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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】活性センサの対照
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6897 20180101AFI20230526BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C12Q1/6897 Z
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565580
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021028797
(87)【国際公開番号】W WO2021216971
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/015,341
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521453600
【氏名又は名称】グリンプス バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ボーエン, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】トウティ, ファイサル
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QR55
4B063QR56
4B063QR90
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
組織の症状を示す酵素に感受性を示す活性センサを、アッセイの成功を示す他の組織中の同一の酵素のレベルまたは対照酵素のレベルを提供する対照活性センサまたは正規化活性センサと同時投与する。分析物の速度分析などにおいて対照レポーターレベルを使用して、試料間の活性センサデータを正規化することができる。また、対照レポーターを使用して、局在化した酵素活性を全身活性と区別し、活性センサの局在化を確認するか、活性センサ取り込みの問題を解決することができる。免疫学的酵素に感受性を示す活性センサおよび対照は、癌免疫処置の査定で特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌進行をモニタリングする方法であって、
癌を有する疑いがある患者に、腫瘍の特徴が存在すると切断される切断可能なリンカーによってレポーター分子に連結された担体を含む活性センサを投与する工程;
前記患者に、対照分子によって切断される対照の切断可能なリンカーによって対照レポーター分子に連結された担体を含む対照活性センサを投与する工程;
前記患者から試料を回収する工程;
前記試料を分析する工程であって、前記レポーターおよび前記対照レポーターの存在または欠如を検出する工程、を含み、ここで、前記レポーターの存在が前記特徴を示す、方法。
【請求項2】
前記試料中の前記対照レポーターの非存在がアッセイの失敗を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特徴が、腫瘍中に存在する酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対照分子が酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分析する工程が、試料中の前記レポーターのレベルおよび前記対照レポーターのレベルを定量することをさらに含み、前記方法が、
前記レポーターのレベルを前記対照レポーターのレベルで除する工程であって、正規化されたレポーターレベルを決定する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
投与する工程、回収する工程、および分析する工程を定期的に繰り返す工程であって、経時的な一連の正規化されたレポーターレベルを調製する工程、および
腫瘍環境の特徴の速度を決定する工程
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素が免疫学的酵素である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が免疫腫瘍学的処置を受けており、前記レポーターの存在が、前記免疫腫瘍学的処置の治療効果を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記活性センサが、標的腫瘍中に前記活性センサを局在化するように操作可能な調整ドメインをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が免疫腫瘍学的処置を受けておらず、前記レポーターの存在が、チェックポイント阻害剤治療に対する予測される治療反応を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記試料中の前記レポーターの検出に基づいて、臨床試験において前記患者を層別する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫学的酵素が、カスパーゼおよびセリンプロテアーゼからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記活性センサが、標的腫瘍中に前記活性センサが局在化するように操作可能な調整ドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記対照活性センサが前記調整ドメインを含み、前記対照酵素が免疫学的酵素ではないが、標的腫瘍において発現に差があり、ここで、前記対照レポーターの存在が標的局在化を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レポーター分子および前記対照レポーター分子の両方が、同一の担体に連結されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対照活性センサが標的化ドメインを含まず、前記対照酵素が前記免疫学的酵素であり、
ここで、前記対照レポーターの存在が標的局在化を示し、
ここで、前記分析する工程が、前記試料中の前記レポーターのレベルおよび前記対照レポーターのレベルを定量することをさらに含み、前記方法が、
前記レポーターのレベルを前記対照レポーターのレベルと比較する工程であって、腫瘍特異的免疫応答を同定する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、酵素活性センサの対照に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
癌などの疾患の診断およびモニタリングは、しばしば、組織生検などの侵襲性で痛みを伴う手技を含む。バイオマーカーは、内部現象を追跡するための非侵襲性の手段を提供することができるが、天然に存在する現象に関連する分子およびそれに関連する我々の理解を必要とし、その範囲は限られる。新規の天然バイオマーカーを発見する過程には問題が多い。最近、体内の種々の条件に応答して検出可能な分子を放出するように操作された合成バイオマーカーが開発されている。しかしながら、レポーターデータソースの確認、標的特異的レポーターの問題解決、および試料毎の変動の排除は全て、合成バイオマーカーを使用した正確な報告の障壁となっている。
【0003】
かかるバイオマーカーは、癌免疫療法または癌免疫(I-O)の分野で適用される見込みがある。癌免疫は、最近発展した分野であり、種々の癌の形態を処置できる見込みがある。I-Oは、癌の攻撃に患者自身の免疫系を使用することを指す。I-Oは広範で、受動的技術および能動的技術が含まれる。受動的技術は、例えば、免疫系攻撃からの腫瘍による防御を破壊することができる免疫チェックポイント阻害剤(例えば、CTLA-4遮断薬、PD-1阻害剤、またはPD-L1阻害剤)による患者の既存の抗腫瘍免疫応答の増強に関与する。能動的技術としては、腫瘍特異的抗原を標的にするようにプログラムされた操作されたCAR-T細胞などの標的免疫治療が挙げられる。不運なことに、侵襲性の生検または誤診の可能性のあるイメージングを用いることなく腫瘍環境を洞察することは困難であり、それ故、合成バイオマーカーの適用が有利である。とは言うものの、既存の非侵襲性の診断アッセイおよびモニタリングアッセイにおいて偽陰性を排除することは困難であり得る。さらに、癌免疫治療の場合、局在化された抗腫瘍免疫応答と全身的免疫系活性とを区別することが必要であり得るが、合成バイオマーカーからの情報を使用した場合でさえも困難であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本発明は、疾患および治療有効性の非侵襲性の検出およびモニタリングで有用なレポーターを提供する。本発明によれば、活性センサを使用して、結果を確証し、診断アッセイおよび治療アッセイを較正する。1つの実施形態では、本発明は、癌進行、局在化した免疫系活性、および免疫治療反応の酵素活性の特徴を検出するための正規化物質および対照レポーターの使用を含む。活性センサは、本明細書中に記載のように、患者に投与されて標的組織に局在化され、標的で酵素活性を示す検出可能なレポーター分子を放出することができる合成バイオマーカーを提供する。腫瘍を標的にし、免疫応答または腫瘍進行を示す酵素活性にについて報告するように操作されたかかる活性センサは、免疫腫瘍学的治療に対する患者の応答の査定および疾患状態のモニタリングに有用である。しかしながら、I-O治療におけるレポーターレベルの分析は、比較分析であることが多く、したがって、ベースライン酵素活性の理解に依存し、酵素活性の変化を経時的にモニタリングする必要がある。種々の時点にわたって採取された試料由来の測定は、試料毎の変動を説明しなければならない。正規化物質として作用する本発明の対照レポーター由来の値は、変動を排除して疾患進行および治療反応のより正確な査定の一助となり得る。さらに、免疫系活性は必ずしも抗腫瘍活性ではなく、したがって、I-O治療の査定には、抗腫瘍応答と全身的免疫応答の区別を必要とする。本発明の対照および正規化レポーターは、標的組織中の活性センサの局在化を確認し、腫瘍特異的免疫系活性の比較分析のためのオフターゲット免疫系活性レベルを提供することによって区別することができる。
【0005】
対照は、全身的な標的特異的レポーター(例えば、疾患状態と無関係に標的組織中での発現に差がある酵素に応答する)を含み得る。試料中にかかるレポーターが存在すると、活性センサが標的組織に到達していること、および組織状態レポーターレベル(例えば、癌進行関連レポーターレベルまたは免疫学的酵素レポーターレベル)が標的組織に寄与し得ることが確認される。例えば、肺癌にI-O分析を適用する場合、免疫学的酵素感受性活性センサを、肺特異的酵素感受性活性センサと同時投与することができる。患者試料中の肺特異的レポーターの存在は、活性センサが標的組織に到達したこと、および試料中に見出された免疫学的酵素感受性レポーターレベルが、オフターゲット免疫応答とは対照的に、抗腫瘍応答に寄与する可能性が高いことを示す。他方では、患者試料中に免疫学的酵素感受性レポーターが存在するが対応する肺特異的レポーターを含まない場合、オフターゲット免疫系応答に原因する偽陽性の結果を示し得る。
【0006】
また、対照レポーターは、首尾の良いアッセイを示すベースラインシグナルを提供することによって偽陰性の結果を防止し得る。上記の例では、患者試料中に一般的な肺特異的レポーターおよび免疫学的酵素感受性レポーターの両方が存在しない場合、アッセイが失敗したこと、および抗腫瘍応答が欠如していると臨床的に結論を下すべきでないことを示し得る。ある特定の実施形態では、対照レポーターは、酵素による切断を投与経路の種々の段階に沿って分類することができるので、その後の分析は、患者試料中に存在するレポーターの軌跡が投与経路に沿って問題が生じ得る場所を示し、アッセイの問題点の解決に役立ち得る。
【0007】
また、対照レポーターレベルは、正規化物質として機能することができる。正規化の主な目的は、レポーター標的以外の要因についてのデータを修正することによって試料毎の変動を排除することである。標的レポーターレベルを第2の対照値で除することによって正規化することができる。免疫学的酵素または癌特異的酵素のレポーターレベルを、上記の対照レポーターレベルのいずれかで除して、I-O応答データを正規化することができる。例えば、以下に考察するように、免疫学的酵素感受性活性センサは、腫瘍組織を標的にして、腫瘍組織に特異的な免疫学的応答情報を得ることができる。ある特定の実施形態では、非標的化免疫学的酵素感受性活性センサを同時投与して、全身免疫系活性レベルを比較することができる。標的特異的レベルを非標的特異的レベルで除して、全身的免疫応答を正規化し、抗腫瘍免疫応答のより正確な状況を提供することができる。
【0008】
ある特定の実施形態では、試験-酵素感受性レポーターレベル(例えば、免疫学的酵素または他の条件を示す酵素活性を報告する)は、疾患に関連しない遍在性酵素または標的特異的酵素に感受性を示す対照レポーターレベルに対して正規化される。かかる対照レベルは、一般的なアッセイ機能を示し、対照レベルを使用して正規化すると、試料毎の変動を平滑化することができ、これは、レポーター測定値の試料対試料の比較に依存するI-O治療のモニタリング技術で特に有用であり得る。本明細書中に記載のように、活性センサは、活性センサ中の酵素特異的切断部位を操作することによって特異的標的組織中の任意の酵素レベルが非侵襲性に報告されるようにプログラミングすることができる合成バイオマーカーとして作用する。ある特定の実施形態では、正規化レポーターおよび実験レポーターを、個別の担体上に含めることができる。好ましい実施形態では、活性センサは、同一または異なる酵素によって切断され得る複数の切断可能なレポーター分子を含むことができる。したがって、対照レポーターまたは正規化レポーターを、実験レポーター(例えば、免疫学的酵素感受性レポーター)と共に単一の担体上に含めることができる。例えば、活性センサは、切断可能な分析物として4つまたはそれを超えるポリペプチドレポーターに連結されたマルチアームポリエチレングリコール(PEG)骨格であり得る。切断可能なリンカーは、活性がモニタリングされるべき条件(例えば、癌組織におけるある特定の病期もしくは進行または免疫応答)の特徴を示す異なる酵素に特異的である。患者に投与されたときに、活性センサは標的組織に局在化し、標的組織で酵素によって切断されて検出可能な分析物を放出する。分析物は、尿などの患者試料中で検出される。検出された分析物は、どの酵素が組織中で活性であるのか、したがって、条件または活性に関連するのかについて報告として役立つ。
【0009】
種々の実施形態では、実験活性センサは、I-O治療応答の予測および癌の進行および進化の詳細なモニタリングに有用な免疫学的酵素に感受性を示す切断可能なレポーターを有する腫瘍局在化活性センサを含むことができる。対照データおよび正規化データを考慮して、I-Oレポーターレベルは、治療反応、疾患進行の病期分類、および治療有効性のモニタリングに役立ち得る。実験活性センサは、免疫応答(炎症およびアポトーシスが挙げられる)において発現に差があるプロテアーゼに感受性を示す切断可能なリンカーを含み得る。また、癌進行に関するさらなる情報を提供するための、天然の腫瘍進行に関連する細胞の壊死に関連するプロテアーゼに感受性を示す活性センサを含めることができる。炎症/アポトーシス関連プロテアーゼレベルと壊死関連プロテアーゼレベルとを比較すると、癌進行のより詳細な所見およびI-O処置応答を得ることができる。
【0010】
カスパーゼ(システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ、システインアスパルターゼ、またはシステイン依存性アスパラギン酸指向プロテアーゼ)は、プログラム細胞死(例えば、アポトーシス)および炎症に関連し、したがって、本明細書中に記載のカスパーゼ切断性レポーターを用いて操作された活性センサは、免疫応答を示す合成バイオマーカーを提供することができる。免疫応答を示す他のプロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼ(グランザイム、好中球エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3、チマーゼ、およびトリプターゼなど)が挙げられる。以下に考察するように、これらの合成バイオマーカーは、I-O治療有効性と全身性免疫応答またはオフターゲット免疫応答の区別で有用な免疫応答の腫瘍に特異的な状況を提供するために、腫瘍に活性センサを局在化させるための調整ドメインを含むことができる。
【0011】
活性センサは、切断可能なリンカーを介した1またはそれを超える検出可能な分析物に連結された分子担体構造を含むことができる。患者試料中の活性センサのレポーターレベルを測定し、対照および/または正規化データを考慮した免疫学的酵素の存在および量を使用して、患者における生得的、人為的、または増強された免疫腫瘍学的応答を決定することができる。例えば、非標的化免疫学的酵素感受性活性センサ対照に対する比較/正規化によって検証された腫瘍局在化活性センサ由来のカスパーゼレポーターおよびセリンプロテアーゼレポーターのベースラインシグナルは、処置後に測定したときの非応答性腫瘍または処置前に測定したときの免疫学的にコールドな腫瘍を示すことができる。免疫学的にコールドな腫瘍の表示は、患者がチェックポイント阻害剤に応答しそうにないことを示すことができる。処置前に測定した腫瘍局在化活性センサ由来のカスパーゼレポーターおよびセリンプロテアーゼレポーターのシグナルのわずかな上昇は、患者がチェックポイント阻害剤の良好な候補であり得る免疫学的にホットな腫瘍を示すことができる。処置中または処置後に測定した腫瘍局在化活性センサ由来のカスパーゼレポーターおよびセリンプロテアーゼレポーターのシグナルが高い場合、望ましい免疫腫瘍学的反応を示し得る。上記の場合のいずれかにおいて、標的特異的免疫学的酵素のベースライン、僅かに上昇したレベル、または非常に上昇したレベルの決定は、非標的化免疫学的酵素などの対照レポーターのレベルに対する比較を含むことができる。
【0012】
壊死関連プロテアーゼ(カルパインおよびカテプシンなど)レベルの報告は、免疫腫瘍学的情報を補完し、腫瘍の進行と偽進行との区別を補助するための細胞の壊死に関する情報を提供することができる。対照レベル(例えば、非標的化壊死関連プロテアーゼ)は、腫瘍特異的壊死の状況を明確にするのに役立ち得る。
【0013】
本発明の活性センサを使用して提供される情報を使用して、ホットな腫瘍とコールドな腫瘍を区別することができる。免疫学的にコールドな腫瘍は、T細胞の浸潤はわずかであり、免疫系による強い応答が誘発されない腫瘍を指す。ホットな腫瘍は、対照的に、高レベルの浸潤T細胞およびより多くの抗原を含み、強力な免疫応答を誘発する可能性がより高い。したがって、患者の免疫系によって標的として既に認識されているホットな腫瘍は、患者の既存の免疫応答を簡潔に増強するためのチェックポイント阻害剤などの受動的処置の良好な候補であり得る。腫瘍特異的免疫応答の全身的免疫系活性を示す対照値との比較は、免疫学的にホットな腫瘍の同定を補助することができる。
【0014】
ある特定の実施形態では、合成バイオマーカー、核酸、タンパク質、色素などとして作用するI-O活性センサを投与し、定期的に測定して、種々の酵素レベルを時系列にマッピングする。時点での情報に加えて、種々の酵素レベルの測定値の変化率を試験して、速度情報を提供することができる。かかるパネルは、健康な個体にさえも適用可能な健康の表示に有用であり、疾患進行および治療反応についての伝統的な縦断的モニタリングを超える別のデータポイントを提供する。かかる速度分析では、試料にわたる正規化は、試料の変動性による任意の影響を低下させるのに重要である。
【0015】
様々な実施形態では、活性センサは、オフターゲット分解に天然に耐性を示す環状ペプチドの形態を取り得る。標的環境は、特異的な酵素または酵素セットの発現に差がある腫瘍微小環境であり得る。環状ペプチドは、腫瘍中の酵素(例えば、腫瘍中で優先して発現される固有の酵素)に対してまたは正規化における使用のための対照酵素に対して特異的な切断部位を用いて操作され得る。操作されたペプチドは、その環状の形態で、血液中および一般的な非特異的プロテアーゼによる分解から保護された他の潜在的に過酷な環境を、オフターゲット組織と意味のある方法で相互作用することなく移動することができる。特異的な標的組織内に到着し、必要な酵素または酵素の組み合わせに暴露された場合のみに、環状ペプチドが切断されて線状分子が産生され、この線状分子によりクリアランスおよび試料の観察が可能である。本出願の目的のために、その詳細な説明を考慮した場合に明らかであるように、線状ペプチドは、環状でない任意のペプチドである。したがって、例えば、線状化ペプチドは、種々の分枝鎖を有し得る。
【0016】
環状ペプチドを、他の切断可能な連結(エステル結合など)を用いて、エステル結合が分解されると線状化ペプチドを放出し、その標的環境と反応する状態になる環状デプシペプチドの形態に操作することができる。血漿または他の環境で持続放出するように、チオエステルおよび他の調整可能な結合を、環状ペプチドに含めることができる。Lin and Anseth,2013 Biomaterials Science(Third Edition),pages 716-728(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0017】
大環状ペプチドは、2またはそれを超えるプロテアーゼ特異的切断配列を含み得、レポーターペプチドまたは生物活性化合物を放出するための2またはそれを超えるプロテアーゼ依存性加水分解事象が必要であり得る。プロテアーゼ特異的配列は、種々の実施形態で異なり得る。線状化ペプチドを放出させるために複数の部位を切断する必要がある場合、プロテアーゼ特異的配列が異なると、少なくとも2つの異なる標的特異的酵素が存在することが必要であると考えられるので、放出特異性を増大させることができる。特異的および非特異的タンパク質分解の感受性および速度を、ペプチド配列含有量、長さ、および環化化学を操作することによって調整することができる。
【0018】
活性センサは、体内のペプチドの移動、または粒子の酵素切断もしくは他の代謝分解のタイミングに影響を及ぼすためのさらなる分子構造を含み得る。対照として正規化で使用するために、実験活性センサがある位置を標的にする一方で対照活性センサが別の位置を標的にすることが有利であり得る。このタスクは、身体によって制御されたタイミングで活性センサを標的組織に配置するように作用する調整ドメイン、さらなる分子サブユニット、またはリンカーとして機能する分子構造によって行われ得る。例えば、調整ドメインにより、粒子が特異的な組織または細胞型を標的にし得る。移動は、担体ポリマー中に分子構造を付加することによって、例えば、体内での分解を遅延させるためにPEG足場のサイズを増大させることによって影響を受け得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、癌進行をモニタリングする方法の工程の線図を図示する。
【0020】
図2図2は、活性センサを示す。
【0021】
図3図3は、操作された大環状ペプチドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本発明は、免疫学的に関連する酵素の発現差について報告するための局在化された活性センサの使用およびデータを考慮するための対照レポーターまたは正規化レポーターの使用によって癌関連免疫応答に関する詳細な情報を提供する。かかる活性センサは、尿などの体液試料中で検出可能であるが、局在化された免疫応答、癌進行、または対照となる指標に関連する切断酵素と接触した際にのみ身体から放出される種々のレポーター分子を含むことができる。したがって、試料中の実験レポーターの検出は、標的組織中の酵素の発現差および関連する免疫活性(例えば、免疫治療反応または免疫学的にホットな腫瘍)の存在を示す。患者試料中の対照レポーターの検出およびレベルを使用して、結果を検証し、アッセイの問題点を解決し、試料または患者にわたってデータを正規化することができる。優先的に癌組織を標的にし、種々の条件下で発現に差がある酵素に特異的な切断部位を操作することにより、本発明の活性センサは、既存のイメージング技術または体系的なモニタリング技術を用いても不可能であった癌進行および予想されるか実際の免疫治療反応を洞察することができ、アッセイの機能性およびバックグラウンドまたはオフターゲット活性を示す対照レベルを用いてデータを考慮することができる。
【0023】
図1は、癌進行のモニタリングのための方法100を図示する。工程105では、活性センサを患者に投与する。患者は、癌を有する疑いがあり、癌を有することが知られおり(活動期または寛解期)、癌発症のリスクが有り、そして/または免疫腫瘍学的(I-O)治療が挙げられる癌の処置を受けている可能性がある。活性センサは、切断可能なリンカーによって担体に連結されたレポーターを含む(例えば、図2および3に示す)。実験用の切断可能なリンカーは、酵素レベルが腫瘍環境における特徴を示す酵素(例えば、拡大している腫瘍または進行腫瘍中で上方制御された酵素、または活動的な免疫応答もしくは阻害された免疫応答を示す酵素)に感受性を示す。対照の切断可能なリンカーも含まれる。これらは、実験用の切断可能なリンカーとして同一担体上に存在することができるか、個別の担体上に存在することができる。本明細書中で考察されるように、酵素活性に応じて、活性センサは、患者の疾患および処置状態について報告されるように操作され、患者試料中のレポーターレベルから収集した情報を使用して、疾患を診断および/または病期分類し、進行をモニタリングし、所与の治療に対する応答性を予測し、治療有効性(抗腫瘍免疫応答と、全身的免疫応答と、腫瘍進行との間の差が挙げられる)をモニタリングすることができる。対照レポーターを使用して、実験レポーターから得たデータを考慮するか正規化する。活性センサを、任意の好適な方法で投与することができる。好ましい実施形態では、活性センサは、静脈内に送達されるか、エアロゾル化して、例えば、ネブライザーを介して肺に送達させる。他の例では、活性センサは、被験体に、経皮、皮内、動脈内、病巣内、腫瘍内、頭蓋内、関節内、腫瘍内、筋肉内、皮下、経口、局所、局部に投与され得るか、吸入、注射、注入で投与され得るか、当該分野で公知の他の方法もしくは任意の組み合わせによって投与され得る(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)(参考として援用される)を参照のこと)。
【0024】
工程110では、活性センサの投与および標的組織中の活性センサの局在化後に、レポーターは、特徴を示す酵素の存在下でリンカーが切断されたときに選択的に放出される。調整ドメイン(標的組織(例えば、癌細胞を保有することが疑われる特異的組織)中に優先的に濃縮されるか、一般に腫瘍中に濃縮される部分が挙げられる)を使用して局在化することができる。レポーターが放出されると、レポーターは、身体によって、血流への輸送および腎クリアランス後に尿などの非侵襲性に回収可能な流体中にクリアランスされ得る。種々の実施形態では、対照レポーターは、疾患の状態と無関係に標的組織での発現に差がある酵素によって切断され得る。試料中にかかるレポーターが存在すると、活性センサが標的組織に到達していること、および組織状態レポーターレベル(例えば、癌進行関連レポーターレベルまたは免疫学的酵素レポーターレベル)が標的組織に寄与し得ることが確認される。ある特定の実施形態では、対照レポーターは、非標的化活性センサ(すなわち、標的組織に局在しないセンサ)上に存在し得る。かかる対照レポーターは、実験レポーターと同一の酵素によって切断されて、標的特異的レポーター情報の正規化のためのオフターゲット酵素レベルを得ることができる。例えば、免疫学的酵素または癌特異的酵素レポーターレベルを上記対照レポーターレベルのいずれかで除して、I-O応答データを正規化することができる。例えば、免疫学的酵素感受性活性センサは、腫瘍組織を標的にして、腫瘍組織に特異的な免疫学的応答の情報を得ることができる。ある特定の実施形態では、非標的化免疫学的酵素感受性活性センサを工程105で同時投与して、工程120で全身的免疫系活性レベルを比較することができる。標的特異的レベルを非標的特異的レベルで除して、全身的免疫応答を正規化し、抗腫瘍免疫応答のより正確な状況を提供することができる。
【0025】
工程115では、尿試料などの試料を、分析のために回収することができる。工程120では、試料を分析することができ、試料中のレポーターの存在および/またはレベルを検出することができる。
【0026】
工程125では、実験レポーターレベルを、対照レポーターレベルを使用して正規化することができる。ある特定の実施形態では、対照レポーターレベルは、正規化物質として機能することもできる。正規化は、標的レポーターレベルを対照レポーター値で除することによって試料間の変動性を排除することができる。したがって、異なるアッセイにおける工程105~120中で生じ得る任意のアッセイの変動性を除去して、アッセイにわたる実験酵素レベルをより正確に追跡することができる。正規化を使用して、患者毎に由来するか、異なる時期に行った単一の患者のアッセイに由来する変動を調節することができる。
【0027】
免疫学的酵素は、免疫応答の一部として産生された酵素であり得る。例えば、免疫学的酵素は、免疫細胞によって産生された酵素を含み得る。
【0028】
ある特定の実施形態では、試験-酵素感受性レポーターレベル(例えば、免疫学的酵素または他の条件を示す酵素活性を報告する)を、疾患に関連しない遍在性酵素または標的特異的酵素に感受性を示す対照レポーターレベルに対して正規化することができる。かかる対照レベルは、一般的なアッセイ機能を示し、対照レベルを使用して正規化すると、試料毎の変動を平滑化することができ、これは、レポーター測定値の試料対試料の比較に依存するI-O治療のモニタリング技術で特に有用であり得る。
【0029】
工程127では、レポーターの存在によって示された酵素レベルを使用して、認められた発現差に関連する特徴を決定することができる。上で述べたように、使用した活性センサにおいて操作された酵素感受性に応じて、レポーターレベルを使用して、疾患進行またはI-O治療応答をモニタリングするか、種々の処置に対する応答性を予測する(例えば、腫瘍のホット状態またはコールド状態を決定する)ことができる。対照レポーターレベルを、特徴を決定するための分析で使用することができる。例えば、I-O分析を肺癌に適用する場合、免疫学的酵素感受性活性センサは、工程105で肺特異的酵素感受性活性センサと同時投与され得る。次いで、工程120での患者試料中の肺特異的対照レポーターの検出は、活性センサが標的組織に到達したこと、および試料中に見出された免疫学的酵素感受性レポーターレベルが、オフターゲット免疫応答とは対照的に、抗腫瘍応答に寄与する可能性が高いことを示す。他方では、患者試料中に免疫学的酵素感受性レポーターが存在するが対応する肺特異的レポーターを含まない場合、オフターゲット免疫系応答に原因する偽陽性の結果を示し得る。また、対照レポーターは、首尾の良いアッセイを示すベースラインシグナルを提供することによって偽陰性の結果を防止し得る。工程120では、患者試料中に標的特異的レポーターや非標的化対照レポーターを検出できない場合、アッセイが失敗したこと、および臨床上の結論を導くべきではないこと、またはプロセスを反復すべきであることを示し得る。
【0030】
ある特定の実施形態では、対照レポーターは、酵素による切断を投与経路の種々の段階に沿って分類することができるので、その後の分析は、患者試料中に存在するレポーターの軌跡が投与経路に沿って問題が生じ得る場所を示し、アッセイの問題点の解決に役立ち得る。例えば、摂取可能な肺標的化活性センサは、胃腸管、肝臓、血液、および肺組織に特異的な酵素に感受性を示す切断可能なレポーターを含み得る。胃腸管および肝臓のレポーターのみの存在は、肝臓から血流へのレポーターの移動に問題があることを示し得、アッセイの問題解決で役に立ち得る。ある特定の実施形態では、活性センサは、意図する投与経路の一部ではない組織のオフターゲット組織特異的酵素によって切断可能なレポーターを含み得、オフターゲット取り込みに関する情報を提供することができる。
【0031】
いくつかのプロテアーゼは、炎症およびプログラム細胞死(例えば、アポトーシス、ピロトーシス、およびネクロトーシスが挙げられる)に関連することが知られている。したがって、これらのプロテアーゼの局在化レベルは、免疫系活性を示す。同様に、対照レポーターによって示されたこれらのプロテアーゼのオフターゲットレベルまたは全身レベルは、全身的免疫系活性を示し、腫瘍組織活性と比較してデータを正規化することができる。カスパーゼ(システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ、システインアスパルターゼ、またはシステイン依存性アスパラギン酸指向プロテアーゼ)は、標的タンパク質のアスパラギン酸残基後のみを求核切断する活性部位中にシステインを含むプロテアーゼ酵素のファミリーである。カスパーゼ-1、カスパーゼ-4、カスパーゼ-5、およびカスパーゼ-11は、炎症に関連する。また、セリンプロテアーゼは、アポトーシスおよび炎症で機能し、したがって、その発現差は、免疫応答も示す。免疫細胞は、セリンプロテアーゼ(グランザイム、好中球エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3、チマーゼ、およびトリプターゼなど)を発現する。
【0032】
種々の実施形態では、免疫応答を示すプログラム細胞死と腫瘍進行中に天然に見出される壊死とを区別するのに有用であり得る。プログラム細胞死と対照的に、カスパーゼおよびセリンプロテアーゼが主なプロテアーゼである場合、カルパインおよびリソソームプロテアーゼ(例えば、カテプシンBおよびD)は、壊死における重要なプロテアーゼである。したがって、活性センサのレポーターの測定によって示されたカルパインおよびカテプシンのレベルは、免疫腫瘍学的情報を補完するための細胞の壊死に関する情報を提供することができる。
【0033】
本発明の活性センサおよび方法を、患者におけるI-O薬の応答を観察するためにI-O処置に適用することができる。例えば、カスパーゼ、セリンプロテアーゼ、カルパイン、およびカテプシンに感受性を示す切断部位を有する活性センサを、I-O処置中またはI-O処置後に投与することができ、患者試料中のレポーターレベルを使用して、治療反応をモニタリングすることができる。患者試料中のカスパーゼまたはセリンプロテアーゼのベースラインシグナルは、非応答性腫瘍を示す。かかるベースラインレベルはまた、例えば、非標的化対照活性センサを使用して決定され得る。ベースラインレベルを、患者集団から収集したデータまたは処置を受けていない患者由来の処置前データから実験的に決定することができる。ベースラインと比較した処置中または処置後のカスパーゼシグナルおよびセリンプロテアーゼシグナルの増加は、望ましい免疫腫瘍学的応答を示すことができる。カルパインシグナルまたはカテプシンシグナルのレベルを追跡すると、腫瘍進行に関連し得る非免疫学的細胞死に関するさらなる情報を得ることができる。対照レポーターレベルを使用して、試料にわたるデータを正規化してアッセイの変動性を説明することができる。
【0034】
活性センサは、活性センサ中の酵素特異的切断部位の操作によって特異的標的組織中の任意の酵素レベルを非侵襲性に報告するようにプログラミングすることができる合成バイオマーカーとして作用する。患者に投与したときに、活性センサは、例えば、標的特異的調整ドメインを使用して標的組織に配置される。局在化された時点で、活性センサは酵素によって切断されて、検出可能な分析物を放出する。分析物は、尿試料などの患者試料中に検出される。検出された分析物は、どの酵素が組織中で活性であるのか、したがって、条件または活性に関連するのかについて報告として役立つ。局在化すると、活性センサは、オフターゲット情報で汚染されることなく標的組織の症状について報告することが可能である。この能力は、首尾の良いI-O処置を示す抗腫瘍免疫応答を、例えば、ウイルス感染に応答して起こり得るオフターゲット免疫応答と区別するのに有用である。また、全身に分布するか局在化する能力は、標的レポーターの全身レベルまたは対照酵素の標的特異的レベルを含む対照データを提供するのに有用である。例えば、免疫学的酵素(例えば、カスパーゼまたはセリンプロテアーゼ)の一般的な増加は、全身免疫応答またはオフターゲット免疫応答(ウイルス感染など)に起因し得る。本発明がバックグラウンド免疫活性に関する対照データと共に免疫系活性に関する腫瘍特異的情報を提供することができることにより、全身的免疫応答が望ましい抗腫瘍応答と誤解釈されることが回避される。
【0035】
また、本発明の活性センサおよび方法を使用して、I-O治療に対する患者の適合性を評価することができる。例えば、活性センサは、患者の天然の免疫認識および癌組織に対する応答において発現に差がある酵素について報告することができる。かかる活性センサを、ホットな腫瘍とコールドな腫瘍を区別するために任意のI-O処置前に投与することができる。患者が高レベルの浸潤T細胞およびより多くの抗原を含む腫瘍を有する場合、これらは患者の既存の免疫応答を増強するためのチェックポイント阻害剤などの受動的処置の良好な候補であり得る。チェックポイントタンパク質としては、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)、およびPD-L1(プログラム死リガンド1)が挙げられ、これらは、免疫検出または免疫応答から腫瘍をマスクすることが知られており、各々について種々の阻害剤が知られている。免疫系認識に感受性を示す活性センサがホットな腫瘍を示す場合、かかるチェックポイント阻害剤治療の適応となり得る。対照レポーター由来の全身性免疫学的酵素レベルとの比較により、ベースラインレベルの確立に必要なデータを得ることができる。ベースラインレベルを超える処置前腫瘍中のカスパーゼまたはセリンプロテアーゼの活性レベルの増加を、本明細書中で考察するように活性センサを使用して観察することができ、このレベルは、腫瘍部位でのいくらかの免疫系の認識および活性を示すであろう。先天性免疫の認識および応答の存在は、癌進行がチェックポイントタンパク質の操作に依存するという結論を支持し、チェックポイント阻害剤の投与が患者に有効であることを証明し得る。
【0036】
実験レポーターおよび対照レポーターを含め、酵素特異的レポーターは、単一の活性センサに多重化することができるか、多数の異なる活性センサに含めて、同時に投与され、分析される。レポーター分子は、多重分析で区別することができるように各酵素に対して特異的であり得る。ある特定の実施形態では、合成バイオマーカーとして作用するI-O活性センサを投与し、定期的に測定して、種々の酵素レベルを時系列にマッピングし得る。研究において、バイオマーカーの速度(バイオマーカーレベルの経時変化率)がいかなる単一の閾値よりも疾患の進行(または後退)の良好な指標であり得ることが見出されている。同一の原理を、合成バイオマーカーとして作用する本発明の活性センサに適用することができる。対照データを使用して異なるアッセイ由来のデータを正規化することができることは、かかる速度分析で特に有用である。
【0037】
活性センサは、担体、少なくとも1つの、担体に連結したレポーター、および少なくとも1つの、被験体に投与されたときに被験体内の活性センサの分布時間または滞留時間を調整する調整ドメインを含むことができる。活性センサは、体内の酵素活性(例えば、免疫応答中または腫瘍の進行もしくは退行中に発現に差がある酵素)を検出および報告するように設計され得る。無制御のプロテアーゼは、これらのプロテアーゼが、細胞シグナル伝達を変化させ、癌細胞の増殖、侵入、血管形成、アポトーシスの回避、および転移の推進を補助し得るという点で、癌などの疾患の進行の重要な結果である。
【0038】
活性センサは、体内の特異的細胞または特異的組織における酵素活性の検出を容易にする多数の方法で調整ドメインを介して調整され得る。例えば、活性センサは、活性センサの特異的組織への分布を促進するか、被験体中または特異的組織中の活性センサの滞留時間を改善するように調整され得る。調整ドメインとしては、例えば、腫瘍組織をより良好に標的にするための迅速に複製されている細胞中に局在化された分子が挙げられ得る。
【0039】
被験体に投与されたときに、活性センサは体中を移動し、体循環から特異的な組織に拡散し得、前述の組織でレポーターが、癌進行または免疫応答を示す酵素を介して切断され得る。次いで、検出可能な分析物は、拡散されて循環に戻り得、腎臓によって濾過されて尿に排出され得、それにより、尿試料中の検出可能な分析物の検出は、標的組織中の酵素活性を示す。
【0040】
担体は、被験体に投与されたときに被験体の体中をレポーターが移動するのに好適な任意のプラットフォームであり得る。担体は、担体またはプラットフォームとしての機能を果たすのに好適な任意の材料またはサイズであり得る。好ましくは、担体は、生体適合性であり、無毒であり、非免疫原性であり、担体が投与された被験体の身体で免疫応答を引き起こさない。また、担体は、活性センサが組織、細胞、または分子を標的するための標的化手段として機能し得る。いくつかの実施形態では、担体ドメインは、ポリマー足場などの粒子である。担体は、例えば、循環によって腫瘍または他の特異的組織を受動的に標的にし得る。他のタイプの担体としては、例えば、組織、細胞、または分子の能動的な標的化を容易にする化合物が挙げられる。担体の例としては、ナノ粒子(酸化鉄または金ナノ粒子など)、アプタマー、ペプチド、タンパク質、核酸、ポリサッカリド、ポリマー、抗体または抗体断片、および小分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
担体は、種々の材料(鉄、セラミック、金属、天然ポリマー材料(ヒアルロン酸など)、合成ポリマー材料(ポリ-グリセロールセバカートなど)、および非ポリマー材料、またはその組み合わせなど)を含み得る。担体は、全体または一部が、ポリマーまたは非ポリマー材料(アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リンケイ酸カルシウム、リン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、およびシリカートなど)から構成され得る。ポリマーとしては、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。非生分解性ポリマーの例としては、エチレンビニルアセタート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、そのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0042】
生分解性ポリマーの例としては、合成ポリマー(乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリウレタンなど)、および天然ポリマー(アルギナートなど)および他のポリサッカリド(デキストランおよびセルロースが挙げられる)、コラーゲン、アルブミン、および他のタンパク質、そのコポリマーおよび混合物が挙げられる。一般に、これらの生分解性ポリマーは、酵素加水分解もしくはin vivoでの水への曝露、表面侵食もしくはバルク侵食のいずれかによって分解する。これらの生分解性ポリマーは、単独でか、物理的混合物(ブレンド)としてか、コポリマーとして単独で使用され得る。
【0043】
好ましい実施形態では、担体は生分解性ポリマーを含み、その結果、レポーターが担体から切断されるか、担体は体内で分解されるであろう。生分解性担体を提供することにより、体内に残存するインタクトな活性センサの蓄積および任意の関連する免疫応答または意図しない効果が最小にされ得る。
【0044】
他の生体適合性ポリマーとしては、PEG、PVA、およびPVPが挙げられ、これらは全て市販されている。PVPは、平均分子量がおよそ10,000~700,000の範囲であり、化学式(C6H9NO)[n]を有する非イオン生成性の親水性ポリマーである。また、PVPは、ポリ[1(2オキソ1ピロリジニル)エチレン]として公知である。PVPは、無毒で吸湿性が高く、水または有機溶媒に容易に溶解する。
【0045】
ポリビニルアルコール(PVA)は、アセタート基のヒドロキシル基との置換によってポリ酢酸ビニルから調整されるポリマーであり、化学式(CH2CHOH)[n]を有する。大部分のポリビニルアルコールは水溶性である。
【0046】
ポリ(オキシエチレン)グリコールとしても公知のポリエチレングリコール(PEG)は、エチレンオキシドと水の縮合ポリマーである。PEGは、エチレングリコールの繰り返し単位を含む化合物を指す。PEGの構造は、H-(O-CH2-CH2)n-OHとして表され得る。PEGは、生物学的に不活性であり(すなわち、非免疫原性)、一般的にヒトへの投与に安全と見なされている親水性化合物である。
【0047】
PEGが粒子に連結されるとき、PEGは、溶解性の改良、循環寿命の増大、安定性、タンパク質分解からの保護、マクロファージによる細胞取り込みの減少、ならびに免疫原性および抗原性の欠如などの有利な性質を提供する。また、PEGは、可動性が高く、立体障害を起こすことなくバイオコンジュゲーションおよび粒子の表面処理を行える。PEGは、化合物の分子特性を特定の適用に合わせるための生物学的に活性な化合物(ペプチド、タンパク質、抗体断片、アプタマー、酵素、および小分子など)の化学修飾のために使用され得る。さらに、PEG分子は、PEG分子の末端への種々の官能基の化学的付加によって官能化され得る(例えば、アミン反応性PEG(BS(PEG)n)またはスルフヒドリル反応性PEG(BM(PEG)n))。
【0048】
ある特定の実施形態では、担体は、生体適合性足場(ポリエチレングリコール(PEG)を含む足場など)である。好ましい実施形態では、担体は、共有結合したポリエチレングリコールマレイミド(PEG-MAL)の複数のサブユニットを含む生体適合性足場(例えば、8アームPEG-MAL足場)である。PEG含有足場は、生体適合性であり、安価であり、容易に購入でき、細網内皮系(RES)による取り込みが最小であり、多くの有利な挙動を示すので、選択され得る。例えば、PEG足場は、多数の細胞型(マクロファージなど)による粒子の細胞取り込みを阻害し、特異的組織への適切な分布を容易にし、組織中の滞留時間を増大させる。
【0049】
8アームPEG-MALは、ヘキサグリセロールコアに接続した8つのアームの各末端にマレイミド基を有するマルチアームPEG誘導体の1つの型である。マレイミド基は、マイケル付加を介して遊離チオール基、SH基、スルフヒドリル基、またはメルカプト基と選択的に反応して、安定な炭素-硫黄結合を形成する。8アームPEG-MAL足場の各アームは、ペプチドに、例えば、マレイミド-チオールカップリングまたはアミド結合を介して抱合され得る。
【0050】
PEG-MAL足場は、種々のサイズの足場であり得る(例えば、10kDaの足場、20kDaの足場、40kDaの足場、または40kDaを超える足場)。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のPEG足場の流体力学直径は、当該分野で公知の種々の方法によって(例えば、動的光散乱によって)決定され得る。かかる技術を使用して、40kDaのPEG-MAL足場の流体力学直径は、およそ8nmと測定された。好ましい実施形態では、活性センサが体循環に容易に分散されるが、細網内皮系によって容易にクリアランスされないので、活性センサが皮下投与されるとき、40kDaのPEG-MAL足場は担体として提供される。
【0051】
直径が約5nmより小さい粒子はタンパク質分解によって切断されなくとも身体の腎臓濾過によって効率的にクリアランスされるので、PEG-MAL足場のサイズは、活性センサの体内の分布および滞留に影響を及ぼす。さらに、直径が約10nmを超える粒子はリンパ管に排出されることが多い。一例を挙げれば、40kDaの8アームPEG-MAL足場が静脈内投与された場合、足場は、腎臓によって尿中にクリアランスされなかった。
【0052】
レポーターは、酵素活性に感受性を示す任意のレポーターであってよく、したがって、レポーターの切断は酵素活性を示す。レポーターは、特異的病状で活性な酵素に依存する。例えば、腫瘍は、特異的な一連の酵素に関連する。腫瘍について、活性センサは、腫瘍または他の罹患組織によって発現される酵素部位に適合する酵素感受性部位を用いてデザインされ得る。あるいは、酵素特異的部位は、通常は存在するが、特定の病状においては存在しない酵素に関連し得る。この例では、病状は、酵素に関連するシグナルの欠如、または通常の参照もしくは健康な被験体における事前の測定値と比較したシグナルレベルの低下に関連するであろう。
【0053】
種々の実施形態では、レポーターは、天然に存在する分子(ペプチド、核酸、小分子、揮発性有機化合物、元素質量タグ、または新生抗原など)を含む。他の実施形態では、レポーターは、天然に存在しない分子(D-アミノ酸、合成元素、または合成化合物など)を含む。レポーターは、質量コード化レポーター(例えば、既知の質量または同位体を有するポリペプチドなどの既知かつ個別に同定可能な質量を有するレポーター)であり得る。
【0054】
酵素は、生物の代謝過程を促進または触媒する生細胞で産生される種々のタンパク質のうちのいずれかであり得る。酵素は、基質に作用する。基質は、酵素による触媒反応が起こる前に活性部位と呼ばれる位置で酵素に結合する。一般に、酵素としては、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、リパーゼ、ヘパリナーゼ、およびホスファターゼが挙げられるが、これらに限定されない。被験体における疾患に関連する酵素の例としては、MMP、MMP-2、MMP-7、MMP-9、カリクレイン、カテプシン、セプラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、グルコセレブロシダーゼ、ピルビン酸キナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(ADAM)、ADAM9、ADAM15、ならびにマトリプターゼが挙げられるが、これらに限定されない。検出された酵素活性は、任意の型の酵素(例えば、プロテアーゼ、キナーゼ、エステラーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リサーゼ、イソメラーゼ、またはリガーゼ)の活性であり得る。
【0055】
疾患関連酵素の基質の例としては、インターロイキン1ベータ、IGFBP-3、TGF-ベータ、TNF、FASL、HB-EGF、FGFR1、デコリン、VEGF、EGF、IL2、IL6、PDGF、線維芽細胞成長因子(FGF)、およびMMPの組織阻害剤(TIMP)が挙げられるが、これらに限定されない。免疫応答を示す酵素としては、例えば、組織リモデリング酵素が挙げられる。
【0056】
調整ドメインは、活性センサが被験体に投与されたときに被験体内の活性センサの分布または滞留時間を改変する任意の好適な材料を含み得る。例えば、調整ドメインは、PEG、PVA、またはPVPを含み得る。別の例では、調整ドメインは、ポリペプチド、ペプチド、核酸、ポリサッカリド、揮発性有機化合物、疎水性鎖、または小分子を含み得る。
【0057】
図2は、担体205、レポーター207、および調整ドメイン215を有する活性センサ200を示す。図示するように、担体205は、共有結合したポリエチレングリコールマレイミド(PEG-MAL)の複数のサブユニットを含む生体適合性足場である。担体205は、分子量が約20kDaと80kDaとの間の8アームPEG-MAL足場である。レポーター207は、同定されたプロテアーゼに感受性を示す領域を含むポリペプチドである。同定されたプロテアーゼのレポーターを切断する活性は、疾患を示す。レポーター207は、検出可能な分析物210に接続された切断可能な基質221を含む。同定されたプロテアーゼによる切断が切断可能な基質221で起こるとき、検出可能な分析物210は、活性センサ200から放出され、組織を通過し、身体から排出され、検出され得る。
【0058】
種々の実施形態では、活性センサは、体内での非特異的なタンパク質分解および分解に構造的に耐性を示す環状ペプチドを含み得る。環状ペプチドは、本来は非反応性の環状ペプチドを本明細書中で考察した酵素の存在に応答して反応性レポーター分子を放出させるプロテアーゼ特異的基質またはpH感受性結合を含むことができる。環状ペプチドは、特異性を増大させるために複数の切断部位で切断されることが必要であり得る。複数の部位が、同一または異なるプロテアーゼに特異的であり得る。機能的なペプチドまたは他の分子を線状化するか放出させるために必要な種々の酵素または環境条件の組み合わせを備えた2、3、4、またはそれを超える環状ペプチド構造を含むポリ環状ペプチドを使用することができる。環状ペプチドは、1またはそれを超えるエステル結合が加水分解して線状化ペプチドを放出させるデプシペプチドを含むことができる。かかる実施形態を使用して、血漿などの環境におけるペプチド放出のタイミングを調整することができる。
【0059】
図3は、プロテアーゼ特異的基質309および安定な環化リンカー303を有する例示的な環状ペプチド301を示す。プロテアーゼ特異的基質309は、任意の数のアミノ酸を任意の順序で含み得る。例えば、Xはグリシンであり得る。Xはセリンであり得る。Xはアスパラギン酸であり得る。Xはフェニルアラニンであり得る。Xはグルタミン酸であり得る。Xはイソロイシンであり得る。環化リンカー303にカップリングしたN末端およびC末端は、環化残基305を含む。ペプチドは、プロテアーゼ安定性、切断部位周囲の立体障害、大員環の構造、およびペプチド鎖の剛性/可動性などの検討事項に対処するように操作され得る。スペーサー残基307のタイプおよび数を、環状ペプチドの種々の機能的部位の間の間隔を変化させることによって前述の性質の多くに対処し、変化させるように選択することができる。また、環化リンカーならびに環化残基の配置および選択により、上で考察した検討事項に影響を及ぼすことができる。PEGなどの調整ドメインおよび/またはFAMなどのレポーターを、環状ペプチドに含めることができる。
【0060】
生物試料は、レポーターが検出され得る被験体由来の任意の試料であり得る。例えば、試料は、組織試料(血液試料、硬組織試料、軟組織試料など)、尿試料、唾液試料、筋肉試料、糞便試料、精液試料、または脳脊髄液試料であり得る。
【0061】
レポーターの検出
本発明の活性センサから放出されたレポーター分子は、検出可能な分析物内の分子の量の存在を直接または間接的に検出できる任意の好適な検出方法によって検出され得る。例えば、レポーターは、親和性因子への捕捉リガンドの結合を含む試験であるリガンド結合アッセイによって検出され得る。レポーターは、捕捉後、光学密度、放射線放射、または非放射性エネルギー移動によって直接検出され得る。あるいは、レポーターは、抗体抱合体、親和性カラム、ストレプトアビジン-ビオチン抱合体、PCR分析、DNAマイクロアレイ、または蛍光分析を用いて間接的に検出され得る。
【0062】
リガンド結合アッセイは、しばしば、ELISA(蛍光、比色、生物発光、および化学発光によるELISAが挙げられる)、試験紙もしくは側方流動アッセイ、またはビーズベースの蛍光アッセイなどの検出工程を含む。
【0063】
一例を挙げれば、ペーパーベースのELISA試験を使用して、尿中の遊離レポーターが検出され得る。ペーパーベースのELISAは、市販の固体インクプリンターから堆積したワックスを再流して単一の紙片上に試験スポットのアレイを作成することなどによって安価に作成され得る。固形インクが液体または半固体の状態に加熱されたとき、プリントされたワックスがペーパーに浸透し、疎水性のバリアが作成される。次いで、疎水性バリアの間の空間は、個別の反応ウェルとして使用され得る。ELISAアッセイは、個別の反応ウェル上で検出抗体を乾燥させ、ペーパー上に試験スポットを構成し、その後にブロッキングおよび洗浄することによって行われ得る。次いで、被験体から採取した尿試料由来の尿が、試験スポットに添加され得、次いで、検出抗体としてストレプトアビジンアルカリホスファターゼ(ALP)抱合体が試験スポットに添加され得る。次いで、結合したALPが発色反応剤(紫色の沈殿を生じ、レポーターの存在を示すBCIP/NBT(5-ブロモ-4-クロロ-3’-インドリルホスファート(indolyphosphate)p-トルイジン塩/ニトロ-ブルーテトラゾリウムクロリド)など)に曝露され得る。
【0064】
別の例では、揮発性有機化合物は、ガスクロマトグラフィ装置、ブレサライザー、質量分析計などの分析プラットフォームによるか、光センサまたは音響センサを使用することによって検出され得る。
【0065】
ガスクロマトグラフィを使用して、分解することなく気化することができる化合物(例えば、揮発性有機化合物)が検出され得る。ガスクロマトグラフィ装置は、キャリアガス(例えば、ヘリウムなどの不活性ガスまたは窒素などの非反応性ガス)であるモバイル相(または移動相)、およびカラムと呼ばれるガラス製または金属製の管の一部の内側にある不活性固体支持体上の液体またはポリマーの微視的層である固定相を含む。カラムには固定相がコーティングされており、分析されるガス状化合物がカラムの壁と相互作用して、前述の化合物が異なる時間に溶出される(すなわち、カラム内での保持時間が様々である)。化合物は、その保持時間によって区別され得る。
【0066】
また、改良型のブレサライザー装置を使用して、揮発性有機化合物が検出され得る。血中アルコールレベルを検出するために使用される伝統的なブレサライザーでは、被験体は、呼気を装置に吐き出し、被験体の呼気中に存在する任意のエタノールがアノードで酢酸に酸化される。カソードでは、大気中の酸素が還元される。反応全体としてはエタノールが酢酸および水に酸化され、それにより電流が発生し、この電流がマイクロコントローラによって検出および定量され得る。他の反応を活用する改良型のブレサライザー装置を使用して、種々の揮発性有機化合物が検出され得る。
【0067】
質量分析を使用して、質量の相違に基づいてレポーターが検出および区別され得る。質量分析では、サンプルは、例えば、電子線を衝突させることによってイオン化される。試料は、固体、液体、または気体であり得る。試料をイオン化することにより、試料の分子のうちのいくつかが荷電断片に破壊される。次いで、これらのイオンは、質量電荷比に応じて分離され得る。しばしば、イオンを加速して電場または磁場に供することによって分離され、ここで、同一の質量電荷比を有するイオンは、同量の偏向を受けるであろう。偏向したときに、イオンは、荷電粒子を検出することができる機構(例えば、電子増倍管)によって検出され得る。検出結果は、質量電荷比の関数として検出されたイオンの相対存在量の範囲として表示され得る。次いで、試料中の分子を、既知の質量との相関(同定された質量に対する全体の質量など)または特徴的なフラグメンテーションパターンによって同定することができる。
【0068】
レポーターが核酸を含むとき、レポーターは、当該分野で公知の種々の配列決定法(例えば、伝統的なサンガー配列決定法または次世代配列決定(NGS))によって検出され得る。NGSは、一般に、非サンガーベースのハイスループット核酸配列決定テクノロジーを指し、多数(すなわち、数千、数百万、または数十億)の核酸ストランドを並行して配列決定することができる。かかるNGS配列決定の例としては、Illumina製のプラットフォーム(例えば、HiSeq、MiSeq、NextSeq、MiniSeq、およびiSeq100)、Pacific Biosciences(例えば、SequelおよびRSII)、およびThermoFisherのIon Torrent(例えば、Ion S5、Ion Proton、Ion PGM、およびIon Chefシステム)が挙げられる。任意の好適なNGS配列決定プラットフォームをNGSのために使用して本明細書中に記載の検出可能な分析物の核酸が検出され得ると理解される。
【0069】
生物試料が直接分析され得るか、検出可能な分析物が最初にいくらか精製され得る。例えば、精製工程は、生物試料中の他の構成要素から検出可能な分析物を単離することを含み得る。精製は、アフィニティクロマトグラフィなどの方法を含み得る。単離または精製された検出可能な分析物は、分析前に純度100%であったり、実質的に純粋であることさえ必要としない。
【0070】
検出可能な分析物を検出すると、酵素の活性レベルを比較するための定性的査定(例えば、検出可能な分析物が存在するか非存在であるかかどうか)または定量的査定(例えば、検出可能な分析物の存在量)が可能である。定量値を、任意の手段(試料中に存在する各画分の相対量を百分率で決定することなど)によって計算することができる。これらのタイプの計算方法は、当該分野で公知である。
【0071】
検出可能な分析物は標識され得る。例えば、標識は、単離された検出可能な分析物がPCRに供されるときに核酸に直接付加され得る。例えば、標識されたプライマーまたは標識されたヌクレオチドを使用してPCR反応を行うと、標識された産物が得られるであろう。標識されたヌクレオチド(フルオレセイン標識CTPなど)は、市販されている。核酸への標識の付着方法は当業者に周知であり、PCR法に加えて、例えば、ニック翻訳および末端標識が挙げられる。
【0072】
レポーターでの使用に好適な標識は、標準的な方法(分光学的方法、光化学的方法、生化学的方法、電気的方法、光学的方法、または化学的方法が挙げられる)によって検出可能な任意のタイプの標識を含む。標識は、蛍光標識であり得る。蛍光標識は、少なくとも1つのフルオロフォアを含む化合物である。市販の蛍光標識としては、例えば、フルオレセインホスホルアミダイト、ローダミン、ポリメタジン色素誘導体、リン光、テキサスレッド、緑色蛍光タンパク質、CY3、およびCYSが挙げられる。
【0073】
また、他の公知の技術(化学発光または比色(酵素呈色反応)など)を使用して、レポーターを検出することができる。また、「ドナー」フルオロフォアが酵素の結合部位である短い架橋によって「アクセプター」発色団に連結されたクエンチャー組成物が使用され得る。ドナーフルオロフォアのシグナルは、共鳴エネルギー転移(RET)(蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)など)が関与すると考えられる過程によってアクセプター発色団によりクエンチされる。ペプチドが切断されると、発色団およびフルオロフォアが分離し、クエンチが除去され、その後にドナーフルオロフォアからシグナルが生成され、このシグナルが測定される。FRET対の例としては、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)とCPQ2、FAMとDABCYL、Cy5とQSY21、Cy3とQSY7が挙げられる。
【0074】
種々の実施形態では、活性センサは、活性センサが特定の組織または器官を標的にするのを補助するためのリガンドを含み得る。被験体に投与されたときに、活性センサは、体内への侵入方法に応じた種々の経路を介して体内に移動する。例えば、活性センサが静脈内投与された場合、活性センサが注射点から体循環に入り、体中を受動的に移動し得る。
【0075】
特異的細胞内の酵素活性に応答するための活性センサについて、体内でのその滞留時間中のある時点で、活性センサは、酵素と出会い、酵素によって切断および線状化されて線状化されたレポーターまたは治療分子が放出される機会がなければならない。ターゲティングの観点から、かかる目的の酵素が存在し得る特異的細胞型または特異的組織型を標的にするための手段が活性センサに提供されることが有利である。これを達成するために、特異的細胞型または特異的組織型の受容体のリガンドが、調整ドメインとして提供され、ポリペプチドに連結され得る。
【0076】
細胞表面受容体は、細胞外表面上のリガンドに結合する膜係留タンパク質である。一例を挙げれば、リガンドは、リガンド結合に応答して開口するイオンチャネルであるリガンド開口型イオンチャネルに結合し得る。リガンド開口型イオンチャネルは、細胞膜にまたがり、その中央部に疎水性チャネルを有する。チャネルの細胞外領域へのリガンド結合に応答して、タンパク質の構造は、ある特定の粒子またはイオンが通過し得るような方法で変化する。細胞表面上に存在するタンパク質のリガンドを含む調整ドメインを活性センサに提供することにより、活性センサは、細胞内の酵素活性を検出するための特異的細胞に到達して侵入する機会が増大する。
【0077】
リガンドは、標的にされた細胞上の細胞表面タンパク質へのリガンドの結合を介して活性センサが被験体中の特異的細胞または特異的組織を標的にし得るので、活性センサに調整ドメインを提供することによって活性センサの分布が修正され得る。調整ドメインのリガンドは、小分子;ペプチド;抗体;抗体の断片;核酸;およびアプタマーを含む群から選択され得る。
【0078】
活性センサが特異的組織に到達した時点で、リガンドはまた、特異的組織型中の活性センサの蓄積を促進し得る。特異的組織中に活性センサが蓄積されると、活性センサの滞留時間が増大し、プロテアーゼが存在する場合に活性センサが組織中のプロテアーゼによって酵素切断される機会が増加する。
【0079】
活性センサが被験体に投与されたときに、活性センサは、免疫系によって外来物質として認識されて免疫クリアランスに供され得、それにより、特異的酵素活性が治療化合物またはレポーター分子を放出することができる特異的細胞または特異的組織に到達することは決して無い。さらに、免疫応答が生じることにより、免疫応答感受性活性センサの目的を果たすことができない。免疫による検出を阻害するために、免疫応答を誘発しないような生体適合性担体を使用することが好ましい(例えば、生体適合性担体は、1またはそれを超えるポリエチレングリコールマレイミドのサブユニットを含み得る)。さらに、ポリエチレングリコールマレイミド担体の分子量は、体内の移動を容易にし、かつ細網内皮系による活性センサのクリアランスを予防するように改変され得る。かかる改変により、体内または特異的組織中の活性センサの分布および滞留時間が改善され得る。
【0080】
種々の実施形態では、活性センサは、細胞膜を横切った分散を促進するように操作され得る。上で考察されるように、活性センサの細胞取り込みは、十分に実証されている。Gang.を参照のこと。また、細胞膜を横切った活性センサの拡散を容易にするための調整ドメインが活性センサに連結され得るように、疎水性鎖が提供され得る。
【0081】
調整ドメインは、拡散を容易にする任意の好適な疎水性鎖(例えば、脂肪酸鎖(中性、飽和、(多価/一価)不飽和油脂(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)が挙げられる)、リン脂質、ステロール(ステロイドアルコール)、動物ステロール(コレステロール)、ワックス、および脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、およびK))を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、調整ドメインは、細胞透過性ペプチドを含む。細胞透過性ペプチド(CPP)は、開示の活性センサの細胞取り入れ/取り込みを容易にする短いペプチドである。CPPは、好ましくは、正電荷のアミノ酸(リジンまたはアルギニンなど)の相対存在量が高いか、極性/荷電アミノ酸および非極性の疎水性アミノ酸が交互になるパターンで含む配列を有するアミノ酸組成を有する。Milletti,2012,Cell-penetrating peptides:classes,origin,and current landscape,Drug Discov Today 17:850-860(参考として援用される)を参照のこと。好適なCPPとしては、文献中にTat、R6、R8、R9、Penetratin、pVEc、RRLヘリックス、Shuffle、およびPenetramaxとして公知のものが挙げられる。Kristensen,2016,Cell-penetrating peptides as tools to enhance non-injectable delivery of biopharmaceuticals,Tissue Barriers 4(2):e1178369(参考として援用される)を参照のこと。
【0083】
ある特定の実施形態では、活性センサは、活性センサを免疫検出から保護するか、マクロファージによる活性センサの細胞取り込みを阻害するための調整ドメインとして生体適合性ポリマーを含み得る。
【0084】
外来物質が抗原として認識されるとき、抗体応答は、免疫系によって引き起こされ得る。一般に、次いで、抗体は外来物質に付着し、抗原-抗体複合体を形成し、次いで、この複合体がマクロファージおよび他の貪食細胞によって取り込まれて、身体からこれらの外来物質が除去されるであろう。そのようなものとして、活性センサが身体に侵入するとき、活性センサは抗原として認識され、免疫クリアランスに供され、活性センサが特異的組織に到達して酵素活性を検出することを阻止し得る。活性センサの免疫検出を阻害するために、例えば、PEG調整ドメインが活性センサに連結され得る。PEGは、遮蔽物として作用し、免疫系によって活性センサが外来物質として認識されるのを阻害する。免疫検出を阻害することにより、調整ドメインは、体内または特異的組織中の活性センサの滞留時間を改善する。
【0085】
酵素は、特異的基質に相補的な形状、電荷、および親水性/疎水性を有する結合ポケットによって、特異的基質に対する特異性が高い。そのようなものとして、酵素は、非常に類似する基質分子を、化学選択的に(すなわち、化学反応の結果が別の反応より優先される)、位置選択的に(すなわち、化学結合が生じるか破壊される方向が全ての他の可能な方向より優先される)、および立体特異的に(すなわち、1つの立体異性体またはそのサブセットのみと反応する)区別することができる。
【0086】
立体効果は、立体障害を生じるイオンおよび分子の形状(すなわち、高次構造)および反応性に影響を及ぼす非結合相互作用である。立体障害は、分子間反応に影響を及ぼす立体容積に起因する化学反応の遅延である。種々の分子群は、群間の立体障害を制御するように(例えば、望ましくない副反応を阻害するために選択性を制御するように)改変され得る。活性センサの担体と切断部位および/または任意の生体抱合残基との間にスペーサー残基などの調整ドメインを提供することにより、活性センサの構成要素間の立体障害を最小にして、特異的プロテアーゼが切断部位により接近可能となり得る。あるいは、立体障害を上記のように使用して、不安定な環化リンカー(例えば、環状デプシペプチドのエステル結合)が分解されるまで、切断部位への接近を防止することができる。かかる不安定な環化リンカーは、標的環境の特異的な特徴に応答して選択され得る規定の条件(例えば、pHまたはある特定の分析物の存在)で加水分解する他の公知の化学的部分であり得る。
【0087】
種々の実施形態では、活性センサは、非特異的プロテアーゼ活性をさらに防止するために、標的切断部位とは別のD-アミノ酸を含み得る。他の非天然アミノ酸(合成ノンネイティブアミノ酸、置換アミノ酸、または1またはそれを超えるD-アミノ酸が挙げられる)がペプチドに組み込まれ得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、調整ドメインは、合成ポリマー(乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリウレタンなど)、および天然ポリマー(アルギナートおよび他のポリサッカリド(デキストランおよびセルロースが挙げられる)、コラーゲン、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性タンパク質など)、そのコポリマーおよび混合物を含み得る。
【0089】
当業者は、本開示の活性センサ中のプロテアーゼ切断部位としてどのペプチドセグメントを含めるかを承知しているであろう。当業者は、切断部位を同定するためのオンラインツールまたは刊行物を使用することができる。例えば、切断部位は、Song,2012,PROSPER:An integrated feature-based tool for predicting protease substrate cleavage sites,PLoSOne 7(11):e50300(参考として援用される)に記載のオンラインデータベースPROSPERにおいて予想される。本明細書中で考察された組成物、構造、方法、または活性センサのうちのいずれかは、例えば、任意の好適な切断部位、および任意の望ましい分子量を得るための任意のさらなる無作為なポリペプチドセグメントを含み得る。オフターゲット切断を防止するために、切断部位の外側の1つまたは任意の数のアミノ酸は、任意の量のD型および/またはL型の混合物であり得る。
【0090】
参照による援用
本開示を通して、特許、特許出願、特許刊行物、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書が参照および引用されている。かかる文書はすべて、あらゆる目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0091】
均等物
本明細書に表示されて記載されたものに加えて、本発明の種々の修正およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書中に引用された科学文献および特許文献の参照が含まれる本文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。本明細書中の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合させることができる重要な情報、例示、およびガイダンスを含む。
図1
図2
図3
【国際調査報告】