(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ヒト化CXCL13遺伝子を有する非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20060101AFI20230526BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230526BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230526BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230526BHJP
C12Q 1/06 20060101ALN20230526BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N15/90 100Z
C12N15/90 104Z
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N5/10
G01N33/48 N
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562072
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 US2021028087
(87)【国際公開番号】W WO2021216505
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フルレタ, ダヴォル
(72)【発明者】
【氏名】トゥ, ナシン
(72)【発明者】
【氏名】グリンドリー, ジャスティン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045AA29
2G045CB01
2G045CB17
4B063QA05
4B063QR72
4B063QR77
4B063QX01
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
本明細書において、ヒト化Cxcl13遺伝子を含むように遺伝子改変された齧歯類(マウスおよびラットなどであるがこれらに限定されない)が開示される。本明細書に開示される齧歯類は、慢性リンパ性白血病細胞などのヒト細胞のより良好な生着および増殖を支持することが示されている。かかる遺伝子改変齧歯類を作製するための組成物および方法、ならびに候補治療薬剤(例えば、候補抗癌剤)を試験するためのかかる遺伝子改変齧歯類を使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
齧歯類Cxcl13核酸配列とヒトCXCL13核酸配列とを含むヒト化Cxcl13遺伝子を、ゲノムに含む遺伝子改変齧歯類動物であって、前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8様ドメインを含むヒト化Cxcl13ポリペプチドをコードする、遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項2】
前記ヒト化Cxcl13ポリペプチドが、前記ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列を含む、請求項1に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項3】
前記ヒトCXCL13タンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項4】
前記ヒト化Cxcl13タンパク質が、齧歯類シグナルペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項5】
前記齧歯類シグナルペプチドが、内因性齧歯類Cxcl13タンパク質のシグナルペプチドである、請求項4に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項6】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4を含む、請求項1に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項7】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5のコード部分とを含む、請求項1に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項8】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項9】
前記齧歯類Cxcl13核酸配列が、齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項10】
前記齧歯類Cxcl13遺伝子が、内因性Cxcl13遺伝子である、請求項9に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項11】
前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1、およびヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5を含む、請求項1に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項12】
前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、齧歯類Cxcl13プロモーターに作動可能に連結される、請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項13】
前記齧歯類Cxcl13プロモーターが、内因性齧歯類Cxcl13座位の内因性齧歯類Cxcl13プロモーターである、請求項12に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項14】
前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、内因性齧歯類Cxcl13座位に位置する、請求項1~12のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項15】
前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、内因性齧歯類Cxcl13座位での齧歯類Cxcl13ゲノムDNAの前記ヒトCXCL13核酸との置換の結果として形成される、請求項14に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項16】
前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、前記内因性齧歯類Cxcl13座位における前記齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン2~3と、エクソン4のコード部分とを含む齧歯類ゲノムDNAの、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5との置換の結果として形成される、請求項14に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項17】
前記齧歯類が、前記ヒト化Cxcl13遺伝子に対してホモ接合性である、請求項1~16のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項18】
内因性齧歯類Sirpα座位にヒト化Sirpα遺伝子を、内因性齧歯類Baff座位にヒト化Baff遺伝子を、内因性齧歯類April座位にヒト化April遺伝子を、内因性齧歯類IL-6座位にヒト化IL-6遺伝子を、またはそれらの組み合わせを、ゲノムにさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項19】
RAG2遺伝子およびIL-2RG遺伝子が破壊されている、請求項1~18のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項20】
前記齧歯類が、マウスまたはラットである、請求項1~19のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項21】
ゲノムが齧歯類Cxcl13核酸配列とヒトCXCL13核酸配列とを含むヒト化Cxcl13遺伝子を含み、前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8様ドメインを含むヒト化Cxcl13ポリペプチドをコードする、単離された齧歯類組織または細胞。
【請求項22】
前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1、およびヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5を含む、請求項21に記載の単離された齧歯類組織または細胞。
【請求項23】
前記齧歯類細胞が、齧歯類胚性幹細胞である、請求項21または22に記載の単離された齧歯類組織または細胞。
【請求項24】
前記齧歯類が、マウスまたはラットである、請求項21~23のいずれか一項に記載の単離された齧歯類組織または細胞。
【請求項25】
請求項23に記載の齧歯類胚性幹細胞を含む、齧歯類胚。
【請求項26】
遺伝子改変齧歯類を作製する方法であって、
ヒト化Cxcl13遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、齧歯類Cxcl13核酸配列と、ヒトCXCL13核酸配列とを含み、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8様ドメインを含むヒト化Cxcl13ポリペプチドをコードする、改変すること、および、
前記改変された齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製すること、を含む、方法。
【請求項27】
前記改変することが、
前記ヒトCXCL13核酸配列を含む核酸分子を、齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入することと、
前記ヒトCXCL13核酸配列が、齧歯類Cxcl13ゲノムDNAを置換するために内因性Cxcl13座位内に組み込まれており、それによって前記ヒト化Cxcl13遺伝子を形成する、齧歯類ES細胞を取得することと、
前記取得された齧歯類ES細胞から齧歯類動物を生成することと、を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、前記ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一であるポリペプチドをコードする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5のコード部分とを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、前記内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1と、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5とを含み、前記内因性齧歯類Cxcl13座位で前記内因性齧歯類Cxcl13プロモーターに作動可能に連結される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記齧歯類が、マウスまたはラットである、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
標的化核酸構築物であって、
齧歯類Cxcl13座位でヌクレオチド配列に相同である5’ヌクレオチド配列および3’ヌクレオチド配列が隣接する、内因性齧歯類Cxcl13座位で齧歯類Cxcl13遺伝子内に組み込まれるべきヒトCXCL13核酸を含み、
前記齧歯類Cxcl13遺伝子内への前記ヒトCXCL13核酸配列の組み込みが、齧歯類Cxcl13ゲノムDNAの前記ヒトCXCL13核酸配列との置換をもたらし、それによってヒト化Cxcl13遺伝子を形成し、
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるポリペプチドをコードする、標的化核酸構築物。
【請求項35】
前記ヒトCXCL13核酸配列が、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5を含む、請求項34に記載の標的化核酸構築物。
【請求項36】
前記齧歯類がマウスまたはラットである、請求項34または35に記載の標的化核酸。
【請求項37】
疾患を治療するための候補薬剤を試験する方法であって、
前記疾患に罹患しているヒト対象に由来する細胞を、請求項1~20のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物に導入することと、
前記齧歯類動物を候補薬剤と接触させることと、
候補薬剤が前記細胞の減少または除去に有効であるかどうかを分析することと、を含む、方法。
【請求項38】
前記疾患が癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患が白血病である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記候補薬剤が、任意選択的に小分子化合物、核酸分子、または抗体から選択される抗癌化合物である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
ヒト化Cxcl13遺伝子を含む齧歯類ゲノムであって、前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、齧歯類Cxcl13核酸配列およびヒトCXCL13核酸配列を含み、前記ヒト化Cxcl13遺伝子が、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8様ドメインを含むヒト化Cxcl13ポリペプチドをコードする、齧歯類ゲノム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月21日に出願された米国仮特許出願第63/013,148号の優先権の利益を主張するものであり、当該仮特許出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
参照による配列表の援用
【0002】
2021年4月16日に作製され、EFS-Webを介して米国特許商標庁に提出された38357WO_10574WO01_SequenceListingという名称の14KBのASCIIテキストファイルの形態をとる配列表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
齧歯類を含む非ヒト動物は、例えばヒト造血幹細胞、または患者由来の異種移植組織もしくは細胞など、ヒト細胞のレシピエントとして使用されている。生着されたヒト細胞の生存および増殖を支持および促進する改善された非ヒト動物系が望まれ、それにより、関連する疾患の発症および治療薬の開発のより良好な理解が促進される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
齧歯類内因性Cxcl13遺伝子のヒト化は、例えば慢性リンパ性白血病細胞などの、ヒト細胞のより良好な生着および増殖を支持する齧歯類動物を生じさせることが、本開示に従って確立されている。したがって、Cxcl13ヒト化齧歯類動物、このような齧歯類を作製するための組成物および方法、ならびにこのような齧歯類を、候補治療薬剤(例えば、候補抗癌剤)を試験するために使用する方法が本明細書に開示される。
【0005】
一態様では、齧歯類Cxcl13核酸配列とヒトCXCL13核酸配列とを含むヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含む遺伝子改変齧歯類動物であって、このヒト化Cxcl13遺伝子がヒト化Cxcl13ポリペプチドをコードする、遺伝子改変齧歯類動物が本明細書に開示される。
【0006】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13ポリペプチドは、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8様ドメインを含む。一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13ポリペプチドは、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0007】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13ポリペプチドは齧歯類シグナルペプチドを含む。一部のこうした実施形態では、齧歯類シグナルペプチドは、内因性齧歯類Cxcl13タンパク質のシグナルペプチドである。
【0008】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子中のヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4を含む。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一であるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5のコード部分とを含む。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5とを含む。
【0009】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子中の齧歯類Cxcl13核酸配列は、齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1を含む。一部の実施形態では、齧歯類Cxcl13遺伝子は内因性Cxcl13遺伝子である。
【0010】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1と、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5とを含む。
【0011】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、齧歯類Cxcl13プロモーターに作動可能に連結される。一部の実施形態では、齧歯類Cxcl13プロモーターは、内因性齧歯類Cxcl13座位における内因性齧歯類Cxcl13プロモーターである。他の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、任意選択的に内因性齧歯類Cxcl13座位で、ヒトCxcl13プロモーターに作動可能に連結される。
【0012】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13座位以外の座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13座位に位置し、一部のこうした実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13座位における齧歯類Cxcl13ゲノムDNAのヒトCXCL13核酸との置換の結果として形成されてもよい。一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13座位における齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン2~3と、エクソン4のコード部分とを含む齧歯類ゲノムDNAの、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5との置換の結果として形成される。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒト化Cxcl13遺伝子についてヘテロ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒト化Cxcl13遺伝子についてホモ接合性である。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類のゲノムは、内因性齧歯類Sirpα座位にヒト化Sirpα遺伝子を、内因性齧歯類Baff座位にヒト化Baff遺伝子を、内因性齧歯類April座位にヒト化April遺伝子を、内因性齧歯類IL-6座位にヒト化IL-6遺伝子を、またはそれらの組み合わせを、さらに含み得る。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、RAG2およびIL-2RGダブルノックアウト齧歯類などの免疫不全である。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、マウスまたはラットから選択される。
【0017】
別の態様では、単離された齧歯類組織または細胞が本明細書に開示され、そのゲノムは本明細書に記載されるヒト化Cxcl13遺伝子を含む。一部の実施形態では、単離された齧歯類細胞は、齧歯類胚性幹細胞である。齧歯類胚性幹細胞を含む齧歯類胚も開示される。
【0018】
さらなる態様では、本明細書において、ヒト化Cxcl13遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、このヒト化Cxcl13遺伝子が、齧歯類Cxcl13核酸配列およびヒトCXCL13核酸配列を含み、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8様ドメインを含むヒト化Cxcl13ポリペプチドをコードする、改変することと、この改変齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製することと、を含む、遺伝子改変齧歯類を作製する方法が開示される。
【0019】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列を含む核酸分子を齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入し、ヒトCXCL13核酸配列が、内因性齧歯類Cxcl13座位で齧歯類Cxcl13ゲノムDNAを置換するために内因性齧歯類Cxcl13座位内に組み込まれており、それによってヒト化Cxcl13遺伝子を形成する齧歯類ES細胞を取得することによって、および得られた齧歯類ES細胞を使用して齧歯類動物を生成することによって、齧歯類ゲノムが改変される。
【0020】
一部の実施形態では、齧歯類ES細胞に導入されるヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4を含む。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一であるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5のコード部分とを含む。一部の実施形態では、ヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5を含む。
【0021】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Cxcl13座位で形成されるヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1と、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5とを含み、内因性齧歯類Cxcl13座位で内因性齧歯類Cxcl13プロモーターに作動可能に連結される。
【0022】
別の態様では、遺伝子改変動物を作製するのに有用である標的化核酸構築物が開示される。標的化構築物は、内因性齧歯類Cxcl13座位のヌクレオチド配列と相同な5’ヌクレオチド配列と3’ヌクレオチド配列とに隣接する、内因性齧歯類Cxcl13座位で齧歯類Cxcl13遺伝子に組み込まれるべきヒトCXCL13核酸配列を含んでもよく、ここで内因性齧歯類Cxcl13遺伝子へのヒトCXCL13核酸配列の組み込みは、齧歯類Cxcl13ゲノムDNAのヒトCXCL13核酸配列との置換をもたらし、それによってヒト化Cxcl13遺伝子を形成する。一部の実施形態では、標的化構築物のヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4を含む。一部の実施形態では、標的化構築物のヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5のコード部分とを含む。一部の実施形態では、標的化構築物のヒトCXCL13核酸配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5を含む。
【0023】
さらに別の態様では、疾患を治療するための候補薬剤を試験するための方法が開示される。方法は、疾患に罹患しているヒト対象に由来する細胞を、本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類動物に導入すること、齧歯類動物を候補薬剤と接触させること、および候補薬剤が細胞の減少または除去に有効であるかどうかを分析することを含む。齧歯類からの細胞の減少または除去に有効な候補薬剤は、疾患の治療に有用であると考えられる。
【0024】
一部の実施形態では、疾患は、癌、例えば、固形腫瘍または血液癌である。一部の実施形態では、疾患は白血病である。
【0025】
一部の実施形態では、候補薬剤は、任意選択的に小分子化合物、核酸分子(例えば、siRNA)、または抗体から選択される抗癌化合物である。
[図面の簡単な説明]
【0026】
本明細書において援用され、かつ本明細書の一部を成す添付の図面は、いくつかの実施形態を例証し、説明と共に、本開示の組成物および方法を例証する。
【0027】
別段の示唆が無い限り、図は、ヒトエクソン配列には中空のボックス、マウスエクソン配列には閉じたボックス、マウスイントロンには一本線、ヒトイントロンには二重線、選択カセットにはテキストを含む中空のボックス(例えば、Loxp)を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】
図1Aは、マウスCxcl13座位のヒト化のための例示的な戦略を示す。マウスエクソン2~3(これはマウスCxcl13ケモカインドメインをコードする)およびマウスエクソン4のコード部分を含む、内因性マウスCxcl13座位の連続マウスCxcl13ゲノム断片は、ヒトCXCL13エクソン3~4(ヒトCXCL13ケモカインドメインをコードする)と、ヒトCXCL13エクソン5(ヒトCXCL13の3’UTRをエクソン5の一部として含む)とを含むヒトCXCL13ゲノム断片によって置換される。置換は、内因性マウスCxcl13座位でヒト化Cxcl13遺伝子を結果として生じさせ、これはマウスネイティブCxcl13プロモーターを含み、マウスCxcl13エクソン1およびヒトCXCL13エクソン3~5(ヒトCXCL13 3’UTRを含む)に作動可能に連結し、マウスCxcl13の3’UTRが続く。ヒト化に使用されるヒトCXCL13ゲノム断片は、選択カセット(例えば、ユビキチンプロモーターの制御下にあるハイグロマイシン耐性遺伝子、LoxP部位に隣接する)を含んで、正しく標的化されたクローンのスクリーニングを容易にすることができる。
【0029】
【
図1B-C】
図1B~1C。
図1Bは、細菌相同組換えを介してマウスCxcl13細菌人工染色体(BAC)を改変するために生成され、使用される核酸構築物(「BHRドナー」)を示す。
図1Cは、キメラCxcl13遺伝子を含む、得られた改変BACを示す。
【0030】
【
図1D-E】
図1D~1Eは、選択カセットを伴いヒト化Cxcl13座位に対してヘテロ接合性である(1D)、およびカセットが欠失された後(1E)のマウスゲノムを示す。対立遺伝子の改変(MOA)アッセイ(実施例1に記載される)に使用されるプライマーおよびプローブの名称および位置も示されている。
【0031】
【
図1F】
図1Fは、マウスCxcl13(配列番号4)、ヒトCXCL13(配列番号2)、およびヒト化(ハイブリッド)Cxcl13(配列番号8)タンパク質配列のアラインメントを示す。タンパク質のシグナルペプチドおよびケモカインIL-8-様ドメインは、ボックスで示されている。ケモカインIL-8-様ドメイン内の二つのN末端システインは、矢印で示されている。三角形は、イントロンがどこにあるか(位置およびサイズ、上部でマウスおよび下部でヒト)を表し、ケモカインIL-8-様ドメインが、第二および第三のコードエクソン(マウスCxcl13のエクソン2~3またはヒトCXCL13のエクソン3~4)によってコードされることを図示している。
【0032】
【
図2】
図2は、実施例1に記載されるCxcl13ヒト化に対してヘテロ接合性のマウスが、成熟ヒトCXCL13タンパク質を血清中で発現したこと(右)を、対照となるCxcl13ヒト化を伴わないマウス(左)と共に、示す。二つの明確に標的化されたES細胞クローン(クローン1およびクローン2)から生成されたマウスを調べた。各点は、一匹のマウスを表している。すべてのマウスは、非生着SIRPα
hu/hu RAG2
-/-IL2Rγ
-/-バックグラウンド由来であった。
【0033】
【
図3】
図3は、Cxcl13ヒト化マウスを、CLL PDXの宿主として、NSGマウスと比較した結果を示す。各線は、生着されたCLL患者サンプルを一つ表す。CLLサンプル当たり3~4匹の生着されたマウスの平均を示した。SRG-BA6-13マウス(Cxcl13ヒト化に対してヘテロ接合性)は、NSGマウスと比較してCLL細胞の生着および増殖を増強したが、SRG-BA6マウス(Cxcl13ヒト化を伴わない)はそうではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書において、ヒト化Cxcl13遺伝子を含むように遺伝子改変された齧歯類(マウスおよびラットなどであるがこれらに限定されない)が開示される。本明細書に開示される齧歯類は、慢性リンパ性白血病細胞などのヒト細胞のより良好な生着および増殖を支持することが示されている。かかる遺伝子改変齧歯類を作製するための組成物および方法、ならびに候補治療薬剤(例えば、候補抗癌剤)を試験するためにかかる遺伝子改変齧歯類を使用する方法が提供され、さらに以下に記載される。
【0035】
CXCL13遺伝子
C-X-Cモチーフケモカインリガンド13(CXCL13)は、Bリンパ球ケモアトラクタント(BLC)またはB細胞誘引性ケモカイン1(BCA-1)としても知られ、CXCケモカインファミリーに属するタンパク質リガンドである。CXCケモカインの二つのN末端システインは、一つのアミノ酸によって分離され、「X」を有するこの名称で表される。
【0036】
CXCL13は、B細胞および濾胞性BヘルパーT細胞(またはTFH細胞)に対して選択的に走化性であり、ケモカイン受容体CXCR5と相互作用することによってその効果を誘発する。CXCL13は、肝臓、脾臓、リンパ節、およびパイエル板に強く発現し、B細胞活性化、クラス切り替え、および体細胞超変異のために、胚中心にB細胞およびTFH細胞を引き付けるための重要なケモカインであると考えられる。
【0037】
ヒトCXCL13、マウスCxcl13、およびラットCxcl13の核酸配列およびタンパク質配列、ならびに例示的なヒト化Cxcl13の核酸配列およびタンパク質配列を含む例示的な配列が、配列表に開示され、表1に要約される。ヒトCXCL13、マウスCxcl13、およびヒト化(ハイブリッド)Cxcl13タンパク質配列のアラインメントを
図1Fに提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【0038】
Cxcl13ヒト化齧歯類
本明細書に開示される齧歯類は、生殖系列にヒト化Cxcl13遺伝子を含む。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、齧歯類Cxcl13遺伝子のヌクレオチド配列とヒトCXCL13遺伝子のヌクレオチド配列とをゲノムに含むヒト化Cxcl13遺伝子を、含む。本明細書において使用される場合、「遺伝子のヌクレオチド配列」は、遺伝子の全部または一部のゲノム配列、mRNA配列またはcDNA配列を含む。例えば、ヒトCXCL13遺伝子のヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子の全部または一部のゲノム配列、mRNA配列、またはcDNA配列であってもよく、齧歯類Cxcl13遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類Cxcl13遺伝子(例えば、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子)の全部または一部のゲノム配列、mRNA配列、またはcDNA配列であってもよい。齧歯類Cxcl13遺伝子のヌクレオチド配列とヒトCXCL13遺伝子のヌクレオチド配列とは、互いに作動可能に連結され、その結果、齧歯類ゲノム中のヒト化Cxcl13遺伝子は、保存されたタンパク質構造をヒトCXCL13および齧歯類Cxcl13タンパク質と共有するヒト化Cxcl13タンパク質をコードし、すなわち、シグナルペプチドと、N末端C-X-Cモチーフを有するケモカインIL-8-様ドメインを含む成熟タンパク質とからなる。
【0040】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類はヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含み、このヒト化Cxcl13遺伝子は、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8-様ドメインを含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。
【0041】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8-様ドメインは、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるポリペプチドである。一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8-様ドメインは、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なるポリペプチドである。一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと実質的に同一であるケモカインIL-8-様ドメインは、ドメインのNまたはC末端部分のみでヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインとは異なる、例えば、アミノ酸の追加、欠失、または置換を有するが、ドメインのNまたはC末端部分で3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なる、ポリペプチドである。「ドメインのNまたはC末端部分」とは、ドメインのNまたはC末端からアミノ酸5個以内を意味する。
【0042】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインは、配列番号2のアミノ酸30~91を含む。したがって、一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類はヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含み、これは、配列番号2のアミノ酸30~91に記載されるアミノ酸配列と実質的に同一であるケモカインIL-8-様ドメインを含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。特定の実施形態では、遺伝子改変齧歯類はヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含み、これは、そのアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸30~91に記載されるケモカインIL-8-様ドメインを含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。
【0043】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類はヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含み、このヒト化Cxcl13遺伝子は、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列を含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。
【0044】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるポリペプチド配列である。一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と、3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なるポリペプチド配列である。一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、ドメインのNまたはC末端部分のみでヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列とは異なる、例えば、アミノ酸の追加、欠失、または置換を有するが、成熟タンパク質のNまたはC末端部分で3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なる、ポリペプチドである。「成熟タンパク質のNまたはC末端部分」とは、成熟タンパク質のNまたはC末端からアミノ酸5個以内を意味する。
【0045】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列は、配列番号2のアミノ酸23~109を含む。したがって、一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類はヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含み、これは、配列番号2のアミノ酸23~109に記載されるアミノ酸配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列を含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。特定の実施形態では、遺伝子改変齧歯類はヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含み、これは、配列番号2のアミノ酸23~109に記載される成熟タンパク質配列を含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。
【0046】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、ヒトCXCL13タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドを含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。例えば、ヒト化Cxcl13タンパク質は、ヒトCXCL13タンパク質のシグナルペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるシグナルペプチド、またはヒトCXCL13タンパク質のシグナルペプチドと3個、2個、もしくは1個以下のアミノ酸だけ異なるシグナルペプチドを含んでもよい。特定の実施形態では、ヒトCXCL13タンパク質のシグナルペプチドは、配列番号2のアミノ酸1~22に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0047】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13タンパク質などの、齧歯類Cxcl13タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドを含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。例えば、ヒト化Cxcl13タンパク質は、齧歯類Cxcl13タンパク質のシグナルペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるシグナルペプチド、または齧歯類Cxcl13タンパク質タンパク質のシグナルペプチドと3個、2個、もしくは1個以下のアミノ酸だけ異なるシグナルペプチドを含んでもよい。特定の実施形態では、マウスCxcl13タンパク質のシグナルペプチドは、配列番号4のアミノ酸1~21に記載されるアミノ酸配列を含む。他の特定の実施形態では、ラットCxcl13タンパク質のシグナルペプチドは、配列番号6のアミノ酸1~21に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
上述のように、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Cxcl13遺伝子は、ヒトCXCL13遺伝子のヌクレオチド配列(または「ヒトCXCL13ヌクレオチド配列」)と、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のヌクレオチド配列(または「内因性齧歯類Cxcl13ヌクレオチド配列」)とを含む。
【0049】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子によってコードされるヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8様ドメインと実質的に同一であるポリペプチド(例えば、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるポリペプチド、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと、3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なるポリペプチド、あるいは、ドメインのNまたはC末端部分のみでヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインとは異なる、例えば、アミノ酸の追加、欠失、または置換を有するが、ドメインのNまたはC末端部分で3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なる、ポリペプチド)をコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4を含むゲノム断片である。
【0050】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子によってコードされるヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一であるポリペプチド(例えば、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるポリペプチド、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と、3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なるポリペプチド、あるいは、ドメインのNまたはC末端部分のみでヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列とは異なる、例えば、アミノ酸の追加、欠失、または置換を有するが、ドメインのNまたはC末端部分で3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なる、ポリペプチド)をコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、(最後のコードエクソンとなる)エクソン5のコード部分とを含む、ゲノム断片である。
【0051】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、エクソン5の3’UTRを含む、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~エクソン5を含むゲノム断片である。一部のこうした実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のイントロン2の3’部分をさらに含む。
【0052】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子中の齧歯類Cxcl13ヌクレオチド配列は、齧歯類Cxcl13タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるポリペプチド(例えば、齧歯類Cxcl13タンパク質のシグナルペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるポリペプチド、または齧歯類Cxcl13タンパク質タンパク質のシグナルペプチドと3個、2個、または1個以下のアミノ酸だけ異なるポリペプチド)をコードする。一部の実施形態では、齧歯類Cxcl13ヌクレオチド配列は、齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1を含む。特定の実施形態では、齧歯類Cxcl13ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1を含み、一部のこうした実施形態では、齧歯類Cxcl13ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1、およびイントロン1の5’部分を含む。
【0053】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、例えば、内因性Cxcl13座位での内因性齧歯類5’転写制御配列など、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの5’転写制御配列などの、齧歯類Cxcl13制御配列に作動可能に連結され、ヒト化Cxcl13遺伝子の発現が齧歯類Cxcl13 5’制御配列の制御下におかれるようにする。
【0054】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13座位にある。一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、例えば、ランダムな組み込みの結果として、内因性齧歯類Cxcl13座位以外の座位にある。ヒト化Cxcl13遺伝子が内因性齧歯類Cxcl13座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子の不活性化(例えば、全部または一部の欠失)の結果として、齧歯類Cxcl13タンパク質を発現することができない。
【0055】
ヒト化Cxcl13遺伝子が内因性齧歯類Cxcl13座位にある一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13座位における内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のヌクレオチド配列のヒトCXCL13遺伝子のヌクレオチド配列との置換の結果生じ得る。
【0056】
一部の実施形態では、置換される内因性齧歯類Cxcl13座位の内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類Cxcl13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインを実質的にコードする内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、置換される齧歯類ゲノム断片は、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン2~3を含む。
【0057】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Cxcl13座位で齧歯類Cxcl13遺伝子のゲノム断片を置換するヒトCXCL13遺伝子のヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Cxcl13座位で齧歯類Cxcl13遺伝子のゲノム断片を置換するヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Cxcl13座位で齧歯類Cxcl13遺伝子のゲノム断片を置換するヒトCXCL13遺伝子のゲノム断片は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソンの全部または一部を含み、このエクソンは、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインを実質的にコードする(すなわち、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと実質的に同一であるポリペプチドをコードする)。一部の実施形態では、内因性齧歯類Cxcl13座位で齧歯類Cxcl13遺伝子のゲノム断片を置換するヒトCXCL13遺伝子のゲノム断片は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソンの全部または一部を含み、このエクソンは、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列を実質的にコードする(すなわち、ヒトCXCL13タンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一であるポリペプチドをコードする)。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4を含む。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~4と、エクソン5のコード部分とを含む。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~エクソン5(すなわち、エクソン5の3’UTRを含む)を含む。
【0058】
一部の実施形態では、置換後に内因性齧歯類Cxcl13座位に残り、挿入されたヒトCXCL13ヌクレオチド配列に作動可能に連結する内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Cxcl13タンパク質のシグナルペプチドを実質的にコードする。一部の実施形態では、置換後、内因性齧歯類Cxcl13座位に残る内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1を含む。
【0059】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Cxcl13座位の内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン2~3と、エクソン4のコード部分とを含むゲノム断片は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5を含むゲノム断片で置換されている。結果として、ヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類Cxcl13座位で形成され、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン1と、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~5(ヒトエクソン5の3’UTRを含む)とを含み、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子の3’UTRが続く。かかるヒト化Cxcl13遺伝子は、内因性齧歯類シグナルペプチドおよび成熟ヒトCXCL13ポリペプチドを含むヒト化Cxcl13タンパク質をコードする。
【0060】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Cxcl13遺伝子に対しヘテロ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Cxcl13遺伝子に対しホモ接合性である。
【0061】
一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13遺伝子は、齧歯類において、例えば齧歯類の血清において、コードされたヒト化Cxcl13タンパク質の発現をもたらす。一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13タンパク質は、対照齧歯類(例えば、ヒト化Cxcl13遺伝子を有していないが、完全齧歯類内因性Cxcl13遺伝子を含む齧歯類)中の対応する齧歯類Cxcl13タンパク質と類似した、または実質的に同一のパターンで発現され、例えば、齧歯類の肝臓、脾臓、リンパ節、およびパイエル板での発現である。一部の実施形態では、ヒト化Cxcl13タンパク質は、対照齧歯類(例えば、ヒト化Cxcl13遺伝子を有していないが、完全齧歯類内因性Cxcl13遺伝子を含む齧歯類)中の対応する齧歯類Cxcl13タンパク質と同等の、または実質的に同一のレベルで発現され、例えば、それの発現において、50%、75%、または100%を超えて異なることがない。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Cxcl13遺伝子の不活性化(例えば、全部または一部の欠失)または置換(全部または一部)の結果として、齧歯類Cxcl13タンパク質を発現することができない。
【0063】
Cxcl13ヒト化齧歯類における追加の任意の遺伝子特徴
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Sirpa遺伝子、ヒト化Baff遺伝子、ヒト化April遺伝子、ヒト化IL-6遺伝子、またはそれらの組み合わせをさらに含む。内因性齧歯類Sirpα、Baff、April、およびIL-6遺伝子のヒト化は、WO2015/042557A1(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)、WO2015/077071A1(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)、WO2015/077072(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)、およびWO2013/063556A1(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)にそれぞれ記載されており、それらすべてが参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、齧歯類は、これらの追加のヒト化遺伝子のうちの一つ以上を含み、一つ以上の追加のヒト化遺伝子のいずれかに対してホモ接合性またはヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類は、これらの追加のヒト化遺伝子のうちのすべてを含み、これらの追加のヒト化遺伝子の各々に対してホモ接合性またはヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化Cxcl13遺伝子に対してホモ接合性またはヘテロ接合性であり、これらの追加のヒト化遺伝子のうちの一つ以上、またはすべてを含み、これらの追加のヒト化遺伝子のいずれかに対してホモ接合性またはヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化Cxcl13遺伝子に対してホモ接合性であり、これらの追加のヒト化遺伝子の各々に対してホモ接合性である。
【0064】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Sirpa遺伝子をさらに含む。一部の実施形態では、ヒト化Sirpa遺伝子は、ヒトSIRPαタンパク質の細胞外ドメインの全部または一部を含むヒト化Sirpαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Sirpa遺伝子は、リガンド結合(すなわち、CD47への結合)に関与するヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分を含むヒト化Sirpαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Sirpa遺伝子は、ヒトSIRPαタンパク質、例えば、GenBank登録番号NP_001035111.1に記載されるヒトSIRPαタンパク質のアミノ酸残基28~362を含むヒト化Sirpαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3、および4を含む。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、内因性齧歯類Sirpα座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2~4による内因性齧歯類Sirpα座位での内因性齧歯類Sirpα遺伝子のエクソン2~4の置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、内因性齧歯類Sirpα座位に位置し、内因性齧歯類Sirpα遺伝子のエクソン1、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2~4、および内因性齧歯類Sirpα遺伝子のエクソン5~8を含み、この場合においてヒト化Sirpα遺伝子は、内因性齧歯類Sirpα座位で齧歯類Sirpαプロモーターに作動可能に連結される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、内因性齧歯類Sirpαタンパク質を発現することができない(例えば、内因性齧歯類Sirpα遺伝子の破損または置換の結果として)。
【0065】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Baff遺伝子をさらに含む。一部の実施形態では、ヒト化Baff遺伝子は、ヒトBAFFタンパク質の細胞外ドメインの全部または一部を含むヒト化Baffタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Baff遺伝子は、受容体結合に関与するヒトBAFFタンパク質の細胞外部分を含むヒト化Baffタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Baff遺伝子は、ヒトBAFFタンパク質、例えば、GenBank登録番号NP_006564.1に記載されるヒトBAFFタンパク質のアミノ酸残基142~285を含むヒト化Baffタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Baff遺伝子は、ヒトBAFF遺伝子のエクソン3~6を含む。一部の実施形態では、ヒト化Baff遺伝子は、内因性齧歯類Baff座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化Baff遺伝子は、ヒトBAFF遺伝子のエクソン3~6による内因性齧歯類Baff座位での、エクソン3~6と、エクソン7のコード部分とを含む内因性齧歯類BaffゲノムDNAの置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化Baff遺伝子は、内因性齧歯類Baff座位に位置し、内因性齧歯類Baff遺伝子のエクソン1~2、およびヒトBAFF遺伝子のエクソン3~6を含み、この場合においてヒト化Baff遺伝子は、内因性齧歯類Baff座位で齧歯類Baffプロモーターに作動可能に連結される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、内因性齧歯類Baffタンパク質を発現することができない(例えば、内因性齧歯類Baff遺伝子の破損または置換の結果として)。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中にヒト化April遺伝子をさらに含む。一部の実施形態では、ヒト化April遺伝子は、ヒトAPRILタンパク質の細胞外ドメインの全部または一部を含むヒト化Aprilタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化April遺伝子は、受容体結合に関与するヒトAPRILタンパク質の細胞外部分を含むヒト化Aprilタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化April遺伝子は、ヒトAPRILタンパク質、例えば、GenBank登録番号NP_003799.1に記載されるヒトAPRILタンパク質のアミノ酸残基87~250を含むヒト化Aprilタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化April遺伝子は、ヒトAPRIL遺伝子のエクソン2~6を含む。一部の実施形態では、ヒト化April遺伝子は、内因性齧歯類April座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化April遺伝子は、ヒトAPRIL遺伝子のエクソン2~6による、エクソン2~エクソン6のコード部分を含む内因性齧歯類AprilゲノムDNAの置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化April遺伝子は、内因性齧歯類April座位に位置し、内因性齧歯類April遺伝子のエクソン1、およびヒトAPRIL遺伝子のエクソン2~6を含み、この場合においてヒト化April遺伝子は、内因性齧歯類April座位で齧歯類Aprilプロモーターに作動可能に連結される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、内因性齧歯類Aprilタンパク質を発現することができない(例えば、内因性齧歯類April遺伝子の破損または置換の結果として)。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中にヒト化IL-6遺伝子をさらに含む。一部の実施形態では、ヒト化IL-6遺伝子は、ヒトIL-6タンパク質、例えば、GenBank登録番号NP_000591.1に記載されるヒトIL-6タンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化IL-6遺伝子は、ヒトIL-6遺伝子のエクソン1~エクソン5のコード部分を含む。一部の実施形態では、ヒト化IL-6遺伝子は、内因性齧歯類IL-6座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化IL-6遺伝子は、ヒトIL-6遺伝子のエクソン1~エクソン5のコード部分による、エクソン1のコード部分~エクソン5のコード部分を含む内因性齧歯類IL-6ゲノムDNAの置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化IL-6遺伝子は、内因性齧歯類IL-6座位に位置し、内因性齧歯類IL-6遺伝子のエクソン1の非コード部分、ヒトIL-6遺伝子のエクソン1~5のコード部分を含み、この場合においてヒト化IL-6遺伝子は、内因性齧歯類IL-6座位で齧歯類IL-6プロモーターに作動可能に連結される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、内因性齧歯類IL-6タンパク質を発現することができない(例えば、内因性齧歯類IL-6遺伝子の破損または置換の結果として)。
【0068】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類はさらに、RAG2およびIL-2RG遺伝子を破損させ、内因性RAG2またはIL-2受容体ガンマ鎖(「γc」としても知られる)タンパク質を発現することができない。RAG2およびIL-2RGダブルノックアウト(DKO)齧歯類は、既知の免疫不全齧歯類であり(例えば、Traggiai E et al.(2004)Development of a human adaptive immune system in cord blood cell-transplanted mice,Science 304:104-107を参照)、(例えば、Taconic Biosciences,Inc.、ニューヨークから)市販により容易に入手可能である。
【0069】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、ヒト化Sirpα遺伝子、ヒト化Baff遺伝子、ヒト化April遺伝子のうちの一つ以上(例えば、すべて)について、すべてそれぞれの内因性座位で(例えば、上述の置換の結果として)ホモ接合性であり、RAG2遺伝子およびIL-2RG遺伝子の両方についてホモ接合性ヌルである。
【0070】
一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、非限定的な例として、マウス、ラット、およびハムスターを含む。一部の実施形態では、齧歯類はネズミ上科から選択される。一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、ヨルマウス科(例えば、マウス様のハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、New Worldラットおよびマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(純種のマウスおよびラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、ロックマウス、オジロラット、マダガスカルラットおよびマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、およびメクラネズミ科(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、および高原モグラネズミ)から選択された科由来の動物である。一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、純種のマウスまたはラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、およびタテガミネズミから選択される。一部の実施形態では、本開示のマウスは、ネズミ科のメンバー由来のものである。
【0071】
一部の実施形態では、齧歯類は、マウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaから選択されるC57BL系統のマウスである。一部のある実施形態では、齧歯類は、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129/SvJae、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系統からなる群から選択される129系統のマウスである(例えば、Festing et al.,1999,Mammalian Genome 10:836;Auerbach et al.,2000,Biotechniques 29(5):1024-1028,1030,1032を参照)。一部の実施形態では、齧歯類は、129系統およびC57BL/6系統を混合したマウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、前述の129系統の混合、または前述のBL/6系統の混合であるマウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、BALB系統、例えば、BALB/c系統のマウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、BALB系統および別の前述の系統の混合であるマウスである。
【0072】
一部の実施形態では、齧歯類は、ラットである。一部の特定の実施形態では、ラットは、ウィスター(Wistar)ラット、LEA系統、Sprague Dawley系統、フィッシャー(Fischer)系統、F344、F6、およびDark Agoutiから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載のラット系統は、ウィスター(Wistar)、LEA、Sprague Dawley、フィッシャー(Fischer)、F344、F6、およびDark Agoutiからなる群から選択される二つ以上の系統の混合である。
【0073】
遺伝子改変齧歯類の組織および細胞
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Cxcl13遺伝子をゲノムに含む、単離された齧歯類細胞または組織が、本明細書に開示される。
【0074】
一部の実施形態では、組織は、脂肪、膀胱、脳、乳房、骨髄、目、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、膵臓、血漿、血清、皮膚、脾臓、胃、胸腺、精巣、卵子、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0075】
一部の実施形態では、細胞は、樹状細胞、リンパ球(例えば、B細胞またはT細胞)、マクロファージ、および単球から選択される。一部の実施形態では、単離された齧歯類細胞は、齧歯類胚性幹細胞、または齧歯類卵子である。
【0076】
ヒト化齧歯類を作製するための組成物および方法
齧歯類座位に組み込まれることが望ましいヒトCXCL13ヌクレオチド配列を含む標的化ベクター(または核酸構築物)が本明細書に開示される。
【0077】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13タンパク質のケモカインIL-8-様ドメインと実質的に同一であるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、配列番号2のアミノ酸30~91に記載されるアミノ酸配列に実質的に同一であるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13タンパク質の成熟部分と実質的に同一であるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、配列番号2のアミノ酸23~109に記載されるアミノ酸配列に実質的に同一であるポリペプチドをコードする。
【0078】
一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3およびエクソン4を含む。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3と、エクソン4と、エクソン5のコード部分とを含む。一部の実施形態では、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13遺伝子のエクソン3~エクソン5を含む。
【0079】
標的化ベクターはまた、5’および3’相同アームとしても知られる、組み込まれるべきヒトヌクレオチド配列に隣接する5’および3’齧歯類配列を含み、相同組換えと、ヒトヌクレオチド配列の標的齧歯類座位(例えば、内因性Cxcl13座位)への組み込みとを介在する。典型的には、5’および3’の隣接齧歯類配列は、ヒトヌクレオチド配列によって置換されるべき対応する齧歯類ヌクレオチド配列に標的齧歯類座位で隣接する、ヌクレオチド配列である。例えば、齧歯類Cxcl13エクソン2~4を含む齧歯類ゲノム配列が、ヒトCXCL13エクソン3~5を含むヒトゲノム配列と置換される実施形態では、標的化ベクター中の5’隣接配列は、齧歯類Cxcl13遺伝子のイントロン1の5’部分を含んでもよく、3’隣接配列は、齧歯類Cxcl13遺伝子のエクソン4の3’UTRの5’部分を含んでもよい。
【0080】
一部の実施形態では、標的化ベクターは選択マーカー遺伝子を含む。一部の実施形態では、標的化ベクターは一つ以上の部位特異的組換え部位を含む。一部の実施形態では、標的化ベクターは、部位特異的組換え部位に隣接した選択マーカー遺伝子を含み、その結果、選択マーカー遺伝子は、部位間の組換えの結果として欠失され得る。
【0081】
例示的な実施形態では、標的化ベクターは、細菌相同組換えおよびVELOCIGENE(登録商標)技術を使用して齧歯類Cxcl13ゲノムDNAを担持する細菌人工染色体(BAC)クローンから生成される(例えば、U.S.6,586,251、およびValenzuela et al.(2003)Nature Biotech.21(6):652-659を参照)。細菌相同組換えの結果として、齧歯類ゲノム配列は、BACクローンから欠失され、ヒトヌクレオチド配列が挿入され、5’および3’齧歯類相同アームに隣接したヒトヌクレオチド配列を担持する改変BACクローンが得られる。一部の実施形態では、ヒトヌクレオチド配列は、ヒトCXCL13タンパク質の成熟部分、または少なくともケモカインIL-8-様ドメインをコードするcDNA配列、またはヒトゲノムDNAであってもよい。改変BACクローンは、直線化されると、齧歯類胚性幹(ES)細胞に導入することができる。
【0082】
一部の実施形態では、本発明は、改変齧歯類胚性幹(ES)細胞を作るための本明細書に記述された標的化ベクターの利用法を提供する。標的化ベクターは、例えばエレクトロポレーションによって齧歯類ES細胞に導入することができる。マウスES細胞とラットES細胞の両方が、共に当技術分野で説明されている。例えば、マウスES細胞、および遺伝子改変マウスを作製するVELOCIMOUSE(登録商標)法について記述するUS7,576,259、US7,659,442、US7,294,754、およびUS2008-0078000A1(これらすべてはその全体で参照により本明細書に援用される)、ラットES細胞、および遺伝子改変ラットを作製する方法について記述するUS2014/0235933A1(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)、US2014/0310828A1(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)、Tong et al.(2010)Nature 467:211-215、およびTong et al.(2011)Nat Protoc.6(6):doi:10.1038/nprot.2011.338(これらすべてはその全体で参照により本明細書に援用される)を参照されたい、これらを使用して改変齧歯類胚を作製することができ、次いでこれを使用して齧歯類動物を作製することができる。
【0083】
一部の実施形態では、追加の望ましい遺伝的特徴(例えば、ヒト化Sirpa遺伝子、ヒト化Baff遺伝子、ヒト化April遺伝子、ヒト化IL-6遺伝子に対してホモ接合性、ならびに/またはRAG2-/-およびIL-2RG-/-)を既に含むES細胞は、ヒトCXCL13ヌクレオチド配列を含む標的化ベクターとのエレクトロポレーションでレシピエント細胞として使用される。一部の実施形態では、これらの付加的な望ましい遺伝的特徴は、後に導入されてもよい(例えば、ヒト化Cxcl13齧歯類を、一つ以上の望ましい遺伝的特徴を有する第二の齧歯類と交配させることによって)。
【0084】
一部の実施形態において、ゲノムに組み込まれたヒトCXCL13ヌクレオチド配列を有するES細胞を選択することができる。一部の実施形態では、ES細胞は、齧歯類対立遺伝子の喪失および/またはヒト対立遺伝子の獲得アッセイに基づいて選択される。一部の実施形態では、次いで選択されたES細胞を、ドナーES細胞として、VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、それらすべてがその全体で参照により援用される、US7,576,259、US7,659,442、US7,294,754、およびUS2008-0078000A1を参照)、または、両方がその全体で参照により援用される、US2014/0235933A1およびUS2014/0310828A1に記載の方法を使用することにより、前桑実胚期の胚(例えば、8細胞期胚)への注入に使用する。一部の実施形態では、ドナーES細胞を含む胚はインキュベートし、代理母に移植して、F0齧歯類を産生する。ヒトヌクレオチド配列を保有する齧歯類の仔は、齧歯類対立遺伝子の喪失および/またはヒト対立遺伝子の獲得アッセイを使用した、尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型決定により特定することができる。
【0085】
一部の実施形態では、ヒト化遺伝子に対してヘテロ接合性の齧歯類を交配させ、ホモ接合性齧歯類をする生成することができる。
【0086】
本明細書に記載されるCxcl13ヒト化齧歯類は、別の齧歯類と交配または交雑させることができる。したがって、交配の方法ならびにかかる交配から得られた子孫もまた、本開示の実施形態である。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書において上で記載された第一の齧歯類、例えば、ゲノムがヒト化Cxcl13遺伝子を含む齧歯類を、第二の齧歯類と交配させ、ゲノムがヒト化Cxcl13遺伝子を含む子孫齧歯類を生成することを含む方法が提供される。子孫は、交配で使用される第二の齧歯類から遺伝する他の望ましい表現型または遺伝子改変を有してもよい。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、ヒト化Cxcl13遺伝子についてヘテロ接合性である。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、ヒト化Cxcl13遺伝子についてホモ接合性である。
【0088】
一部の実施形態では、ゲノムがヒト化Cxcl13遺伝子を含む子孫齧歯類が提供され、この子孫齧歯類は、ゲノムがヒト化Cxcl13遺伝子を含む第一の齧歯類を、第二の齧歯類と交配させることを含む方法によって生成される。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、ヒト化Cxcl13遺伝子についてヘテロ接合性である。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、ヒト化Cxcl13遺伝子についてホモ接合性である。
【0089】
一部の実施形態では、第二の齧歯類は、ヒト化Sirpα遺伝子、ヒト化Baff遺伝子、ヒト化April遺伝子、ヒト化IL-6遺伝子、またはそれらの組み合わせをゲノムに含む。
【0090】
一部の実施形態では、第二の齧歯類は、RAG2およびIL-2RGダブルノックアウト(DKO)齧歯類(RAG2-/-およびIL-2RG-/-)である。
【0091】
一部の実施形態では、第二の齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Sirpα遺伝子、ヒト化Baff遺伝子、ヒト化April遺伝子、ヒト化IL-6遺伝子を、それぞれの内因性座位に含み、かつRAG2-/-、およびIL-2RG-/-である。
【0092】
ヒト化齧歯類を用いる方法
本明細書に開示される齧歯類は、化合物のヒト疾患治療に対する可能性を特定および試験するための有用なインビボシステムおよび生体材料の供給源を提供する。
【0093】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物を使用して、ヒトCXCL13を標的とする、および/またはCXCL13-CXCR5相互作用を調節する薬剤が開発される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類を使用して、ヒトCXCL13に特異的に結合する候補薬剤(例えば、抗体)をスクリーニングおよび開発する。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物を使用して、薬剤(例えば、抗ヒトCXCL13抗体)の結合プロファイルを決定する。
【0094】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物を使用して、ヒトCXCL13活性を遮断または調節する効果を測定する。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒトCXCL13に結合して阻害する候補薬剤に曝露され、ヒトCXCL13依存性プロセスに対する効果について分析される。例えば、本明細書に開示されるCxcl13ヒト化齧歯類動物は、ヒトCXCL13に結合して阻害する候補薬剤に曝露することができ、ヒト造血CD34+細胞の生着後の胚中心の発達、B細胞発生、および血清ヒトイムノグロブリンレベルに対する候補薬剤の効果について分析される。齧歯類動物は、好ましくは免疫不全動物であり、例えば、Rag2-/- IL-2RG-/-遺伝子型を有する齧歯類であり、より好ましくはRag2-/- IL-2RG-/- Sirpαhu/hu Baffhu/hu Aprilhu/hu IL-6hu/hu 遺伝子型を有する。
【0095】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、患者由来の異種移植組織または細胞の維持のための改善されたインビボシステムを提供する。一部の実施形態では、患者由来の異種移植片細胞は、癌細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は、固形腫瘍の細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は、癌性血液細胞、例えば、白血病、骨髄腫、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を有する患者の血液細胞である。一部の実施形態では、患者由来の異種移植片細胞は、慢性リンパ性白血病(CCL)細胞である。
【0096】
本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒト癌細胞標的化治療薬剤の有効性を評価するために用いることができる。様々な実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒト癌細胞(例えば、CCL細胞)で生着され、このようなヒト癌細胞を標的とする薬剤候補が齧歯類動物に投与される。薬剤の治療有効性は次に、薬剤投与後の齧歯類動物中のヒト細胞をモニタリングすることによって、例えば、齧歯類動物中のヒト癌細胞の成長または転移が、薬剤の投与の結果として阻害されるかどうかを評価することによって、決定される。非ヒト動物で試験できる薬剤には、小分子化合物、すなわち1500kD、1200kD、1000kD、または800ダルトン未満の分子量の化合物、および大分子化合物(タンパク質など、例えば抗体、または抗体の抗原結合性断片)の両方を含み、これらはヒト細胞を標的化する(例えば、結合するおよび/または作用する)ことによってヒト疾患および状態の治療に対して意図する治療効果を持つ。
【0097】
本明細書は、限定するものとして解釈すべきではない以下の実施例により、さらに例示される。全ての引用参考文献(本出願全体で引用される文献参照、発行特許、および公表された特許出願を含む)は、それらの全体が参照により本明細書に明確に援用される。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、本明細書に請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法がどのようになされて評価されるのかに関して、当業者に完全な開示および説明を提供するように示されており、単に例示的であることを意図しており、本開示を限定することを意図していない。
【0099】
実施例1 ヒト化CXCL13マウスの生成
マウスCxcl13座位は、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用してヒト化された(例えば、米国特許第6,586,251号およびValenzuela et al.(2003)High-throughput engineering of the mouse genome couple with high-resolution expression analysis.Nat.Biotech.21(6):652-659を参照のこと。両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。得られたヒト化Cxcl13座位は、内因性マウスCxcl13プロモーターを含有し、マウスCxcl13エクソン1、ヒトCXCL13エクソン3およびエクソン4(ヒトCXCL13ケモカインドメインをコードする)、ならびにヒトCXCL13エクソン5(ヒト3’UTRを含む)に作動可能に連結し、内因性マウスCxcl13 3’UTRが続いた。
図1Aを参照。
【0100】
マウスCxcl13座位をヒト化するために、マウスCxcl13配列に隣接したヒトCXCL13ケモカインドメインをコードする核酸を担持するための初期プラスミドを生成した。より具体的には、この初期プラスミドは、5’から3’に:(i)XhoI部位、(ii)249bpのマウスCxcl13配列(マウスイントロン1の5’部分)(「Up-Box」)、(iii)ヒトCXCL13の、イントロン2の3’部分(150bp)、エクソン3(133bp)、イントロン3(2778bp、AgeI部位およびSalI部位を含む)、エクソン4(81bp)、イントロン4(293bp)、およびエクソン5(847bp、3’UTRを含む)を含むヒトCXCL13核酸配列、(iv)マウスCxcl13の3’UTRの5’部分(140bp、「Down-Box」)、ならびに(v)XhoI部位を含有した。プラスミドはまた、LoxP部位に隣接したユビキチンプロモーターに作動可能に連結されたハイグロマイシン耐性遺伝子を含有する選択カセットを含有した。次いで、このBHRドナープラスミド(細菌相同組換えを意味する「BHR」)をXhoIで消化し、マウスCxcl13配列(Up-BoxおよびDown-Box)に隣接した、ヒトCXCL13核酸配列および選択カセットを含有する断片(本明細書では「BHRドナー」と称される)を放出した。
図1Bを参照。
【0101】
その後、BHRドナーを使用して、マウスCxcl13細菌人工染色体(BAC)クローンRP23-162n18(Thermo-Fisher/Invitrogen)を改変した。細菌相同組換えを介して、マウスエクソン2~3(マウスCxcl13ケモカインドメインをコードする)と、マウスエクソン4のコード部分とを含むマウスCxcl13 BACの連続核酸断片を、BHRドナーからのヒトCXCL13核酸配列で置換し、マウスCxcl13エクソン1、およびヒトCXCL13エクソン3~5(ヒトエクソン3と4の間に挿入されたハイグロマイシンカセットを有する)を含有するキメラヒト化Cxcl13核酸を担持する改変BACを生じさせ、マウスCxcl13の3’UTRが続いた。
図1B~1Cを参照。
【0102】
次いで、改変BACを標的化ベクターとして使用し、hSIRP-アルファ(またはヒトSIRPa)、RAG2-/-IL2Rg-/-改変を含むマウス胚性幹(ES)細胞にエレクトロポレーションした。組み込みの成功は、例えば、Valenzuela et al.,上記に記載される対立遺伝子の改変(MOA)アッセイによって確認された。ヒトCXCL13配列の存在を検出し、マウスCxcl13配列の損失および/または保持を確認するためにMOAアッセイに使用されるプライマーおよびプローブを表2に示し、それらの位置を
図1Dに示す。適正に標的化されたES細胞クローンを選択した後、ハイグロマイシン選択カセットをCreリコンビナーゼによって切除した。カセットの欠失後のヒト化Cxcl13座位を
図1Eに示す。得られたヒト化Cxcl13遺伝子のコード配列とコードされたアミノ酸配列とを、それぞれ配列番号7および配列番号8に明記する。ヒトCXCL13(配列番号2)、マウスCxcl13(配列番号4)、およびヒト化Cxcl13(配列番号8)タンパク質配列のアラインメントを
図1Fに提供する。
【表2-1】
【表2-2】
【0103】
明確に標的化されたES細胞をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法により、前桑実胚(8細胞)期のマウス胚に顕微注入した(例えば、US7,576,259、US7,659,442、US7,294,754、およびUS2008-0078000A1を参照、その全てが参照により本明細書に組み込まれる)。ドナーES細胞を含むマウス胚をインビトロでインキュベートし、次に代理母に移植して、完全にドナーES細胞に由来するF0マウスを産生した。ヒト化Cxcl13遺伝子を保有するマウスを、上述のMOAアッセイを使用した遺伝子型判定により特定した。ヒト化Cxcl13遺伝子に対してヘテロ接合性のマウスを、ホモ接合性に交配させた。
【0104】
Cxcl13ヒト化に対してホモ接合性のマウスがヒト化タンパク質を発現したかを判定するために、ヒト化マウスまたは対照マウス(マウスCXCL13タンパク質を発現するマウス)を、すべて、非生着hSIRP-アルファRag2-/- IL-2RG-/-バックグラウンド上で試験した。ヒト化CXCL13 ES細胞の二つの異なるクローンに由来するマウス(クローン1およびクローン2として指定)を試験した。マウスを安楽死させ、心臓穿刺を介して血液を採取した。血清を調製し、製造業者の指示に従って、ヒトCXCL13 Quantikine ELISA(R&D systems;カタログ番号DCX130)により血清中のヒトCXCL13レベルを評価した。
【0105】
上述のCxcl13ヒト化に対してヘテロ接合性のマウスは、成熟ヒトCXCL13を血清中に発現することが見出された(
図2)。
【0106】
実施例2.ヒト化Cxcl13マウスは、強化されたヒト慢性リンパ性白血病細胞生着を示した。
材料および方法
マウス-NSGマウスをJackson Labsから購入した。SIRPahu/hu Rag2-/- IL2Rg-/-およびヒト化BAFF、APRIL、IL-6(SRG-BA6)を含むマウス、ならびにSIRPαhu/hu Rag2-/- IL2Rg-/-およびヒト化BAFF、APRIL、IL-6、およびCXCL13(SRG-BA6-13)を含むマウスを、ES細胞への連続標的化および交配の組み合わせを用いてRegeneronで生成した。これらのマウスにおけるマウスSirpα、Baff、April、およびIL-6遺伝子のヒト化は、それぞれ、WO2015/042557A1(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)、WO 2015/077071A1(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)、WO2015/077072(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)、およびWO2013/063556A1(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)に記載されている(それらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)。マウスは生後6~16週の間であり、異種移植が実施されたときに、致死量以下(2Gy)で放射線照射された。
【0107】
患者材料--慢性リンパ性白血病(CLL)患者の新鮮な末梢血由来の単核細胞を、勾配遠心分離により単離し、次いで直接使用または凍結保存した。細胞を、製造業者のプロトコルに従ってTraceVilotまたはCFSC(Invitrogen)で標識し、マウスに静脈内注射した。5×107~1×108細胞を各マウスに注射した。
【0108】
フローサイトメトリー-マウスは、異種移植の2週間後に眼窩後方から採血した。赤血球を溶解した。単核細胞を2%ウシ胎児血清と共にPBS中に懸濁し、以下に記載される抗体で染色し、CountBright細胞絶対数計数用ビーズ(Invitrogen)と混合し、フローサイトメトリーに供した。BiolegendまたはeBioscienceからの以下のモノクローナル抗体(mAb)を使用した:抗mCD45(30F11)、抗Ter119、抗hCD45(HI30)、抗hCD3(UCHT1)、抗hCD19(HIB19)、抗hCD5(L17F12)。抗体は、APC、APCCy7、Alexa Fluor 700、BV-605、またはBV-711に直接連結した。データはBD Fortessa X20機器上で取得され、FlowJoプログラムによって分析された。
【0109】
ゲーティング戦略-シングレット生細胞を、hCD45+mCD45-集団に対してゲーティングした。CLL細胞を、hCD19+hCD5+hCD3-としてさらにゲーティングした。増殖するCLL細胞を、TraceViolet-lowまたはCFSE-lowのいずれかとしてさらにゲーティングした。
【0110】
結果
12のCLL患者サンプルの生着を、NSGとSRG-BA6マウスの間で、またはNSGとSRG-BA6-13マウスの間で比較した。各系統のマウス2~3匹を、同じ患者サンプルで異種移植した。異種移植の2週間後、マウスを採血してCLL生着を評価した。CLL細胞頻度(hCD19+hCD5+hCD3-)、およびそれらの増殖状態(TraceViolet-lowまたはCFSE-low)の明らかな差異は、NSG系統とSRG-BA6系統の間では観察されなかった。対照的に、増殖(5つの患者サンプルうち4つ)およびCLL細胞数(3つの患者サンプルのうち3つ)は、NSGマウスと比較して、SRG-BA6-13マウスにおいて顕著に増加した(
図3)。結果は、内因性Cxcl13遺伝子のヒト化が、免疫不全マウスにおけるCLL患者サンプルの生着を強化したことを示す。
【配列表】
【国際調査報告】