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特表2023-523107高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20230526BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230526BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230526BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/36 E
C01B33/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573402
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 CN2021099115
(87)【国際公開番号】W WO2022205619
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110355374.5
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520416026
【氏名又は名称】広東▲凱▼金新能源科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Guangdong Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 302, Unit 2, Building 29, No.4, Keji 10th Road, Songshanhu Park, Dongguan, Guangdong, 523000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鄭 安華
(72)【発明者】
【氏名】余 徳馨
(72)【発明者】
【氏名】仰 永軍
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072DD03
4G072DD04
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH04
4G072JJ47
4G072LL02
4G072MM26
4G072RR11
4G072TT01
4G072TT04
4G072TT30
4G072UU30
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA24
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】 高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用を提供することを課題とする。
【解決手段】 リチウム電池の負極材料分野に関し、特に、高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料、に関する。ケイ素粒子と、炭素被覆層と、を備えた高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料であって、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料は、高緻密質炭素マトリックスも備え、前記ケイ素粒子を高緻密質炭素マトリックスの内部に均一に分散して内部コアを形成し、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の内部が緻密で微小な細孔がないか、又は少量の閉孔が存在する。本発明は、体積膨張による影響を低減し、サイクル特性を改善することができる高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素粒子と、炭素被覆層とを備えた高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料であって、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料は、高緻密質炭素マトリックスも備え、前記ケイ素粒子を前記高緻密質炭素マトリックスの内部に均一に分散して内部コアを形成し、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の内部が緻密で微小な細孔がないか、又は少量の閉孔が存在することを特徴とする、高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料。
【請求項2】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の真密度は1.90~2.64g/cmの範囲であり、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の酸素含有量、炭素含有量、ケイ素含有量はそれぞれ0~10%、20~90%、5~90%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料。
【請求項3】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の空隙率は、0~10%の範囲、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の粒子径D50は2~30μmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料。
【請求項4】
前記ケイ素粒子は、ナノケイ素又はナノ二酸化ケイ素のうちの1種或いは2種であり、前記ナノケイ素の粒径D50が1~100nmの範囲、前記ナノケイ素の結晶粒の大きさが1~10nmの範囲であり、前記ナノ二酸化ケイ素SiOのXは、0~0.8の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料。
【請求項5】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の内部に少量の閉孔が存在する場合、前記閉孔の孔径は3~50nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料。
【請求項6】
高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、
マトリックスを反応器に入れ、保護雰囲気ガス下で、ケイ素粒子及び高緻密質炭素マトリックス同時又は交互に蒸着して、緻密質構造前駆体Aを得る工程と、
得られた緻密質構造前駆体Aをマトリックスから分離させ、粉砕処理を施して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを炭素で被覆して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Cを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Cを高温で焼結して、高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする、高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項7】
前記緻密質構造前駆体Aは、粉末粒子又はブロック体のうちの1種であり、その空隙率が0~10%の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項8】
前記マトリックスは、グラファイトペーパー、カーボンフォーム、金属棒、金属板、前記方法で調製された高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料又は前駆体Bのうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項6に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項9】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の初回の可逆容量は、1800mAh/g以上、50サイクル後の膨張率は40%未満、容量維持率は95%を超えることを特徴とする、請求項6に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池における請求項1~5のいずれか一項に記載の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料又は前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料と炭素粉末を混合した混合物の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池の負極材料分野に関し、特に、高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ポータブル電子機器内に幅広く活用され、ポータブル電子機器の小型化の進展及び航空、軍事及び自動車産業における二次電池の需要が益々増大するのに伴い、電池の容量とエネルギー密度の大幅な増加が急務となっている。現在市販されている負極材料は、主に黒鉛類材料であるが、理論容量が小さい(372mAh/g)ため、市場の需要に応えることができないでいた。近年、新型の高比容量負極材料であるリチウム貯蔵金属及びその酸化物(例えばSn、Si)とリチウム遷移金属リン化物に注目が集まっている。Siは、高い理論的な比容量(4200mAh/g)を備えるため、黒鉛類材料に代替できる最も可能性のある一つとなっているが、Siベースは充放電時の大きな体積膨張(~300%)があり、割れ及び微粉化が発生しやすいため、集電体から剥離することにより、サイクル性能が急激に低下する。
【0003】
従来のケイ素-炭素負極材料は、ナノケイ素、黒鉛及び炭素を用いて造粒して複合材料を得ている。ナノケイ素を均一に分散させることが難しいため、必ずナノケイ素の局所的な凝集を引き起こし、ナノケイ素の凝集場所の炭素含有量が比較的低く、比較的低い炭素含有量では、ナノケイ素サイクル過程中の体積膨張を十分に吸収できず、ナノケイ素の凝集場所で局所膨張が大きくなりすぎて、一部の構造損傷が生じ、材料全体の特性にも影響を及ぼす。同時に、従来のケイ素-炭素負極材料の内部に微小な細孔(20~100nm)が多数存在するため、複合材料の安定性が悪くなり、サイクル過程でナノケイ素と電解液が直接接触して副反応が増加する。したがって、どのようにケイ素-炭素複合材料中のナノケイ素の均一な分散を高め、ケイ素-炭素複合材料内部の緻密性を向上させ、体積膨張の影響を低減し、サイクル特性を改善するかがリチウムイオン電池におけるケイ素ベース材料の応用にとって重要な意義を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、体積膨張による影響を低減し、サイクル特性を改善することができる高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では次のような技術的手段を講じた。
ケイ素粒子と、炭素被覆層と、を備えた高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料であって、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料は、高緻密質炭素マトリックスも備え、前記ケイ素粒子を高緻密質炭素マトリックスの内部に均一に分散して内部コアを形成し、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の内部が緻密で微小な細孔がないか、又は少量の閉孔が存在する。
【0006】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の真密度は1.90~2.64g/cmの範囲であり、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の酸素含有量、炭素含有量、ケイ素含有量はそれぞれ0~10%、20~90%、5~90%の範囲である。
【0007】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の空隙率は、0~10%の範囲、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の粒子径D50は2~30μmの範囲である。
【0008】
前記ケイ素粒子は、ナノケイ素又はナノ二酸化ケイ素のうちの1種或いは2種であり、前記ナノケイ素の粒径D50が1~100nmの範囲、前記ナノケイ素の結晶粒の大きさが1~10nmの範囲であり、前記ナノ二酸化ケイ素SiOのXは、0~0.8の範囲である。
【0009】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の内部に少量の閉孔が存在する場合、前記閉孔の孔径は3~50nmの範囲である。
【0010】
高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、
マトリックスを反応器に入れ、保護雰囲気ガス下で、ケイ素粒子及び高緻密質炭素マトリックス同時又は交互に蒸着して、緻密質構造前駆体Aを得る工程と、
得られた緻密質構造前駆体Aをマトリックスから分離させ、粉砕処理を施して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを炭素で被覆して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Cを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Cを高温で焼結して、高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料を得る工程と、を含む。
【0011】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記緻密質構造前駆体Aは、粉末粒子又はブロック体のうちの1種であり、その空隙率が0~10%の範囲である。
【0012】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記マトリックスは、グラファイトペーパー、カーボンフォーム、金属棒、金属板、前記方法で調製された高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料又は前駆体Bのうちの1種又は複数種である。
【0013】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の初回の可逆容量は、1800mAh/g以上、50サイクル後の膨張率は40%未満、容量維持率は95%を超える。
【0014】
高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の応用であって、上記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料又は前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料と炭素粉末を混合した混合物をリチウムイオン電池に応用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のケイ素粒子は、高度緻密的炭素マトリックスの内部に均一に分散され、緻密なケイ素-炭素複合材料サイクル過程中のケイ素粒子と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らし、サイクル特性を改善する。炭素マトリックスは、良好な導電性ネットワークを提供し、充放電時の体積膨張によってもたらされる応力を効果的に解放/緩和し、材料の割れを防ぎ、材料のサイクル特性を改善できる。内部に分散したケイ素粒子は、超微細アモルファスナノケイ素粒子であり、充放電時の体積膨張を効果的に抑制し、材料の膨張を低減し、材料のサイクル特性を改善できる。最外層の炭素被覆層は、ナノケイ素と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らし、同時にケイ素ベース材料の導電性を効果的に向上できると共に充放電時の体積膨張を効果的に緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の構造概略図である。
図2】本発明の実施例4に係る高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料のFIB~SEM画像一である。
図3】本発明の実施例4に係る高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料のFIB~SEM画像二である。
図4】本発明の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料サンプルの初回充放電曲線図である。
図5】本発明の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料サンプルのXRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の図面を参照しつつ本発明の実施例における技術的手段を明確かつ完全に説明する。
【0018】
ケイ素粒子と、炭素被覆層と、を備えた高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料であって、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料は、高緻密質炭素マトリックスも備え、前記ケイ素粒子を高緻密質炭素マトリックスの内部に均一に分散して内部コアを形成し、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の内部が緻密で微小な細孔がないか、又は少量の閉孔が存在する。
【0019】
ここでケイ素粒子は、ケイ素源の高温熱分解によって形成され、炭素マトリックスが有機炭素源の高温熱分解によって形成され、最外層の被覆層は炭素被覆層であり、炭素被覆層が少なくとも1つの層で、単層の厚さが0.1~3μmの範囲である。
【0020】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の真密度は1.90~2.64g/cmの範囲、より好ましくは2.00~2.50g/cmの範囲、特に好ましくは2.10~2.50g/cmの範囲である。
【0021】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の酸素含有量は、0~10%の範囲、より好ましくは0~8%の範囲、特に好ましくは0~5%の範囲である。
【0022】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の炭素含有量は、20~90%の範囲、より好ましくは20~60%の範囲、特に好ましくは30~50%の範囲である。
【0023】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料のケイ素含有量は、5~90%の範囲、より好ましくは20~70%の範囲、特に好ましくは30~60%の範囲である。
【0024】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の空隙率は、0~10%の範囲、より好ましくは0~5%の範囲、特に好ましくは0~2%の範囲、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の粒子径D50は2~30μmの範囲、より好ましくは2~20μmの範囲、特に好ましくは2~10μmの範囲である。
【0025】
さらに、前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の比表面積は、0.5~5m/gの範囲である。
【0026】
前記ケイ素粒子は、ナノケイ素又はナノ二酸化ケイ素のうちの1種或いは2種であり、前記ナノケイ素の粒径D50が1~100nmの範囲、前記ナノケイ素の結晶粒の大きさが1~10nmの範囲であり、前記ナノ二酸化ケイ素SiOのXは、0~0.8の範囲である。
【0027】
さらに、前記ケイ素粒子は、超微細アモルファスナノケイ素粒子である。
【0028】
記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の内部に少量の閉孔が存在する場合、前記閉孔の孔径は3~50nmの範囲である。
【0029】
高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、
マトリックスを反応器に入れ、保護雰囲気ガス下で、ケイ素粒子及び高緻密質炭素マトリックス同時又は交互に蒸着して、緻密質構造前駆体Aを得る工程と、
得られた緻密質構造前駆体Aをマトリックスから分離させ、粉砕処理を施して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを炭素で被覆して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Cを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Cを高温で焼結して、高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料を得る工程と、を含む。
【0030】
ここで、同時蒸着は、有機炭素源とケイ素源を比率Aに従って保護雰囲気ガスと混合した後反応器内に吹き込んで蒸着を行った。
【0031】
さらに、交互蒸着は、超微細ナノケイ素の蒸着と炭素マトリックスの蒸着を交互に実施することである。すなわち、まず比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、1~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、次に比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、1~600秒のガス吹き込みを行って炭素マトリックスを蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現し、或いはまず比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、1~600秒のガス吹き込みを行って炭素マトリックスを蒸着し、次に比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、1~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現する。
【0032】
さらに、比率Aは、有機炭素源とケイ素源の流量比10:1~1:10、前記比率Bはケイ素源と保護雰囲気ガスの流量比1:1~1:20、前記比率Cは有機流量比1:1~1:20である。
【0033】
さらに、有機炭素源とケイ素源の吹き込み方法は、両者が直接又はそれぞれ混合して希釈した後吹き込み、それぞれマイクロ波プラズマ反応器による吹き込み、一緒にマイクロ波プラズマ反応器による吹き込みのうちの1種又は複数種である。
【0034】
さらに、ナノケイ素と炭素マトリックスを同時又は交互に蒸着するのは、保護雰囲気ガス下で、前記比率に従って0.5~20.0L/分の速度で有機炭素源とケイ素源を同時又は交互に吹き込むことである。
【0035】
さらに、蒸着温度は、400~900℃の範囲、蒸着時間は0.5~20時間の範囲である。
【0036】
さらに、雰囲気ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガス、アルゴン-水素混合ガスのうちの1種又は複数種である。
【0037】
さらに、有機炭素源は、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ブテン、塩化ビニル、フッ化ビニル、2フッ化ビニリデン、クロロエタン、フルオロエタン、ジフルオロエタン、クロロメタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、メチルアミン、ホルムアルデヒド、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、フェノールのうちの1種又は複数種である。
【0038】
さらに、前記ケイ素源ケイ素源は、シラン、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、メチルクロロシラン、クロロエチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、メチルジシラン、ジメチルジシラン、トリメチルジシラン、テトラメチルジシラン、ヘキサメチルジシランうちの1種又は複数種である。
【0039】
さらに、前記粉砕処理は、破砕、機械的粉砕及び気流粉砕のうちの1種又は複数種である。
【0040】
さらに、炭素被覆層は、高温熱分解炭素被覆又は気相法炭素被覆或いは液相法炭素被覆のいずれかの1種である。
【0041】
さらに、液相法炭素被覆プロセスは、炭素源、被覆対象物前駆体Bを溶媒と高速混合して均一に分散させた後スラリーを形成し、スラリーを噴霧乾燥し、更に熱処理を施すことを含む。前記炭素源は、スクロース、グルコース、クエン酸、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ピッチ、ポリビニルアルコール、ポリピロール、ポリピロリドン、ポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリドーパミン、リグニン、キチンのうちの1種又は複数種である。
【0042】
気相法炭素被覆プロセスは、被覆対象物を反応器に入れ、保護雰囲気ガスを吹き込み、400~900℃まで1~5℃/分で昇温し、0.5~20.0L/分の吹き込み速度で有機炭素源ガスを吹き込み、0.5~20時間保温し、室温まで自然冷却させることで気相被覆品を得ることを含む。
【0043】
さらに、高温焼結の昇温速度は、1~10℃/分の範囲、保持温度が500~900℃の範囲、温度保持時間が1~10時間の範囲である。
【0044】
前記緻密質構造前駆体Aは、粉末粒子又はブロック体のうちの1種であり、その空隙率は0~10%の範囲、より好ましくは0~5%の範囲、特に好ましくは0~2%の範囲である。
【0045】
前記マトリックスは、グラファイトペーパー、カーボンフォーム、金属棒、金属板、前記方法で調製された高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料又は前駆体Bのうちの1種又は複数種である。
【0046】
前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の初回の可逆容量は、1800mAh/g以上、50サイクル後の膨張率は40%未満、容量維持率は95%を超える。
【0047】
高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の応用であって、上記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料又は前記高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料と炭素粉末を混合した混合物をリチウムイオン電池に応用する。
【0048】
(実施例1)
1、グラファイトペーパーマトリックスをCVD炉に入れ、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4 .0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/minの速度でアセチレンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガスを吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体A1を得た。
2、前駆体をグラファイトペーパー上から分離させ、粉砕処理を経て前駆体B1を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体B1をCVD炉に取り、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、ガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0049】
(実施例2)
1、グラファイトペーパーマトリックスをCVD炉に入れ、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4 .0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、2.0L/minの速度でアセチレンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガスを吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体A2を得た。
2、前駆体をグラファイトペーパー上から分離させ、粉砕処理を経て前駆体B2を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体B2をCVD炉に取り、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、ガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0050】
(実施例3)
1、1000gの実施例1で調製されたケイ素-炭素複合材料をCVD炉に取り、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、2.0L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガスを吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体A3を得た。
2、前駆体A3を粉砕処理することによって前駆体B3を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体B3をCVD炉に取り、900℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、ガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0051】
(実施例4)
1、1000gの実施例1で調製されたケイ素-炭素複合材料をCVD炉に取り、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、2.0L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガスを吹き込み、3つのガス混合物をマイクロ波プラズマ反応器でイオン化し、イオン化したガスをCVD炉に吹き込んで蒸着を行い、蒸着時間が8時間であり、室温まで自然冷却させることで、前駆体A4を得た。
2、前駆体A4を粉砕処理することによって前駆体B4を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体B4をCVD炉に取り、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、ガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0052】
(実施例5)
1、1000gの実施例1で調製されたケイ素-炭素複合材料をCVD炉に取り、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4 .0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、2.0L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガスをマイクロ波プラズマ反応器に吹き込んでイオン化し、3つのガスをCVD炉に吹き込んで蒸着を行い、蒸着時間が8時間であり、室温まで自然冷却させることで、前駆体A5を得た。
2、前駆体A5を粉砕処理することによって前駆体B5を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体B5をCVD炉に取り、900℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、ガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0053】
(実施例6)
1、1000gの実施例1で調製されたケイ素-炭素複合材料をCVD炉に取り、700℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4 .0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、2.0L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガスを吹き込み、3つのガス混合物をマイクロ波プラズマ反応器でイオン化し、イオン化したガスをCVD炉に吹き込んで蒸着を行い、蒸着時間が8時間であり、室温まで自然冷却させることで、前駆体A6を得た。
2、前駆体A6を粉砕処理することによってケイ素-炭素複合材料を得た。
【0054】
<比較例>
1、粒子径D50が3~10μmの範囲のミクロンケイ素と無水エタノールを1:10質量比で均一に混合させ、ボールミル法で粒子径D50=100nmのナノケイ素スラリーを得た。
2、ナノケイ素スラリーとレークグラファイトを10:1質量比で均一に混合させた後、噴霧造粒してケイ素-炭素前駆体1を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体1をCVD炉に取り、800℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でアセチレンガスを吹き込み、ガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0055】
以下は、上記実施例及び比較例の試験を行う。
【0056】
以下の方法で材料の体積膨張率を試験及び計算した。調製されたケイ素-炭素複合材料と黒鉛複合で調製された容量500mAh/gの複合材料についてサイクル特性を試験し、膨張率=(50サイクル後のポールピースの厚さ~サイクル前のポールピースの厚さ)/(サイクル前のポールピースの厚さ~銅箔の厚さ)×100%。
【0057】
表1は、比較例と実施例1~6の初回サイクル試験結果を示す。
【表1】
【0058】
表2は、比較例と実施例1~6サイクルの膨張試験結果を示す。
【表2】
【0059】
図1は、本発明の高緻密質構造のケイ素-炭素複合材料の構造概略図である。図1から分かるように、ケイ素粒子は、高度緻密的炭素マトリックスの内部に均一に分散され、緻密なケイ素-炭素複合材料サイクル過程中のケイ素粒子と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らし、サイクル特性を改善する。炭素マトリックスは、良好な導電性ネットワークを提供し、充放電時の体積膨張によってもたらされる応力を効果的に解放/緩和し、材料の割れを防ぎ、材料のサイクル特性を改善できる。内部に分散したケイ素粒子は、超微細アモルファスナノケイ素粒子であり、充放電時の体積膨張を効果的に抑制し、材料の膨張を低減し、材料のサイクル特性を改善できる。最外層の炭素被覆層は、ナノケイ素と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らし、同時にケイ素ベース材料の導電性を効果的に向上できると共に充放電時の体積膨張を効果的に緩和できる。
【0060】
図2及び図3に示すように、いずれも実施例4のFIB~SEM画像である。図2及び図3からも分かるように、材料内部の粒子は、超微細ナノケイ素であり、その他が炭素マトリックスであり、材料内部にボイドがなく、緻密性が高く、同時に超微細ナノケイ素が炭素マトリックス中に均一に分散している。
【0061】
図4は、本発明のサンプルの初回充放電曲線図である。図4からも分かるように、サンプルの容量は1938.1mAh/g、効率は90.4%であり、表1~表2と組み合わせると、本発明のサンプルは、高容量、高初回効率などの特長を持っている。
【0062】
図5は、本発明のサンプルのXRDパターンを示す図である。図5から分かるように、サンプル内のケイ素はアモルファス状態にあり、炭素マトリックス中に分散している。
【0063】
以上、本発明を詳細に説明したが、以上の述べるものは本発明の好ましい実施例のみであって、これらによって本発明の保護範囲が限定的に解釈されない。当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変形及び改良が可能であり、かかる変形及び改良は本発明の保護範囲に含めることを指摘しておかなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】