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特表2023-523339多孔性電極を製造する方法、及びそうした電極を含むマイクロ電池
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  • 特表-多孔性電極を製造する方法、及びそうした電極を含むマイクロ電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】多孔性電極を製造する方法、及びそうした電極を含むマイクロ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230526BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230526BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230526BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230526BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/485
H01M4/1391
H01M4/1397
H01M4/131
H01M4/136
H01M10/0565
H01M10/0566
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/058
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565753
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 IB2021053497
(87)【国際公開番号】W WO2021220174
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】2004187
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ガベン,ファビアン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL03
5H029AM02
5H029AM06
5H029AM09
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029DJ13
5H029EJ04
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ09
5H029HJ19
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB03
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA09
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA23
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA19
(57)【要約】
20体積%~60体積%の間に含まれる気孔率、及び50nm未満の平均径を有する孔を有する電極を製造する方法であって、該方法において、
(a)基板と、2nm~100nmの間に含まれる一次平均径D50を有する、電極活物質の単分散一次ナノ粒子の集合体又は凝集体を含むコロイド懸濁液とを準備し、上述の集合体又は凝集体は、50nm~300nmの間に含まれる平均径D50を有し、
(b)上述のコロイド懸濁液から、上述の基板上に、電気泳動法、プリント技術、及び被覆技術からなる群より選択される技術によって層を堆積させ、
(c)ステップ(b)において得た上述の層を乾燥させ、加圧及び/又は加熱によって固化してメソポーラス層を得て、
(d)上述の多孔性層の孔及び該孔内に、電子伝導性材料の被覆を堆積させる。
この多孔性電極はリチウムイオンマイクロ電池に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に電気化学デバイスのための多孔性電極を製造する方法であって、前記電極は、基板上に堆積させた多孔性層を含み、前記層は、バインダーを含まず、20体積%~60体積%の間、好ましくは25体積%~50体積%の間に含まれる気孔率、及び50nm未満の平均径を有する孔を有し、前記製造方法は、
(a)基板と、少なくとも1つの電極活物質Pの単分散一次ナノ粒子の集合体又は凝集体を含むコロイド懸濁液又はペーストであって、前記単分散一次ナノ粒子が、2nm~150nmの間、好ましくは2nm~100nmの間、さらに好ましくは2nm~60nmの間に含まれる一次平均径D50を有し、前記集合体又は凝集体が、50nm~300nmの間、好ましくは100nm~200nmの間に含まれる平均径D50を有する、コロイド懸濁液又はペーストとを準備するステップと、
(b)ステップ(a)において準備した前記コロイド懸濁液又はペーストから、前記基板の少なくとも1つの面上に、電気泳動法、プリント法、好ましくはインクジェットプリント法又はフレキソプリント法、被覆法、好ましくはドクターブレード被覆法、ロール被覆法、カーテン被覆法、ディップ被覆法、又はスロットダイ被覆法、からなる群より選択される方法によって層を堆積させるステップと、
(c)ステップ(b)において得た前記層を、適切な場合、前記層をその中間基板から分離する前又は後に、乾燥させ、その後任意で、乾燥させた前記層を、好ましくは酸化雰囲気下において熱処理し、加圧及び/又は加熱によって固化して、多孔性層、好ましくはメソポーラス層を得るステップと、
(d)前記多孔性層の孔及び該孔内に、電子伝導性材料の被覆を堆積させるステップと、によって特徴づけられ、
前記基板は、電気集電体として機能可能な基板、又は、中間基板とすることができる方法。
【請求項2】
ステップ(c)から得られた前記多孔性層は、10m/g~500m/gの間に含まれる比表面積(specific surface)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)において得た前記多孔性層は、4μm~400μmの間に含まれる厚さを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板が中間基板であるとき、前記層を、ステップ(c)において、前記中間基板を乾燥させる前又は後に分離して多孔性プレートを形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)において準備した前記コロイド懸濁液又はペーストが、有機添加剤、例えば、リガンド、安定化剤、バインダー、又は残留有機溶媒を含むとき、請求項1~3のいずれか1項に記載のステップ(c)において乾燥させた前記層を、又は請求項4に記載のステップ(c)において形成した多孔性プレートを、好ましくは酸化雰囲気下において熱処理する方法。
【請求項6】
前記電子伝導性材料は炭素である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
電子伝導性材料の前記被覆の前記堆積は、原子層堆積ALD技術によって、又は前記電子伝導性材料の前駆体を含む液相に前記多孔性層を浸漬させて、その後前記前駆体を電子伝導性材料に変換することによって行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆体は、炭素高含有化合物、例えば炭水化物、好ましくは多糖であり、電子伝導性材料への前記変換は、好ましくは不活性雰囲気下における熱分解である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記物質Pは、
o酸化物のLiMn、Li1+xMn2-x(式中、0<x<0.15)、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-x(式中、XはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、他の希土類、例えばSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、0<x<0.1)、LiMn2-x(式中、M=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg、又はこれらの化合物の混合物で、0<x<0.4)、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiAlMn2-x(式中、0≦x<0.15)、LiNi1/xCo1/yMn1/z(式中、x+y+z=10)、
oLi(式中、0.6≦y≦0.85かつ0≦x+y≦2、かつMはAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Sn、及びSb、又はこれらの元素の混合物から選択される)、Li1.20Nb0.20Mn0.60
oLi1+xNbMe(式中、Meは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、及びMtから選択される少なくとも1つの遷移金属であり、かつ0.6<x<1、0<y<0.5、0.25≦z<1、但し、A≠MeかつA≠Nbかつ0≦p≦0.2)、
oLiNby-az-b2-c(式中、1.2<x≦1.75、0≦y<0.55、0.1<z<1、0≦a<0.5、0≦b<1、0≦c<0.8、かつ、M、N、及びPはそれぞれ、Ti、Ta、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、及びSbからなる群より選択される元素の少なくとも1つである)、
oLi1.25Nb0.25Mn0.50、Li1.3Nb0.3Mn0.40、Li1.3Nb0.3Fe0.40、Li1.3Nb0.43Ni0.27、Li1.3Nb0.43Co0.27、Li1.4Nb0.2Mn0.53
oLiNi0.2Mn0.6(式中、0.00≦x≦1.52、1.07≦y<2.4)、Li1.2Ni0.2Mn0.6
oLiNiCoMn1-x-y(式中、0≦x,y≦0.5)、LiNiCeCoMn1-x-y(式中、0≦x,y≦0.5かつ0≦z)、
oリン酸塩のLiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO、LiMPOF(式中、M=Fe、Co、Ni、又はこれらの様々な元素の混合物)、LiMPOF(式中、M=V、Fe、T、又はこれらの様々な元素の混合物)、式LiMM’POのリン酸塩(式中、M及びM’(M≠M’)はFe、Mn、Ni、Co、Vから選択され、例えば、LiFeCo1-xPOであって、0<x<1のもの)、
oFe0.9Co0.1OF、LiMSOF(式中、M=Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Mg)、
o以下のカルコゲン化物、V、V、TiS、チタンオキシスルフィド(TiO、式中、z=2-yかつ0.3≦y≦1)、タングステンオキシスルフィド(WO、式中、0.6<y<3かつ0.1<z<2)、CuS、CuSのすべてのリチオ化形態、好ましくはLi(式中、0<x≦2)、Li(式中、0<x≦1.7)、LiTiS(式中、0<x≦1)、チタン及びリチウムオキシスルフィドのLiTiO(式中、z=2-yかつ0.3≦y≦1かつ0<x≦1)、LiWO(式中、z=2-yかつ0.3≦y≦1かつ0<x≦1)、LiCuS(式中、0<x≦1)、LiCuS(式中、0<x≦1)、からなる群より選択する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記物質Pは、
oLiTi12、LiTi5-x12(式中、M=V、Zr、Hf、Nb、Ta、かつ0≦x≦0.25)、
o酸化ニオブ、及びチタン、ゲルマニウム、セリウム、又はタングステンとの混合酸化ニオブ、好ましくは、
oNb5±δ、Nb181693±δ、Nb1655±δ(式中、0≦x<1かつ0≦δ≦2)、LiNbO
oTiNb7±δ、LiTiNb(式中、w≧0)、Ti1-x Nb2-y 7±δ又はLiTi1-x Nb2-y 7±δ(式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、M及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつ0≦δ≦0.3)、
oLaTi1-2xNb2+x(式中、0<x<0.5)、
oMTi1-2xNb2+x7±δ
o式中、Mは、酸化の程度が+IIIの元素である、より具体的には、Mは、Fe、Ga、Mo、Al、Bからなる群より選択される元素の少なくとも1つであり、0<x≦0.20かつ-0.3≦δ≦0.3のもの、Ga0.10Ti0.80Nb2.10、Fe0.10Ti0.80Nb2.10
oMTi2-2xNb10+x29±δ
o式中、Mは、酸化の程度が+IIIの元素である、より具体的には、Mは、Fe、Ga、Mo、Al、Bからなる群より選択される元素の少なくとも1つであり、0<x≦0.40かつ-0.3≦δ≦0.3のもの、
oTi1-x Nb2-y 7-z 又はLiTi1-x Nb2-y 7-z
o式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
oM及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、
oMは、少なくとも1つのハロゲンであり、
o0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつz≦0.3のもの、
oTiNb7-z 又はLiTiNb7-z 、但し、Mは、好ましくはF、Cl、Br、I、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1つのハロゲンであり、0<z≦0.3、
oTi1-xGeNb2-y 7±z、LiTi1-xGeNb2-y 7±z、Ti1-xCeNb2-y 7±z、LiTi1-xCeNb2-y 7±z
o式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
o0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつz≦0.3のもの、
oTi1-xGeNb2-y 7-z 、LiTi1-xGeNb2-y 7-z 、Ti1-xCeNb2-y 7-z 、LiTi1-xCeNb2-y 7-z
o式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
oM及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、
o0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつz≦0.3のもの、
oTiO
oLiSiTON、からなる群より選択する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
20体積%~60体積%の間に含まれる気孔率を有し、バインダーを含まず、50nm未満の平均径を有する孔を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる多孔性電極。
【請求項12】
リチウムイオン電池の多孔性電極を製造するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~10の1項に記載の多孔性電極を製造する方法を実施する、又は請求項11に記載の多孔性電極を実施する、1mAhを超えない容量を有するように設計された電池の製造方法。
【請求項14】
前記電池はリチウムイオン電池である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項11に記載の多孔性電極を製造するための前記方法を陰極の製造に実施する、又は請求項11に記載の前記方法を陽極の製造に実施する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔性電極に電解質、好ましくは、
o少なくとも1つの非プロトン性溶媒及び少なくとも1つのリチウム塩から構成される電解質、
o少なくとも1つのイオン性液体及び少なくとも1つのリチウム塩から構成される電解質、
o少なくとも1つの非プロトン性溶媒及び少なくとも1つのイオン性液体及び少なくとも1つのリチウム塩の混合物、
o少なくとも1つのリチウム塩を添加することでイオン伝導性としたポリマー、並びに
oポリマー相又はメソポーラス構造のいずれかに液体電解質を添加することでイオン伝導性としたポリマー、
からなる群より選択されるリチウムイオン担持相を含浸させる、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、1mAhを超えない容量を有するように設計されているリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学の分野、より具体的には薄層電気化学システムに関する。これは、より具体的には、リチウムイオンマイクロ電池などの電気化学システムに使用することができる電極に関する。本発明は、負極及び正極に適用する。これは、液相又は液体電解質を含まない固体電解質を含浸することができる多孔性電極に関する。
【0002】
また、本発明は、電極材料のナノ粒子を適用するそうした多孔性電極を調製する方法、及びそうして得られた電極にも関する。また、本発明は、これらの電極の少なくとも1つを含むリチウムイオンマイクロ電池を製造する方法、及びそうして得られたマイクロ電池にも関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、市場の種々の電気化学蓄電技術のなかでも最も良好なエネルギー密度を有する。この電池を作製するため、種々のアーキテクチャ及び電極化学組成が存在する。リチウムイオン電池を製造する方法は、多くの記事や特許に提示されており、W.van Schalkwijk及びB.Scrosati編、「Advances in Lithium-ion batteries」、Kluever Academic/Plenum Publishers、2002年という本に一覧が示されている。
【0004】
電子カードに組み込み可能な、マイクロ電池、すなわち極めて小さい充電式電池がますます求められている。この電子回路は、例えば取引を安全にするカード、電子ラベル、インプラント可能な医療デバイス、種々のマイクロマシンシステムなどの、多くの分野で使用可能である。
【0005】
先行技術において、リチウムイオン電池の電極は、被覆技術を使用して、特にロール被覆、ドクターブレード被覆、テープキャスティング被覆、スロットダイ被覆によって製造することができる。これらの方法によって、粉末の形態の活物質の粒子からなるインクを基板表面に堆積させる。この粉末を構成する粒子は、典型的に直径5μm~15μmの平均粒子径を有する。
【0006】
これらの技術により、約50μm~約400μmの間に含まれる厚さの層を作製することができる。電池の出力及びエネルギーは、層の厚さ及び気孔率、並びにこれを構成する活性粒子径を適合させることで変えることができる。
【0007】
電極を形成するために堆積したインク(又はペースト)は、活物質粒子、及びまた(有機)バインダー、粒子間の電気的接触を確保可能な炭素粉末、及び電極の乾燥ステップ時に蒸発する溶媒をも含有している。粒子間の電気的接触の質を向上し、かつ堆積した層を緻密にするため、カレンダー加工ステップを電極に行う。この圧縮ステップの後、電極の活性粒子は堆積物の体積の約60%を占めており、このことは粒子間に通常約40%の気孔率があることを意味する。
【0008】
従来の製造方法で作製したリチウムイオンマイクロ電池の体積エネルギー密度を良好に最適化するため、電極の気孔率を下げて、電極の体積単位に対する活性成分の量を増加させることが極めて有用であり得る。これは、多くの方法で行うことができる。
【0009】
極端な場合、多孔性でない、十分に密度の高い層を使用することができ、したがって、電極の体積エネルギー密度を最大とする。そうした緻密層は、真空堆積技術を使用して、例えば、物理気相堆積(PVDと略記)によって作製することができる。しかしながら、孔を含まないこの層(全固体層と呼ぶ層)は、イオン輸送を促進する液体電解質又は電荷輸送を促進する電子伝導性充填剤を含有できないので、電池におけるその厚さを数マイクロメートルに抑えて留める必要があり、これはそうでなければ抵抗性になりすぎるためである。
【0010】
また、カレンダー加工後得る層の密度を増加させるように従来のインク技術を最適化することも可能である。堆積した粒子のサイズ分布を最適化することで、70%の層の密度に達することが可能であることが示されている(非特許文献1を参照)。30%の気孔率を有し、導電性充填剤を含有し、リチウムイオン伝導電解質を含浸させた電極は、サイズが単分散である粒子からなる50%の気孔率を有する同じ電極と比較して、体積エネルギー密度が約35%とより高くなると推定することができる。さらに、極めてイオン伝導性の高い相を含浸させ、電子伝導体を添加するため、この電極の厚さは、緻密だがより抵抗性の大きい層をもたらす真空堆積技術によって可能となるものと比較して、非常に大きく増加し得る。この電極の厚さの増加により、こうして得られた電池セルのエネルギー密度が増加する。
【0011】
しかしながら、そうした活物質粒子のサイズ分布は、電極のエネルギー密度を増加させるものの、問題がないわけではない。電極における様々なサイズの粒子は様々な容量を有し得る。これらは、同一の充電電流及び/又は放電電流の影響下において、そのサイズに応じて局所的に多かれ少なかれ充電及び/又は放電し得る。電池が電流を受けなくなると、粒子間における局所の電荷状態は再び均衡し得るが、一時的な相において、局所の不均衡が、その安定電圧範囲外において粒子に局所的なストレスをもたらし得る。この局所における電荷の不均衡は、電流密度が高いと、なおさら明らかとなり得る。したがって、この不均衡は、サイクル性能の喪失、安全性におけるリスク、及び電池セルの出力制限をもたらす。電極が不均質の、すなわちサイズが様々な多孔性を有するときも同様であり、この不均質性は、電極の孔のウェッティングをより困難にすることの一因となる。
【0012】
電極の電流/電圧の関係における、これらの活物質粒子の粒径分布の影響は、非特許文献2において数値シミュレーションによって研究された。先行技術において、典型的に5μm~15μmの間に含まれるサイズを有する活物質粒子を、上述の電極にインク技術のために使用している。各粒子間の接触は実質的に点状であり、粒子は、多くの場合でポリフッ化ビニリデン(PVDFと略記)である有機バインダーと共に結合される。
【0013】
リチウムイオン電池のためのバインダー非含有メソポーラス電極層を、電気泳動法によって堆積させることができる。これは、特許文献1(I-TEN)から既知である。これは、液体電解質に含浸させることができるが、その電気抵抗率は極めて高くとどまる。
【0014】
多孔性電極の含浸に使用する液体電解質は、リチウム塩を溶解した非プロトン性溶媒からなる。これは、極めて可燃性が高く、特に、陰極活物質がその安定電圧範囲外の電圧範囲にあるとき、又はホットスポットが局所的に電池セルに現れるとき、電池セルを激しく燃焼させ得る。
【0015】
このリチウムイオン電池セルの構造に特有の安全性の問題に対する解決策を見出すため、3つの軸に沿った取り組みを行うことができる。
【0016】
第1の軸によると、有機溶媒系電解質を、極めて温度安定性の高いイオン性液体によって置き換えることができる。しかしながら、イオン性液体は有機材料の表面をウェッティングせず、従来のリチウムイオン電池電極においてPVDF及び他の有機バインダーが存在することにより、固定電極が、このタイプの電解質によってウェッティングされず、電極の性能に影響を与える。電極間の電解質の境目におけるこの問題を克服するため、セラミックセパレータが開発されているが、電極に有機バインダーが存在することで、イオン性液体系電解質の使用に引き続き問題を起こすという事実が依然としてある。
【0017】
第2の軸によると、激しい放電時にその動作電圧範囲外において活物質に局所的なストレスをもたらし得る電荷状態の局所の不均衡を防ぐため、粒子径の均質化が模索され得る。また、この最適化はセルのエネルギー密度を犠牲にし得る。
【0018】
第3の軸によると、電池出力動作時にホットスポットの形成をもたらし得る、より電気的に抵抗の大きい領域が局所的にないようにするため、導電性充填剤(通常カーボンブラック)の分布及び分配を、電極において均質化することができる。
【0019】
より具体的に、先行技術における電池電極を製造する方法に関して、その製造コストは、使用する溶媒及びインクの特性によって部分的に決まる。電極を製造するコストは、活物質自体のコストに加え、使用するインクの複雑性(バインダー、溶媒、カーボンブラック)から実質的に生じる。リチウムイオン電池電極の作製に使用する主要な溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMPと略記)である。NMPは、インクの配合処方においてバインダーとして機能するPVDFの溶解に優れた溶媒である。
【0020】
電極に含有されるNMPの乾燥は、実に経済的な問題となる。NMPの極めて低い蒸気圧と併せた高い沸騰温度により、工業的環境において乾燥を行うことが困難となる。溶媒蒸気は回収して再処理する必要がある。さらに、より良く確実に基板へ電極を付着させるため、NMPの乾燥温度は、高すぎるものであってはならず、このことも乾燥時間及びそのコストを増加させる傾向を有する。これは、非特許文献3に記載されている。
【0021】
他のあまり高価でない溶媒、特に水及びエタノールを、インクの作製に使用することができる。しかしながら、これらの表面張力はNMPのものより大きいので、金属集電体の表面をあまり良好にウェッティングしない。さらに、粒子、とくにカーボンブラックナノ粒子は、水中で凝集する傾向がある。これらの凝集が、電極の組成に入る成分の不均一な分布をもたらす(バインダー、カーボンブラック…)。さらに、水又はエタノールでも、微量の水が、乾燥後でも活物質粒子の表面に吸着して残り得る。
【0022】
最後に、低コストの効率的な電極を得るためのインクの配合処方に関する問題に加えて、電極のエネルギー密度と出力密度との比を、活物質の粒子径に従って、並びに電極層の気孔率及びその厚さに間接的に従って調整することができることに留意する必要がある。J.Newmanによる記事(非特許文献4)は、放電速度(出力)及びエネルギー密度における電極の厚さ及びその気孔率のそれぞれの影響を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第2019/215407号
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】J.Ma及びL.C.Lim、「Effect of particle size distribution of sintering of agglomerate-free submicron alumina powder compacts」、J.Europ.Ceramic Soc.、2002、22(13)、p.2197-2208
【非特許文献2】S.T.Taleghani等、「A study on the Effect of Porosity and Particle Size Distribution On Li-Ion Battery Performance」、j.Electrochem.Soc.、2017、164(11)、p.E3179-E3189
【非特許文献3】D.L.Wood等、「Technical and economic analysis of solvent-based lithium-ion electrode drying with water and NMP」、Drying Technology、2018、第36巻、No.2
【非特許文献4】J.Newman、「Optimization of Porosity and Thickness of a Battery Electrode by Means of a Reaction-Zone Model」、J.Electrochem.Soc.、1995、142(1)、p.97-101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明が克服しようとする課題は、優れたサイクル寿命を有し、安全性が向上した、極めて高い出力密度と併せた極めて高いエネルギー密度を有する、リチウムイオンマイクロ電池のための新しい電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
より具体的には、従来のリチウムイオン電池セルの構造に特有のこの安全性の問題を克服するため、発明者らは、3つのガイドラインに従った。
【0027】
第1のガイドラインによると、有機溶媒系電解質を、極めて温度安定性の高い、有機溶媒とイオン性液体との混合物又はイオン性液体によって置き換える。しかしながら、イオン性液体は有機材料の表面をウェッティングせず、従来の電池電極においてPVDF及び他の有機バインダーが存在することにより、このタイプの電解質による電極のウェッティングを妨げ、電極の性能に影響を与える。電極間の電解質の境目におけるこの問題を克服するため、セラミックセパレータが開発されているが、電極に有機バインダーが存在することで、イオン性液体に基づく電解質の使用に引き続き問題を生じさせるという事実が依然としてある。
【0028】
第2のガイドラインによると、激しい放電時にその従来の動作電圧範囲外において活物質に局所的なストレスをもたらし得る電荷状態の局所的不均衡を防ぐため、粒子径の均質化を模索する。
【0029】
第3のガイドラインによると、電池出力動作時にホットスポットの形成をもたらし得る、より電気的に抵抗性の領域が局所的にないようにするため、電極における導電性添加剤(「導電性充填剤」、カーボンブラックのみが実際に使用される)の分布及び分配の均質化を模索する。
【0030】
本発明において、この問題は、完全にセラミックであり、メソポーラスであり、有機バインダーを含まず、その気孔率が50%~25%の間に含まれ、そのチャネル及び孔のサイズが、セルの良好な動的均衡を確保するように均質であるリチウムイオンマイクロ電池電極によって解決する。
【0031】
有機成分を含まない、この全固体メソ孔構造は、基板上に活物質のナノ粒子の凝集体及び/又は集合体を堆積させることによって得られる。この凝集体及び/又は集合体を構成する一次粒子のサイズは、ナノメートル又は数十ナノメートルの範囲であり、凝集体及び/又は集合体は少なくとも4つの一次粒子を含有する。
【0032】
上述の基板は、第1の実施形態において、電気集電体として機能可能な基板とすることができる、又は、第2の実施形態において、以下により詳細に説明する一時的な中間基板とすることができる。
【0033】
それぞれがナノメートル又は数十ナノメートルの範囲のサイズを有する非凝集の一次粒子ではなく、直径が数十又はさらに数百ナノメートルの凝集体を使用するという事実により、堆積厚さを増加させることができる。上述の凝集体は、300nm未満のサイズを有する必要がある。500nmを超える凝集体の焼結からは、連続するメソポーラス膜を得られない。この場合、異なる2つのサイズの多孔性、すなわち凝集体間の多孔性と凝集体内の多孔性とが、堆積物において観察される。
【0034】
実際に、電気集電体として機能可能な基板上のナノ粒子の堆積を乾燥させる際、層に割れが発生することが観察される。この割れは、実質的に粒子のサイズ、堆積における緻密度、及びその厚さに応じて発生することが見てとれる。この割れの限界厚さは、以下の関係によって定義され、
max=0.41[(GMΦrcp)/2γ]
式中、hmaxは臨界厚さ、gはナノ粒子のせん断弾性率(shear module)、Mは配位数、Φrcpはナノ粒子の体積分率、Rは粒子の半径、γは溶媒と空気との間の界面張力を指す。
【0035】
凝集体のサイズより少なくとも10倍小さい一次ナノ粒子からなる、メソポーラスの凝集体の使用により、層における割れの限界厚さを実質的に増加させることができるということになる。同様に、ウェッティング性及び堆積の付着性を向上させ、割れのリスクを低下させるため、水又はエタノール中に、より低い表面張力を有する数パーセントの溶媒(イソプロピルアルコール(IPAと略記)など)を添加することが可能である。割れの発生を抑える又はなくしながら、堆積厚さを増加させるため、バインダー、分散剤を添加することが可能である。これらの添加剤及び有機溶媒は、焼結処理時又は焼結処理前に行う熱処理時に、空気中での熱処理、例えば脱バインダー処理によって除去することができる。
【0036】
さらに、同じサイズの一次粒子では、沈殿によるその合成時に、合成反応装置においてリガンド(例えば、ポリビニルピロリドン、PVPと略記)の量を調節することで凝集体のサイズを変えることが可能である。したがって、凝集体の堆積における緻密度を最大にするため、サイズが極めて様々であるか、又は2つの相補的なサイズの集団を有する凝集体を含有するインクを作製することが可能である。非凝集のナノ粒子の焼結とは異なり、サイズの異なる凝集体間の焼結状態は変化しない。これらは、共に会合し得る凝集体を構成する一次ナノ粒子である。これらの一次ナノ粒子は、凝集体のサイズにかかわらず、同一のサイズを有する。凝集体のサイズ分布は、堆積における緻密度を向上させ、ナノ粒子間の接触点を増加させるが、固化温度を変えない。
【0037】
しかしながら、凝集体は、層の熱処理時に、連続するメソポーラス膜を形成できるように、小さくとどめる必要がある。凝集体が大きすぎる場合、これはその焼結を妨げ、凝集体間の多孔性及び凝集体内の多孔性という2つの別個の多孔性の形成が層に観察される。
【0038】
部分的に焼結した後、カーボンブラック又は有機バインダーなしの、多孔性、好ましくはメソポーラスの層又はプレートを得、すべてのナノ粒子が、単峰性の多孔性によって特徴づけられた、連続するメソポーラスネットワークを形成するように、(これも既知であるネッキング現象によって)共に会合する。こうして得られた多孔性、好ましくはメソポーラスの層は、全面的に固体かつセラミックである。サイクル時に活物質の粒子間におけるいずれの電気的接触の喪失のリスクもなくなり、これが、電池のサイクル性能を向上させる可能性を高くする。さらに、焼結後、多孔性、好ましくはメソポーラスの層は、堆積させた又は移した(中間基板上の最初の堆積の場合)金属基板に十分に付着する。
【0039】
ナノ粒子を共に焼結するため高温で行われる熱処理により、電極を十分に乾燥させ、活物質粒子の表面上に吸着されたすべての微量の水又は溶媒又は他の有機添加剤(安定化剤、バインダー)を取り除くことができる。配置した又は堆積した電極を乾燥させ、活物質粒子の表面上に吸着した微量の水又は溶媒又は他の有機添加剤(安定化剤、バインダー)を取り除くため、低温の熱処理(脱バインダー処理)を、高温の熱処理(焼結)の前に行うことができる。この脱バインダー処理は、酸化雰囲気中で行うことができる。
【0040】
焼結時間及び温度に応じて、最終的な電極の気孔率を調整することが可能である。エネルギー密度要件に応じて、後者を50%~25%の間に含まれる気孔率の範囲内に調整することができる。
【0041】
すべての場合に、こうして得られた電極の出力密度は、メソポーラスにより極めて高く保たれる。さらに、活物質におけるメソ孔のサイズにかかわらず(焼結後、ナノ粒子の概念は、チャネル及びメソ孔のネットワークを含む3次元構造を有する該物質と同様ではないことが知られている)、動的セル均衡は十分に保たれ、これが出力密度及び電池セル寿命を最大にするために有用である。
【0042】
本発明における電極は、電極のイオン抵抗を小さくする高比表面積(high specific surface)を有する。しかしながら、この電極が最大出力を供給するために、電池の抵抗損失を防ぐように、なお非常に良好な電子伝導性を有する必要がある。このセルにおける電子伝導性の向上は、電極の厚さが大きくなるとなおさら重要性を増す。さらに、この電子伝導性は、ホットスポットの局所的な形成を防ぐため、電極にわたって十分に均質である必要がある。
【0043】
本発明において、電子伝導性材料の被覆を、多孔性層の孔及び該孔内に堆積させる。この電子伝導性材料は、原子層堆積技術(ALDと略記)によって又は液体前駆体から堆積させることができる。上述の電子伝導性材料は炭素とすることができる。
【0044】
液体前駆体から炭素層を堆積させるため、メソポーラス層を、炭素前駆体高含有である溶液(例えば、スクロースなどの炭水化物の溶液)に浸漬することができる。その後、電極を乾燥させ、炭素前駆体の熱分解に十分な温度で窒素中において熱処理を施す。これにより、電極の内面全体に極めて薄く、十分に分散した炭素被覆を形成する。この被覆により、その厚さにかかわらず、電極に良好な電子伝導性を与える。電極が、有機残留物なく、全面的に固体であり、種々の熱処理によって行われる熱サイクルに耐えるので、この処理は焼結後に可能となることに留意する必要がある。
【0045】
本発明の第1の目的は、特に電気化学デバイスのための多孔性電極を製造する方法であって、上述の電極は、基板上に堆積させた多孔性層を含み、上述の層は、バインダーを含まず、20体積%~60体積%の間、好ましくは25体積%~50体積%の間に含まれる気孔率、及び50nm未満の平均径を有する孔を有し、上述の製造方法は、
(a)基板と、少なくとも1つの電極活物質Pの単分散一次ナノ粒子の集合体又は凝集体を含むコロイド懸濁液又はペーストであって、上述の単分散一次ナノ粒子が、2nm~150nmの間(好ましくは2nm~100nmの間、好ましくは2nm~60nmの間、さらにより好ましくは2nm~50nmの間)に含まれる平均一次径D50を有し、上述の集合体又は凝集体は、50nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)に含まれる平均径D50を有する、コロイド懸濁液又はペーストとを準備するステップと、
(b)ステップ(a)において準備した上述のコロイド懸濁液又はペーストから、上述の基板の少なくとも1つの面上に、電気泳動法、プリント法、特にインクジェットプリント法又はフレキソプリント法、被覆法、好ましくはドクターブレードを用いる被覆法、すなわちドクターブレード被覆法、ロール被覆法、カーテン被覆法、ディップ被覆法、又はスロットダイ被覆法、からなる群より選択される方法によって層を堆積させるステップと、
(c)ステップ(b)において得た上述の層を、適切な場合、上述の層をその中間基板から分離する前又は後に、乾燥させ、その後任意で、上述の乾燥させた層を、好ましくは酸化雰囲気下において熱処理し、加圧及び/又は加熱によって固化して、多孔性層、好ましくはメソポーラス層を得るステップと、
(d)多孔性層の孔及び該孔内に、電子伝導性材料の被覆を堆積させるステップと、によって特徴づけられ、
上述の基板は、電気集電体として機能可能な基板、又は、中間基板とすることができる。
【0046】
有利には、ステップ(d)の後、電池の寿命及びその性能を高めるため、得られた電極をイオン伝導層で被覆することができる。イオン伝導層は、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、nafion(登録商標)、LiBO、PEO、又はPEOとリチウム塩などのリチウムイオン担持相との混合物とすることができる。
【0047】
ステップ(b)において、堆積は、基板の一方又は両方の面に行うことができる。
【0048】
有利には、上述の基板が中間基板であるとき、上述の層を、ステップ(c)において上述の中間基板から分離して、固化後、多孔性プレートを形成する。この分離ステップは、ステップ(b)において得た層を乾燥する前又は後に行うことができる。
【0049】
有利には、上述の基板が中間基板であるとき、ステップ(c)の後かつステップ(d)の前に、少なくとも1つの面において、好ましくはその2つの面において、導電性接着剤の薄層又は少なくとも1つの電極活物質Pのナノ粒子の薄層で覆った電気伝導性シートを準備し、その後、少なくとも1つの多孔性プレートを、電気伝導性シートの1つの面に、好ましくは各面に接着して、集電体として機能可能な基板上に多孔性層、好ましくはメソポーラス層を得る。
【0050】
有利には、ステップ(a)において準備した上述のコロイド懸濁液又はペーストが、有機添加剤、例えばリガンド、安定化剤、バインダー、又は残留有機溶媒を含むとき、ステップ(c)において乾燥させた上述の層を、好ましくは酸化雰囲気下において、熱処理する。この熱処理は、脱バインダー処理を可能とし、ステップ(c)において、酸化雰囲気下で行う固化(焼結)と同時に又は乾燥させた層を固化するステップの前に行うことができる。
【0051】
第1の実施形態では、上述の基板は、電気集電体として機能可能な基板である。その化学特性は、多孔性電極を製造する方法におけるステップ(c)の熱処理の温度に適合する必要があり(脱バインダー及び/又は焼結熱処理)、特に、融解し、又は高すぎる電気抵抗性を有し得る酸化層を形成し、又は電極材料と反応してはならない。有利には、特にタングステン、モリブデン、クロム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、又は2つ以上のこれらの材料の合金から作製可能な、金属基板を選択する。そうした金属基板は極めて高価であり、電池のコストを大幅に増加させ得る。また、この金属基板を、物質Pの層を堆積させる前に、導電性又は半導体酸化物で被覆することができる。ステップ(c)の後の層の厚さは、有利には、約1μm~約300μmの間、好ましくは1μm~150μmの間、より好ましくは10μm~50μmの間、又は10μm~30μmの間に含まれる。使用する基板が電気集電体として機能可能な基板であるとき、ステップ(c)の後の層の厚さは、いかなる割れの問題をも防ぐため制限する。
【0052】
第2の実施形態では、上述の基板は、ポリマー膜であり得る可撓性基板などの一時的な中間基板である。この第2の実施形態では、堆積ステップは、有利には、その後層をその中間基板から分離しやすいように、上述の中間基板の1つの面に行う。この第2の実施形態では、層は、乾燥した後、好ましくは加熱する前に、しかしながら遅くともステップ(c)の最後に、その基板から分離することができる。ステップ(c)の後の層の厚さは、有利には、5mm以下、有利には約1μm~約500μmの間に含まれる。ステップ(c)の後の層の厚さは、有利には、300μm未満、好ましくは約5μm~約300μmの間、好ましくは5μm~150μmの間に含まれる。
【0053】
有利には、ステップ(c)の最後に得られる上述の多孔性層は、10m/g~500m/gの間に含まれる比表面積を有する。その厚さは、有利には、1~500μmの間に含まれ、好ましくは4~400μmの間に含まれる。
【0054】
活物質Pの一次粒子のサイズ分布は好ましくは狭いものである。好ましい方法では、上述の凝集体は好ましくは少なくとも3つの一次粒子を含む。上述の凝集体のサイズ分布は好ましくは多分散である。一実施形態では、凝集体のサイズ分布は二峰性であり、すなわち、2つのサイズ分布のピークを有し、これらの2つのサイズをD1及びD2と呼び、D1>D2であり、D2/D1の比は、例えば3~7の間、好ましくは4~6の間を含むことができる。これにより、大きい空隙の形成を防いで、メソポーラス層の良好な緻密度を確保する。
【0055】
ナノ粒子の懸濁液は、水中若しくはエタノール中、又は水とエタノールとの混合物中、またあるいは、エタノールとイソプロピルアルコールとの混合物(3%未満のイソプロピルアルコール)中で作製することができる。これは、カーボンブラックを含有しない。
【0056】
被覆技術、例えばロール被覆、カーテン被覆、スロットダイ被覆、又はディップ被覆を使用するため、使用する懸濁液は、有利には少なくとも15%、好ましくは少なくとも50%の乾燥抽出物によって特徴づけられる。
【0057】
電子伝導性材料の上述の被覆の堆積は、原子層堆積ALD技術によって、又は、上述の電子伝導性材料の前駆体を含む液相に多孔性層を浸漬させて、その後上述の前駆体を電子伝導性材料に変換することによって行うことができる。
【0058】
上述の前駆体は、有利には、炭素高含有化合物、例えば炭水化物、好ましくは多糖であり、電子伝導性材料への上述の変換は、この場合、好ましくは不活性雰囲気(例えば窒素)下における熱分解によって行う。上述の電子伝導性材料は炭素とすることができる。これは、特にALDによって又は炭素前駆体を含む液相に浸漬させることによって堆積させることができる。
【0059】
上述の第2の実施形態では、電池の多孔性電極を製造する方法は、ポリマー中間基板(PETなど)を使用し、「生テープ」と呼ぶテープを得る。このテープをその後その基板から分離して、その後プレート又はシートを形成する(以下、その厚さにかかわらず「プレート」という用語を使用する)。このプレートを切り取り後、その中間基板から分離することができる。その後、有機成分を取り除くため、このプレートをか焼する。その後、25%~50%の間に含まれる気孔率を有するメソポーラスセラミック構造を得るまでナノ粒子を固化するため、このプレートを焼結する。ステップ(c)において得た上述の多孔性プレートは、有利には、5mm以下、好ましくは約1μm~約500μmの間に含まれる厚さを有する。ステップ(c)の後の層の厚さは、有利には、300μm未満、好ましくは約5μm~約300μmの間、好ましくは5μm~150μmの間に含まれる。その後、電子伝導性材料の被覆を、先ほど記載したように好ましくはメソポーラスの多孔性層又は多孔性プレートの孔及び該孔内に堆積させる。
【0060】
この第2の実施形態では、また、両方の面において好ましくは電極プレートを構成するものと同一のナノ粒子の中間薄層で覆った、又は両方の面において導電性接着剤の薄層で覆った、電気伝導性シートも準備する。上述の薄層は、好ましくは1μm未満の厚さを有する。このシートは、金属ストリップ又は黒鉛シートとすることができる。
【0061】
この電気伝導性シートを、その後、これまでに得た多孔性電極の2つのプレートの間、ステップ(c)の後に得た2つの多孔性プレートの間のそれぞれに配置する。その後、この組立体を熱プレスして、上述のナノ粒子中間薄層を焼結によって変換し、電極/基板/電極の組立体、多孔性プレート/基板/多孔性プレートの組立体をそれぞれ固化して、剛性で一体的な副組立体を得る。この焼結時、電極層と中間層との間、多孔性プレートと中間層との間のそれぞれの接合を原子拡散によって得る。この現象は「拡散接合」として既知である。この組立体は、同じ極性(典型的には2つの陽極の間又は2つの陰極の間)である2つの電極プレート、2つの多孔性プレートによってそれぞれ作製し、同じ極性であるこれらの2つの電極プレートの間、2つの多孔性プレート間のそれぞれの金属シートがその間を並列接続する。
【0062】
第2の実施形態の利点の1つは、アルミニウムストリップ、銅又は黒鉛ストリップなどの安価な基板を使用できることである。実際に、これらのストリップは、堆積した層を固化するための熱処理に耐えないので、その熱処理後に電極プレートにこれらを接着することがその酸化を防ぐことにも役立つ。
【0063】
第2の実施形態の他の変形において、多孔性プレート/基板/多孔性プレートの組立体を得るとき、有利にはその後、特に使用する多孔性プレートが厚いとき、これまでに記載したように、多孔性プレート/基板/多孔性プレートの組立体の多孔性プレート、好ましくはメソポーラスプレートの孔及び該孔内に、電子伝導性材料の被覆を堆積させることができる。
【0064】
電子伝導性材料の上述の被覆の堆積は、原子層堆積ALD技術によって、又は上述の電子伝導性材料の前駆体を含む液相に多孔性層を浸漬させて、その後上述の前駆体を電子伝導性材料に変換することによって行うことができる。
【0065】
この「拡散接合」組立体は、先ほど記載したように別個になすことができ、こうして得られた電極/基板/電極の副組立体は、電池を製造するために使用することができる。また、この拡散接合組立体は、全電池構造を積層して熱プレスすることによって成し遂げることができ、この場合、第1多孔性陽極層、その金属基板、第2多孔性陽極層、固体電解質層、第1陰極層、その金属基板、第2陰極層、新しい固体電解質層等を含む多層スタックを組み立てる。
【0066】
より具体的に、メソポーラスセラミックである電極プレートを、金属基板の両方の面に接着することができる(そのとき、金属基板の両方の面に堆積させて得られるものと同じ構成が見つかる)。
【0067】
この電極/基板/電極の副組立体は、その後に電気集電体として機能可能な電気伝導性シートに電極プレートを接着することによって、又は電気集電体として機能可能な基板、特に金属基板上に層を堆積させて、その後焼結することによって、得ることができる。
【0068】
電極/基板/電極の副組立体の実施形態にかかわらず、電解質膜(セパレータ)をその後、後者に堆積させる。その後、複数の基本セルを含む電池を作製するため必要な切り取りを行い、その後、副組立体を(典型的には「ヘッドトゥテール」モードで)積層して、熱圧縮を行い、固体電解質において電極を共に溶着する。
【0069】
あるいは、複数の基本セルを含む電池を作製するための必要な切り取りを、各電極/基板/電極の副組立体に電解質膜(セパレータ)を堆積させる前に行うことができ、その後、副組立体を(典型的には「ヘッドトゥテール」モードで)積層して、熱圧縮を行い、電解質膜(セパレータ)において電極を共に溶着する。
【0070】
先ほど提示した2つの変形では、熱圧縮溶着を、比較的低い温度で行っており、これは、ナノ粒子が極めて小さいサイズであるため可能となる。結果として、基板の金属層の酸化が見られない。
【0071】
以下に記載する組立体の他の実施形態では、導電性接着剤(黒鉛を添加)、又は導電性粒子を添加したゾルゲルタイプの堆積、又は、好ましくは低融点を有する金属(例えばアルミニウム)ストリップを使用し、金属ストリップは、熱機械(熱プレス)処理時に、クリープによって変形させて、このプレート間の溶着を行うことができる。
【0072】
電極を電池に使用する必要がある場合、充電及び放電サイクル時に寸法が安定である活物質Pを、好ましくは選択する。これは、以下からなる群より特に選択することができる。すなわち、
o酸化物のLiMn、Li1+xMn2-x(式中、0<x<0.15)、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-x(式中、XはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、他の希土類、例えばSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、0<x<0.1)、LiMn2-x(式中、M=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg、又はこれらの化合物の混合物で、0<x<0.4)、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiAlMn2-x(式中、0≦x<0.15)、LiNi1/xCo1/yMn1/z(式中、x+y+z=10)、
oLi(式中、0.6≦y≦0.85かつ0≦x+y≦2、かつMはAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Sn、及びSb、又はこれらの元素の混合物から選択される)、Li1.20Nb0.20Mn0.60
oLi1+xNbMe(式中、Meは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、及びMtから選択される少なくとも1つの遷移金属であり、かつ0.6<x<1、0<y<0.5、0.25≦z<1、但し、A≠MeかつA≠Nbかつ0≦p≦0.2)、
oLiNby-az-b2-c(式中、1.2<x≦1.75、0≦y<0.55、0.1<z<1、0≦a<0.5、0≦b<1、0≦c<0.8、かつ、M、N、及びPはそれぞれ、Ti、Ta、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、及びSbからなる群より選択される元素の少なくとも1つである)、
oLi1.25Nb0.25Mn0.50、Li1.3Nb0.3Mn0.40、Li1.3Nb0.3Fe0.40、Li1.3Nb0.43Ni0.27、Li1.3Nb0.43Co0.27、Li1.4Nb0.2Mn0.53
oLiNi0.2Mn0.6(式中、0.00≦x≦1.52、1.07≦y<2.4)、Li1.2Ni0.2Mn0.6
oLiNiCoMn1-x-y(式中、0≦x,y≦0.5)、LiNiCeCoMn1-x-y(式中、0≦x,y≦0.5かつ0≦z)、
oリン酸塩のLiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO、LiMPOF(式中、M=Fe、Co、Ni、又はこれらの様々な元素の混合物)、LiMPOF(式中、M=V、Fe、T、又はこれらの様々な元素の混合物)、式LiMM’POのリン酸塩(式中、M及びM’(M≠M’)はFe、Mn、Ni、Co、Vから選択され、例えば、LiFeCo1-xPOであって、0<x<1のもの)、
oFe0.9Co0.1OFタイプのオキシフッ化物、LiMSOF(式中、M=Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Mg)、
o以下のカルコゲン化物、V、V、TiS、チタンオキシスルフィド(TiO、式中、z=2-yかつ0.3≦y≦1)、タングステンオキシスルフィド(WO、式中、0.6<y<3かつ0.1<z<2)、CuS、CuSのすべてのリチオ化形態、好ましくはLi(式中、0<x≦2)、Li(式中、0<x≦1.7)、LiTiS(式中、0<x≦1)、チタン及びリチウムオキシスルフィドのLiTiO(式中、z=2-yかつ0.3≦y≦1かつ0<x≦1)、LiWO(式中、z=2-yかつ0.3≦y≦1かつ0<x≦1)、LiCuS(式中、0<x≦1)、LiCuS(式中、0<x≦1)、からなる群より特に選択することができる。
【0073】
これらの材料の1つから作製する、本発明における多孔性層により、電池、特にリチウムイオン電池の陰極機能を確保することができる。
【0074】
また、上述の物質Pは、以下からなる群より選択することもできる。すなわち、
oLiTi12、LiTi5-x12(式中、M=V、Zr、Hf、Nb、Ta、かつ0≦x≦0.25)、
o酸化ニオブ、及びチタン、ゲルマニウム、セリウム、又はタングステンとの混合酸化ニオブ、好ましくは、
oNb5±δ、Nb181693±δ、Nb1655±δ(式中、0≦x<1かつ0≦δ≦2)、LiNbO
oTiNb7±δ、LiTiNb(式中、w≧0)、Ti1-x Nb2-y 7±δ又はLiTi1-x Nb2-y 7±δ(式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、M及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつ0≦δ≦0.3)、
oLaTi1-2xNb2+x(式中、0<x<0.5)、
oMTi1-2xNb2+x7±δ
o式中、Mは、酸化の程度が+IIIの元素である、より具体的には、Mは、Fe、Ga、Mo、Al、Bからなる群より選択される元素の少なくとも1つであり、0<x≦0.20かつ-0.3≦δ≦0.3のもの、Ga0.10Ti0.80Nb2.10、Fe0.10Ti0.80Nb2.10
oMTi2-2xNb10+x29±δ
o式中、Mは、酸化の程度が+IIIの元素である、より具体的には、Mは、Fe、Ga、Mo、Al、Bからなる群より選択される元素の少なくとも1つであり、0<x≦0.40かつ-0.3≦δ≦0.3のもの、
oTi1-x Nb2-y 7-z 又はLiTi1-x Nb2-y 7-z
o式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
oM及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、
oMは、少なくとも1つのハロゲンであり、
o0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつz≦0.3のもの、
oTiNb7-z 又はLiTiNb7-z 、但し、Mは、好ましくはF、Cl、Br、I、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1つのハロゲンであり、0<z≦0.3、
oTi1-xGeNb2-y 7±z、LiTi1-xGeNb2-y 7±z、Ti1-xCeNb2-y 7±z、LiTi1-xCeNb2-y 7±z
o式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
o0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつz≦0.3のもの、
oTi1-xGeNb2-y 7-z 、LiTi1-xGeNb2-y 7-z 、Ti1-xCeNb2-y 7-z 、LiTi1-xCeNb2-y 7-z
o式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
oM及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、
o0≦w≦5かつ0≦x≦1かつ0≦y≦2かつz≦0.3のもの、
oTiO
oLiSiTON、からなる群より選択することもできる。
【0075】
本発明に使用するナノ粒子は、コアシェルタイプの構造を有することができ、この場合、上述の物質Pはコアを形成する。シェルは、イオン伝導体である又はそうではない、誘電性材料とすることができる。
【0076】
これらの材料の1つから作製する、本発明における多孔性層により、電池、特にリチウムイオン電池の陽極機能を確保することができる。リチウムイオン電池において陽極として使用するため、1Vより大きいリチウム吸蔵電位を有する陽極材料を有利に使用する。これにより、電池を極めて速く充電することができる。
【0077】
負極を、チタネート及び/又は混合酸化チタンから作製することができる。好ましくは、電極に、リチウム塩を含有するイオン性液体を含浸させる。上述のイオン性液体が硫黄原子を含むとき、電気集電体として機能可能な基板は、好ましくは貴金属である。そうした電池は、高温で動作可能という利点を有する。
【0078】
本発明の他の目的は、本発明における多孔性電極を製造する方法によって得られる多孔性電極である。この多孔性電極はバインダーを含まない。その気孔率は好ましくは20体積%~60体積%の間に含まれ、その孔の平均径は50nm未満である。これは、電気化学デバイスの正極として又は負極として動作することが意図され得る。
【0079】
本発明における電極により、高エネルギー密度及び高出力密度の両方を有するリチウムイオンマイクロ電池を作製することができる。この性能は、気孔率の制限(エネルギー密度を増加させる)、極めて高い比表面積(電極における極めて小さいサイズの一次粒子にとって有利であり、イオン抵抗性を減少させる交換面の増加につながる)、有機バインダーが存在しないこと(バインダーは活物質面へのリチウムのアクセスを局所的に妨げ得る)の結果として得られる。本発明の重要な特徴において、電子伝導性材料の被覆を、多孔性層の孔及び該孔内に堆積させる。この被覆により、電池の直列抵抗を低下させる。
【0080】
本発明のさらに他の目的は、リチウムイオン電池の多孔性電極を製造するための、本発明における多孔性電極を製造する方法の使用である。
【0081】
本発明のさらに他の目的は、1mAhを超えない容量を有するように設計された電池を製造する、本発明における多孔性電極を製造する方法を実施する、又は本発明における多孔性電極を実施する方法である。上述の電池は有利にはリチウムイオン電池である。特に、多孔性電極を製造するこの方法は、陰極を製造する、及び/又は陽極を製造するために適用することができる。電池を製造するこの方法は、上述の多孔性電極に電解質、好ましくは、
o少なくとも1つの非プロトン性溶媒及び少なくとも1つのリチウム塩から構成される電解質、
o少なくとも1つのイオン性液体及び少なくとも1つのリチウム塩から構成される電解質、
o少なくとも1つの非プロトン性溶媒及び少なくとも1つのイオン性液体及び少なくとも1つのリチウム塩の混合物、
o少なくとも1つのリチウム塩を添加することでイオン伝導性としたポリマー、並びに
oポリマー相又はメソポーラス構造のいずれかに液体電解質を添加することでイオン伝導性としたポリマー、からなる群より選択されるリチウムイオン担持相を含浸させるステップを含むことができる。
【0082】
上述したように、本発明における電極により、高エネルギー密度及び高出力密度の両方を有するリチウムイオン電池を作製することができる。そうした電池はまた、極めて信頼性が高い。粒子間の電気的接触を喪失するリスクはなく、これにより、優れたサイクル寿命を与える。さらに、電流が電極において十分に分布し、これは、電気伝導性の優れた均質性を生じさせる活物質における孔のサイズ及び局所の厚さの均質性によってもたらされる。
【0083】
本発明における電池は、特に、約1mAh以下の容量を有するような設計及び形状とすることができる(一般に「マイクロ電池」と呼ぶ)。典型的に、マイクロ電池は、マイクロエレクトロニクス製造方法に適合するように設計される。
【0084】
したがって、本発明の最後の目的は、本発明における電池を製造する方法によって得られるリチウムイオンマイクロ電池である。
【0085】
図1図6は、本発明の種々の態様及び実施形態を、その範囲を限定することなく示す。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1は、凝集体形成前に懸濁液に使用する一次ナノ粒子のディフラクトグラムを示す。
図2図2は、図1のものと同じ試料の一次ナノ粒子における透過型電子顕微鏡観察によって得られた写真を示す。
図3図3は、熱処理前のナノ粒子を模式的に示す。
図4図4は、熱処理後のナノ粒子を模式的に示し、「ネッキング」の現象を示す。
図5図5は、充電及び放電サイクル数に応じた、本発明における電池の相対容量の変化を示す。
図6図6は、同じ電池の充電曲線を示し、曲線Aは、充電状態に相当し(右目盛り)、曲線Bは、吸収した電流に相当する(左目盛り)。
【発明を実施するための形態】
【0087】
(1.定義)
この記載の一部として、粒子のサイズをその最も大きい寸法によって規定する。「ナノ粒子」とは、その寸法の少なくとも1つが100nm未満である、ナノメートルサイズの任意の粒子又は物体を意味する。
【0088】
「イオン性液体」とは、電気を送ることができ、すべての融解塩とは100℃より低い融解温度によって異なる、任意の液体塩を意味する。これらの塩の一部は、室温で液体にとどまり、極めて低い温度でも固体化しない。そうした塩は、「室温のイオン性液体」と呼ぶ。
【0089】
「メソポーラス」材料とは、マイクロ孔のサイズ(2nm未満の幅)とマクロ孔のサイズ(50nmより大きい幅)との中間のサイズを有する、すなわち、2nm~50nmの間に含まれるサイズを有する、「メソ孔」と呼ぶ孔をその構造内に有する任意の固体を意味する。この用語は、当業者の参考となる、IUPAC(国際純粋応用化学連合)によって採用されているものに対応している。したがって、「ナノ孔」という用語は、上述で規定したようなメソ孔がナノ粒子の定義の意味の範囲内におけるナノスケールの寸法を有しているとしても、メソ孔のサイズより小さいサイズを有する孔が当業者に「マイクロ孔」と呼ばれていることが既知なので、本明細書において使用しない。
【0090】
気孔性(及び先ほど上述した用語)の概念は、「Techniques de l’Ingenieur」論文集、解析と特性に関する取り決め、分冊P1050に掲載されているF.Rouquercol等による記事である「Texture des materiaux pulverulents ou poreux」に提示されている。この記事も、多孔性の特徴を記述する技術、特にBET法を記載している。
【0091】
本発明の意味の範囲内で、「メソポーラス電極」又は「メソポーラス層」は、メソ孔を有する電極、層をそれぞれ意味する。以下に説明するように、この電極又は層において、メソ孔は全孔体積に大きく寄与する。このことは、以下の記載に使用する「X体積%より大きいメソ孔気孔率のメソポーラス電極又は層」という用語において解釈される。
【0092】
「集合体」という用語は、IUPACの定義によると、弱く結合した一次粒子の集まりを意味する。この場合、この一次粒子は、透過型電子顕微鏡観察によって測定可能な直径を有するナノ粒子である。集合した一次ナノ粒子の集合体は、当業者に既知の技術によって、超音波の影響下において液相中に一次ナノ粒子を懸濁させるように、通常破壊することができる(すなわち、一次ナノ粒子に戻す)。
【0093】
「凝集体」という用語は、IUPACの定義によると、強く結合した一次粒子又は集合体の集まりを意味する。
【0094】
「マイクロ電池」という用語は、本明細書において1mAhを超えない容量の電池に使用する。典型的に、マイクロ電池は、マイクロエレクトロニクス製造方法に適合するように設計される。
【0095】
(2.ナノ粒子の懸濁液の調製)
本明細書における多孔性電極を調製する方法は、ナノ粒子の懸濁液から開始される。このナノ粒子の懸濁液を乾燥ナノ粉末から調製しないことが好ましい。それらは、液相中で粉末若しくはナノ粉末を粉砕する、及び/又はナノ粒子の凝集を解除するように超音波処理を使用して調製することができる。
【0096】
本発明の他の実施形態において、ナノ粒子を、沈殿によって直接懸濁液中で調製する。沈殿によるナノ粒子の合成により、単峰性のサイズ分布を有する、すなわち、極めて狭く単分散の分布を有する、極めて均質なサイズであり、良好な結晶性及び純度の、一次ナノ粒子を得ることができる。この極めて均質なナノ粒子と狭い分布とを使用して、制御された開放多孔性の多孔構造を堆積後に得ることができる。このナノ粒子を堆積させた後に得られる多孔構造は、閉鎖孔をほとんど有しない、好ましくは閉鎖孔を有しない。
【0097】
本発明のさらにより好ましい実施形態では、ナノ粒子を、水熱又は溶媒熱合成によってその一次サイズにて直接調製する。この技術により、「単分散ナノ粒子」と呼ぶ、極めて狭いサイズ分布を有するナノ粒子を得ることができる。この非集合又は非凝集のナノ粉末/ナノ粒子のサイズを一次サイズと呼ぶ。これは、典型的には2nm~150nmの間に含まれる。これは、有利には10nm~50nmの間、好ましくは10nm~30nmの間に含まれる。これにより、その後の方法ステップにおいて、「ネッキング」という現象のため、電子及びイオン伝導性を有する相互接続したメソポーラスネットワークの形成を促す。
【0098】
有利な実施形態では、ナノ粒子の集合又はさらに凝集を防ぐため、単分散ナノ粒子の懸濁を、リガンド又は有機安定化剤の存在下で行うことができる。また、堆積物又は生テープ、特に割れのない厚い堆積物を作製しやすくするため、バインダーをナノ粒子の懸濁液に添加してもよい。
【0099】
実際に、本発明の状況では、一次粒子の凝集を懸濁液の調製段階で自発的に生じさせるのではなく、非凝集の一次粒子の懸濁液から開始し、その後に凝集が誘導される又は発生することが好ましいことが分かっている。
【0100】
この単分散ナノ粒子の懸濁液は、干渉の可能性がある任意のイオンを取り除くため、精製することができる。精製の程度に応じて、その後特別に処理して、サイズを制御した集合体又は凝集体を形成することができる。より具体的には、集合体又は凝集体の形成は、特に、イオンによって、懸濁液の乾燥抽出物の増加によって、懸濁液の溶媒を変えることによって、不安定化剤を添加することによって生じる懸濁液の不安定化から生じさせることができる。懸濁液は、十分に精製されている場合に安定であり、これを不安定化するため、典型的には塩の形態でイオンを添加し、このイオンは好ましくはリチウムイオンである(好ましくはLiOHの形態で添加する)。
【0101】
懸濁液が十分に精製されていない場合、集合体又は凝集体の形成は、自発的手法又はエージングによって単独で行うことができる。この手法は、より少ない精製ステップを含むため、より簡単であるが、集合体又は凝集体のサイズを制御することがより困難である。本発明における電極の製造の重要な態様の1つは、電極材料の一次粒子のサイズ及びその集合又は凝集の程度の適切な制御に基づく。
【0102】
ナノ粒子の懸濁液の安定化が凝集体の形成後に生じた場合、それらは凝集体の形態にとどまり得る。得られた懸濁液をメソポーラス堆積物の作製に使用することができる。
【0103】
このナノ粒子の集合体又は凝集体の懸濁液が、その後、本発明における多孔性の、好ましくはメソポーラスの電極層を、電気泳動法によって、インクジェットプリント法によって、フレキソプリント法によって、ドクターブレード被覆法によって、ロール被覆法によって、カーテン被覆法によって、押出スロットダイ被覆法によって、又はディップ被覆法によって堆積させるために使用される。
【0104】
出願人の知見によると、80nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)に含まれる平均径のナノ粒子の集合体又は凝集体により、2nm~50nmの間に含まれる平均径のメソ孔を有するメソポーラス層が、この方法のその後のステップ時に得られる。
【0105】
本発明において、多孔性電極層は、活物質Pのナノ粒子集合体又は凝集体を含む、十分に濃縮した懸濁液から、インクジェットプリント法によって、又は被覆法によって、特にディップ被覆法によって、ロール被覆法によって、カーテン被覆法によって、スロットダイ被覆法によって、又はドクターブレード被覆法によって堆積することができる。
【0106】
また、多孔性電極層を電気泳動法によって堆積させることも可能であるが、活物質Pのナノ粒子凝集体を含有する、あまり濃縮されていない懸濁液を有利には使用する。
【0107】
ナノ粒子の集合体又は凝集体を、電気泳動法によって、ディップ被覆法によって、インクジェット法によって、ロール被覆法によって、カーテン被覆法によって、スロットダイ被覆法によって、又はドクターブレード被覆法によって堆積する方法は、簡単で安全であり、実施及び工業化しやすく、最終的に均質な多孔性層を得ることができる方法である。電気泳動法による堆積は、高堆積速度を伴って、広い領域に均一に層を堆積させることを可能とする。被覆技術、特に上述のものにより、電気泳動法による堆積技術と比較して、懸濁液は堆積時に粒子が枯渇しないので、槽の管理を簡単にできる。インクジェットプリント堆積は局所の堆積を可能とする。
【0108】
厚い層からなる多孔性層を、ロール被覆法、カーテン被覆法、スロットダイ被覆法、又はドクターブレード被覆法(すなわちドクターブレードを使用する)によって、1つのステップで作製することができる。
【0109】
水中及び/又はエタノール中及び/又はIPA中並びにそれらの混合物中のコロイド懸濁液は、NMP中で得られるものより流動性を有するということに留意されたい。したがって、ナノ粒子凝集体の懸濁液における乾燥抽出物を増加させることが可能である。これらの凝集体は、異なるサイズの2つの集団であっても、好ましくは200nm以下のサイズを有し、かつ多分散のサイズを有する。
【0110】
先行技術と比較して、電極を作製するためのインク及びペーストの配合処方は単純になる。乾燥抽出物を増加させたとき、懸濁液中におけるカーボンブラック凝集のリスクの増加はない。
【0111】
(3.層の堆積及びその固化)
一般に、ナノ粒子の懸濁液の層は、任意の適切な技術によって、特に、電気泳動法、プリント法、好ましくはインクジェットプリント法又はフレキソプリント法、被覆法、好ましくはドクターブレード被覆法、ロール被覆法、カーテン被覆法、ディップ被覆法、又はスロットダイ被覆法、からなる群より選択される方法によって、基板に堆積される。上述の懸濁液は、典型的にインクの形態であり、すなわち十分に流動性を有する液体であるが、ペースト状の粘稠性も有し得る。堆積技術、及び堆積方法の適用は、懸濁液の粘性に適合する必要があり、逆もまた同様である。
【0112】
その後、堆積した層を乾燥させる。その後、所望のメソポーラスセラミック構造を得るため、上述の層を固化する。この固化について以下に記載する。これは、熱処理によって、機械処理とその後の熱処理とによって、任意で熱機械処理、典型的には熱圧縮によって行うことができる。この熱機械又は熱処理時に、電極層は、任意の有機成分及び有機残留物(例えばナノ粒子の懸濁液の液相及び任意の界面活性剤)を含まなくなり、すなわち、無機層(セラミック)となる。プレートの固化は、好ましくは、その中間基板から分離した後に行い、これは、後者がこの処理時に劣化するリスクがあるためである。
【0113】
層の堆積、その乾燥、及びその固化は、いくつかの問題を生じる可能性があり、それをここで検討する。この問題は、層の固化時に、内部ストレスを生じさせる収縮が起こるという事実に部分的に関連する。
【0114】
(3.1.集電体として機能可能な基板)
第1の実施形態において、電極の層をそれぞれ、電気集電体として機能可能な基板上に堆積させる。ナノ粒子の懸濁液又はナノ粒子の凝集体を含む層を、一方の面又は両方の面上に、上述の堆積技術によって堆積させることができる。本発明における多孔性電極を使用する電池内の集電体として機能する基板は、金属、例えば金属ストリップ(すなわち積層金属シート)とすることができる。上述の基板は、好ましくは、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、又は2つ以上のこれらの材料の合金のストリップから選択する。銅又はニッケルなどのさほど貴でない基板は、導電性かつ酸化に対する保護性を有する被覆を施すことができる。
【0115】
上述の金属シートは、特に、金、白金、パラジウム、チタン、若しくは少なくとも1つ以上のこれらの金属を主に含有する合金から選択される貴金属層、又はITOタイプの導電性材料の層(拡散バリアとして機能するという利点を有する)で被覆することができる。
【0116】
一般に、電気集電体として機能可能なこの基板は、堆積した層の熱処理の条件、及び電池セル内の動作条件に耐える必要がある。ゆえに、銅及びニッケルは、陰極材料との接触に適しており、陽極を酸化させる可能性がある。
【0117】
層の堆積に関して、電気泳動法(特に水中の)を使用することができる。この特定の場合、上述の基板は、ナノ粒子の懸濁液中でその酸化又はその溶解のいずれかをもたらす電気化学的分極を受ける。この場合、陽極酸化及び/又は腐食現象を有しない基板のみを使用することができる。これは、特に、ステンレス鋼及び貴金属の場合に当てはまる。
【0118】
ナノ粒子及び/又は凝集体の堆積を、以下に記載する他の技術のうちの1つ(例えば被覆、プリント)によって行うとき、基板の選択を広げることが可能である。また、そのとき、この選択は、関連しかつ電解質と接触する電極の動作電位における金属の安定性に応じてむしろなされ得る。しかしながら、ナノ粒子の作製に使用する合成経路に応じて、ナノ粉末の固化及び想定される再結晶化のため、ある程度強い熱処理を行う必要がある。この態様は、以下の第5項でさらに記載する。
【0119】
すべての場合、このメソポーラス電極を得るため、固化用熱処理が必要である。電気集電体として機能可能な基板が、酸化せずこの熱処理に耐えられることが重要である。いくつかの方策を用いることができる。
【0120】
インク技術によって基板に堆積したナノ粉末が、非晶質である、及び/又は多くの点欠陥を有するとき、固化に加えて、適切な化学量論性を有する適切な結晶相に材料を再結晶化させ得る熱処理を行う必要がある。この目的で、500℃~700℃の温度で熱処理を行うことが一般に必要である。また、上述の基板は、このタイプの熱処理に耐えなければならないこととなり、この高温処理に耐える材料を使用する必要がある。ステンレス鋼、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、クロム、及びそれらの合金のストリップを、例えば使用することができる。
【0121】
ナノ粉末及び/又は凝集体を、適切な相及び結晶構造で、水熱又は溶媒熱合成によって結晶化して取得するとき、ニッケル、銅、アルミニウムなどのさほど貴でない基板を使用することができる、制御雰囲気下における固化用熱処理を使用することが可能であり、また、水熱合成によって得られる一次粒子が極めて小さいサイズであるため、固化用熱処理の温度及び/又は持続時間を350℃~500℃に近い値まで下げることも可能であり、このことにより、基板の選択を広げることもできる。しかしながら、このさほど貴でない基板は、使用するナノ粒子の懸濁液中に場合によって含有される有機添加剤、例えばリガンド、安定化剤、バインダー、又は残留有機溶媒を取り除くこと(脱バインダー)ができる熱処理に耐える必要があり、この熱処理は、有利には酸化雰囲気下において行われる。
【0122】
疑似水熱合成により、後に再結晶化の必要がある非晶質ナノ粒子を得ることも可能である。
【0123】
電気集電体として機能可能なこの基板を、任意で、導電性酸化物の薄膜で覆うことができる。この酸化物は、電極と同じ組成を有してもよい。この薄膜はゾルゲルによって作製することができる。この酸化物系境界部により、基板の腐食を抑えることができ、電極に、基板との良好な取付ベースを確保する。
【0124】
電池セル内の動作条件に関して、本発明における多孔性電極を使用する電池において、多孔性電極に含浸される液体電解質は集電体として機能可能な基板と直接接触するということにまず留意する必要がある。しかしながら、この電解質が、集電体として機能可能な基板、すなわち金属であるとともに、陰極に対して極めて陽極性を有し陽極に対して極めて陰極性を有する電位で分極した基板と接触するとき、この電解質は集電体の溶解を引き起こし得る。この寄生反応が電池寿命を劣化させ、その自然放電を加速させ得る。これを防ぐため、アルミニウム集電体などの集電体として機能可能な基板を、すべてのリチウムイオン電池の陰極において使用する。アルミニウムは、この極めて陽極性の電位で陽極酸化するという特性を有し、こうしてその表面に形成された酸化物層がこれを溶解から守る。しかしながら、アルミニウムは、融解温度が600℃近くであり、電極の固化処理によって集電体を融解させる可能性がある場合、本発明における電池の製造に使用できない。
【0125】
したがって、電池の寿命を劣化させ、その自然放電を加速させ得る寄生反応を防ぐため、チタンストリップを、有利には、陰極の集電体として使用する。電池を動作させるとき、チタンストリップは、アルミニウムのように、陽極酸化され得、その酸化物層が、液体電解質に接触したチタンの溶解といういかなる寄生反応も防ぎ得る。さらに、チタンはアルミニウムよりもはるかに高い融解点を有するので、本発明における全固体電極を、このタイプのストリップに直接作製することができる。
【0126】
また、これらの重い材料、特にチタン、銅、又はニッケルストリップの使用により、電池の電極の切り取り縁部を腐食現象から守ることができる。
【0127】
また、ステンレス鋼は、特にチタン又はアルミニウムを合金元素として含有するとき、又は保護性酸化物の薄層を有するとき、集電体として使用することができる。
【0128】
保護被覆で覆ったさほど貴でない金属のストリップなど、集電体として機能する他の基板を使用することができ、電解液の存在がその接触によって引き起こす、これらのストリップの起こり得る溶解を防ぐことができる。
【0129】
これらのさほど貴でない金属ストリップは、銅、ニッケル、又は、ステンレス鋼ストリップ、Fe-Ni合金、Be-Ni-Cr合金、Ni-Cr合金、若しくはNi-Ti合金ストリップなどの金属合金のストリップとすることができる。
【0130】
集電体として機能する基板の保護に使用することができる被覆は、様々な特性のものであり得る。これは、
・電極と同じ材料でのゾルゲル法によって得られる薄層、この膜に多孔性が存在しないことにより、電解質と金属集電体との接触を防ぐことができる、
・電極と同じ材料での真空堆積によって、特に物理気相堆積(PVDと略記)によって又は化学気相堆積(CVDと略記)によって得られる薄層、
・緻密で欠陥のない金属薄層、例えば金、チタン、白金、パラジウム、タングステン、又はモリブデンの金属薄層、これらの金属は、良好な導電特性を有し、その後の電極製造方法の際に熱処理に耐えることができるので、集電体の保護に使用することができ、この層は、特に、電気化学法、PVD、CVD、蒸着、ALDによって作製することができる、
・熱処理後、導電性にするため炭素ドープした無機相を得ることができる、ALD、PVD、CVD、又はゾルゲル溶液のインク技術によって堆積した、ダイアモンド、黒鉛炭素などの炭素薄層、
・酸化物が低電位において減少するため、陰極基板のみに堆積される、ITO(インジウム-スズ酸化物)層などの導電性又は半導体酸化物の層、
・窒化物が低電位においてリチウムを吸蔵するため、陰極基板のみに堆積される、TiN層などの導電性窒化物の層、とすることができる。
【0131】
集電体として機能する基板の保護に使用することができる被覆は、後にこの被覆上に堆積する電極の動作を、抵抗性にしすぎることで妨げないように、電子伝導性とする必要がある。
【0132】
一般に、電池セルの動作にあまりに大きく影響しないように、電極の動作電位において、集電体として機能することができる基板において測定され、μA/cmで表される最大溶解電流が、μAh/cmで表される電極の表面容量よりも1000倍低い必要がある。電極の厚さを増加させようとするとき、固化によって生じる収縮により、層の割れ又は基板(既定寸法を有する)とセラミック電極との間の境界部におけるせん断ストレスのいずれかをもたらし得ることが観察される。このせん断ストレスが閾値を超えるとき、層はその基板から剥離する。
【0133】
この現象を防ぐため、連続する堆積-焼結作業によって電極の厚さを増加させることが好ましい。層の堆積の第1の実施形態におけるこの第1の変形により、良好な結果が得られるが、あまり生産性が高くはない。あるいは、第2の変形では、より大きい厚さの層を、穴があいた基板の両面上に堆積させる。この穴は、前後の2つの層が穴において接触するように、十分な直径のものである必要がある。したがって、固化時に、基板の穴を通して接触する電極材料のナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を共に会合させて、付着点を形成する(2面の堆積物間の会合点)。これにより、固化ステップ時に、基板に対する層の付着性がなくならないようにする。
【0134】
この現象を防ぐため、すなわち、割れの発生を抑える又はなくしながら、堆積厚さを増加させるため、バインダー、分散剤を添加することが可能である。これらの添加剤及び有機溶媒は、焼結処理時又は焼結処理前に行う熱処理時に、好ましくは酸化雰囲気下における熱処理によって、例えば脱バインダー処理によって除去することができる。
【0135】
(3.2.中間基板)
第2の実施形態において、電極の層を、電気集電体として機能可能な基板上に堆積させるのでなく、一時的な中間基板上に堆積させる。特に、ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体がより濃縮された(すなわち、さほど流動性を有さない、好ましくはペースト状の)懸濁液から、十分に厚い層(「グリーンシート」と呼ぶ)を堆積させることが可能である。この厚い層を、例えば被覆法によって、好ましくはドクターブレード被覆法(「テープキャスティング」という用語で知られる技術)又はスロットダイ被覆法によって堆積させる。上述の中間基板は、ポリマーシート、例えば、PETと略記するポリ(エチレンテレフタレート)とすることができる。乾燥時、特に、ステップ(b)において得られた層をその中間基板から分離した後に乾燥するとき、この層は割れることがない。熱処理による固化のため(及び好ましくは既にその前の乾燥のため)、これを、その基板から剥離することができる。したがって、「生」電極と呼ぶ電極を切り取った後、プレートを得て、これのか焼熱処理及び部分的な焼結の後、メソポーラスの自立したセラミックプレートを取得し得る。
【0136】
その後、3つの層のスタック、すなわち、金属シート又は黒鉛シートなどの電気集電体として機能可能な電気伝導性シートによって隔てた同じ極性の2つの電極のプレートを作製する。その後、このスタックを、好ましくは同時に行われる加圧及び熱処理を含む熱機械処理によって組み立てる。あるいは、セラミックプレートと金属シートとを接着しやすくするため、境界部を電子伝導性の接着を可能にする層で被覆してもよい。この層は、場合によって、メソポーラス電極と金属シートとをセラミック溶着させ得る電子伝導性材料の粒子を添加した、ゾルゲル層(好ましくは、熱処理後に電極の化学組成を得ることができるタイプのもの)とすることができる。また、この層は、非焼結電極ナノ粒子の薄層、又は(例えば黒鉛粒子を添加した)導電性接着剤の薄層、又は低融解点を有する金属の金属層からなるものとすることができる。
【0137】
上述の電気伝導性シートは、金属であるとき、好ましくは積層シートである、すなわち積層により得られる。積層の後、任意で最終の焼きなましを行うことができ、これは、冶金の用語に応じて(全体又は部分的な)軟化又は再結晶焼きなましとすることができる。また、電気化学的に堆積させたシート、例えば電着した銅シート又は電着したニッケルシートを使用することも可能である。
【0138】
いずれにしても、有機バインダーなしで、メソポーラスであり、電子集電体として機能する金属基板の両側に配置されるセラミック電極が得られる。
【0139】
(4.活物質Pの層の堆積)
一般に、既に上述したように、本発明における電極を、ナノ粒子の懸濁液から、既知の被覆技術を使用して製造することができる。使用できるこの技術は、テープキャスティング及び被覆技術、例えばロール被覆技術、ドクターブレード技術、スロットダイ被覆技術、カーテン被覆技術である。また、ディップ被覆技術も使用することができる。
【0140】
これらすべての技術において、懸濁液の乾燥抽出物が20%を超える、好ましくは40%を超えることが有利である。これにより、乾燥時の割れのリスクを低下させる。
【0141】
また、プリント技術、例えばフレキソ技術、インクジェットプリント技術も使用することができる。
【0142】
また、電気泳動法も使用することができる。
【0143】
第1の実施形態では、本発明における方法は、有利には、多孔性、好ましくはメソポーラスの電極層を堆積させるための技術としてナノ粒子の懸濁液の電気泳動法を使用する。ナノ粒子の懸濁液から電極層を堆積させる方法は、それ自体既知である(例えば欧州特許第2774194号明細書を参照)。上述の基板は金属、例えば金属シートとすることができる。本発明における多孔性電極を使用する電池内の集電体として機能する基板は、好ましくは、チタン、銅、ステンレス鋼、又はモリブデンのストリップから選択される。
【0144】
基板として、例えば、厚さが5μmのステンレス鋼のシートを使用することができる。上述の金属シートは、特に、金、白金、パラジウム、チタン、若しくは少なくとも1つ以上のこれらの金属を主として含有する合金から選択される、貴金属の層、又はITOタイプの導電性材料の層(拡散バリアとしても機能するという利点を有する)で被覆することができる。
【0145】
特定の実施形態では、電極材料の層、好ましくは薄層を金属層に堆積させる。この堆積は、極めて薄くする必要がある(典型的には数十ナノメートル、より一般には10nm~100nmの間に含まれる)。これは、ゾルゲル法によって行うことができる。例えば、LiMnを多孔性LiMn陰極に使用することができる。
【0146】
電気泳動を行うため、カウンター電極を懸濁液中に配置して、導電性基板と上述のカウンター電極との間に電圧を印加する。
【0147】
有利な実施形態では、ナノ粒子の集合体又は凝集体の電気泳動法による堆積は、パルスモードの定電流電着法によって行う。すなわち、高周波電流パルスを印加し、これにより、電極の表面における泡の形成及び堆積時の懸濁液中の電界の変動を防ぐ。したがって、電気泳動法によって、好ましくはパルスモードの定電流電着法によってこのように堆積させた電極層の厚さは、有利には、10μm未満、好ましくは8μm未満であり、さらにより好ましくは1μm~6μmの間である。
【0148】
電気泳動法によって極めて厚い層を堆積させるため、カーボンブラックナノ粒子を、固化前に堆積物の電子伝導性を高めるように、懸濁液に添加することができる。このカーボンブラックナノ粒子は、固化用熱処理時に酸化によって取り除くことができる。
【0149】
他の実施形態では、ナノ粒子の集合体又は凝集体を、使用するナノ粒子の化学特性に関わらず、ディップ被覆法によって堆積させることができる。この堆積法は、使用するナノ粒子が電荷をほとんど有しない又は電荷を有しないとき、好ましい。所望の厚さの層を得るため、ナノ粒子の集合体又は凝集体をディップ被覆法によって堆積させるステップ、得られた層をその後に乾燥させるステップを、必要に応じて繰り返す。割れのない層の厚みを増加させるため、コロイド懸濁液又は堆積させるペースト中において、少なくとも1つの有機添加剤、例えばリガンド、安定化剤、増粘剤、バインダー、又は残留有機溶媒を使用することが有利である。この連続するディップ被覆/乾燥のステップは時間がかかるものであるが、ディップ被覆堆積法は、簡単、安全で、実施及び工業化しやすく、均質かつ緻密な最終層を得ることができる方法である。
【0150】
(5.堆積した層の固化処理)
堆積した層は乾燥させる必要がある。乾燥は割れの形成を引き起こすものであってはならない。この理由のため、制御した湿度及び温度条件下でこれを行うこと、又は、多孔性層を作製するため、単分散一次ナノ粒子の集合体若しくは凝集体に加えて、本発明における少なくとも1つの電極活物質P、有機添加剤、例えばリガンド、安定化剤、増粘剤、バインダー、若しくは残留有機溶媒を含むコロイド懸濁液及び/若しくはペーストを使用することが好ましい。
【0151】
乾燥した層を、加圧及び/又は加熱ステップ(熱処理)によって固化することができる。本発明の極めて有利な実施形態では、この処理により、集合体又は凝集体中、及び隣接する集合体又は凝集体同士の間で、一次ナノ粒子が部分的に合体する。この現象は「ネッキング」又は「ネック形成」と呼ばれる。これは、分離しているが(くびれた)ネック部によって接続する、接触した2つの粒子の部分的な合体によって特徴づけられる。これを、図3及び図4に模式的に示す。リチウムイオン及び電子は、これらのネック内で移動可能であり、粒界に行き当たることなく粒子から粒子へと拡散することができる。ナノ粒子(図3)は、一方の粒子から他方の粒子への電子の伝導を確実にするように、共に会合している(図4)。したがって、イオン移動度及び電子伝導性が大きい3次元ネットワークを形成する連続的なメソポーラス膜を、一次ナノ粒子から形成する。このネットワークは、相互接続した孔、好ましくはメソ孔を含む。
【0152】
「ネッキング」を得るために必要な温度は材料によって決まる。ネッキングをもたらすこの現象の拡散特性を考慮して、処理の持続時間を温度によって決める。この方法は、焼結と呼ぶことができる。その持続時間及び温度に応じて、多かれ少なかれ明白な合体(ネッキング)が得られ、気孔率に影響する。したがって、十分に均質なチャネルのサイズを維持しながら、30%(又はさらに25%)の気孔率に低下させることが可能である。
【0153】
また、熱処理は、使用するナノ粒子の懸濁液中に場合によって含有される有機添加剤、例えばリガンド、安定化剤、バインダー、又は残留有機溶媒を除去するため、使用することができる。他の変形において、使用するナノ粒子の懸濁液中に場合によって含有されるこれらの有機添加剤を取り除くため、酸化雰囲気下における、さらなる熱処理を行うことができる。このさらなる熱処理は、有利には、中間基板を使用するとき、その中間基板から分離した多孔性層に行うことができる。このさらなる熱処理は、有利には、多孔性層、好ましくはメソポーラス層を得ることができるステップ(c)の固化処理の前に行う。
【0154】
(6.電子伝導性材料の被覆の堆積)
本発明の重要な特徴において、電子伝導性材料の被覆を、上述の多孔性層の孔及び該孔内に堆積させる。
【0155】
実際に、上述で説明したように、電極材料(活物質)の凝集ナノ粒子を堆積させるステップに必然的に関与する本発明における方法は、ナノ粒子を、互いに自然に「会合」させて、焼きなましなどの固化後に、有機バインダーなしで、多孔性かつ剛性の3次元構造を生じさせる。この多孔性層、好ましくはメソポーラス層は、該層の開放多孔構造の深くまで入る、気体又は液体による表面処理の適用に十分に適合する。
【0156】
極めて有利には、この堆積は、それを適用する基板の原子トポグラフィーを忠実に再現し、層の開放多孔ネットワークの深くまで入る堆積である、封止被覆を可能にする技術(「コンフォーマル堆積」とも呼ぶ)によって行う。上述の電子伝導性材料は炭素とすることができる。
【0157】
ALD(原子層堆積)又はCSD(化学溶液堆積)の技術が、それ自体既知であり、適切であり得る。これらは、製造後、セパレータ粒子の堆積前、及びセルの組み立て前に、多孔性層に適用することができる。ALDによる堆積技術は、周期的な方法によって層ごとに行い、基板のトポグラフィーを忠実に再現する封止被覆を作製することができる。該被覆は電極の表面全体に沿う。この封止被覆は、典型的には、1nm~5nmの間に含まれる厚さを有する。
【0158】
ALDによる堆積は、典型的には100℃~300℃の間に含まれる温度で行う。層が有機物質を含まないことが重要である。これは、いずれの有機バインダーも含んではならず、懸濁液の安定化に使用するいずれの安定化リガンドの残留物も、懸濁液の精製によって、及び/又は乾燥後の層の熱処理時に取り除かれている必要がある。実際に、ALDによる堆積の温度では、有機バインダーを形成する有機材料(例えば、インクのテープキャスティングによって作製される電極に含有されるポリマー)が分解するリスクがあり、ALD反応器を汚染し得る。さらに、電極の活物質粒子と接触する残留ポリマーの存在により、ALD被覆がすべての粒子表面を封止できなくなり得、このことはその有効性を損なう。
【0159】
また、CSDによる堆積技術により、基板のトポグラフィーを忠実に再現する、電子伝導性材料の前駆体による封止被覆を作製することができる。これは電極の表面全体に沿う。この封止被覆は、典型的には5nm未満、好ましくは1nm~5nmの間に含まれる厚さを有する。これは、その後、電子伝導性材料に変換する必要がある。炭素前駆体の場合、これは、好ましくは不活性ガス(窒素など)中での、熱分解によって行い得る。
【0160】
電子伝導性材料のナノ層を堆積するというこの変形では、導電層が電極層の開放多孔を遮断しないように、電極材料の一次粒子の直径D50が少なくとも10nmであることが好ましい。
【0161】
(7.電解質)
電解質は本発明の一部ではないが、電池セルの形成に必要であるので、本明細書において記載することは有用である。本発明における電極は、有機化合物を含有しない。この有機化合物が存在しないことは、メソポーラス構造と併せて、リチウムイオンを伝導する電解質によるウェッティングを促進する。また、この電解質は、非プロトン性溶媒及びリチウム塩から構成される電解質、イオン性液体又はポリ(イオン性液体)及びリチウム塩から構成される電解質、非プロトン性溶媒及びイオン性液体又はポリ(イオン性液体)並びにリチウム塩の混合物、リチウム塩を含むイオン伝導性としたポリマー、イオン伝導性ポリマーからなる群より、区別せずに選択することができる。
【0162】
上述のイオン性液体は、室温で溶融する塩(この生成物は、RTIL、すなわち室温イオン性液体という名称として既知である)、又は室温で固体のイオン性液体とすることができる。この室温で固体のイオン性液体は、電極に含浸させるため液体化するように加熱する必要がある。これは、電極において固体化する。上述のイオン伝導性ポリマーは、リチウム塩と混合するため融解させることができ、この溶融相を、その後、電極のメソ孔に含浸させることができる。
【0163】
同様に、上述のポリマーは、室温で液体、又は、メソポーラス電極に含浸させるため液体となるように加熱される固体とすることができる。
【実施例
【0164】
(8.有利な実施形態の実施例)
一般に、リチウムイオン電池を高温で動作させる必要があるとき、有利には、陰極の物質Pとして、LiFePO又はLiCoPOなどのマンガンを含有しないものから、上述で挙げた材料の1つを使用する。この場合の陽極は、有利には、チタネート、チタン及びニオブの混合酸化物、又はチタン及びニオブの混合酸化物の誘導体であり、セルに、リチウム塩を含むイオン性液体を含浸させる。上述のイオン性液体が硫黄原子を含む場合、基板が貴金属であることが好ましい。
【0165】
当業者が本発明における方法を行うことができるように、本発明における電極における一部の実施形態及び実施例を本明細書に記載する。
【0166】
第1の有利な実施形態では、メソポーラス陽極を、LiTi12又はLiTi5-x12(式中M=V、Zr、Hf、Nb、Ta)である物質Pの懸濁液で、リチウムイオン電池のために本発明に従って製造する。図1は、懸濁液に使用するLiTi12ナノ粉末の典型的なX線ディフラクトグラムを示し、図2は、この一次ナノ粒子における透過型電子顕微鏡観察によって得られた写真を示す。
【0167】
この物質を金属基板上に堆積させ、これを、熱処理(焼結)し、数ナノメートルの厚さの電子伝導性材料の層で覆う。この層を、本明細書において「ナノ被覆」と呼ぶ。このナノ被覆は好ましくは炭素である。この炭素ナノ被覆は、炭素高含有液相に含浸させてから、窒素中で熱分解させることによって、又はALD堆積させることによって作製することができる。この陽極は、1.55Vの電位でリチウムを吸蔵し、極めて出力が高く、超高速充電を可能とする。
【0168】
第2の有利な実施形態では、本発明におけるメソポーラス陽極を、TiNb、又はLiTi1-x Nb2-y (式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素である)である物質Pで、リチウムイオン電池のために製造する。M及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、式中、0≦w≦5、0≦x≦1、0≦y≦2である。この層を金属基板上に堆積させ、焼結し、先の実施形態に関して記載したように堆積させた、有利には炭素である電子伝導性ナノ被覆で覆う。この陽極は、極めて出力が高く、急速充電を可能とする。
【0169】
第3の有利な実施形態では、メソポーラス陽極を、Nb5±δ若しくはNb181693±δ若しくはNb1655±δ(式中、0≦x<1、0≦δ≦2)、又はLaTi1-2xNb2+x(式中、0<x<0.5)、又はTi1-xGeNb2-y 7±z若しくはLiTi1-xGeNb2-y 7±z若しくはTi1-xCeNb2-y 7±z若しくはLiTi1-xCeNb2-y 7±z(式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、式中、0≦w≦5、0≦x≦1、0≦y≦2、z≦0.3)、又は、Ti1-xGeNb2-y 7-z 若しくはLiTi1-xGeNb2-y 7-z 若しくはTi1-xCeNb2-y 7-z 若しくはLiTi1-xCeNb2-y 7-z (式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、M及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得、式中、0≦w≦5、0≦x≦1、0≦y≦2、z≦0.3)である物質Pで、リチウムイオン電池のために本発明に従って製造する。この層を金属基板上に堆積させ、焼結し、先の実施形態に関して記載したように堆積させた、有利には炭素である電子伝導性ナノ被覆で覆う。この陽極は、極めて出力が高く、急速充電を可能とする。
【0170】
第4の実施形態では、メソポーラス陽極を、TiNb7-z 、又はLiTi1-x Nb2-y 7-z (式中、M及びMはそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、及びSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素である)である物質Pで、リチウムイオン電池のために本発明に従って製造する。M及びMは、同一であり得る、又は互いに異なり得る。0≦w≦5、0≦x≦1、及び0≦y≦2の関係を適用する。Mは、少なくとも1つのハロゲンであり、z≦0.3である。第2の実施形態に関して記載したように、この層を金属基板上に堆積させ、焼結し、上述のように堆積させた、炭素であり得るナノ被覆で覆う。この陽極は、極めて出力が高く、急速充電することができる。
【0171】
第5の実施形態では、メソポーラス陽極を、TiO又はLiSiTONである物質Pで、リチウムイオン電池のために本発明に従って製造する。該製造は、他の実施形態に関して記載したように行う。この電極は、極めて出力が高く、急速充電することができる。
【0172】
第6の例示の実施形態では、メソポーラス陰極を、LiMnである物質Pで、リチウムイオン電池のために本発明に従って製造する。このナノ粒子は、「One pot hydrothermal synthesis and electrochemical characterisation of Li1+xMn2-y spinel structured compounds」、Energy Environ. Sci.誌、3、p.1339-1346という記事に記載されている方法を使用して、水熱合成によって得ることができる。この合成では、得られる凝集体のサイズ及び形状を調製するため、少量のPVPが添加された。後者は、形状が球状であり、直径が約150nmであり、サイズが10nm~20nmの間に含まれる一次粒子からなる。遠心分離及び洗浄後、約10質量%~15質量%のPVP 360kを、水性懸濁液に添加し、10%の乾燥抽出物を得るため、水を蒸発させた。こうして得られたインクを、ステンレス鋼のシートに付加し、乾燥させて、約10ミクロンの層を得た。このシーケンスを数回繰り返して、堆積物の厚さを増加させることができる。こうして得られた堆積物を、空気中において600℃で1時間焼きなまし、ナノ粒子凝集体を互いに対して固化した。
【0173】
その後、このメソポーラス層に、スクロース溶液を含浸させてから、窒素中において400℃で焼きなまし、電極のメソポーラス面全体上に電子伝導性炭素層を得た。この炭素層の厚さは数ナノメートルであった。その後に含浸させる電解質層、この場合LiPOを、このメソポーラス陰極上に堆積させた。第6の例示の実施形態では、電池を本発明に従って製造し、該電池は、
-LiTi12及び/又はTiOを含むメソポーラス陽極(50%気孔率)、
-LiMnを含むメソポーラス陰極(50%気孔率)、
-LiPOを含むメソポーラス電解質セパレータ(50%気孔率)、から形成される。
【0174】
電極の基板は316Lステンレス鋼から作製した。イオン性含浸液体は、0.7Mにおける1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Pyr14TFSIと略記)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiTFSIと略記)との混合物であった。
【0175】
図5は、充電及び放電サイクル数に応じた、本発明における電池の相対容量の変化を示す。各放電は、電池容量の100%の深度まで行った。電池の相対容量の喪失はないことが観察される。本発明における電池は、充電-放電サイクルにおいて優れた耐久性を有する。
【0176】
図6は、この電池の充電曲線を示す。電池容量の80%をわずか5分未満で充電できることが見てとれる。この急速な充電性能は、使用において多大な利益をもたらす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】