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特表2023-523252パワーオンリセット回路およびそれを備えた集積回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】パワーオンリセット回路およびそれを備えた集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/22 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
H03K17/22 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564407
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2021060087
(87)【国際公開番号】W WO2021219419
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】20172116.4
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド ヴィンチェンツォ
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX22
5J055BX41
5J055DX12
5J055DX22
5J055EX30
5J055EY03
5J055EY17
5J055EY21
5J055EZ04
5J055GX01
5J055GX07
(57)【要約】
パワーオンリセット回路は、基準電位(VSS)用端子(101)および供給電位(VDD)用端子(102)と、それらの間に結合された分圧器(130)とを備える。バンドギャップ回路の第1および第2トランジスタ(110、120)は、それぞれ、基準電位端子(101)に抵抗結合され、分圧器(130)に接続されたベースを有する。カレントミラー(150、160、170)は、第1および第2トランジスタ(110、120)のコレクタを、パワーオンリセット状態を示す出力信号(POR)を供給する出力端子(103)に結合する。第1補償トランジスタ(180)は、一方のトランジスタ(120)のコレクタと基準電位端子(101)との間に結合され、第2補償トランジスタ(190)は、外部からの干渉に応じて、寄生基板電流の影響を補償するために、出力端子(103)と基準電位端子(101)との間に結合される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電位(VSS)用端子(101)および供給電位(VDD)用端子(102)と、
前記基準電位(VSS)用端子(101)と前記供給電位(VDD)用端子(102)との間に結合された分圧器(130)と、
前記分圧器(130)に接続されたベースと、前記基準電位(VSS)用端子(101)に抵抗結合されたエミッタとコレクタとをそれぞれ有する第1トランジスタ(110)および第2トランジスタ(120)と、
前記第1トランジスタ(110)と出力端子(103)とに結合された第1カレントミラー(150)であって、前記出力端子は、前記基準電位(VSS)用端子(101)と前記供給電位(VDD)用端子(102)との間の電圧に応じて出力信号(POR)を供給するように構成された、前記第1カレントミラー(150)と、
前記第2トランジスタ(120)に結合され、第3カレントミラー(170)を介して前記出力端子(103)に結合された第2カレントミラー(160)と、
前記第1および第2トランジスタ(120)の一方の前記コレクタと前記基準電位(VSS)用端子(101)との間に結合された第1補償トランジスタ(180)と、
前記出力端子(103)と前記基準電位(VSS)用端子(101)との間に結合された第2補償トランジスタ(190)と、を備える、
パワーオンリセット回路。
【請求項2】
前記第1補償トランジスタ(180)および前記第2補償トランジスタ(190)は、それぞれベースと、コレクタと、エミッタとを有するバイポーラトランジスタを備え、前記ベースは、前記エミッタに接続される、請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項3】
前記第1トランジスタ(110)および前記第2トランジスタ(120)の前記コレクタはそれぞれコレクタ面積を有し、前記第1トランジスタ(110)の前記コレクタ面積は前記第2トランジスタ(120)の前記コレクタ面積の倍数である、請求項2に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項4】
前記第1補償トランジスタ(180)は前記第2トランジスタ(120)のコレクタに接続され、前記第1補償トランジスタのベースおよびエミッタは前記基準電位(VSS)用端子(101)に接続される、請求項3に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項5】
前記第1カレントミラー(150)は、前記第1トランジスタ(110)のコレクタと前記供給電位(VDD)用端子(102)とに接続されたダイオード接続トランジスタ(151)を有する入力経路と、前記入力経路の前記トランジスタ(151)の制御端子に接続された制御端子を有するトランジスタ(152)を有する出力経路とを備え、前記出力経路の前記トランジスタ(152)は、前記出力端子(103)と前記供給電位(VDD)用端子(102)との間に接続される、請求項1~4のいずれかに記載のパワーオンリセット回路。
【請求項6】
前記第2カレントミラー(160)は、前記第2トランジスタ(120)のコレクタと前記供給電位(VDD)用端子(102)とに接続されたダイオード接続トランジスタ(161)を有する入力経路と、前記第2カレントミラーの前記入力経路の前記トランジスタ(161)の制御端子に接続された制御端子を有するトランジスタ(162)を有する出力経路とを備え、第3カレントミラー(170)は、前記第2カレントミラー(160)の出力経路の前記トランジスタ(162)に接続されたダイオード接続トランジスタ(171)を有する入力経路と、前記第3カレントミラー(170)の入力経路の前記トランジスタ(171)の制御端子に接続された制御端子を有するトランジスタ(172)を有する出力経路とを備え、前記第3カレントミラー(170)の前記出力経路の前記トランジスタ(172)は、前記出力端子(103)と前記基準電位(VSS)用端子(102)との間に接続される、請求項1~5のいずれかに記載のパワーオンリセット回路。
【請求項7】
前記第2補償トランジスタ(190)のベース・コレクタ経路は、前記第3カレントミラー(170)の出力経路のトランジスタ(172)と並列に接続されている、請求項6に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項8】
前記第1トランジスタ(110)は、N1ユニットのコレクタ面積を有し、前記第2トランジスタ(120)は、N2ユニットのコレクタ面積を有し、前記第1補償トランジスタ(180)は、N3ユニットのコレクタ面積を有し、前記第2補償トランジスタ(190)は、N4ユニットのコレクタ面積を有し、前記第1カレントミラー(150)は、M1:1の電流変換比を有し、前記第2カレントミラー(160)は、M2:1の電流変換比を有し、前記第3カレントミラー(170)は、M3:1の電流変換比を有し、前記コレクタ面積および前記電流変換比は、以下の式で表される、
N1/M1=(N2+N3)/(M2×M3)+N4
請求項6または7に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項9】
前記第1トランジスタ(110)と前記第2トランジスタ(120)との間のコレクタ面積の比が4:1であり、前記第1カレントミラー(150)の電流変換比が3:1であり、前記第2カレントミラー(160)の電流変換比が6:1であり、前記第2トランジスタ(120)と前記第1補償トランジスタ(180)との間の前記コレクタ面積の比が1:1であり、前記第2トランジスタ(120)と前記第2補償トランジスタ(190)との間の前記コレクタ面積の比が1:1である、請求項1~8のいずれかに記載のパワーオンリセット回路。
【請求項10】
前記第1および第2トランジスタ(110,120)は、バイポーラトランジスタであり、前記カレントミラーのトランジスタ(151,152,161,162,171,172)は電界効果トランジスタである、請求項1~9のいずれかに記載のパワーオンリセット回路。
【請求項11】
前記第1トランジスタ(110)のエミッタに接続された抵抗(141)と、前記基準電位(VSS)用端子(101)に接続された別の抵抗(142)とを備える分圧器(140)をさらに備え、前記第2トランジスタ(120)のエミッタは、前記分圧器(140)の前記抵抗(141,142)間に配置されたノードに接続される、請求項1~10のいずれかに記載のパワーオンリセット回路。
【請求項12】
第1導電型(P)の半導体基板(300)であって、前記半導体基板(300)は、前記第1導電型(P)とは異なる第2導電型(N)のディープウェル(311)を有し、前記ディープウェル(311)は、前記第1および第2トランジスタ(110、120)のうちの少なくとも一方の前記コレクタを形成する、前記半導体基板(300)と、
前記半導体基板(300)内に配置された、前記第2導電型(N)のドーピング領域(320)と、をさらに備える、
請求項1~11のいずれかに記載のパワーオンリセット回路。
【請求項13】
前記パワーオンリセット回路は、集積回路(400)内に配置され、前記ドーピング領域(320、423)は、外部信号を受信または送信するように構成された前記集積回路の端子(422)に接続される、請求項12に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項14】
少なくとも1つのフォトダイオード(421)を有し、前記少なくとも1つのフォトダイオード(421)によって受信された光信号に応じて動作するように構成される、回路部分(420)と、
請求項1~13のいずれかに記載のパワーオンリセット回路(410)であって、前記回路部分(420)は、前記基準電位(VSS)用端子(101)および供給電位(VDD)用端子(102)間の電圧に応じて、前記パワーオンリセット回路(410)の出力信号(POR)によってイネーブルされるように構成される、前記パワーオンリセット回路(410)と、を備える、
光電子集積回路(400)。
【請求項15】
外部電気信号の受信および送信の少なくとも一方を行うように構成された少なくとも1つのパッド領域(422)と、前記パッド領域(422)に接続された静電放電構造体(423)とを有する回路部分(420)であって、前記静電放電構造体(423)は、前記パッド領域(422)に接続され、集積回路(400)の基板(300)に配置された、ドーピング領域(320)を有する、回路部分(420)と、
請求項1~14のいずれかに記載のパワーオンリセット回路(410)であって、前記回路部分(420)は、前記基準電位(VSS)用端子(101)および供給電位(VDD)用端子(102)間の電圧に応じて、前記パワーオンリセット回路(410)の出力信号(POR)によってイネーブルされるように構成される、請求項1~14のいずれかに記載のパワーオンリセット回路(410)と、を備える、
集積回路(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーオンリセット回路に関する。より具体的には、本開示は、バンドギャップ回路を形成する第1および第2トランジスタと、トランジスタのコレクタを出力端子に結合するためのカレントミラーとを有するパワーオンリセット回路に関する。また、本開示は、集積回路の一部を制御するためのパワーオンリセット回路を有する集積回路に関する。
【0002】
本特許出願は、2020年4月29日に出願された欧州特許出願第20172116.4号の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
パワーオンリセット(POR)回路は、電子デバイスにおいて広く使用されており、電源電圧の電流レベルを監視し、電源電圧が閾値レベルを下回るときに電子デバイスの機能ユニットをリセット状態に保ち、電源電圧が閾値レベルを上回るときにリセット状態を解除する。従来のPOR回路は、バイポーラトランジスタの対応する配置で確実に再現できるシリコンのバンドギャップ電圧に基づいてトリップポイントを決定するバンドギャップ配置を有する。電源電圧レベルが閾値を超えている限り、POR回路は常に電源オン状態を維持するように動作する。POR回路は、回路が工業用環境や自動車用環境で使用されるときに高温または電磁場などの外部干渉を受ける集積回路や、または集積回路がオプトエレクトロニクスデバイスとして使用されるときにPOR回路に入射する迷光を受ける集積回路に設けられることがある。このような干渉は、POR回路および集積回路を組み込んだ半導体基板に寄生基板電流を引き起こす可能性がある。寄生基板電流は、POR回路のバイポーラトランジスタのコレクタに作用して、垂直方向および横方向に流れる場合がある。基板電流は、POR回路のバイポーラトランジスタのコレクタと半導体基板との間の漏れ電流または光電流として、またはPOR回路のバイポーラトランジスタのコレクタを有する基板内に確立された寄生トランジスタを介して、引き起こされ得る。
【0004】
POR回路におけるバンドギャップ電流スイッチのスイッチング動作は、電流スイッチを形成するバンドギャップ回路のバイポーラトランジスタを流れる実質的に異なる電流の比に基づく。電流は出力端子にミラーリングされ、出力端子をハイサイドまたはローサイドの電圧供給端子に引き込む。外部干渉により寄生基板電流が発生すると、対応する電流がバンドギャップ電流スイッチのバイポーラトランジスタで引き起こされ、カレントミラーのミラー比が出力端子でプルアップおよびプルダウン電流に非対称な寄生寄与が発生する。その結果、POR回路は、供給電圧レベルがまだ十分で許容できる電圧レベルであるにもかかわらず、外部干渉事象に応じてパワーオンリセット状況を表す傾向を示す場合がある。回路が中断してリセットされ、データが失われる可能性があるため、このようなPOR回路のフェイルリセットスイッチングを回避することが望まれている。
【0005】
外部干渉が発生する環境下でも動作可能なPOR回路が求められている。工業用、自動車用および光電子用の、より堅牢に動作するPOR回路や、高温、EMI、光などの外部干渉の影響を受けにくいPOR回路が求められている。POR回路は、漏れ電流、横方向電流、光電流などの寄生電流を発生させる可能性のある高温、EMI、迷光などの外部干渉に応じたフェイルリセットを回避する必要がある。本開示の目的は、外部干渉を伴う環境においてより堅牢に動作するパワーオンリセット回路を提供することである。
【0006】
本開示の別の目的は、外部干渉下であっても、安定したトリップポイントを提供するパワーオンリセット回路を提供することである。
【0007】
本開示のさらに別の目的は、過酷な環境条件下でもリセット不良が発生せず、正確に動作するPOR回路を提供することである。
【0008】
本開示のさらに別の目的は、より正確に動作するESD保護された外部端子を用いた光電子集積回路または集積回路を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本開示によれば、上述の目的のうちの1つまたは複数の目的は、請求項1の特徴を備えるパワーオンリセット回路によって実現される。
【0010】
一実施形態によれば、パワーオンリセット回路は、電源電圧源に動作可能に結合され得る基準電位端子および供給電位端子備える。基準電位端子と供給電位端子の間に接続された分圧器は、供給電圧のレベルを感知する。第1および第2トランジスタは、分圧器の出力ノードに接続されるベースを有し、基準電位端子に抵抗ネットワークを介して結合されるエミッタを有する。第1カレントミラーは、第1トランジスタのコレクタと出力端子とに結合され、出力端子は、基準電位端子と供給電位端子との間の電圧に応じて出力信号を提供するように構成される。第2カレントミラーが第2トランジスタのコレクタに接続され、さらに第3カレントミラーを介して出力端子に結合される。パワーオンリセット回路は、第1および第2補償トランジスタをさらに備え、第1補償トランジスタは、第1および第2トランジスタのうちの一方のコレクタと基準電位端子との間に結合され、第2補償トランジスタは、出力端子と基準電位端子との間に結合される。
【0011】
第1および第2の補償用トランジスタデバイスは、パワーオンリセット回路を組み込んだ半導体基板内の寄生電流を補償する。例えば、寄生基板電流は、高温などの外部干渉によって生じるバイポーラトランジスタのコレクタ基板ダイオードを流れる漏れ電流であってもよい。寄生基板電流は、パワーオンリセット回路が光電子デバイスに含まれる場合に起こり得る、集積回路の裏面に迷光が結合したときに寄生フォトダイオードとして作用し得るバイポーラトランジスタのコレクタ基板ダイオードを通る光電電流であってもよい。寄生電流は、バイポーラトランジスタのコレクタ、半導体基板および他のドーピング領域によって寄生的に形成された寄生トランジスタに、他のドーピング領域が電磁的事象によってバイアスされたときに流れる横方向の電流であってもよい。これは、ドーピング領域が、電磁環境で使用される回路内のパッド領域などの外部端子に接続される場合であってもよい。このような回路には、そのようなドーピング領域を有する静電放電(ESD)構造がしばしば装備されており、EMIインパルスを基板に誘導し、それが回路に入るのを防いでいる。この場合、ESD構造のドーピング領域は、負にバイアスされてもよい。第1および第2補償トランジスタは、バンドギャップ回路のバイポーラトランジスタのうちの1つのバイポーラトランジスタのコレクタから基板への付加的な電流および出力端子から基板への別の付加的な電流を生成するという点で、このような寄生電流を補償する。基板は、基準電位に接続されてもよい。別の実施形態では、基板は、基準電位とは異なる別の電位に接続されてもよい。他の電位は、基準電位よりも低くてもよい。第1および第2トランジスタによって形成されるバンドギャップ電流スイッチに対する第1補償トランジスタの影響、および出力端子に対する第2補償トランジスタの影響は、カレントミラーを介して変換され、外部干渉による寄生的な非対称効果が実質的に補償される。
【0012】
第1および第2補償トランジスタは、POR回路のトリップポイントが安定化されるという点で、回路が外部干渉に対してより堅牢性を有するようにする。第1および第2補償トランジスタは、POR回路の出力端子で対称寄生プルアップおよびプルダウン電流寄与を生成し、それによりトリップポイントの安定性が維持され、フェイルリセットが回避される。
【0013】
第1および第2補償トランジスタは、バンドギャップ電流スイッチを形成するバイポーラトランジスタに整合させてもよい。第1および第2補償トランジスタは、それぞれ、ベース領域、コレクタ領域、およびエミッタ領域を有するバイポーラトランジスタから形成され、ベースが、コレクタまたはエミッタに接続されるようにしてもよい。第1および第2補償トランジスタのベース領域およびエミッタ領域は、互いに接続され、それにより、基板ダイオードが、当該補償トランジスタのコレクタ領域から半導体基板に形成される。半導体基板は、P導電性またはPドープされたものであってもよく、トランジスタは、Nドープコレクタおよびエミッタ領域ならびにPドープベース領域を有するNPNトランジスタである。第1および第2補償トランジスタは、バンドギャップ電流スイッチの第1および第2のバイポーラトランジスタを形成するために使用されるのと同じビルディングブロックを使用するため、バンドギャップトランジスタおよび補償トランジスタは、構造が一致し、寸法が一致し、ひいては電気的挙動が一致すると想定することができる。
【0014】
電流スイッチの第1および第2トランジスタは、トランジスタのベースにおけるスイッチポイントが約1.2Vとなるバンドギャップ回路を形成する。バンドギャップ機能は、第1トランジスタなど一方のトランジスタのコレクタ面積が、第2トランジスタのコレクタ面積の倍数であることで実現される。例えば、第1トランジスタのコレクタ面積は、4:1など、第2トランジスタのコレクタ面積の整数倍であってもよい。他の整数倍または他の関係であってもよい。通常、バイポーラトランジスタユニットが互いに並列に接続されることにより、整数倍が実現される。一例として、4つのユニットを接続して第1のトランジスタのコレクタ面積を4ユニットとし、1つのコレクタユニットを第2のトランジスタに用いて4:1のコレクタ面積比を実現してもよい。
【0015】
また、前記第1の補償トランジスタは、前記バンドギャップ電流スイッチのトランジスタのうち、前記第2のトランジスタの1ユニットの面積などのコレクタ面積が小さい方に接続され、前記第1の補償トランジスタのベースとエミッタとが互いに接続されるとともに基準電位端子と接続されていてもよい。
【0016】
バンドギャップ電流スイッチの第1のバイポーラトランジスタのコレクタは、第1カレントミラーを介して出力端子に結合される。第1カレントミラーは、第1トランジスタのコレクタと供給電位端子との間に結合されたダイオード接続トランジスタを有する入力経路を備える。第1カレントミラーは、別のトランジスタを有する出力経路をさらに備え、入力経路のダイオード接続トランジスタからの電位が出力経路のトランジスタを流れる電流を制御するように、第1カレントミラーの入力経路と出力経路のトランジスタの制御端子が互いに接続される。出力経路のトランジスタは、出力端子と供給電位端子の間に接続されている。第1カレントミラーは、入力経路を流れる電流と出力経路を流れる電流との間の規定された電流変換比を有し、出力端子での出力信号が、通常の動作条件下で信頼性の高いトリップポイントを提供する。一実施形態において、第1カレントミラーの電流変換比は、M1:1であってもよい。M1は整数値であってもよい。一実施形態において、第1カレントミラーの電流変換比は、6:1であってもよい。電流変換比は、出力経路に対する入力経路のトランジスタの幅対長さの比(W/L)に対応して実現され、これらのトランジスタは電界効果トランジスタである。
【0017】
対応する方法では、第2カレントミラーは、バンドギャップ電流スイッチの第2トランジスタのコレクタおよび供給電位端子に接続されたダイオード接続トランジスタを有する入力経路を備える。出力経路は別のトランジスタを含み、第2カレントミラーの入出力経路のトランジスタの制御端子は互いに接続されている。第2カレントミラーの出力経路は、第2カレントミラーの出力経路トランジスタと基準電位端子との間に接続されたダイオード接続トランジスタを有する入力経路と、出力端子と基準電位端子との間に接続された別のトランジスタを有する出力経路とを備える第3カレントミラーを介して出力端子に結合される。第3カレントミラーの入出力経路のトランジスタの制御端子は互いに接続されている。
【0018】
第2カレントミラーおよび第3カレントミラーは、第2カレントミラーおよび第3カレントミラーの結合電流変換比を形成する個々の電流変換比をそれぞれ有する。電流変換比は整数であってもよいが、有理数であってもよい。例えば、第2カレントミラーのカレントミラー比はM2:1であり、第3カレントミラーの電流変換比はM3:1であってもよい。一実施形態において、M2:1は3:1であってもよく、M3:1は1:1であってもよく、その結果、3:1の共同変換比となる。他の比率を用いてもよい。
【0019】
出力端子と基準電位端子との間に接続された第2補償トランジスタは、第3カレントミラーの出力経路トランジスタに並列に接続されている。一実施形態において、第2補償トランジスタのベース・コレクタ経路は、第3カレントミラーの出力経路トランジスタに並列に接続される。
【0020】
対応するカレントミラーの電流変換比を確立するために規定された幅/長さ(W/L)比を有する電界効果トランジスタであり得る、バイポーラトランジスタおよびカレントミラーのトランジスタなどのPOR回路内の整合素子は、高温、EMI、迷光などの外部事象によって生成される基板内の垂直または横方向の寄生基板電流が、出力端子における寄生プルアップおよびプルダウン電流に対する実質的に等しい寄与を生成するように設定される。第1および第2トランジスタのコレクタ面積はそれぞれN1およびN2であり、第1および第2補償トランジスタのコレクタ面積はそれぞれN3およびN4であり、第1、第2および第3カレントミラーのカレントミラー変換比はそれぞれM1:1,M2:1およびM3:1である。出力端子での寄生電流の寄与を均等にするためには、これらのコレクタ面積と電流変換比は次の式を満たす必要がある。
N1/M1=(N2+N3)/(M2×M3)+N4
【0021】
一実施形態において、第1および第2トランジスタのコレクタ面積は4:1、第1カレントミラーの電流変換比は3:1、第2カレントミラーの電流変換比は6:1、第3カレントミラーの電流変換比は1:1、バンドギャップ電流スイッチの第2トランジスタと第1および第2補償トランジスタとの間のコレクタ面積の比は1:1である。したがって、上述の式は次のように満たされる。
4/3=(1+1)/(6x1)+1
【0022】
一実施形態において、バンドギャップ電流スイッチのトランジスタは、電流スイッチのトリップポイントがトランジスタベースに供給されるバンドギャップ電圧が約1.2Vとなるようにバイポーラトランジスタであってもよい。第1および第2補償トランジスタは、バンドギャップ電流スイッチのバイポーラトランジスタとの十分な整合を実現するために、バイポーラトランジスタによっても実現される。カレントミラーのトランジスタは、電源電位端子に接続されたカレントミラー用PCHMOSトランジスタと、基準電位端子に接続されたカレントミラー用NCHMOSトランジスタを有する電界効果トランジスタで構成されている。電界効果トランジスタの幅/長さ(W/L)比は再現性があり、互いに一致するので、電流変換比を電界効果トランジスタで確実に設定できる。全体として、バンドギャップ電流スイッチのトランジスタの一方と出力端子に補償トランジスタを有するバイポーラトランジスタと電界効果トランジスタの組み合わせは、外部干渉の場合でも、規定された堅牢なトリップポイントを有するPOR回路を実現する。バンドギャップ電流スイッチのトリップポイントは、バイポーラNPNトランジスタのベースエミッタダイオードなどのシリコンダイオードのバンドギャップ基準電圧によって規定されるが、供給電位端子と基準電位端子との間の供給電圧レベルに関するスイッチング閾値は、供給電圧端子間に接続された分圧器によって設定することができる。分圧器は、バンドギャップ電流スイッチの第1および第2トランジスタのベースに接続された出力ノードまたは中間ノードを有する。分圧器は、抵抗分圧器、特にオーム抵抗器を有するオーム分圧器であってもよい。
【0023】
別の分圧器を、バンドギャップ電流スイッチのバイポーラトランジスタのエミッタと基準電位端子との間に設けてもよい。その分圧器の外部端子は、第1のバイポーラトランジスタのエミッタと基準電位端子との間に接続されてもよく、第2のバイポーラトランジスタのエミッタは、前記分圧器の抵抗間の中間ノードに接続されてもよい。この分圧器は、抵抗分圧器、特にオーム抵抗器を有するオーム分圧器であってもよい。
【0024】
POR回路は、P基板などの第1導電型の半導体基板に組み込まれてもよい。基板は、バンドギャップ電流スイッチトランジスタの1つのコレクタを形成するNウェルのような別の導電型のディープウェルドーピングを有する。Nウェルなどの第2導電型の別のドーピング領域を半導体基板内に配置してもよい。負にバイアスされたNウェルの場合、Nウェルドーピング領域からP-基板を介して寄生横方向トランジスタを形成するNウェルコレクタ領域へ横方向基板電流が発生し得る。これは、例えば、Nウェルドーピング領域が、EMIインパルスを受信する可能性のある外部端子に接続される場合が考えられる。本開示の原理によれば、基板電流の影響は、上述したように、第1および第2補償トランジスタによって補償されるため、出力端子におけるプルアップおよびプルダウン電流の寄与を等しくするという点で、EMIイベントを補償する追加の横方向基板電流が生成される。第1および第2補償トランジスタは、そのような電流を外部干渉状況下でのみ発生させるため、その消費電力は非常に低く、ほとんど無視できる。通常動作モードでは、第1および第2補償トランジスタによる電力消費は実質的にない。
【0025】
上述の目的の1つ以上を解決する光電子集積回路は、請求項14の特徴を備える。
【0026】
光電子集積回路は、1つまたは複数のフォトダイオードを有する回路部分を備える。フォトダイオードは、回路部分で受け取った光信号に応じて電流を生成する。POR回路は、フォトダイオードを有する集積回路の回路部分にリセット信号を供給する。リセット信号は、電源電圧が閾値を下回ると、回路部分をリセット状態に保ち、電源電圧が閾値を上回ると、回路部分のリセットを解除し、回路部分をイネーブルにする。光電子集積回路は、しばしば集積回路の裏面から照射されることが多いので、POR回路に入射する迷光により、バイポーラトランジスタのコレクタ領域と半導体基板との間の基板ダイオードが迷光に対するフォトダイオードを寄生的に形成し、不要な電流を発生することがある。本開示の原理によるパワーオンリセット回路は、補償トランジスタを有することで、バンドギャップ電流スイッチのバイポーラトランジスタの寄生フォトダイオードによって生じる非対称光電子効果が、安定したトリップポイントを維持する第1および第2補償トランジスタによって補償される。
【0027】
上述の目的の1つまたは複数は、請求項15の特徴を備える集積回路によっても実現される。
【0028】
一実施形態によれば、集積回路は、集積回路の表面に配置された金属パッドなどの少なくとも1つのパッド領域を備える回路部分を有する。POR回路は、パッド領域を有する集積回路の回路部分のリセットを解除することで、回路部分をイネーブルにする。パッド領域は、外部電気信号を受信または送信するためのボンディングワイヤを受けるために使用されてもよい。そのようなパッド領域には、電磁干渉(EMI)などの外部干渉が電子回路に侵入するのを防止するように、静電放電構造体が設けられていても良い。ESD構造は、EMIイベントが発生する可能性がある工業用または自動車用の集積回路で使用されることが多い。ESD構造は、集積回路の半導体基板内に配置されたドーピング領域を含んでもよく、ドーピング領域は、パッド領域に接続される。本開示の原理によるPOR回路は、バイポーラトランジスタのコレクタとESD構造のドーピング領域との間に横方向の基板電流を発生させてもよい。第1および第2補償トランジスタは、バンドギャップ電流スイッチのバイポーラトランジスタによって生成される寄生電流を補償する付加的な寄生電流を出力端子に生成するため、EMIインパルスによるESD動作が発生しても、POR回路の安定したトリップポイントを維持することができる。
【0029】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、単に例示的なものであり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することが意図されていることを理解されたい。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、1つまたは複数の実施形態を示し、説明と共に、様々な実施形態の原理および動作を説明するのに用いられる。図面中、異なる図における同じ要素は、同じ参照符号を用いて示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の原理によるパワーオンリセット回路の概略図。
図2】従来のPOR回路を示す図。
図3図1のパワーオンリセット回路の半導体基板の一部と外部端子の断面図。
図4図1のパワーオンリセット回路と、フォトダイオードおよび外部端子を有する機能回路部分とを有する集積回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態を示す添付の図面を参照して、本開示をより詳細に説明する。ただし、本開示は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。図面は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、本開示を明確に示すように構成されている。
【0032】
図2は、従来のパワーオンリセット(POR)回路を示す。従来の回路は、供給電圧VDD、VSSが供給される分圧器230によって制御される2つのバイポーラトランジスタ210、220を有するバンドギャップ電流スイッチを備える。供給電圧VDD、VSSが閾値を下回ると、電流はトランジスタ210を介して流れ、カレントミラー250を介してミラーリングされ、電流IPUを引き上げて出力端子230を引き上げ、供給電位VDDを供給する。出力信号PORはハイ(POR=1)で、パワーオンリセット状態を示す。供給電圧VDD、VSSが閾値を超えると、電流はトランジスタ210からトランジスタ220に切り替わる。トランジスタ220のコレクタ電流は、カレントミラー260、270を介してミラーリングされて、出力端子203で電流IPDを引き下げ、出力信号PORをローレベル(POR=0)に引き下げ、出力信号PORがリセット状態から通常動作を示すオン状態に変更するようにし、機能回路に電源電圧を供給することができるようにする。
【0033】
POR回路で高温、電磁波、迷光などのエネルギー衝撃が発生し、チップ内に基板電流が発生すると、トランジスタ210、220のコレクタ面積は、コレクタから集積回路の基板に電流IDNA、IDNBなどの接地電位VSSに寄生電流を引き込む。従来の一実施形態において、トランジスタ210のコレクタ面積は、トランジスタ220のコレクタ面積の4倍であり、カレントミラー250は3:1、カレントミラー260は6:1、カレントミラー270は1:1の電流変換比を有している。トランジスタ220の寄生電流IDNBは、1/6の比率で出力ノード203にミラーリングされる一方、トランジスタ210の寄生電流IDNAは、4/3の比率で出力ノード203にミラーリングされる。出力ノードのトリップポイントは、寄生基板電流を生成するエネルギー衝撃の場合に、出力端子203を高レベルに引っ張ってパワーオンリセット状況に反転する傾向が増加するように、電流IPUおよびIPDが等しい場合に発生する。POR回路が、出力信号POR=0を有する通常の非リセット動作条件を示す場合、外部干渉からの寄生電流がリセット条件POR=1を生成する回路のスイッチングを引き起こす可能性があり、その結果、パワーオンリセット回路によって制御される動作回路がリセットされ、その動作が意図せず中断され、全ての動作データが失われる可能性がある。このようなPOR不良を引き起こす可能性のある外部干渉は、例えば、工業用や自動車用環境、光電応用製品で起こりうる。
【0034】
図1は、本開示の原理によるPOR回路を示す。POR回路は、寄生基板電流の影響を補償する点で、寄生基板電流を発生する外部の影響に対して堅牢性を有する。図1のPOR回路は、ベース端子が互いに接続され、抵抗性オーム分圧器130の出力ノードに接続された、バイポーラトランジスタ110、120を備えるバンドギャップ回路を有する。分圧器130は、基準電位VSSおよび供給電位VDD用の端子101、102間にそれぞれ接続されたオーム抵抗器131、132を有する。トランジスタ110、120のエミッタは、基準電位VSS用端子101に抵抗結合される。分圧器140がトランジスタ110、120のエミッタと基準電位端子101との間に接続されている。分圧器140は、トランジスタ110のエミッタと基準電位端子101との間に接続されたオーム抵抗器141、142を有する。分圧器140の出力ノードである中間またはミドルノードは、トランジスタ120のエミッタに接続される。トランジスタ110は、トランジスタ120よりも大きなコレクタ面積を有する。トランジスタ110は、N1ユニットのコレクタ面積を有し、トランジスタ120は、N2ユニットのコレクタを有する。上述した分圧器およびトランジスタの配置は、例えば1.2Vのシリコンのバンドギャップ電圧にトリップポイントを有するバンドギャップ回路を構成する。トランジスタ110、120のベース電位がバンドギャップ電圧を下回ると、電流がトランジスタ110を流れる。ベース電位がバンドギャップ電圧よりも高い場合、電流がトランジスタ120を流れ、トランジスタ110、120がバンドギャップ電流スイッチを確立する。分圧器130の抵抗器131、132は、バンドギャップ電流スイッチのトリップポイントが電源電圧VDD、VSSの所望のレベルで生じるように設計することができる。
【0035】
トランジスタ110のコレクタ電流は、カレントミラー150を介して出力端子103にミラーリングされ、出力端子103にプルアップ電流IPUを供給する。トランジスタ120のコレクタ電流は、ハイサイドカレントミラー106及びローサイドカレントミラー170を介して出力端子103にミラーリングされ、出力端子103にプルダウン電流IPDを供給する。カレントミラー150は、トランジスタ110のコレクタと供給電位端子102との間に接続されたダイオード接続トランジスタ151を有する入力経路を備える。カレントミラー150は、出力端子103と供給電位端子102との間に接続されたトランジスタ152を有する出力経路を更に備える。トランジスタ151、152の制御端子は互いに接続されている。トランジスタ151の制御端子は、そのドレイン端子に接続され、ダイオードを形成する。トランジスタ151を流れる電流は、トランジスタ152を流れる対応する電流を制御する。トランジスタ151、152の寸法に応じて、これらのトランジスタを流れる電流は、M1:1の比率を有する。電流変換比は、トランジスタ151、152のゲート面積の幅と長さ(W/L)の関係によって表されるトランジスタ151、152のサイズの関係によって設定される。
【0036】
トランジスタ151、152はPチャネルMOSFETであるが、バンドギャップ部分のトランジスタ110、120はバイポーラNPNトランジスタである。バイポーラトランジスタは、再現性よく製造することができる規定されたスイッチングポイントを提供する。電界効果トランジスタのW/L比は、電界効果トランジスタに所望の電流を得るために、十分に制御して製造することができる。図1の回路は、PチャネルとNチャネルのMOSFETなど、主に2極のCMOSデバイス専用の集積チップ上に実現され、さらにNPNトランジスタなどの少なくとも1種類のバイポーラトランジスタを形成することが可能である。
【0037】
カレントミラー160は、トランジスタ120のコレクタと供給電位端子102との間に接続されたダイオード接続トランジスタ161を有する入力経路と、供給電位端子102に接続されたトランジスタ162を有する出力経路とを備える。トランジスタ161、162は、ゲート端子が互いに接続されたPチャネルMOSFETである。トランジスタ162を流れる電流は、カレントミラー170によって出力端子103にさらにミラーリングされる。カレントミラー170は、トランジスタ162のドレインと基準電位端子101との間に接続されたダイオード接続トランジスタ171を有する入力経路を有する。カレントミラー170の出力経路は、出力端子103と基準電位端子101との間に接続されたトランジスタ172を有する。NチャネルMOSFET171、172のゲート端子は、互いに接続される。カレントミラー160の電流変換比はM2:1であり、カレントミラー170の電流変換比はM3:1である。
【0038】
一実施形態において、トランジスタ110、120のコレクタ面積およびカレントミラー150、160、170の電流変換比は、以下のようにすることができる。トランジスタ110は、4ユニットであってもよい、N1ユニットのコレクタ面積を有する。トランジスタ210は、1ユニットであってもよい、N2ユニットのコレクタ面積を有する。カレントミラー150は、3:1の電流比、カレントミラー160は、6:1の電流比、カレントミラー170は、1:1の電流比を有してもよい。同様の又は同一の効果を生み出す他の比率であってもよい。一実施形態において、トランジスタ110は、バイポーラユニットの整数倍で生成され、当該ユニットは、所望のコレクタ面積を実現するように互いに並列に接続される。バイポーラユニットを並列に集めることで、所望のサイズのコレクタを規定し、よく制御して製造することができる。
【0039】
通常動作モードにおける図1の回路の機能は、トランジスタ180、190が通常動作モードにおいて認識可能な電流を流さないので、図2の従来の回路について説明した機能と同じである。高温、電磁干渉、迷光などの基板電流を引き起こす外部干渉の場合、図3を参照して説明されるように、主に垂直または主に横方向の基板電流が生成され得る。
【0040】
図3は、トランジスタ110、120などのバイポーラトランジスタのうちの1つの断面図である。トランジスタのうちの1つのドーピング領域は、P導電型の半導体基板300内に配置される。ディープドーピングウェル311は、N導電型のバイポーラトランジスタのコレクタを形成する。コレクタウェルは、バイポーラトランジスタのベースを形成するP導電型のドーピング領域312を有する。Pドーピング領域312内のN導電型のドーピング領域313は、バイポーラトランジスタのエミッタを構成する。寄生基板ダイオード330は、コレクタのディープNウェルドーピング領域311とP基板300とによって形成される。高温の場合、寄生基板ダイオード330を流れる漏れ電流341は増加し、出力端子103における前記漏れ電流のミラーリングされたバージョンの寄与に関して無視できなくなることがある。また、例えば、チップの裏面を介して半導体チップに結合した迷光は、寄生基板ダイオードとして動作する寄生フォトダイオードによって、341のような光電流を発生することがある。迷光は、チップが裏面から照射される光電子チップである場合、POR回路を搭載するチップ部分の裏面に入射することがある。
【0041】
さらに、半導体基板300は、他の電気的理由のためのディープNウェルであってもよい320などのNウェルを有してもよい。Nウェル320は、パッド領域321に接続されたボンドワイヤを介して電気信号を受信または送信するための接続領域を形成する金属パッド321に結合され得るESD保護構造の一部であってもよい。寄生トランジスタ340は、バイポーラトランジスタのディープNウェルドーピング領域311、P基板300、およびESD保護構造のNウェル320によって確立される。基板300は、通常、接地電位VSSおよび接続された接地電位端子101によってバイアスされる。電磁干渉(EMI)インパルスは、ディープNウェルドーピング領域320を、寄生トランジスタ340が導通し、横方向の寄生電流342を生成し得るように、基準電位VSS未満の電位にまで負にバイアスすることがある。図2を参照して上述したように、垂直および横方向の基板電流が、トランジスタ110、120のコレクタに電流を発生させ、これがカレントミラー150、160および170を介して非対称に出力ノードにミラーリングされることで、外部干渉によって出力信号PORがハイレベルにリセットされ、POR不良を引き起こす危険性がある。
【0042】
このような不良を回避し、POR回路を基板電流に対して、また上述の外部衝撃に対して堅牢性を有するようにするために、補償トランジスタ180、190が設けられる。補償トランジスタ180は、トランジスタ120のコレクタおよび接地電位端子101に接続されている。示された実施形態では、補償トランジスタ180は、トランジスタ110、120のうち、1ユニット以上の、例えば4ユニットのコレクタ面積を有するトランジスタ110と比較して、1ユニットのコレクタ面積を有するトランジスタ120である小さい方のコレクタ面積を有する方に接続されている。補償トランジスタ180が、トランジスタ110などの、より大きなコレクタ面積を有する他のトランジスタに接続される状況が起こりうる。補償トランジスタ190は、出力端子103と基準電位端子101との間に接続されている。同時に、補償トランジスタ190は、トランジスタ172などの第3カレントミラー170の出力経路に並列に接続される。補償トランジスタ180、190は、出力端子103における寄生プルアップ電流および寄生プルダウン電流の全体寄与度が、それらが互いに等しくなり、かつPOR出力信号が供給電圧または基準電圧に向かう傾向を回避するように、実質的に同じとなるように決定される。補償トランジスタ180、190は、端子103における出力信号PORに関して、バンドギャップ回路のバイポーラトランジスタの基板電流によって生成される上述の非対称性を補償するように設計される。図3に示されるドーピング領域の配置は、補償トランジスタ180、190にも対応する。
【0043】
一実施形態において、補償トランジスタ180、190は、Nウェルドーピング領域および半導体基板を備える基板ダイオードを備えてもよい。この点に関し、トランジスタ180、190は、ベースがエミッタに接続されたバイポーラトランジスタとして実現することができる。図1に示す実施形態では、トランジスタ180は、ベース端子181がエミッタ端子183に接続されたバイポーラトランジスタとして実現され、両者は接地電位端子101に接続される。同様に、トランジスタ190は、ベース端子とエミッタ端子が互いに、また接地電位端子101に接続されたバイポーラトランジスタとして実現される。さらに、補償トランジスタ180、190のコレクタ面積は、外部干渉に対する出力ノード103におけるプルアップ電流およびプルダウン電流への寄与度が実質的に均等化されるようになっている。以上説明したような、トランジスタ110,120のコレクタ面積とカレントミラー150,160,170の電流変換比の場合、補償トランジスタ180のコレクタ面積としてN3を1ユニット、補償トランジスタ190のコレクタ面積としてN4を1ユニットとすることが有用である。補償トランジスタ180、190はバイポーラトランジスタユニットであるため、トランジスタ110、120を形成するトランジスタユニットに整合される。上述のトランジスタ180,190は、ベース端子が短絡されたバイポーラトランジスタを用いた基板ダイオードとして実現されており、通常動作モード時にはオフ状態であるため、通常動作時の消費電流に寄与しない。これらは、外部干渉の間に基板電流を流すだけなので、その消費電流は無視できる。
【0044】
外部干渉の場合、トランジスタ110のコレクタは、寄生基板電流IDN1を生成する。トランジスタ120、180のジョイントコレクタは、別の基板電流IDN2を生成する。トランジスタ190は、別の基板電流IDN3を生成する。出力端子103におけるプルアップ電流IPUに対する寄生基板電流IDN1の寄与度は、トランジスタ110のコレクタ面積が4ユニット、カレントミラー150のカレントミラー比が3:1であることを考慮すると、4/3電流ユニットである。出力端子103におけるプルダウン電流に対する寄生電流IDN2、IDN3の寄与度は、トランジスタ120、180のコレクタ面積がそれぞれ1ユニットであり、カレントミラー160のミラー比が6:1、カレントミラー170のミラー比が1:1、トランジスタ190のコレクタユニットが1であることを考慮すると、(1+1)/(6x1)+1=4/3である。したがって、図1の回路における寄生基板電流に対する出力端子103でのプルアップおよびプルダウン電流の寄与度は、それぞれの場合において4/3であり、それにより均等化される。
【0045】
より一般的には、バイポーラトランジスタの任意のコレクタ面積、およびカレントミラーの任意の電流比に対して、それぞれN1、N2、N3、N4のコレクタ面積を有するトランジスタ110、120、180、190と、それぞれM1:1、M2:1、M3:1の電流変換比を有するカレントミラー150、160、170は、面積および比率の値が、出力端子103における基板電流のプルアップおよびプルダウンの寄与が均等になるよう次式に従う必要がある。
N1/M1=(N2+N3)/(M2×M3)+N4
【0046】
本開示の原理による図1のPOR回路は、図4を参照して説明されるように、工業用、自動車用、または光電応用製品を対象とする集積回路に関連して有用であり得る。
【0047】
図4は、同じチップ400上にモノリシック集積された回路部分420のパワーオンリセットを制御するためにPOR信号を生成する図1のPOR回路410を有する集積回路400を示す。回路部分420は、フォトダイオード421と、静電放電(ESD)構造423が接続されるパッド領域422とを有する。回路部分420は、図4に示すように、フォトダイオード421またはパッド/ESD構造422、423などの要素のうちの1つのみを含んでもよいし、それらの両方を含んでもよい。
【0048】
フォトダイオード421は、赤外光またはUV光を含む光学的可視光および/または不可視光の入射に応じて電流を生成する。フォトダイオードは、チップの裏面から入射する光によって光電流を発生させる裏面照射用として実現されることが多い。また、迷光は、POR回路部分410の裏面に入射し、フォトダイオードとして寄生的に作用し得る寄生基板ダイオードを介して寄生光電流を発生させる場合がある。図1のPOR回路410は、スイッチングポイントに対する基板電流の寄与度が対称的であり、かつ、出力端子103における信号PORのトリップポイントが変化しないように補償されるという点で、上記迷光による基板電流の発生に対して堅牢性を有する。
【0049】
工業用または自動車用環境におけるチップ400の使用においては、チップが高温条件下で動作すること、または電磁干渉(EMI)事象にさらされることを必要とする場合がある。高温になると,寄生基板ダイオードを介したリーク電流が増加する場合がある。EMI事象は、パッド領域422に接続され得るESD構造423に影響を及ぼす場合がある。パッド領域422は、ボンドワイヤ424をパッド領域422に接着できるように、チップの上面に設けられた外部からアクセス可能な金属領域である。パッド領域422および/またはボンドワイヤは、ESD構造423が寄生EMI信号をグランドに排出するように、EMIインパルスの場合に寄生アンテナの機能を有していてもよい。ESD構造423は、比較的大きなEMIエネルギーを排出するように設計された、図3に示される320のようなドーピング領域を含んでもよい。この場合、図3に示す340のような寄生横方向トランジスタは、横方向基板電流342を生成することができる。図1のPOR回路410は、POR出力信号のトリップポイントを変更することなく、POR回路内の寄生基板電流を補償し、均一化するため、高温およびEMI状況に対して堅牢である。
【0050】
添付の特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。本開示の精神及び実質を組み込んだ開示された実施形態の修正、組み合わせ、下位の組み合わせ及び変形は当業者に想起され得るので、本開示は、添付の特許請求の範囲内のすべてを有すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】