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特表2023-523276化学反応を実行するための反応器および方法
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  • 特表-化学反応を実行するための反応器および方法 図1
  • 特表-化学反応を実行するための反応器および方法 図2
  • 特表-化学反応を実行するための反応器および方法 図3
  • 特表-化学反応を実行するための反応器および方法 図4A
  • 特表-化学反応を実行するための反応器および方法 図4B
  • 特表-化学反応を実行するための反応器および方法 図5
  • 特表-化学反応を実行するための反応器および方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】化学反応を実行するための反応器および方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022564630
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021060599
(87)【国際公開番号】W WO2021214256
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】20171182.7
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
(72)【発明者】
【氏名】ライザー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】キーゼ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーゲマン,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】エンゲンハイスター,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ファイグル,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレンホーファー,アントン
(72)【発明者】
【氏名】デルホム-ノイデッカー,クララ
(72)【発明者】
【氏名】シュストフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】イェンネ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】コッヘンデルファー,キアラ・エンネ
(72)【発明者】
【氏名】ライプ,ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】キューン,ハインツ-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ,ライナー
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA62
4G075BA10
4G075CA02
4G075CA63
4G075DA02
4G075DA12
4G075EB01
4G075EB21
4G075FC01
4G075FC07
(57)【要約】
本発明は、反応容器(10)および1つまたは複数の反応管(20)を有し、化学反応を実行するための反応器(100,200)に関し、1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のために、1つまたは複数の電力入力要素(41)が、反応容器(10)内に案内され、1つまたは複数の電力入力要素(41)はおのおの、棒状部分(43)を有し、1つまたは複数の棒状部分(43)はおのおの、反応容器(10)の壁(14)を通過して壁通路(15)内をそれぞれ延びている。棒状部分(43)が突出する接続チャンバ(60)は、反応容器(10)の外側に、反応容器(10)の壁(14)に隣接して配置され、壁通路(15)内には、棒状部分(43)が、反応容器の壁を通過して延びていると規定されている。接続チャンバ(60)に不活性ガスを加えるように設定されたガス供給手段(80~82)が設けられ、棒状部分(43)が長手方向に移動可能な方式で内部に収容される壁通路(15)は、接続チャンバ(60)内に供給された不活性ガスの少なくとも一部が、反応容器(10)内に流れ込むように、ガス透過性となるように設計される。対応する方法も本発明の主題である。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器(10)および1つまたは複数の反応管(20)を有し、化学反応を実行するための反応器(100,200)であって、前記1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のために、1つまたは複数の電力入力要素(41)が、前記反応容器(10)内に案内され、前記反応器(100,200)は、
- 前記1つまたは複数の電力入力要素(41)がおのおの、棒状部分(43)を有し、1つまたは複数の前記棒状部分(43)がおのおの、前記反応容器(10)の壁(14)を通過してそれぞれ壁通路(15)内を延び、
- 前記棒状部分(43)が突出する接続チャンバ(60)が、前記反応容器(10)の外側に、前記壁通路(15)が形成される前記反応容器(10)の前記壁(14)に隣接して配置され、
- 不活性ガスを前記接続チャンバ(60)へ加えるために設定されるガス供給手段(80~82)が設けられ、
- 前記棒状部分(43)が長手方向に移動可能な方式で内部に収容される前記壁通路(15)は、前記接続チャンバ(60)内に供給された前記不活性ガスの少なくとも一部が、前記反応容器(10)内に流れ込むように、ガス透過性となるように設計されることを特徴とする、反応器(100,200)。
【請求項2】
前記1つまたは複数の反応管(20)の管部分(21,22)はおのおの、前記反応容器(10)内の第1の領域(11)と第2の領域(12)との間に延び、前記管部分(21,22)の電気的加熱のため、前記第1の領域(11)内の前記管部分(21,22)はおのおの、電源(50)の電力接続部(U,V,W)に電気的に接続されるか、または接続可能であり、前記管部分(21,22)のそれぞれ1つまたはそれぞれのグループが電気的に接続される電力入力構成(40)が、前記第1の領域(11)に設けられ、前記電力入力構成(40)はおのおの、それぞれが前記反応容器(10)の壁(14)を通過して壁通路(15)内に延びる前記棒状部分(43)を有する前記電力入力要素(41)のうちの1つを有する、請求項1に記載の反応器(100,200)。
【請求項3】
前記ガス供給手段(80~82)は、前記不活性ガスとして、窒素、二酸化炭素、および/またはアルゴンをそれぞれ超大気圧含有量で有するガスまたはガス混合物を提供するように設定される、請求項1または請求項2に記載の反応器(100,200)。
【請求項4】
前記反応容器(10)および前記接続チャンバ(60)は、1つまたは複数の目標出口(71)を除いて、ともに気密的に収容される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項5】
前記1つまたは複数の目標出口(71)は、1つまたは複数の煙突(70)に接続される、請求項4に記載の反応器(100,200)。
【請求項6】
前記ガス供給手段(80~82)は、前記煙突(70)の寸法決定に基づいて、前記反応容器(10)および/または前記接続チャンバ(60)内の最大酸素含有量を調整するように設定される、請求項5に記載の反応器(100,200)。
【請求項7】
前記ガス供給手段(80~82)は、前記1つまたは複数の煙突(70)における酸素測定に基づいて、不活性ガスの量を規制するように設定される、請求項6に記載の反応器(100,200)。
【請求項8】
測定された酸素含有量が目標酸素含有量を超えた場合、前記反応管への炭化水素の添加により反応動作を回避するように設定される手段を有する、請求項7に記載の反応器(100,200)。
【請求項9】
前記反応容器(10)内の圧力、および/または、前記煙突(70)内の炭化水素含有量が、所定の値を超えた場合、前記反応管への炭化水素の添加により反応動作を回避するように設定される手段を有する、請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項10】
冷却流体が通過して流入できる冷却パネル(61)が、前記接続チャンバ(60)内に設けられ、前記接続チャンバ(60)内に突出する前記棒状部分(43)の、少なくとも2つの間、または少なくとも2つのグループの間に配置される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項11】
反応容器(10)および1つまたは複数の反応管(20)を有する反応器(100,200)を使用して化学反応を実行するための方法であって、前記1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のために、1つまたは複数の電力入力要素(41)が、前記反応容器(10)内に案内され、前記方法は、反応器(100,200)が使用され、前記反応器では、
- 前記1つまたは複数の電力入力要素(41)がおのおの棒状部分(43)を有し、1つまたは複数の前記棒状部分(43)がおのおの、前記反応容器(10)の壁(14)を通過してそれぞれの壁通路(15)内に延び、
- 前記棒状部分(43)が突出する接続チャンバ(60)が、前記反応容器(10)の外側に、前記壁通路(15)が形成される前記反応容器(10)の前記壁(14)に隣接して配置され、
- 不活性ガスを前記接続チャンバ(60)へ加えるために設定されるガス供給手段(80~82)が設けられ、
- 前記棒状部分(43)が長手方向に移動可能な方式で内部に収容される前記壁通路(15)は、前記接続チャンバ(60)内に供給された前記不活性ガスの少なくとも一部が、前記反応容器(10)内に流れ込むように、ガス透過性となるように設計されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
反応器が使用され、前記反応器では、前記1つまたは複数の反応管(20)の管部分(21,22)はおのおの、前記反応容器(10)内の第1の領域(11)と第2の領域(12)との間に延び、前記管部分(21,22)の加熱のため、前記第1の領域(11)内の前記管部分(21,22)はおのおの、電源(50)の電力接続部(U,V,W)に電気的に接続され、前記管部分(21,22)のそれぞれ1つまたはそれぞれのグループが電気的に接続される電力入力構成(40)が、前記第1の領域(11)に設けられ、前記電力入力構成(40)はおのおの、それぞれが前記反応容器(10)の壁(14)を通過して壁通路(15)内に延びる前記棒状部分(43)を有する前記電力入力要素(41)のうちの1つを有する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルにしたがって、化学反応を実行するための反応器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業における多くのプロセスにおいて、1つまたは複数の反応物が、加熱された反応管を通過し、そこで、触媒的または非触媒的に反応する、反応器が使用される。加熱は特に、進行中の化学反応に必要な活性化エネルギに打ち勝つために役立つ。この反応は、全体として吸熱的に、または活性化エネルギに打ち勝った後、発熱的に進行する可能性がある。本発明は、特に、強い吸熱反応に関する。
【0003】
そのようなプロセスの例は、水蒸気分解、種々の改質プロセス、特に水蒸気改質、乾式改質(二酸化炭素改質)、混合改質プロセス、アルカンの脱水素プロセスなどである。水蒸気分解において、反応管は、反応器内に少なくとも1つのU字形屈曲部を有するコイルの形態で反応器を通過して案内されるが、U字形屈曲部なしで反応器を通過して延びる管は通常、水蒸気改質で使用される。
【0004】
本発明は、そのようなすべてのプロセスおよび反応管の設計に適している。ウルマン産業化学事典の、たとえば、2009年4月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a22_211の記事「エチレン」、「ガス生産」、および「プロペン」は、純粋に例示目的のためにここで参照される。
【0005】
対応する反応器の反応管は、従来、バーナを使用して加熱される。この場合、反応管は、バーナも配置されている燃焼チャンバを通過して送られる。
【0006】
しかしながら、たとえばDE 10 2015 004 121 A1(同様にEP 3 075 704 A1)に記載されているように、たとえば、低減された局所的な二酸化炭素排出の有無に関わらず製造される合成ガスおよび水素の需要は、現在増加している。しかしながら、この需要は、典型的には化石エネルギ担体の燃焼により、燃焼反応器が使用されるプロセスでは満たすことができない。たとえば、コストが高いなどの理由で、他のプロセスは除外される。同じことは、アルカンの水蒸気分解または脱水素によるオレフィンおよび/または他の炭化水素の提供にも当てはまる。そのような場合でも、少なくともその場で排出される二酸化炭素の量が少ないプロセスが望まれる。
【0007】
この背景に対して、前述のDE 10 2015 004 121 A1は、燃焼に加えて、水蒸気改質のための反応器の電気的加熱を提案している。この場合、3つの外部導体に三相交流電圧を提供する1つまたは複数の電圧源が使用される。各外部導体は反応管に接続されている。パイプラインが開口し、反応管が導電的に接続されたコレクタによって、スターポイントが実現されるスター回路が形成される。このようにして、コレクタは理想的には、無電位のままである。鉛直線に対して、コレクタは、燃焼チャンバの下方および外側に配置され、好ましくは反応管に対して横断方向に、すなわち水平に沿って延在する。WO 2015/197181 A1も同様に、反応管が、スターポイント回路に配置された反応器を開示している。
【0008】
電流が反応管を通過して流れる反応管の直接加熱に加えて、反応管の間接的な電気的加熱についても多種多様な概念がある。間接的な電気的加熱は、とりわけWO 2020/002326 A1に記載されているように、外部電気的加熱の形態で行うことができる。たとえばWO 2019/228798 A1に開示されているように、内部加熱も可能である。抵抗加熱またはインピーダンス加熱に加えて、たとえばWO 2017/072057 A1に記載されているように、反応管または触媒床の誘導電気的加熱を行うことができる。誘導加熱は、たとえば、内部または外部の加熱素子、または反応管自体を加熱することができる。反応管の直接(非誘導)加熱は、DE 10 2015 004 121 A1にも開示されている。加熱については、多相交流または単相交流または直流で基本的な概念を実現できる。直流による、または単相交流を用いた、反応器の直接加熱の場合、無電位のスターポイントを有するスター回路は実現できないが、電力入力は基本的に同様の方式で実現できる。本発明は、電気的加熱のすべての変形例に適している。
【0009】
WO 2004/091773 A1は、高温でガス反応を実行するための電気的加熱式反応器を記載している。反応器は、反応器ブロック、電気的加熱に適した材料の1つまたは複数のモノリシックモジュールで構成され、これらのモジュールはハウジングによって取り囲まれ、モジュールを通過して延在し、反応チャネルとして設計されたチャネルで、および反応器ブロックに電流を伝導または誘導するためのデバイスで構成される。そのような反応器の動作中の安全性は、反応器ブロックのハウジングが、前記反応器ブロックを気密方式で密閉する二重壁ジャケットと、不活性ガスを二重壁ジャケットに供給するための少なくとも1つのデバイスとを有するという点において高められる。
【0010】
以下でも説明されるように、電気的加熱式反応器の場合、特別な安全関連の態様を遵守する必要がある。本発明の目的は、これらの態様を考慮に入れ、このようにして電気的加熱式反応器の有利な動作を可能にする措置を特定することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2020/002326 A1
【特許文献2】WO 2019/228798 A1
【特許文献3】WO 2017/072057 A1
【特許文献4】DE 10 2015 004 121 A1
【特許文献5】WO 2004/091773 A1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2009年4月15日
【非特許文献2】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、2006年12月15日
【非特許文献3】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a22_211、2000年6月15日
【発明の概要】
【0013】
この背景に対して、本発明は、独立請求項のプリアンブルにしたがって、化学反応を実行するための反応器および方法を提案する。実施形態は、従属請求項および以下の説明の主題である。
【0014】
本発明の基礎である、電化された炉の概念(「炉」という用語は、対応する反応器または少なくともその断熱された反応空間を示すと一般に理解される)において、たとえば反応管、またはその対応する管部分(以下、略して「管」とも呼ばれる)自体が、熱を発生させるための電気抵抗器として使用される。このアプローチは、外部の電気的加熱素子による間接加熱と比較して効率が高く、達成可能な熱流束密度も高いという利点がある。しかしながら、冒頭で述べたように、前記加熱が有利であることが証明された場合、本発明の範囲内で、任意の他のタイプの電気的加熱を(直接的または間接的に、抵抗、インピーダンス、または誘導加熱の形態で、単相交流または多相交流によって、または直流を用いて)実行することも可能である。
【0015】
多相交流で加熱する場合、電流はM個の別々に接続された相を介して、直接加熱された反応管に供給される。M相に接続された導体性反応管は、スターポイントにも電気的に接続され得る。相数Mは特に3であり、従来の三相電流電源またはネットワークの相数に対応する。しかしながら、原則として、本発明は、3相の使用に限定されず、より多くの相数、たとえば4,5,6,7または8の相数でも使用できる。位相オフセットは、特に360°/M、すなわち三相電流に対して120°である。
【0016】
多相交流を有する電気的加熱では、接続されたパイプラインの電気的絶縁を不要にするスターポイントでのスター回路によって、相間の等電位化が達成される。特定の部分を断熱するための金属製反応管の破損は、特に高温が使用され、必要な材料費および建設費が高く、望ましくないため、これは、そのような炉概念の特別な利点を表している。
【0017】
しかしながら、本発明により提案され、以下に説明される措置は、単相交流電流および直流電流の使用に同様に適しており、本発明は、交流電流で加熱される反応器および直流で加熱される反応器の両方で、または対応する混合形態でも使用できる。前述のように、本発明は、間接加熱反応管での使用にも適している。直流構成の場合、たとえば、電流源のタイプ、および電力入力、または電流が供給される対応する部分に対向する反応管の領域のみが、交流構成と異なる。後者では、異なる管部分の電気的接続は、任意選択的にのみ実行される。無電位スターポイントは直流構成には存在しないので、電流の流れを外部に安全に戻す適切な電流放電要素を提供する必要がある。後者は、以下に説明する電力入力と同様に設計できる。
【0018】
特許請求の範囲の用語において、本発明は、反応容器(すなわち、断熱された、または少なくとも部分的に断熱された領域)および1つまたは複数の反応管を有し、化学反応を実行するための反応器に関し、反応管の電気的加熱のために、1つまたは複数の電力入力要素が、反応容器内に案内される。本発明によれば、電力入力要素は、棒状部分を有するか、またはいくつかの電力入力要素おのおのが棒状部分を有し、棒状部分は、壁通路内を、またはそれぞれ反応容器の壁を通過して壁通路内を延びている。
【0019】
本発明の範囲内で、棒状部分が突出する接続チャンバは、反応容器の外側に、壁に隣接して配置され、電流入力要素の棒状部分が、この壁を通過して延びており、つまり、ここに壁通路が形成される。(以下、複数形は簡略化のためだけに使用され、何ら意図した限定をもたらすものではないが、説明は、個々に存在する要素に同様に適用される)棒状部分は、接続チャンバ内で、特に可撓性接触要素、たとえば、ストランド、パワーストリップ、ラメラストリップ、または電流スプリングへ、たとえば、適切な中間部分または中間要素を介して接続される。これらの可撓性接触要素は、棒状部分に接続されていない端部を用いて、剛性接触要素に固定され、剛性接触要素は通常、接続チャンバ内に移動できないように、たとえば壁で絶縁された方式で配置され、たとえば、DC変換器またはAC変換器によって電力供給される。可撓性接触要素は、壁通路内の棒状部分の長手方向の動きを補償する。言い換えれば、棒状部分は壁通路内に長手方向に移動可能に収容される。
【0020】
本発明の範囲内で、長手方向に移動可能な方式で内部に収容された棒状部分を有する壁通路は、ガス透過性がある、すなわち、反応容器から接続チャンバへの、およびその逆へのガスの一定の移動を可能にするように設計される。
【0021】
本発明によれば、少なくとも部分的に接続チャンバに供給され、壁通路を通過して反応容器に流出する不活性ガスは、たとえば、供給ノズルまたは開口部、ライン、およびそれに接続されたガスリザーバを含む、対応して設定されたガス供給手段によって接続チャンバに供給される。不活性ガスは、接続チャンバ内に少なくとも部分的に供給される。接続チャンバへの供給は、接続チャンバがフラッシングされ、接続チャンバ内で追加の冷却効果が達成され、反応容器内で可能な限り方向付けられたフラッシング流が下から上に達成される、という有利な効果をもたらす。たとえば、反応容器内のフラッシング流をさらに改善するために、特に、酸素が蓄積する可能性があるデッドゾーンを回避するために、さらなる供給ポイントを、任意のポイントに提供することができる。
【0022】
本発明は、1つまたは複数の反応管の多数の管部分が、いずれの場合も、反応容器内の第1の領域と第2の領域との間を、第1の領域と第2の領域との間の中間領域を通過して延び、管部分の電気的加熱のために、第1の領域内の管部分はおのおの、以下で詳細に説明するように、電源の1つまたは複数の電力接続部に、電気的に接続されているか、または接続可能であり、つまり、直流構成の場合、1つまたは複数の直流接続に、交流構成の場合、多相交流電源の相接続(「外部導体」)に接続する実施形態を参照して以下にさらに説明される。前述したようにも使用できる、代替的に同様に可能な間接加熱では、対応する加熱デバイス用の接続要素が、反応容器の壁を通過して案内される。
【0023】
前述したように、本発明の対応する実施形態では、この場合、それぞれの交流電圧は、位相接続を介して交流構成によって提供され、位相接続の交流電圧は、上記で説明した方式で位相シフトされる。たとえば、供給ネットワークまたは適切な発電機および/または変圧器は、交流電源として機能することができる。管部分はスター回路を形成し、電流源とは反対側の端部、すなわち第2の領域において互いに導電的に結合される。
【0024】
一方、直流構成の場合、他の実施形態では、同じまたは異なる静電電位が、1つまたは複数の直流接続を介して供給され、電流回収要素が、電力入力の反対側のそれぞれの端部において設けられる。1つまたは複数の電流電源からの単相交流電流を使用する場合にも、同じことが当てはまる。
【0025】
中間領域において、本発明の言及された実施形態における管部分は、特に自由に、すなわち、機械的支持なしで、電気的接触なしで、および/または一方への流体的または純粋に機械的な交差接続なしで、反応容器を通過して延びている。この実施形態では、管部分は特に、中間領域において実質的にまたは完全に真っ直ぐに延びており、ここで、「実質的に真っ直ぐ」とは、10°または5°未満の角度偏差が存在することを意味すると理解されるべきである。
【0026】
特に、水蒸気分解における開裂反応は、強い吸熱反応である。したがって直接加熱(オーム抵抗)による反応に必要なエネルギの供給には、高電流強度が必要であり、これは、反応器の外側に配置された1つまたは複数の変圧器によって、前述した反応器の概念で設けられる。
【0027】
前述した電気的加熱のすべての概念において、電流は、可能な限り低い損失(低い電気抵抗)で、断熱反応器の外部から内部へ、およびプロセス伝導領域へ伝導されねばならない。
【0028】
熱損失を低減して、高いシステム効率を達成するために、電気的に加熱された反応管を、(ここでは、反応容器と呼ばれる)断熱ボックスに配置することが不可欠である。反応容器の断熱壁を貫通するとき、電流導体は、これらの領域において、許容できないほど高い局所温度が発生することなく、準断熱ゾーンを打ち勝つ必要がある。
【0029】
したがって、説明した本発明の特に好ましい実施形態の範囲内では、それぞれの管部分、または管部分のそれぞれのグループが電気的に接続される電力入力構成が、反応器の第1の領域、すなわち電力入力の領域に提供される。管部分は、いくつかの管部分のそれぞれの1つまたはそれぞれのグループが、電力入力構成のそれぞれの1つに接続されるような数で設けられ、逆もまた同様である。本発明の範囲内で提供される電力入力構成の数は、交流構成の場合、多相交流電源の位相接続の数に依存するか、またはこの数は直流接続の数に対応する。
【0030】
電力入力要素はおのおの、前述した棒状部分のうちの少なくとも1つを有し、棒状部分のおのおのは、その壁通路において、反応容器の壁を通過して延びている。ストランドなどとは対照的に、たとえば、本発明のすべての実施形態における棒状部分は、特に、一体的に形成される(すなわち、特に平行または絡み合ったワイヤの形態ではない)。棒状部分は、中実または少なくとも部分的に管状に、すなわち中空の棒として設計することができる。棒状部分は、反応容器の壁に垂直な、反応容器の壁に平行な最大の横断方向延長部の少なくとも2倍、特に少なくとも3倍、4倍、または5倍、たとえば最大10倍の大きさである長手方向延長部を有する。棒状部分は、たとえば、断面が円形、楕円形、三角形、または多角形であることができ、または他の任意の形状を有することができる。
【0031】
本発明のすべての実施形態において、不活性ガスは、窒素、二酸化炭素、および/またはアルゴンをそれぞれ超大気圧含有量で有するガスまたはガス混合物であることができるか、またはガス供給手段は、対応する不活性ガスを提供するように設定される。特に、含有量は、50%、60%、70%、80%、または90%を超えることができる。したがって、伝統的な意味での純粋な「不活性なガス」である必要はなく、むしろ、不活性ガスは、特に不燃性ガスの含有量により、混合物の可燃範囲を少なくとも部分的に減少させる、すなわち、発火、爆発、または爆裂のリスクを減少させるのであれば十分である。本発明の枠組み内で使用するための不活性ガスは、特に、減圧酸素含有量、たとえば、10%、5%、1%、0.5%、または0.1%未満の酸素含有量を有することができる。不活性ガスはまた、(実質的に)酸素を含まなくてもよい。
【0032】
本発明にしたがって実行される不活性ガスの供給により、本発明は、たとえば、反応管が損傷(「コイルシュレッダ」)を受けた場合、電力入力要素の棒状部分を、可燃性ガスが環境内に漏出するのを回避するために必要である気密シールを必要とせずに、反応容器の壁に移動可能に収容することを可能にする。したがって、本発明の範囲内で、壁通路は、大幅にコンパクトになりシール材料が不要であるため、恒久的になることができる。ここで有利なことは、接続チャンバから環境に出るすべての構成要素が、非常に小さな補償動作しか有さず、その結果、反応容器壁自体に関する気密性の実施が、ここでは大幅に簡素化されることである。
【0033】
燃焼反応器内の反応管から、炭化水素蒸気混合物の形態で出現する可燃性ガスは、反応容器または対応する燃焼チャンバで発生する燃焼によって即時かつ継続的に反応するか、または、燃焼の発生により反応容器の他の領域に存在する酸素含有量が大幅に減少し、反応管を取り囲むガス空間がすでに実質的に「不活性化」されているので、コイルシュレッダは、本発明にしたがって使用される純粋に電気的に加熱される反応器よりも、従来の燃焼反応器における安全関連の問題が少ない。対照的に、純粋な電気的加熱の場合、対応する可燃性ガスが反応容器内に蓄積し、そこでは、空気の通常の酸素含有量、および自然発火温度を超える温度において、たとえば爆発または爆裂の限界に達する可能性がある。爆裂を伴わない燃焼の場合でも、完全燃焼または不完全燃焼によってエネルギが投入され、過熱する可能性がある。反応管から流出するガス量とともに、完全燃焼または不完全燃焼自体も、大幅な圧力上昇をもたらす可能性がある。この圧力上昇は、不活性ガスの使用によって流出ガス混合物の燃焼が回避されるか、または少なくとも大幅に制限されるため、減少する。
【0034】
しかしながら、不活性ガスを接続チャンバ内に特別に供給することによって、または(少なくとも)不活性ガスを接続チャンバに加えることによって、本発明は、接続チャンバと反応容器との間の壁のシールが、高温により、たとえば、耐熱性ベローズ構造などを使用するなど、非常に高い材料費をかけてのみ実行できる、完全気密になるように設計する必要はない点にあるという、すでに述べたさらなる利点を達成する。接続チャンバから反応容器への不活性ガスの有利な連続流出の結果として、対流熱放散も達成でき、したがって、接続チャンバの冷却または既存の冷却のサポートを達成できる。
【0035】
前述したように、接続チャンバおよび反応容器の外側で発生する補償動作が、非常に小さいことは有利である。したがって、本発明の1つの実施形態によれば、反応容器および接続チャンバは、たとえば1つまたは複数の煙突の形態で、1つまたは複数の目標出口を任意選択的に除いて、ともに気密的に収容される。この場合、「目標出口」という用語は、ガス漏出のために目標を絞った方式で開いている、または開くことができる出口、たとえば、恒久的に開いている出口開口部、または、内圧上昇によって開き、逆止弁として機能できるガス出口フラップを意味することが意図される。「目標出口」は、避けられない漏出に起因する開口部とは異なる。気密容器は、別個の外側容器(格納容器)を使用して提供することができ、この外側容器は、おのおのが独自の外壁を有する反応容器および接続チャンバを別々に取り囲んでいる。しかしながら、電力入力要素の棒状部分が、長手方向に移動可能な方式で壁通路内に収容される壁を除いて、また、繰り返すが、目標出口を除いて、反応容器の外壁と接続チャンバとを気密に設計することも有利であり得る。
【0036】
前述したように、反応容器は、1つまたは複数の煙突に接続され得る1つまたは複数の目標出口を有し得る。この場合、1つまたは複数の煙突は、前述した効果により発生する過剰圧力を低減し、煙突効果の結果として、反応容器内のわずかな負圧を達成することを可能にする寸法を有することができる。ある程度まで不活性化され、(煙突の結果として)環境に対して「オープンな」システムは、反応管への損傷の結果として炭化水素が漏出する場合に、反応容器内の圧力上昇率を許容量に制限することができる。比較的少量の不活性ガスによる連続フラッシングを含む、本発明による手法での不活性ガスの使用は、反応容器および接続チャンバへの周囲空気の逆流がないことを保証する。それに加えて、不十分なシールによる少量のフォールスエアの侵入は、この手法で補償することができる。
【0037】
不活性ガスで満たされたチャンバ(反応容器および接続チャンバ)の提案された概念は、これらのチャンバ内の酸素含有量を低減することを可能にする。本発明にしたがって利用できるように、漏出する炭化水素の反応速度、したがって(反応熱入力の結果としての)大幅な追加の体積増加率は、第一近似では、酸素分圧と相関する。この相関関係が以下の表1にまとめられる。ここで、γOは、酸素分圧を表し、Vreacは、反応関連の体積増加率を表す。
【0038】
【表1】
【0039】
最大許容圧力pmaxは、それぞれのチャンバの、または周囲の閉じ込めの機械的安定性に依存する。この圧力は、コイルシュレッダの場合、または対応する他の安全関連事象の場合、関連するチャンバの体積Vbox、煙突の直径Dchimney、および酸素分圧に依存する圧力pboxと少なくとも同じ大きさでなければならない。
max≧pbox=f(Vbox,Dchimney,γO
【0040】
この要件は、煙突の寸法決定、すなわち環境へのオープンな連通、およびその逆の設計基準となる。この関係は、以下の図6において再度説明される。たとえば、図6の破線601,602によって例示されるように、ここで20ミリバールの最大許容圧力上昇が基準として使用される場合、直径500mmの煙突(破線601)を使用できるようにするために、反応に関連した体積増加率は、約10m/sに過ぎず、最大酸素含有量は約1%になり、これは不活性化によって調整される。逆に、最大でも1%の酸素含有量への不活性化が実行される場合は、少なくとも500mmの煙突直径を使用する必要がある。直径900mmの煙突(破線602)を使用できるようにするために、反応に関連する体積増加率は約42m/sに過ぎず、最大酸素含有量は約4%になり、これは不活性化によって調整される。逆に、また上記の説明と同様に、最大4%の酸素含有量への不活性化が行われる場合、ここでは少なくとも900mmの煙突直径を使用する必要がある。
【0041】
関連するチャンバ内の酸素含有量が少ないほど、体積増加は小さい。その結果、追加の体積の排出を要する非常用煙突の直径も小さくすることができる。酸素を含有したフォールスエアの侵入を可能な限り、または、十分に回避するために、酸素含有量の効率的な制限のために重要なことは、環境に対する常に十分に良好なシールである。
【0042】
言い換えれば、本発明の枠組み内で、反応容器および/または接続チャンバ内の最大酸素含有量は、不活性ガスによって調整され、この最大酸素含有量は、1つまたは複数の煙突の寸法決定に基づいて選択されるか、または、ガス供給手段は、不活性ガスを供給するため、またはこれに基づいて酸素含有量を調整するために設定される。
【0043】
供給される不活性ガスの量は、対応する規制手段によって、特に、1つまたは複数の煙突における酸素測定に基づいて規制することができ、その結果、酸素含有量を、動作中、一定に保つことができる。対応する安全概念は、たとえば、測定された酸素含有量が目標酸素含有量を超える場合、反応器の動作が回避される、または回避を続けることも含むことができる。たとえば、反応管への炭化水素の供給および/またはその加熱は、必要な酸素含有量を下回った場合にのみ解放することができる。障害が検出された場合、一般に、反応管への炭化水素の添加により反応動作を回避することができる。
【0044】
反応管からのガスの許容できない漏出は、たとえば、圧力測定センサを介して検出することができ、ガス漏出が検出された場合、炭化水素の合計漏出量を最小化するために、炭化水素の反応管への供給を回避することができる。
【0045】
非常に小さな損傷(急激な圧力上昇を伴わない漏出流)を検出するために、煙突内の(たとえば、一酸化炭素当量の形態での)炭化水素含有量も、連続的に測定することができる。同様に、許容できない値の結果、炭化水素の供給を回避できる。
【0046】
したがって、本発明は、より一般的に言えば、圧力および/または炭化水素の測定に基づいて、1つまたは複数の煙突において、1つまたは複数の反応管からのガス漏出を特徴付ける値を決定すること、および、値が所定のしきい値を超えた場合に、1つまたは複数の安全措置が開始されることを包含することができる。
【0047】
本発明の1つの実施形態によれば、冷却流体が通過して流れる冷却パネルが、接続チャンバに提供され、接続チャンバ内に突出する棒状部分の、少なくとも2つの間、または少なくとも2つのグループの間に配置される。
【0048】
本発明のこの実施形態における冷却パネルは、有利には、少なくとも1つの部分が平坦であるように設計されている。すなわち、冷却パネルは、互いに距離を置いて配置された2つの境界面の間に延在し、境界面の距離は、冷却パネルの厚さを規定し、境界面に沿った延長部は、この厚さの2倍、5倍、10倍、または20倍よりも大きい。境界面は、冷却パネルが平坦で平面状になるように、平面状または曲面状の境界面にすることができるが、この場合の冷却パネルは、平坦で半円筒状または部分的に円筒状に湾曲するように湾曲させることもできる。異なる冷却パネルは、異なる寸法または設計にすることもできる。「境界面」は、冷却パネルの最大厚さを規定する面である。冷却パネルは、表面全体にわたってこれらの境界面に接する必要はない。
【0049】
これらの寸法は、冷却パネルのおのおのに個別に適合し、すなわち、第1の冷却パネルは、第2の冷却パネルに対して斜めまたは垂直になるように配置することができる。いくつかの冷却パネルは、特に、電力入力要素の棒状部分の長手延長方向に平行で、反応容器の壁に垂直な軸の周りで、互いに対して回転することができる。
【0050】
冷却パネルは、特に、冷却流体が棒状部分に垂直または平行な方向に全体として対応する方向に、たとえば、棒状部分に平行な側面における冷却流体用の対応する供給開口部および除去開口部を通過して流れるように構成することができる。
【0051】
冷却パネルの厚さは、少なくとも、前述したように、寸法決定された断面において、0.5cmから10cm、特に1cmから5cmの範囲とすることができる。
【0052】
特に、本発明のこの実施形態における接続チャンバは、反応容器の壁に対して垂直に延在する側壁を有することができ、いずれの場合も、壁通路内には、電力入力要素の棒状部分が、反応容器の壁を通過して延びている。1つまたは複数のさらなる冷却パネルを、側壁のうちの少なくとも1つに、またはそれに平行に配置することができる。前述の冷却パネルと同様に、これらの冷却パネルは、基本的な寸法で設計できる。
【0053】
特に、接続チャンバはまた、反応容器の壁に平行に延びる底壁を有することもでき、いずれの場合も、壁通路内には、電力入力要素の棒状部分が、反応容器の壁を通過して延びており、前述の要素は、前述した反応容器の壁と、接続チャンバの底壁との間に配置される。底壁は、少なくとも部分的に中空壁として設計することができ、前述した、またはさらなる冷却流体が、通過して流れるように設定することができる。
【0054】
本発明では、電力入力要素自体の対応する寸法決定および設計に加えて、記載された冷却は、特に高導電性および/または可撓性の接触要素を接続するために、十分低い温度が全体的に維持されることを保証する。
【0055】
特に、本発明により提案された不活性化と協調して、臨界温度を超えることを確実に回避できるので、動作上の安全性を著しく高めることができる。
【0056】
本発明によれば、前述したように、電力入力要素の棒状部分はおのおの、反応容器の壁を通過する壁通路内で、長手方向に移動可能な方式で案内される。このようにして保証される移動の自由度は、反応管の機械的挙動にとって特に有利であり、反応管の機械的挙動は、反応器の動作中の数デシメートルの管の熱膨張によって主に支配される。移動の自由のために、剛性固定の場合に発生する反応管の曲げ荷重が低減される。また一方、後述するように、反応管は、交流加熱の場合、第2の領域において、反応器のルーフ上の剛性スターブリッジに固定することができ、このようにして、電力入力要素の棒状部分の対応する長手方向の可動性がある場合でも、安定したサスペンションが与えられる。十分に高い線断面積を有するそれらの有利な寸法決定により、電力入力要素の棒状部分は、反応管の確実な横断方向の案内を保証する。一方、前述したように、冷却チャンバ内の接続により、特に可撓性接触要素を介して、冷却チャンバから環境に出る構成要素は、非常に小さな補償動作しか有さない。本発明による不活性化は、壁通路自体が気密である必要がないので、何度か前述したように、この実施形態を単純化する。
【0057】
本発明は、水蒸気分解に使用されるような反応管および反応器で使用することができ、反応容器内にいくつかのU字形屈曲部を有する。しかしながら、本発明は、たとえば前述したように、水蒸気改質に使用されるような、他のタイプの反応器にも使用することができ、反応管は、反応容器内にU字形屈曲部を有していない。本発明により提案される反応器は、あらゆる吸熱化学反応を実行するために使用することができる。
【0058】
本発明はまた、反応容器および1つまたは複数の反応管を有する反応器を使用して化学反応を実施するための方法に関し、1つまたは複数の電力入力要素は、1つまたは複数の反応管の電気的加熱のために、反応容器内に案内される。
【0059】
本発明によれば、反応器が使用され、この反応器とともに、1つまたは複数の電力入力要素は、おのおの棒状部分を有し、1つまたは複数の棒状部分はおのおの、反応容器の壁を通過してそれぞれの壁通路内に延びている。
【0060】
棒または棒状部分が突出する接続チャンバは、反応容器の外側に配置され、壁通路が形成される反応容器の壁に隣接する。接続チャンバに不活性ガスを加えるように設定されたガス供給手段が設けられ、棒状部分が長手方向に移動可能な方式で内部に収容される壁通路は、接続チャンバ内に供給された不活性ガスの少なくとも一部が、反応容器に流れ込むように、ガス透過性となるように設計される。
【0061】
本発明の特に好ましい実施形態では、反応器が使用され、反応器では、1つまたは複数の管部分のうちのいくつかの管部分が、いずれの場合も、反応容器内の第1の領域と第2の領域との間に延び、管部分を加熱するための第1の領域はおのおの、電流源の1つまたは複数の電力接続部に電気的に接続される。
【0062】
この実施形態では、反応器が使用され、反応器は、第1の領域に、管部分の、それぞれ1つ、またはそれぞれのグループが電気的に接続される電力入力構成を有し、各電力入力構成は、おのおのが反応容器の壁を通過する壁通路において延びている棒状部分を有する電力入力要素のうちの1つを有する。棒状部分が突出する接続チャンバは、反応容器の外側で、反応容器の壁に隣接して配置され、壁通路内には、棒状部分が、この壁を通過して延びている。棒状部分は、長手方向に移動可能な方式で壁通路に収容される。長手方向に移動可能な方式で内部に収容された棒状部分を有する壁通路は、ガス透過性であり、接続チャンバに不活性ガスを加え、不活性ガスが少なくとも部分的に壁通路を通過して反応容器に流出することを可能にするように設定された、本発明による手段も提供される。
【0063】
すでに説明した本発明の実施形態のうちの1つの実施形態による反応器が有利に使用される、対応する方法のさらなる特徴および利点については、上記の説明を参照されたい。
【0064】
本発明は、従来技術を参照および比較して、本発明の実施形態を例示する添付の図面を参照して以下にさらに解明される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、本発明によらない実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
図3図3は、本発明のさらなる実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
図4A図4Aは、本発明のさらなる実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す部分図である。
図4B図4Bは、本発明のさらなる実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す部分図である。
図5図5は、本発明のさらなる実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態による、煙突の寸法決定の原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図では、機能的または構造的に互いに対応する要素は、同一の参照符号によって示され、明確のために繰り返し説明されない。デバイスの構成要素が以下で説明される場合、対応する説明は、いずれの場合も、それによって実行される方法にも関連し、その逆も同様である。図の説明は、交流加熱を繰り返し述べている。しかしながら、前述したように、本発明はまた、加熱のために、直流の使用にも同様に適している。ここでは、上記の説明が参照される。
【0067】
図1は、本発明によらない実施形態による、化学反応を実行するための反応器を概略的に示す。
【0068】
ここで、300で示される反応器は、化学反応を実行するように設定される。この目的のために、反応器は、特に、断熱された反応容器10と、反応管20とを有し、ここでは2つの場合のみ21で示される反応管20の多数の管部分は、それぞれ反応容器10内の第1のゾーン11’と、第2のゾーン12’との間に延びている。図2を参照して以下でより詳細に説明される反応管20は、適切なサスペンション13によって反応容器のシーリングまたは支持構造に取り付けられる。下部領域では、反応容器は特に炉(図示せず)を有することができる。言うまでもなく、いずれの場合も、ここおよびその後にいくつかの反応管が提供される。
【0069】
図2は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための、全体が100で示される反応器を概略的に示す。
【0070】
以前に11’および12’によって指定されたゾーンは、ここでは領域11および領域12の形態をとり、第1の領域11内の管部分21を加熱するための管部分21は、いずれの場合も、多相交流電源50の相接続部U,V,Wに電気的に接続することができる。スイッチなどの特定のタイプの接続部は例示されていない。
【0071】
ここに例示される本発明の実施形態では、管部分21は、1つまたは複数の反応管20に一体的に接続され、反応容器10内に配置された接続要素30によって、第2の領域12において互いに導電的に接続される。管部分には中性導体も接続され得る。
【0072】
したがって、ここに例示される反応器100では、(いくつかのそのような反応管20が提供され得るが、)反応管20のいくつかの管部分21が、反応容器10内に並んで配置される。管部分21は、(部分的にのみ示されている)U字形屈曲部23を介して互いに交わり、供給部分24および抽出部分25に接続される。
【0073】
第1の領域11には、U字形屈曲部23の第1のグループ(図中下側)が並んで配置され、第2の領域12には、U字形屈曲部23の第2のグループ(図中上側)が並んで配置されている。第2のグループのU字形屈曲部23は、接続要素30に形成され、管部分21は、第2の領域12における接続要素30から第1の領域11まで延在する。
【0074】
本発明の範囲内で、接続要素30の使用は、任意選択的であるが有利である。一方、以下に説明する本発明の実施形態は、特に、第1の領域11における電力入力のための手段の実施形態に関する。これは、電力入力要素41を使用することによって実行され、電力入力要素は、ここでは非常に簡略化して例示されており、そのうちの1つだけが示されている。
【0075】
また特に、図4Aおよび図4Bに関して以下に説明するように、電力入力要素41は、接続チャンバ60内に突出する。電力入力要素41、より正確には、その棒状部分は、反応容器10と接続チャンバ60とを分離する壁内の対応する壁通路で長手方向に移動可能な方式で収容され、結果として、ここでは、気密閉鎖は行われない。(したがって、1つの矢印のみが示される)矢印Iで示されるように、不活性ガスが提供され、接続チャンバ60に供給され、壁通路を介して反応容器10に入る。反応容器の中には、電力供給要素41が、長手方向に移動可能な方式で収容される。不活性ガスを提供し、供給するために、80で示され、ここでは非常に簡略化され、たとえば、1つまたは複数のガスタンクと、対応するライン81とを備えた、適切なガス供給手段が設けられる。
【0076】
図3は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を概略的に示しており、全体が200で示されている。
【0077】
反応器200において、ここでは対照的に22で示される管部分は、いずれの場合も、いくつかの反応管20からなる管部分22を備え、管部分22は、反応容器10内に、流体的に連通されない方式で並んで配置され、いずれの場合も、供給部分24および抽出部分25に接続される。残りの要素については、以前の図に関する上記の説明に、明示的に参照される。
【0078】
繰り返すが、本発明の範囲内の接続要素30の使用は、任意選択的であるが有利である。ここでも、電力入力要素41および接続チャンバ60は、非常に簡略化された方式で例示されている。不活性ガスIの供給は、ここでは、実質的に上記で説明したように行われる。電力入力要素は、スリーブ状領域49を有することができ、スリーブ状領域49は、反応管20または管部分の周りの第1の領域11に配置される。
【0079】
図4Aおよび図4Bは、長手方向部分(図4A)および断面(図4B)における本発明の実施形態による、接続チャンバ60を備えた反応器100の部分図を示し、断面(図4B)では、一部の選択された要素のみが例示される。図4Aおよび図4Bは、いずれの場合も、本明細書において例示されたかなり多数の要素を、実際の反応器に提供できる限り、特に大幅に簡素化されている。
【0080】
特に図4Aに見られるように、電力入力要素の棒状部分43はおのおの、反応容器10の壁14を通過して壁通路15内に延びている。棒状部分43はおのおの、何度か前述したように、長手方向に移動可能な方式で収容され、壁通路15に気密閉鎖は存在しない。棒状部分43が突出する接続チャンバ60は、反応容器10の外側に配置され、反応容器10の壁14に隣接し、壁通路15内には、棒状部分43が、反応容器の壁を通過して延びている。壁通路15には気密閉鎖部が形成されていないので、矢印I1で例示されるように、適切な開口部82またはノズルを介して接続チャンバに供給される不活性ガスは、矢印I2で例示されるように、反応容器に流入することができる。図4Bにおいて矢印I3で例示されるように、不活性ガスはまた、接続チャンバ60に横方向にも供給される。
【0081】
冷却パネル61は、接続チャンバ60内に提供され、特に図4Bにおいて明らかなように配置できる。冷却流体は冷却パネルを通過して流れることができ、冷却パネルは、接続チャンバ60内に突出する棒状部分43の、少なくとも2つの間、または少なくとも2つのグループの間に配置することができる。
【0082】
接続チャンバ60は、いずれの場合も、反応容器10の壁14に対して垂直に延在する側壁62を有し、棒状部分43は、反応容器の壁を通過して延びており、図4Bに見られるように、また図4Aに別個に示されていないように、1つまたは複数のさらなる冷却パネル63を、側壁62のうちの少なくとも1つに配置することもできる。
【0083】
接続チャンバ60は、図4Aに図示され、反応容器10の壁14と平行に延在する底壁64を有し、棒状部分43が、底壁を通過して延びており、底壁64は、少なくとも1つの部分が中空壁として形成され、同様に、冷却流体が通過して流れるように設定される。接続チャンバ60は、冷却パネル61および棒状部分43を取り囲むガス雰囲気65内で強制対流を提供するためのデバイスなしで設計される。
【0084】
接続チャンバ60では、図4Aにおいてストランド66として例示されている可撓性接続要素は、棒状部分43に接続され、棒状部分43に接続されていない端部を用いて、剛性接触要素67に固定され、剛性接触要素は、接続チャンバ60内に移動できないように配置され、ここでは、底部64において(より詳細な指定のない)絶縁および気密性レセプタクルに固定される。
【0085】
図5は、本発明のさらなる実施形態による、化学反応を実行するための反応器を、以前の図による例示を拡張して概略的に例示しており、図2においてすでに上記で例示された要素は、部分的であって、再度例示されない。これらの要素はすべて、図5に例示される反応器の一部であり得る。図5では、特に、反応容器10および接続チャンバ60が大幅に簡略化された方式で図示されている。
【0086】
ここに例示されるように、反応容器10は、目標出口71を介して煙突70に接続され、煙突は、反応容器10に隣接する領域に適切な断熱材72を有する。煙突70は、事故の場合に、炭化水素の漏出を、安全な場所に放散できるようにするために、地面に対して、たとえば20メートルから50メートルの高さhを有することができる。煙突ガス中の酸素および/または炭化水素の含有量を検出するための1つまたは複数のセンサと同様に、いわゆる速度シール74も同様に提供される。任意選択的に、災害時に未燃焼の炭化水素が大気中に漏出するのを少なくとも部分的に回避するために、煙突出口の領域に、点火デバイスまたはパイロットバーナ73を追加で設置することができる。
【0087】
図6は、本発明の実施形態による煙突の寸法決定の原理を図面の形態で概略的に示しており、ここでは、パーセントでの酸素含有量が横軸にプロットされ、反応に関連する体積増加率が、m/sで縦軸にプロットされている。グラフ601は、表を参照して既に説明した関係を表す。破線602は、煙突の直径が500mmの場合に、20ミリバールの最大圧力上昇に必要な値を示し、破線603は、煙突の直径が900mmの場合の、対応する値を示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】