(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】圧着ツール
(51)【国際特許分類】
H01R 43/048 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
H01R43/048 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563412
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2021060697
(87)【国際公開番号】W WO2021214301
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519314456
【氏名又は名称】アグロ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AGRO AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フューラー,ステファン
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063CA03
5E063CB01
5E063CC02
5E063XA01
(57)【要約】
本発明による圧着ツール(1)は、圧着によって、ケーブル(2)に配置された圧着スリーブ(4)と支持スリーブ(3)との間において、ケーブル(2)のケーブル編組(3)を軸線方向に固定するために用いられる。圧着ツール(1)は、軸線方向(x)に延在する第1の貫通開口部(8)を備えた第1のプレスジョー(6)と、第1の貫通開口部(8)と同軸に配置されている第2の貫通開口部(9)を備えた第2のプレスジョー(7)と、を含む。第1のプレスジョー(6)及び第2のプレスジョー(7)は、軸線方向において相互に相対的に変位可能である。圧着のために、第1のプレスジョー(6)は、軸線方向において圧着スリーブ(4)を支持するための支持面(10)を有し、第2のプレスジョー(7)は、支持スリーブ(5)に対して圧着スリーブ(4)を圧着させるための、第2の貫通開口部(9)周りに配置された漏斗状の成形面(11)を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル(2)のケーブル編組(3)を、前記ケーブル(2)に配置された圧着スリーブ(4)と支持スリーブ(5)との間において、圧着によって軸線方向に固定する圧着ツール(1)であって、
a.軸線方向(x)に延在し、且つ前記圧着中に前記ケーブル(2)を収容するために用いる第1の貫通開口部(8)を備えた第1のプレスジョー(6)と、
b.前記第1の貫通開口部(8)と同軸に配置されており、且つ前記圧着中に前記ケーブル(2)を収容するために用いる、軸線方向に配置された第2の貫通開口部(9)を備えた第2のプレスジョー(7)と、を有し、
c.前記第1のプレスジョー(6)及び前記第2のプレスジョー(7)は、軸線方向において相互に変位可能であり、
d.前記第1のプレスジョー(6)は、軸線方向において前記圧着スリーブを支持する支持面(10)を有し、
e.前記第2のプレスジョー(7)は、前記支持スリーブ(5)に対して前記圧着スリーブ(4)を圧着させるための、前記第2の貫通開口部(9)周りに配置された漏斗状の成形面(11)を有する、圧着ツール(1)。
【請求項2】
前記漏斗状の成形面(11)は、前記第2の貫通開口部(8)の中心軸線方向に湾曲していることを特徴とする、請求項1記載の圧着ツール(1)。
【請求項3】
前記第2のプレスジョー(7)は、前記第2の貫通開口部(9)を通る分割平面(12)に沿って、第1のジョー部分(13)と第2のジョー部分(14)とに分割可能であることを特徴とする、請求項1又は2記載の圧着ツール(1)。
【請求項4】
前記第2のジョー部分(14)は、開放位置から閉鎖位置まで移動可能であり、前記開放位置においては、ケーブル(2)を側方から前記第2のプレスジョー(7)に挿入可能であることを特徴とする、請求項3記載の圧着ツール(1)。
【請求項5】
前記第2のジョー部分(14)は、前記開放位置及び/又は前記閉鎖位置において、少なくとも1つの磁石(16)を介して、前記第1のジョー部分(13)に固定可能であることを特徴とする、請求項4記載の圧着ツール(1)。
【請求項6】
前記第1のジョー部分(13)及び前記第2のジョー部分(14)は、連結部(15)を介して動作可能に結合されていることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項記載の圧着ツール(1)。
【請求項7】
前記第2のプレスジョー(7)は、前記第1のプレスジョー(6)に対して、始端位置から終端位置まで相対的に変位可能であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項記載の圧着ツール(1)。
【請求項8】
前記終端位置では、前記第2のプレスジョー(7)は、少なくとも部分的に、半径方向において前記第1のプレスジョー(6)内に配置されていることを特徴とする、請求項7記載の圧着ツール(1)。
【請求項9】
前記終端位置では、前記第1のプレスジョー(6)の第1のプレス面(17)が、前記第2のプレスジョー(7)の第2のプレス面(18)に接触していることを特徴とする、請求項7又は8記載の圧着ツール(1)。
【請求項10】
前記第1のプレス面(17)は、前記第1の貫通開口部(8)を環状に包囲し、前記第2のプレス面(18)は、前記第2の貫通開口部(9)を環状に包囲していることを特徴とする、請求項9記載の圧着ツール(1)。
【請求項11】
前記第1のプレスジョー(6)及び/又は前記第2のプレスジョー(7)は、前記圧着スリーブ(4)に刻印を施すための刻印スタンプ(27)を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項記載の圧着ツール(1)。
【請求項12】
前記刻印スタンプ(27)は、前記成形面(11)に配置されていることを特徴とする、請求項11記載の圧着ツール(1)。
【請求項13】
前記刻印スタンプ(27)は、前記第2のプレスジョー(7)において、前記第1のプレスジョー(6)の前記支持面(10)に対向して配置されていることを特徴とする、請求項11又は12記載の圧着ツール(1)。
【請求項14】
前記第1のプレスジョー(6)は、前記第1の貫通開口部(8)周りに第1のプレスインサート(19)を有し、且つ/又は前記第2のプレスジョー(7)は、前記第2の貫通開口部(9)周りに第2のプレスインサート(20)を有していることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項記載の圧着ツール(1)。
【請求項15】
前記第1のプレスインサート(19)は、前記第1のプレスジョー(6)の第1の収容部(21)において少なくとも1つの磁石(16)を用いて保持され、及び/又は前記第2のプレスインサート(20)は、前記第2のプレスジョー(7)の第2の収容部(22)において少なくとも1つの磁石(16)を用いて保持されていることを特徴とする、請求項14記載の圧着ツール(1)。
【請求項16】
前記第1のプレスインサート(19)は、前記第1の収容部(21)において、少なくとも1つのばね押圧要素(23)を用いて固定されていることを特徴とする、請求項14又は15記載の圧着ツール(1)。
【請求項17】
前記第2のプレスインサート(20)は、第1のインサート半部(24)及び第2のインサート半部(25)に分割可能であることを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項記載の圧着ツール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、、ケーブルのケーブル編組を、ケーブルに配置された圧着スリーブと支持スリーブとの間において圧着によって軸線方向に固定する圧着ツールに関する。
【0002】
従来より、ケーブルのケーブル編組、特にケーブルシールドを、圧着スリーブを用いて圧着することが知られている。圧着スリーブは、ケーブルに取り付けられた状態において、シールドとの接触接続及び/又は配線干渉を回避するために用いられる。
【0003】
通常の場合、ケーブル編組は、圧着スリーブによって半径方向において圧着される。しかしながら、この方式では、シールドの電気的な接触接続が不十分になることが多く、遮蔽損失が大きくなって、シールドの品質が低くなる。不十分な電気的な接触接続は、例えば、編組の圧着が過度に強すぎる場合に生じる可能性があり、また過度に弱すぎる場合にも生じる可能性がある。更に、半径方向の圧着によって、ケーブルが楕円形の断面になるように変形する可能性がある。とりわけ、圧着されたケーブルの事後的な取り付け、特にシーリングが困難となる場合がある。更に、半径方向の圧着によって、ケーブル絶縁体が損傷する可能性がある。
【0004】
本発明の課題は、圧着スリーブを用いたケーブル編組の圧着を改善するための圧着ツールを提供することにある。
【0005】
本発明による圧着ツールは、ケーブルのケーブル編組を、ケーブルに配置された圧着スリーブと支持スリーブとの間において圧着によって該ケーブルの軸線方向に固定するために用いられる。このため、圧着ツールは、軸線方向に延在し、且つ圧着中にケーブルを収容するために用いる、第1の貫通開口部を備えた第1のプレスジョーを有する。更に、圧着ツールは、圧着中にケーブルを収容するための、軸線方向に配置された第2の貫通開口部を備えた第2のプレスジョーを有する。第2の貫通開口部は、第1の貫通開口部と実質的に同軸である。第1のプレスジョー及び第2のプレスジョーは、軸線方向において相互に相対的に変位可能である。このために、第1のプレスジョー及び第2のプレスジョーは、結合手段を介して、(プレス)機械と動作可能に結合させることができる。プレス機械は、第1のプレスジョー及び/又は第2のプレスジョーを変位させ、押圧力を加えるために用いられる。同様に、圧着のために、2つのプレスジョーのうちの一方のみを、他方のプレスジョーに対して変位可能に配置することができる。有利には、第2のプレスジョーは、第1のプレスジョーに対して相対的に変位可能である。
【0006】
第1のプレスジョーは、圧着のために、軸線方向において圧着スリーブを支持する少なくとも1つの支持面を有する。支持面は、第1の貫通開口部周りに環状に構成することができる。有利には、支持面は、第1の貫通開口部内の肩部に配置されており、且つ軸線方向に対して垂直な方向に設けられている。下記において更に説明するように、第1のプレスジョーが第1のプレスインサートを有する場合には、支持面は有利には第1のプレスインサートに配置されている。圧着スリーブは、軸線方向及び第2のプレスジョーの方向から、支持面に接触するまで、第1の貫通開口部に押し込むことができる。有利には、ケーブルを、圧着スリーブを取り付けた状態で挿入する。ケーブルに(緩く)取り付けられた圧着スリーブは、半径方向において、ケーブルに配置されている支持スリーブに係合する。支持スリーブと圧着スリーブとの間には、ケーブル編組が配置されている。通常の場合、ケーブル編組を広げ、続けて支持スリーブの周りに折り返し、圧着スリーブを該支持スリーブ及びケーブル編組上にスライドさせる。ケーブルが圧着ツールに挿入された状態では、ケーブルが、有利には、第1のプレスジョー及び第2のプレスジョーを通って延在している。圧着スリーブを、圧着のために、既に第1のプレスジョーの支持面に近接させることができる。
【0007】
本発明によれば、第2のプレスジョーは更に、支持スリーブに対して圧着スリーブを圧着させるための、第2の貫通開口部周りに設けられた成形面を有する。成形面は、漏斗状に構成されている。有利には、成形面は、第2の貫通開口部内に配置されている。即ち、成形面が、少なくとも部分的に第2の貫通開口部を構成していることを意味している。つまり有利には、漏斗状の成形面の直径は、(軸線方向において)第1のプレスジョーからの距離が大きくなるほど小さくなる。漏斗状の成形面は、少なくとも部分的に円錐状に形成することができる。しかしながら、有利には、漏斗状の成形面は、第2の貫通開口部の中心軸線方向に湾曲されている。
【0008】
構成に応じて、漏斗状の成形面を複数の環状の面領域に分割することができる。面領域は、軸線方向において相前後して配置することができる。有利には、隣接する面領域は相互に移行する。各面領域は、(第2の貫通開口部の)中心軸線に対して異なる開口角度を有することができる。即ち、各面領域は、それぞれ実質的に円錐状に構成することができる。各面領域の開口角度は、有利には、軸線方向において第1のプレスジョーの方向に向かって増大する。1つの好適な実施形態においては、相互に移行する2つの面領域が設けられている。第1の面領域は、例えば、中心軸線に対して15°から25°(度)の(第1の)開口角度を有することができる。それに対して、第2の面領域は、(第1の開口角度と比較して)より大きい第2の開口角度を有することができる。第2の開口角度は、中心軸線に対して50°から60°(度)を有することができる。更に、第2の面領域は、後述するように、(第2の)プレス面に移行することができる。これに対して、第1の面領域は、第2の貫通開口部の円筒状の領域に移行することができる。
【0009】
成形面の内径、乃至第2の貫通開口部の円筒状の領域の直径は、有利には、付加的な間隙を含めた圧着すべきケーブルの直径に対応するように選択されている。隙間寸法は、押圧力に応じて、約0から0.4mmの大きさにすることができる。これにより、圧着時のケーブル絶縁体の損傷を最小限に抑えることができる。ケーブルへの圧着をスペースを節約して行うため、成形面を、半径方向において支持面内に配置することができる。即ち好適には、成形面の外径は、支持面の内径より小さい。成形面は、回転対称形に構成することができる。しかしながら、多くの実施形態においては、非回転対称形の成形面も同様に有利であると考えられる。例えば、成形面は周囲に沿って波状に及び/又はジグザグ状に及び/又はその他のパターンを有するように構成することができる。
【0010】
ケーブルの処理、特に対応する貫通開口部へのケーブルの挿入、又は貫通開口部からのケーブルの取り出しを容易にするために、少なくとも1つのプレスジョーは、対応する貫通開口部を通る分割平面に沿って分割可能であってよい。有利には、少なくとも第2のプレスジョーを、対応する第2の貫通開口部を通る分割平面に沿って分割することができる。分割可能なプレスジョーは、第1のジョー部分及び第2のジョー部分に分割可能であってもよい。第1のジョー部分は、プレス機械と動作可能に結合するためのものであってもよい。第2のジョー部分は、圧着のために、分割平面に沿って第1のジョー部分と動作可能に結合することができる。このことは、第1のジョー部分及び第2のジョー部分が相互に少なくとも部分的に離間している開放位置においては、ケーブルを側方からプレスジョーに挿入可能であるという利点を有する。この側方からの挿入は非常に簡単であり、例えば片手で実施することができる。閉鎖位置においては、第1のジョー部分及び第2のジョー部分が、相応の貫通開口部を形成することができる。
【0011】
処理を更に簡略化するために、第1のジョー部分及び第2のジョー部分は、少なくとも1つの連結部を介して相互に動作可能に結合させることができる。このようにして、第2のジョー部分を高速且つ簡潔に、少なくとも1つの連結部を介して開閉することができる。少なくとも1つの連結部には、例えば、プレーンベアリングブッシュ又は、例えばスナップヒンジなどのヒンジが含まれてもよい。閉鎖位置においては、第2のジョー部分を、圧着のために、補完的に閉鎖機構を介して第1のジョー部分に固定することができる。第1のジョー部分及び第2のジョー部分を開閉するために、第2のジョー部分は、グリップを含むことができる。グリップは、固定のために、このグリップに対応して第1のジョー部分に設けた凹部に挿入することができる。
【0012】
第2のジョー部分は、代替的又は補完的に、開放位置及び/又は閉鎖位置において、少なくとも1つの磁石を介して、第1のジョー部分に固定可能であってよい。このために、第1のジョー部分及び第2のジョー部分のそれぞれに少なくとも1つの磁石を配置することができ、第1のジョー部分及び第2のジョー部分は、開放位置及び/又は閉鎖位置において磁気的に相互に作用することができる。開放位置においても閉鎖位置においても第2のジョー部分の位置を規定することで、中間位置において誤って早期に閉鎖されることによる破損を回避することができるという利点を有する。第2のジョー部分を閉鎖位置において固定するために、少なくとも1つの磁石、好ましくは対向する2つの磁石を分割平面に配置することができる。
【0013】
第2のプレスジョーは、圧着のために、第1のプレスジョーに対して始端位置から終端位置まで相対的に変位可能であってもよい。始端位置では、第1のプレスジョー及び第2のプレスジョーが、有利には相互に離間するように配置されている。始端位置において、ケーブル、圧着スリーブ及び支持スリーブを圧着ツールに位置決めすることができる。続いて、第1のプレスジョー及び第2のプレスジョーを軸線方向において相互に相対的に変位させることができる。相互のセンタリングのために、第1のプレスジョー及び/又は第2のプレスジョーは、センタリング部分を有することができる。始端位置から終端位置へと変位させる際に、第1のプレスジョーに配置されたセンタリング部分を、第2のプレスジョーに配置されたセンタリング部分に係合させて、圧着のために、それらのプレスジョーを相互に位置合わせすることができる。更に、始端位置から終端位置への変位の際に一方のプレスジョーを部分的に他方のプレスジョーに押し込むと、良好にセンタリングを達成することができる。第2のプレスジョー、特に分割可能な第2のプレスジョーの第1のジョー部分及び第2のジョー部分を、部分的に、第1のプレスジョーに押し込むことができる場合には特に有利である。終端位置では、第2のプレスジョーが、少なくとも部分的に、半径方向において第1のプレスジョー内に配置されていることが有効である。
【0014】
プレスジョーを更に相互に押し当てると、成形面が、第1のプレスジョーに配置されている圧着スリーブに接触し、圧着スリーブの圧着領域を変形させることができる。有利には、圧着領域が成形面に沿ってスライドする。この際、成形面を漏斗状の形状とすることで、可能な限り圧着領域を損傷なく、切断することなく変形させることができる。圧着領域、または圧着スリーブは、続けて、ケーブル周りにぴったりとフィットし、圧着スリーブに配置された支持スリーブ周りに配置される。更に、そのようなぴったりとしたフィット感は、圧着されたケーブルの屈曲保護にも好適に作用する。ケーブル編組は、この過程において、支持スリーブと圧着スリーブとの間において押し潰される。終端位置においては、圧着スリーブ、また必要に応じて支持スリーブの所望の圧着または塑性変形が達成される。終端位置を明確に定義するため、終端位置において、軸線方向に相互に接触する2つのプレス面を設けることができる。しかしながら、プレスジョーが終端位置において当接しない、即ちプレス面が相互に接触しない変形形態も考えられる。終端位置は、プレス機械のパラメータ、例えば液圧又は特定のスピンドル回転等を介して規定することができる。しかしながら、終端位置において相互に押圧されている第1のプレス面及び第2のプレス面は、その第1のプレス面と第2のプレス面との間の押圧力を例えばセンサを介して測定することができるという利点を有する。ここで、良好に測定可能な押圧力を得るためには、第1のプレス面及び第2のプレス面を圧着部の近傍に配置することが有利である。従って、第1のプレス面が、第1の貫通開口部を環状に包囲し、且つ/又は第2のプレス面が、第2の貫通開口を環状に包囲することが有利である。第1のプレス面が支持面を包囲し、且つ/又は第2のプレス面が成形面を包囲することが有利である。
【0015】
用途に応じて、圧着ツールが刻印スタンプを含むことができる。該刻印スタンプは、第1のプレスジョー及び/又は第2のプレスジョーに、特に第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートに配置することができる。有利には、刻印スタンプは、軸線方向に向かって設けられている。刻印スタンプは、圧着スリーブに刻印を施すために用いられる。好適には、刻印スタンプが、第2のプレスジョーに、特に第2のプレスインサートに配置されている。刻印スタンプは、成形面に、特にプレス面に隣接する成形面の面領域に配置することができる。刻印スタンプは、軸線方向において第1のプレスジョーの支持面に対向するように第2のプレスジョーに配置することができる。刻印は、使用される圧着パラメータに関する情報、例えばツールパラメータ、圧着の回数、押圧力、メーカーロゴ等を示すことができる。
【0016】
用途に応じて、第1のプレスジョーは、第1の貫通開口部周りに第1のプレスインサートを設けることができ、且つ/又は第2のプレスジョーは、第2の貫通開口部周りに第2のプレスインサートを設けることができる。第1のプレスインサート及び第2のプレスインサートは、特定のケーブル直径及び/又はケーブルタイプに合わせて設計することができる。このようにして、用途に応じて、異なるプレスインサートを使い分けることができる。ここで、第1のプレスインサートは、第1のプレスジョーの第1の収容部に配置することができ、および/又は第2のプレスインサートは、第2のプレスジョーの第2の収容部に配置することができる。各収容部は、軸線方向において、収容開口部を有することができ、この収容開口部に、対応するプレスインサートを収容することができる。第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートは、1つまたは複数のパーツで構成することができる。更に、第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートは、スリーブ状に構成することができる。各プレスインサートは、各プレスジョーに取り付けられた状態では、少なくとも部分的に、対応する貫通開口部を形成する。有利には、第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートは、その外面に、前面を備えた肩部をそれぞれ有する。前面は、第1の収容部又は第2の収容部における軸線方向の支持体として機能する。第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートは、金属から構成することができる。有利には、第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートは、冷間加工鋼、特に靭性のある硬化された冷間加工鋼からなる。
【0017】
第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートは、少なくとも1つの磁石を用いて、収容部に保持することができる。しかしながら、少なくとも1つのねじを用いた締結など、他の固定手段も考えられる。なお、磁石を用いる利点は、ツールを必要としないで取り付けることができることにある。このため、複数の磁石を各収容開口部の周面に分散させて配置することができる。代替的又は補完的に、少なくとも1つの磁石を軸線方向において、プレスインサートと対応する収容部との間に配置することができる。有利には、少なくとも1つの磁石を、軸線方向において、且つプレスインサートが取り付けられた状態において、対応するプレスインサートの前面に対して設ける。
【0018】
代替的又は補完的に、第1のプレスインサート及び/又は第2のプレスインサートは、対応する収容部において、少なくとも1つのばね押圧要素を用いて固定することができる。このことは、特に、プレスジョーを分割できない場合に考えられる。即ち、有利には、少なくとも1つのばね押圧要素を介して、第1のプレスインサートを第1の収容部に固定することができる。少なくとも1つのばね押圧要素は、例えば、半径方向において、収容部とプレスインサートとの間に配置することができる。プレスインサートに、ばね押圧要素が係合することができる凹部を設けることができる。従って、ばね押圧要素は、収容開口部においてプレスインサートを保持し、高速且つ簡単に、ツールを用いることなくプレスインサートの交換を行うことができる。
【0019】
第1のプレスジョー及び/又は第2のプレスジョーが分割可能である場合には、プレスジョーの収容部に配置されているプレスインサートも、第1のインサート半部及び第2のインサート半部に分割可能であってよい。製造に応じて、各プレスインサートは、例えばワイヤ放電加工のような切断方法によって、第1のインサート半部及び第2のインサート半部に分割することができる。その場合、それらのインサート半部は、対応するプレスジョーの開放位置において簡単に取り付けることができる。2つのインサート半部が異なる位置に取り付けられないようにするために、これら2つのインサート半部にマーキング、コーティング等を設けることができる。取り付けのために、収容開口部には、(組み付けられた)プレスインサートの周縁に係合することができる、周方向に延在する溝を設けることができる。溝及び縁部は、取り付けられた状態において、軸線方向においてアンダーカットを形成する。有利には、第2のプレスジョーは、上述したように、第1のジョー部分及び第2のジョー部分に分割することができる。各ジョー部分に、1つのインサート半部を配置することができる。これら2つのインサート半部が接合されて、第2のプレスインサートが形成される。これは、周方向に延在する縁部を有することができ、この縁部は、第2の収容部の収容開口部に配置された溝と共に、軸線方向におけるアンダーカットを形成する。第2のジョー部分の閉鎖位置においては、第1のジョー部分に配置された第1のインサート半部が、第2のジョー部分に配置された第2のインサート半部と共に、少なくとも部分的に第2の貫通開口部を形成する。
添付の図面に図示した実施例及び関連する説明に基づき、本発明の態様を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】始端位置における、ガイドレール上の本発明による圧着ツールの斜視図を示す。
【
図2】第2のプレスジョーが開かれており、且つケーブルが挿入されている、始端位置における
図1の圧着ツールの斜視図を示す。
【
図3】開放位置において第2のプレスジョーが閉じられている、
図2の圧着ツールの斜視図を示す。
【
図4】終端位置における、
図2の圧着ツールの斜視図を示す。
【
図5】終端位置における、
図4の圧着ツールの断面図を示す。
【0021】
図1は、プレス機械のガイドレール31に取り付けられている、本発明の圧着ツール1を示す。後続の図においては、ガイドレール乃至プレス機械は図示していない。
図2から
図4は、本発明の圧着ツール1の斜視図を示す。圧着ツール1は、第1の貫通開口部8を備えた第1のプレスジョー6と、第2の貫通開口部9を備えた第2のプレスジョー7と、を含む。第1の貫通開口部8及び第2の貫通開口部9は、相互に同軸であり、軸線方向(X方向)に延在している。貫通開口部8、9は、圧着中にケーブル2を収容するために用いられる。第2のプレスジョー7は、第1のプレスジョー6に対して相対的に、軸線方向において、始端位置から終端位置まで変位可能である。特に、始端位置は
図1に示されており、終端位置は
図4に示されている。
【0022】
第2のプレスジョー7は、圧着されたケーブル2を取り出すために、第2の貫通開口部9を通る分割平面12に沿って、第1のジョー部分13と第2のジョー部分14とに分割可能である。第1のジョー部分13は、ガイドレール31及び/又はプレス機械との結合に用いられる。第2のジョー部分14は、開放位置(
図2参照)から、閉鎖位置(
図3参照)まで移動させることができる。開放位置では、ケーブル2を側方から第2のプレスジョー7に挿入することができる。閉鎖位置では、第1のジョー部分13及び第2のジョー部分14が、第2の貫通開口部9を形成する。取り付けを簡単にするために、図示のように、第2のジョー部分14は、閉鎖位置において、少なくとも1つの磁石16を介して、第1のジョー部分13に固定することができる。開放位置において、第2のジョー部分14を第1のジョー部分13に固定するために、別の磁石(図示せず)を使用することができる。ここで、第1のジョー部分13及び第2のジョー部分14は、(単に概略的に示されている)プレーンベアリングブッシュ形の連結部15を介して作用結合されている。閉鎖位置では、第2のジョー部分14を、補完的に閉鎖機構32を介して第1のジョー部分13に固定することができる。図示したケースでは、第2のジョー部分14が、第1のジョー部分13の、対応する位置に設けた凹部に挿入することができるグリップを有している。
【0023】
第1のプレスジョー6はプレスインサート19を、また第2のプレスジョー7はプレスインサート20をそれぞれ有し、これらのプレスインサート19、20はそれぞれ、収容部21、22に収容されている。プレスジョー6、7の収容部21、22はそれぞれ、プレスインサート19、20を収容するための収容開口部を有する。第1のプレスジョー6の第1のプレスインサート19は、軸線方向に第1の収容部21または収容開口部へと、この第1のプレスインサート19が前面26に接触するまで押し入れることができる。収容開口部においては、半径方向に向けられたばね押圧要素23(
図5を参照されたい)を介して、(第1の)プレスインサート19を保持することができる。第2のプレスインサート20は、2つのインサート半部24、25に分割可能に構成することができる。有利には、第1のインサート半部24が第1のジョー部分13の収容部に配置されており、第2のインサート半部25が第2のジョー部分14の収容部に配置されている。2つのインサート半部24、25が取り違えられて取り付けられないようにするために、これら2つのインサート半部24、25は、マーキング及び/又はコーティング33を有することができる。図示したケースでは、第1のジョー部分13及び第2のジョー部分14がそれぞれ1つのピンを含み、それらのピンは、取り付けられた状態において、第1のインサート半部24または第2のインサート半部25の相応の凹部に係合される(例えば、
図1を参照されたい)。ピンまたは凹部は、第2の貫通開口部9に対して異なる周方向位置にある。従って、第2のインサート半部25を、第1のジョー部分13に取り付けることはできない。
【0024】
第1のインサート半部24及び/又は第2のインサート半部25は、第2のプレスジョー7の開放位置において側方から導入することができる。2つのパーツからなる第2のプレスインサート20は、周方向に延在する縁部30を有することができ、この縁部30は、第2の収容部22の相応の溝に係合し、この溝と共に軸線方向へのアンダーカットを形成する。補完的に、プレスインサート19、20を、それぞれ少なくとも1つの磁石16を用いて保持することができる。有利には、複数の磁石16が、それぞれの貫通開口部8、9周りに、及び/又は前面26に沿って分散されて配置されている(
図5において概略的に示唆されている)。
【0025】
プレスジョーの変位中に、プレスインサート19、20は相互に嵌合するように変位される。この際、少なくとも1つのセンタリング部分28を、第1のプレスインサート19及び/又は第2のプレスインサート20に配置し、それらのプレスインサートを相互に正確に位置合わせするために用いることができる(
図5を参照されたい)。センタリング後、終端位置では、2つの環状のプレス面17、18が相互に接触する。断面図における終端位置は、
図5に図示されている。プレス面17、18は、それぞれ、第1のプレスジョー6及び第2のプレスジョー7、または各プレスインサート19、20に配置されている。プレス面17、18への押圧力が最大に達すると、所望の圧着が達成されており、圧着ツール1、乃至第1のプレスジョー6及び第2のプレスジョー7を相互に離す方向に変位させて、圧着されたケーブル2を取り出すことができる。
図5においては、第1のプレスジョー6、または第1のプレスインサート19が軸線方向において圧着スリーブ4を支持するための支持面10を有することが見て取れる。これに対して、第2のプレスジョー7、または第2のプレスインサート20は、圧着スリーブ4と、その圧着スリーブ4に配置されている支持スリーブ5との間において、ケーブル編組3を圧着させるための、第2の貫通開口部9周りに配置された漏斗状の成形面11を有する。漏斗状の成形面11は、第2の貫通開口部8の中心軸線29の方向に湾曲されている。成形面11は、有利には、プレスジョー6、7が相互に相対的に変位する際に、先ず、第1のプレスジョー6に配置されている圧着スリーブ4と接触する。この接触を介して、圧着スリーブ4の圧着領域が成形される。この際、漏斗状の成形面11は、圧着領域が成形面11に沿って案内され、図示のようにケーブル2の周囲において撓み、圧着スリーブ4内に配置された支持スリーブ5の周囲に位置するように作用する。ケーブル編組3は、この過程において、支持スリーブ5と圧着スリーブ4との間において押し潰されて固定される。圧着ツール1は、圧着を追跡表示によって品質保証するために、更に刻印スタンプ27を有することができる。図示のケースでは、刻印スタンプ27が、第2のプレスジョー7に、特に第2のプレスインサート20に配置されている。刻印スタンプ27は、成形面11に配置されている。刻印スタンプ27は、例えば圧着パラメータ、メーカ等を推定できる刻印を施すために用いられる。
【符号の説明】
【0026】
1 圧着ツール
2 ケーブル
3 ケーブル編組
4 圧着スリーブ
5 支持スリーブ
6 第1のプレスジョー
7 第2のプレスジョー
8 第1の貫通開口部
9 第2の貫通開口部
10 支持面
11 成形面
12 分割平面
13 第1のジョー部分
14 第2のジョー部分
15 連結部
16 磁石
17 第1のプレス面
18 第2のプレス面
19 第1のプレスインサート
20 第2のプレスインサート
21 第1の収容部
22 第2の収容部
23 ばね押圧要素
24 第1のインサート半部
25 第2のインサート半部
26 前面
27 刻印スタンプ
28 センタリング部分
29 中心軸線
30 縁部
31 ガイドレール
32 閉鎖機構
33 マーキング/コーティング
【国際調査報告】