(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】サーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法、及びそのサーモクロミック水性ゲルインク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/00 20140101AFI20230526BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20230526BHJP
C09D 11/17 20140101ALI20230526BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C09D11/00
C09B57/00 C
C09D11/17
C09K9/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559342
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2021061187
(87)【国際公開番号】W WO2021219753
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルク,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ソバージュ,オーロラ
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB12
4J039AD01
4J039AD14
4J039AE03
4J039AE04
4J039BC19
4J039BC20
4J039BC29
4J039BE01
4J039BE23
4J039BE28
4J039CA06
4J039EA29
4J039GA21
4J039GA26
4J039GA27
(57)【要約】
本発明は、サーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法と、特定のモノカルボン酸又はポリカルボン酸を含むそのサーモクロミック水性ゲルインク組成物と、に関する。本発明はまた、本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物を含む、ボールペン、筆ペン、マーカー、ハイライトマーカー、及びフェルトペンなどの筆記具にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法であって、
(i)サーモクロミック顔料組成物を、
(A)少なくとも1つの電子供与性発色性有機化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容性化合物、及び
(C)少なくとも1つの変色温度調節剤を混合することによって調製するステップと、
(ii)ステップ(i)で調製された前記サーモクロミック顔料組成物を、無水マレイン酸の少なくとも1つのモノマーを含むコポリマー界面活性剤の存在下で、カプセル化して、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を生成するステップと、
(iii)ステップ(ii)で得られた前記サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を、前記サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液の総重量に対して、好ましくは0.5~5重量%の範囲のモノカルボン酸又はポリカルボン酸の量で、モノカルボン酸又はポリカルボン酸を添加することによって、4.6以下のpH、好ましくは4.5以下のpH、より好ましくは4以下のpHに酸性化するステップと、
(iv)ステップ(iii)で得られた前記サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液と、少なくともゲル化剤とを含むサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記コポリマー界面活性剤が、無水マレイン酸のコポリマーからなる群から選択され、好ましくはポリ(メチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(スチレン-co-マレイン酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸-co-マレイン酸)、ポリ(無水マレイン酸-alt-1-オクタデセン)、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、部分イソオクチルエステル、クメン末端、好ましくはポリ(メチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)及びエチレン-無水マレイン酸コポリマーからなる群から選択され、より好ましくはエチレン-無水マレイン酸コポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸が、非ポリマー性であり、かつ/又は前記モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸が、2~10個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を含み、より好ましくは、没食子酸、コハク酸、イタコン酸、グルタル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2-オキソグルタル酸、マロン酸、サリチル酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ピコリン酸、アルギニノコハク酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシリンゴ酸、アスパラギン酸、グルタチオン、グルタミン酸、グルタミン、3-メチル-2-オキソ吉草酸、アコチン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはクエン酸又はクエン酸を含む混合物である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カプセル化ステップ(ii)が、好ましくはメラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、及びそれらの混合物からなる群、より好ましくはメラミン樹脂から選択されるアミノ樹脂溶液を、ステップ(i)で調製された前記サーモクロミック顔料組成物及び前記コポリマー界面活性剤に添加することによって、実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液であって、
-サーモクロミック顔料組成物をカプセル化するサーモクロミック顔料マイクロカプセルであって、前記サーモクロミック顔料組成物は、
(A)少なくとも1つの電子供与性発色性有機化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容性化合物、及び
(C)少なくとも1つの変色温度調節剤を含む、サーモクロミック顔料マイクロカプセルと、
-モノカルボン酸又はポリカルボン酸であって、好ましくは非ポリマー性であり、前記モノカルボン酸又はポリカルボン酸の量は、前記サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液の総重量に対して、好ましくは0.5~5重量%の範囲である、モノカルボン酸又はポリカルボン酸と、
-無水マレイン酸の少なくとも1つのモノマーを含むコポリマー界面活性剤と、
-前記サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液の総重量に対して、好ましくは55~85重量%、より好ましくは60~80重量%の範囲の量の水と、を含み、
前記サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液は、4.6以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下のpHを有する、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液。
【請求項6】
サーモクロミック水性ゲルインク組成物であって、
-サーモクロミック顔料組成物をカプセル化するサーモクロミック顔料マイクロカプセルであって、前記サーモクロミック顔料組成物は、
(A)少なくとも1つの電子供与性発色性有機化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容性化合物、及び
(C)少なくとも1つの変色温度調節剤を含む、サーモクロミック顔料マイクロカプセルと、
-好ましくは非ポリマーであるモノカルボン酸又はポリカルボン酸と、
-担体、好ましくは水と、
-ゲル化剤と、
-無水マレイン酸の少なくとも1つのモノマーを含むコポリマー界面活性剤と、を含む、サーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項7】
前記電子供与性発色性有機化合物(A)が、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号:34372-72-0)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(Yellow CK37、CAS番号:144190-25-0)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(Blue 203、CAS番号:98660-18-5)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(Black 15、CAS番号:36431-22-8)、3,3-ビス-(1-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(Red 40、CAS番号:50292-91-6)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項8】
前記電子受容性化合物(B)が、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号:79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号:136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BPZ、CAS番号:843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号:1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:1806-29-7)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号:2362-14-3)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(CAS番号:3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号:27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号:74462-02-5)、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号:110726-28-8)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6又は7に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項9】
前記変色温度調節剤(C)が、40~80℃、好ましくは40~70℃の範囲の融点を有するワックスからなる群から選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項10】
前記サーモクロミック顔料マイクロカプセルが、前記サーモクロミックインク組成物の総重量に対して、10~35重量%、好ましくは20~30重量%の範囲の量で存在する、請求項6~9のいずれか一項に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項11】
前記モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸が、非ポリマー性であり、かつ/若しくは前記モノカルボン酸又はポリカルボン酸が、2~10個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を含み、更により好ましくは、没食子酸、コハク酸、イタコン酸、グルタル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2-オキソグルタル酸、マロン酸、サリチル酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ピコリン酸、アルギニノコハク酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシリンゴ酸、アスパラギン酸、グルタチオン、グルタミン酸、グルタミン、3-メチル-2-オキソ吉草酸、アコチン酸、及びそれらの混合物からなる群、好ましくはクエン酸又はクエン酸を含む混合物から選択される、請求項6~10のいずれか一項に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項12】
前記モノカルボン酸又はポリカルボン酸が、前記サーモクロミックインク組成物の総重量に対して、0.2~5重量%、好ましくは0.3~4重量%、より好ましくは0.5~3.5重量%の範囲の量で存在する、請求項6~11のいずれか一項に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項13】
前記ゲル化剤が、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガム、トラガカントガム、及びジウタンガムからなる群、好ましくはキサンタンガムから選択される、請求項6~12のいずれか一項に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項14】
レオロジー調整剤、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアジュバントを含む、請求項6~13のいずれか一項に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物。
【請求項15】
筆記具であって、
-請求項6~14のいずれか一項に記載のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を含有するインクリザーバと、
-前記インクリザーバに収容された前記サーモクロミック水性ゲルインク組成物を送達するペン本体であって、
より具体的には、ボールペン、筆ペン、マーカー、ハイライトマーカー、フェルトペンからなる群において、好ましくは摩擦によって消去可能なボールペンにおいて選択される、ペン本体と、を備える、筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法、並びに特定のモノカルボン酸又はポリカルボン酸を含むそのサーモクロミック水性ゲルインク組成物に関する。本発明はまた、本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物を含む、ボールペン、筆ペン、マーカー、ハイライトマーカー、及びフェルトペンなどの筆記具にも関する。
【0002】
サーモクロミック顔料組成物は、温度変化に関連する可逆的な変色特性を示す。それらは、温度変化による顕著なヒステリシス特性を備えた着色状態と脱色状態の間の可逆的な変色を示し、変色に必要な熱又は冷気の適用を終了した後でも、交換可能かつ可逆的な方法で着色状態又は脱色状態のいずれかを保持する。これらの組成物は、インクマーキングが繰り返しの消去を必要とする場合に適用される。
【0003】
インクのサーモクロミック効果は、次の3つの化合物の組み合わせによって機能する:
(A)電子供与性発色性有機化合物(ロイコ染料化合物)、
(B)電子受容性化合物(発色剤化合物)、及び
(C)当該成分(A)と(B)との間の呈色反応を制御し、化合物(A)及び(B)に起因する可逆的な電子供与/受容反応をもたらすことができる反応媒体として機能する化合物。
【0004】
温度変化は可逆的にインクの着色又は脱色を引き起こす。本発明のサーモクロミックインク組成物では、温度の上昇により、インクが消去され、一方で、インクを冷却することにより、色が再出現することになる。これらの変化は、
図1のスキームに従う。このスキームでは、インクの色の脱色開始温度はT3であり、完全な脱色温度はT4であり、TGはT3とT4の間の平均温度である。逆に、インクの色が再出現し始める温度はT2であり、完全な再着色温度はT1であり、THはT1とT2との間の平均温度である。変色ヒステリシス幅(ΔΗ)は、(TH)と(TG)との差である。
【0005】
一般に、サーモクロミックインク組成物を調製するために使用される方法は、インク配合前の遠心分離ステップ又は濾過ステップなどのカプセル化反応中に使用された反応材料を除去するための清浄/洗浄ステップを含む。これらの追加のステップは、設備の観点と労働力の観点の両方から、産業プロセスにかなりのコストを追加することになる。
【0006】
例えば、EP2 511 353は、濾過/遠心分離ステップを実装するプロセスによって調製されたサーモクロミック顔料マイクロカプセルを含有する水性インクボールペンを開示している。
【0007】
US6,863,720は、工業設備の腐食、及びゲル化剤などの有機材料の褐変/黄変を引き起こし得る強酸の使用を実装する感熱性変色ドライオフセットインクを開示している。
【0008】
本発明の方法は、上述のステップ及び欠点を抑制することを可能にし、方法を有意に合理化する。実際、本発明の方法では、サーモクロミック顔料マイクロカプセルは、遠心分離ステップ及び/又は濾過ステップと組み合わせた洗浄ステップなどの任意の追加の処理ステップを必要とせずに、サーモクロミック水性ゲルインク組成物に直接添加され、それにより工業プロセスが単純化され、また生産の全体的なコストが削減される。
【0009】
更に、カプセル化プロセス中に一般的に使用される界面活性剤は、「脱プロトン化された形態」であり、負に帯電した形態であることを意味している。水性ゲルインクに添加すると、アニオン性界面活性剤は、キサンタンガムなどのゲル化剤と相互作用し、ゲルネットワークを破壊する。これにより、ゲル化効果が失われ、低せん断速度においてインクの粘度が実質的に低下し、インクリザーバ内のサーモクロミック顔料マイクロカプセルの沈降及び凝集、インクの漏れ、不均一な筆跡、及びペン本体における気泡の形成などのインク品質の問題につながる。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、最終的な水性ゲルインクの配合前に、サーモクロミック顔料マイクロカプセル(スラリー)の酸性化工程を含むプロセスによって、これらの問題を克服し、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の安定性を改善する方法を発見した。酸性化は、サーモクロミック顔料マイクロカプセル(スラリー)のpHが、4.6以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下に達するまで行われる。本発明の目的のために、「安定性」という用語は、本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物は、特に、変化してはいけない、より具体的には、十分な粘度を維持するべきであるゲルの粘度に関して安定であることを意味することを意図している。特に、本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物は、貯蔵中に安定であって、並びに/又はペン先の腐食及び/若しくは沈降現象及び/若しくはペン先の目詰まりを引き起こさない。本発明の方法は、サーモクロミック顔料マイクロカプセル中に存在する界面活性剤の「プロトン化形態」(非イオン形態を意味する)への変換を可能にするため、ゲルネットワークの破壊が回避される。実際に、本発明の方法の酸性化ステップは、酸性化ステップの終了時に4.6以下のpHで、好ましくは4.5以下のpHで、より好ましくは4以下のpHで、サーモクロミック顔料マイクロカプセルを水性ゲルインクに添加するときに、ゲルネットワークの分解を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。特定の実施形態は、本発明をより良好に説明するためのものであるが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0013】
したがって、本発明は、サーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法であって、
(i)サーモクロミック顔料組成物を、
(A)少なくとも1つの電子供与性発色性有機化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容性化合物、及び
(C)化合物(A)と(B)との間の電子交換のための反応媒体として作用する化合物である、少なくとも1つの変色温度調節剤、を混合することによって調製するステップと、
(ii)ステップ(i)で調製されたサーモクロミック顔料組成物を、無水マレイン酸の少なくとも1つのモノマーを含むコポリマー界面活性剤の存在下で、カプセル化して、特に5.0~6.0の範囲に制御されたpHのサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)を生成するステップと、
(iii)ステップ(ii)で得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液の総重量に対して、好ましくは0.5~5重量%の範囲のモノカルボン酸又はポリカルボン酸の量で、モノカルボン酸又はポリカルボン酸を添加することによって、4.6以下のpH、好ましくは4.5以下のpH、より好ましくは4以下のpHに酸性化するステップと、
(iv)ステップ(iii)で得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液と、少なくともゲル化剤(ゲル化効果を発生させることができる)、例えば、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガム、トラガントガム、及びジウタンガム、好ましくはキサンタンガム、を含むサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するステップであって、サーモクロミック水性ゲルインク組成物のpHが好ましくは6.0~7.0の範囲に制御されている、調製するステップと、を含む、方法に関する。
【0014】
本発明の意味において、「を含む(comprising a)」という表現は、「少なくとも1つを含む」と同義であると理解されるべきである。
【0015】
本発明の意味において、「…と…との間」又は「…から…までの範囲」という表現は、境界値を含むものと理解されるべきである。
【0016】
サーモクロミック顔料組成物を調製するステップ(i)は、有利には、化合物(A)及び(B)を、変色温度調節剤(C)に溶解し、次いで撹拌機を使用して均一な混合物が得られるまで撹拌することによって、調製される。成分(A)、(B)、及び(C)の混合は、有利には60~160℃、より有利には80~130℃の範囲の温度で行われる。成分(A)、(B)、及び(C)は、好ましくは15分~3時間、より好ましくは30分~2時間にわたって混合される。
【0017】
本発明のサーモクロミック顔料組成物は、化合物(A)及び(B)を、変色温度調節剤(C)に溶解させ、次いで、簡易撹拌器(simple agitation pale)などの撹拌機を使用して均一な混合物が得られるまで撹拌することによって、調製される。
【0018】
電子供与性発色性有機化合物(A)としては、従来の既知の化合物、例えば、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、エチレノフタリド類、エチレノアザフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、ピリジン類、キナゾリン類及びビスキナゾリン類、フルオレン類、フルオラン類、スチリルキノン類及びスチリルキノリン類、並びにラクトンジアザローダミンが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの化合物の例を、以下に提示する。
【0019】
したがって、電子供与性発色性有機化合物(A)は、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタレート(CAS番号:1552-42-7)、2’-クロロ-6’-(ジエチルアミノ)-3’-メチルフルオラン(CAS番号:21121-62-0)、6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン(CAS番号:21934-68-9)、2-クロロ-6-(ジエチルアミノ)-フルオラン(CAS番号:26567-23-7)、3-ジエチルアミノベンゾフルオラン(CAS番号:26628-47-7)、3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-2-(4-ニトロフェニル)スピロ[イソインドール-1,9’-キサンテン]-3-オン(CAS番号:29199-09-5)、2-フェニルアミノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(CAS番号:29512-49-0)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号:34372-72-0)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(Black 15、CAS番号:36431-22-8)、3-(1,2-ジメチル-3-インドリル)-3-[4-(ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル]フタリド(CAS番号:36499-49-7)、3’,6’-ジメトキシフルオラン(CAS番号:36886-76-7)、3,3-ビス-(1-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(Red 40、CAS番号:50292-91-6)、3,3-ビス-(2-メチル-1-オクチル-1H-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(CAS番号:50292-95-0)、2’-アニリノ-6’-[エチル(p-トリル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン(CAS番号:59129-79-2)、3-(N-エチル-n-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオレン(CAS番号:70516-41-5)、3-[4-(ジエチルアミノ)フェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)フタリド(CAS番号:75805-17-3)、2’-(2-クロロアニリノ)-6’-(ジブチルアミノ)フルオラン(CAS番号:82137-81-3)、2-フェニルアミノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン(CAS番号:89331-94-2)、3-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-6-(ジメチルアミノ)-3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-3-(1(3H)-イソベンゾフラノン(CAS番号:92453-31-1)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(Blue 203、CAS番号:98660-18-5)、7,7-ビス[4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル]フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(CAS番号:132467-74-4)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(Yellow CK37、CAS番号:144190-25-0)、3-(2,2-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)ビニル)-3-(4-ジエチルアミノフェニル)-フタリド(CAS番号:148716-90-9)、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0020】
好ましい実施形態によれば、電子供与性発色性有機化合物(A)は、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号:34372-72-0)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(Yellow CK37、CAS番号:144190-25-0)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(Blue 203、CAS番号:98660-18-5)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(Black 15、CAS番号:36431-22-8)、3,3-ビス-(1-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(Red 40、CAS番号:50292-91-6)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
電子受容性化合物(B)として、ビスフェノール又はトリスフェノールなどのフェノール性ヒドロキシル基(モノフェノール又はポリフェノール)を有する化合物、並びにアルキル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、カルボキシ及びそれらのエステルなどの置換基、並びにアミド基などの活性プロトンを有する化合物の、ハロゲン原子、及びフェノール-アルデヒド縮合樹脂を有するそれらの誘導体について言及することができるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の電子受容性化合物(B)において、次の用語は次を意味する:
アルキル:飽和、直鎖状又は分岐状のC1~C20、好ましくはC1~C12、より好ましくはC1~C6、更により好ましくはC1~C4、炭化水素ベースの脂肪族基。「分岐」という用語は、メチル又はエチルなどの少なくとも1つの低級アルキル基が直鎖状アルキル鎖によって運ばれることを意味する。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル及びn-ペンチルが挙げられ得る。
アリール:少なくとも1つの芳香環から誘導された任意の官能基又は置換基;芳香環は、環の各原子がp軌道を含み、当該p軌道は互いに重なり合っている非局在化π-系を含む任意の平面単環式又は多環式基に相当し、そのようなアリール基の中では、フェニル、ビフェニル、ナフタレン及びアントラセン基を挙げることができるが、フラン(フラニル)、ピリジン(ピリジニル)、ピロール(ピロリル)及びチオフェン(チオフェニル)などのヘテロ原子含有アリール基も挙げることができる。本発明のアリール基は、好ましくは4~12個の炭素原子を含み、さらにより好ましくは5~6個の炭素原子を含む。さらにより好ましくは、本発明のアリール基はフェニル基である。
したがって、電子受容性化合物(B)は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号:79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号:136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BPZ、CAS番号:843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号:1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:1806-29-7)、4,4’-エチリデンビスフェノール(CAS番号:2081-08-5)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号:2362-14-3)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(CAS番号:3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号:27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号:74462-02-5)、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号:110726-28)-8)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(CAS番号:140-66-9)、4-ヒドロキシジフェニルエーテル(CAS番号:831-82-3)、ビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタン(CAS番号:1096-84-0)、4-(メチルスルホニル)フェノール(CAS番号:14763-60-1)、4-ヒドロキシフェニル-4’-イソプロポキシフェニルスルホン(CAS番号:95235-30-6)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:92-88-6)、4-ヒドロキシビフェニル(CAS番号:92-69-3)、p-ヒドロキシクメン(CAS番号:99-89-8)、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(CAS番号:131-56-6)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQMME、CAS番号:150-76-5)、3-n-ペンタデシルフェノール(CAS番号:501-24-6)、4-(2-フェニルイソプロピル)フェノール(CAS番号:599-64-4)、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(CAS番号:3380-34-5)、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル)尿素(CAS番号:232938-43-1)、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(CAS番号:79-94-7)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(CAS番号:80-05-7)、及び4,4’-スルホニルジフェノール(BPS、CAS番号:80-09-1)からなる群から選択され得る。
【0023】
好ましい実施形態によれば、電子受容性化合物(B)は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号:79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号:136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BPZ、CAS番号:843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号:1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:1806-29-7)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号:2362-14-3)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(CAS番号:3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号:27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号:74462-02-5)、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号:110726-28-8)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
電子受容性化合物(B)は、有利には、少なくとも2つの電子受容性化合物(B)の混合物である。
【0025】
化合物(A)と(B)との間の電子交換のための反応媒体として作用する化合物である変色温度調節剤(C)は、40~80℃、好ましくは40~70℃の範囲の融点を有するワックスからなる群から選択され得る。
【0026】
変色温度調節剤(C)は、エステル、アルコール、カルボン酸、ケトン、アミド、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0027】
好ましい実施形態によれば、変色温度調節剤(C)は、1,2,3-トリ-ドデカノイル-グリセロール(CAS番号:538-24-9)、ヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(CAS番号:67845-93-6)、ステアリルベンゾエート(CAS番号:10578-34-4)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(CAS番号:2082-79-3)、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0028】
ステップ(i)で調製されたサーモクロミック顔料組成物をカプセル化するステップ(ii)は、有利には、ステップ(i)で調製されたサーモクロミック顔料組成物を、無水マレイン酸の少なくとも1つのモノマーを含むコポリマー界面活性剤と撹拌下で混合することによって行われ、当該コポリマー界面活性剤は、好ましくは、無水マレイン酸のコポリマーからなる群から選択され、当該コポリマー界面活性剤は、より好ましくは、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸);エチレン-無水マレイン酸コポリマー;ポリ(スチレン-co-マレイン酸);ポリ(4-スチレンスルホン酸-co-マレイン酸);ポリ(無水マレイン酸-alt-1-オクタデセン);ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、部分イソオクチルエステル、クメン末端からなる群;より有利には、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)、及びエチレン-無水マレイン酸コポリマーから選択される。特に好ましい実施形態では、コポリマー界面活性剤は、エチレン-無水マレイン酸コポリマーである。
【0029】
コポリマー界面活性剤は、好都合には、塩基を含む水溶液の形態であり、より好都合には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、又はトリエタノールアミン(C6H15NO3)からなる群から選択される塩基を含む。サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)のpHを5.0~6.0に制御するために、塩基を添加する。
【0030】
ステップ(ii)は、有利には40~95℃、より有利には60~90℃の範囲の温度で、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは2~6時間、水相中の油滴の分散が得られるまで、行われる。
【0031】
ステップ(i)のサーモクロミック顔料組成物をカプセル化するために使用されるマイクロカプセル化法には、以下のような従来の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
-マイクロカプセルシェルの現場形成に依存する化学プロセス。化学的方法の代表的な例としては、複雑なコアセルベーション、界面重合(IFP)、ポリマー間非相溶性、その場重合、遠心力法、及び水中ノズル法が挙げられ、界面重合(IFP)が好ましい、
-例えば、相分離又は複雑なコアセルベーションによる、溶媒の蒸発抽出による、エマルションの熱ゲル化(ホットメルト)による物理化学的プロセス、
-例えば、噴霧化/乾燥(噴霧乾燥)による、液滴のゲル化又は凍結による、流動床でのコーティング(噴霧コーティング)による機械的プロセス。
【0032】
好ましい実施形態によれば、サーモクロミック顔料組成物のマイクロカプセルは、より好ましくは、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選択され得、好ましくはメラミン樹脂であるアミノ樹脂溶液(カプセルコーティング剤)からのその場重合によって調製される。次いで、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)は、5.0~6.0の制御されたpHで得られる。
【0033】
ステップ(ii)の終わりに得られるカプセルは、機械的応力に耐性があり、不溶性であるため水に分散可能であり、凝集及び沈降が遅いという限りにおいて有利な特徴を有する。
【0034】
ステップ(ii)で得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を、モノカルボン酸又はポリカルボン酸を添加することによって、酸性化するステップ(iii)、当該モノカルボン酸又はポリカルボン酸は好ましくは非ポリマー性である。
【0035】
好ましい実施形態では、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を酸性化するステップ(iii)は、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液のpHが、4.6以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下のpHに達するまで、実現される。モノカルボン酸又はポリカルボン酸の量は、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)の総重量に対して、0.5~5重量%、好ましくは0.5~4重量%、より好ましくは0.5~3.5重量%、更により好ましくは1~3.5重量%で変動し得る。モノカルボン酸又はポリカルボン酸は、高温又は低温で添加することができる。
【0036】
したがって、ステップ(iii)の終わりに、モノカルボン酸又はポリカルボン酸の量は、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)の総重量に対して、0.5~5重量%、好ましくは0.5~4重量%、より好ましくは0.5~3.5重量%、更により好ましくは1~3.5重量%の範囲である。
【0037】
好ましい実施形態によれば、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を酸性化するステップ(iii)中に添加されるモノカルボン酸又はポリカルボン酸は、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を含む。
【0038】
好ましい実施形態によれば、ステップ(iii)の間に添加されるモノカルボン酸又はポリカルボン酸は、没食子酸、コハク酸、イタコン酸、グルタル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2-オキソ-グルタル酸、マロン酸、サリチル酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ピコリン酸、アルギニノコハク酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシリンゴ酸、アスパラギン酸、グルタチオン、グルタミン酸、グルタミン、3-メチル-2-オキソ吉草酸、アコチン酸(acotinic acid)、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはクエン酸又はクエン酸を含む混合物である。
【0039】
ステップ(iv)のサーモクロミック水性ゲルインク組成物の調製中に、ステップ(iii)で得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)をゲル化剤と混合する。本発明によれば、ゲル化剤(すなわち、ゲル化効果を発生させることができる化合物)は、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガム、トラガントガム、及びダイウタンガムの中から選択され、より好ましくはキサンタンガムである。
【0040】
したがって、本発明の方法は、上述の特性を有するサーモクロミック水性ゲルインク組成物を得ることを可能にし、特に、当該サーモクロミック水性ゲルインク組成物は、安定であり、より具体的には、20℃及び一定の空気圧において、1s-1のせん断速度で測定すると、1,500mPa.s以上の粘度を有する。本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物の粘度は、20℃及び一定の空気圧において、1s-1のせん断速度で、直径60mmを有する角度1°のコーンを備えているMalvern Kinexus Lab proなどのコーンプレートレオメーターを用いて、測定することができる。
【0041】
更に、本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物は、経時的に良好な安定性を示し、特に、好ましくは20℃で2週間保管した後、より好ましくは20℃で1ヶ月保管した後で、マイクロカプセルの沈降は起こらない。
【0042】
ステップ(iii)で得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)(「中間サーモクロミック水性組成物」とも呼ばれる)はまた、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の他の従来の成分及び特定のアジュバントとも混合され得る。
【0043】
アジュバントとしては、以下のものを挙げることができる。
-ポリビニルピロリドン又はヒドロキシエチルセルロースなどのレオロジー調整剤(レオ流動化剤)、
-キサンタンガム又はアラビアガムなどのゲル化効果を発生させることができるゲル化剤、
-イソチアゾリノン(ThorのACTICIDE(登録商標))などの抗菌剤(殺生物剤)、
-ベンゾトリアゾールなどの腐食防止剤
-変性ポリシロキサンの水性分散液などの消泡剤(SynthronのMOUSSEX(登録商標))、
-水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンなどのpH調整剤、
-ポリエーテルポリオールなどの界面活性剤(DOWのTERGITOL商標)、
-潤滑剤、
-分散剤、
-合体剤、
-架橋剤、
-湿潤剤、
-保湿剤、
-抗酸化剤、
-紫外線安定剤、
-フィルム形成剤、
-水溶性溶剤、及び
それらの混合物。
【0044】
サーモクロミック水性ゲルインクのpHは、ステップ(iv)の間、6.0~7.0の範囲に制御される。
【0045】
本発明はまた、ステップ(iii)で得られるサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(「中間サーモクロミック水性組成物」とも呼ばれる)にも関し、
-サーモクロミック顔料組成物をカプセル化するサーモクロミック顔料マイクロカプセルであって、
(A)少なくとも1つの電子供与性発色性有機化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容性化合物、及び
(C)化合物(A)と(B)との間の電子交換のための反応媒体として作用する化合物である少なくとも1つの変色温度調節剤、を含む、サーモクロミック顔料マイクロカプセルと、
-モノカルボン酸又はポリカルボン酸であって、好ましくは非ポリマー性であり、当該モノカルボン酸又はポリカルボン酸の量は、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液の総重量に対して、好ましくは0.5~5重量%の範囲である、モノカルボン酸又はポリカルボン酸と、
-無水マレイン酸の少なくとも1つのモノマーを含むコポリマー界面活性剤と、
-サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液の総重量に対して、好ましくは55~85重量%、より好ましくは60~80重量%の範囲の量の水と、を含み、
当該サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液は、4.6以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下のpHを有する。
【0046】
本発明はまた、特に、好ましくは本発明により定義されるモノカルボン酸又はポリカルボン酸を含む、上述の本発明の方法に従って調製されたサーモクロミック水性ゲルインク組成物にも関する。
【0047】
本発明は、特に、
-サーモクロミック顔料組成物をカプセル化するサーモクロミック顔料マイクロカプセルであって、
(A)少なくとも1つの電子供与性発色性有機化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容性化合物、及び
(C)少なくとも1つの変色温度調節剤、を含むサーモクロミック顔料マイクロカプセルと、
-モノカルボン酸又はポリカルボン酸であって、当該モノカルボン酸又はポリカルボン酸は好ましくは非ポリマー性である、モノカルボン酸又はポリカルボン酸と、
-担体、好ましくは水と、
-ゲル化剤(すなわち、ゲル化効果を発生させることができる化合物)と、
-無水マレイン酸の少なくとも1つのモノマーを含むコポリマー界面活性剤と、を含む、サーモクロミック水性ゲルインク組成物に関する。
【0048】
特に、本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物は、前述のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法に従って調製することができる。
【0049】
本発明の目的のために、「サーモクロミック水性ゲルインク組成物」という用語は、ボールペン、筆ペン、マーカー、ハイライトマーカー、及びフェルトペンなどの筆記具において使用することを意図しているインクを意味しており、印刷機で使用される印刷インクと混同すべきではなく、これらは、同じ技術的制約条件に対応していないため、同じ仕様に対応していない。実際、本発明の枠組み内で筆記具において使用することが意図された「サーモクロミック水性ゲルインク組成物」は、必然的に筆記が不可逆的に停止する原因となるブロッキングを回避するために、サイズが筆記具のチャネルよりも大きい固体粒子を含有してはいけない。更に、筆記中の漏れを回避するために、流動性が高すぎてはならない。しかしながら、筆記動作の流れを容易にするために、十分に流動的である必要がある。また、筆記媒体を汚すことを回避するために、十分に急速に乾く必要がある。したがって、本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物は、それが意図される筆記具にとって好適となる。
【0050】
電子供与性発色性有機化合物(A)は、本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法について上で定義した通りであり得る。
【0051】
好ましい実施形態によれば、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の電子供与性発色性有機化合物(A)は、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号:34372-72-0)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(Yellow CK37、CAS番号:144190-25-0)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(Blue 203、CAS番号:98660-18-5)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(Black 15、CAS番号:36431-22-8)、3,3-ビス-(1-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(Red 40、CAS番号:50292-91-6)、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0052】
電子受容性有機化合物(B)は、本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法について上で定義した通りであり得る。
【0053】
好ましい実施形態では、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の電子受容性化合物(B)は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号:79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号:136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BPZ、CAS番号:843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号:1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:1806-29-7)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号:2362-14-3)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(CAS番号:3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号:27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号:74462-02-5)、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号:110726-28-8)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
変色温度調節剤(C)は、本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するための方法について上で定義した通りであり得る。
【0055】
好ましい実施形態では、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の変色温度調節剤(C)は、40~80℃、好ましくは40~70℃の範囲の融点を有するワックスからなる群から選択される。
【0056】
変色温度調節剤(C)は、エステル、アルコール、カルボン酸、ケトン、アミド、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0057】
好ましい実施形態によれば、変色温度調節剤(C)は、1,2,3-トリ-ドデカノイル-グリセロール(CAS番号:538-24-9)、ヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(CAS番号:67845-93-6)、ステアリルベンゾエート(CAS番号:10578-34-4)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(CAS番号:2082-79-3)、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0058】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物では、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の総重量に対して、サーモクロミック顔料マイクロカプセル(スラリー)は、有利には10~35重量%、より有利には20~30重量%の範囲の量で存在する。
【0059】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルの融解温度(又は変色温度T4)は、20~80℃、好ましくは30~80℃、更により好ましくは40~70℃で変動し得る。
【0060】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルの結晶化温度(又は再発色温度T1)は、-40~20℃、好ましくは-30~10℃、更により好ましくは-20~0℃で変動し得る。
【0061】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルは、有利には、0.5~30μm、好ましくは1~10μm、更により好ましくは3~5μmの範囲の平均直径を有する。この平均直径は、体積d90に対応し、マイクロカプセルの90体積%が、示されたd90の値よりも小さいことを意味する。この平均直径は、MalvernからのZetasizer Nano ZSシステムを使用したレーザー粒度分布測定によって決定できる。
【0062】
本発明によれば、本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物中に存在するモノカルボン酸又はポリカルボン酸は、ステップ(ii)の終わりに得られるサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液のpHを、4.6以下のpH、より好ましくは4.5以下のpH、更により好ましくは4以下のpHに下げるために使用される。
【0063】
好ましい実施形態では、特に、当該モノカルボン酸又はポリカルボン酸が、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液の総重量に対して、0.5~5重量%、好ましくは0.5~4重量%、より好ましくは0.5~3.5重量%、更により好ましくは1~3.5重量%の範囲の量で添加される場合に、当該モノカルボン酸又はポリカルボン酸の酸価は、4.6以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下の値のpHまで下げ得るのに十分であるべきである。
【0064】
別の実施形態では、モノカルボン酸又はポリカルボン酸は、好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下、更により好ましくは5以下のpKaを有する。この実施形態によれば、より具体的には、当該カルボン酸が、1を超えるpKa値を含む場合(例えば、ジカルボン酸及びトリカルボン酸の場合)、pKaのうちの少なくとも1つは、6以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下であるべきである。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のモノカルボン酸又はポリカルボン酸は、好ましくは非ポリマー性である。
【0066】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明のモノカルボン酸又はポリカルボン酸は、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を含む。
【0067】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、モノカルボン酸又はポリカルボン酸は、好ましくはジカルボン酸又はトリカルボン酸である。
【0068】
本発明のモノカルボン酸又はポリカルボン酸は、好ましくは、没食子酸、コハク酸、イタコン酸、グルタル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2-オキソ-グルタル酸、マロン酸、サリチル酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ピコリン酸、アルギニノコハク酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシリンゴ酸、アスパラギン酸、グルタチオン、グルタミン酸、グルタミン、3-メチル-2-オキソ吉草酸、アコチン酸、及びそれらの混合物からなる群、より好ましくはクエン酸又はクエン酸を含む混合物から選択される。
【0069】
好ましくは、本発明のモノカルボン酸又はポリカルボン酸は、サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)の総重量に対して、0.5~5重量%、好ましくは0.5~4重量%、より好ましくは0.5~3.5重量%、更により好ましくは1~3.5重量%の量で、ステップ(iii)で添加される。
【0070】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物では、モノカルボン酸又はポリカルボン酸は、好ましくは非ポリマー性であり、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の総重量に対して、有利には、0.2~5重量%、好ましくは0.3~4重量%、より好ましくは0.5~3.5重量%の範囲の量で存在する。
【0071】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物はまた、有利には水である担体も含む。
【0072】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物では、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の総重量に対して、担体は、有利には40~80重量%、より有利には50~70重量%の範囲の量で存在する。
【0073】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物の担体が水であるとき、共溶媒が添加され得る。共溶媒は、インク配合成分の相溶性/溶解性の改善を助けることができる。有用な共溶媒としては、水に混和性の極性溶媒、例えば、
-グリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物、
-グリコールエーテル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びそれらの混合物、
-C1~C6の直鎖又は分岐鎖アルコールなどのアルコール、例えば、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、及びそれらの混合物、
-カーボネートエステル、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及びそれらの混合物、
-ラクタム、例えば、2-ピロリドン、N-メチル2-ピロリドン、及びそれらの混合物、
-ケトン、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン又はシクロヘキサノン、及びそれらの混合物、
-それらの混合物、が挙げられる。
【0074】
共溶媒は、サーモクロミック水性ゲルインク組成物の総重量に対して、5~20重量%を占めることができる。
【0075】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物はまた、ゲル化剤(すなわち、ゲル化効果を発生させることができる化合物)も含み、好ましくは、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガム、トラガカントガム、及びジウタンガムからなる群から選択され、より好ましくはキサンタンガムである。
【0076】
本発明のサーモクロミック顔料マイクロカプセルはまた、意図される最終用途に応じて異なる役割を果たすことができる1つ以上の特定のアジュバントと混合することができる。
【0077】
アジュバントとしては、以下のものを挙げることができる。
-レオロジー調整剤(レオ流動化剤)、例えば、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシエチルセルロース、
-抗菌剤(殺生物剤)、例えば、イソチアゾリノン(ThorのACTICIDE(登録商標))、
-腐食防止剤、例えば、ベンゾトリアゾール、
-消泡剤、例えば、変性ポリシロキサンの水性分散液(SynthronのMOUSSEX(登録商標))、
-pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、
-界面活性剤、例えば、ポリエーテルポリオール(DOWのTERGITOL商標)、
-潤滑剤、
-分散剤、
-合体剤、
-架橋剤、
-湿潤剤、
-保湿剤、
-抗酸化剤、
-紫外線安定剤、
-フィルム形成剤、
-水溶性溶剤、及び
それらの混合物。
【0078】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物は、有利には、レオロジー調整剤、抗菌剤(殺生物剤)、腐食防止剤、及び消泡剤からなる群から選択される1つ以上の特定のアジュバントを含む。
【0079】
最後に、本発明はまた、
-本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物を含有するインクリザーバ、及び
-インクリザーバに収容されたサーモクロミックインク組成物を送達するペン本体、を備える筆記具にも関する。
【0080】
本発明の筆記具は、有利には、ボールペン、筆ペン、マーカー、ハイライトマーカー、及びフェルトペンから選択され、より有利には、摩擦によって消去可能なボールペンである。本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を適用することができる支持体は、紙、印刷用紙、又は厚紙などのセルロース繊維を含む多孔性基材(又は多孔性表面)である。
【0081】
上記に加えて、本発明はまた、
図1及び2から明らかとなる他の規定、及び本発明の方法によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物の調製、並びに比較サーモクロミック水性ゲルインク組成物、及び得られたサーモクロミック水性ゲルインク組成物の特性決定に関する以下の追加の説明も含む。
【実施例】
【0082】
実施例:
実施例1:本発明による実験プロセス
本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物の調製:
サーモクロミック顔料組成物を調製するステップ(i):
2.2重量部の3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(化合物(A)、Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2.0重量部の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(化合物(B1)、ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、2.0重量部の2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(化合物(B2)、CAS番号:79-97-0)、及び93.8重量部のヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(化合物(C)、CAS番号:67845-93-6)を混合することによって、下記の式(1)のサーモクロミック顔料組成物を調製した:
【0083】
【0084】
得られた混合物を、化合物(A)、(B1)、及び(B2)が化合物(C)に完全に可溶化するまで、110℃の温度で1時間、攪拌しながら加熱した。
【0085】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルを調製するステップ(ii)(カプセル化ステップ):
7.9重量部の(無水マレイン酸)-co-(メチルビニルエーテル)コポリマーの水溶液(コポリマー31重量%の溶液)を、3.7重量部の水酸化ナトリウム水溶液(5.0Mの溶液)でpH=4.5まで中和した。得られた溶液を、39.7重量部の水で希釈し、その混合物を、均質化ミキサーを用いて15m・s-1の速度で1時間均質化した。予め調製しておいたサーモクロミック顔料組成物26.8重量部を添加し、その形成されたエマルションを、30分間、85℃の温度に維持した。18.8重量部のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー溶液(プレポリマー50重量%の水溶液)を、混合物に10分間かけてゆっくりと添加した。プレポリマー溶液の添加が完了した後、混合物を90℃の温度で4時間、15m.s-1の速度で加熱した。
【0086】
カプセル化ステップ直後のpHは5.0~5.5であった。
【0087】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を酸性化するステップ(iii):
2.12部の無水クエン酸を、ステップ(ii)の終わりに得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)に添加した。スラリーの最終pHは3.45である。
【0088】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルは、水に分散したサーモクロミック顔料マイクロカプセル(スラリー)の水性懸濁液として回収し、マイクロカプセルは、632nmの照明下でMalvern InstrumentsのZetasizer Nano ZSシステムを使用して測定すると、4μmのd90直径を有した。
【0089】
得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルは、色変化のヒステリシス効果により、62℃を超えると青色から無色へと色が変化する特性を有する。
【0090】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するステップ(iv):
10.5部のグリセリンを30℃に加熱し、0.2部のベンゾトリアゾール、0.1部の1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン水溶液、0.1部の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン水溶液を添加した。溶解後、0.4部のキサンタンガムを添加した。キサンタンガムを分散させた後、25.7部の水及び予め作製しておいたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液63.0部を、ゆっくりと添加した。次いで、その混合物を30℃で3時間均質化した。
【0091】
実施例2:本発明による実験プロセス
本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物の調製:
サーモクロミック顔料組成物を調製するステップ(i):
2.2重量部の3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(化合物(A)、Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2.0重量部の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(化合物(B1)、ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、2.0重量部の2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(化合物(B2)、CAS番号:79-97-0)、及び93.8重量部のヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(化合物(C)、CAS番号:67845-93-6)を混合することによって、下記の式(1)のサーモクロミック顔料組成物を調製した:
【0092】
【0093】
得られた混合物を、化合物(A)、(B1)、及び(B2)が化合物(C)に完全に可溶化するまで、110℃の温度で1時間、撹拌しながら加熱した。
【0094】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルを調製するステップ(ii)(カプセル化ステップ):
7.9重量部の(無水マレイン酸)-co-(メチルビニルエーテル)コポリマーの水溶液(コポリマー31重量%の溶液)を、3.7重量部の水酸化ナトリウム水溶液(5.0Mの溶液)でpH=4.5まで中和した。得られた溶液を、39.7重量部の水で希釈し、その混合物を、均質化ミキサーを用いて15m・s-1の速度で1時間均質化した。予め調製しておいたサーモクロミック顔料組成物26.8重量部を添加し、その形成されたエマルションを、30分間、85℃の温度に維持した。18.8重量部のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー溶液(プレポリマー50重量%の水溶液)を、混合物に10分間かけてゆっくりと添加した。プレポリマー溶液の添加が完了した後、混合物を90℃の温度で4時間、15m.s-1の速度で加熱した。
【0095】
カプセル化ステップ直後のpHは5.0~5.5であった。
【0096】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を酸性化するステップ(iii):
3.03部の没食子酸を、ステップ(ii)の終わりに得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)に添加した。スラリーの最終pHは4.47である。
【0097】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルは、水に分散したサーモクロミック顔料マイクロカプセル(スラリー)の水性懸濁液として回収し、マイクロカプセルは、632nmの照明下でMalvern InstrumentsのZetasizer Nano ZSシステムを使用して測定すると、4μmのd90直径を有した。
【0098】
得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルは、色変化のヒステリシス効果により、62℃を超えると青色から無色へと色が変化する特性を有する。
【0099】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するステップ(iv):
10.5部のグリセリンを30℃に加熱し、0.2部のベンゾトリアゾール、0.1部の1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン水溶液、0.1部の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン水溶液を添加した。溶解後、0.4部のキサンタンガムを添加した。キサンタンガムを分散させた後、25.7部の水及び予め作製しておいたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液63.0部を、ゆっくりと添加した。次いで、その混合物を30℃で3時間均質化した。
【0100】
実施例3:本発明による実験プロセス
本発明によるサーモクロミック水性ゲルインク組成物の調製:
サーモクロミック顔料組成物を調製するステップ(i):
2.2重量部の3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(化合物(A)、Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2.0重量部の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(化合物(B1)、ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、2.0重量部の2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(化合物(B2)、CAS番号:79-97-0)、及び93.8重量部のヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(化合物(C)、CAS番号:67845-93-6)を混合することによって、下記の式(1)のサーモクロミック顔料組成物を調製した:
【0101】
【0102】
得られた混合物を、化合物(A)、(B1)、及び(B2)が化合物(C)に完全に可溶化するまで、110℃の温度で1時間、撹拌しながら加熱した。
【0103】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルを調製するステップ(ii)(カプセル化ステップ):
7.9重量部の(無水マレイン酸)-co-(メチルビニルエーテル)コポリマーの水溶液(コポリマー31重量%の溶液)を、3.7重量部の水酸化ナトリウム水溶液(5.0Mの溶液)でpH=4.5まで中和した。得られた溶液を、39.7重量部の水で希釈し、その混合物を、均質化ミキサーを用いて15m・s-1の速度で1時間均質化した。予め調製しておいたサーモクロミック顔料組成物26.8重量部を添加し、その形成されたエマルションを、30分間、85℃の温度に維持した。18.8重量部のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー溶液(プレポリマー50重量%の水溶液)を、混合物に10分間かけてゆっくりと添加した。プレポリマー溶液の添加が完了した後、混合物を90℃の温度で4時間、15m.s-1の速度で加熱した。
【0104】
カプセル化ステップ直後のpHは5.0~5.5であった。
【0105】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を酸性化するステップ(iii):
3.20部のイタコン酸を、ステップ(ii)の終わりに得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)に添加した。スラリーの最終pHは3.59である。
【0106】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルは、水に分散したサーモクロミック顔料マイクロカプセル(スラリー)の水性懸濁液として回収し、マイクロカプセルは、632nmの照明下でMalvern InstrumentsのZetasizer Nano ZSシステムを使用して測定すると、4μmのd90直径を有した。
【0107】
得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルは、色変化のヒステリシス効果により、62℃を超えると青色から無色へと色が変化する特性を有する。
【0108】
本発明のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するステップ(iv):
10.5部のグリセリンを30℃に加熱し、0.2部のベンゾトリアゾール、0.1部の1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン水溶液、0.1部の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン水溶液を添加した。溶解後、0.4部のキサンタンガムを添加した。キサンタンガムを分散させた後、25.7部の水及び予め作製しておいたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液63.0部を、ゆっくりと添加した。次いで、その混合物を30℃で3時間均質化した。
【0109】
実施例4:比較実験プロセス
サーモクロミック顔料組成物を調製するステップ(i):
2.2重量部の3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(化合物(A)、Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2.0重量部の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(化合物(B1)、ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、2.0重量部の2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(化合物(B2)、CAS番号:79-97-0)、及び93.8重量部のヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(化合物(C)、CAS番号:67845-93-6)を混合することによって、下記の式(1)のサーモクロミック顔料組成物を調製した:
【0110】
【0111】
得られた混合物を、化合物(A)、(B1)、及び(B2)が化合物(C)に完全に可溶化するまで、110℃の温度で1時間、撹拌しながら加熱した。
【0112】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルを調製するステップ(ii)(カプセル化ステップ):
7.9重量部の(無水マレイン酸)-co-(メチルビニルエーテル)コポリマーの水溶液(コポリマー31重量%の溶液)を、3.7重量部の水酸化ナトリウム水溶液(5.0Mの溶液)でpH=4.5まで中和した。得られた溶液を、39.7重量部の水で希釈し、その混合物を、均質化ミキサーを用いて15m・s-1の速度で1時間均質化した。予め調製しておいたサーモクロミック顔料組成物26.8重量部を添加し、その形成されたエマルションを、30分間、85℃の温度に維持した。18.8重量部のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー溶液(プレポリマー50重量%の水溶液)を、混合物に10分間かけてゆっくりと添加した。プレポリマー溶液の添加が完了した後、混合物を90℃の温度で4時間、15m.s-1の速度で加熱した。
【0113】
カプセル化ステップ直後のpHは5.0~5.5であった。
【0114】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液を酸性化するステップ(iii):
0.15部の無水クエン酸を、ステップ(ii)の終わりに得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液(スラリー)に添加した。スラリーの最終pHは4.8である。
【0115】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルは、水に分散したサーモクロミック顔料マイクロカプセル(スラリー)の水性懸濁液として回収し、マイクロカプセルは、632nmの照明下でMalvern InstrumentsのZetasizer Nano ZSシステムを使用して測定すると、4μmのd90直径を有した。
【0116】
得られたサーモクロミック顔料マイクロカプセルは、色変化のヒステリシス効果により、62℃を超えると青色から無色へと色が変化する特性を有する。
【0117】
比較のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するステップ(iv):
10.5部のグリセリンを30℃に加熱し、0.2部のベンゾトリアゾール、0.1部の1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン水溶液、0.1部の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン水溶液を添加した。溶解後、0.4部のキサンタンガムを添加した。キサンタンガムを分散させた後、25.7部の水及び予め作製しておいたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液63.0部を、ゆっくりと添加した。次いで、その混合物を30℃で3時間均質化した。
【0118】
実施例5:比較実験プロセス
サーモクロミック顔料組成物を調製するステップ(i):
2.2重量部の3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(化合物(A)、Blue 63、CAS番号:69898-40-4)、2.0重量部の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(化合物(B1)、ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、2.0重量部の2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(化合物(B2)、CAS番号:79-97-0)、及び93.8重量部のヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(化合物(C)、CAS番号:67845-93-6)を混合することによって、下記の式(1)のサーモクロミック顔料組成物を調製した:
【0119】
【0120】
得られた混合物を、化合物(A)、(B1)、及び(B2)が化合物(C)に完全に可溶化するまで、110℃の温度で1時間、撹拌しながら加熱した。
【0121】
サーモクロミック顔料マイクロカプセルを調製するステップ(ii)(カプセル化ステップ):
7.9重量部の(無水マレイン酸)-co-(メチルビニルエーテル)コポリマーの水溶液(コポリマー31重量%の溶液)を、3.7重量部の水酸化ナトリウム水溶液(5.0Mの溶液)でpH=4.5まで中和した。得られた溶液を、39.7重量部の水で希釈し、その混合物を、均質化ミキサーを用いて15m・s-1の速度で1時間均質化した。予め調製しておいたサーモクロミック顔料組成物26.8重量部を添加し、その形成されたエマルションを、30分間、85℃の温度に維持した。18.8重量部のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー溶液(プレポリマー50重量%の水溶液)を、混合物に10分間かけてゆっくりと添加した。プレポリマー溶液の添加が完了した後、混合物を90℃の温度で4時間、15m.s-1の速度で加熱した。
【0122】
カプセル化ステップ直後のpHは5.0~5.5であった。
【0123】
実施例5の調製法は、酸性化ステップ(iii)を含まない。
【0124】
比較のサーモクロミック水性ゲルインク組成物を調製するステップ(iv):
10.5部のグリセリンを30℃に加熱し、0.2部のベンゾトリアゾール、0.1部の1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン水溶液、0.1部の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン水溶液を添加した。溶解後、0.4部のキサンタンガムを添加した。キサンタンガムを分散させた後、25.7部の水及び予め作製しておいたサーモクロミック顔料マイクロカプセルの水性懸濁液63.0部を、ゆっくりと添加した。次いで、その混合物を30℃で3時間均質化した。
【0125】
結果:
実施例1、2、及び3(本発明による)並びに実施例4及び5(比較例)のサーモクロミック水性ゲルインク組成物の粘度及び不安定性を、以下の試験によって評価した。
【0126】
サーモクロミック水性ゲルインク組成物の粘度を、20℃で、1s-1のせん断速度で、直径60mmを有する角度1°のコーンを備えているMalvern Kinexus Lab proなどのコーンプレートレオメーターを用いて、測定した。
【0127】
サーモクロミック水性ゲルインク組成物の不安定性は、以下の手順に従って、LUM(ブランド)LUMiSizer(装置)を用いて、23℃で8時間、1500gで遠心分離後に測定した。
1-0.5gのサーモクロミック水性ゲルインク組成物を、セルに投入し、
2-インク組成物を、23℃で8時間、1500gで遠心分離し、
3-インク組成物は、上澄み及び沈殿物の2相に分離した。
【0128】
図2に示したように、測定値は、次の式に従って計算した。
%不安定性=((D-d)/D)*100
式中:
D:遠心分離前のインク組成物の高さ、
d:遠心分離後のインク組成物の高さ、
【0129】
結果は、%で示し、不安定性の%に対応している。
【0130】
実施例1、2、3、4、及び5のインク組成物について得られた粘度及び不安定性の結果を、以下の表1に要約する。
【0131】
【0132】
比較例4及び5のインク組成物は、ゲルネットワークのない非常に低い粘度(<1500mPa.s)を示している。したがって、カプセルは、凝集したサーモクロミック顔料マイクロカプセルを沈殿させる(沈降)。その結果、ゲルが安定せず、インクの漏れ及び/又はポイントの目詰まりが発生することがある。
【0133】
本発明の実施例1、2、及び3のインク組成物は、粘度が適切であり(>1500mPa.s)、比較例4及び5よりも良好であることを示している。本発明の実施例のカプセルは安定であり、沈殿しない。インク漏れ及び不均一なインクトレースがなく、ペン本体における気泡の形成もない。
【国際調査報告】