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特表2023-523328電子工学とニオブ酸リチウムフォトニクスの一体化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】電子工学とニオブ酸リチウムフォトニクスの一体化
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20230526BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
G02F1/035
H01L29/80 H
H01L29/80 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565623
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 US2021028685
(87)【国際公開番号】W WO2021222000
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】16/859,454
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520435267
【氏名又は名称】レイセオン ビービーエヌ テクノロジーズ コープ
【氏名又は名称原語表記】RAYTHEON BBN TECHNOLOGIES CORP.
【住所又は居所原語表記】10 Moulton Street Cambridge Massachusetts 02138 US
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ソルタニ,モエ
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】カジオール,トーマス
【テーマコード(参考)】
2K102
5F102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA18
2K102CA20
2K102CA30
2K102DA05
2K102DB04
2K102DD05
2K102EA08
5F102GA19
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GV05
5F102GV07
(57)【要約】
【要約】
電気光学変調器アセンブリ(520)が、基板(214)上に配置されたゲート、ドレイン及びソース(206)を含むトランジスタ;第1電極(108a)と第2電極(108b)との間に位置する第1導波管構造を含むフォトニック変調器(100)であり、前記基板上の前記トランジスタと一体化されているフォトニック変調器;及び前記トランジスタの前記ドレインと、前記フォトニック変調器の前記第1電極及び前記第2電極のうちの1つとの間に結合された金属接続部を(522)含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学変調器アセンブリであって:
基板上に配置されたゲート、ドレイン及びソースを含むトランジスタ;
第1電極と第2電極との間に位置する第1導波管構造を含むフォトニック変調器であり、前記基板上の前記トランジスタと一体化されているフォトニック変調器;及び
前記トランジスタの前記ドレインと、前記フォトニック変調器の前記第1電極及び前記第2電極のうちの1つとの間に結合された金属接続部;
を含む電気光学変調器アセンブリ。
【請求項2】
前記トランジスタの頂部側に配置された第1酸化物層が、前記フォトニック変調器の底部側に配置された第2酸化物層に接合されている、請求項1に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項3】
金属接続部の長さを最小化し、100 GHzを超える周波数での前記フォトニック変調器の動作を可能にするように、前記トランジスタは前記フォトニック変調器に近接して配置される、請求項1に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項4】
前記トランジスタがIII-窒化物トランジスタである、請求項1に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項5】
前記トランジスタが窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)である、請求項4に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項6】
前記基板がシリコン(Si)基板及び炭化ケイ素(SiC)基板のいずれかである、請求項1に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項7】
前記フォトニック変調器が、マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)変調器として構成され、前記第1電極及び前記第2電極の外側に位置する第2導波管構造を含む、請求項1に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項8】
前記第1導波管構造及び前記第2導波管構造が、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及び窒化ケイ素(SiN)のうちの少なくとも1つから製造され、光エネルギー信号を伝播するように構成されている、請求項7に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項9】
前記トランジスタは、前記ゲートで無線周波数信号を受信し、前記金属接続部を介して前記第1電極及び前記第2電極の1つに変調電圧を提供して、前記第1導波管構造の光エネルギー信号に位相シフトを誘導するように構成されている、請求項8に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項10】
前記第1導波管構造の前記光エネルギー信号が、前記第2導波管構造の光エネルギー信号と組み合わされて、前記トランジスタの前記ゲートで受信された前記無線周波数信号に対応する振幅変調を有する光信号を提供する、請求項9に記載の電気光学変調器アセンブリ。
【請求項11】
電気光学変調器アセンブリの製造方法であって:
第1基板の上に配置されたゲート、ドレイン及びソースを含むトランジスタを提供するステップ;
第1電極と第2電極との間に位置する第1導波管構造を含み、第2基板上に配置されるフォトニック変調器を提供するステップ;
前記トランジスタの前記ゲート、前記ドレイン及び前記ソースの上に第1酸化物層を堆積させるステップ;及び
前記フォトニック変調器が前記第1基板の上の前記トランジスタと一体化するように、前記トランジスタの前記第1酸化物層を前記フォトニック変調器の第2酸化物層に接合するステップ;
を含む方法。
【請求項12】
前記トランジスタの前記第1酸化物層を前記フォトニック変調器の第2酸化物層に接合するステップが、前記第2基板を除去して前記フォトニック変調器の前記第2酸化物層を露出させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プラズマ処理及び/又は背面研削プロセスを用いて前記第2基板を除去する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トランジスタの前記第1酸化物層を前記フォトニック変調器の第2酸化物層に接合するステップが、前記第2酸化物層を前記第2基板の底部側に付着させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって:
前記第1酸化物層の一部を除去して、前記トランジスタの前記ゲート、前記ドレイン及び前記ソースを露出させるステップ;及び
前記トランジスタと前記フォトニック変調器との間に金属接続部を設け、前記トランジスタの前記ドレインを、前記フォトニック変調器の前記第1電極及び前記第2電極のうちの1つに結合するステップ;
をさらに含む方法。
【請求項16】
前記第1酸化物層の一部が、リソグラフィープロセス及び/又はエッチングプロセスを用いて除去される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
リソグラフィープロセス及び/又は金属リフトオフプロセスを使用して、前記トランジスタと前記フォトニック変調器との間に前記金属接続部が提供される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記トランジスタがIII-窒化物トランジスタである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記トランジスタが窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1基板がシリコン(Si)基板及び炭化ケイ素(SiC)基板のいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記フォトニック変調器が、マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)変調器として構成され、前記第1電極及び前記第2電極の外側に位置する第2導波管構造を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記第1導波管構造及び前記第2導波管構造が、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及び窒化ケイ素(SiN)の少なくとも1つから製造され、光エネルギーを伝播するように構成されている、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般にフォトニック変調器に関し、より具体的には無線周波数(RF)エネルギー領域の情報を搬送する信号を、光周波数エネルギー領域の情報を搬送する信号へと変換するためのフォトニック変調器に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
当該技術分野、フォトニック又は電気光学で知られているように、変調器は無線周波数(RF)エネルギーを光エネルギーへと変換するために使用されてきた。一部のタイプのフォトニック変調器は、クラッド層の間に配置された導波管構造を含み、導波管構造は、該導波管構造の一端に導入された(例えばレーザーからの)光エネルギーを閉じ込め、導波管構造を通過させて検出器へと到達させるために使用される。導波管構造の一種にはニオブ酸リチウム導波管材料があり、これは変調器デバイスの最も有望な材料の一つである。増大し続ける性能要求のため、より高い変調周波数(例:100 GHz以上)では、より広い周波数帯域幅及びより低いRF寄生効果を可能にするために、変調器及び関連する電子駆動回路の小型化又は短縮が要求されており、RF寄生効果は変調器の性能を低下させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の1つの特徴は、電気光学変調器アセンブリに向けられている。電気光学変調器アセンブリは、基板上に配置されたゲート、ドレイン及びソースを含むトランジスタ;第1電極と第2電極との間に配置された第1導波管構造を含むフォトニック変調器であり、基板上のトランジスタと一体化されているフォトニック変調器;及びトランジスタのドレインとフォトニック変調器の第1電極及び第2電極の1つとの間に結合された金属接続部を含む。
【0004】
一実施例では、トランジスタの頂部側に配置された第1の酸化物層、すなわち第1酸化物層が、フォトニック変調器の底部側に配置された第2の酸化物層、すなわち第2酸化物層に接合されている。いくつかの実施例では、金属接続部の長さを最小化し、100 GHzを超える周波数でのフォトニック変調器の動作を可能にするために、トランジスタをフォトニック変調器の近くに配置する。特定の実施例では、トランジスタはIII-窒化物トランジスタである。一実施例では、トランジスタは窒化ガリウム(GaN)高電子移動度(High-Electron-Mobility)トランジスタ (HEMT) である。
【0005】
いくつかの実施形態では、基板はシリコン(Si)基板及び炭化ケイ素(SiC)基板のいずれかである。特定の実施形態では、光変調器はマッハ・ツェンダー干渉計(MZI)変調器として構成され、第1電極及び第2電極の外側に位置する第2導波管構造を含む。一実施例では、第1導波管構造及び第2導波管構造は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及び窒化ケイ素(SiN)の少なくとも1つから製造され、光エネルギー信号を伝播するように構成されている。
【0006】
様々な実施形態では、トランジスタは、ゲートで無線周波数信号を受信し、金属接続部を介して第1電極及び第2電極の1つに変調電圧を提供して、第1導波管構造の光エネルギー信号に位相シフトを誘導するように構成されている。いくつかの実施例では、第1導波管構造の光エネルギー信号が、第2導波管構造の光エネルギー信号と組み合わされて、トランジスタのゲートで受信された無線周波数信号に対応する振幅変調を有する光信号を提供する。
【0007】
本発明の別の特徴は、電気光学変調器アセンブリを製造する方法に関する。この方法は、第1基板上に配置されたゲート、ドレイン及びソースを含むトランジスタを提供するステップ; 第1電極と第2電極との間に配置された第1導波管構造を含み、第2基板上に配置されたフォトニック変調器を提供するステップ; トランジスタのゲート、ドレイン及びソースの上に第1の酸化物層を堆積させるステップ; フォトニック変調器が第1基板上のトランジスタと一体化するように、トランジスタの第1酸化物層をフォトニック変調器の第2酸化物層に接合(ボンディング)するするステップ;を含む。
【0008】
一実施例では、トランジスタの第1酸化物層をフォトニック変調器の第2酸化物層に接合するステップが、第2基板を除去してフォトニック変調器の第2酸化物層を露出させるステップを含む。いくつかの実施形態では、第2基板がプラズマ処理及び/又は背面研削(back-grinding)プロセスを用いて除去される。特定の実施形態では、トランジスタの第1酸化物層をフォトニック変調器の第2酸化物層に接合することは、第2基板の底部側に第2酸化物層を堆積させることを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1酸化物層の一部を除去してトランジスタのゲート、ドレイン及びソースを露出させ、トランジスタとフォトニック変調器との間に金属接続部を設けて、トランジスタのドレインをフォトニック変調器の第1電極及び第2電極の1つに結合させることを含む。特定の実施形態では、第1酸化物層の部分は、リソグラフィープロセス及び/又はエッチングプロセスを使用して除去される。様々な実施形態において、金属接続部は、リソグラフィープロセス及び/又は金属リフトオフプロセスを使用してトランジスタとフォトニック変調器との間に提供される。
【0010】
一実施例では、トランジスタはIII-窒化物トランジスタである。いくつかの実施形態では、トランジスタは窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)である。特定の実施形態では、第1の基板はシリコン(Si)基板及び炭化ケイ素(SiC)基板のいずれかである。様々な実施形態において、光変調器はマッハ・ツェンダー干渉計(MZI)変調器として構成され、第1電極及び第2電極の外側に位置する第2導波管構造を含む。いくつかの実施形態では、第1導波管構造及び第2導波管構造は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及び窒化ケイ素(SiN)の少なくとも1つから製造され、光エネルギーを伝播するように構成される。
【0011】
少なくとも1つの実施形態の様々な側面について、縮尺どおりに描くことを意図していない添付の図を参照して以下に説明する。図は、様々な特徴及び実施形態の説明及びさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するが、本発明の限界の定義として意図されたものではない。図では、さまざまな図に示されている同一又はほぼ同一の各構成要素を同様の参照符号で表している。明確にするために、すべての構成要素にすべての図でラベルを付けているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】フォトニック変調器の平面図である。
図1B】フォトニック変調器の断面図である。
図1C】フォトニック変調器の断面図である。
図2】III-窒化物電子デバイスの断面図である。
図3】一実施形態に従った電気光学変調器の配置を示す図である。
図4】一実施形態に従った電気光学変調器アセンブリの製造方法を示すフローチャートである。
図5A】一実施形態に従ったIII-窒化物電子デバイスの断面図である。
図5B】一実施形態に従った光変調器の断面図である。
図5C】一実施形態に従ったフォトニック変調器と統合されたIII-窒化物電子デバイスの断面図である。
図5D】一実施形態に従ったフォトニック変調器と統合されたIII-窒化物電子デバイスの断面図である。
図5E】一実施形態に従った電気光学変調器アセンブリの断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で説明する方法及び装置の実施例は、以下の説明に記載されており又は添付の図面に示されている構造及び構成要素の配置の詳細に適用される場合に限定されないことを理解されたい。該方法及び装置は、他の実施形態での実装が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。特定の実装の例が、説明の目的のみのために本明細書に提供されており、制限することを意図していない。また、ここで使用されている表現及び用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなすべきではない。ここでいう「含む」、「有する」、「持つ」、「含有する」、「包含する」及びそれらの派生語の使用は、その後に列挙された項目及びそれに相当するもの、並びに追加項目を含むことを意味する。「又は」への言及は、「又は」を使用して記述された用語が、記述された用語のいずれか1つ、複数及び全てすべてを示すことができるように、包括的に解釈できる。前後、左右、頂部底部、上方下方、及び垂直水平への言及は、説明の便宜を目的としたものであり、現在のシステムと方法、又はそれらのコンポーネントを1つの位置的又は空間的方向に限定するものではない。
【0014】
前述のように、フォトニック変調器を使用してRFエネルギー信号を光エネルギー信号に変換することができる。場合によっては、フォトニック変調器は、性能を向上させるために、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)と統合される異なるフォトニック材料を含む導波管構造を利用することがある。例えば、図1Aはマッハ・ツェンダー干渉計(MZI)変調器100の図である。変調器100は、入力102、出力104、導波管構造106a、106b (ここではまとめて導波管構造106と呼ぶ)、第1電極108a、第2電極108bを含む。一例では、導波管構造106は第1アーム106a及び第2アーム106bを含むことができる。光エネルギー信号(例えばレーザーからの)を入力102に供給し、2つのアーム106a、106bの間で分割することができる。アーム106a、106bは、光エネルギー信号を入力102から出力104へと伝播させることができる。第1電極108a及び/又は第2電極108bに変調電圧を印加して、第2アーム106b(すなわち、変調アーム)の光エネルギー信号に位相シフトを誘導することができる。いくつかの例では、第1アーム106aの光エネルギー信号の位相シフトを誘導するために、第3及び第4の電極(図には示されていない)にも変調電圧を印加することができる。いくつかの例では、電極に印加される変調電圧は、RFエネルギー信号により搬送される情報に対応する場合がある。第1及び第2のアーム106a、106bの光エネルギー信号は、RFエネルギー信号によって搬送される情報に対応する振幅変調を持つ出力光エネルギーを生成するために、構築的及び/又は脱構築的に結合することができる。
【0015】
図1BはMZI変調器の変調部120の断面図である。一例では、変調部120は、電極108a、108b、及び図1Aの変調器100の第2アーム106bの導波管構造に対応することができる。図に示すように、第2アーム106bの導波管構造は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)材料122のスラブを直接パターン化することによって定義することができる。第2アーム106bの導波管構造は、二酸化ケイ素(SiO2)クラッド層124a、124bに囲まれている。電極108a、108bは、LiNbO3材料122のスラブに固定され、部分的にSiO2クラッド層124aで覆われていてもよい。いくつかの例では、第2アーム106b、LiNbO3材料122のスラブ、電極108a、108b、及びクラッド層124a、124bの導波管構造をシリコン(Si)基板126上に配置することができる。図には示されていないが、変調器100の第1アーム106aの導波管構造は、第2アーム106bの導波管構造と同様に構成することができる。例えば、第1アーム106aの導波管構造は、LiNbO3材料122のスラブを直接パターン化し、LiNbO3材料122のパターン化されたスラブをSiO2クラッド層124a、124bで囲み、その構造をSi基板126(任意で第2アーム106bの導波管構造に使用されているのと同じSi基板126)上に配置することによって定義することができる。
【0016】
いくつかの例では、導波管構造106a、106bは異なる構成をとることができる。例えば、図1CはMZI変調器(例えばモジュレータ100)の変調部140の断面図である。一例では、変調部140は、第2アーム106bの導波管構造が異なって構成されていることを除いて、図1Bの変調部120と実質的に同じであってもよい。図に示すように、第2アーム106bの導波管構造は、LiNbO3材料122のスラブ上に窒化ケイ素(SiN)膜をパターン形成することによって定義される。同様に、第1アーム106aの導波管構造も同様に構成することができる。
【0017】
前述のように、変調器100のようなフォトニック変調器を高周波(例:100GHz以上)で動作させると、RF寄生効果(例えば、信号反射、伝搬損失、電磁干渉など。)によって性能が低下する可能性がある。いくつかの実装では、そのような変調器は、変調器内のRF寄生効果を抑制するために、小型化された形態(例えば、波長に対して)で設計することができる。しかしながら、変調器のサイズを小さくすると、所望の位相シフト(例えば180°)を達成するために必要な変調電圧を増やすことがある。さらに、変調電圧を電極に印加するように構成された電圧回路と変調器との間の距離が、さらなるRF損失及び/又は反射をもたらす可能性がある。
【0018】
ここではコンパクトな高周波フォトニックモジュレータの配置を提供する。少なくとも1つの実施形態では、フォトニック変調器はIII-窒化物電子デバイスと統合されている。より具体的には、フォトニック変調器を電子デバイス基板に接合することにより、デバイス間のRF寄生効果を低減し、変調器の高周波動作(例えば100GHz以上)を可能にする。
【0019】
前述のように、高周波アプリケーションで使用されるフォトニック変調器が、変調電圧を高くして動作する場合がある。このように、変調器の電極に変調電圧を供給するように構成された電圧回路には、高周波で破壊領域に入ることなく大きな電圧を供給することができる半導体デバイスを含めることができる。一例では、電圧回路は1つ以上のIII-窒化物電子デバイスを含むことができる。例えば、電圧回路は、1つ以上の窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含み、増加した変調電圧を提供することができる。当業者に知られているように、GaN HEMTは高周波(例えば100 GHz以上)で動作しながら高い耐圧を提供することができる。いくつかの例では、低ノイズ増幅を提供するためにGaN HEMTを利用することができる。図2にGaN HEMT 200の一例の断面図を示す。図に示すように、GaN HEMT 200は、ソース202、ゲート204及びドレイン206を含む。一例では、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)障壁層208がソース202、ゲート204及びドレイン206の間に含まれている。他の例では、バリア層208はInAlN、InAlGaN、又はScAlN材料から作ることができる。ソース202とドレイン206はGaNチャネル層210に固定され、窒化アルミニウム(AlN)核形成(又はバッファ)層212がGaNチャネル層210と基板214の間に配置される。いくつかの例では、基板214はSiから作ることができ、しかしながら、他の例では、基板は炭化ケイ素(SiC)材料から作ることもできる。
【0020】
図3は、ここに記載されている特徴に従った電気光学変調器配置300を示している。一例では、図2のGaN HEMT 200は、図1Aの変調器100に結合されている。図に示すように、GaN HEMT 200のドレイン206は、金属接続部302を介して変調器100の電極108aに結合されている。GaN HEMT 200は、第2アーム106bの光エネルギーを変調するために、ドレイン206を介して電極108aに変調電圧を供給するように構成されている。いくつかの例では、電極108bは接地又は別の電圧源に結合されている。示されていないが、GaN HEMT 200は、電極108aに変調電圧を提供するために他の回路と動作するように構成することができる。例えば、RF変調源をゲート204に結合し、ソース202を接地又は別の電圧源に結合することができる。そのため、RF変調源はゲート204にRF信号を提供してGaN HEMT 200をオン・オフし、RF信号に対応する変調電圧をドレイン206に提供することができる。いくつかの例では、GaN HEMT 200は、ドレイン206で提供される変調電圧を増幅するように構成することができる。
【0021】
一例では、距離304はドレイン206と電極108aとの間の物理的距離を表す。そのため、金属接続部302の電気的長さは、距離304に相当する場合がある。前述のように、電圧回路(すなわち、GaN HEMT 200)と変調器100との間の距離は、寄生RF損失に寄与する可能性がある。そのため、ドレイン206と電極108aとの間の距離304を小さくすると、変調器100の性能が向上しうる。
【0022】
図4は、本明細書に記載された特徴に従って電気光学変調器アセンブリを製造する方法400を示している。一例では、電子光変調器アセンブリは電子デバイスと統合又は一体化されたフォトニック変調器に対応する。例えば、電気光学変調器アセンブリは、図3の電気光学変調器配置300に対応することができる。いくつかの例では、方法400は、GaN HEMT 200と変調器100との間の距離304を減らすことができ、高周波での変調器100の性能を向上させることができる。
【0023】
一例では、方法400は、酸化物-酸化物結合プロセスを使用してGaN HEMT 200に変調器100を結合することを含む。そのため、ブロック402で、酸化物-酸化物結合プロセスのためにGaN HEMT 200を準備する。図5Aに示すように、GaN HEMT 200上にSiO2層502が堆積される。いくつかの例では、SiO2層502の厚さは、GaN HEMT 200の特定の特徴の厚さに対応する場合がある。例えば、SiO2層502は、GaN HEMT 200のソース202、ゲート204及びドレイン206に対応する金属接点を覆うのに十分な厚さであってもよい。特定の例では、平坦化プロセスを利用して、SiO2層502の上部を平坦化することができる。
【0024】
同様に、ブロック404で、変調器100が酸化物-酸化物結合プロセスのために準備される。一例では、変調器100のSi基板126を除去して、SiO2クラッド層124bを露出させることができる。図5Bは、Si基板126を除去した変調器100の変調部120を示している。いくつかの例では、プラズマ処理及び/又は背面研削プロセスを使用してSi基板126を除去することができる。変形的には、他の例では、薄いSiO2層をSi基板126の裏面(すなわち、底部)に堆積させてもよい。いくつかの例では、高周波(例:100 GHz以上)での変調器100の性能を維持又は改善するために、Si基板126を除去することが好ましい場合がある。図には示されていないが、他の例では、変調器100は図1Cの変調部140で構成され、同様の方法で変更されることがある。
【0025】
ブロック406で、変調器100はGaN HEMT 200の基板214に統合又は一体化される。図5Cに示すように、酸化物-酸化物結合プロセスを用いて、変調器100のSiO2クラッド層124bをGaN HEMT 200のSiO2層502に結合し、一体化デバイス510を作製する。一例では、ソース202、ゲート204及びドレイン206へのアクセスを提供するために、GaN HEMT 200の上の領域(例:レイヤー)を削除することができる。例えば、図5Dに示すように、ソース202、ゲート204及びドレイン206の上の層122、124a、124b及び502の一部は、リソグラフィ及び/又はエッチングプロセスを使用して、一体化又は統合デバイス510から除去することができる。他の例では、GaN HEMT 200のソース202、ゲート204及びドレイン208を覆うSiO2層502の部分は、酸化物-酸化物結合プロセス(例えば、ブロック406の前)の前に除去され、その結果、GaN HEMT 200のソース202、ゲート204及びドレイン208が結合後に露出したままになる。
【0026】
ブロック408で、メタライゼーションプロセスが一体化デバイス510に適用される。図5Eに示すように、メタライゼーションプロセスを利用して、GaN HEMT 200と変調器100との間に金属接続部522を生成し、電気光学変調器アセンブリ520を提供することができる。一例では、金属接続部522は、図3の金属接続部302に対応してもよい。金属接続部522は、GaN HEMT 200のドレイン206を変調器100の電極108aに結合することができる。いくつかの例では、メタライゼーションプロセスは、ドレイン206を電極108aに接続するためのリソグラフィ及び/又は金属リフトオフプロセスを含むことができる。示されていないが、他の例では、電極108bを接地又は別の電圧源に結合するために同様のプロセスを利用することができる。
【0027】
いくつかの例では、変調器100をGaN HEMT 200の基板214にボンディングすることで、変調器100をGaN HEMT 200に近接(例えば、数ミクロン)して配置することができる。変調器100とGaN HEMT 200が近接しているため、金属接続部522の長さが比較的短くなり、GaN HEMT 200のドレイン206と電極108aとの距離(例えば、距離304)が大幅に短くなる場合がある。そのため、変調器100とGaN HEMT 200との間の電気的接続に伴うRF寄生効果を低減することができ、変調器100をさらに高い周波数(例:THzレンジ)で動作させることができる。
【0028】
本明細書で説明する実施形態は、III-窒化物電子デバイスの特定のタイプに限定されないことを認識すべきである。前述のように、GaN HEMTはフォトニック変調器と統合又は一体化することができ、高周波性能を向上させることができ;しかしながら、他の例では、異なるIII-窒化物材料及び/又はデバイスを利用することもできる。例えば、実装にもよるが、方法400は、窒化インジウム(InN) HEMTとフォトニック変調器(例えば、結合のためにInN HEMTの上にSiO2を堆積させる)を統合するように適応させることができる。代替の実施形態では、III族-窒化物デバイス以外のデバイス、例えば、GaAs、InP、SiC、及びSiベースのデバイスを、特定の用途の性能要件に応じて、フォトニック変調器に統合又は一体化することができる。さらに、いくつかの例では、方法400は個々のデバイス(すなわちチップ)を使用して実行される場合がある。ただし、他の例では、方法400をウェハーレベルで実行することもできる。
【0029】
同様に、本明細書に記載されている実施形態は、特定のタイプの光変調器に限定されないことを認識すべきである。上記ではMZI変調器の使用について説明したが、他の例では、III-窒化物電子デバイスを異なる種類の変調器(例えば、共振器変調器)と統合することができる。
【0030】
したがって、本明細書で説明するさまざまな特徴と例は、コンパクトで高周波のフォトニックモジュレータの配置を提供する。少なくとも1つの実施形態では、フォトニック変調器はIII-窒化物電子デバイスと統合又は一体化されている。具体的には、フォトニック変調器を電子デバイス基板に接合することにより、デバイス間のRF寄生効果を低減し、変調器の高周波動作(例:100 GHz以上)を可能にする。
【0031】
上記の少なくとも1つの例のいくつかの特徴を説明したので、当業者には様々な変更、修正、改良が容易に起こることが理解されるが、そのような変更、修正、改良は本開示の一部であり、本発明の範囲内にあることを意図している。したがって、上記の説明及び図面はあくまで例示であり、発明の範囲は、添付の請求項の適切な構成及びそれらの等価物から決定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
【国際調査報告】