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特表2023-522981整合間隙を伴うユーザカスタマイズ可能な整形外科整合デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】整合間隙を伴うユーザカスタマイズ可能な整形外科整合デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20230525BHJP
   A61F 5/56 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
A61F5/01 Z
A61F5/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564233
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021028624
(87)【国際公開番号】W WO2021216858
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】16/856,963
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522411511
【氏名又は名称】ユッカート, グレッグ エドワード
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ユッカート, グレッグ エドワード
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098BB15
(57)【要約】
デバイスがユーザの口の中に設置されると、ユーザの犬歯と整合される、整合間隙を有する、形成可能なマウスピースを含む、ユーザカスタマイズ可能な整形外科整合デバイス(OAD)。本OADは、ユーザの臼歯を被覆し、前歯を網羅し得る、成型可能材料を有する。整合間隙は、整合部材が、成型可能材料の成型の間にユーザの犬歯間に横方向に位置付けられることを可能にするために提供される。成型可能材料は、フレームおよびマウスピースが、撓曲し、ユーザの右臼歯と左臼歯との間の具体的間隔に調節することを可能にする、一体型ヒンジを含む、フレーム上に位置付けられてもよい。成型可能材料がユーザの歯に合わせて成型された後、挿入体が、整合間隙内に位置付けられ、いくつかの実施形態では、本OADが使用されるとき、犬歯間に衝撃緩和を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザカスタマイズ可能な整形外科整合デバイス(OAD)であって、
ユーザの口の中に、前記ユーザの上歯と下歯との間に位置付けられるように適合される、成型可能なマウスピースを備え、
前記成型可能なマウスピースは、少なくとも右区分と、左区分とを含み、
前記右区分および左区分のそれぞれは、前記ユーザの歯に合わせて成型され、前記ユーザの歯に共形化する形状に硬化されるように適合される、第1の成型可能材料を有し、前記右区分および左区分のそれぞれは、前記ユーザの歯の咬合表面に接触するように適合される、咬合部分を有し、
前記成型可能なマウスピースは、整合間隙を有し、前記成型可能なマウスピースが、前記左区分および前記右区分の前記咬合部分が、前記ユーザの上顎大臼歯と下顎大臼歯との間に位置付けられた状態で、ユーザの口の中に設置されると、前記整合間隙は、前記ユーザの犬歯との横方向に整合する状態に位置付けられ、それによって、前記ユーザの犬歯間の整合部材の妨害されていない横方向への位置付けを可能にするように適合される、ユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項2】
前記成型可能なマウスピースが、整合部材が前記ユーザの上歯と下歯との間の前記整合間隙内に位置付けられた状態で前記ユーザの口の中に位置付けられると、1つ以上の整合部材は、前記ユーザの歯と前記1つ以上の整合部材との間の接触圧が、顎を整形外科的整合位置に向かって押勢することを可能にし、前記右区分および左区分が、前記整形外科的整合位置内で前記ユーザの歯に合わせて成型されることを可能にする、請求項1に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項3】
前記成型可能なマウスピースはさらに、前記成型可能なマウスピースが前記ユーザの口の中に位置付けられると、前記ユーザの上前歯および下前歯に対して位置付けられるように適合される、前部分を備え、前記成型可能なマウスピースの整合間隙は、前記成型可能なマウスピースの前区分と右区分および左区分との間に位置付けられる、請求項1に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項4】
フレームをさらに備え、前記フレームは、その上に前記成型可能材料を保定するように適合される、右後部トレイと、左後部トレイと含み、前記右後部トレイおよび左後部トレイのそれぞれは、少なくとも2mmの厚さを有し、前記第1の成型可能材料が、前記ユーザの歯に合わせて成型されると、前記右後部トレイおよび左後部トレイは、前記ユーザの上顎大臼歯が前記ユーザの下顎大臼歯から2mmより近接して位置付けられないように防止する、請求項1に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項5】
前記成型可能なマウスピースは、前記フレームが前記フレームの右区分と左区分との間で接続される、フレームコネクタを有する、後部専用マウスピースを備え、前記フレームコネクタは、前記成型可能なマウスピースが前記ユーザの口の中に位置付けられると、前記ユーザの下前歯に対して後部に位置付けられるように構成される、請求項4に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項6】
フレームコネクタは、前記フレームの一部が相互に対して枢動することを可能にし、それによって、前記フレームの右区分と左区分との間の間隔の調節を可能にする、1つ以上の一体型ヒンジを含む、請求項1に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項7】
ユーザカスタマイズ可能な整形外科整合デバイス(OAD)であって、
ユーザの口の中に、前記ユーザの上歯と下歯との間に位置付けられるように適合される、成型可能なマウスピースを備え、前記成型可能なマウスピースは、少なくとも右区分と、左区分とを有する、フレームと、前記右区分および左区分のそれぞれの上に、前記ユーザの歯に合わせて成型され、前記ユーザの歯に共形化する形状に硬化されるように適合される、第1の成型可能材料とを含み、前記右区分および左区分のそれぞれは、前記第1の成型可能材料が前記ユーザの歯の咬合表面に接触するように適合される、咬合部分を有し、
前記フレームは、前記フレームの一部が相互に対して枢動することを可能にし、それによって、前記フレームの右区分と左区分との間の間隔の調節を可能にする、1つ以上の一体型ヒンジを有する、ユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項8】
前記右区分および左区分のそれぞれの上の前記第1の成型可能材料は、前記ユーザの下顎大臼歯の周囲に成型されるように適合され、前記フレームは、前記フレームの右区分と左区分との間で接続される、フレームコネクタを備え、前記フレームコネクタは、前記成型可能なマウスピースが前記ユーザの口の中に位置付けられると、前記ユーザの下前歯に対して後部に位置付けられるように構成される、請求項7に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項9】
前記1つ以上の一体型ヒンジは、前記フレームコネクタ内に位置付けられる、請求項8に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項10】
前記成型可能なマウスピースは、整合間隙を有し、前記成型可能なマウスピースが、前記左区分および前記右区分の前記咬合部分が前記ユーザの上顎大臼歯と下顎大臼歯との間に位置付けられた状態で、ユーザの口の中に設置されると、前記整合間隙は、前記ユーザの犬歯との横方向に整合する状態に位置付けられ、それによって、前記ユーザの犬歯間の整合部材の妨害されていない横方向への位置付けを可能にするように適合される、請求項7に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項11】
前記成型可能なマウスピースはさらに、前記成型可能なマウスピースが前記ユーザの口の中に位置付けられると、前記ユーザの上前歯および下前歯に対して位置付けられるように適合される、前部分を備え、前記成型可能なマウスピースの整合間隙は、前記成型可能なマウスピースの前区分と右区分および左区分との間に位置付けられる、請求項10に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項12】
前記成型可能なマウスピースは、前記フレームが前記フレームの右区分と左区分との間で接続される、フレームコネクタを有する、後部専用マウスピースを備え、前記フレームコネクタは、前記成型可能なマウスピースが前記ユーザの口の中に位置付けられると、前記ユーザの下前歯に対して後部に位置付けられるように構成される、請求項7に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項13】
前記右区分および左区分は、その上に前記成型可能材料を保定するように適合される、右後部トレイと、左後部トレイとを備え、前記右後部トレイおよび左後部トレイのそれぞれは、少なくとも2mmの厚さを有し、前記第1の成型可能材料が、前記ユーザの歯に合わせて成型されると、前記右後部トレイおよび左後部トレイは、前記ユーザの上顎大臼歯が前記ユーザの下顎大臼歯から2mmより近接して位置付けられないように防止する、請求項7に記載のユーザカスタマイズ可能なOAD。
【請求項14】
ユーザカスタマイズ可能な整形外科整合デバイス(OAD)を形成するための方法であって、前記方法は、
少なくとも右区分と、左区分とを有する成型可能なマウスピースを提供することであって、前記右区分および左区分のそれぞれは、成型可能材料を含む、咬合部分を有し、前記成型可能なマウスピースは、整合間隙を有する、ことと、
前記成型可能なマウスピースを軟化させることと、
前記左区分および前記右区分の咬合部分が前記ユーザの上顎大臼歯と下顎大臼歯との間に位置付けられ、前記整合間隙が前記ユーザの犬歯と実質的に整合して位置付けられた状態で、前記成型可能なマウスピースをユーザの口の中に設置することと、
整合部材を前記ユーザの犬歯間に設置することであって、前記整合部材は、前記成型可能なマウスピースの整合間隙内の前記ユーザの口内から横方向に、かつ前記ユーザの犬歯間の間隙内に位置付けられる、ことと、
前記整合部材が前記ユーザの上犬歯および下犬歯と接触するように、前記整合部材上を下方に軽く咬合することであって、前記ユーザの歯と前記整合部材との間の接触圧は、顎を整形外科的整合位置に向かって押勢し、前記成型可能なマウスピースの右区分および左区分の前記咬合部分は、複数の前記ユーザの臼歯に合わせて成型される、ことと、
前記成型可能なマウスピースが硬化することを可能にすることと
を含む、方法。
【請求項15】
前記成型可能なマウスピースはさらに、フレームを備え、前記フレームは、その上に前記成型可能材料を保定するように適合される、右後部トレイと、左後部トレイと含み、前記右後部トレイおよび左後部トレイのそれぞれは、少なくとも2mmの厚さを有し、前記方法はさらに、前記右後部トレイおよび左後部トレイが、前記ユーザの上顎大臼歯が前記ユーザの下顎大臼歯から2mmより近接して位置付けられないように防止しながら、前記第1の成型可能材料を前記ユーザの歯に合わせて成型することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記成型可能なマウスピースはさらに、前記フレームが前記フレームの右区分と左区分との間で接続される、フレームコネクタを有する、後部専用マウスピースを備え、前記方法はさらに、前記成型可能なマウスピースが前記ユーザの口の中に位置付けられると、前記フレームを前記ユーザの下前歯に対して後部に位置付けられることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フレームコネクタは、前記フレームの一部が相互に対して枢動することを可能にする、1つ以上の一体型ヒンジを含み、前記方法はさらに、前記1つ以上の一体型ヒンジにおいて前記フレームコネクタを撓曲させることによって、前記フレームの右区分と左区分との間の間隔を調節することを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、あらゆる目的のために、参照することによって本明細書に完全に組み込まれる、2019年3月22日に出願され、「User-Customizable Orthopedic Alignment Device with Alignment Gap」と題された、米国特許出願第16/362,301号の部分的に継続出願であり、その優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
【0003】
本発明は、上顎および下顎の最適化された整形外科整合を維持し、それによって、頭部および上部頸椎の最適化された整形外科整合を助長するように設計された、整形外科整合デバイスを製造および使用することに関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術
【0005】
保護マウスピースは、長い間、アスリートによって、その歯に対する損傷を回避する目的のために使用されてきた。これらのマウスピースはまた、頭部および顎に対する振盪性の衝撃の効果を低減させることも意図し得る。ごく最近では、マウスピースが、上顎に対する下顎の所望の位置を維持することによって、アスリートのパフォーマンスおよび健康な状態に影響を及ぼし得ることが発見されている。逆に、不十分な頭部位置は、上部頸椎内にトルクを誘起し、中枢神経系(CNS)上に剪断を生成し、身体の主要な関節における運動の範囲を限定している。これは、最適な生理学的出力を妨害し、制限された移動およびあまり最適ではない生理学的整合に対する適応を通した障害のリスクの増大をもたらす。
【0006】
訓練を受けた医療従事者によって実践され、ヒトの顎の最適化された整形外科的整合位置を判定し、顎の最適化された整形外科的整合位置を維持するために使用され得る、カスタム装着装具デバイスを形成する技法が、存在する。しかしながら、これらの技法は、訓練を受けた医療従事者の技能を要求するため、それらは、広く利用可能ではなく、関連付けられるコストが、幅広い普及を法外に高価にし得る。したがって、訓練を受けた技師がデバイスをカスタム装着することを要求するのではなく、ユーザ自身によってユーザの顎に装着するように成型され得る、マウスピースタイプの製品とユーザの顎を整形外科的に整合させるためのシステムおよび方法を提供することが、望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の要約)
本開示は、ユーザ装着マウスピースを用いて頭部から姿勢鎖を辿って脚部まで降下する、ヒトの整形外科整合の改良に関連する、システムおよび方法を対象とする(ユーザは、代替として、本明細書では着用者と称され得る)。本デバイスは、生理学的パフォーマンスを改良し、姿勢鎖の不十分な整合を引き起こす、不十分な頭部位置に直接関連する障害を低減させることができる。改良は、従来のマウスピースが使用される状況と比較して、頭蓋頸部/頭蓋下顎(CC/CM)関係の改良を通して達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの例示的実施形態は、ユーザが本デバイスを自身の顎および歯に装着することを可能にするように設計される、マウスピースタイプの整形外科整合デバイス(OAD)を備える。OADは、OADが装着される(上歯および下歯に合うように成型される)と、上顎に対して下顎を適切に位置付けるための手段と連動して使用される。ここで言及されるような、上顎および下顎の「適切な」位置付けは、ユーザの上部頸椎を整合された位置に向かって移動するように誘導するであろう、位置付けであり、これは、ひいては、ユーザの姿勢鎖の残部の整合を誘発するであろう。
【0009】
一実施形態は、ユーザの口内に、上歯と下歯との間に位置付けられるように適合される、形成可能なマウスピースを含む、ユーザカスタマイズ可能なOADを備える。OADは、少なくとも、ユーザの臼歯に合わせて成型されるべき、右区分と、左区分とを有する、成型可能なマウスピースを含み、また、前歯に合わせて成型されるべき前区分も有し得る。これらの区分のそれぞれは、ユーザの歯の咬合表面に接触する、咬合部分を有する。成型可能なマウスピースは、本デバイスが(左咬合部分および右咬合部分がユーザの上顎大臼歯と下顎大臼歯との間に位置付けられた状態で)ユーザの口の中に設置されると、ユーザの犬歯と概して整合して位置付けられる、整合間隙を形成する。整合間隙は、ユーザの犬歯間の横方向の整合部材の妨害されていない位置付けを可能にする。オーバーモールド部の右区分および左区分は、一時的に軟化され、ユーザの歯に合わせて成型され、ユーザの歯に共形化する形状に硬化されるように適合される、形成可能材料を備える。形成可能材料は、例えば、加熱によって軟化され、冷却によって硬化されるように適合される、熱可塑性材料であってもよい。成型可能なマウスピースが、一時的に軟化されると、マウスピースは、整合部材とともにユーザの口の中に位置付けられる。整合部材は、ユーザの上歯と下歯との間の整合間隙内に位置付けられる。ユーザの歯と整合部材との間の接触圧は、顎を整形外科的整合位置に向かって押勢する。オーバーモールド部は、硬化し、本位置において硬化し、ユーザの歯に合わせて成型される。
【0010】
形成可能なマウスピースが、ユーザの口の中に位置付けられると、右区分および左区分が、ユーザの上顎大臼歯および下顎大臼歯の個別のものに対して位置付けられる。形成可能なマウスピースはまた、ユーザの上前歯および下前歯に対して位置付けられる、前部分を有してもよい。形成可能なマウスピースの整合間隙は、形成可能なマウスピースの前区分と右区分および左区分との間にある。一実施形態では、ユーザカスタマイズ可能なOADはまた、成型可能材料が搭載される(例えば、フレーム内に埋込される、またはそれに別様に添着される)フレームも含む。フレームは、成型可能なマウスピースの右区分と左区分との間の間隔が、装着者の歯に適合され得るように、フレームが対応する点において撓曲することを可能にし得る、一体型ヒンジを含んでもよい。ユーザカスタマイズ可能なOADは、オーバーモールド部内の整合間隔内に嵌合するように構成される、1つ以上の整合間隙挿入体を有してもよい。整合間隙挿入体は、加熱によって軟化され、冷却によって硬化するように適合される、熱可塑性材料から成ってもよい。
【0011】
多数の他の実施形態もまた、可能性として考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の他の目的および利点が、以下の詳細な説明を熟読し、付随の図面を参照することに応じて、明白な状態になり得る。
【0013】
図1図1Aおよび1Bは、それぞれ、整合位置および非整合位置における頸椎の例示的後部図を図示する、略図である。
【0014】
図2図2は、整合位置における頸椎の例示的横方向図を図示する、略図である。
【0015】
図3図3は、非整合位置における脊柱全体の例示的後部図を図示する、略図である。
【0016】
図4図4は、整形外科的に最適化されておらず、TMJ内にADDを有する位置における患者の顎を図示する、略図である。
【0017】
図5図5は、関節窩内の顆部を減圧し、TMJ内の円板を縮小させる位置にある、その整形外科的に最適化されたCM関係における患者の顎を図示する、略図である。
【0018】
図6図6は、一実施形態による、例示的なユ-ザ装着OADを形成するための方法を図示する、フロー図である。
【0019】
図7図7A-7Bは、一実施形態による例示的OADアセンブリを図示する、略図である。
【0020】
図8図8A-8Cは、一実施形態による例示的OADのためのオーバーモールド部を図示する、略図である。
【0021】
図9図9A-9Dは、一実施形態による例示的OADのための整合間隙挿入体を図示する、略図である。
【0022】
図10図10A-10Cは、一実施形態による例示的OADのためのフレームを図示する、略図である。
【0023】
図11図11は、一実施形態による例示的OADのためのオーバーモールドアセンブリの分解図を図示する、略図である。
【0024】
図12図12は、例示的実施形態による、オーバーモールドアセンブリの成型の間のオーバーモールドアセンブリに対する整合部材の位置付けを図示する、略図である。
【0025】
図13図13は、例示的実施形態による、オーバーモールドアセンブリの成型の間のオーバーモールドアセンブリおよび装着者の歯に対する整合部材の位置付けを図示する、略図である。
【0026】
図14図14A-14Cは、OADのいくつかの実施形態において使用され得る、フレームの構造を図示する、略図である。
【0027】
図15図15は、一実施形態による整合間隙挿入体の構造を図示する、略図である。
【0028】
図16図16は、一実施形態による組み立てられたOADの斜視図を図示する、略図である。
【0029】
図17図17は、一実施形態によるOADとの併用のために位置付けられる、整合リングの斜視図を図示する、略図である。
【0030】
図18図18A-18Cは、一実施形態による、装着者の下顎大臼歯に合わせて成型されるように適合される、OADの代替実施形態を図示する、略図である。
【0031】
図19図19は、図18A-18CのOADとの併用のために位置付けられる、整合リングの斜視図を図示する、略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、種々の修正および代替形態を対象とするが、その具体的な実施形態が、図面ならびに添付される詳細な説明内に実施例として示される。しかしながら、図面および詳細な説明が、本発明を説明される特定の実施形態に限定することを意図していないことを理解されたい。本開示は、代わりに、添付の請求項によって定義されるような本発明の範囲内にある、全ての修正、均等物、および代替物を網羅することを意図している。さらに、図面は、縮尺通りではない場合があり、本明細書に説明される種々の特徴の理解を促進するために、1つ以上の構成要素を誇張している場合がある。
【0033】
(例示的実施形態の詳細な説明)
本発明の1つ以上の実施形態が、下記に説明される。下記に説明されるこれらおよび任意の他の実施形態が、例示的であり、本発明を限定するのではなく、その例証であることを意図していることに留意されたい。
【0034】
本明細書に説明されるように、本発明の種々の実施は、TMJおよび上顎および下顎の改良されたCM整形外科整合を介して改良されたCC整合を維持する、ユーザ装着OADの使用を通して、頭部および上部頸椎の最適化された整形外科整合を助長するためのシステムおよび方法を備える。
【0035】
上記に記載されるように、ヒトの顎の位置は、自身の健康な状態およびパフォーマンスに影響を及ぼし得る。種々の研究が、パフォーマンスに対する顎の位置の影響に関連して行われている。例えば、Makkar, et al.の米国特許第8,667,972号(参照することによって本明細書に組み込まれる)は、顎の生理学的静置位置を維持するためのマウスピースの使用と、それによる物理的パフォーマンスの向上とに関する、いくつかの論説を手短に記載している。Ueckertによって2017年2月27日に出願された米国特許出願(参照することによって本明細書に組み込まれる)もまた、本主題、ならびに神経剪断(本明細書では、頭蓋骨および上部頸椎における脊髄上への応力を指すために使用される)が、最小限化または緩和されていることを確実にするための頭蓋骨と脊柱との整合(CC整合)を議論している。CC整合および最小限化された神経剪断は、頭蓋骨に対する下顎の位置付け(CM位置付け)に影響を及ぼす。
【0036】
MakkarおよびUeckertによって議論される方法論を使用すると、ヒトのパフォーマンスは、最大限化されることができ、その傷害のリスクが、最小限化されることができる。MakkarおよびUeckertは両方とも、整形外科的に最適化されたCM位置を判定するために、歯科医または歯科矯正医等の訓練を受けた医療従事者による経皮的電気神経刺激(TENS)の使用を伴う。顎が、整形外科的に最適化された位置にあるとき、咬合位置合わせが、行われる。ヒトの歯の印象が、とられ、患者の上歯および下歯の凸成型型を形成するために使用される。これらの凸成型型は、咬合器上に搭載され、咬合位置合わせが、使用され、凸成型型を整形外科的に最適化された咬合位置に整合させる。最後に、マウスピース、すなわち、OADが、上側成型型と下側成型型との間に形成される。本OADの使用は、最適なCM整合が誘発されるように、顎を整形外科的に最適化されたCM位置に保持する。
【0037】
これらの技法は、患者のための最適化されたパフォーマンスを達成するが、複雑で詳細な手技および医療従事者の関与が、技法のコストをそれらが多くの人々にとって実践的解決策にならない点まで増大させ得る。例えば、スポーツに参加する多くの学童が、保護マウスピースを使用するが、特注のマウスピースを有するコストを負担することは不可能である。本タイプの状況では、人々が、ユーザの歯に合わせて成型され得る、医師処方不要なマウスピースを購入することが一般的である。典型的には、マウスピースが、熱水中で軟化され、ユーザの口の中に設置され、ユーザの歯に対して圧接され、依然として可撓性のままでありながら、その形状を留保するために十分に冷却され、硬化することが可能にされる。これらの従来の医師処方不要なマウスピースを成型するとき、下顎が、有益な位置にあることを確実にするための方法が、存在せず、そのため、マウスピースは、一般的には、顎をTMJが十分に減圧されていない、上方後部の位置に保持する。加えて、本位置は、ユーザにいかなるパフォーマンスの恩恵も提供せず、実際には、ユーザのパフォーマンスに悪影響を及ぼし得る。
【0038】
本明細書で使用されるように、「硬化する(harden)」が、材料の硬直を指すために使用され、材料が完全に堅性または非可撓性な状態になったことを示すものではないことに留意されたい。言い換えると、「硬化(hardening)」は、材料の形状が歯に共形化される、第1の成型可能状態から、材料の形状がその成型された形状から若干撓曲し得ることを除いては変化しない、第2の堅固な状態への材料の変化を指す。本明細書で使用されるように、「軟化(Softening)」は、材料を加熱すること、または材料の成分を混合すること等によって成型され得る材料の調製を指し、これは、次いで、成型された形状に硬化および硬直する前に、時間周期にわたって成型可能なままであるであろう。
【0039】
本発明の実施形態は、歯に合わせたマウスピースタイプのOADの成型の間に上顎に対して下顎の有益な整合を維持する、1つ以上の整合部材を使用することによって、本問題を克服する。一実施形態では、整合部材は、典型的には、ユーザの下歯および顎が整形外科的整合位置に維持されるように、ユーザの犬歯に隣接する、横方向に位置付けられる(すなわち、左右に、前後方向に対して略直角に延在する)、実質的に堅性のバーから成る。OADの成型可能部分は、成型可能部分がユーザの口の中に位置付けられると、整合部材が、上歯と下歯との間に障害物なく位置付けられることを可能にするように配向される、整合間隙を有する。成型可能部分は、軟化され、ユーザの口の中に設置され、整合部材が、ユーザの歯の間の間隙内に横方向に位置付けられる。ユーザが、上歯および下歯に接触する整合部材を下方に軽く咬合する。
【0040】
整合部材が、上歯および下歯が快適に広がるように、概して、ユーザの犬歯間に横方向に(左右に)位置付けられる。一実施形態では、整合部材は、上歯6および11、ならびに下歯22および27から遠位にあるが、これは、何人かのユーザに関して、他の歯に接触するように位置付けられてもよい(これらの数が、成人の歯列に対応し、他の識別子、例えば、歯c、h、m、およびqが、小児の歯列に適用可能であることにもまた、留意されたい)。バーとこれらの歯の接触が、OADの成型可能部分が硬化するにつれて、歯が所望の位置に(例えば、上歯と下歯との間の対応する間隙が垂直方向に整合された状態に、かつ歯6、11、22、および27が略垂直方向に整合された状態に)整合されるように、下顎を移動させる。本位置付けは、典型的には、従来のマウスピースを成型するときの通常の静置顎位置(すなわち、下前歯が上前歯の後部にある位置)に優る、改良である。成型可能部分が、硬化すると、整合部材は、歯から除去されることができる。本実施形態では、挿入体が、次いで、整合間隙内に位置付けられ、挿入体およびOADの成型された部分内の特徴を保定することによって、定位置に係止される。挿入体が整合間隙内に位置付けられた後、挿入体は、軟化され、それらを犬歯に合わせて成型することができる。
【0041】
本発明の例示的実施形態を説明する前に、CC整合と、CM整合と、パフォーマンスに及ぼすそれらの影響と、傷害のリスクを最小限化することとの間の関係のいくつかの側面を解説することが、役立ち得る。脊髄は、大後頭孔、すなわち、頭蓋骨の基部における大きい開口部を通して頭蓋骨から出現し、(C1または「環椎」と称される)最上頸椎と、(C2または「軸椎」と称される」)第2の頸椎とを含む、椎骨を通して延在する。環椎および軸椎は、脊柱に対する頭蓋骨の移動の70%を可能にする。
【0042】
頭蓋骨および頸椎が、完全に整合される(図1Aおよび2参照)と、環椎および軸椎内の脊髄上での神経剪断が、最小限化される。頭蓋骨が、本同心円状に整合された位置から離れるように移動する度に、脊髄が、それとともに移動され、これは、中枢神経系上にトルクを課す。本トルクは、結合組織ブリッジを介して、脳および脊髄を囲繞する髄膜の3つの層の最も外側である、厚い膜である、硬膜への環椎および軸椎の直接的な物理的接続によって誘発される。硬膜は、脳および中枢神経系を被覆および保護する、ある種類の「外皮」として機能する。硬膜が、最適な整合から離れるような頭部または頸部の移動によって伸展または捻転されると、トルクが、中枢神経系上に誘発される。脊髄上の剪断応力が高すぎる場合、運動の範囲が、中枢神経系および神経組織のさらなる剪断を防止するように即座に限定される。侵害受容器から発出する疼痛もまた、身体の運動範囲を限定するように脳に信号伝達することができる。疼痛感覚は、さらなる移動および脊髄上の対応する応力を妨げる。
【0043】
例えば、ヒトの頭部が、横方向に屈曲され、左に向けられた場合、剪断力が、右腕を神経支配する神経の腕神経叢上に課されるであろう。右肩の運動の範囲が、さらなる剪断が生じないように防止するように限定され、神経の誘発された圧縮および不整合が、影響を及ぼされる腕に手への知覚異常を引き起こし得る。本不整合は、姿勢鎖を辿って降下し、足に至るまでの整合に影響を及し得る(図3参照)。ヒトの神経上に剪断力または圧縮および結果として生じる疼痛を生成することに加えて、不整合は、椎骨動脈の収縮を引き起こし(図1B参照)、心臓がより激しく鼓動し、脳の中に血液を適切に灌流するため、潜在的に、血管性片頭痛および高血圧等の問題をもたらし得る。
【0044】
顎関節は、身体内で最も一意であり、最も使用される関節である。本関節は、開口部の最初の20mmにおいて回転型関節として機能し、開口部の最後の20~25mmにおいて、関節の並進が、生じる。本並進の間、下顎の顆部が、関節窩から外に移動し、最大開口部に到達する。下顎は、6つの並進方向、すなわち、上下、前後、および左右に移動することができる。これに加えて、これはまた、ピッチ、ヨー、およびロールと称される、飛行機と同一の回転方向に移動することもできる。例えば、ヒトが、その顎を閉鎖し、前歯が、奥歯の前方に接触した場合、下顎は、奥歯が接触するまで、上方かつ後方にピッチ運動するであろう。左前歯が、他側の前に最初に片側上で接触する場合、顎が、干渉を回避するために、時期尚早に接触しないように離れるようにヨー運動するであろう。また、右側における奥歯が、左側の奥歯が接触する前に接触する場合、顎が、後方歯が接触するまで左側で上方にロールするであろう。下顎が、ピッチ運動、ヨー運動、またはロール運動する必要があるとき、これは、TMJ内に圧縮を生成し、これは、上部頸椎(C1およびC2)内にトルクをもたらし、即座に神経剪断を展開する。本剪断を管理するために、顎は、6つの方向の全てにおいて平衡状態にある必要がある。これは、OADを使用して遂行される。
【0045】
CM整合およびCC整合の相互作用または相互依存の概念は、時として、Dr. Mariano Rocabodoが先鞭をつけた、50/50原理と称される。関係間の共通性は、頭蓋骨であり、整合のうちの一方を変更することは、他方に影響を及ぼす(作用反作用の法則)。下顎および上顎の整合が、改良された場合、頸椎の整合もまた、改良される。逆に、頸椎の整合が、改良される場合、上顎および下顎の整合が、改良されるであろう。
【0046】
習慣的に(但し、最適にではない)整合されたCC/CM関係では、ヒトの顎が閉鎖すると、上前歯が、下前歯の正面(その前方)に位置付けられる(図4参照)。従来のユーザ装着マウスピースは、顎を、本習慣的整合に近接する位置に保持するが、歯は、わずかにさらに離れるように離間される。右および左の後方歯が、前方の歯が接触する前にいかなるピッチ運動/ヨー運動/ロール運動も発生させることなく同時に接触する。右および左TMJ関節円板は、関節窩内にいかなる前方変位も伴うことなく安定し、低減され、C1およびC2は、いかなる亜脱臼または回転も伴わず、同心円状に整合される。
【0047】
図4に示されるような習慣的な亜脱臼整合では、下顎が、後方歯を着座させるために上方かつ後方に移動しなければならない。これは、TMJを圧縮し、ADDにつながり、C1/C2の亜脱臼、可能性として考えられる回転および側方屈曲を伴う、前方頭部姿勢、および姿勢鎖を辿った連鎖不整合を引き起こす。顎の本上方かつ後部移動はまた、舌空間を限定することによる、ヒトの軌道の閉塞を引き起こす。加えて、ヒトの舌は、咬合されることを回避するために後方に移動し、これはさらに、気道を閉塞し、睡眠の間の妨害につながり、鼾または閉塞性睡眠時無呼吸の発症を増大させる。気道の閉塞、および後部咬合支持の喪失に起因する、顎の関係の崩壊に応答して、ヒトの頭部が前方に移動するにつれて、姿勢鎖の下行亜脱臼が、生じる。これは、作用反作用の法則によって決定付けられ、(股関節インピンジメント、すなわち、FAIのように)関節移動内に障害を生成し、より開放した気道を維持することに役立つ。頭部の本前方運動は、ひいては、脳幹上にトルクを課し、上部頸椎内に神経剪断を発生させ、環椎および軸椎を亜脱臼させることによって、中枢神経系に影響を及ぼし、これはまた、主要な関節の運動の範囲を限定する。
【0048】
固有受容感覚は、身体部分の移動に採用されている近隣部分の相対位置および労力の強度の感覚である。本用語は、したがって、顎の位置および移動の感覚に寄与する感覚情報を説明するために使用される。筋肉および関節からの受容体が、本質的に、身体認識を通知し、与え、移動している方法に関する情報を提供する。
【0049】
固有受容感覚系は、主に、小脳(脳の平衡中心)内に位置し、これは、前庭系および触覚系と緊密に稼働する。脊髄小脳が、固有受容器、触覚受容器、視覚受容器、および聴覚受容器から感覚インパルスを受信することによって、トーン、姿勢、および平衡を調整する。顎の場合では、脊髄小脳への固有受容遠心性接続を提供するのは、三叉神経小脳路である。本脳路は、顎筋およびTMJから脊髄小脳に固有受容情報を伝達する。これはまた、感覚インパルスを歯周組織(顎骨内で歯を支持する靭帯および組織)から脊髄小脳に搬送する。
【0050】
顎、TMJ、および歯の関係の固有受容感覚が、直接小脳に提供される。後方歯(臼歯および小臼歯)が、接触すると、三叉神経小脳路を介した固有受容感覚が、瞬時に脊髄小脳と通信し、その情報を使用して頭部位置に影響を与える。これは、平均で、毎日約3,000回生じる。その結果、ヒトの顎が、整合から外れた場合、ヒトの頭部の位置もまた、整合から外れるであろう。他方において、ヒトの顎が、より最適に整合された場合、ヒトのCC/CM整合は、自身の頭部位置が亜脱臼されないように補正されるが、代わりに、より整形外科的に整合される。より具体的には、これは、神経剪断が低減され、頭部が平衡点まで戻り、姿勢鎖を辿って再整合の下降連鎖を開始する、整形外科的整合位置に保持されることができる。これは、主要な関節の改良された運動の範囲、改良された平衡状態、より開存している気道、より良好な運動の漸増、および障害の低減されたリスクをもたらす。改良は、即時であり、上部頸椎、下部頸椎、肩、および股関節に関する通常の可動域試験を使用して査定されることができる。CC/CM複合体の亜脱臼に由来する疼痛を患う患者の場合には、本複合体の改良された整合が、神経剪断を低減させ、運動の範囲が限定されていた関節内の疼痛を即座に減少させる。
【0051】
MakkarおよびUeckertの方法では、TENSが、患者の顎筋に印加され、筋肉を弛緩させ、それらを「プログラム解除」する。これは、患者が下顎を上昇させ、後方歯を生理学的静置位置の後部の位置に結合するための筋肉収縮のエングラムパターンを生成しているため、行われる(図4参照)。筋肉が、プログラム解除されると、顎は、上部頸椎のCC整合に関連する、より最適化された位置に近接するであろう。本位置では、上前歯を下前歯の前方にさせる(図4参照)のではなく、前歯が、相互に垂直方向により整合される(図5参照)であろう。同様に、但し逆に、下顎の位置付けは、CC整合に影響を及ぼすであろう。その結果、患者の下顎が最適化された位置に保持されると、患者のCC/CM複合体は、最適化された顎の位置に対応する、整形外科的に最適化された位置に維持されるであろう。
【0052】
したがって、理想的には、マウスピースは、図5に示されるように、装着者の顎を整形外科的に有益な位置に保持するであろう。整形外科的に有益な顎位置を維持することによって、特に、顎位置の固有受容感覚が、生じると、頭部および上部頸椎の整形外科整合が、維持され、神経剪断が、低減され、主要な関節の運動の範囲が、改良され、平衡状態が、改良される。整形外科整合の本リセットはまた、障害のリスクも最小限化する。
【0053】
図4および5に示されるように、関節円板205が、下顎の顆部210と側頭骨の関節窩215との間に位置付けられる。通常、顎が、開放および閉鎖されるにつれて、円板が、それらが顆部と窩との間に留まるように移動する。顎が閉鎖し、後方歯が、末端接触しているとき、顆部が上方かつ後方に移動する場合、これが、TMJを圧縮し、関節円板の後部部分上に負荷を課し得る。これは、ADDを引き起こす。ADDおよびTMJの対応する不整合が、侵害受容信号伝達に起因して上部頸椎内に不要なトルクを生成する。これは、環椎および軸椎の亜脱臼および頭部不整合につながり、神経剪断を誘発する、上部頸部筋(特に、C1/C2の周囲の後頭下筋)の反射収縮を生成する。
【0054】
関節円板205が圧縮されていない(CC/CM複合体が、その結果、整合に向かって移行する)顎の有益な整合を達成するために、本システムおよび方法は、(本明細書では、整形外科整合デバイス、すなわち、OADと称され得る)形成可能なマウスピースと、マウスピースがユーザの歯に合わせて形成されている間、顎を適切に整合させ、本整合を維持するための手段とを採用する。本整合手段(例えば、マウスピースを横断して横方向に延在する、整合部材)は、整合部材が、マウスピースからの障害なく、歯の間に位置付けられることを可能にする、マウスピース内の間隙内に位置付けられる。マウスピースが、形成された後、整合部材は、除去され、挿入体が、間隙内に位置付けられ、歯の間に衝撃緩和を提供してもよい。付加的な成型が、実施され、ユーザの歯に合わせて挿入体を成型してもよい。
【0055】
本システムおよび方法では、顎筋をプログラム解除するためにTENSを印加するのではなく、整合部材が、上歯および下歯(例えば、上歯番号6および11の遠位、かつ下歯22および27に対して近心)に接触して位置付けられ、顎を整形外科的に最適化された位置に向かって押勢する。整合部材が、これが、歯に合わせて成型されている間、マウスピースの成型可能部分内の整合間隙内に位置付けられることを可能にすることによって、顎整合が制御されていない、従来のマウスピースを用いる場合より、OADの成型において、より最適化された顎位置が、達成されるであろう。顎の前部位置/後部位置を調節することに加えて、OADの整合部材は、顎の「ロール運動」が生じないように、左側および右側における上歯と下歯との間に均一な間隔を維持する。好ましくは、17~21mmの垂直指数が、最適化された顎関係内に展開される、またはいくつかの状況は、最低2mmの空間が、歯の最も近接する近似物(最も近接する上歯および下歯が、相互に接触する状態になる)間に展開されるであろう。
【0056】
OADの成型可能部分は、EVA(エチレン酢酸ビニル)タイプ材料、別のタイプの熱可塑性材料、または好適な3D印刷材料等、当技術分野において公知であるような、任意の好適な材料から成ることができる。選択された材料は、図6に図示される方法に従って形成されてもよい。本図では、成型されていないOADが、提供される(302)。マウスピースは、成型可能部分が装着者の口の中に設置されると、歯の間の整合部材の位置付けを可能にするように、その中に整合間隙を有する、成型可能部分を有する。挿入体が、最初に、成型可能部分の整合間隙内に位置付けられる場合、それらは、除去されるべきである(304)。
【0057】
成型可能部分は、例えば、これをある時間量にわたって温水槽内に設置することによって、軟化される(306)。材料を軟化させるために使用される具体的なステップは、材料に関する製造業者の推奨および要件に依存するであろう。軟化された成型可能部分が、次いで、装着者の口の中に設置される(308)。整合部材が、ユーザの歯の間の間隙内に横方向に位置付けられる(310)。整合部材は、成型可能部分が装着者の口の中に設置される前または後のいずれにおいても歯の間に位置付けられ得る。装着者は、整合部材が上歯および下歯(例えば、上歯6および11および下歯22および27の遠位)に接触し、下顎を所望の整合位置まで移動させるように下方に軽く咬合する(312)。整合部材が、マウスピースが成型されているときにユーザがこれを下方に咬合することによってこれが有意に変形されないであろうように、実質的に堅性であることに留意されたい。成型可能部分が、装着者の歯の周囲に成型され、次いで、硬化することが可能にされる(314)。
【0058】
成型可能部分が硬化すると、成型可能部分および整合部材が、装着者の口から除去されることができる。挿入体が、次いで、整合間隙内に位置付けられる(316)。挿入体は、挿入体内の特徴およびOADの成型された部分(例えば、成型可能部分内の対応する孔または成型可能部分内のフレームの中に嵌合する、挿入体上の小さい返し付きの柱)を保定することによって、定位置に係止されてもよい。挿入体が、整合間隙内に位置付けられた後、挿入体は、軟化され、それらを犬歯に合わせて成型することができる(318)が、これは、全ての実施形態において必要であるわけではない。一実施形態では、アセンブリ全体が、(例えば、温水槽内で)軟化される。代替として、挿入体を伴うアセンブリの前部分のみが、軟化されることができる。アセンブリは、次いで、装着者の口の中に戻されるように設置され、装着者の歯に合わせて挿入体を成型することができる(320)。OADの前もって成型された部分が、整合部材が本目的のためにもはや必要とされなくなるように、挿入体が歯に合わせて成型される間、顎の適切な整形外科整合を維持する役割を果たすであろう(322)。挿入体が、硬化すると、OADは、使用できる状態になる。
【0059】
OADの例示的実施形態が、図7-11に示される。図7A-7Bを参照すると、オーバーモールド部と、フレームと、整合間隙挿入体とを含む、OADアセンブリ全体が、描写される。図7Aは、OADの斜視図である一方、図7Bは、OADの下側の平面図である。OAD400が、装着者の歯の周囲に嵌合する、略半円形デバイスであることが、これらの図に見られ得る。これらの図に図示される本デバイスが、装着者の上歯の周囲に形成されるように設計されるが、代替実施形態が、装着者の下歯の周囲、または上歯および下歯の両方の周囲に形成されるように設計され得ることに留意されたい。一実施形態では、装着者の下歯に合わせて成型されるように設計された、OADの構造は、図7-11に示される実施形態と実質的に同一である。装着者の下歯および装着者の上歯の両方に合わせて成型されるように設計された、ある実施形態は、垂直壁が(装着者の上歯に対して成型される)咬合部分の上方および(装着者の下歯に対して成型される)咬合部分の下方の両方に延在することを除いて、図7-11に示される実施形態と実質的に同一である。
【0060】
本実施形態では、OAD400は、装着者の臼歯の周囲に成型された、左(410)部分および右(420)部分と、装着者の前歯の周囲に成型された、前部分430と、装着者の犬歯の周囲に成型され得る、挿入体部分(440、441)とを含む。前部分430および左部分および右部分410および420が、相互に接続され、本明細書では、オーバーモールド部と称される。オーバーモールド部および挿入体部分は、軟化され、装着者の歯に合わせて成型され得る、当技術分野において公知である、EVAタイプ材料または任意の他の好適な材料から成る。本実施形態のオーバーモールド部は、挿入体440および441が除去されるときに前部分と右部分および左部分との間にある剛性を提供するために、フレーム450にわたって形成される。
【0061】
図8A-8Cを参照すると、オーバーモールド部は、フレームおよび挿入体部分を伴わずに示される。オーバーモールド部の右部分および左部分のそれぞれは、装着者の臼歯の咬合表面に接触する、対応する咬合部分(411、421)を有する。垂直壁が、咬合部分の側面から上向きに延在する。壁412および422は、それぞれ、咬合部分411および421の外縁から上向きに延在する。壁413および423は、それぞれ、咬合部分411および421の内縁から上向きに延在する。前部分430は、同様に、咬合部分431の対応する縁から上向きに延在する、外側(432)垂直壁および内側(433)垂直壁を伴う、咬合部分431を有する。咬合部分(411、421、431)および垂直壁(412、413、422、423、432、433)は、これらの図に描写されるように、最初に平滑な表面であるが、成型に続いて、これらの表面は、装着者の歯の表面に共形化される。
【0062】
オーバーモールド部の右部分および左部分の内側垂直壁および外側垂直壁が、前部分の内側垂直壁および外側垂直壁に接続される。言い換えると、垂直壁は、オーバーモールド部の右部分および左部分および前部分が、単一のユニットを形成するように、整合間隙460を横断して延在する。整合間隙を横断して延在する垂直壁の一部は、比較的に薄いため、それらは、オーバーモールド部の材料が、装着者の歯の周囲にこれを形成することに先立って軟化されると、オーバーモールド部の半円形形状全体を維持するために十分な剛性を有していない場合がある。したがって、上記に記載されるように、フレームが、アセンブリに付加的な剛性を提供するために使用される。小さいチャネルまたは空隙(例えば、455)が、フレームを収容するために、オーバーモールド部内に形成される。図11(OADアセンブリの分解図)が、フレーム450が本実施形態内のオーバーモールド部のチャネル455の中に挿入される方法を示すことに留意されたい。
【0063】
図9A-9Cを参照すると、整合間隙挿入体が、OADアセンブリから離れた状態で示される。本実施形態では、2つの別個の挿入体(440、441)が、使用されるが、単一の挿入体も、代替実施形態において使用され得る。左挿入体440が、OADの左側(左部分410と前部分430との間)における整合間隙の中に挿入され、右挿入体441が、OADの右側(右部分420と前部分430との間)における整合間隙の中に挿入される。各挿入体は、咬合部分(例えば、442)を含む。挿入体が、整合間隙内に位置付けられ、オーバーモールドアセンブリが、装着者の口の中に設置されると、挿入体の咬合部分が、概して装着者の上犬歯と下犬歯との間に位置付けられる。挿入体はまた、挿入体の咬合部分の外縁および内縁から上向きに延在する、短い垂直壁(例えば、443、444)も有する。挿入体は、対応する整合間隙内に位置付けられると、概して、連続的な咬合部分および内側垂直壁および外側垂直壁が、オーバーモールド部とともに形成されるように、成形される。
【0064】
挿入体が、いったん挿入されると、挿入体がオーバーモールド部内に保定されることを可能にする、位置付け特徴を含むことに留意されたい。一実施形態では、小さい柱(446、448)が、挿入体上に提供される。これらの柱は、オーバーモールド部および/またはフレーム内の対応する孔内に嵌合し、挿入体を整合間隙内の定位置に保持する。一実施形態では、柱は、柱が孔の中に挿入されると、返しが、図9Dに示されるように、柱を孔内に保持するように、それらの端部上に小さい返し(例えば、449)を有する。これは、挿入体が整合間隙から外れ、窒息の危険性をもたらさないように防止し得る。位置付け特徴がまた、整合間隙内の挿入体の位置を維持するであろう、種々の他のタイプのキーおよびキー溝も含み得ることに留意されたい。
【0065】
図10A-10Cを参照すると、フレーム450が、OADアセンブリから離れた状態で示される。本実施形態では、フレームは、別個の左(451)部分と、右(452)部分とを含む。他の実施形態では、フレームは、単一のユニットとして設計されてもよい。フレームの左部分および右部分のそれぞれは、オーバーモールド部の咬合部分の中に挿入される、安定化部分(例えば、456)を含む。フレームの左部分(451)は、オーバーモールド部の左部分内に嵌合し、フレームの右部分(452)は、オーバーモールド部の右部分内に嵌合する。安定化部分は、これが、装着者の上顎大臼歯および下顎大臼歯ならびに/もしくは小臼歯間に最小の間隔または好ましい間隔を維持する役割を果たし得るため、間隔部分とも称され得る。フレームの安定化部分は、フレームがオーバーモールド部内に配設されると、オーバーモールド部の左後部分/右後部分(410、420)と前部分(430)との間の整合間隙を横断して延在する、フレームの橋架部分(例えば、457)に接続される。
【0066】
フレーム450は、橋架部分457が(フレームを伴わないオーバーモールド部と比較して)オーバーモールドアセンブリに剛性を加えるように、オーバーモールド部より堅性の材料から成る。フレームは、完全に堅性または非可撓性である必要はないが、少なくとも橋架部分は、オーバーモールドアセンブリがその略円形形状を維持することを可能にするであろうように、あまり可撓性ではなくあるべきである。フレームの安定化部が、別個に製造され、オーバーモールド部の対応する咬合部分の中に挿入され得ること、またはこれが咬合部分の中に成型される、もしくは任意の他の好適な手段を通して形成され得ることに留意されたい。一実施形態では、安定化部分は、本デバイスが装着者の歯に合わせて成型されるとき、最小の間隔が装着者の上顎大臼歯および下顎大臼歯ならびに/もしくは小臼歯の間に維持されるように、定寸される。最小の間隔は、好ましくは、2~4mmであり、一例示的実施形態では、好ましくは、3.5mmである。フレームが、オーバーモールド部より概して圧縮可能ではない材料から成る(言い換えると、オーバーモールド部の材料より高いデュロメータを有する)ため、これは、装着者がオーバーモールド部上を下方に咬合しすぎないように保つ。しかしながら、フレームは、完全に非圧縮性ではなく、そのため、咬合部分は、圧縮可能であり、顎に対する潜在的衝撃を衝撃緩和することが可能なままである。
【0067】
本実施形態では、フレーム450は、オーバーモールドアセンブリ内に整合間隙挿入体を保定するように適合される、橋架部分457からの2つの拡張部を含む。これらの拡張部、すなわち、後部挿入体保定器458および前部挿入体保定器459のそれぞれは、拡張部の端部を通した小さい孔を有する。全体が、整合間隙挿入体の対応する保定柱を受入するように適合される。例えば、挿入体440の後部柱446は、後部挿入体保定器458の端部内の孔を通して延在し、挿入体440の前部柱448は、前部挿入体保定器459の端部内の孔を通して延在するであろう。オーバーモールド部はまた、その中に、挿入体の柱がフレームおよびオーバーモールド部の両方の中の孔を通して延在するように、前部挿入体保定器および後部挿入体保定器459および458内の孔と整合される、孔を有してもよい。上記に記載されるように、柱は、それらが孔を通して挿入されると、フレームが孔内に柱を保定するであろうように、返しを有してもよい。
【0068】
図6に関連して上記に説明されるように、OADは、本デバイスを成型する間、顎の整形外科的整合位置を維持するために、上歯に対して装着者の下歯を位置付けるための、整合部材の使用を可能にする。図12および13は、成型プロセスの間のオーバーモールドアセンブリ400に対する整合部材500の位置付けを示す。
【0069】
OADが、装着者によって購入されると、オーバーモールドアセンブリおよび挿入体の中に組み込まれる保定特徴が、挿入体を整合間隙内の定位置付けられるに恒久的に係止し得るため、挿入体を整合間隙内に配設させないであろうことが、想定される。しかしながら、装着者が、挿入体が整合間隙内に配設される、ある実施形態を購入する場合、装着者は、オーバーモールドアセンブリを成型することに先立って、挿入体を除去するであろう。
【0070】
上記に記載されるように、装着者は、アセンブリを温水槽内に設置する等の手段によって、オーバーモールドアセンブリを軟化させるであろう。オーバーモールドアセンブリが、軟化した後、ユーザは、歯が咬合部分と接触し、内側垂直壁と外側垂直壁との間にあるように、アセンブリを自身の口の中に設置するであろう。オーバーモールドアセンブリが本位置にある状態で、整合間隙は、図13に示されるように、装着者の犬歯間の間隙と実質的に整合されるべきである。「実質的に整合される」は、ここでは、略線形の整合部材(例えば、ロッド)が、オーバーモールドアセンブリによって遮られていない、上歯と下歯との間で装着者の口を横断して横方向に位置付けられ得るような、整合を指すために使用される。好ましくは、整合部材は、オーバーモールドアセンブリと接触しない。整合部材は、オーバーモールドアセンブリの整合間隙内で心合される必要はない。
【0071】
整合部材は、整合間隙内および装着者の犬歯間の間隙内に位置付けられる。整合部材は、オーバーモールドアセンブリが口の中に位置付けられる前または後のいずれにおいても装着者の口の中に位置付けられてもよい。装着者の歯列に応じて、整合部材は、オーバーモールドアセンブリの整合間隙内の種々の場所に据え付けられてもよい。図13に描写されるように、犬歯および整合部材は、オーバーモールドアセンブリの整合間隙の中心に対してわずかに前方にある。装着者が、整合部材上を下方に軽く咬合すると、顎および下歯が、整合部材が、歯の間、典型的には、歯6、11、22、および27から遠位の間隙内に静置するまで、前方または後方に移動する。オーバーモールド部は、次いで、顎が本位置にある状態で硬化することを可能にされる。これは、装着者が、その舌をオーバーモールド部に対して圧接する、または空気をその口から外に吸い出し、本デバイスが歯に合わせて成型することを補助するために役立ち得る。
【0072】
整合部材は、種々の異なる形状およびサイズを有し得るが、本図に描写されるように、整合部材は、整合間隙を通して延在する約3mmの直径の丸みを帯びた断面を伴う、直線のロッドまたはだぼを有する。図12に示されるように、整合間隙を通して延在する整合部材の直線部分は、ループを形成するように、それぞれにおいて、略半円形の部分に接続される。本ループ構成は、いくつかの目的を果たし得る。例えば、これは、整合部材を、子供の歯に合わせて本デバイスを成型するために使用されるときに、窒息の危険性にならないように十分に大きくする。本構造はまた、成型プロセスの間に装着者の口内の定位置に整合部材を保ち得る。例えば、整合部材の直線部分は、装着者の口の中に位置付けられてもよく、湾曲部分は、これが定位置から外れるように移動しないように防止されるように、装着者の顎に対して、またはその下に下向きに吊下することを可能にされてもよい。
【0073】
図14-17を参照すると、OADの代替実施形態が、図示される。本実施形態では、OADは、装着者の臼歯および前歯に合わせて形成され得る、成型可能材料のためのトレイとしての役割を果たす、フレームであって、トレイ内で材料を成型する間にそれを通して整合部材を収容し、その後、成型可能な挿入体を収容する、整合間隙を有する、フレームを備える。
【0074】
図14A-14Cを参照すると、OADの本実施形態において使用され得る、フレームが、示される。図14Aは、フレームの側面図であり、図14Bは、フレームの上面図であり、図14Cは、フレームの正面斜視図である。これらの図に見られ得るように、本実施形態におけるフレームは、成型可能材料のオーバーモールド部内に完全には含有されないが、代わりに、概して、成型可能材料が位置付けられるトレイとしての役割を果たす。本実施形態におけるフレームの一部は、成型可能材料がトレイ内に位置付けられ、装着者の歯に合わせて成型されるときに露出されたままである。
【0075】
図14Bに示されるように、フレーム600は、装着者の臼歯に合わせて成型されるであろう、材料を保持する、後部分602と、整合間隙610を含む、中心部分604と、装着者の前歯に合わせて成型されるであろう、材料を保持する、前部分606とを有する。フレームは、フレームの外縁の周囲で略半円形の形状において延在する、外壁612を有する。外壁612の外形は、その長さに沿って変動する(例えば、図14Aおよび14C参照)が、外壁は、略連続的である。フレームはまた、形状が略半円形であり、フレームの内部の周囲に延在する、内壁614も有し、内壁が、空間616および618において不連続であることが、分かり得る。これは、フレームのヒンジ式側面に関連して、下記により詳細に説明されるであろう。内壁および外壁のそれぞれは、OADが使用中であるとき、装着者の上歯と下歯との間に位置付けられる、フレームの床部620から上向きに延在する。
【0076】
フレーム600の後部分602は、そのそれぞれが、装着者の臼歯に共形化されるであろう、成型可能材料を保持する、右後部トレイと、左後部トレイとを形成する。右後部トレイおよび左後部トレイのそれぞれの床部は、それを通して開口部(例えば、成型可能材料がフレームを通して延在し得、上顎大臼歯および下顎大臼歯の両方に接触し得るような、622、624)を有する。成型可能材料は、したがって、装着者の上顎大臼歯と下顎大臼歯との間に衝撃緩和を提供することができる。それにもかかわらず、後部トレイにおけるフレームの床部は、成型可能材料が装着者の歯に合わせて成型されるとき、装着者の臼歯間に最小の間隔を維持する役割を果たすことができる。フレームは、成型可能材料より堅性である材料から成ってもよく、さらに、依然として、成型可能材料が装着者の顎への衝撃を緩和しないように防止しないほど十分に可撓性である。左後部トレイおよび右後部トレイがそれぞれ、個別のトレイの正面縁に位置付けられる、障壁(例えば、626)を有し、装着者の歯に合わせて成型されるとき、成型可能材料の広がりを含有する役割を果たすことに留意されたい。これは、成型可能材料が、(下記により詳細に議論されるであろうように)フレーム内の整合間隙の中に嵌入する、挿入体によって充填されるであろう、面積内に前方に流動しないことを確実にする。
【0077】
図14-17の実施形態では、フレーム600の前部分606は、装着者の前歯に合わせて成型されるであろう、付加的な成型可能材料を保持する、前部トレイを形成する。後部トレイと同様に、前部トレイは、障壁(例えば、630)を有し、これは、成型可能材料が、前歯に合わせて成型されるとき、整合間隙の面積の中への後方の成型可能材料の広がりを含有する役割を果たす。
【0078】
フレーム600の前部分606はまた、2つの「一体型ヒンジ」640、642も有する。図14Bに見られ得るように、本実施形態の各一体型ヒンジは、フレームが本点において屈曲することを可能にする、外壁612の狭小化区分を備える。「一体型ヒンジ」が、ここでは、フレームの一部がフレーム全体(またはその実質的部分)に沿って撓曲するのではなく、特定の場所において撓曲することを可能にする、構造を指すために使用されることに留意されたい。一体型ヒンジは、フレームの外壁内の薄肉化されたスポット、一体型ヒンジ場所におけるより可撓性の材料、または同等物を備えてもよく、ドアヒンジ、ピアノヒンジ等の中に見出されるような従来のピンアンドナックル構造を有することは、必要ではない。
【0079】
内壁614および床部620は、不連続的であり、フレームの前部分606の左区分と、中心区分と、右区分との間に空間616および618を形成する。これらの空間は、フレームの左部分、中心部分、および右部分が、フレームがヒンジ640および642において屈曲するにつれて、相互に対して移動することを可能にする。言い換えると、空間がなければ、フレームは、連続的な床部および/または内壁が、フレームの左区分および右区分を定位置に保持し、図に描写される非撓曲位置と比較して、それらが相互にわずかにより近接して、もしくは相互からわずかにより遠くに離れるように移動しないように防止するであろうため、撓曲することが可能ではないであろう。これは、フレームが、複数の異なるサイズのフレームを提供する必要なく、(臼歯がより狭く、またはより広く離間される)より広い範囲の顎サイズを有する装着者に合わせて快適に成型されることを可能にする。フレームが、本デバイスが装着者の歯に合わせて成型されるとき、ヒンジにおいて撓曲される場合、前部トレイ内の成型された材料は、フレームを本位置に保持する傾向にあろう。
【0080】
図14Cに見られ得るように、外壁612は、それを通して孔(例えば、644、646)を含んでもよい。前部トレイ内の成型可能材料は、これらの孔を通して延在し、それによって、フレームに対する成型可能材料の位置付けを維持することに役立ち得る。成型可能材料は、装着者の歯に合わせて材料を成型することに先立って、これらの孔を通して延在してもよい、または装着者の歯に合わせて材料を成型するプロセスは、材料の一部を孔の中に/孔を通して押進させてもよい。
【0081】
図15を参照すると、整合間隙挿入体660が、示される。挿入体660は、フレーム600の整合間隙内に嵌合するように成形される、右挿入体部分および左挿入体部分(662、664)を有する。挿入体コネクタ668が、挿入体部分662と664との間に延在し、2つの挿入体部分がフレーム内により便宜的に配設され得るように、それらをともに保持する。コネクタ668はまた、挿入体部分662および664をフレーム内の整合間隙内に保定する役割も果たす。挿入体部分662および664が、上方からフレームの中に降下されると、コネクタ668が、前部トレイの床部の真上の内壁614に対して静置し、挿入体が、いったん定位置に到達すると、整合間隙を通してさらに遠くに下向きに移動しないように防止する。
【0082】
図16を参照すると、組み立てられたOADの斜視図が、示される。組み立てられたOAD670では、成型可能材料の層(672、674)が、フレームの後部トレイのそれぞれの中に位置付けられ、挿入体部分662および664が、フレームの整合間隙内に位置付けられる。成型可能材料の層(676、678)が、前部トレイ内およびフレームの前部分の外壁の周囲に形成される。本図に描写されるように、成型可能材料は、まだ装着者の歯に合わせて成型されていない。
【0083】
図17を参照すると、装着者が、装着者の歯に合わせてOADの成型可能材料を成型する準備ができると、整合間隙挿入体が、除去され、本デバイスの整合間隙を開放した状態に残す。成型可能材料は、軟化され、OADは、装着者の口の中に位置付けられる。整合リング680が、整合間隙を通して延在する直線状の整合部材682とともに位置付けられる。装着者は、直線状の整合部材682が上歯および下歯(例えば、犬歯)に接触し、装着者の顎を最適化された整形外科的整合位置に向かって押勢するように、下方に軽く咬合する。成型可能材料は、次いで、装着者の歯に共形化され、本成型された形状に硬化(硬直)することを可能にされる。成型可能材料が、成型された形状に硬直すると、整合部材が、除去され、整合間隙挿入体が、整合間隙内に位置付けられてもよい。装着者は、挿入体の材料を軟化させることによって整合間隙挿入体を成型し、整合間隙内に挿入体を位置付け、装着者がOAD上を下方にわずかに咬合する状態で、装着者の口の中にOADを設置することを所望し得る。OADのフレーム上の成型可能材料は、すでに整形外科的整合位置に成型されているため、本材料は、挿入体が挿入体に接触する歯に合わせて成型される間、装着者の顎を本位置に維持するであろう。OADが、挿入体を伴わずに、成型されていない挿入体とともに、または成型された挿入体とともに使用され得ることに留意されたい。
【0084】
図18-19を参照すると、いくつかの実施形態による、OADの別の代替実施形態が、示される。図18Aは、OADの側面図であり、図18Bは、本OAD内で使用されるフレームの上面図であり、図18Cは、フレーム上に位置付けられる成型可能な衝撃緩和材料を伴う、OADの正面斜視図である。図19は、OADを成型するために位置付けられた整合リングを伴う、OADの斜視図である。
【0085】
これらの図に描写されるように、OAD700は、装着者の上顎大臼歯と下顎大臼歯との間のみに衝撃緩和を提供する、後部専用設計であり、いかなる衝撃緩和も、装着者の前歯間に提供されない。故に、フレーム710は、図14Bに描写されるフレームのものに実質的に類似する、右後部トレイおよび左後部トレイ(712、714)を含むが、前部分は含まない。成型可能材料(732、734)が、装着者の上顎大臼歯と下顎大臼歯との間に衝撃緩和を提供する、咬合パッドを形成するようにトレイ内に位置付けられる。成型可能材料は、成型可能材料がフレーム上に保定され、上顎大臼歯および下顎大臼歯の両方に接触し、顎への衝撃の間に衝撃緩和を提供するように、フレーム内の孔(例えば、726、728)を通して延在する。本実施形態では、OAD700が、装着者の下顎大臼歯上に保定されるように設計され、そのため、成型可能材料のより大きい部分が、装着者の下顎大臼歯の周囲に成型され得るように、フレーム710の下側に位置付けられ得る。
【0086】
フレーム710は、後部トレイ712および714のそれぞれに接続され、それらを相互に対して実質的に定位置に保持する、フレームコネクタ716を含む。OAD700が、装着者の口の中に位置付けられると、フレームコネクタ716は、装着者の下前歯および犬歯の背後に位置付けられる。図18Aに見られ得るように、コネクタ716が、前歯の背後でわずかに上昇するが、整合間隙730が、整合部材が装着者の犬歯間に位置付けられ、成型可能材料が装着者の臼歯に合わせて成型されるとき、顎を整形外科的整合位置に移動させ得るように、咬合パッドに対して前方に維持される。本実施形態では、コネクタ716は、(後部トレイ712、714上の)右咬合パッドと左咬合パッドとの間の間隔が、装着者の右臼歯および左臼歯の横方向の間隔に適合するように増加または減少され得るように、コネクタが若干撓曲することを可能にする、ヒンジ(720、722)のセットを含む。本実施例におけるヒンジは、コネクタ716内に、これらの点におけるコネクタの厚さを縮小させ、コネクタが、コネクタの残部がより堅性であり、その形状を留保する間、これらの点において屈曲することを可能にする、湾入部を備える。
【0087】
図19を参照すると、OAD700が、整合リングが、装着者の歯に合わせたOADの成型の間の整合リングの使用を図示するように整合間隙内に位置付けられた状態で示される。装着者が、OADを成型することを所望すると、成型可能材料が、(例えば、材料を加熱することによって)軟化され、OADが、装着者の口の中に位置付けられ、整合リング780が、直線状の整合部材782とともに、装着者の犬歯間に延在する、整合間隙730内に位置付けられる。装着者は、OAD700および整合部材782上を下方に軽く咬合する。装着者の犬歯と整合部材782との間の接触が、顎をより最適化された整形外科的整合位置に向かって押勢し、成型可能材料は、顎が本位置にある状態で臼歯に共形化する。成型可能材料は、顎が本位置にある状態で硬化/硬直することを可能にされる。整合リング780は、次いで、除去され、OAD700は、使用できる状態になる。
【0088】
下記の請求項の範囲内にある、前述の実施形態の多くの変形例が存在し得ることに留意されたい。例えば、上記で説明される実施形態は、単一のだぼ形状の整合部材を使用するが、代替実施形態は、異なる形状を有する整合部材を使用してもよい。例えば、整合部材の断面は、丸みを帯びている代わりに、正方形であってもよい、またはある他の形状を有してもよい。さらに、整合部材は、直径(または、整合部材が丸みを帯びていない場合、サイズ)が変動してもよい。加えて、複数の整合部材が、単一のものの代わりに使用され得る。多くの他の変形例もまた、本発明の範囲内で可能性として考えられる。
【0089】
本発明によって提供され得る恩恵および利点が、具体的な実施形態に関して上記に説明されている。これらの恩恵および利点、ならびにそれらを生じさせる、またはそれらをより顕著な状態にさせ得るいかなる要素もしくは限界も、請求項のいずれかまたは全ての重要となる、要求される、もしくは不可欠な特徴として解釈されるべきではない。本明細書で使用されるように、用語「~を備える(comprises)」、「~を備える(comprising)」、またはそのいかなる他の変形例も、それらの用語に追従する要素もしくは限界を非排他的に含むものと解釈されることを意図している。故に、要素のセットを備えるシステム、方法、または他の実施形態は、それらの要素のみに限定されず、請求される実施形態に明示的に列挙されていない、もしくは固有ではない、他の要素も含み得る。
【0090】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、実施形態が例証的であること、および本発明の範囲がこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。上記で説明される実施形態に対する多くの変形例、修正、追加、および改良が、可能性として考えられる。これらの変形例、修正、追加、および改良が、以下の請求項内に詳述されるような、本発明の範囲に該当することが、想定される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19
【国際調査報告】