(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564656
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021060724
(87)【国際公開番号】W WO2021214319
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】516039480
【氏名又は名称】エーピーエイチピー(アシスタンス パブリック-オピトークス ド パリ)
(71)【出願人】
【識別番号】514203362
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ソース,デルフィン
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ボダート,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ,エレーヌ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB04
2G045CB07
2G045CB30
2G045FA40
2G045FB01
2G045FB03
2G045FB06
2G045FB17
(57)【要約】
本出願は、急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するための方法であって、i)前述の対象から得られた生体試料中のネオプテリンレベルを決定するステップと、ii)前述のレベルをその所定の参照ネオプテリンレベルと比較するステップと、iii)ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象は機能自律性への復帰までの時間が長いと予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象は機能自律性への復帰までの時間が短いと予測するステップとを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するための方法であって、以下:
i.前記対象から得られた生体試料中のネオプテリンレベルを決定するステップと、
ii.前記レベルを所定の参照ネオプテリンレベルと比較するステップと、
iii.前記ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、前記対象は機能自律性への復帰までの時間が長いと予測するか、または前記ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、前記対象は機能自律性への復帰までの時間が短いと予測するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記対象は、ヒト対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象は、65歳を超える対象、より好ましくは75歳を超える対象などの、高齢の対象である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記急性事象は、股関節骨折、骨盤骨折、脛骨骨折、腓骨骨折、足骨折、手関節骨折、鎖骨骨折、および手骨折を含む群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記急性事象は、股関節骨折である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生体試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、脳脊髄液試料、および糞便試料を含む群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料は、血液試料である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生体試料は、新鮮であるか、新鮮凍結されるか、または凍結される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記生体試料は、以下:
a)医学的管理後、
b)前記急性事象と、前記急性事象を処置するための外科手術との間、好ましくは病院到着時、
c)前記外科手術中、
d)前記外科手術の翌日、
e)前記外科手術の1~12日後、好ましくは7~10日後、および
f)前記外科手術の12日~12か月後、好ましくは6~12カ月後
を含む群から選択される時間に得られる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生体試料は、病院到着時に得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップi)は、ELISA、質量分析法、高速液体クロマトグラフィー、またはラテラルフローイムノアッセイによって行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の参照ネオプテリンレベルは、10nmol/Lを超え、好ましくは、前記所定の参照ネオプテリンレベルは、10~17nmol/L、より好ましくは12~15nmol/Lに含まれ、さらに好ましくは、前記所定の参照ネオプテリンレベルは、15nmol/Lである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の参照ネオプテリンレベルは、15nmol/Lである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するためのキット。
【請求項15】
試料の採取手段と、
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を実行するのに必要な試薬と
を含む、請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、老年医学の分野にある。本出願は、概して、患者を監視する方法、より具体的には、骨折などの急性事象後の対象、好ましくは高齢の対象の、機能自律性への復帰に必要な時間の長さを予測するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WHOは、世界人口の高齢化、より良好な公衆衛生、および平均余命を延長する医療介入により、今後20年で、65歳を超える人々の数が88%増加すると推定する。虚弱高齢患者は、障害、転倒、施設収容、入院、および死亡を含む、主要な有害健康転帰のリスクが高い。虚弱高齢者の合併症の1つは、股関節骨折(HF)である。したがって、2030年までに推定される股関節骨折発生率の15%の上昇は、より高い罹患死亡率およびより長い入院滞在を経験する可能性のあるより虚弱な高齢者および社会的依存患者と相まって、健康管理戦略および資源配分に影響を及ぼす。今日では、HFの結果は壊滅的であり、患者の50%が依存的になり、手術後1年以内に30%が死亡している。
【0003】
実際、HF患者は、併存疾患ならびに術後の罹患率および死亡率の高いリスクを有する、弱い高齢者群に属する。世界の年間HF数は、実際には160万人であるが、2050年には400万人超に達すると予想され、入院患者だけで80億ドル/年を超える推定年間費用を有する。これは、HF後1年間にわたるリハビリテーション/再入院によって発生し得る費用を含める場合、米国で140億ドル/年に達し得る。その結果、主要な課題は、高齢者人口(+75歳)におけるこの急性の身体的ストレスによって引き起こされる健康および社会経済的負担の管理である。Bouchonの定義によれば、HFは、高齢者の健康の加速度的低下に関与し得る急性事象の代表である。
【0004】
今日では、HF手術後の臨床判断は、HF患者に適合したケアを決定するのにバイオマーカーを使用することができないため、主に医学的パラメータに基づいている。多くのスコアが提唱されてきたが、外部検証なしでは臨床的に有用ではなかった。したがって、HF患者に対する臨床医の直感は、「群盲象を評す」の寓話を示す。手術の遅延は、不良転帰に関連するが、注意深い術前評価は、通常、共存する医学的状態を安定化するためにこれらの患者に不可欠であると認識される。最後に、最終的に行われなければならない手術の代替は存在しない。したがって、たいていの組織的および医学的理由は、緊急手術の必要性を考慮すると、適切ではない場合がある。
【0005】
したがって、当該技術分野において、患者を、その機能自律性を回復するその能力に従って分類するための、単純で効率的な信頼できる方法が必要である。
【0006】
バイオマーカーのネオプテリンの術前レベルは、その血漿中の濃度が早期の死亡を予測するため、高リスク患者を特定することを発明者らは以前に示した。
【0007】
本出願では、発明者らは、術前のネオプテリンがまた、その濃度が急性事象後の自律性の喪失から回復する患者の能力を予測するため、高リスク患者を特定することを示す。ネオプテリン濃度と機能自律性への復帰とを関係づけることは、以前は行われなかった。
【0008】
本発明の第1の目的は、したがって、急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するための方法である。そのような方法は、救急病棟で、かつ/または入院中に、かつ/または退院後に、使用され得る。
【0009】
本発明の第2の目的は、第1の態様による機能自律性への復帰を予測するための方法のステップを含み、かつ処置を適合させる追加のステップを含む、処置方法である。
【0010】
本発明の別の目的は、急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するためのキットである。
【0011】
救急病棟におけるネオプテリンレベルの測定は、費用効果の高い適合された健康ソリューションであることが示されている老年整形外科(orthogeriatric)部門に高リスク患者を送ることによって、患者の選択的トリアージの層別化および改善を可能とするべきである。
【0012】
以前は、医師は、ほとんど、先着順で、または不正確なマーカーおよび/もしくは自身の専門知識を用いて、患者をこれらの部門に送っていた。結果として、これらの部門から最も利益を得るであろう患者は、これらに優先的に送られない。
【0013】
本発明の別の態様によれば、患者の退院後のオプテリンレベルの測定は、開業医が、術後プログラムを評価し、適合させて、事象および手術からの回復を改善し、したがって、患者の全体的な健康を改善し、その機能自律性への復帰を促進することを可能とするべきである。
【0014】
定義
「急性事象」は、対象、典型的には高齢者が患う事故、熱傷、または外傷を指す。「事故」という用語は、転倒または身体的暴力によるものを含む外力によって身体に与えられる損傷をもたらす、予期せぬ計画外の事象または状況を含む。本明細書で使用される「外傷」という用語は、創傷、具体的には、組織の裂け、切断、穴あき、または破壊に関連し得る創傷のような、身体の皮膚または骨の完全性を妨げる損傷を包含する。特定の実施形態では、急性事象は、股関節骨折、骨盤骨折、脛骨骨折、腓骨骨折、足骨折、手関節骨折、鎖骨骨折、および手骨折からなる群から選択される。
【0015】
本発明の内容において、急性事象は、疾患または基礎疾患に関連する合併症を含まない。
【0016】
本発明の内容において、急性事象は、基礎疾患または合併症をもたらす状況の組み合わせではなく、固有の、外部の、特定可能な原因(例えば、転倒、火、台所器具)を有する。
【0017】
「機能自律性」は、対象に、日常生活に必要な基本的な運動および/または活動の大部分を対象が行えなくなる合併症がない、したがって、第三者によるケアの必要性がない状態を指す。
【0018】
機能自律性は、全体的な健康(すなわち、病気および/または障害がないこと)とは無関係である。
【0019】
対象が機能自律しているか(すなわち、機能自律状態にあるか)を決定するために、一連の一般に認められている試験および指標を、当業者は利用可能であり、独立してまたは相互に組み合わせて使用可能である。
【0020】
これらの試験および指標は、バイアスなしで、対象または第三者の証言に頼らずに、対象の能力を測定することによって、対象が機能自律しているかどうかを定める主観的な方法を提供する。
【0021】
そのような試験および指標のリストは、SPPB(簡易身体能力バッテリ)(Guralnikら、1994)、バーセルインデックス(Barthel’s index)(Barthelら、1964)、“ゲットアップアンドゴー(Get up and go)”試験(Podsiadloら、1991)、ADL(Baltesら、1996; Baltesら、1993)、IADL(Baltesら、1993, 1996)、カッツインデックス(Katz’ Index)(Katz S, Down TD, Cash HR. Progress in the development of the index of ADL. Gerontologist 1970;10:20-30)、ロートンテスト(Lawton’s test)(Lawton M, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. Gerontologist 1969;9:179-86.)、またはAGGIRグリッド(AGGIR’s grid)(Syndicat National de Gerontologie Clinique. AGGIR. Guide pratique pour la codification des variables. Principaux profils des groupes isoressources. Revue Geriatr 1994;19:249-59.)を含むが、これらに限定されない。
【0022】
例として、そのような運動および/または活動は、以下を含むが、これらに限定されない:
-横になった姿勢、もたれかかった姿勢、または座位から起き上がる、
-基本的な衛生活動を行う、
-料理するまたは自分で食べる
-服を着る、
-基本的な清掃作業を完了する。
【0023】
これに関して、患者の機能自律性の決定は、当業者によく知られている検査である。
【0024】
「機能自律性への復帰」は、急性事象から、上で定義されたような機能自律状態に及ぶ期間を指す。
【0025】
機能自律性への復帰は、骨折および手術の両方の治癒プロセスに基づいているので、当業者は、本発明の教示に基づいて、急性事象に下記のプロトコルを適用することが可能である。
【0026】
本発明の内容において、対象は、股関節骨折を患っている。当業者は、本明細書に記載の方法によって提供される情報に基づいて、股関節骨折を患う対象の処置を適合させなければならないか、具体的には、対象が特殊ケア部門に送られなければならないかを決定することができる。そのような特殊ケア部門は、非限定的に、患者が、老齢期専門の医師および整形外科専門の医師の両方の監督下にあるか、または他の専門からの定期検査を行う医師のだれかの監督下にあるケア部門である。フランスにおけるUPOG(“Unite peri-operatoire geriatrique”-高齢者向け周術期部門)は、これらの特殊ケア部門の一例である。
【0027】
「ネオプテリン」は、以下の式Iを有し、プテリジン群に属する、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-(D-エリスロ-,2’,3’-トリヒドロキシプロピル)を指す。ネオプテリンは、神経伝達物質合成の必須補因子であるビオプテリンの前駆体分子の代表であり、また、体内の様々な酸化/還元反応に関与する。ネオプテリンは、生体内でグアノシン三リン酸(GTP)から誘導される。酵素GTP-シクロヒドロラーゼ-I(GTPCH I)は、活性化単球、マクロファージ、樹状細胞、および内皮細胞、ならびにより低い程度で腎上皮細胞、線維芽細胞、および血管平滑筋細胞において、その放出が腫瘍壊死因子により増強されるインターフェロンガンマならびにより低い程度でインターフェロンアルファおよびベータによって主に刺激されると、この反応を触媒する。
【化1】
【0028】
「試料」は、対象から得られた試料、例えば、血液、唾液、糞便、尿、精液、血漿、滑液、または血清を指す。特定の実施形態では、生体試料は、血液試料である。「血液試料」という用語は、対象由来の血液試料を意味する。典型的には、ネオプテリンのレベルは、対象が病院に到着した時に得られた血液試料で測定される。別の実施形態では、血液試料は、-80℃で凍結保存され、ネオプテリンのレベルは、凍結保存から36か月までに測定され得る。典型的には、血清は、静脈穿刺によって血液を採取し、凝固させた後に得られた。血餅は、室温での遠心分離によって除去され、血清と呼ばれる結果として生じる上清は、パスツールピペットを使用して慎重に除去される。血漿は、抗凝固剤(ヘパリン)で処理されたチューブに全血が採取されると生成される。
【0029】
「新鮮凍結」試料は、その採取後48時間未満に凍結された試料を指す。
【0030】
「対象」は、男女いずれかのヒトである。特定の実施形態では、対象は、高齢者である。本明細書で使用される「高齢者」という用語は、65歳を超える対象、より好ましくは75歳を超える対象を指す。
【0031】
特定の実施形態では、対象は、股関節骨折、骨盤骨折、脛骨骨折、腓骨骨折、足骨折、手関節骨折、鎖骨骨折、および/または手骨折を患っているか、または患いやすい。
【0032】
「酵素結合免疫吸着測定法」(ELISA)は、測定されるタンパク質に対する抗体を使用して液体試料中のリガンド(通常はタンパク質)の存在を検出するために固相酵素免疫測定を使用するアッセイを指す。
【0033】
ELISAは、一般に、参照試薬(抗原)を固相支持体に結合することによって行われる。標識試薬と混合された試験血清は、次いで、結合した参照試薬と反応する。試薬は、次いで、結合した試薬と遊離試薬とを分離するために、一連の希釈、インキュベーション、および洗浄ステップを受ける。プロセスは、使用された標識のタイプに適合し、試験血清中の抗体(または抗原)の量を間接的に測定するように設計された検出ステップで終了する。
【0034】
「質量分析法」は、イオンの質量対電荷比を測定して試料中の粒子および分子の質量を決定する分析技術を指す。質量分析法は、それがどんなタイプであっても一般に、試料中に存在する分子を、イオン化し、加速し、質量分析計に導入した後に、これらの分子の質量を測定することによって同定することからなるステップを含む。
【0035】
「高速液体クロマトグラフィー」(HPLC)は、混合物中の各成分を分離、同定、および定量する分析化学で使用される技術を指す。典型的には、試料混合物を含有する加圧液体溶媒は、固体吸着剤で充填されたカラムに通される。試料中の各成分は、吸着剤とわずかに異なって反応し、異なる成分について異なる流速を引き起こし、成分がカラムから流出する時に成分の分離をもたらす。
【0036】
ラテラルフローイムノクロマトグラフィアッセイ、ラテラルフロー試験、またはラテラルフロー装置としても知られる「ラテラルフローイムノアッセイ」は、液体試料中の標的分析物の存在を、陽性または陰性結果を視覚的に示す反応性分子を有する多孔性紙片、微細構造ポリマー片、または焼結ポリマー片などの一連の毛細血管床を含むパッドの表面に沿って前述の液体を流すことによって検出するように意図された装置を指す。
【発明の概要】
【0037】
本発明は、急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するための方法であって、以下:
i)前述の対象から得られた生体試料中のネオプテリンレベルを決定するステップと、
ii)前述のレベルを所定の参照ネオプテリンレベルと比較するステップと、
iii)ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象は機能自律性への復帰までの時間が長いと予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象は機能自律性への復帰までの時間が短いと予測するステップと
を含む、方法に関する。
【0038】
この方法は、対象が機能自律性への復帰までの時間が長く、したがって、その状況に適合した特殊ケアを必要とする対象であるか、または対象が機能自律性への復帰までの時間が短く、したがって、標準的なレベルのケアで回復する対象であるかを、医師が決定することを可能とする。
【0039】
その結果、機能自律性への復帰までの時間が長いことが予測されると特定された対象は、注意深く監視され、そのケアレジメンはその必要性に合うように適合されることになるか、またはその回復および退院後のその生活の質を改善する特殊ケア部門に送られることになる。
【0040】
本明細書で使用される「機能自律性への復帰までの時間が短い」という表現は、対象が、前述の急性事象を患う対象の母集団で観察される中央値(または平均値)より低い機能自律性への復帰までの時間を有するであろうことを示す。
【0041】
逆に、「機能自律性への復帰までの時間が長い」という表現は、対象が、前述の疾患を患う対象の母集団で観察される中央値(または平均値)より高い機能自律性への復帰までの時間を有するであろうことを示す。
【0042】
本発明の実施形態では、機能自律性への復帰までの時間が短いとは、5日~30日である一方で、機能自律性への復帰までの時間が長いとは、30日~1年である。本発明の別の実施形態では、機能自律性への復帰までの時間が短いとは、5日~3か月である一方で、機能自律性への復帰までの時間が長いとは、3か月~1年である。
【0043】
本発明の実施形態では、生体試料中で測定されるネオプテリンレベルは、ネオプテリン濃度である。この実施形態では、所定の参照ネオプテリンレベルは、所定の参照ネオプテリン濃度である。
【0044】
本発明の実施形態では、機能自律性への復帰までの時間は、前述の対象から得られた生体試料中で測定されるネオプテリンレベルに依存する。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明の方法の対象は、ヒト対象である。より好ましくは、前述の対象は、65歳を超える対象、より好ましくは75歳を超える対象などの、高齢の対象である。
【0046】
好ましい実施形態では、急性事象は、股関節骨折、骨盤骨折、脛骨骨折、腓骨骨折、足骨折、手関節骨折、手骨折を含む群から選択される。
【0047】
好ましい実施形態では、生体試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、脳脊髄液試料、および糞便試料を含む群から選択される。
【0048】
好ましい実施形態では、生体試料は、新鮮であるか、新鮮凍結されるか、または凍結される。
【0049】
好ましい実施形態では、前述の生体試料は、以下:
a)医学的管理後、
b)急性事象と、急性事象を処置するための外科手術との間、好ましくは病院到着時、
c)外科手術中、
d)外科手術の翌日、
e)外科手術の1~12日後、好ましくは7~10日後、および
f)外科手術の12日~12か月後、好ましくは6~12カ月後
を含む群から選択される時間に得られる。
【0050】
好ましい実施形態では、前述の生体試料は、病院到着時に得られる。
【0051】
生体試料中のネオプテリンレベルを決定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。そのような方法の例としては、免疫組織化学的検査、マルチプレックス法(Luminex)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、サンドイッチELISA、蛍光結合免疫吸着測定法(FLISA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、質量分析法(MS)、マイクロアレイなど、高速液体クロマトグラフィー、もしくはラテラルフローイムノアッセイ、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明の方法のステップi)は、ELISA、質量分析法、高速液体クロマトグラフィー、またはラテラルフローイムノアッセイによって行われる。
【0053】
特定の実施形態では、ネオプテリンレベルは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)標識ネオプテリンを使用する市販のキット(例えば、DRG Diagnostics、Biomnis)に従って、競合酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって測定される。特に、ELISAは、唾液、尿、および血液試料中のネオプテリンレベルを測定するのに適している。
【0054】
別の実施形態では、ネオプテリンレベルは、蛍光検出を備える高圧液体クロマトグラフィー(HPLC;例えば、血清中のネオプテリンのHPLCに関するHuberら、J. Chromatography B: Biomed. Sci. App. 666(2): 223-232 (April 1995を参照)によって、適切な試料精製後に評価される。特に、HPLCは、尿または血漿試料中のネオプテリンレベルを測定するために行われる。
【0055】
一実施形態では、対象が機能自律性への復帰までの時間が長いか短いかは、急性事象後の対象の特定の試料、好ましくは体液試料、より好ましくは血液試料のネオプテリンレベルを、所定の参照値と比較した後に結論づけられる。
【0056】
典型的には、参照ネオプテリンレベルは、ソフトウェアもしくは全体の中央値で実装され得るか、または測定値にわたる他の算術平均が構築され得る。
【0057】
一実施形態では、所定の参照ネオプテリンレベルは、参照集団に由来する対照試料における、本発明によるネオプテリンレベルの測定値から導出される。
【0058】
一実施形態では、参照集団は、同様の年齢幅の対象、同じ性別の対象、同じかまたは同様の民族の対象などを制限なく含む。
【0059】
一実施形態では、参照集団は、好ましくは少なくとも50人、より好ましくは少なくとも100人、より好ましくは少なくとも200人の対象、およびさらに好ましくは少なくとも500人の対象を含む。
【0060】
一実施形態では、参照集団は、実質的に健康な対象(単数または複数)を含む。
【0061】
本明細書で使用される「実質的に健康な対象」は、以前に急性事象を患っていない。好ましい実施形態では、実質的に健康な対象は、前述の対照試料の採取前3か月の間に急性事象を患っていない。
【0062】
好ましい実施形態では、実質的に健康な対象は、免疫系を変化させる処置を受けていない。
【0063】
好ましい実施形態では、実質的に健康な対象は、部分的または完全関節形成術の対象ではない。
【0064】
一実施形態では、参照集団は、急性事象を患っている対象を含む。
【0065】
好ましい実施形態では、参照集団は、処置される対象と同じ急性事象を患っている対象を含む。
【0066】
好ましい実施形態では、参照集団は、骨粗鬆症患者、または骨粗鬆症関連の急性事象の患者を含まない。
【0067】
一実施形態では、参照集団は、急性事象、より好ましくは処置される対象と同じ急性事象を患っている対象、および実質的に健康な対象の両方を含む。
【0068】
実施形態では、当業者は、所与の測定方法で所定の参照ネオプテリンレベルを定める。この実施形態では、所定の参照ネオプテリンレベルは、対照試料または参照集団から得られたネオプテリンレベルである。この実施形態では、ネオプテリンレベルは、所定の参照ネオプテリンレベルと同じ測定方法で決定される。したがって、所与の測定方法を使用して対象のネオプテリンレベルを測定し、前述のネオプテリンレベルを、対照試料または参照集団から得られた所定の参照ネオプテリンレベルと比較して、対象が機能自律性への復帰までの時間が長いか短いかを測定されたネオプテリンレベルに応じて予測する方法が、当業者ならわかる。
【0069】
別の実施形態では、予測方法は、ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象はより低い最大療養スコアを有すると予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象はより高い最大療養スコアを有すると予測するステップiii’を含む。
【0070】
別の実施形態では、予測方法は、ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象は5m歩行するのに必要な時間がより長いと予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象は5m歩行するのに必要な時間がより短いと予測するステップiii’’を含む。
【0071】
別の実施形態では、予測方法は、ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象は簡易身体能力バッテリについて得られるスコアがより低いと予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象は簡易身体能力バッテリについて得られるスコアがより高いと予測するステップiii’’’を含む。
【0072】
別の実施形態では、予測方法は、ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象は日常生活動作について得られるスコアがより低いと予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象は日常生活動作について得られるスコアがより高いと予測するステップiii’’’を含む。
【0073】
別の実施形態では、予測方法は、ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象は手段的日常生活動作について得られるスコアがより低いと予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象は手段的日常生活動作について得られるスコアがより高いと予測するステップiii’’’を含む。
【0074】
別の実施形態では、所定の参照ネオプテリンレベルは、10nmol/Lを超える。
好ましくは、所定の参照ネオプテリンレベルは、10~17nmol/L、好ましくは12~15nmol/Lに含まれる。より好ましくは、所定の参照ネオプテリンレベルは、15nmol/Lである。
【0075】
本発明はまた、急性事象を患う対象の処置方法であって、以下:
i.前述の対象から得られた生体試料中のネオプテリンレベルを決定するステップと、
ii.前述のレベルを所定の参照ネオプテリンレベルと比較するステップと、
iii.ネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより高い場合に、対象は機能自律性への復帰までの時間が長いと予測するか、またはネオプテリンレベルがその所定の参照ネオプテリンレベルより低い場合に、対象は機能自律性への復帰までの時間が短いとの結論を予測するステップと、
iv.ステップiiiの予測に従って対象の処置を適合させるステップと
を含む、方法に関する。
【0076】
好ましい実施形態では、ステップiv)は、対象を特殊ケア部門に送ることを含む。追加または代替として、ステップiv)は、患者が行う身体運動のレジメンを、単独または医師の行動もしくは監督下のいずれかで適合させることを含む。
【0077】
本発明はまた、急性事象を患う対象における機能自律性への復帰を予測するためのキットに関する。
【0078】
本発明の実施形態では、キットは、試料の採取手段、および本発明の第1の態様による方法を実行するのに必要な試薬を含む。
【0079】
本発明はまた、ラテラルフローイムノアッセイ(LFI)装置に関する。装置は、試料パッド-すなわち、多孔性紙片、微細構造ポリマー片、または焼結ポリマー片などの一連の毛細血管床を含む領域-、および製造者がマトリックスにコンジュゲートと呼ばれる生物活性粒子を貯蔵したコンジュゲートパッドを含む。コンジュゲートパッドは、標的分子(例えば、抗原)と、粒子の表面に固定化されたその化学的パートナー(例えば、抗体)との間の最適化された化学反応に必要な全ての試薬を含有する。これは、標的粒子がパッドを通り、試験ラインおよび対照ラインを越えて進む時にそれらをマークする。試験ラインは、信号、しばしば妊娠検査でのような色を示す。試験はまた、定量的であり得、標的分子の濃度を示し得る。
【0080】
本発明の他の利点および特徴は、以下の本発明の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1A-C】異なる時期の高齢者のネオプテリンレベルを示すグラフの組み合わせである。ネオプテリン濃度(nmol/l)は、3つの異なる時期(A)退院時、(B)リハビリ終了時、(C)骨折後6か月に測定され、股関節骨折患者について、2つの臨床転帰:歩行可能(黒四角、それぞれn=84;28および24)または歩行不可能(それぞれn=14;18および59)に従って分析された。pは、ノンパラメトリックMann-Whitney検定で計算される。
【
図2A-C】高齢者のネオプテリンレベルが機能自律性への復帰までの時間に関係していることを示すグラフの組み合わせである。患者のネオプテリン濃度は、病院到着時に測定され(nmol/l)、異なる時期の3つの臨床パラメータ(A)退院時の最大回復、(B)病院到着後30日での歩行の遅れ、(C)病院到着後30日での簡易身体能力バッテリ(SPPB)と比較された。pは、ノンパラメトリックMann-Whitney検定で計算される。
【
図3A-C】
図2A~
図2Cに関連する他の試験および指標で、高齢者のネオプテリンレベルが機能自律性への復帰までの時間に関係していることを示すグラフの組み合わせである。患者のネオプテリン濃度は、病院到着時に測定され(nmol/l)、異なる時期の3つの臨床パラメータ(A)日常生活動作、(B)手段的日常生活動作、(C)手術後30日での簡易身体能力バッテリ(SPPB)と比較された。pは、ノンパラメトリックMann-Whitney検定で計算される。
【
図4】病院到着時に測定されたネオプテリン濃度に基づく、D30での歩行能力に関連する機能自律性の予測モデルの感度および特異度を示す受信者動作特性(ROC)曲線である。AUC=0.91、特異度=100%、感度=75%、閾値=15nM。
【発明を実施するための形態】
【0082】
詳細な説明-実施例
75歳を超える200人超の高齢者に、研究に参加するためのスクリーニングを行った。健常者がコホートの3分の1を構成する一方で、他は股関節骨折で救急科に入院していた。注目すべきことに、骨粗鬆症患者は含まれず、したがって、事故による股関節骨折患者のみが、コホート(n=120)に含まれていた。骨折後の長期追跡調査は、患者の病院到着時(D0;PRE)、手術後(POST)、患者の退院時(D7~D10;EXIT)、および骨折の長期間後(M6~M12;FOLLOW UP)に採取された血液試料を用いて設計された。
【0083】
血漿およびPBMCは、使用するまで凍結保存された。実験は、常に、股関節骨折患者と比較される健康対照由来の試料を含んでいた(全ての時点で同時に行われた)。
【0084】
発明者らは、病院到着時の患者が到達するネオプテリンレベルに注目することを選ぶ。
【0085】
発明者らは、以下のプロトコルに従って、ネオプテリンを、股関節骨折後の機能回復の予測マーカーとして分析した。
【0086】
材料および方法
実験を、IBL-internationalからの市販のキットを使用して、(以下に記載される)製造者の指示に従って行った。
【0087】
試験の原理
ネオプテリンELISAキットは、血清試料由来のヒトネオプテリンおよび酵素標識ネオプテリンの、マイクロタイタープレートに固定化されたネオプテリン特異抗体への競合的結合に基づく。洗浄ステップ後、発色基質を加え、発色させる。酵素反応(青色)は、試料中に存在するネオプテリンの量に反比例する。反応は、停止液を加えることによって終了する(青色から黄色に変わる)。次いで、吸光度を、ELISAリーダーで450nmで測定し、試料および対照中のネオプテリン濃度を、検量線から読み取る。
【0088】
感度
検出下限は、(10回の反復分析に基づく)キャリブレーターAの平均OD-2SDの結果として得られる濃度を決定することによって検量線から計算される。ネオプテリンELISAキットの感度は、0.7nmol/Lである。
【0089】
特異度(交差反応性)
以下の化合物を、直接ネオプテリンELISAキットを用いて交差反応性について試験した。著しい干渉は、以下の濃度で検出されなかった。ヘモグロビン35mg/dL、ビリルビン2.25mg/dL、トリグリセリド125mg/dL。
【0090】
検体の採取および取り扱い
血液を、静脈穿刺によって採取し、凝固させ、血清を、室温での遠心分離によって分離した。血清は、加熱不活性化されなかった。血清を直ちに評価することができない場合、これらは、-20℃で6か月間まで貯蔵され得る。試料を凍結および解凍することができるが、試料の繰り返しの凍結および解凍は、避けられるべきである。NaN3を含有する検体を使用しないこと。濁って見える試料は、粒子状物質を除去するために、試験前に遠心分離されるべきである。
【0091】
発明者らの実験は、凍結されたヒト血漿に対して行われた。血漿試料を、アリコートに分け、光から保護し、使用前に1年間-80℃で凍結保存した。解凍を、試料を冷蔵庫に置き、ゆっくりと解凍することによって行った。その後、解凍した血漿を、1000rpmで10分間、暗所で遠心分離した。
【0092】
試薬調製
原料洗浄緩衝液を、水で希釈し(1:20)、4℃で1か月間貯蔵した。
【0093】
全ての試薬を、それらの使用前に室温に置いた。
【0094】
以下の実験のために、ヒト血漿アリコートを、希釈せずに使用し、暗所で操作した。必要ならば、使用される試料を、アッセイ緩衝液で希釈した(1:10)。
【0095】
貯蔵および安定性
マイクロタイターウェルプレートおよび全ての他の試薬は、2~8℃で、ラベルに印刷された使用期限まで安定である。キット全体の安定性は、通常、適切な貯蔵条件下で、発送日から6か月である。標準物質の未使用分は、2~8℃で貯蔵されるか、または小さいアリコートに分けて凍結貯蔵されるべきである。
【0096】
試験手順
全ての試薬を、使用前に室温にした。必要な数のコーティングストリップを取り除き、マイクロタイターウェルプレートに配置した。プレート上で使用されるマイクロタイターウェルストリップを標識し、洗浄緩衝液を水で希釈した(1:20)。
【0097】
20μlの標準物質、対照、および試料を、ピペットで適切なウェルに分けて複製した。
【0098】
100μlの既製の酵素コンジュゲートを各ウェルに加え、続いて、50μlの既製のネオプテリン抗血清を各ウェルに加え、その後、5~10秒間穏やかに混合した。プレートを覆い、90分間、18~25℃で、オービタルシェーカー(500rpm)上で、暗所でインキュベートした。
【0099】
ウェル内容物を吸引し、プレートを吸収紙にブロットし、その後、ウェルを、300μlの1X洗浄緩衝液で4回直ちに洗浄した。
【0100】
150μlのTMB基質溶液を加え、その後、5~10秒間穏やかに混合した。プレートを覆い、10分間、暗所で、18~25℃でインキュベートした。
【0101】
反応を、150μlの停止液を、全てのウェルに、ステップ5と同じ時間間隔で加えることによって停止した。穏やかな混合を5~10秒間行って、均一な色分布を得た(青色が黄色に変わった)。
【0102】
吸光度を、15分以内にELISAリーダーを使用して450nmで測定した。
【0103】
結果の計算
全ての複製の吸光度を平均し、その後、上で得られた平均から、平均化された非特異的結合(NSB)吸光度を差し引いた。これは、正味の吸光度をもたらす。正味の吸光度を正味のゼロ基準吸光度(Bo)で割って、パーセント結合(%B/Bo)を得た。
【0104】
式:
Abs.(試料)-Abs.(NSB)
%B/Bo=×100Abs.(ゼロ基準)-Abs.(NSB)
Abs.=複製ウェルの平均吸光度
NSB=非特異的結合(ブランクとしても知られる)、試料=計算されている特定の血清または標準物質、ゼロ基準=0nmol/L基準または100%結合ウェル。
【0105】
0.5nmol/Lの点から開始するネオプテリン標準物質の濃度(X軸)に対する、パーセント結合(Y軸)のプロットを構築する。ロジット対数または片対数方眼紙が使用され得る。これは、検量線をもたらす。
【0106】
検量線を使用して、各試料のネオプテリン濃度を決定した。
【0107】
予想される参照ネオプテリンレベル
通常、健康な対象は、以下の値を示す:健康な対象のネオプテリンレベル(正常)<10nmol/L(0.3~3.0ng/mL)。
換算:ネオプテリン(nmol/L)×0.253=ng/mL
【0108】
結果および考察
図1に示すように、ネオプテリンレベルは、試験を行うことが不可能な股関節骨折患者と比較した歩行可能な股関節骨折患者の間で統計的に差があった。この観察は、退院時(
図1A;p=0.002)、リハビリ部門での患者の滞在後(
図1B;p<0.0001)、および骨折後6か月(
図1C;p=0.004)の患者の歩行能力について妥当であった。
【0109】
機能自律している対象の集団と、依存している対象の集団との間のカットオフ値は、手術後D30での歩行能力に関連する受信者動作特性分析に基づいて、15nmol/L(75%の感度;100%の特異度;AUC=0.91)と決定された(
図4)。
【0110】
発明者らは、病院到着時に測定されたネオプテリンレベルと、
・最大療養スコア(
図2A、p=0.006;r=-0.47)
・手術後30日での5m歩行するのに必要な時間(
図2B、p=0.002;r=0.46)
・手術後D30に測定された簡易身体能力バッテリ(SPPB)について得られたスコア(
図2C、p=0.002;r=-0.5)
と間の相関も見出した。
【0111】
病院到着時に測定されたネオプテリンレベルと、対象の機能自律性との間のさらなる比較が行われ、ネオプテリンと機能自律性への復帰との間の相関を強調した:
・手術後D30に測定された日常生活動作(ADL)について得られたスコア(
図3A、p=0.0008)
・手術後D30に測定された手段的日常生活動作(IADL)について得られたスコア(
図3B、p=0.009)
・手術後D30に測定された簡易身体能力バッテリ(SPPB)について得られたスコア(
図3C、p=0.01)。
【国際調査報告】