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特表2023-523378耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置
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  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図1
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図2
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図3
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  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図4b
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図4c
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図5a
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図5b
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図6
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図7
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図8
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図9a
  • 特表-耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置 図9b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】耐荷重能力を高める方法及び表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/64 20060101AFI20230529BHJP
   B21B 31/07 20060101ALI20230529BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20230529BHJP
   B21H 1/12 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
F16C33/64
B21B31/07
F16C19/38
B21H1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532802
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2020083446
(87)【国際公開番号】W WO2021110519
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】102019218794.3
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323002211
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・ローテ・エルデ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】ThyssenKrupp Allee 1 45143 Essen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロールマン,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ハンドレック,トマス
(72)【発明者】
【氏名】リューネブルク,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】トフケ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ライヴェン,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA13
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA69
3J701DA01
3J701DA09
3J701DA11
3J701FA15
3J701FA31
3J701GA24
3J701XB03
3J701XB34
3J701XB37
3J701XE01
3J701XE03
3J701XE22
(57)【要約】
本発明は、転がり軸受リング要素の表面硬化された転がり軸受軌道の耐荷重能力を高めるための方法であって、-未硬化のコア領域(K)と、少なくとも特定の部分において表面硬化深さ(Rht)まで硬化された表面層(Ra)とを有する転がり軸受リング要素であって、硬化された表面層(Ra)の領域内に転がり軸受軌道が形成されている、転がり軸受リング要素を提供すること、-ローラを用いて転がり軸受軌道を硬質圧延すること、を含み、該ローラの直径が表面硬化深さ(Rht)の8~25倍の範囲で選択され、-硬質圧延プロセス中にローラと転がり軸受軌道との間の転がり接触部において優勢な面圧のレベルが2000MPa~3300MPaの範囲に設定され、-硬質圧延された後、転がり軸受軌道が機械加工される、方法に関し、また本発明は、転がり軸受リング要素の表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受リング要素(1)の表面硬化された転がり軸受軌道(2)の荷重容量を増加させるための方法であって、
未硬化のコア領域(K)と、少なくとも特定の部分において表面硬化深さ(Rht)まで硬化された外層(Ra)と、を有する転がり軸受リング要素(1)であって、前記硬化された外層(Ra)の領域に転がり軸受軌道(2)が形成されている、転がり軸受リング要素(1)、を提供することと、
少なくとも1つのロール(3)で前記転がり軸受軌道(2)を硬質圧延することと、を含み、
前記ロール(3)の直径(D)が前記表面硬化深さ(Rht)の8~25倍の範囲において選択され、
前記硬質圧延の間に、前記ロール(3)と前記転がり軸受軌道(2)との間の転がり接触部(4)において優勢な面圧が2000MPa~3300MPaの範囲において設定され、
前記転がり軸受軌道(2)が前記硬質圧延の後に機械加工されること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記転がり接触部(4)の面圧が、前記未硬化のコア領域(K)に生じる荷重応力(LS)が前記未硬化のコア領域(K)の降伏強度(S)の最大0.9~2倍、好ましくは1.2~1.5倍であるように選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転がり接触部(4)における面圧が、前記硬質圧延が最大で前記コア領域(K)に5%までの塑性歪を生じさせるように選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記転がり接触部(4)が、前記転がり軸受軌道(2)の幅(B)の最大2/3の幅(b)を有し、前記転がり軸受軌道(2)が、複数の重複する経路において硬質圧延されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ロール(3)が、少なくとも前記転がり接触部(4)の周辺領域(6)において長手方向断面において凸状に湾曲した側面(5)を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記転がり軸受リング要素(1)が、少なくとも前記転がり軸受軌道(2)の領域において許容差を伴って製造されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ローラ軸受(10)の転がり軸受リング(20、30)が、転がり軸受リング要素(1)として提供され、
前記ローラ軸受(10)が、前記転がり軸受リング(20、30)の間に少なくとも1つのローラ列(40)を導入して硬質圧延のために組み立てられ、前記ローラ列(40)が、
前記ローラ列が前記ロール(3)として半径方向のオーバーサイズ(51)を有する少なくとも1つのオーバーサイズローラ(50)を含み、
前記面圧が、軸方向又は半径方向に作用する荷重によって前記ローラ軸受(10)に導入されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのローラ列(40)が、前記硬質圧延の間に前記転がり軸受リング(20、30)の寸法精度を改善するために複数のローラで完全に占められていることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ローラ軸受(10)が少なくとも2つのローラ列(40)を含み、
前記転がり軸受リング(20、30)のうちの少なくとも1つは、前記転がり軸受リング(20、30)の間に前記ローラ列(40)を確実にロックするように囲むために互いに軸方向に支え合うことができる少なくとも2つの部分リング(21、22)を有し、
前記面圧が、前記部分リング(21、22)を互いに軸方向に支え合うことによって加えられる軸方向に作用する荷重によって導入されることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも3つのオーバーサイズローラ(50)が、転がり軸受軌道(2)の円周にわたって分布するように、ロール(3)として前記ローラ軸受(10)に挿入されることを特徴とする、請求項7から請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記オーバーサイズローラ(50)が、前記転がり軸受軌道の幅(B)の異なった重複する部分領域(52、53、54)に前記半径方向のオーバーサイズ(51)を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
テーパがふされた又はシリンダ状のローラの少なくとも1つの列を具備する、風力タービン用のロータ軸受であって、
該ロータ軸受の転がり軸受軌道が、請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法を実行することによって製造される、ことを特徴とする、風力タービン用のロータ軸受。
【請求項13】
転がり軸受リング要素(1)の表面硬化された転がり軸受軌道(2)を硬質圧延するための圧延装置であって、
前記転がり軸受リング要素(1)を支持するための少なくとも1つの支持ロール(111、112)を有する支持装置(110)と、
該支持装置(110)に連接された少なくとも2つのテンションロッド(121、122)によって保持されるヨーク(120)であって、前記テンションロッド(121、122)及び前記支持装置(110)と共に、前記硬質圧延の間に前記転がり軸受リング要素(1)を案内することができる閉鎖フレーム(130)を形成する、ヨーク(120)と、
前記ヨーク(120)上において油圧式により支持され、位置決め装置(124)によって前記ヨーク(120)の長手方向に変位可能であるように取り付けられ、前記転がり軸受軌道(2)を加工するために設けられた少なくとも1つのロール(3)が取り付けられる、ロールスタンド(130)と、を具備する、ことを特徴とする圧延装置。
【請求項14】
前記閉鎖フレーム(130)が、前記転がり軸受リング要素(1)を受け入れて取り外すために開放可能であるように構成されることを特徴とする、請求項13に記載の圧延装置。
【請求項15】
前記位置決め装置(124)がスクリュー駆動部の形態であることを特徴とする、請求項13又は請求項14に記載の圧延装置。
【請求項16】
前記ロールスタンド(130)が、少なくとも1つの加圧可能な油圧シリンダ(125)によって前記ヨーク(120)上に支持されることを特徴とする、請求項13から請求項15のいずれかに記載の圧延装置。
【請求項17】
前記ロール(3)が、前記ロールスタンド(130)において荷重方向(L)に変位可能であるように配置されたガイド軸受(133、134)によって取り付けられた1次ロール(131)の形態であり、
該1次ロール(131)よりも大きい直径を有する少なくとも1つの2次ロール(132)が、前記ロールスタンド(130)に取り付けられ、荷重散逸のために前記1次ロール(131)を円周方向に支持することを特徴とする、請求項13から16のいずれかに記載の圧延装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の表面硬化された転がり軸受軌道の荷重容量を増加させるための方法、及び、請求項13に記載の表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ国特許出願公開第102016114895号は、表面硬化された転がり軸受軌道の荷重容量を増加させる方法を開示している。残留応力のプロファイルは、硬化した周辺領域の圧延によって変化し、特に、硬化した外層の下に位置する残留引張応力の最大値が減少する。圧延中、3500~5500MPaの面圧が達成される。使用されるロールは、転がり軸受リングが正しい軌道幅で直接圧延されるように、圧延本体を具備することが好ましい。1つの欠点は、この方法によって転がり軸受軌道の静的荷重容量を増加させることができるが、軸受の動的連続荷重容量が減少し、その結果、軌道、ひいては軸受の平均耐用年数が減少することである。
【0003】
硬化表面を処理するための他の圧延方法は、独国特許出願公開第102015201644号及び欧州特許第2771585号から知られている。これらの方法の目的は、深圧延を使用して金属の表面の直下に残留圧縮応力を形成すること、すなわち材料を加工硬化して残留圧縮応力を蓄積することである。典型的には、硬化鋼では、数100μmの深さ範囲まで表面で直接かなりの大きさの圧縮残留応力を発生させることが可能である。圧延には、直径1~9mmの円筒状のローラ本体が用いられる。1つの欠点は、これらの方法が、表面硬化された転がり軸受軌道の場合に硬化外層の下の残留応力プロファイルによって制限される静的荷重容量を増加させることなく、硬化外層自体の特性のみに影響を及ぼすことを可能にすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102016114895号
【特許文献2】独国特許出願公開第102015201644号
【特許文献3】欧州特許第2771585号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、表面硬化された転がり軸受軌道の静的荷重容量を増加させるための方法及び圧延装置を特定することであり、当該方法及び圧延装置は、また、その軌道の耐用年数を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する表面硬化された転がり軸受軌道の荷重容量を増加させるための方法、及び、請求項13の特徴を有する圧延装置によって達成される。
【0007】
このようにして、転がり軸受リング要素の表面硬化された転がり軸受軌道の荷重容量を増加させるための方法であって、
-未硬化のコア領域と、少なくとも特定の部分において表面硬化深さまで硬化された外層とを有する転がり軸受リング要素であって、硬化された外層の領域内に転がり軸受軌道が形成されている転がり軸受リング要素を提供すること、
-少なくとも1つのロールで転がり軸受軌道を硬質圧延すること、を含み、
-ロールの直径が表面硬化深さの8~25倍の範囲で選択され、
-硬質圧延中にロールと転がり軸受軌道との間の転がり接触部において優勢な面圧が2000MPa~3300MPaの範囲に設定され、
-転がり軸受軌道が、硬質圧延後に機械加工される、方法が明示される。
【0008】
したがって、本発明によれば、従来技術よりも低い面圧が硬質圧延中に使用される。これは、3500~5500MPaの範囲の既知の面圧によってもたらされる転がり軸受リング要素のコア領域における塑性化が、特に、より高い面圧が静的荷重容量のより大きな増加をもたらすような方法で、残留引張応力最大値の減少に特に効果的に寄与するが、そのような塑性化は、同時に、材料に導入された微細構造変化により、コア領域における材料の動的変形能力の減少をもたらすという知見に基づいている。軸受が連続的な動的荷重を受けると、初期段階で転がり軸受リングのコア領域に微小亀裂が発生し、より大きな疲労破壊に成長する可能性があり、したがって軌道の耐用年数に悪影響を及ぼす可能性がある。表面硬化深さと比較して大きいロール直径と組み合わせて2000MPa~3300MPa(ヘルツ応力)の範囲で本発明により使用される面圧は、硬質圧延中に深さ効果を達成し、この場合、荷重応力及び残留応力の合計に対応する等価応力は実際にコア領域内の転がり軸受リング要素の降伏強度を超えるが、同時にコア領域内の結果として生じる塑性変形は最小化される。慎重な材料加工と、同時に残留応力の効果的な低減との間の特に良好な妥協点は、2300MPa~2800MPaの範囲の面圧で達成される。
【0009】
また、硬質圧延工程は、転がり軸受軌道の表面構造の変化を引き起こし、圧延本体が圧延本体の上を転動するときに応力ピークをもたらし、したがって軌道及び圧延本体を損傷する可能性があることも分かった。したがって、本発明によれば、硬質圧延工程に続いて、軌道の耐用年数を更に延ばすために、表面構造の変化が機械加工によって取り除かれることが提供される。
【0010】
好ましい実施形態では、転がり接触部の面圧は、未硬化コア領域に生じる荷重応力が未硬化コア領域の降伏強度の最大0.9~2倍、好ましくは1.2~1.5倍であるように選択される。未硬化コア領域は、表面硬化深さの約1.1倍の表面距離で始まる。本発明の文脈において、荷重応力は、硬質圧延によって転がり軸受要素に導入される実際の多軸応力状態に対応し、(1次元)材料特性降伏強度との比較を可能にする等価応力を意味すると理解されるべきである。荷重応力は、好ましくは、歪みエネルギー仮説を使用して計算される。コア領域における残留引張応力最大値を効果的に低減するためには、残留応力が再配置によって低減され得るように、荷重応力と残留応力との和の等価応力がコア材料の降伏強度を超えることが必要である。未硬化のコア領域の荷重応力が転がり軸受リング要素の材料の降伏強度の0.9~2倍を超えない場合、コア材料の塑性変形は可能な限り最小限に抑えられる。特に、材料の引張強度が局所的に超えられた結果として起こり得るような微小亀裂が回避される。転がり軸受軌道の慎重な加工により、転がり軸受軌道の塑性変形能力もほとんど変化しないままである。
【0011】
特に好ましくは、転がり接触部における面圧は、硬質圧延が最大でコア領域に5%までの塑性歪を生じさせるように選択される。塑性化を5%の歪みに低減することによって、コア材料が更なる部分の上を流れることが防止される。その結果、材料の元の微細構造が保持され、コア材料の局所的な歪み/圧縮によって残留応力が低減される。
【0012】
転がり軸受リング要素は、好ましくは、42CrMo4等の転がり軸受鋼から形成される。
【0013】
硬質圧延中、転がり軸受軌道は、好ましくは1~100回、特に好ましくは2~10回で重ね圧延される。残留引張応力最大値の最も大きな減少は、最初の重ね圧延中に既に生じている。しかしながら、具体的には、従来技術と比較して低い面圧を使用する場合、その後の重ね圧延も残留引張応力最大値の減少に大きく寄与し得ることが分かった。10回を超える重ね圧延も、依然として測定可能な効果を有するが、経済的観点からはもはや価値がないことが多い。
【0014】
指定された面圧での硬質圧延に使用される圧延装置によって吸収される力を低減するために、転がり接触部が転がり軸受軌道の幅の最大2/3の幅を有し、転がり軸受軌道が複数の重なり合う経路で硬質圧延されると有利である。
【0015】
好ましい実施形態では、ロールは、少なくとも転がり接触部の周辺領域において、長手方向断面において凸状に湾曲した側面を有する。周辺領域におけるロールの曲率に起因して、転がり軸受軌道における転がり接触部の周辺における過剰な応力が低減される。これにより、転がり軸受軌道の表面が保護され、発生する表面構造の変化が低減される。その結果、後続の機械加工のための費用が削減される。凸状に湾曲した構成は、転がり軸受軌道の摩耗が回避されるように、転がり軸受軌道よりも狭いロールの場合に特に好ましい。
【0016】
転がり軸受リング要素は、好ましくは、少なくとも転がり軸受軌道の領域において許容差を伴って製造される。許容値は、好ましくは、表面構造の最大予想変化に対応する。このようにして、後続の機械加工のための費用を削減することができる。
【0017】
好ましい実施形態では、ローラ軸受の転がり軸受リングは、転がり軸受リング要素として提供され、ローラ軸受は、転がり軸受リング間に少なくとも1つのローラ列を導入して硬質圧延のために組み立てられ、ローラ列は、ロールとして半径方向のオーバーサイズを有する少なくとも1つのオーバーサイズローラを備え、面圧は、軸方向に作用する荷重によってローラ軸受に導入される。これは、硬質圧延のために別個の圧延装置を必要としないという利点を有する。硬質圧延は、少なくとも1つのオーバーサイズローラを備えた荷重軸受の転がり軸受リングを回転させることによって行われる。この目的のため、例えば、下部転がり軸受リングを固定し、上部転がり軸受リングを、例えば油圧シリンダ又はウエイトによって対応して荷重し、下部転がり軸受リングに対して回転させることが可能である。上部転がり軸受リングの1回転又は複数回転の後、転がり軸受軌道は硬質圧延されている。
【0018】
ローラ軸受が少なくとも2つのローラ列を含み、転がり軸受リングの少なくとも1つが、転がり軸受リングの間にローラ列を確実にロックするように囲むために互いに軸方向に支え合うことができる少なくとも2つの部分リングを有する場合、軸方向に作用する荷重は、部分リングを互いに軸方向に支え合うことによって加えられてもよい。結果として、軸受に力を外部から加えるための装置ももはや必要とされない。例えば、部分リングをねじ止めによって互いに軸方向に支え合うことが可能である。
【0019】
本発明による方法の好ましい実施形態では、少なくとも3つのオーバーサイズローラが、転がり軸受軌道の円周にわたって分布するように、ロールとしてローラ軸受に挿入される。その結果、転がり軸受リング間の荷重伝達を均一化することができ、硬質圧延時のリングの変形を低減することができる。特に好ましくは、オーバーサイズローラは、軌道幅の異なる重なり合う部分領域に半径方向のオーバーサイズを有する。
【0020】
硬質圧延中の転がり軸受リングの寸法精度を向上させるために、少なくとも1つのローラ列がローラで完全に占められていることも好ましい。
【0021】
本発明による方法は、好ましくは、1000mmを超える直径を有する大型転がり軸受の製造に使用される。この方法は、風力タービン用のロータ軸受の製造に特に適している。したがって、本発明はまた、テーパ又はシリンダローラの少なくとも1つの列を具備する風力タービン用のロータ軸受に関し、ロータ軸受の転がり軸受軌道は、上述の方法を実行することによって製造される。
【0022】
装置に関して、この目的は、転がり軸受リング要素の表面硬化された転がり軸受軌道を硬質圧延するための圧延装置であって、転がり軸受リング要素を支持するための少なくとも1つの支持ロールを有する支持装置と、支持装置上に連接された少なくとも2つのテンションロッドによって保持されるヨークとを具備する、圧延装置によって達成される。この場合、ヨークは、テンションロッド及び支持装置と共に、硬質圧延中に転がり軸受リング要素を案内(ガイド)することができる閉鎖フレームを形成する。圧延装置はまた、ヨーク上に油圧で支持され、位置決め装置によってヨークの長手方向に変位可能であるように取り付けられ、転がり軸受軌道を加工するために設けられた少なくとも1つのロールが取り付けられるロールスタンドを具備する。
【0023】
閉鎖フレームは、転がり軸受要素の転がり軸受軌道に対してロールの面圧を単純かつ制御された方法で蓄積させることを可能にする。この場合、ロールは、ロールスタンドを変位させることによって転がり軸受軌道に対して位置決めすることができる。更なる位置決めのために、1つ以上のテンションロッドは、長さ調整可能な形態であってもよい。特に、転がり軸受軌道よりも幅の小さいロールを使用する場合、経路を変更するときにヨークに沿って、好ましくは荷重なしで、硬質圧延中にロールスタンドが変位するようにすることができる。その結果、転がり軸受軌道全体を、重なり合う経路で連続的に硬質圧延することができる。ロールスタンドは、好ましくは、スクリュー駆動部によってヨークの長手方向に変位させることができる。
【0024】
転がり軸受リング要素としての閉鎖された転がり軸受リングの転がり軸受軌道の硬質圧延のため、閉鎖フレームが転がり軸受リング要素を受け入れて取り除くために開閉可能に構成されると有利である。
【0025】
圧延装置の好ましい実施形態では、ロールスタンドは、少なくとも1つの加圧可能な油圧シリンダによってヨーク上に支持される。
【0026】
さらに、ロールは、ロールスタンド内に荷重方向に変位可能であるように配置されたガイド軸受を介して取り付けられた1次ロールの形態であることが好ましく、1次ロールよりも直径が大きい少なくとも1つの2次ロールがロールスタンド内に取り付けられ、荷重散逸のために1次ロールを周方向に支持する。変位可能なガイド軸受による1次ロールの取り付けは、転がり荷重全体を吸収するようにその軸受配置を設計する必要なしに、より小さい1次ロールが所定の位置に保持されるという効果を有する。転がり荷重は、少なくとも1つの2次ロールのより大きなサイズの軸受を介して散逸される。
【0027】
更なる有利な実施形態は、以下の説明及び従属請求項から収集することができる。
【0028】
本発明は、添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、転がり軸受リング要素における引張強度、降伏強度及び残留応力プロファイルに関して異なる直径のロールによって表面硬化された転がり軸受リング要素にもたらされる(残留応力のない)荷重応力のプロファイルを概略的に示す図である。
図2図2は、転がり軸受リング要素における引張強度、降伏強度及び残留応力プロファイルに関して異なる面圧を使用するロールによって表面硬化された転がり軸受リング要素にもたらされる荷重応力のプロファイルを概略的に示す図である。
図3図3は、荷重及び残留応力による硬質圧延中に生じる転がり軸受リング要素の全相当応力、並びに硬質圧延前後の残留応力プロファイルを概略的に示す図である。
図4a図4aは、転がり軸受リング要素の断面図における本発明による方法のシーケンスを概略的に示す。
図4b図4bは、転がり軸受リング要素の断面図における本発明による方法のシーケンスを概略的に示す。
図4c図4cは、転がり軸受リング要素の断面図における本発明による方法のシーケンスを概略的に示す。
図5a図5aは、オーバーサイズローラを有する複列テーパローラ軸受における硬質圧延転がり軸受軌道の工程を概略的に示す図である。
図5b図5bは図5aの細部Xの詳細図である。
図6図6は、重複する経路上の硬質圧延転がり軸受軌道の目的で転がり軸受に挿入することができる一組のオーバーサイズローラを概略的に示す図である。
図7図7は、転がり軸受リング要素の外側軌道の加工中の本発明による圧延装置の例示的な実施形態を概略的に示す図である。
図8図8は、開放フレームを有する転がり軸受リング要素の内側軌道の加工中の図7の圧延装置を概略的に示す図である。
図9a図9aは、図8による圧延装置の概略断面図である。
図9b図9bは、図8に係る圧延装置のロールスタンドの詳細断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
様々な図において、同一の部品は常に同じ参照符号で示されており、したがって、一般に、それぞれが一度だけ命名又は言及される。
【0031】
図1には、表面硬化された転がり軸受リング要素の材料特性及び異なる直径Dのロール又は圧延本体によってもたらされる荷重応力プロファイルが示されている。
【0032】
横軸に転がり軸受リング要素の表面からの距離Rがプロットされ、縦軸に応力σ(相当応力、残留応力、引張強度、降伏強度等の許容応力)がプロットされる。転がり軸受リングの材料、好ましくは、鋼は、3つの定性的に異なる領域、すなわち、表面から表面硬化深さRhtまで延在し、引張強度Z及び降伏強度Sの増加によって区別される硬化外層Raと、表面距離RKで始まる外層Raよりも低い引張強度Z及び降伏強度Sを有する未硬化コア領域Kと、これらの領域の間にあり、引張強度Z及び降伏強度Sがコア領域Kの値まで低下する遷移領域Tとを有する。遷移領域Tは通常、約0.1 Raの深さを有し、通常RK=約1.1×Rhtである。
【0033】
転がり軸受リング要素の表面硬化により、残留応力ESが材料に導入されており、その定性的プロファイルも図1に示されている。硬化した外層Raには、残留圧縮応力(σ<0)が存在する。外層Raの残留圧縮応力により、軌道面における転がり軸受リング要素の強度が向上する。遷移領域Tでは、残留圧縮応力は残留引張応力(σ>0)になり、これは表面距離Rmaxでコア領域Kにおいて最大に達する。
【0034】
表面硬化された転がり軸受リングの転がり軸受軌道の場合、ロール又は圧延本体によって導入される荷重応力及び材料に存在する残留応力から材料に導入される総相当応力が材料の降伏強度Sを超えると、形状の永久的な変化が生じる。硬化した外層Raの降伏強度Sが増加し、外層Raの残留圧縮応力ESが荷重応力LSを打ち消す一方で、より低い降伏強度Sを有するコア領域Kに存在する残留引張応力ES及び荷重応力LSは、合計してより大きな総相当応力になる。
【0035】
図1は、ロール又は圧延本体の様々な直径Dについての様々な荷重応力曲線LSを示す。一点鎖線は最大径に相当し、連続点線は最小径に相当する。図1から分かるように、荷重応力曲線は、硬化した外層Raの領域で最大値を有し、次いでコア領域Kに向かって低下する。最大荷重応力は、異なる直径Dに対して本質的に同じままであるが、最大値はより大きな表面距離Rにシフトする。結果として、コア領域Kにもたらされる荷重応力が増加する。したがって、表面硬化深さRaが変化せず、転がり接触部の面圧Pが変化しない場合、圧延本体直径Dを大きくすると、未硬化のコア領域Kで降伏強度Sを超える可能性がある。
【0036】
大型転がり軸受の適用の多くの技術分野では、プラントの規模拡大による技術的進歩の過程で効率の向上を達成することができる。このため、例えば、風力タービンのメインロータの軸受配置のために、より大きな寸法の表面硬化軌道を備えた転がり軸受も求められている。この場合、軸受に使用される圧延本体(本質的にテーパ及びシリンダローラ)の直径も大きくなる。より大きな圧延本体を使用することにより、転がり接触部において面圧を変化させずに軸受を介してより高い力を支持することが可能になる。
【0037】
転がり軸受の設計は、恒久的な運転荷重及び極限荷重を考慮する必要がある。これらは軸受の損傷につながるものであってはならない。恒久的に許容される運転荷重は、降伏強度Sに対して深さRK=約1.1×Rhtで生じる荷重応力によって制限される。
【0038】
対照的に、許容される極限荷重は、とりわけ、極限荷重によってもたらされる軌道面の永久変形から決定される。実際には、ピボット軸受は、通常、Zwirlein法(Zwirlein et al.(1983),Case Depth for Induction Hardened Slewing Bearing Rings,SAE Technical Paper Series 831371)を使用して設計される。そこに規定される静的荷重容量を達成するためには、コア領域Kにおける降伏強度Sの超過を回避しなければならない。この目的のため、圧延本体の直径Dが増加するにつれて表面硬化深さRaを増加させることが通例であり、その結果、コア領域Kはより低い荷重応力にさらされる。実際には、圧延本体直径Dに対する表面硬化深さRaの比の10%ルールが確立されている。
【0039】
それから逸脱して、風力タービン用の主ロータ軸受の静的荷重容量は、規格ISO 76に基づいて評価されるべきである。この規格には、圧延本体直径に対する圧延本体軌道の許容塑性変形に対するより厳格な要件が含まれており、ピボット軸受からロータ軸受への移行中の静的荷重容量を減少させる。
【0040】
このより厳しい要件は、表面硬化深さRhtをその限界まで増加させる既知の手順を押し進める。高周波焼き入れによって達成することができる表面硬化深さRhtは、硬化される材料、その熱処理状態、及び、使用されるプラント工学/方法によって制限される。高周波により全面硬化された軌道の場合、プラント及び方法のため、65~120mmの大きな圧延本体直径Dに対して「10%ルール」は既に制限されている。
【0041】
或いは、基材として使用される鋼のグレードの異なる選択によってコア強度を高めることが考えられる。しかしながら、合金元素の必要性の増加及び機械加工コストの増加のために、これはまた、大幅なコスト増加をもたらす。
【0042】
したがって、表面硬化された転がり軸受軌道の静的荷重容量を増加させるために、本発明による方法は異なる手法に従う。転がり軸受リング要素は、通常、高周波を用いて表面硬化される。しかしながら、何らかの他の方法で表面硬化された、例えば表面焼き入れされた(case-hardened)転がり軸受リング要素への本発明による方法の適用も本発明によって包含される。図1を参照して既に説明したように、静的荷重容量を制限する転がり軸受軌道の許容可能な変形は、コア領域Kに存在する残留引張応力によって促進されるが、これは、それらがコア領域Kにおける荷重及び残留応力からの総相当応力LESを増加させるためである。したがって、本発明による方法は、コア領域Kにおける残留引張応力を低減することを目的とし、その結果、同じ荷重応力LSが転がり軸受軌道2のより小さい変形をもたらす。静的荷重に対する転がり軸受軌道の残留引張応力最大値の低減及び関連する硬化効果は、圧延操作によって達成することができ、したがって、これは硬質圧延と呼ぶことができる。
【0043】
コア領域Kに導入される荷重応力LSは、残留引張応力最大値の低減に重要である。これらの荷重応力LSは、実質的にロール直径D(図1参照)及び面圧P(図2を参照されたい)のパラメータによって設定することができる。図2は、同じロール直径を有する様々な面圧から生じる荷重応力を示す。一点鎖線は、最も高い面圧に相当する。
【0044】
図3は、本発明による方法による残留引張応力最大値の減少、及び、結果として生じる転がり軸受軌道のより大きな静的荷重容量を示す図である。曲線ESは、硬質圧延前の残留応力のプロファイルを示し、曲線ES’は、硬質圧延後の残留応力を示す。硬化した外層Raの残留圧縮応力はわずかに減少するが、コア領域Kの残留引張応力は大幅に減少する。荷重及び残留応力からの合計された総相当応力LESは、硬質圧延操作中のコア領域Kにおける降伏強度Sを超え、その結果、再配置による残留引張応力の低減をもたらす。硬質圧延後の同じ荷重応力による転がり軸受軌道の新たな荷重は、コア領域Kにおけるより低い合わさった総相当応力LES’をもたらし、当該総相当応力のプロファイル全体は降伏強度Sを下回ったままである。したがって、転がり軸受軌道の静的荷重容量は、硬質圧延操作によって増加する。
【0045】
図4a~4cは、転がり軸受リング要素1の表面硬化された転がり軸受軌道2の荷重容量を増加させるための本発明による方法の性能を概略的に示す。図4aでは、未硬化のコア領域Kと、少なくとも特定の部分において表面硬化深さまで硬化された外層Raとを有する転がり軸受リング要素1が最初に提供され、転がり軸受軌道2は、硬化された外層Raの領域内に形成される。続いて、転がり軸受軌道2を、直径Dが表面硬化深さの8~25倍の範囲にあるロール3で硬質圧延する。ロール3と転がり軸受軌道2との間の転がり接触部4において、硬質圧延中に優勢な面圧は、2000MPa~3300 MPaの範囲に設定される。この目的のため、ロール3は、転がり軸受軌道に対して実質的に垂直である荷重方向Lに荷重されることが好ましい。
【0046】
硬質圧延中に十分に大きな直径のロールによって軌道に及ぼされる面圧のため、基材の塑性変形は硬化した外層との境界で直接始まり、ここで材料は、荷重応力に加えて、降伏強度Sを超える元々有効な残留応力によって応力を受ける。荷重が軌道表面から取り除かれた後、測定可能な形状偏差(窪み/走行軌道)が圧延転がり軸受軌道8に残る(図4bを参照されたい)。
【0047】
指定されたパラメータでの硬質圧延中に、圧延本体直径Dの数万分の1の表面構造7の変化が生じる。表面構造のこれらの変化は、硬質圧延後の転がり軸受軌道2の機械加工によって取り除かれ、その結果、平坦な機械加工された転がり軸受軌道9が製造される(図4cを参照されたい)。このようにして処理された軌道は、はるかに少ない形状の偏差で同じタイプ及び大きさの新たな応力に耐えることができ、したがって増加した静的荷重容量を有する。機械加工は、規定の又は規定されていない刃先で実行することができる。
【0048】
転がり軸受軌道の動的連続荷重容量に悪影響を及ぼすことなくコア領域内の残留引張応力を低減する所望の効果を達成するために、面圧Pとロール直径Dとの特許請求の範囲に記載される組み合わせは、本発明による教示に不可欠である。
【0049】
表面硬化深さRhtの8~25倍の範囲のロール直径Dを選択することにより、荷重応力LSが必要な材料深さで作用することが保証される。深圧延硬化軸受リングのための他の既知の方法とは対照的に、残留圧縮応力の更なる蓄積又は大容量材料圧密化(転位の形成)は、本発明による硬質圧延によって求められない。対照的に、本発明による方法は、例えば介在物で発生する残留応力ピーク等の高い残留応力ピークを低減し、例えば、それにより、軸受の動作中にこれらの領域で応力変動が少なくなり、したがって動的荷重容量/耐用年数が長くなる。寸法安定性及び荷重容量を更に高めるために、深圧延の前又は後に、例えば160~180℃で熱緩和を行うことが好ましい。使用される圧延ローラは、軸受の後段で使用される圧延本体とほぼ同じ直径Dを有することが好ましい。
【0050】
請求項1に記載されているように提供されるロール直径D及び面圧Pのパラメータ範囲を用いて硬質圧延する場合に同時に達成することができるのは、
-硬化した外層Raの下の材料がコア領域Kで可塑化し、この領域の残留引張応力が取り除かれ、
-硬化した外層Ra(表面硬化深さRhtより上)中の材料は、幾何学的外乱のない領域(例えば含有物)で実質的に弾性的に応力を受け、せいぜい軽度の塑性化を経験し、それにより、既知の深圧延方法とは対照的に、硬化及び急冷熱処理からの残留圧縮応力は変化しないままであるか、又は低減され、
-硬化した外層Ra(表面硬化深さRhtより上)の材料は、幾何学的外乱(例えば介在物)を有する領域で塑性的に応力を受ける。
【0051】
本発明による方法によって生成された残留応力の再配置は、コア領域Kで大容量に、また硬化した外層の不連続部及び介在物に局所的に限定され、処理された軸受の静的及び動的荷重容量及び寸法安定性の増加をもたらす。
【0052】
本発明の有利な改良によれば、硬質圧延の間に使用される面圧は、軸受の動作中に予想されるコア領域Kの最大静的荷重を超えるべきではない。より大きい面圧は、本質的に残留引張応力最大値のより迅速かつより効果的な低減をもたらすが、それは同時に変形能力を低下させ、したがって連続荷重下での転がり軸受リングの予想寿命を低下させる。
【0053】
この検討に基づいて、未硬化コア領域Kに生じる荷重応力LSが未硬化コア領域Kの降伏強度Sの最大0.9~2倍、好ましくは1.2~1.5倍になるように、転がり接触部4の面圧が選択されることが好ましい。既に上述したように、転がり軸受の動的連続荷重容量は、例えば、コア領域KのRK=約1.1×Rhtの開始時の降伏強度Sの約0.6倍の相当応力によって与えられる(すなわち、例えば、Zwirlein et al.(1983),SAE Technical Paper Series 831371による)。転がり軸受を設計する場合、動的連続荷重容量と極端な静的荷重との間の慣習的な因数は、1.5~3.3の範囲、特に2~2.5の間であり、これは、硬質圧延の間の荷重応力LSの特定の範囲をもたらす。
【0054】
さらに、既存の表面硬化深さRht又は残留応力ES及び関連する材料パラメータ(外層材料及びコア材料の引張強度Z及び降伏強度S)に応じてロール直径D及び面圧を選択することは、好ましくは以下の基準を満たす:
コア領域Kの材料に関する基準:
a)好ましくは、転がり接触部4の面圧Pは、硬質圧延がせいぜいコア領域Kに最大5%の塑性歪みを生じさせるように選択される。結果として生じる荷重応力LS及び有効な元の残留応力ESからの総相当応力LESからの荷重に起因するコア領域Kの塑性変形は、降伏強度S及び/又は引張強度Zを考慮して、例えばFEMシミュレーションで事前に決定することができる。
【0055】
b)好ましくは、コア領域Kにおける荷重応力LS及び有効な元の残留応力ESからの総相当応力LESからの荷重は、少なくとも特定の部分、特にコア領域RKの始まり(=約1.1×Rht)から最大残留引張応力Rmaxの表面距離までの部分において、コア領域Kの降伏強度Sを上回る。
【0056】
硬化外層Raの材料に関する判定基準:
c)好ましくは、転がり接触部4の面圧Pは、硬質圧延がせいぜい外層Raに最大2%の塑性歪を生じるように選択される。結果として生じる荷重応力LS及び有効な元の残留応力ESからの総相当応力LESからの荷重による周辺領域の塑性変形は、前述の材料パラメータを考慮して、コンピュータシミュレーション、例えばFEMシミュレーションで事前に決定することができる。
【0057】
d)好ましくは、硬化した外層Raの介在物及び不連続部における荷重応力LS及び有効な元の残留応力ESからの総相当応力LESからの荷重は、降伏強度を上回る。これは、硬化した外層においても最大圧延応力が事前に生じるという利点を有する。これにより、存在し得る介在物の周辺部における応力ピークが低減される。動作中、これらは介在物の周囲における亀裂成長を妨げる。
【0058】
特に好ましくは、転がり軸受リング要素の材料特性に適合するように、パラメータ面圧P及び圧延本体直径Dを選択するための基礎としてコンピュータシミュレーションが使用される。これにより、上記基準を満たすことができる数を最適化することができる。
【0059】
本発明によれば、硬質圧延の間の重ね圧延回数は、好ましくは1~100回、2~10回としなければならない。
【0060】
原理的には、ロールが軌道面上を圧延するような硬質圧延ではなく、ロールが軌道面上を小さく離間したステップで押圧するように硬質圧延を行うことも考えられる。そのような「硬質押圧」は、硬質圧延という用語に包含されると理解されるべきである。
【0061】
十分な圧延力がある場合、硬質圧延は、軌道幅B全体にわたって同時に実行され得る。或いは、但し、転がり接触部4は、例えば、転がり軸受軌道2の幅Bのせいぜい2/3の幅bを有し、転がり軸受軌道2は複数の重複する経路で硬質圧延される。この場合、比較的低い圧延力を提供すればよい。圧延本体直径Dの10%の転がり接触部4の最小幅bが有利である。
【0062】
ロール3は、転がり接触部の周辺の応力ピークを低減するために、少なくとも転がり接触部4の周辺領域6において縦断面で凸状に湾曲した側面5を有することが好ましい。
【0063】
図5a及びbは、オーバーサイズローラを有する複列テーパローラ軸受における硬質圧延転がり軸受軌道の工程を概略的に示す図である。
【0064】
この場合、ローラ軸受10の転がり軸受リング20、30は、転がり軸受リング要素として提供され、ローラ軸受10は、転がり軸受リング20、30の間に2つのローラ列40を導入して硬質圧延のために組み立てられ、ローラ列40は、ロールとして半径方向のオーバーサイズ51を有する少なくとも1つのオーバーサイズローラ50を備え、面圧は、軸方向に作用する荷重によってローラ軸受10に導入される。
【0065】
図5aに示すローラ軸受10は、2つのローラ列40を含む複列テーパローラ軸受であり、転がり軸受リング20、30の少なくとも一方は、転がり軸受リング20、30の間にローラ列40を確実にロックするように囲むために軸方向に互いに支え合うことができる2つの部分リング21、22を有し、軸方向に作用する荷重は、部分リング21、22を互いに軸方向に支え合うことによって加えられる。この目的のために、2つの部分リング21、22は、共通の締結ねじ23によって接続構造にねじ止めされる。接続構造は、ここでは例として、ターンテーブル60上に配置された第1のプレート65から形成される。
【0066】
圧延力の大きさは、オーバーサイズローラ50のオーバーサイズ、締結ねじ23によって加えられる予応力VS及び構造の弾性特性に起因する。予応力VS及び圧延ローラのオーバーサイズは、結果として生じる圧延力の重要な設定可能な変数を表す。
【0067】
他方の転がり軸受リング30は、締結ねじ24を介して固定接続構造に固定される。図5aでは、固定接続構造は、固定ブラケット70及び第2のプレート75から形成される。圧延は、ターンテーブル60を駆動することによって行うことができる。従動ターンテーブル60に対する固定リング30の固定は、転がり軸受リング20、30の一方が回転するように設定され、転がり軸受リング20、30の軌道2がオーバーサイズローラ50によって重ね圧延される、という効果を有する。したがって、転がり軸受軌道2全体の硬質圧延は、1つ以上の回転にわたって行われる。
【0068】
図5bは、図5aの細部Xを示す。ねじ止めにより、予応力VSが軸受に導入され、オーバーサイズローラの軌道面に必要な圧延力を加える。結果として生じる力の流れKFを、図5bに例として示す。
【0069】
転がり軸受リング20、30は、好ましくは、少なくとも転がり軸受軌道の領域において許容差を伴って製造される。
【0070】
ローラ軸受10は、ローラ列40の全てのローラを備えていることが好ましい。これは、圧延動作中であってもローラ軸受10が寸法的に正確なままである、すなわち、転がり軸受リング20、30の互いに対する変位が制限され、各転がり軸受リング20、30の形状偏差が最小限に抑えられるという利点を有する。これにより、転がり軸受軌道が軌道の円周及び幅にわたって均一に塑性化されることが保証される。また、オーバーサイズローラ50の周方向近傍のローラは、オーバーサイズローラ50の半径方向のオーバーサイズにより荷重が取り除かれているため、寸法精度への寄与が少なく、また、省略することもできる。オーバーサイズローラ50の数は、ターンテーブル60を回転させ、したがって硬質圧延に必要である、必要な駆動トルクを決定する。
【0071】
全てのローラ(オーバーサイズローラ50を含む)の長さは、好ましくは、軌道幅B(又は圧延される領域の幅)に対応する。圧延ローラの外形(輪郭)及びオーバーサイズは、圧延中に軌道の全ての領域で所望の面圧が発生し、高いエッジ圧力が回避されるように選択されるべきである。
【0072】
少なくとも1つ、好ましくは少なくとも3つのオーバーサイズローラ50が、転がり軸受軌道の円周にわたって分布するように、ロールとしてローラ軸受10に挿入される。圧延力の均一な分布のため、オーバーサイズローラは、好ましくは、それぞれの軌道において回転対称に分布している。
【0073】
好ましくは、少なくとも3つのオーバーサイズローラ50は、同じ形態であってもよい。しかしながら、オーバーサイズローラ50が、軌道幅Bの異なった重複する部分領域52、53、54上に半径方向のオーバーサイズ51を有することが好ましい(図6を参照されたい)。その結果、必要な面圧P及び深さ荷重を達成するために必要な圧延力を低減することができる。ローラ列40内の全てのオーバーサイズローラ50は、各ローラ列40の軌道幅B全体がトラックごとに重ね圧延され、局所的なオーバーサイズを有する領域間に重複があるように互いに一致する。
【0074】
例えば、オーバーサイズローラは、圧延本体直径の約1~2%のオーバーサイズを有することができる。硬質圧延の後、ローラ軸受10を解体し、軌道を機械加工で仕上げなければならない。
【0075】
オーバーサイズローラ(例えば対数プロファイリング)のプロファイリングを考慮した接触圧力のコンピュータ分析により、高いエッジ圧力又は非対称性が特定される。これらは、例えば、ロールプロファイル、接続構造の剛性、又は軌道のプロファイリングへの変更によって低減又は回避することができる。
【0076】
軸受に関連する剛性の対称的な実施は、設計に有利である。これに従うことができない場合、ローラ軸受10の2つのローラ列40の異なる半径方向のオーバーサイズを選択することによって、圧延本体軌道に同じ結果として生じる圧力を依然として達成することが可能である。
【0077】
図7~9では、本発明による圧延装置100の例示的な実施形態を示す。
【0078】
転がり軸受リング要素1の表面硬化された転がり軸受軌道2を硬質圧延するための圧延装置100は、転がり軸受リング要素1を支持するための支持ロール111、112を有する支持装置110と、支持装置110上に連接された少なくとも2つのテンションロッド121、122によって保持されたヨーク120と、ヨーク120上に油圧で支持され、位置決め装置124によってヨーク120の長手方向に変位可能であるように取り付けられたロールスタンド130とを具備する。この場合、ヨーク120は、テンションロッド121、122及び支持装置110と共に、硬質圧延の間に転がり軸受リング要素1を案内(ガイド)することができる閉鎖フレーム130を形成する。ロールスタンド130には、転がり軸受軌道2を加工するための少なくとも1つのロール3が取り付けられている。
【0079】
テンションロッドは、転がり軸受リング要素1及びロール3が軌道面に平行な力を受けないようにするために、連接構造で取り付けられている。2つのテンションロッド121、122は、ロールスタンド130用の位置決め装置124(例えば、スクリュー駆動部)によってヨーク120を持つ。位置決め装置124は、好ましくは、ロールスタンド130を取り付けるためのガイドを更に有する。
【0080】
位置決め装置124は、ロールスタンド130を転がり軸受軌道2の上方に位置決めする。図示の例示的な実施形態では、位置決め装置124は、転がり軸受リング要素1の少なくとも軌道幅Bを覆う平行ガイドと、ロールスタンド130を軌道面に平行な横方向に変位させることができる従動スピンドル又はラックとからなる。
【0081】
ロールスタンド130は、好ましくは、必要な圧延力を加えるために使用される少なくとも1つの加圧可能油圧シリンダ125によってヨーク120に支持される。油圧シリンダ125によって、ロールスタンド130はまた、加工される転がり軸受軌道2に対して垂直に数ミリメートル変位可能であってもよい。ヨーク120とロールスタンド130との間に配置された油圧シリンダ125は、荷重状態においてヨーク120と転がり軸受軌道2との間のロールスタンド130を支える。
【0082】
硬質圧延の間、転がり軸受リング要素1は、一方では圧延装置100内に、他方では転がり軸受リング要素1の範囲にわたって分布するキャリアローラを有する支持ブラケット160上に支持されることが好ましい。
【0083】
好ましくは、テンションロッド121、122は、例えばねじ山を介して長さ調整可能である。これにより、軌道支持角度の異なるリング断面の硬質圧延を簡素化することができる。
【0084】
好ましくは、閉鎖フレーム130が転がり軸受リング要素1を受け入れて取り外すために開閉可能に構成されることが実現される。この目的のため、例えば、2つのテンションロッド121、122の少なくとも一方にボルト接続部126を設けることが可能である。閉鎖フレーム123は、ボルトのプラグを抜くことによって、又は別の容易に解放可能な接続によって、開いて装填位置に枢動することができる。次に、転動される転がり軸受リング要素1を配置することができる。
【0085】
図7に示すように、圧延装置100は、支持ロール111、112を駆動するための駆動装置140を更に具備することが好ましい。その結果、圧延力の力の流れは、転がり軸受リング要素1に推進力を及ぼすために有利に利用される。駆動装置140及び圧延装置100は、好ましくは共通のベースプレート150上に配置される。
【0086】
図8では、図7の圧延装置100が開放荷重位置に示されている。この例では、閉鎖フレーム123を開くためのボルト接続部126は、テンションロッド121とヨーク120との間に構成されている。しかしながら、例えば支持装置110とテンションロッド121との間の、フレーム123上の別の点におけるボルト接続も考えられる。
【0087】
図8はまた、図7の圧延装置100が、同じローラ軸受10の内側圧延本体軌道及び外側圧延本体軌道の両方の硬質圧延に適していることを示している。
【0088】
図9aは、図8の圧延装置100の断面図である。図9aから分かるように、ローラ軸受の軸線に対して傾斜して走る転がり軸受軌道2の硬質圧延のため、支持装置110は、好ましくはL字形の軸受面を備えて構成され、その中に少なくとも1つ、好ましくは2つの半径方向支持ロール111及び少なくとも1つ、好ましくは2つの軸方向支持ロール112がそれぞれの場合に配置される。半径方向又は軸方向の転がり軸受軌道の硬質圧延の場合、支持装置の軸受面はまた、転がり軸受リング要素1の横方向ガイドによって平坦になるように構成することもできる。
【0089】
ロールスタンド130の断面を図9bに示す。ロールスタンド130は、2次ロール132の転がり軸受135を介して圧延力を加えるために、1次ロール131と、少なくとも1つの2次ロール132とを具備する。2次ロール132の転がり軸受135(例えば、複列シリンダローラ軸受)は、ロールスタンド130からの圧延力を2次ロール132に伝達するために用いられる。1次ロール131は、ロールスタンド130内で荷重方向Lに変位可能であるようにガイド軸受133、134を介して取り付けられている。ガイド軸受133、134は、例えば転がり軸受及び/又は平軸受の形態であってもよく、荷重方向Lの変位に関して、及び、転がり軸受軌道2の方向の圧延中に1次ロール131を案内(ガイド)するために使用されてもよい。
【0090】
好ましくは、1次ロール131及び2次ロール132は硬化される。1次ロール131は、表面硬化深さRhtの8~25倍の範囲の直径を有する。2次ロール132は、好ましくは、1次ロール131の直径の少なくとも2倍の直径を有する。
【0091】
例えば、図7~9に示す圧延装置100及び直径100mm、幅30mmの1次ロール131は、圧延力約255kNで面圧2530MPaを達成し、上記a)~d)の基準を満たす。
【0092】
上述した方法を用いて及び圧延装置100によって、少なくとも一列のテーパ又はシリンダローラを具備する、風力タービン用のロータ軸受の転がり軸受軌道を加工することが可能であることが好ましい。
【符号の説明】
【0093】
1 転がり軸受リング要素
2 転がり軸受軌道
3 ロール
4 転がり接触部
5 側面
6 周辺領域
7 表面構造の変化
8 転動した転がり軸受軌道
9 圧延及び機械加工された転がり軸受軌道
10 ローラ軸受
20 転がり軸受リング
21、22 部分リング
23、24 締結ねじ
30 転がり軸受リング
40 ローラ列
50 オーバーサイズローラ
51 半径方向のオーバーサイズ
52、53、54 部分領域
60 ターンテーブル
65 第1プレート
70 ブラケット
75 第2プレート
100 圧延装置
110 支持装置
111、112 支持ロール
120 ヨーク
121、122 テンションロッド
123 閉鎖フレーム
124 スクリュー駆動部
125 油圧シリンダ
126 ボルト接続
130 ロールスタンド
131 1次ロール
132 2次ロール
133、134 ガイド軸受
135 転がり軸受
140 駆動部
150 ベースプレート
160 支持ブラケット
b 転がり接触部の幅
B 転がり軸受軌道の幅
D 直径
ES 硬質圧延の前の残留応力
ES’ 硬質圧延の後の残留応力
K 未硬化のコア領域
KF 力の流れ
L 荷重方向
LS 荷重応力
LES 複合荷重及び残留応力
P 面圧
R 深さ/面距離
Ra 外層
Rht 表面硬化深さ
RK コア領域の始まりの深さ
Rmax 最大残留応力の深さ
S 降伏強度
T 遷移領域
Z 引張強度
σ 相当応力
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9a
図9b
【手続補正書】
【提出日】2022-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受リング要素(1)の表面硬化された転がり軸受軌道(2)の荷重容量を増加させるための方法であって、
未硬化のコア領域(K)と、少なくとも特定の部分において表面硬化深さ(Rht)まで硬化された外層(Ra)と、を有する転がり軸受リング要素(1)であって、前記硬化された外層(Ra)の領域に転がり軸受軌道(2)が形成されている、転がり軸受リング要素(1)、を提供することと、
少なくとも1つのロール(3)で前記転がり軸受軌道(2)を硬質圧延することと、を含み、
前記ロール(3)の直径(D)が前記表面硬化深さ(Rht)の8~25倍の範囲において選択され、
前記硬質圧延の間に、前記ロール(3)と前記転がり軸受軌道(2)との間の転がり接触部(4)において優勢な面圧が2000MPa~3300MPaの範囲において設定され、
前記転がり軸受軌道(2)が前記硬質圧延の後に機械加工されること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記転がり接触部(4)の面圧が、前記未硬化のコア領域(K)に生じる荷重応力(LS)が前記未硬化のコア領域(K)の降伏強度(S)の最大0.9~2倍あるように選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転がり接触部(4)における面圧が、前記硬質圧延が最大で前記コア領域(K)に5%までの塑性歪を生じさせるように選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記転がり接触部(4)が、前記転がり軸受軌道(2)の幅(B)の最大2/3の幅(b)を有し、前記転がり軸受軌道(2)が、複数の重複する経路において硬質圧延されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ロール(3)が、少なくとも前記転がり接触部(4)の周辺領域(6)において長手方向断面において凸状に湾曲した側面(5)を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記転がり軸受リング要素(1)が、少なくとも前記転がり軸受軌道(2)の領域において許容差を伴って製造されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ローラ軸受(10)の転がり軸受リング(20、30)が、転がり軸受リング要素(1)として提供され、
前記ローラ軸受(10)が、前記転がり軸受リング(20、30)の間に少なくとも1つのローラ列(40)を導入して硬質圧延のために組み立てられ、前記ローラ列(40)が、
前記ローラ列が前記ロール(3)として半径方向のオーバーサイズ(51)を有する少なくとも1つのオーバーサイズローラ(50)を含み、
前記面圧が、軸方向又は半径方向に作用する荷重によって前記ローラ軸受(10)に導入されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのローラ列(40)が、前記硬質圧延の間に前記転がり軸受リング(20、30)の寸法精度を改善するために複数のローラで完全に占められていることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ローラ軸受(10)が少なくとも2つのローラ列(40)を含み、
前記転がり軸受リング(20、30)のうちの少なくとも1つは、前記転がり軸受リング(20、30)の間に前記ローラ列(40)を確実にロックするように囲むために互いに軸方向に支え合うことができる少なくとも2つの部分リング(21、22)を有し、
前記面圧が、前記部分リング(21、22)を互いに軸方向に支え合うことによって加えられる軸方向に作用する荷重によって導入されることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも3つのオーバーサイズローラ(50)が、転がり軸受軌道(2)の円周にわたって分布するように、ロール(3)として前記ローラ軸受(10)に挿入されることを特徴とする、請求項7から請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記オーバーサイズローラ(50)が、前記転がり軸受軌道の幅(B)の異なった重複する部分領域(52、53、54)に前記半径方向のオーバーサイズ(51)を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
テーパがふされた又はシリンダ状のローラの少なくとも1つの列を具備する、風力タービン用のロータ軸受であって、
該ロータ軸受の転がり軸受軌道が、請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法を実行することによって製造される、ことを特徴とする、風力タービン用のロータ軸受。
【請求項13】
転がり軸受リング要素(1)の表面硬化された転がり軸受軌道(2)を硬質圧延するための圧延装置であって、
前記転がり軸受リング要素(1)を支持するための少なくとも1つの支持ロール(111、112)を有する支持装置(110)と、
該支持装置(110)に連接された少なくとも2つのテンションロッド(121、122)によって保持されるヨーク(120)であって、前記テンションロッド(121、122)及び前記支持装置(110)と共に、前記硬質圧延の間に前記転がり軸受リング要素(1)を案内することができる閉鎖フレーム(123)を形成する、ヨーク(120)と、
前記ヨーク(120)上において油圧式により支持され、位置決め装置(124)によって前記ヨーク(120)の長手方向に変位可能であるように取り付けられ、前記転がり軸受軌道(2)を加工するために設けられた少なくとも1つのロール(3)が取り付けられる、ロールスタンド(130)と、を具備する、ことを特徴とする圧延装置。
【請求項14】
前記閉鎖フレーム(123)が、前記転がり軸受リング要素(1)を受け入れて取り外すために開放可能であるように構成されることを特徴とする、請求項13に記載の圧延装置。
【請求項15】
前記位置決め装置(124)がスクリュー駆動部の形態であることを特徴とする、請求項13又は請求項14に記載の圧延装置。
【請求項16】
前記ロールスタンド(130)が、少なくとも1つの加圧可能な油圧シリンダ(125)によって前記ヨーク(120)上に支持されることを特徴とする、請求項13から請求項15のいずれかに記載の圧延装置。
【請求項17】
前記ロール(3)が、前記ロールスタンド(130)において荷重方向(L)に変位可能であるように配置されたガイド軸受(133、134)によって取り付けられた1次ロール(131)の形態であり、
該1次ロール(131)よりも大きい直径を有する少なくとも1つの2次ロール(132)が、前記ロールスタンド(130)に取り付けられ、荷重散逸のために前記1次ロール(131)を円周方向に支持することを特徴とする、請求項13から16のいずれかに記載の圧延装置。
【請求項18】
前記転がり接触部(4)の面圧が、前記未硬化のコア領域(K)に生じる荷重応力(LS)が前記未硬化のコア領域(K)の降伏強度(S)の1.2~1.5倍であるように選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【国際調査報告】