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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】高効率炉
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/235 20060101AFI20230526BHJP
   F27B 3/20 20060101ALI20230526BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C03B5/235
F27B3/20
F27D9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563438
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 FR2021050720
(87)【国際公開番号】W WO2021219952
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】2004299
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム デュプー
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ビスポ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル マルタン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン シュネル
【テーマコード(参考)】
4G014
4K045
4K063
【Fターム(参考)】
4G014AF00
4K045AA04
4K045BA08
4K045DA09
4K045RA06
4K045RA09
4K045RA16
4K045RB13
4K045RB19
4K063AA04
4K063AA13
4K063BA06
4K063CA01
4K063EA01
(57)【要約】
【課題】従来技術の溶融設備に係る欠点に対する技術的解決策を提供すること。
【解決手段】本発明は、ガラスウール、テキスタイルガラスヤーン及び/又は平坦ガラスを得るために適している、原材料の組成物を溶融するための設備1に関し、これは、少なくとも1つの浸漬バーナー3を備える溶融チャンバ2を有し、この溶融チャンバ2は、耐火性材料でできた側壁4と、好ましくは水である冷却流体の循環に適合したパイプのネットワークによって横断されている露出した金属底部5と、によって画定されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスウール、テキスタイルガラスヤーン及び/又は平坦ガラスを得るために適している、原材料の組成物を溶融するための設備(1)であって、この設備は、少なくとも1つの浸漬バーナー(3)を備える溶融チャンバ(2)を有しており、
好ましくは円筒状の形状を有する前記溶融チャンバ(2)が、規格ISO/R836又は規格AFNOR NF B 40-001に従う耐火性材料でできた側壁(4)と、露出した金属底部(5)とによって画定されていることを特徴とし、
前記金属底部には、前記バーナー(3)が取り付けられており、かつ、前記金属底部は、好ましくは水である冷却流体の循環のために適合しているパイプのネットワークによって横断されている、
設備(1)。
【請求項2】
前記金属底部(5)が、前記側壁(4)に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項3】
前記底部(5)が、前記溶融チャンバ(2)の下方表面を形成するように適合している少なくとも1つの中央部(5)、及び、前記側壁(4)の下方で平坦に当接するように適合している接続フランジ部(5b)を有することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の設備(1)。
【請求項4】
前記接続フランジ部(5b)が、前記中央部(5a)と共に、肩部を形成していることを特徴とする、請求項3に記載の設備(1)。
【請求項5】
前記底部(5)が、周縁部(5c)を有しており、これは、前記中央部(5a)の周縁と相補的な形状を有しており、かつ、一方では、前記側壁(4)のための土台として機能するように適合しており、他方では、前記接続フランジ部(5b)と面一になるように適合していることを特徴とする、請求項3又は4に記載の設備(1)。
【請求項6】
前記周縁部(5c)が、取り外し可能な態様で、好ましくはネジ-ナット取付けによって、前記接続フランジ部(5b)に取り付けられるように適合していることを特徴とする、請求項5に記載の設備(1)。
【請求項7】
前記設備が、前記周縁部(5c)と前記接続フランジ部(5b)との間の界面に配置されている少なくとも1つの燃焼ガス封止部を有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の設備(1)。
【請求項8】
前記露出した金属底部(5)が、前記底部(5)に取り外し可能に取り付けられている少なくとも1つの浸漬バーナー(3)及び/又はボイラによって通過されるように適合していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項9】
耐火性材料でできている前記側壁(4)が、それらの周縁において、少なくとも部分的に、好ましくは水である冷却流体の循環のために適合しているパイプのネットワークによって横断されている金属マントルで覆われていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの浸漬バーナー(3)が、燃焼ガス分配ネットワーク及び複数の噴射器を備える噴射器ブロックを有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項11】
ガラス化可能な原材料の組成物を溶融するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の設備(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱遮断又は音遮断のためのミネラルウールタイプのガラス繊維、いわゆる強化テキスタイルガラスヤーン、及び/又は平坦ガラスを得るために適している原材料の組成物を溶融するための設備に関する。
【背景技術】
【0002】
本件において、「原材料」は、珪砂を包含し、また、すべての添加剤(炭酸ナトリウム、石灰石、ドロマイト、アルミナ、等)、(ミネラル繊維を含む)廃材料(これは、上記繊維の製造から生じることがあり、又は、建設現場若しくは解体現場から生じることがある)、全てのありうる液体又は固体の燃料(複合プラスチック、又は非複合プラスチック、有機材料、石炭)、及び任意のタイプのカレット、を包含する。また、可燃性(有機)要素を含有するリサイクル可能な材料、例えば、バインダを有するサイジングミネラル繊維(熱遮断若しくは音遮断に使用されるタイプのもの、又はプラスチックの強化に使用されるもの)、ポリビニルブチラールポリマーのシートと積層されたグレージング、例えばウィンドシールド、ガラス瓶(家庭用カレット)、又は、ガラスと特定のボトルなどのプラスチック材料とを組み合わせた任意のタイプの「複合」材料も、含まれる。「ガラス-金属複合材又は金属複合物」、例えば金属含有コーティングを有する機能性グレージングなども、リサイクル(再利用)することができる。これまでは、溶融チャンバに金属が徐々に蓄積され、ガラス溶融物中にケイ素金属が生成される可能性があるため、これらは、リサイクルが困難であった。しかしながら、本発明に係る溶融プロセスによって生じる撹拌は、この堆積を回避することを可能にし、したがって、例えば、エナメル層、金属層及び/又は様々なコネクタ要素でコーティングされたグレージングを再利用することを可能にする。本明細書において、「液体ガラス」及び「ガラス溶融物」という用語は、これらのガラス化可能な材料を溶融した生成物を指す。
【0003】
本発明は、より詳細にはいわゆる「サブマージドバーナー(浸漬バーナー)」設備(炉)に関する。このようなバーナーは、ガス及び空気の供給を受け、一般に、溶融チャンバの底部と同一平面(面一)になるように配置され、それにより、液化される原材料の塊の中で火炎が発生するようになっている。これらのバーナーは、それらのガス供給ラインがそれらが通過する壁と同一平面上にあるようなものであってよい。いくつかの実施形態によれば、燃焼から生じるガスのみを噴射することを選択することも可能であり、燃焼が、溶融チャンバ自体の外部で行われる。
【0004】
これに関連して、底部及び側壁が耐火性材料でできている浸漬バーナー炉を使用することが知られている。
【0005】
本明細書を通して、ISO/R836又はAFNOR NF B 40-001規格に従って、「耐火性」材料は、耐自然発火性が少なくとも1500℃に等しい、金属及び合金以外の材料及び製品(金属成分を含むものは排除されない)として定義される。この定義は、耐火性材料が、自然発火性強度試験規格に従って、自重の下で軟化又は崩壊することなく、少なくとも1500℃に耐えなければならないことを意味する。
【0006】
耐火性の壁及び底部の利点は、それらが非常に良好な熱遮断性を提供し、したがって妥当なエネルギー消費を提供するという点である。しかしながら、それらは、脆くかつあまり適合性でないという欠点を有する。例えば、底部における様々な要素(バーナー、ボイラー)の包含及び固定は、約20~40センチメートルである耐火物の厚さに起因して、困難である。
【0007】
また、そのような耐火壁を有する浸漬バーナー炉は、ロックウール製造には適していないことにも留意すべきである。岩石(玄武岩又は高炉スラグ)を溶融する場合には、通常のガラスを溶融するよりも著しく高い1500℃付近の温度にまで原材料を加熱する必要があり、従来の耐火材は、これに耐えることが困難である。これに加わるのが、その表面下におけるバーナーの配置及び溶融岩石の比較的高い流動性に起因する、溶融岩石浴の、溶融ガラスと比較して、非常に強い撹拌である。これらの種々の要因は、炉壁に対する腐食メカニズムの促進に寄与する。
【0008】
確かに、このような物理的応力にしばらく耐えることができる高性能耐火材が存在する。しかしながら、そのような耐火物の使用に伴う非常に高いコストは、浸漬バーナー炉を介したロックウールの製造のためのそれらの使用を阻害する。
【0009】
これらの理由の全てのために、耐火壁を有する浸漬バーナー炉は、ロックウールを溶融するのに適していない。
【0010】
代替的なアプローチによれば、冷却流体の循環のために適合されたパイプのネットワーク(「ウォータージャケット」と呼ばれる)を有する金属プレート(金属板)で側壁及び底部が作られている浸漬バーナー炉を使用することが、知られている。そのような金属板は、容易に取り外し可能かつ交換可能であるという利点を有し、高温かつ流動的なガラスと接触したときに、長い耐用期間を有する。
【0011】
しかしながら、そのようなウォータージャケット壁は、いくつかの欠点を有する。主に、それらは多くのエネルギーを吸収し、したがって、炉に大量のエネルギーを消費させ、これは、エネルギー節約の産業上の背景において、これらのウォータージャケット壁の使用が、伝統的な耐火壁の性能が欠如しているロックウール製造の分野に厳密に限定されることを、正当化する。
【0012】
さらに、これらのウォータージャケット壁は、ガラスウールの製造のための仮定的な実施に特有のいくつかのさらなる欠点を有することに留意すべきである。そのような製造に必要な溶融原材料の浴は、非常に明るい色であるという特殊性を有し、したがって、「透明ガラス」溶融物というニックネームを有する。
【0013】
そのような透明ガラス溶融物は、それが可能にする放射伝達のより大きな強度によって、溶融岩浴とは異なる。溶融岩浴と比較して、透明ガラス溶融物は、放射によって、より多くの熱を炉壁に伝達する。これは、ウォータージャケット壁のエネルギー消費をさらに増加させ、これは、透明ガラス溶融のためにウォータージャケット壁を使用することに関して、阻害的であることが既に確認されている欠点を、増強する。
【0014】
透明ガラス溶融物は、失透しにくいという点で、岩浴とは異なる。しかしながら、岩浴の場合、ウォータージャケット壁とガラス溶融物との間の界面における失透層の形成が、特に、岩浴によって誘発される腐食に対して、これらの壁の比較的良好な保護を可能にする。そのような失透層は、透明ガラス溶融物中では形成され難いため、ウォータージャケット壁は、ガラスによる腐食により多く曝され、したがって、耐用期間が短くなる。
【0015】
少なくともこれらの理由のために、このようなウォータージャケット金属板の使用は、今日まで、ガラスウールの製造に特に不適切であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の欠点に対する技術的解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
より詳細には、少なくとも1つの実施形態において、提案される技術は、ガラスウール、テキスタイルガラスヤーン(織物ガラス糸)、及び/又は平坦ガラスを得るのに適した、原材料の組成物を溶融するための設備に関し、これは、少なくとも1つの浸漬バーナーを備えた溶融チャンバを含み、溶融チャンバが、好ましくは円筒の形状であり、ISO/R836又はAFNOR NF B 40-001規格に従う耐火性材料で作られた側壁と、上述のバーナーが取り付けられておりかつ冷却流体(好ましくは水)の循環のために適合されたパイプのネットワークによって横断されている露出した金属底部とによって画定されることを、特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の特定の実施形態に係る、原材料の組成物を溶融するための設備の概略的な断面分解図である。
図2図2は、図1に示すような設備の下部の拡大図であり、分解図である。
図3図3は、図1に示すような設備の下部の拡大図であり、底部3が、炉の底部に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、金属底部は、金属底部と溶融ガラスとの間に介在する耐火材料によって保護されないという点で、「露出された」と言われる。
【0020】
従来技術において特定された欠点に直面して、本件発明者らは、まず、種々の炉構成について、炉内の溶融ガラスの対流運動、溶融ガラスと、炉の壁、天井部及び底部を構成する要素の各々との間に生じる熱交換、結果として生じるこれらの要素の各々の摩耗、並びに、想定される構成の各々について炉によって得られるエネルギー収率、を分析するために、広範な研究プログラムを開始した。これらの分析は、パイロット炉で実施された実証試験とコンピュータシミュレーションの両方に基づいて実施された。
【0021】
これらの分析は、バーナー火炎の近傍では、強い対流運動及び溶融ガラスの特に高い温度に起因して、耐火性の底部が、ウォータージャケットタイプの金属底部よりも著しく速く摩耗することを示した。したがって、底部の耐久性、したがって炉の耐久性の理由から、ウォータージャケット金属底部の選択が好ましい。
【0022】
対照的に、炉壁は、底部よりも溶融ガラスによって攻撃されにくく、したがって、そこに配置された耐火性の壁については中程度の摩耗である。これらの側壁は、以下の説明において「ガラス接触表面」とも呼ばれる、ガラス溶融物との炉の総交換表面の、かなりの部分を占める。この領域における耐火物の使用は、ウォータージャケットタイプの金属壁と比較して、許容可能な耐用期間に対して、熱損失を制限することを可能にし、かつ、炉のエネルギー効率を増加させることを可能にする。
【0023】
これらの結論に基づいて、本発明に係る炉は、従来技術において知られている技術的解決策のそれぞれに関連する利点を有するハイブリッドな解決策を構成し、従来技術に固有の欠点はない。これを行うために、本発明に係る炉は、エネルギー効率及び耐久性の両方を有する炉を得るために、これらの解決策のそれぞれの最も効率的な要素をうまく組み合わせている。
【0024】
そのようなハイブリッドは、決して明らかではないことに留意すべきである。これはなぜならば、これは、炉内で作用し炉のエネルギー収率及び耐久性に影響を及ぼす物理的メカニズムを特定し理解することを目的とする成功した研究プログラムに基づいて、先験的には互いに拮抗する技術的解決策に存在する要素を、選択しかつ組み合わせた結果だからである。
【0025】
最後に、いかなる外部的な動機付けもない場合、新しい炉の解決策を開発するための技術的な複雑さ及びコストは、本発明を達成するために克服する必要のある追加的技術的な阻害要因を構成する。
【0026】
特定の実施形態によれば、上記の金属底部は、上記の側壁に取り外し可能に取り付けられる。
【0027】
本明細書を通して、用語「取り外し可能」は、一緒に締結された部品に損傷を与えることのない可逆的な取り付けを説明するために使用される。対照的に、2つの部品を一緒に溶接することは、不可逆的な取付けと見なされる。
【0028】
炉を修理するとき、欠陥のある部品のみを交換することができ、その一方で、他の部品を再使用することができる。一般に、この第1の欠陥部品は、金属底部であり、これはなぜならば、これは、液体ガラスによって最も強く腐食される部分だからである。したがって、本発明に係る炉は、大幅に増加した耐用期間を有する。一方では底部の製造、他方では側壁の製造も、比較的容易になる。これはなぜならば、これらの2つの要素は、これらの部分のそれぞれの技術的特異性に適合された異なるプロセスを介して、別々に潜在的に製造されるからである。言い換えれば、本発明に係る炉は、改善された作動効率を有する。
【0029】
特定の実施形態によれば、上記の底部は、溶融チャンバの底部表面を形成するように適合された少なくとも1つの中央部と、上記の側壁の下方で平坦に当接するように適合された接続フランジ部とを備える。
【0030】
したがって、中央部は、ガラス溶融物の下方部分と接触するように適合されており、一方、接続フランジ部は、この中央部の周縁のまわりに形成されており、直接の接触によって又は好ましくは底部の周縁部を介して、側壁の下方部分との当接表面として働くように、適合されている。
【0031】
特定の実施形態によれば、上記の接続フランジ部は、上記の中央部とともに、肩部(ショルダー部)を形成する。
【0032】
肩部は、底部の中央部の基部に形成される、断面における急激な変化を指す。
【0033】
特定の実施形態によれば、上記の底部は、周縁部を備え、これは、上記の中央部の周縁と形状が相補的であり、一方では上記の側壁のための土台として機能し、かつ他方では上記の接続フランジ部と平坦に当接するように、適合されている。
【0034】
そのような周縁部は、その上に載っている側壁のための土台(または座部)として機能し、好ましくは、炉の外部金属構造体と一体化されている。この周縁部(5c)は、底部の一部であり、それ自体がウォータージャケットを有することに留意されたい。
【0035】
このような周縁部の利点は、これが、側壁との気密接続の実施に適しているということであり、この周縁部は、側壁と、比較的広い面積にわたって、可逆的であるか不可逆的であるかにかかわらず、平坦な当接接続を共有する。したがって、燃焼ガスの漏れの危険性が、この場所で低減される。
【0036】
この周縁部は、また、それらの相補的な形状に起因して、底部の中央部との気密接続の実施を容易にする。そのような接続は、特に、接続フランジ部との共有の平坦な当接接続によって強化され、これは、ガラス溶融物から後退して配置され、したがって、ガラス溶融物によって放出される熱にさらされる程度が比較的低い。
【0037】
特定の実施形態によれば、上記の周縁部は、好ましくはネジ-ナット取付けによって、上記の接続フランジ部に取り外し可能に取り付けられるように、適合されている。
【0038】
炉を修理するとき、欠陥のある部品のみを交換することができ、一方、他の部品を再使用することができる。したがって、そのような取り外し可能な取付けの実施は、金属底部の、より一般的には炉の、作動効率を改善することを可能にする。
【0039】
特定の実施形態によれば、上記の設備は、上記の周縁部と上記の接続フランジ部との間の界面に配置された少なくとも1つの燃焼ガス封止部を、備える。
【0040】
そのような封止部は、溶融チャンバから炉の外側へのガス漏れのリスクを制限する。周縁部と底部の接続フランジ部との間におけるその配置は、封止部がその場合に溶融チャンバ及びこれによって生成される熱から後退するという点で、特に有利である。したがって、封止部に使用される材料は、比較的低い熱抵抗を有するものとして選択することができ、これは、より良好な封止特性に有利である。
【0041】
好ましい実施形態によれば、上記の封止部は、高温(数百度)に耐えるように適合されたシリコーンのタイプから構成される。
【0042】
特定の実施形態によれば、上記の露出した金属底部は、底部に取り外し可能に取り付けられた少なくとも1つの浸漬バーナー及び/またはボイラによって通過されるように、適合されている。
【0043】
ウォータージャケットタイプの底部を選択することは、底部に取り付けられる構成要素(バーナー、酸化剤注入ブロック)のサイズ、重量、及びコストを制限することを可能にする。実際、ウォータージャケット底部は、耐火材底部よりも2~4倍小さい厚みを有する。好ましくはネジによって底部の下方で取り付けられる要素は、上方部と同一平面になるために底部を通過しなければならないが、比較的小さい厚みを通過する必要があるのみなので、体積がより少なくなる。したがって、それらは、使用される材料の減少、及び設計の単純化を考慮すると、より軽量であり、製造コストもより低い。
【0044】
特定の実施形態によれば、耐火性材料で作られた上記の側壁は、その周囲において、少なくとも部分的に、好ましくは水である冷却流体の循環のために適合されたパイプのネットワークによって横断された金属マントル(金属外套部)で、覆われている。
【0045】
このウォータージャケットを有する金属マントルを炉の外側に追加することにより、耐火材側壁のさらなる冷却を提供でき、かつ/又は、耐火材側壁を通して放出される熱を回収することができる。いくつかの特定の実施形態では、これは、また、封止部の接触領域の冷却を可能にする。
【0046】
特定の一実施形態によれば、上記の少なくとも1つの浸漬バーナーが、燃焼ガス分配ネットワーク及び複数の噴射器(インジェクタ)を備えた噴射器ブロックを備える。
【0047】
本発明は、また、ガラス化可能な原材料の組成物を溶融するためのそのような設備の使用にも関する。
【0048】
炉内での燃料の燃焼は、炉内における、酸素を含む酸化剤の存在によって、達成される。99%を超える純粋な酸素の使用は、無論、NOxの劇的な縮小のための良好な解決策であり、なぜならば、そのような酸化剤は、ほとんど窒素を含まないからである。しかしながら、この高品質の酸素は、特に高価である。
【0049】
特定の実施形態によれば、使用されるガス状酸化剤は、90~96モルパーセントの酸素及び窒素を含む。工業用酸素が使用され、これは、はるかに安価であり、依然としていくらかの窒素を含有し、「VPSA」(「Vacuum Pressure Swing Adsorption(真空圧力スイング吸着)」)酸素と呼ばれる。このような混合物の使用は、燃焼温度を低下させる手段と組み合わせた場合に、有利である。実際、酸化剤と共に導入されるわずかの窒素は、炉内におけるその低濃度に起因して、比較的低い温度において、NOxをほとんど又は全く生成しない。
【0050】
本発明のさらなる特徴及び利点が、単に例示的かつ非限定的な例として示される特定の実施形態の以下の説明、及び添付の図面から明らかになるであろう。
【0051】
図に示される様々な要素は、必ずしも実際の縮尺で示されておらず、本発明の一般的な動作を表すことに重点が置かれている。様々な図において、別段の指示がない限り、同一の符号は、同様又は同一の要素を表す。
【0052】
さらに、本発明は、記載及び/又は図示された特定の実施形態によって決して限定されず、他の実施形態も完全に可能であることが、理解される。
【0053】
図1図3は、原材料の組成物を溶融するための設備1(炉)の全部又は一部を表し、その一般的な動作を説明することを意図している。このような設備1は、ガラスウール及び/又はガラステキスタイルヤーンを得るのに適している。それは、鉛直軸に沿って配向された円筒状の溶融チャンバ2を備え、側壁4と、耐火性材料で作られた円天井と、浸漬バーナー3が通過する、ウォータージャケットタイプの露出した金属底部5とによって、画定されている。
【0054】
明瞭かつ簡単にするために、図1図3に示す炉1は、単一のバーナー3のみを備え、ボイラを備えていない。本発明の範囲は、炉内で使用されるバーナー/ボイラの数によって決して限定されないことは言うまでもない。
【0055】
炉1は、底部に原材料取入口8を備え、これは、本願でガラス溶融物とも呼ばれる溶融原材料浴の理論上の高さより下に位置する。原材料は、一般に、フィーダー(図示せず)によって溶融チャンバ2に供給される。
【0056】
原材料は、いったんガラス溶融物中に入ると、同様にガラス溶融物の高さよりも下に配置された浸漬バーナー3によって、溶融される。図1及び図2において、このバーナー3は、燃焼ガス分配ネットワーク及び複数の噴射器を備えた噴射器ブロックの形態で存在している。しかしながら、本発明は、そのようなタイプのバーナーの態様に限定されず、これは、代替的な実施態様によれば、例えば、リング形状を有しており、かつ/又は、単一の噴射器タイプである。
【0057】
原材料の燃焼から生じるガスは、燃焼チャンバ2の上部に配置された排気煙突9を介して回収される。溶融混合物は、ガラスウールを繊維化する次の工程又はガラステキスタイルヤーンを紡糸する次の工程のために、堰部10を介して、炉1から排出される。緊急排出口11が、溶融チャンバ2の基部又は代替的には底部に位置しており、必要に応じて炉をパージすることを可能にする。
【0058】
図2及び3は、設備の下方部分の拡大図を示しており、特に、底部5の種々の構成要素と耐火材料でできている側壁4との間の接続部の拡大図を示す。
【0059】
図2及び図3に示す特定の実施形態によれば、底部5は、特に、中央部5aを備え、これは、溶融チャンバ2の下方表面を形成するように適合されており、又は言い換えれば、ガラス溶融槽の底部を形成するように適合されている。この中央部5aは、特に、バーナー3によって通過され、このバーナーは、ネジによってその下側部分に固定される。底部3の金属製の周縁部5cは、炉1の外部金属構造体(図示せず)と一体でありながら、側壁4のための土台として機能し、側壁4が、その上に平坦に載置される。この周縁部5cは、また、底部5の中央部5aの周囲と相補的な形状であり、それにより、この中央部5aは、槽2の基部に挿入されたときに、側壁4によって形成された中央開口部を閉鎖し、そのようにして、図3に示されているように、少なくとも溶融ガラスの通過のための、密閉槽底部を形成する。接続フランジ部5bは、中央部5aの基部に肩部を形成し、周縁部5cの下方部分に対して平坦に押し付けられ、そのようにして、特にはこれらの2つの構成要素の間の界面に配置された封止部(図示せず)によって、槽底部の耐ガス漏洩性を強化する。図1図3に示される特定の実施形態によれば、接続フランジ部5bは、複数のネジによって周縁部5cに取り外し可能に取り付けられる。
【0060】
図示されていない代替的な実施形態によれば、底部3が、周縁部3cを備えていない。この場合、底部3は、接続フランジ部5bと側壁の基部との平坦な接触によって、側壁4の下方部分に直接取り付けられ、又は、側壁の土台として機能する中間プレートによって、側壁4の下方部分に取り付けられる。そのような取付けは、可逆的又は不可逆的でありうる。
【0061】
図示されていない代替的な実施形態によれば、底部3が、周縁部3cを備えるが、後者は、例えばこれらの側壁4のための土台として作用するプレートによって、側壁4に取り外し可能に取り付けられる。
【0062】
底部3及び側壁4をそれぞれ構成する材料が炉1のエネルギー性能の改善に果たす役割を評価するために、1200℃における1mのソーダ石灰ガラス溶融物について、1mの溶融炉の熱モデルを介して、コンピュータによって試験をシミュレートする。ガラス接触壁の表面は、5mである。
【0063】
第1のサンプルでは、底部を含む炉の全ての壁が、ウォータージャケットを有する露出した金属である。この場合、ガラス接触壁におけるエネルギー損失は、500kWと推定される。
【0064】
第2のサンプルでは、底部を含む炉壁の全体が、耐火性材料で作られている。この場合、ガラス接触壁におけるエネルギー損失は、50kWと推定される。
【0065】
したがって、ガラスと接触する壁における熱損失は、耐火材料で作られた壁と比較して、ウォータージャケットを有する壁の場合に、10倍高いことが観察される。
【0066】
本発明に係る炉を代表する第3のサンプルでは、側壁は、耐火性材料でできており、底部は、ウォータージャケットを有する露出した金属である。この場合、ガラス接触壁におけるエネルギー損失は、140kWと推定される。
【0067】
第1のサンプルと比較して、請求項に記載される本発明に係る第3のサンプルの使用は、許容可能な耐用期間に関して、熱損失を制限することを可能にし、炉のエネルギー効率を大幅に増加させることを可能にし、ウォータージャケット底部は、耐火材底部よりも、ガラスによる腐食に対してはるかに高い耐性を有する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】