(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】光学的セキュリティ機能を備えた平坦なセキュリティ要素
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20230529BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20230529BHJP
B42D 25/342 20140101ALI20230529BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/324
B42D25/342
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022555739
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2021056474
(87)【国際公開番号】W WO2021185729
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511214727
【氏名又は名称】ヒュック・フォーリエン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】トラスル・シュテファン
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005JB17
2C005KA40
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA09
2H113BB08
2H113BB22
2H113BB32
2H113CA35
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
2H113CA45
2H113CA46
2H113DA04
2H113DA06
2H113DA47
2H113DA49
2H113DA53
2H113DA57
2H113DA58
2H113FA04
2H113FA09
2H113FA43
(57)【要約】
本発明は、第一のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第一の表面領域(1)を含む、光学的セキュリティ機能を備えた平坦なセキュリティ要素(4)であって、前記第一のサブ波長構造を画定する構造要素が、セキュリティ要素(4)の平面に周期的に反復している、前記平坦なセキュリティ要素に関する。製造することが簡単な、少なくとも二つの異なる色の印象によって増強された偽造防止性をもってモチーフを伝えることができるようになるために、第一の表面領域(1)の少なくとも一つの部分領域の第一のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティング(5)を追加的に備えることが企図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第一の表面領域(1)を含む、光学的セキュリティ機能を備えた平坦なセキュリティ要素(4)において、第一のサブ波長構造を画定する構造要素が、セキュリティ要素(4)の平面において周期的に反復するセキュリティ要素(4)であって、第一の表面領域(1)の少なくとも一つの部分領域の前記第一のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティング(5)を追加的に備えることを特徴とする、平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項2】
第一の表面領域(1)に隣接して、非構造化表面領域(3)が存在し、この非構造化表面領域(3)は、サブ波長構造を持たないが、第一の表面領域(1)の少なくとも一つの部分領域と同じ干渉コーティング(5)を少なくとも部分領域において有することを特徴とする、請求項1に記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項3】
第一のサブ波長構造を有する第一の表面領域(1)の他に、第二のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第二の表面領域(2)を含み、ここで、前記の第一の表面領域(1)が前記第二の表面領域(2)に並べて配置されており、及び前記第一及び第二のサブ波長構造を画定しかつセキュリティ要素(4)の平面において周期的に反復する構造要素が、両表面領域間で異なっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の平坦なセキュリティ要素。
【請求項4】
第一のサブ波長構造を有する第一の表面領域(1)の他に、第二のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第二の表面領域(2)を含み、この際、前記第一の表面領域(1)は、前記第二の表面領域(2)に並べて配置されており、及び前記第一及び第二のサブ波長構造を画定しかつセキュリティ要素(4)の平面において周期的に反復する構造要素は、両表面領域において同一であるが、第一の表面領域(1)においては、セキュリティ要素の第一の表面の方に配向しており、そして第二の表面領域においては、前記第一の表面とは反対側のセキュリティ要素の第二の表面の方に配向していることを特徴とする、請求項1または2に記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項5】
第二の表面領域(2)の少なくとも一部の第二のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティング(5)を追加的に備えていることを特徴とする、請求項3または4に記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項6】
第一の表面領域(1)の第一のサブ波長構造及び/または場合により、第二の表面領域(2)の第二のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための二つ以上の異なる干渉コーティング(5)を相並んで有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項7】
少なくとも一つの第一の表面領域(1)が、第二の表面領域(2)に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項2~6のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項8】
第一の表面領域(1)が、第二の表面領域(2)とは隔てって配置されており、この際、第一の表面領域と第二の表面領域との間に、サブ波長構造を持たない非構造化表面領域(3)が存在することを特徴とする、請求項3~7のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項9】
第一及び第二のサブ波長構造を画定する構造要素が、カラム(8、11)または穴を含み、及び第一の表面領域(1)におけるカラム(8、11)の上面の平面が、第二の表面領域(2)におけるカラム(8、11)の周囲表面の平面に一致するか、または第一の表面領域(1)の穴の底の平面が、第二の表面領域(2)における穴の周囲の表面の平面に一致することを特徴とする、請求項3~7のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項10】
干渉コーティング(5)が、少なくとも表面領域(1,2)において、サブ波長構造上に直に施用されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項11】
サブ波長構造の有効深さ(T)が、干渉コーティング(5)の厚さよりも短いことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一つに記載のセキュリティ要素を含むデータキャリアまたはバリュードキュメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第一の表面領域を含む、光学的セキュリティ機能を備えた平坦なセキュリティ要素であって、前記第一のサブ波長構造を画定する構造要素が、セキュリティ要素の平面に周期的に反復している、前記平坦なセキュリティ要素に関する。前記の周期的な反復は、一つの方向で、すなわち一つの次元で起こり得、例えば、構造要素が真っ直ぐな壁を含みそして複数のこのような壁が周期的に並べて配置される時に、起こり得る。前記の周期的な反復は、二つの方向で、すなわち二つの次元で起こり得、例えば構造要素がカラムを含みそして複数のカラムが格子状に配置されるか、または構造要素が窪みを含みそして複数の窪みが格子状に配置される時に、起こり得る。
【背景技術】
【0002】
DE102012015900A1(特許文献1)からは、サブ波長構造を備えた単層型のセキュリティ要素が知られている。すなわち、この平坦なセキュリティ要素は、表面及び裏面から上から見た時にサブ波長構造の故に異なる色の印象を伝える、いわゆる基本要素構造を第一の表面領域において有し、及び第二の表面領域においても同様に、第一の表面領域を鏡に映した形態であるが基本要素構造を有し、それによって、第一及び第二の領域は両面から上から見た時にはモチーフを示すが、透かして見た時はこのモチーフが認識できない。この基本要素構造の実現のためには、今や、第一の変形において、第一の表面領域における格子基本構造及び第二の表面領域における反転格子基本構造が開示される。第二の変形として、相互に反転した干渉コーティングを有する基材が、第一及び第二の平坦要素に示される。
【0003】
それ故、DE102012015900A1(特許文献1)は、相互に反転した基本要素構造を備えた二つ異なる表面領域の故に、上から見た時に、すなわちセキュリティ要素の一つの表面上で反射した時に、二つの異なる色の印象によってモチーフを伝えることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE102012015900A1
【特許文献2】EP1558449A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題の一つは、高められた偽造防止性を有し、簡単に製造でき及びまた、少なくとも二つの異なる色の印象を介してモチーフを伝えることもできる、光学的セキュリティ機能を備えた代替のセキュリティ要素を提供することである。
【0006】
本発明の出発点は、第一のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第一の表面領域を含む、光学的セキュリティ機能を備えた平坦なセキュリティ要素であって、前記第一のサブ波長構造を画定する構造要素が、セキュリティ要素の平面に周期的に反復している、前記平坦なセキュリティ要素である。サブ波長構造によって生じる色の効果を変えるために、第一の表面領域の少なくとも一つの部分領域の第一のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティングを追加的に備えることが企図される。
【0007】
このカラーシフト効果とは、色の印象が観察角によって変化すること、すなわち干渉コーティングが、観察角に応じて色を変化させることである。
【0008】
この追加的な干渉コーティングは、サブ波長構造によって引き起こされる、色効果の更なる変化をもたらす。サブ波長構造及び干渉コーティングに基づいた効果は重なり合うため、その総合的な効果は、他の方法では生じさせることが困難であり、これは、本発明によるセキュリティ要素の偽造防止性を拡大させる。
【0009】
ここでは、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティングとは、特に、薄膜干渉によってカラーシフト効果を引き起こす薄層構成物のことと理解される。薄膜干渉に基づくセキュリティ要素は、例えばEP1558449A(特許文献2)から知られている。以下簡略して干渉コーティングと称する、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティングは、通常は、少なくとも二つの部分層、すなわち誘電層及び吸収体層からなる。誘電層の他方の面、すなわち誘電層に対して吸収体層の反対側にある追加の反射層は、電磁波(ここでは可視範囲の光)を反射し、それ故、干渉効果を増強する。誘電層は、場合により反射層と吸収体層との間の、スペーサー層として役立つ。カラーシフト効果は、吸収体層側から干渉コーティングを見た時に、すなわち光が吸収体層を通して誘電層に当たった時に、発生する。
【0010】
干渉コーティングの誘電層のためには、1.65以下の屈折率を有する誘電性材料、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、金属フッ化物、例えばフッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、酸化ケイ素(SiOx)、二酸化ケイ素(SiO2)、フッ化セリウム(CeF3)、フッ化ナトリウムアルミニウム(例えば、Na3AlF6またはNa5Al3F14)、フッ化ネオジム(NdF3)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化サマリウム(SmF3)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)、低屈折率有機モノマー及び/または低屈折率有機ポリマーなどが考慮される。
【0011】
しかし、干渉コーティングの誘電層のためには、1.65超の屈折率を有する誘電性材料、例えば硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)、炭素(C)、酸化インジウム(In2O3)、インジウム錫酸化物(ITO)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化セリウム(CeO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ユーロピウム(Eu2O3)、酸化鉄、例えば酸化鉄(II,III)(Fe3O4)及び酸化鉄(III)(Fe2O3)、窒化ハフニウム(HfN)、炭化ハフニウム(HfC)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ネオジム(Nd2O3)、酸化プラセオジム(Pr6O11)、酸化サマリウム(Sm2O3)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、一酸化ケイ素(SiO)、三酸化セレン(Se2O3)、酸化錫(SnO2)、三酸化タングステン(WO3)、高屈折率有機モノマー及び/または高屈折率有機ポリマーも考慮される。
【0012】
干渉コーティングの吸収体層としては、金属層を使用することができ、この際、これは、例えば、純粋な金属層であることができ、または金属クラスターを含む層であることができる。好ましくは、吸収体層は、アルミニウム、金、チタン、バナジウム、コバルト、タングステン、ニオブ、鉄、モリブデン、パラジウム、白金、クロム、銀、銅、ニッケル、タンタル、錫及び/またはこれらの合金、例えば金/パラジウム、銅/ニッケル、銅/アルミニウムまたはクロム/ニッケルからなる群の少なくとも一種の金属を含む。
【0013】
干渉コーティングの反射層としては、場合により、金属層を使用することができ、これは、好ましくは、アルミニウム、金、クロム、銀、銅、錫、白金、ニッケル及びこれらの合金、例えばニッケル/クロムまたは銅/アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む。同様に、反射層が、半導体、例えばケイ素を含むことも考慮可能である。最後に、反射層が、金属製顔料、好ましくは先に記載した群からの金属からなる顔料を用いた印刷インキの塗布によって製造されることも考慮可能である。反射層は、既知の方法、例えばスプレー、蒸着、スパッタリングによって、または印刷インキとして、既知の印刷方法(凹版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、デジタル印刷)によって、ラッカー塗布、ロール塗布法、スロットダイ塗布法、浸漬塗布法(ロールディップコーティング)もしくは流し塗り塗布法(カーテンコーティング)及び類似法によって、全面にまたは部分的に施与される。
【0014】
干渉コーティングの反射層としては、いわゆるHRI層(高屈折率層)も使用でき、これは、1.5超の屈折率を有する材料を含む。このようなHRI層は、例えば、1.65以上の屈折率を有する誘電性材料、例えば硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)、炭素(C)、酸化インジウム(In2O3)、インジウム錫酸化物(ITO)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化セリウム(CeO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ユーロピウム(Eu2O3)、酸化鉄、例えば酸化鉄(II,III)(Fe3O4)及び酸化鉄(III)(Fe2O3)、窒化ハフニウム(HfN)、炭化ハフニウム(HfC)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ニオジム(Nd2O3)、酸化プラセオジム(Pr6O11)、酸化サマリウム(Sm2O3)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、一酸化ケイ素(SiO)、三酸化セレン(Se2O3)、酸化錫(SnO2)、三酸化タングステン(WO3)、高屈折率有機モノマー及び/または高屈折率有機ポリマーを含む。これらの材料は、蒸着することができるかまたは印刷(中でも前記のモノマー及びポリマー)することができる。
【0015】
しかし、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティングとしては、暗色の、好ましくは黒色の印刷層または金属被覆と組み合わせたコレステリック液晶層も使用することができる。しかし、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティングとしては、干渉顔料または液晶顔料を用いた印刷層も使用することができる。
【0016】
第一の表面領域の少なくとも一つの部分領域の第一のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティングを追加的に備えるという特徴は、干渉コーティングが、この第一の表面領域を部分的にのみまたは完全に覆うことができることを意味する。第一の表面領域の部分領域のみが干渉コーティングを備える場合には、第一の表面領域において二つの異なる色を認識できる。第一の表面領域全体が干渉コーティングを備える場合には、或る特定の観察角では、この表面領域は一つの色のみで見えるが、これは、異なる観察角では再現が困難である、というのも、これは、少なくとも一つの他の観察角では二つの色に変わるからである。
【0017】
いずれの場合も、本発明は、一つのセキュリティ要素当たり、第一のサブ波長構造を有する複数の第一の表面領域が存在し得ることも含む。このようにして、例えば、複数の別々のパターン要素からなるパターン、または複数の文字からなるレタリングを生成することができる。その際、第一の表面領域の全ての可能な変形、すなわち、干渉コーティングが完全に備えられた一つまたは複数の第一の表面領域、及び/または干渉コーティングが部分的にのみ備えられた一つまたは複数の第一の表面領域が可能である。
【0018】
平坦なセキュリティ要素は、それの長さ及び幅と比べて、短い高さまたは厚さを有する。平坦なセキュリティ要素は、例えば、フィルムまたはプレートであることができる。該平坦なセキュリティ要素は、通常は、一定の高さまたは厚さを有する。該セキュリティ要素の表面及び裏面を形成する第一及び第二の表面は、通常は、平面でありそして互いに並行に配置されている。サブ波長構造は、通常は、セキュリティ要素の平面に対して並行に延びる、すなわち、構造要素の周期的な反復の方向は、セキュリティ要素の平面に対して並行であり、他方で、構造要素自体、例えばカラムまたは窪みは、当然ながら、セキュリティ要素の平面に対して垂直に延びることもでき、通常もそのように延びている。
【0019】
ここで、サブ波長構造とは、少なくともセキュリティ要素の平面において周期的に反復する構造要素から構成され、この際、個々の構造要素の寸法が、使用した光の波長未満である構造のことと理解される。構造要素の周期的反復は、一つの方向で、すなわち一つの次元で行うことができるか、または二つの方向で、すなわち二つの次元で行うことができる。サブ波長構造としては、例えば、(例えばDE102012015900A1(特許文献1)に説明されているように)二次元の周期的カラム構造または二次元の周期的穴構造が知られている。この際、カラムは、層から突き出ており、他方で穴は、層中への凹部によって実現される。それ故、カラムとは、穴に対してネガ形である。この際、カラムまたは穴構造における穴の直径は、照明に使用した光の波長未満であり、通常は、前記の光は可視光である。カラムの高さまたは穴の深さは、或る特定の波長が消失し、そうして反射された(及び場合により透過された)光が、入射光、通常は白色光とは異なる色を有するように選択される。更なる可能性の一つは、追加的にプラズモンを生成し、それ故、光の更なるカラーシフトを達成することであろう。そのためには、サブ波長構造は、薄い金属層を使用して実現される。すなわち、カラム構造の場合には、カラムの上面、及びカラムの底の高さに存在するカラム間の面は、金属層を有し、しかし、製造条件が可能とする場合には、カラムの側面は金属層を持たない。同様に、穴構造の場合には、穴が存在する面及び穴の底は金属層を有するが、製造条件が可能とする場合には、穴の壁は金属層を持たないであろう。
【0020】
サブ波長構造は、通常は、主として、例えばエンボス加工法によって表面にナノ構造が設けられた(例えばUVラッカーからなる)ラッカー層によって形成される。次いで、この構造化されたラッカー層上に、本発明による干渉コーティングが施用される。これが、吸収体層、誘電層及び反射層を含む薄層構成物である場合には、追加的な表面プラズモンを励起するために金属製反射層を使用することができる。任意に、薄い誘電層を、ラッカー層と金属製反射層との間に施用することもできる。
【0021】
例えば干渉コーティングが、誘電及び吸収体層及び反射層を備えた薄層構成物ではない場合に、金属製反射層を利用できない場合には、表面プラズモンの励起のために、干渉コーティングの施用の前に、追加的な金属層をサブ波長構造上に施用することも考えられるであろう。任意に、薄い誘電層を、ラッカー層と追加的な金属層との間に施用することもできる。
【0022】
金属製反射層または追加的な金属層の堆積は、好ましくは、例えば熱蒸着またはスパッタリング堆積によって、指向的に行うのがよい。金属の指向的堆積よって、穴の底にまたはカラム上に小さな金属製ディスクが生じ、他方で、残りの領域には有孔開口フィルムが形成する。小さな金属ディスク及び有孔開口フィルムの電気的分離によって、入射光によって表面プラズモンを励起することができる。表面プラズモンの励起は、特定のスペクトル領域において増強された反射または吸収を引き起こし、これには、着色が伴う。サブ波長構造の追加的な金属層は、Al、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Sn、Inまたはそれらの合金によって構成することができる。
【0023】
干渉コーティングを施用した後は、干渉コーティングでコーティングされたサブ波長構造を、例えばこのサブ波長構造を構成する同じラッカーで満たすことができる。
【0024】
サブ波長構造の周期は200~500nmの範囲であることができ、カラムまたは穴または格子開口部の寸法は100~300nmの範囲であることができる。カラムの高さまたは穴の深さは、30と400nmとの間、特に150~250nmの範囲、例えばおおよそ200nmであることができる。
【0025】
干渉コーティングが、誘電及び吸収体層を備えた薄層構成物である場合には、誘電層は、典型的には、100~500nmの範囲の厚さを有する。吸収体層の厚さは、典型的には5~10nmの範囲である。薄層構成物の任意選択の反射層は、典型的には20~50nmの厚さを有することができる。20nm未満、例えば5~10nmの厚さも考慮でき、しかし、この場合には、反射特性はより小さくなる。干渉コーティングが薄層構成物ではない場合には、表面プラズモンを励起するための任意選択の追加的な金属層は、5~100nmの厚さ、好ましくは40nm未満の厚さ、特に好ましくは20nm未満の厚さ、例えば5~10nmの厚さを有することができる。
【0026】
更に、該セキュリティ要素は、サブ波長構造も干渉コーティングも持たない、一つまたは複数の表面領域を含むことができる。これらには、例えば色及び/または情報を印刷できるか、あるいは他のセキュリティ機能を設けることができる。
【0027】
本発明の実施変形の一つでは、第一の表面領域に隣接して、構造化されていない表面領域が存在し、これは、サブ波長構造を持たないが、第一の表面領域の少なくとも一つの部分領域と同じ干渉コーティングを少なくとも部分領域において有する。すなわち、この際、サブ波長構造を有する少なくとも一つの第一の表面領域と、サブ波長構造を持たない前者に隣接する表面領域とが供され、この際、両表面領域には、部分的に、特に完全に、同じ干渉コーティングが設けられている。すなわち、例えば、少なくとも一つの連続する干渉コーティングが存在し、これが、サブ波長構造を備えた表面領域も、サブ波長構造を備えない表面領域も覆っている。特に、唯一の連続する干渉コーティングが、サブ波長構造の全ての第一の表面領域及びサブ波長構造を持たない全ての表面領域を覆うことができる。この際、前記の唯一の連続する干渉コーティングは、平坦なセキュリティ要素の全面にわたって延在することができる。連続する干渉コーティングは、干渉コーティングを備えた複数の互いに分離された表面領域よりも簡単に製造することができる。
【0028】
相応して多数の及び相応して小さな第一の表面領域及び相応して多数の及び相応して小さな構造化されていない表面領域を使用する場合には、高解像度の二色の画像を生成することができる。
【0029】
本発明の一つの実施変形においては、セキュリティ要素は、第一のサブ波長構造を備えた第一の表面領域の他に、第二のサブ波長構造を備えた少なくとも一つの第二の表面領域を含み、この際、第一の表面領域は、第二の表面領域に並べて配置され、ここで、第一及び第二のサブ波長構造を画定しかつセキュリティ要素の平面において周期的に反復する構造要素は、両表面領域に関して異なっていることが企図される。
【0030】
この場合、或る特定の観察角での入射光においては、三つの異なる色でさえ生成でき、一つは、第一の表面領域の第一のサブ波長構造によるものであり、一つは、第二の表面領域の第二のサブ波長構造によるものであり、そして一つは、第一の表面領域の部分領域における追加的な干渉コーティングによるものである。第一の表面領域全体を同じ干渉コーティングで覆った場合には、或る特定の観察角では、二つの異なる色だけを発現させることができるが、異なる観察角で変化する第一の表面領域の色は再現が困難である。
【0031】
本発明の他の一つの実施変形においては、セキュリティ要素は、第一のサブ波長構造を備えた第一の表面領域の他に、第二のサブ波長構造を備えた少なくとも一つの第二の表面領域を含み、この際、第一の表面領域は、第二の表面領域に並べて配置され、ここで、第一及び第二のサブ波長構造を画定しかつセキュリティ要素の平面において周期的に反復する構造要素は、両表面領域に関して同じであるが、第一の表面領域においてセキュリティ要素の第一の表面に向かって配向しており、そして第二の表面領域においては、第一の表面とは反対側のセキュリティ要素の第二の表面に向かって配向していることが企図される。
【0032】
すなわち、第一の表面領域の第一のサブ波長構造を、セキュリティ要素においてセキュリティ要素の平面に対して平行に延在する平面に鏡映し、次いで、その鏡面に沿って第二の表面領域に移動させると、第二の表面領域の第二のサブ波長構造が得られる。
【0033】
この場合、同様に、入射光に三つの異なる色でさえ生成でき、一つは、第一の表面領域の第一のサブ波長構造によるものであり、一つは、第二の表面領域の第二のサブ波長構造によるものであり、そして一つは、第一の表面領域の部分領域における追加的な干渉コーティングによるものである。
【0034】
第一の表面領域全体を同じ干渉コーティングで覆った場合には、或る特定の観察角では、二つの異なる色だけを発現させることができるが、異なる観察角で変化する第一の表面領域の色は再現が困難である。
【0035】
二つの異なるまたは二つの互いに反転したサブ波長構造を備えた両実施形態の更に別の設計の一つでは、第二の表面領域の少なくとも一つの部分の第二のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティングを追加的に備えることを企図することができる。このようにして、或る特定の観察角では、入射光に最大四つまでの色を生成することができる、なぜならば、第二の表面領域における干渉コーティングの部分的な配置も、第二の表面領域のこの領域において反射光の変化を引き起こすからである。干渉コーティングは、構造の面では、第一及び第二の表面領域に関して同一に設計できる、すなわち同じ光学的挙動を示すことができる。すなわち、例えば、干渉コーティングは、第一及び第二の表面領域を完全に充填することができる。この際、セキュリティ要素は、或る特定の観察角において、それぞれ再現が困難な二つの色を示すだろう。
【0036】
しかし、第一の表面領域における干渉コーティングは、第二の表面領域におけるものとは異なる層構造(例えば、スペーサ層の異なる厚さ)を有し、その結果、第二の表面領域における干渉コーティングが、第一の表面領域のそれとは、異なる光学的挙動及びそれ故、他の色を生成するようにすることもできる。
【0037】
当然ながら、例えば干渉コーティングの異なる層構造に基づいて一つの表面領域当たり応じて異なる色を生成するために、一つの表面領域あたり、すなわち同じサブ波長構造上に、異なる干渉コーティングを並べて施用することもできる。応じて、本発明の一つの実施形態においては、第一の表面領域の第一のサブ波長構造及び/または場合によっては第二の表面領域の第二のサブ波長構造は、カラーシフト効果を生み出すための二つ以上の異なる干渉コーティングを相並んで有することが企図される。「異なる干渉コーティング」という記載は、これらのコーティングがそれぞれ異なる色効果を達成することを意味すると理解される。このためには、異なる干渉コーティングは、同じ原理に従い構築することができ、例えば、これらは、全てが、少なくとも吸収体層及び誘電層を備えた薄層構成物を含むことができるが、誘電層の材料及び/または厚さの点で異なることができる。あるいは、異なる干渉コーティングは、例えば、一つの干渉コーティングが、薄層構成物を含み、他の干渉コーティングが、コレステリック液晶層または干渉顔料もしくは液晶顔料を含む層を含むことによって、異なる原理を使用することができる。
【0038】
(第一のサブ波長構造を有する)少なくとも一つの第一の表面領域が、(第二のサブ波長構造を有する)第二の表面領域に隣接して配置されることを企図することができる。すなわち、第一及び第二の表面領域は、直に相並んで隣接することができ、これは、連続した偽造防止性モチーフの形成を可能とし、または第一及び第二の表面領域は互いから隔てて配置することができ、これは、これらの両表面領域の間に追加的なセキュリティ機能の設置を可能にする。
【0039】
特に、第一の表面領域が、第二の表面領域とは隔てって配置されており、この際、第一の表面領域と第二の表面領域との間に、サブ波長構造を持たない非構造化表面領域が存在することを企図することができる。
【0040】
本発明の一つの実施形態では、第一及び第二のサブ波長構造を画定する構造要素が、カラムまたは穴を含み、及び第一の表面領域におけるカラムの上面の平面が、第二の表面領域におけるカラムの周囲表面の平面に一致するか、または第一の表面領域の穴の底の平面が、第二の表面領域における穴の周囲の表面の平面に一致することが企図される。
【0041】
本発明の一つの実施形態では、干渉コーティングが、少なくとも或る表面領域において、サブ波長構造上に直に施用されていることが企図される。干渉コーティングは、通常は、サブ波長構造上に直に施用される。また、逆に、サブ波長構造が、干渉コーティング上に施用されることもできる。両方の場合において、サブ波長構造と干渉コーティングとの間に更なる層は存在せず、サブ波長構造及び干渉コーティングが互いに直に隣り合っている。しかし、サブ波長構造と干渉コーティングとの間に、一つ以上の更に別の層が存在することも考慮することができる。
【0042】
本発明の一つの実施形態では、サブ波長構造の有効深さが、干渉コーティングの厚さよりも短いことが企図される。有効深さは、構造要素の高さに相当する。カラムの場合は、有効深さはカラムの高さであり、穴の場合は、有効深さは穴の深さである。反射層を持たない薄層構成物の場合には、干渉コーティングの厚さは、誘電層及び吸収体層の厚さの合計に相当する。反射層を持つ薄層構成物の場合には、干渉コーティングの厚さは、誘電層、吸収体層及び反射層の厚さの合計に相当する。
【0043】
本発明によるセキュリティ要素は、通常は、キャリア基材を含み、その上に、サブ波長構造及び干渉コーティングが施用されている。キャリア基材としては、例えば、透明なキャリアフィルム、好ましくはフレキシブルなプラスチックフィルム、例えばポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、単軸配向ポリプロピレン(MOPP)、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエチレンイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリオキシメチレン(POM)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリビニルクロライド(PVC)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びエチレン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フルオロターポリマー(EFEP)からなるキャリアフィルムが考慮される。キャリアフィルムは、透明、半透明、半不透明または不透明であることができる。
【0044】
キャリア基材は、好ましくは7~700μm、特に5~200μm、特に好ましくは5~50μmの厚さを有する。
【0045】
前記サブ波長構造及び干渉コーティングを含む該セキュリティ要素は、セキュリティ要素上に存在するセキュリティ機能を機械的、物理的及び/または化学的影響から保護するために、一方の表面または両表面を表面処理、コーティングまたはラミネートでき、例えばプラスチックでコーティングまたはラミネートすることができるか、またはラッカー塗装されていることができる。保護ラッカー層は、例えば、ニトロセルロース、アクリレート及びそれのコポリマー、ポリアミド及びそれのコポリマー、ポリビニルクロライド及びそれのコポリマーをベースに形成されていることができるか、または架橋ラッカーからなることができる。更に、該セキュリティ要素は、データキャリアまたはバリュードキュメント(Wertdokument)上または中に固定できるようにするために、片面または両面に接着剤層を備えていてよい。この接着剤層は、ホットシールコーティング、コールドシールコーティングまたは自着コーティングの形で設計することができる。
【0046】
この際、サブ波長構造及び干渉コーティングによって形成される本発明によるセキュリティ機能は、セキュリティ要素を形成するために、キャリア基材上に施用することができる。このセキュリティ要素は、次いで、表面処理の前また後にカスタマイズでき、そしてストリップ、スレッドまたはパッチとして、データキャリアまたはバリュードキュメント中に少なくとも部分的に埋設できるかまたはデータキャリアまたはバリュードキュメント上に適用できる。それ故、本発明は、本発明によるセキュリティ要素を有する、データキャリアまたはバリュードキュメント、例えば紙幣も含む。
【0047】
本発明を、本発明によるデバイスの実施例を表す概略的な図面に基づいて更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、干渉コーティングはまだ備えていない、本発明による平坦なセキュリティ要素の上面図である。
【
図2】
図2は、干渉コーティングを備えた、
図1のセキュリティ要素の上面図である。
【
図3】
図3は、断面線A-Aで切り取った、
図2のセキュリティ要素の縦断面である。
【
図4】
図4は、二つのサブ波長構造及び一つの干渉コーティングを備えた本発明のセキュリティ要素の縦断面である。
【
図5】
図5は、二つの相互に反転したサブ波長構造及び一つの干渉コーティングを備えた本発明のセキュリティ要素の縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、ここでは矩形の、平坦なセキュリティ要素4の上面図を示す。第一の表面領域1には、これは第一のサブ波長構造を有する。隣接する表面領域には、サブ波長構造は設けられておらず、これは非構造化表面領域3である。両表面領域1、3の間の境界は、矩形の対角線によって形成される。
【0050】
干渉コーティング5の本発明による機能をセキュリティ要素4に設けるためには、ここでは、セキュリティ要素4の矩形の部分領域において干渉コーティング5を施用するが、セキュリティ要素4の残りの部分には、干渉コーティング5を施用しない。
図2を参照されたい。
図2では、干渉コーティング5は、右側で、セキュリティ要素4の右半分強を覆っている。ここでは、干渉コーティング5は、どこでも同じ特性を有する。すなわち、これは、両表面領域1、3に関して共有の及び同一に設計された干渉コーティングである。すなわち、干渉コーティング5は、どこでも同じ厚さ及び同じ構成を有する。それにもかかわらず、このようにして四つの異なる色効果を達成できる。
【0051】
当然ながら、セキュリティ要素4上には、第一のサブ波長構造を有する一つまたは複数の異なって形成された第一の表面領域1が存在することができ、及び第一のサブ波長構造を有する複数の互いに別れた第一の表面領域1が存在することができ、この際、これらの第一の表面領域1の間及び/またはその周りには、一つの連続的なまたは複数の互いに分かれた非構造化表面領域3が存在することができる。この際、全ての表面領域1、3には同じ連続した干渉コーティング5が設けられていることができ、または一部の表面領域1、3のみが、完全にまたは部分的に連続した全面的な干渉コーティングで覆われていることができる。あるいは、第一の表面領域1のみを完全一致で覆う干渉コーティング5が、複数の互いに分かれた領域に設けられていることができる。あるいは、干渉コーティング5の一つまたは複数の領域は、第一の表面領域1と完全には一致せず、それとは独立したパターンを形成する。
【0052】
図示したセキュリティ要素4は、バリュードキュメントの一部であることができ、例えばバリュードキュメントの一部の面を覆うことができる。
【0053】
図3は、サブ波長構造及び干渉コーティング5の構成を示すための、セキュリティ要素4の縦断面を示す。すなわちここでは、セキュリティ要素4の平面は水平に延びている。第一の表面領域1には、第一のサブ波長構造が設けられている。これは、カラム8からなり、これらは、それぞれ周期Pで二つの方向に周期的に反復している。ここでは、左から右への方向の周期Pのみが、図示面に見ることができる。図示面に対して垂直な方向の周期は、図示面のそれと同じであるかまたは異なることもできる。カラム8の高さは、サブ波長構造の有効深さTに相当する。カラム8は、任意の断面、例えば円形、楕円形、矩形または正方形を有することができる。断面は、製造技術的に可能であれば、カラム8の高さにわたって、最良では、一定であるのがよい。
【0054】
ここでは、第一の表面領域1のサブ波長構造上及び非構造化表面領域3上には、干渉コーティング5が施与され、これは、ここでは、三つの層から構成され; 反射層13は、カラム8の上面9に、カラム8の周りの面10に並びに非構造化表面領域3の表面に直接施用されている。この反射層13上には、誘電層6が施用される。この誘電層6上には、吸収体層7が施用される。任意選択的に、反射層13は無しで済ませることができる。吸収体層7の上には、コーティングまたはラミネートを施用することができる。
【0055】
干渉コーティング5の通常は金属製の反射層13によって、プラズモン効果を励起することもできる。
【0056】
ここでは、光は上からセキュリティ要素に入射し、干渉コーティングと共にサブ波長構造によって引き起こされる色効果は応じて反射光に、すなわち上から見ることができるであろう。光は、(キャリア基材12が透光性の場合は)下からセキュリティ要素に入射することもでき、サブ波長構造によって引き起こされる色効果は同様に応じて反射光中に、すなわち下から見ることができるであろう。しかし、(キャリア基材12が透光性の場合に)透過における色効果は排除されない。
図4は、二つの異なるサブ波長構造を有するセキュリティ要素4の縦断面を示す。第一の表面領域1には、第一のサブ波長構造が設けられている。第二の表面領域2には、第二のサブ波長構造が設けられ、これは、カラム11の高さ及び幅が比較的短いという点で、第一のサブ波長構造と異なっている。これらのカラム11も、それぞれ一つの周期で二つの方向に周期的に反復しており、これらの周期は、図示面において、図示面に対して垂直なものと同一であることができるか、または図示面に対して垂直なものとは異なっていることもできる。第一の表面領域1のサブ波長構造の周期は、第二の表面領域2のそれとは異なっていることができる。サブ波長構造を備えた両表面領域1,2は、サブ波長構造を持たない非構造化表面領域3によって隔てられている。三つの表面領域1~3には全て、同じ干渉コーティング5が設けられている。
【0057】
このようにして、異なる観察角において、最大6つまでの異なる色の印象、すなわち一つの表面領域1~3当たり二つの異なる色の印象を伝えることができる。第一の表面領域1及び/または第二の表面領域2が、干渉コーティング5で完全に覆われていない場合、すなわち
図4において、例えば、更に左または右にある領域が、干渉コーティングを担わない場合には、一つの構造化表面領域1、2当たりで、二つの異なる色の印象を同じ観察角で達成することもできる。
【0058】
しかし、非構造化表面領域3を省略して、第一の表面領域1及び第二の表面領域2を直接互いに隣接させることもできる。また、この場合も他のサブ波長構造を有する更に別の表面領域が設けられていることもできる。
【0059】
図5は、二つの異なるサブ波長構造を有するセキュリティ要素4の縦断面を示す。両サブ波長構造は、同じ構造要素、すなわちカラム11によって構成されるが、この場合は、セキュリティ要素4の平面において二つの方向に周期的に反復するカラム11は、第一の表面領域1においてはセキュリティ要素4の第一の表面の方に配向しており、そして第二の表面領域2においては、第一の表面とは反対側にあるセキュリティ要素4の第二の表面の方に配向している。両表面領域1、2には、同じ干渉コーティング5が設けられている。サブ波長構造を備えた両表面領域1,2は、サブ波長構造を持たない非構造化表面領域3によって隔てられていてもよい
この実施形態では、第二の表面領域2のサブ波長構造は、
図4のそれと同じである。ここでは、第一の表面領域1のサブ波長構造は、第二の表面領域2のサブ波長構造に対して鏡写しの関係にあり、詳しくはこの場合には水平な表面に対し鏡映の関係にある。この場合、第一の表面領域1のカラム11は、下方に向いており、キャリア基材12のくぼみが充填された時に形成される。
【0060】
この場合、第一の表面領域1におけるカラム11の上面9の平面は、第二の表面領域1におけるカラム11のその周りを囲む表面10の平面にある。
[符号の説明]
1 第一の表面領域
2 第二の表面領域
3 非構造化表面領域
4 セキュリティ要素
5 干渉コーティング
6 誘電層
7 吸収体層
8 カラム
9 カラムの上面
10 カラム周りの面
11 カラム
12 キャリア基材
13 反射層
P 周期
T 有効深さ
【手続補正書】
【提出日】2022-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第一の表面領域(1)を含む、光学的セキュリティ機能を備えた平坦なセキュリティ要素(4)において、第一のサブ波長構造を画定する構造要素が、セキュリティ要素(4)の平面において周期的に反復
し、及び第一の表面領域(1)の少なくとも一つの部分領域の前記第一のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティング(5)を追加的に備えているセキュリティ要素(4)
であって、第一の表面領域(1)に隣接して、非構造化表面領域(3)が存在し、この非構造化表面領域(3)は、サブ波長構造を持たないが、第一の表面領域(1)の少なくとも一つの部分領域と同じ干渉コーティング(5)を少なくとも部分領域において有
し、ここで、第一の表面領域(1)及び非構造化表面領域(3)によって、モチーフが少なくとも二つの異なる色の印象を介して伝えられることを特徴とする、平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項2】
第一のサブ波長構造を有する第一の表面領域(1)の他に、第二のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第二の表面領域(2)を含み、ここで、前記の第一の表面領域(1)が前記第二の表面領域(2)に並べて配置されており、及び前記第一及び第二のサブ波長構造を画定しかつセキュリティ要素(4)の平面において周期的に反復する構造要素が、両表面領域間で異なっていることを特徴とする、請求項
1に記載の平坦なセキュリティ要素。
【請求項3】
第一のサブ波長構造を有する第一の表面領域(1)の他に、第二のサブ波長構造を有する少なくとも一つの第二の表面領域(2)を含み、この際、前記第一の表面領域(1)は、前記第二の表面領域(2)に並べて配置されており、及び前記第一及び第二のサブ波長構造を画定しかつセキュリティ要素(4)の平面において周期的に反復する構造要素は、両表面領域において同一であるが、第一の表面領域(1)においては、セキュリティ要素の第一の表面の方に配向しており、そして第二の表面領域においては、前記第一の表面とは反対側のセキュリティ要素の第二の表面の方に配向していることを特徴とする、請求項
1に記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項4】
第二の表面領域(2)の少なくとも一部の第二のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための干渉コーティング(5)を追加的に備えていることを特徴とする、請求項
2または
3に記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項5】
第一の表面領域(1)の第一のサブ波長構造及び/または場合により、第二の表面領域(2)の第二のサブ波長構造が、カラーシフト効果を生み出すための二つ以上の異なる干渉コーティング(5)を相並んで有することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項6】
少なくとも一つの第一の表面領域(1)が、第二の表面領域(2)に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項2~
5のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項7】
第一の表面領域(1)が、第二の表面領域(2)とは隔てって配置されており、この際、第一の表面領域と第二の表面領域との間に、サブ波長構造を持たない非構造化表面領域(3)が存在することを特徴とする、請求項
2~
6のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項8】
第一及び第二のサブ波長構造を画定する構造要素が、カラム(8、11)または穴を含み、及び第一の表面領域(1)におけるカラム(8、11)の上面の平面が、第二の表面領域(2)におけるカラム(8、11)の周囲表面の平面に一致するか、または第一の表面領域(1)の穴の底の平面が、第二の表面領域(2)における穴の周囲の表面の平面に一致することを特徴とする、請求項
2~7のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項9】
干渉コーティング(5)が、少なくとも表面領域(1,2)において、サブ波長構造上に直に施用されていることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項10】
サブ波長構造の有効深さ(T)が、干渉コーティング(5)の厚さよりも短いことを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一つに記載の平坦なセキュリティ要素(4)。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一つに記載のセキュリティ要素を含むデータキャリアまたはバリュードキュメント。
【国際調査報告】