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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】IgE抗体を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230526BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230526BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230526BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230526BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230526BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230526BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P15/00
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564560
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2021060749
(87)【国際公開番号】W WO2021214329
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】2006093.5
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500532757
【氏名又は名称】キングス カレッジ ロンドン
【氏名又は名称原語表記】KINGS COLLEGE LONDON
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】スパイサー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】カラジアニス ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】フィジーニ マリアンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】グールド ハナ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB35
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
一態様では、本発明は、アイソタイプ免疫グロブリンE(IgE)の抗体を含む薬学的単位投与量組成物であって、50mg未満のIgE抗体を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソタイプ免疫グロブリンE(IgE)の抗体を含む薬学的単位投与量組成物であって、前記組成物が、500μg~50mgの前記IgE抗体を含み、前記抗体が、配列番号3に規定する軽鎖可変ドメインアミノ酸配列と、配列番号4に規定する重鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含むMOv18 IgE抗体である、前記組成物。
【請求項2】
30mg未満、25mg未満、10mg未満、5mg未満、3mg未満又は1mg未満のIgE抗体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
500μg~30mg、500μg~3mg、500μg~1mg又は約700μgのIgE抗体を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
液体の形態である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
0.1mg/ml~10mg/ml、0.5mg/ml~2mg/ml又は約1mg/mlのIgE抗体の濃度を有する水溶液を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される賦形剤が、クエン酸ナトリウム、L-アルギニン、ショ糖、ポリソルベート20及び/又は塩化ナトリウムから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
静脈内注射に適している、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
50mg/週、25mg/週、10mg/週、3mg/週又は1mg/週までの最大合計用量での静脈内注射に適している、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ヒト対象におけるがんの治療及び/又はがんの進行の遅延における使用のための、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
がんが、卵巣がんである、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
対象に投与されるIgE抗体の最大週用量が、50mg、25mg、10mg、3mg又は1mgである、がんの治療方法における使用のための請求項10又は11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
IgE抗体の週用量が、500μg~50mg、500μg~30mg、500μg~3mg、500μg~1mg又は約700μgである、請求項12に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
IgE抗体が、週1回又は2週間に1回対象に投与される、請求項10~13のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項15】
IgE抗体が、最長12週間対象に投与される、請求項14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
IgE抗体が、(i)6週間にわたって週1回、その後(ii)6週間にわたって2週間に1回対象に投与される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
IgE抗体が、1回の投与あたり、1mg/kg未満、0.1mg/kg未満又は0.03mg/kg未満の用量で対象に投与される、請求項10~16のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項18】
IgE抗体が、1mg/kg/週未満、0.1mg/kg/週未満又は0.03mg/kg/週未満の用量で対象に投与される、請求項10~17のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項19】
それを必要とするヒト対象におけるがんを治療及び/又はがんの進行を遅延する方法であって、請求項1~18のいずれかに規定の薬学的単位投与量組成物を、前記対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項20】
70μg~3mgのMOv18 IgE抗体を含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
0.007~0.03mg/kg/週の用量のMOv18 IgE抗体が、対象に投与される、請求項10~18のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項22】
ヒト対象における卵巣がんの進行の遅延における使用のための、請求項20又は21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用抗体の分野、特に免疫グロブリンE(IgE,immunoglobulin E)抗体の投与計画及び薬学的単位剤形に関する。本発明は、このようなIgE抗体及び投与計画を用いて疾患、例えばがんを治療する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
治療用抗体は、現在、多くの悪性疾患の従来の治療を補完するが、現在開発されているほぼ全ての薬剤は、9つのヒト抗体クラスのうちの1つのみ、すなわち血液中に最も豊富に存在する抗体クラスであるIgG1に依存している(Weiner LM, Surana R, Wang S (2010) Monoclonal antibodies: versatile platforms for cancer immunotherapy. Nat Rev Immunol 10: 317-327)。ヒト免疫系は、天然において、9つの抗体クラス及びサブクラス(IgM、IgD、IgG1~4、IgA1、IgA2及びIgE)を配備して、免疫監視を行い、異なる解剖学的区画における病原体の破壊を媒介する。しかし、IgG(ほとんどの場合IgG1)のみが、がんの免疫療法に用いられている。
【0003】
その理由の一つは、IgG抗体(特にIgG1)がヒト血液中の循環抗体の最大の部分を占めるからであろう。抗体クラスの選択は、9つの抗体クラス及びサブクラスの1つに属するFc領域をそれぞれが有する同じ特異性のキメラ抗体のパネルを比較する、1980年代の後半の先駆的な研究にも基づく(Bruggemann M, Williams GT, Bindon CI, Clark MR, Walker MR, Jefferis R, Waldmann H, Neuberger MS (1987) Comparison of the effector functions of human immunoglobulins using a matched set of chimeric antibodies. J Exp Med 166: 1351-1361)。抗体は、補体に結合する能力と、補体の存在下での抗原発現標的細胞の溶血及び細胞毒性を媒介する効力について評価された。ヒト末梢血単核細胞(PBMC,peripheral blood mononuclear cell)と組み合わせて、IgG1は、インビトロの補体依存性細胞死滅において最も効果的なIgGサブクラスであったが、IgA及びIgE抗体は、完全に不活性であった。
【0004】
B細胞マーカーCD20を認識する抗体を用いるその後の臨床試験は、IgG1がB細胞悪性腫瘍、例えば非ホジキンリンパ腫の患者の免疫療法に最適なサブクラスであろうという推論を支持した(Alduaij W, Illidge TM (2011) The future of anti-CD20 monoclonal antibodies: are we making progress? Blood 117: 2993-3001)。これらの研究以降、異なる抗体クラスによる抗腫瘍効果の比較は、マウスモデル及びリンパ様悪性腫瘍の患者の両方においてIgG及びIgMに制限されてきたが、IgAは、リンパ腫のマウスモデルにおいてインビトロ及びインビボでADCCを媒介することが示されている(Dechant M, Valerius T (2001) IgA antibodies for cancer therapy. Crit Rev Oncol Hematol 39: 69-77)。
【0005】
IgEクラスの抗体は、アレルギー反応において中心的な役割を演じ、がん療法のために有用であり得る多くの特性を有する。IgEベースの能動的及び受動的免疫療法アプローチは、インビトロ及びインビボの両方のがんモデルにおいて効果的であることが示されており、このことは、ヒトにおけるこれらのアプローチの潜在的な使用を示唆する(Leoh et al., Curr Top Microbiol Immunol. 2015; 388: 109-149)。よって、IgE治療用抗体は、がん細胞に対する免疫監視の増強及び優れたエフェクター細胞効力を提供し得る。がん関連抗原葉酸受容体αに特異的なマウス/ヒトキメラIgE抗体(MOv18 IgE)は、同系免疫適格動物において、その他は同一のIgGと比較して、優れたIgEについての抗腫瘍有効性を有することが示されている(Gould et al., Eur J Immunol 1999; 29:3527-37; Josephs et al., Cancer Res. 2017 Mar 1; 77(5):1127-1141; Karagiannis et al., Cancer Res. 2017 Jun 1;77(11):2779-2783)。TNFα/MCP-1シグナル伝達は、単球及びマクロファージ活性化並びに腫瘍への動員のIgE媒介機構であると同定された。これらの知見は、アレルギー性のIgE機構ではなく、寄生体に対してIgEにより採用される強力なマクロファージ活性化機能の例となる。これらの前臨床実験においてMOv18 IgEの抗腫瘍活性が患者において再現できるならば、臨床腫瘍学におけるIgE派生薬物の臨床応用の潜在的可能性は明白である。特に、IgGの標的として既に確認されている多くの他の抗原についての特異性を有する異なるIgE抗体は、抗体療法の新規なクラスの開発のための広い可能性を示唆する。
【0006】
しかし、ヒトにおけるIgE抗体の治療的使用に関する臨床試験データが存在しないことは、IgE抗体を伴う適当な治療方法及び医薬組成物がまだないことを意味する。特に、他の治療用抗体アイソタイプ(例えばIgG)の投与用に開発された方法及び組成物をIgE抗体について用い得るのかが不明である。よって、IgE抗体に適切で、かつヒトにおいて安全及び効果的である方法及び組成物、特に単位剤形及び投与計画が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Weiner LM, Surana R, Wang S (2010) Monoclonal antibodies: versatile platforms for cancer immunotherapy. Nat Rev Immunol 10: 317-327
【非特許文献2】Bruggemann M, Williams GT, Bindon CI, Clark MR, Walker MR, Jefferis R, Waldmann H, Neuberger MS (1987) Comparison of the effector functions of human immunoglobulins using a matched set of chimeric antibodies. J Exp Med 166: 1351-1361
【非特許文献3】Alduaij W, Illidge TM (2011) The future of anti-CD20 monoclonal antibodies: are we making progress? Blood 117: 2993-3001
【非特許文献4】Dechant M, Valerius T (2001) IgA antibodies for cancer therapy. Crit Rev Oncol Hematol 39: 69-77
【非特許文献5】Leoh et al., Curr Top Microbiol Immunol. 2015; 388: 109-149
【非特許文献6】Gould et al., Eur J Immunol 1999; 29:3527-37
【非特許文献7】Josephs et al., Cancer Res. 2017 Mar 1; 77(5):1127-1141
【非特許文献8】Karagiannis et al., Cancer Res. 2017 Jun 1;77(11):2779-2783
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、アイソタイプ免疫グロブリンE(IgE)の抗体を含む薬学的単位投与量組成物であって、50mg未満のIgE抗体を含む薬学的単位投与量組成物を提供する。
【0009】
特定の実施形態では、組成物は、30mg未満、25mg未満、10mg未満、5mg未満、3mg未満又は1mg未満のIgE抗体を含む。例えば、組成物は、10μg~50mg、70μg~30mg、70μg~3mg、500μg~1mg又は約700μgのIgE抗体を含み得る。
【0010】
一実施形態では、組成物は、液体の形態である。例えば、組成物は、0.1mg/ml~10mg/ml、0.5mg/ml~2mg/ml又は約1mg/mlのIgE抗体の濃度を有する水溶液を含み得る。
【0011】
一実施形態では、組成物は、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、例えばクエン酸ナトリウム、L-アルギニン、ショ糖、ポリソルベート20及び/又は塩化ナトリウムをさらに含む。特に、組成物は、例えば50mg/週、25mg/週、10mg/週、3mg/週又は1mg/週までの最大合計用量での静脈内注射に適している。
【0012】
別の実施形態では、抗体は、抗葉酸受容体α(FRα)抗体である。好ましくは、抗体は、MOv18 IgE抗体である。例えば、抗体は、配列番号3に規定する軽鎖可変ドメインアミノ酸配列及び/又は配列番号4に規定する重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み得る。最も好ましくは、抗体は、配列番号1に規定する軽鎖アミノ酸配列及び/又は配列番号2に規定する重鎖アミノ酸配列を含む。
【0013】
さらなる実施形態において、組成物は、がんの治療に用いられる。つまり、さらなる態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるがんの治療及び/又は進行を遅延する方法であって、上で規定する薬学的単位投与量組成物を、対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0014】
組成物は、がんに罹患した(哺乳動物の)対象、例えばヒト対象に投与し得る。好ましくは、がんは、卵巣がんである。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象に投与するIgE抗体の最大週用量は、50mg、25mg、10mg、3mg又は1mgである。例えば、IgE抗体の週用量は、10μg~50mg、70μg~30mg、70μg~3mg、500μg~1mg又は約700μgであり得る。
【0016】
一実施形態では、IgE抗体は、週1回又は2週間に1回、例えば最長12週間対象に投与される。一実施形態では、IgE抗体は、(i)週1回で6週間の後に(ii)2週間に1回で6週間対象に投与される。
【0017】
さらなる実施形態では、IgE抗体は、1回の投与あたり、0.7mg/kg未満、0.1mg/kg未満又は0.03mg/kg未満の用量で、例えば0.7mg/kg/週未満、0.1mg/kg/週未満又は0.03mg/kg/週未満の用量で対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】MOv18 IgE軽(L)鎖(配列番号1)のアミノ酸配列を示し、マウスVLは、太字で示し、ヒトCLは、標準テキストで示す図である。
図2】MOv18 IgE重(H)鎖(配列番号2)のアミノ酸配列を示し、マウスVHは、太字で示し、ヒトCHは、標準テキストで示す図である。
図3】MOv18 IgE軽鎖可変ドメイン(VL)のアミノ酸配列(配列番号3)を示す図である。
図4】MOv18 IgE重鎖可変ドメイン(VH)のアミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。
図5】抗体の静脈内投与後のMOv18 IgEの薬物動態(血清濃度)を示す図である。
図6】700μg用量レベルのMOv18 IgE抗体で処置した卵巣がん対象における腫瘍サイズの低減を示す、CTスキャン画像と、該CTスキャン画像から得た腫瘍測定の結果とを示す図である。腫瘍(各画像の楕円内の領域において示す)を、ベースライン(左パネル)及び処置の6週間後(右パネル)にて示す。対象における標的及び非標的病変寸法並びに状態は、抗体での処置のサイクルの前後、及び維持期間後に決定した。
図7】700μgのMOv18 IgE抗体の6回の週用量の後に、2週間間隔でさらに3回の700μg用量の抗体での患者の処置の間の卵巣がん抗原CA125の血清濃度における著しい減少を示す図である。
図8】MOv18 IgE抗体で処置した個別の卵巣がん対象における固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST,Response Evaluation Criteria in Solid Tumours)スコアの変化のプロットを示す図である。各線は、処置の開始から(すなわち、処置6週間後及び処置12週間後)の個別の患者におけるRECISTスコアのパーセンテージ変化を表す。20%未満増加又は減少するRECISTスコアは、安定疾患を示す。
図9】MOv18 IgE抗体での処置6週間後の個別の卵巣がん対象におけるRECIST(固形がんの治療効果判定のためのガイドライン)スコアの変化のウォーターフォールプロットを示す図である。各垂直バーは、6週間での個別の対象におけるRECISTスコアの変化を表す。合計で20名の対象を処置した。垂直バーが示されていない場合、その対象において6週間後にRECISTスコアの変化がないことを示す(このことは4名の対象で起こり、x軸に沿った垂直バー間の間隙により示される)。
図10】MOv18 IgE抗体での処置6又は12週間後の個別の卵巣がん対象におけるRECIST(固形がんの治療効果判定のためのガイドライン)スコアの変化のウォーターフォールプロットを示す図である。図9に示した同じ対象を同じ順序で表す。数人(5名)の対象だけが、6週間を超えて処置を継続した。アステリスク(*)を付した各垂直バーは、12週間まで処置した個別の対象におけるRECISTスコアの変化を表す。アステリスクのない残りの垂直バーは、図9に示すように6週間まで処置した個別の対象におけるRECISTスコアの変化を表す。垂直バーが示されていない場合、対象におけるRECISTスコアの変化が0%であることを示す(このことは、2名の対象で起こり、x軸に沿った垂直バーの間隙により示される)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
IgG抗体のために典型的に用いる方法、組成物及び剤形並びに計画が、IgE抗体には必ずしも適切ではないことが驚くべきことに見出された。特に、有効性(例えば、抗腫瘍効果)のために必要なIgE抗体の最少用量が、IgG抗体についての典型的な有効用量よりかなり低くなり得ることが本明細書において証明されている。例えば、以下の実施例に示すように、抗葉酸受容体α(FRα)IgE抗体は、700μg(約0.01mg/kg)ほど低い単位用量にて抗腫瘍効果を有することが第I相試験において見出され、この用量は、典型的なIgG治療用抗体用量(例えば用量あたり150~2000mg前後又は2~20mg/kg)より数桁低い。本研究は、ヒト対象におけるIgE抗体の最初の試験であり、よって、この新しいクラスの治療剤の安全性を示すことを主に意図した。有効性の証明は特に驚くべきことであった。なぜなら、試験した非常に低用量のIgEは、著しい生物学的応答を引き起こしにくいと考えられたからである。
【0020】
がんの治療のために承認されたいくつかのモノクローナル(IgG)抗体の承認された用量及び治療ウィンドウを、以下の表1に示す(例えば、Hendrikx et al., Fixed Dosing of Monoclonal Antibodies in Oncology, The Oncologist 2017;22:1212-1221を参照されたい)。
【0021】
【表1】

【0022】
したがって、本発明の実施形態は、IgE抗体を、IgG抗体と比較して非常に低い単位用量、例えば50mg未満又は1mg/kg未満(例えば500μg~10mg又は0.005~0.1mg/kg)で投与できるという驚くべき利点を提供する。このような低用量組成物は、耐容性が良好であり、抗体の治療投与に伴う副作用の危険性を低減し、必要な薬物製品が少ない(つまり、製造が比較的安価である)。このような低用量でのIgE抗体の有効性の可能性は、特に現存するIgG治療用抗体についての投与計画に基づくと、全く予期できなかった結果である。
【0023】
この結果は、IgG及びIgEの薬理学及び薬物動態における差のために、IgG抗体のために開発された方法及び組成物(例えば投与計画及び単位剤形)は、必ずしもIgEに当てはめられないことを証明する。本発明者らは、よって、例えばがんの治療における、治療用IgE投与に特に当てはめることができる新しい投与計画及び単位剤形を開発した。
【0024】
治療用抗体
抗体は、抗原、例えばFRαのエピトープ又はその断片を特異的に認識して特異的に結合する軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチドリガンドである。抗体は、典型的に、重鎖及び軽鎖で構成され、これらはそれぞれ、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域とよばれる可変領域を有する。まとめて、VH領域及びVL領域は、抗体により認識される抗原との結合を担う。
【0025】
抗体は、当該技術において公知のインタクトな免疫グロブリン、並びに抗体のバリアント及び部分を含むが、但し、このような断片がIgEの少なくとも1つの機能を保持する、例えばFcε受容体と結合できる。抗体は、遺伝子操作された形、例えばキメラヒト化(例えば可変領域にマウス配列を含むヒト化抗体)又はヒト抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)、例えばKuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997に記載されるものも含む。
【0026】
典型的に、天然に存在する免疫グロブリンは、ジスルフィド結合で相互接続された重(H)鎖及び軽(L)鎖を有する。軽鎖には2つのタイプ、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)がある。抗体分子の機能的活性を決定する9つの主要なアイソタイプ又はクラス、すなわち重鎖タイプα、δ、ε、γ及びμに相当するIgA1~2、IgD、IgE、IgG1~4及びIgMがある。つまり、存在する重鎖タイプは、抗体のクラスを規定する。別個の重鎖は、サイズ及び組成が異なり、α及びγは、およそ450アミノ酸を含むが、μ及びεは、およそ550アミノ酸を有する。各重鎖タイプの定常領域における差は、特定のタイプの受容体(例えばFc受容体)とのそれらの選択的結合のおかげで、各抗体アイソタイプのエフェクター機能の違いに帰する。したがって、本発明の実施形態において、抗体は、好ましくはイプシロン(ε)重鎖を含み、すなわち、抗体は、Fcε受容体と結合するアイソタイプIgEのものである。
【0027】
重鎖及び軽鎖はそれぞれ、定常領域及び可変領域を含む(これらの領域は、「ドメイン」としても知られる)。組み合わせて、重鎖及び軽鎖可変領域は、特異的に抗原に結合する。軽鎖及び重鎖可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」ともよばれる3つの超可変領域が割り込んだ「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、規定されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照されたい)。Kabatデータベースは、現在、オンラインで維持されている。異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種、例えばヒト内で比較的保存されている。構成する軽鎖及び重鎖の組み合わせたフレームワーク領域である抗体のフレームワーク領域は、CDRを三次元空間に配置及び整列させる役目をする。
【0028】
CDRは、抗原のエピトープとの結合を主に担う。各鎖のCDRは、N末端から順番に番号付けして典型的にCDR1、CDR2及びCDR3といい、その特定のCDRが位置する鎖により典型的に同定される。よって、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインにあるが、VL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。
【0029】
抗体は、特定のVH領域及びVL領域配列、よって特定のCDR配列を有することがある。異なる特異性(すなわち異なる抗原についての異なる組み合わせ部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。抗体ごとに変動するのはCDRであるが、CDR内の限られた数だけのアミノ酸の位置が抗原結合に直接関与する。CDR内のそれらの位置は、特異性決定残基(SDR)とよばれる。「VH」への言及は、免疫グロブリン重鎖の可変領域のことをいう。「VL」への言及は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域のことをいう。
【0030】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンにより、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子をトランスフェクションした細胞により産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に既知の方法、例えば骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合からハイブリッド抗体形成細胞を作製することにより産生される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0031】
「キメラ抗体」は、2つの異なる抗体に由来する配列を含み、これらは、典型的に異なる種に由来する。例えば、キメラ抗体は、ヒト及びマウス抗体ドメイン、例えばヒト定常領域及びマウス可変領域(例えば標的抗原に特異的に結合するマウス抗体から)を含み得る。
【0032】
キメラ抗体は、異なる種に属する軽鎖及び重鎖免疫グロブリン遺伝子から、例えば遺伝子操作により、可変及び定常領域を融合することにより典型的に構築される。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変セグメントを、ヒト定常セグメント、例えばカッパ及びイプシロンにつなぐことができる。一例では、治療用キメラ抗体は、よって、マウス抗体からの可変又は抗原結合ドメイン、及びヒト抗体からの定常又はエフェクタードメイン、例えばヒトIgE抗体からのFc(エフェクター)ドメインで構成されるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種を用いることができ、又は可変領域は、分子技術により生成できる。キメラ抗体を作製する方法は、当該技術において公知であり、例えば米国特許第5,807,715号明細書を参照されたい。
【0033】
「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(例えばマウス、ラット又は合成)抗体からの1又は2以上のCDRとを含む抗体である。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」とよばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」とよばれる。一実施形態では、全てのCDRは、ヒト化免疫グロブリンにおけるドナー免疫グロブリンからのものである。定常領域は、ヒト免疫グロブリン定常領域と典型的に実質的に同一、すなわち少なくとも約85~90%、例えば約95%以上同一である。よって、CDR以外のヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。
【0034】
ヒト化抗体は、ヒト化免疫グロブリン軽鎖と、ヒト化免疫グロブリン重鎖とを典型的に含む。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原と典型的に結合する。ヒト化免疫グロブリン又は抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークからのアミノ酸による限られた数の置換を有し得る。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に対して実質的に影響を有さない追加の保存的アミノ酸置換を有し得る。
【0035】
ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作により構築できる(例えば米国特許第5,585,089号明細書を参照されたい)。典型的に、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの可変重鎖及び軽鎖からのドナー抗体相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いでドナー対応物のフレームワーク領域におけるヒト残基を置換することにより生成される。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体成分の使用は、ドナー抗体の定常領域の免疫原性に伴う潜在的な問題点を未然に防ぐ。ヒト化モノクローナル抗体を生成する技術は、例えばJones et al., Nature 321:522, 1986; Riechmann et al., Nature 332:323, 1988; Verhoeyen et al., Science 239:1534, 1988; Carter et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. U.S.A. 89:4285, 1992; Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437, 1992; and Singer et al., J. Immunol. 150:2844, 1993に記載される。
【0036】
「ヒト」抗体(「完全ヒト」抗体ともよばれる)は、ヒトフレームワーク領域及びヒト免疫グロブリンからのCDRの全てを含む抗体である。一例では、フレームワーク及びCDRは、同じ起源のヒト重鎖及び/又は軽鎖アミノ酸配列からのものである。しかし、1つのヒト抗体からのフレームワークは、異なるヒト抗体からのCDRを含むように操作できる。
【0037】
本発明の実施形態では、抗体は、キメラ、ヒト化又は完全ヒト抗体を含むモノクローナル又はポリクローナル抗体であり得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗体は、葉酸受容体α(FRα)と特異的に結合して、免疫複合体を形成する。典型的に、抗体は、FRα、好ましくはヒトFRαに結合することがわかっている抗体、例えばMOv18 IgEに由来する抗原結合領域(例えば1又は2以上の可変領域、又は1~6つのCDR)を含み得る。
【0039】
FRαは、いくつかのタイプの固形腫瘍(卵巣及び子宮内膜がん並びに中皮腫を含む)において過剰発現されている。抗原は、実際上腫瘍特異的であることを特徴とし、IgG及びIgE抗体を用いるFRαを標的にする臨床試験は、好ましい耐容性プロファイルを示している。FRαに結合するMOv18 IgG及びIgE抗体並びにそれらの特性は、例えばConey, L. R., A. Tomassetti, et al. (1991). Cancer Res 51(22): 6125-6132; Gould, H. J., G. A. Mackay, et al. (1999). Eur J Immunol 29(11): 3527-3537; Karagiannis, S. N., Q. Wang, et al. (2003). Eur J Immunol 33(4): 1030-1040に記載されている。
【0040】
ある特定の実施形態では、抗体は、可変領域(例えば重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は軽鎖可変ドメイン(VL))、又はMOv18 IgG若しくはIgEからの少なくとも1、2、3、4、5若しくは6のCDR(例えば3つの重鎖CDR又は3つの軽鎖CDR)、例えば配列番号4及び/若しくは配列番号3にあるCDRを含み、CDR配列はKabat、Chothia又はIMGTの方法に従って規定し得る(例えばDondelinger, Front Immunol. 2018; 9: 2278及び本明細書に参照により組み込まれるそこに引用される文献を参照されたい)。例えば、CDRは、Kabatに従って(Kabat EA, et al. (U.S.) NI of H. Sequences of Immunoglobulin Chains: Tabulation Analysis of Amino Acid Sequences of Precursors, V-regions, C-regions, J-Chain BP-Microglobulins, 1979を参照されたい)、又はChothiaに従って(Chothia C, et al, Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins, J Mol Biol. 1987 Aug 20; 196(4):901-1を参照されたい)、又はIMGTに従って(Giudicelli V et al., IMGT, the international ImMunoGeneTics database, Nucleic Acids Res. 1997 Jan 1; 25(1):206-11又はLefranc MP, Unique database numbering system for immunogenetic analysis, Immunol Today. 1997 Nov; 18(11):509を参照されたい)規定し得る。MOv18 IgEのVH及びVLドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4及び配列番号3に示す。別の実施形態では、抗体は、MOv18 IgEと結合するエピトープに特異的に結合するキメラ、ヒト化又は完全ヒト抗体である。最も好ましくは、治療用抗体は、MOv18 IgEであり、例えば、抗体は、配列番号1に規定する軽鎖アミノ酸配列及び/又は配列番号2に規定する重鎖アミノ酸配列を含む。
【0041】
別の例では、抗体は、例えばFRα、好ましくはヒトFRα上で見出されるエピトープを認識するヒトB細胞クローンに由来する可変領域(例えば重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメイン)、又は少なくとも1、2、3、4、5若しくは6のCDR(例えば3つの重鎖CDR又は3つの軽鎖CDR)を含む。
【0042】
一実施形態では、抗体は、1又は2以上のヒト定常領域、例えば1又は2以上のヒト重鎖定常ドメイン(例えばε定常ドメイン)及び/又はヒト軽鎖(例えばκ又はλ)定常ドメインを含む。ヒト軽(κ)鎖定常ドメインのアミノ酸配列を、配列番号1(太字でないテキスト)に示す。ヒト重鎖定常ドメインのアミノ酸配列を、配列番号2(太字でないテキスト)に示す。一実施形態では、抗体は、VH及び/又はVLドメイン内の1又は2以上のヒトフレームワーク領域を含む。
【0043】
一実施形態では、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列は、ドナー免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列と少なくとも約65%同一であり得る。よって、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列は、ドナー免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列と少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約99%又は少なくとも約95%同一であり得る。ヒトフレームワーク領域、及びヒト化抗体フレームワーク領域に作り得る変異は、当該技術において知られている(例えば、米国特許第5,585,089号明細書を参照されたい)。
【0044】
特異的抗原、例えばFRαに対するさらなる抗体は、確立された方法により作製することもでき、そのような抗体からの少なくとも可変領域又はCDRは、本発明の抗体において用いることができる(例えば、作製された抗体を用いて、IgEアクセプター配列にCDR又は可変領域配列を提供できる)。ポリペプチドを合成する方法及び宿主動物を免疫する方法は、当該技術において公知である。典型的に、宿主動物(例えばマウス)に、ある量の免疫原(例えばFRα又はその免疫原性断片を含むポリペプチド)と、(モノクローナル抗体生成の場合は)Kohler, B. and Milstein, C. (1975) Nature 25 6:495-497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を用いてリンパ球及び不死化骨髄腫細胞から調製されるハイブリドーマとを腹腔内接種する。
【0045】
適切な抗体を生成するハイブリドーマは、既知の手順を用いてインビトロ又はインビボで増殖させることができる。モノクローナル抗体は、培養培地又は体液から、所望により、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー及び限外濾過により単離できる。存在するならば望ましくない活性は、例えば、固相に結合した免疫原で作られた吸着剤に調製物を流し、所望の抗体を免疫原から溶出又は放出させることにより除去できる。所望により、所望の抗体(モノクローナル又はポリクローナル)を配列決定し、ポリヌクレオチド配列を、次いで、発現又は増殖のためのベクターにクローニングできる。抗体をコードする配列は、宿主細胞内のベクターに維持し、次いで、宿主細胞を、将来の使用のために拡張及び凍結できる。
【0046】
ファージディスプレイ技術、例えば米国特許第5,565,332号明細書及び他の出版された文献に記載されるものは、非免疫化ドナーから(例えば、関係する障害に罹患している患者を含むヒト対象から)の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体及び抗体断片をインビトロで選択及び生成するために用いることができる。例えば、現存する抗体ファージディスプレイライブラリーを、合成ポリペプチドの大きいコレクションに対して並行して選り分けることができる。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdのメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片としてディスプレイされる。繊維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選択も、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。よって、ヒトライブラリーからファージディスプレイを用いて選択される抗体配列は、特定の抗原、例えばFRαとの特異的結合を与えるヒトCDR又は可変領域配列を含むことができ、これは、本発明で用いるための完全ヒト抗体を提供するために用いることができる。
【0047】
ヒトB細胞及び形質細胞クローンから重鎖及び軽鎖配列を導く方法も当該技術において公知であり、典型的に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行われ、この方法の例は、Kuppers R, Methods Mol Biol. 2004;271:225-38; Yoshioka M et al., BMC Biotechnol. 2011 Jul 21;11:75; Scheeren FA et al., PLoS ONE 2011, 6(4): e17189. doi:10.1371/journal.pone.0017189; Wrammert J et al., Nature 2008 453, 667-671; Kurosawa N et al., BMC Biotechnol. 2011 Apr 13;11:39; Tiller et al., J Immunol Methods. 2008 January 1; 329(1-2): 112-124に記載される。よって、B細胞クローンを用いて選択される抗体配列は、例えばFRαとの特異的結合を与えるヒトCDR又は可変領域配列を含むことができ、これは、本発明で用いるための完全ヒト抗体を提供するために用いることができる。
【0048】
IgE抗体
対象に投与される治療用抗体は、IgE抗体、すなわち,アイソタイプIgEの抗体である。IgEとIgGとの間には、いくつかの基本的な構造の違いがあり、これらは、機能的効果を有する。IgEは、他のクラスの抗体と同じ基本的分子構造が共通しているが、IgEの重鎖は、IgGの重鎖よりドメインを1つ多く有する。IgEのCε3及びCε4ドメインは、IgGのCγ2及びCγ3ドメインと配列が相同であり、構造が類似しているので、IgEの最も明確な区別できる特徴は、Cε2ドメインである。Cε2ドメインは、重鎖IgEに対して折り返され、Cε3ドメインと広い範囲で接触することが見出されている。IgE重鎖のこの曲がった構造により、開放又は閉鎖された立体構造をとることが可能になる。未結合のIgE二量体は、一本の鎖が開放立体構造及び一本の鎖が閉鎖立体構造にある。IgEとのFcεRIの結合は、二相であり、開放Cε鎖との最初の結合の後に広い範囲の構造再構成を行って、閉鎖Cε鎖との結合を可能にすると考えられている。IgE二量体とFcεRIとの間の結合は、2つの同一Cε鎖の存在にもかかわらず、1:1の化学量論で起こる。この再構成は、IgEとFcεRIとの間の非常に密な相互作用と、IgGとFcγRとで見出されるよりもかなり大きいFc受容体についてのIgEの親和性とをもたらす(McDonnell, J. M., R. Calvert, et al. (2001) Nat Struct Biol 8(5): 437-441)。
【0049】
本発明で用いる抗体は、Fcε受容体、例えばFcεRI及び/又はFcεRII受容体と典型的に結合できる。好ましくは、抗体は、少なくともFcεRIと結合できる(すなわち高親和性Fcε受容体)か、又は少なくともFcεRIIと結合できる(CD23、低親和性Fcε受容体)。典型的に、抗体は、IgEにより媒介されるエフェクター機能を開始するために、例えば免疫系の細胞上で発現されるFcε受容体も活性化できる。
【0050】
イプシロン(ε)重鎖は、IgE抗体にとって決定的であり、N末端可変ドメインVHと、4つの定常ドメインCε1~Cε4とを含む。他の抗体アイソタイプと同様に、可変ドメインは、抗原特異性を与え、定常ドメインは、アイソタイプ特異的エフェクター機能を動員する。
【0051】
IgEは、補体を固定できず、単核細胞、NK細胞及び好中球の表面上で発現されるFc受容体であるFcγRI、RII及びRIIIと結合しない点で、より豊富なIgGアイソタイプとは異なる。しかし、IgEは、様々な免疫細胞、例えば肥満細胞、好塩基球、単球/マクロファージ、好酸球上の「高親和性」IgE受容体(FcεRI、Ka.1011-1)、並びに炎症及び抗原提示細胞(例えば単球/マクロファージ、血小板、樹状細胞、T及びBリンパ球)上で発現されるCD23としても知られる「低親和性」受容体FcεRII(Ka.10-1)と非常に特異的な相互作用ができる。
【0052】
これらの受容体相互作用を担うIgEの部位は、Cε鎖上のペプチド配列にマッピングされ、異なる。FcεRI部位は、Gln301とArg376との間の残基により創出される割れ目にあり、Cε2とCε3ドメインとの間の接合部を含む(Helm, B. et al. (1988) Nature 331, 180183)。FcεRII結合部位は、Cε3周囲残基Val370内に位置する(Vercelli, D. et al. (1989) Nature 338, 649-651)。2つの受容体を区別する主な違いは、FcεRIは単量体Cεに結合するが、FcεRIIは二量体Cεとのみ結合し、すなわち2つのCε鎖は会合しなければならない。IgEは、インビボでグリコシル化されるが、FcεRI及びFcεRRIIとの結合に必要ではない。グリコシル化がないと、結合は実際のところわずかに強くなる(Vercelli, D. et al. (1989)et.既出)。
【0053】
よって、Fcε受容体との結合及び関係するエフェクター機能は、抗体の重鎖定常ドメインにより、特に抗体のFc領域を一緒に形成するドメインにより典型的に媒介される。本明細書に記載する抗体は、少なくともIgE抗体の一部、例えばIgE、好ましくはヒトIgEに由来する1又は2以上の定常ドメインを典型的に含む。特定の実施形態では、抗体は、Cε1、Cε2、Cε3及びCε4から選択される1又は2以上のドメイン(IgEに由来する)を含む。一実施形態では、抗体は、少なくともCε2及びCε3、より好ましくは少なくともCε2、Cε3及びCε4を含み、好ましくは、ドメインは、ヒトIgEに由来する。一実施形態では、抗体は、イプシロン(ε)重鎖、好ましくはヒトε重鎖を含む。
【0054】
ヒトIgEに由来する定常ドメインのアミノ酸配列を、例えば図1及び2に示す(配列番号1及び2、太字でないテキスト)。ヒトIgEに由来する定常ドメイン、特にCε1、Cε2、Cε3及びCε4ドメインをコードするヌクレオチド配列は、例えば国際公開第2013/050725号パンフレットにも開示されている。他のヒト及び哺乳動物IgE、並びにヒトCε1、Cε2、Cε3及びCε4ドメイン並びにヒトε重鎖配列を含むそれらのドメインのアミノ酸配列は、当該技術において知られており、公共でアクセスできるデータベースから入手可能である。例えば、ヒト免疫グロブリン配列のデータベースは、国際免疫遺伝子情報システム(IMGT(登録商標)、International ImMunoGeneTics Information System)ウェブサイトからhttp://www.imgt.orgにてアクセスできる。一例として、種々のヒトIgE重(ε)鎖アレル及びそれらの個別の定常ドメイン(Cε1~4)の配列は、http://www.imgt.org/IMGT_GENE-DB/GENElect?query=2+IGHE&species=Homo+sapiensにてアクセスできる。
【0055】
好ましい抗FRαIgE抗体
一実施形態では、抗FRα抗体は、配列番号4に規定するアミノ酸配列の少なくとも一部を含む、例えば配列番号4の少なくとも20、30、50若しくは100アミノ酸、又は配列番号4の全長、又は配列番号4に存在する1、2若しくは3つのCDR(例えばKabat、Chothia又はIMGTに従って定義される)を含むVHドメインを含む。
【0056】
一実施形態では、抗FRα抗体は、配列番号3に規定するアミノ酸配列の少なくとも一部を含む、例えば配列番号3の少なくとも20、30、50若しくは100アミノ酸、又は配列番号3の全長、又は配列番号3に存在する1、2若しくは3つのCDR(例えばKabat、Chothia又はIMGTに従って定義される)を含むVLドメインを含む。
【0057】
一般的に、上で規定する配列の機能的断片を、本発明において用いることができる。機能的断片は、断片が抗体に存在する場合に必要な活性を保持する(例えばFRα及び/又はFcε受容体との特異的結合)ことを条件として、上で特定する任意の長さのものであり得る(例えば、少なくとも50、100、300若しくは500ヌクレオチド、又は少なくとも50、100、200若しくは300アミノ酸)。
【0058】
上記のアミノ酸及びヌクレオチド配列のバリアントも、得られる抗体がFcε受容体に結合することを条件として、本発明において用いることができる。典型的に、このようなバリアントは、上で特定する配列の1つと高い配列同一性を有する。
【0059】
アミノ酸又はヌクレオチド配列間の類似性は、配列間の類似性に関して表され、そうでなければ配列同一性といわれる。配列同一性は、パーセンテージ同一性(又は類似性又は相同性)に関して頻繁に測定される。パーセンテージが高いと、2つの配列間の類似性がより高い。アミノ酸又はヌクレオチド配列のホモログ又はバリアントは、標準的な方法を用いてアラインメントさせた場合に、比較的高い程度の配列同一性を有する。
【0060】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術において公知である。種々のプログラム及びアラインメントアルゴリズムは、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970; Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444, 1988; Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988; Higgins and Sharp, CABIOS 5:151, 1989; Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988及びPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994は、配列アラインメント法及び相同性計算の詳細な考察を示す。
【0061】
NCBIベーシックローカルアラインメント検索ツール(BLAST、Basic Local Alignment Search Tool)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと連携して用いるために、米国国立生物工学情報センター(NCBI、National Center for Biotechnology Information, Bethesda, Md.)を含むいくつかの情報源から、そしてインターネットで入手可能である。このプログラムを用いて配列同一性をどのように決定するかについての説明は、インターネットのNCBIウェブサイトで入手可能である。
【0062】
抗体のホモログ及びバリアント(例えば抗FRα抗体又はそのドメイン、例えばVL、VH、CL又はCHドメイン)は、例えばNCBI Blast2.0、デフォルトパラメータに設定されたギャップありblastpを用いて抗体又はそのドメインのアミノ酸配列との全長アラインメントにわたって計数して、元の配列(例えば上に規定する配列)と少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%配列同一性を典型的に有する。約30アミノ酸より多いアミノ酸配列の比較のために、デフォルトパラメータ(ギャップ存在コスト11、及び残基あたりのギャップコスト1)に設定されたデフォルトBLOSUM62行列を用いて、Blast2配列関数を用いる。短いペプチド(約30アミノ酸未満)をアラインメントする場合、アラインメントは、デフォルトパラメータ(オープンギャップ9、伸長ギャップ1ペナルティ)に設定されたPAM30行列を用いるBlast2配列関数を用いて行うべきである。参照配列とさらにより大きい類似性を有するタンパク質は、この方法により評価した場合に、パーセンテージ同一性が増加し、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を示す。配列全体未満を配列同一性のために比較する場合に、ホモログ及びバリアントは、10~20アミノ酸の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を典型的に有し、参照配列との類似性に依存して、少なくとも85%又は少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有し得る。このような短いウィンドウにわたって配列同一性を決定する方法は、インターネットのNCBIウェブサイトで入手可能である。当業者は、これらの配列同一性の範囲は、手引きのためだけに提示することを認識している。提示する範囲外になる非常に著しいホモログが得られることも全くあり得る。
【0063】
典型的に、バリアントは、元のアミノ酸又は核酸配列と比較して、1又は2以上の保存アミノ酸置換を含み得る。保存置換は、標的抗原(例えばFRα)及び/又はFcε受容体との抗体の親和性に実質的に影響又は減少しない置換である。例えば、FRαと特異的に結合するヒト抗体は、元の配列(例えば上に規定するもの)と比較して1まで、2まで、5まで、10まで又は15までの保存置換を含み、FRαポリペプチドと特異的結合を保持し得る。保存的変動との用語は、抗体が標的抗原(例えばFRα)と特異的に結合することを条件として、非置換の親のアミノ酸の場所において置換されたアミノ酸の使用も含む。非保存的置換は、標的抗原(例えばFRα)及び/又はFcε受容体との活性又は結合を低減するものである。
【0064】
保存的置換により交換できる機能的類似アミノ酸は、当業者に公知である。以下の6つの群は、互いに保存的置換とみなされるアミノ酸の例である:1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0065】
さらなるIgE抗体
上記のように、好ましい実施形態では、IgE抗体は、FRαと結合する。さらなる実施形態では、本発明で用いるIgE抗体は、がんの治療に有用な1又は2以上のさらなる標的抗原と、すなわちFRα以外の標的抗原と特異的に(すなわち、それらの可変ドメイン又はそれらの相補性決定領域(CDR)を介して)結合し得る。例えば、IgE抗体は、1又は2以上のさらなるがん抗原(すなわち、がん細胞上で選択的に又は過剰に発現される抗原)と特異的に結合し得る。好ましくは、IgE抗体は、特にそのような抗原を発現するがん細胞に対して、細胞毒性(例えばADCC)及び/又は食作用(ADCP)を誘導できる。例えば、IgE抗体は、例えばEGF-R(上皮増殖因子受容体)、VEGF(血管内皮増殖因子)又はerbB2受容体(Her2/neu)と特異的に結合し得る。Her2/neuと選択的に結合する可変ドメインを含む抗体の一例は、トラスツズマブ(ハーセプチン)である。
【0066】
いくつかの実施形態では、1若しくは2以上の可変ドメイン及び/又は1若しくは2以上のCDR、好ましくは少なくとも3つのCDR、より好ましくは6つ全てのCDRは、1又は2以上の以下の抗体に由来し得る:アレムツズマブ(配列番号27~32)、アテゾリズマブ(配列番号33~38)、アベルマブ(配列番号39~45)、ベバシズマブ(配列番号46~51)、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、セミプリマブ、セルトリズマブ(配列番号52~57)、セツキシマブ(配列番号58~63)、デノスマブ、デュルバルマブ(配列番号64~69)、エファリズマブ(配列番号70~75)、イピリムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ(配列番号76~81)、パニツムマブ(配列番号82~87)、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ(配列番号88~93)、リツキシマブ(配列番号94~99)又はトラスツズマブ(配列番号100~105)。
【0067】
このような実施形態では、抗体の可変ドメインは、表2に列挙する抗体の1つからの1又は2以上のCDR、好ましくは少なくとも3つのCDR、より好ましくは6つ全てのCDR配列を含み得る。
【0068】
【表2】
【0069】
表2では、括弧内の数は、対応する配列番号である。点は、IMGT及びKabat番号付けシステムに従う配列アラインメントギャップを示す。文字は、CDR配列の予測に用いた方法を示す。A-IMGT、B-Kabat。1-Magdelaine-Beuzelin et al. (2007) Structure-function relationships of the variable domains of monoclonal antibodies approved for cancer treatment. Critical Reviews in Oncology/Hematology, 64: 210-225。2-Lee et al. (2017). Molecular mechanism of PD-1/PD-L1 blockade via anti-PD-L1 antibodies atezolizumab and durvalumab. Scientific Reports, 7: 5532。3-Ling et al. (2018) Effect of VH-VL Families in Pertuzumab and Trastuzumab Recombinant Production, Her2 and FcγIIA Binding. Frontiers in Immunology, 9: 469。
【0070】
代替の実施形態では、1若しくは2以上の可変ドメイン及び/又は1若しくは2以上のCDR、好ましくは少なくとも3つのCDR、より好ましくは6つ全てのCDRは、1又は2以上の以下の抗体に由来し得る:アブシキシマブ、アダリムマブ(配列番号106~111)、アデュカヌマブ、アレファセプト、アリロクマブ、アニフロルマブ、バルスチリマブ、バシリキシマブ(配列番号112~117)、ベリムマブ(配列番号118~123)、ベンラリズマブ、ベズロトクスマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロスマブ、カナキヌマブ、カプラシズマブ、クリザンリズマブ、ダクリズマブ(配列番号124~129)、ダラツムマブ、ジヌツキシマブ、ドスタルリマブ、デュピルマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エマパルマブ、エミシズマブ、エプチネズマブ、エレヌマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、ゴリムマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イダルシズマブ、イネビリズマブ、インフリキシマブ(配列番号130~135)、イサツキシマブ、イキセキズマブ、ラナデルマブ、レロンリマブ、マルゲツキシマブ、メポリズマブ、モガムリズマブ、ムロモナブ、ナルソプリマブ、ナタリズマブ(配列番号136~141)、ナキシタマブ、ネシツムマブ、オビルトキサキシマブ、オクレリズマブ、オンバータマブ、パリビズマブ(配列番号5~10)、ラムシルマブ、ラニビズマブ(配列番号11~16)、レスリズマブ、リサンキズマブ、ロモソズマブ、サリルマブ、サトラリズマブ、セクキヌマブ、スパルタリズマブ、スチムリマブ、タファシタマブ、タネズマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トリパリマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ又はザリフレリマブ。
【0071】
このような実施形態では、抗体の可変ドメインは、表3に列挙する抗体の1つからの1又は2以上のCDR、好ましくは少なくとも3つのCDR、より好ましくは6つ全てのCDR配列を含み得る。
【0072】
【表3】
【0073】
表3では、括弧内の数は、対応する配列番号である。点は、IMGT及びKabat番号付けシステムに従う配列アラインメントギャップを示す。文字は、CDR配列の予測に用いた方法を示す。A-IMGT、B-Kabat。1-Schroter et al. (2014) A generic approach to engineer antibody pH-switches using combinatorial histidine scanning libraries and yeast display. MAbs, 7(1): 138-151。2-Wang et al. (2009). Potential aggregation prone regions in biotherapeutics. A survey of commercial monoclonal antibodies. MAbs, 1(3): 254-267。3-国際公開第2015/173782A1号パンフレット。4-Lim et al. (2018). Structural Biology of the TNFαAntagonists Used in the Treatment of Rheumatoid Arthritis. International Journal of Molecular Sciences, 19(3): pii E768。
【0074】
他の実施形態では、1若しくは2以上の可変ドメイン及び/又は1若しくは2以上のCDR配列、好ましくは少なくとも3つのCDR、より好ましくは6つ全てのCDRは、抗HMW-MAA抗体に由来し得る。一実施形態では、1若しくは2以上の可変ドメイン及び/又は1若しくは2以上のCDR配列、好ましくは少なくとも3つのCDR、より好ましくは6つ全てのCDRは、国際公開第2013/050725号パンフレットに記載の抗HMW-MAA抗体に由来し得る(可変ドメインについて配列番号23及び25、並びにCDRについて配列番号17~22)。HMW-MAAとは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4、chondroitin sulfate proteoglycan 4)又は黒色腫コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP、melanoma chondroitin sulfate proteoglycan)としても知られる高分子量黒色腫関連抗原のことをいう。例えば、Uniprot Q6UVK1を参照されたい。
【0075】
このような実施形態では、抗体の可変ドメインは、表4に規定する1又は2以上のCDRの配列、好ましくは少なくとも3つのCDR、より好ましくは6つ全てのCDR配列を含み得る。他の実施形態では、抗体の1又は2以上の可変ドメインは、表4に列挙する1又は2以上の可変ドメイン配列を含む。
【0076】
【表4】
【0077】
抗体及び核酸の生成
本明細書に示すポリペプチド(それらに限定されないが、抗体及びその機能的断片を含む)をコードする核酸分子(ポリヌクレオチドとしても知られる)は、本明細書に示すアミノ酸配列、当該技術において入手可能な配列、及び遺伝子コードを用いて、当業者が容易に生成できる。さらに、当業者は、機能的に等価な核酸、例えば配列は異なるが同じエフェクター分子又は抗体配列をコードする核酸を含む様々なクローンを容易に構築できる。よって、抗体をコードする核酸が、本発明において提供される。
【0078】
標的抗原(例えばFRα)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片をコードする核酸配列は、例えば適当な配列のクローニング、又は例えばNarang et al., Meth. Enzymol. 68:90-99, 1979のホスホトリエステル法、Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109-151, 1979のホスホジエステル法、Beaucage et al., Tetra. Lett. 22:1859-1862, 1981のジエチルホスホロアミダイト法、例えばNeedham-VanDevanter et al., Nucl. Acids Res. 12:6159-6168, 1984に記載される自動化合成機を例えば用いるBeaucage & Caruthers, Tetra. Letts. 22(20):1859-1862, 1981により記載される固相ホスホロアミダイトトリエステル法、及び米国特許第4,458,066号明細書の固相支持法の方法による直接化学合成を含む任意の適切な方法により調製できる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補配列とのハイブリダイゼーション、又は一本鎖を鋳型として用い、DNAポリメラーゼを用いる重合により、二本鎖DNAに変換できる。当業者は、DNAの化学合成が、約100塩基の配列に一般的に限定され、より長い配列は、短い配列のライゲーションにより得ることができることを認識している。
【0079】
抗体又はその機能的断片をコードする例示的核酸は、クローニング技術により調製できる。適当なクローニング及び配列決定技術の例、並びに当業者に多くのクローニングを実行させるのに十分な指示は、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)及びCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds 1995 supplement))で見出すことができる。生物学的試薬及び実験機器の製造業者からの製品情報も、有用な情報をもたらす。このような製造業者は、SIGMA Chemical Company社(Saint Louis, Mo.)、R&D Systems社(Minneapolis, Minn.)、Pharmacia Amersham社(Piscataway, N.J.)、CLONTECH Laboratories, Inc.社(Palo Alto, Calif.)、Chem Genes Corp.社、Aldrich Chemical Company社(Milwaukee, Wis.)、Glen Research, Inc.社、GIBCO BRL Life Technologies, Inc.社(Gaithersburg, Md.)、Fluka Chemica-Biochemika Analytika社(Fluka Chemie AG社, Buchs, Switzerland)、Invitrogen社(Carlsbad, Calif.)及びApplied Biosystems社(Foster City, Calif.)、並びに当業者に知られる多くの他の商業的供給源を含む。
【0080】
天然抗体をコードする核酸を改変して、本明細書に記載する抗体を形成できる。部位特異的突然変異誘発による改変は、当該技術において公知である。核酸は、増幅法によっても調製できる。増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、polymerase chain reaction)、リガーゼ連鎖反応(LCR、ligase chain reaction)、転写ベースの増幅システム(TAS、transcription-based amplification system)、自家持続配列複製システム(3SR、self-sustained sequence replication system)を含む。広範なクローニング法、宿主細胞及びインビトロ増幅法は、当業者に公知である。
【0081】
一実施形態では、抗体は、1又は2以上の抗体ドメイン(例えばヒトFRαに結合するマウスIgG1重鎖可変領域)をコードするcDNAを、1又は2以上のさらなる抗体ドメイン(例えばヒト重鎖ε定常領域)をコードするcDNAを含むベクターに挿入することにより、調製する。挿入は、機能的抗体領域を含む1つの連続ポリペプチドとしてインフレームで抗体ドメインが読まれるように行われる。
【0082】
一実施形態では、重鎖定常領域をコードするcDNAを重鎖可変領域にライゲーションして、定常領域が抗体のカルボキシル末端に位置するようにする。重鎖可変及び/又は定常領域を、その後、ジスルフィド結合を用いて抗体の軽鎖可変及び/又は定常領域にライゲーションできる。
【0083】
抗体又はその機能的断片をコードする核酸を一旦単離及びクローニングしたら、所望のタンパク質は、組換え操作した細胞、例えば細菌、植物、酵母、昆虫及び哺乳動物細胞内で発現できる。当業者は、大腸菌(E. coli)、他の細菌宿主、酵母及び種々の高等真核細胞、例えばCOS、CHO、HeLa及び骨髄腫株化細胞を含む、タンパク質発現のために利用可能な多数の発現系を知っていると考えられる。
【0084】
抗体又はその断片をコードする1又は2以上のDNA配列は、適切な宿主細胞へのDNA移入によりインビトロで発現できる。細胞は、原核又は真核であり得る。この用語は、対象宿主細胞の任意の子孫も含む。複製中に起こり得る変異のために、全ての子孫が親の細胞と同一ではないことが理解される。外来DNAが継続的に宿主に維持されることを意味する安定移入の方法は、当該技術において知られている。所望の抗体を発現するハイブリドーマも、本開示に含まれる。
【0085】
本明細書に記載する単離抗体及び抗体断片をコードする核酸の発現は、DNA又はcDNAを、プロモーター(これは、構成的又は誘導的のいずれかである)に作動可能に連結し、その後、発現カセットに組み込むことにより達成できる。カセットは、原核又は真核生物のいずれかにおける複製及び組込みのために適切であり得る。典型的な発現カセットは、タンパク質をコードするDNAの発現の調節に有用な特異的配列を含む。例えば、発現カセットは、適当なプロモーター、エンハンサー、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、タンパク質コード配列の前の開始コドン(すなわちATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAの正しい翻訳を可能にするその遺伝子の正しいリーディングフレームの維持、並びに停止コドンを含み得る。
【0086】
クローニングされた遺伝子の高い発現レベルを得るために、転写を駆動する強いプロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、及び転写/翻訳ターミネーターを最小限で含む発現カセットを構築することが望ましい。大腸菌について、これは、プロモーター、例えばT7、trp、lac又はラムダプロモーター、リボソーム結合部位、及び好ましくは転写終結シグナルを含む。真核細胞について、制御配列は、例えば免疫グロブリン遺伝子、SV40又はサイトメガロウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーと、ポリアデニル化配列とを含むことができ、スプライスドナー及びアクセプター配列をさらに含み得る。カセットは、公知の方法、例えば大腸菌について形質転換又はエレクトロポレーション、及び哺乳動物細胞についてリン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション又はリポフェクションにより選択された宿主細胞に移入できる。カセットにより形質転換された細胞は、カセットに含まれる遺伝子、例えばamp、gpt、neo及びhyg遺伝子により与えられる抗生物質耐性により選択できる。
【0087】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈、従来の機械的手順、例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームで覆ったプラスミドの挿入のようなDNAトランスフェクション法、又はウイルスベクターを用い得る。真核細胞は、抗体、標識抗体又はその機能的断片と、選択的形質をコードする第2の外来DNA分子、例えば単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子とをコードするポリヌクレオチド配列で同時形質転換できる。別の方法は、真核ウイルスベクター、例えばサルウイルス40(SV40、simian virus 40)又はウシパピローマウイルスを用いて真核細胞を一過的に感染又は形質転換してタンパク質を発現させることである(例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed., 1982を参照されたい)。当業者は、高等真核細胞、例えばCOS、CHO、HeLa及び骨髄腫株化細胞を含む細胞においてタンパク質を生成するために有用な発現系、例えばプラスミド及びベクターを容易に用いることができる。
【0088】
改変は、本明細書に記載するポリペプチド(例えばヒトFRα特異的IgE抗体)をコードする核酸に対して、その生物活性を減弱することなく行うことができる。いくつかの改変は、クローニング、発現又は標的化分子の融合タンパク質への組込みを容易にするために行うことができる。そのような改変は、当業者に公知であり、例えば、停止コドン、開始部位をもたらすためにアミノ末端に付加されたメチオニン、簡便な位置に制限部位を創出するためにいずれかの末端に付加されたアミノ酸、又は精製ステップを助けるために付加されたアミノ酸(例えばポリHis)を含む。組換え法に加えて、本開示の抗体は、当該技術において公知の標準的なペプチド合成を用いて全体又は部分的に構築することもできる。
【0089】
一旦発現されると、組換え抗体は、硫酸アンモニウム沈殿、親和性カラム、カラムクロマトグラフィーなどを含む当該技術における標準的な手順に従って精製できる(全般的に、R. Scopes, PROTEIN PURIFICATION, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照されたい)。抗体、イムノコンジュゲート及びエフェクター分子は、100%純粋である必要はない。所望により部分的又は均質に一旦精製されると、治療に用いるならば、ポリペプチドは、内毒素を実質的に含むべきでない。
【0090】
細菌、例えば大腸菌からの単鎖抗体を含む単鎖抗体の発現及び/又は適当な活性形へのリフォールディングの方法は、記載され、公知であり、本明細書に開示する抗体に用いることができる。Buchner et al., Anal. Biochem. 205:263-270, 1992; Pluckthun, Biotechnology 9:545, 1991; Huse et al., Science 246:1275, 1989及びWard et al., Nature 341:544, 1989を参照されたい。
【0091】
頻繁に、大腸菌又は他の細菌からの機能的異種タンパク質は、封入体から単離され、強い変性剤を用いる可溶化と、その後のリフォールディングを必要とする。可溶化ステップ中に、当該技術において知られるように、ジスルフィド結合を分けるために還元剤が存在しなければならない。還元剤を含む例示的な緩衝液は、0.1M Tris pH8、6Mグアニジン、2mM EDTA、0.3Mジチオエリスリトール(DTE、dithioerythritol)である。ジスルフィド結合の再酸化は、Saxena et al., Biochemistry 9: 5015-5021, 1970に記載され、特にBuchner et al.、既出に記載されるように、還元及び酸化形での低分子量チオール試薬の存在により起こり得る。
【0092】
再生は、変性及び還元されたタンパク質をリフォールディング緩衝液中で(例えば100倍)希釈することにより典型的に達成される。例示的な緩衝液は、0.1M Tris、pH8.0、0.5M L-アルギニン、8mM酸化グルタチオン(GSSG)及び2mM EDTAである。
【0093】
二本鎖抗体精製プロトコールの改変として、重鎖及び軽鎖領域を別々に可溶化及び還元し、次いでリフォールディング溶液中で組み合わせる。一方のタンパク質が他方の5倍モル過剰を超えないモル比で2つのタンパク質を混合した場合に、例示する収量が得られる。過剰の酸化されたグルタチオン又は他の酸化性低分子量化合物を、酸化還元シャッフリングが完了した後にリフォールディング溶液に加えることができる。
【0094】
組換え法に加えて、本明細書に開示する抗体、標識抗体及びその機能的断片は、標準的なペプチド合成を用いて全体的又は部分的に構築することもできる。約50アミノ酸未満の長さのポリペプチドの固相合成は、配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に結合させた後に、配列中の残りのアミノ酸を逐次的に付加することにより達成できる。固相合成の技術は、Barany & Merrifield, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology. Vol. 2: Special Methods in Peptide Synthesis, Part A. pp. 3-284; Merrifield et al., J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2156, 1963及びStewart et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., Pierce Chem. Co., Rockford, Ill., 1984により記載される。より長いタンパク質は、短い断片のアミノ及びカルボキシル末端の縮合により合成できる。
【0095】
カルボキシル末端の端の活性化によるペプチド結合の形成方法(例えば、カップリング試薬N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いることによる)は、当該技術において公知である。
【0096】
一実施形態では、抗体、核酸、発現ベクター、宿主細胞又は他の生物学的生成物を単離する。「単離する」は、生成物が、該成分が天然に存在する環境(例えば細胞)中の他の生物学的成分、すなわち他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、タンパク質並びにオルガネラから実質的に離れて分けられたか又は精製されたことを意味する。「単離された」核酸及び抗体は、標準的な精製法により精製された核酸及び抗体を含む。この用語は、宿主細胞中で組換え発現により調製された核酸及び抗体、並びに化学合成された核酸も包含する。
【0097】
組成物及び治療法
担体と、1又は2以上の治療用IgE抗体又はその機能的断片とを含む組成物が、本発明で提供される。組成物は、対象への投与のための単位剤形で調製できる。抗体は、全身又は局所(例えば腫瘍内)投与のために処方され得る。一例では、治療用IgE抗体は、非経口投与、例えば静脈内投与のために処方される。
【0098】
投与用の組成物は、薬学的に許容される担体、例えば水性担体に溶解された抗体(又はその機能的断片)の溶液を含み得る。種々の水性担体、例えば緩衝生理食塩水などを用いることができる。これらの溶液は、滅菌され、望ましくない物質をほぼ含まない。これらの組成物は、従来のそして公知の滅菌技術により滅菌できる。組成物は、生理的条件を近似するように、必要ならば、薬学的に許容される補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、毒性調節剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでいてよい。これらの処方物中の抗体及び賦形剤の濃度は変動でき、流体の体積、粘度、体重などに主に基づいて、選択される特定の投与形態及び対象の必要性に応じて、選択される。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に知られているか又は明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1995)のような刊行物により詳細に記載されている。
【0099】
好ましい実施形態では、組成物は、例えば単回用量での対象への投与に適切なIgE抗体の規定量を含む単位剤形として提供される。単位剤形は、例えば単独の容器、バイアル、予め充填されたシリンジなどに個別に包装され得る。単位剤形は、対象への即座の投与に適切であり得る(例えば生理的に許容される濃度の塩を含み得る)か、又は単位剤形は、(例えば使用前の滅菌生理食塩水での希釈のため)濃縮若しくは凍結乾燥された形で提供され得る。
【0100】
本明細書に記載する実施形態では、典型的な単位用量の(例えば静脈内投与用の)医薬組成物は、50mg未満のIgE抗体を含む。例えば、(すなわち単位剤形の)組成物は、40mg、30mg、25mg、20mg、15mg、10mg、5mg、3mg又は1mg未満のIgE抗体を含み得る。組成物は、少なくとも10μg、100μg、200μg、300μg、500μg、700μg、1mg、3mg、5mg又は10mgのIgE抗体を含み得る。好ましい実施形態では、組成物は、10μg~50mg、70μg~30mg、300μg~50mg、300μg~30mg、300μg~3mg、500μg~50mg、500μg~30mg、500μg~10mg、500μg~3mg、700μg~50mg、700μg~30mg、700μg~10mg、700μg~3mg、500μg~5mg、500μg~1mg又は約700μgのIgE抗体を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1又は2以上の以下の量を除く1又は2以上の上記の範囲内の量のIgE抗体を含み得る:1μg、5μg、10μg、50μg、100μg、500μg、1mg、2mg、4mg、5mg、10mg又は15mg。例えば、組成物は、2μg~9μg、11μg~99μg、101μg~499μg、501~999μg又は2mg~9mgを含み得る。
【0101】
対象に投与されるIgE抗体の投与量は、対象の体重に基づくことがある。よって、対象に投与されるIgE抗体の用量は、例えば1mg/kg未満であり得る。好ましくは、IgE抗体は、例えば、(1回の投与あたり)0.7mg/kg、0.5mg/kg、0.3mg/kg、0.1mg/kg、0.07mg/kg、0.05mg/kg、0.03mg/kg又は0.01mg/kg未満の用量で対象に投与できる。対象に投与されるIgE抗体の用量は、少なくとも0.001mg/kg、0.003mg/kg、0.005mg/kg、0.007mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg又は0.1mg/kgであり得る。好ましい実施形態では、対象に投与されるIgE抗体の用量は、0.001~1mg/kg、0.003~0.7mg/kg、0.005~0.5mg/kg、0.005~0.1mg/kg、0.005~0.05mg/kg、0.007~0.03mg/kg又は0.007~0.15mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、対象に投与されるIgE抗体の用量は、1又は2以上の以下の投与量を除く1又は2以上の上に規定する範囲内であり得る:1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg又は0.5mg/kg。例えばIgE抗体の用量は、2~9μg/kg、11~99μg/kg、101~499μg/kg又は0.51~0.7mg/kgであり得る。
【0102】
本発明の実施形態では、上記のIgE抗体の単位剤形は、多くて1週間に1回で投与され、例えばIgE抗体の最大週用量は、50mg、40mg、30mg、25mg、20mg、15mg、10mg、5mg、3mg又は1mgである。例えば、IgE抗体の週用量は、10μg~50mg、70μg~30mg、300μg~50mg、300μg~30mg、300μg~3mg、500μg~50mg、500μg~30mg、500μg~10mg、500μg~3mg、700μg~50mg、700μg~30mg、700μg~10mg、700μg~3mg、500μg~5mg、500μg~1mg、又は約700μgであり得る。IgE抗体の週用量は、対象の体重に応じて決定することもでき、例えば、IgE抗体は、例えば0.7mg/kg/週、0.5mg/kg/週、0.3mg/kg/週、0.1mg/kg/週、0.07mg/kg/週、0.05mg/kg/週、0.03mg/kg/週又は0.01mg/kg/週未満の用量で対象に投与できる。好ましい実施形態では、対象に投与されるIgE抗体の用量は、0.001~1mg/kg/週、0.003~0.7mg/kg/週、0.005~0.5mg/kg/週、0.005~0.1mg/kg/週、0.005~0.05mg/kg/週、0.007~0.03mg/kg/週又は0.007~0.15mg/kg/週であり得る。いくつかの実施形態では、対象に投与されるIgE抗体の用量は、1又は2以上の以下の投与量を除く1又は2以上の上に規定する範囲内であり得る:1μg/kg/日(7μg/kg/週)、10μg/kg/日(70μg/kg/週)又は100μg/kg/日(0.7mg/kg/週)。例えば、IgE抗体の用量は、2~6μg/kg/週、8~69μg/kg/週又は71~699μg/kg/週であり得る。
【0103】
一実施形態では、医薬組成物は、クエン酸ナトリウム、L-アルギニン、ショ糖、ポリソルベート20及び/又は塩化ナトリウムから選択される1又は2以上の賦形剤を含む液体である。好ましくは、組成物は、6.0~8.0、例えば約6.5のpHを有する。賦形剤の好ましい濃度は、0.05~0.5M(例えば約0.1M)のクエン酸ナトリウム、10~50g/L(例えば約30g/L)のL-アルギニン、10~100g/L(例えば約50g/L)のショ糖、0.01~0.05%w/w(例えば0.02%w/w)のポリソルベート20を含む。一実施形態では、IgE抗体は、約0.1mg/ml~10mg/ml又は0.5mg/ml~2mg/ml、例えば約1mg/mlの濃度でこのような処方物に存在する。いくつかの実施形態では、このような組成物は、単位剤形として、例えば約1mgのIgE抗体を含む約1ml体積の溶液中に、例えば2mlのI型ガラスバイアル中に処方できる。組成物は、対象への投与前に、例えば250mlの生理食塩水中に1mlの量の組成物で、滅菌生理食塩水(0.9%w/v)に希釈できる。
【0104】
抗体は、凍結乾燥形で提供し、投与前に滅菌水で再水和できるが、既知の濃度の滅菌溶液で提供することもできる。抗体溶液は、次いで、0.9%塩化ナトリウム、USPを含む注入袋に加えられ、対象に投与される。抗体薬物の投与について当該技術において相当の経験があり、これらは、1997年のRITUXAN(登録商標)の承認以来、米国において市販されている。抗体は、静脈内注入又は急速投与よりもむしろ緩慢注入により投与できる。一例では、より多い負荷用量を投与し、その後に、より低いレベルの維持用量を投与する。例えば、初期負荷用量を90分程度の期間の間に注入した後に、4~8週間にわたって毎週の維持用量を、以前の用量に良好な耐容性があるならば、30分の期間にわたって注入することができる。
【0105】
抗体(又はその機能的断片)は、細胞、例えばがん細胞の増殖を遅延又は阻害するために投与できる。これらの応用において、治療有効量の抗体を、がん細胞の増殖、複製若しくは転移を阻害、又はがんの徴候若しくは症状を阻害するのに十分な量で対象に投与する。いくつかの実施形態では、抗体は、転移の発生を阻害若しくは妨げるか、又は転移、例えば微小転移、例えば所属リンパ節への微小転移のサイズ若しくは数を減らすために対象に投与される(Goto et al., Clin. Cancer Res. 14(11):3401-3407, 2008)。
【0106】
よって、いくつかの実施形態では、IgE抗体は、がんを治療及び/又はがんの進行を遅延若しくは妨げるために用いられる。がんの「進行を遅延又は妨げる」は、例えば、がんが抗体の投与後ある期間、例えば少なくとも6週間、少なくとも12週間、少なくとも6か月又は少なくとも12か月少なくとも安定であることを意味する。「安定な」疾患は、例えば20%未満のRECISTスコアの変化として定義できる。
【0107】
RECIST(固形がんの治療効果判定のためのガイドライン)評価は、がん治療薬での治療の後に患者の疾患が改善したか、ほぼ同じであるか又は悪化したかを決定するための単純な方法であり、抗がん剤の臨床試験において一般的に用いられる。RECIST基準は、例えばEisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumours: Revised RECIST guideline (version 1.1), European Journal Of Cancer 45 (2009) 228-247に明記されている。RECISTは、調べた最少の合計を参照として、標的病変の直径の合計における少なくとも20%の増加として進行性疾患(PD)を定義する。安定疾患は、部分奏功(標的病変の直径の合計における少なくとも30%の減少)となるのに十分な退縮でも、PDとなるのに十分な増加でもないと定義され、すなわち<20%の増加が安定疾患と定義される。
【0108】
本文脈において、「少なくとも安定」は、20%未満のRECISTスコアの増加又は減少を含むことが認識される。よって、抗体は、疾患の進行を遅延若しくは妨げ得る(例えばがんの1若しくは2以上の徴候若しくは症状の出現を遅延若しくは妨げ、及び/又はがん細胞の増殖を阻害し、及び/又は転移を妨げ若しくは低減する)か、又は疾患を改善若しくは疾患の寛解を促進し得る(例えばがんの1若しくは2以上の徴候若しくは症状を低減若しくは阻害し、及び/又はがん細胞を死滅させる)。
【0109】
適切な対象は、がん、例えばFRαを発現するがん、例えばそれらに限定されないが、皮膚がん(例えば黒色腫)、肺がん、前立腺がん、扁平上皮癌(例えば頭頚部扁平上皮癌)、乳がん(それらに限定されないが、基底乳癌、乳管癌及び小葉乳癌を含む)、白血病(例えば急性骨髄性白血病及び11g23陽性急性白血病)、リンパ腫、神経稜腫瘍(例えば星状細胞腫、神経膠腫又は神経芽腫)、卵巣がん、大腸がん、胃がん、膵がん、骨がん(例えば脊索腫)、神経膠腫又は肉腫(例えば軟骨肉腫)と診断された対象を含み得る。好ましくは、抗体は、固形腫瘍を治療するために投与される。
【0110】
治療有効量の抗体は、疾患の重篤度及び患者の健康の全身状態に依存する。治療有効量の抗体は、疾患の主観的軽減又は医師若しくは他の資格のある観察者が気づく客観的に同定可能な改善のいずれかをもたらすものである。これらの組成物は、別の化学療法剤とともに、同時又は逐次的に投与できる。
【0111】
本発明を、以下の非限定的な実施形態に言及しながら、例示のためにのみさらに以下に説明する。
[実施例]
【0112】
キメラMOv18 IgE(MOv18 IgE)
キメラMOv18 IgE(MOv18 IgE)は、IgEクラスの抗葉酸受容体α(FRα)モノクローナル抗体(mAb)である。この抗体は、インビトロでFRα発現腫瘍株化細胞、及びインビボでFRα発現腫瘍異種移植片に対して強力な抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC、antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)及び抗体依存性細胞介在性貪食(ADCP、antibody-dependent cell-mediated phagocytosis)を媒介することが示されている。標的抗原FRαは、いくつかの固形腫瘍のタイプ(卵巣及び子宮内膜がん並びに中皮腫を含む)で過剰発現される。抗原は、効果的に腫瘍特異的であると特徴づけられており、キメラMOv18 IgG1(MOv18 IgG1)の試験を含むIgG抗体を用いてFRαを標的にする臨床試験は、好ましい耐容性プロファイルを示した。MOv18 IgEは、単球、好塩基球及び好酸球を含む血液エフェクター細胞との結合を含む作用機序を有すると考えられる。これらのIgE担持細胞は組織に侵入し、FRα発現細胞に遭遇すると、腫瘍に対してIgE介在性免疫応答を生じる。MOv18 IgG及びIgE抗体並びにそれらの特性は、例えばConey, L. R., A. Tomassetti, et al. (1991). "Cloning of a tumor-associated antigen: MOv18 and MOv19 antibodies recognize a folate-binding protein." Cancer Res 51(22): 6125-6132; Gould, H. J., G. A. Mackay, et al. (1999). "Comparison of IgE and IgG antibody-dependent cytotoxicity in vitro and in a SCID mouse xenograft model of ovarian carcinoma." Eur J Immunol 29(11): 3527-3537; Karagiannis, S. N., Q. Wang, et al. (2003). "Activity of human monocytes in IgE antibody dependent surveillance and killing of ovarian tumor cells." Eur J Immunol 33(4): 1030-1040に記載されている。
【0113】
薬物処方及び投与
MOv18 IgEは、図1(配列番号1)及び2(配列番号2)に示すような軽鎖及び重鎖アミノ酸配列を有する168kDaタンパク質である。MOv18 IgE薬物製品は、pH6.5で1mg/mL MOv18 IgEを含む滅菌、パイロジェンフリーで粒子フリーの溶液として、注入前の希釈のために2mLバイアルに充填された1.0mLとして供給される。MOv18 IgEの各バイアルは、注射用水中に賦形剤、すなわち0.1Mクエン酸ナトリウム、30g/L L-アルギニン、50g/Lショ糖、0.02%ポリソルベート20も含む。
【0114】
MOv18 IgEは、0.9%(w/v)生理食塩水で希釈した後に静脈内(IV)注入により投与する。さらに、対象は、各IV投与前にMOv18 IgE(プラスヒスタミン及び生理食塩水対照)の皮内[ID]投与を受けて、アナフィラキシーのリスクについて評価された。或いは、皮膚プリック試験を用いてアナフィラキシーリスクを評価した。患者は、抗体に対する皮膚反応がない場合にのみ、MOv18 IgEのIV投与に進んだ。
【0115】
治療用抗体の投与前に、血液試料を対象から得て、MOv18 IgEの存在下で好塩基球活性化試験に供した(Flow CAST(登録商標)、Buhlmann Laboratories AG, Schonenbuch, Switzerland)。
【0116】
研究設計
MOv18 IgEは、FRα陽性固形腫瘍における非盲検第I相反復用量漸増試験で試験した。FRαを発現する進行固形腫瘍を有する24名の患者が研究に参加した。資格のある対象は、適切な臓器機能を有し、重度のアレルギーの経歴がなく、アナフィラキシーの場合にリスクを増加し得る併用薬物療法又は併存疾患がなかった。
【0117】
患者は、70μgの一定用量で開始して、IV注入として週1回、合計6回の用量のMOv18 IgEを受けた。用量漸増は、規定された用量レベル(70μg、250μg、500μg、700μg、1.5mg及び3mgを含む)を通じて、最大用量50mgまで行った。この相の間は、3週間の処置を1サイクルとみなした。MOv18 IgEから利益を受けていると見られるいずれのコホートの患者にも、(用量制限毒性になるか、又は患者が進行性疾患を発生しない限り)同じ用量レベルを継続して2週間間隔でさらに3回の用量までのMOv18 IgEを与えた。この追加の期間は、維持期とみなした。
【0118】
最初に、患者を単一患者コホート(コホート1~4;70~700μg用量のMOv18 IgE)に登録したが、これは、計画した容量が非常に低く、著しい生物学的応答をもたらす可能性が低いと考えられたからである。コホート5~10(1.5~50mg用量のMOv18 IgE)について、コホートあたり3名の患者を登録し、毒性のために必要であれば追加で3名の患者をコホートに加えた。MOv18 IgEの安全性及び有効性をさらに探索するために、コホートは、6名の患者まで拡張した。コホート10以降のさらなる用量漸増は行わなかった(すなわち50mgが評価した最高の用量であった)。
【0119】
結果
研究の初期に、10名の患者がMOv18 IgEを受け、このうち2名の患者が500μgの用量レベルで処置された。抗薬物抗体は、6週間及び/又は研究期間外フォローアップ(>8週間)にて、評価した患者21名のうち3名で検出された(ADAが2名の患者で検出されたのに加えて、1名の患者はADAが疑われた)。500μgの用量レベルで処置された患者のうち1名は、MOv18 IgEを受けたすぐ後にグレード3のアナフィラキシーエピソードを経験した。この患者は、プロトコールに従った標準的なアナフィラキシー処置に応答して、完全に回復した。
【0120】
対象の特定の用量コホートについての静脈内投与後のMOv18 IgEの薬物動態(血清濃度)を、図5に示す。コホート1:70μg;コホート2:250μg;コホート3:500μg;コホート4:700μg;コホート5:1.5mg。
【0121】
図6及び7は、700μgの単位用量でのMOv18 IgE抗体の投与が抗腫瘍効果をもたらしたことを示す。図6は、700μgの用量レベルのMOv18 IgE抗体で処置された卵巣がん対象の腫瘍サイズの低減を示す、CTスキャン画像から得た腫瘍測定の結果を示す。図7は、6回の週用量の700μgのMOv18 IgE抗体と、その後、2週間の間隔で3回のさらなる700μg用量の抗体とを受けた患者の処置中の卵巣がん抗原CA125の血清濃度の著しい減少を示す。卵巣がん治療中のCA125の低減は、肯定的な治療成果と関連することが示されている(例えばYang, Z., Zhao, B. & Li, L. The significance of the change pattern of serum CA125 level for judging prognosis and diagnosing recurrences of epithelial ovarian cancer. J Ovarian Res 9, 57 (2016)を参照されたい)。図7に示すCA125レベルの減少は、婦人科腫瘍学研究グループ(GOG、Gynecologic Oncology Group)基準に従う卵巣がんにおける化学療法に対する応答を定義する閾値を超えている(例えばRustin et al. Defining response of ovarian carcinoma to initial chemotherapy according to serum CA 125, Journal of Clinical Oncology 1996 14:5, 1545-1551を参照されたい)。
【0122】
図8~10は、低用量のMOv18 IgE抗体で処置された患者の大多数が、安定疾患を経験したことを示す。図8は、処置の開始から最後まで(0~12週間)MOv18 IgE抗体で処置された個別の卵巣がん対象における、RECIST(固形がんの治療効果判定のためのガイドライン)スコアの変化のプロットである。図9及び10は、それぞれ6及び12週間の処置にて個別の対象におけるRECISTスコアの変化を示す。20%未満のRECISTスコアの変化は、安定疾患を示す。6週間の処置の後に、処置された患者の70%(14/20)は、安定疾患を有した。12週間まで処置された患者の60%(3/5)は、まだ安定疾患を有した。6~12週間の間の期間に週1回から2週間に1回に投与頻度を下げたことに注意されたい。
【0123】
安定疾患(すなわちRECISTスコアの変化が20%未満)は、有効性主要評価項目である無増悪生存(PFS、Progression Free Survival)の重要な原動力である。本研究は6週間で70%及び12週間で60%の病勢コントロール率を示す。よって、これらの結果は、IgE抗体を非常に低用量でヒトにおいて用いて、対象におけるがんを治療及び/又は進行を遅延させ得ることを証明する。
【0124】
この結果は、MOv18 IgEが抗がん療法に適切であり、投与がほとんどの患者において耐容性があることを示す。最も著しいことには、抗体は、非常に低用量(例えば700μg)であっても抗腫瘍活性を示す。これらの結果は、50mg未満(1mg/kg/週未満)の単位用量を含む、がんの治療としてのIgEの安全性及び有効性を最初に支持するものである。
【0125】
上記の明細書において言及した全ての刊行物は、本明細書に参照により組み込まれている。記載する本発明の方法及びシステムの様々な改変及び変動が、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して記載したが、請求する発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されないことが理解される。実際に、当業者に明らかな本発明を行うための記載した形態の様々な改変が、以下の特許請求の範囲内で意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023523264000001.app
【国際調査報告】