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特表2023-522984重症急性呼吸促迫症候群の処置のためのデンドリマー組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】重症急性呼吸促迫症候群の処置のためのデンドリマー組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/59 20170101AFI20230525BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230525BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230525BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230525BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230525BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230525BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230525BHJP
   C07D 498/18 20060101ALN20230525BHJP
   C07J 71/00 20060101ALN20230525BHJP
   C07J 5/00 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
A61K47/59
A61P37/02
A61P31/04
A61P29/00
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/14
A61K45/00
A61K31/196
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/26
A61K9/19
A61K31/197
A61K39/395 N
A61K31/436
A61K31/58
A61K31/573
C07D498/18
C07J71/00
C07J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564242
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021029139
(87)【国際公開番号】W WO2021217131
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/015,131
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522223121
【氏名又は名称】アシュバッタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリーランド, ジェフリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ランガラマヌジャム, カナン
(72)【発明者】
【氏名】カナン, スジャータ
(72)【発明者】
【氏名】ザヴェリ, ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C072
4C076
4C084
4C085
4C086
4C091
4C206
【Fターム(参考)】
4C072AA03
4C072BB03
4C072CC01
4C072CC12
4C072DD07
4C072EE09
4C072FF15
4C072GG07
4C072HH01
4C072UU01
4C076AA11
4C076AA30
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076FF11
4C076FF61
4C084AA17
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB33
4C084ZB35
4C085AA14
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086DA10
4C086DA12
4C086FA06
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA44
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZB35
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091FF03
4C091FF06
4C091GG01
4C091HH01
4C091HH03
4C091JJ03
4C091KK12
4C091LL01
4C091MM03
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4C091NN12
4C091PA03
4C091PA05
4C091PA09
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4C091QQ07
4C091QQ15
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA44
4C206FA53
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA64
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB33
4C206ZB35
(57)【要約】
重症炎症の1又は複数の症状の処置又は予防を必要とする対象の肺においてそれを行うための方法は、重症炎症の1又は複数の症状を処置、軽減又は予防するために有効な量の1又は複数種の治療剤又は予防剤と複合体化されるか、共有結合によりコンジュゲートされるか又は分子内分散もしくはカプセル化されたデンドリマーを含む組成物を対象に投与することを含む。例えば、それを必要とする対象における人工呼吸器の使用、又はCOVID-19などの感染症、敗血症及び全身性細菌感染症から生じる、確立された急性肺損傷(ALI)及び/又は急性呼吸促迫症候群(ARDS)を処置又は予防するための組成物及び方法はサイトカインストームによって特徴付けられる障害を処置するのに有用である。好ましくはデンドリマーは4、5、6、7又は8世代ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであり、治療剤は1又は複数種の抗炎症剤及び/又は抗酸化剤である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症炎症の1つまたは複数の症状を処置または予防することを必要とする対象の臓器における重症炎症の1つまたは複数の症状を処置または予防するための方法であって、重症炎症の1つまたは複数の症状を処置、軽減または予防するために有効な量の、1種または複数種の治療剤または予防剤と、複合体化されるか、共有結合によりコンジュゲートされるか、または分子内分散もしくはカプセル化されたデンドリマーを含む組成物を、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記重症炎症が、身体の多臓器、組織および/または細胞型に関与する全身性炎症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重症炎症が、敗血症または敗血症ショックに関連する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記重症炎症が、マクロファージ活性化症候群を含むマクロファージ活性化の任意の機構によって引き起こされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重症炎症が、神経炎症を含む多臓器機能不全に関連する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重症炎症が、過剰反応性M1マクロファージ、ならびに/またはIL-6、CRP、フェリチンおよびIL-1bからなる群から選択される炎症促進性マーカーの上昇に関連する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記重症炎症が、サイトカインストームによって特徴付けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記重症炎症が、それを必要とする対象における人工呼吸器の使用、ウイルス感染症、敗血症または全身性細菌感染症に関連するかまたはそれから生じる、確立された急性肺損傷(ALI)および/または急性呼吸促迫症候群(ARDS)に関連する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記治療剤が、急性肺損傷または急性呼吸促迫症候群の1つまたは複数の症状を処置、軽減または予防するために有効な量で、共有結合によりコンジュゲートされるか、または分子内分散もしくはカプセル化されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記急性肺損傷が、人工呼吸器誘発肺損傷である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記急性呼吸促迫症候群が、ウイルスによる感染によって引き起こされる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスが、SARS-COVID-2である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記デンドリマーが、ヒドロキシル末端デンドリマーである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記デンドリマーが、4世代、5世代または6世代のポリ(アミドアミン)デンドリマーである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療剤が、抗炎症剤である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療剤が、N-アセチルシステインである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、肺の炎症を低減させるのに有効な量で投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、肺の血管漏出もしくは血管透過性を低減させ、肺胞細胞完全性もしくは肺の内皮細胞完全性を増大し、吸入酸素分圧に対する動脈血酸素の比(PaO/FiO)を増大し、パルスオキシメトリベースの末梢血酸素飽和度(SpO)/FiO2(SpO/FiO)比を増大し、および/または気管支肺胞洗浄検査(BAL)タンパク質レベルもしくは気管支肺胞洗浄検査細胞数を低減させるのに有効な量で投与される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、肺の1種または複数種の炎症促進性細胞、ケモカインおよび/またはサイトカインを低減させるのに有効な量で投与される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、MCP-1、CXCL-8、CXCL-1、CXCL-5およびCCL-2からなる群から選択される1種または複数種の炎症促進性ケモカインを低減させるのに有効な量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、C反応性タンパク質(CRP)、フェリチン、IL-6、TNF-α、IL-12、IL-1βおよびIL-18からなる群から選択される1種または複数種の炎症促進性サイトカインを低減させるのに有効な量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記1種または複数種の炎症促進性細胞が、M1様マクロファージである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、静脈内、皮下または筋肉内投与用に製剤化される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、経腸的にまたは肺などの粘膜表面に送達するために製剤化される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、静脈内、皮下または筋肉内経路を介して投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、1つまたは複数の追加の治療または手順を用いる処置の前、それと共に、その後、またはそれと交互に投与される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つまたは複数の追加の治療が、抗菌剤、界面活性剤およびコルチコステロイドからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記1つまたは複数の追加の手順が、腹臥位にすること、リクルートメント手技、NO吸入、体外式膜型人工肺(ECMO)、挿管、および/またはPGI吸入からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、前記対象の体重1kg当たり約0.1mg/kgから前記対象の体重1kg当たり約40mg/kgの間の量である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、前記対象の体重1kg当たり約2mg/kgから前記対象の体重1kg当たり約8mg/kgの間の量であり、
前記組成物が、皮下注射によって投与される、
請求項16に記載の方法。
【請求項31】
N-アセチルシステインにコンジュゲートした前記デンドリマーが、前記対象の体重1kg当たり約20mg/kgから前記対象の体重1kg当たり約40mg/kgの間の量であり、
前記組成物が、静脈内輸液によって投与される、
請求項16に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、pH5.5のヒスチジンおよびトレハロース二水和物の1つまたは複数を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1から32のいずれか一項に記載の方法において使用するための、医薬組成物。
【請求項34】
凍結乾燥されている、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
(1)1種または複数種の抗炎症剤と共有結合によりコンジュゲートしたデンドリマーを含む組成物の1つまたは複数の単一単位用量、および
(2)急性肺損傷の処置のために前記用量をどのように投与すべきかに関する使用説明書
を含む、キット。
【請求項36】
対象の重症急性呼吸促迫症候群を処置するための医薬製剤であって、
N-アセチルシステインと複合体化されるか、共有結合によりコンジュゲートされるか、または分子内分散もしくはカプセル化された4世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマー、pH5.5のヒスチジン、およびトレハロース二水和物を含み、
前記対象の体重1kg当たり約40mg/kgまでの投与のための量である、
医薬製剤。
【請求項37】
皮下注射による投与のための、前記対象の体重1kg当たり約2mg/kgから前記対象の体重1kg当たり約8mg/kgの量の、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項38】
静脈内輸液による投与のための、前記対象の体重1kg当たり約20mg/kgから前記対象の体重1kg当たり約40mg/kgの量の、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項39】
前記組成物が、0.1mlから10mlの間、好ましくは2.5mlの体積である、請求項36から38のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記組成物が、凍結乾燥されている、請求項36から39のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参考としてその開示全体が本明細書に援用される2020年4月24日出願の米国仮出願第63/015,131号に基づく優先権および利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、薬物送達の分野にあり、特に呼吸促迫を有する患者の炎症部位または領域に、デンドリマー製剤を介して結合した薬物を選択的に送達する方法である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
中国湖北省武漢において2019年12月に始まったコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の大流行は、世界中に蔓延し、2020年4月9日の時点で184の国で150万人を超える症例が確認され、少なくとも94,000人の死亡が報告されており、2021年4月の時点では1億4千万を超える症例および300万人を超える死亡が確認された。COVID-19は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)という名称の、これまで知られていなかったコロナウイルスによって引き起こされる。
【0004】
SARS-CoV-2は、非常に軽度から危篤状態まで幅広い症状を有する肺炎を引き起こす。危篤状態のSARS-CoV-2患者の転帰を特徴付ける、武漢からの単一施設研究では、集中治療室(ICU)内でのケアを必要とした患者の死亡率は高く(61.5%)、非生存者について、ICU時から死亡までの期間中央値は7日であったことが示された。非生存者は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を発生する可能性がより高かった(非生存者の81%)(Yang X, et al., The Lancet Respiratory Medicine, 2213-2600, (2020))。武漢の患者のより大きいコホートにおいて、生存者の36%と比較して、非生存者の98%がARDSを有しており、生存者の0%と比較して、非生存者の70%が、全身性炎症を示す敗血症ショックを有していた(Zhou, et al., Lancet , 395:1054-62 (2020))。これらの患者では、サイトカイン、例えばIL-6の増大が観察されており、患者のサブグループはサイトカインストームを発生していた(Ruan, et al., Intensive Care Med.、オンライン2020年3月3日)。治療戦略は、ほとんどが対症的であり、抗炎症剤、例えばコルチコステロイドを受けた患者では入り混じった結果が見られ、ロピナビル-リトナビルの抗ウイルス剤の組合せでは利益が観察されなかった(Cao, et al., N Engl J Med, (2020))。
重症COVID-19の患者では、二相の免疫応答が関与していると思われる。初期の防御適応免疫応答は、ウイルスを排除するために必要とされる。しかし、防御免疫応答が損なわれると、影響を受けた組織が大量に破壊され、ウイルスがさらに繁殖する。次に、これらの損傷細胞は、主に炎症促進性マクロファージおよび顆粒球によって媒介される肺の炎症を誘発する(Shi, et al., Cell Death & Differentiation (2020))。酸化ストレスおよび炎症の両方が、ARDSの病態生理において大きな役割を果たしている(Reddy, Antioxidants & Redox Signaling, 2003-2012 (2007))。活性化されたマクロファージは、ARDSの病態生理を媒介し、マクロファージの表現型を炎症促進性(M1様)から「正常」にシフトする中心的な役割を果たし、または抗炎症性(M2様)表現型は、ARDSの転帰のために非常に有益となり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yang X, et al., The Lancet Respiratory Medicine, 2213-2600, (2020)
【非特許文献2】Zhou, et al., Lancet , 395:1054-62 (2020)
【非特許文献3】Ruan, et al., Intensive Care Med.、オンライン2020年3月3日
【非特許文献4】Cao, et al., N Engl J Med, (2020)
【非特許文献5】Shi, et al., Cell Death & Differentiation (2020)
【非特許文献6】Reddy, Antioxidants & Redox Signaling, 2003-2012 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
全身性炎症および関連サイトカインストームも、炎症促進性マクロファージによって媒介される。したがって、本発明の目的は、肺の炎症、および/またはCOVID-19誘発性肺炎から生じる全身性炎症を低減させまたは予防するための組成物および方法を提供することである。
【0007】
また本発明の目的は、急性呼吸促迫症候群の発生および進行に関連する病理学的過程を低減させまたは予防する組成物、ならびにそれを作製する方法および使用する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、急性呼吸促迫症候群に関連する肺の炎症部位における炎症促進性細胞に向けて、活性剤を選択的に標的とするための組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
重症炎症の1つまたは複数の症状を処置または予防することを必要とするヒトの臓器における重症炎症の1つまたは複数の症状を処置または予防するための方法は、重症炎症の1つまたは複数の症状を処置、軽減または予防するために有効な量の、1種または複数種の治療剤または予防剤と、複合体化されるか、共有結合によりコンジュゲートされるか、または分子内分散もしくはカプセル化されたデンドリマーを、ヒトに投与することを含む。本明細書で使用される重症炎症は、慢性的な応答の上昇をもたらす、過剰反応性M1マクロファージおよび/または炎症促進性マーカー(IL-6、CRP、フェリチン、IL-1bなど)の上昇によって定義される。例えば、それを必要とする対象における、人工呼吸器の使用、またはCOVID-19などの感染症、敗血症および全身性細菌感染症から生じる、確立された急性肺損傷(ALI)および/または急性呼吸促迫症候群(ARDS)を処置または予防するための組成物および方法は、サイトカインストームによって特徴付けられる障害を処置するために有用である。
【0010】
ALIおよび/またはARDSを有する対象を処置する方法は、急性肺損傷または急性呼吸促迫症候群の1つまたは複数の症状を処置、軽減または予防するために有効な量の、1種または複数種の治療剤または予防剤と、複合体化されるか、共有結合によりコンジュゲートされるか、または分子内分散もしくはカプセル化されたデンドリマーを、対象に投与することを含む。例示的な急性肺損傷には、人工呼吸器誘発肺損傷および胃吸引誘発肺損傷が含まれる。急性呼吸促迫症候群の例示的な原因には、ウイルス、例えばSARS-COVID-2ウイルスによる感染が含まれる。したがって、組成物および方法は、SARS-COVID-2ウイルスによって引き起こされたALIおよび/またはARDSの症状を処置または予防するために適している。
【0011】
一部の実施形態では、デンドリマーは、ヒドロキシル末端デンドリマー、例えば4世代、5世代または6世代のポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーである。一部の実施形態では、1種または複数種の治療剤は、抗炎症剤である。例示的な治療剤は、N-アセチルシステインである。
【0012】
デンドリマー組成物は、肺の炎症を低減させ、例えば、肺の血管漏出もしくは血管透過性を低減させ、肺胞細胞完全性もしくは肺の内皮細胞完全性を増大し、吸入酸素分圧に対する動脈血酸素の比(PaO/FiO)を増大し、および/または気管支肺胞洗浄検査(BAL)タンパク質レベルもしくは気管支肺胞洗浄検査細胞数を低減させるのに有効な量で投与される。一部の実施形態では、方法は、肺の1種または複数種の炎症促進性細胞、ケモカインおよび/またはサイトカインを低減させ、例えば、MCP-1、CXCL-8、CXCL-1、CXCL-5およびCCL-2から選択される1種もしくは複数種の炎症促進性ケモカイン、またはC反応性タンパク質(CRP)、フェリチン、IL-6、TNF-α、IL-12、IL-1βおよびIL-18から選択される1種もしくは複数種の炎症促進性サイトカイン、または炎症促進性細胞、例えばM1様マクロファージを低減させるのに有効な量のデンドリマー組成物を投与する。
【0013】
デンドリマー組成物は、静脈内、皮下もしくは筋肉内投与または肺投与用に製剤化され、静脈内、皮下もしくは筋肉内経路を介して注射もしくはカテーテルによって、または経鼻もしくは肺経路を介して、投与される。一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の追加の治療または手順を用いる処置の前、それと共に、その後、またはそれと交互に投与される。製剤の一部として投与するか、またはデンドリマー-薬物と併用投与することができる、例示的な追加の治療剤には、抗菌剤、界面活性剤、および抗炎症薬、例えばコルチコステロイドが含まれる。例示的な追加の手順には、腹臥位にすること、リクルートメント手技、NO吸入、体外式膜型人工肺(ECMO)、挿管、および/またはPGI吸入が含まれる。
【0014】
急性肺損傷(ALI)および/または急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置または予防を必要とする対象における、急性肺損傷(ALI)および/または急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置または予防において使用するための医薬組成物も、提供される。
【0015】
キットは、1種または複数種の抗炎症剤と共有結合によりコンジュゲートしたデンドリマーを含む組成物の1つまたは複数の単一単位用量を含有するパッケージ、および急性肺損傷の処置のためにその用量をどのように投与すべきかに関する使用説明書を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、G4-OHポリ(アミドアミン)またはPAMAMデンドリマーにコンジュゲートしたN-アセチルシステインの代表的な化学構造である。PAMAMデンドリマーは、メチルアクリレートおよびエチレンジアミンの反復分岐単位から作製される。20個のNAC単位が存在する場合、全体の式は、C862154422628840であり、20,965Daの平均分子量を有する。
【0017】
図2図2は、各コホートに6人の患者を含む、4つの別々の連続コホートA(2mg/kgのOP-101)、B(4mg/kgのOP-101)、C(8mg/kgのOP-101)およびD(プラセボ対照)を示す模式図である。コホートA(2mg/kg)からコホートB(4mg/kg)への用量漸増は、コホートAの3日目までの安全性および忍容性の審査後、独立データモニタリング委員会(IDMC)によって決定された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
I. 定義
「活性剤」または「生物学的に活性な薬剤」という用語は、予防的、治療的、または診断的であり得る、所望の薬理学的および/または生理学的効果を誘発させる化学的なまたは生物学的な化合物である治療剤、予防剤、または診断剤を指す。これらは、核酸、核酸類似体、2kDa未満の、より典型的には1kDa未満の分子量を有する小分子、ペプチド模倣体、タンパク質もしくはペプチド、炭水化物もしくは糖、脂質、またはこれらの組合せであってもよい。用語は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、および類似体を含むがこれらに限定することのない、活性剤の薬学的に許容される、薬理学的に活性な誘導体も包含する。
【0019】
「薬学的に許容される塩」という用語は、当技術分野で認識されており、比較的無毒性の、化合物の無機および有機酸付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例には、例えば塩酸および硫酸などの鉱酸から誘導されたもの、およびエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸から誘導されたものが含まれる。塩を形成するのに適切な無機塩基の例には、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、および亜鉛の水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩が含まれる。塩は、そのような塩を形成するのに十分無毒性であり強力なものを含む適切な有機塩基で形成されてもよい。例示の目的で、そのような有機塩基のクラスは、モノ-、ジ-、およびトリアルキルアミン、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、およびトリエチルアミン;モノ-、ジ-、またはトリヒドロキシアルキルアミン、例えばモノ-、ジ-、およびトリエタノールアミン;アミノ酸、例えばアルギニンおよびリシン;グアニジン;N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジルフェネチルアミンを含んでいてもよい。
【0020】
「治療剤」という用語は、疾患または障害の1つまたは複数の症状を処置するのに投与することができる活性剤を指す。
【0021】
「診断剤」という用語は、一般に、病理学的過程の局在化を明らかにし、正確に示し、画定するのに投与することができる活性剤を指す。診断剤は、標的細胞を標識して、引き続きなされるこれら標識された標的細胞の検出または撮像を可能にすることができる。
【0022】
「予防剤」という用語は、一般に、疾患を予防するのにまたはある特定の状態を予防するのに投与することができる活性剤を指す。
【0023】
「薬学的に許容される」または「生体適合性」という文言は、正しい医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、またはその他の問題もしくは合併症なしに、妥当なベネフィット/リスク比に相応しい、人間および動物の組織と接触させた使用に適した、組成物、ポリマー、およびその他の材料、ならびに/または剤形を指す。「薬学的に許容される担体」という文言は、1つの臓器または身体の部分から別の臓器または身体の部分に、任意の対象組成物を運びまたは移送するのに関わる、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば液体または固体の充填剤、希釈剤、溶媒、またはカプセル化材料を指す。各担体は、対象組成物のその他の成分と適合性がありかつ患者に有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0024】
「治療有効量」という用語は、デンドリマーの内部におよび/または表面に組み込まれた場合に、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比でいくつかの所望の効果を発揮する治療剤の量を指す。有効量は、処置がなされる疾患または状態、投与がなされる特定の標的構造物、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重症度などの因子に応じて様々であってもよい。当業者なら、特定の化合物の有効量を、過度な実験を必要とすることなく経験的に決定し得る。一部の実施形態では、「有効量」という用語は、急性肺損傷を発生するリスクを低減させもしくは減少させるか、または1つもしくは複数の肺疾患もしくは障害の症状を低減させもしくは減少させる、例えば肺の炎症を低減させる、予防剤または治療剤の量を指す。さらなる所望の結果には、肺の血管漏出もしくは血管透過性を低減させること、肺胞細胞完全性を増大することもしくは肺の内皮細胞完全性を増大すること、気管支肺胞洗浄検査(BAL)タンパク質レベルもしくはBAL細胞数を低減させることも含まれる。
【0025】
阻害の文脈における「阻害する」または「低減させる」という用語は、活性および量の低減または減少を意味する。これは活性または量の完全な阻害または低減、あるいは部分的な阻害または低減とすることができる。阻害または低減は、対照とまたは標準レベルと比較することができる。阻害は、5、10、25、50、75、80、85、90、95、99、または100%とすることができる。例えば、1種または複数種の薬剤を含むデンドリマー組成物は、罹患肺における炎症促進性(M1様)マクロファージおよび/または炎症促進性サイトカインの活性および/または量を、デンドリマー組成物を受けなかったまたはそのような組成物で処置しなかった対象の肺における同じ細胞の活性および/または量から、約10%、20%、30%、40%、50%、75%、85%、90%、95%、または99%阻害しまたは低減させ得る。一部の実施形態では、阻害および低減は、mRNA、タンパク質、細胞、組織、および臓器レベルで比較される。
【0026】
疾患、障害、または状態を「処置する」、あるいは疾患、障害、および/または状態に至る傾向があると考えられるがまだその状態にあると診断されていない動物でそのような状態が生じるのを「予防する」という用語は;疾患、障害、または状態を阻害し、例えばその進行を妨げ;疾患、障害、または状態を緩和し、例えば疾患、障害、および/または状態の後退を引き起こす。疾患または状態の処置は、鎮痛剤がたとえ疼痛の原因を処置するものでなくてもそのような鎮痛剤の投与によって対象の疼痛を処置するなど、基礎をなす病態生理学が影響を受けない場合であっても、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を寛解させることを含む。処置の望ましい効果には、疾患の進行速度の低下、疾患状態の寛解または緩和、および緩解または改善された予後が含まれる。例えば、限定されるものではないが、肺の血管漏出もしくは血管透過性の低減、肺胞細胞完全性の増大もしくは肺の内皮細胞完全性の増大、疾患に罹患している個体のクオリティオブライフの増大、疾患の処置に必要とされる他の医薬品の用量の減少、疾患の進行の遅延、および/または個体の生存の延長を含め、ARDSに関連する1つまたは複数の症状が軽減されまたはなくなった場合に、個体は首尾良く「処置」される。
【0027】
「生分解性」という用語は、一般に、対象によって代謝し、排除し、または排泄されることが可能なより小さい単位または化学種に、生理学的条件下で分解または侵食することになる材料を指す。分解時間は、組成物および形態の関数である。
【0028】
「デンドリマー」という用語は、限定するものではないが、内部コア、この内部コアに規則的に結合した反復単位の内部層(または「世代」)、および最外世代に結合した末端基の外面を持つ分子アーキテクチャーを含む。
【0029】
「官能化」は、官能基または部分の結合をもたらす手法で、化合物または分子を修飾することを意味する。例えば分子は、分子を強い求核剤または強い求電子剤にする分子の導入によって官能化されてもよい。
【0030】
「標的部分」という用語は、特定の場所に局在化するまたは特定の場所から離れる部分を指す。部分は例えば、タンパク質、核酸、核酸類似体、炭水化物、または小分子であってもよい。実体は例えば、小分子などの治療化合物、または検出可能な標識などの診断実体であってもよい。場所は、組織、特定の細胞型、または細胞内区画であってもよい。一実施形態では、標的部分は、活性剤の局在化を指示する。
【0031】
「長期滞留時間」という用語は、薬剤が患者の身体、またはその患者の臓器もしくは組織からなくなるのに必要とされる時間の増大を指す。ある特定の実施形態では、「長期滞留時間」は、デンドリマーなど送達ビヒクルへのコンジュゲートがない同等の薬剤などの比較の標準よりも、10%、20%、50%、または75%長い半減期で、なくなる薬剤を指す。ある特定の実施形態では、「長期滞留時間」は、炎症部位に関連する特定の細胞型を特異的に標的とするデンドリマーがない同等の薬剤など、比較の標準よりも、2、5、10、20、50、100、200、または10000倍長い半減期でなくなる薬剤を指す。
【0032】
「組み込まれた」および「カプセル化された」という用語は、所望の適用例においてそのような薬剤の持続放出などの放出を可能にする組成物の内部および/または表面に活性剤を組み込み、製剤化し、またはその他の手法で活性剤を含むことを指す。活性剤またはその他の材料はデンドリマーに組み込むことができ、そのようなデンドリマーの1つまたは複数の表面官能基を含むこと(共有、イオン、またはその他の結合相互作用による)、物理的混合、デンドリマー構造内への薬剤の包封、デンドリマー構造内へのカプセル化などが含まれる。
【0033】
II. 組成物
1種または複数種の活性剤、特に急性肺損傷(ALI)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特に、感染、外傷、放射線、および肺に対する他の環境的侵襲または医学的処置関連侵襲に関連するものを予防、処置または診断するための1種または複数種の活性剤を送達するために適したデンドリマー複合体およびコンジュゲートについて説明する。組成物は、特に、コロナウイルス感染症、例えばCOVID-19によって引き起こされた疾患を含む、病原性ウイルス感染症によって引き起こされたARDSおよび/または全身性炎症を処置するために適している。
【0034】
デンドリマー内にカプセル化され、関連付けられ、および/またはコンジュゲートされた1種または複数種の予防剤、治療剤および/または診断剤を含む、デンドリマー複合体およびコンジュゲートの組成物も、提供される。一般に、1種または複数種の活性剤は、約0.01重量%から約30重量%、好ましくは約1重量%から約20重量%、より好ましくは約5重量%から約20重量%または約10重量%から約20重量%の濃度で、デンドリマー複合体内にカプセル化され、関連付けられ、および/またはコンジュゲートされる。好ましくは、活性剤は、1つまたは複数の連結、例えば、ジスルフィド、エステル、エーテル、チオエステル、カルバメート、カーボネート、ヒドラジンおよびアミドを介して、必要に応じて1つまたは複数のスペーサーを介して、デンドリマーに共有結合によりコンジュゲートされる。一部の実施形態では、スペーサーは、活性剤、例えばN-アセチルシステインである。例示的な活性剤には、抗炎症薬、血管拡張剤および抗感染剤が含まれる。
【0035】
好ましい実施形態では、デンドリマー-活性剤組成物は、メチルアクリレートとエチレンジアミンとの反復反応から作製されるヒドロキシル化ポリ(アミドアミン)またはPAMAMデンドリマーを含む。特定の実施形態では、4世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーは、エチレンジアミン(EDA)コア、アミドアミン反復単位([CHCHCONHCHCHN])、および64個のヒドロキシル末端基を含有しており(化学式:C6221184186188)、その64個のヒドロキシルのうち約20個が、活性成分であるN-アセチルシステイン(NAC)とのジスルフィド結合を使用した最終的なコンジュゲーションのために、その後アミン基に変換され、次にチオール基に変換される(構造Iおよび図1に示される通り)。20個のNAC単位が存在する場合、全体の式はC862154422628840であり、20,965Daの平均分子量を有する。NACは、分子の全質量の約16%を占める。
【0036】
構造I
【化1】
(式中、Dは、好ましくは、任意の活性剤とのコンジュゲーションの前に、エチレンジアミン(EDA)コア、アミドアミン反復単位([CHCHCONHCHCHN])および64個のヒドロキシル末端基を含有する4世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマー(化学式:C6221184186188)であり、
n=15~25、好ましくは約20である)。
【0037】
追加の薬剤の存在は、ゼータ電位または粒子の表面電荷に影響を及ぼす可能性がある。一実施形態では、デンドリマーのゼータ電位は-100mVから100mVの間、-50mVから50mVの間、-25mVから25mVの間、-20mVから20mVの間、-10mVから10mVの間、-10mVから5mVの間、-5mVから5mVの間、または-2mVから2mVの間である。先の範囲は、-100mVから100mV(両端を含む)の全ての値である。好ましい実施形態では、表面電荷は、中性であるか、または中性に近く、すなわち-10mVから10mVの間、-5mVから5mVの間、または-2mVから2mVの間である。4世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーおよびそれにコンジュゲートした約18~22個のNAC単位を有するデンドリマーは、約5nmの粒子サイズおよび約7mVのゼータ電位を有する。
【0038】
A. デンドリマー
デンドリマーは、高密度の表面末端基を含む三次元の高分岐、単分散、球状および多価高分子である(Tomalia, D. A., et al., Biochemical Society Transactions, 35, 61(2007);およびSharma, A., et al., ACS Macro Letters, 3, 1079 (2014))。それら独自の構造および物理的特徴に起因して、デンドリマーは、標的薬物/遺伝子送達、撮像、および診断を含む様々なバイオメディカル適用例でのナノ担体として有用である(Sharma,A., et al., RSC Advances, 4, 19242 (2014); Caminade, A.-M., et al., Journal of Materials Chemistry B, 2, 4055 (2014); Esfand, R., et al., Drug Discovery Today, 6, 427 (2001);およびKannan, R. M., et al., Journal of Internal Medicine,276, 579 (2014))。
【0039】
近年の研究は、デンドリマー表面基が、それらの生体内分布に著しい影響を及ぼすことを示した(Nance, E.,et al., Biomaterials, 101, 96 (2016))。いかなる標的リガンドも持たないヒドロキシル末端の4世代PAMAMデンドリマー(約4nmサイズ)は、脳性麻痺(CP)のウサギモデルでの全身投与で損なわれたBBBを、健康な対照と比較して著しく多く(>20倍)横断し、活性化ミクログリアおよびアストロサイトを選択的に標的とする(Lesniak,W. G.,et al., Mol Pharm, 10 (2013))。
【0040】
「デンドリマー」という用語は、内部コアと、この内部コアに結合しかつそこから延びる反復単位の層(または「世代」)とを持ち、各層が1つまたは複数の分岐点を有し、末端基の外面が最外世代に結合している、分子アーキテクチャーを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、デンドリマーは、規則的なデンドリマーまたは「スターバースト」分子構造を有する。
【0041】
一般にデンドリマーは、約1nmから約50nmの間、より好ましくは約1nmから約20nmの間、約1nmから約10nmの間、または約1nmから約5nmの間の直径を有する。一部の実施形態では、直径は、約1nmから約2nmの間である。コンジュゲートは一般に、同じサイズ範囲にあるが、抗体などの大きいタンパク質は、サイズを5~15nm増大させ得る。一般に薬剤は、より大きい世代のデンドリマーに関し、薬剤のデンドリマーに対する比が1:1から4:1の間でカプセル化される。好ましい実施形態では、デンドリマーは、肺上皮組織に浸透するようかつ長期間にわたり標的細胞内に保持されるよう、有効な直径を有する。
【0042】
一部の実施形態では、デンドリマーは、約500ダルトンから約100,000ダルトンの間、好ましくは約500ダルトンから約50,000ダルトンの間、最も好ましくは約1,000ダルトンから約20,000ダルトンの間の分子量を有する。
【0043】
使用することができる適切なデンドリマー足場には、PAMAMまたはSTARBURST(商標)デンドリマーとしても公知のポリ(アミドアミン);ポリプロピルアミン(POPAM)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、ポリエステル、イプチセン、脂肪族ポリ(エーテル)、および/または芳香族ポリエーテルデンドリマーが含まれる。デンドリマーは、カルボン酸、アミン、および/またはヒドロキシル末端を有することができる。好ましい実施形態では、デンドリマーは、ヒドロキシル末端を有する。デンドリマー複合体の各デンドリマーは、同じであってもよく、または他デンドリマーと類似のもしくは異なる化学的性質のものであってもよい(例えば、第1のデンドリマーはPAMAMデンドリマーを含んでいてもよく、一方、第2のデンドリマーはPOPAMデンドリマーであってもよい)。
【0044】
「PAMAMデンドリマー」という用語は、アミドアミン構成単位と共に異なるコアを含有していてもよいポリ(アミドアミン)デンドリマーを意味し、1世代PAMAMデンドリマー、2世代PAMAMデンドリマー、3世代PAMAMデンドリマー、4世代PAMAMデンドリマー、5世代PAMAMデンドリマー、6世代PAMAMデンドリマー、7世代PAMAMデンドリマー、8世代PAMAMデンドリマー、9世代PAMAMデンドリマー、または10世代PAMAMデンドリマーを含むがこれらに限定されない任意の世代のカルボン酸、アミン、およびヒドロキシル末端を有することができる。好ましい実施形態では、デンドリマーは製剤に可溶であり、4、5、または6世代(「G」)デンドリマーである。デンドリマーは、それらの官能性表面基に結合したヒドロキシル基を有し得る。
【0045】
デンドリマーを作製する方法は、当業者に公知であり、一般に、中心開始剤コア(例えば、エチレンジアミンコア)の周りに樹状β-アラニン単位の同心状のシェル(世代)を生成する2ステップ反復反応順序を含む。各後続成長ステップは、より大きい分子直径を持ち、反応性表面部位の数の2倍であり、先行する世代の分子量の約2倍である、ポリマーの新「世代」を表す。使用に適したデンドリマー足場は、様々な世代として市販されている。好ましくは、デンドリマー組成物は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10世代デンドリマー足場をベースにする。そのような足場は、それぞれ4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、および4096個の反応性部位を有する。したがって、これらの足場をベースにしたデンドリマー化合物は、標的部分と、存在する場合、活性剤とを組み合わせたものの対応する数を有し得る。
【0046】
一部の実施形態では、デンドリマーは、複数のヒドロキシル基を含む。一部の例示的な高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーは、市販のポリエステル樹状ポリマー、例えば多分岐2,2-ビス(ヒドロキシル-メチル)プロピオン酸エステルポリマー(例えば、多分岐ビス-MPAポリエステル-64-ヒドロキシル、4世代)、樹状ポリグリセロールを含む。
【0047】
一部の実施形態では、高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーは、オリゴエチレングリコール(OEG)様デンドリマーである。例えば、2世代OEGデンドリマー(D2-OH-60)は、Cu(I)で触媒されたアルキン-アジドクリックおよび光触媒されたチオール-エンクリック化学など、高度に効率的で堅牢かつ原子経済的化学反応を使用して合成することができる。最小限に抑えられた反応ステップにおける非常に低い世代での高度に稠密なポリオールデンドリマーは、例えば国際特許公開第WO2019094952号に記載されるような、オルソゴナルハイパーモノマーおよびハイパーコア戦略を使用することによって、実現することができる。一部の実施形態では、デンドリマー主鎖は、in vivoでのデンドリマーの崩壊が回避されるよう、および身体からの単一実体(非生分解性)としてのそのようなデンドリマーの排除が可能になるように、構造全体を通して非切断可能ポリエーテル結合を有する。
【0048】
一部の実施形態では、デンドリマーは、特定の組織領域および/または細胞型、ALI/ARDSに関与する炎症促進性マクロファージを特異的に標的とすることができる。好ましい実施形態では、デンドリマーは、標的部分なしに特定の組織領域および/または細胞型を、特異的に標的とすることができる。
【0049】
好ましい実施形態では、デンドリマーは、デンドリマーの周辺に複数のヒドロキシル(-OH)基を有する。ヒドロキシル(-OH)基の好ましい表面密度は、少なくとも1OH基/nm(ヒドロキシル表面基の数/nmを単位とする表面積)である。例えば一部の実施形態では、ヒドロキシル基の表面密度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10よりも大きく;好ましくは少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、または50よりも大きい。さらなる実施形態では、ヒドロキシル(-OH)基の表面密度は、約1から約50の間、好ましくは5~20OH基/nm(ヒドロキシル表面基の数/nmを単位とする表面積)であると共に約500Daから約10kDaの間の分子量を有する。
【0050】
一部の実施形態では、デンドリマーは、デンドリマーの内部コアにおける他の基と共に、外面に露出したヒドロキシル基の一部を有していてもよい。好ましい実施形態では、デンドリマーは、少なくとも1OH基/nm(ヒドロキシル基の数/nmを単位とする体積)のヒドロキシル(-OH)基の体積密度を有する。例えば一部の実施形態では、ヒドロキシル基の体積密度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10、15、20、25、30、35、40、45、および50よりも大きい。一部の実施形態では、ヒドロキシル基の体積密度は、約4から約50基/nmの間、好ましくは約5から約30基/nmの間、より好ましくは約10から約20基/nmの間である。
【0051】
B.カップリング剤およびスペーサー
デンドリマー複合体は、デンドリマー、樹状ポリマー、または多分岐ポリマーにコンジュゲートされたまたは結合した治療上活性な薬剤または化合物で形成することができる。必要に応じて、活性剤は、ジスルフィド、エステル、カーボネート、カルバメート、チオエステル、ヒドラジン、ヒドラジド、およびアミド結合などの種々の結合を介した1つまたは複数のスペーサー/リンカーを介してデンドリマーにコンジュゲートされる。デンドリマーと薬剤との間の1つまたは複数のスペーサー/リンカーは、in vivoでデンドリマー活性複合体の放出可能なまたは非放出可能な形態を提供するように設計することができる。一部の実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にエステル結合を提供する適切なスペーサーを介して存在する。一部の実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にアミド結合を提供する適切なスペーサーを介して存在する。好ましい実施形態では、デンドリマーと薬物との間の1つまたは複数のスペーサー/リンカーは、in vivoで所望の有効な放出動態を実現するように添加される。
【0052】
本明細書中で使用される場合、用語「スペーサー」は、治療上活性な薬剤をデンドリマーに結合するのに使用される組成物を含む。スペーサーは、ポリマーと治療剤または造影剤とを架橋するための、単一の化学的実体、または一緒に結合した2つもしくはそれよりも多くの化学的実体であり得る。スペーサーは、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシニミジル、マレイミド、ビニルスルホンおよびカーボネート末端を有する、任意の小さい化学的実体、ペプチドまたはポリマーを含み得る。
【0053】
スペーサーは、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシニミジル、マレイミド、ビニルスルホン、およびカーボネート基で終端する化合物のクラスの中から選択することができる。スペーサーは、チオピリジン末端化合物、例えばジチオジピリジン、N-スクシニミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、スクシニミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオナミド)ヘキサノエートLC-SPDPまたはスルホ-LC-SPDPを含むことができる。スペーサーはペプチドを含むこともでき、このペプチドは、スルフヒドリル基、例えばグルタチオン、ホモシステイン、システインおよびその誘導体、arg-gly-asp-cys(RGDC)、シクロ(Arg-Gly-Asp-d-Phe-Cys)(c(RGDfC))、シクロ(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Cys)、シクロ(Arg-Ala-Asp-d-Tyr-Cys)を本質的に有する直鎖状または環状である。スペーサーは、メルカプト酸誘導体、例えば、3メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、4メルカプト酪酸、チオラン-2-オン、6メルカプトヘキサン酸、5メルカプト吉草酸、ならびに2メルカプトエタノールおよび2メルカプトエチルアミンなどの他のメルカプト誘導体であってもよい。スペーサーは、チオサリチル酸およびその誘導体、(4-スクシニミジルオキシカルボニル-メチル-アルファ-2-ピリジルチオ)トルエン、(3-[2-ピリジチオ]プロピオニルヒドラジドであってもよい。スペーサーは、マレイミド末端を有することができ、このスペーサーは、ポリマーまたは小さい化学実体、例えばビス-マレイミドジエチレングリコールおよびビス-マレイミドトリエチレングリコール、ビス-マレイミドエタン、ビスマレイミドヘキサンを含む。スペーサーは、ビニルスルホン、例えば1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホンを含むことができる。スペーサーは、チオグリコシド、例えばチオグルコースを含むことができる。スペーサーは、還元タンパク質、例えばウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミン、ジスルフィド結合を形成することが可能な任意のチオール末端化合物であってもよい。スペーサーは、マレイミド、スクシニミジルおよびチオール末端を有するポリエチレングリコールを含むことができる。
【0054】
薬剤および/または標的化部分は、共有結合により結合しているか、または分子内分散もしくはカプセル化されているかのいずれかであってよい。デンドリマーは、好ましくは、カルボン酸、ヒドロキシルまたはアミン末端を有する、10世代までのPAMAMデンドリマーである。好ましい実施形態では、デンドリマーは、ジスルフィド、エステルまたはアミド結合で終わるスペーサーを介して薬剤に連結される。
【0055】
C. 治療、予防および診断活性剤
送達されるべき粒子に含まれることになる薬剤は、タンパク質またはペプチド、糖または炭水化物、核酸またはオリゴヌクレオチド、脂質、小分子(例えば、2000ダルトン未満、好ましくは1500ダルトン未満、より好ましくは300~700ダルトンの分子量)、またはこれらの組合せであってもよい。核酸は、タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド、例えば、DNA発現カセットまたはmRNAであってもよい。代表的なオリゴヌクレオチドには、siRNA、マイクロRNA、DNAおよびRNAが含まれる。一部の実施形態では、活性剤は、治療用抗体である。
【0056】
デンドリマーは、複数の治療剤、予防剤および/または診断剤を、同じデンドリマーを用いて送達することができるという利点を有する。1つまたは複数のタイプの活性剤を、デンドリマー内にカプセル化し、複合体化し、またはコンジュゲートすることができる。一実施形態では、デンドリマーは、2種またはそれよりも多くの異なるクラスの薬剤と複合体化されまたはコンジュゲートされ、標的部位で異なるまたは独立した放出動態による同時送達をもたらす。別の実施形態では、デンドリマーは、少なくとも1つの検出可能な部分および少なくとも1つのクラスの薬剤に共有結合により連結される。さらなる実施形態では、それぞれが異なるクラスの薬剤を運ぶデンドリマー複合体は、併用処置のために同時に投与される。例示的な活性剤には、SARSおよびARDSを処置および予防するために有用な治療剤が含まれる。
【0057】
1. 抗炎症剤
一部の実施形態では、組成物は、1種または複数種の抗炎症剤を含む。抗炎症剤は、炎症を低減させ、ステロイド系および非ステロイド系薬物を含む。
【0058】
好ましいNSAIDには、メフェナミン酸、アスピリン、ジフルニサル、サルサレート、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デアケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メクロフェナミン酸、フルフェナミン酸、トルフェナミン酸、エレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、スルホナニリド、ニメスリド、ニフルミン酸、およびリコフェロンが含まれる。
【0059】
好ましい抗炎症性は、N-アセチルシステインを含む抗酸化薬物である。N-アセチルシステインの構造は、以下の構造IIとして示される。
【0060】
構造II
【化2】
代表的な小分子には、ステロイド、例えばメチルプレドニゾン、デキサメタゾン、COX-2阻害剤を含む非ステロイド系抗炎症剤、副腎皮質ステロイド系抗炎症剤、金化合物抗炎症剤、免疫抑制剤、抗炎症剤および血管新生抑制剤、抗興奮毒性剤、例えばバルプロ酸、D-アミノホスホノバレレート、D-アミノホスホノヘプタノエート、グルタメート形成/放出阻害剤、例えばバクロフェン、NMDA受容体アンタゴニスト、サリチレート抗炎症剤、ラニビズマブ、アフリベルセプトを含む抗VEGF剤、ならびにラパマイシンが含まれる。他の抗炎症薬には、非ステロイド系薬物、例えばインドメタシン、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウムおよびイブプロフェンが含まれる。コルチコステロイドは、フルオシノロンアセトニドおよびメチルプレドニゾロンであってもよい。
【0061】
例示的な免疫調節薬物には、シクロスポリン、タクロリムスおよびラパマイシンが含まれる。一部の実施形態では、抗炎症剤は、1種もしくは複数種の免疫細胞型、例えばT細胞の作用を遮断するか、または免疫系のタンパク質、例えば腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)、インターロイキン17-A、インターロイキン-12、およびインターロイキン-23を遮断する、生物学的薬物である。
【0062】
一部の実施形態では、抗炎症薬物は、合成または自然の抗炎症性タンパク質である。免疫成分を選択するために特異的な抗体を、免疫抑制治療に加えることができる。一部の実施形態では、抗炎症薬物は、抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリンもしくは抗リンパ球グロブリン)、抗IL-2Rα受容体抗体(例えば、バシリキシマブもしくはダクリズマブ)、または抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)である。
【0063】
炎症性疾患は、リポ多糖(LPS)のための受容体であるtoll様受容体4(TLR4)を介して、病理学的に上昇したシグナル伝達に関連し得る。例えば、ある研究では、人工呼吸器誘発性の炎症性肺損傷(VILI)は、NAMPT転写およびニコチンアミドホスホリボシル-トランスフェラーゼ(NAMPT/PBEF)の循環レベルの増大に機構的に関連しており、それによってTLR4の直接的なライゲーションを介して肺NFκB転写活性および炎症性損傷が誘発されることが示された。潜在的な抗炎症剤としてのTLR4阻害剤の発見には、大きな関心が寄せられてきた。近年、阻害剤E5564に結合したTLR4の構造が解析され、E5564-結合ドメインを標的とする新しいTLR4阻害剤の設計および合成が可能になった。これらは、米国特許第8,889,101号に記載されている。Neal, et al., PLoS One. 2013; 8(6): e65779eによって報告された通り、類似性検索アルゴリズムを、小分子ライブラリーの制限されたスクリーニング手法と併用することにより、E5564部位に結合し、TLR4を阻害する化合物が特定された。リード化合物であるC34は、式C1727NOを有する2-アセトアミドピラノシド(MW389)であり、これは、腸細胞内でTLR4を、in vitroでマクロファージを阻害し、エンドトキシン血症および壊死性腸炎のマウスモデルにおける全身性炎症を低減させる。したがって、一部の実施形態では、活性剤は、1種または複数種のTLR4阻害剤である。好ましい実施形態では、活性剤は、C34、およびその誘導体、アナログである。
【0064】
好ましい実施形態では、1種または複数種の抗炎症薬は、炎症を阻害するために有効な量で哺乳動物対象に投与された後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、好ましくは、少なくとも1週間、2週間または3週間、より好ましくは、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月または6カ月にわたって、デンドリマー複合体から放出される。
【0065】
2. 送達されるべき追加の活性剤
一部の実施形態では、デンドリマーは、1種または複数種の追加の活性剤、特に感染性疾患の1つまたは複数の症状を予防または処置するための1種または複数種の活性剤を送達するために使用される。適切な治療剤、診断剤および/または予防剤は、酵素、タンパク質、ポリペプチドもしくは核酸などの生体分子、または有機剤、無機剤および有機金属剤を含む小分子剤(例えば、2000ダルトン未満、好ましくは1500ダルトン未満の分子量)であってもよい。追加の薬剤は、共有結合または非共有結合のいずれかにより、デンドリマー内にカプセル化し、デンドリマー内に分散させ、および/またはデンドリマーの表面と関連付けることができる。
【0066】
a. 治療剤および予防剤
主な実施形態では、デンドリマーは、N-アセチルシステインと複合体化される。
【0067】
一部の実施形態では、デンドリマー複合体は、デンドリマーと複合体化された、またはコンジュゲートされた、1種または複数種の治療剤、予防剤または予後剤(prognostic agent)を含む。代表的な治療剤には、神経保護剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗感染剤、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
一部の実施形態では、デンドリマーは、1種または複数種のオリゴヌクレオチドを送達する。代表的なオリゴヌクレオチドには、siRNA、マイクロRNA、DNAおよびRNAが含まれる。
【0069】
一部の実施形態では、活性剤は、抗感染剤である。例示的な抗感染剤には、抗ウイルス剤、抗菌剤、駆虫剤および抗真菌剤が含まれる。
【0070】
一部の実施形態では、デンドリマーは、SARSおよびまたはARDSを処置および予防するための効力を有することが示された1種または複数種の治療剤を送達する。一部の実施形態では、デンドリマーは、COVID-19を処置および予防するための効力を有することが示された1種または複数種の治療剤を送達する。例示的な治療剤には、限定されるものではないが、ヒドロキシクロロキン、EIDD-2801、レムデシビル、ロピナビルおよびリトナビルならびにサイトカイン阻害剤を含む、抗ウイルス剤および免疫調節剤が含まれる。
【0071】
3. 診断剤
ある場合には、薬剤は、診断剤を含み得る。診断剤の例には、常磁性分子、蛍光化合物、磁気分子ならびに放射性核種、X線造影剤および造影媒体が含まれる。他の適切な造影剤の例には、放射線不透過性の気体または気体放出化合物が含まれる。デンドリマー複合体はさらに、投与された組成物の場所を決定するのに有用な薬剤を含むことができる。この目的に有用な薬剤は、蛍光タグ、放射性核種、および造影剤を含む。
【0072】
例示的な診断剤は、色素、蛍光色素、近赤外線色素、SPECT造影剤、PET造影剤、および放射性同位体を含む。
【0073】
さらなる実施形態では、単一のデンドリマー複合体組成物は、体内の1つまたは複数の位置で疾患または状態を同時に処置および/または診断することができる。
【0074】
III. 使用方法
デンドリマー組成物は、重症炎症の1つまたは複数の症状を処置または予防することを必要とするヒトの臓器における重症炎症の1つまたは複数の症状を処置または予防するために使用することができる。重症炎症の1つまたは複数の症状を処置または予防する方法は、重症炎症の1つまたは複数の症状を処置、軽減または予防するために有効な量の、1種または複数種の治療剤または予防剤と、複合体化されるか、共有結合によりコンジュゲートされるか、または分子内分散もしくはカプセル化されたデンドリマーを、ヒトに投与することを含む。
【0075】
一部の実施形態では、デンドリマー組成物は、1つまたは複数の呼吸器障害および/または疾患を処置および/または診断するために使用することができる。一部の実施形態では、デンドリマー複合体は、ARDS、例えば、COVID-19などの病原性ウイルス感染症によって引き起こされたものを処置するために使用される。別の実施形態では、デンドリマー複合体は、気圧性外傷、容量損傷、虚脱性肺損傷(atelectrauma)および生物学的損傷(biotrauma)を含む、人工呼吸器誘発肺損傷(VILI)に関連する1つまたは複数の症状を処置するために使用される。
【0076】
方法は、典型的には、デンドリマー、ならびに呼吸器障害および/または疾患に関連する1つまたは複数の症状を処置および/または軽減するための1種または複数種の薬剤を含む組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。好ましい実施形態では、1種もしくは複数種の抗炎症剤を含むデンドリマー組成物またはその製剤は、呼吸器の炎症を低減させるのに有効な量で投与される。
【0077】
呼吸器の血管漏出または血管透過性を低減させるための方法についても説明する。肺の血管漏出の増大または血管透過性の増大の症状を呈する疾患は、一般に、ALI、ARDSおよびVILIを含む肺の血管透過性障害として特徴付けることができる。一部の実施形態では、デンドリマー組成物は、肺の障害を受けたこれらの血管の血管漏出および透過性の増大を低減および/または軽減する。肺内皮細胞および肺胞細胞の透過性は、哺乳動物の気管支肺胞洗浄検査(BAL)におけるタンパク質レベルおよび細胞数によって評価することができ、ここで、対照と比較してBALにおけるより高いタンパク質レベルまたは細胞数は、肺内皮および上皮透過性の増大を示す。したがって、デンドリマー組成物の有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物のBALタンパク質レベルまたはBAL細胞数を低減させるための方法も、提供される。
【0078】
肺障害または疾患の1つまたは複数の症状を処置または寛解させるための方法について説明する。特に、組成物は、ALIおよびARDS、例えばCOVID-19に関連するものの1つまたは複数の症状を処置または寛解させるのに有効な量で使用される。COVID-19の臨床的特徴は、無症状性状態から急性呼吸促迫症候群および多臓器機能不全まで多様である。したがって、一部の実施形態では、デンドリマー組成物は、死亡率を低減させ、臓器不全の発生率を低減させ、入院時間を低減させるのに有効な量で投与される。
【0079】
急性肺損傷、特にARDSは、肺の強烈な炎症反応を伴い、気管支肺胞洗浄液(BALF)に炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの両方が蓄積する。一部の実施形態では、デンドリマー組成物は、炎症促進性サイトカインの生成を低減させるならびに/あるいは抗炎症性サイトカインおよび/または1種もしくは複数種の免疫細胞型の抗炎症性表現型の産生を促進するために有効な量で使用される。他の実施形態では、組成物は、処置がなされる1つまたは複数の肺状態/疾患に関与する1種または複数種の免疫細胞の炎症促進性を抑制し、抗炎症特性を促進するために使用される。
【0080】
一部の実施形態では、組成物は、1種または複数種の炎症促進性サイトカイン、例えば、C反応性タンパク質(CRP)、フェリチン、TNF-α、IL-6、IL-12、IL-1βおよびIL-18を阻害もしくは低減させ、1種もしくは複数種のケモカインおよび/もしくはケモカイン受容体、例えば、CXCL-8、CXCL-1、CXCL-5およびCCL-2、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)を阻害もしくは低減させ、ならびに/または活性酸素種を阻害もしくは低減させるのに有効な量で投与される。さらなる実施形態では、組成物は、抗炎症性サイトカイン、例えばIL-10の生成を増大することができる。一部の実施形態では、組成物は、罹患/損傷した肺の活性化マクロファージにおける誘導型NO合成酵素(iNOS)を阻害または低減させるのに有効な量で投与される。
【0081】
炎症促進性細胞または炎症細胞は、炎症促進活性、炎症促進性サイトカイン、例えばIL-12、IFN-γおよびTNF-αの分泌、またはこれらの組合せを促進する免疫細胞を指す。例示的な炎症促進性細胞には、炎症促進性M1マクロファージまたは古典的活性化マクロファージ(CAM)が含まれる。一部の実施形態では、例えば、炎症促進性肺胞マクロファージの増殖、遊走または活性化の遮断によって、対象の炎症促進性肺胞マクロファージまたは古典的活性化マクロファージ(M1様マクロファージ)を枯渇、阻害または低減させるための方法について説明する。方法は、炎症促進性M1マクロファージの数または活性を、デンドリマー組成物を用いる処置の前のこのようなレベルと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%または300%超、枯渇、阻害または低減させるのに有効な量の、1種または複数種の活性剤を含むデンドリマー複合体を、対象に投与することを含む。
【0082】
一部の実施形態では、1種もしくは複数種の炎症促進性細胞の活性化、増殖および/もしくは動員を低減させるならびに/または1種もしくは複数種の抑制性免疫細胞の活性化、増殖および/もしくは動員を増強するために有効な量の組成物を投与することによって、それを必要とする対象の炎症反応を低減/阻害するために使用される組成物およびその製剤が提供される。一部の実施形態では、炎症促進性細胞は、炎症促進性M1マクロファージである。さらなる実施形態では、抑制性免疫細胞は、M2様マクロファージである。したがって、一部の実施形態では、組成物は、M1マクロファージの増殖および/もしくは産生を低減させ、M2マクロファージの活性化、増殖および/もしくは産生を増強し、ならびに/またはM1マクロファージに対するM2マクロファージの比を増大することによって、肺を含む1つまたは複数の罹患組織/臓器において炎症促進性表現型(M1マクロファージ)から抗炎症状態(M2マクロファージ)への切替えを促進することができ、炎症状態、例えばALIおよびARDSの1つまたは複数の症状を寛解させるのに有効である。
【0083】
一部の実施形態では、組成物およびその製剤は、入院時間、死亡率、心臓損傷マーカー、炎症促進性サイトカインレベル、臓器不全、低酸素血症を伴う日数/時間数を低減させ、酸素補給への依存を低減させ、機械的人工呼吸法への依存を低減させ、血中酸素を改善し、および/または生存率を改善するために使用される。
【0084】
全ての方法は、処置を必要とする対象、または組成物の投与から利益を得る対象を特定し、選択するステップを含むことができる。
【0085】
A. 呼吸器疾患および障害を処置するための方法
一般に、組成物およびその処置方法は、ALI、ARDSおよびVILIを含むがこれらに限定されない、様々な肺の障害、疾患または損傷のために使用することができる。組成物は、他の炎症性の疾患、障害および損傷の処置のために使用することもできる。
【0086】
組成物またはその製剤は、ヒト、霊長類、例えばサルおよび類人猿、イヌ科、例えばイヌ、ネコ科、例えばネコ、ウシ科、例えばウシ、ウマ科、例えばウマ、イノシシ科、例えばブタ、ならびにげっ歯類、例えばマウスおよびラットを含むがこれらに限定されない、哺乳動物の対象に投与され得る。好ましい実施形態では、処置がなされる対象は、ヒトである。
【0087】
好ましい実施形態では、デンドリマーは、急性肺損傷(ALI)および/または急性呼吸促迫症候群(ARDS)を処置または予防するために使用される。
【0088】
急性肺損傷(ALI)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、危篤状態の患者では生命を脅かす疾患である。それらは、直接的侵襲および間接的侵襲の両方に起因する肺の炎症反応の兆候であり、重症の低酸素血症、高炭酸ガス血症、胸部X線におけるびまん性浸潤、および肺コンプライアンスの実質的低下によって特徴付けられる。
【0089】
「急性肺損傷」または「ALI」という用語は、慢性肺損傷または状態とは反対に、低酸素血症、非心原性肺水腫、低い肺コンプライアンス、肺胞細胞透過性、および広汎性毛細血管漏出によって特徴付けられるびまん性異質性(heterogeneous)肺損傷を指す。急性肺損傷の症状の出現は、損傷の原因に応じて変わることがあり、エンドトキシン誘発性損傷では数時間または数日して出現する一方、放射線誘発性肺損傷では数週間して出現することがある。ALIは、局所性もしくは全身性炎症の刺激、イオン化照射、感染症、および菌体内エンドトキシンへの曝露、敗血症、または肺への外傷によって引き起こされることがある。臨床的には、ALIは、以下のパラメータの1つまたは複数を使用して診断することができる:胸部X線写真の水腫の存在と一致する両側性肺浸潤、および左心房高血圧の臨床的証拠がないこと;<18mmHg(2.4kPa)の肺毛細血管楔入圧;および<300mmHg(40kPa)のPaO/FiO(PaOは、酸素分圧であり、FiOは、吸入酸素分圧である)。ALIの中心的病理は、毛細血管-内皮バリアの破壊、内皮完全性の低下、および肺胞透過性の増大である。内皮バリアの破壊により、毛細血管からタンパク質に富んだ体液が漏出することがある。急性肺損傷は、慢性肺状態をもたらすことがあり、これは肺組織再構築および線維症によって一般に特徴付けられる。
【0090】
ALIの最も重症形態であるARDSは、呼気終末陽圧(PEEP)レベルにかかわらず、約200mmHgまたはそれ未満の、吸入酸素分圧に対する動脈酸素の比によって定義される。ARDSという用語は、ALIと互換的に使用されることが多いが、厳密な基準により、ARDSは、その疾患の最も重症形態だけを指すべきである(Bernard GR et al., Am J Respir Crit Care Med. 1994;149:818-24、Artigas A et al., Intensive Care Med. 1998;24:378-98)。1種または複数種の抗炎症剤とコンジュゲートされるか、または複合体化されたデンドリマーを使用する方法は、軽度(200mmHgから300mmHgの間のPaO/FiO)、中等度(100mmHgから200mmHgの間のPaO/FiO)、および重症(<100mmHgのPaO/FiO)を含む様々な重症度のARDSを有する対象を処置するために適している。方法は、デンドリマー組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与して、酸素化を改善する、すなわちPaO/FiOを改善することを含む。好ましい実施形態では、組成物またはその製剤は、病原性の高いコロナウイルス、例えばSARS-CoV-2によって引き起こされたARDSを有する対象に、ARDSの1つまたは複数の症状を処置および/または軽減するために有効な量で投与される。
【0091】
一部の実施形態では、ARDSを有する患者をモニタリングするために、パルスオキシメトリベースの末梢血酸素飽和度(SpO2)/FiO(SpO/FiO)比が使用される。SpO/FiO比は、普遍的に得ることができ、非侵襲的である。研究は、特に、PaO/FiO比が300未満であり、患者が150未満のSpO/FiO比(≦100のPaO/FiOに対応する)によって定義される重症の低酸素血症を有している場合には、SpO/FiOおよびPaO/FiO比がかなり十分に相関していることを示唆している。1種または複数種の抗炎症剤とコンジュゲートされるか、または複合体化されたデンドリマーを使用する方法は、軽度(235~314のSpO/FiO比)、中等度(150~234のSpO/FiO比)、および重症(<150のSpO/FiO比)を含む様々な重症度のARDSを有する対象を処置するために適している。方法は、デンドリマー組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与して、酸素化を改善する、すなわちSpO/FiO比を改善することを含む。好ましい実施形態では、方法は、デンドリマー組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与して、酸素補給使用および/または機械的人工呼吸法への依存を低減させることを含む。
【0092】
ALIは、様々な手段、例えば電離放射線によって引き起こされ得る。「放射線誘発性肺損傷」または「RILI」は、最も一般的には胸部がんの放射線治療の結果として生じる、電離放射線への曝露の結果として肺によって維持された損傷についての一般用語である。このような損傷には、早期(急性)炎症性損傷(放射線肺炎)および慢性瘢痕化の後期合併症(放射線線維症)が含まれる。RILIは、独特の患者集団(最も一般的には放射線治療を受けている患者)、損傷(放射線誘発性損傷)の独特の性質、および疾患の発生のわずかな遅延(LPS誘発性ALIの数時間/数日と比較して数週間)を伴う、ALIの特定のサブセットである。臨床的には、RILIは、気道、気嚢および血管の上皮細胞喪失、水腫、炎症および閉塞によって特徴付けられ得る。肺は、放射線感受性が最も高い臓器であり、放射線肺炎は、数カ月で肺動脈弁閉鎖不全および死亡に至るおそれがある(50Gyの放射線への曝露後に100%)。本願の処置に最も適した損傷には、肺透過性の増大によって現れた炎症性損傷(放射線肺炎)が含まれる。
【0093】
ALIは、菌体内エンドトキシンによって誘発されることもある。「エンドトキシン」という用語は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌によって産生された毒素を指す。より具体的には、エンドトキシンは、免疫系によって認識される細菌の構造分子である。エンドトキシンの原型例は、大腸菌(Escherichia coli)を含む様々なグラム陰性菌の外膜に見出されるリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)であり、疾患を引き起こすそれらの能力の重要な成分である。LPSは、多糖(糖)鎖および毒性効果の原因である脂質Aとしても公知の脂質部分を含む。多糖鎖は、様々な細菌によって大きな開きがある。エンドトキシンは主に、髄膜炎菌血症、ウォターハウス・フリードリクセン症候群および髄膜炎を含む髄膜炎菌性疾患を引き起こす病原体である病原性グラム陰性菌、例えばナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)による感染症の劇的臨床兆候の原因である。他のエンドトキシンには、細菌内部の内生胞子に隣接して結晶様封入体を作製するバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のデルタエンドトキシンが含まれる。さらに、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogene)は、「エンドトキシン様」物質を産生し得る。
【0094】
ALIは、外傷によって引き起こされることもある。「外傷」は、身体創傷、または暴力もしくは事故などによる肺の突然の物理的損傷によって生じたショックを指す。物理的損傷の結果としての内皮バリアの破壊の効果は、本方法によって軽減することができる。
【0095】
基礎をなす疾患(例えば、ショック、外傷、敗血症、肺炎、吸引または熱傷)のための治療の一部としての機械的人工呼吸法は、生命を脅かす低酸素症および高炭酸ガス血症を消散するために非常に重要である。しかし、実験分野および臨床分野からの研究では、機械的人工呼吸法が不注意に実施されると、過膨張、気圧性外傷、および肺胞の周期的開閉に起因して、肺をさらに損傷することが示された。この現象は、人工呼吸器関連肺損傷(VALI)と命名されている。さらに、VALIの機構は、肺および全身の炎症性反応を引き起こすか、または引き金を引くことがあり、その炎症性反応が、多臓器機能不全および多系統臓器不全をさらにもたらし得る。1種または複数種の抗炎症剤とコンジュゲートされるか、または複合体化されたデンドリマーを使用する方法は、VALIを有する患者を処置するために適している。好ましい実施形態では、組成物またはその製剤は、VALIを有する対象に、VALIの1つまたは複数の症状を処置および/または軽減するために有効な量で投与される。
【0096】
ALIおよびARDSの病変形成は、異なるレベル(細胞、分子など)で十分に確立されている(Ashbaugh, et al., Lancet. 1967;2:319-23、Ware, et al., N Engl J Med. 2000;342:1334-49、Rocco, et al., Zin. Curr Opin Crit Care. 2005;11:10-7、14. Ricard et al., Curr Opin Crit Care. 2002;8:12-20)。手短に言えば、肺胞毛細血管単位は、肺胞内皮および微小血管内皮から構成されている。どんな侵襲が肺に加わろうと、程度の差はあれ、侵襲によりこの血液ガスバリアにびまん性損傷が生じ、したがってガス交換が損なわれる。肺ARDSでは、侵襲は、主に肺胞内皮を攻撃し(例えば、肺炎、吸引)、一方、肺外ARDS(例えば、敗血症、膵炎、ショック)では、微小血管内皮が標的となる。しかし、それらの存在は共に、疾患の明確な時点で、肺組織のびまん性炎症と相対的に均一に反応する。宿主の余剰の炎症性ネットワークは、ARDSの発生および進行における非常に重要な因子である。肺胞または微小血管側のいずれから出発しても、炎症過程は、肺胞および間質の水腫、肺胞液クリアランスの低下、サーファクタント生成および機能の機能障害、ならびに肺線維症をもたらす。気管支肺胞洗浄検査における炎症性メディエーター(主に好中球起源)の持続的上昇は、肺の炎症過程の消散を妨げる。仰臥位では、重力に起因して、背側基底領域で水腫の形成が顕著であり、それによって、無気肺、肺胞の周期的開閉、およびガス交換肺表面の喪失がもたらされる。さらにこれは、人工呼吸/灌流の顕著なミスマッチ、肺内シャント、肺高血圧症、肺コンプライアンスの低下、および全体的呼吸不全をもたらす。損傷肺組織からの炎症性メディエーターの放出は、全身性炎症(SIRS)の引き金を引き、ARDS患者の主な死亡原因である多臓器不全をもたらし得る。
【0097】
したがって、デンドリマー組成物またはその製剤は、肺の血管漏出もしくは血管透過性を低減させ、肺胞細胞完全性もしくは肺の内皮細胞完全性を増大し、および/または気管支肺胞洗浄検査(BAL)タンパク質レベルもしくはBAL細胞数を低減させるのに有効な量で、哺乳動物対象、好ましくはヒトに投与される。
【0098】
1. 投薬量および有効量
投薬量および投与レジメンは、重症度および障害もしくは損傷の位置、ならびに/または投与方法に依存し、当業者に公知である。肺障害および/または疾患の処置において使用されるデンドリマー組成物の治療有効量は、典型的には、肺障害および/または疾患の1つまたは複数の症状を低減させまたは軽減するために十分なものである。
【0099】
好ましくは、活性剤は、罹患/損傷した肺内には存在しないかもしくはそれに関連しない健康な細胞の活性もしくは量を標的とすることもしくはモジュレートすることはなく、または罹患/損傷した肺に関連する細胞と比較して低レベルでモジュレートする。このように、組成物に関連する副製品および他の副作用は、低減される。
【0100】
治療有効量のデンドリマー組成物および薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む医薬組成物について説明する。一部の実施形態では、医薬組成物は、N-アセチルシステインにコンジュゲートされたヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーの有効量を含む。一部の特定の実施形態では、使用に適した投薬量範囲は、レシピエントの体重1kg当たり約0.1mg/kgからレシピエントの体重1kg当たり約100mg/kgの間(両端を含む)、約0.5mg/kgから約40mg/kgの間(両端を含む)、約1.0mg/kgから約20mg/kgの間(両端を含む)、および約2.0mg/kgから約10mg/kgの間(両端を含む)である。一部の実施形態では、組成物は、レシピエントの体重1kg当たり約20mg/kgからレシピエントの体重1kg当たり約40mg/kgの間(両端を含む)の投薬量で投与される。例えば、一部の実施形態では、デンドリマー/N-アセチルシステイン(D-NAC)を含む組成物は、レシピエントの体重1kg当たり約20mg/kgからレシピエントの体重1kg当たり約40mg/kgの間(両端を含む)の投薬量で静脈内投与される。他の実施形態では、組成物は、レシピエントの体重1kg当たり約2mg/kgからレシピエントの体重1kg当たり約8mg/kgの間(両端を含む)の投薬量で投与される。例えば、一部の実施形態では、デンドリマー/N-アセチルシステイン(D-NAC)を含む組成物は、レシピエントの体重1kg当たり約2mg/kgからレシピエントの体重1kg当たり約8mg/kgの間(両端を含む)の投薬量で皮下投与される。
【0101】
デンドリマー組成物を含む医薬組成物の剤形も、提供される。「剤形」は、患者への投与が意図されるカプセルまたはバイアルなど、治療化合物の用量の物理形態を指す。本明細書で使用される「投薬単位」という用語は、単一用量で患者に投与される治療化合物の量を指す。一部の実施形態では、使用に適した投薬単位は、(平均的患者の体重が70kgであると仮定すると)5mg/投薬単位から約7000mg/投薬単位の間(両端を含む)、約35mg/投薬単位から約2800mg/投薬単位の間(両端を含む)、および約70mg/投薬単位から約1400mg/投薬単位の間(両端を含む)、約150mg/投薬単位から約700mg/投薬単位の間(両端を含む)、および約400mg/投薬単位から約600mg/投薬単位の間(両端を含む)である。
【0102】
デンドリマー複合体の実際の有効量は、投与される特定の活性剤、製剤化される特定の組成物、投与方法、および処置される対象の年齢、体重、状態、ならびに投与経路および疾患または障害を含めた、因子に従って変わり得る。対象は、好ましくはヒトである。一般に、静脈内注射または輸液のための投薬量は、局所(topical)、局部的(local)または部分的(regional)投与よりも低い投薬量であり得る。
【0103】
一般に、投与のタイミングおよび頻度は、所与の処置または診断スケジュールの効力と、所与の送達系の副作用とのバランスをとるように調節されることになる。例示的な投薬頻度は、連続輸液、単一および多数の投与、例えば、毎時、毎日、毎週、毎月または毎年の投薬を含む。
【0104】
一部の実施形態では、用量は、毎日1回、2回もしくは3回、または1日おき、2日おき、3日おき、4日おき、5日おきもしくは6日おきに、ヒトに投与される。一部の実施形態では、用量は、毎週、2週ごと、3週ごとまたは4週ごとに、約1回または2回投与される。一部の実施形態では、用量は、毎月、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、5カ月ごと、または6カ月ごとに、約1回または2回投与される。
【0105】
投与レジメンは、対象の障害を処置するために十分な任意の時間の長さとすることができることが、当業者に理解されよう。一部の実施形態では、レジメンは、1回または複数回のサイクルの、1ラウンドの治療、その後の休薬日(例えば、薬物なし)を含む。休薬日は、1、2、3、4、5、6もしくは7日、または1、2、3、4週、または1、2、3、4、5もしくは6カ月であり得る。
【0106】
2. 対照
1種または複数種の薬剤を含むデンドリマー組成物の効果は、対照と比較することができる。適切な対照は、当技術分野で公知であり、例えば、未処置対象、またはプラセボで処置された対象を含む。典型的な対照は、標的剤の投与の前および後の対象の状態または症状の比較である。状態または症状は、生化学的、分子、生理学的、または病理学的な読取りとすることができる。例えば、特定の症状、薬理学的、または生理学的指標に対する組成物の影響は、未処置の対象、または処置前の対象の状態と比較することができる。一部の実施形態では、症状、薬理学的、または生理学的指標は、処置前の対象で測定され、再び処置が開始された後に1回または複数回測定される。一部の実施形態では、対照は、処置がなされる疾患または状態を持たない1または複数の対象(例えば、健康な対象)における症状、薬理学的、または生理学的指標の測定に基づいて決定された参照レベルまたは平均である。一部の実施形態では、処置の効果は、当技術分野で公知の従来の処置と比較される。
【0107】
B. 併用治療および手順
組成物は、単独で、または1つもしくは複数の従来の治療と組み合わせて投与することができる。一部の実施形態では、従来の治療は、組成物の1つまたは複数を、1種または複数種の追加の活性剤と組み合わせて投与することを含む。併用治療は、活性剤を同じ混和物でまたは別々の混和物で一緒に投与することを含むことができる。したがって、一部の実施形態では、医薬組成物は、2種、3種、またはそれよりも多い活性剤を含む。このような製剤は、典型的には、処置部位を標的とする薬剤の有効量を含む。1種または複数種の追加の活性剤は、同じまたは異なる作用機構を有することができる。一部の実施形態では、組合せは、肺状態の処置に対して相加効果をもたらす。一部の実施形態では、組合せは、疾患または障害の処置に対して相加効果以上の効果をもたらす。
【0108】
追加の治療または手順は、デンドリマー組成物の投与と同時または連続的に行うことができる。一部の実施形態では、追加の治療は、薬物サイクル間で、または投薬レジメンの一部である休薬日中に実施される。例えば、一部の実施形態では、追加の治療または手順は、損傷制御のための外科手術、補液蘇生、輸血、気管支鏡検査、および/またはドレナージである。
【0109】
さらなる実施形態では、追加の治療または手順は、腹臥位にすること、リクルートメント手技、NO吸入、体外式膜型人工肺(ECMO)、挿管、および/またはPGI吸入である。腹臥位は、様々な機構により潜在的にリクルート可能な肺における肺リクルートメントを増強し、横隔膜をリリースし、肺組織に対する心臓および肺の重量および形状の効果を低減させ、腹部による肺圧迫を低減させ、下葉をリリースし、それによってガス交換が改善され、重症ARDS患者の死亡率が低減される。ECMOは、肺リクルートメントに対する効果がない体外式ガス交換を提供する。ECMOは、肺を休ませ、リクルート不可能な肺のために十分に機能する。ECMOは、高性能ECMOセンターにおけるある特定の患者群について、生存を改善することが示された。追加の治療剤は、抗生物質、界面活性剤、コルチコステロイドおよびグルココルチコイドの1つまたは複数を含むことができる。
【0110】
一部の実施形態では、組成物および方法は、1つまたは複数の追加の治療または手順を用いる処置の前もしくはそれと共に、その後、またはそれと交互に使用される。
【0111】
IV. 医薬製剤
デンドリマーおよび1種または複数種の抗炎症剤(例えば、N-アセチルシステム)を含む医薬組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む、1種または複数種の生理学的に許容される担体を使用する従来の手法で製剤化されてもよい。適正な製剤化は、選択される投与経路に依存する。好ましい実施形態では、組成物は、非経口送達用に製剤化される。一部の実施形態では、組成物は、皮下注射用に製剤化される。典型的には、組成物は、処置がなされる組織または細胞への注射のために滅菌生理食塩水または緩衝液で製剤化される。組成物は、使用直前の再水和のため、単回使用のバイアルに凍結乾燥して保存することができる。再水和および投与するためのその他の手段は、当業者に公知である。
【0112】
一部の実施形態では、ジスルフィド結合を使用してNACに連結させた、ヒドロキシル末端4世代のポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーを含む組成物は、凍結乾燥される。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジン緩衝液およびトレハロース中で凍結乾燥される。典型的には、凍結乾燥された薬物製品は、2~8℃で12カ月間および25℃で1カ月間安定である。一部の実施形態では、単回用量は、約150mgから約700mgの間(両端を含む)、約400mgから約600mgの間(両端を含む)、または約450mgから約550mgの間(両端を含む)を含む。注射のために滅菌水で再構成される場合、得られた溶液は、典型的には、80mg/mLのトレハロースを含むpH5.5の20mMヒスチジン中に400mg/mLのデンドリマー組成物を含有する。デンドリマー組成物の液体薬物製品は、pH5.5の生理食塩水(9%塩化ナトリウム)中に200mg/mLで製剤化される。OP-101は、体重1キログラム当たりのデンドリマー組成物の質量(mg/kg)を使用して、ヒト対象に投与される。
【0113】
医薬製剤は、1種または複数種のデンドリマー複合体を、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含有する。代表的な賦形剤には、溶媒、希釈剤、pH調節剤、保存剤、抗酸化剤、懸濁化剤、湿潤剤、粘度調節剤、等張剤、安定化剤、およびこれらの組合せが含まれる。適切な薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは、一般的に安全と認められている(GRAS)材料から選択され、望ましくない生物学的副作用または不要な相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000, p. 704を参照されたい。
【0114】
組成物は、好ましくは、投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、単位剤形で製剤化される。「単位剤形」という文言は、処置がなされる患者に適切なコンジュゲートの物理的に切り離された単位を指す。しかしながら、組成物の単回投与全体は、正しい医学的判断の範囲内で主治医により決定されることが理解されよう。治療有効用量は、細胞培養アッセイでまたは動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、またはブタで最初に推定することができる。動物モデルは、所望の濃度範囲および投与経路を実現するのにも使用される。次いでそのような情報は、ヒトに有用な用量および投与経路を決定するのに役立てるべきである。コンジュゲートの治療効力および毒性は、細胞培養でまたは実験動物で、標準的な医薬手順によって、例えばED50(用量は、集団の50%で治療上有効である)およびLD50(用量は、集団の50%に致命的である)と決定することができる。毒性の治療効果に対する用量比は治療指標であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指標を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトへの使用のための投薬範囲を製剤化する際に使用することができる。
【0115】
非経口により投与するための(筋肉内、腹腔内、静脈内、または皮下注射)および経腸投与経路により投与するための製剤化された医薬組成物について説明する。
【0116】
A. 非経口投与
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という文言は、当技術分野で理解されている用語であり、注射など、経腸および局所投与以外の投与形態を含み、静脈内、筋肉内、胸腔内、血管内、心膜内、動脈内、脊髄内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内注射および輸液が含まれる。デンドリマーは、非経口的に、例えば硬膜下、静脈内、脊髄内、心室内、動脈内、羊水内、腹腔内、または皮下経路により投与され得る。好ましい実施形態では、デンドリマー組成物は、皮下注射を介して投与される。
【0117】
液体製剤の場合、薬学的に許容される担体は、例えば水性または非水性溶液、懸濁液、エマルジョン、または油であってもよい。(皮下、静脈内、動脈内または筋肉内注射のための)非経口ビヒクルは、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルおよび固定油が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体には、例えば、水、アルコール性/水性溶液、シクロデキストリン、エマルジョン、または懸濁液が含まれ、生理食塩水および緩衝媒体を含む。デンドリマーは、エマルジョンで、例えば油中水で投与することもできる。油の例は、石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えばピーナツ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ、ワセリン、およびミネラルである。非経口製剤に使用される適切な脂肪酸には、例えばオレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が含まれる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0118】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液に対して製剤を等張性にする溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含むことができる水性および非水性滅菌懸濁液を含むことができる。静脈内ビヒクルは、流体および栄養補給剤、電解質補給剤、例えばリンゲルデキストロースをベースにするものを含むことができる。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロース、および関連ある糖溶液と、グリコール、例えばポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどは、特に注射可能な溶液に好ましい液体担体である。
【0119】
注射可能な組成物のための注射可能な医薬担体は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982)、およびASHP Handbook on Injectable Drugs,Trissel, 15th ed., pages 622-630 (2009)参照)。
【0120】
例示的な実施形態では、投与のための組成物は、4.4%トレハロース二水和物を含むpH5.5の10mMヒスチジン中に200mg/mLのOP-101を含有する溶液を含む。特定の実施形態では、組成物は、凍結乾燥される。他の実施形態では、組成物は、約0.1mlから約100mlの間(両端を含む)の体積、好ましくは2.5mLの体積である。
【0121】
B. 経腸投与
組成物は、経腸的に投与されるように製剤化され得る。担体または希釈剤は、カプセル剤もしくは錠剤などの固体担体、または固体製剤用の希釈剤、液体製剤用の液体担体もしくは希釈剤、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0122】
液体製剤の場合、薬学的に許容される担体は、例えば、水性または非水性溶液、懸濁液、エマルジョン、または油であってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体には、例えば、水、アルコール/水性溶液、シクロデキストリン、エマルジョン、または懸濁液が含まれ、生理食塩水および緩衝媒体を含む。
【0123】
油の例は、石油、動物、植物、または合成由来のものであり、例えば、ピーナツ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ、ワセリン、およびミネラルである。非経口製剤で使用される適切な脂肪酸には、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が含まれる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0124】
ビヒクルには、例えば塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルおよび固定油が含まれる。製剤には、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液に対して製剤を等張性にする溶質を含有することができる、水性および非水性、等張性滅菌注射液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含むことができる水性および非水性滅菌懸濁液を含有することができる。ビヒクルは、例えば、流体および栄養補給剤、電解質補給剤、例えばリンゲルデキストロースをベースにしたものなどを含むことができる。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロース、および関連ある糖溶液が、好ましい液体担体である。これらは、タンパク質、脂肪、糖、およびその他の乳児用調製乳の成分と共に製剤化することもできる。
【0125】
好ましい実施形態では、組成物は、経口投与用に製剤化される。経口製剤は、チューイングガム、ゲルストリップ、錠剤、カプセル剤、またはロゼンジ剤の形態をとってもよい。腸溶性コーティング付き経口製剤の調製のためのカプセル化物質は、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレート、およびメタクリル酸エステルコポリマーを含む。カプセル剤または錠剤などの固体経口製剤が好ましい。エリキシル剤およびシロップ剤も周知の経口製剤である。
【0126】
V. デンドリマーおよびそのコンジュゲートまたは複合体の作製方法
A. デンドリマーを作製する方法
デンドリマーは、様々な化学反応ステップを介して調製することができる。デンドリマーは通常、全ての構築段階でその構造の制御を可能にする方法により合成される。樹状構造は、2つの主な異なる手法:発散または収束によって、ほとんどが合成される。
【0127】
一部の実施形態において、デンドリマーは、一般にMichael反応である一連の反応によって外向きに延びる多官能性コアからデンドリマーが組み立てられる、発散方法を使用して調製される。戦略は、コアの周りに段階的な世代の付加をもたらしその後に保護基が除去される、多官能性コア部分を持つ反応性および保護基を保有するモノマー分子のカップリングを含む。例えばPAMAM-NHデンドリマーは、アンモニアコアにN-(2-アミノエチル)アクリルアミドモノマーをカップリングすることによって最初に合成される。
【0128】
他の実施形態では、デンドリマーは収束方法を使用して調製され、この方法ではデンドリマーが、球の表面で終わる小分子から構築され、反応は内向きに構築されるように進行し、最終的にはコアに結合する。
【0129】
オルソゴナル手法、加速手法、二段階収束法、またはハイパーコア手法、ハイパーモノマー法、または分岐モノマー手法、二重指数法;オルソゴナルカップリング法、または2ステップ手法、2モノマー手法、AB-CD手法などの多くのその他の合成経路が、デンドリマーの調製のために存在する。
【0130】
一部の実施形態では、デンドリマーのコア、1つもしくは複数の分岐単位、1つもしくは複数のリンカー/スペーサー、および/または1つもしくは複数の表面基を修飾して、さらなる官能基(分岐単位、リンカー/スペーサー、表面基など)、モノマー、および/または活性剤に、クリックケミストリーを介して、1つもしくは複数の銅支援型アジド-アルキン環付加(CuAAC)、Diels-Alder反応、チオール-エンおよびチオール-イン反応、ならびにアジド-アルキン反応を用いて共役させることができる(Arseneault M et al., Molecules. 2015 May 20;20(5):9263-94)。一部の実施形態では、事前に作製されたデンドロンが高密度ヒドロキシルポリマー上にクリックされる。「クリックケミストリー」は、例えば、第1の部分の表面のアルキン部分(またはその均等物)と第2の部分上のアジド部分(例えば、トリアジン組成物またはその均等物上に存在する)または任意の活性末端基、例えば第一級アミン末端基、ヒドロキシル末端基、カルボン酸末端基、チオール末端基など)との間の1,3-双極子環付加反応を介した2つの異なる部分(例えば、コア基および分岐単位;または分岐単位および表面基)のカップリングを含む。
【0131】
一部の実施形態では、デンドリマー合成は、チオール-エンクリック反応、チオール-インクリック反応、CuAAC、Diels-Alderクリック反応、アジド-アルキンクリック反応、Michael付加、エポキシ開環、エステル化、シラン化学、およびこれらの組合せなどの1つまたは複数の反応に依拠する。
【0132】
任意の既存の樹状プラットフォームを使用して、所望の官能基のデンドリマー、即ち表面ヒドロキシル基の高密度を持つデンドリマーを、1-チオ-グリセロールまたはペンタエリスリトールなどの高ヒドロキシル含有部分をコンジュゲートすることによって作製することができる。例示的な樹状プラットフォーム、例えばポリアミドアミン(PAMAM)、ポリ(プロピレンイミン)(PPI)、ポリ-L-リシン、メラミン、ポリ(エーテルヒドロキシルアミン)(PEHAM)、ポリ(エステルアミン)(PEA)、およびポリグリセロールを合成し、調査することができる。
【0133】
デンドリマーはまた、2つまたはそれよりも多くのデンドロンを組み合わせることによって調製することができる。デンドロンは、反応性焦点官能基を持つデンドリマーの楔形セクションである。多くのデンドロン足場が市販されている。それらは第1、2、3、4、5、および6世代になり、それぞれ2、4、8、16、32、および64個の反応性基を持つ。ある特定の実施形態では、活性剤の1つのタイプがデンドロンの1つのタイプに連結され、活性剤の異なるタイプがデンドロンの別のタイプに連結される。次いで2つのデンドロンが接続されてデンドリマーを形成する。2つのデンドロンは、クリックケミストリーを介して、即ちトリアゾールリンカーが形成されるように1つのデンドロン上のアジド部分と別のデンドロン上のアルキン部分との間の1,3-双極子環付加反応を介して連結することができる。
【0134】
デンドリマーを作製する例示的な方法は、国際特許公開番号WO2009/046446、WO2015168347、WO2016025745、WO2016025741、WO2019094952、および米国特許第8,889,101号に詳述されている。
【0135】
B. デンドリマー複合体およびコンジュゲート
デンドリマー複合体は、デンドリマー、樹状ポリマーまたは多分枝ポリマーにコンジュゲートされたまたは複合体化された治療剤、予防剤または診断剤から形成することができる。デンドリマーへの1種または複数種の薬剤のコンジュゲーションは、当技術分野で公知であり、米国公開出願番号US2011/0034422、US2012/0003155、およびUS2013/0136697に詳述されている。
【0136】
一部の実施形態では、1種または複数種の活性剤は、デンドリマーに共有結合する。一部の実施形態では、活性剤は、in vivoで切断されるように設計された連結部分を介してデンドリマーに結合する。連結部分は、in vivoで活性剤の持続放出がもたらされるように、加水分解により、酵素により、またはこれらの組合せによって切断されるように設計することができる。連結部分の組成物と、活性剤へのその結合点との両方は、連結部分の切断が活性剤またはその適切なプロドラッグのいずれかを放出するように、選択される。連結部分の組成は、活性剤の所望の放出速度に鑑み、選択することもできる。
【0137】
一部の実施形態では、結合は、ジスルフィド、エステル、エーテル、チオエステル、カルバメート、カーボネート、ヒドラジン、またはアミド結合の1つまたは複数を介して引き起こされる。好ましい実施形態では、結合は、活性剤の所望の放出動態に応じて、薬剤とデンドリマーとの間にエステル結合またはアミド結合をもたらす適切なスペーサーを介して引き起こされる。ある場合には、エステル結合は、活性剤の切断可能な形態のために導入される。他の場合には、アミド結合は、活性剤の非切断可能形態のために導入される。
【0138】
連結部分は一般に、1つまたは複数の有機官能基を含む。適切な有機官能基の例には、第二級アミド(-CONH-)、第三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)-NR-)、第二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、第三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カーボネート(-O-C(O)-O-)、尿素(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、エーテル(-O-)、およびエステル(-COO-、-CHC-、CHROC-)が含まれ、Rはアルキル基、アリール基、または複素環基である。一般に、連結部分における1つまたは複数の有機官能基の実体は、活性剤の所望の放出速度に鑑み選択することができる。さらに、1つまたは複数の有機官能基は、活性剤とデンドリマーとの共有結合が容易になるように選択することができる。好ましい実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にジスルフィド架橋をもたらす適切なスペーサーを介して引き起こすことができる。デンドリマー複合体は、体内に見られる還元条件下、チオール交換反応によって、in vivoでの薬剤の急速放出が可能である。
【0139】
ある特定の実施形態では、連結部分は、スペーサー基と組み合わせて、上述の有機官能基の1つまたは複数を含む。スペーサー基は、オリゴマーおよびポリマー鎖を含む、原子の任意のアセンブリから構成することができ;しかしながら、スペーサー基の原子の総数は、好ましくは3から200個の間の原子、より好ましくは3から150個の間の原子、より好ましくは3から100個の間の原子、最も好ましくは3から50個の間の原子である。適切なスペーサー基の例には、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルキルアリール基、オリゴ-およびポリエチレングリコール鎖、ならびにオリゴ-およびポリ(アミノ酸)鎖が含まれる。スペーサー基のばらつきは、in vivoでの薬剤の放出に関して、追加の制御をもたらす。連結部分がスペーサー基を含む実施形態では、スペーサー基を抗炎症剤およびデンドリマーの両方に接続するのに、1つまたは複数の有機官能基が一般に使用されることになる。
【0140】
活性剤とデンドリマーとの共有結合に有用な反応および戦略は、当技術分野で公知である。例えば、March, "Advanced Organic Chemistry," 5th Edition, 2001,Wiley-Interscience Publication, New York)およびHermanson, "Bioconjugate Techniques," 1996, Elsevier Academic Press, U.S.A.を参照されたい。所与の活性剤を共有結合するための適切な方法は、所望の連結部分、ならびに全体としての薬剤およびデンドリマーの構造に鑑み選択することができるが、それは官能基の適合性、保護基の戦略、および不安定な結合の存在に関係するからである。
【0141】
最適な薬物負荷は、必然的に、薬物の選択、デンドリマーの構造およびサイズ、ならびに処置される組織を含む多くの因子に依存する。一部の実施形態では、1種または複数種の活性薬は、約0.01%から約45%、好ましくは約0.1%から約30%、約0.1%から約20%、約0.1%から約10%、約1%から約10%、約1%から約5%、約3%から約20重量%、および約3%から約10重量%の濃度で、デンドリマーにカプセル化され、関連付けられ、および/またはコンジュゲートされる。しかしながら、任意の所与の薬物、デンドリマー、および標的部位に関する最適な薬物負荷は、記載されるもののような通常の方法によって特定することができる。
【0142】
一部の実施形態では、活性剤および/またはリンカーの共役は、1つまたは複数の表面および/または内部基を経て生じる。したがって一部の実施形態では、活性剤/リンカーの共役は、共役前のデンドリマーの利用可能な表面官能基、好ましくはヒドロキシル基の全ての約1%、2%、3%、4%、または5%を介して行われる。他の実施形態では、活性剤/リンカーの共役は、共役前のデンドリマーの利用可能な表面官能基全ての5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満で生じる。好ましい実施形態では、デンドリマー複合体は、疾患または障害を処置し、予防し、および/または撮像するための活性剤の有効量にコンジュゲートされながら、特定の細胞型を標的とするための表面官能基の有効量を保持する。
【0143】
VI. キット
組成物は、キットにパッケージすることができる。キットは、デンドリマー内にカプセル化されるか、関連付けられるか、またはコンジュゲートされた1種または複数種の抗炎症剤を含む、単回用量または複数回用量の組成物と、組成物を投与するための使用説明書を含むことができる。具体的には、使用説明書は、組成物の有効量が、ALIまたはARDSなどの特定の肺状態/疾患を有する個体に、指示される通りに投与されるべきであることを指導している。組成物は、特定の処置方法を参照することにより前述の通り製剤化することができ、任意の好都合な手法でパッケージすることができる。
【0144】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解されよう。
【実施例
【0145】
(実施例1)
デンドリマー-NACの調製
PAMAMデンドリマーにコンジュゲートしたN-アセチルシステインを調製し、臨床試験で用いる。それを「OP-101」と呼ぶ。凍結乾燥させたOP-101薬物製品は、5ccバイアル1つ当たり2.5mLで無菌充填し凍結乾燥させた、4.4%トレハロース二水和物を含むpH5.5の10mMヒスチジン中で200mg/mLのOP-101を含有する溶液を含む。
【0146】
OP-101は、メチルアクリレートとエチレンジアミンとの反復反応から作製されるポリ(アミドアミン)またはPAMAMデンドリマーを含む。4世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーは、エチレンジアミン(EDA)コア、アミドアミン反復単位([CHCHCONHCHCHN])、および64個のヒドロキシル末端基を含有している(化学式:C6221184186188)。その後、以下の図1に示される通り、64個のヒドロキシルのうち約20個を、アミン基に変換し、次にそれをNAC-SPDPで処理して、ジスルフィド結合を介して連結したN-アセチルシステイン(NAC)単位を結合させる。活性成分であるNACは、OP-101の全質量の約16%である。
【0147】
OP-101は、約5nmの粒子サイズおよび約7mVのゼータ電位を有する。薬物物質は、pH5.5の0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中、200mg/mLのOP-101である。
【0148】
(実施例2)
OP-101の静脈内投与は健康なボランティアにおいて安全である
この第1相臨床治験研究では、コホート1つ当たり投与を受ける4人の対象を含む2つのコホートを、多用量のOP-101をi.v.投与した後に、有害事象について評価した。コホート1つ当たりの投薬量は、以下の通りであった:コホート1:20mg/kg、コホート2:40mg/kg。
【0149】
3人の対象は、処置中に有害事象が発生した(グレード1:尿円柱およびタンパク尿、コホート1から1人およびコホート2から2人)。処置中に発生した他の有害事象は、試験薬物に関係していなかった。
【0150】
(実施例3)
健康なボランティアにおけるOP-101の第1相皮下投与
この第1相臨床治験研究では、コホート1つ当たり投与を受ける4人の対象を含む2つのコホートを、多用量のOP-101を皮下(s.c.)投与した後に、有害事象について評価した。コホート1つ当たりの投薬量は、以下の通りであった:コホート1:4mg/kg、コホート2:8mg/kg。
【0151】
5人の対象が、軽度(グレード1)の一過性注射部位反応を経験した(コホート1から2人およびコホート2から3人)。処置中に発生した他の有害事象は、試験薬物に関係していなかった。
【0152】
これらの軽度の一過性注射部位反応は、皮下投与される薬物に共通のものである。これらの結果は、OP-101の皮下投与の潜在的実用性を裏付けている。
【0153】
(実施例4)
重症のCOVID-19を有する患者におけるOP-101(N-アセチルシステインデンドリマー)の安全性、忍容性、薬物動態、および効力を評価するための二重盲検プラセボ対照第2相研究
概要
CDCによれば、入院中のCOVID-19患者の17~29%およびARDSを発症した武漢コホートの患者の41.8%において、ARDSが発生した。ARDSは、COVID-19を有するほとんどの患者における高熱(≧39℃)と相関していた。上昇した体温は、感染後に肺に動員されたM1活性化マクロファージからの、強力なサイトカインの制御の効かない放出によって引き起こされた、古典的な「サイトカインストーム」の結果である可能性が高い。ARDSから回復している患者では、M1マクロファージが、M2抗炎症性マクロファージに切り替わっている。しかし、現在の制御の効かない炎症を処置するための、現在の唯一の治療は、全身性コルチコステロイドであり、これは免疫力が低下した患者においては安全でない選択肢である。
【0154】
抗酸化剤/抗炎症剤とコンジュゲートされたヒドロキシルデンドリマーは、薬物の選択的送達のプラットフォーム技術を提供する。N-アセチルシステイン(D-NAC)とコンジュゲートされたヒドロキシルデンドリマーは、30匹を上回る動物モデル、6種の動物種(イヌおよびサルを含む)およびex vivoヒト細胞における、脳、網膜および眼の損傷に関連する多発性炎症モデルにおいて、反応性M1様マクロファージを反応性がより低いM2様マクロファージに変換する堅牢な能力を示した。D-NAC治療は、反応性マクロファージの炎症促進性反応を減弱し、それらを「正常な」または抗炎症状態にし、炎症にとどまらず、神経細胞的、行動学的、認知的、および他の機能的転帰への酸化ストレスへの治療反応を可能にした。D-NACを用いる全身治療は、げっ歯類およびイヌにおける脳性麻痺、低酸素虚血、心停止、加齢性黄斑変性症、早産児の網膜症、および糖尿病性網膜症の前臨床モデルにおいて有効であった。これらの前臨床データは、D-NACが、ARDSについて臨床的に有益となり得る標的化抗炎症/抗酸化治療であることを示している。
【0155】
D-NACは、薬物を標的マクロファージに選択的に送達し、遊離薬物の副作用を低減させることに起因して、非常に強力な抗炎症/抗酸化化合物である。D-NACの有益な効果には、炎症促進性サイトカインおよび活性酸素種の低減が含まれる。さらに、D-NACは、40mg/kgまでのIV単回用量で、健康な成人において忍容性が高く、臨床的有害効果がなかったことが示された。D-NACは、より好都合な反復投与を可能にするために、現在、健康な成人において4mg/kgおよび8mg/kgの皮下用量で研究中である。
【0156】
この研究では、SARS-CoV-2によって引き起こされたARDSおよびCOVID-19を有する患者の入院時間、人工呼吸器の必要性、および/または死亡を低減させるD-NACの能力を評価した。D-NACは、炎症促進性マクロファージおよび対応するサイトカイン放出を低減させるD-NACの能力を評価するために、鼻腔内接種を介してヒトSARS-CoV株に感染させたK18-hACE2遺伝子導入マウス(McCray et al J Virol 81(2):813-21 2007)および/または正常マウスのLPS誘発性ARDSで試験中である。SARS-CoV-2を用いた研究は、国または地方の生物学的封じ込め研究所(Biocontainment Laboratory)と共同で実施した。それと並行して、反復用量GLP毒性学を開始して、臨床治験を裏付けた。臨床治験には、全身性炎症反応症候群、敗血症または敗血症ショックの存在によって評価された、サイトカインストームを受けているCOVID-19のARDS患者が登録された。臨床プロトコールを、以下に概説する。
【0157】
一次目的
この研究の一次目的は、重症のCOVID-19を有する患者における単回投与後の、OP-101の安全性および忍容性を評価することである。
【0158】
二次目的
この研究の二次目的は、重症のCOVID-19を有する患者における単回投与後の、炎症促進性サイトカインを低減させるOP-101の効果を決定することである。
【0159】
方法
第2相臨床治験研究は、安全性および忍容性についての、無作為化二重盲検プラセボ対照の単一漸増用量設計であった。患者は、標準ケア(SOC)処置を受けた。
【0160】
研究は、約6カ所の施設で実施された。
【0161】
患者の疾患は急速に進行するので、患者をスクリーニングし、72時間以内に登録した。登録されたら、各患者は、現在登録中の用量レベルでのOP101の単回IV輸液、またはプラセボ対照のいずれかを受けるように、1群当たり3:1の比で無作為化された(全体で1:1:1:1比)。患者を、安全性についてモニタリングし、(薬物動態)PKおよび薬力学的(PD)試料を、投与後に得た。任意の研究手順が実施される前に、患者または正式代表者は、インフォームドコンセントを提供しており、患者は、研究に参加するための組み入れの全てを満たしていなければならず、除外基準のいずれも満たしていてはならない。適格患者は、1日目に投与され、研究フォローアップは、60日目に完了する。
【0162】
4つの別々の連続コホート(2mg/kg、4mg/kg、8mg/kgのOP-101、およびマッチングプラセボ)があり、各コホートに6人の患者が含まれていた(図2および表1)。コホートAは、単回用量の2mg/kgのOP-101を投与された6人の患者が登録されるように無作為化されるか、または2人の患者はコホートDのプラセボに登録された。コホートA(2mg/kg)からコホートB(4mg/kg)への用量漸増は、コホートAの3日目までの安全性および忍容性の審査後、独立データモニタリング委員会(IDMC)によって決定された。コホートBは、単回用量の4mg/kgを投与された6人の患者が登録されるように無作為化されるか、または2人の患者はコホートDのプラセボに登録された。同じ手順を使用して、コホートCに漸増した(8mg/kg)。全無作為化比は、1:1:1:1であり、コホート1つ当たり6人の患者が含まれていた。層別化は、ベースラインである世界保健機関のブループリントCOVID-19マスタープロトコールシノプシスの7ポイント順序尺度(WHO 7OS)(スコア <6対≧6)に基づいて行った。
【0163】
【表1】
【0164】
単回投与後に、薬物動態/薬力学(PK/PD)分析のために血漿試料を収集した。PK/PD血漿試料は、可能であれば以下の通り、投与前、ならびに輸液開始後2時間目、12時間目および24時間目に収集したスパースサンプリングを用いた。PD分析のための追加の血液試料を、3日目、5日目および8日目に採取し、安全性臨床検査で15日目、22日目および30日目(±1日)に採取した。PK/PD分析のための血液/試料は、≦24時間の試料時間に予定されたサンプリング時間の±30分以内、および>24時間の試料時間に予定されたサンプリング時間の±24時間以内に得ることができる。
【0165】
尿PK試料を、以下の通り、投与前のスポット試料ならびに以下の間隔:輸液開始(SOI)後0~4時間、SOI後4~8時間、SOI後8~12時間、SOI後12~18時間およびSOI後18~24時間の間に収集した。
【0166】
全てのコホートの患者が、臨床的判断および患者の応答によって示される通り、一次臨床チームによって最も入手可能な、機械的人工呼吸法を含むSOC処置を受けた。患者が病院から退院した場合、全ての生存患者が、遠隔フォローアップを含む30日間のフォローアップを受けた。
【0167】
安全性評価には、AEモニタリング、臨床検査試験(血液学的検査、化学検査および尿検査)、身体検査、ならびにバイタルサイン(心拍、呼吸数、体温ならびに収縮期および拡張期血圧[BP])が含まれていた。凝固試験は、スクリーニング時に実施した。
【0168】
対象選択:組み入れ基準
個体は、研究に含まれるためには以下の基準の全てを満たさなければならない:男性または非妊娠女性成人は、インフォームドコンセント用紙(ICF)への署名時に≧18歳であること;SARS-CoV-2についての臨床検査値の陽性または研究室により証明されたSARS-CoV-2を有するヒトとの最近の接触による呼吸器感染;患者は、WHO 7Oを使用して4から7の間(両端を含む)の順序尺度スコアを有すること;室内空気で<95%のSpOによって定義された低酸素血症またはARDS;以下の基準:>38.0℃の発熱、>90心拍数/分の頻脈、>20呼吸/分の頻呼吸、>12×10/Lの白血球増加症または<4×10/Lの白血球減少症(leucopoenia)の少なくとも1つの発生。これらの評価のタイミングは、スクリーニング日に行われる必要はなく、入院日からスクリーニング評価日までいつでも行うことができる;スクリーニングおよび無作為化は、機械的人工呼吸法(WHOスコア6)の開始から72時間以内に行わなければならない;患者または患者の法的に正式な代表者が署名したICFを入手可能でなければならない(電話による同意は許容される);女性患者は、妊娠中、授乳中、または母乳育児中であってはならない;潜在的妊娠可能性を有する女性患者は、スクリーニング時に妊娠検査について陰性結果を有していなければならない;男性患者は、研究中および最終投与後90日間、バリア式避妊法の使用に同意しなければならない;患者は、スクリーニング時に>45mL/分/1.73mの推定糸球体濾過率を有していなければならない;ならびにこの研究の完了まで別の治験薬の研究への登録に同意してはならない。
【0169】
対象選択:除外基準
スクリーニング時に以下の基準のいずれかを満たす個体は、この研究への参加に不適格である:24時間超にわたって生存すると予測されない;研究者の意見において、患者から人工呼吸が外されることになる可能性が極めて低い、基礎臨床状態(例えば、運動ニューロン疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、または急速進行性間質性肺線維症);睡眠時呼吸障害のためだけに使用される持続的気道陽圧法または二相性気道陽圧法を除いて、長期間の家庭酸素治療または機械的人工呼吸法(非侵襲的人工呼吸または気管切開術による)を必要とする重症の慢性閉塞性肺疾患;ニューヨーク心臓病学会のクラスIVとして定義されたうっ血性心不全;急性左心室不全または心筋梗塞;現在、体外式膜型人工肺(ECMO)治療を受けている;慢性腎不全のための腎透析治療を受けている;中等度から重症の肝不全(>12のチャイルド・ピュー(Childs-Pugh)スコア);過去2年間に肺移植を受けた患者における、処置を必要とする任意の活動性悪性腫瘍(非黒色腫皮膚がん以外)の存在;WHOクラスIIIまたはIVの肺高血圧症;過去3カ月以内に文書化された深部静脈血栓症または肺塞栓症;過去5日間における大外傷;30日または半減期の5倍(OP-101の投薬前のいずれか長い方)以内の、免疫調節試験薬物(例えば、抗IL6抗体、JAKキナーゼ阻害剤)またはSARS-CoV-2に対して実際のもしくは可能な直接作用型抗ウイルス活性を有する他の薬剤との併用処置;FDA緊急使用許可を受けており、SOCになっていた個体を除く。対象が、スクリーニング時に、文書化された持続的低酸素血症(室内空気で<95%のSpO)および過剰炎症(CRP上昇、>実施施設(local lab)の正常値上限)を有していた場合、コルチコステロイドとの併用処置が許容される;スクリーニング前30日以内に>450mLの全血または血液製剤を喪失または献血していた。
【0170】
試料サイズの決定
この研究は、安全性および忍容性に基づいてOP-101の最大耐性用量を評価するように設計された概念実証である。コホート1つ当たり6人の患者に、安全性および忍容性の適切な評価を行うことが可能である。結果を正確に解釈し、研究処置に起因する複数の有害効果を区別する一助にすることができるように、プラセボが含まれていた。
【0171】
処置割当て
1日目に適用できる全ての適格性基準を満たした患者は、自動化IXRSを使用して、2mg/kgのOP-101(コホートA)またはプラセボ(コホートD)のいずれかに3:1比で、続いて4mg/kgのOP-101(コホートB)またはプラセボ(コホートD)のいずれかに3:1比で、最後に8mg/kgのOP-101(コホートC)またはプラセボ(コホートD)のいずれかに3:1比で、一元的に無作為化された。患者の無作為化は、1日目に評価されるベースラインであるWHO 7OSスコアに基づいて層別化される(<6対≧6)。
【0172】
盲検
研究者、安全性および効力を評価する施設スタッフ、他の関連の研究スタッフ(後援者および任意の被指名人を含む)、全ての患者、ならびに研究室は、この研究を通して研究処置割当てに対して盲検のままである。PK評価の評価を実施する研究室スタッフは、非盲検とみなされる。
【0173】
被験薬の投与
OP-101は、注射のための滅菌水で再構成するための、凍結乾燥させた粉末として供給される。各バイアルは、500mgのOP-101を含む。再構成後に、OP-101溶液を、用量コホートおよび患者の体重(kg)に基づいて、適切な用量で100mLのIV食塩水バッグに添加した。プラセボは、非盲検の薬剤師によって、100mLのIV食塩水バッグとして供給された。コホートA~Dの全ての用量を、持続IV輸液(100mL)として60分にわたって投与した。
【0174】
研究停止規則
ある用量コホートの1人の患者が、薬物に関係するSAEを有するか、または同じ用量コホートの≧2人の患者が、薬物に関係するグレード3のAEもしくはSAEを有する事象において、安全性情報を審査することができるまで、この研究は停止され、それ以上の投薬および/または用量漸増は行わない。
【0175】
研究手順および評価スケジュール
評価およびそれらのタイミングは、以下の評価スケジュールの表2に概説される通りに実施されるべきである。
【0176】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0177】
試験薬物が投与される来院時に予定された評価および手順は、評価スケジュールに別段指示されない限り、処置の投与前に実施されるべきである。
【0178】
効力評価には、臨床状態の改善までの時間、ICUに入っていた日数、生存者についての入院日数、クリニックもしくは病院からの退院までの時間、またはNEWS2が≦2になり24時間維持されるまでの時間、NEWS2採点システムにおけるベースライン(投与前、1日目)からの変化が含まれる。安全性評価には、バイタルサイン、身体検査、研究室評価、および有害事象(AE)が含まれる。PK評価には、OP-101の投与後の炎症促進性マーカー(CRP、フェリチン、およびIL-6)の変化パーセンテージが含まれる。
【0179】
一次エンドポイント
単回IV用量のOP-101の安全性および忍容性
【0180】
二次エンドポイント
1.WHO 7OSを使用した臨床状態評価の改善までの時間(2ポイント)
2.文書化された発熱(≧37.2℃[経口]、または≧37.8℃[直腸]、または≧38.0℃[鼓膜])を有する患者について、少なくとも48時間の発熱が解熱薬を用いずに消散するまでの時間
3.最下点SpO/FiOと比較して≧50のパルス酸素飽和度(SpO)/FiOの増加によって定義される、少なくとも48時間の酸素化の改善までの時間
4.WHO 7OSの平均変化
5.クリニックもしくは病院からの退院までの時間、またはNEWS2が≦2になり24時間維持されるまでの時間
6.病院/クリニックからの退院時または30日目に生存しており、酸素補給を使用していない患者の割合
7.安静時呼吸数が>24回呼吸/分の日数
8.低酸素血症を有していた日数
9.酸素補給使用の日数
10.最初の28日間において人工呼吸器を用いなかった日数
11.集中治療室(ICU)に入っていた日数
12.生存者についての入院日数
13.あらゆる原因による死亡数
14.炎症促進性サイトカイン(CRP、フェリチン、およびIL-6)の変化パーセンテージ
15.薬物に関係する重篤な有害事象(SAE)の発生率
【0181】
探索的エンドポイント
1日目から30日目までのNational Early Warning Score 2(NEWS2)の変化。
【0182】
薬物動態エンドポイント
薬物動態(PK)エンドポイントは、集団PKモデリングによって推定される。
【0183】
薬力学的エンドポイント
研究において測定されることになる炎症性サイトカインには、CRP、フェリチン、およびIL-6が含まれる。
【0184】
解析対象集団(set)
登録対象集団(enrolled set)
登録対象集団は、ICFに署名した全ての対象または法的に正式な代表者が対象に代わって署名した対象を含む。
【0185】
安全性解析対象集団(safety set)
安全性解析対象集団(SAF)は、少なくとも1つの用量の被験薬が投与された全ての対象を含む。対象は、実際に受けた処置に従って分析される。SAFは、安全性エンドポイントの全ての分析のため、および全ての対象一覧の対象の症状のため、および対象の体内動態の概要のために使用される。SAFは、安全性エンドポイントの全ての分析のために使用される。
【0186】
処置意図解析対象集団(intent-to-treat set)
処置意図解析(ITT)対象集団は、無作為化された全ての対象を含む。対象は、無作為化処置に従って分析される。処置群の割当ては、初期無作為化に従って指定される。ITT対象集団は、効力エンドポイントの全ての分析のために使用される。
【0187】
薬物動態解析対象集団(pharmacokinetic set)
薬物動態解析対象集団(PKS)は、ベースライン後の少なくとも1つのPK濃度が測定された、SAF内の全ての対象を含む。その集団の処置群の割当ては、実際に受けた処置によって定義される。PK濃度は、PK対象集団の全ての対象について列挙される。
【0188】
薬力学的解析対象集団(pharmacodynamic set)
薬力学的解析対象集団(PDS)は、ベースライン後の少なくとも1つの測定可能なPD評価を有する、SAF内の全ての対象を含む。この集団の処置群の割当ては、実際に受けた処置によって定義される。この集団は、PDの分析のために使用される。
【0189】
プロトコール逸脱
プロトコール逸脱は、プロジェクト開始からプロジェクト閉鎖まで文書化される。プロトコール逸脱を特定し、追跡する過程は、プロジェクト主導者によって準備されるプロトコール逸脱および不履行管理計画に記載される。
【0190】
プロトコール逸脱および/または違反、ならびにそれらが生じた理由は、臨床試験報告に含まれる。
【0191】
効力
ITT解析対象集団は、効力エンドポイント分析のために使用される。
【0192】
推定対象
この第2相研究は概念実証であり、一次目的は、様々な漸増用量のOP-101の安全性および忍容性を評価することである。この評価の一次集団は、SAFであり、効力の任意の初期評価を、ITT解析対象集団において実施する。エンドポイントの分析により、研究の主眼が実現され、その分析は、起こり得る任意の予期せぬ安全性の問題を除外するほどにはフォーカスされない。将来研究で試験されることになるOP-101用量の選択に関する決定は、安全性審査およびCRPの変化によって決定される。また、この時点で見られたいかなる初期効力も、意思決定において考慮され得る。
【0193】
介入事象は、処置方針戦略により、すなわち、調和国際会議(ICH)E9の補遺:「介入事象の発生は、目的の処置効果の定義には無関係とみなされる:目的の変数についての値は、介入事象が生じるか否かに関係なく使用される」により取り扱われることになる。
【0194】
全ての二次エンドポイントは、この指示において、臨床機能の適切な評価を提供するように選択される。ドロップアウトまたは死亡に起因する、事象が発生するまでの時間(time-to-event)のエンドポイントについてのデータの取扱いに関する詳細が含まれる。
【0195】
バイナリエンドポイントについてのいかなる欠測データも、非応答者として保管され、連続エンドポイント、または順序尺度に基づくもの(例えば一次エンドポイント)については、セクション6.3に従って多重代入法が使用される。
【0196】
効力エンドポイントおよび分析
WHO 7OSを使用した評価:WHO 7OS(WHO 7ポイント順序尺度は、0(非感染)から7(入院中)の範囲である)を使用して、臨床状態の改善までの時間(2ポイント)およびWHO 7OSの平均変化を評価する。
【0197】
1.感染の臨床的またはウイルス学的証拠なし(非感染)
2.活動に制限なし(歩行可能)
3.活動に制限あり(歩行可能)
4.入院中、酸素治療なし(軽度疾患で入院中)
5.入院中、酸素マスクまたは経鼻酸素カニューレ(軽度疾患で入院中)
6.入院中、非侵襲的人工呼吸または高流量酸素(重症疾患で入院中)
7.入院中、挿管および機械的人工呼吸法(重症疾患で入院中)
8.入院中、人工呼吸+追加の臓器サポート-昇圧薬、腎代替療法、ECMO
【0198】
結果
薬物またはプラセボ投与に関係する、処置中に発生した有害事象を有していた対象はいなかった。第2相COVID-19治験の非盲検生存データの一部を、表3にまとめる。各コホートには、OP-101で処置された6人の患者および2人のプラセボ患者が含まれていた。4mg/kgでの患者を含むコホートBの1人のプラセボ処置患者が死亡し、8mg/kgでの患者を含むコホートCの両方のプラセボ患者が死亡した。現在までのデータは、数は少ないものの、生存利益への傾向を示唆している。
【0199】
【表3】
【0200】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、開示される本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用される刊行物およびそれらが引用される文献は、参照により具体的に組み込まれる。
【0201】
当業者であれば、単なる通常の実験を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の、多くの均等物を認識するであろうしまたは確認することができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
図1
図2
【国際調査報告】