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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】圧電薄膜及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/853 20230101AFI20230526BHJP
   H10N 30/076 20230101ALI20230526BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20230526BHJP
   H10N 30/06 20230101ALI20230526BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20230526BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20230526BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20230526BHJP
   C30B 23/02 20060101ALI20230526BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H10N30/853
H10N30/076
H10N30/87
H10N30/06
C23C14/34
C23C14/08 K
C30B29/22 Z
C30B23/02
C01G33/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564613
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 SG2021050218
(87)【国際公開番号】W WO2021216000
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】10202003767Q
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ワカー,モアズ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ペニークック,スティーブン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ハイジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,クイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フアジュン
【テーマコード(参考)】
4G048
4G077
4K029
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC01
4G048AD02
4G048AD06
4G077AA03
4G077AB02
4G077BC60
4G077DA11
4G077ED05
4G077ED06
4G077HA11
4G077SA04
4K029AA04
4K029BA50
4K029BB09
4K029CA05
4K029EA01
4K029EA03
4K029EA05
4K029EA08
4K029EA09
(57)【要約】
本発明は一般的に、経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜に関する。特に、圧電薄膜は、逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)、(010)又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている。本発明は、圧電薄膜を作製する方法にも関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含む圧電薄膜素子であって、
圧電薄膜が単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜が、その(001)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向し、
圧電薄膜が逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面が(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている、
圧電薄膜素子。
【請求項2】
それぞれの[001]、[010]、又は[100]の方位に配向している柱状粒子を有する、請求項1に記載の圧電薄膜素子。
【請求項3】
逆位相境界における少なくとも2つの隣接したNbO面が(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに約0.220nm~約0.260nmずれている、請求項1又は2に記載の圧電薄膜素子。
【請求項4】
圧電薄膜の逆位相境界の密度が約0.05nm-1~約0.30nm-1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項5】
圧電薄膜が約60kV/cmの印加電圧及び約1kHzの周波数において約1200pm/V~約1700pm/Vの有効縦圧電係数(d33 )を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項6】
圧電薄膜が柱状構造を有し、柱状粒子が約3nm~約6nmの幅を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項7】
圧電薄膜が約100nm~約500nmの厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項8】
基材が、場合によりドープされているペロブスカイト単結晶である、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項9】
基材が、SrTiO、LaAlO、DyScO、(La,Sr)(Al,Ti)O、Si、NdGaO、LiTaO、YAlO、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択されるペロブスカイト単結晶である、請求項1から8のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項10】
圧電薄膜が、圧電薄膜と基材との間に挟まれたペロブスカイト酸化物層をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項11】
ペロブスカイト酸化物層が、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択される、請求項12に記載の圧電薄膜素子。
【請求項12】
ペロブスカイト酸化物層が約1nm~約300nmの厚さを有する、請求項10又は11に記載の圧電薄膜素子。
【請求項13】
圧電薄膜の上に重ねられた電極をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
【請求項14】
電極が、Pt、Au、Ag、Cu、Cr、Al、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択される、請求項13に記載の圧電薄膜素子。
【請求項15】
a)請求項1から14のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子と、
b)圧電薄膜と接触している少なくとも2つの電極と
を含む、圧電デバイス。
【請求項16】
圧電薄膜における単結晶基材が少なくとも2つの電極のうちの1つである、請求項15に記載の圧電デバイス。
【請求項17】
圧電薄膜素子を作製する方法であって、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材が表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有し、
圧電薄膜が単結晶基材の表面と隣接し、圧電薄膜が、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向し、
圧電薄膜が逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面が(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている、
方法。
【請求項18】
圧電薄膜を形成するステップが、スパッタリングを使用して圧電薄膜を成膜するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
圧電薄膜を形成するステップが、約680℃の基材温度及び約120Wの放電出力におけるスパッタリングを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
スパッタリングが少なくとも2時間行われる、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
スパッタリングが約50/15のアルゴン-酸素比(Ar/O)で行われる、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
スパッタリングが約3.5x10-3mtorrの全圧下で行われる、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
スパッタリング角度、基材-ターゲット距離、アルゴン-酸素比、及び/又は成膜温度が、(K+Na)/Nb比が約0.64~約0.95となるように制御される、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材の表面を、スパッタリングの前に切断及び研磨するステップをさらに含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、圧電薄膜に関する。本発明はまた、圧電薄膜を作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料は、機械的エネルギーを電気エネルギーへ変換することが可能であり、逆もまた可能である、材料である。圧電材料は様々な所望の機能を果たすために利用することができる。それらは、圧電素子が電場の印加により変形するアクチュエーターとして、及び変形に起因して圧電素子に発生する電圧を利用することにより任意の物理量が間接的に検出され得るセンサーとして、広く使用される。
【0003】
圧電薄膜は圧電材料の非常に微細なラメラである。圧電薄膜は基材に取り付けられ、多くの実用的な用途がある。圧電薄膜のいくつかの従来の用途としては、超音波トランスデューサ、マイクロポンプ、マイクロカンチレバーに基づく質量センサー、インクジェットプリンターヘッド、ジャイロ、及び加速度計が挙げられる。圧電薄膜は容易に微小電子機械システム(MEMS)に組み込まれることが可能である。燃料噴射器、マイクロランジュバントランスデューサ、及び光空洞用ナノ制御システムなどの特定の用途では、圧電薄膜アクチュエーターにおける大きい圧電性のピストン様変形を得るために高効率の縦圧電係数(d33 )が必要とされる。
【0004】
最も広く使用される圧電材料は鉛系ペロブスカイト型強誘電体であり、一般に化学式PbZr1-xTi、0<x<1を有するPZTと呼ばれる。PZTはx=0.48において優れた圧電特性を有するが、なぜなら2つの異なる結晶構造、すなわち菱面体晶相及び正方晶相が同時に存在するためであり、モルフォトロピック相境界(MPB)としても知られる。
【0005】
しかし、鉛系圧電材料の使用は環境に関する懸念を高め、したがって鉛汚染に対する懸念に起因して鉛フリー圧電材料の強い需要がある。いくつかの鉛フリー圧電材料が調査中であり、その中でも一般式K1-xNaNbO、0<x<1により一般に表されるアルカリニオブ酸系セラミック系が試験される系の中で比較的良好な圧電特性を示す。しかし、圧電特性はまだ鉛系圧電材料と同等ではない。これに関しては、アルカリニオブ酸系圧電セラミックのd33 を高めるために多くの注意が払われてきた。この方面における最近の業績としては、相共存及び0.95(K0.48Na0.52)(Nb0.95Sb0.05)O3-0.05Bi0.5(Na0.820.180.5ZrOの複雑な組成を有し改良ゾル-ゲル法により作られる2.7μm厚さの圧電膜において最大で250pm/Vのd33 を得たことが挙げられる。しかし、実用的な用途において、そのような複雑な組成は正確な制御が必要とされるので大量に製造するのが困難である可能性があり、鉛系圧電材料と競うためには圧電特性がさらに改善される必要がある。
【0006】
技術の進歩に伴い、電子デバイスで使用される圧電材料を含む機能性部材には小型化及びより高い性能が求められる。様々な用途で使用される圧電薄膜の形態である圧電材料の厚さを削減するために研究努力及び工業開発がなされてきた。他方で、Si基材上にアルカリニオブ酸系薄膜アクチュエーターを作るのにスパッタリングが利用されてきた。しかし、一般に、アルカリニオブ酸系薄膜の圧電特性はPZTの圧電特性に大きく後れを取ったままである。例えば、柱状粒子の軸と基材表面の法線との角度が0°~10°の範囲であるならば、柱状構造を有する粒子で構成される膜に結晶集合組織を加えることにより、一般式(NaLi)NbO、(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦0.2、x+y+z=1)を有する圧電薄膜において圧電係数が改善され得る。
【0007】
しかし、そのような多大な努力の後でも鉛フリーアルカリニオブ酸系薄膜の圧電特性はまだ鉛系圧電薄膜には匹敵しない。別の方法は、化学式(KNa1-x1-yNb1-zを有し、式中A=Li、Bi、Ba、B=Sb、Ta、Zr、Hf、0<x<1、0<y≦0.06、0<z≦0.1であるものなどの複雑な組成を有する圧電薄膜を得ることであり、これは著しく改善された圧電特性を示す。そのような圧電薄膜は、アモルファス薄膜が基材上に成膜され次いで基材を含むこの構造を高温にさらして結晶学的成長を促進させる、化学溶液法により製造することができる。薄膜の所望の厚さが得られるまでこのプロセスが多数のサイクルで繰り返される。複雑な組成を有する化学溶液から得られるそのような圧電薄膜の大量生産において、加工、組成、ひいては性能の一貫性を制御することは困難である。
【0008】
圧電薄膜は一般に、Ptの薄層により緩衝化されたSi又はMgO基材上に作られる。[001]の結晶方位に優先的に配向した結晶粒を有するアルカリニオブ酸系圧電性多結晶薄膜が得られるように、200nm以下の厚さを有する(111)配向のPt層が酸化Si基材上に作られる。あるいは、同様の結果又はより良好な結果を得るように、LaNiOなどのペロブスカイト型酸化物層がPt層の上に作られてもよい。しかし、そのような圧電薄膜は(001)の方位に完全には配向しておらず、(001)の方位に80~90%の配向しか有していないことがある。さらに、圧電層の熱処理の際にアルカリ金属が蒸発するので、アルカリニオブ酸系圧電薄膜においてパイロクロア相を避けることは非常に難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題の少なくとも1つを克服する若しくは改善する、又は少なくとも有用な代替物を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(K+Na)/Nb比が約0.64~約0.95となるように、(001)配向の単結晶基材上で成長させた式(K,Na)NbOを有するアルカリニオブ酸系圧電性エピタキシャル薄膜において、大きい縦圧電係数を得ることができるという発見に基づく。それに基づいて、薄膜は、膜表面と垂直であり逆位相境界により隔てられた柱状粒子から成り、逆位相境界の密度は前記薄膜における(K+Na)/Nb比を制御することにより制御できる。
【0011】
本発明は、
a)である、経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含む圧電薄膜素子であって、
圧電薄膜が単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜が、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向し、
圧電薄膜が逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている、
圧電薄膜素子を提供する。
【0012】
有利なことに、例えば(001)配向単結晶基材上で成長させた圧電薄膜において0.64以上及び0.95以下の(K+Na)/Nb比を有すると、NaO/KO面が失われ2つの隣接したNbO面が互いに逆位相で配列されている(逆位相境界)不完全な粒界の形成をもたらす。有利なことに、これは少なくとも1000pm/Vである有効縦圧電係数(d33 )の増加を可能にする。
【0013】
一部の実施形態において、圧電薄膜はそれぞれの[001]、[010]、又は[100]の方位に配向した柱状粒子を有する。
一部の実施形態において、逆位相境界における少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)、(010)、又は(100)結晶面において互いに約0.220nm~約0.260nmずれている。
【0014】
一部の実施形態において、圧電薄膜の逆位相境界の密度は約0.05nm-1~約0.30nm-1である。
一部の実施形態において、圧電薄膜は約60kV/cmの印加電圧及び約1kHzの周波数において約1200pm/V~約1700pm/Vの有効縦圧電係数(d33 )を有する。
【0015】
一部の実施形態において、圧電薄膜は柱状構造を有し、柱状構造は約3nm~約6nmの幅を有する。
一部の実施形態において、圧電薄膜は約100nm~約500nmの厚さを有する。
【0016】
一部の実施形態において、基材は、場合によりドープされているペロブスカイト型単結晶である。
一部の実施形態において、基材は、SrTiO、LaAlO、DyScO、(La,Sr)(Al,Ti)O、Si、NdGaO、LiTaO、YAlO、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択されるペロブスカイト型単結晶である。
【0017】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、圧電薄膜と基材の間に挟まれたペロブスカイト型酸化物層をさらに含む。
一部の実施形態において、ペロブスカイト型酸化物層は、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択される。
【0018】
一部の実施形態において、ペロブスカイト型酸化物層は約1nm~約300nmの厚さを有する。
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は圧電薄膜の上に重ねられた電極をさらに含む。
【0019】
一部の実施形態において、電極はPt、Au、Ag、Cu、Cr、Al、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択される。
【0020】
本発明はまた、
a)本明細書で開示される圧電薄膜素子と、
b)圧電薄膜と接触している少なくとも2つの電極と
を含む、圧電デバイスも提供する。
【0021】
一部の実施形態において、圧電デバイスにおける単結晶基材は少なくとも2つの電極のうちの1つである。
本発明はまた、圧電薄膜素子を作製する方法であって、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材が表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有し、
圧電薄膜が単結晶基材の表面と隣接し、圧電薄膜が、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向し、
圧電薄膜が逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面が(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている、
方法も提供する。
【0022】
一部の実施形態において、圧電薄膜を形成するステップは、スパッタリングを使用して圧電薄膜を成膜するステップを含む。
一部の実施形態において、圧電薄膜を形成するステップは、約680℃の基材温度及び約120Wの放電出力におけるスパッタリングを含む。
【0023】
一部の実施形態において、スパッタリングは少なくとも2時間行われる。
一部の実施形態において、スパッタリングは約50/15のアルゴン-酸素比(Ar/O)で行われる。
【0024】
一部の実施形態において、スパッタリングは約3.5×10-3mtorrの全圧下で行われる。
一部の実施形態において、スパッタリング角度、基材-ターゲットの距離、アルゴン-酸素比、及び/又は成膜温度は、yが0.64≦y≦0.95となるように制御される。
【0025】
一部の実施形態において、ターゲットと基材との垂直距離は約5cm~15cmである。
一部の実施形態において、ターゲット法線と基材法線との角度は鈍角である。
【0026】
一部の実施形態において、この方法は、表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材の表面をスパッタリングの前に切断及び研磨するステップをさらに含む。
【0027】
ここで図を参照して非限定的な例により本発明の実施形態を説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(K,Na)NbOのペロブスカイト単位セルを示す概略図である。
図2】規則的な完全境界1、及び(1/2)a<100>の距離だけシフトしたNbO面を有する逆位相境界2を示す概略図である。
図3】圧電薄膜素子(導電性単結晶基材3上に作られた圧電薄膜4)を示す構造図である。
図4】圧電薄膜4と絶縁性単結晶基材5の間にある導電性ペロブスカイト層6を示す構造図である。
図5】導電性単結晶基材3上に作られた圧電薄膜4上の上部電極7を示す構造図である。
図6】すぐ下の導電性ペロブスカイト層6及び絶縁性単結晶基材5を有する圧電薄膜4上の上部電極7を示す構造図である。
図7】実施例1による導電性の0.5%NbドープSrTiO単結晶基材8上の300nm厚さの圧電薄膜9を示す、例示的な圧電薄膜断面の明視野走査透過電子顕微鏡像の図である。
図8】実施例1による、ニオブリッチな逆位相境界により隔てられた微細結晶粒を示す、圧電薄膜表面の高角度円環状暗視野走査透過電子顕微鏡像を示す図である(Nb原子のみが顕微鏡像で見えている)。
図9】長方形内に囲まれた逆位相境界の拡大した高角度円環状暗視野走査透過電子顕微鏡像を示す図である(Nb原子のみが顕微鏡像で見えている)。
図10】実施例1による、1kHzの周波数で正弦波電気信号を与えたときの圧電薄膜の例示的な圧電応答を示すグラフである。
図11】実施例2による、導電性の0.5%NbドープSrTiO単結晶基材上の300nm厚さの圧電薄膜を示す、圧電薄膜断面の例示的な明視野走査透過電子顕微鏡像の図である。
図12】実施例2による、1kHzの周波数で正弦波電気信号を与えたときの圧電薄膜の例示的な圧電応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、一般式K1-xNaNbO、0<x<1(KNNとも呼ばれる)を有するニオブ酸カリウムナトリウムに基づく。KNNはペロブスカイト型構造を有する鉛フリー圧電セラミック系である。圧電薄膜の形態では、KNNは斜方晶構造又は正方晶構造で存在し、カリウム(K)又はナトリウム(Na)がAサイト(結晶格子の頂点部)にあり、ニオブ(Nb)がBサイト(結晶格子の体心部)にあり、酸素(O)がNbの周りで八面体を作る(図1を参照)。
【0030】
発明者らは過去の研究を再検討し、アルカリニオブ酸薄膜の圧電特性は具体的にはアルカリ金属対Nbの比を調整しその結晶学的成長を制御することにより改善できることを見出した。
【0031】
これに関して、一般式(K1-xNaNbOを有する先行技術の圧電薄膜は、0.4≦x≦0.7でありyが1に近い場合、180pm/V未満の典型的なd33を有する圧電特性を示す(d31は典型的にはおよそ-d33/2であることを考慮して)。別の例において、Pt緩衝化Si基材上に成長させた、0.4≦x≦0.7及び0.75≦y≦0.90である一般式(K1-xNaNbOを有する多結晶アルカリニオブ酸系薄膜は、圧電係数を改善することができる、すなわちd33=218pm/Vまで改善することができる。別の例において、一般式(K1-xNa)NbO、(0<x<1)を有する圧電膜は、(001)の結晶学的ピークが回折パターンの80%以上を占めるならば圧電特性を示す。
【0032】
したがって、本発明は、多結晶薄膜とは対照的に単結晶膜が基材表面の末端種により決定される完全な原子配列に基づいて成長するという理解に基づいて予見される。例えば、1に近い(K+Na)/Nb比を有するKNN薄膜の島状成長モードでは、様々な結晶粒が基材の表面から核形成し連続粒界と融合する[図2の1を参照]。例えば、001配向単結晶基材上に成長させたKNN圧電薄膜において(K+Na)/Nb比が1未満である場合、単結晶基材上に成長させた場合に一部の結晶粒は不定型の核形成を示し不完全粒界の形成をもたらし、NaO/KO面が失われることが分かった。特に、2つの隣接したNbO面は互いに逆位相で配列され得る[図2の2を参照]。この逆位相境界の配列は、隣接したNbO層の1つが格子長さの半分の距離だけ水平方向にずれ(1/2<100>a又は1/2<010>a)、NbO面どうしの距離が0.225~0.252nmの範囲内であるような配列である。
【0033】
この理解に基づいて、発明者らは、一般に、(K1-xNa)NbO薄膜(0≦x≦1)において1未満の(K+Na)/Nb比を有する、一般式(K1-xNa)NbOのKNN系圧電薄膜が、単結晶基材上に成長させた場合に上記の逆位相境界の形成をもたらすことが可能であることを見出した。特に、(K+Na)/Nb比は約0.64~約0.95であってもよい。さらに、逆位相境界を有するそのような薄膜は、それぞれ58.3kV/cm及び1kHzの印加電圧及び周波数で測定される最大で1621.9pm/Vの非常に大きいd33 を示すことが可能である。逆位相境界の密度(結晶格子の単位長さ当たりの逆位相境界の数)は(K+Na)/Nb比の値の減少と共に増加するので、(K+Na)/Nb比がそれぞれ0.95~0.64の間にあるとき逆位相境界の密度は0.08~0.23nm-1の範囲である。さらに、0.23nm-1の逆位相境界密度及び0.64に相当する(K+Na)/Nb比を有する薄膜において1621.9pm/Vのd33 が実現可能である。したがって、単結晶基材上で成長させる場合、アルカリニオブ酸薄膜のd33 はアルカリ金属K及びNaに対する膜中のNb含量を調整することにより制御できる。さらに、本発明の膜の厚さ(約300nm)は過去の発明で開示される膜よりもはるかに薄くなり得る。
【0034】
誤解を避けるため、本明細書で使用する「圧電薄膜素子」は、基材と組み合わせた圧電薄膜を指す。「圧電薄膜」は膜部分のみを指し、すなわち基材を含まない。
基材は一般に圧電薄膜を成長させることを求められる。基材は成長プロセスの際の薄膜の支持体である一方、基材は成長の間に所望の構造を薄膜に与えるための必須の部材でもあり得る。一部の実施形態において示されるように、発明者らは高いd33を有する圧電薄膜を得るために[001]配向の基材が使用されてもよいことを見出した。他の実施形態において、[010]又は[100]配向の基材が使用されてもよい。最終製品の形態において、圧電薄膜が基材なしで利用されてもよい、すなわち圧電薄膜の形成後に基材が除去されてもよいことに注意すべきである。例えば、水溶性単結晶基材及び/又は有機単結晶基材が使用されてもよい。
【0035】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は圧電薄膜及び基材から成る。基材は0.5%NbドープSrTiOなどのペロブスカイト型構造を有する導電性単結晶であってもよい。基材は主な結晶軸の1つ、例えば(001)と垂直に切断及び研磨される。圧電薄膜は基材の上に作られる。圧電薄膜は一般式(K,Na)NbO及び約0.64~約0.95の(K+Na)/Nb比を有し、例えば[001]の結晶学的方位に優先的配向を有し、柱状粒子は膜表面の法線に平行に配向している。これらの柱状粒子は逆位相境界(APB)により互いに隔てられているので、(K+Na)/Nb比がそれぞれ0.95~0.64の間にあるとき逆位相境界の密度が0.08~0.23nm-1の間にある。APBは、KO又はNaOの層が規則的なペロブスカイト型構造において失われ、2つのNbO層が逆位相境界で互いに隣接するものである。さらに、これらの隣接したNbO層の1つはその正常な位置から(1/2)a<100>又は(1/2)a<010>の距離だけずれており、ここで「a」は水平方向におけるペロブスカイトセルの格子パラメーターである。
【0036】
他の結晶軸も使用されてもよい。例えば、基材の(001)、(010)、及び(100)の結晶軸が使用されてもよく、これは(001)、(010)、又は(100)の結晶学的方位のいずれかを有する対応する圧電薄膜をもたらし、柱状粒子が膜表面の法線に平行に配向する。
【0037】
本明細書で使用する、「(001)」などの丸括弧は結晶面を表すのに使用され、一方「[001]」などの角括弧は結晶学的方位を表すのに使用される。
化学物質の経験式は、化合物中の各々の種類の原子の相対数又は元素の比の簡単な表現である。経験式はCaClなどのイオン性化合物について、及びSiOなどの巨大分子についての標準である。経験式は異性、構造、又は原子の絶対数には言及しない。経験的なという用語は、純粋な化学物質の元素による相対的なパーセント組成を決定するのに使用される分析化学の技術である、元素分析のプロセスを指す。例えば、ヘキサンはC14の分子式、又は構造的にはCHCHCHCHCHCHを有し、6個の炭素原子、及び14個の水素原子の鎖構造を有することを示唆する。しかし、ヘキサンの経験式はCである。同様に、過酸化水素Hの経験式は単純にHOであり、成分元素の1:1の比を表す。ホルムアルデヒド及び酢酸は同じ経験式CHOを有する。これはホルムアルデヒドの実際の化学式であるが、酢酸は2倍の原子の数を有する。
【0038】
本発明は薄膜の成長方向に平行な(001)、(010)、又は(100)の配向を有する単結晶基材上に成長させる圧電薄膜について予見した。単結晶基材を使用することにより、例えば[001]の結晶方位への100%配向がアルカリ系圧電薄膜において実現される。これに関して、圧電薄膜は[001]の方位及び/若しくは(001)面に完全に又は少なくとも実質的に配向している。さらに、圧電薄膜は二次パイロクロア相を含まないことが可能である。これを実現するために、基材の水平面の格子パラメーターは好ましくは圧電薄膜の水平面の格子パラメーターに近い(又は一致する)。
【0039】
一部の実施形態において、圧電薄膜はそれぞれ58.3kV/cm及び1kHzの印加電圧及び周波数において1621.9pm/Vの有効縦圧電係数d33 を有する。これは市販の鉛系圧電薄膜の圧電係数を超える。さらに、圧電薄膜は、他の方法では圧電特性をそのような程度に高めるのに必要となる他の異物元素を含まない。さらに、圧電薄膜はスパッタリングプロセスを使用して作られる。
【0040】
既に述べたように、本発明の圧電薄膜を使用して58.3kV/cmの駆動電圧及び1kHzの周波数において1621.9pm/Vの有効縦圧電係数d33 を得ることができる。有利なことに、これは既存の鉛系及び鉛フリーの圧電薄膜よりも高い縦圧電応答である。これはより高感度で省エネルギーの鉛フリー電気化学デバイスを開発する可能性も広げる。
【0041】
さらに、単結晶基材上に薄膜を成長させることにより、高密度の逆位相境界がアルカリニオブ酸薄膜の巨大なd33 をもたらし得る。逆位相境界を作り出すことができ、その密度はアルカリ金属に対する膜中のニオブ含量を調整することにより制御できる。そのような場合、スパッタリングターゲット中のNb含量が膜中のNbの量に直接影響する。有利なことに、高価なドーパントを加えることにより相境界を作り出す従来の方法と比較して、単にスパッタリングにおけるターゲットの組成の化学量論を調整することにより、圧電薄膜のd33 を大幅に増大させることができる。この単純な方法は改善された再現性という利点を提供し、それにより大量生産の機会をもたらす。
【0042】
有利には、圧電薄膜、圧電薄膜素子、及び/又はデバイスは、消費者製品中の鉛の使用を現在制限する、有害物質の制限(Restriction of Hazardous Substances(RoHS))に準拠する。適切な代替物が入手不可能であるため、現在の回避策は電子製品での使用のためにPZTを当分の間RoHSの検討から除外することであった。本発明は多くのデバイス及び用途においてPZTに取って代わる鉛フリー圧電材料を潜在的にもたらす可能性がある。
【0043】
有利なことに、より高いd33 は圧電薄膜アクチュエーターが非常に低い電圧で駆動されるようにし、したがってさらなる小型化を促進しその用途を広げる。1621.9pm/Vという高いd33 は実用的な用途で商業的に使用される鉛系の同等物よりも著しく高い。さらに、そのような高い圧電定数は複雑なドーパントを添加せずに実現され、圧電薄膜は単純なスパッタリングプロセスにより調製される。
【0044】
圧電薄膜に基づく典型的なセンサー又はアクチュエーターデバイスは、それぞれバイアスを測定する電圧計を取り付けるため又は動作を駆動する電源を取り付けるための少なくとも2つの電極を有する。一部の実施形態において、基材は導電性であってもよく、電極の1つとして機能してもよい(図3の3を参照)。例えば、これらの電極の1つは成長プロセスにおいて、すなわち圧電薄膜素子の成長プロセスにおいて使用された導電性基材であってもよい。一部の実施形態において、NbドープSrTiO導電性基材が使用された。このNbドープ基材において、NbはSrTiOを導電性にすることができる(SrTiOは絶縁体である)。他の実施形態において、本質的に導電性の基材も使用されてもよい。
【0045】

限定はされないがSrTiO、LaAlO、DyScO、(La,Sr)(Al,Ti)O、Si、NdGaO、LiTaO、YAlOを含む群からの絶縁性ペロブスカイト単結晶5も使用されてもよい(図4を参照)。発明者らは絶縁性基材を使用して本発明の圧電薄膜を作ることができることを見出した。しかし、デバイスとしてのその適用性は限定されることがあることが分かった。したがって、これを解決するために、発明者らは導電性ペロブスカイト層を圧電薄膜と基材との間に置くことができることを見出した。したがってこの導電性層はデバイスとして使用するための下部電極として機能することが可能である。そのような場合、好ましくは限定はされないがLaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、SrRuOを含む群からの金属酸化物である、導電性ペロブスカイト6の導電性層は、上記の絶縁性基材(図4を参照)の上に作られる。典型的には、導電性電極の厚さは1~250nmである。
【0046】
電極7は圧電薄膜の上面に成膜されてもよい(図5及び6を参照)。この上部電極は、好ましくは、限定はされないがPt、Au、Ag、Cu、Cr、Alなどの金属、又は上記で挙げた導電性ペロブスカイトである。上部層は好ましくはスパッタリング若しくは蒸着法、又はめっき法、又はペースト法を使用して成膜される。
【0047】
一般式(K,Na)NbO及び約0.64~約0.95の(K+Na)/Nb比を有する圧電薄膜を作製する方法も本明細書で開示される。下記で論じられる本発明の実施形態において、基材は、(001)結晶面と垂直に切断及び研磨された、5mm×5mm×0.5mmの0.5%NbドープSrTiO導電性ペロブスカイト単結晶である。その上に直接RFマグネトロンスパッタリングにより680℃の基材温度で圧電薄膜が形成され、使用される放電出力は120Wである。他の条件は、チャンバーガスが3.5×10-3mtorrの全圧のAr/O=50/15であり、スパッタリング時間が2時間である。さらに、室温でマスクを使用して80Wのスパッタリング電力及び10分の継続時間において、100nmの厚さを有する直径200μmのPt電極が成膜されてもよい。(K,Na)NbO薄膜については、スパッタリングターゲット中のNb含量を調整することにより(K+Na)/Nb比を制御できる。1未満の(K+Na)/Nb比では、(K+Na)/Nb比が1である場合の化学量論的なターゲットと比較して過剰のNbがスパッタリングターゲットへ添加されてもよい。同様に、(K+Na)/Nbは、スパッタリング角度、基材-ターゲット距離、アルゴン-酸素比、及び/又は成膜温度を調整することにより制御することもできる。
【0048】
したがって、本発明は
a)式(K,Na)NbOを有し、約0.64~約0.95の(K+Na)/Nb比を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含む、圧電薄膜素子であって、
圧電薄膜が単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜が、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと平行であるように配向している、
圧電薄膜素子を提供する。
【0049】
これに関して、圧電薄膜はその(001)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと平行であるように配向している。圧電薄膜はまたその(010)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと平行であるように配向していてもよい。圧電薄膜はまたその(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと平行であるように配向していてもよい。
【0050】
結晶面からの「原子間隔情報」が基材から、形成された圧電薄膜へ与えられることが可能である限り、圧電薄膜は基材と物理的及び/又は化学的に接触している必要はないことを認識するべきである。これに関して、単結晶基材の表面に隣接した圧電薄膜は単結晶基材の表面に近接している。このことは、圧電薄膜が単結晶基材の表面と物理的及び/若しくは化学的な接触/結合の状態にあるか(介在する構造がそれらの間にない)、又は単結晶基材の表面からわずかな距離/間隔で離れている/隔てられている(それらの間の介在する構造によって)かのいずれかであってもよいことを意味する。したがって、「情報」は基材から直接中継され、基材と物理的及び/又は化学的に接触している圧電薄膜の形成を可能にする。このことは圧電薄膜が基材上に成長する場合に、単結晶基材が圧電薄膜との完全な原子の整合を有することを意味し、これらの原子は化学的に互いに結合している。「情報」が介在する構造によって間接的に中継される場合、基材からの「情報」は介在する構造に伝えられ包含され、次いでこれが形成される圧電薄膜へ伝えられる。例えば、介在する構造は基材と同じ(又は実質的に同じ)結晶面配向を有する、基材上に成長させた導電性薄膜であってもよい。この目的のために、介在する構造は結晶学的に基材と同様であってもよく(同じ配向を有する単結晶)、その結果、介在する構造が薄膜及び基材の両方に化学的に結合しているが異なる物理特性(電気伝導度など)を有することがある。
【0051】
一部の実施形態において、本発明は、
a)式(K,Na)NbOを有し、約0.64~約0.95の(K+Na)/Nb比を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含む、圧電薄膜素子であって、
圧電薄膜が単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜が、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材のそれぞれの(001)、(010)、又は(100)結晶面と平行であるように配向している、
圧電薄膜素子を提供する。
【0052】
一部の実施形態において、単結晶基材が表面と垂直な(001)結晶面を有する場合、圧電薄膜はその(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面に平行であるように配向している。他の実施形態において、単結晶基材が表面と垂直な(010)結晶面を有する場合、圧電薄膜はその(010)結晶面が単結晶基材の(010)結晶面に平行であるように配向している。他の実施形態において、単結晶基材が表面と垂直な(100)結晶面を有する場合、圧電薄膜はその(100)結晶面が単結晶基材の(100)結晶面に平行であるように配向している。
【0053】
一部の好ましい実施形態において、SrTiO(STO)単結晶基材が使用される。STO基材は立方晶であり、そのため、(001)、(010)、及び(100)は等価な面である。この点で、STOのどの基材配向が使用されても、基材の面(表面に垂直)に平行な圧電薄膜の面は(001)となる。
【0054】
したがって、一部の実施形態において、本発明は、
a)式(K,Na)NbOを有し、約0.64~約0.95の(K+Na)/Nb比を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する立方晶系単結晶基材と
を含む、圧電薄膜素子であって、
圧電薄膜が単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜が、その(001)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面と平行であるように配向している、
圧電薄膜素子を提供する。
【0055】
一部の実施形態において、yは0.95未満である。他の実施形態において、yは0.95以下である。他の実施形態において、0.60≦y≦0.95、又は0.60≦y≦0.90、又は0.60≦y≦0.85、又は0.60≦y≦0.80、又は0.60≦y≦0.75である。
【0056】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及びy≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向している。
【0057】
一部の実施形態において、圧電薄膜は経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64<y≦0.95)を有する。他の実施形態において、圧電薄膜は、経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する。
【0058】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向している。
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材のそれぞれの(001)、(010)、若しくは(100)結晶面と、又は単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向している。
【0059】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材のそれぞれの(001)、(010)、又は(100)結晶面と実質的に平行であるように配向している。
【0060】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する立方晶系単結晶基材と
を含み、圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面と実質的に平行であるように配向している。
【0061】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜はそれぞれの[001]、[010]、又は[100]の方位に配向した柱状粒子を有し、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含む。
【0062】
一態様において、本発明は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材と
を含む、圧電薄膜素子であって、
圧電薄膜が単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜が、その(001)、(010)、又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜が逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面が(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている、
圧電薄膜素子を提供する。
【0063】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている。
【0064】
一部の実施形態において、圧電薄膜はその(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と完全に平行であるように配向している。他の実施形態において、圧電薄膜はその(010)結晶面が単結晶基材の(010)結晶面と完全に平行であるように配向している。他の実施形態において、圧電薄膜はその(100)結晶面が単結晶基材の(100)結晶面と完全に平行であるように配向している。これに関して、圧電薄膜の100%が単結晶基材と平行に配向している。一部の実施形態において、圧電薄膜はその(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向している。一部の実施形態において、圧電薄膜はその(010)結晶面が単結晶基材の(010)結晶面と実質的に平行であるように配向している。一部の実施形態において、圧電薄膜はその(100)結晶面が単結晶基材の(100)結晶面と実質的に平行であるように配向している。本明細書で使用する、単結晶基材と実質的に平行に配向している圧電薄膜とは、圧電薄膜の少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、又は少なくとも99%が単結晶基材と平行に配向しているものを指す。好ましくは、圧電薄膜は単結晶基材と100%平行に配向している。
【0065】
一部の実施形態において、圧電薄膜は[001]の方位に配向した柱状粒子を有する。一部の実施形態において、圧電薄膜は[010]の方位に配向した柱状粒子を有する。一部の実施形態において、圧電薄膜は[100]の方位に配向した柱状粒子を有する。
【0066】
一部の実施形態において、圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含む。一部の実施形態において、圧電薄膜は、(001)、(100)、又は(010)結晶面において互いに格子長さの約半分ずれた、少なくとも2つの隣接したNbO面を逆位相境界において含む。これに関して、少なくとも2つのNbO面は互いに接触し、互いに格子長さの約半分ずれている。
【0067】
一部の実施形態において、逆位相境界における少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)結晶面において互いに約0.220nm~約0.260nmずれている。これに関して、少なくとも2つのNbO面は互いに接触し、互いに約0.220nm~約0.260nmずれている。
【0068】
一部の実施形態において、逆位相境界における少なくとも2つの隣接したNbO面は(010)結晶面において互いに約0.220nm~約0.260nmずれている。これに関して、少なくとも2つのNbO面は互いに接触し、互いに約0.220nm~約0.260nmずれている。
【0069】
一部の実施形態において、逆位相境界における少なくとも2つの隣接したNbO面は(001)結晶面において互いに約0.220nm~約0.260nmずれている。これに関して、少なくとも2つのNbO面は互いに接触し、互いに約0.220nm~約0.260nmずれている。
【0070】
一部の実施形態において、圧電薄膜の逆位相境界の密度は約0.05nm-1~約0.30nm-1である。他の実施形態において、圧電薄膜の逆位相境界の密度は約0.10nm-1~約0.30nm-1、約0.15nm-1~約0.30nm-1、又は約0.20nm-1~約0.30nm-1である。
【0071】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜は[001]の方位に配向した柱状粒子を有し、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含む。
【0072】
一部の実施形態において、圧電薄膜は約1000pm/Vを超える有効縦圧電係数(d33 )を有する。他の実施形態において、d33 は約60kV/cmの印加電圧及び約1kHzの周波数において約1000pm/V~約2000pm/V、又は約1200pm/V~約1700pm/Vである。
【0073】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、
a)経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜と、
b)表面に垂直な(001)結晶面を有する単結晶基材と
を含み、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜は[001]の方位に配向した柱状粒子を有し、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、
圧電薄膜は約60kV/cmの印加電圧及び約1kHzの周波数において約1200pm/V~約1700pm/Vの有効縦圧電係数(d33 )を有する。
【0074】
一部の実施形態において、圧電薄膜は柱状構造を有し、柱状構造は約3nm~約6nmの幅を有する。
一部の実施形態において、圧電膜は約100nm~約500nmの厚さを有する。
【0075】
一部の実施形態において、基材は、場合によりドープされているペロブスカイト単結晶である。例えば、ペロブスカイトはNbでドープされてもよい。ドープは約0.01%~1%、又は好ましくは0.5%であってもよい。
【0076】
単結晶基材はペロブスカイト単結晶基材であってもよい。これに関して、単結晶基材は立方晶構造を有していてもよい。あるいは、立方晶構造は熱誘発性又は応力誘発性の格子歪みに起因して、正方晶、斜方晶系、又は対称性がより低い菱面体晶へ変化することがある。
【0077】
一部の実施形態において、基材は、SrTiO、LaAlO、DyScO、(La,Sr)(Al,Ti)O、Si、NdGaO、LiTaO、YAlO、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択されるペロブスカイト単結晶である。
【0078】
有利なことに、膜の表面に垂直な圧電薄膜の結晶面は、その形成の間に基材の表面に垂直な基材の面と整合可能である。膜の表面に平行な圧電薄膜の結晶面はそれら自身の格子面間隔又は面間隔を自由に形成できる。
【0079】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は、圧電薄膜と基材との間に挟まれたペロブスカイト酸化物層をさらに含む。ペロブスカイト酸化物層は本明細書に記載される介在する構造であってもよい。
【0080】
一部の実施形態において、ペロブスカイト酸化物層は、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択される。
【0081】
一部の実施形態において、ペロブスカイト酸化物層は約1nm~約300nmの厚さを有する。
一部の実施形態において、圧電薄膜素子は圧電薄膜の上に重ねられた電極をさらに含む。
【0082】
一部の実施形態において、電極は、Pt、Au、Ag、Cu、Cr、Al、LaSr1-xFeO、LaCa1-xFeO、LaSr1-xCoO、LaSr1-xMnO、LaNiO、及びSrRuOから選択される。
【0083】
本発明は、
c)本明細書で開示される圧電薄膜素子と、
d)圧電薄膜素子と接触している少なくとも2つの電極と
を含む、圧電デバイスも提供する。
【0084】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子における単結晶基材は少なくとも2つの電極のうちの1つである。
本発明はまた、圧電薄膜素子の作製方法であって、
圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップであり、圧電薄膜が約0.64~約0.95の(K+Na)/Nb比を有する、ステップ
を含み、
単結晶基材が表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有し、
圧電薄膜が単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜が、その(001)、(010)又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向している、
方法も提供する。
【0085】
本発明はまた、圧電薄膜素子の作製方法であって、
圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップであり、圧電薄膜が約0.64~約0.95の(K+Na)/Nb比を有する、ステップ
を含み、
単結晶基材が表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有し、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜はその(001)、(010)又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜が逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面が(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている、
方法を提供する。
【0086】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子の作製方法は、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及びy≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材は表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有し、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)、(010)又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている。
【0087】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子の作製方法は、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材は表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有し、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)、(010)又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている。
【0088】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子の作製方法は、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材は表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有し、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜はその(001)、(010)又は(100)結晶面が単結晶基材の(001)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかと実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜はそれぞれの[001]、[010]、又は[100]の方位に配向した柱状粒子を有し、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含む。
【0089】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子の作製方法は、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材は表面と垂直な(001)結晶面を有し、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜はその(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向している。
【0090】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子の作製方法は、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材は表面と垂直な(001)結晶面を有し、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜は、その(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含み、少なくとも2つの隣接したNbO面は(100)、(010)、又は(100)結晶面のいずれかにおいて互いに格子長さの約半分ずれている。
【0091】
一部の実施形態において、圧電薄膜素子の作製方法は、
経験式(K1-xNaNbO(式中、0≦x≦1及び0.64≦y≦0.95)を有する圧電薄膜を単結晶基材上に形成するステップ
を含み、
単結晶基材は表面と垂直な(001)結晶面を有し、
圧電薄膜は単結晶基材の表面に隣接し、圧電薄膜はその(001)結晶面が単結晶基材の(001)結晶面と実質的に平行であるように配向しており、
圧電薄膜は[001]の方位に配向した柱状粒子を有し、
圧電薄膜は逆位相境界において少なくとも2つの隣接したNbO面を含む。
【0092】
一部の実施形態において、圧電薄膜を形成するステップは、スパッタリングを使用して圧電薄膜を成膜するステップを含む。
一部の実施形態において、圧電薄膜を形成するステップは、約680℃の基材温度及び約120Wの放電出力におけるスパッタリングを含む。
【0093】
一部の実施形態において、スパッタリングは少なくとも2時間行われる。スパッタリングは少なくとも1.5時間、少なくとも3時間、又は少なくとも4時間行われてもよい。
一部の実施形態において、スパッタリングは約50/15のアルゴン-酸素比(Ar/O)で行われる。
【0094】
一部の実施形態において、スパッタリングは約3.5×10-3mtorrの全圧下で行われる。
一部の実施形態において、スパッタリング角度、基材-ターゲット距離、アルゴン-酸素比、及び/又は成膜温度は、(K+Na)/Nb比が約0.64~約0.95となるように制御される。
【0095】
一部の実施形態において、この方法は、表面と垂直な(001)、(010)、又は(100)結晶面を有する単結晶基材の表面をスパッタリングの前に切断及び研磨するステップをさらに含む。
【0096】
一部の実施形態において、圧電薄膜は水溶性単結晶基材上に成長させてもよい。一部の実施形態において、圧電薄膜は有機単結晶基材上に成長させてもよい。したがって、そのような場合、成膜後のステップにより基材を除去することにより圧電薄膜を得ることができる。
【実施例
【0097】
ここで本発明の実施例を下記に論じることにするが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定さない。
実施例1
K及びNaの全含量が100%であるという仮定のもとでKの含量比が30%であり、(K+Na)/Nb比が0.64であり、(001)配向の0.5%NbドープSrTiO単結晶基材上で成長させる、式(K,Na)NbOを有する圧電薄膜は、基材表面から膜の水平面と垂直に延びる柱状粒子を有する柱状構造を有する(図7を参照)。そのような柱状粒子は平均で5~6nm以下の幅を有し、膜の全厚さは300nm(図8を参照)である。これらの結晶粒は逆位相境界又は逆位相粒界によって互いに隔てられ、その密度は0.23nm-1であると測定される。この明確な逆位相境界は2つの隣接したNbO面によって形成され、2つのNbO面の1つが1/2<100>a又は1/2<010>aの距離でずれており、aは水平の格子パラメーターであり、<100>及び<010>は2つの水平な結晶学的方位の群である(図9を参照)。58.3kV/cmの電圧が1kHzで印加される場合、膜は1621.9pm/Vの有効縦圧電係数d33 を示す(図10を参照)。そのような圧電薄膜は、マイクロブロア、マイクロポンプ、マイクロインジェクター、スイッチなどのストロークに基づく用途に非常に適している。
【0098】
実施例2
K及びNaの全含量が100%であるという仮定のもとでKの含量比が30%であり、(K+Na)/Nb比が0.92であり、(001)配向の0.5%NbドープSrTiO単結晶基材上で成長させる、式(K,Na)NbOを有する圧電薄膜は、実施例1と同様の柱状構造を有し、柱状粒子は10nmの平均幅を有する(図11を参照)。実施例1に記載される膜の0.64と比較して、この膜の(K+Na)/Nb比は0.92である。この圧電薄膜は、75kV/cmの駆動電圧において1kHzで測定される1293.7pm/Vのd33 を示す(図12)。
【0099】
ここで示される走査透過電子顕微鏡像は、冷電界放出銃及びASCOR 5次収差補正器を備えたJEOL ARM200F原子分解能電子顕微鏡を使用して撮影された。薄膜の化学組成は、20.0kVで動作するOxford Instrumentsエネルギー分散分光計を装備したZeiss Supra 40VP走査電子顕微鏡を使用して測定された。OFV-3001-SF6 PolyTech GmbH(ドイツ)走査レーザー振動計を使用して圧電薄膜の電圧依存変位が測定された。200μmの直径を有するAu電極が薄膜上にスパッタリングされ、続いて200℃で15分間ベーキングを行った。あらかじめダイヤモンドナイフを使用して膜をはがし、基材の一角にある小パッチ上にAu膜を成膜することにより、下部電極を露出させた。AC電圧により電極を励起させながら、円形プロファイルを使用して電極上でレーザーをスキャンした。逆位相境界密度は結晶格子の単位長さ当たりの境界の数を測定することにより見積もられる。25nm×25nmのSTEM顕微鏡像のランダムな場所から5本のラインスキャンを行い、25nm長さのスキャンを横切る境界の数を数えた。次いでラインを横切るAPBの平均数をラインスキャンの長さで、すなわち25nmで割った。
【0100】
記載される実施形態の様々な態様の多くのさらなる修正及び置換、例えば基材の変更及びAサイトの元素ドープなどが考えられることが認識されることになる。したがって、記載される態様は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれるすべてのそのような変更物、修正物、及び変形物を包含することを意図する。
【0101】
この明細書及び下記の特許請求の範囲の全体を通して、文脈状別段の解釈を要する場合を除き、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形語は、記載される整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群を含むがいかなる整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群も排除しないことを暗示すると理解されることになる。
【0102】
この明細書におけるいかなる先行する公開物(若しくはそれから得られる情報)、又はいかなる既知の事柄への言及も、先行する公開物(若しくはそれから得られる情報)又は既知の事柄がこの明細書が関連する試みの分野における技術常識の一部を成すという承認又は許可又は任意の形態の提案と見なされず、見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】