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  • 特表-水素ガス生成用の材料及び生成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】水素ガス生成用の材料及び生成装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
C01B3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562406
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 NL2021050257
(87)【国際公開番号】W WO2021215917
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】20170689.2
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595115802
【氏名又は名称】ネーデルランセ オルハニサチエ フォール トゥーヘパスト-ナツールウェーテンシャッペルック オンデルズク テーエヌオー
【氏名又は名称原語表記】Nederlandse Organisatie voor toegepast-natuurwetenschappelijk onderzoek TNO
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン フリート、ラウレンス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フェルボーム、ヴィオラ
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140AA12
4G140AA14
(57)【要約】
本発明は、水素ガス生成用の固体多孔質材料であって、前記材料が、20~75体積%の空隙率を有し、かつ、前記材料の重量を基準として、50~99%の水素化ホウ素化合物、及び1~30%のバインダーを含む組成を有する、材料に関する。本発明のさらなる態様は、前記材料を含むガス生成装置及び航空宇宙用途におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス生成用の固体多孔質材料であって、前記材料が、20~75体積%の空隙率を有し、かつ、前記材料の重量を基準として、50~99%の水素化ホウ素化合物、及び1~30%のバインダーを含む組成を有する、材料。
【請求項2】
前記水素化ホウ素化合物が、アンモニアボラン、マグネシウムボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、及びそれらの組み合わせの群から選択され、好ましくはアンモニアボランである、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記バインダーが、活性バインダー(energetic binder)、好ましくはビニルテトラゾールに基づくポリマー(PVT)、ポリビニルテトラゾール、及びそれらの塩、グリシジルアジドポリマー(GAP)、ポリ(3-ニトラトメチル-3-メチルオキセタン)(ポリ(NiMMo))、ポリ(グリシジルナイトレート)(ポリ(GLyN))、ニトロキシエチルニトラミン(NENA)、特にエチルニトロキシエチルニトラミン及びn-ブチルニトロキシエチルニトラミン(BuNENA)などのアルキルニトロキシエチルニトラミン、ニトロ-ヒドロキシル末端ポリブタジエン(NHTPB)などからなる群から選択される活性バインダー、より好ましくはポリ-5-ビニルテトラゾールナトリウムなどのポリビニルテトラゾール、を含む、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記バインダーが、不活性バインダー、好ましくはケイ酸カリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
前記水素化ホウ素化合物と反応して直接的に間接的に水を生成する化合物又は添加剤を実質的に含まない、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
活性化剤(energizer)、好ましくはハロゲン化アンモニウムを含む活性化剤、より好ましくは塩化アンモニウム及び/又はフッ化アンモニウムを含む活性化剤をさらに含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
ガス生成材料のためのハウジングと、点火器と、を備える水素ガス生成用のガス生成装置であって、前記ガス生成材料が、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の材料であることを特徴とする、ガス生成装置。
【請求項8】
操作時に、生成されたガスの少なくとも90%が前記材料を通過するように、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の材料を含む、請求項7に記載のガス生成装置。
【請求項9】
再突入シールドなどの航空宇宙モジュールであって、好ましくは着陸装置に好適であり、前記航空宇宙モジュールが、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の材料又は請求項7又は請求項8に記載のガス生成装置を備える、航空宇宙モジュール。
【請求項10】
前記ガス生成装置が、生成されたガスのためのベントを備え、前記ベントは、膨張するとその外表面積が増加するように適合された膨張可能な構造に接続されている、請求項9に記載の航空宇宙モジュール。
【請求項11】
着陸装置の表面積を増加させるための、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の材料、ガス生成装置、又は航空宇宙モジュールの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス生成装置の分野にある。特に、本発明は、水素ガス生成用の固体多孔質材料及び例えば航空宇宙用途におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスは、比重量が低いため、(膨張可能な)航空宇宙用途で使用するための典型的な好ましいガスである。加圧ボトルなどの従来の容器に水素ガスを供給することは、一定の欠点を有しており、すなわち、これらは一般に比較的重く、漏れが生じやすい。宇宙空間において重量は特に問題である。したがって、加圧ボトルの代替物として、水素生成化学配合物が特に適している。これらの水素生成化学配合物からの水素ガスの供給は、化合物又は化学材料の分解及び付随ガス生成に基づくものである。
【0003】
水素貯蔵材料は、米国特許出願公開第2006/0237688号明細書に開示されている。この材料は、活性物質粒子と、前記活性粒子間の相対空間を維持するために前記活性粒子を十分に固定するためのバインダーとを含む。この活性物質粒子は、水素を貯蔵することができ、又は水素を吸蔵及び放出することができる。
【0004】
米国特許出願公開第2009/0078345号明細書では、例えば水素ガスを生成するための装置が開示されている。この装置は、第1の材料の基板と第2の材料のコーティングとを含む発熱構造を備える。さらに、前記構造の隣に又は前記構造の内部に配置された第3の材料を含む。第1及び第2の材料を熱的に活性化することによって、これらの材料は互いに反応し、発熱自動継続反応が伝播する。この発熱自動継続反応は、第3の材料を熱分解する。この第3の材料は、例えば水素ガスを生成するためのアンモニアボラン又はホウ化水素であってもよい。しかし、この装置の欠点は、アンモニアボランを使用する場合にはテルミット層(とりわけFe)が必要となり好ましくないことである(下記参照)。さらなる欠点には、生成されたガスが高温であること、及び水素ガスの生成に直接寄与しないかなりの量の材料が存在することが含まれる。
【0005】
別の材料は国際公開第2007/098271号に開示されており、そこには、点火材料及びアンモニアボラン内包体を備えた発熱点火充填材(heat generating pyrotechnic charge)を含む水素燃料要素が記載されている。欠点は、この燃料要素が要素の内側と外側との間の比較的低い圧力差でのみ機能することである。米国特許出願公開第2009/0078345号と同様に、前記燃料要素の更なる欠点には、生成されたガスが高温であること、及び水素ガスの生成に直接寄与しないかなりの量の材料が存在することが含まれる。
【0006】
米国特許出願公開第2011/0033342号明細書では、水素生成化合物を含む複数の燃料ペレットを含む水素ガス生成装置が記載されている。前記ペレットは、アンモニアボランと、水素化リチウムアルミニウム(lithium aluminum hydride)及び塩化アンモニウムの混合物である熱混合物とからなる。ガスの生成は前記熱混合物を加熱することによって開始することができ、前記熱混合物は、その後、アンモニアボランを加熱しアンモニアボランの分解を誘導するのに十分な熱を発生させる。このシステムには、航空宇宙での用途に特に関連する、多くの欠点がある。第1に、分解温度が自己発火温度(auto-ignition temperature)よりはるかに高い(例えば、480℃以上高い)ため、一つのペレットの分解が隣接するペレットの点火に至らないように、個々のペレットを断熱空間で分離しなければならない。この空の断熱空間は、より大きな用途へのシステムのスケールアップにとって望ましくない。第2に、重力の助けによって分解が伝播すると考えられる。約100℃において、アンモニアボランが溶融し、さらなるアンモニアボランの適切な分解のためには、米国特許出願公開第2011/0033342号明細書に記載されているようなシステムは、分解されるアンモニアボランが分解発熱化合物と良好に接触しなければならないことを必要とすると考えられる。この接触は、無重力環境又は低重力環境では失われてしまう。米国特許出願公開第2011/0033342号のシステムのさらなる欠点は、生成した水素ガスが高温であり、一般に、使用前に冷却を必要とし、システムに重量及び体積を追加してしまうことである。そのため、従来の水素ガス生成装置は、航空宇宙での用途にあまり適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の欠点の少なくとも一部を解決し、コンパクトなシステムで低温の水素ガスを製造することができるガス生成装置及び水素ガス生成用の化学材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、ロシア特許出願公開第2108282号明細書及び国際公開第0123327号に記載されているようなアプローチを好適に用いることができることを見出した。ロシア特許出願公開第2108282号明細書では、固体で多孔質のガス生成組成物を有するハウジングを備え、分解前線(decomposition front)が移動するのと同じ方向にガスを前記多孔質組成物に通過させることによって生成ガスが冷却されるように配置された、低温ガス生成装置が記載されている。同様のアプローチは、窒素ガスを生成するための欧州特許出願公開第2070870号明細書に記載されている。ガスは多孔質組成物を通過することによって冷却されるため、生成装置の外部へ放出される熱及び伝達可能な熱の量が低く、複数のガス生成装置は、空の隔離空間を伴わずに互いに隣接して配置されることができる。このアプローチの別の利点は、生成されたガスの流れが重力に依存せず、したがって、分解の伝播も重力に依存しないことである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のガス生成装置の一般的なレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明は、ガス生成材料のためのハウジングと、点火器と、を備える水素ガス生成用のガス生成装置に関する。前記ガス生成材料は、水素ガス生成用の固体多孔質材料であって、前記材料の体積を基準として20~75%の空隙率を有し、かつ、前記材料は、前記材料の重量を基準として、50~99%の水素化ホウ素化合物、及び1~30%のバインダーを含む組成を有する。好ましくは、前記材料は、前記材料の重量を基準として、水素化ホウ素化合物を60~99%、より好ましくは70~99%、最も好ましくは80~99%の量で含む。
【0011】
材料の多孔性は、生成されたガスが材料の細孔を通過することができ、それによってガスを効果的に冷却し、分解の伝播のために材料を十分に加熱することを保証している。空隙率は、貴重な空間が失われるような高すぎる値でないことが好ましい。これは、航空宇宙用途にとって特に望ましくない。一方で、生成装置内の伝播不良又は圧力上昇につながることがあるため、空隙率は、ガス流が妨げられるような低すぎる値であるべきではない。したがって、前記材料の体積を基準として、30~60%の空隙率が好ましいが、約20~75%などのわずかに高くわずかに低い空隙率は依然として適切であり得る。
【0012】
他の水素ガス生成化合物よりもボラン化合物を使用することは、いくつかの理由で有益である。例えば、米国特許出願公開第2011/0033342号明細書及びロシア特許出願公開第2108282号明細書に記載されているような金属水素化物(例えば水素化リチウムアルミニウム)の使用は、金属水素化物と反応して水素ガスを生成することができるFeなどの試薬を必要とする。すなわち、金属水素化物は自己分解性ではない。追加の試薬の存在は、水素ガス生成化合物の利用可能な空間の量を減少させるため、好ましくなく、特に航空宇宙用途にとって好ましくない。さらに、システムの予測不可能な挙動を引き起こし得る水などの副生成物が生成されることがある。水は、例えば、環境に応じて、固体、液体、又は気体であることができ、水の物理的状態はガスの最終組成物に影響を及ぼす。環境を変化させることによって、例えば、太陽光への露出の変化又は地球大気の再突入による航空宇宙用途(下記参照)によって、水は水素ガスの所望の効果及び使用(例えば、生成されたガスの圧力又は体積)に大きな影響を与え得る。
【0013】
本発明にとって好適なボラン化合物としては、アンモニアボラン、マグネシウムボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、及びそれらの組み合わせが含まれる。アンモニアボラン(NHBH)は、他のボラン化合物と比較して、重量に対する水素ガス生成の比がより高いために特に好ましい。最適条件では、分解における各NHBH分子は、3分子の水素(3×H)と1分子の窒化ホウ素(BN)とに分解する。したがって、19.6重量%のアンモニアボランは、水素ガスに潜在的に変換されることができる。これは金属水素化物の可能性よりはるかに高く、この理由から、アンモニアボランは金属水素化物よりも好ましい。
【0014】
組成物中のバインダーは、ホウ素化合物の結合と、組成物の構造的完全性及び固体特性とをもたらす。特定の実施形態では、バインダーは不活性バインダーであり、水素化ホウ素化合物の分解の前、最中、及び後に完全なまま(intact)である。本発明の特定の用途(例えば、燃料セルとしてのガス生成装置及び材料の使用)においては、高純度の水素ガスを生成することが好ましい場合がある。これらの場合では、バインダーの分解は水素ガスの不純物につながる。例えば、樹脂などの炭化水素系バインダーは、揮発性炭化水素化合物及び/又は酸素含有化合物に分解することがあり、これは、次いで水生成を引き起こすことがある。上述したように、水の生成はまた、特に航空宇宙用途にとって不利になり得る。そのため、アルカリ金属ケイ酸塩などの不活性バインダーの使用が好ましいことがある。好適なアルカリ金属ケイ酸塩の例としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、及びケイ酸ナトリウムが挙げられる。ケイ酸カリウムは、特に、他の不活性バインダーに比べてその吸湿性が低いために好ましい。低い吸湿性は、組成物中の低い含水量を維持することを容易にし、好ましい。
【0015】
別の特定の実施形態では、バインダーは、好ましくは活性バインダー(energetic binder)を含み、発熱的に分解する。したがって、バインダーは、結合及び構造的完全性の提供以外に、いくつかの追加の機能を提供する。発熱分解は、水素化ホウ素化合物の分解の伝播を補助することができ、適切な活性バインダーが選択されれば、材料及びガス生成装置の最終用途において有用な追加のガスを生成することができる。この点において、バインダーが、ビニルテトラゾールに基づくポリマー(PVT)、ポリビニルテトラゾール、及びそれらの塩、グリシジルアジドポリマー(GAP)、ポリ(3-ニトラトメチル-3-メチルオキセタン)(ポリ(NiMMo))、ポリ(グリシジルナイトレート)(ポリ(GLyN))、ニトロキシエチルニトラミン(NENA)、特にエチルニトロキシエチルニトラミン及びn-ブチルニトロキシエチルニトラミン(BuNENA)などのアルキルニトロキシエチルニトラミン、ニトロ-ヒドロキシル末端ポリブタジエン(NHTPB)などの活性バインダーを含むことが特に好ましい。好ましい活性バインダーは、比較的多量のN-N結合を有するか、又はテトラゾール基を有し(例えば、ポリビニルテトラゾール(例えば、ポリ-5-ビニルテトラゾール又はそのナトリウム塩)、分解時に比較的多量の窒素ガスを生成し、かつ水又は他の凝縮性化合物を最小量生成するか又は生成しないものである。窒素ガスは、クリーンガスであり、本発明を使用することができる航空宇宙用途においては典型的に凝縮しない。さらに、上述の活性バインダーによって生成された追加のガスは、ガスで満たされた体積を生み出すのを助けることができるため、膨張可能な構造を有するデバイス(下記参照)にとっても有益であり得る。バインダーは分解時に水又は他の凝縮性化合物を生成しないことが好ましいが、特定のバインダーは実際にそれらを少量生成することがあり、その場合には、生成される水の量が組成物の用途に有害とならないように、組成物においてこれらのバインダーを少量に維持することが好ましい。したがって、本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載の活性バインダー及び不活性バインダーの1つ以上の組み合わせを組成物に含めることができる。
【0016】
さらに、組成物は活性化剤(energizer)を含んでもよい。この活性化剤は、水素化ホウ素化合物の分解を可能にする初期活性化エネルギーを提供するために有利に使用されることができる。追加として又は代替として、活性化剤は、分解前線の伝播を維持するためにさらに使用されてもよい。活性化剤は、とりわけ上述の理由により、好ましくは水の生成をもたらさない。したがって、適切な活性化剤は、典型的には酸素を含まないものである。適切な活性化剤は、好ましくは、塩化アンモニウム及び/又はフッ化アンモニウムのなどのハロゲン化アンモニウムを含む。活性化剤は、材料の重量を基準として、5~25%、好ましくは5~10重量%の量で組成物中に存在してもよい。活性化剤の含有量は、より多くのアンモニウムボランを配合物に含有させることができるように比較的少ないことが好ましい。
【0017】
水素化ホウ素化合物、バインダー、及び任意の活性化剤に加えて、組成物は、組成物の特定の特性を調整するための添加剤を含んでもよい。しかし、このような添加剤は、とりわけ上述した理由から、水素化ホウ素又は生成された水素ガスと反応して水を生成しないことが好ましい。したがって、酸化鉄(Fe)又は炭酸ナトリウム(NaCO)などの改質剤は好ましくなく、組成物は本質的にはこれらを含まない。したがって、本発明の材料は、好ましくは、水素化ホウ素化合物と反応して直接的に間接的に水を生成する化合物又は添加剤を実質的に含まない。直接的及び間接的とは、添加剤と水素化ホウ素化合物との反応生成物の反応による間接的な生成を含め、水の生成が防止されることを意味する。本明細書での実質的に含まないとは、改質剤の量が、組成物の用途に悪影響を及ぼさないように十分に少ないことを意味する。特定の実施形態では、組成物は、材料の重量を基準として、15%未満のFe、より好ましくは5%未満のFe、最も好ましくは1%未満のFeを含む。したがって、典型的には、本発明の材料は、水素化ホウ素化合物と反応して直接的に間接的に水を生成する化合物又は添加剤を、材料の重量を基準として、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満の量で含む。
【0018】
固体のガス生成材料は、20~75体積%の空隙率を有する1つ以上の多孔質充填材(porous charge)の形態である。2つ以上のガス生成充填材である場合には、点火装置(点火器)によって第1の充填材が開始され、他の充填材は先行する1つの充填材又は複数の充填材によって連続して点火される。反応(分解)前線は、高温分解ガスが1つの多孔質充填材又は複数の多孔質充填材を通過する間に点火器から離れるように制御された速度で移動し、それによって、1つの充填材又は複数の充填材が暖まりガスが初期充填材温度まで冷却されるように、1つの充填材又は複数の充填材と熱交換する。
【0019】
したがって、生成された水素ガスは、典型的には低温(例えば、初期充填材温度、又は周囲の温度と同様の温度)である。この低温は、典型的には水素ガスが高温水素ガスと比較して比較的反応性が低くなるため、有利であり得る。さらに、低温であることで、ガスは、いくつかの目的のために直接使用されることができる(下記参照)。
【0020】
1つの充填材又は複数の充填材は、別個に製造されたものであり、生成されたガスの大部分、好ましくは90%超、より具体的には95%超の分解ガスが1つの多孔質充填材又は複数の多孔質充填材の細孔を通過するように、ガス生成装置のハウジング内に取り付けられている。
【0021】
1つの充填材又は複数の充填材は、充填材の長さ及び又は幅にわたって変化する組成を有してもよい。
【0022】
点火器は、古典的な点火式であってもよいが、他の(従来の)点火器を使用することも可能である。
【0023】
(第1の)充填材は、ガス生成装置出口から離れた充填材の位置で点火される。点火は、第1の多孔質充填材の頂部で行われる。このようにして、ハウジングは、高温分解ガスを1つの固体多孔質充填材又は複数の固体多孔質充填材に通過させる。これにより、1つの充填材又は複数の充填材が加熱されている間に生成されたガスが冷却される。1つの多孔質充填材又は複数の多孔質充填材の温度を上昇させることによって、制御された分解が維持される。最後の充填材の出口において、一般に、ガスは、最後の多孔質充填材の(初期)温度に達し、その熱を充填材の未燃焼部分と完全に交換した。
【0024】
ガス生成装置が窒化ホウ素などの反応生成物を放出せず、ガスが粒子状物質又は望ましくない化学汚染物質を含まないことを保証するために、ガス生成装置は、窒化ホウ素などの水素化ホウ素残留物と、その他の望ましくない汚染物質と、固体又は液体物質とを除去する特別なフィルタを備えることができる。好適なフィルタは、活性炭、砂、ゼオライト、金属酸化物、及びそれらの組み合わせなどの粒状物質を、互いに混合して又は連続的に含む。
【0025】
本発明のガス生成装置の一般的なレイアウトが示されている図1を参照して本発明を説明する。
【0026】
なお、図は本発明及びその好適な実施形態を理解するための補助として主に示されているものであるため、以下の説明は図の特定の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1に示すガス生成装置は、点火器(1)と、1つ以上の多孔質ガス生成充填材(2)とを含む。この1つ以上の充填材は、多孔質であり、分解ガスがこの1つ以上の充填材を通過することを可能にすることが必須である。さらに、ガス生成装置は、1つ以上のフィルタ(3)を含んでもよい。ガス生成装置は、ハウジング(4)とベント(5)とを有し、第2の点火器を有することができ、この点火器は任意である。さらに、ガス生成装置は中和充填材(neutralizing charge)を有してもよく、この中和充填材も任意である。中和充填材は、例えば、完全に分解されていない水素化ホウ素化合物の残りの種を中和又は活性化するために使用することができ、これらの種を、水素ガス生成がさらに増加することができるように、害の少ない種又は水素ガスに変える。
【0028】
好ましくはないが、充填材は、任意の適切な形状を有してもよく、主充填材よりも直径が小さいか、又は孔の開いた形状でもよい。また、主点火器によって(ある程度の遅延を伴い)中和充填材が点火されるレイアウトも可能である。
【0029】
点火器(1)は、主ガス生成充填材(2)に点火する。点火器は、ガス生成装置によってもたらされるガスの純度に厳しい要求がない場合には、任意の適切で古典的な点火式であることができる。点火器は開始剤を含むことができ、これは、電気的な開始剤、衝撃活性化開始剤、又はレーザ点火される開始剤であってもよい。
【0030】
主ガス生成充填材は、異なる形状であってもよいし、又は好適な形状の充填材のスタックから構成されていてもよい。
【0031】
各スタックは、また、分解速度又はガスの組成を変更するために異なる組成であってもよく、及び/又は、組成は充填材の長さ及び又は幅にわたって変化してもよい。
【0032】
図において充填材は円筒形であり、これにより生成ガスの質量流量は比較的一定である。しかし、充填材を、1つの(円錐台)円錐、2つの円錐台、球形、又は他の適切な形状にすることによって、ガスの質量流量をその特定の用途のために予めプログラムしてもよい。高温ガスは、1つの多孔質充填材又は複数の充填材を通過し、それによって、初期(最初)の低温充填材材料と熱交換しガスを冷却する。
【0033】
次いで、分解生成物は、ガスを精製するために充填材を離れた後に、フィルタに通過させてもよい。フィルタの二次的な機能は、最後の多孔質充填材の一番最後の部分によって生成されるガスを冷却することである。
【0034】
充填材は、容器内でキャスト(cast)することもできるが、別個にキャストし、必要に応じてライナーを使用して、後にハウジング内に取り付けることもできる。
【0035】
ガス生成装置は、分解ガスが常に多孔質充填材(2)を通過することで主充填材と熱交換するようなレイアウトである。充填材のいかなるバイパスも、適切な封止によって、又は充填材がハウジングに結合もしくはケース結合(case-bonded)されるか、もしくはハウジング内に緊密に収められるため、一般に回避される。これは、充填材を加熱して分解反応を維持しながら、分解ガスを周囲温度まで冷却するという、2つの目的を果たす。
【0036】
ガス生成装置及び材料は、燃料セル及びエネルギー送達を含む、様々な用途に使用することができるが、航空宇宙での用途に特に好適であり得る。航空宇宙では、生成されたガスは、例えば、デバイスを膨張させてその表面積を増加させるために使用されることができる。これは、着陸装置に特に好適であることができ、惑星又は月などの天体の雰囲気に突入する際に早期に速度を低下させることができると想定される。現在、着陸装置は、大量の熱を発生する高い摩擦力を同時に伴って高速で地球の大気圏に突入する。大気圏への突入時に早期に、着陸装置(特にその再突入シールド)の外表面積を増加させることにより、摩擦力がそのような高い熱生成をもたらす前の早い段階において速度を低下させることができる。高高度での低い大気圧(例えば、高度20kmでは、大気圧は約5pKa以下)により、比較的少量の水素ガスは、すでに相当な体積及び付随する表面積をもたらすことができる。
【0037】
したがって、本発明のさらなる態様は、好ましくは航空宇宙着陸装置に好適な、遮断システム(breaking system)などの航空宇宙モジュールである。ベントは、膨張するとその外表面積が増加するように適合された膨張可能な構造に接続されることができる。
【0038】
本明細書で使用されるとき、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数形も含むことを意図する。「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目の1つ以上の任意かつ全ての組み合わせを含む。「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」という用語は、記載された特徴の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴の存在又は追加を除外しないと理解される。
【0039】
明瞭かつ簡潔な説明のために、特徴は、同一の実施形態又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されているが、本発明の範囲は、記載された特徴のすべて又は一部の組み合わせを有する実施形態を含むことができると理解される。
図1
【国際調査報告】