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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】土壌安定剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/50 20060101AFI20230529BHJP
   C09K 17/08 20060101ALI20230529BHJP
   C09K 17/14 20060101ALI20230529BHJP
   E01C 3/04 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C09K17/50 P
C09K17/08 P
C09K17/14 P
E01C3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549344
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 AU2021050233
(87)【国際公開番号】W WO2021184066
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2020900796
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522324901
【氏名又は名称】ホール アールビー プロプライエトリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレン、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ルワー、サイモン
【テーマコード(参考)】
2D051
4H026
【Fターム(参考)】
2D051AG05
2D051AH01
4H026CA06
4H026CB05
4H026CB08
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
大量の土壌(例えば、道路基層又は道路補助基層を画定する大量の土壌)を安定化させるための方法が本明細書で開示される。方法は、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含むコーティング剤を土壌に適用することを含み、それによって土壌中の土壌粒子がコーティング剤でコートされ、次いで、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含む硬化剤を土壌に適用することを含み、そこで硬化生成物が形成される。その後土壌を圧縮し、それによってコートされた土壌粒子を圧密化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大量の土壌を安定化するための方法であって、
ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含むコーティング剤を前記土壌に適用する工程であって、それによって前記土壌中の土壌粒子が前記コーティング剤でコートされる工程と、
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含む硬化剤を前記土壌に適用する工程であって、そこで硬化生成物が形成される工程と、
前記土壌を圧縮する工程であって、それによって前記コートされた土壌粒子が圧密化される工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記大量の土壌が、前記コーティング剤が適用される前に攪乱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング剤が、前記大量の土壌の上部に噴霧される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング剤が前記大量の土壌に物理的に混合される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング剤が、前記土壌への適用前に一定量の水に混合される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記硬化剤が、前記大量の土壌の上部に噴霧される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化剤が前記大量の土壌に物理的に混合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化剤が、前記土壌への適用前に一定量の水に混合される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸及びステアリン酸の塩の混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、前記脂肪酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング剤が、アルコールをさらに含む液体組成物で提供される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコールが2-プロパノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング剤が、分散剤をさらに含む液体組成物で提供される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記分散剤がモノステアリン酸エチレングリコールである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記硬化剤がアルミニウム塩を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化剤が硫酸アルミニウムを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記硬化剤が適用される前に、追加の材料を前記大量の土壌に混合する工程をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティング剤が適用される前に、前記追加の材料が前記大量の土壌に混合される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記追加の材料が、細断された廃プラスチック、砂、骨材及び破砕ガラスの1つ以上から選択される、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記大量の土壌に石灰を添加する工程をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記安定化された大量の土壌が、道路基層又は道路補助基層を画定する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記土壌が粘土を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
土壌を安定化するためのキットであって、第1の容器と、第2の容器と、を含み、
前記第1の容器が、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含み、土壌に適用されると、前記土壌中の土壌粒子をコートするコーティング剤を含有し、
前記第2の容器が、前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含み、前記土壌に適用されると、前記コートされた土壌粒子を圧密化させる硬化剤を含有する、キット。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法で使用される場合の、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法でコーティング剤として使用される場合の、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と、アルコールと、分散剤と、を含む組成物。
【請求項26】
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸及びステアリン酸の塩の混合物を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、前記脂肪酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩である、請求項25又は請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記アルコールが2-プロパノールである、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記分散剤がモノステアリン酸エチレングリコールである、請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌を安定化するための方法、特に、道路基層又は道路補助基層用に安定化された土壌に関する。
【背景技術】
【0002】
耐久性のある路面の構築は、表面自体の安定性及び耐久性と少なくとも同程度に、道路基層の安定性及び耐久性に依存する。したがって多くの技術が長年にわたって開発され、道路の基材又は道路基層の品質に特に注意を払うことによって道路を強化してきた。例えば、大量の輸入された砕石及び/又は土壌基材の圧縮を使用する方法は、安定した耐久性のある道路基層を提供するために頻繁に使用される。
【0003】
しかしながら、そのような方法は、現場で問題のある土壌を除去し、それを優れた材料と交換すること、又は現場で土壌特性を受け入れ、それに応じて補償するようにプロジェクトを設計することを含む。いずれの場合も、そのような道路を作製するのにかかる時間及びコストは、非理想的な道路基層及び/又は補助基層の存在によって著しく増加する。
【0004】
化学ベースの土壌安定剤は公知であるが、実験室外でのそれらの有効性は、多くの用途、特に耐久性のある道路基層又は補助基層の建設におけるそれらの有用性を制限する傾向がある。
【0005】
道路基層を安定させるための代替方法を提供することが有利であろう。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、大量の土壌(例えば、道路基層又は道路補助基層を画定する大量の土壌)を安定化させるための方法を提供する。この方法は、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含むコーティング剤を土壌に適用することを含み、それによって土壌中の土壌粒子がコーティング剤でコーティングされる。続いて、硬化生成物が形成される、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含む硬化剤が土壌に適用され、その後、土壌が圧縮され、それによってコーティングされた土壌粒子が圧密化される。
【0007】
本発明は、有利には、大量の土壌に対して実施された場合に、水分の侵入に対する高い耐性、及び通行による荷重に耐えるのに十分強い支持能力を有する実質的に不浸透性の土壌層が作製されるように、土壌を安定化する効果を有する化学プロセスを提供する。以下にさらに詳細に説明するように、本発明者らは、本発明で使用されるコーティング剤が、土壌粒子をコートする能力を大幅に助長する物理的特性を有することを見出した。さらに、コーティング剤及び硬化剤の反応生成物は、処理された土壌を圧密化かつ圧縮された体積に形成するのに有益に寄与する物理的特性を有する。本発明は、本発明者らによって多くの実社会の環境において成功裏に試験されており、そこでは、本発明によって達成された化学的及び物理的特性の組み合わせにより、高い強度、耐久性及び耐水性を有する道路基層が作製された。
【0008】
したがって、少なくとも、本発明は、現在の土壌安定化方法の代替手段を提供する。従来の機械的な建設の代わりに本発明の方法を使用して、時間及び費用の大幅な節約を達成することができるのは、一般に、必要な装置及び人員が削減されるためである。例えば、コーティング剤及び硬化剤は濃縮形態で出荷され、現場で希釈され得るので、輸送コストを削減することができる。本発明者らは、例えば、200Lのコーティング剤及び100Lの硬化剤を使用して、28台のトラック積載量の砕石を使用して調製された道路基層に匹敵する効果を有する、安定化された大量の土壌を製造できることを見出した。これの経済的及び環境的利益は直ちに明らかである。
【0009】
本発明の方法は、実施が比較的容易であり、建設現場で既に見られそうな装置を使用して達成することができる。本発明者らはまた、結果として生じる安定化された土壌に必ずしも影響を与えることなく、良識の範囲内で本発明の実施を任意の段階で中断することができることに留意する。さらに、少なくとも好ましい実施形態では、コーティング剤及び硬化剤の両方は、比較的安全であり、環境的に許容可能であり、取り扱いが容易である。それらは、好ましくは、非毒性であり、危険でなく、貯蔵中又は使用中に不燃性であり、非腐食性であり、一般にヒト及び動物に無害である。コーティング剤自体は水溶性であり、硬化剤で処理する前は生分解性である。
【0010】
コーティング剤は、ココナッツ油由来の脂肪酸(「ココナッツ脂肪酸」とも呼ばれる)の1つ以上の塩を含む。本発明者らによって試験された(以下にさらに詳細に記載される)いくつかの特定の実施形態では、コーティング剤は、ココナッツ脂肪酸に由来する石鹸を含み得る。本発明者らによって使用されている市販のココナッツ脂肪酸は、48%のラウリン酸、16%のミリスチン酸、4%のステアリン酸、及び他の脂肪酸の混合物(4~10%カプロン酸、3~12%オレイン酸、最大3%リノレライジン酸、5~13%パルミチン酸及び4~8%カプリル酸)の残部を有することを特徴とする。
【0011】
ココナッツ油に由来する脂肪酸の塩は、粘着性かつ頑強であり、コーティング剤が適用される大量の土壌の全体にわたって均一に土壌粒子をコーティングすることが分かっているので、本発明での使用に特に適していることが本発明者らによって示されている。そのアルミニウム塩も完全に不溶性である。
【0012】
いくつかの実施形態では、脂肪酸の1つ以上の塩は、脂肪酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩であり得る。脂肪酸石鹸は潤滑性を有し、本発明者らは、それが圧縮中にゾル粒子の互いに対する移動を促進することによって、大量の土壌の圧密化に有意に寄与し得ると考える。以下に記載されるように、ココナッツ油由来の脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩の使用は、いくつかの実施形態では、1つの塩のみを単独で使用した場合よりも、試薬の優れた特性を提供することが見出された。
【0013】
硬化剤は、ココナッツ脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができ、それによって硬化生成物(すなわち、土壌粒子を組み込む)が最終的に形成される、1つ又は複数の金属塩を含む(又は、いくつかの実施形態では、それからなる)。本発明者らは、硬化生成物を形成するための、コーティング剤と硬化剤と(したがって、同伴された土壌粒子と)の間の反応は、瞬時に起こるのではなく、パテ状の稠度を有する中間生成物を介して起こることを見出した。この期間中に土壌を圧縮することで、空気及び水に代えて、中間生成物を土壌粒子間の間隙空間に押し込み、その後硬化させる。硬化生成物は、実験室の内外の両方で、顕著な硬度、耐水性及び耐久性を有することが本発明者らによって見出された。実際、以下に記載されるデータは、本発明の実社会での適用可能性を明確に実証する。
【0014】
いくつかの実施形態では、硬化剤は、アルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムを含み得る。コーティング剤がココナッツ脂肪酸のカリウム塩及びナトリウム塩の混合物を含む実施形態では、例えば、コーティング剤が適用された大量の土壌を金属塩溶液で処理すると、コーティング剤が不溶性になる。
【0015】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、分散剤をさらに含む液体組成物で提供されてもよい。本発明者らは、例えば、モノステアリン酸エチレングリコールを添加すると、土壌の体積全体にわたる薬剤の分散をさらに促進することを見出した。
【0016】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、2-プロパノールなどのアルコールをさらに含む液体組成物で提供されてもよく、これは、薬剤の流動点を低下させ、貯蔵中に固化するのを防ぐのに役立ち得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、硬化剤が適用される前に、追加の1つ又は複数の材料を大量の土壌に混合する工程をさらに含み得る。典型的には、追加の材料は、コーティング剤が適用される前に大量の土壌に混合され、これは、他の物理的混合工程が行われる可能性が高い場合であるが、必ずしもそうである必要はない。追加の材料は、例えば、以下の材料:細断された廃プラスチック、砂、骨材及び破砕ガラスのうちの1つ以上から選択されてもよい。理解されるように、そのような実施形態は、そうしなければ廃棄物となる材料に有益な利用法を提供することができ、又はさらに安定化された表面をもたらすことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、大量の土壌に石灰を添加する工程をさらに含み得る。そのような添加によって、土壌をさらに安定化し、その機械的特性(特に重粘土による)を改善することができる。
【0019】
本発明は、任意の土壌タイプ、特に粘土質土壌と共に使用することができる。
【0020】
第2の態様では、本発明は、土壌を安定化するためのキットであって、第1の容器と、第2の容器と、を含むキットを提供する。第1の容器は、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含み、土壌に適用されると、土壌中の土壌粒子をコートするコーティング剤を含む。第2の容器は、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含み、土壌に適用されると、コーティングされた土壌粒子を圧密化させ、したがって本明細書に記載の土壌安定化効果をもたらす硬化剤を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の第2の態様のキットは、本発明の第1の態様の方法において使用され得る。
【0022】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法において凝集剤として使用される場合、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と、アルコールと、分散剤と、を含む組成物を提供する。ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ又は複数の塩は、いくつかの実施形態では、本発明の方法の文脈において本明細書に記載される通りであり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明の第3の態様の組成物は、本発明の第2の態様のキットの第1の容器に含まれ得る。
【0024】
本発明の他の態様、実施形態及び利点を以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一般的に言えば、本発明は、道路建設用の土壌基材の調製に特に重点を置いた土壌安定化に関する。本発明はまた、製造が比較的容易で安価であり、土壌安定化を実質的に支援する道路工事などの用途のための液体調合物に関する。
【0026】
したがって、本発明は、大量の土壌を安定化するための方法を提供する。方法は、コーティング剤(後述)を土壌に適用することを含み、それによって土壌中の土壌粒子がコーティング剤でコートされ、次いで、コーティング剤と反応することができる硬化剤(後述)を土壌に適用することを含み、その結果硬化生成物が形成される。最後に、土壌を圧縮し、コートされた土壌粒子を圧密化する。
【0027】
本発明の方法は、本明細書では、主として、道路基層又は道路補助基層を画定する(例えば、それらとして使用される)大量の土壌を安定させるために使用される状況で説明される。しかしながら、方法は、多種多様な土壌処理及び安定化状況において同様の効果を得るために使用されてもよいことを理解されたい。例えば、この方法は、シールされた駐車場、車道、空港、滑走路、運動場、テニスコートなどの準備に有用であり得る。
【0028】
さらに、本発明はまた、舗装で覆われる必要はないが、それでも未処理の表面によって提供され得る耐久性よりも高い耐久性を必要とする表面を安定化するために使用され得る。そのような表面の例には、路肩、泥又は「シールされていない」奥地及び側道、シールされていない駐車場、シールされていない滑走路、集約的な牛の餌場、ごみチップ、貯水池、ダム、運河、堤防などが含まれる。実際、本発明者らは、本発明が土壌安定化が必要とされるか又は有益となるあらゆる状況において有用性を有すると予想している。
【0029】
上述したように、本発明は、大量の土壌(例えば、道路基層又は道路補助基層を画定する大量の土壌)を安定化させるための方法を提供する。方法は、コーティング剤(例えば、コーティング剤を含む液体組成物)を、薬剤が適用された大量の土壌中の土壌粒子が薬剤によってコートされるように土壌に適用することを含む。続いて、硬化剤が土壌に適用され、硬化剤はコーティング剤と反応することができ、この反応が土壌粒子のコートされた塊を硬化させる。これらの反応が進行している間に土壌を圧縮すると、(土壌粒子間の間隙空間に存在する空気及び水が移動するように)コートされた土壌粒子が圧密化され、最終的に、例えば道路基層又は補助基層として使用するのに適した安定化土壌が作製される。
【0030】
本発明は、硬い、水不透過性基材へと変わる劣悪な粘土質土壌での使用に特に適している。本発明は、処理した土壌の水の、制御されなければ土壌粒子の分離を引き起こし、圧力下で粒子の流体流をもたらし得る、毛管上昇の流入に耐える能力を改善する。処理された土壌は、高荷重条件下でも、さらに水分が存在する場合でも、でもその耐荷重能力を維持することが分かった。
【0031】
本発明の方法の特徴及び結果として生じる土壌安定化効果は、以下でさらに詳細に説明される。
【0032】
コーティング剤
コーティング剤は、ココナッツ油由来の脂肪酸(本明細書では「ココナッツ脂肪酸」とも呼ばれる)の1つ以上の塩を含み、薬剤が適用される大量の土壌中の有意な割合の土壌粒子をコーティングすることができる任意の形態で提供され得る。コーティング剤のレオロジー特性によって、コーティング剤が土壌粒子上を流れ、したがって大量の土壌の大部分にわたって分散することができる。薬剤はまた、靭性を有し、それは、土壌粒子がその上に薄いコーティングを保持することにつながる。
【0033】
コーティング剤はまた、硬化するか、固化するか、又は他の方法で本明細書に記載の機能的効果及び土壌安定化をもたらすために、硬化剤と反応することができなければならない。土壌粒子の圧密化を引き起こすために硬化剤と反応するのは、主にコーティング剤である。
【0034】
コーティング剤は、液体又は固体の形態で、土壌に適用する準備ができている形態か、又は適用前に液体に希釈若しくは分散することを要する濃縮形態で提供されてもよい。
【0035】
天然油由来の脂肪酸は、比較的一貫した脂肪酸の混合物を含む傾向がある。1つの脂肪酸のみを含むコーティング剤が有効であり得るが、本発明者らは、脂肪酸の混合物を含むコーティング剤がより良好な機能性を付与し、例えば粘着性が増す、取り扱いが容易になる、より迅速に硬化することを見出した。
【0036】
本発明のコーティング剤は、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含む。このような脂肪酸は、少なくともラウリン酸、ミリスチン酸及びステアリン酸の混合物を含む。ココナッツ脂肪酸は、自由流動性で比較的粘着質であり、そのアルミニウム塩は完全に不溶性であるので、特に適していることが分かっている。
【0037】
本発明の有用性が悪影響を受けない限り(例えば、溶解性又は毒性の問題などのために)、本明細書に記載の脂肪酸の任意の塩を使用することができる。典型的には、脂肪酸の1つ以上の塩は脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩であり、これらは工業で一般的に使用される塩である(ナトリウム又はカリウムの脂肪酸塩は脂肪酸石鹸と呼ばれることが多い)。本発明者らは、ココナッツ脂肪酸の石鹸が大量の土壌に潤滑性を付与し、これが、上記のように、圧縮中にゾル粒子の互いに対する移動を促進するので、大量の土壌の圧密化に寄与し得ることを見出した。
【0038】
いくつかの脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩の組み合わせの使用は、状況によっては、本発明が使用される土壌のタイプに応じて有利であり得る。例えば、ココナッツ脂肪酸のナトリウム石鹸のみを使用すると、比較的柔らかく、ココナッツ脂肪酸のナトリウム石鹸とカリウム石鹸との混合物と比較した場合に、一部の土壌タイプの土壌粒子をしっかりと保持することができない石鹸が生成される。一方、ココナッツ脂肪酸のカリウム石鹸は、濃縮形態である場合、塊状になることがあり、ココナッツ脂肪酸のナトリウム石鹸とカリウム石鹸との混合物と同様には分散しない可能性がある。コーティング剤の最も適切な形態を決定するために、所与の場所からの土壌サンプルを使用して実験室ベースの試験を実施することは、当業者の能力の範囲内である。
【0039】
典型的には、コーティング剤は、大量の土壌に適用される液体組成物の一部を形成する。典型的な業界の慣例と一致して、そのような液体組成物は、しばしば「パートA」液体組成物と呼ばれる(硬化剤は「パートB」組成物である)。そのような実施形態では、液体組成物は、コーティング剤からなり得るか、又はコーティング剤を含み得、組成物に有利な機能性を付与し得る他の成分と組み合わせてもよい。
【0040】
そのような実施形態では、液体組成物中の1つ又は複数の脂肪酸の塩の割合は、約10%(w/w)~約100%(w/w)程度の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、脂肪酸塩は、液体組成物の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%(w/w)を構成し得る。典型的には、脂肪酸塩は、液体組成物の10~30%、例えば15~25%又は17~22%を構成する。そのような実施形態では、液体組成物中の脂肪酸塩の割合は、液体組成物の約15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%又は22%(w/w)であり得る。
【0041】
上記のように、コーティング剤を含むパートA液体組成物はまた、コーティング剤の機能性に悪影響を及ぼさない限り、追加の成分を含んでもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、パートA液体組成物は、アルコールをさらに含み得る。コーティング剤にアルコールを添加すると、薬剤の流動点の低下、及び貯蔵中の固化の防止などの有益なレオロジー効果を提供することができる。適切なアルコールには、2-プロパノール及びエタノールが含まれる。存在する場合、パートA液体組成物中のアルコールの割合は、約1%(v/v)~約3%(v/v)程度の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、液体組成物は、約1%、1.5%、2%、2.5%又は3%(v/v)のアルコールを含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、パートA液体組成物は、分散剤をさらに含み得る。分散剤の添加は、処理される大量の土壌へのコーティング剤の分散効率を上げるなどの有益な効果を提供し得る。適切な分散剤としては、例えば、モノステアリン酸エチレングリコール、アルコールエトキシレート及びソルビタンモノステアレートが挙げられる。存在する場合、パートA液体組成物中の分散剤の割合は、約1%(v/v)~約4%(v/v)程度の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、液体組成物は、約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%又は4%(v/v)の分散剤を含み得る。
【0044】
硬化剤
硬化剤は、コーティング剤でコートされた土壌粒子が、それらが圧縮されて硬化したことによって最終的に圧密化されるように、コーティング剤と反応することができる。硬化剤は、コーティング剤との反応を引き起こし、コートされた土壌粒子の周りに固化生成物を生成し、それによって土壌粒子が圧密化される形態、量及び条件で提供される。その後土壌を圧縮すると、本明細書に記載の土壌安定化効果が生じる。
【0045】
硬化剤は、土壌粒子を含む安定化された塊が形成されるように、上記の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含む。硬化剤がココナッツ油由来の脂肪酸の石鹸を含む場合に非常に有効であることが本発明者らによって見出された金属塩は、例えばアルミニウム塩、特に硫酸アルミニウム(容易に入手可能であり、比較的安価で環境に優しいだけでなく、非常に可溶性である)である。
【0046】
硬化剤は、典型的には「パートB」液体組成物の形態で提供され、土壌に別々に適用される(以下でさらに詳細に説明するように)。硬化剤は、早発の反応を防止するために、コーティング剤とは別に貯蔵する必要がある。同じ装置を使用して2つの薬剤を適用する場合、装置を十分に洗浄するように注意しなければならない。パートB液体中の硬化剤の濃度は、通常、パートA:パートBの単純な体積比が現場で利用されるように選択される(例えば、2部の「パートA」及び1部の「パートB」)。
【0047】
この場合も、硬化剤は、希釈及び土壌への適用の準備ができた濃縮液体又は固体形態で提供され得る。
【0048】
追加の材料
いくつかの実施形態では、有益な効果を提供し、本発明の性能に悪影響を与えないのであれば、1つ又は複数の追加の材料(反応性又は非反応性)を本発明の方法に組み込むことが有利であり得る。
【0049】
そのような土壌は、増強された強度又は他の特性(例えば耐水性)、増加した嵩及び/又は摩擦特性を有し得る。しかしながら、土壌に追加の材料を組み込むことの利点は、単に、そうしなければ埋め立て地に行くことが予定される製品を有益に再利用することができることであり得る。追加の材料の例には、細断された廃プラスチック、砂、骨材及び破砕ガラスが含まれる。
【0050】
追加の材料は、例えば、土壌に取り込まれるようにするために、硬化剤が適用される前に大量の土壌に混合されてもよい。しかしながら、追加の材料は、典型的には、その後に適用されるコーティング剤が大量の土壌全体にわたって均一に分散されることを確保するために、コーティング剤が適用される前に大量の土壌に混合される。
【0051】
いくつかの実施形態では、土壌をさらに安定化し、(特に重粘土による)その機械的特性を改善するのを助けるために、大量の土壌に石灰を添加することができる。
【0052】
コーティング剤を含む液体組成物の土壌への適用
本発明の方法の一実施形態では、コーティング剤を含む「パートA」液体組成物は、例えば、土壌中の土壌粒子がコーティング剤でコートされるように、土壌に適用することができる。
【0053】
パートA液体組成物は、コーティング剤を土壌粒子と接触させるのに効果的な任意の方法で土壌に適用され得る。建設現場の性質及び現在利用可能な装置を考慮すると、組成物を土壌の上に噴霧することは、本発明者らが現在最も実用的であると考えている方法である。
【0054】
本発明者らは、パートA組成物(及び、実際には硬化剤)を噴霧するための適切な装置は、噴霧として表面上に液体を均一に分配することができる水ドーリー(好ましくはポンプを装備している)であることに注目する。使用時には、十分な水を水ドーリーに入れ、コーティング剤(他)を現場の土壌に適切な、実験室試験(後述)によって決定された量で添加する。次いで、水を添加してパートA組成物を構成する(汚染又は早発反応を防止するために、水は塩、酸及び有機物を含んではならない)。ドーリー内で混合した後、液体を土壌の上面に可能な限り均等に噴霧する。噴霧は、理想的には端から中心に向かって行われるべきであり、適度に均一な適用範囲が達成されるまで行われるべきである。
【0055】
パートA組成物は、「そのまま」土壌に適用されてもよく、又は組成物が適用される前に大量の土壌が攪乱されてもよい。例えば、道路基層建設では、本発明者らは、処理されるべき土壌が最初に詰められるか又は放たれ、次いでパートA組成物が噴霧されることを想定する。処理の前に既存の道路基層を破る又は引き裂くために、例えば、土かき器及びブレードを備えたモーターグレーダーを使用することができる。いくつかの実施形態では、処理される領域を、プロジェクトに必要とされる正確な線及びレベルにならしてもよく、その後、土壌は掻き取られて粉砕される。
【0056】
一旦適用されると、パートA組成物は、大量の土壌中に簡単に沈むことができ、あるいは、組成物は、大量の土壌中に物理的に混合されてもよい。そのような混合は、大量の土壌の全体にわたるコーティング剤(及び任意の他の成分)のより均一な分布を確実にし、これは有益であり得る。ここでも、道路建設環境では、粉砕機/ミキサー(例えば、パルビミキサー(pulvimixer))又は他の適切な粉砕装置(例えば、ディスクプラウ)を使用して、噴霧後にコーティング剤(及び硬化剤)を土壌に混合することができる。
【0057】
コーティング剤(又は硬化剤)が固体形態又は濃縮物として提供される実施形態では、方法はまた、土壌への適用前にコーティング剤を一定量の水に混合する(すなわち、パートA組成物を製造するための)工程を含む。
【0058】
硬化剤を含む液体組成物の適用
本発明の方法では、コートされた土壌粒子に硬化剤を適用し、最終的に土壌粒子を硬化塊に凝結させる。
【0059】
コーティング剤について上述したものと同様に、硬化剤は、大量の土壌の上部に噴霧され、続いて大量の土壌に物理的に混合され得る。そのような適用によって、大量の土壌の全体にわたる実質的な均一性、したがって一貫した構造特性を確実にする。
【0060】
特定の実施形態では、例えば、溶液は、硬化剤を所定量の水(例えば、以下に記載される実験室研究から計算される)に添加することによって、別のドーリーで調製されてもよい。次いで、硬化剤を含有する「パートB」液体組成物を可能な限り均一に土壌に適用する。このドーリーがコーティング剤の適用に使用されるものと同じである場合、スプレーノズルの詰まりをもたらすであろう溶液間の化学反応を避けるために、各溶液での使用間に慎重に洗い流さなければならない。次いで、パルビミキサー(pulvimixer)を再び使用して、硬化剤を土壌/安定化試薬混合物にブレンドしてもよい。
【0061】
次いで、土壌の最終含水量検査を行うことができる。水分含有量が高い場合、土壌に通気することができ、一方、水分含有量が低い場合、水を添加することができる。好都合には、過剰な硬化剤は有害ではなく、コーティング剤のすべてが効果的に処理されることを確実にするので、添加される水はさらなるパートB溶液の形態であってもよい。
【0062】
方法は、コートされた土壌粒子に硬化剤が適用された後に大量の土壌を圧縮することをさらに含む。そのような圧縮は、任意の適切な装置を使用して達成することができる。例えば、静的又は振動性の様々な重量のシープスフートローラーを使用して、最終的な整地の前に土壌を圧縮することができる。最終平滑化は、ゴム製のタイヤ付きローラーによって達成することができる。任意の非自動化装置を受け入れて作動させるのに十分な動力を有する、タイヤ付きトラクターが非常に推奨される。
【0063】
実行する場合、圧延操作は、端に沿って開始し、長手方向に進行するべきであり、それぞれの通行は、ローラーが各通行において、道路中心線に平行して先の通行の幅の少なくとも半分を均等に覆うように、平行に作用し、真っ直ぐに引き伸ばしながら中心に接近し、内端から外端に湾曲して引き伸ばす。圧延へのアクセスが不可能であるか、又はローラーの使用が推奨されない地域では、特別なランマーによって圧縮が達成されるべきである。
【0064】
完成した層は、突出、窪み又は轍がなく均一でなければならない。これらの条件が満たされていない場合、路面は再び掘り起こされ、粉砕され、加湿され、再圧延され得る。このような土壌の再処理は、前述のように粉砕、加湿、及び圧延を適切に考慮する限り、実際にいつでも行うことができる。
【0065】
最終的な表面仕上げは、放たれた材料又は小さな積層を残すことなく、切削操作のみで作業するモーターグレーダーを使用して行われるべきである。ゴム製のタイヤ付きローラーで圧延を完了する。完成した路面に対する研磨作用を最小限に抑えるために、必要に応じて適切な摩耗層(すなわち、仕上げ層)を適用することが推奨される。
【0066】
土壌の事前試験及び評価
本発明を使用した土壌安定化は、土壌の既存の特性を向上させて、道路基層又は補助基層の要件をより良好に満たすことができる新しい現場材料を作り出す。しかしながら、特定の場所に適用する前に、試験を行って必要な処理の割合を決定するべきである。
【0067】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、土壌粒子のアニオン性と静電的に結合する試薬のカチオン性によって改善された工学的特性が生じ、その結果、土壌中の粒子(特に粘土粒子)の圧密化が生じると予想している。実際には、粘土粒子は凝集して塊になり、それらは一緒に「かたまる」か、又は凝集してより大きな凝集物になる。これに照らして、本発明の方法を実施する前に、処理される土壌中の粘土、シルト、砂及び砂利の割合を考慮すべきである。
【0068】
土壌の凝集収縮、膨潤及び圧縮性は、アッターベルグ限界及び最大乾燥圧縮強度によって示されるように、主として粘土画分の量及び特性に関連する。アッターベルグ限界は、材料が固体、半固体又は流体として作用する水分の範囲を提供する。したがって、コーティング剤及び硬化剤の添加の最適な比率は、粒径分布(粘土対シルトの比)及びアッターベルグ限界基準に基づくことができる。
【0069】
したがって、大量の土壌に対して本発明を実施する前に、通常、土壌自体を特徴付けることが必要であろう。土壌調査は、作業現場の位置及び土壌タイプの分布及び土壌中に存在する水分環境に関する情報を提供する。各土壌タイプの代表的なサンプルを実験室試験のために収集することができ、それらのプロファイルは標準的な土壌手順を使用して調製される。土壌プロファイルの各レベルについて適切に工学的特性を特徴付けるのに十分なサンプルを採取すべきである。
【0070】
例示的な手順は、粒径分布、塑性限界及び液体限界(すなわち、アッターベルグ限界)及び負荷に対する耐性(例えば、California Bearing Ratio(CBR))などの格付試験、並びにプロクター試験を使用した水分密度関係の確立を含む。プロクター試験では、天然土壌材料の最大乾燥密度及び最適含水量が得られる。Texas’Triaxialなどの他の試験手順は、材料を特徴付けるのに有用であり得る。
【0071】
また、pH、塩分及び有機物含有量などの値を決定するための試験は、有害成分の存在を検出するために、そのようなことが必要であれば、有用であり得る。
【0072】
さらに、本発明の方法に従って処理された土壌のサンプルも、土壌の改善された耐荷重性、耐水性又は他の強化された特性の基準を提供するために試験することができる。強度試験(CBR又はTexas Triaxialなど)を行って、必要な改善が達成されたことを検証することができる。特に、California Bearing Ratio(CBR)は、当技術分野で周知の試験であり、浸透に対する材料の耐性の基準として一般的に使用される。
【0073】
提案された慣例の定量的試験を実施する前に、最小適用量を確認するために、コーティング及び/又は硬化剤の有効性の定性的評価を実施することが適切であるとも考えられ得る。これは、未処理材料と処理材料の両方をプロクター型の成形金型で成形し、標本を24時間乾燥させ、次いでそれらを約25mmの水に入れることによって効果的に実行することができる。
【0074】
例えば、修正プロクター試験では、土壌サンプルを様々な割合のコーティング剤及び硬化剤で処理し、次いで円筒形状へと圧縮することができる。次いで、未処理サンプルと共に、これらを水の皿に入れる。典型的な試験では、未処理のサンプルは急速に飽和し、皿の水の底に沈む。
【0075】
処理されたサンプルの安定性を使用して、添加剤の正しい割合を決定することもできる。例えば、試験標本が安定したままであり、破損に対するある程度の耐性を示し、最適値付近の内部水分含有量を有していれば、満足できる結果が達成される。試験サンプルを水中に配置する場合、得られた毛細管上昇と、あらゆる種類の軟化、膨潤、亀裂又はサンプルの劣化とを比較する必要がある。
【0076】
土壌が高い粘土濃度を有する場合、それらは混合することが困難である可能性があり、評価可能な特性の変化により、必要なコーティング剤(及びそれに対応する硬化剤)の量が増加し得ることに留意されたい。実際には、例えば、コーティング剤及び硬化剤のみを使用して、約50を超える液体限界を有する粘土質土壌を安定化することは不可能であり得る。しかしながら、カルシウムスラリーによる前処理(改質)後にそのような重粘土を安定化することが可能であるべきであり、したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、土壌の可塑性を低下させ、土壌の使用可能性を高める適切な前処理又は土壌調整工程を含むことができる。
【0077】
現場で本発明の方法を適用する準備が整ったら、選択されたスポットにおける自然水分レベルを決定すべきである。これは、Speedy試験によって、又は他の適切な試験装置を用いて行うことができる。次いで、添加されるべき水の量は、パーセンテージとして表され、先に行われた実験室研究(プロクター試験)に基づいて、最適値から自然含水量を差し引くことによって決定され得る。
【0078】
処理される土壌の総体積は、予定される処理の深さを考慮して現場の計算から決定してもよい。次いで、乾燥土壌の総質量を、全体積及び最大乾燥見かけ比重に基づいて、プロクター試験によって提供されるように計算する。次いで、添加されるコーティング剤及び硬化剤のパートA及びパートB溶液の総量を、最適含水量と自然含水量との間の差を利用して、その数値に上記で決定された処理される土壌の総質量を掛けることによって決定することができる。これは、以下の式によって便利に表すことができる。
必要な総水量=10(D×T)[(R-M)/100]リットル/sq.m
式中、
D=土壌の密度(トン/立方メートル)
T=舗装厚(メートル)
R=パーセントで表される最適含水量
M=土壌の含水量パーセント(実地試験)
【0079】
このようにして添加されるべき総水量が得られる場合、それは好ましくは60:40の比で2つの部分に分けられる。第1の部分は、コーティング(すなわちパートA)剤を添加するためのビヒクルであり、第2の部分は、硬化(すなわちパートB)剤を添加するためのものである。
【0080】
各それぞれの部分に添加される濃縮コーティング剤及び硬化剤(例えば、粒状塩として)の量は、実験室分析から以下のように決定される。
コーティング剤の量=10(D×T)[C/100]リットル/sq.m
式中、
C=実験室報告から要求される濃縮コーティング剤/硬化剤のアドオンパーセンテージ
D=土壌の密度(トン/立方メートル)
T=舗装厚(メートル)
【0081】
コーティング剤の当量重量の約20%に相当する量の硬化剤が効果的であることが分かった。
【0082】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。例示された方法は、Redox Chemicalsなどの供給業者から供給されたココナッツ脂肪酸であり、ラウリン酸、ミリスチン酸及びステアリン酸を主成分として含む、本発明者らが「CB230419」と呼ぶコーティング剤を含むパートA液体を利用する。次いで、以下に記載されるように、ココナッツ脂肪酸とアルカリ(これらの例では、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム)とを分散剤及びアルコールを用いて混合することによって、A部液体中に脂肪酸石鹸を生成することができる。
【0083】
パートA液体に含まれるこのコーティング剤は、土壌基材上に直接注入又は噴霧されてもよい。(パートAの石鹸と反応して不溶性アルミニウム石鹸を生成する)硫酸アルミニウムの形態の硬化剤を含むパートB溶液で処理した後、得られたパテ状組成物は、土壌基材を安定化し、一旦圧縮及び圧密化すると不浸透性にする効果を有し、それによって(後に構築される)路面の下の安定した防水層を効果的に提供する。このような処理によって、土壌を構成するグレイン又は粒子を圧密化し、水の有害な影響から保護する。
【0084】
処理された土壌層は、土壌の膨張を減少させ、その耐荷重能力を増加させることによって、通行による荷重に耐えるのに十分強い支持能力を獲得する。最も重要なことに、本発明者らは、これらの特性が経時的に変化しないことを見出した。
【0085】
2つの例示的なパートA調合物を形成するための組成及び方法を以下の表1に示す。
【表1】

【表2】
【0086】
必要に応じて、さらなる水酸化ナトリウムを、適切には50%溶液の形態で添加することによって、pHを8.5~9.0の範囲に調整してもよい。適切な染料は、約0.001%w/wのブリリアントブルーFCF Supraである。
【0087】
上記の方法に従って製造されたコーティング剤を含む濃縮パートA液体調合物の特性は、以下の通りである。
20℃でのpH 8.5-9.0
外観 真珠光沢性液体
密度、kg/Lat 20℃ 1.015 典型的
45℃における粘度(フォードカップNo4) 10~13秒
水への溶解性 完全
エチルアルコールへの溶解性 不溶性(最大1%)
0.5%溶液中の表面張力 31.7ダイン/cm
A1(SO溶液による試験 沈殿物の形態
(硬化剤:A1(SO:HO=1:1:1)
【0088】
本発明はまた、土壌を安定化するためのキットであって、第1の容器と、第2の容器と、を含み、
第1の容器が、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含み、土壌に適用されると、土壌中の土壌粒子をコートするコーティング剤を含有し、
第2の容器が、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含み、コートされた土壌粒子に適用されると、コートされた土壌粒子を圧密化させる硬化剤を含有する、キットに関する。
【0089】
本発明はまた、本明細書に記載の本発明の方法で使用される場合、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と、アルコールと、分散剤と、を含む組成物に関する。脂肪酸の1つ以上の塩、アルコール及び分散剤は、例えば、本発明の方法に関連して上述したものであってもよい。組成物は、例えば、上述の方法におけるコーティング剤として使用され得る。
【0090】
脂肪酸又は天然油の可溶性石鹸を含む安定化試薬が、土壌(舗装が利用されていない場合)又は土壌基材(必要に応じて路面を敷設する前に)に適用される、車道などの建設用の土壌の安定化方法が本明細書に記載される。その場合、安定化試薬を現場で金属塩を含む中和溶液で処理して不溶性にする。
【0091】

本発明による具体的な実施形態の例をこれから説明する。
【0092】
例1
以下の例は、本発明による濃縮パートA液体用の様々な調合物を示す。すべての実施形態において、パートBの液体調合物は硫酸アルミニウムを含んだ。
【表3】
【0093】
調合物Eを有し、上記のプロセス工程に従って製造された濃縮液体道路基層安定化試薬を、広範囲のオーストラリアの土壌サンプルに対して様々な標準手順を使用して試験した。5kgの土壌サンプルをオーストラリア中の様々な場所から得た。これらの実験室試験のいくつかの結果を以下に示す。
【表4】

【表5】

【表6】
【0094】
いずれの場合も、土壌本来の安定性及び道路基層に適した値をはるかに上回る土壌のCBRによって測定されるように、満足な土壌の安定化が生じたことが分かる。
【0095】
例2
屋外試験を、オーストラリア、シドニー地方のシールされていない道路基層で行った。水で希釈した、上記表1に記載の調合物2の形態のコーティング剤を有するパートA組成物、及び水に溶解した硫酸アルミニウムを含むパートB組成物を上記の方法で道路基層に適用し、3日間放置し、その間に全く絶え間ない降雨を経験した。
【0096】
次いで、道路基層の3つの部分(道路の左側及び右側並びに中央)を、表面の相対的な強度及び安定性の指標を提供する標準的なコーン貫入試験(CPT)を使用して試験した。針入度計の結果を以下の表2に示す。
【表7】
【0097】
見ての通り、本発明に従って処理された道路の中央及び右側は、処理された深さ、さらにその下にわたって非常に類似した強度を示した。道路の左側は処理された深さの方が弱く、本発明者らは、この側が道路の中央及び反対側ほど最適に処理されなかった可能性が最も高いと考えている。
【0098】
表2のデータは、本発明に従って処理した道路基層が、陰性対照(すなわち、未処理の道路)よりも有意な強度の増加を有することを明確に実証している。具体的には、150mmの深さでは、適切に処理された道路の領域は、未処理の道路に対して100%の強度改善を示し、300mmの深さでは、適切に処理された道路の領域は、未処理の道路に対して400%の強度改善を示し、300mmを超える深さでは、適切に処理された道路の領域は、未処理の道路に対して200~300%の強度改善を示した。
【0099】
本発明に従って調製された道路基層の耐水性を試験したこの試験は、上記のように、3日間の全く絶え間ない降雨の後に行われ、道路強度に対するその抵抗の衝撃はデータに明確に見られる。
【0100】
本発明の実施形態は、大量の土壌を安定化するための方法を提供し、以下の利点のうちの1つ以上を有することができる。
・本発明の方法を利用することによって、時間及び費用の大幅な節約を達成することができる。一般的に言えば、必要とされる装置及び人員が減る。プロセスは適用が容易である。
・安定化された土壌の防水性は、特に多雨地域において道路基層の寿命の改善をもたらす。
・砂質土基層における道路の滑り(液化)の減少。
・作業は、最終結果に影響を与えることなく多くの段階で中断することができる。処理層は、状況に応じて取り出して交換することができる。
・利用される製品は、一般に安全であり、環境的に許容可能であり、取り扱いが容易である。それらは、一般に、非毒性であり、危険でなく、貯蔵中又は使用中に不燃性であり、非腐食性であり、一般にヒト及び動物に無害である。コーティング剤自体は水溶性であり、硬化剤で処理する前は生分解性であり得る。
・薬剤を濃縮形態で出荷し、現場で希釈することができるため、輸送コストが最小限に抑えられる。
【0101】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができることは、本発明の当業者には理解されよう。
【0102】
本明細書で言及される任意の先行技術の刊行物は、その刊行物が当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することの承認を構成しないことを理解されたい。
【0103】
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の説明では、文脈が上、明示的な言語又は必要な含意により他の意味に解釈すべき場合を除いて、「含む(comprise)」という単語又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は包括的な意味で使用され、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大量の土壌を安定化するための方法であって、
ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含むコーティング剤を前記土壌に適用する工程であって、前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸及びステアリン酸の塩の混合物を含み、それによって前記土壌中の土壌粒子が前記コーティング剤でコートされる工程と、
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含む硬化剤を前記土壌に適用する工程であって、そこで硬化生成物が形成される工程と、
前記土壌を圧縮する工程であって、それによって前記コートされた土壌粒子が圧密化される工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記大量の土壌が、前記コーティング剤が適用される前に攪乱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング剤が、前記大量の土壌の上部に噴霧される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング剤が前記大量の土壌に物理的に混合される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング剤が、前記土壌への適用前に一定量の水に混合される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記硬化剤が、前記大量の土壌の上部に噴霧される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化剤が前記大量の土壌に物理的に混合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化剤が、前記土壌への適用前に一定量の水に混合される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、前記脂肪酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング剤が、アルコールをさらに含む液体組成物で提供される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコールが2-プロパノールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング剤が、分散剤をさらに含む液体組成物で提供される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記分散剤がモノステアリン酸エチレングリコールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化剤がアルミニウム塩を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記硬化剤が硫酸アルミニウムを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化剤が適用される前に、追加の材料を前記大量の土壌に混合する工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティング剤が適用される前に、前記追加の材料が前記大量の土壌に混合される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記追加の材料が、細断された廃プラスチック、砂、骨材及び破砕ガラスの1つ以上から選択される、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記大量の土壌に石灰を添加する工程をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記安定化された大量の土壌が、道路基層又は道路補助基層を画定する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記土壌が粘土を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
土壌を安定化するためのキットであって、第1の容器と、第2の容器と、を含み、
前記第1の容器が、ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩を含み、前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸及びステアリン酸の塩の混合物を含み、土壌に適用されると、前記土壌中の土壌粒子をコートするコーティング剤を含有し、
前記第2の容器が、前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩と反応することができる金属塩を含み、前記土壌に適用されると、前記コートされた土壌粒子を圧密化させる硬化剤を含有する、キット。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法で使用される場合の、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法でコーティング剤として使用される場合の、ココナッツ油由来の、ラウリン酸、ミリスチン酸及びステアリン酸の塩の混合物を含む脂肪酸の1つ以上の塩と、アルコールと、分散剤と、を含む組成物。
【請求項25】
前記ココナッツ油由来の脂肪酸の1つ以上の塩が、前記脂肪酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記アルコールが2-プロパノールである、請求項24又は請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記分散剤がモノステアリン酸エチレングリコールである、請求項2426のいずれか一項に記載の組成物。
【国際調査報告】