(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】顆粒球マクロファージコロニー刺激因子に基づく感染治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/19 20060101AFI20230526BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230526BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230526BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230526BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230526BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230526BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230526BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20230526BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230526BHJP
C07K 14/535 20060101ALN20230526BHJP
【FI】
A61K38/19
A61P31/14
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/72
A61P11/00
A61P37/02
G01N33/49 A
G01N33/68
C07K14/535 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564376
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 US2021028875
(87)【国際公開番号】W WO2021217020
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522412493
【氏名又は名称】パートナー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイチョードリー、デバシィシュ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA15
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2G045CA26
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2G045CB30
2G045DA36
4C076AA11
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4C076FF70
4C084AA02
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4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA12
4H045EA53
(57)【要約】
本開示は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を用いるコロナウイルス感染の治療に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス感染を治療するための方法であって、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む有効な量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
コロナウイルス感染を治療するための方法であって、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む有効な量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、
前記患者が感染していない状態と比較して好酸球の数が少ないことを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
前記コロナウイルスは、
(i)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1及びHCoV-OC43から任意に選択されるベータコロナウイルス、ならびに
(ii)HCoV-NL63及びHCoV-229Eから任意に選択されるアルファコロナウイルス、から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2であり、及び任意選択で前記患者は、COVID-19に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2であり、及び任意選択で前記患者は、COVID-19に罹患している、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記患者は、発熱、咳、息切れ、下痢、上気道障害、下気道障害、肺炎、及び急性呼吸障害のうち1つ以上に罹患している、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者は、低酸素症である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者は、呼吸窮迫に罹患している、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記患者の前記好酸球の数を増加させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記好酸球の数は、前記患者の生体サンプルで測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生体サンプルは、血液、呼吸液、唾液、または糞便を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記呼吸液は、口咽頭(OP)または鼻咽頭(NP)スワブからのものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記呼吸液は、洗浄液であり、場合により前記洗浄液は、気管支洗浄液を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記呼吸液は、痰である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記呼吸液は、鼻分泌物である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記呼吸液は、唾液である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症を予防または緩和する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記患者の酸素化を改善する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記患者の呼吸窮迫からサイトカイン平衡異常への移行を予防または緩和する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、サイトカインストームを逆転または予防する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、肺または全身におけるサイトカインストームを逆転または予防する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記サイトカインストームは、全身炎症反応症候群、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群、及び血球貪食性リンパ組織炎球増多症のうち1つ以上から選択される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、1つ以上の炎症性サイトカインの過剰産生を逆転または予防する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
前記炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1、IL-2、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、IL-2ra、IL-10、IL-18、TNFα、インターフェロン-γ、CXCL10、及びCCL7のうち1つ以上である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、治療前と比較して前記患者のウイルス量を減少させる、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、治療前と比較してフェリチンレベルを減少させる、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、フェリチンを約1000ng/ml未満まで、必要に応じて約650ng/ml未満まで減少させる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、治療前と比較してC反応性タンパク質(CRP)を減少させ、必要に応じてCRPを約10mg/L未満まで、必要に応じて約3mg/L未満まで減少させる、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、前記患者におけるHLD-DR+ CD38+ CD8+ T細胞を増加させる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記GM-CSFは、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと約90%、もしくは約93%、もしくは約95%、もしくは約97%、もしくは約98%の同一性のあるバリアントを有する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記GM-CSFは、配列番号2もしくは配列番号3のアミノ酸配列、またはそれと約90%、もしくは約93%、もしくは約95%、もしくは約97%、もしくは約98%の同一性のあるバリアントを有する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記GM-CSFは、モルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチムのうち1つである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記GM-CSFは、サルグラモスチムである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記GM-CSFは、約125μg、約150μg、または約200μg、または約250μg、または約300μg、または約350μgの総用量で投与される、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記GM-CSFは、約250μgの総用量で投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記GM-CSFは、約125μg、約150μg、または約200μg、または約250μg、または約300μg、または約350μgの用量で投与される、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記GM-CSFは、1日2回投与される、請求項34~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記GM-CSFは、1日2回、約125μgの用量で投与されるサルグラモスチムである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記GM-CSFは、静脈内経路を介して投与される、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記GM-CSFは、肺に投与される、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記GM-CSFは、エアロゾルまたはネブライザを介して投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記エアロゾルまたはネブライザは、液体噴霧、乾燥粉末分散、及び投薬量計量型投与から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記GM-CSFは、吸入によって投与される、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法は、レムデシビル;ファビピラビル;ガリデシビル;プレズコビックス;ロピナビル;及び/またはリトナビル;及び/またはアルビドールロピナビル/リトナビル;及び/またはリバビリン;及び/またはIFN-β;シーヤンピン;抗VEGF-A;フィンゴリモド;カリマイシン;ヒドロキシクロロキン;ダルナビル及びコビシスタット;メチルプレドニゾロン;ブリラシジン;レロンリマブ;サリドマイド、バムラニビマブ、カシリビマブ、及びイムデビマブから選択される1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
コロナウイルス感染を治療するための方法であって、
(a)コロナウイルスに感染し、かつ
(i)感染していない状態と比較して好酸球の数が少ない、
(ii)感染していない状態と比較してフェリチンのレベルが高い、及び/または
(iii)感染していない状態と比較してCRPのレベルが高い、のうち1つ以上を伴う患者を選択することと、
(b)GM-CSFを含む有効な量の組成物を前記患者に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項46】
前記方法は、前記治療中に好酸球の数をモニタリングするステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
好酸球の数の増加は、GM-CSFの継続投与を導く、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
好酸球の数の減少は、GM-CSFの投与の中断を導く、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記方法は、前記治療中に前記フェリチンのレベルをモニタリングするステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
フェリチンのレベルの減少は、GM-CSFの継続投与を導く、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
フェリチンのレベルの増加は、GM-CSFの投与の中断を導く、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記方法は、前記治療中に前記CRPのレベルをモニタリングするステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
CRPのレベルの減少は、GM-CSFの継続投与を導く、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
CRPのレベルの増加は、GM-CSFの投与の中断を導く、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記好酸球の数、フェリチンのレベル、及び/またはCRPのレベルは、前記患者の生体サンプルで測定される、請求項45~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記生体サンプルは、血液、呼吸液、唾液、または糞便を含む、請求項45~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記呼吸液は、口咽頭(OP)または鼻咽頭(NP)スワブからのものである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記呼吸液は、洗浄液であり、場合により前記洗浄液は、気管支洗浄液を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記呼吸液は、痰である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記呼吸液は、鼻分泌物である、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記呼吸液は、唾液である、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記コロナウイルスは、
(i)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1及びHCoV-OC43から任意に選択されるベータコロナウイルス、ならびに
(ii)HCoV-NL63及びHCoV-229Eから任意に選択されるアルファコロナウイルス、から選択される、請求項45~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記患者は、COVID-19に罹患している、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記患者は、発熱、咳、息切れ、下痢、上気道障害、下気道障害、肺炎、及び急性呼吸障害のうち1つ以上に罹患している、請求項62~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記患者は、低酸素症である、請求項62~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記患者は、呼吸窮迫に罹患している、請求項62~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記方法は、前記患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症を予防または緩和する、請求項62~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記方法は、前記患者の酸素化を改善する、請求項62~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記方法は、前記患者の呼吸窮迫からサイトカイン平衡異常への移行を予防または緩和する、請求項62~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記方法は、サイトカインストームを逆転または予防する、請求項62~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記方法は、肺または全身におけるサイトカインストームを逆転または予防する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記サイトカインストームは、全身炎症反応症候群、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群、及び血球貪食性リンパ組織炎球増多症のうち1つ以上から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記方法は、1つまたは炎症性サイトカインの過剰産生を逆転または予防する、請求項71~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1、IL-2、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、IL-2ra、IL-10、IL-18、TNFα、インターフェロン-γ、CXCL10、及びCCL7のうち1つ以上である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記方法は、治療前と比較して前記患者のウイルス量を減少させる、請求項62~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記GM-CSFは、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと約90%、もしくは約93%、もしくは約95%、もしくは約97%、もしくは約98%の同一性のあるバリアントを有する、請求項62~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記GM-CSFは、配列番号2もしくは配列番号3のアミノ酸配列、またはそれと約90%、もしくは約93%、もしくは約95%、もしくは約97%、もしくは約98%の同一性のあるバリアントを有する、請求項62~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記GM-CSFは、モルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチムのうち1つである、請求項62~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記GM-CSFは、サルグラモスチムである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記GM-CSFは、約125μg、約150μg、または約200μg、または約250μg、または約300μg、または約350μgの総用量で投与される、請求項62~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記GM-CSFは、約250μgの総用量で投与される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記GM-CSFは、約125μg、約150μg、または約200μg、または約250μg、または約300μg、または約350μgの用量で投与される、請求項62~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記GM-CSFは、1日2回投与される、請求項62~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記GM-CSFは、1日2回、約125μgの用量で投与されるサルグラモスチムである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記GM-CSFは、静脈内経路を介して投与される、請求項62~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記GM-CSFは、肺に投与される、請求項62~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記GM-CSFは、エアロゾルまたはネブライザを介して投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記エアロゾルまたはネブライザは、液体噴霧、乾燥粉末分散、及び投薬量計量型投与から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記GM-CSFは、吸入によって投与される、請求項62~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記方法は、レムデシビル;ファビピラビル;ガリデシビル;プレズコビックス;ロピナビル;及び/またはリトナビル;及び/またはアルビドールロピナビル/リトナビル;及び/またはリバビリン;及び/またはIFN-β;シーヤンピン;抗VEGF-A;フィンゴリモド;カリマイシン;ヒドロキシクロロキン;ダルナビル及びコビシスタット;メチルプレドニゾロン;ブリラシジン;レロンリマブ;サリドマイド、バムラニビマブ、カシリビマブ、及びイムデビマブから選択される1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項62~90のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月23日に出願の米国仮特許出願第63/014,462号及び2020年10月19日に出願の米国仮特許出願第63/093,576号の利益及び優先権を主張し、それらの内容は、それら全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、炎症性サイトカインストームの治療及び/または緩和を含む、コロナウイルス感染の治療及び/または緩和に部分的に関する。
【0003】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出されている配列表を含み、その全体は参照により本明細書に援用される。上記ASCIIのコピーは、2021年4月19日に作成されたものであり、名称は「PNR-001PC_ST25.txt」、サイズは、3,951バイトである。
【背景技術】
【0004】
コロナウイルスは、感染力がありエンベロープ型プラス鎖一本鎖RNAウイルスのファミリーであり、アルファ、ベータ、ガンマ、及びデルタコロナウイルスを含む主に4つの類型に分類される場合がある。Fehr AR and Perlman S.Methods Mol Biol 2015;1282:1-23。2019年12月、そのようなコロナウイルス疾患のうち1つがコロナウイルス疾患19(COVID-19)と定義され、新規の重症急性呼吸器症候群SARS-CoV-2ウイルスが原因であることが判明した。SARS-CoV-2ウイルス(以前は2019-nCoVとして知られていた)は、SARS-CoVに密接に関連し、約80%同一のゲノムを有する。Zhou P.et al.Nature 2020:10.1038。COVID-19とSARS-CoVとは、受容体結合ドメイン(RBD)構造が類似しており、同じ細胞侵入受容体ACE2を利用する。Li W.et al.Nature 2003;426:450-4。
【0005】
COVID-19のSタンパク質のRBDドメインは、ヒトACE2分子と強力に相互作用し、このACE2は、細胞侵入で重要な役割を果たすことが明らかとなっており、したがって、ACE2発現細胞は、標的細胞として作用することがあり、COVID-19感染を受けやすい。Li W,et al.Nature 2003;426:450-4;Xu,X.et al.Science China Life Sciences vol 63,457-460(2020)。ACE2の高発現は、肺のII型肺胞細胞(AT2)、食道上部細胞及び重層上皮細胞、回腸及び結腸の吸収腸細胞、胆管細胞、心筋細胞、腎臓近位尿細管細胞、ならびに膀胱尿路上皮細胞でこれまでに確認されている。Xu,X.et al.Sci.China Life Sci.vol 63,457-460(2020);Zou,X.et al.Front Med.2020 Mar 12.doi:10.1007/s11684-020-0754-0;Zhao,Y.et al.Clin Infect Dis.2020 Mar 28.pii:ciaa344.doi:10.1093/cid/ciaa344.;Hao,Xu.et al.International J Oral Science(2020)12:8;Zhang,H.et al.Cell 181,April 16,2020;Chai,X.et al.2020 bioRxiv.doi:10.1101/2020.02.03.931766。
【0006】
インフルエンザ、呼吸系発疹ウイルス、ライノウイルス及びコロナウイルスなどの呼吸系ウイルスを含む全てではないが多くのウイルスは、自然免疫反応を抑制して、効率的なウイルス複製及び感染の確立の機会を得る。宿主の免疫反応の結果は、不完全であるか、遅延もしくは減少し、あるいは、組織損傷の原因になることがある非常に強い誘導を(遅延の後)示すことが多い。Kikkert M et al.J Innate Immun.2020 Jan;12(1):4-20。一見軽症例に見えるCOVID-19が下肺に影響を及ぼす重症例へと急激に悪化することがこれまでに判明している。COVID-19症例の急激な悪化は、部分的には、「サイトカインストーム」に起因する可能性があると考えられており、これは、免疫細胞及びそれらの活性化化合物(サイトカインまたはケモカイン)の過剰産生であり、多くの場合、肺への活性化免疫細胞の急増及び多くの臓器に影響を及ぼす全身炎症性傷害を伴う。肺の中で、結果として生じる肺炎症及び浮腫(体液の蓄積)は、呼吸窮迫をもたらす場合があり、また続発性細菌性肺炎によって悪化する可能性があり、これにより患者の死亡リスクが高まる。これらの患者は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び敗血症性ショックから急激に進行し、多臓器不全に至ることがある。死亡率の上昇を抑えるためにこの過剰炎症の確認及び治療が重要である。Mehta et al.Lancet.2020 Mar 28;395(10229):1033-1034。ほとんどの患者は、発熱、乾性咳、呼吸困難、及び胸部CTスキャン時の両側すりガラス状陰影を呈する。COVID-19患者からの報告により、大量のIL-1β、IFNγ、IP10及びMCP1が、活性化ヘルパーT1(Th1)細胞反応を引き起こす可能性があることが明らかとなっている。重症COVID-19患者はまた、おそらく炎症を抑制する対抗手段として、ヘルパーT2(Th2)サイトカイン(例えば、IL-4及びIL-10)の分泌が増加し始め、サイトカインストームと疾患重症度との関連が強まった。さらに、患者の検査結果により、COVID-19感染肺炎患者におけるサイトカインストームの危険因子として他のサイトカインの中でも特にIL-6が増加することが特定された。Cheung CY et al.2005.J Virol 79(12):7819-7826;Huang C,et al.Lancet 2020;395:497-506;Chen N,et al.Lancet 2020;395:507-13;Ruan et al.Intensive Care Med.2020 Mar 3.doi:10.1007/s00134-020-05991-x。
【0007】
これらの観察結果により、一連の重複するネットワークによって特徴付けられるウイルス感染の際に起こる複雑なサイトカイン反応が明らかとなる。サイトカインTNF及びIL-1β、ならびに走化性サイトカインIL-8及びMCP-1は、感染直後に現れる急性反応、それに続くIL-6の持続的な増加を示す。IL-6とその可溶性受容体との相互作用により、標的細胞に対するIL-6の活性が高まり、炎症がさらに悪化する。Park WY,et al.2001.Am.J.Respir.Crit.Care Med.164:1896-1903。
【0008】
代償性修復プロセスが、感染が始まるとすぐに開始され、組織及び臓器の機能を回復しようとする。サイトカインストーム発症後のIL-10の全身産生は、体循環における好中球及び単核細胞機能のダウンレギュレーションに関連するという点で、「免疫麻痺」と呼ばれる抑制性抗炎症反応のマーカーとして機能する可能性がある。全身性炎症のダウンレギュレーションは、局所感染に対する全身反応を制御する上で概念的に有益である可能性がある。しかし、最初のサイトカインストームを乗り越えたが、その後死亡した患者は、免疫抑制から回復していない患者であったことが示唆されている。Cohen J.2002.Nature 420:885-891;Fowler AA,et al.Am.J.Pathol.116:427-435;Tisonick JR.et al.Into the Eye of the Cytokine Storm.Microbiol Mol Biol Rev.2012 Mar;76(1):16-32;Munford RS,et al.2001.Am.J.Respir.Crit.Care Med.163:316-321。
【0009】
コロニー刺激因子、CSFとは、広く散在する骨髄細胞の沈着によって細胞の産生を制御及び調整する4つの糖タンパク質のファミリーを指す。これらには、顆粒球マクロファージCSF(GM-CSF)、顆粒球コロニーCSF(G-CSF)、マクロファージコロニーCSF(M-CSF)及び多能性コロニー刺激因子(IL-3)が含まれる。これらのリンフォカインは、骨髄に見られる前駆細胞が特定の種類の成熟血液細胞に分化するように誘導することができる。前駆細胞から生じる特定の種類の成熟血液細胞は、存在するCSFの種類に依存する。Metcalf D.Cancer Immunol Res.2013,1(6):351-356を参照されたい。
【0010】
GM-CSFは、造血細胞の産生、移動、増殖、分化及び機能を調節する血液成長因子である。炎症性刺激に反応して、GM-CSFは、Tリンパ球、マクロファージ、線維芽細胞、及び内皮細胞を含む様々な細胞型によって放出される。次に、GM-CSFは、好中球、好酸球、及びマクロファージの産生及び生存を活性化及び強化する。ネイティブGM-CSFは、通常、造血前駆細胞の増殖、分化、及び生存を調節できる作用部位の近くで産生される。それは、ピコモル濃度(10-10~10-12M)のみで循環血液中に存在する。Alexander WS.Int Rev Immunol.1998,16:651-682;Gasson JC.Blood.1991,77:1131-1145;Shannon MF et al.Crit Rev Immunol.1997,17:301-323,Barreda DR et al.Dev Comp Immunol.2004,28:509-554及びMetcalf D.Immunol Cell Biology.1987,65:35-43を参照されたい。
【0011】
化学療法と組み合わせた、好中球減少症、血液疾患、及び悪性腫瘍性白血病の治療向けに、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhGM-CSF)が、これまでにFDAによって承認されている。臨床において、化学療法後の好中球減少症及び再生不良性貧血の治療に使用されるGM-CSFは、骨髄移植に伴う感染のリスクを大幅に低減する。骨髄性白血病治療時の及びワクチンアジュバントとしてのその有用性も十分に確立されている。Dorr RT.Clin Therapeutics.1993.15(1):19-29;Armitage JO.Blood 1998,92:4491-4508;Kovacic JC et al.J Mol Cell Cardiol.2007,42:19-33;Jacobs PP et al.Microbial Cell Factories 2010,9:93を参照されたい。
【0012】
細菌、酵母、植物、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を含む異種タンパク質産生プラットホームの5つのクラスが存在するが、現在市販されているバイオ医薬品の50%以上が、哺乳動物細胞株で産生されている。これは、残りの4つのクラスがヒト様オリゴ糖で糖タンパク質を修飾できないことに部分的に起因する。これは、タンパク質結合グリカンが、循環半減期、組織分布、生物学的活性、及び免疫原性に影響を与えるため、重要である。LEUKINEは、酵母由来の組換えヒト化顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhuGM-CSF、サルグラモスチム)であり、FDAが唯一承認したGM-CSFである。
【0013】
肺胞マクロファージ(AM)は、呼吸器系微生物に対抗する宿主防御に最も重要である。GM-CSFは、健康な肺の維持を助ける重要なサイトカインである。それは、単核性食細胞及びAMの成熟に寄与する。GM-CSF欠乏(GM-/-)マウス由来のAMは、食作用及びサイトカイン産生の能力が損なわれており、これらの機能はGM-CSFによって回復された。GM-/-マウスの研究により、GM-CSFが、Pseudomonas aeruginosa及びPneumocystis cariniiが原因の肺炎の際の免疫反応に寄与し、敗血症患者へのGM-CSFの投与は、単核細胞免疫抑制を逆転させ、かつそれらの臨床経過を改善することが明らかとなった。さらに、GM-CSFは、肺胞マクロファージに依存する自然免疫メカニズムを強化することによってインフルエンザに対する抵抗力を与えることが明らかとなった。ヒト組換えGM-CSFは、マウスの致命的なインフルエンザ感染を防ぐことも証明された。Paine R 3rd et al.J Immunol.2000.164(5):2602-9;Paine R 3rd,et al.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.2001.281(5):L1210-8;Shi Y et al.Cell Res.2006.16(2):126-33;Ballinger MN et al.Am J Respir Cell Mol Biol.2006.34(6):766-74;Meisel C et al.Am J Respir Crit Care Med 2009;180:640-648;Min L et al.J Immunol.2010.184(9):4625-9;Huang F-F et al.Am J Respir Crit Care Med.2011.15;184(2):259-268。
【0014】
GM-CSFの多分化能性質を考えると、阻止GM-CSFがサイトカインストーム症候群を阻害している可能性があることがいくつかの研究で示唆されている。Spath S et al.Immunity 46,245-260;Sterner RM et al.Blood.2019 Feb 14;133(7):697-709;Zhou Y et al.Perspective Immunol.2020。I-Mab Biopharmaは、重症及び重度のCOVID-19感染が原因で引き起こされるサイトカインストームの治療用にTJM2(TJ003234)を開発する計画を発表している。TJM2は、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を中和する抗体である。(https://www.pharmaceutical-technology.com/news/i-mab-covid-19-cytokine-storm-therapy/)。興味深いことに、ランダム化第II相試験では、GM-CSF治療によって、急性肺損傷(ALI)またはARDSを患う患者が人工呼吸器を使用しない日数は増えなかった。Paine R 3rd.Crit Care Med.2012 Jan;40(1):90-97。したがって、文献の少なくともいくつかは、GM-CSFは、サイトカインストームまたは肺障害の状況において、効果がないか、有害でさえあることを示唆している。
【0015】
COVID-19の現在の管理は支持的であり、サイトカインストームと対となることが多いARDSの呼吸不全は、死亡の主な原因である。COVID-19に対する承認された治療法はなく、ワクチンが使用されているが、その持続時間とバリアントへの適用性は不明である。したがって、SARS-CoV-2を標的とする治療法が早急に必要である。コロナウイルス感染に関連する呼吸窮迫及び/またはサイトカインストームを予防及び/または逆転できる治療法がさらに必要である。
【発明の概要】
【0016】
したがって、一態様では、本発明は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む有効な量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、コロナウイルス感染を治療するための方法に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む有効な量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、該患者が感染していない状態と比較して好酸球の数が少ないことを特徴とする、コロナウイルス感染を治療するための方法に関する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、(a)コロナウイルスに感染し、かつ(i)感染していない状態と比較して好酸球の数が少ない、(ii)感染していない状態と比較してフェリチンのレベルが高い、及び/または(iii)感染していない状態と比較してCRPのレベルが高い、のうち1つ以上を伴う患者を選択することと、(b)GM-CSFを含む有効な量の組成物を患者に投与することと、を含む、コロナウイルス感染を治療するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】LEUKINEによる治療後のCOVID-19患者の肺胞-動脈(A-a)勾配の絶対的な変化を示す。
【
図3】LEUKINEによる治療後のCOVID-19患者の好酸球絶対数を示す。
【
図4】LEUKINEによる治療後のCOVID-19患者のフェリチンレベルを示す。
【
図5】LEUKINEによる治療後のCOVID-19患者のCRPレベルを示す。
【
図6】LEUKINEによる治療後のリンパ球数を示す。
【
図7】LEUKINEによる治療後の抗SARS-CoV2特異的免疫グロブリンのレベルを示す。スパイク(S1)及びヌクレオカプシド(NCV)タンパク質に対抗する、SARS-Cov2特異的免疫グロブリンに対するLEUKINEの吸入の効果を示している。
【
図8】LEUKINEによる治療後のHLA-DR+ CD38+ CD8+ T細胞の数を示す。PBMCの中のHLA-DR+ CD38+ CD8 T細胞の数に対するLEUKINEの吸入の効果を示している。
【
図9】LEUKINEによる治療後の活性化CD8+ T細胞の数を示す。IFNg+及びIL-2+二重陽性CD8 T細胞の数に対するLEUKINEの吸入の効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、部分的に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が、例えば、コロナウイルス感染に関連するサイトカインストームを治療及び/または逆転し、免疫細胞のレベルを調節することを含む、SARS及びCOVID-19などのコロナウイルス感染に対する有効な薬剤であるという驚くべき発見に関する。
【0021】
したがって、一態様では、本発明は、コロナウイルス感染を治療するための方法を提供する。
【0022】
コロナウイルス
コロナウイルスは、ベータコロナウイルス及びアルファコロナウイルス呼吸器系病原体を含むCoronaviridae科のメンバーであり、比較的最近になって人間に侵入することが知られるようになった。Coronaviridae科は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1及びHCoV-OC43のようなベータコロナウイルスを含む。アルファコロナウイルスには、例えば、HCoV-NL63及びHCoV-229Eが含まれる。
【0023】
コロナウイルスは、宿主細胞へのウイルス侵入を促進する、哺乳動物宿主の膜貫通受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)のウイルス認識を担う「スパイク」表面糖タンパク質を介して細胞に侵入する。Zhou et al.,A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin.Nature 2020。SARS-CoV-2が原因の新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は、コウモリが起源であると考えられている新型のウイルスである。
【0024】
COVID-19は、重度の呼吸窮迫を引き起こし、このRNAウイルス株は、公衆衛生に対する大きな脅威及び世界的な緊急事態と宣言された最近の爆発的感染の原因となっている。SARS-CoV-2の完全なゲノムの系統発生解析から、このウイルスは、SARS様コロナウイルス(ベータコロナウイルス属サルベコウイルス亜属)のグループに最も密接に関連している(89.1%のヌクレオチド類似性)ことが明らかとなった。Wu et al.,A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature,Feb 3,2020。
【0025】
SARS-CoV-2は、細胞表面受容体への結合を媒介する表面糖タンパク質;膜内在性タンパク質;エンベロープタンパク質及びヌクレオカプシドタンパク質である、Sタンパク質としても知られている「スパイク」タンパク質をコードするエンベロープ型一本鎖RNAウイルスである。S1サブユニット及びS2サブユニットを含むSタンパク質は、ウイルス膜を宿主細胞膜と融合するように構造的再編成を受ける融合前コンフォメーションで存在する三量体クラスI融合タンパク質である。例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるLi,F.Structure,Function,and Evolution of Coronavirus Spike Proteins.Annu.Rev.Virol.3:237-261(2016)を参照されたい。融合前コンフォメーションでのSARS-CoV-2スパイクタンパク質の構造は、これまでに発見されている。その全体が参照により本明細書に援用されるDaniel et al.,Cryo-EM structure of the SARS-CoV-2 spike in the prefusion conformation.Science,19 Feb 2020を参照されたい。
【0026】
SARS-CoV-2の完全なゲノム(GenBank登録番号:MN908947)の系統発生解析から、このウイルスは、SARS様コロナウイルス(ベータコロナウイルス属サルベコウイルス亜属)のグループに最も密接に関連している(89.1%のヌクレオチド類似性)ことが明らかとなった。Wu et al.,A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature,Feb 3,2020、これは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0027】
SARS-CoV-2は、スパイク表面糖タンパク質、膜糖タンパク質M、エンベロープタンパク質E、及びヌクレオカプシドリンタンパク質Nを有する。SARS-CoV-2コロナウイルスの完全なゲノム(29903ヌクレオチド、一本鎖RNA)については、GenBank参照配列:MN908947としてNCBIデータベースに記載されている。コロナウイルスタンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質(GenBank参照配列:QHD43416)、コロナウイルス膜糖タンパク質M(GenBank参照配列:QHD43419)、コロナウイルスエンベロープタンパク質E(GenBank参照配列:QHD43418)、及びコロナウイルスヌクレオカプシドリンタンパク質E(GenBank参照配列:QHD43423)からなる群から選択することができる。
【0028】
実施形態において、SARS-CoV-2コロナウイルスは、「Wuhan株」またはバリアント株である。いくつかの実施形態では、バリアント株は、B.1.1.7、B1.351、B.1、B.1.1.28、B.1.2、CAL.20C、B.6、P.1、及びP.2のうち1つ以上、ならびに/または任意の他のバリアント、もしくはその抗原断片である。いくつかの実施形態では、バリアント株は、A.1、A.2、A.3、A.4、A.5、A.6、A.7、A.8、A.9、B、B.1、B.1.1、B.1.1.1、B.2、B.3、B.4、B.5、B.6、B.7、B.9、B.10、B.11、B.12、B.13、B.14、B.15、B.16、B.17、B.18、B.19、B.20、B.21、B.22、B.23、B.24、B.25、B.26、B.27、C.1、C.2、C.3、D.1、及びD2のうち1つ以上である。いくつかの実施形態では、バリアント株は、Wuhan株と比較して1つまたは変異、例えば、D614G、E484K、N501Y、K417N、S477G、及びS477Nを有する。
【0029】
GM-CSFの組成物
本発明の実施の際に使用されるGM-CSFは、任意の薬学的に安全かつ有効なGM-CSF、またはGM-CSFの生物学的活性を有する任意のその誘導体を含む。一実施形態では、主題の方法の実施の際に使用されるGM-CSFは、サルグラモスチム(LEUKINE)などの組換えヒトGM-CSF(rhu GM-CSF)である。サルグラモスチムは、23位にプロリンの代わりにロイシンを有するという点で内因性ヒトGM-CSFとは異なる、単一の127アミノ酸糖タンパク質を有する生合成の酵母由来の組換えヒトGM-CSFである。天然のヒトGM-CSFの生物学的活性を有する他の天然及び合成GM-CSFならびにその誘導体も、本発明の実施の際に同等に有用であり得る。
【0030】
実施形態において、GM-CSFは、細菌、酵母、植物、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞で産生されるかまたは産生可能である。実施形態において、GM-CSFは、Escherichia coli細胞で産生されるかまたは産生可能である。実施形態において、GM-CSFは、酵母細胞で産生されるかまたは産生可能である。実施形態において、GM-CSFは、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)で産生されるかまたは産生可能である。実施形態において、GM-CSFは、E.Coli細胞で産生されない。実施形態において、GM-CSFは、グリコシル化を可能にする細胞、例えば、酵母またはCHO細胞で産生される。
【0031】
実施形態において、GM-CSFは、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと約90%、もしくは約93%、もしくは約95%、もしくは約97%、もしくは約98%の同一性のあるバリアントを有する。実施形態において、GM-CSFは、配列番号2もしくは配列番号3のアミノ酸配列、またはそれと約90%、もしくは約93%、もしくは約95%、もしくは約97%、もしくは約98%の同一性のあるバリアントを有する。実施形態において、GM-CSFは、モルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチム(regramostim)のうち1つである。
【0032】
理論に拘束されることを望まないが、hGM-CSFのコアは、角度をもって群をなす4つのヘリックスからなる。rhGM-CSFの結晶構造及び変異原性分析(Rozwarski D A et al.,Proteins 26:304-13,1996)により、タンパク質コアの無極側鎖に加えて、10個の埋め込まれた水素結合残基が、他の側鎖原子に水素結合する残基よりもより良く保存された主鎖原子への分子内水素結合に関与し;24個の溶媒化部位が、非対称ユニットの2つの分子の等価位置で観察され、それらの中で最も強いものが、二次構造要素間の間隙に位置している、ことが明らかとなった。疎水性側鎖の2つの表面クラスターは、予想された受容体結合領域の近くに位置している。ヘリックスA/ヘリックスC表面の残基の突然変異誘発により、特定のGlu、Gly、及びGln残基の重要性が確認された。したがって、これらの残基は、本発明で用いるためのhGM-CSFの機能的置換バリアントでは置換されず、これらのヘリックスは、本発明で用いるためのhGM-CSFの機能的フラグメントまたは欠失バリアントで維持される。さらに、実施形態において、当業者は、バリアントの同一性を報告するために、構造情報についてUniProtKBのエントリーP04141を参照することができる。
【0033】
hGM-CSFのN末端ヘリックスは、その受容体への高親和性結合を支配する(Shanafelt A B et al.,EMBO J 10:4105-12,1991)。GM-CSFの生物学的効果の変換には、少なくとも2つの細胞表面受容体構成成分(そのうちの1つは、サイトカインIL-5と共有される)との相互作用が必要である。上記の研究で、一連のヒト-マウスハイブリッドGM-CSFサイトカイン上に独自の受容体結合ドメインを配置することによってGM-CSF内の受容体結合決定基が特定された。GM-CSFとそれらの高親和性受容体複合体の共有サブユニットとの相互作用は、ペプチド鎖の非常に小さい部分によって支配されていた。N末端αヘリックスにおけるいくつかの重要な残基の存在は、相互作用に特異性を付与するのに十分であった。
【0034】
いくつかの実施形態では、アミノ酸変異は、アミノ酸置換であり、保存的置換及び/または非保存的置換を含み得る。
【0035】
「保存的置換」は、例えば、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行われてよい。20個の天然に存在するアミノ酸は、(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、(3)酸性:Asp、Glu、(4)塩基性:His、Lys、Arg、(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro、及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Pheという6つの標準的なアミノ酸グループに分類され得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「保存的置換」は、上記の6つの標準的なアミノ酸グループの同じグループ内に列挙される別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。例えば、GluによるAspの交換は、そのように修飾されたポリペプチド内に1つの負電荷を保持する。さらに、グリシン及びプロリンは、αヘリックスを破壊するそれらの能力に基づいて互いに置換されてもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「非保存的置換」とは、上記の6つの標準的なアミノ酸グループ(1)~(6)の異なるグループに列挙される別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。
【0038】
様々な実施形態では、置換はまた、非古典的なアミノ酸も含み得る(例えば、セレノシステイン、ピロリシン、N-ホルミルメチオニンβ-アラニン、GABA及びδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、βメチルアミノ酸、C α-メチルアミノ酸、N α-メチルアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体)。
【0039】
アミノ酸配列の修飾は、当技術分野における任意の周知の技術、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCRベースの突然変異誘発を使用して、達成することができる。このような技術は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.,1989及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1989に記載されている。
【0040】
理論に拘束されることを望まないが、生合成GM-CSFのグリコシル化の程度は、半減期、分布、及び排除に影響を与えると思われる。(Lieschke and Burgess,N.Engl.J.Med.327:28-35,1992;Dorr,R.T.,Clin.Ther.15:19-29,1993;Horgaard et al.,Eur.J.Hematol.50:32-36,1993)。実施形態において、本発明のGM-CSF分子は、グリコシル化される。
【0041】
治療の方法
一態様では、本発明は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む有効な量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、コロナウイルス感染を治療するための方法に関する。
【0042】
別の態様では、本発明は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む有効な量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、該患者が感染していない状態と比較して好酸球の数が少ないことを特徴とする、コロナウイルス感染を治療するための方法に関する。
【0043】
別の態様では、本発明は、(a)コロナウイルスに感染し、かつ(i)感染していない状態と比較して好酸球の数が少ない、(ii)感染していない状態と比較してフェリチンのレベルが高い、及び/または(iii)感染していない状態と比較してCRPのレベルが高い、のうち1つ以上を伴う患者を選択することと、(b)GM-CSFを含む有効な量の組成物を患者に投与することと、を含む、コロナウイルス感染を治療するための方法を提供する。
【0044】
実施形態において、本方法は、治療中に好酸球の数をモニタリングするステップをさらに含む。実施形態において、好酸球の数の増加は、GM-CSFの継続投与を導く。実施形態において、好酸球の数の減少は、GM-CSFの投与の中断を導く。
【0045】
実施形態において、本方法は、治療中にフェリチンのレベルをモニタリングするステップをさらに含む。実施形態において、フェリチンのレベルの減少は、GM-CSFの継続投与を導く。実施形態において、フェリチンのレベルの増加は、GM-CSFの投与の中断を導く。
【0046】
実施形態において、本方法は、治療中にCRPのレベルをモニタリングするステップをさらに含む。実施形態において、CRPのレベルの減少は、GM-CSFの継続投与を導く。実施形態において、CRPのレベルの増加は、GM-CSFの投与の中断を導く。
【0047】
実施形態において、好酸球の数、フェリチンのレベル、及び/またはCRPのレベルは、患者の生体サンプルで測定される。
【0048】
実施形態において、コロナウイルスは、(i)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1及びHCoV-OC43から任意に選択されるベータコロナウイルス、ならびに(ii)HCoV-NL63及びHCoV-229Eから任意に選択されるアルファコロナウイルスから選択される。実施形態において、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0049】
実施形態において、患者は、COVID-19に罹患している。実施形態において、患者は、発熱、咳、息切れ、下痢、上気道障害、下気道障害、肺炎、及び急性呼吸障害のうち1つ以上に罹患している。実施形態において、患者は、低酸素症である。実施形態において、患者は、呼吸窮迫に罹患している。
【0050】
実施形態において、本方法は、患者における好酸球の数を増加させる。実施形態において、好酸球の数は、患者の生体サンプルで測定される。実施形態において、生体サンプルは、血液、呼吸液、唾液または糞便を含む。実施形態において、呼吸液は、口咽頭(OP)または鼻咽頭(NP)スワブからのものである。実施形態において、呼吸液は、洗浄液であり、場合によりその洗浄液は、気管支洗浄液を含む。実施形態において、呼吸液は、痰である。実施形態において、呼吸液は、鼻分泌物である。実施形態において、呼吸液は、唾液である。
【0051】
実施形態において、本発明の方法は、例えば、コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾン、場合により、経口吸入されるか注射によって投与されるステロイドなどの1つ以上のステロイドによる治療を受けている患者に使用される。理論に拘束されることを望まないが、ステロイドによって誘発される好酸球減少症は、本発明のGM-CSF投与によって補正され得る。したがって、実施形態において、患者は、本発明の方法の状況でステロイド治療を継続できる。
【0052】
実施形態において、本方法は、患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症を予防または緩和する。実施形態において、本方法は、患者の酸素化を改善する。
【0053】
実施形態において、本方法は、治療前と比較して患者のウイルス量を減少させる。
【0054】
実施形態において、本方法は、患者の呼吸窮迫からサイトカイン平衡異常への移行を予防または緩和する。実施形態において、本方法は、サイトカインストームを逆転または予防する。実施形態において、本方法は、肺または全身におけるサイトカインストームを逆転または予防する。実施形態において、サイトカインストームは、全身炎症反応症候群、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群、及び血球貪食性リンパ組織炎球増多症のうち1つ以上から選択される。実施形態において、本方法は、1つ以上の炎症性サイトカインの過剰産生を逆転または予防する。実施形態において、炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1、IL-2、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、IL-2ra、IL-10、IL-18、TNFα、インターフェロン-γ、CXCL10、及びCCL7のうち1つ以上である。
【0055】
実施形態において、本方法は、治療前と比較してフェリチンレベルを減少させる。実施形態において、本方法は、フェリチンを約1000ng/ml未満まで、必要に応じて約650ng/ml未満まで減少させる。実施形態において、本方法は、治療前と比較してC反応性タンパク質(CRP)を減少させる。実施形態において、本方法は、CRPを約10mg/L未満まで、必要に応じて約3mg/L未満まで減少させる。
【0056】
実施形態において、本方法は、(例えば、抗感染効果によって測定する際に)患者におけるSARS-CoV2抗原特異的T細胞、例えば、細胞傷害性T細胞もしくはヘルパーT細胞の量及び/または質を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)改善させる。
【0057】
実施形態において、本方法は、(例えば、抗感染効果によって測定する際に)患者におけるSARS-CoV2抗原特異的CD8+ T細胞の量及び/または質を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)改善させる。
【0058】
実施形態において、本方法は、(例えば、抗感染効果によって測定する際に)患者におけるSARS-CoV2抗原特異的活性化CD8+ T細胞の量及び/または質を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)改善させる。
【0059】
実施形態において、本方法は、(例えば、抗感染効果によって測定する際に)SARS-CoV2抗原特異的HLD-DR+ CD38+ CD8+ T細胞の量及び/または質を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)改善させる。
【0060】
実施形態において、本方法は、(例えば、抗感染効果によって測定する際に)SARS-CoV2抗原特異的IFN-g及びIL-2分泌CD8+ T細胞の量及び/または質を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)改善させる。
【0061】
実施形態において、本方法は、遊走樹状細胞(DC)の調節を行う。実施形態において、これらの遊走DCは、患者におけるSARS-CoV2抗原特異的CD8+ T細胞、例えば、HLD-DR+ CD38+ CD8+ T細胞及び/またはIFN-g及びIL-2分泌CD8+ T細胞を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)活性化する。
【0062】
実施形態において、本方法は、肺胞マクロファージ(AM)の調節を行う。実施形態において、これらのAMは、患者におけるSARS-CoV2抗原特異的CD8+T細胞、例えば、HLD-DR+ CD38+ CD8+ T細胞及び/またはIFN-g及びIL-2分泌CD8+ T細胞を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)活性化する。
【0063】
実施形態において、本発明のGM-CSF剤を投与することによって対象におけるSARS-CoV2抗原特異的免疫反応を発生させる方法を提供する。実施形態において、SARS-CoV2抗原特異的免疫反応は、CD8+ T細胞、AM及びDCのうち1つ以上によって媒介される。
【0064】
実施形態において、本発明のGM-CSFは、自然免疫反応を強化し、すなわちAMを調節することで、コロナウイルス感染の本発明の治療法をもたらす。
【0065】
実施形態において、本発明の方法は、ワクチンを接種していないか、またはワクチンを接種することができない患者に対する治療法を提供する。実施形態において、本発明の方法は、ワクチンを接種したが、それでも感染する患者(例えば、効果のないワクチン接種及び/または時間の経過とともにワクチンの効果が低下することに起因する)に対する治療法を提供する。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、弱毒生ウイルス、不活化ウイルス、非複製ウイルスベクター、複製ウイルスベクター、組換えタンパク質、ペプチド、ウイルス様粒子、DNA、RNA、mRNA、別の巨大分子、及びその断片うち1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、mRNA-1273、AZD1222、BNT162、Ad5-nCoV、INO-4800、及びLV-SMENP-DC、ならびに病原体特異的aAPC、またはそれらのバリアントもしくは誘導体から選択される。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質をコードし、必要に応じてLNPカプセル化型のmRNAワクチン、mRNA-1273などを含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、Sタンパク質を発現するウイルスベクターワクチン、必要に応じてSタンパク質を発現するウイルスベクター(ChAdOx1-チンパンジーアデノウイルスOxford1)ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)、AZD1222などを含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、最適化されたSARS-CoV-2 RBDをコードするmRNAワクチン、BNT162b1などを含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、最適化された完全長のSタンパク質をコードするmRNAワクチン、BNT162b2などを含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、スパイク表面糖タンパク質、膜糖タンパク質M、エンベロープタンパク質E、及びヌクレオカプシドリンタンパク質Nから選択されるタンパク質を発現するアデノウイルス5型ベクター、必要に応じてSタンパク質を発現するアデノウイルス5型ベクター、Ad5-nCoVなどを含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、電気穿孔法によって導入されるSタンパク質をコードするプラスミド、必要に応じて電気穿孔法によって導入されるSタンパク質をコードするDNAプラスミド、INO-4800などを含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と共に投与される、選択されたウイルスタンパク質のドメインをベースにした合成ミニ遺伝子を発現するレンチウイルスベクターで修飾した樹状細胞(DC)、LV-SMENP-DCなどを含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルスワクチンは、選択されたウイルスタンパク質のドメインをベースにした合成ミニ遺伝子を発現するレンチウイルスベクターで修飾した人工抗原提示細胞(aAPC)、病原体特異的aAPCなどを含む。
【0066】
薬学的に許容される塩及び賦形剤
本明細書で記載される組成物は、薬学的に許容される塩を形成するために、無機酸もしくは有機酸と反応することができる十分な塩基性官能基、または無機塩基もしくは有機塩基と反応することができるカルボキシル基を有する場合がある。薬学的に許容される酸付加塩は、当該技術分野において周知のように、薬学的に許容される酸から形成される。このような塩としては、例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるJournal of Pharmaceutical Science,66,2-19(1977)及びThe Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection,and Use.P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Verlag, Zurich(Switzerland) 2002に列挙されている薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0067】
薬学的に許容される塩としては、非限定的な例として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホナート、カンファースルホン酸塩、パモエート、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1、4-ジカルボン酸塩、ヘキシン-1、4-ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、りんご酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、ニコチン酸塩、フタル酸塩、テラフタル酸塩、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、プロピオン酸フェニル、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p-ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ナフタレン-1、5-スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩及び酒石酸塩塩類が挙げられる。
【0068】
用語「薬学的に許容される塩」はまた、カルボン酸官能基などの酸性官能基及び塩基を有する本発明の組成物の塩も指す。好適な塩基としては、ナトリウム、カリウム及びリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛などの他の金属の水酸化物;非置換もしくはヒドロキシ置換されたモノ、ジ、もしくはトリアルキルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのアンモニア及び有機アミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-もしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのモノ、ビスもしくはトリス(2-OH低級アルキルアミン)、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンもしくはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N-ジ低級アルキル-N-(ヒドロキシル低級アルキル)-アミン;N-メチル-D-グルカミン;ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される塩の形態である。
【0070】
医薬組成物及び製剤
様々な実施形態では、本発明は、組成物、例えば、本明細書に記載のGM-CSF及び/または追加の治療剤、ならびに薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物に関する。本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に許容される担体またはビヒクルを含む組成物の構成成分として対象に投与され得る。このような組成物は、適切な投与に向けた形態を提供するために、必要に応じて適切な量の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0071】
様々な実施形態では、薬学的賦形剤は、水、及び例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などといった石油、動物、植物、もしくは合成起源の油を含む油などの液体であり得る。薬学的賦形剤は、例えば、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンのり、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤を使用してもよい。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、対象に投与される時に無菌である。水は、本明細書に記載される任意の薬剤が静脈内投与される場合に有用な賦形剤である。生理食塩水溶液ならびにデキストロース及びグリセロールの水溶液もまた、特に注入溶液のために液体賦形剤として用いられ得る。適切な薬学的賦形剤としてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなども挙げられる。本明細書に記載のいずれの薬剤もまた、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含んでもよい。適切な薬学的賦形剤の他の例は、参照により本明細書に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences1447-1676(Alfonso R.Gennaro eds., 19th ed.1995)に記載されている。
【0072】
本発明は、種々の配合で、記載の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)を含む。本明細書に記載のいずれの本発明の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)も、溶液、懸濁液、乳剤、点滴、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体含有カプセル剤、ゼラチンカプセル剤、粉末剤、持続放出製剤、坐剤、乳濁液、エアロゾル、噴霧剤、懸濁剤、凍結乾燥粉末、凍結懸濁液、脱水粉末、または使用に適した他の形態をとり得る。一実施形態では、組成物は、カプセルの形態である。別の実施形態では、組成物は、錠剤の形態である。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、ソフトゲルカプセルの形態で製剤化される。さらなる実施形態では、医薬組成物は、ゼラチンカプセルの形態で製剤化される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、液体として製剤化される。
【0073】
必要に応じて、本発明の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)はまた、可溶化剤を含んでもよい。また、薬剤は、当技術分野において既知の適切なビヒクルまたは送達デバイスを用いて送達することができる。本明細書で概説する併用療法剤は、単一の送達ビヒクルまたは送達デバイスで併用送達することができる。
【0074】
本発明の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)を含む製剤は、好適に単位剤形で提供されてよく、薬学分野において周知である方法のいずれかによって調製されてよい。このような方法は一般に、治療剤を1つ以上の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。典型的には、製剤は、治療剤を液体担体、微粉化した固体担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させることによって調製され、次に必要に応じて、その生成物が成形されて所望の製剤の剤形となる(例えば、湿式または乾式造粒、粉末ブレンドなどにして、その後当技術分野で公知である従来の方法を使用して錠剤化される)。
【0075】
様々な実施形態では、本明細書に記載の任意の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、慣用的な手順に従って、本明細書に記載の投与方法に適した組成物として製剤化される。
【0076】
投与経路としては、例えば、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入、または局所的経路が挙げられる。投与は、局所的または全身的なものであってよい。いくつかの実施形態では、投与は、経口で行われる。別の実施形態では、投与は、非経口注射によるものである。投与方法は、医療関係者の判断に任され、医学的状態の部位に部分的に依存する場合がある。ほとんどの場合、投与により、本明細書に記載の任意の薬剤が血流に放出される。
【0077】
特定の実施形態では、GM-CSF(及び/または追加の治療剤)は、静脈内経路を介して投与される。
【0078】
特定の実施形態では、GM-CSF(及び/または追加の治療剤)は、肺に投与される。
【0079】
特定の実施形態では、GM-CSF(及び/または追加の治療剤)は、エアロゾルまたはネブライザを介して投与される。
【0080】
特定の実施形態では、エアロゾルまたはネブライザは、液体噴霧、乾燥粉末分散、及び投薬量計量型投与から選択される。特定の実施形態では、エアロゾルまたはネブライザは、噴出流またはメッシュ振動から選択される。
【0081】
特定の実施形態では、GM-CSF(及び/または追加の治療剤)は、吸入によって投与される。理論に拘束されることを望まないが、サルグラモスチムの吸入により、患者の全身曝露量が減少する。
【0082】
実施形態において、GM-CSF(及び/または追加の治療剤)は、吸入によって投与され、局所細胞反応及び/または周辺細胞反応を媒介する。例えば、実施形態において、GM-CSF(及び/または追加の治療剤)は、吸入によって投与され、末梢血中のリンパ球及び/または好酸球の増加を媒介する。
【0083】
したがって、実施形態において、末梢免疫細胞を調節して、局所投与(例えば、吸入)を介して抗感染効果を引き起こす方法が提供される。
【0084】
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、慣用的な手順に従って、経口投与に適した組成物として製剤化される。経口送達の組成物は、例えば、錠剤、口内錠、水性もしくは油性懸濁液、顆粒、粉末剤、乳濁液、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態とすることができる。経口投与型の組成物は、薬学的に美味な調製物を得るために、1つ以上の薬剤、例えばフルクトース、アスパルテームまたはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、ヒメコウジ油、またはチェリーなどの香料添加剤;着色剤;及び保存剤を含むことができる。さらに、錠剤または丸剤の形態の場合、組成物を、消化管における崩壊及び吸収を遅らせるためにコーティングし、それによって長期間にわたる持続作用を提供することができる。浸透性活性駆動の本明細書に記載の任意の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)を取り囲む選択的透過性膜もまた、経口で投与される組成物に好適である。これらの後者のプラットホームでは、カプセルを包囲する環境の流体が駆動化合物によって吸水され、その化合物は、膨張して開口部を通して薬剤または薬剤組成物と入れ代わる。これらの送達プラットホームは、即時放出製剤のスパイクプロファイルとは対照的に、本質的にゼロ次送達プロファイルを提供することができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延材料が、有用である場合もある。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウムなどの標準的な賦形剤を含むことができる。一実施形態では、賦形剤は、医薬品グレードのものである。懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカントなど、及びこれらの混合物などの沈殿防止剤を含有してもよい。
【0085】
非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下及び関節内の注射及び点滴)に適した剤形としては、例えば、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液などが挙げられる。それらはまた、使用直前に無菌注射用媒体に溶解または懸濁することができる、無菌の固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造され得る。それらは、例えば、当技術分野において知られている懸濁剤または分散剤を含有してよい。非経口投与に適した製剤成分としては、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールもしくは他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸もしくは重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩などの緩衝剤;及び塩化ナトリウムもしくはデキストロースなどの等張性を調節するための薬剤、が挙げられる
【0086】
静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理的食塩水、静菌性水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、製造及び保管条件下で安定なものである必要があり、微生物から保護される必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール)、ならびにその好適な混合物を含有する溶剤または分散媒であり得る。
【0087】
本明細書に記載の組成物は、単独でまたは他の好適な構成成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤(すなわち、「噴霧型」)にすることができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧可能な噴霧剤に入れることができる。
【0088】
本明細書に記載の本発明の医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、制御放出もしくは持続放出手段によって、または当業者に周知である送達デバイスによって投与され得る。例としては、限定するものではないが、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、及び同第5,733,556号に記載されているものが挙げられ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される。このような剤形は、種々の割合で所望の放出プロファイルを提供するために、例えば、ヒドロプロピルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、微粒子、またはこれらの組み合わせを使用して、1つ以上の有効成分の制御放出または持続放出を提供するために有用であり得る。本明細書に記載のものを含む当業者に既知の好適な制御放出製剤または持続放出製剤が、本明細書に記載の薬剤の有効成分と共に用いるために容易に選択することができる。したがって、本発明は、制御放出または持続放出用に適合された、限定はされないが錠剤、カプセル、ゲルキャップ、及びカプレットなどの経口投与に適した単一の単位剤形を提供する。
【0089】
有効成分の制御放出または持続放出は、pHの変化、温度の変化、適切な波長の光による刺激、酵素の濃度もしくは利用能、水の濃度もしくは利用能、または他の生理学的条件もしくは化合物を含むがこれらに限定されない様々な条件によって刺激される場合がある。
【0090】
別の実施形態では、制御放出装置は、治療される標的領域の近くに配置することができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,前述,vol.2, pp.115-138(1984)を参照されたい)。Langer,1990,Science 249:1527-1533による総説で論じられている他の制御放出装置を使用してもよい。
【0091】
医薬製剤は無菌であることが好ましい。無菌化は、例えば、無菌濾過膜を通す濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、フィルター無菌化を、凍結乾燥及び溶液調製の前後に行うことができる。
【0092】
用法及び用量
本発明に従って投与される組成物の実際の用量は、特定の剤形及び投与方法によって変化することを理解されるであろう。組成物の作用を改変する可能性のある多くの要因(例えば、体重、性別、食事、投与時期、投与経路、排泄速度、対象の状態、薬物の組み合わせ、遺伝的素因及び反応感受性)は、当業者によって考慮され得る。投与は、最大耐量の範囲内で、連続的に、または単回または複数回の個別の用量で行うことができる。所与の一連の条件に対する最適な投与速度は、従来の用量・用法試験を使用して、当業者によって確認することができる。
【0093】
実施形態において、GM-CSFは、約125μg、約150μg、または約200μg、または約250μg、または約300μg、または約350μgの総用量で投与される。実施形態において、GM-CSFは、約250μgの総用量で投与される。
【0094】
実施形態において、GM-CSFは、約125μg、約150μg、または約200μg、または約250μg、または約300μg、または約350μgの用量で投与される。
【0095】
実施形態において、GM-CSFは、1日2回投与される。
【0096】
実施形態において、GM-CSFは、1日2回、約125μgの用量で投与されるサルグラモスチムである。
【0097】
併用療法及び追加の治療剤
様々な実施形態では、本発明の医薬組成物は、追加の薬剤(複数可)と組み合わせて併用投与される。併用投与は、同時にまたは逐次的に行うことができる。
【0098】
一実施形態では、追加の治療剤及び本発明のGM-CSFは、対象に同時に投与される。用語「同時に」は、本明細書で使用される場合、追加の治療剤及びGM-CSFが、約30分以内、約20分以内、約10分以内、約5分以内、または約1分以内などの約60分以内の時間間隔で投与されることを意味する。追加の治療剤及びGM-CSFの投与は、単一の製剤(例えば、追加の治療剤及びGM-CSF組成物を含む製剤)または別々の製剤(例えば、追加の治療剤を含む第1の製剤及びGM-CSF組成物を含む第2の製剤)の同時投与によるものであってよい。
【0099】
併用投与は、投与のタイミングが追加の治療剤及びGM-CSFの薬理学的活性が時間的に重複し、それによって、複合的な治療効果を発揮するようなものである場合、治療剤が同時に投与されることを必要としない。例えば、追加の治療剤、及び標的指向形成分であるGM-CSF組成物は、逐次的に投与することができる。用語「逐次的に」は、本明細書で使用される場合、追加の治療剤及びGM-CSFが、約60分を超える時間間隔で投与されることを意味する。例えば、追加の治療剤及びGM-CSFの逐次的投与間の時間は、約60分以上、約2時間以上、約5時間以上、約10時間以上、約1日以上、約2日以上、約3日以上、約1週間以上の間隔、約2週間以上の間隔、または約1ヶ月以上の間隔である場合がある。最適の投与時間は、投与される追加の治療剤及びGM-CSFの代謝の速度、排泄の速度、及び/または薬力学的活性に依存する。追加の治療剤またはGM-CSF組成物のいずれかが、最初に投与されてよい。
【0100】
併用投与は、治療剤が同じ投与経路によって対象に投与されることを必要としない。むしろ、治療剤のそれぞれは、適切な経路によって、例えば、経口または非経口で投与することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のGM-CSFは、別の治療剤と併用投与される場合に相乗的に作用する。このような実施形態では、標的指向形成分であるGM-CSF組成物及び追加の治療剤は、その薬剤が単独療法に関連して使用される場合に用いられる用量よりも少ない用量で投与することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、レムデシビル;ファビピラビル;ガリデシビル;プレズコビックス;ロピナビル;及び/またはリトナビル;及び/またはアルビドールロピナビル/リトナビル;及び/またはリバビリン;及び/またはIFN-β;シーヤンピン(xiyanping);抗VEGF-A;フィンゴリモド;カリマイシン;ヒドロキシクロロキン;ダルナビル及びコビシスタット;メチルプレドニゾロン;ブリラシジン;レロンリマブ;及びサリドマイドから選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、コロナウイルスの抗原、例えば、スパイクタンパク質、例えば、そのRBDに対抗する、抗体、例えば、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、バムラニビマブ、カシリビマブ、及びイムデビマブのうち1つ以上である。
【0104】
治療効果の検出方法
いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染に対する本発明のGM-CSF剤による治療の成功または治療による反応の可能性を検出するための方法が提供される。実施形態において、バイオマーカーとしてKL-6を使用することによる、コロナウイルス感染に対する本発明のGM-CSF剤による治療の成功または治療による反応の可能性を検出するための方法が提供される。実施形態において、本発明のGM-CSF剤は、コロナウイルス感染を患う対象におけるKL-6を減少させ、その結果、この減少が治療のバイオマーカーとして使用される。例えば、実施形態において、KL-6レベルは、(例えば、生体サンプル中、例えば、血液、呼吸液(例えば、口咽頭(OP)もしくは鼻咽頭(NP)スワブまたは洗浄液からのものであり、この際、該洗浄液は、場合により気管支洗浄液を含み、さらに痰、鼻分泌物または唾液を含む)、唾液、または糞便中のタンパク質または核酸レベルを介して測定される際に)決定される。実施形態において、KL-6の減少(例えば、治療前または未治療と比較して)は、治療の成功を意味し、一方、KL-6の減少が乏しいまたはKL-6の増加は、治療の成功が小さい(例えば、より高い投与量及び/または代替治療(例えば、本明細書にて開示するもののうち1つ以上)を導く)ことを意味する。
【0105】
いくつかの実施形態では、限定されないが、KL-6を含む1つ以上のMUC1剤の存在、不在、またはレベルを測定することによって、コロナウイルス感染に対する本発明のGM-CSF剤による治療の成功の可能性を検出するための方法が提供される。例えば、実施形態において、コロナウイルス感染に罹っているか、罹っている疑いのある患者からサンプルを採取して、限定されないが、KL-6を含む1つ以上のMUC1剤の存在、不在、またはレベルを測定する方法が提供され、ここで、(i)高レベル(例えば、通常レベルもしくは未治療レベルと比較して)は、治療の成功の可能性が高いことを意味し、本発明のGM-CSF剤による治療もしくは継続治療が導かれるか、または(ii)低レベル(例えば、通常レベルもしくは未治療レベルと比較して)は、治療の成功の可能性が低いことを意味し、本発明のGM-CSF剤に対する代替治療による治療が導かれる。
【0106】
いくつかの実施形態では、限定されないが、KL-6を含む1つ以上のMUC1剤の存在、不在、またはレベルを測定することによって、コロナウイルス感染に対する本発明のGM-CSF剤による治療による反応を検出するための方法が提供される。例えば、実施形態において、コロナウイルス感染に罹っているか、罹っている疑いがあり、かつ本発明のGM-CSF剤による治療を受けている患者からサンプルを採取して、限定されないが、KL-6を含む1つ以上のMUC1剤の存在、不在、またはレベルを測定する方法が提供され、ここで、(i)低レベル(例えば、通常レベルもしくは未治療レベルと比較して)は、治療に対する陽性反応を意味し、本発明のGM-CSF剤による継続治療が導かれるか、または(ii)高レベル(例えば、通常レベルもしくは未治療レベルと比較して)は、治療に対する陰性反応を意味し、代替の薬剤による治療が導かれる。
【0107】
モルグラモスチムの使用
いくつかの実施形態では、本発明は、吸入を介して投与することと、必要に応じて末梢における免疫反応を調節することによって(例えば、患者における抗原特異的CD8+ T細胞、例えば、HLD-DR+ CD38+ CD8+ T細胞、ならびに/またはIFN-g及びIL-2分泌CD8+ T細胞を(例えば、未治療の状態または治療前の状態と比較して)調節することを介して)、感染を治療または予防する方法におけるモルグラモスチムの使用に関する。
【0108】
実施形態において、このようなモルグラモスチムは、ウイルス感染、寄生虫感染または細菌感染を治療または予防する方法で使用される。
【0109】
様々な実施形態では、本発明は、モルグラモスチムを用いてウイルス感染を治療する方法を提供し、該ウイルス感染となるコロナウイルスは、(i)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1及びHCoV-OC43から任意に選択されるベータコロナウイルス、ならびに(ii)HCoV-NL63及びHCoV-229Eから任意に選択されるアルファコロナウイルス、から選択される。実施形態において、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0110】
様々な実施形態では、本発明は、例えば、気道の、パピローマ・ウイルス感染の、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の、及び肝炎ウイルスによる感染などの内部臓器のウイルス感染の、急性もしくは慢性ウイルス感染を含むがこれらに限定されないウイルス感染を、モルグラモスチムを用いて治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、Flaviviridae科のウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、Flaviviridae科のウイルスは、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、及びC型肝炎ウイルスから選択される。その他の実施形態では、ウイルス感染は、Picornaviridae科のウイルス、例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルスによって引き起こされる。その他の実施形態では、ウイルス感染は、Orthomyxoviridaeのメンバー、例えば、インフルエンザウイルスによって引き起こされる。その他の実施形態では、ウイルス感染は、Retroviridaeのメンバー、例えば、レンチウイルスによって引き起こされる。その他の実施形態では、ウイルス感染は、Paramyxoviridaeのメンバー、例えば、呼吸系発疹ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ルブラウイルス(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス)、麻疹ウイルス、及びヒトメタニューモウイルスによって引き起こされる。その他の実施形態では、ウイルス感染は、Bunyaviridaeのメンバー、例えば、ハンタウイルスによって引き起こされる。その他の実施形態では、ウイルス感染は、Reoviridaeのメンバー、例えば、ロタウイルスによって引き起こされる。
【0111】
様々な実施形態では、本発明は、原虫感染または蠕虫感染などの寄生虫感染を、モルグラモスチムを用いて治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、寄生虫感染は、原虫寄生体によるものである。いくつかの実施形態では、オリチジアブ(oritiziab)寄生虫は、腸管原生動物、組織原生動物、または血液原生動物から選択される。例示的な原虫寄生体としては、Entamoeba hystolytica、Giardia lamblia、Cryptosporidium muris、Trypanosomatida gambiense、Trypanosomatida rhodesiense、Trypanosomatida crusi、Leishmania mexicana、Leishmania braziliensis、Leishmania tropica、Leishmania donovani、Toxoplasma gondii、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariae、Plasmodium falciparum、Trichomonas vaginalis及びHistomonas meleagridisが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、寄生虫感染は、線虫類(例えば、Adenophorea)などの蠕虫寄生虫によるものである。いくつかの実施形態では、寄生虫は、双腺綱(例えば、Trichuris trichiura、Ascaris lumbricoides、Enterobius vermicularis、Ancylostoma duodenale、Necator americanus、Strongyloides stercoralis、Wuchereria bancrofti、Dracunculus medinensis)から選択される。いくつかの実施形態では、寄生虫は、吸虫類(例えば、住血吸虫、肝吸虫、腸吸虫、及び肺吸虫)から選択される。いくつかの実施形態では、寄生虫は、Schistosoma mansoni、Schistosoma haematobium、Schistosoma japonicum、Fasciola hepatica、Fasciola gigantica、Heterophyes、Paragonimus westermaniから選択される。いくつかの実施形態では、寄生虫は、条虫類(例えば、Taenia solium、Taenia saginata、Hymenolepis nana、Echinococcus granulosus)から選択される。
【0112】
様々な実施形態では、本発明は、細菌感染を、モルグラモスチムを用いて治療する方法を提供する。様々な実施形態では、細菌感染は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、好気性細菌、及び/または嫌気性細菌によるものである。種々の実施形態では、細菌は、限定するものではないが、Staphylococcus、Lactobacillus、Streptococcus、Sarcina、Escherichia、Enterobacter、Klebsiella、Pseudomonas、Acinetobacter、Mycobacterium、Proteus、Campylobacter、Citrobacter、Nisseria、Baccillus、Bacteroides、Peptococcus、Clostridium、Salmonella、Shigella、Serratia、Haemophilus、Brucella、及びその他の微生物から選択される。いくつかの実施形態では、細菌は、限定するものではないが、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas acidovorans、Pseudomonas alcaligenes、Pseudomonas putida、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepacia、Aeromonas hydrophilia、Escherichia coli、Citrobacter freundii、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Salmonella enteritidis、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Shigella sonnei、Enterobacter cloacae、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Serratia marcescens、Francisella tularensis、Morganella morganii、Proteus mirabilis、Proteus vulgaris、Providencia alcalifaciens、Providencia rettgeri、Providencia stuartii、Acinetobacter baumannii、Acinetobacter calcoaceticus、Acinetobacter haemolyticus、Yersinia enterocolitica、Yersinia pestis、Yersinia pseudotuberculosis、Yersinia intermedia、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus haemolyticus、Haemophilus parahaemolyticus、Haemophilus ducreyi、Pasteurella multocida、Pasteurella haemolytica、Branhamella catarrhalis、Helicobacter pylori、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter coli、Borrelia burgdorferi、Vibrio cholerae、Vibrio parahaemolyticus、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Kingella、Moraxella、Gardnerella vaginalis、Bacteroides fragilis、Bacteroides distasonis、Bacteroides 3452Aホモロジー群、Bacteroides vulgatus、Bacteroides ovalus、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides eggerthii、Bacteroides splanchnicus、Clostridium difficile、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium leprae、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium ulcerans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pyogenes、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus intermedius、Staphylococcus hyicus subsp.hyicus、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、またはStaphylococcus saccharolyticusから選択される。
【0113】
配列
配列番号1は、野生型GM-CSF:
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEAPRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQEである。
配列番号2は、サルグラモスチム:
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEALRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQEである。
配列番号3は、モルグラモスチム:
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQEである。
【0114】
定義
以下の定義は、本明細書にて開示する発明に関連して使用される。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0115】
「有効な量」は、コロナウイルス感染の治療に有効な薬剤に関連して使用される場合、コロナウイルス感染を治療または緩和するのに有効な量である。
【0116】
本明細書で使用される場合、「a」または「the」は、1つまたは複数を意味する場合がある。さらに、参照された数値表示に関連して使用される場合の「約」という用語は、その参照された数値表示に、その参照された数値表示の最大10%を加算または減算することを意味する。例えば、「約50」という言葉は、45から55の範囲を包含する。
【0117】
本明細書で言及されるように、全ての組成物の割合は、特に指定がない限り全組成物の重量に対するものである。本明細書で使用される場合、語「含む(include)」、及びその変形は、非限定的であることを意図しており、一覧の中の項目の記述は、この技術の材料、組成物、デバイス、及び方法で有用である可能性のある他の類似の項目を除外するものではない。同様に、用語「できる(can)」及び「場合がある(may)」、ならびにそれらの変形は、非限定的であることを意図しており、実施形態が特定の要素または特徴を含むことができるまたは含む場合があるといった記述は、それらの要素または特徴を含まない本技術の他の実施形態を除外するものではない。
【0118】
用語「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「有する(having)」と同義語である非限定的用語「含む(comprising)」は、本明細書では発明、本発明、またはその実施形態を説明及び請求するために使用されるが、「からなる(consisting of)」または「本質的に~からなる(consisting essentially of)」などの代替的用語を用いて、代替的に説明される場合がある。
【0119】
本発明は、以下の非限定的実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0120】
実施例1:COVID-19の治療のためのサルグラモスチム(LEUKINE)の臨床試験デザイン
急性低酸素呼吸不全を患うCOVID-19患者の酸素化ならびに短期的成績及び長期的成績の改善におけるサルグラモスチム(LEUKINE)の効果を調査するために、プロスペクティブランダム化非盲検介入研究を実施した(
図1)。
【0121】
18歳~80歳の参加候補に関して、その候補らがCOVID-19感染の症状を示す場合に、ARDSに対する臨床的、放射線学的、及び研究的基準を満たすかどうかを特定した。患者を2つの群:標準治療に加えて1日2回の125μcgのサルグラモスチムの吸入(IH)を受けるA群の患者、及び1日目~5日目(D1~5)のみ標準治療(SOC)を受けるB群の患者に分けた。D5後、患者が機械的換気を伴ってARDSに進行した場合、両群のそのような患者(C群及びD群のそれぞれ)に125μcg/m2のサルグラモスチムを静脈内投与(IV)した。治療後さらに10~20週間、患者の経過観察を継続する。
【0122】
除外基準には、サルグラモスチム(GM-CSF)、酵母由来生成物、またはLEUKINEの任意の成分などヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子に対して既知の過敏症を有する患者、他の臨床試験に登録している患者、または妊娠中もしくは授乳中の患者、末梢血の白血球数が1mlあたり25,000を超える及び/または活動性悪性腫瘍を有する患者、高用量の全身ステロイド(20mgを超えるメチルプレドニゾロンまたは同等物)投与中または炭酸リチウム療法を受けている患者、ならびに2000μcg/mlを超える血清フェリチンを有する患者を含めた。
【0123】
主な目的は、最初の5日間のLEUKINEの吸入投与がCOVID-19患者の酸素化を改善するかどうかを調査することであった。副次的な目的は、LEUKINEによる早期介入が良好な安全性プロファイルを有し、機械的換気及び/またはARDSへの進行に影響を与えるかどうかを判断することであった。
【0124】
実施例2:臨床結果
COVID-19感染患者へのLEUKINEの投与により、SOCと比較してD1~D6の肺胞-動脈(A-a)絶対勾配が減少した。これは、患者へのLEUKINEの投与により、COVID-19によって引き起こされる血中への酸素拡散のなんらかの異常が正常化し始めたことを示唆している(
図2)。さらに、LEUKINEによる治療により、SOCと比較して好酸球絶対数が増加した(
図3)。さらに重要なことに、LEUKINEによる治療により、SOCと比較して、患者内のリンパ球絶対数を維持しながらフェリチン及びCRPレベルが減少した(
図4~6)。これらはサイトカインストーム及び潜在的な毒性のマーカーである可能性があり、ゆえに、LEUKINEは、患者に安全に投与することができることを示唆している。LEUKINEによる治療後のD1~D6の免疫反応のさらなる評価により、SARS-CoV2抗原特異的HLD-DR+ CD38+ CD8+ T細胞の数の大幅な増加(
図8)、ならびに活性化したIFN-g及びIL-2分泌CD8+ T細胞の数の増加(
図9)が示された。しかし、LEUKINEによる治療によって、D1~D6の間で測定される、SARS-CoV2スパイク(S1)及びヌクレオカプシド(NCV)タンパク質に対するIgG抗体またはスパイク(S1)タンパク質に対するIgA抗体の著しい量の増加は見られなかった(
図7)。
【0125】
等価物
当業者は、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態に対する多数の等価物を、日常的な実験を超えない実験を使用して認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲の範囲に包含されることが意図される。
【0126】
参照による援用
本明細書で参照される全ての特許及び文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0127】
本明細書で使用される場合、全ての見出しは単に本明細書の構成のためのものであり、いかなる様式においても開示を制限することを意図したものではない。いかなる個々のセクションの内容も、全てのセクションに等しく適用可能であり得る。
【配列表】
【国際調査報告】