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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】組成物、菓子製品、およびプロセス
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230529BHJP
   A23D 9/013 20060101ALI20230529BHJP
   A23G 1/36 20060101ALI20230529BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20230529BHJP
   A23G 1/48 20060101ALI20230529BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20230529BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20230529BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20230529BHJP
【FI】
A23D9/00
A23D9/013
A23G1/36
A23G1/40
A23G1/48
A23G3/34
A23L27/00 Z
A23L27/10 G
A23L27/10 H
A23L27/10 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562833
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021061145
(87)【国際公開番号】W WO2021219725
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】20172216.2
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2020163.8
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520372869
【氏名又は名称】ブンゲ・ローデルス・クロックラーン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イムロ・ヘト・ザント
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・アールベルツ
(72)【発明者】
【氏名】ジャニーヌ・ルヴェレ・ヴェルレマン
(72)【発明者】
【氏名】エーリク・パウル・アロシン・ベレンショット
(72)【発明者】
【氏名】リサ・スミス
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B047
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB02
4B014GG07
4B014GG08
4B014GG14
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK07
4B014GK12
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GY04
4B026DG15
4B026DH10
4B026DK05
4B026DL03
4B026DL05
4B026DL06
4B026DL09
4B026DP01
4B026DP03
4B047LB07
4B047LF09
4B047LG26
4B047LG37
4B047LG39
4B047LG56
4B047LP19
(57)【要約】
ISO 8292-1に従って20℃で40時間安定化した安定化脂肪で測定される、少なくとも10%のN20および多くとも10%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物と、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪組成物に分散または溶解された少なくとも1つの苦味抑制剤と、を含む、製菓用途の組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製菓用途の組成物であって、
-ISO 8292-1に従って20℃で40時間安定化した安定化脂肪で測定される、少なくとも10%のN20および多くとも15%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物と、
-少なくとも1つの乳化剤と、
-前記脂肪組成物に分散または溶解された少なくとも1つの苦味抑制剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記脂肪組成物が、少なくとも50%のN20、少なくとも40%のN25、および多くとも15%のN35を有する固形脂肪含有量(SFC);任意選択的に、50~90%のN20、40~65%のN25、5~35%のN30、および0~12%のN35を有するSFC;例えば、65~90%のN20、45~60%のN25、10~30%のN30、および1~8%のN35のSFC;例えば、70~85%のN20、50~60%のN25、15~25%のN30、および1~5%のN35のSFCを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪組成物が、30%~70%のN20、20~50%のN25、および多くとも15%のN35を有するSFC、任意選択的に、35~70%のN20、25~50%のN25、0~30%のN30、および0~12%のN35を有するSFC;例えば、40~65%のN20、28~45%のN25、1~25%のN30、および1~8%のN35のSFC;例えば、50~62%のN20、30~40%のN25、2~20%のN30、および1~5%のN35のSFCを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記乳化剤がレシチンである、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記苦味抑制剤が、カカオアルカロイドの苦味を抑制する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記苦味抑制剤が、α-グルカン型の多糖類等の苦味を抑制する多糖類を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記苦味抑制剤が、植物抽出物、菌糸体抽出物、酵母抽出物、藻類抽出物、または細菌抽出物からの天然フレーバーを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記苦味抑制剤が、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物等の菌糸体抽出物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記乳化剤がレシチンであり、前記苦味抑制剤が、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物等の菌糸体抽出物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
レシチンと、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物と、を含む組成物であって、好ましくは、前記組成物が、レシチンと前記菌糸体抽出物とを、700:1~25:1、例えば550:1~50:1、例えば500:1~70:1、任意選択的に450:1~100:1、例えば400:1~150:1もしくは350:1~200:1の重量比で含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
菓子製品であって、
-20重量%~80重量%の請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物と、
-10重量%~50重量%の1:10~10:1の重量比の砂糖とフィラー材料との組み合わせと、
10重量%~70重量%のカカオマスと、
0重量%~10重量%の添加剤と、を含む、菓子製品。
【請求項12】
フィラー材料および砂糖の合計の百分率として、少なくとも10重量%、好ましくは10重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~50重量%、より好ましくは25重量%~40重量%のフィラー材料、請求項11に記載の菓子製品。
【請求項13】
前記フィラー材料が、繊維、イヌリン、マルトデキストリン、糖アルコール、エリスリトール、マルチトール、またはそれらの混合物から選択される、請求項11または12に記載の菓子製品。
【請求項14】
製菓用組成物が、チョコレート組成物、チョコレートコーティング組成物、または製菓用フィリング組成物である、請求項11~13のいずれか一項に記載の菓子製品。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を調製するためのプロセスであって、
-脂肪組成物を提供するステップと、
-前記提供された脂肪組成物、乳化剤(レシチン等)、および少なくとも1つの苦味抑制剤(Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物等)を混合するステップと、を含む、プロセス。
【請求項16】
前記脂肪が、前記乳化剤および前記苦味抑制剤と混合する前に、融解される、請求項15に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製菓用途の組成物、そのような組成物を含む菓子製品、および組成物を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
菓子製品は、典型的には、脂肪、大量の添加糖、およびカカオマス等の他の成分の組み合わせを含む。砂糖によって提供される甘い味は消費者に非常に喜ばれるが、砂糖は、カロリー値が高く、いくつかの健康上のリスクと関連している。添加糖を過剰に摂取すると、血圧が上昇し、慢性炎症が増加する可能性があり、これらはどちらも心疾患へとつながる。
【0003】
満足できる菓子製品を提供するために、一般的な解決策は、砂糖を、いくつかの人工および天然の低カロリー甘味料、例えばステビアを含む、低カロリー甘味料に置き換えることである。このアプローチは、飲料等の液体用途ではかなりうまく行くが、そのような低カロリー甘味料は、満足度の低い菓子製品を作り出すことが多い。より固形の製品では、砂糖は、製品に甘味を提供する機能を有するだけでなく、食感(texture)にも貢献する。
【0004】
食感の問題のバランスをとるために、解決策は、甘味機能を置き換えるための低カロリー甘味料と組み合わせて、砂糖の構造機能の代わりとなるようにフィラー材料を製品に添加することであり得る。これは複雑なシステムにつながる可能性があり、満足できる配合を見つけることが困難になる。多くの場合、元の全部が砂糖のレシピと比較してより多くの砂糖が削減されるほど、結果として得られる感覚体験は、元のレシピによる満足感から逸脱する。また、得られた官能特性は常に安定しているわけではなく、経時的に低下する場合がある。
【0005】
満足できる官能特性と、比較的少ない砂糖含有量とを備えた甘い味の菓子製品が依然として必要とされている。また、経時的に安定した官能特性を有するそのような菓子製品も必要である。そのような菓子製品を単純かつ便利な方法で製造するための方法も必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、製菓用途の組成物であって、ISO 8292-1に従って20℃で40時間安定化した安定化脂肪で測定される、少なくとも10%のN20および多くとも15%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物と、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪組成物に分散または溶解された少なくとも1つの苦味抑制剤と、を含む、組成物が提供される。
【0007】
この組成物は、満足できる官能特性を保持しながら、比較的少ない(削減された)砂糖含有量を有する菓子製品を調製するために使用することができる。この組成物はまた、そのような菓子製品を製造するための単純な方法を可能にする。
【0008】
製菓用途の組成物は、菓子製品を調製するために使用するのに適した組成物として定義される。菓子製品は、典型的には、食べたときに甘い味の経験を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例2のレーダーチャート図を示す
図2図2は、実施例2のレーダーチャート図を示す。
図3図3は、実施例3のレーダーチャート図を示す。
図4図4は、実施例3のレーダーチャート図を示す。
図5図5は、実施例4のレーダーチャート図を示す。
図6図6は、実施例4のレーダーチャート図を示す。
図7図7は、実施例5のレーダーチャート図を示す。
図8図8は、実施例5のレーダーチャート図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「脂肪」という用語は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド油脂を指す。
【0011】
「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和(一価および多価不飽和を含む)カルボン酸を指す。x個の炭素原子およびy個の二重結合を有する脂肪酸は、Cx:yと表されてもよい。例えば、パルミチン酸はC16:0と表されてもよく、オレイン酸はC18:1と表されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸の百分率は、グリセリド中に存在するトリグリセリド、ジグリセリド、およびモノグリセリド中のアシル基を含み、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。脂肪酸プロファイル(すなわち、組成)は、例えば、ISO 12966-2およびISO 12966-4に従ってガスクロマトグラフィーを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。
【0012】
本発明による組成物中の脂肪組成物は、天然に存在するもしくは合成脂肪、天然に存在するもしくは合成脂肪の画分、またはそれらの混合物から作製され得る。
【0013】
「乳化剤」という用語は、溶液、乳濁液、または分散液の安定性を速度論的に増加させる物質、例えば、レシチン、ポリリシノレイン酸ポリグリセリン(PGPR)、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノグリセリドおよびジグリセリド、蒸留モノグリセリド、ならびに脂肪酸のプロピレングリコールエステルを指す。
【0014】
苦味抑制剤は、感覚評価において試験者が味わう苦味を低減するコンパウンドまたはコンパウンドの混合物である。苦味抑制剤の中には、合成的に調製できるものもあれば、天然の供給源から入手できるものもある。様々な苦味抑制剤の特性および調製方法が、特許および科学文献に記載されており、多くの苦味抑制剤が市販されている。
【0015】
特定の苦味抑制剤の効果は、苦味の原因によって異なる場合がある。多くの苦味抑制剤は、苦い薬効成分を含む経口薬のより良好な嗜好性を達成するために特別に開発される。製菓において、カカオが既知の苦味成分であり、その苦味はしばしばカカオアルカロイドに起因する。
【0016】
苦味抑制剤および効果的な投与の例は、WO2009140784(Givaudan)、WO2013072332(Givaudan)、EP3019033(Firmenich)、EP2570035(Symrise)、WO2011130705(Kraft)、およびその中に引用される参考文献に見出すことができる。
【0017】
苦味抑制剤の作用機序は必ずしも明確ではない。考えられる機序のうちの1つは、苦味抑制剤が苦味受容体の拮抗薬として作用するというものである。特定の苦味受容体の試験の例は、例えば、WO2014176336(Chromocell)、WO2008057470(Senomyx)、およびその中に引用される参考文献に記載されている。
【0018】
上記のように、本発明の組成物は、定義された固形脂肪含有量(SFC)プロファイルを有する脂肪組成物を含む。この脂肪組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも93重量%(または少なくとも93.5重量%)、例えば少なくとも94重量%(または少なくとも94.5重量%)、例えば少なくとも95重量%(または少なくとも95.5重量%)の量で本発明の組成物中に存在し得る。
【0019】
好都合には、脂肪組成物は、少なくとも96重量%(または少なくとも96.5重量%)、例えば、少なくとも97重量%(または少なくとも97.5重量%)の量で存在し得る。この脂肪組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも98重量%(または少なくとも98.5重量%)、例えば少なくとも99重量%(または少なくとも99.5重量%)の量で本発明の組成物に含まれ得る。
【0020】
有利には、本発明の組成物は、約95.0~約99.7重量%、例えば、約96.0~約99.5重量%、任意選択的に約96.0~約99.0重量%、例えば、約96.5~約99.0重量%、例えば約97.0~約99.0重量%、任意選択的に約97.0~約98.5重量%または約98.0重量%のこの脂肪組成物を含む。
【0021】
好都合には、本発明の組成物は、約95.7~約99.8重量%(例えば、約95.960~約99.799%重量%)、例えば約96.5~約99.7重量%(例えば、約96.470~約99.698重量%)、例えば約97.0~約99.7重量%(例えば約96.980~約99.696重量%)、任意選択的に約96.985~約99.696重量%、例えば、約96.990~約99.696重量%のこの脂肪組成物を含む。
【0022】
好ましい実施形態(「第1の」実施形態)において、本発明による組成物は、少なくとも50%のN20、少なくとも40%のN25、および多くとも15%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物を有する。より好ましい実施形態において、本発明による組成物は、少なくとも60%のN20、少なくとも50%のN25、および多くとも12%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物を有する。最も好ましい実施形態において、本発明による組成物は、70%~95%のN20、52%~70%のN25、10%~35%のN30、および0%~10%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物を有する。以下に説明するように、そのような脂肪は、チョコレートまたはチョコレートコーティングにおける使用に適している。
【0023】
本発明によるこれらの組成物は、50~90%、例えば65~90%、例えば70~85%の固形脂肪含有量(SFC)N20を有する脂肪組成物を含み得る。
【0024】
本発明によるこれらの組成物は、40~65%、例えば45~60%、例えば50~60%の固形脂肪含有量(SFC)N25を有する脂肪組成物を含み得る。
【0025】
本発明によるこれらの組成物は、5~35%、例えば10~30%、例えば15~25%の固形脂肪含有量(SFC)N30を有する脂肪組成物を含み得る。
【0026】
本発明によるこれらの組成物は、0~12%、例えば1~8%、例えば1~5%の固形脂肪含有量(SFC)N35を有する脂肪組成物を含み得る。
【0027】
したがって、本発明のそのような組成物は、50~90%のN20、40~65%のN25、5~35%のN30、および0~12%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物;例えば、65~90%のN20、45~60%のN25、10~30%のN30、および1~8%のN35のSFCを有する脂肪組成物;例えば、70~85%のN20、50~60%のN25、15~25%のN30、および1~5%のN35のSFCを有する脂肪組成物を含み得る。
【0028】
この脂肪組成物は、本発明の組成物の総重量に基づいて、少なくとも94または94.5重量%、例えば少なくとも95または95.5重量%、例えば、少なくとも96または96.5重量%、任意選択的に少なくとも97重量%の量で本発明の組成物中に存在し得る。
【0029】
一実施形態において、本発明の組成物は、約95.7~約99.8重量%(例えば、約95.960~約99.799%重量%)、例えば約96.5~約99.7重量%(例えば、約96.470~約99.698重量%)、例えば約97.0~約99.7重量%(例えば約96.980~約99.696重量%)、任意選択的に約96.985~約99.696重量%、例えば、約96.990~約99.696重量%のこの脂肪組成物を含む。
【0030】
好都合には、本発明の組成物は、約96~約99.5重量%、例えば約96.5~約99.0重量%(例えば96.486~98.994重量%)、例えば約97.0~約98.5重量%(例えば96.988~98.492重量%)、任意選択的に約97.0~約98重量%(例えば96.990~97.991重量%)のこの脂肪組成物を含む。
【0031】
そのような脂肪は、チョコレートまたはチョコレートコーティングにおける使用に適している。好ましくは、脂肪は、カカオバター、カカオバター同等物(CBE)またはカカオバター代替物(CBS)である。「カカオバター同等物」という用語は、カカオバターと実質的に同一の物理的特性および分子構造を有する、カカオバター以外の他の植物性脂肪の組み合わせを指す。「カカオバター代替物」という用語は、カカオバターと同様の物理的特性を有する、ココナッツ油、パーム核油等のラウリン酸系の脂肪から主になる脂肪組成物またはコンパウンドを指す。カカオバター代替物は、水素化油脂を含み得る。
【0032】
別の好ましい実施形態(「第2の」実施形態)において、本発明による組成物は、30%~70%のN20、20%~50%のN25、および多くとも15%のN35を有するSFCを有する脂肪を有する。別のより好ましい実施形態において、本発明による組成物は、40%~65%のN20、25%~45%のN25、および多くとも12%のN35を有するSFCを有する脂肪を有する。別の最も好ましい実施形態において、本発明による組成物は、45%~60%のN20、30%~40%のN25、5%~20%のN30、および0%~10%のN35を有するSFCを有する脂肪を有する。そのような脂肪は、例えば、フィリング入りチョコレートまたはフィリング入り製菓製パンの用途に使用するために、組成物をフィリング用脂肪に特に適したものにする。
【0033】
本発明によるこれらの組成物は、35~70%、例えば40~65%、例えば50~62%の固形脂肪含有量(SFC)N20を有する脂肪組成物を含み得る。
【0034】
本発明によるこれらの組成物は、25~50%、例えば28~45%、例えば30~40%の固形脂肪含有量(SFC)N25を有する脂肪組成物を含み得る。
【0035】
本発明によるこれらの組成物は、0~30%、例えば1~25%、例えば2~20%の固形脂肪含有量(SFC)N30を有する脂肪組成物を含み得る。
【0036】
本発明によるこれらの組成物は、0~12%、例えば1~8%、例えば1~5%の固形脂肪含有量(SFC)N35を有する脂肪組成物を含み得る。
【0037】
したがって、本発明のそのような組成物は、35~70%のN20、25~50%のN25、0~30%のN30、および0~12%のN35の固形脂肪含有量(SFC)を有する脂肪組成物;例えば、40~65%のN20、28~45%のN25、1~25%のN30、および1~8%のN35のSFCを有する脂肪組成物;例えば、50~62%のN20、30~40%のN25、2~20%のN30、および1~5%のN35のSFCを有する脂肪組成物を含み得る。
【0038】
この脂肪組成物は、本発明の組成物の総重量に基づいて、少なくとも96または96.5重量%、例えば少なくとも97または97.5重量%、例えば、少なくとも98または98.5重量%、任意選択的に少なくとも99または99.5重量%の量で本発明の組成物中に存在し得る。
【0039】
一実施形態において、本発明の組成物は、約95.7~約99.8重量%(例えば、約95.960~約99.799%重量%)、例えば約96.5~約99.7重量%(例えば、約96.470~約99.698重量%)、例えば約97.0~約99.7重量%(例えば約96.980~約99.696重量%)、任意選択的に約96.985~約99.696重量%、例えば、約96.990~約99.696重量%のこの脂肪組成物を含む。
【0040】
好都合には、本発明の組成物は、約97.5~約99.7重量%、例えば、約98.0~約99.7重量%(例えば、97.993~99.697%)、例えば、約98.5~約99.5重量%(例えば、98.4935~99.4965重量%)、任意選択的に約98.8~約99.2重量%(例えば、98.7940~99.1960重量%)のこの脂肪組成物を含む。
【0041】
好ましくは、「第1の」および「第2の」実施形態の組成物のSFC(したがって、上記の対応するN20、N25、N30およびN35値)は、ISO 8292-1に従って20℃で40時間安定化した安定化脂肪で測定される。
【0042】
本発明による組成物は、好ましくは2重量%未満のトランス脂肪酸残基、より好ましくは1重量%未満のトランス脂肪酸残基を含む脂肪組成物を有する。そのような低いトランス脂肪値は、典型的には、非水素化脂肪において達成される。
【0043】
上で説明したように、本発明の組成物は乳化剤を含む。好ましい実施形態において、乳化剤はレシチンである。
【0044】
乳化剤は、本発明の組成物の総重量に基づいて、0.2~4重量%、例えば、0.3~3.0重量%または3.5重量%の量で本発明の組成物中に存在することができる。
【0045】
例えば、乳化剤(好ましくはレシチン)は、1~3.5重量%、例えば、1.5~3重量%、例えば2~3重量%の量で存在することができる。代替として、乳化剤(好ましくはレシチン)は、0.3~2重量%、例えば、0.5~1.5重量%、例えば、0.8~1.2重量%の量で存在することができる。
【0046】
上で説明したように、本発明の組成物は苦味抑制剤を含む。好都合には、苦味抑制剤は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~0.040重量%、例えば0.002~0.030重量%、例えば0.004~0.020重量%、任意選択的に0.004~0.015重量%または0.010重量%、例えば0.006~0.010重量%%の量で本発明の組成物中に存在し得る。
【0047】
製菓用途では、苦味抑制剤がカカオアルカロイドの苦味に拮抗するのに効果的であることが好ましい。言い換えれば、苦味抑制剤がカカオアルカロイドの苦味を阻害することが好ましい。カカオアルカロイドは、カカオマスの苦味の主な原因であると考えられている。
【0048】
好ましい実施形態において、苦味抑制剤は、苦味を抑制する多糖類を含む。多糖類は、製菓用途と良好な適合性を有することが分かっている。
【0049】
すべての多糖類が苦味抑制剤であるとは限らないことに留意された。例えば、EP1533382は、菌糸体から抽出され、油に混合されたβ-グルカンの混合物について記載しているが、記載されるβ-グルカンが苦味を抑制する特性を有することは知られていない。
【0050】
苦味抑制剤は、植物抽出物、菌糸体抽出物、酵母抽出物、藻類抽出物または細菌抽出物を含むことが好ましい。天然起源のそのような苦味抑制剤は、一般に、合成苦味抑制剤よりも食品用途により受け入れられやすい。
【0051】
好ましい実施形態において、組成物は菌糸体抽出物を含む。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、0.001重量%~0.030重量%の菌糸体抽出物を含む。より好ましい実施形態において、本発明による組成物は、0.003重量%~0.025重量%の菌糸体抽出物を含む。最も好ましい実施形態において、本発明による組成物は、0.005重量%~0.015重量%の菌糸体抽出物を含む。
【0053】
別の好ましい実施形態において、乳化剤はレシチンであり、苦味抑制剤は菌糸体抽出物を含む。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明による組成物中の乳化剤と苦味抑制剤との重量比は、100:1~500:1である。より好ましい実施形態において、レシチンである乳化剤と、本発明による組成物中に菌糸体抽出物を含む苦味抑制剤との重量比は、150:1~300:1である。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物である苦味抑制剤を含む。疑義を避けるために記すと、この抽出物は、Cordyceps sinensis自体から得られる一般的なキノコ抽出物とは異なることに留意されたい。
【0056】
一実施形態において、本発明による組成物は、0.001重量%~0.030重量%のこの菌糸体抽出物を含む。例えば、本発明による組成物は、0.003重量%~0.025重量%、例えば、0.004重量%~0.020重量%の菌糸体抽出物を含み得る。好ましくは、本発明による組成物は、0.005重量%~0.015重量%、例えば0.006~0.014重量%、例えば0.008~0.012重量%または0.009~0.010重量%のこの菌糸体抽出物を含む。別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、0.003~0.007重量%、例えば0.0035~0.0065重量%、例えば0.0040~0.0060重量%のこの菌糸体抽出物を含み得る。
【0057】
好ましくは、本発明の組成物は、乳化剤としてのレシチンと、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される上記の菌糸体抽出物である苦味抑制剤とを含む。
【0058】
本発明の組成物は、乳化剤(好ましくはレシチン)と、この菌糸体抽出物とを、700:1~25:1、例えば550:1~50:1、例えば500:1~70:1、任意選択的に450:1~100:1、例えば400:1~150:1または350:1~200:1の重量比で含み得る。
【0059】
本発明の組成物が上記に開示される「第1の」実施形態による脂肪組成物(すなわち、チョコレートまたはチョコレートコーティングにおける使用に特に適した脂肪)を含む場合、組成物は、乳化剤としてのレシチンを、1~3.5重量%、例えば1.5~3重量%、例えば2~3重量%の量で含むことが好ましい。好ましくは、組成物はまた、Cordyceps sinensis(上記に開示される)の発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物である苦味抑制剤を、0.006~0.014重量%、例えば0.008~0.012重量%、例えば0.009~0.010重量%の量で含む。
【0060】
驚くべきことに、本発明の組成物においてこれらの特定の濃度範囲の苦味抑制剤を使用することに関連するかなりの技術的利点があることが分かった。例として、チョコレートコーティング製品の用途では、苦味抑制剤の濃度が0.006~0.014重量%の最も広い好ましい範囲外である場合、製造される菓子製品は、望ましくない感覚特性、特に長い融解時間(口溶け(meltdown))および強い苦味を示すことが分かった。
【0061】
一実施形態において、本発明の組成物は、1~3.5重量%のレシチン、0.006~0.014重量%のCordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物、および約96.5~約99.0重量%(例えば、96.486~98.994%)の上記に開示される「第1の」実施形態による脂肪組成物;例えば、1.5~3重量%のレシチン、0.008~0.012重量%のCordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物、および約97.0~約98.5重量%(例えば、96.988~98.492%)の上記に開示される「第1の」実施形態による脂肪組成物;例えば、2~3重量%のレシチン、0.009~0.010重量%のCordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物、および約97.0~約98.0重量%(例えば、96.990~97.991%)の上記に開示される「第1の」実施形態による脂肪組成物を含む。
【0062】
本発明の組成物が上記に開示される「第2の」実施形態による脂肪組成物(すなわち、例えば、フィリング入りチョコレートまたはフィリング入り製菓製パンの用途で使用するための、フィリング用脂肪に特に適した脂肪)を含む場合、組成物は、乳化剤としてのレシチンを、0.3~2重量%、例えば、0.5~1.5重量%、例えば、0.8~1.2重量%の量で含むことが好ましい。好ましくは、組成物はまた、Cordyceps sinensis(上記に開示される)の発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される上記の菌糸体抽出物である苦味抑制剤を、0.003~0.007重量%、例えば0.0035~0.0065重量%、例えば0.0040~0.0060重量%の量で含む。
【0063】
驚くべきことに、本発明の組成物においてこれらの特定の濃度範囲の苦味抑制剤を使用することに関連するかなりの技術的利点があることが分かった。例として、チョコレートフィリング製品の用途では、苦味抑制剤の濃度が0.007重量%より高い場合、製造された菓子製品は、望ましくない感覚特性、特に強い苦味および高い硬さを示すことが分かった。さらに、苦味抑制剤の濃度が0.003重量%より低い場合、製品の甘味は著しく低下する。したがって、これらの特定の濃度範囲は、砂糖を削減した菓子製品において良好な食感(硬さ等)を維持しながら、苦味と甘味強度との間の所望のバランスを提供すると考えられる。
【0064】
一実施形態において、本発明の組成物は、0.3~2重量%のレシチン、0.003~0.007重量%のCordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物、および約98.0~約99.7重量%(例えば、97.993~99.697%)の上記に開示される「第2の」実施形態による脂肪組成物;例えば、0.5~1.5重量%のレシチン、0.0035~0.0065重量%のCordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物、および約98.5~約99.5重量%(例えば98.4935~99.4965%)の上記に開示される「第2の」実施形態による脂肪組成物;例えば、0.8~1.2重量%のレシチン、0.0040~0.0060重量%のCordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物、および約98.8~約99.2重量%(例えば、98.7940~99.1960%)の上記に開示される「第2の」実施形態による脂肪組成物を含む。
【0065】
レシチン(乳化剤)と、上記のCordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物(苦味抑制剤)との組み合わせは、驚くべきことに、製菓用途における使用、特に、より少ない(削減された)砂糖含有量を有するが、満足できるまたはさらには増強された官能特性(甘味を含む)を示す菓子製品を調製するために脂肪組成物と混合するのに、特に望ましいことが分かった。
【0066】
したがって、本発明の別の態様では、レシチンと、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物と、を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる組成物が提供される。疑義を避けるために記すと、この抽出物は、Cordyceps sinensis自体から得られる一般的なキノコ抽出物とは異なることに留意されたい。
【0067】
この態様の組成物は、レシチンと菌糸体抽出物とを、700:1~25:1、例えば550:1~50:1、例えば500:1~70:1、任意選択的に450:1~100:1、例えば400:1~150:1または350:1~200:1の重量比で含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる。好ましくは、そのような組成物は、いずれの事前の処理ステップもなしに、目的の菓子製品(複数可)で使用される適切に調製された(例えば、融解された)脂肪組成物と直接混合するのに適している。
【0068】
本質的になるとは、関連する組成物が他の構成成分を実質的に含まず、特に乳化剤または苦味抑制剤として作用することが当該技術分野で既知であるさらなる構成成分を含まないという意味を含む。「からなる」という用語は、「から本質的になる」の意味に含まれる。「実質的に含まない」とは、本発明の組成物が、組成物の総重量に基づいて0.5重量%以下、好ましくは0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%以下の明記された構成成分を含むという意味を含む。
【0069】
本発明はさらに、20重量%~80重量%の本発明による組成物と、10重量%~50重量%の1:10~10:1の重量比の砂糖とフィラー材料との組み合わせと、10重量%~70重量%のカカオマスと、0重量%~10重量%の添加剤と、を含む菓子製品を提供する。
【0070】
驚くべきことに、菓子製品は、砂糖含有量が比較的少ないにもかかわらず、甘味を含む満足できる官能特性を有する。経時的に安定した官能特性を有するそのような菓子製品も必要である。そのような菓子製品を単純かつ便利な方法で製造するための方法も必要である。
【0071】
フィラー材料は、砂糖の代わりに添加することができる低カロリーのフィラー材料として定義される。
【0072】
好ましい実施形態において、菓子製品は、フィラー材料および砂糖の合計の百分率として、少なくとも10重量%、より好ましくは10重量%~60重量%、さらにより好ましくは20重量%~55重量%、最も好ましくは、30重量%~50重量%のフィラー材料を有する。
【0073】
砂糖の代替となるフィラーは、好ましくは、イヌリン、マルトデキストリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、アセスルファムカリウム(Ace-K)、サッカリン、アドバンテームまたはそれらの混合物から選択される。
【0074】
好ましい実施形態において、菓子製品は、チョコレート組成物、チョコレートコーティング、または製菓用フィリングである。チョコレートコーティングまたはチョコレートフィリングも、製菓製パン製品の一部であり得る。
【0075】
本発明はさらに、
-脂肪組成物を提供するステップと、
-提供された脂肪組成物、乳化剤、および少なくとも1つの苦味抑制剤を混合するステップと、を含む、本発明による組成物を調製するプロセスを提供する。
【0076】
成分は、固体(例えば、粉末、顆粒)もしくは液体、またはその両方として混合することができる。
【0077】
好ましい実施形態において、脂肪組成物は、乳化剤(レシチン等)および苦味抑制剤(Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される菌糸体抽出物等)と混合する前に融解される。これは、良好な安定性を有する均質な混合物を作製するための便利な方法を提供する。
【0078】
続いて、組成物は、本明細書に記載されるように菓子製品に加工することができる。
【0079】
本明細書で明らかに先に公表された文献のリストまたは議論は、その文献が最新技術の一部であるか、または共通の一般知識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0080】
本発明の所与の態様、実施形態、特徴、またはパラメータについての優先度および選択肢は、別段文脈が示さない限り、本発明のすべての他の態様、実施形態、特徴、およびパラメータについての任意かつすべての優先度および選択肢と組み合わせて開示されているものとみなされるべきである。
【0081】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を決して限定するものではない。実施例において、および本明細書を通して、他に示されない限り、すべての百分率、部、および比率は重量による。
【実施例
【0082】
これらの実施例を通して:
Cx:yは、x個の炭素原子およびy個の二重結合を有する脂肪酸を指し、レベルは、GC-FAME(ISO12966-2およびISO12966-4)によって測定し、
SAFAは、飽和脂肪酸を指し、
MUFAは、一価不飽和脂肪酸を指す。
PUFAは、多価不飽和脂肪酸を指し、
IV FAMEは、AOCS Cd 1c-85に従って計算されたヨウ素価を指し、
TRANSは、トランス脂肪酸、つまりトランス配列に二重結合を有する不飽和脂肪酸を指し、
CNxxは、xx個の炭素原子を有するトリグリセリドを指し(グリセロールからの炭素原子は、標準的手法なので除く)、レベルは、最終的にジグリセリドを除去する前処理を伴うGCによって決定し(AOCS Ce 5-86)、
S20Nxは、ISO 8292-1に従ってx℃で測定した安定化脂肪(20℃で40時間安定化した)でNMRによって決定した固形脂肪含有量を指す。
【0083】
実施例1:脂肪組成物
以下の実験では、2つの脂肪(CBE脂肪1およびフィリング用脂肪2)を調製する。これら2つの脂肪組成の分析結果を表1に示す。両方の脂肪は、分別された非水素化および精製植物油に由来する。
【表1】
【0084】
参考までに、ISO 8292-1に準拠した安定化脂肪(20℃で40時間安定化した)のNMRによって測定されたカカオバターの固形脂肪含有量(SFC)を以下の表に示す。
【表2】
【0085】
実施例2:30%砂糖削減ダークスーパーコンパウンドの調製および評価
参照ダークスーパーコンパウンド(参照SC)、砂糖を30%削減したダークスーパーコンパウンド(比較SC、30%SR)を、表1に示すようなCBE脂肪1を用いて生成した。砂糖を30%削減したダークスーパーコンパウンド(SC A、30%SR)は、本発明による組成物である組成物1を用いて生成した。組成物1は、97.21重量%のCBE脂肪1、2.78重量%のレシチン(Bungemaxx S1000)、および0.01重量%の多糖類を含む市販の菌糸体抽出物である苦味抑制剤を含む。使用した菌糸体抽出物は、カカオアルカロイドの苦味を抑制することが知られている。使用した菌糸体抽出物は、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される。
【0086】
コンパウンドコーティングは、50℃に温度調節されたHobartミキサー(Hobart、A200型)を使用して、表2に記載の組成物1を含む乾燥成分をCBE植物性脂肪と混合してペーストにし、50rpmで10分間撹拌することにより、従来のチョコレート作製プロセスに従って生成した。ローラー式精製機(Buhler、10182359型)を使用して、このペーストの粒径を減少させた(25μm未満)。50℃で4時間コンチ(Zum Wald、LC-05型)を使用することにより、精製機からの粉末を残りの植物性脂肪およびレシチンと混合する。
【表3】
【0087】
混合後、コンパウンドを取り出し、40℃で保存した。
【0088】
コンパウンドの2/3を、大理石の台の上でハンドテンパリングにより25℃まで冷却し、残りの温かいコンパウンドと混合して28~29℃にした後、正方形になるように置いた。
【0089】
サンプルを18℃で保存して感覚評価の前に熟成させた。
【0090】
専門家の感覚パネル(n=5)が、1週間後にテストサンプルを評価し、18℃で3か月間保存した後にそれを繰り返した。(図1および図2のレーダーチャート図に表示)比較SC、30%SRおよびSC A、30%SRサンプルを参照に対して評価し、表3の標準属性についてそれらをスコア化した。ここでは、甘味強度、甘味放出時間、および苦味により重点を置いた。
【表4】
【0091】
感覚パネルは、参照SCと比較して比較SC、30%SRの甘味放出時間がより短く、苦味がより強いことを認めた。しかしながら、参照SCとSC A、30%SRとの間で、甘味放出時間に関する有意差は認められなかった。SC A、30%SRにおいて、参照SCにより近い、より少ない苦味が認められた。
【0092】
3か月後、比較SC、30%SRでより強い苦味が味わわれた。一方、SC A、30%SRの苦味は同じままであった。比較SC、30%SRでは、3か月後の甘味放出時間が参照SCにより近い。参照SCと同様に、甘味強度に関して、比較SC、30%SRおよびSC A、30%SRの両方に有意差はない。
【0093】
実施例3:50%砂糖削減ダークスーパーコンパウンドの調製および評価
参照ダークスーパーコンパウンド(参照SC)、砂糖を50%削減したダークスーパーコンパウンド(比較SC、50%SR)を、CBE脂肪1を用いて生成した。砂糖を50%削減したダークスーパーコンパウンド(SC B、50%SR)は、実施例2に開示された本発明による同じ組成物である組成物1を用いて生成した。
【0094】
コンパウンドコーティングは、50℃に温度調節されたHobartミキサー(Hobart、A200型)を使用して、表4に記載の組成物1を含む乾燥成分をいくらかの植物性脂肪と混合してペーストにし、50rpmで10分間撹拌することにより、従来のチョコレート作製プロセスに従って生成した。ローラー式精製機(Buhler、10182359型)を使用して、このペーストの粒径を減少させた(25μm未満)。50℃で4時間コンチ(Zum Wald、LC-05型)を使用することにより、精製機からの粉末を残りの植物性脂肪およびレシチンと混合する。
【表5】
【0095】
混合後、コンパウンドを取り出し、40℃で保存した。
【0096】
コンパウンドの2/3を、大理石の台の上でハンドテンパリングにより25℃まで冷却し、残りの温かいコンパウンドと混合して28~29℃にした後、正方形になるように置いた。
【0097】
サンプルを18℃で保存して感覚評価の前に熟成させた。
【0098】
専門家の感覚パネル(n=5)が、1週間後にテストサンプルを評価し、18℃で3か月間保存した後にそれを繰り返した。(図3および図4のレーダーチャート図に表示)比較SC、50%SRおよびSC B、50%SRサンプルを参照SCに対して評価し、表3の標準属性についてそれらをスコア化した。ここでは、甘味強度、甘味放出時間、および苦味により重点を置いた。
【0099】
50%の砂糖削減は、甘味強度に大きな影響を与え、比較SC、50%SRの苦味にはさらに大きな影響を与える。感覚パネルはまた、参照SCと比較して、比較SC、50%SRの甘味放出時間がより短いことも認めた。しかしながら参照SCとSC B、50%SRとの間で、甘味放出時間もしくは甘味強度または苦味に関する有意差は認められなかった。
【0100】
同様の観察を3か月行った後でも、50%の砂糖削減は、比較SC、50%SRの甘味強度および苦味になおも大きな影響を有する。甘味放出時間はわずかに改善したが、依然として参照SCおよびSC B、50%SRよりは長かった。
【0101】
サンプルSC B、50%SRのすべての属性は、参照SCと同様であり、3か月後に有意差は認められなかった。
【0102】
実施例2および実施例3からの全体的な結論:
これらの実施例は、組成物1に基づくダークスーパーコンパウンドの感覚プロファイルが、比較SC、30%SRおよび比較SC、50%SRのそれぞれと比較して、甘味強度、甘味放出時間および苦味に影響を与えることを示している。
【0103】
30%の砂糖削減を適用すると、熟成(3か月)後、その差は参照SCにより近くなる/それと同等になる依然として少し苦味が認められるが、許容可能である。
【0104】
50%の砂糖削減を適用すると、比較SC、50%SRの甘味強度および苦味に有意差が認められる。SC B、50%SRスコアは、参照SCと同じすべての属性について、1週間後および熟成(3か月)後に差は認められなかった。
【0105】
実施例4:30%砂糖削減チョコレートフィリングの調製および評価
参照チョコレートフィリング(参照フィリング)、砂糖を30%削減したチョコレートフィリング(比較フィリング、30%SR)を、フィリング用脂肪2を用いて生成した。砂糖を30%削減したチョコレートフィリング(フィリングA、30%SR)は、本発明による組成物である組成物2を用いて生成した。組成物2は、99.005重量%のフィリング用脂肪2、1.00重量%のレシチン(Bungemaxx S1000)、および0.005重量%の市販の菌糸体抽出物である苦味抑制剤を含む。使用した菌糸体抽出物は、Cordyceps sinensisの発酵によって処理された、主にα-グルカン型の多糖類から大部分が構成される。
【0106】
表5に記載の成分を、55℃に温度調節されたボールミル(W-1-S、Duyvis Wiener B.V.)を使用して混合し、240rpmで45分間撹拌した。混合後、フィリングを取り出し、24℃まで冷却し、アルミカップに入れた。
【表6】
【0107】
専門家の感覚パネル(n=5)は、1週間後にテストサンプルを評価し、18℃で3か月間保存した後にそれを繰り返した。(図5および図6のレーダーチャート図に表示)比較フィリング、30%SRおよびフィリングA、30%SRサンプルを参照フィリングに対して評価し、表6の標準属性についてそれらをスコア化した。ここでは、甘味強度、甘味放出時間、および苦味により重点を置いた。
【表7】
【0108】
比較フィリングA、30%SRおよびフィリングA、30%SRのすべての属性は、参照フィリングと同様であった。1週間後、甘味に有意差は認められなかった。
【0109】
3か月後、比較フィリング、30%SRにおいて、より低い甘味強度が認められた。フィリングA、30%SRのすべての属性は、参照フィリングと同様であり、3か月後に甘味に有意差は見られなかった。
【0110】
実施例5:50%砂糖削減チョコレートフィリングの調製と評価
参照チョコレートフィリング(参照フィリング)、砂糖を50%削減したチョコレートフィリング(比較フィリング、50%SR)を、フィリング用脂肪2を用いて生成した。砂糖を50%削減したチョコレートフィリング(フィリングB、50%SR)は、実施例4に開示された本発明による同じ組成物である組成物2を用いて生成した。
【0111】
表7に記載の成分を、55℃に温度調節されたボールミル(W-1-S、Duyvis Wiener B.V.)を使用して混合し、240rpmで45分間撹拌した。混合後、フィリングを取り出し、24℃まで冷却し、アルミカップに入れた。
【表8】
【0112】
専門家の感覚パネル(n=5)が、1週間後にテストサンプルを評価し、18℃で3か月間保存した後にそれを繰り返した。(図7および図8のレーダーチャート図に表示)比較フィリング、50%SRおよびフィリングB、50%SRサンプルを参照フィリングに対して評価し、表6の標準属性についてそれらをスコア化した。ここでは、甘味強度、甘味放出時間、および苦味により重点を置いた。
【0113】
フィリングB、50%SRのすべての属性は、参照フィリングと同様であり、1週間後に甘味に有意差は見られなかった。
【0114】
比較フィリング、50%SRの甘味強度および苦味には有意差があった。参照フィリングおよびフィリングB、50%SRと比較して、より強い苦味が認められ、甘味強度はより低かった。
【0115】
3か月後、比較フィリング、50%SRにおいて、より低い甘味強度およびより強い苦味が認められた(1週間後に認められたのと同様)。甘味放出時間は1週間後よりわずかに短かった。
【0116】
わずかな差を示す唯一の属性は、3か月後のフィリングB、50%SRの硬さ、口溶け、および冷涼感である。最も重要な属性(甘味強度および苦味)は、有意差を示していない。
【0117】
実施例4および実施例5からの全体的な結論:
甘味強度に重点が置かれた。感覚パネルは、参照フィリングおよび50%の砂糖削減が適用されたフィリングB、50%SRと比較して、比較フィリング、50%SRの甘味強度がより低く、苦味がより強いことを認めた。しかしながら、驚くべきことに、フィリングB、50%SRでは50%の砂糖が削減されていたにもかかわらず、参照フィリングおよびフィリングA、30%SRおよびフィリングB、50%SRの間で甘味強度に関する有意差は認められなかった。30%の砂糖削減は、50%の砂糖削減と比較して甘味への影響が少ないと考えられる。
【0118】
実施例6:20℃での保存可能期間
【表9】
【0119】
砂糖を削減したフィリングAおよびBは、参照フィリングと比較して、保存可能期間の始めからやや光沢が少ないが、依然として許容可能な値である。この傾向は6か月まで続き、最後の6か月には、すべてのサンプルにおいてブルームの発生が認められる。
【表10】
【0120】
6か月の保存では、すべてのサンプルに有意差は認められなかった。
【表11】
【表12】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】