IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ランダ ラボ (2012) リミテッドの特許一覧

特表2023-523260毛髪繊維をスタイリングするための組成物、キット及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】毛髪繊維をスタイリングするための組成物、キット及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20230526BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230526BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/58 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/9767 20170101ALI20230526BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/04
A61K8/35
A61K8/9789
A61K8/06
A61K8/58
A61K8/362
A61K8/41
A61K8/40
A61K8/37
A61K8/36
A61K8/98
A61K8/9767
A61K8/31
A61K8/49
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564529
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2021053720
(87)【国際公開番号】W WO2021224784
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】2006573.6
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2010599.5
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522413102
【氏名又は名称】ランダ ラボ (2012) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】アブラモビッチ,サジ
(72)【発明者】
【氏名】アッシャー,タマール
(72)【発明者】
【氏名】バークマン,アリナ
(72)【発明者】
【氏名】ブラフシュタイン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】コジョカロ,ニール
(72)【発明者】
【氏名】カートン,イーシャイ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC231
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC252
4C083AC291
4C083AC331
4C083AC372
4C083AC421
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC511
4C083AC521
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC841
4C083AC861
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD162
4C083AD531
4C083CC34
4C083DD33
4C083EE25
(57)【要約】
本開示は、ボリュームを与えること、縮毛矯正すること、弛緩させること、巻き毛にすること、又は毛髪の形状に任意の他の所望の改変を適用することを含む、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするための方法に関するものである。本方法は、少なくとも1つの毛髪浸透性フェノール系モノマーを含むヘアスタイリング組成物を毛髪に適用し、モノマーを毛髪内に浸透させ、このようなモノマーを硬化させて、毛髪がその生来の形状に戻る傾向を克服できるようなポリマーを内部形成することを含む。毛髪が所望の形状に改変された形状の状態の間に硬化を行う場合に、得られるポリマーは改変形状を維持することができる。また、適切な組成物及びそれを調製するためのキットも開示される。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生来の形状を有する未処理の哺乳類毛髪繊維をスタイリングする方法であって、前記方法は:
a)個々の毛髪繊維にヘアスタイリング組成物を適用することであり、ここで前記ヘアスタイリング組成物は、10,000g/mol以下の平均分子量を有する少なくとも1つのエネルギー硬化性フェノール系モノマー(PBM)及び水を含み、前記組成物のpHは、モノマーの毛髪繊維への浸透を可能にし、前記pHは、1~3.5又は5~11の範囲内であること;
b)前記PBM(複数可)の毛髪繊維への少なくとも部分的な浸透を確実にするために、前記ヘアスタイリング組成物を少なくとも5分間、毛髪繊維と接触したままにすること;及び
c)毛髪繊維内のPBMの少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させるためにエネルギーを適用することであり、ここで処理済み毛髪繊維が得られるように、前記硬化は前記毛髪繊維が少なくとも50℃の温度である間に起こること;
を含み、
前記ヘアスタイリング組成物は、0.2wt%未満の低分子反応性アルデヒド(SRA)を含有し、前記SRAは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される、前記方法。
【請求項2】
前記エネルギーは、前記毛髪繊維が所望の改変形状にある間に適用され、前記改変形状は、前記生来の形状とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのPBMは、式I:
【化1】
のものであり、式中、
i)R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、直鎖状、分岐状若しくは環状の、置換若しくは非置換の、C~C20アルキル、C~Cアルコキシ、C~Cアリル、フェニルエステル、又はグリコールエステルであり;かつ
ii)Rは、水素原子、ヒドロキシル、又は飽和若しくは不飽和のCアルキルであり、Xは、15以下の整数であり、かつYは、2X+1-nに等しく、nは、0、2、4及び6から選択される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、メチル、2-プロペニル、フェニルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、又はメトキシであり;かつRは、任意に、水素原子、ヒドロキシル、又はC1531-nである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのPBMは、カシューナッツ殻液(CNSL)又はその成分である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのPBMの合計濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して少なくとも0.1wt%、少なくとも0.25wt%、少なくとも0.5wt%、若しくは少なくとも0.9wt%、及び多くとも5wt%、多くとも3wt%、多くとも2wt%、若しくは多くとも1.5wt%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヘアスタイリング組成物は、架橋剤及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含み、前記硬化促進剤は、毛髪繊維内の前記PBMと同じ相に存在するように適合されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヘアスタイリング組成物は、前記PBM及び前記硬化促進剤のうちの少なくとも1つと交差重合することができる少なくとも1つの官能基を含有する少なくとも1つの補助重合剤をさらに含み、前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、及び二重結合から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘアスタイリング組成物は、少なくとも1つの共溶媒をさらに含み、前記少なくとも1つの共溶媒は、水中油型乳剤を形成するのに十分な量であり、前記少なくとも1つのPBMは、前記乳剤の油相に存在し、かつ前記少なくとも1つの共溶媒は、毛髪繊維内で前記PBMと同じ相に存在するように適合されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘアスタイリング組成物を毛髪繊維に適用する前に、A- 前記少なくとも1つのPBM、及び/又は前記少なくとも1つの硬化促進剤、及び/又は前記少なくとも1つの補助重合剤は、水と混合する前に予備重合され、及び/又は、B- 毛髪繊維は、a)毛髪繊維を洗浄すること;及びb)毛髪繊維を乾燥すること、のうちの少なくとも1つにより前処理され、前記乾燥は、任意に、毛髪繊維を少なくとも40℃の温度へ、少なくとも5分間加熱することによって実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の後に、I]少なくとも部分的な硬化をもたらすためにエネルギーを適用する前に、すすぎ液で毛髪繊維をすすぐことによって毛髪繊維の表面から過剰なヘアスタイリング組成物を除去することであり、前記すすぎ液は、任意に、洗剤及び硬化促進剤のうちの少なくとも1つを含むこと、及びII]硬化促進剤を含む硬化組成物を毛髪繊維に適用すること、のうちの少なくとも1つをさらに含み;及び/又は、工程c)の後に、III]洗浄液で毛髪繊維を洗浄すること、及びIV]コンディショニング液で毛髪繊維をコンディショニングすること、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理済み繊維及び未処理繊維は、熱分析によって測定されるとおり、互いに4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
哺乳類の毛髪繊維の形状を改変するためのヘアスタイリング組成物であって、前記組成物は、a)10,000g/mol以下の平均分子量を有する少なくとも1つのエネルギー硬化性フェノール系モノマー(PBM);及びb)水を含み;前記組成物のpHは、毛髪繊維へのモノマーの浸透を可能にし、前記pHは、1~3.5又は5~11の範囲内であり;前記ヘアスタイリング組成物は、以下の特徴:
a- 前記ヘアスタイリング組成物は、0.2wt%未満の低分子反応性アルデヒド(SRA)を含有することであり、前記SRAは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択されること;
b- 前記ヘアスタイリング組成物は、1wt%未満のアミノ酸を含有すること;
c- 前記ヘアスタイリング組成物は、1wt%未満のペプチドを含有すること;及び
d- 前記ヘアスタイリング組成物は、1wt%未満のタンパク質を含有すること、
のうちの1つ又は複数をさらなる特徴とする、前記ヘアスタイリング組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの前記PBMは、式I:
【化2】
のものであり、式中、
i)R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の、置換若しくは非置換の、C~C20アルキル、C~Cアルコキシ、C~Cアリル、C~Cフェニルエステル、又はC~Cグリコールエステルであり;かつ
ii)Rは、ヒドロキシル、又は飽和若しくは不飽和のCアルキルであり、Xは、15以下の整数であり、かつYは、2X+1-nに等しく、nは、0、2、4及び6から選択される、
請求項13に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのPBMは、式Iのものであり、かつR、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、メチル、2-プロペニル、フェニルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、又はメトキシであり;かつRは、水素原子、ヒドロキシル、又は式C1531-nのアルキルである、請求項14に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つのPBMは、以下の式:
【化3】
のいずれかから選択され、
式中、nは、0、2、4及び6から選択される、請求項13~15のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つのPBMは、カシューナッツ殻液(CNSL)又はその成分である、請求項13~16のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのPBMの合計濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して少なくとも0.1wt%、少なくとも0.25wt%、少なくとも0.5wt%、若しくは少なくとも0.9wt%、及び多くとも5wt%、多くとも3wt%、多くとも2wt%、若しくは多くとも1.5wt%である、請求項13~17のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項19】
架橋剤及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含み、前記硬化促進剤は、毛髪繊維内でPBMと同じ相に存在するように適合されている、請求項13~18のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの硬化促進剤は、少なくとも1つの架橋剤であり、任意に、少なくとも2つのシラノール基及び多くとも1,000g/molの分子量を有する反応性シラン、反応性シランとアミノシランとの混合物、多塩基酸、ポリオール、ポリアミン、モノ及びジ-グリシジル、ジイソシアネート、アリル化合物、ポリフェノール、アクリレート、及び最大15個の炭素原子を含み、かつ二重結合の開裂時に少なくとも2つのラジカルを形成できる複数の二重結合を含有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルケン化合物から選択され、前記少なくとも1つの架橋剤の合計濃度は、さらに任意に、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、少なくとも0.05wt%、少なくとも0.1wt%、若しくは少なくとも0.5wt%、及び多くても10wt%、多くても5wt%、多くても2.5wt%、多くても2wt%、若しくは多くても1.5wt%である、請求項19に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つの硬化促進剤は、縮合重合及び付加重合のうちの少なくとも1つに適した硬化加速剤であり、任意に、金属錯体、金属石鹸、金属サレン及び有機過酸化物から選択され、前記少なくとも1つの硬化加速剤の合計濃度は、さらに任意に、ヘアスタイリング組成物の重量に対して少なくとも0.001wt%であり、かつ多くても5wt%である、請求項19又は20に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項22】
前記ヘアスタイリング組成物は、PBM及び硬化促進剤の少なくとも1つと交差重合することができる少なくとも1つの官能基を含有する少なくとも1つの補助重合剤をさらに含み、前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、及び二重結合から選択され、前記補助重合剤の濃度は、任意に、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、0.01wt%~1wt%の間、0.01wt%~0.8wt%の間、0.02wt%~0.6wt%の間、又は0.03wt%~0.5wt%の間である、請求項13~21のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1つの補助重合剤は、シェラック、ロジンガム、アルキルアリール置換マレエート及びサリシレート、テルペン及びテルペノイドを含む炭素原子が16以上のアルケン鎖を有する不飽和脂肪油、脂肪アミン、脂肪酸、及び前記不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む群から選択される、請求項22に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項24】
前記組成物は:A- 少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC~C10アルコール、水混和性エーテル、非プロトン性溶媒、エステル、及び鉱物油若しくは植物油からなる群から選択される共溶媒であり、ここで前記共溶媒は、前記組成物の形態を制御する量であり、前記ヘアスタイリング組成物の前記形態は、水中油型乳剤又は単相の組成物であるもの;及び/又は、B- 乳化剤、湿潤剤、増粘剤及び電荷調整剤を含む群より選択される添加剤、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項13~23のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項25】
軟化温度を有する合成ポリマーを形成する、少なくとも部分的に硬化したエネルギー硬化性フェノール系モノマー(PBM)(複数可)を内側部分に含む哺乳類毛髪繊維であって、前記毛髪繊維は:
i)ホルムアルデヒドとアミノ酸との反応生成物を0.2wt%未満有することであり、ここで前記反応生成物はチアゾリジン、ヘミチオアセタール、チアジナン、オキソゾリジン、及び1,3-オキサジナンチアゾリジンを含む群から選択されること;
ii)DSCによって測定されるとおり、未処理の毛髪繊維に対して、4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示すこと;
iii)同様の未処理繊維の破断応力より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも25%大きい破断応力を有すること;及び
iv)同様の未処理毛髪繊維の95%以上、100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、又は120%以上の靭性(toughness)を有すること;
のうちの少なくとも1つを特徴とし、
前記PBMは、請求項13~24のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物の少なくとも1つのPBMに相当する、前記哺乳類の毛髪繊維。
【請求項26】
ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される0.2wt%未満の低分子反応性アルデヒド(SRA)を有することをさらに特徴とする、請求項25に記載の哺乳類の毛髪繊維。
【請求項27】
哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするためのキットであって:
(a)10,000g/mol以下の平均分子量を有する少なくとも1つのエネルギー硬化性フェノール系モノマー(PBM)を含有する第1のコンパートメント;及び
(b)
i. PBM(複数可)の毛髪繊維への浸透性を高めるように選択されたpHの水;又は
ii. 少なくとも1つのpH調整剤;
のいずれかを含有する第2のコンパートメント
を含み、
これらのコンパートメントを混合することで、単相組成物又は水中油型乳剤を生成し;かつ
前記PBMは、請求項13~24のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物のうちの少なくとも1つのPBMである、前記キット。
【請求項28】
前記少なくとも1つのPBMは、予備重合される、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
i)架橋剤及び硬化加速剤から選択される、少なくとも1つの硬化促進剤;
ii)少なくとも1つの補助重合剤;
iii)少なくとも1つの共溶媒;及び
iv)乳化剤、湿潤剤、増粘剤、及び電荷調整剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤;
のうちの少なくとも1つをさらに含み、
i)~iv)のうちのいずれか1つは、キットの保管中に前記コンパートメントの他の成分と反応しないように、独立して、同じ又は異なるコンパートメントに配置される、請求項27又は28に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年5月4日に出願された英国出願第2006573.6号及び2020年7月9日に出願された英国出願第2010599.5号のパリ条約優先権を主張するものである。前述のすべての出願の全開示は、参照することにより、すべての目的のために本明細書に完全に記載されているとして本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、哺乳類の毛髪などのケラチン性繊維をスタイリングするための組成物、キット、及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
哺乳類(例えば、ヒト)の毛髪繊維は層状構造であり、最も外側の層は毛小皮(キューティクル)であり、ケラチンタンパク質でできた薄い保護層であり、毛皮質(コルテックス)と毛髄(メデュラ)とで構成される中央の毛幹を取り囲んでいる。この毛小皮(キューティクル)層は、屋根の屋根板のように、積層式に互いに重なり合う鱗片状の細胞から形成されている。毛髪繊維の物理的な外観と形状は、繊維内のケラチン鎖間の様々な相互作用によって決まり、ケラチンのアミノ酸組成は、可能な相互作用の種類の要因となる。システイン側鎖はジスルフィド結合の形成を可能にするが、他のアミノ酸残基は水素結合、疎水性相互作用、イオン結合、クーロン相互作用などのより弱い相互作用を形成することができる。繊維内のそのような反応基の存在、繊維に沿ったそれらの割合、並びに繊維の構成に起因する能力により、これらの相互作用の発生及び繊維又は複数のそのような繊維によって構成される毛髪の外観が決定される。
【0004】
隣接する2つのシステイン残基のチオール側鎖の間に形成することが可能なジスルフィド共有結合は、繊維の構造の安定性、耐久性及び機械的特性の主な原因となり、様々な手順によるこれらの結合の破壊は、永久的なヘアスタイリング(主に矯正縮毛(ストレート)化又はウェーブ化)の最も現代的な方法の背後にあるメカニズムである。
【0005】
「日本の縮毛矯正(Japanese straightening)」と呼ばれるそのような手順の1つは、例えばメルカプタン又は亜硫酸塩などの還元剤を使用してジスルフィド結合を選択的に切断し、それによりケラチンが機械的に弛緩した後、遊離スルフヒドリル基が再酸化され、髪は目的のスタイリングを達成するのに適した形状を保つ間に、ジスルフィド結合が工程の最後に再結合される。髪を所望の形状(ストレートかウェーブかは問わず)に永久的に適合させるためのさらなる圧迫を誘導するために、ホットアイロン又はドライヤーなどの様々なスタイリング手段を用いることができる。
【0006】
毛髪の永久的なスタイリングの別の手順は、pHが11.0超過の強アルカリ剤など、さらに強い還元剤を使用するものである。この条件下では、pH誘導性の膨潤した毛髪にアルカリ剤が深く浸透する際にジスルフィド結合の可能な再配列を妨害する選択性が低い方法でジスルフィド結合が切断される。
【0007】
その他、「ケラチン縮毛矯正」及び「オーガニック縮毛矯正」と呼ばれる施術は、「ブラジリアンストレート」を含み、半永久的と考えられ、アルデヒド類、すなわちホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド生成剤、又はグルタルアルデヒドが大量に使用され、ほとんどの縮毛矯正剤には2~10%のそのような化学薬剤を含有している。ホルムアルデヒド放出剤とも呼ばれるホルムアルデヒド生成剤の例としては、グリオキシル酸及びその誘導体(例えば、グリオキシロイルカルボシステイン)などが挙げられ、これらの一部は防腐剤として一般的に使用されている。これらのアルデヒド系薬剤又はアルデヒド生成薬剤は、毛髪繊維のケラチンと反応し、架橋剤として作用するため、新規の毛髪の形態及び形状を長持ちさせることができる。ホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドは発がん性があるとされ、目及び鼻の炎症、並びに皮膚、目、及び肺のアレルギー反応を引き起こす可能性がある。そのため、これらは労働安全衛生局(OSHA:Occupational Safety and Health Administration)により有害とされ、ヘアスタイリング剤メーカーには0.2wt%以下、一部の管轄区域ではさらに0.1wt%以下の規制が義務付けられている。OSHAは、いくつかのケラチントリートメントを試験し、そして製品が「ホルムアルデヒドフリー」として販売されているか、又は成分リストにおいてホルムアルデヒドを含まない場合でさえ、多くの製品が溶液中にホルムアルデヒドを含有していること、又は加熱によりホルムアルデヒドのガスが排出されることがわかり、「非ホルムアルデヒド」含有ケラチン矯正製品の主張する安全性について社会的に疑義を抱かせた。このような製品では、ホルムアルデヒドが単にホルムアルデヒド生成剤に置き換わっている可能性があると報告されている。このような製品は、毛小皮の下にある毛髪繊維にある程度浸透するが、主に表面的コーティングにより作用すると考えられており、この外部保護の鞘が、この方法による滑らかさ及び光沢の効果の基礎となっている。しかしながら、これは一時的な効果で、このコーティングは毛髪から水分を奪い、保護的なケラチン含有被膜が薄くなると、毛髪はもろくなり、乾燥し、くすむ結果となる。
【0008】
一部の永久的又は半永久的な矯正方法では、効果を長期間維持するために専用のシャンプーを使用する必要があり、このような製品は、そのような各処理が髪の形状に影響を与える特定の化学反応に適合している。さらに、そのような方法は、髪の色、髪のスタイルをさらに改変したい、又は自然なスタイルに戻したい場合の柔軟性がほとんどなく、そのような工程では通常、髪にさらにダメージを与える新しい永久的な処理を行うか、又は髪の再成長を待つ必要がある。
【0009】
毛髪繊維のケラチンタンパク質を構成するアミノ酸には、水分子の存在下で極性及び/又は荷電の側鎖間で形成され得る水素結合など、非共有結合性の弱い結合を形成できる側鎖も含有する。このような水素結合は、毛小皮の鱗片(cuticle scale)の外表面、及び該鱗片の内部又はその下のアミノ酸間で形成される。毛髪を熱(例えば、フラットアイロン又はヘアドライヤーなどによって、髪から水分を除去できる)にさらすことでこれらの水素結合を破壊し、乾燥又は冷却でそれらを再結合することで、一時的なヘアスタイリングが可能になる。このような方法は、毛髪にダメージを与える試薬を使用しないが、環境の相対湿度など水に対してそのように形作られた繊維が敏感であるため、その効果は一過性のものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヘアスタイリング方法の永久的、半永久的、又は一時的における分類は、通常、髪が生来の形を取り戻すのに必要なシャンプーの回数に依存する。永久的な方法は、新しい毛髪繊維の成長を必要とするほど十分に過酷であり得、一部の非一時的なスタイリングは自発的に元に戻り得るが、このような方法自体、ダメージを与え得る。
【0011】
したがって、毛髪の損傷及び有害な試薬の必要性を減らし、同時に有利に毛髪のスタイル及び形状を長持ちさせるヘアスタイリング方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
本開示は、とりわけ、ヘアスタイリングの従来の方法に関連する欠点の少なくともいくつかを克服するために開発された、毛髪繊維のスタイリングのための、組成物、キット、及びそれらを含む、又は使用する方法に関する。本明細書で使用されるとおり、毛髪の「スタイリング」とは、視覚的に検出可能かつ望ましい方法でその形状を改変する任意の行為を含み、波状、巻き毛状、又はコイル状の場合、毛髪をまっすぐ(縮毛矯正化)にするか、又は弛緩させることを含み;又は逆に、髪が希望よりも比較的まっすぐである場合は、髪を巻き毛にすることを含み;したがって、毛髪繊維が巻き毛である生来の傾向が任意に増加又は減少することである。
【0013】
有利なことに、本教示による硬化性組成物及び方法は、毛髪繊維内のジスルフィド結合の切断又はその分子構造の永久的な変化なしに、一時的又は永久的なヘアスタイリングを可能にする。したがって、毛髪繊維が、本教示に従ってスタイリングする前の生来の(改変されていない)形状で、特定の数の硫黄結合を有する場合、改変した形状を持つようにスタイリングされた繊維は、本質的に同じ数の硫黄結合を示すであろう。或いは、本組成物及び方法の無害性は、生来の毛髪繊維と本質的に同じ物理化学的構造を示す改変した毛髪繊維によって評価することができる。例えば、いくつかの実施形態では、毛髪繊維の機械的特性は、本組成物及び方法によって損なわれることはなく、かつ特定の実施形態では、いくつかの特性が改善されることさえある。毛髪繊維の化学構造が悪影響を受けないという事実は、例えば、熱分析によって実証することができ、その場合、改変(処理)及び生来の(未処理の)毛髪繊維は、少なくとも1つの本質的に同様の吸熱温度を示し得る(種々の方法、例えば、DSC、DMA、TMA、及び同様の熱重量測定法によって決定される)。2種の材料又は毛髪繊維の吸熱温度は、互いに4℃、3℃、2℃、又は1℃以内であれば、本質的に類似しているとみなすことができる。特定の実施形態では、処理済み繊維及び参照として働く未処理繊維の吸熱温度は、同じ熱分析法によって測定され、DSCが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1AB図1Aは、走査型電子顕微鏡法(FIB-SEM)と組み合わせた集束イオンビームミリングで撮影した画像であり、参照の未処理の毛髪繊維の断面を示している。図1Bは、図1AのSEM像を模式的に示したものである。
図2AB図2Aは、本発明の一実施形態によるCNSL水中油型乳剤で処理した毛髪繊維の断面を示すFIB-SEMで撮影した画像である。図2Bは、図2AのFIB-SEM像を模式的に示したものである。
図3AB図3Aは、対照溶液で処理した毛髪繊維の上面図をSEMで撮影した画像である。図3Bは、本発明の一実施形態によるCNSL水中油型乳剤で処理した毛髪繊維の上面視を示すSEMで撮影した画像である。
図4図4は、本発明の一実施形態によるCNSL水中油型乳剤で処理された毛髪繊維の断面を示す、毛髪のいずれの洗浄サイクル前にFIB-SEMによって撮影された画像である。
図5AB図5Aは、図4に示すものと同じCNSL水中油型乳剤で処理した毛髪繊維を49回洗浄した後の断面を示すFIB-SEMで撮影した画像であり、1.20kVの電圧で撮影したものである。図5Bは、FIB-SEMで撮影した画像であり、図5Aに示すように、49回の毛髪の洗浄サイクルの後のCNSL水中油型乳剤で処理した毛髪繊維の断面を示すが、10kVの電圧で撮影したものである。
図6A図6Aは、未処理の巻き毛の黒髪繊維の写真を示し、本発明の一実施形態によるCNSL水中油型乳剤で処理した同様の巻き毛の黒髪繊維(図6B)と比較した。
図6B図6Aは、未処理の巻き毛の黒髪繊維の写真を示し、本発明の一実施形態によるCNSL水中油型乳剤で処理した同様の巻き毛の黒髪繊維(図6B)と比較した。
図7図7は、参照の未処理毛髪試料、市販の方法によって処理した2つの毛髪試料、及び本発明の一実施形態によるCNSL水中油型乳剤によって処理した1つの毛髪試料を含む毛髪試料の熱分析の一連の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)のプロットを示す。
図8図8は、本教示の一実施形態によるヘアスタイリング方法の簡略化された概略図である。
図9AB図9Aは、処理に応じた毛髪繊維の破断応力を示す図であり、未処理の毛髪に対するパーセンテージとして示す;及び図9Bは、処理に応じた毛髪繊維の靭性を示す図であり、未処理の毛髪に対するパーセンテージとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
毛髪繊維の引張強度などの機械的特性は、従来の方法を使用して評価することができ、本発明の方法によって処理された毛髪繊維の引張強度は低下せず(例えば、処理済み繊維と未処理繊維との弾性率は類似している)、かつ毛髪繊維の破断応力及び靭性などの一部のパラメータについては、なお増加し得る。
【0016】
本発明の第1の態様では、繊維の形状を生来の形状から所望の改変形状に改変することによって哺乳類の毛髪繊維をスタイリングする方法が提供され、該方法は以下を含む:
a)個々の毛髪繊維に、毛髪繊維をカバーするヘアスタイリング組成物を適用すること、ここで前記ヘアスタイリング組成物は、少なくとも1つの毛髪繊維浸透性モノマー(HPM:hair fiber-penetrating monomer)及び任意にそれと混和する1つ又は複数の硬化性促進剤(curing facilitator)を含む;
b)前記HPM(複数可)の毛髪繊維への少なくとも部分的な浸透を確実にするのに十分な時間、前記組成物を毛髪繊維と接触させたままにすること;及び
c)毛髪繊維にエネルギーを適用して、毛髪繊維内に浸透したHPMの少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させること、ここで前記部分的な硬化は任意に毛髪繊維が所望の改変形状の間に起こる。
【0017】
本発明の第2の態様では、繊維の形状を生来の形状から所望の改変形状に改変することによって哺乳類の毛髪繊維をスタイリングする方法が提供され、該方法は以下を含む:
a)個々の毛髪繊維に、毛髪繊維をカバーするヘアスタイリング組成物を適用すること、ここで前記ヘアスタイリング組成物は、少なくとも1つのフェノール系モノマー(PBM:phenol-based monomer)及び任意にそれと混和する1つ又は複数の硬化性促進剤を含む;
b)前記PBM(複数可)の毛髪繊維への少なくとも部分的な浸透を確実にするのに十分な時間、前記ヘアスタイリング組成物を毛髪繊維と接触させたままにすること;及び
c)毛髪繊維にエネルギーを適用して、毛髪繊維内に浸透したPBMの少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させること、ここで前記部分的な硬化は任意に毛髪繊維が所望の改変形状である間に起こる。
【0018】
第1及び第2の態様のいくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物は、0.2wt%未満の低分子反応性アルデヒド(SRA:small reactive aldehyde)を含有し、該SRAは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、HPM又はPBMを含むヘアスタイリング組成物を適用する工程a)の前に、毛髪繊維の複数の水素結合の少なくとも一部の切断を確実にするのに十分な温度及び時間で毛髪繊維を乾燥させる。
【0020】
再スタイリング及び脱スタイリングの文脈でより詳細に説明するように、本発明の方法によって処理された毛髪繊維に改変形状を与える実際のスタイリング工程は、毛髪繊維が以前の(例えば、未改変/生来の/改変とは別の)形状に戻る傾向を克服できるポリマーを徐々に形成するモノマーの硬化と必ずしも同時に行われる必要はない。一度、毛髪の繊維の中にポリマーが形成されると、後で希望に応じてその形状を改変することができる。この処理方法は、単に繊維内のポリマーの形成がボリュームを与えることが可能であるため、繊維の全体的な形状を改変するタイムラインに関係がないスタイリングの方法とみなすことができ、また、変化の検出可能性の程度に関係がないスタイリング効果とみなすことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、毛髪繊維内に浸透したエネルギー硬化性モノマー(HPM又はPBM)の少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させるために適用されるエネルギーは熱エネルギーであり、熱は、伝導(例えば、スタイリングアイロンとの直接接触)、対流(例えば、熱風ブロワー、ヘアドライヤーの使用)、又は放射(例えば、セラミック遠赤(IR)放射ヘアドライヤーの使用)によって毛髪繊維に伝達される。他の実施形態では、適用されるエネルギーは、より一般的には電磁波(EM:electromagnetic)であり、上述のIR放射に加えて、例えば紫外線(UV)放射を含んでもよい。HPMの中には、熱エネルギー(熱)により主として又は単独で硬化可能なものもあれば、電磁エネルギーにより主として又は単独で硬化可能なものもある。前者は熱硬化性モノマーとも呼ばれ、後者はEM硬化性モノマーとも呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、HPMは両方の機構によって硬化可能であってもよく、その場合、それらはハイブリッド硬化性モノマーと呼ばれることがある。
【0022】
第1及び第2の態様のいくつかの実施形態において、本発明の方法により処理された繊維及び未処理の繊維(又は類似の対応するもの)は、熱分析によって測定されるとおり、互いに4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す。
【0023】
本発明の第3の態様では、本明細書にさらに詳述されるスタイリング方法又はヘアスタイリング組成物によって達成される第1の改変された毛髪形状である毛髪形状を持つ毛髪繊維を再スタイリングする方法が提供され、該再スタイリング方法は以下を含む:
a)第1の形状を有し、かつ内部に軟化温度を持つ合成ポリマーを含有する毛髪繊維にエネルギーを適用することであり、ここで前記合成ポリマーは、その軟化温度よりも低い温度である間に毛髪繊維に形状を提供することができ、前記エネルギーの適用は、前記毛髪繊維内の合成ポリマーを軟化するのに十分な時間であること;及び
b)前記毛髪繊維が所望の再スタイリングの第2の改変された毛髪形状である間に前記エネルギーの適用を終了することであり、前記第2の改変された毛髪形状は前記第1の形状と同じか又は異なること。
【0024】
いくつかの実施形態では、所望の第2の形状を持つ繊維は、熱分析によって測定されるとおり、合成ポリマーを欠く未処理繊維に対して4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す。
【0025】
いくつかの実施形態では、工程a)における再スタイリングのための熱エネルギーの適用は、少なくとも5分間、ポリマーの軟化温度を超える温度、例えば少なくとも50℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、再スタイリングの温度は、毛髪繊維内の残留水の量をさらに減少させるのに十分に高い。
【0026】
本発明の第4の態様では、本明細書でさらに詳述されるスタイリング方法又はヘアスタイリング組成物によって達成される改変された毛髪形状を持つ毛髪繊維を脱スタイリングする方法が提供される。すなわち、軟化温度を持つ合成ポリマーを内部に含む毛髪繊維の脱スタイリングの方法を提供することであり、前記合成ポリマーは、その軟化温度よりも低い温度にある間に毛髪繊維に形状を付与することができ、前記脱スタイリング方法は以下を含む:
a)第1の形状を持つ毛髪繊維にエネルギーを適用することであり、ここで前記エネルギーの適用は、毛髪繊維が少なくとも10分間、少なくとも40℃であるか、又は好ましくは少なくとも45℃であるように、毛髪繊維内の合成ポリマーを軟化させるのに十分な時間であること;
b)前記エネルギーの適用中に水を適用して、合成ポリマーの軟化によって解放された水素結合の少なくとも部分的な再形成を可能にすること;及び
c)毛髪繊維が生来の未改変の形状である間にポリマーが軟化していない形状を取り戻すことを可能にするように、毛髪繊維が人為的な拘束を欠いている間に前記エネルギーと水との適用を停止すること。
【0027】
いくつかの実施形態では、生来の未改変の形状を持つ繊維は、熱分析によって測定されるとおり、合成ポリマーを欠く未処理繊維に対して4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す。
【0028】
本発明の方法及び組成物により前もって処理された毛髪(すなわち、PBMの架橋によりin situで合成されたポリマーを内部に含む毛髪繊維)を再スタイリング又は脱スタイリングする能力は、従来の方法がさらに毛髪形状を変えるために適切な組成物の適用を通常必要とする当該分野において有利かつ予想外なことである。
【0029】
本発明の第5の態様では、哺乳類の毛髪繊維の形状を改変するためのヘアスタイリング組成物が提供され、該ヘアスタイリング組成物は:
A- 単相組成物であって、前記単相が少なくとも1つの毛髪繊維浸透性モノマー(HPM)、毛髪繊維への前記HPM(複数可)の浸透を高めるように選択されたpHを有する水、及び共溶媒を含み、前記単相が任意にそれと混和性の1つ又は複数の硬化促進剤をさらに含むもの;及び
B- 水中油型乳剤であって、前記乳剤が、a)少なくとも1つの毛髪繊維浸透性モノマー(HPM)を含む油相;及びb)毛髪繊維への前記モノマーの浸透性を高めるように選択されたpHを有する水相からなるもの;
から選択され、
前記ヘアスタイリング組成物は、本明細書においてさらに詳述され、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0030】
本発明の第6の態様では、哺乳類の毛髪繊維の形状を改変するためのヘアスタイリング組成物が提供され、該ヘアスタイリング組成物は:
A- 単相組成物であって、前記単相は、少なくとも1つのフェノール系モノマー(PBM)、毛髪繊維への前記モノマーの浸透を増加させるように選択されたpHを有する水、及び共溶媒を含み、前記単相は、任意にそれと混和性の1つ又は複数の硬化促進剤をさらに含むもの;及び
B- 水中油型乳剤であって、前記乳剤は、a)少なくとも1つのフェノール系モノマー(PBM)及び任意にそれと混和する1つ又は複数の硬化促進剤を含む油相、及びb)毛髪繊維へのモノマーの浸透を増加させるように選択されたpHを有する水相からなるもの;
から選択され、
前記ヘアスタイリング組成物は、本明細書においてさらに詳述され、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0031】
第5及び第6の態様のいくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物は、0.2wt%未満の低分子反応性アルデヒド(SRA:small reactive aldehyde)を含有し、該SRAは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される。
【0032】
第5及び第6の態様のいくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物は、PBM及び硬化促進剤の少なくとも1つと交差重合することができる少なくとも1つの官能基を含む補助重合剤をさらに含み、該官能基は:ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、及び二重結合から選択される。
【0033】
第5及び第6の態様のいくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、乳化剤、湿潤剤、増粘剤及び電荷調整剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0034】
本発明の第7の態様では、哺乳動物の毛髪繊維をスタイリングするためのキットが提供され、前記キットは:
少なくとも1つの毛髪繊維浸透性モノマー(HPM)を含有する第1のコンパートメント;及び
i. HPMの毛髪繊維への浸透性を高めるように選択されたpHの水;又は
ii. 少なくとも1つのpH調整剤;
のいずれかを含有する第2のコンパートメント
を含み、
これらのコンパートメントを混合することにより、単相組成物又は水中油型乳剤としてヘアスタイリング組成物を生成し、これは本明細書でさらに詳細に説明され、添付の請求項に記載されるとおりである。
【0035】
本発明の第8の態様では、哺乳動物の毛髪繊維をスタイリングするためのキットが提供され、前記キットは:
少なくとも1つのフェノール系モノマー(PBM)を含有する第1のコンパートメント;及び
i. 前記モノマーの毛髪繊維への浸透を増加させるように選択されたpHの水;又は
ii. 少なくとも1つのpH調整剤;
のいずれかを含有する第2のコンパートメント
を含み、
これらのコンパートメントを混合することにより、単相組成物又は水中油型乳剤としてヘアスタイリング組成物を生成し、これは本明細書でさらに詳細に説明され、添付の請求項に記載されるとおりである。
【0036】
第7及び第8の態様のいくつかの実施形態では、第1のコンパートメントの少なくとも1つのHPM又はPBMは、キット内に配置される前に予備重合される。
【0037】
前記キットのコンパートメント(及びそれぞれの内容物)は、望ましい保管温度(例えば室温を超えない温度)でキットを保管する間、製品の有効性を低下させるようないずれの反応を回避又は低減するように選択される。第7及び第8の態様のいくつかの実施形態において、HPM/PBMの予備重合の有無にかかわらず、第1のコンパートメントは、不活性環境、好ましくは不活性ガス、例えば、アルゴン又は窒素下で維持される。同様の理由で、前記コンパートメントは、放射線に対して不透明性であるか、又は内容物の安定性に有害な要因に対して密閉されるように選択することができる。
【0038】
第7及び第8の態様のいくつかの実施形態において、キットのコンパートメントの混合により調製されたヘアスタイリング組成物はすぐに使用でき、一方では他の実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、コンパートメントの混合及び/又は毛髪繊維への適用の前にエンドユーザーによってさらに(例えば、水道水で)希釈される必要がある。
【0039】
いくつかの実施形態では、架橋剤(縮合硬化及び/又は付加硬化に適したもの)及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤が、ヘアスタイリング組成物内、キット内、又はそれを用いる方法においてさらに含まれる。本組成物及び方法は、いくつかの実施形態において、前記プレポリマーの付加硬化及び縮合硬化の両方を組み合わせて可能にする2つ以上の種類の架橋剤を含んでいてもよい。このような硬化促進剤は、それが第1又は第2のコンパートメントの成分のいずれか1つとそれぞれ自発的に(例えば、室温で)反応しない場合に、第1又は第2のコンパートメントに配置することができる。或いは、硬化促進剤は、単相組成物又は水中油型乳剤としてのヘアスタイリング組成物の調製時に、第1及び第2のコンパートメントと混合されるように、別の追加のコンパートメントに配置されてもよい。
【0040】
第7及び第8の態様のいくつかの実施形態において、前記キットの第1のコンパートメントは、少なくとも1つの補助重合剤をさらに含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記キットは少なくとも1つの共溶媒をさらに含み、これは第1、第2、又は別の追加のコンパートメントに含有されてもよい。
【0042】
第7及び第8の態様のいくつかの実施形態では、前記キットは乳化剤、湿潤剤、増粘剤、及び電荷調整剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。前記少なくとも1つの添加剤が油混和性である場合、第1のコンパートメントに配置してもよい。少なくとも1つの添加剤が水混和性である場合、第2のコンパートメントに配置してもよい。
【0043】
特定の実施形態では、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするためのキットが提供され、該キットは:
a)少なくとも1つのPBMと少なくとも1つの補助重合剤とを含む第1のコンパートメント;
b)pHが5~11の範囲の水及び少なくとも1つの共溶媒を含む第2のコンパートメント;及び
c)PBMの縮合硬化に適合した1つ又は複数の架橋剤を含む第3のコンパートメント;
を含み、
前記キットは、任意に:
(a)PBMの付加硬化に適合した少なくとも1つの架橋剤;
(b)硬化加速剤;
(c)共溶媒;
(d)乳化剤;及び
(e)増粘剤;
のうちの少なくとも1つをさらに含み、
任意の(a)~(c)のそれぞれは独立して、第1、第2又は別の追加のコンパートメント(複数可)に配置され、任意の(d)及び(e)のそれぞれは独立して、第2又は別の追加のコンパートメント(複数可)に配置される。
【0044】
一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(a)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(b)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(c)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(d)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(e)をさらに含む。
【0045】
一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(a)及び(b)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(a)及び(c)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(a)及び(d)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(a)及び(e)をさらに含む。一実施形態において、前記キットは、上記列挙した少なくとも成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)をさらに含む。
【0046】
本発明の第9の態様では、生来の形状以外の形状を有する哺乳類毛髪繊維が提供され、前記毛髪繊維は、その内部に、少なくとも部分的に硬化した毛髪繊維浸透性モノマー(HPM)、毛髪繊維浸透性オリゴマー(HPO:hair fiber-penetrating oligomer)、又は毛髪繊維浸透性ポリマー(HPP:hair fiber-penetrating polymer)を含み;HPM、HPO又はHPPは、本明細書でさらに詳述されるとおりのヘアスタイリング組成物の成分及び前記成分の少なくとも部分的に硬化したものに対応している。
【0047】
本発明の第10の態様では、生来の形状以外の形状を有する哺乳類毛髪繊維が提供され、前記毛髪繊維は、その内部に、少なくとも部分的に硬化したフェノール系モノマー(PBM)、フェノール系オリゴマー(PBO:phenol-based oligomer)、又はフェノール系ポリマー(PBP:phenol-based polymer)を含み;PBM、PBO又はPBPは、本明細書でさらに詳述されるとおりのヘアスタイリング組成物の成分及び前記成分の少なくとも部分的に硬化したものに対応している。
【0048】
本開示のさらなる目的、特徴及び利点は、以下に続く詳細な説明に記載され、一部は、本明細書から当業者に容易に明らかになるか、又は本明細書及び特許請求の範囲、並びに添付図面に記載された本開示を実施することによって認識されるであろう。本開示の実施形態の様々な特徴及び副次的な組み合わせ(sub-conbination)は、他の特徴及び副次的な組み合わせを参照することなく採用され得る。
【0049】
図面の簡単な説明
次に、本開示のいくつかの実施形態について、添付の図を参照しながら例としてさらに説明するが、同様の参照数字又は文字は、対応の又は同様の構成要素を示している。本説明は、図と共に、本開示のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを、当業者にとって明らかにするものである。図は、例示的な議論のためのものであり、本開示の基本的な理解に必要であること以上に詳細に実施形態の構造的詳細を示すことは企図していない。説明を明確にし、便宜を図るため、図に示されているものの一部は、必ずしも原寸大で示されているわけではない。
【0050】
詳細な説明
本開示は、毛髪繊維をスタイリングするための組成物に関し、より特にポリマー(例えば、ポリマー)を生成する任意の適切な反応によって重合を受けることができる、少なくとも1つの毛髪繊維浸透性モノマー(HPM)又はフェノール系モノマー(PBM)を含む硬化性組成物に関する。本明細書で使用するとおり、モノマーという用語は、単一の繰り返し分子のみを含むことを意味せず、毛髪繊維に浸透する分子の能力に適していると考えられるように、その繰り返し数が、10,000g/mol、5,000g/mol又は3,000g/mol以下の分子量をもたらす限り、短いオリゴマーを含んでもよい。ヘアスタイリング組成物は、適切な重合に必要な任意の化合物と共にエネルギー硬化性モノマーを毛髪繊維の内部に送達することを可能にしながら、その繊維内でそのような化合物が該モノマーとその位置で混和される。該モノマーと混和性であり、かつそれらの硬化を促進する前記化合物は、硬化促進剤及び/又は共溶媒であり得る。このような化合物は、モノマーと同じ相で送達することも、又は別の相で送達することも可能である。したがって、本教示によるヘアスタイリング組成物は、単相組成物及び水中油型乳剤から選択することができ、両方とも一般的には、モノマーの浸透を促進するように適合されたpHを有する。促進性のpHは、a)毛髪の鱗片の十分な開口、及び/又はb)毛髪繊維及びヘアスタイリング組成物の十分な帯電(例えば、ゼータ電位によって測定可能)を促進することによって作用することができ;かつpH 1~pH 3.5又はpH 4の範囲の酸性、又はpH 5~pH 8の範囲の弱酸性~弱アルカリ性、又はpH 8~pH 11の範囲のアルカリ性のいずれかであり得、好ましくはpH 9~pH 11の間であり得る。言い換えれば、pHは、毛髪の等電点以外の範囲にあれば、毛髪繊維への浸透に有利と判断され、毛髪繊維とその健康状態によって、3.5~5、4~5、又は3.5~4の間でわずかに変動してもよい。
【0051】
同じものを調製かつ使用する方法、及びそのような組成物を含み、かつそのようなスタイリングを可能にするキットもまた記載される。
【0052】
ここでの教示の原理、用途及び実施形態は、添付の明細書及び図を参照することにより、よりよく理解され得る。本明細書に提示された説明及び図を熟読すれば、当業者は、過度の努力又は実験なしに、本開示を実施することができる。
【0053】
少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、本明細書に規定される構成要素及び/又は方法の構造及び構成の詳細へのその適用に必ずしも限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することが可能である。本明細書で使用される用語及び表現は説明のためのものであり、限定的なものとみなすべきではない。例えば、本発明の利点を説明するために頭髪に対する言及が多くなされるが、本発明の教示は、いくつかの選択肢を挙げると、ウィッグ、ヘアエクステンション、又はまつ毛にも同様に適用されることは明らかである。したがって、耐久性のあるヘアスタイルを提供することは、ヒト対象に取り付けられた毛髪、ウィッグ又はヘアエクステンションに対するものであってもよく、用語はさらに、一例として、耐久性のあるまつ毛の形状を提供することを含み、睫毛に対するものであってもよい。
【0054】
材料、方法及び実施例を含む前述の一般的説明及び以下の詳細な説明の両方は、本開示の単なる例示であり、請求される本開示の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供することを意図しており、必ずしも制限的であることを意図しないことが理解されるであろう。
【0055】
本発明の一態様では、哺乳類の毛髪繊維の形状を改変することによって哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするための方法が提供される。
【0056】
本発明の方法の第1の工程では、液体ヘアスタイリング組成物を個々の毛髪繊維に適用し、ここで前記液体組成物は、水及び:i)少なくとも1つの毛髪繊維浸透性モノマー(HPM)又はフェノール系モノマー(PBM)を含む単相組成物又は水中油型乳剤である。該ヘアスタイリング組成物が単相として提供される場合、該モノマーと該液体の水部分との混和性を確保するために十分な量の適切な共溶媒が提供され、前記共溶媒を含有する水性媒質は、モノマーの重合に望ましい他の任意の材料(例えば、任意の硬化促進剤、及び/又は補助重合剤)又は、該組成物の形態及び適用性に望ましい他の任意の材料(例えば、乳化剤、湿潤剤、増粘剤など)の混和性に対してさらに適合性がある。該ヘアスタイリング組成物が二相性の乳剤として提供される場合、共溶媒は、すべて存在するならば、少なくともモノマーと任意の硬化促進剤との混和性を確実にするために提供される場合、該モノマーは乳剤の油相に存在する。
【0057】
本発明の方法及び組成物に適した特定の化合物を詳述する前に、毛髪繊維内に浸透し、そして硬化が進行するように設定された後及び/又はその限りにおいて互いに混和するモノマー(及びそれらの重合を促進する任意の薬剤)の上述の能力の他に、これらの材料はスタイリング組成物に適合性であり、それらの調製方法及び使用方法に適合性であることが一般的に必要であることを強調したい。「適合性」とは、該モノマー、硬化促進剤、補助重合剤、共溶媒、又は本組成物の他の適合性成分が、いずれの他の化合物の効果、又は最終組成物を調製又は使用する能力に悪影響を与えないことを意味する。「適合性」には化学的、物理的、又はその両方があり、相対的な量に依存し得る。例示すると、硬化促進剤は、モノマー間を架橋すること、及び/又は他としてはプロセスを加速することに適合した官能基を有する場合、適合性があると考えられる。共溶媒は、関連物質が同じ相にある間に重合が進行するように十分遅い変動速度を持っている場合に適合性があると考えられる。材料は、組成物のpH、又は該組成物の調製中若しくはヘアスタイリングのための該組成物の使用中にかけられる温度に影響されない場合、適合性があると考えられる。必須ではないが、すべての材料は、調製及び使用を容易にするために、室温(約23℃)で液体であることが可能か、又は固体の場合は、組成物の液体成分と容易に混和することが可能である。さらに、室温で液体の材料は、固体の材料に比べて毛髪の感触が向上すると考えられている。材料が室温で固体であり、その溶解に加熱が必要な場合、その融点は、熱硬化性モノマーの硬化を通常より早く引き起こすことなく、またその他としては重合能力に影響を与えることなく、その溶解を選択的に促進するために適合した加熱温度に対して十分に低い必要がある。必要に応じて、ヘアスタイリング組成物、特に毛髪繊維に浸透するためのモノマー及びその他の硬化性成分を室温で液体に保つために、可塑剤を含有させることが可能である。
【0058】
このような化合物は、通常、毛髪の鱗片が適切に開いた後に、毛髪繊維内に浸透することができるという前提条件に戻ると、いずれの特定の理論に拘束されることを望まないが、より大きな分子よりも小さな分子の方が繊維内に容易に移行することができると考えられている。分子の物理的なサイズは、さらなる因子(特別な構造及び「稠密性(compactness)」、又はそれらの欠如など)に依存し得るが、化合物の分子量は、繊維に浸透する能力を推定するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、毛髪繊維内で重合するための材料(例えば、モノマー及び架橋剤)、又はそのような重合を促進するための材料(例えば、補助重合剤、共溶媒及び硬化加速剤)は、平均分子量が10,000g/mol以下、5,000g/mol以下、3,000g/mol以下、2,500g/mol以下、2,000g/mol以下、1,500g/mol以下、又は1,000g/mol以下である。
【0059】
一実施形態では、少なくとも1つのHPMは、PBMである。そのような一実施形態において、少なくとも1つのPBMは、一般式Iのものであり:
【化1】
式中、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、直鎖状、環状若しくは分岐状の置換若しくは非置換の、C~C20アルキル、C~Cアルコキシ、C~Cアリル、C~Cフェニルエステル、又はC~Cグリコールエステルであり;及び
は、水素原子、ヒドロキシル、又は飽和若しくは不飽和のCアルキルであり、Xは、15以下の整数であり、かつYは、2X+1-nに等しく、nは、0、2、4及び6から選択される。
【0060】
いくつかの実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、メチル、2-プロペニル、フェニルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、又はメトキシである。他の実施形態では、Rは、水素原子、ヒドロキシル、又はC1531-nアルキルであり、nは、0、2、4及び6から選択される。
【0061】
実施形態では、該組成物が、Rがヒドロキシルであり、かつR、R、R及びRがすべて水素原子である、一般式Iの少なくとも1つのPBMを含み、該モノマー、すなわちベンゼン-1,3-ジオールは、レゾルシノールとしても知られ、次いで該組成物はさらに一般式Iの少なくとも第2のHPM又はPBM、レゾルシノール以外の第2のHPM又はPBM、及び任意に硬化促進剤をさらに含むことが必要となる場合がある。
【0062】
特定の実施形態において、少なくとも1つのPBMは、以下の式II~Vのいずれかから選択される。
【化2】
【0063】
PBMのC1531-n側鎖は、不飽和度の異なる炭化水素(アルキル)置換基であり、すなわち、飽和(n=0)、モノエン(n=2)、ジエン(n=4)、及びトリエン(n=6)の炭化水素側鎖であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、本組成物のPBMの少なくとも1つを構成する一般式IIの化合物は、カルダノール誘導体である。このような誘導体は、3-ペンタデシルフェノール(n=0)、3-[ペンタデカ-8-エニル]フェノール(n=2)、3-[ペンタデカ-8,11-ジエニル]フェノール(n=4)、3-[ペンタデカ-8,11,14-トリエニル]フェノール(n=6)及びこれらの配座異性体からなる群から選択することができる。
【0065】
他の実施形態では、本組成物のPBMの少なくとも1つを構成する一般式IIIの化合物は、カルドール誘導体である。このような誘導体は、5-ペンタデシルベンゼン-1,3-ジオール(n=0)、5-[ペンタデカ-8-エニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=2)、4-[ペンタデカ-8,11-ジエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、5-[ペンタデカ-8,11-ジエニル]-ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、5-[ペンタデカ-9,12-ジエニル]-ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、5-[ペンタデカ-8,11,14-トリエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=6)及びそれらの配座異性体からなる群から選択することができる。
【0066】
さらに他の実施形態では、本組成物のPBMの少なくとも1つを構成する一般式IVの化合物は、2-メチルカルドール誘導体である。このような誘導体は、2-メチル-5-ペンタデシルベンゼン-1,3-ジオール(n=0)、2-メチル-5-[ペンタデカ-8-エニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=2)、2-メチル-5-[ペンタデカ-8,11-ジエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、2-メチル-5-[ペンタデカ-8,11,14-トリエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=6)及びそれらの配座異性体からなる群から選択することができる。
【0067】
特定の実施形態では、本組成物の少なくとも1つのPBMは、カシューナッツ殻液(CNSL:cashew nut shell liquid)又はその成分である。
【0068】
CNSLはカシューナッツの殻中に黒っぽい粘性のある油状の液体として生成され、ナッツの工業的加工時に副産物として得られる。CNSLの成分は、以下に描かれるように、R側鎖が炭化水素側鎖の第8、第11又は第14炭素の少なくとも1つから選択される1つ又は複数の位置で非共役不飽和の程度が異なる、上記一般式II~IVのフェノール化合物である。
【化3】
【0069】
天然CNSLはまた、一般式VIで表されるアナカルド酸を含有し:
【化4】
式中、C1531-n側鎖は、CNSLの他の成分について上述したとおりである。天然由来のCNSL中のアナカルド酸の量は60~70wt%の間である。しかしながら、技術グレード又は商業グレードのCNSLには、アナカルド酸はCNSL工程中に脱炭酸し、主にカルダノール(一般式II)に変換するため、1wt%未満の含有である。特定の実施形態では、本発明で使用されるCNSLは、0.5wt%未満、0.3wt%未満、0.2wt%未満、又は0.1wt%未満のアナカルド酸を含有する。
【0070】
CNSL成分のそれぞれの飽和及び不飽和誘導体は、様々な量で存在することができる。例えば、CNSL内のカルダノールは、60wt%のモノエン誘導体、10wt%のジエン誘導体、及び30wt%のトリエン誘導体から構成され得る。これらの誘導体の量の測定は、分子蒸留法、薄層クロマトグラフィー(TLC)/ガス液体クロマトグラフィー(GLC)、TLC-質量分析法などの方法を用いて行うことができる。
【0071】
PBMのヒドロキシル基(-OH)により、R側鎖がヒドロキシル基又は飽和炭化水素以外の場合、不飽和度の変化と共に、高重合性物質であるPBMは、様々な重合反応(例えば、縮合又は付加による)が可能になる。理論に束縛されることを望まないが、PBMは、そのヒドロキシル基と他の縮合重合可能な基との縮合によって重合することができると考えられ、一方、適切なR側鎖の不飽和は、適切な条件下で、付加重合の基礎となることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、重合を促進するために、本発明のヘアスタイリング方法に適合するヘアスタイリング組成物(例えば、単相又は水中油型乳剤)は、少なくとも1つのHPM又はPBMに加えて、ii)架橋剤及び硬化加速剤(curing accelerator)から選択される少なくとも1つの硬化促進剤(curing facilitator)をさらに含む。架橋剤とは、硬化工程に積極的にかかわり、生じるポリマーネットワークに組み込まれる化合物を指し、硬化促進剤は、単に硬化を触媒又は活性化のみすることが可能である(例えば、重合温度を下げるか、その速度を上げることによる)。硬化促進剤は、毛髪繊維内で重合する際に油性モノマーと同相になるように、好ましくは油混和性であることが必要である。なお、ヘアスタイリング組成物を毛髪に適用した後に硬化加速剤を使用する場合、そのような工程で使用する硬化加速剤は、加速液が水性であるとすれば、水溶性であることが可能である。
【0073】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、縮合硬化機構を介してモノマーと反応することができ、「縮合硬化性架橋剤」と称する。他の実施形態では、架橋剤は付加硬化機構を介してモノマーと反応することができ、「付加硬化性架橋剤」と称する。いくつかの実施形態では、同じ硬化促進剤が、架橋剤としても硬化促進剤としても作用することができる。毛髪繊維の内部で毛髪繊維を所望の改変形状に拘束できるネットワークを形成する架橋可能なモノマー及び硬化促進剤の種類にかかわらず、生じる内部形成ポリマーはまた、合成骨格とも呼ぶことができる。この用語は、モノマーが人工的である(天然に存在しない)必要性を意味するものではなく、生じるポリマーがin situで合成され、かつ毛髪繊維内に生来存在しないことを意味するものである。簡単に言えば、外来ポリマーが毛髪繊維を所望の形状に「固定」することで、繊維が本来持っている力に打ち勝つか、その他としては生来の形状を有する又は取り戻すことを可能にする。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明のヘアスタイリング組成物及び方法に適した架橋剤は、2つ以上の架橋性官能基を有し、有利には3つ以上の架橋性官能基を有し、それによって形成される三次元ネットワークの密度を増加させることができる。
【0075】
適切な縮合硬化性架橋剤は、少なくとも2つのシラノール基を持ち、分子量が最大1,000g/molの反応性シランから選択することができ、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(例えば、Dynasylan(登録商標)AMEO)、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピル(ジエトキシ)-メチルシラン、メチルトリエトキシシラン、又はN-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]エチレンジアミン;反応性シランとアミノシランの混合物(例えば、Evonik Dynasylan(登録商標)SIVO 210);コハク酸、アジピン酸、又はクエン酸などの多塩基酸;ひまし油などのポリオール;ヘキサメチレンジアミン又はヘキサメチレンテトラミンなどのポリアミン(任意にマレイン酸ジアルキル、例えばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、又はマレイン酸ジブチルなどと結合した、それらの反応生成物であり、可能なマイケル反応を介して、本明細書で教示される条件下で本発明のモノマーと反応することができる活性架橋剤を生成する);モノ及びジ-グリシジル、例えば(3-グリシジルオキシプロピル)-トリメトキシシラン又はポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート又は4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート);アリル化合物、例えばヘキサン酸アリル、又は1-メチル-4-(プロパ-1-エン-2-イル)シクロヘキサ-1-エン(リモネン);及びタンニン酸などのポリフェノールである。特定の実施形態では、縮合硬化性架橋剤はアミノプロピルトリエトキシシランである。
【0076】
架橋剤によって促進される重合の分野の当業者には容易に理解されるように、そのような化合物は、一般的には、モノマーの架橋性基と架橋剤の対応する反応性基との間の少なくとも化学量論反応に対応する量で存在する。このような最小量は、特に硬化がより複雑なポリマーの形成に進むにつれて、モノマー及び増加するオリゴマーの架橋性基の一部が阻害される場合、架橋剤の過剰をすでにもたらした可能性がある。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、特に、架橋剤がモノマーと反応する能力に加えて、互いに反応し得る場合、そのような硬化促進剤を単に化学量論的濃度を超えて含むことが望まれたかもしれない。
【0077】
有利には、必ずしもそうではないが、架橋剤は、組成物のpHを変更する役割をさらに果たし得、それらを含む組成物が適用される毛髪繊維の毛小皮の鱗片の開きを促進し、HPM又はPBM、又はその一部が毛幹に浸透することを可能にし得る。
【0078】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本教示によるHPM又はPBMは、十分に小さい分子(例えば、10,000g/mol以下の分子量を有する)であり、少なくとも部分的に繊維幹に浸透し、そこで、その後エネルギー(例えば、モノマーの重合を誘導するのに適した熱又は電磁気)の適用時に重合することができると考えられる。HPM又はPBMの毛髪繊維への浸透は、FIB-SEMなどの顕微鏡的手法によって観察及びモニターすることができる(例えば、図2A、以下でさらに言及する)。毛髪繊維が所望の改変形状である間に重合が行われる場合、生じた毛髪繊維浸透性オリゴマー(HPO)及び毛髪繊維浸透性ポリマー(HPP)、又はHPMがPBMである場合にはフェノール系オリゴマー(PBO)及びフェノール系ポリマー(PBP)は、毛髪繊維を改変形状に維持するか、又は繊維がその生来の(未改変)形状を取り戻す能力を遅らせることができる。このような工程については、後節でより詳しく説明する。
【0079】
本発明のヘアスタイリング方法の第1の工程として個々の繊維に適用され得る組成物に戻ると、架橋剤リンカーは、存在する場合、それらが追加的に提供し得るいかなる効果にもかかわらず、HPM又はPBMとの組み合わせの前に、例えば、水による少なくとも部分的な加水分解を受けることができる。或いは、加水分解促進剤を用いて、架橋剤とHPM又はPBMとの組み合わせ後に加水分解を誘導することもできる。このような加水分解の適切な促進剤は、サリチル酸及び乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、酒石酸、アゼライン酸又はプロピオン酸などの4~6のpHを有する(又はそれを組成物に提供する)酸であり得る。加水分解促進剤は、毛髪繊維に適用される組成物中に存在することができ、及び/又は毛髪繊維上に後で塗布することができる。いずれにせよ、適切な架橋剤の部分的な加水分解は、架橋剤の活性を高め、HPM又はPBMの重合につながる縮合を促進すると期待される。
【0080】
いくつかの実施形態において、PBMを含むヘアスタイリング組成物、及びそれを使用する本発明の方法に適した硬化加速剤は、縮合重合に適しており、例えば、アセチルアセトネート又はナフテン酸塩などの金属カルボキシレートを含む金属錯体(例えば、金属:Co、Mn、Ce、Fe、Al、Zn、Zr、Se又はCuを有する);ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸;N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンとFe又はMnの錯体などの金属サレン錯体;p-トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、スルホコハク酸などの強酸;及びNaOH、KOH、NHOHなどの強塩基から選択することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のPBMは、共役又は非共役二重結合などの少なくとも1つの付加硬化性基をさらに含有することができ、モノマーがPBMのヒドロキシル基を介して起こる縮合重合と、付加重合との両方を受けることを可能にする。例えば、PBMがCNSLである場合、そのR位の非共役不飽和アルキル側鎖により、適切な条件下で付加硬化させることでこのような重合を可能にする。このような条件には、側鎖の二重結合を開いてラジカルを形成し、付加重合を開始させるために、組成物内に硬化促進剤を加えることが含まれる。付加重合に適した硬化加速剤には、過酸化ベンゾイル、過安息香酸tert-ブチル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ジベンゾイルのオルト及びパラ-メチル及び2,4-ジクロロ誘導体(ortho- and para-methyl and 2,4-dichloro derivatives of dibenzoyl peroxide)、過酸化ジクミル、過酸化アルキル(例えば、過酸化ラウロイル、及び過酸化2-ブタノン)、過酸化ケトン、過酸化ジアシルなどの有機過酸化物が含まれる。
【0082】
或いは、PBM及び/又は架橋剤が共役又は非共役の少なくとも1つの二重結合(これは架橋剤をPBMとの付加硬化に適したものにする)、特に少なくとも2つの二重結合(例えば、短いジエン)を含有する場合、大気中の酸素への曝露により、自動酸化反応を誘発し、ラジカルの形成をもたらし、重合又は架橋が付加機構によって、任意に特化した硬化加速剤の非存在下で進行することが可能となり得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、付加硬化に適した架橋剤は、最大15個の炭素原子を含み、二重結合の開口時に少なくとも2つのラジカルの形成を可能にする数の二重結合を含む、直鎖状、分岐状、又は環状のアルケン化合物である。例えば、アルケンは、アルケン鎖内に位置する場合、少なくとも2つの二重結合を含有することができ(例えば、ミルセン(C1016)、ゲラニオール(C1018O)、カルボン(C1014O)及びファルネセン(C1524)などの短い脂肪油又は短いモノテルペン)、又はアルケン鎖の末端に位置する少なくとも1つの二重結合を含有することができる。したがって、アルケン鎖の両末端に二重結合を持つ短いアルケン架橋剤(例えば、1,5-ヘキサジエン又は1,5-ヘキサジエン-3,4-ジオールなど)もまた好適である。
【0084】
鎖の両端に末端二重結合を有するさらなる架橋剤としては、ジアリルエーテル(例えば、ジ(エチレングリコール)、ジビニルエーテル又は2,2-ビス(アリルオキシメチル)-1-ブタノール);ジアリルスルフィド;ジアリルエステル(例えば、ジアリルアジペート);アクリレート(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート);ジアリルアセタール(例えば、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラ-オキサスピロ[5.5]ウンデカン);トリアリルシアヌレート;及びトリアリルイソシアヌレートが含まれる。PBMの付加硬化に適した架橋剤にはまた、置換又は非置換のビニル芳香族化合物(例えば、スチレン又はビニルトルエン);ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニル又は桂皮酸ビニル);及びビニルアルコール(例えば、10-ウンデセン-1-オール)が含まれる。架橋剤の混合物を使用する場合、架橋剤の少なくとも1つは2つのラジカルを提供できる必要があり、別の架橋剤は任意に二重結合の開口時に1つのラジカルのみを提供する。
【0085】
単独で、又は本発明のヘアスタイリング組成物の追加成分と組み合わせでのいずれかでの添加硬化によるPBMの重合は、標準的な方法によってモニターすることができる。例として、組成物のヨウ素価は、二重結合が開いて他のモノマー又は適切な成分と架橋するため、減少すると予想される。したがって、本発明の任意の特定の組成物を用いた毛髪繊維の内側部分における合成ポリマーの形成は、適用及び硬化前の組成物のヨウ素価を、毛髪繊維内に浸透かつ硬化した後に毛髪繊維から抽出された物質のヨウ素価との比較により決定することによって追跡することができる。合成内部ポリマーを含む物質は、拡散(例えば、40~60℃のIPAに2時間浸漬)により毛髪繊維から抽出し、濃縮して試験方法に適合した試料を得ることができる。ヨウ素価は、ASTM D-1959に記載されているような標準的な方法によって測定することができる。
【0086】
本教示による組成物及び方法は、生体から分離した毛髪繊維上(例えば、毛皮上又はかつら上)に適用及び実施することができるが、それらは一般的には、生哺乳類対象の毛髪、特にヒト頭皮上の使用への適用を意図したものである。したがって、毛髪繊維の形状を満足に改変することができる組成物において、以下に詳述するとおり多数の架橋剤、硬化加速剤又は他の薬剤及び添加剤を使用することができるが、すべてのそのような成分、並びにHPM又はPBMは、好ましくは化粧品的に許容できるものとする。成分、組成物、又はそれから作られる製剤は、過度の毒性、不安定性、アレルギー反応性などがなく、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪と接触して使用するのに適している場合、「化粧品的に許容できる」とみなされる。一部の成分は、関連法規に従い、比較的低い濃度で存在する場合、「化粧品的に許容できる」場合がある。
【0087】
目的のヘアスタイリング組成物が単相組成物である場合、それらは、HPM又はPBMが適切な共溶媒を含有する連続水相に溶解される場合に実現される。目的のヘアスタイリング組成物が水中油型乳剤である場合、HPM又はPBMは、任意に適切な共溶媒をさらに含むことができる連続水相中に油滴として乳化分散される場合に実現される。硬化促進剤は、存在する場合、それらが毛皮質に送達され得る相に関係なく、毛髪繊維中にある間、モノマーと混和性である必要がある。
【0088】
いくつかの実施形態において、硬化性ヘアスタイリング組成物の水相は、a)毛髪繊維及びHPM又はPBMを含む組成物に適切な帯電を提供するのに適したpH、b)媒質中の化合物の適切な溶解性(又は逆にその欠如)を提供するのに適したpH、及び/又はc)浸透を促進するための毛髪の鱗片の適切な開きを提供するpHを有している。酸性pH(例えば、約1~3.5の範囲)もそのような効果を可能にし得るが、いくつかの実施形態では、硬化性ヘアスタイリング組成物の水相はアルカリ性pHを有する。他に対して非中性のpHを選択することは、モノマー及び硬化促進剤の化学的性質に依存することもあり、いくつかが、酸性又は塩基性pHに本質的に寄与するか、又はその他のpHに対して一方のpHが強いこともある。
【0089】
本発明のヘアスタイリング組成物のpHは、とりわけ毛髪の鱗片を持ち上げてモノマーの浸透を促進するために、任意の所望の非中性pHを有するように調整することができるが、このような機構は、繊維毛皮質内にモノマーを導入する追加の方法の存在を排除するものではない。例えば、その重合に必要なモノマー及び薬剤は、毛髪環境とその毛皮質との間の直接移動のために十分に開放されているか否かにかかわらず、毛髪の鱗片を通して拡散するのに十分にさらに極性であってもよい。
【0090】
以前に記載されかつ本明細書でさらに詳述されるHPM又はPBMは、本質的に油性であり、すなわち、実質的に水に混和せず、したがって、適切な量の適切な共溶媒が存在しない場合、水中油型乳剤の油相に存在する。いくつかの実施形態では、HPM又はPBM(又は水不溶性と見なされる任意の材料)の残留物の溶解性は、それらが液体のpHにて処理される水性環境の重量に対して、5wt%以下、1wt%以下、又は0.5wt%以下である。溶解性は肉眼で評価することができ、可溶性組成物(例えば、単相組成物)は室温(約23℃)で一般的に透明(濁っていない)である。或いは、この状態は、溶液の屈折率を測定し、水中の既知の量のHPM又はPBMを用いた検量線と比較することによって定量することができる。しかしながら、適切な量の適切な共溶媒(例えば、30wt%超過)の存在下で、単相組成物を代わりに形成することが可能である。
【0091】
スタイリング組成物の形態に関係なく、また理論に拘束されるものではないが、アルカリ性pHは、毛髪繊維の表面を帯電させることにより(一般に繊維上に存在する帯電可能な基、例えばカルボキシル基に起因して)、とりわけ毛小皮の鱗片の開放に寄与すると考えられ、毛幹へのモノマーのより良好な浸透を可能にする。いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油乳剤)は、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10のpHを有する。一般的には、組成物のpHは、pH 11を超えない。特定の実施形態において、組成物のpHは、8~10.5の間、9~10.5の間、又は9.5~10.5の間である。
【0092】
ヘアスタイリング組成物のこのようなアルカリ性pHは、HPM又はPBMが存在する油相を、適切なpHの水相で分散又は溶解することによって達成することができる(例えば、それぞれ乳剤又は単一相を形成するために)。水相のpHは、所望のpHを維持するように適合された任意の濃度で、任意の適切なpH調整剤を使用することによって調整することができる。このような薬剤としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、又は水酸化カリウムなどの塩基が挙げられる。また、pH調整剤は、モノエタノール-アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、コカミドモノエタノール-アミン、アミノメチルプロパノール又はオレイルアミンなどのアミンであってもよい。或いは又はさらに、性質上塩基性であるヘアスタイリング組成物の他の成分が、該組成物(例えば、乳剤)のアルカリ性のpHを提供又はそれに寄与してもよい。例えば、「Dynasylan(登録商標)AMEO」及び「Dynasylan(登録商標)SIVO 210」として商品化されている架橋剤は、それらのアミン基の点において、このような効果を有している。
【0093】
逆に、4.5以下、4以下、又は3以下の酸性のpHも、毛髪の鱗片の開きに寄与することが可能である。一般的には、そのような酸性pHを有するヘアスタイリング組成物のpHは、少なくとも1、少なくとも1.5、又は少なくとも2であり、一般的には、1~4の間、1~3の間、1~3.5の間、2~4の間、又は2~3.5の間である。このような酸性pHは、pH調整剤として酸を用いて得ることができ、数例を挙げれば、酢酸、過塩素酸、及び硫酸などから選択することができる。或いは、又はさらに、本来酸性であるヘアスタイリング組成物の他の成分が、該組成物(例えば、乳剤)の酸性pHを提供又はそれに寄与してもよい。例えば、トリエトキシシリルプロピルマレイン酸及びトリヒドロキシシリルエチルフェニルスルホン酸として知られる架橋剤は、それぞれの酸性基の点において、このような効果を有している。
【0094】
単相組成物及び水中油型乳剤は、通常、それぞれが含有し得る水及び共溶媒の相対量によって互いに異なるので、以下に、各種類について別個に説明する。特定の種類の組成物に適した水と共溶媒との相対量は、モノマー、硬化促進剤、補助重合剤、又は他の添加剤、並びにそれらのそれぞれの量にも依存するため、それぞれの種類の組成物に適した濃度の範囲に重複がある可能性があることに注意する必要がある。
【0095】
いくつかの実施形態では、単相組成物中の水の濃度は、単相組成物の重量に対して少なくとも2wt%、少なくとも5wt%、少なくとも10wt%、少なくとも15wt%、又は少なくとも20wt%である。いくつかの実施形態では、水の濃度は、単相組成物の重量に対して、多くても80wt%、多くても60wt%、多くても40wt%、多くても35wt%、又は多くても30wt%である。特定の実施形態では、水の濃度は、単相組成物の重量に対して、2~80wt%の間、2~60wt%の間、2~20wt%の間、2~15wt%の間、10~40wt%の間、10~30wt%の間、又は15~40wt%の間である。
【0096】
いくつかの実施形態では、水中油型乳剤中の水の濃度は、水中油型乳剤の重量に対して、少なくとも60wt%、少なくとも65wt%、又は少なくとも70wt%である。いくつかの実施形態では、水の濃度は、水中油型乳剤の重量に対して、多くても90wt%、多くても87wt%、又は多くても85wt%である。特定の実施形態では、水の濃度は、水中油型乳剤の重量に対して、60~90wt%の間、60~87wt%の間、65~87wt%の間、又は70~85wt%の間である。
【0097】
水は、本組成物の唯一の「液体担体」でなくてもよく、いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、少なくとも1つの共溶媒をさらに含有することができる。少なくとも1つの共溶媒は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC~C10アルコール、例えばメタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、プロピレングリコール、1-ペンタノール、1,2-ペンタンジオール、2-ヘキサンジオール、ベンジルアルコール又はジメチルイソソルビド;ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン、又は1-メトキシ-2-プロパノールなどの水混和性エーテル;ケトン(例えば、メチルエチルケトン、アセトン)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、炭酸ジメチル又はジメチルフォルマイドなどの非プロトン性溶剤;安息香酸C1215アルキル、又はマレイン酸ジブチルなどのエステル;及びイソパラフィン液、オリーブ油、ヤシ油又はヒマワリ油などの鉱物油又は植物油から選択することができる。特定の実施形態では、共溶媒はイソプロピルアルコールである。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、油性共溶媒(例えば、C12~15アルキルベンゾエート)もまた、最終組成物の疎水性に寄与することができる。
【0098】
当業者には容易に理解されるように、これらの共溶媒のいくつかは、油相のHPM又はPBMと、水相と、又は部分的に両方と、相が区別可能な乳剤の調製中に、又は油相が水性共溶媒相に溶解される単相の調製中に、無差別に混合することができる。したがって、以下においてこれらの共溶媒の合計濃度に言及する場合、いくつかの状況が包含される:a)単一の共溶媒が使用され、HPM若しくはPBMと混合するか又は水相と混合するかのいずれか;b)単一の共溶媒が使用され、HPM若しくはPBMと水相との両方と混合するか:c)2種以上の共溶媒が使用され、少なくとも1つのHPM若しくはPBMと水相と混合するかである。特定の理論に縛られることはないが、HPM若しくはPBMの浸透を容易にし、及び/又はHPM若しくはPBM内の混和性架橋を、存在する場合には増加させ、及び/又は単相組成物を形成するために水相内のHPM若しくはPBMの混和性を高めるように、共溶媒は油相の表面張力を向上させると考えられている。
【0099】
いくつかの実施形態では、単相組成物中のこれらの共溶媒の合計濃度は、単相組成物の重量に対して少なくとも20wt%、少なくとも30wt%、少なくとも40wt%、又は少なくとも50wt%である。共溶媒の最大用量は、選択されるHPM若しくはPBM、並びに追加成分の存在に依存し得る。いずれにしても、共溶媒の濃度は、組成物が単相組成物の形態となるような濃度である。いくつかの実施形態では、これらの共溶媒の合計濃度は、単相組成物の重量に対して、多くても80wt%、多くても75wt%、又は多くても70wt%である。特定の実施形態では、共溶媒の合計濃度は、単相組成物の重量に対して20~70wt%の間、30~70wt%の間、又は35~65wt%の間である。
【0100】
いくつかの実施形態では、水中油型乳剤中のこれらの共溶媒の合計濃度は、水中油型乳剤の重量に対して少なくとも1wt%、少なくとも5wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、又は少なくとも13wt%である。共溶媒の最大用量は、選択されるHPM若しくはPBM、並びに追加成分の存在に依存し得る。いずれにしても、共溶媒の濃度は、組成物が乳剤の形態となるような濃度である。いくつかの実施形態では、共溶媒の合計濃度は、水中油型乳剤の重量に対して、多くても40wt%、多くても35wt%、又は多くても30wt%である。特定の実施形態では、共溶媒の合計濃度は、水中油型乳剤の重量に対して、1~40wt%の間、5~40wt%の間、10~40wt%の間、12~35wt%の間、又は13~30wt%の間である。
【0101】
単相組成物及び水中油型乳剤は、任意の適切な方法によって調製することができる。例えば、本発明の組成物は、HPM(複数可)又はPBM(複数可)を含み、したがって油相の優勢な部分を含む第1の混合を、水相の優勢な部分を含む第二の液体と混合することによって製造することができる。任意の所望の添加剤を含む、「HPMコンパートメント」又は「PBMコンパートメント」及び「水性コンパートメント」を形成するこれらの別個の副組成物はそれぞれ、水中油型乳剤の化合物の一部が実際に部分的に2相の間を移行し得ることを除外できないため、2相のいずれかの優勢な部分を含むとそれぞれ言及される。例えば、重合性副組成物を考慮すれば、HPM若しくはPBMは、水とほとんど混和しなくてもよく、及び/又は優勢な水性副組成物と混合する時に水相と一部融合することができる、水とある程度の混和性を示す共溶媒(又は乳剤の他の任意の成分)の存在下で調製されてもよい。2つの相を混合する際、一方が他方に溶解する際に乳剤ではなく単相組成物が得られる。
【0102】
水中油型乳剤が、HPM又はPBMのコンパートメントを水性コンパートメントと混合することによって調製される場合、それぞれには、設定比率での2つのコンパートメントの混合時に、最終的な水中油型乳剤の所望の濃度を達成するのに適したそれぞれの成分量が含まれ得る。例として、いくつかの実施形態では、HPM又はPBMのコンパートメント中のすべてのHPM又はPBM(2つ以上の場合)の合計濃度は、HPM又はPBMのコンパートメントの重量に対して、少なくとも2wt%、少なくとも5wt%、少なくとも9wt%、少なくとも13wt%、又は少なくとも15wt%である。いくつかの実施形態では、HPM又はPBMの濃度は、HPM又はPBMのコンパートメントの重量に対して、多くとも50wt%、多くとも40wt%、多くとも37wt%、多くとも35wt%、多くとも33wt%、又は多くとも32wt%である。特定の実施形態において、HPM又はPBMの濃度は、HPM又はPBMのコンパートメントの重量に対して、2~50wt%の間、2~40wt%の間、5~35wt%の間、5~33wt%の間、9~33wt%の間、又は9~32wt%の間である。
【0103】
本教示による単相組成物及び水中油乳剤は、HPM又はPBMのコンパートメントと水性コンパートメントとの混合物を溶解又は乳化すること以外の任意の追加の適切な方法によって調製することができるため、HPM又はPBMの濃度は、総/最終組成物(例えば、単相又は乳剤)の重量によって代替的に提供される。
【0104】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型乳剤)中のHPM又はPBM(2つ以上の場合)の合計濃度は、該組成物の総重量に対して、少なくとも0.1wt%、少なくとも0.25wt%、少なくとも0.5wt%、又は少なくとも0.9wt%である。いくつかの実施形態では、HPM又はPBMの濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、多くとも5wt%、多くとも3wt%、多くとも2wt%、又は多くとも1.5wt%である。特定の実施形態では、HPM又はPBMの濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、0.1~5wt%の間、0.25~5wt%の間、0.5~5wt%の間、0.5~3wt%の間、0.9~2wt%の間、又は0.9~1.5wt%の間である。
【0105】
いくつかの実施形態では、PBMは、早期かつ望ましくない重合を誘発する可能性のある環境要因(例えば、酸素)を低減又は除去するために、アルゴン又は窒素下などの不活性雰囲気中に維持される。
【0106】
一般に、架橋剤を使用する場合、低濃度が要求され、そのような濃度は、一般的には、モノマーのすべての架橋性基及び架橋剤の対応する官能基を介して架橋することが理論的に可能な化学量論的量に相当する。いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物中に存在する架橋剤の合計濃度(2つ以上の場合)は、組成物(例えば、水中油型乳剤)の重量に対して、多くても10wt%、多くても5wt%、多くても2.5wt%、多くても2wt%、又は多くても1.5wt%である。いくつかの実施形態では、架橋剤の合計濃度は、組成物の重量に対して、少なくとも0.05wt%、少なくとも0.1wt%、又は少なくとも0.5wt%である。特定の実施形態では、架橋剤は、組成物の重量に対して0.05~10wt%の間、0.1~5wt%の間、又は0.5~1.5wt%の間の合計濃度で存在する。HPM(複数可)又はPBM(複数可)とその架橋剤との間の重量比を考慮する場合、この比率は、1:15~5:1との間、1:10~2.5:1との間、又は1:5~5:1との間とすることができる。硬化プロセスが熱エネルギーに関与する場合、架橋剤は、ヘアスタイリング組成物の貯蔵及び/又は適用中の自然硬化を防止又は低減するために、周囲温度に対して相対的に上昇した温度及び/又は室温で十分に遅い速度での硬化をもたらすように選択されることが好ましい。生対象への使用が可能であるように、適切な架橋剤の硬化温度は高すぎる必要はなく(例えば、毛髪繊維が50℃~60℃の間である)、架橋剤の硬化温度と硬化速度の両方は、妥当な条件での硬化をもたらすように選択することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、硬化加速剤(2つ以上である場合)の合計濃度は、HPM(複数可)又はPBM(複数可)の重量に対して、多くとも30wt%、多くとも25wt%、多くとも20wt%、多くとも15wt%、多くとも10wt%、多くとも9wt%、多くとも8wt%、多くとも7wt%、多くとも6wt%又は多くとも5wt%であり、硬化加速剤は、任意に前記HPM(複数可)又はPBM(複数可)の少なくとも0.01wt%で存在する。ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型乳剤)全体の重量に対して硬化加速剤の量を考えると、それらは一般に非常に低い濃度で存在する。いくつかの実施形態では、硬化加速剤の合計濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、多くても5wt%、多くても3wt%又は多くても2wt%であり、硬化加速剤は任意にヘアスタイリング組成物の少なくとも0.001wt%で存在する。
【0108】
過酸化物を付加重合の硬化加速剤として使用する場合、その量は毛髪を脱色する能力の観点から慎重に検討する必要がある。したがって、過酸化物の量は、重合を活性化するのに十分な量であり、かつ毛髪を有意に脱色しない程度に少ないことが求められる。
【0109】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物中に存在する硬化促進剤の濃度(すなわち、付加重合又は縮合重合に使用される架橋剤と硬化加速剤との合計濃度)は、ヘアスタイリング組成物全体の0.05wt%~15wt%の間、0.1wt%~13wt%の間、又は0.5wt%~10wt%の間である。
【0110】
いくつかの実施形態では、単相組成物又は水中油型乳剤は、ヘアスタイリング組成物の1つ又は複数の特性を高めるように適合された、少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、例えば、補助重合剤、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、荷電調製剤、又はその他のヘアスタイリング組成物に従来から含まれる成分(例えば、香料)などを挙げることができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、HPM(複数可)若しくはPBM(複数可)又は架橋剤自体の架橋を強化及び促進するために補助重合剤が添加されてもよい。必ずしも官能化される必要のない、先に述べたような古典的な硬化加速剤とは対照的に、このような補助重合剤は、HPM又はPBMの重合性基と共に、或いは架橋剤の官能基と共に、架橋に利用できる官能基の濃度を増加させる少なくとも1つの官能基を有する。補助重合剤に含まれる官能基の濃度が高いほど、架橋促進の程度がより高くなることに寄与すると考えられている。少なくとも官能基の存在の観点から、補助重合剤は増大するポリマーネットワークに結合することができる(追加的に架橋しない場合にネットワークに取り込まない従来の硬化加速剤とは対照的である)。好ましくは、補助重合剤の官能基の密度は、10,000g/mol未満、5,000g/mol未満、又は3,000g/mol未満の分子量を有する補助重合剤を使用できる程度に十分に高くする必要があり、そのような大きさは毛幹に浸透する能力を妨げない。
【0112】
補助重合剤に含まれる官能基は、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、アミン基(-NH)、又はカルボニル基(C=O)で有り得る。適切な補助重合剤はまた、無水物、イソシアネート、及びイソチオシアネートなどの官能基を有していてもよく、これらは、例えば、アミン架橋剤と反応することが可能である。他の適切な補助重合剤は、該組成物中に存在する他の反応物によってさらに官能化され得る基、例えば二重結合を有することができ、これは(例えば、アミン架橋剤によって、又は代替的にマイケル付加反応にて、又はさらには反応性ラジカルを含むように「活性化」したPBMによって)開裂が可能である。
【0113】
例示的な補助重合剤は、以下のものから選択することができる:シェラック、ロジンガム、アルキルアリール置換マレエート及びサリシレート(例えば、ジメチルマレエート及びジブチルマレエート)、テルペン及びテルペノイドを含む炭素原子16個以上のアルケン鎖を有する脂肪油(例えば、スクアレン及びリコペン)、脂肪性アミン(例えば、オレイルアミン)、及びアラキドン酸、リノール酸、及びリノレン酸などの非共役不飽和脂肪酸、レチノイン酸、エレオステアリン酸、リカン酸(licanic acid)、及びプニカ酸などの共役脂肪酸、及びザクロ種子油、チャ種子油、シソ種子油、ラズベリー種子油、及びキウイ種子油などの共役又は非共役二重結合を含む脂肪酸のトリグリセライド。補助重合剤として機能し得るアルケンは、より多くの炭素原子(例えば、13以上)及び場合によっては1分子あたりのより多くの二重結合(例えば、3以上)を有することによって、架橋剤として機能し得るアルケンと区別される。さらに、不飽和アルケン鎖を有する補助重合剤は、100gの薬剤あたりのヨウ素価がヨウ素100g以上であることを特徴とすることができ、かかる値は通常400を超えない。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明の目的のために使用される補助重合剤は疎水性であり、毛髪繊維内での架橋増強の他に、水分の浸透に対して毛髪を保護することを助ける可能性もある。
【0115】
特定の実施形態では、補助重合剤は、昆虫の分泌物から採取される天然の生体付着性樹脂であるシェラックであり、これは多くの合成化学的同等物を有する。一般に精製されたワックス抜きシェラック(wax free shellac)は、平均分子量が約600~1,000g/molであり、その真の構造については様々な成分の混合物であり、議論があるが、オレフィン及びアルデヒドの官能基と共にヒドロキシル基及びカルボキシル基の繰り返し単位を含むことがわかっている。シェラックは、最大150mg KOH/gの可変の酸価で供給することができ、該酸価は一般的に65~90mg KOH/gの範囲内であり、ヒドロキシル価は一般的に180~420mg KOH/gである。
【0116】
いくつかの実施形態では、補助重合剤は、組成物の重量に対して0.01wt%~1wt%の間、0.01wt%~0.8wt%の間、0.02wt%~0.6wt%の間、又は0.03~0.5wt%の間の量で存在する。
【0117】
ヘアスタイリング組成物は、水中油型乳剤の場合、乳剤の形成を容易にするため、及び/又はその安定性を延長するために、乳化剤をさらに含有していてもよい。いくつかの実施形態では、乳化剤は非イオン性乳化剤であり、好ましくは親水性-親油性バランス(HLB:hydrophile-lipophile balance)値が、グリフィンの尺度で、2~20の間、7~18の間、10~18の間、12~18の間、12~17の間、12~16の間、12~15の間、又は13~16の間である。適切な乳化剤は、水溶性(例えば、HLB値が8~20)であり、例えば、ポリソルベート(Tweensとして市販されていることが多い)、ソルビタンのエステル誘導体(Spanとして市販されていることが多い)、アクリルコポリマー(例えば、Synthalen(登録商標)W2000として市販されている)及びそれらの組み合わせであるか、又は油溶性であり、例えばレシチン及びオレイン酸などである(例えば、2~8の間のHLB値を有する)。他の機能のために選択されたヘアスタイリング組成物のいくつかの構成要素も、乳化剤として機能することができることに留意されたい。例えば、一般に補助重合剤として使用されるリノール酸は、その極性頭部と脂肪鎖とにより、乳化剤としても機能することができる。
【0118】
HPM又はPBMの毛髪繊維への浸透を促進するために、該組成物は、適切な接触を可能にするために、毛髪繊維上に適切に広がることが可能であることが求められる。適用時に該組成物が毛髪繊維を十分に被覆することで、毛細管現象によると考えられるモノマーの毛髪への浸透が進み、所望の形状を拘束することができる合成ポリマーが形成されると期待される。ミリニュートン/メートル(mN/m)で測定されるヘアスタイリング組成物の表面張力を、毛髪繊維の表面エネルギーよりも低く調整することによって、表面の適切な濡れ性を理論的に改善することができる。このような特性は、標準的な方法、例えばASTM D1331-14、方法Cに記載された手順に従って決定することができる。
【0119】
以前に処理されていない生来の毛髪繊維は、一般的に約25~28mN/mの表面エネルギーを有するが、損傷毛髪は一般的に高い表面エネルギーを有し、例えば化学的に脱色された毛髪繊維は、31~47mN/mの範囲内である。損傷毛と非損傷の毛髪の間の多くの差異のうち、非損傷毛髪では天然由来の脂肪酸が多く存在することは、表面張力が相対的に低くなることに寄与していると考えられている。上記の範囲を考慮すると、25mN/m未満の表面張力を有する組成物を用いて行う場合、すべての毛髪の種類において適切な濡れが観察されると仮定することができる。表面張力が低すぎるヘアスタイリング組成物は、モノマーの浸透に関する限り、期待される結果をもたらさないことが驚くべきことに見出された。本発明者らは、直感に反して、理論的に適切と考えられるよりも比較的に高い表面張力を有する組成物が、本発明の目的により適していることを見出した。理論に縛られることを望まないが、毛幹内の脂肪酸が存在しないことが、毛髪内で感知される表面エネルギーを、毛髪の外表面で測定可能な表面エネルギーよりも十分に高くなるように増大させると考えられ、毛幹に浸透することを意図した組成物の特定の範囲の表面張力を選択する必要がある。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、25~60mN/mの間、25~55mN/mの間、25~50mN/mの間、25~45mN/mの間、25~40mN/mの間、25~35mN/mの間、又は30~40mN/mの間の表面張力を有している。
【0121】
生来の毛髪に好適な本発明の組成物はまた、以前に処理された毛髪繊維にも好適である。しかしながら、いくつかの実施形態においては、スタイリング組成物は、損傷した毛髪を十分に被覆するのに適合した表面張力を示すことができるが、生来の毛髪繊維に対しては十分なものではない場合がある。
【0122】
湿潤剤は、表面張力を前述の適切な範囲のいずれかになるように低下させることができる任意の適切な濃度で、組成物に添加することができる。湿潤剤の例としては、シリコーン系、フッ素系、炭素系、又はアミンアルコール類を挙げることができる。シリコーン系湿潤剤としては、シリコーンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製SIU 100など)を挙げることができる。フッ素系湿潤剤としては、ペルフルオロスルホン酸(ペルフルオロオクタンスルホン酸など)、又はペルフルオロカルボン酸(ペルフルオロオクタン酸など)などを挙げることができる。炭素系の湿潤剤は、エトキシル化アミン及び/又は脂肪酸アミド(例えば、コカミドジエタノールアミン)、脂肪アルコールエトキシレート(例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル)、ソルビトールの脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート及びアルキルポリグルコシド(例えば、ラウリルグルコシド)が挙げられる。アミン官能化シリコーンは、湿潤剤(アモジメチコン又はビスアミノプロピルジメチコンなど)、並びにアルカノールアミン(2-アミノ-1-ブタノール及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなど)としても使用できる。湿潤剤が添加される場合、一般的には、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型乳剤)中に、該組成物の重量に対して、少なくとも0.001wt%、少なくとも0.01wt%、又は少なくとも0.1wt%;多くても1.5wt%、多くても1.4wt%、又は多くても1.3wt%;任意に0.001~1.5wt%の間、0.01~1.4wt%の間、又は0.1~1.3wt%の間の濃度で存在する。
【0123】
或いは又はさらに、異なる機能を果たすためにヘアスタイリング組成物に存在する成分の一部が、ヘアスタイリング組成物の表面張力に寄与することも可能である。例えば、架橋剤であるアミノプロピルトリエトキシシラン(例えば、Dynasylan(登録商標)AMEO)は、組成物の表面張力を低下させ、一方、補助重合剤及び乳化剤として使用できるリノール酸は、組成物の表面張力を増大させることができる。したがって、ヘアスタイリング組成物の表面張力は、そのような成分の適切な濃度を選択することによって調整することができる。共溶媒は、形成され得るヘアスタイリング組成物の種類に対して、その化学式及び相対濃度によって寄与することに加えて、毛髪繊維に対する組成物の湿潤能力に寄与することもできる。
【0124】
いくつかの実施形態では、所望の粘度を提供するために、一般に水中油型乳剤又は水性コンパートメントの水相に増粘剤を添加することができる。粘度は、個々の毛髪繊維をすべて満足に被覆するように組成物を毛髪に容易に適用できるように十分に低く、しかし毛髪繊維上に十分な時間残留し、滴下を防止するために十分に高いことが必要である。粘度が比較的低いと、拡散及び/又は毛細管現象によるHPM又はPBMの毛髪への浸透も促進され得る。例示的な増粘剤は、ヒアルロン酸、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリル-ジメチル-アンモニウムクロリド)コポリマー(ポリクオタニウム7、例えば、Dow Chemicals製)、四級化ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム10、例えば、Dow Chemicals製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。増粘剤は、添加される場合、一般的には、水相又は単相の重量に対して、少なくとも0.1wt%;多くても10wt%;任意に0.5wt%~5wt%の間の濃度である。
【0125】
毛髪繊維の表面へのHPM又はPBMの移動及び/又は保持を促進し、次いで、そこへの浸透を増加させ得るために、好ましくは、組成物と毛髪とのゼータ電位の間に差が存在すべきである。例えば、ヘアスタイリング組成物のそのpHにおけるゼータ電位(又はζ)は、好ましくは、同じpHにおける哺乳類の毛髪繊維のゼータ電位(又はζ)よりも負又は正である必要がある。場合によっては、組成物に使用される成分は、他の機能に加えて、ゼータ電位値のこのような勾配を達成するための組成物の十分な帯電を提供することができる。例えば、pH調整剤、湿潤剤及び/又はアミン系架橋剤は、水中油型乳剤の好適な帯電に寄与し得る。いくつかの実施形態では、電荷調整剤と呼ばれるこの効果に専用の薬剤を、組成物に添加することができる。説明のために、水不溶性の非反応性アミノシリコーンオイルを乳剤の油相に添加して、ゼータ電位を調節することができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、組成物のゼータ電位ζと毛髪繊維のゼータ電位ζとの間の差は、ゼータ差又はデルタゼータ電位(Δζ)とも称され、絶対値で、少なくとも10mV、少なくとも15mV、少なくとも20mV、少なくとも25mV、少なくとも30mV、又は少なくとも40mVである。いくつかの実施形態では、△ζ絶対値は、10~80mV、10~70mV、10~60mV、15~80mV、15~70mV、15~60mV、20~80mV、20~70mV、20~60mV、25~80mV、25~70mV、25~60mV、30~80mV、30~70mV、30~60mV、35~80mV、35~70mV又は35~60mVの範囲内である。
【0127】
本組成物はまた、化粧品組成物に慣用される他の任意の添加剤、例えば防腐剤、酸化防止剤、殺菌剤、防かび剤、キレート剤、ビタミン及び香料、又はヘアスタイリング組成物に慣用される、例えばヘアデタングル剤(もつれほぐし剤)及びヘアコンディショニング剤(conditioning agent)を含んでもよく、その性質及び濃度は、本明細書においてさらに詳述する必要はない。
【0128】
該組成物は、ヘアスタイリング組成物が適用される形態に対して慣用される他の任意の添加剤、を含んでもよく、例えば組成物が噴霧される場合に推進剤を含んでいてもよく、その性質及び濃度は本明細書においてさらに詳述される必要はない。
【0129】
前記材料の混合及び/又は乳化は、当該技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。手動で振っても十分であるが、ボルテックス、オーバーヘッドスターラー、マグネティックスターラー、超音波分散機、高剪断ホモジナイザー、ソニケーター、及び遊星遠心ミルなど、様々な装置を使用することができ、一般的にはより均一な組成、例えば水中油型乳剤の水相中のより均一な油滴の集団が得られる。
【0130】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、HPM又はPBMのコンパートメント及び水性コンパートメントの内容物を混合又は乳化することによって調製することができ、この組み合わせは、それぞれの部分が準備された後すぐに行われる。しかし、別の実施形態では、2つのコンパートメントの混合を先送りすることができる。特に、HPM(複数可)又はPBM(複数可)及び少なくとも1つの硬化促進剤(例えば、架橋剤)を含む組成物が、完全な最終組成物において異なる相に分離する傾向がある場合、同じ重合性コンパートメントにおいてそのような材料を予備重合させることが望まれる場合がある。いくつかの実施形態において、該予備重合の工程は、プロセスに悪影響を及ぼすか、又は単に遅延させる可能性のある追加の材料を含むことに起因する場合、HPM(複数可)又はPBM(複数可)と硬化促進剤との単独混合物に対して行われ、HPM/PBMコンパートメントの内容物の全体に対して行われない。他の実施形態では、予備重合は、硬化促進剤又はHPM若しくはPBMコンパートメントの任意の他の成分との組み合わせの前に、HPM(複数可)又はPBM(複数可)の単独で実施される。このような予備重合は、「自己予備重合」と呼ぶことができる。理論に縛られることを望まないが、PBM(複数可)がCNSLのような不飽和側鎖を含有する場合、このような自己予備重合は、適切な条件(例えば、高温)で二重結合が開裂し、付加重合を介して他のCNSL分子との重合に利用できるラジカルを形成することによって起こると考えられる。
【0131】
このような予備重合は、必要な場合、そして硬化促進剤の存在下であろうとなかろうと、HPM/PBMコンパートメントの添加剤との混合時及び/又は水性コンパートメントの内容物との混合時にモノマーと硬化促進剤とが異なる相に分離することを防止するのに、混合した組成物の適用後の毛髪繊維内での重合を大幅に遅らせることが可能な程度に、十分長い時間を有することが必要である。しかし、予備重合は、このプロセスで形成できるオリゴマー(架橋剤自体又はモノマー自体のもの、又は架橋剤及びモノマーと他とのもの)が、組成物の適用後に毛髪繊維内に浸透するように十分小さいままであるように十分に短い必要がある。この予備重合は、予備重合されるコンパートメントに存在する関連ビルディングブロック(例えば、モノマー及び/又は架橋剤)を消費して、オリゴマー(組成に関係なく)の形成をもたらすと考えられている。このプロセスは、モノマーと硬化促進剤の予備重合混合物の粘度が時間と共に上昇することによってモニターすることができる。予備重合工程は、室温などの周囲条件で行うことができるが、例えば混合物の加熱など、重合を誘発及び/又は増強するのに適合した任意の手段によってさらに加速することができる。予備重合工程は、予備重合反応を妨害する可能性のある環境因子(例えば、酸素)を低減又は除去するために、アルゴン又は窒素下などの不活性雰囲気中で行うことができる。予備重合の条件は、実施される場合、HPM又はPBMの種類、及び選択された架橋剤に依存し得る。いくつかの実施形態では、予備重合は、20℃~60℃の間、25℃~60℃の間、30℃~60℃の間、又は40℃~60℃の間の温度、又は100℃~150℃の間又は150℃~200℃の間などの高温で、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、少なくとも120分間又は少なくとも180分間行うことができる。一般的には、予備重合の期間は、比較的穏やかな温度で行われる場合、24時間、18時間又は12時間を超えないが、しかし、比較的高い温度(例えば、150℃~200℃の間)で行われる場合は、短縮することができ、8時間未満、5時間未満、又は4時間未満を要する。予備重合後、添加剤を予備重合コンパートメントに任意に添加することができ、及び/又は水性コンパートメントをそれと組み合わせて、ヘアスタイリング組成物を形成することができる。
【0132】
ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型乳剤)は、その調製後、又はそれが好適に安定かつ効力を維持する期間内に、容易に適用することができる。例えば、乳剤の場合、HPM又はPBMがin vitroで完全に重合していない条件で油滴が所望のサイズ範囲内(例えば、数マイクロメートル以下、一般的には10μm未満)である限りは、組成物を適用することが可能である。より一般的には、ヘアスタイリング組成物は、毛髪繊維に少なくとも部分的に浸透し、そこで重合するように十分な量のHPM又はPBMが利用可能である限り使用することができる。いくつかの実施形態では、単相組成物又は乳剤は、その溶解又は乳化から多くても30分以内、又は多くても20分以内、多くても10分以内、又は多くても5分以内に毛髪繊維に適用される。
【0133】
いくつかの実施形態では、単相組成物として、又は水中油型乳剤として、ヘアスタイリング組成物を適用する前に、毛髪から残留水分が除去され得る。この毛髪繊維からの水分子の除去は、一般に、毛髪を加熱することによって達成され、毛小皮の表面及び/又は毛幹内にいずれか形成され得た水素結合を切断すると考えられている。また、ヘアスタイリング組成物を適用する前に、毛髪に存在し得る残留物質、例えば、毛髪製品、汚れ又はグリースを除去して、毛髪繊維を清浄化することができる。これは、ラウリル硫酸ナトリウムなどの洗浄剤を適用することで行うことが可能である。所望により、ヘアスタイリング組成物を適用する前に、毛髪繊維を洗浄し、次いで乾燥させることができる。
【0134】
本明細書で使用されるとおり、文脈から明らかでない限り、又は別段の記載がない限り、「残留水分」という用語は、毛髪繊維に関して、湿気にさらされた毛髪に由来する(例えば、周囲の湿度又は毛髪の湿潤の結果として)、毛小皮の外面上、その鱗片の間及び/又は下(すなわち、毛皮質又は毛髄質内)のいずれかに存在する水を指す。当然のことながら、毛髪は常に周囲の湿度にさらされており、湿度はほとんどゼロになることはないため、残留水分を完全に除去することは実現が非常に困難である。それにもかかわらず、低レベルの残留水分は達成可能であるか、又は主に熱(すなわち加熱)のエネルギーを毛髪に適用することによって一時的に達成することができる。わずかなレベルの残留水分を達成するのに十分な熱を、任意の従来の方法、例えば、ヘアドライヤー又はフラットアイロン若しくはカールアイロンを十分な時間使用することによって、毛髪に適用することができる。毛髪中の水分子の量を減少させるために使用される方法に関係なく、そのような工程は、乾燥処理又は乾燥工程と代替的に呼ぶことができる。
【0135】
少なくとも波状の外観を有する毛髪を考慮する場合、十分な乾燥により波が一時的に軽減されるため、乾燥前処理により水素結合が十分に切断されたことを容易に視覚的に評価することができ、所望によりそのような工程の最後に毛髪繊維が完全に平らにされる。或いは、ストレートヘアの場合のように、乾燥前処理の期間は、使用する乾燥装置及び毛髪繊維に加える温度に応じて任意に設定することができる。例えば、約200℃の熱伝導温度で毛髪に直接加えることができるフラット又はカールアイロンは、数分以内に水素結合を十分に切断することができるが、従来のヘアドライヤーは、用いられる毛髪からの距離に応じ、熱伝達によって比較的低い温度を加え得、比較的長い乾燥期間が必要になるであろう。通常、毛髪繊維の乾燥は、毛髪繊維の領域を少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、又は少なくとも100℃の温度まで、一度に5秒以下加熱することによって行うことができ、このような乾燥処理は、加熱が毛髪束の一方の端からもう一方の端まで進行する場合に毛髪束に対して最大5分かかる。
【0136】
いくつかの実施形態では、そのような乾燥処理後(実施する場合)及び/又は本組成物の適用前の残留水分レベルは、毛髪繊維の重量に対して、多くても5wt%、多くても4wt%、多くても3wt%、多くても2wt%、又は多くても1wt%である。そのような量は、例えば、熱重量分析、又は光熱過渡放出放射測定などの近赤外技術を使用する標準的な方法によって決定することができる。
【0137】
或いは、又はさらに、ケラチンポリマー内及び/又は毛髪繊維に浸透したヘアスタイリング組成物の材料内の水素結合の開裂にとりわけ寄与し得る加熱は、a)組成物の適用中に任意に適用される(例えば、組成物は適用前に加熱される)加熱;b)毛髪繊維上の組成物のインキュベーション中に任意に適用される加熱;及び/又はc)組成物の適用後に毛髪繊維のスタイリング中に適用される加熱である。水素結合への作用に関係なく、もしあれば、加熱は毛髪繊維内のモノマー/オリゴマーの拡散速度及び/又はポリマーの硬化を促進する。
【0138】
任意の乾燥工程及び/又は洗浄工程が前もって行われたか否かにかかわらず、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型乳剤)を毛髪繊維に適用し、少なくとも5分間、毛髪上に一般的に維持し、毛小皮の鱗片を膨潤かつ開放し、それによってHPM又はPBM及び硬化促進剤(存在する場合)が毛幹内にアクセスすることを可能にする。毛皮質への浸透を促進するために、内部重合に関与する、或いは促進する分子(例えば、HPM又はPBM、硬化促進剤、共溶媒)は、好ましくは2nm未満、1.8nm未満、又は1.6nm未満の分子径を有する。本発明者らは、一度、モノマーが毛髪繊維の水素結合の少なくとも一部に結合することで、水に暴露される際に毛髪繊維が以前の元の状態に再形成するのを防ぐことができると考えている。HPM又はPBMは、さらに又は代替的に、以前に切断された水素結合に結合することなく重合することができる。作用機序に関係なく、毛髪繊維に含浸したモノマーの硬化から生じるポリマーは、毛髪繊維を新しい形状に拘束することができる。本発明の硬化組成物は、水(環境のものか、又は湿潤時に適用されるもの)が毛髪に接近するのを防ぎ、水素結合が再び形成される能力を低減又は遅延させ、毛髪がその生来の形状に戻る能力を遅延させると考えられている。したがって、簡単にするために、この方法は、水素結合の切断、及びその後に重合することができるHPM若しくはPBM又はその他の成分への結合による、前記切断された結合のその後の妨害の点で記載されているが、これは、観察されるスタイリング効果の基礎となるさらなる根拠を排除することを意味するものではない。
【0139】
モノマーが毛髪繊維に含浸し、毛髪繊維において破壊された水素結合の少なくとも一部への結合を確実にするのに十分な時間が与えられる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも35分間、少なくとも40分間、少なくとも45分間、又は少なくとも50分間、毛髪繊維に接触したままにするか、又は適用したままにする。いくつかの実施形態では、組成物が毛髪繊維に適用されたままである時間、或いはインキュベーション時間と呼ばれる時間は、多くても12時間、多くても10時間、多くても5時間、多くても2時間、又は多くても1時間である。特定の実施形態では、組成物は、5分間~30分間、10分間~60分間、30分間~12時間、30分間~5時間、40分間~2時間、又は50分間~2時間の期間、毛髪繊維上に維持される。従来の縮毛矯正方法は、より長い時間を必要とする場合があり、3~4時間、又はさらには6~8時間の適用を必要とする場合もあることに留意されたい。
【0140】
本組成物は、周囲温度(約23℃)で毛髪繊維上に適用されたままであることが可能であるが、この工程は、代替的に、少なくとも約30℃、又は少なくとも約40℃の高い温度で実行することができる。いくつかの実施形態では、組成物が毛髪繊維と接触したままであることができる温度は、最大で約60℃、最大で約55℃、又は最大で約50℃である。特定の実施形態では、液体組成物は、15℃~23℃の間、23℃~60℃の間、25℃~55℃の間、又は25℃~50℃の間の温度範囲において毛髪繊維上に維持される。
【0141】
前記時間の後、個々の毛髪繊維内での組成物のHPM又はPBMの少なくとも一部の十分な浸透を可能にし、これらのモノマーは、その後少なくとも部分的な重合をもたらすように、任意に硬化促進剤の存在下で、エネルギーの適用により、少なくとも部分的に硬化する。
【0142】
HPM又はPBMの重合時に、毛髪繊維内よりも液体組成物内でより容易に評価できるとおり、得られたポリマーはガラス転移温度(Tg)の上昇が生じる。いくつかの実施形態では、完全な硬化時に、得られるHPP又はPBPは、少なくとも50℃、少なくとも100℃、少なくとも150℃、又は少なくとも200℃のTgを有する。そのようなTgは、重合したHPM又はPBMが、暑い気象条件下、熱水(約45℃)で髪を洗う場合、又はサウナ(約70℃)などの温度が上昇した環境下にある場合でさえも、損なわれないままであることを可能にする。毛髪繊維内に形成された合成ポリマーは、そのTgのおかげで、そのような条件又は処理に影響を受けないままであるため、本教示による組成物及び方法を用いて達成される毛髪の改変された形状は、そのような影響を受けない。
【0143】
いくつかの実施形態において、組成物の少なくとも部分的な硬化(したがって、毛髪繊維のスタイリング)を可能にするエネルギーは、少なくとも約80℃、少なくとも約100℃、少なくとも約120℃、又は少なくとも約140℃の温度で適用される熱エネルギーである。いくつかの実施形態では、加熱温度は最大で220℃、又は最大で200℃である。特定の実施形態では、少なくとも部分的な硬化を達成するために適用される温度は、80℃~220℃の間、100℃~220℃の間、120℃~220℃の間、又は140℃~200℃の間の範囲内である。モノマーを少なくとも部分的に硬化させるために加熱装置によって提供される温度は、一般に、毛髪繊維によって感知される温度よりも高いことを理解されたい。十分長い滞留時間(毛髪部位が熱にさらされる期間)が与えられれば、毛髪繊維の温度は最終的に加熱温度に到達し得るが、これは一般的にはそうではなく、硬化が行われ得る毛髪繊維の温度は、一般的には少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、又は少なくとも約60℃の温度である。毛髪繊維への不可逆的な損傷を防止するために、少なくとも部分的な硬化工程中の毛髪繊維の温度は、望ましくは180℃以下、140℃以下、又は100℃以下である。少なくとも部分的な硬化は、生来の形状を改変するように、例えば、ヘアドライヤー、フラットアイロン又はカールアイロンによって、毛髪を所望の形状にスタイリングしながら行うことができる。この工程では、その間、その形状を改変するために、毛髪繊維を動的又は静的に機械的に拘束する(例えば、櫛又はブラシで引っ張るか、ローラーでロールするか、又はスタイリングアイロンで接触させる)ので、代替的にスタイリング工程と呼ぶことができる。
【0144】
このような温度では、少なくとも部分的に硬化するのに必要な時間は、一般に短時間である。通常、100℃以上の温度を感知する個々の毛髪繊維の領域は、数秒以内でHPM又はPBMの部分重合を局所的にもたらすことができ、一方、約50℃の低い温度に達する毛髪繊維は、数分(例えば、5分)までの時間を必要とする場合がある。毛髪が加熱される、つまり硬化に適した特定の温度を感知する必要のある時間は、改変される毛髪の形状及び形成される新しい形状に依存し得る。比較的穏やかな改変であれば、比較的より劇的な形状の変化よりも短い時間で済むこともある。
【0145】
毛髪繊維が適切な温度であるべき時間の期間は、溶解又は乳化される対象の組成物の油相を毛髪処理に意図された温度にさらし、液相が固化(すなわち、硬化)を開始するのにかかる時間を測定することによってin vitroで独立して試験することが可能である。哺乳類対象を考慮する場合、部分的な硬化工程(言い換えれば、それ自体の毛髪のスタイリング)のために割り当てられる時間の量は、とりわけ、毛髪の種類、頭皮の毛髪の密度及び長さ、並びに熱を供給するために使用する装置及びその温度に依存するであろう。したがって、髪の頭皮全体のレベルでは、部分的な硬化に数分かかることがあるが、一般的には1時間以内である。このような考えは、毛髪繊維の他のあらゆる処理に適用され、本明細書で提供される時間の持続時間は、一般に、同時に処理できる任意の毛髪繊維の量に適した期間を指す。毛髪の頭皮全体が、毛髪繊維の異なるバッチに対して同じ処理を繰り返すことによって段階的に処理される場合、頭皮全体に対する処理の期間は、同時処置の個々の繰り返しの実際の回数に応じた期間の合計とすることができる。例えば、毛髪繊維の第1のバッチの同時処理に5分間必要であり、毛髪頭皮全体が4つのバッチで構成されているとすると、約20分で処理が完了するであろう。
【0146】
少なくとも部分的な硬化の前に、任意に、液体組成物の過剰分を、すすぎ液で毛髪繊維をすすぐことによって毛髪繊維の外表面から除去し、その結果、毛髪繊維の表面に厚いコーティングの形成を防止するため、毛髪に粘着性及び粗い感触を与えないようにする。また、すすいだ毛髪繊維は熱伝導が向上し、部分的な硬化が加速されることもある。
【0147】
或いは、又はさらに、組成物の適用及び毛髪繊維上でのそのインキュベーションの後、及び任意にすすぎの後、しかしヘアスタイリングの前に、硬化促進剤からなる第2の組成物を、HPM又はPBMを含浸させた毛髪繊維に適用することが可能である。この任意の工程で使用され得る組成物は、硬化性組成物と呼ぶことができる。これは前記の同じ硬化促進剤を含有し、先にヘアスタイリング組成物について記載した架橋剤及び硬化促進剤から選択され、かつ一般的には、硬化加速剤からなる硬化組成物である。ヘアスタイリング組成物とは対照的に、硬化促進剤(例えば、硬化加速剤)は、毛髪繊維への硬化組成物の適用を比較的短時間(例えば、5分間~15分間の間、又はそれ未満)にすることができる超過量(例えば、5wt%)で硬化組成物に存在することができる。該硬化性組成物は、すすぎ液に加えて、又はすすぎ液の代わりに、毛髪繊維をすすぐ役割をさらに果たすことができる。
【0148】
所望の改変形状を達成するのに十分な、少なくとも部分的な硬化の後、毛髪繊維は組成物のさらなる硬化を確実にするために、さらなるエネルギー、好ましくは熱の適用によるさらなる硬化を任意に受けることができる。さらなるエネルギーは、上述のスタイリング器具、例えば、ヘアドライヤー、又はスタイリングアイロンの使用によって適用することができる。いくつかの実施形態では、さらなる硬化は、第3の工程の少なくとも部分的な硬化について記載したとおりの温度で、一般的には部分的な硬化の場合よりもかなり長い時間、実施することができる。例えば、毛髪繊維が20分以内に特定のスタイリング装置で所定の温度で少なくとも部分的な硬化を可能にする組成物で処理される(頭皮全体の繊維が所望の改変形状を示すことによって確立される)場合、さらなる硬化に有利な任意の追加加熱工程は、少なくとも40分間、少なくとも同じ条件下で行われることになる。部分的な硬化は繊維の形状を改変する間に達成されるが、本明細書でさらなる硬化と呼ばれる工程は、毛髪繊維が所望の改変形状となった際に適用されるので、所望の形状に適合するように繊維を同時に機械的に拘束することはもはや必要でない。さらなる硬化により、毛髪繊維内のHPM又はPBMの重合度を高めることが期待されるが、完全硬化(例えば、その後、重合がもはや行われなくなること)することは予期されていない。
【0149】
いくつかの実施形態では、(例えば、スタイリング工程及び任意にさらなる硬化の間に達成される)加熱硬化の後、毛髪繊維は、水への露出を減らすために、洗わずに維持することができ、該当する場合、硬化がさらに進行することを可能にする。毛髪繊維の洗浄を回避できる期間は、毛髪の種類、それに適用される組成物、生来の形状を改変するために用いられる手順、温度、相対湿度、所望の改変形状及び前記改変の所望の持続時間に依存し得る。一般的には、毛髪繊維が約40~60RH%の相対湿度で室温に維持されると仮定すると、毛髪の洗浄は、少なくとも部分的硬化(例えば、機械的拘束を含むスタイリング)又は任意のさらなる硬化工程(例えば、機械的拘束なしの加熱)の終了後少なくとも18時間で行われてもよい。場合によっては、少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間、洗浄を延期することができる。通常、本方法によりスタイリングした毛髪の洗髪は、スタイリングから長くても1週間以内に行われる。本発明に従ってスタイリングされた毛髪は、従来の方法でしばしば必要とされるように、スタイリング効果を破壊しないための特定のシャンプーの使用に制限されず、任意のシャンプーで洗浄することができる。とはいえ、通常のシャンプーは、硬化促進剤を含めることにより改善することができる。
【0150】
図1Aは、ヘキサンで洗浄及びデジタル超音波洗浄機(PS-60A、Xi’an HEB Biotechnology社、360W、40,000Hz)で45分間超音波処理した毛髪繊維のFIB-SEM画像を示し、毛髪に付着した残留物を取り除き、参照用の未処理毛髪繊維の毛小皮をより良く可視化するために作成したものである。図1Aは、毛髪繊維の断面に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)と集束イオンビーム(FIB)測定により、Zeiss Crossbeam 340顕微鏡を用いて撮影したものである。断面は、SEMカラムから54°の角度で、30kV及び300pAでイオン化ガリウムを試料に衝突させて実行され、その画像は、x100Kの倍率、1.20kVの電圧、及び5mmの作動距離で、SEMカラムとレンズ内検出器とを使用して撮影した。図からわかるように、毛小皮の鱗片11は上下に層状になっている。毛髪の構造をよりよく示すために、模式図を図1Bに示す。鱗片はまばらな点線の領域で示され、毛小皮-毛小皮細胞膜複合体(CMC:cuticle-cuticle cell membrane complex)を示す可能性のある暗い線で区切られている。
【0151】
比較として、図2Aは、本発明のCNSL水中油型乳剤で処理した毛髪の、硬化後のFIB-SEM画像を示している。画像では、処理された毛髪繊維の毛小皮の鱗片21の間に位置する硬化した乳剤20がはっきりと確認できる。図2Bは、まばらな点線部で示される毛小皮の鱗片の間に、破線部で示される硬化したCNSL組成物を有する、同じ処理された毛髪構造を模式的に示す図である。
【0152】
図3Aは、毛髪繊維表面の毛小皮の鱗片31をSEMで撮影した上面図である(Zeiss Crossbeam340顕微鏡、電圧0.8kV、作動距離5.3mm、倍率20K倍)。毛髪繊維を、イソプロピルアルコールの存在下、pH 10のアルカリ性水(水酸化アンモニウムを用いて調整)を含有する対照組成物で処理し、これにより、鱗片31の「上昇した」外観及び領域32の隣接する影から理解できるとおり、鱗片の開きをもたらした。比較のために、図3Bは、本発明のCNSL水中油型乳剤で処理された毛髪繊維の表面の鱗片33を硬化後に示す上面図である。図からわかるように、硬化した乳剤34は、鱗片33の隆起に隣接する軽度の膨張領域34から推測できるとおり開いた鱗片の下に位置している。
【0153】
本発明の方法は、毛髪が湿気にさらされた後でも-大気湿度に由来する水分であれ、毛髪の濡れ又は洗浄の後であれ-毛髪繊維を所望の形状に維持する、耐久性のあるヘアスタイリングを提供するものである。5回以上のシャンプー洗浄後でさえスタイリング形状は、有意に検出可能な様式で影響されることがなく、ヘアスタイリングを長期間維持することができる。実施例で実証されるように、いくつかの実施形態では、本教示によるヘアスタイリング組成物及び方法は、処理された毛髪が10回以上のシャンプー洗浄、20回以上のシャンプー洗浄、30回以上のシャンプー洗浄、40回以上のシャンプー洗浄、又は50回以上のシャンプー洗浄に耐える能力によって証明されるように、毛髪形状の持続的な改変をもたらす。
【0154】
最初に、毛髪に適用されたヘアスタイリング組成物は、毛髪繊維の表面に除去可能なコーティングを形成する。これは、本発明の実施形態に従って調製された組成物(具体的には、乳剤Em31、その調製は実施例16に記載されている)の適用後48時間に、すすぎも洗浄サイクルもなく撮影した毛髪繊維の画像を示す図4において観察することができる。図4は、イオン化ガリウムを30kV及び50pAで照射し、倍率20K倍、電圧1.20kVで画像を撮影した、前述したとおりFIB-SEMで撮影したものである。この図では、硬化したヘアスタイリング組成物は、毛髪繊維上に外層43として堆積した明るい層として、また毛小皮41の間に浸透した層42として見ることができる。
【0155】
図5A及び図5Bは、乳剤Em31の適用によって処理し、その後、毛髪の縮毛矯正及び49回の洗浄サイクルを行った(両方の手順は、以下の実施例2、3及び13に記載されている)毛髪繊維のFIB-SEM画像である。画像は倍率20K倍での同じ毛髪繊維のものであり、イオン化ガリウムを30kV、300pAで試料に照射して、電圧1.2kV(図5A)、10kV(図5B)で撮影したものである。図5Aについて行われたとおり、繊維を低い電圧で荷電すると、毛小皮51をより明確に見ることができ、図5Bについて行われたとおり、高い電圧で荷電すると、図4の未洗浄の試料で以前に観察された一時的なコーティングがない状態で毛髪繊維内に明確に見られる硬化組成物52の可視性が向上する。
【0156】
この「洗浄耐性」の一部は、繊維の外表面に残っている散在性コーティングに起因することを排除することはできないが、発明者らは、そのような外部コーティングは洗浄によって比較的急速に摩耗する傾向があり、本教示に従い毛髪をスタイリングする能力が主にHPM又はPBMの内部重合に起因する可能性があると推測する。この一過性の散在性コーティングは比較的薄く、通常は最初の厚さ1μmを超えず、多くの場合0.5μm未満の厚さであり、これ自体、望ましい形状に繊維を拘束するために数ミクロンの連続的な外部コーティングによる従来のスタイリング方法に対して、本教示に従って処理された毛髪繊維を区別することに注目されたい。理論に束縛されることを望むものではないが、毛髪繊維のこの一時的な薄いコーティングは、内幹を一時的に保護し、その結果、内部に浸透したモノマーが硬化をさらに促進し、重合を強化するため、ヘアスタイリングの耐久性を延ばすことができると考えられている。以下に例示するように、本方法による毛髪のスタイリングは、一時的なコーティングがなくても維持される。
【0157】
本明細書で使用されるとおり、5~9回のシャンプー洗浄に耐えることができる改変形状を提供する組成物は、短期間のスタイリング効果を有すると言える。10~49回のシャンプーに耐えられる組成物は半永久的なスタイリングを提供すると言え、一方、50回超過のシャンプーに耐えられる組成物は永久的なスタイリングを提供すると言える。
【0158】
以下の実施例において、このような値は、一般に、本発明の組成物で処理しただけの生来の毛髪で確立されたことに留意されたい。損傷した毛髪繊維(従来の方法によって以前に脱色又は着色されたもの、或いは単に損傷したものなど)は、一般的に生来の毛髪繊維よりも高い表面エネルギーを示すため、とりわけ、その表面張力の結果として、生来の毛髪に短期のスタイリング効果を提供できる組成物は、損傷毛髪に対してより長いスタイリング期間(例えば、シャンプー耐性について、より多いサイクル数)を提供できる可能性がある。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、これは、組成物の表面張力と毛髪の表面エネルギーとの差が、損傷した毛髪の場合に大きく、それゆえ、モノマーの浸透を促す勾配がより強くなることによるであろう。
【0159】
縮毛矯正した髪の形状を持続的に維持するために、このような周囲制約構造に依存する方法は、しばしば髪の健康及び自然な外観に有害であることがわかっているため、連続した外部コーティング(本長持ちするスタイリング効果にとっては重要ではない)を迅速になくすことは有利であると考えられる。
【0160】
図6Aは、生来の未処理の巻き毛の黒髪の毛束の画像を示し、毛髪繊維のねじれ(例えば、山とくぼみ)が明確に検出可能である。図6Bは、比較のために、本発明に記載のとおりのCNSL水中油型乳剤で処理した巻き毛の黒髪の試料を、フラットアイロンで縮毛矯正した画像である。図6Bは、19回のシャンプー洗浄後に撮影したものであるが、明らかに、毛束はまっすぐなままであり、未処理の参照に比べ、ねじれの数が激減している。さらに、処理された髪は、処理前の外観と本質的に同じ、健康的な光沢のある外観を示した。
【0161】
代替のものは一般的には髪又は健康に有害である場合が多いが、本発明の組成物及び方法は、長持ちするヘアスタイリングに特に有益であり、さらに又は或いは、短期間のヘアスタイリングに使用することができ、毛髪繊維は2~4回のシャンプー洗浄後に生来の元の形状に戻ることができる。
【0162】
図7は、本発明のヘアスタイリング方法が、従来の方法とは異なり、毛髪を傷めないで保持することを示すDSC試験の結果を示す。図からわかるように、本発明の組成物で処理した毛髪繊維の試料の曲線は、未処理の生来の毛髪試料の曲線と同等であり、毛髪に大きな構造変化、ひいては損傷がないことを示している。一方、市販の縮毛矯正剤(オーガニック、日本製)のDSC曲線は、生来の毛髪曲線からかなり変化しており、このような劇的なヘアスタイリング方法を使用した場合に予想される構造変化を示している。DSC測定は、以下の実施例8でさらに詳述する。
【0163】
有利には、本教示による組成物によって処理された毛髪繊維は、熱分析によって測定されるとおり、同様の未処理繊維から4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す。
【0164】
図9A及び図9Bは、以下の実施例20に記載されるとおり、処理された及び未処理の毛髪繊維について様々な機械的パラメータを測定した、引張試験の結果を示している。この結果は、本発明の組成物で処理された毛髪繊維の機械的特性が、同様の未処理繊維の機械的特性より優れていないとしても、変化しないことを実証している。比較のため、従来のオーガニック縮毛矯正剤でスタイリングした繊維は、未処理の繊維と比較して機械的特性が劣り、本発明に従って処理した繊維と比較してさらに劣ることが示される。
【0165】
本発明により処理した毛髪繊維の機械的パラメータは、ひずみ-応力曲線の破断点で測定される、破断応力又は毛髪を破断するのに必要な圧力(又は断面積あたりの力)が優れている。図9Aにはその結果の一例が示される。本発明の組成物及び方法によって処理された毛髪繊維(具体的には、実施例14で調製したEm25及び実施例16で調製したEm31による)は、未処理の繊維と比較して、少なくとも13回の洗浄後でさえ、より強く、より応力に耐えることが示された。これらは、逆に繊維が弱くなる従来のオーガニック縮毛で処理した毛髪繊維よりも強いことがわかった。
【0166】
毛髪が破断するまでに吸収できるエネルギー量(すなわち、ひずみ-応力曲線の下の面積)によって評価される毛髪の靭性(toughness)の結果は、図9Bに示されており、未処理の毛髪と比較して、本発明の組成物によって処理した繊維が、少なくとも13回の洗浄後でも同等、さらにはより優れた結果を示している。従来のオーガニック縮毛矯正剤で処理した毛髪は、靭性が実質的に劣ることが示された。また、弾性率又は毛髪繊維の弾性変形に対する抵抗力を試験したところ、本発明の方法で処理した繊維は未処理の毛髪と同等であることがわかった(結果は示さず)。
【0167】
これらの機械的特性は、本教示に従ってスタイリングされた毛髪繊維と、同じ効果を得るために従来の処理の毛髪とを明確に区別するものである。いくつかの実施形態では、本教示による組成物によって処理された毛髪繊維は、引張強度分析によって測定される場合、以下のうちの少なくとも1つを示す:
i)同様の未処理繊維の破断応力より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも25%大きい破断応力;及び
ii)同様の未処理毛髪繊維の95%以上、100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、又は120%以上の靭性。
【0168】
本発明の方法は、縮毛矯正、カール、又は中間形状をもたらすことなど、任意の所望のヘアスタイル及び形状に適しており、毛髪は、その自然の未改変形状よりもウェーブが少ない形状に緩和される。
【0169】
有利なことに、本発明の組成物は、新たな組成物の適用を必要とせずに再スタイリングを可能にする。それゆえ、毛髪繊維の形状を生来の形状から第1の改変形状に改変するように機能する方法である上述の実施形態の方法を一度終えた後に、毛髪繊維は、第2の改変形状に再形成することができる。これは、毛髪繊維を、第1の成形中に形成されたポリマーのTg又は軟化温度を超える温度にすることによって達成することができ、それゆえ、「少なくとも部分的な軟化」と呼ばれることがある。このような少なくとも部分的な軟化の工程の間及び/又はその後に、毛髪繊維は、所望の第2の形状に形成される。その後、毛髪を所望の形状に維持しながら、温度をTg又は軟化温度未満に低下させることにより、ポリマーは第2の形状を保持するのに適した拘束構造を回復させることができる。或いは、毛髪に冷風をあてるなどして、積極的に温度を下げることも可能である。第2の改変形状は、第1の改変形状と同じでもよいし、又は異なっていてもよい。この革新的な再スタイリング方法は、繊維内に前もって浸透したポリマーの軟化に関して記載したが、この軟化を達成するために加えられる加熱は、水分量を下げるようにさらに機能し得ると考えられている。先に説明したとおり、残留水分がなくなることで、水素結合に影響を与え、軟化停止時に再形成されたポリマーの効果が高まると考えられる。
【0170】
有利には、本発明の組成物は、所望により「脱スタイリング」を可能にし、このことは、本発明に従って処理された毛髪繊維が、スタイリングの効果が時間と共に消失するのを待たずに、又は自然に形作られる毛髪繊維の再成長を待たずに、元の形状を取り戻すことができることを意味する。これは、以前にスタイリングした毛髪繊維を、水の存在下で、ポリマーのTg又は軟化温度を超える温度に、該温度がポリマーを軟化させ、かつ水が毛髪繊維に浸透するのに十分な時間、共することによって達成することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、そのような脱スタイリング処理は、ポリマーの軟化をもたらし、したがって水素結合を形成しやすい毛髪繊維の部分とポリマーが形成したであろう結合をある程度の切断できる可能性があると考えられている。脱スタイリング処理中に水が存在すると、そのような分子が毛髪に浸透することができ、その結果、未処理の毛髪に自然に生じる水素結合の少なくとも一部を再形成することが可能になる。毛髪繊維の元の水素結合の再形成の程度と、軟化をもはやサポートしなくなった低温まで冷却した際にポリマーがとる形態とに応じて、脱スタイリングは部分的又は完全になされ、それに応じて毛髪は元の形状に少し戻るか、又はより近く戻ることができる。脱スタイリングプロセスは、毛幹内に残っているポリマーの形状にのみ影響を与えると考えられているため、脱スタイリングの後、所望により、毛髪繊維は、再スタイリングについて先に記載したとおり、さらなるスタイリング処理を受けることができる。
【0171】
毛髪繊維内の合成ポリマーのTg又は軟化温度は、例えば、in vitroで実験的に評価することができる。再スタイリング又は脱スタイリングの対象の毛髪の試料は、そのような方法によって処理される対象の毛髪の頭皮から採取され、目的の再/脱スタイリング液(例えば、水)中に配置できる。この段階では、試料の毛髪繊維は特定の改変形状を有している。温度を徐々に上げていき、その温度による形状を緩和する能力をモニターすることができる。毛髪繊維が改変形状を失い、生来の形状に戻る時の温度は、ポリマーの少なくとも部分的な軟化に適しているとする。適切な温度はまた、試料のインキュベーションの期間に依存し得、いくつかの実施形態において、ポリマーのTg又は軟化温度は、少なくとも40℃、少なくとも50℃、又は少なくとも60℃であり、そのような軟化温度は一般に80℃を超えない。再スタイリング又は脱スタイリングを達成するように毛髪繊維をそのような温度に供することが必要な時間の期間も同様に決定することができる。一般的に、このような処理は少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、又は少なくとも60分間継続され、一般的に4時間又は3時間を超えず、比較的高い温度では比較的短い軟化時間を必要とする。ヘアスタイリング組成物は、必要に応じて、再スタイリング又は脱スタイリングに必要な温度及び時間に関する案内書と共に販売することができる。
【0172】
有利なことに、本発明の組成物及び方法は、成長毛髪のスタイリングに適している。ヘアスタイリング組成物の最初の適用によって形成された合成ポリマーは、モノマーの適用時に頭皮上の利用可能な毛髪繊維の部位に位置すると予想される。時間の経過と髪の成長とにより、このような部位は頭皮からだんだんと遠ざかる部分に見られるようになり、頭皮に隣接する新しく成長した髪はこのような内部スタイリング骨格を欠いている。このような毛髪の成長に続いて、その後の時期に適用されるヘアスタイリング組成物は、おそらく新しく成長した部位に主に作用し、先に処理された部位は、前もって形成された合成ポリマーによって既に「占有」されると考えられる。しかし、説明したとおり、既存のポリマーは毛髪繊維の再スタイリング又は脱スタイリングを可能にするので、新しい部位で新たに形成されるであろうポリマーと機能的に融合し、既存のものと新たに成長したものの繊維全体に沿って「スタイリングの連続性」をもたらすことができる。
【0173】
本発明はさらに、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするための液体組成物を提供し、該液体組成物は:
HPM及びPBMから選択される、少なくとも1つのモノマーであり、本明細書に記載されるとおりのもの;
水、及び
1つ又は複数の共溶媒;
を含む単相組成物であり、
前記液体組成物は、毛髪繊維内へのモノマーの浸透を促進するように適合されたpHを有する。
【0174】
本発明はさらに、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするための液体組成物を提供し、該液体組成物は:
HPM及びPBMから選択される少なくとも1つのモノマーを含有する油相であり、本明細書に記載されているとおりのもの;及び
毛髪繊維内へのモノマーの浸透を促進するように適合されたpHの水を含有する水相;
を含む、硬化性水中油型乳剤であり、
前記油相及び前記水相の各々は、任意に、1つ又は複数の共溶媒をさらに含み;
前記油相が前記水相中に分散され、前記水中油型乳剤が、毛髪繊維内へのモノマーの浸透を促進するように適合されたpHを有する。
【0175】
いくつかの実施形態では、単相組成物又は水中油型乳剤は、任意に、上記及び本明細書でさらに詳述するとおり、架橋剤及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含有する。
【0176】
いくつかの実施形態では、液体ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型乳剤)は、任意に、上記及び本明細書でさらに詳述するとおり、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、補助重合剤及び電荷調整剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含有する。
【0177】
有利なことに、本教示によるヘアスタイリング組成物は、既知の発がん性化合物を欠いている。例えば、いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、そのような化合物の許容可能な痕跡量を含み、管轄に応じて、組成物の重量に対して、0.5wt%未満のホルムアルデヒド、0.2wt%未満のホルムアルデヒド、0.1wt%未満のホルムアルデヒドとすることができ、又はさらに、0.05wt%未満のホルムアルデヒド、0.01wt%未満のホルムアルデヒド、0.005wt%未満のホルムアルデヒド、0.001wt%未満のホルムアルデヒドの許容できる基準レベル未満とすることができ、或いは全くホルムアルデヒドを含まないとすることができる。ホルムアルデヒドを生成又はホルムアルデヒドとして作用する可能性のある製品(例えば、グリオキシル酸及びその誘導体、又はその他のホルムアルデヒド放出剤)、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒドを生成及びグルタルアルデヒドとして作用する可能性のある製品(例えば、2-アルコキシ-3,4-ジヒドロピラン)に対して同じ限定濃度が適用される。これらの有害化合物は、それぞれの前駆体又は置換形態を含み(ホルムアルデヒド生成化合物又はホルムアルデヒド放出剤とも呼ばれる)、例えばクオタニウム-15(例えばDowicil 200;Dowicil 75;Dowicil 100;Dowco 184;Dowicide Qを含み、Dow Chemical Company製);イミダゾリジニル尿素(Germall(商標)115など、Ashland);ジアゾリジニル尿素(Germall(商標)IIなど);ブロモニトロプロパンジオール(ブロノポール);ポリオキシメチレン尿素;1,2-ジメチロール-5,6-ジメチル(DMDM)ヒダントイン(Glydantとして売買);トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン(トリスニトロ);トリス(N-ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロトリアジン(Grotan(登録商標)BK);及びヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウムが挙げられ、本明細書では、個別に及び集合的に、低分子反応性アルデヒド(SRA)と呼ぶことができる。
【0178】
有機化学の当業者には理解されるように、SRA分子は、それ自体がアルデヒドである必要はなく、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドなどの有害なアルデヒドを形成できる限り(例えば、加水分解、分解、反応などによる)、さらなる化学族であってもよい。このような形成は、熱を加えるなどの、ヘアスタイリングによくある条件が引き金となることがある。そのような前駆体のいくつかは、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドに完全に変換可能であり、SRAの1分子は、任意に中間生成物を介して、理想的な条件下でホルムアルデヒドの1つ又は複数の分子を生成するが、これは極端な場合であり、他の前駆体は部分的にのみ変換することができる。ヘキシミニウム塩は後者の一例である。
【0179】
いずれにせよ、SRA化合物がホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒド以外であると仮定すると、組成物中のそれらの重量は、それによって形成され得るホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドの最終重量を超過するものであろう。特定の実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、組成物の重量に対して、0.5wt%未満のSRA、0.2wt%未満のSRA、0.1wt%未満のSRA、0.05wt%未満のSRA、0.01wt%未満のSRA、0.005wt%未満のSRA、0.001wt%未満のSRAの含有量であり、又はSRAなしである。理解されるとおり、ヘアスタイリング組成物は、ヘアスタイリング方法において(例えば、組成物の加熱時に)検出されないレベルのホルムアルデヒドを含むか又は生成する場合、SRA分子を本質的に含まないものとみなされる。
【0180】
ホルムアルデヒドは毛髪タンパク質と反応するため、本ヘアスタイリング組成物にホルムアルデヒドが実質的に存在しないことは、処理された毛髪繊維にその反応生成物が存在しないことに対応している。ホルムアルデヒドの反応生成物は、それが反応するアミノ酸に依存し、例として、システインとの反応はチアゾリジン及びヘミチオアセタールを生成し、ホモシステインとの反応はチアジナン及びヘミチオアセタールを生成し、トレオニンとの反応はオキソゾリジンを生成し、ホモセリンとの反応は、1,3-オキサジナンを生成する。このような反応生成物は、核磁気共鳴法(NMR)などの標準的な方法により毛髪繊維中に検出することができる。
【0181】
したがって、本発明の方法に従って、又は本発明の組成物を用いてスタイリングされた哺乳類の毛髪繊維は、ホルムアルデヒドとアミノ酸との間の反応生成物が0.2wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満、0.01wt%未満、0.005wt%未満、0.001wt%未満を含有すること、又はそれを有意に欠いていることを特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、本教示に従って処理された哺乳類毛髪繊維は、NMRによって測定できるとおり、チアゾリジン、ヘミチオアセタール、チアジナン、オキソゾリジン及び1,3-オキサジナンの少なくとも1つを検出できないレベルで含有する。システインは正常なヒトケラチンタンパク質のアミノ酸リピートの最大18%を占めることが可能なため、毛髪繊維にチアゾリジン及び/又はヘミチオアセタールがないことは、以前に毛髪の処理に使用した組成物にホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド形成産物がないことに対応する最も重要なマーカーとなり得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、アミノ酸、ペプチド及び/又はタンパク質を実質的に欠いている。本組成物に存在しないタンパク質は、ケラチン及びコラーゲンなどの天然に存在するタンパク質、又はそれらの合成及び/又は修飾(例えば、加水分解)形態であってもよく、欠如しているペプチドは、そのようなタンパク質のより小さい断片であってもよい。簡潔にするために、このようなペプチドは、それらが一部である可能性のある、より大きなタンパク質に従って命名されることがあり、例えば、毛髪処理に最も頻繁に使用されるタンパク質を考えると、ケラチン関連ペプチド又はコラーゲン関連ペプチドと称することができる。
【0183】
アミノ酸、ペプチド又はタンパク質、特にケラチン、コラーゲン及びそれらの関連ペプチドが、組成物の1wt%以下を構成する場合、本発明による組成物は、そのような物質を実質的に欠いているものであり、それらのそれぞれの濃度がヘアスタイリング組成物の重量に対して、0.5wt%以下、0.1wt%以下、又は0.05wt%以下であることが好ましい。いくつかの実施形態では、そのような物質は、それに応じて、組成物に対して実質的に存在しない(例えば、約0wt%)。そのような生体分子の存在又は非存在は、例えば、飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF)によるものを含む、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI:matrix-assisted laser desorption/ionization)及び関連技術による標準的な方法によって決定することが可能である。
【0184】
したがって、本発明の方法に従って、又は本発明の組成物を用いてスタイリングされた哺乳類の毛髪繊維は、天然に形成されたもの以外のペプチド及びタンパク質を有意に欠いていることを追加的に又は代替的に特徴とすることができる。毛髪繊維が天然に存在するタンパク質又はその関連ペプチド断片を用いて従来の方法で処理された場合、本発明の方法に従ってスタイリングされた毛髪繊維は、対照的に、毛髪繊維に天然に存在するタンパク質のペプチドを有意に欠いていることを特徴とすることができる。
【0185】
要約すると、繊維内に合成ポリマーを形成する、本発明の少なくとも部分的に硬化したPBMをその内部に含む哺乳類毛髪繊維は、以下の特徴:
i)毛髪繊維の重量に対して、0.2wt%未満のホルムアルデヒドとアミノ酸との反応生成物を有することであり、ここで前記反応生成物が、チアゾリジン、ヘミチオアセタール、チアジナン、オキソゾリジン、及び1,3-オキサジナンチアゾリジンを含む群から選択されること、
ii)DSCなどの熱分析によって測定されるとおり、未処理の毛髪繊維に対して、4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示すこと;
iii)引張分析によって測定されるとおり、同様の未処理の毛髪繊維の破断応力より、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも25%大きい破断応力を有すること;
iv)引張分析によって測定されるとおり、同様の未処理の毛髪繊維の95%以上、100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、又は120%以上の靭性を有すること;及び
v)ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される低分子反応性アルデヒド(SRA)を、毛髪繊維の重量に対して、0.2wt%未満有すること、
のうちの少なくとも1つを特徴とすることができる。
【0186】
一実施形態において、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)を満たしている。一実施形態において、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴ii)を満たしている。一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴iii)を満たしている。一実施形態において、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴iv)を満たしている。
【0187】
一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)及びii)を満たしている。一実施形態において、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)及びiii)を満たしている。一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)及びiv)を満たしている。一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)及びv)を満たしている。一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴iii)及びiv)を満たしている。一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)、iii)及びiv)を満たしている。一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)、ii)、iii)及びiv)を満たしている。一実施形態では、哺乳類毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)、ii)、iii)、iv)及びv)を満たしている。
【0188】
本発明はまた、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするためのキットを提供し、該キットは;
a)HPM及びPBMから選択される少なくとも1つのモノマーを含有する第1のコンパートメント;及び
b)毛髪繊維内へのモノマーの浸透を促進するように適合されたpHの水、又は少なくとも1つのpH調整剤のいずれかを含有する第2のコンパートメント;
を含み、
これらの前記コンパートメントの内容物の混合により、上記及び本明細書にさらに詳述するヘアスタイリング組成物(例えば、単相又は水中油型乳剤)を生成する。
【0189】
いくつかの実施形態では、該キットの構成要素は、不活性環境下、好ましくは不活性ガス、例えば、アルゴン又は窒素下、及び/又は組成物の効力を低下させ得る有害反応をキットの保管中に防止又は低減する他の任意の適切な条件下で種々のコンパートメントにパッケージされ、かつ保持される。例えば、キットは30℃未満、27℃未満、又は25℃未満など、重合を誘発しない温度で保管することが必要である。
【0190】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのHPM又はPBMは、キットの第1のコンパートメントに配置される前に予備重合される。
【0191】
本キットは、縮合硬化性架橋剤又は付加硬化性架橋剤である、少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含んでもよい。前記硬化促進剤はまた、重合を促進するために用いられる、上記のとおりの硬化加速剤であってもよい。硬化促進剤(架橋剤又は硬化加速剤である)は、これらのコンパートメントの成分のいずれか1つとの反応性に応じて、第1又は第2のコンパートメントに配置することができる。例えば、ポリアミン系架橋剤は、室温ではHPM又はPBMと反応しないので、第1のコンパートメントに含めることができる。或いは、硬化促進剤がいずれかの成分と自発的に反応する傾向がある場合、別のさらなるコンパートメントに配置してもよい。反応性シラン架橋剤は、そのような一例であり、PBMと同じコンパートメントに入れると、室温でも反応してしまうため、キット内で別個に配置するであろう。
【0192】
本キットは、任意に、先に詳述したとおり、共溶媒、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、補助重合剤及び電荷調整剤のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよく、これらは、上記のコンパートメントのいずれか1つに含められるか、又は別のさらなるコンパートメントに含められてもよい。このような添加物の配置を考える場合、油溶性成分は油性成分を多く含有するコンパートメント(例えば、第1のコンパートメント)に配置することが好ましく、かつ水溶性成分は水性成分を多く含有するコンパートメント(例えば、第2のコンパートメント)に配置することが好ましい。
【0193】
本キットには、通常、エンドユーザーに様々なコンパートメントの混合方法を案内するリーフレットが含まれており、その順序はそれぞれのコンパートメントの成分の性質及び/又は内容物(含有量)に依存する場合がある。一般に、提案された混合及び適用の方法は、その効力及び意図された用途に適した時間内に適用するように、有効かつ安全な組成物の調製を可能にするものである。例えば、硬化促進剤としてシラン誘導体を含有する第3のコンパートメントがキットに含まれる場合、リーフレットには、まず硬化促進剤をHPM又はPBMと混合し、次に水性コンパートメントの内容物を添加することが示され得る。逆に、硬化促進剤が存在するがシラン誘導体でない場合、第1のコンパートメントに含まれ、別の第3のコンパートメントの必要性を不要にすることができる。
【0194】
いくつかの実施形態では、最終ヘアスタイリング組成物を毛髪繊維に適用する前に、そのようなリーフレットで指示され得るとおりに、様々なコンパートメントの成分が混合される。そのような場合、得られた組成物は、毛髪繊維に適用する直前に使用してもよいし、毛髪繊維に適用する前に未適用のまま、最大3時間、最大2.5時間、最大2時間、最大1.5時間又は最大1時間、維持することができる。
【0195】
同様に、水中油型乳剤を適用するタイミング及び期間も、所望のスタイリングの持続性に応じて考えられる限り提案することができる。例えば、短期間のスタイリングが望まれる場合、組成物は、より長持ちするスタイリングが望まれる場合よりも、比較的より遅くに、及び/又はより短い期間適用することができる。
【実施例
【0196】
材料
以下の実施例で使用した材料を以下の表1に示す。報告された特性は、各供給元から提供された製品データシートから取得又は推定したものである。特に断りのない限り、すべての材料は入手可能な最高純度のものを購入した。N/Aは、情報が得られないことを示す。
【0197】
【表1】
【0198】
以下の実施例では、簡潔にするために、上表に示した頭文字で材料を参照することがある。例えば、「AMEO」は「Dynasylan(登録商標)AMEO」を指し、「IPA」は「イソプロピルアルコール」を指す。
【0199】
装置
フラットアイロン:Babyliss(登録商標)I-Pro 235 インテンスプロテクト
攪拌器:デジタルオービタルシェーカー TOU 50(MRC Lab、イスラエル)
攪拌ホットプレート:C-MAG HS 7コントロール(IKA、ドイツ)
オーブン:Heraeusオーブン、UT 12(Thermo Scientific、米国)
ヘアドライヤー:Itamar superturbo Parlux 4600(Parlux(登録商標)、イタリア)
示差走査熱量計:DSC Q2000(TA Instruments、米国)
粘度計:Brookfield DV-II(Brookfield Engineering Laboratories Inc.、米国)
水浴:BL-30(MRC、英国)
ボルテックスミキサー:Vortex-Genie 2(Scientific Industries、米国)
共焦点レーザー顕微鏡:Lext 5000(Olympus、日本)
引張試験機:MTT157(Dia-Stron、英国)
遠心分離機:卓上型遠心分離機Z383(Hermle、ドイツ)
ロータリーエバポレーター:Hei-VAPバリュー(Heidolph、ドイツ)
ガスクロマトグラフ GC-MS:GCD G1800A(HP、米国)
【0200】
実施例1:縮合硬化性PBMを含有する水中油型乳剤の調製
PBMの混合物:
20mlバイアル瓶にCNSLを0.2g入れ、ガラス棒を用いてDynasylan(登録商標)AMEOを0.2g添加し混合した。その後、0.4gのIPAを加え、光学顕微鏡で確認されるとおり、バイアルの内容物が完全に溶解するまで約10秒間、手動で混合した。
【0201】
水性混合物:
pH 10を有するアルカリ水は、脱イオン水100gに水酸化アンモニウム5滴(約0.075gの塩基の量)を加えることで調製した。別の100mlプラスチックカップにおいて、pH 10のアルカリ水15.8gをIPA 2gと、約10秒間、手動で混合した。
【0202】
水中油型乳剤:
PBM混合物を含有するバイアルの内容物(PBMコンパートメントとも呼ばれる)を、水性混合物を含有するカップ(水性コンパートメントとも呼ばれる)に加え、乳剤が得られるまで約10秒間手で激しく混合した(「乳状」の外観)。
【0203】
この組成物(Em1)は、表2に報告されており、表2は上記の手順に従って調製されたさらなる組成物を示し、各組成物は、表に規定されるとおり、2つのコンパートメントの各々において異なる成分、添加剤及びそれぞれの量を含有する。表中に記載の数値は、全体の乳剤の重量に対する重量%(wt%)における各成分の濃度に相当する。
【0204】
【表2】
【0205】
このようにして調製された乳剤は、いずれも約9~11の範囲内のpHを有し、さらに使用するまで室温で保存され、毛髪試料への適用は、それぞれの乳化から通常1分以内に実施された。このように調製された乳剤は、毛髪試料に適用した後、主に縮合硬化により重合することが期待される。
【0206】
組成物Em1、Em2及びEm3のゼータ電位値を、折り返し型毛細管セルDTS1070を備えたZetasizer Nano Z(Malvern Instruments)を用いて測定したところ、それぞれ-22.2mV、-19.3mV及び-28.6mVであり、本発明の組成物がそれぞれのpHにおいて、pH 10でゼータ電位が約-70mVと知られている生来の繊維と比較してより正のゼータ電位をもたらすことが実証された。
【0207】
実施例2:PBM組成物を用いた毛髪の縮毛矯正
本発明の水中油型乳剤の縮毛矯正能の試験に使用した毛束は、黒色で、Vogue hair extensionsから入手したインド起源の巻き毛(長さ約40cm、Natural curly indianremihairextensions.com)か、又はボランティアから入手したエチオピア起源のコイル状/縮れ状の毛髪(長さ約20cm)のいずれかであった。各毛束はエポキシ接着剤で一端を接着してまとめ、接着した先端を含めて約0.6~1.3gの重さであった。
【0208】
巻き毛又はコイル状の毛束はすべて、5%ラウリル硫酸ナトリウムを含有する水道水で38~40℃で洗浄し、毛髪に付着した物質(例えば、汚れ又は油分)を除去し、室温で少なくとも1時間、吊るして乾燥し、その間に毛束が本来の形状を取り戻した。
【0209】
清潔な毛髪試料に適用された基本的な処理及び縮毛矯正の手順を以下に記載し、異なる工程の簡略図を示す図8に模式的に表す。簡略化のために、組成物又は方法は、「縮毛矯正(straightening)」と呼ぶことができ、本実施例においてこの用語は、その他としては、毛髪繊維の「完全な平坦化(complete flattening)」という特定のヘアスタイリング効果を表し、毛髪が生来の形状よりもウェーブが少ない形状に緩和される、任意の有意な形状改変を包含することが意図される。
【0210】
手順:
1. 毛髪繊維の前処理(図8の工程S01に描かれているとおり):乾燥した清浄な毛髪束から残留水分を除去し、200℃の温度で毛髪束の上に4回、フラットアイロンを用いて、通過させることで、縮毛矯正された毛髪束が得られた。
2. 組成物の適用(図8の工程S02に描かれているとおり):次に、熱縮毛矯正された毛束を、例1で調製したように、PBMを含むヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型乳剤)約15~20gを含有する100mlプラスチックカップ中に浸漬した。
3. 組成物のインキュベーション(図8の工程S03に描かれているとおり):様々なPBM乳剤に浸した毛束試料を含有するカップを、デジタルオービタルシェーカーを用いて、30分間~120分間の範囲の所定の期間、室温(約23℃)~60℃の範囲の設定温度で穏やかに振とうした。特に断らない限り、すべての予備実験は、室温で2時間のインキュベーション期間で実施した。
4. 毛髪繊維のすすぎ(図8の工程S04に描かれているとおり):このように処理された毛束は、実験的適用の方法の観点から、過剰な組成物を排除するために十分にすすいだ。特に断らない限り、毛髪繊維を約38~40℃の温度の水道水ですすぎ、タオルで2回拭き、水滴を落とすか、又はヘアドライヤーを使用して2~3分乾燥させた。
5. 毛髪繊維のスタイリング(図8の工程S05に描かれているとおり):次に、すすぎ処理された毛束を、毛束が完全に乾燥し、かつ所望の改変形状となるまで、フラットアイロンを用いて、毛束の長さに応じて、220℃の温度で2~5分間、縮毛矯正化(約15~50回の通過)した。この工程により、PBM(複数可)の少なくとも部分的な硬化が可能になる。
6. 重合性スタイリング組成物の硬化(図8の工程S06に描かれているとおり):工程5に従い縮毛矯正及び乾燥した毛束を、ヘアドライヤー又はオーブンを用いてさらなる加熱にさらして、そこで重合されるPBMのさらなる硬化を確実にした。毛髪繊維内のPBM、PBO、又はPBPをヘアドライヤーを用いてさらに硬化させる場合、毛髪試料をブラシ上に保持し、150~220℃の温度の空気を吹き付けるヘアドライヤーを、毛髪繊維に最大220℃の昇温を数秒間感知させるように、毛束上に近い距離で約15回、急速に移動させた。さらにオーブンで硬化させる場合は、標準的な毛髪乾燥技術の条件を再現するために、毛髪試料を200℃で4分間維持した。
【0211】
繊維が未だ未改変のカール状又はコイル状である時点の予備洗浄後に、及び繊維が縮毛矯正されたか、又はその他の形状に改変された、PBM内容物が少なくとも部分的に硬化した時点の処理の完了後に各毛髪試料の写真を撮影した。
【0212】
以下の実施例で支持されるように、実験室環境における本組成物及び方法の有効性を説明するために実施される本実施例に記載されるすべての工程が、このような組成物及び方法の(例えば、自宅や美容院での)従来の使用において必要なわけではないことに注意すべきである。例えば、組成物は清浄な毛髪及び/又は残留水分を除去するように処理された毛髪に適用できるが、該組成物の適用前の毛髪繊維へのそのような前処理は、必須ではない。換言すれば、工程S01は任意であり、したがって、図8におけるそれを囲むブロックは輪郭が破線で記されている。同様に、有効性を迅速に評価する目的で、すべての毛髪試料をさらなる硬化にかけたが(S06)、このプロセスは、本教示によるヘアスタイリング組成物の日常的な使用において、所望の改変形状を達成する十分な乾燥の際のスタイリング工程(S05)に従い終了することができるであろう。
【0213】
逆に、以下の例で示すように、追加の工程を使用したり、又は現在の工程を変更したりすることもできる。例えば、任意のすすぎ(S04)の後、過剰量の硬化促進剤を含む硬化性組成物を短時間適用してもよいし、又は水道水以外の専用の溶液ですすぎを行なってもよい。同様に、毛髪繊維のスタイリング(S05)の前に、スタイリング中に適用される温度に起因し得る損傷から毛髪を保護する製剤で毛髪を処理することもできる。このような熱保護製剤は、スタイリングのために適用される温度よりも高い温度で比較的高い発煙点を有するオイルを含むか、又はそれからなり得る。この目的のために、シリコンオイルを使用することができる。
【0214】
実施例3:毛髪の縮毛矯正の耐久性
実施例2に記載したとおり、本発明の組成物で処理した毛束を、実施例2の硬化工程6の直後、又はその48時間後のいずれかで一連の洗浄に供した。各洗浄サイクルにおいて、毛束は、標準的なシャンプー(Saryna Key社製のShea Natural Keratinシャンプー、イスラエル)で約30秒間、先端から先端まで完全にカバーし密接するように実施者の指の間で2回マッサージし、約40℃の水道水ですすぎ、拭いて、少なくとも10分間吊るして乾燥させた。この洗浄のサイクルは1日2回以下で実施し、ヒト対象の高い頻度の洗浄を模倣した。
【0215】
洗浄後に、毛束が実施例2の矯正手順の最後に得られる任意の種類の改変形状を含む「縮毛矯正」されたまま維持される洗浄の回数は、本組成物及び方法によって提供されるヘアスタイリングの耐久性を示す。この数値は、適用及び試験された条件下で特定の組成物によって得られる「洗浄耐性(wash resistance)」とも呼ぶことができる。洗浄耐性は、訓練を受けた操作者が定性的に視覚的に評価することができ、結果は、形状の変化が視覚的に検出可能になることに従う洗浄サイクルの回数を示す。或いは、洗浄耐性は、例えば、代表的な数の繊維において、スタイリング処理後及び所望の量の洗浄サイクル後に毛髪試料の長さを測定することによって、及び/又はストレートヘアからの逸脱(例えば、山と谷)の数を数えることによって、定量化することができる。長さは、毛髪繊維を伸ばしたり引っ張ったりせずに、定規に沿って毛髪繊維を配置して測定することができる。毛髪繊維の「ねじれ」の数は、繊維上に見られる偏角(最小及び最大)の数を数えることによって得られる。ねじれの数は毛髪長さで規格化することができ、考慮した処理後の規格化したねじれの数を、処理前の規格化したねじれの数(参照値)で割ることにより、真直度の効率を算出することができる。真直度の効率は、参照値に対するパーセンテージで表すことができる。洗浄前及び考慮される洗浄サイクルでの測定(例えば、長さ、ねじれの数、真直度の効率)が類似している限り(例えば、互いに10%以内)、又は訓練を受けた操作者が視覚的変化を検出できない限り、毛髪繊維は、「洗浄耐性」がある。同様に、このような方法は、ヘアスタイリング組成物の効果を評価するために用いることができる。
【0216】
表3は、実施例2に記載したとおり処理及び縮毛矯正した毛束に適用した実施例1の組成物の洗浄耐性を示し、その結果は訓練された操作者によって定性的に評価された。
【0217】
【表3】
【0218】
すべての組成物が5回以上の洗浄耐性を有し、毛髪繊維とのPBMの少なくとも部分的な浸透及びそこでの重合をサポートしているが、実施例4で詳述するように、Em1及びEm2について提供される結果は最終的なものではないことに留意されたい。
【0219】
その上、化学処理を施した毛髪の洗浄耐性を試験した。9%の過酸化水素を含有する重量の2倍のクリームディベロッパー(cream developer)と混合された市販の漂白粉(bleaching powder)を使用して、50℃で1時間、以前に脱色された毛束を、Em1で処理し、実施例2に記載のとおり縮毛矯正化した。洗浄耐性は、実施例3に記載のとおり評価され、26であることがわかった。
【0220】
Em1で処理し、30回洗浄した毛髪を、従来の着色方法によって着色することへの適性について試験を行った。ウエラ コレストンナチュラル-ブルーベリーブラックを、メーカーの指示に従って塗布した。興味深いことに、本発明の方法によってスタイリングされた毛髪は、一般に意図した色から逸脱する、縮毛矯正化の前に発した又は形成された色合いに影響を与える可能性があるいくつかの従来の方法とは対照的に、意図した色合いを達成するための着色にさらに成功することが可能である。
【0221】
追加の実験において、Em1に従って調製したヘアスタイリング組成物を同様に試験し、追加の組成物は、AMEOの代わりにN-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]-エチレンジアミンを含み、すべての構成成分のそれぞれの量は同じままであった。このヘアスタイリング組成物で処理した毛髪は、縮毛矯正することに成功し、スタイリングした毛髪は23回の洗浄に耐えることができた。
【0222】
実施例4:PBM含有乳剤で処理した毛髪の再スタイリング
実施例3において50回の洗浄耐性を示したEm1及びEm2で処理した毛髪試料を本試験に供した。実施例2の工程5に記載したとおり、毛髪試料を縮毛矯正した。今回の場合この熱処理はモノマーの部分硬化を達成することを目的とせず、50回のシャンプー洗浄に対する毛髪試料の耐性が繊維内にPBPが形成されていることを裏付けた。代わりに、この処理は、観察された結果によって確認されるとおり、毛髪繊維を再形成するためにポリマーを十分に軟化することを目的とした。本実施例では、毛髪試料は、元のスタイリングと同じ平坦な改変形状を有するように再スタイリングされたが、これに限定されず、他の任意の第2の改変形状が繊維に適用されたかもしれない。毛髪試料を室温まで冷却することで、ポリマーが硬い/軟化していない構造を取り戻すことを可能にし、その時点で、実施例3に記載したとおり洗浄サイクルに供した。再スタイリングしたどちらの毛髪試料も、少なくとも50回のさらなる洗浄耐性を示した。
【0223】
実施例5:異なる架橋剤とPBMとを含有する乳剤-洗浄耐性への影響
実施例1に記載の手順に従って、新しい一連の水中油型乳剤を調製し、ここで各PBM混合物を、異なる架橋剤を用いて調製した。PBM及び水性のコンパートメントのそれぞれにおける各組成物の内容物は、表4に報告され、ここで、各成分の濃度は、全乳剤に対するwt%で報告されている。
【0224】
【表4】
【0225】
これらの組成物(全て約9~11の範囲内のpHを有する)を、実施例2に記載のとおり清浄な毛束に容易に適用し、毛髪試料は、工程3に記載のとおり、室温で120分間乳剤に浸漬した。硬化工程6は、ヘアドライヤーを用いて行った。すべての乳剤は、毛髪繊維の縮毛矯正をもたらした。
【0226】
これらの組成物によってもたらされる縮毛矯正の耐久性を、毛束を室温で48時間維持した後、実施例3に従って測定した。3種の乳剤はいずれも5回を超える洗浄耐性を示した。この結果は、CNSLのPBMが各種架橋剤の存在下で毛髪繊維の内部に十分に浸透していることを示唆している。
【0227】
実施例6:異なる共溶媒とPBMとを含有する乳剤-洗浄耐性への影響
実施例1に記載の手順に従って、新しい一連の水中油型乳剤を調製し、ここで、PBM及び/又は水性混合物を、IPA以外の又はそれに加えて共溶媒を使用して調製した。PBM及び水性のコンパートメントのそれぞれにおける各組成物の内容物は、表5に報告され、ここで、各成分の濃度は、全乳剤に対するwt%で報告されている。
【0228】
【表5】
【0229】
本実施例のEm12は、実施例1のEm1のPBMコンパートメントのイソプロピルアルコール(CHCHOHCH)をエチルアルコール(CHCHOH)に置き換えた近縁種であった。これらの組成物(全て約9~11の範囲内のpHを有する)を、実施例2に記載のとおり清浄な毛束に容易に適用し、毛髪試料を、工程3に記載のとおり、室温で120分間乳剤に浸漬した。硬化工程6は、ヘアドライヤーを用いて行った。4つの乳剤は、いずれも毛髪繊維の縮毛矯正化を実現するものであった。
【0230】
これらの組成物によってもたらされる縮毛矯正の耐久性を、毛束を室温で48時間維持した後、実施例3に従って測定した。4種類の乳剤は、いずれも8回を超える洗浄耐性をもたらした。この結果は、CNSLのPBMが各種共溶媒の存在下で毛髪繊維の内部に十分に浸透していることを示唆している。
【0231】
実施例7:PBMと加水分解促進剤とを含有する乳剤
実施例1に記載の手順に従って、新しい一連の水中油型乳剤を調製し、加水分解促進剤の含有による加水分解の効果を試験した。
【0232】
組成物Em15を、PBMコンパートメントの他の成分との混合に先立って、少なくとも部分的に水で加水分解された架橋剤を用いて調製した。すなわち、他としては乾燥した不活性雰囲気下で保存した0.2gのDynasylan(登録商標)AMEOを、20mlのプラスチックカップで0.008gの脱イオン水(pH 7)と混合し、室温で5分間少なくとも部分的に加水分解させた。その部分的な加水分解後、AMEOを20mlプラスチックカップに移し、そこで0.2gのCNSLと0.4gのIPAを混合し、部分的な予備加水分解したPBM混合物を得た。水性混合液は、Em1と同じものであり、実施例1に記載のとおり2つのコンパートメントを併せて乳化した。
【0233】
Em16及びEm17は、あらかじめ水で処理されていない乾燥したDynasylan(登録商標)AMEOを用いて調製し、Em16では、PBM混合物に加水分解促進剤のサリチル酸を加えて調製した。組成物Em17を調製する際、水性混合物に加水分解促進剤であるサリチル酸を添加した。
【0234】
PBM及び水性のコンパートメントのそれぞれにおける各組成物の内容物は、表5に報告され、ここで、各成分の濃度は、全乳剤に対するwt%で報告されている。
【0235】
【表6】
【0236】
これらの組成物(全て約9~11の範囲内のpHを有する)を、実施例2に記載のとおり清浄な毛束に容易に適用し、毛髪試料を、工程3に記載のとおり、室温で120分間乳剤に浸漬した。硬化工程6は、ヘアドライヤーを用いて行った。3つの乳剤は、いずれも毛髪繊維の縮毛矯正をもたらした。
【0237】
これらの組成物によってもたらされる縮毛矯正の耐久性を、毛束を室温で48時間維持した後、実施例3に従って測定した。3種の乳剤はいずれも7回を超える洗浄耐性を示した。この結果は、CNSLのPBMが、加水分解を促進する工程又は薬剤の有無に関わらず、毛髪繊維の内部に十分に浸透していることを示唆している。
【0238】
実施例8:示差走査熱量測定(DSC)試験
ケラチン毛髪繊維は、多くの熱分析法において特徴的な吸熱ピークを示し、それぞれのピークは、様々な温度付近で起こる化学変化を示している。本研究では、以下の毛髪試料をDSCで分析した:i)参照として使用される未処理の巻き毛の黒髪繊維、ii)従来の半永久オーガニック縮毛矯正剤で処理した毛髪繊維、iii)従来の日本の永久縮毛矯正剤で処理した毛髪繊維、及びiv)実施例1に記載のとおり調製したEm1を用いて、実施例2の縮毛矯正化手順に従って適用し、ヘアドライヤーによって硬化させた毛髪繊維。すべての縮毛矯正処理を、未処理の参照と同様の巻き毛の黒髪試料に適用した。
【0239】
参照の毛髪試料と処理済み毛髪試料とを通常のハサミで小さい断片(約2mmの長さ)に切断した。各測定では、約5mgの毛髪片を70μlのDSCの白金製るつぼに配置した。測定中、るつぼは開けたまま維持した。
【0240】
試料を示差走査熱量計に入れ、DSC測定を行った。具体的には、窒素下で10℃/分の速度で400℃まで加熱しながら、データ取得と保存を行った。
【0241】
保存されたデータをプロットして各試料のDSC曲線を得て、この得られた4つの曲線が図7のサーモグラムで描かれている。様々な縮毛矯正技術間の比較のために、一般的にy軸にプロットされる熱流量の絶対値は重要ではなく(したがって示さず)、繊維の物理的変化が確認された温度のみ特定した。
【0242】
プロットの下部の実線は、未処理の黒髪繊維のカーブを表している。毛髪繊維の特徴的な温度である234.5℃と250℃との2つの吸熱が観測された。234.5℃付近の第1の吸熱は繊維中のα-ケラチンの溶解を示し、250℃付近の第2の吸熱はケラチンの分解とジスルフィド結合の切断を示すと考えられる。
【0243】
参照曲線の上の点線は、本発明の水中油型乳剤で処理した毛髪試料の挙動を示している。234.6℃と247℃とに2つの吸熱が見られ、本方法による毛髪処理とスタイリングが、毛髪繊維の分子構造及び固有の特性を実質的に変化させなかったことを示している。最低吸熱温度は互いに0.1℃以内であり、最高吸熱温度は互いに3℃以内である。
【0244】
プロットの上の2つの曲線は、市販の縮毛矯正手順による処理後の毛髪繊維の挙動を示す。上部の短い破線の曲線は、日本の縮毛矯正剤で処理された毛髪のもので、226.9℃と238.8℃との2つの吸熱が見られる。その下の長い破線の曲線は、229℃と240.1℃の温度で2つの吸熱が存在する、オーガニックの縮毛矯正によって処理された毛髪のものである。両方の従来の手順のDSC曲線は、毛髪の構造及び/又は特性の変化を示しており、これらの矯正手順の過酷な性質と一致している。つまり、日本の縮毛矯正剤又はオーガニックの縮毛矯正剤の最低吸熱温度は、生来の未処理の毛髪の値からそれぞれ7.6℃又は5.5℃以内であり、一方、最高吸熱温度は生来の未処理の毛髪の値から11.2℃又は9.9℃以内である。改変した毛髪の少なくとも1つの吸熱温度が、処理されていない生来の毛髪における対応する吸熱の値から少なくとも5℃ずれていることは、そのスタイリングの結果として、毛髪繊維の物理化学的特性の意味のある不利な改変を示すと考えられる。逆に、未処理の毛髪と処理した毛髪の少なくとも1組の対応する吸熱の間の差が4℃未満であれば、処理が比較的無害であることを示唆していると、本発明者らは考えている。好ましくは、対応する吸熱での2つの温度は、互いに3℃以内、2℃以内、又は1℃以内である必要がある。
【0245】
このような測定は、代わりに、熱機械分析(TMA)又は動的機械分析(DMA)など、他の熱分析方法から得ることもできる。
【0246】
実施例9:異なる湿潤剤とPBMとを含有する乳剤-洗浄耐性に及ぼす影響
実施例1に記載の手順に従って、新しい一連の水中油型乳剤を調製し、湿潤剤を該組成物に含めた。湿潤剤の添加により、モノマーとその架橋剤の相対濃度が若干変化したが、新しい組成物は、Em1及びEm2と比較可能である。
【0247】
PBM及び水性のコンパートメントのそれぞれにおける各組成物の内容物は、表7に報告され、ここで、各成分の濃度は、全乳剤に対するwt%で報告されている。
【0248】
【表7】
【0249】
これらの組成物(全て約9~11の範囲内のpHを有する)によってもたらされる縮毛矯正の耐久性を、毛束を室温で48時間維持した後、実施例3に従って測定した。5種の乳剤は、いずれも平均して8回を超える洗浄耐性をもたらした。この結果は、CNSLのPBMが各種湿潤剤の存在下で毛髪繊維の内部に十分に浸透していることを示唆している。
【0250】
実施例10:PBMを含有する乳剤で処理した毛髪の脱スタイリング
Em1又はEm3で処理し、縮毛矯正した元は巻き毛の毛髪試料を、表8の第2欄に規定するとおりのサイクル数、実施例3に従って洗浄し、その改変(平坦化)形状の安定を成立させた。なおスタイリングされている試料を、その後、毛髪が元の(改変されていない)形状を取り戻させる本試験に供した。
【0251】
スタイリングされた毛髪試料は、脱スタイリング処理を受け、ここで水道水又はpH10.5のアンモニウム溶液のいずれかである脱スタイリング液約15gを含有する100mlのプラスチックカップに各試料を浸漬した。その後、表8に規定されるとおり、このカップをデジタルオービタルシェーカーに入れ、設定温度で一定時間振とうした。表からわかるように、すべての脱スタイリング方法では、以前にスタイリングした(縮毛矯正した)毛髪繊維は、元の巻き毛の形状に戻ることが可能であった。
【0252】
【表8】
【0253】
本発明者らは、脱スタイリングプロセスは、毛髪繊維内に取り込まれた合成ポリマーが除去されることによって引き起こされたものではないことと推測する。これを、前述のとおり、毛髪試料をさらに再スタイリングできることで確認した。
【0254】
実施例11:PBMを含有する単相組成物の調製
単相を形成するヘアスタイリング組成物は、以下のように調製した。プラスチックバイアルにCNSL 1.5gを入れ、ガラス棒を用いて、0.15gのDynasylan(登録商標)AMEOと混合した。その後、15gのジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME)と6gのpH 10のアルカリ水を加え、バイアル内容物を約10秒間、透明な溶液が形成されることにより観察されるように完全に溶解するまで手動で混合し、光学顕微鏡で確認した。
【0255】
この組成物(Sol1)は、表9に報告され、これは上記の手順に従って調製されたさらなる単相組成物を示し、各組成物は、表に規定されるとおり、異なる成分、添加剤及びそれらの量を含有する。表中に記載される数値は、単相組成物全体の重量に対する重量%での各成分の濃度に相当する。
【0256】
【表9】
【0257】
単相組成物を、水中油型乳剤について先に記載のとおり、毛髪繊維のスタイリングに適用し、持続的なスタイリングを提供する能力を、各処理済み毛髪試料が耐えるシャンプーのサイクルの数をモニターすることによって評価した。どちらの溶液も、最大約20回のシャンプーサイクルの洗浄耐性をもたらした。
【0258】
実施例12:予備重合されたヘアスタイリング組成物及びその使用方法
ヘアスタイリング組成物Em1’は、構成成分の中身及び量に関して、実施例1の組成物Em1と同様に調製したが、調製方法が以下のように異なっていた。PBMと架橋剤とを、共溶媒と組み合わせる前に、以下の手順に従って併せて加熱した:CNSLとAMEOとを含むバイアル(磁気撹拌機を装備)を撹拌ホットプレート上に置き、撹拌しながら、約50℃の温度で1時間維持した。この工程は、これらの重合性材料の少なくとも部分的な予備重合を確実にするために実施された。混合物の粘度は、Brookfield DVII粘度計及び水冷式冷却器(BL-30、MRC)を用いて、加熱工程の前後で25℃の温度で測定した。重合材料の粘度は28mPa・s~33mPa・sに上昇したことが確認され、このことは部分的に予備重合が行われたことを支持している。
【0259】
その後、粘度が上昇した高温の混合物に室温のIPAを加えて攪拌し、PBM混合物を得た。水性混合物及び(それを本実施例のPBM混合物と組み合わせて得られる)水中油型乳剤を調製する手順を、実施例1に記載のとおりに続けて行った。
【0260】
次に、実施例2の縮毛矯正手順及び実施例3の耐久性分析を、表10に報告されているとおり、以下の変更を加えて行った。表の各列は、Em1’a~Em1’eとして呼ばれる別々の試験を表す。便宜上、本実施例で変更された実施例1~3のEm1について記載された条件を素早く参照できるように提供する。等号の符号=は、特定の工程に関してEm1’組成物を用いて行った試験の条件が、実施例1~3のEm1について記載したとおりであったことを示す。NPは、工程が実行されなかったことを意味する。試験Em1’eで適用した硬化性組成物は、酢酸亜鉛二水和物を5wt%含有する水溶液であり、これをすすいだ毛髪繊維上に5分間適用した。9種の異なる供給源からのブラジル人の巻き毛の毛髪で各試験を実施した。
【0261】
【表10】
【0262】
上記の各々のヘアスタイリング手順の後、実施例3に記載のとおり、毛髪束を洗浄し、各洗浄サイクルの後に、ヘアドライヤーを使用して乾燥させることによって、毛髪の縮毛矯正の耐久性を測定した。
【0263】
1日に2回の洗浄サイクルを入れるように洗浄サイクルに時間の間隔をあけた以前の実施例とは対照的に、洗浄耐性の評価を早めるため、1日に10回の洗浄サイクルを実施した。試験条件によっては重合がまだ不完全である可能性があるため、洗浄耐性のこの迅速な試験は、毛髪繊維で少なくとも部分的に重合したポリマーに対してより激しいものと考えられる。したがって、本実施例で実施されるとおり比較的頻繁な少なくとも10回の洗浄の洗浄耐性をもたらすヘアスタイリング組成物及び/又は方法は、ヒト対象による従来の洗髪において、少なくとも10回未満の頻度の洗浄、又はそれを超過する洗浄に対して耐性であることが期待される。
【0264】
組成物Em1’で処理され、特定の工程が表10に記載されているとおりの方法に従ってスタイリングされた(すなわち、Em1’a~Em1’e)すべての毛束は、1日10回の洗浄後も縮毛矯正されたままであった。この観察は、各試験で9種類の毛髪試料すべてに対して繰り返し行われた。比較のために、Em1(PBMと架橋剤との予備重合を欠いている)で処理した毛髪試料は再現性の低い結果をもたらし、すべてがブラジル人の巻き毛であるにもかかわらず、9種の毛髪試料間で洗浄耐性が異なった。平均して、実施例2のスタイリング方法を特に変更せずに使用してEm1で処理したすべての試料は、約6回の洗浄耐性をもたらし、一部の毛髪試料は10回の洗浄に耐性を示した。したがって、Em1’に対して実行される予備重合は、ヘアスタイリング方法の再現性を少なくとも向上させ、インキュベーション期間の短縮をもたらす可能性があると考えられる。
【0265】
Em1’と同様のさらなる組成物を、予備重合の条件を変更して調製した。Em1’では、重合性成分であるCNSL及びAMEOをヘアスタイリング組成物の残りの構成成分の添加前に約50℃の温度で1時間撹拌したが、本一連の実験では、同じ重合性材料を室温(23℃付近)で5分間、15分間、30分間、60分間又は150分間撹拌することにより予備重合した。このような予備重合化混合物を含むすべての最終組成物を毛髪に適用し、先に述べたとおり、スタイリング能力及び達成されたスタイリングの洗浄耐性について試験した。いずれも、少なくとも10回の洗浄耐性があり、150分間の予備重合により最大25回の洗浄耐性を可能にする長持ちするスタイリングを提供した。これらの結果から、より穏やかな温度条件、及び比較的短い時間など、様々な条件で予備重合を行うことが可能であることが示唆された。
【0266】
CNSLとAMEOとの絶対量及びCNSLとAMEOとの重量比を変えて、PBMコンパートメントの重合性成分の予備重合の効果をさらに試験した。簡単には、Em1’及び関連組成物は、CNSL及びAMEOを最終乳剤の1.1wt%を構成する量で含み、IPAは予備重合後にPBMコンパートメントに、最終乳剤の2.2wt%を構成する量で後から添加されたことに注意されたい。同重量のCNSLとAMEOを、すなわち、CNSL:AMEOの重量比が1:1にて、予備重合することにより、Em1’の一連のヘアスタイリング組成物を調製した。新たな一連の実験では、CNSLの量を半分にして最終組成物の0.55wt%を構成するようにし、一方、AMEOの量を以前の濃度の1/4に下げて最終組成物の約0.275wt%を構成するようにして、CNSL:AMEOの重量比を2:1にした。前記の低い量の重合性成分を室温で15分間~最大24時間予備重合し、次いでPBMコンパートメントに3.575wt%のIPAを添加し、先に述べたとおり水性コンパートメントと乳化させて、一連の組成物を調製した。このような予備重合化混合物を含むすべての最終組成物を毛髪に適用し、先に述べたとおり、スタイリング能力及び達成されたスタイリングの洗浄耐性について試験した。すべては、5回の洗浄に耐性のある長持ちするスタイリングをもたらした。前記組成物を、前記実施例のとおり2時間、又は30分という短い時間で、毛髪繊維上でインキュベートした。この短縮した手順で処理した毛髪は、スタイリング(例えば、縮毛矯正化)も可能であり、そのスタイリングは、長いインキュベート時間と同様に、毛髪繊維のスタイリングされた形状に検出可能な変化を生じることなく5回の洗浄サイクルを持続することができた。これらの結果は、スタイリング組成物の毛髪への適用期間が比較的短時間であってもよいことを示唆している。
【0267】
実施例13:補助重合剤で予備重合されたPBMを含有するヘアスタイリング組成物
20mlのカップにカルダノール(PBMとして)4.75gを入れ、シェラックフレーク(補助重合剤として)0.25gを加えて混合した。該カップをマグネティックスターラーを備えたホットプレート上に置き、その内容物を140℃で30分間攪拌して、カルダノールとシェラックとの少なくとも部分的に予備重合した混合物(予備重合PBM相と称する)を得た。
【0268】
別の20mlのカップに、予備重合PBM相0.2gを入れ、次にAMEOとIPAを加えてPBM混合物を得た。次に、このPBM混合物を、実施例1に記載のとおり水性混合物と合わせて、水中油型乳剤Em23を得た。
【0269】
別の水中油型乳剤Em24は、同様に調製し、ここで架橋剤とPBMとの反応を促進するために、IPAを添加する前に、予備重合した混合物のカルダノール及びシェラックにAMEOを添加し、室温で約80分間攪拌した。
【0270】
組成物Em23及びEm24を表11に報告する。表で報告されている値は、全乳剤の重量に対する各成分の重量%における濃度に対応するが、カルダノール-シェラック混合物の項の値を除き、これは特定の予備重合PBM混合物でのそれぞれの重量パーセントに対応する。
【0271】
次に、残留水を除去する前処理工程1を行わない状態で、ブラジル人の巻き毛の毛髪に実施例2の縮毛矯正施術を行った。処理済み繊維を48時間維持した後、実施例3の記載のとおり耐久性分析を行い、洗浄耐性の結果もまた表11の最終行に詳述する。
【0272】
【表11】
【0273】
実施例14:縮合によって硬化可能なPBMを含有する予備重合したヘアスタイリング組成物
20mlのカップにCNSLを入れ、少なくとも部分的な予備重合を誘導するために190℃のオーブンで3時間保持した。このカップをマグネティックスターラー付きのホットプレート上に置き、補助重合剤としてシェラックフレークを2~5wt%(PBMとシェラックとの合計量に対するパーセントで計算)を加え、攪拌しながら、140℃で30分間、シェラックがCNSLに溶解するまで維持した。
【0274】
別の20mlカップに、予備重合CNSLとシェラックの混合物(予備重合PBM相と呼ぶ)0.2gを入れ、表12に報告するとおり架橋剤を加え、得られた混合物を約80分間室温で維持し、次にIPAを加えてPBM混合物を得た。次に、このPBM混合物を、実施例1に記載のとおり水性混合物と合わせて、水中油型乳剤Em25を得た。
【0275】
他のPBM混合物も同様に調製し、室温で約80分間保持したが、IPAを添加した後、水性混合物と合わせて、水中油型乳剤Em27及びEm28を得た。
【0276】
組成物Em26のPBM混合物において、AMEOの代わりにタンニン酸を架橋剤として用い、pH及び電荷調整をオレイルアミン(補助重合剤としても機能する)によって達成し、PBM混合物を、最初に室温で80分間維持することなく、直接水性混合物と合わせた。
【0277】
組成物Em25~Em28は、表12に報告され、各組成物は、表に規定されているとおり、2つのコンパートメントの各々において、異なる成分、添加物及びそれらの量を含有している。表で報告された値は、全乳剤の重量に対する重量%での各成分の濃度に対応するが、予備重合PBM相の値を除き、この値はその特定のPBM混合物中のそのような成分の重量に対応している。
【0278】
次に、実施例13に記載されるとおり、縮毛矯正手順を、ブラジル人の巻き毛の毛髪に実施したところ、このようにして調製した乳剤は、縮合硬化によって大部分が重合することが期待される。また、実施例13に記載のとおり耐久性解析を行い、洗浄耐性の結果を表12の最終行に詳述した。
【0279】
【表12】
【0280】
実施例15:付加によって硬化可能なPBMを含有する予備重合したヘアスタイリング組成物
20mlのカップに1gのCNSLを入れ、少なくとも部分的な予備重合を誘導するために190℃のオーブンで3時間保持した。このカップをマグネティックスターラーを備えたホットプレート上に置き、シェラックフレーク(補助重合剤として)0.02gを加え、撹拌しながら、140℃で30分間、均質な混合物が得られるまで維持した。
【0281】
ホットプレート上に置いたバイアルに過酸化ベンゾイル(BPO)0.25gを加え、さらに100℃で60分間攪拌した。
【0282】
別の20mlカップに、上記で調製したCNSL-BPO混合物(予備重合PBM相と呼ぶ)を入れ、IPA 0.4gを加えて、PBM混合物を得た。次に、このPBM混合物を、実施例1に記載のとおり水性混合物と合わせて、水中油型乳剤Em29を得た。同様に、シェラックを使用しないで組成物Em30を調製した。得られた組成物は、表13に詳述されており、ここで報告された値は、全乳剤の重量に対するwt%における各成分の濃度に対応するが、予備重合PBM相における値を除き、この値はその特定のPBM混合物におけるそのような成分の重量に対応する。
【0283】
次に、実施例13に記載されるとおり、縮毛矯正手順を、ブラジル人の巻き毛の毛髪に実施したところ、このようにして調製した乳剤は、付加硬化によって大部分が重合することが期待される。また、実施例13に記載のとおり耐久性解析を行い、洗浄耐性の結果を表13の最終行に詳述した。
【0284】
【表13】
【0285】
実施例16:縮合及び付加により硬化可能なPBMを含有する予備重合したヘアスタイリング組成物
2gのCNSLをアルゴン環境下で20mlの金属缶に入れ、少なくとも部分的な予備重合を誘導するために、190℃のオーブン内で3時間維持した。
【0286】
少なくとも部分的に予備重合されたCNSLを、マグネティックスターラー付きの20mlのカップに入れ、シェラックフレーク(補助重合剤として)0.04gを加え、該混合物を140℃のホットプレート上に置き、均質な混合物が得られるまで30分間混合した。
【0287】
室温で約5分間保持して冷却した後、リノール酸0.4gを加え、バイアルの内容物をボルテックスで混合し、続いて2gのAMEOを添加した。得られた混合物を室温で80分間攪拌した。
【0288】
別の20mlカップに攪拌した混合物0.4gを入れ、IPA 0.4gを加え、PBM混合物を得た。次に、このPBM混合物を、実施例1に記載のとおり水性混合物と合わせて、水中油型乳剤Em31を得た。
【0289】
組成物Em32も同様に調製し、ここで予備重合の前に、最初にいずれの残留物又は汚染物からCNSLを精製した。これは、CNSL 5.5gとIPA 30gを遠心管に入れ、7,500rpmの速度で15分間遠心分離を行い、その後、液相を沈殿物から分離し、さらに同じ速度で同じ時間、遠心分離を再び3回以上繰り返して精製CNSLを得ることによって達成した。精製CNSLをフラスコに移し、ロータリーエバポレーターに入れ、温度45℃、圧力27mbarで2時間IPAを蒸発させ、さらに120℃に加熱することにより残留IPAをさらに2時間かけて除去した。その後、正味のCNSLは、上記のとおり、予備重合工程に進め、その後、組成物調製の残りの工程に進めた。
【0290】
組成物Em31及びEm32は、表14に報告され、各組成物は、表に規定されているとおり、2つのコンパートメントの各々において、異なる成分、添加物及びそれらの量を含有している。表で報告された値は、全乳剤の重量に対するwt%での各成分の濃度に対応するが、予備重合PBM相の値を除き、この値はその特定のPBM混合物中のそのような成分の重量に対応している。
【0291】
次に、実施例13に記載のとおり毛髪の縮毛矯正手順を、ブラジル人の巻き毛の毛髪に実施し、ここで、毛束をPBM組成物中で1時間インキュベートした。また、繊維のブロー乾燥を伴い、スタイリング後工程6がない状態で、縮毛矯正の手順を行った。このように調製された乳剤は、毛髪試料に適用した後、縮合硬化と付加硬化の両方により重合することが期待される。
【0292】
或いは、工程4で行われるすすぎ及びヘアドライヤーによる乾燥に続いて、組成物Em32で処理した毛束に、シリコーン油のデカメチルシクロペンタシロキサンを4滴、手で塗布して広げ、縮毛矯正装置の高温に対する保護剤として機能させた。
【0293】
また、実施例13に従い耐久性分析を行い、洗浄耐性の結果を表14の最終行に詳述した。
【0294】
【表14】
【0295】
アルデヒド、特にホルムアルデヒドの存在は、標準的な方法(アルデヒド全般についてはNIOSH 2539、特にホルムアルデヒドについてはNIOSH 2541)に従って、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)によって組成物Em31において試験した。Em31の組成物の試料を100℃の温度で1時間維持し、そのような手順の間に存在又は形成された揮発性化合物を蒸発させた。Em31の第2の試料は、220℃の高温で1時間維持され、さらにPBMの少なくとも部分的な硬化を可能にした。両試料ともアルデヒド及びホルムアルデヒドの濃度は検出レベル未満、すなわち1ppm未満(すなわち0.0001wt%未満)であることが確認された。容易に理解されるように、毛髪組成物はそのようなSRAを実質的に欠いているため、これに伴い毛髪組成物を用いて処理された毛髪繊維はそのような物質を実質的に含まない。
【0296】
実施例17:他のPBMと補助重合剤を含有する縮合硬化可能な水中油型乳剤
20mlのカップに、補助重合剤としてのマレイン酸ジブチル1gを入れ、PBMとしてのサリチル酸フェニル1gと合わせた。このカップをヘアドライヤーで20秒間加熱し、マレイン酸ジブチル中のサリチル酸フェニルを溶かし、続いてボルテックスで混合し、室温まで冷却した。
【0297】
上記混合物(PBMストックと呼ぶ)0.2gを別の20mlカップに入れ、0.2gのAMEOと0.04gのザクロ種子油と合わせ、ボルテックスで混合してPBM混合物を得た。次に、このPBM混合物を、実施例1に記載のとおり水性混合物と合わせて、水中油型乳剤Em33を得た。
【0298】
この組成物(Em33)は、表15に報告されており、この表は上記の手順に従って調製されたさらなる組成物を示し、各組成物は、表に規定されるとおり、2つのコンパートメントの各々において異なる成分、添加剤及びその量を含有する。
【0299】
水中油型乳剤Em37も同様に調製し、ここでサリチル酸グリコール(PBMとして)と2%シェラック(補助重合剤として)の混合物を、最初に上記のとおり混合及び加熱することによって調製し、続いて、上記の混合物の0.2gをリノール酸0.2g及びAMEO 1gと(これも上記のとおり)組み合わせて、PBMストックを得た。得られた0.4gのPBMストックを0.4gのIPAと合わせ、ボルテックスで混合し、PBM混合物を得た。次に、このPBM混合物を実施例1に記載のとおり水性混合物と合わせて、表15にも示す水中油型乳化物Em37を得た。
【0300】
表で報告された値は、全乳剤の重量に対する重量%での各成分の濃度に対応するが、PBMストックの値は除き、この値はその特定のPBM混合物中の当該成分の重量に対応する。
【0301】
実施例13の縮毛矯正手順は、ブラジル人の巻き毛に対して行われ、ここで毛束はPBM組成物中で1時間インキュベートした。また、繊維のブロー乾燥を伴い、スタイリング後工程6がない状態で、縮毛矯正の手順を行った。このように調製された乳剤は、毛髪試料に適用した後、主に縮合硬化により重合することが期待される。実施例13に従い耐久性分析を行い、洗浄耐性の結果を表15の最終行に詳述した。
【0302】
【表15】
【0303】
実施例18:PBMと乳化剤とを含有する予備重合ヘアスタイリング組成物
PBM混合物は、共溶媒としてのIPAの非存在下で、実施例16のEm31の調製について記載したとおり調製した。
【0304】
また、共溶媒を除いた水性混合物は、さらに乳化剤を含有し、以下のように調製した:100mlのプラスチックカップに0.25gのSynthalen(登録商標)W2000の乳化剤を入れ、99.75gの蒸留水を手で5秒間混合した。該カップを撹拌ホットプレート上に置き、pH10が達成されるまで撹拌しながら0.1の25wt%水酸化アンモニウム溶液を加えた。
【0305】
別の20mlのカップに、0.4gのPBM混合物を入れ、15.8gの水性混合物を加え、乳剤Em38が得られるまでカップの内容物を5秒間手で混合した。
【0306】
次に、実施例17に記載のとおり縮毛矯正の手順を、ブラジル人の巻き毛の毛髪に実施した。実施例13に準じて耐久性分析を行ったところ、Em38を使用してスタイリングした毛髪は、25回の洗浄に耐えることを示した。
【0307】
実施例19:PBMと増粘剤とを含有する予備重合ヘアスタイリング組成物
実施例16のEm31の調製についての記載のとおり、PBM混合物を調製した。
【0308】
共溶媒を除き、さらに増粘剤を含有する水性混合物を、以下のように調製した:(実施例1に従って調製される)pH 10のアルカリ水15.8gを撹拌プレート上の20mlカップに入れ、ヒアルロン酸0.158gを加え、得られた混合物を撹拌しながら12時間室温で維持した。
【0309】
別の20mlのカップに、0.4gのPBM混合物を入れ、先に調製した水性混合物を加え、カップの内容物を乳剤Em39が得られるまで5秒間手で混合した。
【0310】
次に、実施例17に記載のとおり縮毛矯正の手順を、ブラジル人の巻き毛の毛髪に実施した。実施例13に従い耐久性分析を行ったところ、Em39を使用してスタイリングした毛髪は、20回の洗浄に耐えることがわかった。
【0311】
実施例20:引張強度結果
これらの組成物で処理した毛髪の引張強度に対する本発明の組成物の寄与を評価し、未処理の毛髪と比較した。巻き毛の黒髪の毛束の4種の毛髪試料を使用した:
i)未処理毛髪、参照として使用:
ii)比較用の従来の半永久のオーガニック縮毛矯正剤で処理した毛髪:
iii)実施例14に記載のとおり調製され、実施例13の手順に従って適用され、実施例13の手順に従って13回の洗浄を施した、組成物Em25で処理された毛髪;及び
iv)実施例16に記載のとおり調製し、実施例13の手順に従って適用し、実施例13の手順に従って21回の洗浄を施した、組成物Em31で処理した毛髪。
【0312】
4種の試料からそれぞれ10本の毛髪繊維を採取し、3日間同一条件下(温度25℃、相対湿度45%)で維持して標準化した。その後、毛髪繊維を30mmの長さに切断し、その断面を共焦点レーザー顕微鏡で、一般的な楕円形の毛髪繊維の最大半径と最小半径の両方を考慮して測定した。引張強度パラメータである破断応力、靭性、及び弾性率を、引張試験機により試験される毛髪繊維について測定した(100%の伸長限界、20mm/分の伸長速度、2gのゲージ力、5gの破断検出限界、2000gの最大力)。各毛髪試料の10本の繊維の平均結果は、図9A及び9Bに、最初の2つのパラメータについて、未処理の毛髪試料(それ自体、各図の最初の列で100%として示される)に対するパーセンテージとして示す。
【0313】
破断応力の結果は、図9Aに示されており、本発明に従って処理された試料iii)及びiv)は、未処理の毛髪と比較して、それぞれ18%及び28%高い破断応力値を示し、これは、本組成物が、一過性のコーティングを除去するとみなされる多数の洗浄サイクルの後でさえ、毛髪の機械的特性を改善することを示唆している。オーガニック縮毛矯正剤による比較試料ii)は、破断応力がより低い結果を示した:未処理の毛髪試料i)よりも12%低く、本組成物Em31sで処理した毛髪試料iv)よりも40%低くい。
【0314】
毛髪の靭性の結果は、図9Bに示されており、試料iv)は未処理の毛髪試料i)と比較して靭性の18%の増加を示し、試料iii)は5%のわずかな減少を示した。一方、オーガニック縮毛矯正剤により処理した試料ii)は、靭性が著しく低い結果を示した:未処理の毛髪試料i)よりも38%少なく、本組成物Em31で処理した試料iv)の繊維よりも56%少なかった。
【0315】
また、弾性率も同様に測定し、Em25又はEm31で処理した繊維は、未処理の毛髪繊維と同等の結果を示した(結果は未掲載)。
【0316】
要約すると、本発明の組成物で処理した毛髪繊維は、未処理の毛髪繊維と比較して、優れた引張強度結果と言えないまでも少なくとも同等の結果を示し、従来のオーガニック縮毛矯正剤により処理された毛髪よりも有意に優れた結果を示すことが証明された。
【0317】
明確さのために、別々の実施形態の文脈で説明されている本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることも可能であることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の状況で記載されている本開示の様々な特徴はまた、別々に、又は任意の適切な副次的な組み合わせで、或いは本開示の任意の他の記載の実施形態において好適に提供されてもよい。実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除き、様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、それらの実施形態の必須の特徴とみなされるべきではない。
【0318】
本開示は、説明のみのためにその提示された様々な特定の実施形態に関して記載されたが、そのような具体的に開示された実施形態は、限定的であるとみなされるべきではない。このような実施形態の多くの他の代替、修正、及び改変が、本出願人の本明細書における開示に基づいて当業者に想起されるであろう。したがって、そのようなすべての代替、修正、及び改変を包含し、開示の精神及び範囲、並びにそれらの意味及び同等の範囲内にある任意の変更によってのみ拘束されることを意図している。
【0319】
本開示の明細書及び特許請求の範囲において、動詞「含む(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する(have)」、並びにそれらの活用形のそれぞれが、動詞の1つ又は複数の目的語が必ずしも、該動詞の1つ又は複数の主語の特徴、メンバー、工程、構成要素、要素又は部分の完全なリストではないことを示すために使用される。なお、これらは、本教示の組成物も列挙された構成要素から本質的になる、又はそれらからなること、並びに本教示の方法もまた、列挙されるプロセスの工程から本質的になる、又はそれらからなると考えられる。
【0320】
本明細書で使用されるとおり、単数形の「a」、「an」及び「the」は複数形の参照を含み、文脈が明確に指示しない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」を意味する。A及びBの少なくとも一方は、A又はBのいずれかを意味することを意図しており、かついくつかの実施形態では、A及びBを意味する場合もある。
【0321】
特に断りのない限り、選択のための選択肢のリストの最後の2つの構成要素の間に「及び/又は」という表現を使用することは、リストされた選択肢のうちの1つ又は複数の選択が適しており、それを行うことができることを示す。
【0322】
別段の記載がない限り、本技術の実施形態の特徴に関する範囲の外側境界が開示に記載されている場合、その実施形態では、特徴の可能な値は、記載の外側境界の間の値と同様に、記載されている外側境界を含み得ることが理解されるべきである。
【0323】
本明細書で使用されるとおり、別段の記載がない限り、本技術の実施形態の1つ又は複数の特徴の状態又は関係特性を修飾する「実質的に(substantially)」、「およそ(approximately)」及び「約(about)」などの形容詞は、条件又は特性が、意図された用途の実施形態の作動に許容される許容範囲内、又は実行される測定及び/又は使用される測定機器から予想される変動内に定義される。「約」及び「およそ」という用語が数値の前にある場合、+/-15%、又は+/-10%、又はなお+/-5%のみを示し、場合によっては正確な値を示すことを意図している。さらに、特に断りのない限り、本開示で使用されている用語(例えば数字)は、そのような形容詞がなくとも、関連する用語の正確な意味から逸脱してもよく、しかし、本発明又はその関連部分が、記載のとおり、かつ当業者が理解するとおり、作動及び機能することを可能にする許容範囲を有すると解釈されるべきである。
【0324】
本開示は、特定の実施形態及び一般に関連する方法の観点から説明されてきたが、実施形態及び方法の変更及び並べ替えは、当業者には明らかであろう。本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されないと理解される。
【0325】
本明細書で参照される特定のマークは、第三者のコモンロー商標又は登録商標であり得る。これらのマークの使用は一例であり、この開示の範囲をそのようなマークにのみ関連する材料に記載のとおり解釈されたり、又はそれに限定したりするものではない。

図1AB
図2AB
図3AB
図4
図5AB
図6A
図6B
図7
図8
図9AB
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
生来の形状を有する未処理の哺乳類毛髪繊維をスタイリングする方法であって、前記方法は:
a)個々の毛髪繊維にヘアスタイリング組成物を適用することであり、ここで前記ヘアスタイリング組成物は、10,000g/mol以下の平均分子量を有する少なくとも1つのエネルギー硬化性フェノール系モノマー(PBM)及び水を含み、前記組成物のpHは、モノマーの毛髪繊維への浸透を可能にし、前記pHは、1~3.5又は5~11の範囲内であること;
b)記ヘアスタイリング組成物を少なくとも5分間、毛髪繊維と接触したままにすること;及び
c)毛髪繊維内のPBMの少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させるためにエネルギーを適用することであり、ここで処理済み毛髪繊維が得られるように、前記硬化は前記毛髪繊維が少なくとも50℃の温度である間に起こること;
を含み、
前記ヘアスタイリング組成物は、0.2wt%未満の低分子反応性アルデヒド(SRA)を含有し、前記SRAは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項23
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項23】
前記少なくとも1つの補助重合剤は、シェラック、ロジンガム、アルキル若しくはアリール置換マレエート及びサリシレート、テルペン及びテルペノイドを含む炭素原子が16以上のアルケン鎖を有する不飽和脂肪油、脂肪アミン、脂肪酸、及び前記不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む群から選択される、請求項22に記載のヘアスタイリング組成物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
例示的な補助重合剤は、以下のものから選択することができる:シェラック、ロジンガム、アルキル若しくはアリール置換マレエート及びサリシレート(例えば、ジメチルマレエート及びジブチルマレエート)、テルペン及びテルペノイドを含む炭素原子16個以上のアルケン鎖を有する脂肪油(例えば、スクアレン及びリコペン)、脂肪性アミン(例えば、オレイルアミン)、及びアラキドン酸、リノール酸、及びリノレン酸などの非共役不飽和脂肪酸、レチノイン酸、エレオステアリン酸、リカン酸(licanic acid)、及びプニカ酸などの共役脂肪酸、及びザクロ種子油、チャ種子油、シソ種子油、ラズベリー種子油、及びキウイ種子油などの共役又は非共役二重結合を含む脂肪酸のトリグリセライド。補助重合剤として機能し得るアルケンは、より多くの炭素原子(例えば、13以上)及び場合によっては1分子あたりのより多くの二重結合(例えば、3以上)を有することによって、架橋剤として機能し得るアルケンと区別される。さらに、不飽和アルケン鎖を有する補助重合剤は、100gの薬剤あたりのヨウ素価がヨウ素100g以上であることを特徴とすることができ、かかる値は通常400を超えない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0154
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0154】
最初に、毛髪に適用されたヘアスタイリング組成物は、毛髪繊維の表面に除去可能なコーティングを形成する。これは、本発明の実施形態に従って調製された組成物(具体的には、乳剤Em31、その調製は実施例16に記載されている)の適用後48時間に、すすぎも洗浄サイクルもなく撮影した毛髪繊維の画像を示す図4において観察することができる。図4は、イオン化ガリウムを30kV及び50pAで照射し、倍率20K倍、電圧10kVで画像を撮影した、前述したとおりFIB-SEMで撮影したものである。この図では、硬化したヘアスタイリング組成物は、毛髪繊維上に外層43として堆積した明るい層として、また毛小皮41の間に浸透した層42として見ることができる。
【国際調査報告】