(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】バス部材、電池及び電力消費機器
(51)【国際特許分類】
H01M 50/503 20210101AFI20230526BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20230526BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20230526BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/583
H01M50/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571440
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2021084736
(87)【国際公開番号】W WO2022205215
(87)【国際公開日】2022-10-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 学▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲ル▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 小波
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA04
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA05
5H043FA04
5H043GA04
5H043JA04F
5H043JA06F
5H043LA02F
5H043LA11F
(57)【要約】
本願はバス部材、電池及び電力消費機器を提供し、電池の技術分野に関する。バス部材は、第1のセルの第1の電極端子と接続するための第1の接続部と、第2のセルの第2の電極端子と接続するための第2の接続部と、それぞれの一端が第1の接続部に接続され、他端が第2の接続部に接続される複数の溶断部とを備え、複数の溶断部のうち過電流断面積の最も大きいものに対応する過電流断面積はSmaxであり、複数の溶断部のうち過電流断面積の最も小さいものに対応する過電流断面積はSminであり、SminとSmaxは関係式0.3≦Smin/Smax≦1を満たす。すべての溶断部のうち最小過電流断面積Sminと最大過電流断面積Smaxは0.3≦Smin/Smax≦1を満たし、短絡の場合、バス部材の溶断部の溶断時間が短く、それにより、短絡時間を短縮させ、長時間の短絡による溶断部の溶断プロセスでのアークエネルギーの蓄積を回避する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バス部材であって、
第1のセルの第1の電極端子と接続するための第1の接続部と、
第2のセルの第2の電極端子と接続するための第2の接続部と、
それぞれの一端が前記第1の接続部に接続され、他端が前記第2の接続部に接続される複数の溶断部と、を備え、
前記複数の溶断部のうち過電流断面積の最も大きいものに対応する過電流断面積はS
maxであり、前記複数の溶断部のうち過電流断面積の最も小さいものに対応する過電流断面積はS
minであり、S
minとS
maxは関係式0.3≦S
min/S
max≦1を満たす、バス部材。
【請求項2】
S
minとS
maxは関係式0.8≦S
min/S
max<1を満たす、請求項1に記載のバス部材。
【請求項3】
前記複数の溶断部の過電流断面積の合計はS
totalであり、S
minとS
totalは関係式0.2≦S
min/S
totalを満たし、
S
maxとS
totalは関係式S
max/S
total≦0.6を満たす、請求項1又は2に記載のバス部材。
【請求項4】
前記複数の溶断部のうちの少なくとも2つの溶断部の過電流断面積は等しくない、請求項1~3のいずれか1項に記載のバス部材。
【請求項5】
前記溶断部の数は少なくとも3つであり、
前記少なくとも3つの溶断部は前記バス部材の幅方向に並んで配置され、前記少なくとも3つの溶断部の過電流断面積は前記バス部材の幅方向の両側から中央へ順に減少する、請求項1~4のいずれか1項に記載のバス部材。
【請求項6】
前記溶断部の過電流断面積はその厚さの1.5倍よりも大きい、請求項1~5のいずれか1項に記載のバス部材。
【請求項7】
少なくとも1つの前記溶断部に曲げ部が設けられ、前記曲げ部は前記バス部材の幅方向の応力を吸収するように配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載のバス部材。
【請求項8】
前記複数の溶断部は、前記バス部材の幅方向の少なくとも一側において、前記第1の接続部及び前記第2の接続部とともに切り欠きを形成する、請求項1~7のいずれか1項に記載のバス部材。
【請求項9】
前記バス部材の幅方向の一側において、前記第1の接続部及び第2の接続部とともに第1の切り欠きを形成し、他側において、前記第1の接続部及び第2の接続部とともに第2の切り欠きを形成し、
前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとは、前記バス部材の幅方向での深さが異なる、請求項8に記載のバス部材。
【請求項10】
前記バス部材は保護カバーをさらに備え、前記保護カバーは前記複数の溶断部を包んで前記複数の溶断部を保護するように配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載のバス部材。
【請求項11】
電池であって、
第1の電極端子を有する第1のセルと、
第2の電極端子を有する第2のセルと、
前記第1の接続部が前記第1の電極端子に接続され、前記第2の接続部が前記第2の電極端子に接続される請求項1~10のいずれか1項に記載のバス部材と、を備える、電池。
【請求項12】
請求項11に記載の電池を備え、前記電池は電気エネルギーを提供するために使用される、電力消費機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池の技術分野に関し、具体的には、バス部材、電池及び電力消費機器に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン蓄電池は、高エネルギー密度、良好なサイクル特性等の優れた利点により、二次電池の主流製品となり、携帯型電気機器、動力自動車、携帯電話、宇宙機等の分野に広く使用されている。電池の安全性の問題は、ユーザーが主に注目する問題の1つであり、電池の発展を制限する主な要因の1つでもある。従って、電池の安全性能をどのように向上させるかは電池分野で急いで解決する必要がある問題となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本願の実施例は、電池の安全性能を向上させるために、バス部材、電池及び電力消費機器を提供する。
【0004】
第1の態様では、本願の実施例はバス部材を提供し、第1のセルの第1の電極端子と接続するための第1の接続部と、第2のセルの第2の電極端子と接続するための第2の接続部と、それぞれの一端が前記第1の接続部に接続され、他端が前記第2の接続部に接続される複数の溶断部とを備え、前記複数の溶断部のうち過電流断面積の最も大きいものに対応する過電流断面積はSmaxであり、前記複数の溶断部のうち過電流断面積の最も小さいものに対応する過電流断面積はSminであり、SminとSmaxは関係式0.3≦Smin/Smax≦1を満たす。
【0005】
上記技術案において、バス部材に複数の溶断部を設け、すべての溶断部のうち最小過電流断面積Sminと最大過電流断面積Smaxが0.3≦Smin/Smax≦1を満たすようにすることにより、バス部材を流れる電流が閾値を超える場合に、すべての溶断部の溶断開始から完全溶断までの時間差を短くし、すなわちバス部材の溶断時間が短く、それにより、第1のセルと第2のセルとの短絡時間を短縮させ、長時間の短絡による溶断部の溶断プロセスでのアークエネルギーの蓄積を回避し、溶断プロセスでのアークによる損傷を減らすことができる。溶断部が複数であることで、バス部材の過電流プロセスでの放熱性能をさらに向上させることができる。溶断部の一部が誤って機械的に切断された場合、他の切断されていない溶断部は依然としてバス部材の通常の動作を確保することができる。
【0006】
第1の態様のいくつかの実施例では、SminとSmaxは関係式0.8≦Smin/Smax<1を満たす。
【0007】
上記技術案では、Smin/Smaxの比率が0.8~1の場合、溶断時間差が最小であり、すべての溶断部の溶断開始から完全溶断までの時間差をさらに短縮させ、すなわちバス部材の溶断時間を短縮させることができ、それにより、短絡時間をさらに短縮させ、長時間の短絡による溶断部の溶断プロセスでのアークエネルギーの蓄積を効果的に回避し、溶断プロセスでのアークによる損傷を減らすことができる。
【0008】
第1の態様のいくつかの実施例では、前記複数の溶断部の過電流断面積の合計はStotalであり、SminとStotalは関係式0.2≦Smin/Stotalを満たし、SmaxとStotalは関係式Smax/Stotal≦0.6を満たす。
【0009】
上記技術案では、最小過電流面積Sminとすべての溶断部の過電流断面積の合計Stotalとの比率を0.2以上に限定し、最大過電流断面積Smaxとすべての溶断部の過電流断面積の合計Stotalとの比率を0.6以下に限定することにより、バス部材の溶断時間をさらに最適化し、第1のセルと第2のセルとの長時間の短絡を回避することができる。
【0010】
第1の態様のいくつかの実施例では、前記複数の溶断部のうちの少なくとも2つの溶断部の過電流断面積は等しくない。
【0011】
上記技術案では、すべての溶断部の過電流断面積の合計が一定である場合、少なくとも2つの溶断部の過電流断面積は等しくないことで、バス部材の溶断時間差が最小値になり、バス部材の溶断時間差をさらに最適化し、第1のセルと第2のセルの長時間の短絡を回避する。
【0012】
第1の態様のいくつかの実施例では、前記溶断部の数は少なくとも3つであり、前記少なくとも3つの溶断部は前記バス部材の幅方向に並んで配置され、前記少なくとも3つの溶断部の過電流断面積は前記バス部材の幅方向の両側から中央へ順に減少する。
【0013】
上記技術案では、外力による作用を受けると、バス部材の幅方向の両側は大きなトルクを受け、従って、溶断部の過電流断面積はバス部材の幅方向の両側から中央へ順に減少することで、バス部材の機械的強度が向上し、それにより、バス部材は幅方向の両側で大きなトルクを受けることができる。
【0014】
第1の態様のいくつかの実施例では、前記溶断部の過電流断面積はその厚さの1.5倍よりも大きい。
【0015】
上記技術案では、バス部材がスタンピングによって成形されるため、スタンピングの効果を確保するには十分な幅のサイズは必要であり、従って、溶断部の過電流断面積はその厚さの1.5倍よりも大きくすることで、溶断部の幅は厚さの1.5倍より大きくなり、バス部材の製造可能性を向上させる。
【0016】
第1の態様のいくつかの実施例では、少なくとも1つの前記溶断部に曲げ部が設けられ、前記曲げ部は前記バス部材の幅方向の応力を吸収するように配置される。
【0017】
上記技術案では、溶断部に曲げ部を設けることにより、バス部材の幅方向の応力を吸収し、バス部材及びセルに対して一定の保護効果を果たすことができる。
【0018】
第1の態様のいくつかの実施例では、前記複数の溶断部は、前記バス部材の幅方向の少なくとも一側において、前記第1の接続部及び前記第2の接続部とともに切り欠きを形成する。
【0019】
上記技術案では、切り欠きが設けられることにより保護カバーの配置が容易になり、保護カバーのないバス部材の場合に、切り欠きは他の構造のために空間を残すことができるとともに、溶断部は電池のボックスの内壁から一定の距離離れており、溶断部の溶断プロセスで生じた高温がボックスに損傷を与えることを回避する。
【0020】
第1の態様のいくつかの実施例では、前記バス部材の幅方向の一側において、前記第1の接続部及び第2の接続部とともに第1の切り欠きを形成し、他側において、前記第1の接続部及び第2の接続部とともに第2の切り欠きを形成し、前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとは、前記バス部材の幅方向での深さが異なる。
【0021】
上記技術案では、第1の切り欠きと第2の切り欠きとは深さが異なり、深さの深い切り欠きが、電池のボックスのバス部材に最も近い内壁に向けられている場合、該溶断部の溶断で生じた高温がボックスに損傷を与えることを回避する。
【0022】
第1の態様のいくつかの実施例では、前記バス部材は保護カバーをさらに備え、前記保護カバーは前記複数の溶断部を包んで前記複数の溶断部を保護するように配置される。
【0023】
上記技術案では、保護カバーは、溶断部を保護し、ボックスの変形、第1のセルと第2のセルとの間の距離変化等に起因する機械的破断を回避するだけでなく、溶断部の溶断プロセスで生じた高温によるボックス、第1のセル及び第2のセルへの損傷を低減させ、溶断部の溶断動作で生じたアークによる損傷を低減させることができる。保護カバーはさらにバス部材の構造的強度を高めることができる。
【0024】
第2の態様では、本願の実施例は電池を提供し、第1の電極端子を有する第1のセルと、第2の電極端子を有する第2のセルと、第1の態様のいずれかの実施例に係るバス部材とを備え、前記第1の接続部が前記第1の電極端子に接続され、前記第2の接続部が前記第2の電極端子に接続される。
【0025】
上記技術案では、電池のバス部材に複数の溶断部を設け、すべての溶断部のうち最小過電流断面積Sminと最大過電流断面積Smaxが0.3≦Smin/Smax≦1を満たすようにすることにより、バス部材を流れる電流が閾値を超える場合に、すべての溶断部の溶断開始から完全溶断までの時間差を短くし、すなわちバス部材の溶断時間が短く、それにより、第1のセルと第2のセルとの短絡時間を短縮させ、長時間の短絡による溶断部の溶断プロセスでのアークエネルギーの蓄積を回避し、溶断プロセスでのアークによる損傷を減らし、電池の安全性能をさらに向上させることができる。
【0026】
第3の態様では、本願の実施例は電力消費機器を提供し、第2の態様の実施例に係る電池を備え、前記電池は電気エネルギーを供給するために使用される。
【0027】
上記技術案では、電池が短絡すると、電池のバス部材の溶断時間が短く、それにより、長時間の短絡による溶断部の溶断プロセスでのアークエネルギーの蓄積を回避し、溶断プロセスでのアークによる損傷を減らし、電池の安全性能及び電力消費機器の電気的安全性をさらに向上させることができる。
【0028】
本願の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下、本願の実施例に必要な図面を簡単に説明し、明らかなように、以下に説明された図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をせずに図面に基づき他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本願のいくつかの実施例に係る車両の構造模式図である。
【
図2】本願のいくつかの実施例に係る電池の分解図である。
【
図3】本願のいくつかの実施例に係るセルの分解図である。
【
図4】本願のいくつかの実施例に係るセルの組み立て図である。
【
図5】本願のいくつかの実施例に係るバス部材によって接続された複数のセルの不等角投影図である。
【
図6】本願のいくつかの実施例に係るバス部材によって接続された複数のセルの平面図である。
【
図8】本願のいくつかの実施例に係る溶断部が3つである場合のバス部材の構造模式図である。
【
図9】本願のいくつかの実施例に係る溶断部が4つである場合のバス部材の構造模式図である。
【
図10】本願のいくつかの実施例に係る溶断部の一部が曲げ部を有するバス部材の構造模式図である。
【
図11】本願のいくつかの実施例に係る溶断部が曲げ部を有さないバス部材の構造模式図である。
【
図12】本願のいくつかの実施例に係る幅方向の一側に切り欠きが形成されているバス部材の構造模式図である。
【
図13】本願のいくつかの実施例に係る切り欠きが設けられていないバス部材の構造模式図である。
【
図14】本願のいくつかの実施例に係る保護カバーを有するバス部材の構造模式図である。
【
図15】本願のほかのいくつかの実施例に係る保護カバーを有するバス部材の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面及び実施例を参照しながら本願の実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明及び図面は本願の原理を例示的に説明するために使用され、本願の範囲を制限するものではなく、すなわち、本願は説明されている実施例に限定されない。
【0031】
本願の説明において、説明する必要がある点として、特に断らない限り、「複数」は2つ以上を意味し、「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」等の用語によって示される方位又は位置関係は、本願を説明しやすくし説明を簡略化させるためのものに過ぎず、示される装置又は素子が必ずしも特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されることを指示又は暗示するものではなく、従って、本願を制限しないと理解すべきである。また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、相対的な重要性を指示又は暗示するものではなく、説明するためのものに過ぎない。「垂直」は厳密には垂直ではなく、誤差許容範囲内のものである。「平行」は厳密には平行ではなく、誤差許容範囲内のものである。
【0032】
以下の説明に出現する方位語はいずれも図示されている方向であり、本願の具体的な構造を限定するものではない。本願の説明において、説明する必要がある点として、特に明確な規定及び限定がない限り、用語「取付」、「連結」、「接続」は、広義に理解すべきであり、たとえば、固定して接続されてもよく、取り外し可能に接続され、又は一体的に接続されてもよい。直接連結されてもよく、中間媒体を介して間接的に連結されてもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願での具体的な意味を理解することができる。
【0033】
本願に出現する「複数」は2つ以上(2つを含む)を意味する。
【0034】
本願では、セルは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウム硫黄電池、ナトリウムリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、又はマグネシウムイオン電池等を含み、本願の実施例はこれについて限定しない。セルは、円筒状、扁平状、直方体又は他の形状等であってもよく、同様に、本願の実施例はこれについて限定しない。セルは、一般的に、パッケージ方式に従って、円筒形セル、角形セル及びソフトパックセルの3種類に分けられ、同様に、本願の実施例はこれについて限定しない。
【0035】
本願の実施例に係る電池は、より高い電圧及び容量を供給するように複数のセルを備える単一の物理モジュールである。たとえば、本願に係る電池は、電池モジュール又は電池パック等を含む。電池は、一般的に、複数のセルをパッケージするためのボックスを備える。ボックスは、液体や他の異物がセルの充電又は放電に悪影響を与えることを回避することができる。
【0036】
セルは電極アセンブリ及び電解液を備え、電極アセンブリは正極板、負極板及びセパレータからなる。セルは主に正極板と負極板との間での金属イオンの移動に依存して動作する。正極板は正極集電体及び正極活物質層を備え、正極活物質層は正極集電体の表面に塗布され、正極活物質層が塗布されていない正極集電体は正極活物質層が塗布されている正極集電体よりも突出し、正極活物質層が塗布されていない正極集電体は正極タブとして使用される。リチウムイオン電池を例として、正極集電体の材料はアルミニウムであってもよく、正極活物質は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元リチウム又はマンガン酸リチウム等であってもよい。負極板は負極集電体及び負極活物質層を備え、負極活物質層は負極集電体の表面に塗布され、負極活物質層が塗布されていない負極集電体は負極活物質層が塗布されている負極集電体よりも突出し、負極活物質層が塗布されていない負極集電体は負極タブとして使用される。負極集電体の材料は銅であってもよく、負極活物質はカーボン又はシリコン等であってもよい。溶断が発生せずに高電流が流れることを確保するために、正極タブは、数が複数で、一体に積層され、負極タブは、数が複数で、一体に積層される。セパレータの材質はPP(polypropylene、ポリプロピレン)又はPE(polyethylene、ポリエチレン)等であってもよい。また、電極アセンブリは、巻回型構造であってもよく、積層型構造であってもよく、本願の実施例はこれらに限定されない。
【0037】
電池技術の発展は、たとえば、エネルギー密度、サイクル寿命、放電容量、充放電速度等の性能パラメータという様々な設計要素を同時に考慮する必要があり、また、電池の安全性をさらに考慮する必要がある。
【0038】
複数のセルを備える電池については、主な安全問題はセル間の短絡由来である。セル間が短絡すると、セル間の電流は短い時間内に増大し、セルに電気的に接続されたバス部材は高温になり、連続的に短絡すると温度が連続的に高くなり、深刻な場合に発火や爆発を引き起こす。電池の安全性を確保するために、一般的に、バス部材は溶断しやすい材料を利用し、バス部材を流れる電流が閾値を超える場合に、バス部材が溶断し、それにより、セル間の電気的接続が切断され、電池の内部の連続的な短絡及び高温の発生を回避する。
【0039】
発明者は、電池の内部に短絡が発生する場合、バス部材の溶断時間が長すぎるので、バス部材が完全に溶断する前に、短絡による高温がセル及び電池のボックスの損傷を引き起こしてしまうか電池が発火したり爆発したりしてしまうことを見出した。
【0040】
これに鑑みて、本願の実施例は、バス部材に複数の溶断部を設け、すべての溶断部のうち最小過電流断面積Sminと最大過電流断面積Smaxが所定の数値条件を満たすという技術案を提供することにより、バス部材を流れる電流が閾値を超える場合に、すべての溶断部の溶断開始から完全溶断までの時間差を短くし、すなわちバス部材の溶断時間が短く、それにより、セルの間の短絡時間を短縮させ、長時間の短絡により溶断部の溶断プロセスで深刻な安全性に関する事故を引き起こすことを回避する。
【0041】
本願の実施例に説明された技術案は電池及び電池を使用した電力消費機器に適用できる。
【0042】
電力消費機器は、車両、携帯電話、携帯機器、ノートパソコン、汽船、宇宙機、電動玩具及び電動工具等であってもよい。車両は、燃料自動車、ガス自動車又は新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、純粋な電気自動車、ハイブリッド自動車又はレンジエクステンダー式電気自動車等であってもよく、宇宙機は、飛行機、ロケット、スペースシャトル及び宇宙船等を含み、電動玩具は、固定式又は移動式の電動玩具を含み、たとえば、ゲーム機、電気自動車玩具、電動汽船玩具及び電動飛行機玩具等であり、電動工具は、金属切削電動工具、研削電動工具、組み立て電動工具及び鉄道用電動工具を含み、たとえば、電動ドリル、電動グラインダー、電動レンチ、電動ドライバ、電動ハンマー、電動インパクトドリル、コンクリート振動器及び電動プレーナー等である。本願の実施例は上記電力消費機器について特に限定しない。
【0043】
以下の実施例では、説明の便宜上、電力消費機器が車両1000であることを例として説明する。
【0044】
図1に示すように、
図1は本願のいくつかの実施例に係る車両1000の構造模式図である。車両1000の内部に電池100が設けられ、電池100は車両1000の底部又は頭部又は尾部に設けられてもよい。電池100は車両1000に給電するために使用され、たとえば、電池100は車両1000の操作電源として使用される。車両1000はコントローラ200及びモータ300をさらに備えてもよく、コントローラ200は電池100を制御してモータ300に給電するために使用され、たとえば、車両1000の起動、ナビゲーション及び走行中の動作電力のニーズに用いられる。
【0045】
本願のいくつかの実施例では、電池100は、車両1000の操作電源として使用できるだけでなく、車両1000の駆動電源として、燃料又は天然ガスを代替し又は部分的に代替して車両1000に駆動動力を提供することができる。
【0046】
図2に示すように、
図2は本願のいくつかの実施例に係る電池の分解図である。電池100はボックス10及びセル20を備え、セル20はボックス10内に収容され、ボックス10はセル20の収容空間を提供し、ボックス10は第1のボックス部11及び第2のボックス部12を備え、第1のボックス部11及び第2のボックス部12は、セル20を収容するための収容空間を共同で限定するように配置される。電池100において、セル20は複数であり、複数のセル20は、直列接続又は並列接続又は直並列接続であってもよく、直並列接続は、複数のセル20の直列接続と並列接続の両方があることを指す。複数のセル20を直接直列接続又は並列接続又は直並列接続し、次に複数のセル20からなる全体をボックス10内に収容するようにしてもよく、勿論、複数のセル20をまず直列接続又は並列接続又は直並列接続して電池モジュールを形成し、次に、複数の電池モジュールを直列接続又は並列接続又は直並列接続して一体化し、ボックス10内に収容するようにしてもよい。セル20は円筒状、扁平状又は他の形状等であってもよい。
【0047】
図3、
図4に示すように、
図3は本願のいくつかの実施例に係るセル20の分解図であり、
図4は
図3におけるセル20の組み立て図である。セル20は、ケース21と、エンドカバーアセンブリ22と、電極アセンブリ23とを備え、ケース21は開口部を有し、電極アセンブリ23はケース21内に収容され、エンドカバーアセンブリ22は開口部を覆うために使用される。ケース21は、円筒状、扁平状等の様々な形状であってもよい。ケース21の形状は、電極アセンブリ23の具体的な形状に応じて決定できる。たとえば、電極アセンブリ23が円筒状構造であると、ケース21は円筒状構造を使用することができ、電極アセンブリ23が扁平状構造であると、ケース21は直方体構造を使用することができる。ケース21の材質は様々であってもよく、たとえば、銅、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金等であり、本願の実施例はこれについて特に限定しない。
【0048】
エンドカバーアセンブリ22は、カバー本体221と、第1の電極端子222と、第2の電極端子223とを備え、第1の電極端子222及び第2の電極端子223は、それぞれ、電極アセンブリ23の正極タブ231及び負極タブ232に電気的に接続されるために使用される。
【0049】
いくつかの実施例では、
図5、
図6に示すように、
図5はバス部材30によって接続された複数のセル20の不等角投影図を示し、
図6はバス部材30によって接続されたセル20の平面図である。電池100はバス部材30をさらに備えてもよく、複数のセル20はバス部材30を介して電気的な接続を実現でき、それにより、複数のセル20の直列接続又は並列接続又は直並列接続を実現する。同一のバス部材30によって電気的に接続された2つのセル20をそれぞれ第1のセル24及び第2のセル25として定義する。
【0050】
いくつかの実施例では、
図7に示すように、
図7は
図5におけるA部の部分拡大図である。バス部材30は、第1の接続部31と、第2の接続部32と、複数の溶断部33とを備える。第1の接続部31は第1のセル24の第1の電極端子222と接続するために使用され、第2の接続部32は第2のセル25の第2の電極端子223と接続するために使用され、各溶断部33は一端が第1の接続部31に接続され、他端が第2の接続部32に接続される。
【0051】
複数の溶断部33はバス部材30の幅方向Xに並んで配置される。バス部材30を流れる電流が閾値より低い場合、各溶断部33は第1の接続部31及び第2の接続部32に接続される状態にあり、且つ溶断部33は、バス部材30を流れる電流が閾値を超える場合に、溶断するように配置され、それにより、第1の接続部31と第2の接続部32が切断され、すなわち、第1のセル24と第2のセル25との間の電気的接続が切断される。
【0052】
いくつかの実施例では、複数の溶断部33のうち過電流断面積の最も大きいものに対応する過電流断面積はSmaxであり、複数の溶断部33のうち過電流断面積の最も小さいものに対応する過電流断面積はSminであり、SminとSmaxは関係式0.3≦Smin/Smax≦1を満たす。バス部材30に複数の溶断部33を設け、すべての溶断部33の最小過電流断面積Sminと最大過電流断面積Smaxが0.3≦Smin/Smax≦1を満たすようにすることにより、バス部材30を流れる電流が閾値を超える場合に、すべての溶断部33の溶断開始から完全溶断までの時間差を短くし、すなわちバス部材30の溶断時間が短く、それにより、第1のセル24と第2のセル25の短絡時間を短縮させ、長時間の短絡による溶断部33の溶断プロセスでのアークエネルギーの蓄積を回避し、溶断プロセスでのアークによる損傷を減らすことができる。ここで、アークとは、スイッチの電流遮断能力の最大限界であり、アークは絶縁体に損傷を与え、たとえば、アークの高温は絶縁体を溶融させたり破裂させたりする。
【0053】
また、溶断部33は複数であることで、バス部材30の過電流プロセスでの放熱性能をさらに向上させることができる。溶断部33の一部が誤って機械的に切断された場合、他の切断されていない溶断部33は依然としてバス部材30の通常の動作を確保することができる。
【0054】
いくつかの実施例では、溶断部33の過電流断面は可変断面形式であり、すなわち溶断部33の第1の接続部から第2の接続部への方向Yにおいて、一部又は全ての位置の過電流断面の面積が異なり、溶断部33の溶断位置は過電流断面積が最も小さい位置となるべきであり、従って、溶断部33の過電流断面積はその最も小さい過電流断面積を指す。「Smin」は対応する溶断部33の過電流断面積の最小値であるとともに、すべての溶断部33の最小過電流断面積の最小値である。「Smax」は対応する溶断部33の過電流断面積の最小値であるが、すべての溶断部33の最小過電流断面積の最大値である。
【0055】
例示的に、S1、S2、S3及びS4はそれぞれ対応する4つの溶断部33の最小過電流断面積であり、S1>S2>S3>S4であり、この場合、Smin=S4、Smax=S1である。
【0056】
いくつかの実施例では、溶断部33の過電流断面は等断面形式であり、すなわち溶断部33の第1の接続部から第2の接続部への方向Yにおいて、各位置の過電流断面の面積が同じである。この場合、「Smin」はすべての溶断部33の過電流断面積の最小値である。「Smax」はすべての溶断部33の過電流断面積の最大値である。
【0057】
例示的に、S1、S2、S3及びS4はそれぞれ対応する4つの溶断部33の過電流断面積であり、S1>S2>S3>S4であり、この場合、Smin=S4、Smax=S1である。
【0058】
いくつかの実施例では、SminとSmaxは関係式0.8≦Smin/Smax<1を満たす。Smin/Smaxの比率が0.8~1の場合、溶断時間差が最小であり、すべての溶断部33の溶断開始から完全溶断までの時間差をさらに短縮させ、すなわちバス部材30の溶断時間を短縮させることができ、それにより、短絡時間をさらに短縮させ、短絡現象が発生すると、バス部材30が瞬時に溶断し、回路全体がオフになる。長時間の短絡による溶断部33の溶断プロセスでのアークエネルギーの蓄積を効果的に回避し、溶断プロセスでのアークによる損傷を減らすことができ、それにより、電池の長時間短絡による過熱や熱暴走を回避する。
【0059】
いくつかの実施例では、複数の溶断部33のうちの少なくとも2つの溶断部33の過電流断面積は等しくない。すべての溶断部33の過電流断面積の合計が一定である場合、少なくとも2つの溶断部33の過電流断面積は等しくないことで、バス部材30の溶断時間差が最小値になり、バス部材30の溶断時間差をさらに最適化し、第1のセル24と第2のセル25の長時間の短絡を回避する。
【0060】
いくつかの実施例では、各溶断部33の過電流断面積は同じであってもよく、又は各溶断部33の過電流断面積はいずれも等しくない。
【0061】
上記数値範囲がバス部材30中の複数の溶断部33の溶断時間差を50ms未満に低減できるか否かを検証するために、以下、3つの溶断部33を有するバス部材30を例としてテストする。一般的に、バス部材30の溶断時間が50ms以内であると発火や爆発を効果的に防止することができる。
【0062】
テスト1:バス部材30の複数の溶断部33の過電流断面積の合計Stotalは18mm2であり、3つの溶断部33を備える。テストプロセスは以下のとおりである。過電流保護構造をリレースイッチ、直流抵抗とともに直流高圧回路に直列接続し、回路の合計電圧に基づき、特定の抵抗値の直流抵抗を選択し、回路がオンになる時の合計電流を8000Aに制御した。リレースイッチをオンにし、オンになった後の回路中の電流変化を監視した。回路中の電流が変動する時点はバス部材30の溶断部33が溶断する開始点t1であり、回路中の電流が0Aに完全に低減する時点はすべての溶断部33が完全に溶断する終了点t2であり、2つの時点の差t2-t1は複数の溶断部33の溶断時間差Δtであり、各溶断部33のパラメータ及びテスト結果は表1示された。
【0063】
表1:溶断部33のパラメータ及びテスト結果
【表1】
【0064】
上記テスト結果から明らかなように、0.3≦Smin/Smax≦1の場合、Δt<50msであり、一般的に電池100の安全性を確保するために求められるバス部材30の複数の溶断部33の溶断時間差の要件を満たした。
【0065】
また、0.8≦Smin/Smax<0.9の場合、溶断時間差Δtは徐々に小さくなり、0.9<Smin/Smax<1の場合、溶断時間差Δtは徐々に大きくなり、従って、0.8≦Smin/Smax<1の区間において、溶断時間差は他の区間の溶断時間差よりも小さく、且つ0.8≦Smin/Smax<1の区間において、最小溶断時間差がある。
【0066】
最小溶断時間差が0.8≦Smin/Smax<1の範囲内にあるので、該範囲内に、3つの溶断部33の過電流断面積はいずれも等しくなく、又は少なくとも2つの溶断部33の過電流断面積は等しくない。
【0067】
このことから明らかなように、0.3≦Smin/Smax≦1の場合、バス部材30の複数の溶断部33の溶断時間差を短縮させ、且つ溶断時間差を、電池100の安全性を確保できる範囲内に維持することができ、すなわち、溶断時間差を50ms以内に維持する。
【0068】
いくつかの実施例では、複数の溶断部33の過電流断面積の合計はStotalであり、SminとStotalは関係式0.2≦Smin/Stotalを満たし、SmaxとStotalは関係式Smax/Stotal≦0.6を満たし、最小過電流面積Sminとすべての溶断部33の過電流断面積の合計Stotalとの比率を0.2以上に限定し、最大過電流断面積Smaxとすべての溶断部33の過電流断面積の合計Stotalとの比率を0.6以下に限定することにより、バス部材30の溶断時間をさらに最適化し、第1のセル24と第2のセル25との長時間の短絡を回避することができる。
【0069】
例示的に、溶断部33の数が3つであり、3つの溶断部33の過電流断面積はそれぞれS1、S2及びS3である場合、Stotal=S1+S2+S3である。
【0070】
一般的に、溶断時間差が40ms未満である場合、電池100への損傷は最小限に抑えられ、電池100の損失を低減させることができる。より短い溶断時間差を取得し、溶断時間差を40ms未満にするために、テスト1をもとに、以下のようにテスト2を行った。
【0071】
好ましく設計されたバス部材30に対して溶断テストを行い、すなわち、0.3≦Smin/Smax≦1を満たす場合にテスト2を行った。テストプロセス及び関連するパラメータはテスト1と同様であった。オンになった後の回路中の電流変化を監視することにより、溶断開始点t1、溶断終了点t2、及び溶断時間差Δtを抽出し、各溶断部33のパラメータ及びテスト結果は表2に示された。
【0072】
表2:溶断部33のパラメータ及びテスト結果
【表2】
【0073】
上記テスト結果から明らかなように、Smin/Stotal≧0.2、Smax/Stotal≦0.6の場合、溶断時間差を40ms以下に制御できる。
【0074】
上記テストから検証したところ、本願の技術案はバス部材30の溶断時間差を安全範囲内に制御できる。
【0075】
バス部材30がスタンピングによって成形されるため、いくつかの実施例では、バス部材30の製造可能性を向上させるように、溶断部33の過電流断面積はその厚さの1.5倍よりも大きい。厚さ方向Zは幅方向X及び第1の接続部から第2の接続部への方向Yに垂直である。
【0076】
説明する必要がある点として、溶断部33の過電流断面積とその厚さとの比較は、両者の数値の比較を指す。
【0077】
続いて、
図7に示すように、第1の接続部31に第1の凹部311が設けられ、第1の凹部311は、第1の接続部31の第1の電極端子222と接続するための接続位置と対応して設けられ、第1の接続部31と第1の電極端子222が接続された後、第1の凹部311の厚さ方向Zでの投影は、第1の電極端子222の厚さ方向Zでの投影と少なくとも部分的に重なる。第1の凹部311は、第1の電極端子222に近づく方向に窪んでいる。バス部材30と第1の電極端子222は一般的に溶接の方式で接続を実現するため、第1の凹部311が設けられることにおり、第1の接続部31の対応する位置の厚さは他の位置よりも薄く、レーザー溶接を実現しやすい。
【0078】
第2の接続部32に第2の凹部321が設けられ、第2の凹部321は、第2の接続部32の第2の電極端子223と接続するための接続位置と対応して設けられ、第2の接続部32と第2の電極端子223が接続された後、第2の凹部321の厚さ方向Zでの投影は、第2の電極端子223の厚さ方向Zでの投影と少なくとも部分的に重なる。第2の凹部321は第2の電極端子223に近づく方向に窪んでいる。バス部材30と第2の電極端子223は一般的に溶接の方式で接続を実現するため、第2の凹部321が設けられることにより、第2の接続部32の対応する位置の厚さは他の位置よりも薄く、レーザー溶接を実現しやすい。
【0079】
本願の実施例では、溶断部33の数は2つ、3つ及び3つ以上の他の数であってもよい。
【0080】
いくつかの実施例では、溶断部33の数は少なくとも3つ(3つ及び3つ以上の数)である場合、少なくとも3つの溶断部33はバス部材30の幅方向Xに並んで配置され、少なくとも3つの溶断部33の過電流断面積はバス部材30の幅方向Xの両側から中央へ順に減少する。外力による作用を受けると、バス部材30の幅方向Xの両側が大きなトルクを受け、従って、溶断部33の過電流断面積はバス部材30の幅方向Xの両側から中央へ順に減少し、すなわち、幅方向Xの両側に位置する溶断部33の過電流断面積は、中央に位置する溶断部33の過電流断面積よりも大きいことで、バス部材30の機械的強度が向上し、それにより、バス部材30は幅方向Xの両側で大きなトルクを受けることができる。
【0081】
図8に示すように、
図8は本願のいくつかの実施例に係る溶断部33が3つである場合のバス部材30の構造模式図である。溶断部33の数が3つであり、幅方向Xに沿って順に第1の溶断部331、第2の溶断部332、及び第3の溶断部333であり、第1の溶断部331の過電流断面積と第3の溶断部333の過電流断面積とはいずれも第2の溶断部332の過電流断面積よりも大きい。第1の溶断部331の過電流断面積と第3の溶断部333の過電流断面積とは同じであってもよく、等しくなくてもよい。
【0082】
いくつかの実施例では、
図9に示すように、
図9は本願のいくつかの実施例に係る溶断部33が4つである場合のバス部材30の構造模式図である。溶断部33の数が4つであり、幅方向Xに沿って順に第1の溶断部331、第2の溶断部332、第3の溶断部333、及び第4の溶断部334であり、第1の溶断部331の過電流断面積は第2の溶断部332の過電流断面積よりも大きく、第4の溶断部334の過電流断面積は第3の溶断部333の過電流断面積よりも大きい。第1の溶断部331の過電流断面積と第4の溶断部334の過電流断面積は同じであってもよく、等しくなくてもよい。第2の溶断部332の過電流断面積と第3の溶断部333の過電流断面積は同じであってもよく、等しくなくてもよい。
【0083】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの溶断部33に曲げ部335が設けられ、曲げ部335はバス部材30の幅方向Xの応力を吸収するように配置される。曲げ部335が設けられることで、バス部材30の幅方向Xの応力を吸収し、バス部材30及びセル20に対して一定の保護効果を果たすことができる。
【0084】
いくつかの実施例では、続いて、
図9に示すように、すべての溶断部33に曲げ部335が設けられる。曲げ部335は第1のセル24及び第2のセル25に近づく側に曲げられることで、溶断部33が電池100製造及び電池100組み立てプロセスで押し出されて機械的破断することを回避することができるとともに、溶断部33の過電流温度及び溶断動作による電池100のボックス10への損傷を低減させることができる。
【0085】
いくつかの実施例では、
図10に示すように、
図10は本願のいくつかの実施例に係る溶断部33の一部に曲げ部335が設けられる構造模式図である。バス部材30は、溶断部33の一部に曲げ部335が設けられ、残りの溶断部33が直線状に延びている構造であってもよい。
図10において、第2の溶断部332と第3の溶断部333とは直線状に延びている構造であり、第1の溶断部331と第4の溶断部334とは曲げ部335を有する。
【0086】
いくつかの実施例では、
図11に示すように、
図11は本願のいくつかの実施例に係る溶断部33に曲げ部335が設けられていないバス部材の構造模式図である。各溶断部33には、曲げ部335が設けられず、すべての溶断部33がいずれも直線状に延びている構造であるようにしてもよい。
【0087】
いくつかの実施例では、複数の溶断部33は、バス部材30の幅方向Xの少なくとも一側において、第1の接続部31及び第2の接続部32とともに切り欠きを形成する。切り欠きが設けられることで、他の構造のために空間を残すことができるだけでなく、溶断部33は電池100のボックス10又はそれに隣接する構造から遠く離れ、溶断部33の溶断プロセスで生じた高温がボックス10又はそれに隣接する構造に損傷を与えることを回避する。
【0088】
いくつかの実施例では、続いて、
図11に示すように、複数の溶断部33は、バス部材30の幅方向Xの両側において、第1の接続部31及び第2の接続部32とともに切り欠きを形成する。第1の溶断部331のうち第2の溶断部332とは反対側の第1の表面3311と、第1の接続部31のうち第2の接続部32に面する第2の表面312と、第2の接続部32のうち第1の接続部31に面する第3の表面322とは、共同で第1の切り欠き34を限定し、第4の溶断部334のうち第3の溶断部333とは反対側の第4の表面3341と、第1の接続部31のうち第2の接続部32に面する第5の表面313と、第2の接続部32のうち第1の接続部31に面する第6の表面323とは、共同で第2の切り欠き35を限定する。
【0089】
いくつかの実施例では、第1の切り欠き34と第2の切り欠き35とは、バス部材30の幅方向Xでの深さが異なる。第1の切り欠き34と第2の切り欠き35とはいずれも電池100の内部の他の構造のために空間を残すことができ、且つ幅方向Xでの深さの深い切り欠きは、溶断部33を他の構造から遠くして、該溶断部33の溶断時に生じた高温による他の構造への損傷を回避することができる。
【0090】
いくつかの実施例では、
図12に示すように、
図12は本願の実施例に係る幅方向Xの一側に切り欠きが形成されているバス部材30の構造模式図であり、複数の溶断部33は、バス部材30の幅方向Xの一側において、第1の接続部31及び第2の接続部32とともに切り欠きを形成し、第1の溶断部331のうち第2の溶断部332とは反対側の第1の表面3311と、第1の接続部31のうち第2の接続部32に面する第2の表面312と、第2の接続部32のうち第1の接続部31に面する第3の表面322とは、共同で第1の切り欠き34を限定する。
【0091】
いくつかの実施例では、
図13に示すように、
図13は本願のいくつかの実施例に係る切り欠きが設けられていないバス部材30の構造模式図である。複数の溶断部33は、バス部材30の幅方向Xの両側において、いずれも第1の接続部31及び第2の接続部32とともに切り欠きを形成していない。
図13において、第1の溶断部331のうち第2の溶断部332とは反対側の第1の表面3311と、第1の接続部31の幅方向Xに位置する1つの表面と、第2の接続部32の幅方向Xに位置する1つの表面とは同一平面上にあり、第4の溶断部334のうち第3の溶断部333とは反対側の第4の表面3341と、第1の接続部31の幅方向Xに位置する別の1つの表面と、第2の接続部32の幅方向Xに位置する別の1つの表面とは同一平面上にある。
【0092】
いくつかの実施例では、
図14に示すように、
図14は本願のいくつかの実施例に係る保護カバー36を有するバス部材30の構造模式図である。バス部材30は保護カバー36をさらに備え、保護カバー36は複数の溶断部33を包んで複数の溶断部33を保護するように配置される。保護カバー36は、溶断部33を保護し、ボックス10の変形、第1のセル24と第2のセル25との間の距離変化等に起因する溶断部33の機械的破断を回避するだけでなく、溶断部33の溶断プロセスで生じた高温によるボックス10、第1のセル24及び第2のセル25への損傷を低減させ、溶断動作で生じたアークによる損傷を低減させることができる。保護カバー36はさらにバス部材30の構造的強度を高めることができる。
【0093】
保護カバー36は、複数の溶断部33の外周に直接形成されて複数の溶断部33を包むスリーブ状構造であってもよい。保護カバー36は、帯状構造を複数の溶断部33の外周に巻き付けた後に形成された複数の溶断部33を包むための構造であってもよい。
【0094】
第1の接続部31と第2の接続部32とはそれぞれ保護カバー36から延びており、バス部材30と第1のセル24の第1の電極端子222及び第2のセル25の第2の電極端子223との接続を容易にする。
【0095】
いくつかの実施例では、保護カバー36はさらに第1の接続部31及び第2の接続部32を包み、第1の接続部31及び第2の接続部32に対して保護作用を果たすこともできる。
【0096】
いくつかの実施例では、保護カバー36の一部は、溶断部33と第1の接続部31及び第2の接続部32とで形成された切り欠きに位置する。続いて、
図14に示すように、保護カバーは、幅方向Xの両側において、それぞれ第1の切り欠き34及び第2の切り欠き35に位置し、それにより、保護カバー36のバス部材30の幅方向Xでのサイズが小さく、占有する電池100の内部空間が小さい。
【0097】
保護カバー36の材質は、PP、PFA又はセラミックを含む。
【0098】
いくつかの実施例では、
図15に示すように、
図15は本願のほかのいくつかの実施例に係る保護カバー36を有するバス部材30の構造模式図である。複数の溶断部33は、幅方向Xの両側において、いずれも第1の接続部31及び第2の接続部32とともに切り欠きを形成していない場合、保護カバー36は、幅方向Xの両側において、第1の接続部31及び第2の接続部32から完全に突出する。
【0099】
好ましい実施例を参照しながら本願を説明したが、本願の範囲を逸脱することなく、様々な改良を行うことができ、且つその中の部材を同等物で置き換えることができる。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施例に係る各技術的特徴は全て任意に組み合わせることができる。本願は明細書に開示されている特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲に属するすべての技術案を含む。
【符号の説明】
【0100】
1000-車両
100-電池
10-ボックス
11-第1のボックス部
12-第2のボックス部
20-セル
21-ケース
22-エンドカバーアセンブリ
221-カバー本体
222-第1の電極端子
223-第2の電極端子
23-電極アセンブリ
231-正極タブ
232-負極タブ
24-第1のセル
25-第2のセル
30-バス部材
31-第1の接続部
311-第1の凹部
312-第2の表面
313-第5の表面
32-第2の接続部
321-第2の凹部
322-第3の表面
323-第6の表面
33-溶断部
331-第1の溶断部
3311-第1の表面
332-第2の溶断部
333-第3の溶断部
334-第4の溶断部
3341-第4の表面
335-曲げ部
34-第1の切り欠き
35-第2の切り欠き
36-保護カバー
200-コントローラ
300-モータ
X-幅方向
Y-第1の接続部から第2の接続部への方向
Z-厚さ方向
【国際調査報告】