(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスの製造方法、アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な、特に3Dの磁性ソフトデバイス、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを符号化する方法、並びにプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスの使用
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20230526BHJP
A61N 2/08 20060101ALI20230526BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20230526BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20230526BHJP
H01F 1/08 20060101ALI20230526BHJP
H01F 1/113 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H01F41/02 D
A61N2/08 A
H01F41/02 G
H01F27/255
H01F1/26
H01F1/08 130
H01F1/113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563411
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2021060313
(87)【国際公開番号】W WO2021219450
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アラパン,ユヌス
(72)【発明者】
【氏名】カラカコル,アルプ
(72)【発明者】
【氏名】シッティ,メティン
【テーマコード(参考)】
4C106
5E040
5E041
5E062
【Fターム(参考)】
4C106AA01
4C106BB07
4C106BB08
4C106CC03
5E040AA01
5E040AA04
5E040AA06
5E040AA11
5E040AB02
5E040AB05
5E040BB03
5E040CA01
5E040HB06
5E040HB07
5E040HB11
5E040NN17
5E041AA01
5E041AA07
5E041AA14
5E041AB12
5E041BB01
5E041BB03
5E041CA01
5E041HB06
5E041HB11
5E041NN17
5E062CD05
5E062CE07
5E062CF02
5E062CG01
(57)【要約】
本発明は、デバイスの一部におけるヤング率が500MPa未満であるプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを製造する方法に関する。本発明は更に、ヤング率が500MP未満である部分を有する、アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な、特に3Dの磁性ソフトデバイス、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを符号化する方法、並びにプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法であって、前記デバイス(10)の1つ以上の部分におけるヤング率が500MPa未満であり、前記方法は、
- 基材と、前記基材内に分散された磁性要素との複合体(12)を形成するステップと、
- 前記複合体(12)を所望の最終形状を有するように成形するステップと、
- 前記複合体(12)に磁場を印加している間、又は磁場を印加しない間に、前記複合体(12)を加熱するステップと、
- 前記複合体(12)に磁場を印加しながら複合体(12)を冷却するステップであって、前記加熱ステップ(12)が、前記複合体(12)を前記磁性要素のキュリー温度に近いか又はそれを上回る温度に加熱することを含む、ステップと、を含む、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項2】
前記加熱ステップは、前記複合体(12)の前記成形ステップの前、及び/又は後、及び/又はその間に実施される、請求項1に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項3】
前記成形ステップ及び前記加熱ステップは同時に実施される、請求項1又は2に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項4】
前記加熱及び/又は冷却ステップの間に印加される前記磁場は、前記磁性要素の室温状態での抗磁場より低い、請求項1から3のいずれか一項に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項5】
前記複合体(12)の前記成形ステップは、前記複合体(12)を所定の形状及びサイズの1つの金型で成形するステップ、前記複合体(12)の1つ以上の部分を同じ形状及びサイズの1つ以上の金型で成形するステップ、前記複合体(12)を異なる形状及びサイズの1つ以上の金型で成形すること、前記複合体(12)をフォトリソグラフィ加工するステップ、前記複合体(12)の1つ以上の部分をフォトリソグラフィ加工するステップ、前記複合体(12)をステレオリソグラフィ加工するステップ、前記複合体(12)の1つ以上の部分をステレオリソグラフィ加工するステップ、前記複合体(12)を3D印刷するステップ、前記複合体(12)の1つ以上の部分を3D印刷するステップ、前記複合体(12)の部分を組み合わせるステップ、前記複合体(12)から材料のセクションを切り出すステップ、前記複合体(12)の部分から材料のセクションを切り出すステップ、及び前述のものの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項6】
前記基材の溶融温度は、前記加熱ステップの間磁性複合体(12)に加えられる最高温度より高い、請求項1から5のいずれか一項に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項7】
前記複合体(12)の前記加熱ステップ及び前記複合体(12)の前記冷却ステップは、前記複合体(12)の異なる領域に対して複数回にわたって順次実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項8】
前記磁化ステップは、前記複合体(12)の各領域が独自の磁化方向を備えるように、前記複合体(12)の各領域についての各冷却ステップに対して実施される、請求項7に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項9】
前記複合体(12)の前記加熱ステップは、光源、特に波長可変レーザを用いて実施されるか、又は
前記複合体(12)の前記加熱ステップは、対流式オーブン、ホットプレート、及びヒートガンのうちの1つを用いて実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項10】
前記複合体(12)の前記加熱ステップ及び前記複合体(12)の前記冷却ステップは、前記複合体(12)の異なる領域に対して全体的に一回実施され、特に
前記磁化ステップは、各領域が独自の磁化方向を備えるように、所望の磁化プロファイルを生成するように構成された磁性マスタを使用することによって、前記複合体(12)の各領域の冷却中に一回実施され、かつ/又は
前記磁場の前記印加ステップは、1mT~10Tの範囲内で選択された大きさを有する磁場を用いて実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を製造する方法。
【請求項11】
ヤング率が500MPa未満である1つ以上の部分を有する、特に請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な、アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な、特に3Dの磁性ソフトデバイス(10)であって、前記プログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス(10)は、複合体(12)から形成された本体(14)を含み、前記複合体(12)は、基材と、前記基材内に分散された磁性要素とを含み、前記本体(14)は、任意の磁化プロファイルを有し、前記本体(14)の異なる領域が、異なる磁化プロファイルを有し、前記プログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス(10)に符号化された情報は、外部場の印加時に、前記本体(14)の前記領域のうちの少なくともいくつかの形状を互いに対して変化させるための形状変化命令を含む、アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)。
【請求項12】
前記基材は、エラストマ、熱可塑性エラストマ、ゴム、デュロプラスチック、熱可塑性樹脂、例えばポリジメチルシロキサン、脂肪族芳香族コポリエステル若しくは変性ポリエステル、又は変性コポリエステル、ポリウレタンエラストマ、シリコーンゴム、天然ゴム、ラテックス、スチレンエチレンブチレンスチレン、ブチルゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリエステル、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、生分解性合成材料、例えば、ポリグリコリドポリラクチド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド);生体材料、例えば、ゼラチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、ヒアルロン酸誘導体、フィブリン糊、エラスチン、セルロース、メチルセルロース、フィブロネクチン、コラーゲン、シルク;ヒドロゲル;イオンゲル;液晶ポリマー、エラストマ又はゲル;形状記憶ポリマー;フォトレジストポリマー、例えばSU-8、生物学的タンパク質、例えば、イカの吸盤にある環歯のタンパク質、生地素材;非磁性金属;ケイ素;シリカ;ガラス;木材;炭素繊維;並びに前述のものの誘導体及び組み合わせからなるメンバーの群から選択される、請求項11に記載のアンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)。
【請求項13】
前記磁性要素は、二酸化クロム、サマリウムコバルト、ネオジム鉄ホウ素、コバルト、フェライト、パーマロイ、炭素鋼、タングステン鋼、アルニコ、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、白金鉄、酸化鉄、バリウムフェライト、マグネタイト、前述のものの組み合わせ、合金又は複合体からなるメンバーの群から選択される、請求項11又は12に記載のアンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に従って製造されたプログラム可能及び/若しくは再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を符号化し、かつ/又は、請求項11から13のいずれか一項に記載のアンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を符号化する方法であって、
- 前記複合体(12)を、その中に分散された前記磁性要素の前記キュリー温度に近いか又はそれを上回る温度まで加熱するステップと、
- 前記複合体(12)を冷却するステップと、
- 冷却の間、又は加熱及び冷却の両方の間外部磁場を印加することによって、前記磁性要素の磁区を再配向するステップと、を含む、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を符号化する方法。
【請求項15】
前記複合体(12)の前記加熱ステップ及び前記複合体(12)の前記冷却ステップは、波長可変レーザを前記複合体(12)の領域上に順次集束させ、前記複合体の更なる領域上に移動する前に任意に前記領域を冷却することによって順次実施されるか、又は
前記複合体(12)の前記加熱ステップ及び前記複合体(12)の前記冷却ステップは、前記複合体(12)の対流式オーブンを使用し、前記複合体(12)に隣接して配置された磁性マスタを用いて複合体(12)を冷却することによって全体的に実施される、請求項14に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を符号化する方法。
【請求項16】
前記磁場の前記印加ステップは、特に、前記複合体(12)の各領域を独自の磁性磁化プロファイルを用いて配向するために各冷却サイクルについて、1mT~10Tの範囲内で選択された大きさを有する磁場を用いて実施される、請求項14又は請求項15に記載の、特に請求項14に記載のプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)を符号化する方法。
【請求項17】
請求項1から10のいずれか一項に従って製造されたプログラム可能及び/若しくは再プログラム可能な磁性ソフトデバイス(10)、並びに/又は請求項11から13のいずれか一項に従うアンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な、特に3Dの磁性ソフトデバイス(10)の、再構成可能なグリッパ、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な音波ガイド、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な電子回路、プログラム可能及び/又は再プログラム可能なアンテナ、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な機械的メタマテリアル、プログラム可能及び/又は再プログラム可能なウェアラブル機器、適応型医療ロボット、並びに前述のものの組み合わせのうちの少なくとも1つとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの1つ以上の部分におけるヤング率が500MPa未満であるプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを製造する方法に関する。本発明は更に、ヤング率が500MP未満である部分を有する、アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な、特に3Dの磁性ソフトデバイス、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを符号化する方法、並びにプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光、温度、湿度、pH、音響、電場、磁場などの外部刺激によって作動することができる形状変化活性物質は、低侵襲医療、埋め込み型機器及びウェアラブル機器、ソフトロボティクス、並びにマイクロマシンへの将来の適用に関して非常に重要である。プログラム可能な形状変形を有する磁気応答ソフトマターは、アンテザードデバイス用のフレキシブル構造の高速で可逆的で複雑なモーフィングに特に有望である。
【0003】
形状プログラム可能な磁性ソフトマターは、ソフトポリマーに埋め込まれた磁性マイクロ/ナノ粒子で構成され、小スケールで動作することができる、複雑な変形及び運動能力を備えたアンテザード(ワイヤレス)デバイス又はロボットの開発に有望である。
【0004】
磁場は、全ての磁区の磁化方向が印加磁場方向と揃うまで、磁性ソフト材料にしてトルクを発生させる。したがって、磁性ソフト材料において磁化方向の空間分布を形成すると、磁場下でプログラム可能な形状変形が可能になる。現在の三次元(3D)離散磁気プログラミング手法は、硬化中の強磁性粒子の物理的配向の調整又はポリマーマトリックス内の超常磁性粒子の整列に依存しており、それによって、製造後の再プログラミングが妨げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解消するためのデバイスを利用可能にすることである。本発明の更に別の目的は、複数の適用例及び用途に使用できる装置を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、デバイスの一部におけるヤング率が500MPa未満であるプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを製造する方法によって満たされ、この方法は、
- 基材と、上記基材内に分散された磁性要素との複合体を形成するステップと、
- 所望の最終形状を有するように複合体を成形するステップと、
- 複合体に磁場を印加している間、又は磁場を印加していない間に複合体を加熱するステップと、
- 複合体に磁場を印加しながら複合体を冷却するステップと、を含み、
加熱ステップは、上記磁性要素のキュリー温度に近いか又はそれを上回る温度まで複合体を加熱することを含む。
【0007】
これに関連して、キュリー温度(Tc)に近い温度を部分磁化に使用することができ、すなわち、サンプルがすでに消磁されている場合、キュリー温度を下回る温度まで加熱するだけで、磁性要素の材料の完全な磁化の2分の1の強度まで磁化することができることに留意されたい。
【0008】
これに関連して、上記磁性要素のキュリー温度に近いか又はそれを上回る温度は、キュリー温度を25%未満下回る温度からキュリー温度を25%上回る温度まで、詳細には、キュリー温度を10%未満下回る温度からキュリー温度を10%上回る温度まで、最も好ましくはキュリー温度を5%未満下回る温度からキュリー温度を5%上回る温度までの範囲内で選択される。このような温度範囲では、すでにこのような温度で消磁された材料についての最大磁化強度の25%~100%の部分磁化を実現することができるので、それぞれの材料の部分磁化が可能になる。
【0009】
例えば、コバルトのキュリー温度は1126℃であるが、CrO2のキュリー温度は120℃である。材料を部分的に磁化すべきかどうかに応じて、キュリー温度の25%の範囲内、すなわち、コバルトのキュリー温度を250℃下回る温度から250℃上回る温度までの範囲で加熱することができる。CrO2を考慮すると、この部分磁化状態は、磁性要素の材料の110℃、詳細にはCrO2のキュリー温度を5~10%下回る110~115℃の範囲ですでに実現可能である。
【0010】
好ましくは、加熱ステップは、基材のそれぞれの複合体の融点未満の温度まで、好ましくは、基材のそれぞれの複合体の融点を5℃下回る温度まで実施される。
【0011】
したがって、本発明は、デバイス内に存在する磁性要素を強磁性粒子のキュリー温度を上回る温度まで加熱することにより、ソフト材料の熱アシスト磁気プログラミングを利用し、それによって、冷却中に外部磁場を用いて磁性要素の磁区を再配向することができる。例えば、磁性ソフトボディ全体にわたる順次熱アシスト磁化によって、3Dの形状変化命令を離散的に符号化し、要求に応じて再プログラムすることができる。
【0012】
したがって、本発明は、平面構造及び三次元構造の三次元磁化プロファイルを符号化することによって、再プログラム可能な形状変化命令をソフト材料に符号化するための多用途方式を利用可能にする。
【0013】
このプログラミング手法は、強磁性粒子のキュリー温度を上回る温度で複合体の磁性ソフト材料を加熱し、冷却中に外部磁場を印加することによってそれらの磁区を再配向することに基づく。
【0014】
熱アシスト磁気プログラミングを使用して、「トンボ」、「棒人間」、非磁性木の枝に付いた磁性葉、マイクロスケールの「花弁」などを含む、多数のフレキシブル構造を構築することができ、三次元構造の離散的な三次元の再プログラム可能な磁化を高時空間分解能(現在約38μm)で行うことが実証されている。
【0015】
以下では、提示された手法の再プログラム可能な磁化機能を使用して、オーセティックメタマテリアル構造の再構成可能な機械的挙動、表面歩行ソフトロボットの調整可能な運動パターン、及びソフトグリッパの適応的な把持挙動を以下で説明するように示すことができる。
【0016】
熱アシスト磁気プログラミングでは、マスタからの分散磁化プロファイルの接触転写を介して高スループットの磁気符号化が更に可能になり、この磁気符号化は、単一のマスタを使用して毎分最大10サンプルまで可能である。ここで説明する熱アシスト磁気プログラミング方式は、前例のない形状モーフィング機能を備えたマルチスケールで再プログラム可能なソフトシステム及びロボットの開発のための豊富な設計空間及びワンショット大量生産能力を確立する。
【0017】
プログラム可能で再プログラム可能なデバイスを利用できるようにすることによって、特定のタスクを実施するようにプログラムすることができる磁気デバイスであって、そのデバイスの改善された機能又は異なる機能を実現するうえでデバイスの部分の微調整が必要であることが判明した場合に再プログラムすることができる磁気デバイスが提供される。このことは以前は、従来技術のデバイスが再プログラム可能ではなかったために不可能であった。
【0018】
これに関連して、磁性ソフトデバイスは、ヤング率が500MPa未満である1つ以上の部分を備えるデバイスであり、いくつかの部分はヤング率が100MPa未満であり得、いくつかの部分はヤング率が場合によっては10MPa未満であり得ることに留意されたい。
【0019】
これに関連して、磁性ソフトデバイス又はデバイスの部分の平均ヤング率は、500MPa未満、特に100MPa未満であり得ることにも留意されたい。
【0020】
このことは、このデバイスが、例えば、純粋に金属又はポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などの硬質プラスチックで作られたデバイスより可撓性が高いことを意味する。
【0021】
これに関連して、磁性要素は、粒子、棒、立方体、ワイヤ、円盤、回転楕円体、ウィスカー、不規則粒子、ヤヌス粒子、及び前述のものの組み合わせのうちの少なくとも1つとすることができることに留意されたい。
【0022】
加熱ステップは、複合体の成形ステップの前、後、及び/又はその間に実施することができる。このようにして、この方法は、必要に応じて、材料及び複合材料を製造する様々な方法に応じて適合させることができる。
【0023】
成形ステップ及び加熱ステップは同時に実施してもよい。このようにして、デバイスの生産時間を効果的に短縮することができる。
【0024】
加熱及び/又は冷却ステップの間印加される磁場は、室温状態での磁性要素の抗磁場を下回ってもよい。このようにして、望ましくない領域の磁化が防止される。
【0025】
これに関連して、印加磁場は、室温状態での磁性要素の抗磁場の1~99.9%の範囲内、特に室温状態での磁性要素の抗磁場の5~50%の範囲内になるように選択されることに留意されたい。これに関連して、印加磁場を少なくとも1mTとすることができることに更に留意すべきである。
【0026】
複合体の成形ステップは、以下のステップ、すなわち、所定の形状及びサイズの1つの金型で複合体を成形するステップ、同じ形状及びサイズの1つ以上の金型で複合体の1つ以上の部分を成形するステップ、異なる形状及びサイズの1つ以上の金型で複合体を成形するステップ、複合体をフォトリソグラフィ加工するステップ、複合体の1つ以上の部分をフォトリソグラフィ加工するステップ、複合体をステレオリソグラフィ加工するステップ、複合体の1つ以上の部分をステレオリソグラフィ加工するステップ、複合体を3D印刷するステップ、複合体の1つ以上の部分を3D印刷するステップ、複合体の部分を組み合わせるステップ、複合体から材料のセクションを切り出すステップ、複合材の部分から材料のセクションを切り出すステップ、並びに前述のものの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0027】
これに関連して、デバイスの様々な部分を互いに別々に製造することができ、その後、異なる部分を互いに結合することができることに留意されたい。例えば、デバイスを8つの別々の部分に成形し、次いでこの8つの部分を互いに接合することができる。このような場合、8つの部分全てを互いに別々に磁化することができる。更に、いくつかの部分は、磁性要素が導入されていない非磁性材料、より硬いか又はより柔らかい材料(ヤング率の観点から)で作られる場合があり、部分は、異なる種類の磁性要素が組み込まれた材料で作られる場合があり、部分は、導電性及び/又は非導電性材料、圧電材料、磁気熱量材料、磁歪材料、光起電力材料、光電子材料、写真製版材料、熱電材料、培養細胞を含む又は含まない生物材料を含むことができ、部分は、前述のものの組み合わせを含むことができる。
【0028】
これらの部分は、成形又は印刷段階でデバイスに組み込むことができ、又は個別に製造された部分を、それぞれの製造後に結合して組み立てることもできる。
【0029】
これに関連して、複合体の異なる部分が異なる磁化配向に加えて異なる大きさの磁化を有するように、複合体の部分がより高い密度の磁性要素を含むように形成することが実現可能である。
【0030】
基材の溶融温度は、加熱ステップの間磁性複合体に加えられる最高温度より高くてもよい。このようにして、デバイスのプログラミング又は再プログラミング時にデバイスが溶融するのが回避される。例えば、基材の溶融温度は、加熱ステップの間磁性複合体に加えられる最高温度より少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、最も好ましくは少なくとも20℃高い。
【0031】
複合体の加熱ステップ及び複合体の冷却ステップは、複合体の異なる領域に対して複数回にわたって順次実施されてもよい。このようにして、1つのデバイスにおいて、同じ加熱デバイス及び磁場発生デバイスによってデバイスの様々な領域全体にわたって走査し、各領域に特定の磁化プロファイルを付与することができる。好ましくは、各領域は、複数の領域の順次走査中に一度だけ走査される。
【0032】
これに関連して、磁性マスタが使用される場合、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを製造する方法の間、複合体の加熱ステップ及び複合体の冷却ステップは、一度のみ実施することができ、これらのステップは、いわゆるワンショットで実施される。磁性マスタは、隣接するセクションにおいて任意の磁場を生成するように構成し、磁化すべきサンプルの近くに配置することができる。次いで、サンプルの全てのセクションを加熱すると、磁化が可能になる。磁性マスタは、このプロセスにおける加熱ステップで到達する温度を上回るキュリー温度を有するべきである。
【0033】
このようにして、1μm~1m、特に20μm~30cmの範囲内で選択されたサイズを有するプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを製造することができる。このようなデバイスは、薬物給送デバイスなどの小型貨物引渡デバイスとして、又は例えばドローンなどを使用して小包を輸送するために使用することができる。
【0034】
磁化のステップは、各領域がそれ自体の磁化方向を備えるように、複合体の各領域用の各冷却ステップについて実施することができる。このようにして、1つのデバイスにおいて、同じ加熱デバイス及び磁場発生デバイスによってデバイスの様々な領域全体にわたって走査し、各領域に特定の磁化プロファイルを付与することができる。
【0035】
複合体の加熱ステップは、平行レーザなどの調整可能な光源を用いて実施されてもよい。調整可能な光源は、デバイスを形成する複合材に存在する磁性要素と確実に繰り返し動作するように構成できる、所定の加熱機能を提供する。複合体の加熱ステップは、超音波、無線周波数電気/電磁放射、及び交番磁場を用いて実施することもできる。
【0036】
複合体の加熱ステップは、対流式オーブン、ホットプレート、及びヒートガンのうちの1つを用いて実施することができる。このような装置は、デバイスのプログラミング及び再プログラミング中にデバイスを局所的又は完全に加熱するために確実に使用することができる。
【0037】
複合体の加熱ステップ及び複合体の冷却ステップは、複合体の異なる領域に対して全体的に一度実施することができ、特に磁化ステップは、各領域が独自の磁化方向を備えるように所望の磁化プロファイルを生成するように構成された磁性マスタを使用することによって複合体の各領域に対して冷却中に一回実施されてもよい。
【0038】
これに関連して、レーザの使用とは別に、局所的及び逐次加熱ステップは、はんだごて先又は他の加熱デバイスなどの接触ベースの装置を使用して行うこともできることに留意されたい。
【0039】
磁場の印加ステップは、1mT~10Tの範囲内で選択された大きさを有する磁場を用いて実施されてもよい。そのような磁場強度は、効率的な方法でそれぞれの領域のプログラミング及び再プログラミングを可能にする。
【0040】
これに関連して、最大印加可能磁場は、選択された磁性材料の抗磁場に依存することに留意されたい。
【0041】
更なる態様によれば、本発明は、ヤング率が500MPa未満である1つ以上の部分を有する、アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイスに関し、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイスは、複合材料で形成された本体を備え、複合材料は、基材と、上記基材内に分散された磁性要素とを含み、本体が任意の磁化プロファイルを有し、本体が異なる磁化プロファイルを有し、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイスに符号化された情報は、外部場の印加時に本体の領域のうちの少なくともいくつかの形状を互いに対して変化させるための形状変化命令を含む。
【0042】
このようなデバイスを用いて実現できる利点は、特定のタスクを実施するようにプログラムすることができるプログラム可能でかつ再プログラム可能な磁気デバイスであって、そのデバイスの改善された機能又は異なる機能を実現するうえでデバイスの部分の微調整が必要であることが判明した場合に再プログラムすることができるプログラム可能でかつ再プログラム可能な磁気デバイスが提供されることである。このことは以前は、デバイスが再プログラム可能ではなかったために不可能であった。
【0043】
基材は、エラストマ、熱可塑性エラストマ、ゴム、デュロプラスチック、熱可塑性樹脂、例えば、ポリジメチルシロキサン、脂肪族芳香族コポリエステル若しくは変性ポリエステル、又は変性コポリエステル、ポリウレタンエラストマ、シリコーンゴム、天然ゴム、ラテックス、スチレンエチレンブチレンスチレン、ブチルゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリエステル、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン;生分解性合成材料、例えば、ポリグリコリドポリラクチド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド);生体材料、例えば、ゼラチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、ヒアルロン酸誘導体、フィブリン糊、エラスチン、セルロース、メチルセルロース、フィブロネクチン、コラーゲン、シルク;ヒドロゲル;イオンゲル;液晶ポリマー、エラストマ又はゲル;形状記憶ポリマー;フォトレジストポリマー、例えばSU-8;生物学的タンパク質、例えば、イカの吸盤にある環歯のタンパク質;生地素材;非磁性金属;ケイ素;シリカ;ガラス;木材;炭素繊維;及び前述のものの誘導体及び組み合わせからなるメンバーの群から選択されてもよい。このような材料を使用して、剛性デバイスと比較して軟性デバイスを提供することができる。
【0044】
磁性要素は、二酸化クロム(CrO2)、サマリウムコバルト(SmCo)、ネオジム-鉄-ホウ素(NdFeB)、コバルト(Co)、フェライト、パーマロイ(NiFe)、炭素鋼、タングステン鋼、アルニコ、鉄、ステンレス鋼、ニッケル(Ni)、鉄白金(FePt)、酸化鉄(Fe2O3)、バリウムフェライト、磁鉄鉱;前述のものの組み合わせ、合金、又は複合体からなるメンバーの群から選択されてもよい。このような材料は、キュリー温度以上に加熱することによってプログラム及び再プログラムが可能である。
【0045】
更なる態様によれば、本発明は、本明細書で説明するプログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイスを符号化する方法に関し、この方法は、
- 複合材料を、その中に分散された磁性要素のキュリー温度に近いか、又はそれを上回る温度まで加熱するステップと、
- 複合材料を冷却するステップと、
- 冷却の間、又は加熱及び冷却の両方の間外部磁場を印加することによって、磁性要素の磁区を再配向するステップと、を含む。
【0046】
粒子などの磁性要素は、キュリー温度に達した後にのみ再整列する。キュリー温度に達し、磁性要素が再整列した後、外部磁場を使用して、磁性要素、すなわち粒子をプログラムし、磁区の所望の新しい配列、すなわちプログラミングを行うことができる。
【0047】
磁場は、加熱ステップの間印加されてもよいが、いずれの場合も、磁性要素の磁区を再配向できるようにするために、冷却ステップの間印加する必要がある。
【0048】
複合体の加熱ステップ及び複合体の冷却ステップは、波長可変光源、すなわち平行レーザを上記複合体の領域上に順次集束させ、上記複合体の更なる領域上に移動する前に任意に上記領域を冷却することによって、順次実施することができる。このようにして、デバイスの各領域に独自の磁化プロファイルをプログラムすることができる。
【0049】
複合体の加熱ステップ及び複合体の冷却ステップは、上記複合体の対流式オーブンを使用し、上記複合体に隣接して配置された磁性マスタを用いて複合体を冷却することによって、全体的に実施することができる。このようなアセンブリは、同一種類のデバイスのバッチ処理に効果的に使用することができる。
【0050】
再プログラミングのステップは、例えば、ジグ及び磁場発生デバイスを備えるか、又は単に所定の配向及び大きさの磁場を生成する磁場発生デバイスを備える磁性マスタを使用し、全てを全体的にワンショットで加熱することによって実現することもできる。磁性マスタは、隣接するセクションにおいて任意の磁場を生成するように構成し、磁化すべきサンプルの近くに配置することができる。次いで、サンプルの全てのセクションを加熱すると、磁化が可能になる。磁性マスタは、このプロセスで加えられる熱を上回るキュリー温度を有するべきである。
【0051】
磁場の印加ステップは、特に、複合体の各領域を独自の磁性磁化プロファイルを用いて配向するために各冷却サイクルについて、1mT~10Tの範囲、特に15mT~3Tの範囲内で選択された大きさを有する磁場を用いて実施されてもよい。
【0052】
この磁化プロファイルは、複合体の他の領域の磁化プロファイルと異なっていても、同じであってもよい。このようにして、デバイスの各部分が1つ以上の特定の運動タイプを実施できるように、デバイスの異なる部分に異なる磁化プロファイルをプログラムすることができる。
【0053】
更なる態様によれば、本発明は、製造されたプログラム可能及び/若しくは再プログラム可能な磁性ソフトデバイスの使用に関し、かつ/又は再構成可能なグリッパ、プログラム可能及び/若しくは再構成可能な音波ガイド、プログラム可能及び/若しくは再プログラム可能な電子回路、プログラム可能及び/若しくは再プログラム可能なアンテナ、プログラム可能及び/若しくは再プログラム可能な機械的メタマテリアル、プログラム可能及び/若しくは再プログラム可能なウェアラブル機器、適応型医療ロボット、並びに前述のものの組み合わせとしてのアンテザードのプログラム可能及び/若しくは再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイスに関する。
【0054】
本発明について、以下の図面を参照しながら詳細に説明する。以下が示される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1a-1i】アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス、並びにサンプルデバイスにおける磁気活性ソフトマターの熱アシスト3D磁気プログラミング及び再プログラミングのために実施されるステップ。
【
図2a-2p】再プログラム可能な様々な磁性ソフトデバイス、並びに初期プログラミング後及び再プログラミング後の外部磁場の印加に対するデバイスの応答。
【
図3a-3h】磁化を再プログラムする前及び後の磁性ソフトデバイスの様々な種類の構造。
【
図4a-4j】マイクロスケールでの磁性ソフトマターの熱アシスト磁気プログラミングの例。
【
図5a-5c】磁性ソフトエラストマの機械的特性。
【
図7a-7c】複合体の一部を形成する磁性ソフトエラストマの光熱応答。
【
図8a-8d】複合体の一部を形成する磁性活性ソフトマターの離散的3D磁化。
【
図9a-9g】デバイスを形成し、磁気作動時に完全な球体に変換される積み重ねられた2つの半球構造。
【
図10a-10j】デバイスの再プログラム可能な磁化。
【
図11a-11b】デバイスとしてのフレキシブル磁性葉の再プログラム可能な磁化。
【
図12】以前の磁性ソフト材料プログラミング手法と現在の研究との性能比較。
【
図13a-13f】デバイスの形状変形の計算モデリング及び検証。
【
図15a-15b】マイクロパターン化されたレーザ加熱(a)及び磁気プロファイルの接触転写用のポリウレタンNdFeB磁石の製造(b)に使用されるフォトマスク設計及び限界寸法。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、アンテザードのプログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス10において、熱アシスト3D磁気プログラミング及び磁気活性ソフトマターの再プログラミングのために実施されるステップを示す。3D磁性ソフトデバイス10は、ヤング率が500MPa未満の1つ以上の部分及び/又は領域を有する。プログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス10は、複合体12から形成された本体14を備える。
図1aでは、本体は棒の形状を有するが、
図1d~
図1iでは、本体14は概して、本体14から延びるいくつかの脚部16、翼部18、及び尾部19の形をした部分16を有するトンボの形状を有する。更に、
図1h及び1iにおいて、本体は、脚部16及びそこから延びる翼部18の形をした部分を有する。
【0057】
脚部16、翼部18及び尾部19は、本体14と同じ複合体12、又は材料組成及び/又は硬度、剛性、磁化プロファイルなどの材料特性が異なる更なる複合体12から形成することができる。本体14の部分又は領域は、磁性要素が埋め込まれていない材料を含むことができる。非ゼロの磁化プロファイルを有するそれぞれの複合体12は、基材と、上記基材内に分散された磁性要素とを含む。
【0058】
3D磁性ソフトデバイス10の本体14、脚部16、翼部18、尾部19、及び任意の更なる形状又はセクション20(例えば、
図8参照)又はフィンガ34(
図3e~
図3h参照)は、任意のプロファイルを有し、3D磁性ソフトデバイス10の異なる領域、すなわち、本体14、脚部16、翼部18、尾部19、セクション20、及び/又はフィンガ34は、異なる磁化プロファイルを有する。プログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス10に符号化された情報は、外部磁場の印加時に3D磁性ソフトデバイス10の領域、すなわち本体14、脚部16、翼部18、尾部19、及びセクション20のうちの少なくともいくつかの形状を互いに対して変化させるための形状変化命令を含む。
【0059】
これに関連して、プログラム可能な及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス10の様々な部分、すなわち、本体14、脚部16、翼部18、尾部19、セクション20、フィンガ34などを形成するために使用される基材は、エラストマ、熱可塑性エラストマ、ゴム、デュロプラスチック、熱可塑性樹脂、例えば、ポリジメチルシロキサン、脂肪族芳香族コポリエステル若しくは変性ポリエステル、又は変性コポリエステル、ポリウレタンエラストマ、シリコーンゴム、天然ゴム、ラテックス、スチレンエチレンブチレンスチレン、ブチルゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリエステル、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、生分解性合成材料、例えば、ポリグリコリドポリラクチド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド);生体材料、例えば、ゼラチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、ヒアルロン酸誘導体、フィブリン糊、エラスチン、セルロース、メチルセルロース、フィブロネクチン、コラーゲン、シルク;ヒドロゲル;イオンゲル;液晶ポリマー、エラストマ又はゲル;形状記憶ポリマー;フォトレジストポリマー、例えばSU-8;生物学的タンパク質、例えば、イカの吸盤にある環歯のタンパク質;生地素材;非磁性金属;ケイ素;シリカ;ガラス;木材;炭素繊維;及び前述のものの誘導体及び組み合わせからなるメンバーの群から選択されてもよい。
【0060】
これに関連して、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な3D磁性ソフトデバイス10の様々な部分、すなわち、本体14、脚部16、翼部18、尾部19、セクション20、並びにフィンガ34などにおいて使用される磁性要素は、二酸化クロム、サマリウムコバルト、ネオジム-鉄-ホウ素、コバルト、フェライト、パーマロイ、炭素鋼、タングステン鋼、アルニコ、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、鉄白金、酸化鉄、バリウムフェライト、磁鉄鉱;前述のものの組み合わせ、合金、又は複合体からなるメンバーの群から選択され得ることに留意されたい。
【0061】
これに関連して、磁性要素は、粒子、ロッド、ワイヤ、ディスク、回転楕円体、ウィスカー、不規則粒子、ヤヌス粒子、及び前述のものの組み合わせの形で存在し得ることに更に留意されたい。
【0062】
図1aの例では、3D磁性ソフトデバイス10の棒形状を有する本体14は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に埋め込まれた磁性CrO
2粒子から構成される磁性ソフトエラストマから形成される。3D磁性ソフトデバイス10を形成するために、以下のステップが実施される:
- 基材と上記基材内に分散された磁性要素との複合体12を、例えば磁性要素、例えば磁気CrO
2粒子をPDMSなどの比較的柔らかい材料と単に混合することによって形成する。
- その後、複合体12を所望の最終形状を有するように成形する。
図1aの例では、所望の形状は、例えばまだ固化していない複合材料を金型に流し込み、そこで固化させることによって形成できる棒の形状である。完全な3D磁性ソフトデバイス10の製造の他の形態は、部分の3D印刷、部分の射出成形、バルク材料からの部分の切り出しなどを含んでもよい。
- 3D磁性ソフトデバイス10の少なくとも一部、すなわち本体14、脚部16、翼部18、尾部19、セクション20及び/又はフィンガ34を成形した後、部分のみ、又は完全な3D磁性ソフトデバイス10を加熱する。複合体12の加熱ステップの間、複合体12に磁場を印加してもしなくてもよい。
- その後、複合体12に磁場を印加しながら複合体12を冷却する。加熱ステップ12は、複合体12を上記磁性要素のキュリー温度に近いか又はそれを上回る温度、すなわち、キュリー温度を10%下回る範囲の温度、好ましくは、CrO
2が磁性要素である場合にはキュリー温度を最大で10℃、特に5℃下回る温度であり、かつ基材の融点を最大で5℃下回る温度で加熱して、基材が溶融するのを防ぐ。
【0063】
これに関連して、加熱ステップは、複合体の成形ステップの前、後、及び/又はその間に実施されてもよいことに留意されたい。
【0064】
これに関連して、成形ステップ及び加熱ステップが同時に実施されてもよいことに更に留意されたい。
【0065】
これに関連して、加熱及び/又は冷却ステップの間印加される磁場は、室温状態での磁性要素の抗磁場を下回り、すなわち、一般的に言えば、磁性要素の抗磁場を25~99%下回ることに更に留意されたい。例えばCrO2の場合、加熱及び/又は冷却ステップの間印加される磁場は、磁性要素の抗磁場を50~95%下回ってもよい。
【0066】
複合体12の成形ステップは、以下のステップ、すなわち、所定の形状及びサイズの1つの金型で複合体12を成形するステップ、同じ形状及びサイズの1つ以上の金型で複合体12の1つ以上の部分を成形するステップ、異なる形状及びサイズの1つ以上の金型で複合体を成形するステップ、複合体12を3D印刷するステップ、複合体12の1つ以上の部分を3D印刷するステップ、複合体12の部分を組み合わせるステップ、複合体12から材料のセクションを切り出すステップ、複合材12の部分から材料のセクションを切り出すステップ、並びに前述のものの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0067】
基材の溶融温度は、基材の相変化を防止するために、加熱ステップの間磁性複合体12に加えられる最高温度より高くてもよい。
【0068】
複合体12の加熱ステップ及び複合体12の冷却ステップは、複合体12の異なる領域22に対して複数回にわたって順次実施されてもよい。代替的に、複合体12の加熱ステップ及び複合体12の冷却ステップは、完全な3D磁性ソフトデバイス10に対して1回実施されてもよい。
【0069】
磁化ステップは、各領域22が独自の磁化方向を備えるように、複合体12の各領域22用の各冷却ステップについて実施されてもよい。代替的に、複合体12の磁化ステップは、ジグ26(
図14e及び
図14f参照)などを使用して完全な3D磁性ソフトデバイス10の移動形状をあらかじめ定義する場合、完全な3D磁性ソフトデバイス10に対して1回実施されてもよい。
【0070】
図1aに示すように、複合体12の加熱ステップは、波長可変レーザ24を用いて実施することができる。このことは、異なる領域22を局所的に加熱し(
図1aの抜粋を参照)、次いで局所的に磁場を印加して、現在の関心領域22を独自の磁化プロファイルでプログラムするために行われる。様々な抜粋に示されているように、異なる領域を様々な磁化プロファイル、又は同じ若しくは同様の磁化プロファイル(例えば、磁化の方向と磁化の大きさを含む)で磁化することができる。
【0071】
これに関連して、各領域22のそれぞれ平均直径及び平均幅は、特定の領域22の加熱を生じさせるために使用される加熱デバイス及びその光学構成要素に応じて、1μm~100mmの範囲、特に20μm~50mmの範囲内で選択できることに留意されたい。
【0072】
磁場の印加ステップは、1mT~10Tの範囲内で選択された大きさを有する磁場を用いて実施されてもよい。
図1aの例では、磁場は、永久磁石30を使用して印加され、3D磁性ソフトデバイス10の領域22を磁化するために他の磁場源が使用されてもよい。
【0073】
領域22がレーザ24によって粒子のキュリー温度に近い温度、好ましくは粒子のキュリー温度を上回る温度に局所的に加熱されると、磁性要素、例えば粒子はその永久磁化を失い、磁性要素の磁化方向は、冷却ステップの間外部磁場を印加することによって再配向される。
【0074】
図1bは、複合体12が1.7秒でCrO
2粒子のキュリー温度(118℃)を上回る温度に加熱され、4秒でこの温度の2分の1まで冷却されたときの磁性ソフトエラストマ、すなわち複合体12の加熱及び冷却曲線の挙動を示す。
【0075】
図1cは、磁性ソフトエラストマ、つまり複合体12が、熱アシスト磁化によって90%の効率で磁化され、外部磁場なしでキュリー温度を上回る温度に加熱するだけで消磁されることを示し、エラーバーは、平均からの標準偏差を表している。
【0076】
図1d~1gは、尾部19及び翼部18(
図1d)及び6本脚16の本体(
図1e)の形状に切り分けられた3D磁性ソフトデバイス10の例を、対応する磁化方向(矢印によって示される)及び面外磁束プロファイル測定結果とともに示す。挿入図は磁束密度強度を示し、スケールバーは2mmである。
【0077】
図1f及び1gは、
図1d及び1eの3D磁性ソフトデバイス10の磁気作動時に、個々の部分16、18、19(脚部16、翼部18、及び尾部19)がプログラムされた磁化方向に従って形状変化したことを示し、挿入図は磁場がない場合の構造の初期形状を示す。
【0078】
図1h及び1iは、磁気作動時に3D階層「トンボ」構造を生成するために積み重ねられた翼部18及び脚部16を有する3D磁性ソフトデバイス10を示す。スケールバーは2mmである。3D磁性ソフトデバイス10の作動は、矢印で示される方向に60mTの磁場を印加することによって実施される。
【0079】
図2aは、「棒人間」構造の磁気作動時の分散3D磁化、面外磁束密度プロファイル測定結果、有限要素シミュレーション、及び実験的形状変化を示す。
【0080】
図2b及び2cは、棒人間構造の形での
図2aの磁性ソフトデバイス10の分散磁化方向をどのように再プログラミングすれば、棒人間構造10が再プログラミング後にその形状を異なる方法で変化させることができるように形状変化を再構成することが可能になるかを示す。矢印は局所的な磁化方向を示す。磁束密度強度及び総変形量のそれぞれも示されており、スケールバーは1mmである。
【0081】
図2d~2jは、個々のユニット、すなわちデバイス10の分散磁化プロファイルを再プログラムすることによって、オーセティックメタマテリアルの機械的挙動をどのように調整できるかを示している。構造10全体の長さ及び幅は、それぞれa及びbによって示される。
【0082】
図2e~2gは、フレキシブルオーセティック構造が、磁気作動方向に応じて長さ及び幅の両方で拡張及び圧縮することを示し、デバイス10が負のポアソン比を有することを示している。
【0083】
図2h~2jは、中央の3つのユニットの磁化プロファイルをどのように再プログラミングすれば、磁気作動方向に関係なく、長さの変化を最小限に抑えながら幅が拡大するかを示す。矢印は局所的な磁化方向を示す。ボックス32は、磁性ソフトデバイス10の再プログラムされた領域22を示し、スケールバーは5mmである。構造の作動は、磁場を示すBの下の矢印によって示される方向に60mTの均一な磁場を印加することによって実施される。
【0084】
図2k~2pは、4本脚16のフレキシブルロボット10の磁化プロファイルをどのように再プログラミングすれば調整可能な運動パターンが実現可能になるかを示す。
図2k及び2nは、異なる変形構成を生成するために脚部16の磁化方向がどのようにプログラムされるかを示し、脚部16を通過する矢印は局所的な磁化方向を示す。
図2l及び2oは、Bの下の矢印によって示される磁気作動(20mT)の際に、脚部16がその磁化方向に従って変形することを示し、スケールバーは1mmである。
【0085】
図2m及び2pは、フレキシブルロボット、すなわちデバイス10を示し、異なる磁化プロファイルが回転磁気作動によって異なる運動パターンを生成している。スケールバーは5mmである。
【0086】
図3a~3dは、3D印刷された非磁性体上に分散された磁性ソフトデバイス10としてのフレキシブル磁性葉の再プログラム可能な磁化を示す。
【0087】
図3b及び3cは、個々の葉の磁化方向が、レーザ24を使用する局所レーザ加熱によってどのようにプログラムされるかを示す。
図3dは、破線で示される葉の2分の1の磁化方向が逆方向に再プログラムされることを示し、スケールバーは5mmである。
図3e~3hは、フィンガの磁化プロファイルを再プログラムすることによって実現可能になる、磁性ソフトデバイス10としての4フィンガ34適応ソフトグリッパを示す。
【0088】
図3f~3hは、球体(直径3mm)(
図3f参照)、棒(直径4mm及び高さ4mm)(
図3g参照)、及び複雑な形態(長さ10.6mm、幅3mm、及び高さ1.75mm)を表す自動車(
図3h参照)を含む異なる形態を有する物体を把持するようにフィンガ34の形状変形が再プログラムされることを示す。矢印は局所的な磁化方向を示し、スケールバーは2mmである。構造の作動は、Bの下の矢印で示される方向に60mTの均一な磁場を印加することによって実施される。
【0089】
図4aは、磁性ソフトデバイス10としての磁性ソフトエラストマ(MSE)の領域22上の、レーザ24からの集束レーザスポットによる走査を示し、この走査によって所望の領域22の正確に制御された局所加熱が生じる。レーザによるデバイス10の所望のパターンでの走査は、その材料の磁化プロファイルをプログラムするために使用される。
【0090】
図4b及び4cは、例示的なソフト構造を示し、すなわち、6枚の花弁(フィンガ34)(幅150μm、長さ500μm、及び厚さ30μm)を有する磁性ソフトデバイス10がマイクロポスト上に配置されている。赤い矢印は花弁の磁化方向を示す。磁気作動(60mT)によって花弁が逆方向に変形した。
図4dは、コリメートされたレーザ34がどのようにして、所望の形状のマイクロパターンを含むマスクを介してワンショットで、目標磁性ソフトエラストマ、すなわち領域22上で所望の形状を加熱できるかを示す。
【0091】
図4e及び4fは、そのようなマイクロパターン化されたレーザ加熱による例示的な磁気的にプログラムされたサンプル10の磁束密度測定結果を示す。最小の磁気パターンは幅が80μmであり、スケールバーは250μmである。
【0092】
図4gは、全体的な加熱を介したワンショットでの所望の磁気プロファイルの接触転写を示す。磁性ソフトエラストマ、すなわち複合体12は、NdFeB磁石と直接接触するように配置され、NdFeB磁石は、キュリー温度がより高く、異なる構成で配置され、CrO
2のキュリー温度を上回る温度で加熱される。NdFeB磁石の磁化方向は、冷却中に磁性ソフトエラストマに転写される。
【0093】
図4h及び
図4iは、様々な形状及び構成のNDFeBマスタ及び磁性ソフトエラストマスレーブの磁束密度測定結果を示しており、スケールバーはそれぞれ500μm及び1mmである。
図4jは、「ミネルバ」の幾何学模様での複雑な磁化プロファイルの接触転写を示しす。挿入図は、磁性ソフトエラストマスレーブの磁束密度プロファイルの拡大図を示す。最小の磁気パターンは幅が38μmである。バーは磁束密度強度を示し、スケールバーはそれぞれ1mm及び250μmである。
【0094】
図5aは、金型深さを25μm~200μmの間で変化させることによって、デバイス10の複合体12の一部を形成する製造された磁性ソフトエラストマの膜厚がどのように制御されるかを示す。
【0095】
図5b及び5cは、150℃を上回るレーザ加熱の前後における、デバイス10の複合体12の一部を形成する磁性ソフトエラストマの弾性係数(E)及び引張歪みを示す。エラーバーは、平均からの標準偏差を表す。
【0096】
図6aは、室温でのCrO
2のヒステリシスループを示す。CrO
2粒子の残留磁化(M
r)は109kA/mであり、保磁力は67mTである。
図6bは、冷却中の印加磁場強度が磁化効率に及ぼす影響を示し、
図6cは、磁化方向に平行及び垂直な方向の熱アシスト磁化効率及び熱アシスト減磁を示す。均一な1.8T磁場下で磁化されたサンプルの磁化値を100%とみなした。エラーバーは、平均からの標準偏差を表す。
図6dは、様々な方向に磁化された矩形磁性ソフトエラストマサンプルの測定された面外磁束密度プロファイルを示す。
【0097】
図7aは、デバイス10の複合体12の一部を形成する磁性ソフトエラストマの平均温度に対するレーザ出力の影響を示す。
図7bは、デバイス10の複合体12の一部を形成する磁性ソフトエラストマの加熱冷却持続時間を示す。
図7cは、CrO
2のキュリー温度を上回る温度に加熱されたスポット径に対するレーザ出力の影響を示す。
【0098】
図8a~8dは、4セグメントリング(
図8a)、8セグメントリング(
図8b)、半球(
図8c)、及び立方体構造(
図8d)の磁気作動時の分散3D磁化、面外磁束密度プロファイル測定結果、有限要素シミュレーション、及び実験的形状変化を示す。スケールバーは1mmであり、作動は黒い矢印で示される方向に60mTの磁場を印加することによって実施された。
【0099】
図9a及び9bは、デバイス10を形成する2つの半球構造のセクション20の磁化方向を示す。
図9cは、挿入図に示すように、周囲において対応する六角形部分を貼り合わせてデバイス10を形成することによって実現される2つの半球構造の手動組み立てを示す。
図9d~9fは、Bの下の矢印で示される方向への磁気作動(60mT)時の閉球面構造の面外圧縮及び形成を示す。
図9gは、閉じた構造を維持しつつ球構造を回転させる回転磁気作動を示す。スケールバーは1mmである。
【0100】
図10a~10dは、オーセティックメタマテリアル内の単一のデバイス10の磁化プロファイルを再プログラムすることによって、どのように構造内に不均一な変形を生じさせるかを示す。矢印は局所的な磁化方向を示す。実線のボックス32は、再プログラムされた領域22を示す。スケールバーは5mmである。
【0101】
図10a~10gは、
図2e(e)、
図10b(f)、及び
図2h(g)に示されたオーセティックメタマテリアルの面外磁束密度プロファイル測定結果を示す。バーは磁束密度強度を示す。
【0102】
図10h~10jは、4本脚のフレキシブルロボットの再プログラムされた磁化プロファイルによって調整可能な運動パターンが実現可能になることを示し、
図10h~10iは、矢印によって示される磁気作動(20mT)時に脚部がその磁化方向に従ってどのように変形するかを示す。スケールバーは1mmである。
図10jは、回転磁場作動下での直線軌道における4脚フレキシブルロボット10の運動を示す。スケールバーは5mmである。
【0103】
図11a及び11bは、デバイス10としてのフレキシブル磁性葉の再プログラム可能な磁化を示す。2つの葉の磁化方向(矢印で示されている)が、残りの葉の反対方向に再プログラムされている。
図10a及び10bは、磁気作動(Bの下の矢印で示される方向に60mT)によって、どのように2つの葉に他の葉と比較して逆の変形がもたらされたかを示す。スケールバーは5mmである。
【0104】
図12は、以前の磁性軟質材料プログラミング手法と現在の研究との性能比較を示す。以前の研究の結果は、以下の文献に記載されている。Hu,W.,Lum,G.Z.,Mastrangeli,M.& Sitti,M.Small-scale soft-bodied robot with multimodal locomotion.Nature 554,81-85,(2018)、Xu,T.,Zhang,J.,Salehizadeh,M.,Onaizah,O.&Diller,E.,Millimeter-scale flexible robots with programmable three-dimensional magnetization and motions.Science Robotics 4,eaav4494,(2019)、Cui,J.et al.Nanomagnetic encoding of shape-morphing micromachines.Nature 575,164-168,(2019)、及びKim,Y.,Yuk,H.,Zhao,R.,Chester,S.A.,& Zhao.X.,Printing ferromagnetic domains for untethered fast-transforming soft materialsNature 558,274-279,(2018)。
【0105】
本明細書に提示された熱アシスト磁気プログラミング方式の磁化能力及び関連する製造能力を、文献におけるソフト材料に対する既存の磁気プログラミング手法の磁化能力及び関連する製造能力と比較する。磁化次元は磁化に利用可能な自由度を示し、3Dは、任意の方向に磁化できることを指す。連続磁化では、隣接するセクションが急激に変化することはできないが、離散磁化では隣接するセクションの独立した磁化が可能になる。再プログラミング可能性において、限定とは、製造中に指定される方向への再プログラミング、及び小スケールでの技術的に困難な手法を指す。作動させた構造とは、様々な手法において実証されるソフトシステムの次元を指す。磁気プログラミング及び製造において、結合とは製造プロセス中の磁気プログラミングを指し、分離とは製造後の磁気プログラミングを指す。大量生産において、限定は、リソグラフィ及びロールツーロール対応方法と比較して、ハイスループット生産能力が制限されることを指す。
【0106】
図13aは、正味の磁気モーメントmを有するサンプルビーム構造を示す。
図13bは、ビーム構造が、d
x、d
y、及びd
zの所定の長さ、並びに正味の磁気モーメントm
i有する、「i」によって示されるより小さいサブセクションに分割されることを示す。
図13cは、サブセクションの自由体ダイアグラムを示し、
【数1】
及びmgはそれぞれ、磁力、直交軸上の磁気トルク、及び重力を表す。
【0107】
図13dは、磁気トルク
【数2】
の分布をサブセクションファセット上の境界荷重
【数3】
として示す。
図13eは、印加された外部磁場に垂直な磁化プロファイルを有するビーム(長さ10mm×幅1mm×厚さ0.17mm)のシミュレーション及び実験結果を示す。
図13fは、印加された外部磁場に応じてシミュレーション及び実験から得られたたわみ角(θ)値を示す。
【0108】
図14a及び14bは、磁化機構36がどのように、電動ステージ38、360°回転可能なNdFeB永久磁石30、3D磁気ホール効果センサ40、及びコリメータ42を有する出力調整可能なファイバ結合NIRレーザ34からなっているかを示す。(c)磁気作動の場合、円盤状の磁石44(直径60mm及び厚さ10mm)を作動プラットフォーム46の下方で垂直方向若しくは水平方向に移動させるか又は回転させた。
図14dは、図示のように配置された16個の永久磁石50(10mm×10mm×10mm)から構成されるハルバッハ配列48を、磁気作動用の一様磁場の生成に使用したことを示す。
【0109】
図14e及び14fは、デバイス10、例えば棒形状のデバイス10をプログラムするために使用できるジグ26を示す。ジグは、プログラム及び/又は再プログラムされるデバイス10の周りに締め付けられる上半分28及び下半分28’を備える。デバイス10が、デバイス10の磁性要素のキュリー温度に近いか又はそれを上回る温度まで加熱されると、
図14eに示されるように磁場Bを印加して、デバイス10の異なる領域22を異なる配向で磁化することができ、異なる配向は、ジグ26の内部構造の形状に依存する。
【0110】
図15a及び15bは、マイクロパターン化されたレーザ加熱(
図15a参照)及び磁気プロファイルの接触転写のためのポリウレタンNdFeB磁石の製造(
図15b参照)に使用される様々なフォトマスク52の設計及び限界寸法を示す。スケールバーは500μmである。
【0111】
上記に示したデバイス10は、プログラム可能な磁性ソフトマターのデバイス10を開示しており、この場合、磁気マイクロ/ナノ粒子がソフトポリマーに埋め込まれている。そのようなデバイス10は、小スケールで動作することができる、複雑な変形及び運動能力を備えたアンテザード(ワイヤレス)デバイス又はロボットの開発に有望である。磁場は、全ての磁区の磁化方向が印加磁場方向と揃うまで、磁性ソフト材料に対するトルクを発生させる。したがって、磁性ソフト材料において磁化方向の空間分布を形成すると、磁場下でプログラム可能な形状変形が可能になる。現在の三次元(3D)離散磁気プログラミング手法は、硬化中の強磁性粒子の物理的配向の調整又はポリマーマトリックス内の超常磁性粒子の整列に依存しており、それによって、製造後の再プログラミングが妨げられる。この作業では、強磁性粒子のキュリー温度を上回る温度に加熱し、冷却中に外部磁場を用いて強磁性粒子の磁区を再配向することによって、ソフト材料の熱アシスト磁気プログラミングを使用する(
図1a)。磁性ソフトボディ全体にわたる順次熱アシスト磁化によって、3Dの形状変化命令を離散的に符号化し、要求に応じて再プログラムすることができる。
【0112】
提示された磁性ソフトエラストマは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマに埋め込まれた平均直径10μmの二酸化クロム(CrO
2)微粒子で構成される。CrO
2は強磁性材料(
図6a)であり、キュリー温度が118℃であり、ほとんどのエラストマの動作温度内で熱アシスト磁気(再)プログラミングを可能にする。
【0113】
CrO
2/PDMS磁性ソフトエラストマ複合シートは、CrO
2粒子とPDMS混合物を異なる厚さの金型で硬化させることによって作製され、厚さ25~200μmの範囲内の磁気弾性フィルムが得られる(
図5a)。
【0114】
これに関連して、デバイス10は、25~200μm厚さの範囲内で選択されたデバイスの少なくともいくつかの部分のデバイス厚さを有することができることに留意されたい。デバイス10は、10μm~10mmの範囲内で選択されたデバイスの少なくともいくつかの部分のデバイス厚さを有することができることも考えられる。
【0115】
調整可能な出力を有するコリメートされた近赤外(NIR)レーザを使用して、制御された温度、加熱冷却時間、及び加熱スポットサイズで磁性ソフトエラストマを局所的かつ正確に加熱する(
図1b及び
図7)。直径1.3mmの加熱スポットでの最短の加熱冷却サイクルは5.7秒で達成される(
図1b)。レーザ加熱された磁性ソフトエラストマスポットは、15mTを超える外部磁場によって磁化され、1.8T磁場下で達成可能な最大磁化と比較して90%より高い磁化効率をもたらす(
図5b)。
【0116】
このような高い磁化効率は、磁区が所望の方向にほぼ完全に再配向され、一方、他の方向の望ましくない磁化が最小限に抑えられることを示す。次いで、同じ材料を、磁場が存在しない状態でCrO
2粒子のキュリー温度を上回る温度に再度加熱することによって、局所的又は完全に消磁することができる(
図1c及び
図5c)。適用される温度は十分にPDMSの硬化及び動作温度範囲内であり、非侵襲的な磁気プログラミング及び再プログラミングが可能になるので、瞬間的な加熱では磁性ソフトエラストマの機械的特性への影響が制限される(
図6b、c)。
【0117】
CrO
2粒子が埋め込まれたソフト材料の熱アシスト磁気プログラミングを例示するために、尾部及び翼部を備えた本体と6本脚の本体の形状に切り分けられた平面磁性ソフトエラストマフィルムが示されている(
図1d~h)。本体及び四肢は、様々な3D方向に離散的に磁化され(
図1d、e)、磁化方向は、
図1d、eの挿入図に示すように、本体及び四肢の磁束密度の面外成分を測定することによって検証される。
【0118】
平面に垂直な60mTの磁場を印加すると、異なる磁化方向を有する構成要素に対する磁気トルクが構成要素を外部場の方向に整列させようとし、構造の3D変形を生じさせる(
図1f、g)。更に、
図1hに示すように、個々の構成要素を積み重ねることによって、マルチコンポーネント3D構造を形成することができる。磁気作動時に脚部及び翼部を備えた本体が積み重ねられ、マルチコンポーネント3D「トンボ」構造が形成される(
図1i)。
【0119】
図8には、磁場下で複雑な3D構造に変換できる様々な3D磁化プロファイルを有する一連の構造が示される。設計された磁化プロファイルを用いた複雑な3D形状変換を予測するために、磁化方向、外部磁場、及び機械的変形を考慮した計算モデルを開発した(
図8)。
【0120】
4セグメントの交番磁化プロファイルを有するリング構造は、磁気作動時に垂直に上昇するプロファイルを生成するが(
図8a)、8セグメントの交番磁化プロファイルを有する同じサイズのリングでは、起伏を有する縁が得られる(
図8b)。3D半球構造は、ヒンジを介して接続された六角形及び五角形のユニットで構成された平面構造の半径方向に対称な磁化によって形成される(
図8c)。更に、磁化プロファイルを補完するこれらの構造のうちの2つを積み重ねると、閉じた3D球体の形成が可能になり、回転磁場を印加することによって、閉じた3D球体を平面上で回転させることもできる(
図9)。更に、手作業による組み立て以外に、成形又は3D印刷技術を使用して、本発明の磁性ソフトエラストマから本質的に3Dの複雑な構造を製造することができる。閉じた構造の形成は、
図1cに示すように、接続されたセグメントの相補的な3D磁化、したがって変形によって実現することもできる。ヒンジを介して接続された平面セグメントは、60mTの磁場下で閉じた立方体を形成するように面内及び面外の両方で磁化される(
図8d)。
【0121】
現場、すなわち研究室では、最適化、多機能動作、及び動的環境への適応にソフトシステムの磁気再プログラミングが不可欠である。熱アシスト磁化方式によって、要求に応じてソフト構造の磁気再プログラミングを容易に行うことができる。
【0122】
図2aでは、本体、肩部、腕部、及び頭部に3D磁化プロファイルが符号化された「棒人間」構造が提示されており、「棒人間」構造は、磁気作動時に3Dの複雑な形状変換を受ける。棒人間構造の磁化プロファイルを再プログラムすると、棒人間構造の頭部及び腕部の曲げを
図2b、cに示すように再構成することができる。内部材料の挙動を局所的に再プログラムすることによっても、高度な活性メタマテリアルの設計及び最適化を可能にすることができる。
【0123】
図2dでは、8つのユニットで構成されたオーセティック機械的メタマテリアル構造が提示されている。
図2eに示すようにユニットを磁気的にプログラムすると、構造全体が長さ及び幅の両方において同時に拡張及び圧縮を施され、したがって、磁気作動方向に応じて負のポアソン比が示される(
図2f、g)。熱アシスト磁気再プログラミング手法を使用して、個々のユニットの磁化プロファイル、したがって、個々のユニットの機械的挙動を再プログラムすることができる(
図10a~g)。構造の中央セクションにおける複数のユニットを再プログラムすると、磁気作動方向に関係なく、長さの変化を最小限に抑えて幅が拡大される(
図2h~j)。
【0124】
容易な再プログラミングの重要性を更に強調するために、各脚に特定の磁化方向が割り当てられた4本脚のフレキシブルロボット(
図2k~p、及び
図10h~j)が示されている。2つの側面における脚部の非対称磁化によって、磁気作動時に右脚のより大きい変形が生じ、円形軌道が生成される(
図2k~m)。ソフトロボットの磁化プロファイルを左右対称及び前後対称に再プログラムすると、磁気作動時に脚が左右対称に変形し、直線軌道が生成される(
図2n~p)。これらの結果は、機械的メタマテリアル及び音響メタマテリアルなどの材料挙動の実験的最適化、及びソフトロボットの運動性能及び特性の調整に、リモートで非侵襲的な再プログラミングを利用できることを示す。
【0125】
熱アシスト磁化は、複雑な3D構造をプログラムするために拡張することもできる。
図3aでは、ブランチの先端に磁性葉が組み立てられた、3D印刷された非磁性木本体が提示されている。葉の磁化方向は、所望の方向に磁場を印加しながらレーザベースの加熱によってプログラムされ、これによって、磁気作動時にプログラムされた葉のみが変形する(
図3b)。
【0126】
全ての磁気葉を同じ方向に順次プログラムすると、全ての葉が同期して同じ方向に作動する(
図3c)。更に、個々の葉の磁化方向を要求に応じて再プログラムして、様々な構成を生成することができ(
図3d及び
図11)、複雑な3D構造に分散された形状変形命令を制御することが可能になる。3D構造の磁気再プログラミングによって、任意の形態の対象との適応的な相互作用のための再構成可能なソフトマシンの開発を可能にすることができる。
【0127】
例として、磁性ソフトエラストマで作られた4本のフィンガで構成される適応的ソフトグリッパ(
図3e)を組み立てた。フィンガの面外磁化によって、フィンガ先端で最大のたわみが生じ、円周の下方に球状物体(直径3mm)を圧搾することができる(
図3f a)。一方、垂直に配置された円筒形の物体(直径4mm、高さ4mm)は、把持フィンガとのより大きい接触面積を必要とし、このことは、
図3gに示す磁化プロファイルを介したフィンガの凹状たわみによって実現される。内側の空洞、及び車輪に起因する下方の隙間を有する、自動車のような物体(長さ10.6mm、幅3mm、高さ1.75mm)のより複雑な例をつかむ動作は、内部の空洞内でのフィンガの外側への変形及び側面でのフィンガの内側への変形によって実現される(
図3h)。既存の手法と比較して、本発明のレーザベースの熱アシスト磁化方式は、任意の磁化プロファイルを有する3D磁気構造の、要求に応じた局所的な再プログラミングを可能にする。
【0128】
マイクロスケールのロボット及び機械は、用途として生物工学から低侵襲医療に至るまで、微視的世界を操作する顕著な潜在性を有する。磁気的にプログラムされた形状変形は、高度な運動及び操作能力を備えた新しい種類のマイクロシステムを実現可能にする。本明細書で紹介する熱アシスト磁化手法は、38μmの空間分解能で微細構造を磁気的にプログラムするようにスケールダウンすることができる(
図4)。
【0129】
ダウンスケーリングのための1つの方法は、顕微鏡対物レンズを使用することによってNIRレーザビームのサイズを200μm未満に絞ることである(
図4a)。集束レーザ加熱を使用することによって、6枚の花弁(幅150μm、長さ500μm、厚さ30μm)を有するソフト構造が相補的な方向に磁化され、花弁同士が同期的に逆方向に変形する(
図4b、c)。マイクロスケールの磁気プログラミングは、磁性ソフトエラストマ上にフォトマスクを配置することによって実現することもできる(
図4d~f)。フォトマスクは、最小寸法が65μm(
図15a)の異なるサイズのマイクロパターン化された領域をレーザが通過するのを可能にし、したがって、パターン化された面積に対する加熱された領域の面積が減少する。フォトマスク対応のマイクロパターン化レーザ加熱を使用することによって、「MPI」という文字が、測定された磁束密度プロファイル(
図4e~f)によって示されるように、磁性ソフトエラストマにおいて異なるサイズで異なる磁化方向に磁気的にプログラムされる。
【0130】
レーザベースの順次加熱及び磁化以外に、磁性ソフトエラストマ(スレーブ)に近接する位置に所望の磁気パターン(マスタ)を生成し、システムを全体的に加熱して、サンプル全体のワンショット磁化を可能にすることによって、磁気プログラミングを実現することもできる(
図4g)。磁性マスタを作製する場合、CrO
2よりキュリー温度が高く、異なる構成において異なるサイズ、形状、及び極性を有するポリウレタンネオジム-鉄-ホウ素(NdFeB)複合磁石が手作業で配置される(
図4h、i)。磁気ワンショットパターン転写は、磁性ソフトエラストマスレーブを磁性マスタと直接接触させ、全体を150℃まで加熱することによって実現される(
図4h、i)。複雑な「ミネルバ」記号(
図4j及び
図15b)を有する磁性マスタも製造された。接触磁気転写によって、磁性マスタの磁気プロファイルが、最小寸法が38μmの磁性ソフトエラストマスレーブにコピーされる(
図4j)。高分解能の2D磁気プログラミングについては、すでにフレキシブルヒンジを介して接続された剛性パネルにおいて示したが、ここで説明する熱アシスト磁化方式では、3D磁気プログラミングが同等の分解能で可能になる(
図12)。
【0131】
ここで紹介する熱アシスト磁気プログラミング方式は、本質的に磁性ソフトエラストマの製造方法から分離されており、材料に符号化された形状変形を高空間分解能で再プログラムするための非侵襲的、つまり非外科的で非破壊的な手段を実現可能にする。容易で非侵襲的な磁気再プログラミングによって、機械的及び光学的なソフトメタマテリアルや切り紙対応構造などのソフトシステムの性能及び挙動の迅速なデータベースの最適化が可能になる。熱アシスト磁気プログラミングの分解能及び速度は、データストレージ業界で使用されている確立された光磁気記録技術を使用して更にスケールダウンすることができる。更に、
図4g~jに示す熱アシスト磁気接触転写は、磁性マスタ及び3軸ステージを利用した高スループットの磁気エンコーディングに適合させることができ、毎分10個のサンプルのプログラミングが可能になる。高スループットの磁気接触転写を更に、所望の磁気プロファイルの複数のマスタ及び機械的パンチャーと組み合わせて、磁性ソフトエラストマサンプルを所望の形状に切断することができ、磁性ソフトマシンの将来の連続ロールツーロール大量生産への道が開かれる(
図12)。
【0132】
ポリマーの動作温度を維持するのに十分に低い設計されたキュリー温度を有する他の磁性粒子、及びより柔らかい材料特性を有する他のポリマー又はゲルを使用して、材料性能を向上させることができる。この説明では、主として軟磁性エラストマを加熱するためのレーザ24について説明するが、エラストマ上に取り付けられた薄い受信機コイルへのリモート電力伝送によって、リモートでの選択的加熱を実現することもできる。AC磁場の印加は、磁性ソフトエラストマをプログラムするための空間的にパターン化されたDC磁場とともに、全体的な加熱に使用することもできる。リモートの磁気プログラミング及び再プログラミングによって、閉ざされ制限された動的環境においてソフトアンテザードシステムの適応操作を可能にすることができる。再プログラム可能な複雑な形状変換機能を備えた磁気応答性のマルチスケールソフトシステムは、医療用ロボット、ウェアラブルな健康管理機器、生物模倣マイクロロボットにおける多様な用途に影響を与える。
【0133】
複合体を調製するには、次の手順を実施することができる。
【0134】
磁性エラストマによって形成された複合体12の調製:
CrO2粉末(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)をオーブン内で300℃で3時間加熱した。250mLの亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)溶液(https://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/sigald/243973?lang=de&region=DEから)を脱イオン(DI)水(50g/L、Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)と混同した溶液において22gの焼成したCrO2粒子を分散させ、時々撹拌しながら65℃で16時間保持した。次いで、粒子を1LのDI水で5回洗浄し、メッシュサイズが20μmの試験ふるいを使用して濾過した。残りのCrO2粒子をドラフト内に2日間放置して、残水を除去した。得られたフィルムを、乳棒及び乳鉢を使用して掻き取り粉砕して、最終的な乾燥し安定化したCrO2粒子を得た。
【0135】
乾燥し安定化したCrO2粒子をシロキサンベース(Dow Corning、Midland,MI)に1:2(CrO2:シロキサンベース)の質量比で添加し、パスツールピペットによって5分間せん断混合することによってCrO2/PDMS磁性ソフトエラストマ複合体を調製した。次に、架橋剤をプレポリマー混合物に、架橋剤対混合物の質量比を1:10にして添加し、更に5分間せん断混合した。次いで、混合物を、平坦なガラス基板に付着させた所望の厚さ(25μm~200μm)の2つのテープで構成された金型に流し込み、90℃で4時間硬化させた。UVレーザシステム(LPKF ProtoLaser U3、Garbsen,Germany)を使用して、磁性エラストマフィルムから所望の形状を切り出した。磁性エラストマフィルムの厚さを光学プロフィルメータ(VK-X250、キーエンス、Osaka,Japan)によって測定した。0.005s-1の歪み速度での非加熱及び加熱ドッグボーン状サンプルの一軸引張試験によって(Instron 5942、Instron、Norwood,MA)、磁性エラストマの弾性係数(E)及び歪みを実験的に特徴付けた。
【0136】
磁性ソフトデバイス10が形成された後、熱アシスト磁気(再)プログラミングを開始することができる。
【0137】
コリメータ(808nm、133~457mW、Edmund Optics、Barrington,NJ)を備えた出力調整可能なファイバ結合NIRレーザを使用することによって、CrO
2エラストマフィルム、すなわちデバイス10の領域22の局所加熱を実現した。7cmの距離から赤外線サーマルカメラ(ETS320、Wilsonville,OR)を使用して磁性エラストマフィルムの温度及び加熱スポットサイズを測定した。サンプルを100秒間加熱することによって磁性ソフトエラストマの加熱時間及び冷却時間を測定した。サンプルを自動化ステージ(Axidraw v3、Evil Mad Scientist、Sunnyvale,CA)上に配置し、360°回転できるNdFeB磁石(直径20mm及び厚さ20mm、Supermagnete、Gottmadingen,Germany)を加熱及び冷却中に磁性ソフトエラストマの下方に配置し、CrO
2粒子の磁化方向を揃えた(
図14a、b)。
【0138】
印加される磁場の大きさと方向を3D磁気ホールセンサ(TLE493D-W2B6、Infineon Technologies、Munich,Germany)を使用して継続的に監視し、所望の磁化方向に従って調整した。
【0139】
磁性ソフトエラストマの磁化を振動サンプル磁力計(VSM;MicroSense、Lowell,MA)で測定した。直径1mmの円形サンプルをサンプルホルダー上に配置し、1.5T~-1.5Tの範囲の外部場においてCrO
2のヒステリシスループを取得した(
図5a)。残留磁化をサンプル体積で割ることによって、デバイス10としての磁性ソフトエラストマの磁化を9.8kA/mと計算した。磁化効率を、VSMにおいて熱磁化サンプルと1.8T磁場下で磁化されたサンプルとの磁化の比率として決定した。磁気光学センサ(MagViewS、Matesy、Jena,Germany)を介してサンプル表面で磁束密度を測定することによって、磁気的にプログラムされたサンプルの磁化プロファイルを特徴付けた。
【0140】
デバイス10を設計し、次いで設計を開発されたモデルと比較するために、形状変形の計算モデリングを実施した。この目的のために、磁気作動下での形状変化の予測モデリングに有限要素解析を使用する(
図13)。
【0141】
COMSOL構造力学モジュール(COMSOL、Burlington,MA)を「LiveLink」を介してカスタムMATLABスクリプト(MathWorks、Natick,MA)リンクする。サンプル形状を所定の磁化プロファイルを有するより小さいサブセクションに分割し、MATLABスクリプトを磁力及びトルクの計算に使用し、機械的変形をCOMSOLにおいて解消する。
【0142】
反復ごとに、3Dでの準静的平衡状態に達するまで、各サブセクションの更新された磁化方向ベクトルに従って磁力及びトルクを再計算した。全てのシミュレーションについて、E及び磁化には、実験的に測定された200kPa及び9.8kA/mを使用した。磁性ソフトエラストマの密度を3.89g/cm3と計算した。ポアソン比を0.49と仮定する。
【0143】
形成されたデバイス10を磁気的に作動させるために、円筒形のNdFeB磁石44(直径60mm、厚さ10mm、Supermagnete、Gottmadingen,Germany)を使用した。磁気作動のために、磁石44をプラットフォーム46上に配置されたデバイス10に向けて垂直方向又は水平方向に案内した(
図14c)。一様場下での磁気作動では、16個の永久磁石50(10mm×10mm×10mm)で構成されたハルバッハ配列48を使用した(
図14d)。動的作動では、サンプルの回転作動のためにホールバッハ配列48を回転させた。
【0144】
デバイス10がプログラムされると、ミクロンスケールでの磁気(再)プログラミングを実施することができる。ミクロンスケールでの磁気(再)プログラミングでは、集束レーザ加熱、フォトマスク対応のマイクロパターン化されたレーザ加熱、及び全体的な加熱による接触磁気転写の3つの異なる手法を採用した。集束レーザ加熱については、顕微鏡対物レンズ(20×、NA0.5、Carl Zeiss、Oberkochen,Germany)をレーザ24ビーム経路に配置し、ビームサイズを200ミクロン未満に縮小することによって実現した。
【0145】
フォトマスク対応のマイクロパターン化されたレーザ加熱では、マイクロスケールパターンを含むフォトマスク(
図15a)をサンプルの上に20μmの隙間を空けて配置した。サンプルは、マイクロパターン化された領域のみを通過できるレーザビームにさらされたときに、フォトマスク上で利用可能なパターンの形状で局所的に加熱された。
【0146】
磁気プロファイルの接触転写では、異なる形状のポリウレタンNdFeB磁性複合体を利用した。最初に、シリコンウェハ上の望ましい形状のSU-8ポジ型テンプレートをフォトリソグラフィ及び湿式化学現像によって作製した。ポジ型テンプレートの製造では、SU-8 100(Microchem Inc.、Newton,MA)をシリコンウェハ上に配設し、2500rpmで45秒間スピンコーティングし、ホットプレート上において95℃で30分間プリベークし、室温まで冷却した。次に、製造されUV光(365nm、13mW/cm2)に15秒間さらされる所望のパターンを含むフォトマスクを有するマスクアライナ(MJB4 Mask Aligner、SUSS MicroTec、Garching,Germany)内に、フォトレジストでコーティングされたウェハを装填する。次いで、フォトレジストでコーティングされたウェハを95℃で10分間ベークし、室温まで冷却し、化学現像剤(mr-600、micro resist technology、Berlin,Germany)にわずかに撹拌しながら約10分間浸漬させ、後でIPAで約2分間すすいだ。最後に、微細加工されたテンプレートをホットプレート上において100℃で30分間ベークした。次いで、シリコーンゴム(Mold Max 20、Smooth-On、Macungie,PA)をポジ型テンプレート上に注ぎ、室温で4時間硬化させ、剥離して、ネガ型テンプレートを得た。その後、ポリウレタンプレポリマー(Smooth-Cast 310/1、Smooth-On、Macungie,PA)をNdFeB粉末(MQFP-15-7、Magnequench、Toronto,Canada)と混合した混合物を1:1の質量比でネガ型テンプレートに成形し、室温で4時間硬化し、剥離した。
【0147】
調製したポリウレタンNdFeB磁石をあらかじめ磁化した。ポリウレタンNdFeB磁石によって生成された磁場は、磁性ソフトエラストマの抗磁力より小さかった。モジュール式のポリウレタン磁石を手作業で所望の構成に配置したが、複雑な形状を有する構成はモノリシックユニットとして使用した。最後に、接触磁気転写のために、磁性ソフトエラストマをポリウレタンNdFeB磁石の上に配置し、オーブンに150℃で5分間入れておき、接触させたまま室温まで冷却させた。
【0148】
このようにして、プログラム可能及び/又は再プログラム可能な磁性ソフトデバイス10を符号化する方法が利用可能になり、この方法は、
- 複合体を、その中に分散された磁性要素のキュリー温度を上回る温度に加熱するステップと、
- 複合体を冷却するステップと、
- 冷却中に外部磁場を適用することによって、磁性要素の磁区を再配向するステップとを含む。
【0149】
複合体の加熱ステップ及び複合体の冷却ステップは、波長可変レーザ24を上記複合材料の領域上に順次集束させ、上記複合材料の更なる領域上に移動する前に任意に上記領域を冷却することによって、順次実施することができ、代替的に、加熱ステップ及び冷却ステップは、例えば上記に説明したようにマスタを使用して一度のみ実施されてもよい。
【0150】
磁場の印加ステップは、特に複合体12の各領域を独自の磁性磁化プロファイルを用いて配向するために各冷却サイクルについて、1mT~10Tの範囲内で選択された大きさを有する磁場を用いて実施されてもよい。
【0151】
磁性ソフト構造10の設計では、形状変化を制御するために形状及び磁化プロファイルの両方を考慮に入れる。外部磁場下での単純な形状変化には直観的な設計を使用することができるが、より要求の厳しい複雑な変形には予測モデルが必要である。このため、COMSOL及びカスタムMATLABスクリプトを利用して磁性ソフト構造の準静的状態についての解を求める予測モデルが開発された。
【0152】
この予測モデルは、以下の仮定に基づいている。磁性ソフト構造10は、磁力(f)、磁気トルク(τ)、及び重力(mg)を受け、それによって、ソフトボディ10上に応力が生じ、ソフトボディ10が変形して全磁気ポテンシャルエネルギー及び弾性ポテンシャルエネルギーを最小限に抑える。更に、磁力及びトルクの方向は、変形中に磁化方向とともに変化し、構造全体にわたる外部磁場に対して分散された不均一な応答が生じる。この不均一な応答を捕捉するために、各サンプル形状は、d
x、d
y、d
zのあらかじめ定義された寸法及びm
iの磁気モーメントを有する「i」でラベル付けされたより小さいサブセクションに分割される(
図13a、b)。各サブセクションの磁力及びトルクは、各サブセクションの印加磁場(B)及び磁気モーメントに従ってカスタムMATLABスクリプトにおいて計算される。次いで、計算された磁力(f
i = ▽(m
iB))が方向力としてサブセクションに印加される。一方、磁気トルク(τ
i = m
i × B)は、サブセクションのファセットに対する力として分散される。このことを実現するために、磁気トルク(τ
i)が、選択されたデカルト基準フレームに対する磁気トルクの直交成分
【数4】
に分離される(
図13c)。次いで、これらのトルク成分はファセット力
【数5】
に変換される(
図13d)。ファセットに対する力の方向は、右手の法則に従うことによって決定され、一方、力の大きさは次のように計算される。
【数6】
上式において、
【数7】
はそれぞれ、トルク
【数8】
に起因するトルク誘起力である。次いで、これらの力はLiveLinkを介してCOMSOLに転送され、構造力学モジュールを使用して磁性ソフト構造の弾性変形についての解が求められる。各反復の後、平衡に達するまで、変形状態における各サブセクション内の更新された磁化方向ベクトルに従って、磁力及びトルクが再計算される。
【0153】
長さ10mm×幅1mm×厚さ0.17mmの寸法のビーム構造を使用することによって、モデルの検証を実施する。ビームをその長軸に沿って磁化し、一端から1.25mmにおいて固定する。次いで、0~56mTの範囲内の磁場をビームの磁化方向に垂直に印加する。実験結果及びシミュレーション結果の両方を同じ条件で取得する(
図13e)。たわみ角θを実験結果及びシミュレーション結果の両方について計算し、比較する(
図13f)。開発された計算手法は、変形特性を捕捉し、実験結果と良好に一致する。
【符号の説明】
【0154】
参照番号のリスト
10 デバイス
12 複合体
14 本体
16 脚部
18 翼部
19 尾部
20 セクション
22 領域
24 レーザ
26 ジグ
28、28’ 26の上半分、26の下半分
30 永久磁石
32 ボックス
34 フィンガ
36 磁化機構
38 電動ステージ
40 ホール効果センサ
42 コリメータ
44 磁石
46 作動プラットフォーム
48 ハルバッハ配列
50 磁石
52 フォトマスク
【国際調査報告】