(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】生体適合性材料並びにその作製及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20230525BHJP
C08B 37/08 20060101ALI20230525BHJP
C08B 37/02 20060101ALI20230525BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230525BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C08L101/02
C08B37/08 Z
C08B37/02
A61K9/06
A61K47/36 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564576
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2021088989
(87)【国際公開番号】W WO2021213467
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/086487
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522413858
【氏名又は名称】プレリオン セラピューティクス (シェンチェン) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イー、イー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、グワンチン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ジョーシン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA94
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076EE30
4C076EE37
4C076FF31
4C090AA09
4C090BA12
4C090BA67
4C090BB91
4C090BD08
4C090BD36
4C090BD37
4C090BD42
4C090CA35
4C090DA23
4J002AA03W
4J002AA03X
4J002AA04W
4J002AA04X
4J002AA05W
4J002AA05X
4J002AA06W
4J002AA06X
4J002AA07W
4J002AA07X
4J002AB03W
4J002AB03X
4J002AB04W
4J002AB04X
4J002AB05W
4J002AB05X
4J002AD01W
4J002AD01X
4J002AD03W
4J002AD03X
4J002BG01W
4J002BG01X
4J002BG07W
4J002BG07X
4J002CH02W
4J002CH02X
4J002FD14W
4J002FD14X
4J002GB04
(57)【要約】
本開示は、少なくとも500mL/gの高い固有粘度[η]を有する第1のポリマーと、第1のポリマーより低くかつ1800mL/g未満の低い固有粘度[η]を有する第2のポリマーと、を含む組成物を提供する。より詳細には、本開示はこの組成物で形成されたハイドロゲルと、医薬と、ハイドロゲルを生成するための方法とを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反応基を有する少なくとも1つの第1のポリマーと、第2の反応基を有する少なくとも1つの第2のポリマーと、を含む組成物であって、
前記第1のポリマーが少なくとも500mL/gの固有粘度[η]を有し、
前記第2のポリマーが前記第1のポリマーよりも低くかつ1800mL/g未満の固有粘度[η]を有し、
前記組成物中の前記第1のポリマーの濃度が、最大で約5mg/mLである、組成物。
【請求項2】
前記第1のポリマーが、前記第2のポリマーと反応してハイドロゲルを形成することが可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のポリマー及び/又は前記第2のポリマーが親水性及び/又は水溶性である、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のポリマー及び/又は前記第2のポリマーが、多糖、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、エラスチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から独立して選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のポリマー及び/又は前記第2のポリマーが、ヒアルロン酸、グアーガム、デンプン、キトサン、コンドロイチン硫酸、アルギナート、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から独立して選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のポリマー及び/又は前記第2のポリマーが、ヒアルロン酸、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から独立して選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1のポリマーが第1のポリマーの誘導体を含み、前記第1のポリマーの誘導体が前記第1の反応基を含み、前記第1のポリマーの誘導体が求電子性である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の反応基が、ビニル、アクリロイル、チオール、アルケン、チオールエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、エポキシド、イミドエステル、フルオロフェニルエステル、カルボナート、カルボジイミド、ジスルフィド、アジリジン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の反応基が、ビニルスルホン、マレイミド、アクリラート、メタクリラート、エポキシド、及びそれらの任意の組合せから選択される、請求項7~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のポリマーが第2のポリマー誘導体を含み、前記第2のポリマー誘導体が前記第2の反応基を含み、前記第2のポリマー誘導体が求核性である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の反応基が、チオール、アミン、アジド、ヒドラジド、ジエン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のポリマーが、約500,000~約5,500,000ダルトンの分子量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2のポリマーが、約3,000~約800,000ダルトンの分子量を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとの分子量(MW)比が約500:1~約1.5:1である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物中の前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとの回転半径(Rg)比が約150:1~約1:1である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物中の前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとの質量比が約20:1~約1:20である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中の前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとのモル比が約4:1~約1:500である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1のポリマーが約500mL/g~約5000mL/gの固有粘度[η]を有し得る、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記第2のポリマーが約5mL/g~約1800mL/gの固有粘度[η]を有し得る、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物中の前記第1のポリマーと前記第2のポリマーの固有粘度間の比が約500:1~約1:1である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記誘導体が約3%~約50%の平均修飾度(DM)を有する、請求項7~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記第1のポリマーの誘導体が第1のDMを有し、前記第2のポリマー誘導体が第2のDMを有し、前記第1のDMと前記第2のDMとの比が約20:1~約1:20である、請求項7~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1のポリマーの誘導体が、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のマレイミド基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又はそれらの組合せであり、前記第2のポリマー誘導体は1つ以上のチオール基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又はそれらの組合せである、請求項7~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記第1のポリマー及び/又は前記第2のポリマーが、形成されたハイドロゲル中の前記組成物中に含まれる、請求項7~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、前記第1のポリマー及び/又は前記第2のポリマーとは異なる架橋剤を何ら含まない、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物で形成されたハイドロゲル。
【請求項27】
生体適合性である請求項26に記載のハイドロゲル。
【請求項28】
以下の特性:
1)5rad/s及び5%の歪みで動的振動せん断試験にて測定した際、5Pa以下の貯蔵弾性率G’;並びに
2)約1000/s超のせん断速度で連続せん断試験にて測定した際、約500mPa・s以下の粘度;
3)5rad/s及び5%の歪みで動的振動せん断試験にて測定した際、貯蔵弾性率G’の約100%以下の損失弾性率G’’、
のうち少なくとも1つを有する、請求項26~27のいずれか一項に記載のハイドロゲル。
【請求項29】
ハイドロゲルを生成するための方法であって、
a)請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物を提供することと;
b)前記組成物を、ハイドロゲルの形成を可能にする条件に供することと、
を含む、方法。
【請求項30】
前記供することが、前記組成物を約15℃~約50℃でインキュベートすることを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項26~28のいずれか一項に記載のハイドロゲルを含む、医薬組成物。
【請求項32】
前記ハイドロゲルが薬物封入物として好適であるように調合されている、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記医薬組成物が薬物を含み、前記薬物が前記ハイドロゲル中に封入されている、請求項31~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
化学架橋されたポリマー-ポリマーハイドロゲルは、ポリマーを別のポリマーに架橋させることで形成される。ポリマーは、反応基で通常は修飾され、化学反応によって架橋する。
【0002】
架橋には、2つの主要なタイプが存在する。1つは、小分子架橋剤を用いてポリマーを架橋させることである。しかし小分子は人体にとって有毒である可能性があり、かつ望ましくない反応を引き起こす可能性があることから、多くの場合、これらは好適ではない。別のタイプの架橋は、異なるポリマー上のグラフト反応基に対するものであり、異なる反応基でグラフト化したポリマーは反応してハイドロゲルを形成し得る。このタイプの架橋は、例えば、機械的強度が低いハイドロゲルなどの望ましい特性のハイドロゲルの生成が可能である。既存の研究は、機械的強度が低いハイドロゲルが回転半径(Rg)が大きく、固有粘度([η])が大きい又は高分子量(MW)の1種以上の反応性ポリマーを反応させることで作製可能であると示唆している。
【0003】
したがって、製品製造に必要とされる適切に安定したポリマーを使用した、所望の特性を有するハイドロゲルを生成する必要が存在している。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ハイドロゲルを形成可能であるポリマー(例えば、生体適合性ポリマー)を含む組成物、並びにその作製及び使用方法を提供する。例えば、この組成物は少なくとも1つの第1のポリマーと少なくとも1つの第2のポリマーを含んでもよい。この第1のポリマーは、組成物中では少なくとも500mL/gの固有粘度[η]を有してもよく、第2のポリマーは、第1のポリマーよりも低くかつ1800mL/g未満の固有粘度[η](例えば、ウベローデ粘度計で測定)を有してもよい。組成物中の第1のポリマーの濃度は、最大で約5mg/mLであってもよい。第1のポリマー及び第2のポリマーは、適切な品質管理試験及び輸送向けの長期保存(例えば、24時間以上)期間の間、組成物中で安定している。組成物及びその中のポリマーは、製造されることができるハイドロゲル製品を形成するには有用である。第1のポリマー及び/又は第2のポリマーによって形成されたハイドロゲルは、生物活性剤(例えば、薬物)を封入することができる。また、生物活性剤はハイドロゲルから累積的に放出されることができる。
【0005】
さらに、本開示は本開示のポリマーで形成されたハイドロゲルを提供する。場合によっては、ハイドロゲルは比較的低いG’値の粘弾性固体であり得、G’’と比較して高いG’を有し得る。場合によっては、ハイドロゲルは低応力では比較的高い弾性であり得るが、高応力では比較的高い粘性であり得る。特定の場合には、低応力で高い弾性を有するハイドロゲルは、必ずしも高応力では高い弾性に対応しない場合がある。場合によっては、ハイドロゲルは低せん断速度で高い粘性を有し得るが、高せん断速度で低い粘性を有し得る。したがって、異なる条件(例えば、歪み、せん断速度、周波数)下で本開示のハイドロゲルの機械的特性(例えば、弾性挙動)を調節することが可能となる。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示の第1のポリマーはそれ自体を架橋せず、第2のポリマーはそれ自体を架橋しない。本開示に従って形成されたハイドロゲルは、比較的低いG’(例えば、約5Pa未満のG’)、比較的大きい降伏歪み(例えば、≧10%)を有する間には、G’’(例えば、G’’/G’<1)と比較して高いG’を有し得る。本開示のハイドロゲルは、高せん断速度にて低い粘性(例えば、約0.5Pa・s以下の粘度)を有するが、これはわずかな力を加えることで表面全体に広げやすい可能性があることを示している。
【0007】
一態様では、本開示は第1の反応基を有する少なくとも1つの第1のポリマーと、第2の反応基を有する少なくとも1つの第2のポリマーと、を含む組成物を提供する。当該第1のポリマーは少なくとも500mL/gの固有粘度[η]を有し、当該第2のポリマーは第1のポリマーよりも低くかつ1800mL/g未満の固有粘度[η]を有し、当該組成物中の当該第1のポリマーの濃度は、最大で約5mg/mLである。
【0008】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、当該第2のポリマーと反応してハイドロゲルを形成することが可能である。
【0009】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマー及び/又は当該第2のポリマーは親水性かつ/又は水溶性である。
【0010】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマー及び/又は当該第2のポリマーは、多糖、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、エラスチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から独立して選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマー及び/又は当該第2のポリマーは、ヒアルロン酸、グアーガム、デンプン、キトサン、コンドロイチン硫酸、アルギナート、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から独立して選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマー及び/又は当該第2のポリマーは、ヒアルロン酸、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から独立して選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは第1のポリマーの誘導体を含み、当該第1のポリマーの誘導体は第1の反応基を含み、当該第1のポリマーの誘導体は求電子性である。
【0014】
いくつかの実施形態では、当該第1の反応基は、ビニル、アクリロイル、チオール、アルケン、チオールエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、エポキシド、イミドエステル、フルオロフェニルエステル、カルボナート、カルボジイミド、ジスルフィド、アジリジン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、当該第1の反応基は、ビニルスルホン、マレイミド、アクリラート、メタクリラート、エポキシド、及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは第2のポリマー誘導体を含み、当該第2のポリマー誘導体は第2の反応基を含み、当該第2のポリマー誘導体は求核性である。
【0017】
いくつかの実施形態では、当該第2の反応基は、チオール、アミン、アジド、ヒドラジド、ジエン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、約500,000~約5,500,000ダルトンの分子量を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、約3,000~約800,000ダルトンの分子量を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの分子量(MW)比は、約500:1~約1.5:1である。
【0021】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの回転半径(Rg)比は、約150:1~約1:1である。
【0022】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの質量比は、約20:1~約1:20である。
【0023】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとのモル比は、約4:1~約1:500である。
【0024】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは約500mL/g~約5000mL/gの固有粘度[η]を有し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは約5mL/g~約1800mL/gの固有粘度[η]を有し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーの固有粘度間の比は約500:1~約1:1である。
【0027】
いくつかの実施形態では、当該誘導体は約3%~約50%の平均修飾度(DM)を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーの誘導体は第1のDMを有し、当該第2のポリマー誘導体は第2のDMを有し、当該第1のDMと当該第2のDMとの比は、約20:1~約1:20である。
【0029】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーの誘導体は1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のマレイミド基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又はそれらの組合せであり、当該第2のポリマー誘導体は1つ以上のチオール基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のチオール基で修飾されたポリエチレングリコール誘導体、又はそれらの組合せである。
【0030】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマー及び/又は当該第2のポリマーは、形成されたハイドロゲル中の当該組成物中に含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態では、当該組成物は、当該第1のポリマー及び/又は当該第2のポリマーとは異なる架橋剤を何ら含まない。
【0032】
別の態様では、本開示は本開示の組成物で形成されたハイドロゲルを提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示の当該ハイドロゲルは生体適合性である。
【0034】
いくつかの実施形態では、当該ハイドロゲルは以下の特性のうち少なくとも1つを有する。すなわち、1)5%の歪み及び5rad/sの周波数で動的振動せん断試験にて測定した際、5Pa以下の貯蔵弾性率G’;2)約100/s超のせん断速度で連続せん断試験にて測定した際、約0.5Pa・s以下の粘度;3)5%の歪み及び5rad/sの周波数で動的振動せん断試験にて測定した際、貯蔵弾性率G’の約100%以下の損失弾性率G’’、である。
【0035】
別の態様では、本開示は、a)本開示の組成物を提供することと、b)当該組成物を、ハイドロゲルの形成を可能にする条件に供することと、を含む、ハイドロゲルを生成するための方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、当該供することは、当該組成物を約15℃~約50℃でインキュベートすることを含む。
【0037】
別の態様では、本開示は、本開示のハイドロゲルを含む医薬組成物を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、当該ハイドロゲルは薬物封入物として好適であるように調合されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、当該医薬組成物は薬物を含み、当該薬物は当該ハイドロゲル中に封入されている。
【0040】
本開示の追加の態様及び利点は、本開示の例示的な実施形態のみが示され、説明されている以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかとなるだろう。理解されるように、本開示は他の異なる実施形態が可能である。また、そのいくつかの詳細は、すべて本開示から逸脱しない範囲にて、明らかになっている種々の点で変更可能である。したがって、図面及び説明は性質上、例示として見なされるべきであり、限定するものとして見なされるべきではない。
【0041】
参照による援用
この明細書で言及されているすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、それぞれ明確かつ独立して参照として援用されていることが示されるように、同程度にて参照として本明細書に援用される。
【0042】
本発明の新規特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の原理が使用されている例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、及び添付の図面(本明細書では「図(figure」)及び「図(FIG.)」も含まれる)を参照することで、本発明の特徴及び利点がより良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【
図4A】反応後、HA-SHをアガロースハイドロゲル電気泳動(agarose hydrogel electrophoresis:AGE)にかけ、1日後、pH4のHClに対して約1mg/mLの溶液として透析にかけることで測定した場合のMWの変化を示す。
【
図4B】HA及びHA-SHのAGEで測定した場合のMW分布を示す。
【0047】
【
図5】2.6MDa、23%のDMのHA-VSのGPC曲線の例を示す。
【0048】
【
図6A】4℃の溶液としてのHA-SHのMWの変化を示す。
【
図6B】4℃の溶液として保存されているHA-SHのハイドロゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography:GPC)曲線の例を示す。
【0049】
【
図7A】4℃の溶液としてのHA-SHのMWの変化を示す。
【
図7B】4℃の溶液として保存されているGPC曲線の例を示す。
【0050】
【
図8A】5%のDMのデキストラン-SHのMWの変化を示す。
【
図8B】5%のDMのデキストラン-SHのGPC曲線の例を示す。
【
図8C】12.5%のDMのデキストラン-SHのMWの変化を示す。
【
図8D】12.5%のDMのデキストラン-SHのGPC曲線の例を示す。
【0051】
【
図9】異なるHA-SH濃度のゲルのG’の変化の動向を示す。
【0052】
【
図10】異なるHA-VS濃度のゲルのG’の変化の動向を示す。
【0053】
【
図11】異なるDMのゲルのG’の変化の動向を示す。
【0054】
【
図12】デキストラン-SH形成ゲルのG’の変化の動向を示す。
【0055】
【
図13】別のインキュベーション期間で16.4%のDM及び670kDaのHA-SHのAGEで測定した場合のMWの変化を示す。
【0056】
【
図14A】周波数掃引試験を受けている4つのハイドロゲルのG’及びG’’を示す。
【
図14B】周波数掃引試験を受けている4つのハイドロゲルのG’及びG’’を示す。
【0057】
【
図15A】歪み掃引試験を受けている4つのハイドロゲルをG’及びG’’を示す。
【
図15B】歪み掃引試験を受けている4つのハイドロゲルをG’及びG’’を示す。
【0058】
【
図16A】ステップストレス試験を受けている4つのハイドロゲルの歪み応答を示す。
【
図16B】ステップストレス試験を受けている4つのハイドロゲルの歪み応答を示す。
【0059】
【
図17A】連続せん断試験を受けている4つのハイドロゲルのせん断粘度を示す。
【
図17B】連続せん断試験を受けている4つのハイドロゲルのせん断粘度を示す。
【0060】
【
図18】小分子モキシフロキサシンのハイドロゲルからの放出を示す。
【0061】
【
図19】小分子レボフロキサシンのハイドロゲルからの放出を示す。
【0062】
【
図20】タンパク質であるベバシズマブのハイドロゲルからの放出を示す。
【0063】
【
図21】アプタマーのハイドロゲルAp1からの放出を示す。
【0064】
【
図22】アプタマーのハイドロゲルAp2からの放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の種々の実施形態が本明細書に示され、かつ記載されているが、かかる実施形態が例としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、当業者は非常に多くの変形、変更及び代用を思い浮かべることができる。本明細書に記載される本発明の実施形態に対し、種々の代替形態が利用され得ることを理解されたい。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」は、一般に、重合によって形成され、繰り返し構造単位から本質的にはなる化学化合物又は化合物の混合物を指す。いくつかの実施形態では、ポリマーはハイドロゲル形成ポリマーであり得る。本明細書で使用される場合、用語「ハイドロゲル形成ポリマー」は、一般に、ハイドロゲルの形成に関係するポリマーを指す。これは、ハイドロゲルを形成可能な天然に存在するポリマー又は合成ポリマーであり得る。ハイドロゲル形成ポリマーは、ハイドロゲル形成に寄与する1つ以上のポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ハイドロゲル形成ポリマーは、仮に本開示の組成物中に存在しているとしても、ハイドロゲル形成に関係することができないポリマー、及び/又はハイドロゲルを形成することができないポリマーを含まない。場合によっては、ハイドロゲル形成ポリマーは、「骨格ポリマー」及び「架橋ポリマー」とも呼ばれ得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「ハイドロゲル」は、一般には、水溶液(例えば、水)に懸濁された1つ以上のポリマーを含むゲル構造又はゲル状構造を指す。すべてのハイドロゲルは、互いの絡まり合いの結果として、マクロマー間にある程度の物理的引力を有する。通常、組織工学用途を意図したハイドロゲルは、追加の物理的相互作用又は化学架橋によって強化され得る。
【0068】
用語「求電子性」は、本明細書で使用される場合、一般には電子対への親和性を有することを指す。求電子性物質(例えば、分子又は分子の一部)は電子対受容体であってもよい。いくつかの実施形態では、求電子性分子又は求電子性基は、ビニル、アクリロイル、チオール、アルケン、チオールエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、エポキシド、イミドエステル、フルオロフェニルエステル、カルボナート、カルボジイミド、ジスルフィド、アジリジン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、求電子性分子又は求電子性基は、ビニルスルホン、マレイミド、アクリラート、メタクリラート、エポキシド、及びそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0069】
用語「求核性」は、本明細書で使用される場合、一般には電子対を供与して求電子性物質との反応に関係する化学結合を形成可能である特性を有することを指す。いくつかの実施形態では、用語は物質の求核性及び求電子試薬への親和性を指すことがある。いくつかの実施形態では、求核性物質(例えば、分子又は分子の一部)は、チオール、アミン、アジド、ヒドラジド、アミン、ジエン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。
【0070】
用語「親水性」は、本明細書で使用される場合、一般には水の吸収が可能、又は水により濡れることが可能といった水への親和性を有することを指す。親水性分子又は親水性分子の一部は、水及び他の極性物質とのその相互作用が油又は他の疎水性溶媒とのそれらの相互作用よりも熱力学的により好ましいものである。
【0071】
用語「粘性」は、本明細書で使用される場合、流体又は半流動体中の流れに対する抵抗性といった特性を指す。
【0072】
用語「固有粘度[η]」は、本明細書で使用される場合、一般には高分子の形状、柔軟性及び高分子のモル質量に関する情報を含む高分子の希釈溶液から測定された値を指す。固有粘度は、「無限希釈」又はゼロ濃度の極限における還元比粘度として定義されている。本開示では、固有粘度[η]は、ウベローデ粘度計又は示差粘度計で測定されもよい。代替的には、固有粘度[η]は、固有粘度と分子量との間の確立された関係に由来するMark-Houwinkの式により計算されてもよい。ポリマーの[η]は、例えば、異なる溶媒、異なる組成物の溶媒(例えば、異なる塩濃度)、又は異なる温度の異なる条件では異なっていてもよい。指定されていない場合、本特許における[η]値はハイドロゲル形成条件での[η]を指している。
【0073】
用語「実質的」は、本明細書で使用される場合、一般には最小量又はわずかな量を超える量を指し、「実質的には」は、一般には最小限又はわずかであることを超えることを指す。
【0074】
用語「貯蔵弾性率G’」は、本明細書で使用される場合、レオメータの動的振動モードで測定される際の正弦波の振動歪みに対する材料の弾性応答を一般には表す。
【0075】
用語「損失弾性率G’’」は、本明細書で使用される場合、レオメータの動的振動モードで測定される際、正弦波の振動歪みに対する材料の粘性応答を一般には表す。
【0076】
用語、「平均修飾度(DM)」は、本明細書で使用される場合、一般にはポリマーの100繰り返し単位あたりの反応基の数を指す。本開示では、反応基は、ポリマーが生成される前又は後に追加されてもよい。いくつかの実施形態では、反応基は、ポリマーの調製プロセス中にポリマーに追加されてもよい。いくつかの実施形態では、反応基は、修飾プロセス中にポリマーに追加されてもよい。例えば、DMはポリマー誘導体の修飾度を反映することがある。
【0077】
ポリマーの「回転半径(Rg)」又は「断面回転半径」といった用語は、本明細書で使用される場合、鎖の重力の中心からのポリマー鎖要素の平均距離を指す。
【0078】
用語「架橋」は、本明細書で使用される場合、一般には一方のポリマー鎖と別のポリマー鎖とを連結する結合を指す。これらは共有結合又はイオン結合であり得る。「ポリマー鎖」は、合成ポリマー又は天然ポリマー(例えばヒアルロン酸など)を指してもよい。
【0079】
用語「架橋剤」は、本明細書で使用される場合、一般には一方のポリマー鎖と別のポリマー鎖とを結合で連結する薬剤を指す。架橋剤は、共有結合又は非共有結合を介して架橋を達成することができる。「ポリマー鎖」は、合成ポリマー、天然ポリマー(例えばヒアルロン酸など)、又は天然ポリマーの誘導体を指し得る。ポリマー化学では、ポリマーが「架橋」される場合、通常はポリマーのバルク全体が架橋法の影響を受けていることを意味する。得られた機械的特性の変更は、架橋密度に強く依存している。架橋は、ポリマー間の化学反応によって形成され得る。
【0080】
用語「前駆体ポリマー」は、本明細書で使用される場合、一般には別のポリマー構造を形成するため、又はさらに修飾されるために使用されるポリマーを指す。この材料は、反応基によってさらに重合し、高分子量の構造を形成することができる。
【0081】
用語「組成物」は、本明細書で使用される場合、一般には種々の要素又は成分の生成物(液状又は固形)を指す。
【0082】
用語「生体適合可能な」又は「生体適合性」は、本明細書で使用される場合、毒性、外傷性又は生理学的に反応性がない、及び/又は免疫拒絶反応を引き起こすことがないことによる生体組織又は生体系に適合可能な状態を指す。
【0083】
用語「約」は、数値に関連して使用される場合、一般には提示された値を超える、又は値よりも1%~15%未満(例えば、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、又は15%未満)高い若しくは低い値を指す。
【0084】
値の範囲(例えば、数値範囲)が与えられている場合、文脈が明確に指示しない限り、下限単位の10分の1までのその範囲の上限及び下限と、他の指定範囲又はその指定範囲中の間に存在する値との間の、間に存在する各値は、本発明の範囲内に包含されている。こうしたより短い範囲の上限と下限は、任意の特別に除外された指定範囲中の限界を満たした場合に限り、このより短い範囲中に独立して含まれてもよく、本発明の範囲内にも包含される。この指定範囲が上限と下限のうち一方又は両方を含む場合、これらの含まれている限界のうちいずれか、又は両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
【0085】
特段定義されない限り、本明細書で使用されている技術的用語及び化学用語のすべては、本発明が属する当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明される方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料もまた本発明の実践又は試験に使用することができるが、ここでは好ましい方法及び材料を説明する。本明細書で言及される刊行物すべては、これらの刊行物が引用されている関連の方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照として援用されている。
【0086】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「and」及び「the」は、文脈で明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「粒子(a particle)」は複数のこうした粒子を含み、「配列(the sequence)」に対する言及は、1つ以上の当該配列及び当業者に公知のこれらの等価物などに対する言及を含む。
【0087】
本開示を読んだ際に当業者に理解されるように、本明細書で説明かつ例示されている個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱しない限り、他のいくつかの実施形態のうちいずれかの特徴から容易に分離され得る、又はこれらと容易に組み合わせられ得る別々の構成要素及び特徴を有する。任意の引用された方法は、引用された事象の順序で、又は論理的に可能である他の順序で実施することができる。これは、こうした組合せを支援することを意図している。
【0088】
本開示は、1つ以上のハイドロゲル形成ポリマーを含む組成物、並びにその作製及び使用方法を提供する。加えて、本開示はハイドロゲル並びにその作製及び使用方法を提供する。
【0089】
一態様では、本開示は、高い固有粘度[η]を有する少なくとも1個(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上)の第1のポリマー、及び低い固有粘度[η]を有する少なくとも1個(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上)の第2のポリマーを含み得る組成物を提供する。いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、少なくとも約500mL/g(例えば、少なくとも約500mL/g、少なくとも約600mL/g、少なくとも約700mL/g、少なくとも約800mL/g、少なくとも約900mL/g、少なくとも約1000mL/g、少なくとも約1100mL/g、少なくとも約1200mL/g、少なくとも約1300mL/g、少なくとも約1400mL/g、少なくとも約1500mL/g、少なくとも約1600mL/g、少なくとも約1700mL/g、少なくとも約1800mL/g、少なくとも約1900mL/g、少なくとも約2000mL/g、少なくとも約2200mL/g、少なくとも約2400mL/g、少なくとも約2800mL/g、少なくとも約2900mL/g、少なくとも約3000mL/g、少なくとも約3500mL/g、少なくとも約4000mL/g、少なくとも約4500mL/g、少なくとも約5000mL/g)の[η]を有してもよく、当該第2のポリマーは、第1のポリマーよりも低くかつ約1800mL/g(例えば、約1700mL/g未満、約1600mL/g未満、約1500mL/g未満、約1400mL/g未満、約1300mL/g未満、約1200mL/g未満、約1100mL/g未満、約1000mL/g未満、約900mL/g未満、約800mL/g未満、約700mL/g未満、約600mL/g未満、約500mL/g未満、約400mL/g未満、約300mL/g未満、約200mL/g未満、約100mL/g未満、約20mL/g未満、約10mL/g未満以下)未満の[η]を有してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、約500mL/g~約5000mL/g(例えば、約500mL/g~約4600mL/g、約600mL/g~約4400mL/g、約800mL/g~約4200mL/g、約1000mL/g~約4000mL/g、約1500mL/g~約3500mL/g、約2000mL/g~約3500mL/g、約2500mL/g~約3500mL/gなど)の固有粘度[η]を有してもよい。いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、約1000mL/g~約4000mL/gの固有粘度[η]を有してもよい。例えば、当該第1のポリマーは、ウベローデ粘度計、毛細管粘度計と連結されたハイドロゲル浸透クロマトグラフィーで測定された際、又は分子量と[η]との間の発表されている関係に基づいて計算された際に約2500mL/g~約3500mL/gの固有粘度[η]を有してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、約5mL/g~約1800mL/g(例えば、約5mL/g~約1600mL/g、約5mL/g~約1400mL/g、約5mL/g~約1200mL/g、約5mL/g~約1000mL/g、約5mL/g~約500mL/g、約5mL/g~約400mL/g、約5mL/g~約300mL/g、約5mL/g~約250mL/g、約10mL/g~約200mL/g、約10mL/g~約150mL/g、約15mL/g~約100mL/gなど)の固有粘度[η]を有してもよい。いくつかの実施形態では、[η]はウベローデ粘度計で測定されてもよい。例えば、当該第2のポリマーは、ウベローデ粘度計、毛細管粘度計と連結されたハイドロゲル浸透クロマトグラフィーで測定された際、又は分子量と[η]との間の発表されている関係に基づいて計算された際に約5mL/g~約200mL/gの固有粘度[η]を有してもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、約1000mL/g~約4000mL/gの固有粘度[η]を有してもよく、当該第2のポリマーは、約5mL/g~約200mL/gの固有粘度[η]を有してもよい。
【0093】
本開示では、第1のポリマーは第1の固有粘度[η]([η]1)を有し、第2のポリマーは第2の固有粘度は第2の固有粘度[η]([η]2)を有する。いくつかの実施形態では、[η]1は[η]2よりも大きくてよく、[η]1と[η]2との間の比は約500:1~約1:1(例えば、約500:1~約1:1、約400:1~約1:1、約300:1~約1:1、約200:1~約1:1、約100:1~約1:1、約50:1~約1:1、約3:1~約1:1、約20:1~約1:1、約10:1~約1:1、約5:1~約1:1、約500:1~約10:1、約500:1~約40:1、約500:1~約50:1、約500:1~約100:1、約500:1~約200:1、約500:1~約300:1、約500:1~約400:1、約400:1~約20:1、約250:1~約30:1、約150:1~約40:1など)であってもよい。例えば、[η]1と[η]2との間の比は、約300:1~約25:1であってもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーの濃度は、最大で約5mg/mLであってもよい。いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーの濃度は、約0.1mg/mL~約4mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約4mg/mL、約0.2mg/mL~約3mg/mL、約0.3mg/mL~約2mg/mL、約0.3mg/mL~約1.5mg/mLなど)であってもよい。いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーの濃度は、約0.3mg/mL~約1.5mg/mLであってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、多糖、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、エラスチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。例えば、組成物中の第1のポリマーは、多糖、1つ以上のタイプの多糖誘導体、ポリ(アクリル酸)、1つ以上のタイプのポリ(アクリル酸)誘導体、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、1つ以上のタイプのポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)誘導体、エラスチン、1つ以上のタイプのエラスチン誘導体、コラーゲン、1つ以上のタイプのコラーゲン誘導体、ポリエチレングリコール、及び1つ以上のタイプのポリエチレングリコール誘導体並びにそれらの任意の組合せのうち1つ以上を含んでもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、多糖、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、エラスチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。例えば、組成物中の第2のポリマーは、多糖、1つ以上のタイプの多糖誘導体、ポリ(アクリル酸)、1つ以上のタイプのポリ(アクリル酸)誘導体、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、1つ以上のタイプのポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)誘導体、エラスチン、1つ以上のタイプのエラスチン誘導体、コラーゲン、1つ以上のタイプのコラーゲン誘導体、ポリエチレングリコール、及び1つ以上のタイプのポリエチレングリコール誘導体及びそれらの任意の組合せのうち1つ以上を含んでもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、多糖、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、エラスチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよく、当該第2のポリマーは、多糖、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、エラスチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、ヒアルロン酸、グアーガム、デンプン、キトサン、コンドロイチン硫酸、アルギナート、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。例えば、組成物中の第1のポリマーは、ヒアルロン酸、1つ以上のタイプのヒアルロン酸誘導体、グアーガム、1つ以上のタイプのグアーガム誘導体、デンプン、1つ以上のタイプのデンプン誘導体、キトサン、1つ以上のタイプのキトサン誘導体、コンドロイチン硫酸、1つ以上のタイプのコンドロイチン硫酸、アルギナート、1つ以上のタイプのアルギナート誘導体、カルボキシメチルセルロース及び1つ以上のタイプのカルボキシメチルセルロース誘導体、デキストラン、1つ以上のタイプのデキストラン誘導体、並びにそれらの任意の組合せのうち、1つ以上を含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、ヒアルロン酸、グアーガム、デンプン、キトサン、コンドロイチン硫酸、アルギナート、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。例えば、組成物中の第2のポリマーは、ヒアルロン酸、1つ以上のタイプのヒアルロン酸誘導体、グアーガム、1つ以上のタイプのグアーガム誘導体、デンプン、1つ以上のタイプのデンプン誘導体、キトサン、1つ以上のタイプのキトサン誘導体、コンドロイチン硫酸、1つ以上のタイプのコンドロイチン硫酸、アルギナート、1つ以上のタイプのアルギナート誘導体、カルボキシメチルセルロース及び1つ以上のタイプのカルボキシメチルセルロース誘導体、デキストラン、1つ以上のタイプのデキストラン誘導体、ポリエチレングリコール、1つ以上のタイプのポリエチレングリコール誘導体、並びにそれらの任意の組合せのうち、1つ以上を含んでもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、ヒアルロン酸、グアーガム、デンプン、キトサン、コンドロイチン硫酸、アルギナート、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよく、当該第2のポリマーは、ヒアルロン酸、グアーガム、デンプン、キトサン、コンドロイチン硫酸、アルギナート、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリエチレングリコール、その誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、ヒアルロン酸、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。例えば、組成物中の第1のポリマーは、ヒアルロン酸、1つ以上のタイプのヒアルロン酸誘導体、デキストラン、1つ以上のタイプのデキストラン誘導体、及びそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、ヒアルロン酸、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。例えば、組成物中の第2のポリマーは、ヒアルロン酸、1つ以上のタイプのヒアルロン酸誘導体、デキストラン、1つ以上のタイプのデキストラン誘導体、ポリエチレングリコール、及びそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、ヒアルロン酸、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよく、当該第2のポリマーは、ヒアルロン酸、デキストラン、それらの誘導体、及びそれらの任意の組合せから選択されてもよい。
【0104】
例えば、組成物中の当該第1のポリマーは、ヒアルロン酸誘導体のうち1つ以上を含んでもよく、当該第2のポリマーは、ヒアルロン酸誘導体であってもよい。別の例を挙げると、当該第1のポリマーはヒアルロン酸誘導体であってもよく、当該第2のポリマーはデキストラン誘導体であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は少なくとも1つの第1のポリマー誘導体及び少なくとも1つの第2のポリマー誘導体を含んでもよく、当該第1のポリマー誘導体は第1の反応基を含んでもよく、当該第2のポリマー誘導体は第2の反応基を含んでもよい。第1の反応基は、第2の反応基とは異なってもよい。
【0106】
本開示の任意の態様に従い、ポリマー(例えば、ハイドロゲル形成ポリマー)は、例えば本開示のポリマー誘導体になるように、1つ以上の反応基で修飾されてもよい。一例では、本開示のポリマー(例えば、ハイドロゲル形成ポリマー)は1つ以上のビニルスルホン基で修飾されてもよい(又は1つ以上のビニルスルホン基を含む分子で修飾されてもよい)。別の例では、本開示のポリマー(例えば、ハイドロゲル形成ポリマー)は、1つ以上のチオール基で修飾されてもよい(又は1つ以上のチオール基を含む分子で修飾されてもよい)。
【0107】
本開示では、第1のポリマーは第1のポリマー誘導体を含んでもよく、当該第1のポリマー誘導体は第1の反応基を含んでもよく、第1のポリマー誘導体は求電子性であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の反応基は、ビニル、マレイミド、アクリラート、メタクリラート、エポキシド、チオール、アルケン、チオールエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、エポキシド、イミドエステル、フルオロフェニルエステル、カルボナート、カルボジイミド、ジスルフィド、アジリジン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、当該第1の反応基は、ビニル、アクリロイル、チオール、アルケン、チオールエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、エポキシド、イミドエステル、フルオロフェニルエステル、カルボナート、カルボジイミド、ジスルフィド、アジリジン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、当該第1の反応基は、ビニルスルホン、マレイミド、アクリラート、メタクリラート、エポキシド、及びそれらの任意の組合せから選択されてもよい。
【0109】
本開示では、第2のポリマーは第2のハイドロゲル形成ポリマー誘導体を含んでもよく、当該第2のポリマー誘導体は第2の反応基を含んでもよく、第2のハイドロゲル形成ポリマー誘導体は求核性であってもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、当該第2の反応基は、チオール、アミン、アジド、ヒドラジド、ジエン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、第1の反応基は、ビニル、マレイミド、アクリラート、メタクリラート、エポキシド、チオール、アルケン、チオールエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、エポキシド、イミドエステル、フルオロフェニルエステル、カルボナート、カルボジイミド、ジスルフィド、アジリジン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよく、第2の反応基は、チオール、アミン、アジド、ヒドラジド、ジエン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、当該第1の反応基は、ビニルスルホン、マレイミド、アクリラート、メタクリラート、エポキシド、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてもよく、第2の反応基は、チオール、アミン、アジド、ヒドラジド、ジエン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、及びそれらの任意の組合せから選択されてもよい。
【0113】
例えば、第1の反応基はビニルスルホンを含んでもよく、第2の反応基はチオールを含んでもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、組成物中で、第1の反応基は1つ以上のビニルスルホンを含んでもよく、第2の反応基は1つ以上のチオールを含んでもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー誘導体は、第2のポリマー誘導体と反応してハイドロゲルを形成することが可能であり得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、約500,000~約5,500,000ダルトン(例えば、約500,000~約5,500,000ダルトン、約1,000,000~約5,500,000ダルトン、約1,500,000~約5,500,000ダルトン、約2,000,000~約5,500,000ダルトン、約2,500,000~約5,500,000ダルトン、約3,000,000~約5,500,000ダルトン、約3,500,000ダルトン~約5,500,000ダルトン、約4,000,000~約5,500,000ダルトン、約4,500,000~約5,500,000ダルトン、又は約500,000~約5,000,000ダルトン、約500,000~約4,500,000ダルトン、約500,000~約4,000,000ダルトン、約500,000~約3,500,000ダルトン、約1,000,000~約3,000,000ダルトン、約1,000,000~約2,500,000ダルトン、約1,000,000~約2,000,000ダルトン、約1,000,000~約1,500,000ダルトン、又は約1,500,000~約5,000,000ダルトン、約2,000,000~約4,500,000ダルトン、約2,000,000~約4,000,000ダルトン、約2,000,000~約3,500,000ダルトン、約2,000,000~約3,000,000ダルトンなど)の分子量を有してもよい。いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーはヒアルロン酸であってもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、約3,000~約800,000ダルトン(例えば、約3,000~約800,000ダルトン、約5,000~約700,000ダルトン、約10,000~約600,000ダルトン、約15,000~約500,000ダルトン、約20,000~約400,000ダルトン、約20,000~約300,000ダルトン、約20,000~約200,000ダルトン、約20,000~約100,000ダルトン、約20,000~約90,000ダルトン、約20,000~約80,000ダルトン、約20,000~約70,000ダルトン、約20,000~約60,000ダルトン、約20,000~約50,000ダルトンなど)の分子量を有してもよい。いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、約20,000~約800,000ダルトン(例えば、約20,000~約800,000ダルトン、約20,000~約700,000ダルトン、約20,000~約600,000ダルトン、約20,000~約500,000ダルトン、約20,000~約400,000ダルトン、約20,000~約300,000ダルトン、約20,000~約200,000ダルトン、約20,000~約100,000ダルトン、約20,000~約90,000ダルトン、約20,000~約80,000ダルトン、約20,000~約70,000ダルトン、約20,000~約60,000ダルトン、約20,000~約50,000ダルトンなど)の分子量を有してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの間の分子量(MW)比は、約500:1~約1.5:1(例えば、約500:1~約1.5:1、約450:1~約1.5:1、約400:1~約1.5:1、約350:1~約1.5:1、約300:1~約1.5:1、約250:1~約1.5:1、約200:1~約1.5:1、約150:1~約1.5:1、約100:1~約1.5:1など)であってもよい。
【0119】
本開示では、組成物中の第1のポリマーは、約30nm超(例えば、約30nm~約500nm、約50nm~約450nm、約100nm~約400nm、約150nm~約350nm、約150nm~約300nm、約150nm~約250nmなど)の回転半径(Rg)を有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物中の第1のポリマーは約30nm~約500nmのRgを有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物中の第1のポリマーは約150nm~約250nmのRgを有してもよい。
【0120】
組成物中の第2のポリマーは、100nm未満(例えば、約1nm~約100nm、約3nm~約90nm、約3nm~約80nm、約3nm~約70nm、約3nm~約60nm、約3nm~約50nm、約3nm~約40nm、約3nm~約30nm、約3nm~約20nm、約5nm~約20nmなど)の回転半径(Rg)を有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物中の第2のポリマーは約3nm~約100nmのRgを有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物中の第1のポリマーは約5nm~約20nmのRgを有してもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの間の回転半径(Rg)比は、約150:1~約1:1(例えば、約150:1~約1:1、約100:1~約1:1、約80:1~約1:1、約60:1~約1:1、約50:1~約1:1、約30:1~約1:1、約30:1~約5:1、約30:1~約10:1など)であってもよい。いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの間の回転半径(Rg)比は、約1:1超(例えば、約150:1~約1.1:1、約100:1~約1.1:1、約80:1~約1.1:1、約60:1~約1.1:1、約50:1~約1.1:1、約30:1~約1.1:1、約30:1~約5:1、約30:1~約10:1など)であってもよい。例えば、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの回転半径(Rg)比は、約30:1~約10:1であってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとの間のモル比は、約4:1~約1:500(例えば、約4:1~約1:500、約3:1~約1:500、約2:1~約1:500、約1:1~約1:500、約4:1~約1:400、約4:1~約4:300、約4:1~約4:200、約4:1~約1:100、約3:1~約1:400、約2:1~約1:300、約1:1~約1:200、約1:1~約1:100、約1:1~約1:500など)であってもよい。例えば、当該組成物中の当該第1のポリマーと当該第2のポリマーとのモル比は、約1:1~約1:50であってもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、誘導体は、約3%~約50%(例えば、約4%~約45%、約5%~約40%、約6%~約40%、約7%~約40%、約8%~約39%、約8%~約38%、約8%~約35%、約9%~約32%、約8%~約30%、約10%~約30%、約12%~約30%、約13%~約30%、約14%~約30%、約15%~約35%、又は約15%~約30%)の平均修飾度(DM)を有してもよい。
【0124】
場合によっては、第1のポリマー誘導体は1つ以上のビニルスルホン基で修飾されてもよく、第2のポリマー誘導体は1つ以上のチオール基で修飾されてもよい。第1のポリマー誘導体は、第2のポリマー誘導体と反応してハイドロゲルを形成することが可能であり得る。
【0125】
本開示において、第1のポリマー誘導体は、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のマレイミド基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のマレイミド基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のアクリラート基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のアクリラート基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のメタクリラート基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のメタクリラート基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又はそれらの組合せであってもよい。例えば、第1のポリマー誘導体は、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又は1つ以上のマレイミド基で修飾されたヒアルロン酸誘導体であってもよい。
【0126】
本開示では、第2のポリマー誘導体は、1つ以上のチオール基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のアミン基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のアミン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又はそれらの組合せであってもよい。例えば、第2のポリマー誘導体は、1つ以上のチオール基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体であってもよい。
【0127】
本開示では、第1のポリマー誘導体は、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のマレイミド基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のマレイミド基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のアクリラート基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のアクリラート基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のメタクリラート基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のメタクリラート基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又はそれらの組合せであってもよく、第2のポリマー誘導体は、1つ以上のチオール基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、1つ以上のアミン基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のアミン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体、又はそれらの組合せであってもよい。場合によっては、第1のポリマー誘導体は、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体であってもよく、第2のポリマー誘導体は、1つ以上のチオール基で修飾されたデキストラン誘導体、1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体であってもよい。第1のポリマー誘導体は、第2のポリマー誘導体と反応してハイドロゲルを形成することが可能であり得る。
【0128】
例えば、第1のポリマー誘導体は1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体(HA-VS)を含んでもよく、第2のポリマー誘導体は1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体(HA-SH)を含んでもよい。別の例を挙げると、第1のポリマー誘導体は1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸誘導体(HA-VS)であってもよく、第2のポリマー誘導体は1つ以上のチオール基で修飾されたデキストラン誘導体(デキストラン-SH)であってもよい。別の例を挙げると、第1のポリマー誘導体は1つ以上のマレイミド基で修飾されたヒアルロン酸誘導体(HA-MI)であってもよく、第2のポリマー誘導体は1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸誘導体(HA-SH)であってもよい。第1のポリマー誘導体は、第2のポリマー誘導体と反応して適切な条件下でポリマー-ポリマータイプのハイドロゲルを形成することが可能であり得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリマーは、形成されたハイドロゲル中の当該組成物中に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、当該第2のポリマーは、形成されたハイドロゲル中の当該組成物中に含まれてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、当該組成物は、当該1つ以上のポリマーとは異なる架橋剤を何ら含まなくてもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、組成物は緩衝液を含んでもよい。緩衝液は水溶液であってもよく、水及び水溶液のpH又は緩衝能力を調節するために有用である適切な塩を含んでもよい。
【0132】
本開示の組成物中のポリマーは、長期保存にとって卓越した安定性を有してもよい。本開示のポリマーは、長期保存中に分解し得ない。本開示のポリマーは、長期保存中に架橋又はそれ自体と凝集体を形成し得ない。本開示のポリマーは、安定した範囲の分子量を有してもよい。
【0133】
別の態様では、本開示は本開示の組成物で形成されたハイドロゲルを提供する。いくつかの実施形態では、本開示の当該ハイドロゲルは生体適合性がある。
【0134】
場合によっては、組成物中のほぼすべてのポリマーは、ハイドロゲルを形成可能であってもよく、場合によっては、組成物は1つ以上のポリマーとは異なる架橋剤を何ら含まなくてもよい。
【0135】
本開示によるハイドロゲルは、1つ以上の特異な特質/特性を有してもよい。
【0136】
本開示のハイドロゲルは、5%の歪み及び5rad/sの周波数で動的振動せん断試験にて測定した際、5Pa以下(例えば、4Pa以下、3.5Pa以下、3Pa以下、2.5Pa以下、少なくとも2.4Pa、少なくとも2.2Pa、少なくとも2Pa、少なくとも1.8Pa、1.6Pa以下、1.5Pa以下、1.4Pa以下、1.2Pa以下、1.0Pa以下、0.8Pa以下、0.7Pa以下、0.6Pa以下、0.5Pa以下、0.4Pa以下、0.3Pa以下、0.2Pa以下、0.1Pa以下又はそれ未満)である貯蔵弾性率G’を有してもよい。
【0137】
本開示のハイドロゲルは、約1000/s超の周波数せん断速度で連続せん断試験にて測定した際、約100mPa・s以下の粘度を有してもよい。本開示のハイドロゲルは、約0.1/s超の周波数せん断速度で連続せん断試験にて測定した際、少なくとも約500mPa・sの粘度を有してもよい。0.1/sのせん断粘度は、1000/sのせん断粘度よりも少なくとも10倍高い。
【0138】
本開示のハイドロゲルは、5%の歪み及び5rad/sの周波数で動的振動せん断試験にて測定した際、貯蔵弾性率G’の約100%以下(例えば、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、又は約20%以下)である損失弾性率G’’を有してもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、組成物は約6.0~約8.0(例えば、約6.1~約7.9、約6.2~約7.7、約6.3~約7.7、約6.4~約7.4、約6.5~約7.3、約6.6~約7.2、約6.7~約7.1、約6.8~約7、約6.3~約6.8、約6.3~約6.7、又は約6.4~約6.6)のpHを有してもよい。
【0140】
レオメータは、貯蔵弾性率、損失弾性率を測定するために使用されてもよく、動的振動せん断試験で使用されてもよい。別の例では、レオメータは、磁気コアを通り移動する機器プローブの結果としての電圧の変化を測定し得る変位センサ(例えば、線形可変差動トランスなど)を備えてもよい。レオメータは、温度制御システム、又は炉、駆動モータ(例えば、印加された力に対する負荷を提供し得る、プローブを負荷するための線形モータ)、モータからサンプルへの力に対する誘導として作用する駆動シャフトサポート及び誘導システム、試験されているサンプルを保持するための1つ以上のサンプルクランプ、をさらに備えてもよい。
【0141】
異なるタイプのレオメータ解析装置もまた使用してもよい。例えば、強制共鳴解析装置又は自由共鳴解析装置を使用してもよい。自由共鳴解析装置は、サンプルを吊り下げて振動させることで試験されるサンプルの減衰の自由振動を測定し得る。強制共鳴解析装置は、ある特定の周波数でサンプルを強制的に振動させ得るものであり、これは温度掃引の実施にとって信頼度が高いものとなり得る。解析装置は、応力(力)及び歪み(変位)制御の両方を目的として作製されてもよい。例えば、歪み制御においては、プローブは入れ替えられてもよく、サンプルの得られた応力は、異なるシャフトを使用し得るフォースバランス型トランスデューサを実装することで測定され得る。応力制御においては、設定された力を印加し、サンプルの得られた歪み又は変位が測定され得る。また、いくつかの他の実験条件(温度、周波数又は時間)は変更されてもよい。ねじれ解析装置又は軸方向解析装置により応力及び歪みを印加してもよい。ねじれ解析装置については、力はねじり運動中に印加される。軸方向解析装置は、曲げ試験、引っ張り試験、及び/又は圧縮試験に使用されてもよい。
【0142】
ポリマー及びハイドロゲルの粘弾性を調べるため、例えば温度掃引試験、周波数掃引試験、歪み掃引試験、ステップストレス試験、動的応力-歪み試験、連続せん断試験、又はそれらの組合せといった様々な試験モードを使用してもよい。
【0143】
様々な機械的特性は、レオメータで決定することができる。これらの特性としては、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、複素弾性率(G*)、損失角(tan(δ))、複素粘度(η*)、同相成分(η’)及び異相成分(η’’)中の複素粘度(η*)、複素コンプライアンス(J*)、貯蔵コンプライアンス(J’)、損失コンプライアンス(J’’)、粘度(η)などが挙げられる。
【0144】
例えば、動的振動せん断試験では、正弦力(例えば、応力)が材料に印加され、得られた変位(歪み)が測定され得る。完全弾性固体については、得られた歪み及び応力は完全に同相であり得る。純粋粘性流体については、応力に対して90度位相遅れした歪みが存在し得る。中間的な特質を有する粘弾性ポリマー又はハイドロゲルは、試験中に位相遅れを有することがあり、それに従って貯蔵弾性率及び損失弾性率が計算され得る。
【0145】
別の態様では、本開示はハイドロゲル(例えば、本開示のハイドロゲル)を生成するための方法を提供する。方法は、a)組成物を提供すること(例えば、本開示の1つ以上のポリマーを含む組成物)、及びb)ハイドロゲルの形成(例えば、ポリマーの架橋を可能にしてハイドロゲルを形成する)を可能にする条件に組成物を供すること、を含んでもよい。例えば、条件は約15℃~約50℃で組成物をインキュベートすることを含んでもよい。
【0146】
場合によっては、方法は、溶液中のポリマーを架橋し、ハイドロゲルを生成することを含んでもよい。例えば、ハイドロゲルの形成を可能にする条件はまた、溶液中のポリマーの架橋を可能にし得る。
【0147】
例えば、方法は、1)第1のポリマー(又は第1のポリマー誘導体)と第2のポリマー(又は第2のポリマー誘導体)(例えば、第1のポリマーは1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸を含んでもよく、第2のポリマーは1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸、デキストラン、又はポリエチレングリコールを含んでもよい)を水中で調製し、pHを調節すること(例えば、緩衝溶液を追加することによる)と;2)予め設定した比で第1のポリマーと第2のポリマーを混合することであって、組成物中のポリマーの濃度は本開示に記載された通りであることと;3)本開示に従いハイドロゲルの形成を可能にする条件の下で混合物をインキュベートすることと、を含んでもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、組成物は組成物中のポリマー(例えば、第1のポリマー誘導体、又は第2のポリマー誘導体(derivate))とは異なる架橋剤を何ら含まなくてもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、組成物は小分子架橋剤を何ら含まなくてもよい。
【0150】
特定の例では、第1のポリマー誘導体は1つ以上のビニルスルホン基で修飾されたヒアルロン酸(例えば、HA-VS)であり、第2のポリマー誘導体は、1つ以上のチオール基で修飾されたヒアルロン酸又はデキストラン(例えば、HA-SH又はデキストラン-SH)である。
【0151】
別の態様では、本開示は、ハイドロゲルを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバント、医薬品、及び/又は診断用化合物をさらに含んでもよい。好適な薬学的に許容されるアジュバント、医薬品、及び/又は診断用化合物は水溶性、水難溶性及び水不溶性の医薬化合物であってもよい。医薬組成物は任意の形態であってもよい。好適な形態は、部分的には、用途の意図された形式及び位置に依存する。
【0152】
本開示では、組成物、ハイドロゲル、及び/又は医薬組成物は、生物活性剤(例えば、活性医薬成分又は薬物)をさらに含んでもよく、生物活性剤は組成物、ハイドロゲル及び/又は医薬組成物中に封入される。生物活性剤は、小分子、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、又は核酸であってもよい。例えば、生物活性剤は、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗体、血管新生抑制剤であってもよい。例えば、生物活性剤は眼疾患又は病状で使用する上で好適であり得る。生物活性剤は、3日超、3日間、2日間、1日間、12時間、8時間、4時間、3時間、2時間、1時間又はそれ未満でハイドロゲルから累積的に放出されてもよい。
【0153】
例
以下の例は、以下の例は、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載されており、発明者らが自身の発明であると見なすものの範囲を限定し、かつ以下の実験はすべて、又は実施された実験のみを表そうと意図したものではない。使用される数(例えば、数量、温度など)に関する正確性を保証しようと努力してきているが、いくつかの実験誤差及び逸脱は考慮されなければならない。特段指示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセルシウス温度であり、圧力は大気圧、又は大気圧付近の圧力である。標準的な省略語が使用されてもよい。例えば、bpは1つ又は複数の塩基対であり;kbは1つ又は複数のキロベースであり;plは1つ又は複数のピコリットルであり、secは1秒以上であり、minは1分以上であり;h又はhrは1時間以上であり、aaは1つ又は複数のアミノ酸であり;ntは1つ又は複数のヌクレオチドであり、i.m.は筋肉内の(筋肉内に)であり;i.p.は腹腔内の(腹腔内に)であり;s.c.は皮下の(皮下に)、などである。
【0154】
例1 Rg及び[η]の測定
例えば多角度光散乱法(multiangle laser light scattering:MALL)検出器に連結されたハイドロゲル浸透クロマトグラフィー及び毛細管粘度計で、ポリマーのRg及び[η]を直接測定することができる。例えば、ヒアルロン酸[HA](Mendichi R,et al.,Evaluation of radius of gyration and intrinsic viscosity molar mass dependence and stiffness of hyaluronan.Biomacromolecules.2003;4(6):1805-1810)、デキストラン(Ioan,C.E.et al.,Structure properties of dextran.2.dilute solution.Macromolecules,2000;33(15),5730-5739、又はKasaai M.R.,Dilute solution properties and degree of chain branching for dextran,Carbohydrate Polymers 88(2012)373-381)、カルボキシメチルセルロース(Hoogendam,C.W.et al.,Persistence length of carboxymethyl cellulose as evaluated from size exclusion chromatography and potentiometric titrations.Macromolecules,1998:31(18),6297-6309、又はSitaramaiah and Gorning,Hydrodynamic Studies on Sodium Carboxymethyl Cellulose iFFIGn Aqueous Solutions,Journal of Polymer Science,1962;(58)1107-1131、又はE.Arinaitwe,M.Pawlik,Dilute solution properties of carboxymethyl celluloses of various molecular weights and degrees of substitution,Carbohydrate Polymers 99(2014)423-431)、及びポリエチレングリコール(Devanand K,Selser JC.Asymptotic behavior and long-range interactions in aqueous solutions of poly(ethylene oxide).Macromolecules.1991;24(22):5943-5947、又はWu,X.et al.,Viscoelasticity of poly(ethylene glycol)in aqueous solutions of potassium sulfate:a comparison of quartz crystal microbalance with conventional methods.Polymer Journal.,2019:doi:10.1038/s41428-018-0162-3)中の多くのポリマーのRg及び[η]を測定した。
【0155】
Rg及び[η]値の一部を表1、表2及び表3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0156】
例2 ポリマー誘導体の調製
2.1 HA-VSの調製
【0157】
ヒアルロン酸(HA)を、Yu及びChau(Biomacromolecules 2015,16(1),56-65)に説明されるようにペンダントVSで修飾した(
図1)。簡単に言えば、脱イオン水(DI水)中にHAを溶解した。濃度は、HAの分子量(MW)によっては0.1mg/mL~40mg/mLであった。高HWのHA(例えば、MW>1MDa)に関しては、濃度はより低く、低MWのHA(例えば、MW<100kDa)に関しては、濃度はより高かった。
【0158】
完全に溶解させた後、5M NaOHを、0.1Mの最終濃度までポリマー溶液に滴下した。勢いよく混合させながらジビニルスルホン(DVS)を直ちに加えた。DVSとHAのヒドロキシル基(OH)とのモル比は、少なくとも1.25:1であった。目標の修飾度(DM)に応じてDVS濃度及び反応時間を選択した。所与の反応時間について、修飾度はまた、HAとDVSの両方の濃度、温度及び最終NaOH濃度にも依存していた。pHを3.5~4.5に低下させるため、1M HClを加えて反応を停止させた。ポリマーを、透析バッグを使用する膜分離又はDI水に対するタンジェンシャルフローろ過で精製した。指定しない限り、精製されたポリマーを溶液として4℃で保存した。修飾度(DM)の測定に関しては、HA-VSをフリーズドライして1HNMRにより決定した。
【0159】
2.2 HA-SHの調製
【0160】
ヒアルロン酸(HA)を、Yu及びChau(Biomacromolecules 2015,16(1),56-65)に説明されるようにペンダントチオール(SH)基で修飾した(
図2)。簡単に言えば、HAを最初に修飾し、HA-VSとした(例2.1に説明)。HA-VS溶液を、N
2で少なくとも20分間パージした。ビニルスルホン(VS)基に対して10倍モル過剰の、又は0.05M DTT溶液を作製するために必要となる量(DTT濃度が高いことに依存する)のジチオスレイトール(DTT)を、約400mg/mLで水(pHは約5.5)中に溶解し、N
2で少なくとも5分間パージし、HA-VS溶液に加えた。HA-VS/DTT溶液のpHはおよそ4であり、連続して系をN
2でパージした。その後、HA-VSの1/10の体積の0.5M リン酸緩衝液(PB)をN
2で少なくとも5分間パージし、HA-VS/DTT溶液に加えた。少なくとも25分間、反応させた。pHを3.5~4.5に低下させるため、1M HClを加えて反応を停止させた。ポリマーを、透析バッグを使用する膜分離、又はHClで調節されたpH4のDI水に対するタンジェンシャルフローろ過で精製した。指定しない限り、精製されたポリマーを溶液として4℃で保存した。HA-SHのエルマンアッセイで修飾度(DM)を決定した。
【0161】
2.3 デキストラン-SHの調製
【0162】
ビニルスルホン(VS)及びチオール(SH)官能化デキストラン、デキストラン-VS及びデキストラン-SHを、既に報告されている方法(Y.Yu and Y.Chau、「One-step ’click’ method for generating vinyl sulfone groups on hydroxyl-containing water-soluble polymers,」、Biomacromolecules,vol.13,pp.937-942,2012)を参照)を使用して合成した。簡単に言えば、ジビニルスルホン(DVS)は水性アルカリ性状態でデキストランのヒドロキシル基と反応し、デキストラン-VSを作製する(
図1)。チオール官能化デキストランはジチオスレイトール(DTT)を使用し、リン酸緩衝液中でデキストラン-VSのVS基と反応し、デキストラン-SHを作製するが(
図2)、官能化プロトコルは例2.2と同様のものである。ポリマーを、透析バッグを使用する膜分離、又はHClで調節されたpH4のDI水に対するタンジェンシャルフローろ過で精製した。指定しない限り、精製されたポリマーを溶液として4℃で保存した。
1H NMRを使用してデキストラン-VSのDMを決定し、デキストラン-SHのDMをエルマンアッセイで決定した。
【0163】
例3 修飾された高固有粘度[η]のポリマーの安定性
例2.2及び例2.1に従い、HA-SH及びHA-VSを修飾した。高分子量HAの安定性を示すため、これらのHA誘導体を2.6MDa([η]=2960mL/g、Rg=183nm)の分子量のHAにより修飾した。アガロースハイドロゲル電気泳動(AGE)でHA-SHの安定性を評価し、HA-VSの安定性をゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で評価した。
【0164】
先行報告書(Lee and Cowman、An agarose gel electrophoretic method for analysis of hyaluronan molecular weight distribution,Analytical Chemistry,1994:219;278-287)によりAGEのプロトコルを修正した。簡単に言えば、AGEローディングバッファ中、約15%のDMのHA-SHサンプルを、TEA緩衝液中、5mg/mLの高融点温度アガロース(Solarbio,Beijing,China)から構成されたアガロースゲルへと投入した。80mVで1時間、電気泳動を行った後、50%エタノール中0.005%のStain-All(Sigma)で一晩、ハイドロゲルを染色した。10%エタノールを用い、ハイドロゲルを留置した。
【0165】
GPC条件を以下に列挙した:
【0166】
HPLC:Waters 2695
【0167】
示差屈折率検出器:Waters 2414
【0168】
移動相:0.2M NaCl及び0.01%のアジ化ナトリウム溶液
【0169】
流速:0.5mL/分
【0170】
カラム:Ultrahydrogel Linear、7.8x300mm、WAT011545、005C181201、No.KNC-COL-003。
【0171】
カラムサーモスタットの温度は35℃であり、検出器の温度は30℃であった。
【0172】
図4A~
図4Bの結果は、2.6MDaのHAに由来するHA-SH(1800mL/gを超える固有粘度を有する)が溶液としては安定していないことを示した。
図4Aのレーン2及びレーン4は修飾されていないHAのAGE結果を示し、
図4Aのレーン1及びレーン3は、pH4の脱イオン水(HClを用いて調節されたpH)に対する約1mg/mLの溶液としての、反応直後及び透析から1日後のHA-SHのAGE結果を示す。この結果は、HA-SHの分子量は反応後標準であるが、酸性状態である透析の1日後には、HA-SHのMWは、レーン3のウェルに閉鎖したスメアが出現したことによる証拠として増加したことを示した。
図4Bのレーン2及びレーン3は、HA-SH及び修飾されていないHAのそれぞれの別のAGE結果を示す。
【0173】
加えて、HA-SHが凍結乾燥された場合、凍結乾燥された粉末は溶液中に再度溶解できず、ゲルを形成する。
【0174】
対照的に、HA-VSは長期間にわたり溶液として安定している(
図5)。
【0175】
例4 修飾された低固有粘度[η]のポリマーの安定性
低固有粘度ポリマーの安定性を示す例として、約65kDa([η]=106mL/g)、約670kDa([η]=1156mL/g)のHA-SH及びデキストラン-SH(すなわち、Dex-SH)、並びに約45kDa([η]=20mL/g)のデキストランを使用した。例2.2に説明されているようにHA-SHを調製した。例2.3に説明されているように、Dex-SHを調製した。GPCでサンプルの分子量安定性を評価し、試験方法を例3に説明した。
【0176】
ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩ポリマー基準から生成したユニバーサル較正曲線と比較することでポリマーの分子量(MW)及び分子量分散度(PDI)を評価した。
【0177】
pH3、4℃で溶液としてポリマーを保存した。
【0178】
例4.1 15%のDM及び65kDaのHA-SHの安定性
15%のDMのHA-SHの結果を表4に示した。
【表4】
【0179】
驚くべきことに、液体形態でのHA-SHの保存条件は例3と同様であるにもかかわらず、表4からは、低固有粘度を有するHA-SHは少なくとも60日間溶液として安定であったことが理解できる。加えて、MWのわずかな増加が約90日後に見られた。
図6は、表4のポリマーのMW変化の動向及び元のGPS曲線の例を示した。
【0180】
例4.2 25%のDM及び65kDaのHA-SHの安定性
例4.1は驚くべきことに、低[η]ポリマーを修飾するのみで溶液中で安定しているSHポリマーを示しており、発明者らは、4℃にて溶液中で高DM(10.16mg/mL)のSHポリマーが安定可能かどうかをさらに調査した。
【表5】
【0181】
表5は、25%のDMの65kDaのHA-SHの安定性の例を示した。結果は、HA-SHのMWは少なくとも70日間安定していたことを示した。
図7は、表5のポリマーのMW変化の動向及び元のGPS曲線の例を示した。
【0182】
例4.3 約5%及び約12.5%のDM、45kDaのデキストラン-SHの安定性
低[η]を有するSHポリマーの安定性をさらに実証するため、例2に従い、約45kDaのデキストランをデキストラン-SHに修飾した。デキストラン-SHの2つのDMとして5%及び12.5%のものを例として使用した。デキストランは、単糖の繰り返しから構成されたポリマーであり、約400DaのMWを有するHAの二糖の繰り返しと比較して繰り返し単位のMWが約160Daであることに留意されたい。こうした理由について、したがって5%及び12.5%のDMのデキストラン-SHは12%及び30%のDMのHA-SHと同様のSH密度を有する。
【0183】
試験結果を表6に示す。両方のポリマーのMWは少なくとも180日間増加しないことが明らかとなった。
図8は、表6のポリマーのMW変化の動向及び元のGPS曲線の例を示した。
【表6】
【0184】
4.4 16.4%のDM及び670kDaのHA-SHの安定性
【0185】
発明者らは、わずかに高いMW及び固有粘度のポリマーである670kDaのHA-SH([η]=1156mL/g)が、4℃にて溶液(5.5mg/mL)中で安定であるかどうかをさらに調査した。この例では、ポリマーのDMは16.4%であった。
【0186】
pH3の希釈HCl溶液中にHA-SHを保存した。発明者らは、ポリマーが精製から1日後に安定していたことを見出した。7日後、ポリマーは依然として大半が非架橋状態であったが、一部の高MW部分を確認することができる。14日後、高MWのポリマー(矢印で指示されている)をAGE中で確認することができる。30日後、単独でゲル形成するポリマーは、著しく自己架橋したことを示す。結果(
図13)は、材料は2.6MDaのHA-SHと比較して比較的安定している。
【0187】
例5 修飾された高[η]ポリマー及び修飾された低[η]ポリマーによるハイドロゲルの形成
例2に従い、HA-VS、HA-SH及びデキストラン-SHを作製した。HA-VS及びHA-SH又はデキストラン-SHの濃度を最初に決定した。既知の体積のポリマー溶液をフリーズドライし、ポリマーの乾燥重量を測定した。正確な測定を保証するため、乾燥ポリマーは少なくとも4mgであった。代替的には、既に説明したように(Oueslati et al.,CTAB turbidimetric method for assaying hyaluronic acid in complex environments and under cross-linked form,Carbohydrate Polymers,2014)、CTABアッセイでHA-VS及びHA-SHのポリマー濃度を測定し、中国薬局方に従い、偏光計でデキストラン-SHのポリマー濃度を測定した。続いて、0.5M PBを加えることで、既知の濃度のHA-VS及びHA-SH又はデキストラン-SHをpH7.4に調節した。PBの最終濃度は約0.02M~0.05Mであった。続いて25%のNaClを使用し、オスモル濃度を調節した。続いて、ポリマーを様々な目標の体積比及び質量比で混合し、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)を加えることで目標の最終濃度に調節した。
【0188】
ハイドロゲルを形成するため、37℃で24時間、ポリマーをインキュベートした。ハイドロゲル形成反応を
図3で実証した。インキュベーション期間後、慎重にピペッティングすることで、ゲル形成のため、ハイドロゲルを最初に視覚的にチェックした。ゲル状構造を首尾良く形成する条件について、Anton Paar製レオメータの60mmのコーンプレート治具(CP60-1/T1)の下部プレート上に形成されたハイドロゲルを載せ、機械的特性(例えば、G’及びG’’)を測定した。ハイドロゲル形成の客観的指標として、線形粘弾性領域(linear viscoelastic region:LVR)領域にてG’’値と比較すると高いG’値(例えば、G’>G’’)を使用した。
【0189】
5.1 様々な濃度のポリマーで形成されたハイドロゲル
原理を実証するものとして、大きな[η]ポリマー(23%のDMで2.6MDaのHA-VS、[η]=2960mL/g)を小さな[η]ポリマー(14%のDMで65kDaのHA-SH、[η]=106mL/g)と以下のように混合した:
【0190】
グループ1:それぞれ、0.64mg/mLのHA-SH、1.01mg/mL、0.81mg/mL、0.65mg/mL、0.52mg/mL、0.42mg/mL、0.33mg/mLのHA-VS。
【0191】
グループ2:それぞれ、0.43mg/mLのHA-SH、1.01mg/mL、0.81mg/mL、0.65mg/mL、0.52mg/mL、0.42mg/mL、0.33mg/mLのHA-VS。
【0192】
グループ3:それぞれ、0.34mg/mLのHA-SH、1.27mg/mL、1.01mg/mL、0.81mg/mL、0.65mg/mL、0.52mg/mL、0.41mg/mLのHA-VS。
【0193】
グループ4:それぞれ、0.28mg/mLのHA-SH、1.27mg/mL、1.01mg/mL、0.81mg/mL、0.65mg/mL、0.52mg/mL、0.41mg/mLのHA-VS。
【0194】
5rad/sの周波数及び5%の歪みで測定されたG’及びG’’(各調合物につきn=3)を表7~表10に示した。
図9~
図10は、異なる調合物のG’の変化の動向を示した。これらの結果は、HA-VS濃度が一定に維持されている場合には、HA-SH濃度が減少するのに伴い機械的特性が減少することを示した。HA-SHが一定に維持されている場合、HA-VS濃度が減少するのに伴い、機械的特性は減少する。2つのゲル形成するポリマー濃度を調節することで、望ましい値のG’を調節することができる。HA-VSの濃度がその重なり濃度(c*)、すなわち約0.33mg/mL未満である場合、ゲルを形成することはできない。重なり濃度は、
【0195】
c*=1/[η]で計算することができる。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0196】
大きな[η]ポリマー(23%のDMで2.6MDaのHA-VS、[η]=2960mL/g)を使用することで別のハイドロゲルを形成し、低MWの小さな[η]ポリマー(16.4%のDMで670kDaのHA-SH、例2.2で調製、[η]=1156mL/g)と混合した。0.8mg/mLのHA-VSと0.4mg/mLのHA-SHの混合物(HA-VSとHA-SHとのモル比は1:1.9であった)については、ハイドロゲルを形成した。
【0197】
大きな[η]ポリマー(670kDaのHA-VS、例2.1で調製、[η]=1156mL/g)を使用することで別のハイドロゲルを形成し、低MWの小さな[η]ポリマー(65kDaのHA-SH、例2.2で調整、[η]=106mL/g)と混合した。この例では、HA-VSの濃度は2.5mg/mLであり、DMは40%であった。HA-SHの濃度は0.42mg/mLであり、DMは14.3%であった。HA-VSとHA-SHとのモル比は1:1.7であった。5%の歪み及び1rad/sでは、G’は0.96Paであり、G’’は0.38Paであった。別の例では、HA-VSの濃度は4mg/mLであり、DMは40%であった。HA-SHの濃度は0.08mg/mLであり、DMは14.3%であった。HA-VSとHA-SHとのモル比は4.9:1であった。ゲルは形成されなかった。別の例では、HA-VSの濃度は4mg/mLであり、DMは40%であった。HA-SHの濃度は0.16mg/mLであり、DMは14.3%であった。HA-VSとHA-SHとのモル比は2.4:1であった。このゲルの機械的特性を表11に示す。
【表11】
【0198】
5.2 異なるDMのポリマーで形成されたハイドロゲル
小さな[η]ポリマーのDMは変化させることができ、ハイドロゲルを形成することができる。
図11は、23%のDM、1mg/mL、2.6MDaのHA-VSと14%又は22%のDM、65kDaのHA-SHとを混合することで作製されたハイドロゲルのG’値を示している。5rad/sの周波数及び5%の歪みで値を測定した。調合は以下の通りである:
【0199】
グループ1:それぞれ、14%のDMのHA-SH、約0.14mg/mL~約0.3mg/mLのHA-SH。
【0200】
グループ2:それぞれ、22%のDMのHA-SH、約0.14mg/mL~約0.3mg/mLのHA-SH。結果(
図11)は、HA-VSが一定に維持されている場合、ハイドロゲルの機械的強度は、HA-SHの濃度及びDMが減少した場合には低下したことを示した。したがって、G’の望ましい値を、ハイドロゲル形成ポリマーのDM及び濃度を調節することで調節することができた。
【0201】
5.3 デキストラン-SHで形成されたハイドロゲル
別の小さな[η]のポリマーである、45kDaのデキストラン-SH(又は[η]=20mL/g)を別の例で使用した。表12及び
図12は、大きな[η]ポリマー(23%のDMで2.6MDaのHA-VS、[η]=2960mL/g)及び45kDa(又は[η]=20mL/g)、13%及び5%のDMのデキストラン-SHから構成された異なる調合物のG’を示した。調合は以下の通りである:
【0202】
グループ1:それぞれ、0.81mg/mLのHA-VS、13%のDM、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLのデキストラン-SH。
【0203】
グループ2:それぞれ、0.81mg/mLのHA-VS、5%のDM、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLのデキストラン-SH。
【0204】
グループ3:それぞれ、0.65mg/mLのHA-VS、13%のDM、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLのデキストラン-SH。
【0205】
グループ4:それぞれ、0.65mg/mLのHA-VS、5%のDM、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLのデキストラン-SH。
【0206】
5rad/sの周波数及び5%の歪みのG’及びG’’値を示した。これらの結果はそれぞれ、HA-VS濃度が減少するのに伴い機械的強度が減少し、デキストラン-SH(Dex-SH)修飾度が減少するのに伴い機械的強度が減少し、かつデキストラン-SH濃度が減少するのに伴い機械的強度が減少したことを示した。望ましい値のG’を、ハイドロゲル形成ポリマーのDM及び濃度を調節することで調節することができた。
【表12】
【0207】
5.4 PEG-SHで形成されたハイドロゲル
大きな[η]ポリマー(2.6MDのHA-VS、例2.1で調製、[η]=2960mL/g)を使用することで別のハイドロゲルを形成し、小さな[η]PEG-チオール(PEG-SH)と混合した。
【0208】
大きな[η]ポリマー(2.6MDのHA-VS、例2.1で調製、[η]=2960mL/g)を使用することで別のハイドロゲルを形成し、小さな[η]の4アームPEG-チオール(5KDa、[η]は約10mL/g、市販品から入手)と混合した。この例では、HA-VSを0.8mg/mLに維持し、PEGジチオールは0.4mg/mL(サンプル1)、0.2mg/mL(サンプル2)及び0.1mg/mL(サンプル3)であった。5%の歪みで測定された機械的特性の例を表13に示す:
【表13】
【0209】
例6 修飾された高[η]ポリマー及び修飾された低[η]ポリマーによるハイドロゲルの機械的特性の測定
例2に従い、HA-VS、HA-SH及びデキストラン-SHを作製した。例5に従い、ハイドロゲルを形成してレオメータに載せた。表14に示されるようにハイドロゲルの4つの代表的な調合を例示目的のために例として示した。したがって、SHポリマーに対するHA-VSのモル比は、F4に対するF1については1:62、1:12、1:10、1:16であった。
【表14】
【0210】
異なるタイプの機械的試験モードの下で、ハイドロゲルの機械的特性を測定した。試験の例を
図14~
図17に示した。
【0211】
図14A及び
図14Bは、周波数掃引試験の結果を示した。この試験では、振動歪みを5%に維持し、例えばG’及びG’’といった機械的特性を、異なる振動周波数で測定した。この試験は、非常に低いG’値にもかかわらず、ハイドロゲルは粘性液体である代わりに粘弾性固体であったことが実証された。これは、低周波数であってもG’がG’’よりも高いことが理由である。
【0212】
図15A及び
図15Bは、歪み掃引試験の結果を示した。この試験では、振動周波数を5rad/sに維持し、例えばG’及びG’’といった機械的特性を、異なる振動歪みで測定した。この試験は、ハイドロゲルの線形粘弾性範囲(LVR)を実証した。低せん断歪み(例えば、1%のF2及びF4)で同様のG’を有するハイドロゲルについては、高歪み(例えば、100%)での挙動は異なり得る。F2は、F4と比較すると著しく弾性が低い(例えば、G’~G’’)。結果は、異なる歪みの下での弾性挙動は調節可能であることを示した。
【0213】
図16A及び
図16Bは、ステップストレス試験の結果を示した。ステップストレス試験では、一定の応力を材料に印加して得られた歪みを測定した。この試験では、発明者らは60秒間一定の応力を印加し、続けて30秒間0Paとした(緩和)。その後、第2の一定の応力を印加し、続けてもう一度緩和させた。0.05Pa、0.1Pa、0.2Pa及び0.5Paの4つの応力を段階的にハイドロゲルに印加した。結果は、材料は低応力条件では実際に粘弾性固体であることを示した。これは、材料の歪みがどの応力であってもほぼ一定であることが理由である。材料が粘性溶液である場合、歪み応答は印加された各応力に対して一定の速度で増加すると予想される。低応力でのハイドロゲルの固体特性を示す別の証拠は、応力を取り除いた際に(緩和)、ハイドロゲルが、負荷を瞬間的に取り除くとすぐに生じるばねの跳ね返り運動と同様に、弾性リンギングを伴いながら多少の違いはあるが初期位置に戻ったという点である。発明者らによる例では、ほとんどのハイドロゲルは低応力レベルでは比較的弾性(歪みはさらに一定であり、緩和はより顕著である)であったが、高応力レベルでは比較的粘性(歪みは増加しており、緩和はあまり顕著ではない)であった。低応力で高弾性を有するハイドロゲルは、必ずしも高応力では高弾性に対応しない。例えば、F1は他のハイドロゲルと比較して、0.05Paではより弾性(例えば、歪みは10%にすぎない)であるが、0.5Paではより粘性(例えば、歪み速度はより高い)である。
【0214】
図17A及び
図17Bは、連続せん断試験の結果であった。この試験では、異なるせん断速度で材料のせん断粘度を測定した。結果は、ハイドロゲルの粘度はせん断速度が増加するのにつれて減少したことを示した。ほとんどのハイドロゲルについては、低せん断速度(例えば、0.1/s)のせん断粘度は少なくとも1000mPa・sであり、高せん断速度(例えば、1000/s)のせん断粘度は100mPaよりも低かった。したがって、0.1/sの粘度は、F1、F2、F3及びF4については、約4200mPa・s、1400mPa・s、8100mPa・s及び2100mPa・sであった。したがって、1000/sの粘度は、F1、F2、F3及びF4については、約9mPa・s、23mPa・s、32mPa・s及び30mPa・sであった。一部のハイドロゲルは、例えばF1とF2を比較すると、低せん断速度で高い粘性を有するが、高せん断速度で低い粘性を有する。
【0215】
例7 マレイミド修飾されたヒアルロン酸(HA-MI)の合成
2.6MDaの分子量を有するヒアルロン酸(HA)をBloomage Freda(Jinan,China)から得た。
【0216】
N-(2-アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸(MI)と4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)をAladdin Biotechnology得た。
【0217】
8mLの1mM PB中にHA(24mg)を含有する溶液に、MI分子(15.10mg)を加えた。続いてこの混合物に約350μLの0.1M NaOHを加え、pHを6.0に調節した後、DMTMM(66.4mg)を加えた。HAの-COOHとMIの-NH2とDMTMMとのモル比は1:1:4であった。320μLの25%のNaClを加えた後、50mLのコニカルチューブ中で32mLのエタノールに沈殿させることで、72時間で反応を停止した。沈殿物を8000rpmで5分間遠心分離にかけ、上清液をデカントすることでこれを分離した。残渣のペレットを10mLのDIに再度溶解し、3日間、4LのDI中で透析することでさらに精製した。透析緩衝液を1日に2回交換した。透析後のDI中のHA-MI濃度は1.6mg/mLであり、DMは4.8%であった。
【0218】
例8 HA-MIからのハイドロゲルの形成
例7で作製したHA-MIを65kDa及び11.6%のDMのHA-SHとリン酸緩衝液中で混合した。約300mOsmの0.02M リン酸緩衝生理食塩水では、最終濃度は、1.1mg/mL(HA-MI)、1mg/mL(HA-SH)であった。ハイドロゲルを形成した。
【0219】
例9 ハイドロゲル中での原薬(active pharmaceutical ingredient:API)の封入
例2に従い、HA-VS、HA-SH及びデキストラン-SHを作製した。ハイドロゲル形成前に粉末形態のAPIをポリマー混合物に加えたことを除き、ハイドロゲルを例5と同様に形成した。ハイドロゲルの19個の代表的な調合を例示目的のために表15に示した。4個の代表的な調合の機械的特性は、例5に従い測定したように、表16に示した。
【表15】
【表16】
【0220】
例10 ハイドロゲルからのAPI放出
モキシフロキサシンをHetero Drugs Limitedから入手した。レボフロキサシンをAladdin Biotechnologyから入手した。ベバシズマブをRocheから入手した。修飾RNAアプタマーをSynbio Tech Incから入手した。
【0221】
10.1 モキシフロキサシンの放出
【0222】
以下の調合(表17)は、モキシフロキサシンを含むハイドロゲルの形成のためのものであった。
【表17】
【0223】
例5に従ってハイドロゲルを形成した。このゲルを37℃で2日間インキュベートしてから放出実験を行った。放出実験については、少量のゲル(200~300μg)を、3mLの使い捨てプラスチック製ピペットで周囲温度の5mLのエッペンドルフチューブに移した。最終放出計算のため、ゲルの質量を測定した。続いて、5mLのPBS溶液でエッペンドルフチューブをゆっくりと満たして、ゲルの擾乱(disturbing)を最小限に留めた。放出実験を37℃で実施した。この場合、所定の各時点(0.1時間、1時間及び2時間)では、チューブを10秒間穏やかに振盪させ、10分間周囲温度で静置した。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を定量するため、100μLの放出緩衝液を採取した。注入前に、0.1M PBで放出緩衝液を10倍に希釈し、0.22μmのシリンジフィルタでろ過した。0.05Mのリン酸水素二カリウム/アセトニトリル(82/18、v/v、pH=3)からなる移動相を用い、1.0mL/分の流速、37℃でHPLCを実施した。YMC-Park Pro C18カラム(4.6mm×150mm、3μm)に溶離液を流した。検出波長は293nmであった。2、5、10、25、50、100μg/mLの線形範囲で基準としてモキシフロキサシンを使用し、濃度を測定した。3回反復して実験を行った。
図18は、モキシフロキサシンは急速に放出され、この放出は約2時間継続したことを示した。
【0224】
10.2 レボフロキサシンの放出
【0225】
以下の調合(表18)は、レボフロキサシンを含むハイドロゲルの形成のためのものであった。10.1に従い、レボフロキサシンを含むハイドロゲルを形成した。2、5、10、25、50、100μg/mLの線形範囲で基準としてレボフロキサシンを使用し、濃度を測定した。
図19は、レボフロキサシンは急速に放出され、この放出は約2時間継続したことを示した。
【表18】
【0226】
10.3 IgGタンパク質の放出
【0227】
以下の調合(表19)は、タンパク薬物であるベバシズマブを含むハイドロゲルの形成のためのものであった。
【表19】
【0228】
例5と同様にハイドロゲルを形成した。ベバシズマブをタンパク薬物例として使用した。25mg/mLベバシズマブを含有する200mLのアバスチン(Roche(USA)から購入)を、926μL、1.62mg/mLのHA-VS及び40.5μL、12.4mg/mLのHA-SH、200μLの0.5M リン酸緩衝液及び適切な量の2回脱イオン水と混合し、表18に従って最終調合物とした。このゲルを37℃で2日間インキュベートしてから放出実験を行った。放出実験については、少量のゲル(200~330μg)を、3mLの使い捨てプラスチック製ピペットで周囲温度の10mLのガラスバイアルに移し、最終放出計算のために質量を測定した。8mLの放出緩衝液(pHを7.4に調節した40mMのアルギニンを含有するPBS溶液)でガラスバイアルをゆっくりと満たして、ゲルの擾乱(disturbing)を最小限に留めた。放出を37℃で実施した。この場合、所定の各時点(0.5時間、1時間、3時間、4.5時間、24時間、及び72時間)では、サンプルを10秒間穏やかに振盪させ、10分間周囲温度で静置した。その後、HPLCを定量するため、400μLの放出緩衝液を採取した。注入前に、放出緩衝液を0.22μmのシリンジフィルタでろ過した。0.2M リン酸カリウム及び0.25M 塩化カリウム(pH=6.2)からなるリン酸緩衝液を用いて、流速0.5mL/分で30分、HPLCを実施した。注入体積50μLの溶離液をVanguardカートリッジホルダカラム及びWaters Xbridge Protein BEH SECカラム(7.8mm×300mm、200A、3.5μm)に順に流した。検出波長は280nmであった。12.5、25、50、100μg/mLの線形範囲で基準としベバシズマブを使用し、濃度を測定した。3回反復して実験を行った。
図20は、ベバシズマブは約5時間で急速に放出され、この放出は約1~3日間継続したことを示した。
【0229】
10.4 アプタマーの放出
【0230】
以下の調合(表20)は、RNAベースのアプタマーを含むハイドロゲルの形成のためのものであった。
【表20】
【0231】
例5と同様にハイドロゲルを形成した。アプタマー例として、以下のヌクレオチド配列及び官能基:5’末端が6個の炭素(C6)で保護され、3’末端が3’-dT-5’で保護されたCfGmGmAAUfCfAmGmUfGmAmAmUfGmCfUfUfAmUfAmCfAmUfCfCfGm3’(配列番号1)のMacugenに類似するアプタマーとCy3蛍光色素とを使用した。Gm又はAm及びCf又はUfは、それらのそれぞれのプリン及びピリミジンの2-メトキシ及び2-フルオロバリアントを表し、C、A、U及びGはシチジル酸、アデニル酸、ウリジル酸及びグアニル酸を指定している。ハイドロゲル形成前の溶液を粉末形態のAPIに加えたことを除き、ハイドロゲルを例5と同様に形成した。このゲルを37℃で2日間インキュベートしてから放出実験を行った。放出実験については、少量のゲル(200~300μg)を、3mLの使い捨てプラスチック製ピペットで周囲温度の10mLのガラスバイアルに移し、最終放出計算のために質量を測定した。続いて、5mLのPBS溶液でガラスバイアルをゆっくりと満たして、ゲルの擾乱(disturbing)を最小限に留めた。放出を37℃で3回反復して実施した。この場合、所定の各時点(0.5時間、1時間、2時間、4時間)では、サンプルを10秒間穏やかに振盪させ、10分間周囲温度で静置した。その後、260nmでUVを定量するため、1000μLの放出緩衝液を採取した。3回反復して実験を行った。
図21及び
図22は、アプタマーはハイドロゲルから急速に放出され、この放出が約4時間継続したことを示した。
【0232】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、かつ記載されているが、かかる実施形態が例としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書内で提供されている特定の例によって限定されることを意図してはいない。本発明は前述の明細書を参照してきているが、本明細書の実施形態の説明及び例示は、限定的な意味で解釈されることを意味していない。本発明から逸脱することなく、当業者は非常に多くの変形、変更及び代用がここで思い浮かぶであろう。さらには、本発明のすべての態様は、様々な条件及び変数に依存する本明細書に記載されている特定の描写、構成又は相対的な比率に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載される本発明の実施形態に対し、本発明を実際する際には種々の代替形態が利用され得ることを理解されたい。したがって、本発明はかかる任意の代替形態、修正形態、変形又は同等物をも網羅することと企図している。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義することを意図しており、かつこれらの請求項及び同等物の範囲内の方法及び構造は、これに包含されることを意図している。
【配列表フリーテキスト】
【0233】
配列表1 <223>アプタマー
配列表1 <223>cは、シチジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>gは、グアニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>gは、グアニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>uは、ウリジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>cは、シチジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>aは、アデニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>gは、グアニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>uは、ウリジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>gは、グアニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>aは、アデニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>aは、アデニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>uは、ウリジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>gは、グアニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>cは、シチジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>uは、ウリジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>uは、ウリジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>aは、アデニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>uは、ウリジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>aは、アデニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>cは、シチジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>aは、アデニル酸の2-メトキシバリアントを表す
配列表1 <223>uは、ウリジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>cは、シチジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>cは、シチジル酸の2-フルオロバリアントを表す
配列表1 <223>gは、グアニル酸の2-メトキシバリアントを表す
【配列表】
【国際調査報告】