(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】遺伝子療法による治療
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230526BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230526BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230526BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230526BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230526BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230526BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230526BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/86 Z
C12Q1/6869 Z
A61P25/00
A61K35/76
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554889
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2021059354
(87)【国際公開番号】W WO2021205028
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/057996
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514131733
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ シェフィールド
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】アズーズ,ミムン
(72)【発明者】
【氏名】スカロット,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】カリカ,エバンゲリア
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
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4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA01
(57)【要約】
本開示は、AP-4サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む転写カセット、当該転写カセットを含むベクター、当該ベクターを含む医薬組成物、及びAP-4-遺伝性痙性対麻痺の治療で使用するためのベクター又は組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸分子であって、哺乳類ニューロンにおける発現のために適合されたプロモーターを含む転写カセットを含み、前記カセットが、AP-4複合体の少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子をさらに含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、前記ヌクレオチド配列が、
i)配列番号1(AP4B1)に記載されるヌクレオチド配列又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、前記配列が(i)で定義される前記ヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重しているヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1(AP4B1)の配列にハイブリダイズし、前記核酸分子が前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする核酸分子と、
iv)配列番号2(AP4B1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
v)アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記アミノ酸配列がiv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、前記ポリペプチドが前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するヌクレオチド配列と、
からなる群から選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、前記ヌクレオチド配列が、
i)配列番号3(AP4E1)に記載されるヌクレオチド配列又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、前記配列が(i)で定義される前記ヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重しているヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3(AP4E1)の配列にハイブリダイズし、前記核酸分子が前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする核酸分子と、
iv)配列番号4(AP4E1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
v)アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記アミノ酸配列がiv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、前記ポリペプチドが前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するヌクレオチド配列と、
からなる群から選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、前記ヌクレオチド配列が、
i)配列番号5(AP4M1)に記載されるヌクレオチド配列又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、前記配列が(i)で定義される前記ヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重しているヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号5(AP4M1)の配列にハイブリダイズし、前記核酸分子が前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする核酸分子と、
iv)配列番号6(AP4M1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
v)アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記アミノ酸配列がiv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、前記ポリペプチドが前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するヌクレオチド配列と、
からなる群から選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、前記ヌクレオチド配列が、
i)配列番号7(AP4S1)に記載されるヌクレオチド配列又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、前記配列が(i)で定義される前記ヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重しているヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号7(AP4S1)の配列にハイブリダイズし、前記核酸分子が前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする核酸分子と、
iv)配列番号8(AP4S1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
v)アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記アミノ酸配列がiv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、前記ポリペプチドが前記AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するヌクレオチド配列と、
からなる群から選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
前記カセットが、運動ニューロンにおける発現のために適合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
前記プロモーターが、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター、ニワトリベータアクチンハイブリッドプロモーター(CBh)、CAGプロモーター、シナプシン1、Hb9、MeP229、及びGFAPプロモーター配列を含むニューロン及びグリア特異的プロモーター、並びにAP4B1、AP4E1、AP4M1、及びAP4S1を含むAP-4サブユニット特異的プロモーター領域からなる群から選択される、請求項6に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
前記プロモーター配列が、配列番号27に記載されるヌクレオチド配列、又は配列番号27の多型配列バリアントであるヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む、請求項7に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項10】
前記発現ベクターが、ウイルスベースの発現ベクターである、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記ウイルスベースのベクターが、AAV9である、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
前記ウイルスベースのベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項13】
前記ウイルスベースのベクターが、配列番号19(AP4B1)に記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項14】
前記ウイルスベースのベクターが、配列番号20(AP4B1)に記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項15】
前記ウイルスベースのベクターが、配列番号21(AP4S1)に記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項16】
前記ウイルスベースのベクターが、配列番号22(AP4S1)に記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項17】
前記ウイルスベースのベクターが、配列番号23(AP4E1)に記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項18】
前記ウイルスベースのベクターが、配列番号24(AP4E1)に記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項19】
前記ウイルスベースのベクターが、配列番号25又は26に記載されるヌクレオチド配列をさらに含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項20】
請求項9~19のいずれか一項に記載の発現ベクターと、賦形剤又は担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項21】
医薬品として使用するための、請求項9~19のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項22】
AP-4-遺伝性痙性対麻痺(AP-4-HSP)の治療で使用するための、請求項9~19のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項23】
前記AP-4-HSPが、SPG47、SPG50、SPG51、又はSPG52である、請求項22に記載の使用による発現ベクター。
【請求項24】
請求項9~19のいずれか一項に記載の発現ベクターでトランスフェクトされた、細胞。
【請求項25】
前記細胞が、ニューロンである、請求項24に記載の細胞。
【請求項26】
前記細胞が、運動ニューロンである、請求項25に記載の細胞。
【請求項27】
AP-4遺伝性痙性対麻痺(HSP)を治療又は予防するための方法であって、治療的有効量の請求項9~19のいずれか一項に記載の発現ベクターを投与して、AP-4-HSPを予防及び/又は治療することを含む、方法。
【請求項28】
前記AP-4-HSPが、SPG47、SPG50、SPG51、又はSPG52である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象を遺伝子型判定して、前記対象が1つ以上のAP-4遺伝子配列に変異を有するかどうかを判定するための診断方法であって、
i)試験される対象から生体試料を取得し、前記生体試料から核酸を抽出するステップと、
ii)前記核酸を配列決定して、前記対象においてAP4B1、AP4E1、AP4M1、及びAP4S1のヌクレオチド配列を取得するステップと、
iii)前記取得されたゲノム配列を正常な一致した対照ヌクレオチド配列と比較して、ヌクレオチド配列の差異を識別するステップと、
iv)前記試験試料がAP-4遺伝子配列において修飾されているかどうか、及び前記修飾がAP-4-HSPに関連するどうかを判定するステップと、を含む、診断方法。
【請求項30】
前記方法が、AP-4-HSPを予防又は治療するための請求項9~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの発現ベクターの投与をさらに含む、請求項29に記載の診断方法。
【請求項31】
前記AP-4-HSPが、SPG47、SPG50、SPG51、及びSPG52からなる群から選択される、請求項29又は30に記載の診断方法。
【請求項32】
前記ゲノム配列が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、又は配列番号7、若しくはその多型配列バリアントを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の診断方法。
【請求項33】
転写カセットであって、
配列番号27に記載されるヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子、又は配列番号27の多型配列バリアントであるヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子が転写プロモーターであり、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子に動作可能に連結されており、前記第1の核酸分子が前記第2の核酸分子の転写を調節する、転写カセット。
【請求項34】
前記第1の核酸分子が、配列番号27に記載される前記ヌクレオチド配列を含む、又はそれからなる、請求項33に記載の転写カセット。
【請求項35】
前記第2の核酸分子が、前記AP-4複合体の少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項33又は34に記載の転写カセット。
【請求項36】
前記第2の核酸分子が、配列番号1に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる、請求項35に記載の転写カセット。
【請求項37】
前記核酸分子が、配列番号3に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる、請求項35に記載の転写カセット。
【請求項38】
前記核酸分子が、配列番号5に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる、請求項35に記載の転写カセット。
【請求項39】
前記核酸分子が、配列番号7に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる、請求項35に記載の転写カセット。
【請求項40】
請求項33~39のいずれか一項に記載の転写カセットを含む、発現ベクター。
【請求項41】
前記発現ベクターが、ウイルスベースの発現ベクターである、請求項40に記載の発現ベクター。
【請求項42】
前記ウイルスベースのベクターが、AAV9である、請求項41に記載の発現ベクター。
【請求項43】
前記ウイルスベースのベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項41に記載の発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘテロ四量体アダプタータンパク質複合体4(AP-4)の少なくとも1つのサブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む転写カセット、当該転写カセットを含むベクター、当該ベクターを含む医薬組成物、及びAP-4遺伝性痙性対麻痺の治療で使用するためのベクター又は組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝性痙性対麻痺(HSP)は、10万人当たり0.5~5.5人の全体的有病率を伴う、希少な遺伝性、進行性、下肢痙性障害群である。若年患者における遺伝性痙性対麻痺(HSP)は、多くの場合、脚の衰弱及び痙性(硬直)を特徴とし、後年にさらなる合併症につながり得、また、杖、歩行器、又は車椅子の介助も必要とし得る。常染色体優性、常染色体劣性、X連鎖性、及び母性遺伝(ミトコンドリア)型などのHSPの様々な遺伝子型があり、最も一般的に見られる常染色体優性型が、HSP患者の75~80%に影響を及ぼす。遺伝子KIAA1840(US10519503)若しくはZFYVE26(US2017152562)の変異によって引き起こされる常染色体劣性HSP(AR-HSP)、又はSPG3Aの変異によって引き起こされる常染色体優性HSPなどの異なる形態のHSPに関与する遺伝子の変異の識別のための様々な診断方法が、CN1958605に開示されている。
【0003】
AP-4欠乏症候群又はアダプタータンパク質複合体4(AP-4)欠乏症として知られることもある、AP-4関連遺伝性痙性対麻痺(AP-4-HSP)は、AP-4アダプター複合体のタンパク質サブユニットをコードする4つの遺伝子のうちのいずれか1つにおける機能喪失型変異によって引き起こされる[10]。AP-4-HSPは、本質的に常染色体劣性である。AP4B1遺伝子の変異によって引き起こされるAP-4-HSPは、痙性対麻痺47型(SPG47)又は遺伝性痙性対麻痺47型(HSP47)と呼ばれることもあり、AP4B1タンパク質レベルの有意な減少をもたらす[2]。AP-4-HSPはまた、3つの他のAP-4サブユニットの変異によって引き起こされ得る。AP4M1変異は、SPG50又はHSP50と呼ばれることもあるAP-4-HSPを引き起こし、AP4E1変異は、SPG51又はHSP51と呼ばれることもあるAP-4-HSPを引き起こし、AP4S1変異は、SPG52又はHSP51と呼ばれることもあるAP-4-HSPを引き起こす。AP-4-HSPの特徴は、原因となる変異が生じる遺伝子にかかわらず、非常に類似している。AP-4-HSPの発症は、通常、小児期早期に起こり、痙性、中等度から重度の知的障害、発話障害又は発話の欠如、小脳髄症、発作、内気な性格、及び重度の症例では四肢麻痺をもたらす[11]。AP-4-HSPはこれまで、世界中で199人の小児で特性評価されてきたが[1]、発症件数は過小報告されている可能性が最も高い。AP-4-HSPは進行性であり、疾患修飾性治療がない。したがって、AP-4-HSPに罹患している患者のために患者転帰を改善するための新しい治療法を開発する必要性がある。
【0004】
AP4B1は、AP-4ヘテロ四量体の1つの成分である(
図1A)。完全なAP-4複合体は、2つの大型アダプチン(エプシロン型サブユニットAP4E1及びベータ型サブユニットAP4B1)、中型アダプチン(ミュー型サブユニットAP4M1)、及び小型アダプチン(シグマ型AP4S1)からなる。AP-4複合体は、トランスゴルジ網(TGN)を逸脱する小胞上に非クラスリン関連コートを形成し、トランスゴルジ網からエンドソーム・リソソーム系へのタンパク質の標的化に関与し得る(
図1B)。これはまた、上皮細胞内の側底膜へのタンパク質選別、及びニューロン内のタンパク質の適切な非対称局在化にも関与している。AP-4陽性TGN由来小胞は、オートファゴソームの正しい空間形成に不可欠であり、したがって、AP-4複合体の喪失は、遠位軸索内のオートファゴソーム形成を妨げ得る。したがって、AP-4複合体は、脳における正常な機能への鍵である。
【0005】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、当該技術分野で公知であり、レトロウイルス又はレンチウイルスベクターと比較すると、その軽度の免疫応答、広範囲の細胞に感染する能力、及び所望のDNAがゲノム内に統合されず、他の遺伝子の潜在的破壊及びノックアウトをもたらすが、細胞内で染色体外に貯蔵されることなどの様々な利点を提供する。AAVは、ゲノム複製及びパッケージングに必要とされる逆位反復が両側に配置されたコード配列を伴う3つの遺伝子を含む、約4.8キロベース(kb)の一本鎖DNAゲノムを含む。AAV及び修正AAVベクターの使用は、当該技術分野で公知であり、WO2019/032898、WO2020041498、又はWO2019/028306に開示されている。AAVベクターは、嚢胞性線維症及びうっ血性心不全の治療並びに脊髄性筋萎縮症の治療のための承認された治療法において遺伝子の送達について様々な第I相及び第II相臨床試験を完了している。
【0006】
我々は、哺乳類ニューロン、例えば、運動ニューロンにおける発現のために適合された発現制御配列に動作可能に連結されたAP-4核酸分子を含む発現ベクター、及びHSPに関連する症状の予防又は治療において送達し、機能不全AP-4タンパク質に機能的に取って代わるための修飾発現ベクターの使用を開示する。本開示は、AP-4複合体のタンパク質をコードする核酸分子を含む、修飾ベクター、例えば、AAVベクターの開発に関する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様によれば、単離された核酸分子であって、哺乳類ニューロンにおける発現のために適合されたプロモーターを含む、転写カセットを含み、当該カセットが、AP-4複合体の少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子をさらに含む、単離された核酸分子が提供される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、当該発現カセットは、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、ヌクレオチド配列は、
i)配列番号1(AP4B1)に記載されるヌクレオチド配列、又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、当該配列が、(i)で定義されるヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重している、ヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1(AP4B1)の配列にハイブリダイズし、当該核酸分子が、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする、核酸分子と、
iv)配列番号2(AP4B1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列と、
v)アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列であって、当該アミノ酸配列が、iv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、当該ポリペプチドが、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成する、ヌクレオチド配列と、からなる群から選択される。
【0009】
核酸分子のハイブリダイゼーションは、2つの相補的核酸分子がある量の相互への水素結合の量を受けるときに生じる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、核酸の周囲の環境条件、ハイブリダイゼーション方法の性質、並びに使用される核酸分子の組成及び長さに応じて変化し得る。特定の程度のストリンジェンシーを達成するために必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001)、及びTijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes Part I,Chapter 2(Elsevier,New York,1993)で論じられている。Tmは、核酸分子の所与の鎖の50%がその相補鎖にハイブリダイズされる温度である。以下は、ハイブリダイゼーション条件の例示的なセットであり、限定するものではない。
【0010】
非常に高いストリンジェンシー(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:5xSSC、65℃で16時間
2回洗浄:2xSSC、各々室温(RT)で15分間
2回洗浄:0.5xSSC、各々65℃で20分間
【0011】
高いストリンジェンシー(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、又は89%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:5x~6xSSC、65℃~70℃で16~20時間
2回洗浄:2xSSC、各々RTで5~20分間
2回洗浄:1xSSC、各々55℃~70℃で30分間
【0012】
低いストリンジェンシー(少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、又は75%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:6xSSC、RT~55℃で16~20時間
少なくとも2回洗浄:2x~3xSSC、各々RT~55℃で20~30分間。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、当該発現カセットは、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、ヌクレオチド配列は、
i)配列番号3(AP4E1)に記載されるヌクレオチド配列、又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、当該配列が、(i)で定義されるヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重している、ヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3(AP4E1)の配列にハイブリダイズし、当該核酸分子が、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする、核酸分子と、
iv)配列番号4(AP4E1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列と、
v)アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列であって、当該アミノ酸配列が、iv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、当該ポリペプチドが、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成する、ヌクレオチド配列と、からなる群から選択される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、当該発現カセットは、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、ヌクレオチド配列は、
i)配列番号5(AP4M1)に記載されるヌクレオチド配列、又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、当該配列が、(i)で定義されるヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重している、ヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号5(AP4M1)の配列にハイブリダイズし、当該核酸分子が、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする、核酸分子と、
iv)配列番号6(AP4M1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列と、
v)アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列であって、当該アミノ酸配列が、iv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、当該ポリペプチドが、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成する、ヌクレオチド配列と、からなる群から選択される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、当該発現カセットは、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、ヌクレオチド配列は、
i)配列番号7(AP4S1)に記載されるヌクレオチド配列、又は多型配列バリアントと、
ii)ヌクレオチド配列であって、当該配列が、(i)で定義されるヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として縮重している、ヌクレオチド配列と、
iii)核酸分子であって、その相補鎖が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号7(AP4S1)の配列にハイブリダイズし、当該核酸分子が、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成するポリペプチドをコードする、核酸分子と、
iv)配列番号8(AP4S1)に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列と、
アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列であって、当該アミノ酸配列が、iv)に表される少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって修飾され、当該ポリペプチドが、AP-4複合体を含むポリペプチドと複合体を形成する、ヌクレオチド配列と、からなる群から選択される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、当該カセットは、運動ニューロンにおける発現のために適合される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、配列番号1に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号2に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、配列番号3に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号4に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、配列番号5に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号6に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、配列番号7に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号8に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0025】
本明細書に開示されるポリペプチドは、任意の組み合わせで存在し得る1つ以上の置換、付加、欠失、切断によってアミノ酸配列が異なり得る。好ましいバリアントとしては、保存的アミノ酸置換によって参照ポリペプチドとは異なるものが挙げられる。そのような置換は、所与のアミノ酸を同様の特徴の別のアミノ酸で置換するものである。以下のアミノ酸の非限定的なリストは、保存的置換(類似)とみなされる:a)アラニン、セリン、及びトレオニン、b)グルタミン酸及びアスパラギン酸、c)アスパラギン及びグルタミン、d)アルギニン及びリジン、e)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、及びバリン、並びにf)フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン。最も好ましいものは、変化する元の参照ポリペプチドと同じ生物学的機能及び活性を保持又は強化するバリアントである。一実施形態では、ポリペプチドは、本明細書で例証される完全長アミノ酸配列又はヌクレオチド配列との少なくとも70%の同一性、さらにより好ましくは、少なくとも75%の同一性、なおもより好ましくは、少なくとも80%、85%、90%、95%の同一性、及び少なくとも99%の同一性を有する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、当該プロモーターは、構成的プロモーターである。
【0027】
本発明の代替的な実施形態では、当該プロモーターは、調節されたプロモーター、例えば、誘導性又は細胞特異的プロモーターである。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、当該プロモーターは、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター、ニワトリベータアクチンハイブリッドプロモーター(CBh)、CAGプロモーター、シナプシン1、Hb9、MeP229、及びGFAPプロモーター配列を含むニューロン及びグリア特異的プロモーター、並びにAP4B1、AP4E1、AP4M1、及びAP4S1を含むAP-4サブユニット特異的プロモーター領域からなる群から選択される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、当該プロモーター配列は、配列番号27に記載されるヌクレオチド配列、又は配列番号27の多型配列バリアントであるヌクレオチド配列を含む、核酸を含む。
【0030】
本発明の代替的な実施形態では、当該プロモーター配列は、配列番号30に記載されるヌクレオチド配列、又は配列番号30の多型配列バリアントであるヌクレオチド配列を含む、核酸を含む。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、
配列番号27に記載されるヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子、又は配列番号27の多型配列バリアントであるヌクレオチド配列を含み、当該核酸分子が、転写プロモーターであり、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子に動作可能に連結されており、第1の核酸分子が、第2の核酸分子の転写を調節する、転写カセットが提供される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、プロモーターを含む当該第1の核酸分子は、配列番号27に記載されるヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる。
【0033】
本発明の代替的な実施形態では、当該第1の核酸分子は、配列番号30に記載されるヌクレオチド配列、又は配列番号30の多型配列バリアントであるヌクレオチド配列を含む。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、当該第2の核酸分子は、AP-4複合体の少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、当該第2の核酸分子は、配列番号1に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号2に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、配列番号3に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号4に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、配列番号5に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号6に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、配列番号7に表されるヌクレオチド配列若しくはその多型配列バリアントを含むか、又はそれからなる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号8に表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列又はその多型配列バリアントが提供される。
【0043】
「プロモーター」又は「転写プロモーター」は、当該技術分野で認識されており、明確にするために、限定としてではなく一例のみとして提供される以下の特徴を含む。エンハンサー要素は、しばしば遺伝子の転写開始部位に対する5’で見出される、シス作用核酸配列である(エンハンサーはまた、遺伝子配列に対する3’で見出されるか、又はイントロン配列内に位置することさえもできる)。エンハンサーは、エンハンサーが連結される遺伝子の転写速度を増加させるように機能する。エンハンサー活性は、エンハンサー要素に特異的に結合することが示されているトランス作用転写因子(ポリペプチド)に応答する。転写因子の結合/活性(Eukaryotic Transcription Factors,by David S Latchman,Academic Press Ltd,San Diegoを参照されたい)は、いくつかの生理学的/環境的合図に応答し、構成的又は調節可能であり、また、細胞/組織特異的であり得る。プロモーター要素には、転写開始部位を選択するように機能する、いわゆるTATAボックス及びRNAポリメラーゼ開始選択(RIS)配列も含まれる。これらの配列はまた、特に、RNAポリメラーゼによる転写開始選択を促進するように機能するポリペプチドに結合する。
【0044】
本明細書で使用される場合、プロモーター配列を含む第1の核酸及びポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列は、調節配列を含む第1の核酸分子の制御の下で第2の核酸分子の発現又は転写を配置するような方法で共有結合されたときに、「動作可能に」連結されると言われる。コード配列が機能的タンパク質に翻訳されることが所望される場合、2つのDNA配列は、5’調節配列中のプロモーターの誘導がコード配列の転写及びmRNAの産生をもたらす場合に動作可能に連結されると言われる。したがって、プロモーター領域は、結果として生じる転写物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳されるように、プロモーター領域がそのDNA配列の転写をもたらすことが可能である場合にコード配列に動作可能に連結されるであろう。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による転写カセットを含む発現ベクターが提供される。
【0046】
ウイルスは、外因性遺伝子の送達のためのベクターとして一般的に使用される。一般的に採用されるベクターには、組換え修飾エンベロープ又は非エンベロープDNA及びRNAウイルス、例えば、バキュロビリジアエ、パルボビリジアエ、ピコルノビリジアエ、ヘルペスビリジアエ、ポックスウイルス科、アデノビリジアエ、ピコルンナビリジアエ、又はレトロウイルス科、例えば、レンチウイルスが含まれる。親ベクター特性の各々の有利な要素を利用するキメラベクターも採用され得る(例えば、Feng,et al(1997)Nature Biotechnology 15:866-870を参照)。そのようなウイルスベクターは、野生型であり得るか、又は複製欠損、条件付き複製、若しくは複製能力を有するように組換えDNA技術によって修飾され得る。条件付き複製ウイルスベクターを使用して、特定の細胞型における選択的発現を達成する一方で、有害な広域スペクトラム感染を回避する。条件付き複製ベクターの例は、Pennisi,E.(1996)Science 274:342-343;Russell,and S.J.(1994)Eur.J.of Cancer 30A(8):1165-1171に記載されている。
【0047】
好ましいベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、又はレトロウイルスゲノムに由来する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、当該発現ベクターは、ウイルスベースの発現ベクターである。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、アデノ随伴ウイルス[AAV]である。
【0050】
好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、以下からなる群から選択される:
AAV2、AAV3、AAV6、AAV13、AAV1、AAV4、AAV5、AAV6、AAV9、及びrhAAV10。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、AAV9である。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、当該AAVベクターは、一本鎖AAVウイルスに基づく。
【0053】
本発明の代替的な実施形態では、当該AAVベクターは、自己相補的AAVウイルスに基づく。
【0054】
天然に存在するAAV血清型は、典型的には、自然感染の間に複製されて二本鎖AAVウイルスゲノムを形成する一本鎖ゲノムを含む。これは、AAV複製及び発現における速度制限ステップである。組換え型形態のAAVは、即時の発現及び複製のために適合されるセンス及びアンチセンスゲノム鎖の両方を含む、自己相補型AAVと称される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、配列番号19(AP4B1)に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、配列番号20(AP4B1)に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、配列番号21(AP4S1)に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、配列番号22(AP4S1)に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、配列番号23(AP4E1)に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、配列番号24(AP4E1)に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、配列番号25又は26をさらに含む。
【0062】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該ウイルスベースのベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0063】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による発現ベクターと、賦形剤又は担体と、を含む、医薬組成物が提供される。
【0064】
本発明の発現ベクター組成物は、薬学的に許容可能な調製物で投与される。そのような調製物は、薬学的に許容可能な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合担体、及び補助的治療剤を日常的に含有し得る。本発明の発現ベクター組成物は、注射を含む任意の従来的経路によって、又は経時的な段階的注入によって投与することができる。
【0065】
本発明の発現ベクター組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、単独で、又はさらなる用量と一緒に、所望の応答を生成する発現ベクターの量である。疾患を治療する場合、所望の応答は、疾患の進行を阻害することである。これは、疾患の進行を一時的に遅らせることのみを含むが、より好ましくは、疾患の進行を永久的に停止することを含む。これは、日常的な方法によって監視することができる。そのような量は、当然ながら、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ及び体重、治療期間、併用療法の性質(存在する場合)、特定の投与経路を含む、個々の患者パラメータ、並びに医療従事者の知識及び専門技術内の類似の因子に依存する。これらの因子は、当業者に周知であり、日常的な実験のみで対処することができる。個々の成分又はその組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断による最大安全用量を使用することが概して好ましい。しかしながら、当業者であれば、患者が、医学的理由、心理的理由、又は事実上あらゆる他の理由により、より低い用量又は耐用量を主張し得ることを理解するであろう。
【0066】
前述の方法で使用される発現ベクター組成物は、好ましくは、滅菌され、患者への投与に好適な重量又は体積の単位で所望の応答を生成するための本発明による有効量の発現ベクターを含有する。対象に投与されるベクターの用量は、異なるパラメータに従って、特に、使用される投与モード及び対象の状態に従って選択することができる。他の因子には、望ましい治療期間が含まれる。対象における応答が適用される初回用量では不十分である場合、より高い用量(又は異なるより局所的な送達経路による効果的に高い用量)が、患者の耐性が許容する範囲で採用され得る。投与量、注射のスケジュール、注射部位、投与モード、及び同等物が前述とは異なる、ベクター組成物の投与のための他のプロトコルが、当業者に公知であろう。(例えば、試験目的又は獣医学治療目的のための)は、上記に記載されるものと実質的に同じ条件下で実施される。本明細書で使用される場合の対象は、哺乳類、好ましくは、ヒトであり、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、又は齧歯類を含む。
【0067】
投与されるとき、本発明の発現ベクター組成物は、薬学的に許容可能な量で、かつ薬学的に許容可能な組成物で適用される。用語「薬学的に許容可能な」は、活性薬剤の生物活性の有効性に干渉しない非毒性物質を意味する。そのような調製物は、塩、緩衝剤、防腐剤、適合担体、及び任意選択的に他の治療剤(例えば、特定の疾患適応症の治療で典型的に使用されるもの)を日常的に含有し得る。医薬で使用されるとき、塩は、薬学的に可能であるべきであるが、薬学的に許容されない塩が、その薬学的に許容可能な塩を調製するために便宜的に使用され得、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的及び薬学的に可能な塩には、限定されないが、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、及び同等物。また、薬学的に可能な塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩などのアルカリ金属塩又はアルカリ土類塩として調製されることができる。
【0068】
本発明による発現ベクターを含有する医薬組成物は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、及び塩中のリン酸を含む。好適な緩衝剤を含有し得る。医薬組成物はまた、任意選択的に、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールなどの好適な防腐剤を含有し得る。
【0069】
発現ベクター組成物は、単位剤形で便宜的に提示され得、薬剤学の技術分野で周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。全ての方法は、活性薬剤を、1つ以上の副成分を構成するベクターと関連付けるステップを含む。調製物は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、公知の方法に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であり得る。採用され得る可能な溶媒としては、水、リンゲル溶液、及び等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、滅菌固定油が、従来、溶媒又は懸濁媒体として採用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油が採用され得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用され得る。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に好適な担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAに見出すことができる。
【0070】
本発明のさらなる態様によれば、医薬品として使用するための本発明による発現ベクターが提供される。
【0071】
本発明のさらなる態様によれば、AP-4遺伝性痙性対麻痺の治療で使用するための本発明による発現ベクターが提供される。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、当該AP-4-HSPは、SPG47である。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、当該AP-4-HSPは、SPG50である。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、当該AP-4-HSPは、SPG51である。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、当該AP-4-HSPは、SPG52である。
【0076】
痙性対麻痺(SPG)は、遺伝性痙性対麻痺(HSP)と同義的に使用され、したがって、SPG47は、HSP47であり、SPG50は、HSP50であり、SPG51は、HSP51であり、SPG52は、HSP52である。
【0077】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による発現ベクターでトランスフェクトされた細胞が提供される。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、当該細胞は、ニューロンである。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、当該ニューロンは、運動ニューロンである。
【0080】
本発明のさらなる態様によれば、治療的有効量の本発明による発現ベクターを投与して、遺伝性痙性対麻痺を予防及び/又は治療することを含む、AP-4遺伝性痙性対麻痺を治療又は予防する方法が提供される。
【0081】
本発明の好ましい方法では、AP-4-HSPは、痙性対麻痺47型(SPG47)である。
【0082】
本発明の好ましい方法では、AP-4 HSPは、痙性対麻痺50型(SPG50)である。
【0083】
本発明の好ましい方法では、AP-4 HSPは、痙性対麻痺51型(SPG51)である。
【0084】
本発明の好ましい方法では、AP-4 HSPは、痙性対麻痺52型(SPG52)である。
【0085】
本発明のさらなる態様によれば、対象を遺伝子型判定して、対象が1つ以上のAP-4遺伝子配列に変異を有するかどうかを判定するための診断方法であって、
i)試験される対象から生体試料を取得し、当該生体試料から核酸を抽出するステップと、
ii)当該核酸を配列決定して、当該対象においてAP4B1、AP4E1、AP4M1、又はAP4S1のヌクレオチド配列を取得するステップと、
iii)取得されたゲノム配列を正常な一致した対照ヌクレオチド配列と比較して、ヌクレオチド配列の差異を識別するステップと、
iv)試験試料がAP-4遺伝子配列において修飾されているかどうか、及び当該修飾が遺伝性痙性対麻痺に関連するどうかを判定するステップと、を含む、診断方法が提供される。
【0086】
本発明の好ましい方法では、当該方法は、あるタイプのAP-4遺伝性痙性対麻痺を予防又は治療するための本発明による少なくとも1つの発現ベクターの投与をさらに含む。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、当該AP-4-HSPは、SPG47、SPG50、SPG51、及びSPG52からなる群から選択される。本発明の好ましい方法では、当該ゲノム配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、又は配列番号7、若しくはその多型配列バリアントを含む。
【0088】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」という単語、並びに当該単語の変化形、例えば、「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、「含むが、それらに限定されない」ことを意味し、他の部分、添加剤、成分、整数、又はステップを除外することを意図していない(かつ除外しない)。「から本質的になる」とは、不可欠な整数を有するが、不可欠な整数の機能には実質的に影響を及ぼさない整数を含むことを意味する。
【0089】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、文脈上別段の解釈が要求されない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、明細書は、文脈上別段の解釈を必要としない限り、複数性だけでなく単一性も企図するものとして理解されるべきである。
【0090】
本発明の特定の態様、実施形態、又は実施例と併せて説明される特徴、整数、特性、化合物、化学的部分、又は基は、それらと不適合でない限り、本明細書に説明される任意の他の態様、実施形態、又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
ここで、本発明の実施形態を、以下の図を参照して、一例のみとして説明する。
【0092】
【
図1】AP4複合体及び機能:(A)大型ベータ及びエプシロン型アダプチン(AP4B1及びAP4E1と称される、β4及びε4)、中型ミュー型アダプチン(AP4M1と症されるAPμ4)、並びに小型シグマアダプチン(AP4S1と称されるAPσ4)からなる、AP4ヘテロ四量体複合体の図。(B)AP4複合体機能の図。1)AP4ヘテロ四量体が、トランスゴルジ網(TGN)に動員され、ひいては、ATG9を含む、それらのカーゴタンパク質を動員する。2)クラテリン陰性小胞が、TGNから生じる。3)AP4複合体は、小胞から脱落され、さらなる小胞形成のためにTGNに戻って再循環される。4)残りの小胞は、キネシン運動タンパク質によって結合され、微小管に沿って細胞周辺又は遠位神経区画まで順行方向に輸送される。5)ATG9小胞が、オートファゴソーム形成を促進するように集合する。
【
図2】AP4B1遺伝子置換のための遺伝子療法ベクターの設計及び検証。(A)設計され、すでに導入されているAAV及びLVの概略図。(B)GFP(+GFP)又はhAP4B1(+AAV-hAP4B1)を発現するプラスミドを用いたトランスフェクション後の対照(WT)又はAP4B1-ノックアウト(KO)HeLa細胞溶解物の代表的なウェスタンブロット。KO細胞株におけるhAP4B1の発現が、AP4B1タンパク質発現の欠損を回復する。AP4B1発現の回復はまた、AP4E1サブユニットタンパク質レベルの発現をWTレベルに復元する。(C)AP4B1-/-Hela細胞におけるAAV発現V5タグ付きAP4B1の検証。(D)300,000vg/細胞AAV9-V5_hAP4B1のいずれかを用いた治療の10日後の皮質ニューロンマーカーMAP2(赤色チャネル)及びV5(緑色チャネル)一次抗体で染色された非トランスジェニックラット皮質ニューロン。(E)患者変異株(破線の左側)におけるhAP4B1発現の回復を示す、非疾患対照線維芽細胞(Ctrl)、並びに未治療(UT)のSPG47患者線維芽細胞及び増加する量のLV-V5_hAP4B1で治療されたSPG47患者線維芽細胞の両方の代表的なウェスタンブロット。400,000vg/細胞AAV9ウイルスベクターで治療された非トランスジェニックラット皮質ニューロンの代表的なウェスタンブロット:AAV9-V5_SPG47(hAP4B1)、AAV9-SPG47(hAP4B1)、AAV9-GFP、非形質導入細胞。
【
図3】AB4B1遺伝子置換の有効性を評価するための読み出しとしてのATG9Aの使用。(A)CRISPR生成Helaノックアウト細胞モデルにおけるTGNトランスゴルジ網(TGN)へのATG9Aの誤った局在化の図。AP4B1-/-Hela細胞におけるATG9Aの誤った局在化は、AP4B1をコードするAAV9構築物を用いたトランスフェクション後に回復される(B)。LV形質導入患者細胞の代表的なウェスタンブロットは、(D)で定量化された、hAP4B1発現の回復及びV5タグの検出(C)を示す。形質導入患者細胞はまた、(F)で定量化された、ATG9A発現の回復(E)も示す。データは、平均±平均の標準誤差(SEM)、n=3として提示される。データは、一元配置ANOVAによって分析され、その後に対照に関するダネットの事後多重比較検定が続く。星は、p≦0.05(*)、p<0.0001(****)、ns=有意ではないことを示す。(G)SPG47患者の初代線維芽細胞におけるATG9Aの誤った局在化のレンチウイルスベクター(LV)介在性補正。白色のアスタリスクでマークされたSPG47患者細胞は、LV-V5_hAP4B1を用いた治療後の誤って局在化されたATG9Aの回復を示す。
【
図4】(A)AAV9_CBh_hAP4B1の大槽を介した注射の4週間後の脳組織内のRT-qPCRによるマウスAp4b1(桃色)及びヒトAP4B1(緑色)mRNAの定量化(UT-未治療、n=3、AAV_CBh_hAP4B1、n=5)。(B)2×10
10vgのAAV9_CBh_hAP4B1ウイルスベクターの大槽を介した注射の4週間後の種々のCNS及び末梢組織におけるqPCRによるウイルスゲノムコピー数の定量化(UT-未治療、n=3、AAV_CBh_hAP4B1、n=5)。(C)野生型マウスにおけるパイロット安全性インビボ研究。2×10
10vgのAAV_CBh_hAP4B1又はAAV_CBh_GFPウイルスベクターの大槽を介した注射後4週間における野生型マウスの体重及びロータロッド測定値。各群の数Nが括弧内に示される。(D及びE)野生型マウスにおけるパイロット安全性インビボ研究。2×10
10vgのAAV_CBh_hAP4B1又はAAV_CBh_GFPウイルスベクターの大槽を介した注射後6か月における野生型マウスの体重及びロータロッド測定値。N=8(UT)、10(hAP4B1/GFP)。
【
図5】Ap4b1
-/-マウスモデルの特性評価。野生型(WT)及びAp4b1-ノックアウト(Ap4b1
-/-)マウスのロータロッド(A)評価を示すヒストグラムが、様々において秒単位で落下するまでの潜時として表示された。データは、平均±平均の標準誤差(SEM)として提示され、n=15である242日目のAp4b1(-/-)を除いて、群当たりn=16である。データは、WTに関するスチューデントのt検定によって分析される。星は、p≦0.05(*)、p<0.01(**)を示す。(B)6、9、及び12か月齢の野生型(WT)マウスと比較した、Ap4b1-ノックアウト(Ap4b1
-/-))のオープンフィールド行動評価。データは、平均±平均の標準誤差(SEM)として提示され、nは、試験が進行するにつれて全ての群及び時点について可変である。データは、各群が他の群と比較された一元配置ANOVAによって分析され、その後にテューキーの事後多重比較検定が続く。星は、p≦0.05(*)を示す。(C)3か月及び6か月齢におけるCatWalk評価によって測定された前足の支持基底。シダックの事後多重比較検定を用いた二元配置ANOVAによって分析されたデータ。星印は、p<0.01(**)、p<0.001(***)を示す。(D)歩行分析
【
図6】(A)後肢が正中線に向かって内側に引かれたAp4b1(-/-)マウスで観察された、抱擁表現型を実証する画像。(B)異なる時点での野生型(WT)及びAp4b1-ノックアウト(Ap4b1
-/-)における抱擁表現型の存在を示すヒストグラム。データは、尾部による懸垂後に抱擁表現型を示すか、又は示さない各群内のマウスの数として提示される。後肢抱擁について陽性である各群内のマウスの割合が上記に示される。n=15である270日目のAp4b1(-/-)を除いて群当たりn=16である。
【
図7】冠状MRI画像は、野生型マウスと比較した、Ap4b1-ko(Ap4b1
-/-)マウスにおける脳梁の厚さの低減を示す(A)。μm単位の厚さが、(B)で定量化される。予備データが平均±SDとして提示される。測定は、一致する脳領域において採取されたマウス当たり4枚のスライスに由来する。MRI所見を確認する、H&Eで染色された冠状脳切片からの代表的な画像(C)。脳梁の厚さの測定は、一致する脳領域において採取されたマウス当たり複数のスライスに由来する。μm単位の厚さが、(D)で定量化される。データが平均±SDとして提示される。スケールバー=1mm;250μm。NanoZoomer Digital Pathologyソフトウェア(Hamamatsu)を使用して撮像及び分析された。
【
図8】AP4B1ノックアウトマウスATG9A及びAP4E1タンパク質レベルにおけるAP4複合体の状態が、ホモ接合体Ap4b1-/-(HZ)及び野生型(WT)マウスから収集された脳で評価された。WTマウスと比較した、Ap4b1-/-におけるATG9Aレベルの増加。これは、ヒト患者線維芽細胞及びiPSC由来ニューロンを含むヒト細胞モデルで観察される表現型である。もう1つの重要な観察は、WTマウスと比較したときのAP4b1-/-におけるAP4E1ユニットの枯渇である。同じ観察が、AP4患者から単離されたヒト細胞を含むSPG47の細胞モデル系で報告されている。
【
図9】AAV9-hAP4B1治療Ap4b1-/-マウスにおける体重増加。未治療野生型マウス(黒色)、未治療AP4b1-/-マウス(青色)、及び生後1日目に5×1013gc/kgのAAV9-hAP4B1の大槽内注射によって治療されたAp4B1-/-マウス(赤色)の群平均。メス及びオスが別々にプロットされる。
【
図10】抱擁アッセイによるAAV9-hAP4B1治療反応。n=6からn=15まで変動するコホート。野生型又はAp4b1-/-ノックアウトマウスのいずれかが、2、3、及び9か月齢で抱擁反射について評価され、抱擁についての陽性率がプロットされる(赤色)。低用量=2×1013gc/kg、高用量=5×1013gc/kg。
【
図11】ロータロッド試験における潜時に対するAAV9-hAP4B1の大槽投与の影響。未治療野生型マウス(黒色)、未治療AP4b1-/-マウス(青色)、及び生後1日目に5×1013gc/kgのAAV9-hAP4B1の大槽内注射によって治療されたAp4B1-/-マウス(赤色)の群平均。メス及びオスが別々にプロットされる。
【
図12】AP4B1ノックアウトマウスにおけるAP4複合体の状態。AP4E1タンパク質レベルが、ホモ接合体Ap4b1-/-(HZ)及び野生型(WT)マウスから収集された脊髄(A)及び心臓(B)で復元された。
【
図13】AP4B1内因性プロモーター配列及びプライマーを記載する。
【
図14】MeP229、AP4、及びhSynプロモーターの制御下でのHeLa細胞におけるGFP発現。用語「モック」は、GFPの発現がない対照を示す。示されるように、3つ全てのプロモーターの下での発現が検出された。実験が、各試料に3つの複製を使用して実施された。データが平均±SDとして提示される。
【
図15】TSS位置(大文字)及び最小プロモーター領域(下線)を示す注釈付き配列。プロモーター及び調節配列でしばしば見られるGC-Box領域が、太字で示される。PolII chip-seq標的領域(イタリック体)が、さらに強調表示される。
【0093】
材料及び方法
倫理についての声明
全ての動物インビボ実験は、シェフィールド大学倫理審査小委員会(University of Sheffield Ethical Review Sub-Committee)、英国動物手順委員会(UK Animal Procedures Committee,London,UK)により承認され、1986年動物(科学的処置)法に従い、プロジェクトライセンス40/3739下で実施された。C57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/Jマウス及び非トランスジェニックC57BL/6Jマウスが、食物及び水への自由なアクセスを伴う12時間暗/12時間明光反応サイクル(午前7時にオン/午後7時にオフ)において制御された施設内で維持された。この研究を報告する際に、ARRIVEガイドラインに従った。
【0094】
ウイルスベクター構築
オリジナルのpAAV2ベクター骨格は、Laughlin et al.,(1983)に発表された。ハイブリッドイントロン領域を含むCBhプロモーター4は、S.Gray博士によって提供されたpTRS-KS-CBh-eGFPプラスミドからのPCRによって増幅され、制限消化によるCMVプロモーターの除去後、pAAV_CMV_MCS構築物のMluI部位及びEcoRI部位にクローニングされた。完全長hAP4B1 cDNAが、J.Hirst博士5によって提供されたpLXIN-SPG47プラスミドからのPCR増幅及びライゲーションによってpAAV-CBh-MCSに移された。hAP4B1 cDNA配列は、pAAV_CBh_MCSプラスミドのSalI部位とHindIII部位との間でクローニングされた。別個のエピトープタグ付き構築物(pAAV_CBh_V5-hAP4B1)が、ICCによるhAP4B1タンパク質発現の検出を可能にするために作成された。リンカーレスN末端V5エピトープタグが、大型挿入のために設計された連続プライマー方略を使用したQ5介在性部位特異的変異誘導によって、hAP4B1コザック配列のすぐ下流に挿入された。ヒト線維芽細胞株における遺伝子導入を調査するために、V5-hAP4B1導入遺伝子配列が、制限消化(SalI/NotI XhoI/NotI)によってPGKプロモーターの下流のpLenti_PGK_MCS_Vosレンチウイルス骨格(Dr K.de Vosによって提供された)にサブクローニングされた。
【0095】
pCMV3-AP4S1が、Sino Biologicalから購入された。完全長ヒト非タグ付きAP4S1が、pCMV3-AP4S1からのPCR増幅によってpAAV_CBh_MCSに移され、それぞれ、hAP4S1の5’及び3’末端上にAgeI及びXbaI制限部位を導入した。次いで、hAP4S1 cDNA産物が、pAAV_CBh_MCSプラスミドのAgeI部位とXbaI部位との間でクローニングされた。
【0096】
強力な構成的CBhプロモーターを使用して遺伝子発現を駆動する構築物に加えて、内在的に見出されるレベルに近いよりレベルでhAP4B1導入遺伝子を発現すると仮説を立てられた、より弱いプロモーターを含有する、さらに3つの推定発現ベクターが生成された。プロモーターは、MeP229(内因性Mecp2遺伝子プロモーターのコア断片に由来し、S.Gray博士からの贈与として受領されたpSJG-MeP229-GFPプラスミドからのPCRにより増幅された)、hSyn(最初にLukashchuk及びその同僚によって発表された構築物である、scAAV-SYN1-GFPからの制限消化-ライゲーションによってクローニングされた、神経細胞特異的ヒトシナプシン1遺伝子プロモーター6)、及びAP4B1_endo(hAP4B1遺伝子転写開始部位の約600bp上流の領域を含有する、推定内在性プロモーター。この領域は、そのゲノム位置、CpG島の存在、及び既知の転写活性化因子である、CCCTC結合因子(CTCF)結合領域の存在により、潜在的なプロモーター領域としてインシリコで識別された7)であった。3つ全てのプロモーターは、制限ライゲーションによって、MluI部位とEcoRI部位の間でpAAV_MCS_KanRにクローニングされた。AP4B1_endoは、HEK293細胞から抽出されたヒトゲノムDNAからのPCRによって増幅された。
【0097】
V5タグ付きhAP4B1構築物の陰性対照としての役割を果たすために、V5エピトープのみが、pCIneo_V5-Nベクター(K.de Vos博士からの贈与)からPCR増幅され、pAAV_CBh_MCSのXbaI部位にクローニングされた。pTRS-KS-CBh-GFP由来のeGFP導入遺伝子が、AgeI/BamHI部位間の制限消化によってpAAV_CBh_MCSベクターにクローニングされ、GFP発現制御ベクター(pAAV_CBh_eGFP)を生成した。
【0098】
初期安全性研究-P1マウスにおけるウイルス遺伝子療法構築物の大槽送達
【0099】
生後1日目(P1)の野生型C57Bl/6Jマウスをイソフルランによって麻酔した。誘導は、5%イソフルラン、3L O2/分においてチャンバー内で生じた。麻酔は、マスクを介して、1~2%イソフルラン、0.3L O2/分において注射中に約5分間維持された。大槽は、Wee-Sightトランスイルミネーター静脈ファインダー(Phillips)を使用して位置特定された。ウイルスベクター(pAAV_CBh_hAP4B1及びpAAV_CBh_eGFP)が、自動灌流ポンプとともに33ゲージハミルトンシリンジを含有する定位固定装置を使用して、P1マウス(n=群当たり15)の大槽内に直接注射された。溶液は、1分当たり1μLの流量で投与され、投与された溶液の最大体積は、動物当たり5μLであった。動物は各々、合計5×1010個のベクターゲノムの最大用量を受けた。実験スケジュールは、以下のように進んだ。
1日目-生後0日目、出生日(P0)-足蹠の入れ墨が識別目的で適用された。
2日目-生後1日目(P1)-イソフルラン麻酔下で、大槽内への最大5μLのウイルスベクター又はビヒクル溶液の注射。
29日目(又は170日目)-生後28日目(P28)又はP168(注射後6か月)-動物が終末麻酔下で灌流され、組織試料が分析のために収集された。
【0100】
概念実証としてのP1マウスにおけるウイルス遺伝子療法構築物の大槽送達
【0101】
大槽を介した注射後に内因性Ap4b1((KO C57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/J)を欠くトランスジェニックマウスの中枢神経系(CNS)において導入遺伝子発現を媒介する当社の治療用ウイルスベクター(pAAV_CBh_hAP4B1)の能力を評価する研究が続いた。マウスは、前述された安全性研究のように大槽を介して注射された。2つのウイルスベクター、すなわち、ヒトAP4B1(SPG47)遺伝子の完全長コピーを発現するAAV9、及びウイルス対照として追加のコード配列がないV5タグを発現するAAV9が、使用された。AAV9-hAP4B1ウイルスベクター受けたマウスが、2つの異なる用量(それぞれ、2×1010個のベクターゲノムの低用量、及び4×1010個のベクターゲノムの高用量)を注射された一方で、AAV9-V5を受けたマウスは、高用量(4×1010個のベクターゲノム)のみを注射した。さらに2つの群、すなわち、未治療KO C57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/J及び未治療WT C57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/Jが、研究に含まれた。表現型の回復が、未治療マウスと比較された治療マウスにおいて、以下に詳細に記載される行動パラメータの改善によって評価された。
【0102】
遺伝子型判定及びコロニー維持
C57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/Jマウスが、マウスAp4b1遺伝子のエクソン1内の76bp領域のCRISPR-Cas9介在性欠失を使用して、Jackson Labsによって生成された。この領域の欠失は、フレームシフト変異及び切断mRNA転写物を生成した。WT配列(欠失は小文字):TTGGCGACGATGCCATAccttggctctgaggacgtggtgaaggaactgaagaaggctctgtgtaaccctcatattcaggctgataggctgcgcTACCGGAATGTCATCCAGCGAGTTATTAGGTATCACCAACCTACCATAGAA(配列番号9)。
【0103】
マウスの遺伝子型判定が、Charles River Laboratoriesによって最適化されたプロトコルに基づいて実施された。マウス遺伝子型判定が、20μlのQuickExtract(商標)DNA抽出溶液(Lucigen)の添加、及び65℃で15分間、続いて、98℃で2分間のサーモサイクラー上のインキュベーションによって、尾部又は耳組織から抽出されたゲノムDNAで実施された。遺伝子型判定PCRが、WT及びKO対立遺伝子について別個の反応として20μlの体積反応で実施された。反応は、7.5mMのMgCl2(Solis Biodyne)、各500nMの遺伝子型判定プライマー、すなわち、野生型対立遺伝子増幅のためのP1+P2、及びKO対立遺伝子増幅のためのP1+P3(P1:5’-TCGCCCGAGGACCCAAGAA-3’(配列番号10)、P2:5’-CCTATCAGCCTGAATATGAGGGTTACA-3’(配列番号11)、P3:5’-GCTGGATGACATTCCGGTATATG-3’(配列番号12))、並びにQuickExtract(商標)プロトコルからの1μlのゲノムDNAを伴う、5μlの5x FIREPol(登録商標)Master Mix Ready to Loadからなった。タッチダウンPCRが、表1に示される熱プロファイルに従って実施された。PCR及びアガロースゲル電気泳動(Tris-酢酸塩-EDTA緩衝液中の2%アガロースゲル)に続いて、WT及びKO対立遺伝子PCR産物が、それぞれ、約254bp及び約203bpで可視化された。
【0104】
ヘテロ接合マウスは、ホモ接合WT(Ap4b1+/+)、KO(Ap4b1-/-)、及びヘテロ接合(Ap4b1+/-)同腹仔を産むように一緒に飼育された。
表1-C57BL/6J-Ap4b1
em5Lutzy/J遺伝子型判定のためのタッチダウンPCR条件
【表1】
【0105】
ヒト及びマウスのAP4B1発現分析のためのRT-qPCR
RT-qPCRが、ヌクレアーゼ遊離水中で10ng/lの濃度に希釈された合計2μlのRNA、5μlの2x QuantiFast SYBR Green RT-PCR Master Mix(Qiagen(登録商標))、hAP4B1(順方向:5’-CTGGTGAACGATGAGAATGT-3’(配列番号13)、逆方向:5’-GACCCAGCAACTCTGTTAAA-3’(配列番号14))、mAp4b1(順方向:5’-CTGTGCTAGGCTCCCACATC-3’(配列番号15)、逆方向:5’-TGGCACTGGCCTTTACCATT-3’(配列番号16))、及び18S(順方向:5’GTAACCCGTTGAACCCCAT 3’(配列番号17)、逆方向:5’CCATCCAATCGGTAGTAGCG 3’(配列番号18))プライマー(全て1M濃度)、0.1μlのQuantiFast RT混合物、並びに10μlの最終体積までのH2Oを使用して実施された。50℃で10分間の最初の逆転写ステップ、及び95℃における5分間の変性ステップに続いて、cDNAが、10秒間の95℃の39サイクルによって増幅され、その後、60℃で10秒間の複合アニーリング/伸長ステップが続いた。この後に、後続の融解曲線分析の前に65℃で31秒間の1サイクルが続いた。全てのRT-qPCRは、Bio-Rad C1000 Touch(商標)サーマルサイクラー上で実施された。Bio-Rad CFX Managerソフトウェアが、シグナル強度を分析するために使用され、相対遺伝子発現値が、ΔΔCt法を使用して決定され、18S rRNAが参照遺伝子として使用された。
【0106】
オープンフィールド
オープンフィールド分析が、6、9、及び12か月齢におけるマウスで実施された。プロトコルは、Herranz-Martin及びその同僚8によって実施されたものに従った。マウスが、寸法60cm×40cm×25cmの半透明の箱に入れられた。箱の底面は、正方形の5×3グリッドの輪郭を描く永久インクでマークされた。活動が、10分の期間にわたって各マウスによって横断されたグリッド線の数として測定された。横断が記録されるために、動物の4本全ての足がグリッド線を横断する必要があった。評価は、最小限の照明条件下で実施され、装置は、各動物間で70%エタノールで清掃された。1回の実行が、各時点で各動物について記録された。
【0107】
ロータロッド
Ugo Basile 7650加速ロータロッド(300秒にわたって3~37rpmで加速するよう設定された)が、運動機能を測定するために使用された。ロータロッド訓練が、1日に2回の試行で3日間連続して実施された。その後、この試験は、2週間に1回(特性評価研究)又は月1回(概念実証研究)の間隔で朝遅くに実施された。各評価について、マウスは、実行の間に最低5分の休息期間を伴って2回試験された。秒単位で落下するまでの潜時として測定される最良のパフォーマンスが、分析に使用された。ロータロッド活動を記録するための最小閾値は、3秒であった。
【0108】
歩行分析
CatWalk(商標)歩行分析システムバージョン7.1が、Ap4b1-KO及びWTマウスの歩行パラメータを評価するために使用された。マウスが、3、6、9、及び12か月齢で試験された。マウスが完全な暗闇の中で装置上に置かれ、それらの歩行パターンが記録された。6回の非強制実行が各マウスについて記録され、3回が分析のために選択された。分析される実行は、匂いを嗅ぐこと、探索、及び飼育、並びにマウスの移動が一貫しており、顕著な加速、減速、又は直線からの逸脱がなかった場合などの行動異常の欠如に基づいて選択された。歩行データの処理が、Noldusソフトウェアを用いて実施された。肢は手動で割り当てられ、歩行パラメータは自動的に計算された。パラメータ値は、統計分析のためにGraphPad Prismに転送された。
【0109】
抗体
本研究で使用された一次抗体は、マウス抗α-チューブリン(1:5000、Sigma)、マウス抗GAPDH(1:10,000、Millipore)、ウサギ抗V5(1:1000、Abcam)、ウサギ抗β4(J.Hirstによって提供された自社非市販抗体)(1:400)、ウサギ抗ATG9A(1:1000、Abcam)、ヒツジ抗TGN46(Bio-Rad)、抗MAP2であった。
【0110】
タンパク質発現分析のためのタンパク質抽出及びウェスタンブロッティング
【0111】
組織が、末端麻酔下のマウスから採取され、液体窒素中で急速凍結された。組織が、1xプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich)を含有する氷冷RIPA緩衝液(50mMのTris-HCL(pH7.4)、1%v/vのNP-40、0.5%w/vのデオキシコール酸ナトリウム、0.1%v/vのSDS、150mMのNaCl、2mMのEDTA)中で、ダウンス型ホモジナイザーを使用して均質化された。溶解物タンパク質濃度が、BCAアッセイ(Thermo Scientific Pierce(商標))を使用して決定された。40μgのタンパク質溶解物が、4x装填緩衝液(10mlの緩衝液は、240mMのTris-HCL(pH6.8)、8%w/vのSDS、40%のグリセロール、0.01%のブロモフェノールブルー、10%のβ-メルカプトエタノールを含有した)の存在下で100℃まで5分間加熱することによって変性された。煮沸がATG9Aの凝集及びシグナルの喪失につながるため、ATG9Aタンパク質レベルの定量化に使用されることを意図した溶解物が、50℃まで加熱された。次いで、溶解物が、4~20%勾配のmini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)プレキャストポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)上に装填された。ゲルが、約50分間、又は染料の前部がゲルの底部に到達するまで、泳動緩衝液(25mMのTris、192mMのグリシン、0.1%のSDS、pH8.3)中で180Vにおいて流された。分離されたタンパク質が、電気泳動によって、メタノールに予め浸漬されたImmobilon-P PVDF膜(Millipore)に移された。タンパク質移動は、移動緩衝液(25mMのTris、192mMのグリシン、5%v/vのメタノール)中で250mAにおいて1.5時間又は40mAにおいて一晩実施された。膜が、5%の牛乳/TBS-T中で1時間ブロックされた。一次抗体が、5%の牛乳/TBS-T又は5%のBSA/TBS-T中で希釈され、膜とともに4℃で一晩インキュベートされた。一次抗体のインキュベーション後、膜は、TBS-T緩衝液中で15分ずつ3回洗浄された。二次抗体抗マウスHRP(1:3000)及び抗ウサギHRP(1:3000)が、5%の牛乳/TBS-T中で希釈され、膜とともに室温で2時間インキュベートされた。二次抗体のインキュベーション後、膜は、TBS-T緩衝液中で15分ずつ3回洗浄され、その後にPBS中で最後の15分間の洗浄が続いた。タンパク質バンドが、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(Amersham)及びG-Box撮像システム(Syngene)を使用して可視化された。タンパク質バンドの濃度測定分析が、Image Jソフトウェアを使用して実施された。
【0112】
ウェスタンブロッティングが、以下のプロトコルを使用して生成された。細胞溶解物が、上記のように抽出された。10ウェルの4~12%Bis-Trisプレキャストゲル上のレーン当たり40μgのタンパク質が装填された。ゲルは、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液中で流され、ニトロセルロース膜に湿潤状態で移された(一晩で100mAの一定アンペア)。膜は、5%の牛乳/TBS-T中で1時間ブロックされた。一次抗体が、室温で2時間添加され(5%BSA中で1:400の抗AP4B1)、その後にPBS-T中で4回の15分間の洗浄が続いた。二次抗体が、5%の牛乳-TBS-T中で室温において30分間添加された。膜は、PBS-T中で5分間5回洗浄され、その後にPBS中で30分間の洗浄が続いた。膜は、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(Amersham)を用いて現像された。
【0113】
細胞培養
ヒト胚腎臓(HEK)293T細胞、HeLa-M/HeLa-AP4B1-/-細胞(J.Hirst博士からの贈与)、及びヒト線維芽細胞株が、10%v/vのウシ胎仔血清(FBS、Sigma,MI,US)及び1%v/vのペニシリン(100U/ml)並びにストレプトマイシン(100U/ml)(Lonza,Basel,Switzerland)を補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)からなる成長培地中で37℃、5%CO2において培養された。
【0114】
初代皮質ニューロン培養については、E18非トランスジェニックラット胚及びE16マウス胚が、本質的に(Krichevsky et al.,2001)によって記載されるように、野生型及びC57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/J妊娠マウスから採取された。C57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/Jマウス及び非トランスジェニックC57BL/6Jマウスが、食物及び水への自由なアクセスを伴う12時間暗/12時間明光反応サイクル(午前7時にオン/午後7時にオフ)において制御された施設内で維持された。次いで、解離された皮質ニューロンが、ポリD-リシン(SIGMA)被覆プレート上に播種され、2%のB27(Life Technologies)、0.5mMのGlutaMax(Life Technologies)、100U/mlのペニシリン、及び100μg/mlのストレプトマイシン(Lonza)を補充されたNeurobasal培地(Life Technologies)中で維持された。
【0115】
AP4B1ノックアウトHeLa細胞(HeLa-AP4B1-/-)が、J.Hirst博士によって提供され、その生成は、9に記載されている。
【0116】
SPG47患者からのAP4B1欠損ヒト線維芽細胞、ヘテロ接合ファミリーメンバー、及び年齢適合ホモ接合野生型対照が、Henry Houlden博士及びIvy Pin-Fang Chen博士によって贈与された。
【0117】
標的外効果分析のためのプラスミド及びウイルス構築物の生産
上記に記載されるように作成されたAAV2-ITR導入遺伝子移入プラスミドが、NEB Stable e.coli細胞(New England Biolabs)内で増幅され、Qiagen Plasmid Plusキットを使用して精製された。アデノウイルスヘルパー遺伝子(pHelper)及びRep-Cap遺伝子(pAAV2/9)が、トランスで供給され、Plasmid Factoryを通して商業的に入手された。偽型AAV9ウイルスベクターが、6に記載されるプロトコルに従って自社で生産された。
【0118】
インビトロでのウイルスベクターの検証
HeLa-M細胞及びHeLa-AP4B1-/-細胞が、正常な成長培地と混合されたウイルスベクターを播種してから24時間後に形質導入された。細胞は、分析のために採取される前に、ウイルスとともに3日間インキュベートされた。
【0119】
線維芽細胞が、細胞当たり20個のレンチウイルス粒子の感染の多重度(MOI)で形質導入された。細胞は、形質導入の72時間後に採取された。
【0120】
野生型及びC57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/Jマウスから採取された初代非トランスジェニックラット皮質ニューロン及びマウス皮質ニューロンが、播種から3日後にウイルスベクターの300,000個のベクターゲノムで形質導入された。細胞は、AP4B1/V5-AP4B1及びATG9A発現のICC及びウェスタンブロット/qPCR分析のために、導入の10日後に採取された。
【0121】
ベクターマップ
表2:hSYN1-hAP4B1(配列番号19)
A.ベクターの概要
【表2】
B.ベクター成分
【表3】
【0122】
表3:CBh-hAP4B1(配列番号20)
A.ベクターの概要
【表4】
B.ベクター成分
【表5】
【0123】
表4:SYN 1hAP4S1-3’UTR(配列番号21)
A ベクターの概要
【表6】
B.ベクター成分
【表7】
【0124】
表5:MeP229hAP4S1(配列番号22)
A.ベクターの概要
【表8】
B.ベクター成分
【表9】
【0125】
表6:MeP229hAP4E1(配列番号23)
A ベクターの概要
【表10】
B.ベクター成分
【表11】
【0126】
表7:SYN1hAP4E1(配列番号24)
A.ベクターの概要
【表12】
B.ベクター成分
【表13】
【0127】
実施例1
ヒトAP4B1 cDNAオープンリーディングフレームのサイズ(2,800bp)は、単純な遺伝子置換の選択肢が技術的に実行可能であり、約4,000bpの挿入限界を有する一本鎖アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用することなどの典型的なウイルス送達アプローチに適していることを意味する。我々は、最も強いレベルの導入遺伝子発現を達成するようにAAVベクターを設計した(
図2A):1)発現カセットが、ヒトAP4B1の発現を駆動するために、0.8kbのCBhプロモーター及び130bpのSV40 polyAを伴って開発された。CBhプロモーターは、齧歯類及び非ヒト霊長類において効率的な導入遺伝子発現を媒介することが報告されている。2)好適な抗AP4B1抗体の非存在下で、AP4B1復元のインビトロ及びインビボ検出を可能にする、N末端V5ウイルスエピトープタグ付きヒトAP4B1 cDNAを発現するベクター、3)AAV9によって効率的に遺伝子導入されない細胞型(例えば、線維芽細胞)においてインビボ検証を可能にする、レンチウイルスベクターから発現されたV5タグ付きAP4B1構築物。全ての構築物は、HeLa細胞(
図2B、C)、初代ラット皮質ニューロン(
図2D)、及びヒト線維芽細胞(
図2E)におけるトランスフェクション又は形質導入時に、ウェスタンブロッティング、RT-qPCR、及び免疫細胞化学によって決定される、それらのウイルスカーゴを効率的に発現することが示されている。ウイルス構築物は、内因性AP4B1を欠くSPG47患者由来のCRISPR生成AP4B1-ノックアウトHeLa細胞株及び線維芽細胞の両方においてAP4B1タンパク質の発現を効率的に復元する(
図2B、C、E)。SPG47患者線維芽細胞におけるV5タグ付きAP4B1の発現はまた、ATG9Aの過剰発現及び誤った局在化の両方を回復する(
図3)。
【0128】
実施例2
野生型C57BL6/Jマウスの大槽を介したAAV9ウイルスベクター(AAV9-AP4B1、AAV9-V5タグ付きAP4B1、又はAAV9-GFP)のくも膜下腔内送達は、我々の以前の研究で説明されるように、CNSへの効率的な遺伝子導入につながることが知られている送達経路である、脳を含む複数の組織の広範な形質導入をもたらした(
図4A、B)。AAV9-AP4B1で治療された野生型マウスにおける長期パイロット安全性研究は、6か月齢まで、体重、運動機能、又は臨床観察に対する明らかな副作用を示していない(
図4C-E)。
【0129】
実施例3
治療用ウイルスベクターの開発と連携して、CRISPRベースのAp4b1-ノックアウト(EM5 Ap4b1-/-)マウス株の生成が、Jackson Laboratoryに外注され、次いで、完全な特性評価のためにSheffieldのSITraNに移送された。株の表現型特性評価は、EM5 Ap4b1-/-株が、ロータロッド、オープンフィールド、及びCatWalk足跡試験(
図5A-C)、並びに抱擁(
図6)によって実証されるように、一貫した進行性の運動障害を示すことを明らかにした。予備的MRI分析は、同じ病理学的表現型がSPG47患者で報告されているため、野生型マウスと比較すると、EM5 Ap4b1-/-の薄い脳梁が臨床的に意義のある表現型であることを明らかにした(
図7A、B)。この観察は、H&E染色によって確認された(
図7C、D)。MRI検査のさらなる分析が、側脳室の全体的サイズ、並びに白質体積の変化、AP4E1-/-及びヒトAP4症例ですでに報告されている表現型などの他の読み出しを評価するために継続中である。
【0130】
SPG47のマウスモデルが、Jackson labs(Bar Harbor,ME)によって生成された。C57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/Jモデル(在庫番号031349)は、エクソン1内に76bp欠失を伴う変異Ap4b1遺伝子を含有する。C57BL/6J-Ap4b1em4Lutzy/Jモデル(在庫番号031062)は、マウスAp4b1遺伝子のエクソン1に78bp欠失+1bp欠失を含有する。いずれもヒト病原性変異であるとは知られていないが、早期ナンセンス変異をもたらすフレームシフトを生成すると予測される。この株は、CRISPR/Cas 9技術及び変異原性オリゴヌクレオチドを用いて開発された。Ap4b1遺伝子のエクソン1内に76bpの欠失を導入するように設計されたシグナルガイドRNAをコードするプラスミド、及びcas9ヌクレアーゼが、十分に認識された前核を伴う細胞質C57BL/6J由来の受精卵に導入された。正しく標的化された胚が、偽妊娠したメスに移された。正しく標的化された仔が、配列決定及びPCRによって識別され、C57BL/6Jにさらに育成されてコロニーを発展させた。PCR遺伝子型判定は、野生型、ヘテロ接合体、及びホモ接合ノックアウトマウスの識別を可能にする。
【0131】
モデルのさらなる特性評価は、シェフィールド大学(University of Sheffield)のAzzouz研究室によって実行された。RT-PCR及びqRT-PCRは、ナンセンス媒介性崩壊と一致する、変異型マウスにおける非常に低いレベルのAp4b1 mRNAを示した。ウェスタンブロットは、野生型マウスの脳、筋肉、脊髄、肝臓、及び心臓内で様々なレベルにおいて通常発現される約85kDaの交差反応バンドの非存在を示した。
【0132】
em5lutzy株は、より詳細に調査されている。野生型及びAp4b1-/-メスマウスの体重増加が、類似する一方で、オスのAp4b1-/-マウスの体重増加は、オスの野生型マウスよりも遅く、>6か月で有意に低い体重を伴う。歩行分析、抱擁、オープンフィールド試験、及びロータロッドパフォーマンスを含む、いくつかの行動評価が行われた(
図5及び6)。これらの全ては、Ap4b1-/-マウスで欠損を示した。歩行分析は、後肢の足角度が野生型と比較して変異マウスで異常に広いことを示した(
図5D)。抱擁アッセイでは、変異マウスは、野生型と比較して、全ての年齢でより高い抱擁率を有した(
図6B)。オープンフィールド活動は、6か月齢における野生型及び変異マウスで同等であったが、変異マウスに存在しない年齢依存性減少が野生型マウスにあった(
図5B)。ロータロッドは、ロータロッド上に落下するまでの潜時との最も一貫した差が50~120日齢で試験された全ての年齢で約15%低いことを示した(
図5A)。さらなる特性評価が、オープンフィールド活動監視、catwalk、後肢抱擁、MRI、病理組織学、ATG9A局在化、及びタンパク質レベルによって進行中である。運動欠損症は、SPG47/AP4B1欠損症の臨床症状の重要な特徴であり、したがって、これらのマウス表現型は、ヒトの疾患に直接関連し、潜在的な治療法を評価するための適切なマーカーである。
【0133】
これらのAp4b1-/-ノックアウトマウスに関するさらなる形態学的及び病理組織学的研究が継続中である。Ap4e1遺伝子に対するノックアウトマウスに関する公表された研究は、脳及び脊髄の様々な領域内の薄い脳梁及び軸索腫脹を示す。免疫組織化学分析は、膜貫通オートファジー関連タンパク質9A(ATG9A)が、トランスゴルジ網(TGN)内でより濃縮され、Ap4e1ノックアウトマウスの様々なニューロン型の両方で末梢細胞質から枯渇することを示した。これは、蓄積されたERを含有する遠位軸索腫脹、欠陥オートファゴソーム、並びにインビトロ及びインビボの両方で観察可能な軸索の短縮につながる。
【0134】
概念実証。大槽内AAV9によるSPG47マウスモデルの治療
3つの研究が、若年又は新生仔マウスを使用して、マウスC57BL/6J-Ap4b1em5Lutzy/Jモデルにおける大槽内AAV9-hAP4B1の影響を評価するために行われた。
【0135】
p1マウスの大槽注射
概念実証が、新生仔Ap4b1-/-マウスで実証された。新生仔を使用することによって、疾患の任意の発症兆候を緩和するための最大の利益があると仮定された。実験デザイン(1)は、AP4B1に対するヒトcDNAを発現するAAV9-HAP4B1ベクターの2つの用量のいずれかを用いたホモ接合ノックアウトマウスの4つのコホート、エピトープタグを発現する空のベクター(AAV9-V5)又は未治療を含んだ。陽性対照は、未治療野生型マウスであった。
【0136】
AAV9ウイルスベクターのストックが、付着ヒト胚腎臓HEK293T細胞をトランスフェクトし、イオジキサノール勾配遠心分離を使用してベクターを精製することによって、生成された。簡潔に述べると、HEK293T細胞が、血清を含まないダルベッコ改変イーグル培地中のポリエチレンイミン(1mg/ml)を使用して、それぞれ、2:1:1の比率において、パッケージングプラスミドpHelper(Stratagene、Stockport,UK)、pAAV2/9(J.Wilson,University of Pennsylvaniaによって厚意で提供された)、及び導入遺伝子プラスミドのうちの1つ(例えば、AAV9-CBh-AP4B1)でトランスフェクトされた。トランスフェクションの3日後、細胞放出ウイルスを含有する上清が採取され、ベンゾナーゼ(10単位/ml、Sigma,Poole,UK)で37℃において2時間処置され、Amicon Ultra-15 Centrifugal 100Kフィルタ(Millipore,Watford,UK)を使用して約24mlと同等に濃縮された。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)/1mmol/l MgCl2/2.5mmol/l KCl及びウイルス溶液中に15、25、40、及び54%のイオジキサノール溶液を含有するイオジキサノール勾配が装填され、毎分69,000回転で18℃において90分間遠心分離された。超遠心分離後、ウイルス画分は、10%のポリアクリルアミドゲル上で可視化され、製造業者のガイドラインに従ってSYPRO Ruby(Life Technologies,Paisley,UK)を使用して染色された。最高純度画分(VP1、VP2、及びVP3に対応する3つのバンドの存在によって識別される)がプールされ、Amicon Ultra-15 Centrifugal 100Kフィルタを使用して、さらに35mmol/lのNaClを補充されたPBSからなる最終製剤緩衝液中でさらに濃縮された。ウイルス力価が、定量的PCRアッセイによって決定された。
表1.P1マウス有効性実験の研究デザイン
1
【表14】
1.評価には、一般観察、3週間毎の体重及び加速ロータロッド、3か月間隔でのオープンフィールド、抱擁、及びcatwalk試験が含まれた。
【0137】
これらのコホートのいずれかの中のいずれのマウスについても死亡率は観察されなかった。体重増加が、野生型対照と比較して、いずれかの性別の未治療Ap4b1-/-マウスによるより遅い体重増加の明確なパターンを伴って、2週間毎に評価された(
図9)。高用量AAV9-hAP4B1の新生仔注射が、オスの体重増加を野生型マウスのレベルまで復元した一方で、メスのマウスの体重増加には影響を及ぼさなかった。
【0138】
表現型が、特定の神経学的欠損を伴うマウス(ただし野生型マウスではない)が尾部で懸垂されたときにその肢を抱擁する、抱擁アッセイによって評価された。データ(
図10)は、9か月齢における7%の野生型対照と比較して、抱擁反応を示す83%のノックアウトマウスで年齢依存性増加を明らかに示す(p<0.001、カイ二乗検定)。高用量のAAV9-hAP4B1ベクターによるノックアウトマウスの治療は、9か月で抱擁応答を有意に軽減した(p<0.01)が、応答は野生型マウスのレベルを達成しなかった(p<0.0001)。対照的に、対照ベクターAAV9-CBH-V5は、抱擁反応に影響を及ぼさなかった。また、低用量AAV9-hAP4B1の使用は、いずれの影響も示さず、年齢依存性抱擁は、未治療Ap4b1-/-マウスのものと同等であり、標的用量が少なくとも5×10
13gc/kgであることを示唆した。
【0139】
表現型はまた、4週間間隔で加速ロータロッド(
図11)によっても評価された。体重増加と同様に、データは、オスマウス及びメスマウスを別々に考慮すると、より明確に理解される。オスマウスについては、同年齢の野生型マウスと同等のレベルまで、高用量AAV9-hAP4B1治療ノックアウトのパフォーマンスに明らかな改善があった。メスマウスについては、ノックアウトは、ロータロッドパフォーマンスに欠陥を示さず、したがって、大槽内へのAAV-hAP4B1送達に対していずれの応答も見る可能性がない。我々は、オスマウスとメスマウスとの間のパフォーマンスの実質的な差異が、野生型マウス[12]、並びにGNAO1[13]、ALS[14、15]、及びアルツハイマー病[16]を含む神経疾患のマウスモデルの両方で知られていることに留意している。
【0140】
パフォーマンスはまた、マウスのサブセットにおけるオープンフィールド試験で全体的活動によっても評価された。この尺度によって、野生型マウスとノックアウトマウスとの間に明らかな差異があったが、活動に対する治療の影響はなかった。類似パターンが、オス及びメスのコホートの両方で見られた。
【0141】
AP4複合体の状態が、AP4E1レベルを測定することによって評価された(
図12)。重要な観察は、WTマウスと比較したときのAP4b1
-/-におけるAP4複合体のAP4E1ユニットの枯渇である。同じ観察が、AP4患者から単離されたヒト細胞を含むSPG47の細胞モデル系で報告されている。AAV9-AP4B1遺伝子導入は、AP4B1-/-マウス脊髄(
図12A)及び心臓(
図12B)内のAP4E1レベルを増加させ、AP4複合体の復元を示唆する(
図13)。
【0142】
P1野生型マウスにおけるCM送達:パイロット安全性研究
このパイロット試験研究のこの目的は、野生型マウスにおける生体内分布、ウイルス介在性導入遺伝子発現の安定性、及びAAV9-hAP4B1の潜在的な有害作用を評価することであった(
図4)。N末端V5ウイルスエピトープタグを含有するヒトAP4B1遺伝子の完全長コピーを発現する、1つのウイルスベクターが使用されるであろう。ウイルスベクターは、自動灌流ポンプとともに33ゲージハミルトンシリンジを含有する定位固定装置を使用して、P1/2仔の大槽内に直接送達された。5μの溶液が、1μL/分で投与された。ウイルスの生体内分布、発現、体重、及び運動機能(ロータロッド)が、注射の4週間後及び6か月後に評価された。
表8 配列の要約
【表15】
【0143】
参考文献
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