(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】電池電極用多孔性材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/26 20060101AFI20230525BHJP
C22B 5/00 20060101ALI20230525BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20230525BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20230525BHJP
H01M 4/32 20060101ALI20230525BHJP
H01M 4/50 20100101ALI20230525BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20230525BHJP
H01M 10/30 20060101ALI20230525BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20230525BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H01M4/26 F
C22B5/00
H01M4/24 Z
H01M4/80 C
H01M4/32
H01M4/50
H01M4/52
H01M10/30 Z
H01M10/28 Z
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564552
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021028477
(87)【国際公開番号】W WO2021216769
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521040123
【氏名又は名称】フォーム エナジー インク
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン, マイケル アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン, アネリーゼ クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ウッドフォード, ウィリアム ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】チャン, イェット ミン
【テーマコード(参考)】
4K001
5H017
5H028
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4K001DA05
4K001GA07
4K001GA19
5H017AA02
5H017AS02
5H017BB10
5H017CC28
5H017DD08
5H017EE04
5H028AA05
5H028BB15
5H028CC07
5H028EE01
5H028EE04
5H031BB00
5H031EE01
5H031EE02
5H031RR00
5H050AA07
5H050BA11
5H050CA03
5H050CA05
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA06
5H050FA09
5H050FA13
5H050GA15
(57)【要約】
種々の実施形態のシステムおよび方法は、電気化学的エネルギー貯蔵システムの電極用の多孔性材料を提供し得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
電解質と、
負極と、を含む電池であって、前記負極は、多孔性金属を含む、
電池。
【請求項2】
前記多孔性金属は、少なくとも部分的に、少なくとも1種の一過性の細孔形成剤を使用して製造された、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記多孔性金属は、鉄を含む、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記一過性の細孔形成剤は、還元剤である、請求項2または3に記載の電池。
【請求項5】
前記還元剤は、炭素を含む、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記一過性の細孔形成剤は、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II,II)、マッキナワイト、マーカサイト、パイライト、トロイライト、磁硫鉄鉱、グライガイト、非晶質硫化鉄(II)、または硫化鉛を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記一過性の細孔形成剤は、石炭を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記多孔性金属は、炉床炉内での還元によって製造される、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記炉床炉は、回転炉床炉または線形炉床炉である、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記多孔性金属は、回転窯内での還元によって製造される、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
前記多孔性金属における孔の形成は、前記電池内での電気化学的還元によって起こる、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項12】
前記一過性の細孔形成剤は、シリカ、ケイ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、または酸化マグネシウムを含む、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記一過性の細孔形成剤は、電解質の塩を含む、請求項11に記載の電池。
【請求項14】
前記一過性の細孔形成剤は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含む、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
前記一過性の細孔形成剤は、硝酸アンモニウムまたは硫酸カリウムを含む、請求項11に記載の電池。
【請求項16】
前記多孔性金属は、第1のサイズを有する前駆体材料から形成され、前記一過性の細孔形成剤の粒径は、前記第1のサイズとほぼ同じである、請求項2~15のいずれか一項に記載の電池。
【請求項17】
前記多孔性金属は、その表面に放電生成物の層を有し、前記一過性の細孔形成剤の粒径は、前記放電生成物の層の厚さの2倍を超える、請求項2~15のいずれか一項に記載の電池。
【請求項18】
前記少なくとも1種の一過性の細孔形成剤は、少なくとも2種の異なる一過性の細孔形成剤を含む、請求項2~17のいずれか一項に記載の電池。
【請求項19】
前記2種の異なる一過性の細孔形成剤は、異なる種類の細孔形成剤および/または異なるサイズの細孔形成剤である、請求項18に記載の電池。
【請求項20】
前記負極と冶金学的に結合した集電体、および/または前記負極と電気的導通状態にある集電体をさらに含み、前記集電体は前記負極の少なくとも一部に沿っている、請求項1~19のいずれか一項に記載の電池。
【請求項21】
前記正極は、エアブリージングカソード、オキシ水酸化ニッケル電極、または二酸化マンガン電極を備える、請求項1~19のいずれか一項に記載の電池。
【請求項22】
前記鉄は、製鋼ダスト、ミルスケール、鉄鉱石、鉄網、鉄線、鉄粉、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項3~21のいずれか一項に記載の電池。
【請求項23】
前記一過性の細孔形成剤は、コークスを含む、請求項2~22のいずれか一項に記載の電池。
【請求項24】
前記多孔性金属は、少なくとも部分的に、金属炭酸塩を含む細孔形成剤を使用して製造された、請求項1~23のいずれか一項に記載の電池。
【請求項25】
電池の負極用の多孔性金属を形成する方法であって、少なくとも1種の一過性の細孔形成剤を使用して前記多孔性金属に孔を形成することを含む、方法。
【請求項26】
前記一過性の細孔形成剤は、請求項3~24のいずれか一項に記載の一過性の細孔形成剤であり、前記孔は、還元ステップを伴って、または還元ステップなしで形成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~24のいずれか一項に記載の電池を1つまたは複数含む、
バルクエネルギー貯蔵システム。
【請求項28】
少なくとも24時間にわたって電荷を保持するように構成された長期エネルギー貯蔵システムであって、請求項1~24のいずれか一項に記載の電池を1つまたは複数含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年4月22日に出願された「Porous Materials For Battery Electrodes」という名称の米国特許仮出願第63/013,864号の優先権を主張するものであり、その内容全体が、参照によりあらゆる目的のために本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵技術は、電力網においてますます重要な役割を果たしつつある。最も基本的なレベルでは、こうしたエネルギー貯蔵資産は、配電網における発電および需要をより良好に一致させるための平滑化を提供する。エネルギー貯蔵デバイスにより実施される役務は、数ミリ秒から数年まで、複数のタイムスケールにわたって電力網に有益である。今日、数ミリ秒から数時間までのタイムスケールをサポートすることができるエネルギー貯蔵技術は存在するが、長期および超長期(まとめて、少なくとも8時間以上)エネルギー貯蔵システムが必要とされている。
【0003】
この「背景技術」のセクションは、本発明の実施形態に関連付けられる可能性がある当技術分野の種々の態様を紹介することを意図している。したがって、このセクションにおける上述の考察は、本発明をより良好に理解するための枠組みを提供するものであり、先行技術の承認とみなされるべきではない。
【発明の概要】
【0004】
種々の実施形態のシステムおよび方法は、電気化学的エネルギー貯蔵システムの電極用の多孔性材料を提供し得る。
【0005】
種々の実施形態は、正極と、電解質と、負極と、を含む電池であって、負極は多孔性金属を含む、電池を含み得る。種々の実施形態では、多孔性金属は、少なくとも部分的に、少なくとも1種の一過性の細孔形成剤を使用して製造されてもよい。種々の実施形態では、多孔性金属は、鉄を含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、還元剤である。種々の実施形態では、還元剤は、炭素を含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II,II)、マッキナワイト、マーカサイト、パイライト、トロイライト、磁硫鉄鉱、グライガイト、非晶質硫化鉄(II)、または硫化鉛を含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、石炭を含む。種々の実施形態では、多孔性金属は、炉床炉内で還元によって製造される。種々の実施形態では、炉床炉は、回転炉床炉または線形炉床炉である。種々の実施形態では、多孔性金属は、回転窯内で還元によって製造される。種々の実施形態では、多孔性金属における細孔の形成は、電池における電気化学的還元によって起こる。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、シリカ、ケイ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、または酸化マグネシウムを含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、電解質の塩を含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、硝酸アンモニウムまたは硫酸カリウムを含む。種々の実施形態では、多孔性金属は、第1のサイズを有する前駆体材料から形成され、一過性の細孔形成剤の粒径は、第1のサイズとほぼ同じである。種々の実施形態では、多孔性金属は、その表面に放電生成物の層を有し、一過性の細孔形成剤の粒径は、放電生成物の層の厚さの2倍を超える。種々の実施形態では、少なくとも1種の一過性の細孔形成剤は、少なくとも2種の異なる一過性の細孔形成剤を含む。種々の実施形態では、2種の異なる一過性の細孔形成剤は、異なる種類の細孔形成剤および/または異なるサイズの細孔形成剤である。種々の実施形態では、負極と冶金学的に結合したおよび/または電気的導通状態にある集電体をさらに含み、当該集電体は負極の少なくとも一部に沿っている。種々の実施形態では、正極は、エアブリージングカソード、オキシ水酸化ニッケル電極、または二酸化マンガン電極を備える。種々の実施形態では、鉄は、製鋼ダスト、ミルスケール、鉄鉱石、鉄網、鉄線、鉄粉、またはこれらの任意の組合せを含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、コークスを含む。種々の実施形態では、多孔性金属は、少なくとも部分的に、金属炭酸塩を含む細孔形成剤を使用して製造され得る。種々の実施形態は、少なくとも1種の一過性の細孔形成剤を使用して多孔性金属に孔を形成することを含む、電池の負極用の多孔性金属を形成する方法を含む。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤の孔は、還元ステップを伴って形成されてもよく、または還元ステップなしで形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】種々の実施形態による電気化学セルの一部の概略図である。
【
図2】負極用多孔性金属を形成するための方法を示すプロセスフローダイヤグラムである。
【
図3】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図4】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図5】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図6】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図7】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図8】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図9】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図10】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【
図11】種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる種々の例示的なシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特定の例および実装への言及は、例示を目的としたものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の実施形態の以下の説明は、本発明をこうした実施形態に限定することを意図しておらず、むしろ当業者による本発明の製作および使用を可能にするためであることを意図している。
【0008】
以下の例は、本発明の本システムおよび本方法の種々の実施形態を例示するために提供されている。こうした例は、例示を目的としたものであり、予言的である場合があり、限定とみなされるべきではなく、いかなる点でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0009】
添付の図面を参照して種々の実施形態を詳細に説明する。同じまたは類似の部品を参照するために、可能な限り、図面全体にわたって同じ参照番号を使用する。特定の例および実装への言及は、例示を目的としたものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の実施形態の以下の説明は、本発明をこうした実施形態に限定することを意図しておらず、むしろ当業者による本発明の製作および使用を可能にすることを意図している。別様の注記がない限り、添付の図面は、縮尺通りに描画されていない。
【0010】
本明細書で使用される場合、別様の記載がない限り、室温は25℃であり、標準温度および標準圧力は、25℃および1気圧である。別様の明示的な記載がない限り、すべての試験、試験結果、物理的特性、ならびに温度依存性の値、圧力依存性の値、またはその両方である値は、標準周囲温度および圧力で提供されている。
【0011】
一般に、用語「約」は、本明細書で使用される場合、別様の指定がない限り、±10%の変動または範囲、記載の値の取得に関連する実験誤差または機器誤差、好ましくはこれらのうちのより大きな方を包含することを意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合、別様の指定がない限り、本明細書の値の範囲の列挙は、範囲内に入る各々別々の値を個別に参照する簡略的な方法としての役目を果たすことを意図しているに過ぎない。本明細書にて別様に指示されていない限り、範囲内の各々個々の値は、本明細書に個々に列挙されているかの如く本明細書に組み込まれる。
【0013】
以下の例は、本発明の本システムおよび方法の種々の実施形態を例示するために提供されている。こうした例は、例示を目的としたものであり、予言的である場合があり、限定とみなされるべきではなく、いかなる点でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0014】
本発明の実施形態の主題である、または本発明の実施形態に関連付けられる新規で画期的なプロセス、材料、性能、または他の有益な特徴および特性の根底にある理論を提供または表明する必要はないことに留意されたい。それにもかかわらず、当分野の技術をさらに進歩させるため、本明細書には種々の理論が提供されている。本明細書に示されている理論は、別様の明示的な記載がない限り、いかなる点でも本特許請求された発明に与えられる保護の範囲を限定、制限、または狭めるものではない。こうした理論は、本発明の利用には必要でない、または実践されない場合がある。さらに、本発明は、本発明の方法、物品、材料、デバイス、およびシステムの実施形態の機能特徴を説明するための、新しくこれまで知られていなかった理論に結び付き得ることが理解される。そのような後に開発される理論は、本発明に与えられる保護の範囲を限定するものではない。
【0015】
本明細書に示されているシステム、設備、技術、方法、活動、および稼動の種々の実施形態は、本明細書に示されているものに加えて、種々の他の活動および他の分野で使用することができる。加えて、そうした実施形態は、例えば、将来において開発され得る他の設備または活動と共に;および本明細書の教示に基づいて部分的に変更され得る既存の設備または活動と共に、使用することができる。さらに、本明細書に示されている種々の実施形態および例は、全体的にまたは部分的に、および異なる種々の組み合わせで、互いと共に使用することができる。したがって、例えば、本明細書の種々の実施形態で提供される構成は、互いと共に使用することができ;本発明に与えられる保護の範囲は、特定の実施形態、例、または特定の図の実施形態に示されている特定の実施形態、構成、または配置に限定されるべきではない。
【0016】
本発明の実施形態は、長期および超長期低コストエネルギー貯蔵のための装置、システム、および方法を含む。本明細書では、「長期」および/または「超長期」は、8時間のエネルギー貯蔵期間、8時間~20時間の範囲のエネルギー貯蔵期間、20時間のエネルギー貯蔵期間、20時間~24時間の範囲のエネルギー貯蔵期間、24時間のエネルギー貯蔵期間、24時間~1週間の範囲のエネルギー貯蔵期間、1週間~1年の範囲のエネルギー貯蔵期間(例えば、数日から数週間、数か月まで)など、8時間以上のエネルギー貯蔵期間を指し得る。換言すれば、「長期」および/または「超長期」エネルギー貯蔵セルとは、数日、数週間、または数シーズンにわたってエネルギーを貯蔵するように構成し得る電気化学セルを指す。例えば、電気化学セルは、日光が豊富であり太陽光発電が電力網必要性を上回る夏季月間中に太陽電池で発電されるエネルギーを貯蔵し、日光が、電力網必要性を満たすのに不十分となり得る冬季月間中に、貯蔵されたエネルギーを放電するように構成されていてもよい。
【0017】
図1は、種々の実施形態による、電池100のような電気化学セルの概略図である。電池100は、正極102、電解質106、および負極104を含み得る。種々の実施形態では、負極104は、集電体108と一体化していてもよい。具体例として、電池100、正極102、電解質106、負極104、および/または集電体108は、米国特許出願公開第2020/0036002号明細書、米国特許出願公開第2021/0028452号明細書、および/または米国特許出願公開第2021/0028457号明細書に記載されている任意の電池、正極、電解質、負極、および/または集電体であってもよく、これら3つの出願全ての全内容は、参照によりあらゆる目的のために本明細書に援用される。1つまたは複数の電池100は、長期エネルギー貯蔵システム、超長期エネルギー貯蔵システムなどのエネルギー貯蔵システム内で互いに接続されていてもよい。
【0018】
種々の実施形態では、電解質106は、当該技術分野で公知の任意の電解質、例えば、鉄アルカリ電池に有用な任意の電解質であってもよい。種々の実施形態では、負極104は、多孔性鉄などの多孔性金属から形成されてもよく、および/または多孔性鉄などの多孔性金属を含んでもよい。種々の実施形態では、負極104は、アルカリ鉄電極などのアルカリ電極であってもよい。
【0019】
集電体108は、負極104を形成するために使用するプロセス(本明細書に記載の還元プロセスなど)に使用される材料と一体化された網目またはその他の多孔性表面であってもよい。集電体108は、鉄板であってもよい。集電体108は、機械的圧力を介して、電極104と冶金学的に結合していてもよく、または電極104と電気的導通状態に置かれていてもよい。電極104は、非常に導電性があり得るためその全長に沿って集電する必要がなく、電極の104上部においてタブでの集電のみを必要とする。あるいは、電極104は、非常に多孔性であり得るため、導電性がきわめて低く、全電極面積に沿って集電が必要である。
【0020】
正極102は、対電極と呼ばれることもあり、かかるアノードに対する対電極(または正極102)は、当該技術分野で公知の任意の対電極であってもよく、例えば、エアブリージングカソード、オキシ水酸化ニッケル電極、および二酸化マンガン電極が挙げられるがこれらに限定されない、アルカリ鉄電池用の任意の対電極であってもよい。
【0021】
負極104などのアルカリ鉄電極の電気化学的サイクルの間に生産される充電生成物と放電生成物との間の体積変化が大きいことを考慮すると、多孔度は、鉄電極から得られる容量を決定する重要な指標となり得る。したがって、高多孔度、低コストの鉄電極を達成する方法は、高性能の低コスト鉄電池の達成にとって興味深い。
【0022】
負極104のような鉄電極の反応性に関するあらゆる特定の理論やモデルに限定されることなく、電解質106のようなアルカリ性電解質中での負極104のような鉄電極の酸化に関して考えられるスキームは、以下の2つの反応ステップ(表1の反応1および反応2)に従って進行し得る。追加のまたは異なる反応生成物が生じ得るが(そのうちの1つは下記の表1の反応3に記載)、反応を経た体積変化の特徴は金属性鉄に関するあらゆる酸化生成物に共通している。
【0023】
【0024】
表2に、負極104のようなアルカリ鉄電極における選択された充電生成物および放電生成物の主な物理的特性のいくつかを示す。
【0025】
【0026】
ピリング-ベドワース比とは、ある金属酸化物の基本セルの体積と、(酸化物が形成される)対応する金属の基本セルの体積との比であり、反応の1工程における正味の体積変化の尺度である。
【0027】
高い多孔度を示す鉄ベースの材料は、微粒子材料加工技術の使用により製造できる。微粒子材料加工中に多孔性を導入する技術の1つは、一過性の相を導入することである。一態様において、回転または線形炉床プロセス(それぞれ、RHFまたはLHF)を使用して製造された鉄材料は、一般的に、石炭ベースの還元剤を使用し、これは一過性の細孔形成剤としても作用する。上記のプロセスにより製造された材料は、蓄電池(電池は、本明細書で電気化学セルとも呼ばれることがある)の鉄電極(例えば負極104)に使用されたときに、有利な特性を有し得る。一過性の相を導入し、低コスト還元技術により鉄ベースの材料を形成するその他の方法も記載する。場合によっては、鉄ベースの材料は、電池(例えば、電池100)への導入前の加工ステップの間に熱化学的に還元されるのではなく、電池アセンブリ(例えば、電池100)の内部で電気化学的に還元されてもよい。種々の実施形態では、電池100などの電池(または電気化学セル)の鉄電極は、電池(または電気化学セル)の負極(例えば、負極104)であってもよい。
【0028】
種々の実施形態は、還元プロセスへの投入材料の幾何学的形状および当該幾何学的形状を作る方法に関し得る。電池100などのアルカリ電池のための鉄ベースの材料は種々の形態をとることができ、そのいくつかを、種々の形態の長所と短所と共に記載する。
【0029】
還元プロセスに投入するための鉄ベースの材料は、鉄前駆体ペレットから、非常に低コストで製造できる。かかる鉄前駆体ペレットは、例えば、溶鉱炉用の酸化物ペレットおよび直接還元用の酸化物ペレットの製造に使用される技術によって形成できる。ペレット化プロセスの間に、一過性の相が、アグロメレーション処理される混合物に導入され、それによって、一過性の相とペレット内の他の構成要素との均質混合物を提供し得る。かかるアプローチは、製鋼業などの種々の産業で使用されるペレット化プロセスの大規模かつ低コストという利点を活かすという点で有用である。かかるプロセスによって製造されたペレットは、通常、ほぼ球体であり、そのサイズは数ミリメートルから数十ミリメートルの範囲となり得る。ペレットの半径は、還元プロセスに望ましい反応速度が得られるように、またはエネルギー貯蔵デバイス内の電極(電池100における負極104など)として使用したときに所望の物質および電気移動特性が得られるように、選択されてもよい。アグロメレーションに使用される混合物に一過性の相が導入されている例は、回転炉床炉に使用されるペレットへのコークスの導入である。
【0030】
鉄ベースの材料は、ペレットではなく、シート状に作製されてもよい。これらのシートは、鉄前駆体材料をシート状に押出またはドクターブレード加工するによって製造されてもよい。シート製造プロセスで使用される混合物が一過性の相を含んでもよい。一例では、コークスと混合したマグネタイト鉱石濃縮物を、ドクターブレードによって厚さ約5mmとし、その後線形炉床炉内で還元してもよい。別の事例では、シートを細片状に切断し、その後、回転炉床炉に供給してもよい。シートの厚さは、還元プロセスに望ましい反応速度が得られるように、またはエネルギー貯蔵デバイス内の電極(電池100における負極104など)として使用したときに所望の物質および電気移動特性が得られるように、選択されてもよい。
【0031】
鉄ベースの材料について、棒、円盤、または板など他の幾何学的形状が可能となり得る。これらの幾何学的形状は、一般に、シートのローラー圧縮、板のプレスおよびにスリップ鋳込み、ならびに押出による棒および円盤の作製など、微粒子材料加工技術においてグリーン体を形成するための技術によって形成できる。円盤は、円形ダイを使用した場合に押出で得られた材料をダイを出た後に切断することから、またはダイ圧縮から、または円形金型へのスリップ鋳込みから、得られる。
【0032】
場合によっては、還元プロセスから得られる幾何学形状を、その後小片へと破砕してもよい。一例では、直接還元プロセスから得られた10mm(mm=10-3m)のオーダーの直径を有するペレットを、還元ステップの後に粉砕し、粉砕プロセス後の粒径が実質的に1mm~6mmとなるように精製する。
【0033】
鉄含有材料から、より酸化の少ない鉄または金属形態の鉄への還元を達成するために、多数のプロセスが利用できる。
【0034】
一態様において、鉄含有材料は、前駆体材料に含有されている、または前駆体材料に隣接して分布している炭素含有材料の分解によって還元されてもよい。これは、直接還元鉄の製造に使用される回転炉床炉で起こるような、石炭、コークス、またはその他の炭素含有材料を用いた固体状態還元によって起こり得る。炭素含有材料を用いるその他の還元プロセスにおいて、炭素含有材料は鉄含有材料に隣接して分布し、還元は、炭素含有材料から鉄含有材料への還元種の気相移動を介して起こる。例えば、石炭は、酸素の存在下で熱分解して、メタン、水素、および一酸化炭素などの種々の還元種を生成し得る。回転窯還元プロセスまたは回転炉床還元プロセスで使用されるプロセスの任意のものが、鉄含有材料の還元に適用できるとみなされるべきであり、これには、石炭が鉄含有材料に厳密には隣接していないが、なおも還元剤として使用できる、石炭ガス化が含まれる。
【0035】
鉄含有材料は、気相還元剤を用いた反応によっても還元され得る。かかる還元ガスを導入する方法は多数存在する。ガス状構成要素を用いて還元を実施するこれらの多数の方法を、還元プロセスを行う機械に応じて(バッチプロセスおよび連続プロセスの小分類へと)分割してもよい。これらのプロセスは、使用する雰囲気の観点からも考えられる。還元雰囲気を作るために使用される機械および使用され得る還元ガスの種類の非排他的リストは、以下を含む: 1)還元ガスを導入するための種々の機械、例えば、バッチプロセス(例えば、箱形炉の使用、管状炉の使用、真空炉の使用、または任意の他の種類のバッチプロセス炉の使用)、および/または連続プロセス(例えば、ウォーキングビーム炉、線形炉床炉、ベルト炉、窯炉、焼成式炉などの線形水平炉の使用、垂直シャフト炉の使用、流動床反応器の使用、還元ガスが導入される移動グレート炉などのグレート式炉の使用、または任意の他の種類の連続プロセス炉の使用);および/または 2)一酸化炭素、水素、メタン、硫化水素、窒素、アルゴン、分解アンモニア、および/またはその組み合わせなどの、種々の種類の還元雰囲気、種々の方法で生成される還元雰囲気は、電気分解、天然ガス、天然ガスと水との反応(合成ガスおよび水ガスシフトした合成ガスの使用を含む)などが挙げられる。
【0036】
かかるプロセスは、その大きな多様性にもかかわらず、全てに共通する点として、適度な還元反応速度と還元反応の適度な完了とを達成するために、概して少なくとも400℃を超える(通常は実質的にそれより高い)温度と、ガス雰囲気の連続的なリフレッシュとを必要とする。必要な時間は、一般に、多くの要因(出発物質、所望の最終的な還元状態、粒径、粉末体の厚さなど)に依存するが、典型的な条件範囲は、700℃~1450℃およびピーク温度において15分~3時間である。
【0037】
別の態様では、鉄含有材料は、電気化学的に還元されてもよい。これは、アルカリ性電解質(多くは12を超えるpHを有する)中で起こり得る。電気化学的プロセスが良好に起こるように、孔空間を通した集電および導電体を提供してもよい。アルカリ性媒体外部での還元も実施されてよい。還元は、電気化学的エネルギー貯蔵に使用される同じ電気化学セルの内部、例えば、電池100の内部で起こってもよい。
【0038】
種々の実施形態は、負極104のような電極における孔形成のための一過性の相の細孔形成剤の使用を含み得る。一過性の相は、粉末化圧密体の内部に細孔空間を形成するため(すなわち、細孔形成剤として作用するため)に使用されてもよい。細孔形成剤として作用する一過性の相の必須要件は、粉末体の加工において、粉末体が十分な機械的完全性を達成する(細孔形成剤が除去され、細孔形成剤が残した容積が細孔として残る)点まで、粉末体内部の開放容積を保持することである。すなわち、細孔形成剤は、添加される材料の多孔度を増すために使用され得る。異なる粉末体は、加工中の様々な時点で十分な機械的完全性を達成することから、形成剤を導入する手段、および粉末体から細孔形成剤を除去する手段は、粉末体に適用される加工に応じ得る。以下において、細孔形成剤を導入する方法を数種類紹介する。最初に、細孔形成剤自体を、粉末圧密体に出入りする時期/方法に基づいて紹介する。続いて、細孔形成剤の幾何学的特徴を、エネルギー貯蔵のための鉄含有電極の製造への適用の範囲内で説明する。
【0039】
種々の実施形態は、1つまたは複数の材料を細孔形成剤として使用することを含み得る。一般に、前述の鉄含有材料の還元は、高温の熱化学的還元によって、またはより低温の電気化学的還元によって、のいずれかで起こり得る。
【0040】
最初に、高温還元プロセスのための一過性の相孔形成剤について記載する。高温処理によって製造された材料に細孔形成剤を介して孔を導入できる方法には、少なくとも次の3つがある: 1)高温処理の前に細孔形成剤を除去する; 2)高温処理中に細孔形成剤を除去する;および/または 3)高温処理後に細孔形成剤を除去する。それぞれの機能的特徴および例を以下に記載する。
【0041】
高温処理の前に粉末体から細孔形成剤を除去するために、細孔形成剤を最初に粉末体に導入してもよく、粉末体を、いくらかの強度に達するまで放置してもよく、その後細孔形成剤を除去してもよい。この一例では、細孔形成剤は、結合材(多くの場合、水から乾燥したときに硬化する水溶性結合剤)を含有する粉末体に導入されてもよい。結合材が硬化した後、または他の方法で材料を強化した後、粉末体を、細孔形成剤が除去されるように処理してもよい。実際の例を示すと、細孔形成剤は有機溶媒(すなわち、パラフィンろうヘキサン溶液)に可溶性の任意の材料であってもよく、多孔体はセメント(例えば、ベントナイト、炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、またはケイ酸ナトリウム)を結合剤として使用した鉄鉱石であってもよく、ペレットが乾燥した後、細孔形成剤を溶解するが結合剤を改変しない有機溶媒に多孔体を曝露することで、細孔形成剤を溶解してもよい。第2の例では、鉄鉱石多孔体はセメントを結合剤として使用し、この結合剤は、乾燥すると硬化して水に不溶となり得る。したがって、水に溶解する細孔形成剤(例えば、塩化ナトリウムまたは任意の他の水溶性の塩)は、ペレットを水に再曝露することでペレットから除去できる。細孔形成剤は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウム(例えば、石灰石)などの金属炭酸塩であってもよく、これは弱酸性溶液に溶解して孔を残す。最後の例では、多孔体形成のプロセス中は不活性であるが、その後の処理中に容易に蒸発する固体の孔形成材を、多孔体に添加してもよい。例えば、炭酸水素アンモニウムを圧密化マグネタイト鉱石体に添加してもよく、その圧密化は多孔体に十分な機械的完全性を付与するのに十分であり、炭酸水素アンモニウムが蒸発によって多孔体から除去されると、炭酸水素アンモニウムがそれまで占めていた容積の一部が細孔として保持され得る。この蒸発は、低温(約36~41℃)で起きてもよく、高温処理の前に達成されてもよい。
【0042】
高温処理ステップの間に除去される材料も添加されてよい。鉄含有前駆体材料の加工中に起こることが多いステップは2つ存在する。第1のステップは、多くの還元プロセスの前、かつ硬結(induration)と呼ばれる溶鉱炉ペレットおよび直接還元ペレットの形成の後に起こる。このプロセスの間、ペレットまたはその他の粉末体は高温で酸化される。この酸化プロセスを通して、材料は機械的完全性も得る。高温の存在下で蒸発するコークスまたはその他の材料を、一過性の細孔形成剤として作用させるために粉末体に添加してもよい。トレファクションによって製造されたポリマー、木材繊維、および炭素質材料はすべて、硬結中に多孔性を誘発する手段として添加されてよい。すべての材料が還元の前に硬結する必要があるわけではないことから、このステップは必ずしも加工経路に必要とは限らないことに留意されたい。
【0043】
高温還元プロセスの間に、粉末体は、ガス(通常は一酸化炭素および水素)に曝露され、これが鉄含有材料を還元する。かかる雰囲気に曝露すると体積が劇的に変わる傾向を有する材料を、生成材料の多孔度を増強する手段として、鉄含有粉末体に添加してもよい。例えば、硫化鉄および硫酸鉄は、従来、還元プロセスへの投入物としての鉄前駆体材料混合物に含まれない。しかし、鉄アルカリ電極の特異な例では、この鉄-硫黄化合物は複数の有用な目的に役立ち得る。第1に、硫黄は、鉄電極において、放電容量の向上を促進するのに有用な化合物であることがわかっている。第2に、硫化鉄および硫酸鉄は、分解時に生成する鉄のモル体積に対する化合物のモル体積の比が非常に高い。したがって、これらの鉄-硫黄化合物は、体積低減が大きいことから、硫黄および酸素損失時に細孔形成剤として作用し得る。この点で、特に安価で有効な細孔形成剤は硫酸鉄(II)である。硫酸塩の体積対還元時の鉄の体積の比は無水状態で5.9対1であり、水和化合物では、更に大きな体積比が観察されている。硫酸鉄(II)は、製鋼酸洗いプロセスの副生成物であり、通常は、この方法でリサイクルされて細孔形成剤を導入し、細孔形成剤は残留鉄および硫黄を孔形成プロセスの副生成物として導入する。その他の鉄の硫化物および硫酸塩は、一過性の相として同様に使用でき、硫酸鉄(II,II)、マッキナワイト、マーカサイト、パイライト、トロイライト、磁硫鉄鉱、グライガイト、非晶質硫化鉄(II)が挙げられるがこれらに限定されない、鉄および硫黄を堆積させる。
【0044】
一部の材料は酸素への曝露およびその後の還元によって有用な相転移を起こし得ることを考慮すると、他の化合物が、硬結およびその後の還元で処理される鉄含有材料に有用に導入され得る。一態様では、硫化鉛を微粒子状に粉砕し、鉄含有材料混合物の一部として硬結プロセスの前に導入してもよい。硬結プロセスの間に、硫化鉛は焙焼されて酸化鉛を形成し得る。硫化鉛の融点および沸点はいずれも酸化鉄ペレットの典型的な硬結温度と比べて低いことに留意されたい。ペレットに鉛を保持するためには、硬結処理は、硫化鉛の沸点よりも実質的に低い温度(一般に少なくとも20℃)、好ましくは硫化鉛の融点よりも低い温度で実施する必要がある可能性がある。ある温度では、より高温の硬結プロセスと比較したときに、同程度の硬結を達成するために、より高い酸素濃度とより長い時間が必要となり得る。液体鉛が微細構造の発達に影響する度合は、一般に、鉄ペレット内の種々の構成要素の関数となる。
【0045】
酸化鉛は、その後還元されて、鉄本体の孔空間と共に均質に分布した鉛金属を形成し得る。鉛は、鉄電極の充電プロセスと競合する水素発生反応の既知の阻害物質である。したがって、鉄含有前駆体材料に硫化鉛を含めることは、細孔の形成と、得られる電池電極への有用化合物の包含とを同時にもたらし得る。
【0046】
材料は、還元プロセスの後、溶解によって鉄含有材料における細孔形成剤として作用する場合がある。水素中で多くは700℃を超える温度での還元後に安定な材料は限られる。一実施形態では、アルカリ性電解質に溶解し得るシリカが含まれてもよい。別の実施形態では、ケイ酸ナトリウム(水ガラスとしても知られる)は、還元プロセスの後、水溶液に溶解し得る。他の実施形態では、石英、長石、雲母、角閃石、輝石、またはかんらん石などのケイ酸塩が、可溶性の一過性の細孔形成剤として組み込まれてもよい。酸化ナトリウム、酸化カルシウム、または酸化マグネシウムなど、還元プロセス中に安定な塩基性酸化物は、還元プロセスの後、酸によって、鉄骨格から容易にエッチングされ得る(ただし、かかる酸化物はアルカリ性溶液にも溶解し得る)。いくつかの実施形態では、塩基性酸化物は、最初に硫酸塩、炭酸塩、または水酸化物などの金属塩として添加されてもよく、この酸化物への熱分解は、多孔度を向上する最初の体積低減をもたらす。任意選択で、多孔度の更なる向上のため、塩基性酸化物は、その後溶解によって除去されてもよい。一例として、石灰岩の形態の炭酸カルシウム、またはドロマイト(炭酸カルシウム-マグネシウム)、または水酸化カルシウムもしくは水酸化マグネシウムは、各々500~1100℃の範囲の温度で熱分解して、それぞれの酸化物を残す。
【0047】
最後に、還元が電気化学的に起こる電極の場合、細孔形成剤を、電解質に溶解するように選択してもよい。一態様において、細孔形成剤は、電解質の構成要素である塩であってもよい。実例として、鉄電池用のアルカリ性電解質の1つの構成要素は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムであってもよい。水酸化カリウムから作製された細孔形成剤は、電解質添加剤と細孔形成剤の両方として作用することで、コストを削減し得る。別の態様では、細孔形成剤は、硝酸アンモニウムまたは硫酸カリウムなど、電気化学的処理の間不活性な物質であってもよい。
【0048】
ある特定の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、鉄鉱石(より酸化された材料)から鉄金属への変換における還元剤であってもよい。特定の他の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、それ自体が還元ステップで還元されてもよい。特定の他の実施形態では、複数の細孔形成剤は、細孔形成剤の組み合わせおよび変形、還元剤として機能するもの、または還元反応に関与しないものを含めて使用できる。
【0049】
細孔形成剤と微細構造の他の要素との間の幾何学的関係は、最適な細孔形成剤のサイズおよび体積分率の決定において重要な役割を果たす。2つの一般的体系(regime)が区別できる。1つの体系では、電池の性能は、鉄を直接囲む多孔性の量によって制限される。この体系では、最適な細孔形成剤粒径は、還元プロセスに投入された鉄前駆体粒子の粒径とほぼ同じである。この体系では、細孔形成剤のサイズを粒径にほぼ一致させることで、細孔形成剤の添加によって追加される多孔性が、最も均質に分布され、反応する鉄表面に直接隣接しない多孔性の量が最小となる。直接隣接するとは、鉄表面から1平均孔半径内にあることとして定義できる。細孔形成剤粒子がほぼ等軸でない場合、細孔形成剤の短軸が鉄鉱石粒子の直径とほぼ一致することが望ましい。
【0050】
第2の体系では、電池の性能は、細孔空間の充填により、アノードを通る物質輸送によって制限される。この体系では、細孔形成剤の導入の目標は、細孔が微細構造を通る高拡散性の経路として作用できるように、放電生成物で充填されない十分に大きい孔を作製することである。この体系では、細孔形成剤は、反応した鉄表面に観察できる放電生成物の層の厚さの2倍を超える粒径を有することが望ましい。こうして、細孔は、放電生成物の形成後に開放を保つこと、および電極を通る物質輸送を促進することができるはずである。細孔形成剤がほぼ等軸ではない場合、細孔形成剤の短軸が、放電生成物の層の厚さの少なくとも2倍であるという指導に従うべきである。多孔体を通る閉塞のない拡散経路を作製したい場合、細孔形成剤のアスペクト比については、アスペクト比が異なると、残留多孔性の浸透閾値が異なる結果となる。高アスペクト比の棒は、無作為に集められた多孔体において最低体積分率で浸透させ、潜在的に、細孔形成剤の最低体積分率(したがって最低の追加コスト)において、拡散速度の増加が最大となる。一般に、第2の体系では、約30~35体積%を超える細孔形成剤を添加したときに性能への見返りが減少する可能性が高く(ここで、細孔形成剤の体積分率は、多孔体に添加された固体のパーセンテージとして表される)、これは還元後に達成される高い多孔度と、得られる多孔の浸透の可能性が高いことによる。それにもかかわらず、関連する電極システムにおいて、高い体積分率の細孔形成剤は、電池の放電容量の増加で定量化したときに、電池性能に多少の利益をもたらすことが実証されている。細孔形成剤の体積分率は、一部の実施形態では、最大で45体積%となり得るが、なおもアノード容量の増加に有益となる。細孔形成剤の高い体積分率は、一般に、電池性能のいくつかの面に有益であるが、性能の合理的な向上が観察される細孔形成剤の体積分率には境界が存在する場合があり、場合によっては、細孔形成剤は、還元プロセス中の還元剤として有効である。多くの状況で、電池性能の実質的な増大を得るため、および性能で十分な向上を実現するために、少なくとも5体積%の細孔形成剤が必要である。コークスをマグネタイト鉱石に添加した場合、包含される細孔形成添加剤の量を定量化するために、代わりに、重量パーセントを使用してもよい。コークスをマグネタイト鉱石に添加した場合、所望の細孔形成と還元との組み合わせを達成するためのコークスの重量パーセントは、3~10重量%で十分である。
【0051】
記載した限度(概ね放電層の厚さの2倍、および、概ね平均粒径)よりもはるかに大きい細孔形成剤は、体積当量基準で、より微細な細孔形成剤と比べて性能向上が小さくなる可能性が高い。すべての場合に、細孔形成剤の体積分率が増えるにつれて、物質輸送がより容易となり、物質輸送による分極が低減されるが、電極の体積エネルギー密度と同様に多孔体の有効導電率が低下する。細孔形成剤の最適量は、システムにおけるインピーダンス測定および主要インピーダンス源の測定、ならびにシステムの必要エネルギー密度に関する考察から誘導できる。多孔度については、多孔度の増大はイオン輸送(反応速度)を向上するが、単位体積当たりのエネルギー密度を低下するという、相反する関係が存在する;この相反する関係は、所与の速度に関して、エネルギー密度を最大にする最適な多孔度が存在することを暗示する。
【0052】
概して、投入鉄含有材料よりもはるかに微細な粒径の細孔形成剤の添加は、他の有益なプロセス特性(例えば、回転炉床還元プロセスにおいてより効果的な還元および速い還元速度)をもたらす可能性はあるが、多孔性の実質的な増加をもたらす可能性は低い。
【0053】
一部の電極構成において、上記の効果の組み合わせを用いて、所望の効果の重ね合わせが生じることができる。例えば、放電生成物の形成のためにアクセス可能な体積を増大するために粒径のオーダーの微細な等軸の細孔形成剤を添加してもよく、多孔体を通した物質輸送を増強するために高アスペクト比の繊維様の細孔形成剤を添加してもよい。
【0054】
概して、細孔形成剤は、その種々の役割が相補的であるときに有用に組み合わせられる。1つの代表的な例では、鉄含有前駆体の固体状態還元プロセスを実施するためにコークスを添加してもよいが、添加コークスが多すぎると、還元プロセスの後に望ましくない高い炭素含有量が生じ得る。望ましくない高い炭素含有量を生じることなく添加できる量よりも大量の細孔形成剤が望ましい状況では、所望の還元反応を達成するのに十分なレベルにコークスを維持しながら、追加の炭素を加えることなく細孔形成機能をもたらすために、コークスの他に、第2の細孔形成添加剤を加えてもよい。
【0055】
種々の実施形態で使用する鉄含有材料の供給源は、鉄電極または工業的鉄還元プロセスのいずれかで一般的に使用される任意の材料であってもよく、その例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない: 1)製鋼ダスト; 2)ミルスケール(例えば、ミルスケールは、適切なサイズおよび形状を達成するために粉砕またはその他の方法で加工されてよい); 3)鉄鉱石、濃縮および/または選鉱された鉱石、例えば浮上選鉱や磁力選鉱によって分離された鉱石を含む(例えば、鉄鉱石は、ヘマタイト鉱石、マグネタイト鉱石、鉄-硫黄化合物などを含み得る); 4)集電体および/または鉄源として機能するように電極に埋め込まれた鉄網および鉄線;および 5)例1~4のうちの1つまたは複数と、鉄粉との組み合わせであって、かかる鉄粉としては、カルボニル鉄粉、海綿鉄粉末、水アトマイズ粉末などが挙げられる。
【0056】
焼結した鉄電極の作製において、還元ステップを伴うことなく、単に細孔を形成する一過性の相としてコークスを使用することもできる。コークスは、単位体積基準で最も低コストの細孔形成剤候補の1つであり、粉末体内部のコークスによって作られる保護還元環境により、焼結プロセス中の雰囲気制御をかなり緩くすることができる。
【0057】
鉄前駆体材料の粒径は、鉄鉱石源の製造に使用される上流プロセスに固有の粒径に基づいて選択されてもよく、適用した適切な還元プロセス中に鉄鉱石源を良好に還元するために必要な粒径に基づいて選択されてもよく、または電気化学的サイクルの間に十分な性能を達成する、得られる鉄電極材料に基づいて選択されてもよい。一般に、微細な鉱石粒子は、還元プロセスと電気化学的性能の両方に望ましく、還元前の良好な粒径は、約10時間の電池放電タイムスケールの場合、マグネタイトベースの鉱石で、d90<45ミクロンである。(dNは、粒径分布のNパーセンタイルに相当する粒径である。例えば、d90は、粒径分布の90パーセンタイルを意味し、別の言い方をすれば、所与の分布において90%の粒子がd90未満のサイズを有する。これは、動的光散乱法、撮像、またはその他の当該技術分野で公知の方法によって測定できる)。適用される還元プロセスおよび電気化学的プロセスに応じて他の粒径が可能であり、還元時間が長く、電気化学的充電/放電率が低いと、より大きな粒径の使用が可能になる。はるかに高いレート容量が必要な電池では、鉄前駆体サイズが必要となる場合があり、d50が約8ミクロンの前駆体サイズが望ましい。投入される鉄前駆体材料の微細度に対する要望は、一般に、より強力な粉砕作業の実施に関連するコストの検討によってバランスがとられる。
【0058】
上記の種々の実施形態を踏まえて、
図2は、1種または複数の一過性の細孔形成剤を使用して、負極104のような電極を形成するための種々の実施形態による方法200を例示する。
【0059】
ステップ202では、電極(負極104など)に還元するための材料が提供される。この材料は、上で論じた材料、例えば、鉄ベースの材料のような金属ベースの材料であってもよい。材料は、前駆体材料、例えば、鉄前駆体ペレット、鉄前駆体シート、鉄前駆体細片、鉄前駆体円盤、鉄前駆体棒、鉄前駆体粉などであってもよい。具体例として、金属は、製鋼ダスト、ミルスケール、鉄鉱石、鉄網、鉄線、鉄粉、またはこれらの任意の組合せであってもよい。
【0060】
ステップ204では、1種または複数の一過性の細孔形成剤が材料に添加されてもよい。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、炭素などの還元剤である。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II,II)、マッキナワイト、マーカサイト、パイライト、トロイライト、磁硫鉄鉱、グライガイト、非晶質硫化鉄(II)、または硫化鉛である。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、石炭であってもよい。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、シリカ、ケイ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、または酸化マグネシウムであってもよい。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、コークスを含んでもよい。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、金属炭酸塩を含んでもよい。種々の実施形態では、一過性の細孔形成剤は、2種以上の異なる一過性の細孔形成剤であってもよい。
【0061】
上記の高温還元プロセスでは、ステップ204における1種または複数の一過性の細孔形成剤の添加は、高温プロセスによる還元の前、または還元中に起こってもよい。
【0062】
電極の電気化学的還元が起こり得る実施形態では、ステップ204における一過性の細孔形成剤の添加は、電気化学的還元中、例えば電池(例えば、100)内での還元中に起こり得る。例えば、一過性の細孔形成剤は、電解質(例えば、電解質106)の塩であってもよい。ステップ204における一過性の細孔形成剤の添加が電気化学的還元中に起こり得る場合、一過性の細孔形成剤は、カリウム、水酸化ナトリウム、硝酸アンモニウム、および/または硫酸カリウムであってもよい。
【0063】
いくつかの任意選択的実施形態では、任意選択のステップ205において、一過性の細孔形成剤の少なくとも一部は、ステップ206における還元の前に除去されてもよい。したがって、ステップ205は任意選択となり得る。上記のように。一過性の細孔形成剤は、還元の前に溶解または蒸発されてもよい。
【0064】
ステップ206では、多孔性電極の還元が起こり得る。還元は、高温処理によるものでも、電池(例えば、100)における電気化学的還元のような、より低温の電気化学的プロセスによるものでもよい。上述のように、還元プロセスは、熱的か電気化学的かにかかわらず、1種または複数の一過性の細孔形成剤の少なくとも一部の除去をもたらし、それによって、得られる電極に細孔を形成し得る。具体例として、鉄を含む多孔性金属電極のような、多孔性金属電極が形成され得る。
【0065】
いくつかの任意選択的実施形態では、任意選択のステップ207において、一過性の細孔形成剤の少なくとも一部は、ステップ206における還元の後に除去されてもよい。したがって、ステップ207は任意選択となり得る。上記のように、一過性の細孔形成剤は、還元後の電池で電解質に溶解される、水溶液に溶解される、還元後に酸浴を用いてエッチングされる、などであってもよい。
【0066】
種々の実施形態は、長期エネルギー貯蔵(LODES)システム、短期エネルギー貯蔵(SDES)システムなどの、バルクエネルギー貯蔵システムで使用するためのデバイスおよび/または方法を提供することができる。一例として、種々の実施形態は、LODESシステム用の電池などの、バルクエネルギー貯蔵システム用の電池を提供することができる。再生可能なエネルギー源は、益々普及しつつあり、費用効果が高くなりつつある。しかしながら、多数の再生可能なエネルギー源は、再生可能なエネルギー源の採用を妨げる断続性問題に直面する。再生可能なエネルギー源に断続的傾向があることの影響は、再生可能なエネルギー源を、LODESシステム、SDESシステムなどのバルクエネルギー貯蔵システムと対にすることにより軽減することができる。 複合型発電、送電、貯蔵システム(例えば、バルクエネルギー貯蔵システムと対になっている再生可能発電源、ならびに発電プラントおよび/またはバルクエネルギー貯蔵システムのいずれかにおける送電設備を有する発電プラント)の採用を支援するため、本明細書に記載されている種々の実施形態デバイスおよび方法など、そのような複合型発電、送電、および貯蔵システムの設計および稼動を支援するためのデバイスおよび方法が必要とされる。
【0067】
複合型発電、送電、および貯蔵システムは、1つまたは複数の発電源(例えば、1つまたは複数の再生可能発電源、1つまたは複数の非再生可能発電源、再生可能発電源および非再生可能発電源の組合せなど)、1つまたは複数の送電設備、および1つまたは複数のバルクエネルギー貯蔵システムを含む発電プラントであってもよい。発電プラントおよび/またはバルクエネルギー貯蔵システムのいずれかにおける送電設備は、発電および貯蔵システムと共に同時最適化される場合もあり、または発電および貯蔵システムの設計および稼動に制約を課す場合もある。複合型発電、送電、および貯蔵システムは、種々の設計および稼動上の制約下で、種々の出力目標を満たすように構成することができる。
【0068】
図3~11は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様を、LODESシステム、SDESシステムなどのバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる様々な例示的なシステムを示す。例えば
図1~2を参照して本明細書に記載されている種々の実施形態を、LODESシステム、SDESシステムなどのバルクエネルギー貯蔵システム用の電池として使用することができ、および/または本明細書に記載の種々の電極を、バルクエネルギー貯蔵システムの部品として使用することができる。本明細書で使用される場合、「LODESシステム」という用語は、24時間の持続時間、24時間~50時間の持続期間、50時間よりも長い持続期間、24時間~150時間の持続期間、150時間よりも長い持続期間、24時間~200時間の持続期間、200時間よりも長い持続期間、24時間~500時間の持続期間、500時間よりも長い持続期間など、24時間(h)またはそれよりも長い定格持続時間(エネルギー/電力比)を有することができるように構成されたバルクエネルギー貯蔵システムを意味する。
【0069】
図3は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。LODESシステム304は、風力発電基地302および1つまたは複数の送電設備306と電気的に接続されていてもよい。風力発電基地302は、送電設備306と電気的に接続されていてもよい。送電設備306は、配電網308と電気的に接続されていてもよい。風力発電基地302は、電力を発電することができ、風力発電基地302は、発電した電力をLODESシステム304および/または送電設備306に出力することができる。LODESシステム304は、風力発電基地302および/または送電設備306から受け取った電力を貯蔵することができる。LODESシステム304は、貯蔵された電力を送電設備306に出力することができる。送電設備306は、風力発電基地302およびLODESシステム304の一方または両方から受け取った電力を配電網308に出力することができ、および/または配電網308から電力を受け取り、その電力をLODESシステム304に出力することができる。風力発電基地302、LODESシステム304、および送電設備306は一緒になって、複合型発電、送電、および貯蔵システムであり得る発電プラント300を構成することができる。風力発電基地302により発電された電力は、送電設備306を介して配電網308に直接送給されてもよく、またはまずLODESシステム304に貯蔵されてもよい。ある特定の場合では、配電網308に供給される電力は、全部が風力発電基地302から送られてもよく、全部がLODESシステム304から送られてもよく、または風力発電基地302およびLODESシステム304の組合せから送られてもよい。複合型風力発電基地302およびLODESシステム304発電プラント300からの電力の配電は、所定の長期(複数日またはさらに複数年)スケジュールに従って制御してもよく、または前日(24時間前通知)市場にしたがって制御してもよく、または時間前市場に従って制御してもよく、またはリアルタイム価格設定シグナルに応じて制御してもよい。
【0070】
発電プラント300の稼動の1つの例として、LODESシステム304を使用して、風力発電基地302により生産された電力を再整形し、「安定」させることができる。1つのそのような例では、風力発電基地302は、260メガワット(MW)のピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、106MWの電力定格(容量)、150時間(h)の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および15,900メガワット時(MWh)の定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、300MWのピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、106MWの電力定格、200時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および21,200MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、176MWのピーク発電出力(容量)および53%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、88MWの電力定格(容量)、150時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および13,200MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、277MWのピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、97MWの電力定格(容量)、50時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および4,850MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、315MWのピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、110MWの電力定格(容量)、25時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および2,750MWhの定格エネルギーを有してもよい。
【0071】
図4は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。
図4のシステムは、光起電力(PV)基地402が風力発電基地302の代わりに使用されていてもよいことを除いて、
図3のシステムと同様であってもよい。LODESシステム304は、PV基地402および1つまたは複数の送電設備306と電気的に接続されていてもよい。PV基地402は、送電設備306と電気的に接続されていてもよい。送電設備306は、配電網308と電気的に接続されていてもよい。PV基地402は、電力を発電することができ、PV基地402は、発電した電力をLODESシステム304および/または送電設備306に出力することができる。LODESシステム304は、PV基地402および/または送電設備306から受け取った電力を貯蔵することができる。LODESシステム304は、貯蔵された電力を送電設備306に出力することができる。送電設備306は、PV基地402およびLODESシステム304の一方または両方から受け取った電力を配電網308に出力することができ、および/または配電網308から電力を受け取り、その電力をLODESシステム304に出力することができる。PV基地402、LODESシステム304、および送電設備306は一緒になって、複合型発電、送電、および貯蔵システムであってもよい発電プラント400を構成することができる。PV基地402により発電された電力は、送電設備306を介して配電網308に直接送給されもよく、またはまずLODESシステム304に貯蔵されてもよい。ある特定の場合では、配電網308に供給される電力は、全部がPV基地402から送られてもよく、全部がLODESシステム304から送られてもよく、またはPV基地402およびLODESシステム304の組合せから送られてもよい。複合型PV基地402およびLODESシステム304発電プラント400からの電力の配電は、所定の長期(複数日またはさらに複数年)スケジュールに従って制御してもよく、または前日(24時間前通知)市場に従って制御してもよく、または時間前市場に従って制御してもよく、またはリアルタイム価格設定シグナルに応じて制御してもよい。
【0072】
発電プラント400の稼動の1つの例として、LODESシステム304を使用して、PV基地402により生産された電力を再整形し、「安定」させることができる。1つのそのような例では、PV基地402は、490MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、340MWの電力定格(容量)、150時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および51,000MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、PV基地402は、680MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、410MWの電力定格(容量)、200時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および82,000MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、PV基地402は、330MWのピーク発電出力(容量)および31%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、215MWの電力定格(容量)、150時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および32,250MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、PV基地402は、510MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、380MWの電力定格(容量)、50時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および19,000MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、PV基地402は、630MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、380MWの電力定格(容量)、25時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および9,500MWhの定格エネルギーを有してもよい。
【0073】
図5は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。
図5のシステムは、風力発電基地302および光起電力(PV)基地402が両方とも、発電プラント500において一緒に作動する発電装置であってもよいことを除いて、
図3および
図4のシステムと類似していてもよい。PV基地402、風力発電基地302、LODESシステム304、および送電設備306は一緒になって、複合型の発電、送電、および貯蔵システムであってもよい発電プラント500を構成することができる。PV基地402および/または風力発電基地302により発電された電力は、送電設備306を介して配電網308に直接送給されもよく、またはまずLODESシステム304に貯蔵されてもよい。ある特定の場合では、配電網308に供給される電力は、全部がPV基地402から送られてもよく、全部が風力発電基地302から送られてもよく、全部がLODESシステム304から送られてもよく、またはPV基地402、風力発電基地302、およびLODESシステム304の組合せから送られてもよい。複合型風力発電基地302、PV基地402、およびLODESシステム304発電プラント500からの電力の配電は、所定の長期(複数日またはさらに複数年)スケジュールに従って制御してもよく、または前日(24時間前通知)市場にしたがって制御してもよく、または時間前市場に従って制御してもよく、またはリアルタイム価格設定シグナルに応じて制御してもよい。
【0074】
発電プラント500の稼動の1つの例として、LODESシステム304を使用して、風力発電基地302およびPV基地402により生産された電力を再整形し、「安定」させることができる。1つのそのような例では、風力発電基地302は、126MWのピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよく、PV基地402は、126MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、63MWの電力定格(容量)、150時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および9,450MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、170MWのピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよく、PV基地402は、110MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、57MWの電力定格(容量)、200時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および11,400MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、105MWのピーク発電出力(容量)および51%の設備利用率(CF)を有してもよく、PV基地402は、70MWのピーク発電出力(容量)および31%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、61MWの電力定格(容量)、150時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および9,150MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、135MWのピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよく、PV基地402は、90MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、68MWの電力定格(容量)、50時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および3,400MWhの定格エネルギーを有してもよい。別のそのような例では、風力発電基地302は、144MWのピーク発電出力(容量)および41%の設備利用率(CF)を有してもよく、PV基地402は、96MWのピーク発電出力(容量)および24%の設備利用率(CF)を有してもよい。LODESシステム304は、72MWの電力定格(容量)、25時間の定格持続時間(エネルギー/電力比)、および1,800MWhの定格エネルギーを有してもよい。
【0075】
図6は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。LODESシステム304は、1つまたは複数の送電設備306と電気的に接続されていてもよい。このようにして、LODESシステム304は、「スタンドアロン」様式で稼動して、市場価格付近でエネルギーをサヤ取り売買(arbiter)すること、および/または送電制約を回避することができる。LODESシステム304は、1つまたは複数の送電設備306と電気的に接続されていてもよい。送電設備306は、配電網308と電気的に接続されていてもよい。LODESシステム304は、送電設備306から受け取った電力を貯蔵することができる。LODESシステム304は、貯蔵された電力を送電設備306に出力することができる。送電設備306は、LODESシステム304から受け取った電力を配電網308に出力することができ、および/または配電網308から電力を受け取り、その電力をLODESシステム304に出力することができる。
【0076】
LODESシステム304および送電設備306は一緒になって、発電プラント600を構成することができる。一例として、発電プラント600は、電力消費に近い、送電制約の下流に位置していてもよい。そのような例示的な下流に位置する発電プラント600では、LODESシステム304は、24時間から500時間の持続時間を有してもよく、送電容量が顧客に役務を提供するのに十分でない時点でピーク電力消費をサポートするために、1年に1回または複数回の完全放電を起こしてもよい。加えて、そのような例示的な下流に位置する発電プラント600では、LODESシステム304は、夜間電気価格と昼間電気価格との差をサヤ取り売買し、顧客への電気役務の全体的なコストを削減するために、数回の浅い放電(毎日またはより高い頻度で)を起こしてもよい。さらなる例として、発電プラント600は、発電に近い、送電制約の上流に位置していてもよい。そのような例示的な上流に位置する発電プラント600では、LODESシステム304は、24時間~500時間の持続時間を有してもよく、顧客に電気を分配するのに送電容量が十分ではない時点で過剰発電を吸収するために、1年に1回または複数回の完全充電を起こしてもよい。加えて、そのような例示的な上流に位置する発電プラント600では、LODESシステム304は、夜間電気価格と昼間電気価格との差をサヤ取り売買し、発電設備の出力の価値を最大化するために、数回の浅い充放電(毎日またはより高い頻度で)を起こしてもよい。
【0077】
図7は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。LODESシステム304は、データセンター、工場などの商業および産業(C&I)顧客702と電気的に接続されていてもよい。LODESシステム304は、1つまたは複数の送電設備306と電気的に接続されていてもよい。送電設備306は、配電網308と電気的に接続されていてもよい。送電設備306は、配電網308から電力を受け取り、その電力をLODESシステム304に出力することができる。LODESシステム304は、送電設備306から受け取った電力を貯蔵することができる。LODESシステム304は、貯蔵された電力をC&I顧客702に出力することができる。このようにして、LODESシステム304は、配電網308から購入した電力を再整形して、C&I顧客702の消費パターンに一致させるように稼動することができる。
【0078】
LODESシステム304および送電設備306は一緒になって、発電プラント700を構成することができる。一例として、発電プラント700は、電気消費の近く、すなわち、配電網308とC&I顧客702との間など、C&I顧客702の近くに位置してもよい。そのような例では、LODESシステム304は、24時間~500時間の持続時間を有してもよく、電力がより安価である時点で市場から電力を購入し、それによりLODESシステム304を充電してもよい。次いで、LODESシステム304は、市場価格が高価な時点で放電してC&I顧客702に電力を提供し、したがってC&I顧客702の市場購入を相殺することができる。代替的な構成として、発電プラント700は、配電網308とC&I顧客702との間に位置するのではなく、PV基地、風力発電基地などの再生可能資源と、再生可能資源に接続されていてもよい送電設備306との間に位置していてもよい。そのような代替的な例では、LODESシステム304は、24時間~500時間の持続時間を有してもよく、LODESシステム304は、再生可能出力が利用可能であり得る時点で充電されてもよい。次いで、LODESシステム304は、C&I顧客702の電力需要の一部または全部をカバーするように放電して、C&I顧客702に再生可能な発電された電気を提供することができる。
【0079】
図8は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。LODESシステム304は、風力発電基地302および1つまたは複数の送電設備306と電気的に接続されていてもよい。風力発電基地302は、送電設備306と電気的に接続されていてもよい。送電設備306は、C&I顧客702と電気的に接続されていてもよい。風力発電基地302は、電力を発電することができ、風力発電基地302は、発電した電力をLODESシステム304および/または送電設備306に出力することができる。LODESシステム304は、風力発電基地302から受け取った電力を貯蔵することができる。
【0080】
LODESシステム304は、貯蔵された電力を送電設備306に出力することができる。送信設備306は、風力発電基地302およびLODESシステム304の一方または両方から受け取った電力をC&I顧客702に出力することができる。風力発電基地302、LODESシステム304、および送電設備306は一緒になって、複合型発電、送電、および貯蔵システムであってもよい発電プラント800を構成することができる。風力発電基地302により発電された電力は、送電設備306を介してC&I顧客702に直接送給されてもよく、またはまずLODESシステム304に貯蔵されてもよい。ある特定の場合では、C&I顧客702に供給される電力は、全部が風力発電基地302から送られてもよく、全部がLODESシステム304から送られてもよく、または風力発電基地302およびLODESシステム304の組合せから送られてもよい。LODESシステム304を使用して、風力発電基地302により発電された電気を再整形して、C&I顧客702の消費パターンに一致させてもよい。1つのそのような例では、LODESシステム304は、24時間~500時間の持続時間を有してもよく、風力発電基地302による再生可能発電がC&I顧客702負荷を超えた場合、充電してもよい。次いで、風力発電基地302による再生可能発電がC&I顧客702負荷を下回った場合、C&I顧客702電気消費の一部または全部を相殺する安定的な再生可能プロファイルをC&I顧客702に提供するように、LODESシステム304を放電してもよい。
【0081】
図9は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。LODESシステム304は、大量の再生可能発電をマイクログリッドに統合し、例えば、PV基地402および風力発電基地302による再生可能発電の出力を、例えば、火力発電プラント902(例えば、ガスプラント、石炭プラント、ディーゼル発電装置セットなど、または火力発電法の組合せ)による既存の火力発電と調和させ、利用可能率が高い場合は再生可能発電および火力発電がC&I顧客702負荷を供給する発電プラント900の一部であってもよい。発電プラント900および火力発電プラント902により構成されるマイクログリッドなどのマイクログリッドは、90%またはそれよりも高い利用可能率を提供することができる。PV基地402および/または風力発電基地302により発電された電力は、C&I顧客702に直接送給されてもよく、またはまずLODESシステム304に貯蔵されてもよい。
【0082】
ある特定の場合では、C&I顧客702に供給される電力は、全部がPV基地402から送られてもよく、全部が風力発電基地302から送られてもよく、全部がLODESシステム304から送られてもよく、全部が火力発電プラント902から送られてもよく、またはPV基地402、風力発電基地302、LODESシステム304、および/または火力発電プラント902の任意の組合せから送られてもよい。一例として、発電プラント900のLODESシステム304は、24時間~500時間の持続時間を有してもよい。具体的な例として、C&I顧客702負荷は、ピークが100MWであってもよく、LODESシステム304は、電力定格が14MWおよび持続時間が150時間であってもよく、天然ガスのコストは、$6/100万英熱量(MMBTU)であってもよく、再生可能占有率は58%であってもよい。別の具体的な例として、C&I顧客702負荷は、ピークが100MWであってもよく、LODESシステム304は、電力定格が25MWおよび持続時間が150時間であってもよく、天然ガスのコストは、$8/100万英熱量(MMBTU)であってもよく、再生可能占有率は65%であってもよい。
【0083】
図10は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。LODESシステム304を使用すると、原子力発電プラント1002(または、火力、バイオマスなどの他の柔軟性のない発電施設、ならびに/または1時間で定格電力の50%未満のランプ速度および80%またはそれよりも高い設備利用率を有する任意の他のタイプの発電プラント)を強化して複合型LODESシステム304および原子力発電プラント1002により構成される発電プラント1000の複合出力に柔軟性を加えることができる。原子力発電プラント1002は、高い設備利用率および最高効率点で稼動することができ、LODESシステム304は、顧客電気消費および/または電気の市場価格に一致させるように原子力発電プラント1002の出力を効果的に再整形するように充放電することができる。一例として、発電プラント1000のLODESシステム304は、24時間~500時間の持続時間を有してもよい。1つの具体的な例では、原子力発電プラント1002は、1,000MWの定格出力を有してもよく、原子力発電プラント1002は、電気の市場価格の下落のため、長期間の最小安定発電または操業停止さえも強制される場合がある。LODESシステム304は、市場価格の下落時の施設操業停止を回避し、充電することができ、その後、LODESシステム304は、市場価格の高騰時に放電し、総出力発電を回復させることができる。
【0084】
図11は、種々の実施形態の1つまたは複数の態様をバルクエネルギー貯蔵システムの一部として使用することができる例示的なシステムを示す。具体的な例として、種々の実施形態の1つまたは複数の態様が組み込まれたバルクエネルギー貯蔵システムは、LODESシステム304であってもよい。一例として、LODESシステム304は、本明細書に記載されている種々の実施形態の電池、本明細書に記載されている種々の電極などを含んでいてもよい。LODESシステム304は、SDESシステム1102と連携して稼動することができる。LODESシステム304およびSDESシステム1102は一緒になって、発電プラント1100を構成してもよい。一例として、LODESシステム304およびSDESシステム1102は、同時最適化することができ、それによりLODESシステム304は、複数日変動(例えば、市場価格、再生可能発電、電気消費など複数日変動)にわたる長期バックアップおよび/またはブリッジングを含む種々の役務を提供することができる。SDESシステム1102は、日中変動(例えば、市場価格、再生可能発電、電気消費などの日中変動)にわたる迅速な補助役務(例えば、電圧制御、周波数調整など)および/またはブリッジングを含む種々の役務を提供することができる。SDESシステム1102は、10時間未満の持続時間および80%よりも大きな往復効率を有してもよい。LODESシステム304は、24時間~500時間の持続時間および40%よりも大きな往復効率を有してもよい。1つのそのような例では、LODESシステム304は、150時間の持続時間を有してもよく、最大で1週間の再生可能発電不足について顧客電気消費をサポートすることができる。また、LODESシステム304は、日中の発電不足事象中の顧客の電気消費をサポートして、SDESシステム1102の容量を強化することができる。さらに、SDESシステム1102は、日中の発電不足事象中に顧客に供給し、電力調整ならびに電圧制御および周波数調整などの品質役務を提供することができる。
【0085】
種々の実施形態の態様を例示するために、以下に種々の実施例を示す。実施例1:正極と、電解質と、負極と、を含む電池であって、負極は多孔性金属を含む、電池。実施例2.多孔性金属は、少なくとも部分的に、少なくとも1種の一過性の細孔形成剤を使用して製造された、実施例1に記載の電池。実施例3.多孔性金属は、鉄を含む、実施例1または2に記載の電池。実施例4.一過性の細孔形成剤は、還元剤である、実施例2または3に記載の電池。実施例5.還元剤は、炭素を含む、実施例4に記載の電池。実施例6.一過性の細孔形成剤は、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II,II)、マッキナワイト、マーカサイト、パイライト、トロイライト、磁硫鉄鉱、グライガイト、非晶質硫化鉄(II)、または硫化鉛を含む、実施例2~5のいずれかに記載の電池。実施例7.一過性の細孔形成剤は、石炭を含む、実施例2~5のいずれかに記載の電池。実施例8.多孔性金属は、炉床炉内での還元によって製造される、実施例1~7のいずれかに記載の電池。実施例9.炉床炉は、回転炉床炉または線形炉床炉である、実施例8に記載の電池。実施例10.多孔性金属は、回転窯内での還元によって製造される、実施例1~7のいずれかに記載の電池。実施例11.多孔性金属における孔の形成は、電池内での電気化学的還元によって起こる、実施例1~7のいずれかに記載の電池。実施例12.一過性の細孔形成剤は、シリカ、ケイ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、または酸化マグネシウムを含む、実施例11に記載の電池。実施例13.一過性の細孔形成剤は、電解質の塩を含む、実施例11に記載の電池。実施例14.一過性の細孔形成剤は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含む、実施例13に記載の電池。実施例15.一過性の細孔形成剤は、硝酸アンモニウムまたは硫酸カリウムを含む、実施例11に記載の電池。実施例16.多孔性金属は、第1のサイズを有する前駆体材料から形成され、一過性の細孔形成剤の粒径は、第1のサイズとほぼ同じである、実施例2~15のいずれかに記載の電池。実施例17.多孔性金属は、その表面に放電生成物の層を有し、一過性の細孔形成剤の粒径は、放電生成物の層の厚さの2倍を超える、実施例2~15のいずれかに記載の電池。実施例18.少なくとも1種の一過性の細孔形成剤は、少なくとも2種の異なる一過性の細孔形成剤を含む、実施例2~17のいずれかに記載の電池。実施例19.2種の異なる一過性の細孔形成剤は、異なる種類の細孔形成剤および/または異なるサイズの細孔形成剤である、実施例18に記載の電池。実施例20.負極と冶金学的に結合した集電体、および/または負極と電気的導通状態にある集電体をさらに含み、当該集電体は負極の少なくとも一部に沿っている、実施例1~19のいずれかに記載の電池。実施例21.正極は、エアブリージングカソード、オキシ水酸化ニッケル電極、または二酸化マンガン電極を備える、実施例1~19のいずれかに記載の電池。実施例22.鉄は、製鋼ダスト、ミルスケール、鉄鉱石、鉄網、鉄線、鉄粉、またはこれらの任意の組合せを含む、実施例3~21のいずれかに記載の電池。実施例23.一過性の細孔形成剤はコークスを含む、実施例2~22のいずれかに記載の電池。実施例24.多孔性金属は、少なくとも部分的に、金属炭酸塩を含む細孔形成剤を使用して製造された、実施例1~23のいずれかに記載の電池。実施例25.少なくとも1種の一過性の細孔形成剤を使用して多孔性金属に孔を形成することを含む、電池の負極用の多孔性金属を形成する方法。実施例26.一過性の細孔形成剤は、実施例3~24のいずれかに記載の一過性の細孔形成剤であり、孔は還元ステップを伴って、または還元ステップなしで形成される、実施例25に記載の方法。実施例27.実施例1~24のいずれかに記載の電池を1つまたは複数含む、バルクエネルギー貯蔵システム。実施例28.少なくとも24時間にわたって電荷を保持するように構成された長期エネルギー貯蔵システムであって、実施例1~24のいずれかに記載の電池を1つまたは複数含む、システム。
【0086】
上述の方法に関する記載は、説明のための例として提供されているに過ぎず、種々の実施形態のステップが、提示されている順序で実施されなければならないことを要求または示唆することを意図するものではない。当業者であれば理解することになるが、上述の実施形態におけるステップの順序は、任意の順序で実施することができる。「その後に」、「次いで」、「次に」などの単語は、必ずしもステップの順序を限定することを意図したものではなく、こうした単語は、方法の記載にわたって読者をガイドするために使用されている場合がある。さらに、例えば、冠詞「a」、「an」、または「the」を使用した、単数形の特許請求要素への言及はすべて、要素を単数形に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0087】
さらに、本明細書に記載されている任意の実施形態の任意のステップは、任意の他の実施形態にて使用することができる。本開示の態様の前出の記載は、当業者が本発明を製作または使用することを可能にするために提供されている。こうした態様に対する種々の改変は、当業者であれば直ちに明らかになり、本明細書で規定されている基本原理は、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様に適用することができる。したがって、本発明は、本明細書で示される態様に限定されることを意図しておらず、本明細書で開示される原理および新規特徴と一致する最も幅広い範囲が与えられるべきである。
【国際調査報告】