(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ミスフォールドTDP-43に対する単鎖抗体およびイントラボディならびに使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230525BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230525BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230525BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230525BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230525BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230525BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230525BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20230525BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230525BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230525BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C07K16/18
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K31/711
A61K35/76
A61P25/02
A61P21/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565772
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 CA2021050597
(87)【国際公開番号】W WO2021217267
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(71)【出願人】
【識別番号】514316411
【氏名又は名称】プロミス、ニューロサイエンシズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROMIS NEUROSCIENCES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニール、アール.キャッシュマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネ、カプラン
(72)【発明者】
【氏名】ベイベイ、ザオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084ZA22
4C084ZA94
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA22
4C086ZA94
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA05
4C087ZA22
4C087ZA94
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、単鎖抗体、例えば、DAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する抗体をコードする核酸およびベクター、ならびに単鎖抗体、核酸およびベクターを、それを必要とする対象に投与する方法に関する。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単鎖抗体をコードする配列を含んでなる核酸であって、前記単鎖抗体はミスフォールドTDP-43においてTrp-68に結合し、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖可変領域と相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなり、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、リンカーによって連結され、前記CDRのアミノ酸配列は、以下のように配列を含んでなり:
CDR-H1: GFSFSSNYV 配列番号 16;
CDR-H2: IWFAGIVDTT 配列番号 17;
CDR-H3: ARNPVGSVNL 配列番号 18;
CDR-L1: ESVYSNNR 配列番号 19;
CDR-L2: YAS 配列番号 20;および
CDR-L3: AGWRGARTDGVD 配列番号 21、
CDR-H1: GFSLSRYY 配列番号 10;
CDR-H2: IIPGGTT 配列番号 11;
CDR-H3: AGGPTGNSHFTL 配列番号 12;
CDR-L1: ESVYNNNH 配列番号 13;
CDR-L2: EAS 配列番号 14;および
CDR-L3: SGYKRVTTDGIA 配列番号 15、
CDR-H1: GFSFSSSYV 配列番号 22;
CDR-H2: SDTGINT 配列番号 23;
CDR-H3: ARRYTGDTYLGNFNL 配列番号 24;
CDR-L1: QSVYKNNY 配列番号 25;
CDR-L2: KAS 配列番号 26;および
CDR-L3: AGGWRSLNA 配列番号 27、
CDR-H1: EFSFSSRYW 配列番号 28;
CDR-H2: IYTGSIDAT 配列番号 29;
CDR-H3: VRGSDAWGLYFNL 配列番号 30;
CDR-L1: QSIHKNNY 配列番号 31;
CDR-L2: FAS 配列番号 32;および
CDR-L3: AGVYSGRIFA 配列番号 33、
CDR-H1: GFSLSSYT 配列番号 34;
CDR-H2: IYGGIGST 配列番号 35;
CDR-H3: GRGDI 配列番号 36;
CDR-L1: QSVYKNR 配列番号 37;
CDR-L2: GAS 配列番号 38;および
CDR-L3: LGNYDCSSVDCGA 配列番号 39、
CDR-H1: GFSFSAYY 配列番号 40;
CDR-H2: TIPIGRT 配列番号 41;
CDR-H3: AGGPTGNSHFTL 配列番号 42;
CDR-L1: ESVYNNNQ 配列番号 43;
CDR-L2: QAS 配列番号 44;および
CDR-L3: AGYKSPTTDGIA 配列番号 45、
CDR-H1: GFSLSSYA 配列番号 46;
CDR-H2: IYNYET 配列番号 47;
CDR-H3: ARDIFRTNTNL 配列番号 48;
CDR-L1: QSVYKNNG 配列番号 49;
CDR-L2: FTS 配列番号 50;および
CDR-L3: LGGYDCSSRVCGA 配列番号 51、
CDR-H1: GFSLSSYN 配列番号 120;
CDR-H2: IGTGGIT 配列番号 121;
CDR-H3: VRSSGSDWWFHI 配列番号 122;
CDR-L1: QSVYNNNN 配列番号 123;
CDR-L2: RAS 配列番号 124;および
CDR-L3: QGYFSGFITT 配列番号 125、
CDR-H1: GFTFSSYY 配列番号 130;
CDR-H2: INSNGGST 配列番号 131;
CDR-H3: VRQNYEGAY 配列番号 132;
CDR-L1: QSIVHSNGNTY 配列番号 133;
CDR-L2: KVS 配列番号 134;および
CDR-L3: FQSSHVPWT 配列番号 135、または
CDR-H1: GFTFSSYY 配列番号 140;
CDR-H2: INTNGGST 配列番号 141;
CDR-H3: VRQNYEGAY 配列番号 142;
CDR-L1: QSIVHSNGNTY 配列番号 143;
CDR-L2: KVS 配列番号 144;および
CDR-L3: FQSSHVPWT 配列番号 145
好ましくは、前記CDR配列は、配列番号10~15、16~21、120~125または130~135を含んでなる、核酸。
【請求項2】
前記抗体が、i)配列番号98において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号98に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号10~12において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号99において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号99に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号13~15において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号76において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号77において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記抗体が、i)配列番号100において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号100に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号16~18において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または前記抗体が、i)配列番号101において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号101に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号19~21において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号78において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号79において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
前記抗体が、i)配列番号102において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号102に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号22~24において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号103において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号103に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号25~27において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号80において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号81において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
前記抗体が、i)配列番号104において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号104に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号28~30において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号105において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号105に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号31~33において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号82において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号83において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
前記抗体が、i)配列番号106において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号106に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号34~36において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号107において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号107に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号37~39において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号84において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号85において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
前記抗体が、i)配列番号108において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号108に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号40~42において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号109において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号109に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号43~45において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号86において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号87において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
前記抗体が、i)配列番号110において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号110に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号46~48において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号111において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号111に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号49~51において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号88において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号89において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項9】
前記抗体が、i)配列番号128において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号128に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号120~122において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号129において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号129に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号123~125において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号126において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号127において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
前記抗体が、i)配列番号138において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号138に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号130~132において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号139において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号139に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号133~135において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号136において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号137において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項11】
前記抗体が、i)配列番号148において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号148に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号140~142において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体が、i)配列番号149において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号149に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号143~145において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号146において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または、前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号147において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる、請求項1に記載の核酸。
【請求項12】
重鎖可変ドメイン、リンカー、および軽鎖可変ドメインの配向が、重鎖可変ドメイン-リンカー-軽鎖可変ドメインである、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項13】
重鎖可変ドメイン、リンカー、および軽鎖可変ドメインの配向が、軽鎖可変ドメイン-リンカー-重鎖可変ドメインである、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
リンカーが約10~約25アミノ酸、好ましくは15または20アミノ酸である、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項15】
リンカーが、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)
3(配列番号180)、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)
4(配列番号181)、およびGSTGGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号182)から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項16】
ターゲティング部分リンカーによって、場合により、連結されていてよいターゲティング部分をさらにコードする、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項17】
ターゲティング部分がリソソームターゲティング配列およびオートファジーターゲティング配列から選択される、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
リソソームターゲティング配列が、YPTL(配列番号173)、KSIRSGYEVM(配列番号174)およびRWRKSHSSSYTPLSGSTYPEGRH(配列番号175)から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項17に記載の核酸。
【請求項19】
単鎖抗体がイントラボディである、請求項1~18のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項20】
シグナルペプチドおよび/または細胞透過性ペプチドをさらにコードする、請求項1~18のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項21】
単鎖抗体がscFV、ミニボディまたはナノボディである、請求項1~20のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項22】
単鎖抗体がヒト化されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項23】
配列が、配列番号203、205、207、209、213、215、217、219、223、225、227、229、233、235、237、239、243、245、247、249、253、255、257、および/または259のいずれかの抗体およびリンカー部分、ならびに、場合により、リソソームターゲティング配列をコードする、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項24】
配列が、配列番号76~89、配列番号126~127、配列番号136~137、146~147のいずれか1つ、またはそれらのコドン最適化配列を含んでなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項25】
配列が、配列番号202、204、206、208、212、214、216、218、222、224、226、228、232、234、236、238、242、244、246、248、252、254、256、および/または258のいずれかの抗体およびリンカー部分、ならびに、場合により、リソソームターゲティング配列を含んでなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸を含んでなる発現カセットまたはベクター。
【請求項27】
前記ベクターがレンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、場合により、AAV血清型9である、請求項26に記載のベクター。
【請求項28】
請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸、請求項26または27に記載の発現カセットまたはベクターによってコードされる単鎖抗体。
【請求項29】
請求項28に記載の抗体および検出可能な標識を含んでなる免疫複合体。
【請求項30】
請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸、または請求項26もしくは27に記載のベクターによってコードされる単鎖抗体を組換え発現する細胞。
【請求項31】
請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸、請求項26もしくは27に記載の発現カセットもしくはベクター、請求項28に記載の単鎖抗体、請求項29に記載の免疫複合体、または請求項30に記載の細胞を、場合により、希釈液および/または薬学上許容可能な担体とともに含んでなる組成物。
【請求項32】
2つ以上の異なる核酸を、場合により、希釈液および/または薬学上許容可能な担体とともに含んでなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
2つ以上の異なる発現カセットまたはベクターを、場合により、希釈液および/または薬学上許容可能な担体とともに含んでなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
2つ以上の異なる単鎖抗体を、場合により、希釈液および/または薬学上許容可能な担体とともに含んでなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
2つ以上の異なる免疫複合体を、場合により、希釈液および/または薬学上許容可能な担体とともに含んでなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項36】
2つ以上の異なる細胞を、場合により、希釈液および/または薬学上許容可能な担体とともに含んでなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
脂質粒子、場合により、リポソーム、ナノ粒子またはナノソームを含んでなる、請求項31~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
くも膜下腔内、脳実質内または脳室内投与のために好適に処方された、請求項31~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
対象を治療する方法であって、有効量の請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸、請求項26もしくは27に記載の発現カセットもしくはベクター、請求項28に記載の抗体、または請求項31~38のいずれか一項に記載の組成物、場合により、1つ以上の核酸、1つ以上の発現カセットもしくはベクター、または1つ以上の抗体および/もしくは組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、方法。
【請求項40】
請求項1~25のいずれか一項に記載の2つ以上の核酸の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項26または27に記載の2つ以上の発現カセットまたはベクターの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
請求項28に記載の2つ以上の抗体の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
請求項31~38のいずれか一項に記載の2つ以上の組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、TDP-43タンパク質症を有すると疑われる、それを発症するリスクにある、またはそれと診断されている、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記TDP-43タンパク質症が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、および大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記核酸、発現カセットもしくはベクター、抗体、または組成物が、別のTDP-43タンパク質症の治療と組み合わせて投与される、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記核酸、発現カセット、ベクター、単鎖抗体、または組成物が、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、くも膜下腔内投与、眼窩内投与、眼投与、脊髄内投与、槽内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、エアロゾル投与または経口投与により投与される、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年4月29日に出願された米国仮出願第63/017,363号の優先権を主張する特許協力条約出願である。先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされ、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0002】
配列表の組込み
2021年4月29日に作成されたコンピューター可読形式の配列表「P61456PC00 Sequence ListingST25.txt」(154,654バイト)は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0003】
分野
本開示は、TDP-43単鎖抗体、より具体的には、細胞内ミスフォールドTDP-43を標的とするためのイントラボディに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
43kDaのトランス活性化応答(TAR)エレメントDNA結合タンパク質(TDP-43)は、414アミノ酸タンパク質であり、N末端ユビキチン様ドメイン(NTD、残基1~80)、残基106~177(RRM1)および残基192~259(RRM2)から構成される2つのRNA認識モチーフ(RRM)、ならびにC末端ドメイン(CTD、残基274~414)から構成される。NTDは、核局在化(残基82~98におけるNLSモチーフ、NLS1 K82RK84およびK95VKR98)を指示するドメインに隣接する。RRM2は、残基239から250にかけて核外搬出シグナル(NES)を含む。
【0005】
TDP-43は主に、RNA代謝において中心的役割を果たす核タンパク質である。罹患ニューロン内の病原性封入体は、翻訳後修飾されたTDP-43を含み得るため、TDP-43は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)疾患スペクトラムにおける研究の焦点となっている。TDP-43のCTDは疾患と特に関連しているが、それは、ほぼ総ての家族性ALS/FTD関連変異がTDP-43において認められる場所であるからである。
【0006】
TDP-43は、孤発型および家族型両方のALSおよびFTDを有する患者の神経封入体において高リン酸化、ユビキチン化、および断片化されることが認められた[4]。
【0007】
機能的TDP-43は、細胞ストレス時に形成される細胞質凝集体と区別される核オリゴマーとして存在し得る。機能的TDP-43のオリゴマー化は、そのRNAスプライシング機能のために必要である。核におけるNTDにより駆動されたTDP-43のオリゴマー化は、細胞質誤局在化および病的凝集の形成を阻害し得る[9]。
【0008】
生理学的TDP-43オリゴマー化は、核磁気共鳴分光法および電子顕微鏡法の組合せでの2.1A結晶構造により明らかにされた、動的なソレノイド様構造を採用し得る、そのN末端ドメインにより媒介される[9]。
【0009】
TDP-43の凝集体(封入体)は現在、ALSのほぼ総て(およそ97%)の症例およびFTDの症例のおよそ半数(およそ40%)において認められている。TDP-43は、ALS患者の運動ニューロンおよびグリア細胞において認められる細胞質封入体の主成分の1つである。
【0010】
TDP-43封入体の前駆体は、機能的TDP-43よりはるかに低い濃度を有し得る。ミスフォールドTDP-43が低濃度であることによって、この標的がとらえにくいものとなっている。
【0011】
細胞質ヒトTDP-43を発現するトランスジェニックマウスおよび非トランスジェニックマウスにおける脳由来病的TDP-43 FTLD-TDP種子の脳内注射は、時間依存的に脳に伝播したデノボTDP-43病変の誘導をもたらしている[10]。
【0012】
TDP-43に結合する抗体がこれまで記載されてきた。
【0013】
「神経変性疾患の予後および/または診断のための方法、候補化合物および神経変性疾患を治療するための化合物の同定方法」と題するWO2012174666は、抗TDP-43抗体を使用して、TDP-43とNF-kB p65との間の相互作用の評価を通じて、ALSおよびFTDなどの神経変性疾患を診断する方法を開示している。
【0014】
「神経変性疾患の治療に有用なTDP-43結合性ポリペプチド」と題するWO2016086320は、ALSおよびFTDの治療のための、TDP-43のRRM1ドメインに結合して、NF-kBとのその相互作用を妨害する抗体を開示している。
【0015】
細胞内で発現でき、天然に折り畳まれたTDP-43よりもミスフォールドTDP-43に優先的に結合する抗体が望まれる。
【発明の概要】
【0016】
概要
本発明者らは、細胞質のミスフォールドTDP-43を標的とすることができ、例えば、細胞質のミスフォールドTDP-43を含んでなる細胞で発現されると、その分解を増加させることができる単鎖イントラボディを同定した。
【0017】
単鎖イントラボディは、ミスフォールドTDP-43においてはアクセス可能であるが、天然に折り畳まれた非疾患関連TDP-43においては利用不可能である立体配座N末端エピトープに結合する抗体に由来する。N末端TDP-43配列DAGWGNL(配列番号1)を含んでなる免疫原に対して惹起された抗体は、ミスフォールドTDP-43凝集体に優先的に結合した。残基W68は、ミスフォールドTDP-43凝集体に対する抗体特異性を付与するのに重要な残基であることがわかった。
【0018】
ある側面は、ミスフォールドTDP-43に結合し、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖可変領域と、相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる単鎖抗体を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域はリンカーによって連結されている。重鎖および軽鎖の可変領域とリンカーの配向は、重鎖の可変領域-リンカー-軽鎖の可変領域または軽鎖の可変領域-リンカー-重鎖の可変領域であり得る。
【0019】
ある実施形態において、単鎖抗体は、scFv、ナノボディ、ミニボディである。
【0020】
さらなる側面は、本明細書に記載の抗体と、陽電子放出放射性核種などの検出可能な標識、FLAGタグまたはmycタグなどの融合タグ、またはリソソームまたはオートファジーターゲティング配列などのターゲティング部分とを含んでなる免疫複合体を含んでなる。
【0021】
さらなる側面は、本明細書に記載の単鎖抗体をコードする単離核酸、ならびに、例えば、本明細書に記載の単鎖抗体を送達および/または発現するための、前記核酸を含んでなるベクターを含んでなる。
【0022】
さらなる側面は、本明細書に記載の単鎖抗体を組換え発現する細胞を含んでなる。
【0023】
さらなる側面は、本明細書に記載の単鎖抗体、免疫複合体、単離核酸、ベクター、または細胞を含んでなる組成物を含む。
【0024】
TDP-43タンパク質症を有する対象を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載の単鎖抗体をコードする核酸または免疫複合体を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる方法が、さらに提供される。
【0025】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の趣旨および範囲内での種々の変更および改変は、この詳細な説明から当業者に明らかになるであろうから、詳細な説明および具体例は、本開示の好ましい実施形態を示す一方で、単に例示として示されるものであると理解されるべきである。
【0026】
ここで本開示の実施形態を図面と関連して説明する:
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、dNLS-TDP43およびLYS-2F7を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、LYS-2F7は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図2】
図2は、dNLS-TDP43およびLYS-1H3-1K3を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLS-TDP43は、抗HAを使用して検出し、LYS-1H3-1K3は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図3】
図3は、dNLS-TDP43およびLYS-28H3-28K1を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、LYS-28H3-28K1は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図4】
図4は、dNLS-TDP43およびLYS-14H1-14K2を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、LYS-14H1-14K2は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図5】
図5Aは、dNLSTDP-43およびYPTL-2F7を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLS-TDP43は、抗HAを使用して検出し、YPTL-2F7は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図6】
図6は、dNLS-TDP43およびYPTL-1H3-1K3を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLS-TDP43は、抗HAを使用して検出し、YPTL-1H3-1K3は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図7】
図7は、dNLS-TDP43およびYPTL-28H3-28K1を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLS-TDP43は、抗HAを使用して検出し、YPTL-28H3-28K1は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図8】
図8は、dNLS-TDP43およびYPTL-14H1-14K2を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、YPTL-14H1-14K2は、抗FLAGを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図9】
図9は、dNLS-TDP43およびMYCL15H-2F7を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCL15H-2F7は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図10】
図10は、dNLS-TDP43およびMYCH15L-2F7を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCH15L-2F7は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図11】
図11は、dNLS-TDP43およびMYCH20L-2F7を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCH20L-2F7は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図12】
図12は、dNLS-TDP43およびMYCL15H-1H3-1K3を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLS-TDP43は、抗HAを使用して検出し、MYCL15H-1H3-1K3は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図13】
図13は、dNLSTDP-43およびMYCL20H-1H3-1K3を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLS-TDP43は、抗HAを使用して検出し、MYCL20H-1H3-1K3は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図14】
図14は、dNLSTDP-43およびMYCH15L-28H3-28K1を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCH15L-28H3-28K1は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図15】
図15は、dNLS-TDP43およびMYCL15H-14H1-14K2を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCL15H-14H1-14K2は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図16】
図16は、dNLS-TDP43およびMYCH15L-14H1-14K2を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCH15L-14H1-14K2は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図17】
図17は、dNLS-TDP43およびMYCL20H-14H1-14K2を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCL20H-14H1-14K2は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図18】
図18は、dNLS-TDP43およびMYCH20L-14H1-14K2を過剰発現する細胞の免疫細胞化学を示す。dNLSTDP-43は、抗HAを使用して検出し、MYCH20L-14H1-14K2は、抗MYCを使用して検出した。マージは、DAPIで染色された核に関して共局在のレベルを示している。
【
図19】
図19は、dNLS-TDP43およびLYS-2F7、LYS-28H3-28K1、またはLYS-14H1-14K2を過剰発現する細胞のウエスタンブロットを示す。dNLS-TDP43の発現レベルは、抗HAを使用して検出した。LYS-2F7、LYS-28H3-28K1、およびLYS-14H1-14K2の発現レベルは、抗FLAGを使用して検出した。ローディング対照としてアクチンを使用した。EV(空ベクター)は、参照陰性対照プラスミドである。
【
図20】
図20は、dNLSTDP-43およびYPTL-14H1-14K2を過剰発現する細胞のウエスタンブロットを示す。dNLS-TDP43の発現レベルは、抗HAを使用して検出した。YPTL-14H1-14K2の発現レベルは、抗FLAGを使用して検出した。ローディング対照としてアクチンを使用した。EVは、参照陰性対照である。
【
図21】
図21は、dNLSTDP-43およびMYCL15H-2F7、MYCH15L-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、またはMYCH20L-14H1-14K2を過剰発現する細胞のウエスタンブロットを示す。dNLS-TDP43の発現レベルは、抗HAを使用して検出した。MYCL15H-2F7、MYCH15L-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、およびMYCH20L-14H1-14K2の発現レベルは、抗MYCを使用して検出した。ローディング対照としてアクチンを使用した。EVは、参照陰性対照である。
【発明の具体的説明】
【0028】
本開示の詳細な説明
I.定義
【0029】
本明細書で使用する場合、「TDP-43」(トランス活性化応答エレメント(TAR)DNA結合タンパク質43)、あるいは「TDP43」、または特に限定されない限り「TDP」という用語は、本明細書で使用する場合、野生型TDP-43、天然TDP-43、ならびに総ての種由来の変異型およびその類似体を含むミスフォールド型を含むあらゆる形態のTDP-43、特に、ヒトTDP-43(すなわち、hTDP-43)を意味する。ヒトTDP-43は、一般に414アミノ酸残基のタンパク質であり、アミノ酸配列(例えば、Uniprotアクセッション番号Q13148)およびヌクレオチド配列(例えば、アクセッション番号HGNC:11571)は、以前に特徴付けられている。
【0030】
「野生型」は、本明細書で使用する場合、非変異タンパク質または天然に存在するタンパク質の一次アミノ酸配列を指す。
【0031】
「天然」は、本明細書で使用する場合、特定のタンパク質またはその一部の正常な三次元構造を指す。天然TDP-43は、場合により、「天然に折り畳まれた」TDP-43、「正常に折り畳まれた」TDP-43および/または「健常な」TDP-43という。したがって、用語「天然TDP-43」、または「天然に折り畳まれたTDP-43」は、本明細書において、新生翻訳後に天然に折り畳まれたTDP-43、および/または、限定されるものではないが、X線結晶解析においてもしくは核磁気共鳴スペクトルから再構築された天然構造を示す非共有結合された個々のTDP-43ペプチドを含んでなる分子構造を有する、非病態(例えば、正常細胞)において折り畳まれた、二量体TDP-43および三量体TDP-43を含む多量体を指す。天然TDP-43は、そのNTDを介して多量体を形成し、天然に折り畳まれた場合のTDP-43は、一般に核である。TDP-43のミスフォールド凝集体は、細胞質であり得、一般に細胞質である。
【0032】
「ミスフォールド」は、本明細書で使用する場合、ポリペプチドまたはその一部の二次構造および三次構造を指し、ポリペプチドが、その適切に機能する状態でのそのポリペプチドに関して正常ではないコンフォメーションをとっていることを示す。ミスフォールディングは、タンパク質における変異、例えば、アミノ酸の欠失、置換、または付加により生じ得るが、野生型配列タンパク質も、疾患においてミスフォールドされ得、例えば、微小環境条件および/またはアミノ酸修飾、例えば、ニトロ化、酸化、カルボニル化もしくは他の修飾の結果として、疾患特異的エピトープを露出させ得る。他の翻訳後修飾としては、異常なユビキチン化、リン酸化、アセチル化、SUMO化、およびC末端フラグメントへの切断が挙げられる。ミスフォールドTDP43は、凝集および/または細胞質であり得る。TDP-43の文脈において、天然TDP-43は、そのNTDを介して多量体を形成する。ミスフォールド多量体(例えば、疾患関連オリゴマー)は一般に、タンパク質の他の領域、例えば、そのLCDおよび/またはRRM1ドメインを介してオリゴマー化する。したがって、「ミスフォールドTDP-43ポリペプチド」、または本明細書においてポリペプチドに言及する場合の「ミスフォールドTDP-43」は、細胞質であるかつ/または凝集している、そのLCDおよび/またはRRM1ドメインを介してオリゴマー化しているTDP-43ポリペプチド、非天然二量体および三量体、ならびに大型の凝集体(例えば、5個以上のサブユニット)を含む。ミスフォールドTDP-43は、タンパク質機能の喪失、毒性、アミロイド様特徴(例えば、コンゴーレッド染色)の獲得および病原性凝集体の伝播をもたらす凝集体を形成する傾向がある。
【0033】
用語「変異体TDP-43」は、TDP-43の形態、特に、例えば、[6]に記載のバイオインフォマティクスツールに記載の変異を含む、例えば、FTDまたは家族性ALSの特徴である置換などのアミノ酸置換をもたらす遺伝子変異の結果として生じるTDP-43の内因型を指す。
【0034】
用語「DAGWGNL(配列番号1)」は、配列番号1において示されるアミノ酸配列:アスパラギン酸、アラニン、グリシン、トリプトファン、グリシン、アスパラギン、およびロイシンを意味する。同様に、GWGは、一文字アミノ酸コードにより同定されるアミノ酸配列を指す。文脈に応じて、アミノ酸配列への言及は、TDP-43または単離ペプチドにおける配列を指し得る。配列DAGWGNL(配列番号1)は、TDP-43のアミノ酸一次配列における残基65~71に相当する。
【0035】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および修飾L-アミノ酸およびD-アミノ酸の総てを含む。アミノ酸の原子は、例えば、異なる同位体を含み得る。例えば、アミノ酸は、水素に対して置換された重水素、窒素14に対して置換された窒素15、および炭素12に対して置換された炭素13および他の同様の変化を含んでなり得る。
【0036】
「保存的アミノ酸置換」は、本明細書で使用する場合、1つのアミノ酸残基が、タンパク質の所望の特性を消失させることなく、別のアミノ酸残基と置き換わるものである。好適な保存的アミノ酸置換は、類似の疎水性、極性、およびR基のサイズを有するアミノ酸を互いに置換することによって行うことができる。保存的アミノ酸置換の例としては、以下のものが挙げられる:
【0037】
【0038】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖、ヒト化および他のキメラ抗体、または完全ヒト抗体、ならびにそれらの結合フラグメントを含むものとする。ベクター化抗体またはイントラボディも含まれる。抗体は、組換え源由来のものでもよく、かつ/または、トランスジェニック動物において産生されたものでもよい。生化学的技術を使用することによって産生され得る、または、ライブラリーから単離され得るヒト抗体も含まれる。ヒト化抗体またはキメラ抗体は、1以上のアイソタイプまたはクラス由来の配列を含んでもよい。
【0039】
句「単離抗体」は、抗体の産生源、例えば、動物、ハイブリドーマまたは他の細胞株(例えば、抗体を産生する組換え細胞)から除去されている、イン・ビボ(in vivo)またはイン・ビトロ(in vitro)で産生された抗体を指す。単離抗体は、場合により「精製」され、それは、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の純度を意味する。
【0040】
用語「イントラボディ(単数または複数)」は、本明細書で使用する場合、細胞内で発現されるかまたは発現させることができ、細胞内タンパク質に結合する抗体を指し、例えば、イントラボディは、細胞内局在化および細胞内機能のために改変または適合された抗体である。イントラボディは、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインおよびリンカーを、場合により、いずれかの可変ドメイン配向で、例えば、重鎖可変ドメイン-リンカー-軽鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメイン-リンカー-重鎖可変ドメインで含んでなる。文脈に応じて、用語「イントラボディ」は、核酸分子またはポリペプチド分子を指すことがある。
【0041】
用語「リンカー」は、本明細書で使用する場合、2つの配列を接続または連結する、例えば、2つのポリペプチドドメインを連結する合成配列(例えば、ポリペプチド中のアミノ酸配列または中の核酸配列)を指す。リンカーは、それが検出可能な標識を連結していることを示す「タグリンカー」またはそれが、軽鎖可変領域に連結された重鎖可変領域の場合のようにリンカーも含んでなり得るポリペプチドにターゲティング部分を連結していることを示すターゲティング部分リンカーであり得る。
【0042】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、本明細書で使用する場合、エピトープ結合を定義すると一般に理解される抗体の特定の超可変領域を指す。CDR配列を同定する計算法としては、Kabat、Chothia、およびIMGTが挙げられる。当業者ならば、本明細書に含まれる配列を考慮して、KabatおよびChothiaなどに基づいてCDR配列を同定することもできるであろう。
【0043】
用語「検出可能な標識」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載のペプチド、抗体または他の化合物に付加または導入することができるペプチド配列、蛍光タンパク質などの部分であって、直接的にまたは間接的にのいずれかで検出可能なシグナルを発生することができる部分を指す。
【0044】
用語「ミスフォールドTDP-43において選択的に提示されるまたはアクセス可能であるエピトープ」は、本明細書で使用する場合、単量体型、二量体型または凝集型であるか否かを問わず、例えばALSまたはFTD(例えば、疾患関連ミスフォールドTDP-43)において存在するミスフォールドTDP-43上で選択的に提示されるまたは抗体がアクセス可能であるが、TDP-43の天然の正しく折り畳まれたホモ二量体型の分子表面上ではそうではないエピトープを指す。本明細書において示されるように、W68は、ミスフォールドTDP-43において選択的に提示されるまたはアクセス可能である。
【0045】
用語「大きな親和性」は、本明細書で使用する場合、抗体Xが、標的Zよりも強力に(Kon)かつ/または小さな解離定数(Koff)で標的Yに結合する、抗体結合の程度を指し、この文脈において、抗体Xは、Zよりも標的Yに対して大きな親和性を有する。同様に、用語「小さな親和性」は、本明細書において、抗体Xが、標的Zよりも弱い強さおよび/または大きな解離定数で標的Yに結合する、抗体結合の程度を指し、この文脈において、抗体Xは、Zよりも標的Yに対して小さな親和性を有する。抗体とその標的抗原との間の結合の親和性は、1/KDに等しいKAで表すことができ、ここで、KDはkon/koffに等しい。konおよびkoff値は、表面プラズモン共鳴を使用して測定することができる(例えば、Biacoreシステムを使用して測定可能)。
【0046】
用語「核酸配列」は、本明細書で使用する場合、天然に存在する塩基、糖および糖間(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオチドモノマーの配列を指す。この用語は、天然に存在しないモノマーまたはその部分を含んでなる修飾または置換された配列も含む。本出願の核酸配列は、デオキシリボ核酸(DNA)配列またはリボ核酸(RNA)配列であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルを含む天然に存在する塩基を含んでもよい。配列は、修飾された塩基を含有してもよい。このような修飾された塩基の例としては、アザおよびデアザのアデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシル;ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。核酸は、二本鎖または一本鎖のいずれかであり得、センス鎖またはアンチセンス鎖を表す。さらに、用語「核酸」は、相補的核酸配列ならびにコドン最適化等価物または同義コドン等価物を含む。用語「単離核酸配列」は、本明細書で使用する場合、組換えDNA技術により産生された場合には細胞材料もしくは培養培地を、または化学的に合成された場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸を指す。単離核酸はまた、核酸が由来する核酸に天然的に隣接する配列(すなわち、核酸の5’および3’末端に位置する配列)も実質的に含まない。
【0047】
「動作可能に連結された」は、核酸が、核酸の発現を可能にする様式で調節配列に連結されていることを意味するものとする。好適な調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳動物、または昆虫の遺伝子を含む、種々の源に由来し得る。適当な調節配列の選択は、選択される宿主細胞に依存し、当業者により容易に達成され得る。このような調節配列の例としては、転写プロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、リボソーム結合配列(翻訳開始シグナルを含む)が挙げられる。さらに、選択される宿主細胞および使用されるベクターに応じて、他の配列、例えば、複製起点、さらなるDNA制限部位、エンハンサー、および転写の誘導性を付与する配列を、発現ベクターに組み込んでもよい。
【0048】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、核酸分子が、例えば、原核細胞および/または真核細胞に導入される、かつ/または、ゲノムに組み込まれることを可能にする、核酸分子のための任意の中間ビヒクルを含んでなり、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターを含むレトロウイルスベースのベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどを含む。用語「プラスミド」は、本明細書で使用する場合、一般に、染色体DNAを独立に複製することができる、染色体外遺伝物質の構築物、通常、環状DNA二本鎖を指す。
【0049】
「少なくとも中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、溶液中での2つの相補的核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションを促進する条件が選択されることを意味する。ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子の全部または一部に対して生じ得る。ハイブリダイズ部分は、一般に、少なくとも15(例えば、20、25、30、40または50)ヌクレオチド長である。当業者は、核酸二本鎖またはハイブリッドの安定性は、ナトリウム含有緩衝液中において、ナトリウムイオン濃度および温度の関数(Tm=81.5℃-16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)-600/l)、または類似の式)により決定されることを認識するであろう。したがって、ハイブリッドの安定性を決定する洗浄条件におけるパラメーターは、ナトリウムイオン濃度および温度である。公知の核酸分子と類似であるが同一ではない分子を同定するために、1%のミスマッチはTmの約1℃の減少をもたらすと想定され得、例えば、核酸分子が95%超の同一性を有するようにする場合、最終洗浄温度は約5℃減少する。これらの考察に基づき、当業者は、適当なハイブリダイゼーション条件を容易に選択できるであろう。好ましい複数の実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例として、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するために以下の条件が使用され得る:上記の式に基づいたTm-5℃における5倍塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5倍デンハルト溶液/1.0%SDSでのハイブリダイゼーションに次いで、60℃での0.2倍SSC/0.1%SDSの洗浄。中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃での3倍SSC中の洗浄工程を含む。しかしながら、等価なストリンジェンシーは、代替の緩衝液、塩および温度を使用して達成され得ると理解される。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなる指針は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y., 2002、およびSambrook et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001において見出され得る。
【0050】
本明細書で使用する場合、抗体に関して「結合する」または「特異的に結合する」とは、抗体が、その標的抗原を認識し、かつ構造的に異なる抗原および/または修飾配列もしくは変異配列を有する抗原に対するよりも大きな親和性でその標的に結合することを意味する。例えば、多価抗体は、少なくとも1e-6、少なくとも1e-7、少なくとも1e-8、少なくとも1e-9または少なくとも1e-10のKDでその標的に結合する。少なくとも1e-8超の親和性が好ましい。1つの可変ドメインを含んでなるFabフラグメントなどの抗原結合フラグメントは、非フラグメント化抗体との多価相互作用よりも10倍または100倍小さな親和性でその標的を見出し得る。
【0051】
用語「選択的」または「優先的」は、ある形態のTDP-43(例えば、天然タンパク質またはミスフォールドタンパク質)に選択的/優先的に結合する抗体に関して本明細書で使用する場合、結合タンパク質が、少なくとも3倍、または少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも100倍、少なくとも250倍、または少なくとも500倍以上の大きな親和性でその形態に結合することを意味する。したがって、特定のコンフォメーション(例えば、ミスフォールドタンパク質)に対してより選択的な抗体は、別の形態と比較して、少なくとも3倍、または少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも100倍、少なくとも250倍、または少なくとも500倍以上大きな親和性で、特定の形態のTDP-43に優先的に結合する。
【0052】
用語「動物」または「対象」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物、場合により、ヒトを含むまたは除く、動物界の全メンバーを含む。
【0053】
用語「治療すること」または「治療」は、本明細書で使用する場合、および当技術分野で十分理解されるように、臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益なまたは所望の臨床結果は、限定されるものではないが、検出可能であるか検出不能であるかを問わず、1以上の症状または状態の軽減または改善、疾患の程度の減少、疾患の安定化した(すなわち、悪化していない)状態、疾患の伝播の予防、疾患進行の遅延または緩徐化、病態の改善または緩和、疾患の再発の減少、および寛解(部分または完全を問わず)を含み得る。「治療すること」および「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存と比較して、生存を延長することも意味し得る。「治療すること」および「治療」は、本明細書で使用する場合、例えば、家族型のALSなどの家族型と関連する変異を有すると同定された対象における予防的治療も含む。ALSなどのTDP-43タンパク質症を有する対象は、疾患進行を遅延または緩徐化するために治療され得る。対象は、進行を予防するために、本明細書に記載の化合物、抗体(ベクター化抗体もしくはイントラボディを含む)、免疫原、免疫複合体、または組成物で治療され得る。
【0054】
本開示の範囲の理解において、用語「からなる」およびその派生語は、本明細書で使用する場合、言及された特徴、要素、成分、群、整数および/または工程の存在を指定し、かつ他の言及されていない特徴、要素、成分、群、整数および/または工程の存在を除外する限定的な用語であるものとする。
【0055】
本明細書における終点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される総ての数および分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4および5を含む)。総ての数およびそれらの分数は、用語「約」により修飾されると想定されることも理解される。さらに、「a」、「an」および「the」は、内容によってそうではないことが明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。用語「約」は、言及されている数のプラスまたはマイナス0.1~50%、5~50%、または10~40%、好ましくは、10~20%、より好ましくは、10%または15%を意味する。
【0056】
さらに、特定の項に記載の定義および実施形態は、当業者により理解されるように、それらが好適である本明細書に記載の他の実施形態に適用可能であるものとする。例えば、以下の節において、本発明の異なる側面がより詳細に定義されている。そのように定義された各側面は、そうではないことが明確に示されていない限り、任意の他の1つの側面または複数の側面と組み合わせてもよい。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された任意の他の1つの特徴または複数の特徴と組み合わせてもよい。
【0057】
II.抗体、免疫複合体、細胞および核酸
実施例に記載のように、単鎖抗体を調製し、ベクター化した。
【0058】
単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43においてアクセス可能であるが天然に折り畳まれた非疾患関連TDP-43においては利用不可能であるN末端エピトープに向けられる。N末端TDP-43配列DAGWGNL(配列番号1)を含んでなる免疫原に対して惹起された抗体は、ミスフォールドTDP-43凝集体に優先的に結合した。残基W68は、ミスフォールドTDP-43凝集体に対する抗体特異性を付与するのに重要な残基であることがわかった。
【0059】
一つの実施形態において、単鎖抗体はイントラボディである。
【0060】
単鎖抗体は、イントラボディとしての場合、場合により、リソソームターゲティングまたはオートファジーターゲティングシグナルを含む。ミスフォールドTDP-43に特異的ないくつかの抗体の重鎖および軽鎖可変領域を、様々なリンカーを使用して、様々な配向で連結した。ベクター化された単鎖抗体またはイントラボディは、その核局在化シグナルの欠失を含んでなる突然変異体dNLS-TDP-43とともに細胞内で発現された。dNLS-TDP-43は細胞質に局在し、そこで凝集体を形成する。本明細書で実証されるように、ベクター化抗体は、細胞内ミスフォールドTDP-43凝集体と共局在し、その分解を誘導することができた。ベクター化抗体は、細胞に対して毒性がなく、正常なTDP-43機能への干渉がないことが確認された。
【0061】
ある側面は、ミスフォールドTDP-43のW68に結合し、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖可変領域と、相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる単鎖抗体を含み、ここで、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、リンカーによって連結されている。重鎖および軽鎖の可変領域とリンカーの配向は、重鎖の可変領域-リンカー-軽鎖の可変領域または軽鎖の可変領域-リンカー-重鎖の可変領域であり得る。いくつかの実施形態では、単鎖抗体は、リソソームまたはオートファジーターゲティング配列をさらに含む。
【0062】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFTFSSYY 配列番号 130;
CDR-H2: INSNGGST 配列番号 131;
CDR-H3: VRQNYEGAY 配列番号 132;
CDR-L1: QSIVHSNGNTY 配列番号 133;
CDR-L2: KVS 配列番号 134;および
CDR-L3: FQSSHVPWT 配列番号 135、
CDR配列を有する。
【0063】
配列番号130~135のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。単鎖抗体は、抗体2F7のCDR配列を含んでなる。
【0064】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号138において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号138に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号130~132において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記単鎖抗体は、i)配列番号139において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号139に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号133~135において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号136において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号137において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0065】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFSLSRYY 配列番号 10;
CDR-H2: IIPGGTT 配列番号 11;
CDR-H3: AGGPTGNSHFTL 配列番号 12;
CDR-L1: ESVYNNNH 配列番号 13;
CDR-L2: EAS 配列番号 14;および
CDR-L3: SGYKRVTTDGIA 配列番号 15、
CDR配列を有する。
【0066】
配列番号10~15のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。単鎖抗体は、抗体1H3-1K3のCDR配列を含んでなる。
【0067】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号98において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号98に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号10~12において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記単鎖抗体は、配列番号99において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号99に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号13~15において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号76において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号77において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0068】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFSLSSYN 配列番号 120;
CDR-H2: IGTGGIT 配列番号 121;
CDR-H3: VRSSGSDWWFHI 配列番号 122;
CDR-L1: QSVYNNNN 配列番号 123;
CDR-L2: RAS 配列番号 124;および
CDR-L3: QGYFSGFITT 配列番号 125、
CDR配列を有する。
【0069】
配列番号120~125のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。単鎖抗体は、抗体28H3-28K1のCDR配列を含んでなる。
【0070】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号128において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号128に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号120~122において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記単鎖抗体は、配列番号129において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号129に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号123~125において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号126において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号127において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0071】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFSFSSNYV 配列番号 16;
CDR-H2: IWFAGIVDTT 配列番号 17;
CDR-H3: ARNPVGSVNL 配列番号 18;
CDR-L1: ESVYSNNR 配列番号 19;
CDR-L2: YAS 配列番号 20;および
CDR-L3: AGWRGARTDGVD 配列番号 21、
CDR配列を有する。
【0072】
配列番号16~21のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体14H1-14K2のCDR配列を含んでなる。
【0073】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号100において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号100に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号16~18において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記単鎖抗体は、配列番号101において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号101に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号19~21において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号78において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号79において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0074】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFSFSSSYV 配列番号 22;
CDR-H2: SDTGINT 配列番号 23;
CDR-H3: ARRYTGDTYLGNFNL 配列番号 24;
CDR-L1: QSVYKNNY 配列番号 25;
CDR-L2: KAS 配列番号 26;および
CDR-L3: AGGWRSLNA 配列番号 27、
CDR配列を有する。
【0075】
配列番号16~21のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体17のCDR配列を含んでなる。
【0076】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号102において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号102に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号22~24において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記抗体は、配列番号103において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号103に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号25~27において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号80において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号81において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0077】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: EFSFSSRYW 配列番号 28;
CDR-H2: IYTGSIDAT 配列番号 29;
CDR-H3: VRGSDAWGLYFNL 配列番号 30;
CDR-L1: QSIHKNNY 配列番号 31;
CDR-L2: FAS 配列番号 32;および
CDR-L3: AGVYSGRIFA 配列番号 33、
CDR配列を有する。
【0078】
配列番号16~21のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体20のCDR配列を含んでなる。
【0079】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号104において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号104に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号28~30において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記抗体は、配列番号105において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号105に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号31~33において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号82において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号83において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0080】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFSLSSYT 配列番号 34;
CDR-H2: IYGGIGST 配列番号 35;
CDR-H3: GRGDI 配列番号 36;
CDR-L1: QSVYKNR 配列番号 37;
CDR-L2: GAS 配列番号 38;および
CDR-L3: LGNYDCSSVDCGA 配列番号 39、
CDR配列を有する。
【0081】
配列番号16~21のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体30のCDR配列を含んでなる。
【0082】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号106において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号106に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号34~36において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記抗体は、配列番号107において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号107に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号37~39において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号84において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号85において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0083】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFSFSAYY 配列番号 40;
CDR-H2: TIPIGRT 配列番号 41;
CDR-H3: AGGPTGNSHFTL 配列番号 42;
CDR-L1: ESVYNNNQ 配列番号 43;
CDR-L2: QAS 配列番号 44;および
CDR-L3: AGYKSPTTDGIA 配列番号 45、
CDR配列を有する。
【0084】
配列番号16~21のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体38のCDR配列を含んでなる。
【0085】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号108において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号108に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号40~42において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記抗体は、配列番号109において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号109に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号43~45において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号86において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号87において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0086】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFSLSSYA 配列番号 46;
CDR-H2: IYNYET 配列番号 47;
CDR-H3: ARDIFRTNTNL 配列番号 48;
CDR-L1: QSVYKNNG 配列番号 49;
CDR-L2: FTS 配列番号 50;および
CDR-L3: LGGYDCSSRVCGA 配列番号 51、
CDR配列を有する。
【0087】
配列番号16~21のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体36のCDR配列を含んでなる。
【0088】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、i)配列番号110において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号110に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号46~48において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり、かつ/または前記抗体は、配列番号111において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号111に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号49~51において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、ここで、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号88において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号89において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0089】
ある実施形態において、単鎖抗体は、以下を含んでなる:
CDR-H1: GFTFSSYY 配列番号 140;
CDR-H2: INTNGGST 配列番号 141;
CDR-H3: VRQNYEGAY 配列番号 142;
CDR-L1: QSIVHSNGNTY 配列番号 143;
CDR-L2: KVS 配列番号 144;および
CDR-L3: FQSSHVPWT 配列番号 145
CDR配列を有する。
【0090】
配列番号16~21のCDRを含んでなる単鎖抗体は、ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体3F11のCDR配列を含んでなる。
【0091】
ある実施形態において、前記抗体は、i)配列番号148において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号148に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号140~142において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる重鎖可変領域を含んでなり;かつ/または、前記抗体は、i)配列番号149において示されるアミノ酸配列、ii)配列番号149に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ここで、CDR配列は配列番号143~145において示される、もしくはiii)i)の保存的置換アミノ酸配列、を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなり、場合により、前記重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号146において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされ、かつ/または前記軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号147において示されるヌクレオチド配列またはコドン縮重もしくはその最適化バージョンによりコードされる。
【0092】
ii)のアミノ酸配列はまた95%超の配列同一性を有し得る。様々な実施形態において、前記アミノ酸配列は、本明細書に提供される配列に対して少なくとも96%の同一性を有する。様々な実施形態において、前記アミノ酸配列は、本明細書に提供される配列に対して少なくとも97%の同一性を有する。様々な実施形態において、前記アミノ酸配列は、本明細書に提供される配列に対して少なくとも98%の同一性を有する。様々な実施形態において、前記アミノ酸配列は、本明細書に提供される配列に対して少なくとも99%の同一性を有する。
【0093】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、配列番号98、100、102、104、106、108、110、128、138、または148のいずれか1つにおいて示される保存的置換アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域を含んでなる。ある実施形態において、前記単鎖抗体は、配列番号99、101、103、105、107、109、111、129、139、または149のいずれか1つにおいて示される保存的置換アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域を含んでなる。例えば、前記重鎖可変領域および/または前記軽鎖可変領域、場合によりフレームワーク領域1、2および/または3は、1、2、3、4または5個の保存的アミノ酸置換を含み得る。
【0094】
一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、シグナルペプチドを含んでなる。例えば、シグナルペプチドは、重鎖シグナルペプチドまたは軽鎖シグナルペプチドであり得る。例示的な重鎖シグナル配列としては、MNFGLRLILLVLVLKGVLC(2F7の天然シグナル配列)(配列番号160)、METGLRWLLLVAVLKGVQCQ(配列番号161)、MELGLSWIFLLAILKGVQC(配列番号162)、MELGLRWVFLVAILEGVQC(配列番号163)、MKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号164)、MDWTWRILFLVAAATGAHS(配列番号165)、MDWTWRFLFVVAAATGVQS(配列番号166)、MEFGLSWLFLVAILKGVQC(配列番号167)、MEFGLSWVFLVALFRGVQC(配列番号168)およびMDLLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号169)を含む/含んでなる。例示的な軽鎖シグナル配列としては、MKLPVRLLVLMFWIPASSS(2F7の天然シグナル配列)(配列番号170)、MDMRVPAQLLGLLLLWLSGARC(配列番号171)およびMKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号172)を含む。分泌可能な単鎖抗体を含んでなるベクター構築物を使用して、分泌されたTDP-43を標的とし、細胞間伝播を最小限に抑えるための抗体の局所細胞外貯蔵所を提供することができる。
【0095】
本明細書において示されるように、本明細書に記載のイントラボディは、ミスフォールドTDP-43に特異的に結合かつ/または選択的に結合し、天然TDP-43には結合しない。選択的結合は、本明細書に記載のように、ELISAまたは表面プラズモン共鳴測定を使用して測定することができる。イントラボディは、細胞内で機能するように意図された抗体療法であり、例えば、毒性タンパク質をブロックし、健康な細胞へのそれらの伝播を防ぐ。
【0096】
実施例に記載のように、イントラボディは、マウスおよびウサギモノクローナル抗体に由来する。
【0097】
イントラボディはヒト化することができる。非ヒト種由来の(例えば、マウスまたはウサギ由来の)抗体のヒト化は、文献において十分に記載されている。例えば、EP-B1 0 239400およびCarter & Merchant 1997 (Curr Opin Biotechnol 8, 449-454, 1997、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる)参照。ヒト化抗体はまた、容易に商業的に得られる(例えば、Scotgen Limited, 2 Holly Road, Twickenham, Middlesex, Great Britain)。
【0098】
ヒト化型の齧歯類抗体は、CDRグラフティングにより容易に作製される(Riechmann et al. Nature, 332:323-327, 1988)。このアプローチにおいて、齧歯類モノクローナル抗体の抗原結合部位を含んでなる6個のCDRループは、対応するヒトフレームワーク領域に連結される。フレームワーク領域のアミノ酸は、抗原認識に影響を及ぼし得るため、CDRグラフティングはしばしば、親和性が低い抗体をもたらす(Foote & Winter. J Mol Biol, 224: 487-499, 1992)。抗体の親和性を維持するために、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により特定のフレームワーク残基を置き換えることがしばしば必要であり、抗原結合部位のコンピューターモデリングにより支援され得る(Co et al. J Immunol, 152: 2968-2976, 1994)。
【0099】
ヒト化型の抗体は、場合により、リサーフェシングにより得られる(Pedersen et al. J Mol Biol, 235: 959-973, 1994)。このアプローチでは、齧歯類抗体の表面残基のみがヒト化される。
【0100】
ある実施形態において、前記単鎖抗体は、キメラ抗体、例えば、ヒト化抗体である。
【0101】
重鎖可変鎖および軽鎖可変鎖を連結するリンカーは、長さが少なくとも5アミノ酸以上、好ましくは少なくとももしくは約10アミノ酸または少なくとももしくは約15アミノ酸であり、例えば、約25アミノ酸未満であるべきである。使用することができるリンカー配列には、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号180)、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)4(配列番号181)およびGSTGGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号182)が含まれる。他のリンカーには、Glu Ser Gly Arg Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser(配列番号183);Glu Gly Lys Ser Ser Gly Ser Gly Ser Glu Ser Lys Ser Thr(配列番号184)、Glu Gly Lys Ser Ser Gly Ser Gly Ser Glu Ser Lys-Ser Thr Gln(配列番号185)、Glu Gly Lys Ser Ser Gly Ser Gly Ser Glu Ser Lys Val Asp(配列番号186)、Gly Ser Thr Ser Gly Ser Gly Lys Ser Ser Glu Gly Lys Gly(配列番号187)、Lys Glu Ser Gly Ser Val Ser Ser Glu Gln Leu Ala Gln Phe Arg Ser Leu Asp(配列番号188)、およびGlu Ser Gly Ser Val Ser Ser Glu Glu Leu Ala Phe Arg Ser Leu Asp(配列番号189)が含まれる。単鎖抗体が融合タグまたはターゲティング部分などの検出可能な標識を含んでなる場合、それは、直接的にまたは間接的に、例えば、タグリンカー、またはターゲティング部分リンカーを介して、融合することができ、場合により、前記リンカーは、GGGGS(配列番号190)を含んでなるかまたはGGGGS(配列番号190)である。さらなる側面は、検出可能な標識にコンジュゲートされた単鎖抗体である。ある実施形態において、検出可能な標識は、陽電子放出放射性核種である。陽電子放出放射性核種は、例えば、PETイメージングにおいて使用され得る。そのような実施形態において、単鎖抗体は、融合細胞透過性ペプチドなどの細胞透過性部分を含んでなり得る。細胞透過性ペプチドは、TAT、例えば、YGRKKRRQRRR(配列番号191)、CYGRKKRRQRRRC(c-Tat)(配列番号192)またはGDIMGEWGNEIFGAIAGFLGYGRKKRRQRRR(HA-Tat)(配列番号193)、またはその他、例えば、RRRRRRRR(R8)(配列番号194)およびCRRRRRRRRC(cR8)(配列番号195)、RQIKIWFQNRRMKWKK(ペネトラチン)(配列番号196)ならびにGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(トランスポータン)(配列番号197)に由来し得る。CPP配列の各側のC残基は、ジスルフィド結合の形成および環化を可能にする。HAは、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質を指す。細胞透過性ペプチドは、例えば、炭素-11、窒素-13、酸素-15、フッ素-18、ガリウム-68、ジルコニウム-89、ルビジウム-82およびイットリウム90などのPETイメージングに好適な放射性核種を含んでなり得る。トレーサー分子をペプチドに共有結合により連結するための方法は、当技術分野で知られている。
【0102】
したがって、ある実施形態は、本明細書に記載の単鎖抗体および検出可能な標識、例えば、融合タグまたはターゲティング部分を含んでなる免疫複合体を提供する。
【0103】
融合タグは、FLAGタグまたはMYCタグとすることができ、タグは、N末端またはC末端とすることができ、直接的にまたはリンカーを介して間接的にコンジュゲートすることができる。別の実施形態において、前記単鎖抗体は、リソソームターゲティングシグナルなどのターゲティング部分にコンジュゲートされる。
【0104】
ある実施形態において、前記ターゲティング部分は、リソソームまたはオートファジーターゲティングシグナルである。例えば、リソソームターゲティング部分は配列YPTL(配列番号173)、KSIRSGYEVM(配列番号174)、RWRKSHSSSYTPLSGSTYPEGRH(配列番号175)であり得るかまたはそれらを含んでなり得る。使用することができる他のリソソームターゲティング配列には、古典的なチロシンベースのNPXY(配列番号176)およびYXXφ(配列番号177)配列(ここで、Xは任意のアミノ酸残基であり得、φは嵩高い疎水性残基である)、ジロイシンベースの[D/E]XXXL[L/I](配列番号178)またはDXXLL(配列番号179)配列が含まれる。
【0105】
一つの実施形態において、前記単鎖抗体は、抗体およびリンカー部分と、場合により、配列番号203、205、207、209、213、215、217、219、223、225、227、229、233、235、237、239、243、245、247、249、253、255、257、および/または259のいずれかのリソソームターゲティング部分(例えば、タグおよびタグを連結する配列(タグリンカー)を除外し、存在しない場合は開始メチオニンを含む)を含んでなり得る。
【0106】
前記抗体は、実施例に記載のように調製することができ、例えば、重鎖および軽鎖可変領域を発現ベクターにクローニングし、発現させることができる。抗体が産生される(例えば、精製される)場合、分泌を指示するために、シグナル配列が利用される。
【0107】
本明細書に記載のように、前記単鎖抗体は、細胞内のミスフォールドTDP-43凝集体を標的とするためのイントラボディとして好適である。このような構築物では、抗体が細胞内で好適に発現されるため、シグナル配列は組み込まれない。
【0108】
したがって、さらなる側面は、本明細書に記載の単鎖抗体または免疫複合体をコードする単離核酸である。
【0109】
融合した重鎖および軽鎖を含んでなり、例えば、本明細書に記載のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3領域を含んでなる重鎖をコードし、かつ、本明細書に記載のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3領域を含んでなる軽鎖をコードする、本明細書に記載の単鎖抗体および免疫複合体をコードする核酸も提供され、表3、9、10、11、12、13および14のいずれかに記載の核酸配列および本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれかをコードするものが含まれる。
【0110】
例えば、核酸配列は、配列番号76~89、配列番号126~127、配列番号136~137、146~147のいずれか1つおよび/または配列番号202、204、206、208、212、214、216、218、222、224、226、228、232、234、236、238、242、244、246、248、252、254、256および/または258のいずれかの抗体およびリンカー部分、ならびに、場合により、リソソームターゲティング部分(例えば、タグおよびタグを連結する配列(すなわち、タグリンカー)を除外し、存在しない場合は開始メチオニンコドンおよび停止コドンを含む)を含んでなる。
【0111】
本開示はまた、本明細書に開示される単鎖抗体をコードする核酸配列のバリアントを提供する。
【0112】
例えば、前記バリアントは、少なくとも中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本明細書に開示される抗体をコードする核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列、またはコドン縮重または最適化配列を含む。別の実施形態において、バリアント核酸配列は、配列番号76~89、配列番号126~127、配列番号136~137、配列番号146~147のいずれか1つおよび/または配列番号202、204、206、208、212、214、216、218、222、224、226、228、232、234、236、238、242、244、246、248、252、254、256および/または258のいずれかの抗体およびリンカー部分、ならびに、場合により、リソソームターゲティング部分を含んでなる核酸配列に対して少なくとも70%、最も好ましくは、少なくとも80%、さらにより好ましくは、少なくとも90%、さらに最も好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を有する。バリアント配列は、例えば、CDR配列の外側に保存的変化を有する抗体および例えば、ヒト細胞における発現のために最適化された、本明細書に記載の抗体配列のコドン最適化バージョンをコードする。
【0113】
別の側面は、本明細書に開示される核酸を含んでなる発現カセットまたはベクターである。発現カセットは、例えば、単鎖抗体およびリンカーをコードする核酸、および核酸に動作可能に連結されたプロモーターなどの調節配列を含んでなり得る。ある実施形態において、前記ベクターは単離ベクターである。
【0114】
前記ベクターは、任意のベクター、好適には、本明細書に記載の単鎖抗体を産生するのに好適な発現ベクターであり得る。ある実施形態において、前記ベクターは、例えば、単鎖抗体(例えば、イントラボディ)を発現するのに好適である。
【0115】
核酸分子は、例えば、実施例に記載されているように、タンパク質の発現を保証する適当な発現ベクターに、公知の様式で組み込んでもよい。
【0116】
ベクターの構築には、当技術分野で知られている分子クローニング技術を使用することができる。ある実施形態において、発現ベクターおよびインサートは、適当な制限酵素で消化され、T4ポリメラーゼによってライゲートされる。ライゲーション反応物はコンピテント細胞に変換される。個々のコロニーを採取し、一晩培養物を増殖させ、診断用の制限消化のためにDNAを精製する。
【0117】
可能性のある発現ベクターとしては、限定されるものではないが、コスミド、プラスミド、または改変ウイルス(例えば、レンチウイルスベクターを含む複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0118】
一つの実施形態において、前記ベクターは、神経細胞に形質導入することができるアデノ随伴ウイルスである(例えば、AAV血清型9)。
【0119】
前記ベクターは、好適な調節配列を含んでなり得る。
【0120】
好適な調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳動物、または昆虫の遺伝子を含む、種々の源に由来し得る。このような調節配列の例としては、転写プロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、リボソーム結合配列(翻訳開始シグナルを含む)が挙げられる。さらに、トランスフェクト/感染/形質導入される細胞および使用されるベクターに応じて、他の配列、例えば、複製起点、さらなるDNA制限部位、エンハンサー、および転写の誘導性を付与する配列を、発現ベクターに組み込んでもよい。ある実施形態において、前記調節配列は、神経組織および/または細胞における発現を指示するまたは増大させる。ある実施形態において、前記ベクターはウイルスベクターである。組換え発現ベクターは、本明細書に記載の抗体を発現するためのベクターで形質転換、感染またはトランスフェクトされた宿主細胞の選択を容易にするマーカー遺伝子も含有してもよい。組換え発現ベクターは、例えば、本明細書に記載のタグおよび標識を含む、例えば検出を助けることができる、融合部分(例えば、抗体「融合タンパク質」を作成するための)をコードする他の発現カセットを含有してもよい。
【0121】
核酸およびベクターを使用して、単鎖抗体を細胞、例えば、対象の細胞に送達することができる。
【0122】
ウイルスベクター、「裸の」DNA、脂質または他のナノ粒子中のDNA、アジュバントを補助としたDNA、遺伝子銃などを含む、細胞に形質導入するための広範なアプローチを使用することができる。例えば、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターも、細胞にイントラボディを形質導入するために使用することができる。本発明の実施に有用な他のベクター系には、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスに基づくベクターが含まれる。
【0123】
別の側面において、本明細書に記載の単鎖抗体を組換え発現する(例えば、組換え細胞)および/または本明細書に記載の単鎖抗体をコードする核酸、発現カセットもしくはベクターを含んでなる、細胞も提供される。ある実施形態において、前記細胞は、本明細書に記載の抗体を発現するか、または本明細書に開示される核酸、発現カセットもしくはベクターを含んでなる、単離細胞である。
【0124】
ある実施形態において、前記細胞は、本明細書に記載の抗体を産生することができる細胞である。
【0125】
IV.組成物
さらなる側面は、本明細書に記載の単離抗体、免疫複合体、核酸、発現カセットまたはベクターを含んでなる組成物である。本明細書に記載の抗体、免疫複合体、核酸またはベクターを2つ以上含んでなる組成物も提供される。
【0126】
一つの実施形態において、前記組成物は、2つ以上の単離抗体(例えば、2つ以上の異なる抗体)を含んでなる。
【0127】
別の実施形態において、前記組成物は、2つ以上の免疫複合体(例えば、2つ以上の異なる免疫複合体)を含んでなる。
【0128】
別の実施形態において、前記組成物は、2つ以上の核酸(例えば、2つ以上の異なる核酸)を含んでなる。
【0129】
別の実施形態において、前記組成物は、2つ以上の発現カセット(例えば、2つ以上の異なる発現カセット)を含んでなる。
【0130】
別の実施形態において、前記組成物は、2つ以上のベクター(例えば、2つ以上の異なるベクター)を含んでなる。
【0131】
ある実施形態において、前記2つ以上は2つ、例えば、2つの抗体または2つの免疫複合体などである。ある実施形態において、前記2つ以上は3つである。ある実施形態において、前記2つ以上は4つである。ある実施形態において、前記2つ以上は5つである。別の実施形態において、前記2つ以上は6つである。ある実施形態において、前記2つ以上は7つである。
【0132】
別の側面は、本明細書に記載の単鎖抗体を含んでなる組成物である。本明細書に記載の単鎖抗体を2つ以上含んでなる組成物も提供される。
【0133】
一つの実施形態において、前記組成物は、抗体2F7のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0134】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体1H3-1K3のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0135】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体28H3-28K1のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0136】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体14H1-14K2のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0137】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体17のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0138】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体20のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0139】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体30のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0140】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体38のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0141】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体36のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0142】
別の実施形態において、前記組成物は、抗体3F1のCDRを含んでなる単鎖抗体を含んでなる。
【0143】
前記単鎖抗体は、リソソームターゲティング部分を含んでなり得る。
【0144】
一つの実施形態において、前記組成物は、LYS-2F7、LYS-28H3-28K1、LYS-14H1-14K2、YPTL-14H1-14K2、MYCH15L-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、およびMYCH20L-14H1-14K2からなる群から選択される単鎖抗体を含んでなる。
【0145】
ある実施形態において、前記組成物は、LYS-2F7およびMYCH15L-2F7からなる群から選択される単鎖抗体を含んでなる。
【0146】
一つの実施形態において、前記組成物は、LYS-14H1-14K2、YPTL-14H1-14K2およびMYCH20L-14H1-14K2からなる群から選択される単鎖抗体を含んでなる。
【0147】
別の実施形態において、前記組成物は、LYS-2F7、LYS-28H3-28K1、LYS-14H1-14K2、YPTL-14H1-14K2、MYCH15L-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、およびMYCH20L-14H1-14K2からなる群から選択される2つ以上の単鎖抗体を含んでなる。
【0148】
ある実施形態において、前記2つ以上は2つの単鎖抗体である。ある実施形態において、前記2つ以上は3つである。ある実施形態において、前記2つ以上は4つである。ある実施形態において、前記2つ以上は5つである。ある実施形態において、前記2つ以上は6つである。ある実施形態において、前記2つ以上は7つである。
【0149】
ある実施形態において、前記組成物は、希釈液を含んでなる。核酸およびベクターのための好適な希釈液としては、限定されるものではないが、水、生理食塩水およびエタノールが挙げられる。
【0150】
前記組成物は、核酸および/またはベクターの送達を補助するためのリポソームなどの脂質粒子、ナノ粒子、またはナノソームを含んでなり得る。
【0151】
抗体もしくはそのフラグメントを含むポリペプチドおよび/または細胞のための好適な希釈液としては、限定されるものではないが、生理食塩水、pH緩衝液ならびにグリセロール溶液またはポリペプチドおよび/もしくは細胞を凍結させるのに好適な他の溶液が挙げられる。
【0152】
ある実施形態において、前記組成物は、本明細書に記載の核酸またはベクターを含んでなる。別の実施形態において、前記組成物は、本明細書に記載の抗体またはその一部および希釈液を含んでなる。ある実施形態において、前記組成物は無菌組成物である。
【0153】
前記組成物は、くも膜下腔内、脳実質内または脳室内投与のために処方することができる。
【0154】
ある実施形態において、前記組成物は、薬学上許容可能な担体、希釈液、および/または賦形剤を含んでなる。ある実施形態において、前記組成物は、例えば、ミスフォールドTDP-43を標的とすることなど、本明細書に記載の方法のためのものである
【0155】
ある実施形態において、前記組成物は、薬学上許容可能な担体、希釈液、および/または賦形剤を含んでなる。ある実施形態において、前記組成物は、例えば、それを必要とする対象、例えば、TDP-43タンパク質症を有する対象を治療することなど、本明細書に記載の方法のための医薬組成物である。
【0156】
前記組成物は、本明細書に記載の1以上の抗体を含んでなり得る。
【0157】
VI.方法
本明細書に記載の単鎖抗体、核酸およびベクターを作製する方法が含まれる。
【0158】
特に、単鎖抗体、例えば、DAGWGNL(配列番号1)との関連でW68に対して選択的な単鎖抗体を作製する方法が提供される。CDRを単鎖抗体足場に移植することができ、または重鎖および軽鎖可変領域を増幅し、ベクターにクローニングすることができる。
【0159】
単鎖抗体、場合により、イントラボディを含んでなるベクターを、いくつかの方法により調製することができる。ベクターの構築には、当技術分野で知られている分子クローニング技術を使用することができる。実施例に記載のように、scFv核酸は、FLAGタグ-VH-リンカー-VL-Lysリンカー-リソソームターゲティング配列形式などの様々な形式で構築した。抗体重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)は、それぞれ、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4から構成し得る。VH配列およびVL配列を連結するためのリンカーならびにリソソームターゲティング部分を連結するためのリンカーは、それぞれ、3回および1回のGGGGSのタンデムリピートから構成し得る。scFv核酸は、5’-NheI/HindIII-3’制限配列などの制限部位に隣接し、DNAシンセサイザーで固相ホスホロアミダイト化学法を使用して個々のホスホロアミダイトモノマーを逐次的に連結することにより合成することができる。得られた一本鎖scFv遺伝子インサートを、標準的なPCRによって増幅して、二本鎖インサートを生成することができ、これを、次に、例えば、pcDNA3.1(-)ベクターなどのNheI/HindIII制限酵素消化ベクターにクローニングすることができる。
【0160】
他の方法も使用することができる。例えば、mRNAは、mRNA単離キット(Qiagen社、チャッツワース、カリフォルニア州)を使用して、ハイブリドーマ細胞株から単離することができる。cDNAは、例えば、製造業者の説明書に従って、Superscript First Strand、カタログ番号12371-019(Invitrogen社、カールズバッド、カリフォルニア州)を使用してオリゴdTプライミングにより合成することができる。重鎖(VH)および軽鎖(Vκ)の可変領域は、ユニバーサルポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)の混合物を使用することにより、第一鎖cDNAとは別に増幅することができる。重鎖および軽鎖のPCR産物は、それぞれ、PstI/BstEIIおよびSacI/XhoIなどの制限酵素で切断することができ、アガロースゲル精製することができる。VLおよびVHに対応するcDNAインサートは、例えば、pBZUT7ベクターにクローニングし、配列決定することができる。VHおよびVLドメインは、PCRによって組み立てられ、一緒に連結して、全長scFv核酸を生成することができる。scFv核酸は、次いで、Mycタグの上流にサブクローニングすることができる。構築物はまた、効率的な分泌のためのシグナル配列、検出を容易にするためのc-mycエピトープもしくはFLAGなどのタグ、またはリソソームシグナル配列もしくはオートファジーシグナル配列などのターゲティング部分などの1つ以上の部分を含むように設計することができる。
【0161】
得られた単鎖抗体の構造は、(HC FR1-HC CDR1-HC FR2-HC CDR2-HC FR3-HC CDR3-HC FR4)VH-リンカー-(LC FR1-LC CDR1-LC FR2-LCCDR2-LC FR3-LC CDR3-LC FR4)VL-任意にLysリンカー-任意にリソソームターゲティング配列などのターゲティング部分であり得、ここで、HC FR1は重鎖フレームワーク1領域であり、HC FR2は重鎖フレームワーク2領域であり、HC FR3は重鎖フレームワーク3領域であり、HC FR4は重鎖フレームワーク4領域であり、LC FR1は軽鎖フレームワーク1領域であり、LC FR2は軽鎖フレームワーク2領域であり、LC FR3は軽鎖フレームワーク3領域であり、LC FR4は軽鎖フレームワーク4領域である。
【0162】
また、例えば、細胞においてまたは対象においてミスフォールドTDP-43を検出する方法も提供される。
【0163】
本明細書に記載の標識単鎖抗体(分泌シグナルを付加することにより産生される)は、ミスフォールドTDP-43の位置を検出するために、対象に投与することもできる。前記測定することは、例えば、免疫蛍光またはPETトレーサーによるものであってもよい。前記方法は、共局在染色、例えば、pan-TDP-43染色も含み得る。
【0164】
細胞内ミスフォールドTDP-43レベルを低減する方法であって、本明細書に記載の核酸、ベクター、または、前記核酸またはベクターを含む組成物を、それを必要とする対象、例えば、TDP-43タンパク質症を有すると疑われる、それを発症するリスクにある、またはそれと診断されている対象に投与することを含んでなる方法も提供される。
【0165】
例えば、TDP-43タンパク質症を有する対象を治療する方法であって、核酸、発現カセット、ベクター、単鎖抗体、または本明細書に記載の前記核酸、発現カセットもしくはベクターもしくは単鎖抗体を含んでなる組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる方法も提供される。
【0166】
ある実施形態において、前記TDP-43タンパク質症は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、および大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から選択される。
【0167】
いくつかの実施形態において、核酸、ベクター、または組成物は、別のTDP-43タンパク質症治療と組み合わせて、対象に投与される。他のTDP-43タンパク質症治療としては、限定されるものではないが、ALSに対する治療、例えば、リルゾール(リルテックまたはTiglutik(商標))、エダラボン(ラジカヴァ(商標))、およびニューデクスタ(商標)(デキストロメトルファンおよびキニジンの組合せ)が挙げられる。
【0168】
前記核酸またはベクターは、例えば、薬学上許容可能な担体、希釈液および/または賦形剤と例えば組み合せて、本明細書に記載の組成物に含まれ得、かつ例えば、核酸またはベクターの送達を補助するためのナノ粒子またはナノソームにおいて処方され得る。
【0169】
本明細書に記載の組成物、抗体、免疫複合体、核酸、およびベクターは、例えば、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、くも膜下腔内投与、眼窩内投与、眼投与、脊髄内投与、槽内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、エアロゾル投与または経口投与により投与され得る。
【0170】
他の複数の実施形態は、本明細書に記載の組成物、抗体、免疫複合体、核酸、およびベクターの、血液脳関門を介する輸送を促進することで知られる生物活性分子との同時投与を企図する。
【0171】
特定の複数の実施形態において、米国特許第7,012,061号「血液脳関門の透過性を増大させる方法」(引用することにより本明細書の一部とされる)に記載のように、血液脳関門の透過性を一過性に増大させるように向けられたものなど、血液脳関門を介して本明細書に記載の組成物、抗体、免疫複合体、核酸、およびベクターを投与する方法も企図される。
【0172】
それを必要とする対象または細胞における本明細書に記載の1以上の抗体の発現のための、本明細書に記載の組成物および/または核酸のウイルス送達も、本明細書において企図される。ある側面は、有効量の本明細書に記載の開示のベクター化抗体、または前記ベクター化抗体を含んでなる組成物を、場合により、別のTDP-43タンパク質症治療と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、TDP-43タンパク質症を有する対象を治療する方法を含む。一つの実施形態において、前記ベクター化抗体は、本明細書に記載の抗体をコードする核酸を含んでなるウイルスベクターである。一つの実施形態において、前記方法は、それを必要とする対象におけるイントラボディの細胞内発現のためのものである。イントラボディは、例えば、細胞内ミスフォールドTDP-43凝集を阻害し得るか、またはミスフォールド凝集体のクリアランスを促進する。
【0173】
例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV、例えば、AAV9)およびレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターを使用することができる。非ウイルスベクターも使用することができる。特定の複数の実施形態において、前記核酸、ベクターまたは組成物は、脳室内注射またはくも膜下腔内注射され得る。他の実施形態において、前記核酸、ベクターまたは組成物は、例えば、分泌される単鎖抗体の持続的産生のための貯蔵所を使用して、静脈内または皮下または筋肉内に投与することができる。
【0174】
上記の開示は、一般に、本出願を説明するものである。より完全な理解は、以下の具体的な実施例を参照することにより得ることができる。これらの実施例は、例示の目的のためにのみ説明され、本出願の範囲を限定することを意図したものではない。状況が便宜を示唆し得るか、与え得る限り、形態の変更および均等物の置換が企図される。特定の用語が本明細書において使用されているが、このような用語は、説明的な意味であることを意図し、限定の目的のためのものではない。
【0175】
以下の限定されない例は、本開示の例示的なものである:
【実施例】
【0176】
実施例1
ミスフォールドTDP-43の検出
抗体は、配列番号1を含む免疫原を用いてウサギで産生された。抗体はアフィニティー精製された。アフィニティー精製抗体を、免疫細胞化学を使用した細胞トランスフェクションアッセイにおいて、天然TDP-43ポリペプチドおよびミスフォールドTDP-43ポリペプチドに結合するそれらの能力に関して試験した。
【0177】
結果
核局在化シグナルにおける三重ミスセンスタンデム変異を有するHA-タグTDP-43構築物によりトランスフェクトしたHEK293細胞は、HA抗体により検出された、細胞質におけるTDP-43凝集体を示している。HA陽性凝集体も、ΔNLS-TDP-43 W68Sトランスフェクト細胞では明らかである。アフィニティー精製ポリクローナル抗体は、トリプトファン68残基(Trp68)を含んでなる、ΔNLS-TDP-43トランスフェクト細胞における凝集体を認識するが、Trp68がセリンに変異している場合、同じ反応性は示さない。したがって、抗DAGWGNL(配列番号1)ポリクローナルウサギ抗体は、Trp68残基を含んでなるミスフォールドTDP-43NTDに対する選択性を有する。
【0178】
HAタグ野生型TDP-43は、核局在化シグナルに変化をもたらさずに過剰発現する場合、一般に核に局在化し、核TDP-43は、GS240またはGS243アフィニティー精製血清に結合しない。興味深いことに、GS240およびGS243は、これらの細胞の細胞質に存在する場合、依然として野生型TDP-43に結合し、それにより、N末端ユビキチン様ドメイン(NTD)は、細胞質に誤局在する場合、WTTDP-43においてミスフォールドされ得ることが示唆される。
【0179】
GS240およびGS243ポリクローナル抗体は、TDP-43凝集体の非存在下で最小の反応性を示す。両抗体の反応性は、細胞質中の凝集体におけるミスフォールドTDP-43に対して選択的であり、Trp68の存在を必要とする。
【0180】
実施例2
マウスモノクローナル抗体の産生
マウスモノクローナル抗体は、KLHに連結されたDAGWGNL(配列番号1)、例えば、DAGWGNLc(配列番号9)を含んでなるペプチドを使用して産生した。ハイブリドーマを開発し、分析した。陽性クローンを同定し、アイソタイプを決定した。
【0181】
実施例3
ウサギモノクローナル抗体の産生
【0182】
C末端システインを介してKLHにコンジュゲートしたDAGWGNL(配列番号1)ペプチド(ペプチド-KLH)を、TDP-43ペプチドに特異的なモノクローナル抗体を分泌するB細胞の作製のためのウサギ免疫化に使用した。単離B細胞の間接的ELISA試験に基づき、B細胞を、RNA単離および組換えプラスミドDNAの作製のために選択した。精製mAbの作製のために、機能的抗原結合組換えmAbをトランスフェクトし、発現させた。
【0183】
実施例4
モノクローナル抗体のクローニングおよびシークエンシング
マウスmAbのクローニング
いくつかのマウスハイブリドーマクローンに関する重鎖免疫グロブリン遺伝子および軽鎖免疫グロブリン遺伝子の可変領域を同定し、配列決定した。
【0184】
配列を以下の表2、3および4に示し、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域を、表3および4において下線および太字で示す。
【0185】
ウサギmAbのクローニング
抗体RNAの単離および組換えプラスミドDNAの作製を行った重鎖および軽鎖可変領域を、ウサギ重鎖およびカッパ定常領域を含有する別々の哺乳動物発現ベクターにクローン化した。
【0186】
トップ組換えmAb(1つの重鎖および1つの軽鎖を含有するDNA構築物)を、以下の表2、3および4に示すように配列決定し、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域を、表3および4において下線および太字で示す。
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
実施例5
直接結合アッセイ
ペプチド(BSAにコンジュゲートした)に対する抗血清、ハイブリドーマ上清または精製抗体の結合は、Biacore(商標)3000機器(GE Healthcare社)を使用した表面プラズモン共鳴により調べることができる。
【0194】
高密度(少なくとも1000レスポンスユニット(RU))のフローセルに固定化された抗原を使用して、結合分析を行う。選択されたクローンの希釈を、結合を評価するための表面に逐次的に注入する。
【0195】
親和性速度論および特異性分析のために、DAQWGNL(配列番号1)またはGWGを含んでなり、かつBSAにコンジュゲートされたペプチドを、隣接するフローセルに低密度(50~100RU)で固定化する。次いで、選択されたクローン(4.7nM~75nM)の段階2倍希釈を、60μl/分で3分間表面に逐次的に注入した後、解離相が続く。二重参照減算の後、センサーグラムをラングミュア1:1結合モデルに当てはめる。同じセンサーチップおよび同じ条件を用いて、最大3回の別々の分析を、連続した3日間で行う。
【0196】
結合分析は、Molecular Affinity Screening System(MASS-2)(Sierra Sensors GmbH社、ハンブルク、ドイツ)を使用して行うこともできる。MASS-2は、高強度レーザー光および高速光学走査を使用して、結合相互作用をリアルタイムでモニタリングする表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング分析バイオセンサーである。ペプチド-BSAコンジュゲートを、標準的なアミンカップリング化学を使用して、High Amine Capacity(HAC)センサーチップの別々のフローセルに共有結合的に固定化し、未反応部位を遮断する。隣接するフローセルを、参照対照表面としてのBSAで同様に固定化する。
【0197】
モノクローナル抗体の結合速度論
表面プラズモン共鳴(SPR)分析を用いて、ペプチドエピトープに対するモノクローナル抗体の結合速度論を測定した。ウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲートしたペプチドを、センサーチップのフローセルに非常に低密度(およそ50RU)で固定化した。31.25nMから0.24nMに4倍希釈した精製マウスまたはウサギモノクローナル抗体を、表面におよそ5分間逐次的に注入した後、緩衝液における解離および表面再生が続いた。速度論曲線当てはめおよびラングミュア1:1相互作用モデルを用いて、結合パラメーターを計算した。マウスおよびウサギ両方のモノクローナル抗体は、以下の表5に示すように、ペプチドエピトープに対してナノモル以下の高い親和性を示した。ウサギモノクローナル抗体は、マウスモノクローナル抗体(10-10nM範囲)と比較して大きな親和性(10-11nM範囲)を示した。
【0198】
【0199】
実施例6
エピトープは、天然に折り畳まれたTDP N末端ドメインではそうではないが、変性TDP N末端ドメインにおける抗体により認識される
TDP-43のN末端ドメイン(残基1~80)を、大腸菌におけるプラスミドから発現させ、以前に記載の通りに精製した(Wang et al. 2018 EMBO)。ウエスタンブロット解析のために、製造業者の仕様書に従って、Novex Bis-Trisシステムを使用してネイティブPAGEを行った。製造業者の仕様書に従って、Novex Bis-Trisシステムを使用して変性SDS-PAGEを行った。ブロットをTBST中5%粉乳においてブロッキングし、次いで、精製ウサギポリクローナル抗体GS240で4℃にて一晩インキュベートした。ChemiDoc MP(Biorad社、米国)での検出のために、ロバ抗ウサギIgG HRP標識二次抗体(GE Healthcare Life Sciences社、米国)を使用した。SuperSignal West Femto(Thermo Scientific社、米国)基質を、製造業者の説明書に従って使用した。抗体は、SDS-PAGEゲル上の変性TDP-43 NTDのみを認識および染色し、ネイティブPAGEゲル上のTDP-43 NTDに対してはそうではなく、それにより、エピトープは、天然に折り畳まれたTDP-43においてアクセス不可能であり、ミスフォールディング時に露出するようになることが確認された。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、天然型または変性型のTDP-43 NTDは、単量体のままであることを示している。参考のために、分子量マーカーを重ねている。
【0200】
実施例7
患者サンプルの免疫組織化学
脳および脊髄サンプルをNetherlands Brain Bankから得、処理および染色した。ホルマリン固定、パラフィン包埋組織からの切片(8μM厚)を脱パラフィンし、その後、リン酸緩衝食塩水(PBS)中0.3%H2O2に30分間浸漬し、内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチした。ホルマリン固定は、組織標本における抗原部位を遮蔽し得るタンパク質架橋を形成する。タンパク質架橋を壊すために、スライドを熱およびトリス-EDTA(pH9)で前処理した。一次試験抗体を1:4000(ウサギポリクローナルGS240抗体、3E8マウスモノクローナル抗体)または1:2000(マウスモノクローナル抗体3F11および2F7)の希釈で、4℃にて一晩インキュベートした。二次EnVision HRPコンジュゲートヤギ抗ウサギ/マウス抗体(EV-GαM HRP、DAKO社)を室温で30分間加え、次いで、色素原3,3,-ジアミノベンジジン(DAKO社)を10分間加えた。切片をヘマトキシリンで対比染色した。
【0201】
前頭側頭葉変性症(FTLD)B型患者由来の脳切片の染色が行われた。ウサギポリクローナルGS240抗体は、白質(WM)および灰白質(GM)の両方において病的TDP43の染色を示している。3F11および3E8モノクローナル抗体は、GMにおいて病的TDP-43を主に検出しているが、一方、2F7モノクローナル抗体は、WMおよびGMの両方において染色を示している。ウサギポリクローナルGS240抗体は、ALS脊髄切片でも試験し、運動ニューロンおよび周囲組織において陽性を示した。これらの結果は、抗体は、患部組織においてin situで示される病原性TDP-43のエピトープを認識できることを示している。
【0202】
実施例8
モノクローナル抗TDP43抗体によるトランスフェクトHEK293細胞の代表的な染色
実施例1に記載のように、免疫組織化学を使用した細胞トランスフェクションアッセイにおいて、マウスモノクローナル抗体およびウサギモノクローナル抗体を、ミスフォールドTDP-43に対する選択的結合に関して試験した。簡単に述べれば、HEK293FT細胞を、HAタグΔNLS-TDP43(細胞質凝集体を形成する)もしくはHAタグ野生型(WT)TDP-43(核において発現した)をコードするプラスミドまたは空ベクターでトランスフェクトした。抗TDP-43抗体を、染色のために10ug/mlに希釈し、蛍光標識抗ウサギIgGまたは抗マウスIgGを、検出用二次抗体として使用した。ニワトリ抗HAタグ抗体、次いで蛍光標識抗ニワトリ二次抗体を、トランスフェクトTDP-43の検出のために使用した。トランスフェクトΔNLS-TDP43は、細胞質に誤局在し、そこでは、抗HAタグ抗体での染色により容易に検出される凝集体を形成する。2F7抗体は、マージ画像における2個の染色シグナルの共局在により確認されるように、同じ凝集体を認識した。対照的に、HAタグ抗体により核において検出されるトランスフェクトWTTDP-43は、2F7抗体により染色されなかった。予想されたように、空ベクターでトランスフェクトした細胞は、HAタグ染色を全く示さない。それらは、2F7抗体による染色を全く示さず、これにより、2F7は内因性核WT TDP-43の認識もできないことが示された。
【0203】
試験した他の抗体でも同様の結果が得られ、それらを表6に要約する。試験した抗体による染色のこのパターンは、WT TDP-43と比較したTDP-43のミスフォールド病原性凝集体に対するそれらの選択性を示している。
【0204】
【0205】
実施例9
生理学的ストレス顆粒の免疫細胞化学
ミスフォールドTDP-43に対するモノクローナル抗体が生理学的ストレス顆粒と反応したかどうかを決定するために、ストレスを受けたHEK293FT細胞に対して染色を行った。簡単に述べれば、HEK293FT細胞に対して、1nM亜ヒ酸ナトリウムへの60分間の曝露により、ストレスを与えた。次いで、細胞を、ストレス顆粒マーカーG3BP1に対する蛍光標識抗体または10ug/mlのモノクローナル抗TDP-43試験抗体で染色した後、標識二次抗体で検出した。1つの抗体を除いて、試験した他の抗体で同様の結果が得られ、それらは以下の表7に含まれる。ストレスを受けた細胞は、細胞質におけるG3BP1+ストレス顆粒の大量の点状の染色を示した。比較して、3F11抗体で染色した同じ細胞は、G3BP1染色の位置において細胞質顆粒の存在を示さず、3F11はこれらの細胞におけるストレス顆粒と反応しないことが示された。生理学的ストレス顆粒におけるTDP-43に対する試験した抗体の結合の欠如は、それらがこれらのストレス顆粒の保護機能を妨げる可能性は低いことを示唆するものである。
【0206】
【0207】
実施例10
選択されたmAbのキャラクタリゼーション
トリプトファン68(Trp68)がセリンに変異したHAタグΔNLS-TDP-43(W68S)との比較でHAタグΔNLS-TDP-43でトランスフェクトしたHEK293FT細胞において形成された細胞質凝集体の認識に関して、モノクローナル抗体を試験した。空ベクターを対照として使用した。細胞を、2μg/mlのTDP-43ウサギモノクローナル抗体28、1μg/mlのマウスpanTDP-43、または0.5μg/mlのニワトリ抗HAタグのいずれかで染色した。蛍光標識二次抗体Alexa Fluor 488-抗ウサギ、Alexa Fluor 647抗マウスおよびAlexa Fluor 568-抗ニワトリを、結合一次抗体の検出のために使用した。核をヘキスト33342色素で染色した。HAタグΔNLS-TDP-43でトランスフェクトした細胞において、28抗体は、ミスフォールドΔNLS-TDP-43のHA陽性凝集体とともに共局在した細胞質凝集体を染色した。対照的に、Trp68を欠くΔNLS-TDP-43-W68Sにより形成された細胞質凝集体の染色は認められなかった。予想されたように、空ベクターでトランスフェクトした細胞は、HAタグ染色を全く示さなかった。それらは、28H3-28K1による染色を全く示さず、これにより、抗体は内因性核WT TDP-43を認識しないことが確認された。pan-TDP-43抗体は、両形態のトランスフェクトTDP-43および内因性核TDP-43により形成された細胞質凝集体を認識した。
試験したほとんどの他の抗体でも同様の結果が得られ、それらを表8に要約する。ポリクローナルウサギ抗体で認められたように、試験したモノクローナル抗体による染色のこのパターンは、溶媒露出Trp68残基を含んでなるミスフォールドTDP-43 NTDに対するそれらの選択性を示している。ΔNLS-TDP-43-W68Sのいくつかの凝集体に結合したクローン20は、生理学的ストレス顆粒に結合した。
【0208】
【0209】
実施例11
HEK293細胞におけるミスフォールドTDP-43伝播の抗体遮断
ドナーHEK293細胞を、ミスフォールドTDP-43を発現させるために、TDP-43のHAタグ核局在化シグナル欠損変異体、HA-ΔNLSTDP-43で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、条件培地をドナー細胞から回収し、1,000gで10分間遠心分離して、浮遊細胞デブリを培地から除去した。清澄な条件培地を、30ug/mlの各個々のTDP-43ミスフォールディング特異的抗体または対照マウスIgG1(Biogen社)で、室温で1時間、一定に回転させながらインキュベートした後、それにナイーブレシピエントHEK293細胞を加えた。試験した抗体には、TDP-43のN末端エピトープに対する3つのマウスモノクローナル抗体(3F11、2F7、3E8)および立体構造RRM1エピトープ(WO2018/218352として発表されているPCT CA/2018/050634)に対する抗体(9C5)が含まれた。インキュベーションの48時間後、レシピエント細胞培地を除去し、細胞を冷PBSで2回洗浄し、2%SDSに溶解した。タンパク質濃度は、BCAアッセイを使用して測定した。25ugのライセートを10%NuPageゲル(Thermo社)上で分離し、PVDFメンブレンに移し、次いで、HAタグ(Abcam社、ウサギ、1:1000)またはローディング対照としてのGAPDH(Thermo社、マウス、1:50K)に対する抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った。HAおよびGAPDH免疫反応性をChemiDoc Imaging Systemで検出し、Image Labを使用して強度を定量化した。
【0210】
HA-dNLS-TDP43でトランスフェクトしたドナー細胞は、多量のHAタグTDP-43を含有していた。対照マウスIgG1(mIgG1)で処置したドナー細胞上清でインキュベートしたナイーブレシピエント細胞は、検出可能な量のHAタグTDP-43を含有しており、HA-dNLS-TDP-43タンパク質のミスフォールド凝集体が、ドナー細胞からレシピエント細胞へと細胞外伝播したことが示された。ミスフォールディング特異的TDP-43抗体で前処置したドナー細胞上清でインキュベートしたレシピエント細胞は、比較的少ない量のHAタグTDP-43を含有しており、抗体による伝播の阻害が示された。陰性対照として、非トランスフェクトドナー細胞由来の上清でインキュベートしたレシピエント細胞は、検出可能なHAタグTDP-43を全く含有していなかった。各抗体に関して、HAタグシグナルをGAPDHシグナルに対して最初に正規化し(HA強度/GAPDH強度)、試験抗体に関して得られた値を、対照mIgG1で得られた値で割った。対照mIgG1と比較して、試験した総ての抗体は、ドナー細胞上清からミスフォールドHA-dNLS-TDP-43の伝播を阻害し、レシピエント細胞における低レベルのHAタグTDP-43をもたらした。
【0211】
実施例12
ベクター生成
ミスフォールドTDP-43に対する抗体からの短い重鎖可変領域を使用して、様々な単鎖可変フラグメント(scFv)イントラボディ構築物を設計した。ミスフォールドTDP-43のDAGWGNL(配列番号1)との関連で少なくともW68を含んでなるエピトープに結合する抗体2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2からの可変重鎖(VH)領域および可変軽鎖(VL)領域を、様々なアミノ酸リンカーを使用して連結した。VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHのいずれかの一般的配列でscFvペプチドを構築した。イントラボディの発現および局在を検出するために、FLAGまたはMYCタグ領域をscFvに連結した、実施例13。リソソームターゲティング領域YPTLもまた、いくつかのイントラボディのscFvペプチドに連結した。
【0212】
2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2の構築を本明細書に記載する。
【0213】
以下の構造を有する抗体のそれぞれについて、6つの異なるタイプの単鎖抗体構築物を生成した:
(a)FLAGタグ-VH-(G4S)3リンカー-VL-G4Sリンカー-リソソームターゲティングタグ構築物;
(b)VH-(G4S)3リンカー-VL-FLAGタグ-YPTL構築物;
(c)15アミノ酸リンカー-MYCタグ構築物を介してVHに連結されたVL;
(d)15アミノ酸リンカー-MYCタグ構築物を介してVLに連結されたVH;
(e)20アミノ酸リンカー-MYCタグ構築物を介してVHに連結されたVL;および
(f)20アミノ酸リンカー-MYCタグ構築物を介してVLに連結されたVH。
【0214】
各scFv構築物のポリヌクレオチド配列を、pcDNA3.1ベクター、例えば、pcDNA3.1(+)またはpcDNA3.1(-)などの発現プラスミドにクローニングすることによって、TDP-43 ScFvベクター構築物を生成した。
【0215】
ベクターおよびscFvインサートをNheIおよびHindIII制限酵素によって消化した。酵素消化後、ベクターとインサートをT4ポリメラーゼによって連結した。1~2uLのライゲーション反応物をTOP10コンピテント細胞に形質転換した。個々の細菌のコロニーを採取し、DNA精製のために一晩培養物を増殖させた。DNA精製後、精製したDNAのNheIおよびHindIIIでの診断用の制限消化を行った。最終プラスミドを配列決定した。
【0216】
a)N末端FLAGタグリソソーム構築物
グループa)リソソームターゲティングタグを含んでなるscFv構築物は、LYS-2F7、LYS-1H3-1K3、LYS-28H3-28K1、およびLYS-14H1-14K2と特定されている。リソソームターゲティング構築物LYS-2F7、LYS-1H3-1K3、LYS-28H3-28K1、およびLYS-14H1-14K2のアミノ酸およびポリヌクレオチドの配列を以下の表9に示す。LYS-2F7、LYS-1H3-1K3、LYS-28H3-28K1、およびLYS-14H1-14K2のVHおよびVL領域はそれぞれ、抗体2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2からの対応するVHおよびVL領域に基づいている。
【0217】
【0218】
【0219】
b)C末端FLAG YPTL構築物
グループb)構築物を含んでなるYPTLは、YPTL-2F7、YPTL-1H3-1K3、YPTL-28H3-28K1、およびYPTL-14H1-14K2と特定されている。構築物YPTL-2F7、YPTL-1H3-1K3、YPTL-28H3-28K1、およびYPTL-14H1-14K2のアミノ酸およびポリヌクレオチドの配列を以下の表10に示す。YPTL-2F7、YPTL-1H3-1K3、YPTL-28H3-28K1、およびYPTL-14H1-14K2のVHおよびVL領域はそれぞれ、抗体2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2からの対応するVHおよびVL領域に基づいている。
【0220】
【0221】
【0222】
c)V
L
が15アミノ酸リンカーを介してV
H
に連結されたC末端MYCタグ構築物:
VLが15アミノ酸リンカーを介してVHに連結されたMYCタグ構築物は、MYCL15H-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、MYCL15H-28H3-28K1、およびMYCL15H-14H1-14K2である。これらの構築物は、VL-15アミノ酸ScFvリンカー配列-VH-3アミノ酸MYCリンカー配列-MYCタグの一般的な配列を有する。構築物MYCL15H-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、MYCL15H-28H3-28K1、およびMYCL15H-14H1-14K2のアミノ酸およびポリヌクレオチドの配列を以下の表11に示す。MYCL15H-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、MYCL15H-28H3-28K1、およびMYCL15H-14H1-14K2のVHおよびVL領域はそれぞれ、抗体2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2からの対応するVHおよびVL領域に基づいている。
【0223】
【0224】
【0225】
d)V
H
が15アミノ酸リンカーを介してV
L
に連結されたMYC構築物
VHが15アミノ酸リンカーを介してVLに連結されたMYC構築物は、MYCH15L-2F7、MYCH15L-1H3-1K3、MYCH15L-28H3-28K1、およびMYCH15L-14H1-14K2である。これらの構築物は総て、VH-15アミノ酸ScFvリンカー配列-VL-3アミノ酸MYCリンカー配列-MYCタグの一般的な配列を有する。構築物MYCH15L-2F7、MYCH15L-1H3-1K3、MYCH15L-28H3-28K1、およびMYCH15L-14H1-14K2のアミノ酸およびポリヌクレオチドの配列を以下の表12に示す。MYCH15L-2F7、MYCH15L-1H3-1K3、MYCH15L-28H3-28K1、およびMYCH15L-14H1-14K2のVHおよびVL領域はそれぞれ、抗体2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2からの対応するVHおよびVL領域に基づいている。
【0226】
【0227】
【0228】
e)V
L
が20アミノ酸リンカーを介してV
H
に連結されたMYC構築物:
各抗体のVHおよびVL領域を最適化し、合成した。各scFvフラグメントをVHおよびVL鋳型から増幅し、同時に、15aaリンカーを付加した。PCR精製後、シームレスライゲーションプロトコールによりscFvフラグメントをpcDNA3.1ベクターにクローニングした。
【0229】
VHが15アミノ酸リンカーを介してVLに連結されたMYC構築物は、MYCL20H-2F7、MYCL20H-1H3-1K3、MYCL20H-28H3-28K1、およびMYCL20H-14H1-14K2である。これらの構築物は総て、VL-20アミノ酸ScFvリンカー配列-VH-3アミノ酸MYCリンカー配列-MYCタグの一般的な配列を有する。構築物MYCL20H-2F7、MYCL20H-1H3-1K3、MYCL20H-28H3-28K1、およびMYCL20H-14H1-14K2のアミノ酸およびポリヌクレオチドの配列を以下の表13に示す。MYCL20H-2F7、MYCL20H-1H3-1K3、MYCL20H-28H3-28K1、およびMYCL20H-14H1-14K2のVHおよびVL領域はそれぞれ、抗体2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2からの対応するVHおよびVL領域に基づいている。
【0230】
【0231】
【0232】
f)V
H
が20アミノ酸リンカーを介してV
L
に連結されたMYC構築物:
各抗体のVHおよびVL領域を最適化し、合成した。各scFvフラグメントをVHおよびVL鋳型から増幅し、同時に、20aaリンカーを付加した。PCR精製後、シームレスライゲーションプロトコールによりscFvフラグメントをpcDNA3.1ベクターにクローニングした。
【0233】
VHが20アミノ酸リンカーを介してVLに連結されたMYC構築物は、MYCH20L-2F7、MYCH20L-1H3-1K3、MYCH20L-28H3-28K1、およびMYCH20L-14H1-14K2である。これらの構築物は総て、VH-20アミノ酸ScFvリンカー配列-VL-3アミノ酸MYCリンカー配列-MYCタグの一般的な配列を有する。構築物、MYCH20L-2F7、MYCH20L-1H3-1K3、MYCH20L-28H3-28K1、およびMYCH20L-14H1-14K2のアミノ酸およびポリヌクレオチドの配列を以下の表14に示す。MYCH20L-2F7、MYCH20L-1H3-1K3、MYCH20L-28H3-28K1、およびMYCH20L-14H1-14K2のVHおよびVL領域はそれぞれ、抗体2F7、1H3-1K3、28H3-28K1、および14H1-14K2からの対応するVHおよびVL領域に基づいている。
【0234】
【0235】
【0236】
scFvベクター構築物は、実施例13に記載するように、トランスフェクションおよび発現研究のために使用した。
【0237】
実施例13
免疫細胞化学および共局在
以下に記載する方法を使用して、dNLSTDP-43を含むまたは含まないHEK293細胞で様々な構築物を発現させた。免疫細胞化学および共局在分析も以下に記載するように行った。
【0238】
LYS-2F7、LYS-1H3-1K3、LYS-28H3-28K1、およびLYS-14H1-14K2TDP-43イントラボディは、トランスフェクトHEK293細胞においてdNLSTDP-43の細胞質凝集体と相互作用する(
図1~4)。これらのイントラボディはどれも核内の内因性野生型TDP43との認識できる相互作用を示さない。TDP43イントラボディの過剰発現は、細胞の生存能力に影響を与えず、これらが本質的な正常なTDP43の機能を妨げないことを示している。
【0239】
同様に、YPTL-2F7、YPTL-1H3-1K3、YPTL-28H3-28K1、およびYPTL-14H1-14K2TDP-43イントラボディの過剰発現は、HEK293細胞の生存能力に影響を与えず、これらのイントラボディが正常なTDP43の本質的な機能を妨げないことを示している(
図5~8)。YPTL-2F7、YPTL-1H3-1K3、YPTL-28H3-28K1、およびYPTL-14H1-14K2は総て、凝集した細胞質dNLS-TDP-43と強い相互作用を示すが、正常な核TDP-43とは示さない(
図5~8)。
【0240】
過剰発現されたMYCL15H-2F7、MYCH15L-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、MYCH15L-28H3-28K1、MYCL15H-14H1-14K2、およびMYCH15L-14H1-14K2TDP-43イントラボディは、ミスフォールドTDP43細胞質凝集体と共局在する(
図9、10、12、14、15および16)。これらのイントラボディはどれも核内の内因性野生型TDP43との認識できる相互作用を示さない。MYCL15H-2F7、MYCH15L-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、MYCH15L-28H3-28K1、MYCL15H-14H1-14K2、およびMYCH15L-14H1-14K2は総て、凝集した細胞質dNLS-TDP-43と強い相互作用を示す(
図9、10、12、14、15および16)。
【0241】
過剰発現されたMYCL20H-1H3-1K3、およびMYCL20H-14H1-14K2TDP-43イントラボディは、ミスフォールドTDP43細胞質凝集体と共局在する(
図13および17)。MYCL20H-1H3-1K3、およびMYCL20H-14H1-14K2TDP-43は、凝集した細胞質dNLS-TDP-43と強い相互作用を示すが、正常な核TDP-43とは示さない(
図13および17)。
【0242】
過剰発現されたMYCH20L-14H1-14K2TDP-43イントラボディは、ミスフォールドTDP43細胞質凝集体と共局在する(
図18)。MYCH20L-2F7はより低い発現を示した(
図11)。イントラボディはどれも核内の内因性野生型TDP43との認識できる相互作用を示さない。
【0243】
dNLS-TDP-43の分解
dNLS-TDP-43分解に対するイントラボディ発現の効果を、以下に記載するように評価した。
【0244】
この結果は、LYS-2F7、LYS-28H3-28K1、およびLYS-14H1-14K2、YPTL-14H1-14K2、MYCH15L-2F7、MYCL15H-1H3-1K3、およびMYCH20L-14H1-14K2イントラボディがdNLSTDP-43分解を促進することを示している(
図19、20、および21)。
【0245】
材料および方法
細胞培養およびトランスフェクション
ヒト胎児腎293T(HEK293T)細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC、ロックビル、メリーランド州)から購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)、GlutaMax(商標)-1(2mM)および抗生物質(50U/ml ペニシリンおよび50mg/ml ストレプトマイシン)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中5%CO2、37℃にて維持した。
【0246】
機能的核局在化シグナル(NLS)を欠くTDP43の突然変異体であるHAタグ付きdNLSTDP-43を、個々のTDP43単鎖可変フラグメント(scFv)プラスミドまたは対照空ベクター(EV)と1:5比で、製造業者の説明書に従って、Lipofectamine LTX試薬(ThermoFisher Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)を使用して、HEK293T細胞に共トランスフェクトした。
【0247】
dNLSTDP-43によるTDP43イントラボディの検出のための免疫細胞化学
トランスフェクションの72時間後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、4%PFAに室温にて15分間固定し、続いて、20mMグリシンで室温にて10分間、絶えず揺動しながら洗浄を行って、残留するPFAをクエンチした。次に、細胞をPBS、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、10%正常ヤギ血清、および0.1%トリトン-X-100を含むブロッキングバッファーとともに室温にて30分間培養した後、一次抗体を添加した。LYSおよびYPTL TDP43イントラボディとdNLS-TDP43との相互作用を調べるため、マウスモノクローナル抗Flag(Sigma社、セントルイス、ミズーリ州、米国、F1804、1:2000)をTDP43 scFv構築物発現の検出用に使用し、ウサギポリクローナル抗HA(Abcam社、ケンブリッジ、イギリス、ab9110、1:1000)をdNLS-TDP43用に使用した。Myc TDP43イントラボディとdNLS-TDP43との相互作用を調べるために、ウサギポリクローナル抗c-Myc(Abcam社、ab9106、1:1000)をscFv発現の検出用に使用し、ラットモノクローナル抗HA(Sigma社、1:2000)をdNLS-TDP43用に使用した。一次抗体を2時間インキュベーションした後、細胞をPBS/0.1%トリトン-X-100(PBST)で10分間×3回、絶えず揺動しながら洗浄し、続いて、Alexa Fluor(登録商標)ヤギ抗ウサギ、抗マウス、または抗ラット二次抗体(ThermoFisher Scientific社、1:1000)とともに暗所にて室温で30分間インキュベーションを行った。次に、細胞をPBSTで10分間×3回洗浄し、5%PBSに浸漬し、ProLong Gold Anti-fade Reagent with DAPI(ThermoFisher社、P36931)を用いて取り付けた。細胞を共焦点顕微鏡(Leica社TCS SP8 MP、ウェッツラー、ドイツ)によって分析した。
【0248】
ウエスタンブロッティングおよび分解の定量
トランスフェクションの72時間後、細胞を冷PBSで2回洗浄し、2%SDSに溶解し、続いて、30%の出力で15秒間超音波処理を行って、総タンパク質を抽出した。タンパク質含量をBCAアッセイ(ThermoFisher Scientific社)によって決定した。10μgのタンパク質を4~12%NuPAGE Bis-TrisSDS-PAGE(ThermoFisher Scientific社)で分離し、PVDFメンブレンに転写し、5%脱脂粉乳および0.1%Tween-20を含有するトリス緩衝生理食塩水(TBS)で室温にて1時間ブロッキングした。以下の一次抗体を4℃にて一晩インキュベートした:LYSおよびYPTL構築物用のウサギモノクローナル抗Flag(Cell Signaling Technology社、ダンバーズ、マサチューセッツ州、米国、147935、1:2000)および、MYCタグ付き構築物TDP-43 scFv発現検出用のウサギ抗c-Myc(Abcam社、1:500)、dNLSTDP-43検出用のウサギ抗HA(Abcam社、1:4000)、ならびにローディング対照用のマウス抗β-アクチン(abm社、リッチモンド、ブリティッシュコロンビア州、カナダ、G043、1:1000)。次いで、メンブレンをTBS/0.1%Tween(TBST)で室温にて10分間×3回、絶えず揺動しながら洗浄し、続いて、室温にて30分間、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウス(Sigma社、1:5000)またはロバ抗ウサギ二次抗体(Sigma社、AP182P、1:5000)のインキュベーションを行った。次いで、メンブレンをTBSTで10分間×3回洗浄し、SuperSignal(商標)West Femto Maximum Sensitivity Substrate(ThermoFisher Scientific社)を用いて発光させた。画像は、ChemiDoc(商標)MP Imager(Bio-Rad Laboratories社、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、米国)で撮影した。
【0249】
ウエスタンブロットバンドの強度を測定するためにImageJを使用した。dNLS-TDP43分解に対するTDP43 scFvイントラボディの効果を定量するために、各トランスフェクション条件の対応するβ-アクチンによりHA強度を最初に正規化した。次いで、各dNLS-TDP43/scFv共トランスフェクションの正規化HA強度を「dNLS+EV」対照と比較した。
【0250】
好ましい実施例であると現在考えられているものを参照して本出願を説明したが、本出願は開示された実施例に限定されないと理解されるべきである。反対に、本出願は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる種々の改変および均等な構成を網羅することを意図するものである。
【0251】
総ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされると具体的かつ個別に示された場合と同程度に、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。具体的には、例えば、表または他所に示されるアクセッション番号および/またはバイオマーカー配列(例えば、タンパク質および/または核酸)を含む、本明細書において示される各アクセッション番号に関連した配列は、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0252】
特許請求の範囲は、好ましい実施形態および実施例により限定されてはならないが、全体として明細書と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0253】
【配列表】
【国際調査報告】