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特表2023-523412アブレーションシステムにおける適応的ECGトリガ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】アブレーションシステムにおける適応的ECGトリガ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230529BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20230529BHJP
   A61B 5/355 20210101ALI20230529BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20230529BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B5/352
A61B5/355
A61B5/33 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563866
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 US2021028108
(87)【国際公開番号】W WO2021216515
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/013,161
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ゴルジツキ、ジョナサン タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ホン
(72)【発明者】
【氏名】フォーサイス、ブルース アール.
(72)【発明者】
【氏名】キャナディ、ラリー ディ.ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】オストルート、ティモシー エイ.
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG02
4C127GG05
4C160KK03
4C160MM38
(57)【要約】
治療送達のトリガとして心臓信号を使用するアブレーション治療を送出する方法及び装置。パルス化電界出力の前及び/又はその間に心臓信号自体を解析して、心臓信号内の基準に対して出力を安全に送達することができるときを判定することができる。いくつかの例では、治療送達のタイミングは、心拍数等、患者の現在の心臓状態に合わせられる。他の例では、トリガ信号を解析して、トリガ自体が適切に検出されることを確実にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のトリガ信号に応答してアブレーションの目的で出力パルスを発生させるパルス発生手段と、
患者から心臓信号情報を受信し、且つ、アブレーション治療の送出のためのトリガ信号を送出する、入力手段を有するトリガ手段と、
前記パルス発生手段及び前記トリガ手段の少なくとも各々に接続されたシステムコントローラと、
を備え、
前記トリガ手段は解析手段を備え、該解析手段は、受信した心臓信号情報を解析するとともに、アブレーション治療の送出のための安全期間を特定するものであり、且つ、前記トリガ手段は、そうした安全期間中に前記パルス発生手段がアブレーションの目的で出力パルスを発生させるように、前記トリガ信号を送出するように構成される、アブレーションシステム。
【請求項2】
前記トリガ手段が、治療レジメン内の少なくとも1つのアブレーション治療の送達後の前記安全期間のタイミングを解析するように前記解析手段を動作させるように構成される、請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項3】
前記解析手段が、前記患者の心拍数を計算するとともに前記安全期間の開始点若しくは前記安全期間の持続時間のうちの1つ以上を調整することにより、前記安全期間を判定するように構成される、請求項1又は2に記載のアブレーションシステム。
【請求項4】
前記トリガ手段が、心周期を検出するとともに前記心周期におけるR波及びT波のうちの1つ以上を特定する検出手段を備え、前記解析手段が、T波が予測されるR波の後の時点を推定するとともに、前記R波が終了した後に開始し前記T波が開始する前に終了するように前記安全期間を設定することにより、前記安全期間を設定するように構成される、請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項5】
前記トリガ手段が、心周期を検出するとともに少なくともR波を含む前記心周期の1つ以上の特徴を特定するように構成された検出手段を備え、
前記解析手段が、前記心周期におけるR波開始から安全開始時点までの遅延と、前記安全開始時点から終了時点までの前記安全期間が規定される期間とを判定する判定手段を備える、請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項6】
前記検出手段が、前記心周期の前記特徴のうちの1つとしてT波を特定するように構成され、前記判定手段が、前記T波に先立つ時点として前記終了時点を特定するように構成される、請求項5に記載のアブレーションシステム。
【請求項7】
前記トリガ手段が、
心臓信号を検知するとともに、心周期内のイベントを特定するように構成された検出手段と、
前記心周期における特定されたイベントを確認する確認手段と、
を含み、
前記トリガ手段が、特定され確認されたイベントに応答してのみトリガ信号を送出するように構成される、
請求項1に記載のアブレーションシステム。
【請求項8】
前記検出手段が、R波を特定するように構成されるとともに、前記確認手段が、前記特定されたイベントをR波テンプレートと比較して前記特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される、請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項9】
前記検出手段が、R波を特定するように構成されるとともに、前記確認手段が、前記特定されたイベントのスルーレートを計算して閾値と比較し、前記特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される、請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項10】
音声、圧力又は運動のうちの1つ以上を検知するセンサをさらに備え、
前記検出手段が、R波を特定するように構成されるとともに、
前記確認手段が、前記センサの出力を前記特定されたイベントと相関させて、前記特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される、
請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項11】
前記検出手段が、R波を特定するように構成されるとともに、前記確認手段が、前記特定されたイベントの幅を計算し、前記幅を閾値又は格納された値と比較して前記特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される、請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項12】
前記検出手段が、R波を特定するように構成されるとともに、前記確認手段が、前記特定されたイベントの振幅を以前のR波の格納された振幅と比較して前記特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される、請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項13】
前記確認手段が、前記特定されたイベントに関連する前記心臓信号における転換点又は変曲点のうちの1つ以上を特定してカウントし、閾値と比較するように、且つ、前記閾値よりも高い転換点又は変曲点を有する特定されたイベントをいずれもノイズとして拒絶するように構成される、請求項7に記載のアブレーションシステム。
【請求項14】
前記トリガ手段が、一連の心周期にわたって、
前記安全期間を規定する第1パラメータを使用して、1つ以上の第1心周期に対してアブレーションをトリガし、
前記1つ以上の第1心周期の後に発生する1つ以上の第2心周期に対してアブレーションをトリガしないとともに、前記解析手段を、前記1つ以上の第2心周期を解析して前記安全期間を規定する第2パラメータを計算するように動作させ、
前記安全期間を規定する前記第2パラメータを使用して、前記第2心周期に続く1つ以上の第3心周期に対してアブレーションをトリガする、
ことにより、動作するように構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載のアブレーションシステム。
【請求項15】
前記パルス発生手段から前記出力パルスを患者に送達するプローブをさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のアブレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アブレーションシステムにおける適応的ECGトリガに関する。
【背景技術】
【0002】
病変組織の除去又は破壊は、多くの癌治療法の目標である。腫瘍は外科的に除去される場合があるが、より侵襲性の低いアプローチが多くの注目を集めている。組織アブレーションは、体内の望ましくない組織を破壊する低侵襲法である。種々のアブレーション技法が開発されており、その多くは、標的組織の上に配置された又は標的組織内に若しくは隣接して挿入されたプローブを介する電気又は他のエネルギーの適用を使用する。例えば、熱を用いた熱アブレーションは、熱を加えて組織を破壊し、低温アブレーションはその逆を行い、低温を適用することにより細胞死をもたらす。高周波(RF)熱アブレーション、マイクロ波アブレーション、高密度焦点式超音波アブレーションは、各々、局所的な組織温度を身体の通常の37℃よりもかなり高く上昇させるために使用することができる。不可逆電気穿孔法(IRE)は、電界を用いて、細胞膜の孔を、回復点を超えて拡大させ、利用できる細胞膜がないため細胞死を引き起こす。IREは、通常、RFアブレーションよりも幅の狭いパルス幅を使用して、熱による影響を低減させる。
【0003】
アブレーションを目的として電気信号を印加する場合、心周期に支障をきたす危険性がわずかにある。より詳細には、心周期の脆弱な期間中に患者に印加される電圧は、不整脈を誘発する可能性がある。例えば、T波中に印加される心臓刺激は、心室細動等の潜在的に危険な心室不整脈を誘発する危険性がある。
【0004】
特許文献1は、心周期のR波が検出され、2つのイベントをトリガする同期信号を発生させる治療法について考察している。最初に、同期信号から一定時間(50ミリ秒(ms))後に、アブレーション治療信号が生成される。第2に、ブランキング期間が設定され、その期間中は、さらなる同期信号がさらなる治療をトリガすることが阻止される。いくつかの例では、特許文献1は、次に、ノイズ又は非R波心臓アーチファクトが誤って治療をトリガするのを阻止するために、ブランキング期間中にさらなる同期信号が受信された場合、ブランキング期間を延長させる。しかしながら、この特許は、治療を患者の心調律自体に合わせる調整を考察しておらず、代わりに、ブランキング期間を延長することによってのみあり得る誤った治療送達の阻止に対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10130819号明細書
【発明の概要】
【0006】
安全な動作を確実にする新たな且つ代替的なシステム及び方法が望まれる。
本発明者らは、とりわけ、解決すべき問題が、患者の検知された心臓信号を使用してアブレーション治療を適用するための安全窓を特定することに対する、新たな且つ/又は代替的な手法の必要性であることを認識した。いくつかの例では、心臓信号又はECGが検出及び解析されて、治療送達のための適切な窓が判定される。いくつかの従来のシステムは、R波を検出し、一定間隔の経過を待ってS-Tセグメント中に治療を送達することができるが、この手法は、患者の個別化された心周期タイミング及び/又は形態を考慮せず、治療レジメンの実行中に患者の心拍数に適応することもない。本発明は、より適応的な手法でこの問題を解決することを目的とする。いくつかの例は、心拍数に応答してタイミングを変更する。いくつかの例は、治療送達を中断して、心臓信号を検知し、治療窓パラメータを更新する。いくつかの例は、ノイズ検出、パラメータマッチング又は他の測定基準を用いて、検知した心臓信号の二重チェックを組み込んで、心周期の検出を確認し、誤った治療送達タイミングを回避する。
【0007】
第1の例示的且つ非限定的な例は、1つ以上のトリガ信号に応答してアブレーションの目的で出力パルスを発生させるパルス発生手段と、患者から心臓信号情報を受信し、且つ、アブレーション治療の送出のためのトリガ信号を送出する、入力手段を有するトリガ手段と、パルス発生手段及びトリガ手段の少なくとも各々に接続されたシステムコントローラとを備え、トリガ手段が、受信した心臓信号情報を解析するとともに、アブレーション治療の送出のための安全期間を特定する解析手段を備え、トリガ手段が、そうした安全期間中にパルス発生手段がアブレーションの目的で出力パルスを発生させるように、トリガ信号を送出するように構成される、アブレーションシステムの形態をとる。
【0008】
さらに又は別法として、トリガ手段は、治療レジメン内の少なくとも1つのアブレーション治療の送達後の安全期間のタイミングを解析するように解析手段を動作させるように構成される。
【0009】
さらに又は別法として、解析手段は、患者の心拍数を計算するとともに安全期間の開始点若しくは安全期間の持続時間のうちの1つ以上を調整することにより、安全期間を判定するように構成される。
【0010】
さらに又は別法として、トリガ手段は、心周期を検知するとともに、心周期におけるR波及びT波のうちの1つ以上を特定する検出手段を備え、解析手段は、T波が予測されるR波の後の時点を推定するとともに、R波が終了した後に開始しT波が開始する前に終了するように安全期間を設定することにより、安全期間を設定するように構成される。
【0011】
さらに又は別法として、トリガ手段は、心周期を検出するとともに少なくともR波を含む心周期の1つ以上の特徴を特定するように構成された検出手段を備え、解析手段は、心周期におけるR波開始から安全開始時点までの遅延と、安全開始時点から終了時点までの安全期間が規定される期間とを判定する判定手段を備える。
【0012】
さらに又は別法として、検出手段は、心周期の特徴のうちの1つとしてT波を特定するように構成され、判定手段は、T波に先立つ時点として終了時点を特定するように構成される。
【0013】
さらに又は別法として、トリガ手段は、心臓信号を検知するとともに、心周期内のイベントを特定するように構成された検出手段と、心周期における特定されたイベントを確認する確認手段とを含み、トリガ手段は、特定され確認されたイベントに応答してのみトリガ信号を送出するように構成される。
【0014】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、特定されたイベントをR波テンプレートと比較して特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0015】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、特定されたイベントのスルーレートを計算して閾値と比較し、特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0016】
さらに又は別法として、本システムは、音声、圧力又は運動のうちの1つ以上を検知するセンサをさらに含み、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、センサの出力を特定されたイベントと相関させて、特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0017】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、特定されたイベントの幅を計算し、幅を閾値又は格納された値と比較して特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0018】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、特定されたイベントの振幅を以前のR波の格納された振幅と比較して特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0019】
さらに又は別法として、確認手段は、特定されたイベントに関連する心臓信号における転換点又は変曲点のうちの1つ以上を特定してカウントし、閾値と比較するように、且つ、閾値よりも高い転換点又は変曲点を有する特定されたイベントをいずれもノイズとして拒絶するように構成される。
【0020】
さらに又は別法として、トリガ手段は、一連の心周期にわたって、安全期間を規定する第1パラメータを使用して、1つ以上の第1心周期に対してアブレーションをトリガし、1つ以上の第1心周期の後に発生する1つ以上の第2心周期に対してアブレーションをトリガしないとともに、解析手段を、1つ以上の第2心周期を解析して安全期間を規定する第2パラメータを計算するように動作させ、安全期間を規定する第2パラメータを使用して、第2心周期に続く1つ以上の第3心周期に対してアブレーションをトリガすることにより、動作するように構成される。
【0021】
さらに又は別法として、本システムは、パルス発生手段から出力パルスを患者に送達するプローブをさらに備えることができる。
第2の例示的且つ非限定的な例は、アブレーション治療を送達する方法であって、患者の1つ以上の心周期を検知するステップと、1つ以上の心周期のR波に対してアブレーション治療を送達する安全期間を判定するステップであって、安全期間が少なくともR波に対する遅延間隔によって規定される、ステップと、安全期間を使用して、後続する心周期のR波を検知し、遅延間隔の経過を待ち、治療を送出することにより、アブレーション治療を送達するステップとを含む、方法の形態をとる。
【0022】
さらに又は別法として、本方法は、治療レジメン内の少なくとも1つのアブレーション治療の送達後に安全期間を再解析するステップをさらに含む。
さらに又は別法として、安全期間を判定するステップは、検知された1つ以上の心周期を用いて患者の心拍数を計算することと、T波が予期されるR波の後の時間を推定することにより安全期間を設定し、安全期間がT波の前に発生するように遅延間隔を設定することとを含む。
【0023】
さらに又は別法として、安全期間は、遅延間隔及び持続時間の両方を規定し、安全期間を判定するステップは、検知された1つ以上の心周期を用いて患者の心拍数を計算することと、T波が予期されるR波の後の時間を推定することにより安全期間を設定し、安全期間がT波の前に終了するように遅延間隔を設定することとを含む。
【0024】
さらに又は別法として、安全期間を判定するステップは、検知された心周期内でR波及びT波の各々を検出することと、安全期間が後続する心周期のT波の前に発生するように遅延間隔を設定することとを含む。
【0025】
別の例示的且つ非限定的な例は、アブレーション治療を送達する方法であって、第1心周期を検知し、検知された心周期に応答してトリガ信号を発生させるステップと、トリガ信号の後に、計算された遅延の経過を待ち、アブレーション治療信号を患者組織に送達するステップと、1つ以上の後続する心周期を検知し、1つ以上の後続する心周期のうちの1つ以上の特徴を解析するステップと、1つ以上の後続する心周期の解析された1つ以上の特徴に応答して、計算された遅延を調節するステップと、第2心周期を検知し、検知された心周期に応答してトリガ信号を発生させるステップと、トリガ信号の後、調整された計算された遅延の経過を待ち、患者組織にアブレーション治療信号を送達するステップとを含む、方法の形態をとる。
【0026】
別の例示的且つ非限定的な例は、アブレーション治療を送達する方法であって、患者の1つ以上の第1心周期を検知するステップと、検知された1つ以上の第1心周期を解析し、心周期の検出可能なセグメントに関連して、アブレーションを安全に送達することができる時間の安全窓を特定し、検出可能なセグメントに関連して安全窓を規定するように1つ以上のパラメータを設定するステップと、患者の心臓信号において少なくとも1つの第2心周期の検出可能なセグメントを検出することにより、1つ以上のアブレーション治療信号を送達するステップと、設定パラメータを使用して、検出された検出可能なセグメントに関連して安全窓が発生するときを判定するステップと、安全窓において少なくとも1つのアブレーション治療信号を送達するステップと、少なくとも1つの第3心周期を検知するために一時停止し、検知された少なくとも1つの第3心周期に応答して設定パラメータを調整するステップとを含む、方法の形態をとる。
【0027】
さらに又は別法として、本方法は、第4心周期を検知するステップと、調整された設定パラメータを用いてアブレーション治療を送達するステップとをさらに含むことができる。
【0028】
さらに別の例示的且つ非限定的な例は、アブレーション治療を管理する方法の形態をとり、アブレーション治療は心周期の検出によってトリガされ、本方法は、治療送達パラメータの第1組を使用して、1つ以上のアブレーション治療パルスを送達するステップであって、治療送達パラメータの第1組が少なくとも遅延間隔を含み、1つ以上のアブレーション治療パルスが、心臓信号成分を検知し、遅延間隔の経過を待ち、アブレーション治療パルスのうちの少なくとも1つを送出することにより、送達される、ステップと、治療を一時停止して、いかなるアブレーション治療パルスからの干渉もなしに1つ以上の無治療心周期を検知するステップと、検知された1つ以上の無治療心周期を解析し、調整された遅延間隔を含む治療送達パラメータの第2組を構築するステップと、治療送達パラメータの第2組を使用して、心臓信号成分を検知し、調整された遅延間隔の経過を待ち、アブレーション治療パルスのうちの少なくとも1つを送出することにより、1つ以上のアブレーション治療パルスを送達するステップとを含む。
【0029】
さらに又は別法として、心臓信号成分は心臓R波である。
さらに又は別法として、1つ以上の無治療心周期を解析するステップは、無治療心周期のうちの少なくとも1つのR波及びT波のタイミング情報を判定することと、タイミング情報を用いて、調整された遅延間隔を設定することとを含む。
【0030】
別の例示的且つ非限定的な例は、アブレーション治療を管理する方法の形態をとり、アブレーション治療は心周期の検出によってトリガされ、本方法は、心周期内のイベントを検知するステップと、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較してイベントの適切な検知を確認するステップと、イベントが適切に検知されていない場合、少なくとも後続するイベントが検知されるまでアブレーション治療を保留するか、又は、イベントが適切に検知された場合、アブレーション治療を送達するいずれかのステップとを含む。
【0031】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、検知されたイベントの一部についてスルーレートを計算することと、スルーレートを1つ以上の閾値と比較することとを含む。
【0032】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、検知されたイベントのウェーブレット変換を実行して一組の基底関数を生成することと、基底関数のうちの少なくとも1つを期待値と比較することとを含む。
【0033】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、格納されたテンプレートに関連して相関解析を実行することと、検知されたイベントが格納されたテンプレートに一致するか否かを判断することとを含む。
【0034】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、以前に検知されたイベントに関連して相関解析を実行することと、検知されたイベントが以前に検知されたイベントと一致するか否かを判定することとを含む。
【0035】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、電気信号のピークを特定することと、音声、圧力又は動き信号のピークが電気信号のピークと時間的に相関しているか否かを判断することとを含む。
【0036】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、電気信号のピークに関連する幅を計算することと、その幅を閾値又は格納された値と比較することとを含む。
【0037】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、電気ピークの振幅を計算するステップと、以前の検知されたイベントの格納された振幅と比較することとを含む。
【0038】
さらに又は別法として、検知されたイベントを1つ以上のパラメータと比較するステップは、検知されたイベントのセグメントにおける転換点をカウントすることと、カウントされた転換点の量を1つ以上の閾値と比較することとを含む。
【0039】
さらに又は別法として、前述の例及び代替形態のうちの任意のものに対して、アブレーション治療は個々のパルスのバーストの形態をとる。
別の例示的且つ非限定的な例は、アブレーションパルスを送出する1つ以上の出力を有するアブレーション発生器と、患者の心臓ECGを解析し、アブレーションパルス出力をトリガするトリガメッセージを生成するように構成されたECGトリガ回路と、アブレーションパルス出力を発生させるパルス発生回路と、パルス発生回路及びECGトリガ回路のうちの少なくとも各々に接続されたシステムコントローラとを備えるアブレーションシステムの形態をとり、本システムは、前述の例及びその代替形態又は追加のうちの任意のものにおけるような方法を実行するように構成される。
【0040】
さらに又は別法として、本システムは、少なくとも1つの皮膚電極及び関連する導体を備えるECG検知システムをさらに備え、アブレーション発生器は、関連する導体を介して少なくとも1つの皮膚電極に結合する少なくとも1つの入力を備え、ECGトリガ回路は、アナログフィルタ、増幅器、デジタルフィルタ、及び心拍を特定するように適合されたECG解析回路を備える。
【0041】
この概要は、本特許出願の主題に対する概論を提供するように意図されている。それは、本発明の排他的又は網羅的な説明を提供するようには意図されていない。詳細な説明は、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれている。
【0042】
必ずしも縮尺通りには描かれていない図面において、異なる図において同様の数字は同様の構成要素を記述している場合がある。異なる文字の接尾辞を有する同様の数字は、同様の構成要素の異なる場合を表す場合がある。図面は、概して、限定ではなく例として、本明細書で考察するさまざまな実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】患者及び標的組織に使用される例示的なアブレーションシステムを示す図。
図2】例示的なアブレーションシステムをブロック形式で示す図。
図3】参照のために例示的な心臓信号を示す図。
図4】選択された方法のステップを示すブロックプロセスフロー図。
図5】選択された方法のステップを示すブロックプロセスフロー図。
図6】治療送達の一方法をグラフィカルに示す図。
図7】心臓信号を解析して心拍検出を確認する方法をグラフィカルに示す図。
図8】心臓信号を解析して心拍検出を確認する方法をグラフィカルに示す図。
図9】心臓信号を解析して心拍検出を確認する方法をグラフィカルに示す図。
図10】心臓信号を解析して心拍検出を確認する方法をグラフィカルに示す図。
図11】別の方法を示すブロックプロセスフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、患者及び標的組織に対して使用されている例示的なアブレーションシステムを示す。アブレーションプローブ10が示されており、アブレーションプローブ10は、その遠位端にある複数の組織穿孔電極12まで延びる長尺状シャフト14を含む。患者20の標的組織22にアクセスすると、組織穿孔電極12を伸長又は後退させることができる。装置の近位端は、電気接続16によってアブレーション発生器18に結合されている。こうしたようなプローブ100のさまざまな特徴及びあり得る拡張は、米国特許第5,855,576号明細書及び同第6,638,277号明細書、並びに米国特許出願公開第20190223943号明細書において考察されており、これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0045】
本システムは、ECG検出器30を有するように示されている。いくつかの例では、ECG検出器は、患者のECGを検知及び解析するそれ自体の回路を有する別個のユニットであり得る。別個のユニットが使用される場合、ECG検出器30は、有線コネクタ又は無線リンク(ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)又はメドラジオ(Medradio)等)によってアブレーション発生器18と通信するように構成することができる。他の例では、ECG検出器30は、患者の胸郭の中又は上に配置されて心電信号を検知するように構成された、一組の電極とすることができ、アブレーション発生器18は、受信した信号を解析する内部回路を備える。他の例では、心音、心臓の動き、及び/又は、血管若しくは心臓内の血流若しくは圧力信号のうちの任意のものを検知する加速度計、マイクロフォン、光検出器等を含む、異なる又は追加のセンサを設けてもよい。必要であれば、(心音センサ、及び一組の表面ECG電極等)複数の検知モダリティを別個に又は合わせて使用してもよい。
【0046】
図2は、例示的なアブレーションシステムをブロック形式で示す。アブレーションシステムは、例えば、状態機械、プログラム可能な命令を実行するように適合されたマイクロコントローラ又はマイクロプロセッサであり得るコントローラ100を含み、プログラム可能な命令は、履歴、イベント、パラメータ、検知された状態、警告、及び、テンプレートプログラム、プローブ180に関連する情報等の多種多様なデータを格納するためにも使用することができるメモリ120内に格納することができる。メモリ120は、揮発性及び不揮発性メモリタイプの両方を含んでもよく、USBポートを使用してSDカード又はサムドライブ等の取外し可能なメモリ素子に結合するポートを含んでもよい。
【0047】
コントローラ100は、ディスプレイ110及びユーザ入力112に接続されている。ディスプレイ110及びユーザ入力112は、タッチスクリーンを含むことにより互いに一体化してもよい。ディスプレイ110は、コンピュータ画面及び/又はタッチスクリーンであってもよく、追加の出力ステータス又はコマンド、音声プロンプト等を提供するように、照明及びスピーカも含むことができる。ユーザ入力112は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、マイクロフォン、カメラ等のうちの1つ以上を含むことができる。ユーザによるいかなる入力も、コントローラ100によって操作することができる。コントローラ100は、トリガ信号として使用するようにECGをフィルタリング及び解析するASIC、又はプローブ装置からの受信信号を処理するアナログデジタル変換回路等、追加の機能を提供する1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができる。
【0048】
本明細書の目的のために、コントローラ100及び/又はトリガ回路160は、ECGタイプ信号を受信及び処理する回路を組み込むことができる。こうしたECG検知システムは、コントローラ100又はトリガ回路160のいずれにあっても、少なくとも1つの皮膚電極及び関連する導体を備えるシステムで使用するように適合させることができる。アブレーション発生器に、電極及び導体に接続するための入力を設けることができる。ECG処理回路は、アナログフィルタ、増幅器、デジタルフィルタ、及び心拍を特定するように適合されたECG解析回路のうちの1つ以上を含むことができる。例えば、アナログフィルタは、(同様に設けてもよい)アナログデジタル変換回路への導入前又は導入時の入力信号(incoming signal)にフィルタリングを適用することができ、アナログフィルタは、例えば、3~40Hzバンドパスを提供することによる等、1~4Hzハイパスフィルタリング、及び40Hz以上のローパスフィルタリングの範囲を用いて、DC及び高周波成分を除去する。デジタルフィルタリングは、必要に応じて同様の極及びゼロを使用することができ、50又は60Hz範囲のライン信号用のバンドストップフィルタも含むことができる。例えば、心臓装置(植込み型か外付けかにかかわらず、ペースメーカ、除細動器、レコーダ及び/又はモニタリング機器)に使用される回路を使用することができる。いくつかの例では、トリガ回路160は、それ自身のマイクロコントローラ、状態機械及び/又は特定用途向け集積回路とともに、関連するメモリ及びロジックを含み、それが、格納されている命令セットを実行して、心周期、心周期の成分(本明細書に記載するようなR波、T波等)を特定する受信ECGの解析等、解析を行い、心拍/周期検出を行い、且つ/又は後述する心拍確認方法を用いて心拍検出の正確性又は精度を確認することができるようにすることができる。
【0049】
コントローラ100は、高圧電源ブロック130にも接続され、高圧電源ブロック130は、標準的な壁電源電圧から数100~数1000ボルトの非常に高い電力への昇圧を提供する充電器又は電圧増倍器に接続された、コンデンサスタック又は他の電力貯蔵装置を備え得る。治療送達ブロック140も示される。該治療送達ブロック140は、高圧電源130からプローブ入出力(プローブI/O)170に高電圧又は高電流を通すようにさまざまな方法で配置された高電力スイッチを含むことができ、プローブI/O170は、さらにプローブ180に接続している。いくつかの例では、高圧電源ブロック130及び送達ブロック140は、「選択的細胞アブレーションのための波形発生器及び制御(WAVEFORM GENERATOR AND CONTROL FOR SELECTIVE CELL ABLATION)」と題する、米国特許出願公開第20200289185号明細書に記載されている回路及び方法を組み込んでもよく、その出願の開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0050】
プローブI/O170は、スマートプローブインタフェースを含むことができ、これにより、プローブI/O170は、光学リーダインタフェース(バーコード又はQRコード(登録商標))を使用して、又はRFリーダを介して読み取ることができるRFIDチップ、若しくはプローブ180がプローブI/O170上のポートに電気的に接続されると読み取ることができるマイクロチップを使用して、プローブ180を自動的に特定することができる。プローブI/O170に測定回路172が接続され、測定回路172を使用して、プローブ180への接続部を流れる電流、又はプローブI/O170の出力における電圧を測定する等、プローブに関連する電圧、電流及び/又はインピーダンスを測定することができる。プローブI/O170は、例えば検知電極又は検知トランスデューサ(例えば、動き、音声、振動、温度又は光トランスデューサ)を使用して、治療送達の目的で、又はプローブ180からの信号を検知/測定するために、プローブ180への電気的接続部を含むとともに、必要であれば、組織の光学インタロゲーション(optical interrogation)を使用するか、又は治療レベル若しくはさらにはアブレーション出力レベルで光を発する等、光エネルギーの出力又は受取りを可能にする光I/Oを含むことができる。これらの選択肢のすべてが、いくつかの実施形態において必要とされるか又は含まれるとは限らない。
【0051】
コントローラ100は、トリガ回路160及び/又は通信回路162にも接続されている。トリガ回路は、例えば、トリガされた治療モードで使用するために患者から表面ECG又は他の信号を取り込むための電極又はECGリードシステム164を受けるように適合されている、ECG接続ポートを含むことができる。代わりに、通信回路162を使用して、トリガ信号、すなわち、外部で生成されるトリガ、又はコントローラ100によって内部で解析される生信号(ECG等)のいずれかをワイヤレスで取得してもよい。通信回路162は、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、メドラジオ(Medradio)又はWIFIアンテナのうちの1つ以上を有するトランシーバと、治療レジメンが行われる前、間、又は行われた後にステータス、データ、コマンド等を無線で通信するドライバ回路とを含むことができる。必要であれば、トリガ160は、システム通信ブロック160に依存するのではなく、専用のトランシーバ自体を有していてもよい。
【0052】
プローブ180は、レビーン(LeVeen)(登録商標)ニードル、又は、開示内容が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,855,576号明細書、同第6,638,277号明細書及び/又は米国特許出願公開第2019/0223943号明細書に示されているようなプローブ、又は、各々が、1つの構造に組み込まれるか又は別個に配置される針電極を含む複数のプローブを使用する等、他の好適なアブレーション設計等、任意の好適な形態をとることができる。プローブ180は、皮膚に配置することができるプレート等、1つ以上の不関電極又は戻り電極を含むことができる。
【0053】
一例では、アブレーション発生器100は、第1パラメータを使用して熱アブレーションを提供し、第2パラメータを使用して不可逆電気穿孔法等の非熱アブレーションを提供すること等により、複数のアブレーションモードを提供する機能を有することができる。第1及び第2パラメータは、アブレーション出力信号において異なる周波数内容をもたらすことができる。アブレーション発生器は、ECG検出器又は検出回路が使用するために、プログラムされた治療出力に対する周波数内容情報をトリガ回路160に提供するように構成することができ、これに応答して、ECG検出器又は検出回路は、ECG波形からのアブレーション信号の除去を確実にするためにアナログ又はデジタルフィルタリングで使用する値を計算することができる。例えば、デジタルフィルタリングは、特定の周波数に合わせたフィルタ係数に依存してもよく、フィルタ係数は、アブレーション信号の内容に応じて調整可能であってもよい。別の例では、ECG検出器又は検出回路は、異なる治療モダリティで使用される異なる周波数範囲を考慮するように、選択可能なフィルタ設定があるように構成してもよい。別の例では、ECG検出器又は検出回路は、例えば、ECG波形からのアブレーション信号の除去を確実にするようにフィルタ回路で使用される静電容量又は抵抗を(抵抗器又はコンデンサを切り替えることにより、コンデンサ又は抵抗器を回路に追加し又は回路から除去することにより、又はポテンショメータ値を調整することにより)変更することによってアナログフィルタリングを適合させてもよい。
【0054】
これに関連して、アブレーション信号の除去を確実にすることは、例えば、フィルタ特性周波数若しくはコーナ値、又はフィルタQ値を調整することによって実行することができる。特定の例では、アブレーション発生器は、治療パルスのバーストを送達するようにユーザによって構成することができ、バーストは、スパイク間隔によって分離されたパルススパイクを含む。比較的単純な手法では、スパイク間隔に関連する値を提供することができる。より複雑な例では、アブレーション発生器は、バーストが使用されるか他の信号が使用されるかにかかわらず、プログラムされた治療パターンに対して高速フーリエ変換等の周波数解析を実行するように適合されたプロセッサを含むことができる。他の例では、治療出力は、特性に応じて、高周波数、中周波数又は低周波数に分類することができ、ECG検出器又は検出回路は、高周波数、中周波数又は低周数波分類の各々について対応するフィルタリング能力を有するように構成することができる。別の実施例では、ECG検出器は、双極治療が送達されているか単極治療が送達されているかに応じて、異なるフィルタ又は検出設定を使用してもよい。いくつかの例は、治療出力の予測される周波数内容が、例えば、少なくとも500Hzを超える場合、代わりにこの適応的フィルタリング能力を省略してもよく、その理由は、心臓信号の典型的な周波数内容は、約3~約40Hzの範囲であり、それは、ライン電圧信号(地理に応じて50又は60Hz)の除去を目標とするローパスフィルタリング方法は、より高い周波数内容も有効に遮断することを意味するためである。
【0055】
図3は、参照のために例示的な心臓信号を示す。P波(心房脱分極)と、R波が最大のピークとして示されるQRS複合波(心室脱分極)と、T波(心室再分極)とを含む、心臓信号のいくつかの特徴について従来の命名技法を使用して、心臓信号のトレースを示す。心臓は、印加される電気刺激に対して、ECG波形の特徴に対する刺激のタイミングに応じて反応する。P波に又はP波の前に印加される刺激により、ペーシングされた心拍をトリガすることができ、心房収縮とずれて1回の心室収縮がもたらされる可能性があり、こうした1回の事象は悪影響を及す可能性が低い。QRS複合波の間と、200でS-T間隔において強調されている、QRS複合波に続く短い期間中とに印加される刺激は、概して、心臓がこの時間窓の間の刺激に不応であるため、(非常に大きい振幅がなければ)影響を及ぼさない。しかしながら、T波中に印加される刺激は、危険である可能性があり、その理由は、その刺激が、心室細動又は多形性心室頻拍を誘発する可能性があり、そのいずれによっても、無秩序の心調律が血液を有効に圧送できなくなるため、患者の血圧がゼロに低下し、適時に逆転しなければ数秒で意識を失い、数分で死に至ることになるためである。
【0056】
アブレーションシステムは、R波又はQRS複合波を検出し、窓200内で発生するように治療送達のタイミングをとることが知られている。しかしながら、こうしたシステムは、通常、治療送達のための安全窓200を開始するために、R波の検出後に一定の遅延を設定することによってこれを行う。202で強調されているR波とT波との間隔の持続時間は、一定ではなく、患者ごとに異なり、また心拍数に応答して所与の患者内でも変化する。例えば、さまざまな公式(バゼット(Bazett)、フリデリシア(Fridericia)及びサギー(Sagie)の公式が例である)が、連続するR波の間隔(R-R間隔)の関数としてQT間隔の変動を特徴付ける。RT間隔は、QT間隔の大部分を占める。サギー(Sagie)の公式は
QTlc=1000×(QT/1000+0.154×(1-RR))
である。式中、QTlcは、患者に対する所与のRR間隔における予測されたQT間隔であり、1秒間のRR間隔に対応する60拍/分(bpm)での患者のQT間隔が、公式においてQTとして使用される。約60bpm~約130拍/分の範囲内で、QT間隔、及び同様にRT間隔は、心拍数が10bpm上昇するごとに約20ミリ秒(ms)だけ短縮する。「正常な」QT間隔であるものは、議論が分かれる問題であるが、通常は、60bpmでの正常なQT間隔が、約330~約440msの範囲にある可能性があり、一部の研究者によってより狭い範囲が示唆されている。いくつかの例では、QT間隔は、処置の前又は処置の間に測定され、治療窓を調整するために使用され、他の例では、60bpmで約400ms等の「正常な」QT間隔が想定される。
【0057】
また、患者は解剖学的構造が異なるため、心臓信号の伝導パターンが異なり、腫瘍があり、そうした腫瘍に対して薬物又は他の治療を受けている患者は、異常な伝導パターンを示す場合がある。一定の遅延を設定するために、これらのばらつきを考慮した適切な安全マージンを組み込まなければならず、治療送達のための使用可能な時間が、任意の所与の患者にとって必要であり得るものを超えて狭まることになる。
【0058】
加えて、実際の臨床応用では、図3に示すような鮮明な心電信号が常に発生するとは限らない。例えば、患者によっては、又はリードの構成によっては(すなわち、ECG捕捉電極の配置方法に応じて)、R波がそれほど顕著でない可能性があり、又は、例えば、T波と同様の振幅である可能性がある。患者によっては、より幅の広いQRS複合波を有する。患者によっては、外部ノイズ、モーションアーチファクト及び/又は(骨格筋組織、又は横隔膜によって発生する信号によって発生することがある)筋電位ノイズを受けることになる。患者によっては、期外収縮心拍(例えば、心室性期外収縮)等の異常心拍が発生する場合がある。アブレーションシステムは、有害な治療出力を回避するために安全窓200の使用に依存するため、治療送達窓200を設定する前に検出の正確さを確保するように設計されるべきである。
【0059】
本発明者らは、これらの問題に注目し、安全窓200の規定(definition)を、いくつかの例では特定の患者に、いくつかの例では心調律に、且つ、治療をトリガするときにR波を誤認する可能性を考慮するように、調整しようとする。
【0060】
図4及び図5は、選択された方法のステップを示すブロックプロセスフロー図である。図4から開始して、アブレーション送達の方法は、患者の現在の心臓の状態に合わせられる。300において、治療レジメンが開始され、302において、患者の心拍数が計算される。次に、304に示すように、心拍数を考慮して、治療で使用する遅延間隔が設定される。
【0061】
例えば、400msの基準QT間隔を使用し、60拍/分で、R波又はQRS検出の約50~約100ms後である開始時点を使用し、予想されるT波の約50~約100ms前である終了点を設定して、100~200msの治療窓を規定することができる。この評価では、RT又はQT間隔を使用することができ、一般に、RT間隔は、大部分の患者でQT間隔よりも20~40ミリ秒だけ短くなるが、広いQRS複合波を有する患者は、さらに短いRT間隔を有する可能性がある。
【0062】
心拍数が100拍/分と測定された場合、QT間隔及び/又はRT間隔はそれに応じて短縮すると想定される。上記の言及した公式(例えば、バゼット(Bazett)、フリデリシア(Fridericia)、又はサギー(Sagie))のうちの1つを使用することができ、又は、簡易版(60を超える各10bpmについて20ミリ秒の短縮)を適用することができ、304において、治療窓タイミング及び/又は持続時間が計算される。いくつかの例では、治療窓持続時間は固定されるが、治療窓開始前の遅延間隔は調整することができ、他の例では、遅延及び持続時間の両方が調整され、さらに他の例では、治療窓持続時間のみが調整される。従って、以下のチャートは、1つの例示的な例を反映している。
【0063】
【表1】
【0064】
この例では、治療窓の開始前の遅延が50msという最小値を有し、治療窓の終了からT波の推定開始までのマージンが100msに設定されており、治療の発生がT波開始に近すぎる場合よりも前端の遅延がもたらすリスクが低いという事実を反映している。上述したように、他の例では、想定QTを見つけるためのより高度な解析を使用してもよい。表に示す遅延最小値及びマージン値は、他の実施例では異なり得る。チャートから見ることができるように、治療の窓持続時間は、いくつかのシナリオでは100ミリ秒を超え、これは、治療に対する制限が、患者の心拍数が閾値を超えていると観察された場合にのみである固定窓を有する、いくつかの従来技術によるシステムで利用可能な時間よりも、はるかに長い。従来のシステムでは、許容可能な最高の心拍数に対応するために治療窓は固定され、それにより窓が過度に短くなり、アブレーション手術に費やされる時間が延長される可能性がある。アブレーション手術に費やされる時間に影響を与える可能性がある、少なくとも2つの方法がある。第一に、治療転帰の成功を達成するために、標的組織のアブレーションを完了するのに十分な時間が必要である。第2に、治療のタイプにより、時間的に密な間隔のパルスの累積効果が用いられ(例えば、個々にIREを達成できないが、累積的にIREを達成するパルスのパルス列でIREを達成することを考察している米国特許8,926,606号明細書を参照)、パルス列の時間の量を延長することができることにより、こうした治療を強化することができる。
【0065】
304で遅延間隔が設定されると、本方法は306で治療送達を始める。治療送達306は、心拍検出312と、続く待機期間314と、その後の治療出力の送出とを含む、310で示すサブルーチンを含むことができる。待機期間を使用して、いくつかの例において、治療出力を送出する前に心拍検出の確認等の他の解析を完了することができることを確実にすることができる。ブロック320に進む前に306/310において1つ以上の心拍にわたる1つ以上の治療出力を発生させて、治療レジメンが完了したか否かを判断することができる。レジメンが未完了である場合、本方法はブロック302に戻る。ブロック302に戻ると、いくつかの手法のうちの任意のものをとることができる。1つの例では、ブロック302への戻りは、治療出力後に、且つ後続する心調律の検出前に生じ、治療が適用された可能性のある、最近検出されたR波又はQRS複合波を用いて心拍数が計算される。他の例では、ブロック302への戻りは、治療の一時停止又は中断を表し、302において、1つ以上の心周期が観察されて、アブレーション治療が送達されない間の心周期から心拍数が計算される。こうした一時停止は任意選択的である。ブロック302に戻った後、ブロック304及び306が繰り返され、再びブロック320に至る。このプロセスは、治療レジメンが完了するまで反復することができ、完了した時点でプロセスは322で終了する。図示しないが、心拍数が計算されるとき、本方法は、心拍数を高いか又は低い境界条件と比較することができ、いずれかの境界を超えた場合、治療を中断してもよく、検知される心調律が期待される挙動の範囲内にないことを示す、出力アラーム又は他の報知信号を発生させることができる。そして、医師は、治療を継続すべきか停止すべきか、又は他の行為(除細動、徐脈ペーシング、薬物送達等)が必要であるか否かを判断することができる。
【0066】
図5は別の例を示す。ここでは、ブロック350において、治療レジメンが開始し、352において、患者の心拍又は心周期が解析される。ブロック352における解析は、手動でも自動であることができ、例えば、所与の心拍数におけるQT間隔等、心臓信号の特徴を特定することを含むことができる。例えば、QRS幅、P波、R波若しくはT波のうちのいずれかの振幅、P波若しくはQRS複合波の形状、基準値に対するST間隔中の信号の形状/上昇、R波の他の特徴(例えばP、Q、S又はT)に対する比、これらの波のうちの任意のものの極性、P波、QRS複合波セグメント若しくはT波のうちの任意のもののスルーレート、及び/又はこうした特徴の心拍間安定性等、他の特徴も測定及び/又は記録することができる。
【0067】
いくつかの例では、ステップ352は、QT又はRT間隔を測定すること等により、心律動挙動をモデル化しようとすることなく現在の状態を測定する。その後、このデータをブロック354に直接供給して、QRS又はR波の検出に続いて治療が送達される安全窓を設定することができる。他の実施例のように、安全窓は、R波に続く幾分かの遅延で開始し、T波の前に終了するように設定することができる。安全窓の持続時間に応じて、356に示すように、アブレーション治療として送達すべきバーストを調整することができる。例えば、治療バーストは、設定された量のパルスまで、パルス間間隔によって分離された、各々がパルス幅を有する一連の方形波パルスとして送出することができる。バーストの持続時間は、パルスの量にパルス幅とパルス間間隔とを足したものとを掛けた積であり、この持続時間は、356に示すように、安全窓内に収まるように又は安全窓を最大限に利用するように調整することができる。非バースト治療も同様に又はその代わりに送達することができる。
【0068】
いくつかの例では、複数のバーストを単一の安全窓で送達してもよい。例えば、IRE及び他の非熱療法は、20マイクロ秒のパルス間間隔と5マイクロ秒パルス幅とを想定して、10マイクロ秒未満の範囲で非常に狭いパルス幅を使用することができ、その後、40パルスのバーストを1ミリ秒(25マイクロ秒×40パルス)で送達することができる。5ミリ秒のバースト間間隔を使用すると、120ミリ秒の治療窓内に20回のバーストを送達することができるが、90ミリ秒の治療窓内では15回のバーストしか送達することができない。
【0069】
354で安全窓が設定され、任意選択的に356で任意のバーストパラメータが調整されると、358に示すように治療が送達される。この場合もまた、治療送達は、心拍検出362、待機時間364、及び366での治療の送出を含む、360に示すサブルーチンを含むことができる。358での治療送達は、要求に応じて、サブルーチン360を1回又は複数回動作させてもよい。レジメンが370で完了した場合、本方法は終了し、そうでない場合はブロック352に戻る。
【0070】
代替例は、最初の反復で図5の方法を使用し、患者固有のQT間隔情報を含む心拍データを収集し、その後、心拍数を用いて1回又は複数回の後続する反復に対して図4に示すように調整を行うことにより、図4及び図5の方法を混合する。例えば、QT間隔を1分間に1回測定してもよく、一方、心拍数を継続的に測定し、各々を使用して、患者及び患者の現在の状態に治療窓を合わせる。いくつかの例では、図5の方法は、治療を受けていなかった心拍/心周期に対して心拍解析を実行し、心周期が治療を受けるか否かに関係なく心拍数解析を使用する。このように、2つの方法のさまざまな混合を使用してもよい。
【0071】
図6は、治療送達の一方法をグラフィカルに示す。図6では、いくつかの拡張機能及び一意の動作モードが合わせて強調されている。まず、400及び410に示すように、アブレーションの安全期間は、例えば、各アブレーション治療送達の前に、繰り返される。図示する手法は、交互の心拍に対してアブレーション治療を送達し、未処置の心拍を使用して治療窓を判定する。例えば、心拍430は、402に示すように安全期間を設定するために解析され、この安全期間は、その後、412でQRS複合波を検出し414で治療を送出することにより心拍432の安全期間中に治療を送達するために、使用される。加えて、図示する方法は、治療が送出される前に、422で心拍確認のさらなる解析を実行する。確認のさまざまな方法については、さらに後述する。
【0072】
この例では、ブロック402において、心拍430を解析することにより安全期間が判定される。解析は、例えば、心拍320におけるR波及びT波を特定し、その後、R波の後に開始し、T波の前に終了するように、治療送達のための安全期間のパラメータを定義することができる。次の心拍432は、412で検知/検出され、ブロック402からの安全期間設定を用いて414で治療が送出される前に、422において、心拍の確認が行われる。さらなる例では、心拍検出412及び確認422は、解析ブロック402に正確なデータを提供するために、心拍430に対しても実行される。治療が414で送出された後、プロセスは、心拍434を使用して(この例ではブロック402と同様に動作する)404で安全期間が設定されて、心拍434、436に対して繰り返す。436の心拍は416で検知/検出され、424で確認され、その後、418で治療が送出される。
【0073】
さらなる例では、412におけるQRSの検出は、遅延期間を繰り返し開始する際に使用するための、R波ピーク又はR波に先行又は後続する変曲点等の基準点の特定を伴ってもよい。例えば、検知回路が心臓イベントを検出するために心臓信号に検出閾値を適用する場合、検出が生じる実際のQ波又はR波に関連する時点は、基準ドリフト又は信号形態の変化により変化する可能性がある。遅延及び/又は安全期間の計算に使用する基準点を次に探索するために心拍検出を使用することにより、本システムは、解析を患者の実際の心調律にさらに合わせることができる。
【0074】
図7図10は、心臓信号を解析して心拍検出を確認する方法をグラフィカルに示す。図7で開始して、450において、参照のために、理想化された心周期が示されている。心拍検出を確認する1つの例示的な方法は、460に示すように、スルーレートを参照することによる。スルーレートは、単位時間当たりに電圧がいかに迅速に変化するかを示す。この例では、P波はスルーレート462を有し、R波はスルーレート464を有し、T波はスルーレート466を有する。R波のスルーレート464は、この例の他の波形特徴のスルーレートよりも特徴的に大きい。従って、高い方のスルーレートを用いて、R波が検出されたことを確認することができ、一方、低い方のスルーレートを用いて、R波が検出されていないことが判定される。QRSが検出された場合、最長の正の傾きの期間、又は最初の長い傾きの期間、又は他の特性を用いて、QRS複合波の傾斜セグメントの中からスルーレートの評価に用いるものを選択することができる。スルーレート、又は他の特徴/特性を用いてR波をT波及び/又はP波と識別するためのパラメータは、予め設定してもよく、又は、患者の1つ以上の心周期を解析することによって計算してもよい。
【0075】
心拍検出を確認する別の例示的な方法は、470に示すように、幅を参照することによる。P波は幅472を有し、R波又はQRS複合波は幅474を有し、T波は幅476を有する。T波の幅476は、他の2つの選択肢のいずれよりも特徴的に長い。従って、470に示すように、幅を用いて、R波の検出を確認することができ、一方、(例えば、100ミリ秒の閾値を超える)長い方の幅を用いて、不適切なT波検出にフラグを立てることができる。患者によっては、広いQRS複合波を有し、幅の使用は、幅の解析で使用する閾値を設定するために、R波又はQRS幅を予め測定することによって、そうした患者に合わせることができる。この例では、P波とR波とは、幅を使用して容易に識別されない可能性があることに留意されたい。その問題は、例えば、典型的にはR波又はT波のいずれよりも増幅がはるかに低いP波を通過するように感度閾値を設定することによって対処することができる。いくつかの例では、これは、例えば表面電極を使用する場合、QRS検知電極を心臓に対して相対的に低い位置に配置するように構成する問題である可能性があり、これにより、P波振幅が減衰し(これは心房で発生する)、従って、主に心室で発生する電気信号が検出される。
【0076】
480に示すように、振幅は、使用することができる別の尺度である。P波は、P波振幅482を有し、R波は、R波振幅484を有し、T波は、T波振幅486を有する。この例のR波振幅484は、他の2つの482、486よりも著しく高い。この場合もまた、ECG検出器又はECG検出回路の検知電極の配置は、この要素を特徴付けることに役立つように操作することができる。
【0077】
図8は、さらなる心拍確認基準を示す。R波又はQRS複合波のテンプレート510を参照して、相関波形解析(CWA)等の相関解析を使用することができる。テンプレート510は、所与の時点で形成され、複数の検出されたイベントを解析するために使用される、格納された又は静的なテンプレートであってもよく、又は、直前の確認された心拍から取得される等、連続的に更新された又は動的なテンプレートであってもよい。512に示すように、テンプレートが一致した場合、検出されたイベントはQRS複合波又はR波として確認することができる。R波テンプレートと比較してT波が検出される場合のように、テンプレートが一致しない場合、一致は見られず、検出されたイベントはQRS複合波として扱われない。
【0078】
検出は、520に示すように、周波数解析を用いて解析することができる。例えば、R波は、典型的には約20~40Hzの特徴的な周波数を有することが知られており、一方、T波は、約10Hz以下の特徴的な周波数を有する。従って周波数解析520を用いて、予期される周波数範囲に一致するか否かを判断することができ、検出されたイベントは、予め設定することができるか、又は患者自身の心周期の解析に基づき得る。522において、本方法は、検知/検出されたイベントが予測された周波数範囲に一致するか否かを判断し、一致する場合、524で心拍が確認され、一致しない場合、526に示すように、心拍は確認されない。P波の周波数内容は、R波のものと重なる傾向があり、そのため、他の特徴を用いて、P波検出を回避するか、又は上述したようにP波をR波又はQRS複合波から識別することができる。
【0079】
代わりに、変換解析を用いてもよい。例えば、主成分分析(PCA)又はウェーブレット変換を用いてもよい。各プロセスは、解析中の信号の一組の特徴的な固有ベクトルを生成し、心周期の異なる成分は、解析されると、異なるウェーブレット又はPCAの特徴的な特徴を有し、R波が他の特徴から識別されるようにすることができる。530において、変換が実行され、532において、本方法は、変換の出力が期待値と一致するか否かを判断する。ブロック532における期待値は、予め設定してもよく、又は、少なくともQRS成分、及び場合により他の成分を用いて患者の1つ以上の心周期を解析し、心周期の異なる成分の変換解の間の差を求めることによって生成してもよい。R波又はQRS複合波の期待値との一致が生じた場合、524で心拍が確認され、そうでない場合、526で心拍が確認されない。
【0080】
さらに別の方法は、540に示すように、検出間の間隔を検討することである。1つのR波から次のR波までの間隔は、一般に、心臓の不整脈がなければかなり安定している。R-R又はQRS-QRS間隔の急激な変化は不整脈の発症を示す可能性があり、経時的なR-R間隔の不整合は伝導性の心房性不整脈を示す可能性がある。従って、誤検出及び/又は不整脈がなければ、R-R又はQRS-QRS間隔は一般に安定していると想定することにより、間隔解析を使用することができる。従って、R波検出とT波検出との間の短い間隔542は、例えば2つのR波間の長い間隔544と容易に識別することができる。間隔解析のために、先行するR-R間隔を格納してもよく、又は、継続中の平均R-R間隔(先行する4つのR-R間隔の平均等)を維持してもよい。この場合もまた、一致がある場合は心拍を確認することができ、不一致の場合は心拍が確認されないことになる。
【0081】
図9は、別の例を示す。ここでは、心電信号をECG600として示し、620に心音信号を示し、630に圧力信号を示す。最初に心音とECGとの組合せを参照すると、R波が発生すると、心室が脱分極及び収縮する際の三尖弁及び僧帽弁の閉鎖によって引き起こされる第1心音S1が、その後すぐに、典型的には100ミリ秒未満で現れる。本システムは、610に示すように、R波の検出を確認するために、S1の発生を探すことができる。一方、T波は、612に示すように、R波と同じように心音と時間的に相関していない。第2心音S2は、心室内の圧力が大動脈の圧力よりも低下したことに応じて大動脈弁及び肺動脈弁が閉鎖することによって引き起こされ、T波発生からかなり後に発生する。第3心音S3及び第4心音S4は、それらの振幅がはるかに小さいことにより容易に識別することができ、そのため、(第4心音が存在すると想定しても)第4心音がP波と時間的に相関する可能性があるという事実は、概して大した問題ではない。使用時に、R波検出から安全窓までの遅延は、アブレーション治療送達前に最初の心音を観察することができることを確実にするように設定することができる。心音を観察するために、植込み型又は装着型のトランスデューサを使用することができる。
【0082】
630に示す圧力信号も使用することができる。632に示すように、圧力信号は、心室が収縮する際の心室脱分極に関連する著しい上昇を示す。こうした上昇は、心周期の他のいかなる成分とも相関しておらず、そのため、この場合もまた、この特徴を使用することができる。圧力信号を観測するために、植込み型又は装着型のトランスデューサを使用することができる。パルスオキシメトリにより、圧力信号のアナログを取り込むことができるが、センサが心臓に対して遠位に配置されているために脈流信号が遅延する場合、末端に配置されたパルスオキシメトリの使用はこのマーカの値を制限する可能性がある。
【0083】
心拍の確認の失敗は、これらの例のうちの任意のものにおいて、治療送達を抑制するために使用することができる。本システムは、失敗を記録することができ、その後、後続するあり得る心周期を特定するために検知を再開し、再び後続する周期を解析して心拍検出を確認する。いくつかの検出が連続して確認に失敗した場合、本システムはエラーを発生させ、ユーザに警告することができる。
【0084】
図10は、転換点を使用して心臓由来の信号の検出を非心臓ノイズ源から識別する方法を示す。650にR波形態を示し、660にノイズ信号を示す。こうしたノイズは、アブレーション手術中に患者が装着しているか又は患者に近接している装置によって発生するノイズ等、非生物学的である場合があり、又は、骨格筋ノイズ若しくは横隔膜関連信号等、筋電位に由来する場合がある。これらの非心臓信号は、心臓信号よりも高い周波数内容を有する傾向があり、そのため、652及び654に示すように、窓内で解析するとき、各信号に対する窓内の転換点の数は異なることになる。窓持続時間は、例えば、50~100ミリ秒のいずれであってもよく、R波又はQRS複合波信号650の転換点1及び3を判定することにより、特定の患者に合わせることができ、転換点1及び3は、図示するように、R波における最長の上昇期間の開始及びR波における最長の下降期間の終了に対応することができる。ノイズ信号660は、R波(ここでは3つ)よりも多くの転換点(ここでは6つ)を有するものとして示されており、この相違は、いくつかの例において、ノイズ信号660をR波信号650から識別するために使用することができる。例えば、転換点を解析するとき、5つの転換点等、閾値を設定することができる。閾値を超える転換点を有する信号は、ノイズとして拒絶することができ、ノイズによって引き起こされる心拍は確認されない。いくつかの例では、転換点は、入力信号の一次導関数の継続的な計算を使用することによって判定することができ、一次導関数のゼロがカウントされる。別の例では、転換点の代わりに変曲点(二次導関数ゼロ)を使用することができる。
【0085】
図11は、図7図10のさまざまな確認プロセスの使用を示すブロックプロセスフロー図である。任意の好適な数の特徴を組み合わせて使用して、心拍を確認するか又は確認を阻止することができる。方法フローは、ブロック700で開始し、そこで、ECG検出が実行される。ECG検出では、ECGにおける傾き又はピーク等のイベントが検出され、検出されたイベントとして扱われる。例えば、ECG検出ブロック700は、(整流された又は整流されていない)ECG信号振幅を、固定であっても又は時間的に変化してもよい検知閾値(時間減衰検知閾値等)と電子的に比較することによって実行することができる。いくつかの例では、ブロック700において、最初の比較的高い振幅から、後の比較的低い第2振幅まで経時的に減衰又は低下する検出閾値を適用することができ、第1振幅は患者のT波の予期された振幅を超えるように選択され、第2振幅は患者のP波の予期された振幅を超えるように選択される。第1及び第2振幅の設定は、格納された1つの値又は複数の値から実行してもよく、又は、1つ以上の心周期の解析によって特定の患者に合わせてもよい。少なくとも治療出力期間中、治療自体の検出を阻止するために、必要であれば、その後のある期間、T波の検出を回避するために、不応期を適用してもよい。開示内容が参照により本明細書に参照される米国特許第8,565,878号明細書は、心臓サイクルを検出するためのいくつかの例示的な装置及び方法について考察している。
【0086】
次いで、ECG信号の検出されたイベントは、702に示すように、確認ルーチンに渡すことができる。確認ルーチンは、704に列挙した解析のうちの1つ以上を使用することができる。例えば、706に示すように、(静的であるか動的であるかにかかわらず、又は、CWA、ウェーブレット(Wavelet)、PCA、周波数若しくは他の形態解析における)ECG信号内の検出されたイベントに関連する信号のテンプレートへのマッチングを使用することができる。例えば、米国特許出願公開第20090259271号明細書、同第20100004713号明細書及び同第20110098585号明細書は、確認前に過検出された心臓イベントを特定することを考察しており、それらの開示内容は参照により本明細書に援用される。708に示すように、音声信号、動き信号、光信号(酸素測定法)又は圧力信号等の第2信号を用いる確認を、例えば、ECG検出イベントを第2信号と相関させるようにすることによって実行することができる。確認は、710に示すように、開示内容が参照により本明細書に援用される米国特許第7,248,921号明細書におけるような解析の使用等により、検出を解析して、その検出がノイズによって引き起こされているか又はノイズで汚染されているかを確認することを含むことができる。確認は、スルーレート712、振幅714及び/又は幅716等、信号自体の特徴を参照することもできる。ブロック704における各特徴は、上記で提供したさまざまな例において説明している。1つからすべてまでのブロック704における任意の数の解析を使用してもよい。
【0087】
検出されたイベントが確認ルーチンに合格した場合、720において心拍が確認され、724で治療が送達される。次に、本方法は、726において、治療レジメンが完了したか否かを判断し、完了した場合、方法は728で終了する。レジメンがまだ完了していない場合、本方法はブロック700に戻る。
【0088】
検出されたイベントが確認ルーチンに不合格であった場合、本方法はブロック730に進む。確認されなかった検出に基づく治療送達を阻止するために、730においてECG検出は破棄される。次いで、本方法は、エラー状態が存在するか否かを判断することができる。例えば、ある期間(例えば3~5秒、又はそれ以下若しくはそれ以上)心拍が確認されなかった場合、患者がECG信号を中断した収縮期又は不整脈となっているか、若しくはリード若しくは電極の断線、ECG検出器との通信の中断、又はリード/電極が患者組織/心臓に対して変位する等、ECG信号検知を中止する何かが発生し、エラーとみなすことができる。別の例では、いくつかの検出が連続して確認に失敗した場合、又は期間内に閾値量のECG検出が確認に失敗した場合(5秒以内に3つの失敗、又は他の組合せ等)、これは、潜在的な不整脈の発症、電極の変位又は切断、検知を損なうノイズ源の導入等を含む、種々の問題のうちのいずれかを示す可能性がある。732においてエラー状態が見つかった場合、システムは、治療ルーチンを停止/中断し、734に示すように、医師への警告を発生させる。警告は、可聴警告、視覚警告及び/又は触覚警告のうちの任意の1つ又は任意の組合せによってもよい。732においてエラー状態が見つからない場合、方法はブロック700に戻る。
【0089】
図11において、図示しないが、724における治療送達のパラメータは、例えば、限定なしに、心拍数、及び心周期の特徴間の間隔を含む、検出された心臓信号の特徴に従って、治療の送達のための安全期間を合わせる等、図4図6の上記で例示した方法を用いて調整することができる。図6に示すように、治療の送達のための安全な期間を調整することができるように、治療レジメンを中断する場合がある。
【0090】
上記の例のうちのいずれも、心臓ペーシングの状況にさらに合わせることができる。一例では、患者は、アブレーション治療の補助として、又は患者がペースメーカに依存しているため、アブレーション治療中に心臓ペーシング療法を受ける場合がある。ペースメーカは、任意の形態(例えば、植込み型経静脈ペースメーカ若しくはリードレスペースメーカ、又は外付けペースメーカ)であってもよく、アブレーションシステムと通信するか又はアブレーションシステムによって検出可能であってもよい。一例では、ペース出力は、アブレーションシステムが(典型的には、心臓信号と比較して明確な周波数特性及び/又は形状を有する)こうしたパルスに対して検知すること、又は(本来の心拍とは形態的に異なる)ペース捕捉心拍に対して検知することによって、識別することができる。アブレーション治療は、ペーシングレートに適合させることができる。さらに、いくつかの例では、心拍数をオーバードライブする(固有レートよりも高いレートで意図的にペーシングする)ことができ、これは、予測可能な心周期を確保するため、又は経時的に発生させることができるアブレーション出力の量を増大させるために有用である場合がある。例えば、アブレーション出力バーストが心周期ごとに1回送達される場合、安全な生理学的境界の範囲内で心臓をオーバードライブペーシングすることにより、単位時間当たりの心周期数が増加し、処置を完了するのに必要な時間が短縮する可能性がある。別の例では、ペースレートの上昇を用いて、アブレーション出力間の回復時間を短縮することができ、熱効果(必要な場合)が増大する可能性があり、又は電気穿孔法の効果を増幅するために細胞壁の回復が阻止される。一例では、電気穿孔法は、熱効果が観察されるまで、ペーシングされた心拍数が比較的高く維持される際に送達することができ、熱効果が観察された時点でペーシング出力を低減させることができる。
【0091】
例示的な非限定的な例において、アブレーションシステムは、1つ以上のトリガ信号に応答してアブレーションの目的で出力パルスを発生させるパルス発生手段(こうしたパルス発生手段は、図示及び上述したような、高圧電源ブロック130及び送達ブロック140を含む)と、患者から心臓信号情報を受信し、且つ、アブレーション治療の送出のためのトリガ信号を送出する、入力手段を有するトリガ手段(こうしたトリガ手段は、各々図示及び上述したように、ブロック160おけるようなものであってもよく、且つ/又は、コントローラ100によって実行されるメモリ120に格納された実行可能命令を含んでもよい)と、パルス発生手段及びトリガ手段の少なくとも各々に接続されたシステムコントローラ(図示及び上述したようなコントローラ100等)とを備える。この例では、改善はトリガ手段を備え、該トリガ手段は、受信した心臓信号情報を解析するとともにアブレーション治療の送出のための安全期間を特定する解析手段を備え(こうした解析手段-当該解析手段はコントローラ実行可能命令として又は例えば特定用途向け集積回路等の専用回路に実装し得る-の動作は、図4図6の各々の例において図示及び記載している。それは、図5における352での心拍数の解析及び354での安全窓の設定と同様に、図4における心拍数の計算302及び遅延間隔304の設定を含み、且つまた、図6における400での、心拍を解析して後続する心拍に対して安全期間が発生するときを判定するブロック402及び404を含む)、該トリガ手段は、そうした安全期間中にパルス発生手段がアブレーションの目的で出力パルスを発生させるように、トリガ信号を送出するように構成される(トリガ手段のこの利用は、図2のブロック160、100及び130/140に対して記載されており、図4の310、図5の360、並びに図6の412/422/414及び416/424/418の各々の方法例に示されている)。
【0092】
さらに又は別法として、トリガ手段は、治療レジメン内の少なくとも1つのアブレーション治療の送達後の安全期間のタイミングを解析するように解析手段を動作させるように構成される(図4は、320から302に戻って反復し、タイミングが再解析される方法を示し図5は、ブロック370から352まで反復し、タイミング及び安全窓/期間が再解析される方法を示し、図6は、心拍432で治療が送出された後の心拍434の解析を示す)。
【0093】
さらに又は別法として、解析手段は、患者の心拍数を計算するとともに安全期間の開始点若しくは安全期間の持続時間のうちの1つ以上を調整することにより、安全期間を判定するように構成される(図4は、開始点の調整を明示的に示し、関連する本文は、ブロック302/304とともに、安全期間の持続時間の調整も示す)。
【0094】
さらに又は別法として、トリガ手段は、心周期を検知するとともに、心周期におけるR波及びT波のうちの1つ以上を特定する検出手段を備え、解析手段は、T波が予測されるR波の後の時点を推定するとともに、R波が終了した後に開始しT波が開始する前に終了するように安全期間を設定することにより、安全期間を設定するように構成される(図4は、開始点の調整を明示的に示し、関連する本文は、ブロック302/304とともに、安全期間の持続時間の調整も示し、特にR波及びT波を考慮してこのステップを実行することは、少なくとも図4に関連する本文に記載されている)。
【0095】
さらに又は別法として、トリガ手段は、心周期を検出するとともに少なくともR波を含む心周期の1つ以上の特徴を特定するように構成された検出手段を備え(こうした検出手段は、コントローラ100又はトリガブロック160の一方又は他方の構成要素として、例えば、上記のさまざまな例におけるデジタル及びアナログフィルタリング能力とともに増幅及びアナログデジタル変換能力を含むものとして記載されている)、解析手段は、心周期におけるR波開始から安全開始時点までの遅延と、安全開始時点から終了時点までの安全期間が規定される期間とを判定する判定手段を備える(解析に対するこの手法は、図5のブロック352及び関連する本文に、且つ、図6のブロック402、404、及び安全期間を設定するための心拍のR波及びT波特徴の解析とともに関連する本文にも示されている)。
【0096】
さらに又は別法として、検出手段は、心周期の特徴のうちの1つとしてT波を特定するように構成され、判定手段は、T波に先立つ時点として終了時点を特定するように構成される(解析に対するこの手法は、図5のブロック352及び関連する本文に、且つ、図6のブロック402、404、及び安全期間を設定するための心拍のR波及びT波特徴の解析とともに関連する本文にも示されている)。
【0097】
さらに又は別法として、トリガ手段は、心臓信号を検知するとともに、心周期内のイベントを特定するように構成された検出手段(こうした検出手段は、コントローラ100又はトリガブロック160の一方又は他方の構成要素として、例えば、上記のさまざまな例におけるデジタル及びアナログフィルタリング能力とともに増幅及びアナログデジタル変換能力を含むものとして記載されている)と、心周期における特定されたイベントを確認する確認手段とを含み、トリガ手段は、特定され確認されたイベントに応答してのみトリガ信号を送出するように構成される(こうした確認手段は、例えば、図6のブロック422、424及び/又は図11のブロック702に関連して説明した心拍確認方法を実行する、マイクロコントローラ、状態機械及び/又はASIC、並びに関連メモリ及び回路を含むことができる)。
【0098】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成され(こうした検出手段は、コントローラ100又はトリガブロック160の一方又は他方の構成要素として、例えば、上記のさまざまな例におけるデジタル及びアナログフィルタリング能力とともに増幅及びアナログデジタル変換能力を含むものとして記載されている)、確認手段は、(例えば図8に示した方法のうちの任意のものを使用して図11において706に示したように)特定されたイベントをR波テンプレートと比較して特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0099】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成され(こうした検出手段は、コントローラ100又はトリガブロック160の一方又は他方の構成要素として、例えば、上記のさまざまな例におけるデジタル及びアナログフィルタリング能力とともに増幅及びアナログデジタル変換能力を含むものとして記載されている)、確認手段は、(図11において712に述べ、図7において460で示したように)特定されたイベントのスルーレートを計算して閾値と比較し、特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0100】
さらに又は別法として、本システムは、音声、圧力又は運動のうちの1つ以上を検知するセンサをさらに含み(代わりにこうしたセンサであってもよく、又はこうしたセンサをさらに有していてもよい、外部ECGセンサの提供に関連して述べたように、且つ/又は、こうしたセンサは、図示及び上述したようにプローブ180の中又は上に設けることができる)、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、(図9のいくつかの例に示し、図11においてブロック708で述べたように)センサの出力を特定されたイベントと相関させて、特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0101】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、特定されたイベントの幅を計算し、前記幅を閾値又は格納された値と比較して特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される(図11の716で、図7において470に示されている)。
【0102】
さらに又は別法として、検出手段は、R波を特定するように構成されるとともに、確認手段は、(図11の714で且つ図7のブロック480で述べたように)特定されたイベントの振幅を以前のR波の格納された振幅と比較して特定されたイベントがR波であることを確認するように構成される。
【0103】
さらに又は別法として、確認手段は、(図11の710において述べ、図10及び関連する本文に示したように)特定されたイベントに関連する心臓信号における転換点又は変曲点のうちの1つ以上を特定してカウントし、閾値と比較するように、且つ、閾値よりも高い転換点又は変曲点を有する特定されたイベントをいずれもノイズとして拒絶するように構成される。
【0104】
さらに又は別法として、トリガ手段は、一連の心周期にわたって、安全期間を規定する第1パラメータを使用して、1つ以上の第1心周期に対してアブレーションをトリガし、1つ以上の第1心周期の後に発生する1つ以上の第2心周期に対してアブレーションをトリガしないとともに、解析手段を、1つ以上の第2心周期を解析して安全期間を規定する第2パラメータを計算するように動作させ、安全期間を規定する第2パラメータを使用して、第2心周期に続く1つ以上の第3心周期に対してアブレーションをトリガすることにより、動作するように構成される(このシーケンスは、図6において、432における心周期に対する治療、434における安全期間の再計算、及び心周期436中の治療を送出のための再計算パラメータの使用で示されている)。
【0105】
さらに又は別法として、本システムは、パルス発生手段から出力パルスを患者に送達するプローブをさらに含むことができる(プローブ10は、図1に示され、図2において再び180で示されている)。
【0106】
これらの非限定的な例の各々は、それ自体で成り立つことができ、又は、他の例の1つ以上とさまざまな並べ替え又は組合せで組み合わせることができる。
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面への参照を含む。図面は、本発明を実施することができる所定の実施形態を例示として示す。これらの実施形態は、本明細書では「例」とも称する。こうした例は、図示又は記載したものに加えて、要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らは、図示又は記載した要素のみが提供される例も想定している。さらに、本発明者らは、特定の例(又はその1つ若しくは複数の態様)に関して、又は本明細書に図示又は記載した他の例(又はその1つ若しくは複数の態様)に関して、図示又は記載したそれらの要素(又はその1つ若しくは複数の態様)の任意の組合せ又は並べ替えを使用する例も想定している。
【0107】
本明細書と参照により援用された任意の文献との間に一貫しない用法がある場合、本明細書の用法を優先する。
本明細書において、「1つの(「a」又は「an」)」という用語は、特許文書において一般的であるように、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」という他の任意の場合又は用法とは無関係に、1つ又は1つ超を含むように使用される。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に標識として使用されており、それらの対象に数値要件を課すようには意図されていない。
【0108】
本明細書に記載した方法例は、少なくとも一部には機械又はコンピュータで実装することができる。いくつかの例は、上記の例で記載したような方法を実行するように電子装置を構成するように動作可能な命令で符号化されたコンピュータ可読媒体又は機械可読媒体を含むことができる。こうした方法の実装は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コード等のコードを含むことができる。こうしたコードは、さまざまな方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成することができる。さらに、一例では、コードは、実行中又は他の時点で、1つ以上の揮発性、非一時的、又は不揮発性の有形のコンピュータ可読媒体に有形に格納することができる。これらの有形のコンピュータ可読媒体の例としては、限定されないが、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク又は光ディスク、磁気カセット、メモリカード又はスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)等を挙げることができる。
【0109】
上記記載は、例示的なものであって、限定的なものではないことが意図されている。例えば、上述した例(又はその1つ若しくは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。上記記載を検討した当業者等により、他の実施形態を使用することができる。
【0110】
要約書は、米国特許法施行規則第1.72(b)条に準拠し、読者が技術的開示の性質を迅速に把握することができるようにするために提供されている。要約書は、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないという理解のもとに提出されている。
【0111】
また、上記の詳細な説明において、本開示を合理化するために、さまざまな特徴を合わせてグループ化している場合がある。これは、請求されていない開示された特徴が任意の請求項に不可欠であることを意図しているものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は、特定の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある可能性がある。従って、以下の特許請求の範囲は、例又は実施形態として詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態としてそれ自体で成り立ち、そうした実施形態は、さまざまな組合せ又は並べ替えで互いに組み合わせることができることが想定されている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そうした特許請求の範囲に権利が与えられる均等物の全範囲とともに判定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】