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特表2023-522997DRAGLINE SPIDER SILKを含む化粧品組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】DRAGLINE SPIDER SILKを含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20230525BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230525BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230525BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230525BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20230525BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20230525BHJP
   C07K 17/14 20060101ALI20230525BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q17/04 ZNA
A61Q5/06
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K8/86
A61K8/84
C07K14/435
C07K17/14
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564362
(86)(22)【出願日】2021-04-25
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 IL2021050476
(87)【国際公開番号】W WO2021214781
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/014,444
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/048,135
(32)【優先日】2020-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/079,621
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/134,343
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/144,089
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.KEVLAR
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518047506
【氏名又は名称】シービックス マテリアル サイエンシーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】プレス,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】イデルソン,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ギヴァン,アリエル
(72)【発明者】
【氏名】メイア,アロン
(72)【発明者】
【氏名】ハダール,ノア
【テーマコード(参考)】
4C083
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC19
4C083CC33
4C083CC36
4C083EE12
4C083EE26
4C083EE28
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA63
4H045CA50
4H045CA51
4H045EA20
(57)【要約】
MaSp(major ampullate spidroin protein)系繊維を含む薬用化粧品組成物が開示される。さらに本組成物を含む物品が開示されている。
【選択図】図26A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子に結合した誘導体化多孔性MaSp(major ampullate spidroin protein)系繊維を含む複合体の薬用化粧品上有効量を含む薬用化粧品組成物であって、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とし、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、多孔性MaSp系繊維のチロシンに共有結合する官能部分を含み、
前記官能部分が、ポリマーおよび金属酸化物キレート基を含み、
前記金属酸化物粒子が、前記金属酸化物キレート基を介して誘導体化多孔性MaSp系繊維に結合している、
薬用化粧品組成物。
【請求項2】
美容上許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項3】
日焼け止め組成物と特徴付けられる、請求項1または2に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項4】
前記薬用化粧品上有効量が、前記組成物の中の複合体の10(w/w)%~50(w/w)%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項5】
ヘアカラー組成物と特徴付けられる、請求項2~4のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、シリカ、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子が、10~5,000nmの粒径を特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項8】
前記組成物の中の前記誘導体化多孔性MaSp系繊維の前記金属酸化物粒子に対するw/w比が、0.01~100である、請求項1~7のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリグルタルアルデヒド(PGA)を含み、前記ポリマーの前記多孔性MaSp系繊維に対するw/w比が、0.001~5である、請求項1~8のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項10】
前記官能部分が、ジアゾ結合、シリル基、またはそれらのいずれかの組み合わせを介して前記チロシンの側鎖に共有結合している、請求項1~9のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項11】
染料または顔料に結合した誘導体化多孔性MaSp系繊維の薬用化粧品上有効量を含む薬用化粧品組成物であって、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とし、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、多孔性MaSp系繊維のチロシンに共有結合する官能部分を含み、
前記官能部分が、アミノ、カルボキシ、ニトロ、スルホナート、カルボニル、エステル、無水物、カルボナートエステル、カルバメート、シアノ、ヒドロキシ、ポリマー、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、
薬用化粧品組成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、ポリアニリン、またはそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される陽イオン性ポリマーである、請求項11に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項13】
前記有効量が、20(w/w)%~99.9%である薬用化粧品組成物内の誘導体化多孔性MaSp系繊維のw/w濃度を含む、請求項11~12のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項14】
前記官能部分が、ジアゾ結合、シリル基、またはそれらのいずれかの組み合わせを介して前記チロシンの側鎖に共有結合している、請求項11~13のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項15】
前記薬用化粧品組成物が、3~7のpHを特徴とする、請求項11~14のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項16】
美容上許容される担体をさらに含み、前記組成物が、薬用化粧品組成物、ヘアカラー組成物、またはその両方である、請求項11~15のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項17】
正のゼータ電位を特徴とし、それを必要とする対象の髪への結合に適している、請求項11~16のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項18】
化粧品有効成分に結合した多孔性MaSp(major ampullate spidroin protein)系繊維を含む薬用化粧品組成物であって、前記多孔性MaSp系繊維が、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とする、薬用化粧品組成物。
【請求項19】
前記薬用化粧品組成物の中の前記化粧品有効成分のw/w濃度が、1~80%であり、前記化粧品有効成分と前記多孔性MaSp系繊維との間のw/w比が、10:1~1:10である、請求項18に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項20】
前記薬用化粧品組成物からの前記化粧品有効成分の放出速度が、対照と比較して少なくとも10%低下している、請求項18および19に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項21】
前記薬用化粧品組成物が、1~95(w/w)%の溶媒、フィルム形成剤、および増粘剤のいずれか1つをさらに含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項22】
前記薬用化粧品組成物が、25℃で50~3000cPの粘度を特徴とする、請求項21に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項23】
美容上許容される担体をさらに含み、前記組成物が、それを必要とする対象の皮膚または髪への適用のために製剤化されている、請求項18~22のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項24】
前記MaSp系繊維が、示差走査熱量測定(DSC)により決定される280℃~350℃の分解温度(T)を特徴とする、請求項1~23のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項25】
前記MaSp系繊維が、DSCにより決定される200℃~250℃のガラス転移点(T)を特徴とする、請求項1~24のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項26】
前記MaSp系繊維が、式10に記載のアミノ酸配列:(XGPGGYGPXGPXGXGGXGPGGPGX10(式中、Xは、独立して、各位置でAまたはGであり、Zは、5~30の整数であり、Xは、SまたはGであり、Xは、GまたはEであり、XはG、S、またはNであり、Xは、QまたはYであり、Xは、GまたはSであり、Xは、PまたはRであり、Xは、YまたはQであり、Xは、GまたはSであり、X10は、SまたはGである)を含む反復領域を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物。
【請求項27】
対象へのUV関連の損傷を低減または予防するための方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物の有効量を前記対象の皮膚に適用することにより、前記対象へのUV関連の損傷を低減または予防するステップを含む、方法。
【請求項28】
髪をカラーリングするための方法であって、適切な条件下で請求項12~17のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物の有効量と前記髪の少なくとも一部を接触させることにより、前記髪をカラーリングするステップを含む、方法。
【請求項29】
前記適切な条件が、9未満のpHを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
対象を化粧品有効成分で補うための方法であって、前記対象に請求項18~26のいずれか1項に記載の薬用化粧品組成物を投与することにより、前記対象を前記化粧品有効成分で補うステップを含む、方法。
【請求項31】
前記方法が、(i)前記対象の皮膚、(ii)前記対象の髪、または(i)および(ii)の両方への損傷を低減または予防するためのものであり、前記損傷が、UV照射、熱放射、環境汚染物質、酸化剤、還元剤、刺激物、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される条件への曝露に関連する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、皮膚の若返り、皮膚の保湿、皮膚のコンディショニング、しわの低減、皮膚の緩和、髪のカラーリング、および髪の成形、またはそれらのいずれかの組み合わせのためのものであり、前記方法が、前記化粧品有効成分の安定性を亢進または長期化し、亢進または長期化が、元の状態の化粧品有効成分と比較して少なくとも10%増大している、請求項30~31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、標題「ANTI-MICROBIAL COMPOSITIONS」の2020年4月23日に出願された米国特許仮出願番号第63/014,444号、標題「COSMETIC COMPOSITIONS COMPRISING DRAGLINE SPIDER SILK」の2020年7月5日に出願された同第63/048,135号、標題「COSMETIC COMPOSITIONS COMPRISING DRAGLINE SPIDER SILK」の2021年2月1日に出願された同第63/144,089号、標題「MODIFIED SPIDER SILK FIBER AND USE THEREOF」の2020年9月17日に出願された同第63/079,621号、標題「EXTRUDATE COMPOSITIONS COMPRISING DRAGLINE SPIDER SILK」の2021年1月6日に出願された同第63/134,343号の米国特許法第119(e)条の下での優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、その一部の実施形態において、MaSp(major ampullate spidroin protein)に由来するタンパク質を含む組成物、および同タンパク質の調製および抗菌物質としての使用を目的とする。
【背景技術】
【0003】
クモの綱糸(Dragline spider silk)は、落下または危険に遭遇した際の良好なライフラインとしての蜘蛛の巣のフレームおよび半径を構築するために、円網を作製するクモが使用する糸として当該分野で知られている。これらのタスクを可能にするために、綱の繊維は、高い弾性および強度の組み合わせにより著しく高い強靱性を呈しており、天然に存在するかまたはヒトにより作製されているかに関わらず、最も強靭な繊維とされている。たとえば、綱は、その直径において高張力鋼よりも強度が6倍であり、今まで作製されたうち最も強力な合成繊維のうちの1つであるKevlarより3倍強靭である。
【0004】
綱糸は、多くの場合MaSp(major ampullate spidroin)1および2と呼ばれており、またAraneus diadematusではADF-3およびADF-4と呼ばれている、2つの主要なポリペプチドからなる。これらタンパク質は、サンプルの寿命および分析の条件に応じて、200~720kDaの範囲で見かけ上の分子量を有する。知られている綱糸のスピドロインは、アラニンリッチセグメントを変更し、繊維における結晶性βシートおよびより柔軟であり順序だてられた構造を主に欠いているグリシンリッチセグメントを形成する著しく反復されたブロックから構成されている。このC末端領域は、非反復性であり、種間で著しく保存されており、αヘリックス立体構造を採用している。また、綱糸タンパク質のN末端領域は、異なるスピンドロン間で、また異なるクモ種間でも著しく保存されていることが見出された。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、金属酸化物粒子に結合した誘導体化多孔性MaSp(major ampullate spidroin protein)系繊維を含む複合体の薬用化粧品上有効量を含む薬用化粧品組成物であって、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とし、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、多孔性MaSp系繊維のチロシンに共有結合する官能部分を含み、
前記官能部分が、ポリマーおよび金属酸化物キレート基を含み、
前記金属酸化物粒子が、前記金属酸化物キレート基を介して誘導体化多孔性MaSp系繊維に結合している、
薬用化粧品組成物がある。
【0006】
一実施形態では、薬用化粧品組成物は、美容上許容される担体をさらに含む。
【0007】
一実施形態では、薬用化粧品組成物は、日焼け止め組成物と特徴付けられる。
【0008】
一実施形態では、薬用化粧上有効量は、本組成物の中の複合体の10(w/w)%~50(w/w)%である。
【0009】
一実施形態では、薬用化粧品組成物は、ヘアカラー組成物と特徴付けられる。
【0010】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、チタニア、ジルコニア、シリカ、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0011】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、10~5,000nmの粒径を特徴とする。
【0012】
一実施形態では、前記組成物の中の誘導体化多孔性MaSp系繊維の前記金属酸化物粒子に対するw/w比は、0.01~100である。
【0013】
一実施形態では、ポリマーはポリグルタルアルデヒド(PGA)を含み、前記ポリマーの前記多孔性MaSp系繊維に対するw/w比は、0.001~5である。
【0014】
一実施形態では、官能部分は、ジアゾ結合、シリル基、またはそれらのいずれかの組み合わせを介して前記チロシンの側鎖に共有結合している。
【0015】
別の態様では、染料または顔料に結合した誘導体化多孔性MaSp系繊維の薬用化粧品上有効量を含む薬用化粧品組成物であって、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とし、
前記誘導体化多孔性MaSp系繊維が、多孔性MaSp系繊維のチロシンに共有結合する官能部分を含み、
前記官能部分が、アミノ、カルボキシ、ニトロ、スルホナート、カルボニル、エステル、無水物、カルボナートエステル、カルバメート、シアノ、ヒドロキシ、ポリマー、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、
薬用化粧品組成物が存在する。
【0016】
一実施形態では、ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、ポリアニリン、またはそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される陽イオン性ポリマーである。
【0017】
一実施形態では、有効量は、20(w/w)%~99.9%である薬用化粧品組成物内の誘導体化多孔性MaSp系繊維のw/w濃度を含む。
【0018】
一実施形態では、官能部分は、ジアゾ結合、シリル基、またはそれらのいずれかの組み合わせを介して前記チロシンの側鎖に共有結合している。
【0019】
一実施形態では、薬用化粧品組成物は、3~7のpH値を特徴とする。
【0020】
一実施形態では、薬用化粧品組成物は、美容上許容される担体をさらに含み、前記組成物は、薬用化粧品組成物、ヘアカラー組成物、またはその両方である。
【0021】
一実施形態では、薬用化粧品組成物は、正のゼータ電位を特徴とし、それを必要とする対象の髪への結合に適している。
【0022】
別の態様では、化粧品有効成分に結合した多孔性MaSp(major ampullate spidroin protein)系繊維を含む薬用化粧品組成物であって、前記多孔性MaSp系繊維が、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とする、薬用化粧品組成物が存在する。
【0023】
一実施形態では、前組成物の中の前記化粧品有効成分のw/w濃度が、1~80%であり、前記化粧品有効成分と前記多孔性MaSp系繊維との間のw/w比が、10:1~1:10である。
【0024】
一実施形態では、前記薬用化粧品組成物からの前記化粧品有効成分の放出速度が、対照と比較して少なくとも10%低下している
【0025】
一実施形態では、薬用化粧品組成物は、1~95(w/w)%の溶媒、フィルム形成剤、および増粘剤のいずれか1つをさらに含む。
【0026】
一実施形態では、本組成物は、25℃で50~3000cPの粘度を特徴とする。
【0027】
一実施形態では、薬用化粧品は、美容上許容される担体を含み、前記組成物は、それを必要とする対象の皮膚または髪への適用のために製剤化されている。
【0028】
一実施形態では、MaSp系繊維は、示差走査熱量測定(DSC)により決定される280℃~350℃の分解温度(Td)を特徴とする。
【0029】
一実施形態では、MaSp系繊維は、DSCにより決定される200℃~250℃のガラス転移点(T)を特徴とする。
【0030】
一実施形態では、MaSp系繊維は、式10に記載のアミノ酸配列:(XGPGGYGPXGPXGXGGXGPGGPGX10(式中、Xは、独立して、各位置でAまたはGであり、Zは、5~30の整数であり、Xは、SまたはGであり、Xは、GまたはEであり、XはG、S、またはNであり、Xは、QまたはYであり、Xは、GまたはSであり、Xは、PまたはRであり、Xは、YまたはQであり、Xは、GまたはSであり、X10は、SまたはGである)を含む反復領域を含む。
【0031】
別の態様では、対象へのUV関連の損傷を低減または予防するための方法であって、本発明の薬用化粧品組成物の有効量を前記対象の皮膚に適用することにより、前記対象へのUV関連の損傷を低減または予防するステップを含む、方法がある。
【0032】
別の態様では、髪をカラーリングするための方法であって、適切な条件下で本発明の薬用化粧品組成物の有効量と前記髪の少なくとも一部を接触させることにより、前記髪をカラーリングするステップを含む、方法がある。
【0033】
一実施形態では、適切な条件は、9未満のpHを含む。
【0034】
別の態様では、対象を化粧品有効成分で補うための方法であって、前記対象に本発明の薬用化粧品組成物を投与することにより、前記対象を前記化粧品有効成分で補うステップを含む、方法がある。
【0035】
一実施形態では、本方法は、(i)前記対象の皮膚、(ii)前記対象の髪、または(i)および(ii)の両方への損傷を低減または予防するためのものであり、前記損傷は、UV照射、熱放射、環境汚染物質、酸化剤、還元剤、刺激物、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される条件への曝露に関連する。
【0036】
一実施形態では、本方法は、皮膚の若返り、皮膚の保湿、皮膚のコンディショニング、しわの低減、皮膚の緩和、髪のカラーリング、および髪の成形、またはそれらのいずれかの組み合わせのためのものであり、前記方法は、前記化粧品有効成分の安定性を亢進または長期化し、亢進または長期化は、元の状態の化粧品有効成分と比較して少なくとも10%増大している。
【0037】
他の意味が定義されない限り、本明細書中使用される全ての技術用語および/または化学用語は、本発明が関連する当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書中記載されるものと同様または同等の方法および材料が本発明の実施形態の実務または試験で使用され得るが、例示的な方法および/または材料を後述する。矛盾が起きる場合、定義を含む本明細書が統制する。さらに、材料、方法、および実施例は単なる例であり、必ずしも限定するように意図されてはいない。
【0038】
本発明のさらなる実施形態および利用可能性の完全な範囲は、本明細書中以降で提供される詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を表すが、本発明の趣旨および範囲の中での様々な変更および修正が詳細な説明から当業者に明らかとなるため、単なる例として提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A-B】図1A~Bは、1~10(w/w)%のアミノ化MaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な髪組成物で処置した健常なヒトの髪(図1A)対損傷したヒトの髪(図1B)のSEM画像である。アミノ化MaSp系繊維(SVX)は、好ましくはヒトの髪の損傷した領域に結合し、ほぼ完全な被覆をもたらす(図1B)。
図2図2は、未処置の髪(非保護)および担体(製剤(SVXなし):Formula w/oSVX)により処置した髪と比較した、1~10(w/w)%のアミノ化MaSp系繊維を含む本発明の例示的な髪組成物(製剤(SVXあり):Formula with SVX)で処置したヒトの髪の引っ張り強さに及ぼす熱曝露の作用を表す棒グラフである。この結果は、対照と比較して、220℃で200サイクルの熱処理後の、本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪の優れた引っ張り強さを示している。
図3図3は、未処置の髪と比較した、1~10(w/w)%のアミノ化SVX繊維を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪の水分含有量に及ぼす熱曝露の作用を表す棒グラフである。この結果は、対照と比較して、220℃で200サイクルの熱処理後の、本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪の優れた水分保持を示している。
図4図4は、海水または塩素水に曝露した後の、未処置の髪と比較した、1~10(w/w)%のアミノ化SVX繊維を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪の引っ張り強さを表す棒グラフである。この結果は、3日間海/プールへ曝露した後の本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪の対照と比較し優れた引っ張り強さを示している。
図5A-B】図5A~Bは、環境汚染物質(たとえばカーボンブラック)への曝露の後の、1~10(w/w)%のアミノ化SVX繊維を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪(3、6、9)vs未処置の髪(1、4、7)および担体で処置した髪(2、5、8)の汚染忌避作用(pollution repellent effect)を表す棒グラフ(図5B)および画像(図5A)である。この結果は、本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪の対照と比較して優れた汚染忌避作用を示している。
図6A-B】図6A~Bは、海水(図6B)または塩素水(図6A)に曝露した後の、1~10(w/w)%のアミノ化SVX繊維を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪vs未処置の髪の色の保持を表す棒グラフである。本発明の組成物により処置した髪サンプルは、最小限の退色のみを示し、対して対照ではほぼ5倍の退色が示された。
図7図7は、7日間のUV照射への曝露後の、1~10(w/w)%のアミノ化SVX繊維を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪vs未処置の髪の色の保持を表す画像である。SVXは、UV光およびフリーラジカル(UV照射由来)に対する保護を提供する。0日目は、UV光に曝露されていない色の付いた髪である。
図8図8は、5(w/w)%のアミノ化SVX繊維を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪vs未処置の髪の縮毛矯正作用を表す画像である。縮毛のSVXコーティングは、さらなる熱および化学処理を必要としない場合であっても縮毛矯正作用を示している。
図9図9は、約0.5(w/w)%のアミノ化SVX繊維を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪vs市販の組成物(Croda MFP, Croda CP, PVP, RevCare)で処置したヒトの髪のカール作用を表す棒グラフである。未処置の髪は、陰性対照として使用した。グラフに表されるように、本発明の髪組成物は、市販の組成物および未処置の対照と比較して増大した経時的な髪のカールの保持を特徴とする。
図10図10は、約0.5(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な髪組成物で処置したヒトの髪vs未処置の髪のカール作用を表す画像である。SVXでの縮毛のコーティングは、さらなる熱処理を必要としない場合であってもカールのデザインを高める。
図11図11は、酸化剤(H2O2)に曝露した後の、市販の製剤と比較した約0.5(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な組成物の中にカプセル化されたレチノールの化学的安定性を表すグラフである。SVXによりカプセル化されたレチノールは、対照と比較してより安定であり、酸化剤に耐性がある。
図12図12は、UV照射への曝露後の、市販の製剤と比較した約0.5(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な組成物の中にカプセル化されたレチノールの化学的安定性を表すグラフである。SVXによりカプセル化されたレチノールは、対照と比較してより安定であり、UV照射に耐性がある。
図13図13は、市販のレチノール製剤と比較した、約1(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な組成物の中にカプセル化されたレチノールの皮膚保持時間を表すグラフである。SVXによりカプセル化されたレチノールは、保護されていないレチノールと比較してより安定し続けていた。
図14A-B】図14A~Bは、未処置の皮膚(図14A)と比較した、約10(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)およびフィルム形成剤を含む本発明の例示的な組成物で処置した皮膚(図14B)の皮膚のしわの低減を表す画像である。
図15A-C】図15A~Cは、未処置の皮膚(図15A)と比較した、15分後(図15B)および60分後(図15C)の約10(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)およびフィルム形成剤を含む本発明の例示的な組成物で処置した皮膚の、皮膚のしわの低減を表す深度図である。
図16図16は、未処置の対照と比較した、約1(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な組成物で処置した皮膚モデルの汚染物質保護を表す。A:100mgの製剤(SVXを含む製剤および含まない製剤)を、ポリウレタンの皮膚モデル上に均質に広げた;B:3mg/cmの炭素粒子を表面に適用した。汚染物質粒子は、SVXへの接着が少ない;C 表面を流水下で5回洗浄した後、徹底的な洗浄サイクルおよび穏やかなこすり洗い(scrubbing)を行った。
図17図17は、未処置の皮膚(w/o SVX)と比較した、経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定により分析した約1(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な組成物で処置した皮膚の、皮膚の水分保持を表すグラフである。TEWL分析は、皮膚にSVXを含むデモ製剤の薄層を適用することが、経表皮水分蒸散量を予防し得、乾燥し、鱗状であり、光沢のない皮膚の外観および/または存在の低減を支援することを示している。
図18A-B】図18A~Bは、未処置の皮膚と比較した、約1(w/w)%の元の状態のMaSp系繊維(SVX)を含む本発明の例示的な組成物で処置した皮膚での様々な刺激物の適用により行われる刺激試験を表す画像である。
図19A-D】図19A~Dは、MaSp系繊維(SVX)のSEM画像である。図19Aおよび19Bは、多孔性繊維の画像を表す。図19Cおよび19Dは、非多孔性粒子の画像を表す。
図20図20は、セルロースおよびsilkと比較した、SVX-E繊維からのヒアルロン酸(HA)の放出を表すグラフである。このグラフは、HAに特異的なピークおよびSVX-E/silk/セルロースに特異的なピーク(Y軸)対洗浄回数(X軸)を示している。
図21A-C】図21A~Cは、テープストリップ試験により決定される、対照と比較したSVX-E繊維からの酸の放出を表すグラフである。図21Aは、乳酸(LA)の放出を表す。図21Bは、グリコール酸(GA)の放出を表す。図21Cは、ヒアルロン酸(HA)の放出を表す。
図22A-B】図22A~Bは、対照と比較した、SVX-E繊維からの酢酸レチニル(RA)およびグリセロールの放出を表すグラフである。
図23図23は、アミノ化MaSp系繊維(Amine)、カルボキシル化MaSp系繊維(Acid)、PAA改変アミノ化MaSp系繊維(PAA)、PEI改変カルボキシル化MaSp系繊維(PEI)、および元の状態のMaSp系繊維(SVXE)のゼータ電位を表すグラフである。
図24A-B】図24A~Bは、ポリアクリレート(図24A)またはポリグルタルアルデヒド(図24B)とコンジュゲートした多孔性MaSp系繊維のSEM画像である。
図25A-B】図25A~Bは、pH=3~5の酸性条件下(図25A)およびpH=10.5の塩基性条件下(図25B)でのヒトの髪へ適用したPEI改変多孔性MaSp系繊維のSEM画像である。
図26図26A~Bは、pH=3.5の酸性条件下でヒトの髪に適用したアミノ化(4-(2-アミノエチル)アニリン(APEA)を介する)MaSp系繊維のSEM画像(異なる倍率)である。
図27A-B】図27A~Bは、pH=3.5の酸性条件下でヒトの髪に適用したアミノ化(3-アミノプロピル(amonipropyl)トリエトキシシラン(APTES)を介する)MaSp系繊維のSEM画像(異なる倍率)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、その一部の実施形態において、染料または顔料に結合した化学的に改変したMaSp系繊維を含むヘアカラー組成物に関する。本明細書中以下に示されるように、本発明者らは、様々な誘導体化多孔性MaSp系繊維を含むヘアカラー組成物の実施に成功した。これらはヘアカラー組成物の一部は、髪(たとえばヒトの髪)とヘアカラー組成物を接触させた後に、均一で安定した髪のコーティングをもたらした。髪のコーティングの実施が成功した例示的なヘアカラー組成物として、限定するものではないが、アミノ化MaSp系繊維(たとえば4-(2アミノエチル)アニリン、3-アミノプロピル(amonipropyl)トリエトキシシランおよび/またはポリエチレンイミン、PEIにより化学的に改変されたMaSp系繊維)が挙げられる。
【0041】
本発明は、その一部の実施形態において、化学的に改変されたMaSp系繊維により錯体形成した金属酸化物(たとえばチタニア)ナノ粒子を含む日焼け止め組成物に関する。例示的な日焼け止め組成物として、限定するものではないが、ポリグルタルアルデヒド(PGA)などのポリマーに共有結合したサリチル酸により化学的に改変したMaSp系繊維に結合したチタニアナノ粒子が挙げられる。PGA誘導体化MaSp系繊維に結合したサリチル酸塩により錯体形成した二酸化チタンナノ粒子の分散は、元の状態のMaSp系繊維と比較して優れた日焼け止め作用を呈する。
【0042】
本発明は、その一部の実施形態において、ヒアルロン酸(HA)、酢酸レチニル(RA)などの化粧品有効成分に結合した非誘導体化MaSp系繊維を含む薬用化粧品組成物に関する。本発明の例示的な薬用化粧品組成物は、silkおよびセルロースの繊維からの迅速な放出と比較して、薬用化粧品組成物からのHAおよびRAのゆっくりとした放出を呈した。さらに、本発明の例示的な薬用化粧品組成物は、皮膚の表面への様々な美容成分の保持時間の長期化を可能にし、美容成分の生物学的な安定性を改善する。
【0043】
一態様では、本発明は、多孔性MaSp系繊維のアミノ酸に共有結合する官能部分を含む、誘導体化多孔性MaSp(major ampullate spidroin protein)系繊維を提供する。一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、本明細書中後述される通りである。
【0044】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、多孔性MaSp系繊維のアミノ酸の側鎖に共有結合した官能部分を含み、多孔性MaSp系繊維は、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とする。
【0045】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、多孔性MaSp系繊維のアミノ酸の側鎖に共有結合した官能部分を含み、多孔性MaSp系繊維は、(i)少なくとも10m/gのBET表面積;(ii)280~350℃の分解温度;(iii)200~250℃のガラス転移点、および(iv)各反復領域が独立して以下の式10に記載のアミノ酸配列を含む反復領域を含むアミノ酸配列、または(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の組み合わせのうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0046】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、多孔性MaSp系繊維のアミノ酸の側鎖に共有結合した官能部分を含み、多孔性MaSp系繊維は、各反復領域が独立して以下の式10に記載のアミノ酸配列を含む反復領域を含み、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、(i)少なくとも10m/gのBET表面積;(ii)280~350℃の分解温度;(iii)200~250℃のガラス転移点、または(i)、(ii)、および(iii)の組み合わせのうちの少なくとも1つを特徴とする。一部の実施形態では、用語「多孔性MaSp系繊維」および「MaSp系繊維」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0047】
一部の実施形態では、官能部分は、多孔性MaSp系繊維のアミノ酸に共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、チロシン、セリン、システインおよびリジン、スレオニン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸に共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、チロシン、セリン、システインおよびリジン、スレオニン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸の側鎖に共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、チロシン、セリン、システインおよびリジン、またはそれらのいずれかの組み合わせのうちのいずれかの側鎖に共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、チロシンの側鎖(たとえばフェノール環)に共有結合している。
【0048】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、ジアゾ結合、シリル基、またはその両方を介して少なくとも1つのチロシンの側鎖に共有結合した官能部分を含む。一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、ジアゾ化チロシン、シリル化チロシン、またはその両方を含む。一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維の中のチロシン残基(または側鎖)の1~99%、10~99%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)が、ジアゾ化および/またはシリル化されている。
【0049】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中「ジアゾ化チロシン」とも呼ばれる、ジアゾ結合を介した少なくとも1つのチロシンの側鎖に共有結合した官能部分を含む。一部の実施形態では、ジアゾ化チロシンは、ジアゾ結合:
【化1】
を介してチロシンのフェニル環に共有結合した官能部分を含む。
【0050】
一部の実施形態では、官能部分は、ジアゾ、シリル、カルボニル、アミド、エステル、マレイミド、またはそれらのいずれかの組み合わせのうちのいずれか1つを介して多孔性MaSp系繊維に共有結合している。
【0051】
一部の実施形態では、官能部分は、多孔性MaSp系繊維の少なくとも1つのチロシン残基で共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、ジアゾ、シリル、エステル、カルバメート、カルボニル、(O-またはS)-チオカルバメート、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される結合を介して少なくとも1つのチロシン残基に共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、ジアゾ結合を介して少なくとも1つのチロシン残基に共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、(i)チロシンのフェノール環とのジアゾ結合(たとえばアルキルジアゾニウム基またはアリールジアゾニウム基)および/または(ii)チロシンのフェノール環とのSi-C(たとえばアルコキシシリルまたはハロシリル)を形成できるいずれかの反応基を含むリンカーを介して少なくとも1つのチロシン残基に共有結合している。
【0052】
一部の実施形態では、本組成物は、MaSp系繊維に吸着した官能部分および/またはポリマーを実質的に欠いている。
【0053】
一部の実施形態では、ジアゾ結合を介してMaSp系繊維に共有結合した官能部分を含む本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維が、式Iにより提示される:
【化2】
(式中、
【化3】
は、MaSp系繊維を表し、Aは、置換されているかまたは置換されていないアリール(たとえばフェニル、または二環系/縮合した芳香環、たとえばナフタレン)、ヘテロアリール(たとえばO、N、およびSから選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含むC5-6芳香環)、およびアルキル(たとえばC1-10の直鎖状または分枝状アルキル)から選択され、Rは、本発明の官能部分であるかまたはこれを含み、波線は、本明細書中記載されるリンカー(またはスペーサー)を表す)。
【0054】
一部の実施形態では、シリル基を介してMaSp系繊維に共有結合した官能部分を含む本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維が、式2により提示される:
【化4】
(式中、波線およびRは、本明細書中記載される通りであり、各Rは、独立して、水素、任意選択で置換されてよいアルキル(たとえばC1-10の直鎖状または分枝状アルキル)、ヒドロキシ、またはアルコキシ(たとえばC1-10アルコキシ)のうちのいずれか1つを含む)。
【0055】
一部の実施形態では、本発明の官能部分は、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシレート基、ニトロ、スルホナート、カルボニル、無水物、カルボナートエステル、カルバメート、ニトリル基、およびポリマーまたはそれらのいずれかの組み合わせのうちのいずれか1つを含む。一部の実施形態では、官能部分は、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシレート基、およびポリマーまたはそれらのいずれかの組み合わせを含む。一部の実施形態では、官能部分は、直鎖状または分枝状リンカーを介して多孔性MaSp系繊維のアミノ酸に共有結合している。一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維の誘導体化されたアミノ酸は、それに共有結合した1つ以上の官能部分を含む。
【0056】
一部の実施形態では、本発明の官能部分は、ジアゾアリールを介してチロシン残基に結合している。一部の実施形態では、本発明の官能部分は、リンカーを介してジアゾアリールに結合している。一部の実施形態では、用語「リンカー」および用語「スペーサー」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0057】
一部の実施形態では、官能部分(またはR)は、求電子性および/または求核性の基を含む。多くの求電子剤および求核剤が当該分野でよく知られている。
【0058】
求電子性反応基の非限定的な例として、限定するものではないが、いずれかのアルキルおよび/またはアリール誘導体(たとえばカルボキシアルキル、カルボキシアリール、アルキルカルボニル、ハロアルキル、ハロアリールなど)を含む、アルデヒド、ケトン、カルボキシ、エステル、イミン、オキシム、アシルハロゲン化物、活性エステル(たとえばN-ヒドロキシサクシニミド)、クロロホルマート、無水物、エポキシド、イソシアナート、ニトロ、スルホナート、トリアルキルアンモニウム、およびハロ、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0059】
求核性反応基の非限定的な例として、限定するものではないが、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、ホスフィン、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0060】
一部の実施形態では、官能部分は、複数の求電子性および/または求核性の基を含む。一部の実施形態では、官能部分は、ポリアミン(たとえば直鎖状ポリアミン、たとえばスペルミンもしくはスペルミジン;または分枝状ポリアミン、たとえばトリス(2-アミノエチル)アミン)を含む。一部の実施形態では、官能部分は、ポリオール(たとえばペンタエリスリトール、キシリトール)を含む。一部の実施形態では、官能部分は、ジまたはトリカルボン酸(たとえばクエン酸、リンゴ酸、コハク酸)を含む。
【0061】
一部の実施形態では、官能部分(またはR)は、アルキル(たとえばC1-10の直鎖状または分枝状アルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル)、C1-10アルコキシ(たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、オシルオキシ)、ビニル基(たとえばビニルオキシ)、C1-10アルキルアミノ(たとえばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ)、(たとえばFmoc、Boc、ベンジル、CBzなどから選択されるアミン保護基により)保護されたアミン、(任意選択でtert-ブチルまたはトリメチルシリルなどのヒドロキシ保護基により保護された)ヒドロキシ、(任意選択でチオール保護基により保護された)メルカプト、シリル、シロキサン(たとえばトリアルコキシシラン)、ニトロ、スルホナート、シアノ、ハロ、トリアルキルアンモニウム、アルデヒド、ケトンケトン、カルボキシ、エステル、イミン、オキシム、アシルハロゲン化物、活性エステル(たとえばN-ヒドロキシサクシニミド)、クロロホルマート、無水物、エポキシド、イソシアナート、またはそれらのいずれかの組み合わせのうちのいずれか1つを含む。
【0062】
一部の実施形態では、リンカー(またはスペーサー)は、カルボキシ、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シクロアルキル、アルキル、ニトロ、スルホナート、シアノ、またはそれらのいずれかの組み合わせもしくは誘導体のいずれか1つにより任意選択で置換されてよいアルキルを含む。一部の実施形態では、リンカーは、任意選択で置換されてよいアルコキシ、チオアルキル、アミノアルキル、グリコール、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。一部の実施形態では、そのいずれかの誘導体を含むアルキルが、本明細書中後述されている。一部の実施形態では、リンカーは、二置換アルキル(たとえばアミノヘキサン酸)、または二置換ヘテロアルキル基を含む。一部の実施形態では、リンカーは、C1-C10アルキル、C1-C10アミノアルキル、C1-C10アルコキシ、C1-C10メルカプトアルキル、カルボニル誘導体(たとえば-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NH)NH-、-C(NH)O-、-C(NH)S-)を含み、任意選択で、リンカーの骨格の中に1つ以上のヘテロ原子(たとえばS、N、O)、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0063】
一部の実施形態では、リンカー(またはスペーサー)は、それらのいずれかの誘導体または組み合わせを含む)天然および/または非天然のアミノ酸、アルキル、アミド結合、エステル結合、およびチオエステル結合、尿素結合を含む。一部の実施形態では、本発明のリンカーは、クリック反応生成物(環化反応などの共有結合の生成物、および/またはクリック反応を介して形成されるサクシニミド-チオエーテル部分)を含む。さらなるリンカーまたはスペーサーは、当該分野でよく知られている。
【0064】
クリック反応は、当該分野でよく知られており、特に、マレイミドおよびチオールのマイケル付加(サクシニミド-チオエーテルの付加をもたらす);アジドアルキンシクロ付加;ディールス・アルダー反応(たとえば直接的および/または逆電子要請型Diels Alder);ジベンジルシクロオクチン1,3-ニトロン(またはアジド)シクロの付加;アルケンテトラゾールのphotoclick反応などを含む。
【0065】
用語「ヘテロアルキル」は、本明細書中使用される場合、構成要素の炭素原子の1つ以上が窒素、酸素、または硫黄により置き換えられている、本明細書中定義されるアルキル基を表す。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、アルコキシ基で本明細書中記載の1、2、3、または4つの置換基とさらに置換され得る。ヘテロアルキル基の例は、ポリグリコールまたはポリアルコキシレート、たとえばポリエチレングリコールである。
【0066】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下のように表される通りである:
【化5】
(式中、
波線はリンカーを表し、リンカーは本明細書中記載される通りである)。一部の実施形態では、Rは、本明細書中記載される通りである。一部の実施形態では、リンカーは、任意選択で置換されてよいC1-6またはC1-10アルキルであるかまたはこれを含む。一部の実施形態では、Rは、アミノ、ハロ、ニトロ、カルボニル、エステル、またはカルボキシを含む。
【0067】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下のように表される通りである:
【化6】
(式中、
Rは、本明細書中記載される通りであり;n、m、およびoは、それぞれが独立して0~20である整数であり、各R2は、独立して、H、またはハロゲン、-NO、-CN、-OH、-CONH、-CONR、-CNNR、-CSNR、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR、-NC(=S)OR、-NC(=S)NR、-SOR、-SOR、-SR、-SOOR、-SON(R)、-NHNR、-NNR、C-Cハロアルキル、任意選択で置換されてよいC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-CアルキルNR、C-CアルキルSR、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、COH、COR、-OCOR、-OCOR、-OC(=O)OR、-OC(=O)NR、-OC(=S)OR、-OC(=S)NR、もしくはそれらの組み合わせから選択される置換基であるかまたはこれを含み;X1は、ヘテロ原子(たとえばO、S、N、NH)であるかまたは存在しない)。一部の実施形態では、n、m、およびoは、それぞれ独立して、0、または0~20、1~20、1~3、3~5、5~7、7~10、10~15、15~20(それらの間のいずれかの範囲を含む)である整数である。一部の実施形態では、Rは、アミノ、カルボキシ、
【化7】
、またはそれらの組み合わせであるかまたはこれを含み、X1は、本明細書中記載される通りであり、R3は、H、任意選択で置換されてよいC-C10アルキル、任意選択で置換されてよいアリール、任意選択で置換されてよいヘテロアリール、またはそれらのいずれかの組み合わせであるかまたはこれを含む。一部の実施形態では、X1は、NまたはNHであるかまたはこれを含む。一部の実施形態では、R2は、H、または任意選択で置換されてよいC1-C6アルキルであるかまたはこれを含む。
【0068】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化8】
(式中、
n、R2、およびR3は、本明細書中記載される通りである)。
【0069】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化9】
(式中、各R2およびnは、本明細書中上述される通りである)。
【0070】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化10】
(式中、Rおよびnは、本明細書中記載される通りであり、各Rは、独立して、水素、アルキル(たとえばC-CアルキルまたはC-C10アルキル)、ヒドロキシ、またはC-C10アルコキシ(たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ペントキシなど)のいずれか1つを含む)。
【0071】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化11】
(式中、R1、n、R3、およびR2は、本明細書中記載される通りである)。
【0072】
一部の実施形態では、官能部分は、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはそれらのいずれかの組み合わせのいずれか1つに共有結合している。当業者は、官能部分が、アミノ-、ヒドロキシ-、またはメルカプト-置換型リンカーを介してカルボキシの側鎖に共有結合し得ることを理解している。
【0073】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化12】
(式中、Xは、O、S、およびNから選択される側鎖のヘテロ原子を表し、Rは、本明細書中上述される通りである)。一部の実施形態では、Xは、MaSp系繊維のアミノ酸のいずれか1つのヘテロ原子を表す。
【0074】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化13】
(式中、Xは、MaSp系繊維のアミノ酸のいずれか1つの側鎖のヘテロ原子を表し、
【化14】
は、MaSp系繊維のアミノ酸に対する結合点を表し、波線の結合はリンカーを表し、Rは、本明細書中記載される通りである)。一部の実施形態では、Rは、アミノ、ハロ、ニトロ、カルボニル、エステル、またはカルボキシを含む。
【0075】
一部の実施形態では、官能部分は、MaSp系繊維の少なくとも1つのチロシン残基のヒドロキシ基に共有結合している。
【0076】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化15】
(式中、Xは、本明細書中記載される通りである)。
【0077】
一部の実施形態では、官能部分は、シリル結合を介してMaSp系繊維の少なくとも1つのアミノ酸に共有結合している。一部の実施形態では、アミノ酸は、求核性アミノ酸(たとえばセリン、システイン、スレオニン、およびリジン)である。一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化16】
(式中、Xは、MaSp系繊維のアミノ酸のいずれか1つの側鎖のヘテロ原子(たとえばS、NH、またはO)を表し、
【化17】
は、MaSp系繊維に対する結合点を表し、波線の結合は、リンカーを表し、Rは、本明細書中記載される通りであり、各Rは、独立して、水素、アルキル、ヒドロキシ、またはアルコキシのいずれか1つを含む)。
【0078】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化18】
(式中、Xは、MaSp系繊維のアミノ酸のいずれか1つの側鎖のヘテロ原子を表し、
【化19】
は、MaSp系繊維に対する結合点を表す)。一部の実施形態では、Xは、システインおよび/またはチロシンの側鎖のヘテロ原子を表す。
【0079】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下に表される通りである:
【化20】
(式中Xは、O、S、およびNから選択されるヘテロ原子を表し、Rは、本明細書中上述される通りである)。
【0080】
一部の実施形態では、官能部分は、セリン、システイン、スレオニン、およびリジンから選択される少なくとも1つの求核性アミノ酸を介してMaSp系繊維に共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、シリル、エステル、カルバメート、カルボニル、(O-またはS)-チオカルバメート、またはそれらの組み合わせから選択される結合を介してMaSp系繊維の求核性アミノ酸に共有結合している。
【0081】
一部の実施形態では、官能部分は、MaSp系繊維に反応性を提供する。当業者は、アミンなどの官能部分が求電子剤(たとえばハロアルキルまたはエステル)と反応し得ることを理解している。よって、官能部分をMaSp系繊維に導入することにより、その後MaSp系繊維は、官能部分に対する反応性を有するいずれかの試薬(たとえば小分子またはポリマー)と反応し得る。一部の実施形態では、官能部分は、MaSp系繊維の反応性を誘導または増大する。一部の実施形態では、官能部分は、それと反応できるいずれかの試薬に対するMaSp系繊維の反応性を誘導または増大する。
【0082】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、ポリマーに共有結合した官能部分(たとえばアミノまたはカルボキシ)を含む。一部の実施形態では、ポリマーは、官能部分に対する反応性を有する官能基を介して官能部分に共有結合する(たとえば官能部分はカルボキシであるかもしくはこれを含み、ポリマーの官能基は、アミノ、メルカプト、もしくはヒドロキシであるか、または官能部分はアミノであるかまたはこれを含み、ポリマーの官能基は、ハロ、カルボニル、またはカルボキシである)。当業者は、(たとえばクリック反応を介して)本発明の官能部分へのポリマーの共有結合に利用され得るさらなるよく知られた反応基が存在することを理解している。一部の実施形態では、ポリマーは、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NH)NH-、-C(NH)O-、-C(NH)S-、-NC(O)-、-N(C)-、またはそれらの組み合わせのいずれかを介して官能部分に共有結合している。
【0083】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維の官能部分は、ポリマーに共有結合している。一部の実施形態では、ポリマーは、正および/または負に荷電している。一部の実施形態では、ポリマーは中性である。
【0084】
一部の実施形態では、ポリマーは、陽イオン性ポリマー(たとえばPEI、ポリリジン、ポリアルギニン、キトサン)(それらのいずれかの誘導体および/もしくはコポリマーを含む)、陰イオン性ポリマー(たとえばPAA)、ならびに/または非イオン性ポリマー(たとえばPVA、PVC、シラン、ポリアミド)などから選択される。他の陽イオン性ポリマー、陰イオン性ポリマー、および/または非イオン性ポリマーは、当該分野でよく知られている。
【0085】
一部の実施形態では、ポリマーは、ポリグルタルアルデヒド(PGA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリアニリン、ポリウレタン、ポリアミド(たとえばナイロン)、ポリビニルクロリド、ポリシラン、キトサン、N-ハラミンポリマー、N-ハラミドポリマー、ポリシランコ-ポリオレフィン、シランが架橋したポリオレフィン、およびポリビニルピロリドン(PVP)(それらのいずれかの組み合わせまたはコポリマーを含む)からなる群から選択される。一部の実施形態では、ポリマーは、直鎖状ポリマーである。一部の実施形態では、ポリマーは、分枝状ポリマーである。一部の実施形態では、ポリマーは、コポリマーである。一部の実施形態では、ポリマーは、グラフトコポリマーである。
【0086】
一部の実施形態では、ポリマーは、誘導体化多孔性MaSp系繊維の求核性官能基または求電子性官能基に共有結合している。当業者は、アミノ化MaSp系繊維が、ポリマー(たとえばPAA)のカルボキシ基またはポリマー(たとえばPGA)のカルボニル基と反応して、ポリマーに共有結合した誘導体化MaSp系繊維を得ることができることを理解している。さらに、カルボキシル化MaSp系繊維は、ポリマー(たとえばPET)のアミノ基またはポリマー(たとえばPVA)のヒドロキシ基と反応し得る。本発明者らは、様々なポリマー、たとえばPGA、PAA、PVA、PEI、PAAm、またはそれらの組み合わせ(PGA-コ-PEIなど)と、(たとえば上述のようにジアゾ結合またはシリル基を介してMaSp系繊維のチロシンに結合した官能基を含む)誘導体化MaSp系繊維のコンジュゲートの合成に成功した。さらに本発明者らは、変異体アミノ酸配列を有するMaSp系タンパク質(本明細書中「変異体MaSp系タンパク質」としても使用される)を使用して上述のコンジュゲートの合成に成功した。
【0087】
本発明者らは、式3により表されるアミノ化MaSp系繊維にin situでの重合を介してPAAmで改変された誘導体化MaSp系繊維の合成に成功した:
【化21】
一部の実施形態では、PAAmで改変した誘導体化MaSp系繊維は、以下に表される通りである:
【化22】
(式中、各nは、独立して、0~10、0~20、1~20、1~3、3~5、5~7、7~10、10~15、15~20(それらの間のいずれかの範囲を含む)である)。一部の実施形態では、mは、1~10000、1~10、10~100、100~1000、1000~10000(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0088】
一部の実施形態では、MaSp系繊維およびポリマーの間のw/w比は、0.01:1~1:1、0.02:1~1:1、0.05:1~1:1、0.09:1~1:1、0.1:1~1:1、0.5:1~1:1、または0.9:1~1:1(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0089】
一部の実施形態では、MaSp系繊維およびポリマーの間のw/w比は、100:1~1:100、95:1~1:100、80:1~1:100、60:1~1:100、50:1~1:100、30:1~1:100、20:1~1:100、10:1~1:100、9:1~1:100、5:1~1:100、2:1~1:100、100:1~1:80、95:1~1:80、80:1~1:80、60:1~1:80、50:1~1:80、30:1~1:80、20:1~1:80、10:1~1:80、9:1~1:80、5:1~1:80、2:1~1:80、100:1~1:50、95:1~1:50、80:1~1:50、60:1~1:50、50:1~1:50、30:1~1:50、20:1~1:50、10:1~1:50、9:1~1:50、5:1~1:50、2:1~1:50、100:1~1:10、95:1~1:10、80:1~1:10、60:1~1:10、50:1~1:10、30:1~1:10、20:1~1:10、10:1~1:10、9:1~1:10、5:1~1:10、または2:1~1:10(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0090】
一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維の官能基は、複数の反応基を含むポリマーに結合している。一部の実施形態では、求核性基(たとえばアミノ、ヒドロキシ、チオール)、求電子性基(たとえばカルボニル、カルボキシ、エステル、サクシニミドエステル、ハロ、ニトロ、およびアジド)、またはその両方を含む。一部の実施形態では、ポリアルデヒド系ポリマー(たとえばポリグルタルアルデヒド)に結合したMaSp系繊維は、式4により表されている:
【化23】
(式中、破線は、任意選択の結合を表し、mおよびnは整数である)。一部の実施形態では、各nは、独立して、0~10、0~20、1~20、1~3、3~5、5~7、7~10、10~15、15~20(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。一部の実施形態では、mは、1~10000、1~10、10~100、100~1000、1000~10000(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0091】
一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、複数のキレート剤を含むポリマーに結合している。一部の実施形態では、キレート剤は、(i)金属またはその塩に結合できる金属キレート基、(ii)金属酸化物キレート基、または(i)および(ii)の両方を含む。
【0092】
一部の実施形態では、金属キレート基は、金属またはその塩と(配位結合を介して)錯体形成できる。
【0093】
一部の実施形態では、金属またはその塩は、遷移金属を含む。繊維金属の非限定的な例として、限定するものではないが、金(Au)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ハフニウム(Hf)、スズ(Sn)、ガリウム(Ga)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、ゲルマニウム(Ge)、およびニオブ(Nb)、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0094】
一部の実施形態では、金属キレート基は、チオール、アミン、フェノール、カルボキシ(それらのいずれかの誘導体を含む)を含む。一部の実施形態では、金属キレート基は、クラウンエーテルを含む。一部の実施形態では、金属キレート基は、金属またはその塩との錯体形成のために構成される複数のカルボキシ基および/またはヒドロキシ基を含む環状分子である。一部の実施形態では、DOTA、NOTA、NODA、EDTA、HBED-CC(それらのいずれかの塩、誘導体、または組み合わせを含む)を含む金属キレート基が、当該分野でよく知られている。一部の実施形態では、金属キレート基は、イミノ二酢酸(IDA)、その塩、または誘導体を含む。
【0095】
一部の実施形態では、複数の金属キレート基を含むポリマーが、本明細書中以下に表される:
【化24】
(式中、CMは、キレート剤を表し、kは、10~10000、10~100、100~1000、100~10000(その間のいずれかの範囲を含む)であり;mは、0~10、0~3、3~5、5~10(その間のいずれかの範囲を含む)であり、各nは、独立して、0~10、0~20、1~20、1~3、3~5、5~7、7~10、10~15、15~20(それらの間のいずれかの範囲を含む)である整数を表す)。
【0096】
別の態様では、誘導体化MaSp系繊維は、金属酸化物キレート基に結合した官能部分(たとえばポリマー)を含み、この官能部分は、本明細書中記載される通りである。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、金属酸化物またはそれを含む粒子に対する親和性を有する。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、金属酸化物またはそれを含む粒子と(たとえば配位結合を介して)錯体形成できる。一部の実施形態では、金属酸化物粒子は、本明細書中記載される通りである。
【0097】
一部の実施形態では、用語「~を錯体形成する」は、金属および/または金属酸化物(それらを含むいずれかの粒子を含む)の安定した(たとえば化学的に安定した)錯体形成を表す。一部の実施形態では、安定した錯体形成は、溶媒(たとえば有機溶媒、水性溶媒など)への曝露または少なくとも1カ月(m)、少なくとも2m、少なくとも6m、少なくとも12m、少なくとも2年(y)、少なくとも3y、少なくとも10y(それらの間のいずれかの範囲を含む)の期間の間の大気条件下での保存の後に、最初の金属含有量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも95%、少なくとも99%を保持する、金属に結合した誘導体化MaSp系繊維(本明細書中「複合体」または「安定した複合体」とも呼ばれる)の特性を表す。
【0098】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化繊維の中の官能部分の多孔性MaSp系繊維に対する重量/重量(w/w)比は、0.01~30%、0.01~0.1%、0.1~0.5%、0.5~1%、1~5%、5~10%、10~20%、20~30%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0099】
一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維の中の官能部分の充填は、0.01μmol/g~10mmol/g、0.01μmol/g~0.1μmol/g、0.1μmol/g~0.5μmol/g、0.5μmol/g~1μmol/g、1μmol/g~10μmol/g、10μmol/g~30μmol/g、30μmol/g~50μmol/g、50μmol/g~100μmol/g、100μmol/g~500μmol/g、0.5~1mmol/g、1~5mmol/g、5~10mmol/g(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0100】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化MaSp系繊維の中のチロシン残基の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%(それらの間のいずれかの範囲を含む)が、本明細書中記載される通りである官能部分で置換される。一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維の中のチロシン残基の置換の度合いは、1~99%、1~5%、5~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~99%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0101】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化MaSp系繊維は、誘導体化MaSp系の中のチロシン残基(または側鎖)の置換の度合いが、1~90%、1~99%、10~99%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)であるように、少なくとも1つのチロシンの側鎖に共有結合した官能部分を含む。
【0102】
一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維の中のチロシン残基(または側鎖)の置換の度合いは、最大90%、最大80%、最大70%、最大65%、最大60%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。本発明者らは、様々な官能部分(この官能部分の一部は実施例のセクションに記載されている)により、チロシン残基(または側鎖)の最大約60%の置換に成功した。
【0103】
一部の実施形態では、官能部分は、MaSp系繊維の少なくとも1つのチロシン残基に選択的に結合している。一部の実施形態では、選択的には、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%(それらの間のいずれかの範囲を含む)の選択性を含む。
【0104】
一部の実施形態では、官能部分は、MaSp系繊維に正および/または負の電荷を提供する。一部の実施形態では、官能部分は、MaSp系繊維の表面の電荷を改変する。一部の実施形態では、官能部分は、MaSp系繊維の特性を改変し、この特性は、水和性、水接触角、分散度、または溶解度(たとえば水および/または有機溶媒における溶解度)から選択される。
【0105】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばアミノ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、約7のpHで1~50の正のゼータ電位の値を特徴とする。本明細書中例証されるように、アミノ化MaSp系繊維は、約7のpHで約20の正のゼータ電位の値を特徴とし、改変されていないMaSp系繊維は、約7のpHで約-20の正のゼータ電位の値を有する。
【0106】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばアミノ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、改変されていない多孔性MaSp系繊維のゼータ電位と比較して少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%大きいゼータ電位の値を有する。
【0107】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばカルボキシ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、約7のpHで-20~-100のゼータ電位を特徴とする。本明細書中例証されるように、カルボキシル化MaSp系繊維は、約7のpHで約-40のゼータ電位の値を特徴とし、改変されていないMaSp系繊維は、約7のpHで約-20のゼータ電位の値を有する。
【0108】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばカルボキシ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、改変されていない多孔性MaSp系繊維のゼータ電位と比較して少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%低いゼータ電位の値を有する。当業者は、正確なゼータ電位の値が、pHおよび多孔性MaSp系繊維の中の官能基の荷重(すなわちw/w比)に応じて変化することを理解している。
【0109】
一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、元も状態の(たとえば非誘導体化)MaSp系繊維の多孔度を保持する。一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、少なくとも10m/gのBET表面積を特徴とする。
【0110】
誘導体化MaSp系繊維のSEM画像を、図3Aおよび3Bに表す。図3A~Bにより示されるように、誘導体化MaSp系繊維の顕著な多孔度(たとえば少なくとも10m/gのBET表面積により定義)は、配列に無関係であり、これは、MaSp系タンパク質および変異体MaSp系タンパク質が著しく多孔性の構造を呈するためである。さらに、誘導体化MaSp系繊維の多孔度は、改変されていないMaSp系繊維の多孔度と比較して実質的に保持されている。
【0111】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、ポリマー、リンカー、およびキレート部分のいずれか1つ、またはそれらのいずれかの組み合わせに共有結合した官能部分を含む。一部の実施形態では、官能部分は、本明細書中記載されるリンカーに共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、キレート部分に共有結合しており、このキレート部分は、金属キレート基、金属酸化物キレート基、またはそれらの組み合わせのいずれか1つであり、金属キレート基および金属酸化物キレート基は、本明細書中記載される通りである。
【0112】
本発明者らは、実施例のセクションに記載されるように、様々な染料を含むヘアカラー組成物を伴う本発明のPEIおよび/またはアミノ修飾された誘導体化繊維の実施に成功した。
【0113】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維と、任意選択で、さらなるポリマー、染料、および/または顔料から選択されるさらなる成分とを含む。
【0114】
一部の実施形態では、本組成物は、0.01~50(w/w)%、0.01~1(w/w)%、1~5(w/w)%、5~10(w/w)%、10~15(w/w)%、15~20(w/w)%、および20~50(w/w)%(それらの間のいずれかの範囲を含む)のMaSp系繊維と、さらなる成分とを含む。
【0115】
一部の実施形態では、本組成物は、0.001~95(w/w)%、0.005~95(w/w)%、0.009~95(w/w)%、0.01~95(w/w)%、0.05~95(w/w)%、0.09~95(w/w)%、0.1~95(w/w)%、0.5~95(w/w)%、0.9~95(w/w)%、1~95(w/w)%、5~95(w/w)%、10~95(w/w)%、15~95(w/w)%、20~95(w/w)%、30~95(w/w)%、50~95(w/w)%、0.01~80(w/w)%、0.05~80(w/w)%、0.09~80(w/w)%、0.1~80(w/w)%、0.5~80(w/w)%、0.9~80(w/w)%、1~80(w/w)%、5~80(w/w)%、10~80(w/w)%、15~80(w/w)%、20~80(w/w)%、30~80(w/w)%、50~80(w/w)%、0.001~50(w/w)%、0.005~50(w/w)%、0.009~50(w/w)%、0.01~95(w/w)%、0.01~50(w/w)%、0.05~50(w/w)%、0.09~50(w/w)%、0.1~50(w/w)%、0.5~50(w/w)%、0.9~50(w/w)%、1~50(w/w)%、5~50(w/w)%、10~50(w/w)%、15~50(w/w)%、20~50(w/w)%、または30~50(w/w)%、(それらの間のいずれかの範囲を含む)の誘導体化多孔性MaSp系繊維を含む。
【0116】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維と、任意選択で本明細書中記載されるさらなる成分とから本質的になる。一部の実施形態では、本組成物の少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.9重量%(それらの間のいずれかの範囲を含む)は、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維と、任意選択で本明細書中記載されるさらなる成分とからなる。
【0117】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中記載される誘導体化多孔性MaSp系繊維のいずれか1つから本質的になる。一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、さらなる繊維(たとえば誘導体化繊維)および/またはさらなるポリマー、および/またはさらなる有機もしくは無機の物質もしくは粒子を実質的に欠いている。
【0118】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維の少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.9重量%(それらの間のいずれかの範囲を含む)が、本明細書中記載される誘導体化多孔性MaSp系繊維のいずれか1つからなる。
【0119】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維および/または組成物は、安定している。一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、誘導体化繊維がその物理的および/または化学的特性を保持しており、かつ/または溶液へ分散した後、および/または大気保存条件下での長期間の保存の後、および/または最大300℃、最大200℃、最大100℃、最大80℃、最大60℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の温度への熱曝露に対し、化学的および/または物理的に安定している場合、安定しているとされる。
【0120】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維がさらなる成分に安定して結合している場合、安定しているとされる(たとえば本組成物は、溶液への分散の後、および/または大気保存条件下での長期間の保存の後、および/または最大300℃、最大200℃、最大100℃、最大80℃、最大60℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の温度への熱曝露に対し、化学的に安定している)。
【0121】
一部の実施形態では、大気条件は、不活性な化学物質、たとえば溶媒(有機溶媒および/または水性溶媒(ここで溶媒は、不活性、すなわち本組成物の成分とのいずれとの化学的反応性をも欠いている))のいずれか1つへの曝露;最大300℃、最大200℃、最大100℃、最大80℃、最大60℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の温度への熱曝露;UV/vis照射(および/または電磁照射、IR照射、マイクロ波照射など)への曝露;水分および/または大気気体への曝露などを含む。一部の実施形態では、大気条件は、不活性な化学物質への反復した曝露を含む。一部の実施形態では、大気条件は、複合体(たとえばMaSp系繊維または誘導体化MaSp系繊維)の成分のいずれかの融点および/または分解点未満の温度への曝露を含む。当業者は、大気保存条件の正確な定義が当該分野でよく知られているさらなるパラメータまたは条件を含み得ることを理解している。
【0122】
一部の実施形態では、本発明の組成物および/または誘導体化多孔性MaSp系繊維は、その構造、およびその物理的特性(たとえば力学的安定性、多孔性(porosivity)、引っ張り強さなど)および化学的特性(水和性、ゼータ電位、疎水性/親水性、反応性)を実質的に維持している場合、かつ/またはさらなる成分が、本発明の誘導体化MaSp系繊維との接触または結合を維持している(たとえば実質的に分解していない)場合、安定しているとされる。
【0123】
一部の実施形態では、本発明の組成物および/または誘導体化多孔性MaSp系繊維は、その化学的組成を実質的に維持している場合、化学的に安定しているとされる。
【0124】
一部の実施形態では、本発明の組成物および/または誘導体化MaSp系繊維は、少なくとも1カ月間(m)、少なくとも2m、少なくとも6m、少なくとも12m、少なくとも2年(y)、少なくとも3y、少なくとも10y(それらの間のいずれかの範囲を含む)の間、実質的に、化学的および/または物理的に安定しており、ここで実質的に本明細書中後述される通りである。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または誘導体化MaSp系繊維は、大気保存条件時に、本明細書中記載される期間の間、実質的に安定している。
【0125】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばアミノ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、約7のpHで1~50の正のゼータ電位の値を特徴とする。本明細書中例証されるように、アミノ化MaSp系繊維は、約7のpHで約20の正のゼータ電位の値を特徴とし、改変されていないMaSp系繊維は、約7のpHで約-20のゼータ電位の値を有する。
【0126】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばアミノ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、改変されていない多孔性MaSp系繊維のゼータ電位の値と比較して、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%高いゼータ電位の値を有する。
【0127】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばカルボキシ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、約7のpHで-20~-100のゼータ電位の値を特徴とする。本明細書中例証されるように、カルボキシル化MaSp系繊維は、約7のpHで約-40のゼータ電位の値を特徴とし、改変されていないMaSpk系繊維は、約7のpHで約-20のゼータ電位の値を有する。
【0128】
一部の実施形態では、誘導体化(たとえばカルボキシ誘導体化)多孔性MaSp系繊維は、改変されていない多孔性MaSp系繊維のゼータ電位の値と比較して、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%低いゼータ電位の値を有する。当業者は、正確なゼータ電位の値が、pHおよび多孔性MaSp系繊維の中の官能基の荷重(すなわちw/w比)に応じて変化することを理解している。
【0129】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、ポリマー、リンカー、およびキレート部分のいずれか1つ、またはそれらのいずれかの組み合わせに共有結合した官能部分を含む。一部の実施形態では、官能部分は、本明細書中記載される通りのリンカーに共有結合している。一部の実施形態では、官能部分は、キレート部分に共有結合しており、キレート部分は、金属キレート基、金属酸化物キレート基、またはそれらの組み合わせのいずれか1つであり、金属キレート基および金属酸化物キレート基は、本明細書中記載される通りである。
【0130】
一部の実施形態では、本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維は、官能部分に結合した染料または顔料を含み、この官能部分は本明細書中上述される通りである。一部の実施形態では、染料または顔料は、共有結合または非共有結合を介して官能部分に結合している。一部の実施形態では、染料または顔料は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、静電相互作用、p-pスタッキング、またはそれらのいずれかの組み合わせのいずれか1つを介して官能部分に結合している。
【0131】
染料の非限定的な例として、限定するものではないが、陰イオン性染料(たとえばコンゴーレッド、アリザリンピュアブルーB、アシッドレッド88、トリパンブルー)、陽イオン性染料(たとえばメチン染料、アントラキノン染料、アゾ染料、クーマシー、メチレンブルー)、および中性染料(たとえばNeutral Orange RL、ニュートラルレッドGRL、Neutral Gray 2BL)、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド、ジアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、およびアニリンブラックまたはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。他の中性または荷電した有機染料は、当該分野でよく知られている。
【0132】
一部の実施形態では、使用される顔料は、Color Index Generic NameまたはColor Index Constitution Numberにより分類される。これら番号の前に、C.Iが付され得る。
【0133】
一部の実施形態では、顔料は、黄色の顔料であり、たとえば限定するものではないが、C.I. Pigment Yellows1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、155、167、172、または18である。
【0134】
一部の実施形態では、顔料は、マゼンタの顔料であり、たとえば限定するものではないが、C.I. Pigment Reds1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、または245である。
【0135】
一部の実施形態では、顔料は、紫色の顔料、たとえばC.I. Pigment Violets 19、23、32、33、36、38、43、または50である。
【0136】
一部の実施形態では、顔料は、限定するものではないが、C.I. Pigment Blues 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、および66;またはC.I. Vat Blues4および60を含むシアンの顔料である。
【0137】
マゼンタ、シアン、および黄色の顔料以外の顔料の例として、限定するものではないが、C.I. Pigment Greens 7および10;C.I. Pigment Browns 3、5、25、および26;ならびにC.I. Pigment Oranges 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、および63が挙げられる。
【0138】
一部の実施形態では、MaSp系繊維と染料または顔料との間のw/w比は、0.01:1~10:1、0.01:1~0.05:1、0.05:1~0.1:1、0.1:1~0.2:1、0.2:1~0.3:1、0.3:1~0.4:1、0.4:1~0.5:1、0.5:1~0.7:1、0.7:1~0.9:1、0.5:1~1:1、0.9:1~1:1、1:1~1.5:1、1.5:1~2:1、2:1~3:1、3:1~5:1、5:1~7:1、7:1~10:1、10:1~30:1、30:1~50:1、50:1~100:1(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0139】
一部の実施形態では、染料または顔料は、誘導体化多孔性MaSp系繊維に吸着されている。
【0140】
一部の実施形態では、染料または顔料は、誘導体化多孔性MaSp系繊維に安定して結合している。一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維に結合した染料または顔料を含む組成物は、反復した洗浄の後に安定している(たとえば、その着色強度の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%を保持している)。
【0141】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、コーティング組成物である。
【0142】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維に結合した染料または顔料を含む組成物は、基質(substrate)をコーティングするためのものである。一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、基質への接着または結合を促進する。一部の実施形態では、基質は、ガラス基質、ポリマー基質、金属基質のいずれか1つである。一部の実施形態では、基質は、身体組織を含む。一部の実施形態では、基質は、皮膚、髪、爪、またはそれらのいずれかの組み合わせのうちのいずれか1つである。
【0143】
一部の実施形態では、基質は、荷電した基質である。一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維に結合した染料または顔料を含む組成物は、対照と比較して、染料または顔料の分解(たとえば化学的な分解および/または物理的な分解)を低減する。一部の実施形態では、対照は、誘導体化多孔性MaSp系繊維を欠いたコーティング複合体を含む。
【0144】
複合体
別の態様では、金属、金属塩、金属酸化物粒子、またはそれらのいずれかの組み合わせのうちのいずれか1つに結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維を含む複合体がある。一部の実施形態では、金属酸化物粒子は、配位結合、静電相互作用、またその両方を介して、誘導体化多孔性MaSp系繊維に結合している。
【0145】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、金属、金属塩から選択される金属成分、または金属酸化物粒子、またはそれらのいずれかの組み合わせに結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維を含み、ここでの金属成分は、粒子の形態または別々の原子の形態にあり、金属成分は、元素状態または酸化した状態にある。一部の実施形態では、金属成分は、金属および/または金属塩を含み、金属成分は、本発明の第1の金属および/または第2の金属を含む。
【0146】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、1つ以上の本発明のキレート剤を介して、本明細書中記載される金属成分に結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維を含む。
【0147】
一部の実施形態では、金属成分は、1つ以上の本発明のキレート剤を介して、誘導体化MaSp系繊維に配位的に(すなわち配位結合または錯体形成を介して)結合しており、1つ以上の本発明のキレート剤は、本発明の官能部分(たとえば本明細書中記載されるポリマー)に共有結合している。一部の実施形態では、本発明の複合体は、金属成分に結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維を含み、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、本明細書中記載されるポリマーに共有結合した複数のキレート剤を含む。一部の実施形態では、キレート剤は、本明細書中上述される通りである(たとえば、(i)金属またはその塩に結合できる金属キレート基、(ii)金属酸化物キレート基、またはその両方を含む)。
【0148】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、キレート剤を介して、誘導体化多孔性MaSp系繊維に結合した金属酸化物粒子を含む。一部の実施形態では、キレート剤は、本明細書中上述される金属酸化物キレート基である。一部の実施形態では、金属酸化物粒子は、キレート剤により錯体化されている。一部の実施形態では、金属酸化物粒子は、誘導体化多孔性MaSp系繊維に安定して結合している(たとえば複合体は、溶液へ分散した後、および/または長期間の大気保存条件下での保存の後、および/または最大300℃、最大200℃、最大100℃、最大80℃、最大60℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の温度への熱曝露の後に、化学的に安定している)。
【0149】
一部の実施形態では、大気条件は、不活性な化学物質、たとえば溶媒(有機溶媒および/または水性溶媒(ここで溶媒は、不活性、すなわち複合体の成分のいずれとも化学的反応性を欠いている))のいずれか1つへの曝露;最大300℃、最大200℃、最大100℃、最大80℃、最大60℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の温度への熱曝露;UV/vis照射(および/または電磁気照射、IR照射、マイクロ波照射など)への曝露;水分および/または大気気体などへの曝露などを含む。一部の実施形態では、大気条件は、不活性な化学物質への反復した曝露を含む。一部の実施形態では、大気条件は、複合体(たとえばMaSp系繊維または誘導体化MaSp系繊維)の成分のいずれかの融点および/または分解点未満の温度への曝露を含む。当業者は、大気保存条件の正確な定義が当該分野でよく知られているさらなるパラメータまたは条件を含み得ることを理解している。
【0150】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、その構造、およびその物理的特性(たとえば力学的安定性、多孔性(porosivity)、引っ張り強さ、電気伝導性など)および化学的特性(水和性、ゼータ電位、疎水性/親水性、反応性)を維持している場合、かつ/または金属成分が、本発明の誘導体化MaSp系繊維との接触または結合を維持している(たとえば実質的に分解していない(ここでの実質的には本明細書中記載される通りである))場合、安定しているとされる。
【0151】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、複合体がその化学組成を実質的に維持している場合化学的に安定しているとされる。
【0152】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、少なくとも1カ月(m)、少なくとも2m、少なくとも6m、少なくとも12m、少なくとも2年(y)、少なくとも3y、少なくとも10y(それらの間のいずれかの範囲を含む)の間、実質的に、化学的および/または物理的に安定しており、ここで実質的には、本明細書中後述される通りである。一部の実施形態では、本発明の複合体は、大気保存条件で、本明細書中記載される期間の間実質的に安定している。
【0153】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、金属成分でドープ処理した本発明の誘導体化MaSp系繊維を含む。一部の実施形態では、金属成分は、複合体の中(たとえば多孔性ナノ繊維の上または繊維の中で)均質に分布している。
【0154】
一部の実施形態では、金属酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄(II/III)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、またはそれらのいずれかの混合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、酸化チタンに対する親和性および/または選択性を有する。一部の実施形態では、キレート剤は、金属酸化物粒子に対する親和性および/または選択性を有する。一部の実施形態では、キレート剤は、酸化チタン粒子に対する親和性および/または選択性を有する。一部の実施形態では、金属酸化物粒子は、本明細書中上述される通りである。
【0155】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維は、金属酸化物キレート基に共有結合した官能部分を含む。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、本明細書中記載されるリンカーを介して、官能部分に共有結合している。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、PGAリンカーを介して官能部分に共有結合している。一部の実施形態では、各PGA鎖は、複数の金属酸化物キレート基に共有結合している。
【0156】
一部の実施形態では、金属酸化物キレート基に共有結合した誘導体化多孔性MaSp系繊維の官能部分は、以下のように表される:
【化25】
(式中、破線は、任意選択の結合を表し、各nは、独立して1~10000の整数である)。
【0157】
一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、カルボキシ基および/またはヒドロキシ基を含む。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、小分子および/またはポリマーを含む。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、一座配位、二座配位、三座配位、および四座配位のリガンドである。一部の実施形態では、リガンドを含む金属酸化物キレート基は、チタニアに対する親和性および/または選択性を有する。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、1つ以上のカルボン酸基と、任意選択で1つ以上のヒドロキシ基とを含むリガンドを含む。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、リガンド、環状であり多座配位のリガンド、または直鎖状のリガンドを含む。
【0158】
一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、カルボキシ側鎖基および/またはヒドロキシ側鎖基を含むポリマーである(たとえばPVA、ポリアクリレート、ポリグリコレートなど(それらのいずれかの混合物またはコポリマーを含む))。
【0159】
金属酸化物キレート基の非限定的な例として、限定するものではないが、サリチル酸、ホスホン酸、ヒドロキサム酸、マロン酸、ピロガロール、5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(naphtoquinone)、キノン、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。チタニアに対し親和性を有する他の金属酸化物キレート基は、当該分野でよく知られている。
【0160】
一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、酸化されたチロシン側鎖(たとえばジヒドロキシフェニルまたはキノン)を含む。一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、少なくとも1つの酸化されたチロシン残基(たとえばジヒドロキシフェニルまたはキノンの形態のチロシン残基)を含む。当業者は、酸化されたチロシンが、たとえばMaSp系繊維をチロシナーゼと反応させることにより、酸化状態の(例えばジヒドロキシフェニルまたはキノンの形態の)チロシン残基の少なくとも一部を得ることにより、入手され得ることを理解している。
【0161】
一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、本明細書中記載されるポリマーに結合している。一部の実施形態では、金属酸化物キレート基は、本明細書中記載されるポリマーに共有結合している。一部の実施形態では、キレート部分は、誘導体化MaSp系繊維の官能基に共有結合している。
【0162】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、それに結合した複数の金属酸化物キレート基を含む誘導体化多孔性MaSp系繊維を含み、金属酸化物キレート基の少なくとも一部(たとえば20~99%、20~30%、30~40%、40~60%、60~80%、80~90%、90~99%(その間のいずれかの範囲を含む))が、金属酸化物(たとえば本発明の金属酸化物粒子)に結合している。
【0163】
当業者は、キレート部分(たとえば金属酸化物キレート基)のポリマーへの共有結合の多くの選択肢が存在することを理解している。たとえば、アミノ化キレート部分は、カルボキシル化MaSp系繊維に結合し得る。あるいは、カルボキシル化キレート部分は、アミノ化MaSp系繊維に結合し得る。さらに、アミノ化キレート部分は、カルボキシ基またはカルボニル基を含むポリマー(たとえばPGA)を含むポリマーに結合し得る。あるいは、カルボキシル化キレート部分は、ヒドロキシ基またはアミノ基を含むポリマー(たとえばポリリジンまたはPEI)に結合し得る。本発明者らは、本明細書中上記に表される金属酸化物キレート基(サリチル酸)にさらに結合したPGAに結合したアミノ化MaSp系繊維の合成に成功した。
【0164】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、金属キレート基に共有結合した官能部分を含む誘導体化多孔性MaSp系繊維を含む。一部の実施形態では、金属キレート基は、本明細書中記載されるリンカーを介して官能部分に共有結合している。一部の実施形態では、金属キレート基は、PGAリンカーを介して官能部分に共有結合している。一部の実施形態では、各PGA鎖は、上述のように、複数の金属キレート基に共有結合している。
【0165】
一部の実施形態では、本発明の複合体は、それに結合した複数の金属キレート基を含む誘導体化多孔性MaSp系繊維を含み、金属キレート基の少なくとも一部(たとえば20~99%、20~30%、30~40%、40~60%、60~80%、80~90%、90~99%(それらの間のいずれかの範囲を含む))が、本明細書中記載される金属に結合している。一部の実施形態では、金属キレート基の少なくとも一部は、Pdまたはその塩(たとえばPd(酢酸塩)、PsCl)に結合している。一部の実施形態では、金属キレート基の少なくとも一部は、元素状態(たとえば基底状態、0酸化状態とも呼ばれる)の金属に結合している。一部の実施形態では、金属キレート基の少なくとも一部は、酸化状態(たとえば+2)の金属に結合している。一部の実施形態では、金属キレート基は、少なくとも部分的に還元された金属に結合している。
【0166】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、金属(本明細書中記載される第1の金属および/または第2の金属)でドープ処理した本発明の誘導体化繊維を含み、ここで金属は、複数の金属キレート基を含むポリマーに配位結合している。一部の実施形態では、本発明の組成物は、複数の金属キレート基(IDAなど)を含むポリグルタルアルデヒドにより錯体形成したPdを含み、ここでポリグルタルアルデヒドは、本発明の誘導体化MaSp系繊維に共有結合している。
【0167】
一部の実施形態では、金属または金属カチオンと錯体形成する複数の金属キレート基を含むポリマーは、以下のように表される:
【化26】
(式中、kは、10~10000であり、Mは、遷移金属(たとえばPdまたはその塩)を表し、各mおよびnは、独立して0~10の整数を表す)。
【0168】
本発明の別の態様では、本発明のポリマーにより錯体形成した金属原子(たとえば第1の金属)は、さらなる金属原子とさらに結合し、ここでさらなる金属原子は、同じまたは異なる原子である。一部の実施形態では、本発明のポリマーにより錯体形成した金属原子は、複数の金属原子にさらに結合することにより、凝集体を形成する。一部の実施形態では、本発明のポリマーにより錯体形成した第1の金属(たとえばPd)は、本発明の誘導体化繊維の外面に均一に分布している。一部の実施形態では、第1の金属(たとえばPd)は、本発明の誘導体化繊維の上部に金属層(または第1の金属層)を形成する。一部の実施形態では、金属層(たとえば第1の金属層および/または第2の金属層)は、1~10個の原子厚(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。一部の実施形態では、第1の金属(たとえばPd)は、コロイド状の形態である。一部の実施形態では、第1の金属(たとえばPd)は、1~500nmの範囲の粒子の形態にある。
【0169】
一部の実施形態では、微粒子の形態または別個の原子の形態のいずれかにある第1の金属は、その上部での第2の金属の結合に適した凝集中心(aggregation center)を形成する。一部の実施形態では、本明細書通記載される本発明のポリマーにより錯体形成したPd(元素状態)は、凝集中心を形成し、第2の金属(たとえばCu)の沈着を可能にする。一部の実施形態では、第2の金属は、無電解めっきを介して沈着される。一部の実施形態では、第1の金属は、第2の金属の無電解の沈着を促進できる。
【0170】
一部の実施形態では、第2の金属(たとえばCu)は、コロイド状の形態にある。一部の実施形態では、第2の金属(たとえばCu)は、1~500nm、1~10nm、10~50nm、50~100nm、100~200nm、200~500nm(それらの間のいずれかの範囲を含む)の範囲の粒子の形態にある。
【0171】
一部の実施形態では、第2の金属は、微粒子の形態または別個の原子の形態(別個の原子は、元素状態もしくは酸化状態にある)のいずれかにある。一部の実施形態では、微粒子の形態または別個の原子の形態のいずれかの第2の金属は、本発明の誘導体化繊維の上部に均質に分布している。一部の実施形態では、第1の金属および/または第2の金属は、本発明の誘導体化繊維の上部にて均質な層の形態にある。一部の実施形態では、第1の金属および/または第2の金属は、アモルファスの状態または結晶状態(たとえば実質的に結晶性の粒子を形成する)にある。一部の実施形態では、第1の金属および/または第2の金属の少なくとも一部は、結晶状態にある。
【0172】
「均一な(uniform)または均質な(homogenous)は、たとえば±60%、±50%、±40%、±30%、±20%、または±10%未満の範囲(それらの間のいずれかの値を含む)の中で変動する大きさ(または厚さ)の分布を表すように意味される。
【0173】
一部の実施形態では、用語「層」は、実質的な均一な厚さの実質的に均質な物質を表す。一部の実施形態では、シェルは、単一の層または複数の層を含む。
【0174】
一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、MaPs系繊維に共有結合したポリグルタルアルデヒドにより錯体形成した第1の金属(たとえばPd)の上部に沈着または上部に結合した第2の金属(たとえばCu)の層を含む。一部の実施形態では、第1の金属(たとえばPd)は、金属キレート部分(たとえばIDA)によりキレート化または錯体形成されている。一部の実施形態では、金属キレート部分は、本明細書中上記で例証されているポリグルタルアルデヒドに共有結合している。本発明者らは、IDA金属キレート基に結合したPGAを含む誘導体化MaSp系繊維のCuでのドープ処理に成功した。
【0175】
一部の実施形態では、本明細書中記載される第1の金属および/または第2の金属は、微粒子の形態または別個の原子の形態にあり、第1の金属および/または第2の金属は、それぞれ独立して元素状態または酸化した状態にある。
【0176】
一部の実施形態では、重合体層と接触または重合体層に結合した金属層(たとえば第1の金属層)は、第2の金属のための複数の凝集部位を形成する。一部の実施形態では、第1の金属は、重合体層のコーティングポリマーに対し高い親和性を有する。一部の実施形態では、第1の金属は、コーティングポリマーに結合している。
【0177】
一部の実施形態では、第2の金属は、第1の金属の上部で結合または凝集している。一部の実施形態では、第2の金属は、元素状態にある。一部の実施形態では、第2の金属は、酸化した状態(たとえば+1または+2)にある。一部の実施形態では、第2の金属は、第1の金属層の上部に層を形成する。一部の実施形態では、第2の金属は、第1の金属に対する親和性を有する。一部の実施形態では、第2の金属および第1の金属は、各金属層が分離している、層状化した構造の形態にある。一部の実施形態では、第2の金属および第1の金属は、重合体層の上部に1つの金属層を形成するため金属層の中で共に混合されている。一部の実施形態では、繊維は、第1の金属および第2の金属のいずれかによるか、または第1の金属および第2の金属の組み合わせにより、少なくとも部分的にコーティングされている。
【0178】
一部の実施形態では、第1の金属および任意選択で第2の金属は、本明細書中記載される遷移金属である。遷移金属は、当該分野でよく知られており、d-電子を含む金属を表す。
【0179】
一部の実施形態では、第1の金属は、化学的な還元に適した還元電位を有する。一部の実施形態では、第1の金属および第2の金属は、無電解沈着法と適合可能である。一部の実施形態では、第1の金属は、第2の金属を直接還元できる。
【0180】
一部の実施形態では、キレート剤の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%(それらの値のいずれかの範囲を含む)は、金属酸化物粒子に結合している。
【0181】
一部の実施形態では、誘導体化多孔性MaSp系繊維の金属酸化物粒子に対するw/w比は、0.01:1~100:1、0.01:1~10:1、0.01:1~0.05:1、0.05:1~0.1:1、0.1:1~0.2:1、0.2:1~0.3:1、0.3:1~0.4:1、0.4:1~0.5:1、0.5:1~0.7:1、0.7:1~0.9:1、0.5:1~1:1、0.9:1~1:1、1:1~1.5:1、1.5:1~2:1、2:1~3:1、3:1~5:1、5:1~7:1、7:1~10:1、10:1~30:1、30:1~50:1、50:1~100:1(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0182】
一部の実施形態では、金属酸化物粒子は、25~5000nm、25~50nm、50~100nm、100~150nm、150~200nm、200~300nm、300~500nm、500~1000nm、1000~2000nm、2000~3000nm、3000~4000nm、4000~5000nm(それらの間のいずれかの範囲を含む)の粒径を特徴とする。
【0183】
一部の実施形態では、複合体は、少なくとも1カ月(m)、少なくとも2m、少なくとも3m、少なくとも4m、少なくとも5m、少なくとも6m、少なくとも7m、少なくとも8m、少なくとも9m、少なくとも10m、少なくとも12m(それらの間のいずれかの範囲を含む)の間安定である。
【0184】
一部の実施形態では、金属酸化物粒子の中の金属酸化物は、アモルファスの状態にある。一部の実施形態では、金属酸化物粒子の中の金属酸化物は、結晶状態にある。一部の実施形態では、金属酸化物粒子の中の金属酸化物の少なくとも一部は、アモルファスの状態にある。
【0185】
一部の実施形態では、複合体は、元の状態の(たとえばMaSp系繊維を欠いている)金属酸化物粒子と比較して高い、水溶液および/または有機得液における分散性を特徴とする。300nm超の粒径を有する酸化チタンを含む本発明の複合体は、元の状態のチタニア粒子と比較して有意に改善した、水溶液および/または有機溶液における分散性を呈した。サリチル酸塩-またはPVA-誘導体化MaSp系繊維(たとえば例示的な本発明の複合体)に結合した酸化チタン粒子を含む水性分散系は、非誘導体化MaSp系繊維を含む対照分散系よりも優れた安定性を示した。さらに、サリチル酸塩誘導体化MaSp系繊維に結合した酸化チタン粒子を含む複合体は、優れた分散性を呈し(たとえば安定した分散を形成できる)、ここで酸化チタン粒子の誘導体化MaSp系繊維のw/w比は、約1:1である。
【0186】
一部の実施形態では、本発明の複合体により形成される水性分散系は、界面活性剤をさらに含む。安定した分散系の形成のため組み入れられている例示的な界面活性剤として、限定するものではないが、TRITONおよびドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0187】
一部の実施形態では、複合体は、対照と比較して高いUV照射の吸収を特徴とする。一部の実施形態では、対照は、金属酸化物粒子を欠いた誘導体化または非誘導体化MaSp系繊維である。
【0188】
多孔性MaSp系繊維
一部の実施形態では、本発明は、誘導体化多孔性MaSp系繊維を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、総重量の0.1%~90%の濃度で存在する。
【0189】
一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、少なくとも1つのMaSp系繊維を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのMaSp系繊維は、総重量の0.1%~25%、0.1%~20%、0.1%~15%、0.5%~30%、1%~30%、5%~30%、または10%~30%(それらの間のいずれかの範囲を含む)の濃度で存在する。
【0190】
一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、0.5μm~1.5μmの範囲の大きさを有する粒子の形態のMaSp系ポリマーである。一部の実施形態では、MaSp系繊維は、不溶性ポリマーである。一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、200℃~280℃の範囲の少なくとも1つの吸熱ピークを呈するDSCパターンを有する。一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、FTIR分析により測定される1615cm-1~1635cm-1の範囲のアミドピークを特徴とする。
【0191】
一部の実施形態では、MaSp系ポリマー(合成MaSp系ポリマー)を含む組成物であって、MaSp系ポリマーが、a)不溶性ポリマー;b)0.5μm~1.5μmの範囲の大きさを有する粒子の形態;c)200℃~280℃の範囲に少なくとも1つの吸熱ピークを呈するDSCパターン;およびd)FTIR分析により測定される1615cm-1~1635cm-1の範囲のアミドピークから選択される少なくとも1つの特徴を有する。
【0192】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、示差走査熱量測定(DSC)により決定される280℃~350℃、290℃~350℃、300℃~350℃、310℃~350℃、320℃~350℃、280℃~330℃、290℃~330℃、300℃~330℃、310℃~330℃、または320℃~330℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の分解温度(T)を特徴とする。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0193】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、DSCにより決定される200℃~250℃、210℃~250℃、220℃~250℃、230℃~250℃、200℃~240℃、210℃~240℃、220℃~240℃、230℃~240℃、200℃~230℃、または210℃~230℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)のガラス転移点(T)を特徴とする。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0194】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、DSCにより決定される260℃~320℃、270℃~320℃、280℃~320℃、290℃~320℃、260℃~310℃、270℃~310℃、280℃~310℃、または290℃~310℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)のTを特徴とする。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0195】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、280℃~350℃、290℃~350℃、300℃~350℃、310℃~350℃、280℃~330℃、290℃~330℃、300℃~330℃、310℃~330℃、または320℃~330℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の少なくとも1つの吸熱ピークを呈するDSCパターンを特徴とする各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0196】
用語「分解温度(T)」は、本明細書中使用される場合、分解が起こる温度を表す。熱分解は、熱により引き起こされる示量性の化学種の変化のプロセスである。
【0197】
本明細書中使用される場合、用語「ガラス転移点(T)」は、物質が弾性があり粘性のアモルファスの液体(T>T)から脆性でありガラス状のアモルファスの固体(T<T)までの転移を経る温度を表す。この液体-ガラスの転移(または略してガラス転移)は、可逆的な転移である。ガラス転移点(T)は、一般的に、存在する場合、物質の結晶状態の融解温度(T)未満である。
【0198】
一部の実施形態では、粒子の形態の合成MaSp系ポリマーを含む多孔性MaSp系繊維を提供する。一部の実施形態では、粒子は、0.5μm~1.5μm、0.7μm~1.5μm、0.8μm~1.5μm、0.9μm~1.5μm、0.5μm~1μm、0.7μm~1μm、0.8μm~1μm、0.9μm~1μm、0.5μm~1.3μm、0.5μm~12μm、0.7μm~1.3μm、0.7μm~1.2μm、または0.9μm~12μm(それらの間のいずれかの範囲を含む)範囲の大きさを有する。
【0199】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、不溶性MaSp系ポリマーを含むかまたはからなる。一部の実施形態では、不溶性MaSp系ポリマーは、粒子の形態にある。一部の実施形態では、不溶性MaSp系ポリマーは、有機溶媒に不溶性である。一部の実施形態では、不溶性MaSp系ポリマーは、水溶液に不溶性である。本明細書中使用される場合、用語「MaSp系ポリマー」および「MaSp系繊維」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0200】
本明細書中使用される場合、用語「不溶性」は、過剰な溶媒に曝露される場合に溶解しないが、様々な度合いまで分散し得る物質を表す。一部の実施形態では、用語「不溶性」は、溶媒において10%未満、5%未満、2%未満、または1%未満溶解できる物質を表す。一部の実施形態では、「不溶性」は、わずか0.01重量%未満の濃度で溶媒に部分的に溶解し得る物質を表す。本発明に係る溶媒は、有機溶媒および水溶液を含む。一部の実施形態では、溶媒は、水性界面活性剤溶液を含む。一部の実施形態では、溶媒は、尿素水溶液を含む。
【0201】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、明確な示差走査熱量測定(DSC)パターンを特徴とする。一部の実施形態では、「DSCパターン」は、ピークの位置を表すことを意味する。一部の実施形態では、「ピーク」は、発熱ピークを表すことを意味する。本明細書を通して、「ピークの位置」または「ピーク位置」は、サーモグラムのパターンにおける温度軸に沿ったピークを表し、一部の実施形態では、いずれかのピーク強度でのピーク位置を表し得る。当業者は、DSC測定で得たデータが、部分的に、使用される器具および測定を行う時間での環境条件(たとえば湿度)に依存することを理解している。
【0202】
一部の実施形態では、MaSp系ポリマーは、200℃~280℃の範囲に少なくとも1つの吸熱ピークを呈するDSCパターンを特徴とする。一部の実施形態では、開示される組成物は、200℃~270℃、200℃~260℃、200℃~250℃、210℃~280℃、212℃~280℃、215℃~280℃、216℃~280℃、220℃~280℃、210℃~250℃、212℃~250℃、215℃~250℃、216℃~250℃、220℃~250℃、210℃~245℃、210℃~242℃、または215℃~245℃(それらの間のいずれかの範囲を含む)の範囲に少なくとも1つの吸熱ピークを呈するDSCパターンを特徴とする。
【0203】
一部の実施形態では、MaSp系ポリマーは、(MaSp)系繊維を含む対応する組成物のDSCパターン未満の、少なくとも5℃~100℃、少なくとも10℃~100℃、少なくとも15℃~100℃、少なくとも12℃~100℃、少なくとも25℃~100℃、少なくとも5℃~80℃、少なくとも10℃~80℃、少なくとも15℃~80℃、少なくとも12℃~80℃、少なくとも25℃~80℃、少なくとも5℃~50℃、少なくとも10℃~50℃、少なくとも15℃~50℃、少なくとも12℃~50℃、または少なくとも25℃~50℃で、少なくとも1つの吸熱ピークを呈するDSCパターンを特徴とする。
【0204】
一部の実施形態では、MaSp系ポリマーは、約-100℃~約190℃の範囲のDSCピークを欠いている。一部の実施形態では、開示される化合物は、約-100℃~約25℃の範囲のDSCピークを欠いている。一部の実施形態では、開示される組成物は、40℃~70℃の範囲の発熱ピークを欠いている少なくとも1つのDSCパターンを特徴とする。
【0205】
一部の実施形態では、MaSp系ポリマーは、約-100℃~約-50℃の範囲のDSCピークを欠いている。一部の実施形態では、開示される化合物は、約-50℃~約0℃の範囲のDSCピークを欠いている。一部の実施形態では、開示される化合物は、約-0℃~約25℃の範囲のDSCピークを欠いている。
【0206】
一部の実施形態では、MaSp系ポリマーは、FTIR分析により測定される1615cm-1~1635cm-1の範囲のアミドピークを有することを特徴とする。一部の実施形態では、開示される組成物は、FTIR分析により測定される1620cm-1~1635cm-1、1620cm-1~1630cm-1、1621cm-1~1630cm-1、または1620cm-1~1625cm-1の範囲(それらの間のいずれかの範囲を含む)のアミドピークを有することを特徴とする。
【0207】
一部の実施形態では、MaSp系ポリマーは、FTIR分析により測定される1700cm-1~1800cm-1の範囲のピークを欠いている。
【0208】
一実施形態では、本発明のMaSp系ポリマーは、自己集合により会合する。「自己集合」は、モノマー、すなわち本発明の合成SPIDER SILKタンパク質が、正常な生理的条件下または室温にて、エネルギー的に好ましい方法で互いに自発的に結合し、本明細書中記載される特性を有するマクロ分子構造を作製することを意味する。さらに、本発明のMaSp系ポリマーは、非常に弾力性があり、いったん会合すると、10%の界面活性剤溶液への可溶化および少なくとも1時間の煮沸などの徹底的な化学的な攻撃に耐え得る。
【0209】
「引っ張り強さ(Tenacityまたはtensile strength)は、フィラメントが破壊する前に耐えることのできる重量を表す。発生する最大比応力は、通常、物質を破壊するための引っ張り試験によりフィラメント、糸、または生地で行われる。特定の実施形態では、本発明のMaSp系ポリマーは、約100-3000MPa(MPa=N/mm2)、約300-3000MPa、約500-2700MPa、約700-2500MPa、約900-2300MPa、約1100-2000MPa、約1200-1800MPa、約1300-1700MPa、または約1400-1600MPa、より具体的には約1500MPaの引っ張り強さを有する。
【0210】
「強靭性」は、MaSp系ポリマーを破壊するために必要とされるエネルギーを表す。これは、応力ひずみ曲線下の面積であり、場合により「破壊するためのエネルギー」または破断するための作用とも呼ばれる。特定の実施形態では、本発明のMaSp系ポリマーは、約20-1000MJ/m3、約50-950MJ/m3、約100-900MJ/m3、約120-850MJ/m3、約150-800MJ/m3、約180-700MJ/m3、約180-750MJ/m3、約250-700MJ/m3、約280-600MJ/m3、約300-580MJ/m3、約310-560MJ/m3、約320-540MJ/m3、または約350-520MJ/m3、最も好ましくは約350-520MJ/m3の強靭性を有する。
【0211】
「弾性」は、変形後に元の大きさおよび形状に復元する傾向を有する物体の特性を表す。可塑性は、復元しない変形であり、弾性の反対語である。MaSp系ポリマーの分子構成において、復元可能または弾性の変形は、原子間および分子間の構造上の結合の伸び(再配列)により可能である。逆に、分子間結合の新規の安定した位置への破壊および再形成は、復元不能または可塑性の変形をもたらす。
【0212】
「伸長(extension)」は、最初の長さのパーセンテージまたは割合として表される長さの増加を表す。
【0213】
「微粉度」は、通常ミクロン(マイクロメートル)で表されるMaSp系ポリマーまたフィラメント(たとえばバイオフィラメント)の平均直径である。
【0214】
MaSp系繊維
用語「MaSp(major ampullate spidroin protein)」および「spidroinタンパク質」は、説明を通して互換可能に使用されており、全ての既知のMaSpタンパク質を包有し、通常「MaSp」またはAraneus diadematusの場合では「ADF」と略される。これらMaSpは、全般的に、2つのタイプ、1および2である。これら用語は、少なくとも既知のMaSpタンパク質の反復領域に対する高い度合いの同一性および/または類似性を伴う本明細書中開示される非天然のタンパク質をさらに含む。さらなる適切なspider silkタンパク質は、MaSp2、MiSp、MiSp2、AcSp、FLYS、FLAS,およびflagelliformを含む。
【0215】
本明細書中使用される場合、用語「反復領域」、「反復配列」、または「反復」は、spider silkアミノ酸配列(たとえばMaSp-1タンパク質)において自然に複数回起こる反復単位に由来する組み換えタンパク質配列を表す。当業者は、spider silkタンパク質の一次構造が、単位反復の一連の小さなバリエーションから主になるとみなされることを理解している。天然に存在するタンパク質の単位反復は、多くの場合、互いに異なる。すなわち、タンパク質の長さに沿った単位反復の正確な重複はほとんどないかまたは全くない。一部の実施形態では、本発明の合成spider silkは、タンパク質の一次構造が、多数の、単一の単位反復の正確な反復を含むように作製される。さらなる実施形態では、本発明の合成spider silkは、多数の第2の単位反復と共に、多数の1つの単位反復の繰り返しを含む。このような構造は、典型的なブロックコポリマーに類似する。またいくつかの異なる配列の単位反復は、特定の適用に適した特性を有する合成spider silkを提供するように組み合わせられ得る。用語「ダイレクトリピート」は、本明細書中使用される場合、反復が類似している一列(頭部-尾部の配置)での反復である。別の実施形態では、本発明の合成spider silkを形成するために使用される反復は、ダイレクトリピートである。一部の実施形態では、反復は、自然に見出されない(すなわち天然に存在するアミノ酸配列ではない)。
【0216】
反復配列を含む例示的な配列は、ADF-4:AAAAAAASGSGGYGPENQGPSGPVAYGPGGPVSSAAAAAAAGSGPGGYGPENQGPSGPGGYGPGGSGSSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSGGYGPGSQGPSGPGASSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSGGYGPGSQGPSGPGGPGASAAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAAAAAAGSGPGGYGPGNQGPSGPGGYGPGGPGSSAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGVYGPGGPGSSAAAAAAAGSGPGGYGPGNQGPSGPGGYGPGGSGSSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSGGYGPGSQGPSGPGASSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSRGYGPGSQGPGGPGASAAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGYQGPSGPGAYGPSPSASAS(配列番号1)である。一部の実施形態では、本発明の合成反復配列は、ADF-4(配列番号1)に由来する1つ以上の反復配列に基づく(たとえば本明細書中以下に定義される高いパーセント同一性を有する)。本明細書中使用される場合、用語「~に基づく」は、反復配列に対し高い相同性のパーセンテージを有する配列を表す。
【0217】
一部の実施形態では、各反復配列は、最大60アミノ酸、最大55アミノ酸、最大50アミノ酸、最大49アミノ酸、最大48アミノ酸、最大47アミノ酸、最大46アミノ酸、最大45アミノ酸、最大44アミノ酸、最大43アミノ酸、最大42アミノ酸、最大41アミノ酸、最大40アミノ酸、最大39アミノ酸、最大38アミノ酸、最大37アミノ酸、最大36アミノ酸、または最大35アミノ酸を含み、可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一部の実施形態では、各反復配列は、5~60アミノ酸、10~55アミノ酸、15~50アミノ酸、20~45アミノ酸、25~40アミノ酸、acids、25~39アミノ酸、または28~36アミノ酸を含み、可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一部の実施形態では、各反復配列は、30~40アミノ酸、31~39アミノ酸、32~38アミノ酸、33~37アミノ酸、34~36アミノ酸を含み、各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。さらなる実施形態では、各反復配列は、35アミノ酸を含む。
【0218】
一部の実施形態では、反復領域は、独立して、式10に記載のアミノ酸配列:
(XGPGGYGPXGPXGXGGXGPGGPGX10(式中、Xは、独立して、各位置でAまたはGであり、Zは、5~30の整数であり、Xは、SまたはGであり、Xは、GまたはEであり、XはG、S、またはNであり、Xは、QまたはYであり、Xは、GまたはSであり、Xは、PまたはRであり、Xは、YまたはQであり、Xは、GまたはSであり、X10は、SまたはGである)を含む。一部の実施形態では、(Xの少なくとも50%がAである。
【0219】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質の反復領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列(SGPGGYGPGSQGPSGPGGYGPGGPGSS)を含む。別の実施形態では、MaSP1タンパク質の反復領域は、配列番号3に記載のアミノ酸配列(AAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGYGPGGPGSS)を含む
【0220】
別の実施形態では、配列番号1と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有するMaSP1タンパク質の反復領域が提供される。
【0221】
別の実施形態では、ホモログは、配列番号2と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有する。
【0222】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質の反復領域は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する。
【0223】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質は、配列番号4(MSYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMDPEFKGLRRRAQLV);配列番号5(MSYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMDPEFKGLRRRAQLVRPLSNLDNAP);配列番号6(MSYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMDPEFKGLRRRAQLVDPPGCRNSARAGSS)、またはそれらのいずれかの機能的なホモログ、バリアント、誘導体、もしくはフラグメントからなる群から選択される単一のN末端領域を含む。別の実施形態では、C末端領域のホモログは、配列番号4~6のいずれか1つと少なくとも70%の相同性を共有する。
【0224】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質は、配列番号7(VAASRLSSPAASSRVSSAVSSLVSSGPTNGAAVSGALNSLVSQISASNPGLSGCDALVQALLELVSALVAILSSASIGQVNVSSVSQSTQMISQALS);配列番号8(GPSGPGAYGPSPSASASVAASRLSSPAASSRVSSAVSSLVSSGPTNGAAVSGALNSLVSQISASNPGLSGCDALVQALLELVSALVAILSSASIGQVNVSSVSQSTQMISQALS);またはそれらのいずれかの機能的なホモログ、バリアント、誘導体、フラグメント、もしくは変異体からなる群から選択される単一のC末端領域をさらに含む。別の実施形態では、N末端領域のホモログは、配列番号7~8と少なくとも70%の相同性を共有する。
【0225】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、国際特許公報第2017025964号に開示されるタンパク質の混合物を含む。
【0226】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、変異体の核酸配列を発現することにより得られる変異体タンパク質を含む。
【0227】
一部の実施形態では、MaSp1タンパク質は、少なくとも1つのタグ配列をさらに含む。本発明で使用され得るタグの非限定的な例として、Hisタグ、HAタグ、T7タグなどが挙げられる。当業者は、別の適切なタグまたは他の融合パートナーを良く認識している。
【0228】
「アミノ酸」は、本明細書中使用される場合、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびにおよび天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類縁体およびアミノ酸ミメティックを表す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸、および後に修飾されるアミノ酸、たとえばヒドロキシプロリン、γカルボキシグルタマート、およびO-ホスホセリンである。「アミノ酸類縁体」は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素、たとえばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを表す。このような類縁体は、修飾されたR基または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。「アミノ酸ミメティック」は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似する方法で機能する化学化合物を表す。アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する一般的に知られている3文字の記号または1文字の記号により表され得る。
【0229】
「アミノ酸配列」または「ペプチド配列」は、ペプチド結合により結合したアミノ酸残基がペプチドおよびタンパク質の鎖にある順序を表す。この配列は、一般的に、遊離アミノ基を含むN末端から遊離カルボキシル基を含むC末端へと記録される。アミノ酸配列は、多くの場合、それがタンパク質の一次構造を表す場合、ペプチド、タンパク質配列と呼ばれるが、用語「アミノ酸配列」または「ペプチド配列」と「タンパク質」との間を区別すべきである。これはタンパク質が、特定の3次元の構成にフォールディングされており、通常、リン酸化、アセチル化、グリコシル化、スルフヒドリル結合の形成、開裂などの翻訳後修飾を経たアミノ酸配列として定義されているためである。
【0230】
本明細書中使用される場合、「単離された」または「実質的に精製された」は、本発明により例証される合成spider silkアミノ酸配列または同配列をコードする核酸分子の文脈では、アミノ酸配列またはポリヌクレオチドが、自然な状況(natural milieu)から除去されているかまたはそれらの天然の状態から変更されていることを意味する。また「単離された」は、アミノ酸配列または核酸分子が精製される度合いを必ずしも反映していない。しかしながら、ある度合いまで精製されたこのような分子は「単離されている」ことを理解されたい。分子が自然な状況を呈さない、すなわち自然に存在しない場合、当該分子は、存在するかどうかに関わらず「単離されている」。例として、ヒトにおいて天然に存在しないアミノ酸配列またはポリヌクレオチドは、ヒトにおいて存在する場合であっても「単離されている」。
【0231】
用語「単離された」または「実質的に精製された」は、アミノ酸配列または核酸に適用される場合、アミノ酸配列または核酸が、天然の状態で結合している他の細胞成分を本質的に含まないことを表す。これは、均一な状態であり得るか、またはあるいは乾燥しているかもしくは水溶液中にあり得る。純度および均一性は、通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を使用して決定される。製剤に存在する優性種であるアミノ酸配列または核酸は、実質的に精製されている。
【0232】
一部の実施形態では、反復は、MaSp1タンパク質の反復領域のホモログ、バリアント、誘導体、またはそれらのフラグメントの反復である。一部の実施形態では、反復は、ADF-4タンパク質の反復領域のホモログ、バリアント、誘導体、またはそれらのフラグメントの反復である。
【0233】
本明細書中使用される場合、用語「機能的なホモログ、バリアント、誘導体、またはフラグメント」などでの用語「機能的な」は、定義された機能的なアッセイを介して同定された生物学的な機能または活性を有するアミノ酸配列を表す。より具体的には、定義された機能的なアッセイは、機能的なホモログ、バリアント、誘導体、またはフラグメントを発現する細胞で自己集合する繊維の形成である。
【0234】
アミノ酸配列または核酸配列は、相同性が少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%であると決定された場合、対応するアミノ酸配列または核酸のホモログである。
【0235】
相同性は、本明細書中使用される場合、2つのアミノ酸(ペプチド)間またはDNA配列間のパーセンテージ同一性に基づき決定され得る。一般的に、比較される2つの配列は、配列間に最大の相関を提供するようにアライメントされる。2つの配列のアライメントが試験され、2つの配列間の正確なアミノ酸(またはヌクレオチド)の対応を提供する位置の数を決定し、アライメントの全長で除算し100を乗算して、パーセンテージ同一性の数字が提供される。このパーセンテージ同一性の数字は、特に同じまたは非常に類似した長さの配列に特に適しており、著しく相同性がある比較される配列の全長にわたり決定されてもよく、または、固有の長さの配列により適しているかもしくは低いレベルの相同性を有する、より短い定義された長さにわたり決定されてもよい。2つ以上の配列の同一性を比較するための方法は、当該分野でよく知られている。よって、たとえば、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1で利用可能なプログラム、たとえばGAPおよびBESTFITのプログラムが、2つのアミノ酸配列間のパーセンテージ同一性および2つのポリヌクレオチド配列間のパーセンテージ同一性を決定するために使用され得る。BESTFITは、Smith and Watermの「local homology」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最良の単一の領域を見出す。BESTFITは、長さにおいて類似していない2つのポリペプチド配列または2つのポリヌクレオチド配列の比較により適しており、このプログラムは、より短い配列がより長い配列の一部を表すと仮定している。比較の際、GAPは、2つの配列をアライメントし、Needleman and Wunschのアルゴリズムにより「最大類似性」を見出す。GAPは、おおよそ同じ長さである配列の比較により適しており、アライメントは、全長にわたり予測される。好ましくは、各プログラムで使用されるパラメータ「Gap Weight」および「Length Weight」は、それぞれ、ポリヌクレオチド配列では50および3であり、ポリペプチド配列では12および4である。好ましくは、パーセンテージ同一性および類似性は、比較される2つの配列が最適にアライメントされる際に決定される。
【0236】
用語「同一の」、「実質的な同一性」、「実質的な相同性」、またはパーセント「同一性」は、2つ以上のアミノ酸または核酸配列の文脈において、後述されるデフォルトのパラメータを用いたBLASTもしくはBLAST2.0の配列比較アルゴリズムを使用するか、またはマニュアルのアライメントおよび外観検査により測定される、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたる最大対応に関して比較およびアライメントされた場合に、特定された領域(たとえばアミノ酸配列配列番号2または3)と同じであるかまたは特定されたパーセンテージの(すなわち約60%の同一性、または少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または99%の同一性)の同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2つ以上の配列またはサブシーケンスを表す。よって、このような配列は、「実質的に同一」である。またこの定義は、試験配列の補体(compliment)を表すか、これに適用され得る。またこの定義は、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列を含む。好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮し得る。
【0237】
配列の比較では、通常、1つの配列が、試験配列と比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列はコンピュータへと入り、必要な場合サブシーケンスの座標が指定され、配列アルゴリズムのプログラムパラメータが指定される。好ましくは、デフォルトのプログラムのパラメータが使用され得るか、または代わりのパラメータが指定され得る。よって、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき参照配列と比較した試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0238】
本発明は、配列番号1、2、または3のいずれか1つのバリアントの2~70の反復を含むアミノ酸配列をさらに包有する。本明細書中使用される場合、用語「バリアント」または「実質的に類似した」は、1つ以上(たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、または25)のアミノ酸残基またはヌクレオチドが欠失、置換、または付加されている具体的に同定された配列と異なるアミノ酸またはヌクレオチドの配列を含む。バリアントは、天然に存在する対立遺伝子のバリアントまたは天然を起源としないバリアントであり得る。バリアントまたは実質的に類似した配列は、最先端で使用される一般的なアルゴリズムにより決定される本明細書中記載されるアミノ酸またはヌクレオチド配列とそれらのアミノ酸またはヌクレオチド配列の同一性のパーセンテージを特徴とし得るアミノ酸配列または核酸のフラグメントを表す。好ましいアミノ酸または核酸のフラグメントは、参照の配列と比較する場合に少なくとも約40または45%の配列同一性、好ましくは約50%または55%の配列同一性、より好ましくは約60%または65%の配列同一性、より好ましくは約70%または75%の配列同一性、より好ましくは約80%または85%の配列同一性、さらにより好ましくは約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸またはヌクレオチドの配列を有するフラグメントである。
【0239】
一実施形態では、MaSp系ポリマーは、繊維である。
【0240】
一実施形態では、MaSp系ポリマーは、モノマーから構成される。一実施形態では、複数のモノマーが、ナノ繊維に配置されている。一実施形態では、複数のナノ繊維が、繊維に配置されるか、または繊維を構成する。一実施形態では、MaSp系ポリマーまたは繊維の中のモノマーまたはナノ繊維は、4~16nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系ポリマーまたは繊維の中のモノマーまたはナノ繊維は、6~14nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系ポリマーまたは繊維の中のモノマーまたはナノ繊維は、8~12nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、70~450nmの直径を有する。一実施形態では、タンパク質の繊維またはMaSp系ポリマーは、80~350nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、80~300nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、150~250nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、コイルとして配置されている。一実施形態では、単一の繊維または1つのMaSp系ポリマーが、コイルとして配置されている。一実施形態では、コイルは、5~800マイクロメートルの直径を有する。一実施形態では、コイルは、5~500マイクロメートルの直径を有する。一実施形態では、コイルは、5~30マイクロメートルの直径を有する。一実施形態では、コイルは、5~20マイクロメートルの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、5~800マイクロメートルの長さを有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、30~300マイクロメートルの長さを有する。
【0241】
一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、分枝状である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、1~10個の分枝を含む。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、炭水化物を含まない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、グリコシル化されていない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、脂肪または脂肪酸を含まない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、リンを含まない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、さらなる非MaSp系タンパク質を含まない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、さらなるポリマー(たとえば合成ポリマー、非MaSp系ペプチド、非MaSp系タンパク質)を含まない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは、さらなるポリマーを実質的に含まない、一実施形態では、「~を含まない(free of)」は、「~を欠いている」かまたは本質的に「~を欠いている」。
【0242】
一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さの直径に対するアスペクト比は、少なくとも1:10である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さの直径に対するアスペクト比は、少なくとも1:10~1:1500である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さの直径に対するアスペクト比は、少なくとも1:50~1:1000である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さの直径に対するアスペクト比は、1:100~1:1200である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さの直径に対するアスペクト比は、少なくとも1:100~1:1000である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さの直径に対するアスペクト比は、少なくとも1:500~1:1000である。
【0243】
用語誘導体および機能的な誘導体は、本明細書中使用される場合、いずれかの挿入、欠失、置換、および修飾を伴う本発明のアミノ酸配列を意味する。
【0244】
用語「挿入」は、本明細書中使用される場合、1~50個のアミノ酸残基、具体的には20~1個のアミノ酸残基、より具体的には1~10個のアミノ酸残基、最も具体的には1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10個のアミノ酸残基の、本発明の配列に対するアミノ酸残基のいずれかの付加を意味することを理解されたい。さらに、本発明のアミノ酸配列は、様々な同一または異なるアミノ酸残基で、そのN末端および/またはC末端で伸長され得る。
【0245】
アミノ酸の「置換」は、1つのアミノ酸の、類似の構造および/または化学的特性を有する別のアミノ酸との置き換え、すなわち保存的アミノ酸の置き換えの結果である。アミノ酸の置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づきなされ得る。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸として、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられ、正に荷電した(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが挙げられ、負に荷電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0246】
別の実施形態では、本発明の反復配列は、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、または7以下の、配列番号2または3のいずれか1つの配列に対するアミノ酸の置換を有する。一実施形態では、本発明の反復配列は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、または少なくとも13個の、配列番号2または3のいずれか1つの配列に対するアミノ酸の置換を有する。
【0247】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列で単一のアミノ酸またはごく一部のアミノ酸を変更、付加、または欠失する、アミノ酸、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失、または付加が、保存的に修飾されたバリアント(ここで変更は、アミノ酸の化学的に類似したアミノ酸での置換をもたらす)であることを認識している。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該分野でよく知られている。このような保存的に修飾されたバリアントは、本発明の多形のバリアント、種間のホモログ、およびアレルに加えられ、これを排除しない。
【0248】
たとえば、脂肪族アミノ酸(G、A、I、L、またはV)が、グループの別のメンバーで置換される置換、または1つの極性残基の別の残基への置換、たとえばアルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、もしくはグルタミンのアスパラギンへの置換などの置換が、なされ得る。以下の8つのグループは、それぞれ、互いに保存的な置換である他の例示的なアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0249】
保存的核酸置換は、上記に定義される保存的アミノ酸置換をもたらす核酸置換である。
【0250】
本発明のアミノ酸配列のバリアントは、配列番号2または3のいずれかにより示される反復単位で、アミノ酸レベルにて少なくとも80%の配列類似性、少なくとも85%の配列類似性、90%の配列類似性、または少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列類似性を有し得る。
【0251】
本発明のアミノ酸配列は、配列番号1または配列番号3、またはそれらのいずれかのフラグメントの2~70の反復を含み得る。「フラグメント」は、特定の領域のアミノ酸またはDNA配列のフラクションを構成する。ペプチド配列のフラグメントは、特定の領域よりも少なくとも1つのアミノ酸だけ短く、DNAのフラグメントは、特定の領域よりも少なくとも1つの塩基対だけ短い。フラグメントは、C末端側またはN末端側、またはその両方でトランケートされ得る。アミノ酸フラグメントは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも24、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、または少なくとも34個の、配列番号1または3のアミノ酸を含み得る。
【0252】
本発明のアミノ酸配列の変異体は、そのアミノ酸の、別のアミノ酸の1つ以上に対する1つ(点変異)以上、最大10個の交換を特徴とする。これらは、異なるコトンをもたらす、DNAレベルでの対応する変異の結果である。
【0253】
さらに、本発明は、本発明のアミノ酸配列の誘導体に関する。本発明のアミノ酸配列の誘導体は、たとえば、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、またはカルボキシル基などの官能基が、それぞれ誘導体化、たとえばグリコシル化、アシル化、アミド化、またはエステル化されている。グリコシル化した誘導体では、オリゴ糖は、通常、アスパラギン、セリン、スレオニン、および/またはリジンに結合している。アシル化された誘導体は、天然に存在する有機酸もしくは無機酸、たとえば酢酸、リン酸、もしくは硫酸により特にアシル化されており、これは通常、特にチロシンまたはセリンのN末端のアミノ基またはヒドロキシル基でそれぞれ起こる。エステルは、天然に存在するアルコール、たとえばメタノールまたはエタノールのエステルである。さらなる誘導体は、塩、特に薬学的に許容される塩、たとえばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩などの金属塩、たとえばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくは亜鉛の塩、またはアンモニアもしくは低級アルキルアミン、たとえばトリエチルアミン、ヒドロキシ低級アルキルアミン、たとえば2-ヒドロキシエチルアミンなどの適切な有機アミンで形成されたアンモニウム塩である。
【0254】
一部の実施形態では、本発明のsilkタンパク質は、翻訳後修飾を欠いている。
【0255】
一部の実施形態では、本発明のsilkタンパク質は、生分解性である。この特徴は、たとえばsilkタンパク質が生物学的な分解が望ましいin vivoでの使用で意図されている場合はいつでも、医薬の分野で重要であり得る。この特徴は、特に、縫合物質および創傷閉鎖および被覆系での適用を見出し得る。
【0256】
一部の態様では、本発明のMaSp系繊維は、適切な核酸配列を含む発現ベクターを使用して製造され、この核酸配列は、操作可能に結合したプロモーター、および任意選択で制御配列の発現制御下にある。例示的な発現系、たとえば国際特許公開公報第2020/050752号が、当該分野で知られている。
【0257】
一部の実施形態では、MaSp系タンパク質は、自己集合して形成される定義された構造をもたらす。一部の実施形態では、MaSp系タンパク質は、ネットワークの形態にある。一部の実施形態では、MaSp系タンパク質は、錯体の形態にある。一部の実施形態では、MaSp系タンパク質は、定義された二次構造、たとえばβターン、γターン、βシート、αヘリックスの立体構造などを誘導する。
【0258】
一部の態様では、本明細書において互換可能に使用されるMaSp系タンパク質またはMaSp系ポリマーは、繊維の形態にある。「繊維」は、本明細書中使用される場合、共によりあわされた2つ以上のフィラメントから構成される繊維状物質の微細なより糸を意味する。「フィラメント」は、微細な長さから1マイル以上の長さまでの範囲の不定の長さの細長く伸長した糸状の物体または構造を意味する。具体的には、合成spider silkフィラメントは、微細であり、タンパク質性である。「バイオフィラメント」は、組み換え技術により産生されたspider silkタンパク質を含むタンパク質から作製されたフィラメントを意味する。一部の実施形態では、用語「繊維」は、体系化されていない凝集体または沈殿物を包有しない。
【0259】
一部の実施形態では、タンパク質の繊維は、その少なくとも1つの次元(たとえば直径、長さ)の大きさを特徴とする。たとえば、限定するものではないが、繊維の直径は、10nm~1μm、20~100nm、および10~50nmである。
【0260】
一部の実施形態では、繊維は、ナノ繊維から構成される。一部の実施形態では、ナノ繊維は、たとえば、1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約40nm、約42nm、約44nm、約46nm、約48nm、または約50nmの直径(それらの間のいずれかの値または範囲を含む)を有する。一実施形態では、ナノ繊維は、3~7nmの直径を有する。一実施形態では、ナノ繊維は、4~6nmの直径を有する。
【0261】
一部の実施形態では、開示される繊維の長さは、1~200μm、10~100μm、100~500μm、または200~500μmである。
【0262】
本明細書中記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、開示される繊維(たとえば粒子)は、多孔性の構造を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性の構造は、少なくとも30%(たとえば30~99%)の多孔度を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性の構造は、少なくとも50%(たとえば50~99%)の多孔度を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性の構造は、少なくとも60%(たとえば60~99%)の多孔度を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性の構造は、少なくとも70%(たとえば70~99%)の多孔度を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性の構造は、少なくとも80%(たとえば80~99%)の多孔度を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性の構造は、少なくとも90%(たとえば90~99%)の多孔度を特徴とする。一部の実施形態では、多孔性の構造は、約90%の多孔度を特徴とする。
【0263】
本明細書において、用語「多孔度」は、空隙からなる物質(たとえば「スポンジ様」物質)の体積のパーセンテージを表す。別の実施形態では、多孔度は、全表面積(多孔性および非多孔性)に対し除算した表面積の中の空隙または管腔により測定される。
【0264】
一部の実施形態では、開示される繊維の多孔性構造は、繊維表面で水を効率的に吸収することを可能にする。すなわち、いずれの特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、この驚くべき発見は、天然で見出されるネイティブなspider silkとは明確に異なる開示される繊維の構造およびその多孔度の観点から説明され得る。
【0265】
本明細書中記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、開示される繊維は、平均直径がナノサイズの大きさであることを特徴とする。
【0266】
一部の実施形態では、開示される繊維は、平均直径が1~50nmの範囲であることを特徴とする。一部のこのような実施形態では、平均直径は、3~50nmの範囲にある。一部のこのような実施形態では、平均直径は、5~50nmの範囲にある。一部のこのような実施形態では、平均直径は、1~40nmの範囲にある。一部のこのような実施形態では、平均直径は、1~30nmの範囲にある。一部のこのような実施形態では、平均直径は、5~40nmの範囲にある。
【0267】
一部の実施形態では、MaSp系繊維は、複数の管孔を含む。一部の実施形態では、多孔性MaSp系繊維は、本明細書中以下(図19Aおよび19B)で例証されるように複数の小線維(たとえばナノ繊維)を含む。一部の実施形態では、MaSp系繊維は、本明細書中後述されるように粒子の形態にある。一部の実施形態では、MaSp系繊維は、本明細書中後述される通りである。一部の実施形態では、本組成物は、複数のMaSp系繊維を含む。一部の実施形態では、複数のMaSp系繊維は、異なる化学組成および/または異なる分子量(MW)を有する繊維を含む。
【0268】
以下の実施例のセクションでさらに例証されるように、一部の実施形態では、複数の開示される繊維は、自己集合した構造またはマトリックスの形態にあり得る。一部の実施形態では、このマトリックスは、生体物質に適切であるとされ得る。
【0269】
一部の実施形態では、このマトリックスは、本明細書中以下でさらに示されるように、細胞増殖、および細胞の活性の維持または促進に適切である。
【0270】
一部の実施形態では、用語「自己集合した」は、1つのドメイン上の結合基が十分に近くにあり、別のドメインとの構造的な結合を可能にするように方向づけられている場合に起こる、繊維の少なくとも2つのドメインの間の一連の結合性化学反応に基づく自己集合プロセス(たとえば自然発生的な自己集合プロセス)の結果得られる構造を表す。言い換えると、結合性相互作用は、繊維(複数の繊維を含む)のドメインの互いへの結合をもたらす遭遇をもたらす。一部の実施形態では、結合したドメインは、互いに平行ではない。また、それぞれが異なる平面に係合する自己集合した構造の2超のドメインが存在する配置が企図される。
【0271】
注目すべきことに、一部の実施形態において、自己集合した繊維の密度(たとえば約80%の空隙)は、0.1g/cm~0.4g/cm、または0.2g/cm~0.3g/cmの範囲にある。例示的な実施形態では、自己集合した繊維の密度は、約0.26g/cmである。
【0272】
ナノスケールの空間分解能および高時間分解能での表面の水和性試験は、理論的態様および実務的態様の両方から出現した分野である。
【0273】
以下にある実施例のセクションで示されるように、開示される繊維は、それらの体積および重量と比較して流体を吸収する顕著な特性を呈する高い度合いの表面の水和性を呈した。
【0274】
一部の実施形態では、ポリマーは、疎水性である。一部の実施形態では、ポリマーは、UV硬化されている。
【0275】
一部の実施形態では、開示される複合体は、生物学的に安定(biostable)である。一部の実施形態では、開示される複合体は、生物学的に切断可能(biocleavable)である。一部の実施形態では、開示される複合体は、生分解性である。
【0276】
一部の実施形態では、用語「生物学的に安定(biostable)」は、生理的条件下でインタクトを維持する(たとえばin vivoで分解せず、よって非生分解性または生物学的に切断可能ではない)化合物またはポリマーを表す。
【0277】
一部の実施形態では、「生分解性」は、生理的および/環境的条件下で分解生成物に分解し得る物質を表す。このような生理的および/または環境的条件として、たとえば、加水分解(加水分解的な切断を介した分解)、酵素的触媒(酵素による分解)、および力学的な相互作用が挙げられる。この用語は、通常、1年より短い期間以内に物質の50重量パーセントが分解するようなこれら条件下で分解する物質を表す。
【0278】
一部の実施形態では、用語「生分解性」はまた、本発明の実施形態の文脈で使用される場合、生理的な条件下で分解し、宿主生物への生物学的再吸収(bioresorption)を経る、すなわち宿主生物の生化学系の代謝物となる産物を分解する物質を表す、用語「生物学的再吸収可能な」を包有する。
【0279】
薬用化粧品組成物
別の態様では、本発明の組成物および/または複合体の有効量と、美容上許容される担体とを含む薬用化粧品組成物がある。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または複合体は、化粧品有効成分の形態にある。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、化粧品有効成分および美容上許容される担体を含み、化粧品有効成分は、本発明の組成物および/または複合体を含む。
【0280】
一部の実施形態では、本組成物の中の本発明の組成物および/または複合体の重量/重量(w/w)の濃度は、1~95%である。
【0281】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物の中の本発明の組成物および/または複合体のw/w濃度は、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。
【0282】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物の中の化粧品有効成分のw/w濃度は、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。
【0283】
一部の実施形態では、化粧品有効成分は、誘導体化MaSp系繊維の縒り合された構造(本明細書中「マトリックス」として使用される)によりカプセル化されているかまたはこの中に組み込まれている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、マトリックスの中に埋め込まれている。
【0284】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物の中の美容上許容される担体の濃度は、60~95(w/w)%、60~70(w/w)%、70~75(w/w)%、75~80(w/w)%、80~85(w/w)%、85~90(w/w)%、90~92(w/w)%、92~95(w/w)%、95~97(w/w)%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。一部の実施形態では、用語「美容上許容される担体」および用語「担体」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0285】
一部の実施形態では、担体は、生理的に適切な担体である。例示的な生理的に適切な担体は、本明細書中以下に列挙されており、さらなる生理的に適切な担体は、当該分野でよく知られている。
【0286】
一部の実施形態では、担体は、乳化剤を含む、乳化剤は、相の間の界面張力を低減し、エマルジョンの処方および安定性を改善し得る。乳化剤は、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性、および両性イオンの乳化剤であり得る(McCutcheon’s (1986);米国特許第5,011,681号;同第4,421,769号;同第3,755,560号を参照されたい)。
【0287】
乳化剤の非限定的な例として、グリセリンのエステル、プロピレングリコールのエステル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールの脂肪酸エステル、ソルビトールのエステル、ソルビタン無水物のエステル、カルボン酸コポリマー、グルコースのエステルおよびエーテル、エトキシル化エーテル、エトキシル化アルコール、リン酸アルキル、ポリオキシエチレン脂肪エーテルホスフェート、脂肪酸アミド、アシル乳酸塩、石鹸、TEAステアリン酸塩、DEAオレス-3 リン酸、ポリエチレングリコール 20ソルビタンモノラウラート(ポリソルベート20)、ポリエチレングリコール5ダイズステロール(soya sterol)、ステアレス-2、ステアレス-20、ステアレス-21、セテアレス-20、PPG-2 メチルグルコースエーテルジステアラート、セテス-10、ポリソルベート80、セチルホスフェート、セチルリン酸カリウム、セチルリン酸字エタノールアミン、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリル、PEG-100ステアリン酸塩、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0288】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物の中の化粧品有効成分の担体に対するw/w比は、最大100:1、最大80:1、最大60:1、最大50:1、最大40:1、最大30:1、最大20:1、最大10:1、最大9:1、最大8:1、最大7:1、最大6:1、最大5:1、最大4:1、最大3:1、最大2:1、最大1:1(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0289】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、固体組成物である。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、ペレットまたは粉末の形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、フィルムの形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、半固体(たとえばゲルまたはハイドロゲル)の形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、実質的に均質である。一部の実施形態では、化粧品有効成分および担体は、本組成物の中で均質に混合されている。
【0290】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物(たとえば固体組成物)は、溶媒、界面活性剤、担体、粒子、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを実質的に欠いており、ここで実質的には、本組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%である。
【0291】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、0.1%~95%の溶媒、フィルム形成剤、顔料、染料、安定化剤、油、および増粘剤のうちのいずれか1つ、またはそれらのいずれかの組み合わせをさらに含む。
【0292】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、溶媒をさらに含む。一部の実施形態では、本組成物の中の溶媒のw/w含有量は、10~90%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。
【0293】
一部の実施形態では、溶媒は、水性または有機溶媒である。一部の実施形態では、有機溶媒は、本明細書中記載される通りである。
【0294】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、液体または半液体の組成物である。一部の実施形態では、液体または半液体の組成物は、25℃で50~3000cP、50~100cP、100~300cP、300~500cP、500~1000cP、1000~2000cP、2000~3000cP(それらの間のいずれかの範囲を含む)の粘度を特徴とする。
【0295】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物(たとえば液体組成物)は、液剤、分散剤、エマルジョン、ゲル、ハイドロゲル、半液体、およびフォーム、またはそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、本組成物(たとえば液体組成物)は、溶媒、界面活性剤、担体、粒子、またはそれらの組み合わせを実質的に欠いており、ここで実質的には、本組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。
【0296】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物(たとえば液体組成物)は、増粘剤をさらに含む。一部の実施形態では、本組成物の中の増粘剤のw/w含有量は、1~20%、1~2%、2~5%、5~7%、4~6%、6~8%、8~10%、10~12%、12~15%、15~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。一部の実施形態では、増粘剤は、液体組成物に所定の粘度を提供する。
【0297】
増粘剤の非限定的な例として、限定するものではないが、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミチン酸、PEG、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、またはそれらの誘導体(エステル、架橋したポリアクリレート、またはそれらの組み合わせなど)、ポリアクリルアミド(たとえばアクリルアミドならびにアクリル酸および置換されたアクリル酸で置換されたアクリルアミドまたはそれらの組み合わせのマルチブロックコポリマー、およびガム(たとえばセルロース、カルボキシメチル、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸プロピオン酸セルロースカルボキシレート、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、セルロース硫酸ナトリウム、アミロペクチン、カラゲナン、デキストリン、グアーガム、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルキトサン、ケルプ、ロカストビーンガム、ナットウガム、トラガカントゴム、キサンタンガム、アカシア、およびアガー、またはそれらの組み合わせ)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0298】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、添加剤をさらに含む。一部の実施形態では、添加剤は、抗菌剤(たとえばメチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、イソブチルパラベンなど)、皮膚のコンディショニング剤(たとえばアロエ抽出物、アラントイン、ビサボロール、セラミド、ジメチコン、およびグリチルリチン酸ジカリウム)が挙げられる。
【0299】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、美容製剤である。一部の実施形態では、美容製剤は、美容製品での使用に適した成分を含む。
【0300】
一部の実施形態では、本発明の組成物および/または複合体は、薬用化粧品組成物の中で実質的に安定している。
【0301】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、生体適合性である。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、疎水性または親水性の化粧品有効成分のバイオアクセシビリティを高める。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、対象の中で化合物のバイオアクセシビリティを高め、この化合物は、多糖、α-ヒドロキシカルボン酸、保水剤など(本明細書中以下で例証)から選択される化粧品有効成分である。用語「バイオアクセシビリティ」は、本明細書中使用される場合、本発明の組成物のいずれか1つによりin vitroで化粧品有効成分を放出する特性を対象とする。in vitroでの放出は、皮膚テープ試験(実施例のセクションに記載)を使用することにより評価され得る。
【0302】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、化粧品有効成分のバイオアベイラビリティおよび/またはバイオアクセシビリティを増大させる。一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、その中に埋め込まれた化粧品有効成分の分解を実質的に低減する。
【0303】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、化粧品の形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、局所的に拡散可能な組成物、噴霧可能な組成物、エアロゾル化された組成物、注射可能な組成物、食用組成物、錠剤、ゲルカプセル、または丸剤の形態の組成物の形態にある。
【0304】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、本発明の複合体の有効量(たとえば美容上有効量)を含む日焼け止め組成物である。一部の実施形態では、日焼け止め組成物は、金属酸化物キレート基に共有結合した官能部分を含む誘導体化MaSp系繊維の有効量を含み、ここで官能部分および金属酸化物キレート基は、本明細書中記載される通りであり、誘導体化MaSp系繊維は、本明細書中記載の金属酸化物キレート基に共有結合したいずれかのMaSp系繊維(たとえば多孔性および/または非多孔性MaSp系繊維)を含む。
【0305】
一部の実施形態では、日焼け止め組成物は、UV照射の少なくとも一部を吸収するためのものである。一部の実施形態では、日焼け止め組成物は、対象の皮膚へのUV曝露を低減するためのものである。
【0306】
一部の実施形態では、UV曝露の低減は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0307】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、1~100の日焼け止め指数(SPF)を有する日焼け止め組成物として特徴付けられる。
【0308】
一部の実施形態では、本発明の日焼け止め組成物は、1~100、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~100(それらの間のいずれかの範囲を含む)の日焼け止め指数(SPF)を特徴とする。
【0309】
一部の実施形態では、有効量は、UV曝露の低減を獲得するために十分な複合体の量を含み、この低減は本明細書中記載される通りである。一部の実施形態では、有効量は、0.01~95%、0.01~0.1%、0.1~0.5%、0.5~0.1%、0.1~0.5%、0.5~1%、1~5%、5~10%、10~20%、20~30%、30~50%、50~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)の、日焼け止め組成物の中の複合体のw/w濃度を含む。
【0310】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、染料および/または顔料に結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維の有効量(たとえば美容上有効量)を含むヘアカラー組成物である。一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、染料および/または顔料に結合した誘導体化MaSp系繊維の有効量を含み、誘導体化MaSp系繊維は、本明細書中記載されるように官能基(たとえば正または負に荷電した基)に共有結合したいずれかのMaSp系繊維(たとえば多孔性および/または非多孔性MaSp系繊維)を含む。一部の実施形態では、有効量は、対象の髪に安定した結合した、対象の髪をカラーリングするため、たとえばヘアカラーを得るために十分な複合体(たとえば染料および/または顔料に結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維)の量を含む。
【0311】
一部の実施形態では、染料および/または顔料は、共有結合または非共有結合を介して誘導体化MaSp系繊維(たとえば多孔性または非多孔性MaSp系繊維)に結合している。一部の実施形態では、染料および/または顔料に結合した誘導体化MaSp系繊維は、ヘアカラー組成物の中で安定し続けている。
【0312】
一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、化粧品有効成分としての染料または顔料に結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維を含む。
【0313】
一部の実施形態では、有効量は、50~99.99(w/w)%、50~60(w/w)%、60~70(w/w)%、70~80(w/w)%、80~90(w/w)%、90~92(w/w)%、92~95(w/w)%、95~97(w/w)%、97~99(w/w)%、99~99.9(w/w)%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である、ヘアカラー組成物の中の誘導体化多孔性MaSp系繊維のw/w濃度を含む。
【0314】
一部の実施形態では、有効量は、0.01~95%、0.01~0.1%、0.1~0.5%、0.5~0.1%、0.1~0.5%、0.5~1%、1~5%、5~10%、10~20%、20~30%、30~50%、50~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である、ヘアカラー組成物の中の誘導体化多孔性MaSp系繊維のw/w濃度を含む。
【0315】
一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、3~7、3~4、4~5、5~6、6~7(それらの間のいずれかの範囲を含む)のpH値を特徴とする。
【0316】
一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、髪のカラーリング、またはそれを含む物品(たとえばアパレル、ウィッグなど)のためのものである。一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、それを必要とする対象の髪に安定して接着する。一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、髪のコーティングを提供する。一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、髪への安定したコーティングを提供できる。一部の実施形態では、ヘアカラー組成物は、染料および/または顔料の分解(たとえば化学的な分解または光漂白)を低減または予防する。一部の実施形態では、コーティングは、少なくとも1日間(d)、少なくとも5d、少なくとも10d、少なくとも15d、少なくとも20d、少なくとも25d、少なくとも30d(それらの間のいずれかの範囲を含む)の間安定している。
【0317】
いずれの特定の理論または機構にも拘束されるものではないが、ヒトの髪(漂白または無漂白)は負に荷電していると仮定されている。よって、正に荷電したポリマーを含む組成物(たとえば本発明のヘアカラー組成物)が、負に荷電した髪に(たとえば静電相互作用を介して)結合することによりその上にコーティングを形成することが予想される。
【0318】
本発明者らは、様々な誘導体化多孔性MaSp系繊維を含むヘアカラー組成物(たとえば本明細書中記載のヘアカラー組成物)の実施に成功した。これらヘアカラー組成物の一部は、ヘアカラー組成物を髪(たとえばヒトの髪)と接触させた後に、均一で安定した髪のコーティングをもたらした。髪のコーティングの実施に成功した例示的なヘアカラー組成物として、(たとえば4-(2アミノエチル)アニリン;3アミノプロピル(amonipropyl)トリエトキシシランによるかまたはPEIにより化学的に修飾した)アミノ化MaSp系繊維が挙げられる。当業者は、アミノ化MaSp系繊維のゼータ電位がpH依存性であることにより、アミノ化MaSp系繊維が対応するアミンのpKa未満のPHで正のゼータ電位を有する(ここでpKaは、コンジュゲートした酸のpKaを表す)ことを理解するものである。
【0319】
さらに、本発明者らは、ヘアカラー組成物のため様々なMaSp系繊維を利用した。安定した髪のコーティングは、アミノ化MaSp系タンパク質およびアミノ化変異体MaSp系タンパク質を使用することにより得られた。
【0320】
一部の実施形態では、コーティングは、連続した洗浄の後(たとえば2、4、6、8、10、15、20回(それらの間のいずれかの範囲を含む)の後)に安定している。一部の実施形態では、コーティングは、対照と比較して低減した分解(たとえば漂白)を特徴とする。
【0321】
一部の実施形態では、本発明は、薬用化粧品組成物を含むキットを対象とする。特定の実施形態では、薬用化粧品組成物は、容器に含まれている。容器は、ビン、ディスペンサー、またはパッケージであり得る。容器は、所定の量の本組成物を分注し得る。特定の態様では、本組成物は、スプレー、少量(dollop)、または液体で分注される。容器は、その表面に印を含み得る。印は、言葉、略語、写真、または記号であり得る。
【0322】
薬用化粧品組成物(元の状態のMaSp系繊維)
本発明の別の態様では、本発明のMaSp系ポリマーまたはMaSp系繊維(たとえば本発明の元の状態のMaSp系ポリマーおよび/または本発明の誘導体化MaSp系ポリマー)と、それにカプセル化または結合した化粧品有効成分とを含む薬用化粧品組成物がある。本明細書中使用される場合、用語「MaSp系ポリマー」および用語「MaSp系繊維」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0323】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、MaSp系繊維または誘導体化多孔性MaSp系繊維の有効量を含む。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、MaSp系繊維または誘導体化多孔性MaSp系繊維の薬用化粧品上有効量を含む。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、MaSp系繊維の薬用化粧品上有効量およびそれに結合した化粧品有効成分の薬用化粧品上有効量を含む。
【0324】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、美容上許容される担体をさらに含む薬用化粧品組成物である。一部の実施形態では、用語「本発明の組成物」および用語「本発明の薬用化粧品組成物」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0325】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、それを必要とする対象の皮膚または髪への適用のために製剤化されている。
【0326】
一部の実施形態では、本組成物の中の化粧品有効成分の重量/重量(w/w)濃度は、1~95%である。一部の実施形態では、本組成物の中の化粧品有効成分のw/w濃度は、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。
【0327】
一部の実施形態では、化粧品有効成分は、MaSp系繊維と接触しているかまたはこれに結合している。一部の実施形態では、化粧品有効成分を多く含むポリマーは、MaSp系繊維に物理的に結合している。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、MaSp系繊維上または中の管孔の少なくとも一部を充填する。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、MaSp系繊維によりカプセル化されている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、小線維と接触または結合している。一部の実施形態では、化粧品成分は、粒子の縒り合された構造(本明細書中「マトリックス」として使用される)によりカプセル化されている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、粒子によりカプセル化されている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、MaSp系繊維の中に組み込まれている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、MaSp系繊維の中に埋め込まれている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、マトリックスの中に埋め込まれている。一部の実施形態では、マトリックスは、化粧品有効成分によりドープ処理されている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、複数の管孔の中に位置している。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、小線維の間に位置している。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、管腔の中に位置しており、ここで管腔は、マトリックスの縒り合された繊維により定義されている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、小線維によりカプセル化されている。
【0328】
一部の実施形態では、結合は、非共有結合、物理的相互作用、またはその両方を介するものである。
【0329】
一部の実施形態では、化粧品有効成分は、管腔の体積の20%~100%を充填する。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、管腔の体積の55%~100%、60%~100%、55%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、50%~99%、50%~98%、50%~97%、50%~95%、50%~90%、70%~90%、または70%~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)を充填する。
【0330】
一部の実施形態では、化粧品有効成分は、粒子の体積(管腔)の20%~100%を充填する。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、粒子の体積の55%~100%、60%~100%、55%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、50%~99%、50%~98%、50%~97%、50%~95%、50%~90%、70%~90%、または70%~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)を充填する。
【0331】
一部の実施形態では、本発明の組成物の中のMaSp系繊維または誘導体化MaSp系繊維の含有量は、20~60(w/w)%である。一部の実施形態では、第1のポリマーの含有量は、25~60(w/w)%、30~60(w/w)%、35~60(w/w)%、30~40(w/w)%、40~60(w/w)%、40~50(w/w)%、50~60(w/w)%、40~45(w/w)%、45~50(w/w)%、50~55(w/w)%、55~60(w/w)%、20~55(w/w)%、または20~50(w/w)%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0332】
一部の実施形態では、本組成物の中のMaSp系繊維の含有量は、60~95(w/w)%、60~70(w/w)%、70~75(w/w)%、75~80(w/w)%、80~85(w/w)%、85~90(w/w)%、90~92(w/w)%、92~95(w/w)%、95~97(w/w)%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0333】
一部の実施形態では、本発明の組成物(例えば薬用化粧品組成物)の中のMaSp系繊維または誘導体化MaSp系繊維の含有量は、0.1~20(w/w)%、0.1~0.5(w/w)%、0.5~1(w/w)%、1~5(w/w)%、5~10(w/w)%、10~15(w/w)%、15~20(w/w)%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0334】
一部の実施形態では、本発明の組成物の中の化粧有効成分のMaSp系繊維に対するw/w比は、10:1~1:10、10:1~8:1、8:1~6:1、6:1~4:1、4:1~3:1、3:1~2:1、2:1~1:1、1:1~1:2、1:2~1:3、1:3~1:5、1:5~1:10(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0335】
一部の実施形態では、本組成物の中の化粧品有効成分のMaSp系繊維に対するw/w比は、最大6:1、最大5:1、最大4:1、最大3:1、最大2:1、および最大1:1(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0336】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、固体組成物である。一部の実施形態では、本発明の組成物は、ペレットまたは粉末の形態にある。一部の実施形態では、本発明の組成物は、フィルムの形態にある。一部の実施形態では、本発明の組成物は、半固体(たとえばゲルまたはハイドロゲル)の形態にある。一部の実施形態では、本発明の組成物は、実質的に均質である。一部の実施形態では、化粧品有効成分およびMaSp系繊維は、本組成物の中で均質に混合されている。一部の実施形態では、本組成物(たとえば固体組成物)は、溶媒、界面活性剤、担体、粒子、またはそれらの組み合わせを実質的に欠いており、ここで実質的には、本組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%である。
【0337】
一部の実施形態では、本発明の組成物は0.1%~95%の溶媒、フィルム形成剤、顔料、染料、安定化剤、油、および増粘剤のうちのいずれか1つ、またはそれらのいずれかの組み合わせをさらに含む。
【0338】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、溶媒をさらに含む。一部の実施形態では、本組成物の中の溶媒のw/w含有量は、10~90%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0339】
一部の実施形態では、溶媒は、水性または有機溶媒である。一部の実施形態では、有機溶媒は、本明細書中記載される通りである。
【0340】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、液体または半液体の組成物である。一部の実施形態では、液体または半液体の組成物は、25℃で50~3000cP、50~100cP、100~300cP、300~500cP、500~1000cP、1000~2000cP、2000~3000cP(それらの間のいずれかの範囲を含む)の粘度を特徴とする。
【0341】
一部の実施形態では、本発明の組成物(たとえば液体組成物)は、液剤、分散剤、エマルジョン、ゲル、ハイドロゲル、半液体、およびフォーム、またはそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、本組成物(たとえば液体組成物)は、溶媒、界面活性剤、担体、粒子、またはそれらの組み合わせを実質的に欠いており、ここで実質的には、本組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0342】
一部の実施形態では、本発明の組成物(たとえば液体組成物)は、フィルム形成剤をさらに含む。一部の実施形態では、本組成物の中のフィルム形成剤のw/w含有量は、0.1~20%、0.1~1%、1~2%、2~5%、5~7%、4~6%、6~8%、8~10%、10~12%、12~15%、15~20%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。一部の実施形態では、フィルム形成剤は、液体のフィルム形成剤および/または固体のフィルム形成剤から選択される。一部の実施形態では、フィルム形成剤は、固体のフィルム形成剤である。
【0343】
フィルム形成剤の非限定的な例として、限定するものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセタート、ポリアルキルアクリラート;デキストリン、セルロース誘導体、たとえばアルキルセルロースおよびニトロセルロース、シリコン処理した多糖、たとえばプルラントリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバメート;プルラン、agave系多糖、ポリフェノール、ガム;intansyl、アクリルシリコーングラフトコポリマー、たとえばアルキルアクリラート-ジメチコンコポリマー、鉱物油、石油系油、植物油、シリコーン樹脂、たとえばトリメチルシロキシケイ酸、シリコーン修飾されたポリノルボルネン、シリコーン樹脂、たとえばフッ素修飾されたシリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、ポリマーエマルジョン樹脂、テルペン樹脂、ポリブテン、ポリイソプレン、アルキド樹脂、ポリビニルピロリドン修飾されたポリマー、ロジン修飾された樹脂、およびポリウレタン、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0344】
フィルム形成剤の他の非限定的な例として、限定するものではないが、プルラン、トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバメート(たとえばTSPL-30d5)、アルキルアクリラート-ジメチコンコポリマー(たとえばKP-543、545、549、550、および545L)、トリメチルシロキシケイ酸(たとえばKF-7312JおよびX-21-5250)、ならびにシリコーン修飾されたポリノルボルネン、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0345】
一部の実施形態では、フィルム形成剤は、精製された化合物、植物抽出物、少なくとも部分的に濃縮された植物抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせの形態にある。一部の実施形態では、本組成物の中の適切な濃度のフィルム形成剤は、それに柔軟性を提供する。一部の実施形態では、適切な濃度のフィルム形成剤は、対照の皮膚への本組成物の適用(たとえば塗ることによる適用)を可能にする。一部の実施形態では、適切な濃度のフィルム形成剤は、本組成物のフィルムを形成する特性を促進する。一部の実施形態では、フィルム形成剤の適切な濃度は、本明細書中記載される通りである。フィルム形成剤を含む例示的な組成物は、実施例のセクションで提供されている。
【0346】
一部の実施形態では、本発明の組成物(たとえば液体組成物)は、増粘剤をさらに含む。一部の実施形態では、本組成物の中の増粘剤のw/w含有量は、1~20%、1~2%、2~5%、5~7%、4~6%、6~8%、8~10%、10~12%、12~15%、15~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。一部の実施形態では、増粘剤は、液体組成物に所定の粘度を提供する。
【0347】
一部の実施形態では、本組成物は、MaSp系繊維、フィルム形成剤、および化粧品有効成分を含む。一部の実施形態では、本組成物は、1~20(w/w)%のMaSp系繊維、0.1~10(w/w)%のフィルム形成剤、1~70(w/w)%の化粧品有効成分、および任意選択で10~95(w/w)%の溶媒を含む。一部の実施形態では、本組成物は、5~15(w/w)%のMaSp系繊維、1~15(w/w)%のフィルム形成剤、1~50(w/w)%の化粧品有効成分、および任意選択で50~95(w/w)%の溶媒を含む。一部の実施形態では、本組成物は、1~5%の化粧品有効成分(たとえばα-ヒドロキシカルボン酸、β-ヒドロキシカルボン酸、クエン酸、サリチル酸などから選択される酸)を含む。非限定的な例示的な組成物は、本明細書中以下の実施例のセクションに記載されている。
【0348】
一部の実施形態では、本組成物は、添加剤をさらに含む。一部の実施形態では、添加剤は、抗菌剤(たとえばメチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、イソブチルパラベンなど)、皮膚のコンディショニング剤(たとえばアロエ抽出物、アラントイン、ビサボロール、セラミド、ジメチコン、およびグリチルリチン酸ジカリウム)からなる群から選択される。
【0349】
一部の実施形態では、本組成物は、美容製剤である。一部の実施形態では、美容製剤は、化粧品での使用に適した成分を含む。
【0350】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、固体組成物である。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、ペレットまたは粉末の形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、フィルムの形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、半固体(たとえばゲルまたはハイドロゲル)の形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、実質的に均質である。一部の実施形態では、化粧品有効成分および担体は、本組成物の中で均質に混合されている。
【0351】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物(たとえば固体組成物)は、溶媒、界面活性剤、担体、粒子、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを実質的に欠いており、ここで実質的には、本組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%である。
【0352】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、0.1~95%の溶媒、フィルム形成剤、顔料、染料、安定化剤、油、および増粘剤のうちのいずれか1つ、またはそれらのいずれかの組み合わせのうちのをさらに含む。
【0353】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、溶媒をさらに含む。一部の実施形態では、本組成物の中の溶媒のw/w含有量は、10~90%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0354】
一部の実施形態では、溶媒は、水性または有機溶媒である。一部の実施形態では、有機溶媒は、本明細書中記載される通りである。
【0355】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、液体または半液体の組成物である。一部の実施形態では、液体または半液体の組成物は、25℃で50~3000cP、50~100cP、100~300cP、300~500cP、500~1000cP、1000~2000cP、2000~3000cP(それらの間のいずれかの範囲を含む)の粘度を特徴とする。
【0356】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物(たとえば液体組成物)は、液剤、分散剤、エマルジョン、ゲル、ハイドロゲル、半液体、およびフォーム、またはそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、本組成物(たとえば液体組成物)は、溶媒、界面活性剤、担体、粒子、またはそれらの組み合わせを実質的に欠いており、ここで実質的には、本組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である。
【0357】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物(たとえば液体組成物)は、増粘剤をさらに含む。一部の実施形態では、本組成物の中の増粘剤のw/w含有量は、1~20%、1~2%、2~5%、5~7%、4~6%、6~8%、8~10%、10~12%、12~15%、15~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)である。一部の実施形態では、増粘剤は、液体組成物に所定の粘度を提供する。
【0358】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、添加剤をさらに含む。一部の実施形態では、添加剤は、抗菌剤(たとえばメチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、イソブチルパラベンなど)、皮膚のコンディショニング剤(たとえばアロエ抽出物、アラントイン、ビサボロール、セラミド、ジメチコン、およびグリチルリチン酸ジカリウム)からなる群から選択される。
【0359】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、美容製剤である。恥部の実施形態では、美容製剤は、化粧品での使用に適した成分を含む。
【0360】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、日焼け止め組成物である。一部の実施形態では、日焼け止め組成物は、UV照射の少なくとも一部を吸収するためのものである。一部の実施形態では、日焼け止め組成物は、対象の皮膚および/または髪へのUV曝露を低減するためのものである。
【0361】
一部の実施形態では、UV曝露は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%(それらの間のいずれかの範囲を含む)低減する。
【0362】
一部の実施形態では、日焼け止め組成物は、1~100、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~100(それらの間のいずれかの範囲を含む)のSPFを特徴とする。
【0363】
一部の実施形態では、有効量は、UV曝露の低減を獲得するために十分な本発明のMaSp系繊維の量を含み、ここでの低減は本明細書中記載される通りである。一部の実施形態では、有効量は、0.01~95%、0.01~0.1%、0.1~0.5%、0.5~0.1%、0.1~0.5%、0.5~1%、1~5%、5~10%、10~20%、20~30%、30~50%、50~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)の、日焼け止め組成物の中の本発明のMaSp系繊維のw/w濃度を含む。
【0364】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、対象の髪への適用のために製剤化されており、本明細書中「髪組成物」としても使用されている。一部の実施形態では、髪組成物は、染料および/または顔料に結合した本発明のMaSp系繊維の有効量を含む。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、染料および/または顔料に結合した本発明の誘導体化多孔性MaSp系繊維の有効量を含む髪組成物である。
【0365】
一部の実施形態では、髪組成物は、染料および/または顔料に結合した本発明のMaSp系繊維の有効量を含み、ここでの結合は、共有結合または非共有結合を介するものである。一部の実施形態では、髪組成物は、本明細書中記載の官能基(たとえば正または負に荷電した基)に共有結合したいずれかの誘導体化MaSp系繊維(たとえば多孔性MaSp系繊維および/または非多孔性MaSp系繊維)を含む。一部の実施形態では、染料および/または顔料に結合したMaSp系繊維は、髪組成物の中で安定したままである。
【0366】
一部の実施形態では、髪組成物は、化粧品有効成分としての染料または顔料に結合した本発明のMaSp系繊維を含む。
【0367】
一部の実施形態では、有効量は、50~99.99(w/w)%、50~60(w/w)%、60~70(w/w)%、70~80(w/w)%、80~90(w/w)%、90~92(w/w)%、92~95(w/w)%、95~97(w/w)%、97~99(w/w)%、99~99.9(w/w)%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である、髪組成物の中のMaSp系繊維(たとえば誘導体化または元の状態の多孔性MaSp系繊維)のw/w濃度を含む。
【0368】
一部の実施形態では、有効量は、0.01~95%、0.01~0.1%、0.1~0.5%、0.5~0.1%、0.1~0.5%、0.5~1%、1~5%、5~10%、10~20%、20~30%、30~50%、50~70%、70~80%、80~90%、90~95%(それらの間のいずれかの範囲を含む)である、髪組成物の中のMaSp系繊維のw/w濃度を含む。
【0369】
一部の実施形態では、髪組成物は、3~7、3~4、4~5、5~6、6~7(それらの間のいずれかの範囲を含む)のpH値を特徴とする。
【0370】
一部の実施形態では、髪組成物は、対象の髪をカラーリングするためのものである。一部の実施形態では、髪組成物は、それを必要とする対象の髪に安定して接着する。一部の実施形態では、髪は、損傷を受けた髪である。一部の実施形態では、髪組成物は、図1により表されるように、対象の、損傷を受けていない髪と比較して損傷を受けた髪への親和性が高い。
【0371】
いずれの特定の理論または機構にも拘束されるものではないが、ヒトの損傷を受けた髪(漂白または無漂白)は負に荷電していると仮定されている。よって、正に荷電したポリマーを含む組成物(たとえば本発明の髪組成物)が、負に荷電している損傷を受けた髪に(たとえば静電相互作用を介して)結合することによりその上にコーティングを形成することが予想される。
【0372】
本明細書中使用される場合、用語「損傷を受けた髪」は、髪のスケール/キューティクルへの損傷などのいずれかの物理的な髪の損傷を表す。一部の実施形態では、損傷を受けた髪の髪のスケール/キューティクルは、ギザギザであり、それらの一部が浮き上がっているかまたは折れている。一部の実施形態では、損傷を受けた髪の外層が剥がされており、内側の皮質は、髪の繊維の一部の領域において損傷に対し保護されておらず、脆弱である。一部の実施形態では、損傷を受けた髪の外層は、ほぼ完全に除去され、ここで皮質は、露出されており、かつ/または弱められている。損傷を受けた髪は、光沢のない外観、不均一な色のバランス、または色褪せた色を伴う荒い質感を特徴とし得る。さらに、損傷を受けた髪は、枝毛の分かれた部分を特徴とし得る。
【0373】
一部の実施形態では、髪組成物は、髪のコーティングを提供する。一部の実施形態では、髪組成物は、髪にとって安定したコーティングを提供できる。一部の実施形態では、髪組成物は、染料および/または顔料の分解(たとえば化学的な分解または光漂白)を低減または予防する。
【0374】
一部の実施形態では、髪組成物は、髪の損傷を予防または低減する。
【0375】
一部の実施形態では、コーティングは、少なくとも1日(d)、少なくとも5d、少なくとも10d、少なくとも15d、少なくとも20d、少なくとも25d、少なくとも30d(それらの間のいずれかの範囲を含む)の間安定している。
【0376】
本発明者らは、様々な誘導体化多孔性MaSp系繊維を含む髪組成物および元の状態の多孔性MaSp系繊維を含む髪組成物(たとえば本明細書中記載の髪組成物)の実施に成功した。これら髪組成物の一部は、髪組成物を髪(たとえばヒトの髪)と接触させた後、均一であり安定した髪のコーティングをもたらした。髪のコーティングの実施に成功した例示的な髪組成物(たとえば図1~9を参照)として、(たとえば4-(2アミノエチル)アニリン;3-アミノプロピル(amonipropyl)トリエトキシシランまたはPEIにより化学的に修飾した)アミノ化MaSp系繊維が挙げられる。当業者は、アミノ化MaSp系繊維のゼータ電位がpH依存性であり、よってアミノ化MaSp系繊維は、対応するアミノのpKa未満のpHで正のゼータ電位を有する(ここでpKaの値はコンジュゲートした酸のpKaを表す)ことを理解している。
【0377】
一部の実施形態では、髪組成物は、0.5~5(w/w)%のアミノ化MaSp系繊維を含み、ここでアミノ化は、本明細書中記載される通りである。一部の実施形態では、髪組成物は、2.5~5(w/w)%のアミノ化MaSp系繊維を含む。
【0378】
さらに本発明者らは、髪組成物のための様々なMaSp系繊維を利用した。安定した髪のコーティングは、アミノ化MaSp系のタンパク質およびアミノ化変異体MaSp系タンパク質を使用することにより得られた。
【0379】
一部の実施形態では、髪組成物は、髪に対する損傷を予防または低減し、ここでの損傷は、UV照射、熱放射、環境汚染物質、酸化剤、還元剤、刺激物、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される条件への曝露に関連する。一部の実施形態では、予防または低減は、対照と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%(それらの間のいずれかの範囲を含む)だけ予防または低減される。一部の実施形態では、対照は、元の状態(たとえば未処置の髪)である。一部の実施形態では、対照は、市販の髪組成物により処置された髪を含む。
【0380】
一部の実施形態では、髪組成物は、それと接触した後の髪の最初の物理的特性(たとえば力学的強度)を実質的に保持しており、ここで実質的には、本明細書中記載される通りである。
【0381】
一部の実施形態では、髪組成物は、図2により示されるように、熱放射(たとえば約200℃の温度)への曝露後の髪への損傷を予防または低減する。
【0382】
一部の実施形態では、髪組成物は、図3により示されるように、それと接触した後の髪の水含有量を実質的に保持している。
【0383】
一部の実施形態では、髪組成物は、酸化剤または還元剤(たとえば塩素、次亜塩素酸水溶液)、海水、またはそれらのいずれかの組み合わせなどの髪を損傷する化学組成物への曝露の後の、髪への損傷を予防または低減する。図4は、塩素水および/または海水への曝露後の本発明の髪組成物で処置した髪の力学的強度の保持を例証する。
【0384】
一部の実施形態では、髪組成物は、図5により例証されるように、環境汚染物質、たとえばちりへの曝露後の、髪への損傷を予防または低減する。
【0385】
一部の実施形態では、髪組成物は、図6および7により例証されるように、(たとえば酸化剤もしくは還元剤などの化学的組成物、および/または海水への曝露の後;UV照射への曝露の後の)カラーリングした髪またはカラーリングされていない髪の退色または漂白を予防または低減する。一部の実施形態では、髪組成物は、処置した髪の酸化を予防または低減する。
【0386】
一部の実施形態では、コーティングは、連続した洗浄(たとえば2、4、6、8、10、15、20回(それらの間のいずれかの範囲を含む)の洗浄)の後に安定している。一部の実施形態では、コーティングは、図6および7により例証されるように、対照と比較して低減した分解(たとえば漂白)を特徴とする。
【0387】
一部の実施形態では、髪組成物は、図8および9により例証されるように、それと接触した髪の形状(たとえば髪の縮毛矯正または髪のカール)を修正する。一部の実施形態では、髪組成物は、それと接触した髪の形状を実質的に保持しており、ここで髪組成物は、図9および10にそれぞれ例証されるように、0.2~0.7(w/w)%の本発明のMaSp系タンパク質(たとえばアミノ化MaSp系タンパク質、または修飾されていないかもしくは元の状態のMaSp系タンパク質)を含む。一部の実施形態では、髪組成物は、それと接触した髪のカールを誘導する。
【0388】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、薬用化粧品組成物の中で実質的に安定している。
【0389】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、生体適合性である。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、疎水性または親水性の化粧品有効成分のバイオアクセシビリティを高める。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、対象の中で化合物のバイオアクセシビリティを高め、ここで化合物は、(本明細書中以下で例証されるように)多糖、α-ヒドロキシカルボン酸、保水剤などから選択される化粧品有効成分である。用語「バイオアクセシビリティ」は、本明細書中使用される場合、本発明の組成物のいずれか1つによりin vitroで化粧品有効成分を放出する特性を対象とする。in vitroでの放出は、皮膚テープ試験(実施例のセクションに記載)を使用することにより評価され得る。
【0390】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、化粧品有効成分のバイオアベイラビリティおよび/またはバイオアクセシビリティを増大させる。一部の実施形態では、誘導体化MaSp系繊維は、その中に埋め込まれた化粧品有効成分の分解を実質的に低減する。
【0391】
一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、化粧品の形態にある。一部の実施形態では、本発明の薬用化粧品組成物は、局所的に拡散可能な組成物、噴霧可能な組成物、エアロゾル化された組成物、注射可能な組成物、食用組成物、錠剤、ゲルカプセル、または丸剤の形態の組成物の形態にある。
【0392】
一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、0.1~20重量%の本発明のMaSp系繊維を含む。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、0.3~0.5重量%、0.5~1重量%、1~5重量%、5~10重量%、10~15重量%の、本発明のMaSp系繊維を含む。一部の実施形態では、薬用化粧品組成物は、0.3~0.5重量%、0.5~1重量%、1~5重量%、5~10重量%、10~15重量%の本発明の元の状態の(たとえば未修飾の)MaSp系繊維と、美容上許容される担体とを含む。
【0393】
一部の実施形態では、本組成物は、対照と比較して長い、本組成物からの化粧品有効成分の放出を特徴とする。一部の実施形態では、本組成物は、それからの化粧品有効成分の段階的な放出を特徴とする。一部の実施形態では、本組成物は、それからの化粧品有効成分の徐放を特徴とする。
【0394】
一部の実施形態では、化粧品有効成分は、生理的条件下で放出される。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、対象の皮膚と接触後に放出される。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、水溶液で放出される。
【0395】
一部の実施形態では、本組成物からの化粧品有効成分の放出速度は、対照と比較して少なくとも10%低い。一部の実施形態では、本組成物からの化粧品有効成分の放出速度は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)低い。
【0396】
一部の実施形態では、対照は、ポリマーである。一部の実施形態では、対照は、MaSp系タンパク質を欠いている。一部の実施形態では、対照は、silkタンパク質または多糖(たとえばセルロース)である。本明細書中以下で例証されるように(図20、21、および22)、本発明の組成物は、対照(たとえばセルロースおよびsilkタンパク質)と比較して改善した化粧品有効成分の放出プロファイル(すなわち低い放出速度)を特徴とする。
【0397】
一部の実施形態では、放出期間は、対照と比較して少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)長期化している。
【0398】
一部の実施形態では、本組成物は、生体適合性である。一部の実施形態では、本組成物は、疎水性または親水性の化粧品有効成分のバイオアクセシビリティを高める。一部の実施形態では、本組成物は、対象の中で化合物のバイオアクセシビリティを高め、ここで化合物は、(本明細書中以下で例証される)多糖、α-ヒドロキシカルボン酸、保水剤などから選択される化粧品有効成分である。用語「バイオアクセシビリティ」は、本明細書中使用される場合、本発明の組成物のいずれか1つによりin vitroで化粧品有効成分を放出する特性を対象とする。in vitroでの放出は、皮膚テープ試験(実施例のセクションに記載)を使用することにより評価され得る。
【0399】
一部の実施形態では、本組成物は、化粧品有効成分のバイオアベイラビリティおよび/またはバイオアクセシビリティを増大させる。一部の実施形態では、MaSp系繊維に結合またはこれによりカプセル化された化粧品有効成分は、元の状態の(たとえば非カプセル化)化粧品有効成分と比較して高い安定性を特徴とする。一部の実施形態では、MaSp系繊維は、化粧品有効成分の分解を実質的に低減する。一部の実施形態では、MaSp系繊維は、化粧品有効成分の分解を実質的に低減し、ここでの分解は、図11~12に例証されるように、化学的または物理的な損傷(たとえば酸化、フリーラジカル、UV照射)に関連している。
【0400】
一部の実施形態では、本組成物は、図13により例証されるように、皮膚上での化粧品有効成分の保持時間を増大させる。
【0401】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、局所的に拡散可能な組成物、噴霧可能な組成物、エアロゾル化された組成物、注射可能な組成物、食用組成物、錠剤、ゲルカプセル、または丸剤の形態の組成物の形態にある。
【0402】
一部の実施形態では、本発明は、本組成物を含むキットを対象とする。特定の実施形態では、本組成物は、容器に含まれている。容器は、ビン、ディスペンサー、またはパッケージであり得る。容器は、所定の量の本組成物を分注し得る。特定の態様では、本組成物は、スプレー、少量(dollop)、または液体で分注される。容器は、その表面に印を含み得る。印は、言葉、略語、写真、または記号であり得る。別の態様では、本発明の複合体の有効量を含む日焼け止め組成物がある。
【0403】
一実施形態では、本発明の日焼け止め組成物は、担体をさらに含む。
【0404】
一実施形態では、本発明の日焼け止め組成物は、1~100のSPF値を有する。
【0405】
一実施形態では、有効量は、10(w/w)%~50(w/w)%の日焼け止め組成物の中の複合体のw/w濃度を含む。
【0406】
一実施形態では、本発明の日焼け止め組成物は、化粧品の形態にある。
【0407】
別の態様では、染料または顔料に結合した本発明のいずれか1つの誘導体化多孔性MaSp系繊維の有効量を含むヘアカラー組成物がある。
【0408】
一実施形態では、ヘアカラー組成物は、担体を含む。
【0409】
一実施形態では、有効量は、50~99.9(w/w)%のヘアカラー組成物の中の誘導体化多孔性MaSp系繊維のw/w濃度を含む。
【0410】
一実施形態では、ヘアカラー組成物は、3~7のpH値を特徴とする。
【0411】
一実施形態では、ヘアカラー組成物は、化粧品の形態にある。
【0412】
薬用化粧品成分
本明細書中使用される場合、用語「MaSp系繊維」および「多孔性MaSp系繊維」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0413】
一部の実施形態では、本組成物は、化粧品有効成分に結合したMaSp系繊維を含む複合体であり、ここで結合は、非共有結合、共有結合、物理的相互作用、またはそれらのいずれかの組み合わせを介するものである。
【0414】
一部の実施形態では、化粧品有効成分は、多糖、日焼け止め剤、保水剤、抗酸化剤、エッセンシャルオイル、ビタミン(たとえばA、B、B3、B12、C、D、E、およびK)、酸(本明細書中後述されるα-ヒドロキシカルボン酸およびβ-ヒドロキシカルボン酸を含む)、植物抽出物、スクラブ剤、またはそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、生物学的に有効な化合物である。生物学的に有効な化合物は、当該分野でよく知られている。
【0415】
一部の実施形態では、化粧品有効成分は、精製された化合物、植物抽出物、少なくとも部分的に濃縮された植物抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせの形態にある。
【0416】
多糖の非限定的な例として、限定するものではないが、ヒアルロン酸および/もしくはその塩、アルギン酸および/もしくはその塩、いずれかの誘導体(たとえば塩)を含むキトサン、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0417】
他の有用な多糖として、3つの単位ごとに(1-6)結合グルコースを伴う(1-3)結合グルコース単位の分岐鎖を含むスクレログルカンが挙げられる。
【0418】
一部の実施形態では、日焼け止め剤は、化学的な日焼け止めクリームおよび/または物理的な日焼け止めクリームを含む、本発明の組成物の中で使用され得るUV吸収剤および/またはUV反射剤である。
【0419】
化学的な日焼け止めクリームの非限定的な例として、限定するものではないが、パラ-アミノ安息香酸(PABA)、PABAエステル(グリセリルPABA、アミルジメチルPABA、およびオクチルジメチルPABA)、ブチルPABA、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ベンゾフェノン(オキシベンゾン、スリソベンゾン、ベンゾフェノン、およびベンゾフェノン-1~12)、シンナマート(オクチルメトキシシンナマート、イソアミルp-メトキシシンナマート、オクチルメトキシシンナマート、シノキサート、ジイソプロピルメチルシンナマート、DEA-メトキシシンナマート、エチルジイソプロピルシンナマート、グリセリルオクタノアートジメトキシシンナマート、およびエチルメトキシシンナマート)、シンナマートエステル、サリチル酸塩(ホモメチルサリチル酸塩、ベンジルサリチル酸塩、グリコールサリチル酸塩、イソプロピルベンジルサリチル酸塩など)、アントラニラート、エチルウロカナート、ホモサラート、オクチサレート、ジベンゾイルメタン誘導体(たとえばアボベンゾン)、オクトクリレン、オクチルトリアゾン、三オレイン酸ジガロイル(digalloy trioleate)、グリセリルアミノベンゾアート、ジヒドロキシアセトンを含むラウソン、エチルヘキシルトリアゾン、ジオクチルブタミドトリアゾン、ベンジリデンマロナートポリシロキサン、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、テトラスルホン酸フェニルジベンゾイミダゾールジナトリウム、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾアート、ビスジエチルアミノヒドロキシベンゾイルベンゾアート、ビスベンゾオキサゾイルフェニルエチルヘキシルイミノトリアジン、ドロメトリゾールトリシロキサン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチル(butyi)フェノール、およびビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、4-メチルベンジリデンカンファー、およびイソペンチル4-メトキシシンナマート(それらのいずれかの誘導体(たとえば塩)またはいずれかの組み合わせを含む)が挙げられる。
【0420】
物理的な日焼け止めクリームの非限定的な例として、限定するものではないが、カオリン、タルク、ワセリン、および金属酸化物(たとえば二酸化チタンおよび酸化亜鉛)、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0421】
本発明の組成物は、UVAおよびUVBの吸収の特性を有し得る。本組成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、またはそれ以上(それらの間のいずれかの範囲または値を含む)の日焼け止め指数(SPF)を有し得る。
【0422】
保水剤の非限定的な例として、限定するものではないが、レチノール、酢酸レチニル、アミノ酸、乳酸、コンドロイチン硫酸、ジグリセリン、エリスリトール、フルクトース、グルコース、グリセリン(またはグリセロール)、グリセロールエチレングリコール、プロピレングリコール、12,6-ヘキサントリオール、ハチミツ、水添ハチミツ、水添でんぷん加水分解物、イノシトール、ラクチトール、マルチトール、マルトース、マンニトール、天然保湿成分、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG-15ブタンジオール、ポリグリセリルソルビトール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、尿素、およびキシリトール(それらのいずれかの誘導体(たとえば塩)またはいずれかの組み合わせを含む)が挙げられる。
【0423】
保水剤の他の例として、限定するものではないが、アセチル化ラノリン、酵素、アセチル化ラノリンアルコール、アクリラート/C10-30アルキルアクリラートクロスポリマー、アクリラートコポリマー、藻類抽出物、アロエベラ(aloe-barbadensis)抽出物、アプリコットカーネルオイル、アスコルビン酸、アスコルビルパルミタート、アボカド油、barrier スフィンゴ脂質、ブチルアルコール、ミツロウ、ベヘニルアルコール、β-シトステロール、シラカバ樹皮抽出物、ルリジサ抽出物、ブッチャーブルーム抽出物、ブチレングリコール、Calendula officinalis油、カンデリラ(Euphorbia cerifera)ろう、キャノーラ油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カルダモン油、カルナウバロウ、カラゲナン(Chondrus crispus)、ニンジン(Daucus carota sativa)油、ひまし油、セラミド、セレシン、セテアレス-5、セテアレス-12、セテアレス-20、セテアリルオクタノアート、セテス-20、セテス-24、酢酸セチル、セチルオクタノアート、パルミチン酸セチル、カモミール油、コレステロール、コレステロールエステル、コレステリルヒドロキシステアラート、サルビア(Salvia sclarea)油、ココアバター、(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキル、ココナッツ(Cocos nucifera)油、コラーゲン、コラーゲンアミノ酸、トウモロコシ(Zea mays)油、脂肪酸、オレイン酸デシル、デキストリン、ジアゾリジニル尿素、ジメチコンコポリオール、ジメチコノール、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、ジペンタエリトリチルヘキサカプリラート/ヘキサカプラート、DMDMヒダントイン、エリスリトール、エトキシジグリコール、エチルリノレアート、ユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)油、イブニングプリムローズ油、脂肪酸、果糖(tructose)、ゼラチン、ゲラニウム・マキュラタム(geranium maculatum)油、グルコサミン、グルコースグルタメート、グルタミン酸、グリセレス-26、グリセリン、グリセロール、グリセリルジステアラート、グリセリルヒドロキシステアラート、ラウリン酸グリセリル、グリセリルリノレアート、ミリスチン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリコール、グリコサミノグリカン、ブドウ種子(Vitis vinifera)油、ヘーゼルナッツ(Corylus americana)油、ヘキシレングリコール、ハイブリッドベニバナ(Carthamus tinctorius)油、水添ひまし油、水添ココグリセリル、水添ココナッツ油、水添ラノリン、水添レシチン、水添パームグリセリド、水添パーム核油、水添ダイズ油、水添獣脂グリセリド、水添植物油、加水分解したコラーゲン、加水分解したエラスチン、加水分解したグリコサミノグリカン、加水分解したケラチン、加水分解したダイズタンパク質、ヒドロキシル化ラノリン、ヒドロキシプロリン、イミダゾリジニル尿素、ヨードプロピニルブチルカルバメート、ステアリン酸イソセチル、ステアロイルステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソプロピルラノラート、イソプロピルミリスタート、イソプロピルパルミタート、ステアリン酸イソプロピル、イソステアラミドDEA、イソステアリン酸、イソステアリル乳酸塩、イソステアリルネオペンタン酸塩、ジャスミン油、ホホバオイル、ケルプ、ククイオイル、ラクトアミドMEA、laneth-16、laneth-10アセタート、ラノリン、ラノリン酸、ラノリンアルコール、ラノリン油、ラノリンワックス、ラベンダー油、レシチン、レモン(Citrus medica limonum)油、リノール酸、リノレン酸、マカデミアナッツ油、ステアリン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、マルチトール、カミツレ(Chamomilla recutita)油、メチルセスキステアリン酸グルコース、マイクロクリスタリンワックス、鉱物油、ミンク油、モルチエレラ油、乳酸ミリスチル、ミリスチルミリスタート、プロピオン酸ミリスチル、ネオペンチルグリコールジカプリラート/ジカプラート、オクチルドデカノール、オクチルドデシルミリスタート、オクチルドデシルステアロイルステアラート、オクチルヒドロキシステアラート、オクチルパルミタート、オクチルサリチル酸塩、ステアリン酸オクチル、オレイン酸、オリーブ(Olea europaea)油、オレンジ(Citrus aurantium dulcis)油、パーム(Elaeis guineensis)油、パルミチン酸、パンテチン、パンテノール、パンテニルエチルエーテル、パラフィン、桃仁(Prunus persica)油、ピーナッツ(Arachis hypogaea)油、PEG-8 C12-18エステル、PEG-15コカミン、PEG-150ジステアラート、PEG-60グリセリルイソステアラート、PEG-5グリセリルステアラート、PEG-30グリセリルステアラート、PEG-7水添ひまし油、PEG-40水添ひまし油、PEG-60水添ひまし油、PEG-20メチルグルコースセスキステアラート、PEG40ソルビタンペルオレアート(peroleate)、PEG-5ダイズステロール、PEG-10ダイズステロール、PEG-2ステアラート、PEG-8ステアラート、PEG-20ステアラート、PEG-32ステアラート、PEG40ステアラート、PEG-50ステアラート、PEG-100ステアラート、PEG-150ステアラート、ペンタデカラクトン、ペパーミント油、ワセリン、リン脂質、ポリアミノ糖濃縮物、ポリグリセリル3ジイソステアラート、ポリクオタニウム-24、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリソルベート85、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、プロピレングリコール、プロピレングリコールジカプリラート/ジカプラート、プロピレングリコールジオクタノアート、プロピレングリコールジペラルゴナート、プロピレングリコールラウラート、プロピレングリコールステアラート、プロピレングリコールステアラートSE、PVP、ピリドキシンジパルミタート、クアテルニウム-15、クアテルニウム-18ヘクトライト、クアテルニウム-22、レチニルパルミタート、米ぬか(Oryza sativa)油、ローズマリー油、ローズオイル、ベニバナ(Carthamus tinctorius)油、セージ(Salvia officinalis)油、ビャクダン(Santalum album)油、血清タンパク質、ゴマ(Sesamum indicum)油、シアバター、コンドロイチン硫酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、PCAナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、ソルビン酸、ソルビタンラウラート、ソルビタンオレアート、ソルビタンパルミタート、ソルビタンセスキオレアート、ソルビタンステアラート、ソルビトール、ダイズ(Glycine soja)油、スフィンゴ脂質、スクアラン、スクアレン、ステアロアミドMEA-ステアラート、ステアリン酸、ステアロキシジメチコン、ステアロキシトリメチルシラン、ステアリルアルコール、グリシルレチン酸ステアリル、ステアリルヘプタノアート、ステアリルステアラート、ヒマワリ種子(Helianthus annuus)油、スイートアーモンドオイル、合成ミツロウ、トコフェロール、トコフェリルアセタート、トコフェリルリノレアート、トリベヘニン、ネオペンタン酸トリデシル、ステアリン酸トリデシル、トリエタノールアミン、トリステアリン、水、ワックス、コムギ胚芽(Triticum vulgare)油、およびイランイランオイル(それらのいずれかの誘導体(たとえば塩)またはそれらのいずれかの組み合わせを含む)が挙げられる。
【0424】
抗酸化剤の非限定的な例として、限定するものではないが、アセチルシステイン、アスコルビン酸、ポリペプチド(たとえばジペプチド2、パルミトイルトリペプチド-5、パルミトイルオリゴペプチド/パルミトイルヘキサペプチド、カルノシン、ペンタペプチド-18)、アスコルビルジパルミタート、アスコルビルメチルシラノールペクチナート(pectinate)、アスコルビルパルミタート、アスコルビルステアラート、BHA、DMAE(ジメチルアミノエタノール)、BHT、t-ブチルヒドロキノン、ジアミルヒドロキノン、ジ-t-ブチルヒドロキノン、ジセチルチオジプロピオナート、ジオレイルトコフェリルメチルシラノール、アスコルビル酸硫酸二ナトリウム、ジステアリルチオジプロピオナート、ジトリデシルチオジプロピオナート、ドデシルガラート、エリトルビン酸、アスコルビン酸のエステル、エチルフェルラート、フェルラ酸、没食子酸エステル、ヒドロキノン、イソオクチルチオグリコラート、コウジ酸、アスコルビン酸マグネシウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸メチルシラノール、天然の植物性抗酸化剤、たとえば緑茶またはグレープシードの抽出物、ノルジヒドログアイアレチン酸、オクチルガレート、フェニルチオグリコール酸、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム、亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、キノン、ロスマリン酸、アスコルビン酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、スーパーオキシドディスムターゼ、チオグリコール酸ナトリウム、ソルビチルフルフラール、チオジグリコール、チオジグリコールアミド、チオジグリコール酸、チオグリコール酸、チオ乳酸(thiolactic acid)、チオサリチル酸、tocophereth-5、tocophereth-10、tocophereth-12、tocophereth-18、tocophereth-50、トコフェロール、トコフェルソラン、トコフェリルアセタート、トコフェリルリノレアート、ニコチン酸トコフェリル、コハク酸トコフェリル、およびトリス(ノニルフェニル)ホスファイト(それらのいずれかの誘導体(たとえば塩)またはそれらのいずれかの組み合わせを含む)が挙げられる。
【0425】
植物抽出物の非限定的な例として、限定するものではないが、インゲンマメ(Haseolus vulgaris)、アボカド(Persea Americana)、アンズ(Prunus armeniaca)、アルニカ・モンタナ(Arnica montana)、ウスベニタチアオイ(Althea officinalis)、オレンジ(Citris sinensis)、レモン(Citrus medica limonum)、オレンジスウィート(Citrus aurantium dulcis)、ペパーミント(Mentha piperita)、ヨーロッパシラカバ(Betula alba)、ルリジサ(Borago officinalis)、ナギイカダ(Ruscus aculeatus)、キンセンカ(Calendula officinalis)、ミツバハマグルマ(Wedelia trilobata)、カルナウバヤシ(Copernicia cerifera)、トウゴマ(Ricinus communis)、ショウズク(Elettaria cardamomum)、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)、バレチオデンドロン・フシエンム(Burretiodendron hsienmu)、カカオ(Theobroma cacao)、ジャスミン(Jasminum officinale)、メマツヨイグサ(Oenothera biennis)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)、ローマンカモミール(Anthemis nobilis)、シアーバターノキ(Butyrospermum parkii)、アーモンド(Prunus amygdalus dulcis)、ククイ(Aleurites moluccana)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)、ホホバ(Buxus chinensis)、バウヒニア・ブラキカルパ(Bauhinia brachycarpa var. cavaleriei)、Cystacanthus paniculatus、Caesalpinia minax、イランイランノキ(Cananga odorata)、Pueraria wallichii、Tetracentron sinense、マルヤマカンコノキ(Bridelia insulana)、ヒロハケニオイグサ(Hedyotis verticillata)、Syzygium fruticosum、カモミール(Chamomilla recutita)、カツラ(Cercidiphyllum japonicum)、Bauhinia glauca、ロードデンドロン・シデロフィルム(Rhododendron siderophyllum)、Cudrania pubescens、キマメ(Cajanus cajan)、Wendlandia uvariifolia、アロエベラ(Aloe vera)、アロエベラ(aloe-barbadensis)、コメナモミ(Siegesbeckia glabrescens)、アカウキクサ(Azolla imbricate)、ヒメコウガイゼキショウ(Juncus bufonius)、ポイキロスペルマム・スアウェオレンス(Poikilospermum suaveolens)、アマクサギ(Clerodendrum trichotomum var. fargesii)、Porandra ramosa、ポンドアップル(Annona glabra)、Sterculia pexa、Phoebe puwenensis、Myriopteron extensum、Croton lachnocarpa、Dillenia turbinata、Alpinia blepharocalyx、クロタラリア・スペクタビリス(Crotalaria spectabilis)、Ficus lacor、タビビトノキ(Ravenala madagascariensis)、アオツヅラフジ(Cocculus orbiculatus)、オタネニンジン(Panax ginseng)、ハカマウラボシ(Drynaria fortunei)、Acrachne racemosa、Pseuderanthemum polyanthum、Eriobotrys serrata、Vernonia arborea、Adianthum caudatum、ライマメ(Phaseolus lunatus)、イポメア・カイリカ(Ipomoea cairica)、スズメノテッポウ(Alopecurus aequalis)、サトウヤシ(Arenga pinnata)、Rhynchosia yunnanensis、ムラサキフトモモ(Syzygium cumini)、Clausena dunniana、Cyclosurus parasiticus、およびワルナスビ(Solanum carolinense)、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0426】
一部の実施形態では、本組成物は、植物、植物部位、および/またはその抽出物を含む。植物部位は、全植物または植物の部位(たとえば根、樹皮、樹液、茎、葉、花、種、葉、茎、根、花、種子、樹液、樹皮など)であり得る。
【0427】
一部の実施形態では、抽出物は、全植物抽出物である。一部の実施形態では、抽出物は、植物の部位(たとえば根、樹皮、樹液、茎、葉、花、種子、葉、茎、根、花、種子、樹液、樹皮など)の抽出物である。一部の実施形態では、抽出物は、水性抽出物または非水性抽出物である。一部の実施形態では、非水性抽出物は、有機溶媒(たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼンプロピレングリコール、エチレングリコール、酢酸エチル、DMF、DMSOなど)および油、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0428】
エッセンシャルオイルは、ハーブ、花、木、および他の植物に由来するオイルを含む。このようなオイルは、通常、植物細胞間の小さな液滴として存在し、当業者に知られているいくつかの方法(たとえば水蒸気蒸留、アンフルラージュ(すなわち脂肪を使用することによる抽出)、マセレーション、溶媒抽出、または機械的な加圧)により抽出され得る。これら種類のオイルは、空気に曝露されると蒸発する傾向がある(すなわち揮発性のオイル)。結果として、多くのエッセンシャルオイルは、無色であるが、時間が経つほど酸化し得、暗色になり得る。エッセンシャルオイルは、水に不溶性であり、アルコール、エーテル、固定油(植物性)、および他の有機溶媒などの有機溶媒に可溶性である。エッセンシャルオイルは、通常、オイルが見出される植物により命名される。たとえば、ローズオイルまたはペパーミントオイルは、それぞれローズまたはペパーミントに由来する。本発明の状況で使用され得るエッセンシャルオイルの非限定的な例として、ゴマ油、マカダミアナッツオイル、ティーツリーオイル、イブニングプリムローズオイル、スパニッシュセージオイル、ローズマリー・スペインオイル、コリアンダーオイル、タイムオイル、pimento berriesオイル、ローズオイル、アニスオイル、バルサムオイル、ベルガモットオイル、ローズウッドオイル、シダーオイル、カモミールオイル、セージオイル、クラリセージオイル、クローブオイル、サイプレスオイル、ユーカリオイル、フェンネルオイル、シーフェンネルオイル、フランキンセンスオイル、ゼラニウムオイル、ショウガオイル、グレープフルーツオイル、ジャスミンオイル、ジュニパーオイル、ラベンダーオイル、レモンオイル、レモングラスオイル、ライムオイル、マンダリンオイル、マジョラムオイル、ミルラオイル、ネロリオイル、オレンジオイル、パチョリオイル、コショウオイル、ブラックペッパーオイル、プチグレンオイル、マツオイル、ローズ・オットーオイル、ローズマリーオイル、ビャクダンオイル、スペアミントオイル、スパイクナードオイル、ベチバーオイル、ウィンターグリーンオイル、またはイランイランが挙げられる。当業者に知られている他のエッセンシャルオイルもまた、本発明の状況の中で有用と企図される。
【0429】
スクラブ剤の非限定的な例として、限定するものではないが、サリチル酸、クエン酸、α-ヒドロキシカルボン酸(たとえば乳酸、グリコール酸、ラクトビオン酸、酒石酸(lactobionic tartaric acid)、リンゴ酸)、およびβ-ヒドロキシカルボン酸(たとえばプロピオン酸、α-ヒドロキシプロピオン酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ、β-メチル酪酸、およびカルニチン)、ならびに酸(たとえばアゼライン酸、オレイン酸、リノール酸、コウジ酸、フェルラ酸、マンデル酸、シキミ酸)(それらのいずれかの塩またはいずれかの組み合わせを含む)が挙げられる。
【0430】
他の化粧品有効成分は、美容製剤で広範に使用されており、当業者によく知られている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、いずれかのさらなる生物学的に有効な成分を実質的に欠いている。一部の実施形態では、本発明の化粧品有効成分は、本明細書中上記に列挙される化合物から本質的になる。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、MaSp系繊維を実質的に欠いている。一部の実施形態では、化粧品有効成分は、タンパク質を実質的に欠いている。
【0431】
物品
本発明の別の態様では、本発明の組成物を含む物品がある。一部の実施形態では、物品は、局所ケア製品である。一部の実施形態では、物品は、化粧品(たとえばカラー化粧品、パウダー、フェイスクレンザー)である。
【0432】
化粧品は、本明細書の他のセクションに記載された化粧品または当業者に知られている化粧品であり得る。化粧品の非限定的な例として、モイスチャライザー、クリーム、ローション、皮膚軟化剤、ファンデーション、ナイトクリーム、口紅、クレンザー、化粧液、日焼け止め、マスク、アンチエイジング製品、デオドラント、制汗剤、香水、コロンなどが挙げられる。
【0433】
一部の実施形態では、物品は、本発明の組成物および担体を含む。一部の実施形態では、担体は、生理的に適切な担体である。例示的な生理的に適切な担体は、本明細書中以下に列挙されており、さらなる生理的に適切な担体が、当該分野でよく知られている。
【0434】
一部の実施形態では、担体は、乳化剤を含む。乳化剤は、相間の界面張力を低減し、エマルジョンの処方および安定性を改善し得る。乳化剤は、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性、および両性イオン性の乳化剤であり得る(McCutcheon’s (1986);米国特許第5,011,681号;同第4,421,769号;同第3,755,560号を参照)。
【0435】
方法
別の態様では、髪をカラーリングするための方法であって、髪(たとえばヒトの髪、ウイッグ、または髪を含む物品など)を準備するステップと、髪を本発明のヘアカラー組成物と接触させるステップとを含む方法がある。
【0436】
一部の実施形態では、髪は、ヒトの髪である。一部の実施形態では、髪は、(たとえば髪の染色または漂白の結果として)損傷を受けた髪である。一部の実施形態では、本方法は、本発明のヘアカラー組成物の十分な量を髪に適用するステップを含む。一部の実施形態では、この量は、カラーリングした髪を得るために十分な量である。一部の実施形態では、この量は、所定のヘアカラーを獲得するために十分な量である。一部の実施形態では、この量は、安定したヘアカラーを獲得するために十分な量であり、ここでの安定したは、本明細書中記載される通りである。
【0437】
別の態様では、対象を化粧品有効成分で補うための方法であって、本発明の組成物または物品を対象に与えることにより、対象を化粧品有効成分で補うステップを含む、方法がある。
【0438】
一部の実施形態では、対象は、ヒトの対象または動物の対象から選択される。
【0439】
一部の実施形態では、本方法は、図14~17および図18A~Bにより示されるように、皮膚の若返り、皮膚の保湿、皮膚の水分の保持、皮膚のコンディショニング、しわの低減、皮膚の刺激の予防、皮膚の汚染の保護、および皮膚の緩和、またはそれらのいずれかの組み合わせのためのものである。一部の実施形態では、本方法は、本明細書中記載される通りであり、ここで本発明の組成物または物品は、0.1~20(w/w)%の本明細書中記載のMaSp系タンパク質を含む。
【0440】
一部の実施形態では、それを必要とする対象の1つ以上の皮膚のパラメータを改善するための方法であって、本明細書中開示される組成物または物品のいずれか1つの治療上有効量を対象に投与するステップを含む、方法がある。別の実施形態では、本発明は、皮膚に関連する病態に罹患した対象を処置するための方法を提供する。
【0441】
一部の実施形態では、1つ以上の皮膚のパラメータは、顔の皮膚のしわ(lines/wrinkles)、皮膚の老化、皮膚の水分含有量、皮膚の弾性、皮膚の輝き、皮膚の明度、皮膚の油含有量(たとえば低減補正)、および紫外線(UV)誘導性損傷から選択される。
【0442】
別の態様では、対象に対するUV関連の損傷を低減または予防するための方法であって、本発明の日焼け止め組成物を対象の皮膚に適用することにより、対象に対するUV関連の損傷を低減または予防するステップを含む方法がある。
【0443】
別の態様では、髪をカラーリングするための方法であって、適切な条件下で本発明のヘアカラー組成物と髪の少なくとも一部を接触させることにより、髪をカラーリングするステップを含む、方法がある。
【0444】
一実施形態では、「皮膚に関連する病態」は、紫外線照射への曝露などの外因性の要因により引き起こされる皮膚の損傷を表す。一実施形態では、皮膚の病態は、刺激物により引き起こされる。一実施形態では、皮膚の病態は、化学的または他のいずれかの毒性の因子により引き起こされる。一実施形態では、皮膚関連病態として、限定するものではないが、皮膚の厚さ、日焼け細胞、紅斑、皮膚刺激、発赤、乾燥、刺傷、皮膚の剥がれおよび分離、にきび様の皮疹、皮膚斑点、および皮膚のカラートーンの非均一性、感染症、および体液の喪失、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0445】
上記に開示されるされる方法において、治療用組成物が従来の手段により投与され得るが、一実施形態では、本組成物は、薬学的剤形、栄養補助的剤形、栄養学的剤形、または経口剤形で投与される。
【0446】
一実施形態では、本発明の組成物は、それ自体が個体に提供され得る。一実施形態では、本発明の組成物は、薬学的に許容される担体と混合した、さらなる医薬組成物または栄養補助組成物(たとえば物品)の一部として個体に提供され得る。
【0447】
一実施形態では、「医薬組成物」、「薬用化粧品組成物」、または「栄養補助組成物」は、生理的に適切な担体および賦形剤などの他の化学的成分を伴う本明細書中記載の組成物の製剤を表す。医薬組成物、薬用化粧品組成物、または栄養補助組成物の目的は、生物への本組成物の投与を容易にすることである。
【0448】
一実施形態では、「併用製剤」は、特に、上記に定義される併用パートナーが、独立して、または異なる量の併用パートナーとの異なる一定した組み合わせを使用することにより、すなわち同時に(simultaneously、concurrently)、別々に、または連続して、投与され得る意味での「キットオブパーツ」を定義する。よって一部の実施形態では、キットオブパーツのパーツは、たとえば、同時に投与され得るか、またはキットオブパーツのいずれかのパーツで異なる時点および同じまたは異なる時間間隔で経時的に調整され得る。併用パートナーの総量の比率は、一部の実施形態では、併用製剤において投与され得る。一実施形態では、併用製剤は、たとえば処置される患者の亜集団の必要性、または異なる必要性が当業者により容易になされ得る特性の疾患、疾患の重症度、年齢、性別、もしくは体重によるものであり得る単一の患者の必要性に対処するために、変動し得る。
【0449】
一実施形態では、互換可能に使用される「生理的に許容される担体」および「薬学的に許容される担体」との文言は、哺乳類に有意な刺激を引き起こさず、投与される組成物の生物学的活性および特性を抑制しない担体または希釈剤を表す。アジュバントは、これら文言に含まれる。
【0450】
一実施形態では、「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために組成物に添加される不活性な物質を表す。一実施形態では、賦形剤として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、およびスターチの種、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0451】
薬物の処方および投与のための技術は、その全体が本明細書中参照により組み込まれている’’Remington’s Pharmaceutical Sciences,’’ Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版で見出される。
【0452】
一実施形態では、適切な投与経路として、たとえば、局所送達、皮膚送達、経皮送達、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経鼻送達、腸管内送達、または非経口送達、および髄腔内注射、直接的な脳室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射が挙げられる。
【0453】
総則
本明細書中使用される場合、用語「約」は、±10%を表す。
【0454】
用語「~を含む(comprises)、(comprising)、(includes)、(including)」、「~を有する」、およびそれらの同根語は、「限定するものではないが、~を含む」を意味する。
【0455】
用語「~からなる」は、「限定するものではないが、~を含む」を意味する。
【0456】
用語「~から本質的になる」は、本組成物、方法、または構造が、さらなる成分、ステップ、および/または一部が請求される組成物、方法、または構造の基本的かつ新規の特徴を実質的に変えない場合のみ、さらなる成分、ステップ、および/または一部を含み得ることを意味する。
【0457】
本明細書中使用される場合、用語「安定してカプセル化された」は、本組成物からの有効成分の放出を実質的に予防する本組成物の特性を表す。本明細書中使用される場合、用語「実質的に予防する」は、皮膚テープ試験(実施例のセクションに記載)により測定される第1のテープ片および第2のテープ片により除去される有効成分の総量を表す。
【0458】
一部の実施形態では、実質的には、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%の化粧品有効成分を含む。一部の実施形態では、実質的には、非共有結合、物理的相互作用、またはその両方を介してMasP系繊維に結合した、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%の化粧品有効成分を含む。非共有結合は、当該分野でよく知られており、特に水素結合、p-pスタッキング、ファンデルワールス相互作用などを含む。
【0459】
用語「例示的な」は、「実施例、例、または例示として作用すること」を意味するように本明細書で使用される。「例示的な」と記載された全ての実施形態は、必ずしも、他の実施形態よりも好ましいもしくは有益な実施形態と解釈される必要はなく、かつ/または他の実施形態からの特性の組み込みを排除するものではない。
【0460】
用語「任意選択で」は、「一部の実施形態において提供され、他の実施形態で提供されない」ことを意味するように本明細書で使用される。本発明のいずれかの特定の実施形態は、当該特性が矛盾しない限り、複数の「任意選択の」特性を含み得る。
【0461】
本明細書中使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他の意味を明記しない限り複数形を含む。たとえば、用語「a compound」または「少なくとも1つの化合物」は、複数の化合物(それらの混合物を含む)を含み得る。
【0462】
定義
本明細書中使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖基および分岐鎖基を含む脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は、1~20個の炭素原子、より好ましくは1~10または1~6個の炭素原子を有する。
【0463】
また用語「アルキル」は、本明細書中使用される場合、飽和または不飽和の炭化水素を包有し、よってこの用語はアルケニルおよびアルキニルをさらに包有する。
【0464】
用語「アルケニル」は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素間二重結合を有する、本明細書中定義される不飽和のアルキルを表す。アルケニルは、本明細書中上述されるように、1つ以上の置換基で置換されてもよくまたは置換されなくてもよい。
【0465】
用語「アルキニル」は、本明細書中定義される場合、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素間三重結合を有する不飽和のアルキルである。アルキニルは、本明細書中上述されるように、1つ以上の置換基で置換されてもよくまたは置換されなくてもよい。
【0466】
用語「シクロアルキル」は、環の1つ以上が完全にコンジュゲートしたπ電子系を有さない全てが炭素の単環または縮合環(すなわち隣接する炭素原子の対を共有する環)を表す。シクロアルキル基は、本明細書中表されるように、置換されてもよくまたは置換されなくてもよい。
【0467】
用語「アリール」は、完全にコンジュゲートしたπ電子系を有する全てが炭素の単環基または縮合環の多環基(すなわち隣接する炭素原子の対を共有する環)を表す。アリール基は、本明細書中表されるように、置換されてもよくまたは置換されなくてもよい。
【0468】
用語「アルコキシ」は、本明細書中定義されるO-アルキル基および-O-シクロアルキル基を表す。
【0469】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中定義される-O-アリールを表す。
【0470】
本明細書中の一般式中のアルキル基、シクロアルキル基、およびアリール基は、それぞれ1つ以上の置換基により置換されてよく、これにより各置換基は、独立して、置換された基および分子におけるその位置に応じて、たとえばハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、チオアルコキシ、カルボキシ、アミド、アリール、およびアリールオキシであり得る。またさらなる置換基が企図され得る。
【0471】
用語「ハロゲン化物」、「ハロゲン」、または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表す。
【0472】
用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン化物でさらに置換された、本明細書中定義されるアルキル基を表す。
【0473】
用語「置換された」または「置換基」は、1、2、3、4、または5個の置換基を表し、ここで各置換基は、独立して、(C-C)アルキル-アリール、(C-C)アルキル-ヘテロアリール、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、任意選択で置換されてよいC-Cヘテロシクリル、ハロゲン、NO、-CN、-OH、-CONH、-CONR、-CNNR、-CSNR、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR、-NC(=S)OR、-NC(=S)NR、SOR、SOR、-SR、SOOR、SON(R)、-NHNR、-NNR、C-Cハロアルキル、任意選択で置換されてよいC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-CアルキルNR、C-Cアルキル-SR、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR、-OCOR、-OCOR、-OC(=O)OR、-OC(=O)NR、-OC(=S)OR、-OC(=S)NR(それらのいずれかの組み合わせを含む)から選択される。
【0474】
用語「ハロアルコキシ」は、1つ以上のハロゲン化物でさらに置換された、本明細書中定義されるアルコキシ基を表す。
【0475】
用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」は、-OH基を表す。
【0476】
用語「メルカプト」または「チオール」は、-SH基を表す。
【0477】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中定義される-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基を表す。
【0478】
用語「チオアリールオキシ」は両方とも、本明細書中定義される-S-アリール基および-S-ヘテロアリール基を表す。
【0479】
用語「アミノ」は、-NR’R’’基を表し、ここでR’およびR’’は本明細書中記載される通りである。
【0480】
用語「ヘテロシクリル(cyclyl)」は、窒素、酸素、および硫黄などの1つ以上の原子を環に有する単環基または縮合環基を表す。またこの環は、1つ以上の二重結合を有し得る。しかしながらこの環は、完全にコンジュゲートしたπ電子系を有さない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルフォリノなどである。
【0481】
用語「カルボキシ」または「カルボキシレート」は、-C(O)OR’基(式中、R’は、本明細書中定義される水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合)またはヘテロシクリル(cyclyl)(環炭素を介して結合)である)を表す。
【0482】
用語「カルボニル」は、-C(O)R’基(式中R’は、本明細書中上記に定義される通りである)を表す。
【0483】
または上記の用語は、そのチオ誘導体(チオカルボキシおよびチオカルボニル)を包有する。
【0484】
用語「チオカルボニル」は、-C(S)R’基(式中R’は、本明細書中上記に定義される通りである)を表す。
【0485】
「チオカルボキシ」基は、-C(S)OR’基(式中R’は、本明細書中定義される通りである)を表す。
【0486】
「スルフィニル」基は、-S(O)R’基(式中R’は、本明細書中定義される通りである)を表す。
【0487】
「スルホニル」または「スルホナート」基は、-S(O)R’基(式中R’は、本明細書中定義される通りである)を表す。
【0488】
「カルバミル」または「カルバメート」基は、-OC(O)NR’R’’基(式中R’は、本明細書中定義される通りであり、R’’は、R’で定義される通りである)を表す。
【0489】
「ニトロ」基は、-NO2基を表す。
【0490】
用語「アミド」は、本明細書中使用される場合、C-アミドおよびN-アミドを包有する。
【0491】
用語「C-アミド」は、-C(O)NR’R’’末端基、または-C(O)NR’-結合基(これら文言は本明細書中上記で定義されており、R’およびR’’は本明細書中定義される通りである)を表す。
【0492】
用語「N-アミド」は、-NR’’C(O)R’末端基または-NR’C(O)-結合基(これら文言は本明細書中上記で定義されており、R’およびR’’は本明細書中定義される通りである)を表す。
【0493】
用語「カルボン酸誘導体」は、本明細書中使用される場合、カルボキシ、アミド、カルボニル、無水物、カルボナートエステル、およびカルバメートを包有する。
【0494】
「シアノ」または「ニトリル」基は、-CN基を表す。
【0495】
用語「アゾ」または「ジアゾ」は、N=NR’末端基またはN=N結合基(これら文言は本明細書中上記で定義されており、R’は本明細書中定義される通りである)を表す。
【0496】
用語「グアニジン」は、-R’NC(N)NR’’R’’’末端基または-R’NC(N)NR’’-結合基(これら文言は本明細書中上記で定義されており、R’、R’’、およびR’’’は本明細書中定義される通りである)を表す。
【0497】
本明細書中使用される場合、用語「アジド」は、-N基を表す。
【0498】
用語「スルホンアミド」は、-S(O)NR’R’’基を表し、ここでR’およびR’’は本明細書中定義される通りである。
【0499】
用語「ホスホニル」または「ホスホネート」は、-OP(O)-(OR’)2基を表し、ここでR’は本明細書中定義される通りである。
【0500】
用語「ホスフィニル」は、-PR’R’’基を表し、ここでR’およびR’’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0501】
用語「アルキルアリール」は、本明細書中記載されるアリールで置換された、本明細書中定義されるアルキルを表す。例示的なアルキルアリールはベンジルである。
【0502】
用語「ヘテロアリール」は、たとえば窒素、酸素、および硫黄などの1つ以上の原子を環に有糸、さらに完全にコンジュゲートしたπ電子系を有する単環基(たとえばC5-C6ヘテロアリール環)または縮合環基(すなわち隣接する対の原子を共有する環)を表す。一部の実施形態では、用語「ヘテロアリール」および「C5-C6ヘテロアリール」は、本明細書において互換可能に使用される。ヘテロアリール基の例として、限定するものではないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、およびプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、本明細書中上記に定義される1つ以上の置換基により置換されてもよくまたは置換されなくてもよい。代表的な例は、チアジアゾール、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0503】
本明細書中使用される場合、用語「ハロ」および「ハロゲン化物」は本明細書中互換可能に、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であるハロゲンの原子を表すように言及され、また、本明細書中、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物をも表す。
【0504】
用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン化物でさらに置換された、上記に定義されるアルキル基を表す。
【0505】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態が、ある範囲の形式で提示され得る。この範囲の形式での説明は単に簡便性および簡潔性のためのものであり、本発明の範囲における変更できない限定と解釈すべきでないことを理解されたい。よって、ある範囲の説明は、具体的に開示される全ての見込みのある下位範囲およびその範囲の中の個々の数値を有するとみなされる。たとえば、1~6などの範囲の説明は、具体的に開示される下位範囲、たとえば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、および当該範囲の中の個別の数、たとえば1、2、3、4、5、および6を有するとみなされる。これは、範囲の広さに関わらず当てはまる。
【0506】
数学的な範囲は本明細書中いつ記載されるかどうかに関わらず、記載される範囲の中の全ての記載される数字(分数または整数)を含むように意味される。最初の表記番号と第2の表記番号との「間の範囲(ranging/ranges)」および第1の表記番号「から」第2の表記番号「までの範囲」は、本明細書中互換可能に使用され、第1の表記番号および第2の表記番号、ならびにそれら間の全ての分数および整数を含むように意味される。
【0507】
本明細書中使用される場合、用語「方法」は、所定のタスクを達成するための方法、手段、技術、および手法を表し、限定するものではないが、化学、薬理学、生物学、生化学、および医学の分野の実務者に知られているか、または化学、薬理学、生物学、生化学、および医学の分野の実務者により既知の方法、手段、技術、および手法から容易に開発される方法、手段、技術、および手法が挙げられる。
【0508】
本明細書中使用される場合、用語「~を処置する(treating)」は、病態の進行を抑止すること、実質的に阻害すること、遅らせること、もしくは反転させること、病態の臨床的もしくは審美的な症状を実質的に寛解させること、または病態の臨床的もしくは審美的な症状の出現を実質的に予防することを含む。
【0509】
本発明の特定の態様は、明確性のため別々の実施形態の文脈で記載されているが、同様に単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、本発明の様々な特性は、簡潔性のため単一の実施形態の文脈で記載されているが、同様に、別々にまたはいずれかの適切な下位の組み合わせで、または本発明の他のいずれかの記載される実施形態において適宜提供され得る。様々な実施形態の状況で記載される特性の特性は、この実施形態がこの構成要素伴わない場合に無効ではない限り、当該実施形態の必須の特性とみなされるべきではない。
【0510】
本明細書中上述し、以下の特許請求の範囲のセクションで請求した本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的な裏付けを見出している。
【0511】
実施例
ここでは以下の実施例に対する言及がなされており、上記の説明と共に、非限定的な形式で本発明の一部の実施形態を例示している。
【0512】
皮膚テープ試験
テープの剥離は、化粧品製剤および皮膚科学製剤の質および効力の評価のための単純で効率的な方法である。製剤の局所的な適用および浸透の後、角質層の細胞層を、接着フィルムを使用して、連続して同じ皮膚領域から除去する。10分ごとにテープを付着させ、次に製剤を適用した皮膚表面から除去する。各テープ片は、FTIR技術により分析した。テープのセロファンポリマーに対応する1450cm-1でのピークは、同じ高さで正規化した。
【0513】
実施例1
誘導体化MaSp系繊維
【0514】
MaSp系繊維のアミノ化を、以下のように行った。
【0515】
陰イオン性界面活性剤を伴うMaSp系繊維を含む水性分散剤(本明細書中「SVX」として使用される)を遠心分離し、脱イオン化(DI)水に再度分散した。さらに、MaSp系繊維を、良好に確立された手法により実質的に乾燥させ、DI水に再度分散させた後、MaSp懸濁物を得た。
【0516】
2-(4アミノフェニル)エチルアミン(APEA)の水溶液(1~20(w/w)%)を調製した後、HCl(1M)で酸性化させた。
【0517】
2~10モル過剰のNaNOを2-(4-アミノフェニル)エチルアミン溶液に添加し、1~20℃の温度に10~60分間保ち、ジアゾ化溶液を得た。次に、ジアゾ化溶液を冷却しながらMaSp懸濁物に滴下した。得られた混合物を、反応が完了するまで撹拌した。
【0518】
次に、上清を廃棄し、残存する誘導体化MaSp系繊維をDI水で徹底的に洗浄した後、アミノ化繊維を乾燥させた。
【0519】
修飾効率(収率)を、反応混合物中の未反応のAPEAの量を計算することにより決定した。この計算は、APEAのUV吸着を(UV分光光度法を介して)決定することにより行った。最大60%のチロシンのジアゾ化が観察された。
【0520】
ポリグルタルアルデヒド(PGA)とアミノ化MaSp系繊維のコンジュゲートを、以下のように行った。
ポリグルタルアルデヒドの調製(平均M.W.:500~2000または約1000Da)
【0521】
25%のグルタルアルデヒド水溶液20mlをKCO(1M)の水溶液に添加し、50℃で2時間加熱した。次に、R.T.(室温、摂氏20~25℃)に冷却し、pHを、37%のHClを使用して7に設定した。次にこれを7000rpmで10分間遠心分離し、液体をアセトンでその容量の10倍まで希釈した。K2CO3粉末を濾過し、アセトンを気化させた。PGA水溶液を凍結乾燥し、-20℃で保存した。
【0522】
アミノ化MaSp系繊維を、1~10mlのポリグルタルアルデヒド(PGA)溶液(0.01~2Mの濃度)を含む水性バッファーに添加した。次に、得られた懸濁物を、R.T.に冷却し、pHをHCl(37%)を使用して中性化した。この反応を、撹拌しながら1~10℃で一晩続け、所望の生成物:SVX-PGAを得た。
【0523】
本発明者らは、PGAに結合したアミノ化MaSp系繊維の合成に成功した(ここでPGAは、式4に表されるように、金属酸化物キレート基(サリチル酸)にさらに結合している)。
【0524】
ポリグルタルアルデヒド(PGA)への金属酸化物キレート基(サリチル酸、SA)のコンジュゲート
本発明者らは、式4により表されるように、金属酸化物キレート剤(コハク酸)で修飾されたPGA誘導体化MaSp系繊維の合成に成功した。
【0525】
式4の修飾されたMaSp系繊維(SVX-PGA-SA)は、SVX-PGA(実施例1の手法により調製)を4アミノサリチル酸と以下のように反応させることにより合成した:
【0526】
300mgのSVX-PGAを含む水分散物(pH10.5)を、150mg(過剰)の4-アミノサリチル酸と1~10時間、20~40℃で混合した。反応混合物の色は、橙色に変化した。次に、反応混合物を遠心分離し、固体のSVX-PGA-SAを、数回洗浄して、全ての未反応のアミノサリチル酸を除去した。
【0527】
PGA-SAで修飾したMaSp系繊維によるチタニア粒子の錯体形成
以下のように、チタニア粒子(粒径300~500nm)を、SVX-PGA-SAにより錯体形成し、複合体TiO-SVX-PGA-SAをもたらした。
【0528】
200mgのSVX-PGA-SAを含む水分散物(pH3.5)を200mgの酸化チタンと40℃で10時間混合した。反応混合物の色は、暗赤色に変化した。次に、反応混合物を遠心分離し、固体TiO-SVX-PGA-SAを数回洗浄して、全ての未反応の物質を除去した。
【0529】
誘導体化MaSp系繊維のSEM画像が、図24Aおよび24Bに表されており、誘導体化MaSp系繊維の顕著な多孔度(たとえば少なくとも10m/gのBET表面積により定義)が表されている。
【0530】
誘導体化繊維のゼータ電位を表す例示的なグラフが、図23に示されている。図23により表されるように、本発明の誘導体化繊維のゼータ電位は、元の状態の繊維と比較して改変されている。さらに、図23は、ゼータ電位が、誘導体化繊維の化学的修飾(官能部分)により予め決定されていることを示している。
【0531】
実施例2
ヘアカラー組成物
本発明者らは、様々な誘導体化多孔性MaSp系繊維を含むヘアカラー組成物(たとえば本明細書中記載されるはカラー組成物)の実施に成功した。これらヘアカラー組成物の一部は、ヘアカラー組成物を髪(たとえばヒトの髪)と接触させた後に、均一で安定した髪のコーティングをもたらした。髪のコーティングの実施に成功した例示的なヘアカラー組成物として、アミノ化MaSp系繊維(4-(2-アミノエチル)アニリン(APEA);3-アミノプロピル(amonipropyl)トリエトキシシラン(APTES)によりまたはPEIにより化学的に修飾)が挙げられる。さらに、いくつかの染料(陽イオン性染料および陰イオン性染料)が、髪のコーティングで実施され、カラーリングされた髪をもたらした。本明細書中記載のヘアカラー組成物の適用の後に形成されるカラーリングされた髪は、徹底的に洗浄した後であってもその色を保持した。
【0532】
さらに本発明者らは、ヘアカラー組成物のため様々なMaSp系繊維を利用した。安定した髪のコーティングは、アミノ化MaSp系タンパク質およびアミノ化変異体MaSp系タンパク質を使用することにより得られた。
【0533】
さらに、図25に表されるように、酸性条件下(アミンのpKa未満のpH、たとえば8未満、7未満、6未満、5未満、4未満のpH)で髪コーティング組成物をヒトの髪に適用することは、十分なコーティング層をもたらした。対照的に、塩基性条件下(10超のpH)で髪コーティング組成物をヒトの髪に適用する場合、繊維はヒトの髪に付着せず、よってコーティング層は獲得されなかった(図25B)。
【0534】
本発明者らは、様々な本発明の誘導体化繊維(たとえば陽イオン性官能基を含む)を含む髪コーティング組成物、たとえばPEI改変、アミノ修飾(APEAを介する)、およびアミノシラン修飾(APTESを介する)の誘導体化MaSp系繊維の実施に成功した。これら誘導体化繊維が、酸性pHで適用されることより、図25~27により例証されるように、ヒトの髪の上で安定したコーティング層が得られた。
【0535】
実施例3
日焼け止め組成物
300nm超の粒径を有する酸化チタン粒子を含む本発明の複合体(実施例1に記載されるように合成)は、元の状態のチタニア粒子と比較して、水溶液および/または有機溶媒において有意に改善した分散性を呈した。(たとえば式4により表される)PGA誘導体化MaSp系繊維に結合したサリチル酸塩を介して結合(錯体化)した二酸化チタンナノ粒子を含む水分散物は、元の状態の二酸化チタンナノ粒子と比較して優れた日焼け止め効果を呈した。さらに、サリチル酸塩誘導体化MaSp系繊維に結合した二酸化チタン粒子を含む複合体は、(たとえば安定した分散を形成できる)優れた分散性を呈した(ここで酸化チタン粒子の誘導体化MaSp系繊維に対するw/w比は、約1:1である)。
【0536】
上述の複合体は、(たとえばヒトの皮膚に対する)UV曝露を低減するために利用した。
【0537】
実施例4
ヒアルロン酸の充填および放出
細菌(SVX-E)で発現したSVX(Spider silk fiber)またはSpider silk繊維を、(本明細書中上述されるように)エタノールで2回洗浄し、次に水で洗浄した。10mgのヒアルロン酸(HA)を、1~20mLの水に分散した10mgのSVXに添加した。pHは、HClまたはリン酸塩バッファーで調節し、水を添加して、所望の体積を達成した。この混合物を振とうし、遠心分離した。上清を廃棄し、小さなペレットのサンプルをスライドガラス上で乾燥させ、HA+SVX-EまたはHA+SVXのペレットをもたらした。その後、これらペレットを、FTIR(Nicolet iS5 FTIR Spectrometer, Thermo Fisher Scientific)により試験した。残りのペレットを水に再懸濁し、懸濁物を、25℃、200rpmにて1~30分間振とうした。各ペレットでサンプルをFTIRにより分析し、全乾燥重量におけるHAの割合を、HAに固有のピーク強度をポリマーに固有のピーク強度(表1)で除算することにより計算した。これら結果から、さらなる化合物(たとえばHA)を安定してカプセル化するMaSp系繊維(たとえばSVXまたはSVX―E)の特性が確認された(ここで、カプセル化化合物の繊維(たとえばSVXまたはSVX―E)に対するw/w比は、約1:1である)。
【表1】
【0538】
SVX、SVX-E、silk、およびセルロースからのHAの放出プロファイルが、図20に示されている。図20は、silkおよびセルロースの遷移からの迅速な放出と比較した、SVX、SVX-Eからの徐放を呈している。
【0539】
実施例5
SVX-E繊維からの酢酸レチニルおよびグリセロールの充填および放出
細菌(SVX-E)で発現したSpider silk繊維を、本明細書中上述されるように前処置した。その後、前処置したSVX-Eを、酢酸レチニルまたはグリセロールと組み合わせ、実施例1に記載の手法によりペレットを形成した。有効成分(酢酸レチニルまたはグリセロール)の放出を、実施例1に記載の手法にしたがい、FTIRにより推定した。有効成分の放出プロファイルを示すグラフが、図22A~Bに表されている。
【0540】
実施例6
α-ヒドロキシカルボン酸およびHAの充填および放出
SVX-E系製剤からのHAおよびα-ヒドロキシカルボン酸(たとえばグリコール酸、GAおよび乳酸、LA)の放出を評価するために、本発明者らは、以下の例示的な液体組成物を、本明細書中上述のプロトコルにしたがい調製した。試験した組成物および陰性対照は、表2にまとめられている。
【表2】
【0541】
試験した組成物および陰性対照を、以下のように調製した:
対照1:10mlの対照1を、0.5グラムのフィルム形成剤(プルラン)を9.3グラムの水に溶解し、その後0.2グラムの乳酸を添加することにより調製した。
【0542】
対照2:10mlの対照2を、0.5グラムのフィルム形成剤(プルラン)を8.0グラムの水に溶解し、その後1.5グラムのグリコール酸溶液(33%)を添加することにより調製した。対照3:10mlの対照3は、0.5グラムのフィルム形成剤(プルラン)を9.5グラムのHA溶液(1%)に溶解することにより調製した。LA+SVX-Eサンプルは、0.5gのフィルム形成剤(プルラン)、1.0グラムのSVX-E、0.2グラムのLAおよび8.3グラムの水を混合することにより調製した。GA+SVX-Eサンプルは、0.5gのフィルム形成剤(プルラン)、1.0グラムのSVX-E、1.5グラムのGA溶液(33%)および7.0グラムの水を混合することにより調製した。HA+SVX-Eサンプルは、0.5gのフィルム形成剤(プルラン)、1.0グラムのSVX-Eおよび8.5グラムのHA溶液(1%)を混合することにより調製した。
【0543】
図21に示されるように、SVX-E繊維系液体組成物での化粧品有効成分(たとえばLA、GA、およびHA)の放出速度は、対照と比較して遅かった。本明細書中例証されるように、SVX-E繊維系液体組成物は、皮膚表面上で様々な美容成分の残存時間の長期化を可能にする。一部の実施形態では、化合物の放出速度は、各化合物(すなわち美容成分)の大きさおよび分子量により予め決定されている。
【0544】
さらに、10(w/w)%超のフィルム形成剤の濃度を有するSVX-E繊維系液体組成物が、粘性がありすぎ、均質ではないテクスチャーを有し、よって、化粧品の適用に適切ではないことが見出された。さらに、1(w/w)%未満のフィルム形成剤の濃度を有するSVX-E繊維系液体組成物は、不十分な粘度を特徴とし、よって化粧品の適用に適切ではなかった。一部の実施形態では、1~15(w/w)%のフィルム形成剤を含む液体組成物が、化粧品適用に適した粘度を特徴とする。一部の実施形態では、1~15(w/w)%のフィルム形成剤を含む液体組成物は、フィルム形成できる。一部の実施形態では、液体組成物の中で1~15(w/w)%の濃度であるフィルム形成剤は、それに十分な柔軟性を提供する。十分な柔軟性を有する美容組成物は、対象の皮膚に(たとえば広げることにより)適用され得る。
【0545】
本発明者らが得たデータにより、液体組成物の総重量のうち10%のSVX-Eが、しわの深さの有意な低減を得るため、および有意な皮膚の起伏を提供するために必要であった。さらに、美容成分(たとえばGA、LA、および/またはHA)を搭載した1~20(好ましくは10)(w/w)%のSVX-E繊維により強化された液体組成物が、対象の皮膚を美容成分で補うために適切であることが見出された。一部の実施形態では、美容成分の量は、有意な薬用化粧品作用(たとえば方法のセクションに記載される作用)を誘導するために十分である。
【0546】
本発明が、その具体的な実施形態と併せて説明されてきたが、多くの代替案、修正、およびバリエーションは、当業者に明らかであることは明白である。よって、添付の特許請求の趣旨および範囲の中の当該全ての代替案、修正、およびバリエーションを包含することが意図されている。
【0547】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照により本明細書に組み込まれているように具体的かつ個別に記載されている場合と同じ度合いで、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。さらに、本出願における全ての参照文献の引用または識別は、当該参照文献が本発明に対する従来技術として利用可能であるとの承認として解釈すべきではない。セクションの見出しが使用される限り、これらは必ずしも限定と解釈すべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図20
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図23
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023522997000001.app
【国際調査報告】