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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】多因子活性のモニタリング
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/545 20060101AFI20230526BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20230526BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20230526BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20230526BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20230526BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALN20230526BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20230526BHJP
   C07K 7/00 20060101ALN20230526BHJP
【FI】
G01N33/545 Z
C12Q1/37
C12Q1/00 Z
G01N33/573 A
G16H50/20
C12Q1/6874 Z
C12Q1/686 Z
C07K7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565579
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021028795
(87)【国際公開番号】W WO2021216969
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/015,342
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SWIFT
2.VISUAL BASIC
3.ANDROID
4.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】521453600
【氏名又は名称】グリンプス バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ボーエン, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】トウティ, ファイサル
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
5L099
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ36
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ58
4B063QQ60
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA17
4H045BA31
4H045BA50
4H045EA50
5L099AA04
(57)【要約】
種々の病状を示す酵素に感受性を示す活性センサからのデータを、電子診療記録を含む他の情報源由来のデータおよび分子診断試験を含む臨床データと組み合わせる。プールしたデータを解析して、疾患の発症、疾患の進行、または患者に施された処置の期待できる治療有効性が挙げられるある特定のアウトカムを示すパターンを同定することができる。本発明は、種々の健康上のリスク、診断、予後、および治療に対する感受性および応答を示す合成バイオマーカーとしての機能を果たす酵素活性の非侵襲性の検出を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別化処置を患者に提供する方法であって、
活性センサカクテルを患者に投与する工程;
前記活性センサカクテルの投与から得た結果を分析する工程;
少なくとも1つの他の情報源から得たデータにアクセスする工程;および
活性センサカクテルの投与に由来する結果および前記少なくとも1つの他の情報源から得たデータの解析に基づいて前記患者の一連の個別化処置を決定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記活性センサカクテルが、
1つまたは複数の分子サブユニットを含む担体;および
酵素の切断部位を含む切断可能なリンカーによって前記担体に各々が連結された複数の検出可能なレポーター
を各々が含む複数の活性センサを含み、ここで、前記活性センサが、1またはそれを超える酵素による切断の際にレポーターを放出することによって前記1またはそれを超える酵素の活性を報告する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記決定する工程が、疾患を診断することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記決定する工程が、疾患進行における病期を同定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記決定する工程が、治療上の処置に対する応答を予測することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの他の情報源が、電子診療記録(EMR)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの他の情報源が、分子診断データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分子診断データが、核酸配列情報、エピジェネティック情報、DNAメチル化、およびRNA発現のデータからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの他の情報源が、共存症情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
決定する工程が、活性センサカクテルの投与に由来する結果およびアウトカムを示す少なくとも1つの他の情報源から得たデータのパターンを同定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記パターンが、既知のアウトカムを有する患者のデータの機械学習による分析によって同定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記決定する工程が、プロセッサに結合された有形の非一時的メモリを含むコンピュータによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
患者データ中の診断上の指標を同定する方法であって、前記方法が、既知のアウトカムを有する複数の患者への活性センサカクテルの投与から得た結果を分析する工程;
少なくとも1つの他の情報源から得た複数の患者のデータにアクセスする工程;および前記既知のアウトカム、結果、およびデータを機械学習システムに提供し;機械学習による解析によって、機械学習システムを使用して1またはそれを超える前記既知のアウトカムを示す前記結果およびデータ中のパターンを同定する工程を含む、方法。
【請求項14】
前記活性センサカクテルが、
1つまたは複数の分子サブユニットを含む担体;および
酵素の切断部位を含む切断可能なリンカーによって前記担体に各々が連結された複数の検出可能なレポーター
を各々が含む複数の活性センサを含み、前記活性センサが、1またはそれを超える酵素による切断の際にレポーターを放出することによって前記1またはそれを超える酵素の活性を報告する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記既知のアウトカムが疾患の発症を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記既知のアウトカムが疾患の進行を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記既知のアウトカムが、治療上の処置に対する応答を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの他の情報源が、電子診療記録(EMR)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの他の情報源が共存症情報を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの他の情報源が分子診断データを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記分子診断データが、核酸配列情報、エピジェネティック情報、DNAメチル化、およびRNA発現のデータからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記同定する工程が、プロセッサに結合された有形の非一時的メモリを含むコンピュータによって行われる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、非侵襲性活性センサを含む多因子個別化医療に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
癌などの疾患を検出または診断する現在のアプローチは、例えば、組織生検を入手し、顕微鏡下で細胞を試験するか、DNAを配列決定して、疾患の遺伝子マーカーを検出する技術を含む。処置によっては介入が早いほど成功する可能性が高くなると考えられるので、早期の検出は有利である。例えば、癌の場合、腫瘍を外科的に除去することが可能であり、癌が転移する前に検出される場合に、患者は、完全寛解し得る。
【0003】
不運なことに、疾患検出の既存のアプローチは、常に疾患をその初期に検出するわけではない。例えば、X線マンモグラムは、X線が身体検査によって検出できない腫瘍を検出し得るという点で、指診より有利である。それにもかかわらず、かかる試験は、検出されるいくらかの程度まで腫瘍が進行している必要がある。液体生検は、1つの見込みのある疾患検出方法を示す。液体生検では、血液試料を採取し、腫瘍DNAの小断片をスクリーニングする。不運なことに、X線マンモグラム、組織試料の顕微鏡試験、および液体生検は、いくらか進行した疾患のみを検出し、医学的に最も有利な初期に疾患を常に検出するわけではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本発明は、種々の健康上のリスク、診断、予後、および治療に対する感受性および応答を示す合成バイオマーカーとしての機能を果たす酵素活性の非侵襲性の検出を提供する。操作されたセンサによって報告された種々の酵素の発現の差を、さらなる情報源(他の臨床アッセイデータ(例えば、ゲノム情報、プロテオミクス情報、およびエピジェネティック情報)が挙げられる)および電子診療記録(EMR)由来のデータと組み合わせて、種々の診断および予後のデータポイントを非侵襲性に提供することができる。さらなるデータポイント(共存症、DNAメチル化、およびテロメア情報が挙げられる)を解析することができ、種々のアウトカムと相関するデータパターンを同定するために、関連する既知のアウトカム情報も分析することができる。癌または他の疾患の発症リスクの増加を示すデータパターンが同定され得る。パターンは、他のアウトカム(疾患進行および治療感受性および応答(局在化免疫系活性が挙げられる)、および免疫治療反応など)と関係し得る。
【0005】
本発明のシステムおよび方法は、患者のデータとアウトカムとの間の新規の診断的および予後的な関連の同定に特に適している。したがって、全ての血清プロテアーゼに感受性を示す操作されたセンサを使用して、発現の差と疾患との間の新規の関連をくまなく捜すことができる。一般的な酵素発現情報(例えば、血清プロテアーゼ)に加えて、腫瘍局在化活性センサなどの標的化活性センサを、例えば、免疫学的酵素に感受性を示す切断可能なレポーターと共に使用して、免疫応答(誘導された免疫治療反応が挙げられる)を検出することができる。一般的な酵素情報、ゲノム供給源、プロテオミクス供給源、エピジェネティック供給源、EMR供給源、および他の供給源から提供されたデータをさらに深めると、疾患リスク、疾患進行、および予測される治療反応または実際の治療反応を示すパターンを同定するための新規の機会が提供される。
【0006】
本発明の多因子システムおよび方法で意図されるさらなるデータ供給源は、分子診断情報およびEMRデータを含む。関連分子診断データは、患者のDNA配列、DNAメチル化データ、RNA分析、遺伝子発現プロファイリングによるエピジェネティクス、タンパク質分析を含むことができる。EMRデータは、患者の病歴、保険金請求パターン、家族歴、人口学的情報、または患者の電子診療記録から入手した任意の他の情報を含むことができる。任意のデータ供給源由来の情報を活性センサ情報と組み合わせて、疾患リスクを決定するか、疾患の進行または治療有効性を追跡するか、類似の患者における予測アウトカムに基づいて一連の個別化処置を開発することができる。
【0007】
ある特定の実施形態では、多重化された活性センサ情報を分子診断情報、EMRデータ、および機械学習アルゴリズムを訓練するための既知のアウトカムと組み合わせて、患者の特徴とある特定のアウトカム(例えば、疾患の発症、疾患の進行、または種々の処置に対する応答)との間の相関またはパターンを同定することができる。かかるアルゴリズムの訓練後、疾患を診断するか、成功する可能性が最も高い個別化処置プランを同定するために、患者データを類似のパターンについて解析することができる。
【0008】
機械学習システムおよび人工知能システムは、一般にヒトによる検出を回避するであろうデータ中のパターンおよび相関の同定に有利である。したがって、解析のために提供されるデータが多いほど、より多くかつより強い相関を同定することができる。医学的な診断、予後、および処置の文脈では、患者データおよび疾患リスク、アウトカム、ならびに処置の結果の間の新規の相関がわかると、処置時間が短縮され、それにより診断がより迅速になり、命を救うことができる。標的化活性センサまたは一般的な活性センサによって提供された豊富な情報を分子診断アッセイ由来の既存の患者データおよびEMR情報と組み合わせることにより、本発明のシステムおよび方法は、既存の診断技術より進歩している。
【0009】
活性センサは、活性センサ中の酵素特異的切断部位の操作によって特異的標的組織中の任意の酵素レベルを非侵襲性に報告するようにプログラミングすることができる合成バイオマーカーとして作用する。例えば、活性センサは、切断可能な分析物として4つまたはそれを超えるポリペプチドレポーターに連結されたマルチアームポリエチレングリコール(PEG)骨格であり得る。切断可能なリンカーは、活性がモニタリングされるべき条件(例えば、癌組織におけるある特定の病期もしくは進行または免疫応答)の特徴を示す異なる酵素に特異的である。患者に投与されたときに、活性センサは標的組織に局在化し、標的組織で酵素によって切断されて検出可能な分析物を放出する。分析物は、尿試料などの患者試料中で検出される。検出された分析物は、どの酵素が組織中で活性であるのか、したがって、条件または活性に関連するのかについて報告として役立つ。
【0010】
酵素は病期または疾患の進行度などの目的の生理学的状態下での発現に差があるので、試料を分析すれば、器官、身体の区画、体液、または組織の生理学的状態(例えば、病期または症状)が非侵襲性に試験される。担体の構造は、好ましくは、複数の分子サブユニットを含み、例えば、マルチアームポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、脂質ナノ粒子、またはデンドリマーであり得る。検出可能な分析物は、例えば疾患に影響を受ける特定の生理学的状態下での組織または器官中の発現に差があるプロテアーゼによって切断される例えばポリペプチドであり得る。担体の構造および検出可能な分析物が、標的組織に配置される生体適合性の分子構造であり、疾患関連酵素によって切断されて試料中に検出可能な分析物を放出するので、開示の組成物は、器官または組織の病状または病期を検出および特徴づけるための非侵襲性の方法を提供する。組成物が酵素活性によって検出可能な分析物として放出される物質を提供するので、試料中の分析物の定量的検出により、器官または組織中の酵素の活性率の尺度が得られる。したがって、開示の方法および組成物は、標的器官または標的組織における疾患または症状の状態および進行速度の両方を測定するための非侵襲性の方法を提供する。
【0011】
さらに、活性センサは、体内のセンサの移動、または粒子の酵素切断もしくは他の代謝分解のタイミングに影響を及ぼすためのさらなる分子構造を含み得る。分子構造は、身体によって、制御されたタイミングで活性センサを標的組織に配置するように作用される調整ドメイン、さらなる分子サブユニット、またはリンカーとして機能し得る。例えば、調整ドメインは、活性センサを未熟な切断および無差別な加水分解から防御するか、粒子を免疫検出およびクリアランスから遮蔽するか、粒子に特異的な組織または細胞型を標的にさせることによって粒子の運命を調整し得る。移動は、コア担体ポリマー中にさらなる分子構造を含めることによって、例えば、体内での粒子の分解を遅延させるためにPEG足場のサイズを増大させることによって影響を受け得る。
【0012】
ある特定の実施形態では、本発明の活性センサおよびデータ解析方法を癌免疫(I-O)処置に適用して、患者におけるI-O薬応答を予測または観察することができる。個別の患者に関するより詳細かつ関連する情報を提供することにより、試験において応答者と非応答者の間の新規のパターンが同定され得、活性センサを介して入手した情報を臨床試験中のより良い患者の層別のためにEMRデータおよび分子診断情報と組み合わせることができ、特異的な処置から利益が得られるように患者亜集団を同定するのに役立ち得る。したがって、本発明のシステムおよび方法は、応答性または有害作用に関連する患者の特徴への理解が限られていたために以前は排除されてきたと考えられる役立つ治療の認可を支持し得る。
【0013】
本明細書中に記載のように、活性センサは、異なる酵素に対して感受性を示す種々の異なる切断可能なレポーターを含み得る。さらに、多数の異なる活性センサを、同時に投与し、分析することができる。レポーター分子は、種々のプロテアーゼ活性の複数の分析を行い、以前の天然バイオマーカーを使用して可能であった場合よりも詳細な標的環境の実態を表すことができるように、相互に区別することができる。
【0014】
ある特定の実施形態では、活性センサのデータは、分子診断情報および他のデータ(EMR情報など)と共に定期的に収集されて、種々のデータポイントの変化を時系列に追跡し得る。時点での情報に加えて、データポイントの変化率を試験して、速度情報を提供することができる。かかる情報は、健康な個体にさえも適用可能な健康の表示に有用であり、疾患進行および治療反応についての伝統的な縦断的モニタリングを超える別のデータポイントを提供する。
【0015】
他のデータ供給源としては、例えば、診療記録、請求データ、および試験結果が挙げられ得る。診療記録および請求データは、人口統計データ、地理データ、病歴、遺伝学的データ、および研究室実験の結果を提供することができる。分子診断データ供給源としては、例えば、RNA発現情報またはゲノム解析/配列決定データが挙げられ得る。
【0016】
本発明で使用される機械学習システムは、完全に自立型であり得る(すなわち、データの特徴の注釈付けまたはラベリングに人為的入力を必要としない)。その代わりに、生データおよび関連するアウトカムのみが機械学習システムに提供される。次いで、機械学習システムは、ある特定のアウトカム(例えば、疾患の診断、ある特定の処置に対する応答性、または疾患の予後)を有する患者から得たデータでよく見られ、したがって、そのアウトカムを示す任意の特徴または一連の特徴または特徴の関係を自由に同定できる。次いで、同定された特徴を使用して、未知のアウトカムを有する新規の患者において活性センサ、EMR、分子診断、および他のデータに基づいて、その患者のアウトカムを予測することができる。それにより、疾患状態が未知の患者においてより正確な診断および予後を提供することができる。
【0017】
機械学習による解析の利益は、疾患と同定された特徴との間のいかなる根底となる関係も理解することを必要とせずにアウトカムを予測するために使用され得る特徴または特徴のパターンが同定されることである。したがって、同定された相関を研究して、疾患の機序をより深く理解することができる。本発明の機械学習システムは、例えば、神経回路網、ランダムフォレスト、回帰分析、サポートベクターマシン(SVM)、クラスター分析、決定木学習、相関ルール学習、またはベイジアンネットワークのうちの1つまたは複数を使用し得るか、含み得る。
【0018】
種々の実施形態では、活性センサの担体構造は、複数の分子サブユニットを含むことができ、例えば、マルチアームポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、脂質ナノ粒子、またはデンドリマーであり得る。検出可能な分析物は、例えば、免疫応答を経験しているか、疾患が進行している組織または器官で発現に差があるプロテアーゼによって切断されるポリペプチドであり得る。担体構造および検出可能な分析物が、標的組織に局在し、疾患または免疫応答に関連する酵素によって切断されて試料中に検出可能な分析物を放出する生体適合性分子構造であるので、本開示の組成物は、器官または組織の状態を検出および特徴づけるための非侵襲性の方法を提供する。組成物が酵素活性によって検出可能な分析物として放出される物質を提供するので、試料中の分析物の定量的検出により、器官または組織中の酵素の活性率の尺度が得られる。したがって、本開示の方法および組成物は、癌の状態および進行速度またはI-O治療に対する応答の両方を測定するための非侵襲性の技術を提供する。
【0019】
活性センサは、オフターゲット分解に天然に耐性を示す環状ペプチドの形態を取り得る。標的環境は、特異的な酵素または酵素セットの発現に差がある腫瘍微小環境であり得る。環状ペプチドは、腫瘍中の酵素(例えば、腫瘍中で優先して発現される固有の酵素)に特異的な切断部位を用いて操作され得る。操作されたペプチドは、その環状の形態で、血液中および一般的な非特異的プロテアーゼによる分解から保護された他の潜在的に過酷な環境を、オフターゲット組織と意味のある方法で相互作用することなく移動することができる。特異的な標的組織内に到着し、必要な酵素または酵素の組み合わせに暴露された場合のみに、環状ペプチドが切断されて線状分子が産生され、この線状分子によりクリアランスおよび試料の観察が可能である。本出願の目的のために、その詳細な説明を考慮した場合に明らかであるように、線状ペプチドは、環状でない任意のペプチドである。したがって、例えば、線状化ペプチドは、種々の分枝鎖を有し得る。
【0020】
環状ペプチドを、他の切断可能な連結(エステル結合など)を用いて、エステル結合が分解されると線状化ペプチドを放出し、その標的環境と反応する状態になる環状デプシペプチドの形態に操作することができる。血漿または他の環境で持続放出するように、チオエステルおよび他の調整可能な結合を、環状ペプチドに含めることができる。Lin and Anseth,2013 Biomaterials Science(Third Edition),pages 716-728(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0021】
大環状ペプチドは、2またはそれを超えるプロテアーゼ特異的切断配列を含み得、レポーターペプチドまたは生物活性化合物を放出するための2またはそれを超えるプロテアーゼ依存性加水分解事象が必要であり得る。プロテアーゼ特異的配列は、種々の実施形態で異なり得る。線状化ペプチドを放出させるために複数の部位を切断する必要がある場合、プロテアーゼ特異的配列が異なると、少なくとも2つの異なる標的特異的酵素が存在することが必要であると考えられるので、放出特異性を増大させることができる。特異的および非特異的タンパク質分解の感受性および速度を、ペプチド配列含有量、長さ、および環化化学を操作することによって調整することができる。
【0022】
活性センサは、体内のペプチドの移動、または粒子の酵素切断もしくは他の代謝分解のタイミングに影響を及ぼすためのさらなる分子構造を含み得る。分子構造は、身体によって、制御されたタイミングで活性センサを標的組織に配置するように作用される調整ドメイン、さらなる分子サブユニット、またはリンカーとして機能し得る。例えば、調整ドメインにより、粒子が特異的な組織または細胞型を標的にし得る。移動は、担体ポリマー中に分子構造を付加することによって、例えば、体内での分解を遅延させるためにPEG足場のサイズを増大させることによって影響を受け得る。
【0023】
ある特定の実施形態では、本発明は、疾患などの生理学的状態に関連する酵素活性を明らかにする調整可能な活性センサを提供する。活性レポーターを患者に投与したときに、身体を通して活性レポーターが特異的細胞または特異的組織に移動する。例えば、肺癌患者では、活性センサは、例えば、肺組織または腫瘍組織に優先して移動される調整ドメインの使用によって、癌組織中に局在化するように調整され得る。活性センサは、免疫応答または腫瘍の進行もしくは退行の状態を示す酵素に感受性を示す切断可能なレポーター分子を含むことができる。次いで、その後に患者試料(例えば、尿)中のレポーターレベルを観察および/または追跡すれば、患者の肺癌の進行および/または治療反応を示すであろう。
【0024】
センサは、循環中(例えば、血液中、またはリンパ中、またはその両方)にとどまるようにデザインまたは調整され得る。特定の疾患条件下で発現に差がある酵素が存在する場合、これらの酵素は、レポーターを切断し、検出可能な分析物を放出する。環状ペプチド活性センサを使用して、依然として標的プロテアーゼによる切断のための基質に接近可能である一方で、循環中のペプチドの非特異的分解に耐性を示し得る。
【0025】
分子構造を、被験体内の活性センサの分布または滞留時間を調整または修正するための調整ドメインとして活性センサ中に含めることができる。調整ドメインは、活性センサの任意の部分に連結され得、多くの方法で修正され得る。調整ドメインの使用により、in vivoでの特異的組織への移動経路、または体循環内もしくは特異的組織内での活性センサの滞留時間に応じて、体内の活性センサの分布を修正し得る。さらに、調整ドメインは、組織特異的酵素によるレポーターの有効な切断を促進し得るか、未熟な切断または加水分解を防止し得る。検出可能な分析物が酵素活性の産物であり、かつ活性センサを過剰に提供することができるので、分析物が生じたシグナルは有効に増幅され、非常に少量の活性酵素の存在でさえも検出され得る。
【0026】
本発明の態様は、癌を有する疑いがある患者に、腫瘍環境の特徴を示す酵素の切断部位を含む切断可能なリンカーによってレポーター分子に連結された担体を含む活性センサを投与する工程を含む、癌進行をモニタリングする方法を含む。尿試料などの試料を、患者から回収し、分析することによってレポーターの存在または欠如を検出することができ、ここで、レポーターの存在は特徴を示す。
【0027】
特徴は活性な免疫応答であり得、患者は免疫腫瘍学的処置を受けており、ここで、レポーターの存在は、免疫腫瘍学的処置の治療効果を示す。活性センサは、標的腫瘍中に活性センサを局在させるように操作可能な調整ドメインを含み得る。特徴は、チェックポイント阻害免疫応答であり得、ここで、レポーターの存在は、チェックポイント阻害剤治療に対する予想される治療反応を示す。方法は、試料中のレポーターの検出に基づいて臨床試験において患者を層別する工程を含み得る。
【0028】
ある特定の実施形態では、分析する工程は、試料中のレポーターのレベルを定量することを含み得、方法は、投与する工程、回収する工程、および分析する工程を定期的に繰り返して、経時的な一連のレポーターレベルを調製する、定期的に繰り返す工程を含むことができ、その結果から、患者における癌進行を示す特徴の速度を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、患者データの解析方法の工程を図示する。
【0030】
図2図2は、活性センサを示す。
【0031】
図3図3は、操作された大環状ペプチドを示す。
【0032】
図4図4は、コンピュータ解析プラットフォームの略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本発明は、患者組織における酵素の発現差に関する詳細な情報を非侵襲性に提供する活性センサを提供する。その情報を臨床データ(例えば、分子診断試験)などの他の情報源由来のデータおよび電子診療記録(EMR)由来の情報と組み合わせて、多数の患者に特異的なデータポイントを得る。大量のデータを組み合わせると、患者のアウトカムを改善するための新規の診断、予後、および治療のための指標を同定することが可能である。ある特定の実施形態では、データ解析を機械学習システムによって行って、種々のデータポイントと患者のアウトカム(例えば、処置応答性および疾患の発症または進行)との間の相関を同定する。活性センサは、尿などの体液試料中で検出可能であるが、特異的酵素酵素または酵素群による切断の際にのみ身体から放出される種々のレポーター分子を含むことができる。したがって、試料中のレポーターの検出は、標的組織中の酵素の発現差を示す。ある特定の実施形態では、広範な活性センサのカクテルを投与して、全ての血清プロテアーゼの発現データについて報告することができる。一般的な血清プロテアーゼ発現に加えて、活性センサが特異的組織(例えば、腫瘍)を標的にし、その切断部位が種々の条件下で発現に差がある酵素に特異的となるように操作することにより、本発明の活性センサは、疾患進行および予測されるか実際の治療反応答を洞察することができる。
【0034】
本発明の活性センサおよびデータ解析法を処置に適用して、患者における薬物応答を予測または観察することができる。活性センサ、臨床データ、およびEMR情報の組み合わせから提供された情報の深さは、例えば、臨床試験のための患者の層別で用いる新規の要因を提供することができる。層別は、与えられた処置以外の因子による被験体および結果の区分化である。層別は、伝統的には性別、年齢、または他の人口統計上の詳細などの因子によって行われるが、活性センサおよび他の臨床試験から得た詳細な患者の情報を加えることにより、層別化のためのより実用的で意味のある群を提供することができる。かかるグループ化を考慮した患者応答の試験を使用して、ばらつきを排除し、それにより、結果をより良好に解釈し、有害事象または治療有効性を原因となる患者の特徴にマッピングすることができる。
【0035】
活性センサは、活性センサ中の酵素特異的切断部位の操作によって特異的標的組織中の任意の酵素レベルを非侵襲性に報告するようにプログラミングすることができる合成バイオマーカーとして作用する。患者に投与したときに、活性センサは、例えば、標的特異的調整ドメインを使用して標的組織に配置される。局在化された時点で、活性センサは酵素によって切断されて、検出可能な分析物を放出する。分析物は、尿試料などの患者試料中に検出される。検出された分析物は、どの酵素が組織中で活性であるのか、したがって、条件または活性に関連するのかについて報告として役立つ。局在化すると、活性センサは、オフターゲット情報で汚染されることなく標的組織の症状について報告することが可能である。この能力は、首尾の良いI-O処置を示す抗腫瘍免疫応答を、例えば、ウイルス感染に応答して起こり得るオフターゲット免疫応答と区別するのに有用である。
【0036】
さらに、多数のゲノム研究およびRNA発現研究、ならびにEMRデータ解析をモニタリングする活性センサが侵襲性操作を必要としないので、頻繁なモニタリングがより実現可能であり、疾患進行および治療反応に関する最新情報により、安全性および有効性の査定のためのより迅速な意思決定が可能である。例えば、頻繁なモニタリングを使用して、処置に対する耐性が生じた場合に迅速に処置に対する耐性を同定することができる。例えば、癌が進行するにつれて、癌は変異し続け、免疫治療が標的にするために使用される新生抗原がもはや発現されない場合があり、治療有効性が小さくなる。活性センサならびに他のEMRおよび臨床データを用いたモニタリングによってかかる変化を迅速に同定できることにより、おそらく有意な癌の進行または再発の前に、より迅速に治療を変更することができる。
【0037】
酵素特異的レポーターは、単一の活性センサに多重化することができるか、多数の異なる活性センサに含めて、同時に投与され、分析される。レポーター分子は、多重分析で区別することができるように各酵素に対して特異的であり得る。ある特定の実施形態では、合成バイオマーカーとして作用する活性センサを投与し、定期的に測定し得る。経時的な酵素レベルの変化を他の臨床データまたはEMRデータの変化と共に試験して、データポイントを時系列にマッピングすることができる。研究において、バイオマーカーの速度(バイオマーカーレベルの経時変化率)がいかなる単一の閾値よりも疾患の進行(または後退)の良好な指標であり得ることが見出されている。同一の原理を、合成バイオマーカーとして作用する本発明の活性センサに適用することができる。
【0038】
活性センサは、担体、少なくとも1つの、担体に連結したレポーター、および少なくとも1つの、被験体に投与されたときに被験体内の活性センサの分布時間または滞留時間を調整する調整ドメインを含むことができる。活性センサは、体内の酵素活性(例えば、免疫応答中または腫瘍の進行もしくは退行中に発現に差がある酵素)を検出および報告するように設計され得る。無制御のプロテアーゼは、これらのプロテアーゼが、細胞シグナル伝達を変化させ、癌細胞の増殖、侵入、血管形成、アポトーシスの回避、および転移の推進を補助し得るという点で、癌などの疾患の進行の重要な結果である。
【0039】
活性センサは、体内の特異的細胞または特異的組織における酵素活性の検出を容易にする多数の方法で調整ドメインを介して調整され得る。例えば、活性センサは、活性センサの特異的組織への分布を促進するか、被験体中または特異的組織中の活性センサの滞留時間を改善するように調整され得る。調整ドメインとしては、例えば、腫瘍組織をより良好に標的にするための迅速に複製されている細胞中に局在化された分子が挙げられ得る。
【0040】
被験体に投与されたときに、活性センサは体中を移動し、体循環から特異的な組織に拡散し得、前述の組織でレポーターが、疾患の存在または進行を示す酵素を介して切断され得る。次いで、検出可能な分析物は、拡散されて循環に戻り得、腎臓によって濾過されて尿に排出され得、それにより、尿試料中の検出可能な分析物の検出は、標的組織中の酵素活性を示す。
【0041】
担体は、被験体に投与されたときに被験体の体中をレポーターが移動するのに好適な任意のプラットフォームであり得る。担体は、担体またはプラットフォームとしての機能を果たすのに好適な任意の材料またはサイズであり得る。好ましくは、担体は、生体適合性であり、無毒であり、非免疫原性であり、担体が投与された被験体の身体で免疫応答を引き起こさない。また、担体は、活性センサが組織、細胞、または分子を標的するための標的化手段として機能し得る。いくつかの実施形態では、担体ドメインは、ポリマー足場などの粒子である。担体は、例えば、循環によって腫瘍または他の特異的組織を受動的に標的にし得る。他のタイプの担体としては、例えば、組織、細胞、または分子の能動的な標的化を容易にする化合物が挙げられる。担体の例としては、ナノ粒子(酸化鉄または金ナノ粒子など)、アプタマー、ペプチド、タンパク質、核酸、ポリサッカリド、ポリマー、抗体または抗体断片、および小分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
担体は、種々の材料(鉄、セラミック、金属、天然ポリマー材料(ヒアルロン酸など)、合成ポリマー材料(ポリ-グリセロールセバカートなど)、および非ポリマー材料、またはその組み合わせなど)を含み得る。担体は、全体または一部が、ポリマーまたは非ポリマー材料(アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リンケイ酸カルシウム、リン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、およびシリカートなど)から構成され得る。ポリマーとしては、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。非生分解性ポリマーの例としては、エチレンビニルアセタート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、そのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0043】
生分解性ポリマーの例としては、合成ポリマー(乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリウレタンなど)、および天然ポリマー(アルギナートなど)および他のポリサッカリド(デキストランおよびセルロースが挙げられる)、コラーゲン、アルブミン、および他のタンパク質、そのコポリマーおよび混合物が挙げられる。一般に、これらの生分解性ポリマーは、酵素加水分解もしくはin vivoでの水への曝露、表面侵食もしくはバルク侵食のいずれかによって分解する。これらの生分解性ポリマーは、単独でか、物理的混合物(ブレンド)としてか、コポリマーとして単独で使用され得る。
【0044】
好ましい実施形態では、担体は生分解性ポリマーを含み、その結果、レポーターが担体から切断されるか、担体は体内で分解されるであろう。生分解性担体を提供することにより、体内に残存するインタクトな活性センサの蓄積および任意の関連する免疫応答または意図しない効果が最小にされ得る。
【0045】
他の生体適合性ポリマーとしては、PEG、PVA、およびPVPが挙げられ、これらは全て市販されている。PVPは、平均分子量がおよそ10,000~700,000の範囲であり、化学式(C6H9NO)[n]を有する非イオン生成性の親水性ポリマーである。また、PVPは、ポリ[1(2オキソ1ピロリジニル)エチレン]として公知である。PVPは、無毒で吸湿性が高く、水または有機溶媒に容易に溶解する。
【0046】
ポリビニルアルコール(PVA)は、アセタート基のヒドロキシル基との置換によってポリ酢酸ビニルから調整されるポリマーであり、化学式(CH2CHOH)[n]を有する。大部分のポリビニルアルコールは水溶性である。
【0047】
ポリ(オキシエチレン)グリコールとしても公知のポリエチレングリコール(PEG)は、エチレンオキシドと水の縮合ポリマーである。PEGは、エチレングリコールの繰り返し単位を含む化合物を指す。PEGの構造は、H-(O-CH2-CH2)n-OHとして表され得る。PEGは、生物学的に不活性であり(すなわち、非免疫原性)、一般的にヒトへの投与に安全と見なされている親水性化合物である。
【0048】
PEGが粒子に連結されるとき、PEGは、溶解性の改良、循環寿命の増大、安定性、タンパク質分解からの保護、マクロファージによる細胞取り込みの減少、ならびに免疫原性および抗原性の欠如などの有利な性質を提供する。また、PEGは、可動性が高く、立体障害を起こすことなくバイオコンジュゲーションおよび粒子の表面処理を行える。PEGは、化合物の分子特性を特定の適用に合わせるための生物学的に活性な化合物(ペプチド、タンパク質、抗体断片、アプタマー、酵素、および小分子など)の化学修飾のために使用され得る。さらに、PEG分子は、PEG分子の末端への種々の官能基の化学的付加によって官能化され得る(例えば、アミン反応性PEG(BS(PEG)n)またはスルフヒドリル反応性PEG(BM(PEG)n))。
【0049】
ある特定の実施形態では、担体は、生体適合性足場(ポリエチレングリコール(PEG)を含む足場など)である。好ましい実施形態では、担体は、共有結合したポリエチレングリコールマレイミド(PEG-MAL)の複数のサブユニットを含む生体適合性足場(例えば、8アームPEG-MAL足場)である。PEG含有足場は、生体適合性であり、安価であり、容易に購入でき、細網内皮系(RES)による取り込みが最小であり、多くの有利な挙動を示すので、選択され得る。例えば、PEG足場は、多数の細胞型(マクロファージなど)による粒子の細胞取り込みを阻害し、特異的組織への適切な分布を容易にし、組織中の滞留時間を増大させる。
【0050】
8アームPEG-MALは、ヘキサグリセロールコアに接続した8つのアームの各末端にマレイミド基を有するマルチアームPEG誘導体の1つの型である。マレイミド基は、マイケル付加を介して遊離チオール基、SH基、スルフヒドリル基、またはメルカプト基と選択的に反応して、安定な炭素-硫黄結合を形成する。8アームPEG-MAL足場の各アームは、ペプチドに、例えば、マレイミド-チオールカップリングまたはアミド結合を介して抱合され得る。
【0051】
PEG-MAL足場は、種々のサイズの足場であり得る(例えば、10kDaの足場、20kDaの足場、40kDaの足場、または40kDaを超える足場)。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のPEG足場の流体力学直径は、当該分野で公知の種々の方法によって(例えば、動的光散乱によって)決定され得る。かかる技術を使用して、40kDaのPEG-MAL足場の流体力学直径は、およそ8nmと測定された。好ましい実施形態では、活性センサが体循環に容易に分散されるが、細網内皮系によって容易にクリアランスされないので、活性センサが皮下投与されるとき、40kDaのPEG-MAL足場は担体として提供される。
【0052】
直径が約5nmより小さい粒子はタンパク質分解によって切断されなくとも身体の腎臓濾過によって効率的にクリアランスされるので、PEG-MAL足場のサイズは、活性センサの体内の分布および滞留に影響を及ぼす。さらに、直径が約10nmを超える粒子はリンパ管に排出されることが多い。一例を挙げれば、40kDaの8アームPEG-MAL足場が静脈内投与された場合、足場は、腎臓によって尿中にクリアランスされなかった。
【0053】
レポーターは、酵素活性に感受性を示す任意のレポーターであってよく、したがって、レポーターの切断は酵素活性を示す。レポーターは、特異的病状で活性な酵素に依存する。例えば、腫瘍は、特異的な一連の酵素に関連する。腫瘍について、活性センサは、腫瘍または他の罹患組織によって発現される酵素部位に適合する酵素感受性部位を用いてデザインされ得る。あるいは、酵素特異的部位は、通常は存在するが、特定の病状においては存在しない酵素に関連し得る。この例では、病状は、酵素に関連するシグナルの欠如、または通常の参照もしくは健康な被験体における事前の測定値と比較したシグナルレベルの低下に関連するであろう。
【0054】
種々の実施形態では、レポーターは、天然に存在する分子(ペプチド、核酸、小分子、揮発性有機化合物、元素質量タグ、または新生抗原など)を含む。他の実施形態では、レポーターは、天然に存在しない分子(D-アミノ酸、合成元素、または合成化合物など)を含む。レポーターは、質量コード化レポーター(例えば、既知の質量または同位体を有するポリペプチドなどの既知かつ個別に同定可能な質量を有するレポーター)であり得る。
【0055】
酵素は、生物の代謝過程を促進または触媒する生細胞で産生される種々のタンパク質のうちのいずれかであり得る。酵素は、基質に作用する。基質は、酵素による触媒反応が起こる前に活性部位と呼ばれる位置で酵素に結合する。一般に、酵素としては、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、リパーゼ、ヘパリナーゼ、およびホスファターゼが挙げられるが、これらに限定されない。被験体における疾患に関連する酵素の例としては、MMP、MMP-2、MMP-7、MMP-9、カリクレイン、カテプシン、セプラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、グルコセレブロシダーゼ、ピルビン酸キナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(ADAM)、ADAM9、ADAM15、ならびにマトリプターゼが挙げられるが、これらに限定されない。検出された酵素活性は、任意の型の酵素(例えば、プロテアーゼ、キナーゼ、エステラーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リサーゼ、イソメラーゼ、またはリガーゼ)の活性であり得る。
【0056】
疾患関連酵素の基質の例としては、インターロイキン1ベータ、IGFBP-3、TGF-ベータ、TNF、FASL、HB-EGF、FGFR1、デコリン、VEGF、EGF、IL2、IL6、PDGF、線維芽細胞成長因子(FGF)、およびMMPの組織阻害剤(TIMP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明のシステムおよび方法を使用して、他のデータと組み合わせた免疫学的酵素レベルの測定によって、癌進行がモニタリングされるか、免疫腫瘍学的治療に対する処置応答が予測またはモニタリングされ得る。免疫応答を示す酵素としては、例えば、組織リモデリング酵素が挙げられる。いくつかのプロテアーゼは、炎症およびプログラム細胞死(例えば、アポトーシス、ピロトーシス、およびネクロトーシスが挙げられる)に関連することが知られている。したがって、これらのプロテアーゼの局在化レベルは、免疫系活性を示す。カスパーゼ(システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ、システインアスパルターゼ、またはシステイン依存性アスパラギン酸指向プロテアーゼ)は、標的タンパク質のアスパラギン酸残基後のみを求核切断する活性部位中にシステインを含むプロテアーゼ酵素のファミリーである。カスパーゼ-1、カスパーゼ-4、カスパーゼ-5、およびカスパーゼ-11は、炎症に関連する。また、セリンプロテアーゼは、アポトーシスおよび炎症で機能し、したがって、その発現差は、免疫応答も示す。免疫細胞は、セリンプロテアーゼ(グランザイム、好中球エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3、チマーゼ、およびトリプターゼなど)を発現する。
【0058】
種々の実施形態では、免疫応答を示すプログラム細胞死と腫瘍進行中に天然に見出される壊死とを区別するのに有用であり得る。プログラム細胞死と対照的に、カスパーゼおよびセリンプロテアーゼが主なプロテアーゼである場合、カルパインおよびリソソームプロテアーゼ(例えば、カテプシンBおよびD)は、壊死における重要なプロテアーゼである。したがって、活性センサのレポーターの測定によって示されたカルパインおよびカテプシンのレベルは、免疫腫瘍学的情報を補完するための細胞の壊死に関する情報を提供することができる。
【0059】
本発明の活性センサおよび方法を、患者におけるI-O薬の応答を観察するためにI-O処置に適用することができる。例えば、カスパーゼ、セリンプロテアーゼ、カルパイン、およびカテプシンに感受性を示す切断部位を有する活性センサを、I-O処置中またはI-O処置後に投与することができ、患者試料中のレポーターレベルを使用して、治療反応をモニタリングすることができる。患者試料中のカスパーゼまたはセリンプロテアーゼのベースラインシグナルは、非応答性腫瘍を示す。ベースラインレベルを、患者集団から収集したデータまたは処置を受けていない患者由来の処置前データから実験的に決定することができる。ベースラインと比較した処置中または処置後のカスパーゼシグナルおよびセリンプロテアーゼシグナルの増加は、望ましい免疫腫瘍学的応答を示すことができる。カルパインシグナルまたはカテプシンシグナルのレベルを追跡すると、腫瘍進行に関連し得る非免疫学的細胞死に関するさらなる情報を得ることができる。
【0060】
調整ドメインは、活性センサが被験体に投与されたときに被験体内の活性センサの分布または滞留時間を改変する任意の好適な材料を含み得る。例えば、調整ドメインは、PEG、PVA、またはPVPを含み得る。別の例では、調整ドメインは、ポリペプチド、ペプチド、核酸、ポリサッカリド、揮発性有機化合物、疎水性鎖、または小分子を含み得る。
【0061】
図1は、患者データの解析のための方法100の工程を図示する。工程105では、活性センサを患者に投与する。患者は、健康であり、疾患を有する疑いがあり、疾患を有することが知られており、疾患の発症リスクがあり、そして/または処置を受けている場合がある。活性センサは、切断可能なリンカーによって担体に連結されたレポーターを含む(例えば、図2および3に示す)。切断可能なリンカーは、酵素レベルが病状示す酵素(例えば、拡大している腫瘍もしくは後退した腫瘍で上方制御される酵素、または活性なもしくは阻害された免疫応答を示す酵素)に感受性を示す。本明細書中で考察されるように、酵素活性に応じて、活性センサは、患者の疾患および処置状態について報告されるように操作され、患者試料中のレポーターレベルから収集した情報を使用して、疾患を診断および/または病期分類し、進行をモニタリングし、所与の治療に対する応答性を予測し、治療有効性をモニタリングすることができる。活性センサを、任意の好適な方法で投与することができる。好ましい実施形態では、活性センサは、静脈内に送達されるか、エアロゾル化して、例えば、ネブライザーを介して肺に送達させる。他の例では、活性センサは、被験体に、経皮、皮内、動脈内、病巣内、腫瘍内、頭蓋内、関節内、腫瘍内、筋肉内、皮下、経口、局所、局部に投与され得るか、吸入、注射、注入で投与され得るか、当該分野で公知の他の方法もしくは任意の組み合わせによって投与され得る(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)(参考として援用される)を参照のこと)。
【0062】
工程110では、活性センサの投与および標的組織中の活性センサの局在化後、レポーターは、標的酵素の存在下でリンカーが切断された際に選択的に放出される。標的組織中に優先的に濃縮された部分を含む調整ドメインを使用することによって局在化することができる。レポーターが放出されると、レポーターは、身体によって、血流への輸送および腎クリアランス後に尿などの非侵襲性に回収可能な流体中にクリアランスされ得る。尿試料などの試料を分析のために回収することができ、試料中のレポーターの存在および/またはレベルを検出することができる。
【0063】
種々の実施形態では、アウトカム関連パターンについての全ての発現データの差を解析するために、異なる血清プロテアーゼに対して感受性を示す活性センサのカクテルが投与され得る。血清プロテアーゼの例としては、トロンビン、プラスミン、およびハーゲマン因子が挙げられる。
【0064】
工程115では、分子診断アッセイを行うことができるか、他の臨床データを集めることができる。かかるデータは、血液アッセイ、尿検査、脂質パネル、DNA配列決定、イムノアッセイ、RNA発現分析、および当業者に公知の任意の他の試験を含むことができる。
【0065】
例えば、DNA内に存在するバリアントを同定するために試料をアッセイすることによって得ることができるゲノムデータが特に興味深い。種々の遺伝子領域中のある特定の一塩基多型(SNP)もしくは他の変異の存在またはこれらの遺伝子領域の異常な発現レベルは、疾患のリスク、病期、進行、または種々の治療に対する応答の可能性を示し得る。疾患に影響を及ぼすことができる変動としては、例えば、SNP、欠失、挿入、逆位、再編成、コピー数変動(CNV)、染色体微小欠失、遺伝子モザイク現象、核型異常、およびその組み合わせを挙げることができる。かかる変動を検出し、ゲノムデータを得る方法は、当該分野で周知である。
【0066】
ある特定の実施形態では、全ゲノム配列決定が行われ得、本発明の方法で使用されるゲノムデータは、患者のゲノム配列を含み得る。全ゲノム配列決定の実施方法は、当該分野で公知である。
【0067】
また、エピジェネティック情報(遺伝子発現レベルおよびDNAメチル化情報が挙げられる)を分析のために得るか提供することができる。DNAメチル化は、当該分野で公知の任意の方法(質量分析、メチル化特異的PCR、重硫酸塩配列決定、メチル化DNA免疫沈降、およびChIP-on-ChIPが挙げられる)によって決定され得る。
【0068】
工程120では、臨床データが提供されるか、得られる。本発明の方法で使用することを意図する臨床データは、診療記録、臨床試験データ、患者および疾患のレジストリ、事務管理データ、保険金請求データ、健康調査、および実験結果のアーカイブを含むことができる。診療記録は、医療施設での医療行為時に作成および/または保存された電子臨床データを含むことができる。この資料は、時折、電子診療記録(EMR)として公知であり、本明細書中で使用される場合、EMRは、管理情報および人口学的情報、診断、処置、処方薬、研究室試験、生理学的モニタリングデータ、入院、患者の保険などを含む。EMRの情報源は、病院または保健制度などの個別の組織を含む。EMRは、NIH Collaborator Distributed Research Networkなどのより大きな協調機構を通じてアクセス可能であり、資格のある研究者が臨床データレポジトリに医療目的または共同研究目的でアクセスする。さらに、UW De-identified Clinical Data Repository(DCDR)およびStanford Center for Clinical Informaticsは、初期コホートを同定可能である。
【0069】
ある特定の慢性的症状(アルツハイマー病、癌、糖尿病、心疾患、および喘息など)のデータを提供する疾患レジストリが存在する。かかるレジストリを使用して、本発明の方法で有用な情報を提供することができる。
【0070】
事務管理データ(AHRQのような政府機関に報告された退院データまたはHealthcare Cost&Utilization Project(H-CUP)由来のデータが挙げられる)を使用することができる。種々の実施形態では、保険金請求データ(入院患者、外来患者、薬局、および登録データが挙げられる)を、活性センサ情報を用いた解析のために使用することができる。政府(例えば、メディケア)および/または商業保険会社は、保険金請求データを得るための情報源であり得る。
【0071】
別の情報源は、National Center for Health Statistics、Center for Medicare&Medicaid Services Data Navigator、Medicare Current Beneficiary Survey、National Health&Nutrition Examination Survey(NHANES)、The Medical Expenditure Panel Survey(MEPS)、またはNational Health and Aging Trends Study(NHATS)などの健康調査であり得る。また、臨床データは、ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform(ICTRP)、European Union Clinical Trials Database、ISRCTN Registry(BioMed Central)、またはCenterWatchなどの臨床試験レジストリおよびデータベースから得ることができる。
【0072】
工程125は、患者を診断し、病期分類し、リスクを評価し、または推奨される処置を決定するためにデータ(活性センサデータ、分子診断データ、および臨床データが挙げられる)中の表示パターンを同定することを含む。データパターンおよび疾患の間の関係を同定するために計算装置上で既知のアウトカムおよび機械学習システムまたは神経回路網を使用し得る初期の訓練段階で、表示パターンを同定することができる。ある特定の実施形態では、表示パターンの同定は、アウトカムが未知の試験データへの同定済み相関の適用を含むことができ、ここでは、試験患者についてのアウトカムを予測するためにある特定のアウトカムを示す事前に同定済みのパターンが同定される。
【0073】
図4は、コンピュータシステム501内に認められ得るコンピュータ構成要素の略図を提供する。システム501は、好ましくは、少なくとも1つの計算装置101a、101bと通信ネットワーク517を介して通信するように操作可能な少なくとも1つのサーバコンピュータシステム511を含む。サーバ511に、本明細書中に記載の方法論を実施するための記録399(例えば、患者のデータ、アウトカム、またはアッセイの結果が挙げられる)を(例えば、メモリ307、記憶装置527、これらの両方、または他の装置内に一部または全部)記憶するためのデータベース385が提供され得る。必要に応じて、記憶装置527は、システム501に関連付けられ得る。本発明のシステムおよび方法のサーバ511または計算装置101は、一般に、バスおよび入出力デバイス305を介してメモリ307に連結された少なくとも1つのプロセッサ309を含む。
【0074】
当業者が本発明のシステムおよび方法に必要であるか、または最も適していると認識するように、本発明のシステムおよび方法は、バスを介して相互に通信する1またはそれを超えるプロセッサ309(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィクス・プロセシング・ユニット(GPU)など)、コンピュータ可読記憶デバイス307(例えば、メインメモリ、スタティックメモリなど)、またはその組み合わせを含み得る1またはそれを超えるサーバ511および/または計算装置101を含む。
【0075】
プロセッサ309は、当該分野で公知の任意の好適なプロセッサ(Intel(Santa Clara,CA)から商標XEON E7で販売されているプロセッサまたはAMD(Sunnyvale,CA)から商標OPTERON6200で販売されているプロセッサなど)を含み得る。
【0076】
メモリ307は、好ましくは、システムが本明細書中に記載の機能を実施するように実行可能な1またはそれを超える命令セット(例えば、本明細書中に見出される任意の方法論または機能を具体化するソフトウェア);データ;またはその両方を記憶することができる少なくとも1つの有形の非一時的媒体を含む。コンピュータ可読記憶デバイスが、例示的な実施形態では、単一の媒体であり得るが、用語「コンピュータ可読記憶デバイス」は、命令またはデータを記憶する単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型データベースもしくは分散型データベース、ならびに/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含むと解釈されるべきである。したがって、用語「コンピュータ可読記憶デバイス」は、固体メモリ(例えば、加入者識別モジュール(SIM)カード、セキュアデジタルカード(SDカード)、マイクロSDカード、または半導体ドライブ(SSD))、光媒体および磁気媒体、ハードドライブ、ディスクドライブ、および任意の他の有形の記憶媒体が挙げられるが、これらに限定されないと解釈されるものとする。
【0077】
記憶装置527(例えば、Amazon Web Services、サーバ511のメモリ307、クラウドストレージ、別のサーバ、または他のコンピュータ可読記憶装置など)に好適な任意のデバイスを使用することができる。クラウドストレージは、データが論理プールに記憶され、物理的記憶域が複数のサーバおよび複数の場所にわたり得るデータ記憶スキーマを指し得る。記憶装置527は、ホスティング会社が所有および管理し得る。好ましくは、本明細書中に記載の操作を実行および支援するために、記憶装置527を使用して、必要に応じて記録399を保存する。
【0078】
本発明の入出力デバイス305は、ビデオ表示ユニット(例えば、液晶表示装置(LCD)または陰極線管(CRT)モニタ)、英数字入力デバイス(例えば、キーボード)、カーソル制御デバイス(例えば、マウスまたはトラックパッド)、ディスクドライブユニット、信号発生デバイス(例えば、スピーカー)、タッチスクリーン、ボタン、加速度計、マイクロホン、セル方式高周波アンテナ、ネットワーク・インターフェースデバイス(例えば、ネットワーク・インターフェースカード(NIC)、Wi-Fiカード、またはセルラーモデムであり得る)、またはその任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0079】
当業者は、任意の好適な開発環境またはプログラミング言語が、種々の本発明のシステムおよび方法で本明細書中に記載の操作を可能にするために使用され得ると認識するであろう。例えば、本明細書中のシステムおよび方法を、Objective-C、Swift、C、Perl、Python、C++、C#、Java(登録商標)、JavaScript(登録商標)、Visual Basic、Ruby on Rails、Groovy and Grails、または任意の他の好適なツールを使用して実行することができる。計算装置101については、ネイティブxCodeまたはAndroid Javaを使用することが好ましいかもしれない。
【0080】
本発明の機械学習システムは、活性センサ、分子診断アッセイ、または臨床データ、および既知のアウトカムを受信し、教師なしの様式でデータ内の特徴を同定し、特徴から得られるアウトカムの確率マップを作成するように構成され得る。さらに、機械学習システムは、試験被験体から上記データのうちのいずれかを受信し、データ内の訓練工程から学習した予測される特徴を同定し、予測される特徴をアウトカムの確率マップ上に配置して、予後診断または診断(種々の処置に対する応答可能性が挙げられる)することができる。
【0081】
いくつかの好適な機械学習型のうちのいずれかは、開示の方法の1またはそれを超える工程のために使用され得る。好適な機械学習型は、決定木学習、相関ルール学習、帰納論理プログラミング、サポートベクターマシン(SVM)、およびベイジアンネットワークを含み得る。決定木学習の例としては、分類木、回帰木、ブーステッドツリー、ブートストラップ集合ツリー、ランダムフォレスト、およびローテーションフォレストが挙げられる。上記機械学習システムのうちの1つまたは複数を使用して、本明細書中に記載の方法工程のうちのいずれかまたは全てが完了し得る。例えば、神経回路網などの1つのモデルを使用して特徴を自律的に同定し、これらの特徴を一定のアウトカムと関連付ける訓練工程が完了され得る。これらの特徴が学習された時点で、特徴が、相関工程のための同一または異なるモデルまたは分類器(例えば、ランダムフォレスト、SVM、回帰)によって試験試料に適用され得る。ある特定の実施形態では、特徴が同定され、1またはそれを超える機械学習システムを使用してアウトカムと関連され得、次いで、この関連は、異なる機械学習システムを使用して精緻化され得る。したがって、訓練工程のいくつかが非標識データを使用して教師なし学習され得る一方で、その後の訓練工程(例えば、関連付けの精緻化)は、第1の機械学習システムによって自律的に同定された特徴を使用した回帰分析などの教師付き訓練技術を使用し得る。
【0082】
決定木学習では、いくつかの入力変数に基づいて標的変数の値を予測するモデルを構築する。決定木は、一般に2つの型に分類することができる。分類木では、目標変数は値またはクラスの有限集合を取り、それに対して、回帰木では、目標変数は実数などの連続する値を取ることができる。決定木では、入力変数に対応する一連のノードで順次決定を下す。ランダムフォレストは、予測精度を改善するための複数の決定木を含む。Breiman,L.Random Forests,Machine Learning 45:5-32(2001)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。ランダムフォレストでは、ブートストラップ集合またはバギングを使用して、異なる訓練データセットが与えられる複数のツリーによって予測の平均値を求める。さらに、特徴のランダムサブセットを学習過程の各スプリットで選択し、応答変数の強力な予測因子である個別の特徴の存在に起因し得る見かけ上の相関を減少させる。また、ランダムフォレストを使用して、観察データを合成データと区別するランダムフォレスト予測因子を構築することによって、非標識データ間の非類似測定値を決定することができる。同上;Shi,T.,Horvath,S.(2006),Unsupervised Learning with Random Forest Predictors,Journal of Computational and Graphical Statistics,15(1):118-138(本明細書中で参考として援用される)。したがって、ランダムフォレストを、本発明の教師なし機械学習法のために使用することができる。
【0083】
SVMは、分類および回帰の両方に有用である。新規のデータを2つのカテゴリー(疾患ありまたは疾患なしなど)のうちの1つに分類するために使用するとき、SVMは、多次元空間中に超平面を作成し、データポイントを1つのカテゴリーまたは他のカテゴリーに分ける。元の問題は有限次元空間のみで必要な用語で表され得るが、カテゴリー間のデータの線形分離は、有限次元空間では可能でないかもしれない。結果的に、多次元空間を選択して、データポイントを完全に分離する超平面を構築可能である。Press,W.H.et al.,Section 16.5.Support Vector Machines.Numerical Recipes:The Art of Scientific Computing(3rd ed.).New York:Cambridge University(2007)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。また、SVMを、本明細書中で考察した方法のうちのいくつかに好適な教師なし機械学習を実施するためのサポートベクタークラスタリングで使用することができる。Ben-Hur,A.,et al.,(2001),Support Vector Clustering,Journal of Machine Learning Research,2:125-137を参照のこと。
【0084】
回帰分析は、特徴およびアウトカムなどの変数間の関係を評価するための統計的過程である。回帰分析は、複数の変数間の関係をモデリングおよび解析するための技術を含む。具体的には、回帰分析は、単一の独立変数の変化に応答した従属変数の変化に注目する。回帰分析を使用して、独立変数で条件付けた従属変数の条件付き期待値を評価することができる。従属変数の変動は、回帰関数で特徴づけられ、確率分布によって説明され得る。回帰モデルのパラメータは、例えば、最小二乗法、ベイズ法、パーセンテージ回帰、最初絶対偏差、ノンパラメトリック回帰、または距離メトリック学習を使用して評価され得る。
【0085】
相関ルール学習は、大規模データベース中の変数間の興味深い関係を発見する方法である。Agrawal,R.et al.,“Mining association rules between sets of items in large databases”.Proceedings of the 1993 ACM SIGMOD international conference on Management of data-SIGMOD ’93.p.207(1993)doi:10.1145/170035.170072,ISBN 0897915925(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。相関ルール学習を実施するためのアルゴリズムには、Apriori、Eclat、FP-growth、およびAprioriDP.FIN、PrePost、およびPPVが挙げられ、Agrawal,R.et al.,Fast algorithms for mining association rules in large databases,in Bocca,Jorge B.;Jarke,Matthias;and Zaniolo,Carlo;editors,Proceedings of the 20th International Conference on Very Large Data Bases(VLDB),Santiago,Chile,September 1994,pages 487-499(1994);Zaki,M.J.(2000).“Scalable algorithms for association mining”.IEEE Transactions on Knowledge and Data Engineering.12(3):372-390;Han(2000).“Mining Frequent Patterns Without Candidate Generation”.Proceedings of the 2000 ACM SIGMOD International Conference on Management of Data.SIGMOD’00:1-12.doi:10.1145/342009.335372;D.Bhalodiya,K.M.Patel and C.Patel.An Efficient way to Find Frequent Pattern with Dynamic Programming Approach [1].NIRMA UNIVERSITY INTERNATIONAL CONFERENCE ON ENGINEERING,NUiCONE-2013,28-30 NOVEMBER,2013;Z.H.Deng and S.L.Lv.Fast mining frequent itemsets using Nodesets.[2].Expert Systems with Applications,41(10):4505-4512,2014;Z.H.Deng,Z.Wang and J.Jiang.A New Algorithm for Fast Mining Frequent Itemsets Using N-Lists[3].SCIENCE CHINA Information Sciences,55(9):2008-2030,2012;およびZ.H.Deng and Z.Wang.A New Fast Vertical Method for Mining Frequent Patterns[4].International Journal of Computational Intelligence Systems,3(6):733-744,2010(各々が、本明細書中で参考として援用される)に詳述されている。
【0086】
帰納論理プログラミングは、正の例、負の例、および背景知識に基づいて仮説を立てるための理論プログラミングに依存する。Luc De Raedt.A Perspective on Inductive Logic Programming.The Workshop on Current and Future Trends in Logic Programming,Shakertown,to appear in Springer LNCS,1999.CiteSeerX:10.1.1.56.1790;Muggleton,S.;De Raedt,L.(1994).“Inductive Logic Programming:Theory and methods”.The Journal of Logic Programming.19-20:629-679.doi:10.1016/0743-1066(94)90035-3(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0087】
ベイジアンネットワークは、有向非巡回グラフ(DAG)によって確率変数セットおよびこれらの条件依存関係を示す確率的グラフィカルモデルである。DAGは、観察可能な量、潜在変数、未知のパラメータ、または仮説であり得る確率変数を示すノードを有する。エッジは条件依存関係を示す;連結していないノードは、相互に条件付き独立にある変数を示す。各ノードは、ノードの親変数についての特定の一連の値を入力として取り,ノードによって表された変数の確率(または確率分布(妥当な場合))を(出力として)与える確率関数に関連する。Charniak,E.Bayesian Networks without Tears,AI Magazine,p.50,Winter 1991を参照のこと。
【0088】
図2は、担体205、レポーター207、および調整ドメイン215を有する活性センサ200を示す。図示するように、担体205は、共有結合したポリエチレングリコールマレイミド(PEG-MAL)の複数のサブユニットを含む生体適合性足場である。担体205は、分子量が約20kDaと80kDaとの間の8アームPEG-MAL足場である。レポーター207は、同定されたプロテアーゼに感受性を示す領域を含むポリペプチドである。同定されたプロテアーゼのレポーターを切断する活性は、疾患を示す。レポーター207は、検出可能な分析物210に接続された切断可能な基質221を含む。同定されたプロテアーゼによる切断が切断可能な基質221で起こるとき、検出可能な分析物210は、活性センサ200から放出され、組織を通過し、身体から排出され、検出され得る。
【0089】
種々の実施形態では、活性センサは、体内での非特異的なタンパク質分解および分解に構造的に耐性を示す環状ペプチドを含み得る。環状ペプチドは、本来は非反応性の環状ペプチドを本明細書中で考察した酵素の存在に応答して反応性レポーター分子を放出させるプロテアーゼ特異的基質またはpH感受性結合を含むことができる。環状ペプチドは、特異性を増大させるために複数の切断部位で切断されることが必要であり得る。複数の部位が、同一または異なるプロテアーゼに特異的であり得る。機能的なペプチドまたは他の分子を線状化するか放出させるために必要な種々の酵素または環境条件の組み合わせを備えた2、3、4、またはそれを超える環状ペプチド構造を含むポリ環状ペプチドを使用することができる。環状ペプチドは、1またはそれを超えるエステル結合が加水分解して線状化ペプチドを放出させるデプシペプチドを含むことができる。かかる実施形態を使用して、血漿などの環境におけるペプチド放出のタイミングを調整することができる。
【0090】
図3は、プロテアーゼ特異的基質309および安定な環化リンカー303を有する例示的な環状ペプチド301を示す。プロテアーゼ特異的基質309は、任意の数のアミノ酸を任意の順序で含み得る。例えば、Xはグリシンであり得る。Xはセリンであり得る。Xはアスパラギン酸であり得る。Xはフェニルアラニンであり得る。Xはグルタミン酸であり得る。Xはイソロイシンであり得る。環化リンカー303にカップリングしたN末端およびC末端は、環化残基305を含む。ペプチドは、プロテアーゼ安定性、切断部位周囲の立体障害、大員環の構造、およびペプチド鎖の剛性/可動性などの検討事項に対処するように操作され得る。スペーサー残基307のタイプおよび数を、環状ペプチドの種々の機能的部位の間の間隔を変化させることによって前述の性質の多くに対処し、変化させるように選択することができる。また、環化リンカーならびに環化残基の配置および選択により、上で考察した検討事項に影響を及ぼすことができる。PEGなどの調整ドメインおよび/またはFAMなどのレポーターを、環状ペプチドに含めることができる。
【0091】
生物試料は、レポーターが検出され得る被験体由来の任意の試料であり得る。例えば、試料は、組織試料(血液試料、硬組織試料、軟組織試料など)、尿試料、唾液試料、筋肉試料、糞便試料、精液試料、または脳脊髄液試料であり得る。
【0092】
本発明の活性センサから放出されたレポーター分子は、検出可能な分析物内の分子の量の存在を直接または間接的に検出できる任意の好適な検出方法によって検出され得る。例えば、レポーターは、親和性因子への捕捉リガンドの結合を含む試験であるリガンド結合アッセイによって検出され得る。レポーターは、捕捉後、光学密度、放射線放射、または非放射性エネルギー移動によって直接検出され得る。あるいは、レポーターは、抗体抱合体、親和性カラム、ストレプトアビジン-ビオチン抱合体、PCR分析、DNAマイクロアレイ、または蛍光分析を用いて間接的に検出され得る。
【0093】
リガンド結合アッセイは、しばしば、ELISA(蛍光、比色、生物発光、および化学発光によるELISAが挙げられる)、試験紙もしくは側方流動アッセイ、またはビーズベースの蛍光アッセイなどの検出工程を含む。
【0094】
一例を挙げれば、ペーパーベースのELISA試験を使用して、尿中の遊離レポーターが検出され得る。ペーパーベースのELISAは、市販の固体インクプリンターから堆積したワックスを再流して単一の紙片上に試験スポットのアレイを作成することなどによって安価に作成され得る。固形インクが液体または半固体の状態に加熱されたとき、プリントされたワックスがペーパーに浸透し、疎水性のバリアが作成される。次いで、疎水性バリアの間の空間は、個別の反応ウェルとして使用され得る。ELISAアッセイは、個別の反応ウェル上で検出抗体を乾燥させ、ペーパー上に試験スポットを構成し、その後にブロッキングおよび洗浄することによって行われ得る。次いで、被験体から採取した尿試料由来の尿が、試験スポットに添加され得、次いで、検出抗体としてストレプトアビジンアルカリホスファターゼ(ALP)抱合体が試験スポットに添加され得る。次いで、結合したALPが発色反応剤(紫色の沈殿を生じ、レポーターの存在を示すBCIP/NBT(5-ブロモ-4-クロロ-3’-インドリルホスファート(indolyphosphate)p-トルイジン塩/ニトロ-ブルーテトラゾリウムクロリド)など)に曝露され得る。
【0095】
別の例では、揮発性有機化合物は、ガスクロマトグラフィ装置、ブレサライザー、質量分析計などの分析プラットフォームによるか、光センサまたは音響センサを使用することによって検出され得る。
【0096】
ガスクロマトグラフィを使用して、分解することなく気化することができる化合物(例えば、揮発性有機化合物)が検出され得る。ガスクロマトグラフィ装置は、キャリアガス(例えば、ヘリウムなどの不活性ガスまたは窒素などの非反応性ガス)であるモバイル相(または移動相)、およびカラムと呼ばれるガラス製または金属製の管の一部の内側にある不活性固体支持体上の液体またはポリマーの微視的層である固定相を含む。カラムには固定相がコーティングされており、分析されるガス状化合物がカラムの壁と相互作用して、前述の化合物が異なる時間に溶出される(すなわち、カラム内での保持時間が様々である)。化合物は、その保持時間によって区別され得る。
【0097】
また、改良型のブレサライザー装置を使用して、揮発性有機化合物が検出され得る。血中アルコールレベルを検出するために使用される伝統的なブレサライザーでは、被験体は、呼気を装置に吐き出し、被験体の呼気中に存在する任意のエタノールがアノードで酢酸に酸化される。カソードでは、大気中の酸素が還元される。反応全体としてはエタノールが酢酸および水に酸化され、それにより電流が発生し、この電流がマイクロコントローラによって検出および定量され得る。他の反応を活用する改良型のブレサライザー装置を使用して、種々の揮発性有機化合物が検出され得る。
【0098】
質量分析を使用して、質量の相違に基づいてレポーターが検出および区別され得る。質量分析では、サンプルは、例えば、電子線を衝突させることによってイオン化される。試料は、固体、液体、または気体であり得る。試料をイオン化することにより、試料の分子のうちのいくつかが荷電断片に破壊される。次いで、これらのイオンは、質量電荷比に応じて分離され得る。しばしば、イオンを加速して電場または磁場に供することによって分離され、ここで、同一の質量電荷比を有するイオンは、同量の偏向を受けるであろう。偏向したときに、イオンは、荷電粒子を検出することができる機構(例えば、電子増倍管)によって検出され得る。検出結果は、質量電荷比の関数として検出されたイオンの相対存在量の範囲として表示され得る。次いで、試料中の分子を、既知の質量との相関(同定された質量に対する全体の質量など)または特徴的なフラグメンテーションパターンによって同定することができる。
【0099】
レポーターが核酸を含むとき、レポーターは、当該分野で公知の種々の配列決定法(例えば、伝統的なサンガー配列決定法または次世代配列決定(NGS))によって検出され得る。NGSは、一般に、非サンガーベースのハイスループット核酸配列決定テクノロジーを指し、多数(すなわち、数千、数百万、または数十億)の核酸ストランドを並行して配列決定することができる。かかるNGS配列決定の例としては、Illumina製のプラットフォーム(例えば、HiSeq、MiSeq、NextSeq、MiniSeq、およびiSeq100)、Pacific Biosciences(例えば、SequelおよびRSII)、およびThermoFisherのIon Torrent(例えば、Ion S5、Ion Proton、Ion PGM、およびIon Chefシステム)が挙げられる。任意の好適なNGS配列決定プラットフォームをNGSのために使用して本明細書中に記載の検出可能な分析物の核酸が検出され得ると理解される。
【0100】
生物試料が直接分析され得るか、検出可能な分析物が最初にいくらか精製され得る。例えば、精製工程は、生物試料中の他の構成要素から検出可能な分析物を単離することを含み得る。精製は、アフィニティクロマトグラフィなどの方法を含み得る。単離または精製された検出可能な分析物は、分析前に純度100%であったり、実質的に純粋であることさえ必要としない。
【0101】
検出可能な分析物を検出すると、酵素の活性レベルを比較するための定性的査定(例えば、検出可能な分析物が存在するか非存在であるかかどうか)または定量的査定(例えば、検出可能な分析物の存在量)が可能である。定量値を、任意の手段(試料中に存在する各画分の相対量を百分率で決定することなど)によって計算することができる。これらのタイプの計算方法は、当該分野で公知である。
【0102】
検出可能な分析物は標識され得る。例えば、標識は、単離された検出可能な分析物がPCRに供されるときに核酸に直接付加され得る。例えば、標識されたプライマーまたは標識されたヌクレオチドを使用してPCR反応を行うと、標識された産物が得られるであろう。標識されたヌクレオチド(フルオレセイン標識CTPなど)は、市販されている。核酸への標識の付着方法は当業者に周知であり、PCR法に加えて、例えば、ニック翻訳および末端標識が挙げられる。
【0103】
レポーターでの使用に好適な標識は、標準的な方法(分光学的方法、光化学的方法、生化学的方法、電気的方法、光学的方法、または化学的方法が挙げられる)によって検出可能な任意のタイプの標識を含む。標識は、蛍光標識であり得る。蛍光標識は、少なくとも1つのフルオロフォアを含む化合物である。市販の蛍光標識としては、例えば、フルオレセインホスホルアミダイト、ローダミン、ポリメタジン色素誘導体、リン光、テキサスレッド、緑色蛍光タンパク質、CY3、およびCYSが挙げられる。
【0104】
また、他の公知の技術(化学発光または比色(酵素呈色反応)など)を使用して、レポーターを検出することができる。また、「ドナー」フルオロフォアが酵素の結合部位である短い架橋によって「アクセプター」発色団に連結されたクエンチャー組成物が使用され得る。ドナーフルオロフォアのシグナルは、共鳴エネルギー転移(RET)(蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)など)が関与すると考えられる過程によってアクセプター発色団によりクエンチされる。ペプチドが切断されると、発色団およびフルオロフォアが分離し、クエンチが除去され、その後にドナーフルオロフォアからシグナルが生成され、このシグナルが測定される。FRET対の例としては、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)とCPQ2、FAMとDABCYL、Cy5とQSY21、Cy3とQSY7が挙げられる。
【0105】
種々の実施形態では、活性センサは、活性センサが特定の組織または器官を標的にするのを補助するためのリガンドを含み得る。被験体に投与されたときに、活性センサは、体内への侵入方法に応じた種々の経路を介して体内に移動する。例えば、活性センサが静脈内投与された場合、活性センサが注射点から体循環に入り、体中を受動的に移動し得る。
【0106】
特異的細胞内の酵素活性に応答するための活性センサについて、体内でのその滞留時間中のある時点で、活性センサは、酵素と出会い、酵素によって切断および線状化されて線状化されたレポーターまたは治療分子が放出される機会がなければならない。ターゲティングの観点から、かかる目的の酵素が存在し得る特異的細胞型または特異的組織型を標的にするための手段が活性センサに提供されることが有利である。これを達成するために、特異的細胞型または特異的組織型の受容体のリガンドが、調整ドメインとして提供され、ポリペプチドに連結され得る。
【0107】
細胞表面受容体は、細胞外表面上のリガンドに結合する膜係留タンパク質である。一例を挙げれば、リガンドは、リガンド結合に応答して開口するイオンチャネルであるリガンド開口型イオンチャネルに結合し得る。リガンド開口型イオンチャネルは、細胞膜にまたがり、その中央部に疎水性チャネルを有する。チャネルの細胞外領域へのリガンド結合に応答して、タンパク質の構造は、ある特定の粒子またはイオンが通過し得るような方法で変化する。細胞表面上に存在するタンパク質のリガンドを含む調整ドメインを活性センサに提供することにより、活性センサは、細胞内の酵素活性を検出するための特異的細胞に到達して侵入する機会が増大する。
【0108】
リガンドは、標的にされた細胞上の細胞表面タンパク質へのリガンドの結合を介して活性センサが被験体中の特異的細胞または特異的組織を標的にし得るので、活性センサに調整ドメインを提供することによって活性センサの分布が修正され得る。調整ドメインのリガンドは、小分子;ペプチド;抗体;抗体の断片;核酸;およびアプタマーを含む群から選択され得る。
【0109】
活性センサが特異的組織に到達した時点で、リガンドはまた、特異的組織型中の活性センサの蓄積を促進し得る。特異的組織中に活性センサが蓄積されると、活性センサの滞留時間が増大し、プロテアーゼが存在する場合に活性センサが組織中のプロテアーゼによって酵素切断される機会が増加する。
【0110】
活性センサが被験体に投与されたときに、活性センサは、免疫系によって外来物質として認識されて免疫クリアランスに供され得、それにより、特異的酵素活性が治療化合物またはレポーター分子を放出することができる特異的細胞または特異的組織に到達することは決して無い。さらに、免疫応答が生じることにより、免疫応答感受性活性センサの目的を果たすことができない。免疫による検出を阻害するために、免疫応答を誘発しないような生体適合性担体を使用することが好ましい(例えば、生体適合性担体は、1またはそれを超えるポリエチレングリコールマレイミドのサブユニットを含み得る)。さらに、ポリエチレングリコールマレイミド担体の分子量は、体内の移動を容易にし、かつ細網内皮系による活性センサのクリアランスを予防するように改変され得る。かかる改変により、体内または特異的組織中の活性センサの分布および滞留時間が改善され得る。
【0111】
種々の実施形態では、活性センサは、細胞膜を横切った分散を促進するように操作され得る。上で考察されるように、活性センサの細胞取り込みは、十分に実証されている。Gang.を参照のこと。また、細胞膜を横切った活性センサの拡散を容易にするための調整ドメインが活性センサに連結され得るように、疎水性鎖が提供され得る。
【0112】
調整ドメインは、拡散を容易にする任意の好適な疎水性鎖(例えば、脂肪酸鎖(中性、飽和、(多価/一価)不飽和油脂(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)が挙げられる)、リン脂質、ステロール(ステロイドアルコール)、動物ステロール(コレステロール)、ワックス、および脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、およびK))を含み得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、調整ドメインは、細胞透過性ペプチドを含む。細胞透過性ペプチド(CPP)は、開示の活性センサの細胞取り入れ/取り込みを容易にする短いペプチドである。CPPは、好ましくは、正電荷のアミノ酸(リジンまたはアルギニンなど)の相対存在量が高いか、極性/荷電アミノ酸および非極性の疎水性アミノ酸が交互になるパターンで含む配列を有するアミノ酸組成を有する。Milletti,2012,Cell-penetrating peptides:classes,origin,and current landscape,Drug Discov Today 17:850-860(参考として援用される)を参照のこと。好適なCPPとしては、文献中にTat、R6、R8、R9、Penetratin、pVEc、RRLヘリックス、Shuffle、およびPenetramaxとして公知のものが挙げられる。Kristensen,2016,Cell-penetrating peptides as tools to enhance non-injectable delivery of biopharmaceuticals,Tissue Barriers 4(2):e1178369(参考として援用される)を参照のこと。
【0114】
ある特定の実施形態では、活性センサは、活性センサを免疫検出から保護するか、マクロファージによる活性センサの細胞取り込みを阻害するための調整ドメインとして生体適合性ポリマーを含み得る。
【0115】
外来物質が抗原として認識されるとき、抗体応答は、免疫系によって引き起こされ得る。一般に、次いで、抗体は外来物質に付着し、抗原-抗体複合体を形成し、次いで、この複合体がマクロファージおよび他の貪食細胞によって取り込まれて、身体からこれらの外来物質が除去されるであろう。そのようなものとして、活性センサが身体に侵入するとき、活性センサは抗原として認識され、免疫クリアランスに供され、活性センサが特異的組織に到達して酵素活性を検出することを阻止し得る。活性センサの免疫検出を阻害するために、例えば、PEG調整ドメインが活性センサに連結され得る。PEGは、遮蔽物として作用し、免疫系によって活性センサが外来物質として認識されるのを阻害する。免疫検出を阻害することにより、調整ドメインは、体内または特異的組織中の活性センサの滞留時間を改善する。
【0116】
酵素は、特異的基質に相補的な形状、電荷、および親水性/疎水性を有する結合ポケットによって、特異的基質に対する特異性が高い。そのようなものとして、酵素は、非常に類似する基質分子を、化学選択的に(すなわち、化学反応の結果が別の反応より優先される)、位置選択的に(すなわち、化学結合が生じるか破壊される方向が全ての他の可能な方向より優先される)、および立体特異的に(すなわち、1つの立体異性体またはそのサブセットのみと反応する)区別することができる。
【0117】
立体効果は、立体障害を生じるイオンおよび分子の形状(すなわち、高次構造)および反応性に影響を及ぼす非結合相互作用である。立体障害は、分子間反応に影響を及ぼす立体容積に起因する化学反応の遅延である。種々の分子群は、群間の立体障害を制御するように(例えば、望ましくない副反応を阻害するために選択性を制御するように)改変され得る。活性センサの担体と切断部位および/または任意の生体抱合残基との間にスペーサー残基などの調整ドメインを提供することにより、活性センサの構成要素間の立体障害を最小にして、特異的プロテアーゼが切断部位により接近可能となり得る。あるいは、立体障害を上記のように使用して、不安定な環化リンカー(例えば、環状デプシペプチドのエステル結合)が分解されるまで、切断部位への接近を防止することができる。かかる不安定な環化リンカーは、標的環境の特異的な特徴に応答して選択され得る規定の条件(例えば、pHまたはある特定の分析物の存在)で加水分解する他の公知の化学的部分であり得る。
【0118】
種々の実施形態では、活性センサは、非特異的プロテアーゼ活性をさらに防止するために、標的切断部位とは別のD-アミノ酸を含み得る。他の非天然アミノ酸(合成ノンネイティブアミノ酸、置換アミノ酸、または1またはそれを超えるD-アミノ酸が挙げられる)がペプチドに組み込まれ得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、調整ドメインは、合成ポリマー(乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリウレタンなど)、および天然ポリマー(アルギナートおよび他のポリサッカリド(デキストランおよびセルロースが挙げられる)、コラーゲン、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性タンパク質など)、そのコポリマーおよび混合物を含み得る。
【0120】
当業者は、本開示の活性センサ中のプロテアーゼ切断部位としてどのペプチドセグメントを含めるかを承知しているであろう。当業者は、切断部位を同定するためのオンラインツールまたは刊行物を使用することができる。例えば、切断部位は、Song,2012,PROSPER:An integrated feature-based tool for predicting protease substrate cleavage sites,PLoSOne 7(11):e50300(参考として援用される)に記載のオンラインデータベースPROSPERにおいて予想される。本明細書中で考察された組成物、構造、方法、または活性センサのうちのいずれかは、例えば、任意の好適な切断部位、および任意の望ましい分子量を得るための任意のさらなる無作為なポリペプチドセグメントを含み得る。オフターゲット切断を防止するために、切断部位の外側の1つまたは任意の数のアミノ酸は、任意の量のD型および/またはL型の混合物であり得る。
【0121】
参照による援用
本開示を通して、特許、特許出願、特許刊行物、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書が参照および引用されている。かかる文書はすべて、あらゆる目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0122】
均等物
本明細書に表示されて記載されたものに加えて、本発明の種々の修正およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書中に引用された科学文献および特許文献の参照が含まれる本文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。本明細書中の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合させることができる重要な情報、例示、およびガイダンスを含む。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】