(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】抗原コードカセット
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20230529BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230529BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230529BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20230529BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20230529BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230529BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230529BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20230529BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20230529BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230529BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230529BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230529BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230529BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230529BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230529BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230529BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230529BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230529BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230529BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230529BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230529BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/19
C12N15/26
C12N15/10 Z
C12N15/63 Z
C12N15/88 Z
C12N15/861 Z
C12Q1/6869 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/18
A61P31/14
A61P31/20
A61K39/00 Z
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563869
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021028485
(87)【国際公開番号】W WO2021216775
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518213307
【氏名又は名称】グリットストーン バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヨース カリン
(72)【発明者】
【氏名】ラパポート エイミー レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】スカラン シアラン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ギトリン レオニド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA13
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR06
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR42
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4B063QR62
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4B063QX02
4B063QX10
4B064AG01
4B064AG02
4B064AG05
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA03
4C085BA51
4C085BB01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB33
(57)【要約】
本明細書は、異なるエピトープコード配列の複数の反復配列を有するか、または700個未満のヌクレオチドを有し、複数の異なるエピトープコード配列をコードする抗原コード核酸配列を含む組成物を開示する。ワクチンとしてのそれらの使用を含む、組成物に関連するヌクレオチド、細胞、及び方法も開示する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原コードカセットであって、5’~3’方向に、式:
(E
x-(E
N
n)
y)
z
[式中、
Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、
nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、
E
Nは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、
zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、
z=2以上であり、
前記抗原コード核酸配列は、E、特定のE
N、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、前記抗原コードカセット。
【請求項2】
zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x及びy=1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
x=少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x=1、y=1であり、n=2であり、
zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:
E-E
1-E
2
により記述され、場合により最後の繰り返しを除いて前記順序が式:
E-E
1
により記述される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
z=少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=4であり、
zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:
E-E
1-E
2-E
3-E
4-E
5
により記述される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
z=少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=9であり、
zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:
E-E
1-E
2-E
3-E
4-E
5-E
6-E
7-E
8-E
9
により記述される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
z=少なくとも2である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
各EまたはE
Nが、独立して、5’~3’方向に、式:
(L5
b-N
c-L3
d)
によって記述されるヌクレオチド配列を含み、
式中、
Nは、各EまたはE
Nに関連する前記異なるエピトープコード核酸配列を含み、ただしc=1であり、
L5は、5’リンカー配列を含み、ただしb=0または1であり、
L3は、3’リンカー配列を含み、ただしd=0または1である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
各Nが、アミノ酸7~15個の長さのエピトープをコードし、
L5が、前記エピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードする天然の5’リンカー配列であり、前記5’リンカー配列が、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードし、
L3が、前記エピトープの天然のC末端アミノ酸配列をコードする天然の3’リンカー配列であり、前記3’リンカー配列が、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードする、
請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
各E及びE
Nが、少なくともアミノ酸7個の長さのエピトープをコードする、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
各E及びE
Nが、アミノ酸7~15個の長さのエピトープをコードする、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
各E及びE
Nが、少なくともヌクレオチド21個の長さのヌクレオチド配列である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
各E及びE
Nが、ヌクレオチド75個の長さのヌクレオチド配列である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
抗原発現系を送達するための組成物であって、前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、
前記組成物。
【請求項17】
抗原発現系を送達するための組成物であって、前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)互いに直鎖状に連結された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なるエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、
前記組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも3個の異なるエピトープコード核酸配列を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
抗原発現系を送達するための組成物であって、前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、場合によりChAdV68ベクターであるチンパンジーアデノウイルスベクター、または場合によりベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターであるアルファウイルスベクターを含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
前記カセットが、場合により前記ベクター骨格に天然に存在する天然プロモーターヌクレオチド配列とポリ(A)配列との間に組み込まれ、
場合により前記ポリ(A)配列が前記ベクター骨格に天然に存在し、
前記カセットが、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、
場合により、互いに直鎖状に連結された少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列を含み、
各エピトープコード核酸配列が場合により、
(A)アミノ酸7~15個の長さのMHCクラスIエピトープをコードするMHCクラスIエピトープコード核酸配列と、
(B)前記MHCクラスIエピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、5’リンカー配列と、
(C)前記MHCクラスIエピトープの天然のC末端酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、3’リンカー配列と、を含み、
前記カセットが、前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、アミノ酸13~25個の長さのポリペプチドをコードし、
各エピトープコード核酸配列の各3’末端が、前記カセット内の最後のエピトープコード核酸配列を除いて、それに続くエピトープコード核酸配列の5’末端に連結された、
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列であって、
(I)PADRE MHCクラスII配列(配列番号48)と、
(II)破傷風トキソイドMHCクラスII配列(配列番号46)と、
(III)前記PADRE MHCクラスII配列と前記破傷風トキソイドMHCクラスII配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第1の核酸配列と、
(IV)前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の5’末端と、前記エピトープコード核酸配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第2の核酸配列と、
(V)場合により、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の3’末端のGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第3の核酸配列と
を含む、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、
前記組成物。
【請求項20】
前記カセットの各要素の順序付けられた配列が、5’~3’方向に、
P
a-(L5
b-N
c-L3
d)
X-(G5
e-U
f)
Y-G3
g
を含む式で記述され、
式中、
Pは、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列を含み、ただし、a=0または1であり、
Nは、異なるエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、ただしc=1であり、
L5は、5’リンカー配列を含み、ただしb=0または1であり、
L3は、3’リンカー配列を含み、ただしd=0または1であり、
G5は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする前記少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、ただしe=0または1であり、
G3は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする前記少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、ただしg=0または1であり、
Uは、前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、ただしf=1であり、
X=1~400であり、ただし各Xについて、対応するN
cは、エピトープコード核酸配列であり、
Y=0、1、または2であり、ただし各Yについて、対応するU
fは、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列である、
請求項16~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
各Xについて、前記対応するN
cが、前記異なるエピトープコード核酸配列の前記少なくとも2個の反復配列に対応するN
cを除いて、異なるエピトープコード核酸配列である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
各Yについて、前記対応するU
fが、異なるMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
a=0、b=1、d=1、e=1、g=1、h=1、X=20、Y=2であり、
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、前記ベクター骨格に天然に存在する単一の天然プロモーターヌクレオチド配列であり、
前記少なくとも1つのポリアデニル化ポリ(A)配列が、前記ベクター骨格によって与えられる少なくとも80個の連続したAヌクレオチドのポリ(A)配列であり、
各Nが、アミノ酸7~15個の長さのエピトープをコードし、
L5が、前記エピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードする天然の5’リンカー配列であり、前記5’リンカー配列が、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードし、
L3が、前記エピトープの天然のC末端アミノ酸配列をコードする天然の3’リンカー配列であり、前記3’リンカー配列が、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードし、
Uが、PADREクラスII配列及び破傷風トキソイドMHCクラスII配列のそれぞれであり、
前記ベクター骨格が、場合によりChAdV68ベクターであるチンパンジーアデノウイルスベクター、または場合によりベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターであるアルファウイルスベクターを含み、
前記ベクター骨格がアルファウイルスベクターを含む場合には、場合により前記天然プロモーターヌクレオチド配列がサブゲノミックプロモーターであり、
前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列のそれぞれが、アミノ酸13個~25個の長さのポリペプチドをコードする、
請求項20~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の反復配列である、請求項16~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、1少なくとも4個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個の反復配列である、請求項16~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記少なくとも2個の反復配列が、2~3個、2~4個、2~5個、2~6個、または2~7個の反復配列である、請求項16~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記少なくとも2個の反復配列が、7個以下の反復配列、6個以下の反復配列、5個以下の反復配列、4個以下の反復配列、または3個以下の反復配列である、請求項16~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2個の反復配列を含む、請求項16~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2個の反復配列を含む、請求項16~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも1つの別個の異なるエピトープコード核酸配列によって隔てられている、請求項16~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも2個の別個の異なるエピトープコード核酸配列によって隔てられている、請求項16~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び/または場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも75個のヌクレオチドによって隔てられている、請求項16~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び/または場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも150個のヌクレオチド、少なくとも300個のヌクレオチド、または少なくとも675個のヌクレオチドによって隔てられている、請求項16~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び/または場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも50個のヌクレオチド、少なくとも100個のヌクレオチド、少なくとも200個のヌクレオチド、少なくとも250個のヌクレオチド、少なくとも350個のヌクレオチド、少なくとも400個のヌクレオチド、少なくとも450個のヌクレオチド、少なくとも500個のヌクレオチド、少なくとも700個のヌクレオチド、少なくとも700個のヌクレオチド、少なくとも750個のヌクレオチド、少なくとも800個のヌクレオチド、少なくとも900個のヌクレオチド、または少なくとも1000個のヌクレオチドによって隔てられている、請求項16~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び/または場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列が、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも20個のヌクレオチド、少なくとも25個のヌクレオチド、少なくとも30個のヌクレオチド、少なくとも35個のヌクレオチド、少なくとも40個のヌクレオチド、少なくとも45個のヌクレオチド、少なくとも50個のヌクレオチド、少なくとも55個のヌクレオチド、少なくとも60個のヌクレオチド、少なくとも65個のヌクレオチド、または少なくとも70個のヌクレオチドによって隔てられている、請求項16~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、5’~3’方向に、式:
(E
x-(E
N
n)
y)
z
により記述され、
式中、
Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、
nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、
E
Nは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、
zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、
z=2以上であり、前記抗原コード核酸配列は、E、特定のE
N、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む、
請求項16~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x及びy=1である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
x=少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x=1、y=1であり、n=2であり、
zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:
E-E
1-E
2
により記述され、場合により最後の繰り返しを除いて前記順序が式:
E-E
1
により記述される、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
z=少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=4であり、
zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:
E-E
1-E
2-E
3-E
4-E
5
により記述される、請求項36に記載の組成物。
【請求項42】
z=少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=9であり、
zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:
E-E
1-E
2-E
3-E
4-E
5-E
6-E
7-E
8-E
9
により記述される、請求項36に記載の組成物。
【請求項44】
z=少なくとも2である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記少なくとも2個の反復配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の単一の繰り返しを含む抗原コード核酸配列に対してより高い免疫応答を刺激するのに充分な数の反復配列を含むか、またはzがそのような充分な数を含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記少なくとも2個の反復配列が、免疫応答を刺激するのに充分な数の反復配列を含むか、またはzがそのような充分な数を含み、
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の単一の繰り返しが、前記免疫応答を刺激するのに不充分であるかもしくは検出可能な免疫応答を刺激するのに不充分である、
請求項1~45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記免疫応答が、前記抗原発現系を送達するための前記組成物によるインビボ免疫後のエピトープ特異的T細胞の増殖である、請求項45または46に記載の組成物。
【請求項48】
前記免疫応答が、前記抗原発現系を送達するための前記組成物によるインビボ免疫後のエピトープ特異的T細胞の活性化の増加及び/またはエピトープ特異的T細胞によるエピトープ特異的殺滅の増加である、請求項45または46に記載の組成物。
【請求項49】
抗原発現系を送達するための組成物であって、前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、
前記組成物。
【請求項50】
抗原発現系を送達するための組成物であって、前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)互いに直鎖状に連結された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なるエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、
前記組成物。
【請求項51】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、3個の異なるエピトープコード核酸配列を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
抗原発現系を送達するための組成物であって、前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、場合によりChAdV68ベクターであるチンパンジーアデノウイルスベクター、または場合によりベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターであるアルファウイルスベクターを含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
前記カセットが、場合により前記ベクター骨格に天然に存在する天然プロモーターヌクレオチド配列とポリ(A)配列との間に組み込まれ、
場合により前記ポリ(A)配列が前記ベクター骨格に天然に存在し、
前記カセットが、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、
場合により、互いに直鎖状に連結された少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列を含み、
各エピトープコード核酸配列が場合により、
(A)アミノ酸7~15個の長さのMHCクラスIエピトープをコードするMHCクラスIエピトープコード核酸配列と、
(B)前記MHCクラスIエピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、5’リンカー配列と、
(C)前記MHCクラスIエピトープの天然のC末端酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、3’リンカー配列と、を含み、
前記カセットが、前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、アミノ酸13~25個の長さのポリペプチドをコードし、
各エピトープコード核酸配列の各3’末端が、前記カセット内の最後のエピトープコード核酸配列を除いて、それに続くエピトープコード核酸配列の5’末端に連結された、
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列であって、
(I)PADRE MHCクラスII配列(配列番号48)と、
(II)破傷風トキソイドMHCクラスII配列(配列番号46)と、
(III)前記PADRE MHCクラスII配列と前記破傷風トキソイドMHCクラスII配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第1の核酸配列と、
(IV)前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の5’末端と、前記エピトープコード核酸配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第2の核酸配列と、
(V)場合により、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の3’末端のGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第3の核酸配列と
を含む、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、
前記組成物。
【請求項53】
前記カセットが、375~700ヌクレオチドの長さである、請求項1~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項54】
前記カセットが、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さである、請求項1~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
前記カセットが、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さである、請求項1~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
前記エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上が、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来する、請求項1~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来する、請求項1~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項58】
前記エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上が、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来しない、請求項1~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来しない、請求項1~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
前記エピトープコード核酸配列が、細胞の表面上のMHCクラスIによって提示されることが分かっているかまたは疑われるエピトープをコードしており、場合により、前記細胞の表面が腫瘍細胞表面または感染細胞表面であり、場合により、前記細胞が対象の細胞である、請求項1~59のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
前記細胞が、肺がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される腫瘍細胞である、または
前記細胞が、病原体感染細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、真菌感染細胞、及び寄生虫感染細胞からなる群から選択される、
請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記ウイルス感染細胞が、HIV感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染細胞、エボラ感染細胞、B型肝炎ウイルス(HBV)感染細胞、インフルエンザ感染細胞、C型肝炎ウイルス(HCV)感染細胞、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染細胞、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞、チクングニアウイルス感染細胞、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染細胞、デングウイルス感染細胞、及びオルトミクソウイルス科ウイルス感染細胞からなる群から選択される、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
ナノ粒子状の送達ビヒクルをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項64】
前記ナノ粒子状の送達ビヒクルが、脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記LNPが、イオン化可能なアミノ脂質を含む、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
前記イオン化可能なアミノ脂質が、MC3様(ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート)分子を含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記ナノ粒子送達ビヒクルが、前記抗原発現系を封入している、請求項24~66のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項68】
前記カセットが、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と前記少なくとも1つのポリ(A)配列との間に組み込まれた、請求項16~18、20~22、または24~67のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項69】
前記第2のプロモーターが存在せず、
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、前記抗原コード核酸配列と機能的に連結されている、
請求項16~18、20~22、または24~68のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
前記1つ以上のベクターが、1つ以上の+鎖RNAベクターを含む、請求項16~18、20~22、または24~69のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
前記1つ以上の+鎖RNAベクターが、5’の7-メチルグアノシン(m7g)キャップを含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記1つ以上の+鎖RNAベクターが、インビトロ転写によって生成される、請求項70または71に記載の組成物。
【請求項73】
前記1つ以上のベクターが、哺乳動物細胞内で自己複製する、請求項16~18、20~22、または24~72のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項74】
前記骨格が、アウラウイルス、フォートモルガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項16~18、20~22、または24~73のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項75】
前記骨格が、ベネズエラウマ脳炎ウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項16~18、20~22、または24~73のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項76】
前記骨格が、少なくとも、前記アウラウイルス、前記フォートモルガンウイルス、前記ベネズエラウマ脳炎ウイルス、前記ロスリバーウイルス、前記セムリキ森林ウイルス、前記シンドビスウイルス、または前記マヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされた、非構造タンパク質媒介増幅のための配列、サブゲノミックプロモーター配列、ポリ(A)配列、非構造タンパク質1(nsP1)遺伝子、nsP2遺伝子、nsP3遺伝子、及びnsP4遺伝子を含む、請求項74または75に記載の組成物。
【請求項77】
前記骨格が、少なくとも、前記アウラウイルス、前記フォートモルガンウイルス、前記ベネズエラウマ脳炎ウイルス、前記ロスリバーウイルス、前記セムリキ森林ウイルス、前記シンドビスウイルス、または前記マヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされた、非構造タンパク質媒介増幅のための配列、サブゲノミックプロモーター配列、及びポリ(A)配列を含む、請求項74または75に記載の組成物。
【請求項78】
前記非構造タンパク質媒介増幅のための配列が、アルファウイルス5’ UTR、51ntのCSE、24ntのCSE、26Sサブゲノミックプロモーター配列、19ntのCSE、アルファウイルス3’ UTR、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項76または77に記載の組成物。
【請求項79】
前記骨格が、構造ビリオンタンパク質カプシドE2及びE1をコードしていない、請求項76~78のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項80】
前記カセットが、前記アウラウイルス、前記フォートモルガンウイルス、前記ベネズエラウマ脳炎ウイルス、前記ロスリバーウイルス、前記セムリキ森林ウイルス、前記シンドビスウイルス、または前記マヤロウイルスのヌクレオチド配列内の構造ビリオンタンパク質の代わりに挿入された、請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記ベネズエラウマ脳炎ウイルスが、配列番号3または配列番号5に記載の配列を含む、請求項74または75に記載の組成物。
【請求項82】
前記ベネズエラウマ脳炎ウイルスが、塩基対7544~11175の欠失をさらに含む配列番号3または配列番号5の配列を含む、請求項74または75に記載の組成物。
【請求項83】
前記骨格が、配列番号6または配列番号7に記載の配列を含む、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
前記カセットが、配列番号3または配列番号5の配列に記載される塩基対7544~11175の前記欠失を置換するように7544位に挿入されている、請求項82または83に記載の組成物。
【請求項85】
前記カセットの挿入が、前記nsP1~4遺伝子及び前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含むポリシストロニックRNAの転写をもたらし、
前記nsP1~4遺伝子及び前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、別々のオープンリーディングフレーム内にある、
請求項80~84に記載の組成物。
【請求項86】
前記骨格が、チンパンジーアデノウイルスベクターの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項16~18、20~22、または24~73のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項87】
前記チンパンジーアデノウイルスベクターが、ChAdV68ベクターであり、
場合により、前記ChAdVベクターが、
(a)ChAdV骨格であって、
(i)配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む改変ChAdV68配列であって、
前記ヌクレオチド2~36,518が、(1)ChAdV68のE1欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403を欠き、(2)ChAdV68のE3欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠き、場合により、(3)ChAdV68の部分E4欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠いている、前記改変ChAdV68配列と、
(ii)場合により、CMVプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、SV40ポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ChAdV骨格と、
(b)先行請求項のいずれか1項に記載の抗原コードカセットであって、場合により、前記E1欠失部内に挿入され、前記CMVプロモーターのヌクレオチド配列及び前記SV40ポリ(A)配列と機能的に連結されている、前記抗原コードカセットと
を含む、請求項86に記載の組成物。
【請求項88】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、前記骨格によってコードされた天然のサブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列である、請求項16~18、20~22、または24~87のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項89】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、外因性のRNAプロモーターである、請求項16~18、20~22または24~87のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項90】
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が、サブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列である、請求項16~18、20~22、または24~89のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項91】
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が複数のサブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列を含み、各サブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列が、前記別々のオープンリーディングフレームのうちの1つ以上の転写をもたらす、請求項16~18、20~22、または24~89のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項92】
前記1つ以上のベクターが、それぞれ少なくとも300ntのサイズである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項93】
前記1つ以上のベクターが、それぞれ少なくとも1kbのサイズである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項94】
前記1つ以上のベクターが、それぞれ2kbのサイズである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項95】
前記1つ以上のベクターが、それぞれ5kb未満のサイズである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項96】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つが、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項97】
各エピトープコード核酸配列が互いに直接連結されている、請求項1~18、20~22、または24~96のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項98】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つが、リンカーをコードする核酸配列によって異なるエピトープコード核酸配列と連結されている、請求項1~18、20~22、または24~97のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項99】
前記リンカーが、2個のMHCクラスI配列または1個のMHCクラスI配列を1個のMHCクラスII配列と連結する、請求項98に記載の組成物。
【請求項100】
前記リンカーが、(1)少なくとも残基2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の長さの連続したグリシン残基、(2)少なくとも残基2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の長さの連続したアラニン残基、(3)2個のアルギニン残基(RR)、(4)アラニン、アラニン、チロシン(AAY)、(5)哺乳動物プロテアーゼによって効率的にプロセシングされる、少なくともアミノ酸残基2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の長さのコンセンサス配列、及び(6)同種由来タンパク質に由来する抗原に隣接し、少なくともアミノ酸残基2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または2~20個の長さの1つ以上の天然配列からなる群から選択される、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
前記リンカーが、2個のMHCクラスII配列または1個のMHCクラスII配列を1個のMHCクラスI配列と連結する、請求項98に記載の組成物。
【請求項102】
前記リンカーが、配列GPGPGを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの配列が、それによりコードされるエピトープの前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の発現、安定性、細胞トラフィッキング、プロセシング及び提示、及び/または免疫原性を高める、隔てられたまたは連続した配列に機能的または直接的に連結されている、請求項1~18、20~22、または24~102のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項104】
前記隔てられたまたは連続した配列が、ユビキチン配列、プロテアソームターゲティング性を高めるように改変されたユビキチン配列(例えば、76位にGlyのAla置換を含むユビキチン配列)、免疫グロブリンシグナル配列(例えばIgK)、主要組織適合性クラスI配列、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP)-1、ヒト樹状細胞リソソーム関連膜タンパク質、及び主要組織適合性クラスII配列のうちの少なくとも1つを含み、場合によりプロテアソームターゲティング性を高めるように改変された前記ユビキチン配列がA76である、請求項103に記載の組成物。
【請求項105】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つが、翻訳後の対応する野生型核酸配列と比べて、その対応するMHCアレルに対する増大した結合親和性を有するポリペプチド配列またはその一部をコードする、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項106】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の少なくとも1つが、翻訳後の対応する野生型核酸配列と比べて、その対応するMHCアレルに対する増大した結合安定性を有するポリペプチド配列またはその一部をコードする、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項107】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つが、翻訳後の対応する野生型核酸配列と比べて、その対応するMHCアレル上への増大した提示の可能性を有するポリペプチド配列またはその一部をコードする、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項108】
前記少なくとも1つの変化が、点変異、フレームシフト変異、非フレームシフト変異、欠失変異、挿入変異、スプライスバリアント、ゲノム再編成、またはプロテアソームにより生成されたスプライス抗原を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項109】
前記腫瘍が、肺がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、膀胱がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択されるか、または、
前記感染症生物が、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラ、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、デングウイルス、オルトミクソウイルス科ウイルス、及び結核からなる群から選択される、
先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項110】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~10個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のエピトープコード核酸配列を含む、請求項1~18、20~22、または24~109のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項111】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも11~20個、15~20個、11~100個、11~200個、11~300個、11~400個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、または最大で400個のエピトープコード核酸配列を含む、請求項1~18、20~22、または24~109のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項112】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~400個のエピトープコード核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2個が、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする、請求項1~18、20~22、または24~109のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項113】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~10個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の抗原コード核酸配列を含む、請求項1~18、20~22、または24~112のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項114】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも11~20個、15~20個、11~100個、11~200個、11~300個、11~400個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、または最大で400個の抗原コード核酸配列を含む、請求項1~18、20~22、または24~112のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項115】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~400個の抗原コード核酸配列を含み、前記抗原コード核酸配列のうちの少なくとも2個が、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする、請求項1~18、20~22、または24~112のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項116】
前記エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2つが、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする、請求項19または23に記載の組成物。
【請求項117】
前記対象に投与されて翻訳された場合、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列によってコードされた前記エピトープのうちの少なくとも1つが抗原提示細胞上に提示され、前記腫瘍細胞表面または感染細胞表面上の前記抗原の少なくとも1つを標的とする免疫応答をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項118】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記対象に投与されて翻訳された場合、前記MHCクラスIまたはクラスIIエピトープのうちの少なくとも1つが抗原提示細胞上に提示され、腫瘍細胞表面または前記感染細胞表面上の前記エピトープのうちの少なくとも1つを標的とする免疫応答をもたらし、場合により、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のそれぞれの発現が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列によって誘導される、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項119】
各エピトープコード核酸配列が、アミノ酸8~35個の長さ、場合により、アミノ酸9~17個、9~25個、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35個のポリペプチド配列をコードする、請求項1~18、20~22、または24~118のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項120】
前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在している、請求項1~18、20~22、または24~119のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項121】
前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在し、
前記コードされたペプチド配列を、野生型核酸配列によってコードされる対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化
を含む、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含む、
請求項1~18、20~22、または24~119のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項122】
前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が、アミノ酸12~20個、12、13、14、15、16、17、18、19、20,または20~40個の長さである、請求項1~18、20~22、または24~121のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項123】
前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在し、少なくとも1つのユニバーサルMHCクラスII抗原コード核酸配列を含み、場合により、前記少なくとも1つのユニバーサル配列が、破傷風トキソイド及びPADREの少なくとも一方を含む、請求項1~18、20~22、または24~122のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項124】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が誘導性である、請求項16~18、20~22、または24~123のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項125】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が非誘導性である、請求項16~18、20~22、または24~123のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項126】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、前記骨格に天然に存在するポリ(A)配列を含む、請求項16~18、20~22、または24~125のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項127】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、前記骨格に対して外因性のポリ(A)配列を含む、請求項16~18、20~22、または24~125のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項128】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つと機能的に連結されている、請求項16~18、20~22、または24~127のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項129】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、または少なくとも90個の連続したAヌクレオチドである、請求項16~18、20~22、または24~128のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項130】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、少なくとも80個の連続したAヌクレオチドである、請求項16~18、20~22、または24~128のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項131】
前記カセットが、イントロン配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(WPRE)配列、内部リボソーム進入配列(IRES)配列、2A自己切断ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、フーリン切断部位をコードするヌクレオチド配列、または、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結された、mRNAの核輸送、安定性、または翻訳効率を向上させることが知られている5’または3’の非コード領域内の配列のうちの少なくとも1つをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項132】
前記カセットが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPバリアント、分泌型アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、ルシフェラーゼバリアント、または検出可能なペプチドもしくはエピトープを含むがこれらに限定されないレポーター遺伝子をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項133】
前記検出可能なペプチドまたはエピトープが、HAタグ、Flagタグ、Hisタグ、またはV5タグからなる群から選択される、請求項132に記載の組成物。
【請求項134】
前記1つ以上のベクターが、少なくとも1つの免疫調節物質をコードする1つ以上の核酸配列をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項135】
前記免疫調節物質が、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合フラグメントである、請求項134に記載の組成物。
【請求項136】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、一本鎖Fv(scFv)、単一特異性抗体もしくは互いに連結された多重特異性抗体としての単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、ラクダ科動物の抗体ドメイン)、または完全長の一本鎖抗体(例えば、柔軟なリンカーによって重鎖と軽鎖が連結された完全長IgG)である、請求項135に記載の組成物。
【請求項137】
前記抗体の前記重鎖配列と前記軽鎖配列とが、2AまたはIRESのような自己切断配列によって隔てられた連続的配列であるか、または前記抗体の前記重鎖配列と前記軽鎖配列とが、連続したグリシン残基のような柔軟性リンカーによって連結されている、請求項135または136に記載の組成物。
【請求項138】
前記免疫調節物質がサイトカインである、請求項134に記載の組成物。
【請求項139】
前記サイトカインが、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、もしくはIL-21、またはそれぞれのそのバリアントのうちの少なくとも1つである、請求項138に記載の組成物。
【請求項140】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列が、以下の工程:
(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物からエクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムヌクレオチドシークエンシングデータのうちの少なくとも1つを取得する工程であって、
前記ヌクレオチドシークエンシングデータが、抗原のセットのそれぞれのペプチド配列を表すデータを取得するために用いられる、前記工程と、
(b)前記抗原のそれぞれが細胞表面上、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上でのMHCアレルのうちの1つ以上によって提示される数値的尤度のセットを生成するために、各抗原の前記ペプチド配列を提示モデルに入力する工程であって、
前記数値的尤度のセットが、受け取られた質量分析データに少なくとも基づいて特定されたものである、前記工程と、
(c)前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を生成するために用いられる選択された抗原のセットを生成するために、前記抗原のセットのサブセットを前記数値的尤度のセットに基づいて選択する工程と
を実施することによって選択される、請求項1~18、20~22、または24~139のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項141】
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、以下の工程:
(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物からエクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムヌクレオチドシークエンシングデータのうちの少なくとも1つを取得する工程であって、
前記ヌクレオチドシークエンシングデータが、抗原のセットのそれぞれのペプチド配列を表すデータを取得するために用いられる、前記工程と、
(b)前記抗原のそれぞれが細胞表面上、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上でのMHCアレルのうちの1つ以上によって提示される数値的尤度のセットを生成するために、各抗原の前記ペプチド配列を提示モデルに入力する工程であって、
前記数値的尤度のセットが、受け取られた質量分析データに少なくとも基づいて特定されたものである、前記工程と、
(c)前記少なくとも20個のエピトープコード核酸配列を生成するために用いられる選択された抗原のセットを生成するために、前記抗原のセットのサブセットを前記数値的尤度のセットに基づいて選択する工程と
を実施することによって選択される、請求項19または23に記載の組成物。
【請求項142】
前記選択された抗原のセットの数が、2~20である、請求項140に記載の組成物。
【請求項143】
前記提示モデルが、
(a)前記MHCアレルのうちの特定の1つとペプチド配列の特定の位置の特定のアミノ酸とのペアの存在と、
(b)前記ペアの前記MHCアレルのうちの前記特定の1つによる、前記特定の位置に前記特定のアミノ酸を含むそのようなペプチド配列の細胞表面上、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上での提示の可能性と
の間の依存性を表す、請求項140~142に記載の組成物。
【請求項144】
前記選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて前記細胞表面上に提示される可能性が増大している抗原を選択することを含み、場合により、前記選択された抗原が、1つ以上の特異的HLAアレルによって提示されているものとして検証されている、請求項140~143に記載の組成物。
【請求項145】
前記選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて前記対象の腫瘍特異的または感染症特異的な免疫応答を刺激することができる可能性が増大している抗原を選択することを含む、請求項140~144に記載の組成物。
【請求項146】
前記選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べてプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によってナイーブT細胞に対して提示され得る可能性が増大している抗原を選択することを含み、場合により、前記APCは樹状細胞(DC)である、請求項140~145に記載の組成物。
【請求項147】
前記選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて中枢性寛容または末梢性寛容による阻害を受ける可能性が減少している抗原を選択することを含む、請求項140~146に記載の組成物。
【請求項148】
前記選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて前記対象の正常組織に対する自己免疫応答を刺激することができる可能性が減少している抗原を選択することを含む、請求項140~147に記載の組成物。
【請求項149】
エクソームまたはトランスクリプトームのヌクレオチドシークエンシングデータが、腫瘍細胞もしくは組織、感染細胞、または感染症生物でシークエンシングを行うことによって取得される、請求項140~148に記載の組成物。
【請求項150】
前記シークエンシングが、次世代シークエンシング(NGS)または任意の大規模並列処理シークエンシング手法である、請求項149に記載の組成物。
【請求項151】
前記カセットが、前記カセット内の隣接配列によって形成されたジャンクションエピトープ配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項152】
少なくとも1つの、または各ジャンクションエピトープ配列が、MHCに対して500nMよりも高い親和性を有する、請求項151に記載の組成物。
【請求項153】
各ジャンクションエピトープ配列が、非自己である、請求項151または152に記載の組成物。
【請求項154】
前記MHCクラスIエピトープのそれぞれが、集団の少なくとも5%に存在する少なくとも1つのHLAアレルによって提示が可能であることが予測または検証されている、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項155】
前記MHCクラスIエピトープのそれぞれが、少なくとも1つのHLAアレルによって提示が可能であることが予測または検証されており、各抗原/HLAペアが、集団において少なくとも0.01%の抗原/HLA頻度を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項156】
前記MHCクラスIエピトープのそれぞれが、少なくとも1つのHLAアレルによって提示が可能であることが予測または検証されており、各抗原/HLAペアが、集団において少なくとも0.1%の抗原/HLA頻度を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項157】
前記カセットが、翻訳後の野生型核酸配列を含む非治療的MHCクラスIまたはクラスIIエピトープ核酸配列をコードしておらず、前記非治療的エピトープが前記対象のMHCアレル上に提示されると予測される、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項158】
前記非治療的な予測されたMHCクラスIまたはクラスIIエピトープ配列が、前記カセット内の隣接配列によって形成されたジャンクションエピトープ配列である、請求項157に記載の組成物。
【請求項159】
前記予測が、前記非治療的エピトープの配列を提示モデルに入力することによって生成される提示可能性に基づいたものである、請求項151~158に記載の組成物。
【請求項160】
前記カセット内における前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列の順序が、以下:
(a)前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列の異なる順序に対応した候補カセット配列のセットを生成する工程と、
(b)前記各候補カセット配列について、候補カセット配列内の非治療的エピトープの提示に基づいた提示スコアを決定する工程と、
(c)所定の閾値を下回る提示スコアに関連する候補カセット配列を、抗原ワクチン用のカセット配列として選択する工程と
を含む一連の工程によって決定される、請求項151~159のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項161】
先行請求項のいずれか1項に記載の前記組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項162】
アジュバントをさらに含む、請求項161に記載の組成物。
【請求項163】
免疫調節物質をさらに含む、請求項161または162に記載の医薬組成物。
【請求項164】
前記免疫調節物質が、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合フラグメントである、請求項163に記載の医薬組成物。
【請求項165】
先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載のカセットと、配列番号3または配列番号5の配列から得られる1つ以上の要素とを含む、単離ヌクレオチド配列または単離ヌクレオチド配列のセットであって、
場合により、前記1つ以上の要素が、非構造タンパク質媒介増幅に必要な配列、サブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列、ポリ(A)配列、及び配列番号3または配列番号5に記載の配列のnsP1~4遺伝子からなる群から選択され、
場合により、前記ヌクレオチド配列がcDNAである、
前記単離ヌクレオチド配列または単離ヌクレオチド配列のセット。
【請求項166】
前記単離ヌクレオチド配列の配列またはセットが、
配列番号6または配列番号7に記載の配列の7544位に挿入された、先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載のカセット
を含む、請求項165に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項167】
(a)配列番号3または配列番号5の配列から得られた前記1つ以上の要素の5’側に位置するT7またはSP6 RNAポリメラーゼプロモーターのヌクレオチド配列と、
(b)場合により、前記ポリ(A)配列の3’側に位置する1つ以上の制限部位と
をさらに含む、請求項165または166に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項168】
先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載のカセットが、配列番号8または配列番号9の7563位に挿入されている、請求項165に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項169】
請求項165~168に記載のヌクレオチド配列を含む、ベクターまたはベクターのセット。
【請求項170】
請求項165~169に記載の単離ヌクレオチド配列のヌクレオチド配列またはセットを含む単離細胞であって、場合により、前記細胞が、BHK-21、CHO、HEK293もしくはその変異体、911、HeLa、A549、LP-293、PER.C6、またはAE1-2a細胞である、前記単離細胞。
【請求項171】
先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載の組成物と、使用説明書とを含む、キット。
【請求項172】
がんを有する対象を治療するための方法であって、
前記対象に、先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載の組成物、または請求項161~164のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与すること
を含む、前記方法。
【請求項173】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列が、がんを有する前記対象の腫瘍に由来するかまたは前記感染した対象の細胞または試料に由来する、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列が、がんを有する前記対象の腫瘍にも、前記感染した対象の細胞または試料にも由来しない、請求項172に記載の方法。
【請求項175】
対象の免疫応答を刺激するための方法であって、
前記対象に、先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載の組成物、または請求項161~164のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与すること
を含む、前記方法。
【請求項176】
前記対象が、前記MHCクラスIエピトープを提示することが予測されているまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する、請求項172~175のいずれか1項に記載の方法。
【請求項177】
前記組成物が、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)投与される、請求項172~176のいずれか1項に記載の方法。
【請求項178】
前記組成物が筋肉内投与される、請求項172~176のいずれか1項に記載の方法。
【請求項179】
1つ以上の免疫調節物質を投与することをさらに含み、
場合により、前記免疫調節物質が前記組成物または医薬組成物の投与前、投与と同時、または投与後に投与される、
請求項172~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項180】
前記1つ以上の免疫調節物質が、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合フラグメントからなる群から選択される、請求項179に記載の方法。
【請求項181】
前記免疫調節物質が、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内(ID)、または皮下(SC)に投与される、請求項179または180に記載の方法。
【請求項182】
前記皮下投与が、前記組成物または医薬組成物の投与部位の近くに、または1つ以上のベクターもしくは組成物の流入領域リンパ節に近接して行われる、請求項181に記載の方法。
【請求項183】
前記対象に第2のワクチン組成物を投与することをさらに含む、請求項172~182のいずれか1項に記載の方法。
【請求項184】
前記第2のワクチン組成物が、請求項172~182のいずれか1項に記載の組成物または医薬組成物の投与の前に投与される、請求項183に記載の方法。
【請求項185】
前記第2のワクチン組成物が、請求項172~182のいずれか1項に記載の組成物または医薬組成物の投与の後に投与される、請求項183に記載の方法。
【請求項186】
前記第2のワクチン組成物が、請求項172~182のいずれか1項に記載の組成物または医薬組成物と同じである、請求項184または185に記載の方法。
【請求項187】
前記第2のワクチン組成物が、請求項172~182のいずれか1項に記載の組成物または医薬組成物と異なる、請求項184または185に記載の方法。
【請求項188】
前記第2のワクチン組成物が、少なくとも1つの抗原コード核酸配列をコードするチンパンジーアデノウイルスベクターを含む、請求項187に記載の方法。
【請求項189】
前記チンパンジーアデノウイルスベクターによってコードされる前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗原コード核酸配列と同じである、請求項188に記載の方法。
【請求項190】
先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載の1つ以上のベクターを製造する方法であって、
(a)前記骨格及び前記カセットを含む直線化DNA配列を得ることと、
(b)前記直線化DNA配列を、前記直線化DNA配列をRNAに転写するために必要なすべての成分を含んだインビトロ転写反応液に加えることにより、前記直線化DNA配列をインビトロ転写することであって、場合により、得られたRNAに前記m7gキャップをインビトロで付加することをさらに含む、前記インビトロ転写することと、
(c)前記インビトロ転写反応液から前記1つ以上のベクターを単離することと
を含む、前記方法。
【請求項191】
前記直線化DNA配列が、DNAプラスミド配列を直線化することにより、またはPCRを用いた増幅により生成される、請求項190に記載の製造方法。
【請求項192】
前記DNAプラスミド配列が、細菌組換えまたは全ゲノムDNA合成または細菌細胞内で合成されたDNAの増幅を行う全ゲノムDNA合成のうちの1つを用いて生成される、請求項191に記載の製造方法。
【請求項193】
前記1つ以上のベクターを前記インビトロ転写反応液から単離することが、フェノールクロロホルム抽出、シリカカラムを用いた精製、または同様のRNA精製法のうちの1つ以上を含む、請求項190に記載の製造方法。
【請求項194】
前記抗原発現系を送達するための先行の組成物の請求項のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、
(a)ナノ粒子状の送達ビヒクルの成分を与えることと、
(b)前記抗原発現系を与えることと、
(c)前記ナノ粒子状の送達ビヒクル及び前記抗原発現系が前記抗原発現系を送達するための前記組成物を生成するのに充分な条件を与えることと
を含む、前記方法。
【請求項195】
前記条件がマイクロ流体混合によって与えられる、請求項194に記載の製造方法。
【請求項196】
疾患を有する対象を治療するための方法であって、場合により前記疾患が、がんまたは感染症であり、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原コードカセットを含み、
前記抗原コードカセットが、5’~3’方向に、式:
(E
x-(E
N
n)
y)
z
[式中、
Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、
nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、
E
Nは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、
zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、
z=2以上であり、
前記抗原コード核酸配列は、E、特定のE
N、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、前記方法。
【請求項197】
疾患を有する対象を治療するための方法であって、場合により前記疾患が、がんであり、
前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、
前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、
前記方法。
【請求項198】
疾患を有する対象を治療するための方法であって、場合により前記疾患が、がんであり、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、
前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、
前記方法。
【請求項199】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列が、がんを有する前記対象の腫瘍に由来するかまたは前記感染した対象の細胞または試料に由来する、請求項196~198のいずれか1項に記載の方法。
【請求項200】
前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列が、がんを有する前記対象の腫瘍にも、前記感染した対象の細胞または試料にも由来しない、請求項196~198のいずれか1項に記載の方法。
【請求項201】
対象の免疫応答を刺激するための方法であって、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原コードカセットを含み、
前記抗原コードカセットが、5’~3’方向に、式:
(E
x-(E
N
n)
y)
z
[式中、
Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、
nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、
E
Nは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、
zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、
z=2以上であり、
前記抗原コード核酸配列は、E、特定のE
N、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、前記方法。
【請求項202】
対象の免疫応答を刺激するための方法であって、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、
前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、
前記方法。
【請求項203】
疾患を有する対象を治療する方法であって、場合により前記疾患が、がんまたは感染症であり、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、
前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、
前記方法。
【請求項204】
前記対象が、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されるかまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する、請求項196~203のいずれか1項に記載の方法。
【請求項205】
前記対象が、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されるかまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現し、かつ、前記少なくとも1つのエピトープ配列が、細胞の表面上のMHCクラスIによって提示されることが知られているかまたは疑われるエピトープを含む、請求項196~203のいずれか1項に記載の方法。
【請求項206】
前記細胞の表面が、腫瘍細胞表面である、請求項205に記載の方法。
【請求項207】
前記細胞が、肺がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される腫瘍細胞である、請求項206に記載の方法。
【請求項208】
前記細胞の表面が、感染細胞表面である、請求項205に記載の方法。
【請求項209】
前記細胞が、病原体感染細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、真菌感染細胞、及び寄生虫感染細胞からなる群から選択される感染細胞である、請求項208に記載の方法。
【請求項210】
前記ウイルス感染細胞が、HIV感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染細胞、エボラ感染細胞、B型肝炎ウイルス(HBV)感染細胞、インフルエンザ感染細胞、C型肝炎ウイルス(HCV)感染細胞、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染細胞、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞、チクングニアウイルス感染細胞、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染細胞、デングウイルス感染細胞、及びオルトミクソウイルス科ウイルス感染細胞からなる群から選択される、請求項209に記載の方法。
【請求項211】
対象の免疫応答を刺激するための方法であって、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原コードカセットを含み、
前記抗原コードカセットが、5’~3’方向に、式:
(E
x-(E
N
n)
y)
z
[式中、
Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、
nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、
E
Nは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、
zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、
z=2以上であり、
前記抗原コード核酸配列は、E、特定のE
N、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、前記方法。
【請求項212】
対象の免疫応答を刺激するための方法であって、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、
前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含み、
前記対象が、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されているかまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する、
前記方法。
【請求項213】
対象の免疫応答を刺激するための方法であって、
前記対象に抗原ベースワクチンを前記対象に投与することを含み、
前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、
前記抗原発現系を含み、
前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、
前記1つ以上のベクターが、
(a)ベクター骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ベクター骨格と、
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
(I)少なくとも2個のエピトープコード核酸配列であって、
場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、
前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、
(A)場合により、5’リンカー配列と、
(B)場合により、3’リンカー配列と
を含む、前記エピトープコード核酸配列
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、
(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、
(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と
を含む、前記カセットと
を含み、
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さであり、
前記対象が、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されているかまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する、
前記方法。
【請求項214】
前記抗原発現系が、請求項1~160のいずれか1項に記載の前記抗原発現系のいずれか1つを含む、請求項196~213のいずれか1項に記載の方法。
【請求項215】
前記抗原ベースワクチンが、請求項161~164のいずれか1項に記載の前記医薬組成物のいずれか1つを含む、請求項196~213のいずれか1項に記載の方法。
【請求項216】
前記抗原ベースワクチンが、プライミング用量として投与される、請求項196~215のいずれか1項に記載の方法。
【請求項217】
前記抗原ベースワクチンが、1つ以上のブースター用量として投与される、請求項196~216のいずれか1項に記載の方法。
【請求項218】
前記ブースター用量が、前記プライミング用量と異なる、請求項217に記載の方法。
【請求項219】
(a)前記プライミング用量がチンパンジーアデノウイルスベクターを含み、前記ブースター用量がアルファウイルスベクターを含む、または
(b)前記プライミング用量がアルファウイルスベクターを含み、前記ブースター用量がチンパンジーアデノウイルスベクターを含む、
請求項218に記載の方法。
【請求項220】
前記ブースター用量が、前記プライミング用量と同じである、請求項217に記載の方法。
【請求項221】
前記1回以上のブースター用量の注射部位が、前記プライミング用量の注射部位に可能な限り近い、請求項217~220のいずれか1項に記載の方法。
【請求項222】
前記対象の前記HLAハロタイプを決定することまたは決定されていること
をさらに含む、先行する方法の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項223】
前記抗原ベースワクチンが、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)投与される、先行する方法の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項224】
前記抗原ベースワクチンが、筋肉内(IM)投与される、先行する方法の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項225】
前記筋肉内(IM)投与が、別々の注射部位に投与される、請求項224に記載の方法。
【請求項226】
前記別々の注射部位が、両方の三角筋である、請求項225に記載の方法。
【請求項227】
前記別々の注射部位が、両側の殿筋または大腿直筋部位である、請求項226に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、あらゆる目的でその全容を参照によって本明細書に援用する2020年4月21日出願の米国仮出願第63/013,466号の利益を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全容を参照によって本明細書に援用する配列表を含む。前記ASCIIコピーは、2021年4月21日に作成され、GSO_086WO_sequencelisting.txtの名前が付けられており、そのサイズは422,165バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
腫瘍特異的抗原に基づく治療用ワクチンは、次世代のがん免疫療法として極めて有望である。1~3例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)及び黒色腫などの高い変異負荷を有するがんは、比較的新生抗原を生成しやすいことからこうした療法に特に適した標的となる。4,5初期のエビデンスは、新生抗原ベースのワクチン接種がT細胞応答を誘発し6、新生抗原を標的とした細胞療法が選択された患者における特定の状況下で腫瘍退縮を引き起こし得ることを示している。7
【0004】
がん及び感染症の状況の抗原ワクチン設計における疑問の1つは、存在する多くのコーディング変異のうちのどれが、「最良の」治療抗原、例えば、免疫を誘発することができる抗原を生じるかというものである。
【0005】
現行の抗原予測法の課題に加えて、その多くがヒト由来のものである、ヒトにおける抗原送達に使用することができる既存のベクター系にもやはり特定の課題が存在する。例えば、多くのヒトは、過去の自然曝露の結果としてヒトウイルスに対する既存の免疫を有しており、この免疫ががん治療または感染症に対するワクチン接種などにおけるワクチン接種戦略において抗原を送達するための組換えヒトウイルスの使用にとって大きな障害となりうる。上記の課題に対処したワクチン接種戦略では一定の進歩があったものの、特にワクチン効力及び有効性の向上など、臨床用途で依然、改善の余地がある。
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書では、抗原コードカセットであって、5’~3’方向に、式:
(Ex-(EN
n)y)z
[式中、Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、ENは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、z=2以上であり、前記抗原コード核酸配列は、E、特定のEN、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、抗原コードカセットが開示される。
【0007】
いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x及びy=1である。いくつかの態様において、x=少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である。いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x=1、y=1であり、n=2であり、zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:E-E1-E2により記述され、場合により最後の繰り返しを除いて前記順序が式:
E-E1により記述される。いくつかの態様において、z=少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である。いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=4であり、zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序は、式:E-E1-E2-E3-E4-E5により記述される。いくつかの態様において、z=少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4である。いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=9であり、zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序は、式:E-E1-E2-E3-E4-E5-E6-E7-E8-E9により記述される。いくつかの態様において、z=少なくとも2である。
【0008】
いくつかの態様において、各EまたはENは、5’~3’方向に、式(L5b-Nc-L3d)によって記述されるヌクレオチド配列を独立して含み、式中、Nは、各EまたはENに関連付けられた異なるエピトープコード核酸配列を含み、ただしc=1であり、L5は5’リンカー配列を含み、ただしb=0または1であり、L3は3’リンカー配列を含み、ただしd=0または1である。いくつかの態様において、各Nは、アミノ酸7~15個の長さのエピトープをコードし、L5は、前記エピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードする天然の5’リンカー配列であり、前記5’リンカー配列は、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードし、L3は、前記エピトープの天然のC末端アミノ酸配列をコードする天然の3’リンカー配列であり、前記3’リンカー配列は、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードする。
【0009】
いくつかの態様において、各E及びENは、少なくともアミノ酸7個の長さのエピトープをコードする。いくつかの態様において、各E及びENは、アミノ酸7~15個の長さのエピトープをコードする。いくつかの態様において、各E及びENは、少なくともヌクレオチド21個の長さのヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、各E及びENは、ヌクレオチド75個の長さのヌクレオチド配列である。
【0010】
本明細書ではまた、抗原発現系を送達するための組成物であって、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記エピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、組成物も開示する。
【0011】
本明細書ではまた、抗原発現系を送達するための組成物であって、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)互いに直鎖状に連結された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なるエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記エピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、組成物も開示する。
【0012】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも3個の異なるエピトープコード核酸配列を含む。
【0013】
本明細書ではまた、抗原発現系を送達するための組成物であって、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、場合によりChAdV68ベクターであるチンパンジーアデノウイルスベクター、または場合によりベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターであるアルファウイルスベクターを含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、前記カセットは、場合により前記ベクター骨格に天然に存在する天然プロモーターヌクレオチド配列とポリ(A)配列との間に組み込まれ、場合により前記ポリ(A)配列は前記ベクター骨格に天然に存在し、前記カセットは、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、場合により、互いに直鎖状に連結された少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列を含み、各エピトープコード核酸配列が場合により、(A)アミノ酸7~15個の長さのMHCクラスIエピトープをコードするMHCクラスIエピトープコード核酸配列と、(B)MHCクラスIエピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、5’リンカー配列と、(C)MHCクラスIエピトープの天然のC末端酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、3’リンカー配列と、を含み、前記カセットが前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、アミノ酸13~25個の長さのポリペプチドをコードし、各エピトープコード核酸配列の各3’末端が、前記カセット内の最後のエピトープコード核酸配列を除いて、それに続くエピトープコード核酸配列の5’末端に連結された、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列であって、(I)PADRE MHCクラスII配列(配列番号48)と、(II)破傷風トキソイドMHCクラスII配列(配列番号46)と、(III)前記PADRE MHCクラスII配列と前記破傷風トキソイドMHCクラスII配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第1の核酸配列と、(IV)前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の5’末端と、前記エピトープコード核酸配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第2の核酸配列と、(V)場合により、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の3’末端のGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第3の核酸配列と、を含む、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、組成物も開示される。
【0014】
いくつかの態様において、前記カセットの各要素の順序付けられた配列は、5’~3’方向に、
Pa-(L5b-Nc-L3d)X-(G5e-Uf)Y-G3g
を含む式[式中、Pは、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列を含み、ただし、a=0または1であり、Nは、異なるエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、ただしc=1であり、L5は、5’リンカー配列を含み、ただしb=0または1であり、L3は、3’リンカー配列を含み、ただしd=0または1であり、G5は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする前記少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、ただしe=0または1であり、G3は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする前記少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、ただしg=0または1であり、Uは、前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、ただしf=1であり、X=1~400であり、ただし各Xについて、対応するNcは、エピトープコード核酸配列であり、Y=0、1、または2であり、ただし各Yについて、対応するUfは、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列である]で記述される。
【0015】
いくつかの態様において、各Xについて、対応するNcは、前記異なるエピトープコード核酸配列の少なくとも2個の反復配列に対応するNcを除いて、異なるエピトープコード核酸配列である。いくつかの態様において、各Yについて、対応するUfは、異なるMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である。いくつかの態様において、a=0、b=1、d=1、e=1、g=1、h=1、X=20、Y=2であり、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、前記ベクター骨格に天然に存在する単一の天然プロモーターヌクレオチド配列であり、
前記少なくとも1つのポリアデニル化ポリ(A)配列は、前記ベクター骨格によって与えられる少なくとも80個の連続したAヌクレオチドのポリ(A)配列であり、
各Nは、アミノ酸7~15個の長さのエピトープをコードし、
L5は、前記エピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードする天然の5’リンカー配列であり、前記5’リンカー配列は、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードし、
L3は、前記エピトープの天然のC末端アミノ酸配列をコードする天然の3’リンカー配列であり、前記3’リンカー配列は、少なくともアミノ酸3個の長さのペプチドをコードし、
Uは、PADREクラスII配列及び破傷風トキソイドMHCクラスII配列のそれぞれであり、
前記ベクター骨格は、場合によりChAdV68ベクターであるチンパンジーアデノウイルスベクター、または場合によりベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターであるアルファウイルスベクターを含み、前記ベクター骨格がアルファウイルスベクターを含む場合には、場合により前記天然プロモーターヌクレオチド配列はサブゲノムプロモーターであり、
前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列のそれぞれは、アミノ酸13個~25個の長さのポリペプチドをコードする。
【0016】
いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の反復配列である。いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個の反復配列である。いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、2~3個、2~4個、2~5個、2~6個、または2~7個の反復配列である。いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、7個以下の反復配列、6個以下の反復配列、5個以下の反復配列、4個以下の反復配列、または3個以下の反復配列である。
【0017】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2個の反復配列を含む。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2個の反復配列を含む。いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも1つの別個の異なるエピトープコード核酸配列によって隔てられている。いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも2個の別個の異なるエピトープコード核酸配列によって隔てられている。いくつかの態様において、場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも75個のヌクレオチドによって隔てられている。いくつかの態様において、場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも150個のヌクレオチド、少なくとも300個のヌクレオチド、または少なくとも675個のヌクレオチドによって隔てられている。いくつかの態様において、場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも50個のヌクレオチド、少なくとも100個のヌクレオチド、少なくとも200個のヌクレオチド、少なくとも250個のヌクレオチド、少なくとも350個のヌクレオチド、少なくとも400個のヌクレオチド、少なくとも450個のヌクレオチド、少なくとも500個のヌクレオチド、少なくとも700個のヌクレオチド、少なくとも700個のヌクレオチド、少なくとも750個のヌクレオチド、少なくとも800個のヌクレオチド、少なくとも900個のヌクレオチド、または少なくとも1000個のヌクレオチドによって隔てられている。いくつかの態様において、場合により存在してよい前記5’リンカー配列及び場合により存在してよい前記3’リンカー配列を含む前記少なくとも2個の反復配列は、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも20個のヌクレオチド、少なくとも25個のヌクレオチド、少なくとも30個のヌクレオチド、少なくとも35個のヌクレオチド、少なくとも40個のヌクレオチド、少なくとも45個のヌクレオチド、少なくとも50個のヌクレオチド、少なくとも55個のヌクレオチド、少なくとも60個のヌクレオチド、少なくとも65個のヌクレオチド、または少なくとも70個のヌクレオチドによって隔てられている。
【0018】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、5’~3’方向に、式:
(Ex-(EN
n)y)z
[式中、Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、ENは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、z=2以上であり、前記抗原コード核酸配列は、E、特定のEN、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]により記述される。
【0019】
いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x及びy=1である。いくつかの態様において、x=少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である。いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、場合により最後の繰り返しを除いて、x=1、y=1であり、n=2であり、zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序が、式:E-E1-E2により記述され、場合により最後の繰り返しを除いて前記順序が式:
E-E1により記述される。いくつかの態様において、z=少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7である。いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=4であり、zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序は、式:E-E1-E2-E3-E4-E5により記述される。いくつかの態様において、z=少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4である。いくつかの態様において、zのそれぞれの繰り返しについて、x=1、y=1、n=9であり、zのそれぞれの繰り返しについて、3個の異なるエピトープコード核酸配列の順序は、式:E-E1-E2-E3-E4-E5-E6-E7-E8-E9により記述される。いくつかの態様において、z=少なくとも2である。
【0020】
いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の単一の繰り返しを含む抗原コード核酸配列に対してより高い免疫応答を刺激するのに充分な数の反復配列を含むか、またはzがそのような充分な数を含む。いくつかの態様において、前記少なくとも2個の反復配列は、免疫応答を刺激するのに充分な数の反復配列を含むか、またはzがそのような充分な数を含み、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の単一の繰り返しが、前記免疫応答を刺激するのに不充分であるかもしくは検出可能な免疫応答を刺激するのに不充分である。いくつかの態様において、前記免疫応答は、前記抗原発現系を送達するための前記組成物によるインビボ免疫後のエピトープ特異的T細胞の増殖である。いくつかの態様において、前記免疫応答は、前記抗原発現系を送達するための前記組成物によるインビボ免疫後のエピトープ特異的T細胞の活性化の増加及び/またはエピトープ特異的T細胞によるエピトープ特異的殺滅の増加である。
【0021】
本明細書ではまた、抗原発現系を送達するための組成物であって、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記エピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、組成物も提供される。
【0022】
本明細書ではまた、抗原発現系を送達するための組成物であって、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)互いに直鎖状に連結された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なるエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記エピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、組成物も提供される。
【0023】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、3個の異なるエピトープコード核酸配列を含む。
【0024】
本明細書ではまた、抗原発現系を送達するための組成物であって、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、場合によりChAdV68ベクターであるチンパンジーアデノウイルスベクター、または場合によりベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターであるアルファウイルスベクターを含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、前記カセットは、場合により前記ベクター骨格に天然に存在する天然プロモーターヌクレオチド配列とポリ(A)配列との間に組み込まれ、場合により前記ポリ(A)配列は前記ベクター骨格に天然に存在し、前記カセットは、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、場合により、互いに直鎖状に連結された少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列を含み、各エピトープコード核酸配列が場合により、(A)アミノ酸7~15個の長さのMHCクラスIエピトープをコードするMHCクラスIエピトープコード核酸配列と、(B)前記MHCクラスIエピトープの天然のN末端アミノ酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、5’リンカー配列と、(C)前記MHCクラスIエピトープの天然のC末端酸配列をコードし、少なくともアミノ酸3個の長さであるペプチドをコードする、3’リンカー配列と、を含み、
前記カセットが前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、アミノ酸13~25個の長さのポリペプチドをコードし、各エピトープコード核酸配列の各3’末端が、前記カセット内の最後のエピトープコード核酸配列を除いて、それに続くエピトープコード核酸配列の5’末端に連結された、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列であって、(I)PADRE MHCクラスII配列(配列番号48)と、(II)破傷風トキソイドMHCクラスII配列(配列番号46)と、(III)前記PADRE MHCクラスII配列と前記破傷風トキソイドMHCクラスII配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第1の核酸配列と、(IV)前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の5’末端と、前記エピトープコード核酸配列とを連結するGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第2の核酸配列と、(V)場合により、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列の3’末端のGPGPGアミノ酸リンカー配列をコードする第3の核酸配列と、を含む、前記少なくとも2個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記天然プロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、組成物も提供される。
【0025】
いくつかの態様において、カセットは、375~700ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、カセットは、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さである。いくつかの態様において、カセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、前記エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上が、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来する。
【0026】
いくつかの態様において、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来する。いくつかの態様において、前記エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上は、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来しない。いくつかの態様において、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれは、対象の腫瘍、感染または感染細胞に由来しない。
【0027】
いくつかの態様において、前記エピトープコード核酸配列は、細胞の表面上のMHCクラスIによって提示されることが分かっているかまたは疑われるエピトープをコードしており、場合により、前記細胞の表面は腫瘍細胞表面または感染細胞表面であり、場合により、前記細胞は対象の細胞である。いくつかの態様において、細胞は、肺がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される腫瘍細胞であるか、または細胞は、病原体感染細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、真菌感染細胞、及び寄生虫感染細胞からなる群から選択される。いくつかの態様において、前記ウイルス感染細胞は、HIV感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染細胞、エボラ感染細胞、B型肝炎ウイルス(HBV)感染細胞、インフルエンザ感染細胞、C型肝炎ウイルス(HCV)感染細胞、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染細胞、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞、チクングニアウイルス感染細胞、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染細胞、デングウイルス感染細胞、及びオルトミクソウイルス科ウイルス感染細胞からなる群から選択される。
【0028】
いくつかの態様において、組成物は、ナノ粒子状の送達ビヒクルをさらに含む。いくつかの態様において、ナノ粒子状の送達ビヒクルは、脂質ナノ粒子(LNP)である。いくつかの態様において、LNPは、イオン化可能なアミノ脂質を含む。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ脂質は、MC3様(ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート)分子を含む。いくつかの態様において、ナノ粒子送達ビヒクルは抗原発現系を封入する。
【0029】
いくつかの態様において、カセットは、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と少なくとも1つのポリ(A)配列との間に組み込まれる。いくつかの態様において、第2のプロモーターは存在せず、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、前記抗原コード核酸配列と機能的に連結されている。
【0030】
いくつかの態様において、1つ以上のベクターは、1つ以上の+鎖RNAベクターを含む。いくつかの態様において、1つ以上の+鎖RNAベクターは、5’7-メチルグアノシン(m7G)キャップを有する。いくつかの態様において、1つ以上の+鎖RNAベクターは、インビトロ転写によって生成される。いくつかの態様において、1つ以上のベクターは、哺乳動物細胞内で自己複製する。いくつかの態様において、骨格は、アウラウイルス、フォートモルガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、骨格は、ベネズエラウマ脳炎ウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、骨格は、少なくとも、アウラウイルス、フォートモルガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされた、非構造タンパク質媒介増幅のための配列、サブゲノミックプロモーター配列、ポリ(A)配列、非構造タンパク質1(nsP1)遺伝子、nsP2遺伝子、nsP3遺伝子、及びnsP4遺伝子を含む。いくつかの態様において、骨格は、少なくとも、アウラウイルス、フォートモルガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされた、非構造タンパク質媒介増幅のための配列、サブゲノミックプロモーター配列、及びポリ(A)配列を含む。いくつかの態様において、非構造タンパク質媒介増幅のための配列は、アルファウイルス5’UTR、51ntのCSE、24ntのCSE、26Sサブゲノミックプロモーター配列、19ntのCSE、アルファウイルス3’UTR、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、骨格は、構造ビリオンタンパク質カプシドE2及びE1をコードしていない。いくつかの態様において、カセットは、アウラウイルス、フォートモルガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスのヌクレオチド配列内の構造ビリオンタンパク質の代わりに挿入される。
【0031】
いくつかの態様において、ベネズエラウマ脳炎ウイルスは、配列番号3または配列番号5の配列を含む。いくつかの態様において、ベネズエラウマ脳炎ウイルスは、さらに塩基対7544~11175の欠失を有する配列番号3または配列番号5の配列を含む。いくつかの態様において、骨格は、配列番号6または配列番号7に記載の配列を含む。いくつかの態様において、カセットは、配列番号3または配列番号5の配列に記載される塩基対7544~11175の欠失を置換するように7544位に挿入されている。
【0032】
いくつかの態様において、前記カセットの挿入は、前記nsP1~4遺伝子及び前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含むポリシストロニックRNAの転写をもたらし、前記nsP1~4遺伝子及び前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は別々のオープンリーディングフレーム内にある。
【0033】
いくつかの態様において、骨格は、チンパンジーアデノウイルスベクターの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、チンパンジーアデノウイルスベクターは、ChAdV68ベクターである。いくつかの態様において、ChAdVベクターは、(a)ChAdV骨格であって、場合により、(i)配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む改変ChAdV68配列であって、前記ヌクレオチド2~36,518が、(1)E1欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403を欠き、(2)E3欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠き、場合により、(3)部分E4欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠いている、前記改変ChAdV68配列と、(ii)場合により、CMVプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、SV40ポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ChAdV骨格と、(b)本明細書に記載の抗原コードカセットのいずれかであって、場合により、前記E1欠失部内に挿入され、前記CMVプロモーターのヌクレオチド配列及び前記SV40ポリ(A)配列と機能的に連結されている、前記抗原コードカセットと、を含む。
【0034】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、骨格によってコードされた天然のサブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、外因性のRNAプロモーターである。いくつかの態様において、第2のプロモーターヌクレオチド配列は、サブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、第2のプロモーターヌクレオチド配列は複数のサブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列を含み、各サブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列は、前記別々のオープンリーディングフレームのうちの1つ以上の転写をもたらす。
【0035】
いくつかの態様において、1つ以上のベクターは、それぞれ少なくとも300ntのサイズである。いくつかの態様において、1つ以上のベクターは、それぞれ少なくとも1kbのサイズである。いくつかの態様において、1つ以上のベクターは、それぞれ2kbのサイズである。いくつかの態様において、1つ以上のベクターは、それぞれ5kb未満のサイズである。
【0036】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つは、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする。
【0037】
いくつかの態様において、各エピトープコード核酸配列が互いに直接連結されている。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つは、リンカーをコードする核酸配列によって異なるエピトープコード核酸配列と連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、2個のMHCクラスI配列または1個のMHCクラスI配列を1個のMHCクラスII配列と連結する。いくつかの態様において、リンカーは、(1)少なくとも残基2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の長さの連続したグリシン残基、(2)少なくとも残基2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の長さの連続したアラニン残基、(3)2個のアルギニン残基(RR)、(4)アラニン、アラニン、チロシン(AAY)、(5)哺乳動物プロテアーゼによって効率的にプロセシングされる、少なくともアミノ酸残基2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の長さのコンセンサス配列、及び(6)同種由来タンパク質に由来する抗原に隣接し、少なくともアミノ酸残基2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または2~20個の長さの1つ以上の天然配列からなる群から選択される。いくつかの態様において、リンカーは、2個のMHCクラスII配列または1個のMHCクラスII配列を1個のMHCクラスI配列と連結する。いくつかの態様において、リンカーは、配列GPGPGを含む。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの配列は、それによりコードされるエピトープの少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の発現、安定性、細胞トラフィッキング、プロセシング及び提示、及び/または免疫原性を高める、隔てられたまたは連続した配列に機能的または直接的に連結されている。いくつかの態様において、隔てられたまたは連続した配列は、ユビキチン配列、プロテアソームターゲティング性を高めるように改変されたユビキチン配列(例えば、76位にGlyのAla置換を有するユビキチン配列)、免疫グロブリンシグナル配列(例えばIgK)、主要組織適合性クラスI配列、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP)-1、ヒト樹状細胞リソソーム関連膜タンパク質、及び主要組織適合性クラスII配列のうちの少なくとも1つを含み、場合によりプロテアソームターゲティング性を高めるように改変された前記ユビキチン配列がA76である。
【0038】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つは、翻訳後の対応する野生型核酸配列と比べて、その対応するMHCアレルに対する増大した結合親和性を有するポリペプチド配列またはその一部をコードする。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列の少なくとも1つは、翻訳後の対応する野生型核酸配列と比べて、その対応するMHCアレルに対する増大した結合安定性を有するポリペプチド配列またはその一部をコードする。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つは、翻訳後の対応する野生型核酸配列と比べて、その対応するMHCアレル上への増大した提示の可能性を有するポリペプチド配列またはその一部をコードする。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの変化は、点変異、フレームシフト変異、非フレームシフト変異、欠失変異、挿入変異、スプライスバリアント、ゲノム再編成、またはプロテアソームにより生成されたスプライス抗原を含む。
【0039】
いくつかの態様において、腫瘍は、肺がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、膀胱がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択されるか、または、感染症生物は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラ、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、デングウイルス、オルトミクソウイルス科ウイルス、及び結核からなる群から選択される。
【0040】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも2~10個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のエピトープコード核酸配列を含む。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも11~20個、15~20個、11~100個、11~200個、11~300個、11~400個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、または最大で400個のエピトープコード核酸配列を含む。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は少なくとも2~400個のエピトープコード核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2個は、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも2~10個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の抗原コード核酸配列を含む。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも11~20個、15~20個、11~100個、11~200個、11~300個、11~400によってコード個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、または最大で400個の抗原コード核酸配列を含む。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は少なくとも2~400個の抗原コード核酸配列を含み、前記抗原コード核酸配列のうちの少なくとも2個は、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする。いくつかの態様において、前記エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも2つが、細胞表面、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上のMHCクラスIによって提示されるポリペプチド配列またはその一部をコードする。
【0041】
いくつかの態様において、前記対象に投与されて翻訳された場合、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列によってコードされた前記エピトープのうちの少なくとも1つが抗原提示細胞上に提示され、前記腫瘍細胞表面または感染細胞表面上の前記抗原の少なくとも1つを標的とする免疫応答をもたらす。いくつかの態様において、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、前記対象に投与されて翻訳された場合、前記MHCクラスIまたはクラスIIエピトープのうちの少なくとも1つが抗原提示細胞上に提示され、腫瘍細胞表面または前記感染細胞表面上の前記エピトープのうちの少なくとも1つを標的とする免疫応答をもたらし、場合により、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のそれぞれの発現は、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列によって誘導される。
【0042】
いくつかの態様において、各エピトープコード核酸配列は、アミノ酸8~35個の長さ、場合により、アミノ酸9~17個、9~25個、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35個のポリペプチド配列をコードする。
【0043】
いくつかの態様において、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列は存在する。いくつかの態様において、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列は存在し、コードされたペプチド配列を、野生型核酸配列によってコードされる対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、を有する、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列は、アミノ酸12~20個、12、13、14、15、16、17、18、19、20,または20~40個の長さである。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列は存在し、少なくとも1つのユニバーサルMHCクラスII抗原コード核酸配列を含み、場合により、前記少なくとも1つのユニバーサル配列は、破傷風トキソイド及びPADREの少なくとも一方を含む。
【0044】
いくつかの態様において、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または第2のプロモーターヌクレオチド配列は、誘導性である。いくつかの態様において、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または第2のプロモーターヌクレオチド配列は、非誘導性である。
【0045】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つのポリ(A)配列は、前記骨格に天然に存在するポリ(A)配列を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つのポリ(A)配列は、前記骨格に対して外因性のポリ(A)配列を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つと機能的に連結される。いくつかの態様において、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、または少なくとも90個の連続したAヌクレオチドである。いくつかの態様において、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも80個の連続したAヌクレオチドである。
【0046】
いくつかの態様において、カセットは、イントロン配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(WPRE)配列、内部リボソーム進入配列(IRES)配列、2A自己切断ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、フーリン切断部位をコードするヌクレオチド配列、または、少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結された、mRNAの核輸送、安定性、または翻訳効率を向上させることが知られている5’または3’末端の非コード領域内の配列のうちの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの態様において、カセットは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPバリアント、分泌型アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、ルシフェラーゼバリアント、または検出可能なペプチドもしくはエピトープを含むがこれらに限定されないレポーター遺伝子をさらに含む。いくつかの態様において、検出可能なペプチドまたはエピトープは、HAタグ、Flagタグ、Hisタグ、またはV5タグからなる群から選択される。
【0047】
いくつかの態様において、前記1つ以上のベクターは、少なくとも1つの免疫調節物質をコードする1つ以上の核酸配列をさらに含む。いくつかの態様において、免疫調節物質は、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、一本鎖Fv(scFv)、単一特異性抗体もしくは互いに連結された多重特異性抗体としての単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、ラクダ科動物の抗体ドメイン)、または完全長の一本鎖抗体(例えば、柔軟なリンカーによって重鎖と軽鎖が連結された完全長IgG)である。いくつかの態様において、抗体の前記重鎖配列と前記軽鎖配列とは、2AまたはIRESのような自己切断配列によって隔てられた連続的配列であるか、または抗体の重鎖配列と軽鎖配列とは連続したグリシン残基のような柔軟性リンカーによって連結される。いくつかの態様において、免疫調節物質はサイトカインである。いくつかの態様において、サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、もしくはIL-21、またはそれぞれのそのバリアントである。
【0048】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列は、(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物からエクソーム、トランスクリプトーム、及び全ゲノムヌクレオチドシークエンシングデータのうちの少なくとも1つを取得する工程であって、前記ヌクレオチドシークエンシングデータが、抗原のセットのそれぞれのペプチド配列を表すデータを取得するために用いられる、前記工程と、(b)前記抗原のそれぞれが細胞表面上のMHCアレルのうちの1つ以上によって提示される数値的尤度のセットを生成するために、各抗原の前記ペプチド配列を提示モデルに入力する工程であって、前記数値的尤度のセットが、受け取られた質量分析データに少なくとも基づいて特定されたものである、前記工程と、(c)前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を生成するために用いられる選択された抗原のセットを生成するために、前記抗原のセットのサブセットを前記数値的尤度のセットに基づいて選択する工程と、を実施することによって選択される。
【0049】
いくつかの態様において、エピトープコード核酸配列のそれぞれは、(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物からエクソーム、トランスクリプトーム、及び全ゲノムヌクレオチドシークエンシングデータのうちの少なくとも1つを取得する工程であって、前記ヌクレオチドシークエンシングデータが、抗原のセットのそれぞれのペプチド配列を表すデータを取得するために用いられる、前記工程と、(b)前記抗原のそれぞれが細胞表面上のMHCアレルのうちの1つ以上によって提示される数値的尤度のセットを生成するために、各抗原の前記ペプチド配列を提示モデルに入力する工程であって、前記数値的尤度のセットが、受け取られた質量分析データに少なくとも基づいて特定されたものである、前記工程と、(c)前記少なくとも20個のエピトープコード核酸配列を生成するために用いられる選択された抗原のセットを生成するために、前記抗原のセットのサブセットを前記数値的尤度のセットに基づいて選択する工程と、を実施することによって選択される。いくつかの態様において、選択された抗原のセットの数は、2~20である。いくつかの態様において、提示モデルは、(a)前記MHCアレルのうちの特定の1つとペプチド配列の特定の位置の特定のアミノ酸とのペアの存在と、(b)前記ペアの前記MHCアレルのうちの前記特定の1つによる、前記特定の位置に前記特定のアミノ酸を含むそのようなペプチド配列の細胞表面上、場合により腫瘍細胞表面または感染細胞表面上での提示の可能性との間の依存性を表す。いくつかの態様において、前記選択された抗原のセットを選択することは、前記提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて前記細胞表面上に提示される可能性が増大している抗原を選択することを含み、場合により、前記選択された抗原は、1つ以上の特異的MHCアレルによって提示されているものとして検証されている。いくつかの態様において、前記選択された抗原のセットを選択することは、前記提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて前記対象の腫瘍特異的または感染症特異的な免疫応答を刺激することができる可能性が増大している抗原を選択することを含む。いくつかの態様において、前記選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べてプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によってナイーブT細胞に対して提示され得る可能性が増大している抗原を選択することを含み、場合により、APCは樹状細胞(DC)である。いくつかの態様において、前記選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて中枢性寛容または末梢性寛容による阻害を受ける可能性が減少している抗原を選択することを含む。いくつかの態様において、前記選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて選択されない抗原と比べて対象に正常組織に対する自己免疫応答を刺激することができる可能性が減少している抗原を選択することを含む。いくつかの態様において、エクソームまたはトランスクリプトームのヌクレオチドシークエンシングデータが、腫瘍細胞もしくは組織、感染細胞、または感染症生物でシークエンシングを行うことによって取得される。いくつかの態様において、シークエンシングは、次世代シークエンシング(NGS)または任意の大規模並列処理シークエンシングアプローチである。
【0050】
いくつかの態様において、カセットは、抗原カセット内の隣接配列によって形成されたジャンクションエピトープ配列を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの、または各ジャンクションエピトープ配列は、MHCに対して500nMよりも高い親和性を有する。いくつかの態様において、各ジャンクションエピトープ配列は、非自己である。
【0051】
いくつかの態様において、MHCクラスIエピトープのそれぞれは、集団の少なくとも5%に存在する少なくとも1つのHLAアレルによって提示が可能であることが予測または検証されている。いくつかの態様において、MHCクラスIエピトープのそれぞれは、少なくとも1つのHLAアレルによって提示が可能であることが予測または検証されており、各抗原/HLAペアは、集団において少なくとも0.01%の抗原/HLA頻度を有する。いくつかの態様において、MHCクラスIエピトープのそれぞれは、少なくとも1つのHLAアレルによって提示が可能であることが予測または検証されており、各抗原/HLAペアが、集団において少なくとも0.1%の抗原/HLA頻度を有する。
【0052】
いくつかの態様において、カセットは、翻訳後の野生型核酸配列を含む非治療的MHCクラスIまたはクラスIIエピトープ核酸配列をコードしておらず、非治療的エピトープが対象のMHCアレル上に提示されると予測される。いくつかの態様において、非治療的な予測されたMHCクラスIまたはクラスIIエピトープ配列は、カセット内の隣接配列によって形成されたジャンクションエピトープ配列である。
【0053】
いくつかの態様において、予測は、前記非治療的エピトープの配列を提示モデルに入力することによって生成される提示可能性に基づいたものである。
【0054】
いくつかの態様において、カセット内における少なくとも1つの抗原コード核酸配列の順序は、(a)前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列の異なる順序に対応した候補カセット配列のセットを生成する工程と、(b)前記各候補カセット配列について、候補カセット配列内の非治療的エピトープの提示に基づいた提示スコアを決定する工程と、(c)所定の閾値を下回る提示スコアに関連する候補カセット配列を、抗原ワクチン用のカセット配列として選択する工程と、を含む一連の工程によって決定される。
【0055】
また、本明細書では、本明細書に記載される組成物のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供される。いくつかの態様において、組成物は、アジュバントをさらに含む。いくつかの態様において、組成物は、免疫調節物質をさらに含む。いくつかの態様において、免疫調節物質は、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0056】
本明細書ではまた、本明細書に記載される組成物のいずれかのカセットと、配列番号3または配列番号5の配列から得られる1つ以上の要素と、を含む単離ヌクレオチド配列または単離ヌクレオチド配列のセットであって、場合により、前記1つ以上の要素が、非構造タンパク質媒介増幅に必要な配列、サブゲノミックプロモーターヌクレオチド配列、ポリ(A)配列、及び配列番号3または配列番号5に記載の配列のnsP1~4遺伝子からなる群から選択され、場合により、前記ヌクレオチド配列がcDNAである、前記単離ヌクレオチド配列または単離ヌクレオチド配列のセットも提供される。いくつかの態様において、前記単離ヌクレオチド配列または配列のセットは、配列番号6または配列番号7に記載の配列の7544位に挿入された先行の組成物の請求項のいずれかに記載のカセットを含む。いくつかの態様において、組成物はさらに、a)配列番号3または配列番号5の配列から得られた前記1つ以上の要素の5’側に位置するT7またはSP6 RNAポリメラーゼプロモーターのヌクレオチド配列と、
b)場合により、前記ポリ(A)配列の3’側に位置する1つ以上の制限部位と、を含む。いくつかの態様において、先行の組成物の請求項のいずれかに記載のカセットは、配列番号8または配列番号9の7563位に挿入される。
【0057】
本明細書ではまた、上記に記載のヌクレオチド配列のいずれかを含むベクターまたはベクターのセットも提供される。
【0058】
本明細書ではまた、本明細書に記載のヌクレオチド配列または単離ヌクレオチド配列のセットを含む単離細胞であって、場合により、前記細胞が、BHK-21、CHO、HEK293もしくはその変異体、911、HeLa、A549、LP-293、PER.C6、またはAE1-2a細胞である、単離細胞も提供される。
【0059】
本明細書ではまた、本明細書に記載の組成物のいずれかと、使用説明書と、を含むキットも提供される。
【0060】
いくつかの態様において、上記の組成物のいずれかは、ナノ粒子状の送達ビヒクルをさらに含む。いくつかの態様において、ナノ粒子状の送達ビヒクルは、脂質ナノ粒子(LNP)であってよい。いくつかの態様において、LNPは、イオン化可能なアミノ脂質を含む。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ脂質は、MC3様(ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート)分子を含む。いくつかの態様において、ナノ粒子送達ビヒクルは抗原発現系を封入する。
【0061】
いくつかの態様において、上記の組成物のいずれかは、複数のLNPをさらに含み、LNPは、抗原発現系、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び、LNPの凝集を阻害する複合脂質を含み、前記複数のLNPのうち、少なくとも約95%のLNPは、非層状の形態を有するか、または高電子密度である。
【0062】
いくつかの態様において、非カチオン性脂質は、(1)リン脂質、及び(2)コレステロールまたはコレステロール誘導体の混合物である。
【0063】
いくつかの態様において、LNPの凝集を阻害する複合脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体である。いくつかの態様において、PEG-脂質複合体は、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)複合体、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)複合体、PEG-リン脂質複合体、PEG-セラミド(PEG-Cer)複合体、及びこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの態様において、PEG-DAA複合体は、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)複合体、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)複合体、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)複合体、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)複合体、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)複合体、及びこれらの混合物からなる群から選択される構成員である。
【0064】
いくつかの態様において、抗原発現系は、LNP中に完全に封入される。
【0065】
いくつかの態様において、LNPの非層状の形態は、逆六方晶(HII)または立方晶相構造を含む。
【0066】
いくつかの態様において、カチオン性脂質は、LNP中に存在する全脂質の約10mol%~約50mol%を構成する。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、LNP中に存在する全脂質の約20mol%~約50mol%を構成する。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、LNP中に存在する全脂質の約20mol%~約40mol%を構成する。
【0067】
いくつかの態様において、非カチオン性脂質は、LNP中に存在する全脂質の約10mol%~約60mol%を構成する。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、LNP中に存在する全脂質の約20mol%~約55mol%を構成する。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、LNP中に存在する全脂質の約25mol%~約50mol%を構成する。
【0068】
いくつかの態様において、複合脂質は、LNP中に存在する全脂質の約0.5mol%~約20mol%を構成する。いくつかの態様において、複合脂質は、LNP中に存在する全脂質の約2mol%~約20mol%を構成する。いくつかの態様において、複合脂質は、LNP中に存在する全脂質の約1.5mol%~約18mol%を構成する。
【0069】
いくつかの態様において、LNPの95%超は、非層状の形態を有する。いくつかの態様において、LNPの95%超は、高電子密度である。
【0070】
いくつかの態様において、上記の組成物のいずれかは、複数のLNPをさらに含み、LNPは、LNP中に存在する全脂質の50mol%~65mol%を構成するカチオン性脂質と、LNP中に存在する全脂質の0.5mol%~2mol%を構成する、LNPの凝集を阻害する複合脂質と、リン脂質とコレステロールまたはその誘導体との混合物であって、リン脂質が前記LNP中に存在する全脂質の4mol%~10mol%を構成し、コレステロールまたはその誘導体がLNP中に存在する全脂質の30mol%~40mol%を構成する、混合物、リン脂質とコレステロールまたはその誘導体との混合物であって、リン脂質がLNP中に存在する全脂質の3mol%~15mol%を構成し、コレステロールまたはその誘導体が前記LNP中に存在する全脂質の30mol%~40mol%を構成する、混合物、または、LNP中に存在する全脂質の49.5mol%以下であり、リン脂質とコレステロールまたはその誘導体との混合物を含み、コレステロールまたはその誘導体が前記LNP中に存在する全脂質の30mol%から40mol%を構成する混合物、のいずれかを含む、前記非カチオン性脂質と、を含む。
【0071】
いくつかの態様において、上記の組成物のいずれかは、複数のLNPをさらに含み、LNPは、LNP中に存在する全脂質の50mol%~85mol%を構成するカチオン性脂質と、LNP中に存在する全脂質の0.5mol%~2mol%を構成する、LNPの凝集を阻害する複合脂質と、LNP中に存在する全脂質の13mol%~49.5mol%を構成する非カチオン性脂質と、を含む。
【0072】
いくつかの態様において、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、またはこれらの混合物を含む。
【0073】
いくつかの態様において、複合脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体を含む。いくつかの態様において、PEG-脂質複合体は、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)複合体、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)複合体、またはこれらの混合物を含む。いくつかの態様において、PEG-DAA複合体は、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(PEG-DMA)複合体、PEG-ジステアロイルオキシプロピル(PEG-DSA)複合体、またはこれらの混合物を含む。いくつかの態様において、複合体のPEG部分は、約2000ダルトンの平均分子量を有する。
【0074】
いくつかの態様において、複合脂質は、LNP中に存在する全脂質の1mol%~2mol%を構成する。
【0075】
いくつかの態様において、LNPは、式Iの構造:
[式中、L
1及びL
2は、それぞれ独立して、-0(C=0)-、-(C=0)0-、-C(=0)-、-0-、-S(0)
x-、-S-S-、-C(=0)S-、-SC(=0)-、-R
aC(=0)-、-C(=0)R
a-、-R
aC(=0)R
a-、-OC(=0)R
a-、-R
aC(=0)0-、または直接的結合であり、G
1は、Ci~C
2アルキレン、-(C=0)-、-0(C=0)-、-SC(=0)-、-R
aC(=0)-、または直接的結合であり、-C(=0)-、-(C=0)0-、-C(=0)S-、-C(=0)R
a-、または直接的結合であり、Gは、Ci~C
6アルキレンであり、R
aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
1a及びR
1bは、それぞれの場合で、独立して(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
1aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
1bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR
1b及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
2a及びR
2bは、それぞれの場合で、独立して、(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
2aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
2bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR
2b及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
3a及びR
3bは、それぞれの場合で、独立して、(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
3aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
3bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
4a及びR
4bは、それぞれの場合で、独立して、(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
4aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
4bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR
4b及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
5及びR
6は、それぞれ独立してHまたはメチルであり、R
7は、C
4~C
20アルキルであり、R
8及びR
9は、それぞれ独立してC
1~C
12アルキルであるか、またはR
8とR
9とは、それらが結合した窒素原子とともに、5、6、または7員の複素環を形成し、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して1~24の整数であり、xは0、1、または2である]を有する化合物、または、薬学的に許容されるその塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む。
【0076】
いくつかの態様において、LNPは、式IIの構造:
[式中、L
1及びL
2は、それぞれ独立して-0(C=0)-、-(C=0)0-、または炭素-炭素二重結合であり、R
1a及びR
1bは、それぞれの場合で、独立して、(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
1aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
1bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR
1b及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
2a及びR
2bは、それぞれの場合で、独立して、(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
2aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
2bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR
2b及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
3a及びR
3bは、それぞれの場合で、独立して、(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
3aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
3bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR
3b及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
4a及びR
4bは、それぞれの場合で、(a)HまたはC
1~C
12アルキルであるか、または(b)R
4aは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、R
4bはそれが結合する炭素原子と共に、隣り合ったR
4b及びそれが結合する炭素原子と共に炭素-炭素二重結合を形成し、R
5及びR
6は、それぞれ独立してHまたはメチルであり、R
7は、それぞれの場合で、独立してHまたはC
1~C
12アルキルであり、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、非置換のC
1~C
12アルキルであるか、またはR
8とR
9とは、それらが結合した窒素原子とともに、1個の窒素原子を含む5、6、または7員の複素環を形成し、a及びdは、それぞれ独立して0~24の整数であり、b及びcはそれぞれ独立して1~24の整数であり、eは1または2であり、ただし、R
1a、R
2a、R
3a、またはR
4aのうちの少なくとも1つが、C
1~C
12アルキルであるか、またはL
1またはL
2の少なくとも一方が、-0(C=0)-または-(C=0)0-であり、R
1a及びR
1bは、aが6である場合にはイソプロピルでなく、aが8である場合にはn-ブチルでない]を有する化合物、または、薬学的に許容されるその塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む。
【0077】
いくつかの態様において、上記の組成物のいずれかは、中性脂質、ステロイド、及びポリマー結合脂質を含む1つ以上の賦形剤をさらに含む。いくつかの態様において、中性脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、及び1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、中性脂質はDSPCである。
【0078】
いくつかの態様において、化合物と中性脂質とのモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0079】
いくつかの態様において、ステロイドはコレステロールである。いくつかの態様において、化合物とコレステロールとのモル比は、約2:1~1:1の範囲である。
【0080】
いくつかの態様において、ポリマー結合脂質はPEG化脂質である。いくつかの態様において、化合物とPEG化脂質とのモル比は、約100:1~約25:1の範囲である。いくつかの態様において、PEG化脂質は、PEG-DAG、PEGポリエチレン(PEG-PE)、PEG-スクシノイル-ジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、PEG-cer、またはPEGジアルキルオキシプロピルカルバメートである。いくつかの態様において、PEG化脂質は、下記構造III:
[式中、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和のアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は場合により1つ以上のエステル結合によって中断され、zは、30~60の範囲の平均値を有する]を有するか、または、薬学的に許容されるその塩、互変異性体、もしくは立体異性体である。いくつかの態様において、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を有する直鎖の飽和アルキル鎖である。いくつかの態様において、zの平均は、約45である。
ここから開始
【0081】
いくつかの態様において、LNPは、ポリアニオン性の核酸と混合される際に非二重層構造に自己組織化する。いくつかの態様において、非二重層構造は、60nm~120nmの直径を有する。いくつかの態様において、非二重層構造は、60nm~140nmの直径を有する。いくつかの態様において、非二重層構造は、約70nm、約80nm、約90nm、または約100nmの直径を有する。いくつかの態様において、ナノ粒子状の送達ビヒクルは、約100nmの直径を有する。
【0082】
本明細書では、がんを有する対象を治療するための方法であって、対象に、本明細書に記載の組成物のいずれか、または本明細書に記載の医薬組成物のいずれかを投与することを含む、方法も提供される。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列は、がんを有する前記対象の腫瘍に由来するかまたは前記感染した対象の細胞または試料に由来する。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列は、がんを有する前記対象の腫瘍にも、前記感染した対象の細胞または試料にも由来しない。
【0083】
本明細書ではまた、対象の免疫応答を刺激するための方法であって、対象に、本明細書に記載の組成物のいずれかまたは医薬組成物のいずれかを投与することを含む、方法も提供される。
【0084】
いくつかの態様において、対象は、MHCクラスIエピトープを提示することが予測されているまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する。いくつかの態様において、組成物は、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)投与される。いくつかの態様において、組成物は筋肉内投与される。いくつかの態様において、方法は、1つ以上の免疫調節物質を投与することをさらに含み、場合により、免疫調節物質は、組成物または医薬組成物の投与前、投与と同時、または投与後に投与される。いくつかの態様において、1つ以上の免疫調節物質は、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合フラグメントからなる群から選択される。いくつかの態様において、免疫調節物質は、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内(ID)、または皮下(SC)に投与される。いくつかの態様において、皮下投与は、組成物または医薬組成物の投与部位の近くに、または1つ以上のベクターもしくは組成物の流入領域リンパ節に近接して行われる。
【0085】
いくつかの態様において、方法は、対象に第2のワクチン組成物を投与することをさらに含む。いくつかの態様において、第2のワクチン組成物は、本明細書に記載の組成物または医薬組成物のいずれかの投与の前に投与される。いくつかの態様において、第2のワクチン組成物は、本明細書に記載の組成物または医薬組成物のいずれかの投与の後に投与される。いくつかの態様において、第2のワクチン組成物は、本明細書に記載の組成物または医薬組成物のいずれかと同じである。いくつかの態様において、第2のワクチン組成物は、本明細書に記載の組成物または医薬組成物のいずれかと異なる。いくつかの態様において、第2のワクチン組成物は、少なくとも1つの抗原コード核酸配列をコードするチンパンジーアデノウイルスベクターを含む。いくつかの態様において、チンパンジーアデノウイルスベクターによってコードされる少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、先行の組成物の請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの抗原コード核酸配列と同じである。
【0086】
本明細書ではまた、先行の組成物の請求項のいずれかに記載の1つ以上のベクターを製造する方法であって、(a)骨格及びカセットを含む直鎖化DNA配列を得ることと、(b)直鎖化DNA配列を、直鎖化DNA配列をRNAに転写するために必要なすべての成分を含んだインビトロ転写反応液に加えることにより、直鎖化DNA配列をインビトロ転写することであって、場合により、得られたRNAにm7gキャップをインビトロで付加することを含む、ことと、(c)インビトロ転写反応液から1つ以上のベクターを単離することと、を含む、方法も提供される。いくつかの態様において、直線化DNA配列は、DNAプラスミド配列を直線化することにより、またはPCRを用いた増幅により生成される。いくつかの態様において、プラスミド配列は、細菌組換えまたは全ゲノムDNA合成または細菌細胞内で合成されたDNAの増幅を行う全ゲノムDNA合成のうちの1つを用いて生成される。いくつかの態様において、1つ以上のベクターを前記インビトロ転写反応液から単離することは、フェノールクロロホルム抽出、シリカカラムを用いた精製、または同様のRNA精製法のうちの1つ以上を含む。
【0087】
本明細書ではまた、前記抗原発現系を送達するための先行の組成物の請求項のいずれかに記載の組成物を製造する方法であって、(a)ナノ粒子状の送達ビヒクルの成分を与えることと、(b)抗原発現系を与えることと、(c)ナノ粒子状の送達ビヒクル及び抗原発現系が、抗原発現系を送達するための組成物を生成するのに充分な条件を与えることと、を含む方法も提供される。いくつかの態様において、かかる条件は、マイクロ流体混合によって与えられる。
【0088】
本明細書ではまた、疾患を有する対象を治療するための方法であって、場合により前記疾患が、がんまたは感染症であり、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが抗原コードカセットを含み、前記抗原コードカセットが、5’~3’方向に、式:
(Ex-(EN
n)y)z
[式中、Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、ENは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、z=2以上であり、前記抗原コード核酸配列は、E、特定のEN、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、前記方法も提供される。
【0089】
本明細書ではまた、疾患を有する対象を治療する方法であって、場合により前記疾患が、がんであり、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記エピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、方法も提供される。
【0090】
本明細書ではまた、疾患を有する対象を治療する方法であって、場合により前記疾患が、がんであり、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、前記抗原発現系が、1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記エピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、組成物も提供される。
【0091】
いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列は、がんを有する前記対象の腫瘍に由来するかまたは前記感染した対象の細胞または試料に由来する。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列は、がんを有する前記対象の腫瘍にも、前記感染した対象の細胞または試料にも由来しない。
【0092】
本明細書ではまた、対象の免疫応答を刺激する方法であって、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが抗原コードカセットを含み、前記抗原コードカセットが、5’~3’方向に、式:
(Ex-(EN
n)y)z
[式中、Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、ENは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、z=2以上であり、前記抗原コード核酸配列は、E、特定のEN、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、前記方法も提供される。
【0093】
本明細書ではまた、対象の免疫応答を刺激する方法であって、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により、前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含む、方法も提供される。
【0094】
本明細書ではまた、場合によりがんまたは感染症である疾患を有する対象を治療する方法であって、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さである、組成物も提供される。
【0095】
いくつかの態様において、前記対象は、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されているまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する。いくつかの態様において、前記対象は、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されているまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現し、かつ、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列は、細胞の表面上のMHCクラスIによって提示されることが知られているかまたは疑われるエピトープを含む。いくつかの態様において、細胞の表面は、腫瘍細胞表面である。いくつかの態様において、細胞は、肺がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される腫瘍細胞である。いくつかの態様において、細胞の表面は、感染細胞表面である。いくつかの態様において、細胞は、病原体感染細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、真菌感染細胞、及び寄生虫感染細胞からなる群から選択される感染細胞である。いくつかの態様において、ウイルス感染細胞は、HIV感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)感染細胞、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染細胞、エボラ感染細胞、B型肝炎ウイルス(HBV)感染細胞、インフルエンザ感染細胞、C型肝炎ウイルス(HCV)感染細胞、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染細胞、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞、チクングニアウイルス感染細胞、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染細胞、デングウイルス感染細胞、及びオルトミクソウイルス科ウイルス感染細胞からなる群から選択される。
【0096】
本明細書ではまた、対象の免疫応答を刺激する方法であって、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが抗原コードカセットを含み、前記抗原コードカセットが、5’~3’方向に、式:
(Ex-(EN
n)y)z
[式中、Eは、前記少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を表し、nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、ENは、それぞれの対応するnについて前記別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、zのそれぞれの繰り返しについては、各nについてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、z=2以上であり、前記抗原コード核酸配列は、E、特定のEN、またはこれらの組み合わせの少なくとも2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含む、方法も提供される。
【0097】
本明細書ではまた、対象の免疫応答を刺激する方法であって、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが、抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により、前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つの少なくとも2個の反復配列を含み、前記対象が、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されているかまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する、方法も提供される。
【0098】
本明細書ではまた、対象の免疫応答を刺激する方法であって、前記対象に抗原ベースワクチンを投与することを含み、前記抗原ベースワクチンが、
抗原発現系を含み、前記抗原発現系が1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、(a)ベクター骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、(ii)場合により、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と、を含む、前記ベクター骨格と、(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、(I)少なくとも2個のエピトープコード核酸配列であって、場合により、(1)前記コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によってコードされた対応するペプチド配列とは異なるものとする、少なくとも1つの変化、または(2)病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドからなる群から選択される感染症生物ペプチドをコードする核酸配列を含み、場合により、前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープをコードし、前記エピトープコード核酸配列のそれぞれが、(A)場合により、5’リンカー配列と、(B)場合により、3’リンカー配列と、を含む、前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列と、(ii)場合により、前記抗原コード核酸配列に機能的に連結された第2のプロモーターヌクレオチド配列と、(iii)場合により、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列と、(iv)場合により、GPGPGアミノ酸リンカー配列(配列番号56)をコードする少なくとも1つの核酸配列と、(v)場合により、前記ベクター骨格に天然のポリ(A)配列または前記ベクター骨格に対して外因性のポリ(A)配列である、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列と、を含む、前記カセットと、を含み、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が存在しない場合、前記抗原コード核酸配列が前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と機能的に連結され、前記カセットが700ヌクレオチド以下の長さであり、
前記対象が、前記少なくとも1つのエピトープ配列を提示することが予測されているかまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する、方法も提供される。
【0099】
いくつかの態様において、抗原発現系は、本明細書に記載される抗原発現系のいずれか1つを含む。いくつかの態様において、抗原ベースワクチンは、本明細書に記載される医薬組成物のいずれか1つを含む。
【0100】
いくつかの態様において、抗原ベースワクチンは、プライミング用量として投与される。いくつかの態様において、抗原ベースワクチンは、1つ以上のブースター用量として投与される。いくつかの態様において、ブースター用量は、前記プライミング用量と異なる。いくつかの態様において、a)プライミング用量がチンパンジーアデノウイルスベクターを含み、ブースター用量がアルファウイルスベクターを含むか、またはb)プライミング用量がアルファウイルスベクターを含み、ブースター用量がチンパンジーアデノウイルスベクターを含む。いくつかの態様において、ブースター用量は、プライミング用量と同じである。いくつかの態様において、1回以上のブースター用量の注射部位は、プライミング用量の注射部位に可能な限り近い。
【0101】
いくつかの態様において、方法は、対象の前記HLAハロタイプを決定するかまたは既に決定されていることをさらに含む。
【0102】
いくつかの態様において、抗原ベースワクチンは、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)投与される。いくつかの態様において、抗原ベースワクチンは、筋肉内(IM)投与される。いくつかの態様において、筋肉内(IM)投与は、別々の部位に投与される。いくつかの態様において、別々の注射部位は両方の三角筋である。いくつかの態様において、別々の注射部位は両側の殿筋または大腿直筋部位である。
【0103】
本明細書ではまた、本明細書に開示される組成物のいずれか(本明細書に開示されるアルファウイルスに基づく、またはChAdに基づくベクターなど)と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も開示される。いくつかの態様において、医薬組成物は、アジュバントをさらに含む。いくつかの態様において、医薬組成物は、免疫調節物質をさらに含む。いくつかの態様において、免疫調節物質は、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0104】
本明細書ではまた、本明細書に開示される単離ヌクレオチド配列を含むベクターも開示される。
【0105】
本明細書ではまた、本明細書に開示されるベクターまたは組成物と、使用説明書と、を含むキットも開示される。
【0106】
本明細書ではまた、対象を治療するための方法であって、対象に、本明細書に開示されるベクター、または本明細書に開示される医薬組成物を投与することを含む方法も開示される。本明細書ではまた、対象の免疫応答を刺激するための方法であって、前記対象に、本明細書に記載される組成物、ベクター、または医薬組成物のいずれかを投与することを含む方法も開示される。いくつかの態様において、対象は、MHCクラスIエピトープを提示することが予測されているまたは知られている少なくとも1つのHLAアレルを発現する。いくつかの態様において、組成物は、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)投与される。
【0107】
本明細書では、上記の組成物のいずれかの1つ以上のベクターを製造する方法であって、骨格及び抗原カセットを含む直鎖化DNA配列を得ることと、直鎖化DNA配列を、直鎖化DNA配列をRNAに転写するために必要なすべての成分を含んだインビトロ転写反応液に加えることにより、直鎖化DNA配列をインビトロ転写することであって、場合により、得られたRNAにm7gキャップをインビトロで付加することを含む、ことと、インビトロ転写反応液から1つ以上のベクターを単離することと、を含む、方法も提供される。いくつかの態様において、直線化DNA配列は、DNAプラスミド配列を直線化することにより、またはPCRを用いた増幅により生成される。いくつかの態様において、プラスミド配列は、細菌組換えまたは全ゲノムDNA合成または細菌細胞内で合成されたDNAの増幅を行う全ゲノムDNA合成のうちの1つを用いて生成される。いくつかの態様において、1つ以上のベクターを前記インビトロ転写反応液から単離することは、フェノールクロロホルム抽出、シリカカラムを用いた精製、または同様のRNA精製法のうちの1つ以上を含む。
【0108】
本明細書ではまた、本明細書に開示される組成物のいずれかを製造する方法であって、ナノ粒子状の送達ビヒクルの成分を与えることと、抗原発現系を与えることと、ナノ粒子状の送達ビヒクル及び抗原発現系が、抗原発現系を送達するための組成物を生成するのに充分な条件を与えることと、を含む方法も提供される。いくつかの態様において、かかる条件は、マイクロ流体混合によって与えられる。
【0109】
本明細書ではまた、本明細書に開示されるアデノウイルスベクターを製造する方法であって、前記少なくとも1つのプロモーター配列と前記抗原カセットとを含むプラスミド配列を得ることと、前記プラスミド配列を1つ以上の宿主細胞にトランスフェクトすることと、前記1つ以上の宿主細胞から前記ベクターを単離することと、を含む方法も開示される。
【0110】
いくつかの態様において、単離することは、宿主細胞を溶解してアデノウイルスベクターを含む細胞ライセートを得ることと、細胞ライセートからアデノウイルスベクターを精製することと、を含む。
【0111】
いくつかの態様において、プラスミド配列は、細菌組換えまたは全ゲノムDNA合成または細菌細胞内で合成されたDNAの増幅を行う全ゲノムDNA合成のうちの1つを用いて生成される。いくつかの態様において、前記1つ以上の宿主細胞は、CHO、HEK293もしくはその変異体、911、HeLa、A549、LP-293、PER.C6、及びAE1-2a細胞のうちの少なくとも1つである。いくつかの態様において、細胞ライセートからアデノウイルスベクターを精製することは、クロマトグラフィー分離、遠心分離、ウイルス沈殿、及び濾過のうちの1つ以上を行う。
【0112】
本発明のこれらの、ならびに他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明文、及び添付図面を参照することでより深い理解がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1A】1xデザインに関して6x/7xエピトープ反復配列カセットデザインの図を示す。1xカセットは、ここで測定した3つのエピトープ(Dpagt1、Adpgk、Reps1)を含む、固有のアミノ酸25個のエピトープ20個をコードしている。他の17個のエピトープは、他のマウス、ヒト、及び霊長類抗原をコードしている。6x/7xカセットは、概略図に示されるように、それぞれ6回または7回反復される、ここで測定した3つのエピトープをコードしている。
【0114】
【
図1B】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原Dpagt1についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0115】
【
図1C】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原AdpgkについてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。破線は、多すぎてカウントできなかった(TNTC)試料を表す。
【0116】
【
図1D】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原Reps1についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。破線は、多すぎてカウントできなかった(TNTC)試料を表す。
【0117】
【
図2A】1xデザインに関して4xエピトープ反復配列カセットデザインの図を示す。1xカセットは、ここで測定した2つのエピトープ(gp100、Trp2)を含む、固有のアミノ酸25個のエピトープ20個をコードしている。他の18個のエピトープは、他のマウス、ヒト、及び霊長類抗原をコードしている。4xカセットは、概略図に示されるように、それぞれ4回反復される2つのエピトープ、ならびに3つのさらなるマウス抗原をコードしている。
【0118】
【
図2B】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原gp100についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。破線は、多すぎてカウントできなかった(TNTC)試料を表す。
【0119】
【
図2C】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原Trp2についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。破線は、多すぎてカウントできなかった(TNTC)試料を表す。
【0120】
【
図3A】1x、2x、4x、及び6x/7xエピトープ反復配列カセットの図を示す。1xカセットは、ここで測定した3つのエピトープ(gp100、Trp1、Trp2)を含む、固有のアミノ酸25個のエピトープ20個をコードしている。他の17個のエピトープは、他のマウス、ヒト、及び霊長類抗原をコードしている。2x、4x、及び6x/7xカセットは、概略図に示されるように、それぞれ示される回数だけ反復される、ここで測定した3つのエピトープをコードしている。
【0121】
【
図3B】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を最大4倍増加させることを示す。反復する抗原gp100についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0122】
【
図3C】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を最大4倍増加させることを示す。反復する抗原Trp1についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0123】
【
図3D】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を最大4倍増加させることを示す。反復する抗原Trp2についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0124】
【
図4A】1x、5x、及び6x/7xエピトープ反復配列カセットの図を示す。1xカセットは、ここで測定した3つのエピトープ(Dpagt1、Adpgk、Reps1)を含む、固有のアミノ酸25個のエピトープ20個をコードしている。他の17個のエピトープは、他のマウス、ヒト、及び霊長類抗原をコードしている。5xカセットは、概略図に示されるように、それぞれ5回反復される、ここで測定した3つのエピトープをコードしている。6x/7xカセットは、概略図に示されるように、それぞれ6回または7回反復される、ここで測定した3つのエピトープをコードしている。
【0125】
【
図4B】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原Dpagt1についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を2e8VPのChAdVで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0126】
【
図4C】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原AdpgkについてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を2e8VPのChAdVで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0127】
【
図4D】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原Reps1についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を2e8VPのChAdVで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0128】
【
図4E】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原Dpagt1についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を1e9VPのChAdVで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0129】
【
図4F】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原AdpgkについてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を1e9VPのChAdVで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0130】
【
図4G】反復エピトープが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。反復する抗原Reps1についてのELISpotの結果が示されている。C57Bl6マウス(n=8/群)を1e9VPのChAdVで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNg ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【0131】
【
図5A】固有のアミノ酸25個のエピトープ20個をコードした標準的な20エピトープスロットカセットデザイン(20エピトープ)と、合計3個のエピトープDpagt1、Adpgk、及びReps1(「ショート1」)、またはgp100、Trp1、及びTrp2(ショート2)のみをコードした2つの「ショート」インサートカセットデザインの図を示す。
【0132】
【
図5B】合計3個のエピトープのみをコードした「ショート」エピトープカセットが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。抗原Adpgk、及びReps1、gp100、及びTrp2についてIFNγICSの結果を示す。C57Bl6マウス(n=8/群)を10μgのSAM-LNPで免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで6時間刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNγについての細胞内サイトカイン染色により測定した。データは、CD8+細胞の割合としてIFNγ+細胞として示し、ネガティブコントロールによるバックグラウンドシグナルを差し引いている。バーは中央値を示す。
【0133】
【
図5C】合計3個のエピトープのみをコードした「ショート」エピトープカセットが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。抗原gp100及びTrp2についてIFNγICSの結果を示す。C57Bl6マウス(n=8/群)を1×10
10VPのChAdV68で免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで6時間刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNγについての細胞内サイトカイン染色により測定した。データは、CD8+細胞の割合としてIFNγ+細胞として示し、ネガティブコントロールによるバックグラウンドシグナルを差し引いている。バーは中央値を示す。
【0134】
【
図5D】合計3個のエピトープのみをコードした「ショート」エピトープカセットが、ワクチンで刺激された抗原特異的T細胞応答を増加させることを示す。抗原gp100及びTrp2についてELISpotの結果を示す。C57Bl6マウス(n=8/群)を1×10
10VPのChAdV68で免疫し、免疫の12日後に脾細胞を単離した。特定の抗原ペプチドで一晩刺激した後、抗原特異的T細胞の数をIFNγ ELISpotにより測定した。データは、各動物について脾細胞1×10
6個当たりのスポット形成コロニー(SFC)として示す。バーは中央値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0135】
詳細な説明
I.定義
一般に、特許請求の範囲及び明細書において使用される用語は、当業者により理解される通常の意味を有するものとして解釈されるものとする。特定の用語を、さらなる明確性を与えるために下記に定義する。通常の意味と与えられる定義との間に矛盾が存在する場合、与えられる定義が用いられるものとする。
【0136】
本明細書で使用するところの「抗原」という用語は、免疫反応を刺激する物質のことである。抗原は、特定の集団、例えば、がん患者の特定の集団間にみられる抗原である「共有抗原」であってよい。
【0137】
本明細書で使用するところの「新生抗原」なる用語は、例えば、腫瘍細胞の変異、または腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾によって、抗原を対応する野生型抗原とは異なるものとする少なくとも1つの変化を有する抗原のことである。新生抗原は、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列を含んでよい。変異は、フレームシフトもしくは非フレームシフト挿入欠失(indel)、ミスセンスもしくはナンセンス置換、スプライス部位変化、ゲノム再編成もしくは遺伝子融合、または、新生ORFを生じる任意のゲノム変化もしくは発現変化を含むことができる。変異はまた、スプライスバリアントも含むことができる。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾は、異常リン酸化を含むことができる。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾はまた、プロテアソームによって生成されるスプライス抗原も含むことができる。Liepe et al.,A large fraction of HLA class I ligands are proteasome- generated spliced peptides;Science.2016 Oct 21;354(6310):354-358を参照されたい。投与を行うための対象は、様々な診断方法、例えば、下記でさらに述べる患者選択方法の使用により特定することができる。
【0138】
本明細書で使用するところの「腫瘍抗原」という用語は、対象の腫瘍細胞もしくは組織中に存在するが、対象の対応する正常細胞もしくは組織中には存在しない抗原、または正常細胞もしくは組織と比較して腫瘍細胞もしくはがん性組織中で発現が変化していることが知られているかまたは見出されているポリペプチドに由来する抗原である。
【0139】
本明細書において使用するところの「抗原ベースワクチン」という用語は、1つ以上の抗原、例えば複数の抗原に基づいたワクチン組成物のことである。ワクチンは、ヌクレオチドベース(例えば、ウイルスベース、RNAベース、またはDNAベース)、タンパク質ベース(例えば、ペプチドベース)、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0140】
本明細書において使用するところの「候補抗原」という用語は、抗原を表しうる配列を生じる変異または他の異常のことである。
【0141】
本明細書において使用するところの「コード領域」という用語は、タンパク質をコードする遺伝子の部分(複数可)のことである。
【0142】
本明細書において使用するところの「コード変異」という用語は、コード領域で生じる変異のことである。
【0143】
本明細書において使用するところの「ORF」という用語は、オープンリーディングフレームを意味する。
【0144】
本明細書において使用するところの「新生ORF」なる用語は、変異またはスプライシングなどの他の異常により生じる腫瘍特異的なORFのことである。
【0145】
本明細書において使用するところの「ミスセンス変異」という用語は、1つのアミノ酸から別のアミノ酸への置換を引き起こす変異である。
【0146】
本明細書において使用される場合、「ナンセンス変異」という用語は、アミノ酸から終止コドンへの置換を引き起こすか、またはカノニカル開始コドンの除去を引き起こす変異である。
【0147】
本明細書において使用される場合、「フレームシフト変異」という用語は、タンパク質のフレームに変更を引き起こす変異である。
【0148】
本明細書において使用される場合、「インデル」という用語は、1つ以上の核酸の挿入または欠失である。
【0149】
本明細書において使用される場合、2つ以上の核酸またはポリペプチドの配列との関連での「同一率」(%)という用語は、下記の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN、または当業者が利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを用いて、または目視検査により測定される、最大の一致について比較し、整列させた場合に、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の比率(%)が同じである2つ以上の配列または部分配列のことを指す。用途に応じて、「同一率」(%)は、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在するか、あるいは、比較される2つの配列の完全長にわたって存在することができる。
【0150】
配列比較では、一般的に、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一率(%)を算出する。あるいは、配列の類似性または相違性は、選択された配列位置(例えば、配列モチーフ)における特定のヌクレオチドの、または翻訳後の配列ではアミノ酸の有無の組み合わせによって確立することもできる。
【0151】
比較を行うための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性の探索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ処理による実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、または目視検査によって実施することができる(一般的には、下記のAusubel et al.を参照)。
【0152】
配列同一率(%)及び配列類似率(%)を決定するのに適したアルゴリズムの1つの例として、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されるBLASTアルゴリズムがある。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公に入手可能である。
【0153】
本明細書において使用される場合、「ノンストップまたはリードスルー」という用語は、天然の終止コドンの除去を引き起こす変異のことである。
【0154】
本明細書において使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体またはT細胞受容体が一般的に結合する、抗原の特異的な部分のことである。
【0155】
本明細書において使用される場合、「免疫原性」という用語は、例えば、T細胞、B細胞、またはその両方を介して免疫応答を刺激する能力のことである。
【0156】
本明細書において使用される場合、「HLA結合親和性」、「MHC結合親和性」という用語は、特異的な抗原と特異的なHLAまたはMHCアレルとの結合の親和性を意味する。
【0157】
本明細書において使用される場合、「ベイト」という用語は、DNAまたはRNAの特定の配列を試料から濃縮するために使用される核酸プローブのことである。
【0158】
本明細書において使用される場合、「変異」という用語は、対象の核酸と、対照として使用される参照ヒトゲノムとの差である。
【0159】
本明細書において使用される場合、「変異コール」という用語は、典型的にはシークエンシングからの、変異の存在のアルゴリズム的決定である。
【0160】
本明細書において使用される場合、「多型」という用語は、生殖細胞系列変異、すなわち、個体のすべてのDNA保有細胞において見出される変異である。
【0161】
本明細書において使用される場合、「体細胞変異」という用語は、個体の非生殖系列細胞において生じる変異である。
【0162】
本明細書において使用される場合、「アレル」という用語は、遺伝子の1つのバージョンまたは遺伝子配列の1つのバージョンまたはタンパク質の1つのバージョンのことである。
【0163】
本明細書において使用される場合、「HLA型」という用語は、HLA遺伝子アレルの相補体のことである。
【0164】
本明細書において使用される場合、「ナンセンス変異依存分解機構」または「NMD」という用語は、未成熟な終止コドンに起因する細胞によるmRNAの分解のことである。
【0165】
本明細書において使用される場合、「トランカル変異(truncal mutation)」という用語は、腫瘍の発生の初期に生じ、腫瘍の細胞の大部分に存在する変異である。
【0166】
本明細書において使用される場合、「サブクローナル変異」という用語は、腫瘍の発生において後期に生じ、腫瘍の細胞の一部のみに存在する変異である。
【0167】
本明細書において使用される場合、「エクソーム」という用語は、タンパク質をコードするゲノムのサブセットである。エクソームは、ゲノムの集合的なエクソンでありうる。
【0168】
本明細書において使用される場合、「ロジスティック回帰」という用語は、従属変数が1に等しい確率のロジットが従属変数の線形関数としてモデル化される、統計からのバイナリデータ用の回帰モデルである。
【0169】
本明細書において使用される場合、「ニューラルネットワーク」という用語は、多層の線形変換に続いて一般的に確率的勾配降下法及び逆伝搬により訓練された要素ごとの非線形変換を行うことからなる分類または回帰のための機械学習モデルである。
【0170】
本明細書において使用される場合、「プロテオーム」という用語は、細胞、細胞の群、または個体によって発現される、及び/または翻訳されるすべてのタンパク質のセットのことである。
【0171】
本明細書において使用される場合、「ペプチドーム」という用語は、細胞表面上のMHC-IまたはMHC-IIによって提示されるすべてのペプチドのセットのことである。ペプチドームは、細胞または細胞の集合の性質を指す場合もある(例えば、腫瘍ペプチドームは、腫瘍を構成するすべての細胞のペプチドームの集合を意味し、感染症ペプチドームは、感染症に感染したすべての細胞のペプチドームの集合を意味する)。
【0172】
本明細書において使用される場合、「ELISPOT」という用語は、ヒト及び動物において免疫応答を観察するための一般的な方法である、酵素結合免疫吸着スポットアッセイを意味する。
【0173】
本明細書において使用される場合、「デキサトラマー」という用語は、フローサイトメトリーにおいて抗原特異的T細胞染色に使用される、デキストランベースのペプチド-MHCマルチマーである。
【0174】
本明細書において使用される場合、「寛容または免疫寛容」という用語は、1つ以上の抗原、例えば、自己抗原に対する免疫不応答の状態のことである。
【0175】
本明細書において使用される場合、「中枢性寛容」という用語は、自己反応性T細胞クローンを欠失させること、または自己反応性T細胞クローンの免疫抑制性制御性T細胞(Treg)への分化を促進することのいずれかにより、胸腺において与えられる寛容である。
【0176】
本明細書において使用される場合、「末梢性寛容」という用語は、中枢性寛容を生き延びた自己反応性T細胞を下方制御もしくはアネルギー化すること、またはこれらのT細胞のTregへの分化を促進することにより、末梢系において与えられる寛容である。
【0177】
「試料」という用語は、静脈穿刺、排泄、射精、マッサージ、生検、針吸引、洗浄試料、擦過、外科的切開、もしくは介入、または当技術分野において公知の他の手段を含む手段によって対象から採取された、単一細胞、または複数の細胞、または細胞の断片、または体液のアリコートを含むことができる。
【0178】
「対象」という用語は、インビボ、エクスビボ、またはインビトロ、雄または雌のいずれかの、細胞、組織、または生物体、ヒトまたは非ヒトを包含する。対象という用語は、ヒトを含む哺乳動物を含める。
【0179】
「哺乳動物」という用語は、ヒト及び非ヒトの両方を包含し、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ、及びブタを含むが、それらに限定されない。
【0180】
「臨床的因子」という用語は、対象の状態、例えば、疾患の活性または重症度の測定を指す。「臨床的因子」は、非試料マーカーを含む、対象の健康状態のすべてのマーカー、ならびに/または、非限定的に年齢及び性別などの、対象の他の特徴を包含する。臨床的因子は、対象または所定の条件下の対象由来の試料(または試料の集団)の評定から取得され得るスコア、値、または値のセットであることができる。臨床的因子はまた、マーカー、及び/または遺伝子発現代替物などの他のパラメータによっても予測することができる。臨床的因子は、腫瘍のタイプ、腫瘍のサブタイプ、感染のタイプ、感染のサブタイプ、及び喫煙歴を含むことができる。
【0181】
「腫瘍由来の抗原コード核酸配列」とは、例えばRT-PCRによって腫瘍から得られた核酸配列、または、腫瘍をシークエンシングした後、例えば当該技術分野では周知の様々な合成法もしくはPCRに基づく方法によりシークエンシングデータを利用して核酸配列を合成することによって得られた配列データのことを指す。
【0182】
「感染由来の抗原コード核酸配列」とは、例えばRT-PCRによって感染細胞または感染症生物から得られた核酸配列、または、感染細胞または感染症生物をシークエンシングした後、例えば当該技術分野では周知の様々な合成法もしくはPCRに基づく方法によりシークエンシングデータを利用して核酸配列を合成することによって得られた配列データのことを指す。得られる配列は、対応する天然の感染症生物の核酸配列と同じポリペプチド配列をコードする、配列最適化された核酸配列バリアント(例えば、コドン最適化及び/または他の形で発現が最適化された)などの核酸配列バリアントを含み得る。得られる配列は、天然の感染症生物のポリペプチド配列に対して1つ以上の(例えば、1、2、3、4、または5個の)変異を有する、改変された感染症生物のペプチド配列をコードする核酸配列バリアントを含み得る。例えば、改変されたポリペプチド配列は、感染症生物のタンパク質の天然ポリペプチド配列に対して1つ以上のミスセンス変異を有することができる。
【0183】
「アルファウイルス」という用語は、トガウイルス科のメンバーのことを指し、一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。アルファウイルスは、一般的に、シンドビス、ロスリバー、マヤロ、チクングニア、及びセムリキ森林ウイルスなどの旧世界型、または、東部ウマ脳炎ウイルス、アウラ、フォートモルガン、もしくはベネズエラウマ脳炎ウイルス及びその誘導株TC-83などの新世界型に分類される。アルファウイルスは一般的には自己複製RNAウイルスである。
【0184】
「アルファウイルス骨格」という用語は、ウイルスゲノムの自己複製を可能とするアルファウイルスの最小配列(複数可)のことを指す。最小配列としては、非構造タンパク質媒介増幅用の保存配列、非構造タンパク質1(nsP1)遺伝子、nsP2遺伝子、nsP3遺伝子、nsP4遺伝子、及びポリA配列、ならびに、サブゲノミック因子をはじめとするサブゲノミックウイルスRNAの発現用の配列を挙げることができる。
【0185】
「非構造タンパク質媒介増幅用の保存配列」という用語には、当該技術分野では周知のアルファウイルス保存配列因子(CSE)が含まれる。CSEとしては、これらに限定されるものではないが、アルファウイルス5’UTR、51-nt CSE、24-nt CSE、サブゲノミックプロモーター配列(例えば、他の26Sサブゲノミックプロモーター配列)、19-nt CSE、及びアルファウイルス3’UTRが挙げられる。
【0186】
「RNAポリメラーゼ」という用語には、DNA鋳型からのRNAポリヌクレオチドの生成を触媒するポリメラーゼが含まれる。RNAポリメラーゼとしては、これらに限定されるものではないが、T3、T7、及びSP6を含むバクテリオファージ由来ポリメラーゼが挙げられる。
【0187】
「脂質」という用語には、疎水性及び/または両親媒性分子が含まれる。脂質は、カチオン性、アニオン性、または中性であってよい。脂質は、合成または天然由来のものであってよく、特定の例では生分解性であってよい。脂質は、コレステロール、リン脂質、ポリエチレングリコール(PEG)複合体(PEG化脂質)を含む(ただしこれに限定されない)脂質複合体、ワックス、油類、グリセリド、脂肪、及び脂溶性ビタミンを含みうる。脂質には、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(MC3)及びMC3様分子も含まれうる。
【0188】
「脂質ナノ粒子」または「LNP」という用語には、リポソームとも呼ばれる、水性の内部を包囲する脂質含有膜を用いて形成された小胞様構造が含まれる。脂質ナノ粒子は、界面活性剤により安定化された固体脂質コアを有する脂質ベースの組成物を含む。コア脂質は、脂肪酸、アシルグリセロール、ワックス、及びこれらの界面活性剤の混合物であってよい。リン脂質、スフィンゴミエリン、胆汁酸(タウロコール酸)、及びステロール類(コレステロール)のような生体膜脂質を安定化剤として用いることができる。脂質ナノ粒子は、1種類以上のカチオン性、アニオン性、または中性脂質の規定の比率を含む(ただし、これに限定されない)、規定の比率の異なる脂質分子を用いて形成することができる。脂質ナノ粒子は、外膜シェル内に分子を封入することができ、その後、標的細胞と接触させて封入分子を宿主細胞のサイトゾルに送達することができる。脂質ナノ粒子は、それらの表面などを非脂質分子で修飾または官能化することができる。脂質ナノ粒子は、単一層(単層)または多層(複層)とすることができる。脂質ナノ粒子は、核酸と複合体化することができる。単層脂質ナノ粒子を核酸と複合体化することができ、その場合、核酸は水性の内部となる。複層脂質ナノ粒子を核酸と複合体化することができ、その場合、核酸は水性の内部となるか、またはその間を形成するかまたはその間に挟まれる。
【0189】
略語:MHC:主要組織適合性複合体;HLA:ヒト白血球抗原、またはヒトMHC遺伝子座;NGS:次世代シークエンシング;PPV:陽性適中率;TSNA:腫瘍特異的新生抗原;FFPE:ホルマリン固定パラフィン包埋;NMD:ナンセンス変異依存分解機構;NSCLC:非小細胞肺がん;DC:樹状細胞。
【0190】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈によってそうでない旨が明示されない限り、複数の指示物を含む点に留意されたい。
【0191】
特に断らない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される「約」という用語は、例えば、平均から標準偏差2つ分以内など、当該技術分野における公称公差の範囲内にあるものとして理解される。「約」は、記載される値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内として理解することができる。文脈から明らかでない限り、本明細書に示される全ての数値は「約」という語によって修飾されている。
【0192】
本明細書において直接定義されていない用語は、本発明の技術分野の範囲内で理解されるような、一般的にそれらに付随する意味を有するものとして理解されるべきである。本発明の態様の組成物、装置、方法など、ならびにそれらの製造または使用法を説明するうえで実施者にさらなる手引きを与える目的で特定の用語が本明細書で検討される。同じものについて複数の言い方がなされうる点は認識されるであろう。したがって、代替的な語及び同義語が、本明細書で検討される用語の任意の1つ以上について用いられる場合がある。本明細書においてある用語が詳述または検討されているか否かに重きが置かれるべきではない。いくつかの同義語または代用可能な方法、材料などが提供される。1つまたは数個の同義語または均等物の記載は、明確に述べられない限り、他の同義語または均等物の使用を除外しない。用語の例を含む例の使用は、あくまで説明を目的としたものにすぎず、本明細書における発明の態様の範囲及び意味を限定しない。
【0193】
本明細書の本文において引用されるすべての参照文献、発行特許、及び特許出願は、あらゆる目的でそれらの全容を参照により本明細書に援用するものである。
【0194】
II.抗原の特定
腫瘍の及び正常なエクソーム及びトランスクリプトームのNGS解析の研究モデルについては、これまでに記載されており、抗原特定空間で適用される。6,14,15臨床状況における抗原特定の感度及び特異性を高めるための特定の最適化を考慮することができる。これらの最適化は、実験室プロセスに関連するものと、NGSデータ解析に関連するものの2つの領域に分類することができる。記載される研究法は、感染症生物、対象の感染症、または対象の感染細胞からの特定など、他の状況での抗原の特定にも適用することができる。最適化の例は当業者には周知のものであり、例えば、そのような方法が、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容をそれぞれ援用する米国特許第10,055,540号、米国特許出願公開第US20200010849A1号、米国特許出願第16/606,577号、ならびに国際特許出願公開第WO2020181240A1号、同第WO/2018/195357号、及び同第WO/2018/208856号により詳細に記載されている。
【0195】
抗原(例えば、腫瘍または感染症生物に由来する抗原)を特定するための方法は、細胞表面上に提示される(例えば、腫瘍細胞、感染細胞、または、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞を含む免疫細胞上のMHCにより提示される)可能性が高い、及び/または免疫原性を有する可能性が高い抗原を特定することを含む。例として、かかる方法の1つは、腫瘍、感染細胞または感染症生物からエクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムのヌクレオチドシークエンシング及び/または発現データのうちの少なくとも1つを取得する工程であって、前記ヌクレオチドシークエンシングデータ及び/または発現データを用いて抗原(例えば、腫瘍または感染症生物に由来する抗原)のセットのそれぞれのペプチド配列を表すデータが得られる、前記工程と、各抗原のペプチド配列を1つ以上の提示モデルに入力して抗原のそれぞれが、対象の腫瘍細胞または感染細胞などの細胞表面の1つ以上のMHCアレルによって提示される数値的尤度のセットを生成する工程であって、前記数値的尤度のセットが、受け取られた質量分析データに少なくとも基づいて特定されたものである、前記工程と、前記数値的尤度のセットに基づいて抗原のセットのサブセットを選択して、選択された抗原のセットを生成する工程と、を含む。
【0196】
III.新生抗原の腫瘍特異的変異の特定
本明細書では、特定の変異(例えば、がん細胞に存在するバリアントまたはアレル)を特定するための方法も開示する。詳細には、これらの変異は、がんを有する対象のがん細胞のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、またはエクソーム内に存在し得るが、対象からの正常組織には存在しない。腫瘍に特異的な共有新生抗原を含む新生抗原を特定するための具体的な方法は当業者には周知のものであり、これらの方法は例えば、あらゆる目的で本明細書に参照によりそれらの全容をそれぞれ援用する米国特許第10,055,540号、米国特許出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号、及び同第WO/2018/208856号により詳細に記載されている。
【0197】
腫瘍の遺伝子変異は、こうした変異が、腫瘍においてのみタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらす場合に腫瘍の免疫学的ターゲティングに有用と考えられる。有用な変異としては、(1)タンパク質内に異なるアミノ酸を生じる非同義変異、(2)C末端に新規な腫瘍特異的配列を有するより長いタンパク質を生じる、終止コドンが改変または欠失されたリードスルー変異、(3)成熟mRNAへのイントロンの導入、それによる固有の腫瘍特異的タンパク質配列を生じるスプライス部位変異、(4)2個のタンパク質の接合部に腫瘍特異的配列を有するキメラタンパク質を生じる染色体再編成(すなわち、遺伝子融合)、(5)新規な腫瘍特異的タンパク質配列を有する新たなオープンリーディングフレームを生じるフレームシフト変異または欠失が挙げられる。変異には、非フレームシフトインデル、ミスセンスまたはナンセンス置換、スプライス部位変化、ゲノム再編成もしくは遺伝子融合、または新生ORFを生じる任意のゲノムもしくは発現変化も含まれる。
【0198】
例えば、腫瘍細胞のスプライス部位、フレームシフト、リードスルー、または遺伝子融合変異から生じる変異を有するペプチドまたは変位ポリペプチドは、正常細胞に対して腫瘍のDNA、RNA、またはタンパク質をシークエンシングすることにより特定することができる。
【0199】
また、変異は、以前に特定されている腫瘍特異的変異も含み得る。既知の腫瘍変異は、COSMIC(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)データベースでみつけることができる。
【0200】
個人のDNAまたはRNAの特定の変異またはアレルの存在を検出するための各種の方法が利用可能である。この分野における進歩によって、正確、容易で、安価な大規模SNP遺伝子型判定が可能となっている。例えば、動的アレル特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイダイアゴナルゲル電気泳動(MADGE)、パイロシークエンシング、オリゴヌクレオチド特異的ライゲーション、TaqManシステム、ならびにAffymetrixのSNPチップのような様々なDNA「チップ」技術を含むいくつかの手法がこれまでに記載されている。これらの方法は、一般的にはPCRによる標的遺伝子領域の増幅を利用したものである。侵襲的切断による小さなシグナル分子の生成に続き、質量分析または固定化したパッドロックプローブ及びローリングサークル増幅を行うことに基づくさらに他の方法もある。特定の変異を検出するための、当該技術分野では周知の方法のいくつかを下記に要約する。
【0201】
PCRベースの検出手段は、複数のマーカーの同時の多重増幅を含むことができる。例えば、サイズがオーバーラップせず、同時に解析することができるPCR産物を生成するようにPCRプライマーを選択することは、当該技術分野では周知である。あるいは、差次的に標識され、したがって、それぞれを差次的に検出することができるプライマーで異なるマーカーを増幅することも可能である。ハイブリダイゼーションベースの検出手段によれば、試料中の複数のPCR産物の差次的な検出が可能になる点は言うまでも無い。複数のマーカーの多重分析を可能とする他の手法も当該技術分野で知られている。
【0202】
ゲノムDNAまたは細胞RNAの単一ヌクレオチド多型の分析を容易にするためのいくつかの方法が開発されている。例えば、一塩基多型は、例えば、Mundy,C.R.(米国特許第4,656,127号)において開示されるような、特殊なエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドを用いることによって検出することができる。この方法によれば、多型部位のすぐ3’側のアレル配列と相補的なプライマーを、特定の動物またはヒトから得られた標的分子にハイブリダイズさせる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド誘導体と相補的であるヌクレオチドを含んでいる場合、その誘導体は、ハイブリダイズしたプライマーの末端に組み込まれる。このような組み込みにより、プライマーはエキソヌクレアーゼに対して抵抗性となるため、その検出が可能となる。試料のエキソヌクレアーゼ抵抗性誘導体の種類は分かっているため、プライマーがエキソヌクレアーゼに対して抵抗性になったという事実によって、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチド(複数可)が、反応に用いられたヌクレオチド誘導体のヌクレオチドと相補的であることが示される。この方法は、大量の外来性配列データの決定を必要としないという利点を有する。
【0203】
多型部位のヌクレオチドの種類を決定するために、溶液ベースの方法を使用することができる(Cohen,D.et al.(フランス国特許第2,650,840号;PCT出願第WO91/02087号)。米国特許第4,656,127号のMundyの方法におけるように、多型部位のすぐ3’側のアレル配列に対して相補的であるプライマーが使用される。この方法は、多型部位のヌクレオチドに対して相補的である場合にプライマーの末端に組み込まれる標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用してその部位のヌクレオチドの種類を決定するものである。
【0204】
遺伝子ビット分析(Genetic Bit Analysis)またはGBAとして知られる代替的な方法が、Goelet,P.et al.(PCT出願第92/15712号)により記載されている。Goelet,P.et al.の方法では、標識ターミネーターと、多型部位の3’側の配列に対して相補的であるプライマーとの混合物を使用する。したがって、組み込まれた標識ターミネーターは、評価される標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドによって決定され、これらのヌクレオチドと相補的である。Cohen et al.(フランス国特許第2,650,840号;PCT出願第WO91/02087号)の方法に対して、Goelet,P.et al.の方法は、プライマーまたは標的分子が固相に固定化される、不均一相アッセイとすることができる。
【0205】
DNA内の多型部位をアッセイするためのいくつかのプライマーガイドヌクレオチド取り込み法がこれまでに記載されている(Komher,J.S.et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779-7784(1989);Sokolov,B.P.,Nucl.Acids Res.18:3671(1990);Syvanen,A.-C.,et al.,Genomics 8:684-692(1990);Kuppuswamy,M.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.) 88:1143-1147(1991);Prezant,T.R.et al.,Hum.Mutat.1:159-164(1992);Ugozzoli,L.et al.,GATA 9:107-112(1992);Nyren,P.et al.,Anal.Biochem.208:171-175(1993))。これらの方法は、多型部位の塩基間で区別するために標識デオキシヌクレオチドの組み込みを用いている点でGBAとは異なる。かかるフォーマットでは、シグナルが組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するため、同じヌクレオチドの複数のランに生じる多型は、ランの長さに比例したシグナルを生じ得る(Syvanen,A.C.,et al.,Amer.J.Hum.Genet.52:46-59(1993))。
【0206】
多くの手法が、DNAまたはRNAの数百万の個別の分子から並行して直接配列情報を得ている。逐次合成によるリアルタイムな単一分子シークエンシング(Real-time single molecule sequencing-by-synthesis)技術は、シークエンシングされる鋳型に相補的なDNAの新生鎖に蛍光ヌクレオチドが取り込まれることから蛍光ヌクレオチドの検出に基づいている。1つの方法では、30~50塩基の長さのオリゴヌクレオチドの5’末端がカバーグラスに共有結合によって固定される。これらの固定された鎖は2つの機能を果たす。第1に、これらの固定された鎖は、鋳型鎖が、表面に結合されたオリゴヌクレオチドに相補的な捕捉テールを有するように構成されている場合に標的鋳型鎖の捕捉鎖として機能する。これらは、配列読取りの基礎をなす鋳型誘導プライマー伸長のプライマーとしても機能する。捕捉プライマーは、色素リンカーの合成、検出、及び色素を除去するための化学的切断の複数のサイクルを用いた配列決定における固定位置部位として機能する。各サイクルは、ポリメラーゼ/標識ヌクレオチド混合物の添加、色素の洗浄、イメージング、及び切断を行う。別の方法では、ポリメラーゼを蛍光ドナー分子で修飾してカバーグラス上に固定する一方で、各ヌクレオチドを、γ位リン酸に結合されたアクセプター蛍光部分で色コード化する。このシステムは、蛍光標識されたポリメラーゼと蛍光修飾されたヌクレオチドとの相互作用を、ヌクレオチドが新生鎖に取り込まれる際に検出する。他の逐次合成によるシークエンシング技術も存在する。
【0207】
任意の適当な逐次合成によるシークエンシングプラットフォームを用いて変異を特定することができる。上記に述べたように、Roche/454 Life Sciencesより提供されるGenome Sequencer、Illumina/Solexaより提供される1G Analyzer、Applied BioSystemsより提供されるSOLiDシステム、及びHelicos Biosciencesより提供されるHeliscopeシステムの4つの主要な逐次合成によるシークエンシングプラットフォームが現在、利用可能である。逐次合成によるシークエンシングのプラットフォームは、Pacific BioSciences及びVisiGen Biotechnologiesによっても記載されている。いくつかの実施形態では、シークエンシングする複数の核酸分子を支持体(固体支持体)に結合させる。核酸を支持体上に固定するため、捕捉配列/ユニバーサルプライミング部位を鋳型の3’及び/または5’末端に付加することができる。核酸は、支持体に共有結合により結合させた相補的配列に捕捉配列をハイブリダイズさせることによって支持体に結合させることができる。捕捉配列(ユニバーサル捕捉配列とも呼ばれる)は、ユニバーサルプライマーとして二重に機能することができる、支持体に結合された配列に相補的な核酸配列である。
【0208】
捕捉配列に代わるものとして、カップリングペア(例えば、米国特許出願第2006/0252077号に記載されるような、抗体/抗原、受容体/リガンド、またはアビジン/ビオチンのペア)のメンバーを、そのカップリングペアの対応する第2のメンバーでコーティングした表面上に捕捉させようとする各フラグメントと結合させることができる。
【0209】
捕捉後、配列を例えば、鋳型依存型の逐次合成によるシークエンシングを含む、実施例及び/または米国特許第7,283,337号に記載されるような単一分子検出/シークエンシングによって分析することができる。逐次合成によるシークエンシングでは、表面に結合させた分子を、ポリメラーゼの存在下で複数の標識ヌクレオチド三リン酸に曝露する。鋳型の配列は、成長する鎖の3’末端に取り込まれた標識ヌクレオチドの順序によって決定される。これは、リアルタイムで行うことができ、また、ステップ・アンド・リピートモードで行うことができる。リアルタイム分析では、各ヌクレオチドに対する異なる光学標識を取り込ませ、複数のレーザーを取り込まれたヌクレオチドの刺激に用いることができる。
【0210】
シークエンシングは、大規模並行シークエンシングまたは次世代シークエンシング(NGS)技術及びプラットフォームを含んでもよい。大規模並行シークエンシング及びプラットフォームのさらなる例としては、Illumina HiSeqまたはMiSeq、Thermo PGMまたはProton、Pac Bio RS IIまたはSequel、QiagenのGene Reader、及びOxford Nanopore MinIONがある。さらなる同様の現在の大規模並行シークエンシング技術、ならびにこれらの技術の将来的世代のものを用いることができる。
【0211】
任意の細胞タイプまたは組織を用いて本明細書に記載される方法で使用するための核酸試料を得ることができる。例えば、DNAまたはRNA試料は、腫瘍または既知の方法(例えば、静脈穿刺)によって得られた血液もしくは唾液などの体液から得ることができる。あるいは、乾燥試料(例えば、毛髪または皮膚)で核酸試験を行ってもよい。さらに、シークエンシング用の試料を腫瘍から得ることができ、その腫瘍と同じ組織タイプの正常組織から別の試料をシークエンシング用に得ることもできる。シークエンシング用の試料を腫瘍から得ることができ、その腫瘍とは異なる組織タイプの正常組織から別の試料をシークエンシング用に得ることもできる。
【0212】
腫瘍は、肺がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、及びT細胞リンパ球性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんのうちの1つ以上のものを含むことができる。
【0213】
あるいは、タンパク質質量分析を用いて、腫瘍細胞上のMHCタンパク質に結合した変異ペプチドの存在を特定または検証することもできる。ペプチドは、腫瘍細胞から、または腫瘍から免疫沈降したHLA分子から酸溶出し、その後、質量分析を用いて特定することができる。
【0214】
IV.抗原
抗原は、ヌクレオチドまたはポリペプチドを含みうる。例えば、抗原は、ポリペプチド配列をコードするRNA配列であってよい。したがって、ワクチンにおいて有用な抗原には、ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列が含まれる。
【0215】
本明細書では、本明細書に開示される方法によって特定された腫瘍特異的変異を含む単離されたペプチド、既知の腫瘍特異的変異を含むペプチド、及び本明細書に開示される方法によって特定された変異体ポリペプチドまたはそのフラグメントが開示される。新生抗原ペプチドはそれらのコード配列に関して記述することができ、新生抗原は関連するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)を含む。
【0216】
本明細書はまた、正常細胞または組織と比較して腫瘍細胞またはがん性組織中で発現が変化していることが知られているかまたは見出されている任意のポリペプチド、例えば、正常細胞または組織と比較して腫瘍細胞またはがん性組織中で異常に発現することが知られているかまたは見出されている任意のポリペプチドに由来するペプチドも開示する。抗原性ペプチドが由来しうる適当なポリペプチドは、例えば、COSMICデータベースに見出すことができる。COSMICは、ヒトのがんにおける体細胞変異に関する包括的な情報をキュレートしたものである。ペプチドは、腫瘍特異的変異を含む。腫瘍抗原(例えば、共有された腫瘍抗原及び腫瘍新生抗原)としては、これらに限定されるものではないが、あらゆる目的で本明細書に参照により援用する米国特許出願第17/058,128号に記載されるものが挙げられる。
【0217】
本明細書では、感染症生物、対象の感染症、または対象の感染細胞に関連する任意のポリヌクレオチドに由来するペプチドも開示される。抗原は、感染症生物のヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に由来するものであってよい。感染症生物のポリペプチド配列としては、これらに限定されるものではないが、病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び/または寄生虫由来ペプチドが挙げられる。感染症生物としては、これらに限定されるものではないが、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラ、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、デングウイルス、オルトミクソウイルス科ウイルス、及び結核が挙げられる。
【0218】
本明細書では、本明細書に開示される方法によって特定された感染症生物特異的抗原またはエピトープを含む単離されたペプチド、既知の感染症生物特異的抗原またはエピトープを含むペプチド、及び本明細書に開示される方法によって特定された変異体ポリペプチドまたはそのフラグメントが開示される。抗原ペプチドはそれらのコード配列に関して記述することができ、抗原は関連するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)を含む。
【0219】
本明細書に記載されるベクター及び関連する組成物を使用して、それらの毒素または他の副産物を含む任意の生物由来の抗原を送達して感染症またはその生物またはその副産物に関連する他の有害反応を予防及び/または治療することができる。
【0220】
ワクチンに組み込む(例えば、カセットにコードする)ことができる抗原には、ヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する病原性ウイルスなどのウイルスに対してヒトまたは非ヒト動物を免疫化するうえで有用な免疫原が含まれる。抗原は様々なウイルス科から選択することができる。それに対する免疫応答が望ましい所望のウイルス科の例としては、一般的な風邪の症例の約50%の原因であるライノウイルス属;ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びA型肝炎ウイルスなどのヒトエンテロウイルスを含むエンテロウイルス属;ならびに、主に非ヒト動物における手足口病の原因であるアフトウイルス属を含むピコルナウイルス科が挙げられる。ピコルナウイルス科のウイルスの中では、標的抗原として、VP1、VP2、VP3、VP4、及びVPGが挙げられる。別のウイルス科としてカリシウイルス科が挙げられ、流行胃腸炎の重要な病原体であるノーウォークウイルス群を含む。ヒト及び非ヒト動物に免疫応答を刺激するために抗原を標的化するうえでの使用に望ましいさらに別のウイルス科としてトガウイルス科があり、アルファウイルス属を含み、アルファウイルス属には、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、ならびにベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎及び西部ウマ脳炎ウイルス、ならびに風疹ウイルスを含むルビウイルスが含まれる。フラビウイルス科は、デング熱、黄熱、日本脳炎、セントルイス脳炎及びダニ媒介性脳炎ウイルスを含む。他の標的抗原がC型肝炎及びコロナウイルス科から生成されうるが、これらのウイルスには、多くの非ヒトウイルス、例えば、伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ血球凝集脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)、及びヒト呼吸器コロナウイルスが含まれ、これらは風邪及び/又は非A、B又はC型肝炎を引き起こすことがある。コロナウイルス科内では、標的抗原には、E1(M又はマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(S又はスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HE又はヘマグルチン-エルテロースとも呼ばれる)糖タンパク質(すべてのコロナウイルスに存在するわけではない)またはN(ヌクレオキャプシド)が含まれる。さらに他の抗原をラブドウイルス科に対して標的化することができるが、ラブドウイルス科にはベシキュロウイルス属(例えば、水泡性口内炎ウイルス)及び狂犬病ウイルス属(例えば、狂犬病)が含まれる。ラブドウイルス科内では、適当な抗原はGタンパク質又はNタンパク質由来のものとすることができる。マールブルグウイルス及びエボラウイルスなどの出血熱ウイルスを包含するフィロウイルス科は適当な抗原のソースとなりうる。パラミクソウイルス科には、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(ムンプスウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、モルビリウイルス(はしか及びイヌジステンバーを包含する)、及び呼吸合胞体ウイルスを含むニューモウイルスが含まれる(他、糖(G)タンパク質及び融合(F)タンパク質、これらの配列はGenBankより入手可能である)。インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科内に分類され、適当な抗原(例えば、HAタンパク質、N1タンパク質)のソースとなりうる。ブンヤウイルス科は、ブンヤウイルス属、(カリフォルニア脳炎、ラ・クロッス)、フレボウイルス(リフトバレー熱)、ハンタウイルス(プレマラ(puremala)はヘマハギン熱ウイルスである)、ナイロウイルス(ナイロビヒツジ病)及び種々の非指定ブンヤウイルスを含む。アレナウイルス科はLCM及びラッサ熱ウイルスに対する抗原のソースを与える。レオウイルス科は、レオウイルス属、ロタウイルス属(子供の急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス属及びカルチウイルス属(コロラドダニ熱、レボンボ(Lebombo)(ヒト)、ウマ脳炎、ブルータング)を含む。レトロウイルス科は、ネコ白血病ウイルス、HTLVI及びHTLVIIのようなヒト及び獣医学的疾患を包含するオンコウイルス亜科、レンチウイルス亜科(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス及びスプマウイルス亜科を含む)を含む。レンチウイルス間では、多くの適当な抗原が記載されており、容易に選択することができる。適当なHIV及びSIV抗原の例としては、これらに限定されるものではないが、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、Nef、及びRevタンパク質、ならびにそれらの種々の断片が挙げられる。例えば、Envタンパク質の適当な断片には、gp120、gp160、gp41などのそのサブユニットのいずれか、または例えば少なくともアミノ酸約8個の長さのそれらのより小さい断片が含まれ得る。同様に、tatタンパク質の断片も選択することができる[米国特許第5,891,994号及び米国特許第6,193,981号を参照]。D.H.Barouch et al,J.Virol.,75(5):2462-2467(March 2001)、及びR.R.Amara,et al,Science,292:69-74(6 Apr.2001)に記載されるHIV及びSIVタンパク質についても参照されたい。別の例では、HIV及び/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドを用いて、融合タンパク質または他の免疫原性分子を形成することができる。例えば、2001年8月2日公開のWO01/54719及び1999年4月8日公開のWO99/16884に記載されるHIV-1 Tat及び/またはNef融合タンパク質及び免疫化のレジメンを参照されたい。本発明は、本明細書に記載されるHIV及び/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドに限定されない。さらに、これらのタンパク質に対する様々な改変がこれまでに記載されているか、または当業者によって容易に行うことができる。例えば、米国特許第5,972,596号に記載される改変gagタンパク質を参照されたい。さらに、あらゆる所望のHIV及び/またはSIV免疫原を単独でまたは組み合わせて投与することができる。かかる組み合わせには、単一のベクターからの、または複数のベクターからの発現が含まれ得る。パポバウイルス科はポリオーマウイルス亜科(BKU及びJCUウイルス)及びパピローマウイルス亜科(がんまたは乳頭腫の悪性進行に関連する)を含む。アデノウイルス科は呼吸疾患及び/又は腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を含む。パルボウイルス科は、ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルス及びブタパルボウイルスを含む。ヘルペスウイルス科は、シンプレックスウイルス属(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス(仮性狂犬病、水痘帯状疱疹)を含むアルファヘルペスウイルス亜科及び、サイトメガロウイルス属(ヒトCMV、ムロメガロウイルス)を含むベータヘルペスウイルス亜科、ならびに、リンフォクリプトウイルス属、EBV(バーキットリンパ腫)、伝染性鼻気管炎、マレック病ウイルス及びラジノウイルスを包含するガンマヘルペスウイルス亜科を含む。ポックスウイルス科は、オルソポックスウイルス属(痘瘡(天然痘)及びワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、ウサギポックスウイルス、スイポックスウイルスを包含する脊椎動物ポックスウイルス亜科、及び昆虫ポックスウイルス亜科を含む。ヘパドナウイルス科はB型肝炎ウイルスを含む。抗原の適切なソースとなりうる未分類のウイルスの1つに、デルタ型肝炎ウイルスがある。さらに他のウイルス源としては、ニワトリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス及びブタ呼吸繁殖障害症候群ウイルスが含まれうる。アルファウイルス科はウマ動脈炎ウイルス及び種々の脳炎ウイルスを含む。
【0221】
ワクチンに組み込む(例えば、カセットにコードする)ことができる抗原には、ヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する細菌、真菌、寄生性微生物または多細胞寄生生物を含む病原体に対してヒトまたは非ヒト動物を免疫化するうえで有用な免疫原も含まれる。細菌病原体の例としては、肺炎球菌、ブドウ球菌、及び連鎖球菌を含む病原性グラム陽性球菌が挙げられる。病原性グラム陰性球菌は髄膜炎菌、淋菌を含む。病原性腸グラム陰性桿菌は、腸内細菌科;シュードモナス、アシネトバクテリア及びエイケネラ;類鼻疽;サルモネラ;赤痢菌;ヘモフィルス(ヘモフィルス・インフルエンザエ、ヘモフィルス・ソムナス);モラクセラ;H.デュクレイ(H.ducreyi)(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ;フランシセラ・ツラレンシス(Franisella tularensis)(野兎病を引き起こす);エルシニア(パスツレラ);ストレプトバシラス・モニリフォルミス及びスピリルムを含む。グラム陽性桿菌は、リステリア・モノサイトゲネス;ブタ丹毒菌;コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;B.アントラシス(B.anthracis)(炭疽菌);ドノヴァン症(鼠径肉芽腫);及びバルトネラ症を含む。病原性嫌気性菌により引き起こされる疾患として、破傷風、ボツリヌス中毒、その他のクロストリジウム症、結核、ハンセン病及びその他のマイコバクテリアが挙げられる。具体的な細菌種の例としては、これらに限定されるものではないが、肺連レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、大便レンサ球菌(Streptococcus faecalis)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・コレレスイス(Salmonella choleraesuis)、大腸菌(Escherichia coli)、赤痢菌(Shigella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム細胞内複合体(Mycobacterium intracellularecomplex)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、破傷風菌(Clostridium tetani)、レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、ヘモリチカ菌(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)及びマイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)が挙げられる。病原性スピロヘータ疾患として、梅毒;トレポネーマ症;イチゴ腫、ピンタ及び地方病性梅毒;並びにレプトスピラ症が挙げられる。より高等な病原性細菌及び病原性真菌により引き起こされるその他の感染として、放線菌症;ノカルジア症;クリプトコッカス症(クリプトコッカス)、ブラストミセス症(ブラストミセス)、ヒストプラスマ症(ヒストプラスマ)及びコクシジオイデス症(コクシジオイデス);カンジダ症(カンジダ)、アスペルギルス症(アスペルギルス)及びムコール症;スポロトリクム症;パラコクシジオイドミコーシス、ペトリエリオジオーシス(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫及び黒色真菌症;ならびに皮膚糸状菌症が挙げられる。リケッチア感染症として、発疹チフス、ロッキー山紅斑熱、Q熱およびリケッチア痘症が挙げられる。マイコプラズマ及びクラミジア感染症の例としては、肺炎マイコプラズマ、鼠径リンパ肉芽腫症、オウム病及び周産期のクラミジア感染症が挙げられる。病原性真核生物には病原性原生動物及び蠕虫が包含され、これによる感染症としては、アメーバ症、マラリア、リーシュマニア症(例えば、大形リーシュマニアにより引き起こされる)、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症(例えば、Toxoplasma gondiiにより引き起こされる)、ニューモシスチス・カリニ、トリカンス(Trichans)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、バベシア症、ジアルジア症(例えば、Giardiaにより引き起こされる)、旋毛虫症(例えば、トリコモナスにより引き起こされる)、フィラリア症、住血吸虫症(例えば、住血吸虫により引き起こされる)、線虫、吸虫(trematode)すなわち吸虫(fluke)、及び条虫(サナダムシ)感染症が挙げられる。他の寄生虫感染症には、特に、回虫、鞭虫、クリプトスポリジウム、及びニューモシスチス・カリニにより引き起こされるものがある。
【0222】
本明細書では、感染症生物、対象の感染症、または対象の感染細胞に関連する任意のポリヌクレオチドに由来するペプチドも開示される。抗原は、感染症生物の核酸配列またはポリペプチド配列に由来するものであってよい。感染症生物のポリペプチド配列としては、これらに限定されるものではないが、病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び/または寄生虫由来ペプチドが挙げられる。感染症生物としては、これらに限定されるものではないが、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラ、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、デングウイルス、オルトミクソウイルス科ウイルス、及び結核が挙げられる。
【0223】
腫瘍細胞、感染細胞または樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞を含む免疫細胞などの細胞の細胞表面状に提示されることが予測される抗原を選択することができる。免疫原性を有することが予測される抗原を選択することができる。
【0224】
抗原ヌクレオチド配列によってコードされる1つ以上のポリペプチドは、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:1000nM未満のIC50値でのMHCとの結合親和性、MHCクラスIペプチドについてはアミノ酸8~15個、8、9、10、11、12、13、14、または15個の長さ、プロテアソーム切断を促進するペプチド内またはその近くの配列モチーフの存在、及び、TAP輸送を促進する配列モチーフの存在、MHCクラスIIのポリペプチドについてはアミノ酸6~30個、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18,19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の長さ、細胞外もしくはリソソームプロテアーゼ(例えば、カテプシン)によるペプチド促進切断部位またはHLA-DMにより触媒されるHLA結合部位内またはその近くの配列モチーフの存在。
【0225】
1つ以上の抗原が、腫瘍の表面上に存在することができる。1つ以上の抗原が感染細胞の表面上に存在することができる。
【0226】
1つ以上の抗原が、腫瘍を有する対象で免疫原性でありうる(例えば、対象のT細胞応答及び/またはB細胞応答を刺激することができる)。1つ以上の抗原が、感染症を有するか有することが疑われる対象で免疫原性でありうる(例えば、対象のT細胞応答及び/またはB細胞応答を刺激することができる)。1つ以上の抗原が、感染症のリスクがある対象で免疫原性でありうる(例えば、感染症に特異的なメモリーT細胞、メモリーB細胞、及び/または抗体の産生を刺激するなど、感染症に対する免疫学的防御(すなわち、免疫)を与える対象のT細胞応答及び/またはB細胞応答を刺激することができる)。
【0227】
1つ以上の抗原が、1つ以上の抗原を認識する抗体(例えば、感染症抗原を認識する抗体)の産生などのB細胞応答を刺激することが可能な場合がある。抗体は、直鎖状ポリペプチド配列を認識するか、または二次及び三次構造を認識することができる。したがって、B細胞の抗原としては、これらに限定されるものではないが、完全長タンパク質、タンパク質サブユニット、タンパク質ドメイン、または二次及び三次構造を有することが知られているかもしくは予測される任意のポリペプチドを含む直鎖状ポリペプチド配列または二次及び三次構造を有するポリペプチドを挙げることができる。感染に対するB細胞応答を誘発することができる抗原は、感染症生物の表面に見出される。感染に対するB細胞応答を誘発することができる抗原は、感染症生物で発現される細胞内抗原でありうる。
【0228】
1つ以上の抗原は、T細胞応答を刺激することができる抗原(例えば、予測されるT細胞エピトープ配列を含むペプチド)と、B細胞応答を刺激することができる異なる抗原(例えば、完全長タンパク質、タンパク質サブユニット、タンパク質ドメイン)との組み合わせを含むことができる。
【0229】
対象の自己免疫応答を刺激する1つ以上の抗原は、対象のためのワクチン生成との関連において考察から除外することができる。
【0230】
少なくとも1つの抗原性ペプチド分子(例えば、エピトープ配列)のサイズは、約5個、約6個、約7個、約8個、約9個、約10個、約11個、約12個、約13個、約14個、約15個、約16個、約17個、約18個、約19個、約20個、約21個、約22個、約23個、約24個、約25個、約26個、約27個、約28個、約29個、約30個、約31個、約32個、約33個、約34個、約35個、約36個、約37個、約38個、約39個、約40個、約41個、約42個、約43個、約44個、約45個、約46個、約47個、約48個、約49個、約50個、約60個、約70個、約80個、約90個、約100個、約110個、約120個、またはそれよりも多いアミノ分子残基、及びこれらの範囲から導出される任意の範囲を含むことができるが、それらに限定されない。具体的な実施形態において、抗原性ペプチド分子は、アミノ酸50個以下である。
【0231】
抗原性ペプチド及びポリペプチドは、MHCクラスIについては長さが15残基以下で、通常約8~約11残基からなり、特に9または10残基であることができ;MHCクラスIIについては、6~30残基であることができる。
【0232】
望ましい場合、より長いペプチドを、いくつかの方法で設計することができる。1つの例において、HLAアレル上のペプチドの提示可能性が予測されるかまたは公知である場合、より長いペプチドは、(1)各々の対応する遺伝子産物のN末端及びC末端に向かって2~5アミノ酸の伸長を有する個々の提示されるペプチド;(2)各々について伸長した配列を有する、提示されるペプチドのいくつかまたはすべての連鎖のいずれかからなることができる。別の場合では、シークエンシングによって腫瘍内の長い(10個よりも多い残基)ネオエピトープ配列の存在が判明した場合(例えば、新規なペプチド配列を生じるフレームシフト、リードスルー、またはイントロンの導入による)、より長いペプチドは、(3)新規な腫瘍特異的または感染症特異的アミノ酸のストレッチ全体からなる(これにより、最も強くHLA提示されるより短いペプチドを計算またはインビトロ試験選択に基づいて選択する必要がない)。いずれの場合も、より長いペプチドの使用は、患者細胞による内因性プロセシングを可能とし、より効果的な抗原提示及びT細胞応答の刺激をもたらし得る。より長いペプチドは、感染症生物で発現されるものなど、ペプチドの完全長タンパク質、タンパク質サブユニット、タンパク質ドメイン、及びそれらの組み合わせも含み得る。より長いペプチド(例えば、完全長タンパク質、タンパク質サブユニット、またはタンパク質ドメイン)及びそれらの組み合わせを、B細胞応答を刺激するために含めることができる。
【0233】
抗原性ペプチド及びポリペプチドは、HLAタンパク質上に提示されることができる。いくつかの態様において、抗原性ペプチドまたはポリペプチドは、野生型ペプチドよりも高い親和性でHLAタンパク質上に提示される。いくつかの態様において、抗原性ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも5000nM未満、少なくとも1000nM未満、少なくとも500nM未満、少なくとも250nM未満、少なくとも200nM未満、少なくとも150nM未満、少なくとも100nM未満、少なくとも50nM未満、またはそれよりも小さいIC50を有することができる。
【0234】
いくつかの態様において、抗原性ペプチド及びポリペプチドは、対象に投与された場合に、自己免疫応答を刺激せず、及び/または免疫寛容を引き起こさない。
【0235】
少なくとも2つ以上の抗原性ペプチドを含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも2つの異なるペプチドを含む。少なくとも2つの異なるペプチドは同じポリペプチドに由来するものであってよい。異なるペプチドとは、ペプチドが、長さ、アミノ酸配列、またはその両方において異なることを意味する。腫瘍特異的なペプチドは、腫瘍特異的変異を含むことが知られているかまたは見出されている任意のポリペプチドに由来するものとするか、またはペプチドは、正常細胞または組織と比較して腫瘍細胞またはがん性組織で発現が変化していることが知られているかもしくは見出されている任意のポリペプチド、(例えば、正常細胞または組織と比較して腫瘍細胞またはがん性組織で異常に発現していることが知られているかもしくは見出されている任意のポリペプチド)に由来するものとすることができる。ペプチドは、感染症生物に関連することが知られているかもしくは疑われる任意のポリペプチドに由来するものとするか、またはペプチドは、正常細胞または組織と比較して感染細胞で発現が変化していることが知られているかもしくは見出されている任意のポリペプチド(例えば、宿主細胞に発現が制限されている感染症ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む感染症ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)に由来するものとすることができる。抗原性ペプチドが由来し得る適当なポリペプチドは、例えば、COSMICデータベースまたはAACR Genomics Evidence Neoplasia Information Exchange(GENIE)データベースに見出すことができる。COSMICは、ヒトのがんにおける体細胞変異に関する包括的な情報をキュレートしている。AACR GENIEは、臨床グレードのがんゲノムデータを統合して数万人のがん患者からの臨床転帰と関連付けするものである。ペプチドは腫瘍特異的な変異を有し得る。いくつかの態様において、腫瘍特異的な変異は、特定の種類のがんのドライバー変異である。
【0236】
望ましい活性または性質を有する抗原性ペプチド及びポリペプチドは、望ましいMHC分子に結合して適切なT細胞を活性化する非改変ペプチドの生物学的活性を増大させるかまたは実質的にそのすべてを少なくとも保持しつつ、特定の望ましい属性、例えば、改善された薬理学的特徴を与えるように改変することができる。例として、抗原性ペプチド及びポリペプチドを、保存的または非保存的のいずれかの置換などの、種々の改変にさらに供することができ、そのような改変は、改善されたMHC結合、安定性、または提示などの、それらの使用におけるある特定の利点を提供し得る。保存的置換とは、アミノ酸残基を、生物学的及び/または化学的に類似している別のもので、例えば、1つの疎水性残基を別の疎水性残基、または1つの極性残基を別の極性残基で置き換えることを意味する。置換は、Gly、Ala;Val、Ile、Leu、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyrなどの組み合わせを含む。単一アミノ酸置換の効果はまた、D-アミノ酸を用いて探査してもよい。そのような改変は、例えば、Merrifield,Science 232:341-347(1986),Barany & Merrifield,The Peptides,Gross & Meienhofer,eds.(N.Y.,Academic Press),pp.1-284(1979);及びStewart & Young,Solid Phase Peptide Synthesis,(Rockford,Ill.,Pierce),2d Ed.(1984)に記載されているように、周知のペプチド合成手順を用いて行うことができる。
【0237】
種々のアミノ酸模倣物または非天然アミノ酸でのペプチド及びポリペプチドの改変は、インビボでのペプチド及びポリペプチドの安定性の増大に特に有用である場合がある。安定性は多くの方法でアッセイすることができる。例として、ペプチダーゼ、ならびに、ヒト血漿及び血清などの種々の生物学的媒質が、安定性を試験するために使用されている。例えば、Verhoef et al.,Eur.J.Drug Metab Pharmacokin.11:291-302(1986)を参照されたい。ペプチドの半減期は、25%ヒト血清(v/v)アッセイを用いて好都合に決定することができる。プロトコールは、概して以下のようなものである。プールしたヒト血清(タイプAB、非熱不活性化)を、使用前に遠心分離によって脱脂する。次いで、血清を、RPMI組織培養培地で25%に希釈し、ペプチド安定性を試験するために使用する。あらかじめ決定された時間間隔で、少量の反応溶液を取り出して、6%水性トリクロロ酢酸またはエタノールのいずれかに添加する。濁った反応試料を15分間冷却(4℃)し、次いで、スピンして沈降血清タンパク質を沈殿させる。次いで、ペプチドの存在を、安定性特異的クロマトグラフィー条件を用いた逆相HPLCによって決定する。
【0238】
ペプチド及びポリペプチドを、改善された血清半減期以外の望ましい属性を提供するために修飾することができる。例として、CTL活性を刺激するペプチドの能力を、Tヘルパー細胞応答を刺激することができる少なくとも1つのエピトープを含有する配列への連結によって増強することができる。免疫原性ペプチド/Tヘルパーコンジュゲートは、スペーサー分子によって連結することができる。スペーサーは、典型的には、生理学的条件下で実質的に無電荷である、アミノ酸またはアミノ酸模倣物などの相対的に小さな中性分子から構成される。スペーサーは、典型的には、例えば、Ala、Gly、または、非極性アミノ酸もしくは中性極性アミノ酸の他の中性スペーサーから選択される。任意で存在するスペーサーは、同じ残基から構成される必要はなく、したがって、ヘテロオリゴマーまたはホモオリゴマーであり得ることが、理解されるであろう。存在する場合、スペーサーは、通常、少なくとも1または2残基、より通常は、3~6残基であろう。あるいは、ペプチドを、スペーサーなしでTヘルパーペプチドに連結することができる。
【0239】
抗原性ペプチドは、ペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかで、直接またはスペーサーを介してのいずれかでTヘルパーペプチドに連結することができる。抗原性ペプチドまたはTヘルパーペプチドのいずれかのアミノ末端を、アシル化することができる。例示的なTヘルパーペプチドは、破傷風トキソイドの830~843、インフルエンザの307~319、マラリアスポロゾイトの周囲382~398及び378~389を含む。
【0240】
タンパク質またはペプチドは、標準的な分子生物学的技法を通したタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、天然由来源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技法によって作製することができる。種々の遺伝子に対応する、ヌクレオチドならびにタンパク質、ポリペプチド及びペプチドの配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピュータ処理されたデータベースで見出すことができる。1つのそのようなデータベースは、National Institutes of Healthのウェブサイトに位置する、National Center for Biotechnology InformationのGenbank及びGenPeptデータベースである。公知の遺伝子のコード領域は、本明細書に開示する技法を用いて、または当業者に公知であるように、増幅及び/または発現させることができる。あるいは、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドの種々の商業的調製物が、当業者に公知である。
【0241】
さらなる態様において、抗原は、抗原性ペプチドまたはその一部をコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を含む。ポリヌクレオチドは、例えば、DNA、cDNA、PNA、CNA、RNA(例えば、mRNA)、例えば、ホスホロチオエート骨格を有するポリヌクレオチドなどの、ポリヌクレオチドの一本鎖及び/もしくは二本鎖、または天然形態もしくは安定化形態のいずれか、または、それらの組み合わせであることができ、イントロンを含有してもよく、または含有しなくてもよい。抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、転写、翻訳、転写後プロセシング、及び/またはRNA安定性を改善することなどにより、発現を改善するために配列最適化することができる。例えば、抗原をコードするポリヌクレオチド配列はコドン最適化することができる。本明細書では「コドン最適化」とは、特定の生物のコドンバイアスに関して、低頻度で用いられるコドンを高頻度で用いられる同義コドンに置換することを指す。ポリヌクレオチド配列は、転写後プロセシングを改善するために最適化することができ、例えば、好ましいスプライシング事象にバイアスするように、スプライシングモチーフ(例えば、カノニカル及び/またはクリプティック/非カノニカルスプライスドナー、ブランチ、及び/またはアクセプター配列)の除去、及び/または外因性スプライシングモチーフ(スプライスドナー、ブランチ、及び/またはアクセプター配列)の導入などにより、意図しないスプライシングを減少させるように最適化することができる。外因性イントロン配列としては、これらに限定されるものではないが、SV40に由来するもの(例えば、SV40ミニイントロン)及び/または免疫グロブリンに由来するもの(例えば、ヒトβ-グロブリン遺伝子)が挙げられる。外因性イントロン配列は、プロモーター/エンハンサー配列と抗原(複数可)配列との間に組み込むことができる。発現ベクターで使用するための外因性イントロン配列は、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容をそれぞれ援用するCallendret et al.(Virology.2007 Jul 5;363(2): 288-302)により詳細に記載されている。ポリヌクレオチド配列は、例えば、RNA安定性モチーフ(例えば、AUリッチエレメント及び/または3’UTRモチーフ)及び/または反復ヌクレオチド配列の除去により転写物安定性を改善するように最適化することができる。ポリヌクレオチド配列は、例えば、クリプティックな転写イニシエーター及び/またはターミネーターの除去によって正確な転写を改善するように最適化することができる。ポリヌクレオチド配列は、例えば、クリプティックなAUG開始コドン、未成熟ポリA配列、及び/または二次構造モチーフの除去によって翻訳及び翻訳精度を改善するように最適化することができる。ポリヌクレオチド配列は、構成的輸送エレメント(CTE)、RNA輸送エレメント(RTE)、またはウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)の付加などによって、転写物の核外輸送を改善するように最適化することができる。発現ベクターで使用するための核外輸送シグナルは、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容をそれぞれ援用するCallendret et al.(Virology.2007 Jul 5;363(2): 288-302)により詳細に記載されている。ポリヌクレオチド配列は、例えば、特定の生物の平均GC含量を反映するように、GC含量に関して最適化することができる。配列最適化によって、転写、翻訳、転写後プロセシング、及び/またはRNA安定性などの1つ以上の配列特性のバランスをとることができる。配列最適化によって、転写、翻訳、転写後プロセシング、及びRNA安定性のそれぞれのバランスをとる最適配列を生成することができる。配列最適化アルゴリズムは、GeneArt(Thermo Fisher)、Codon Optimization Tool (IDT)、Cool Tool(University of Singapore)、SGI-DNA(La Jolla California)などの当業者には周知のものである。抗原コードタンパク質の1つ以上の領域を別々に配列最適化することができる。
【0242】
またさらなる態様は、ポリペプチドまたはその一部を発現することができる発現ベクターを提供する。様々な細胞タイプ用の発現ベクターが、当技術分野において周知であり、過度の実験なしで選択することができる。概して、DNAを、プラスミドなどの発現ベクター中に、発現のための適正な方向及び正確なリーディングフレームで挿入する。必要な場合は、DNAを、望ましい宿主によって認識される適切な転写及び翻訳調節性制御ヌクレオチド配列に連結することができるが、そのような制御は、概して発現ベクターにおいて利用可能である。次いで、ベクターを、標準的な技法を通して宿主中に導入する。手引きは、例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.において見出すことができる。
【0243】
V.ワクチン組成物
また、特異的な免疫応答、例えば、腫瘍特異的な免疫応答または感染症生物特異的な免疫応答を生じることができる免疫原性組成物、例えば、ワクチン組成物も、本明細書に開示する。ワクチン組成物は、典型的に、本明細書に記載される方法を用いて選択された、または病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び/または寄生虫由来ペプチドから選択された1つまたは複数の抗原を含む。ワクチン組成物はワクチンと呼ぶこともできる。
【0244】
ワクチンは、1~30個のペプチド、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30個の異なるペプチド、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なるペプチド、または12、13、もしくは14個の異なるペプチドを含むことができる。ペプチドは、翻訳後修飾を有してもよい。ワクチンは、1~100個以上のヌクレオチド配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94,95、96、97、98、99、100個、もしくはそれよりも多くの異なるヌクレオチド配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なる抗原コード核酸配列、または12、13もしくは14個の異なる抗原コード核酸配列を含むことができる。ワクチンは、1~30個の抗原配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94,95、96、97、98、99、100個、もしくはそれよりも多くの異なる抗原配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なる抗原配列、または12、13もしくは14個の異なる抗原配列を含むことができる。
【0245】
ワクチンは、1~30個の抗原コード核酸配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94,95、96、97、98、99、100個、もしくはそれよりも多くの異なる抗原コード核酸配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なる抗原コード核酸配列、または12、13もしくは14個の異なる抗原コード核酸配列を含むことができる。抗原コード核酸配列は、「抗原カセット」の抗原コード部分を指す場合もある。抗原カセットの特性について下記により詳細に説明する。抗原コード核酸配列は、1つ以上のエピトープコード核酸配列(例えば、連結されたT細胞エピトープをコードした抗原コード核酸配列)を含むことができる。
【0246】
ワクチンは、1~30個の異なるエピトープコード核酸配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94,95、96、97、98、99、100個、もしくはそれよりも多くの異なるエピトープコード核酸配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なるエピトープコード核酸配列、または12、13もしくは14個の異なるエピトープコード核酸配列を含むことができる。エピトープコード核酸配列とは、連結されたT細胞エピトープコード核酸配列をコードする抗原コード核酸配列中のT細胞エピトープのそれぞれなど、個別のエピトープ配列の配列を指す場合もある。
【0247】
ワクチンは、エピトープコード核酸配列の少なくとも2個の反復配列を含むことができる。本明細書で使用される「反復配列」とは、抗原コード核酸配列内の同じ核酸エピトープコード核酸配列(本明細書に記載される任意の5’リンカー配列及び/または任意の3’リンカー配列を含む)の2個以上の繰り返しを指す。1つの例では、カセットの抗原コード核酸配列部分は、エピトープコード核酸配列の少なくとも2個の反復配列をコードする。さらなる非限定的な例では、カセットの抗原コード核酸配列部分は複数の異なるエピトープをコードし、異なるエピトープのうちの少なくとも1つは、異なるエピトープをコードした核酸配列の少なくとも2個の反復(すなわち、少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列)によってコードされる。例示的な非限定例では、抗原コード核酸配列は、エピトープコード核酸配列A(EA)、エピトープコード配列B(EB)、及びエピトープコード配列C(EC)によってコードされるエピトープA、B、及びCをコードし、異なるエピトープのうちの少なくとも1つの反復配列を有する例示的な抗原コード核酸配列は、これらに限定されるものではないが、下記式によって示される。
-1つの異なるエピトープの反復配列(エピトープAの反復配列):
EA-EB-EC-EA、または
EA-EA-EB-EC
-複数の異なるエピトープの反復配列(エピトープA、B、及びCの反復配列):
EA-EB-EC-EA-EB-EC、または
EA-EA-EB-EB-EC-EC
-複数の異なるエピトープの複数の反復配列(エピトープA、B、及びCの反復配列):
EA-EB-EC-EA-EB-EC-EA-EB-EC、または
EA-EA-EA-EB-EB-EB-EC-EC-EC
【0248】
上記の例は限定的なものではなく、異なるエピトープのうちの少なくとも1つの反復配列を有する抗原コード核酸配列は、異なるエピトープのそれぞれを任意の順序または頻度でコードすることができる。例えば、順序及び頻度は、例えば式EA-EB-EC-EC-EA-EB-EA-EC-EA-EC-EC-EBによるエピトープA、B、及びCを有する例におけるように、異なるエピトープのランダムな配置とすることができる。
【0249】
本明細書では、5’~3’方向に、式:
(Ex-(EN
n)y)z
[式中、Eは、少なくとも1つの異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、
nは、別個の異なるエピトープコード核酸配列の数を表し、0を含む任意の整数であり、
ENは、それぞれの対応するnについて別個の異なるエピトープコード核酸配列を含むヌクレオチド配列を表し、
zのそれぞれの繰り返しについては、各nにおいてx=0または1、y=0または1であり、xまたはyの少なくとも一方は1であり、
z=2以上であり、抗原コード核酸配列は、E、特定のEN、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの2回の繰り返しを含む]
によって記述される少なくとも1つの抗原コード核酸配列を有する抗原コードカセットが提供される。
【0250】
各EまたはENは、本明細書に記載されるエピトープコード核酸配列(例えば、感染症T細胞エピトープ及び/または新生抗原エピトープをコードするペプチド)を独立して含むことができる。例えば、各EまたはENは、5’~3’方向に、式(L5b-Nc-L3d)によって記述されるヌクレオチド配列を独立して含むことができ、式中、Nは、各EまたはENに関連付けられた異なるエピトープコード核酸配列を含み、ただしc=1であり、L5は5’リンカー配列を含み、ただしb=0または1であり、L3は3’リンカー配列を含み、ただしd=0または1である。使用することができるエピトープ及びリンカーについては本明細書でさらに述べる。
【0251】
エピトープコード核酸配列(任意の5’リンカー配列及び/または任意の3’リンカー配列を含む)の反復配列は互いに直接連結されてもよい(例えば、上記に示したように、EA-EA-…)。エピトープコード核酸配列の反復配列は、1つ以上のさらなるヌクレオチド配列によって隔てられてもよい。一般的に、エピトープコード核酸配列の反復配列は、本明細書に記載される組成物に適用可能な任意のサイズのヌクレオチド配列によって隔てられうる。1つの例では、エピトープコード核酸配列の反復配列は、別個の異なるエピトープコード核酸配列によって隔てられうる(例えば、上記に示したように、EA-EB-EC-EA…)。反復配列が単一の別個の異なるエピトープコード核酸配列によって隔てられており、各エピトープコード核酸配列(任意の5’リンカー配列及び/または任意の3’リンカー配列を含む)がアミノ酸25個の長さのペプチドをコードする例では、反復配列は、例えばEA-EB-EA…(EAは75個のヌクレオチドによって隔てられている)により表される抗原コード核酸におけるように75個のヌクレオチドによって隔てられうる。例示的な1つの例では、25マーの抗原Trp1(VTNTEMFVTAPDNLGYMYEVQWPGQ)及びTrp2(TQPQIANCSVYDFFVWLHYYSVRDT)の反復配列をコードした配列VTNTEMFVTAPDNLGYMYEVQWPGQTQPQIANCSVYDFFVWLHYYSVRDTVTNTEMFVTAPDNLGYMYEVQWPGQTQPQIANCSVYDFFVWLHYYSVRDTを有する抗原コード核酸であり、Trp1の反復配列が25マーのTrp2によって隔てられており、したがって、Trp1エピトープコード核酸配列の反復配列は、ヌクレオチド75個のTrp2エピトープコード核酸配列によって隔てられる。反復配列が2、3、4、5、6、7、8、または9個の別個の異なるエピトープコード核酸配列によって隔てられており、各エピトープコード核酸配列(任意の5’リンカー配列及び/または任意の3’リンカー配列を含む)がアミノ酸25個の長さのペプチドをコードする例では、反復配列は、それぞれ、150、225、300、375、450、525、600、または675個のヌクレオチドによって隔てられうる。
【0252】
一実施形態では、異なるペプチド及び/もしくはポリペプチド、またはそれらをコードするヌクレオチド配列は、ペプチド及び/またはポリペプチドが、異なるMHCクラスI分子及び/または異なるMHCクラスII分子などの異なるMHC分子と結合することができるように選択される。いくつかの態様において、1つのワクチン組成物は、最も頻繁に存在するMHCクラスI分子及び/または異なるMHCクラスII分子と結合することができるペプチド及び/またはポリペプチドのコード配列を含む。したがって、ワクチン組成物は、少なくとも2種類の好ましい、少なくとも3種類の好ましい、または少なくとも4種類の好ましいMHCクラスI分子及び/または異なるMHCクラスII分子と結合することができる異なる断片を含むことができる。
【0253】
ワクチン組成物は、特異的な細胞傷害性T細胞応答、及び/または特異的なヘルパーT細胞応答を刺激することができる。ワクチン組成物は、特異的な細胞傷害性T細胞応答及び特異的なヘルパーT細胞応答を刺激することができる。
【0254】
ワクチン組成物は、特異的B細胞応答(例えば、抗体応答)を誘発することができる。
【0255】
ワクチン組成物は、特異的細胞毒性T細胞応答、特異的ヘルパーT細胞応答、及び/または特異的B細胞応答を刺激することができる。ワクチン組成物は、特異的細胞毒性T細胞応答、及び特異的B細胞応答を刺激することができる。ワクチン組成物は、特異的細胞毒性T細胞応答、特異的ヘルパーT細胞応答、及び特異的B細胞応答を刺激することができる。
【0256】
ワクチン組成物は、アジュバント及び/または担体をさらに含むことができる。有用なアジュバント及び担体の例を本明細書で以下に示す。組成物は、例えば、タンパク質、またはペプチドをT細胞に提示することができる樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞などの担体を伴ってもよい。
【0257】
アジュバントは、ワクチン組成物に混合することで抗原に対する免疫応答を増大または他の形で改変する任意の物質である。担体は、抗原が会合することができる、例えばポリペプチドまたは多糖類などのスカフォールド構造であってよい。場合により、アジュバントは共有結合または非共有結合により結合される。
【0258】
アジュバントが抗原に対する免疫応答を増大させる能力は、免疫介在反応の有意なもしくは大幅な増大、または疾患症状の低減として一般的に現れる。例えば、体液性免疫の増大は、抗原に対して生成された抗体の力価の有意な増大として一般的に現れ、T細胞活性の増大は細胞増殖、または細胞毒性、またはサイトカイン分泌の増大として一般的に現れる。アジュバントはまた、例えば、主として体液性またはTh応答を主として細胞性またはTh応答に変化させることにより、免疫応答も変化させることができる。
【0259】
適当なアジュバントとしては、これらに限定されるものではないが、1018ISS、ミョウバン、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTelベクターシステム、PLG微小粒子、レシキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニンから誘導されるAquila’s QS21スティミュロン(Aquila Biotech,Worcester,Mass.,USA)、マイコバクテリウム抽出物及び合成細菌壁模倣体、ならびにRibi’s Detox. QuilまたはSuperfosなどの他の特許取得アジュバントが挙げられる。不完全フロイントまたはGM-CSFなどのアジュバントが有用である。樹状細胞に対して特異的ないくつかの免疫学的アジュバント(例えば、MF59)及びそれらの製剤がこれまでに記載されている(Dupuis M,et al.,Cell Immunol.1998;186(1):18-27;Allison A C;Dev Biol Stand.1998;92:3-11)。サイトカインを用いることもできる。いくつかのサイトカインが、リンパ組織への樹状細胞の遊走に影響を及ぼし(例えば、TNF-α)、Tリンパ球に対する効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速させ(例えば、GM-CSF、IL-1及びIL-4) (参照によって本明細書にその全容を具体的に援用する米国特許第5,849,589号)、免疫アジュバントとして作用する(例えば、IL-12) (Gabrilovich D I, et al., J Immunother Emphasis Tumor Immunol. 1996 (6):414-418)ことに直接的な関連が示されている。
【0260】
CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドも、ワクチン環境におけるアジュバントの効果を高めることが報告されている。RNA結合TLR7、TLR8及び/またはTLR9のような他のTLR結合分子を使用することもできる。
【0261】
有用なアジュバントの他の例としては、これらに限定されるものではないが、化学修飾CpG(例えば、CpR、Idera)、Poly(I:C)(例えば、polyi:CI2U)、非CpG細菌性DNAまたはRNA、ならびに、治療作用を有するか、かつ/またはアジュバントとして作用しうる、シクロフォスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、イピリムマブ、トレメリムマブ、及びSC58175などの免疫活性小分子及び抗体が挙げられる。アジュバント及び添加剤の量ならびに濃度は、当業者によれば不要な実験を行うことなく容易に決定することが可能である。さらなるアジュバントとしては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスティム)などのコロニー刺激因子が挙げられる。
【0262】
ワクチン組成物は、複数の異なるアジュバントを含むことができる。さらに、治療組成物は、上記のいずれかまたはそれらの組み合わせを含む、任意のアジュバント物質を含むことができる。ワクチンとアジュバントは、一緒に投与してもよく、または任意の適当な順序で別々に投与することもできる。
【0263】
担体(または賦形剤)がアジュバントとは独立して存在してもよい。担体の機能は、例えば特定の変異体の分子量を増やすことによって、活性もしくは免疫原性を高める、安定性を付与する、生物活性を高める、または血清半減期を延ばすことであってよい。さらに、担体は、T細胞へのペプチドの提示を助けることができる。担体は、例えば、タンパク質または抗原提示細胞などの当業者には周知の任意の適当な担体であってよい。担体タンパク質は、これらに限定されるものではないが、キーホールリンペットヘモシアニン;トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、チログロブリンまたはオボアルブミンなどの血清タンパク質、免疫グロブリン;インスリンまたはパルミチン酸などのホルモンであってよい。ヒトの免疫化においては、担体は一般的に、ヒトに許容される、安全な生理学的に許容される担体である。しかしながら、破傷風トキソイド及び/またはジフテリアトキソイドは適当な担体である。あるいは、担体は、デキストラン、例えばセファロースであってもよい。
【0264】
細胞傷害性T細胞(CTL)は、インタクトな外来抗原自体ではなく、MHC分子に結合したペプチドの形の抗原を認識する。MHC分子自体は、抗原提示細胞の細胞表面に位置している。したがって、CTLの活性化は、ペプチド抗原、MHC分子及びAPCの三量体複合体が存在する場合に可能となる。これに対応して、CTLは、ペプチドのみがCTLの活性化に用いられる場合でなく、対応するMHC分子を有するAPCがさらに加えられる場合に免疫応答を増強することができる。したがって、特定の実施形態では、ワクチン組成物は少なくとも1つの抗原提示細胞をさらに含む。
【0265】
抗原はまた、ワクシニア、鶏痘、自己複製アルファウイルス、マラバウイルス、アデノウイルス(例えば、Tatsis et al.,Adenoviruses,Molecular Therapy(2004)10,616-629を参照されたい)、または、第2、第3、もしくはハイブリッド第2/第3世代のレンチウイルス、及び特異的な細胞タイプもしくは受容体を標的とするように設計された任意の世代の組換えレンチウイルスを含むがそれらに限定されないレンチウイルス(例えば、Hu et al.,Immunization Delivered by Lentiviral Vectors for Cancer and Infectious Diseases,Immunol Rev.(2011)239(1):45-61、Sakuma et al.,Lentiviral vectors:basicto translational,Biochem J.(2012)443(3):603-18、Cooper et al.,Rescue of splicing-mediated intron loss maximizes expression in lentiviral vectors containing the human ubiquitin C promoter,Nucl.AcidsRes.(2015)43(1):682-690、Zufferey et al.,Self-Inactivating Lentivirus Vector for Safe and Efficient In Vivo Gene Delivery,J.Virol.(1998)72(12):9873-9880を参照されたい)などの、ウイルスベクターベースのワクチンプラットフォームに含めることもできる。上述のウイルスベクターベースのワクチンプラットフォームのパッケージング能力に依存して、このアプローチは、1つ以上の抗原ペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を送達することができる。配列は、非変異配列が隣接していてもよく、リンカーによって隔てられていてもよく、または、細胞内区画を標的とする1つもしくは複数の配列が先行していてもよい(例えば、Gros et al.,Prospective identification of antigen-specific lymphocytes in the peripheral blood of melanoma patients,Nat Med.(2016)22(4):433-8、Stronen et al.,Targeting of cancer neoantigens with donor-derived T cell receptor repertoires,Science.(2016)352(6291):1337-41、Lu et al.,Efficient identification of mutated cancer antigens recognized by T cells associated with durable tumor regressions,Clin Cancer Res.(2014)20( 13):3401-10を参照されたい)。宿主中への導入時に、感染した細胞は、抗原を発現し、それにより、ペプチドに対する宿主免疫(例えば、CTL)応答を刺激する。免疫化プロトコールにおいて有用なワクシニアベクター及び方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターは、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al.(Nature 351:456-460(1991))に記載されている。抗原の治療的投与または免疫化に有用な、多種多様の他のワクチンベクター、例えば、チフス菌(Salmonella typhi)ベクターなどが、本明細書における記載から当業者に明らかであろう。
【0266】
V.A.抗原カセット
1つ以上の抗原の選択に用いられる方法、「抗原カセット」のクローニング及び構築、ならびにウイルスベクターへのその挿入は本明細書に与えられる教示を考慮すれば当該技術分野の範囲内である。「抗原カセット」または「カセット」とは、選択された抗原または複数の抗原(例えば、抗原コード核酸配列)と、この抗原(複数可)を転写し、転写産物を発現するために必要とされる他の調節エレメントとの組み合わせを意味する。選択された抗原または複数の抗原とは、異なるエピトープ配列を指す場合がある(例えば、カセット内の抗原コード核酸配列は、エピトープが転写されて発現されるようにエピトープコード核酸配列(または複数のエピトープコード核酸配列)をコードすることができる)。抗原または複数の抗原は、転写を可能とするような形で調節要素と機能的に連結することができる。かかる要素としては、ウイルスベクターをトランスフェクトした細胞内で抗原(複数可)の発現を誘導することができる従来の調節エレメントが挙げられる。したがって、抗原カセットは、抗原(複数可)に連結され、組換えベクターの選択されたウイルス配列内に他の任意選択的な調節エレメントとともに配置された選択されたプロモーターも含むことができる。カセットは、1つ以上の病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、寄生虫由来ペプチド、及び/または腫瘍由来ペプチドなどの1つまたは複数の抗原を含むことができる。カセットは、それぞれが独立して別個のプロモーターに機能的に連結されるか、かつ/または、2Aリボソームスキッピング配列エレメント(例えば、E2A、P2A、F2A、またはT2A配列)または内部リボソーム進入部位(IRES)配列エレメントなどの他のマルチシストロニックシステムを用いて互いに連結された複数の抗原コード核酸配列を含むカセットなどの1つ以上の抗原コード核酸配列を有することができる。リンカーは、TEVまたはフーリン切断部位のような切断部位を有することもできる。切断部位を有するリンカーを、マルチシストロニックシステム内のエレメントなど、他のエレメントと組み合わせることもできる。非限定的な例示的な例では、フーリンプロテアーゼ切断部位を2Aリボソームスキッピング配列エレメントと組み合わせて使用して、翻訳後の2A配列の除去を促進するようにフーリンプロテアーゼ切断部位を構成することができる。複数の抗原コード核酸配列を含むカセットにおいて、各抗原コード核酸配列は、1つ以上のエピトープコード核酸配列(例えば、連結されたT細胞エピトープをコードした抗原コード核酸配列)を含むことができる。
【0267】
有用なプロモーターは、構成性プロモーター、または発現させる抗原(複数可)の量を制御することが可能な調節された(誘導性)プロモーターであってよい。例えば、望ましいプロモーターとして、サイトメガロウイルス最初期プロモーター/エンハンサーのものがある[例えば、Boshart et al,Cell,41:521-530(1985)を参照]。別の望ましいプロモーターとしては、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター/エンハンサーが挙げられる。さらに別のプロモーター/エンハンサー配列は、ニワトリβアクチンプロモーターである[T.A.Kost et al,Nucl.Acids Res.,11(23):8287(1983)]。当業者であれば、他の適当な、または望ましいプロモーターも選択することができる。
【0268】
抗原カセットは、転写産物の効率的なポリアデニル化(ポリ(A)、ポリAまたはpA)のためのシグナルを与える配列ならびに機能的スプライスドナー及びアクセプター部位を含むイントロンを含む、ウイルスベクター配列に対して異種の核酸配列も含みうる。本明細書の例示的なベクターに用いられる一般的なポリA配列は、パポバウイルスSV-40由来のものである。ポリA配列は、抗原ベースの配列の後で、ウイルスベクター配列の前にカセットに挿入することができる。一般的なイントロン配列もまたSV-40由来のものでよく、SV-40Tイントロン配列と呼ばれる。抗原カセットは、プロモーター/エンハンサー配列と抗原(複数可)との間に位置するイントロンを含んでもよい。これら及び他の一般的なベクターエレメントの選択は従来のものであり[例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual.”,2d edit.,Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1989)及び本明細書に引用される参照文献を参照]、多くのかかる配列が商業的及び産業的供給元、ならびにGenbankより入手可能である。
【0269】
抗原カセットは1つ以上の抗原を有することができる。例えば個、特定のカセットは、1~10個、1~20個、1~30個、10~20個、15~25個、15~20個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはそれよりも多くの抗原を含むことができる。抗原は互いに直接連結されてもよい。抗原はリンカーによって互いに連結されてもよい。抗原は、N~CまたはC~Nを含む、互いに対して任意の方向とすることができる。
【0270】
本明細書の他の箇所で述べたように、抗原カセットは、選択することができるものの中でもとりわけ、例えば、VEE骨格の欠失した構造タンパク質またはChAd-ベースベクターのE1遺伝子領域の欠失もしくはE3遺伝子領域の欠失の部位などのウイルスベクター内の任意の選択された欠失部位内に配置することができる。
【0271】
抗原カセットは、5’~3’方向に各要素の順序付けられた配列を記述する下記式を用いて記述することができる。すなわち、
(Pa-(L5b-Nc-L3d)X)Z-(P2h-(G5e-Uf)Y)W-G3g
[式中、P及びP2は、プロモーターヌクレオチド配列を含み、Nは、MHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、L5は、5’リンカー配列を含み、L3は、3’リンカー配列を含み、G5は、アミノ酸リンカーをコードする核酸配列を含み、G3は、アミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、Uは、MHCクラスII抗原コード核酸配列を含み、ただし、各Xについて、対応するNcは、エピトープコード核酸配列であり、各Yについて、対応するUfは、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列(例えば、ユニバーサルなMHCクラスIIエピトープコード核酸配列(例えば、ユニバーサルなMHCクラスIIエピトープコード核酸配列)である。]。ユニバーサル配列は破傷風トキソイド及びPADREの少なくとも一方を含むことができる。ユニバーサル配列はPADREペプチドを含むことができる。ユニバーサル配列は破傷風トキソイド及びPADREペプチドを含むことができる。組成物及び順序付けられた配列は、存在する要素の数を選択することによってさらに定義することができ、例えば、a=0または1である場合、b=0または1である場合、c=1である場合、d=0または1である場合、e=0または1である場合、f=1である場合、g=0または1である場合、h=0または1である場合、X=1~400であり、Y=0、1、2、3、4または5であり、Z=1~400であり、かつW=0、1、2、3、4または5である。
【0272】
1つの例では、存在する要素は、a=0、b=1、d=1、e=1、g=1、h=0、X=10、Y=2、Z=1、かつW=1であり、さらなるプロモーターが存在しない場合が記述される場合(例えば、RNAアルファウイルス骨格などのベクター骨格によって与えられるプロモーターヌクレオチド配列のみが存在する)、10個のMHCクラスIエピトープが存在し、各Nについて5’リンカーが存在し、各Nについて3’リンカーが存在し、2個のMHCクラスIIエピトープが存在し、2個のMHCクラスIIエピトープを連結するリンカーが存在し、2個のMHCクラスIIエピトープの5’末端を最後のMHCクラスIエピトープの3’リンカーに連結するリンカーが存在し、2個のMHCクラスIIエピトープの3’末端をベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)に連結するリンカーが存在する。抗原カセットの3’末端の、ベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)との連結の例としては、3’の19ntのCSEのような、ベクター骨格によって与えられる3’UTR要素に直接連結することが挙げられる。抗原カセットの5’末端の、ベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)との連結の例としては、サブゲノミックプロモーター配列(例えば、26Sサブゲノミックプロモーター配列)、アルファウイルスの5’UTR、51ntのCSE、または24ntのCSEなどのベクター骨格のプロモーターまたは5’UTRエレメントに直接連結することが挙げられる。
【0273】
他の例としては、a=1であり、ベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)によって与えられるプロモーターヌクレオチド配列以外のプロモーターが存在する場合が記述される場合;a=1かつZが1よりも大きく、それぞれが1つ以上の異なるMHCクラスIエピトープコード核酸配列の発現をもたらす、ベクター骨格によって与えられるプロモーターヌクレオチド配列以外の複数のプロモーターが存在する場合;h=1であり、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列の発現をもたらす別のプロモーターが存在することが記述される場合;及び、g=0であり、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列(存在する場合)がベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)に直接連結される場合などが挙げられる。
【0274】
他の例としては、存在する各MHCクラスIエピトープが、5’リンカーを有する、3’リンカーを有する、どちらも有さない、または両方を有する場合が挙げられる。複数のMHCクラスIエピトープが同じ抗原カセット内に存在する例では、一部のMHCクラスIエピトープが5’リンカー及び3’リンカーの両方を有してよく、他のMHCクラスIエピトープが、5’リンカーまたは3’リンカーを有するか、またはどちらも有さなくてもよい。複数のMHCクラスIエピトープが同じ抗原カセット内に存在するその他の例では、一部のMHCクラスIエピトープが5’リンカーまたは3’リンカーのどちらかを有してよく、他のMHCクラスIエピトープが5’リンカーまたは3’リンカーを有するか、またはどちらも有さなくてもよい。
【0275】
複数のMHCクラスIIエピトープが同じ抗原カセット内に存在する例では、一部のMHCクラスIIエピトープが5’リンカー及び3’リンカーの両方を有してよく、他のMHCクラスIIエピトープが、5’リンカーまたは3’リンカーを有するか、またはどちらも有さなくてもよい。複数のMHCクラスIIエピトープが同じ抗原カセット内に存在するその他の例では、一部のMHCクラスIIエピトープが5’リンカーまたは3’リンカーのどちらかを有してよく、他のMHCクラスIIエピトープが5’リンカーまたは3’リンカーを有するか、またはどちらも有さなくてもよい。
【0276】
他の例には、存在する各抗原が5’リンカー、または3’リンカーを有するか、またはどちらも有さないか、または両方を有する場合が含まれる。複数の抗原が同じ抗原カセット内に存在する例では、一部の抗原が5’リンカー及び3’リンカーの両方を有してよく、他の抗原が5’リンカーまたは3’リンカーを有するか、またはどちらも有さなくてもよい。複数の抗原が同じ抗原カセット内に存在するその他の例では、一部の抗原が5’リンカーまたは3’リンカーのどちらかを有してよく、他の抗原が5’リンカーまたは3’リンカーを有するか、またはどちらも有さなくてもよい。
【0277】
プロモーターヌクレオチド配列P及び/またはP2は、RNAアルファウイルス骨格などのベクター骨格によって与えられるプロモーターヌクレオチド配列と同じであってよい。例えば、ベクター骨格によって与えられるプロモーター配列であるPn及びP2が、それぞれサブゲノミックプロモーター配列(例えば、26Sのサブゲノミックプロモーター配列)またはCMVプロモーターを含むことができる。プロモーターヌクレオチド配列P及び/またはP2は、ベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)によって与えられるプロモーターヌクレオチド配列と異なっていてもよく、また、互いと異なっていてもよい。
【0278】
5’リンカーL5は、天然配列または非天然配列であってよい。非天然配列としては、これらに限定されるものではないが、AAY、RR、及びDPPが挙げられる。3’リンカーL3もまた、天然配列または非天然配列であってよい。さらに、L5及びL3は、いずれも天然配列であってよく、いずれも非天然配列であってよく、または一方が天然で他方が非天然であってもよい。各Xについて、アミノ酸リンカーは、アミノ酸2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、またはそれ以上の長さであってよい。各Xについて、アミノ酸リンカーはまた、アミノ酸が少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、または少なくとも30個の長さであってもよい。
【0279】
各Yについて、アミノ酸リンカーG5は、アミノ酸2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、またはそれ以上の長さであってよい。各Yについて、アミノ酸リンカーはまた、アミノ酸が少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、または少なくとも30個の長さであってもよい。
【0280】
アミノ酸リンカーG3は、アミノ酸2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、またはそれ以上の長さであってよい。G3はまた、アミノ酸が少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、または少なくとも30個の長さであってもよい。
【0281】
各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、B細胞応答を刺激することができるエピトープ/抗原、またはこれらの組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、及びB細胞応答を刺激することができるエピトープ/抗原の組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープとMHCクラスIIエピトープとの組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープとB細胞応答を刺激することができるエピトープ/抗原との組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIIエピトープとB細胞応答を刺激することができるエピトープ/抗原との組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIIエピトープをコードすることができる。各Xについて、各Nは、B細胞応答を刺激することができるエピトープ/抗原をコードすることができる。各Xについて、各Nは、アミノ酸7~15個の長さのMHCクラスIエピトープをコードすることができる。各Xについて、各Nは、アミノ酸5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、または30個の長さのMHCクラスIエピトープをコードしてもよい。各Xについて、各Nはまた、アミノ酸が少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、または少なくとも30個の長さのMHCクラスIエピトープをコードしてもよい。
【0282】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、700ヌクレオチド以下であってよい。1つ以上の抗原をコードするカセットは、700ヌクレオチド以下であってよく、2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる(例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする2個の異なる感染症または腫瘍由来核酸配列をコードする)。1つ以上の抗原をコードするカセットは、700ヌクレオチド以下であってよく、少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、700ヌクレオチド以下であってよく、3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、700ヌクレオチド以下であってよく、少なくとも3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、700ヌクレオチド以下であってよく、1~10個、1~5個、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多い抗原を含むことができる。
【0283】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~700ヌクレオチドの長さであってよい。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~700ヌクレオチドの長さであってよく、2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~700ヌクレオチドの長さであってよく、少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~700ヌクレオチドの長さであってよく、3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~700ヌクレオチドの長さであってよく、少なくとも3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~700ヌクレオチドの長さであってよく、1~10個、1~5個、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多い抗原を含むことができる。
【0284】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さであってよい。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さであってよく、2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さであってよく、少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さであってよく、3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さであってよく、少なくとも3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、または100ヌクレオチド以下の長さであってよく、1~10個、1~5個、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多い抗原を含むことができる。
【0285】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さであってよい。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さであってよく、2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さであってよく、少なくとも2個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さであってよく、3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さであってよく、少なくとも3個の異なるエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチドの長さであってよく、1~10個、1~5個、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多い抗原を含むことができる。
【0286】
V.B.免疫調節因子
本明細書に記載されるベクター、例えば本明細書に記載されるC68ベクター、または本明細書に記載されるアルファウイルスベクターは少なくとも1つの抗原をコードする核酸を含むことができ、また、同じまたは別のベクターが、少なくとも1つの免疫調節因子をコードする核酸を含むことができる。免疫調節因子は、免疫チェックポイント分子に結合してその活性を遮断する結合分子(例えばscFvなどの抗体)を含むことができる。免疫調節因子は、IL-2、IL-7、IL-12(IL-12p35、p40、p70、及び/またはp70融合コンストラクトを含む)、IL-15、またはIL-21などのサイトカインを含むことができる。免疫調節因子は、修飾サイトカイン(例えば、pegIL-2)を含むことができる。ベクターは、抗原カセットと、免疫調節因子をコードする1つ以上の核酸分子とを含むことができる。
【0287】
遮断または阻害するための標的となりうる例示的な免疫チェックポイント分子としては、これらに限定されるものではないが、CTLA-4、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、VISTA、KIR、2B4(CD2ファミリーの分子に属し、すべてのNK(γδ)及びメモリーCD8+(αβ)T細胞で発現する)、CD160(BY55とも呼ばれる)、及びCGEN-15049が挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤には、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、VISTA、KIR、2B4、CD160、及びCGEN-15049の1つ以上に結合してその活性を遮断または阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメント、または他の結合タンパク質が挙げられる。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、イピリムマブ、MK-3475(PD-1blocker)、ニボルマブ(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)、及びヤーボイ/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)が挙げられる。抗体をコードする配列は、当該技術分野における通常の技能を用いてベクターに操作により組み込むことができる。例示的な方法の1つが、あらゆる目的で参照により本明細書に援用する、Fang et al.,Stable antibody expression at therapeutic levels using the 2A peptide. Nat Biotechnol.2005 May;23(5):584-90.Epub 2005 Apr 17に記載されている。
【0288】
V.C.ワクチン設計及び製造のさらなる考慮事項
V.C.1.すべての腫瘍サブクローンをカバーするペプチドのセットの決定
すべてまたは大部分の腫瘍サブクローンによって提示されるペプチドを意味する躯幹ペプチド(truncal peptide)を、ワクチンに含めるために優先順位付けすることができる。場合により、高確率で提示され、免疫原性であると予測される躯幹ペプチドが存在しない場合、または高確率で提示され、免疫原性であると予測される躯幹ペプチドの数が、さらなる非躯幹ペプチドをワクチンに含めることができるだけ充分に小さい場合、ワクチンによって包含される腫瘍サブクローンの数が最大となるように腫瘍サブクローンの数及び種類を推定し、ペプチドを選択することによってさらなるペプチドを順位付けすることができる。
【0289】
V.C.2.抗原の優先順位決定
上記の抗原フィルターのすべてが適用された後、ワクチン技術が対応できるよりも多くの候補抗原が、ワクチン包含になおも利用可能である可能性がある。追加的に、抗原解析の種々の態様についての不確定度が残っている可能性があり、候補ワクチン抗原の様々な性状の間にトレードオフが存在する可能性がある。したがって、選択プロセスの各段階でのあらかじめ決定されたフィルターの代わりに、少なくとも以下の軸を有する空間に候補抗原を置き、積分アプローチを用いて選択を最適化する、積分多次元モデルを考えることができる。
1. 自己免疫または寛容のリスク(生殖細胞系列のリスク)(より低い自己免疫のリスクが、典型的に好ましい)
2. シークエンシングアーチファクトの確率(より低いアーチファクトの確率が、典型的に好ましい)
3. 免疫原性の確率(より高い免疫原性の確率が、典型的に好ましい)
4. 提示の確率(より高い提示の確率が、典型的に好ましい)
5. 遺伝子発現(より高い発現が、典型的に好ましい)
6. HLA遺伝子のカバレッジ(抗原のセットの提示に関与するHLA分子の数が多いほど、腫瘍、感染症及び/または感染細胞が、HLA分子の下方制御または変異を介して免疫攻撃を回避する確率を低くし得る)
7.HLAクラスのカバレッジ(HLA-I及びHLA-IIの両方をカバーすることで、治療応答の確率が高まり、腫瘍または感染症の回避の確率が低くなる可能性がある)
【0290】
さらに、場合によっては、抗原が、患者の腫瘍または感染細胞のすべてまたは一部において喪失するかまたは不活性化されたHLAアレルによって提示されることが予想される場合には、抗原のワクチン接種における優先順位を下げる(例えば除外)することができる。HLAアレルの喪失は、体細胞変異、ヘテロ接合性の喪失、または遺伝子座のホモ接合欠失のいずれかによって生じうる。HLAアレルの体細胞変異の検出方法は当該技術分野では周知のものである(例えば、Shukla et al.,2015)。体細胞LOH及びホモ接合欠失(HLA遺伝子座を含む)の検出方法についても同様に述べられている(Carter et al.,2012;McGranahan et al.,2017;Van Loo et al.,2010)。抗原は、質量分析データが、予測された抗原が予測されたHLAアレルによって提示されないことを示す場合には優先順位付けを外してもよい。
【0291】
V.D.アルファウイルス
V.D.1.アルファウイルスの生物学
アルファウイルスは、トガウイルス科のメンバーであり、一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。メンバーは、一般的に、シンドビス、ロスリバー、マヤロ、チクングニア、及びセムリキ森林ウイルスなどの旧世界型、または、東部ウマ脳炎ウイルス、アウラ、フォートモルガン、もしくはベネズエラウマ脳炎ウイルス及びその誘導株TC-83などの新世界型に分類される(Strauss Microbial Review 1994)。天然のアルファウイルスゲノムは、通常、長さ約12kbであり、その最初の2/3は、ウイルスゲノムを自己複製するためのRNA複製複合体を形成する非構造タンパク質(nsP)をコードする遺伝子を含んでおり、最後の1/3は、ビリオンを産生するための構造タンパク質をコードするサブゲノミック発現カセットを含んでいる(Frolov RNA 2001)。
【0292】
アルファウイルスのモデル生活環は、複数の異なるステップを含む(Strauss Microbial Review 1994,Jose Future Microbiol 2009)。宿主細胞にウイルスが吸着した後、ビリオンが細胞内区画内の膜と融合し、最終的にゲノムRNAをサイトゾル中に放出する。プラス鎖の向きを有し、5’末端のメチルグアニル酸キャップ及び3’末端のポリAテールを有するゲノムRNAは、翻訳されて非構造タンパク質nsP1-4を生成し、これが複製複合体を形成する。感染初期には、プラス鎖はこの複合体によってマイナス鎖の鋳型に複製される。現在のモデルでは、複製複合体は感染が進行するにつれてさらにプロセシングされ、生じたプロセス後の複合体はマイナス鎖の完全長プラス鎖ゲノムRNA及び構造遺伝子を含む26Sのサブゲノミックプラス鎖RNAへの転写に切り替わる。アルファウイルスのいくつかの保存配列エレメント(CSE)が、マイナス鎖鋳型からのプラス鎖RNAの複製における5’UTRの相補体、ゲノム鋳型からのマイナス鎖合成の複製における51ntのCSE、マイナス鎖からのサブゲノミックRNAの転写におけるnsPと26S RNAとのジャンクション領域内の24ntのCSE、及び、プラス鎖鋳型からのマイナス鎖合成における3’末端の19ntのCSEを含む様々なRNA合成ステップにおいて潜在的に一定の役割を担っているものとして同定されている。
【0293】
ウイルスの自然の生活環では、異なるRNA種の複製後、ウイルス粒子が通常、アセンブルされる。26S RNAは翻訳され、生じたタンパク質はさらにプロセシングされて、カプシドタンパク質、糖タンパク質E1及びE2、ならびに2種類の小ポリペプチドE3及び6Kを含む構造タンパク質を生成する(Strauss 1994)。ウイルス粒子のカプシド形成が生じ、通常はゲノムRNAのみに特異的なカプシドタンパク質がパッケージングされた後、ビリオンがアセンブルされ、膜表面に出芽する。
【0294】
V.D.2.送達ベクターとしてのアルファウイルス
アルファウイルス(アルファウイルス配列、特徴、及び、他の要素)を使用してアルファウイルスベースの送達ベクター(アルファウイルスベクター、アルファウイルスウイルスベクター、アルファウイルスワクチンベクター、自己複製RNA(srRNA)ベクター、または自己増幅mRNA(SAM)ベクターとも称される)を作製することができる。アルファウイルスは、発現ベクター系として使用するために従来、遺伝子操作がなされている(Pushko 1997,Rheme 2004)。アルファウイルスは、異種抗原の発現が望ましい場合があるワクチン設定においていくつかの長所を有する。アルファウイルスは、宿主のサイトゾル中で自己複製するその能力のため、細胞内の発現カセットの高いコピー数を一般的に得ることができることから、高いレベルの異種抗原の産生を実現することができる。さらに、ベクターは一般的に一過性であるため、バイオセーフティーが高く、ベクターに対する免疫寛容の誘導は低い。また、一般公衆は、一般的にヒトアデノウイルスのような他の標準的ウイルスベクターと比較してアルファウイルスに対する既存の免疫を有していない。アルファウイルスに基づくベクターはまた、感染細胞に対する細胞毒性反応を一般的に生じる。細胞毒性は、発現された異種抗原に対する免疫応答を適性に刺激するためにワクチン設定においてある程度の重要性を有しうる。しかしながら、所望の細胞毒性の程度はバランスの問題であり、そのため、VEEのTC-83株をはじめとするいくつかの弱毒化されたアルファウイルスが開発されている。したがって、本明細書に記載される抗原発現ベクターの一例では、高いレベルの抗原発現を可能とし、抗原に対する強い免疫応答を刺激し、ベクター自体に対する免疫応答は刺激せず、安全に使用することができるアルファウイルス骨格を用いることができる。さらに、抗原発現カセットは、ベクターが、VEEまたはその弱毒化誘導株TC-83に由来する配列を含む(ただしこれらに限定されない)どのアルファウイルス配列を用いるかを最適化することを通じて異なるレベルの免疫応答を刺激するように設計することができる。
【0295】
アルファウイルス配列を用いたいくつかの発現ベクターの設計戦略が開発されている(Pushko 1997)。1つの戦略では、アルファウイルスベクターの設計は、構造タンパク質遺伝子の下流に26Sプロモーター配列因子の第2のコピーを挿入した後、異種遺伝子を挿入することを含む(Frolov 1993)。これにより、天然の非構造及び構造タンパク質以外に、さらなる異種タンパク質を発現するサブゲノミックRNAが産生される。このシステムでは、感染性ビリオンを産生するためのすべての因子が存在し、したがって、非感染細胞において発現ベクターの繰り返しの感染のラウンドが行われうる。
【0296】
別の発現ベクターの設計では、ヘルパーウイルスシステムを利用する(Pushko 1997)。この戦略では、構造タンパク質は異種遺伝子によって置換される。したがって、依然としてインタクトな非構造遺伝子によって媒介されるウイルスRNAの自己複製の後、26SサブゲノミックRNAが異種タンパク質の発現をもたらす。従来、構造タンパク質を発現するさらなるベクターが、例えば、細胞株の同時トランスフェクションなどによってイン・トランスで与えられることで感染性ウイルスを生じる。1つのシステムが米国特許第8,093,021号に記載されており、当該特許の全容をあらゆる目的で参照によって本明細書に援用する。ヘルパーベクターシステムは、感染性粒子を形成する可能性を制限するという長所をもたらし、したがってバイオセーフティーを改善する。さらに、ヘルパーベクターシステムは、全ベクター長を短縮し、複製及び発現の効率を改善する可能性がある。したがって、本明細書に記載される抗原発現ベクターの一例では、構造タンパク質が抗原カセットで置換されたアルファウイルス骨格を用いることができ、得られるベクターはバイオセーフティーの問題が低減されるのと同時に全体的な発現ベクターのサイズの減少により、効率的な発現を促進する。
【0297】
V.D.3.インビトロでのアルファウイルスの生成
アルファウイルス送達ベクターは、一般的に+鎖センスRNAポリヌクレオチドである。RNA生成のための当該技術分野では周知の従来の方法として、インビトロ翻訳(IVT)がある。この方法では、所望のベクターのDNA鋳型が、クローニング、制限消化、ライゲーション、遺伝子合成(例えば、化学的及び/または酵素的合成)、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの標準的な分子生物学的方法を含む当該技術分野では周知の方法によって最初に生成される。このDNA鋳型は、RNAに転写されることが望ましい配列の5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーターを有している。プロモーターとしては、これらに限定されるものではないが、T3、T7、またはSP6などのバクテリオファージポリメラーゼのプロモーターが挙げられる。次に、DNA鋳型は、適当なRNAポリメラーゼ酵素、バッファー剤、及びヌクレオチド(NTP)とインキュベートされる。得られたRNAポリヌクレオチドは、7-メチルグアノシンまたは関連する構造などの5’キャップ構造の付加、及び場合によりポリアデニル化(ポリA)テールを有するように3’末端を改変することを含む(ただしこれらに限定されない)方法によって、場合によりさらに改変することができる。次に、RNAをフェノールクロロホルム抽出、またはカラム生成(例えば、クロマトグラフィーを用いた精製)などの当該技術分野では周知の方法を用いて精製することができる。
【0298】
V.D.4.脂質ナノ粒子による送達
ワクチンベクターの設計において考慮すべき重要な側面の1つとして、ベクター自体に対する免疫がある(Riley 2017)。これは、例えば特定のヒトアデノウイルス系などのベクター自体に対する既存の免疫の形である場合もあり、またはワクチンの投与後に生じるベクターに対する免疫の形である場合もある。後者は、例えば別々のプライミング及びブースター投与のように同じワクチンの複数回の投与が行われる場合、または異なる抗原カセットを送達するために同じワクチンベクターシステムが用いられるような場合に重要な考慮事項となる。
【0299】
アルファウイルスベクターの場合では、標準的な送達方法は、カプシド、E1、及びE2タンパク質をイン・トランスで与えることによって感染性のウイルス粒子を生じる上記に述べたヘルパーウイルスシステムである。しかしながら、E1及びE2タンパク質は、しばしば中和抗体の主要な標的である点に留意することが重要である(Strauss 1994)。したがって、対象とする抗原を標的細胞に送達するためにアルファウイルスベクターを使用することの有効性は、感染性粒子が中和抗体の標的とされる場合に低下する可能性がある。
【0300】
ウイルス粒子を媒介とした遺伝子送達の代替的手法として、ナノ粒子を用いた発現ベクターの送達がある(Riley 2017)。重要な点として、ナノ材料担体は、非免疫原性材料で形成することができ、送達ベクター自体に対する免疫の誘発を一般的に回避することができる。これらの材料としては、これらに限定されるものではないが、脂質、無機ナノ材料、及び他のポリマー材料を挙げることができる。脂質は、カチオン性、アニオン性、または中性であってよい。かかる材料は、合成または天然由来のものであってよく、特定の例では生分解性であってよい。脂質は、脂肪、コレステロール、リン脂質、ポリエチレングリコール(PEG)複合体(PEG化脂質)を含む(ただしこれに限定されない)脂質複合体、ワックス、油類、グリセリド、及び脂溶性ビタミンを含みうる。
【0301】
脂質ナノ粒子(LNP)は、膜及び小胞状構造の形成を可能とする脂質の両親媒性の性質のために魅力的な送達システムである(Riley 2017)。一般的にこれらの小胞は、標的細胞の膜内に吸収され、サイトゾル中に核酸を放出することによって発現ベクターを送達する。さらに、LNPは特定の細胞種のターゲティングを促すようにさらに改変または官能化することができる。LNPの設計における別の考慮事項は、ターゲティングの効率と細胞毒性との間のバランスである。脂質の組成は一般的に、カチオン性、中性、アニオン性、及び両親媒性脂質の規定の混合物を含む。いくつかの例では、LNPの凝集を防止するか、脂質の酸化を防止するか、またはさらなる部分の付着を促す化学官能基を与えるために特定の脂質が含まれる。脂質の組成は、全体のLNPのサイズ及び安定性に影響しうる。1つの例では、脂質の組成は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(MC3)またはMC3様分子を含む。MC3及びMC3様脂質の組成物は、例えばPEGまたはPEG複合化脂質、ステロール、または中性脂質などの1種類以上の他の脂質を含むように製剤化することができる。
【0302】
血清に直接曝露された発現ベクターなどの核酸ベクターは、血清中のヌクレアーゼによる核酸の分解、または遊離核酸による免疫系のオフターゲットの刺激を含むいくつかの望ましくない影響を有しうる。したがって、アルファウイルスベクターの封入を利用して分解を防止する一方で、潜在的なオフターゲット効果も防止することができる。特定の例では、アルファウイルスベクターは、LNPの水性の内部など、送達担体内に完全に封入される。LNP内へのアルファウイルスベクターの封入は、微小流体液滴生成装置で行われる微小流体混合及び液滴生成などの当該技術分野では周知の方法によって実施することができる。かかる装置としては、これらに限定されるものではないが、標準的なTジャンクション装置またはフローフォーカシング装置が挙げられる。1つの例では、MC3またはMC3様分子含有組成物などの所望の脂質製剤を、アルファウイルス送達ベクター及び他の所望の物質と並行して液滴生成装置に供給することで、送達ベクター及び所望の物質がMC3またはMC3様分子ベースのLNPの内部に完全に封入される。1つの例では、液滴生成装置は、生成されたLNPの粒径範囲及び粒度分布を制御することができる。例えば、LNPは、直径1~1000nmの範囲の粒径、例えば、1、10、50、100、500、または1000nmの粒径を有することができる。液滴生成の後、発現ベクターを封入した送達ベクターを、投与に備えてさらに処理または改変することができる。
【0303】
V.E.チンパンジーアデノウイルス(ChAd)
V.E.1.チンパンジーアデノウイルスによるウイルス送達
1つ以上の抗原を送達するためのワクチン組成物(例えば、抗原カセットによる)は、チンパンジー由来のアデノウイルスヌクレオチド配列、各種の新規ベクター、及びチンパンジーアデノウイルス遺伝子を発現する細胞株を与えることにより作出することができる。チンパンジーC68アデノウイルス(本明細書ではChAdV68とも呼ぶ)のヌクレオチド配列を、抗原を送達するためのワクチン組成物中に使用することができる(配列番号1を参照)。C68アデノウイルス由来ベクターの使用については米国特許第6,083,716号にさらに詳細に記載されており、当該特許の全容をあらゆる目的で参照によって本明細書に援用する。ChAdV68ベースのベクター及び/または送達システムについては、米国特許出願公開第US20200197500A1号及び国際特許出願公開WO2020243719A1号に記載されており、それぞれをあらゆる目的で参照によって本明細書に援用する。
【0304】
さらなる態様において、本明細書では、C68などのチンパンジーアデノウイルスのDNA配列と、発現を誘導する調節配列に機能的に連結された抗原カセットとを含む組換えアデノウイルスが提供される。この組換えウイルスは、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞に感染させることが可能であり、細胞内で新生抗原カセットの産物を発現することが可能である。このベクターでは、天然のチンパンジーE1遺伝子、及び/またはE3遺伝子、及び/またはE4遺伝子を欠失させることができる。抗原カセットを、これらの遺伝子欠失部位のいずれに挿入することもできる。抗原カセットは、それに対するプライミングされた免疫応答が望ましい抗原を含むことができる。
【0305】
別の態様において、本明細書では、C68などのチンパンジーアデノウイルスを感染させた哺乳動物細胞が提供される。
【0306】
さらなる別の態様では、チンパンジーアデノウイルス遺伝子(例えばC68由来の)またはその機能的フラグメントを発現する新規な哺乳動物細胞株が提供される。
【0307】
いっそうさらなる態様において、本明細書では、哺乳動物細胞内に抗原カセットを送達するための方法であって、細胞内に、抗原カセットを発現するように操作された、有効量のC68などのチンパンジーアデノウイルスを導入する工程を含む方法が提供される。
【0308】
さらなる別の態様は、がんを治療するために哺乳動物宿主の免疫応答を刺激する方法を提供する。この方法は、免疫応答が標的とする腫瘍に由来する1種類以上の抗原をコードする抗原カセットを含む、有効量のC68などの組換えチンパンジーアデノウイルスを宿主に投与する工程を含むことができる。
【0309】
さらなる別の態様は、哺乳動物宿主の免疫応答を刺激して、感染症などの対象の疾患を治療または予防するための方法を提供する。この方法は、免疫応答が標的とする感染症に由来する抗原などの1つ以上の抗原をコードする抗原カセットを含む、有効量のC68などの組換えチンパンジーアデノウイルスを宿主に投与する工程を含むことができる。
【0310】
さらに、配列番号1の配列から得られるチンパンジーアデノウイルス遺伝子を発現する非サル哺乳動物細胞も開示される。この遺伝子は、配列番号1のアデノウイルスE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5からなる群から選択することができる。
【0311】
さらに、配列番号1の配列から得られる遺伝子を含むチンパンジーアデノウイルスのDNA配列を含む核酸分子も開示される。この遺伝子は、配列番号1の前記チンパンジーアデノウイルスE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5遺伝子からなる群から選択することができる。いくつかの態様において、核酸分子は、配列番号1を含む。いくつかの態様において、核酸分子は、配列番号1のE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子が欠失した、配列番号1の配列を含む。
【0312】
さらに、配列番号1から得られるチンパンジーアデノウイルスDNA配列と、異種宿主細胞内でカセットの発現を誘導する1つ以上の調節配列に機能的に連結された抗原カセットとを含むベクターであって、場合により、チンパンジーアデノウイルスDNA配列が、複製及びカプシド形成に必要とされる少なくともシスエレメントを含み、シスエレメントが抗原カセット及び調節配列に隣接している、ベクターも開示される。いくつかの態様において、チンパンジーアデノウイルスDNA配列は、配列番号1のE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5遺伝子配列から選択される遺伝子を含む。いくつかの態様において、ベクターは、E1A及び/またはE1B遺伝子を欠失していてもよい。
【0313】
本明細書では、欠失または部分欠失E4orf2領域及び欠失または部分欠失E4orf3領域、及び場合により、欠失または部分欠失E4orf4領域を含む部分欠失E4遺伝子を含むアデノウイルスベクターも開示される。部分欠失E4は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642のE4欠失を含むことができ、ベクターは、配列番号1に記載される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分欠失E4は、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~34,942の少なくとも部分欠失、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,952~35,305の少なくとも部分欠失、及び配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,302~35,642の少なくとも部分欠失のE4欠失を含むことができ、ベクターは、配列番号1に記載される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分欠失E4は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,980~36,516のE4欠失を含むことができ、ベクターは、配列番号1に記載される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分欠失E4は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,979~35,642のE4欠失を含むことができ、ベクターは、配列番号1に記載される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分欠失E4は、E4Orf2の少なくとも部分欠失、完全欠失したE4Orf3、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失のE4欠失を含むことができる。部分欠失E4は、E4Orf2の少なくとも部分欠失、E4Orf3の少なくとも部分欠失、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失のE4欠失を含むことができる。部分欠失E4は、E4Orf1の少なくとも部分欠失、完全欠失したE4Orf2、及びE4Orf3の少なくとも部分欠失のE4欠失を含むことができる。部分欠失E4は、E4Orf2の少なくとも部分欠失及びE4Orf3の少なくとも部分欠失のE4欠失を含むことができる。部分欠失E4は、E4Orf1の開始部位からE4Orf5の開始部位までのE4欠失を含むことができる。部分欠失E4は、E4Orf1の開始部位に隣接したE4欠失であってよい。部分欠失E4は、E4Orf2の開始部位に隣接したE4欠失であってよい。部分欠失E4は、E4Orf3の開始部位に隣接したE4欠失であってよい。部分欠失E4は、E4Orf4の開始部位に隣接したE4欠失であってよい。E4欠失は、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1100、少なくとも1200、少なくとも1300、少なくとも1400、少なくとも1500、少なくとも1600、少なくとも1700、少なくとも1800、少なくとも1900、または少なくとも2000ヌクレオチドであってよい。E4欠失は、少なくとも700ヌクレオチドであってよい。E4欠失は、少なくとも1500ヌクレオチドであってよい。E4欠失は、50以下、100以下、200以下、300以下、400以下、500以下、600以下、700以下、800以下、900以下、1000以下、1100以下、1200以下、1300以下、1400以下、1500以下、1600以下、1700以下、1800以下、1900以下、または2000ヌクレオチド以下であってよい。E4欠失は、750ヌクレオチド以下であってよい。E4欠失は、少なくとも1550ヌクレオチドまたはそれ以下であってよい。
【0314】
部分欠失E4遺伝子は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642を欠く、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であってよい。部分欠失E4遺伝子は、配列番号1に示されるE4遺伝子配列を欠き、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~34,942、ヌクレオチド34,952~35,305、及び配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,302~35,642を欠く、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であってよい。部分欠失E4遺伝子は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,980~36,516を欠く、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であってよい。部分欠失E4遺伝子は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,979~35,642を欠く、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であってよい。部分欠失E4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、カセットを含むことができ、カセットは少なくとも1つのペイロード核酸配列を含み、さらにカセットは、少なくとも1つのペイロード核酸配列に機能的に連結された少なくとも1つのプロモーター配列を含む。部分欠失E4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、配列番号1に示されるChAdV68配列の1つ以上の遺伝子または調節配列を有することができ、場合により、1つ以上の遺伝子または調節配列は、配列番号1に示される配列のチンパンジーアデノウイルス末端逆位反復配列(ITR)、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子のうちの少なくとも1つを含む。部分欠失E4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916を有することができ、部分欠失E4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’末端であり、場合により、ヌクレオチド2~34,916は、E1欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403をさらに欠き、かつ/またはE3欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠く。部分欠失E4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、配列番号1に示されるヌクレオチド35,643~36,518を有することができ、部分欠失E4遺伝子はヌクレオチド35,643~36,518の5’末端である。部分欠失E4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916を有することができ、部分欠失E4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’末端であり、ヌクレオチド2~34,916は、E1欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403をさらに欠き、かつE3欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠く。部分欠失E4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916を有することができ、部分欠失E4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’末端であり、ヌクレオチド2~34,916は、E1欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403をさらに欠き、かつE3欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠き、かつ配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,643~36,518を有し、部分欠失E4遺伝子は、ヌクレオチド35,643~36,518の5’末端である。
【0315】
部分欠失E4遺伝子は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642、配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916を欠く、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であってよく、部分欠失E4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’末端であり、ヌクレオチド2~34,916は、E1欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403をさらに欠き、かつE3欠失に相当する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠き、かつ配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,643~36,518を有し、部分欠失E4遺伝子は、ヌクレオチド35,643~36,518の5’末端である。
【0316】
さらに、抗原カセットを発現するように操作されたC68ベクターなどの本明細書に開示されるベクターをトランスフェクトした宿主細胞も開示される。さらに、細胞内に本明細書に開示されるベクターを導入することによって細胞内に導入された選択された遺伝子を発現するヒト細胞も開示される。
【0317】
さらに、哺乳動物細胞に抗原カセットを送達するための方法であって、前記細胞内に、抗原カセットを発現するように操作された有効量のC68ベクターなどの本明細書に開示されるベクターを導入することを含む方法も提供される。
【0318】
さらに、哺乳動物細胞内に本明細書に開示されるベクターを導入することと、適当な条件下で細胞を培養することと、抗原を産生することと、を含む、抗原を産生するための方法も開示される。
【0319】
V.E.2.E1を発現する相補性細胞株
本明細書に記載される遺伝子のいずれかにおいて欠失を有する組換えチンパンジーアデノウイルス(Ad)を作製するため、欠失させた遺伝子領域の機能(ウイルスの複製及び感染性に不可欠である場合)をヘルパーウイルスまたは細胞株(すなわち、相補性またはパッケージング細胞株)によって組換えウイルスに供給することができる。例えば、複製欠損チンパンジーアデノウイルスベクターを作製するには、ヒトまたはチンパンジーアデノウイルスのE1遺伝子産物を発現する細胞株を使用することができ、そのような細胞株にはHEK293またはそのバリアントが含まれうる。チンパンジーE1遺伝子を発現する細胞株の作製のプロトコール(米国特許第6,083,716号の実施例3及び4)にしたがって任意の選択されたチンパンジーアデノウイルス遺伝子を発現する細胞株を作製することができる。
【0320】
AAV強化アッセイを用いてチンパンジーアデノウイルスE1発現細胞株を同定することができる。このアッセイは、他の特性評価されていないアデノウイルス(例えば他の種由来)のE1遺伝子を使用して作製された細胞株においてE1の機能を同定するうえで有用である。このアッセイは米国特許第6,083,716号の実施例4Bに記載されている。
【0321】
選択されたチンパンジーアデノウイルス遺伝子(例えばE1)は、選択された親細胞株で発現するためのプロモーターの転写制御下にある可能性がある。この目的で誘導性または構成性プロモーターを用いることができる。誘導性プロモーターには、亜鉛によって誘導されるヒツジメタロチオニンプロモーター、または糖質コルチコイド、特にデキサメタゾンによって誘導されるマウス哺乳動物腫瘍ウイルス(MMTV)がある。本明細書に参照により援用するところの国際出願第WO95/13392号において特定されるものなどの他の誘導性プロモーターもパッケージング細胞株の作製に使用することができる。チンパンジーアデノウイルス遺伝子の発現を制御する構成性プロモーターも用いることができる。
【0322】
任意の所望のC68遺伝子を発現する新規な細胞株を作製するために親細胞を選択することができる。限定されることなく、かかる親細胞株は、HeLa[ATCC寄託番号CCL2]、A549[ATCC寄託番号CCL185]、KB[CCL17]、Detroit[例えばDetroit510、CCL72]、及びWI-38[CCL75]細胞であってよい。他の適当な親細胞株を他の供給元から入手することができる。親細胞株としては、CHO、HEK293またはそのバリアント、911、HeLa、A549、LP-293、PER.C6、またはAE1-2aを挙げることができる。
【0323】
E1発現細胞株は、組換えチンパンジーアデノウイルスE1欠失ベクターの作製において有用となりうる。1つ以上の他のチンパンジーアデノウイルス遺伝子産物を発現する基本的に同じ手順を用いて構築された細胞株は、これらの産物をコードする遺伝子に欠失を有する組換えチンパンジーアデノウイルスベクターの作製において有用である。さらに、他のヒトAdE1遺伝子産物を発現する細胞株も、チンパンジー組換えAdを作製するうえで有用である。
【0324】
V.E.3.ベクターとしての組換えウイルス粒子
本明細書に開示される組成物は、少なくとも1種類の抗原を細胞に送達するウイルスベクターを含むことができる。かかるベクターは、C68のようなチンパンジーアデノウイルスDNA配列と、カセットを直接発現するための調節配列に機能的に連結された抗原カセットとを含む。C68ベクターは、感染した哺乳動物細胞内でカセットを発現することが可能である。C68ベクターは1つ以上のウイルス遺伝子に機能的欠失を有することができる。抗原カセットは、プロモーターなどの1つ以上の調節配列の制御下にある少なくとも1つの抗原を含む。任意選択的なヘルパーウイルス及び/またはパッケージング細胞株によって、チンパンジーウイルスベクターに、欠失させたアデノウイルス遺伝子の任意の必要な産物を供給することができる。
【0325】
「機能的に欠失された」という用語は、その遺伝子領域の充分な量が除去または例えば変異もしくは改変により他の形で変化させられていることにより、その遺伝子領域が遺伝子発現の1つ以上の機能的産物を産生できなくなっていることを意味する。機能的欠失につながりうる変異または改変としては、これらに限定されるものではないが、未成熟終止コドンの導入及び基準及び非基準開始コドンの除去のようなナンセンス変異、mRNAスプライシングまたは他の転写プロセシングを変化させる変異、またはこれらの組み合わせが挙げられる。必要な場合、遺伝子領域全体を除去することができる。
【0326】
配列の欠失、挿入、及び他の変異を含む、本明細書に開示されるベクターを形成する核酸配列の改変は、標準的な分子生物学的手法を用いて生成することができるものであり、本明細書の範囲内である。
【0327】
V.E.4.ウイルスプラスミドベクターの構築
本発明で有用なチンパンジーアデノウイルスC68ベクターには、組換え欠損アデノウイルス、すなわち、E1aまたはE1b遺伝子に機能的欠失を有し、場合により例えば温度感受性変異または他の遺伝子における欠失などの他の変異を有するチンパンジーアデノウイルス配列が含まれる。これらのチンパンジー配列は、他のアデノウイルス及び/またはアデノ随伴ウイルス配列からハイブリッドベクターを形成するうえでも有用であると予想される。ヒトアデノウイルスから調製された同種アデノウイルスベクターについては、刊行文献に記載されている[例えば、上記に引用のKozarsky I及びII、ならびに同文献に引用された参照文献、米国特許第5,240,846号を参照]。
【0328】
抗原カセットをヒト(または他の哺乳動物)細胞に送達するための有用なチンパンジーアデノウイルスC68ベクターの構築において、広範囲のアデノウイルス核酸配列をベクターに用いることができる。最小のチンパンジーC68アデノウイルス配列を含むベクターをヘルパーウイルスとともに使用して感染性の組換えウイルス粒子を作製することができる。ヘルパーウイルスは、最小のチンパンジーアデノウイルスベクターのウイルス感染性及び増殖に必要な基本的な遺伝子産物を提供する。チンパンジーアデノウイルス遺伝子の1つ以上の選択された欠失のみが、欠失がなければ機能性のウイルスベクターに導入される場合、欠失された遺伝子産物は、欠失された遺伝子機能をイン・トランスで与えるウイルスを選択されたパッケージング細胞株内で増殖させることによるウイルスベクター作製プロセスで供給することができる。
【0329】
V.E.5.組換え最小アデノウイルス
最小チンパンジーAd C68ウイルスとしては、複製及びビリオンのカプシド形成に必要なアデノウイルスのシスエレメントのみを含むウイルス粒子がある。すなわち、このベクターは、アデノウイルスのシス作用性の5’及び3’の末端逆位反復配列(ITR)(複製起点として機能する)と、天然の5’パッケージング/エンハンサードメイン(直鎖状のAdのゲノム及びE1プロモーターのエンハンサーエレメントをパッケージングするために必要な配列を含む)とを含む。例えば、国際出願第WO96/13597号において「最小」ヒトAdベクターの調製について述べられ、本明細書に参照によって援用する方法を参照されたい。
【0330】
V.E.6.他の欠損アデノウイルス
組換え複製不全アデノウイルスは、最小チンパンジーアデノウイルス配列以上のものを含んでもよい。これらの他のAdベクターは、ウイルスの遺伝子領域の異なる部分の欠失、ならびに、必要に応じたヘルパーウイルス及び/またはパッケージング細胞株の使用によって形成される感染性ウイルス粒子によって特徴づけることができる。
【0331】
1つの例として、適当なベクターは、C68アデノウイルスの最初期遺伝子E1a及び後初期遺伝子E1bの全体または充分な部分を欠失させることにより、それらの正常な生物学的機能を失わせることによって形成することができる。複製不全E1欠失ウイルスは、対応する遺伝子産物をイン・トランスで与える機能的アデノウイルスE1a及びE1b遺伝子を含むチンパンジーのアデノウイルス形質転換相補性細胞株で増殖させた場合に感染性のウイルスを複製及び生成することが可能である。既知のアデノウイルス配列に対する相同性に基づけば、得られる組換えチンパンジーアデノウイルスは、当該技術分野のヒト組換えE1欠失アデノウイルスでそうであるように多くの細胞種に感染することが可能であり、抗原(複数可)を発現することができるが、チンパンジーE1領域DNAを有していない多くの細胞では、細胞が極めて高い感染多重度で感染していないかぎりは複製できないものと予想される。
【0332】
別の例として、C68アデノウイルス後初期遺伝子E3の全体または一部を、組換えウイルスの一部を形成するチンパンジーアデノウイルス配列から除去することができる。
【0333】
チンパンジーアデノウイルスC68ベクターは、E4遺伝子の欠失を有するように構築することもできる。さらに別のベクターは、後初期遺伝子E2aに欠失を有することができる。
【0334】
欠失は、チンパンジーC68アデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1~L5のいずれに導入することもできる。同様に、中期遺伝子IX及びIVa2内の欠失も特定の目的では有用となりうる。他の欠失を他の構造または非構造アデノウイルス遺伝子に導入することもできる。
【0335】
上記に述べた欠失は、個々に用いることもできる。すなわち、アデノウイルス配列はE1のみの欠失を有してもよい。また、それらの生物学的活性を破壊または低減するうえで効果的な遺伝子全体またはその一部を任意の組み合わせで用いることもできる。例えば、1つの例示的なベクターでは、アデノウイルスC68配列は、E1遺伝子及びE4遺伝子、またはE1、E2a、及びE3遺伝子、またはE1及びE3遺伝子、または、E3の欠失をともなうかまたはともなわない、E1、E2a、及びE4遺伝子の欠失を有することができる。上記に述べたように、かかる欠失は、所望の結果を得るために温度感受性変異などの他の変異と組み合わせて用いることができる。
【0336】
抗原(複数可)を含むカセットを場合によりチンパンジーC68Adウイルスの任意の欠失領域に挿入する。また、必要に応じて既存の遺伝子領域内にカセットを挿入することでその領域の機能を破壊することもできる。
【0337】
V.E.7.ヘルパーウイルス
抗原カセットを送達するために用いられるウイルスベクターのチンパンジーアデノウイルス遺伝子の含量に応じて、ヘルパーアデノウイルスまたは非複製ウイルスフラグメントを用いて、カセットを含む感染性の組換えウイルス粒子を生成するのに充分なチンパンジーアデノウイルス遺伝子配列を与えることができる。
【0338】
有用なヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクターコンストラクト中に存在しない、及び/またはベクターをトランスフェクトしたパッケージング細胞株によって発現されない選択されたアデノウイルス遺伝子配列を含む。ヘルパーウイルスは複製不全であってよく、上記に述べた配列以外の様々なアデノウイルス遺伝子を含むことができる。ヘルパーウイルスは、本明細書に記載されるE1発現細胞株と組み合わせて用いることができる。
【0339】
C68では、「ヘルパー」ウイルスは、C68ゲノムのC末端を、ウイルスの左端から約1300bpを除去するSspIによって短縮することによって形成されるフラグメントとすることができる。次に、この短縮されたウイルスをプラスミドDNAとともにE1発現細胞株内に同時トランスフェクトすることにより、プラスミド内のC68配列との相同組み換えによって組換えウイルスを形成する。
【0340】
ヘルパーウイルスは、Wu et al,J.Biol.Chem.,264:16985-16987 (1989);K.J.Fisher and J.M.Wilson,Biochem.J.,299:49(Apr.1,1994)に記載されるようなポリカチオン複合体として形成することもできる。ヘルパーウイルスは、場合によりレポーター遺伝子を含んでもよい。多くのかかるレポーター遺伝子が当該技術分野で知られている。アデノウイルスベクター上の抗原カセットとは異なるヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子の存在によって、Adベクターとヘルパーウイルスを独立して観察することが可能となる。この第2のレポーター遺伝子を用いることで、精製時に得られた組換えウイルスとヘルパーウイルスとを分離することが可能である。
【0341】
V.E.8.ウイルス粒子のアセンブリと細胞株の感染
アデノウイルス、抗原カセット、及び他のベクター因子の選択されたDNA配列の様々な中間プラスミド及びシャトルベクターへのアセンブリ、ならびに組換えウイルス粒子を作製するためのプラスミド及びシャトルベクターの使用は、従来の手法を用いてすべて実現することができる。かかる手法としては、従来のcDNAのクローニング法、インビトロ組換え法(例えば、ギブソンアセンブリ)、アデノウイルスゲノムの重複するオリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応、及び所望のヌクレオチド配列を与える任意の適当な方法が挙げられる。標準的なトランスフェクション及び同時トランスフェクションの手法、例えば、CaPO4沈殿法またはリポフェクタミンなどのリポソーム媒介トランスフェクション法が用いられる。用いられる他の従来の方法としては、ウイルスゲノムの相同組み換え、アガーオーバーレイ中でのウイルスのプラーク形成、シグナル発生測定の方法などが挙げられる。
【0342】
例えば、所望の抗原を含むウイルスベクターの構築及びアセンブリの後、ベクターをインビトロでヘルパーウイルスの存在下でパッケージング細胞株にトランスフェクトすることができる。ヘルパーとベクター配列との間で相同組み換えが起こり、これによりベクター内のアデノウイルス-抗原配列が複製されてビリオンカプシド内にパッケージングされ、組換えウイルスベクター粒子が得られる。
【0343】
得られた組換えチンパンジーC68アデノウイルスは、抗原カセットを選択された細胞に導入するうえで有用である。パッケージング細胞株内で増殖させた組換えウイルスを用いたインビボ実験において、E1欠失組換えチンパンジーアデノウイルスが、カセットを非チンパンジー細胞、好ましくはヒト細胞に導入するうえで実用性を有することが実証されている。
【0344】
V.E.9.組換えウイルスベクターの使用
したがって、抗原カセットを含む得られた組換えチンパンジーC68アデノウイルス(上記に述べたようなアデノウイルスベクターとヘルパーウイルス、またはアデノウイルスベクターとパッケージング細胞株の組み込みにより作製される)は、抗原(複数可)をインビボまたはエクスビボで対象に送達することができる効率的な遺伝子導入担体を与えるものである。
【0345】
上記に述べた組換えベクターは、遺伝子治療について公開されている方法にしたがってヒトに投与される。抗原カセットを有するチンパンジーウイルスベクターは、好ましくは生体適合性溶液または薬学的に許容される送達溶媒中に懸濁させて患者に投与することができる。適当な溶媒としては滅菌生理食塩水が挙げられる。薬学的に許容される担体として知られ、当業者には周知のものである他の水性及び非水性等張滅菌注射溶液、ならびに水性及び非水性滅菌懸濁液をこの目的で使用することもできる。
【0346】
チンパンジーアデノウイルスベクターは、ヒト細胞を形質転換し、医療分野の当業者によって判定することが可能な有害作用をともなわずに、または医学的に許容される生理学的作用をともなって、治療効果を与えるうえで充分なレベルの抗原の導入及び発現をもたらすのに充分な量で投与される。従来の薬学的に許容される投与経路としては、これらに限定されるものではないが、肝臓、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経口、及び他の非経口の投与経路が挙げられる。投与経路は必要に応じて組み合わせることができる。
【0347】
ウイルスベクターの用量は、治療される状態、患者の年齢、体重、及び健康状態などの因子に主として依存し、したがって患者間で異なりうる。用量は、あらゆる副作用に対して治療効果のバランスが取れるように調節され、かかる用量は、組換えベクターが用いられる治療用途に応じて異なりうる。抗原(複数可)の発現レベルを観察することにより、投与頻度を決定することができる。
【0348】
組換え複製不全アデノウイルスは、「薬学的有効量」、すなわち、所望の細胞をトランスフェクトし、ワクチン効果、すなわち一定の測定可能なレベルの防御免疫をもたらすような選択された遺伝子の充分な発現レベルを与えるのにある投与経路で有効な組換えアデノウイルスの量で投与することができる。抗原を含むC68ベクターは、アジュバントと同時投与することができる。アジュバントは、ベクターとは別のモノマーの出会ってもよく(例えばミョウバン)または特にアジュバントがタンパク質である場合にはベクター内にコードされてもよい。アジュバントは当該技術分野では周知のものである。
【0349】
従来の薬学的に許容される投与経路としては、これらに限定されるものではないが、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、直腸内、経口、及び他の非経口の投与経路が挙げられる。投与経路は必要に応じて組み合わせるか、または免疫原もしくは疾患に応じて調節することができる。例えば、狂犬病の予防では、皮下、気管内、及び鼻腔内経路が好ましい。投与経路は、主として治療される疾患の性質によって決められる。
【0350】
抗原(複数可)の発現レベルを観察することにより、ブースターの必要性(ある場合)を決定することができる。例えば、血清中の抗体力価の評価の後、必要に応じてブースター免疫が望ましい場合がある。
【0351】
VI.治療及び製造方法
本明細書に開示する方法を用いて特定された複数の抗原などの1つ以上の抗原を対象に投与することにより、対象の腫瘍特異的な免疫応答を刺激し、腫瘍に対するワクチン接種を行い、対象のがんの症状を治療及び/または緩和する方法も提供される。
【0352】
本明細書に開示する方法を用いて特定された複数の抗原などの1つ以上の抗原を対象に投与することにより、対象の感染症生物特異的な免疫応答を刺激し、感染症生物に対するワクチン接種を行い、対象の感染症生物に関連した感染症の症状を治療及び/または緩和する方法も提供される。
【0353】
いくつかの実施形態では、対象は、がんと診断されているかまたはがんを発症するリスクを有する。対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、または腫瘍特異的な免疫応答が望ましい任意の動物とすることができる。腫瘍は、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部腫瘍、膵臓がん、脳腫瘍、黒色腫、及び他の組織臓器の腫瘍などの任意の固形腫瘍、ならびに、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、T細胞リンパ球性白血病、及びB細胞リンパ腫を含むリンパ腫及び白血病などの血液腫瘍であり得る。
【0354】
いくつかの態様において、対象は、年齢、地理的/移動、及び/または仕事に関連した感染症の高いリスクまたは素因など、感染症を診断されているかまたは感染症のリスクを有する、または季節性及び/または新規の疾患感染のリスクを有する。
【0355】
抗原は、CTL応答を刺激するのに充分な量で投与することができる。抗原は、T細胞応答を刺激するのに充分な量で投与することができる。抗原は、B細胞応答を刺激するのに充分な量で投与することができる。
【0356】
抗原は、単独で、または他の治療薬と併用して投与することができる。治療薬は、抗ウイルス剤または抗生剤などの感染症生物を標的とするものを含みうる。
【0357】
さらに、対象に、チェックポイント阻害剤などの抗免疫抑制/免疫刺激剤をさらに投与することができる。例えば、対象に、抗CTLA抗体または抗PD-1または抗PD-L1をさらに投与することができる。CTLA4またはPD-L1の遮断は、患者のがん性細胞に対する免疫応答を高めることができる。詳細には、CTLA4の遮断は、ワクチン接種プロトコールに従った場合に効果的であることが示されている。
【0358】
ワクチン組成物中に含まれる各抗原の最適量及び最適な投与レジメンを決定することができる。例えば、抗原またはそのバリアントは、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射用に製剤化することができる。注射の方法としては、皮下(s.c.)、皮内(i.d.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、及び静脈内(i.v.)が挙げられる。DNAまたはRNAの注射方法としては、皮内(i.d.)、筋肉内(i.m.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)及び静脈内(i.v.)が挙げられる。ワクチン組成物の他の投与方法は、当業者には周知のものである。
【0359】
ワクチンは、組成物中に存在する抗原の選択、数、及び/または量が、組織、がん、感染症、及び/または患者に特異的であるように適合することができる。例えば、ペプチドの正確な選択は、特定の親タンパク質の発現パターンによって導くか、または患者の変異もしくは疾患状態によって導くことができる。この選択は、特定の種類のがん、特定の感染症(例えば、対象が感染している、または感染のリスクのある特定の感染症単離物/株)、疾患の状態、ワクチン接種の目的(例えば、予防的かまたは進行中の疾患を標的としているか)、初期の治療レジメン、患者の免疫状態、及び、言うまでもなく、患者のHLAハロタイプに依存しうる。さらに、ワクチンは、特定の患者の個人的ニーズにしたがって、個別化された成分を含むことができる。例としては、特定の患者における抗原の発現にしたがって抗原の選択を変えること、または治療の第1ラウンドもしくはスキーム後の二次的治療を調整することが挙げられる。
【0360】
抗原ワクチンの投与を行うための患者は、様々な診断方法、例えば、下記でさらに述べる患者選択方法の使用により特定することができる。患者選択では、1つ以上の遺伝子の変異または発現パターンを特定することを行うことができる。患者選択では、進行中の感染の感染症を特定することを行うことができる。患者選択では、感染症による感染のリスクを特定することを行うことができる。場合により、患者選択では、患者のハプロタイプを特定することを行う。様々な患者選択方法を並行して行うことができ、例えば、シークエンシング診断によって患者の変異及びハプロタイプの両方を特定することができる。様々な患者選択方法を順次行うこともでき、例えば、1つの診断検査で変異を特定し、別の診断検査で患者のハプロタイプを特定し、その場合、各検査は、同じ(例えば、両方ともハイスループットシークエンシング)か、または異なる(例えば、一方がハイスループットシークエンシングで他方がサンガーシークエンシング)診断方法であってよい。
【0361】
組成物ががんまたは感染症のワクチンとして使用されるためには、正常組織で高量で発現される類似の正常な自己ペプチドを含む抗原が、本明細書に記載される組成物中で避けられるかまたは低量で存在してもよい。これに対して、患者の腫瘍または感染細胞が特定の抗原を高量で発現していることが分かっている場合、このがんまたは感染の治療用のそれぞれの医薬組成物を高量で存在させることができ、及び/またはこの特定の抗原またはこの抗原の経路に対して特異的な複数の抗原が含まれてもよい。
【0362】
抗原を含む組成物を、既にがんまたは感染症に罹患している個人に投与することができる。治療用途では、組成物は、腫瘍抗原または感染症生物抗原に対する効果的なCTLを刺激し、症状及び/または合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するうえで充分な量で患者に投与される。これを実現するのに適した量は、「治療有効用量」として定義される。この目的で有効な量は、例えば、組成物、投与形態、治療される疾患のステージ及び重症度、患者の体重及び一般的状態、ならびに処方医師の判断によって決められる。組成物は、特に、がんが転移したかまたは感染症生物が誘導された臓器障害及び/または他の免疫病態を有する場合に、重篤な病状、すなわち命に関わる、または潜在的に命に関わる状況で一般的に用いることができる。そのような場合、外来物質及び抗原の相対的非毒性特性の最小化を考慮すると、治療にあたる医師によってこれらの組成物の大幅な過剰量を投与することが可能であり、望ましいと感じられるものと考えられる。
【0363】
治療用途では、腫瘍の検出もしくは外科的除去時、または感染の検出もしくは治療時に投与を開始することができる。これに続いて、少なくとも症状が実質的に消失し、その後の所定の期間、または免疫が得られたとみなされる(例えば、メモリーB細胞もしくはT細胞集団、または抗原特異的B細胞もしくは抗体が産生される)まで、ブースター用量を投与することができる。
【0364】
治療処置用の医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)は、非経口、局所(topical)、経鼻、経口、局所(local)投与を意図している。医薬組成物は、非経口的に、例えば、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内投与することができる。組成物は、腫瘍に対する局所免疫応答を刺激するために外科的切除部位に投与することができる。組成物は、対象の特定の感染組織及び/または細胞を標的として投与することができる。本明細書では、抗原の溶液を含む非経口投与用の組成物を開示し、ワクチン組成物は許容される担体、例えば水性担体中に溶解または懸濁される。例えば、水、緩衝された水、0.9%生理食潜水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などの様々な水性担体を使用することができる。これらの組成物は従来の周知の滅菌法によって滅菌するか、または滅菌濾過することができる。得られた水溶液はそのまま使用されるようにパッケージングされてもよく、または凍結乾燥し、凍結乾燥した製剤を投与に先立って滅菌溶液と加え合わせることができる。組成物は、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなどのpH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤、湿潤剤など、生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質を含むことができる。
【0365】
抗原は、リンパ系組織などの特定の細胞組織に抗原をターゲティングするリポソームによって投与することもできる。リポソームは、半減期を増大させるうえでも有用である。リポソームとしては、エマルジョン、フォーム、ミセル、不溶性単分子膜、液晶、リン脂質分散液、ラメラ層などが挙げられる。これらの製剤中では、送達させようとする抗原を、単独で、または例えばCD45抗原に結合するモノクローナル抗体などのリンパ系細胞に多くみられる受容体に結合する分子、または他の治療用もしくは免疫原性組成物と共にリポソームの一部として取り込ませる。したがって、所望の抗原で充填されたリポソームをリンパ系細胞の部位に誘導することができ、そこでリポソームは選択された治療用/免疫原性組成物を送達する。リポソームは、一般的に中性及び負に帯電したリン脂質とコレステロールのようなステロールとを含む標準的な小胞形成脂質から形成することができる。脂質の選択は、例えば、リポソームのサイズ、酸不安定性、及び血流中でのリポソームの安定性を考慮して一般的に導かれる。例えば、Szoka et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9;467 (1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、及び同第5,019,369号に記載されるようなリポソームを調製するための様々な方法がある。
【0366】
免疫細胞にターゲティングするため、リポソームに組み込むリガンドは、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定因子に特異的な抗体またはそのフラグメントを含むことができる。リポソーム懸濁液を、とりわけ、投与方法、送達されるペプチド、及び治療される疾患のステージに応じて異なる用量で静脈内、局所的(locally)、局所的(topically)といった要領で投与することができる。
【0367】
治療または免疫化の目的では、ペプチド及び場合により本明細書に記載されるペプチドの1つ以上をコードする核酸患者に投与してもよい。核酸を患者に投与するための多くの方法が便宜よく用いられる。例えば、核酸は「ネイキッドDNA」として直接投与することができる。このアプローチは、例えば、Wolff et al.,Science 247:1465-1468 (1990)、ならびに米国特許第5,580,859号及び同第5,589,466号に記載されている。核酸は、例えば、米国特許第5,204,253号に記載されるような弾道送達を用いて投与することもできる。DNAのみで構成された粒子を投与することもできる。あるいは、DNAを金粒子のような粒子に付着させてもよい。核酸配列を送達するためのアプローチとしては、エレクトロポレーションを伴う、または伴わないウイルスベクター、mRNAベクター、及びDNAベクターが挙げられる。
【0368】
核酸は、カチオン性脂質などのカチオン性化合物と複合体化して送達させることもできる。脂質により媒介される遺伝子送達法は、例えば、9618372WOAWO96/18372、9324640WOAWO93/24640、Mannino & Gould-Fogerite,BioTechniques 6(7): 682-691(1988)、米国特許第5,279,833号Rose米国特許第5,279,833号、9106309WOAWO91/06309、及びFelgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413-7414(1987)に記載されている。
【0369】
抗原は、ワクシニア、鶏痘、自己複製アルファウイルス、マラバウイルス、アデノウイルス(例えば、Tatsis et al.,Adenoviruses,Molecular Therapy(2004)10,616-629を参照)、または、第2、第3、またはハイブリッド第2/第3世代レンチウイルス及び特定の細胞タイプまたは受容体をターゲティングするように設計された任意の世代の組換えレンチウイルス(例えば、Hu et al.,Immunization Delivered by Lentiviral Vectors for Cancer and Infectious Diseases,Immunol Rev.(2011)239(1):45-61,Sakuma et al.,Lentiviral vectors:basic to translational,Biochem J.(2012)443(3):603-18,Cooper et al.,Rescue of splicing-mediated intron loss maximizes expression in lentiviral vectors containing the human ubiquitin C promoter,Nucl.Acids Res.(2015)43(1):682-690,Zufferey et al.,Self-Inactivating Lentivirus Vector for Safe and Efficient In Vivo Gene Delivery,J.Virol.(1998)72(12):9873-9880を参照)などのウイルスベクターに基づいたワクチンプラットフォームに含まれるようにしてもよい。上記に述べたウイルスベクターに基づくワクチンプラットフォームのパッケージングキャパシティーに応じて、この手法は1つ以上の抗原ペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を送達することができる。配列は、変異が導入されていない配列を隣接させてもよく、リンカーによって隔てられてもよく、または細胞内区画をターゲティングする1つ以上の配列がその前に配置されてもよい(例えば、Gros et al.,Prospective identification of neoantigen-specific lymphocytes in the peripheral blood of melanoma patients,Nat Med.(2016)22(4):433-8,Stronen et al.,Targeting of cancer neoantigens with donor-derived T cell receptor repertoires,Science.(2016)352(6291):1337-41,Lu et al.,Efficient identification of mutated cancer antigens recognized by T cells associated with durable tumor regressions,Clin Cancer Res.(2014)20(13):3401-10を参照)。宿主に導入されると、感染細胞は抗原を発現し、それによりペプチド(複数可)に対する宿主の免疫(例えば、CTL)応答を刺激する。免疫化プロトコールにおいて有用なワクシニアベクター及び方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターとしてBCG(Bacille Calmette Guerin、カルメット・ゲラン桿菌)がある。BCGベクターは、Stover et al. (Nature 351:456-460 (1991))に記載されている。例えば、チフス菌(Salmonella typhi)ベクターなどの治療薬の投与または抗原の免疫化において有用な広範な他のワクチンベクターが、本明細書の記載から当業者には明らかとなろう。
【0370】
核酸を投与する手段の1つは、1つまたは複数のエピトープコード核酸配列をコードしたミニジーンコンストラクトを使用することである。ヒト細胞で発現させるための選択されたCTLエピトープをコードしたDNA配列(ミニジーン)を作製するには、エピトープのアミノ酸配列を逆翻訳する。ヒトのコドン使用表を用いて各アミノ酸のコドン選択の手引きとする。これらのエピトープコードDNA配列を直接連結して、連続したポリペプチド配列を作製する。発現及び/または免疫原性を最適化するため、さらなるエレメントをミニジーンの設計に組み込むことができる。逆翻訳してミニジーン配列に組み込むことができるアミノ酸配列の例としては、ヘルパーTリンパ球、エピトープ、リーダー(シグナル)配列、及び小胞体保留シグナルが挙げられる。さらに、CTLエピトープのMHCによる提示は、合成(例えば、ポリアラニン)または天然のフランキング配列をCTLエピトープに隣接して組み込むことによって向上させることができる。ミニジーン配列は、ミニジーンの+鎖と-鎖をコードしたオリゴヌクレオチドをアセンブルすることによりDNAに変換される。重複するオリゴヌクレオチド(30~100塩基の長さ)を周知の方法を用いて合成、リン酸化、精製し、適当な条件下でアニールする。オリゴヌクレオチドの末端同士を、T4 DNAリガーゼを用いてつなげる。次いで、CTLエピトープポリペプチドをコードしたこの合成ミニジーンを所望の発現ベクターにクローニングする。
【0371】
精製したプラスミドDNAは、様々な製剤を用いて注射用に調製することができる。これらのうちで最も簡単なものは、凍結乾燥したDNAを無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で戻すことである。様々な方法がこれまでに記載されており、新たな技術も利用可能となる可能性がある。上記に述べたように、核酸はカチオン性脂質と便宜よく配合される。さらに、糖脂質、膜融合性リポソーム、ペプチド及びPINC(protective,interactive,non-condensing、保護的、相互作用性、非凝縮性)と総称される化合物を、精製したプラスミドDNAと複合体化することで安定性、筋肉内の分散性、または特定の臓器もしくは細胞タイプへのトラフィッキングなどの変数に影響を及ぼすこともできる。
【0372】
本明細書に開示される方法の各工程を実行することと、複数の抗原または複数の抗原のサブセットを含むワクチンを生産することとを含む、ワクチンを製造する方法も開示される。
【0373】
本明細書に開示される抗原は、当該技術分野における周知の方法を用いて製造することができる。例えば、本明細書に開示される抗原またはベクター(例えば、1つ以上の抗原をコードする少なくとも1つの配列を含むベクター)の製造方法は、抗原またはベクターをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、抗原またはベクターを発現するのに適した条件下で培養することと、抗原またはベクターを精製することと、を含むことができる。標準的な精製方法としては、クロマトグラフィー法、電気泳動法、免疫学的方法、沈殿、透析、濾過、濃縮、及びクロマト分画法が挙げられる。
【0374】
宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、酵母、またはHEK293細胞を含みうる。宿主細胞は、本明細書に開示される抗原またはベクターをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドで形質転換することができ、場合により、単離されたポリヌクレオチドは、抗原またはベクターをコードする少なくとも1つの核酸配列に機能的に連結されたプロモーター配列を含む。特定の実施形態では、単離されたポリペプチドはcDNAであってよい。
【0375】
VII.抗原の使用及び投与
ワクチン接種プロトコールを用いて対象に1つ以上の抗原を投与することができる。プライミングワクチン及びブースターワクチンを用いて対象への投与を行うことができる。
【0376】
プライミングワクチンは、C68(例えば、配列番号1または2に示される配列)またはSAM(例えば、配列番号3または4に示される配列)に基づいたものとすることができる。ブースターワクチンも、C68(例えば、配列番号1または2に示される配列)またはSAM(例えば、配列番号3または4に示される配列)に基づいたものとすることができる。
【0377】
プライミング/ブースター手法における各ベクターは、通常、抗原を含むカセットを含んでいる。カセットは、各抗原を通常取り囲む天然の配列、またはAAYなどの他の非天然のスペーサー配列などのスペーサーによって隔てられた約1~50個の抗原を含むことができる。カセットは、破傷風トキソイド抗原などのMHCII抗原、及びユニバーサルなクラスII抗原とみなされるPADRE抗原を含んでもよい。カセットは、ユビキチンターゲティング配列などのターゲティング配列を含んでもよい。さらに、各ワクチン用量は、免疫調節剤と組み合わせて(例えば、同時、その前、またはその後で)対象に投与することができる。各ワクチン用量は、チェックポイント阻害剤(CPI)と組み合わせて(例えば、同時、その前、またはその後で)対象に投与することができる。CPIは、抗体またはその抗原結合部分など、CTLA4、PD1、及び/またはPDL1を阻害するものを含むことができる。かかる抗体としては、トレメリムマブまたはデュルバルマブを挙げることができる。各ワクチン用量は、IL-2、IL-7、IL-12(IL-12 p35、p40、p70、及び/またはp70融合コンストラクトを含む)、IL-15、またはIL-21などのサイトカインと組み合わせて(例えば、同時、その前、またはその後で)対象に投与することができる。各ワクチン用量は、修飾サイトカイン(例えば、pegIL-2)と組み合わせて(例えば、同時、その前、またはその後で)対象に投与することができる。
【0378】
プライミングワクチンは、対象に注射(例えば筋肉内に)することができる。用量ごとに両側性注射を用いることができる。例えば、ChAdV68(C68)の1回以上の注射を用いることができ(例えば、総用量1×1012個のウイルス粒子)、0.001~1ugのRNAの範囲から選択される低ワクチン用量、詳細には0.1もしくは1ugのSAMベクターの1回以上の注射を用いることができ、または、1~100ugのRNAの範囲から選択される高ワクチン用量、詳細には10もしくは100ugのSAMベクターの1回以上の注射を用いることができる。
【0379】
プライムワクチン接種後に、ワクチンブースト(ブースターワクチン)を注射(例えば筋肉内に)することができる。ブースターワクチンは、プライム後の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間ごと、例えば、4週間ごと、及び/または8週間ごとに投与することができる。用量ごとに両側性注射を用いることができる。例えば、ChAdV68(C68)の1回以上の注射を用いることができ(例えば、総用量1×1012個のウイルス粒子)、0.001~1ugのRNAの範囲から選択される低ワクチン用量、詳細には0.1もしくは1ugのSAMベクターの1回以上の注射を用いることができ、または、1~100ugのRNAの範囲から選択される高ワクチン用量、詳細には10もしくは100ugのSAMベクターの1回以上の注射を用いることができる。
【0380】
抗CTLA-4(例えばトレメリムマブ)を対象に投与することもできる。例えば、抗CTLA4を筋肉内ワクチン注射(ChAdV68プライムまたはSAM低用量)の部位の近くに皮下投与することで同じリンパ節内に確実に送り込むことができる。トレメリムマブは、CTLA-4の選択的ヒトIgG2mAb阻害剤である。標的抗CTLA-4(トレメリムマブ)皮下用量は、通常、70~75mg(詳細には75mg)であり、例えば、1~100mgまたは5~420mgの用量範囲である。
【0381】
特定の場合では、デュルバルマブ(MEDI4736)などの抗PD-L1抗体を使用することができる。デュルバルマブは、PD-1及びCD80へのPD-L1の結合を阻害する選択的な高親和性のヒトIgG1 mAbである。デュルバルマブは一般的に4週間ごとに20mg/kgが静脈内投与される。
【0382】
免疫モニタリングを、ワクチン投与の前、その間、及び/またはその後に行うことができる。かかるモニタリングは、他のパラメータの中でもとりわけ、安全性及び有効性についての情報を与えることができる。
【0383】
免疫モニタリングを行うには、PBMCが一般的に用いられる。PBMCは、プライムワクチン接種の前、及びプライムワクチン接種の後(例えば、4週間及び8週間)に単離することができる。PBMCは、ブーストワクチン接種の直前、及び各ブーストワクチン接種の後(例えば、4週間及び8週間)に採取することができる。
【0384】
T細胞応答及びB細胞応答などの免疫応答を、免疫モニタリングプロトコールの一環として評価することができる。例えば、本明細書に記載されるワクチン組成物が免疫応答を刺激する能力を監視及び/または評価することができる。本明細書で使用する「免疫応答を刺激する」とは、免疫応答を開始させること(例えば、ナイーブな対象において免疫応答の開始を刺激するプライミングワクチン)、または免疫応答の増強(例えば、プライミングワクチンにより開始された既存の免疫応答などの抗原に対する既存の免疫応答を有する対象における免疫応答の増強を刺激するブースターワクチン)などの免疫応答のあらゆる増加を指す。T細胞応答は、ELISpot、細胞内サイトカイン染色、サイトカイン分泌、及び細胞表面捕捉、T細胞増殖、MHCマルチマー染色、または細胞毒性アッセイなどの当業者には周知の1つ以上の方法を用いて測定することができる。ワクチンにコードされたエピトープに対するT細胞応答は、ELISpotアッセイを用いて、IFN-γなどのサイトカインの誘導を測定することによりPBMCから監視することができる。ワクチンにコードされたエピトープに対する特異的なCD4またはCD8 T細胞応答は、フローサイトメトリーを用いて、IFN-γなどの細胞内または細胞外で捕捉されたサイトカインの誘導を測定することによりPBMCから監視することができる。ワクチンにコードされたエピトープに対する特異的なCD4またはCD8 T細胞応答は、MHCマルチマー染色を用い、エピトープ/MHCクラスI複合体に対して特異的なT細胞受容体を発現するT細胞集団を測定することによりPBMCから監視することができる。ワクチンにコードされたエピトープに対する特異的なCD4またはCD8 T細胞応答は、3Hチミジン、ブロモデオキシウリジン、及びカルボキシフルオロセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)の取り込み後に、T細胞集団のエクスビボ増殖を測定することによりPBMCから監視することができる。ワクチンにコードされたエピトープに特異的なPBMC由来T細胞の抗原認識能及び溶解活性は、クロム放出アッセイまたは代替的な比色細胞毒性アッセイにより機能的に評価することができる。
【0385】
B細胞応答は、B細胞の分化(例えば、形質細胞への分化)、B細胞または形質細胞の増殖、B細胞または形質細胞の活性化(例えば、CD80またはCD86などの共刺激マーカーの増加)、抗体のクラススイッチ、及び/または抗体産生(例えば、ELISA)を判定するために用いられるアッセイなど、当該技術分野では周知の1つ以上の方法を用いて測定することができる。抗体も中和能力について評価するなど、機能について評価することができる。
【0386】
VIII.HLAペプチドの単離及び検出
HLAペプチド分子の単離を、組織試料の溶解及び可溶化後に古典的な免疫沈降(IP)法を用いて行った(55~58)。清澄化したライセートをHLA特異的IPに使用した。
【0387】
免疫沈降を、抗体がHLA分子に特異的である、ビーズにカップリングした抗体を用いて行った。汎クラスI HLA免疫沈降のためには、汎クラスI CR抗体を使用し、クラスII HLA-DRのためには、HLA-DR抗体を使用する。抗体を、一晩インキュベーション中に、NHS-セファロースビーズに共有結合で付着させる。共有結合性の付着後、ビーズを洗浄して、IPのために等分した(59,60)。免疫沈降は、ビーズに共有結合されていない抗体を用いて行うこともできる。一般的に、これは、抗体をカラムに保持するためにProteinA及び/またはProteinGでコーティングしたセファロースまたは磁気ビーズを使用して行われる。MHC/ペプチド複合体を選択的に濃縮するために使用することができるいくつかの抗体を下記に示す。
【0388】
清澄化した組織溶解物を、免疫沈降のために抗体ビーズに添加する。免疫沈降後、ビーズを溶解物から除去し、追加的なIPを含む追加的な実験のために、溶解物を保存する。標準的な技法を用いて、IPビーズを洗浄して非特異的結合を除去し、HLA/ペプチド複合体をビーズから溶出する。分子量スピンカラムまたはC18分画を用いて、タンパク質構成要素をペプチドから除去する。結果として生じたペプチドを、SpeedVac蒸発によって乾燥させ、いくつかの場合には、MS解析の前に-20℃で保存する。HLA IPは、フィルター底を有するプレートを用いた96ウェルプレートフォーマットで行うこともできる。このプレートを使用することで、複数のIPを並行して行うことができる。
【0389】
乾燥したペプチドを、逆相クロマトグラフィーに適しているHPLC緩衝液において再構成し、Fusion Lumos質量分析計(Thermo)における勾配溶出のために、C-18マイクロキャピラリーHPLCカラム上にロードする。ペプチド質量/電荷(m/z)のMS1スペクトルを、Orbitrap検出器において高解像度で収集し、その後、MS2低解像度スキャンを、選択イオンのHCDフラグメンテーション後にイオントラップ検出器において収集した。追加的に、MS2スペクトルは、CIDもしくはETDフラグメンテーション法、または、ペプチドのより大きなアミノ酸カバレッジを獲得するための3つの技法の任意の組み合わせのいずれかを用いて、取得することができる。MS2スペクトルはまた、Orbitrap検出器において高解像度質量精度で測定することもできる。
【0390】
各解析由来のMS2スペクトルを、Comet(61,62)を用いてタンパク質データベースに対して検索し、ペプチド特定を、Percolator(63~65)を用いてスコア化する。PEAKS studio(Bioinformatics Solutions Inc.)及び他のサーチエンジンを用いてさらなるシークエンシングを行うか、またはスペクトルマッチング及びデノボシークエンシング(97)を含むシークエンシング法を用いることができる。
【0391】
VIII.B.1.包括的HLAペプチドシークエンシングを支持するMS検出限界試験
ペプチドYVYVADVAAKを使用し、LCカラムにロードした異なる量のペプチドを用いて検出限界を決定した。試験したペプチドの量は、1pmol、100fmol、10fmol、1fmol、及び100amolとした。(表1)結果を
図24A及び24Bに示す。これらの結果は、最低検出限界(LoD)がアトモル範囲(10
-18)内にあること、ダイナミックレンジは5桁にわたること、及び信号対雑音比が低フェムトモル範囲(10
-15)でのシークエンシングに充分と考えられることを示している。
【0392】
【0393】
IX.提示モデル
提示モデルを用いて、患者におけるペプチド提示の可能性を特定することができる。異なる提示モデルは当業者には周知のものであり、例えば、そのような提示モデルは、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容をそれぞれ援用する米国特許第10,055,540号、米国特許出願公開第US20200010849A1号及び同第US20110293637、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号、同第WO/2018/208856号、及び同第WO2016187508号により詳細に記載されている。
【0394】
X.訓練モジュール
訓練モジュールを用いて、ペプチド配列がそのペプチド配列に関連したMHCアレルによって提示される可能性を生成する1つ以上の提示モデルを訓練データセットに基づいて構築することができる。様々な訓練モジュールが当業者には周知であり、例えば、そのような提示モデルは、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容をそれぞれ援用する米国特許第10,055,540号、米国特許出願公開第US20200010849A1、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号、及び同第WO/2018/208856号により詳細に記載されている。訓練モジュールは、アレル毎ベースでペプチドの提示可能性を予測するための予測モデルを構築することができる。訓練モジュールは、2つ以上のMHCアレルが存在する複数アレル場面においてペプチドの提示可能性を予測するための提示モデルも構築することができる。
【0395】
XI.予測モジュール
予測モジュールを用いて配列データを受け取り、提示モデルを用いて配列データ中の候補抗原を選択することができる。具体的には、配列データは、患者の腫瘍組織細胞、患者の感染細胞、または感染症生物自体から抽出されたDNA配列、RNA配列、及び/またはタンパク質配列であってよい。予測モジュールは、患者の正常組織細胞から抽出された配列データをその患者の腫瘍組織細胞から抽出された配列データと比較して1つ以上の変異を有する部分を特定することによって、変異したペプチド配列である候補新生抗原を特定することができる。予測モジュールは、例えば、患者の正常組織の細胞から抽出された配列データを、患者の感染細胞から抽出された配列データと比較して1つ以上の感染症生物関連抗原を含む部分を特定することにより、病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドである候補抗原を特定することができる。予測モジュールは、患者の正常組織細胞から抽出された配列データをその患者の腫瘍組織細胞から抽出された配列データと比較して不適切に発現している候補抗原を特定することにより、正常細胞または組織と比較して腫瘍細胞またはがん性組織で発現が変化している候補抗原を特定することができる。予測モジュールは、患者の正常組織の細胞から抽出された配列データをその患者の感染組織の細胞から抽出された配列データと比較して、発現される候補抗原を特定する(例えば、感染症で特異的に発現されるポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドを特定する)ことにより、正常細胞または組織と比較して感染細胞または感染組織で発現される候補抗原を特定することができる。
【0396】
提示モジュールは、1つ以上の提示モデルを処理されたペプチド配列に適用してペプチド配列の提示可能性を推定することができる。具体的には、予測モジュールは、提示モデルを候補抗原に適用することによって、腫瘍のHLA分子または感染細胞のHLA分子上に提示される可能性が高い1つ以上の候補抗原ペプチド配列を選択することができる。一実現形態では、提示モジュールは、あらかじめ決定された閾値を上回る推定提示可能性を有する候補抗原配列を選択する。別の実現形態では、提示モデルは、最も高い推定提示可能性を有するN個の候補抗原配列を選択する(Nは、一般的に、ワクチン中で送達することができるエピトープの最大数である)。所定の患者について選択された候補抗原を含むワクチンを患者に注射して免疫応答を刺激することができる。
【0397】
XI.B.カセット設計モジュール
XI.B.1 概要
カセット設計モジュールを用いて、患者に注射するために選択された候補ペプチドに基づいてワクチンカセット配列を生成することができる。様々なカセット設計モジュールが当業者には周知であり、例えば、そのようなカセット設計訓練モジュールが、あらゆる目的で本明細書に参照によりそれらの全容をそれぞれ援用する米国特許第10,055,540号、米国特許出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号、及び同第WO/2018/208856号により詳細に記載されている。
【0398】
治療エピトープのセットは、所定の閾値を上回る提示可能性(提示可能性は、提示モデルにより決定される)に関連付けられた予測モジュールによって決定された選択されたペプチドに基づいて生成することができる。しかしながら、他の実施形態では、治療エピトープのセットは、多くの方法の任意の1つ以上(単独または組み合わせ)に基づいて、例えば、患者のHLAクラスIまたはクラスIIアレルに対する結合親和性もしくは予測される結合親和性、患者のHLAクラスIまたはクラスIIアレルに対する結合安定性もしくは予測される結合安定性、ランダムサンプリングなどに基づいて、生成することができる。
【0399】
治療エピトープはそれ自体が選択されたペプチドに相当してもよい。治療エピトープは、選択されたペプチド以外にC及び/またはN末端フランキング配列を含むこともできる。N及びC末端フランキング配列は、その由来源タンパク質との関連において治療ワクチンエピトープの天然のN及びC末端フランキング配列であってよい。治療エピトープは固定長のエピトープを表してもよい。治療エピトープは、可変長のエピトープを表してもよく、エピトープの長さは例えばCまたはN末端フランキング配列の長さによって異なりうる。例えば、C末端フランキング配列及びN末端フランキング配列は、それぞれ2~5残基の異なる長さを有してよく、これによりエピトープの16種類の可能な選択肢が与えられる。
【0400】
カセット設計モジュールは、カセット内の2個の治療エピトープ間の連結部にまたがるジャンクションエピトープの提示を考慮することによってカセット配列を生成することもできる。ジャンクションエピトープは、カセット内で治療エピトープ及びリンカー配列を連結するプロセスによってカセット内に生じる新規な非自己であるが無関係なエピトープ配列である。ジャンクションエピトープの新規な配列は、カセットの治療エピトープ自体とは異なる。
【0401】
カセット設計モジュールは、ジャンクションエピトープがその患者において提示される可能性を低下させるカセット配列を生成することができる。具体的には、カセットが患者に注射される際、ジャンクションエピトープは、患者のHLAクラスIまたはHLAクラスIIアレルによって提示される可能性を有し、それぞれCD8またはCD4 T細胞応答を刺激する。かかる応答は、ジャンクションエピトープに対する反応性を有するT細胞は治療効果を有さないことから望ましくなく、抗原競合によりカセット内の選択された治療エピトープに対する免疫応答を消失させる可能性がある76。
【0402】
カセット設計モジュールは、1つ以上の候補カセットについて繰り返し処理を行って、そのカセット配列に関連付けられたジャンクションエピトープの提示スコアが数値閾値を下回るカセット配列を決定することができる。ジャンクションエピトープ提示スコアは、カセット内のジャンクションエピトープの提示可能性に関連付けられた量であり、ジャンクションエピトープ提示スコアの値が高いほど、カセットのジャンクションエピトープがHLAクラスIまたはHLAクラスIIまたはその両方によって提示されやすいことを示す。
【0403】
一実施形態では、カセット設計モジュールは、候補カセット配列間で最も低いジャンクションエピトープ提示スコアに関連付けられたカセット配列を決定することができる。
【0404】
カセット設計モジュールは、1つ以上の候補カセット配列について繰り返し処理を行い、各候補カセットのジャンクションエピトープ提示スコアを決定し、閾値を下回るジャンクションエピトープ提示スコアに関連付けられた最適なカセット配列を特定することができる。
【0405】
カセット設計モジュールは、候補カセット配列内のジャンクションエピトープのいずれかが、ワクチンを設計しようとする特定の患者の自己エピトープであるかどうかを識別するために1つ以上の候補カセット配列をさらに確認することができる。これを行うには、カセット設計モジュールは、BLASTなどの既知のデータベースに対してジャンクションエピトープを確認する。一実施形態では、カセット設計モジュールは、ジャンクション自己エピトープを防止するカセットを設計するように構成することができる。
【0406】
カセット設計モジュールは、ブルートフォースアプローチを実行して、すべての、または大部分の可能な候補カセット配列について繰り返し処理を行うことで最小のジャンクションエピトープ提示スコアを有する配列を選択することができる。しかしながら、かかる候補カセットの数は、ワクチンの容量が大きくなるにしたがって途方もなく大きくなりうる。例えば、20個のエピトープのワクチン容量では、カセット設計モジュールは、最小のエピトープ提示スコアを有するカセットを決定するために約1018個の可能な候補カセットについて繰り返し処理を行わなければならない。この決定は、カセット設計モジュールが妥当な長さの時間内で患者に対するワクチンを生成するには計算の負荷(必要とされる計算処理リソースの点で)が大きくなり、時として処理不能となりうる。さらに、各候補カセットについて可能なジャンクションエピトープを処理することはよりいっそうの負荷となりうる。したがって、カセット設計モジュールは、ブルートフォースアプローチにおける候補カセット配列の数よりも大幅に小さい候補カセット配列の数について繰り返し処理を行う方法に基づいてカセット配列を選択することができる。
【0407】
カセット設計モジュールは、ランダムに、または少なくとも疑似ランダムに生成された候補カセットを生成し、所定の閾値を下回るジャンクションエピトープ提示スコアに関連付けられた候補カセットをカセット配列として選択することができる。さらに、カセット設計モジュールは、最小のジャンクションエピトープ提示スコアを有するサブセットからの候補カセットをカセット配列として選択することができる。例えば、カセット設計モジュールは、20個の選択されたエピトープのセットについて約100万の候補カセットのサブセットを生成し、最小のジャンクションエピトープ提示スコアを有する候補カセットを選択することができる。ランダムカセット配列のサブセットを生成し、このサブセットからジャンクションエピトープ提示スコアの低いカセット配列を選択することはブルートフォースアプローチと比べて最適とはいえないが、これは、必要な計算リソースが大幅に少なく、そのため、その実施が技術的に可能である。さらに、このより効率的な手法に対してブルートフォース法を行うことは、ジャンクションエピトープ提示スコアのわずかな、またはさらには無視される程度の改善しかもたらされない可能性があるため、リソースの配分の観点からはあまり価値がない。カセット設計モジュールは、カセットのエピトープ配列を非対称巡回セールスマン問題(TSP)として定式化することにより、改善されたカセット構成を決定することができる。ノードのリスト、及び各ノードのペア間の距離が与えられた場合、TSPは、各ノードをちょうど1回ずつ訪問して元のノードに戻るための最小の総距離に関連付けられたノードの配列を決定する。例えば、互いの間の距離が既知である都市A、B、及びCが与えられた場合、TSPの解は、可能な巡回路のうちで各都市をちょうど1回ずつ訪問するのに移動する総距離が最小となるような都市の閉じた配列を生成する。TSPの非対称バージョンは、ノードのペア間の距離が非対象である場合の最適なノードの配列を決定する。例えば、ノードAからノードBに移動するための「距離」は、ノードBからノードAに移動するための「距離」と異なる場合がある。非対称TSPを用いて改善された最適カセットについて解くことにより、カセット設計モジュールは、カセットの各エピトープ間のジャンクションにわたって低い提示スコアを与えるカセット配列を見つけることができる。非対称TSPの解は、カセットの各ジャンクションにわたったジャンクションエピトープ提示スコアを最小とするために各エピトープが連結されなければならない順序に対応した治療エピトープの配列を示す。このアプローチによって決定されたカセット配列は、ジャンクションエピトープの提示が大幅に低い配列を与える一方で、特に生成される候補カセット配列の数が大きい場合に、必要とされる計算リソースがランダムサンプリングアプローチよりも大幅に少なくなる可能性がある。異なる計算手法及び最適化カセット設計の比較の例示的な例が、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容をそれぞれ援用する米国特許第10,055,540号、米国特許出願公開第US20200010849A1、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号、及び同第WO/2018/208856号により詳細に記載されている。
【0408】
共有抗原ワクチンに含めるための共有(新生)抗原の配列及びかかるワクチンによる治療に適当な患者は、例えば、あらゆる目的で本明細書に参照により援用する米国特許出願第17/058,128号に記載されるように当業者が選択することができる。候補共有(新生)抗原の質量分析(MS)による検証を、選択プロセスの一貫として行うことができる。
【0409】
XIII.例示的なコンピュータ
本明細書に記載される計算方法のいずれにおいてもコンピュータを使用することができる。当業者には、コンピュータは異なるアーキテクチャを有し得る点が認識されよう。当業者には周知のコンピュータの例は、例えば、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容をそれぞれ援用する、米国特許第10,055,540号、米国特許出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号、及び同第WO/2018/208856号により詳細に記載されている。
【実施例】
【0410】
XIV.実施例
以下は、本明細書を実施するための具体的な実施形態の例である。これらの例はあくまで例示の目的で示されるものにすぎず、本発明の範囲をいかなる意味においても限定しようとするものではない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確実とするべく努力に努めてはいるが、ある程度の実験的誤差及び偏差は無論のこと、許容されなければならない。
【0411】
本発明の実施では、特に断らない限りは、当該技術分野の技術の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を用いている。かかる技術は文献に完全に説明されている(例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい)。
【0412】
XIV.A.反復エピトープまたはショートインサートによるカセットの評価の概要
ワクチン接種によって、対応する免疫応答(複数可)を刺激する複数のクラスI MHC制限抗原を投与することができる。複数のエピトープを単一の遺伝子産物としてコードしたいくつかのワクチンカセットが遺伝子操作によって得られており、これらのエピトープはその天然の周囲ペプチド配列内に埋め込まれている。様々なカセット設計が、1つ以上のエピトープの複数のコピーを有している。様々なカセット設計が、2つ以上のエピトープをコードした700ヌクレオチド未満の短いカセットを有している。
【0413】
XVI.B.反復エピトープ及びショートカセットの評価の材料及び方法
抗原
以下の実施例で使用した、エピトープを含む25マーのアミノ酸配列(すなわち、天然のN及びC末端アミノ酸リンカーで挟まれたエピトープ)を表2Aに示し、下記に記載するようにして用いた。異なるコンストラクトのカセットの抗原コード配列を、以下の実施例に記載される順序及び数(例えば、
図1A、2A、3A、及び4A)で、各25マー配列を互いに直接連結する(すなわち、連続した25マー配列間にさらなるアミノ酸が存在しないように)ことによって構築した。互いに連結された複数の異なるエピトープ、ならびにユニバーサルなMHCクラスII抗原である破傷風トキソイド及びPADRE(太字の配列)を含む完全長の抗原コード配列を含むカセットを表2Bに示す。ベクターへの完全な外因性ヌクレオチドインサートは、5’~3’方向に、コザック配列((GCCACC)、3つのアミノ酸MAGをコードするヌクレオチド(ATGGCCGGG)、表2Bのカセット配列のうちの1つ、及び2個の終止コドン(TAATGA)を含む。
【0414】
【0415】
【0416】
SAMベクター
本発明の一実現形態では、自己複製型のベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス(Kinney,1986,Virology 152:400-413)から、26Sサブゲノミックプロモーターの3’側に位置するVEEの構造タンパク質を、E1の最後の50個のアミノ酸を除いて欠失させることによって、抗原発現系のRNAアルファウイルス骨格を作製した(7544~11175を欠失させたVEE;番号付けはKinney et al 1986に基づく。配列番号6)。自己複製型mRNA(「SAM」)ベクターを作製するため、欠失させた配列を抗原配列に置き換えた。20個のモデル抗原を含む代表的なSAMベクターは、「VEE-MAG25マー」(配列番号4)である。MAG25マーカセットを有する後述する抗原カセットを有するベクターを、上記の抗原カセットに置き換えることができる。
【0417】
SAMを作製するためのインビトロ転写
インビトロ試験を行うため:TriLink Biotechnologiesにより、SAMベクターを作製し、精製してもらった。カノニカルな3’末端のジヌクレオチドGGを欠いた改変T7 RNAポリメラーゼプロモーター((TAATACGACTCACTATA)を、SAMベクターの5’末端に付加してインビトロ転写用の鋳型DNA(配列番号57、挿入された抗原カセットを有さない、7544~11175を欠失させたもの)を作製した。反応条件を以下に記載する。
-1xT7 RNAポリメラーゼミックス(E2040S)、0.025mg/mLのDNA転写用鋳型(制限酵素による消化によって直鎖化したもの)、8mMのCleanCap試薬AU(カタログ番号N-7114)及び各10mMのATP、シチジン三リン酸(CTP)、GTP、及びウリジン三リン酸(UTP)の最終濃度を用いた、1x転写バッファー(40mM Tris、10mMジチオトレイトール、2mMスペルミジン、0.002%Triton X-100、及び27mM塩化マグネシウム)
-転写反応液を37℃で2時間インキュベートし、DNaseバッファー中、0.001mgのDNA転写鋳型当たり最終濃度2UのDNase1(AM2239)で1時間、37℃で処理した。
-SAMをRNeasy Maxi(QIAGEN,75162)により精製した。
【0418】
アデノウイルスベクター
抗原発現系用の改変ChAdV68ベクターを、E1(nt577~3403)及びE3(nt27,125~31,825)配列を欠失させ、対応するATCC VR-594(独立してシークエンシングした完全長のVR-594 C68、配列番号10)ヌクレオチドを5つの位置で置換したAC_000011.1に基づいて作製した。対応するATCC VR-594が5つの位置で置換された完全長のChAdVC68 AC_000011.1配列は、「ChAdV68.5WTnt」(配列番号1)と呼ばれる。CMVプロモーター/エンハンサー配列の制御下にある抗原カセットを欠失させたE1配列の代わりに挿入した。抗原カセットに20個のモデル抗原を含む代表的なChAdV68ベクターは、「ChAdV68.5WTnt.MAG25マー」(配列番号2)である。MAG25マーカセットを有する後述する抗原カセットを有するベクターを、上記の(例えば、表2Bの)抗原カセットに置き換えることができる。
【0419】
293F細胞でのアデノウイルス生産
ChAdV68ウイルス生産を、8%CO2のインキュベーター内で293FreeStyle(商標)(ThermoFisher)培地中で増殖させた293F細胞で行った。感染させた日に細胞を生存率98%で106細胞/mLに希釈し、1Lの振盪フラスコ(Corning)中の生産ラン1回当たり400mLを使用した。感染1回当たり、4mLの目標MOIが3.3よりも高い3次ウイルスストックを用いた。トリパンブルーにより測定される生存率が70%を下回るまで48~72時間、細胞をインキュベートした。次いで、感染細胞を最大速度のベンチトップ遠心分離器による遠心分離により回収し、1×PBS中で洗浄し、再遠心した後、20mLの10mM Tris、pH7.4中に再懸濁した。細胞ペレットを凍結融解を3回繰り返して溶解し、4300×Gで5分間遠心して清澄化した。
【0420】
CsCl遠心分離によるアデノウイルスの精製
CsCl遠心分離によってウイルスDNAを精製した。2回の不連続の勾配ランを行った。1回目は、細胞成分からウイルスを精製するためのものであり、2回目は、細胞成分からの分離物をさらに精製して感染性粒子から欠陥粒子を分離するためのものである。
【0421】
10mLの1.2(92mLの10mM Tris、pH8.0に26.8gのCsClを溶解したもの)CsClをポリアロマーチューブに加えた。次いで、8mLの1.4CsCl(87mLの10mM Tris、pH8.0に53gのCsClを溶解したもの)を、ピペットを使用してチューブの底に入れることで慎重に加えた。清澄化したウイルスを1.2の層の上に層をなすように静かに入れた。必要に応じてさらなる10mM Trisを加えてチューブのバランスを取った。次いで、各チューブをSW-32Tiローターに入れ、10℃で2時間30分、遠心した。次いで、チューブを取り出して層流キャビネットに移し、18ゲージの針と10mLシリンジを用いてウイルスバンドを吸引した。混入する宿主細胞のDNA及びタンパク質を除去しないように注意を払った。次いで、バンドを10mM Tris、pH8.0で少なくとも2倍に希釈し、上記に述べた不連続勾配上に上記のように層をなすように置いた。今回のランは終夜行った点以外は、上記と同様にしてランを行った。翌日、欠陥粒子のバンドを吸引しないように注意しながらバンドを吸引した。次いで、ARMバッファー(20mM Tris、pH8.0、25mM NaCl、2.5%グリセロール)に対してSlide-a-Lyzer(商標)カセット(Pierce)を使用してウイルスを透析した。これをバッファーを1回交換する毎に1時間、3回行った。次いで、ウイルスを等分量に分けて-80℃で保存した。
【0422】
アデノウイルスアッセイ
OD260nmでの吸光度値1に相当する1.1×1012個のウイルス粒子(VP)の消光係数に基づいてOD260アッセイを用いてVP濃縮化を行った。アデノウイルスの2つの希釈液(1:5と1:10)を、ウイルス溶解バッファー(0.1%SDS、10mM Tris、pH 7.4、1mM EDTA)中で調製した。両方の希釈液でODを2重に測定し、OD260値×希釈倍率×1.1×1012VPを乗じることにより、VP濃度/mLを測定した。
【0423】
ウイルスストックの限界希釈アッセイによって感染単位(IU)力価を計算した。最初にウイルスをDMEM/5%NS/1×PS中で100倍に希釈した後、10倍希釈率を用いて1×10-7にまで希釈した。次いで、100μLのこれらの希釈液を、少なくとも1時間前に24ウェルプレートに3e5細胞/ウェルで播種した293A細胞に加えた。これを二重で行った。各プレートを、37℃のCO2(5%)インキュベーターで48時間、インキュベートした。次いで、細胞を1xPBSで洗浄した後、100%冷メタノール(-20℃)で固定した。次いで、各プレートを-20℃で最低20分間インキュベートした。ウェルを1xPBSで洗浄した後、1xPBS/0.1%BSA中、室温で1時間ブロッキングした。ウサギ抗Ad抗体(Abcam,Cambridge,MA)をブロッキングバッファー中、1:8000の希釈率で加え(ウェル当たり0.25ml)、室温で1時間インキュベートした。ウェルをウェル当たり0.5mLのPBSで4回洗浄した。1000倍に希釈したHRP結合ヤギ抗ウサギ抗体(Bethyl Labs,Montgomery Texas)をウェルごとに加え、1時間インキュベートした後、最終ラウンドの洗浄を行った。5回のPBS洗浄を行い、各プレートを、Tris緩衝生理食塩水に加えたDAB(ジアミノベンジジン四塩酸塩)基質(50mM Tris、pH7.5中、0.67mg/mLのDAB、150mM NaCl)を0.01%H2O2とともに使用して発色させた。各ウェルを、カウントに先立って5分間、発色させた。細胞を、視野当たり4~40個の染色細胞となるような希釈率を用いて10倍対物レンズ下でカウントした。使用した視野は、24ウェルプレート上の視野当たり625個に相当する0.32mm2の格子であった。1mL当たりの感染性ウイルスの数は、格子1個当たりの染色細胞の数に、視野1つ当たりの格子の数を掛け、希釈倍率10を掛けることによって求めることができる。同様に、GFP発現細胞を扱う場合、カプシド染色の代わりに蛍光を用いて1mL当たりのGFP発現ビリオンの数を求めることができる。
【0424】
免疫化
SAMワクチンでは、C57BL/6Jマウスに10μgのRNA-LNP複合体を100μL体積で両側性筋肉内注射(片脚当たり50μL)により注入した。
【0425】
ChAdV68ワクチンでは、C57BL/6Jマウスに、示されるように2×108個のウイルス粒子(VP)または1×108個のVPを100μL体積で両側性筋肉内注射(片脚当たり50μL)により注入した。
【0426】
脾細胞の解離
脾細胞を免疫12日後に単離した。各マウスの脾臓を、3mLの完全RPMI(RPMI、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン)中にプールした。gentleMACS Dissociator(Miltenyi Biotec)を製造者のプロトコールに従って使用して機械的解離を行った。解離した細胞を、40ミクロンのフィルターに通して濾過し、赤血球をACK溶解バッファー(150mM NH4Cl、10mM KHCO3、0.1mM Na2EDTA)で溶解した。細胞を30ミクロンのフィルターに通して再び濾過した後、完全RPMI中に再懸濁した。細胞を、死細胞及びアポトーシス細胞を除外するためのヨウ化プロピジウム染色を用いてCytoflex LX(Beckman Coulter)でカウントした。次いで、後の分析用に細胞を適当な生細胞濃度に調整した。
【0427】
エクスビボ酵素結合イムノスポット(ELISpot)分析
マウスIFNg ELISpotPLUSキット(MABTECH)を用い、ELISPOTハーモナイゼーションガイドライン{DOI:10.1038/nprot.2015.068}に従ってELISPOT分析を行った。5×104個の脾細胞を10μMの示したペプチドと、96ウェルIFNg抗体コーティングプレート中で16時間インキュベートした。アルカリホスファターゼを用いてスポットを発色させた。反応時間を10分計り、水道水をプレートに流して反応を停止させた。AID vSpot Reader Spectrumを用いてスポットをカウントした。ELISPOT分析では、飽和度が50%よりも高いウェルを「多すぎてカウントできない」として記録した。複製ウェルの偏差が10%よりも高い試料を分析から除外した。次いで、スポットのカウントを式:スポットカウント+2×(スポットカウント×コンフルエンス(%)/[100%-コンフルエンス(%)])を用いてウェルのコンフルエンシーについて補正した。ネガティブペプチド刺激ウェルのカウントを抗原刺激ウェルから差し引くことによりネガティブバックグラウンドを補正した。最後に、多すぎてカウントできないとして標識されたウェルを、最高の観察補正値に設定し、10の位で四捨五入して100の位までの概数とした。
【0428】
エクスビボ細胞内サイトカイン染色(ICS)及びフローサイトメトリー分析
2~5×106細胞/mLの密度の新しく単離したリンパ球を10μMの示したペプチドと2時間インキュベートした。2時間後、ブレフェルジンAを5μg/mLの濃度にまで加え、細胞を刺激因子とさらに4時間インキュベートした。刺激後、生存細胞を製造者のプロトコールに従って固定可能な細胞生死判定用色素eFluor780で標識し、1:400の希釈率で抗CD8 APC(クローン53-6.7,BioLegend)で染色した。抗IFNg PE(クローンXMG1.2, BioLegend)を1:100で使用して細胞染色を行った。試料をCytoflex LX(Beckman Coulter)で採取した。フローサイトメトリーのデータをプロットし、FlowJoを用いて分析した。抗原特異的応答の大きさを評価するため、CD8+細胞のIFNg+の割合を各ペプチド刺激因子に応じて計算した。
【0429】
XVI.C.反復エピトープの評価結果
反復エピトープを有するカセットによるワクチン有効性を、特定のエピトープの単一のコピーのみを有するカセットに対して比較した。マウスを下記に述べる送達ベクターを用いて免疫し、有効性をELISpotにより評価した。
【0430】
図1Aに示されるように、抗原Dpagt1、Adpgk、及びReps1の単一のコピー(「1x」、カセット=配列番号63)、または抗原Dpagt1及びAdpgkの7回反復配列と抗原Reps1の6回反復配列(「6x/7x」、カセット=配列番号64)のいずれかを有するカセットの有効性を評価するため、一連のSAM-LNP送達ベクターを設計した。
図1B~Dに示され、また表3に示されるように、抗原の複数の反復配列を有するベクターによるワクチン接種は、スポット形成コロニー(SFC)の増加を示し、カセット内の抗原コード配列の反復がSAM-LNP送達システムを用いた抗原特異的免疫応答の増加につながることを示した。
【0431】
【0432】
図2Aに示されるように、抗原gp100及びTrp2の単一のコピー(「1x」、カセット=配列番号63)、または各抗原の4回反復配列(「4x」、カセット=配列番号68)のいずれかを有するカセットの有効性を評価するため、別の一連のSAM-LNP送達ベクターを設計した。
図2B及び2Cに示され、また表4に示されるように、抗原の複数の反復配列を有するベクターによるワクチン接種は、スポット形成コロニー(SFC)の増加を示し、カセット内の抗原コード配列の反復がSAM-LNP送達システムを用いた抗原特異的免疫応答の増加につながることを示した。
【0433】
【0434】
図3Aに示されるように、抗原gp100、Trp1、及びTrp2の単一のコピー(「1x」、カセット=配列番号66)、各抗原の2回反復配列(「2x」、カセット=配列番号67)、各抗原の4回反復配列(「4x」、カセット=配列番号68)、または抗原gp100及びTrp1の7回反復配列と抗原Trp2の6回反復配列(「6x/7x」、カセット=配列番号69)のいずれかを有するカセットの有効性を評価するため、別の一連のSAM-LNP送達ベクターを設計した。
図3B~Dに示され、または表5に示されるように、抗原の2回または4回反復配列を有するベクターによるワクチン接種は、スポット形成コロニー(SFC)の増加を示し、Trp1及びTrp2は、2xから4xでさらなる増加を示した。しかしながら、6回または7回反復配列は、4xコンストラクトと比較してさらなるSFCの増加を示さず、場合によっては1xのレベルを含め(gp100、
図3B)、SFC数を低下させた。これらのデータは、カセット内の抗原コード配列の反復が、SAM-LNP送達システムを用いた抗原特異的免疫応答の増加につながることを示すものである。しかしながら、特定の反復回数を超えると、特定の抗原のさらなる反復は効果を飽和させると考えられる。
【0435】
【0436】
SAMベクターシステムによる上記の結果が、異なるベクターシステムでも生じるかどうかを理解するため、一連のChAdV68送達ベクターを設計して、抗原Dpagt1、Adpgk、及びReps1(「1x」、カセット=配列番号63)、各抗原の5回反復配列(「5x」、カセット=配列番号65)、または抗原Dpagt1及びAdpgkの7回反復配列と抗原Reps1の6回反復配列(「6x/7x」、カセット=配列番号64)のいずれかを有するカセットの有効性を評価した。
図4Aを参照。
図4B~Dに示され、または表6に示されるように、抗原の複数の反復配列を有するベクターによるワクチン接種は、スポット形成コロニー(SFC)の増加を示した。次いで、さらなる一連の実験において、ChAdV68ワクチン接種用量を、1e9VPのChAdV68まで5倍増加させた。
図4E~Gに示され、または表7に示されるように、より高用量の抗原の複数の反復配列を有するベクターによるワクチン接種も、スポット形成コロニー(SFC)の増加を示した。これらの結果は、カセット内の抗原コード配列の反復が、ChAdV68システムを用いた抗原特異的免疫応答の増加につながることを示すものである。しかしながら、特定の反復回を超えると、特定の抗原のさらなる反復は効果を飽和させると考えられる。
【0437】
【0438】
【0439】
XIV.D.ショートカセットインサートの評価結果
短いエピトープコードインサートを有するカセットによるワクチン有効性を、より大きなインサートを有するカセットと比較した。具体的には、より短い375ntの抗原コードインサートを、1623ntのより大きな抗原コードインサートと比較した。マウスを下記に述べる送達ベクターを用いて免疫し、有効性をIFNγ ICSにより評価した。
【0440】
図5Aに示されるように、3つの異なる抗原Dpagt1、Adpgk、及びReps1の単一のコピーのみをコードしたショートインサート(「ショート1」、カセット=配列番号70)、3つの異なる抗原gp100、Trp1、及びTrp2の単一のコピーのみをコードしたショートインサート(「ショート2」、カセット=配列番号71)、またはDpagt1、Adpgk、Reps1、gp100、及びTrp2を含む20種の異なる抗原の単一のコピーのみをコードしたロングインサート(「1x」、カセット=配列番号63)のいずれかを有するカセットの有効性を評価するために一連の送達ベクターを設計した。
【0441】
ショートカセットまたはロングカセットを含む一連のSAM-LNPコンストラクト(
図5Aを参照)を評価した。
図5Bに示され、また表8に示されるように、より短い抗原コードインサートを有するベクターによるワクチン接種は、ICSによるIFNγ+T細胞の割合の増加を示し、カセット内にコードされた抗原コード配列が短いほど、及び/または異なる抗原の数が少ないほど、SAM-LNPシステムを用いた抗原特異的免疫応答の増加につながることを示した。
【0442】
ショートカセットまたはロングカセットを含む一連のChAdVベクター(
図5Aを参照)を評価した。
図5C及び5Dに示され、また表9及び10に示されるように、より短い抗原コードインサートを有するベクターによるワクチン接種は、ICSによるIFNγ+T細胞の割合の増加及び/またはスポット形成コロニー(SFC)の増加をそれぞれ示し、カセット内にコードされた抗原コード配列が短いほど、及び/または異なる抗原の数が少ないほど、ChAdV68システムを用いた抗原特異的免疫応答の増加につながりうることを示した。
【0443】
【0444】
【0445】
【0446】
特定の配列
本明細書で参照されるベクター、カセット、及び抗体を以下に記載し、配列番号で参照する。
【0447】
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】