(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】生理活性フェノラートイオン性錯体
(51)【国際特許分類】
C07C 39/23 20060101AFI20230526BHJP
C07C 211/63 20060101ALI20230526BHJP
C07C 69/84 20060101ALI20230526BHJP
C07C 49/84 20060101ALI20230526BHJP
C07C 235/46 20060101ALI20230526BHJP
C07F 9/10 20060101ALI20230526BHJP
C07C 39/06 20060101ALI20230526BHJP
C07C 37/66 20060101ALI20230526BHJP
C07C 37/00 20060101ALI20230526BHJP
C07C 45/61 20060101ALI20230526BHJP
C07C 67/30 20060101ALI20230526BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20230526BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230526BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230526BHJP
C07D 223/16 20060101ALI20230526BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20230526BHJP
A61K 31/191 20060101ALI20230526BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20230526BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230526BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230526BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230526BHJP
A61K 36/54 20060101ALI20230526BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230526BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C07C39/23
C07C211/63
C07C69/84
C07C49/84 E
C07C235/46
C07F9/10 B
C07C39/06
C07C37/66
C07C37/00
C07C45/61
C07C67/30
C07C231/12
A61K31/05
A61P43/00 111
C07D223/16
A61K31/55
A61K31/191
A61K8/35
A61Q17/04
A61P17/00
A61P29/00
A61K8/37
A61K36/54
A61P31/12
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563902
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 IL2021050450
(87)【国際公開番号】W WO2021214762
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510126427
【氏名又は名称】イッサム リサーチ ディべロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YISSUM RESEARCH DEVELOPMENT COMPANY OF THE HEBREW UNIVERSITY OF JERUSALEM,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】508133411
【氏名又は名称】ハダシット メディカルリサーチサービセス アンド ディベロップメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドムバ,エイブラハム ジャコブ
(72)【発明者】
【氏名】スタインマン,ノーム
(72)【発明者】
【氏名】ロッテンバーグ,ヤキル
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
4C206
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4C083AC212
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(57)【要約】
本発明は、単離された材料、又はフェノラート形態の少なくとも1つのフェノール含有活性材料を提供し、その単離材料は、1つ又は複数のフェノラート種及び金属塩、ホスホニウム又はアンモニウムの形態の対イオン(カチオン)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフェノール含有活性材料及び金属塩、ホスホニウム又はアンモニウム塩対イオンを含む単離された材料であって、前記活性材料が、フェノール(C
6H
6O)、メチルフェノール、ブロモフェノール、ジブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノン又はナフトールではない、単離された材料。
【請求項2】
前記金属カチオンと前記フェノラート材料上の荷電した酸素原子を結び付ける結合がイオン結合である金属カチオン及びフェノラート活性材料を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記金属カチオンが、一価、二価、及び多価カチオンから選択される、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前期金属カチオンが二価又は三価金属カチオンである、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
前記金属カチオンが一価カチオンではない、請求項2又は3に記載の材料。
【請求項6】
前記金属カチオンが、アルカリ金属、アルカリ金属及び遷移金属のなかから選択される、請求項3に記載の材料。
【請求項7】
前記金属カチオンがアルカリ金属ではない、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記金属カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉄、銀、金バリウム金属カチオンから選択される、請求項6に記載の材料。
【請求項9】
アンモニウム塩の形態である、請求項1に記載の材料。
【請求項10】
ホスホニウム塩の形態である、請求項1に記載の材料。
【請求項11】
前記フェノール性活性材料が、前記フェノール-OH基から水素原子を引き抜くことによって前記フェノラート形態に変換された、薬、化粧品、獣医学又は農業に使用されるフェノール含有活性材料である、請求項1~10のいずれか一項に記載の材料。
【請求項12】
フェノール含有活性材料が1つ又は複数の-OH基を含む、請求項11に記載の材料。
【請求項13】
二価金属及び2つのフェノラート活性材料を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項14】
2つ以上のフェノール性活性材料を含み、各活性材料が1つ又は複数のフェノラート基を有し、前記フェノラート基のそれぞれが、金属カチオン、ホスホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンから選択される異なるカチオンと結合している、請求項1に記載の材料。
【請求項15】
前記2つのフェノラート活性材料が同じ又は異なる、請求項13又は14に記載の材料。
【請求項16】
三価金属及び3つのフェノラート活性材料を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項17】
前記3つのフェノラート活性材料のそれぞれが互いに異なる、請求項16に記載の材料。
【請求項18】
前記3つのフェノラート活性材料の2つが、前記フェノラート活性材料の3つめと異なる。請求項16に記載の材料。
【請求項19】
前記3つのフェノラート活性材料のそれぞれが同じである、請求項16に記載の材料。
【請求項20】
前記フェノラート活性材料の1つ又は複数が、治療薬、化粧品又は獣医学材料である、請求項14~19に記載のいずれか一項に記載の材料。
【請求項21】
前記フェノラート活性材料の1つ又は複数が農業材料である、請求項14~19に記載のいずれか一項に記載の材料。
【請求項22】
1つ又は複数のフェノラート活性材料及び1つ又は複数の非活性フェノラート材料を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項23】
前記フェノラート活性材料が、カンナビノイド、フェノルドパム、チロシン、キシレノール、チモール、プロポフォール、アポモルヒネ、モルヒネ及びその誘導体、ミトキサントロン、デキソルビシン、ヘキサクロロフェン、アセトアミノフェン、p-クマル酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ブチルパラベン、バニリン酸、グアイアコール、コーヒー酸、トルテロジン、ラロキシフィア、スコポレチン、デカルシノール、ドーパミン、L-ドーパ、クルクミン、チアニン並びにポリフェノールから選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項24】
前記活性な薬物実体がカンナビノイド材料である、請求項23に記載の材料。
【請求項25】
前記カンナビエルソイン(カンナビノイド材料が、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロル(CBL)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)及びカンナビシトラン(CBT)のなかから選択される、請求項24に記載の材料。
【請求項26】
前記カンナビノイドがTHC又はCBD及びその化学誘導体である、請求項24に記載の材料。
【請求項27】
前記フェノール活性材料が、サルカプロザートナトリウム(SNAC)、タピナロフ及びシナモン抽出物由来の材料から選択される、請求項23に記載の材料。
【請求項28】
前記フェノール活性材料がフィトマテリアルである、請求項1に記載の材料。
【請求項29】
前記フェノール活性材料が、メサラジン、サルブタモール、ピルブテロール、カプサイシン、サルメテロール、ビランテロール、バルサラジド、ラベタロール、ミコフェノール酸、ピリドキシン、フェニレフリン、エドロホニウム、パラセタモール、モノベンゾン、タペンタドール、メタラミノール、メチロシン、オキシメタゾリン、ナイロン、ジフルニサル、オルサラジン、リオチロニンナトリウム、デスベンラファキシン、ロチゴチン、フェントラミン、オキシフェンブタゾン、アモジアキン、オロダテロール、トログリタゾン、エルトロンボパグ、イバカフトル、インダカテロール、セファドロキシル、セフプロジル、テトラヒドロカンナビノール、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、レバロルファン、オキシモルフォン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナロキソン、レボルファノール、ナルトレキソン、デゾシン、モルヒネ、ナロキセゴール、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、メタサイクリン、サレサイクリン、オマダサイクリン、エラバサイクリン、エクイリン、フルテメタモール、ジエチルスチルベストロール、ジエンエストロール、プロブコール、ミトキサントロン、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、アルブタミン、ドブタミン、マソプロコール、カンナビジオール、テルブタリン、オルシプレナリン、デノルドパム、ノルエピネフリン、コルバドリン、イソプレナリン、イソエタリン、ドロキシドパ、カルビドパ、プロトキロール、アポモルヒネ、エンタカポン、トールカポン、イダルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン及びバルルビシンから選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項30】
フェノラートの形態の少なくとも1つのカンナビノイド並びに金属カチオン、ホスホニウム及びアンモニウムから選択されるカチオンを含む材料。
【請求項31】
前記金属カチオンが、一価、二価又は三価の金属原子である、請求項30に記載の材料。
【請求項32】
前記金属カチオンが二価又は三価のカチオンである、請求項30に記載の材料。
【請求項33】
前記金属カチオンが一価カチオンではない、請求項30に記載の材料。
【請求項34】
二価金属原子及び1つ又は2つのカンナビノイドを含む、請求項32に記載の材料。
【請求項35】
1つのカンナビノイド及び1つの非カンナビノイドを含む、請求項32に記載の材料。
【請求項36】
三価金属原子及び1つ又は2つ又は3つのカンナビノイドを含む、請求項32に記載の材料。
【請求項37】
1つのカンナビノイド及び2つの非カンナビノイドを含む、請求項36に記載の材料。
【請求項38】
2つのカンナビノイド及び1つの非カンナビノイドを含む、請求項36に記載の材料。
【請求項39】
前記カンナビノイドがCBD又はTHCである、請求項30~38に記載のいずれか一項に記載の材料。
【請求項40】
前記金属カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉄、銀、金バリウム金属カチオンから選択される、請求項39に記載の材料。
【請求項41】
前記金属カチオンがナトリウム又はカルシウムである、請求項40に記載の材料。
【請求項42】
1つのCDB及び任意選択で別の非カンナビノイド又は2つのCBDを含むカルシウムCBD塩。
【請求項43】
前記アンモニウムが、任意選択で置換されたアンモニウムカチオンである請求項1に記載の材料。
【請求項44】
任意選択で置換されたアンモニウムカチオン及びフェノラート活性化合物を含む、請求項43に記載の材料。
【請求項45】
前記アンモニウムカチオンがテトラアルキルアンモニウムであり、任意選択で、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウムコリン及びコリン誘導体から選択される、請求項44に記載の材料。
【請求項46】
少なくとも1つのフェノール活性材料のコール酸塩である材料。
【請求項47】
前記活性材料が、カンナビノイド、フェノルドパム、チロシン、キシレノール、チモール、プロポフォール、アポモルヒネ、モルヒネ及びその誘導体、ミトキサントロン、デキソルビシン、ヘキサクロロフェン、アセトアミノフェン、p-クマル酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ブチルパラベン、バニリン酸、グアイアコール、コーヒー酸、トルテロジン、ラロキシフィア、スコポレチン、デカルシノール、ドーパミン、L-ドーパ、クルクミン、チアニン並びにポリフェノールから選択される、請求項46に記載の材料。
【請求項48】
前記活性な薬物実体がカンナビノイド材料である、請求項46に記載の材料。
【請求項49】
前記カンナビエルソイン(カンナビノイド材料が、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロル(CBL)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)及びカンナビシトラン(CBT)のなかから選択される、請求項48に記載の材料。
【請求項50】
前記カンナビノイドがTHC又はCBD及びその化学誘導体である、請求項48に記載の材料。
【請求項51】
前記フェノール活性材料が、サルカプロザートナトリウム(SNAC)、タピナロフ及びシナモン抽出物由来の材料から選択される、請求項46に記載の材料。
【請求項52】
前記フェノール活性材料がフィトマテリアルである、請求項46に記載の材料。
【請求項53】
前記フェノール活性材料が、メサラジン、サルブタモール、ピルブテロール、カプサイシン、サルメテロール、ビランテロール、バルサラジド、ラベタロール、ミコフェノール酸、ピリドキシン、フェニレフリン、エドロホニウム、パラセタモール、モノベンゾン、タペンタドール、メタラミノール、メチロシン、オキシメタゾリン、ナイロン、ジフルニサル、オルサラジン、リオチロニンナトリウム、デスベンラファキシン、ロチゴチン、フェントラミン、オキシフェンブタゾン、アモジアキン、オロダテロール、トログリタゾン、エルトロンボパグ、イバカフトル、インダカテロール、セファドロキシル、セフプロジル、テトラヒドロカンナビノール、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、レバロルファン、オキシモルフォン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナロキソン、レボルファノール、ナルトレキソン、デゾシン、モルヒネ、ナロキセゴール、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、メタサイクリン、サレサイクリン、オマダサイクリン、エラバサイクリン、エクイリン、フルテメタモール、ジエチルスチルベストロール、ジエンエストロール、プロブコール、ミトキサントロン、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、アルブタミン、ドブタミン、マソプロコール、カンナビジオール、テルブタリン、オルシプレナリン、デノルドパム、ノルエピネフリン、コルバドリン、イソプレナリン、イソエタリン、ドロキシドパ、カルビドパ、プロトキロール、アポモルヒネ、エンタカポン、トールカポン、イダルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン及びバルルビシンから選択される、請求項46に記載の材料。
【請求項54】
医薬、化粧品、獣医学又は農業製剤から選択される製剤であって、請求項1~53に記載のいずれか一項に記載の単離材料を含む、製剤。
【請求項55】
局所、経皮、経口、エアゾール、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、直腸又は膣内投与に適合された医薬製剤である請求項54に記載の製剤。
【請求項56】
0.1~99%の前記単離材料を含む、請求項54に記載の製剤。
【請求項57】
製剤の調製における少なくとも1つの請求項1に記載の材料の使用。
【請求項58】
少なくとも1つの障害又は病態を予防又は治療する方法における少なくとも1つの請求項1に記載の材料の使用。
【請求項59】
少なくとも1つのフェノール含有活性材料を、金属を含有する塩基及びアンモニア又はその均等物から選択される塩基で処理することを含む、請求項1に記載の材料を調製する方法。
【請求項60】
前記塩基が、金属水素化物、金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、金属炭酸塩、金属カルバニオン又は金属アミドから選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記塩基が、NaOH、Ca(OH)
2、Cu(OH)
2、CaCl
2、FeCl
3、Zn(OH)
2及びNaHから選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
請求項1に記載の材料を調製する方法であって、少なくとも1つのフェノール含有活性材料を、金属を含有する塩基及びアンモニア又はその均等物から選択される塩基で処理して前記材料を得ること並びに対イオンの交換を可能にする条件下で前記材料を処理することを含む、方法。
【請求項63】
請求項59~62のいずれか一項に記載の方法によって調製される請求項1に記載の材料。
【請求項64】
2つ以上のフェノール含有活性材料を含み、それぞれがカチオンとイオン結合し、前記カチオンが多価金属カチオン又はポリアンモニウムである多分子材料の形態である、請求項1~40に記載のいずれか一項に記載の材料。
【請求項65】
前記多価金属カチオンが、二価、三価又は四価のカチオンである、請求項64に記載の材料。
【請求項66】
ポリフェノールと前記多価カチオン又はポリアンモニウムの反応によって形成される、請求項65に記載の材料。
【請求項67】
ナノ粒子又はマイクロ粒子の調製に使用するための請求項65に記載の材料。
【請求項68】
コーティング材料の調製に使用するための請求項65に記載の材料。
【請求項69】
請求項65又は1に記載の材料を含む粒子。
【請求項70】
ミクロ粒子又はナノ粒子である請求項69に記載の粒子。
【請求項71】
前記材料が緑茶抽出物に由来するポリフェノールを含む、請求項69に記載の粒子。
【請求項72】
前記材料がタンニン酸を含む、請求項69に記載の粒子。
【請求項73】
2つ以上のフェノール含有材料を含み、それぞれがカチオンとイオン結合し、前記カチオンが多価金属カチオン又はポリアンモニウムである、多分子材料の形態の材料。
【請求項74】
前記多価金属カチオンが、二価、三価又は四価のカチオンである、請求項73に記載の材料。
【請求項75】
ポリフェノールと前記多価カチオン又はポリアンモニウムの反応によって形成される、請求項73に記載の材料。
【請求項76】
ナノ粒子又はマイクロ粒子の調製に使用するための請求項73に記載の材料。
【請求項77】
コーティング材料の調製に使用するための請求項73に記載の材料。
【請求項78】
請求項73に記載の材料を含む粒子。
【請求項79】
前記材料によって治療可能であることがわかっている疾患又は障害を治療する、寛解させる、又は予防するための、請求項1に記載の少なくとも1つのフェノール含有材料の金属又はアンモニウム材料の形態にある材料の使用。
【請求項80】
そのような製剤/組成物/医薬によって治療可能であることがわかっている疾患又は障害を治療する、予防する、又は寛解させるための製剤、医薬組成物又は医薬を調製するための請求項1に記載の少なくとも1つの材料の使用。
【請求項81】
細菌及び/又は真菌感染症から植物及び作物を保護及び治療するための製剤を調製するための請求項1に記載の少なくとも1つの材料の使用。
【請求項82】
前記材料が、亜塩素酸ナトリウム、サリチル酸銅、ブロモクロロジメチルヒダントイン、チモール銅、及びポリグアニジンから選択される、請求項81に記載の使用。
【請求項83】
前記細菌及び/又は真菌感染症が、エルウィニア、ピチウム、マクロフォミナ・ファゼオリナ、アテリア・ロルフシイ及びジャガイモそうか病から選択される、請求項81に記載の使用。
【請求項84】
材料を含む組成物又は製剤であって、前記材料が、少なくとも(
2+)の価数を有する多価金属カチオン及び前記多価金属カチオンにイオン結合した、フェノラートの形態の少なくとも1つの活性フェノール含有材料を含み、前記組成物又は前記製剤の治療有効量を対象に投与することによって治療可能である疾患又は障害を治療するのに使用するための、組成物又は製剤。
【請求項85】
材料を含む組成物又は製剤であって、前記材料が、アンモニウムカチオン又はポリアンモニウム、及び前記アンモニウム又は前記ポリアンモニウムカチオンにイオン結合した少なくとも1つのフェノラート部分を含む少なくとも1つの活性材料を含み、前記組成物又は前記製剤の治療有効量を対象に投与することによって治療可能である疾患又は障害を治療するのに使用するための、組成物又は製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として、活性剤である新規なイオン性の金属、ホスホニウム及びアンモニウムフェノラート並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界にはフェノール基を含有する多種多様な生理活性材料があり、人間の食事に欠かせない役割を担っている。フェノール含有材料はまた、いくつかの重要な合成及び天然の薬物(drugs)にも見られ、例えば、アポモルヒネ、エストロン、エストラジオール、プロポフォール(propopfol)、O-フェニルフェノール、L-ドーパ、ドキソルビシン、テトラヒドロカンナビジオール(THC)やカンナビジオール(CBD)などのカンナビノイド活性分子、及びチロシンを含有するペプチド又はタンパク質分子である。別の例は、ペプチド及びビタミン用の経口吸収促進剤であるサルカプロザートナトリウム(SNAC)、クルクミンや、フラボン、フラバノール、アントシアニン、没食子酸、コーヒー酸、チモール、サリチル酸、ヒドロキシスチルベン、セラリシニンなど、天然及び改変(modified)ポリフェノールである。
【0003】
オルソ-又はパラ-カテコールなどのフェノール性物質は、酸化又はアルデヒド及び求核剤との反応のために、水溶液中で化学的安定性が低いことがよく知られている。さらに、これらのフェノール性薬物は、多くの場合、溶解性及びバイオアベイラビリティーが低いことが知られている。したがって、経口での送達には限界があり、経口投与のためのプロドラッグ代用品が作られるようになった。場合によっては、フェノラート塩の形成によって達成できる日焼け止め分子など、皮膚を通した浸透を低減又は増強する必要がある。
【0004】
国際公開第2016/127111号は、3つのヘプタフルオロアルキル配位子で錯化されたCBDとランタノイド金属の付加物を教示し、そこではCBDのOHはフェノラートアニオンに変換されていない。
【発明の概要】
【0005】
フェノール含有活性材料に関連する多くの困難を克服するために、本明細書に開示の技術の発明者らは、これらの活性材料を塩の形態のプロドラッグ実体(entities)に変換し、それらに以下を付与した。
-化学的安定性の向上、
-酸化に対する感受性の減少、及び
-水溶性や、結晶化しやすさ、純度などの物理的特性の向上。
【0006】
本発明者らは、それらの化合物をそれぞれの塩に変換することによって、1つ又は複数の、同じ又は異なる薬物実体を含む多薬物ビヒクル(multi-drug vehicles)を単一剤形内に形成することを可能にした。言い換えれば、単一のカチオンが、単位として投与又は使用できる2つ以上の、同じ又は異なる、薬物物質と結合することができる。
【0007】
したがって、全体として言えば、本発明は、単離された材料、又は少なくとも1つのフェノール含有活性材料のフェノラート形態を提供し、単離された材料が、1つ又は複数のフェノラート種及び金属塩、ホスホニウム又はアンモニウムの形態の対イオン(カチオン)を含み、活性材料が、フェノール(C6H6O)、メチルフェノール、ブロモフェノール、ジブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノン又はナフトールではない。1つ又は複数のフェノラート種は、安定性の向上、水性溶媒(media)への効率的な溶解、より効率的な送達、及びバイオアベイラビリティーの向上を可能にする形態で提示される。本発明の材料生成物はそれぞれ、フェノール含有化合物と金属カチオンに解離するので、本発明の材料は、当該技術分野で公知のような金属付加物や金属配位化合物であってはならない(must not)。
【0008】
本発明の材料は、単離された材料とみなされる。「単離された」という用語は、材料が、偶発的な材料でもなく、それが作られ、単離されていないスープ(soup)や溶媒に残留する中間材料でもないことを意味する。したがって、単離された材料は純度が高い。純度は100%であっても、80%超であってもよい。また、純度は、材料が意図された使用又は実用のそれぞれに必要な純度に依存することもある。いくつかの実施形態では、発明の単離された材料は、当該技術分野で規定される医薬グレード、化粧品グレード、又は農業グレードである。
【0009】
単離されていない材料は、本発明の一部を構成しない。
【0010】
本発明の材料は、親油性又は水不溶性の活性材料の水に可溶な形態である。この水溶性の形態はイオン性であり、対イオンは以下に定義する通りである。理論に縛られることを望むものではないが、本発明の材料は、投与後、体内でそれぞれの活性種、すなわち活性フェノール化合物に変換されることもあり、又はイオン化されたままであることもあると考えられる。例えば、活性材料がカンナビノイドである場合、それはイオン化されたフェノラート形態で発明の材料に提示され、体内で、非イオン化形態に変換されて戻る可能性がある。
【0011】
当該技術分野で公知のように、フェノール含有活性材料は、1つ又は複数の環炭素原子に結合した1つ又は複数のヒドロキシル基(-OH)を有する芳香族炭化水素基(ベンゼン環、フェニル環、ナフチル基、縮合芳香環など)を有する化合物である。フェノール含有活性材料は、典型的には、薬(medicine)、化粧品、獣医学又は農業に使用される生理活性化合物である。活性材料は、合成であっても、植物由来であってもよい。塩形態は、金属塩形態、アンモニウム塩形態、ニトロニウム塩形態、又はホスホニウム塩形態である。金属塩形態は、金属カチオン及びフェノラート化合物を含有する。言い換えれば、金属カチオンとフェノラート化合物の荷電酸素原子を結び付ける結合は、典型的にカチオンとアニオンを結び付けるような類のイオン性である(ionic of the sorts)。金属カチオンと形成されるイオン結合の数は、金属カチオンの価数に依存する。
【0012】
金属カチオンは、薬(ヒト及び動物対象の治療と診断の両方)、化粧品分野又は農業に使用される一価、二価、又はそれより高い価数のカチオンから選択することができる。したがって、金属カチオンは、医薬用途に使用されるときには、薬学的に許容されなければならず、化粧品用途に使用されるときには、化粧品的に許容されなければならず、農業用途に使用されるときには、農業的に許容されなければならない。一般に、「薬学的に許容される」とは、実質的、主要、又は致死的な有害事象がなく、ヒト及び動物(特に哺乳類)への投与に適していることを意味する。「化粧品的に許容される」とは、皮膚領域上に用いられるレベルで、ヒト及び動物(特に哺乳類)に対して無毒且つ安全と考えられることを意味し、「農業的に許容される」とは、その材料が植物又はその環境に対して実質的に有害又は有毒でなく、偶発的な(受動的な)露出又は接触又は摂取によって直接又は間接的にそれに曝される可能性がある使用者又は他の人にとって危険でないことを示唆する。
【0013】
カチオンは、アルカリ金属、アルカリ金属、及び遷移金属のなかから選択することができる。非限定的な例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉄、銀、金、バリウムなどが挙げられる。
【0014】
いくつかの実施形態では、金属は、ナトリウム、カリウム及びカルシウムから選択される。
【0015】
いくつかの他の実施形態では、材料は、ホスホニウムカチオン及びフェノラート化合物を含む。
【0016】
アンモニウム塩形態は、アンモニウムカチオン及びフェノラート化合物を含むものである。アンモニウムカチオンは、中央の正荷電窒素原子を有する任意のアンモニウムカチオンから選択することができる。言い換えれば、アンモニウムは、NH4
+、NH3R+、NH2RR’+、NHRR’R’’+又はNRR’R’’R’’’+の形態であることができ、式中、R、R’、R’’及びR’’’のそれぞれは、窒素原子、例えばアルキル基又はアリール基に共有結合する官能基でありうる。例えば、材料が単一のフェノール含有活性材料、すなわち単一のフェノラート基を含む場合、カチオンはNH4
+であってもよく、NH3R+、NH2RR’+、NHRR’R’’+及びNRR’R’’R’’’+のいずれかであってもよく、それぞれのR基は同じでも異なってもよく、独立してアルキル及びアリールから選択されてよい。
【0017】
上記R基の1つ若しくは複数(又はそれぞれ)が「アルキル」である場合、材料は、水溶性ある状態のままであることを条件として、典型的に、1~20個の炭素原子を含有する。したがって、いくつかの実施形態では、アルキルは、直鎖又は分枝の形態で、1~6個の炭素原子を含む。例示的なアルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソヘキシルなどが挙げられる。
【0018】
アルキル基はまた、「シクロアルキル」基、すなわち、ある特定の実施形態では3~10個の炭素原子、他の実施形態では3~6個の炭素原子の飽和単環式又は多環式環系を包含する。シクロアルキルの環系は、一緒になって縮合、架橋、又はスピロ(sprio)の形で結合できる1つの環又は2つ以上の環から構成されうる。
【0019】
「アリール」基は、6~20個の炭素原子を含有する芳香族単環式又は多環式基である。アリール基としては、非置換又は置換フルオレニル、非置換又は置換フェニル、及び非置換又は置換ナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
アリール基はまた、ある特定の実施形態では3~15個の原子の単環式又は多環式芳香環系を含み、環系内の1個又は複数個の、いくつかの実施形態では1~3個の原子が、窒素、酸素、硫黄及び他の非炭素原子から選択されるヘテロ原子である「ヘテロアリール」基を包含する。ヘテロアリール基は、任意選択でフェニル環に縮合していてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、アンモニウムカチオンは、NH4
+又はテトラアルキルアンモニウムカチオンであることができる。テトラアルキルアンモニウムカチオンの非限定的な例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム及びテトラヘキシルアンモニウム、又は混合アルキル形態が挙げられる。別の例は、コリン、又はコリン誘導体、又は当該技術分野で公知のジ-コリンやトリ-コリンなどのポリコリンである。
【0022】
いくつかの実施形態では、アンモニウムカチオンは、複数の(multiple number)アミン基(例えば、一級、二級、及び三級アミンを含む)を有するポリアミンの一部であることができ、複数の(plurality)活性フェノール材料をそれと結合させることによって本明細書に記載の材料に変換することができる。
【0023】
材料が(単一のフェノール含有材料上に)2つ以上のフェノラート基を含む場合、フェノラート基はそれぞれ、異なるカチオンとイオン結合していてもよく、例えば、1つの基はアンモニウムカチオンと結合していてもよく、一方で別の基は金属カチオンと結合していてもよい、又はフェノラートはそれぞれ、異なる若しくは同じ金属カチオンと結合していてもよい。
【0024】
フェノラート実体を含む材料は、フェノール-OH基から水素原子を引き抜いてフェノラート形態に変換されている、薬、化粧品、獣医学又は農業に使用される(医薬成分、化粧品成分又は農業成分でありうる)任意のフェノール含有活性材料である。本明細書に記載のように、フェノラート化合物は、芳香族炭素環基(ベンゼン環又はフェニル環)上に1つ又は2つ以上の-OH基を含むことができる。
【0025】
金属錯体の形態の材料は、1つ以上のフェノラート基とイオン結合した荷電形態(カチオン)の1つの金属を含むことができ、フェノラート基の数は、金属イオンの価数によって決まる。例えば、リチウムなどのアルカリ金属原子が使用される場合、材料はリチウムイオン及び単一のフェノラート化合物を含むことができる。単一のフェノラート化合物は、1つ又は複数の-OH基を有する化合物であることができるが、金属イオンとフェノラート化合物の結合は、単一のフェノラート基を介するものであることができる。
【0026】
同様に、金属錯体は二価金属イオンと2つのフェノラート化合物を含むことができ、その2つは同じでも異なってもよく、すなわち、ベンゼン環を置換する-OHは同じベンゼン環上にあっても異なったベンゼン環上にあってもよく、あるいは2つのフェノラート化合物は同じ分子でも異なった分子でもよい2つの別個のフェノール含有化合物である。違った言い方をすれば、フェノラート化合物とイオン結合を形成する金属イオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンは、次の1つ又は複数として提供することができる。
(1)単一ベンゼン環を置換する-OH基が、1つの金属イオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンとイオン結合を形成する。
(2)同一分子上であるが(ポリフェノール又は複素環化合物など)上にあるが異なるベンゼン環を置換する-OH基が、1つ又は複数の金属イオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンとイオン結合を形成する。
(3)2つの別個の分子(同一又は異なる)上の同一又は異なるベンゼン環を置換する-OH基が、1つ又は複数の金属イオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンとイオン結合を形成する。
(4)上記の任意の組み合わせ。
【0027】
金属イオンとフェノラート基の間のイオン結合は、本明細書に記載のように、その価数に応じて、1つの金属イオンとでも、複数の金属イオンとでもよい。例えば、二価のイオンは、上記(1)~(4)のいずれかで1つ又は2つのイオン結合を形成することができる。
【0028】
下のスキーム1は、本発明の金属錯体のいくつかの一般的な描写を示し、式中R=は、フェノール含有活性材料上の置換基を示し、その置換基は、アルキル、アリール、又は上記で定義された複素環基、又はフェノールに縮合した環であることができ、Mは一価、二価及び三価金属イオン又はアンモニウムカチオンである。
【0029】
上記スキーム1では、本発明の4つの異なる例示的な実施形態が示されている。いずれの場合も、フェノールは一般的に描かれ、Rは置換基、フェノールに縮合した環、又はフェノール含有材料の任意の派生物(derivation)である。描かれているフェノールは、単一のフェノール性-OH基を含んでもよく、2つ以上(more than one)のフェノール性-OH基を含んでもよい。言い換えれば、表記のフェノールはそれぞれ、芳香族炭素環に直接結合する1つ、2つの又はそれより多いヒドロキシル基を含みうる。
【0030】
スキーム1に示される第1の場合では、フェノール含有材料は、一価金属M+1(アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシドなど、一般にM-Xの形態(式中Mは金属カチオンであり、Xはアニオンを表す)でありうる塩基の形態)又はアンモニア(若しくはその均等物)と反応して、フェノラート化合物(塩基との相互作用によって形成されるフェノールのアニオン)と、金属カチオン又はアンモニウムカチオンとの間の錯体をそれぞれ形成する。
【0031】
スキーム1に示される第2及び第3の場合では、フェノール含有材料は、二価金属M+2(アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属アルコキシドなど、一般にM-X(式中、Mは二価金属カチオンであり、Xはジアニオンを表す)でありうる塩基の形態)と反応して、2つフェノラート基との金属塩又は単位一のフェノラート基と(フェノラートではない)別のアニオンとの間の金属塩を形成する。2つのフェノラート基は、同じでも異なっていてもよい。
【0032】
スキーム1に示される第4の場合では、フェノール含有材料は、三価金属M+3(三価金属三水素物、三価金属トリアルコキシドなど、一般にM-X(式中、Mは三価金属カチオンであり、Xはトリアニオンを表す)の形態でありうる塩基の形態)と反応して、3つのフェノラート基と三価金属カチオンとの間の金属錯体を形成する。いくつかの実施形態では、3つのフェノラート化合物は同じであり、他の場合では、それらは異なる。いくつかの実施形態では、3つのうち2つは同じであり、3つ目は異なる。いくつかの実施形態では、3つはそれぞれ、上記に関してすべて、他と異なる。フェノラートの対イオンは、溶液中で対イオンを置換することによって調製することができ、例えば、ナトリウム対イオンが溶液中のイオンと置換されるようにフェノラートナトリウム塩をカルシウム塩又はコリン塩の溶液に浸漬することによってカルシウム塩又はコリン塩に変換することができる。
【0033】
2つのフェノール性-OH基が同じ芳香環上でオルトである、そうでなければ互いに近接しているカテコール分子の場合、以下のスキーム2に描かれているように、カルシウム、マグネシウム、鉄などの1つの二価又は三価の金属イオンとイオン性錯体を形成することができる(ここでR及びMはスキーム1の定義と同じ)。
【0034】
鉄やアルミナなどの二価又は三価の金属イオンの場合、他の官能基との混合相互作用が形成されることがある。例えば、カルシウムイオンはフェノラートアニオン及びカルボン酸アニオンに結合でき(下記スキーム3に示される通り)、また、鉄の場合、1つ又は2つのフェノラートアニオンが三価の鉄イオンと結合し、3つ目の価のものが配位付加物を形成することができる。
【0035】
2つ以上のフェノラート化合物が金属カチオンに結合している本発明の材料では、それぞれのフェノラート基が活性材料である場合がある、フェノラート基の少なくとも1つが活性薬物(active drug)材料である場合がある、フェノラート基の1つのみが活性材料である、又は大多数のフェノラート基が活性材料である。2つ以上のフェノラート化合物が金属カチオンに結合しているいくつかの実施形態では、フェノラート化合物の1つは活性材料であり、フェノラート化合物の別のものは異なる活性材料又は非活性薬物(non-active drug)材料である。
【0036】
本明細書で使用される場合、活性材料は、障害若しくは病態の治療若しくは予防の方法において、又は皮膚領域の状態(state)若しくは状態(condition)を改善する方法(若しくは一般に化粧品の使用方法)若しくは人体若しくは動物の体に関する任意の状態を改善する方法において、又は植物の疾患及び障害の治療若しくはファシリテーションの方法において、又は一般に植物保護若しくは他の農法において、それぞれ、典型的に使用される任意の治療薬、化粧品又は獣医学材料である。
【0037】
農業に使用されるフェノール含有化合物は、除草剤、殺菌剤、殺虫剤、殺鼠剤、植物生育調節剤、ホルモン、誘引剤、忌避剤、栄養剤、肥料などとして使用さているそのような化合物のいずれかである。
【0038】
フェノラート化合物又はフェノール含有生理活性物質(bioactive)は、フェノール(C6H6OH)でもその任意の置換形態でもない。
【0039】
いくつかの実施形態では、フェノール含有は、1つのフェノール性-OH基及び少なくとも1つの他の官能基を含む活性材料である。いくつかの実施形態では、活性材料は、2つ以上のフェノール性-OH基及び少なくとも1つの他の官能基を含む材料である。いくつかの実施形態では、活性材料は、複数のフェノール性-OH基及び任意選択で少なくとも1つの他の官能基を含む材料である。場合によっては、-OH基をもつ芳香環は、1つ、ときには2つ、ときには3つ、ときには4つ、ときには5つ及びときには6つの-OH基を含みうる。
【0040】
「少なくとも1つの他の官能基」は、-OHとは異なる基であり、ヒドロキシル基(-OH)でも、水素原子(-H)でもない、芳香環上の位置を置換する任意の官能基でありうる。官能基は、ハロゲン原子(halide atom)、ハロアルキル、ニトロ、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、エーテル、アミド、アルキルアミノカルボニル、カルボキサミド、アリールアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アリールオキシカルボニル(arloxycarbonyl)、アルキル、アルケニル、アルキニル、アザアルキレン、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、シクロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリレン、ヘテロシクリレン、サルフィニル、サルフォ、アミンなどから選択することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、縮合芳香族基、すなわち、ヒドロキシル基で直接置換されたベンゼン環又はフェニル環を含む。縮合環系は、芳香族でも非芳香族でもよい環状炭素環又は複素環(N、S、Oなどの1つ又は複数のヘテロ原子も含有)に縮合したフェノール基の形態であることができる。そのような系は、一般に複素環系と呼ばれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、単純フェノールなどの単一のフェノール基(但し、フェノール及びその単純誘導体を除く)並びにベンゾキノンを含む。そのような化合物の非限定的な例としては、カテコール、ヒドロキシキノン及び2,6-ジメトキシベンゾキノンが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、没食子酸やサリチル酸などのフェノール酸やフェノールアルデヒドである。
【0044】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、アセトフェノン、チロシン誘導体及びフェニル酢酸のなかから選択される。非限定的な例としては、3-アセチル-6-メトキシベンズアルデヒド、チロソール及びp-ヒドロキシフェニル酢酸が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、ヒドロキシケイ皮酸、フェニルプロペン及びクマリンのなかから選択される。非限定的な例としては、コーヒー酸、フェルラ酸、ミリスチシン、オイゲノール、ウンベリフェロン、エスクレチン、ベルゲノン(bergenon)及びオイゲニンが挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料はナフトキノンのなかから選択される。非限定的な例としては、ジュグロン及びプルンバギンが挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、マンギフェリンなどのキサントノイドから選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、スチルベノイド及びアントラキノンから選択される。非限定的な例としては、レスベラトロール及びエモジンが挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、カルコノイド、フラボノイド、イソフラボノイド及びネオフラボノイドから選択される。非限定的な例としては、ケルセチン、シアニジン(cyaniding)及びゲニステインが挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、リグナン及びネオリグナンから選択される。非限定的な例としては、ピノレジノール及びユーシデリン(eusiderin)が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料はバイオフラボノイドから選択される。非限定的な例としては、アメントフラボンが挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、リグニン、カテコールメラニン、フラボラン(縮合タンニンなど)、ポリフェノールタンパク質及びポリフェノールから選択される。非限定的な例としては、ラズベリーエラギタンニン及びタンニン酸が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、エストラジオール、チロキシン、レボチロキシン、トリヨードチロニン、アドレナリンなどから選択されるホルモンである。
【0054】
そのようなフェノール含有活性材料のさらなる非限定的な例としては、カンナビノイド、フェノルドパム、チロシン、キシレノール、チモール、プロポフォール、アポモルヒネ、モルヒネ及びその誘導体、ミトキサントロン、デキソルビシン、ヘキサクロロフェン、アセトアミノフェン、p-クマル酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ブチルパラベン、バニリン酸、グアイアコール、コーヒー酸、トルテロジン、ラロキシフィア、スコポレチン、デカルシノール、ドーパミン、L-ドーパ、クルクミン、ポリフェノール、チアニンなどが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料はサルカプロザートナトリウム(SNAC)である。
【0056】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料はタピナロフである。
【0057】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料はシナモン抽出物のものである。
【0058】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料は、メサラジン、サルブタモール、ピルブテロール、カプサイシン、サルメテロール、ビランテロール、バルサラジド、ラベタロール、ミコフェノール酸、ピリドキシン、フェニレフリン、エドロホニウム、パラセタモール、モノベンゾン、タペンタドール、メタラミノール、メチロシン、オキシメタゾリン、ナイロン、ジフルニサル、オルサラジン、リオチロニンナトリウム、デスベンラファキシン、ロチゴチン、フェントラミン、オキシフェンブタゾン、アモジアキン、オロダテロール、トログリタゾン、エルトロンボパグ、イバカフトル、インダカテロール、セファドロキシル、セフプロジル、テトラヒドロカンナビノール、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、レバロルファン、オキシモルフォン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナロキソン、レボルファノール、ナルトレキソン、デゾシン、モルヒネ、ナロキセゴール、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、メタサイクリン、サレサイクリン、オマダサイクリン、エラバサイクリン、エクイリン、フルテメタモール、ジエチルスチルベストロール、ジエンエストロール、プロブコール、ミトキサントロン、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、アルブタミン、ドブタミン、マソプロコール、カンナビジオール、テルブタリン、オルシプレナリン、デノルドパム、ノルエピネフリン、コルバドリン、イソプレナリン、イソエタリン、ドロキシドパ、カルビドパ、プロトキロール、アポモルヒネ、エンタカポン、トールカポン、イダルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン及びバルルビシンのいずれか1つ又は複数である。
【0059】
いくつかの実施形態では、フェノール含有活性材料はカンナビノイド材料である。カンナビノイド材料は、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロル(CBL)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビシトラン(CBT)などのなかから選択することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、カンナビノイドはTHC又はCBDである。
【0061】
いくつかの実施形態では、材料は、フェノラート形態の少なくとも1つのカンナビノイド並びにナトリウム、カリウム及びカルシウムから選択される1つ又は複数の金属カチオンを含む。
【0062】
フェノール含有活性材料、例えばCBDとの金属錯体は、芳香環からの電子密度の除去による酸化又はチオール置換を防ぐことによって化学的安定性を向上させ、イオンという性質があるので水溶性を向上させ、希酸を添加することで容易に可逆的にフェノールを再形成することができる。
【0063】
カンナビノイド材料は、合成若しくは天然のカンナビノイド(単数若しくは複数)、カンナビス抽出物(単数若しくは複数)又はそれらの画分でありうる。最も広い意味では、これは、内在性カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)に対して様々な親和性で作用する化学化合物、カンナビノイド/カンナビノイドアゴニスト/カンナビノイド関連化合物の全体(entire class)を指す用語である。このリガンドのグループには、エンドカンナビノイド(ヒト及び動物によって天然で生成される)、フィトカンナビノイド(カンナビス及び他のいくつかの植物に見られる)、並びに合成カンナビノイド(人工的に製造される)が含まれる。さらに、そのような用語は、カンナビス植物の天然のカンナビノイドに由来する、又はそれを模倣した古典的なカンナビノイドを意味する。
【0064】
いくつかの実施形態では、カンナビノイド材料(フェノール基を含む)は、上記材料のいずれか1つから選択することができる。
【0065】
カンナビスをベースとする組成物の別の利点は、様々な組み合わせ及び割合で存在し、より使いやすいという意味において、吸収、活性、さらに風味-、香り-、及び色-付与特性に寄与する、テルペン、セスキテルペン、カロテン、フラボノイドといったその追加の内容物にある。したがって、フェノール含有活性材料は、カンナビス植物に存在し、その中にフェノール基を含有するテルペン、セスキテルペン、カロテン、フラボノイドのいずれでありうる。
【0066】
様々な薬物実体のフェノール性の塩が、周囲条件での簡単な化学反応によって調製されてきた。スキーム1は、これらの調製のための一般的なアプローチを示している。形成される錯体のなかには、以下のスキーム4、5及び6に示されるように、CBDなどのカンナビノイドがある。
【0067】
下のスキーム4に描かれるように、CBD金属錯体は、塩基性条件下で、CBDと、対応する金属水酸化物又は塩化物塩との反応から容易に調整される。CBD錯体は希HClの添加によって変換されてフェノール形態に戻る。各Mは、スキーム1について上で定義した通りである。
【0068】
本発明の金属錯体は、下の表1にまとめたように、劇的な水溶性(10mg/mL、CBDよりも800倍近くよく溶ける)を示した。
【0069】
多価金属の中心を使用して、複数のCBD分子との塩を形成することができる(スキーム5)。CBDのフェノールを介した金属塩は、CBDの化学的安定性及び物理的特性をさらに増強させることができる。スキーム5は、CBD二量体又は三量体金属塩を示し、塩基性条件下でCBDと、対応する二価の金属硫酸塩又は塩化金属塩との反応によるそれらの簡単な合成を描く。CBD塩は、希HClの添加によって変換されてフェノール形態に戻った。各Mは、スキーム1について上で定義した通りである。
【0070】
さらにCBDを、L-ドーパ、ドーパミン、及びクルクミンなどの他のフェノール性の生物活性化合物とともに反応させた(スキーム6)。CBDヘテロ二量体金属塩は、塩基性条件下で、CBD及び他のフェノール性化合物(L-ドーパ、ドーパミン、クルクミン)と、対応する二価の金属硫酸塩又は塩化金属塩を反応させることから合成された。
【0071】
本発明はさらに、ナトリウム又はカルシウムを含むCBD塩を提供する。したがって、金属錯体は、ナトリウム-CBD及びカルシウム ジ-CBDである。
【0072】
本発明はさらに、定義されたような少なくとも1つの金属カチオン、及び少なくとも1つのカンナビノイドの金属塩を提供し、少なくとも1つのカンナビノイドは、単離されたカンナビノイドである、又は本発明の金属錯体の形態ではない少なくとも1つの他のカンナビノイドとの組成物、例えばカンナビス植物抽出物中に存在する。そのような混合形態は、塩基性条件下でカンナビス抽出物を金属カチオンと反応させ、フェノラートイオンを生じさせて、金属カチオンと結合させることによって形成させることができる。天然のカンナビノイド又はカンナビノイド抽出物に存在する天然の植物成分のすべてが、フェノール基を含有するわけではないので、フェノール系生理活性物質と金属カチオンの間の選択的な結合が生じるはずである。場合によっては、イオン結合は、CBDなどのカンナビノイドと、テルペン、セスキテルペン、カロテン又はフラボノイドなどのカンナビス植物に含有される別の材料との間で形成されることがある。
【0073】
一般的に言うと、本発明のフェノール含有活性材料は、単離形態、抽出物形態、精製形態で、医薬用、化粧品用、獣医学用又は農業用の製剤中の薬物活性物質(actives)として提供される。活性物質が単離されたとき、それらは実質的に純粋な形態、すなわち95~100%の純度でありうる。
【0074】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明による材料を含む医薬、化粧品、農業、食品又は獣医学の製剤又は組成物を提供する。
【0075】
数多くの実施形態では、本発明の組成物は、様々な組み合わせで、抗酸化剤、吸収促進剤、色及び風味付与剤、防腐剤、安定剤、塩をさらに含むことができる。当該技術分野で周知の様々な甘味料、味覚修飾物質、抗酸化剤、防腐剤としては、人工甘味料などの味覚修飾物質、イチゴやペパーミントオイルのような香料、例えば、植物甘味料、砂糖、蜂蜜、ステビア、ステビオール、グリコシド、クエン酸塩、酸、メントール、アニス、ユーカリオイル、フェンネル、天然抗菌物質及び天然抗酸化剤(例えばマートル、オレガノ、ローズマリー、ボリジの抽出物)、ビタミンE(トコフェロール)やC及びそれらの誘導体などの抗酸化剤、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、GRASと認識されているブチル化ヒドロキシトルエン(hydroxytolune)(BHT)、及び硫化物;砂糖、グルコース、スクラロース、グリシン、シクラメート、スクロース、サッカリン、フルクトース、マルトース、ステビア抽出物、サッカリンナトリウムなどの経口投与が可能な任意の甘味料;NaCl、クエン酸塩などの塩などが挙げられる。
【0076】
本発明の組成物は、医学又は獣医学で知られているように、あらゆるタイプの投与に適応可能であることが留意されるべきである。本発明の製剤は、局所投与(例えばクリーム及び軟膏の形態)、経腸投与(例えば経口投与など胃腸管を介した投与を伴うすべての全身投与経路を含む)、又は非経口投与(例えば、胃腸管を介した投与を伴わないすべての全身投与経路を含む)に構成又は設計又は適応又は選択又は使用されうる。本発明の製剤の投与に有効な非限定的な投与経路としては、経口、舌下、粘膜、エアゾール、吸入、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、直腸及び膣内の投与が挙げられる。
【0077】
これまで述べてきたように、前述の製剤を含む経口又は舌下投与用の剤形を提供することが、本発明の別の態様である。
【0078】
さらに、本発明の材料は、乳化基剤や水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって坐剤にすることができる。膣内投与に適した製剤は、有効成分にくわえて、そのような使用に適切であることが当技術分野で公知の担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー製剤として提供されうる。
【0079】
数多くの実施形態では、本発明の経口剤形は、THC、CBD、CBN、CBG、CBC、CBL、CBV、THCV、CBDV、CBCV、CBGV、CBGMである少なくとも1つの合成又は天然のカンナビノイド金属又はアンモニウム塩を、誘導体又は前駆体として含むことができる。
【0080】
さらに他の実施形態では、本発明の経口剤形は、カンナビス抽出物又は品種C.サティバ(Sativa)、C.インディカ(Indica)、C.ルデラリス(Ruderalis)若しくはそれらの組み合わせから得られる画分を含むことができ、その中の材料のいくつかは、それらのフェノール金属塩の形態である。
【0081】
上述のように、本発明の経口投与形態は、様々な濃度及び組み合わせで、追加の治療剤、ミネラル、栄養素、ビタミンをさらに含むことができる。
【0082】
特に興味深いのは、放出制御特性をもつ経口剤形である。「放出制御」という用語は、薬物の時間依存放出、持続放出、延長放出、さらにパルス放出、すなわち遅延放出を達成することを可能にする特性又は改変を指す。この用語はさらに、胃耐性(gastro-resistance)、すなわち、pHによって制御された薬物放出、消化管ターゲッティング、結腸送達、酸に敏感な活性物質の保護、攻撃的な(aggressive)活性物質からの胃粘膜の保護を達成することを可能にする特性又は改変に関するものである。この意味で、胃耐性は標的薬物放出でもある。また、胃耐性コーティング及び改変は、保存安定性を向上させることが知られている。
【0083】
胃耐性の向上及び/又は放出制御は、ポリ(メタ)アクリレートの使用又は積層化など、様々な薬理学的技術を用いた改変及び/又はコーティングによって達成することができる。標的化及び制御された薬物放出を達成するために製薬産業で広く使用されてきたポリ(メタ)アクリレートコーティングのよく知られた例は、EUDRAGIT(登録商標)である。ポリ(メタ)アクリレートコーティングの別の重要な特徴は、外的影響(湿気)からの保護又は患者のコンプライアンスを高めるための味/臭いのマスキングである。
【0084】
ある種特定の固形油(solid oil)は、制御放出を促進するために添加することができ、例えば一般に、モノ-、ジ-及びトリグリセリド油、並びに特に、トリラウリン、トリカプリン、トリパルミチン、トリミリスチン、グリセリル、水素化パーム油ジステアレート、水添ひまし油、水素化植物油である。
【0085】
ある特定の実施形態では、本発明の経口剤形は、マトリックス修飾(matrix modifying)/制御放出材料を含むことができ、限定されないが、グリセリド、ワックス、脂肪酸、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのポリマー、エチルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、スターチ、キトサンなどが挙げられる。
【0086】
他の実施形態では、本発明の経口剤形は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリレート、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニルフタレート、及び他の種類のコーティングで被覆することができる。
【0087】
数多くの実施形態では、本発明の経口剤形は、錠剤又はカプセル剤の形態で提供でき、ともに経口薬物送達の最も一般的で且つ便利な方法である。カプセルは、GRASをベースとする材料を使用した胃耐性コーティングであるコーティングを備えることができる。
【0088】
さらなる実施形態では、剤形は、ブリスター(PVC/PVDC-Alufoil)、ボトル、アルミニウムパウチなど、二次パッケージを使用することができる。
【0089】
別の態様では、本発明の製剤及び組成物は、いくつかの疾患及び病的状態(medical condition)の治療及び緩和に適用することができる。そのような病的状態は、組成物を投与したときに有益な治療効果を示すものでありうる。本発明の組成物又は製剤はすべて、フェノール基を有する少なくとも1つの活性材料及びイオン結合した金属、アンモニウム又はホスホニウムカチオンを含む。
【0090】
さらに別の態様では、本発明の上記製剤、組成物及び剤形は、いくつかの疾患及び病的状態、特にカンナビノイド又はカンナビスをベースとする薬の有益な効果が、これまでに実証されているものを治療及び緩和するのに適用することができる。言い換えれば、本発明は、現在記載されている製剤、組成物、又は剤形を適用することによって、カンナビノイド又はカンナビスの有益な効果に関連する疾患又は病的状態を治療するための様々な治療方法を提供する。留意すべきことに、本発明の治療方法は、炎症性、神経性、精神性障害、悪性腫瘍、さらに免疫、代謝障害、栄養欠乏、感染症、及び複数のタイプの胃腸障害、心血管障害、並びに慢性及び神経障害性疼痛を含む様々なタイプの疼痛を含む広範囲のヒトの状態に適用することができる。
【0091】
若年患者及び高齢患者におけるカンナビノイドの臨床用途に関する現在の知識レベルを考慮すると、現在記載されている調製物(preparations)及び方法は、以下に限らないが、それらに適用できると予測される。うつ病、睡眠障害、摂食障害、がん、多発性硬化症、移植片対宿主病(GVHD)、パーキンソン病、てんかん、自閉症、結核、潰瘍性大腸炎、クローン病(morbus Crohn)、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、食欲増進剤、食欲抑制剤、肥満、吐き気、神経障害性疼痛、不安、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、胃腸障害、高血圧、失禁、そう痒症、関節炎、関節症、リウマチ性炎症、不眠症、真菌症、局所及び/又は慢性疼痛、炎症、注意欠陥・多動性障害(ADDH)、嘔吐、アトピー性皮膚炎、線維筋痛症、エイズ、気分障害、勃起不全、早漏、栄養欠乏。
【0092】
現在記載されている調製物及び方法は、乳幼児(infants)、青年、又は成人である対象に適用できることが理解されるべきである。
【0093】
また、本発明の製剤、組成物、及び剤形は、治療有効量で適用されることにも留意されるべきである。一般的に、「治療有効量」(薬理学的又は薬学的又は生理学的に有効な量とも)は、予想される又は所望の生理学的反応を達成するために必要な本発明の材料の量を意味する。正確な量は、多数の要因、例えば、薬剤の種類、活性及び意図された使用(例えば、1日当たりの投与数)に依存し、これらは当該技術分野で公知の技術及び方法によって決められうる。有効量は、治療するヘルスケア(health care)専門家及び/又は個人によってなされる経験的且つ/又は個別(ケースバイケース)の決定の結果でありうることが理解される。より大量の治療投与を施行する場合は、1日に複数回投与を必要としうる。
【0094】
用語「治療すること」、「治療」若しくは「療法」、又はそれらの任意の言語的変形は、治癒療法、寛解療法又は予防療法を等しく指す。この用語は、生理学的、代謝学的、又は生化学的パラメーターによって臨床的に確立されうる、有益な又は所望の治療効果を得るためのいずれの方法も包含している。有益な又は所望の臨床結果としては、症状の軽減、疾患の範囲の縮小、症状の安定化、進行の遅延又は鈍化、状態又は症状の改善又は緩和、及び寛解(部分寛解であれ完全寛解であれ)が挙げられるが、それらに限定されない。「緩和」という用語は、ここでは、同じであるが未治療の状態と比較して、軽減されている生理状態若しくは症状の望ましくない発現及び/又は遅延若しくは延長されている進行を含む。それらの用語は疾患又は障害の予防に関連しうる。
【0095】
さらに、ある特定の実施形態では、本発明の調製物及び方法は、他の方法及び薬物(治療剤でもある)と同時又は連続して投与される併用療法を含む。
【0096】
関連する治療薬は、限定はされないが、よくみられるヒト疾患に対する臨床効果及び適用可能性に応じてFDAによって分類された次の一般医薬品区分(General Drug Categories)であることができる。鎮痛剤、制酸剤、抗不安薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗生物質、抗菌剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、止瀉薬、制吐剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗炎症剤、抗悪性腫瘍剤、抗精神病薬、解熱剤、抗ウイルス剤、バルビツール酸塩、β-ブロッカー、気管支拡張剤、風邪薬(cold cures)、コレステロール低下剤、副腎皮質ステロイド、鎮咳剤、細胞毒性薬、充血除去剤、利尿剤、去痰剤、ホルモン剤、血糖降下剤、免疫抑制剤、緩下薬、筋弛緩剤、鎮静剤、性ホルモン剤、睡眠薬、精神安定剤及びビタミン剤。
【0097】
治療効果の観点からは、少なくとも約5%の改善、又は10%の改善、又は少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも75%、又は少なくとも100%の改善又はより多くあれば、治療の結果としての改善が認識される。本明細書において改善とは、集団の改善(population improvement)と同様に個人の改善という意味で解釈されうる。
【0098】
本文に現れる登場するすべてにおいて「約」という用語は、特定の値及び/又は範囲からの±10%までのばらつき、より具体的には、そこからの最大1%、±2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は±10%までばらつきを示す。
【0099】
本発明はさらに、製剤の調製における、又は本明細書に記載の少なくとも1つの障害又は病態を予防又は治療する方法における本発明の少なくとも1つの金属又はアンモニウム塩の使用を提供する。
【0100】
さらに提供されるのは、フェノール含有材料(例えばCBD)を利用することによって治療可能であることがわかっている疾患又は障害を治療するための、本明細書に記載の少なくとも1つの金属又はアンモニウム塩の使用である。
【0101】
さらに提供されるのは、そのような材料の組成物によって治療可能であることがわかっている疾患又は障害を治療する、予防する又は寛解させるための本明細書に記載の製剤、医薬組成物又は医薬品を調製するための本明細書に記載の少なくとも1つの材料の使用である。
【0102】
さらに提供されるのは、細菌及び/又は真菌感染症から植物及び作物を保護及び治療するための、本発明の組成物又は製剤の使用である。
【0103】
いくつかの実施形態では、製剤中に含まれる材料は、亜塩素酸ナトリウム、サリチル酸銅、ブロモクロロジメチルヒダントイン、チモール銅、及びポリグアニジンから選択される。しかし、他の多くのフェノール含有活性材料が、植物及び作物を処理するのに適した材料を製造するために採用されうる。
【0104】
いくつかの実施形態では、細菌/真菌感染症は、エルウィニア(erwinia)、ピチウム(pythium)、マクロフォミナ・ファゼオリナ(macrophomina phaseolina)、アテリア・ロルフシイ(athelia rolfsii)及びジャガイモそうか病から選択される。しかし、本発明の材料を利用することによって治療可能でありうる、植物又は作物に関連するその他の感染症もまた、本明細書の発明の実施形態である。
【0105】
本明細書においてさらに提供されるのは、材料を含む組成物又は製剤であって、材料が、少なくとも(2+)の価数を有する多価金属カチオン及び多価金属カチオンにイオン結合した少なくとも1つのフェノラート部分を含む活性材料を含み、組成物又は製剤の治療有効量を対象に投与することによって治療可能である疾患又は障害を治療するのに使用するための組成物又は製剤である。
【0106】
さらに提供されるのは、材料を含む組成物又は製剤であって、材料が、本明細書で画定されるアンモニウムカチオン又はポリアンモニウム、及びアンモニウム又はポリアンモニウムカチオンにイオン結合した少なくとも1つのフェノラート部分を含む少なくとも1つの活性材料を含み、組成物又は製剤の治療有効量を対象に投与することによって治療可能である疾患又は障害を治療するのに使用するための組成物又は製剤である。
【0107】
さらに、材料を含む組成物又は製剤の治療有効量を対象に投与することによって治療可能である、疾患又は障害を治療する方法が提供され、その材料は、本明細書で画定されるアンモニウムカチオン、又は少なくとも(2+)の価数を有するポリアンモニウム若しくは多価金属カチオン、及びアンモニウムカチオン又はポリアンモニウム若しくは多価金属カチオンにイオン結合した少なくとも1つのフェノラート部分を含む少なくとも1つの活性材料を含んでいることを示す。
【0108】
本発明はさらに、本発明による材料を調製する方法であって、少なくとも1つのフェノール含有活性材料を、本明細書で画定されるように、例えば金属カチオン又はアンモニア又はその均等物を含む塩基で処理することを含む方法を提供する。塩基は、金属水素化物、金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、金属炭酸塩、金属カルバニオン、金属アミド、アンモニア(本明細書に記載のように、例えばコリン)などから選択することができる。
【0109】
本明細書に記載のように、フェノール含有活性材料の物理化学的性質を変化させ、改善する別の方法は、そのアンモニウム塩を形成させ、それによってフェノール含有材料と、任意選択で置換されたアンモニウムカチオンとを含む塩を生成することである。したがって、別の1つのその態様において、本発明は、少なくとも1つのフェノール性(又はフェノール含有)材料及び少なくとも1つの任意選択で置換されたアンモニウムイオンのアンモニウム塩であって、フェノール含有活性材料が、フェノール(C6H6O)、メチルフェノール、ブロモフェノール、ジブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノン及びナフトールではないアンモニウム塩を提供する。
【0110】
任意選択で置換されたアンモニウム-CBD材料の合成の非限定的な概略例がスキーム7に示される。
【0111】
反応は、上記で説明したように、アンモニア又はアンモニウム均等物の存在下で実施することができる。スキーム7では、水酸化アンモニウムが使用される。水酸化アンモニウム(式中、各RはHである)、モノアルキル化水酸化アンモニウム(式中、R基の1つはアルキルであり、他の残りのものはそれぞれHである)、又はマルチ(ジ、トリ若しくはテトラ)アルキル化水酸化アンモニウムのなかから選択することができる。
【0112】
同様の方法で、本明細書に開示のような、薬、化粧品、獣医学及び農業など、様々な分野で使用される他のフェノール含有活性材料も、それらのアンモニウムフェノラート形態に変換することができる。
【0113】
フェノルドパムの非限定的な例が模式的にスキーム8に示される。
【0114】
スキーム8は、水酸化アンモニウムを用いたアンモニウム-フェノルドパム錯体の合成を示す。反応は、上記で説明したように、アンモニア又はアンモニウム均等物の存在下で実施することができる。このスキームでは、水酸化アンモニウムが使用される。水酸化アンモニウム(式中、各RはHである)、モノアルキル化水酸化アンモニウム(式中、R基の1つはアルキルであり、他の残りのものはそれぞれHである)、又はマルチ(ジ、トリ若しくはテトラ)アルキル化水酸化アンモニウムのなかから選択することができる。そのような水酸化アンモニウムの例がスキーム7に示される。
【0115】
当業者であれば知っていると思われるように(would know)、アルキル化水酸化アンモニウムは、単純なアルキルからも、高度に置換されたアルキルからも構成することができる。そのようなアルキル化水酸化アンモニウムの合成は簡単で、フェノール含有する生理活性剤をと反応させて、対応するアンモニウム塩を形成するのに使用することができる。典型的な合成では、トリアルキルアミンを有機溶媒中でハロゲン化アルキルと反応させてハロゲン化テトラアルキルを形成させ、それをKOHと反応させてハロゲン化物をOH部位に置換する。
【0116】
また、本明細書に言及されている任意選択で置換されたアンモニウム塩のいずれも、文献上公知の他の方法によって得られる、又は合成することができ、スキームで使用される試薬は、当技術分野で公知の他の好適な試薬に交換することができる。
【0117】
本発明の材料は、様々な用途及び分野(薬、化粧品、農業、化学及び生物関連(biological)産業、染料など)の有効成分として使用することができる。ポリアミンの場合のように、対イオンが、1つ又は複数のカチオン中心を有するポリマーの形態である場合、そのような材料はまた、他の薬剤の送達用のナノカプセル及びマイクロカプセルを調製するために使用することもできる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」、「ナノスフィア」、「ナノカプセル」及び「粒子」という用語はすべて、生体適合性があり、化学的及び/又は物理的破壊に対して十分な耐性があり、その結果、十分な量のナノ粒子が、ヒト又は動物の体内に投与された後、所望の標的組織(臓器)に到達するのに十分な時間、実質的に完全な状態のままである粒子担体を指している。一般的に、ナノ粒子は球状であり、最大1000nm、ほとんどの場合、最500nmまでの平均直径を有する。粒子の形状が球状でない場合、直径は粒子の最も長い寸法を指す。
【0119】
「マイクロカプセル」に言及する場合、その意味は、約1~1,000μmの直径を有する上記のような粒子である。
【0120】
本発明はまた、複数のフェノラート活性剤と結合したポリカチオン、及びそれを含む組成物を提供する。
【0121】
本発明はさらに、2つ以上のフェノール含有活性材料を含み、それぞれがカチオンとイオン結合し、そのカチオンが多価金属カチオン又はポリアンモニウムである多分子材料の形態にある本発明による材料を提供する。
【0122】
「ポリアミン」及び「ポリアンモニウム」という用語は、一般に、複数(通常は少なくとも3つ、しかしときには2つを超える)のアミノ官能基を有する任意の化合物を意味する。場合によっては、そのような化合物はタンパク質の分解によって生成されることがある。いくつかの実施形態では、そのようなポリアミンはアルキルポリアミンである。いくつかの実施形態では、ポリアミンは天然のポリアミンであり、他の実施形態では、ポリアミンは合成のものである。
【0123】
ポリアミンが天然のものである場合、それらは、限定されることなく、スペルミジン及びスペルミン、又は天然に、特に人体に自然に現れるその他のトリアミン、テトラアミン又はポリアミンから選択することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、ポリアミンは、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,4,7-トリアザシクロナンや、サイクレン、サイクラムなどの大員環ポリアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン分岐状ポリアミン及び1,1,1-トリス(アミノメチル)エタンなどの三脚状ポリアミンから選択される合成ポリアミンである。
【0125】
いくつかの具体的な実施形態では、ポリアミンはジ-コリン又はトリ-コリンである。
【0126】
いくつかの実施形態では、ポリアミンは、少なくとも3つのコリン部分を含むマルチ(multi)-コリンポリマーである。本発明による「マルチ-コリン」は、複数(少なくとも2つ)のコリン部分を有するポリマー分子である。
【0127】
いくつかの実施形態では、多価金属カチオンは、二価、三価若しくは四価カチオン、又はより高い価数の金属カチオンである。
【0128】
いくつかの実施形態では、材料は、ポリフェノールと多価カチオン又はポリアンモニウムの反応によって形成される。
【0129】
いくつかの実施形態では、材料は、ナノ粒子又はマイクロ粒子の調製に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、材料は、コーティング材料の調製に使用するためのものである。
【0130】
本発明はまた、本発明による材料を含む粒子を提供する。
【0131】
フェノール含有剤が薬学的活性剤又は他の何らかでの形の活性剤でない場合、本発明は、それぞれがカチオンとイオン結合した2つ以上のフェノール含有材料を含む多分子材料の形態の材料を提供し、カチオンは多価金属カチオン又はポリアンモニウムである。いくつかの実施形態では、多価金属カチオンは、二価、三価若しくは四価カチオン、又はより高い価数の金属カチオンである。
【0132】
いくつかの実施形態では、材料は、ポリフェノールと多価カチオン又はポリアンモニウムの反応によって形成される。
【0133】
いくつかの実施形態では、材料は、ナノ粒子若しくはマイクロ粒子の調製に使用するための、又はコーティング材料の調製に使用するためのものである。
【0134】
したがって、本発明の具体的な態様及び実施形態は以下を含む。
【0135】
少なくとも1つのフェノール含有活性材料及び金属塩、ホスホニウム又はアンモニウム塩対イオンを含む単離材料であって、フェノール(C6H6O)、メチルフェノール、ブロモフェノール、ジブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノン又はナフトールでない活性材料。
【0136】
材料が金属カチオン及びフェノラート活性材料を含み、金属カチオンとフェノラート材料の荷電酸素原子を結び付ける結合はイオン結合である。
【0137】
金属カチオンが、一価、二価、及び多価カチオンから選択される材料。
【0138】
金属カチオンが二価又は三価金属カチオンである材料。
【0139】
金属カチオンが一価カチオンでない材料。
【0140】
金属カチオンが、アルカリ金属、アルカリ金属及び遷移金属のなかから選択される材料。
【0141】
金属カチオンがアルカリ金属でない材料。
【0142】
金属カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉄、銀、金バリウム金属カチオンから選択される材料。
【0143】
アンモニウム塩の形態にある場合の材料。
【0144】
ホスホニウム塩の形態にある場合の材料。
【0145】
フェノール性活性材料が、フェノール-OH基から水素原子を引き抜くことによってフェノラート形態に変換された、薬、化粧品、獣医学又は農業に使用されるフェノール含有活性材料である材料。
【0146】
フェノール含有活性材料が1つ又は複数の-OH基を含む材料。
【0147】
二価金属及び2つのフェノラート活性材料を含む場合の材料。
【0148】
2つ以上のフェノール性活性材料を含み、各活性材料が1つ又は複数のフェノラート基を有し、フェノラート基のそれぞれが、金属カチオン、ホスホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンから選択される異なるカチオンと結合している場合の材料。
【0149】
2つのフェノラート活性材料が、同じ又は異なる材料。
【0150】
三価金属及び3つのフェノラート活性材料を含む材料。
【0151】
3つのフェノラート活性材料のそれぞれが、互いに異なる材料。
【0152】
3つのフェノラート活性材料の2つが、前記(said)フェノラート活性材料の3つめと異なる材料。
【0153】
3つのフェノラート活性材料のそれぞれが同じである材料。
【0154】
フェノラート活性材料の1つ又は複数が、治療薬、化粧品又は獣医学材料である材料。
【0155】
フェノラート活性材料の1つ又は複数が農業材料である材料。
【0156】
1つ又は複数のフェノラート活性材料及び1つ又は複数の非活性フェノラート材料を含む材料。
【0157】
フェノラート活性材料が、カンナビノイド、フェノルドパム、チロシン、キシレノール、チモール、プロポフォール、アポモルヒネ、モルヒネ及びその誘導体、ミトキサントロン、デキソルビシン、ヘキサクロロフェン、アセトアミノフェン、p-クマル酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ブチルパラベン、バニリン酸、グアイアコール、コーヒー酸、トルテロジン、ラロキシフィア、スコポレチン、デカルシノール、ドーパミン、L-ドーパ、クルクミン、チアニン並びにポリフェノールから選択される材料。
【0158】
活性な薬物実体がカンナビノイド材料である材料。
【0159】
カンナビエルソイン(カンナビノイド材料が、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロル(CBL)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)及びカンナビシトラン(CBT)CBE)及びカンナビシトラン(CBT)のなかから選択される材料。
【0160】
カンナビノイドがTHC又はCBD及びその化学誘導体である材料。
【0161】
フェノール活性材料が、サルカプロザートナトリウム(SNAC)、タピナロフ及びシナモン抽出物由来の材料から選択される材料。
【0162】
フェノール活性材料がフィトマテリアルである材料。
【0163】
フェノール活性材料が、メサラジン、サルブタモール、ピルブテロール、カプサイシン、サルメテロール、ビランテロール、バルサラジド、ラベタロール、ミコフェノール酸、ピリドキシン、フェニレフリン、エドロホニウム、パラセタモール、モノベンゾン、タペンタドール、メタラミノール、メチロシン、オキシメタゾリン、ナイロン、ジフルニサル、オルサラジン、リオチロニンナトリウム、デスベンラファキシン、ロチゴチン、フェントラミン、オキシフェンブタゾン、アモジアキン、オロダテロール、トログリタゾン、エルトロンボパグ、イバカフトル、インダカテロール、セファドロキシル、セフプロジル、テトラヒドロカンナビノール、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、レバロルファン、オキシモルフォン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナロキソン、レボルファノール、ナルトレキソン、デゾシン、モルヒネ、ナロキセゴール、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、メタサイクリン、サレサイクリン、オマダサイクリン、エラバサイクリン、エクイリン、フルテメタモール、ジエチルスチルベストロール、ジエンエストロール、プロブコール、ミトキサントロン、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、アルブタミン、ドブタミン、マソプロコール、カンナビジオール、テルブタリン、オルシプレナリン、デノルドパム、ノルエピネフリン、コルバドリン、イソプレナリン、イソエタリン、ドロキシドパ、カルビドパ、プロトキロール、アポモルヒネ、エンタカポン、トールカポン、イダルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン及びバルルビシンから選択される材料。
【0164】
フェノラートの形態の少なくとも1つのカンナビノイド並びに金属カチオン、ホスホニウム及びアンモニウムから選択されるカチオンを含む材料。
【0165】
金属カチオンが、一価、二価又は三価の金属原子である材料。
【0166】
金属カチオンが二価又は三価のカチオンである材料。
【0167】
金属カチオンが一価カチオンではない材料。
【0168】
二価金属原子及び1つ又は2つのカンナビノイドを含む場合の材料。
【0169】
1つのカンナビノイド及び1つの非カンナビノイドを含む場合の材料。
【0170】
三価金属原子及び1つ又は2つ又は3つのカンナビノイドを含む場合の材料。
【0171】
1つのカンナビノイド及び2つの非カンナビノイドを含む場合の材料。
【0172】
2つのカンナビノイド及び1つの非カンナビノイドを含む場合の材料。
【0173】
カンナビノイドがCBD又はTHCである材料。
【0174】
金属カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉄、銀、金バリウム金属カチオンから選択される材料。
【0175】
金属カチオンがナトリウム又はカルシウムである材料。
【0176】
1つのCDB及び任意選択で別の非カンナビノイド又は2つのCBDを含むカルシウムCBD塩。
【0177】
アンモニウムが、任意選択で置換されたアンモニウムカチオンである材料。
【0178】
任意選択で置換されたアンモニウムカチオン及びフェノラート活性化合物を含む場合の材料。
【0179】
アンモニウムカチオンがテトラアルキルアンモニウムであり、任意選択で、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウムコリン及びコリン誘導体から選択される材料。
【0180】
少なくとも1つのフェノール活性材料のコール酸塩である材料。
【0181】
活性材料が、カンナビノイド、フェノルドパム、チロシン、キシレノール、チモール、プロポフォール、アポモルヒネ、モルヒネ及びその誘導体、ミトキサントロン、デキソルビシン、ヘキサクロロフェン、アセトアミノフェン、p-クマル酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ブチルパラベン、バニリン酸、グアイアコール、コーヒー酸、トルテロジン、ラロキシフィア、スコポレチン、デカルシノール、ドーパミン、L-ドーパ、クルクミン、チアニン並びにポリフェノールから選択される材料。
【0182】
活性な薬物実体がカンナビノイド材料である材料。
【0183】
カンナビエルソイン(カンナビノイド材料が、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロル(CBL)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)及びカンナビシトラン(CBT)CBE)及びカンナビシトラン(CBT)のなかから選択される材料。
【0184】
カンナビノイドがTHC又はCBD及びその化学誘導体である材料。
【0185】
フェノール活性材料が、サルカプロザートナトリウム(SNAC)、タピナロフ及びシナモン抽出物由来の材料から選択される材料。
【0186】
フェノール活性材料がフィトマテリアルである材料。
【0187】
フェノール活性材料が、メサラジン、サルブタモール、ピルブテロール、カプサイシン、サルメテロール、ビランテロール、バルサラジド、ラベタロール、ミコフェノール酸、ピリドキシン、フェニレフリン、エドロホニウム、パラセタモール、モノベンゾン、タペンタドール、メタラミノール、メチロシン、オキシメタゾリン、ナイロン、ジフルニサル、オルサラジン、リオチロニンナトリウム、デスベンラファキシン、ロチゴチン、フェントラミン、オキシフェンブタゾン、アモジアキン、オロダテロール、トログリタゾン、エルトロンボパグ、イバカフトル、インダカテロール、セファドロキシル、セフプロジル、テトラヒドロカンナビノール、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、レバロルファン、オキシモルフォン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナロキソン、レボルファノール、ナルトレキソン、デゾシン、モルヒネ、ナロキセゴール、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、メタサイクリン、サレサイクリン、オマダサイクリン、エラバサイクリン、エクイリン、フルテメタモール、ジエチルスチルベストロール、ジエンエストロール、プロブコール、ミトキサントロン、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、アルブタミン、ドブタミン、マソプロコール、カンナビジオール、テルブタリン、オルシプレナリン、デノルドパム、ノルエピネフリン、コルバドリン、イソプレナリン、イソエタリン、ドロキシドパ、カルビドパ、プロトキロール、アポモルヒネ、エンタカポン、トールカポン、イダルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン及びバルルビシンから選択される材料。
【0188】
医薬、化粧品、獣医学又は農業製剤から選択される製剤であって、本発明による単離材料を含む製剤。
【0189】
局所、経皮、経口、エアゾール、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、直腸又は膣内投与に適合された医薬製剤としての製剤。
【0190】
0.1~99%の前記単離材料を含む場合の製剤。
【0191】
製剤の調製における少なくとも1つの本発明による材料の使用。
【0192】
少なくとも1つの障害又は病態を予防又は治療する方法における少なくとも1つの本発明による材料の使用。
【0193】
少なくとも1つのフェノール含有活性材料を、金属を含有する塩基及びアンモニア又はその均等物から選択される塩基で処理することを含む、本発明による材料を調製する方法。
【0194】
塩基が、金属水素化物、金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、金属炭酸塩、金属カルバニオン又は金属アミドから選択される方法。
【0195】
塩基が、NaOH、Ca(OH)2、Cu(OH)2、CaCl2、FeCl3、Zn(OH)2及びNaHから選択される方法。
【0196】
本発明による材料を調製する方法であって、少なくとも1つのフェノール含有活性材料を、金属を含有する塩基及びアンモニア又はその均等物から選択される塩基で処理して材料を得ること並びに対イオンの交換を可能にする条件下で前記材料を処理することを含む方法。
【0197】
本発明の方法によって調製される本発明による材料。
【0198】
2つ以上のフェノール含有活性材料を含み、それぞれがカチオンとイオン結合しており、カチオンが多価金属カチオン又はポリアンモニウムである多分子材料の形態の材料。
【0199】
多価金属カチオンが、二価、三価又は四価のカチオンである材料。
【0200】
ポリフェノールと多価カチオン又はポリアンモニウムの反応によって形成される場合の材料。
【0201】
ナノ粒子又はマイクロ粒子の調製に使用するための材料。
【0202】
コーティング材料の調製に使用するための材料。
【0203】
本発明による材料を含む粒子。
【0204】
粒子はミクロ粒子又はナノ粒子である。
【0205】
材料が緑茶抽出物に由来するポリフェノールを含む粒子。
【0206】
材料がタンニン酸を含む粒子。
【0207】
2つ以上のフェノール含有材料を含み、それぞれがカチオンとイオン結合し、カチオンが多価金属カチオン又はポリアンモニウムである多分子材料の形態の材料。
【0208】
多価金属カチオンが、二価、三価又は四価のカチオンである材料。
【0209】
ポリフェノールと多価カチオン又はポリアンモニウムの反応によって形成される場合の材料。
【0210】
ナノ粒子又はマイクロ粒子の調製に使用するための材料。
【0211】
コーティング材料の調製に使用するための材料。
【0212】
本発明による材料を含む粒子。
【0213】
材料によって治療可能であることがわかっている疾患又は障害を治療する、寛解させる、又は予防するための、本発明による少なくとも1つのフェノール含有材料の金属又はアンモニウム材料の形態にある材料の使用。
【0214】
そのような製剤/組成物/医薬によって治療可能であることがわかっている疾患又は障害を治療する、予防する、又は寛解させるための製剤、医薬組成物又は医薬を調製するための少なくとも1つの本発明による材料の使用。
【0215】
細菌及び/又は真菌感染症から植物及び作物を保護及び治療するための製剤を調製するための少なくとも1つの本発明による材料の使用。
【0216】
材料が、亜塩素酸ナトリウム、サリチル酸銅、ブロモクロロジメチルヒダントイン、チモール銅、及びポリグアニジンから選択される使用。
【0217】
細菌及び/又は真菌感染症が、エルウィニア、ピチウム、マクロフォミナ・ファゼオリナ、アテリア・ロルフシイ及びジャガイモそうか病から選択される使用。
【0218】
材料を含む組成物又は製剤であって、前記材料が、少なくとも(2+)の価数を有する多価金属カチオン及び多価金属カチオンにイオン結合した、フェノラートの形態の少なくとも1つの活性フェノール含有材料を含み、組成物又は製剤の治療有効量を対象に投与することによって治療可能である疾患又は障害を治療するのに使用するための組成物又は製剤。
【0219】
材料を含む組成物又は製剤であって、前記材料が、アンモニウムカチオン又はポリアンモニウム、及びアンモニウム又はポリアンモニウムカチオンにイオン結合した少なくとも1つのフェノラート部分を含む少なくとも1つの活性材料を含み、組成物又は製剤の治療有効量を対象に投与することによって治療可能である疾患又は障害を治療するのに使用するための組成物又は製剤。
【発明を実施するための形態】
【0220】
CBD金属錯体は、様々な手順に従って形成される。ここでは、望ましくない副反応、特にCBDの化学的な変性を防ぐために、最も周辺環境に近い(most ambient)反応条件のみを適用する。金属試薬の相対量は、金属の価数に基づいて調整され、CBDで利用可能なフェノール両方を錯形成するのに十分な金属イオンの存在を常に確保するように保たれた。
【実施例】
【0221】
実施例1:CBD-塩合成及び分析
Na塩:エタノール(3.0mL)中のNaOH(9.4mg、0.24mmol)の溶液を、エタノール(5.0mL)中のCBD(35mg、0.11mmol)の攪拌溶液に加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、溶媒を蒸発させると、定量的収率でCBD-Naが得られた。
【0222】
CBD金属錯体を、以下の分析手法によって特性を評価する。
1)1H及び13C核磁気共鳴(NMR)
2)赤外分光法(IR)
3)薄層クロマトグラフィー(TLC)
4)示差走査熱量測定(DSC)
5)融点(MP)
6)元素分析
7)紫外吸収分光法(UV)
【0223】
それぞれの特性評価の方法は、合成の成功の一側面(an aspect)を確認する。
NMR分光法により、反応条件は他のいずれの部分も破壊せず、CBD構造が維持されていることが確認された。
IR分光法により、新しい官能基、とりわけフェノール-金属錯体が同定された。
TLCにより、出発材料の消費、極性の違いに基づく新しい材料の存在が確認された。
融点は新物質の純度を確認した。
元素分析により、金属含有量の重量寄与に起因して生成物中のCH%が減少していることが確認された。
UVは、フェノール環の吸収スペクトルに変化を示した。
【0224】
結果:一価、二価、及び三価の金属中心をもつ様々なCBD-金属錯体が合成された。金属水酸化物若しくは塩化物や硫酸塩などの塩との反応(方法1)、又は無水条件下での金属水素化物との反応(方法2)のいずれかによって形成された錯体。
【0225】
CBD-Na合成
エタノール(3.0mL)中のNaOH(9.4mg、0.24mmol)の溶液を、エタノール(5.0mL)中のCBD(35mg、0.11mmol)の撹拌溶液に加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、溶媒を蒸発させ、定量的収率でCBD-Naを得た。
【0226】
CBD-K合成
メタノール(2.5mL)中のKOH(2.5mg、0.045mmol)の溶液を、メタノール(2.5mL)中のCBD(7.1mg、0.023mmol)の撹拌溶液に加えた。混合物を室温で1日撹拌し、溶媒を蒸発させ、定量的収率でCBD-Kを得た。
【0227】
CBD-Ca合成
メタノール(2.5mL)中のCaCl2(5.2mg、0.046mmol)の溶液を、メタノール(2.5mL)中のCBD(7.3mg,0.023mmol)の撹拌溶液に加えた。混合物を室温で1日撹拌し、溶媒を蒸発させ、CBD-Caを得た。
【0228】
CBD-Cu合成
メタノール(2.5mL)中のCuSO4(7.2mg、0.045mmol)の溶液を、メタノール(2.5mL)中のCBD(9.2mg、0.029mmol)の撹拌溶液に加えた。混合物を室温で1日撹拌し、溶媒を蒸発させ、CBD-Cuを得た。
【0229】
CBD-Zn合成
ZnCl2の溶液(2.5mLの0.8mg mL-1溶液)を、メタノール(2.5mL)中のCBD(5.2mg,0.017mmol)の撹拌溶液に加えた。混合物を室温で1日撹拌し、溶媒を蒸発させ、定量的収率でCBD-Znを得た。
【0230】
CBD-Al合成
メタノール(5mL)中のAlCl3(3.1mg、0.011mmol)の溶液を、メタノール(2.5mL)中のCBD(5mg、0.016mmol)の撹拌溶液に加えた。混合物を室温で1日撹拌し、溶媒を蒸発させ、定量的収率でCBD-Alを得た。
【0231】
CBD-Fe合成
エタノール(3mL)中のFeCl3(9.2mg、0.057mmol)の溶液を、エタノール(5mL)中のCBD(24.1mg、0.077mmol)の撹拌溶液に加えた。混合物を室温で1日撹拌し、溶媒を蒸発させ、定量的収率でCBD-Feを得た。
【0232】
実施例2:金属水素化物又はエトキシドとの反応によるCBD塩の調製
水素化ナトリウム(油中50%、2.3mg、0.096mmol)を洗浄し(3×1mL)、最後にアルゴン下においてTHF(5mL)で覆った。次いで、CBD(15mg、0.048mmol)を加え、混合物を0.5時間攪拌した。混合物をエーテル(10mL)で希釈し,10%NaOH(3×5mL)で洗浄した。有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させ、溶媒を蒸発させ、定量的収率でCBD-Naを得た。
【0233】
CBD-Naを得るためのCBDとナトリウムエトキシドの反応
CBD-Na錯体は、エタノール中の金属ナトリウムで合成することもできる。ナトリウム(2.2mg、0.096mmol)を、エタノール(5mL)中のCBD(15mg、0.048mmol)の溶液に添加した。混合物を0.5時間撹拌し、エーテル(10mL)で希釈し、10%NaOH(3×5mL)で洗浄した。有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させ、溶媒を蒸発させ、定量的収率でCBD-Naを得た。
【0234】
CBD金属錯体の分析
CBD金属錯体の合成は、まず最初に、シリカを固定相とし、ヘキサン:酢酸エチルの9:1混合物を移動相とした薄層クロマトグラフィー(TLC)で示した。プレートを紫外線(254nm)下で可視化した。金属錯体をCBD(Rf=0.69)と比較し、極性の増加(Rf=0)を示した。
【0235】
NMRの研究から、CBDはこれらの反応条件を通してその構造的完全性を維持することが示され、合成前と後でほぼ同一の1H NMRスペクトルを示した。フェノールプロトンは消失している。フェノールの芳香族プロトンはシフトした。
【0236】
CBD金属錯体を水溶性について調べた(表1)。重要なことに、ナトリウム、カルシウム及び銅の複合体はすべて、10mg/mLで溶けた。CBD植物抽出物は0.0126mg/mLしか溶けない。
【0237】
可逆性
1M HCl溶液をCBD-Naの水溶液にpHが3に達するまで滴下した。すぐに混合物中に不溶性の褐色油の出現が認められ、1H NMRによりCBDであることを確認した。元の化合物は簡単な化学プロセスで簡単に再溶解できるので、可逆性の容易さはこの研究の成功にとって最も重要である。
【0238】
熱的特性
CBD-Naの熱的特性を示差走査熱量測定(DSC)によってCBDと比較した。DSCは60mL分-1の窒素気流下で25から100℃まで10℃ 分-1のスキャン速度で行い、この温度範囲全体を通して金属錯体及び親分子の熱挙動を示した。CBD-Na金属錯体の融点は、親CBD分子の観察された融点66℃に対し、55℃であることがわかった。
【0239】
金属水素化物を用いた金属錯体の調製
CBDのイオン性錯体は、副生成物のない錯体を得るために、金属水素化物(NaH、CaH2)を用いて行った。DCM(1mL)中のCBD(35mg、0.11mmol)の溶液を、乾燥アルゴンガス下、DCM(1mL)中の過剰のNaH/CaH2の分散液に添加した。この混合物を室温で一晩混合した。水素の生成及び放出に関連した泡立ちが反応混合物で観察された。溶媒を蒸発させ、CBD-Na/Caを得た。9:1ヘキサン/酢酸エチル(Rf=0)のTLC及びスペクトル分析で生成物を確認した。生成物の外観は、金属の塩化物又は水酸化物との反応によって形成されるイオン性錯体に類似していた。
【0240】
ナトリウムエトキシドを用いた金属錯体の調製
副生成物のない錯体を得るために、CBDイオン錯体を、ナトリウムエトキシドを用いて行った。エタノール(1mL)中のCBD(35mg、0.11mmol)の溶液を、乾燥アルゴンガス下においてナトリウム金属をエタノール(1mL)に加えることによって調製したナトリウムエトキシド溶液に加えた。この混合物を室温で30分間混合した。溶媒を蒸発させてCBD-Naを得た。9:1ヘキサン/酢酸エチル(Rf=0)のTLC及びスペクトル分析で生成物を確認した。生成物の外観は、金属の塩化物又は水酸化物との反応によって形成されるイオン性錯体に類似していた。
【0241】
酸化安定性
エタノール中のCBDの溶液を、気泡化した空気と及び太陽光に晒した。24時間暴露後、CBD含有量の減少が認められた。CBD金属錯体を酸化によって気泡化した空気と太陽光に24時間暴露したとき、HPLCで測定して、CBD含有量に変化は見られなかった。
【0242】
CBD金属材料形成
Ca(OH)2及びBa(OH)2などの異なる二価金属水酸化物を使用して、以下の手順で二価金属-CBD錯体を合成する。
【0243】
CBD(1当量)及び二価金属水酸化物(1当量)を、マグネットバーを備えた反応バイアルに取る。反応バイアルをアルゴン雰囲気下に保つ。次いで、エタノール:水(1:1)混合物を加え、反応混合物を室温で攪拌する。TLCで反応の完了をモニターする。反応の完了後、真空を用いてエタノールを除去する。水を凍結乾燥機で除去し、二価金属-CBD複合体を固体として得る。
【0244】
Ca-CBD錯体:CBD(100mg、0.32mmol、1当量)及び水酸化カルシウム(24mg、0.32mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた4mL反応バイアルに取った。続いて、3mLのエタノール:水(1:1)混合物を加えた。反応バイアルをアルゴン雰囲気下に保った。次いで反応混合物を室温で攪拌した。溶離液として10%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液を用いてTLCを確認した。TLCでCBDが消費されたことを確認した(~48時間)後、真空を用いてエタノールを除去した。得られた錯体を一晩凍結乾燥させた。暗紫色の固体として生成物が得られる。得られた固体生成物をFT-IR及びNMRを使用して分析した。
【0245】
Ba-CBD錯体:CBD(100mg、0.32mmol、1当量)及び水酸化バリウム五水和物(101mg、0.32mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた4mL反応バイアルに取った。続いて、3mLのエタノール:水(1:1)混合溶液を加えた。反応バイアルをAr雰囲気下に保った。次いで、反応混合物を室温で攪拌した。10%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液を溶離液としてTLCを確認した。TLCでCBDが消費されたことを確認した(~48時間)後、真空でエタノールを除去した。得られた錯体を一晩凍結乾燥させた。暗紫色の固体として生成物が得られる。得られた固体生成物をFT-IR及びNMRを使用して分析した。
【0246】
一般に、CBDはエタノールに溶けるが、水には溶けない。しかし、Ca(OH)2及びBa(OH)2はエタノールに溶けず、水にわずかに溶ける。そこで、エタノール:水(1:1)混合液を二価の金属-CBD反応に使用した。CBD及びCa(OH)2/Ba(OH)2をエタノール:水(1:1)混合溶液中で室温(rt)にて撹拌したとき、白色の部分溶解溶液が観察された。反応が進むと、溶液の色は徐々に濃い紫色に変わり、溶媒を蒸発させた後、最終的に濃い紫色の固体が得られた。
【0247】
二価金属-CBD錯体のNMR分析
CBDとBa-CBD錯体の1H NMRスペクトルを得た。Ca-CBD錯体では、CBDの2つの芳香族C-Hプロトンに対応する6.01ppmのピークの強度がほとんど消失し、6.15ppmに新しいピークが現れた。さらに、CBDの2つのOHに起因する8.66ppmのピークは、Ca-CBD複合体では消えている。
【0248】
同様に、Ca-CBD塩では、CBDの2つの芳香族C-Hプロトンに対応する6.01ppmのピークの強度が減少し、新しいピークがCa-CBD錯体の近くに観察された。さらに、Ca-CBD錯体では、CBDの2つのOHに起因する8.66ppmのピークの強度が減少し、新しいピークがその近傍に認められた。
【0249】
CBD-Na誘導体の特性評価
合成したCBD-Na誘導体を1H NMR及びFTIRスペクトルによって特性を評価した。CBD-Na(NaHを用いて合成)の場合、新しいピークが6.99ppmに現れ、CBDにフェノラートアニオンが形成されたことを裏付ける。CBDは2つのフェノール基を含有するので、モノ又はジナトリウム塩が形成されることがある。
【0250】
また、FTIRスペクトルはCBDのナトリウム誘導体の生成を裏付ける。CBD-Na(NaHを用いて合成)では、CBDの3425cm-1にある-OH基の水素結合ピークは抑制され、CBDの金属誘導体の形成に起因して3420cm-1にシフトしている。CBD-Naでは、CBDの1628cm-1及び1582cm-1のピークも、1643cm-1及び1514cm-1にシフトしている。
【0251】
CBD-Ca誘導体の特性評価
合成したCBD-Ca誘導体を1H NMR及びFTIRスペクトルによって特性を評価した。CBD-Caの場合、新しいピークが6.97ppmに現れ、CBDにフェノラートアニオンが形成されたことを裏付ける。また、FTIRスペクトルはCBDのカルシウム誘導体の形成を裏付ける。CBDの金属誘導体の形成及びCBDの分子間水素結合の切断に起因して、CBDの3425cm-1の-OH基の水素結合ピークが抑制され、CBD-Caでは水素結合していない-OH基の鋭いピークが3640cm-1に出現している。
【0252】
実施例3:CBD-Feの誘導体の合成と特性評価
合成:窒素パージした丸底フラスコで、200mgのCBD(0.63mmol)を20mlのエタノールに溶かした。10mlの脱水エタノールに溶けたFeCl3(34mg、0.21mmol)をCBD溶液に加えた。この溶液を室温で24時間静置した。
【0253】
CBD-FeのEDXスペクトルは、C、O、Fe及びClの存在を確認し、原子%は、炭素が82、Feが2.17である。つまり、CとFeの比は~38:1である。2つの塩化物イオンがCBDのフェノール-OH基で正確に置換されている場合、この比は~42:1であるはずである。この結果から、CBD2FeClの形成が確認される。
【0254】
また、FTIRスペクトルはCBDの鉄誘導体の形成を裏付ける。CBDの3425cm-1にある-OH基の水素結合ピークは、CBD-Feでは、CBDの金属誘導体の形成に起因して抑制され、3300cm-1にシフトしている。また、-OH基の変角振動モードに帰するCBDの1628cm-1のピークも、CBD-Feでは抑制され、1621cm-1にシフトしている。CBDの1582cm-1及び1442cm-1の強い芳香族バンドは、CBD-Fe塩では、1576cm-1及び1426cm-1にシフトし、芳香族C=C結合の変化を示し、CBDがCBD-Feに変換されたことを示す。
【0255】
DSC研究から、純品は69℃にピークを有するのに対して、CBD-Feは132.69℃に大きなピークを示し、64℃にも小さなピークがある。
【0256】
すべての塩について、HClなどの酸性溶液を加えると、変換されて元の(native)CBDに戻る。
【0257】
実施例4:CBDと様々な一価金属塩の反応
NaOH、Na2CO3又はNaHCO3とのCBDの反応:窒素パージした丸底フラスコに、25mgのCBDを3mlのメタノールに溶かした。次いで、2mlのエタノール中の17mgのNa2CO3又は炭酸水素ナトリウムの均等物及びNaOHをCBD溶液に加えた。溶液を室温で24時間攪拌(staring)し続けた。最終的な乾燥混合物には2つの部分が含まれる。一方の部分は水に溶け、他方の部分は水に溶けない。2つの部分両方のNMR、FTIR及びMSをチェックした。のNMR、FTIR及びMSをチェックした。水溶性の部分には、ナトリウム塩のCBD及び酸化したCBDと思われる化合物が含まれる。水不溶な部分には、未反応のCBD又は単一のナトリウム塩のいずれかが含まれる。
【0258】
NaClを用いたCBDの反応:20mgのCBDを3mlの脱水エタノールに溶かした。次いで、2mlの脱水エタノールに溶かした8.8mgのNaClをCBD溶液に添加した。この溶液を室温で72時間攪拌した。反応なし、CBDは未変化(intact)のまま、水溶性化合物なし。
【0259】
KOH、LiOH、LiCl、KCl、KHCO3及びK2CO3を同様の条件下で使用したときも同様の結果が得られた。KCl及びLiClはCBDと反応せず、一方で塩基性化合物は対応するCBD塩を形成したが、CBDとの混合物として、おそらく酸化したCBDとしてであった。
【0260】
ZnCl2とのCBDの反応:CBD(100mg、0.32mmol、1当量)及び塩化亜鉛(44mg、0.32mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた4mL反応バイアルに取った。続いて、3mLのエタノール:水(1:1)混合溶液を加えた。反応バイアルをAr雰囲気下に保った。次いで、反応混合物を室温で攪拌した。10%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液を溶離液としてTLCを確認した。TLCでCBDが消費されたことを確認した後、真空を用いてエタノールを除去した。得られた塩を一晩凍結乾燥させ、固体として生成物を得た。
【0261】
MgCl2とのCBDの反応:CBD(100mg、0.32mmol、1当量)及び塩化マグネシウム(31mg、0.32mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた4mL反応バイアルに取った。続いて、3mLのエタノール:水(1:1)混合溶液を加えた。反応バイアルをAr雰囲気下に保った。次いで、反応混合物を室温で攪拌した。10%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液を溶離液としてTLCを確認した。TLCでCBDが消費されたことを確認した後、真空を用いてエタノールを除去した。得られた塩を一晩凍結乾燥させ、固体として生成物を得た。
【0262】
TLCを確認して反応の完了を確かめた。24~48時間の反応後、CBDの完全な消費が認められた。二価の金属-CBD錯体がTLCのベースラインにおいて観察された。TLC及びH NMRスペクトルは、金属塩が得られ、いくつかの副産物(単一金属又は二量体)が形成されたことを示した。
【0263】
CBDとFeCl3の反応:CBD(58.7mg、0.187mmol)及び塩化鉄(III)(20.4mg、0.126mmol)を無水エタノール(6mL)に取り、室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させてほぼ乾燥させ、次いでペンタン中に沈殿させた。ペンタン画分にはCBDのみが含まれ、沈殿物を集めた。常磁性の鉄(III)があるため1H NMRを行うことができず、そこで試料をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で特性を評価した。観察された分子量が1950であったことから、錯体中の数個(~6個)のCBDユニットの存在が示唆された。次いで、生成物をエタノール/0.1M HCl(比率2:1)に取り込み,得られた沈殿物が出発CBDであった。同じ反応をTHF中で行ったところ、塩酸で酸性化すると変換されてCBDに戻るFe-錯体が形成された。FeCl3とCBDを異なる比率及び反応条件で反応させたとき、様々な錯体が得られた。
【0264】
CBDとAl(Cl)3の反応:CBD(106mg、0.337mmol)及び無水塩化アルミニウム(35.2mg、0.264mmol)を無水エタノール(15mL)に取り、室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させてほぼ乾燥させ、粗生成物をクロロホルムで洗浄して未反応のCBDを除去した。1H NMRは、芳香族プロトンピークのシフトを示し、錯体形成が示唆された。次いで、生成物をエタノール/0.1M HCl(比率2:1)に取り込み、得られた沈殿物がCBDであることが示された。
【0265】
実施例5:水酸化アンモニウムを用いたアンモニウム-CBD錯体の合成
テトラメチルアンモニウム-、テトラエチルアンモニウム-、テトラブチルアンモニウム- テトラペンチルアンモニウム-又はテトラヘキシル水酸化アンモニウムなどの一連の水酸化アンモニウムを使用して、以下の手順を用いてアンモニウム-CBD錯体を合成した(スキーム7)。
【0266】
エタノール中のCBD(1当量)溶液を、エタノール中のテトラ-ブチルアンモニウムヒドロキシド(2当量)溶液と混合した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、エタノールを蒸発させてアンモニウム-CBD錯体を得た。
【0267】
実施例6:水酸化アンモニウムを用いたアンモニウム-フェノルドパムの合成
テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム及びコリンを含む一連のアンモニウム水酸化物を用いて、アンモニウム-フェノルドパム錯体を合成した。エタノール:水(1:1)混合物中のメシル酸フェノルドパム(1当量)を、エタノール:水(1:1)混合物中のテトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシド(3当量)を混合し、室温で攪拌した。TLCで反応の完了をモニターした。溶媒を蒸発させた後、アンモニウム-フェノルドパム錯体を得た。
【0268】
実施例7:水酸化アンモニウムを用いたアンモニウム-CBD錯体の合成。
水酸化アンモニウムの合成:トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジンなどの様々なアミンを以下の手順を用いて水酸化アンモニウムの誘導体に変換した。これにより、多様なアンモニウム-フェノラート錯体の合成が可能となる。
【0269】
最初のステップでは、アセトニトリル中でアミン(1当量)と、対応するハロゲン化アルキル(1当量)をアルキル化することによって、テトラ-アルキル置換アンモニウムブロミド/ヨージドを合成した。反応混合物を75℃の温度で12時間激しく撹拌して固体生成物を形成させ、これを濾過し、ヘキサンで十分に洗浄して、純粋なテトラアルキル置換アンモニウムのハロゲン化物を得た。
【0270】
これらの合成したハロゲン化アンモニウム誘導体及び市販のハロゲン化アンモニウム誘導体を以下の手順を用いて水酸化アンモニウム誘導体に変換した。
【0271】
エタノール中のテトラアンモニウムブロミド/ヨージド(1当量)を、エタノール中のKOH(1当量)の溶液と混合し、60℃まで一晩徐々に加熱した。KBr沈殿物を濾過によって除去し、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液を得た。溶媒を蒸発によって除去し、テトラアルキルアンモニウムヒドロオキシドを得た。
【0272】
CBD-アンモニウム塩の調製:CBD(100mg、0.32mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた4mL反応バイアルに取った。反応バイアルをAr雰囲気下に保った。次いで、1mLのエタノールを加え、撹拌してCBDを溶かした。その後、テトラメチル水酸化アンモニウム五水和物(115mg、0.64mmol、2当量)又はテトラブチル水酸化アンモニウム(40%水溶液、414μL、0.64mmol、2当量)を1mLのエタノールに溶かした溶液を滴下した。次いで反応混合物を室温で攪拌した。溶離液として10%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液を用いてTLCを確認した。TLCでCBDが消費されたことを確認した後、真空を用いてエタノールを除去した。得られた塩を一晩凍結乾燥させた。固体として生成物が得られる。得られた固体生成物をFT-IR、UV、及びNMRを使用して分析した。
【0273】
ハロゲン化アンモニウムを用いたアンモニウム-CBD錯体の合成:テトラエチルアンモニウムブロミド(3.15g、15mmol、1当量)又はテトラペンチルアンモニウムブロミド(5.68g、15mmol、1当量)又はテトラヘキシルアンモニウムヨージド(7.22g、15mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた50mL丸底フラスコに取った。溶媒のエタノール(10mL)を加え、混合物を攪拌して、テトラアンモニウムブロミド/ヨージドを溶かした。透明な溶液が観察された後、エタノールに溶かしたKOH(0.84g、15mmol、1当量)の溶液を加えた。次いで、60℃まで徐々に加熱した。24時間後、混合物を室温まで冷却した。その後、KBr沈殿物を濾過によって除去した。テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液が得られる。溶媒を蒸発させることによって除去し、テトラアルキルアンモニウムヒドロオキシドを得た。
【0274】
CBD(100mg、0.318mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた4mL反応バイアルに取った。反応バイアルをAr雰囲気下に保った。次いで、1mLのエタノールを加え、撹拌してCBDを溶かした。その後、テトラエチルアンモニウムヒドロオキシド(94mg、0.636mmol、2当量)又はテトラペンチルアンモニウムヒドロオキシド(201mg、0.636mmol、2当量)又はテトラヘキシルアンモニウムヒドロオキシド(236mg、0.636mmol、2当量)を1mLのエタノールに溶かした溶液を滴下した。次いで反応混合物を室温で攪拌した。溶離液として10%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液を用いてTLCを確認した。TLCでCBDが消費されたことを確認した後、真空を用いてエタノールを除去した。得られた塩を一晩凍結乾燥させた。固体として生成物が得られる。得られた固体生成物をFT-IR、UV、及びNMRを使用して分析した。
【0275】
アンモニウム-CBD錯体の合成:CBDはエタノール中で淡褐色の透明な溶液を呈する。この溶液に、エタノール中のテトラブチルアンモニウム-及びテトラメチルアンモニウム-ヒドロオキシドの溶液を加えたとき、反応が進むと、溶液の色は徐々に暗紫色に変化した。TLCを確認して反応の完了を確かめた。48時間の反応の後、CBDの完全な消費が認められた。アンモニウム-CBD錯体は底部に観察された。しかし、TLCでは他に3つのスポットが観察された。
【0276】
アンモニウム-CBD錯体のFT-IR分析:CBD並びにそれらのテトラメチルアンモニウム及びテトラブチルアンモニウム錯体のFT-IRスペクトルは、それらの振動数に有意な変化を示す。CBDの1582cm-1、1442cm-1の強いバンドが、アンモニウム-CBD錯体では1514cm-1に変化していることは、芳香族C=C結合の変化を示し、CBDの変換を示す。さらに、1628cm-1の振動数の消失は、CBDの二重結合の変化を示す。
【0277】
アンモニウム-CBD錯体のNMR分析:CBD、水酸化アンモニウム、及びアンモニウム-CBD錯体の1H NMRスペクトルを比較した。CBDの2つのOHに対応する6.18ppm及び5.97ppmのピークは、アンモニウム-CBD複合体では消失している。さらに、それぞれの水酸化アンモニウムのメチルプロトン及びブチルプロトンはアンモニウム-CBD錯体に組み込まれている。しかし、CBDの二重結合により、副反応がNMRスペクトルに観察された。またCBDの酸化物も観察された。化合物は、好適な溶媒による洗浄又はカラムクロマトグラフィーによって、さらに精製することができる。
【0278】
アンモニウム-CBD錯体のUV分析:CBDと比較したアンモニウム-CBD錯体のUV分析を実施した。エタノール中のCBD又はアンモニウム-CBD錯体(20μg/mL)をUV分析した。CBDは229~235nm及び274~281nmで吸収を示す。これらの吸収は、アンモニウム-CBD錯体では広がり、シフトしている。
【0279】
実施例8:水酸化アンモニウムを使用したアンモニウム-フェノルドパム錯体の合成
メシル酸フェノルドパム(50mg、0.12mmol、1当量)を、マグネットバーを備えた4mL反応バイアルに取った。反応バイアルをアルゴン雰囲気下に保った。次いで、1mLエタノール:水(1:1)混合物を加え、攪拌してメシル酸フェノルドパムを溶かした。その後、テトラメチル水酸化アンモニウム五水和物(68mg、0.36mmol、3当量)又はテトラブチルアンモニウムヒドロオキシド(40%水溶液、243μL、0.36mmol、3当量)を1mLのエタノール:水(1:1)混合物に溶かした溶液を滴下した。次いで反応混合物を室温で攪拌した。TLCでCBDが消費されたことを確認した後、真空を用いてエタノールを除去した。凍結乾燥機を使用して水を一晩除去した。固体として生成物が得られる。得られた固体生成物をFT-IR、UV、及びNMRを使用して分析した。
【0280】
アンモニウム-フェノルドパム錯体の合成:メシル酸フェノルドパムは、エタノール:水(1:1)混合物中で無色の溶液を呈する。この溶液に、エタノール:水(1:1)混合物中のテトラメチルアンモニウム-又はテトラブチルアンモニウム-ヒドロオキシドに溶液を加えると、淡い緑色の溶液となる。反応完了後、テトラメチルアンモニウム-及びテトラブチルアンモニウム-ヒドロオキシド反応物は、それぞれ暗褐色及び暗褐色の固体に変わる。
【0281】
メシル酸フェノルドパムとテトラブチルアンモニウム-フェノルドパム錯体の1H NMRスペクトルを比較した。フェノルドパムの3つのOHに対応する9.01ppm、8.94ppm、8.81ppmのピークはテトラブチルアンモニウム-フェノルドパム錯体では消失している。また、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドのブチルプロトンは、テトラブチルアンモニウム-フェノルドパム錯体に取り込まれている。
【0282】
アンモニウム-フェノルドパム錯体のUV分析:メシル酸フェノルドパムと比較したアンモニウム-フェノルドパム錯体のUV分析を行った。エタノール中のフェノルドパム又はアンモニウム-フェノルドパム錯体(20μg/mL)をUVで分析した。フェノルドパムは218nm及び284nmで吸収を示す。これらの吸収は、アンモニウム-フェノルドパム錯体では広がり、シフトしている。テトラメチルアンモニウム-フェノルドパム錯体では、218nm及び284nmの吸収は、それぞれ229nm及び280nmにシフトしている。また、新たな吸収が306nm及び338nmに観察された。テトラブチルアンモニウム-フェノルドパム錯体では、218nm及び284nmの吸収は、それぞれ226nm及び279nmにシフトしている。また、新たな吸収が308nm及び331nmに観察された。
【0283】
実施例9:CBD-コリンの合成、製剤化及び薬物動態
CBD-コリン塩は暗紫色の固体として得られ、メタノール、エタノール及びDMSOに可溶であり、トルエン、ヘキサン及びクロロホルムに不溶であり、水にやや溶けにくい。CBD-コリンをNMR及びFT-IR分析を使用して確認した。CBDをpH~3でCBD-コリン塩から再生することに成功した。CBD-コリン塩の方法論は、L-α-ホスファチジルコリンなどの他のコリン誘導体に拡張された。CBD-コリンは、自己ナノ乳化薬物送達システム製剤を使用して水性溶媒中に分散されており、流体力学的直径が85nm、ゼータ電位が-3.7mVの粒子である。LogP 1.71をオクタノール/水中で測定した。CBD-コリン塩を、CBDに使用したのと同様の方法を用いてHPLC-MSによって検出した。塩は、酸性化した血漿から高収率で抽出された。
【0284】
水酸化コリン(46%水溶液)を使用してCBD-コリン塩を合成した。CBD(1.0当量)及び水酸化コリン(2.2当量)を、溶媒としてメタノールを使用して窒素雰囲気下において室温で撹拌した。TLCで反応の完了をモニターした。反応の完了後、メタノールを真空下で除去し、凍結乾燥してCBD-コリンを暗紫色の固体として得た。
【0285】
CBDはメタノールに可溶で、淡褐色の透明な溶液を形成する。メタノール中のCBDの溶液を、メタノール中の水酸化コリンの溶液に滴下したとき、暗紫色の透明な溶液が観察された。反応が進むと、溶液の色は暗紫色が濃くなる。溶媒を蒸発させた後に得られた暗紫色の固体として塩を単離した。
【0286】
特性評価:CBD-コリン塩の1H NMRスペクトルを、メタノール-d4中のCBDと比較した。CBDの2つの芳香族C-Hのプロトンに対応する6.08ppmは、CBD-コリン塩では6.00ppmにシフトしている。また、CBDの二重結合の他のプロトンは、5.28ppm、4.47ppm及び4.43ppmに現れたが、CBD-コリンでは5.33ppm、4.51ppm及び4.43ppmにシフトしている。NMRの研究から、CBD-コリンの形成が明らかになった。CBD-コリンとCBDのIRスペクトルを比較した。CBD-コリンでは、1643cm-1、1622cm-1及び1581cm-1に観測された芳香族振動数は、CBDと比較して、1640cm-1及び1561cm-1にシフトしていた。CBD-コリン塩の形成が裏付けられる。
【0287】
CBD-コリン塩からのCBDの再生
CBD-コリン塩からのCBDの再生を調べるため、CBD-コリンをpH=3の溶液に加え、CDCl3で抽出した。CDCl3層は、CBD-コリン塩からCBDが再生されたことを明らかに示し、1H NMRで確認した。
【0288】
HPLC-MSによるCBD-コリンの検出方法が開発されている。5ng/mL~1μg/mLの濃度範囲に対して線形曲線(linear curve)が定められている。ピークAUC(y軸)とCBD-コリン濃度(x軸)の間の直線関係が明らかになっている。
【0289】
CBD-コリン塩の合成:CBD-コリン塩を、スキーム7に示すように水酸化コリン(46%水溶液)を使用して合成した。CBD(1.0当量)及び水酸化コリン(2.2当量)を、メタノールを溶媒として使用して窒素雰囲気下において室温で攪拌した。TLCで反応の完了をモニターした。反応の完了後、メタノールを真空下で除去し、凍結乾燥機を使用して乾燥させた、CBD-コリンが暗紫色の固体として得られる。
【0290】
CBDへの高い再生能力をもつ純粋なCBD塩の合成。
除去しやすい副生成物を使用した純粋なCBD塩の合成。
【0291】
CBD-Na塩:CBD(300mg、0.953mmol、1当量)を3mLの乾燥THFに溶かし、次いで3mLの乾燥THFに溶かしたNaH(83mg、2.09mmol、2当量)を、N2雰囲気下で10分の時間をかけて滴下した。その後、反応混合物をN2雰囲気下において、室温で24時間攪拌した。反応完了後、黒色の沈殿物が反応混合物中に生じ、それを集め、n-ヘプタンで数回(10mL×3)洗浄することによって精製した。沈殿物を集め、温度制御熱風オーブンで乾燥させた。収量:260mg(76%)。得られたCBD-Na塩を、FT-IR及びNMRを使用して分析した。
【0292】
CBD-コリン(1:1)塩:水酸化コリン溶液(水中46%溶液、391μL、1.59mmol、1当量)を20mL反応バイアルに取った。10mLメタノールを加え、ボルテックスして溶かした。次いで、10mLのメタノールに溶かしたCBD(500mg、1.59mmol、1当量)を窒素雰囲気下で滴下した。反応バイアルを窒素雰囲気下で密閉し、アルミニウム箔で覆った。次いで反応混合物を室温で攪拌した。溶離液として10%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液を用いてTLCを確認した。TLCでCBDが消費されたことを確認した(~48時間)後、真空でエタノールを除去した。得られた塩を一晩凍結乾燥させ、暗紫色の固体としてCBD-コリン塩が得られ、FT-IR及びNMRを使用して分析した。
【0293】
CBD塩の合成の改良及びCBDの回収:CBD-Na塩を、CBDと、スキーム1に示したNaOHの代わりにNaHを用いた、改変した手順によって合成した。CBD(1.0当量)及びNaH(2.0当量)を、窒素雰囲気下で乾燥THFを溶媒として使用して室温で攪拌した。反応の完了後、CBD-Na塩を集め、n-ヘプタンで洗浄して未反応のCBD及び他の不純物を除去した。
【0294】
NMR分析:純粋なCBDと異なり、CBD-NaのNMRスペクトルは、1H-NMRスペクトルの8.6ppm付近にフェノール性OH共鳴を示さなかった。このことはCBD-Naの形成を表す。さらに、CBD-Naの他の芳香族及び脂肪族共鳴は、CBDと比較してシフトしていた。
【0295】
IR分析:CBD-NaのFT-IRスペクトルをCBDと比較して分析した。CBDは3518cm-1及び3406cm-1付近に芳香族ヒドロキシル基のFT-IR伸縮振動数を示す。これらの振動数は、その類似体であるCBD-Na塩では消失し、芳香族ヒドロキシル基が対応するCBD-Na塩に変換されたことを裏付ける。これらの化合物のアルカン及びアルケンのC-Hスターチング(starching)振動数は、それぞれ2931cm-1及び2857cm-1に示された。最も重要なことに、これらの化合物は、異なる芳香族C=C及びC-Oスターチング振動数を、それぞれ1643~1428cm-1の範囲及び1251cm-1に示した。
【0296】
CBD-Ch塩の合成、結果、及び分析:CBD-コリン塩(1:1)を、CBD及び水酸化コリン(46%水溶液)を使用して、スキーム10のように合成した。CBD(1.0当量)及び水酸化コリン(1.0当量)を、メタノールを溶媒として使用して窒素雰囲気下において室温で攪拌した。TLCで反応の完了はモニターした。反応の完了後、メタノールを真空で除去し、凍結乾燥機を使用して乾燥させた。CBD-コリンが暗紫色の固体として得られる。
【0297】
CBD-コリン塩のNMR分析:DMSO-d6で1H NMRスペクトルを得た。フェノールOHに対応する8.64ppmのピークがCBD-コリン塩では消失した。他の芳香族や二重結合のプロトンはシフトしている。コリン部分に関連するピークは、3つのCH3プロトンが3.11ppmに、2つのCH2プロトンが3.38ppm及び3.81ppmに、OHプロトンが5.52ppmに観察された。
【0298】
CBD-コリン(1:1)から再生されたCBDのHPLC分析:HCl溶液(pH=1.0)中のCBD-コリン塩(1:1)の再生研究を行い、続いてクロロホルムを使用して遊離CBDを抽出した。適量のCBD-コリン塩(詳細は表1を参照されたい)を5mLバイアルに取り、これに2mLのHCl溶液(pH=1.0)を加えた。数(Few)滴の濃HClを加えて溶液をpH=1.0にした。得られた混合物をシェーカーで30分間保った。30分の酸処理後、2mLのクロロホルムを反応混合物に加え(抽出を3回、3×2mLを繰り返した)、15分間ボルテックスした。有機層と水層を分離し、ロータリーエバポレーターを使用して乾燥させ、続いて一晩凍結乾燥した。CBD-コリン塩から酸処理後に生成したCBDの重量を、秤量及びHPLC研究を用いて測定した。結果を表2に示す。興味深いことに、CBD-コリン(1:1)は、HPLC分析によると約67.0%のHPLCでCBDに再生される。
【0299】
まとめ:CBD-コリン(1:1)塩は67.01%でCBDに再生した。CBD及びNaHを使用してCBD-Naを調製することに成功した。この方法論を適用して、新鮮なCaH2及びMgH2を用いてCBD-Ca及びCBD-Mgを作った。
【0300】
カンナビジオール(CBD)-コリン(Ch)塩の薬物動態(PK):自由運動ラットにCBD及びCh-CBD塩を投与した後のCBDのPKプロファイルの比較。
【0301】
製剤特性
CBD及びCBD-コリン塩を、表3に示す脂質と界面活性剤の混合物に溶かした。そして、水に分散して約30ナノメートルのナノ分散体を形成した。この分散体をラットにIV又は経口のいずれかで投与した。
【0302】
IV投与の場合:各分子をプロナノリポスフェア(PNL)製剤に溶かした(2%重量/重量)(表3)。再蒸留水(DDW)を加えて、ナノ懸濁液中の最終CBD濃度を0.2%重量/重量とした。
【0303】
経口投与の場合:各分子をプロナノリポスフェア(PNL)製剤に溶かした(5%重量/重量)(表2)。再蒸留水(DDW)を加えて、ナノ懸濁液中の最終CBD濃度を0.5%重量/重量とした。
【0304】
上記の%は、塩の実際の重量による量(weight amount)を指し、この量の補正は下の表4及び表5で触れられている。
【0305】
ラットにおけるカンナビジオール(CBD)-コリン(Ch)塩のIV及び経口投与後の薬物動態(PK):自由運動ラットモデルを用いて薬物動態試験を行った。静脈内投与の場合、1mg/kgの投与量を施した(塩の補正は表4及び表5にある)。2つの群をCBD(n=5)又はCh-CBD(n=4)のいずれかを投与するようにランダムに割り当てた。投与前5分、並びに投与後5、15、30分及び1、1.5、2、4、6、及び8時間に全身血液試料(0.35mL)を採取した。
【0306】
経口製剤を15mg/kgの投与量で、強制経口投与で動物に投与した(塩の補正は表4及び表5に示す)。2つの群をCBD(n=5)又はCh-CBD(n=3)のいずれかを投与するようにランダムに割り当てた。投与前5分、並びに投与後0.33、0.66、1、1.5、2、4、6、8及び10時間に全身血液試料(0.35mL)を採取した。脱水を防ぐため、採血毎に等量の生理的溶液を投与した。血漿を遠心分離(4000rpm、10分)によって分離し、分析まで-20℃で保存した。150μLの血漿アリコートに、10μLの内部標準カンナビゲロール(CBG;1μg/mL)でスパイクした。各試験管(チューブA)にACN(200μL)を加え、1分間ボルテックスで混ぜた。各試験管(チューブA)にN-ヘキサン(3mL)を加え、それに続いて1分間ボルテックスで混ぜることでCBD及びCBGの抽出を行った。4000rpmで10分間遠心分離した後、n-ヘキサン有機層を新しいガラス試験管(チューブB)に移し、蒸発乾固させた(Vacuum Evaporation System、Labconco、カンザスシティ、ミズーリ州)。次いで、チューブBを80μLのACN:水(80:20)で再溶解した。得られた溶液(80μl)をHPLC-MSシステムに注入した。使用カラム:XTerra MS C18 Column 3.5μm 2.1×100mmカラム(ウォーターズ(登録商標)、ミルフォード、マサチューセッツ州)
移動相:20:80(体積/体積)2mM酢酸アンモニウム/アセトニトリルのイソクラティック移動相
希釈剤:20:80(体積/体積)水/アセトニトリル
流量:0.2mL/分
カラム温度:35℃±5℃
試料温度:20℃±5℃
検出質量(m/z):CBG-312.2及びCBD-313.2、負イオンエレクトロスプレーによる
【0307】
CBD及びCh-CBD塩の薬物動態プロファイルの比較
血漿中に見られる塩の量を、IV投与では1mg/kg及び経口投与では15mg/kgの投与量になるように、表6に記載の補正率0.17を用いて調整した。
【0308】
各塩パラメーターをCBD自体と比較しながら、P値<0.05でt検定を用いて、両方の補正率でAUC、CL及び分布容積の統計的な差が認められた。
【0309】
P値<0.05のt検定を用いて、統計学的な差は見られなかった。CBDのCh-CBD塩に対する実際の量を補正した後のCBDとCh-CBD塩の間の比較(MWによるものとMSによるものの両方)。CBD及びCBD-コリン塩のIV後の血中レベルは同等であったが、コリン塩の経口バイオアベイラビリティーは有意に高かった。
【0310】
実施例10:オキシベンゾン及びサリチル酸オクチルのナトリウム塩の日焼け止めの合成
実施例44~49の目的は、オキシベンゾン及びサリチル酸オクチルのナトリウム塩及びコリン塩の合成、特性評価及び分析である。オキシベンゾン(シグマアルドリッチ、アメリカ合衆国)及びサリチル酸オクチル(シグマアルドリッチ、アメリカ合衆国)を受け取った状態そのままで使用した。DMSO-d6を溶媒として使用して、Varian 300MHz核磁気共鳴装置で1H NMRスペクトルを得た。
【0311】
100mL丸底フラスコに、500mgのオキシベンゾン(2.19mmol)を10mlのCH3OHに窒素雰囲気下で溶かした。次いで、10mlのメチルアルコールに溶けた87.6mgのNaOH(2.19mmol)を、オキシベンゾン溶液に長時間(1時間)かけて滴下した。溶液を室温で一晩攪拌し続けた。次いで、メチルアルコールを真空下で除去し、沈殿物を空気下で乾燥させてオキシベンゾンの純粋なナトリウム塩として黄色がかった固体ダストを得た。
【0312】
100mL丸底フラスコに、500mgのサリチル酸オクチル(2.0mmol)を10mlのCH3OHに窒素雰囲気下で溶かした。次いで、10mlのメチルアルコールに溶けた80mgのNaOH(2.0mmol)を、サリチル酸オクチル溶液に長時間(1時間)かけて滴下した。溶液を室温で一晩攪拌し続けた。次いで、メチルアルコールを蒸発させ、沈殿物を空気下で乾燥させてサリチル酸オクチルの純粋なナトリウム塩として白色の固体粉末を得た。
【0313】
合成したオキシベンゾン及びサリチル酸オクチルのナトリウム塩を、1H NMRによって特性を評価した。12.02ppmのピークはオキシベンゾンの-OH基に対応し、NaOHによる処理後、完全に消失する。オキシベンゾンのナトリウム塩の場合、オキシベンゾンの他の残りのピークはすべて、若干の高磁場シフトを伴って不変(intact)であり、オキシベンゾンのフェノラートアニオンの形成を裏付ける。同様に、サリチル酸オクチルのナトリウム塩の場合、サリチル酸オクチルの-OH基に対応する10.60ppmのピークは、塩形成後に完全に消失している。サリチル酸オクチルの他の残りのピークはすべて、サリチル酸オクチルナトリウム塩の場合にも、若干の上方磁場シフトを伴って不変であり、サリチル酸オクチルのフェノラートアニオンの形成を裏付ける。
【0314】
コリン-オキシベンゾン/サリチル酸オクチル塩を、それぞれ、オキシベンゾン又はサリチル酸オクチルと、水酸化コリンを使用して、以下の手順(スキーム11)で合成する。
【0315】
オキシベンゾン/サリチル酸オクチル(1.0当量)を、マグネットバー付きの反応バイアルに取った。反応バイアルを窒素雰囲気下に保った。次いで、メタノールを加え、攪拌してオキシベンゾン/サリチル酸オクチルを溶かした。その後、水中の水酸化コリン(1.1当量)溶液を滴下する。次いで、反応混合物を室温で攪拌した。TLCで反応の完了をモニターする。反応の完了後、メタノールを真空で室温にて除去する。凍結乾燥機を使用して得られた塩を乾燥させ、コリン-オキシベンゾン/サリチル酸オクチル塩が得られる。
【0316】
実験手順:オキシベンゾン(500mg、4.38mmol、1.0当量)又はサリチル酸オクチル(548mg、4.38mmol、1.0当量)を、マグネットバーを備えた20mL反応バイアルに取った。反応バイアルを窒素雰囲気下に保った。次いで、10mLのメタノールを加え、攪拌してオキシベンゾン/サリチル酸オクチルを溶かした。その後、水酸化コリン溶液(46%水溶液、592μL、4.82mmol、1.1当量)を滴下した。次いで反応混合物を室温で攪拌した。TLCでオキシベンゾン/サリチル酸オクチルが消費されたことを確認した後、真空を用いてエタノールを除去した。得られた生成物を一晩凍結乾燥した。粘性液体(コリン-オキシベンゾン-淡褐色透明粘性液体;コリン-サリチル酸オクチル-淡黄色透明粘性液体)が得られる。FT-IR及びNMRを使用して分析した。
【0317】
結果及び考察:オキシベンゾン/サリチル酸オクチルはメタノール中で淡黄色/無色透明の溶液を呈する。この溶液に、水中の水酸化コリン溶液を加えた後、反応を進めると、反応混合物は徐々に黄色/淡黄色透明溶液に変化した。反応完了後、メタノールを除去し、生成物を粘性液体として得た。コリン-オキシベンゾン-淡褐色透明粘性液体、コリン-オクチルサリシレート-淡黄色透明粘性液体。
【0318】
オキシベンゾンとコリン-オキシベンゾン塩の1H NMRスペクトルを比較した。オキシベンゾンのOHに対応する12.03ppmのピークはコリン-オキシベンゾン塩では消失している。さらに,コリン-オキシベンゾン塩では、フェノラートイオンの電子密度が高いので、オキシベンゾンの芳香族プロトンがシフト(高磁場)している。さらに、水酸化コリンの3つのメチル(CH3)基の9つプロトンが3.59ppmに組み込まれている。また、水酸化コリンの2つのメチレン(CH2)基が3.73ppm及び3.28ppmに観察された。
【0319】
オキシベンゾン又はサリチル酸2-エチルヘキシルの鉄(III)塩。エタノール中のFeCl3(1.2当量)溶液を、エタノール中の攪拌混合液に、オキシベンゾン又はサリチル酸2-エチルヘキシル(1.0当量)に加えた。紫(violet)の色がすぐに見えた。混合物をアルミニウム箔で覆い、室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をクロロホルムに取り込み、ヘキサンに滴下した。次いで、濁った混合物を遠心分離し、上澄みを蒸発させて、紫(purple)の色の粉末を定量的収率で得た。
【0320】
実施例11:サルカプロザートナトリウム(SNAC)塩の合成
サルカプロザートナトリウムは、経口吸収促進剤であるサルカプロザートのカルボン酸ナトリウム塩形態である。サルカプロザートナトリウムは、ビタミンB、インスリン、ヘパリン、及び最近ではセマグルチドの経口吸収を促進する送達剤(delivery agent)として使用されている。本実施例では、製剤の改良及び経口バイオアベイラビリティーの向上を目的として、金属フェノラート塩及びアンモニウムフェノラート塩を調製している。ナトリウム、カリウム、カルシウム及び鉄のフェノラート塩を、上に記載の方法の1つを用いて調製した。コリンイオン及びテトラエチルアンモニウムイオンを含むアンモニウム塩を、上に記載の方法を用いて調製した。これらの塩は、セマグルチド及びインスリンの経口バイオアベイラビリティーを向上させるために使用されている。
【0321】
下に提示したのは、SNAC塩の化学構造である。1-SNAC、2-SNAC-ナトリウム、3-SNAC-コリン、4-SNAC-ホスファチジルコリン。
【0322】
製剤の調製:下の表8に示す成分を徐々に混合することによって、製剤を調製した。化合物はすべて粉末であり、各材料比率は質量比である。
【0323】
生体内試験
各SNAC又は塩の製剤に対して、4匹の雄のウィスター系ラット(Harlan、イスラエル)を使用する。
【0324】
薬物動態試験プロトコール:体重が275~300gの雄のウィスター系ラット(Harlan、イスラエル)を、試験前、餌(標準ラット用飼料(rat chow))及び水に自由にアクセスさせ、12時間の明暗サイクル下に保つ。動物には手術の間、麻酔をかける。全身採血のため、留置カニューレを各動物の右頸静脈に設置する。カニューレは皮下にトンネルを通し、頸部背面で外装する。外科的処置の完了後、動物を個別のケージに移して、一晩(12~18時間)回復させる。前記回復期において、経口吸収実験を行う場合は、水を除く食物をとらせない。実験全体を通して、経口投与後4時間には食物を自由にアクセス可能にする。
【0325】
動物を異なる実験群に無作為に割り当てる。経口SNAC又は塩製剤を蒸留水に分散させ、次いで強制経口投与する(ラットが12mg/kgのセマグルチドを得るように~1.2ml)。頸静脈に留置した静脈カニューレによって、全身血液試料(0.36ml)を得る。経口投与の場合、薬物動態プロファイルに応じて、投与前5分と投与後の異なる時点に採血する(採血はラットの血液量の10%を超えないものとする)。脱水を防ぐために、各採血後に等量の生理食塩水をラットに投与する。血漿を遠心分離(4000rpm、7分、4℃)により分離し、分析まで-20℃で保存する。セマグルチド向けに開発したLC-MS法によって血漿試料を分析した。
【0326】
結果:
塩合成の特性評価:
溶解性:水に溶けないSNAC-PCを除いて、SNAC及びその塩は水に溶ける。pHを腸内環境に存在するように酸性pH(1.2)まで下げる間に、SNACや塩類が沈殿する。NMRにより、この条件で塩がSNACに再生されることが確認された。
【0327】
薬物動態吸収プロファイル:
ラットにおけるセマグルチドの吸収を、SNAC及び塩製剤の経口投与後長時間経過したラット血漿中のセマグルチド濃度として検討した。PKパラメーターを片対数スケールでデータから抽出した。PKパラメーターを表9に記載のプロットから抽出した。SNAC-Na製剤は、他の製剤と比較してすべてのPKパラメーター、つまりこの製剤のAUC、Cmax及び絶対的バイオアベイラビリティーが低い値を示したので、SNACと比較してセマグルチドの吸収に寄与しなかったことが明らかに示されている。SNAC-CHは、元のSNACと同様のPK値を示したが、PC塩製剤によるセマグルチドの吸収は、最大のAUC、Cmax及びバイオアベイラビリティーを示した。%F(絶対的バイオアベイラビリティー)はいずれの場合も非常に低いが、SNAC-PCの値は他と比較して桁違いに高い。また、セマグルチドの経口製剤市場の民間会社(commercial company)は、犬でのバイオアベイラビリティーが1%であったと報告した。さらに、SNAC-PCを使用したときのセマグルチドの血中濃度の経時的な減少は、SNACを用いたプロファイルと比較してはるかに遅く、セマグルチドの経口投与向け製剤の優れた可能性及び進歩が示唆される。PC塩が吸収プロファイルの向上を示した製剤である理由は、PCが2つの親油性の長鎖を有し、これが製剤の疎水性及び腸壁を通って血流に浸透する能力に寄与している可能性があるためと思われる。さらに、製剤が質量比によって調製されたことも重要な点である。PCの分子量はSNACより大きいので、PC塩製剤の場合、SNACの現在の量(current amount)はSNAC製剤と比較してかなり少ない。したがって、元の比率と等しくなるようにPC-塩製剤中のSNAC量を増加させると、さらに良好な結果が得られる可能性がある。
【0328】
SNAC、SNAC-Na、SNAC-CH又はSNAC-PC製剤中のセマグルチド12mg/kgをPO投与した後のセマグルチドのPKパラメーターを表9に示す。AUC
0-∞
#は、消失相の傾きを用いることによって無限大について計算した。F
abs$=絶対バイオアベイラビリティーの%は、表10に示されるIV投与によるSNAC製剤のセマグルチドのデータを用いて算出した。
【0329】
実施例12:ジコリン分子及びトリコリン分子の合成
水酸化コリンは、活性フェノール含有分子のコリンフェノラート塩を作るのに適していることがわかった。複数の(more than one)のアンモニウム部分を有する分子を得るために、ホスゲン又はホスゲン誘導体を用いてエーテル結合を形成させること又は炭酸結合を形成させることによってコリンを二量化した。クエン酸と、シュウ酸や、マロン酸、セバシン酸、フマル酸などの二酸とのコリンエステルは、エステル化触媒を用いた縮合によって調製されている。ポリアクリル酸などのポリカルボン酸分子上でエステル化することにより、フェノラート塩の形成に使用できるマルチコリン第四級アンモニウム部位をもつポリマーを形成することができる。
【0330】
実施例13:マイクロスフェア及び送達システムの調製
人体若しくは動物の体に送達するために薬物又は活性剤を充填したナノ粒子及びマイクロ粒子に製剤できる、又は肥料や殺虫剤などの農業物質の制御送達に使用できる材料を形成する鉄又はカルシウムとの1:1モル比のクルクミン塩。これらの化合物は、薬物又は化粧品を皮膚に送達するための担体として使用することができる。
【0331】
実施例14:化膿性汗腺炎を治療するためのタピナロフの調製
タピナロフは、皮膚障害、特に化膿性汗腺炎を治療するのによく使用されるフェノール性分子である。この薬物は、投与部位の皮下に注射するか、軟膏若しくはクリームを使用して局所的に塗布するかのいずれかによって送達される。本実施例の目的は、タピナロフの金属塩又はアンモニウム塩を調製して、皮膚への浸透性を増加させ、且つ/又はこの薬物の持続放出を可能にすることである。銀、銅、亜鉛及びコリンの塩を上に記載のように調製した。その塩は、水性溶媒中で薬物を数日~4週間の期間放出した。軟膏及びクリームの局所用担体、並びに塗布後の持続放出のための脂質又はPLGAマイクロスフェアに塩を製剤した。
【0332】
実施例15:緑茶ポリフェノールナノ粒子の調製
水中の10mg/mlの濃度の、緑茶から抽出したポリフェノールを、FeCl3の水溶液に1:100~1:10のモル比で混合してナノ粒子を形成させた。室温で4時間混合した後、200~400ナノメートルのナノ粒子を得た。ナノ粒子を凍結乾燥によって単離した。同様に、Ca塩及びZn塩のナノ粒子を調製した。粒子径に影響を与える要因は、金属イオンとフェノール基の比である。フェノール基1個あたりの金属イオンの量の増加並びに水溶液中のフェノール及び金属イオンの濃度の減少は、ナノ粒子の大きさを減少させる。
【0333】
同様に、ポリフェノールをNaOHに溶かし、その溶液に金属塩を加え、適切な(nice)沈殿物が得られるまで30分間混合することによって、異なる金属イオンをもつタンニン酸のナノ粒子及びマイクロ粒子を調製した。その粒子を、遠心分離又はろ過によって、フェノール性分子の自由に流れる(free flowing)水に溶けないナノ粒子及びマイクロ粒子から単離した。天然ポリフェノール及び異なる供給源のポリフェノールの混合物を使用して、制御薬物送達のための薬物の放出制御システム及び封入(entrappment)として、又は食品添加物として使用するための金属イオンを含むナノ粒子及びマイクロ粒子を調製した。合成ポリドーパミンを金属イオンと反応させ、イオン性ポリドーパミンを作製した。Na、K及びLiの一価金属塩は比較的可溶性のポリマーを形成し、二価及び三価の金属イオンは不溶性の材料を形成した。Ca、Mn、Mg、Zn、Cu、Al及びFeで不溶性塩を調製した。
【0334】
さらなる例では、コリンとテトラブチルアンモニウムのアンモニウム塩を、水酸化物とアンモニウムイオンの直接反応から調製した。
【0335】
実施例16:シナモン抽出物金属塩
Food Sci.Biotechnol.24(4):1201-1207(2015)に記載のシナモン抽出物を、水中でナトリウム塩及びカリウム塩と反応させ、可溶性フェノラート塩又はCa、Mn、Mg、Zn、Cu、Al及びFeをもつ水不溶性シナモン抽出物を形成させた。塩の調製は上に記載の通りであった。分子量が1000~20000の範囲の高分子量シナモン抽出物、又はナノ粒子の形態のものを、金属塩やアンモニウム塩の調製に使用した。これらの塩は、様々な微生物病原体(microbial agents)に対して試験したとき、抗ウイルス及び抗菌活性を示している。
【0336】
実施例17:チモール(2-イソプロピル-5-メチルフェノラート)塩
目的は、チモールと比較しての、2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-金属塩の合成、特性評価、及び再生研究である(スキーム11)。
【0337】
チモールをその対応するアルカリ金属水酸化物、すなわち、KOH、LiOH、NaOH、及びBa(OH)
2と、水/メタノール混合物の存在下において室温又は60℃で24時間反応させることによってチモールのK、Li、Na及びBa塩をそれぞれ合成した。同様に、等モル量のチモールとテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA.OH)を、水/メタノール混合液の存在下において70℃で24時間反応させることによって、テトラブチルアンモニウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラートを調製した(スキーム11を参照)。一方、ナトリウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラートと、対応する遷移金属の硫酸塩/塩化物CuSO
4、ZnCl
2、FeCl
2、及びMnCl
2を、水の存在下において室温で24時間攪拌することによってチモールのCu、Zn、Fe、及びMn塩をそれぞれ調製した(スキーム12を参照)。合成したチモール塩はすべて、NMR、IR、UV-可視、DSC、EDX及び元素分析などの様々な分析及び分光技術を用いることによって特性を十分に評価した。
【0338】
様々な2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-金属塩の合成及び特性評価の詳細は以下に記載の通りである。
【0339】
カリウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:5mLのMeOHに溶かしたチモール(1gm、6.656mmol)を、4mLの水中のKOH(0.373gm、6.656mmol)に滴下した。その後、反応混合物を室温で24時間攪拌した。反応完了後、反応混合物をロータリーエバポレーター下で蒸発させた。得られた黒色粘着性固体をn-ヘプタン(10mL×3)で洗浄し、熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収率:60%(0.760gm)FT-IR:νmax/cm-1 2956-2865(ν C-H伸縮),1589-1556-1487-1447- 1397(ν C=C伸縮),1292-1270-1242-1193-1165-1150(ν C-O伸縮),1111,1085-1056-1006(ν C-H面内屈曲),951(ν C=C屈曲),857-794-738(ν C-H面外屈曲)cm-1。1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):δ = 6.57(d,1H,J = 9 Hz,Ar-H),6.02(s,1H,Ar-H), 5.76(d,1H,J = 6Hz,Ar-H),3.25-3.16(m,1H,iPr-H),1.98(s,3H,Ar-CH3),1.01(d,6H,J = 9 Hz,iPr-(CH3)2)
【0340】
リチウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:6mLのMeOHに溶かしたチモール(1gm、6.656mmol)を、6mLの水中のLiOH(0.279gm、6.656mmol)に滴下した。その後、反応混合物を70℃で24時間攪拌した。反応完了後、反応混合物をロータリーエバポレーター下で蒸発させた。得られた暗褐色の沈殿物を、水(10mL×3)及びn-ヘプタン(10mL×3)で数回洗浄し、温度制御した熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収率:87%(0.900gm)。FT-IR:νmax/cm-1 2957-2922(ν C-H芳香族),2865(ν C-H脂肪族),1596-1577-1562-1508-1447-1401(ν C=C),1292-1274-1233-1169-1157-1112(ν C-O),1086-1054-1037-1000(ν C-H面内屈曲),953-946(ν C=C屈曲),867-859-803-745(ν C-H面外屈曲)cm-1。1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):δ = 6.69(d,1H,J = 6 Hz,Ar-H),6.31(s,1H,Ar-H), 5.97(d,1H,J = 6Hz,Ar-H),3.48-3.26(m,1H,iPr-H),2.03(s,3H,Ar-CH3),1.06(d,6H,J = 6 Hz,iPr-(CH3)2)
【0341】
テトラブチルアンモニウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:5mLのMeOHに溶かしたチモール(1.00gm、6.65mmol)を、5mLの水中のTBA.OH.30H2O(5.32gm、6.65mmol)に滴下した。その後、反応混合物を50℃で24時間攪拌した。反応完了後、反応混合物をロータリーエバポレーター下で蒸発させた。得られた粘着性固体は蒸留水(40mL)を加えると小麦色の沈殿物が生じ、ブフナー漏斗を使用してそれをさらに集め、続いて蒸留水(40mL×3)及びn-ヘプタン(20mL×3)で数回洗浄し、温度制御した熱風オーブンで50℃にて24時間乾燥させた。収量:1.20gm(46%)。1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):δ = 6.79(d,2H,J = 6 Hz,ArH),6.51(s,2H,ArH), 6.21(d,2H,J = 6Hz,ArH),3.27-3.20(m,2H,iPr-H),3.18-3.13(m,8H,TBA),2.06(s,3H,Ar-CH3),1.61-1.51(m,8H,TBA),1.36-1.24(m,8H,TBA),1.11-1.09(m,6H,iPr-(CH3)2),0.95-0.91(m,12H,TBA)。FT-IR:νmax/cm-1 2960(ν C-H芳香族),2872(ν C-H脂肪族),1586-1480-1458-1380(ν C=C),1283-1235-1148(ν C-O),1087-1050-1004(ν C-H面内屈曲),948(ν C=C屈曲),883-864-798-738(ν C-H面外屈曲)cm-1。
【0342】
30mLのMeOHに溶かしたナトリウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:チモール(20gm、133.13mmol)を、40mLの水中のNaOH(5.857gm、146.451mmol)に滴下した。その後、反応混合物を室温で24時間攪拌した。反応完了後、反応混合物をロータリーエバポレーター下で蒸発させた。得られた黒色の粘着性固体をn-ヘプタン(50mL×3)で数回洗浄し、次いで熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。FT-IR:νmax/cm-1 2952(ν C-H芳香族),2864(ν C-H脂肪族),1635-1595-1557-1491-1396(ν C=C),1289-1263-1196-1166-1151(ν C-O),1086-1054-1008(ν C-H面内屈曲),952(ν C=C屈曲),860-795-739(ν C-H面外屈曲)cm-1。1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):δ = 6.66(d,1H,J = 6 Hz,Ar-H),6.22(s,1H,Ar-H), 5.93(d,1H,J = 9Hz,Ar-H),3.25-3.16(m,1H,iPr-H),2.00(s,3H,Ar-CH3),1.05(d,6H,J = 9 Hz,iPr-(CH3)2)
【0343】
2Na(2-イソプロピル-5-メチルフェノラート)
4Znの合成:70mLの乾燥THFに溶かしたNa-チモール(5gm、29.03mmol)を、20mLの乾燥THF中のZn(II)Cl
2(1.009gm、7.404mmol)に滴下した。その後、反応混合物を室温で36時間攪拌した。反応完了後、遠心分離によってNaClを反応混合物から除去した。その後、得られた透明溶液を減圧下で蒸発させ、続いて熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収率:71%(3.742gm)FT-IR:νmax/cm-
1 2959(ν C-H芳香族),2868(ν C-H脂肪族),1581-1506-1493-1456-1418(ν C=C),1287-1230-1181-1152(ν C-O),1087-1058(ν C-H面内屈曲),945(ν C=C屈曲),861-805-738(ν C-H面外屈曲)cm-
1。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ = 6.93(d,1H,J = 6 Hz,Ar-H),6.57(s,1H,Ar-H), 6.48(d,1H,J = 9Hz,Ar-H),3.22-3.08(m,1H,iPr-H),2.14(s,3H,Ar-CH
3),1.11(d,6H,J = 9 Hz,iPr-(CH
3)
2)
得られた構造は次の通りである。
【0344】
バリウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:5mLのMeOHに溶かしたチモール(0.5gm、3.28mmol)を、10mLの水中のBa(OH)
2.8H
2O(0.5gm、1.64mmol)に滴下した。その後、反応混合物を、70℃で24時間攪拌した。反応完了後、反応混合物をロータリーエバポレーター下で蒸発させた。得られた黒色の沈殿物を、n-ヘプタン(10mL×3)で数回洗浄し、熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収量:0.520gm(36%)。FT-IR:νmax/cm-
1 2961(ν C-H芳香族),2872(ν C-H脂肪族),1578-1423(ν C=C),1290-1246-1177(ν C-O),1089-1059(ν C-H面内屈曲),947(ν C=C屈曲),855-807-768(ν C-H面外屈曲)cm-
1。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ = 6.95(d,1H,J = 9 Hz,Ar-H),6.56(s,1H,Ar-H),6.53(d,1H,J = 9Hz,Ar-H),3.32-3.08(m,1H,iPr-H),2.16(s,3H,Ar-CH
3),1.11(d,6H,J = 9 Hz,iPr-(CH
3)
2)
得られた構造は次の通りである。
【0345】
銅(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:500mLの蒸留水に溶かしたCu(II)SO
4.5H
2O(139.199gm、557.49mmol)を、1Lの蒸留水中のNa-チモール(192gm、1114.9mmol)にゆっくりと加えた。添加後、直ちに緑色の沈殿物の形成が見られた。その後、反応混合物を24時間攪拌した。反応完了後、ブフナー漏斗を通して反応混合物を濾過し、続いて蒸留水(200mL×3)で洗浄した。得られた緑色を帯びた沈殿物を、温度制御した熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収率:80%(160.3gm)。この化合物は、Cu(II)イオンの常磁性によりNMR分析に不活性である。FT-IR:νmax/cm-
1 2958(ν C-H芳香族),2868(ν C-H脂肪族),1583-1491-1455-1417(ν C=C),1338-1286-1243-1177-1155(ν C-O),1088-1058-1004(ν C-H面内屈曲),943(ν C=C屈曲),894-805-737(ν C-H面外屈曲)cm-
1
得られた構造は次の通りである。
【0346】
亜鉛(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:5mLの蒸留水に溶かしたZn(II)Cl
2(0.451gm、3.31mmol)を、10mLの蒸留水のNa-チモール(1.14gm、6.62mmol)に滴下した。添加後、直ちに小麦色の沈殿物の形成が見られた。その後、反応混合物を室温で24時間攪拌した。反応完了後、ブフナー漏斗を通して反応混合物を濾過し、続いて蒸留水(20mL×3)で洗浄した。得られた小麦色の沈殿物を、温度制御熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収率:71.3%(0.85gm)。FT-IR:νmax/cm-
1 2962(ν C-H芳香族),2868(ν C-H脂肪族),1551-1457-1418(ν C=C),1289-1260-1155(ν C-O),855-829-807(ν C-H面外屈曲)cm-
1
得られた構造は次の通りである。
【0347】
鉄(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:5mLの蒸留水に溶かしたFe(II)Cl
2(0.367gm、2.903mmol)を、10mLの蒸留水中のNa-チモール(1gm、5.87mmol)に滴下した。添加後、直ちに小麦色の沈殿物の形成が見られた。その後、反応混合物を室温で24時間攪拌した。反応完了後、ブフナー漏斗を通して反応混合物を濾過し、続いて蒸留水(20mL×3)で洗浄した。得られた小麦色の沈殿物を、温度制御熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収率:37%(0.380gm)。FT-IR:νmax/cm-
1 2960(ν C-H芳香族),2869(ν C-H脂肪族),1642-1611-1599-1506-1455(ν C=C),1288-1255-1220-1154(ν C-O),890-855-809(ν C-H面外屈曲)cm-
1
得られた構造は次の通りである。
【0348】
銀2-イソプロピル-5-メチルフェノラートの合成:4mLの乾燥アセトニトリルに溶かしたAgNO
3(0.986gm、5.807mmol)を、10mLの乾燥アセトニトリルのNa-チモール(1gm、5.87mmol)に滴下した。その後、反応混合物を室温で24時間攪拌した。反応完了後、反応混合物をワットマン濾紙で濾過し、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させた。得られた固体を、温度制御熱風オーブン内で50℃にて24時間乾燥させた。収率:55%(0.820gm)。FT-IR:νmax/cm-
1 2961(ν C-H芳香族),2870(ν C-H脂肪族),1652-1537-1485-1412(ν C=C),1289-1223-1175(ν C-O),855-829-807(ν C-H面外屈曲)cm-
1。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ = 7.31(s,1H,Ar-H),7.13(s,1H,Ar-H),6.96(s,1H,Ar-H),3.18-3.10(m,1H,iPr-H),1.85(s,3H,Ar-CH
3),1.17-1.10(m,6H,iPr-(CH
3)
2)
得られた構造は次の通りである。
【0349】
2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-塩の特性評価
NMR分析:一連の2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-塩における有機ユニットの存在を、NMR分析を用いて特性評価した。試料はすべて、重水素化DMSO-d6で室温にて記録した。チモールとは対照的に、これらの試料では9ppm付近に芳香族水酸基の共鳴がないことから、チモールが脱プロトン化されていることを示し、この観察結果から、塩の性質をもつことが明らかにされている。さらに、チモール塩の芳香族プロトンはチモールのそれと比較して遮蔽されており、塩の性質をもつことがさらに明らかになった。2-イソプロピル-5-メチルフェノラートのCu、Fe、Mn塩は常磁性であるので、NMR分析に不活性であった。
【0350】
IR分析:すべてのチモール-塩のFT-IRスペクトルを、チモールと比較して記録した。チモールはヒドロキシル基のFT-IR伸縮振動数を3177.48cm-1に示し、一方でその類似体であるチモール塩にはこのピークはなく、塩であることが裏付けられた。しかし、チモール-Li及びチモール-Feは、ヒドロキシル基の伸縮振動数をそれぞれ3436cm-1及び3387cm-1に示した。これは、反応を水中で行ったので、分子構造中に溶媒である水分子が配位しているためではないかと仮定される。これらの化合物の芳香族及びアルキル(メチル/イソプロピル(isopropoyl))C-Hスターチング振動数は、それぞれ2922~2961cm-1及び2865~2872cm-1の範囲を示した。最も重要なことに、これらの化合物は芳香族C=C及びC-Oのスターチング振動数を、それぞれ1635~1418cm-1及び1290~1155cm-1の範囲に示した。
【0351】
DSC分析:示差走査熱量測定(DSC)を用いてチモールと比較して、様々なチモール-塩の融解温度を測定した。DSC研究により、チモール塩が親チモールとは異なる融解温度を示すことが明らかにされている(表11を参照)。
【0352】
UV-可視分光法:電子遷移を調べるために、様々な2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-塩を、DMFにおいて希釈した濃度で、チモールと比較してUV-可視分析に供した。結果から、2-イソプロピル-5-メチルフェノラートのZn、Co、Li、Fe、Ba、及びAg塩の吸収は青方偏移していることが明らかされている。一方では、2-イソプロピル-5-メチルフェノラートのTBA、Mn、及びCu塩の吸収はチモールの範囲内である。チモールと比較した様々なチモール塩の吸収は次の通り:チモール:277、283nm;亜鉛(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:266nm;コバルト(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:265nm;リチウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:269nm;鉄(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:264nm;テトラブチルアンモニウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:277、283nm;マンガン(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:282;銅(II)2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:282nm;バリウム2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:268nm;銀2-イソプロピル-5-メチルフェノラート:268nm;2Na(2-イソプロピル-5-メチルフェノラート)4Zn:277、282nm。分析から、2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-塩のチモールの存在が明らかに示されている。
【0353】
EDX分析:2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-金属塩について、その中の金属イオンの百分率組成を明らかにするために、EDX分析を実施した。対応する-イソプロピル-5-メチルフェノラート-金属塩の形成が裏付ける、原子及び重量組成が異なるAg、Na、K、Fe、Zn、Fe、及びMnを含む異なる金属が存在。
【0354】
酸性水性溶媒における2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-金属塩からのチモールの再生
再生研究の実験手順:2-イソプロピル-5-メチルフェノラート-塩について、再生研究を0.1N HCl溶液(1 pH)中で行い、続いてヘプタンで遊離チモールを抽出した。適量の対応するチモール-塩(表12)を20mLガラスバイアルに入れた。これに10mLの0.1Nを添加した。得られた混合物をシェーカーで30分間保持した。30分間の酸処理の後、10mLのヘプタンを反応混合物に加えた。集めた有機層を水層から分離し、ロータリーエバポレーターを使用して注意深く乾燥させ、続いて温度制御ホットオーブン下で35℃にて12時間乾燥させた。様々なチモール塩を酸処理した後に再生されたチモールの百分率割合を表12に示す。
【0355】
再生されたチモールを、NMR及びIR分析を用いて特性評価をした。特性評価データから、合成したチモール塩はすべて、酸処理後にチモールに戻る能力を有することが明らかにされている。例えば、TBA-イソプロピル-5-メチルフェノラートから得られた再生チモールは、芳香族ヒドロキシル基に対応する9.06ppmに共鳴を示した。これは、TBA-イソプロピル-5-メチルフェノラートが酸性水性溶媒中でチモールとTBA-Clに変換されることを示す。さらに、同じスペクトルでTBAの共鳴がないことから、TBAイソプロピル-5-メチルフェノラートからチモールが再生されることが裏付けられる。同様に、ナトリウム-イソプロピル-5-メチルフェノラートも酸処理後に、9.06ppmにヒドロキシル基の共鳴を示すことによって、チモールの再生が裏付けられる。さらに、再生されたチモールのFT-IRスペクトルは、3424cm-1に芳香族ヒドロキシル基の伸縮振動数を示し、ナトリウム-イソプロピル-5-メチルフェノラートからチモールが再生されることがさらに裏付けられる。
【0356】
溶解性試験
様々なチモール塩の溶解性試験を、異なるpHの水溶液(pH=4、7、及び10)並びにエタノール、アセトン、及びプロピレングリコールを含む有機溶媒で行った。水に溶けたナトリウム塩を除いて、それら塩はどのpHでも水に溶けなかった。塩の中には、有機溶媒に若干の溶解性を有するものもあった。
【0357】
上記実験のまとめ
チモールのNa、K、TBA、Mn、Fe、Ag、Cu、Li、Ba、Zn塩を調製し、親チモール分子と比較して分析した。1H-NMRスペクトルの9ppm付近の塩のヒドロキシル基の共鳴が消失していることによって、対応する塩の形成が確認された。これらの化合物のすべてにおいて、チモールと比較して、3177.48cm-1のFT-IR伸縮振動数が存在しないことから、それらが塩であることがさらに確認されている。DSC研究により、これらの試料はチモールと比較して、高い融解温度を有していることが明らかにされている。イソプロピル-5-メチルフェノラート-塩からのチモールの再生を、酸性水系溶媒(pH=1)で調べ、特性評価研究は、すべての試料からチモールが純粋な形で再生されることを明らかにしている。フェノラート塩の融点は元のフェノールよりも高く、プラスチック押出成形又は蒸気発泡による高温での塩加工が可能である。
【0358】
実施例18:フェノラート塩の抗菌活性
フェノラート塩は、作物を細菌感染及び真菌感染から保護する活性を示す。次の材料を試験した:サリチル酸銅、サリチル酸、チモール銅及びチモール。
【0359】
材料を、次の汚染菌に対して試験した:エルウィニア(細菌)、ピシウム(真菌)、マクロフォミナ・ファゼオリナ(真菌)、アテリア・ルフシイ(真菌)、ジャガイモそうか病菌(細菌)。
【0360】
上記病原体に感染した根を集め、除染を行った。エルウィニアに感染した根を2つの試験に曝した。第1の試験では、腐ったジャガイモの割合を30日後に測定した。第2の試験では、120日後の作物収量を測定した。
【0361】
エルウィニア、ピシウム、マクロフォミナ・ファゼオリナ及びアテリア・ルフシイについて実験室における試験(Lab tests)を行った。
【0362】
2020年春、栽培110日後に、ジャガイモそうか病病変を作物で評価した。
【0363】
そうか病変(scabbing)の程度と作物の収量の両方を測定した。
【0364】
2020年春、ピシウムをさらに圃場試験で評価した。ピシウムのレベルを栽培110日後に測定した。
【0365】
結果
・実験室条件下においてすべての薬剤で、エルウィニアとそうか病の両方が全滅した。
・サリチル酸銅は、ピシウム感染に対する最も活性の高い化合物であった。
・サリチル酸銅は、サリチル酸に対して活性の向上を示した。
・活性は、他の菌に比べてマクロフォミナ・ファゼオリナで高かった。
【0366】
銅及び亜鉛のチモール塩を、ポリスチレンフォーム、その製造時のヒドロゲル、ジャガイモの種子のコーティング材料及び干し草の包装材料に組み込んだ。さらに、チモール銅を溶融押出時にポリエチレンシートに組み込んだ。塩はこれらの配合物に組み込まれた一方で、チモールはその蒸発速度及び低い融点のため組み込むことができなかった。チモールは、微生物汚染から干し草を保護している間、3週間の期間にわたって絶えず空気中に放出された。
【0367】
典型的な実験では、新鮮な干し草を、チモールコーティングした包装及び銅チモール塩コーティングした包装で梱包した。2週間後、対照の梱(bale)にカビが生えた。コーティングされた梱には、カビは少しも生えていなかった。
【0368】
実施例19:6%Cu-サリチル酸/安息香酸を含有するポリスチレンフォームからのサリチル酸/安息香酸の放出
サリチル酸銅、安息香酸銅及びそれらの混合物は、上記の実施例に記載のように調製した。これらの塩は、融点が高く、水に溶けないので、スチームブロー(steam blowing)の間にポリスチレンフォームに効率よく取り込ませることができた。6%Cu-サリチル酸又は6%Cu-安息香酸を含有するポリスチレンフォームトレイを、そのサリチル酸/安息香酸放出特性について調べた。放出試験は、二回蒸留水(DDW)で室温にて、150rpmの振盪で行った。各トレイごとに約10gのフォーム試料を取り、550mLのDDWに完全に浸るまで加えた。いずれの活性剤も含まないポリスチレンフォームを参照として採用した。1時間後、並びに1、2、8、16及び30日後に溶液を交換した。その溶液を、UVを用いて298nm及び225nmでの吸収をそれぞれ測定することによって、サリチル酸/安息香酸の量について分析した。検出濃度が非常に低い場合、凍結乾燥過程を実施した。6%Cu-サリチル酸を含有するポリスチレンフォームトレイは、30日でトレイ1枚あたり34.5mgのサリチル酸放出を示し、6%Cu-安息香酸は30日でトレイ1枚あたり30.7mgの安息香酸放出を示した。ポリスチレンフォームからのサリチル酸/安息香酸の放出プロファイルを下の表13に示す。
【0369】
ポリスチレンフォーム全体における活性剤の分布の決定:フォーム調製の間に、不溶性の問題に起因して、活性剤の不均一な分布が最終生成物で発生する可能性がある。本明細書でのアプローチは、フォーム中の活性剤の分布を分析することである。
【0370】
トレイの数箇所から小片を取り、水に分散させた。UV吸光分光法を用いて、サリチル酸(SA)と安息香酸を分析した。金属イオン(この場合はCu(II))をZINCONで分析した。
【0371】
試料のフォームの様々な箇所から小片を取り、水溶液に加え、24時間強く攪拌した。その後、その溶液をサリチル酸の含有量について296nmのUVで分析した。さらに、その溶液を、ZINCON水溶液を用いて希釈し、620nmのUV吸光を用いて分析した。すべての試料に対して同様の濃度が得られ、フォーム中の均一な分布を示す。
【0372】
結果から、活性剤であるCu-SAとCu-安息香酸塩はともに、ポリスチレンフォーム中に均一に分散していることが明らかになった。
【0373】
これらのトレイは、様々なウイルスに汚染されたトマトの苗を植えるために使用された。サリチル酸銅又は安息香酸銅を含有したトレイの植物は、よく生育し、汚染である感染(infection of contamination)を少しも示さなかった。一方、いずれの塩も入っていないブランクの(blank)ポリスチレントレイに植えられた植物は、感染がひどかった。
【国際調査報告】