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特表2023-523273カルベニウム系有機レドックスフロー電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】カルベニウム系有機レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230526BHJP
   C07D 471/06 20060101ALI20230526BHJP
   C07D 219/08 20060101ALI20230526BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230526BHJP
【FI】
H01M8/18
C07D471/06
C07D219/08
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564620
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 US2021028981
(87)【国際公開番号】W WO2021217092
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/014,810
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522142604
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ジャネッティ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ムーテ ジュールス
【テーマコード(参考)】
4C065
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4C065AA07
4C065BB09
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL01
4C065PP01
4C065PP12
5H126BB10
5H126RR00
5H127AA10
5H127AB27
(57)【要約】
レドックスフロー電池は:共役複素環式カルベニウム化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び共役複素環式カルベニウム化合物の中性ラジカルを含むアノライトを含み;カソライト及びアノライトに存在する共役複素環式カルベニウム化合物は同じ化合物であり;レドックスフロー電池の開回路電位は約2Vを超える。レドックスフロー電池は:第1酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むカソライト;及び第2酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むアノライトを含み;第1酸化状態は第2酸化状態より酸化状態の程度が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池であって、前記レドックスフロー電池は:
共役複素環式カルベニウム化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び
共役複素環式カルベニウム化合物の中性ラジカルを含むアノライト
を含み、
前記カソライト及び前記アノライトに存在する前記共役複素環式化合物は同じ化合物であるレドックスフロー電池。
【請求項2】
レドックスフロー電池であって、前記レドックスフロー電池は:
式Iの化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び
前記式Iの化合物の中性ラジカルを含むアノライト;
を含み、
前記式(I)の化合物は以下の構造で表される、レドックスフロー電池。
【化1】
(式中、
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており;前記置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される)
【請求項3】
前記式Iの化合物は下記式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【化2】
【請求項4】
1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2である、請求項4に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH24‐Ar3、‐(CH2)‐(OCH2CH2O)CH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)CH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)CH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)CH3であり;Ar3は2‐ピリジニルである、請求項5に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記式Ibの化合物は、式中、
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである、化合物である、請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記式Iの化合物は下記式のいずれか1種の化合物である、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【化3】
【請求項9】
前記式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスファート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハライド、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記レドックスフロー電池は更に、前記アノライトと前記カソライトとの間に配置したセパレータを含み、前記セパレータは多孔質膜である、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
更に、溶媒及び電解質塩を含む、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
前記電解質塩は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項11に記載のレドックスフロー電池。
【請求項13】
前記溶媒は、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、ジメチルホルムアミド、水、ハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む、請求項11に記載のレドックスフロー電池。
【請求項14】
請求項2に記載の前記レドックスフロー電池を操作する方法であって、前記方法は、カソライト区画内に前記カソライトを流し、アノライト区画内に前記アノライトを流す工程を含み、前記カソライト区画と前記アノライト区画とは多孔質セパレータにより分離され、前記アノライトから前記カソライトへの電子輸送が促進される方法。
【請求項15】
前記電子輸送後、外部電源により前記カソライト及び/又は前記アノライトを再生する工程を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
レドックスフロー電池であって、前記レドックスフロー電池は:
第1酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むカソライト;及び
第2酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むアノライト;
を含み、
前記第1酸化状態は前記第2酸化状態より酸化状態の程度が高いレドックスフロー電池。
【請求項17】
前記カソライト及び前記アノライト中の前記共役複素環式カチオン化合物はそれぞれ独立して式Iの化合物であり、前記式(I)の化合物は以下の構造で表される、請求項16に記載のレドックスフロー電池。
【化4】
(式中:
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z;又は‐L2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており;前記置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される)
【請求項18】
前記式Iの化合物はそれぞれ独立して下記式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である、請求項17に記載のレドックスフロー電池。
【化5】
【請求項19】
1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである、請求項17に記載のレドックスフロー電池。
【請求項20】
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2である、請求項19に記載のレドックスフロー電池。
【請求項21】
4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH24‐Ar3、‐(CH2)‐(OCH2CH2O)CH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)CH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)CH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)CH3であり;Ar3は2‐ピリジニルである、請求項20に記載のレドックスフロー電池。
【請求項22】
前記式Ibの化合物は、それぞれ独立して、式中、
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキルである、化合物である、請求項18に記載のレドックスフロー電池。
【請求項23】
前記式Iの化合物はそれぞれ独立して下記式のいずれか1種の化合物である、請求項17に記載のレドックスフロー電池。
【化6】
【請求項24】
前記共役複素環式カチオン化合物はそれぞれ独立して更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスファート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハライド、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む、請求項16に記載のレドックスフロー電池。
【請求項25】
前記レドックスフロー電池は更に、前記アノライトと前記カソライトとの間に配置したセパレータを含み、前記セパレータは多孔質膜である、請求項16に記載のレドックスフロー電池。
【請求項26】
更に、溶媒及び電解質塩を含む、請求項16に記載のレドックスフロー電池。
【請求項27】
前記電解質塩は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項26に記載のレドックスフロー電池。
【請求項28】
前記溶媒は、ニトリル溶媒;エーテル溶媒、ジメチルホルムアミド、水、ハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む、請求項26に記載のレドックスフロー電池。
【請求項29】
前記レドックスフロー電池の開回路電位は約1V、1.5V、又は2Vを超える、請求項16に記載のレドックスフロー電池。
【請求項30】
請求項16に記載の前記レドックスフロー電池を操作する方法であって、前記方法は、カソライト区画内に前記カソライトを流し、アノライト区画内に前記アノライトを流す工程を含み、前記カソライト区画と前記アノライト区画とは多孔質セパレータにより分離され、前記アノライトから前記カソライトへの電子輸送が促進される方法。
【請求項31】
前記電子輸送後、外部電源により前記カソライト及び/又は前記アノライトを再生する工程を含む請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2020年4月24日出願の米国仮出願第63/014,810号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本技術は、レドックスフロー電池に関する。より詳細には、本技術は、カソライト及びアノライトとして共役複素環式カルベニウム化合物を利用する有機レドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0003】
経済的及び環境的な動力の観点では、エネルギーの生産及び貯蔵は特に注目に値する。人類は主なエネルギー源として石炭及び石油燃焼を長年にわたって集中的に使用してきたが、電気の使用は増加の一方である。様々な用途に電気的に適合する効率的な貯蔵には依然として課題が残っている。スマートフォンや小型装置に限定して長い間使われてたリチウムイオン電池は、短期的な解決策としては可能性がある。自動車産業などの大型の用途でリチウムイオン電池を使用すると、原材料(Li、Co、希土類)が不足し、コストが大幅に増加する可能性がある。
【0004】
この問題を克服し、将来に備えるために、エネルギー貯蔵システム(ESS)の分野では、持続可能なアプローチがいくつか検討されてきた。その一つが、レドックスフロー電池(RFB)の開発である。エネルギーは、充放電時に電気化学セルの電池内を流れる液体電解液に貯蔵する。用語「レドックス」とは、関与する化学的酸化還元反応を指す。
【0005】
これらのレドックスフロー電池は、これまでに発表されてきたシステムより優れた利点をいくつか有する。電力変換はエネルギー貯蔵から分離されているため、独立した電力量及びエネルギー量の調整が可能である。エネルギー貯蔵からのこの分離は、ESS容量を実質的に無制限にし、タンカーのサイズや電解質濃度によってのみ制限される。レドックスフロー電池システムでは、レドックス反応は完全に可逆的であり、これは、1つのセルを使用して電気を化学エネルギーに変換したり、逆に化学エネルギーを電気に変換する変換器として操作できることを意味する。レドックスフロー電池システムは、インフラの観点から、開発が比較的容易である。その設置には、ポンプを備えた2つのタンク、及び2つの電極間にイオン交換膜を備えたセルが必要なだけである。従って、レドックスフロー電池システムでは消耗部品が非常に少なく、設備保守コストが非常に低い。最後に、2つの電解質貯蔵部が明確に分離されているため、自己放電を防止し、電池寿命は主に化学物質に依存することになる。
しかし、レドックスフロー電池システムに関しては、改善すべき点がいくつか残っている。現在、RFBにもたらされるエネルギー密度は自動車用途には不十分である。電解質の溶解度や温度などのパラメータは依然として重要である。また、エネルギー市場における存在感が薄いため、これらのEESのコストは高いままである。
【0006】
歴史的には、RFBシステムは、1933年にフランスでバナジウム系電解質を用いて初めて使用された。今日、バナジウムRFBは、他の化学物質より利点が多いため(両電極での電圧(V)、相互汚染の問題がないこと、水系溶液)、依然として最も販売されているフロー電池である。しかし、バナジウムは高価であり、これらのバナジウム系RFBはエネルギー密度が比較的低い。更に、バナジウム系RFBの資本コストは、電池の両極を分離する交換膜を調製するために使用する膜材料のコストに掛かっている。このような膜はアニオンにのみ透過するように開発しており、カチオン性の官能化ポリマーをベースとしている。この種の材料は、時間の経過とともに、RFBの寿命に影響を与える多大な充電ストレスを受ける。金属配位錯体は最も安定した電解質であると思われているが、これらの錯体には、低溶解度、低電気化学的活性、及び高コストなどの重大な技術的及び経済的制限が関係しており、研究者らを、より安価で合成しやすい化合物の探索へと駆り立てている。
【0007】
レドックス活性のある有機材料(ROM)は、現在のRFBシステムを改善するための有望な代替的選択肢である。何故なら、ROMは:I)分子が多様であり、II)構造を適応させることが可能であり、III)天然に豊富に存在するため、電解質としての選択肢に成り得るからである。このように、レドックス活性のある有機材料を用いたRFBシステムがいくつか開発されている。これらのRFBシステムの重要な特徴は、非常に可溶性かつ高度に調整可能な1種の窒素含有芳香族骨格であることである。しかし、最もよく知られているレドックス活性有機系RFBシステムは依然として、効率化できず、堅牢性が低く、開回路電位(OCV)を大きくできない。本開示は、レドックス活性有機材料系RFBシステムに必要な改良に取り組んでいる。
【発明の概要】
【0008】
本技術は、アノライト及びカソライトの両方として共役複素環式カルベニウム化合物を含むレドックスフロー電池システムを提供する。本明細書に示される共役複素環式カルベニウム化合物の電位、安定性、及び溶解度は容易に調整可能であり、任意の特定の溶媒の電子密度貯蔵及び開回路電位(OVC)を向上させる。本明細書に開示したレドックスフロー電池システムは、1つの化合物をアノライト及びカソライトの両方として使用し、OCVが2.0Vを超える高機能システムの珍しい例である。
アノライト及びカソライトの両方として共役複素環式カルベニウム化合物を使用することにより、対称型有機レドックスフロー電池(SORFB)を開発することも可能である。これにより、電池の両極を分離する交換膜(EM)の特性を向上させ、前述のバナジウム系RFBに関連する制限を克服する機会も得られる。アニオン選択性膜の代わりに、特に、EM孔径によりサイズ排除に基づく選択ができる単純な多孔質交換膜(EM)を使用してもよい。このように、別の態様では、セパレータとして多孔質交換膜を含む対称型有機レドックスフロー電池(SORFB)を提供する。
【0009】
一態様では、レドックスフロー電池を提供し、前記レドックスフロー電池は以下:
共役複素環式カルベニウム化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び
共役複素環式カルベニウム化合物の中性ラジカルを含むアノライト;
を含み、
ここでは、カソライト及びアノライトに存在する共役複素環式化合物は同じ化合物である。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約1V、1.5V、又は2Vを超える。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約2Vを超える。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約1V~約5V、約1.5V~約5V、約1.5V~約3V、約2V~約5V、約2V~約4V、又は約2V~約3Vである。
【0010】
別の態様では、レドックスフロー電池を提供し、前記レドックスフロー電池は以下:
式Iの化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び
式Iの化合物の中性ラジカルを含むアノライト;
を含み、
ここでは、式(I)の化合物は以下の構造で表される:
【化1】
式中、
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており;置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は下記式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である。
【化2】
いくつかの実施形態では、Xは-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、又は4である。いくつかの実施形態では、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、又は‐L‐Zである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、又は‐(CH24‐Ar3であり;Ar3は2‐ピリジニルである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは1である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、R1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。
【0012】
いくつかの実施形態では、式Ibの化合物は以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、又は‐L‐Ar3であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してHであり;
Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。
いくつかの実施形態では、式Ibの化合物は以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである。
【0013】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は下記式のいずれか1種の化合物である。
【化3】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート(tetrarylborate)、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスファート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハライド、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。
いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は更に、アノライトとカソライトとの間に配置したセパレータを含む。いくつかの実施形態では、セパレータは多孔質膜である。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は更に、溶媒及び電解質塩を含む。
いくつかの実施形態では、電解質塩は、、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、電解質は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、アルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、アルキルアンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、又はこれらの混合物である。いくつかの実施形態では、電解質塩は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。
【0014】
いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトニトリルなどのニトリル溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒;ジメチルホルムアミド;水;ジクロロメタンなどのハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は光活性を有する。
別の態様では、レドックスフロー電池を提供し、前記レドックスフロー電池は:
第1酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むカソライト;及び
第2酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むアノライト;
を含み、
ここでは、第1酸化状態は第2酸化状態より酸化状態の程度が高い。
【0015】
いくつかの実施形態では、カソライト及びアノライト中の共役複素環式カチオン化合物はそれぞれ独立して式Iの化合物であり、式(I)の化合物は以下の構造で表される:
【化4】
式中:
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており;置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物はそれぞれ独立して下記式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である。
【化5】
いくつかの実施形態では、Xは-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、又は4である。いくつかの実施形態では、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、又は‐L‐Zである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、又は‐(CH24‐Ar3であり;Ar3は2‐ピリジニルである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは1である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、R1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。
【0017】
いくつかの実施形態では、化合物はそれぞれ独立して式Ibの化合物であり、式中:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、又は‐L‐Ar3であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してHであり;
Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。
いくつかの実施形態では、式Ibの化合物は以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである。
【0018】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物はそれぞれ独立して下記式のいずれか1種の化合物である。
【化6】

いくつかの実施形態では、共役複素環式化合物は更に、それぞれ独立してテトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスファート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハライド、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。
いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は更に、アノライトとカソライトとの間に配置したセパレータを備える。
いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は更に、溶媒及び電解質塩を含む。
いくつかの実施形態では、電解質塩は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、電解質は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸塩、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、アルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、アルキルアンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、又はこれらの混合物である。いくつかの実施形態では、電解質塩は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。
【0019】
いくつかの実施形態では、溶媒は、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、ジメチルホルムアミド、水、ハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む。
いくつかの実施形態では、共役複素環式化合物はそれぞれ独立して光活性を有する。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約1V、1.5V、又は2Vを超える。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約2Vを超える。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約1V~約5V、約1.5V~約5V、約1.5V~約3V、約2V~約5V、約2V~約4V、又は約2V~約3Vである。
【0020】
別の態様では、本明細書に記載のレドックスフロー電池システムのいずれか1つを操作する方法を提供する。前記方法は、カソライト区画内にカソライトを流し、アノライト区画内にアノライトを流す工程を含み、カソライト区画とアノライト区画とは多孔質セパレータにより分離し、アノライトからカソライトへの電子輸送を促進する。いくつかの実施形態では、多孔質セパレータは多孔質膜である。
いくつかの実施形態では、本方法は、電子輸送後、外部電源によりカソライト及び/又はアノライトを再生する工程を含む。いくつかの実施形態では、カソライトを再生する工程は、光利用酸化を介してカソライトを再生する工程を含む。いくつかの実施形態では、アノライトを再生する工程は、光利用還元を介してアノライトを再生する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】いくつかの実施形態に従ったレドックスフロー電池―タイプ1RFBの説明図である。
図2】いくつかの実施形態に従ったレドックスフロー電池―タイプ2RFBの説明図である。
図3】実施例に従った、DCM中のビスnPrヘリセンのサイクリックボルタモグラムである。
図4】実施例に従った、DMF中のビスnPrヘリセンのサイクリックボルタモグラムである。
図5】実施例に従った、DMF中のビスnPrヘリセンの示差パルスボルタモグラム(DPV)である。
図6】実施例に従った、ACN中のビスnPrヘリセンのサイクリックボルタモグラムである。
図7】実施例に従った、ACN中のビスnPrヘリセンの示差パルスボルタモグラム(DPV)である。
図8A】実施例に従った、ACN中のビスnPrヘリセンのサイクリックボルタモグラムであり、異なる速度10、100、及び500mV・s-1での還元事象の詳細図である。
図8B】実施例に従った、ACN中のビスnPrヘリセンのサイクリックボルタモグラムであり、異なる速度10、100、及び500mV・s-1での酸化事象の詳細図である。
図9】実施例に従った、電池の容量全体を決定する説明図である。
図10】実施例に従った、単電子サイクルの28回目及び29回目のサイクル中のEwe、及びEref区画中の種形成を示す詳細図である。
図11】実施例に従った、単電子サイクル実験のEref区画における電圧プロファイルを示す図である。
図12】実施例に従った、支持電解質としてTBAPF6を含むCH3CN中のnPrDMQA+について収集したH型セルサイクル実験データを示す図である。
図13】実施例に従った、GCPL CCCV単電子サイクル実験の800回目のサイクル後の、セルの各側のそれぞれの内容物の100mV/sでのサイクリックボルタモグラム分析を示す図である。
図14】実施例に従った、ストレス条件下での電池の容量全体の決定を示す説明図である。
図15】実施例に従った、1サイクルのEw及びIをモニタリングすることによる充放電測定のグラフである。
図16】実施例に従った、82サイクルに渡るQ充電、Q放電、及び効率のグラフである。
図17A】室温での液体トルエン溶液中のラジカル2‐H・(トレース1)及び2‐NO2・(トレース2)の連続波電子常磁性共鳴(CW EPR)スペクトルを示す図である。実験条件:mw周波数、9.651GHz;mw電力、2mW;磁場変調振幅、0.01mT。
図17B】液体トルエン‐d8溶液中のラジカル2(トレース1)及び3(トレース2)の連続波電子核二重共鳴(CW ENDOR)スペクトルを示す図である。実験条件:mw周波数、9.558GHz;mw電力、32mW;磁場、340.9mT(EPRスペクトルの中心);無線周波数(rf)電力、200W;rf変調振幅、100kHz(周波数変調);温度、-63.15℃(210K)。
図18】ラジカル2・‐5・におけるスピン集団及び1Hhfi定数を示す図である。環系の半分だけを示す。後半は、C1‐C##結合に関するC2対称性に関連している(太い茶色の線で示す)。ラジカル2‐NO2・では、アスタリスクで示した水素は分子の片側だけNO2基で置換している。この置換及びそれによるプロトンのhfi定数の変化を色のついた矢印で示す。環状原子のスピン集団の計算結果を紫色で示す。プロトンのhfi定数の計算値を緑で、ENDORで決定した計算値を水色で示す。ENDORの線分配置は赤色で括弧内に示す。McConnell式を使用して実験hfi定数から推定した環状炭素スピン集団は紺色で示す。
図19】ガラス状炭素作用電極(n=0.1V/s)及び内部参照電極としてのAg/Ag+で記録したDCM([TBA][PF6]0.1M)溶液中の2+‐5+(2mM)のサイクリックボルタモグラムを示す図である。E1/2=0とすることにより二次参照としてFc/Fc+を使用した。矢印は走査の方向を示す。還元半波電位値(V)は、Fc/Fc+レドックス対と比較するEで、2‐H+(E1/2 red1=-1.308)、2‐NO2 +(E1/2 red1=-1.046、E1/2 red2=-1.849)、3+(E1/2 red1=-1.264)、4+(E1/2 red1=-1.267)、及び5+(E1/2 red1=-1.286)について、CVにより測定した。
図20】空気への曝露時の2・についてのUV‐可視光吸収スペクトルの変化を示す図である。スペクトルは異なる時間間隔で記録した。2‐H・についての半減期時間(t1/2)は約27分、3・は45分、5・は47分、4・は57分、2‐NO2・は210分である。
図21】実施例3から得たカソライトC++のEPRスペクトルを示す図である。
図22】実施例4から得た化合物のUV‐可視光スペクトル、サイクリックボルタンメトリー、励起状態電位を示す図である。
図23】レドックスフロー電池の原型を示す図である。
図24】異なる電流密度での100%SOCのサイクルを利用したGCPL/CCCV実験を示す図である。
図25】活物質としてnPrDMQA+を用いたRFBモデルの容量保持率及び効率結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、様々な実施形態について説明する。特定の実施形態は、本明細書で議論する広範な態様に対する網羅的な説明又は制限を意図したものではないことに留意されたい。特定の実施形態と関連して説明する1つの態様は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、他の任意の実施形態(単数又は複数)で実施することが可能である。
本明細書で使用する場合、「約」は、当業者は理解しており、それが使用される文脈に依存してある程度可変である。当業者にとって明確でない用語を使用する場合、その用語を使用する文脈を考慮すると、「約」は特定の用語の前後10%までを意味することになる。
要素を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」、「an」、及び「the」、並びに同様の参照語の使用は、本明細書において別段に指示しているか又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するように解釈すべきである。本明細書における数値範囲の列挙は単に、本明細書において別段に示されない限り、範囲内に該当する各別の値を個別に参照するための簡略表記法となることを意図しており、別々の値はそれぞれ、本明細書に個別に列記しているかのように本明細書に組み入れられる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段に指示されていない限り、又は文脈により別段に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行してもよい。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に実施形態をより良く明らかにすることを意図しており、特段に明記しない限り、特許請求の範囲に制限をもたらすものでない。本明細書におけるいかなる文言も、請求されていない要素を必須のものとして説明していると解釈すべきではない。
【0023】
一般に、「置換された」とは、以下に定義するアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、又はエーテル基(例えば、アルキル基)において、それら基に含まれる水素原子への1以上の結合が非水素原子又は非炭素原子への結合に置換されていることを指す。置換基には、炭素原子(単数又は複数)又は水素原子(単数又は複数)への1つ以上の結合が、ヘテロ原子への二重結合又は三重結合を含む1つ以上の結合で置換された基も含まれる。従って、置換基は、別段に指定しない限り、1つ以上の置換基で置換されることになる。いくつかの実施形態では、置換基は1、2、3、4、5、又は6個の置換基で置換する。置換基の例としては:ハロゲン(即ちF、Cl、Br、及びI);ヒドロキシル基;アルコキシ基、アルケノキシ基、アルキノキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロシクリロキシ基、及びヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシル;エステル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N‐オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;ウレア;アミジン;グアニジン;エナミン;イミド;イソシアナート;イソチオシアナート;シアナート;チオシアナート;イミン;ニトロ基;ニトリル(即ちCN);等が挙げられる。
本明細書で使用する場合、「アルキル」基は、1~約20個の炭素原子、典型的には1~12個の炭素原子、又はいくつかの実施形態では1~8個の炭素原子を有する直鎖及び分枝アルキル基を含む。本明細書で採用する場合、「アルキル基」は、以下に定義したシクロアルキル基を含む。アルキル基は置換しても置換しなくてもよい。直鎖アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、n‐ブチル基、n‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基、及びn‐オクチル基が含まれる。分岐アルキル基の例としては、イソプロピル基、sec‐ブチル基、t‐ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な置換アルキル基は、例えば、アミノ基、チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、及び/又はF、Cl、Br、及びI基などのハロ基で一置換以上してもよい。本明細書で使用する場合、ハロアルキルという用語は、1つ以上のハロ基を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、ハロアルキルは、パーハロアルキル基を指す。
【0024】
用語「アルキレン」は、飽和直鎖二価炭化水素部分又は分岐飽和二価炭化水素部分を指す。アルキレン基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、2‐メチルプロピレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
用語「ヘテロアルキレン」は、1つ以上の鎖原子又は水素原子がO、N、P、又はSなどのヘテロ原子で置換されている本明細書で定義するアルキレン基を指す。ヘテロアルキレンの例としては、PEG2(即ち、2分子のエチレングリコールが連結されている)、PEG3、2‐メトキシエチレン、2‐ヒドロキシエチル、2,3‐ジヒドロキシプロピル等のポリエチレングリコール由来のヘテロアルキレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基などの環状アルキル基であるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は3~8個の環員を有し、他の実施形態では環状炭素原子数は3~5、6、又は7個の範囲である。シクロアルキル基は置換しても置換しなくてもよい。シクロアルキル基は更に、ノルボルニル基、アダマンチル基、ボルニル基、カンフェニル基、イソカンフェニル基、及びカレニル基などの多環シクロアルキル基、並びにデカリニルなどの縮合環等を含むが、これらに限定されるものではない。シクロアルキル基はまた、上記で定義した直鎖又は分岐鎖アルキル基で置換した環も含む。代表的な置換シクロアルキル基は一置換、又は二置換以上であってもよく、例えば、限定するものではないが:2,2‐;2,3‐;2,4‐;2,5‐;もしくは2,6‐二置換シクロヘキシル基、又は一置換、二置換、又は三置換ノルボルニルもしくはシクロヘプチル基が挙げられ、これらは例えばアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、及び/又はハロ基で置換してもよい。
【0025】
アルケニル基は、2~約20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、又は環状アルキル基であり、更に少なくとも1つの二重結合を含む。いくつかの実施形態では、アルケニル基は1~12個の炭素原子、典型的には、1~8個の炭素原子を有する。アルケニル基は置換しても置換しなくてもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、2‐ブテニル基、3‐ブテニル基、イソブテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキサジエニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、及びヘキサジエニル基等が挙げられる。アルケニル基は、アルキル基と同様に置換してもよい。二価のアルケニル基、即ち2つの付着点を有するアルケニル基としては、CH‐CH=CH2、C=CH2、又はC=CHCH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用する場合、「アリール」又は「芳香族」基は、ヘテロ原子を含まない環状芳香族炭化水素である。アリール基は、単環式、二環式、及び多環式環系を含む。従って、アリール基としては、フェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ビフェニル基、アントラセニル基、インデニル基、インダニル基、ペンタレニル基、及びナフチル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、アリール基は、基の環部分において、6~14個の炭素原子、及び他の実施形態では6~12個、又は6~10個の炭素原子を含む。語句「アリール基」には、縮合芳香族‐脂肪族環系(例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル等)などの縮合環を含む基が挙げられる。アリール基は置換しても置換しなくてもよい。
本明細書で使用する場合、「アリーレン」は、2つの環炭素原子から水素原子が除去されたアレーン由来の2価の基を指す。
【0026】
ヘテロアルキル基は、上記で定義した直鎖及び分岐鎖アルキル基を含み、更に酸素、硫黄、及び窒素から独立して選択される1、2、3、4、5、又は6個のヘテロ原子を含む。従って、ヘテロアルキル基は、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、あるいはいくつかの実施形態では、1~8個の炭素原子、又は1、2、3、4、5、もしくは6個の炭素原子、又はそのうちの任意の範囲(例えば、1~4個)の炭素原子を含む。ヘテロアルキル基の例としては、限定するものではないが、‐(CH2CH2O)1‐5CH3、‐(CH21‐6O(CH21‐6CH3、‐(CH21‐6NRa(CH21‐6CH3、‐(CH21‐6S(CH21‐6CH3、‐(CH21‐6O(CH21‐6O(CH21‐6CH3、‐(CH21‐6NRa(CH21‐6NRa(CH21‐6CH3、‐(CH21‐6O(CH21‐6O(CH21‐6O(CH21‐6CH3、‐(CH21‐6NRa(CH21‐6NRa(CH21‐6NRa(CH21‐6CH3が挙げられ、ヘテロアルキル基の総炭素原子数は1~12個であり、Raは水素、又は置換もしくは無置換アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基である。ヘテロアルキル基の他の例としては、1つの基中に異なるヘテロ原子を有する基が挙げられるが、これに限定されるものではない。このようなヘテロアルキル基の例としては、限定されるものではないが、‐(CH21‐6S(CH21‐6O(CH21‐6、‐(CH21‐6NRa(CH21‐6)O(CH21‐6、‐(CH21‐6O(CH21‐6NRa(CH21‐6S(CH21‐6、‐(CH21‐6NRa(CH21‐6O(CH21‐6S(CH21‐6が挙げられ、ヘテロアルキル基中の総炭素原子数は1~12個である。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキル基としては、‐(OCH2CH2‐)1‐5CH3、例えば、‐O(CH22O(CH22OCH3、‐O(CH22O(CH22O(CH22OCH3、‐O(CH22O(CH22O(CH22OCH3、‐O(CH22O(CH22O(CH22O(CH22OCH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アラルキル基は、上記で定義したアルキル基の水素又は炭素結合が、上記で定義したアリール基への結合で置換された置換アリール基である。いくつかの実施形態では、アラルキル基は、7~14個の炭素原子、7~10個の炭素原子、例えば、7、8、9、もしくは10個の炭素原子、又はそのうちの任意の範囲(例えば、7~8個)の炭素原子を含む。アラルキル基は置換しても置換しなくてもよい。置換アラルキル基は、基のアルキル部分、アリール部分、又はアルキル部分とアリール部分との両方で置換してもよい。代表的な置換及び無置換アルカリル基としては、メチルフェニル、(クロロメチル)フェニル、クロロ(クロロメチル)フェニルなどのアルキルフェニル、又は5‐エチルナフタレニルなどの縮合アルカリル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
ヘテロシクリル基は、3個以上の環員を含む非芳香族環化合物であり、その環員のうち1つ以上は、N、O、及びSなどのヘテロ原子であるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、3~16個の環員を有する単環式、二環式、及び三環式の環を含み、一方、他のこのような基は、3~6、3~10、3~12、又は3~14個の環員を有する。ヘテロシクリル基は、例えば、イミダゾリニル基及びイミダゾリジニル基などの部分不飽和及び飽和環系を包含する。この語句はまた、キヌクリジルなどのヘテロ原子を含む架橋多環式環系も含むが、これに限定されるものではない。この語句はまた、環員の1つに結合したアルキル基、オキソ基、又はハロ基などの他の基を有するヘテロシクリル基も含み、これらは「置換ヘテロシクリル基」と称する。ヘテロシクリル基としては、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロチオフェニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキソリル基、ピロリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルフォリニル基、チオモルフォリニル基、テトラヒドロピラニル基、及びテトラヒドロチオピラニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な置換ヘテロシクリル基は、一置換しても、二置換以上してもよく、例えば、二置換、三置換、四置換、五置換、もしくは六置換したモルホリニル基、又は上記に挙げたような種々の置換基で二置換したモルホリニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ヘテロ原子(単数又は複数)は、化学的に可能であれば、酸化形態であってもよい。
ヘテロアリール基は、5個以上の環員を含む芳香環化合物であり、その環員のうち1つ以上はN、O、及びSなどのヘテロ原子であるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、アザインドリル(ピロロピリジニル)基、インダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、イミダゾピリジニル(アザベンズイミダゾリル)基、ピラゾロピリジニル基、トリアゾロピリジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、イソオキサゾロピリジニル基、チアナフチル基、プリニル基、キサンチニル基、アデニニル基、グアニニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、テトラヒドロキノリニル基、キノキサリニル基、及びキナゾリニル基などの基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアリール基は、全ての環がインドリル基などの芳香族である縮合環化合物を含み、また、2,3‐ジヒドロインドリル基などの1つの環のみが芳香族である縮合環化合物を含む。語句「ヘテロアリール基」は縮合環化合物を含み、また、「置換ヘテロアリール基」と称するアルキル基などの環員の1つに他の基が結合したヘテロアリール基も含む。代表的な置換ヘテロアリール基は、上記に収載したような種々の置換基で一置換以上してもよい。また、ヘテロ原子(単数又は複数)は、化学的に可能であれば酸化形態であってもよい。
【0028】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、臭素、塩素、フッ素、又はヨウ素を指す。いくつかの実施形態では、ハロゲンはフッ素である。他の実施形態では、ハロゲンは塩素又は臭素である。本明細書で使用する用語「ハロゲン化物」は、臭化物、塩化物、フッ化物、及びヨウ化物などのハロゲンのアニオンを指す。いくつかの実施形態では、ハロゲン化物は塩化物又はヨウ化物である。
用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合した置換又は非置換アルキル基、例えば式‐ORaの部分を指し、ここでRaは本明細書で定義したようなアルキルである。例としては、メトキシ及びエトキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な置換アルコキシ基は、メトキシメチル及びフルオロメトキシなどの上記に収載したような置換基で一置換以上してもよい。
用語「アルキルアミノ」は、式‐NHRaの部分を指し、式中、Raは本明細書で定義したようなアルキルである。
用語「ジアルキルアミノ」は、式‐NRabの部分を指し、式中、Ra及びRbは独立して、本明細書で定義したようなアルキルである。
【0029】
本明細書では、アノライト及びカソライトの両方として共役複素環式カルベニウム化合物を含むレドックスフロー電池システムを開示する。これらの共役複素環式カルベニウム化合物は、可逆的に還元及び酸化されて2Vより高い開回路電位(酸化と還元との間の電位差)を提供できるレドックス活性化合物である。また、カソライトとアノライト(analyte)の両方に同じ化合物を使用することで、現在のレドックスフロー電池システムに伴う相互汚染や電池寿命の低下を回避できる。また、本明細書に開示した共役複素環式カルベニウム化合物は光活性も有し、また、光触媒的に充電するレドックスフロー電池システムの調製も可能にする。
これらの共役複素環カルベニウムイオンは、トリス(2,6‐ジメトキシフェニル)カルベニウムイオンと一級アミンとの連続的二重SNAr反応から中~高温でメタノール除去することにより容易に調製できる。これらの安定なカルベニウム塩が特に興味深い理由は:1)弱酸性又は塩基性水溶液条件下でも、文献上最も安定しているカルボカチオンであること;2)合成が段階的かつ温度依存的であるため、脂肪族又は芳香族アミンを使用したり、非対称イオンを形成することで汎用性がもたらされること;3)C‐Hホウ素化反応、及び/又は金属触媒によるクロスカップリングを介して官能化できること;並びに4)塩の物理的及び化学的特性に影響を与えるために負の対イオンを交換できることである。また、これらの共役複素環式カルベニウム化合物は高蛍光性であり、吸光係数が高く、蛍光寿命が長いだけでなく、これらの共役複素環式カルベニウム化合物は、3つの安定な酸化還元状態:カルボジカチオン、カルボカチオン、及び中性カルボラジカルにあるレドックス活性種である。
【0030】
複素環式カルベニウム化合物のレドックス状態を以下のスキームに示す。中性ラジカル(C・)とラジカルジカチオン(C++・)はそれぞれ電子を授受してカルボカチオン(C+)を形成し、電池の放電及び発電が起こる(スキーム1;赤い破線矢印の工程)。交互にカルボカチオン(C+)は電子を授受してそれぞれ中性ラジカル(C・)又はラジカルジカチオン(C++・)に変換され、電池が充電される(スキームA;青い実線矢印の工程)。
スキームA
【化7】

これらの化合物は、安定性、還元及び酸化電位、有機溶媒への溶解性、及び簡単な有機変換による調整可能性により、RFBのアノライト及びカソライトとしてテストするための理想的な候補となる。
また、複素環式カルベニウム化合物は光活性を有するため、電池が光触媒的に充電されるシステムの開発を可能にする。カルボカチオンは、可視光(>500nm)で励起できる。その励起状態(C+*)は、電極でC++・へと酸化されるか、又はC・へと還元できる。
スキームB
【化8】

複素環式カルベニウム化合物の電気化学的及び光化学的特性の両方により、アノライト及びカソライトの両方としてこれらの化合物を使用してレドックスフロー電池システムを開発してもよい。本明細書に記載のレドックスフロー電池は、カソライトを収容するカソライト区画、アノライトを収容するアノライト区画、及びカソライト区画とアノライト区画を仕切る多孔質セパレータ(例えば、膜又は他のカチオン透過性材料)を備えてもよい。2つの例示的な例を図1及び図2に示す。両例において、電池からの電流の発生は、それぞれ電子を授受する際にC+を形成するC・及びC++・の放電に由来する。
【0031】
図1は、レドックスフロー電池の一実施形態―タイプI RFBを示す。この実施形態では、充電は、貯蔵する必要がある理想的な再生可能エネルギー(例えば、風、太陽光等)などの外部エネルギー源が提供する電流を介して起こる。本明細書に開示した予備実験では、電流はポテンショスタットにより提供される。
図2は、レドックスフロー電池の一実施形態―タイプII RFBを示す。タイプII RFBはC+の光起電力特性を利用しており、この特性では、可視光の吸収後、電子を失うと励起状態が酸化されてカソライトC++・に戻ることが可能である。その電子はカソードに移動してC+をアノライトC・へと還元できる。
更に、アノライト及びカソライトの両方として共役複素環式カルベニウム化合物を使用することにより、対称型有機レドックスフロー電池(SORFB)を開発することも可能となる。このことにより、電池の両極を隔てる交換膜(EM)の特性を向上させ、前述のバナジウム系RFBに関連する制約を克服する機会が得られる。特に、バナジウム系RFBで通常使用するアニオン選択性膜を単純な多孔質交換膜(EM)に置き換えると、EMの孔径によりサイズ排除に基づく選択を行えるようになる。共役複素環式カルベニウム化合物をアノライトとカソライトの両方として用いることで、電気活性種の化学的勾配を低減し、クロスオーバーを低減することから、VRFBや他のRFBと比較して、SORFBでは電池の一方の極から他方の極への電気活性物質の漏出の恐れが最小限になる。膜貫通型クロスオーバーが発生しても、SRFBは自己放電を起こすので、永久汚染や電解質劣化が起こることなく、ROMは初期レドックス状態に戻る可能性がある。このように、対称型RFBは、不可逆的な副反応を起こすことなく、無期限に貯蔵できる可能性がある[29]。交換膜(EM)の孔径によりサイズ排除に基づく選択を行える例示的な多孔質EMについて更に本明細書で述べる。
【0032】
レドックスフロー電池の第1実施形態
一態様では、共役複素環式カルベニウム化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び共役複素環式カルベニウム化合物の中性ラジカルを含むアノライト;を含むレドックスフロー電池を提供する。ここでは、カソライト及びアノライト中に存在する共役複素環式化合物は同一化合物である。本明細書で使用する「同一化合物」とは、酸化状態/充電が異なるがカソード種及びアノード種の原子成分及び構造が同じであるラジカルジカチオンや中性ラジカルなどの2つの異なる種を指す。
いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約1Vを超える。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約2Vを超える。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は、約1V~約5V、約1.5V~約5V、約1.5V~約3V、約2V~約5V、約2V~約4V、又は約2V~約3Vである。
別の態様では、式Iの化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び式Iの化合物の中性ラジカルを含むアノライト;を含むレドックスフロー電池を提供する。ここでは、式(I)の化合物は本明細書に開示した以下の構造で表す。
【0033】
本明細書に開示した共役複素環式カルベニウム化合物は、式Iの化合物である。式(I)の化合物は以下の構造で表す:
【化9】
式中、
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており;置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は下記式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である。
【化10】
いくつかの実施形態では、Xは-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、又は4である。いくつかの実施形態では、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである。いくつかの実施形態では、X1はO又はNR4aである。いくつかの実施形態では、X2はO又はNR4aである。いくつかの実施形態では、X3はO又はNR4aである。
いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、又は‐L‐Zである。いくつかの実施形態では、R4aはC1‐C12アルキルである。いくつかの実施形態では、R4aはC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R4aはC1‐C4アルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R4aはC1‐C4ジアルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R4aはAr3である。いくつかの実施形態では、R4aは‐L‐Ar3である。いくつかの実施形態では、R4aは‐L‐Zである。いくつかの実施形態では、R4aは‐L2‐Z2である。
【0035】
いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、又は‐(CH24‐Ar3であり;Ar3は2‐ピリジニルである。いくつかの実施形態では、R4aはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R4aは‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、又は‐(CH24‐N(Me)2である。いくつかの実施形態では、R4aは‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、又は(CH24‐Ar3である。いくつかの実施形態では、Ar3は2‐ピリジニルなどのピリジニルである。いくつかの実施形態では、R4aは‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3であり;式中、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの実施形態では、R4aは‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3であり;式中、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの実施形態では、R4aは‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3であり;式中、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの実施形態では、R4aは‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;式中、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの実施形態では、R4aは‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3であり;式中、nは1である。
いくつかの実施形態では、Yは、電子求引性置換基である。いくつかの例では、NO2などの電子求引性の付加により、酸素に対する安定性を向上させ、還元電位を付加し、1分子当たり複数の電子の貯蔵を可能にする。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は1つ、2つ、又は3つのY基を有し、YはNO2である。いくつかの実施形態では、Yは電子供与性置換基である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、YはそれぞれHである。いくつかの実施形態では、YはNO2である。いくつかの実施形態では、YはNR5a5bであり、R5a及びR5bはそれぞれ独立してC1‐C12アルキルである。いくつかの実施形態では、YはN(Me)2である。
いくつかの実施形態では、R1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R1aはメトキシ又はエトキシなどのC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R2dはメトキシ又はエトキシなどのC1‐C4アルコキシである。
【0036】
いくつかの実施形態では、R1d及びR3aはそれぞれC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R1dは、メトキシ又はエトキシなどのC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R3aはメトキシ又はエトキシなどのC1‐C4アルコキシである。
いくつかの実施形態では、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してHである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してHである。いくつかの実施形態では、R1bはHである。いくつかの実施形態では、R1cはHである。いくつかの実施形態では、R2bはHである。いくつかの実施形態では、R2cはHである。いくつかの実施形態では、R3bはHである。
いくつかの実施形態では、式Iaの化合物は以下の化合物である:X1はそれぞれNR4aであり;R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;R1a1d、R3a、及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり、R5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである。
いくつかの実施形態では、X1はそれぞれNR4aである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれC1‐C12アルキルである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれC1‐C4ジアルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L‐Ar3である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L2‐Z2である。いくつかの実施形態では、R1a1d、R3a、及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はC1‐C4アルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH、又はNR5a5bである。いくつかの実施形態では、R5a及びR5bはそれぞれ独立してH又はC1‐C12アルキルである。
【0037】
いくつかの実施形態では、式Ibの化合物は以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである。
いくつかの実施形態では、X2及びX3はそれぞれNR4aである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれC1‐C12アルキルである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれC1‐C4ジアルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L‐Ar3である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L2‐Z2である。いくつかの実施形態では、R1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はC1‐C4アルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH、又はNR5a5bである。いくつかの実施形態では、R5a及びR5bはそれぞれ独立してH又はC1‐C12アルキルである。
いくつかの実施形態では、式Ibの化合物は以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、又は‐L‐Ar3であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してHであり;
Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。
【0038】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、式Iの化合物は、CH3CNなどの有機溶媒中における化合物又はそのレドックス状態の化合物の溶解度を向上させる官能基を含んでもよい。これらの官能基には、下記化合物に示されるようなPEGyl鎖(‐(OCH2CH2O)nCH3)などの溶解度を向上できるオリゴマー官能性がある。この種の分子工学は溶解度を劇的に向上させることが近年の文献で既に証明されており[30、31]、このアプローチの関連性は近年のコミュニティ論評で確認されている[32]。
【化11】

いくつかの実施形態では、式Iの化合物は下記式のいずれか1種の化合物である。
【化12】
【0039】
本明細書に記載した式Iの化合物は更に対アニオンを含む。式Iのカルボカチオンの例示的な対アニオンとしてはどのようなアニオンでもよく、例えばハライド(例えば、Cl、F、I、及びBr)、カルボキシラート、ホスファート、スルファート等の有機化合物に由来するアニオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスファート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は光活性を有する。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は可視光により励起される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は約500nmを超える波長により励起される。
いくつかの実施形態では、Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分である。共役複素環カルベニウムを含む部分は、本明細書に記載の式Ia、Ib、及びIcの化合物を含む式Iの化合物であってもよい。いくつかの例では、Z及びZ1がそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分である場合、得られた化合物は、2種以上の共役複素環式カルベニウムを含む化合物である。例えば、式Ibの化合物はアリーレン、アルキレン、又はヘテロアルキレンリンカーにより式Ibの別の化合物に共有結合していてもよく、あるいは、式Icの化合物はアリーレン、アルキレン、又はヘテロアルキレンリンカーにより式Icの別の化合物に共有結合してもよい。
【0040】
レドックスフロー電池の第2実施形態
別の態様では、以下を含むレドックスフロー電池:
第1酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むカソライト;及び
第2酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むアノライト;
を提供し、
ここでは、第1酸化状態は第2酸化状態より酸化状態の程度が高い。
いくつかの実施形態では、カソライト中の共役複素環式化合物とアノライト中の共役複素環式化合物とは同じ化合物であり、同じ化合物とは、異なる酸化状態を有するが、カソード種及びアノード種の同じ原子成分及び構造を有する2つの異なる種を指す。
いくつかの実施形態では、カソライト中の共役複素環式化合物とアノライト中の共役複素環式化合物とは異なる化合物である。例えば、アノライトは電子供与置換基を有するカルベニウムを含み、カソライトは電子供与置換基を有するカルベニウムを含む。
レドックスフロー電池システムは、2個、3個、4個、又はそれ以上の電子を含む多電子過程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は、カルベニウム化合物のラジカルジカチオンへの酸化、及びカルベニウム化合物の中性ラジカルへの還元など、2つの電子過程を含む。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は4電子以上の電子過程を含み、この過程では、共役複素環式カルベニウム化合物に電子供与性又は電子求引性置換基を添加することにより異なる酸化状態/充電が達成される。
【0041】
カソライト又はアノライト中の共役複素環式化合物は、本明細書に記載のカルベニウム化合物のうちのいずれか1種であってもよい。いくつかの実施形態では、カソライト及びアノライト中の共役複素環式化合物はそれぞれ独立して式Iの化合物であり、式(I)の化合物は以下の構造で表される:
【化13】
式中、
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており、置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される。
【0042】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物はそれぞれ独立して式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である。
【化14】
いくつかの実施形態では、Xは-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、又は4である。いくつかの実施形態では、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、又は‐L‐Zである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、又は‐(CH24‐Ar3であり;Ar3は2‐ピリジニルである。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは1である。いくつかの実施形態では、R1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。
【0043】
いくつかの実施形態では、式Iaの化合物は以下の化合物である:
1はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a、R1d、R3a、及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである。
いくつかの実施形態では、X1はそれぞれNR4aである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれC1‐C12アルキルである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれC1‐C4ジアルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L‐Ar3である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L2‐Z2である。いくつかの実施形態では、R1a1d、R3a、及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はC1‐C4アルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH、又はNR5a5bである。いくつかの実施形態では、R5a及びR5bはそれぞれ独立してH又はC1‐C12アルキルである。
【0044】
いくつかの実施形態では、式Ibの化合物は以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである。
いくつかの実施形態では、X2及びX3はそれぞれNR4aである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ、C1‐C12アルキルである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれC1‐C4ジアルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L‐Ar3である。いくつかの実施形態では、R4aはそれぞれ‐L2‐Z2である。いくつかの実施形態では、R1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はC1‐C4アルキルアミノである。いくつかの実施形態では、R1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。いくつかの実施形態では、Yはそれぞれ独立してH、又はNR5a5bである。いくつかの実施形態では、R5a及びR5bはそれぞれ独立してH又はC1‐C12アルキルである。
いくつかの実施形態では、化合物はそれぞれ独立して以下の式Ibの化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、又は‐L‐Ar3であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してHであり;
Yはそれぞれ独立してH又はNO2である。
【0045】
いくつかの実施形態では、式1の化合物はそれぞれ独立して下記式のいずれか1種の化合物である。
【化15】
いくつかの実施形態では、共役複素環式化合物はそれぞれ独立して更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスフェート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハライド、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスラート、又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む。
いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は更に、アノライトとカソライトとの間に配置したセパレータを備える。いくつかの実施形態では、セパレータは多孔質膜である。
いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は更に溶媒及び電解質塩を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、電解質は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物のアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、アルキルアンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、又はこれらの混合物である。いくつかの実施形態では、電解質塩は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。
いくつかの実施形態では、溶媒は、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、ジメチルホルムアミド、水、ハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、共役複素環式カチオン化合物は光活性を有する。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約1V、1.5V、又は2Vを超える。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池の開回路電位は約1V~約5V、約1.5V~約5V、約1.5V~約3V、約2V~約5V、約2V~約4V、又は約2V~約3Vである。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレドックスフロー電池の任意の1種などの、レドックスフロー電池は更に、アノライトとカソライトとの間に配置したセパレータを備える。いくつかの実施形態では、セパレータは多孔質膜である。いくつかの実施形態では、レドックスフロー電池は更に、溶媒及び電解質塩を含む。
本明細書に記載のレドックスフロー電池の任意の1つは更に電解質塩を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電解質塩は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、電解質は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物のアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、アルキルアンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、又はこれらの混合物である。いくつかの実施形態では、電解質塩は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、又はこれらのいずれか2種以上の混合物である。
【0048】
本明細書に記載のレドックスフロー電池のいずれか1種は更に、溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトニトリルなどのニトリル溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒;ジメチルホルムアミド;水;ジクロロメタンなどのハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む。
別の態様では、本明細書に記載のレドックスフロー電池のいずれか1種などのレドックスフロー電池を操作する方法を提供する。前記方法は、カソライト区画内にカソライトを流し、アノライト区画内にアノライトを流す工程を含み、カソライト区画とアノライト区画とは多孔質セパレータにより分離し、アノライトからカソライトへの電子輸送を促進する。いくつかの実施形態では、セパレータは多孔質膜である。
いくつかの実施形態では、電子輸送後、本方法は、外部電源によりカソライト及び/又はアノライトを再生する工程を含む。いくつかの実施形態では、カソライトを再生する工程は、光利用酸化を介してカソライトを再生する工程を含む。いくつかの実施形態では、アノライトを再生する工程は、光利用還元を介してアノライトを再生する工程を含む。
本明細書に記載のレドックスフロー電池システムは、当業者に公知の任意の種類のアノード、カソード、及びセパレータを備えてもよい。更に、本明細書に記載のレドックスフロー電池システムは、エネルギー放出及び/又はエネルギー貯蔵のためにも使用してよい。
【0049】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、レドックスフロー電池システムは、対称型有機逆流電池(symmetric organic reverse flow battery)(SORFB)である。いくつかの実施形態では、セパレータ又は交換膜は、多孔質膜である。多孔質膜の例としては、空隙率が約55%、厚さが約25μm、孔径(平均径)が約0.064μmのポリプロピレン製多孔質膜Celgard(登録商標)2500、空隙率が約55%、厚さが約175μmの多孔質膜Daramic(登録商標)HD plusが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、多孔質膜はCelgard(登録商標)2500である。いくつかの実施形態では、多孔質膜は、以下の特徴の1つ以上を有するポリプロピレン製多孔質膜である:空隙率は少なくとも約55%であり、厚さは少なくとも約25μmであり、孔径(平均径)は少なくとも約0.064μmである。いくつかの実施形態では、多孔質膜は、以下の特徴の1つ以上を有するポリプロピレン製多孔質膜である:空隙率は約55%であり、厚さは約25μmであり、孔径(平均径)は約0.064μmである。いくつかの実施形態では、多孔質膜はDaramic(登録商標)HD plusである。いくつかの実施形態では、多孔質膜は、以下の特徴の1つ以上を有する:空隙率は少なくとも約55%であり、厚さは少なくとも約175μmである。いくつかの実施形態では、多孔質膜は、以下の特徴の1つ以上を有する:空隙率は約55%であり、厚さは約175μmである。
いくつかの実施形態では、セパレータ又は交換膜はアニオン交換膜(AEM)である。いくつかの実施形態では、交換膜として多孔質膜を有する対称型有機レドックスフロー電池(SORFB)の効率又は性能は、交換膜としてアニオン交換膜を有する対称型有機レドックスフロー電池(SORFB)と同等であるか、より優れている。アニオン交換膜の好適な例としては、Fumasep(登録商標)FAP‐450などのフッ化アニオン交換膜(0.5MのH2SO4中の導電率が9~12mScm-1であり、T=25での0.1/0.5モル/kgのKCl選択性が90~96%であり、プロトン輸送速度が2500~4500μモル min-1cm-2であり、厚さが50μmであるフッ化アニオン交換膜)が挙げられるがこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、フッ化アニオン交換膜はFumasep(登録商標)FAP‐450である。いくつかの実施形態では、フッ化アニオン交換膜は、以下の特徴の1つ以上を有する:0.5MのH2SO4中の導電率は9~12mScm-1であり、T=25での0.1/0.5モル/kgのKCl選択性が90~96%であり、プロトン輸送速度が2500~4500μモル min-1cm-2であり、厚さが50μmである。
【0050】
更に、本明細書に記載の実施例に示すように、H型セルサイクルの研究から得た予備的な結果に基づいて、RFBシステムの理想的な候補である共役複素環式カチオン化合物を特定することには、以下の1つ以上の特徴が関連していることが分かっている。
‐ 共役複素環式カチオン化合物は、少なくとも2つの完全可逆的な電子過程に存在する必要がある(対称性パラメータ);
‐ 2つの完全可逆的な電子過程は、少なくとも2Vの電圧差で分離する必要がある(エネルギー密度基準);
‐ 電子過程の拡散係数はD≧5.0×10-6cm2・s-1である必要がある;
‐ 電子過程の異種電子輸送係数はk0≧1.0×10-2cm・s-1である必要がある;
‐ 初期カルボカチオン状態では、共役複素環式カチオン化合物は、≧50mMで可溶である必要がある(エネルギー密度基準);
‐ H型セルにおいて、共役複素環式カチオン化合物のサイクル性(容量保持率>90%)は、≧200サイクルである必要がある。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の共役複素環式カチオン化合物は、これらの特徴のうちの1つ以上を示す。
【実施例
【0051】
実施例1.ビス‐nPrヘリセンを使用するRFBセルの予備結果
【化16】

本化合物の最初の研究期間では、炭素作用電極、AgNO3/Ag参照電極(CH3CN中、0.1MのnBu4NPF6に含まれる0.01MのAgNO3)、及び白金対電極から成る3電極電気化学セルにおいて、サイクリックボルタンメトリーを実施した。酸化アルミニウム研磨紙及び無水CH2Cl2を用いてガラス状炭素ディスク電極を研磨した。2mMの活性種及び0.1MのTBAPF6を含み、内部電圧参照としてフェロセンを加えたCH2Cl2電解質中、100mV/sの走査速度でCV実験を行った(図3)。
【0052】
RFB試験について:
理解を促し、充電及び放電測定との比較を容易にするために、以下の全データは、AgNO3/Ag電極を参照として提供する。
【0053】
DMF
ジクロロメタンは、サイクリックボルタンメトリーよりも長いタイムスケールで還元種を安定化させるのに都合のよい溶媒ではないと考えられていた。そして、C+及びC・++種の溶解度及び溶液中のC・の既知の安定性(数日間に渡る)を好適なものとする極性が高いために、DMF(ジメチルホルムアミド)を選択し、検討した。
炭素作用電極、AgNO3/Ag参照電極(DMF中、0.1MのnBu4NPF6に含まれる0.01MのAgNO3)、及び白金対電極から成る3電極電気化学セルにおいて、サイクリックボルタンメトリーを実施した。酸化アルミニウム研磨紙及び無水DMFを用いてガラス状炭素ディスク電極を研磨した。1mMの活性種を含む10mLのDMF電解質中、100mV/sの走査速度でCV実験を行った(図4)。
残念ながら、AgNO3/Agと比較して、850mVで発生したC・++の形成は可逆的ではなかった。このことは、DPV実験において、酸化の際に作用するいくつかの過程が示されたことにより確認した(図5)。
【0054】
ACN
C・種を合成し(上記参照)、グローブボックス内で乾燥ACNに溶解させた。数時間の間、紫外線‐可視光(UV‐Vis)分光法で分解は観察されなかった。従って、更なる電池試験のための溶媒としてACNを選択した。
炭素作用電極、AgNO3/Ag参照電極(CH3CN中、0.1MのnBu4NPF6に含まれる0.01MのAgNO3)、及び白金対電極から成る3電極電気化学セルにおいて、サイクリックボルタンメトリーを実施した(図6)。酸化アルミニウム研磨紙及び無水CH3CNを用いてガラス状炭素ディスク電極を研磨した。1mMの活性種及び0.1MのTBAPF6を含むCH3CN電解質中、異なる走査速度10、100、500mV/sでCV実験を行った。
還元及び酸化過程は、参照電極を基準として-1.14V及び0.98Vで起こる(図7、8A、8B)。これらの測定から、一度充電した電池の開回路電位(OCV)は、2つの端子間で2.12Vであることが分かる(100%充電溶液の場合)。システムが完全に放電する前の瞬間に、最小電位は1.90Vとなる。酸化及び還元での現象において異なる速度(10、100、500mV/s、図8A及び8B)で測定すると、5回のサイクル後に形状を保持する波が現れ、電子過程中に形成される種の安定性、及び選択した溶媒中での可逆性が証明されている。
【0055】
従来、装置のサイクル安定性及び可逆性を報告するためには、電位制限を伴うガルバノスタット充電/放電(GCPL)を利用していた。この研究期間において電解質の過酸化/過還元現象を回避するため、電池の容量全体を理論的に決定し、充電限界を定義していた(図9)。
起こり得る充電損失、並びにシステム固有の過熱及び抵抗を補填するために、+1%に制限した追加容量を規定してきた。従って、5mAの印加電流で、0.317mA.hの負荷制限を選択した。以下では、用語「放電」は、「逆電流充電」を意味する。
また、選択したセル構成では、中間「半充電」状態の電池で開始することに留意されたい。実際、セルの各部は同じ中性のC+溶液、即ち半分量の電子活性物質を含んでいる。従って、最初の充電サイクルは、過酸化/還元現象を回避するために、容量Total/2(即ち、0.1585mA.h)のサイクルでなければならない。この最初の充電及びその合計放電(0.317mA.h)は、システムの効率を歪めず、人為的に増大させないように、以下のグラフから削除している。
【0056】
充放電測定は、セパレータとして使用する2mmの微細多孔質ガラスフリット(穴径4~5.5μm)、及び参照電極(CH3CN中、0.1MのTBAPF6に含まれる0.01MのAgNO3/Ag)を備えた特注ガラス製H型セル中で実施した。C+の1.2mM溶液(0.1MのTBAPF6)10mLをセルの両コンパートメントに均等に充填した。網状ガラス質炭素(RVC)電極(1インチ当たりの孔数(ppi)100孔、Duocel(登録商標))を0.5cm×0.5cm×4cmの寸法の棒状に切断し、溶液中約2cmの深さに配置した(1電極当たり約33cm2の活性表面)。汚染過程を排除するため、電極は単独で使用した。次に、「定電圧を伴う定電流」ガルバノスタット充電(CCCV/GCPLプロトコル)を、|5|mAの電流で、RVC電極により適用した。単電子サイクルでは、電位境界を-1.54V及び-0.74Vに設定し、容量限界は90%SOCであった。一方、ストレス試験は-1.54V~1.38Vの間に制限し、容量限界は100%SOCであった(Qmax=Qtheo)。充放電実験中、両セルを1000rpmで連続的に撹拌した。
最初の例では、90%理論容量限界(90%充電状態「SOC」)充放電サイクルでの単電子輸送を行い(図9)、ここでは、|5|mAでの「定電圧を伴う定電流」ガルバノスタット充電(CCCV/GCPLプロトコル)を行い、電位境界はErefと比較して-1.54V及び-0.64Vであった。完全な1サイクルは、充電工程とそれに続く放電工程に対応している(図10)。充電-放電サイクルの間、Ew電圧曲線の約-1.0V及び-1.2Vに2つのプラトーが見られ、これらはC+/C・レドックス対過程の電子過程であった(図11)。かなり良好に、図12におけるこの試験セルのモニタリングから、クーロン効率(CE、緑色の三角形)は実験を通して一定で100%に近い状態を保っていることが分かる。更に、容量Q(赤色及び青色の四角形)は、550サイクルにわたって初期容量(Qinit)を>90%に維持し、優れていることが証明された(図12)。本発明の電池は461回目のサイクルで容量が減少し始めた。その後、システムは、容量維持率が1サイクル当たり0.16%低下し、電池を停止した800回目のサイクルでは値はQ=0.081mA.hになった(即ち、Qinitの58%)。800回目のサイクル後に、セルの各面のそれぞれの内容物について100mV/sでCV分析を行った(図13)。
【0057】
nPrDMQA+についてこれまでに収集した全てのデータをより深く分析することにより、以下の図(図12)において、以下のことが確認された:実験全体を通してクーロン効率(CE、緑の四角形)が完璧であることに加えて、記載した標準条件下での分子のサイクルは、電気化学変換の効率を表すエネルギー効率(EE、赤色の三角形)、及びシステム内の分極効率に関する起電力効率(VE、紫色の円形)の印象深い値を示した。両例において、EE及びVEは、システムが示したサイクル性のうち550サイクルの間、60~70%の効率を保持した。これは、サイクルの開始時に60%の値に達することはほとんどのORFBにおいて困難であるため優れた結果であった。
次に、この対称型電池の初期状態から、電位境界をErefと比較して1.38及び-1.54Vに設定し、|5|mAの電流で、CCCVガルバノスタット充電シーケンスを開始した(図14)。充放電測定(400秒~1000秒の間、即ち1サイクルに焦点を当てた図、図15)に注目すると、電池充電段階に伴って2つの異なる挙動が示されていた。負荷時(488~718秒)には、Eweの値は0.98Vにゆっくりと到達し(青色)、負荷移動速度が遅いことが際立った。逆に、放電時(718~898s)には、-1Vの閾値プラトーに容易に到達することが確認され、その後、限界値である-1.54Vにゆっくりと到達した(青色)。電流強度の減少(赤色)を根拠とし、このことにより、還元が効率的になっていると仮定できた。ここでは溶液中の物質の拡散が制限要因である。システムの抵抗率、拡散パラメータ、及びセル内の攪拌の最適化について深く研究することで、これらの限界を容易に解決することとなる。長期的には、電流強度、並びに充電及び放電率を高められるようになる。
【0058】
なお、実験全体を通して、放電の閾値-1.54Vに体系的に到達したが、青いトレースで示すように、81サイクルの間はゆっくり1.38Vの値に到達したことに留意されたい。この現象は2つの要素に起因していた:1つは、電極及びその支持体の表面の劣化(炭素電極を保持するクランプの酸化)であり;2つ目の原因は、C・++形態の電解質の経時変化である。これは80回目のサイクル以降に突然現れる。これらのパラメータは、より信頼性の高い電極の研究及び合理的な選択、並びに吊り下げアームの適切な機能化による本電解質の安定化により解決することが可能であり、また解決するであろう。
最後に、このシステムの効率を検討したところ、検討した81サイクルに渡って効率はほぼ一定で100%に近いことが分かった(効率は81回目のサイクル:101%、82回目のサイクル:30%、図16の緑色)。これらの測定結果は予備的な結果であり、近い将来、より適切な電極を使用して改善されるであろう。効率は、全体のセル容量、又は試験中に維持された0.317mA.hのQ充電/放電に基づいて計算した(紫色)。これらのデータは全て、15時間を超える化学的ストレスサイクルに渡る電解質システムの堅牢性及び高い信頼性を示している。
サイクル中のシステムの全容量のモニタリングから、実験の過程で、0.317mA.hの負荷を本システムに伝送し、再生し続けられることが分かった(図16)。システムは、青紫色(図16)のプロットにおける減少に示されるように、80回目のサイクル以降に容量を失い始める。そして、81回目のサイクルからその効率に影響を及ぼし始める。
なお、従来の「電池」タイプを使用する場合、このシステムの開回路電圧は2.12Vであるが、本研究を実施するために使用した充電量の半分しか利用できないことに留意されたい。実際、この電池は初期状態tinitにしか戻れない(第1スキーム参照)。ここで示したこのサイクルの研究は情報を得るためだけのものであり、本システムの堅牢性及び汎用性を証明するためのものである。
【0059】
実施例2.アノライトC・ラジカルの合成及び特徴付け
安定な中性有機ラジカルは、最大分子軌道(HOMO)を占める不対電子を有する開殻分子であり、これは水素除去、二量化、又は再結合などの反応に容易に関与できる[1、2]。これらの分子は、コストが低く、容易に合成でき、構造が多様であり、触媒作用における応用に好適であることから、数十年間、科学コミュニティにおいて関心の的であった[3]。更に近年、有機ラジカルは、有機発光ダイオード(OLED)及び他の材料用途の開発において特別な関心事となっている[4]。1900年にGombergがトリフェニルメチル(トリチル)ラジカルを発見して以来[5]、他の持続的かつ安定な炭素系ラジカルの基礎研究により、その電子構造及び安定性が明らかになってきている。トリアリールメチルラジカル[6]、シクロペンタジエニルラジカル[7]、フルオレニルラジカル[8]、及びアントリルラジカル[9]の場合のように、二量体化を防止するためにかさ高い保護基が用いられてきた。ラジカルのσ‐二量体化を克服するための別のアプローチとして、電子求引性/供与性置換基を導入して電子構造を制御するアプローチがある。例えば、カルボラジカルのパラ位に窒素系電子供与体を有するα,α‐ジシアノメチルは、動的安定性を持つことが実証された。ラジカル中心への電子求引基αの存在は、ベンジル位でのスピン密度を収縮し、分子間C‐Cカップリング反応性を弱めることに役立つ[10]。更に、ラジカルは大型π共役系に含まれると安定化させることが可能である。これは、ポルフィリノイド[11]、大環状分子、及び縮合π‐骨格[12]の場合である。
【0060】
直鎖系以外にも、縮合π‐共役系を開発することで螺旋状の有機分子が得られる。新規な有機ラジカルを開発するために、またそれをオプトエレクトロニクス及びスピントロニクス材料へ応用するために、螺旋状分子の固有の鏡像異性は大きな関心事である[13、14]。[n]ヘリセン(n=4、5、6、7)ラジカルの例は、文献上、わずか数例しか報告されていない。この例では、nは縮合芳香環の数を示す[15]。ほとんどの場合、これらの系の不対電子はπ共役置換基上での非局在化を経て安定化され、縮合芳香環の数が多い分子ほど高い安定性を示す。このように、[4]ヘリセンはこのクラスのラジカルの中で最も安定性が低く、あまり知られていないラジカルの代表格である。我々の知る限り、文献上では[4]ヘリセンラジカルの例は4つしか報告されておらず、そのうちの1つは単離されていない(スキーム1a)。
【0061】
1958年、Neunhoffer及びHaaseは、二重オルト架橋ラジカル(I)としての最初の[4]ヘリセンラジカルを報告した。このラジカルは安定性が低く、空気に触れると容易に分解した[16]。Aulmich及び共同研究者らも、ジメチル‐メチレン単位を架橋基とする[4]ヘリセンラジカル(II)を合成した[17]。その後、Laursenらは、N,N’‐ジアルキル‐1,13‐ジメトキシキナクリジニウム(DMQA+)のインサイツ電気化学還元によりキノリノアクリジニウム[4]ヘリセンラジカル(III)を生成し、それをUV‐vis法及び電子常磁性共鳴(EPR)分光法により検討した[18]。この化合物の特性データは、EPRスペクトルが未解明であり、DFT計算を行えないため、このラジカル種の電子構造について結論づけるには不十分なものであった。2012年、Morita及び共同研究者らは、分子内π‐電子ネットワークのスピン非局在化により安定化した鏡像異性フェナレニル[4]ヘリセン中性ラジカル(IV)を報告している[19]。近年、Osukaらは空気安定的なトリアリールNi‐ポルフィリン[4]ヘリセンラジカル並びにその化学酸化及び還元生成物を報告している[20]
スキーム1.[4]ヘリセニウムラジカルに関する文献報告及び研究
【化17】
【0062】
上記のどの研究においても、純粋な有機[4]ヘリセン系中性ラジカル系のX線結晶構造は報告されていないことに注目されたい。ここでは、[4]ヘリセンキナクリジル中性ラジカルの簡便な合成及び構造調整、並びにそのような種の初めてのX線結晶構造データを紹介する。これらの常磁性[4]ヘリセニウム系ラジカルの電子特性を、1H NMR分光法、連続波(CW)EPR、電子‐核二重共鳴(ENDOR)分光法、サイクリックボルタンメトリー、UV‐vis吸収分光法、密度汎関数理論(DFT)計算により体系的に研究した。同様に、本発明者らは、骨格に電子求引性の‐NO2基を導入すると、ラジカルの特性(安定性、分解生成物等)が大きく影響を受け、更に1電子還元が起こり、ジラジカルアニオン形態に到達できることを示している。更に、これらラジカル全ての好気的条件下での安定性をUV‐vis吸収分光法で調査した。ほとんどのラジカルが酸素分子と不可逆的に反応するのに対し、これらのカルボラジカルはカルボカチオン類似体へと可逆的に酸化したことが観察された。
【0063】
結果及び考察
前駆体ヘリセニウムカチオンを文献のプロトコルに従って合成した[21]。トリス(2,6‐ジメトキシフェニル)メチリウムテトラフルオロホウ酸塩(1)を、対応する一級アミンの存在下で、アセトニトリル中、85℃で12時間撹拌した。これにより、高収率でヘリセニウムカチオン2‐H+、3+、及び既知の4+を形成した(スキーム1a、条件i)。Lacourが報告した手順に従って2‐H+をニトロ化することによりヘリセニウム2‐NO2 +を得た(スキーム2a、条件ii)。最後に、2段階法でヘリセニウムカチオン5+を合成した(スキーム2a、条件iii)。初めに、1を1当量の2‐(ピリジン‐2‐イル)エタン‐1-アミンと室温で2時間反応させると、紫色から赤色に変色し、典型的に既知のアクリジニウム中間体S1が形成される[22]。アセトニトリル中、S1を過剰量の3‐(ジメチルアミノ)‐1‐プロピルアミンと85℃で12時間反応させると、高収率で5+が得られた(スキーム1a)[23]。全ての[4]ヘリセニウム(2+~5+)の形成を、1H及び13C NMR分光法、並びにX線結晶解析法により確認した。
【0064】
カルボカチオン2‐H+及び3+~5+1H NMRスペクトルは室温でよく分解し、シャープに見える。同じ温度で、2‐NO2 + 1H NMRスペクトルは、2.70~2.00ppmの範囲に広域で不鮮明なシグナルを示し、動的運動の存在を示唆している。観察された広域シグナルを分解するために、2‐NO2 +の可変温度(VT)1H NMR分光分析を実施した。非配位性溶媒(CD2Cl2)で試料を調製し、59.85~-80.15℃(333~193K)の温度範囲で検討した。室温(19.85℃(293K))では、芳香族プロトンはほとんど分解されず、1H NMRスペクトルは、アミノアームが急速に交換されていることを示す。-80.15℃(193K)まで温度を下げると、動的交換が減少するため、プロトンのシグナルがシャープになり、鮮明になる。アミノアームの6つのメチレン性プロトンは、4.95及び3.55ppm、4.87及び4.68ppm、並びに1.92及び1.75ppmで鮮明に見え、そこに帰属していることが確認できる。また、低温相関分光(COSY)NMR配列法により、これらプロトンの帰属に成功した。ジアステレオトピック(diastereostopic)なこれらのプロトンは、一本の‐nPr‐NMe2アームの窒素孤立電子対と、C+カルボカチオン中心との相互作用により生じた可能性がある(スキーム3)。これらのデータ及びメチレンHA‐A’プロトンシフトに基づいて、合体温度は4.85℃(278K)であり、NMe2‐C+の相互作用のギブズ変化量(ΔG)は12.2kcal/モルであることが判明した。同様に、[4]ヘリセン構造のメトキシ基(-80.15℃(193K)で3.77ppm&3.73ppm)を観察することにより、-25.15℃(248K)の合体温度で、o‐MeOPh部分相互変換エネルギーのΔGは12.6kcal/モルであることが判明した。
【0065】
スキーム2.合成経路
【化18】

スキ‐ム2.a)i)2‐H+、3+及び4+の合成経路:1.0当量の(1)、25.0当量のアミン、CH3CN、85℃、12時間;ii)2‐NO2 +の合成経路:1.0 当量の(2+)、HNO3(60%、0.05M)、15分;iii)5+の合成経路:1.0当量の(1)、1.2当量の2‐(2‐ジメチルアミノエチル)ピリジン、EtOAc、室温(rt)、1.5時間;次いで15.0当量の3‐(ジメチルアミノ)‐1‐プロピルアミン、CH3CN、85℃、12時間。b)2・~5・の合成経路:THF中1.1当量のK又はKC8、rt、一晩(o/n)。
スキ‐ム3.VT1H NMRで観察したC+との2‐NO2 +‐nPr‐NMe2の相互作用
【化19】
【0066】
+~5+をTHF中、室温で一晩金属カリウムで還元することによりラジカル類似体(2・~5・)を合成した(スキーム1b)。反応混合物は暗緑色の懸濁液から暗紫色の溶液に変化した。この過程で生成した不溶性KBF4塩を濾過により除去した。THFを真空下で除去し、得られた固形物をトルエンで抽出した。トルエン/ヘキサン混合物から-35℃で結晶化させると、2・~5・が暗褐色の結晶として良好な収率で得られた(スキーム1b)。ラジカル2・~5・の生成は、19F NMRスペクトル中にフッ素シグナルがないこと、及び特徴的なEPRシグナルが観測されたことにより確認できた(下記参照)。得られたラジカルは、固体及び溶液のいずれにおいても室温の不活性雰囲気下で著しく安定であり、その色及び結晶性を無期限(数ヶ月以上)に保持することは特筆すべきである。
【0067】
また、分子2・~5・を常磁性1H NMRでも分析し、分子のペンダントアームがラジカル系との何らかの効果や相互作用を有するかどうかを調べた。これらの化合物の顕著なラジカル特性により、ヘリセンラジカル骨格の芳香族プロトンは観察できない。しかし、ヘリセン核への置換基アームα(N‐CH2‐CH2‐R)及びβ(N‐CH2‐CH2‐R)のプロトンは、全てのラジカルにおいて、それぞれ17及び-7ppmで一貫して広域で、シフトしたように見える。ヘリセン核へのプロトンγ(N‐CH2‐CH2‐R;R=CH3、CH2NMe2、Py)はラジカルの影響をあまり受けず、広域であるが、反磁性の10~0ppm領域において共鳴する。2‐H・では、γ‐プロトンは5.71ppmを中心とする4ppm幅の広帯域として観測された。2‐NO2・上のNO2電子求引性基は、やはり5.71ppm付近を中心とした帯域(9~2ppm)において広がる効果があると推察される。3・及び5・のピリジニルプロトン(π)はそれぞれ8.58、7.38、6.33、及び6.03ppmで鮮明である。骨格5・では、5.71ppmのγ‐プロトンの広域シグネチャは、π‐プロトンに部分的に隠されている。n-プロピル基からの4・上のγ‐プロトンはラジカル系の影響を受けにくく、2.88ppmを中心とする広域ピークとして現れた。従って、選択したペンダントアームの性質は、化合物2・~5・のラジカル特性にほとんど影響を与えないように思われる。逆に、ヘリセニウム核のプロトンを電子求引基で置換すると、得られるラジカル2‐NO2・の電子構造の修飾が誘発される。これは、今後の研究で、これらのヘリシニウムの電子構造を自在に修飾するために利用することが可能である。
【0068】
X線回折.DCM/ヘキサンをゆっくり積層することにより、X線回折(XRD)分析に適したカチオン前駆体2‐H+及び2‐NO2 +の結晶が得られた。2‐H+はP‐1三斜晶空間基において結晶化し、一方、ニトロ‐カチオン(2‐NO2 +)はC2/c単斜晶系を示した。どちらの構造でも、[4]ヘリセニウム骨格は窒素環化断片に沿って平面的である。同様に、o‐(MeO)‐フェニル部分間の重要な立体障害によるねじれ(2‐H+:41.93°、2‐NO2 +:38.37°)が固体状態で観察された(表1)。2‐H+と2‐NO2 +とのねじれ角に差があるのは、O1‐O2距離がそれぞれ2.743Å及び2.659Åであることからも明らかである。2‐H+の2本の‐nPr‐NMe2アームは拘束されておらず、カルボカチオン骨格と同じ平面上に配向しているように見える。VT1H NMRスペクトル解析から推測されるように、2‐NO2 +の‐nPr‐NMe2アームの1つはカルボカチオン中心(C1‐N3:3.194Å)上で折り畳まれている。また、この現象はNO2基の隣接位置で生じ、立体障害により起こりやすいと考えられる。この相互作用は、2‐NO2 +のm‐(NO2)基の存在によりカルボカチオン中心に付与されるルイス酸性の増加を示し、固体状態でC1とN3中の孤立電子対との非結合相互作用をもたらし、本発明者らのVT1H NMRスペクトルの解釈を確認できる。
ヘキサンをゆっくりと拡散させることにより中性ラジカル2‐H・及び2‐NO2・を濃縮トルエン溶液から単離し、それぞれ斜方晶Pbca及び三斜晶P‐1空間基を有する結晶が得られた。BF4・対イオンが存在しないことから、THF中で金属Kにより誘発される単電子還元が確認された。o‐(MeO)‐フェニル基の歪みは2‐H・(45.92°、+3.99°)、特に2‐NO2・(52.05°、+13.68°)でそのカチオン前駆体よりも顕著であり、その結果、両錯体のO1‐O2距離は同様の距離となる(2‐H・:2.772Å、及び2‐NO2・:2.773Å)(表1)。
【0069】
2‐H・のC1‐C2、C1‐C3、及びC1‐C4原子間距離(それぞれ1.439、1.444、及び1.446Å)が、カチオン2‐H+(1.406、1.435、及び1.431Å)と比較して増加しているということは、C1とその周囲の原子との間の反結合性相互作用があることを示している。この相互作用は、C1における電子密度の局在化と共に、DFT計算により支持されている(下記参照)。同様に、2‐NO2・におけるC1‐C3距離(1.429Å)は、2‐NO2 +(1.413Å)と比較して長かった。対照的に、2‐NO2・における結合距離は2‐NO2 +と比較して短かく、C1‐C2では、2‐NO2 +の1.431Åと比較して1.423Åであり、C1‐C4では、2‐NO2 +の1.440Åと比較して1.438Åであり、C2‐C5では、2‐NO2 +の1.435Åと比較して1.408Åであった。この現象は、電子求引性NO2基によるものと推測され、その原子間距離C‐NO2(1.452Åから1.444Åへ)及びN‐O(1.233/1.235Åから1.226/1.235Åへ)も短く、電子電荷の非局在化が高まる可能性が高い。最後に、2‐NO2・ではニトロ基に隣接する‐nPr‐NMe2アームはNO2部分の立体障害により平面外にある。しかし、NMe2の孤立電子対と電子が少ないp系との間に相互作用が見られる2‐NO2 +とは異なり、NMe2は中性ラジカル分子の富電子π系から離間した配向である。更に、2+状態から2・状態への遷移により、ヘリセンのMeO‐Ph基のねじれ角が大きくなっていることが分かる。2‐Hの場合、芳香族が形成する2つの平面間の角度は41.93°から45.92°へとわずかに増加している(即ち+3.99°)。2‐NO2 +の場合、カルボカチオン状態での2‐H+のねじれ角(38.37°)に近いねじれ角に注目すれば、ラジカル状態への移行時には+13.68°の増加(52.05°)が観察され、‐NO2基の影響が際立っている。
【0070】
【表1】

DFT計算.ラジカル2・~5・の電子構造を決定するために、開殻モデルの形状最適化とそれに続く周波数計算をS=2で行った。ラジカル2・~5・の電子構造を決定するために、開殻DFT計算を実施した。これらの全ラジカルでは、電子スピンが□‐系全体に分布しており、最大のスピン集団は中心炭素原子C1上に約60%存在することが分かった。このスピン密度分布は、アルキルアミン付加物R及びR’の性質には影響されなかった(スキーム2参照)。ラジカル2・~5・のSOMOの価電子は、最低非占有分子軌道(LUMO)より約4kcal/モル低いエネルギーで存在する。
【0071】
EPR(ESR)、ENDOR、測定:液体トルエン溶液中の2‐H・及び3・~5・のXバンドEPRスペクトルは、g≒2.003を中心とするガウス線で表され、幅は約0.76mTであり、約0.088mTで分割されている低分解の多線超微細構造を有する(一例として、2‐H・のスペクトルを示す図17Aのトレース1参照)。2‐NO2・のEPRスペクトルのg‐因子及び幅が同じであるが、超微細構造は分解されない。1H超微細相互作用(hfi)について、より詳細な情報を得るために、連続波電子核二重共鳴(ENDOR)実験を行った(図17B)。2‐H・及び3・‐5・の1H ENDORスペクトルは概ね類似しており、(a,a’)、(b,b’)、及び(c,c’)で示される3対の線を示した。各対の線はvH±aH/2の周波数に位置しており、vHはプロトンのZeeman周波数であり、aHはhfi定数(プロトンによって異なる)である。ENDOR線の各対について見積もった具体的なhfi定数は:|aHa|≒7.1MHz(a,a’線)、|aHb|≒2.3MHz(b,b’線)、及び|aHc|≒0.65MHz(c,c’線)である。2‐H・及び3・~5・のEPRスペクトルで観察された0.088mT(周波数単位では約2.5MHz)の分割は明らかにaHaとaHbによって決定される。
1H hfi定数を、DFT予測値と比較することにより、特定の分子位置に割り当てた。図18は2‐H・及び3・~5・の分子構造の関連部分を示す(即ち、環系がC1‐C##軸に関してほぼC2対称性を有するので、構造の半分を示している)。環炭素、窒素(単数又は複数)、##酸素のスピン集団の計算結果を紫色で示す。水素原子上のスピン集団の計算から得られた1H hfi定数(aH=1420ρH[MHz])を緑で示し、暫定的に割り当てた対応する実験hfi定数を水色で示す。括弧内はENDOR線の割り当てを示す。また、McConnell式:aH=(-63MHz)ρCを用いて隣接するプロトン(α‐プロトン)の実験的aH値から推定した環状炭素原子上のスピン集団を図18に紺色で示す。
【0072】
ラジカル2‐NO2・については、図18のアスタリスクで印したプロトンをNO2基の窒素で置換している(分子の片側のみ、スキーム2参照)。この置換の分光法の結果としては、ENDORスペクトルの(b,b’)線の相対強度が約30%減少し、それぞれaH=6.05及び5.37MHzに対応する(d,d’)及び(e,e’)線が出現した(図17Bのトレース2参照)。(b,b’)線の強度のこのような顕著な減少は、図18に示す本発明のhfi割り当てによれば、HからNO2への置換によりaH=2.3MHzプールから1つのプロトンが除去されるという事実によって説明できる((b,b’)線)。また、2つ以上のプロトンが(b,b’)線から新しい(d,d’)及び(e,e’)ENDOR線に「再配置」される。aH=2.3MHzプールから除去された3つのプロトンは、もともと10個のプロトンから成るため、(b,b’)線の強度が30%減少したことを説明している。
(d,d’)及び(e,e’)ENDOR線に寄与するプロトンを割り当てるために、分子構造及びDFTの結果を検討する。ラジカル2‐NO2・では、NO2基と、最も近い環窒素に結合したCH2基との間の立体衝突により、芳香環構造の立体構造が大きく歪み、影響を受けたCH2基が再配向する。特に、図18に示す3つの芳香環のセット全体は、N‐CH2結合とN含有環により形成した平均平面との角度が38°である顕著なサドル立体構造を獲得する(2‐H・及び3・~5・では<10°であることと比較して)。同時に、ラジカル2‐NO2・のDFT計算の結果、スピン集団の分布は2‐H・及び3・~5・と基本的に同じであった。従って、DFT予測における特定の不正確さを考慮しても、6.05及び5.37MHzというhfi定数は、2‐NO2・におけるNO2基に隣接する環窒素に結合したメチレン基のプロトンに割り当てられる可能性が最も高く、これらのプロトンのaH値が2.3MHzから6.05及び5.37MHzへと変化することは、ほとんどが上述の立体構造変化に起因していると間違いなく結論づけられる。
【0073】
電気化学:サイクリックボルタンメトリーにより2+~5+の電気化学的挙動を調べた(図19)。還元条件下では、2+~5+中、E1/2=-1.25V付近で完全な可逆的事象が観察され、これはC+のC・への還元に相当する(4+のCVはLaursenによる報告である)[18]。この事象は2‐NO2 +ではより低い電位(-1.0V)で観察され、NO2基が存在するために骨格の電子がより少ないことと整合している。2‐NO2 +では、E1/2=-1.8Vで第2の可逆的還元が観察された。2‐H+及び3+~5+の場合、E1/2=-2.3Vで不可逆的還元事象が見られ、これは、Laursenが報告したようにC・からC-への還元に相当する[18]
【0074】
UV‐Vis分光法.電子遷移を理解するために、カチオン及びラジカル(2~5)のUV‐可視光スペクトルを検討した(表2)。ラジカル2‐H・はシャープな吸収帯域を示し、この帯域は392nm(ε=15936)で最大吸光度を有し、445nm(ε=5090)でショルダーを有し、558nm(ε=6496)に広域の吸収ピークを有する。このような種類の遷移帯域は化合物IVには見られず[19]、このことはアリール環又は架橋窒素のいずれかにあるR置換基の誘導効果がラジカル遷移の原因であることを示す。一方、カチオン前駆体(2‐H+)は、617nm(ε=14431)でシャープなピーク、570nm(ε=10526)でショルダー、435nm(ε=6044)で広域な吸収を示す[34]。しかし、2‐H・は、2‐H+と比較して吸収帯域がブルーシフトしており、このことは、中心原子にラジカル特性が存在し、分子骨格におけるヘテロ原子の関与が低下し、共役が顕著に減少していることを示唆している。単離したラジカル中で遷移の局在化が増加することにより、2‐H・の可視領域内における遷移帯域の数が2‐H+と比較して増加する[18]。更に、他のラジカルである3・~5・は、多かれ少なかれ同様の遷移エネルギーを示し、このことは窒素架橋置換基が遷移エネルギーに与える影響は無視できる程度であることを示している。2‐NO2・は、NO2基とN‐アルキル架橋とを組み合わせた誘導的安定化により、全ての遷移の中で最初の遷移で最も高いエネルギーを示した。
【表2】
【0075】
酸素の存在下での全ラジカルの安定性を定量化するために、N2充填グローブボックス内で調製したCF3‐tol中の2・~5・の溶液を空気に曝露し、UV‐vis分光法により経時的にモニタリングした。ラジカル2‐H・及び3・~5・では、ラジカルの吸収スペクトルは経時的にゆっくり減少し(矢印で示す)、数時間で低吸収に達し、最後の吸収スペクトル減衰はそのカチオン形態のものと一致していた(図20参照)。このファミリーの他のラジカルとは異なり、これらのキナクリジル[4]ヘリセニウムラジカルは、分子内の2つのオルト‐メトキシ基が相互作用してラジカルが完全に平面構造になることを防止することから、酸素挿入又は二量体形成が起こらない。立体的な反発が非局在化を抑制し、二量体又はオキソ類似体の形成を回避する[16、17、25]。代わりに、カチオン類似体への完全な可逆的酸化が観察される。2‐H・の半減期(t1/2)は約27分であり、3・では45分、5・では47分、4・では57分であった。4・のn-プロピル断片の正誘導効果により、他のラジカルと比較して、4・は半減期が長くなっている。一方、電子が少ない2‐NO2・ラジカルはt1/2が271分と長く、これはニトロ基並びにn‐プロピル断片の誘導効果によりラジカルが安定化していることを示している。‐NO2基の-I効果が強力である程、スピン密度が低下し、反応性が消失する[26]。更に、電子求引性‐NO2基は酸素分子に対するラジカルの反応性を低下させるので、そのカチオン類似体を形成する2‐NO2・酸化は、選択性が低くなる[27]
【0076】
実施例3.C++・が安定なカソライトであることを支持するラジカルジカチオンの予備結果
酸化剤としてマジックブルーを用いてカルベニウムC+前駆体を酸化することにより、以下のスキームに示すようなカソライトC++を合成し、単離することに成功した。予備EPR分光測定結果を図21に示す。この作業は、X線回折分光法、UV‐Vis分光法、及びDFT計算を使用してこの分子を完全に特徴付けるために、現在進行中である。
【化20】
【0077】
実施例4.電池の光電充電のための光触媒活性の予備的な結果
以下のスキームは、以下の化合物の光触媒活性を示す。図22は、これらの化合物の対応するUV‐可視光スペクトル、サイクリックボルタンメトリー、励起状態電位を示す。
スキームC.アセトニトリル中で記録し、SCF電極を基準とする電位。
【化21】
【0078】
実施例5.支持電解質塩に依存する活性カルボカチオン電解質の堅牢性及びサイクル性の評価
本実施例では、H型セルサイクルを用いて、支持電解質塩に依存する活性カルボカチオン電解質の堅牢性及びサイクル性を評価した。以下の化合物nPrDMQA+を使用した。
【化22】
TBAPF6は当初、入手がし易く、価格が手軽であり(表3参照)、電位安定性範囲が広い(アセトニトリル中で6.6V)[28]ために選択した塩であり、システムはその容量の10%を失う前に550サイクルを実行することができた。TBABF4塩を使用すると、若干高価で堅牢性に欠ける(安定性範囲は6.4V)[28]が、この結果を改善し、680サイクル中に初期充電の90%を超える容量を維持できた。TEABF4塩(6.4Vの安定性)[28]の使用により、テトラブチルアンモニウム塩がシステムの安定性に重要であることが確認された。実際、2回目の充電サイクルから、モデル電池の容量保持率は急速に低下し、195回目のサイクル後では10%を超える損失が見られた。
【表3】
【0079】
これらの研究から、システムの寿命及びその容量維持能力は、支持塩を構成するアニオン及び対カチオンの性質に直接的に強い依存性があることが判明した。
これらの結果は、そのコスト、及び電位制限を伴うガルバノスタットサイクル(GCPL)のサイクル状況において良好な結果をもたらすことから、支持電解質を最初に選択することが適切であるという結論に至った。従って、TBAPF6は、今後の調査においてCH3CNのための良い「モデル」電解質である。また、本明細書で提案したレドックス材料の顕著な堅牢性を強調することも重要であると思われる。H型セルでの試験は、適切なRFBシステムの評価工程での一次安定性を保証する。実際、リチウム電池は最大10Cの充電速度でしか試験されず、これらの条件では60%の損失を示すが、試験した化合物は33Cで充放電された(つまり、現在の電池の極限充電速度の3.3倍の速さである)。この結果はまた、静的系において、最も過酷でストレスの多い条件下で500サイクルを超えてその容量保持を維持したことを示している。
【0080】
実施例6.支持電解質塩に依存する活性カルボカチオン電解質の堅牢性及びサイクル性の評価
本実施例は、堅牢性、規模設定性、及び信頼性の高いフローレドックスセルの設計及び構築に関するものである。非水性、有機系、及び対称型RFBの例を図23に示す。
RFBセルは、Fuel Cell Technologies社から市販されている間隙の無い構造物であり、1枚の交換膜EM(多孔質又はアニオン選択性)、2枚の金属板i、2つの金メッキ集電器ii、2つのPOCO(登録商標)黒鉛蛇紋岩(serpentin)双極電極iii、2つのテフロンガスケットiv、及び面積5cm2の2つの黒鉛フェルト(Sigracet29AA)vを含む。セルを密閉するために8本のボルトを使用した。2チャネルのCole‐Parme(Permer) Masterflex蠕動ポンプ、2つの電解質タンク、及びいくつかのポンプチューブを用い、RFBを組み立てた。
対称型ONRFBにおける電気化学的エネルギー貯蔵のためのレドックス活性材料としての電解質を検証するために、いくつかの点を評価した:
‐ 様々なDMQA+濃度(エネルギー密度だけでなく、粘度、ひいてはセル内のエネルギー輸送効率にも影響を与える)。
‐ 電流密度(充電速度C、電気活性物質の疲労、研究期間に影響を与える)
‐ 膜EMの性質、アニオン性(非常に高額であり、VRFBの展開コストの40%を占めるが、セパレータとしては既に実証済み)又は多孔質の膜(4~10倍安く、この系の対称性により可能になる)。
【0081】
標準化した切断(炭素フェルト、膜、ガスケット)、全ての管の接続、流速の較正、特にその信頼性及び結果の再現性を担保するためのRFBシステム全体の漏出試験に、多大な努力を払った。多くの調整及び微調整を経て、専用のグローブボックス内に完全に組み立てたRFBシステムを構築した。
予備結果を得るために、1タンカー当たり、0.1MのTBAPF6CH3CNに含まれるC+モデルの1mM溶液を10mL使用し、1タンカー当たり10mL/min-1の流速で試験を実施した。この評価に選択したEMは多孔質膜(Daramic HD plus、175μm、Daramic社から大量に提供)であった。本明細書に記載の化合物の適合性を証明するために、nPrDMQA+は「実際の」RFB用途で使用するC+モデルであった。異なる電流密度(1、3、5、10mA・cm2、それぞれ5サイクル)について、100%の充電状態(SOC)で、電位制限を伴うガルバノスタットサイクル(GCPL)定電流定電圧(CCCV)サイクルを行い、「通常の」領域より良好な結果をもたらすと期待される最もストレスの掛かる条件(例えば、>10C)でデータを記録した(図24)。
【0082】
充放電が正常に動作したため、安価な多孔質膜はセパレータとして良好な性能を示し、多孔質セパレータを用いたSONRFBの概念実証の信頼性を証明するものとなった。これは、異なる加工配列(誤った>100Cも含む)にも当てはまった。1mA・cm2では、高いCレート(19C)にも関わらず、電気化学過程の証拠として、2.1V付近でのC+のC・への還元が明確な根拠になっている(黒いトレース、図24)。
サイクル数に沿った容量保持及び効率の結果に焦点を当てているが、その結果は、そのベータ版におけるシステムにとって、全く驚くべきものであった(図25)。
平衡期間であると解釈される19Cサイクルに沿って、放電容量(青いトレース、RFBの古典的な挙動)は75%から83%までゆっくりと上昇した。その後、56C、93C、187Cの充電速度に沿って、Q放電はほぼ90%まで上昇し、CEも90%に近づいた。最初の5回のバランスサイクルを省略すると、Cレート状態が5.5倍高い場合でさえ、EE及びVEの値は良好であり(>50%)、同じ化合物をH型セルで観察した場合の値に近かったことに留意されたい。この結果は、提案したアプローチの有効性を認めるとともに、H型セルが、完全なRFBセルへスケールアップする前の新規化合物のための非常に有効な試験台システムであることを際立たせている。更に、最大10Cレートの充電、10倍濃度、及び最低200サイクルでの調査が進行中である。
【0083】
パラグラフ1.
レドックスフロー電池であって、前記レドックスフロー電池は:
共役複素環式カルベニウム化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び
共役複素環式カルベニウム化合物の中性ラジカルを含むアノライト
を含み、
カソライト及びアノライトに存在する共役複素環式化合物は同じ化合物である、レドックスフロー電池。
【0084】
パラグラフ2.
レドックスフロー電池であって、前記レドックスフロー電池は:
式Iの化合物のラジカルジカチオンを含むカソライト;及び
式Iの化合物の中性ラジカルを含むアノライト;
を含み、
式(I)の化合物は以下の構造で表される:
【化23】
式中、
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又はL2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており;置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される、レドックスフロー電池。
【0085】
パラグラフ3.
式Iの化合物は下記式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である、パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【化24】
【0086】
パラグラフ4.
1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである、パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【0087】
パラグラフ5.
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2である、パラグラフ4に記載のレドックスフロー電池。
【0088】
パラグラフ6.
4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、又は‐(CH24‐Ar3であり;Ar3は2‐ピリジニルである、パラグラフ5に記載のレドックスフロー電池。
【0089】
パラグラフ7.
4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である、パラグラフ5に記載のレドックスフロー電池。
【0090】
パラグラフ8.
4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは1である、パラグラフ7に記載のレドックスフロー電池。
【0091】
パラグラフ9.
Yはそれぞれ独立してH又はNO2である、パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【0092】
パラグラフ10.
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである、パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【0093】
パラグラフ11.
式Ibの化合物は以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである、パラグラフ3に記載のレドックスフロー電池。
【0094】
パラグラフ12.
式Iの化合物は下記式のいずれか1種の化合物である、パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【化25】
【0095】
パラグラフ13.
式Iの化合物は更に、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート(tetrarylborate)、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスファート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハライド、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む、パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【0096】
パラグラフ14.
更に、アノライトとカソライトとの間に配置したセパレータを含むパラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【0097】
パラグラフ15.
セパレータは多孔質膜である、パラグラフ14に記載のレドックスフロー電池。
【0098】
パラグラフ16.
更に、溶媒及び電解質塩を含む、パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池。
【0099】
パラグラフ17.
電解質塩は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である、パラグラフ16に記載のレドックスフロー電池。
【0100】
パラグラフ18.
溶媒は、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、ジメチルホルムアミド、水、ハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む、パラグラフ16に記載のレドックスフロー電池。
【0101】
パラグラフ19.
式Iの化合物は光活性を有する、パラグラフ1に記載のレドックスフロー電池。
【0102】
パラグラフ20.
パラグラフ2に記載のレドックスフロー電池を操作する方法であって、前記方法は、カソライト区画内にカソライトを流し、アノライト区画内にアノライトを流す工程を含み、カソライト区画とアノライト区画とは多孔質セパレータにより分離し、アノライトからカソライトへの電子輸送を促進する、方法。
【0103】
パラグラフ21.
電子輸送後、外部電源によりカソライト及び/又はアノライトを再生する工程を含むパラグラフ20に記載の方法。
【0104】
パラグラフ22.
カソライトを再生する工程は、光利用酸化を介してカソライトを再生する工程を含むパラグラフ21に記載の方法。
【0105】
パラグラフ23.
アノライトを再生する工程は、光利用還元を介してアノライトを再生する工程を含むパラグラフ21に記載の方法。
【0106】
パラグラフ24.
レドックスフロー電池であって、前記レドックスフロー電池は:
第1酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むカソライト;及び
第2酸化状態にある共役複素環式カチオン化合物を含むアノライト;
を含み、
第1酸化状態は第2酸化状態より酸化状態の程度が高い、レドックスフロー電池。
【0107】
パラグラフ25.
カソライト及びアノライト中の共役複素環式カチオン化合物はそれぞれ独立して式Iの化合物であり、式(I)の化合物は以下の構造で表される:
【化26】
式中:
Xは-4~+4であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R3a、R3b、R3c、及びR3dはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、NH2、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2R、もしくはAr1であり;
又は、R2a及びR3dは一緒に‐X1‐を形成し;
又は、R1a及びR2dは一緒に‐X2‐を形成し;
又は、R1d及びR3aは一緒に‐X3‐を形成し;
又は、R1a及びR1bは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
又は、R2c及びR2dは自身が結合している原子と一緒にフェニルを形成し;
1、X2及びX3はそれぞれ独立してO、NR4a、PR4a、CR4a4b、又はSiR4a4bであり;
4a及びR4bはそれぞれ独立してH、ハライド、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z;又は‐L2‐Z2であり;
Yはそれぞれ独立してH、ハライド、OR5a、NR5a5b、PR5a5b、NO2、CN、CF3、CO2R、N3、又はAr2であり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、C1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar4、‐L1‐Ar4、又は‐L1‐Z1であり;
L及びL1はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレン、C1‐C12ヘテロアルキレン、又はアリーレンであり;
2はそれぞれ独立してC1‐C12アルキレンであり;
Z及びZ1はそれぞれ独立して共役複素環式カルベニウムを含む部分であり;
2はそれぞれ独立して‐(OCH2CH2O)nCH3であり;
nはそれぞれ独立して1~20であり;
Rはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル又はアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して非置換もしくは置換フェニル、又は非置換もしくは置換ヘテロアリールであり;
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立して0~5個の置換基で置換しており;置換基はそれぞれ独立してハライド、CF3、NH2、C1‐C4アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、NO2、CN、又はアリールから成る群より選択される、パラグラフ24に記載のレドックスフロー電池。
【0108】
パラグラフ26.
式Iの化合物はそれぞれ独立して下記式Ia、式Ib、又は式Icの化合物である、パラグラフ25に記載のレドックスフロー電池。
【化27】
【0109】
パラグラフ27.
1、X2、及びX3はそれぞれ独立してO又はNR4aである、パラグラフ25に記載のレドックスフロー電池。
【0110】
パラグラフ28.
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4アルコキシ、C1‐C4アルキルアミノ、C1‐C4ジアルキルアミノ、Ar3、‐L‐Ar3、‐L‐Z、又は‐L2‐Z2である、パラグラフ27に記載のレドックスフロー電池。
【0111】
パラグラフ29.
4aはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、‐(CH2)‐N(Me)2、‐(CH22‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH23‐N(Me)2、‐(CH24‐N(Me)2、‐(CH22‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、‐(CH23‐Ar3、又は‐(CH24‐Ar3であり;Ar3は2‐ピリジニルである、パラグラフ28に記載のレドックスフロー電池。
【0112】
パラグラフ30.
4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である、パラグラフ28に記載のレドックスフロー電池。
【0113】
パラグラフ31.
4aはそれぞれ‐(CH2)‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH22‐(OCH2CH2O)nCH3、‐(CH23‐(OCH2CH2O)nCH3、又は‐(CH24‐(OCH2CH2O)nCH3であり;nは1である、パラグラフ30に記載のレドックスフロー電池。
【0114】
パラグラフ32.
Yはそれぞれ独立してH又はNO2である、パラグラフ25に記載のレドックスフロー電池。
【0115】
パラグラフ33.
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシである、パラグラフ25に記載のレドックスフロー電池。
【0116】
パラグラフ34.
式Ibの化合物はそれぞれ独立して以下の化合物である:
2及びX3はそれぞれNR4aであり;
4aはそれぞれ独立してC1‐C12アルキル、C1‐C4ジアルキルアミノ、‐L‐Ar3、又は‐L2‐Z2であり;
1a及びR2dはそれぞれC1‐C4アルコキシであり;
1b、R1c、R2b、R2c、R3b、及びR3cはそれぞれ独立してH、C1‐C4アルキルアミノ、又はNO2であり;
Yはそれぞれ独立してH、NO2、又はNR5a5bであり;
5a及びR5bはそれぞれ独立してH、CF3、又はC1‐C12アルキルである、パラグラフ26に記載のレドックスフロー電池。
【0117】
パラグラフ35.
式Iの化合物はそれぞれ独立して下記式のいずれか1種の化合物である、パラグラフ25に記載のレドックスフロー電池。
【化28】
【0118】
パラグラフ36.
共役複素環式カチオン化合物は更に、それぞれ独立してテトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ペルクロラート、テトラアリールボラート(tetrarylborate)、トリフルオロメタンスルホナート、オキサラトボラート、オキサラート、ホスファート、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハライド、イオン液のアニオン、ヒドロキシド、カルボナート、ビカルボナート、スルファート、ハイドロゲンスルファート、スルフィット;又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるアニオンを含む、パラグラフ24に記載のレドックスフロー電池。
【0119】
パラグラフ37.
更に、アノライトとカソライトとの間に配置したセパレータを含むパラグラフ24に記載のレドックスフロー電池。
【0120】
パラグラフ38.
セパレータは多孔質膜である、パラグラフ37に記載のレドックスフロー電池。
【0121】
パラグラフ39.
更に、溶媒及び電解質塩を含むパラグラフ24に記載のレドックスフロー電池。
【0122】
パラグラフ40.
電解質塩は、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラアリールホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オキサラトホウ酸、シュウ酸、リン酸、ビス‐トリフルオロメタンスルホンイミド、ハロゲン化物の、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はアルキルアンモニウム塩;又はこれらのいずれか2種以上の混合物である、パラグラフ39に記載のレドックスフロー電池。
【0123】
パラグラフ41.
溶媒は、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、ジメチルホルムアミド、水、ハロゲン化溶媒、又はイオン液を含む、パラグラフ39に記載のレドックスフロー電池。
【0124】
パラグラフ42.
共役複素環式カチオン化合物はそれぞれ独立して光活性を有する、パラグラフ24に記載のレドックスフロー電池。
【0125】
パラグラフ43.
レドックスフロー電池の開回路電位は約1V、1.5V、又は2Vを超える、パラグラフ24に記載のレドックスフロー電池。
【0126】
パラグラフ44.
パラグラフ24に記載のレドックスフロー電池を操作する方法であって、前記方法は、カソライト区画内にカソライトを流し、アノライト区画内にアノライトを流す工程を含み、カソライト区画とアノライト区画とは多孔質セパレータにより分離し、アノライトからカソライトへの電子輸送を促進する、方法。
【0127】
パラグラフ45.
電子輸送後、外部電源によりカソライト及び/又はアノライトを再生する工程を含むパラグラフ44に記載の方法。
【0128】
パラグラフ46.
カソライトを再生する工程は、光利用酸化を介してカソライトを再生する工程を含む、パラグラフ45に記載の方法。
【0129】
パラグラフ47.
アノライトを再生する工程は、光利用還元を介してアノライトを再生する工程を含む、パラグラフ45に記載の方法。
【0130】
特定の実施形態を例示し、説明してきたが、以下の特許請求の範囲に定義されるようなより広い態様における技術から逸脱することなく、当技術分野の通常の技術に従って実施形態に変更及び修正を加え得ることは理解すべきである。
本明細書に例示的に記載した実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない要素(単数又は複数)や制限(単数又は複数)がない場合、好適に実施し得る。従って、例えば、用語「を含む」、「含む」、「含有する」等は、限定されることなく、拡大解釈されるものとする。また、本明細書で採用した用語及び表現は説明の用語として使用してきたものであり、限定するものではなく、このような用語及び表現の使用において、表示し、説明した特徴又はその特徴の一部の任意の等価物を排除する意図はないが、請求された技術の範囲内で様々な改変が可能であることは認識されているものとする。また、表現「基本的に~から成る」は、具体的に言及した要素、及び請求した技術の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない追加の要素を含むと理解されているものとする。表現「から成る」は、特定していない要素は全て除外する。
【0131】
本開示は、本願に記載した特定の実施形態の観点で限定されるものではない。当業者には明らかなように、開示の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変更を加えることが可能である。本明細書に列挙したものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法及び組成物は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まるように意図している。本開示は、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ、そのような特許請求の範囲が権利を有する完全な均等物の範囲に従って制限すべきである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的系に限定されず、それらは当然に変更可能であることは理解すべきである。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態の説明だけを目的とし、限定することを意図していないことも理解すべきである。
また、本開示の特徴又は態様をマーカッシュ群の観点から説明する場合、それにより本開示がマーカッシュ群の任意の個々の構成要素、又は構成要素の亜群の観点からも説明されていることは当業者は認識しているものとする。
【0132】
当業者に理解されているように、任意の及び全ての目的において、特に書面での説明を提供する観点から、本明細書に開示した全ての範囲は、その任意の及び全ての可能な部分範囲及び部分範囲の組み合わせも包含する。同じ範囲を少なくとも均等な半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分割していることが十分に説明され、可能になっていることは、列挙した任意の範囲により容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書で議論する各範囲は、下3分の1、中3分の1、及び上3分の1等に容易に分割できる。また、当業者に理解されているように、「まで」、「少なくとも」、「を超える」、「より少ない」等の全ての語句は、列挙した数を含み、その後、上述したように部分範囲に分割できる範囲を指す。最後に、当業者に理解されているように、範囲は各個別のメンバーを含む。
本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、公開特許、及び他の文書は、個々の刊行物、特許出願、公開特許、又は他の文書が全体として参照により援用されることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に援用される。参照により援用された文章に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する範囲においては除外される。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載する。
【0133】
[参考文献]



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】