(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】mRNA治療ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20230526BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230526BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/28 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/23 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/117 20100101ALI20230526BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230526BHJP
C12P 19/34 20060101ALI20230526BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/37 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20230526BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230526BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230526BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230526BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
A61K39/00 H
C12N15/12
C12N15/88 Z
C12N15/33
C12N15/113 Z
C12N15/24
C12N15/28
C12N15/23
C12N15/19
C12N15/13
C12N15/117 Z
C12N15/10 Z
C12P19/34 A
C12M1/00 A
C12N15/37
C12N15/38
A61K9/127
A61K9/51
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560406
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021028312
(87)【国際公開番号】W WO2021216647
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126302
【氏名又は名称】ナットクラッカー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ドイッチュ
(72)【発明者】
【氏名】ニコール フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フリーマンソン
(72)【発明者】
【氏名】オーレ ハーベス
(72)【発明者】
【氏名】コリン マッキンレイ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB20
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4B064DA05
4C076AA19
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4C076CC50
4C076FF16
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4C076GG26
4C085AA02
4C085AA03
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4C085BA51
4C085BA76
4C085BA78
4C085BA80
4C085BB01
4C085CC33
4C085EE01
4C085GG01
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、mRNA治療ナノ粒子、および患者を治療するためにそれらを使用する方法の例である。mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍特異的抗原をコードする1以上のmRNA、および免疫調節剤、並びに1以上のmRNAをカプセル化した送達ビヒクル分子を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、該方法は、以下を含む。
を含むmRNAナノ粒子を腫瘍内に注入する。
(i)腫瘍特異的抗原をコードする第一のmRNA。
(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および
(iii)送達ビークル分子であって、該第1のmRNAおよび該第2のmRNAは、該送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、送達ビークル分子。
【請求項2】
腫瘍特異的抗原が、ウイルス抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス抗原が、ヒトパピローマウイルス(HPV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、またはそれらの任意の組み合わせと関連している、請求項1から2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
腫瘍特異的抗原がネオエピトープを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
腫瘍特異的抗原が患者特異的抗原を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
腫瘍特異的抗原が、複数の患者特異的抗原を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
腫瘍特異的抗原が、共有腫瘍抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
デリバリービヒクル分子が、アミノ脂質化ペプトイドを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
mRNAナノ粒子が、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAをさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
mRNAナノ粒子が、免疫調節性siRNAをさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの任意の組合せをコードする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、炎症性サイトカインをコードする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
炎症性サイトカインが、(IL)、IL-1、IL-2、IL-12、IL-17、IL-18、IFN-γ、およびTNF-αのうちの1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
炎症性サイトカインがインターロイキン-12(IL-12)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、抗CTLA-4をコードする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、TGF-βアンタゴニストをコードする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
mRNAナノ粒子が、免疫賦活剤をさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
mRNAナノ粒子が、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む免疫賦活剤をさらに含む、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
注射の間に待ち時間を設けて腫瘍内注射を1回以上繰り返すことをさらに含み、待ち時間が約1日~約14日である、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、単一のmRNA鎖上にある、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
本方法が、リンパ腫を有する患者を治療する方法である、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
子宮頸癌を有する患者を治療する方法である、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
方法であって、該方法は、以下を含む。
(i)mRNAナノ粒子を、それを必要とする患者に腫瘍内注射することであり、該mRNAナノ粒子は以下を含む。
子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと
(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および
(iii)送達ビークル分子であって、該第1のmRNAおよび該第2のmRNAは、該送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、送達ビークル分子。
【請求項25】
mRNA処理用ナノ粒子であって、該ナノ粒子は、以下を含む。
(i)腫瘍特異的抗原をコードする第一のmRNA。
(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および
(iii)送達ビークル分子であって、該第1のmRNAおよび該第2のmRNAは、該送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、送達ビークル分子。
【請求項26】
mRNA処理用ナノ粒子であって、該ナノ粒子は、以下を含む。
(i)腫瘍特異的抗原をコードする第一のmRNA。
(ii)SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および
(iii)アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを含む送達ビヒクル分子であって、第1のmRNAおよび第2のmRNAが送達ビヒクル分子によって一緒にカプセル化されている、送達ビヒクル分子。
【請求項27】
mRNA処理用ナノ粒子であって、該ナノ粒子は、以下を含む。
(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと
(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および
(iii)送達ビークル分子であって、該第1のmRNAおよび該第2のmRNAは、該送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、送達ビークル分子。
【請求項28】
送達ビヒクル分子がアミノ脂質化ペプトイドを含む、請求項25または27に記載のmRNA処理ナノ粒子。
【請求項29】
第1のmRNAが患者特異的抗原をコードする、請求項25~27に記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項30】
前記第1のmRNAが、複数の患者特異的抗原をコードする、請求項29に記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項31】
前記第1のmRNAが、共有腫瘍抗原をコードする、請求項25~26のいずれかに記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項32】
第2のmRNAが、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの任意の組み合わせをコードする、請求項25に記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項33】
前記第2のmRNAが抗CTLA-4をコードする、請求項25に記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項34】
第2のmRNAが、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である抗CTLA-4をコードする、請求項25のいずれかに記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項35】
腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードする第3のmRNAをさらに含む、請求項25~27のいずれかに記載のmRNA処理ナノ粒子。
【請求項36】
SEQ ID NO: 7またはSEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるTGF-βアンタゴニストをコードする第3のmRNAをさらに含む、請求項25~27のいずれかに記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項37】
第2のmRNAが、SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるインターロイキン12をコードする、請求項25に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項38】
mRNA治療用ナノ粒子が、さらに免疫賦活剤を含む、請求項25~27のいずれかに記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項39】
免疫賦活剤がCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む、請求項38に記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項40】
腫瘍特異的抗原および免疫調節剤のそれぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)が、単一のmRNA鎖の一部である、請求項25に記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項41】
腫瘍特異的抗原および免疫調節剤のそれぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)が、異なるmRNA鎖の一部である、請求項25に記載のmRNA治療用ナノ粒子。
【請求項42】
方法であって、該方法は、以下を含む。
マイクロ流路デバイスにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第一のmRNAをインビトロで転写すること。
第一のmRNAを精製すること。
マイクロ流路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うこと。
マイクロ流路デバイスで第2のmRNAを精製すること;および
マイクロ流路デバイスにおいて、第1のmRNAおよび第2のmRNAを送達ビヒクル分子と一緒にカプセル化し、mRNA治療ナノ粒子を形成すること。
【請求項43】
方法であって、該方法は、以下を含む。
マイクロ流路デバイスの第1のチャンバーにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAをインビトロで転写すること。
第一のmRNAを精製すること。
マイクロ流路デバイスの第2のチャンバーにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うこと。
マイクロ流路デバイスにおいて、第2のmRNAを精製すること。
マイクロ流路デバイスの第3のチャンバーにおいて、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAのインビトロ転写を行うこと。
マイクロ流路デバイスにおいて第3のmRNAを精製すること;および
【請求項44】
第1のmRNA、第2のmRNAおよび第3のmRNAを送達ビヒクル分子とともにマイクロ流路デバイスに封入し、mRNA治療ナノ粒子を形成すること。
前記第1のmRNAの精製、前記第2のmRNAの精製及び前記第3のmRNAの精製の各々は、前記マイクロ流路デバイス上の1つ又は複数のリアクターで精製することを更に含む、請求項42~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
1つ以上の反応器における精製が、1つ以上の反応器内でセルロースを用いて二本鎖mRNAを除去することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
マイクロ流路装置が、第1のmRNAおよび第2のmRNAの各々のin vitro転写を自動的に連続的に行い、第1のmRNAおよび第2のmRNAを精製し、第1のmRNAおよび第2のmRNAを送達ビヒクル分子と結合するクローズドパスシステムからなる、請求項4~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
クローズドパスシステムが、第1及び第2のmRNAのin vitro転写の実行、第1及び第2のmRNAの精製、並びに第1及び第2のmRNAを送達ビヒクル分子と組み合わせることを空気圧で制御する、請求項46に記載の方法。
クローズドパスシステムが空気圧で制御する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第一のmRNAと第二のmRNAをin vitroで転写すること。
前記第1のmRNAおよび前記第2のmRNAを精製するステップと
マイクロ流路デバイス内の1つまたは複数の膜を偏向させることにより、第1のmRNAおよび第2のmRNAを送達ビークル分子と結合させること。
【請求項49】
請求項46記載の方法において、クローズドパスシステムが自動的かつ連続的に行われることを特徴とする方法。
は、治療用mRNAをin vitroで転写する。
治療用mRNAを精製するステップと
は、mRNAとデリバリービークルを結合させる。
を約5日以内にまとめた。
【請求項50】
請求項42~49のいずれかに記載の方法であって、本方法が医療現場で実施される、方法。
【請求項51】
mRNAと送達ビヒクルとを組み合わせることが、マイクロ流体経路デバイス内でmRNA処理ナノ粒子を透析することをさらに含む、請求項42~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
マイクロ流路デバイス上でmRNA処理ナノ粒子を濃縮することをさらに含む、請求項42~50のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
送達ビヒクル分子が両親媒性分子を含む、請求項42~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
両親媒性分子がアミノ脂質化ペプトイドを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAが、患者特異的抗原をコードするmRNAを含んでなる、請求項42~54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記第1のmRNAが、複数の患者特異的抗原をコードする、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの任意の組合せをコードする、請求項42~56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、抗CTLA-4をコードする、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、TGF-βアンタゴニストをコードする、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAが、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードする、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
第1のmRNAと第2のmRNAとを組み合わせることが、マイクロ流路デバイス内で免疫賦活剤を添加することを含む、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
免疫賦活剤が、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
第1の表面と第2の表面とに挟まれた弾性層と
第1の表面と第2の表面との間に形成されたテンプレート体外転写(IVT)チャンバーであって、弾性層の一部が、テンプレートIVTチャンバーを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側とに分割し、テンプレートIVTチャンバーの流体接触側が腫瘍特異的抗原をコードするmRNAテンプレートの供給源と流体連通していることを特徴とするテンプレート体外転写チャンバーを備える、マイクロ流路デバイス。
テンプレートIVTチャンバーの流体接触側と流体連通している第1の反応器であって、二本鎖mRNAを除去するために第1の反応器内に二本鎖mRNA結合材を含む第1の反応器。
第1の反応器と、第1の免疫調節物質mRNAの供給源と、送達ビークル分子の供給源と結合する送達ビークルポートと流体連通して、第1のmRNAおよび第2のmRNAを送達ビークル分子と一緒にカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成する混合アセンブリ;および
複数の圧力チャンネルが、それぞれ、1つ以上の圧力ポートから、第1の表面および弾性層を通って第2の表面へ、そして弾性層を通って第1の表面へ戻って延びており、複数の圧力チャンネルのそれぞれの圧力チャンネルが、テンプレートIVTチャンバの圧力受容側と流体連通し、さらに、テンプレートIVTチャンバの流体連通側の容積が、1つ以上の圧力ポートから圧力を加えて、マイクロ流路デバイスを通して流体を駆動してmRNA処理ナノ粒子を形成するために調節されてもよい、複数の圧力チャンネルを備える、マイクロ流路デバイス。
【請求項64】
第1の表面と第2の表面とに挟まれた弾性層と
第1の表面と第2の表面との間に形成されたテンプレート体外転写(IVT)チャンバーであって、弾性層の一部が、テンプレートIVTチャンバーを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側とに分け、テンプレートIVTチャンバーの流体接触側が、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAテンプレートの供給源と流体連通していることを特徴とするテンプレート体外転写チャンバーを備える、マイクロ流路デバイスを備える、マイクロ流路デバイス。
テンプレートIVTチャンバーの流体接触側と流体連通している第1の反応器であって、二本鎖mRNAを除去するために第1の反応器内に二本鎖mRNA結合材を含む第1の反応器。
第1の表面と第2の表面との間に形成された第1の免疫調節剤IVTチャンバーであって、弾性層の一部が、第1の免疫調節剤IVTチャンバーを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側とに分け、第1の免疫調節剤IVTチャンバーの流体接触側が、第1の免疫調節剤をコードする第1の免疫調節剤テンプレートのソースと流体連通していることを特徴とする、第1の免疫調節剤IVTチャンバー。
前記第1の免疫調節剤IVTチャンバの流体接触側と流体連通している第2の反応器であって、前記第2の反応器は、前記第1の反応器内に二本鎖mRNA結合物質を含み、二本鎖mRNAを除去することを特徴とする、第1の反応器と第2の反応器。
前記第1の反応器および前記第2の反応器と流体連通している第1の混合チャンバ。
第1の混合チャンバーの出力と流体連通している第2の混合キャンバー、および送達ビークル分子の供給源と結合して、第1のmRNAおよび第2のmRNAを送達ビークル分子と一緒にカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成する送達ビークルポート;および
複数の圧力チャネルが、それぞれ1つ以上の圧力ポートから、第1の表面および弾性層を通って第2の表面へと延び、弾性層を通って第1の表面へと戻り、複数の圧力チャネルのそれぞれの圧力チャネルが、 テンプレートIVTチャンバの受圧側および第1の免疫調節剤IVTチャンバの受圧側に流体接続すること
さらに、テンプレートIVTチャンバの流体接触側および第1の免疫調節剤IVTチャンバの流体接触側の体積は、1つまたは複数の圧力ポートから圧力を加えることによって調整され得る。
【請求項65】
方法であって、該方法は、以下を含む。
(iv)腫瘍特異的抗原をコードする第一のmRNA
(v)免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および
(vi)送達ビークル分子であって、該第1のmRNAおよび該第2のmRNAは、該送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、送達ビークル分子
を含むmRNAナノ粒子を注入する。
【請求項66】
方法であって、該方法は、以下を含む。
mRNAナノ粒子を、それを必要とする患者に注入することであり、該mRNAナノ粒子は以下を含む。
(iv)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと
(v)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および
(vi)送達ビークル分子であって、該第1のmRNAおよび該第2のmRNAは、該送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、送達ビークル分子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本特許は、「mRNA THERAPIES」と題し、2020年4月22日に出願された米国仮特許出願第63/014,074号の優先権を主張する。
【0002】
明細書で言及されているすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
mRNA ベースのワクチンには、DNA ワクチンのようなゲノム統合の危険性やペプチドワクチンのような抗原選択の制限なしに、強固な抗がん性免疫を誘発するという利点がある。しかし、従来のmRNAワクチンは、抗原提示細胞に効果的に取り込まれず、血漿や組織の酵素による分解からmRNA分子を十分に保護できない可能性がある。mRNAは抗体遺伝子導入のための新しいプラットフォームですが、安全で効果的な送達システムの必要性から、mRNAベースのmAbのさらなる開発は制限されている。
【0004】
さらに、mRNAは自然な翻訳後修飾を持つAbにしかならないため、mRNAによってコードされたAbでは、結合体や血清半減期を延ばすための修飾(例えばPEG化)は通常不可能であることを意味します。受動免疫の場合、非常に高い安全性プロファイルが要求される。過去数十年にわたり、細胞性RNAセンサーによる不要な免疫活性化やサイトカイン誘導を回避するため、IVT mRNAの様々な最適化が報告されている。しかしながら、IVT用mRNAは、ADA(抗薬物抗体)反応や一過性のサイトカインの出現により、mRNA薬剤の臨床応用の妨げとなっている。特に、mRNAを複数回投与しなければならない場合、補体活性化関連偽アレルギー(CARPA)の誘導につながるケースもある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載されるのは、これらの問題に対処し得る方法及び組成物(キットを含む)である。本明細書で提供されるのは、癌を治療するための方法、特に、mRNA(治療)ナノ粒子の製造方法、これらのmRNAナノ粒子を用いて患者を治療する方法(例えば、mRNAワクチンを含む)に対する例である。特に、本明細書に記載されるのは、それを必要とする患者に投与されるmRNA治療薬である。患者は、哺乳類、例えば、ヒトであり得る。患者は、本明細書に記載される腫瘍(またはいくつかの例では癌)のいずれかを有し、したがって、いくつかの例では、本明細書に記載される療法、または治療法を必要とし得る。mRNA療法は、1つ以上の患者特異的抗原をコードするmRNA及び1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを含むmRNA(治療)ナノ粒子を(患者又は患者の部位に)投与すること、並びに患者特異的mRNA療法を作るための装置及び方法、を含む。
【0006】
特に、本明細書に記載されるのは、mRNAワクチンを含むmRNA治療、これらのmRNA治療を用いて、本明細書では良性ではない腫瘍、または良性もしくは癌性であり得る腫瘍を指す、癌を治療する方法、およびこれらのmRNA治療を形成する方法である。例えば、本明細書に記載されるのは、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA治療ナノ粒子、および免疫調節剤をコードするmRNAの腫瘍内注射を含む方法であって、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAおよび免疫調節剤は、例えばアミノ脂質化ペプトイドなどの送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される方法である。本明細書のいくつかの例で提供されるように、注射は腫瘍内であってもよいが、他の投与経路もまた可能である。
【0007】
本明細書に記載される方法のいずれも、癌を治療する方法(例えば、腫瘍を縮小する、または場合によっては除去する)を含む、治療の方法であってもよい。
【0008】
明細書に記載の方法は、以下を含むmRNA治療ナノ粒子を注射すること:腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤をコードする1つ又は複数のmRNA;並びに1つ又は複数のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子。例えば、方法は、以下を含むことができる:腫瘍特異的抗原及び1つ以上の免疫調節剤をコードする1つ以上のmRNA;並びに1つ以上のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子。いくつかの例では、方法は、腫瘍特異的抗原をコードする1つ以上のmRNAと、1つ以上の免疫調節剤(ここで、少なくとも1つ以上の免疫調節剤はチェックポイント阻害剤である);及び1つ以上のmRNAをカプセル化する送達ビークル分子を含むmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内に注入することを含んでもよい。いくつかの例では、方法は:腫瘍特異的抗原をコードする1つ以上のmRNA、2つ以上の免疫調節剤;及び1つ以上のmRNAをカプセル化した送達ビークル分子を含むmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内に注入することであって、送達ビークル分子がアミノ脂質化ペプトイド送達ビークルを含むことを含み得る。例えば、本明細書に記載される方法は:腫瘍特異的抗原をコードするmRNA(例えば、mRNAワクチン)及び免疫調節剤をコードするmRNAを含むmRNA治療ナノ粒子を注射することであって、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び免疫調節剤が同じ送達ビヒクル分子でカプセル化されている、ことを含む方法。例えば、本方法は、以下を含むことができる:腫瘍特異的抗原をコードするmRNAおよび1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを含むmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内に注射することであって、mRNAワクチンおよび免疫調節剤は、同一のナノ粒子送達でカプセル化されている。
【0009】
方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA(例えば、mRNAワクチン)及び2つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを含むmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内に注射することであって、2つ以上の免疫調節剤の少なくとも1つがチェックポイント阻害剤であり、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び免疫調節剤をコードするmRNAが同じ送達ビークル分子でカプセル化されていることを更に含むことができる。
【0010】
いくつかの変形例では、方法は:腫瘍特異的抗原をコードするmRNA(例えば、mRNAワクチン)および2つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを含むmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内に注射することであって、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAおよび2つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAが、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルからなる送達ビヒクル分子でカプセル化されていること、を含む。
【0011】
これらの方法または組成物(例えば、mRNA治療)のいずれも、1つまたは複数の免疫調節剤siRNAを含む、1つまたは複数のsiRNAを含むことができる。例えば、方法は、以下を含むことができる:腫瘍特異的抗原をコードするmRNA、1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNA、及び1つ以上の免疫調節siRNAを含むmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内に注射することであって、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA、1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNA、及び1つ以上のsiRNAが同じ送達ビークル分子でカプセル化されていること。
【0012】
任意の適切な送達ビヒクルを使用することができる。例えば、送達ビヒクル分子は、脂質ベースのビヒクル(脂質ナノ粒子など)またはポリマーベースのナノ粒子であってもよい。特に、送達ビヒクル(DV)分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルであってよい。これらの方法のいずれにおいても、送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでいてもよい。一例では、送達ビヒクル分子は、少なくとも1つのペプトイドを含み、これは、本明細書に記載の任意のタイプのペプトイドであり得る。別の例では、送達ビヒクル分子は、1つより多いペプトイドからなり、これは、本明細書に記載される任意のタイプのペプトイドであり得る。
【0013】
腫瘍特異的抗原をコードするmRNAは、患者特異的抗原(又は複数の患者特異的抗原)をコードするmRNAから構成されていてもよい。例えば、mRNA治療薬(例えば、mRNAワクチン)は、複数の患者特異的抗原をコードするmRNAから構成されていてもよい。腫瘍特異的抗原をコードするmRNAは、共有腫瘍抗原をコードするmRNAを含んでもよい。
【0014】
免疫調節剤をコードするmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの組合せをコードする。例えば、免疫調節剤をコードするmRNAは、抗CTLA-4をコードする。免疫調節剤をコードするmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしていてもよい。免疫調節剤をコードするmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードしていてもよい。
【0015】
mRNA治療およびその製造または使用方法のいずれもが、1つまたは複数のアジュバントの追加を含んでもよい。いくつかの変形例では、送達ビヒクル分子は、追加のアジュバントと混合され、含まれ、及び/又はカプセル化されてもよい。いくつかの変形例では、追加のアジュバントは、治療用mRNA(例えば、腫瘍特異的mRNA及び1つ又は複数の免疫調節物質mRNA)をカプセル化したナノ粒子を含む溶液と組み合わせてもよい。例えば、これらのmRNA治療のいずれかは、免疫賦活剤をさらに含んでもよい。例えば、免疫賦活剤は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0016】
使用において、これらの方法のいずれかが、治療間に1~7日の待ち時間で、注射治療を1回以上繰り返すことを含んでもよい。前述のように、注射は、腫瘍内であってもよい(ただし、これに限定されない)。いくつかの変形例では、注射は、腫瘍内および/または他の手段(皮下など)の両方であってよい。
【0017】
腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと免疫調節剤をコードするmRNAは、単一のmRNA鎖上に存在してもよいし、別々のmRNA鎖上に存在してもよい。
【0018】
一般に、これらの方法は、腫瘍を治療する方法、例えば、腫瘍の大きさを縮小する方法であってもよい。腫瘍は、約10%と約100%の間、約10%と約90%の間、約10%と約80%の間、約10%と約70%の間、約10%と約60%の間、約10%と約50%の間、約10%と約40%の間、約10%より大きい、約15%より大きい、約20%、約25%、約30%、約40%より大きい、約50%、約60%より大きい、約70%、約75%など減少させることができる。
【0019】
任意の適切な癌または腫瘍は、本明細書に記載されるように、治療され得る。例えば、およびこれらの方法は、リンパ腫を治療する方法であってもよい。本明細書に記載される方法は、子宮頸がんを治療する方法であってもよい。
【0020】
また、本明細書では、(例えば、mRNAワクチンナノ粒子)としてのmRNA治療ナノ粒子を含むmRNA治療法も記載される。一般に、mRNA治療ナノ粒子は、以下を含むことができる:腫瘍特異的抗原および免疫調節剤をコードする1つ以上のmRNA;および送達ビークル分子であって、1つ以上のmRNAが送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、送達ビークル分子。mRNA治療ナノ粒子は、以下を含むことができる:腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA(例えば、mRNAワクチン);免疫調節剤をコードする第2のmRNA;および第1のmRNAおよび第2のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子。例えば、mRNAワクチンナノ粒子は、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA;チェックポイント阻害剤を含む免疫調節剤をコードする第2のmRNA;第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNA;および第1のmRNA、第2のmRNAおよび第3のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子を含んでもよい。
【0021】
mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA、チェックポイント阻害剤を含む免疫調節剤をコードする第2のmRNA、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNA、および第1のmRNA、第2のmRNAおよび第3のmRNAをカプセル化したアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルからなる送達ビヒクル分子を含むことができる。
【0022】
これらのmRNA治療ワクチンのいずれもが、免疫調節性siRNAを含む1つ以上のsiRNAを含んでもよい。
【0023】
上記のように、任意の適切な送達ビヒクル分子を使用することができる。例えば、送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルから構成されてもよい。
【0024】
第1のmRNAは、患者特異的な抗原をコードしていてもよい。例えば、第1のmRNAは、複数の患者特異的な抗原をコードしていてもよい。第1のmRNAは、共有腫瘍抗原をコードしていてもよい。第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの組み合わせをコードしていてもよい。第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしていてもよい。例えば、第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしてもよく、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:3のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、約60%、約65%、約70%、約75%。約80%、約85%、約90%、またはそれ以上)同一のポリヌクレオチド配列を有してよい。 いくつかの例において、第2のmRNAは、少なくとも約50%(例えば、,約60%、約65%、約70%、約75%。約80%、約85%、約90%、またはそれ以上)SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:4のポリペプチド配列と同一であるTNFSF14(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14 isoform1 precursor、またはLIGHT)を第2のmRNAはコードしていてもよい。例えば、第2のmRNAは、TNFSF14をコードしてもよく、SEQ ID NO:11のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、約60%、約65%、約70%、約75%。 約80%、約85%、約90%、またはそれ以上)同一であるポリヌクレオチド配列を有してよい。 いくつかの例において、第2のmRNAは、TNFSF14をコードして、少なくとも約50%(例えば、約80%、約85%、約90%、またはそれ以上)SEQ ID No:12のポリペプチド配列と同一であるTNFSF14をコードしてもよい。第3のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしていてもよい。第3のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしてもよく、SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:9のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%。 約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一のポリヌクレオチド配列を持ってもよい。 第3のmRNAは、少なくとも約50%(例えば、第3のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12をコードしていてもよい。例えば、第3のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12をコードしてもよく、SEQ ID NO: 5のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%。約80%、約85%、約90%、またはそれ以上)同一のポリヌクレオチド配列を持ってもよい。 第3のmRNAは、少なくとも約50%(例えば、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列と少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、またはそれ以上)同一である一本鎖インターロイキン-12をコードしてもよい。
【0025】
mRNA治療ナノ粒子は、mRNA治療ナノ粒子に既に含まれている他の免疫調節剤とは異なる、他の免疫調節剤をコードする追加のmRNAを含んでもよい。本明細書に記載されるように、3つ以上の異なる免疫調節mRNAが、これらのmRNA治療のいずれかにおいて腫瘍特異的mRNAと共に含まれてもよい。
【0026】
本明細書に記載されるmRNA治療ナノ粒子は、上記のように、1つ以上の免疫調節剤を含み、及び/又はそれと組み合わせてもよい。例えば、本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどの免疫賦活剤を含むおよび/またはそれと組み合わされてもよい。
【0027】
腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び免疫調節剤をコードする1つ又は複数のmRNAの全て又は一部は、単一のmRNA鎖の一部であってもよい。具体的には、これらのmRNA(又はその一部)は、例えば、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び免疫調節剤をコードするmRNA(複数可)が、単一の連続したmRNA内で腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤をコードするmRNA(複数可)の2以上のオープンリーディングフレームを組み合わせた単一のmRNAとなるように組み合わせてもよい。例えば、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA及び免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、第1のmRNA(腫瘍特異的抗原をコードするmRNA)及び第2のmRNA(免疫調節剤をコードするmRNA)のORFを含む単一のmRNA鎖であってよい。あるいは、第一のmRNAと第二のmRNAは、異なるmRNA鎖の一部であってもよい。
【0028】
また、本明細書に記載されるmRNA治療薬(例えば、mRNA治療薬ナノ粒子)の製造方法(例えば、作製方法、製造方法、合成方法など)についても説明する。例えば、方法(例えば、mRNA治療ナノ粒子の作製の)には、以下のものが含まれ得る。マイクロ流路デバイスにおいて腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのin vitro転写を行うこと;マイクロ流路デバイスにおいて第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのin vitro転写を行うこと;マイクロ流路デバイスにおいて第1及び第2のmRNAを精製すること;並びにマイクロ流路デバイスにおいて第1のmRNA及び第2のmRNAと送達ビークル分子とを結合してmRNA治療ナノ粒子を形成すること;が挙げられる。
【0029】
いくつかの例では、方法は:クローズドパス微小流路装置において腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのin vitro転写を行うこと;微小流路装置において第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのin vitro転写を行うこと;微小流路装置において第1及び第2のmRNAを精製すること;及び微小流路装置において第1のmRNA及び第2のmRNAと送達ビークル分子を組み合わせることを含む場合がある。
【0030】
mRNA治療用ナノ粒子の製造方法は、以下を含むことができる。クローズドパス型マイクロ流路デバイスにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うこと;第1のmRNAを精製すること;マイクロ流路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うこと;。マイクロ流路デバイスにおいて第2のmRNAを精製すること;およびマイクロ流路デバイスにおいて第1のmRNAおよび第2のmRNAの両方を送達ビヒクル分子とともにカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成することが含まれる。
【0031】
方法(例えば、mRNA治療ナノ粒子の製造)であって、該方法は:テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を、(例えば。クローズドパス)マイクロ流路デバイスの第1のチャンバーにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのin vitro転写を行い、第1のmRNAを精製し、マイクロ流路デバイスの第2のチャンバーにおいて第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのin vitro転写を行い;第2のmRNAをマイクロ流路デバイス内で精製すること。マイクロ流路デバイスの第3のチャンバーで第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAのin vitro転写を行い、マイクロ流路デバイスで第3のmRNAを精製し、そしてマイクロ流路デバイスで第1のmRNA、第2のmRNAおよび第3のmRNAを送達ビークル分子と共にカプセル化してmRNA処置ナノ粒子を形成する。
【0032】
第1、第2及び第3のmRNAを精製することは、マイクロ流路デバイス上の1つ又は複数の反応器において第1、第2又は第3のmRNAを精製することを含んでもよい。mRNAを精製するための1つ以上の反応器は、2本鎖mRNAを除去するために、1つ以上の反応器内にセルロースなどの2本鎖mRNA結合材料を含んでもよい。
マイクロ流路デバイスは、1つ以上のテンプレートから第1及び第2のmRNAのin vitro転写を行う工程、第1及び第2のmRNA(及び第3、第4等)を精製する工程、並びにmRNAを送達ビヒクル分子と結合する工程を自動的にかつ連続して行うように構成された閉経路システムを含んでいてよい。クローズドパスシステムは、mRNAのin vitro転写の実行、mRNAの精製、およびmRNAとデリバリービークル分子との結合を空気圧で制御してもよい。
【0033】
クローズドパスシステムは、マイクロ流路デバイス内の1つ以上の膜を偏向させることにより、テンプレートからの第1及び第2のmRNAのin vitro転写、第1及び第2のmRNAの精製、並びに第1及び第2のmRNAとデリバリービークル分子との結合を行うことを空気圧で制御してもよい。クローズドパスシステムは、テンプレートから治療用mRNAのin vitro転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルと結合させる工程を、5日未満で自動的にかつ連続的に行うことができる。本方法は、医療現場で実施することができる。mRNAと送達ビヒクルとを組み合わせることは、マイクロ流路デバイス内でmRNA治療用ナノ粒子組成物を透析することをさらに含んでもよい。
【0034】
これらの方法及びそれを実行するシステムのいずれもが、マイクロ流路デバイスにmRNA処理ナノ粒子を集中させることを含んでもよい。
【0035】
前述のように、送達ビヒクル分子は、両親媒性ナノ粒子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド)を含む、任意の適切な送達ビヒクルであってよい。腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAは、患者特異的抗原をコードするmRNAを構成していてもよい。第1のmRNAは、複数の患者特異的抗原をコードしていてもよい。腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAは、共有腫瘍抗原をコードするmRNAを含んでいてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの組み合わせをコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードしていてもよい。mRNA(例えば、第1のmRNA及び第2のmRNA、第3のmRNA等)を組み合わせることは、mRNA処理ナノ粒子がマイクロ流路デバイス内にある間に、CpGオリゴデオキシヌクレオチド等の免疫刺激剤をmRNA処理ナノ粒子に添加することを含んでもよい。
【0036】
本明細書では、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA治療ナノ粒子、および2つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを腫瘍内に注入することを含む方法であって、2つ以上の免疫調節剤の少なくとも1つがチェックポイント阻害剤であり、さらに、mRNAワクチンおよび免疫調節剤が、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークルなどの単一の送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、方法が記載されている。
【0037】
例えば、本明細書に記載されているのは、治療の方法である。これらの方法は、mRNAワクチン、特に癌の治療のための改善された効力を有する可能性がある。腫瘍特異的mRNAをコードするmRNAと免疫調節剤(複数可)をコードするmRNA(複数可)の両方を送達ビヒクルと共にカプセル化することにより、ワクチン接種の効能が向上する可能性がある。mRNAワクチンを腫瘍内に注射することが有益である場合がある。これらの方法のいずれもが、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAワクチン及び1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを腫瘍内に注射することを含み得る;腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAは、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークルと共にカプセル化されてもよい。
【0038】
治療(例えば、癌の治療)の方法は、腫瘍特異的抗原及び1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAをコードするmRNAワクチンを腫瘍内に注射することを含み得、ここで、mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍特異的mRNA抗原及び1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAの両方のための単一の送達ビヒクルと共にカプセル化されている。
【0039】
これらの方法および組成物は、mRNA治療ナノ粒子の一部として、腫瘍特異的抗原を含む指向性mRNAを含むことができ、腫瘍特異的抗原は、mRNA治療ナノ粒子が注入される腫瘍によって発現される。いくつかの変形例では、腫瘍特異的抗原は、mRNA治療ナノ粒子が注入されている腫瘍に特異的である。
【0040】
これらの方法および組成物のいずれにおいても、腫瘍特異的抗原は、1つまたは複数の患者特異的抗原をコードするmRNAであってもよい。患者特異的抗原は、異常なタンパク質(例えば、対応する体細胞タンパク質と比較して修飾されているもの、及び/又は非癌患者細胞と比較して異常に発現しているもの)を同定することによって同定されてもよい。いくつかの変形例では、mRNA治療ナノ粒子は、複数の患者特異的抗原をコードするmRNAを含んでいる。mRNA治療ナノ粒子は、共有腫瘍抗原をコードするmRNAを含んでもよい。例えば、いくつかのバリエーションでは、mRNAは、患者から分離されていない類似の腫瘍から同定される抗原(例えば、ペプチド)をコードしていてもよい。
【0041】
腫瘍特異的抗原のポリヌクレオチド配列は、患者(例えば、腫瘍内)に存在する配列と比較して、改変されているかもしれない。ポリヌクレオチド配列は、mRNAの発現を増強し、および/またはmRNAの分解を防止するように修飾されてもよい。いくつかの変形例では、腫瘍特異的抗原を含むmRNAは、免疫反応を誘発するために腫瘍特異的抗原(複数可)の提示を増強するように修飾されてもよい。例えば、腫瘍特異的抗原は、提示を強化するmRNAスキャフォールドの一部であってもよい。
【0042】
一般に、本明細書に記載のmRNA療法は、2つ以上の追加の免疫調節剤をコードするmRNAを有利に含むことができる;これらの免疫調節剤は、互いに異なっていてもよい。本明細書で使用されるように、免疫調節剤には、チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体、抗CTLA4等のチェックポイント阻害剤タンパク質)、免疫抑制アンタゴニスト、炎症促進剤、またはそれらの組合せを含むことができる。
【0043】
チェックポイント阻害剤の例には、1つ以上の免疫系チェックポイントタンパク質を標的として阻害するタンパク質、例えば、CTLA4、PD-1、及びPD-L1のうちの1つをより多く阻害するタンパク質が含まれる。いくつかの変形例では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4を阻害するタンパク質を指す。例えば、チェックポイント阻害剤タンパク質は、抗体又は抗体断片、例えば、抗原結合断片(Fab)、単鎖可変断片(scFv)、アプタマーなど、CTLA-4に結合するタンパク質を含んでもよい。抗CTLA-4タンパク質(例えば、抗体、scFvなど)の例は、本明細書に記載されている。免疫調節剤をコードするmRNAは、以下をコードする:抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブなど);抗CTLA-4抗体(トレメリムマブまたはイピリムマブなど);抗PD1抗体(ニボルマブまたはペムブロリズマブなど)またはそれらの組合せ。例えば、いくつかの変形例では、免疫調節剤をコードするmRNAは、抗CTLA-4結合剤をコードする。
【0044】
免疫抑制アンタゴニストは、免疫系の抑制のための経路を遮断し、免疫抑制を防止または制限するタンパク質を含んでもよい。例えば、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β-RII)に対するアンタゴニストは、免疫抑制アンタゴニストとして作用し得るサイトカインの1つである。炎症促進剤は、典型的には、炎症反応自体を誘導し、局所的な炎症を引き起こす可能性がある。例えば、IL-12は、炎症性分子である。したがって、本明細書で使用されるように、免疫調節剤(immunomodulator)は、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12)及び他のサイトカイン(インターフェロン、GM-CSF)、ケモカイン(CCL3、CCL26、CXCL-7)等を含んでもよい。
【0045】
特に、本明細書に記載されるのは、TGF-βアンタゴニスト(例えば、TGF-β RII)をコードするmRNAを含む方法及び組成物である。いくつかの変形例では、免疫調節剤をコードするmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードする。
【0046】
本明細書に記載されるこれらの方法及び組成物のいずれかにおいて、mRNA処理ナノ粒子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどの免疫シミュレータを含んでもよい。免疫刺激剤は、本明細書に記載されるような免疫調節剤とは別個のものであってよい。免疫刺激剤は、非タンパク質免疫刺激剤を指す場合があるが、本明細書で言及される免疫調節剤は、mRNAワクチンの一部としてmRNAとしてコード化されてもよいタンパク質(例えば、ペプチドベース)免疫調節剤である。
【0047】
腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤の両方に対するmRNAの使用は、腫瘍内に注入される場合、多数の利点を提供し得る。例えば、本明細書に記載されるように身体(腫瘍内を含む)に直接注入される場合のmRNAは、約3日の半減期を有し得るが、本明細書により詳細に記載されるように実質的かつ特定の免疫応答を誘発するのに十分な、かなりの量の転写を提供する。
【0048】
本明細書に記載される方法は、治療期間にわたって1回または2回以上の注射を含むことができる腫瘍内注射治療の一部として実行されてもよい。例えば、本明細書に記載の方法は、治療間に約1~約30日の待ち時間で、腫瘍内注射治療を1回以上(例えば、約1x、約2x、約3x、約4x、約5x、約6x、約7x、またはそれ以上)繰り返すことを含んでもよい(例えば、約1日と約3日の間、約1日と5日の間、約1日と7日の間、約1日と8日の間、約1日と10日の間、約1日と15日の間、約1日と20日の間、約1日と30日の間、など)待つことである。一例では、待機時間は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、又は約14日であってもよく;前述の範囲のいずれかの中の他の適切な値が可能である。1回の治療には、単一の腫瘍における1つ以上の部位への注射、または複数の腫瘍における1つ以上の部位への注射を含む、1つ以上の注射を含むことができる。例えば、本明細書に記載の方法は、主要な腫瘍への注射を含んでもよい。注入は、腫瘍の本体、及び/又は腫瘍を取り巻く組織への注入であってもよい。いくつかの変形例では、注入は、腫瘍に栄養を供給する血管(例えば、血管など)を介して行われる場合がある。
【0049】
本明細書に記載の方法は、以下の1つ以上に関連する腫瘍または前腫瘍病変を含む、任意の適切な腫瘍タイプへの注入を含むことができる。急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);副腎皮質癌;肛門癌;付録癌;アストロサイトーマ;非定型類縁体/ラブドイド腫瘍;皮膚の基底細胞癌;胆管癌;膀胱癌。骨癌(ユーイング肉腫および骨肉腫、悪性線維性組織球腫を含む);脳腫瘍;乳癌;気管支腫瘍(肺癌);バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍(消化器);心臓(心)腫瘍;頸癌;小児頭蓋外胚細胞腫瘍。小児横紋筋肉腫(軟部肉腫);小児血管腫瘍(軟部肉腫);胆管癌;脊索腫;慢性リンパ性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);慢性骨髄増殖性新生物;大腸癌;頭蓋咽頭腫。皮膚T細胞リンパ腫;乳管内癌(DCIS);胚性腫瘍、髄芽腫;子宮内膜癌(子宮体癌);上衣腫;食道癌;エステシオネーロブラストーマ(頭頸部癌);ユーイング肉腫(骨癌);ユーイング肉腫(骨癌)頭蓋外胚細胞腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍;眼球癌;卵管癌;骨繊維性組織球腫、悪性、および骨肉腫;胆嚢癌;胃(stomach)癌;消化管カルチノイド腫瘍。消化管間質腫瘍 (GIST) (軟部組織肉腫)/胚細胞腫瘍/妊娠性絨毛疾患/ヘアリーセル白血病/頭頸部がん/肝細胞 (肝臓) がん/組織球症、ランゲルハンス細胞/ホジキンリンパ腫/下咽頭癌。下咽頭癌(頭頸部癌);眼内黒色腫;膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍;カポジ肉腫(軟部組織肉腫);腎臓(腎細胞)癌;ランゲルハンス細胞組織球症。喉頭癌(頭頸部癌)、白血病、唇・口腔癌(頭頸部癌)、肝臓癌、肺癌(非小細胞癌、小細胞癌、胸膜肺芽腫、気管支腫瘍)、リンパ腫、骨悪性線維性組織球腫および骨肉腫。髄芽腫およびその他の中枢神経系発生腫瘍;黒色腫;メルケル細胞癌(皮膚癌);悪性中皮腫;転移性癌;原発不明転移性扁平上皮癌(頭頸部癌);口唇癌(頭頸部癌)。多発性内分泌腫瘍症候群;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍;菌状息肉腫(リンパ腫);骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物;骨髄性白血病、慢性(CML);骨髄性白血病、急性(AML);骨髄増殖性新生物、慢性鼻腔および副鼻腔がん(頭頸部がん);上咽頭がん;上咽頭がん(頭頸部がん);神経芽腫;非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口腔がん、口唇および口腔がんおよび中咽頭がん(頭頸部がん)。中咽頭がん;骨肉腫(骨がん);骨肉腫および骨悪性線維性組織球腫;卵巣がん;卵巣胚細胞腫瘍;膵臓がん;膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍);乳頭腫症(小児喉頭);パラガングリオーマ副鼻腔がん;陰茎がん;咽頭がん(頭頸部がん);褐色細胞腫;下垂体腫瘍;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽細胞腫(肺がん);中枢神経系原発リンパ腫。原発性腹膜癌;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;網膜芽細胞腫;小児横紋筋肉腫(軟部肉腫);唾液腺癌(頭頸部癌);肉腫;Sezary症候群(リンパ腫);皮膚癌;小細胞肺癌。小腸がん;軟部組織肉腫;皮膚の扁平上皮がん-皮膚がんを参照;潜伏性原発を有する扁平上皮がん、転移性(頭頸部がん);胃(胃)がん;精巣がん;咽頭がん(頭頸部がん)。胸腺腫および胸腺癌;甲状腺癌;気管気管支腫瘍(肺癌);腎盂尿管移行細胞癌(腎臓(腎細胞)癌);尿道癌;子宮癌、子宮内膜癌;子宮肉腫;膣癌;および外陰部癌。
【0050】
例えば、本明細書に記載される方法は、リンパ腫を治療するための方法であってもよい。いくつかの変形例では、本明細書に記載される方法は、前癌の適応症(例えば、子宮頸部異形成)を含む子宮頸癌を治療するために使用されてもよい。
【0051】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、方法は、単一の送達ビークル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークル)によって腫瘍特異的抗原をコードするmRNAとともにカプセル化された1つまたは複数の免疫調節剤の両方をコードするmRNA治療ナノ粒子を注入することを含んでもよい。一例では、mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍内に注入されてもよい;代替的または追加的に、mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍の近くまたは腫瘍供給血管に、全身的または局所的に注入されてもよい。全身注射は、静脈内注射、皮下注射、胸腔内注射、筋肉内注射などを含んでもよい。
【0052】
一般に、本明細書に記載される送達ビヒクルは、例えば、両親媒性ナノ粒子を含む、任意の適切な送達ビヒクルであってよい。特に、両親媒性ナノ粒子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを構成してもよい。例えば、これらの送達ビヒクルは、循環中にmRNAカルゴのパッケージング及び保護を提供し、免疫認識を回避し、細胞への取り込み及び放出を促進し得る脂質含有両親媒性送達ビヒクルであってもよい。これらの送達ビヒクルの例は、「LIPID NANOPARTICLE FORMULATIONS COMPRISING LIPIDATED CATIONIC PEPTIDE COMPOUNDS FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題する国際特許出願、PCT/US19/53661、および9月27日に出願された、PCT/US19.2019、および「TERTIARY AMINO LIPIDATED CATIONIC PEPTIDES FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題され、2019年9月27日に出願された国際特許出願PCT/US19/53655において、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。複数のタイプの送達ビヒクル分子を使用してもよく、各タイプは、本明細書に記載の1つまたは複数の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAおよび1つまたは複数の免疫調節剤をコードするmRNAの両方を搭載してよい(例えば、カプセル化してよいなど)。
【0053】
ペプトイドベースの脂質製剤は、N-置換ペプチド(すなわちペプトイド)骨格上にカチオン性基および脂質部分の両方を組み込むことができる。送達ビヒクル成分は、商業的に入手可能な単分散の、完全に特性化可能な化学的実体であってもよい。デリバリービークル(DV)成分は、制御された比率でmRNAと比較的迅速に混合される。DV成分が水溶液にさらされ、カチオン性(+)脂質とアニオン性(-)mRNAの間で相互作用することにより、粒子形成が引き起こされる可能性がある。このプロセスは、マイクロ流体デバイスを使用して実施することができます(粒子サイズおよび均一性を制御するため)。例えば、mRNAは、そのカチオン電荷の原因である送達ビヒクル上の塩基性官能基(アミンなど)の完全なプロトン化を保証するのに役立ち得る酸性緩衝液(pH約3~5)中に溶解されてもよい。送達ビヒクルは、水性混和性有機溶媒(例えば、エタノール)に溶解してもよく、これは、水性貨物溶液への曝露時にナノサイズ粒子の形成を促進する。混合直後に、溶液のpHは、中性緩衝液によって安定化されてもよい。得られた製剤は、約4℃~約8℃で数週間またはそれ以上、明らかな機能低下なく保存することができる。あるいは、製剤化工程は、ジャストインタイムで、ポイントオブケアで行うことができる。
【0054】
本開示は、癌の治療のためのmRNA療法を提供する。本開示のmRNA療法は、技術が腫瘍特異的抗原mRNAと免疫調節剤ポリペプチド(例えば、チェックポイント阻害剤、炎症促進剤および免疫抑制の拮抗剤などを含む、免疫腫瘍学(「IO」)において有用な腫瘍関連ポリペプチド)をコードする1以上のmRNAの両方を送達し、標的細胞内の機能的タンパク質のデノボ合成を可能にするので、癌の治療に特に適している、例えば、以下が挙げられる。g.,腫瘍の標的細胞内でこれらの治療用mRNAは、不要な免疫活性化(例えば、外来核酸のインビボ導入に関連する自然免疫反応)を最小限に抑え、タンパク質へのmRNAの翻訳効率を最適化するために、修飾ヌクレオチドを有していてもよい。本開示の例示的な態様は、自然免疫反応を低減するためのヌクレオチド修飾と、配列最適化、特に、タンパク質発現を高めるための免疫調節ポリペプチドをコードする治療用mRNAのオープンリーディングフレーム(ORF)内との組み合わせを有する治療用mRNAを特徴としている。
【0055】
本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)送達システム、特に、単一の送達ビークル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークル)内にカプセル化された、腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドの両方をコードするmRNA(複数可)を送達することを特徴としている。例えば、本明細書に記載のmRNA治療技術は、腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAを腫瘍にアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルに送達することを特徴とする。本明細書に記載の製剤は、in vivo投与に関連する免疫原性が低下している可能性がある。
【0056】
本開示は、癌を治療するための方法及び組成物、特に、免疫治療方法及び組成物を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、腫瘍特異的抗原mRNAおよび免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つまたは複数のmRNAの両方を使用して、癌を治療するための方法および組成物を特徴とする。
【0057】
いくつかの態様において、本開示は、腫瘍特異的抗原mRNAおよび免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAを、例えば、送達ビークル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークル)と共にカプセル化したものを腫瘍内に投与することによって、それを必要としている対象において腫瘍のサイズを縮小または減少させる方法または腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。
【0058】
腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ又は複数のmRNAは、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドを含んでいてもよい。いくつかの例では、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
いくつかの態様において、本組成物は、別の癌治療と組み合わせて、それを必要とする被験者に投与される。腫瘍特異的抗原mRNAおよび免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAは、少なくとも部分的に、(a)樹状細胞のプライミング(b)樹状細胞の成熟促進;(c)抗原提示細胞サイトカインおよび/またはケモカイン産生促進(d)Th17細胞の拡大または維持;(e)Th1および/またはTh9分化促進;ならびに(f)(a)~(f)の任意の組み合わせ、よりなる群から選ばれる1以上の作用を有していてよい。
【0060】
一般に、本明細書に記載されるmRNAナノ粒子のいずれかの治療的使用は、少なくともmRNAナノ粒子の使用を含む、mRNA治療ナノ粒子を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。
【0061】
本開示は、同じナノ粒子(例えば、腫瘍特異的抗原mRNAおよび免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つまたは複数のmRNA)にカプセル化された前記または先行する組成物のいずれかの使用を提供することができる(例えば。脂質ナノ粒子、例えばアミノ脂質化ペプトイド送達ビークル)、個体における癌の治療または進行を遅らせるための医薬の製造において、本明細書に記載される、医薬が、組成物または脂質ナノ粒子および任意の薬学的に許容できる担体を含み、治療が、医薬の投与、および任意の薬学的に許容できる担体を含んでなる、医薬の製造である。
【0062】
いくつかの態様において、本開示は、腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAの両方が送達ビヒクル分子(例えば、本明細書に記載のアミノ脂質化ペプトイド送達ビークル)、および任意選択の薬学的に許容される担体、ならびに個体における癌の治療または進行を遅らせるための組成物の腫瘍内投与(例えば、注射)に関する指示を含むパッケージ挿入物である。いくつかの態様において、添付文書は、個体における癌の進行を治療または遅延させるための、別の部位への注射(例えば、全身注射)と組み合わせた腫瘍内注射による組成物の投与に関する説明書をさらに含む。
【0063】
さらに他の態様において、本開示は、本明細書に記載される前述のまたは先行する組成物のいずれかを含む医薬と、任意選択の薬学的に許容される担体とを含むキット、および個体における癌の治療または進行を遅らせるための、医薬の単独または第2の(例えば全身)部位における注射と組み合わせた腫瘍内投与に関する指示を含むパッケージ挿入物を提供する。いくつかの態様において、キットは、個体における癌の進行を治療または遅延させるための医薬の投与に関する指示を含むパッケージ挿入物をさらに含む。
【0064】
本開示の他の態様は、単一の脂質ナノ粒子(例えば。)中に一緒にカプセル化された、前述または先行する腫瘍特異的抗原mRNAのいずれか、および免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つまたは複数のmRNAを含む組成物に関するものである。アミノ脂質化ペプトイド送達ビークル)、および個体における癌の治療または進行の遅延に使用するための任意選択の薬学的に許容される担体を含み、治療は、腫瘍特異的抗原mRNAおよび免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つまたは複数のmRNAを同じ脂質ナノ粒子中に、第2の組成物と組み合わせて腫瘍内投与を含み、第2の組成物は免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つまたは複数のmRNAおよび送達ビークル分子(例えば、。つまたは複数のアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル)を含む。免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAは、チェックポイント阻害剤ポリペプチド(例えば、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体、抗CTLA4抗体、またはそれらの組み合わせ)、および任意選択の薬学的に許容される担体であってよい。いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、PD1、PD-L1、CTLA4、またはそれらの組合せを阻害する。一例では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、抗体またはその抗体をコードするポリヌクレオチドである。一例では、抗体は、CTLA4と特異的に結合する抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片、PD1と特異的に結合する抗PD 1抗体又はその抗原結合断片、PD-L1と特異的に結合する抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片、及びこれらの組合せである。一例において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブである。一例では、抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブ又はイピリムマブである。一例では、抗PD1抗体は、ニボルマブ又はペムブロリズマブである。mRNA(例えば、腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ又は複数のmRNA)は、少なくとも1つの化学修飾を含む。一例では、化学修飾は、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、2-チオウリジン、4′-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1デアザプソイドウリジン、2-チオ-1-メチルプソイドウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロスイドウリジンからなる群から選択され、さらに、この化学修飾は、2-ジヒドロヒドロウリジンと、この化学修飾に関連する2-メチルシトシンと、2.2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジンおよび2´-O-メチルウリジンの5種類のウリジンである。いくつかの態様において、mRNAは少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドを含み、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、N1-メチルプソイドウリジンである。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、完全に修飾されたN1-メチルプソイドウリジンmRNAである。追加の化学修飾は本明細書に開示されている。
【0065】
組成物は、脂質ナノ粒子担体、特にアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に製剤化されてもよい。例えば、本明細書に記載の腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAを含む組成物は、組成物内の全てのポリヌクレオチドが同じ脂質ナノ粒子担体によって運ばれるように製剤化されてもよい。腫瘍特異的抗原mRNAと免疫調節剤ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAの比率は、例えば、約1:1(例えば、ほぼ等モル)となるように選択してもよいし、免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAに対する腫瘍特異的抗原mRNAの過剰を含んでもよい(例えば、約1:1以上約1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1等、腫瘍特異的抗原のmRNA:免疫調節剤のポリペプチドをコードするmRNA)間における、免疫調節剤のmRNAを含む。あるいは、組成物は、腫瘍特異的抗原mRNAに対して免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAを過剰に含んでもよい(例えば。免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNA:腫瘍特異的抗原mRNAの>約1:1と約1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1等の間)であってもよい。複数の免疫調節剤ポリペプチド(例えば、免疫調節剤ポリペプチドをコードする複数のmRNA)が使用されるバリエーションにおいて、全ての成分は、ほぼ等モル(例えば、約1:1:1、又は約1:1:1等。腫瘍特異的抗原mRNAに対して)、または1つ以上の成分が過剰であってもよい(例えば、腫瘍特異的抗原mRNAが過剰であってもよく、代替的に、1つ以上の免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAが過剰であってもよい)。
【0066】
別の態様では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子組成物のいずれかを対象に投与することを含む、それを必要とする対象における腫瘍のサイズを縮小または減少させる方法または腫瘍成長を阻害する方法を含む。一般に、組成物は、腫瘍内に投与される。別の例では、組成物(または1つ以上の免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAおよびアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを含む第2の組成物)は、局所的に(例えば、腫瘍が成長している領域に、例えば腹腔内の腫瘍に対して組成物は腹腔内に投与され得る)、および/または全身に投与され得る。一例では、腫瘍はリンパ腫である。いくつかの他の例では、腫瘍は肝細胞癌である。別の例では、腫瘍は、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、または播種性胃腫瘍である。治療のための他の適切な腫瘍及び癌は、本明細書に開示されている。
【0067】
例えば、本明細書に記載されるのは方法であり、その方法は、(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA;(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNA;及び(iii)送達ビヒクル分子を含むmRNAナノ粒子を腫瘍内に注射することを含み、ここで第1のmRNA及び第2のmRNAは送達ビンヒル分子により一緒にカプセル化される。
【0068】
腫瘍特異的抗原は、ウイルス抗原を含んでいてもよい。ウイルス抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、またはそれらの任意の組み合わせと関連してもよい。腫瘍特異的抗原は、ネオエピトープを含んでいてもよい。腫瘍特異的抗原は、患者特異的抗原を含んでいてもよい。腫瘍特異的抗原は、複数の患者特異的抗原から構成されてもよい。腫瘍特異的抗原は、共有腫瘍抗原から構成されてもよい。
【0069】
送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでもよい。mRNAナノ粒子は、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAをさらに含んでもよい。mRNAナノ粒子は、免疫調節性siRNAをさらに含んでもよい。
【0070】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの任意の組合せをコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、炎症誘発性サイトカインをコードしていてもよい。炎症性サイトカインは、(IL)、IL-1、IL-2、IL-12、IL-17、IL-18、IFN-γ、及びTNF-αのうちの1つであってもよい。炎症性サイトカインは、インターロイキン-12(IL-12)であってもよい。
免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしていてもよい。
【0071】
mRNAナノ粒子は、免疫賦活剤をさらに含んでもよい。mRNAナノ粒子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む免疫賦活剤をさらに含んでもよい。これらの方法のいずれかが、注射の間に待ち時間を設けて腫瘍内注射を1回以上繰り返すことをさらに含み、待ち時間が約1日~約14日である場合がある。
【0072】
腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、単一のmRNA鎖上に存在してもよい。本方法は、リンパ腫を有する患者を治療する方法であってもよい。本方法は、子宮頸癌を有する患者を治療する方法であってもよい。
【0073】
本明細書には、方法も記載されており、その方法は、mRNAナノ粒子をそれを必要とする患者に腫瘍内注入することであって、mRNAナノ粒子が、(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNA;(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNA;及び(iii)送達ビークル分子を含み、第1のmRNA及び第2のmRNAが送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、ことを含む。
【0074】
また、本明細書では、mRNA治療ナノ粒子であって、ナノ粒子は、(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNA;及び(iii)送達ビークル分子を含み、第1のmRNA及び第2のmRNAが送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される、ナノ粒子である。
【0075】
mRNA治療ナノ粒子であって、ナノ粒子は、(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA;(ii)SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である免疫調節剤をコードする第2のmRNA;及び(iii)アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルからなる送達ビヒクル分子を含んでよく、ここで第1のmRNA及び第2のmRNAは送達ビヒクル分子により一緒にカプセル化される。
【0076】
いくつかの例では、mRNA治療ナノ粒子であって、ナノ粒子は、(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNA(ii)以下を含む免疫調節剤をコードする第2のmRNA:炎症性サイトカイン;および(iii)送達ビヒクル分子を含んでよく、ここで第1のmRNAおよび第2のmRNAは送達ビヒクル分子によって一緒にカプセル化される。
【0077】
送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでいてもよい。第1のmRNAは、患者特異的な抗原をコードしていてもよい。第1のmRNAは、複数の患者特異的抗原をコードしていてもよい。第1のmRNAは、共有腫瘍抗原をコードしていてもよい。第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの任意の組み合わせをコードしていてもよい。第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしていてもよい。第2のmRNAは、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO. 3のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である抗CTLA-4をコードしていてもよい。
【0078】
これらのいずれかのmRNA処理ナノ粒子は、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードする第3のmRNAをさらに含んでいてもよい。
【0079】
mRNA治療ナノ粒子は、SEQ ID NO. 7またはSEQ ID NO. 9のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるTGF-βアンタゴニストをコードする第3mRNAをさらに含んでもよい。 第2mRNAは、SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるインターロイキン12をコードしてもよい。 mRNA治療ナノ粒子は免疫賦活剤(immunostimulator)をさらに含んでもよい。免疫賦活剤は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含んでもよい。
【0080】
いずれのmRNA処理ナノ粒子においても、腫瘍特異的抗原および免疫調節剤のそれぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)は、単一のmRNA鎖の一部であってよい。腫瘍特異的抗原および免疫調節剤のそれぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)は、異なるmRNA鎖の一部であってもよい。
【0081】
また、本明細書に記載されるのは、方法であり、該方法は、以下を含む。マイクロ流路デバイスにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うこと、第1のmRNAを精製すること、マイクロ流路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うこと、マイクロ流路デバイス内で第2のmRNAを精製すること、およびマイクロ流路デバイス内で第1のmRNAおよび第2のmRNAを送達ビヒクル分子と一緒にカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成することが含まれる。
【0082】
例えば、本明細書に記載されるのは方法であり、該方法は以下を含む。マイクロ流路デバイスの第1のチャンバーにおいてテンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うこと、第1のmRNAを精製すること、マイクロ流路デバイスの第2のチャンバーにおいて第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うこと、第2のmRNAをマイクロ流路デバイス内で精製することを含む。マイクロ流路デバイスの第3のチャンバーで第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAのin vitro転写を行い、マイクロ流路デバイスで第3のmRNAを精製し、マイクロ流路デバイスで第1のmRNA、第2のmRNAおよび第3のmRNAを送達ビークル分子とともにカプセル化してmRNA処置ナノ粒子を形成すること。
第1mRNAの精製、第2mRNAの精製及び第3mRNAの精製のそれぞれは、マイクロ流路デバイス上の1つ以上のリアクターで精製することをさらに含んでもよい。
【0083】
1つ以上の反応器内で精製することは、1つ以上の反応器内でセルロースを用いて二本鎖mRNAを除去することを含んでもよい。マイクロ流路デバイスは、第1mRNA及び第2mRNAの各々のin vitro転写を自動的かつ連続的に行い、第1mRNA及び第2mRNAを精製し、第1mRNA及び第2mRNAを送達ビークル分子に結合するクローズドパスシステムから構成されても良い。クローズドパスシステムは、第1及び第2のmRNAの体外転写、第1及び第2のmRNAの精製、並びに第1及び第2のmRNAとデリバリービークル分子との結合を行うことを空気圧で制御してもよい。
【0084】
クローズドパスシステムは、マイクロ流路デバイス内の1つ以上の膜を偏向させることにより、第1mRNAおよび第2mRNAのin vitro転写の実行、第1mRNAおよび第2mRNAの精製、ならびに第1mRNAおよび第2mRNAと送達ビークル分子との結合を空気圧で制御してもよい。
【0085】
クローズドパスシステムは、治療用mRNAのin vitro転写、治療用mRNAの精製、およびmRNAと送達ビヒクルの結合を、まとめて約5日未満で自動的に連続的に行うことができる。本方法は、医療現場において実施することができる。mRNAと送達ビヒクルとを組み合わせることは、マイクロ流路装置内でmRNA治療用ナノ粒子を透析することをさらに含んでもよい。これらの方法のいずれかが、マイクロ流体経路デバイス上でmRNA治療ナノ粒子を濃縮することを含んでもよい。
【0086】
送達ビヒクル分子は、両親媒性分子を含んでいてもよい。両親媒性分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでもよい。第1のmRNAは、患者特異的抗原をコードするmRNAからなる腫瘍特異的抗原をコードしていてもよい。mRNAは、複数の患者特異的抗原をコードしていてもよい。第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、またはそれらの任意の組み合わせをコードする免疫調節剤をコードしていてもよい。第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードする免疫調節剤をコードしていてもよい。第2のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードする免疫調節剤をコードしていてもよい。第2のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコード化する免疫調節剤をコード化してもよい。
【0087】
これらの方法のいずれかが、第1のmRNAと第2のmRNAとを組み合わせることは、マイクロ流路デバイス中に免疫刺激剤を加えることを含んでいてもよい。免疫賦活剤は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0088】
また、本明細書では、以下のものを含むマイクロ流体パスデバイスを説明する。第1の表面と第2の表面との間に挟まれた弾性層;第1の表面と第2の表面との間に形成されたテンプレート体外転写(IVT)チャンバーであって、弾性層の一部がテンプレートIVTチャンバーを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側に分割し、テンプレートIVTチャンバーの流体接触側が腫瘍特異的抗原をコードするmRNAテンプレートのソースと流体連通しているテンプレートIVTチャンバー;を含み、テンプレートが第1の表面における圧力受容側と第1の表面における圧力接触側とに分かれておりテンプレートIVTチャンバーの流体接触面と流体連通している第1の反応器であって、二本鎖mRNAを除去するために第1の反応器内に二本鎖mRNA結合材を含む第1の反応器と第1の反応器と流体連通し、第1の免疫調節物質mRNAの供給源と、送達ビークル分子の供給源と結合し、第1のmRNA及び第2のmRNAを送達ビークル分子と一緒にカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成する送達ビークルポートと、を有する混合アセンブリと複数の圧力チャンネルが、それぞれ1つ以上の圧力ポートから、第1の表面および弾性層を通って第2の表面へと延び、弾性層を通って第1の表面へと戻り、複数の圧力チャンネルの各圧力チャンネルがテンプレートIVTチャンバの圧力受容側と流体連通し、さらに、テンプレートIVTチャンバの液体接触側の容積が、1つ以上の圧力ポートから圧力を加えてマイクロ流路デバイスを通して流体を駆動してmRNA治療ナノ粒子を形成することによって調節されうる。
【0089】
また、本明細書では、以下のものを含むマイクロ流体パスデバイスを説明する。第1の表面と第2の表面との間に挟まれた弾性層;第1の表面と第2の表面との間に形成されたテンプレート体外転写(IVT)チャンバーであって、弾性層の一部がテンプレートIVTチャンバーを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側に分割し、テンプレートIVTチャンバーの流体接触側が腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAテンプレートのソースと流体連通しているテンプレートIVTチャンバー;。テンプレートIVTチャンバーの流体接触面と流体連通している第1の反応器であって、二本鎖mRNAを除去するために第1の反応器内に二本鎖mRNA結合材を含む第1の反応器と第1の表面と第2の表面との間に形成された第1の免疫調節剤IVTチャンバーであって、弾性層の一部が、第1の免疫調節剤IVTチャンバーを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側とに分割し、第1の免疫調節剤IVTチャンバーの流体接触側が第1の免疫調節剤をコードする第1の免疫調節剤テンプレートのソースと流体連通しており、第1の免疫調節剤テンプレートは第1の免疫調節剤をコードするテンプレートと流体連通しており、第1の免疫調節剤は第1の免疫調節剤をコードするテンプレートのソースと連通しており、第1の免疫調節剤は第2の表面における圧力を受容する側と第1の表面における圧力を受容する側に分割され、第1の免疫調節剤は第1の免疫調節剤をコードするテンプレートのソースと連通しており、第2の免疫剤は第2の表面における圧力と接触する側と連通している。第1の免疫調節剤IVTチャンバーの流体接触面と流体連通している第2の反応器であって、第2の反応器は、二本鎖mRNAを除去するために第1の反応器内に二本鎖mRNA結合材を含む第2の反応器;第1の反応器及び第2の反応器と流体連通している第1の混合チャンバー;を備える。第1の混合チャンバーの出力と流体連通している第2の混合キャンバーと、送達ビークル分子の供給源と結合して、第1のmRNA及び第2のmRNAを送達ビークル分子と一緒にカプセル化してmRNA処理ナノ粒子を形成するための送達ビークルポートおよび複数の圧力チャネルが、それぞれ1つまたは複数の圧力ポートから、第1の表面および弾性層を通って第2の表面へと延び、弾性層を通って第1の表面へと戻り、複数の圧力チャネルのそれぞれの圧力チャネルが、テンプレートIVTチャンバの受圧側および第1の免疫調節剤IVTチャンバと流体連通しており、さらに、1つまたは複数の圧力ポートから圧力をかけることによりテンプレートIVTチャンバの受圧側および第1の免疫調節剤IVTチャンバの受圧側の体積が調節されてもよいこと。
【0090】
また、本明細書には、方法が記載されており、その方法は(ii)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA(iii)免疫調節剤をコードする第2のmRNAおよび(iv)送達ビークル分子を含むmRNAナノ粒子を注射することを含み、ここで第1のmRNAおよび第2のmRNAは送達ビークル分子によって一緒にカプセル化される。
【0091】
例えば、方法は以下を含むことができるmRNAナノ粒子を、それを必要とする患者に注射することであり、mRNAナノ粒子は、(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNA(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNAおよび(iii)送達ビヒクル分子を含み、第1のmRNAおよび第2のmRNAが送達ビヒクル分子によって一緒にカプセル化されることである。注射は、腫瘍内注射に限定されず、例えば、筋肉内注射を含んでもよい。
【0092】
前述の概念及び以下でより詳細に議論される追加の概念の全ての組み合わせ(ただし、そのような概念は相互に矛盾しない)は、本明細書に開示される発明的主題の一部であることが企図され、本明細書に記載される利益を達成するために採用され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
本明細書に記載された方法および装置の特徴および利点のより良い理解は、例示的な実施例を示す以下の詳細な説明、およびその添付図面を参照することによって得られるであろう。
【
図1】
図1Aは、本明細書に記載されるmRNA治療ナノ粒子の一部として使用され得るmRNAの一例に関する模式図である。
図1Bは、本明細書に記載のmRNA処理ナノ粒子を形成する方法の一例を模式的に示す図である。
図1Cは、腫瘍特異的抗原及び複数の免疫調節因子mRNAを包含する複数のmRNAオープンリーディングフレームを含むmRNAの一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、癌の治療における本明細書に記載のmRNAワクチンの改善された有効性を示すグラフである。合成マウス癌モデルは、本明細書に示されるように処置された。
図2は、陰性対照(G1)、免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAの腫瘍内注射と同時のアミノ脂質化ペプトイド送達ビークル中の腫瘍特異的抗原のmRNAの皮下注射(G5)についてのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。腫瘍特異的抗原のmRNAと免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAをアミノリピッド化ペプチド送達ビヒクル中に含むmRNAワクチンの腫瘍内注入(G6)、腫瘍特異的抗原のmRNAと2種類の免疫調節剤(抗CTLA-4およびTGF-β)をコードするmRNAをアミノリピッド化ペプチド送達ビン中に含むmRNAワクチン(G7)の腫瘍内注入。
【
図3】
図3は、癌の治療における、本明細書に記載される別のmRNAワクチンの改善された効力を示すグラフである。
図3は、マウス腫瘍モデルについて、陰性対照(G2)、アミノ脂質化ペプトイド送達における腫瘍特異的抗原(m4)のmRNAの皮下注射(G7)、アミノ脂質化ペプトイド送達車両における腫瘍特異的抗原(m4)のmRNA及び免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAを含むmRNAワクチンの腫瘍内注射(G9)を比較して、カプラン・マイヤー生存曲線(Kaplan Meier Survival Curve)を示す。および、腫瘍特異抗原(m4)のmRNAと3種類の免疫調節剤(抗CTLA-4およびTGF-β、一本鎖IL-12、G10)をコードするmRNAを含むmRNAワクチンを、アミノリピッド化ペプチド送達ビヒクル中で腫瘍内に注射することである。
【
図4】
図4は、マウス癌モデルの治療における本明細書に記載のmRNAワクチンの改善された有効性を示す別の例であり、対照(1)と、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークル中の腫瘍特異抗原のmRNA及び免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAを含むmRNAワクチン(6)の腫瘍内注入とを比較する。
【
図5】
図5は、本明細書に記載のmRNAワクチン接種の改善された効力を示し、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークル中の腫瘍特異抗原のmRNA及び免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAを含むmRNAワクチンの腫瘍内注入(陰性対照と比較、n=6)のリンパ腫動物モデルにおける生存の改善における効力を示している。
【
図6】
図6は、リンパ腫動物モデルにおけるmRNAワクチンの皮下注射の生存率に対する効果(陰性対照との比較)を示すグラフである。アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを有するmRNAワクチン(免疫調節剤をコードするmRNAを含むG3)の皮下注射は、対照動物と比較して、腫瘍体積の減少(約50%)を示した。
【
図7】
図7は、リンパ腫動物モデルにおけるmRNAワクチン(
図6で用いたものと同様のもの)の腫瘍内注射の生存率に対する効果(陰性対照との比較)を示すグラフである。アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを用いたmRNAワクチン(腫瘍特異的抗原をコードするmRNAを含むG7、および2つの免疫調節剤、抗CTLA-4およびTGF-β-PLD1)の皮下注射は、対照動物と比較して腫瘍体積の大きな減少(約80%より大きい)を示した。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、本明細書に記載のmRNAワクチン接種後の長期生存者である被験者(マウス動物モデルから)が、強力かつ持続的なCD8+エフェクターT細胞癌免疫を発現し、さらなる腫瘍チャレンジに対して耐性があることを示す図である。
図8Aは、3x10
5 脾臓細胞/ウェルと、刺激剤として使用した腫瘍細胞(EG.7、1x10
6 )で実行したEliSpotアッセイの例を示している。PMA/Ionomycin は非特異的刺激剤として使用した。細胞は、分析前に18時間インキュベートされた。
図8Bは、腫瘍抗原に特異的なCD8+エフェクターT細胞をカウントする、このアッセイの定量化を示すグラフである。OTI(陽性対照)は、陰性対照(#596)および2匹の生存マウス(マウス#662およびマウス#670)と比較される。
【
図9】
図9は、本明細書に記載の、リンパ腫腫瘍モデルで試験した試験群を示す表(表1)である。
【
図10】
図10A~10Gは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を11日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに筋肉内注射した結果を示す図である。
【
図11】
図11A~11Fは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を28日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに筋肉内注射した結果を示す図である。
【
図12】
図12A~12Gは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を11日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに腫瘍内注入した結果を示す図である。
【
図13】
図13A~13Fは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を28日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに腫瘍内注入した結果を示す図である。
【
図14】
図14は、異なるナノ粒子組成物を筋肉内注射したマウスリンパ腫腫瘍モデルにおける生存確率を示すグラフである。
【
図15】
図15は、異なるナノ粒子組成物を腫瘍内注入したマウスリンパ腫腫瘍モデルにおける生存の確率を示すグラフである。
【
図16】
図16は、コントロール(未処理)PBS溶液、または腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)を筋肉内注射したマウスのリンパ腫腫瘍の腫瘍体積の経時変化を示す図である。
【
図17】
図17は、対照液(PBS)、または腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAの両方を含むナノ粒子組成物を筋肉内注射したマウスにおけるリンパ腫腫瘍の経時的な腫瘍体積の変化を示す図である。
【
図18】
図18は、腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)を筋肉内注射したマウス、または免疫シミュレーター(CpG)単独(腫瘍抗原mRNAを含まない)で注射したマウスのリンパ腫腫瘍の経時的な腫瘍体積の変化を示す。
【
図19】
図19は、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫調節物質(IL-12)mRNAを同じ送達ビヒクルに加えたナノ粒子組成物、または免疫調節物質(IL-12)mRNA単独(腫瘍抗原mRNAを含まない)を筋肉内注射したマウスのリンパ腫腫瘍の経時変化を示す図である。
【
図20】
図20は、腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)のナノ粒子組成物、または免疫シミュレーター(CpG)単独(腫瘍抗原mRNAを含まない)を筋肉内注射したマウスのリンパ腫腫瘍の経時変化を示す図である。
【
図21】
図21は、腫瘍抗原と免疫調節物質(例えば、IL-12)のナノ粒子組成物を腫瘍内注入して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注入しなかった同じ動物からの腫瘍(「遠位」腫瘍)との間の腫瘍体積の経時変化を比較するグラフである。
【
図22】
図22は、単なる免疫調節物質(例えば、IL-12)のナノ粒子組成物を腫瘍内注入して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注入しなかった同じ動物からの腫瘍(「遠位」腫瘍)との間の腫瘍体積の時間的変化を比較するグラフである。
【
図23】
図23は、腫瘍抗原と免疫賦活剤(例えば、CpG)のナノ粒子組成物を腫瘍内注入して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注入しなかった同じ動物からの腫瘍(「遠位」腫瘍)の間の腫瘍体積の経時変化を比較するグラフである。
【
図24】
図24は、単なる免疫賦活剤(例えば、CpG)のナノ粒子組成物を腫瘍内注入して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注入しなかった同じ動物からの腫瘍(「遠位」腫瘍)との間の腫瘍体積の時間的変化を比較するグラフである。
【
図25】
図25は、EG.7腫瘍の奏功率をまとめた表(表2)である。
【
図26】
図26は、MC38腫瘍細胞の腫瘍体積に対する様々な免疫調節剤(例えば、エフェクター)の効果を示すグラフである。
【
図27】
図27は、本明細書に記載の様々な免疫調節剤で治療された腫瘍におけるCD8 T細胞の頻度をまとめたグラフである。
【
図28】
図28は、本明細書に記載の様々な免疫調節剤で処理した後の抗原提示細胞の数のグラフである。
【
図29】
図29は、本明細書に記載されるようなナノ粒子組成物の効果を調べるために使用され得る研究タイムラインの1つの例を示す図である。
【
図30】
図30A~30Fの各々は、C3.43腫瘍に対する本明細書に記載のナノ粒子組成物の1つを用いた腫瘍内注入後の腫瘍増殖の時間経過を示す図である。
図30Aは、腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAと免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAとのナノ粒子組成物の効果を示す図である。
図30Bは、腫瘍特異抗原(HPV16)mRNAと、第1の免疫調節物質(TNFSF14)mRNAと、第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAとのナノ粒子組成物の効果を示す図である。
図30Cは、腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNAと免疫賦活剤(CpG)のナノ粒子組成物の効果を示す図である。
図30Dは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA単独のナノ粒子組成物の効果を示す(腫瘍抗原なし)。
図30Eは、第1の免疫調節物質(TNFSF14)mRNAおよび第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAのナノ粒子組成物の効果を示す(腫瘍抗原を含まない)。
図30Fは、免疫賦活剤(CpG)単独(腫瘍抗原なし)の効果を示す図である。
【
図31】
図31A~31Bは、C3.43腫瘍に対する本明細書に記載のナノ粒子組成物の1つを筋肉内注射した後の腫瘍増殖の時間経過を示す図である。
図31Aは、腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAと免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAとのナノ粒子組成物の効果を示している。
図31Bは、コントロール(未処理)の効果を示す図である。
【
図32】
図32は、本明細書に記載のナノ粒子組成物による処理(例えば、腫瘍内または筋肉内注射)後の、C3.43腫瘍を有するマウスの生存確率を示すグラフである。
【
図33】
図33は、本明細書に記載の特定のナノ粒子組成物の腫瘍内注入が、処置された動物の循環におけるCD3+/CD8+/テトラマー+細胞の割合の増加をもたらすことを示すグラフである。
【
図34A】
図34Aは、本明細書に記載されるマイクロ流路デバイス制御システムの一例を示す図である。
【
図34B】
図34Bは、本明細書で説明するように使用され得るマイクロ流路デバイス制御システムの一例を模式的に示す図である。
【
図35】
図35A~35Cは、本明細書に記載されるマイクロ流路デバイスの例を示す図である。
図35は、本明細書に記載されるマイクロ流路デバイスの一例の一部を通る断面である。
【0094】
本明細書に記載される方法及び組成物は、癌を含む疾患又は障害の治療のための改善された治療法を提供する。本明細書に記載される治療法は、腫瘍特異的抗原をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド、および免疫調節物質をコードする1つまたはポリヌクレオチドを含んでいてもよい。ポリヌクレオチドは、mRNAのようなRNAであってもよい。例えば、本明細書に記載されるのは、治療のために使用され得るmRNA治療法、それらを形成する方法、及びそれらを使用する方法である。本明細書に記載されるmRNA療法のいずれもが、mRNAワクチンであってもよい。これらの方法は、1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAとともに腫瘍特異的抗原をコードするmRNAをそれぞれ含むmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内に注射することを含んでもよく、腫瘍特異的抗原のmRNAおよび1つ以上の免疫調節剤のmRNAは、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークルなど(ただしこれに限らない)の単一の送達ビークル分子とともにカプセル化される。腫瘍特異的抗原は、患者特異的抗原及び/又は共有腫瘍抗原に対して指向され得る。一例において、これらの改良されたワクチン接種は、耐久性のある腫瘍退縮及び長期のCD8+T細胞媒介癌免疫をもたらす可能性がある。つ以上のアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを有するmRNAワクチンは、単独で治療効果を有することができるが、免疫調節分子の添加は、治療効果を高める。
【0095】
本明細書でより詳細に説明するように、腫瘍特異的抗原に対するワクチン接種が腫瘍の退縮をもたらし得るのに対し、腫瘍特異的抗原のmRNAを含むmRNA治療ナノ粒子、及びアミノ脂質化ペプトイド送達ビークル内にカプセル化された1又は複数のmRNAコード化免疫調節分子(例えば、チェックポイント阻害剤抗体など)の1回の腫瘍内注入は、生存を改善し得る。免疫調節分子の例には、mRNAとしてコード化された抗CTLA-4試薬などのチェックポイント阻害剤抗体が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。
【0096】
追加のmRNAコード化免疫調節因子を含めることで、長期生存率を向上させることができる。これは、シンジェニックマウス癌モデルについて以下に詳述する(例えば、
図2~7参照)。これらの実験で使用されたmRNAコード化免疫調節物質は、チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA-4)に加えて、いくつかの場合には、TGF-β拮抗剤および一本鎖インターロイキン-12を含んでいた。これらの実験では、長期生存者であるマウスは、強力かつ持続的なCD8+エフェクターT細胞がん免疫を獲得し、さらなる腫瘍への挑戦に対して抵抗力を持つようになった。
【0097】
一般に、mRNAベースのエフェクター分子と組み合わせたmRNAベースの腫瘍ワクチン接種は、1つ以上のネオエピトープを使用するなど、患者特異的腫瘍抗原に対して実施することができる。ネオエピトープは、例えば、腫瘍(例えば、一例では、MC38腫瘍)の配列決定によって同定され得、したがって、ネオエピトープは、腫瘍特異的抗原である。任意の患者特異的な癌ネオエピトープが使用されてもよい。
【0098】
mRNAベースの腫瘍ワクチン接種を、mRNAベースのエフェクター分子(例えば、免疫調節剤)と組み合わせて、異なる患者からの腫瘍において過剰発現されHLAが提示される抗原などの、共有抗原に対して行うことができる。 本明細書に記載のmRNAワクチンは、1以上のアミノ脂質化ペプトイドを用いてナノ粒子に処方されることができる。本明細書における「ナノ粒子」は、その最大寸法を指す、ナノメートル範囲のサイズを有する粒子を指す場合がある。ナノ粒子は、球、楕円、立方体、または規則的もしくは不規則的な幾何学的形状を含む、任意の適切な幾何学的形状を有していてもよい。形状によっては、寸法は、長さ、幅、直径などを指す場合がある。ナノ粒子は、約1000nm未満-例えば、約500nm、約300nm、約200nm、約100nm、約80nm、約50nm、約40nm、約30nm、約20nm、またはそれより小さいサイズを有してもよい。一例では、ナノ粒子は、約1nmと約1000nmの間-例えば、約5nmと約800nmの間、約10nmと約500nmの間、約15nmと約300nmの間、約20nmと約200nmの間、約30nmと約100nmの間、約40nmと約80nmの間、約50nmと約70nmの間等のサイズである。一例では、ナノ粒子は、約40nmと約70nmの間のサイズを有する。他の適切な粒子サイズも可能である。アミノ脂質化ペプトイドは、送達ビークルとして作用し、mRNAワクチンと組み合わせて、腫瘍微小環境における高発現を提供することができる。したがって、1つまたは複数の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAおよび1つまたは複数の免疫調節物質をコードするmRNAを含む本明細書に記載のmRNAワクチンは、単一のナノ粒子に共形成することができ、結果として、驚くほど高い発現レベルおよび高いワクチン接種効果を得ることができる。これらの治療法のいずれもが、高いワクチン接種効果に最適化された送達ビークル(例えば、アミノ脂質化ペプトイド)を用いてナノ粒子に処方されたmRNAワクチンを含むことができる。前述のように、本明細書に記載の治療用mRNAは、腫瘍特異的抗原mRNA及び1つ以上の免疫調節剤mRNAを含んでもよく;特定の免疫調節剤mRNAは、腫瘍特異的抗原mRNAと共に、同じ送達ビヒクル中にカプセル化されてもよい。
【0099】
一般に、mRNAワクチンに含まれるmRNAは、抗原の提示を補助する構築物またはスキャフォールドにコード化されてもよい。例えば、
図1Aは、汎用mRNAスキャフォールドの一例を模式的に示す。
図1Aにおいて、mRNAは、5′から3′までの異なるインシス作用要素:キャップ構造、5′UTR、コーディング領域(これは潜在的に修飾ヌクレオチドを含み得る)、3′UTR及びポリAテールで構成されている。この例では、mRNAのin vitro転写のためのテンプレートは、シス作用構造要素、すなわち5′から3′端まで:(i)キャップ構造、(ii)5′非翻訳領域(UTR)、(iii)コーディング(例えば最適化コドン)配列、(iv)3′UTRおよび(v)反復アデニンヌクレオチドのストレッチ(ポリAテール)から構成される。キャップ構造およびポリAテールの長さは、最適化されてもよい。これらのシス作用構造要素は、抗原提示のために最適化されてもよい。ポリAテールおよびキャップ構造は、mRNAの効率的な翻訳およびmRNAの崩壊に対する安定化に重要であり、一方、UTRは、場合によっては、mRNAの翻訳および半減期を制御する。純度や修飾ヌクレオシド(例えば、5'メトキシウリジン、5moU)の組み込みなどの一般的な製造上の特定は、mRNA自体の免疫原性を変え、翻訳効率を著しく高める可能性がある。
図1Cは、mRNA鎖が腫瘍特異的抗原mRNA(例えば、1つ以上のコピー、及び/又は1つ以上の腫瘍特異的抗原)及び1つ以上の免疫調節因子mRNA ORFの両方を含む例を示す。
【0100】
図1Bは、癌の治療におけるmRNAワクチンの有効性を向上させる方法の一例を模式的に示す図である。
図1Bにおいて、方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAワクチン(例えば、抗原提示を増強する足場において)と、単一の送達ビヒクル分子によって一緒にカプセル化された2つ以上の免疫調節剤(例えば、第1の免疫調節剤mRNA及び第2の免疫調節剤mRNA)をコードするmRNAを腫瘍内に注射することを含む。例えば、2つ(またはそれ以上)の免疫調節剤のうちの少なくとも1つは、チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA-4 mRNA)であってもよい。mRNAワクチンおよび免疫調節剤は、例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルであってもよい送達ビヒクルとともにカプセル化される。
【0101】
図1Cは、単一のmRNA鎖が、腫瘍特異的mRNA及び1つ以上の免疫調節物質(例えば、第1の免疫調節物質、第2の免疫調節物質、第3の免疫調節物質)をコードするmRNAを含み、mRNAオープンリーディングフレーム(ORF)が、腫瘍特異的mRNA及び免疫調節物質のmRNAをコードしている代替実施例を示している。この一本のmRNA鎖は、送達ビヒクル分子内にカプセル化されてもよい。
【0102】
免疫反応を刺激する物質による病気の予防や治療は、一般に免疫療法と呼ばれている。免疫療法は、免疫腫瘍学とも呼ばれ、腫瘍ではなく、宿主の免疫系を標的とした治療法を導入している。これらの治療法は、独特の薬理学的反応プロファイルを持つ可能性があり、多くの異なるタイプの癌を治療する可能性がある治療法である。一例として、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、皮膚がんなどは、特にメラノーマと同様に、免疫腫瘍学的治療により生存率や腫瘍反応性の面で大きな効果を得ることができるがんである。免疫療法は、チェックポイント阻害抗体と呼ばれる生物学的製剤を用いたチェックポイント阻害剤治療を特徴とすることが多い。
【0103】
本開示は、癌を治療するための方法及び組成物、特に、免疫治療方法及び組成物を改善又は増強するための方法及び組成物を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、(1)特に患者特異的腫瘍抗原(または抗原)を含む腫瘍特異的抗原、および(2)単一の送達ビヒクル分子でカプセル化された1つまたは複数の免疫調節物質(例えば、チェックポイント阻害剤ポリペプチドを含むいくつかのバリエーションにおいて)をコードする2つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)使用して癌を治療または予防する方法と組成物を特徴としている。いくつかの態様において、本開示は、患者特異的腫瘍抗原をコードするポリヌクレオチド、及び単一の送達ビヒクル分子と共にカプセル化された2つ以上の免疫調節剤を含む免疫調節組成物の増強物を提供する。他の態様において、本開示は、患者特異的腫瘍抗原をコードするポリヌクレオチド、及び2つ以上の免疫調節剤(例えば、抗CTLA-4及び一方又は両方。TGF-βアンタゴニストおよび一本鎖インターロイキン-12)、単一の送達ビヒクル分子とともにカプセル化されている。mRNAワクチンは、これらの成分の混合物を任意の適切かつ有効な比率で含んでもよい。
【0104】
いくつかの態様において、本開示は、患者特異的腫瘍抗原のmRNA、および単一の送達ビヒクル分子とともにカプセル化された2つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを使用して、癌を治療する方法に関するものである。理論に縛られることなく、投与すること、特に腫瘍内投与することで、これらのmRNAワクチンは、例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、およびまたは樹状細胞を刺激することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される免疫治療方法は、(1)免疫原性を最適化するために腫瘍微小環境(TME)を変換し、及び/又は(2)アブソーバーコントロール及び抗癌メモリを引き出すためにT細胞応答を強化することができる。
【0105】
本開示の他の態様は、患者特異的腫瘍抗原をコードするmRNA、及び単一の送達ビヒクル分子と共にカプセル化された2つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを含む組み合わせの有効量を対象に投与することによって、それを必要とする対象において腫瘍のサイズを縮小又は減少させる、又は腫瘍の成長を阻害する組成物及び方法を特徴付ける。送達ビヒクル分子は、例えば、PCT出願、PCT/US19/53661に記載されたもののいずれかのような、3級アミノ脂質化カチオン性ペプチドを含んでもよいアミノ脂質化ペプチドであってよい。2019年9月27日に出願された「LIPID NANOPARTICLE FORMULATIONS COMPRISING LIPIDATED CATIONIC PEPTIDE COMPOUNDS FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題されたPCT/US19/53655、及び「TERTIARY AMINO LIPIDATED CATIONIC PEPTIDES FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と称されたPCT出願に含まれるものを挙げることができる。これらの出願の両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
これらの送達ビヒクル分子は、追加の脂質/成分を含んでいてもよい。例えば、アミノリピッド化ペプチドは、1つ以上のリン脂質、例えば、1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MSPC)又はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含むことができる。脂質組成物は、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチル-硫酸(DOTAP)等の第4級アミン化合物を含むこともできる。
【0107】
本明細書で提供される見出しは、本開示の様々な局面または態様を制限するものではなく、本明細書全体を参照することによって定義することができる。したがって、直後に定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。本開示を詳細に説明する前に、本開示は、特定の組成物又はプロセスステップに限定されないことを理解されたい、そのようなものは変化し得るからである。
【0108】
.定義
本開示をより容易に理解できるようにするために、まず、特定の用語を定義する。本願で使用される場合、本明細書で明示的に規定される場合を除き、以下の各用語は、以下に規定される意味を有するものとする。追加の定義は、本願を通じて規定される。
【0109】
本開示は、グループのちょうど1つのメンバーが、所定の製品またはプロセスにおいて存在するか、採用されるか、または他の方法で関連する例を含む。本開示は、1つより多い、またはすべてのグループのメンバーが、所定の製品またはプロセスに存在する、採用される、またはそうでなければ関連する例を含む。
【0110】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに他に指示されない限り、複数の参照語を含む。用語「a」(または「an」)、ならびに用語「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において交換可能に使用され得る。特定の態様において、用語 "a "または "an "は、"単一 "を意味する。他の態様では、用語「a」または「an」は、"2つ以上 "または "複数 "を含む。
【0111】
さらに、本明細書で使用される「および/または」は、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれについて、他方を伴ってまたは伴わずに具体的に開示されていると解釈されるものとする。したがって、本明細書において「Aおよび/またはB」などのフレーズで使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、B、および/またはC」などのフレーズで使用される「および/または」という用語は、以下の態様の各々を包含することが意図される。A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0112】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press; and the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に対して、この開示において用いられる多くの用語の一般辞書を提供するものである。
【0113】
本明細書において、態様が「からなる」という表現で説明される場合、「からなる」及び/又は「から本質的になる」という表現で説明される他の類似の態様もまた提供される。
【0114】
単位,接頭辞,記号はSI(Systeme International de Unites)で認められている形式で表記している。数値の範囲は、その範囲を定義する数値を含む。数値の範囲を示す場合、その範囲の上限と下限の間にある各整数値およびその端数も、その値の間の各サブレンジとともに具体的に開示されていると理解される。任意の範囲の上限と下限は、独立して、その範囲に含まれるか、または範囲から除外されることができ、どちらか一方、どちらも、または両方の上限が含まれる各範囲もまた、本開示内に包含される。値が明示的に記載されている場合、記載されている値とほぼ同量または同量の値も、本開示の範囲内にあると理解されたい。組み合わせが開示されている場合、その組み合わせの要素の各副組み合わせも具体的に開示され、本開示の範囲内である。逆に、異なる要素または要素群が個別に開示されている場合、その組み合わせも開示される。ある開示の要素が複数の選択肢を有するものとして開示されている場合、各選択肢が単独でまたは他の選択肢との任意の組み合わせで除外されているその開示の例もここに開示される;ある開示の複数の要素がそのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素の全ての組み合わせがここに開示される。
【0115】
ヌクレオチドは一般に受け入れられている1文字コードで表記しています。特に指示しない限り、核酸は5′から3′の方向で左から右へ書かれる。ヌクレオチドは、本明細書では、IUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される一般に知られた1文字記号により参照される。従って、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Tはチミン、Uはウラシルを表わす。
【0116】
アミノ酸は、一般に知られている3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会が推奨する1文字記号で表記する。特に断りのない限り、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向で左から右に書かれている。
【0117】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて数値に関連して使用される用語「実質的に」、「約」及び「約」は、わずかな変動を考慮した精度の間隔を示すものである。一般に、そのような精度の区間は、+10%である。例えば、それらは、±10%以下、例えば±5%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下などを指すことができる。一例では、これらの用語は、変動なし、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下などを包含する。
【0118】
範囲が与えられている場合、終点が含まれる。さらに、特に示されない限り、または文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈から明らかに指示されない限り、範囲の下限の単位の10分の1に、本開示の異なる実施例において述べられた範囲内の任意の特定の値またはサブ範囲を想定することが可能である。
【0119】
組み合わせて投与される本明細書で使用されるように、用語「組み合わせて投与される」、「同時投与」、「複合投与」、または「組み合わせ療法」は、2つ以上の薬剤が、患者に対する各薬剤の効果の重複があり得るような間隔で、同時に、または被験者に投与されることを意味する。いくつかの例では、それらは、互いに約60分以下-例えば、約、30、約15、約10、約5、又は約1分以下-で投与される。いくつかの例では、薬剤の投与は、コンビナトリアル(例えば、相乗的)効果が達成されるように、十分に密接に間隔をあけて行われる。
【0120】
アミノ酸置換」という用語は、親配列または参照配列(例えば、野生型配列)中に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することを指す。アミノ酸は、例えば、化学的ペプチド合成を介して、または当技術分野で既知の組換え法によって、親または参照配列(例えば、野生型ポリペプチド配列)において置換することができる。したがって、「X位置での置換」への言及は、X位置に存在するアミノ酸を代替アミノ酸残基で置換することを指す。いくつかの態様において、置換パターンはスキーマAnYに従って記述することができ、ここでAは位置nに天然にまたは元々存在するアミノ酸に対応する一文字コードであり、Yは置換アミノ酸残基である。他の局面では、置換パターンはスキーマAn(YZ)に従って記述することができ、ここでAは位置Xに天然にまたは元々存在するアミノ酸を置換するアミノ酸残基に対応する1文字コードであり、YおよびZは代替置換アミノ酸残基である。
【0121】
本開示の文脈では、置換(それらがアミノ酸置換と呼ばれる場合であっても)は核酸レベルで行われる、すなわち、アミノ酸残基を代替アミノ酸残基に置換することは、第1のアミノ酸をコードするコドンを第2のアミノ酸をコードするコドンに置換することによって実施される。
【0122】
動物。本明細書で使用する場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの例では、「動物」は、任意の発達段階のヒトを指す。いくつかの例では、「動物」は、任意の発達段階における非ヒト動物を指す。特定の例では、非ヒト動物は哺乳類(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、犬、猫、羊、牛、霊長類、又はブタ)である。いくつかの例では、動物には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及びミミズが含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの例では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作動物、またはクローンである。
【0123】
と関連する。疾患に関して本明細書で使用する場合、「関連する」という用語は、問題の症状、測定値、特性、または状態が、その疾患の診断、発症、存在、または進行と関連していることを意味する。関連は、疾患と因果関係がある場合もあるが、そうである必要はない。
【0124】
2つ以上の部位に関して使用される場合、用語「関連する」、「共役」、「連結」、「付着」、および「テザー」は、部位が、直接または連結剤として機能する1つ以上の追加の部位を介して互いに物理的に関連または連結されて、構造が使用される条件、例えば生理的条件下で部位が物理的に関連したままになるように十分に安定な構造を形成していることを意味する。結合」は、厳密には直接的な共有化学結合によるものである必要はない。イオン結合、水素結合、または「会合した」実体が物理的に会合したままであるように十分に安定なハイブリダイゼーションに基づく結合を示唆することもできる。
【0125】
生体適合性。本明細書において、「生体適合性」という用語は、生体細胞、組織、臓器またはシステムと適合し、損傷、毒性または免疫系による拒絶のリスクをほとんど伴わないことを意味する。
【0126】
生分解性。本書で使用する「生分解性」という用語は、生物の作用により無害な製品に分解される可能性があることを意味する。
【0127】
配列の最適化。配列最適化」という用語は、参照核酸配列中の核酸塩基を代替核酸塩基で置換することにより、改善された特性、例えば、改善されたタンパク質発現または免疫原性を有する核酸配列をもたらす工程または一連の工程を指す。
【0128】
一般に、配列最適化における目標は、参照ヌクレオチド配列によってコードされる同じポリペプチド配列をコードするよりも同義ヌクレオチド配列を生成することである。したがって、コドン最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドには、参照ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに対する(コドン最適化の結果としての)アミノ酸置換が存在しないことになる。
【0129】
コドン置換配列最適化の文脈における「コドン置換」または「コドン置換」という用語は、参照核酸配列に存在するコドンを別のコドンに置き換えることを指す。コドンは、例えば、化学的ペプチド合成を介して、または当技術分野で既知の組換え法によって、参照核酸配列において置換することができる。したがって、核酸配列(例えば、mRNA)中のある位置、または核酸配列(例えば、mRNA)のある領域または部分配列内での「置換」または「置換」への言及は、当該位置または領域でのコドンを代替コドンで置換することを意味する。
【0130】
本明細書で使用する場合、「コード領域」、「コード化領域」およびその文法的変形は、発現時にポリペプチドまたはタンパク質を生成するポリヌクレオチド中のオープンリーディングフレーム(ORF)を意味する。
【0131】
保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、またはヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)、非帯電極側鎖(例えば。グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、またはシステイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、またはトリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはヒスチジン)である。したがって、ポリペプチド中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸に置換されている場合、そのアミノ酸置換は保存的であると考えられる。別の態様では、アミノ酸の列は、側鎖ファミリーのメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似した列と保存的に置換され得る。
【0132】
非保存的アミノ酸置換としては、(i)電気陽性側鎖を有する残基(例えば、Arg、HisまたはLys)が電気陰性残基(例えば、GluまたはAsp)と置換されるもの、(ii)親水性残基(例えば、SerまたはThr)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、PheまたはVal)、(iii)システインまたはプロリンが他の残基と置換される、または他の残基によって置換される、または(iv)嵩高い疎水性または芳香族側鎖(例えば、Val、His、IleまたはTrp)を有する残基が、小さい側鎖(例えば、AlaまたはSer)または側鎖なし(例えば、Gly)を有するものと、またはそれらによって置換される。
【0133】
他の適切なアミノ酸の置換も可能である。例えば、アミノ酸のアラニンについては、D-アラニン、グリシン、β-アラニン、L-システインおよびD-システインのうちのいずれか1つから置換をとることができる。リジンについては、D-リジン、アルギニン、D-アルギニン、ホモアルギニン、メチオニン、D-メチオニン、オルニチン、またはD-オルニチンのうちのいずれか1つから置換をとることができる。一般に、単離されたポリペプチドの特性の変化を誘発すると期待できる機能的に重要な領域における置換は、(i)極性残基、例えばセリンまたはスレオニンが疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンまたはアラニンに置換される(またはそれによって);(ii)システイン残基が他の残基に置換される(またはそれによって);(iii)電気陽性側鎖を有する残基、例えば,リジン、アルギニンまたはヒスチジンが、電気陰性側鎖を有する残基、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸に(またはそれらによって)置換される;または(iv)嵩高い側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、そのような側鎖を有しないもの、例えばグリシンに(またはそれらによって)置換される。前述の非保存的置換の1つがタンパク質の機能的特性を変える可能性は、タンパク質の機能的に重要な領域に対する置換の位置にも相関する。
【0134】
保存されている。本明細書で使用する場合、「保存されている」という用語は、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のそれぞれヌクレオチドまたはアミノ酸残基であって、比較する2以上の配列の同じ位置で変化なく出現するものを指す。相対的に保存されているヌクレオチドまたはアミノ酸とは、配列中の他の場所に現れるヌクレオチドまたはアミノ酸よりも、より多くの関連配列間で保存されているものである。
【0135】
いくつかの例では、2つ以上の配列は、それらが互いに100%同一である場合、「完全に保存されている」と言われる。いくつかの例では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも約70%同一-例えば、少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、またはそれ以上である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの例では、2つ以上の配列は、互いに約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%、約98%、または約99%、またはそれ以上同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの例では、2つ以上の配列は、互いに少なくとも約30%同一、少なくとも約40%同一、少なくとも約50%同一、少なくとも約60%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、または少なくとも約95%同一であれば「保存」されていると言われる。いくつかの例では、2つ以上の配列は、互いに約30%同一、約40%同一、約50%同一、約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、または約99%同一であれば「保存」されていると言われる。配列の保存は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長に適用されてもよいし、その一部、領域または特徴に適用されてもよい。
【0136】
接触すること。本明細書で使用する場合、「接触する」という用語は、2つ以上の実体の間に物理的接続を確立することを意味する。例えば、哺乳類細胞をナノ粒子組成物と接触させることは、哺乳類細胞とナノ粒子とが物理的接続を共有するようにされることを意味する。細胞をin vivoおよびex vivoの両方で外部実体と接触させる方法は、生物学的技術においてよく知られている。例えば、ナノ粒子組成物と哺乳動物内に配置された哺乳動物細胞との接触は、多様な投与経路(例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下)により行われてもよく、多様な量のナノ粒子組成物を伴ってもよい。さらに、1つ以上の哺乳類細胞がナノ粒子組成物によって接触されてもよい。
【0137】
制御された放出。本明細書で使用する場合、「放出制御」という用語は、治療結果をもたらすために特定の放出パターンに適合する医薬組成物または化合物の放出プロフィールを指す。
【0138】
共有結合性誘導体。ポリペプチドに言及する場合の用語「共有結合性誘導体」は、有機タンパク質性または非タンパク質性誘導体化剤によるネイティブまたは出発タンパク質の修飾、および/または翻訳後修飾を含む。共有結合修飾は、従来、タンパク質の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖または末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって、または選択された組換え宿主細胞において機能する翻訳後修飾の機構を利用することによって、導入される。得られた共有結合誘導体は、生物学的活性に重要な残基の同定、イムノアッセイ、または組換え糖タンパク質のイムノアフィニティー精製のための抗タンパク質抗体の調製に向けたプログラムにおいて有用である。このような改変は、当業者の通常の技術範囲内であり、過度の実験なしに実施される。
【0139】
環状または環状化されている。本明細書で使用する場合、「環状」という用語は、連続したループの存在を意味する。環状分子は、環状である必要はなく、サブユニットの切れ目のない鎖を形成するように結合するだけでよい。工学的RNAまたはmRNAのような環状分子は、単一ユニットまたは多量体であるか、または複雑なまたは高次構造の1つまたは複数の構成要素から構成され得る。
【0140】
細胞毒性。本明細書で使用される「細胞毒性」は、細胞(例えば、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、またはそれらの組み合わせに対して殺傷効果、毒性、または致死効果をもたらすことを意味する。
【0141】
配送すること、本明細書で使用されるように、用語「送達する」は、目的地に実体を提供することを意味する。例えば、ポリヌクレオチドを対象に送達することは、ポリヌクレオチドを含むナノ粒子組成物を対象に(例えば、静脈内、筋肉内、皮内、または皮下経路によって)投与することを含んでもよい。哺乳動物または哺乳類細胞へのナノ粒子組成物の投与は、1つまたは複数の細胞をナノ粒子組成物と接触させることを含み得る。
【0142】
送達ビークル。本明細書で使用する場合、「送達ビークル」は、標的細胞または組織(例えば、腫瘍など)へのポリヌクレオチドのin vivo、in vitro、またはex vivo送達を少なくとも部分的に促進する任意の物質を指す。デリバリービークルとして何かを参照することは、それがまた治療効果を有しないことを意味しない。
【0143】
不安定化された。本明細書で使用する場合、用語「不安定化」、「不安定化」、または「不安定化領域」は、同じ領域または分子の出発形態、野生型またはネイティブ形態より安定性が低い領域または分子を意味する。
【0144】
検出可能な標識。本明細書で使用する場合、「検出可能な標識」とは、ラジオグラフィー、蛍光、化学発光、酵素活性、吸光度などを含む当該技術分野で既知の方法によって容易に検出される別の実体に付着、組み込み、または関連付けられた1つまたは複数のマーカー、シグナル、または部位のことをいう。検出可能な標識には、放射性同位体、蛍光体、発色体、酵素、染料、金属イオン、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン及びハプテンなどのリガンド、量子ドットなどが含まれる。検出可能な標識は、本明細書に開示されるペプチドまたはタンパク質の任意の位置に配置することができる。それらは、アミノ酸、ペプチド、またはタンパク質内であってもよいし、N末端またはC末端に位置していてもよい。
【0145】
ジアステレオマー。本明細書で使用する場合、用語「ジアステレオマー」は、互いの鏡像ではなく、互いに非重畳的である立体異性体を意味する。
【0146】
ダイジェスト(Digest)。本明細書で使用する場合、「消化」という用語は、より小さな断片または構成要素に分解することを意味する。ポリペプチドまたはタンパク質に言及する場合、消化によりペプチドが生成される。
【0147】
遠位:本明細書において、「遠位」という用語は、中心から離れた位置にあること、または、関心 のある点または領域から離れた位置にあることを意味する。
【0148】
ドメイン。本明細書において、ポリペプチドに言及する場合、用語「ドメイン」は、1つ以上の識別可能な構造的または機能的特性または性質(例えば、結合能、タンパク質-タンパク質相互作用の部位として機能する)を有するポリペプチドのモチーフを指す。
【0149】
投与レジメン。本明細書で使用する場合、「投与法」または「投与レジメン」は、治療、予防、または緩和ケアの投与スケジュールまたは医師が決定するレジメンである。
【0150】
有効量。本明細書で使用するように、薬剤の「有効量」という用語は、有益なまたは望ましい結果、例えば、臨床結果をもたらすのに十分な量であり、そのため、「有効量」は、それが適用されている文脈に依存する。例えば、腫瘍を治療する薬剤を投与する文脈では、薬剤の有効量は、例えば、薬剤を投与しない場合に得られる応答と比較して、腫瘍のサイズを縮小または減少させるか、または腫瘍の成長を阻害するのに十分な量である。有効量」という用語は、「有効量」、「治療上有効な量」、または「治療上有効な用量」と互換的に使用することができる。
【0151】
エナンチオマー。本明細書で使用される場合、用語「エナンチオマー」は、少なくとも約80%(すなわち、一方のエナンチオマーの少なくとも約90%および他方のエナンチオマーの最大約10%)、少なくとも約90%、または少なくとも約98%、またはそれ以上の光学純度またはエナンチオマー過剰(当該技術分野において標準的な方法によって決定)を有する、開示の化合物の個々の光学活性型を意味する。
【0152】
カプセル化する:本明細書で使用されるように、mRNAと相互作用する送達ビヒクルに関して、用語「カプセル化する」は、完全にまたは部分的に囲むまたは包むことを意味する;これは、mRNAを分解から保護し、細胞への取り込みを促進し得る。これは、カプセル化する送達ビヒクルによってmRNAを含んでもよい。本明細書で使用される「一緒にカプセル化される」とは、同じ送達ビヒクル分子によってカプセル化される第1のmRNA及び第2のmRNAのような2つ以上の分子を意味する。第1のmRNA及び第2のmRNAは、異なるポリヌクレオチド鎖にコードされてもよく、又はそれらは同じ鎖の一部であってもよい。いくつかの例では、同じタイプの複数のmRNAは、決定された化学量論(例えば、1:1、1:2、2:1など)で同じ送達ビヒクル分子に一緒にカプセル化されてもよい。
【0153】
カプセル化効率。本明細書で使用する場合、「カプセル化効率」は、ナノ粒子組成物の調製に使用されるポリヌクレオチドの最初の総量に対する、ナノ粒子組成物の一部となるポリヌクレオチドの量を指す。例えば、最初に組成物に提供されたポリヌクレオチドの合計100mgのうち、97mgのポリヌクレオチドがナノ粒子組成物にカプセル化される場合、カプセル化効率は97%として与えられることがある。本明細書で使用される場合、「カプセル化」は、完全、実質的、または部分的な封入、閉じ込め、周囲、または包囲を指す場合がある。例えば、カプセル化は、約80%以上のカプセル化、約85%以上のカプセル化、約90%以上のカプセル化、約95%以上のカプセル化、または完全にカプセル化されたことを指す場合がある。
【0154】
コード化されたタンパク質切断シグナル本明細書で使用する「コード化タンパク質切断シグナル」は、タンパク質切断シグナルをコードするヌクレオチド配列を意味する。
【0155】
設計された。本明細書で使用する場合、本開示の例は、出発点、野生型またはネイティブ分子から変化する特徴または特性(構造的または化学的であるかを問わず)を有するように設計されている場合に「設計された」であるという。
【0156】
送達の強化。本明細書で使用される場合、用語「送達の強化」は、ナノ粒子によるポリヌクレオチドの、関心対象の標的組織(例えば。哺乳類肝組織)へのポリヌクレオチドの送達のレベルと比較して、対照のナノ粒子による目的の標的組織へのポリヌクレオチドの送達のレベルを決定する。特定の組織へのナノ粒子の送達レベルは、組織で生成されたタンパク質の量を前記組織の重量と比較すること、組織中のポリヌクレオチドの量を前記組織の重量と比較すること、組織で生成されたタンパク質の量を前記組織中の総タンパク質の量と比較すること、または組織中のポリヌクレオチドの量を前記組織中の総ポリヌクレオチドの量と比較することによって測定されうる。標的組織へのナノ粒子の送達の増強は、治療される対象において決定する必要はなく、動物モデル(例えば、ラットモデル)などの代替物において決定してもよいことが理解されるであろう。
【0157】
エクソソーム。本明細書で使用する場合、「エクソソーム」は、哺乳類細胞によって分泌される小胞、またはRNA分解に関与する複合体である。
【0158】
本明細書で使用する場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象のうちの1つ以上を指す。(1)DNA配列からのRNAテンプレートの産生(例えば、転写による)(2)RNA転写物の処理(例えば、スプライシング、編集、5′キャップ形成、および/または3′エンド処理による)(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳および(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾を発現させる。
【0159】
生体外
本明細書で使用する場合、「生体外」という用語は、生物(例えば、動物、植物、微生物、またはその細胞もしくは組織)の外部で起こる事象を指す。生体外事象は、自然の(例えば、生体内の)環境から最小限に変化した環境において行われることがある。
【0160】
特徴
本明細書で使用する「特徴」とは、特性、性質、または特徴的な要素を指す。ポリペプチドに言及する場合、「特徴」は、分子の明確なアミノ酸配列に基づく構成要素として定義される。本開示のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの特徴には、表面顕性、局所的なコンフォメーション形状、折り目、ループ、半ループ、ドメイン、半ドメイン、部位、末端またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0161】
製剤
本明細書で使用される場合、「製剤」は、少なくともポリヌクレオチドと、担体、賦形剤、および送達剤のうちの1つ以上とを含む。
【0162】
ラグメント
本明細書で使用する「断片」は、一部を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離された全長タンパク質を消化して得られるポリペプチドを含むことができる。いくつかの例では、フラグメントは、N末端、および/またはC末端、および/または内部の部分配列が削除された完全長タンパク質(例えば、IL-23のサブユニットのうちの1つ)の部分配列である。本開示のいくつかの態様において、本開示のタンパク質の断片は、機能的断片である。
【0163】
機能的
本明細書で使用する場合、「機能的な」生体分子とは、それが特徴付ける特性および/または活性を示す形態にある生体分子をいう。したがって、本開示のポリヌクレオチドの機能的断片は、機能的インターロイキン断片を発現することができるポリヌクレオチドである。本明細書で使用される場合、インターロイキンの機能的断片とは、野生型インターロイキンの断片(すなわち、の断片、またはその変異体もしくは変種であり、ここでその断片は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%を保持し、また、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約45%、少なくとも約10%を保持する。少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の生物活性を保持する、完全長タンパク質の生物活性。
【0164】
相同性
本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、高分子分子間、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。一般に、「相同性」という用語は、2つの分子間の進化的な関係を意味する。したがって、相同である2つの分子は、共通の進化的祖先を有することになる。本開示の文脈では、相同性という用語は、同一性と類似性の両方を包含する。
【0165】
いくつかの例では、高分子分子は、分子中のモノマーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%が同一(全く同じモノマー)であるか、類似(保存的置換)である場合、互いに「相同」であると見なされる。ここでいう「相同」とは、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列)を比較することを必然的に意味する。
【0166】
同一性。本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、高分子分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)および/またはポリペプチド分子間の全体的なモノマー保存を意味する。2つのポリヌクレオチド配列のパーセント同一性の計算は、例えば、最適な比較目的のために2つの配列をアライメントすることによって行うことができる(例えば、最適なアライメントのために第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、比較目的のために非同一の配列を無視することができる)。特定の例では、比較目的でアラインメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%とする。その後、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列のある位置が第2の配列の対応する位置と同じヌクレオチドによって占められている場合、その位置で分子は同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列が共有する同一位置の数の関数である。配列の比較と2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。DNAとRNAを比較する場合、チミン(T)とウラシル(U)は等価と考えることができる。
【0167】
適切なソフトウェアプログラムは、様々なソースから入手可能であり、タンパク質およびヌクレオチド配列の両方のアラインメントのために利用可能である。配列同一性パーセントを決定するための1つの適切なプログラムは、米国政府の国立生物工学情報センターBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なプログラムのBLASTスイートの一部であるbl2seqである。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを用いて2つの配列間の比較を実行します。BLASTNは核酸配列の比較に使用され、BLASTPはアミノ酸配列の比較に使用される。他の適切なプログラムは、例えば、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSスイートの一部であるNeedle、Stretcher、Water、またはMatcherであり、またEBI(欧州バイオインフォマティクス研究所)から入手可能である。
【0168】
配列のアラインメントは、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal XまたはClustal Omega)、MUSCLEなど、当技術分野で既知の方法を用いて実施することができる。
【0169】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ独自の配列同一性パーセントを有することができる。配列同一性パーセントの値は、最も近い第10位に丸められることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、および 80.14 は 80.1 に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、および 80.19 は 80.2 に切り上げられ る。また、長さの値は必ず整数になることに注意する。
【0170】
特定の局面において、第1のアミノ酸配列(または核酸配列)の第2のアミノ酸配列(または核酸配列)に対する同一性パーセント「%ID」は、%ID=100×(Y/Z)として計算され、ここでYは第1および第2の配列のアライメントにおいて同一の一致としてスコアされたアミノ酸残基(または核酸塩基)の数(視覚検査または特定の配列アライメントプログラムによりアライメントしたもの)、Zは第2の配列における残基の合計の数である。第1の配列の長さが第2の配列よりも長い場合、第2の配列に対する第1の配列の同一性パーセントは、第1の配列に対する第2の配列の同一性パーセントより高くなる。
【0171】
配列同一性パーセントの計算のための配列アライメントの生成は、一次配列データによってのみ駆動される二次配列-配列比較に限定されるものではない。また、配列アライメントは、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、突然変異の位置)、または系統学的データなどの異種ソースからのデータと統合することによって生成できることが理解されよう。異種データを統合して多重配列アライメントを生成する適切なプログラムは、T-Coffeeであり、www.tcoffee.org、代替的に、例えばEBIから入手可能である。また、配列同一性パーセントを計算するために使用される最終的なアラインメントは、自動的または手動的にキュレーションできることが理解されよう。
【0172】
免疫チェックポイント阻害剤。免疫チェックポイント阻害剤」または単に「チェックポイント阻害剤」は、免疫細胞が癌細胞によってオフにされるのを防ぐ分子を指す。本明細書で使用する場合、チェックポイント阻害剤という用語は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、プログラム死1受容体(PD-1)、またはPD-1リガンド1(PD-L1)などの阻害性チェックポイント分子を中和または阻害するポリペプチド(例えば抗体)またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を意味する。
【0173】
免疫反応免疫反応」とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記細胞や肝臓が産生する可溶性高分子(抗体、サイトカイン、補体を含む)の作用により、侵入した病原体、病原体に感染した細胞や組織、癌細胞、あるいは自己免疫や病的炎症の場合には正常なヒト細胞や組織を選択的に損傷、破壊、人体から排除することをいう。
【0174】
炎症反応。"炎症反応 "とは、特異的防御系と非特異的防御系が関与する免疫反応のことである。特異的防御系反応とは、抗原に対する特異的な免疫系反応である。特異的防御系反応の例としては、抗体反応が挙げられる。非特異的防御系反応は、一般に免疫学的記憶ができない白血球、例えばマクロファージ、好酸球および好中球によって媒介される炎症性反応である。いくつかの態様において、免疫反応は、炎症性サイトカインの分泌を含み、その結果、炎症性サイトカインレベルが上昇する。
【0175】
炎症性サイトカイン炎症性サイトカイン」とは、炎症反応において上昇するサイトカインを指す。炎症性サイトカインの例としては、インターロイキン-6(IL-6)、CXCL1(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1;GROcとしても知られている)、インターフェロン-γ(IFNγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ-誘導タンパク質10(IP-10)、または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)等が挙げられる。炎症性サイトカインという用語は、当技術分野で知られている炎症性反応に関連する他のサイトカイン、例えば、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-12(L-12)、インターロイキン-13(IL-13)、インターフェロンα(IFN-α)等も包含する。
【0176】
インビトロ。本明細書で使用する場合、「in vitro」という用語は、生物(例えば、動物、植物、または微生物)内ではなく、人工環境、例えば、試験管または反応容器内、細胞培養、ペトリ皿内などで起こる事象を指す。
【0177】
In Vivo:本明細書で使用する場合、「in vivo」という用語は、生物(例えば、動物、植物、微生物またはその細胞や組織)内で発生する事象を指す。
【0178】
挿入型変異体および欠失型変異体ポリペプチドに言及する場合の「挿入型変異体」とは、ネイティブ配列または開始配列の特定の位置でアミノ酸のすぐ隣に1つまたは複数のアミノ酸が挿入されたものである。アミノ酸に「隣接する」とは、アミノ酸のα-カルボキシまたはα-アミノ官能基のいずれかに接続されていることを意味する。ポリペプチドに言及する場合の「欠失型」は、ネイティブまたは開始アミノ酸配列中の1つまたは複数のアミノ酸が除去されたものである。通常、欠失型変異体は、分子の特定の領域で1つまたは複数のアミノ酸が欠失されている。
【0179】
インタクトである。本明細書で使用する場合、ポリペプチドの文脈において、用語「インタクト」は、野生型タンパク質に対応するアミノ酸を保持すること、例えば、野生型アミノ酸を変異または置換していないことを意味する。逆に、核酸の文脈では、用語「無傷」は、野生型核酸に対応する核酸塩基を保持すること、例えば、野生型核酸塩基を変異または置換していないことを意味する。
【0180】
単離されたもの。本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、(自然界であれ実験環境であれ)それが関連していた成分の少なくとも一部から分離された物質または実体を意味する。単離された物質(例えば、ヌクレオチド配列又はタンパク質配列)は、それらが関連付けられていた物質との関連において様々なレベルの純度を有し得る。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に会合していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上から分離することができる。いくつかの例では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれ以上の純度を有する。本明細書で使用されるように、物質は、他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。実質的に分離されている」という用語は、化合物が形成または検出された環境から実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、例えば、本開示の化合物を濃縮した組成物を含むことができる。実質的な分離は、本開示の化合物またはその塩を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%含む組成物を含むことができる。
【0181】
本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞、または「単離された」任意の組成物は、自然界に存在しない形態であるポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞、または組成物を意味する。単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、または組成物は、それらが自然界で見出される形態ではもはやない程度に精製されたものを含む。いくつかの態様において、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、または組成物は、実質的に純粋である。
【0182】
異性体。本明細書で使用される場合、用語「異性体」は、本開示の任意の化合物の任意の互変異性体、立体異性体、エナンチオマー、またはジアステレオマーを意味する。本開示の化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を有し得、したがって、二重結合異性体(すなわち、幾何E/Z異性体)またはジアステレオマー(例えば、エナンチオマー(すなわち、(+)または(-))またはシス/トランス異性体)等の立体異性体として存在すると認識される。本開示によれば、本明細書に描かれた化学構造、したがって本開示の化合物は、対応する立体異性体のすべて、すなわち、立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何学的に純粋、エナンチオマー的に純粋、またはジアステレオマー的に純粋)およびエナンチオマーと立体異性体の混合物、例えば、ラセミ体の両方を包含する。本開示の化合物のエナンチオマーおよび立体異性体混合物は、典型的には、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩複合体としての化合物の結晶化、またはキラル溶剤中での化合物の結晶化などの周知の方法によってそれらの成分エナンチオマーまたは立体異性体に分解することができる。また、立体異性体や立体異性体は、立体的にあるいはエナンチオマー的に純粋な中間体、試薬、触媒から、公知の不斉合成法により得ることができる。
【0183】
リンカーである。本明細書で使用する場合、「リンカー」は、例えば、約10~1000個の原子のグループを指し、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、イミンなどの原子または基で構成できる(これらに限定されない)が、これらに限定されない)。リンカーは、第1の端で核酸塩基または糖部分上の修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドに、第2の端でペイロード、例えば、検出可能または治療剤に付着させることができる。リンカーは、核酸配列への組込みに干渉しないような十分な長さを有することができる。リンカーは、本明細書に記載されるように、ペイロードを投与するためだけでなく、ポリヌクレオチドマルチマー(例えば、2つ以上のキメラポリヌクレオチド分子またはIVTポリヌクレオチドの連結による)またはポリヌクレオチドコンジュゲートの形成など、任意の有用な目的で使用することができる。リンカーに組み込むことができる化学基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、またはヘテロシクリルなどがあるが、これらに限定されず、これらはそれぞれ、本明細書に記載のように任意に置換されることが可能である。リンカーの例としては、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレンまたはプロピレングリコールのモノマー単位、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール)、およびデキストランポリマーおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の例としては、例えば、ジスルフィド結合(-S-S-)またはアゾ結合(-N-N-)などの、還元剤または光分解を用いて開裂することができるリンカー内の開裂部位が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。選択的に開裂可能な結合の非限定的な例としては、アミド結合は、例えばトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、または他の還元剤、および/または光分解の使用によって開裂することができ、同様にエステル結合は、例えば酸性または塩基性の加水分解によって開裂することができる。
【0184】
投与方法。本明細書で使用されるように、「投与方法」は、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、または被験者に組成物を送達する他の方法を含むことができる。投与方法は、身体の特定の領域又は系への送達を目標とする(例えば、特異的に送達する)ように選択され得る。特に、本明細書に記載されているのは、腫瘍内注入(例えば、1つ以上の腫瘍内または腫瘍にすぐ隣接する組織内への注入)である。
【0185】
修飾された。本明細書で使用する「修飾」とは、本開示の分子の状態または構造を変更することを意味する。分子は、化学的、構造的、および機能的などの多くの方法で修飾され得る。いくつかの例では、本開示のmRNA分子は、例えば、天然リボヌクレオチドA、U、G、およびCに関連するように、非天然ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの導入により修飾される。キャップ構造などの非正規ヌクレオチドは、A、C、G、Uリボヌクレオチドの化学構造とは異なるが、「修飾」とはみなされない。
【0186】
天然に存在すること。本明細書で使用する「天然由来」とは、人為的な助力なしに自然界に存在することを意味する。
【0187】
非ヒト脊椎動物。本明細書で使用する場合、「非ヒト脊椎動物」は、野生種および家畜化種を含む、ホモサピエンス以外の全ての脊椎動物を含む。非ヒト脊椎動物の例としては、アルパカ、バンテン、バイソン、ラクダ、ネコ、ウシ、シカ、イヌ、ロバ、ガイヤール、ヤギ、モルモット、ウマ、ラマ、ミュール、ブタ、ウサギ、トナカイ、羊水牛、ヤクなどの哺乳類があるが、それに限定はしない。
【0188】
核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」(「ポリヌクレオチド配列」の一例)という用語は、互換的に用いられ、連続した核酸配列を意味する。配列は、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA(例えば、mRNA)のいずれでもよい。
【0189】
核酸とは、広義には、ヌクレオチドの重合体からなる化合物および/または物質を含む。これらのポリマーは、しばしばポリヌクレオチドと呼ばれる。本開示の核酸またはポリヌクレオチドの例には、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、スレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA、ベータDリボ構成を有するLNAを含む)があるが、それだけに限定されるわけではない。α-L-リボ配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2′-アミノ官能化を有する2′-アミノ-LNA、および2′-アミノ官能化を有する2′-アミノ-α-LNA)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキシル核酸(CeNA)またはそれらのハイブリッドもしくは組合せが挙げられる。
【0190】
フレーズ「コードするヌクレオチド配列」は、ポリペプチドをコードする核酸(例えば、mRNAまたはDNA分子)コード配列を指す。コーディング配列は、核酸が投与される個体または哺乳類の細胞における発現を指示することができるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む調節要素に作動可能に連結した開始および終了シグナルをさらに含むことができる。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含むことができる。
【0191】
オフターゲット本明細書で使用する「オフターゲット」とは、1つ以上の標的、遺伝子、または細胞転写物に対する意図しない効果を意味する。
【0192】
オープンリーディングフレーム。本明細書で使用する「オープンリーディングフレーム」または「ORF」は、所定のリーディングフレームにストップコドンを含まない配列を指す。
【0193】
操作可能に連結された。本明細書で使用される場合、フレーズ「操作可能に連結された」は、2つ以上の分子、構築物、転写物、実体、部位などの間の機能的な接続を意味する。
【0194】
任意に置換されるとは、ここで、「任意に置換されたX」(例えば、任意に置換されたアルキル)の形式のフレーズは、「X、ここでXは任意に置換される」(例えば、「アルキル、ここで当該アルキルは任意に置換される」)と等価であることを意図している。特徴「X」(例えば、アルキル)それ自体が任意であることを意味することは意図していない。
【0195】
本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドの「部分」または「領域」は、ポリヌクレオチドの全長よりも短い任意の部分と定義される。
【0196】
本明細書で使用される「患者」とは、治療を求める可能性のある、または治療を必要とする、治療を受けている、治療を受ける予定の、または特定の疾患または状態について訓練を受けた専門家の治療を受けている対象をいう。
【0197】
薬学的に許容されるとは、本明細書において、「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触して用いるのに適している、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形についていうために使用される。
【0198】
薬学的に許容される賦形剤本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」というフレーズは、本明細書に記載される化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解することができるビヒクル)で、患者において実質的に無毒かつ非炎症であるという性質を有するものを指す。賦形剤としては、例えば、付着防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、染料(色)、軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはコーティング剤、香料、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁または分散剤、甘味料、水和物などを挙げることができる。例示的な賦形剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン。システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ゼラチン化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(コーン)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンCおよびキシリトール。
【0199】
薬学的に許容される塩本開示はまた、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物が、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって(例えば、遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって)修飾されている、開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機酸塩;などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重硫酸、ホウ酸、酪酸、カンホウ酸。カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミスル酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド。ヒドロヨード、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ラクトビオン酸、乳酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩。パモエート、ペクチネート、ペルサルフェート、3-フェニルプロピオネート、リン酸塩、ピクレート、ピバレート、プロピオン酸塩、ステアレート、スクシネート、サルフェート、タートレート、チオシアネート、トルエンスルホネート、ウンデカン酸、バリレート塩等が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の他、無毒のアンモニウム、第4級アンモニウム、アミンカチオンが挙げられ、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本開示の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が含まれる。本開示の薬学的に許容される塩は、塩基性または酸性部位を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中または有機溶媒中、あるいはこれらの混合物中で化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができる;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が使用される。適当な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p.1418, Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use, P. H. Stahl and C. G. Wermuth (eds.), Wiley-VCH, 2008、およびBerge et al., Journal of Pharmaceutical Science, 66, 1-19 (1977), これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0200】
薬学的に許容される溶媒和物。本明細書で使用する「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、適切な溶媒の分子が結晶格子内に取り込まれた本開示の化合物を意味する。適切な溶媒は、投与される用量において生理学的に許容される。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、またはそれらの混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶、または沈殿によって調製することができる。好適な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N´-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N´-ジメチルアセトアミド(DMAC)、など。1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジル等である。水を溶媒とする場合、その溶媒和物を "水和物 "と呼ぶことがある。
【0201】
薬物動態学
本明細書で使用する「薬物動態学」とは、生体に投与された物質の運命の決定に関連する、分子または化合物の1つ以上の特性をいう。薬物動態学は、吸収、分布、代謝、排泄の程度と速度を含むいくつかの領域に分けられる。これは一般にADMEと呼ばれ、次のようなものである。(A)吸収は、物質が血液循環に入るプロセス、(D)分布は、体液および体内組織全体への物質の分散または拡散、(M)代謝(または生体内変換)は、親化合物が娘代謝物に不可逆的に変換すること、(E)排泄(または排泄)は、物質の体からの排泄を指します。まれに、体内組織に不可逆的に蓄積する薬物がある。物理化学的なもの。本明細書で使用する場合、「物理化学的」とは、物理的および/または化学的特性の、またはそれらに関連することを意味する。
【0202】
ポリヌクレオチド、本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、その類似体、またはそれらの混合物を含む任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味する。この用語は、分子の一次構造を意味する。したがって、この用語は、三本鎖、二本鎖および一本鎖のデオキシリボ核酸(「DNA」)、ならびに三本鎖、二本鎖および一本鎖のリボ核酸(「RNA」)を含む。また、ポリヌクレオチドの、例えばアルキル化による、および/またはキャッピングによる修飾型、および非修飾型も含まれる。より詳細には、用語「ポリヌクレオチド」は、tRNA、rRNA、hRNA、siRNAおよびmRNAを含むポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、が含まれる。スプライスされているか否かにかかわらず、プリンまたはピリミジン塩基のN-またはC-グリコシドである任意の他のタイプのポリヌクレオチド、およびノルムヌクレオチドバックボーンを含む他のポリマー、例えば、ポリアミド(e.g.,ペプチド核酸「PNA」)およびポリモルフォリノポリマー、ならびにDNAおよびRNAに見られるような塩基対形成および塩基積層を可能にする配置で核酸塩基を含むポリマーを提供する他の合成配列特異的核酸ポリマーが挙げられる。特定の態様において、ポリヌクレオチドは、mRNAを含んでなる。他の態様では、mRNAは合成mRNAである。いくつかの態様において、合成mRNAは、少なくとも1つの非天然核酸塩基を含んでいる。いくつかの態様では、あるクラスのすべての核酸塩基が非天然核酸塩基で置換されている(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド中のすべてのウリジンは、非天然核酸塩基、例えば5-メトキシウリジンで置換することが可能である)。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド(例えば、合成RNAまたは合成DNA)は、天然核酸塩基のみ、すなわち、合成DNAの場合にはA,C,TおよびU、または合成RNAの場合にはA,C,TおよびUから構成される。
【0203】
当業者は、本明細書に開示されたコドンマップ中のT塩基はDNA中に存在し、一方、T塩基は対応するRNA中でU塩基に置換されるだろうことを理解するであろう。例えば、DNA形態、例えばベクターまたは体外翻訳(IVT)テンプレートにおいて本明細書に開示されるコドン-ヌクレオチド配列は、その対応する転写されたmRNAにおいてそのT塩基がU塩基として転写されることになるであろう。この点で、コドン最適化DNA配列(Tを含む)およびその対応するRNA配列(Uを含む)の両方は、本開示のコドン最適化ヌクレオチド配列とみなされる。当業者であれば、1つ以上の塩基を非天然塩基に置換することにより、同等のコドンマップを生成することができることも理解するであろう。したがって、例えば、TTCコドン(DNAマップ)は、UUCコドン(RNAマップ)に対応し、これは、今度は、'P'Cコドン(Uがプソイドウリジンに置換されているRNAマップ)に対応するだろう。
【0204】
標準的なA-TおよびG-C塩基対は、チミジンのN3-HおよびC4-オキシとアデノシンのN1およびC6-NH2 、およびシチジンのC2-オキシ、N3およびC4-NH2 、およびグアノシンのC2-NH2 、N′-HおよびC6-オキシの間にそれぞれ水素結合が形成可能な条件下で形成されている。したがって、例えば、グアノシン(2-アミノ-6-オキシ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)は、イソグアノシン(2-オキシ-6-アミノ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)に修飾することが可能である。このような修飾を受けると、シトシンと効果的に標準塩基対を形成しないヌクレオシド塩基となる。しかしながら、シトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-オキシ-4-アミノ-ピリミジン)を修飾してイソシトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-オキシ-4-ピリミジン-)を形成すると、グアノシンと有効に塩基対にならないがイソグアノシンと塩基対になる修飾塩基となる(コリンズらへの米国特許第5,681,702号明細書)。イソシトシンは、Sigma Chemical Co. (St. Louis, Mo.) から入手可能であり;イソシチジンは、Switzerら (1993) Biochemistry 32:10489-10496 およびそこに引用されている文献によって記載されている方法によって調製することができ;2′-deoxy-5-methyl-isocytidineはTorらの方法 (1993) J. Am.Chem.Soc.115:4461-4467、およびそこに引用された文献;およびイソグアニンヌクレオチドは、Switzerら、1993、前掲書、およびMantschら、(1993) Biochem.に記載の方法を使用して調製することができる。14:5593-5601に記載された方法、または米国特許第5,780,610号明細書に記載された方法によって調製することができる。Collinsらへの第5,780,610号に記載されている方法によって、他の非天然塩基対を合成することができる。 Piccirilliら(1990)Nature 343:33-37に、2,6-ジアミノピリミジンおよびその補体(1-methylpyrazol-[4,3]pyrimidine-5,7-(4H,6H)-dione)の合成に関して記載されている方法によって合成されうる。ユニークな塩基対を形成する他のそのような修飾ヌクレオチド単位が知られており、例えば、Leachら(1992) J. Am.Chem.Soc. 114:3675-3683およびSwitzerらをいう。
【0205】
核酸配列」、「ヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、連続した核酸配列を意味する。配列は、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA(例えば、mRNA)のいずれでもよい。
【0206】
フレーズ「コードするヌクレオチド配列」及びその変種は、本明細書に規定するポリペプチド又はその機能的断片をコードするヌクレオチド配列からなる核酸(例えば、mRNA又はDNA分子)コード配列を意味する。コーディング配列は、核酸が投与される個体または哺乳類の細胞における発現を指示することができるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む調節要素に作動可能に連結した開始および終了シグナルをさらに含むことができる。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含むことができる。
【0207】
ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、修飾アミノ酸を含むことができる。用語はまた、天然または介入によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作または修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションなどである。また、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、クレアチンなどの非天然アミノ酸を含む)を含むポリペプチド、および当技術分野で知られている他の修飾も定義に含まれる。
【0208】
本明細書で使用される用語は、任意のサイズ、構造、または機能を有するタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。ポリペプチドは、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片および前記の他の同等物、変種、および類似物を含む。ポリペプチドは、単一のポリペプチドであってもよいし、二量体、三量体、四量体などの多分子複合体であってもよい。また、単鎖または多鎖のポリペプチドからなることもできる。最も一般的には、ジスルフィド結合が多鎖ポリペプチドに見出される。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的アナログであるアミノ酸ポリマーに適用することも可能である。いくつかの例では、「ペプチド」は、約50アミノ酸長以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長であり得る。
【0209】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチドバリアント」という用語は、ネイティブ配列または参照配列とそのアミノ酸配列が異なる分子を指す。アミノ酸配列バリアントは、ネイティブ配列または参照配列と比較して、アミノ酸配列内の特定の位置で置換、欠失、および/または挿入を有し得る。通常、変異体は、ネイティブ配列または参照配列に対して少なくとも約50%の同一性、少なくとも約60%の同一性、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約99%の同一性を有するであろう。いくつかの例では、それらはネイティブ配列または参照配列と少なくとも約80%、または少なくとも約90%同一であろう。
本明細書において、単位薬物当たりポリペプチド(PUD)または単位薬物当たり製品は、体液または組織で測定した製品(ポリペプチドなど)の1日の総投与量の通常1mg、pg、kgなどの小分け部分として定義され、通常pmol/mL、mmol/mLなどの濃度で定義し、体液での測定で割ったものである。
【0210】
本明細書で使用される場合、用語「予防する」は、完全に含む少なくとも部分的に、感染、疾患、障害及び/又は状態の発症を遅延させること;少なくとも部分的又は完全に、特定の感染、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状、特徴、又は臨床症状の発症を遅延させること、を指す。特定の感染症、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状、特徴、又は症状の発症を少なくとも部分的又は完全に遅延させること;感染症、特定の疾患、障害、及び/又は状態からの進行を少なくとも部分的又は完全に遅延させること;並びに感染、疾患、障害、及び/又は状態に関連する病理学の発症リスクを低減させること。
【0211】
本開示はまた、本明細書に記載される化合物のプロドラッグを含む。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、化学的または物理的変化により治療薬として作用する物質、分子または実体のための前提条件となる形態にある任意の物質、分子または実体を意味する。プロドラッグは、何らかの方法で共有結合または隔離され、それを必要とする哺乳類被験者に投与される前、投与時、または投与後に活性薬剤部分に放出または変換されうる。プロドラッグは、日常的な操作またはin vivoのいずれかで親化合物に切断されるように、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグには、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、またはカルボキシル基が、哺乳類被験体に投与されたときに開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、またはカルボキシル基を形成する任意の基に結合した化合物が含まれる。プロドラッグの調製と使用については、T. Higuchi and V. Stella, "Pro-drugs as Novel Delivery Systems", Vol.14 of the A.C.S. Symposium Series, and in Bioreversible Carriers in Drug Design, ed.Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に記載されており、その両方が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0212】
増殖させるとは、本明細書で使用する場合、「増殖する」という用語は、成長、拡大もしくは増加すること、または急速に成長、拡大もしくは増加するようにすることを意味する。「増殖性」とは、増殖する能力を有することを意味する。「抗増殖性」とは、増殖性に対抗する、または対抗しない特性を有することを意味する。
【0213】
予防
本明細書において、「予防」とは、疾病の蔓延を防止するために用いられる治療法または処置のことをいう。
【0214】
本明細書で使用する「予防」とは、健康を維持し、疾病の蔓延を防止するために講じる手段を指す。免疫予防」とは、病気の蔓延を防ぐために能動的または受動的な免疫力を作り出す手段を指す。
【0215】
タンパク質の開裂部位。本明細書で使用する「タンパク質切断部位」とは、化学的、酵素的または光化学的手段によってアミノ酸鎖の制御された切断を達成することができる部位をいう。
【0216】
タンパク質切断シグナル。本明細書で使用する「タンパク質切断シグナル」とは、ポリペプチドを切断するためのフラグまたはマークを付ける少なくとも1つのアミノ酸を意味する。
【0217】
目的のタンパク質本明細書で使用される場合、用語「目的のタンパク質」または「目的のタンパク質」は、本明細書で提供されるもの、およびその断片、変異体、変種、および改変体を含む。
【0218】
本明細書において、「近位」という用語は、中心または点もしくは関心領域の近くに位置することを意味する。
【0219】
プソイドウリジン。本明細書で使用する場合、プソイドウリジンとは、ヌクレオシドウリジンのC-グリコシド異性体を指す。プソイドウリジン類似体」は、プソイドウリジンの任意の改変体、変異体、アイソフォームまたは誘導体である。例えば、プソイドウリジン類似体には、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジンなどがあるが、これだけに限定されるわけではない。1-メチル-プソイドウリジン(m1 ψ)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1 s4 ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3 ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン。1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン。4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(ACP3 ψ)、2´-O-メチル-シュードウリジン(xm)などがある。
【0220】
精製すること、本明細書において、「精製する」、「精製した」、「精製」とは、不要な成分、物質的な汚れ、混入物、不完全なものから実質的に純粋または透明にすることを意味する。
【0221】
参照核酸配列。用語「参照核酸配列」または「参照核酸」または「参照ヌクレオチド配列」または「参照配列」は、配列を最適化することができる出発核酸配列(例えば、RNA、例えば、mRNA配列)を指す。いくつかの例では、参照核酸配列は、野生型核酸配列、そのフラグメントまたはバリアントである。いくつかの例では、参照核酸配列は、以前に配列最適化された核酸配列である。
【0222】
いくつかの態様において、本明細書に開示され、腫瘍内送達のための医薬組成物は、その脂質成分の一部の塩を含んでいる。塩」という用語は、任意のアニオン性及びカチオン性複合体を含む。アニオンの非限定的な例としては、無機および有機アニオン、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、シュウ酸塩(例えば。ヘミオキサレート)、リン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、窒化物、亜硫酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、硫酸水素塩、ボレート、フォレート、アセテート、ベンゾアート、シトラート、タートレート、ラクテート、アクリレート、ポリアクリレート、フマレート、マレート、イタコネート。グリコレート、グルコン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、チグレート、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、ポリメタクリル酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、臭素酸塩、次亜塩素酸塩、陽イオン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、砒酸塩、亜砒酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、シアン化物、シアン塩、チオシアン酸塩、水酸化物、過酸化物、ペルマンガナートおよびこれらの混合物などをいう。
【0223】
試料
本明細書で使用される場合、用語「試料」または「生体試料」は、その組織、細胞または構成部分のサブセット(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊帯血、尿、膣液および精液を含むがこれらに限らない、体液)を指す。試料はさらに、生物全体またはその組織、細胞もしくは構成部分のサブセット、またはその画分もしくは部分から調製されたホモジネート、溶解物もしくは抽出物を含み得、例えば、血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸および泌尿器管の外部セクション、涙、唾液、ミルク、血球、腫瘍、器官が挙げられるがこれらに限定されるものではない。さらに、試料とは、タンパク質や核酸分子などの細胞成分を含む栄養ブロスやゲルなどの培地を指す。
【0224】
シグナル配列
本明細書で使用する場合、「シグナル配列」、「シグナルペプチド」および「トランジットペプチド」という語句は互換的に使用され、特定のオルガネラ、細胞区画、または細胞外輸出へのタンパク質の輸送または局在化を指示し得る配列を意味する。この用語は、シグナル配列ポリペプチドおよびシグナル配列をコードする核酸配列の両方を包含する。したがって、核酸の文脈におけるシグナル配列への言及は、実際には、シグナル配列ポリペプチドをコードする核酸配列を指す。
【0225】
シグナル伝達経路
シグナル伝達経路」とは、細胞のある部分から別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。本明細書で使用する「細胞表面受容体」という語は、例えば、シグナルを受け取ることができる分子や分子の複合体、および細胞の細胞膜を横切ってそのようなシグナルを伝達することができる分子や複合体を含む。
【0226】
類似性
本明細書で使用する場合、「類似性」という用語は、高分子分子間、例えばポリヌクレオチド分子間(例えばDNA分子および/またはRNA分子)および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。高分子分子の互いの類似度パーセントの計算は、類似度パーセントの計算が当技術分野で理解されているように保存的置換を考慮することを除いて、同一性パーセントの計算と同じ方法で実施することができる。
【0227】
具体的な引渡し本明細書で使用される場合、用語「特異的送達」、「特異的に送達する」、または「特異的に送達する」は、より多くの(例えば、少なくとも約1.5倍以上、少なくとも約2倍以上、少なくとも約3倍以上、少なくとも約4倍以上、少なくとも約5倍以上、少なくとも約6倍以上、少なくとも約7倍以上、少なくとも約8倍以上、少なくとも約9倍以上、少なくとも約10倍以上)のナノ粒子による目的の標的組織(例えば、哺乳類肝臓)へのナノ粒子によるポリヌクレオチドの送達を、標的外組織(例えば、哺乳類脾臓)と比較する。特定の組織へのナノ粒子の送達レベルは、組織内で生成されたタンパク質の量を前記組織の重量と比較すること、組織内のポリヌクレオチドの量を前記組織の重量と比較すること、組織内で生成されたタンパク質の量を前記組織内の全タンパクの量と比較すること、または組織内のポリヌクレオチドの量を前記組織内の全ポリヌクレオチドの量と比較することによって測定されうる。例えば、改装血管標的化については、ポリヌクレオチドの全身投与後に肝臓または脾臓に送達されるものと比較して、組織1g当たり約1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍または20倍多いポリヌクレオチドが腎臓に送達されれば、肝臓および脾臓と比較して哺乳動物の腎臓に特異的に供給されることになる。ナノ粒子が標的組織に特異的に送達する能力は、治療される対象において決定される必要はなく、動物モデル(例えば、ラットモデル)などの代替物において決定されてもよいことが理解されるであろう。
【0228】
安定であることとは、本明細書で使用する「安定な」とは、反応混合物から有用な純度まで単離するのに十分な堅牢性を有し、場合によっては有効な治療薬に製剤化できる化合物を意味する。
【0229】
安定化させるとは、本明細書で使用されるように、用語「安定化」、「安定化」、「安定化領域」は、安定にすること、または安定になることを意味する。立体異性体。本明細書で使用される場合、用語「立体異性体」は、化合物(例えば、本明細書に記載の任意の式の化合物)が有し得るすべての可能な異なる異性体およびコンフォメーション形態、特にすべての可能な立体化学的およびコンフォメーション的異性体形態、基本分子構造のすべてのジアステレオマー、エナンチオマーおよび/またはコンフォマーを意味する。本開示のいくつかの化合物は、異なる互変異性形態で存在してもよく、後者はすべて本開示の範囲に含まれる。
【0230】
被験者被験者」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳類」とは、診断、予後、または治療が望まれる任意の被験者、特に哺乳類の被験者を意味する。哺乳類被験体としては、ヒト、家畜、農耕動物、動物園動物、スポーツ動物、犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、馬、牛、牛などのペット動物;類人猿、サル、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類などがあるが、それらに限定されるわけではない。犬、狼などの犬科動物;猫、ライオン、虎などの獣科動物;馬、ロバ、シマウマなどの馬科動物;熊、牛、豚、羊などの食用動物;鹿、キリンなどの偶蹄類;マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類;などである。特定の例では、哺乳類は、ヒト被験体である。他の例では、被験体は、ヒト患者である。特定の例では、対象は、癌治療を必要としているヒト患者である。
【0231】
本明細書で使用する文脈では、「実質的に」という用語は、関心のある特性または性質の全体的またはそれに近い範囲または程度を示すという定性的な状態を指す。生物学分野の通常の技術者であれば、生物学的および化学的現象は、もしあるとしても、完了まで行くおよび/または完全性まで進む、または絶対的な結果を達成または回避することはほとんどないことを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的および化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捕捉するために本明細書で使用される。投与間の時間差に関連して本明細書で使用される「実質的に等しい」は、プラス/マイナス2%を意味する。本明細書で使用され、複数の投与に関連する「実質的に同時」とは、数秒(例えば、2)以内を意味する。
【0232】
病気、障害、および/または状態に「苦しんでいる」個人は、病気、障害、および/または状態の1つ以上の症状を診断された、または示している。
【0233】
疾患、障害、及び/又は状態に「かかりやすい」個人は、疾患、障害、及び/又は状態の診断を受けず、及び/又はその症状を示さないかもしれないが、疾患又はその症状を発症する傾向があることを保持している。いくつかの例では、疾患、障害、及び/又は状態(例えば、癌)に罹患しやすい個体は、以下のうちの1つ又は複数によって特徴付けることができる。(1)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子変異;(2)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子多型;(3)疾患、障害、及び/又は状態に関連するタンパク質及び/又は核酸の発現及び/又は活性の増加又は減少。(4)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する習慣及び/又は生活様式;(5)疾患、障害、及び/又は状態の家族歴;及び(6)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する微生物への曝露及び/又は感染。いくつかの例では、疾患、障害、および/または状態に感受性のある個体が、その疾患、障害、および/または状態を発症する。いくつかの例では、疾患、障害、および/または状態に感受性のある個体が、疾患、障害、および/または状態を発症することはない。
【0234】
本明細書で使用する場合、「徐放性」という用語は、特定の期間にわたって放出速度に適合する医薬組成物または化合物の放出プロフィールを意味する。
【0235】
合成」という用語は、人の手によって生産、準備、および/または製造されることを意味する。本開示のポリヌクレオチドまたは他の分子の合成は、化学的または酵素的であり得る。
【0236】
本明細書で使用する「標的細胞」は、任意の1つまたは複数の関心対象の細胞を指す。細胞は、in vitro、in vivo、in situ、または生物の組織もしくは器官に存在してもよい。生物は、動物、例えば、ヒトを含む哺乳類であってもよい。
【0237】
標的組織。本明細書で使用される「標的組織」とは、ポリヌクレオチドの送達が所望の生物学的および/または薬理学的効果をもたらすであろう、任意の1つまたは複数の組織タイプの関心事をいう。興味のある標的組織の例には、特定の組織、器官、およびシステムまたはそのグループが含まれる。特定の用途において、標的組織は、腎臓、肺、脾臓、血管内皮(例えば、冠状動脈内または大腿骨内)、または腫瘍組織(例えば、腫瘍内注入を介して)であってよい。オフターゲット組織」とは、コード化されたタンパク質の発現が所望の生物学的及び/又は薬理学的効果をもたらさない任意の1つ又は複数の組織タイプを指す。特定の用途において、オフターゲット組織には、肝臓および脾臓が含まれ得る。
【0238】
ターゲティング配列。本明細書で使用されるように、フレーズ「ターゲティング配列」は、タンパク質またはポリペプチドの輸送または局在化を指示することができる配列を指す。末端とは、本明細書で使用されるように、ポリペプチドに言及する場合の「末端」または「末端」は、ペプチドまたはポリペプチドの末端を指す。このような末端は、ペプチドまたはポリペプチドの最初または最後の部位のみに限定されず、末端領域における追加のアミノ酸を含むことができる。本開示のポリペプチドベースの分子は、N末端(遊離アミノ基を有するアミノ酸によって終結する(NH2 ))およびC末端(遊離カルボキシル基を有するアミノ酸によって終結する(COOH))の両方を有するものとして特徴付けることができる。本開示のタンパク質は、場合によっては、ジスルフィド結合または非共有結合力によって一緒になった複数のポリペプチド鎖で構成されている(多量体、オリゴマー)。このような種類のタンパク質は、複数のN末端およびC末端を有するであろう。あるいは、ポリペプチドの末端は、場合により、有機コンジュゲートなどの非ポリペプチドベースの部位で開始または終了するように修飾することも可能である。
【0239】
治療薬
「治療薬」という用語は、それを必要とする被験者に投与されたとき、治療、診断、および/または予防効果を有し、および/または所望の生物学的および/または薬学的効果を誘発する薬剤を意味する。例えば、いくつかの例では、IL-36-γポリペプチドをコードするmRNAは、治療剤であり得る。
【0240】
治療上有効な量本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な量」とは、感染、疾患、障害、および/または状態に罹患しているかまたは罹患しやすい対象に投与された場合に、感染、疾患、障害、および/または状態を治療、症状の改善、診断、予防、および/または発症を遅らせるために十分である送達すべき薬剤(例えば、核酸、薬剤、治療剤、診断剤、予防剤等)の量を意味する。治療上有効な結果本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な結果」とは、感染、疾患、障害、及び/又は状態に罹患しているか又は罹患しやすい対象において、感染、疾患、障害、及び/又は状態の治療、症状の改善、診断、予防、及び/又は発症の遅延に十分である結果をいう。1日の総量。本明細書で使用する「1日総投与量」は、24時間以内に投与または処方される量である。1日の総投与量は、1単位用量または分割用量として投与することができる。転写因子。本明細書で使用する場合、「転写因子」という用語は、例えば、転写の活性化または抑制によって、DNAからRNAへの転写を調節するDNA結合タンパク質を指す。転写因子には、単独で転写の調節に影響を及ぼすものもあれば、他のタンパク質と協調して作用するものもある。また、ある種の転写因子は、特定の条件下で転写を活性化することも抑制することもできる。一般に、転写因子は、標的遺伝子の制御領域において、特定の標的配列または特定のコンセンサス配列と高度に類似した配列に結合する。転写因子は、単独で、あるいは他の分子と複合して、標的遺伝子の転写を制御することができる。
【0241】
転写本明細書で使用されるように、用語「転写」は、外来性核酸を細胞に導入する方法を指す。トランスフェクションの方法には、化学的方法、物理的処理、およびカチオン性脂質または混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0242】
トランスフェクション本明細書で使用する場合、「トランスフェクション」とは、ポリヌクレオチドの細胞への導入を指し、そこでポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが発現される(例えば、mRNA)か、またはポリペプチドが細胞の機能を調節する(例えば、siRNA、miRNA)。本明細書において、核酸配列の「発現」とは、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)のポリペプチドもしくはタンパク質への翻訳、および/またはポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾を意味する。
【0243】
治療すること、処置、治療本明細書で使用される場合、用語「治療する」または「処置」または「療法」は、高増殖性疾患、例えば癌の1つ以上の症状または特徴の部分的または完全に緩和、改善、改善、緩和、発症の遅延、進行の抑制、重症度の低減、および/または発生率の低減を意味する。例えば、癌を「治療する」とは、腫瘍の生存、成長、及び/又は広がりを阻害することを指すことができる。治療は、疾患、障害、および/または状態の兆候を示さない対象、および/または疾患、障害、および/または状態の初期兆候のみを示す対象に、疾患、障害、および/または状態に関連する病理学の発症リスクを低下させる目的で投与することができる。
【0244】
腫瘍微小環境
本明細書で使用される「腫瘍微小環境」とは、腫瘍内に浸潤する免疫細胞および/または炎症細胞の有無、ならびに腫瘍内のそのような細胞の種類に関して、腫瘍内の細胞組成物を指す。1つの態様において、腫瘍微小環境は「炎症性腫瘍微小環境」であり、これは、腫瘍に浸潤した免疫細胞および/または炎症細胞の存在を意味し、優勢な細胞型は顆粒球である。別の態様では、腫瘍微小環境は「免疫抑制性腫瘍微小環境」であり、これは、腫瘍に浸潤した免疫細胞および/または炎症細胞の存在を意味し、優勢な細胞型は単球系細胞およびマクロファージである。別の態様では、腫瘍微小環境は「免疫学的に不毛な腫瘍微小環境」であり、これは、免疫細胞および/または炎症細胞の腫瘍への著しい浸潤がないことを意味する。
【0245】
未修飾
本明細書で使用する「未修飾」とは、何らかの方法で変化させる前の物質、化合物または分子を指す。未修飾とは、生体分子の野生型またはネイティブフォームを指すことがあるが、必ずしもそうではない。分子は、一連の修飾を受けることができ、各修飾分子は、後続の修飾のための「未修飾」出発分子として機能することができる。
【0246】
ウラシルウラシルは、RNAの核酸中の4つの核酸塩基の1つであり、Uの文字で表される。ウラシルは、リボース環、より具体的にはリボフラノースに、β-N1 -グリコシド結合を介して結合し、ヌクレオシドウリジンを得ることができる。したがって、本開示の文脈において、ポリヌクレオチド配列中のモノマーがUであるとき、かかるUは、交換可能に "ウラシル "または "ウリジン "として指定される。
【0247】
ウリジン含有量
「ウリジン含有量」または「ウラシル含有量」という用語は互換性があり、ある核酸配列中に存在するウラシルまたはウリジンの量を指す。ウリジン含量またはウラシル含量は、絶対値(配列中のウリジンまたはウラシルの総数)または相対値(核酸配列中の核酸塩基の総数に対するウリジンまたはウラシルの割合)として表現することができる。ウリジン修飾配列。ウリジン修飾配列」という用語は、候補核酸配列のウリジン含有量及び/又はウリジン・パターンに関して、異なる全体的又は局所的ウリジン含有量(高い又は低いウリジン含有量)又は異なるウリジン・パターン(例えば、グラデーション分布又はクラスタリング)を有する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)のことをいう。本開示の内容において、「ウリジン修飾配列」及び「ウラシル修飾配列」という用語は、同等かつ交換可能であるとみなされる。高ウリジンコドン」とは、2個または3個のウリジンからなるコドン、「低ウリジンコドン」とは、1個のウリジンからなるコドン、「ウリジンなしコドン」とは、ウリジンを含まないコドンとして定義される。いくつかの例では、ウリジン修飾配列は、高ウリジンコドンの低ウリジンコドンへの置換、高ウリジンコドンの無ウリジンコドンへの置換、低ウリジンコドンの高ウリジンコドンへの置換、低ウリジンコドンの無ウリジンコドンへの置換、無ウリジンコドンの高ウリジンコドンへの置換およびそれらの組み合わせで構成される。いくつかの例では、高ウリジンコドンは、別の高ウリジンコドンに置換され得る。いくつかの例では、低ウリジンコドンを別の低ウリジンコドンに置換することができる。いくつかの例では、非ウリジンコドンは、別の非ウリジンコドンに置換され得る。ウリジン修飾配列は、ウリジン富化配列またはウリジン希薄化配列とすることができる。
【0248】
ウリジン富化
本明細書で使用する場合、用語「ウリジン富化」及び文法的変形は、対応する候補核酸配列のウリジン含有量に対する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)のウリジン含有量の増加(絶対値又はパーセント値で表される)を意味する。ウリジン富化は、候補核酸配列中のコドンを、より少ないウリジン核酸塩基を含む同義コドンで置換することにより実施することができる。ウリジン濃縮は、グローバル(すなわち、候補核酸配列の全長に対して)またはローカル(すなわち、候補核酸配列の部分配列または領域に対して)であることができる。ウリジン希薄化。本明細書で使用する場合、用語「ウリジン希薄化」及び文法的変形は、対応する候補核酸配列のウリジン含有量に対する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)のウリジン含有量の減少(絶対値又はパーセント値で表される)を指す。ウリジン希少化は、候補核酸配列中のコドンを、より少ないウリジン核酸塩基を含む同義コドンで置換することにより実施することができる。ウリジン希少化は、グローバル(すなわち、候補核酸配列の全長に対して)またはローカル(すなわち、候補核酸配列の部分配列または領域に対して)であることができる。
【0249】
バリアント
本開示で使用されるバリアントという用語は、天然のバリアント(例えば、多型、アイソフォームなど)およびネイティブ配列または出発配列(例えば、野生型配列)中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、同じ位置に異なるアミノ酸が挿入されている人工バリアントの両方を意味する。これらの変異体は、"置換型変異体 "と表現することができる。置換は、分子中の1つのアミノ酸のみが置換された単一置換体である場合もあれば、同一分子内で2つ以上のアミノ酸が置換された複数置換体である場合もある。アミノ酸が挿入または削除された場合、結果として生じる変異体はそれぞれ「挿入型変異体」または「削除型変異体」となる。
【0250】
ワクチン
本明細書で使用されるように、ワクチンは、身体が癌と戦うのを助ける治療法であってもよい。具体的には、本明細書に記載されるワクチンは、癌を治療してもよい。本明細書に記載されるワクチンは、疾患(例えば、癌)の予防に限定されないが、腫瘍または腫瘍を含む既存の癌を治療してもよい。本明細書に記載されるmRNAワクチンは、任意の適切な送達ビヒクル分子を含んでもよい。例えば、送達ビヒクル分子は、脂質ベースのビヒクル(脂質ナノ粒子など)又はポリマーベースのナノ粒子であってもよい。特に、送達ビークル(DV)分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビークルであってよい。一般に、送達ビヒクル分子は、mRNAをRNase分解から保護し、細胞への取り込みを増加させ、エンドソームからの脱出を促進し、それによって細胞質で機能性タンパク質を発現させる。これらの特性により、患者へのmRNAのin vivo送達に関する技術的課題に対処することが可能となる。
【0251】
したがって、本明細書に記載されるmRNAワクチンは、1つ以上の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと、同じ送達ビヒクル分子と共配合される1つ以上の免疫調節剤とを含んでもよい。送達ビヒクル分子は、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)であってもよい。LNP製剤は、ポリアニオン性mRNAをカプセル化するための第3級または第4級アミンを有する、イオン化可能またはカチオン性の脂質または高分子材料;双性イオン性脂質(例えば。LNPの脂質二重層を安定化させるコレステロール、およびナノ粒子に水和層を与え、コロイド安定性を向上させ、タンパク質の吸収を抑えるポリエチレングリコール(PEG)-脂質である。
【0252】
多成分のLNPはエンドサイトーシスによって取り込まれ、静電的に細胞膜に付着し、反転した非重層脂質相を利用して融合することができる。細胞内では、初期エンドソーム、後期エンドソーム、そして最終的にはリソソームへと移行し、mRNAが酵素分解される。
【0253】
送達ビヒクル分子の1つのクラスには、カチオン性またはイオン化可能な脂質および脂質類似物質が含まれる。カチオン性脂質はアルキル化された4級アンモニウム基を持ち、pHに依存しない様式でカチオン性を保持するが、イオン化可能な脂質はpHが下がると遊離アミンのプロトン化により正の電荷を獲得する。脂質類似物質は、天然脂質に比べ疎水性の側鎖を多く持つ。N-[1-(2,3-dioleoyloxy)propyl]-N,N,N-trimethylammonium chloride (DOTMA) などのカチオン性脂質が使用される場合がある。代替的にまたは追加的に、pH依存性のイオン化可能な材料を使用してもよい。Dlin-MC3-DMA(MC3)と名付けられたイオン化可能な脂質は、治療用タンパク質を発現させるためにmRNAをトランスフェクトするために使用することも可能である。
【0254】
高分子材料は、治療用mRNAの送達に使用することができる。例えば、脂肪鎖で修飾された低分子量のポリエチレンイミン(PEI)は、高分子量のPEIの毒性を低減するために、siRNAおよびmRNAの送達に使用され得る。脂肪鎖で修飾されたポリ(グリコアミドアミン)ポリマー(例えば、酒石酸塩骨格を含むいくつかのバリエーションにおいて)は、mRNAを送達することが示されている。ポリ(β-アミノ)エステル(PBAE)は、生分解性ポリマーであり、血清安定性を高めるためにPEG-脂質を配合したPBAEを含む核酸送達に使用されることがある。高分岐型PBAEは、mRNAの送達に使用することができる。
【0255】
アミン側鎖を有するポリメタクリレート、オリゴアミノエチレン側鎖を有するポリアスパルタミド、エチルプロピルエチルスペーサーを交互に有するテトラミンでアミド化したポリアクリル酸はmRNAをトランスフェクトすると報告されており、デリバリービークル分子として使用できる可能性があります。自己免疫型ポリカーボネートブロックポリ(α-アミノ)エステルは、再配列とpH7.4での分解によりmRNAを放出し、エンドソームからの脱出を促進する可能性があります。生分解性アミノポリエステル(APE)は、様々なラクトンの開環重合における開始剤として3級アミノアルコールから低分散性で合成され、組織選択的にmRNAを送達することが可能であると考えられる。その他、生体適合性のある分解生成物やエンドソームからの脱出性を高めた生分解性ポリマーをmRNA送達に用いてもよい。
【0256】
いくつかの変形例では、送達ビヒクル分子はデンドリマーを含んでもよい。例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)またはポリプロピレンイミンをベースとするデンドリマーは、遺伝子送達のために広く研究されている。脂肪鎖修飾PAMAMデンドリマー、および/またはポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)およびセラミド-PEGと共形成した修飾PAMAMデンドリマーは、送達媒体分子として使用され得る。
【0257】
あるいは、細胞侵入ペプチド(CPP)が送達ビークル分子として使用される場合もある。CPPは、細胞表面の負に帯電したグリコサミノグリカンのクラスタリングを促進し、その結果、マクロピノサイトーシスと側方拡散を誘発するか、直接脂質二重層を破壊することが考えられる。アルギニンに富む両親媒性RALA配列の繰り返しを有するCPPを用いてもよい。いくつかのバリエーションでは、送達ビヒクル分子は、カチオン性脂質とヘルパー脂質(「双性イオン性アミノリピッド」またはZAL)を連想させる、カチオン性および双性イオン性脂質の組み合わせであってよい。
【0258】
特に、本明細書に記載される送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルであってもよい。例えば、これらの送達ビヒクルは、循環中にmRNAカルゴのパッケージング及び保護を提供し、免疫認識を回避し、細胞の取り込み及び放出を促進し得る、脂質含有両親媒性送達ビヒクルであってもよい。これらの送達ビヒクルの例は、「LIPID NANOPARTICLE FORMULATIONS COMPRISING LIPIDATED CATIONIC PEPTIDE COMPOUNDS FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題する国際特許出願、PCT/US19/53661、および9月27日に出願された、PCT/US19.2019、および「TERTIARY AMINO LIPIDATED CATIONIC PEPTIDES FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題され、2019年9月27日に出願された国際特許出願PCT/US19/53655において、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。複数のタイプの送達ビヒクル分子を使用してもよく、各タイプは、本明細書に記載の1つ以上の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAおよび1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAの両方と共にカプセル化されてもよい。
【0259】
一般に、本明細書に記載される方法及び組成物は、癌の治療方法を含み得る。これらの方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAワクチン及び1つ以上の免疫調節剤をコードするmRNAを腫瘍内に注入することを含んでもよく、ここで、mRNAワクチン及び免疫調節剤は、送達ビークル分子と共にカプセル化されている。特に、腫瘍特異的抗原は、ネイティブな患者組織、特に同じ分化系統を有するネイティブな患者組織;例えば肝臓腫瘍組織と比較した肝臓組織などと比較して、1つ以上の遺伝子および/またはタンパク質の配列および/または1つ以上の遺伝子および/またはタンパク質の発現における変化(例えば、欠損、付加などを含む変異)として同定することができる患者特異的腫瘍抗原とすることができる。
【0260】
例えば、患者特異的腫瘍抗原は、ネオエピトープ(ネオ抗原とも呼ばれる)を含んでもよい。本明細書に記載の方法及び組成物は、ネオエピトープを使用するmRNAワクチンの有効性を向上させることができる。ネオエピトープは、非同義変異、保持イントロン、アミノ酸を変更する翻訳後修飾、遺伝子融合、フレームシフトイン/デル変異を含む、タンパク質配列を変更する任意のゲノム変異から生じる可能性があります。次世代シーケンサー(NGS)は、翻訳後修飾を除いて、これらのタイプのバリアントの同定に使用することができ、質量分析などの技術によって検出される場合がある。
【0261】
腫瘍特異的抗原は体細胞変異であってもよく、任意の適切な方法で同定することができる。 超並列NGSは、個々のcDNAライブラリーのスクリーニングを必要とせずにネオエピトープを同定するために使用されるかもしれない。全エキソーム/ゲノム配列決定法を用いれば、タンパク質コード領域を変化させる腫瘍特異的な遺伝子変異をハイスループットで迅速に特定でき、ネオエピトープの予測を容易にすることができるだろう。また、細胞表面のMHC分子に結合したペプチドを同定するために、質量分析を用いることもできる。生殖細胞や腫瘍のDNAに対してNGSを行い、がん細胞に特異的なタンパク質変異を同定し、その後、インシリコアルゴリズムによりエピトープを予測するという前方アプローチも可能である。
例えば、腫瘍サンプルは、患者から抽出され(及び/又は短期培養を含む培養)、全エキソームシーケンス(又は他のエクソームシーケンス)により調べ、患者特異的である変異由来のネオエピトープを同定することができる。例えば、患者の腫瘍細胞からDNA及びRNAを抽出し、DNA配列決定のためのエクソーム捕捉を実施してもよい(例えば、Agilentヒト全エキソームSureSelectアッセイを使用する)。RNA-seqライブラリーを調製した(例えば、Illumina mRNA-seqプロトコルを用いて)。ライブラリーは、ヌクレオチドリードを生成するために(例えば、Illumina HiSeq2500で)配列決定されてもよい。RNAリードは、ヒト参照ゲノムに整列され、転写物に組み立てられてもよい(例えば、Bowtie-TopHat-Cufflinks、オープンソースTuxedo Suiteソフトウェア、Trapnell、C. et al.,Nat.Protoc.を使用する)。Protoc.7, 562-578 (2012)).WESデータは、参照ゲノムにマッピングされ(例えば、BWA、Burrows-Wheeler Aligner、http://bio-bwa.sourceforge.net/)、次に体細胞変異を検出するために処理されてもよい(例えば、高感度で特異的な変異呼び出しアルゴリズムであるMuTectを使用、Cibulskis, K. et al.不純物と不均質な癌試料における体細胞点突然変異の感度の高い検出。Nat.Biotechnol.31, 213-219 (2013)).したがって、患者固有の対立遺伝子が決定されてもよい(例えば、Seq2HLAを使用して、Boegel, S. et al. RNA-Seq sequence readsからのHLAタイピング。Genome Med.4, 102 (2012)).同定された変異は、例えばRNA配列データを用いて、腫瘍発現レベルによってさらにフィルタリングされ得る、推定抗原性ペプチド候補であってもよい。候補ペプチド(例えば、8~11文字以上の長さの)は、例えば、インシリコ(例えば、NetMHCpanを使用して、例えば、http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCpan/)で行われるペプチド-MHC結合親和性予測(IC50 nM)によって、ランク付けされてもよい。上記のいずれのソフトウェアも単に例示的なものであり、他のソフトウェアを用いてもよい。
【0262】
ネオエピトープの予測は、ゲノムデータのインシリコ処理に依存し、ドナーのHLAタイプ、腫瘍mRNA発現、生殖細胞DNAおよび腫瘍DNAの知識を使用することができる。全ゲノムマイクロアレイやRNA-seqなどの腫瘍mRNA発現データを腫瘍特異的な癌変異情報と重ね合わせて、転写遺伝子における変異を同定することができる。これらの変異体は、エピトープ予測アルゴリズムにかけられ、個人特異的なHLAアレルに結合する可能性のあるペプチド配列が同定されるかもしれない。SYFPEITHI (Schuler et al. 2007), RANKPEP (Reche et al. 2002), NetMHCpan (Jurtz et al. 2017), NetMHCcons (Karosiene et al. 2012), PickPocket (Zhang et al. 2009), MHCflurry (pre-print, 10.1101/174243), ANN (Singh and Mishra 2008) and SMM (Peters and Sette 2005) など多くの利用できるエピトープ予測アルゴリズムが存在する。このようなアルゴリズムは、異なる予測モデルを採用しているかもしれないが、すべて特徴的なエピトープとMHCの組み合わせを使って訓練されており、その結果、短いペプチド配列が与えられたHLAアレルに結合する可能性を予測することができるようになった。全ゲノム/全エキソームシーケンスデータを使用し、HLA-アレルのタイピング、mRNA発現データ、ペプチド処理予測、野生型および変異ペプチドに対するHLA-アレルの結合を含む解析を統合するバイオインフォマティックパイプラインが作成されています。これらには、pVAC-seq(Hundalら2016)、MuPeXi(Bjerregaardら2017)、Cloudneo(Baisら2017)、TIminer(Tappeinerら2017)などが含まれる場合があります。次世代シーケンシングデータからHLA遺伝子座のアレル特異的コピー数推定を可能にする計算ツール(例えば、LOHHLA、ヒト白血球抗原のヘテロ接合性喪失)を使用することも可能である。
【0263】
本明細書に記載されるmRNAワクチンおよび方法のいずれかにおいて、1つ以上、場合によっては複数(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上など)を単一のmRNA(または複数のmRNA)に組み合わせて、例えば、一緒にコード化してもよい。これらの組み合わされたネオエピトープmRNAは、本明細書に記載されるように、正常に使用され得る。
【0264】
代替的または追加的に、mRNAに基づく腫瘍ワクチン接種は、腫瘍共有抗原、すなわち、異なる患者の多くの腫瘍において過剰発現され、HLAが提示される抗原を含むことができる。
非限定的な実用例
いくつかの例では、本明細書に記載のmRNAワクチン接種方法が腫瘍抗原に対して使用され、マウスの一部において耐久性のある腫瘍退縮及び長期のCD8+T細胞媒介癌免疫をもたらし得ることを示すために、合成遺伝子マウス癌モデルを使用した。
【0265】
例1:腫瘍モデル
【0266】
図2は、マウスに腫瘍細胞株(EG.7)を移植し、腫瘍の成長をモニターした、使用された同系マウスモデルの一例を示す図である。この腫瘍細胞株は、共有の腫瘍特異的抗原であるオバルブミンを発現するように操作された。マウスは、予め設定された腫瘍成長量の後に犠牲にされた。
図2は、本明細書に記載の様々なmRNAワクチン及び治療方法の結果を示す図である。
図2において、陰性対照マウス(G1)は、移植後25日(DPI)までに、事前に設定された腫瘍体積の限界を超えた。対照的に、共有腫瘍特異的抗原のmRNAの皮下注射(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中)、ならびに免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAの腫瘍内注射で治療したマウスでは、腫瘍成長の著しい減速が見られ、同じくアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルと組み合わせた(以下「G5」)。G5を用いた結果と比較すると、腫瘍特異的抗原のmRNAと免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAを含むmRNAワクチンを、アミノ脂質化ペプチド送達ビヒクルで腫瘍内に注入した場合(「G6」)、腫瘍の成長を遅らせるか、または減らすという点で、同様ではあるが、わずかに良い改善が見られました。しかし、驚くべきことに、腫瘍特異的抗原のmRNAと2種類の免疫調節剤(抗CTLA-4とTGF-βの両方)をコードするmRNAを含むmRNAワクチンを、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル(「G7」)で処置した動物では、はるかに大きな生存率が見られました。抗CTLA-4のDNA配列は、SEQ ID NO: 1(重鎖)およびSEQ ID NO: 3(軽鎖)に提供される。TGF-βについての配列例は、SEQ ID NO: 7およびSEQ ID NO: 9に示されている。
図2において、完全長IgG抗CTLA4は、mRNAワクチン中のmRNAによりコードされていた。上記の全ての処理において、免疫賦活剤であるCpGは、mRNAワクチンと一緒に含まれていた。すべての腫瘍内注射に、同じアミノ脂質化ペプトイドが使用された。
【0267】
図2に示すように、腫瘍特異的抗原に対するmRNAを、1つまたは(より好ましくは)より多くの免疫調節剤(aCTLA4およびaTGF-βなど)と組み合わせて腫瘍内に注入すると、mRNAワクチン接種の有効性が劇的に増加した。
【0268】
同様の実験を、異なる腫瘍細胞株(MC38)を使用した同系統マウスモデルを用いて行った。これは
図3に示されている。この例では、MC38腫瘍の配列決定により同定された腫瘍特異的抗原を含むmRNAワクチンと、ネオエピトープが同定された。7つのエピトープが同定され、連鎖して、7つの腫瘍特異的抗原すべてをコードする単一のmRNAを形成した。エピトープの配列は、提示を強化するためにカスタム足場において発現された。
【0269】
図3において、対照動物(「G2」)は、非コード化mRNAおよびCpGを、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルとともに注射された。腫瘍特異的mRNAとアミノ脂質化ペプチドを含むmRNAワクチン(「G7」)の皮下注射は、コントロール動物と比較して、腫瘍増殖に有意な影響を与えなかった。一方、腫瘍特異的mRNAと抗CTLA-4 mRNAの両方をアミノ脂質化ペプチドと組み合わせて腫瘍内に投与した動物(「G9」)では、腫瘍の成長が著しく遅くなるか減少し、したがって生存率も低下しました。最も顕著なのは、腫瘍特異的抗原のmRNAと3つの免疫調節剤(抗CTLA-4とTGF-βと一本鎖IL-12)をコードするmRNAを含むmRNAワクチンを、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル(「G10」は「マルチエフェクターカクテル」を示す)とともに腫瘍内に注入すると、腫瘍増殖が劇的に低下するか減少したことである。この例では、mRNAのワクチン接種もすべてCpGを含んでいた。
【0270】
図4は、合成マウスモデルを用いて、腫瘍内注入のみによる投与を検討した別の実施例の結果を示す。
図7では、腫瘍特異的抗原とアミノリピドペプトイドを単独で用いたmRNAワクチン(「1」)と、腫瘍特異的抗原のmRNAとアミノリピドペプトイドを含むmRNAワクチンに抗CTLA-4とアミノリピドペプトイドを組み合わせたもの(「6」)が比較される。示されるように、単一の免疫調節剤(この場合、抗CTLA-4)の使用は、(例えば、腫瘍の成長を減速または減少させることにより)生存率を劇的に増加させた。
【0271】
図5は、
図4に要約された動物被験者について、腫瘍特異的抗原のmRNA及びアミノリピッド化ペプトイド単独(「1」)の腫瘍内注入(IT)に続いて、抗CTLA-4及びアミノリピッド化ペプトイドと組み合わせた腫瘍特異的抗原のmRNA及びアミノリピッドを含むmRNAワクチン(「6」)と比較する、腫瘍体積に対する時間的影響をグラフ化したものである。動物は通常、腫瘍の体積が3000mm
3 を超えた時点で犠牲になった。腫瘍特異抗原と抗CTLA-4 mRNAとアミノリピッドペプトイドで治療した実質的にすべての動物において、腫瘍成長の遅延を示し、一部は腫瘍体積の減少または阻止を示した。
【0272】
図6は、皮下注射により治療したシンジェニックマウスにおいて同様の結果が得られ、対照「G1」)動物と比較して、約50%の腫瘍の制御(例えば、経時的な腫瘍の成長の防止)を示したことを示す。一方、
図7では、治療マウスに、腫瘍特異的抗原を含むmRNAワクチン2μgと、アミノ脂質化ペプトイドを含む抗CTLA-4 mRNAおよびTGF-B-PDL1 mRNA)を注射し、約80%の腫瘍の制御を示した。すべてのマウスで腫瘍の成長が遅くなり、大半のマウスで時間の経過とともに腫瘍の体積が減少していることが確認された。
【0273】
上記の結果はすべて、対象動物に mRNA ワクチンを複数回投与することを含んでいる。一般に、mRNAワクチンの腫瘍内注射の複数回投与を提供することは有益であり得るが、必要ではない。例えば、注射は、約4日以上間隔を空けてもよい(例えば、隔週で)。いくつかの変形例では、2回またはせいぜい3回の注射のみが使用される。
【0274】
驚くべきことに、上記の実験から、長期生存者であるマウスは、強力かつ持続的なCD8+エフェクターT細胞癌免疫を発達させ、さらなる腫瘍チャレンジに抵抗性であることが観察された。例えば、
図8A及び8Bは、本明細書に記載されるmRNAワクチン接種方法から得られる効率的なT細胞応答を例示する。エリスポットアッセイを、ウェル当たり3x10
5 脾臓細胞で実行し、腫瘍細胞(1x10
6のEG7細胞など)を刺激物として使用した。
図8Aにおいて、陽性対照(OTI)及び陰性対照(#596)からの細胞は、長期生存マウスの2匹(#662及び#670)と比較され、腫瘍曝露に反応してインターフェロンγを分泌するT細胞のカウントを示す。細胞は最後の治療から2ヵ月後に循環血液または脾臓から採取された。
【0275】
図8Bは、このデータを定量化し、有意な応答(使用したオバルブミン腫瘍特異的マーカーに応答するように操作された陽性対照マウス、OTIと同等または優れている)を示している。したがって、本明細書に記載されるように免疫化されたマウスが腫瘍を認識し続けることが観察され、有意に強い持続的な免疫を示し、これらのマウスにおける本明細書に記載される方法の有効性を示し、単一の処置でさえからの長期的効果を示唆した。
実施例2:EG7-OVAリンパ腫モデル
【0276】
この例では、マウスをEG7マウス(EG7-OVAリンパ腫モデル)に腫瘍内(IT)または筋肉内(IM)に注射した。IT注入は両側性で、エフェクターを含むまたは含まないOVA-mRNAが注入された。IT注射は片側注射で、エフェクターを含むまたは含まない同じOVA-mRNAを注射した。表1(
図9に示す)は、抗原mRNA(「OVA」)(群1、2、5、6、7、及び10)又は非コード化抗原mRNA(「非コード化mRNA」)(群3、4 、8及び9)にCpG(群1、3、6及び8)、IL-12(群2、4、7及び9)又は抗原mRNA、非コード化抗原mRNA及びCM-CSGの両方を注射した種々の試験群を示している。群1~10のそれぞれについて、10匹のマウスに注射し、合計3回の注射を行った。初回注入は腫瘍サイズが約75mmに達した4日目に行い、2回目と3回目の注入(ブースト)は初回注入の1週間後と2週間後に行った。対照動物(グループ11および12のマウス)には、送達ビークルまたはmRNAを投与しなかった。腫瘍が1500mm
3以上になった後、または60日後にマウスを犠牲にした。脾臓と血清を調べ、CD8+ T細胞について評定した。
CD8 T細胞応答はフローサイトメトリーで測定した。四量体陽性CD8 T細胞の割合は、治療介入による腫瘍特異的免疫の誘導能力のバイオマーカーとなる。個々のマウスは、チャレンジ後11日目と28日目に採血された。循環末梢血単核細胞(PBMC)の単細胞懸濁液を、1:100に希釈した抗CD3抗体、及び1:100に希釈した抗CD8抗体(Thermo Scientific)中、0.5μg/mLのテトラマー(OVAペプチドを含むH-2Dbテトラマー、SIINFEKL)とともに4℃で30分インキュベートした。細胞は2回洗浄し,2%パラホルムアルデヒドで固定した。Beckman Coulter FC 500フローサイトメーターで少なくとも10万個の細胞を取得し、CXPソフトウェアで解析した。ゲーティングはCD8+細胞で行い、CD3+/CD8+/tetramer+細胞の割合を決定した。
図10A~10Gおよび11A~11Fは、筋肉内注射の結果を示す。OVAペプチド(SIINFEKL)を用いて、循環中のOVA特異的T細胞を測定するために、フローサイトメトリーを使用した。測定は、1回投与後(11日目)および3回投与後(28日目)に、血液から実施した。
図10A~10Gは、11日目、最初の投与後の、上記のような筋肉内(IM)注射の結果を示している。
図10Aは、第6群(OVA+CpG、筋肉内)に対応し、
図10Bは、第7群(OVA+IL-12、筋肉内)に対応し、
図10Cは、第8群(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応し、
図10Dは、第9群(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応し、そして
図10Eは、第10群(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応する。
図10Fおよび
図10Gは、対照を示す。
同様に、
図11A~11Gは、3回目のIM投与後(28日目)のSIINFEKLテトラマーを用いた循環中のOVA特異的T細胞についてのフローサイトメトリー結果を示している。
図11Aは第6群(OVA+CpG、筋肉内)に対応し、
図11Bは第7群(OVA+IL-12、筋肉内)に対応し、
図11Cは第8群(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応し、
図11Dは第9群(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応し、そして
図11Eは第10群(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応する。
図11Fは、対照群を示す。
図10A~10Gおよび11A~11Fに示すように、エフェクター単独では、腫瘍特異的CD8+T細胞集団の強固な拡大を促進しなかった(例えば、
図10C~10Dおよび11C~11Dを参照)。しかしながら、抗原を、免疫調節剤(例えば、IL-12のような炎症性サイトカイン)および/またはCpGのような免疫刺激剤と組み合わせた場合、例えば、同じ送達ビークルにおいて抗原および免疫調節剤のmRNAを組み合わせることによって、循環CD8+T細胞の約25%が、28日目に腫瘍特異的であった。この例では、IL-12とCpGの両方が、腫瘍特異的なCD8 T細胞の同様の拡大を示した。
図12A~12G及び13A~13Fは、腫瘍内(IT)注射の結果を示す。OVAペプチド(SIINFEKL)を用いて、循環中のOVA特異的T細胞を測定するために、フローサイトメトリーを使用した。測定は、1回投与後(11日目)及び3回投与後(28日目)、血液から行った。
図12A~12Gは、11日目、1回目の投与後の、上記のような腫瘍内注入の結果を示している。
図12Aは、群1(OVA+CpG、筋肉内)に対応し、
図12Bは、群2(OVA+IL-12、筋肉内)に対応し、
図12Cは、群3(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応し、
図12Dは、群4(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応し、
図12Eは、群5(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応する。
図12Fおよび
図12Gは、対照を示す。
【0277】
図13A~13Gは、3回目のIT投与後(28日目)のSIINFEKLテトラマーを用いた循環中のOVA特異的T細胞についてのフローサイトメトリー結果を示す図である。
図13Aは、第1群(OVA+CpG、筋肉内)に対応し、
図13Bは、第2群(OVA+IL-12、筋肉内)に対応し、
図13Cは、第3群(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応し、
図13Dは、第4群(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応し、
図13Eは、第5群(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応している。
図13Fは、対照(未処置)群を示す。
【0278】
図13A~13B及び13Eに示すように、抗原と、炎症性サイトカイン(例えば、IL-12)又はCpGなどの免疫調節剤とを組み合わせた腫瘍内(IT)注射は、筋肉内(IM)注射と比較して、より強い腫瘍特異的CD8応答をもたらした。例えば、腫瘍特異的抗原と炎症性サイトカイン(例えば、IL-12)を同じ送達ビークル上で組み合わせて腫瘍内に注射すると、筋肉内に注射した同じ組成物よりも強固な応答が得られた。腫瘍抗原mRNAと免疫調節剤または免疫賦活剤(同じ送達ビヒクルと一緒に組み合わせた)の使用は、28日目に循環CD8+ T細胞の約25%が腫瘍特異的であることをもたらした。この例では、免疫賦活剤(CpG)および免疫調節剤(炎症性免疫調節剤、IL12)の両方が、腫瘍特異的CD8 T細胞の同様の拡張をもたらした。筋肉内注射および腫瘍内注射の両方について、エフェクター(例えば、免疫調節物質、免疫刺激物質など)単独では、
図13Cおよび13DのIT注射について示されるように、腫瘍特異的CD8+T細胞集団の強固な拡大を駆動しなかった。
例3:腫瘍の移植・治療・サーベイランス
【0279】
また、腫瘍特異的抗原mRNAと同じ免疫調節物質mRNA(例えば、IL-12のような炎症性免疫調節物質)または免疫抑制物質(例えば、CpG)を組み合わせた腫瘍内注入の治療用途も動物モデルで検討された。
【0280】
8週齢の雌のC57BL/6マウス10匹のグループに、PBS中の1×105 EG.7腫瘍細胞を右脇腹に皮下(s.c.)にチャレンジさせた。実験の期間中、腫瘍の成長をノギスで2次元的に週2~3回モニターした。腫瘍の体積が1,500 mm3を超えたとき、または潰瘍ができたときにマウスを安楽死させた。腫瘍内注射と筋肉内注射の両方が行われた。例えば、20ul中にmRNAを配合した2μgのナノ粒子による腫瘍内治療ワクチン接種が、腫瘍チャレンジ後の7、14、および28日目に注入された。6つのバリエーションが用いられた。(1) 腫瘍特異抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNA;(2) 腫瘍特異抗原(OVA)mRNA、免疫調節物質(IL-12)mRNAおよび第2の免疫調節物質(GM-CSF)mRNA;(3) 腫瘍特異抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNA。(3) 腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫賦活剤(CpG); (4) 免疫賦活剤(IL-12)mRNAのみ(腫瘍抗原mRNAなし); (5) 免疫賦活剤(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAなし);および (6) PBS.同じ6つのバリアントを、腫瘍内と筋肉内の両方の実験で調べた。筋肉内注射については、腫瘍チャレンジ後7、14、28日目に、2ugのナノ粒子製剤化RNAを20ulに配合した治療ワクチンも実施した。これらの実験では治療に関連した毒性は認められず、腫瘍の成長は60日間モニターされた。
【0281】
図14は、上記の6つのバリエーションのうちの1つを筋肉内(IM)注射で処理した場合の、腫瘍注射後の生存確率に関する結果をまとめたものである。示されるように、対照動物は、免疫賦活注射(CpG)だけで処置された動物と同様に、40日目までに全て死んだ。60日目(終点)までに生存する確率は、腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫賦活剤(CpG)で免疫した動物が最も高く、次いで免疫賦活剤(IL-12)mRNA単独(腫瘍抗原mRNAを含まない)であった。そして、腫瘍特異抗原(OVA)mRNA、免疫調節物質(IL-12)mRNA、第2の免疫調節物質(GM-CSF)mRNA、腫瘍特異抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAの順で免疫しました。
【0282】
図15は、上述したこれらと同じ変形例の腫瘍内注入の結果を示す。この例では、コントロール(PBS)または免疫調節剤(IL-12)mRNA単独(腫瘍抗原なし)のいずれかで免疫された腫瘍を有する動物は、40日まで生存しなかった。腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫調節物質(IL-12)mRNAで免疫した動物の全生存率が最も高く(40%)、次いで腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA、免疫調節物質(IL-12)mRNAで免疫した動物、そして第2の免疫調節物質で免疫した動物でした。と第二の免疫調節物質(GM-CSF)mRNAで免疫した動物(30%)、そして腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫調節物質(CpG)または免疫調節物質(CpG)単独(腫瘍抗原mRNAなし)で免疫した動物(ともに20%)であった。
【0283】
図16~
図20は、上記で検討した筋肉内投与群のそれぞれについて、腫瘍体積の経時的変化を示すグラフである。例えば、
図16は、コントロール(未処理)PBS溶液、または腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレータ(CpG)を含むナノ粒子組成物のいずれかを注射したマウスの腫瘍の経時的な腫瘍体積の変化を示すグラフである。腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)を組み合わせたものを注射したマウスは、有意な腫瘍量を示さなかった(例えば、腫瘍が成長しなかった)か、または腫瘍の成長がより緩やかであった。
【0284】
図17は、対照溶液(PBS)、または腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAの両方を含む送達ビークルのいずれかを筋肉内(IM)に注射したマウスの腫瘍の経時的体積の変化を示している。
図17に示すように、いくつかの腫瘍は成長せず、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAで処置したマウスの腫瘍の大部分は、よりゆっくりと成長した。
図18は、腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)を筋肉内注射したマウスと、免疫シミュレーター(CpG)単独(腫瘍抗原mRNAを含まない)を注射したマウスの腫瘍体積の変化を示している。これら2つのグループの間では、経時的な腫瘍体積にかなりのオーバーラップが見られる。
図19は、送達ビヒクル中に腫瘍特異抗原(OVA)mRNA+免疫調節因子(IL-12)mRNAを含むナノ粒子組成物を筋肉内注射して治療したマウスと、免疫調節因子(IL-12)mRNA単独(腫瘍抗原mRNAを含まない)を含むナノ粒子組成物の間の腫瘍量の時間的変化を示す図である。
【0285】
図20は、腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)のいずれか、または免疫シミュレーター(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)によって筋肉内(IM)に注入されたマウスの腫瘍体積の比較である。いくつかの実験では、同じ動物に複数の誘発腫瘍が含まれることがあり、そのうちのいくつかは、同じ動物において、腫瘍内注射によって治療される(「近位」腫瘍)か、または未治療(「遠位」)であることがある。
図21は、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAの腫瘍内注射を受けた腫瘍のいずれかについて、腫瘍内注射を受けなかった同じ動物における腫瘍と比較した、腫瘍体積の変化を示す図である。
図22は、同じ動物からの近位腫瘍、に免疫調節剤(IL-12)mRNA単独(腫瘍抗原mRNAなし)を注射した場合の、近位腫瘍と遠位腫瘍の間の腫瘍体積の変化を示す。
図23はまた、腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)を注射した同じ動物の治療済み(近位)マウスと未治療(遠位)マウスの腫瘍体積の変化を示している。近位腫瘍は腫瘍内への注射を受け、遠位腫瘍は同じ動物であったが、送達ビヒクルおよびCpGを含むOVA mRNAの腫瘍内注射を受けなかった。腫瘍特異抗原(OVA)mRNAと免疫シミュレーター(CpG)で処理した腫瘍の一部は、遠位(注射していない)腫瘍と比較して、よりゆっくりと成長するか、成長しなかった。
図24において、腫瘍内注射(この例では:免疫シミュレータ(CpG)単独)を受けた近位腫瘍の大部分は、成長が遅くなった、または反転したが、遠位腫瘍の大部分は同じマウスで成長を継続した。
図25は、
図16~
図24に関連するデータの結果をまとめた表(表2)である。示されるように、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAおよび免疫調節物質(IL-12)mRNAの両方を含む送達ビヒクルの腫瘍内注入は、遠位腫瘍効果(50%の)を維持しながら、注入された腫瘍の最も強固な応答率(例えば、70%)を有していた。これらの動物における近位(注入)および遠位(非注入、近位と同じ動物)の両方の全体の応答は、約40%であった。同じアッセイで、免疫調節物質(例えば、炎症性サイトカイン、IL-12)だけでは、反応率に有意な効果は見られなかった。免疫賦活剤、CpGを添加した腫瘍特異抗原(OVA)mRNAでも効果が見られた(例えば、近位腫瘍の応答率50%、遠位腫瘍の応答率50%など)。腫瘍特異抗原(OVA)mRNA+免疫賦活剤(CpG)に対する近位腫瘍、遠位腫瘍の総合奏効率は約20%であった。CpG単独の腫瘍内注入は効果が小さい(例えば、近位腫瘍30%、遠位腫瘍20%、全体20%)。
【0286】
本明細書で使用する場合、反応とは、エンドポイント腫瘍体積に到達した際の対側腫瘍の 腫瘍体積と比較して5%未満のエンドポイント腫瘍体積のことである。例えば、同じマウスの2つの腫瘍のうちの1つがエンドポイント体積に達し(例えば、腫瘍1が1500mm3 )、対側の腫瘍(腫瘍2)が75mm3 しかない場合、それは腫瘍2における反応とみなされる。
【0287】
実験4:MC38結腸癌皮下腫瘍
MC38結腸癌腫瘍を試験動物(マウス)に樹立し、ナノ粒子を投与して、腫瘍特異的抗原非存在下を含むエフェクター(免疫調節物質、免疫賦活物質など)の効果を測定した。腫瘍を移植してから6日目と10日目に、免疫調節物質と免疫賦活mRNAを配合したナノ粒子で腫瘍を治療した。ナノ粒子は、1つ以上の免疫調節剤、免疫刺激剤および/または腫瘍特異的抗原を含む送達ビヒクルである。例えば
図26~28は、非コードRNA対照、分泌LIGTH(例えばTNFRSF14)、ネイティブLIGHT、免疫調節物質GM-CSF、および/または免疫調節物質(例えば炎症性サイトカインIL-12)を含むナノ粒子の、誘導MC38腫瘍およびそのような腫瘍を有するマウスに対する効果を示している。注射された動物は、免疫調節剤および/または免疫刺激剤によって誘導された腫瘍微小環境の変化について、腫瘍および腫瘍排出リンパ節を分析した。LIGHTは、CD258とも呼ばれる腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)を指し、本明細書に記載の免疫調節因子の別の例である。
【0288】
プロトコルの一部として、5~10匹の8週齢の雌のC57BL/6マウスのグループに、PBS中の1×10
5 MC38腫瘍細胞を右脇腹に皮下投与(s.c.)するチャレンジを実施した。20 ul中の2 μgのナノ粒子製剤化RNAによる腫瘍内治療ワクチン接種を、腫瘍チャレンジ後7日目および11日目に行った。試験された組成物は、免疫調節物質(例えば、炎症性サイトカイン、IL-12)mRNA、GM-CSF免疫調節mRNA、免疫調節分泌LIGHT mRNA、免疫調節ネイティブLIGHT mRNA、およびコントロールPBSのナノ粒子を含んでいた。腫瘍は、腫瘍排出リンパ節と同様に、マウスの予定された安楽死後に採取された。フローサイトメトリー分析 腫瘍の免疫細胞浸潤と免疫活性化をフローサイトメトリーで評価した。治療に関連する毒性は認められなかった。腫瘍の成長を 60 日間モニターした。
図26は、MC38腫瘍細胞の腫瘍体積に対する様々な免疫調節剤(例えば、エフェクター)の効果を示す図である。
図26において、コントロール(非コード化mRNA)、または免疫調節剤(分泌型LIGHT、LIGTH、GM-CSF、またはIL-12)のいずれかを含む送達ビヒクルの腫瘍内注入の効果は、D1およびチャレンジ後7日目に示される。IL-12グループ(グループ6)は、コントロールと比較して差異を示した。
図27に示すように、IL-12を含む腫瘍内注射によって処置された動物からの腫瘍において、CD8 T細胞頻度の増加があった。この例では、腫瘍チャレンジ後7日目のCD4とCD8の両方に陽性な生T細胞の頻度は、IL-12を含む送達ビークルを腫瘍内注入した腫瘍で有意に大きかった。一般に、IL-12を腫瘍内注入した後の抗原提示細胞は、
図28に示すように、7日目までに他の免疫調節剤およびコントロールと比較して、単球、B細胞、樹状細胞およびマクロファージで有意な増加が見られた。したがって、IL-12のような炎症性サイトカインは、腫瘍内に注射された場合(そして上記に示すように、特に腫瘍特異的抗原と同じ送達ビークルで結合された場合)、他の免疫調節剤と比較しても抗腫瘍応答を増強することが見いだされた。
【0289】
実施例5:C3.43腫瘍細胞
C3.43は、HPV16で形質転換した腫瘍モデルです。C3.43腫瘍には、腫瘍特異的抗原(HPV16オンコプロテインE6およびE7)を使用することができます。このモデルは、炎症性サイトカイン(例えば、IL-12)のような(これらに限定されない)1つ以上の免疫調節因子mRNAと同じ送達ビークルで結合した腫瘍特異的抗原mRNAの有効性を示すためにも使用された。8週齢の雌のC57BL/6マウス10匹のグループに、PBS中の5×105 C3.43腫瘍細胞を右脇腹からs.c.チャレンジした。実験の期間中、腫瘍の成長をノギスで1週間に2~3回、3次元的にモニターした。腫瘍の体積が1,500 mm3 を超えたとき、または潰瘍ができたときにマウスを安楽死させた。腫瘍チャレンジ後18日目、25日目、32日目に、20μl中の2μgのナノ粒子製剤化RNAによる腫瘍内治療ワクチン接種を行った。6種類のナノ粒子製剤が検討された。(1) 腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAと免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA;(2) 腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNAと第1の免疫調節物質(LIGHT)mRNAと第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA;(3) 腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNAと第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインALM)mRNA(3)腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNAおよび免疫賦活剤(CpG);(4)免疫賦活剤(炎症性サイトカインIL-12)mRNA;(5)第1の免疫賦活剤(LIGHT)mRNAおよび第2の免疫賦活剤(炎症性サイトカインIL-12)mRNA;(6)免疫賦活剤(CpG);(7)コントロール(PBS)。また、第一のナノ粒子溶液である腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7) mRNAに免疫調節因子(炎症性サイトカインIL-12) mRNAを加えたものを筋肉内注射した。治療に関連する毒性は認められなかった。腫瘍の成長は 60 日間モニターされた。
【0290】
図29は、本明細書に記載されるようなナノ粒子組成物の効果を調べるために使用され得る研究タイムラインの一例を示している。このタイムラインは、上記の実施例2~4に記載された実験に使用されるものと同様である。マウス(例えば、C57BL6雌マウス、6~8週齢)は、0日目に、100μL HBSS中の1x10
5 腫瘍細胞(この例では、C3.43腫瘍細胞など)を右後肢にs.cによって片側チャレンジさせる。投与注射は、右後肢またはITに片側i.m.で行った。10群について、n=10マウス/群。マウスは、腫瘍の成長、有意な体重減少(毎週測定)、および苦痛の外見的徴候(人道的エンドポイント)についてモニターされた。
【0291】
図30A~30Fはそれぞれ、
図29に示すようなプロトコルを用いて、上記のナノ粒子溶液の1つを腫瘍内注入した個々の腫瘍の結果を示している。例えば、
図30Aは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを有する腫瘍特異抗原(HPV16 E6E7)mRNAを含む第1のナノ粒子溶液のC3・43腫瘍における腫瘍内注入の効果を示し、調べた腫瘍のほぼ全てについて平均腫瘍体積の減少を示した。
図30Bは、腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNA、第1の免疫調節物質(LIGHT)mRNAおよび第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを含む第2のナノ粒子溶液の腫瘍内注入の効果を示し、平均腫瘍体積がほぼ完全に減少していることを示す。
図30Cは、第3のナノ粒子溶液、腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNA、及び免疫賦活剤(CpG)の効果が小さくなっていることを示す。
【0292】
図30Dは、腫瘍特異的抗原を含まない免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを含むナノ粒子溶液の平均腫瘍体積に対する腫瘍内注入の効果を示す図である。
図30Eは、第1の免疫調節物質(LIGHT)mRNAおよび第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを含むナノ粒子溶液の平均腫瘍体積に対する腫瘍内注入の効果を示す(再び、腫瘍抗原を含まない)。
図30Fは、免疫賦活剤(CpG)だけの場合の平均腫瘍体積に対する腫瘍内注入の効果を示す図である。
図31A及び
図31Bは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを有する腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAを含む第1のナノ粒子溶液の筋肉内注射の結果を示す図である。同じ組成の腫瘍内注入とは対照的に、筋肉内注入は、平均腫瘍体積の減少をもたらさなかった。
図31Bは、対照処理(例えば、PBS)の結果を示し、平均腫瘍体積の時間依存的な増加を示している。
図32は、上記の様々なナノ粒子組成物についての生存確率の比較である。腫瘍抗原(例えば、このモデルにおけるHPV16 E6E7)と少なくとも1つの免疫調節剤、特にIL-12のような炎症性サイトカイン免疫調節剤、またはLIGHTのような第2の免疫調節剤を有するIL-12の両方を含むナノ粒子は、腫瘍内に注射されると、完全、またはほぼ完全な生存を示した。腫瘍抗原とIL-12の同じ組み合わせの筋肉内注射は、60日以上の生存をもたらさなかった。
【0293】
本明細書に記載された様々なナノ粒子組成物に対するCD8 T細胞応答を検討した。HPV16 E7(49-57)ペプチドを含むH-2Dbテトラマーを使用した。個々のマウスを、チャレンジ後39日目に採血した。循環末梢血単核細胞(PBMC)の単細胞懸濁液を、0.5μg/mLテトラマー、1:100希釈抗CD3抗体、及び1:100希釈抗CD8抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、2%パラフォルムアルデヒドで固定した。Beckman Coulter FC 500フローサイトメーターで少なくとも10万個の細胞を取得し、CXPソフトウェアで解析した。ゲーティングはCD8+細胞で行い、CD3+/CD8+/テトラマー+細胞のパーセンテージを決定した。テトラマー陽性のCD8 T細胞の割合は、治療介入による腫瘍特異的免疫の誘導能力を示すバイオマーカーとなる。
図33は、結果をグラフ化したものであり、腫瘍抗原(この例では、HPV16 E6E7)が免疫調節剤又は免疫刺激剤とナノ粒子で結合された腫瘍内注入ナノ粒子が、マウスからかなりの割合のCD3+/CD8+/テトラマー+細胞を同定したことを表している。テトラマー陽性のCD8 T細胞の割合は、治療介入による腫瘍特異的免疫の誘導能力を示すバイオマーカーとなる。
図33において、開いた円は、3回目の注射時に腫瘍が小さいか、または全く存在しなかった腫瘍を表し、これは、第1および第2のナノ粒子溶液の両方で発生したものである。
図37に示すように、腫瘍抗原mRNAと免疫調節剤(例えば、IL-12またはLIGHT付きIL-12)または免疫賦活剤(例えば、CpG)の両方を有するナノ粒子は、循環中の腫瘍特異的T細胞の強固な活性化をもたらした。
【0294】
mRNA処理ナノ粒子の製造(例:作製、合成)方法
本明細書に記載されるmRNA治療のいずれか(mRNA治療ナノ粒子のいずれかを含む)は、クローズドパスシステムを使用して作製されてもよい;クローズドパスシステムは、mRNA治療ナノ粒子(例えば、mRNAワクチン)を迅速かつ正確に合成するために、密封され、無菌で閉じた環境において操作されてよいバイオチップ(例えば、マイクロ流体パスデバイス)、含む場合がある。例えば、本明細書に記載されるのは、mRNA治療薬を製造するための方法および装置(例えば、システム、デバイスなど)である。つの非限定的な例では、本明細書に記載される方法および装置は、皮膚T細胞リンパ腫において活性な癌特異的抗原に対する治療用mRNA治療ナノ粒子を製造するために使用され得る。 したがって、一般に、本明細書に記載されているのは、ポイントオブケアで任意に展開されるmRNA療法のための自動化された高収率の製造方法である。
【0295】
例えば、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通するように固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むクローズドパスシステムを用いてmRNA処理ナノ粒子組成物を製造する方法であって、該方法は、以下を含む。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉じた流体経路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスにおいて、DNAテンプレートの形成、テンプレートからの治療mRNAのインビトロ転写、治療mRNAの精製およびmRNAと送達ビークルとの結合という工程のそれぞれを実行し、さらに、試薬の輸送を実行すること。
【0296】
1つ以上のマイクロ流体経路デバイス(ここで、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスは、複数のリアクターを含む)と密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含む閉経システムを使用してmRNA処理ナノ粒子組成物を製造する方法は、以下を含むことができる。テンプレート前駆体材料を1つ以上の貯蔵デポから複数の反応器の第1の反応器領域に送達し、テンプレート前駆体材料を処理してテンプレート前駆体材料からテンプレートを調製すること;テンプレートを複数の反応器の第2の反応器領域に移送し、インビトロ転写によってテンプレートを処理して治療用mRNAを形成すること;を含み得る。および、治療用mRNAを複数の反応器の第3の反応器領域に移送し、治療用mRNAを処理して送達ビヒクルと組み合わせ、mRNA治療用ナノ粒子組成物を形成し、テンプレート前駆体材料および送達ビヒクルを含む材料が、保管庫から複数の反応器内に大気接触なしで送達される、ことを特徴とする、複数の反応器。
【0297】
mRNA処理ナノ粒子(本明細書では一般にmRNA処理ナノ粒子組成物と呼ぶ)を製造する方法は、1つ以上のマイクロ流体パスデバイスと密閉流体連通している複数の貯蔵デポを含むクローズドパスシステム(例えば。ここで、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスは、複数のリアクターを含む)を含み得る。テンプレート前駆体材料を1つまたは複数の貯蔵デポから複数の反応器の第1の反応器領域に送達し、テンプレート前駆体材料を処理してテンプレート前駆体材料からテンプレートを調製するための流体流れの誘導;テンプレートを複数の反応器の第2の反応器領域に移送し、インビトロ転写によってテンプレートを処理してmRNAを形成させること;を含むことができる。mRNAを複数の反応器の第3の反応器領域に移送し、mRNAを処理して送達ビヒクルと結合させてmRNA処理ナノ粒子組成物を形成すること;及び1つ以上の貯蔵デポのmRNA生成物デポを移送することであって、材料が貯蔵デポからマイクロ流路デバイスの反応器にサブマイクロリットル精度で、かつ大気接触なしに送達される、ことを特徴とする。本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、プロセスのいずれかが空気圧で実行されてもよく、例えば、流体の流れが空気圧で誘導されてもよく、流体が空気圧で移送されてもよい。代替的に又は追加的に、流体は、機械的、油圧的等によって駆動されてもよい。
【0298】
これらの方法(及びそれを実行するための装置)のいずれにおいても、クローズドパスシステムは、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達用ビークルに結合する工程のための部品を自動的にかつ連続的に実行することができる。クローズドパスシステムは、テンプレートを形成すること、テンプレートから治療用mRNAのin vitro転写を行うこと、治療用mRNAを精製すること、及びmRNAを送達用ビークルと結合することの性能を空気圧で制御してもよい。いくつかの変形例では、クローズドパスシステムは、1つ以上のマイクロ流路デバイス内の1つ以上の膜を偏向させることによって、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビークルと結合させる工程の性能を空気圧的にコントロールする。
【0299】
本明細書に記載される方法及び装置のいずれも、病院、診療所等のケアの現場で設定され、動作するように構成されてもよい。これにより、即時/オンデマンドで、患者に特異的な治療薬を特定の患者にカスタム製造することができる場合がある。代替的または追加的に、特定の患者に特異的でない治療分子は、「患者個別化」の方法で送達ビヒクルと共に製剤化されてもよい。本明細書に記載された方法および装置のため、これらの方法のいずれかを非常に迅速に実行することができる。例えば、クローズドパスシステムは、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのin vitro転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、およびmRNAを送達ビヒクルと結合する工程を5日未満で自動的に連続的に実行することができる。あるいは、あらかじめ作成したテンプレートを入力として、残りの工程をより短時間で行うことも可能である。
【0300】
mRNAを送達ビヒクルと組み合わせること(治療薬を処方すること)は、mRNA治療ナノ粒子組成物を精製するために、1つ以上のマイクロ流路装置内で透析することをさらに含んでいてもよい。
【0301】
これらの方法のいずれかが、1つ以上のマイクロ流路デバイス上でmRNA治療用ナノ粒子組成物を濃縮すること、及び/又は治療薬を透析することをさらに含んでもよい。任意の適切な送達ビヒクルが使用されてもよく、例えば、両親媒性送達ビヒクル分子が含まれる。例えば、両親媒性送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドから構成されてもよい。代替的または追加的に、本明細書に記載の方法および装置のいずれかにおいて、mRNAは予め作製され、ある時間(例えば、約10℃、約4℃、0℃、-10℃など)保存されてもよい。例えばこれらの方法およびそれらを実行するための装置のいずれかが、個別にまたは集合的に(例えば、約2、3、4、5、6などまたはそれ以上の個別の治療用mRNAが組み合わされ、)一緒にカプセル化されてmRNA治療ナノ粒子組成物を形成してもよい治療用mRNAのライブラリーを含んでもよい。本明細書に記載されるように、mRNA治療ナノ粒子組成物は、したがって、オンデマンドで製造されてもよく、単一または複数のmRNA治療ナノ粒子組成物「カクテル」においてジャストインタイムで製剤化されてもよい。また、本明細書には、テンプレート(例えば、DNAテンプレート)を形成するための方法が記載されている。例えば、マイクロ流路デバイスと密封流体連通する複数の貯蔵デポを含むクローズドパスシステムを使用してin vitro転写用の合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法は、以下を含むことができる。目的の合成遺伝子と合成体外転写促進剤カセットとを結合させて合成環状結紮産物を作成すること;未反応の目的の合成遺伝子および未反応の合成体外転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から遠ざけること;を含むことができる。環状結紮物を増幅して、分岐または環状増幅DNAを生成する工程;および分岐増幅DNA結紮物を線形化して二本鎖DNAテンプレートを生成する工程であって、接合、除去、増幅および線形化の各工程が、マイクロ流路デバイス内でクローズパス方式により行われる、工程。
【0302】
例えば、in vitro転写のための合成二本鎖DNAテンプレートを製造する高効率で自動化された方法は、以下を含むことができる:各々を空気圧で送達すること。目的の合成遺伝子と合成体外転写促進剤カセットを、マイクロ流体経路装置と流体連通している複数の貯蔵デポのうちの1つ以上の貯蔵デポから、マイクロ流体経路装置のライゲーションリアクターに送り、目的の合成遺伝子と合成体外転写促進剤カセットを接合して合成循環ライゲート生成物を作製するステップと複数の貯蔵所のうちの1つまたは複数の貯蔵所から1つまたは複数のエキソヌクレアーゼ剤をライゲーションリアクターに空気圧で導入し、未反応の関心対象の合成遺伝子および未反応の合成体外転写促進剤カセットを合成円形結紮産物から離して未反応物を除去するステップと合成円形結紮産物をマイクロ流路デバイスの多重置換増幅(MDA)リアクターに空気圧で送り、円形結紮産物を増幅するための1つ以上の増幅剤と組み合わせて、分枝状または円形の増幅DNAを生成すること。分岐増幅されたDNAライゲーション生成物をマイクロ流路デバイスの消化リアクターに空気圧で移送し、分岐増幅されたDNAライゲーション生成物を線形化して二本鎖DNAテンプレートを生成し、ライゲーションリアクター、MDAリアクター、消化リアクターおよび複数の貯蔵デポがクローズパスおよび密閉環境を形成している、方法。
【0303】
mRNA処理ナノ粒子組成物のための合成二本鎖DNAテンプレートを製造する方法(1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密封流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含む閉経路システムを使用)は、以下を含むことができる。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉じた流体経路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスにおいて:治療mRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを形成するステップを含む。
【0304】
一般に、本明細書に記載される方法及び装置は、細菌DNAを含まない及び/又はエンドトキシンを含まない二本鎖DNAテンプレートを生成してもよい。本明細書に記載されるテンプレート生成方法及び装置は、細菌培養を伴わない場合がある。さらに、本明細書に記載されるように製造された治療用mRNAは、細菌ポリヌクレオチドを使用せずにテンプレートから合成されてもよい。したがって、本明細書に記載される方法のいずれかは、細菌DNAを使用することなく、及び/又はエンドトキシンから分離された治療用mRNAを製造する方法であってもよい。特に、本明細書に記載されるのは、細菌DNA及び/又はエンドトキシンを含まない二本鎖DNAテンプレートを製造する方法である。本明細書に記載される方法のいずれもが、無菌製造方法であってもよい。
【0305】
これらの方法のいずれもが、合成体外転写促進剤カセットをタイプIIS制限酵素で消化することを含んでもよい。結合することは、DNAリガーゼでライゲーションすることを含んでもよい。除去することは、線状DNAをエキソヌクレアーゼで消化することを含んでもよい。エキソヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼVを含んでもよい。 増幅は、多重置換増幅(MDA)を含んでもよい。増幅することは、Φ29DNAポリメラーゼで増幅することを含んでもよい。増幅は、分岐した増幅DNAを生成することを含んでもよい。
【0306】
線状化は、タイプIIs制限酵素で消化することを含んでもよい。直鎖化することは、BsaI制限酵素で消化することを含んでもよい。目的の合成遺伝子は、直鎖状であってもよい。いくつかの変形例では、合成in vitro転写促進剤カセットは、プロモーター;5'UTR;切断可能なリンカー;3'UTR;および少なくとも約200個のアデニン残基または約200個のチミジン残基が並んでなるポリA領域をコードする部分を含む二鎖DNAテンプレートから構成される。ポリA領域をコードする部分は、少なくとも約300bpsの長さであってよい。いくつかの変形例では、ポリA領域をコードする部分は、少なくとも約350bpsの長さであってよい。
【0307】
目的の合成遺伝子は、T細胞受容体の少なくとも一部を構成していてもよい。目的の合成遺伝子は、相補性決定領域(CDR)を含んでいてもよい。
【0308】
インビトロ転写促進剤カセットは、長さが2kb未満であってもよい。インビトロ転写促進剤カセットは、長さが1kb未満であるかもしれない。インビトロ転写促進因子カセットは、長さが約700塩基対未満であってもよい。合成体外転写促進因子カセットは、抗生物質耐性遺伝子をコードしていない場合がある。
【0309】
合成環状ライゲーション産物は、複製起点(ORI)を持たない場合がある。in vitro転写促進カセットは、複製起点(ORI)を持たない場合がある。前述のように、本明細書に記載される方法のいずれかの工程は、クローズドパス微小流路デバイス内及び/又は閉鎖系内で実行されてもよい。工程は、クローズドパスマイクロ流体パスデバイス内で行われてもよく、接合ステップは、増幅ステップとは異なるモジュール(例えば、異なるマイクロ流体パスデバイス)内で行われてもよく、増幅ステップは、線形化ステップとは異なるモジュール内で行われる。これらの方法のいずれもが、1つまたは複数のマイクロ流路デバイスの閉じた経路において、テンプレートを精製することを含み得る。
【0310】
また、本明細書では、本明細書に記載のクローズドパス法および装置を用いてin vitro転写を行う方法についても説明する。例えば、クローズドパスシステムを使用してインビトロ転写(IVT)反応を行う方法(例えば。1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含む)は、1つ以上のマイクロ流体経路デバイス内のテンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行うために、複数の貯蔵デポのうちの1つ以上の貯蔵デポと、大気中の接触から保護されている閉鎖流路の1つ以上のマイクロ流体デバイス上の複数のリアクタの間で試薬を搬送することを含み得る。
【0311】
体外転写(IVT)反応を実行する方法は、以下を含み得る。DNAテンプレート、ポリメラーゼ、およびヌクレオチドを、マイクロ流体経路デバイスの第1の反応器に、マイクロリットル以下の精度で計量された量で複数の貯蔵デポから自動的に供給すること;第1の反応器でテンプレート材料およびヌクレオチドを処理して治療mRNAを形成すること;および治療mRNAをマイクロ流体経路デバイスを通して第1の反応器から空気圧で移送し、ここで第1のマイクロ流体経路デバイスおよび複数の貯蔵デポが閉鎖経路および密封環境を形成して大気への曝露を防止することを含む。
【0312】
クローズドパスシステムは、自動的かつ連続的に動作することができる。クローズドパスシステムは、鋳型からの治療用mRNAのin vitro転写の性能を空気圧で制御してもよい。
【0313】
これらの方法のいずれもが、1つ又は複数のマイクロ流体デバイスにおいて治療用mRNAを精製することも含み得る。試薬を輸送することは、試薬を複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスの第1のリアクターに輸送することを含んでもよい。
【0314】
また、本明細書には、治療用mRNAを製剤化する(例えば、送達ビヒクルと組み合わせる)方法が記載されている。例えば、mRNA治療用ナノ粒子組成物を製造する方法(例えば。1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密封流体連通するように固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むクローズドパスシステムを用いて)、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて治療用mRNAを送達ビークルと組み合わせることによりmRNA治療ナノ粒子組成物を処方するために、大気との接触から保護されている閉鎖流路で複数の貯蔵デポの1つ以上と1つ以上のマイクロ流体デバイス上の複数のリアクタの間で試薬を搬送することを含む場合がある。クローズドパスシステムは、mRNAと送達ビヒクルとを自動的にかつ連続的に結合させてもよい。クローズドパスシステムは、mRNAを送達媒体と結合させることを空気圧で制御してもよい。例えば、クローズドパスシステムは、1つ以上のマイクロ流路デバイス内の1つ以上の膜を偏向させることによって、mRNAを送達ビークルに結合させることを空気圧的に制御してもよい。
【0315】
mRNAを送達ビヒクルと組み合わせることは、mRNA処理ナノ粒子組成物を精製するために、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスにおいてmRNA処理ナノ粒子組成物を透析すること、及び/又は1つ以上のマイクロ流体経路デバイスにおいてmRNA処理ナノ粒子組成物を濃縮することをさらに含んでもよい。
【0316】
例えば、本明細書に記載されるのは、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて、mRNAを製造する方法である。これらの方法のいずれかが、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートからmRNAのインビトロ転写を行う工程、及びmRNAを精製する工程のうちの1つ以上を行うために、複数の貯蔵デポのうちの1つ以上の貯蔵デポと1つ以上のマイクロ流体デバイス上の複数のリアクターとの間で試薬を大気的接触から保護されている閉鎖流路で搬送することを含むことができる。
【0317】
1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通するように固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法は、以下を含むことができる。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉鎖流体経路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスにおいて、以下の工程のうちの1つまたは複数を実行する:鋳型を形成し、鋳型から治療用mRNAのインビトロ転写を行い、治療用mRNAを浄化し、mRNAを送達媒体と製剤化すること。
【0318】
1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通するように固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法は、以下の工程の1つ以上を1つ以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて実行するために、複数の貯蔵デポの1つ以上の貯蔵デポと、大気接触から保護されている閉鎖流路の1つ以上のマイクロ流体デバイス上の複数のリアクター間で試薬を搬送することを含むことができる:以下の工程のうち、1つ以上の工程のうちテンプレートの形成、テンプレートからの治療用mRNAのin vitro転写、治療用mRNAの精製、送達ビヒクルによるmRNAの調合、および調合された治療用mRNAの透析および濃縮を実行すること。
【0319】
1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法は、非一過性のコンピュータ可読媒体にコード化されている治療用mRNA組成物を形成するための一連の工程に従うこと、ここで工程は以下を含む場合がある。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気接触から保護された閉鎖流体経路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスにおいて、以下の工程のうちの1つまたは複数を実行する:テンプレートの形成、テンプレートからの治療用mRNAのインビトロ転写の実行、治療用mRNAの浄化、およびmRNAと送達ビークルとを結合すること。
【0320】
また、本明細書では、マイクロ流体経路装置と密封流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法であって、マイクロ流体経路装置上でテンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行い、マイクロ流体経路装置上の一つ以上の流動的に連結したリアクターで治療用mRNAを精製することを含む、方法を説明する。
【0321】
また、本明細書には、これらの方法のいずれかによって作られた治療薬、特にmRNA治療薬も記載されている。例えば、本明細書に記載されるのは、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密封流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを使用して作られる治療用mRNAであり、mRNAは、以下のようにして作られる。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉鎖流体経路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスにおいて、以下の工程のうちの1つまたは複数を行う:鋳型の形成、鋳型からのmRNAのインビトロ転写、およびmRNAの精製。
【0322】
例えば、本明細書に記載されるのは、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉された流体連絡で固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを使用して作られた治療用mRNAであり、mRNAは、以下のようにして作られる。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉鎖流体経路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスにおいて、以下の工程のうちの1つまたは複数を実行する:テンプレートの形成、テンプレートからの治療mRNAのインビトロ転写の実行、治療mRNAの浄化、およびmRNAを送達ビヒクルで製剤化すること。
【0323】
例えば、本明細書に記載されるのは、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを使用して製造された治療用mRNAであり、mRNAは、以下の工程::複数の貯蔵デポの1つ以上の貯蔵デポと、大気接触から保護されている閉鎖流路の1つ以上のマイクロ流体デバイス上の複数のリアクターとの間で試薬を輸送して1つ以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて以下の工程のうちの1つを実施すること。テンプレートの形成、テンプレートからの治療用mRNAのin vitro転写、治療用mRNAの精製、送達ビヒクルによるmRNAの調合、および調合された治療用mRNAの透析および濃縮を実行すること。
【0324】
本明細書では、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを使用して形成される治療用mRNA組成物が、以下の方法により提供される:非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体にコード化されている治療用mRNA組成物の形成のための一連の工程に従うこと、ここで工程は以下を含む。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉鎖流体路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体パスデバイスにおいて、以下の工程のうちの1つまたは複数を実行する:テンプレートの形成、テンプレートからの治療用mRNAのインビトロ転写の実行、治療用mRNAの浄化、およびmRNAと送達ビークルとを結合させる。例えば、治療用mRNAは、マイクロ流体経路デバイスと密封流体連通するように固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて形成された治療用mRNA組成物であってよく、その方法は、マイクロ流体経路デバイス上でテンプレートから治療用mRNAをin vitro転写すること、及びマイクロ流体経路デバイス上の1つ又は複数の流体的に連結したリアクターで治療用mRNAを精製することを含んでいる。
【0325】
本明細書に記載されるシステムのいずれもが、これらの方法のいずれかを実行するように構成されたコントローラを含むことができる。したがって、本明細書に記載される方法のいずれかを実行するように構成されたソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアもまた、本明細書に記載される。例えば、本明細書に記載されるのは、mRNAを製造するための命令を具現化した非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密封流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムのコントローラによって実行されると、コントローラに以下の方法を実行させるものである。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉鎖流体路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体パスデバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートからmRNAのインビトロ転写を行う工程、およびmRNAを精製する工程のうちの1つまたは複数を実行させるステップ。
【0326】
例えば、本明細書に記載されるのは、治療用mRNA組成物を含むmRNAを製造するための命令を具体化した非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密封流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムのコントローラによって実行されると、コントローラに本明細書に記載の方法のいずれかを実行させる、命令である。
【0327】
また、本明細書では、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含む閉経路システムを用いてmRNAの合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法であって、大気接触から保護されている閉経路で複数の貯蔵デポの1つ以上の貯蔵デポと1つ以上のマイクロ流体デバイス上の複数のリアクター間で試薬を輸送して試薬を結合することと;治療mRNAの体外転写用テンプレートを形成することを含み得る方法が説明されている。
【0328】
例えば、クローズドパスシステムを使用してmRNAのin vitro転写反応への入力として使用するための合成二本鎖DNAテンプレートを製造する方法は、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含み得、この方法は、以下を含む。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉じた流体路で輸送し;治療用mRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを形成するステップと、を含む。
【0329】
1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密封流体連通するように固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いてmRNA組成物を製造する方法であって、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスが複数のリアクターを含む、方法は、以下を含むことができる。テンプレート前駆体材料を1つまたは複数の貯蔵デポから複数の反応器の第1の反応器領域に送達し、テンプレート前駆体材料を処理してテンプレート前駆体材料からテンプレートを調製すること、テンプレートを複数の反応器の第2の反応器領域に移送し、インビトロ転写によってテンプレートを処理してmRNAを形成すること。およびmRNAを複数の反応器の第3の反応器領域に移送し、mRNAを処理して送達ビヒクルと結合させてmRNA組成物を形成し、テンプレート材料および送達ビヒクルを含む材料が、保管庫から複数の反応器内に大気圧接触なしで送達されることを特徴とする、複数の反応器。
【0330】
つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通している複数の貯蔵デポを含むシステムを使用してmRNA組成物を製造する方法であって、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスが複数の反応器を含む方法は、以下を含むことができる。テンプレート前駆体材料を1つまたは複数の貯蔵デポから複数の反応器の第1の反応器領域に空気圧で移送し、テンプレート前駆体材料を処理してテンプレート前駆体材料からテンプレートを調製すること、テンプレートを複数の反応器の第2の反応器に空気圧で移送し、テンプレートをインビトロ転写によって処理してmRNAを形成すること、およびmRNAを複数のリアクターの第3のリアクター領域に空気圧で移送し、mRNAを処理して送達媒体と結合させて治療用mRNA組成物を形成し;およびmRNA生成物を1つ以上の保管庫に移送し、材料が保管庫からマイクロ流路デバイスのリアクターにマイクロリットル以下の精度で大気接触なしに送達される、方法。
【0331】
マイクロ流体パスデバイスと密閉流体連通する複数の貯蔵デポを含むクローズドパスシステムを使用してin vitro転写用の合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法は、以下を含むことができる。目的の合成遺伝子と合成体外転写促進剤カセットとを結合させて合成環状結紮産物を作成すること;未反応の目的の合成遺伝子および未反応の合成体外転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から遠ざけること;を含むことができる。環状結紮物を増幅して、分岐または環状増幅DNAを生成する工程;および分岐増幅DNA結紮物を線形化して二本鎖DNAテンプレートを生成する工程であって、接合、除去、増幅および線形化の各工程が、マイクロ流路デバイス内でクローズパス方式により行われる、工程をいう。
【0332】
これらの方法のいずれもが、インビトロ転写のための合成二本鎖DNAテンプレートを作成する高効率で自動化された方法を含む、高効率で自動化された方法であってよい。例えば、方法は、以下を含むことができる:空気圧で各々を送達すること。目的の合成遺伝子と合成体外転写促進剤カセットを、マイクロ流体経路デバイスと流体連通している複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポから、マイクロ流体経路デバイスのライゲーションリアクターに送り、目的の合成遺伝子を合成体外転写促進剤カセットと接合して合成環状ライゲート生成物を作製するステップと複数の貯蔵所のうちの1つまたは複数の貯蔵所から1つまたは複数のエキソヌクレアーゼ剤をライゲーションリアクターに空気圧で導入し、未反応の関心対象の合成遺伝子および未反応の合成体外転写促進剤カセットを合成円形結紮産物から離して未反応物を除去するステップと合成円形結紮産物をマイクロ流路デバイスの多重置換増幅(MDA)リアクターに空気圧で送り、円形結紮産物を増幅するための1つ以上の増幅剤と組み合わせて、分枝状または円形の増幅DNAを生成すること。分岐増幅されたDNAライゲーション生成物をマイクロ流路デバイスの消化リアクターに空気圧で移送し、分岐増幅されたDNAライゲーション生成物を線形化することによって二本鎖DNAテンプレートを生成し、ライゲーションリアクター、MDAリアクター、消化リアクターおよび複数の貯蔵デポがクローズパスおよび密閉環境を形成している、方法。
【0333】
インビトロ転写のための合成二本鎖DNAテンプレートの製造方法であって、非一過性のコンピュータ可読媒体にコード化されている一連の工程に従うことを含む方法は、以下を含み得る:それぞれを送達すること。目的の合成遺伝子および合成体外転写促進剤カセットを、マイクロ流体経路装置と流体連通している複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポから、マイクロ流体経路装置のライゲーションリアクターに送り、目的の合成遺伝子を合成体外転写促進剤カセットに接合して合成環状ライゲート産物を作製する工程と複数の貯蔵所のうちの1つまたは複数の貯蔵所から1つまたは複数のエキソヌクレアーゼ剤をライゲーションリアクターに導入し、未反応の合成興味遺伝子および未反応の合成体外転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から離して未反応物を除去するステップと合成円形結紮産物をマイクロ流路デバイスの多重置換増幅(MDA)リアクターに送り、円形結紮産物を増幅するための1つまたは複数の増幅剤と結合させて、分岐または円形増幅DNAを生成するステップと分岐増幅されたDNAライゲーション生成物をマイクロ流路デバイスの消化リアクターに移送し、分岐増幅されたDNAライゲーション生成物を直鎖化することによって二本鎖DNAテンプレートを生成し、ライゲーションリアクター、MDAリアクター、消化リアクターおよび複数の貯蔵デポがクローズパスおよび密封環境を形成している。
【0334】
1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて体外転写(IVT)反応を行う方法は、1つ以上のマイクロ流体経路デバイス内のテンプレートから治療mRNAの体外転写を行うために、大気接触から保護されている閉じた流路で複数の貯蔵デポの1つ以上の貯蔵デポと1つ以上のマイクロ流体デバイス上の複数のリアクター間で試薬を輸送すること、を含みうる。
【0335】
また、本明細書では、in vitro転写(IVT)反応を行う方法であって、この方法は、非一過性のコンピュータ可読媒体にコード化されている一連の工程に従うことを含み、この工程は、以下を含む。鋳型物質、ポリメラーゼおよびヌクレオチドを、反応中の任意の時間にサブマイクロリットルの精度で計量された量で複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスの第1の反応器に空気圧で供給し;第1の反応器において鋳型物質およびヌクレオチドを処理して治療mRNAを形成し;治療mRNAを形成する。治療用mRNAを空気圧でマイクロ流体経路装置を通して第1の反応器から遠ざける。ここで、第1のマイクロ流体経路装置および複数の保管庫は、大気暴露を防ぐためにクローズドパスおよび密閉された環境を形成する。
【0336】
また、本明細書では、in vitro転写(IVT)反応を行う方法であって、非一過性のコンピュータ可読媒体にコード化されている一連の工程に従うことを含み、工程が以下を含む、方法である。誘導流体流によって、鋳型材料、ポリメラーゼ、およびヌクレオチドを、一連の工程に従ってコントローラによって制御される量の複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスに送達する工程;鋳型材料およびヌクレオチドを1つまたは複数のリアクターで処理して治療mRNAを形成する工程;および治療mRNAを1つまたは複数のリアクターから離れたマイクロ流体経路デバイスを通して移送する工程であって、第一マイクロ流体経路デバイスおよび複数の貯蔵デポが大気暴露を防ぐために閉鎖経路および密封環境を形成している、ことを含む、前記方法が挙げられる。
【0337】
また、本明細書では、in vitro転写(IVT)反応を行う方法であって、該方法は、以下を含む。予めプログラムされたソフトウェアコマンドによって制御される量のテンプレート材料、ポリメラーゼ、およびヌクレオチドを、誘導流体流れによって、複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスに送達し;テンプレート材料およびヌクレオチドをマイクロ流体経路デバイス内の第1の1つまたは複数のリアクターで処理して治療用mRNAを形成し;治療用mRNAを、第1の1つまたは複数のリアクターから離れるように、マイクロ流体経路デバイスを通して移送し治療用mRNAを、マイクロ流路デバイスを通して、第1の1つ以上の反応器から離れ、mRNAの精製に適合した第2の1つ以上の反応器に移送することであり、マイクロ流路デバイスおよび複数の貯蔵デポが、大気暴露を防ぐために閉経および密封環境を形成することである。
【0338】
また、本明細書では、in vitro転写(IVT)反応を行う方法であって、この方法は、非一過性のコンピュータ可読媒体にコード化されている一連の工程に従うことを含み、この工程が以下を含む、方法である。誘導された流体流れによって、鋳型物質、ポリメラーゼ、およびヌクレオチドを、一連の工程によって制御された量で、複数の貯蔵デポから第1のマイクロ流体経路デバイスの第1の1つ以上のリアクターに送達し;第1の1つ以上のリアクターで鋳型物質およびヌクレオチドを処理して治療mRNAを形成し;治療mRNAを、第1のマイクロ流体経路デバイスの第2のリアクターに送達し;第1のマイクロ流体経路デバイスの第1の1つ以上のリアクターに送達し治療用mRNAを、第1のマイクロ流路デバイスを通して、第1の1つ以上の反応器から離れ、mRNAの精製に適合した第2の1つ以上の反応器に移送すること;およびmRNA治療ナノ粒子の処方を完了するために、このように精製されたmRNAを移送することであって、第1のマイクロ流路デバイスおよび複数の貯蔵デポが、大気暴露を防ぐために閉鎖経路および密封環境を形成している、こと。
【0339】
また、本明細書では、in vitro転写(IVT)反応を行う方法であって、この方法は、非一過性のコンピュータ可読媒体にコード化されている一連の工程に従うことを含み、ここで、この工程は以下を含む。鋳型物質、ポリメラーゼおよびヌクレオチドを、複数の貯蔵デポから第1のマイクロ流体経路装置の第1の1つまたは複数のリアクターに空気圧で送達し;第1の1つまたは複数のリアクターで鋳型物質およびヌクレオチドを処理して治療mRNAを形成し;治療mRNAを第1の1つまたは複数のリアクターから離れ、mRNAの精製のために適合した第2の1つまたは複数のリアクターに第1のマイクロ流体経路装置を通して移送し;治療mRNAを、第1のマイクロ流体経路装置から、mRNAの精製に適した第1のリアクターに移動させる。精製されたmRNAを第3の1つ以上の反応器に移送して、精製されたmRNAを1つ以上の送達媒体と結合させてmRNA治療ナノ粒子を形成するステップであって、第1のマイクロ流路装置および複数の貯蔵デポが、大気暴露を防ぐために閉経および密封環境を形成する、ステップとが含まれる。
【0340】
例えば、本明細書には、in vitro転写(IVT)反応を行う方法も記載されており、この方法は、非一過性のコンピュータ可読媒体にコード化されている一連の工程に従うことを含み、この工程は以下を含む。鋳型物質、ポリメラーゼおよびヌクレオチドを、複数の貯蔵デポから第1のマイクロ流体経路装置の第1の1つまたは複数の反応器に空気圧で送達する工程;第1の1つまたは複数の反応器において鋳型物質およびヌクレオチドを処理して治療mRNAを形成する工程;および治療mRNAを第1の1つまたは複数の反応器から離れ、セルロースからなりmRNAの精製に適合した第2の1つまたは複数の反応器に、第1のマイクロ流体経路装置を通って移送する工程;。精製されたmRNAを第3の1つ以上の反応器に移送して、精製されたmRNAを1つ以上の送達媒体と結合させてmRNA治療ナノ粒子を形成するステップであって、第1のマイクロ流路デバイスおよび複数の貯蔵デポが、大気暴露を防ぐために閉経および密封環境を形成する、ステップとが含まれる。
【0341】
また、本明細書では、1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法であって、1つ以上の治療用mRNAを1つ以上のマイクロ流体経路デバイス内の送達ビークルと組み合わせることにより治療用mRNA組成物を形成するために、大気接触から保護されている閉流路で複数の貯蔵デポの1つ以上と1つ以上のマイクロ流体装置上の複数のリアクター間で試薬を搬送する工程、を含む方法について記載されている。
【0342】
1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通して固定されるように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを用いて、オンデマンドで治療用mRNA組成物を製造する方法は、以下を含むことができる。複数の貯蔵デポのうちの1つまたは複数の貯蔵デポと、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイス上の複数の反応器との間で試薬を、大気との接触から保護された閉鎖流体経路で輸送し、1つまたは複数のマイクロ流体経路デバイスにおいて、以下の工程のうちの1つまたは複数を実行する:鋳型を形成し、鋳型から治療用mRNAのインビトロ転写を行い、治療用mRNAを浄化し、mRNAを送達媒体と製剤化すること。
【0343】
これらの方法及び装置のいずれも、治療の現場で操作(例えば、治療用mRNAを製造)することができる。これらの方法および装置のいずれもが、迅速かつ連続的に実行されてもよく、例えば、治療薬は72時間未満で製造される。
【0344】
例えば、本明細書では、完全自動化されたソフトウェア制御のマイクロ流体工学の使用を含む可能性のあるmRNA療法の製造方法および装置について説明する。これらの方法及び装置は、個人化された又は個別化された療法に使用され得る。また、本明細書では、テンプレートの形成、インビトロ転写、治療用mRNAの精製、mRNAの濃縮、およびmRNA(複数可)と1つまたは複数の送達ビヒクルとの複合化を含む、本明細書に記載の製造工程のいずれかのソフトウェア制御を含む装置(例えば、システム、デバイスなど)および方法が記載されている。ソフトウェア制御は、1つ以上の治療用mRNAを製造するためのこれらの工程のいずれか、いくつか、またはすべてが正確かつ精密に迅速に実行されるように、これらの方法の自動化を可能にし得る。ソフトウェア制御と反応成分のマイクロ流体による正確な送達および移送は、プロセス制御、効率および再現性を高める一方で、手動操作を大幅に削減または排除し、設備の必要性を低減し、生産サイクル時間を短縮する機会を提供し、最終的には適切であればジャストインタイム生産の低コスト療法につながるものである。
【0345】
本明細書に記載される装置(例えば、システム、デバイスなど)のいくつかでは、治療材料の各バッチは、専用の、単一使用の、使い捨てのマイクロ流体経路デバイス(本明細書ではバイオチップとも呼ばれる)において製造されてよく、それはマイクロ流体経路デバイス制御システム(本明細書では制御システムとも呼ばれる)内に収容されてもよい。生産全体は、大気との接触を伴わない無菌設計のクローズドパスプロセスとして進行してもよい。生産工程はすべて自動化され、制御システムによって制御され、システムを収容する施設の属性に関係なく、コピーエクスタクトプロセスを達成することができる。生産パラメータ、原材料、および環境データ(完全な視覚的記録を含む)は、クラウド上で保護され、各生産ランに関連付けられた広範で暗号化された電子ファイルの一部となる可能性があります。さらに、精製プロセスや多くのQCアッセイを生産プロセス中にインラインで単一の流体フローで行うことができ、半導体産業で開発されたプロセス制御コンセプトにより、異常を早期に検出することができる。全自動でソフトウェア制御された製造方法を活用することで、患者さんのために費用対効果の高い方法でパーソナライズされた個別のmRNA治療法を製造することができる。
【0346】
特にこれらの方法及び装置は、体外転写(IVT)として知られる合成技術により、人体外で合成的にmRNA療法を生成することができる。いくつかの例では、ネイキッドmRNA分子は、細胞膜を通過しない大きなポリアニオン分子であり、インビボで細胞外ヌクレアーゼによって急速に分解される。本明細書に記載の方法および装置は、mRNAを標的(組織、身体、組織の領域など)に輸送するように設計された、1つまたは複数の送達ビークルを有するmRNA分子の製剤を製造してもよい。例えば、いくつかの変形例では、送達ビヒクルは、循環中にmRNAカーゴのパッケージング及び保護を提供し、免疫認識を回避し、細胞の取り込み及び放出を促進し得る、脂質含有両親媒性送達ビヒクルであってよい。
【0347】
一般に、本明細書でより詳細に説明するように、いくつかの変形例では、テンプレート合成、IVT、精製、および送達ビヒクルによる製剤化を含む製造工程のすべてまたは一部が、1つまたは複数のマイクロ流路デバイスの高度に制御された環境下で実施されてよく、堅牢で高品質かつ再現性の高い製造工程の最適化を可能にする。
【0348】
mRNA ワクチン接種には、mRNA 療法などの治療法が用いられることがある。mRNA治療薬は、その高い効力に加え、迅速な開発サイクル、標準化された製造、一過性の発現、ゲノム統合のリスクの低さなどに関する重要な利点も有している。
【0349】
いくつかの変形例では、本明細書に記載のmRNA療法は、最終医薬品中の有効成分として、関心のある抗原またはタンパク質をコードするmRNAを含むことができる。mRNAの頑健な翻訳には、機能的な5'キャップ構造が必要である。5'キャップ(または7-メチルグアノシンキャップ)は、最初の転写ヌクレオチドに5'-5'-トリリン酸結合で結合した末端7-メチルグアノシン残基からなる。このキャップは、リボソームによるmRNAの認識とRNAsからの保護に重要である。ポリ(A)テールは、ポリ(A)結合タンパク質(PABP)と結合し、真核生物の翻訳開始因子eIF4Gと相互作用し、さらにeIF4Eと複合体を形成して、mRNAの安定性と翻訳開始をm7Gキャップと相乗的に制御する。ポリ(A)テールの長さは、mRNAからタンパク質への翻訳プロセスの効率に影響すると考えられる。
【0350】
本明細書に記載の方法および装置は、反復投与を制限し得る毒性または免疫原性の懸念を回避しつつ、循環中のmRNAカーゴのパッケージングおよび保護を提供し、免疫認識を回避し、所望の組織に薬物製品を局在化し、細胞への取り込みおよび放出を促進するようにmRNA治療ナノ粒子を配合し得る。
【0351】
一般に、mRNA治療用ナノ粒子(患者特異的T細胞リンパ腫ワクチン製剤を含むが、これに限定されない)の製造方法は、標的タンパク質の同定およびmRNA配列の設計、標的配列についての二本鎖DNAテンプレートの調製を含み得る。この配列は、mRNAを合成するために、in vitro転写(IVT)反応のためのmRNAを生成するために使用されてもよい。この治療用mRNAは、その後、精製して工程上の不純物を除去し、ろ過して原薬を生成してもよい。次に、治療用mRNAは、送達ビヒクル(両親媒性ナノ粒子を形成するためのアジュバントおよび送達ビヒクル成分とのいくつかのバリエーションを含む)と共に製剤化されてもよい。その後、製剤を処理および精製して、患者への送達に使用され得る薬物を生成することができる。
【0352】
一変形例の具体例として、患者特異的T細胞リンパ腫ワクチン製剤を製造するための例示的プロセスは、リンパ腫細胞によって発現されるクローン拡大TCR配列(イディオタイプ)を同定することを含んでもよい。また、本工程は、mRNAワクチン配列を設計すること、及びIVT反応に用いる二本鎖DNAテンプレートを調製することを含んでもよい。この鋳型を用いてIVT反応によりmRNAを合成し、この治療用mRNAを精製して工程不純物を除去し、ろ過して原薬として調製することができる。次に、治療用mRNAは、免疫調節剤および送達ビヒクル成分とともに製剤化されて、両親媒性ナノ粒子を形成してもよい。その後、製剤化後の処理を行い、治療用mRNA治療用ナノ粒子などの薬物を生成することができる。
【0353】
これらの製造工程のいずれもが、本明細書に記載の自動マイクロ流路デバイス制御システムを用いて実施されるように最適化されてもよい。例えば、DNAテンプレートの製造は、1つ以上のマイクロ流路デバイスで行われてもよく、テンプレートマイクロ流路デバイス(例えば、テンプレートバイオチップ)が使用されてもよい。本実施例では、mRNAの体外転写とその物質の精製による原薬生成の工程は、IVTマイクロ流路デバイス(例えば、IVTバイオチップ)で行われてもよく、製剤化工程は製剤マイクロ流路デバイス(例えば、製剤バイオチップ)で行われてもよい。これらのマイクロ流路デバイスには、製造工程の各工程を行うために必要な入力ポート、計量バルブ、反応チャンバー、および精製構造体が含まれる場合がある。
【0354】
【0355】
装置
本明細書に記載される方法は、一般に、1つ以上のマイクロ流路デバイス(例えば、バイオチップ)と、マイクロ流路デバイスにおける動作を制御するように構成されたマイクロ流路デバイス制御システムとを含むことができる装置を使用して実行されてもよい。これらのマイクロ流路デバイスは、マイクロ流路デバイス制御システム(本明細書では製造システムと呼ぶことがある)内に配置及び保持されてもよく、このシステムは、一部の、より好ましくはほぼ全ての、又は全ての製造構成部品の大気への曝露を防止する閉経法で動作することができる。
図34Aは、マイクロ流体経路デバイス管理システムとも呼ばれ得るマイクロ流体経路デバイス制御システム903の一例を示し、マイクロ流体経路デバイスを保持するためのハードウェア、マイクロ流体経路デバイスにおけるマイクロ流体動作を操作するための正/負圧の適用、マイクロ流体経路デバイスのすべて又は領域の加熱/冷却、マイクロ流体経路デバイスからの1つ又は複数の特徴の検出及び/又は1つ又は複数のマイクロ流体経路デバイスで行われる動作の記録、等を含んでも良い。マイクロ流体経路デバイス制御システムは、1つ以上のプロセッサ(例えば、図示しないコントローラ)、及び温度制御された(例えば、冷蔵)容器905(例えば、ISOクラス5キャビネット)を含むこともできる。このシステムは、1つ以上のマイクロ流体パスデバイス901を使用してもよいし、含んでもよい。マイクロ流体パスデバイス制御システムは、1つ以上のマイクロ流体パスデバイス(例えば、カートリッジ)901を解放可能に保持するための着座マウント932を含んでもよい。マイクロ流体経路デバイス制御システムは、着座時にマイクロ流体経路デバイスを冷却/加熱するための熱コントローラも含んでもよく、これは、着座マウントの下にあるか又はそれと結合していてもよい。流体インターフェースアセンブリ939は、1つ又は複数のカートリッジが着座マウントに装填されることを可能にするために、着座マウントから(上及び/又は側方に)持ち上げられてもよい。流体インターフェースアセンブリは、着座マウントに保持されたマイクロ流体経路デバイス上に適用されるように構成された複数の流体接点を含んでもよい。流体接点は、マイクロ流体経路デバイス上の受入ポートに対するシールを改善するために、例えば、ばね等によって、マイクロ流体経路デバイスに対して偏っていてもよい。試薬保管フレーム943は、着座マウント及び流体インタフェースアセンブリの上方又は側方に配置されてもよい。試薬貯蔵フレームは、複数の貯蔵デポ967を含んでもよい。流体インターフェースアセンブリは、中央部、例えば、着座マウントに着座したときにマイクロ流体経路デバイスのすぐ上の領域で開口していてもよい。この開口部は、監視及び追跡のためにマイクロ流体経路デバイスを通した可視化を可能にしてもよく、また、アクセスを可能にしてもよい。
図34Aでは、複数のセンサ(例えば、カメラ)が、流体が、例えば、圧力源(図示せず)を使用して駆動されるときのマイクロ流体経路デバイス制御システムの動作を見るために、マイクロ流体経路デバイス制御システムの周囲と、着座マウントの上の中央領域の上に配置される。
【0356】
図34Bは、本明細書に記載されるように使用され得るマイクロ流体経路デバイス制御システムの一例の概略図である。この例では、装置は、単一使用装置であってもよい1つ以上のマイクロ流体経路デバイス911を保持することができる着座マウント915を囲むハウジング933を含む。ハウジングは、蓋又は開口部を含んでもよいチャンバー、筐体等であってもよく、閉じられると密閉されてもよい。ハウジングは、熱調整器を囲んでいてもよく、及び/又は、熱的に調整された環境(冷蔵装置等)に囲われるように構成されていてもよい。ハウジングは、無菌バリアを形成してもよい。いくつかの変形例では、ハウジングは、加湿または湿度制御された環境を形成してもよい。
【0357】
着座マウント915は、マイクロ流体経路デバイスを固定された所定の向きに保持するように構成された1つ以上のピン又は他の構成要素を用いて、マイクロ流体経路デバイスを固定するように構成されてもよい。
【0358】
いくつかの変形例では、熱制御913は、1つ以上のマイクロ流体経路デバイス911に対する温度を調節するために、着座マウント915に隣接して配置されてもよい。熱制御は、マイクロ流体経路デバイスの全て又は一部の温度を制御するための熱電部品(例えば、ペルチェデバイス)及び/又は1つ以上のヒートシンクを含んでもよい。いくつかの変形例では、マイクロ流体経路デバイスの1つ以上の領域の温度を個別に調節するために、2つ以上の熱制御が含まれてもよい。熱制御は、マイクロ流体経路デバイス及び/又は熱制御のフィードバック制御に使用され得る1つ又は複数の熱センサ(例えば、熱電対など)を含んでもよい。
図34Bにおいて、流体インターフェースアセンブリ909は、液体試薬及び/又は圧力(例えば、ガス)を、着座マウント915に保持されたマイクロ流体経路デバイス911と結合し、圧力源917からマイクロ流体経路デバイス911の内部への、正/負のガス状圧力と同様に、流動物質の送達を支援し得る。流体インターフェースアセンブリは、以下でより詳細に説明するように、任意選択で、マイクロ流体経路デバイス(複数可)の固定を支援してもよい。流体インターフェースアセンブリは、使用間の滅菌のために、装置に取り外し可能に結合されてもよい(取り外されてもよいし、一部を取り外してもよい)。
【0359】
試薬保管フレーム907は、複数の流体サンプルホルダを含むように構成されてもよく、その各々は、マイクロ流体デバイス911に送達するための試薬(例えば、ヌクレオチド、溶媒、水など)を保持するように構成された流体バイアルを保持してもよく、あるいは、流体バイアルはマイクロ流路デバイス911の内部からの生成物を受け取るように構成されてもよい。試薬収納枠は、試薬ラックと称されてもよい。いくつかの変形例では、試薬ラックは、1つ又は複数の圧力源917を、マイクロ流体経路デバイスanに適用され得る複数の圧力ラインに分割するように構成された複数の圧力ライン及び/又はマニホールドを含み、独立して又は(サブコンビネーションで)集合的に制御されても良い。あるいは、流体デポ(バイアル等)は、マイクロ流体経路デバイス(複数可)に対して直接固定及び密封するように構成されてもよい。
【0360】
流体インターフェースアセンブリは、複数の流体ライン及び/又は圧力ラインを含んでもよく、マイクロ流体経路デバイスが着座マウント915に保持されたときに各流体ライン及び/又は圧力ラインを個別かつ独立して駆動するバイアス(例えば、ばね式)ホルダー又はチップを含んでもよい(又は、前述のように、代替的にデバイスは直接ばね式マウントされてもよい)。マイクロ流体経路は、マイクロ流体経路デバイスが他の構成要素(例えば、チューブ)に安定的に接続された状態を作るように、制御システム内に保持され、固定されてもよい。チューブ、例えば、流体ライン及び/又は圧力ラインは、流体インターフェースアセンブリの一部であってもよく、又は流体インターフェースアセンブリに接続されてもよい。いくつかの変形例では、流体ラインは、バイアルをチューブにロック係合(例えば、フェルール)で結合するコネクタを介して試薬貯蔵フレームと、マイクロ流体経路デバイスとの間に接続する可撓性チューブから構成される。流体経路の端部、いくつかの変形例では流体ライン/圧力ラインの端部は、本明細書に記載されるように、マイクロ流体経路デバイスに対して、例えば、マイクロ流体経路デバイスに形成されたシーリングポートでシールするように構成されてもよい。例えば、流体ラインの端部は、平坦(側面視で垂直)になるように切断又は形成されてもよい。バイアルは、圧力源に接続することもできるコネクタを介して、加圧(例えば、2気圧、3気圧、5気圧などの1気圧以上の圧力)されてもよい。例えば、流体バイアルは、約6.9kPa~138kPa(例えば、約34.5kPa~138kPa、約69kPaなど)に加圧される場合がある。負圧または正圧を適用してもよく、例えば、真空(例えば、約-48.2kPaまたは48.2kPa)を適用して、プロセスの終了時に流体をバイアル(例えば、デポ)に引き戻してもよい。一般に、流体バイアルは、空気圧バルブよりも低い圧力で駆動されてもよく、これにより漏れを防止又は低減することができる。いくつかの変形例では、流体バルブと空気圧バルブとの間の圧力の差は、例えば、約34.5kPa(例えば、約48.3kPa、68.9kPa、82.7kPa、103.4kPa、137.9kPa等)、例えば、約34.5kPa~約275.7kPa(例えば、約34.5kPa~206.8kPa、約34.5kPa~137.9kPa、約48.2kPa~275.8kPa、約48.2kPa~137.9kPa、その他)であってよい。
【0361】
各バイアルは、コード化されてもよい(例えば、以下に説明するように、1つ以上のセンサによって読み取られ得る識別子によって)。コントローラは、流体レベル、したがって、流体インターフェースアセンブリ内の各材料の量を監視してもよい。
【0362】
装置はまた、磁場アプリケータ919を含んでもよく、これは、マイクロ流体経路デバイス911の領域において磁場を形成するように構成されてもよい。光学センサであってもよい1つ以上のセンサ905は、装置の一部であってもよく、バーコード、試薬収納フレーム内に保持された流体バイアル内の流体レベル、及び装置が取付座915内に取り付けられたときのマイクロ流体経路装置911内の流体移動のうちの1つ以上を感知することができる。
センサーは、例えば、光学的指標を測定することによって、装置上のプロセスの測定を行うことができる。いくつかの変形例では、歩留まりを推定するために視覚的/光学的マーカーが使用されてもよい。例えば、蛍光は、フルオロフォアでタグ付けすることにより、プロセスの歩留まり又は残留材料を検出するために使用されてもよい。代替的に又は追加的に、動的光散乱を使用して、マイクロ流路デバイスの一部(例えば、混合部分など)内の粒度分布を測定してもよい。いくつかの変形例では、センサーの測定は、光(例えば、レーザー光)を中に伝え、出てくる光信号を検出するために、1つ又は2つの光ファイバーを用いて行われてもよい。装置パッケージは、装置から遠隔に取り付けられてもよい。このような非接触のセンシングは有益である。
【0363】
本明細書に記載される方法及び装置のいずれかにおいて、センサ(例えば、ビデオセンサ)は、マイクロ流体経路デバイス(例えば、チップ又はカートリッジ)上の全ての活動を記録してもよい。例えば、材料(治療用RNAなど)を合成及び/又は処理するためのラン全体が、例えば上方からマイクロ流路デバイスを可視化し得るビデオセンサーを含む1又は複数のビデオセンサーによって記録されてもよい。マイクロ流体経路デバイス上の処理は、視覚的に追跡されてもよく、この記録は、後の品質管理及び/又は処理のために保持されてもよい。したがって、処理のビデオ記録は、その後のレビュー及び/又は分析のために保存、保管及び/又は送信されてもよい。
【0364】
器具の内部部分、例えばハウジング933内は、さらに滅菌可能に構成されてもよい。特に、器具の一部は、取り外されて個別に滅菌されてもよい。滅菌は、例えば、UV照射、または汚染を制限するため、または規制要件を満たすために必要とされ得る他の任意の滅菌方法によって実行されてもよい。ハウジングを含む装置は、高効率粒子状空気(HEPA)濾過環境内に収容されてもよい。ハウジングを含む装置は、温度制御されたエンクロージャ内に収容されてもよい。さらに、装置自体が、温度制御される1つ以上の領域を含んでいてもよい。本明細書に記載の装置のいずれかにおいて、装置は、試薬を保管するため、及び/又はmRNA(例えば、治療用mRNA)を保管するための、例えば、保管温度(例えば、約10℃、約4℃、約-10℃等の、約-10℃~約20℃の温度)の温度制御領域を(例えば、ハウジング内に)含んでもよい。これらの装置のいずれかは、個別にまたは1つ以上の追加のmRNAおよび送達ビークルと組み合わせて使用され得る製造されたmRNAのライブラリーを含んでもよい。
【0365】
上述したように、マイクロ流体経路デバイスコントローラシステムは、マイクロ流体経路デバイス911を介して圧力を加えて少なくとも流体移動を駆動することを含め、コントローラ921によって制御されてもよい。コントローラは、少なくとも部分的に、いくつかの例では完全に、ハウジングの外側であってもよい。コントローラは、ユーザ入力/出力を含むように構成されてもよい。例えば、システムのユーザーインターフェース923は、装置及びマイクロ流体経路デバイス(複数可)の容易な操作及び指示を可能にしてもよい。
本明細書で説明される装置のいずれも、
図34Bに示される構成要素のすべてまたは一部を含むことができ;すべての構成要素が必要であるわけではない場合がある。
図34Bでは、構成要素間の接続の一部のみが示されている;追加の(または代替の)接続が使用されてもよい。
【0366】
マイクロ流路デバイス制御システムは、試薬の供給、流体制御、温度制御、混合、精製、プロセスモニタリングなど、マイクロ流路デバイス内のすべての製造活動をサポートすることができます。マイクロ流路デバイス制御システム上の製造活動は、アプリケーションソフトウェアを通じてアクセスし、制御することができる。
微小流路デバイスは、治療用(例えば、治療用mRNA)材料を精密に調製するために行われる製造工程のための1つ又は複数の反応器を含むように構成されていてもよい。同一のマイクロ流路デバイスが、直列及び/又は並列に、かつ、マイクロ流路デバイス制御システムの連続パス性を中断することなく、1以上のマイクロ流路デバイス上で動作してもよい。例えば、複数のマイクロ流体経路デバイスを使用して複数のリアクターで実行される複数の処理工程を使用して治療材料を製造する場合、1つのマイクロ流体経路デバイスからの部分生成物を含む流体生成物(複数可)は、マイクロ流体経路デバイス生成物を含む流体をマイクロ流体経路デバイス制御装置の貯蔵デポ部分に移動することを含む装置によって閉路方式で1又は複数の追加のマイクロ流体経路デバイスに移送されてもよい。
【0367】
各マイクロ流体経路デバイスは、製造工程中に処理するための1つ以上の反応器を含むように構成されてもよい。例えば、
図35A~
図35Cは、マイクロ流体経路デバイスの3つの例を示している。これらの例は、テンプレートマイクロ流体経路デバイス(
図35A)、インビトロ転写(IVT)マイクロ流体経路デバイス(
図35B)、及び製剤マイクロ流体経路デバイス(
図35C)という3つの異なる種類のマイクロ流体経路デバイスを例示している。これらのマイクロ流体パスデバイスの例の各々は、制御された高度に再現可能な方法で一連の単位操作を実行するための機能を含むように構成されてもよい。
【0368】
いくつかの変形例では、マイクロ流体経路デバイスは、2つの隆起した層の間に柔軟な膜が挟まれた、2つのより硬い層からなる多層構造として構成され得る。
図35は、本明細書に記載されるように治療薬を処理するための反応器を形成する複数の層を有するマイクロ流体経路デバイスの一例を通る断面図(マイクロ流体経路デバイスの平面に対して横方向)を示す図である。反応器は、複数の層から形成されるポンピングチャンバーを含むシール、チャネル、バルブ、及びチャンバーを含んでもよい。例えば、マイクロ流路デバイスは、2つ以上の剛性又は半剛性プレート1103、1105及び少なくとも1つの弾性層1107で形成されてもよい。弾性層1107は、液体不透過性である弾性材料のシートであってよい。弾性層は、多分、幾分ガス透過性であり、又は、様々な領域を含めて、多かれ少なかれガス透過性であるように処理されてもよい。弾性材料の単一の連続したシートを使用してもよいが、いくつかの変形例では、複数の弾性材料シートを使用してもよく、または「シート」は複数のシートの部分から形成されてもよい。また、層と弾性体シートとが積層されていてもよい。一般に、弾性層がチャンバを液体含有側と圧力(例えば、ガス)印加側とに二分するように、流体を保持、バルブ、及び/又はポンプするためのチャンバが、弾性層の両側のプレートに形成されてもよい。チャンバー(複数可)の全体容積は一定で、第1(例えば、上)プレートと第2(例えば、下)プレートの両方に形成されてもよいが、この容積は圧力側と液体側に分割されてもよい。圧力側に正圧または負圧を加えることにより、弾性シートを変形させて、液体を含む側の容積を小さく(ゼロにし、チャンバを閉鎖)したり、液体を含む側の容積を大きく(所定の最大値まで)したりしてもよい。また、1つ以上のチャンバーの受圧側1119に負圧または正圧を加えるために、圧力流路1147に接続する上板1103の圧力ポート1143を介して、例えば、圧力印加側を接続してもよい。各チャンバの圧力印加側と反対側の液体含有側1117は、流体チャネル1121を介して流体ポート1123に接続されてもよい。流体ポートおよび圧力ポートの両方が、上部プレート1103および弾性層1107への開口部によって形成されてもよく、圧力ラインが、反対側の剛性または半剛性層(複数可)、1105、1109によってポートの下側で支持されている弾性層1107に押し込まれるので、複数の異なる入力ラインがある場合でも大気から隔離された密閉接続が可能である。
【0369】
前述の概念のすべての組み合わせは、本明細書に開示される発明的主題の一部であることが企図され、本明細書に記載される利点を達成するために採用され得ることを理解されたい。
本明細書で使用される用語は、特定の例を説明する目的のみのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書では、様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために「第1」及び「第2」という用語を使用することができるが、文脈が他に示す場合を除いて、これらの特徴/要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を別の特徴/要素から区別するために使用されてもよい。したがって、後述する第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と称され得、同様に、後述する第2の特徴/要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第1の特徴/要素と称される可能性がある。
【0370】
本明細書で与えられる任意の数値はまた、文脈が他に示さない限り、その値についてまたはその程度を含むと理解されるべきである。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」もまた開示される。本明細書で言及される任意の数値範囲は、そこに包含されるすべての下位範囲を含むことが意図される。また、値が開示されている場合、当業者によって適切に理解されるように、「その値以下」、「その値以上」、および値の間の可能な範囲もまた開示されていることが理解される。例えば、ある値が開示されている場合、その値「以下」だけでなく、その値「以上」も開示されている。また、本願を通じて、データは、多くの異なるフォーマットで提供され、このデータは、データポイントの任意の組み合わせの終点と始点、および範囲を表していることが理解される。例えば、特定のデータ点「10」と特定のデータ点「15」が開示されている場合、10と15の間だけでなく、10より大きい、10と同等以上、10より小さい、10と同等以下、および10と15の間が開示されていると見なされることが理解される。また、2つの特定の単位の間の各単位も開示されていると理解される。例えば、10と15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示されている。
【配列表】
【誤訳訂正書】
【提出日】2023-01-27
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、「mRNA THERAPIES」と題し、2020年4月22日に出願された米国仮特許出願第63/014074号の優先権を主張する。
【0002】
明細書で言及されているすべての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
mRNAワクチンには、DNAワクチンのようなゲノム組み込みの危険性やペプチドワクチンのような抗原選択の制限なしに、ロバストな抗癌免疫を誘発できるという利点がある。しかし、従来のmRNAワクチンは、抗原提示細胞に効果的に取り込まれず、血漿や組織の酵素による分解からmRNA分子を十分に保護できない恐れがあった。mRNAは抗体遺伝子導入のための新しいプラットフォームであるが、安全で効果的な送達システムの必要性から、mRNAに基づくモノクローナル抗体(mAb)の開発は制限されている。
【0004】
さらに、mRNAは自然な翻訳後修飾を持つ抗体(Ab)にしかならず、mRNAによってコードされたAbでは、血清半減期を延ばすための結合や修飾(例えばPEG化)は通常不可能である。受動免疫の場合、非常に高い安全性プロファイルが要求される。過去数十年にわたり、細胞性RNAセンサによる不要な免疫活性化やサイトカイン誘導を回避するため、インビトロ転写合成mRNAにおける様々な最適化が報告されてきた。しかしながら、このようなインビトロ転写合成mRNAの適応にも関わらず、抗薬物抗体(ADA)応答や一過性のサイトカインの出現が、mRNA薬剤の臨床応用の妨げとなっている。特に、mRNAを複数回投与しなければならない場合、補体活性化関連偽アレルギー(CARPA)の誘導につながることもある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、これらの問題に対処し得る方法及び組成物(キットを含む)について説明する。本明細書では、癌を治療するための方法、特に、mRNA(治療用)ナノ粒子の製造方法、これらのmRNAナノ粒子を用いて患者を治療する方法(例えば、mRNAワクチンを含む)を例示する。特に、本明細書では、それを必要とする患者に投与されるmRNA治療薬について説明する。患者は、哺乳類、例えば、ヒトであり得る。患者は、本明細書に記載される腫瘍(又は、いくつかの場合には、癌)のいずれかを有し、したがって、いくつかの場合には、本明細書に記載される治療薬又は治療を必要とし得る。mRNA治療薬は、1以上の患者特異的抗原をコードするmRNA及び1以上の免疫調節剤をコードするmRNAを含むmRNA(治療用)ナノ粒子を(患者又は患部に)投与すること、並びに患者特異的mRNA治療薬を作るための装置及び方法、を含む。
【0006】
特に、本明細書では、mRNAワクチンを含むmRNA治療、これらのmRNA治療を用いて、良性ではない腫瘍又は良性もしくは癌性であり得る腫瘍である癌を治療する方法、及びこれらのmRNA治療を形成する方法について説明する。例えば、本明細書に記載されるのは、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA治療ナノ粒子、及び免疫調節剤をコードするmRNAの腫瘍内注射を含む方法であって、腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤をコードするmRNAは、例えばアミノ脂質化ペプトイドなどの送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される。本明細書で例示されるように、注射は腫瘍内であってもよいが、他の投与経路もまた可能である。
【0007】
本明細書に記載される方法のいずれも、癌を治療する方法(例えば、腫瘍を小さくする、又は場合によっては除去する)を含む、治療方法であってもよい。
【0008】
本明細書に記載の方法は、腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤をコードする1以上のmRNAと、1以上のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子と、から成るmRNA治療ナノ粒子を注射することを含んでもよい。例えば、方法は、腫瘍特異的抗原及び1以上の免疫調節剤をコードする1以上のmRNAと、1以上のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子と、を含んでもよい。いくつかの例では、方法は、腫瘍特異的抗原及び1以上の免疫調節剤をコードする1以上のmRNAであって、1以上の免疫調節剤が、チェックポイント阻害剤である1以上のmRNAと、1以上のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子と、から成るmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内注射することを含んでもよい。いくつかの例では、方法は、腫瘍特異的抗原及び2以上の免疫調節剤をコードする1以上のmRNAと、1以上のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子であって、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを含む送達ビヒクル分子と、から成るmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内注射することを含んでもよい。
【0009】
方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA(例えば、mRNAワクチン)と、免疫調節剤をコードするmRNAと、から成るmRNA治療ナノ粒子を注射することを含み、腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤をコードするmRNAは、同一の送達ビヒクル分子でカプセル化されている。例えば、方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと、1以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、から成るmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内注射することを含んでもよく、mRNAワクチン及び免疫調整剤は、同一の送達ビヒクル分子でカプセル化されている。
【0010】
いくつかの変形例では、方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA(例えば、mRNAワクチン)と、2以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、から成るmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内注射することを含んでもよく、2以上の免疫調節剤のうちの少なくとも1つはチェックポイント阻害剤であり、さらに、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び2以上の免疫調節剤をコードするmRNAは、同一の送達ビヒクル分子でカプセル化されている。
【0011】
いくつかの変形例では、方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA(例えば、mRNAワクチン)と、2以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、から成るmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内注射することを含み、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び2以上の免疫調節剤をコードするmRNAは、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを含む送達ビヒクル分子でカプセル化されている。
【0012】
これら方法又は組成物(例えば、mRNA治療薬)のいずれも、1以上の免疫調節物質siRNAから成る1以上のsiRNAを含んでもよい。例えば、方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと、1以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、1以上の免疫調節性siRNAと、から成るmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内注射することを含んでもよく、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA、1以上の免疫調節剤をコードするmRNA、及び1以上のsiRNAが、同一の送達ビヒクル分子でカプセル化されている。
【0013】
任意の適切な送達ビヒクルを使用することができる。例えば、送達ビヒクル分子は、脂質ベースのビヒクル(脂質ナノ粒子など)又はポリマーベースのナノ粒子であってもよい。特に、送達ビヒクル(DV)分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルであってもよい。これらの方法のいずれにおいても、送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでもよい。一例では、送達ビヒクル分子は、少なくとも1つのペプトイドを含み、これは、本明細書に記載の任意のタイプのペプトイドであり得る。別の例では、送達ビヒクル分子は、1より多いペプトイドからなり、これは、本明細書に記載される任意のタイプのペプトイドであり得る。
【0014】
腫瘍特異的抗原をコードするmRNAは、患者特異的抗原(又は複数の患者特異的抗原)をコードするmRNAから構成されてもよい。例えば、mRNA治療薬(例えば、mRNAワクチン)は、複数の患者特異的抗原をコードするmRNAから構成されてもよい。腫瘍特異的抗原をコードするmRNAは、共通腫瘍抗原をコードするmRNAを含んでもよい。
【0015】
免疫調節剤をコードするmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの組合せをコードする。例えば、免疫調節剤をコードするmRNAは、抗CTLA-4をコードする。免疫調節剤をコードするmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしてもよい。免疫調節剤をコードするmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードしてもよい。
【0016】
mRNA治療薬及びその製造又は使用方法は、いずれも、mRNA治療に含まれる可能性がある1以上のアジュバントの追加を含んでもよい。いくつかの変形例では、送達ビヒクル分子は、追加のアジュバントと混合され、含まれ、及び/又はカプセル化されてもよい。いくつかの変形例では、追加のアジュバントは、治療用mRNA(例えば、腫瘍特異的mRNA及び1以上の免疫調節物質mRNA)をカプセル化したナノ粒子を含む溶液と結合させてもよい。例えば、これらのmRNA治療薬のいずれかは、免疫賦活剤をさらに含んでもいてよい。例えば、免疫賦活剤は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含んでもよい。
【0017】
使用において、これらの方法のいずれかが、治療の間に1~7日の待機時間で、注射治療を1回以上繰り返すことを含んでもよい。前述のように、注射は、腫瘍内注射であってもよい(ただし、これに限定されない)。いくつかの変形例では、注射は、腫瘍内注射及び/又は他の手段(皮下注射など)の両方であってもよい。
【0018】
腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと免疫調節剤をコードするmRNAは、単一のmRNA鎖上に存在してもよいし、別々のmRNA鎖上に存在してもよい。
【0019】
一般に、これらの方法は、腫瘍を治療する方法、例えば、腫瘍の大きさを縮小する方法であってもよい。腫瘍は、約10%と約100%の間で、約10%と約90%の間で、約10%と約80%の間で、約10%と約70%の間で、約10%と約60%の間で、約10%と約50%の間で、約10%と約40%の間で、約10%より大きく、約15%より大きく、約20%より大きく、約25%より大きく、約30%より大きく、約40%より大きく、約50%より大きく、約60%より大きく、約70%より大きく、又は約75%より大きく等、減少させることができる。
【0020】
任意の適切な癌又は腫瘍は、本明細書に記載されるように、治療され得る。例えば、これらの方法は、リンパ腫を治療する方法であってもよい。本明細書に記載される方法は、子宮頸がんを治療する方法であってもよい。
【0021】
また、本明細書では、(例えば、mRNAワクチンナノ粒子としての)mRNA治療ナノ粒子を含むmRNA治療薬も記載される。一般に、mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤をコードする1以上のmRNAと、送達ビヒクル分子と、を含んでいてもよく、1以上のmRNAが送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される。mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNA(例えば、mRNAワクチン)と、免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、第1のmRNA及び第2のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子と、を含んでもよい。例えば、mRNAワクチンナノ粒子は、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、チェックポイント阻害剤から成る免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAと、第1のmRNA、第2のmRNA、及び第3のmRNAをカプセル化する送達ビヒクル分子と、を含んでもよい。
【0022】
mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、チェックポイント阻害剤から成る免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAと、第1のmRNA、第2のmRNA、及び第3のmRNAをカプセル化するアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルからなる送達ビヒクル分子と、を含んでもよい。
【0023】
これらのmRNA治療ワクチンのいずれもが、免疫調節性siRNAを含む1以上のsiRNAを含んでもよい。
【0024】
上記のように、任意の適切な送達ビヒクル分子を使用することができる。例えば、送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルから構成されてもよい。
【0025】
第1のmRNAは、患者特異的な抗原をコードしてもよい。例えば、第1のmRNAは、複数の患者特異的な抗原をコードしてもよい。第1のmRNAは、共通腫瘍抗原をコードしてもよい。第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの組み合わせをコードしてもよい。第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしてもよい。例えば、第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしていてもよく、SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 3のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一のポリヌクレオチド配列を有してもよい。いくつかの例において、第2のmRNAは、SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 4のポリペプチド配列と少なくとも約50%(例えば、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一である抗CTLA-4をコードしてもよい。第2のmRNAは、TNFSF14(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14 isoform1 precursor、又はLIGHT)をコードしてもよい。例えば、第2のmRNAは、TNFSF14をコードしていてもよく、SEQ ID NO: 11のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一であるポリヌクレオチド配列を有してもよい。いくつかの例において、第2のmRNAは、SEQ ID NO: 12のポリペプチド配列と少なくとも約50%(例えば、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一であるTNFSF14をコードしてもよい。第3のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしてもよい。第3のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしていてもよく、SEQ ID NO: 7又はSEQ ID NO: 9のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一のポリヌクレオチド配列を有してもよい。第3のmRNAは、SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 10のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一のTGF-βアンタゴニストをコードしてもよい。第3のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12をコードしてもよい。例えば、第3のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12をコードしていてもよく、SEQ ID NO: 5のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一のポリヌクレオチド配列を有してもよい。第3のmRNAは、SEQ ID NO: 6のポリヌクレオチド配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又はそれ以上)同一の一本鎖インターロイキン-12をコードしてもよい。
【0026】
mRNA治療ナノ粒子は、mRNA治療ナノ粒子に既に含まれている免疫調節剤とは異なる、他の免疫調節剤をコードする追加のmRNAを含んでもよい。本明細書に記載されるように、これらのmRNA治療薬のいずれかにおいて、3以上の異なる免疫調節性mRNAが、腫瘍特異的mRNAと共に含まれてもよい。
【0027】
本明細書に記載されるmRNA治療ナノ粒子は、上記のように、1以上の免疫調節物質を含んでいても、及び/又は結合されていてもよい。例えば、本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどの免疫賦活剤を含んでいても及び/又は結合されていてもよい。
【0028】
腫瘍特異的抗原をコードするmRNA、及び免疫調節剤をコードする1以上のmRNAの全て又は一部は、一本鎖mRNAの一部であってもよい。具体的には、これらのmRNA(又はその一部)は、例えば、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び免疫調節剤(複数可)をコードするmRNA(複数可)が、単一の連続したmRNA内で、腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤(複数可)をコードするmRNA(複数可)の2以上のオープンリーディングフレームを結合させた単一のmRNAとなるように結合されてもよい。例えば、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、第1のmRNA(腫瘍特異的抗原をコードするmRNA)及び第2のmRNA(免疫調節剤をコードするmRNA)のORFを含む単一のmRNA鎖であってもよい。あるいは、第1のmRNAと第2のmRNAは、異なるmRNA鎖の一部であってもよい。
【0029】
また、本明細書に記載されるmRNA治療薬(例えば、mRNA治療ナノ粒子)の作成方法(例えば、作製方法、製造方法、合成方法など)についても説明する。例えば、(mRNA治療ナノ粒子の作成)方法は、マイクロ流体経路デバイスにおいて、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うことと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うことと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1及び第2のmRNAを精製することと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1のmRNA及び第2のmRNAを送達ビヒクル分子と結合してmRNA治療ナノ粒子を形成することと、を含んでもよい。
【0030】
いくつかの例では、方法は、閉経路マイクロ流体経路デバイスにおいて、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うことと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うことと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1及び第2のmRNAを精製することと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1のmRNA及び第2のmRNAを送達ビヒクル分子と結合することと、を含んでもよい。
【0031】
mRNA治療ナノ粒子の作成方法は、閉経路マイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うことと、第1のmRNAを精製することと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うことと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第2のmRNAを精製することと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1のmRNA及び第2のmRNAの両方を送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成することと、を含んでもよい。
【0032】
(例えば、mRNA治療ナノ粒子の作成)方法は、(例えば、閉経路)マイクロ流体経路デバイスの第1のチャンバにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うことと、第1のmRNAを精製することと、該マイクロ流体経路デバイスの第2のチャンバにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うことと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第2のmRNAを精製することと、該マイクロ流体経路デバイスの第3のチャンバにおいて、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAのインビトロ転写を行うことと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第3のmRNAを精製することと、該マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1のmRNA、第2のmRNA、及び第3のmRNAを送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成することと、を含んでもよい。
【0033】
第1、第2及び第3のmRNAを精製することは、マイクロ流体経路デバイス上の1以上のリアクタにおいて、第1、第2、又は第3のmRNAを精製することを含んでもよい。mRNAを精製するための1以上のリアクタは、2本鎖mRNAを除去するために、1以上のリアクタ内に、セルロースなどの2本鎖mRNA結合材料を含んでもよい。
【0034】
マイクロ流体経路デバイスは、1以上のテンプレートから第1及び第2のmRNAのインビトロ転写を行う工程と、第1及び第2(及び第3、第4等)のmRNAを精製する工程と、mRNAを送達ビヒクル分子と結合させる工程と、を自動的かつ連続的に行うように構成された閉経路システムを含んでもよい。閉経路システムは、mRNAのインビトロ転写の実行、mRNAの精製、及びmRNAと送達ビヒクル分子との結合を空気圧で制御してもよい。
【0035】
閉経路システムは、マイクロ流体経路デバイス内の1以上の膜を偏向させることにより、テンプレートからの第1及び第2のmRNAのインビトロ転写の実行、第1及び第2のmRNAの精製、並びに第1及び第2のmRNAと送達ビヒクル分子との結合を空気圧で制御してもよい。閉経路システムは、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程と、治療用mRNAを精製する工程と、mRNAを送達ビヒクルと結合させる工程と、を5日未満で自動的にかつ連続的に行ってもよい。本方法は、医療現場で実施されてもよい。mRNAと送達ビヒクルとを結合することは、マイクロ流体経路デバイス内で、mRNA治療ナノ粒子組成物を透析することをさらに含んでもよい。
【0036】
これらの方法及びそれを実行するシステムのいずれもが、マイクロ流体経路デバイスにmRNA治療ナノ粒子を集中させることを含んでもよい。
【0037】
前述のように、送達ビヒクル分子は、両親媒性ナノ粒子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド)を含む、任意の適切な送達ビヒクルであってもよい。腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAは、患者特異的抗原をコードするmRNAを含んでもよい。第1のmRNAは、複数の患者特異的抗原をコードしてもよい。腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAは、共通腫瘍抗原をコードするmRNAを含んでもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの組み合わせをコードしてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードしてもよい。mRNA(例えば、第1及び第2のmRNA、並びに第3のmRNA等)を結合させることは、mRNA治療ナノ粒子がマイクロ流体経路デバイス内にある間に、CpGオリゴデオキシヌクレオチド等の免疫賦活剤をmRNA治療ナノ粒子に添加することを含んでもよい。
【0038】
本明細書に記載の方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA治療ナノ粒子と、2以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、を腫瘍内注射することを含み、2以上の免疫調節剤のうちの少なくとも1つがチェックポイント阻害剤であり、さらに、mRNAワクチン及び免疫調節剤がアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルなどの単一の送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化されている。
【0039】
例えば、本明細書に記載されているのは、治療の方法である。これらの方法は、mRNAワクチンの、特に癌治療のための効能を改善する可能性がある。腫瘍特異的mRNAをコードするmRNAと免疫調節剤(複数可)をコードするmRNA(複数可)との両方を送達ビヒクルに一緒にカプセル化することにより、ワクチンの効能が向上する可能性がある。mRNAワクチンを腫瘍内注射することが有益である可能性がある。これらの方法のいずれもが、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAワクチンと、1以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、を腫瘍内注射することを含んでもよく、腫瘍特異的抗原をコードするmRNA及び1以上の免疫調節剤をコードするmRNAは、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルに一緒にカプセル化されてもよい。
【0040】
治療(例えば、癌の治療)の方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAワクチンと、1以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、を腫瘍内注射することを含んでもよく、mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍特異的mRNA抗原及び1以上の免疫調節剤をコードするmRNAの両方のための単一の送達ビヒクルに一緒にカプセル化されている。
【0041】
これらの方法及び組成物は、mRNA治療ナノ粒子の一部として、腫瘍特異的抗原を含む指向性mRNAを含むことができ、腫瘍特異的抗原は、mRNA治療ナノ粒子が注射される腫瘍によって発現される。いくつかの変形例では、腫瘍特異的抗原は、mRNA治療ナノ粒子が注射される腫瘍に特異的である。
【0042】
これらの方法及び組成物のいずれにおいても、腫瘍特異的抗原は、1以上の患者特異的抗原をコードするmRNAであってもよい。患者特異的抗原は、異常なタンパク質(例えば、対応する体細胞タンパク質と比較して修飾されているもの、及び/又は非癌患者細胞と比較して異常に発現しているもの)を同定することによって同定されてもよい。いくつかの変形例では、mRNA治療ナノ粒子は、複数の患者特異的抗原をコードするmRNAを含んでいる。mRNA治療ナノ粒子は、共通腫瘍抗原をコードするmRNAを含んでもよい。例えば、いくつかの変形例では、mRNAは、患者から分離されていない類似の腫瘍から同定される抗原(例えば、ペプチド)をコードしてもよい。
【0043】
腫瘍特異的抗原のポリヌクレオチド配列は、患者(例えば、腫瘍内)に存在する配列と比較して、修飾されていてもよい。ポリヌクレオチド配列は、mRNAの発現を強化し、及び/又はmRNAの分解を防止するように修飾されてもよい。いくつかの変形例では、腫瘍特異的抗原を含むmRNAは、免疫応答を誘発するために、腫瘍特異的抗原(複数可)の提示を強化するように修飾されてもよい。例えば、腫瘍特異的抗原は、提示を強化するmRNAスキャフォールドの一部であってもよい。
【0044】
一般に、本明細書に記載のmRNA治療薬は、2以上の追加の免疫調節剤をコードするmRNAを有利に含んでもよく、これらの免疫調節剤は、互いに異なっていてもよい。本明細書で使用されるように、免疫調節剤は、チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体、抗CTLA4等のチェックポイント阻害剤タンパク質)、免疫抑制アンタゴニスト、炎症促進剤、又はそれらの組合せを含んでもよい。
【0045】
チェックポイント阻害剤の例として、1以上の免疫系チェックポイントタンパク質を標的として阻害するタンパク質、例えば、CTLA4、PD-1、及びPD-L1のうちの1つ以上を阻害するタンパク質が含まれる。いくつかの変形例では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4を阻害するタンパク質を指す。例えば、チェックポイント阻害剤タンパク質は、抗体又は抗体断片、例えば、抗原結合断片(Fab)、単鎖可変断片(scFv)、アプタマーなど、CTLA-4に結合するタンパク質を含んでもよい。抗CTLA-4タンパク質(例えば、抗体、scFvなど)の例は、本明細書に記載されている。免疫調節剤をコードするmRNAは、抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブなど)、抗CTLA-4抗体(トレメリムマブ又はイピリムマブなど)、抗PD1抗体(ニボルマブ又はペムブロリズマブなど)、又はそれらの組合せをコードしている。例えば、いくつかの変形例では、免疫調節剤をコードするmRNAは、抗CTLA-4結合剤をコードしている。
【0046】
免疫抑制アンタゴニストは、免疫抑制を防止又は制限するタンパク質を含んでもよく、免疫系の抑制のための経路を遮断する。例えば、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β-RII)に対するアンタゴニストは、免疫抑制アンタゴニストとして作用し得るサイトカインの1つである。炎症促進剤は、典型的には、炎症応答自体を誘導し、局所的な炎症を引き起こす可能性がある。例えば、IL-12は、炎症性分子である。したがって、本明細書で使用されるように、免疫調節剤(免疫調節物質)は、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12)及び他のサイトカイン(インターフェロン、GM-CSF)、ケモカイン(CCL3、CCL26、CXCL-7)等を含んでもよい。
【0047】
特に、本明細書では、TGF-βアンタゴニスト(例えば、TGF-β RII)をコードするmRNAを含む方法及び組成物について説明する。いくつかの変形例では、免疫調節剤をコードするmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードしている。
【0048】
本明細書に記載されるこれらの方法及び組成物のいずれかにおいて、mRNA治療ナノ粒子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどの免疫賦活剤を含んでもよい。免疫賦活剤は、本明細書に記載されるような免疫調節剤とは別のものであってもよい。免疫賦活剤は、非タンパク質免疫賦活剤を指す場合がある一方、本明細書で言及される免疫調節剤は、mRNAワクチンの一部としてmRNAとしてコードされ得るタンパク質(例えば、ペプチドベース)免疫調節剤である。
【0049】
腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤の両方に対するmRNAの使用は、腫瘍内注射される場合、多数の利点を提供し得る。例えば、本明細書に記載されるように身体(腫瘍内を含む)に直接注射される場合のmRNAは、約3日の半減期を有し得るが、本明細書により詳細に記載されるように、実質的かつ特定の免疫応答を誘発するのに十分な、かなりの量の転写をもたらす。
【0050】
本明細書に記載される方法は、治療期間にわたって、1回又は2回以上の注射を含んでもよい腫瘍内注射治療の一部として実行されてもよい。例えば、本明細書に記載の方法は、治療間に約1~約30日の待機時間(例えば、約1日~約3日の待機時間、約1日~5日の待機時間、約1日~7日の待機時間、約1日~8日の待機時間、約1日~10日の待機時間、約1日~15日の待機時間、約1日~20日の待機時間、約1日~30日の待機時間、など)で、腫瘍内注射治療を1回以上(例えば、約1x、約2x、約3x、約4x、約5x、約6x、約7x、又はそれ以上)繰り返すことを含んでもよい。一例では、待機時間は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、又は約14日であってもよく、前述の範囲のいずれかのうちの他の適切な値でもよい。1回の治療には、一つの腫瘍における1以上の部位への注射、又は複数の腫瘍における1以上の部位への注射を含む、1以上の注射を含むことができる。例えば、本明細書に記載の方法は、主要な腫瘍への注射を含んでもよい。注射は、腫瘍の本体、及び/又は腫瘍を取り巻く組織への注射であってもよい。いくつかの変形例では、注射は、腫瘍に栄養を供給する管(例えば、血管など)を介して行われる場合がある。
【0051】
本明細書に記載の方法は、以下の1以上に関連する腫瘍又は前腫瘍病変を含む、任意の適切な腫瘍タイプへの注射を含んでもよい。急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、アストロサイトーマ、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、非定型類縁体/ラブドイド腫瘍、皮膚の基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌(ユーイング肉腫及び骨肉腫、悪性線維性組織球腫を含む)、脳腫瘍、乳癌、気管支腫瘍(肺癌)、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(消化器)、心臓(心)腫瘍、頸癌、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児横紋筋肉腫(軟部肉腫)、小児血管腫瘍(軟部肉腫)、胆管癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性新生物、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、乳管内癌(DCIS)、胚性腫瘍、髄芽腫、子宮内膜癌(子宮体癌)、上衣腫、食道癌、エステシオネーロブラストーマ(頭頸部癌)、ユーイング肉腫(骨癌)、頭蓋外胚細胞腫瘍、外胚葉細胞腫瘍、眼球癌、卵管癌、骨繊維性組織球腫、悪性、及び骨肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)(軟部組織肉腫)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌(頭頸部癌)、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫(軟部組織肉腫)、腎臓(腎細胞)癌、喉頭癌(頭頸部癌)、白血病、唇・口腔癌(頭頸部癌)、肝臓癌、肺癌(非小細胞癌、小細胞癌、胸膜肺芽腫、気管支腫瘍)、リンパ腫、骨悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、髄芽腫及びその他の中枢神経系発生腫瘍、黒色腫、メルケル細胞癌(皮膚癌)、悪性中皮腫、転移性癌、原発不明転移性扁平上皮癌(頭頸部癌)、口唇癌(頭頸部癌)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫(リンパ腫)、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、慢性骨髄増殖性新生物、鼻腔及び副鼻腔癌(頭頸部癌)、上咽頭癌(頭頸部癌)、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、口唇及び口腔癌及び中咽頭癌(頭頸部癌)、中咽頭癌、骨肉腫(骨癌)、卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓癌、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫症(小児喉頭)、パラガングリオーマ、副鼻腔・鼻腔癌(頭頸部癌)、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(頭頸部癌)、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫(肺癌)、中枢神経系原発リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、網膜芽細胞腫、唾液腺癌(頭頸部癌)、肉腫、セザリー症候群(リンパ腫)、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、皮膚扁平上皮癌(皮膚癌を参照)、潜伏性原発を有する転移性扁平上皮癌(頭頸部癌)、精巣癌、喉の癌(頭頸部癌)、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、気管気管支腫瘍(肺癌)、腎盂尿管移行細胞癌(腎臓(腎細胞)癌)、尿道癌、子宮癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、膣癌、及び外陰部癌。
【0052】
例えば、本明細書に記載される方法は、リンパ腫を治療するための方法であってもよい。いくつかの変形例では、本明細書に記載される方法は、前癌状態の適応症(例えば、子宮頸部異形成)を含む子宮頸癌を治療するために使用されてもよい。
【0053】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、方法は、単一の送達ビヒクル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル)によって腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと一緒にカプセル化された1以上の免疫調節剤の両方をコードするmRNA治療ナノ粒子を注射することを含んでもよい。一例では、mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍内注射されてもよく、代替的又は追加的に、mRNA治療ナノ粒子は、腫瘍の近く又は腫瘍に栄養を供給する血管に、全身的又は局所的に注射されてもよい。全身注射は、静脈内注射、皮下注射、胸腔内注射、筋肉内注射などを含んでもよい。
【0054】
一般に、本明細書に記載される送達ビヒクルは、例えば、両親媒性ナノ粒子を含む、任意の適切な送達ビヒクルであってよい。特に、両親媒性ナノ粒子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを構成してもよい。例えば、これらの送達ビヒクルは、循環中にmRNAカーゴのパッケージング及び保護を提供し、免疫認識を回避し、細胞への取り込み及び放出を促進し得る脂質含有両親媒性送達ビヒクルであってもよい。これらの送達ビヒクルの例は、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年9月27日出願の国際特許出願PCT/US19/53661「LIPID NANOPARTICLE FORMULATIONS COMPRISING LIPIDATED CATIONIC PEPTIDE COMPOUNDS FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」、及び2019年9月27日出願の国際特許出願PCT/US19/53655「TERTIARY AMINO LIPIDATED CATIONIC PEPTIDES FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」に挙げられている。複数のタイプの送達ビヒクル分子を使用してもよく、各タイプは、本明細書に記載の1以上の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと、1以上の免疫調節剤をコードするmRNAとの両方を搭載してよい(例えば、カプセル化してよい等)。
【0055】
ペプトイドベースの脂質製剤は、N-置換ペプチド(すなわちペプトイド)骨格上にカチオン基及び脂質部分の両方を組み込むことができる。送達ビヒクル成分は、商業的に入手可能な単分散の、完全に特性化可能な化学的実体であってもよい。送達ビヒクル(DV)成分は、制御された比率でmRNAと比較的迅速に混合される。DV成分が水溶液にさらされ、カチオン性(+)脂質とアニオン性(-)mRNAの間で相互作用することにより、粒子形成が引き起こされる可能性がある。このプロセスは、(粒子サイズ及び均一性を制御するため)マイクロ流体経路デバイスを使用して実施することができる。例えば、mRNAは、そのカチオン電荷の原因である送達ビヒクル上の塩基性官能基(アミンなど)の完全なプロトン化を保証するのに役立ち得る酸性緩衝液(pH約3~5)中に溶解されてもよい。送達ビヒクルは、水性混和性有機溶媒(例えば、エタノール)に溶解してもよく、これは、荷電水溶液への曝露時にナノサイズ粒子の形成を促進する。混合直後に、溶液のpHは、中性緩衝液によって安定化されてもよい。得られた製剤は、約4℃~約8℃で数週間又はそれ以上、明らかな機能低下なく保存することができる。あるいは、製剤化工程は、ジャストインタイムで、ポイントオブケアで行うことができる。
【0056】
本開示は、癌治療のためのmRNA治療薬を提供する。本開示のmRNA治療薬は、その技術が、腫瘍特異的抗原mRNAと、免疫調節剤ポリペプチド(例えば、チェックポイント阻害剤、炎症促進剤、及び免疫抑制の拮抗剤などを含む、免疫腫瘍学(「IO」)において有用な腫瘍関連ポリペプチド)をコードする1以上のmRNAとの両方を送達し、標的細胞内、例えば、腫瘍の標的細胞内の機能的タンパク質のデノボ合成を可能にするので、癌の治療に特に適している。これらの治療用mRNAは、不要な免疫活性化(例えば、外来核酸のインビボ導入に関連する自然免疫応答)を最小限に抑え、タンパク質へのmRNAの翻訳効率を最適化するために、修飾ヌクレオチドを有してもよい。本開示の例示的な態様は、自然免疫応答を低減するためのヌクレオチド修飾と、配列最適化、特に、タンパク質発現を高めるための免疫調節ポリペプチドをコードする治療用mRNAのオープンリーディングフレーム(ORF)内での配列最適化との組み合わせを有する治療用mRNAを特徴としている。
【0057】
本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子組成物は、腫瘍特異的抗原mRNAと、免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAとの両方をコードするmRNA(複数可)が、脂質ナノ粒子(LNP)送達システムを介して、特に、単一の送達ビヒクル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル)内にカプセル化されて送達されることを特徴としている。例えば、本明細書に記載のmRNA療法技術は、腫瘍特異的抗原mRNAと、免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAと、をアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルによって、腫瘍に送達することを特徴とする。本明細書に記載の製剤は、インビボ投与に関連する免疫原性が低下している可能性がある。
【0058】
本開示は、癌を治療するための方法及び組成物、特に、免疫治療方法及び組成物を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、腫瘍特異的抗原mRNAと免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAとの両方を使用して、癌を治療するための方法及び組成物を特徴とする。
【0059】
いくつかの態様において、本開示は、例えば、送達ビヒクル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル)に一緒にカプセル化した腫瘍特異的抗原mRNAと、免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAと、を腫瘍内に投与することによって、それを必要としている対象において腫瘍のサイズを縮小又は減少させる方法又は腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。
【0060】
腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAは、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドを含んでもよい。いくつかの例では、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
いくつかの態様において、本組成物は、別の癌療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与される。腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAは、少なくとも部分的に、(a)樹状細胞のプライミング、(b)樹状細胞の成熟促進、(c)抗原提示細胞サイトカイン及び/又はケモカイン産生促進、(d)Th17細胞の拡大又は維持、(e)Th1及び/又はTh9分化促進、ならびに(f)(a)~(f)の任意の組み合わせ、より成る群から選ばれる1以上の作用を有していてよい。
【0062】
一般に、本明細書に記載されるmRNAナノ粒子のいずれかの治療的使用は、少なくともmRNAナノ粒子の使用を含むmRNA治療ナノ粒子を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。
【0063】
本開示では、個体における癌の治療又は進行を遅らせるための医薬の製造において、本明細書に記載されるように、同一のナノ粒子(アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルのような脂質ナノ粒子)にカプセル化された前述又は先述の組成物(例えば、腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNA)のうちのいずれかが使用される。医薬は、組成物又は脂質ナノ粒子と、任意の薬学的に許容される担体と、を含む。治療は、医薬と、任意の薬学的に許容される担体と、を投与することを含む。
【0064】
いくつかの態様において、本開示では、本明細書に記載のように、腫瘍特異的抗原mRNAと免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAとの両方を送達ビヒクル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル)によってカプセル化したポリヌクレオチド(例えば、mRNA)組成物と、任意の薬学的に許容される担体と、を含む容器から成るキット、及び個体における癌の治療又は進行を遅らせるための組成物の腫瘍内投与(例えば、注射)に関する指示を含む添付文書が提供される。いくつかの態様において、添付文書は、個体における癌の進行を治療又は遅延させるための、別の部位への注射(例えば、全身注射)と組み合わせた腫瘍内注射による組成物の投与に関する指示をさらに含む。
【0065】
さらに他の態様において、本開示では、本明細書に記載される前述又は先述の組成物のいずれかと任意の薬学的に許容される担体とから成る医薬を含むキット、及び、個体における癌の進行を治療又は遅延させるための、医薬単体又は第2の(例えば、全身)部位に対する注射と組み合わせた医薬と、任意の薬学的に許容される担体との腫瘍内投与に関する指示を含む添付文書が提供される。いくつかの態様において、キットは、個体における癌の治療又は進行を遅らせるための医薬の投与に関する指示を含む添付文書をさらに含む。
【0066】
本開示の他の態様は、本明細書に記載されるように、個体における癌の治療又は進行を遅らせるための、単一の脂質ナノ粒子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル)に一緒にカプセル化された前述又は先述の腫瘍特異的抗原mRNAのいずれかと免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAと、任意の薬学的に許容される担体とから成る組成物に関する。治療は、同一の脂質ナノ粒子に含まれる腫瘍特異的抗原mRNAと、免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAと、を第2の組成物と結合させて腫瘍内注射することを含む。第2の組成物は、免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAと、送達ビヒクル分子(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル)と、を含む。免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAは、チェックポイント阻害剤ポリペプチド(例えば、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体、抗CTLA4抗体、又はそれらの組み合わせ)、及び任意の薬学的に許容される担体であってもよい。いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、PD1、PD-L1、CTLA4、又はそれらの組合せを阻害する。一例では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、抗体又はその抗体をコードするポリヌクレオチドである。一例では、抗体は、CTLA4と特異的に結合する抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片、PD1と特異的に結合する抗PD1抗体又はその抗原結合断片、PD-L1と特異的に結合する抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片、及びこれらの組合せである。一例において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブである。一例では、抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブ又はイピリムマブである。一例では、抗PD1抗体は、ニボルマブ又はペムブロリズマブである。
【0067】
mRNA(例えば、腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNA)は、少なくとも1つの化学修飾を含む。一例では、化学修飾は、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、2-チオウリジン、4′-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、2′-O-メチルウリジンからなる群から選択される。いくつかの態様において、mRNAは、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドを含む。少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、N1-メチルプソイドウリジンである。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、完全に修飾されたN1-メチルプソイドウリジンmRNAである。追加の化学修飾は本明細書に開示されている。
【0068】
組成物は、脂質ナノ粒子担体、特にアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に製剤化されてもよい。例えば、本明細書に記載の腫瘍特異的抗原mRNA及び免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAを含む組成物は、組成物内の全てのポリヌクレオチドが同一の脂質ナノ粒子担体によって運ばれるように製剤化されてもよい。腫瘍特異的抗原mRNAと免疫調節剤ポリペプチドをコードする1以上のmRNAとの比率は、例えば、約1:1(例えば、ほぼ等モル)となるように選択してもよいし、免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAに対して、腫瘍特異的抗原mRNAを過剰に含んでもよい(例えば、腫瘍特異的抗原のmRNA:免疫調節剤のポリペプチドをコードするmRNA>約1:1と約1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1等の間)。あるいは、組成物は、腫瘍特異的抗原mRNAに対して、免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAを過剰に含んでもよい(例えば、免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNA:腫瘍特異的抗原mRNA>約1:1と約1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1等の間)であってもよい。複数の免疫調節剤ポリペプチド(例えば、免疫調節剤ポリペプチドをコードする複数のmRNA)が使用される変形例において、全ての成分は、ほぼ等モルであってもよく(例えば、腫瘍特異的抗原mRNAに対して約1:1:1、又は約1:1:1:1等)、又は1以上の成分が過剰であってもよい(例えば、腫瘍特異的抗原mRNAが過剰であってもよく、代替的に、1以上の免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAが過剰であってもよい)。
【0069】
別の態様では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子組成物のいずれかを対象に投与することを含む、それを必要とする対象における腫瘍のサイズを縮小又は減少させる方法又は腫瘍成長を阻害する方法を含む。一般に、組成物は、腫瘍内に投与される。別の例では、組成物(又は1以上の免疫調節剤ポリペプチドをコードするmRNAと、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルと、を含む第2の組成物)は、局所的に(例えば、腫瘍が成長している領域に、例えば腹腔内の腫瘍に対して組成物は腹腔内に投与され得る)、及び/又は全身に投与され得る。一例では、腫瘍はリンパ腫である。いくつかの他の例では、腫瘍は肝細胞癌である。別の例では、腫瘍は、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、又は播種性胃腫瘍である。治療に適する他の腫瘍及び癌は、本明細書に開示されている。
【0070】
例えば、本明細書に記載されるのは方法であり、その方法は、(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、(iii)送達ビヒクル分子と、を含むmRNAナノ粒子を腫瘍内注射することを含み、第1のmRNA及び第2のmRNAは、送達ビヒクルヒル分子により一緒にカプセル化される。
【0071】
腫瘍特異的抗原は、ウイルス抗原を含んでもよい。ウイルス抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、又はそれらの任意の組み合わせと関連していてもよい。腫瘍特異的抗原は、ネオエピトープを含んでもよい。腫瘍特異的抗原は、患者特異的抗原を含んでもよい。腫瘍特異的抗原は、複数の患者特異的抗原を含んでもよい。腫瘍特異的抗原は、共通腫瘍抗原を含んでもよい。
【0072】
送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでもよい。mRNAナノ粒子は、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAをさらに含んでもよい。mRNAナノ粒子は、免疫調節性siRNAをさらに含んでもよい。
【0073】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの任意の組合せをコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、炎症誘発性サイトカインをコードしていてもよい。炎症性サイトカインは、(IL)、IL-1、IL-2、IL-12、IL-17、IL-18、IFN-γ、及びTNF-αのうちの1つであってもよい。炎症性サイトカインは、インターロイキン-12(IL-12)であってもよい。
【0074】
免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしていてもよい。免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードしていてもよい。
【0075】
mRNAナノ粒子は、免疫賦活剤をさらに含んでもよい。mRNAナノ粒子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む免疫賦活剤をさらに含んでもよい。これらの方法のいずれかが、注射の間に待機時間を設けて腫瘍内注射を1回以上繰り返すことをさらに含んでもよく、待機時間が約1日~約14日である。
【0076】
腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと免疫調節剤をコードする第2のmRNAは、単一のmRNA鎖上に存在してもよい。本方法は、リンパ腫を有する患者を治療する方法であってもよい。本方法は、子宮頸癌を有する患者を治療する方法であってもよい。
【0077】
本明細書には、方法も記載されており、その方法は、mRNAナノ粒子を、それを必要とする患者に腫瘍内注射することを含み、mRNAナノ粒子が、(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと、(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、(iii)送達ビヒクル分子と、を含み、第1のmRNA及び第2のmRNAが送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される。
【0078】
また、本明細書では、mRNA治療ナノ粒子であって、ナノ粒子は、(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、(iii)送達ビヒクル分子と、を含み、第1のmRNA及び第2のmRNAが送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される。
【0079】
mRNA治療ナノ粒子であって、ナノ粒子は、(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、(ii)SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、(iii)アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルからなる送達ビヒクル分子と、を含んでもよく、第1のmRNA及び第2のmRNAは、送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される。
【0080】
いくつかの例では、mRNA治療ナノ粒子であって、ナノ粒子は、(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと、(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、(iii)送達ビヒクル分子と、を含んでもよく、第1のmRNA及び第2のmRNAは、送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される。
【0081】
送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでもよい。第1のmRNAは、患者特異的抗原をコードしていてもよい。第1のmRNAは、複数の患者特異的抗原をコードしていてもよい。第1のmRNAは、共通腫瘍抗原をコードしていてもよい。第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの任意の組み合わせをコードしていてもよい。第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードしていてもよい。第2のmRNAは、SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である抗CTLA-4をコードしていてもよい。
【0082】
これらのいずれかのmRNA治療ナノ粒子は、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードする第3のmRNAをさらに含んでもよい。
【0083】
mRNA治療ナノ粒子は、SEQ ID NO: 7又はSEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるTGF-βアンタゴニストをコードする第3mのRNAをさらに含んでもよい。第2mのRNAは、SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるインターロイキン12をコードしていてもよい。mRNA治療ナノ粒子は免疫賦活剤をさらに含んでもよい。免疫賦活剤は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含んでもよい。
【0084】
いずれのmRNA治療ナノ粒子においても、腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤のそれぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)は、単一のmRNA鎖の一部であってよい。腫瘍特異的抗原及び免疫調節剤のそれぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)は、異なるmRNA鎖の一部であってもよい。
【0085】
また、本明細書に記載されるのは、方法であり、該方法は、マイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うことと、第1のmRNAを精製することと、マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うことと、マイクロ流体経路デバイスにおいて、第2のmRNAを精製することと、マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1のmRNA及び第2のmRNAを一緒に送達ビヒクル分子でカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成することと、を含む。
【0086】
例えば、本明細書に記載されるのは方法であり、該方法は、マイクロ流体経路デバイスの第1のチャンバにおいて、テンプレートから腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのインビトロ転写を行うことと、第1のmRNAを精製することと、マイクロ流体経路デバイスの第2のチャンバにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を行うことと、マイクロ流体経路デバイスにおいて、第2のmRNAを精製することと、マイクロ流体経路デバイスの第3のチャンバにおいて、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAのインビトロ転写を行うことと、マイクロ流体経路デバイスにおいて、第3のmRNAを精製することと、マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1のmRNA、第2のmRNA、及び第3のmRNAを一緒に送達ビヒクル分子でカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成することと、を含む。
【0087】
第1のmRNAの精製、第2のmRNAの精製、及び第3のmRNAの精製は、それぞれ、マイクロ流体経路デバイス上の1以上のリアクタで精製することをさらに含んでもよい。
【0088】
1以上のリアクタ内で精製することは、1以上のリアクタ内でセルロースを用いて二本鎖mRNAを除去することを含んでもよい。マイクロ流体経路デバイスは、第1mのRNA及び第2のmRNAの各々のインビトロ転写を自動的かつ連続的に行い、第1のmRNA及び第2のmRNAを精製し、第1のmRNA及び第2のmRNAを送達ビヒクル分子に結合する閉経路システムから構成されてもよい。閉経路システムは、第1及び第2のmRNAのインビトロ転写、第1及び第2のmRNAの精製、並びに第1及び第2のmRNAと送達ビヒクル分子との結合を行うことを空気圧によって制御してもよい。
【0089】
閉経路システムは、マイクロ流体経路デバイス内の1以上の膜を偏向させることにより、第1のmRNA及び第2のmRNAのインビトロ転写の実行、第1のmRNA及び第2のmRNAの精製、ならびに第1のmRNA及び第2のmRNAと送達ビヒクル分子との結合を空気圧によって制御してもよい。
【0090】
閉経路システムは、治療用mRNAのインビトロ転写、治療用mRNAの精製、及びmRNAと送達ビヒクルとの結合を、まとめて約5日未満で自動的かつ連続的に行ってもよい。本方法は、医療現場において実施されてもよい。mRNAと送達ビヒクルとを結合させることは、マイクロ流体経路デバイス内でmRNA治療ナノ粒子を透析することをさらに含んでもよい。これらの方法のいずれかが、マイクロ流体経路デバイス上で、mRNA治療ナノ粒子を濃縮することを含んでもよい。
【0091】
送達ビヒクル分子は、両親媒性分子を含んでもよい。両親媒性分子は、アミノ脂質化ペプトイドを含んでもよい。第1のmRNAは、患者特異的抗原をコードするmRNAからなる腫瘍特異的抗原をコードしてもよい。mRNAは、複数の患者特異的抗原をコードしてもよい。第2のmRNAは、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの任意の組み合わせをコードする免疫調節剤をコードしてもよい。第2のmRNAは、抗CTLA-4をコードする免疫調節剤をコードしてもよい。第2のmRNAは、TGF-βアンタゴニストをコードする免疫調節剤をコードしてもよい。第2のmRNAは、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードする免疫調節剤をコードしてもよい。
【0092】
これらの方法のいずれかにおいて、第1のmRNAと第2のmRNAとを結合させることは、マイクロ流体経路デバイス中に免疫賦活剤を加えることを含んでもよい。免疫賦活剤は、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含んでもよい。
【0093】
また、本明細書で説明するマイクロ流体経路デバイスは、第1の表面と第2の表面とに挟まれた弾性層と、第1の表面と第2の表面との間に形成されたテンプレートインビトロ転写(IVT)チャンバであって、弾性層の一部が、テンプレートIVTチャンバを第2の表面における流体接触側及び第1の表面における圧力受容側に分割し、テンプレートIVTチャンバの流体接触側が、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAテンプレートの供給源に流体連通している、テンプレートIVTチャンバと、テンプレートIVTチャンバの流体接触側と流体連通している第1のリアクタであって、二本鎖mRNAを除去するために、第1のリアクタ内に二本鎖mRNA結合材を含む、第1のリアクタと、第1のリアクタ、第1の免疫調節物質mRNAの供給源、及び送達ビヒクル分子の供給源に結合する送達ビヒクルポートに流体連通して、第1のmRNA及び第2のmRNAを一緒に送達ビヒクル分子でカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成する混合アセンブリと、1以上の圧力ポートから、第1の表面及び弾性層を通って第2の表面へそれぞれ延び、弾性層を通って第1の表面へ戻ってそれぞれ延びる複数の圧力チャネルであり、複数の圧力チャネルの各圧力チャネルが、テンプレートIVTチャンバの圧力受容側と流体連通し、さらに、テンプレートIVTチャンバの流体接触側の容積が、1以上の圧力ポートから圧力を加えることによって、マイクロ流体経路デバイスを通して流体を駆動してmRNA治療ナノ粒子を形成するために調節される、複数の圧力チャネルと、を備える。
【0094】
また、本明細書で説明するマイクロ流体経路デバイスは、第1の表面と第2の表面とに挟まれた弾性層と、第1の表面と第2の表面の間に形成されたテンプレートインビトロ転写(IVT)チャンバであって、弾性層の一部が、テンプレートIVTチャンバを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側に分割し、テンプレートIVTチャンバの流体接触側が、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAテンプレートの供給源と流体連通している、テンプレートIVTチャンバと、テンプレートIVTチャンバの流体接触側と流体連通している第1のリアクタであって、二本鎖mRNAを除去するために、第1のリアクタ内に二本鎖mRNA結合材を含む、第1のリアクタと、第1の表面と第2の表面の間に形成された第1の免疫調節物質IVTチャンバであって、弾性層の一部が、第1の免疫調節物質IVTチャンバを第2の表面における流体接触側と第1の表面における圧力受容側に分割し、第1の免疫調節物質IVTチャンバの流体接触側が、第1の免疫調節物質をコードする第1の免疫調節物質テンプレートの供給源と流体連通している、第1の免疫調節物質IVTチャンバと、第1の免疫調節物質IVTチャンバの流体接触側と流体連通している第2のリアクタであって、二本鎖mRNAを除去するために、第2のリアクタ内に二本鎖mRNA結合材を含む、第2のリアクタと、第1のリアクタ及び第2のリアクタと流体連通している第1の混合チャンバと、第1の混合チャンバの出力、及び送達ビヒクル分子の供給源と結合する送達ビヒクルポートと流体連通して、第1のmRNA及び第2のmRNAを一緒に送達ビヒクル分子でカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成する第2の混合チャンバと、1以上の圧力ポートから、第1の表面及び弾性層を通って第2の表面へそれぞれ延び、弾性層を通って第1の表面へ戻ってそれぞれ延びる複数の圧力チャネルであり、複数の圧力チャネルの各圧力チャネルが、テンプレートIVTチャンバの圧力受容側及び第1の免疫調節物質IVTチャンバと流体連通している、複数の圧力チャネルと、を備える。テンプレートIVTチャンバの流体接触側の容積、及び第1の免疫調節物質IVTチャンバの流体接触側の容積が、1以上の圧力ポートから圧力を加えることによって調節されてもよい。
【0095】
また、本明細書で説明する方法は、(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、(iii)送達ビヒクル分子であって、第1のmRNA及び第2のmRNAは、送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、から成るmRNAナノ粒子を腫瘍内注射することを含む。
【0096】
例えば、方法は、mRNAナノ粒子を、それを必要とする患者に腫瘍内注射することを含み、mRNAナノ粒子は、(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと、(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、(iii)送達ビヒクル分子であって、第1のmRNA及び第2のmRNAは、送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、を含む。注射は、腫瘍内注射に限定されず、例えば、筋肉内注射を含んでもよい。
【0097】
前述の概念及び以下でより詳細に議論される追加の概念の組み合わせ(ただし、そのような概念は相互に矛盾しない)は、全て、本明細書に開示される発明的主題の一部であり、本明細書に記載される利益を達成するために採用され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
本明細書に記載された方法及び装置の特徴及び利点は、例示的な実施例を示す以下の詳細な説明、及びその添付図面を参照することによって、より一層理解されるであろう。添付図面において、
【
図1】
図1Aは、本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子の一部として使用され得るmRNAの一例を示す模式図である。
図1Bは、本明細書に記載のmRNA治療ナノ粒子を形成する方法の一例を模式的に示す図である。
図1Cは、腫瘍特異的抗原及び複数の免疫調節物質mRNAを包含する複数のmRNAオープンリーディングフレームを含むmRNAの一例を模式的に示す図である。
【
図2】癌治療における本明細書に記載のmRNAワクチンの有効性の改善について示すグラフである。同種マウス癌モデルは、本明細書に示されるように治療された。
図2はカプラン・マイヤー生存曲線を示し、陰性対照の場合(G1)、免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAの腫瘍内注射と同時に腫瘍特異的抗原のmRNAをアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中で皮下注射した場合(G5)、腫瘍特異的抗原のmRNAと、免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAと、をアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に含むmRNAワクチンを腫瘍内注射した場合(G6)、及び腫瘍特異的抗原のmRNAと、2種類の免疫調節剤(抗CTLA-4及びTGF-β)をコードするmRNAと、をアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に含むmRNAワクチンを腫瘍内注射した場合(G7)を示す。
【
図3】癌治療における本明細書に記載される別のmRNAワクチンの有効性の改善について示すグラフである。
図3はマウス腫瘍モデルのカプラン・マイヤー生存曲線を示し、陰性対照の場合(G2)、腫瘍特異的抗原(m4)のmRNAをアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中で皮下注射した場合(G7)、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に、腫瘍特異的抗原(m4)のmRNAと、免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAと、を含むmRNAワクチンを腫瘍内注射した場合(G9)、及びアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に、腫瘍特異的抗原(m4)のmRNAと、3種類の免疫調節剤(抗CTLA-4、TGF-β、一本鎖IL-12)をコードするmRNAと、を含むmRNAワクチンを腫瘍内注射した場合(G10)を比較する。
【
図4】マウス癌モデルの治療における本明細書に記載されるmRNAワクチンの有効性の改善について示す別の例であり、対照(1)と、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に、腫瘍特異的抗原のmRNAと、免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAと、を含むmRNAワクチン(6)を腫瘍内注射した場合を比較する。
【
図5】本明細書に記載のmRNAワクチンの有効性の改善について示し、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に、腫瘍特異的抗原のmRNAと、免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAと、を含むmRNAワクチン(n=6)の腫瘍内注射した場合のリンパ腫動物モデルにおける生存率改善の有効性(陰性対照と比較、n=1)を示している。
【
図6】リンパ腫動物モデルにおけるmRNAワクチンを皮下注射した場合の生存率に対する効果(陰性対照との比較)を示すグラフである。アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを有するmRNAワクチン(G3;免疫調節剤をコードするmRNAを含む)の皮下注射により、対照動物と比較して、腫瘍体積が減少(約50%)した。
【
図7】リンパ腫動物モデルにおけるmRNAワクチン(
図6で用いたのと同様のもの)を皮下注射した場合の生存率に対する効果(陰性対照との比較)を示すグラフである。アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを有するmRNAワクチン(G7;腫瘍特異的抗原と2つの免疫調節剤、抗CTLA-4及びTGF-β-PLD1とをコードするmRNAを含む)の皮下注射により、対照動物と比較して、腫瘍体積が大幅に(約80%より大きく)減少した。
【
図8A】本明細書に記載のmRNAワクチン接種後の長期生存者である(マウス動物モデルのうちの)対象が、強力かつ持続的なCD8+エフェクターT細胞癌免疫を発現し、さらなる腫瘍攻撃に対して耐性があることを示す図である。
図8Aは、3×10
5の脾臓細胞/ウェルと、刺激剤として使用した腫瘍細胞(EG.7、1×10
6)で実行したEliSpotアッセイの例を示している。PMA/イオノマイシンは非特異的刺激剤として使用された。細胞は、分析前に18時間培養された。
【
図8B】本明細書に記載のmRNAワクチン接種後の長期生存者である(マウス動物モデルのうちの)対象が、強力かつ持続的なCD8+エフェクターT細胞癌免疫を発現し、さらなる腫瘍攻撃に対して耐性があることを示す図である。
図8Bは、腫瘍抗原に特異的なCD8+エフェクターT細胞をカウントする、このアッセイの定量化を示すグラフである。OTI(陽性対照)は、陰性対照(#596)及び2匹の生存マウス(マウス#662及びマウス#670)と比較される。
【
図9】本明細書に記載のリンパ腫腫瘍モデルで試験した試験グループを示す表(表1)である。
【
図10】
図10A~
図10Gは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を11日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに筋肉内注射した結果を示す図である。
【
図11】
図11A~
図11Fは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を28日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに筋肉内注射した結果を示す図である。
【
図12】
図12A~
図12Gは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を11日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに腫瘍内注射した結果を示す図である。
【
図13】
図13A~
図13Fは、異なるナノ粒子組成物(
図9に記載)を28日目にマウスリンパ腫腫瘍モデルに腫瘍内注射した結果を示す図である。
【
図14】異なるナノ粒子組成物を筋肉内注射したマウスリンパ腫腫瘍モデルにおける生存確率を示すグラフである。
【
図15】異なるナノ粒子組成物を腫瘍内注射したマウスリンパ腫腫瘍モデルにおける生存確率を示すグラフである。
【
図16】対照(未治療)としてのPBS溶液、又は腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫賦活物質(CpG)を筋肉内注射したマウスのリンパ腫腫瘍の腫瘍体積の経時変化を示す図である。
【
図17】対照液(PBS)、又は腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫調節物質(IL-12)mRNAとの両方を含むナノ粒子組成物を筋肉内注射したマウスにおけるリンパ腫腫瘍の腫瘍体積の経時変化を示す図である。
【
図18】腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫賦活剤(CpG)、又は免疫賦活剤(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)を筋肉内注射したマウスのリンパ腫腫瘍の腫瘍体積の経時変化を示す図である。
【
図19】腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫調節物質(IL-12)mRNAを同じ送達ビヒクルに加えたナノ粒子組成物、又は免疫調節物質(IL-12)mRNAのみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)を筋肉内注射したマウスのリンパ腫腫瘍の腫瘍体積の経時変化を示す図である。
【
図20】腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫賦活剤(CpG)とから成るナノ粒子組成物、又は免疫賦活剤(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)を筋肉内注射したマウスのリンパ腫腫瘍の腫瘍体積の経時変化を示す図である。
【
図21】腫瘍抗原と免疫調節物質(例えば、IL-12)とから成るナノ粒子組成物を腫瘍内注射して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注射しなかった同じ動物の腫瘍(「遠位」腫瘍)との間の腫瘍体積の経時変化を比較するグラフである。
【
図22】免疫調節物質(例えば、IL-12)のみから成るナノ粒子組成物を腫瘍内注射して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注射しなかった同じ動物の腫瘍(「遠位」腫瘍)との間の腫瘍体積の時間的変化を比較するグラフである。
【
図23】腫瘍抗原と免疫賦活剤(例えば、CpG)とから成るナノ粒子組成物を腫瘍内注射して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注射しなかった同じ動物からの腫瘍(「遠位」腫瘍)の間の腫瘍体積の経時変化を比較するグラフである。
【
図24】免疫賦活剤(例えば、CpG)のみから成るナノ粒子組成物を腫瘍内注射して治療した腫瘍(「近位」腫瘍)と、ナノ粒子組成物を腫瘍内注射しなかった同じ動物の腫瘍(「遠位」腫瘍)との間の腫瘍体積の経時変化を比較するグラフである。
【
図25】EG.7腫瘍の奏功率をまとめた表(表2)である。
【
図26】MC38腫瘍細胞の腫瘍体積に対する様々な免疫調節剤(例えば、エフェクター)の効果を示すグラフである。
【
図27】本明細書に記載の様々な免疫調節剤で治療された腫瘍におけるCD8 T細胞の頻度をまとめたグラフである。
【
図28】本明細書に記載の様々な免疫調節剤で治療した後の抗原提示細胞数を示すグラフである。
【
図29】本明細書に記載されるようなナノ粒子組成物の効果を調べるために使用され得る研究タイムラインの一例を示す図である。
【
図30】C3.43腫瘍に対して、本明細書に記載のナノ粒子組成物の1つを腫瘍内注射した後の時間経過に応じた腫瘍増殖を示す図である。
図30Aは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを含む腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAのナノ粒子組成物の効果を示す図である。
図30Bは、腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNAと、第1の免疫調節物質(TNFSF14)mRNAと、第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAとから成るナノ粒子組成物の効果を示す図である。
図30Cは、腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNAと免疫賦活剤(CpG)とから成るナノ粒子組成物の効果を示す図である。
図30Dは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAのみから成る(腫瘍抗原を含まない)ナノ粒子組成物の効果を示す。
図30Eは、第1の免疫調節物質(TNFSF14)mRNAと第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAとから成る(腫瘍抗原を含まない)ナノ粒子組成物の効果を示す。
図30Fは、免疫賦活剤(CpG)のみ(腫瘍抗原なし)の効果を示す図である。
【
図31】C3.43腫瘍に対して、本明細書に記載のナノ粒子組成物の1つを筋肉内注射した後の時間経過に応じた腫瘍増殖を示す図である。
図31Aは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを含む腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAのナノ粒子組成物の効果を示す図である。
図31Bは、対照(未治療)の効果を示す図である。
【
図32】本明細書に記載のナノ粒子組成物による治療(例えば、腫瘍内又は筋肉内注射)後の、C3.43腫瘍を有するマウスの生存確率を示すグラフである。
【
図33】本明細書に記載の特定のナノ粒子組成物の腫瘍内注射が、治療された動物の循環におけるCD3+/CD8+/テトラマー+細胞の割合の増加をもたらすことを示すグラフである。
【
図34A】本明細書に記載されるマイクロ流体経路デバイス制御システムの一例を示す図である。
【
図34B】本明細書で説明するように使用され得るマイクロ流体経路デバイス制御システムの一例を模式的に示す図である。
【
図35】本明細書に記載されるマイクロ流体経路デバイスの一例の一部を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本明細書に記載される方法及び組成物は、癌を含む疾病又は疾患の治療のために改善された治療薬を提供する。本明細書に記載される治療薬は、腫瘍特異的抗原をコードする1以上のポリヌクレオチドと、免疫調節物質をコードする1以上のポリヌクレオチドと、を含んでもよい。ポリヌクレオチドは、mRNAのようなRNAであってもよい。例えば、本明細書では、治療のために使用され得るmRNA治療薬、mRNA治療薬を形成する方法、及びmRNA治療薬を使用する方法について説明する。本明細書に記載されるmRNA治療薬は、いずれも、mRNAワクチンであってもよい。これらの方法は、複数のmRNA治療ナノ粒子であって、その各々が、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと一緒に、免疫調節剤をコードするmRNAを含む、複数のmRNA治療ナノ粒子から成るmRNA治療ナノ粒子を腫瘍内注射することを含んでもよく、腫瘍特異的抗原のmRNA及び1以上の免疫調節剤のmRNAは一緒に、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル(ただしこれに限らない)のような単一の送達ビヒクル分子でカプセル化される。腫瘍特異的抗原は、患者特異的抗原及び/又は共通腫瘍抗原に対して指向され得る。一例において、これらの改良されたワクチンは、持続的な腫瘍の退縮及び長期のCD8+T細胞媒介癌免疫をもたらす可能性がある。1以上のアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを有するmRNAワクチンは、単独でも治療効果を有するが、免疫調節分子の添加によって治療効果が高められる。
【0100】
本明細書でより詳細に説明するように、腫瘍特異的抗原に対するワクチンが腫瘍の退縮をもたらし得るのに対し、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル内に一緒にカプセル化された腫瘍特異的抗原のmRNAと、1以上のmRNAでコードされた免疫調節分子(例えば、チェックポイント阻害剤抗体など)と、を含むmRNA治療ナノ粒子の1回の腫瘍内注射は、生存率を改善し得る。免疫調節分子は、例えば、mRNAとしてコードされた抗CTLA-4試薬などのチェックポイント阻害剤抗体を含むが、これに限定されるわけではない。
【0101】
追加のmRNAでコードされた免疫調節物質を含めることで、長期生存率を向上させることができる。シンジェニックマウス癌モデルについて以下に詳述する(例えば、
図2~7参照)。これらの実験で使用されたmRNAでコードされた免疫調節物質は、TGF-β拮抗剤及び一本鎖インターロイキン-12を含んでおり、いくつかの場合には、チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA-4)を含んでいた。これらの実験では、長期生存者であるマウスは、強力かつ持続的なCD8+エフェクターT細胞がん免疫を獲得し、さらなる腫瘍の攻撃に対して抵抗力を持つようになった。
【0102】
一般に、mRNAベースのエフェクター分子と結合させたmRNAベースの腫瘍ワクチン接種は、1以上のネオエピトープを使用するなど、患者特異的腫瘍抗原に対して実施することができる。ネオエピトープは、例えば、腫瘍(例えば、一例では、MC38腫瘍)の配列決定によって同定され、したがって、ネオエピトープは、腫瘍特異的抗原である。任意の患者特異的な癌ネオエピトープが使用されてもよい。
【0103】
mRNAベースの腫瘍ワクチン接種を、mRNAベースのエフェクター分子(例えば、免疫調節物質)と組み合わせて、共有抗原、例えば、異なる患者の腫瘍において過剰発現されHLAが提示される抗原に対して行うことができる。本明細書に記載のmRNAワクチンは、1以上のアミノ脂質化ペプトイドを用いて、ナノ粒子に製剤化されてもよい。本明細書における「ナノ粒子」は、その最大寸法が、ナノメートル範囲のサイズを有する粒子を指す場合がある。ナノ粒子は、球、楕円、立方体、又は規則的もしくは不規則的な幾何学的形状を含む、任意の適切な幾何学的形状を有してもよい。形状によっては、寸法は、長さ、幅、直径などを指す場合がある。ナノ粒子は、約1000nm未満-例えば、約500nm、約300nm、約200nm、約100nm、約80nm、約50nm、約40nm、約30nm、約20nm、又はそれより小さいサイズを有してもよい。一例では、ナノ粒子は、約1nmと約1000nmの間、例えば、約5nmと約800nmの間、約10nmと約500nmの間、約15nmと約300nmの間、約20nmと約200nmの間、約30nmと約100nmの間、約40nmと約80nmの間、約50nmと約70nmの間等のサイズである。一例では、ナノ粒子は、約40nmと約70nmの間のサイズを有する。他の適切な粒子サイズも可能である。アミノ脂質化ペプトイドは、送達ビヒクルとして作用し、mRNAワクチンと結合させて、腫瘍微小環境における高発現を提供することができる。したがって、1以上の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと、1以上の免疫調節物質をコードするmRNAと、を含む本明細書に記載のmRNAワクチンは、単一のナノ粒子に共配合することができ、結果として、驚くほど高い発現レベル及び高いワクチン接種効果を得ることができる。これらの治療法のいずれもが、高いワクチン接種効果に最適化された送達ビヒクル(例えば、アミノ脂質化ペプトイド)を用いてナノ粒子に製剤化されたmRNAワクチンを含んでもよい。前述のように、本明細書に記載の治療用mRNAは、腫瘍特異的抗原mRNA及び1以上の免疫調節剤mRNAを含んでもよく、特定の免疫調節剤mRNAは、腫瘍特異的抗原mRNAと一緒に、同じ送達ビヒクルにカプセル化されてもよい。
【0104】
一般に、mRNAワクチンに含まれるmRNAは、抗原の提示を補助する構造又はスキャフォールドにコードされてもよい。例えば、
図1Aは、汎用mRNAスキャフォールドの一例を模式的に示す。
図1Aにおいて、mRNAは、5′から3′までの異なるシス作用因子で構成されており、キャップ構造、5′UTR、コード領域(これは潜在的に修飾ヌクレオチドを含み得る)、3′UTR、及びポリAテールで構成されている。この例では、mRNAのインビトロ転写のためのテンプレートは、シス作用構造因子、すなわち5′から3′端までの(i)キャップ構造、(ii)5′非翻訳領域(UTR)、(iii)コード(例えば最適化コドン)配列、(iv)3′UTR、及び(v)反復アデニンヌクレオチドのストレッチ(ポリAテール)から構成される。キャップ構造及びポリAテールの長さは、最適化されてもよい。これらのシス作用構造因子は、抗原提示のために最適化されてもよい。ポリAテール及びキャップ構造は、mRNAの効率的な翻訳及びmRNAの崩壊に対する安定化のために重要であり、一方、UTRは、場合によっては、mRNAの翻訳及び半減期を制御する。純度や修飾ヌクレオシド(例えば、5′メトキシウリジン、5moU)の組み込みなどの一般的な製造上の特定は、mRNA自体の免疫原性を変え、翻訳効率を著しく高める可能性がある。
図1Cは、mRNA鎖が、腫瘍特異的抗原mRNA(例えば、1以上のコピー、及び/又は1以上の腫瘍特異的抗原)と1以上の免疫調節物質mRNA ORFとの両方を含む例を示す。
【0105】
図1Bは、癌の治療におけるmRNAワクチンの有効性を向上させる方法の一例を模式的に示す図である。
図1Bにおいて、方法は、単一の送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化された、(例えば、抗原提示を強化するスキャフォールドにおいて)腫瘍特異的抗原をコードするmRNAワクチンと、2以上の免疫調節剤をコードするmRNA(例えば、第1の免疫調節剤mRNA及び第2の免疫調節剤mRNA)と、を腫瘍内注射することを含む。例えば、2つ(又はそれ以上)の免疫調節剤のうちの少なくとも1つは、チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA-4 mRNA)であってもよい。mRNAワクチン及び免疫調節剤は、例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルであってもよい送達ビヒクルに一緒にカプセル化される。
【0106】
図1Cは、単一のmRNA鎖が、腫瘍特異的mRNA及び1以上の免疫調節物質(例えば、第1の免疫調節物質、第2の免疫調節物質、第3の免疫調節物質)をコードするmRNAを含み、mRNAオープンリーディングフレーム(ORF)が、腫瘍特異的mRNA及び免疫調節物質のmRNAをコードしている代替実施例を示している。この一本のmRNA鎖が、送達ビヒクル分子内にカプセル化されてもよい。
【0107】
免疫応答を刺激する物質による疾病の予防や治療は、一般に免疫療法と呼ばれている。免疫療法は、免疫腫瘍学とも呼ばれ、腫瘍ではなく、宿主免疫系を標的とした治療法を導入している。これらの治療法は、唯一の薬理学的応答プロファイルを持つ可能性があり、多くの異なるタイプの癌を治療する可能性がある治療法である。一例として、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、皮膚癌などは、特にメラノーマと同様に、免疫腫瘍学的治療により生存率や腫瘍応答性の面で大きな効果を得ることができる癌である。免疫療法は、チェックポイント阻害抗体と呼ばれる生物学的薬物を用いたチェックポイント阻害剤治療を特徴とすることが多い。
【0108】
本開示は、癌を治療するための方法及び組成物、特に、免疫治療方法及び組成物を改善又は強化するための方法及び組成物であることを特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、単一の送達ビヒクル分子でカプセル化された(1)腫瘍特異的抗原、特に患者特異的腫瘍抗原(又は抗原)を含む腫瘍特異的抗原と、(2)1以上の免疫調節物質(例えば、いくつかの変形例では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドを含む)をコードする1以上mRNAと、をコードする2以上のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を使用して癌を治療又は予防する方法及び組成物であることを特徴としている。いくつかの態様において、本開示は、単一の送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化された、患者特異的腫瘍抗原をコードするポリヌクレオチドと、2以上の免疫調節物質と、を含む免疫調節組成物の強化物を提供する。他の態様において、本開示は、単一の送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化された、患者特異的腫瘍抗原をコードするポリヌクレオチドと、2以上の免疫調節物質(例えば、抗CTLA-4、並びにTGF-βアンタゴニスト及び一本鎖インターロイキン-12のうちの一方又は両方)と、を含む免疫調節組成物を提供する。mRNAワクチンは、これらの成分の混合物を任意の適切かつ有効な比率で含んでもよい。
【0109】
いくつかの態様において、本開示は、単一の送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化された、患者特異的腫瘍抗原のmRNAと、2以上の免疫調節物質をコードするmRNAを使用して、癌を治療する方法に関するものである。理論に縛られることなく、投与すること、特に腫瘍内投与することで、これらのmRNAワクチンは、例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、及び/又は樹状細胞を刺激することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される免疫治療方法は、(1)免疫原性を最適化するために腫瘍微小環境(TME)を変換し、及び/又は(2)アブスコパル制御及び抗癌記憶を引き出すためのT細胞応答を強化することができる。
【0110】
本開示の他の態様は、単一の送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化された、患者特異的腫瘍抗原をコードするmRNAと、2以上の免疫調節物質をコードするmRNAと、を含む結合の有効量を対象に投与することによって、それを必要とする対象において腫瘍のサイズを縮小又は減少させる、又は腫瘍の成長を阻害する組成物及び方法であることを特徴とする。送達ビヒクル分子は、例えば、2019年9月27日出願の「LIPID NANOPARTICLE FORMULATIONS COMPRISING LIPIDATED CATIONIC PEPTIDE COMPOUNDS FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題されたPCT出願PCT/US19/53661、及び2019年9月27日出願の「TERTIARY AMINO LIPIDATED CATIONIC PEPTIDES FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題されたPCT出願PCT/US19/53655のいずれかに記載のように、3級アミノ脂質化カチオン性ペプチドを含むアミノ脂質化ペプチドであってもよい。これらの出願の両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
これらの送達ビヒクル分子は、追加の脂質/成分を含んでもよい。例えば、アミノ脂質化ペプチドは、1以上のリン脂質、例えば、1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MSPC)又はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含むことができる。脂質組成物は、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチル-硫酸(DOTAP)等の第4級アミン化合物を含むことができる。
【0112】
本明細書で提供される見出しは、種々の態様又は本開示の態様を制限するものではなく、本明細書全体を参照することによって定義することができる。したがって、直後に定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。本開示を詳細に説明する前に、本開示は、変化し得るものであり、特定の組成物又は工程ステップに限定されないことを理解されたい。
【0113】
I.定義
本開示をより容易に理解できるようにするために、まず、特定の用語を定義する。本出願で使用される場合、本明細書で明示的に規定される場合を除き、以下の各用語は、以下に規定される意味を有するものとする。追加の定義は、本出願を通じて規定される。
【0114】
本開示は、グループのちょうど1つの要素が、所定の製品又は工程において存在するか、採用されるか、又は他の方法で関連する例を含む。本開示は、1つより多い、又はすべての要素が、所定の製品又は工程に存在するか、採用されるか、又は他の方法で関連する例を含む。
【0115】
本明細書及び添付の請求項において、単数の構成要素は、文脈上明らかに他に指示されない限り、複数の構成要素を含む。「1以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書において交換可能に使用され得る。特定の態様において、「単一」は単一性を意味する。他の態様では、「1以上」及び「少なくとも1つ」は、「2以上」又は「複数」を含む。
【0116】
さらに、本明細書で使用される「及び/又は」は、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれについて、他方を伴って又は伴わずに具体的に開示されていると解釈されるものとする。したがって、本明細書において「A及び/又はB」などのフレーズで使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、B、及び/又はC」などのフレーズで使用される「及び/又は」という用語は、A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の態様の各々を包含することが意図される。
【0117】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に対して、この開示において用いられる多くの用語の一般辞書を提供するものである。
【0118】
本明細書において、態様が「含む」という表現で説明される場合、「から成る」及び/又は「から本質的に成る」という表現で説明される他の類似の態様もまた提供される。
【0119】
単位,接頭辞,記号はSI(Systeme International de Unites)で認められている形式で表記している。数値の範囲は、その範囲を定義する数値を含む。数値の範囲を示す場合、その範囲の上限と下限の間にある各整数値及びその端数も、その値の間の各副次的な範囲とともに具体的に開示されていると理解される。任意の範囲の上限と下限は、独立して、その範囲に含まれるか、又は範囲から除外されることができ、どちらか一方が含まれる、どちらも含まれない、又は両方が含まれる各範囲もまた、本開示内に包含される。値が明示的に記載されている場合、記載されている値とほぼ同量又は同量の値も、本開示の範囲内にあると理解されたい。組み合わせが開示されている場合、その組み合わせの要素の副次的な組み合わせも各々具体的に開示され、本開示の範囲内である。逆に、異なる要素又は要素群が個別に開示されている場合、その組み合わせも開示される。ある開示の要素が複数の代替物を有するものとして開示されている場合、各代替物が単独で、又は他の代替物との任意の組み合わせで除外されているその開示の例もここに開示される。開示の複数の要素がそのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素の全ての組み合わせがここに開示される。
【0120】
ヌクレオチドは一般に受け入れられている1文字コードで表記している。特に指示しない限り、核酸は5′から3′の方向で左から右へ書かれる。ヌクレオチドは、本明細書では、IUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される一般に知られた1文字記号により参照される。従って、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Tはチミン、Uはウラシルを表す。
【0121】
アミノ酸は、一般に知られている3文字記号、又はIUPAC-IUB生化学命名法委員会が推奨する1文字記号で表記する。特に断りのない限り、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向で左から右に書かれている。
【0122】
本明細書及び請求項を通じて数値に関連して使用される用語「実質的に」、「約」、及び「おおよそ」は、わずかな変動を考慮した精度の間隔を示すものである。一般に、そのような精度の区間は、+10%である。例えば、それらは、±10%以下、例えば±5%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下などを指すことができる。一例では、これらの用語は、変動なし、±0を包含する。
【0123】
範囲が与えられている場合、終点が含まれる。さらに、特に示されない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、本開示の異なる実施例において述べられた範囲内の任意の特定の値又は副次的な範囲を想定でき、文脈から明らかに指示されない限り、範囲の下限の単位の10分の1になる。
【0124】
組み合わせて投与:本明細書で使用される用語「組み合わせて投与される」、「同時投与」、「複合投与」、又は「組み合わせ療法」は、2以上の薬剤が、同時に、又は患者に対する各薬剤の効果の重複があり得るような間隔で、対象に投与されることを意味する。いくつかの例では、それらは、互いに約60分以下、例えば、約30、約15、約10、約5、又は約1分以下で投与される。いくつかの例では、薬剤の投与は、組み合わせ(例えば、相乗)効果が達成されるように、十分に密接な間隔で行われる。
【0125】
「アミノ酸置換」という用語は、親配列又は参照配列(例えば、野生型配列)中に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することを指す。アミノ酸は、例えば、化学的ペプチド合成を介して、又は当技術分野で既知の組換え法によって、親又は参照配列(例えば、野生型ポリペプチド配列)において置換することができる。したがって、「X位置での置換」への言及は、X位置に存在するアミノ酸を代替アミノ酸残基で置換することを指す。いくつかの態様において、置換パターンは、AnYと記述することができ、ここでAは位置nに天然に又は元々存在するアミノ酸に対応する一文字コードであり、Yは置換アミノ酸残基である。他の態様では、置換パターンは、An(YZ)と記述することができ、ここでAは位置nに天然に又は元々存在するアミノ酸を置換するアミノ酸残基に対応する1文字コードであり、Y及びZは代替の置換アミノ酸残基である。
【0126】
本開示の文脈では、置換(それらがアミノ酸置換と呼ばれる場合であっても)は核酸レベルで行われる。すなわち、アミノ酸残基を代替アミノ酸残基に置換することは、第1のアミノ酸をコードするコドンを第2のアミノ酸をコードするコドンに置換することによって実施される。
【0127】
動物:本明細書で使用する場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの例では、「動物」は、任意の発達段階のヒトを指す。いくつかの例では、「動物」は、任意の発達段階における非ヒト動物を指す。特定の例では、非ヒト動物は哺乳類(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、犬、猫、羊、牛、霊長類、又はブタ)である。いくつかの例では、動物には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び虫類が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの例では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作動物、又はクローンである。
【0128】
関連する:疾病に関して本明細書で使用する場合、「関連する」という用語は、問題の症状、測定値、特性、又は状態が、その疾病の診断、発症、存在、又は進行と関連していることを意味する。関連は、疾病と因果関係がある場合もあるが、そうである必要はない。
【0129】
2以上の部位に関して使用される場合、「会合する」、「共役する」、「連結する」、「付着する」、及び「つながる」という用語は、部位が、直接又は連結剤として機能する1以上の追加の部位を介して、互いに物理的に会合又は接続されて、構造が使用される条件、例えば生理的条件下で部位が物理的に会合したままになるように十分に安定な構造を形成していることを意味する。「会合」は、厳密には、直接的な共有化学結合によるものである必要はない。イオン結合、水素結合、又は「会合する」実体が物理的に会合したままであるように十分に安定的な複合化に基づく連結を示唆することもできる。
【0130】
生体適合性:本明細書において、「生体適合性」という用語は、生体細胞、組織、臓器又は系と適合し、損傷、毒性又は免疫系による拒絶のリスクをほとんど伴わないことを意味する。
【0131】
生分解性:本明細書で使用する「生分解性」という用語は、生物の作用により無害な製品に分解される可能性があることを意味する。
【0132】
配列の最適化:「配列の最適化」という用語は、参照核酸配列中の核酸塩基を代替核酸塩基で置換することにより、改善された特性、例えば、改善されたタンパク質発現又は免疫原性を有する核酸配列をもたらす工程又は一連の工程を指す。
【0133】
一般に、配列の最適化における目標は、参照ヌクレオチド配列によってコードされる同じポリペプチド配列をコードするよりも同義ヌクレオチド配列を生成することである。したがって、コドン最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドには、参照ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに対する(コドン最適化の結果としての)アミノ酸置換が存在しないことになる。
【0134】
コドン置換:配列の最適化の文脈において、「コドン置換」又は「コドン置き換え」という用語は、参照核酸配列に存在するコドンを別のコドンに置き換えることを指す。コドンは、例えば、化学的ペプチド合成を介して、又は当技術分野で既知の組換え法によって、参照核酸配列において置換することができる。したがって、核酸配列(例えば、mRNA)中のある位置、又は核酸配列(例えば、mRNA)のある領域又は部分配列内での「置換」又は「置き換え」は、当該位置又は領域でのコドンを代替コドンで置換することを意味する。
【0135】
本明細書で使用する場合、「コード領域」、「コード化領域」、及びその文法的変形は、発現時にポリペプチド又はタンパク質を生成するポリヌクレオチド中のオープンリーディングフレーム(ORF)を意味する。
【0136】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、又はヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)、非帯極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、又はシステイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、又はトリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、又はヒスチジン)を含む。したがって、ポリペプチド中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸に置換されている場合、そのアミノ酸置換は保存的であると考えられる。別の態様では、アミノ酸の列は、側鎖ファミリーメンバーと順序及び/又は組成が異なる構造的に類似した列と保存的に置換され得る。
【0137】
非保存的アミノ酸置換としては、(i)陽性側鎖を有する残基(例えば、Arg、His又はLys)が陰性残基(例えば、Glu又はAsp)と、又は陰性残基に置換されるもの、(ii)親水性残基(例えば、Ser又はThr)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe又はVal)と、又は疎水性残基に置換されるもの、(iii)システイン又はプロリンが他の残基と、又は他の残基に置換されるもの、又は(iv)嵩高い疎水性又は芳香族側鎖(例えば、Val、His、Ile又はTrp)を有する残基が小さい側鎖(例えば、Ala又はSer)を有する残基又は側鎖なし(例えば、Gly)の残基と、又は小さい側鎖を有する残基又は側鎖なしの残基に置換されるものがある。
【0138】
他の適切なアミノ酸の置換も可能である。例えば、アミノ酸アラニンについては、D-アラニン、グリシン、β-アラニン、L-システイン、及びD-システインのうちのいずれか1つからの置換が可能である。リジンについては、D-リジン、アルギニン、D-アルギニン、ホモアルギニン、メチオニン、D-メチオニン、オルニチン、又はD-オルニチンのうちのいずれか1つと置換することができる。一般に、単離されたポリペプチドの特性の変化を誘発すると期待できる機能的に重要な領域における置換は、(i)極性残基、例えばセリン又はスレオニンが疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン又はアラニンと(又は疎水性残基に)置換されること、(ii)システイン残基が他の残基と(又は他の残基に)置換されること、(iii)陽性側鎖を有する残基、例えば,リジン、アルギニン、又はヒスチジンが、陰性側鎖を有する残基、例えばグルタミン酸又はアスパラギン酸と(又は陰性側鎖を有する残基に)置換されること、もしくは(iv)嵩高い側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、そのような側鎖を有さない残基、例えばグリシンと(又は側鎖を有さない残基に)置換されることを含む。前述の非保存的置換の1つがタンパク質の機能的特性を変える可能性は、タンパク質の機能的に重要な領域に対する置換の位置にも相関する。したがって、非保存的な置換は、生物学的特性にほとんど、あるいは全く影響を与えないこともある。
【0139】
保存されている:本明細書で使用する場合、「保存されている」という用語は、ポリヌクレオチド配列のヌクレオチド、又はポリペプチド配列のアミノ酸残基であって、比較する2以上の配列の同じ位置で変化なく出現するものを指す。相対的に保存されているヌクレオチド又はアミノ酸とは、配列中の他の位置に現れるヌクレオチド又はアミノ酸よりも、より多くの関連配列間で保存されているものである。
【0140】
いくつかの例では、2以上の配列は、それらが互いに100%同一である場合、「完全に保存されている」と言われる。いくつかの例では、2以上の配列は、それらが互いに少なくとも約70%同一、例えば、少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、又はそれ以上である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの例では、2以上の配列は、互いに約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%、約98%、又は約99%、又はそれ以上同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの例では、2以上の配列は、互いに少なくとも約30%同一、少なくとも約40%同一、少なくとも約50%同一、少なくとも約60%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、又は少なくとも約95%同一であれば「保存されている」と言われる。いくつかの例では、2以上の配列は、互いに約30%同一、約40%同一、約50%同一、約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、又は約99%同一であれば「保存されている」と言われる。配列の保存は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの全長に適用されてもよいし、その一部、領域、又は特徴に適用されてもよい。
【0141】
接触する:本明細書で使用する場合、「接触する」という用語は、2以上の実体の間に物理的接続を確立することを意味する。例えば、哺乳類細胞をナノ粒子組成物と接触させることは、哺乳類細胞とナノ粒子とが物理的接続を共有するようにされることを意味する。細胞をインビボ及びエクスビボの両方で外部実体と接触させる方法は、生物学的技術においてよく知られている。例えば、ナノ粒子組成物と哺乳動物内に配置された哺乳類細胞との接触は、多様な投与経路(例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下)により行われてもよく、様々な量のナノ粒子組成物を伴ってもよい。さらに、1以上の哺乳類細胞がナノ粒子組成物によって接触されてもよい。
【0142】
放出制御:本明細書で使用する場合、「放出制御」という用語は、治療結果をもたらすための特定の放出パターンに適合する医薬組成物又は化合物の放出プロフィールを指す。
【0143】
共有結合性誘導体:ポリペプチドに言及する場合の用語「共有結合性誘導体」は、有機タンパク質性又は非タンパク質性誘導体化剤による天然又は出発タンパク質の修飾、及び/又は翻訳後修飾を含む。共有結合修飾は、従来、タンパク質の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖又は末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって、又は選択された組換え宿主細胞において機能する翻訳後修飾の機構を利用することによって、導入される。得られた共有結合誘導体は、生物学的活性に重要な残基の同定、イムノアッセイ、又は組換え糖タンパク質のイムノアフィニティー精製のための抗タンパク質抗体の調製に向けたプログラムにおいて有用である。このような修飾は、当業者の通常の技術範囲内であり、過度の実験なしに実施される。
【0144】
環状又は環状化:本明細書で使用する場合、「環状」という用語は、連続したループが存在することを意味する。環状分子は、環状である必要はなく、サブユニットの切れ目のない鎖を形成するように結合するだけでよい。工学的RNA又はmRNAのような環状分子は、単一ユニット又は多量体であるか、複雑な又は高次構造の1以上の構成要素から構成され得る。
【0145】
細胞毒性:本明細書で使用される「細胞毒性」は、細胞(例えば、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、又はそれらの組み合わせに対して殺傷効果、毒性、又は致死効果をもたらすことを意味する。
【0146】
送達する:本明細書で使用される「送達する」という用語は、目的地に実体を提供することを意味する。例えば、ポリヌクレオチドを対象に送達することは、ポリヌクレオチドを含むナノ粒子組成物を対象に(例えば、静脈内、筋肉内、皮内、又は皮下経路によって)投与することを含んでもよい。哺乳動物又は哺乳類細胞へのナノ粒子組成物の投与は、1以上の細胞をナノ粒子組成物と接触させることを含み得る。
【0147】
送達ビヒクル:本明細書で使用する場合、「送達ビヒクル」は、標的細胞又は組織(例えば、腫瘍など)へのポリヌクレオチドのインビボ、インビトロ、又はエクスビボ送達を少なくとも部分的に促進する任意の物質を指す。送達ビヒクルとして言及することは、それが治療効果を持たないことを意味するわけではない。
【0148】
不安定化:本明細書で使用する場合、「不安定な」、「不安定化」、又は「不安定化領域」という用語は、同じ領域又は分子の出発、野生型、又は天然構造より安定性が低い領域又は分子を意味する。
【0149】
検出可能な標識:本明細書で使用する場合、「検出可能な標識」とは、ラジオグラフィー、蛍光、化学発光、酵素活性、吸光度などを含む当該技術分野で既知の方法によって容易に検出される別の実体に付着、取り込み、又は会合された1以上のマーカー、シグナル、又は部位のことを指す。検出可能な標識は、放射性同位体と、蛍光体と、発色体と、酵素と、染料と、金属イオンと、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ハプテンなどのリガンドと、及び量子ドットなどと、を含む。検出可能な標識は、本明細書に開示されるペプチド又はタンパク質の任意の位置に配置することができる。それらは、アミノ酸、ペプチド、又はタンパク質内であってもよいし、N末端又はC末端に位置してもよい。
【0150】
ジアステレオマー:本明細書で使用する場合、「ジアステレオマー」という用語は、互いの鏡像ではなく、互いに非重畳的である立体異性体を意味する。
【0151】
消化する:本明細書で使用する場合、「消化する」という用語は、より小さな断片又は構成要素に分解することを意味する。ポリペプチド又はタンパク質に言及する場合、消化によりペプチドが生成される。
【0152】
遠位:本明細書において、「遠位」という用語は、中心から離れた位置にあること、又は、関心点又は関心領域から離れた位置にあることを意味する。
【0153】
ドメイン:本明細書において、ポリペプチドに言及する場合、「ドメイン」という用語は、1以上の識別可能な構造的又は機能的特性又は性質(例えば、タンパク質-タンパク質相互作用の部位として機能する結合能)を有するポリペプチドのモチーフを意味する。
【0154】
投薬レジメン:本明細書で使用する場合、「投薬レジメン」は、投与スケジュール、又は石が決定する治療、予防、又は緩和ケアのレジメンである。
【0155】
有効量:本明細書で使用するように、薬剤の「有効量」という用語は、有益な又は望ましい結果、例えば、臨床結果をもたらすのに十分な量を指し、そのため、「有効量」は、それが適用されている文脈に依存する。例えば、腫瘍を治療する薬剤を投与する文脈では、薬剤の有効量は、例えば、薬剤を投与しない場合に得られる応答と比較して、腫瘍のサイズを縮小又は減少させるか、又は腫瘍の成長を阻害するのに十分な量である。「有効量」という用語は、「有効用量」、「治療上有効な量」、又は「治療上有効な用量」と互換的に使用することができる。
【0156】
エナンチオマー:本明細書で使用する場合、「エナンチオマー」という用語は、少なくとも約80%(すなわち、一方のエナンチオマーの少なくとも約90%及び他方のエナンチオマーの最大約10%)、少なくとも約90%、又は少なくとも約98%、又はそれ以上の光学純度又はエナンチオマー過剰(当該技術分野において標準的な方法によって決定される)を有する、開示の化合物の個々の光学活性型を意味する。
【0157】
カプセル化する:本明細書で使用されるように、mRNAと相互作用する送達ビヒクルに関して、「カプセル化する」という用語は、完全に又は部分的に囲む又は包むことを意味する。これは、mRNAを分解から保護し、細胞への取り込みを促進し得る。これは、カプセル化する送達ビヒクルによるmRNAを含んでもよい。本明細書で使用される「一緒にカプセル化される」とは、第1のmRNA及び第2のmRNAのような2以上の分子が、同じ送達ビヒクル分子でカプセル化されることを意味する。第1のmRNA及び第2のmRNAは、異なるポリヌクレオチド鎖にコードされてもよく、又はそれらは同じ鎖の一部であってもよい。いくつかの例では、同じタイプの複数のmRNAは、決定された化学量論(例えば、1:1、1:2、2:1など)で、同じ送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化されてもよい。
【0158】
カプセル化効率:本明細書で使用する場合、「カプセル化効率」は、ナノ粒子組成物の調製に使用されるポリヌクレオチドの最初の総量に対する、ナノ粒子組成物の一部となるポリヌクレオチドの量を指す。例えば、最初に組成物に提供されたポリヌクレオチドの合計100mgのうち、97mgのポリヌクレオチドがナノ粒子組成物にカプセル化される場合、カプセル化効率は97%として与えられてもよい。本明細書で使用される場合、「カプセル化」は、完全、実質的、又は部分的な封入、閉じ込め、囲み、又は包囲を指してもよい。例えば、カプセル化は、約80%以上のカプセル化、約85%以上のカプセル化、約90%以上のカプセル化、約95%以上のカプセル化、又は完全にカプセル化されたことを指してもよい。
【0159】
コード化されたタンパク質切断シグナル:本明細書で使用する「コード化タンパク質切断シグナル」は、タンパク質切断シグナルをコードするヌクレオチド配列を意味する。
【0160】
設計された:本明細書で使用する場合、本開示の例は、出発点、野生型又はネイティブ分子から変化する特徴又は特性(構造的又は化学的であるかを問わず)を有するように設計されている場合に「設計された」という。
【0161】
送達の強化:本明細書で使用する場合、「送達の強化」という用語は、対照のナノ粒子によるポリヌクレオチドの関心対象の標的組織への送達レベルと比較して、ナノ粒子により、関心対象の標的組織(例えば、哺乳類肝組織)に、より多く(例えば、少なくとも約1.5倍以上、例えば、少なくとも約2倍以上、少なくとも3倍以上、少なくとも4倍以上、少なくとも5倍以上、少なくとも6倍以上、少なくとも7倍以上、少なくとも8倍以上、少なくとも9倍以上、少なくとも10倍以上、またはそれ以上)のポリヌクレオチドを送達すること、を意味する。特定の組織へのナノ粒子の送達レベルは、組織で生成されたタンパク質の量を該組織の重量と比較すること、組織内のポリヌクレオチドの量を該組織の重量と比較すること、組織で生成されたタンパク質の量を該組織中の総タンパク質の量と比較すること、又は組織中のポリヌクレオチドの量を該組織中の総ポリヌクレオチドの量と比較すること、によって測定されてもよい。標的組織へのナノ粒子の送達の強化は、治療される対象において決定される必要はなく、動物モデル(例えば、ラットモデル)などの代替物において決定してもよいことが理解されるであろう。
【0162】
エクソソーム:本明細書で使用する場合、「エクソソーム」は、哺乳類細胞によって分泌される小胞、又はRNA分解に関与する複合体である。
【0163】
発現:本明細書で使用する場合、核酸配列の「発現」は、(1)(例えば、転写による)DNA配列からのRNAテンプレートの産生、(2)(例えば、スプライシング、編集、5′キャップ形成、及び/又は3′エンド処理による)RNA転写物の処理、(3)RNAのポリペプチド又はタンパク質への翻訳、及び(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾、のうちの1以上を指す。
【0164】
エクスビボ:本明細書で使用する場合、「エクスビボ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、微生物、又はその細胞もしくは組織)の外部で起こる事象を指す。エクスビボ事象は、自然の(例えば、インビボの)環境から最小限に変化した環境において行われることがある。
【0165】
特徴:本明細書で使用する「特徴」とは、特性、性質、又は特徴的な要素を指す。ポリペプチドに言及する場合、「特徴」は、分子の明確なアミノ酸配列に基づく構成要素として定義される。本開示のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの特徴には、表面顕性、局所的な配座形状、折り目、ループ、半ループ、ドメイン、半ドメイン、部位、末端又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0166】
製剤:本明細書で使用する場合、「製剤」は、少なくとも、ポリヌクレオチドと、担体、賦形剤、及び送達剤のうちの1以上と、を含む。
【0167】
断片:本明細書で使用する場合、「断片」は、一部を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離された全長タンパク質を消化して得られるポリペプチドを含むことができる。いくつかの例では、断片は、N末端、及び/又はC末端、及び/又は内部の部分配列が削除された完全長タンパク質(例えば、IL-23のサブユニットのうちの1つ)の部分配列である。本開示のいくつかの態様において、本開示のタンパク質の断片は、機能的断片である。
【0168】
機能的:本明細書で使用する場合、「機能的な」生体分子とは、それを特徴付ける特性及び/又は活性を示す形態にある生体分子をいう。したがって、本開示のポリヌクレオチドの機能的断片は、機能的インターロイキン断片を発現することができるポリヌクレオチドである。本明細書で使用される場合、インターロイキンの機能的断片とは、野生型インターロイキンの断片(すなわち、天然に存在する形態のインターロイキンの断片)、又はその変異体もしくは変種であり、その断片は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の対応する全長タンパク質の生物活性を保持する。
【0169】
相同性:本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、高分子分子間、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。一般に、「相同性」という用語は、2つの分子間の進化的な関係を意味する。したがって、相同である2つの分子は、共通の進化的祖先を有することになる。本開示の文脈では、相同性という用語は、同一性と類似性の両方を包含する。
【0170】
いくつかの例では、高分子分子は、分子中のモノマーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%が同一(全く同じモノマー)であるか、類似(保存的置換)である場合、互いに「相同」であると見なされる。ここでいう「相同」とは、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列)を比較することを必然的に意味する。
【0171】
同一性:本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、高分子分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的なモノマー保存を意味する。2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために2つの配列をアライメントすることによって行うことができる(例えば、最適なアライメントのために第1及び第2の核酸配列の一方又は両方にギャップを導入し、比較目的のために非同一の配列を無視することができる)。ある例では、比較目的でアラインメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%とする。その後、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列におけるある位置が、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドによって占められている場合、その位置において分子は同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れた場合に、配列によって共有される同一位置の数の関数である。配列の比較、及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。DNAとRNAを比較する場合、チミン(T)とウラシル(U)は等価と考えることができる。
【0172】
適切なソフトウェアプログラムは、様々なソースから入手可能であり、タンパク質及びヌクレオチド配列の両方のアラインメントのために利用可能である。配列同一性パーセントを決定するための1つの適切なプログラムは、米国政府の国立生物工学情報センターBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なプログラムのBLASTスイートの一部であるbl2seqである。bl2seqは、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムを用いて2つの配列間の比較を実行する。BLASTNは核酸配列の比較に使用され、BLASTPはアミノ酸配列の比較に使用される。他の適切なプログラムは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)から入手可能なバイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSスイートの一部であるNeedle、Stretcher、Water、又はMatcherである。
【0173】
配列のアラインメントは、MAFFT、Clustal(ClustalW、ClustalX、又はClustal Omega)、MUSCLEなど、当技術分野で既知の方法を用いて実施することができる。
【0174】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド参照配列とアライメントする単一のポリヌクレオチド又はポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ独自の配列同一性パーセントを有することができる。配列同一性パーセントの値は、最も近い少数第1位に丸められることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は、80.2に切り上げられる。また、長さの値は必ず整数になることに注意する。
【0175】
ある態様において、第2のアミノ酸配列(又は核酸配列)に対する、第1のアミノ酸配列(又は核酸配列)の同一性パーセント「%ID」は、%ID=100×(Y/Z)として計算される。ここでYは、第1及び第2の配列のアライメントにおいて同一の一致としてスコアされたアミノ酸残基(又は核酸塩基)の数(視覚検査又は特定の配列アライメントプログラムによりアライメントしたもの)、Zは、第2の配列における残基の合計の数である。第1の配列の長さが第2の配列よりも長い場合、第2の配列に対する第1の配列の同一性パーセントは、第1の配列に対する第2の配列の同一性パーセントよりも高くなる。
【0176】
配列同一性パーセントの計算のための配列アライメントの生成は、もっぱら一次配列データによって駆動される二次的な配列間の比較に限定されるものではない。また、配列アライメントは、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、変異体の位置)、又は系統学的データなどの異種ソースからのデータと統合することによって生成できることが理解されよう。異種データを統合して多重配列アライメントを生成する適切なプログラムは、www.tcoffee.orgで利用可能なT-Coffeeであり、代替的に、例えばEBIから入手可能である。また、配列同一性パーセントを計算するために使用される最終的なアラインメントは、自動的又は手動的にキュレーションできることが理解されよう。
【0177】
免疫チェックポイント阻害剤:「免疫チェックポイント阻害剤」又は単に「チェックポイント阻害剤」は、免疫細胞が癌細胞によってオフにされるのを防ぐ分子を指す。本明細書で使用する場合、チェックポイント阻害剤という用語は、細胞傷害性Tリンパ球会合タンパク質4(CTLA-4)、プログラム細胞死1受容体(PD-1)、又はPD-1リガンド1(PD-L1)などの阻害性チェックポイント分子を中和又は阻害するポリペプチド(例えば抗体)又はそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を意味する。
【0178】
免疫応答:「免疫応答」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び該細胞又は肝臓が産生する可溶性高分子(抗体、サイトカイン、補体を含む)の作用により、侵入した病原体、病原体に感染した細胞や組織、癌細胞、あるいは自己免疫や病的炎症の場合には正常なヒト細胞や組織を選択的に損傷、破壊、人体から排除することをいう。
【0179】
炎症応答:「炎症応答」とは、特異的防御系と非特異的防御系が関与する免疫応答のことである。特異的防御系反応とは、抗原に対する特異的な免疫系反応である。特異的防御系反応の例としては、抗体応答が挙げられる。非特異的防御系反応は、一般に免疫学的記憶ができない白血球、例えばマクロファージ、好酸球、及び好中球によって媒介される炎症性応答である。いくつかの態様において、免疫応答は、炎症性サイトカインの分泌を含み、その結果、炎症性サイトカインレベルが上昇する。
【0180】
炎症性サイトカイン:「炎症性サイトカイン」という用語は、炎症応答において上昇するサイトカインを指す。炎症性サイトカインの例としては、インターロイキン-6(IL-6)、CXCL1(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(GROcとしても知られている)、インターフェロン-γ(IFNγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ-誘導タンパク質10(IP-10)、又は顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)等が挙げられる。炎症性サイトカインという用語は、当技術分野で知られている炎症性応答に関連する他のサイトカイン、例えば、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-12(L-12)、インターロイキン-13(IL-13)、インターフェロンα(IFN-α)等も包含する。
【0181】
インビトロ:本明細書で使用する場合、「インビトロ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、又は微生物)内ではなく、人工環境、例えば、試験管又は反応容器内、細胞培養、ペトリ皿内などで起こる事象を指す。
【0182】
インビボ:本明細書で使用する場合、「インビボ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、微生物、又はその細胞や組織)内で発生する事象を指す。
【0183】
挿入型及び欠失型変異:ポリペプチドに言及する場合、「挿入型変異」とは、ネイティブ配列又は開始配列の特定の位置で、アミノ酸に隣接する1以上のアミノ酸が挿入されたものである。アミノ酸に「隣接する」とは、アミノ酸のα-カルボキシ又はα-アミノ官能基のいずれかに接続されていることを意味する。ポリペプチドに言及する場合、「欠失型変異」とは、ネイティブ又は開始アミノ酸配列中の1以上のアミノ酸が除去されたものである。通常、欠失型変異では、分子の特定の領域で1以上のアミノ酸が欠失している。
【0184】
インタクト:本明細書で使用する場合、ポリペプチドの文脈において、「インタクト」という用語は、野生型タンパク質に対応するアミノ酸を保持すること、例えば、野生型アミノ酸を変異又は置換していないことを意味する。逆に、核酸の文脈では、「インタクト」という用語は、野生型核酸に対応する核酸塩基を保持すること、例えば、野生型核酸塩基を変異又は置換していないことを意味する。
【0185】
単離された:本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、(自然界であれ実験環境であれ)それが会合している成分の少なくとも一部から分離された物質又は実体を意味する。単離された物質(例えば、ヌクレオチド配列又はタンパク質配列)は、それらが会合していた物質に関連して、様々なレベルの純度を有し得る。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に会合していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上から分離することができる。いくつかの例では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上の純度を有する。本明細書で使用されるように、物質は、他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。「実質的に分離されている」という用語は、化合物が形成又は検出された環境から実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、例えば、本開示の化合物を濃縮した組成物を含むことができる。実質的な分離は、本開示の化合物、又はその塩を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、又は少なくとも約99重量%含む組成物を含むことができる。
【0186】
本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞、又は「単離された」任意の組成物は、自然界に存在しない形態であるポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞、又は組成物を意味する。単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、又は組成物は、それらが自然界で見出される形態ではもはやない程度に精製されたものを含む。いくつかの態様において、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、又は組成物は、実質的に純粋である。
【0187】
異性体:本明細書で使用される場合、「異性体」という用語は、本開示の任意の化合物の任意の互変異性体、立体異性体、エナンチオマー、又はジアステレオマーを意味する。本開示の化合物は、1以上のキラル中心及び/又は二重結合を有していてもよく、したがって、二重結合異性体(すなわち、幾何E/Z異性体)又はジアステレオマー(例えば、エナンチオマー(すなわち、(+)又は(-))又はシス/トランス異性体)等の立体異性体として存在すると認識される。本開示によれば、本明細書に描かれた化学構造、したがって本開示の化合物は、対応する立体異性体のすべて、すなわち、立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何学的に純粋、エナンチオマー的に純粋、又はジアステレオマー的に純粋)、及びエナンチオマーと立体異性体との混合物、例えば、ラセミ体の両方を包含する。本開示の化合物のエナンチオマーと立体異性体との混合物は、典型的には、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩複合体としての化合物の結晶化、又はキラル溶剤中での化合物の結晶化などの周知の方法によって、それらの成分エナンチオマー又は立体異性体に分解することができる。また、エナンチオマーや立体異性体は、立体的にあるいはエナンチオマー的に純粋な中間体、試薬、及び触媒から、公知の不斉合成法により得ることができる。
【0188】
リンカー:本明細書で使用する場合、「リンカー」は、例えば、約10~1000個の原子のグループを指し、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、イミンなどの原子又は基で構成できるが、これらに限定されない。リンカーは、第1の端で核酸塩基又は糖部分上の修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドに、第2の端でペイロード、例えば、検出可能剤又は治療剤に付着されることができる。リンカーは、核酸配列への取り込みに干渉しないような十分な長さを有することができる。リンカーは、本明細書に記載されるように、ペイロードを投与するためだけでなく、ポリヌクレオチドマルチマー(例えば、2以上のキメラポリヌクレオチド分子又はIVTポリヌクレオチドの連結による)又はポリヌクレオチド共役の形成など、任意の有用な目的で使用することができる。リンカーに取り込むことができる化学基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、又はヘテロシクリルなどがあるが、これらに限定されず、これらはそれぞれ、本明細書に記載のように任意に置換されることが可能である。リンカーの例としては、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレン又はプロピレングリコールのモノマー単位、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール)、及びデキストランポリマー及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の例としては、例えば、ジスルフィド結合(-S-S-)又はアゾ結合(-N=N-)などの、還元剤又は光分解を用いて切断することができるリンカー内の切断部位が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。選択的に切断可能な結合の非限定的な例としては、アミド結合は、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、又は他の還元剤、及び/又は光分解の使用によって切断することができ、同様にエステル結合は、例えば酸性又は塩基性の加水分解によって切断することができる。
【0189】
投与方法:本明細書で使用されるように、「投与方法」は、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は対象に組成物を送達する他の方法を含むことができる。投与方法は、身体の特定の領域又は系への送達(例えば、特異的に送達すること)を目標として選択され得る。特に、本明細書に記載されているのは、腫瘍内注射(例えば、1以上の腫瘍内、又は腫瘍に隣接する組織内への注射)である。
【0190】
修飾:本明細書で使用する「修飾」とは、本開示の分子の状態、又は構造を変更することを意味する。分子は、化学的、構造的、及び機能的など、多くの方法で修飾され得る。いくつかの例では、本開示のmRNA分子は、例えば、天然リボヌクレオチドA、U、G、及びCに関連するように、非天然ヌクレオシド及び/又はヌクレオチドの導入により修飾される。キャップ構造などの非正規ヌクレオチドは、A、C、G、Uリボヌクレオチドの化学構造とは異なるが、「修飾」とはみなされない。
【0191】
天然に存在する:本明細書で使用する「天然に存在する」とは、人為的な助力なしに自然界に存在することを意味する。
【0192】
非ヒト脊椎動物:本明細書で使用する場合、「非ヒト脊椎動物」は、野生種及び家畜化種を含む、ホモサピエンス以外の全ての脊椎動物を含む。非ヒト脊椎動物の例としては、アルパカ、バンテン、バイソン、ラクダ、ネコ、ウシ、シカ、イヌ、ロバ、ガヤル、ヤギ、モルモット、ウマ、ラマ、ラバ、ブタ、ウサギ、トナカイ、ヒツジ、水牛、ヤクなどの哺乳類があるが、それに限定しない。
【0193】
「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」(「ポリヌクレオチド配列」の一例)という用語は、互換的に用いられ、連続した核酸配列を意味する。配列は、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA(例えば、mRNA)のいずれでもよい。
【0194】
「核酸」という用語は、広義には、ヌクレオチドの重合体からなる化合物及び/又は物質を含む。これらのポリマーは、しばしばポリヌクレオチドと呼ばれる。本開示の核酸又はポリヌクレオチドの例には、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、スレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA、β-D-リボ構造を有するLNA、α-L-リボ構造(LNAのジアステレオマー)を有するα-LNA、2′-アミノ官能化を有する2′-アミノ-LNA、及び2′-アミノ官能化を有する2′-アミノ-α-LNA)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキシル核酸(CeNA)、又はそれらの混合物もしくは組合せが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0195】
「コードするヌクレオチド配列」という語句は、ポリペプチドをコードする核酸(例えば、mRNA又はDNA分子)コード配列を指す。コード配列は、核酸が投与される個体又は哺乳類の細胞における発現を指示することができるプロモーター及びポリアデニル化シグナルを含む調節要素に作動可能に連結した開始及び終了シグナルをさらに含むことができる。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含むことができる。
【0196】
オフターゲット:本明細書で使用する「オフターゲット」とは、いずれか1以上の標的、遺伝子、又は細胞転写物に対する意図しない効果を意味する。
【0197】
オープンリーディングフレーム:本明細書で使用する「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」は、所定のリーディングフレームに終止コドンを含まない配列を指す。
【0198】
操作可能に連結された:本明細書で使用される場合、「操作可能に連結された」という語句は、2以上の分子、構築物、転写物、実体、部位などの間の機能的な接続を意味する。
【0199】
任意に置換される:「任意に置換されたX」(例えば、任意に置換されたアルキル)という形式の語句は、「X、ここでXは任意に置換される」(例えば、「アルキル、ここで該アルキルは任意に置換される」)と等価であることを意図している。特徴「X」(例えば、アルキル)それ自体が任意であることを意味することは意図していない。
【0200】
部分:本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドの「部分」又は「領域」は、ポリヌクレオチドの全長よりも短い、ポリヌクレオチドの任意の一部と定義される。
【0201】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」とは、特定の疾病又は状態について訓練を受けた専門家による治療を求める可能性のある、又は治療を必要とする、治療を受けている、治療を受ける予定の、又は看護を受けている対象をいう。
【0202】
薬学的に許容される:本明細書において、「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題もしくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触して用いるのに適している化合物、材料、組成物、及び/又は薬剤に言及するために使用される。
【0203】
薬学的に許容される賦形剤:本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という語句は、本明細書に記載される化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁又は溶解することができるビヒクル)で、患者において実質的に無毒かつ非炎症であるという性質を有するものを指す。賦形剤としては、例えば、付着防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、染料(色素)、軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤又はコーティング剤、香味料、香料、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁又は分散剤、甘味料、水和物などを挙げることができる。例示的な賦形剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ゼラチン化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(コーン)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0204】
薬学的に許容される塩:本開示はまた、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物が、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することによって(例えば、遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって)修飾されている開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、及びカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機酸塩などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、酢酸、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンフル酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクレート、ピバレート、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、バリレート塩類などが挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の他、無毒のアンモニウム、第4級アンモニウム、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びエチルアミン等のアミンカチオンが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本開示の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が含まれる。本開示の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部位を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、水中又は有機溶媒中、あるいはこれらの混合物中で、化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水性媒体が使用される。適当な塩のリストは、ペンシルベニア州イーストン、Mack Publishing Company出版のRemington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed. (1985) p.1418、P. H. Stahl及びC. G. Wermuth編集、Wiley-VCH出版、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (2008)、並びにBerge et al., Journal of Pharmaceutical Science, 66, 1-19 (1977)に挙げられている。これらは、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0205】
薬学的に許容される溶媒和物:本明細書で使用する「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、適切な溶媒の分子が結晶格子内に取り込まれた本開示の化合物を意味する。適切な溶媒は、投与される用量において生理学的に許容される。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、又はそれらの混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶、又は沈殿によって調製することができる。好適な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N´-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N´-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジル等である。水を溶媒とする場合、その溶媒和物を「水和物」と呼ぶことがある。
【0206】
薬物動態:明細書で使用する「薬物動態」とは、生体に投与された物質の運命の決定に関連する、分子又は化合物の1以上の特性をいう。薬物動態は、吸収、分布、代謝、排泄の程度と速度を含むいくつかの領域に分けられる。これは一般にADMEと呼ばれ、(A)吸収は、物質が血液循環に入るプロセス、(D)分布は、体液及び体内組織全体への物質の分散又は拡散、(M)代謝(又は生体内変換)は、親化合物が娘代謝物に不可逆的に変換すること、(E)排泄(又は排出)は、物質の体からの排出を指す。まれに、体内組織に不可逆的に蓄積する薬物もある。
【0207】
物理化学的:本明細書で使用する場合、「物理化学的」とは、物理的及び/又は化学的特性、又はそれらに関連することを意味する。
【0208】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、その類似体、又はそれらの混合物を含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味する。この用語は、分子の一次構造を意味する。したがって、この用語は、三本鎖、二本鎖、及び一本鎖のデオキシリボ核酸(「DNA」)、ならびに三本鎖、二本鎖、及び一本鎖のリボ核酸(「RNA」)を含む。また、ポリヌクレオチドの、例えばアルキル化による、及び/又はキャッピングによる修飾型、及び非修飾型も含まれる。より詳細には、用語「ポリヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、スプライスされているか否かにかかわらずtRNA、rRNA、hRNA、siRNA、及びmRNAを含むポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、プリン又はピリミジン塩基のN-又はC-グリコシドである任意の他のタイプのポリヌクレオチド、並びに非ヌクレオチド骨格を含む他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸「PNA」)及びポリモルフォリノポリマー、並びにDNA及びRNAに見られるような塩基対や塩基積層を可能にする配置で核酸塩基を含むポリマーを提供する他の合成配列特異的核酸ポリマーが挙げられる。特定の態様において、ポリヌクレオチドは、mRNAから成る。他の態様では、mRNAは合成mRNAである。いくつかの態様において、合成mRNAは、少なくとも1つの非天然核酸塩基から成る。いくつかの態様では、あるクラスのすべての核酸塩基が非天然核酸塩基で置換されている(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド中のすべてのウリジンは、非天然核酸塩基、例えば5-メトキシウリジンで置換することが可能である)。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド(例えば、合成RNA又は合成DNA)は、天然核酸塩基のみ、すなわち、合成DNAの場合にはA、C、T、及びU、又は合成RNAの場合にはA、C、T、及びUから構成される。
【0209】
当業者は、本明細書に開示されたコドンマップ中のT塩基はDNA中に存在し、一方、T塩基は対応するRNA中でU塩基に置換されることを理解するであろう。例えば、DNA形態、例えばベクター又はインビトロ(IVT)テンプレートにおいて、本明細書に開示されるコドン-ヌクレオチド配列は、その対応する転写されたmRNAにおいて、そのT塩基がU塩基として転写されることになる。この点で、コドン最適化DNA配列(Tを含む)及びその対応するRNA配列(Uを含む)の両方は、本開示のコドン最適化ヌクレオチド配列とみなされる。当業者であれば、1以上の塩基を非天然塩基に置換することにより、同等のコドンマップを生成することができることも理解するであろう。したがって、例えば、TTCコドン(DNAマップ)は、UUCコドン(RNAマップ)に対応し、これは、結果として、「P」Cコドン(Uがプソイドウリジンに置換されているRNAマップ)に対応する。
【0210】
標準的なA-T及びG-C塩基対は、チミジンのN3-H及びC4-オキシとアデノシンのN1及びC6-NH2との間、並びにシチジンのC2-オキシ、N3、及びC4-NH2とグアノシンのC2-NH2、N′-H、及びC6-オキシとの間に、それぞれ水素結合が形成可能な条件下で形成されている。したがって、例えば、グアノシン(2-アミノ-6-オキシ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)は、イソグアノシン(2-オキシ-6-アミノ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)に修飾することが可能である。このような修飾を受けると、シトシンと効果的に標準塩基対を形成しないヌクレオシド塩基となる。しかしながら、シトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-オキシ-4-アミノ-ピリミジン)を修飾してイソシトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-アミノ-4-オキシ-ピリミジン)を形成すると、グアノシンと有効に塩基対にならないがイソグアノシンと塩基対になる修飾ヌクレオチドとなる(Collins et al.米国特許第5681702号明細書)。イソシトシンは、Sigma Chemical社(ミズーリ州セントルイス)から入手可能である。イソシチジンは、Switzer et al. (1993), Biochemistry 32, 10489-10496、及びそこに引用されている文献に記載されている方法によって調製することができる。2′-デオキシ-5-メチル-イソシチジンは、Tor et al.(1993), J. Am. Chem. Soc. 115: 4461-4467、及びそこに引用された文献に記載の方法で調製することができる。イソグアニンヌクレオチドは、Switzer et al. (1993)の前掲書、及びMantsch et al. (1993), Biochem. 14: 5593-5601に記載の方法、又はCollins et al., 米国特許第5780610号に記載されている方法を使用して調製することができる。他の非天然塩基対は、Piccirilli et al. (1990)、Nature 343: 33-37に記載されている2,6-ジアミノピリミジン及びその補体(1-メチルピラゾロ-[4,3]ピリミジン-5,7-(4H,6H)-ジオン)の合成に関して記載されている方法によって合成されうる。唯一の塩基対を形成する他のそのような修飾ヌクレオチド単位としては、例えば、Leach et al. (1992), J. Am. Chem. Soc. 114: 3675-3683及びSwitzer et al.の前掲書に記載のものが知られている。
【0211】
「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、又は「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、連続した核酸配列を意味する。配列は、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA(例えば、mRNA)のいずれでもよい。
【0212】
「コードするヌクレオチド配列」という語句、及びその変異は、本明細書に規定するポリペプチド又はその機能的断片をコードするヌクレオチド配列からなる核酸(例えば、mRNA又はDNA分子)コード配列を意味する。コード配列は、核酸が投与される個体又は哺乳類の細胞における発現を指示することができるプロモーター及びポリアデニル化シグナルを含む調節要素に作動可能に連結した開始及び終了シグナルをさらに含むことができる。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含むことができる。
【0213】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、修飾アミノ酸を含むことができる。用語はまた、天然又は介入によって修飾されたアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作又は修飾、例えば標識成分との共役を包含する。また、例えば、アミノ酸の1以上の類似体(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、クレアチンなどの非天然アミノ酸を含む)を含むポリペプチド、及び当技術分野で知られている他の修飾も定義に含まれる。
【0214】
本明細書で使用される用語は、任意のサイズ、構造、又は機能を有するタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。ポリペプチドは、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片及び前記の他の同等物、変種、及び類似体を含む。ポリペプチドは、単一のポリペプチドであってもよいし、二量体、三量体、四量体などの多分子複合体であってもよい。また、単鎖又は多鎖のポリペプチドからなることもできる。最も一般的には、多鎖ポリペプチドには、ジスルフィド結合が含まれる。ポリペプチドという用語は、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的類似物である、アミノ酸ポリマーに適用することも可能である。いくつかの例では、「ペプチド」は、約50アミノ酸長以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50アミノ酸長であり得る。
【0215】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド変種」という用語は、そのアミノ酸配列が、ネイティブ配列又は参照配列と異なる分子を指す。アミノ酸配列変種は、ネイティブ配列又は参照配列と比較して、アミノ酸配列内のある位置で、置換、欠失、及び/又は挿入を有し得る。通常、変種は、ネイティブ配列又は参照配列に対して、少なくとも約50%の同一性、少なくとも約60%の同一性、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約99%の同一性を有する。いくつかの例では、それらは、ネイティブ配列又は参照配列と、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%同一である。
【0216】
本明細書において、単位薬物当たり(PUD)のポリペプチド、又は単位薬物当たり製品は、体液又は組織で測定された製品(ポリペプチドなど)の1日の総投与量、通常1mg、pg、kgなどの細分化部分として定義され、通常pmol/mL、mmol/mLなどの濃度で定義し、体液での測定値で割ったものである。
【0217】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、完全に、を含む、少なくとも部分的に、感染、疾病、疾患、及び/もしくは状態の発症を遅延させること、少なくとも部分的又は完全に、特定の感染、疾病、疾患、及び/もしくは状態の1以上の症状、特徴、又は臨床発現の発症を遅延させること、少なくとも部分的又は完全に、特定の感染症、疾病、疾患、及び/もしくは状態の1以上の症状、特徴、もしくは発現の発症を遅延させること、少なくとも部分的又は完全に、感染症、特定の疾病、疾患、及び/もしくは状態からの進行を遅延させること、並びに/又は感染、疾病、疾患、及び/もしくは状態に関連する病理学の発症リスクを低減させること、を指す。
【0218】
本開示はまた、本明細書に記載される化合物のプロドラッグを含む。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、化学的又は物理的変化により治療薬として作用する物質、分子又は実体のための前提条件となる形態にある任意の物質、分子又は実体を意味する。プロドラッグは、何らかの方法で共有結合又は隔離され、それを必要とする哺乳類被験対象に投与される前、投与時、又は投与後に、活性薬剤部分に放出又は変換されうる。プロドラッグは、日常的な操作又はインビボのいずれかで親化合物に切断されるように、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグは化合物を含み、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基が、哺乳類被験対象に投与されたときに、切断して、それぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基を形成する任意の基に結合する。プロドラッグの調製と使用については、A.C.S.シンポジウムシリーズの第14巻、T. Higuchi及びV. Stella著、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、及び米国製薬協会、ペルガモン・プレス、1987、Edward B. Roche編集のin Bioreversible Carriers in Drug Designに記載されており、その両方が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0219】
増殖する:本明細書で使用する場合、「増殖する」という用語は、成長、拡大、もしくは増加すること、又は急速に成長、拡大、もしくは増加させることを意味する。「増殖性」とは、増殖する能力を有することを意味する。「抗増殖性」とは、増殖性に対抗する、又は増殖性に欠ける特性を有することを意味する。
【0220】
予防:本明細書において、「予防」とは、疾病の蔓延を防止するために用いられる治療又は処置のことをいう。
【0221】
予防:本明細書で使用する「予防」とは、健康を維持し、疾病の蔓延を防止するために講じる手段を指す。「免疫予防」とは、疾病の蔓延を防ぐために、能動的又は受動的な免疫力を作り出す手段を指す。
【0222】
タンパク質切断部位:本明細書で使用する「タンパク質切断部位」とは、化学的、酵素的、又は光化学的手段によって、アミノ酸鎖の制御切断を達成することができる部位をいう。
【0223】
タンパク質切断シグナル:本明細書で使用する「タンパク質切断シグナル」とは、切断するために、ポリペプチドにフラグ又はマークを付ける少なくとも1つのアミノ酸を意味する。
【0224】
対象のタンパク質:本明細書で使用される場合、用語「対象のタンパク質」又は「所望のタンパク質」は、本明細書で提供されるもの、及びその断片、変異体、変種、及び改変体を含む。
【0225】
本明細書において、「近位」という用語は、中心、又は点もしくは関心領域の近くに位置することを意味する。
【0226】
プソイドウリジン:本明細書で使用する場合、プソイドウリジンとは、ヌクレオシドウリジンのC-グリコシド異性体を指す。「プソイドウリジン類似体」は、プソイドウリジンの任意の修飾体、変種、アイソフォーム、又は誘導体である。例えば、プソイドウリジン類似体には、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3ψ)、及び2´-O-メチル-プソイドウリジン(xm)などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0227】
精製された:本明細書において、「精製する」、「精製された」、「精製」とは、不要な成分、物質的な汚れ、混入物、又は不完全なものから、実質的に純粋又は透明にすることを意味する。
【0228】
参照核酸配列:「参照核酸配列」又は「参照核酸」又は「参照ヌクレオチド配列」又は「参照配列」という用語は、配列を最適化することができる出発核酸配列(例えば、RNA、例えば、mRNA配列)を指す。いくつかの例では、参照核酸配列は、野生型核酸配列、その断片又は変種である。いくつかの例では、参照核酸配列は、あらかじめ配列最適化された核酸配列である。
【0229】
塩:いくつかの態様において、本明細書に開示された腫瘍内送達のための医薬組成物は、その脂質成分の一部に塩を含んでいる。「塩」という用語は、任意のアニオン性及びカチオン性複合体を含む。アニオンの非限定的な例としては、無機及び有機アニオン、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、シュウ酸塩(例えば、ヘミオキサレート)、リン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、窒化物、重亜硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、重硫酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、アクリル酸塩、ポリアクリレート、フマール酸塩、マレイン酸塩、イタコン酸、グリコール酸、グルコン酸、リンゴ酸、マンデル酸、チグレン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、ポリメタクリレート、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、臭素酸塩、次亜臭素酸塩、ヨウ素酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、シアン化合物、シアン酸塩、チオシアン酸塩、水酸化物、過酸化物、過マンガン酸塩、及びこれらの混合物がある。
【0230】
試料:本明細書で使用される場合、「試料」又は「生体試料」という用語は、その組織、細胞、又は構成部分のサブセット(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊帯血、尿、膣液、及び精液を含むがこれらに限らない、体液)を指す。試料はさらに、生物全体又はその組織、細胞もしくは構成部分のサブセット、又はその画分もしくは部分から調製されたホモジネート、溶解物もしくは抽出物を含み得、例えば、血漿、血清、髄液、リンパ液、並びに皮膚、呼吸器、腸、及び泌尿器の外皮部分、涙、唾液、母乳、血球、腫瘍、並びに器官が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、試料とは、タンパク質や核酸分子などの細胞成分を含む栄養ブロスやゲルなどの培地を指す。
【0231】
シグナル配列:本明細書で使用する場合、「シグナル配列」、「シグナルペプチド」、及び「トランジットペプチド」という語句は互換的に使用され、特定のオルガネラ、細胞区画、又は細胞外輸出へのタンパク質の輸送又は局在化を指示し得る配列を意味する。この用語は、シグナル配列ポリペプチド及びシグナル配列をコードする核酸配列の両方を包含する。したがって、核酸の文脈におけるシグナル配列への言及は、実際には、シグナル配列ポリペプチドをコードする核酸配列を指す。
【0232】
シグナル伝達経路:「シグナル伝達経路」とは、細胞のある部分から別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。本明細書で使用する「細胞表面受容体」という語句は、例えば、シグナルを受け取ることができる分子や分子の複合体、及び細胞の細胞膜を横切ってそのようなシグナルを伝達することができる分子や複合体を含む。
【0233】
類似性:本明細書で使用する場合、「類似性」という用語は、高分子分子間、例えばポリヌクレオチド分子間(例えばDNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。高分子分子の互いの類似性パーセントの計算は、類似性パーセントの計算が当技術分野で理解されているように保存的置換を考慮することを除いて、同一性パーセントの計算と同じ方法で実施することができる。
【0234】
特異的送達:本明細書で使用される場合、「特異的送達」、「特異的に送達する」、又は「特異的に送達すること」は、ナノ粒子により、関心の標的組織(例えば、哺乳類の肝臓)に、標的外組織(例えば、哺乳類の脾臓)と比較して、より多くの(例えば、少なくとも約1.5倍以上、少なくとも約2倍以上、少なくとも約3倍以上、少なくとも約4倍以上、少なくとも約5倍以上、少なくとも約6倍以上、少なくとも約7倍以上、少なくとも約8倍以上、少なくとも約9倍以上、少なくとも約10倍以上)のポリヌクレオチド送達することを意味する。特定の組織へのナノ粒子の送達レベルは、組織内で生成されたタンパク質の量を該組織の重量と比較すること、組織内のポリヌクレオチドの量を該組織の重量と比較すること、組織内で生成されたタンパク質の量を該組織内の全タンパクの量と比較すること、又は組織内のポリヌクレオチドの量を該組織内の全ポリヌクレオチドの量と比較することによって測定されうる。例えば、腎血管標的については、ポリヌクレオチドの全身投与後に、肝臓又は脾臓に送達されるものと比較して、組織1g当たり約1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍又は20倍多いポリヌクレオチドが腎臓に送達されれば、肝臓及び脾臓と比較して、哺乳類の腎臓に特異的に供給されることになる。ナノ粒子が標的組織に特異的に送達する能力は、治療される対象において決定される必要はなく、動物モデル(例えば、ラットモデル)などの代替物において決定されてもよいことが理解されるであろう。
【0235】
安定な:本明細書で使用される場合、「安定な」とは、反応混合物から有用な純度まで単離するのに十分なロバスト性を有し、場合によっては、効能のある治療剤に製剤化できる化合物を意味する。
【0236】
安定化した:本明細書で使用される場合、「安定化する」、「安定化した」、「安定化領域」は、安定にすること、又は安定になることを意味する。
【0237】
立体異性体:本明細書で使用される場合、「立体異性体」という用語は、化合物(例えば、本明細書に記載の任意の式の化合物)が有し得るすべての可能な異なる異性体及び配座形態、特にすべての可能な立体化学的及び配座的異性体形態、基本分子構造のすべてのジアステレオマー、エナンチオマー及び/又はコンフォマーを意味する。本開示のいくつかの化合物は、異なる互変異性形態で存在してもよく、後者はすべて本開示の範囲に含まれる。
【0238】
対象:「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳類」とは、診断、予後、又は治療が望まれる任意の被験対象、特に哺乳類の被験対象を意味する。哺乳類の被験対象としては、ヒト、家畜、農耕動物、動物園動物、スポーツ動物、並びに犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、馬、畜牛、及び乳牛などのペット動物、並びに類人猿、サル、オランウータン、及びチンパンジーなどの霊長類、並びに犬及び狼などの犬科動物、並びに猫、ライオン、及び虎などの獣科動物、並びに馬、ロバ、シマウマなどの馬科動物、熊、並びに牛、豚、及び羊などの食用動物、並びに鹿及びキリンなどの偶蹄類、並びにマウス、ラット、ハムスター、及びモルモットなどのげっ歯類などである。特定の例では、哺乳類は、ヒト被験対象である。他の例では、被験対象は、ヒト患者である。特定の例では、対象は、癌治療を必要としているヒト患者である。
【0239】
本明細書で使用する文脈では、「実質的に」という用語は、関心のある特性又は性質の全体的又はそれに近い範囲又は程度を示すという定性的な状態を指す。生物学分野の通常の技術者であれば、生物学的及び化学的現象は、もしあるとしても、完了まで行く及び/又は完全性まで進む、又は絶対的な結果を達成又は回避することはほとんどないことを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捕捉するために、本明細書で使用される。投与間の時間差に関連して本明細書で使用される「実質的に等しい」は、プラス/マイナス2%を意味する。本明細書で使用される複数の投与に関連する「実質的に同時」とは、数秒(例えば、2)以内を意味する。
【0240】
疾病、疾患、及び/又は状態に「苦しんでいる」個人は、疾病、疾患、及び/又は状態の1以上の症状を診断された、又は示している。
【0241】
疾病、疾患、及び/又は状態に「罹患しやすい」個人は、疾病、疾患、及び/又は状態の診断を受けず、及び/又はその症状を示さないかもしれないが、疾病又はその症状を発症する傾向を含んでいる。いくつかの例では、疾病、疾患、及び/又は状態(例えば、癌)に罹患しやすい個体は、(1)疾病、疾患、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子変異、(2)疾病、疾患、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子多型、(3)疾病、疾患、及び/又は状態に関連するタンパク質及び/又は核酸の発現及び/又は活性の増加又は減少、(4)疾病、疾患、及び/又は状態の発症に関連する習慣及び/又は生活様式、(5)疾病、疾患、及び/又は状態の家族歴、及び(6)疾病、疾患、及び/又は状態の発症に関連する微生物への曝露及び/又は感染、のうちの1以上によって特徴付けることができる。いくつかの例では、疾病、疾患、及び/又は状態に罹患しやすい個体が、その疾病、疾患、及び/又は状態を発症する。いくつかの例では、疾病、疾患、及び/又は状態に罹患しやすい個体が、疾病、疾患、及び/又は状態を発症することはない。
【0242】
本明細書で使用する場合、「徐放性」という用語は、特定の期間にわたって放出速度に適合する医薬組成物又は化合物の放出プロフィールを意味する。
【0243】
「合成」という用語は、人の手によって生産、調製、及び/又は製造されることを意味する。本開示のポリヌクレオチド又は他の分子の合成は、化学的又は酵素的であり得る。
【0244】
本明細書で使用する場合、「標的細胞」は、任意の1以上の関心対象の細胞を指す。細胞は、インビトロ、インビボ、インサイチュ、又は生物の組織もしくは器官に存在してもよい。生物は、動物、例えば、ヒトを含む哺乳類であってもよい。
【0245】
標的組織:本明細書で使用される場合、「標的組織」とは、ポリヌクレオチドの送達が所望の生物学的及び/又は薬理学的効果をもたらすであろう、任意の1以上の組織タイプの関心事をいう。関心の標的組織の例には、特定の組織、器官、及び系又はその群が含まれる。特定の用途において、標的組織は、腎臓、肺、脾臓、血管内皮(例えば、冠状動脈内又は大腿骨内)、又は腫瘍組織(例えば、腫瘍内注射を介して)であってよい。「オフターゲット組織」とは、コード化されたタンパク質の発現が所望の生物学的及び/又は薬理学的効果をもたらさない任意の1以上の組織タイプを指す。特定の用途において、オフターゲット組織には、肝臓及び脾臓が含まれ得る。
【0246】
ターゲティング配列:本明細書で使用される場合、「ターゲティング配列」という語句は、タンパク質又はポリペプチドの輸送又は局在化を指示することができる配列を指す。
【0247】
末端:本明細書において、ポリペプチドに言及する場合の「(複数の)末端」又は「末端」という用語は、ペプチド又はポリペプチドの先端を指す。このような先端は、ペプチド又はポリペプチドの最初又は最後の部位のみに限定されず、末端領域における追加のアミノ酸を含むことができる。本開示のポリペプチドベースの分子は、N末端(遊離アミノ基を有するアミノ酸によって終結する(NH2))及びC末端(遊離カルボキシル基を有するアミノ酸によって終結する(COOH))の両方を有するものとして特徴付けることができる。本開示のタンパク質は、場合によっては、ジスルフィド結合又は非共有結合力(多量体、オリゴマー)によって一緒になった複数のポリペプチド鎖で構成されている。このような種類のタンパク質は、複数のN末端及びC末端を有する。あるいは、ポリペプチドの末端は、場合により、有機共役などの非ポリペプチドベースの部位で開始又は終了するように修飾することも可能である。
【0248】
治療剤:「治療剤」という用語は、それを必要とする被験対象に投与されたとき、治療、診断、及び/又は予防効果を有し、及び/又は所望の生物学的及び/又は薬学的効果を誘発する薬剤を意味する。例えば、いくつかの例では、IL-36-γポリペプチドをコードするmRNAは、治療剤であり得る。
【0249】
治療上有効な量:本明細書で使用される場合、「治療上有効な量」という用語は、感染、疾病、疾患、及び/又は状態に罹患しているか又は罹患しやすい対象に投与された場合に、感染、疾病、疾患、及び/又は状態を治療、症状の改善、診断、予防、及び/又は発症を遅らせるために十分である送達すべき薬剤(例えば、核酸、薬剤、治療剤、診断剤、予防剤等)の量を意味する。
【0250】
治療上有効な結果:本明細書で使用される場合、「治療上有効な結果」という用語は、感染、疾病、疾患、及び/又は状態に罹患しているか又は罹患しやすい対象において、感染、疾病、疾患、及び/又は状態の治療、症状の改善、診断、予防、及び/又は発症の遅延に十分である結果を意味する。
【0251】
1日の総投与量:本明細書で使用する場合、「1日の総投与量」は、24時間以内に投与又は処方される量である。1日の総投与量は、1単位用量又は分割用量として投与することができる。
【0252】
転写因子:本明細書で使用する場合、「転写因子」という用語は、例えば、転写の活性化又は抑制によって、DNAからRNAへの転写を調節するDNA結合タンパク質を指す。転写因子には、単独で転写の調節に影響を及ぼすものもあれば、他のタンパク質と協調して作用するものもある。また、ある種の転写因子は、特定の条件下で転写を活性化することも抑制することもできる。一般に、転写因子は、標的遺伝子の制御領域において、特定の標的配列、又は特定のコンセンサス配列と高度に類似した配列に結合する。転写因子は、単独で、あるいは他の分子と複合して、標的遺伝子の転写を制御することができる。
【0253】
転写:本明細書で使用される場合、「転写」という用語は、外来性核酸を細胞に導入する方法を指す。トランスフェクションの方法には、化学的方法、物理的治療、及びカチオン性脂質又は混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0254】
トランスフェクション:本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」とは、ポリヌクレオチドの細胞への導入を指し、そこでポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドが発現される(例えば、mRNA)か、又はポリペプチドが細胞の機能を調節する(例えば、siRNA、miRNA)。本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」とは、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)のポリペプチドもしくはタンパク質への翻訳、及び/又はポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾を意味する。
【0255】
治療する、治療、療法:本明細書で使用される場合、用語「治療する」又は「治療」又は「療法」は、高増殖性疾病、例えば癌の1以上の症状又は特徴を、部分的又は完全に、緩和、改良、改善、軽減、発症の遅延、進行の抑制、重症度の低減、及び/又は発生率の低減を意味する。例えば、癌を「治療する」とは、腫瘍の生存、成長、及び/又は広がりを阻害することを指すことができる。治療は、疾病、疾患、及び/又は状態の兆候を示さない対象、及び/又は疾病、疾患、及び/又は状態の初期兆候のみを示す対象に、疾病、疾患、及び/又は状態に関連する病変の発症リスクを低下させる目的で投与することができる。
【0256】
腫瘍微小環境:本明細書で使用される場合、「腫瘍微小環境」とは、腫瘍内に浸潤する免疫細胞及び/又は炎症細胞の有無、ならびに腫瘍内のそのような細胞の種類に関する、腫瘍内の細胞組成物を指す。1つの態様において、腫瘍微小環境は「炎症性腫瘍微小環境」であり、これは、腫瘍に浸潤した免疫細胞及び/又は炎症細胞の存在を意味し、優勢な細胞型は顆粒球である。別の態様では、腫瘍微小環境は「免疫抑制性腫瘍微小環境」であり、これは、腫瘍に浸潤した免疫細胞及び/又は炎症細胞の存在を意味し、優勢な細胞型は単球系細胞及びマクロファージである。別の態様では、腫瘍微小環境は「免疫学的に不毛な腫瘍微小環境」であり、これは、免疫細胞及び/又は炎症細胞の腫瘍への著しい浸潤がないことを意味する。
【0257】
未修飾:本明細書で使用される場合、「未修飾」とは、何らかの方法で変化させる前の物質、化合物、又は分子を指す。未修飾とは、生体分子の野生型又はネイティブ型を指すことがあるが、必ずしもそうではない。分子は、一連の修飾を受けることができ、各修飾分子は、後続の修飾のための「未修飾」出発分子として機能することができる。
【0258】
ウラシル:ウラシルは、RNAの核酸中の4つの核酸塩基の1つであり、Uの文字で表される。ウラシルは、リボース環、より具体的にはリボフラノースに、β-N1-グリコシド結合を介して結合し、ヌクレオシドウリジンを得ることができる。また、ヌクレオシドウリジンは、その核酸塩基の1文字コードに従って、一般にUと略記される。したがって、本開示の文脈において、ポリヌクレオチド配列中のモノマーがUであるとき、かかるUは、交換可能に「ウラシル」又は「ウリジン」として指定される。
【0259】
ウリジン含有量:「ウリジン含有量」又は「ウラシル含有量」という用語は互換性があり、ある核酸配列中に存在するウラシル又はウリジンの量を指す。ウリジン含量又はウラシル含量は、絶対値(配列中のウリジン又はウラシルの総数)又は相対値(核酸配列中の核酸塩基の総数に対するウリジン又はウラシルの割合)として表現することができる。
【0260】
ウリジン修飾配列:「ウリジン修飾配列」という用語は、候補核酸配列のウリジン含有量及び/又はウリジン・パターンに関して、異なる全体的又は局所的ウリジン含有量(高い又は低いウリジン含有量)又は異なるウリジン・パターン(例えば、グラデーション分布又はクラスタリング)を有する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)のことを指す。本開示の内容において、「ウリジン修飾配列」及び「ウラシル修飾配列」という用語は、同等かつ交換可能であるとみなされる。
【0261】
「高ウリジンコドン」とは、2個又は3個のウリジンからなるコドン、「低ウリジンコドン」とは、1個のウリジンからなるコドン、「無ウリジンコドン」とは、ウリジンを含まないコドンとして定義される。いくつかの例では、ウリジン修飾配列は、高ウリジンコドンの低ウリジンコドンへの置換、高ウリジンコドンの無ウリジンコドンへの置換、低ウリジンコドンの高ウリジンコドンへの置換、低ウリジンコドンの無ウリジンコドンへの置換、無ウリジンコドンの高ウリジンコドンへの置換、及びそれらの組み合わせで構成される。いくつかの例では、高ウリジンコドンは、別の高ウリジンコドンに置換され得る。いくつかの例では、低ウリジンコドンは、別の低ウリジンコドンに置換され得る。いくつかの例では、無ウリジンコドンは、別の無ウリジンコドンに置換され得る。ウリジン修飾配列は、ウリジン濃縮配列又はウリジン希薄配列とすることができる。
【0262】
ウリジン濃縮化:本明細書で使用する場合、「ウリジン濃縮化」という用語及び文法的変形は、対応する候補核酸配列のウリジン含有量に対する、配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)のウリジン含有量の増加(絶対値又はパーセント値で表される)を指す。ウリジン濃縮化は、候補核酸配列中のコドンを、より多いウリジン核酸塩基を含む同義コドンで置換することにより実施することができる。ウリジン濃縮化は、グローバル(すなわち、候補核酸配列の全長に対して)又はローカル(すなわち、候補核酸配列の部分配列又は領域に対して)であることができる。
【0263】
ウリジン希薄化:本明細書で使用する場合、「ウリジン希薄化」という用語及び文法的変形は、対応する候補核酸配列のウリジン含有量に対する、配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)のウリジン含有量の減少(絶対値又はパーセント値で表される)を指す。ウリジン希薄化は、候補核酸配列中のコドンを、より少ないウリジン核酸塩基を含む同義コドンで置換することにより実施することができる。ウリジン希少化は、グローバル(すなわち、候補核酸配列の全長に対して)又はローカル(すなわち、候補核酸配列の部分配列又は領域に対して)であることができる。
【0264】
変異:本開示で使用される変異という用語は、天然の変異(例えば、多形、アイソフォームなど)、及びネイティブ配列又は出発配列(例えば、野生型配列)中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、同じ位置に異なるアミノ酸が挿入されている人工変異の両方を意味する。これらの変異は、「置換型変異」ということができる。置換は、分子中の1つのアミノ酸のみが置換された単一置換体である場合もあれば、同一分子内で2以上のアミノ酸が置換された複数置換体である場合もある。アミノ酸が挿入又は削除された場合、結果として生じる変異はそれぞれ「挿入型変異」又は「削除型変異」となる。
【0265】
ワクチン:本明細書で使用される場合、ワクチンは、身体が癌と戦うのを助ける治療法であってもよい。具体的には、本明細書に記載されるワクチンは、癌を治療してもよい。本明細書に記載されるワクチンは、疾病(例えば、癌)の予防に限定されず、1又は複数の腫瘍を含む既存の癌を治療してもよい。
【0266】
本明細書に記載されるmRNAワクチンは、任意の適切な送達ビヒクル分子を含んでもよい。例えば、送達ビヒクル分子は、脂質ベースのビヒクル(脂質ナノ粒子など)又はポリマーベースのナノ粒子であってもよい。特に、送達ビヒクル(DV)分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルであってもよい。
【0267】
一般に、送達ビヒクル分子は、mRNAをRNAse分解から保護し、細胞への取り込みを増加させ、エンドソームからの脱出を促進し、それによって細胞質で機能性タンパク質を発現させる。これらの特性により、患者へのmRNAのインビボ送達に関する技術的課題に対処することが可能となる。
【0268】
したがって、本明細書に記載されるように、本明細書によるmRNAワクチンは、1以上の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと、同じ送達ビヒクル分子と共配合される1以上の免疫調節剤と、を含んでもよい。送達ビヒクル分子は、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)であってもよい。LNP製剤は、ポリアニオン性mRNAをカプセル化するための第3級または第4級アミンを有するイオン化可能な又はカチオン性の脂質又は高分子材料、細胞膜の脂質に類似した双性イオン性脂質(例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、LNPの脂質二重層を安定化するコレステロール、及びナノ粒子に水和層を与え、コロイド安定性を改善し、タンパク質吸収率を下げるためのポリエチレングリコール(PEG)-脂質から成ってもよい。
【0269】
多成分のLNPはエンドサイトーシスによって取り込まれ、静電的に細胞膜に付着し、反転した非二重層脂質相を利用して細胞膜に融合してもよい。細胞内では、LNPは、初期エンドソーム、後期エンドソーム、そして最終的にはリソソームへと送られ、mRNAが酵素分解される。
【0270】
送達ビヒクル分子の1つのクラスには、カチオン性又はイオン化可能な脂質、及び脂質類似物質が含まれる。カチオン性脂質は、アルキル化された4級アンモニウム基を持ち、pHに依存しない様式でカチオン性を保持する一方、イオン化可能な脂質は、pHが下がると遊離アミンのプロトン化により正の電荷を獲得する。脂質類似物質は、天然脂質に比べ、疎水性の側鎖を多く持つ。N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)などのカチオン性脂質が使用されてもよい。代替的に又は追加的に、pH依存性のイオン化可能な材料を使用してもよい。Dlin-MC3-DMA(MC3)と名付けられたイオン化可能な脂質は、治療用タンパク質を発現させるため、mRNAをトランスフェクトするために使用することも可能である。
【0271】
高分子材料は、治療用mRNAの送達に使用することができる。例えば、脂肪鎖で修飾された低分子量ポリエチレンイミン(PEI)は、高分子量PEIの毒性を低減するために、siRNA及びmRNAの送達に使用され得る。脂肪鎖で修飾されたポリ(グリコアミドアミン)ポリマー(例えば、酒石酸塩骨格を含むいくつかの変形例において)は、mRNAを送達することが示されている。ポリ(β-アミノ)エステル(PBAE)は、生分解性ポリマーであり、血清安定性を高めるためにPEG-脂質を配合したPBAEを含む核酸送達に使用されることがある。高分岐型PBAEは、mRNAの送達に使用されてもよい。
【0272】
アミン側鎖を有するポリメタクリレート、オリゴアミノエチレン側鎖を有するポリアスパルタミド、及びエチル-プロピル-エチルスペーサーを交互に有するテトラミンでアミド化したポリアクリル酸は、mRNAをトランスフェクトすると報告されており、送達ビヒクル分子として使用できる可能性がある。自己免疫型ポリカーボネートブロックポリ(α-アミノ)エステルは、再配列とpH7.4での分解により、mRNAを放出し、エンドソームからの脱出を促進する可能性がある。生分解性アミノポリエステル(APE)は、様々なラクトンの開環重合における開始剤として、3級アミノアルコールから低分散性で合成され、組織選択的にmRNAを送達することが可能である。その他、生体適合性分解生成物を有し、エンドソームからの脱出性を高めた生分解性ポリマーをmRNAの送達に用いてもよい。
【0273】
いくつかの変形例では、送達ビヒクル分子はデンドリマーを含んでもよい。例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)又はポリプロピレンイミンをベースとするデンドリマーは、遺伝子送達のために広く研究されている。脂肪鎖修飾PAMAMデンドリマー、及び/又はポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)及びセラミド-PEGを共配合した修飾PAMAMデンドリマーは、送達ビヒクル分子として使用され得る。
【0274】
あるいは、いくつかの変形例では、細胞侵入ペプチド(CPP)が、送達ビヒクル分子として使用されてもよい。CPPは、細胞表面で負に帯電したグリコサミノグリカンのクラスタリングを促進し、その結果、マクロピノサイトーシスと側方拡散を誘発するか、直接、脂質二重層を破壊することが考えられる。アルギニンに富む両親媒性RALA配列の繰り返しを有するCPPを用いてもよい。いくつかの変形例では、送達ビヒクル分子は、カチオン性脂質と双性イオン性脂質の組み合わせで、カチオン性脂質とヘルパー脂質を連想させるもの(「双性イオン性アミノ脂質」またはZAL)であってもよい。
【0275】
特に、本明細書に記載される送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルであってもよい。例えば、これらの送達ビヒクルは、循環中にmRNAカーゴのパッケージング及び保護を提供し、免疫認識を回避し、細胞の取り込み及び放出を促進し得る、脂質含有両親媒性送達ビヒクルであってもよい。これらの送達ビヒクルの例は、「LIPID NANOPARTICLE FORMULATIONS COMPRISING LIPIDATED CATIONIC PEPTIDE COMPOUNDS FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題された2019年9月27日出願の国際特許出願PCT/US19/53661、及び「TERTIARY AMINO LIPIDATED CATIONIC PEPTIDES FOR NUCLEIC ACID DELIVERY」と題された2019年9月27日出願の国際特許出願PCT/US19/53655に見られ、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。複数のタイプの送達ビヒクル分子を使用してもよく、各タイプは、本明細書に記載の1以上の腫瘍特異的抗原をコードするmRNAと、1以上の免疫調節剤をコードするmRNAとの両方と一緒にカプセル化されてもよい。
【0276】
一般に、本明細書に記載される方法及び組成物は、癌の治療方法を含み得る。これらの方法は、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAワクチンと、1以上の免疫調節剤をコードするmRNAと、を腫瘍内注射することを含んでもよく、mRNAワクチン及び免疫調節剤は、一緒に送達ビヒクル分子でカプセル化されている。特に、腫瘍特異的抗原は、ネイティブな患者組織、特に同じ分化系統を有するネイティブな患者組織と比較して(例えば肝臓腫瘍組織と比較した肝臓組織)、1以上の遺伝子及び/もしくはタンパク質の配列、ならびに/又は1以上の遺伝子及び/もしくはタンパク質の発現における変化(例えば、欠損、付加などを含む変異)として同定することができる患者特異的腫瘍抗原であってもよい。
【0277】
例えば、患者特異的腫瘍抗原は、ネオエピトープ(ネオ抗原とも呼ばれる)を含んでもよい。本明細書に記載の方法及び組成物は、ネオエピトープを使用するmRNAワクチンの有効性を向上させることができる。
【0278】
ネオエピトープは、非同義変異、保持イントロン、アミノ酸を変更する翻訳後修飾、遺伝子融合、フレームシフトイン/デル変異を含む、タンパク質配列を変更する任意のゲノム変異から生じる可能性がある。次世代配列(NGS)は、翻訳後修飾を除いて、これらのタイプの変異の同定に使用することができ、質量分析などの技術によって検出されてもよい。
【0279】
腫瘍特異的抗原は体細胞変異体であってもよく、任意の適切な方法で同定することができる。
【0280】
超並列NGSは、個々のcDNAライブラリのスクリーニングを必要とせずにネオエピトープを同定するために使用されてもよい。全エクソーム/ゲノム配列決定法を用いれば、タンパク質コード領域を変化させる腫瘍特異的な遺伝子の変異をハイスループットで迅速に特定でき、ネオエピトープの予測を容易にする。また、細胞表面のMHC分子に結合したペプチドを同定するために、質量分析を用いることもできる。生殖細胞や腫瘍のDNAに対してNGSを行い、がん細胞に特異的なタンパク質変異を同定し、その後、インシリコアルゴリズムによりエピトープを予測するという進歩的アプローチも可能である。
【0281】
例えば、腫瘍サンプルは、患者から抽出(及び/又は短期培養を含む培養)され、患者特異的である変異由来のネオエピトープを同定するために、全エクソーム配列(又は他のエクソーム配列)により調べられる。例えば、患者の腫瘍細胞からDNA及びRNAを抽出し、DNA配列決定のためのエクソーム捕捉を実施してもよい(例えば、Agilent社製、human whole-exome SureSelect assayを使用する)。(例えば、Illumina社製、mRNA-seqプロトコルを用いて)RNA-seqライブラリを調製した。ライブラリは、ヌクレオチドリードを生成するために(例えば、Illumina社製、HiSeq2500で)配列されてもよい。RNAリードは、ヒト参照ゲノムに整列され、転写物に組み立てられてもよい(例えば、Bowtie-TopHat-Cufflinks、オープンソースTuxedo Suiteソフトウェア、Trapnell C. et al., Nat. Protoc. 7, 562-578 (2012)を使用する)。WESデータは、(例えば、BWA、Burrows-Wheeler Aligner, http://bio-bwa.sourceforge.net/によって)参照ゲノムにマッピングされ、次に体細胞変異を検出するために処理されてもよい(例えば、MuTect社製、高感度で特異的な変異呼び出しアルゴリズムを使用、Cibulskis K. et al.不純で不均質な癌試料における体細胞点突然変異の高感度検出、Nat. Biotechnol. 31, 213-219 (2013))。したがって、(例えば、Seq2HLA、Boegel S. et al.、RNA-Seq配列リードからのHLAタイピング、Genome Med. 4, 102 (2012)を使用して)患者特異的対立遺伝子が決定されてもよい。同定された変異は、例えばRNA配列データを用いて、腫瘍発現レベルによってさらにフィルタリングされ得る、推定上の候補抗原性ペプチドであってもよい。(例えば、8~11文字以上の長さの)候補ペプチドは、例えば、(NetMHCpan, http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCpan/を使用して)インシリコで行われるペプチド-MHC結合親和性予測(IC50nM)によって、ランク付けされてもよい。上記のいずれのソフトウェアも単に例示的なものであり、他のソフトウェアを用いてもよい。
【0282】
ネオエピトープの予測は、ゲノムデータのインシリコ処理に依存してもよく、ドナーのHLAタイプ、腫瘍mRNA発現、生殖細胞DNA、及び腫瘍DNAの知識を使用してもよい。全ゲノムマイクロアレイやRNA-seqなどの腫瘍mRNA発現データを腫瘍特異的な癌変異情報と重ね合わせて、転写遺伝子における変異を同定することができる。これらの変異は、エピトープ予測アルゴリズムにかけられ、個人特異的なHLAアレルに結合する可能性のあるペプチド配列を同定してもよい。SYFPEITHI(Schuler et al. 2007)、RANKPEP(Reche et al. 2002)、NetMHCpan(Jurtz et al. 2017)、NetMHCcons(Karosiene et al. 2012)、PickPocket(Zhang et al. 2009)、MHCflurry(pre-print, 10.1101/174243)、ANN(Singh and Mishra 2008)、及びSMM(Peters and Sette 2005)など多くの利用できるエピトープ予測アルゴリズムが存在する。このようなアルゴリズムは、異なる予測モデルを採用しているかもしれないが、すべて特徴的なエピトープとMHCとの組み合わせを使って訓練されており、その結果、短いペプチド配列が与えられたHLAアレルに結合する可能性を予測することができるようになった。全ゲノム/全エクソーム配列データを使用し、HLA-アレルのタイピング、mRNA発現データ、ペプチド処理予測、野生型及び変異ペプチドに対するHLA-アレルの結合を含む解析を統合するバイオインフォマティックパイプラインが作成されている。これらには、pVAC-seq(Hundal et al. 2016)、MuPeXi(Bjerregaard et al. 2017)、Cloudneo(Bais et al. 2017)、TIminer(Tappeiner et al. 2017)などが含まれてもよい。次世代配列データからHLA遺伝子座のアレル特異的コピー数の推定を可能にする計算ツール(例えば、LOHHLA、ヒト白血球抗原のヘテロ接合性喪失)を使用することも可能である。
【0283】
本明細書に記載されるmRNAワクチン及び方法のいずれかにおいて、1以上、場合によっては複数(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上など)を単一のmRNA(又は複数のmRNA)に組み合わせて、例えば、一緒にコード化してもよい。これらの組み合わされたネオエピトープmRNAは、本明細書に記載されるように、正常に使用され得る。
【0284】
代替的又は追加的に、mRNAに基づく腫瘍ワクチン接種は、腫瘍共有抗原、すなわち、異なる患者の多くの腫瘍において過剰発現され、HLAが提示される抗原を含むことができる。
非限定的実用例
【0285】
いくつかの例では、本明細書に記載のmRNAワクチン接種方法が腫瘍抗原に対して使用され、マウスの一部において、耐久性のある腫瘍退縮及び長期のCD8+T細胞媒介癌免疫をもたらし得ることを示すために、合成遺伝子マウス癌モデルを使用した。
・例1:腫瘍モデル
【0286】
図2は、使用した同系統マウスモデルの一例を示す。マウスには、腫瘍細胞株(EG.7)を移植し、腫瘍の成長をモニターした。この腫瘍細胞株は、共有の腫瘍特異的抗原であるオバルブミンを発現するように操作された。マウスは、予め設定された腫瘍成長量の後に死んだ。
図2は、本明細書に記載の様々なmRNAワクチン及び治療方法の結果を示す図である。
図2において、陰性対照マウス(G1)は、移植後25日(DPI)までに、事前に設定された腫瘍体積の限界を超えた。対照的に、共有腫瘍特異的抗原のmRNAの皮下注射(例えば、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中)、ならびに同じくアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルと結合させた免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAの腫瘍内注射で治療したマウス(以下「G5」)では、腫瘍成長の著しい減速が見られた。G5を用いた結果と比較すると、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に、腫瘍特異的抗原のmRNAと免疫調節剤(抗CTLA-4)をコードするmRNAとを含むmRNAワクチンを腫瘍内注射した場合(「G6」)、腫瘍の成長を遅らせるか、又は減らすという点で、同様ではあるが、わずかに良い改善が見られた。しかし、驚くべきことに、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクル中に、腫瘍特異的抗原のmRNAと2種類の免疫調節剤(抗CTLA-4とTGF-βの両方)をコードするmRNAとを含むmRNAワクチン(「G7」)で処置した動物では、はるかに大きな生存率が見られた。抗CTLA-4のDNA配列は、SEQ ID NO: 1(重鎖)及びSEQ ID NO: 3(軽鎖)で示される。TGF-βについての配列例は、SEQ ID NO: 7及びSEQ ID NO: 9に示されている。
図2において、完全長IgG抗CTLA4は、mRNAワクチン中のmRNAによりコードされていた。上記の全ての処理において、免疫賦活物質であるCpGが、mRNAワクチンと一緒に含まれていた。すべての腫瘍内注射に、同じアミノ脂質化ペプトイドが使用された。
【0287】
図2に示すように、腫瘍特異的抗原に対するmRNAを、1又は(より好ましくは)より多くの免疫調節物質(aCTLA4及びaTGF-βなど)と結合させて腫瘍内注射すると、mRNAワクチン接種の有効性が劇的に増加した。
【0288】
同様の実験を、異なる腫瘍細胞株(MC38)を使用して、同系統マウスモデルを用いて行った。これは
図3に示されている。この例では、MC38腫瘍の配列決定により同定された腫瘍特異的抗原を含むmRNAワクチンと、ネオエピトープが同定された。7つのエピトープが同定され、連鎖して、7つの腫瘍特異的抗原すべてをコードする単一のmRNAを形成した。エピトープの配列は、提示を強化するためにカスタムスキャフォールドにおいて発現された。
【0289】
図3において、対照動物(「G2」)は、非コード化mRNA及びCpGを、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルとともに注射された。腫瘍特異的mRNAとアミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルとを含むmRNAワクチンの皮下注射(「G7」)は、対照動物と比較して、腫瘍増殖に有意な影響を与えなかった。一方、腫瘍特異的mRNAと抗CTLA-4のmRNAとの両方をアミノ脂質化ペプトイドと結合させて腫瘍内注射した動物(「G9」)では、腫瘍の成長が著しく遅くなるか減少し、したがって生存率が上昇した。最も顕著なのは、腫瘍特異的抗原のmRNAと3つの免疫調節剤(抗CTLA-4、TGF-β、一本鎖IL-12)をコードするmRNAとを含むmRNAワクチンを、アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルとともに腫瘍内注射(「G10」は「マルチエフェクターカクテル」を示す)すると、腫瘍増殖が劇的に低下するか減少したことである。この例では、mRNAのワクチン接種もすべてCpGを含んでいた。
【0290】
図4は、同系統マウスモデルを用いて、腫瘍内注射のみによる投与を検討した別の実施例の結果を示す。
図4では、腫瘍特異的抗原とアミノ脂質化ペプトイドを含むmRNAワクチンを単独で用いたもの(「1」)と、腫瘍特異的抗原のmRNAとアミノ脂質化ペプトイドを含むmRNAワクチンに抗CTLA-4とアミノ脂質化ペプトイドを結合させたもの(「6」)が比較される。示されるように、単一の免疫調節剤(この場合、抗CTLA-4)の使用は、(例えば、腫瘍の成長を減速又は減少させることにより)生存率を劇的に増加させた。
【0291】
図5は、
図4に要約された動物被験対象について、抗CTLA-4及びアミノ脂質化ペプトイドと結合させた腫瘍特異的抗原のmRNAとアミノ脂質化ペプトイドを含むmRNAワクチン(「6」)と比較した場合の、腫瘍特異的抗原のmRNAとアミノ脂質化ペプトイド単独(「1」)の腫瘍内注射(IT)後の時間経過に伴った腫瘍体積に対する影響をグラフ化したものである。動物は通常、腫瘍の体積が3000mm
3を超えた時点で死んだ。腫瘍特異的抗原と抗CTLA-4のmRNAとアミノ脂質化ペプトイドで治療した実質的にすべての動物において、腫瘍成長の遅延を示し、一部は腫瘍体積の減少又は阻止を示した。
【0292】
図6は、皮下注射により治療した同系統マウスにおいて同様の結果が得られ、約50%腫瘍が制御(例えば、対照「G1」と比較して、経時的な腫瘍の成長が防止)されたことを示す。一方、
図7では、治療マウスに、腫瘍特異的抗原を含むmRNAワクチン2μgと、アミノ脂質化ペプトイドとともに、抗CTLA-4のmRNAとTGF-B-PDL1のmRNAとを注射した場合、約80%腫瘍が制御された。すべてのマウスにおいて、腫瘍の成長が遅くなり、大半のマウスで時間の経過とともに腫瘍の体積が減少していることが確認された。
【0293】
上記の結果はすべて、対象動物にmRNAワクチンを複数回投与することを含んでいる。一般に、mRNAワクチンの腫瘍内注射の複数回投与は有益であり得るが、必要ではない。例えば、注射は、約4日以上間隔を空けてもよい(例えば、1週に2回)。いくつかの変形例では、2回又はせいぜい3回、注射される。
【0294】
驚くべきことに、上記の実験から、長期生存者であるマウスは、強力かつ持続的なCD8+エフェクターT細胞癌免疫を発生させ、さらなる腫瘍の攻撃に抵抗力があることが観察された。例えば、
図8A及び8Bは、本明細書に記載されるmRNAワクチン接種方法から得られる効率的なT細胞応答を例示する。エリスポットアッセイを、ウェル当たり3×10
5の脾臓細胞で実行し、腫瘍細胞(1×10
6のEG7細胞など)を刺激物として使用した。
図8Aにおいて、陽性対照(OTI)及び陰性対照(#596)からの細胞は、長期生存マウスの2匹(#662及び#670)と比較され、腫瘍曝露に応答してインターフェロンγを分泌するT細胞のカウントを示す。細胞は、最後の治療から2ヵ月後に循環血液又は脾臓から採取された。
【0295】
図8Bは、このデータを定量化し、有意な応答(使用したオバルブミン腫瘍特異的マーカーに応答するように操作された陽性対照マウス、OTIと同等又は優れている)を示している。したがって、本明細書に記載されるように免疫化されたマウスが、腫瘍を認識し続けることが観察され、有意に強い持続的な免疫を示し、これらのマウスにおける本明細書に記載される方法の有効性を示し、一回の処置からでさえ、長期的効果を示唆した。
・例2:EG7-OVAリンパ腫モデル
【0296】
この例では、マウスに腫瘍内(IT)又は筋肉内(IM)注射して、EG7マウス(EG7-OVAリンパ腫モデル)にした。IT注射は両側性で、エフェクターを含む又は含まないOVA-mRNAを注射した。IM注射は片側注射で、エフェクターを含む又は含まない同じOVA-mRNAを注射した。表1(
図9に示す)は、抗原mRNA(「OVA」)(グループ1、2、5、6、7、及び10)もしくは非コード化抗原mRNA(「非コード化mRNA」)(グループ3、4、8、及び9)に、CpG(グループ1、3、6、及び8)もしくはIL-12(グループ2、4、7、及び9)、又は抗原mRNAにIL-12とGM-CSFの両方を注射した種々の試験群を示している。グループ1~10のそれぞれについて、10匹のマウスに注射し、合計3回の注射を行った。初回の注射は腫瘍サイズが約75mmに達した4日目に行い、2回目と3回目の注射(ブースト)は初回注射の1週間後と2週間後に行った。対照動物(グループ11及び12のマウス)には、送達ビヒクルもmRNAも投与しなかった。腫瘍が1500mm
3以上になった後、又は60日後に、マウスが死んだ。脾臓と血清を調べ、CD8+T細胞について評価した。
【0297】
CD8 T細胞応答はフローサイトメトリーで測定した。テトラマー陽性CD8 T細胞の割合は、治療介入による腫瘍特異的免疫の誘導能力のバイオマーカーとなる。個々のマウスは、攻撃後11日目と28日目に採血された。循環末梢血単核細胞(PBMC)の単細胞懸濁液を、1:100に希釈した抗CD3抗体、及び1:100に希釈した抗CD8抗体(Thermo Scientific社製)中で、0.5μg/mLのテトラマー(OVAペプチドを含むH-2Dbテトラマー、SIINFEKL)とともに4℃で30分インキュベートした。細胞は2回洗浄し,2%パラホルムアルデヒドで固定した。Beckman Coulter社製FC500フローサイトメーターで少なくとも10万個の細胞を取得し、CXPソフトウェアで解析した。ゲーティングはCD8+細胞で行い、CD3+/CD8+/テトラマー+細胞の割合を決定した。
【0298】
図10A~10G及び
図11A~11Fは、筋肉内注射の結果を示す。OVAペプチド(SIINFEKL)を用いて、循環中のOVA特異的T細胞を測定するために、フローサイトメトリーを使用した。測定は、1回投与後(11日目)及び3回投与後(28日目)に、血液から実施した。
図10A~10Gは、11日目、すなわち1回目の投与後の、上記のような筋肉内(IM)注射の結果を示している。
図10Aは、グループ6(OVA+CpG、筋肉内)に対応する。
図10Bは、グループ7(OVA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図10Cは、グループ8(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応する。
図10Dは、グループ9(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図10Eは、グループ10(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応する。
図10F及び
図10Gは、対照を示す。
【0299】
同様に、
図11A~11Gは、3回目のIM投与後(28日目)のSIINFEKLテトラマーを用いた循環中のOVA特異的T細胞についてのフローサイトメトリー結果を示している。
図11Aはグループ6(OVA+CpG、筋肉内)に対応する。
図11Bはグループ7(OVA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図11Cはグループ8(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応する。
図11Dはグループ9(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図11Eはグループ10(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応する。
図11Fは、対照グループを示す。
【0300】
図10A~10G及び
図11A~11Fに示すように、エフェクターのみでは、腫瘍特異的CD8+T細胞集団のロバストな拡大を促進しなかった(例えば、
図10C~10D及び11C~11Dを参照)。しかしながら、抗原を、免疫調節物質(例えば、IL-12のような炎症性サイトカイン)及び/又はCpGのような免疫賦活物質と結合させた場合、例えば、同じ送達ビヒクル中に抗原及び免疫調節物質のmRNAを結合させることによって、循環CD8 T細胞の約25%が、28日目に腫瘍特異的であった。この例では、IL-12とCpGの両方が、同じように腫瘍特異的なCD8+T細胞の拡大を示した。
【0301】
図12A~12G及び
図13A~13Fは、腫瘍内(IT)注射の結果を示す。OVAペプチド(SIINFEKL)を用いて、循環中のOVA特異的T細胞を測定するために、フローサイトメトリーを使用した。測定は、1回投与後(11日目)及び3回投与後(28日目)に、血液から行った。
図12A~12Gは、11日目、すなわち1回目の投与後の上記のような腫瘍内注射の結果を示している。
図12Aは、グループ1(OVA+CpG、筋肉内)に対応する。
図12Bは、グループ2(OVA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図12Cは、グループ3(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応する。
図12Dは、グループ4(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図12Eは、グループ5(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応する。
図12F及び
図12Gは、対照を示す。
【0302】
図13A~13Gは、3回目のIT投与後(28日目)のSIINFEKLテトラマーを用いた循環中のOVA特異的T細胞についてのフローサイトメトリー結果を示す図である。
図13Aは、グループ1(OVA+CpG、筋肉内)に対応する。
図13Bは、グループ2(OVA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図13Cは、グループ3(非コード化mRNA+CpG、筋肉内)に対応する。
図13Dは、グループ4(非コード化mRNA+IL-12、筋肉内)に対応する。
図13Eは、グループ5(OVA+IL-12+GM-CSF、筋肉内)に対応する。
図13Fは、対照(未処置)グループを示す。
【0303】
図13A~13B及び
図13Eに示すように、抗原と、炎症性サイトカイン(例えば、IL-12)などの免疫調節物質又はCpGなどの免疫賦活物質と、を抗原特異的mRNAと結合させて腫瘍内(IT)注射すると、筋肉内(IM)注射と比較して、より強い腫瘍特異的CD8応答をもたらした。例えば、腫瘍特異的抗原と炎症性サイトカイン(例えば、IL-12)とを同じ送達ビヒクル上で結合させて腫瘍内注射すると、筋肉内に注射した同じ組成物よりもロバストな応答が得られた。腫瘍抗原mRNAと、免疫調節物質又は免疫賦活物質(同じ送達ビヒクルで一緒に結合させた)との使用は、28日目に循環CD8 T細胞の約25%が腫瘍特異的であることをもたらした。この例では、免疫賦活物質(CpG)及び免疫調節物質(炎症性免疫調節物質、IL12)の両方が、同じような腫瘍特異的CD8T細胞の拡張をもたらした。筋肉内注射及び腫瘍内注射の両方について、エフェクター(例えば、免疫調節物質、免疫刺激物質など)のみでは、
図13C及び
図13DのIT注射について示されるように、腫瘍特異的CD8+T細胞集団のロバストな拡大を駆動しなかった。
・例3:腫瘍の移植、治療、観察
【0304】
また、同じ免疫調節物質mRNA(例えば、IL-12のような炎症性免疫調節物質)又は免疫抑制物質(例えば、CpG)を腫瘍特異的抗原mRNAに結合させた腫瘍内注射の治療用途も動物モデルで検討された。
【0305】
8週齢の雌のC57BL/6マウス10匹のグループに、PBS中の1×105、EG.7腫瘍細胞を右脇腹に皮下攻撃(s.c.)した。実験の期間中、腫瘍の成長をノギスで2次元的に週2~3回モニターした。腫瘍の体積が1,500mm3を超えたとき、又は潰瘍ができたときに、マウスを安楽死させた。腫瘍内注射と筋肉内注射の両方が行われた。例えば、20μl中にmRNAを配合した2μgのナノ粒子による腫瘍内治療ワクチン接種が、腫瘍攻撃後の7、14、及び28日目に注射された。(1)腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNA、(2)腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNA+第2の免疫調節剤(GM-CSF)mRNA、(3)腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫賦活物質(CpG)、(4)免疫調節物質(IL-12)mRNAのみ(腫瘍抗原mRNAなし)、(5)免疫賦活物質(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAなし)、及び(6)PBS、の6つの変形例を使用した。同6つの変異を、腫瘍内と筋肉内の両方の実験で調べた。筋肉内注射については、腫瘍攻撃後7、14、28日目に、2ugのナノ粒子製剤化RNAを20μlに配合した治療ワクチンも実施した。これらの実験では治療に関連した毒性は認められず、腫瘍の成長は60日間モニターされた。
【0306】
図14は、上記の6つの変形例のうちの1つの筋肉内(IM)注射で治療した場合の、腫瘍注射後の生存確率に関する結果をまとめたものである。示されるように、対照動物は、免疫賦活注射(CpG)だけで処置された動物と同様に、40日目までに全て死んだ。60日目(終点)まで生存する確率は、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫賦活物質(CpG)で免疫した動物が最も高く、次いで免疫調整物質(IL-12)mRNAのみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)、そして、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNA+第2の免疫調節剤(GM-CSF)mRNA、及び腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAであった。
【0307】
図15は、上述したのと同じ変形例の腫瘍内注射の結果を示す。この例では、対照(PBS)又は免疫調節物質(IL-12)mRNAのみ(腫瘍抗原なし)のいずれかで免疫された腫瘍を有する動物は、40日まで生存しなかった。腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAで免疫した動物の全生存率が最も高く(40%)、次いで腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNA+第2の免疫調節剤(GM-CSF)mRNAで免疫した動物(30%)、そして腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫賦活物質(CpG)又は免疫賦活物質(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAなし)で免疫した動物(ともに20%)であった。
【0308】
図16~
図20は、上記で検討した筋肉内投与グループのそれぞれについて、腫瘍体積の経時的変化を示すグラフである。例えば、
図16は、対照(未処理)PBS溶液、又は腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫賦活物質(CpG)とを含むナノ粒子組成物のいずれかを注射したマウスの腫瘍の経時的な腫瘍体積の変化を示すグラフである。腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫賦活物質(CpG)を結合させたものを注射したマウスは、有意な腫瘍体積を示さなかった(例えば、腫瘍が成長しなかった)か、又は腫瘍の成長がより緩やかであった。
【0309】
図17は、対照溶液(PBS)と、又は腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA及び免疫調節物質(IL-12)mRNAの両方を含む送達ビヒクルと、のいずれかを筋肉内(IM)注射したマウスの腫瘍の経時的な腫瘍体積の変化を示している。
図17に示すように、いくつかの腫瘍は成長せず、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAで治療したマウスの腫瘍の大部分は、よりゆっくりと成長した。
【0310】
図18は、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA及び免疫賦活物質(CpG)を筋肉内(IM)注射したマウスと、免疫賦活物質(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)を注射したマウスとの腫瘍体積の変化を示している。これら2つのグループの間では、経時的な腫瘍体積にかなりのオーバーラップが見られる。
【0311】
図19は、送達ビヒクル中に腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAを含むナノ粒子組成物を筋肉内注射して治療したマウスと、免疫調節物質(IL-12)mRNAのみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)を含むナノ粒子組成物を注射したマウスとの腫瘍体積の時間的変化を示す図である。
【0312】
図20は、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA及び免疫賦活物質(CpG)と、免疫賦活物質(CpG)のみ(腫瘍抗原mRNAを含まない)とのうちいずれかを筋肉内(IM)に注射されたマウスの腫瘍体積の比較である。
【0313】
いくつかの実験では、同じ動物に複数の誘発腫瘍が含まれることがあり、そのうちのいくつかは、同じ動物において、腫瘍内注射によって治療される(「近位」腫瘍)か、又は未治療(「遠位」)であることがある。
図21は、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫調節物質(IL-12)mRNAの腫瘍内注射を受けた腫瘍のいずれかについて、同じ動物における、腫瘍内注射を受けなかった腫瘍と比較した、腫瘍体積の変化を示す図である。
図22は、同じ動物の近位腫瘍に免疫調節物質(IL-12)mRNAのみ(腫瘍抗原mRNAなし)を注射した場合の、近位腫瘍と遠位腫瘍との間の腫瘍体積の変化を示す。
【0314】
図23はまた、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA及び免疫賦活物質(CpG)を注射した同じ動物の治療済み(近位)マウスと未治療(遠位)マウスとの腫瘍体積の変化を示している。近位腫瘍は腫瘍内への注射を受け、遠位腫瘍は同じ動物内であったが、送達ビヒクル及びCpGを含むOVAのmRNAの腫瘍内注射を受けなかった。腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA及び免疫賦活物質(CpG)で治療した腫瘍の一部は、遠位(注射していない)腫瘍と比較して、よりゆっくりと成長するか、成長しなかった。
【0315】
図24において、腫瘍内注射(この例では、免疫賦活物質(CpG)のみ)を受けた近位腫瘍の大部分は、成長が遅くなった、又は逆成長したが、遠位腫瘍の大部分は同じマウスで成長し続けた。
図25は、
図16~
図24に関連するデータの結果をまとめた表(表2)である。示されるように、腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAと免疫調節物質(IL-12)mRNAとの両方を含む送達ビヒクルの腫瘍内注射は、(50%の)遠位腫瘍効果を維持しながら、注射された腫瘍の最もロバストな奏効率(例えば、70%)を有していた。これらの動物における近位(注射)及び遠位(非注射、近位と同じ動物)の両方の全体の奏効率は、約40%であった。同じアッセイで、免疫調節物質(例えば、炎症性サイトカイン、IL-12)のみでは、奏効率に有意な効果は見られなかった。免疫賦活剤及びCpGを添加した腫瘍特異的抗原(OVA)mRNAでも効果が見られた(例えば、近位腫瘍の奏効率50%、遠位腫瘍の奏効率50%など)。腫瘍特異的抗原(OVA)mRNA+免疫賦活剤(CpG)に対する近位腫瘍及び遠位腫瘍の総合奏効率は約20%であった。CpGのみの腫瘍内注射は効果が小さい(例えば、近位腫瘍30%、遠位腫瘍20%、全体20%)。
【0316】
本明細書で使用する場合、奏効とは、終点腫瘍体積に到達した際の対側腫瘍の腫瘍体積と比較して、終点腫瘍体積の5%未満のことである。例えば、同じマウスの2つの腫瘍のうちの1つが終点体積に達し(例えば、腫瘍1が1500mm3)、対側腫瘍(腫瘍2)が75mm3しかない場合、それは腫瘍2における奏効とみなされる。
・実験4:MC38結腸癌皮下腫瘍
【0317】
MC38結腸癌腫瘍を試験動物(マウス)に樹立し、ナノ粒子で治療して、腫瘍特異的抗原非存在下を含むエフェクター(例えば、免疫調節物質及び免疫賦活物質)の効果を測定した。
【0318】
腫瘍を移植してから6日目と10日目に、免疫調節物質と免疫賦活mRNAを配合したナノ粒子で腫瘍を治療した。ナノ粒子は、1以上の免疫調節物質、免疫賦活物質、及び/又は腫瘍特異的抗原を含む送達ビヒクルである。例えば
図26~28は、非コードRNA対照、分泌LIGTH(例えばTNFRSF14)、ネイティブLIGHT、免疫調節物質GM-CSF、及び/又は免疫調節物質(例えば炎症性サイトカインIL-12)を含むナノ粒子の、誘導MC38腫瘍及びそのような腫瘍を有するマウスに対する効果を示している。注射された動物の、免疫調節物質及び/又は免疫賦活物質によって誘導された腫瘍微小環境の変化について、腫瘍及び腫瘍排出リンパ節を分析した。LIGHTは、CD258とも呼ばれる腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)を指し、本明細書に記載の免疫調節物質の別の例である。
【0319】
プロトコルの一部として、5~10匹の8週齢の雌のC57BL/6マウスのグループに、PBS中の1×105、MC38腫瘍細胞を右脇腹に皮下投与(s.c.)する攻撃を実施した。20μl中の2μgのナノ粒子製剤化RNAによる腫瘍内治療ワクチン接種を、腫瘍攻撃後7日目及び11日目に行った。試験された組成物は、免疫調節物質(例えば、炎症性サイトカイン、IL-12)mRNA、GM-CSF免疫調節mRNA、免疫調節分泌LIGHTmRNA、免疫調節ネイティブLIGHTmRNA、及び対照PBSのナノ粒子を含んでいた。腫瘍は、腫瘍排出リンパ節と同様に、マウスの予定された安楽死後に採取された。腫瘍の免疫細胞浸潤と免疫活性化をフローサイトメトリーで評価した。治療に関連する毒性は認められなかった。腫瘍の成長を60日間モニターした。
【0320】
図26は、MC38腫瘍細胞の腫瘍体積に対する様々な免疫調節剤(例えば、エフェクター)の効果を示す図である。
図26において、対照(非コード化mRNA)又は免疫調節剤(分泌型LIGHT、LIGTH、GM-CSF、又はIL-12)のいずれかを含む送達ビヒクルの腫瘍内注射の効果は、D1及び攻撃後7日目に示される。IL-12グループ(グループ6)は、対照と比較して、差異を示した。
【0321】
図27に示すように、IL-12を用いた腫瘍内注射によって治療された動物の腫瘍において、CD8 T細胞頻度の増加があった。この例では、腫瘍攻撃後7日目のCD4とCD8の両方に陽性な生T細胞の頻度は、IL-12を含む送達ビヒクルを腫瘍内注射した腫瘍で、有意に大きかった。一般に、IL-12を腫瘍内注射した後の抗原提示細胞は、
図28に示すように、7日目までに他の免疫調節物質及び対照と比較して、単球、B細胞、樹状細胞、及びマクロファージで有意な増加が見られた。したがって、IL-12のような炎症性サイトカインは、腫瘍内注射された場合(及び上記に示すように、特に腫瘍特異的抗原と同じ送達ビヒクルで結合された場合)、他の免疫調節物質と比較しても、抗腫瘍応答を強化することが見いだされた。
・例5:C3.43腫瘍細胞
【0322】
C3.43は、HPV16で形質転換した腫瘍モデルである。C3.43腫瘍には、腫瘍特異的抗原(HPV16オンコプロテインE6及びE7)を使用してもよい。このモデルは、炎症性サイトカイン(例えば、IL-12)のような(これらに限定されない)、1以上の免疫調節物質mRNAと同じ送達ビヒクルで結合した腫瘍特異的抗原mRNAの有効性を示すためにも使用された。
【0323】
8週齢の雌のC57BL/6マウス10匹のグループに、PBS中の5×105、C3.43腫瘍細胞を右脇腹からs.c.攻撃した。実験の期間中、腫瘍の成長をノギスで1週間に2~3回、3次元的にモニターした。腫瘍の体積が1,500mm3を超えたとき、又は潰瘍ができたときにマウスを安楽死させた。腫瘍攻撃後18日目、25日目、32日目に、20μl中、2μgのナノ粒子製剤化RNAによる腫瘍内治療ワクチン接種を行った。6種類のナノ粒子製剤、すなわち(1)腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNA及び免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA、(2)腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNA、第1の免疫調節物質(LIGHT)mRNA、及び第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA、(3)腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNA及び免疫賦活物質(CpG)、(4)免疫賦活物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA、(5)第1の免疫賦活物質(LIGHT)mRNA及び第2の免疫賦活物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA、(6)免疫賦活物質(CpG)と、(7)対照(PBS)について調べた。また、第1のナノ粒子溶液である腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAに免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを加えたものを筋肉内注射した。治療に関連する毒性は認められなかった。腫瘍の成長は、60日間モニターされた。
【0324】
図29は、本明細書に記載されるようなナノ粒子組成物の効果を調べるために使用され得る研究タイムラインの一例を示している。このタイムラインは、上記の例2~4に記載された実験に使用されたものと同様である。マウス(例えば、C57BL6雌マウス、6~8週齢)は、0日目に、100μLのHBSS中の1×10
5の腫瘍細胞(この例では、C3.43腫瘍細胞など)を右後肢にs.c.によって片側攻撃される。投与注射は、右後肢又はITに片側i.m.で行った。10のグループであり、n=10マウス/グループである。マウスは、腫瘍の成長、有意な体重減少(毎週測定)、及び苦痛の外見的徴候(人道的エンドポイント)についてモニターされた。
【0325】
図30A~30Fはそれぞれ、
図29に示すようなプロトコルを用いて、上記のナノ粒子溶液のうちの1つを腫瘍内注射した個々の腫瘍の結果を示している。例えば、
図30Aは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを有する腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAを含む第1のナノ粒子溶液をC3.43腫瘍に腫瘍内注射した場合の効果を示し、調べた腫瘍のほぼ全てについて平均腫瘍体積の減少を示した。
図30Bは、腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNA、第1の免疫調節物質(LIGHT)mRNA、及び第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを含む第2のナノ粒子溶液を腫瘍内注射した場合の効果を示し、平均腫瘍体積がほぼ完全に減少していることを示す。
図30Cは、第3のナノ粒子溶液、すなわち腫瘍特異的抗原(HPV16)mRNA及び免疫賦活物質(CpG)の効果が小さいことを示す。
【0326】
図30Dは、腫瘍特異的抗原を含まない、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを含むナノ粒子溶液を腫瘍内注射した場合の、平均腫瘍体積に対する効果を示す図である。
図30Eは、第1の免疫調節物質(LIGHT)mRNA及び第2の免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNA(ここでも、腫瘍抗原は含まない)を含むナノ粒子溶液を腫瘍内注射した場合の、平均腫瘍体積に対する効果を示す。
図30Fは、免疫賦活物質(CpG)だけ腫瘍内注射した場合の平均腫瘍体積に対する効果を示す図である。
【0327】
図31A及び
図31Bは、免疫調節物質(炎症性サイトカインIL-12)mRNAを有する腫瘍特異的抗原(HPV16 E6E7)mRNAを含む第1のナノ粒子溶液を筋肉内注射した場合の結果を示す図である。同じ組成を腫瘍内注射した場合とは対照的に、筋肉内注射では、平均腫瘍体積の減少は得られなかった。
図31Bは、対照治療(例えば、PBS)の結果を示し、平均腫瘍体積の経時的な増加を示している。
【0328】
図32は、上記の様々なナノ粒子組成物についての生存確率の比較である。腫瘍抗原(例えば、このモデルにおけるHPV16 E6E7)と、少なくとも1つの免疫調節物質、特にIL-12のような炎症性サイトカイン免疫調節物質、又はLIGHTのような第2の免疫調節物質を有するIL-12と、の両方を含むナノ粒子は、腫瘍内注射されると、完全、又はほぼ完全な生存を示した。腫瘍抗原とIL-12の同じ組み合わせの筋肉内注射では、60日を超える生存をもたらさなかった。
【0329】
本明細書に記載された様々なナノ粒子組成物に対するCD8 T細胞応答を調べた。HPV16 E7(49-57)ペプチドを含むH-2Dbテトラマーを使用した。攻撃後39日目に、個々のマウスから採血した。循環末梢血単核細胞(PBMC)の単細胞懸濁液を、0.5μg/mLテトラマー、1:100希釈抗CD3抗体、及び1:100希釈抗CD8抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、2%パラフォルムアルデヒドで固定した。Beckman Coulter FC 500フローサイトメーターで少なくとも10万個の細胞を取得し、CXPソフトウェアで解析した。ゲーティングはCD8+細胞で行い、CD3+/CD8+/テトラマー+細胞の割合を決定した。テトラマー陽性のCD8 T細胞の割合は、治療介入による腫瘍特異的免疫の誘導能力を示すバイオマーカーとなる。
【0330】
図33は、結果をグラフ化したものであり、腫瘍抗原(この例では、HPV16 E6E7)が免疫調節物質又は免疫賦活物質と結合されたナノ粒子を腫瘍内注射することによって、マウスからかなりの割合のCD3+/CD8+/テトラマー+細胞が同定されたことを表している。テトラマー陽性のCD8 T細胞の割合は、治療介入による腫瘍特異的免疫の誘導能力を示すバイオマーカーとなる。
【0331】
図33において、白丸は、3回目の注射時に腫瘍が小さいか、又は全く存在しなかった腫瘍を表し、これは第1及び第2のナノ粒子溶液の両方で発生した。
図37に示すように、腫瘍抗原mRNAと、免疫調節物質(例えば、IL-12、又はLIGHTとIL-12)又は免疫賦活物質(例えば、CpG)と、の両方を有するナノ粒子は、循環中の腫瘍特異的T細胞のロバストな活性化をもたらした。
mRNA治療ナノ粒子の作成(例えば、作製、合成)方法
【0332】
本明細書に記載されるmRNA治療のいずれか(mRNA治療ナノ粒子のいずれかを含む)は、閉経路システムを使用して作製されてもよい。閉経路システムは、mRNA治療ナノ粒子(例えば、mRNAワクチン)を迅速かつ正確に合成するために、密閉され、無菌で閉じた環境において操作されるバイオチップ(例えば、マイクロ流体経路デバイス)を含んでもよい。例えば、本明細書に記載されるのは、mRNA治療薬を作成するための方法及び装置(例えば、システム、デバイスなど)である。1つの非限定的な例では、本明細書に記載される方法及び装置は、皮膚T細胞リンパ腫において活性な癌特異的抗原に対する治療用mRNA治療ナノ粒子を製造するために使用されてもよい。
【0333】
したがって、一般に、本明細書に記載されているのは、ポイントオブケアで任意に展開されるmRNA療法のための自動化された高収率の製造方法である。
【0334】
例えば、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えた閉経路システムを用いて、mRNA治療ナノ粒子組成物を製造する方法であって、該方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を輸送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、DNAテンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルと結合する工程のそれぞれを実行することを含む。
【0335】
1以上のマイクロ流体経路デバイス(ここで、1以上のマイクロ流体経路デバイスは、複数のリアクタを含む)と密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えた閉経路システムを使用して、mRNA治療ナノ粒子組成物を製造する方法は、テンプレート前駆体材料を1以上の貯蔵デポから複数のリアクタの第1のリアクタ領域に送達し、テンプレート前駆体材料を処理してテンプレート前駆体材料からテンプレートを調製することと、テンプレートを複数のリアクタの第2のリアクタ領域に移送し、インビトロ転写によってテンプレートを処理して治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAを複数のリアクタの第3のリアクタ領域に移送し、治療用mRNAを処理して送達ビヒクルと結合させ、mRNA治療ナノ粒子組成物を形成すること、とを含み、テンプレート前駆体材料及び送達ビヒクルを含む材料が、貯蔵デポから複数のリアクタ内に大気接触なしで送達される。
【0336】
1以上のマイクロ流体経路デバイス(ここで、1以上のマイクロ流体経路デバイスは、複数のリアクタを含む)と密閉流体連通した複数の貯蔵デポから成る閉経路システムを使用して、mRNA治療ナノ粒子(本明細書では一般にmRNA治療ナノ粒子組成物と呼ぶ)を製造する方法は、テンプレート前駆体材料を、1以上の貯蔵デポから複数のリアクタの第1のリアクタ領域に送達し、テンプレート前駆体材料を処理して、テンプレート前駆体材料からテンプレートを調製するための流体流れを誘導することと、テンプレートを複数のリアクタの第2のリアクタ領域に移送し、インビトロ転写によってテンプレートを処理してmRNAを形成することと、mRNAを複数のリアクタの第3のリアクタ領域に移送し、mRNAを処理して送達ビヒクルと結合させてmRNA治療ナノ粒子組成物を形成することと、1以上の貯蔵デポのmRNA生成物デポを移送することと、を含み、材料が、貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスのリアクタにサブマイクロリットル精度で、かつ大気接触なしに送達される。本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、工程のいずれかが空気圧で実行されてもよく、例えば、流体流れが空気圧で誘導されてもよく、流体が空気圧で移送されてもよい。代替的に又は追加的に、流体は、機械的、油圧等によって駆動されてもよい。
【0337】
これらの方法(及びそれを実行するための装置)のいずれにおいても、閉経路システムは、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達用ビヒクルに結合させる工程、を自動的にかつ連続的に実行することができる。閉経路システムは、テンプレートを形成すること、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行うこと、治療用mRNAを精製すること、及びmRNAを送達用ビヒクルに結合させること、の実行を空気圧で制御してもよい。いくつかの変形例では、閉経路システムは、1以上のマイクロ流体経路デバイス内の1以上の膜を偏向させることによって、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルに結合させる工程の実行を空気圧で制御する。
【0338】
本明細書に記載される方法及び装置のいずれも、病院、診療所等の医療現場で設定され、動作するように構成されてもよい。これにより、即時/オンデマンドで、患者に特異的な治療薬を、特定の患者にカスタム製造することができる。代替的又は追加的に、特定の患者に特異的でない治療分子は、「患者個別化」の方法で送達ビヒクルと共に製剤化されてもよい。本明細書に記載された方法及び装置のため、これらの方法のいずれかを非常に迅速に実行することができる。例えば、閉経路システムは、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルに結合させる工程、を5日未満で自動的かつ連続的に実行することができる。あるいは、あらかじめ作成したテンプレートを入力として、残りの工程をより短時間で行うことも可能である。
【0339】
mRNAを送達ビヒクルに結合させること(治療薬を製剤化すること)は、mRNA治療ナノ粒子組成物を精製するために、1以上のマイクロ流体経路デバイス内で透析することをさらに含んでもよい。
【0340】
これらの方法のいずれかが、1以上のマイクロ流体経路デバイス上でmRNA治療ナノ粒子組成物を濃縮すること、及び/又は治療薬を透析することをさらに含んでもよい。
【0341】
任意の適切な送達ビヒクル、例えば、両親媒性送達ビヒクル分子が使用されてもよい。例えば、両親媒性送達ビヒクル分子は、アミノ脂質化ペプトイドから構成されてもよい。
【0342】
代替的又は追加的に、本明細書に記載の方法及び装置のいずれかにおいて、mRNAは予め作製され、ある時間(例えば、約10℃、約4℃、0℃、-10℃などで)保存されてもよい。例えば、これらの方法及びそれらを実行するための装置のいずれかが、個別又は集合的に(例えば、約2、3、4、5、6、又はそれ以上の個別の治療用mRNAが組み合わされ)一緒にカプセル化されてmRNA治療ナノ粒子組成物を形成する治療用mRNAのライブラリを含んでもよい。本明細書に記載されるように、mRNA治療ナノ粒子組成物は、したがって、オンデマンドで製造されてもよく、単一又は複数のmRNA治療ナノ粒子組成物「カクテル」においてジャストインタイムで製剤化されてもよい。
【0343】
また、本明細書には、テンプレート(例えば、DNAテンプレート)を形成するための方法が記載されている。例えば、マイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通する複数の貯蔵デポを備えた閉経路システムを使用して、インビトロ転写用の合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法は、関心の合成遺伝子と合成インビトロ転写促進剤カセットを結合させて合成環状結紮産物を作成することと、未反応の関心の合成遺伝子及び未反応の合成インビトロ転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から除去することと、環状結紮産物を増幅して、分岐又は環状増幅DNAを生成することと、分岐増幅DNA結紮産物を線形化して、二本鎖DNAテンプレートを生成することと、を含み、結合、除去、増幅、及び線形化工程の各々が、マイクロ流体経路デバイス内で閉経路システムにより行われる。
【0344】
例えば、インビトロ転写のための合成二本鎖DNAテンプレートを作成する高効率で自動化された方法は、関心の合成遺伝子と合成インビトロ転写促進剤カセットの各々を、マイクロ流体経路デバイスと流体連通している複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポから、マイクロ流体経路デバイスの結紮リアクタに空気圧で送達し、目的合成遺伝子と合成インビトロ転写促進剤カセットを結合して合成環状結紮産物を作製することと、1以上のエキソヌクレアーゼ剤を、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポから結紮リアクタに空気圧で導入し、未反応の関心の合成遺伝子及び未反応の合成インビトロ転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から除去して、未反応物を除去することと、合成環状結紮産物をマイクロ流体経路デバイスの多重置換増幅(MDA)リアクタに空気圧で送達し、環状結紮産物を増幅するための1以上の増幅剤と結合させて、分枝状又は環状の増幅DNAを生成することと、分岐増幅されたDNA結紮産物をマイクロ流体経路デバイスの消化リアクタに空気圧で移送し、分岐増幅されたDNA結紮産物を線形化して、二本鎖DNAテンプレートを生成することと、を含み、結紮リアクタ、MDAリアクタ、消化リアクタ、及び複数の貯蔵デポが、閉経路及び密閉環境を形成している。
【0345】
(1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポから成る閉経路システムを使用して、)mRNA治療ナノ粒子組成物のための合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を輸送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、治療用mRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを形成することを含む。
【0346】
一般に、本明細書に記載される方法及び装置は、細菌DNAを含まない及び/又はエンドトキシンを含まない二本鎖DNAテンプレートを生成してもよい。本明細書に記載されるテンプレート生成方法及び装置は、細菌培養を伴わない場合がある。さらに、本明細書に記載されるように製造された治療用mRNAは、細菌ポリヌクレオチドを使用せずにテンプレートから合成されてもよい。したがって、本明細書に記載される方法のいずれかは、細菌DNAを使用することなく、及び/又はエンドトキシンから分離された治療用mRNAを製造する方法であってもよい。特に、本明細書に記載されるのは、細菌DNA及び/又はエンドトキシンを含まない二本鎖DNAテンプレートを製造する方法である。本明細書に記載される方法のいずれもが、無菌製造方法であってもよい。
【0347】
これらの方法のいずれもが、合成インビトロ転写促進剤カセットをタイプIIS制限酵素で消化することを含んでもよい。結合することは、DNAリガーゼで結紮することを含んでもよい。除去することは、線状DNAをエキソヌクレアーゼで消化することを含んでもよい。エキソヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼVを含んでもよい。増幅することは、多重置換増幅(MDA)を含んでもよい。増幅することは、Φ29DNAポリメラーゼで増幅することを含んでもよい。増幅することは、分岐した増幅DNAを生成することを含んでもよい。
【0348】
線状化は、タイプIIs制限酵素で消化することを含んでもよい。直鎖化することは、BsaI制限酵素で消化することを含んでもよい。関心の合成遺伝子は、直鎖状であってもよい。いくつかの変形例では、合成インビトロ転写促進剤カセットは、プロモーター、5’UTR、切断可能なリンカー、3’UTR、及び少なくとも約200個のアデニン残基又は約200個のチミジン残基が並んでなるポリA領域をコードする部分を含む二本鎖DNAテンプレートから構成される。ポリA領域をコードする部分は、少なくとも約300bpsの長さであってよい。いくつかの変形例では、ポリA領域をコードする部分は、少なくとも約350bpsの長さであってよい。
【0349】
関心の合成遺伝子は、T細胞受容体の少なくとも一部を構成してもよい。関心の合成遺伝子は、相補性決定領域(CDR)を含んでもよい。
【0350】
インビトロ転写促進剤カセットは、長さが2kb未満であってもよい。インビトロ転写促進剤カセットは、長さが1kb未満であってもよい。インビトロ転写促進剤カセットは、長さが約700塩基対未満であってもよい。合成インビトロ転写促進剤カセットは、抗生物質耐性遺伝子をコードしていない場合がある。
【0351】
合成環状結紮産物は、複製起点(ORI)を持たない場合がある。インビトロ転写促進剤カセットは、複製起点(ORI)を持たない場合がある。
【0352】
前述のように、本明細書に記載される方法のいずれかの工程は、閉経路マイクロ流体経路デバイス内及び/又は閉システム内で実行されてもよい。工程は、閉経路マイクロ流体経路デバイス内で行われてもよく、結合ステップは、増幅ステップとは異なるモジュール(例えば、異なるマイクロ流体経路デバイス)内で行われてもよく、増幅ステップは、線形化ステップとは異なるモジュール内で行われてもよい。
【0353】
これらの方法のいずれもが、1以上のマイクロ流体経路デバイスの閉じた経路において、テンプレートを精製することを含み得る。
【0354】
また、本明細書では、本明細書に記載の閉経路法及び装置を用いて、インビトロ転写を行う方法についても説明する。例えば、閉経路システム(例えば、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを含む)を使用してインビトロ転写(IVT)反応を行う方法は、大気の接触から保護された閉流路において、1以上のマイクロ流体経路デバイス内のテンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行うために、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で、試薬を輸送することを含んでもよい。
【0355】
インビトロ転写(IVT)反応を実行する方法は、マイクロリットル以下の精度で計量された量のDNAテンプレート、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドを、複数の貯蔵デポから、マイクロ流体経路デバイスの第1のリアクタに自動的に送達することと、第1のリアクタでテンプレート材料及びヌクレオチドを処理して、治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAをマイクロ流体経路デバイスを通して第1のリアクタから空気圧で移送すること、を含み、第1のマイクロ流体経路デバイス及び複数の貯蔵デポが、大気への曝露を防止する閉経路及び密閉環境を形成する。
【0356】
閉経路システムは、自動的かつ連続的に動作することができる。閉経路システムは、テンプレートからの治療用mRNAのインビトロ転写の実行を空気圧で制御してもよい。
【0357】
これらの方法のいずれもが、さらに、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、治療用mRNAを精製することを含んでもよい。試薬を輸送することは、試薬を複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスの第1のリアクタに輸送することを含んでもよい。
【0358】
また、本明細書には、治療用mRNAを製剤化する(例えば、送達ビヒクルと結合させる)方法が記載されている。例えば、mRNA治療ナノ粒子組成物を製造する方法(例えば、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを含む閉経路システムを用いて)は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、治療用mRNAを送達ビヒクルと結合させることにより、mRNA治療ナノ粒子組成物を製剤化することを含んでもよい。閉経路システムは、mRNAと送達ビヒクルとを自動的にかつ連続的に結合させてもよい。閉経路システムは、mRNAと送達ビヒクルとの結合を空気圧で制御してもよい。例えば、閉経路システムは、1以上のマイクロ流体経路デバイス内の1以上の膜を偏向させることによって、mRNAを送達ビヒクルに結合させることを空気圧で制御してもよい。
【0359】
mRNAを送達ビヒクルと結合させることは、mRNA治療ナノ粒子組成物を精製するために、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、mRNA治療ナノ粒子組成物を透析すること、及び/又は1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、mRNA治療ナノ粒子組成物を濃縮すること、をさらに含んでもよい。
【0360】
例えば、本明細書に記載されるのは、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて、mRNAを製造する方法である。これらの方法のいずれかが、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートからmRNAのインビトロ転写を行う工程、及びmRNAを精製する工程のうちの1以上を含んでもよい。
【0361】
1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて、治療用mRNA組成物を製造する方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルで製剤化する工程のうちの1以上を含んでもよい。
【0362】
1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、mRNAを送達ビヒクルで製剤化する工程、及び製剤化された治療用mRNAの透析及び濃縮を行う工程のうちの1以上を含んでもよい。
【0363】
1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法は、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている治療用mRNA組成物を形成するための一連の工程に従うことを含み、該工程は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルと結合する工程のうちの1以上を含んでもよい。
【0364】
また、本明細書に記載されているのは、マイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて治療用mRNA組成物を製造する方法であって、該方法は、マイクロ流体経路デバイスにおいてテンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行うことと、マイクロ流体経路デバイス上の流動的に接続された1以上のリアクタにおいて、治療用mRNAを精製することと、を含んでもよい。
【0365】
また、本明細書には、これらの方法のいずれかによって作られた治療薬、特にmRNA治療薬が記載されている。例えば、本明細書に記載されているのは、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを使用して作られる治療用mRNAであり、mRNAは、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートからmRNAのインビトロ転写を行う工程、及びmRNAを精製する工程のうちの1以上を含むことによって作られてもよい。
【0366】
例えば、本明細書に記載されるのは、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを使用して作られた治療用mRNAであり、mRNAは、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルで製剤化する工程のうちの1以上を含んでもよい。
【0367】
例えば、本明細書に記載されるのは、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを使用して作られた治療用mRNAであり、mRNAは、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、mRNAを送達ビヒクルで製剤化する工程、及び製剤化された治療用mRNAの透析及び濃縮を行う工程のうちの1以上を含んでもよい。
【0368】
本明細書に記載されるのは、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを含むシステムを使用して、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている治療用mRNA組成物を形成するための一連の工程に従うことによって作られた治療用mRNA組成物であり、該工程は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルと結合する工程のうちの1以上を含んでもよい。例えば、治療用mRNAは、マイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを使用して作られた治療用mRNA組成物であり、その方法は、マイクロ流体経路デバイス上で、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行うことと、マイクロ流体経路デバイス上の流動的に接続された1以上のリアクタで治療用mRNAを精製することと、を含んでもよい。
【0369】
本明細書に記載されるシステムのいずれもが、これらの方法のいずれかを実行するように構成されたコントローラを含んでもよい。したがって、本明細書に記載される方法のいずれかを実行するように構成されたソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアもまた、本明細書に記載される。例えば、本明細書に記載されるのは、mRNAを製造するための命令を具現化する非一時的コンピュータ可読媒体であって、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムのコントローラによって実行されると、コントローラに、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送する方法を実行させ、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、及びmRNAを精製する工程のうちの1以上を実行させる。
【0370】
例えば、本明細書に記載されるのは、治療用mRNA組成物を含むmRNAを製造するための命令を具体化する非一時的コンピュータ可読媒体であって、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムのコントローラによって実行されると、コントローラに、本明細書に記載の方法のいずれかを実行させる命令である。
【0371】
また、本明細書では、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを含む閉経路システムを用いて、mRNAの合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法であって、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を輸送して試薬を結合することと、治療用mRNAのインビトロ転写用テンプレートを形成することと、を含み得る。
【0372】
例えば、閉経路システムを使用して、mRNAインビトロ転写反応への入力として使用するための合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法は、1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを含んでもよく、この方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を輸送することと、治療用mRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを形成することと、を含む。
【0373】
1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて、mRNA組成物を製造する方法であって、1以上のマイクロ流体経路デバイスが複数のリアクタを含み、方法は、テンプレート前駆体材料を1以上の貯蔵デポから複数のリアクタの第1のリアクタ領域に送達し、テンプレート前駆体材料を処理してテンプレート前駆体材料からテンプレートを調製することと、テンプレートを複数のリアクタの第2のリアクタ領域に移送し、インビトロ転写によってテンプレートを処理してmRNAを形成することと、mRNAを複数のリアクタの第3のリアクタ領域に移送し、mRNAを送達ビヒクルと結合させてmRNA組成物を形成するようにmRNAを処理することと、を含んでもよく、テンプレート材料及び送達ビヒクルを含む材料が、大気と接触することなく、貯蔵デポから複数のリアクタ内に送達される。
【0374】
1つ以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通している複数の貯蔵デポを備えたシステムを使用して、mRNA組成物を製造する方法であって、1以上のマイクロ流体経路デバイスが、複数のリアクタを含み、方法は、テンプレート前駆体材料を1以上の貯蔵デポから複数のリアクタの第1のリアクタ領域に空気圧で送達し、テンプレート前駆体材料を処理してテンプレート前駆体材料からテンプレートを調製することと、テンプレートを複数のリアクタの第2のリアクタ領域に空気圧で移送し、テンプレートをインビトロ転写によって処理してmRNAを形成することと、mRNAを複数のリアクタの第3のリアクタ領域に空気圧で移送し、mRNAを送達ビヒクルと結合させて治療用mRNA組成物を形成するよう処理することと、mRNA生成物を1以上の貯蔵デポに移送することと、を含んでもよく、材料が貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスのリアクタにマイクロリットル以下の精度で大気との接触なしに送達される。
【0375】
マイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通する複数の貯蔵デポを備えた閉経路システムを使用して、インビトロ転写用の合成二本鎖DNAテンプレートを作成する方法は、関心の合成遺伝子と合成インビトロ転写促進剤カセットとを結合させて合成環状結紮産物を作成することと、未反応の関心の合成遺伝子及び未反応の合成インビトロ転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から除去することと、環状結紮産物を増幅して、分岐又は環状増幅DNAを生成することと、分岐増幅DNA結紮物を線形化して二本鎖DNAテンプレートを生成することと、を含んでもよく、結合、除去、増幅、及び線形化の各工程が、マイクロ流体経路デバイス内で閉経路システムにより行われる。
【0376】
これらの方法のいずれもが、インビトロ転写のための合成二本鎖DNAテンプレートを作成する高効率で自動化された方法を含む、高効率で自動化された方法であってもよい。例えば、方法は、関心の合成遺伝子と合成インビトロ転写促進剤カセットの各々を、マイクロ流体経路デバイスと流体連通している複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポから、マイクロ流体経路デバイスの結紮リアクタに、空気圧で送達し、関心の合成遺伝子を合成インビトロ転写促進剤カセットと結合させて合成環状結紮産物を作製することと、1以上のエキソヌクレアーゼ剤を、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポから結紮リアクタに空気圧で導入し、未反応の関心の合成遺伝子及び未反応の合成インビトロ転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から除去することによって、未反応物を除去することと、合成環状結紮産物をマイクロ流体経路デバイスの多重置換増幅(MDA)リアクタに空気圧で送達し、環状結紮産物を増幅するための1以上の増幅剤と結合させて、分枝状又は環状増幅DNAを生成することと、分岐増幅DNA結紮産物をマイクロ流体経路デバイスの消化リアクタに空気圧で移送し、分岐増幅DNA結紮産物を線形化することによって、二本鎖DNAテンプレートを生成することと、を含んでもよく、結紮リアクタ、MDAリアクタ、消化リアクタ、及び複数の貯蔵デポが、閉経路及び密閉環境を形成している。
【0377】
インビトロ転写のための合成二本鎖DNAテンプレートの作成方法であって、該方法は、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている一連の工程に従うことを含み、該方法は、関心の合成遺伝子と合成インビトロ転写促進剤カセットの各々を、マイクロ流体経路デバイスと流体連通している複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポから、マイクロ流体経路デバイスの結紮リアクタに送達し、関心の合成遺伝子を合成インビトロ転写促進剤カセットと結合させて合成環状結紮産物を作製することと、1以上のエキソヌクレアーゼ剤を、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポから結紮リアクタに導入し、未反応の関心の合成遺伝子及び未反応の合成インビトロ転写促進剤カセットを合成環状結紮産物から除去することによって、未反応物を除去することと、合成環状結紮産物をマイクロ流体経路デバイスの多重置換増幅(MDA)リアクタに送達し、環状結紮産物を増幅するための1以上の増幅剤と結合させて、分枝状又は環状増幅DNAを生成することと、分岐増幅DNA結紮産物をマイクロ流体経路デバイスの消化リアクタに移送し、分岐増幅DNA結紮産物を線形化することによって、二本鎖DNAテンプレートを生成することと、を含んでもよく、結紮リアクタ、MDAリアクタ、消化リアクタ、及び複数の貯蔵デポが、閉経路及び密閉環境を形成している。
【0378】
1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて、インビトロ転写(IVT)反応を行う方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を輸送し、1以上のマイクロ流体経路デバイス内のテンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行うこと、を含んでもよい。
【0379】
また、本明細書で記載されているのは、インビトロ転写(IVT)反応を行う方法であって、該方法は、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている一連の工程に従うことを含み、該工程は、サブマイクロリットルの精度で計量された量のテンプレート物質、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドを、反応中の任意の時間に、複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスの第1のリアクタに空気圧で送達することと、第1のリアクタにおいて、テンプレート物質及びヌクレオチドを処理して、治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAを、第1のリアクタからマイクロ流体経路デバイスを通して、空気圧で移送することと、を含み、第1のマイクロ流体経路デバイス及び複数の貯蔵デポは、大気への暴露を防ぐために、閉経路及び密閉環境を形成する。
【0380】
また、本明細書で記載されているのは、インビトロ転写(IVT)反応を行う方法であって、該方法は、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている一連の工程に従うことを含み、該工程は、誘導された流体流れによって、一連の工程に従ってコントローラによって制御される量のテンプレート物質、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドを、複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスに送達することと、1以上のリアクタにおいて、テンプレート物質及びヌクレオチドを処理して、治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAを、1以上のリアクタからマイクロ流体経路デバイスを通して移送することと、を含み、第1のマイクロ流体経路デバイス及び複数の貯蔵デポは、大気への暴露を防ぐために、閉経路及び密閉環境を形成する。
【0381】
また、本明細書で記載されているのは、インビトロ転写(IVT)反応を行う方法であって、該方法は、誘導された流体流れによって、あらかじめプログラムされたソフトウェアコマンドによって制御される量のテンプレート物質、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドを、複数の貯蔵デポからマイクロ流体経路デバイスに送達することと、マイクロ流体経路デバイスの1以上の第1のリアクタにおいて、テンプレート物質及びヌクレオチドを処理して、治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAを、マイクロ流体経路デバイスを通して、1以上の第1のリアクタから、mRNAの精製に適した1以上の第2のリアクタに移送することと、を含み、マイクロ流体経路デバイス及び複数の貯蔵デポは、大気への暴露を防ぐために、閉経路及び密閉環境を形成する。
【0382】
また、本明細書で記載されているのは、インビトロ転写(IVT)反応を行う方法であって、該方法は、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている一連の工程に従うことを含み、該工程は、誘導された流体流れによって、一連の工程に従ってコントローラによって制御される量のテンプレート物質、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドを、複数の貯蔵デポから第1のマイクロ流体経路デバイスの1以上の第1のリアクタに送達することと、1以上の第1のリアクタにおいて、テンプレート物質及びヌクレオチドを処理して、治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAを1以上の第1のリアクタから、第1のマイクロ流体経路デバイスを通して、mRNAの精製に適した1以上の第2のリアクタに移送することと、精製されたmRNAを移送してmRNA治療ナノ粒子の製剤化を完了することと、を含み、第1のマイクロ流体経路デバイス及び複数の貯蔵デポは、大気への暴露を防ぐために、閉経路及び密閉環境を形成する。
【0383】
また、本明細書で記載されているのは、インビトロ転写(IVT)反応を行う方法であって、該方法は、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている一連の工程に従うことを含み、該工程は、テンプレート物質、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドを、複数の貯蔵デポから第1のマイクロ流体経路デバイスの1以上の第1のリアクタに空気圧で送達することと、1以上の第1のリアクタにおいて、テンプレート物質及びヌクレオチドを処理して、治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAを1以上の第1のリアクタから、第1のマイクロ流体経路デバイスを通して、mRNAの精製に適した1以上の第2のリアクタに移送することと、精製されたmRNAを1以上の第3のリアクタに移送して、mRNA治療ナノ粒子を形成するために、精製されたmRNAを1以上の送達ビヒクルと結合させることと、を含み、第1のマイクロ流体経路デバイス及び複数の貯蔵デポは、大気への暴露を防ぐために、閉経路及び密閉環境を形成する。
【0384】
例えば、本明細書には、インビトロ転写(IVT)反応を行う方法も記載されており、該方法は、非一時的なコンピュータ可読媒体にコードされている一連の工程に従うことを含み、該工程は、テンプレート物質、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドを、複数の貯蔵デポから第1のマイクロ流体経路デバイスの1以上の第1のリアクタに空気圧で送達することと、1以上の第1のリアクタにおいて、テンプレート物質及びヌクレオチドを処理して、治療用mRNAを形成することと、治療用mRNAを1以上の第1のリアクタから、第1のマイクロ流体経路デバイスを通して、セルロースを含み、mRNAの精製に適した1以上の第2のリアクタに移送することと、精製されたmRNAを1以上の第3のリアクタに移送して、mRNA治療ナノ粒子を形成するために、精製されたmRNAを1以上の送達ビヒクルと結合させることと、を含み、第1のマイクロ流体経路デバイス及び複数の貯蔵デポは、大気への暴露を防ぐために、閉経路及び密閉環境を形成する。
【0385】
また、本明細書で記載されるのは、1以上のマイクロ流体経路デバイスとの密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて、治療用mRNA組成物を製造する方法であって、該方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を搬送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、1以上の治療用mRNAを送達ビヒクルと結合させることによって、治療用mRNA組成物を製剤化することを含む。
【0386】
1以上のマイクロ流体経路デバイスと密閉流体連通を確保するように構成された複数の貯蔵デポを備えたシステムを用いて、オンデマンドで治療用mRNA組成物を製造する方法は、大気との接触から保護された閉流路において、複数の貯蔵デポのうちの1以上の貯蔵デポと1以上のマイクロ流体経路デバイス上の複数のリアクタとの間で試薬を輸送し、1以上のマイクロ流体経路デバイスにおいて、テンプレートを形成する工程、テンプレートから治療用mRNAのインビトロ転写を行う工程、治療用mRNAを精製する工程、及びmRNAを送達ビヒクルで製剤化する工程のうちの1以上を実行すること、を含んでもよい。
【0387】
これらの方法及び装置のいずれも、医療現場で操作(例えば、治療用mRNAを製造)することができる。これらの方法及び装置のいずれもが、迅速かつ連続的に実行されてもよく、例えば、治療薬は72時間未満で製造される。
【0388】
例えば、本明細書では、完全自動化されたソフトウェア制御のマイクロ流体工学の使用を含む可能性のあるmRNA治療薬の製造方法及び装置について説明する。これらの方法及び装置は、個人化又は個別化された治療薬に使用され得る。また、本明細書では、テンプレートの形成、インビトロ転写、治療用mRNAの精製、mRNAの濃縮、及びmRNA(複数可)と1以上の送達ビヒクルとの複合化を含む、本明細書に記載の製造工程のいずれかのソフトウェア制御を含む装置(例えば、システム、デバイスなど)及び方法が記載されている。ソフトウェア制御は、1以上の治療用mRNAを製造するためのこれらの工程のいずれか、いくつか、又はすべてが、正確かつ精密に迅速に実行されるように、これらの方法の自動化を可能にし得る。ソフトウェアによる制御とマイクロ流体による正確な反応成分の送達及び移送は、プロセス制御、効率、及び再現性を高める一方で、手動操作を実質的に削減又は排除し、設備の必要性を低減し、生産サイクル時間を短縮する機会を提供し、適切であれば、最終的にはジャストインタイムで生産される低コスト治療薬をもたらすものである。
【0389】
本明細書に記載される装置(例えば、システム、デバイスなど)のいくつかでは、治療材料の各バッチは、専用の、単一使用の、使い捨てのマイクロ流体経路デバイス(本明細書ではバイオチップとも呼ばれる)において製造されてよく、それはマイクロ流体経路デバイス制御システム(本明細書では制御システムとも呼ばれる)内に収容されてもよい。生産全体は、大気との接触を伴わない無菌設計の閉経路プロセスとして進行してもよい。生産工程はすべて自動化され、制御システムによって制御され、システムを収容する施設の属性に関係なく、コピーイグザクトプロセスを達成することができる。生産パラメータ、原材料、及び環境データ(完全な視覚的記録を含む)は、クラウド上で保護され、各生産ランに関連付けられた広範で暗号化された電子ファイルの一部となる可能性がある。さらに、精製プロセスや多くのQCアッセイを生産プロセス中にインラインで単一の流体フローで行うことができ、半導体産業で開発されたプロセス制御コンセプトにより、異常を早期に検出することができる。全自動でソフトウェア制御された製造方法を活用することで、患者のために費用対効果の高い方法で、個人化及び個別化されたmRNA治療薬を製造することができる。
【0390】
特にこれらの方法及び装置は、インビトロ転写(IVT)として知られる合成技術により、人体外で合成的にmRNA治療薬を生成することができる。いくつかの例では、ネイキッドmRNA分子は、細胞膜を通過しない大きなポリアニオン分子であり、インビボで細胞外ヌクレアーゼによって急速に分解される。本明細書に記載の方法及び装置は、mRNAを標的(組織、身体、組織の領域など)に輸送するように設計された、1以上の送達ビヒクルを有するmRNA分子製剤を生成してもよい。例えば、いくつかの変形例では、送達ビヒクルは、循環中にmRNAカーゴのパッケージング及び保護を提供し、免疫認識を回避し、細胞の取り込み及び放出を促進し得る、脂質含有両親媒性送達ビヒクルであってもよい。
【0391】
一般に、本明細書でより詳細に説明するように、いくつかの変形例では、テンプレート合成、IVT、精製、及び送達ビヒクルによる製剤化を含む製造工程のすべて又は一部が、1以上のマイクロ流体経路デバイスの高度に制御された環境下で実施されてよく、ロバストで高品質かつ再現性の高い製造工程の最適化を可能にする。
【0392】
mRNAワクチン接種には、mRNA治療薬などの治療薬が用いられることがある。mRNA治療薬は、その高い効力に加え、迅速な開発サイクル、標準化された製造、一過性の発現、及びゲノム統合のリスクの低さに関する重要な利点も有している。
【0393】
いくつかの変形例では、本明細書に記載のmRNA治療薬は、最終医薬品中の有効成分として、関心の抗原又はタンパク質をコードするmRNAを含んでもよい。mRNAのロバストな翻訳には、機能的な5´キャップ構造が必要である。5´キャップ(又は7-メチルグアノシンキャップ)は、最初の転写ヌクレオチドに5´-5´-トリリン酸結合で結合した末端7-メチルグアノシン残基からなる。このキャップは、リボソームによるmRNAの認識とRNaseからの保護に重要である。ポリ(A)テールは、ポリ(A)結合タンパク質(PABP)と結合し、真核生物の翻訳開始因子eIF4Gと相互作用し、さらにeIF4Eと複合体を形成して、mRNAの安定性と翻訳開始をm7Gキャップと相乗的に制御する。ポリ(A)テールの長さは、mRNAからタンパク質への翻訳プロセスの効率に影響すると考えられる。
【0394】
本明細書に記載の方法及び装置は、反復投与を制限し得る毒性又は免疫原性の懸念を回避しつつ、循環中のmRNAカーゴのパッケージング及び保護を提供し、免疫認識を回避し、所望の組織に薬剤を局在化し、細胞への取り込み及び放出を促進するmRNA治療ナノ粒子を製剤化し得る。
【0395】
一般に、mRNA治療ナノ粒子(患者特異的T細胞リンパ腫ワクチン製剤を含むが、これに限定されない)の製造方法は、標的タンパク質の同定及びmRNA配列の設計、標的配列についての二本鎖DNAテンプレートの調製を含み得る。この配列は、mRNAを合成するために、インビトロ転写(IVT)反応のためのmRNAを生成するために使用されてもよい。この治療用mRNAは、その後、精製して工程不純物を除去し、ろ過して原薬を生成してもよい。次に、治療用mRNAは、送達ビヒクル(両親媒性ナノ粒子を形成するためのアジュバント及び送達ビヒクル成分を有するいくつかの変形例を含む)と共に製剤化されてもよい。その後、製剤を処理及び精製して、患者への送達に使用され得る薬物を生成することができる。
【0396】
一変形の具体例として、患者特異的T細胞リンパ腫ワクチン製剤を製造するための例示的工程は、リンパ腫細胞によって発現されるクローン拡大TCR配列(イディオタイプ)を同定することを含んでもよい。また、本工程は、mRNAワクチン配列を設計すること、及びIVT反応に用いる二本鎖DNAテンプレートを調製すること、を含んでもよい。このテンプレートを用いてIVT反応によりmRNAを合成し、この治療用mRNAを精製して工程不純物を除去し、ろ過して、治療用mRNAを原薬として調製することができる。次に、治療用mRNAは、免疫調節剤及び送達ビヒクル成分で製剤化されて、両親媒性ナノ粒子を形成してもよい。その後、製剤化後の処理を行い、治療用mRNA治療ナノ粒子などの薬剤を生成することができる。
【0397】
これらの製造工程のいずれもが、本明細書に記載の自動マイクロ流体経路デバイス制御システムを用いて実施されるように最適化されてもよい。例えば、DNAテンプレートの製造は、1以上のマイクロ流体経路デバイスで行われてもよく、テンプレートマイクロ流体経路デバイス(例えば、テンプレートバイオチップ)が使用されてもよい。本実施例では、mRNAのインビトロ転写とその物質の精製による原薬生成の工程は、IVTマイクロ流体経路デバイス(例えば、IVTバイオチップ)で行われてもよく、製剤化工程は製剤化マイクロ流体経路デバイス(例えば、製剤化バイオチップ)で行われてもよい。これらのマイクロ流体経路デバイスは、製造工程の各工程を行うために必要な入力ポート、計量バルブ、反応チャンバ、及び精製構造が含まれてもよい。
・装置
【0398】
本明細書に記載される方法は、一般に、1以上のマイクロ流体経路デバイス(例えば、バイオチップ)と、マイクロ流体経路デバイスにおける動作を制御するように構成されたマイクロ流体経路デバイス制御システムと、を備えることができる装置を使用して実行されてもよい。これらのマイクロ流体経路デバイスは、マイクロ流体経路デバイス制御システム(本明細書では製造システムと呼ぶことがある)内に配置及び保持されてもよく、このシステムは、一部の、より好ましくはほぼ全ての、又は全ての製造部品の大気への曝露を防止する閉経路方式で動作することができる。
図34Aは、マイクロ流体経路デバイス管理システムとも呼ばれ得る、マイクロ流体経路デバイス制御システム903の一例を示し、マイクロ流体経路デバイスを保持するためのハードウェア、マイクロ流体経路デバイスにおいて、マイクロ流体動作を操作するための正/負圧を適用するためのハードウェア、マイクロ流体経路デバイスのすべて又は領域を加熱/冷却するためのハードウェア、マイクロ流体経路デバイスから1以上の特徴の検出するためのハードウェア、及び/又は1以上のマイクロ流体経路デバイスで行われる動作を記録するためのハードウェア、を含んでもよい。マイクロ流体経路デバイス制御システムは、1以上のプロセッサ(例えば、図示しないコントローラ)、及び温度制御された(例えば、冷蔵)容器905(例えば、ISOクラス5キャビネット)を備えてもよい。このシステムは、1以上のマイクロ流体経路デバイス901を使用してもよいし、含んでもよい。マイクロ流体経路デバイス制御システムは、1以上のマイクロ流体経路デバイス(例えば、カートリッジ)901を解放可能に保持するための着座マウント932を含んでもよい。マイクロ流体経路デバイス制御システムは、着座時にマイクロ流体経路デバイスを冷却/加熱するための熱コントローラも含んでもよく、これは、着座マウントの下にあるか又はそれと結合してもよい。流体インターフェースアセンブリ939は、1以上のカートリッジが着座マウントに装填されることを可能にするために、着座マウントから(上及び/又は側方に)持ち上げられてもよい。流体インターフェースアセンブリは、着座マウントに保持されたマイクロ流体経路デバイス上に適用されるように構成された複数の流体接点を含んでもよい。流体接点は、マイクロ流体経路デバイス上の受入ポートに対する密閉を改善するために、例えば、ばね等によって、マイクロ流体経路デバイスに対して偏ってもよい。試薬貯蔵フレーム943は、着座マウント及び流体インターフェースアセンブリの上方又は側方に配置されてもよい。試薬貯蔵フレームは、複数の貯蔵デポ967を含んでもよい。流体インターフェースアセンブリは、中央部、例えば、着座マウントに着座したときにマイクロ流体経路デバイスのすぐ上の領域で開口してもよい。この開口部は、監視及び追跡のためにマイクロ流体経路デバイスを通した可視化を可能にしてもよく、また、アクセスを可能にしてもよい。
図34Aでは、複数のセンサ(例えば、カメラ)が、流体が、例えば、圧力源(図示せず)を使用して駆動されるときのマイクロ流体経路デバイス制御システムの動作を見るために、マイクロ流体経路デバイス制御システムの周囲と、着座マウントの上の中央領域の上に配置される。
【0399】
図34Bは、本明細書に記載されるように使用され得るマイクロ流体経路デバイス制御システムの一例の概略図である。この例では、装置は、単一の使用装置であってもよい1以上のマイクロ流体経路デバイス911を保持することができる着座マウント915を囲むハウジング933を含む。ハウジングは、蓋又は開口部を含んでもよいチャンバ、筐体等であってもよく、閉じられると密閉されてもよい。ハウジングは、熱調整器を囲んでいてもよく、及び/又は熱的に調整された環境(冷蔵ユニット等)に囲われるように構成されてもよい。ハウジングは、無菌バリアを形成してもよい。いくつかの変形例では、ハウジングは、加湿された又は湿度制御された環境を形成してもよい。
【0400】
着座マウント915は、マイクロ流体経路デバイスを固定された所定の向きに保持するように構成された1以上のピン又は他の構成要素を用いて、マイクロ流体経路デバイスを固定するように構成されてもよい。
【0401】
いくつかの変形例では、熱制御913は、1以上のマイクロ流体経路デバイス911に対する温度を調節するために、着座マウント915に隣接して配置されてもよい。熱制御は、マイクロ流体経路デバイスの全て又は一部の温度を制御するための熱電部品(例えば、ペルチェデバイス)及び/又は1以上のヒートシンクを含んでもよい。いくつかの変形例では、マイクロ流体経路デバイスの1以上の領域の温度を個別に調節するために、2以上の熱制御が含まれてもよい。熱制御は、マイクロ流体経路デバイス及び/又は熱制御のフィードバック制御に使用され得る1以上の熱センサ(例えば、熱電対など)を含んでもよい。
【0402】
図34Bにおいて、流体インターフェースアセンブリ909は、液体試薬及び/又は圧力(例えば、ガス)を、着座マウント915に保持されたマイクロ流体経路デバイス911と結合し、圧力源917からマイクロ流体経路デバイス911の内部への、正/負のガス状圧力と同様に、流動物質の送達を支援し得る。流体インターフェースアセンブリは、以下でより詳細に説明するように、任意選択で、マイクロ流体経路デバイス(複数可)の固定を支援してもよい。流体インターフェースアセンブリは、使用間の滅菌のために、装置に取り外し可能に結合されてもよい(取り外されてもよいし、一部を取り外してもよい)。
【0403】
試薬貯蔵フレーム907は、複数の流体サンプルホルダを含むように構成されてもよく、その各々は、マイクロ流体経路デバイス911に送達するための試薬(例えば、ヌクレオチド、溶媒、水など)を保持するように構成された流体バイアルを保持してもよく、あるいは、流体バイアルはマイクロ流体経路デバイス911の内部からの生成物を受け取るように構成されてもよい。試薬貯蔵フレーム、試薬ラックと称されてもよい。いくつかの変形例では、試薬ラックは、1以上の圧力源917を、マイクロ流体経路デバイスに適用され得る複数の圧力ラインに分割するように構成された複数の圧力ライン及び/又はマニホールドを含み、独立して又は集合的に(サブコンビネーションで)制御されてもよい。あるいは、流体デポ(バイアル等)は、マイクロ流体経路デバイス(複数可)に対して直接固定及び密閉するように構成されてもよい。
【0404】
流体インターフェースアセンブリは、複数の流体ライン及び/又は圧力ラインを含んでもよく、マイクロ流体経路デバイスが着座マウント915に保持されたときに、各流体及び/又は圧力ラインを個別かつ独立してマイクロ流体経路デバイスに駆動するバイアス(例えば、ばね式)ホルダー又はチップを含んでもよい(又は、前述のように、代わりにデバイスは直接ばね式マウントされることもあり得る)。マイクロ流体経路は、マイクロ流体経路デバイスが他の構成要素(例えば、チューブ)に安定的に接続された状態を作るように、制御システム内に保持され、固定されてもよい。チューブ、例えば、流体ライン及び/又は圧力ラインは、流体インターフェースアセンブリの一部であってもよく、又は流体インターフェースアセンブリに接続されてもよい。いくつかの変形例では、流体ラインは、バイアルをチューブにロック係合(例えば、フェルール)で結合するコネクタを介して試薬貯蔵フレームと、マイクロ流体経路デバイスとの間に接続する可撓性チューブから構成される。流体経路の端部、いくつかの変形例では、流体ライン/圧力ラインの端部は、本明細書に記載されるように、マイクロ流体経路デバイスに対して、例えば、マイクロ流体経路デバイスに形成されたシーリングポートで密閉するように構成されてもよい。例えば、流体ラインの端部は、平坦(側面視で垂直)になるように切断又は形成されてもよい。バイアルは、圧力源に接続することもできるコネクタを介して、加圧(例えば、2気圧、3気圧、5気圧などの1気圧より大きい圧力)されてもよい。例えば、流体バイアルは、約6.9kPa~138kPa(例えば、約34.5kPa~138kPa、約69kPaなど)に加圧されてもよい。負圧又は正圧を適用してもよく、例えば、真空(例えば、約-48.2kPa又は48.2kPa)を適用して、工程の終了時に流体をバイアル(例えば、デポ)に引き戻してもよい。一般に、流体バイアルは、空気圧バルブよりも低い圧力で駆動されてもよく、これにより漏れを防止又は低減することができる。いくつかの変形例では、流体バルブと空気圧バルブとの間の圧力差は、例えば、約34.5kPa(例えば、約48.3kPa、68.9kPa、82.7kPa、103.4kPa、137.9kPa等)、例えば、約34.5kPa~約275.7kPa(例えば、約34.5kPa~206.8kPa、約34.5kPa~137.9kPa、約48.2kPa~275.8kPa、約48.2kPa~137.9kPa、その他)であってよい。
【0405】
各バイアルは、コード化されてもよい(例えば、以下に説明するように、1以上のセンサによって読み取られ得る識別子によって)。コントローラは、流体レベル、したがって、流体インターフェースアセンブリ内の各材料の量を監視してもよい。
【0406】
装置はまた、磁場アプリケータ919を含んでもよく、これは、マイクロ流体経路デバイス911の領域において、磁場を形成するように構成されてもよい。光学センサであってもよい1以上のセンサ905は、装置の一部であってもよく、バーコード、試薬貯蔵フレーム内に保持された流体バイアル内の流体レベル、及び装置が取付座915内に取り付けられたときのマイクロ流体経路デバイス911内の流体移動のうちの1以上を感知することができる。
【0407】
センサは、例えば、光学的指標を測定することによって、装置上のプロセスの測定を行うことができる。いくつかの変形例では、歩留まりを推定するために視覚的/光学的マーカーが使用されてもよい。例えば、蛍光は、蛍光物質でタグ付けすることにより、プロセスの歩留まり又は残留材料を検出するために使用されてもよい。代替的に又は追加的に、動的光散乱を使用して、マイクロ流体経路デバイスの一部(例えば、混合部分など)内の粒径分布を測定してもよい。いくつかの変形例では、センサによる測定は、光(例えば、レーザー光)を中に伝え、出てくる光信号を検出するための1つ又は2つの光ファイバーを用いて行われてもよい。計測器パッケージは、デバイスから遠隔に取り付けられてもよい。このような非接触のセンシングは有益である。
【0408】
本明細書に記載される方法及び装置のいずれかにおいて、センサ(例えば、ビデオセンサ)は、マイクロ流体経路デバイス(例えば、チップ又はカートリッジ)上の全ての活動を記録してもよい。例えば、材料(治療用RNAなど)を合成及び/又は処理するための行程全体が、例えば、上方からマイクロ流体経路デバイスを可視化し得るビデオセンサを含む1以上のビデオセンサによって記録されてもよい。マイクロ流体経路デバイス上の処理は、視覚的に追跡されてもよく、この記録は、後の品質管理及び/又は処理のために保持されてもよい。したがって、処理のビデオ記録は、その後のレビュー及び/又は分析のために保存、保管及び/又は送信されてもよい。
【0409】
装置の内部部分、例えばハウジング933内は、さらに滅菌可能に構成されてもよい。特に、装置の一部は、取り外されて個別に滅菌されてもよい。滅菌は、例えば、UV照射、又は汚染を制限するため、又は規制要件を満たすために必要とされ得る他の任意の滅菌方法によって実行されてもよい。ハウジングを含む装置は、高効率粒子状空気(HEPA)濾過環境内に収容されてもよい。ハウジングを含む装置は、温度制御された筐体内に収容されてもよい。さらに、装置自体が、温度制御された1以上の領域を含んでもよい。本明細書に記載の装置のいずれかにおいて、装置は、例えば、保管温度(例えば、約10℃、約4℃、約-10℃等の、約-10℃~約20℃の温度)で試薬を保管するための、及び/又はmRNA(例えば、治療用mRNA)を保管するための温度制御領域を(例えば、ハウジング内に)含んでもよい。これらの装置のいずれかは、個別に、又は1以上の追加のmRNA及び送達ビヒクルと結合させて使用され得る製造されたmRNAのライブラリを含んでもよい。
【0410】
上述したように、マイクロ流体経路デバイス制御システムは、マイクロ流体経路デバイス911を介して圧力を加えて、少なくとも流体移動を駆動することを含め、コントローラ921によって制御されてもよい。コントローラは、少なくとも部分的に、いくつかの例では完全に、ハウジングの外側にあってもよい。コントローラは、ユーザー入力/出力を含むように構成されてもよい。例えば、システムのユーザーインターフェース923は、装置及びマイクロ流体経路デバイス(複数可)の容易な操作及び指示を可能にしてもよい。
【0411】
本明細書で説明される装置のいずれも、
図34Bに示される構成要素のすべて又は一部を含むことができ、すべての構成要素が必要であるわけではない。
図34Bでは、構成要素間の接続の一部のみが示されており、追加の(又は代替の)接続が使用されてもよい。
【0412】
マイクロ流体経路デバイス制御システムは、試薬の供給、流体の制御、温度制御、混合、精製、プロセス監視など、マイクロ流体経路デバイス内のすべての製造活動をサポートすることができる。マイクロ流体経路デバイス制御システム上の製造活動は、アプリケーションソフトウェアを通じてアクセスし、制御することができる。
【0413】
マイクロ流体経路デバイスは、治療用(例えば、治療用mRNA)材料を精密に調製するために行われる製造工程のための1以上のリアクタを含むように構成されてもよい。同一のマイクロ流体経路デバイスが、直列及び/又は並列に、かつ、マイクロ流体経路デバイス制御システムの連続パス性を中断することなく、1以上のマイクロ流体経路デバイス上で動作してもよい。例えば、複数のマイクロ流体経路デバイスを用い、複数のリアクタで実行される複数の処理工程を使用して治療材料を製造する場合、1つのマイクロ流体経路デバイスからの部分生成物を含む流体生成物(複数可)は、マイクロ流体経路デバイス生成物を含む流体をマイクロ流体経路デバイス制御システムの貯蔵デポ部分に移動することを含む装置によって、閉経路方式で1又は複数の追加のマイクロ流体経路デバイスに移送されてもよい。
【0414】
各マイクロ流体経路デバイスは、製造工程中に処理するための1以上のリアクタを含むように構成されてもよい。例えば、
図35A~
図35Cは、マイクロ流体経路デバイスの3つの例を示している。これらの例は、テンプレートマイクロ流体経路デバイス(
図35A)、インビトロ転写(IVT)マイクロ流体経路デバイス(
図35B)、及び製剤化マイクロ流体経路デバイス(
図35C)という3つの異なる種類のマイクロ流体経路デバイスを例示している。これらのマイクロ流体経路デバイスの例の各々は、制御された高度に再現可能な方法で、一連の単位操作を実行するための機能を含むように構成されてもよい。
【0415】
いくつかの変形例では、マイクロ流体経路デバイスは、2以上の剛性層からなる多層構造として構成することができ、その2層の間に可撓性の膜が挟まれている。
図36は、本明細書に記載されるように治療薬を処理するためのリアクタを形成する複数の層を有するマイクロ流体経路デバイスの一例を通る断面図(マイクロ流体経路デバイスの平面に対して横方向)を示す図である。リアクタは、シール、チャネル、バルブ、及び複数の層から形成されるポンピングチャンバを含むチャンバを含んでもよい。例えば、マイクロ流体経路デバイスは、2以上の剛性又は半剛性プレート1103、1105、及び少なくとも1つの弾性層1107で形成されてもよい。弾性層1107は、液体不透過性である弾性材料のシートであってよい。弾性層は、多分、幾分ガス透過性であり、又は、様々な領域を含めて、多かれ少なかれガス透過性であるように処理されてもよい。単一の連続した弾性材料シートを使用してもよいが、いくつかの変形例では、複数の弾性材料シートを使用してもよく、又は「シート」は複数のシートの部分から形成されてもよい。また、層と弾性シートとが積層されてもよい。一般に、弾性層がチャンバを液体含有側と圧力(例えば、ガス)印加側とに二分するように、流体を保持、バルブ、及び/又はポンプするためのチャンバが、弾性層の両側のプレートに形成されてもよい。チャンバ(複数可)の全体容積は一定で、第1(例えば、上)プレートと第2(例えば、下)プレートの両方に形成されてもよいが、この容積は圧力側と液体側とに分割されてもよい。圧力側に正圧又は負圧を加えることにより、弾性シートを変形させて、液体を含む側の容積を小さく(ゼロにし、チャンバを閉鎖)したり、液体を含む側の容積を大きく(所定の最大値まで)したりしてもよい。また、1以上のチャンバの受圧側1119に負圧又は正圧を加えるために、チャンバの圧力印加側は、圧力流路1147に接続する上板1103の圧力ポート1143を介して接続されてもよい。各チャンバの圧力印加側と反対側の液体含有側1117は、流体チャネル1121を介して、流体ポート1123に接続されてもよい。流体ポート及び圧力ポートの両方が、上部プレート1103及び弾性層1107への開口によって形成されてもよく、圧力ラインが、正対する剛性又は半剛性層(複数可)1105、1109によって、ポートの下側で支持されている弾性層1107に押し込まれるので、複数の異なる入力ラインがある場合でも、大気から隔離された密閉接続が可能である。
【0416】
前述の概念のすべての組み合わせは、本明細書に開示される発明的主題の一部であることが企図され、本明細書に記載される利点を達成するために採用され得ることを理解されたい。
【0417】
本明細書で使用される用語は、特定の例を説明する目的のみのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書では、様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために「第1」及び「第2」という用語を使用するが、文脈が他に示す場合を除いて、これらの特徴/要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を、別の特徴/要素から区別するために使用されてもよい。したがって、後述する第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と称され得、同様に、後述する第2の特徴/要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第1の特徴/要素と称される可能性がある。
【0418】
本明細書で与えられる任意の数値はまた、文脈が他に示さない限り、その値のあたり又はその程度を含むと理解されるべきである。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」もまた開示される。本明細書で言及される任意の数値範囲は、そこに包含されるすべての下位範囲を含むことが意図される。また、値が開示されている場合、当業者によって適切に理解されるように、「その値以下」、「その値以上」、及び値の間の可能な範囲もまた開示されていることが理解される。例えば、ある値が開示されている場合、その値「以下」だけでなく、その値「以上」も開示されている。また、本願を通じて、データは、多くの異なるフォーマットで提供され、このデータは、データポイントの任意の組み合わせの終点と始点、及び範囲を表していることが理解される。例えば、特定のデータポイント「10」と特定のデータポイント「15」が開示されている場合、10と15の間だけでなく、10及び15より大きい、10及び15以上、10及び15より小さい、10及び15以下、及び10と15と等しいことが開示されていると見なされることが理解される。また、2つの特定の単位の間の各単位も開示されていると理解される。例えば、10と15が開示されている場合、11、12、13、及び14も開示されている。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、
(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、
(iii)送達ビヒクル分子であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAは、前記送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、
から成るmRNAナノ粒子を腫瘍内注射することを含む、方法。
【請求項2】
前記腫瘍特異的抗原が、ウイルス抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス抗原が、ヒトパピローマウイルス(HPV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、又はそれらの任意の組み合わせと関連している、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍特異的抗原がネオエピトープを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍特異的抗原が患者特異的抗原を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍特異的抗原が、複数の患者特異的抗原を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍特異的抗原が、共通腫瘍抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記送達ビヒクル分子が、アミノ脂質化ペプトイドを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記mRNAナノ粒子が、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAをさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記mRNAナノ粒子が、免疫調節性siRNAをさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの任意の組合せをコードする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、炎症性サイトカインをコードする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記炎症性サイトカインが、(IL)、IL-1、IL-2、IL-12、IL-17、IL-18、IFN-γ、及びTNF-αのうちの1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記炎症性サイトカインが、インターロイキン-12(IL-12)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、抗CTLA-4をコードする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、TGF-βアンタゴニストをコードする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記mRNAナノ粒子が、免疫賦活物質をさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記mRNAナノ粒子が、CpGオリゴデオキシヌクレオチドから成る免疫賦活物質をさらに含む、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
注射の間に待機時間を設けて腫瘍内注射を1回以上繰り返すことをさらに含み、前記待機時間が約1日~約14日である、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍特異的抗原をコードする前記第1のmRNAと前記免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、単一のmRNA鎖上にある、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、リンパ腫を有する患者を治療する方法である、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、子宮頸癌を有する患者を治療する方法である、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
mRNAナノ粒子を、それを必要とする患者に腫瘍内注射することを含み、前記mRNAナノ粒子は、
(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと、
(ii)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、
(iii)送達ビヒクル分子であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAは、前記送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、
を含む、方法。
【請求項25】
(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、
(ii)免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、
(iii)送達ビヒクル分子であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAは、前記送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、
を含む、mRNA治療ナノ粒子。
【請求項26】
(i)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、
(ii)SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、
(iii)アミノ脂質化ペプトイド送達ビヒクルを含む送達ビヒクル分子であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAは、前記送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化されている、送達ビヒクル分子と、
を含む、mRNA治療ナノ粒子。
【請求項27】
(i)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと、
(ii)炎症性サイトカインから成る免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、
(iii)送達ビヒクル分子であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAは、前記送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、
を含む、mRNA治療ナノ粒子。
【請求項28】
前記送達ビヒクル分子が、アミノ脂質化ペプトイドを含む、請求項25又は27に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項29】
前記第1のmRNAが、患者特異的抗原をコードする、請求項25~27のいずれかに記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項30】
前記第1のmRNAが、複数の患者特異的抗原をコードする、請求項29に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項31】
前記第1のmRNAが、共通腫瘍抗原をコードする、請求項25~26のいずれかに記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項32】
前記第2のmRNAが、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの任意の組み合わせをコードする、請求項25に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項33】
前記第2のmRNAが、抗CTLA-4をコードする、請求項25に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項34】
前記第2のmRNAが、SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である抗CTLA-4をコードする、請求項25に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項35】
腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)をコードする第3のmRNAをさらに含む、請求項25~27のいずれかに記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項36】
SEQ ID NO: 7又はSEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるTGF-βアンタゴニストをコードする第3のmRNAをさらに含む、請求項25~27のいずれかに記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項37】
前記第2のmRNAが、SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一であるインターロイキン12をコードする、請求項25に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項38】
前記mRNA治療ナノ粒子が、さらに免疫賦活物質を含む、請求項25~27のいずれかに記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項39】
前記免疫賦活物質がCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む、請求項38に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項40】
前記腫瘍特異的抗原及び前記免疫調節剤のオープンリーディングフレーム(ORF)のそれぞれが、単一のmRNA鎖の一部である、請求項25に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項41】
前記腫瘍特異的抗原及び前記免疫調節剤のオープンリーディングフレーム(ORF)のそれぞれが、異なるmRNA鎖の一部である、請求項25に記載のmRNA治療ナノ粒子。
【請求項42】
マイクロ流体経路デバイスにおいて、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのテンプレートからのインビトロ転写を実行すること、
前記第1のmRNAを精製すること、
前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を実行すること、
前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、前記第2のmRNAを精製すること、及び
前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAを一緒に送達ビヒクル分子でカプセル化し、mRNA治療ナノ粒子を形成すること、
を含む、方法。
【請求項43】
マイクロ流体経路デバイスの第1のチャンバにおいて、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAのテンプレートからのインビトロ転写を実行すること、
前記第1のmRNAを精製すること、
前記マイクロ流体経路デバイスの第2のチャンバにおいて、第1の免疫調節剤をコードする第2のmRNAのインビトロ転写を実行すること、
前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、前記第2のmRNAを精製すること、
前記マイクロ流体経路デバイスの第3のチャンバにおいて、第2の免疫調節剤をコードする第3のmRNAのインビトロ転写を実行すること、
前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、前記第3のmRNAを精製すること、及び
前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、前記第1のmRNA、前記第2のmRNA、及び前記第3のmRNAを一緒に送達ビヒクル分子でカプセル化し、mRNA治療ナノ粒子を形成すること、
を含む、方法。
【請求項44】
前記第1のmRNAを精製すること、前記第2のmRNAを精製すること、及び前記第3のmRNAを精製することは、それぞれ、前記マイクロ流体経路デバイス上の1以上のリアクタで精製することを更に含む、請求項42~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記1以上のリアクタで精製することは、前記1以上のリアクタ内で、セルロースを用いて二本鎖mRNAを除去することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記マイクロ流体経路デバイスが、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAの各々のインビトロ転写の実行、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAの精製、並びに前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAと前記送達ビヒクル分子との結合を自動的かつ連続的に行う閉経路システムからなる、請求項42~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記閉経路システムが、前記第1及び第2のmRNAのインビトロ転写の実行、前記第1及び第2のmRNAの精製、並びに前記第1及び第2のmRNAと前記送達ビヒクル分子との結合を空気圧によって制御する、請求項46に記載の方法。
閉経路システムが空気圧で制御する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記閉経路システムが、
前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAのインビトロ転写を実行すること、
前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAを精製すること、並びに
前記マイクロ流体経路デバイス内の1以上の膜を偏向させることにより、前記第1のmRNA及び第2のmRNAを前記送達ビヒクル分子と結合させること、
を空気圧によって制御する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記閉経路システムが、自動的かつ連続的に、
前記第1及び第2のmRNAのインビトロ転写を実行すること、
前記第1及び第2のmRNAを精製すること、及び
前記第1及び第2のmRNAを前記送達ビヒクル分子と結合させること、
を一括して約5日未満で行う、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、医療現場で実施される、請求項42~49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記第1及び第2のmRNAを前記送達ビヒクル分子と結合することが、前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、前記mRNA治療ナノ粒子を透析することをさらに含む、請求項42~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記マイクロ流体経路デバイス上で前記mRNA治療ナノ粒子を濃縮することをさらに含む、請求項42~50のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記送達ビヒクル分子が、両親媒性分子を含む、請求項42~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記両親媒性分子が、アミノ脂質化ペプトイドを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記腫瘍特異的抗原をコードする前記第1のmRNAが、患者特異的抗原をコードするmRNAを含む、請求項42~54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記第1のmRNAが、複数の患者特異的抗原をコードする、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記第1の免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、チェックポイント阻害剤、免疫抑制拮抗剤、炎症促進剤、又はそれらの任意の組合せをコードする、請求項42~56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、抗CTLA-4をコードする、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、TGF-βアンタゴニストをコードする、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
免疫調節剤をコードする前記第2のmRNAが、一本鎖インターロイキン-12(IL-12)をコードする、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAを結合させることが、前記マイクロ流体経路デバイスにおいて、免疫賦活物質を添加することを含む、請求項42~57のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記免疫賦活物質が、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
第1の表面と第2の表面の間に挟まれた弾性層と、
前記第1の表面と前記第2の表面との間に形成されたテンプレートインビトロ転写(IVT)チャンバであって、前記弾性層の一部が、前記テンプレートIVTチャンバを、前記第2の表面における流体接触側と前記第1の表面における圧力受容側とに分割し、前記テンプレートIVTチャンバの前記流体接触側が、腫瘍特異的抗原をコードするmRNAテンプレートの供給源と流体連通している、テンプレートIVTチャンバと、
前記テンプレートIVTチャンバの前記流体接触側と流体連通している第1のリアクタであって、二本鎖mRNAを除去するために、前記第1のリアクタ内に二本鎖mRNA結合材を含む、第1のリアクタと、
前記第1のリアクタと、第1の免疫調節物質mRNAの供給源と、送達ビヒクル分子の供給源と結合する送達ビヒクルポートと流体連通して、第1のmRNA及び第2のmRNAを一緒に前記送達ビヒクル分子でカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成する混合アセンブリと、
1以上の圧力ポートから、前記第1の表面及び前記弾性層を通って、前記第2の表面へそれぞれ延び、前記弾性層を通って前記第1の表面へ戻るようにそれぞれ延びる複数の圧力チャネルであり、前記複数の圧力チャネルの各圧力チャネルが、前記テンプレートIVTチャンバの前記圧力受容側と流動的に接続し、さらに、前記テンプレートIVTチャンバの前記流体接触側の容積が、前記1以上の圧力ポートから圧力を加えることによって、前記マイクロ流体経路デバイスを通して流体を駆動して、前記mRNA治療ナノ粒子を形成するために調節される、複数の圧力チャネルと、
を備える、マイクロ流体経路デバイス。
【請求項64】
第1の表面と第2の表面の間に挟まれた弾性層と、
前記第1の表面と前記第2の表面との間に形成されたテンプレートインビトロ転写(IVT)チャンバであって、前記弾性層の一部が、前記テンプレートIVTチャンバを、前記第2の表面における流体接触側と前記第1の表面における圧力受容側とに分割し、前記テンプレートIVTチャンバの前記流体接触側が、腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAテンプレートの供給源と流体連通している、テンプレートIVTチャンバと、
前記テンプレートIVTチャンバの前記流体接触側と流体連通している第1のリアクタであって、二本鎖mRNAを除去するために、前記第1のリアクタ内に二本鎖mRNA結合材を含む、第1のリアクタと、
前記第1の表面と前記第2の表面との間に形成された第1の免疫調節物質IVTチャンバであって、前記弾性層の一部が、前記第1の免疫調節物質IVTチャンバを、前記第2の表面における流体接触側と前記第1の表面における圧力受容側とに分割し、前記第1の免疫調節物質IVTチャンバの前記流体接触側が、第1の免疫調節物質をコードする第1の免疫調節物質テンプレートの供給源と流体連通している、第1の免疫調節物質IVTチャンバと、
前記第1の免疫調節物質IVTチャンバの前記流体接触側と流体連通している第2のリアクタであって、二本鎖mRNAを除去するために、前記第2のリアクタ内に二本鎖mRNA結合材を含む、第2のリアクタと、
前記第1のリアクタ及び前記第2のリアクタと流体連通している第1の混合チャンバと、
前記第1の混合チャンバの出力、及び送達ビヒクル分子の供給源と結合する送達ビヒクルポートと流体連通して、第1のmRNA及び第2のmRNAを一緒に前記送達ビヒクル分子でカプセル化してmRNA治療ナノ粒子を形成する第2の混合チャンバと、
1以上の圧力ポートから、前記第1の表面及び前記弾性層を通って、前記第2の表面へそれぞれ延び、前記弾性層を通って前記第1の表面へ戻るようにそれぞれ延びる複数の圧力チャネルであり、前記複数の圧力チャネルの各圧力チャネルが、前記テンプレートIVTチャンバの前記圧力受容側及び前記第1の免疫調節物質IVTチャンバと流動的に接続している、複数の圧力チャネルと、
を備え、
前記テンプレートIVTチャンバの前記流体接触側の容積、及び前記第1の免疫調節物質IVTチャンバの前記流体接触側の容積が、前記1以上の圧力ポートから圧力を加えることによって調節される、
マイクロ流体経路デバイス。
【請求項65】
(iv)腫瘍特異的抗原をコードする第1のmRNAと、
(v)免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、
(vi)送達ビヒクル分子であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAは、前記送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、
を含むmRNAナノ粒子を注射すること、
を含む、方法。
【請求項66】
(iv)子宮頸癌に特異的な抗原をコードする第1のmRNAと、
(v)炎症性サイトカインを含む免疫調節剤をコードする第2のmRNAと、
(vi)送達ビヒクル分子であって、前記の第1のmRNA及び前記第2のmRNAは、前記送達ビヒクル分子で一緒にカプセル化される、送達ビヒクル分子と、
を含むmRNAナノ粒子を、それを必要とする患者に注射すること、
を含む、方法。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】全図
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【国際調査報告】