(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】抗ヒトインターロイキン23モノクローナル抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230525BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230525BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230525BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230525BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230525BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230525BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230525BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230525BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230525BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230525BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230525BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230525BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230525BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230525BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230525BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230525BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230525BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230525BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230525BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230525BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230525BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230525BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230525BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230525BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230525BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/24
C12P21/08
C12N5/10
A61K39/395 U
A61P13/12
A61P21/04
A61P3/10
A61P17/14
A61P37/08
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/00
A61P35/00
A61P9/00
A61P27/02
A61P37/06
A61P5/14
A61P1/16
A61P1/18
A61P29/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P19/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576348
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2020114176
(87)【国際公開番号】W WO2021248718
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010534153.X
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520451681
【氏名又は名称】江蘇▲筌▼信生物医薬股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】QYUNS THERAPEUTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1310,Building 1,No.907 Yaocheng Avenue,Taizhou,Jiangsu,225300,China
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】裘 霽宛
(72)【発明者】
【氏名】孔 永
(72)【発明者】
【氏名】陳 衛
(72)【発明者】
【氏名】喬 懐耀
(72)【発明者】
【氏名】裘 之華
(72)【発明者】
【氏名】呉 亦亮
(72)【発明者】
【氏名】陳 涛
(72)【発明者】
【氏名】呉 美娟
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB04
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4B065CA44
4C085AA14
4C085BB17
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)モノクローナル抗体及びその使用を提供する。本発明の抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)モノクローナル抗体は、3つの重鎖相補性決定領域(CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)を含み、ここで、(a)CDR-H1のアミノ酸配列は配列番号1に示され;(b)CDR-H2のアミノ酸配列は配列番号2に示され;(c)CDR-H3のアミノ酸配列は配列番号3に示され、(d)CDR-L1のアミノ酸配列は配列番号4に示され、(e)CDR-L2のアミノ酸配列は配列番号5に示され;(f)CDR-L3のアミノ酸配列は配列番号6に示される。既存の抗ヒトインターロイキン23モノクローナル抗体(グセルクマブ(Guselkumab)及びリサンキズマブ(Risankizumab))と比較して、抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)モノクローナル抗体はhIL-23と結合する同等の親和性を持っているが、細胞レベルでの拮抗活性はグセルクマブより優れており、リサンキズマブと同等である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの重鎖相補性決定領域(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)と3つの軽鎖相補性決定領域(CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む単離された抗ヒトインターロイキン23モノクローナル抗体であって、
(a)前記CDR-H1のアミノ酸配列は配列番号1に示され;
(b)前記CDR-H2のアミノ酸配列は配列番号2に示され;
(c)前記CDR-H3のアミノ酸配列は配列番号3に示され;
(d)前記CDR-L1のアミノ酸配列は配列番号4に示され;
(e)前記CDR-L2のアミノ酸配列は配列番号5に示され;及び
(f)前記CDR-L3のアミノ酸配列は配列番号6に示される、前記モノクローナル抗体。
【請求項2】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示され、且つ
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号8に示される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモノクローナル抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項5】
請求項4に記載の宿主細胞を培養して請求項1または2に記載のモノクローナル抗体を産生することを含む、モノクローナル抗体を産生する方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載のモノクローナル抗体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
IL-23媒介シグナル伝達関連疾患の治療に使用される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記IL-23媒介シグナル伝達関連疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、変形性関節症、胃潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、急性膵炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎・ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー・アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性接触皮膚炎、白斑、乾癬、円形脱毛症、天疱瘡、強皮症、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、バセドウ病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、及び/または急性腎不全である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
IL-23媒介シグナル伝達関連疾患を治療するための薬剤の調製における請求項1または2に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項10】
前記IL-23媒介シグナル伝達関連疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、変形性関節症、胃潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、急性膵炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎・ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー・アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性接触皮膚炎、白斑、乾癬、円形脱毛症、天疱瘡、強皮症、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、バセドウ病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、及び/または急性腎不全から選択されるものである、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体薬剤の分野に関する。具体的には、本発明は、ヒトインターロイキン23(hIL-23)に対するモノクローナル抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IL-23は、主に活性化された樹状細胞、マクロファージ、及び単球によって産生され、IL-12ヘテロダイマーサイトカインファミリーのメンバーであり、主にIL-23p19とIL-12/IL-23p40の2つのサブユニットから構成される。IL-23受容体はIL-12受容体β1とIL-23受容体の2つのサブユニットを含み、IL-23はT細胞、NK細胞、単球マクロファージ/樹状細胞の表面に発現する受容体IL-23R及びIL-12Rβ1と相互作用することにより、下流のシグナル伝達経路を活性化して生物学的機能を発揮する。IL-23は主にTh17細胞に作用し、IL-17A、IL-17F、IL-21、IL-22などの炎症誘発性サイトカインの産生を誘導し、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患及び炎症性疾患において重要な役割を果たす。
【0003】
IL-23を介したシグナル伝達及び生物学的効果は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、変形性関節症、胃潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、急性膵炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎・ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー・アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性接触皮膚炎、白斑、乾癬、円形脱毛症、天疱瘡、強皮症、アレルギー・アトピー性結膜炎、過敏性肺炎、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、バセドウ病(グレーブス病)、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、及び/または急性腎不全などを含む、複数の疾患に関連する。
【0004】
ジョンソン・エンド・ジョンソンとAbbVieが開発したIL-23を標的とするモノクローナル抗体医薬品Guselkumab(商標名Tremfya)及びRisankizumab(商標名SKYRIZI)は、乾癬及び乾癬性関節炎の治療薬として、またクローン病及び炎症性腸疾患に関する第III相臨床研究を実施するために、米国FDAによって承認されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、新しい抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)のモノクローナル抗体、当該モノクローナル抗体を含む医薬組成物、及び当該モノクローナル抗体の製薬用途を提供することを目的とする。
【0006】
すなわち、本発明は下記を含む。
【0007】
1.3つの重鎖相補性決定領域(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)と3つの軽鎖相補性決定領域(CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む単離された抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)モノクローナル抗体であって、
(a)前記CDR-H1(本明細書では、CDR-H1は重鎖CDR1を表す)のアミノ酸配列は配列番号1(NHEMS)に示され;
(b)前記CDR-H2(本明細書では、CDR-H2は重鎖CDR2を表す)のアミノ酸配列は配列番号2(IITTSDTTYYATWAKG)に示され;
(c)前記CDR-H3(本明細書では、CDR-H3は重鎖CDR3を表す)のアミノ酸配列は配列番号3(VDIVLLSVTSRI)に示され;
(d)前記CDR-L1(本明細書では、CDR-L1は軽鎖CDR1を表す)のアミノ酸配列は配列番号4(QASQSVSTYLS)に示され;
(e)前記CDR-L2(本明細書では、CDR-L2は軽鎖CDR2を表す)のアミノ酸配列は配列番号5(GASNLES)に示され;及び
(f)前記CDR-L3(本明細書では、CDR-L3は軽鎖CDR3を表す)のアミノ酸配列は配列番号6(QSGYVFAGLT)に示される、前記モノクローナル抗体。
【0008】
2.重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示され、そのアミノ酸配列はEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLSNHEMSWVRQAPGKGLEWIGIITTSDTTYYATWAKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVDIVLLSVTSRIWGQGTLVTVSSであり、且つ
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号8に示され、そのアミノ酸配列はDVVMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQSVSTYLSWYQQKPGKAPKLLIYGASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQSGYVFAGLTFGGGTKVEIKである、項1に記載のモノクローナル抗体。
【0009】
3.前記いずれか一項に記載のモノクローナル抗体をコードする、単離された核酸。
【0010】
4.項3に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【0011】
前記核酸はベクター上に存在していてもよい。ベクターは、任意のタイプ、例えば、発現ベクターなどの組換えベクターであってもよい。複数の宿主細胞のいずれかを使用してもよい。一実施形態では、宿主細胞は、原核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)である。別の実施形態では、宿主細胞は真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0012】
5.項4に記載の宿主細胞を培養して前記いずれか一項に記載のモノクローナル抗体を産生することを含む、モノクローナル抗体を産生する方法。
【0013】
前記方法は、適切な宿主細胞内において前記抗ヒトインターロイキン-23モノクローナル抗体をコードする組換えベクターを発現させ、それによって前記モノクローナル抗体を産生することを含む。特定の実施形態では、前記方法は、前記抗ヒトインターロイキン-23モノクローナル抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、それによって前記核酸を発現させることを含む。前記方法は、宿主細胞培養物または宿主細胞培養培地から前記抗ヒトインターロイキン-23モノクローナル抗体を回収することをさらに含み得る。
【0014】
6.前記いずれか一項に記載のモノクローナル抗体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【0015】
前記医薬組成物は、他の治療剤(例えば、異なる抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)抗体)をさらに含んでもよい。
【0016】
7.IL-23媒介シグナル伝達関連疾患の治療に使用される、項6に記載の医薬組成物。
【0017】
8.前記IL-23媒介シグナル伝達関連疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、変形性関節症、胃潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、急性膵炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎・ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー・アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性接触皮膚炎、白斑、乾癬、円形脱毛症、天疱瘡、強皮症、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、バセドウ病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、及び/または急性腎不全である、項7に記載の医薬組成物。
【0018】
9.IL-23媒介シグナル伝達関連疾患を治療するための薬剤の調製における前記いずれか一項に記載のモノクローナル抗体の使用。
【0019】
10.前記IL-23媒介シグナル伝達関連疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、変形性関節症、胃潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、急性膵炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎・ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー・アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性接触皮膚炎、白斑、乾癬、円形脱毛症、天疱瘡、強皮症、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、バセドウ病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、及び/または急性腎不全である、項9に記載の使用。
【0020】
11.IL-23媒介シグナル伝達関連疾患を治療する方法であって、それを必要とする被験者に、前記いずれか一項に記載のモノクローナル抗体または前記いずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【0021】
12.前記IL-23媒介シグナル伝達関連疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、変形性関節症、胃潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、急性膵炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎・ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー・アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性接触皮膚炎、白斑、乾癬、円形脱毛症、天疱瘡、強皮症、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、バセドウ病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、及び/または急性腎不全である、項11に記載の方法。
【0022】
13.前記全身性血管炎がウェゲナー肉芽腫症である、項12に記載の方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、新しい抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)モノクローナル抗体を提供する。既存の抗ヒトインターロイキン23モノクローナル抗体(グセルクマブ(Guselkumab)及びリサンキズマブ(Risankizumab))と比較して、本発明の抗ヒトインターロイキン23(hIL-23)モノクローナル抗体はhIL-23と結合する同等の親和性を持っているが、細胞レベルでの拮抗活性はグセルクマブより優れており、リサンキズマブと同等である。
【0024】
なお、リサンキズマブ(SKYRIZI(登録商標))は、日本、米国、欧州連合で販売承認を取得しており、臨床試験の結果、中等度から重度の尋常性乾癬に対する治療効果がジョンソン・エンド・ジョンソンのブロックバスター抗炎症薬STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ(ustekinumab))及びAbbVieのベストセラー抗炎症薬Humira(登録商標)(アダリムマブ(adalimumab))よりも優れている。
【0025】
本発明のモノクローナル抗体は、細胞レベルでリサンキズマブに匹敵する拮抗活性を示し、関連疾患の予防及び治療において良好な臨床効果を示すことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、QX004N(HZD90-32)一過性発現プラスミドを構築する核酸電気泳動の結果を示す図である。その中で、M:マーカー(Marker);バンド1:PCR生成物90VH-Hu18;バンド2:pHZDCH、HindIII/NheI;バンド3:PCR生成物90VH-Hu9;バンド4:pHZDCK、HindIII/BsiWI。
【
図2】
図2は、一過性発現のフローチャートである。
【
図3】
図3は、QX004N(HZD90-32)の電気泳動検出図である。
【
図4】
図4は、QX004N(HZD90-32)、グセルクマブ及びリサンキズマブが、IL-23によって誘導されるHEK Blue(商標)IL-23細胞におけるSTAT3リン酸化を阻害する活性を示す図である。
【
図5】
図5は、QX004N(HZD90-32)、グセルクマブ及びリサンキズマブが、IL-23によって誘導されるマウス脾臓細胞からのIL-17A放出を阻害する活性を示す図である。
【
図6】
図6は、QX004N(HZD90-32)、グセルクマブ及びリサンキズマブが、IL-23によって誘導されるヒトNK細胞からのIFN-γ放出を阻害する活性を示す図である。
【
図7】
図7は、QX004N(HZD90-32)、グセルクマブ及びリサンキズマブのIL-23 p19サブユニットへの結合特異性の検出図である。
【発明の詳細】
【0027】
本明細書に記載されている科学技術用語は、当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有するが、矛盾する場合には、本明細書の定義に準ずる。
【0028】
一般的にいえば、本明細書で使用されている用語は、以下の意味を有する。
【0029】
本明細書において、「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から分離された抗体をいう。ある一部の実施形態では、抗体を95%または99%を超える純度に精製し、前記純度は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE等電集束(IEF)、毛細管電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって確定される。抗体の純度を評価する方法について、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
【0030】
本明細書において、「モノクローナル抗体」とは、実質的に相同な抗体の群から得られた抗体のことであり、すなわち、該群を構成する各抗体は可能な変異体抗体(例えば、自然に存在する突然変異またはモノクローナル抗体の製品の製造過程において発生するもの)を除き、同一であり、及び/または同じエピトープに結合し、このような変異体は一般に微量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む典型的なポリクローナル抗体製品と違って、モノクローナル抗体製品における各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する。よって、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に相同な抗体群から得られる特徴を示し、いずれか特定の方法で調製する必要のある抗体と解釈すべきではない。例えば、本発明のモノクローナル抗体は複数の技術によって製造することができ、前記技術は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限られない。本文は、このような方法、及びモノクローナル抗体を調製するその他の例示的な方法を記載している。
【0031】
本明細書において、「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合サイトとその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別途説明する場合を除き、本明細書で使用されている「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に平衡解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本分野で既知の常用方法によって測定することができる。
【0032】
本明細書において、ヒトインターロイキン23(Human Interleukin-23、hIL-23)は、ヒト由来タンパク質を表し、p19とp40の2つのサブユニットから構成されるヘテロ二量体である。p19のアミノ酸配列は配列番号9に示され、p40のアミノ酸配列は配列番号10に示され、下線部分は、シグナルペプチドを表す。
配列番号9:
MLGSRAVMLLLLLPWTAQGRAVPGGSSPAWTQCQQLSQKLCTLAWSAHPLVGHMDLREEGDEETTNDVPHIQCGDGCDPQGLRDNSQFCLQRIHQGLIFYEKLLGSDIFTGEPSLLPDSPVGQLHASLLGLSQLLQPEGHHWETQQIPSLSPSQPWQRLLLRFKILRSLQAFVAVAARVFAHGAATLSP
配列番号10:
MCHQQLVISWFSLVFLASPLVAIWELKKDVYVVELDWYPDAPGEMVVLTCDTPEEDGITWTLDQSSEVLGSGKTLTIQVKEFGDAGQYTCHKGGEVLSHSLLLLHKKEDGIWSTDILKDQKEPKNKTFLRCEAKNYSGRFTCWWLTTISTDLTFSVKSSRGSSDPQGVTCGAATLSAERVRGDNKEYEYSVECQEDSACPAAEESLPIEVMVDAVHKLKYENYTSSFFIRDIIKPDPPKNLQLKPLKNSRQVEVSWEYPDTWSTPHSYFSLTFCVQVQGKSKREKKDRVFTDKTSATVICRKNASISVRAQDRYYSSSWSEWASVPCS
【0033】
本明細書において、「抗ヒトインターロイキン23モノクローナル抗体」とは、ヒトインターロイキン23を標的とする診断薬及び/または治療薬として使用できるように、十分な親和性でヒトインターロイキン23に結合できるモノクローナル抗体を意味する。
【0034】
本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体は、標的と関係ないタンパク質に結合しない。ここで、「関係ないタンパク質」とは、標的としてのヒトインターロイキン23以外のタンパク質をいい、ここで「結合しない」とは、本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体と、その標的となるヒトインターロイキン23との結合能を100%とした場合、本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体の前記関係ないタンパク質への結合能は10%未満であり、例えば9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%または0であることを指す。
【0035】
本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体は、他の動物種のインターロイキン23に結合しなくてもよい。ここで、「他の動物種」とは、アカゲザル、カニクイザル、ラット、マウスなどのヒト以外の動物種を指す。ここで「結合しない」とは、本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体と、その標的となるヒトインターロイキン23との結合能を100%とした場合、本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体のその他の動物種のインターロイキン23への結合能は10%未満であり、例えば9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%または0であることを指す。
【0036】
本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体は、1μM以下、100nM以下、50nM以下、40nM以下の平衡解離定数(KD)を有する。
【0037】
実験結果は、本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体が、ヒトインターロイキン23(IL-23)のp19サブユニットに特異的に結合できることを示している。
【0038】
本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体は、多くの生物学的活性において、市販されている類似のモノクローナル抗体製品と同等またはそれより優れている。前記生物学的活性として、例えば、IL-23によって誘導される細胞中のSTAT3リン酸化を阻害する活性、IL-23によって誘導されるマウス脾臓細胞からのIL-17A放出を阻害する活性、IL-23によって誘導されるヒトNK細胞からのIFN-γ放出を阻害する活性が挙げられる。
【0039】
一実施形態では、本発明の抗ヒトインターロイキン23(IL-23)モノクローナル抗体の重鎖のアミノ酸配列は、配列番号11に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号12に示される。
配列番号11
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLSNHEMSWVRQAPGKGLEWIGIITTSDTTYYATWAKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVDIVLLSVTSRIWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号12
DVVMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQSVSTYLSWYQQKPGKAPKLLIYGASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQSGYVFAGLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
その中で、配列番号11と12はいずれもヒト化された配列である。
【0040】
本明細書において、「単離された」核酸とは、その自然環境の成分から分離された核酸分子を意味する。単離された核酸は、通常は核酸分子を含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、前記核酸分子は、染色体外、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0041】
本明細書において、「抗ヒトインターロイキン23モノクローナル抗体をコードする単離された核酸」とは、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つまたは複数の核酸分子を意味し、単一のベクターまたは別個のベクター中のそのような核酸分子、及び宿主細胞に存在する1つまたは複数の位置に存在するそのような核酸分子を含む。
【0042】
本明細書において、「ベクター」とは、それに連結した別の核酸を増幅することができる核酸分子を意味する。この用語には、自己複製核酸構造であるベクター、及びそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。ある一部のベクターは、それらに操作可能に連結されている核酸の発現をガイドすることができる。このようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
【0043】
本明細書において、「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」は互いに置き換えて使用することができ、外因性核酸が導入された細胞を表し、そのような細胞の後代を含む。宿主細胞は、「形質転換体」と「形質転換細胞」とを含み、初代形質転換細胞とそれに由来する後代(継代数を問わず)とを含む。後代は、核酸内容物では親細胞と完全に同じでなくてもよく、突然変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択された、同じ機能または生物学的活性を有する変異体後代は、本明細書に含まれている。
【0044】
本明細書において、「医薬組成物」とは、その中に含まれている活性成分の生物学的活性を有効にする形を取っており、製剤が投与される被験者に対して容認できない毒性を持つ追加の成分を含まない組成物のような製品を指す。
【0045】
本明細書において、「薬学的に許容される担体」とは、医薬組成物に含まれる、活性成分以外の、被験者に対して無毒である成分を意味する。薬学的に許容される担体は、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または防腐剤を含むが、これらに限られていない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を通して本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限られていないことを理解されたい。
【0047】
実施例1 抗ヒトインターロイキン23モノクローナル抗体QX004Nの調製
ニュージーランドウサギの免疫のためのヒトインターロイキン23(IL-23)を上海近岸科技有限公司(Novoprotein)から購入し、B細胞クローニング技術を使用して抗原結合特異的抗体クローンを得、さらにIL-23に結合しており、かつIL-23阻害活性を有するモノクローナル抗体をスクリーニングした。まず、binding ELISAを利用して細胞上清を検出し、IL-23に結合するクローンを選択した後、blocking ELISAで検出し、IL-23阻害活性を有するクローンを選択した。上記の免疫及びスクリーニングプロセスは、商業会社に委託されて完成された。
【0048】
5つのクローンを選択して組換え発現されてから、シーケンシングした。90#クローンに対してヒト化した。NCBI IgBlastを使用してヒトIgG生殖系列配列(Germline)の同一性アラインメントを行い、IgGHV3-66*01を重鎖CDR移植テンプレートとして選択して、90#クローン重鎖のCDR領域(すなわち、CDR-H1(配列番号1)、CDR-H2(配列番号2)、及びCDR-H3(配列番号3))をIgGHV3-66*01のフレームワーク領域に移植し、IGKV1-39*01を選択して軽鎖CDR移植テンプレートとし、90#クローン軽鎖のCDR領域(すなわち、CDR-L1(配列番号4)、CDR-L2(配列番号5)、及びCDR-L3(配列番号6))をIGKV1-39*01のフレームワーク領域に移植した。フレームワーク領域の特定の部位に対して復帰突然変異を行い、重鎖CDR-H3の103番目のメチオニン(Met、M)をロイシン(Leu、L)に変異させて本発明のモノクローナル抗体QX004N可変領域を得た。最後に、ヒト化された重鎖可変領域の配列は配列番号7に示され、ヒト化された軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号8に示される。
【0049】
上記の重鎖可変領域(配列番号7)の遺伝子はPCR増幅により得られ、軽鎖可変領域(配列番号8)の遺伝子はPCR増幅により得られた。HindIIIとNheIを使用して重鎖発現プラスミドpHZDCHを二重消化させ、HindIIIとBsiWIを使用して軽鎖発現プラスミドpHZDCKを二重消化させ、インフュージョンリコンビナーゼを使用して、PCR増幅遺伝子を対応する発現プラスミドに挿入し、重鎖発現プラスミドpHZDCH-90VH-Hu18及び軽鎖発現プラスミドpHZDCK-90VK-Hu9を構築した。
【0050】
プラスミドの二重消化を核酸電気泳動で検出した結果を
図1に示す。
図1の結果から分かるように、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域のPCR増幅の結果、及び重鎖と軽鎖の発現プラスミドを二重消化させた結果、重鎖と軽鎖のプラスミドのサイズは約10000bpであり、軽鎖可変領域は約438bpであり、重鎖可変領域は約459bpである。
配列が正しい重鎖発現プラスミドと軽鎖発現プラスミドをExpiCHO-S細胞を同時トランスフェクションした。トランスフェクションの前日、ExpiCHO-S細胞を3×10
6細胞/mlに希釈して、トランスフェクション前の継代を行った。トランスフェクション当日、細胞密度を6×10
6細胞/mlに希釈し、トランスフェクションのために25mlの細胞を125mlの振とうフラスコに入れた。トランスフェクションと発現のプロセスを
図2に示す。
【0051】
トランスフェクション後4~8日目に、培養上清を採取し、Protein Aを使用してワンステップで精製した。精製された抗体をSDS-PAGE電気泳動で検出し、QX004N(HZD90-32)と名付けた。当該抗体をタンパク質電気泳動で検出した結果を
図3に示す。タンパク質電気泳動は変性還元ゲルで検出され、
図3に示される結果から分かるように、2つのバンドがあり、2つのバンドのサイズはそれぞれ約50kDaと25kDaであり、重鎖(49.1kDa)と軽鎖(23.1kDa)の理論上の分子量と一致している。
【0052】
実施例2 平衡解離定数(KD)の測定
BiacoreT200を使用してQX004N(HZD90-32)とIL-23の親和性を検出し、すべてのプロセスを25℃で行った。市販のProtein Aタンパク質チップを使用し、Rmaxが約50RU、捕捉流量が10μl/分になるように、捕捉法によって適切な量の抗体を固定した。抗原を段階的に希釈し、機器の流量を30μl/分に切り替え、濃度が低いものから高いものへの順番で参照チャネルと抗体固定チャネルを流し、ネガティブ対照として緩衝液を流した。各結合と解離が完了した後、pH1.5グリシンでチップを再生した。機器に付属されている解析ソフトウェアを使用して、Kinetics選択肢における1:1結合モデルに従ってフィッティングさせ、抗体の結合速度定数ka、解離速度定数kd、及び平衡解離定数KDの値を計算した。
【0053】
また、QX004N(HZD90-32)と、現在すでに市販されているIL-23に対するモノクローナル抗体、すなわち、グセルクマブ及びリサンキズマブとの親和性を比較した。既知の抗体に対する検出方法は、QX004Nに対する検出方法と同じであった。結果を表1に示す。ここで、グセルクマブ及びリサンキズマブは市販薬を購入することで入手した。
【0054】
【0055】
実施例3 QX004N、グセルクマブ及びリサンキズマブの、IL-23によって誘導されるHEK Blue(商標)IL-23細胞中のSTAT3リン酸化を阻害する活性
HEK Blue(商標)IL-23細胞レポーター遺伝子細胞株を使用して、QX004N、グセルクマブ、及びリサンキズマブが、IL-23を介した細胞内シグナル分子STAT3リン酸化を阻害する活性を測定した。培地中の細胞をウェルあたり4×10
4細胞で96ウェルプレートに添加し、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で一晩培養した。IL-23を1ng/mlに希釈し、抗体を0~2μg/mlの範囲の濃度で段階希釈して、等体積のIL-23と勾配希釈抗体を混合し、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で1.5時間インキュベートした。その後、混合液を細胞に加え、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で24時間培養した後、細胞培養上清を回収し、10%QUANTI-Blue(商標)検出試薬を加え、37℃で1時間反応させた。次にOD630nm値を検出し、用量反応曲線を作成し、抗体の中和活性を分析した。用量反応曲線を
図4に示す。
【0056】
図4に示す結果から分かるように、QX004Nは、HEK Blue(商標)IL-23細胞におけるIL-23誘導STAT3リン酸化活性を阻害でき、そのIC
50は3.21ng/mlである;グセルクマブ及びリサンキズマブもIL-23誘導HEK Blue(商標)IL-23細胞におけるSTAT3リン酸化活性を阻害でき、それらのIC
50はそれぞれ6.18ng/ml及び3.51ng/mlである。これは、QX004NがIL-23によって誘導されるシグナル伝達活性を阻害する活性は、現在市販されているIL-23に対するモノクローナル抗体、すなわちリサンキズマブの活性と同等であり、グセルクマブよりも優れていることを示している。
【0057】
実施例4 QX004N、グセルクマブ及びリサンキズマブの、IL-23によって誘導されるマウス脾臓細胞からのIL-17A放出を阻害する活性
マウス脾臓細胞を使用して、QX004N、グセルクマブ、及びリサンキズマブがIL-23によって誘導されるIL-17A放出を阻害する活性を測定した。マウス脾臓から初代マウス脾臓細胞を得、培養液中の細胞をウェルあたり5×10
5細胞で96ウェルプレートに添加した。IL-23を10ng/mlに希釈し、抗体を0~20μg/mlの範囲の濃度で段階希釈して、等体積のIL-23と勾配希釈抗体を混合し、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で1.5時間インキュベートした。その後、混合液を細胞に加え、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で48時間培養した後、細胞培養上清を回収し、ELISA Kitを使用してIL-17Aの発現量を検出し、用量反応曲線を作成し、抗体の中和活性を分析した。用量反応曲線を
図5に示す。
【0058】
図5に示す結果から分かるように、QX004Nはマウス脾臓細胞からのIL-23誘導によるIL-17Aの放出活性を阻害でき、そのIC
50が11.7ng/mlである;グセルクマブ及びリサンキズマブは、IL-23によって誘導されたマウス脾臓細胞からのIL-17Aの放出も阻害でき、それらのIC
50はそれぞれ13.5ng/ml及び8.43ng/mlである。これは、QX004Nが、IL-23によって誘導されるマウス脾臓細胞からのIL-17A放出を阻害する強力な活性を持っており、既存の市販品(グセルクマブ及びリサンキズマブ)の効果とは同等であることを示している。
【0059】
実施例5 QX004N、グセルクマブ及びリサンキズマブの、IL-23によって誘導されるヒトNK細胞からのIFN-γ放出を阻害する活性
ヒトNK細胞を用いてIL-23誘導IFN-γ放出活性を阻害するQX004N、グセルクマブ、及びリサンキズマブの活性を測定した。末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心法によって健康なボランティアの末梢血から分離し、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を磁気ビーズ選別によってPBMCから選別し、100U/ml IL-2を加えてCO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で3日間活性化して培養した。20ng/mlのIL-18を培養液に添加し、培養液中の細胞をウェルあたり1×10
5細胞で96ウェルプレートに添加した。IL-23を10ng/mlに希釈し、抗体を0~5μg/mlの範囲の濃度で段階希釈して、等体積のIL-23と勾配希釈抗体を混合し、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で1.5時間インキュベートした。その後、混合液を細胞に加え、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)で48時間培養した後、細胞培養上清を回収し、ELISA Kitを使用してIFN-γの発現量を検出し、用量反応曲線を作成し、抗体の中和活性を分析した。用量反応曲線を
図6に示す。
【0060】
図6に示す結果から分かるように、QX004Nは、IL-23によって誘導されるヒトNK細胞からのIFN-γの放出活性を阻害でき、そのIC
50が10.4ng/mlである;グセルクマブ及びリサンキズマブは、IL-23によって誘導されたヒトNK細胞からのIFN-γの放出も阻害でき、それらのIC
50はそれぞれ16.8ng/ml及び11.1ng/mlである。これは、QX004Nが、IL-23によって誘導されるヒトNK細胞からのIFN-γの放出を阻害する活性は、既存の市販品グセルクマブよりも強力であり、リサンキズマブの活性と同等であることを示している。
【0061】
上記の実施例3~5から分かるように、測定された3つの細胞レベルでの生物活性に関して、QX004Nは、グセルクマブよりも優れており、リサンキズマブとほぼ同じである。リサンキズマブ(SKYRIZI(登録商標))が中等度から重度の尋常性乾癬の治療にとても有効であることが臨床試験で証明されていることを考えると、QX004Nは関連疾患の予防及び治療においても優れた臨床効果を示すことが期待される。
【0062】
実施例6 IL-23 p19サブユニットに結合するQX004N、グセルクマブ及びリサンキズマブの特異性の検出
IL-23のp40サブユニットへのQX004N、グセルクマブ及びリサンキズマブの結合を、Binding ELISA法によって測定した。IL-23-p40を2μg/mlに希釈してマイクロタイタープレートに加え、4℃で一晩コーティングした。ブロッキング後、0~5μg/mlの濃度範囲に希釈した一連の抗体希釈液とヤギ抗ヒトIgG二次抗体を加えてインキュベーションし、最後に発色のための基質を加え、停止液を加えて発色反応を停止させた。停止完了後、マイクロプレートプレートをマイクロプレートリーダーにセットし、450nmの吸光度値を読み取り(650nmの吸光度値を基準とする)、用量反応曲線を作成し、抗体の結合特異性を分析した。用量反応曲線を
図7に示す。
【0063】
図7に示す結果から分かるように、IL-23 p40特異的抗体QX001Sは、p40サブユニットに結合でき、QX004N、グセルクマブ、及びリサンキズマブはIL-23のp40サブユニットに結合しない。これは、QX004N、グセルクマブ、及びリサンキズマブがIL-23のp19サブユニットに特異的に結合していることを示している。
【0064】
実施例7 点突然変異を使用してQX004N及びリサンキズマブのIL-23p19への結合の違いについての研究
PCR法により変異プライマーを設計し、5つの単一点変異を含むp19プラスミドをそれぞれ構築し、表2に示す。p19変異プラスミドとp40プラスミドを293F細胞にコトランスフェクトし、IL-23変異体を含む細胞上清を調製した。定量的ELISAを使用して細胞上清中のIL-23変異体のタンパク質濃度を定量し、異なるIL-23変異体と結合するQX004N及びリサンキズマブのEC50値を結合ELISAによって検出した。
【0065】
IL-23変異体を含む細胞上清の濃度をBinding ELISA法で定量した。抗p40抗体を2μg/mlに希釈してマイクロタイタープレートに加え、4℃で一晩コーティングした。ブロッキング後、0~50ng/mlの濃度範囲に希釈した既知濃度の精製IL-23、及び勾配希釈したIL-23変異体を含む細胞上清を添加してインキュベートした。その後、ビオチン標識抗His抗体とSA-HRPを加えてインキュベートし、最後に発色のための基質を加え、停止液を加えて発色反応を停止させた。停止完了後、マイクロプレートプレートをマイクロプレートリーダーにセットし、450nmの吸光度値を読み取り(650nmの吸光度値を基準とする)、既知濃度の精製IL-23の用量反応曲線を標準曲線として作成し、標準曲線及びIL-23変異細胞の上清のOD値によって、IL-23変異細胞の上清の濃度を計算した。
【0066】
IL-23変異体へのQX004N及びリサンキズマブの結合を、Binding ELISA法によって測定した。QX004N及びリサンキズマブをそれぞれ1μg/mlに希釈してマイクロタイタープレートに加え、4℃で一晩コーティングした。ブロッキング後、0~0.5μg/mlの濃度範囲に希釈した一連のIL-23変異体細胞上清希釈液を加えてインキュベートした。その後、ビオチン標識抗His抗体とSA-HRPをそれぞれ加えてインキュベートし、最後に発色のための基質を加え、停止液を加えて発色反応を停止させた。停止完了後、マイクロプレートプレートをマイクロプレートリーダーにセットし、450nmの吸光度値を読み取り(650nmの吸光度値を基準とする)、用量反応曲線を作成し、EC50値を計算した。IL-23変異体のEC50値が天然のIL-23の10倍を超える場合、その変異に対応する部位が抗体結合のエピトープであることを意味する。EC50の結果を表2に示す。
【0067】
表2に示す結果から分かるように、IL-23p19に結合するQX004N及びリサンキズマブのエピトープが異なり、W137がQX004Nの重要なエピトープである。Jutta SchroderとYehudi Blochらは、W137が、IL-23p19がIL-23受容体(IL-23R)に結合する重要な部位の1つであることをそれぞれ確認した。
【0068】
【0069】
要約すると、本発明のモノクローナル抗体は、STAT3リン酸化活性を阻害し、IL-23が誘導するマウス脾臓細胞からのIL-17Aの放出活性を阻害し、IL-23が誘導するヒトNK細胞のIFN-γの放出活性を阻害することができる。その阻害活性は、現在市販されている製品であるグセルクマブよりも優れており、リサンキズマブと同等である。IL-23が誘導するマウス脾臓細胞からのIL-17Aの放出活性に対して、本発明のモノクローナル抗体は、IL-23が誘導するマウス脾臓細胞からのIL-17Aの放出を阻害する活性が、グセルクマブ及びリサンキズマブと同等である。
【0070】
本発明のモノクローナル抗体は、現在市販されている製品(グセルクマブ及びリサンキズマブ)と同様に、IL-23のp19サブユニットに特異的に結合することができるが、IL-23p19に結合する本発明のモノクローナル抗体のエピトープは、IL-23p19に結合するグセルクマブ及びリサンキズマブのエピトープとは異なり、W137は本発明のモノクローナル抗体の重要なエピトープであるが、グセルクマブ及びリサンキズマブの重要なエピトープではない(グセルクマブのエピトープ研究について、国際特許出願公開WO2007076524A2を参照、リサンキズマブのエピトープ研究については、Sanjaya et al.,Selective targeting of the IL23 pathway Generation and characterization of a novel high affinity humanized anti-IL23A antibody,mAbs,Volume 7,Issue 4,2015を参照されたい)。
【0071】
また、リサンキズマブ(SKYRIZI(登録商標))は、日本、米国、欧州連合で販売承認を取得しており、臨床試験の結果、中等度から重度の尋常性乾癬に対する治療効果がジョンソン・エンド・ジョンソンのブロックバスター抗炎症薬STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ(ustekinumab))及びAbbVieのベストセラー抗炎症薬Humira(登録商標)(アダリムマブ(adalimumab))よりも優れている。そのため、本発明に記載のモノクローナル抗体は、関連疾患の予防及び治療において良好な臨床効果を発揮することが期待される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】