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特表2023-523424非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎、肝細胞バルーニング、肝線維症及び脂肪症の治療に使用するための(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(APL)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎、肝細胞バルーニング、肝線維症及び脂肪症の治療に使用するための(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(APL)
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230529BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564477
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021028849
(87)【国際公開番号】W WO2021217006
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/015,175
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591135163
【氏名又は名称】テンプル・ユニバーシティ-オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイアー・エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】TEMPLE UNIVERSITY-OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サリム・メラリ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・イー・チルダーズ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・バレロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・シー・モートン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・シーザー・リコ
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206KA14
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA75
(57)【要約】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎、肝細胞バルーニング、肝線維症、及び脂肪症の治療に使用するための(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ))ヘキサン酸(APL)。
(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iによる化合物、
【化1】
(I)、
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2
-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2
-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは1、2、3、又は4であり;
nは0、1、2、3、又は4であり;
oは0、1、2、3、又は4であり;
pは1、2、3、又は4であり;
qは0、1、2、3、又は4であり;
rは0、1、2、3、又は4である、方法。
【請求項2】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化2】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩である、請求項2に記載の方法。
【化3】
【請求項4】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化4】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項4に記載の方法。
【化5】
【請求項6】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化6】
(3)、
又は、その薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項6に記載の方法。
【化7】
【請求項8】
前記対象がヒトである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、又は16週間の期間、対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約4~6、4~8、4~10、4~12、4~14、又は4~16週間の期間、対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、一日に約2~1000、10~1000、又は10~100mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、一日に約10mg/kg以上の用量で対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、一日に約100~5000、500~5000、又は600~3000mgの一日の総用量で対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式Iの前記化合物が、対象に経口投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、≧4のNAFLD活性スコア(NAS)を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、≧5のNAFLD活性スコア(NAS)を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、<4のNAFLD活性スコア(NAS)をもたらす、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が非肝硬変NASHを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が肝硬変NASHを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が肝炎を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記肝炎が小葉の炎症である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式Iの前記化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、肝炎の減少をもたらす、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、0又は1の肝炎スコアをもたらす、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象の前記肝臓が、肝細胞バルーニングによって特徴付けられる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、肝細胞バルーニングの減少をもたらす、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、バルーニングスコア0をもたらす、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象の肝アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルが上昇する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、肝アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの減少をもたらす、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象の肝アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルが上昇する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、肝アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの減少をもたらす、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が肝線維症を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、ステージ2、ステージ3、又はステージ4の肝線維症を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、前記対象における肝線維症の安定化をもたらす、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、前記対象における肝線維症の逆転をもたらす、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、1、2、又は3の脂肪症スコアを有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、前記対象における脂肪症の減少をもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、前記対象における肝肥大の減少をもたらす、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
肝炎を低減する方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iによる化合物、
【化8】
(I)、
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2
-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2
-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは1、2、3、又は4であり;
nは0、1、2、3、又は4であり;
oは0、1、2、3、又は4であり;
pは1、2、3、又は4であり;
qは0、1、2、3、又は4であり;
rは0、1、2、3、又は4である、方法。
【請求項39】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化9】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩である、請求項39に記載の方法。
【化10】
【請求項41】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化11】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項41に記載の方法。
【化12】
【請求項43】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化13】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項43に記載の方法。
【化14】
【請求項45】
肝炎が小葉の炎症である、請求項38~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、0又は1の肝炎スコアをもたらす、請求項38~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
肝細胞バルーニングを低減する方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iによる化合物、
【化15】
(I)、
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2
-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2
-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは1、2、3、又は4であり;
nは0、1、2、3、又は4であり;
oは0、1、2、3、又は4であり;
pは1、2、3、又は4であり;
qは0、1、2、3、又は4であり;
rは0、1、2、3、又は4である、方法。
【請求項48】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化16】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩である、請求項48に記載の方法。
【化17】
【請求項50】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化18】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項50に記載の方法。
【化19】
【請求項52】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化20】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項52に記載の方法。
【化21】
【請求項54】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、バルーニングスコア0をもたらす、請求項47~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
肝線維症を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iによる化合物、
【化22】
(I)、
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2
-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2
-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは1、2、3、又は4であり;
nは0、1、2、3、又は4であり;
oは0、1、2、3、又は4であり;
pは1、2、3、又は4であり;
qは0、1、2、3、又は4であり;
rは0、1、2、3、又は4である、方法。
【請求項56】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化23】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩である、請求項56に記載の方法。
【化24】
【請求項58】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化25】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項58に記載の方法。
【化26】
【請求項60】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化27】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項60に記載の方法。
【化28】
【請求項62】
前記対象が、ステージ2、ステージ3、又はステージ4の肝線維症を有する、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記対象が肝硬変を有する、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、前記対象における肝線維症の安定化をもたらす、請求項55~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、前記対象における肝線維症の逆転をもたらす、請求項55~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
脂肪症を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iによる化合物、
【化29】
(I)、
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2
-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、前記置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2
-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは1、2、3、又は4であり;
nは0、1、2、3、又は4であり;
oは0、1、2、3、又は4であり;
pは1、2、3、又は4であり;
qは0、1、2、3、又は4であり;
rは0、1、2、3、又は4である、方法。
【請求項67】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化30】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩である、請求項67に記載の方法。
【化31】
【請求項69】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化32】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項69に記載の方法。
【化33】
【請求項71】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化34】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項66に記載の方法。
【請求項72】
前記化合物が、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩である、請求項71に記載の方法。
【化35】
【請求項73】
前記対象が、1、2、又は3の脂肪症スコアを有する、請求項66~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
式Iの前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与が、前記対象における脂肪症の減少をもたらす、請求項66~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する、請求項38~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象がヒトである、請求項38~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、又は16週間の期間、対象に投与される、請求項38~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約4~6、4~8、4~10、4~12、4~14、又は4~16週間の期間、対象に投与される、請求項38~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、一日に約2~1000、10~1000、又は10~100mg/kgの用量で対象に投与される、請求項38~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、一日に約10mg/kg以上の用量で対象に投与される、請求項38~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
式Iの前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩が、一日に約100~5000、500~5000、又は600~3000mgの一日の総用量で対象に投与される、請求項38~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
式Iの前記化合物が、対象に経口投与される、請求項38~81のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月24日出願の米国仮出願第63/015,175号の恩典を主張し、当該出願の全体は参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、実質的な健康リスクを特徴とする非良性障害である。NASHと診断された対象は、罹患及び死亡のリスクが高い。より具体的には、NASHは心血管性及び肝臓関連死のリスクの増加によって特徴付けられる。NASHは肝硬変を引き起こし、その結果、体液貯留、筋肉の消耗、腸からの出血、及び肝不全を引き起こす可能性がある。肝移植は、肝不全を伴う進行肝硬変に対する唯一の治療であり、NASHは現在、肝移植の理由の第二位である。
【0004】
したがって、NASHの治療のための治療剤が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む肝臓疾患及び障害を治療するための新しい方法が本明細書に記載されている。
【0006】
一態様では、本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、
-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2
-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、
-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、
チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは、1~4の整数であり、
nは、0~4の整数である。
oは、0~4の整数であり、
pは、1~4の整数であり、
qは、0~4の整数であり、
rは、0~4の整数である。
【0007】
別の態様では、本発明は、対象におけるNASHの治療に使用するための、式Iに記載の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を特徴とする。
【0008】
別の態様では、本発明は、NASHの治療のための薬剤の調製のための式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を特徴とする。
【0009】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化2】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩、
【化3】
である。
【0010】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化4】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化5】
である。
【0011】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化6】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化7】
である。
【0012】
複数の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルからなる群から選択される。
【0013】
複数の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8の各々は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。
【0014】
複数の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。
【0015】
複数の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の各々は独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択され、R9、R10、R11、R12、R13及びR14の各々は独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。
【0016】
複数の実施形態では、又はその薬学的に許容可能な塩、m+n+oの総和は、2~10の範囲内であり、p+q+rの総和は、2~10の範囲内である。
【0017】
複数の実施形態では、mは3であり、pは4であり、n、o、q及びrの各々はゼロである。複数の実施形態では、R3、R4、R9、及びR10は独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルからなる群から選択される。複数の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R9、及びR10は水素である。
【0018】
複数の実施形態では、mは4であり、nは2であり、oはゼロであり、pは3であり、qは1であり、及びrはゼロである。複数の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルからなる群から選択される。複数の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は水素である。
【0019】
複数の実施形態では、mは4であり、nは1であり、oはゼロであり、pは3であり、qは1であり、及びrはゼロである。複数の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルからなる群から選択される。複数の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は水素である。
【0020】
複数の実施形態では、対象はヒトである。
【0021】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、少なくとも約4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、又は16週間、対象に投与される。
【0022】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、少なくとも約4~6、4~8、4~10、4~12、4~14、又は4~16週間、対象に投与される。
【0023】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約2~1000、10~1000、又は10~100mg/kgの用量で、対象に投与される。
【0024】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約10mg/kg又はそれを超える用量で、対象に投与される。
【0025】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約2mg/kg又はそれを超える用量で、対象に投与される。
【0026】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約100~5000、500~5000、又は600~3000mgの一日の総用量で、対象に投与される。
【0027】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、対象に経口投与される。
【0028】
複数の実施形態では、対象は、4以上のNAFLD活性スコア(NAS)を有する。
【0029】
複数の実施形態では、対象は、5以上のNAFLD活性スコア(NAS)を有する。
【0030】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩を投与することは、4未満のNAFLD活性スコア(NAS)をもたらす。
【0031】
複数の実施形態では、対象は非肝硬変NASHを有する。
【0032】
複数の実施形態では、対象は肝硬変NASHを有する。
【0033】
複数の実施形態では、対象は肝炎を有する。複数の実施形態では、肝炎は小葉の炎症である。
【0034】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、肝炎の減少をもたらす。
【0035】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0又は1の肝炎のスコアをもたらす。
【0036】
複数の実施形態では、対象の肝臓は、肝細胞バルーニングによって特徴付けられる。
【0037】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、肝細胞バルーニングの減少をもたらす。
【0038】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0のバルーニングスコアをもたらす。
【0039】
複数の実施形態では、対象の肝アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルが上昇した。
【0040】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、肝アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの減少をもたらす。
【0041】
複数の実施形態では、対象の肝アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルが上昇した。
【0042】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、肝アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの減少をもたらす。
【0043】
複数の実施形態では、対象は肝線維症を有する。複数の実施形態では、対象は、ステージ2、ステージ3、又はステージ4の肝線維症を有する。複数の実施形態では、対象は肝硬変を有する。
【0044】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における肝線維症の安定化をもたらす。
【0045】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における肝線維症の逆転をもたらす。
【0046】
複数の実施形態では、対象は、1、2、又は3の脂肪症スコアを有する。
【0047】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における肝肥大の減少をもたらす。
【0048】
一態様では、本発明は、肝炎を低減する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、
【化8】
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、
-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2
-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、
-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、
チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは、1~4の整数であり、
nは、0~4の整数である。
oは、0~4の整数であり、
pは、1~4の整数であり、
qは、0~4の整数であり、
rは、0~4の整数である。
【0049】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化9】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩、
【化10】
である。
【0050】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化11】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化12】
である。
【0051】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化13】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化14】
である。
【0052】
複数の実施形態では、肝炎は小葉の炎症である。
【0053】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0又は1の肝炎のスコアをもたらす。
【0054】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0055】
一態様では、本発明は、肝細胞バルーニングを低減する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、
【化15】
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、
-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2
-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、
-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、
チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは、1~4の整数であり、
nは、0~4の整数である。
oは、0~4の整数であり、
pは、1~4の整数であり、
qは、0~4の整数であり、
rは、0~4の整数である。
【0056】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化16】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩、
【化17】
である。
【0057】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化18】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化19】
である。
【0058】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化20】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化21】
である。
【0059】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0のバルーニングスコアをもたらす。
【0060】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0061】
一態様では、本発明は、肝線維症を治療する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、
【化22】
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、
-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2
-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、
-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、
チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは、1~4の整数であり、
nは、0~4の整数である。
oは、0~4の整数であり、
pは、1~4の整数であり、
qは、0~4の整数であり、
rは、0~4の整数である。
【0062】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化23】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩、
【化24】
である。
【0063】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化25】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
である。
【0064】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化26】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化27】
である。
【0065】
複数の実施形態では、対象は、ステージ2、ステージ3、又はステージ4の肝線維症を有する。
【0066】
複数の実施形態では、対象は肝硬変を有する。
【0067】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における肝線維症の安定化をもたらす。
【0068】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における肝線維症の逆転をもたらす。
【0069】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0070】
一態様では、本発明は、脂肪症を治療する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、
【化28】
又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、
-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2
-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、
-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、
チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、
-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは、1~4の整数であり、
nは、0~4の整数である。
oは、0~4の整数であり、
pは、1~4の整数であり、
qは、0~4の整数であり、
rは、0~4の整数である。
【0071】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化29】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩、
【化30】
である。
【0072】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化31】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化32】
である。
【0073】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化33】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化34】
である。
【0074】
複数の実施形態では、対象は、1、2、又は3の脂肪症スコアを有する。
【0075】
複数の実施形態では、式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における脂肪症の減少をもたらす。
【0076】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0077】
本開示組成物の物質及び方法に関し、本開示において想定されるように、一つの態様において、本開示の実施形態は、本明細書に開示される構成要素及び/又は工程を含む。別の態様では、本開示の実施形態は、本明細書に開示される構成要素及び/又は工程から本質的になる。さらに別の態様では、本開示の実施形態は、本明細書に開示される構成要素及び/又は工程からなる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも一つの図面を含む。カラー図面を含む本特許又は特許出願公報の写しは、請求があり、必要な手数料の支払いが行われると、特許庁から提供される。
【0079】
本開示をさらに理解するために提供され、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本開示の例示的な実施形態を示し、説明と共に、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【0080】
図1図1は、NASHのラットモデルにおける、耐糖能障害に対するAPLの効果に関するデータを示す。図1は、ビヒクル(陽性対照)又はAPL(処置)のいずれかを用いて、一日二回、78日間処置されたZucker痩せ(Fa/fa)及び肥満(fa/fa)ラットにおけるグルコース負荷試験(GTT)の曲線下面積(AUC)のプロットである。二元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定を実施した。陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された(**p<0.01)。
【0081】
図2図2A及び図2Bを含む図2は、NASHの食事誘発性マウスモデルにおける、耐糖能障害に対するAPLの効果に関するデータを示す。図2Aは、C57BL/6Jマウスのグルコースレベルのプロットであり、固形飼料食事(CHOW)及びビヒクル(陰性対照)、高脂肪/高フルクトース食事(HFD)及びビヒクル(陽性対照)、又はHFD及びAPL(処置)のいずれかを131日間摂食し、その後、動物を絶食させ、グルコースを経口投与(2mg/体重g)し、血糖値を測定した。二元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定を実施した。15分(****p<0.0001)、60分(*p<0.05)、及び120分(***p<0.001)の時点で、陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された。陰性対照群と陽性対照群との間にも、0分及び30分(*p<0.05)、45分(**p<0.01)、及び15分、30分、60分、及び120分(****p<0.0001)の時点で、有意な統計的差異が観察された。いずれの時点でも、陰性対照群と処置群との間に有意差はなかった。図2Bは、CHOW又はHFDのいずれかを与えられたC57BL/6JマウスにおけるグルコースレベルのAUCのプロットである。CHOW動物を、ビヒクル(陰性対照)又はAPLのいずれかで120日間、一日二回処置した。HFD動物を、ビヒクル(陽性対照)、APL(処置)、又はピオグリタゾン(Pio)のいずれかで処置した。陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された(**p<0.01)。
【0082】
図3図3は、CHOW及びビヒクル(陰性対照)、HFD及びビヒクル(陽性対照)、又はHFD及びAPL(TB-019、処置)のいずれかを131日間摂食したC57BL/6Jマウスの肝生検を、20倍の倍率で示す。切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。陽性対照群の切片は、特に肝臓のゾーン3で、重度の肝細胞脂肪の蓄積、炎症浸潤、及び脂肪性肝炎の病態学的兆候、及びバルーニングを示した。対照的に、処置された群の肝臓切片は、HFDによって誘発されたバルーンニングを最小限に示すか、又は全く示さなかった。したがって、APL(TB-019)は、食事によって誘発される顕微鏡的肝損傷を低減するのに有効であった。
【0083】
図4図4は、CHOW及びビヒクル(陰性対照)、HFD及びビヒクル(陽性対照)、又はHFD及びAPL(処置)のいずれかを131日間摂食したC57BL/6Jマウスの肝生検を、100倍の倍率で示す。
【0084】
図5図5A図5Dを含む、図5は、NASHのマウスモデルにおける肝脂肪症に関するデータを示す。C57BL/6JマウスにCHOW又はHFDのいずれかを与えた。マウスを、ビヒクル又はAPL(p.o.b.i.d.)で処置した。APL用量は、200mg/kg/日、一日二回(b.i.d.)の経口投与(p.o.)であった。動物は、APL処置のビヒクルと同時に20週間給餌された。CHOW(ビヒクル):固形飼料を与えられ、ビヒクル(陰性対照)を投与されたマウス、HFD(ビヒクル):HFDを与えられ、ビヒクル(陽性対照)を投与されたマウス、HFD(APL):HFDを与えられ、APL(処置)を投与されたマウス。図5Aは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色肝組織試料の代表的な画像を含み、図5Bは、BODIPY及びDAPIで免疫染色された肝組織試料の代表的な画像を含む。図5C及び図5Dは、核データ(図5C)及び脂肪沈着データ(図5D)の数のプロットを示す。測定は20倍の倍率フィールドで行った。各群の三匹の異なる動物から21以上のフィールドを分析した:陰性対照(フィールド数=26)、陽性対照(フィールド数=25)、及び処置(フィールド数=23)。ImageJを使用した間接的な測定(Schneider et al.,2012,Nature Methods 9(7):671-675)を使用して、脂肪沈着を計算した(閾値は赤で示した)。大きな血管を含むフィールドはカウントから除外した。Harmony(登録商標)4.6 High-Content Imaging and Analysis Software of Operetta CLS(商標)(PerkinElmer,Waltham,MA)及びPerkinElmer共焦点顕微鏡を使用して、核数を評価した。両方の実験で、一元配置ANOVA及びテューキーの多重比較事後検定を実施した。陽性対照における肝細胞数の有意な統計的減少が観察された(***p<0.001)。陰性対照群と処置群との間に統計的差異はなかった。さらに、陽性対照と陰性対照の間には、脂肪沈着に有意な統計的差異があった(**p<0.01)。陰性対照群と処置群との間に、脂肪沈着における有意な統計的差異は観察されなかった。
【0085】
図6図6A及び図6Bを含む、図6は、食事誘発性肥満(NASHのDIOマウスモデル)における非アルコール性脂肪肝疾患活性スコア(NAS)に関するデータを示す。C57BL/6Jマウスに、固形飼料食事(CHOW)又は高脂肪/高フルクトース食事(HFD)のいずれかを与えた。マウスを、ビヒクル又はAPL(200mg/体重kg)を用いてp.o.b.i.dで130日間処置した。CHOWビヒクル:固形飼料を与えられ、ビヒクル(陰性対照)を投与されたマウス、HFDビヒクル:HFDを与えられ、ビヒクル(陽性対照)を投与されたマウス、HFD APL:HFDを与えられ、APL(処置)を投与されたマウス。図6Aは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色された肝組織試料の代表的な画像を含む。矢印1:大滴性脂肪症。矢印2:微小胞性脂肪症。矢印3:肥大。矢印4:炎症性病巣。図6Bは、様々な処置群における脂肪症(肝脂肪)、炎症、及び肥大に対するNASコンポーネントスコアを示す。二元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定を実施した。陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された(***p<0.001)。
【0086】
図7図7A及び図7Bを含む、図7は、NASHのDIOマウスモデルにおけるNASに関するデータを示す。C57BL/6JマウスにCHOW又はHFDのいずれかを与えた。マウスを、ビヒクル又はAPL(TB-019;200mg/体重kg)を用いてp.o.b.i.dで130日間処置した。CHOWビヒクル:固形飼料を与えられ、ビヒクル(陰性対照)を投与されたマウス、HFDビヒクル:HFDを与えられ、ビヒクル(陽性対照)を投与されたマウス、HFD APL:HFDを与えられ、APL(TB-019、処置)を投与されたマウス。非アルコール性脂肪性肝炎の病理組織学的解析、NASH活性スコア(NAS)を実施した。図7Aは、群の総NASスコア平均を示す(陰性対照=0.28±0.46、陽性対照=6±1.76、処置群=1.2±1.06)。一元配置ANOVA及びテューキーの多重比較事後検定を実施した。ANOVA解析は、群間で有意差を示した(****p<0.0001)。事後検定多重比較解析(テューキー)は、全群対間でも有意差を示した(陰性対照対陽性対照、***q=23.38;陰性対照対処置群、*q=3.55;及び陽性対照対処置群、***q=18.5)。図7Bは、NASHのDIOマウスモデルの肝臓における病理学的変化に関するデータ、具体的には、(1)脂肪症(st)、(2)小葉の炎症(li)、及び(3)肝臓のバルーニング(hb)を示す。二元配置ANOVA RM及びボンフェローニ多重比較事後検定を実施した。全ての比較において、陰性対照群と陽性対照群との間に有意な統計的差異が観察された(****p<0.0001)。小葉の炎症について、陰性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された(****p<0.0001)。全ての比較において、処置群と陽性対照との間に有意な統計的差異が観察された(****p<0.0001)。
【0087】
図8図8A図8B、及び図8Cを含む、図8は、ラットNASHモデルにおける肝臓コラーゲン線維に関するデータを示す。図8Aは、Zucker(Fa/fa)痩せラット、ビヒクルを投与されたZucker fa/fa肥満ラット、及びビヒクルを投与され、APLを投与されたZucker(fa/fa)肥満ラットのヘマトキシリン及びエオシンで染色した肝臓切片の代表的な画像である(40倍の倍率)。図8Bは、メイソントリクローム染色した肝臓切片の代表的な画像である(100倍の倍率)。図8Cは、図8Bの画像の赤枠内の領域の拡大である。矢印は、ビヒクルで処置されたZucker肥満ラットの間葉系肝組織中のコラーゲン線維を指す。
【0088】
図9図9A図9B、及び図9Cを含む、図9は、ラットNASHモデルにおける肝4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)に関するデータを示す。図9Aは、Zucker(Fa/fa)痩せラット、ビヒクル(陰性対照)を投与されたZucker(fa/fa)肥満ラット、及びビヒクル(陽性対照)を投与、又はAPL(処置)を投与されたZucker(fa/fa)肥満ラットの4-HNE免疫蛍光肝臓切片の代表的な画像である。63倍の倍率での肝組織の共焦点顕微鏡検査。図9B及び図9Cはそれぞれ、4HNE/免疫蛍光強度の定量化(組織面積μm2当たりの4HNE強度)及び全組織面積の定量化のプロットである。両方の実験で、一元配置ANOVA及びテューキーの多重比較事後検定を実施した。対照群とAPL処置群との間に有意な統計的差異が観察された(***p<0.001)。陰性対照群と処置群との間に有意な統計的差異は観察されなかった(Ns=非統計的差異)。
【0089】
図10図10A、及び図10Bを含む、図10は、NASHのDIOマウスモデルにおける肝4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)に関するデータを示す。図10Aは、CHOWを与え、ビヒクル(陰性対照;左画像)で処置されたC57BL/6マウス、HFDを与え、ビヒクル(陽性対照;中間画像)又はAPL(TB-019;処置;右画像)のいずれかで処置されたC57BL/6マウスからの4-HNE免疫蛍光肝臓切片の代表的な画像である。20倍及び63倍の倍率での肝組織の共焦点顕微鏡検査。図10Bは、4HNE/免疫蛍光強度(組織面積μm2当たりの4HNE強度)の定量化のプロットである。一元配置ANOVA及びテューキーの多重比較事後検定を実施した。陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された(***p<0.001)。陰性対照群と処置群との間に、統計的差異は観察されなかった。
【0090】
図11図11A図11B図11C図11D図11E、及び図11Fを含む、図11は、NASHのAMLN食事マウスモデルにおける代用血清バイオマーカーに関するデータを示す。C57BL/6Jマウスに、CHOW又は改変AMLN食事のいずれかを与え、20週間後にHFDに変更した。50週目で、マウスをビヒクル又はAPL(p.o.b.i.d.)で処置した。APL用量25、50、又は100mg/kg、一日二回(b.i.d.)の経口投与(p.o.)(総用量50、100、又は200mg/kg/日)。16週間にわたるビヒクル又はAPLを用いた処置の後、分析のために試料を採取した。ダネットの多重比較検定を実施した。図11Aは、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。図11Bは、血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルを示す。図11Cは、血清アルカリホスファターゼ(ALP)レベルを示す。図11Dは、血清トリグリセリドレベルを示す。図11Eは、血清非エステル化脂肪酸(NEFA)レベルを示す。図11Fは、血清コレステロールレベルを示す。図示した全ての結果は、50mg/kg/日のAPLを投与されたマウスから取得され、コレステロールについてのみ、200mg/kg/日のAPLを投与されたマウスから取得した。陽性対照群と処置群の間に有意な統計的差異が観察された(*p<0.02;**p=0.002;***p=0.0008、及び****p<0.0001)。
【0091】
図12図12A及び図12Bを含む、図12は、NASHのAMLN食事マウスモデルにおけるNAS及び線維症に関するデータを示す。C57BL/6Jマウスに、CHOW又は改変AMLN食事のいずれかを与え、20週間後にHFDに変更した。50週目で、マウスをビヒクル又はAPL(p.o.b.i.d.)で処置した。APL用量25、50、又は100mg/kg、一日二回(b.i.d.)の経口投与(p.o.)(総用量50、100、又は200mg/kg/日)。ビヒクル又はAPLを用いた16週間の治療後、生検を回収し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、脂肪症、炎症、及び肝細胞のバルーニングについて評価した。図12Aは、陽性対照と比較した、処置群におけるNASの減少を示す。陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された(***p<0.001)。図12Bは、陽性対照と比較した、処置群における肝線維症の減少を示す。陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された(****p<0.0001)。
【0092】
定義
別段に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0093】
また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものであるに過ぎず、制限を意図するものではないことを理解されたい。
【0094】
冠詞「a」及び「an」は、本開示において、冠詞の文法上の目的語の一つ又は複数(すなわち、少なくとも一つ)を指すために使用される。一例として、「要素」は一つの要素又は複数の要素を意味する。ゆえに、「細胞」という記載は、例えば、同じタイプの複数の細胞を含む。
【0095】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、例えば量、期間などの測定可能な値を指す場合、特定の値から±20%又は±10%、±5%、±1%、又は±0.1%の変動を包含することが意図されており、そうした変動は、本発明の実施に適切である。
【0096】
用語「アルキル」は、それ自体で、又は別の置換基の一部として、別段に記述のない限り、指定された数の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビルを意味する(すなわち、C1-C6は1個から6個の炭素を意味する)。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルが挙げられる。複数の実施形態では、アルキルは、(C1-C3)アルキル(例えば、メチル及びエチル)などの(C1-C6)アルキルである。
【0097】
単独で又は他の用語と組み合わせて利用される用語「アルケニル」は、別段に記述のない限り、記述された数の炭素原子を有しかつ一つ又は複数の二重結合を含有する、直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビルを意味する。例としては、エテニル(ビニル)、プロペニル(アリル)、クロチル、イソペンテニル、ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル、及び1,4-ペンタジエニルが挙げられる。アルケニルを表す官能基は、-CH2-CH=CH2-に例示される。
【0098】
単独で、又は他の用語と併せて採用される「アルキニル」という用語は、別段の記載が無い限り、記載される数の炭素原子を有し、一つ又は複数の三重結合を含有する直鎖又は分枝鎖のヒドロカルビルを意味する。
【0099】
単独で、又は他の用語と併せて採用される「アルコキシ」という用語は、別段の記載が無い限り、酸素原子を介して分子の残余部分に接続されている上記に規定されるアルキル基を意味し、例えばメトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ(イソプロポキシ)ならびにその高次ホモログ及び異性体が挙げられる。アルコキシ基のアルキル部分は、上記のアルキル基について定義されたように、指定された数の炭素原子を有しうる。複数の実施形態では、アルコキシ基は、(C1-C3)アルコキシ(例えば、メトキシ及びエトキシ)などの(C1-C6)アルコキシである。
【0100】
本明細書で使用される場合、「APL」及び「TB-019」という用語は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1))である式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を指す。
【0101】
用語「芳香族」は、芳香族の性質を有する(すなわち、(4n+2)の非局在性π(パイ)電子を有し、式中、nは整数である)一つ又は複数のポリ不飽和環を有する、炭素環又は複素環を指す。
【0102】
用語「アリール」は、少なくとも一つの芳香環を含有する芳香族炭化水素環系を指す。芳香環は、任意選択的に、他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環に融合又はその他付加することができる。アリール基の例としては、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、及びビフェニルが挙げられる。アリール基の例としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。
【0103】
用語「アラルキル」基は、アリール基により置換されたアルキル基を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、化合物の量を意味し、それを必要とする対象(例えば、NASHなどの疾患又は状態を患っているか、又は発症するリスクがある患者)に投与されると、疾患又は状態(例えば、特定の障害又は疾患(例えば、NASH)の症状を予防、阻害、治療、又は低減する)の一つ又は複数の症状の軽減に治療的利益をもたらす。しかし、完全な治療効果は必ずしも一回用量を投与することによっては起こらないが、一連の用量の投与後に発生しうることが理解される。したがって、有効量は、一回又は複数回の投与で投与されてもよい。治療(予防を含む)用途のコンテクストでは、対象に投与される活性剤の量は、疾患又は状態のタイプ及び重症度、ならびに全般的な健康、年齢、性別、体重、及び薬剤への耐性などの対象の特徴に依存するものとなる。また、それは、疾患又は状態の度合い、重症度、及びタイプに依存するものとなる。当業者は、これら及び他の因子に応じて適切な投薬量を決定できるものとなる。式Iの化合物は、一つ又は複数の追加的治療用化合物と併用されて投与されることもできる。
【0105】
それ自体又は別の置換基の一部としての「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、別段の記述のない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子を意味する。複数の実施形態では、ハロゲンは、フッ素、塩素、又は臭素を含む。複数の実施形態では、ハロゲンは、フッ素又は塩素である。
【0106】
用語「ヘテロアラルキル」基は、ヘテロアリール基によって置換されたアルキル基を指す。
【0107】
それ自身又は別の置換基の一部としての「複素環」又は「ヘテロシクリル」又は「複素環式」という用語は、別段の記載が無い限り、炭素原子と、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子からなる非置換若しくは置換された単環又は多環の複素環系を意味する。複素環は典型的には5~10個の環原子を含有する。複素環系は、別段に記述のない限り、構造異性体をもたらす複素環系の任意のヘテロ原子又は炭素原子において別の原子に付加されることがある。
【0108】
「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」という用語は、芳香族の特徴を有する複素環を指す。
【0109】
別段の記載が無い限り、それ自身又は別の置換基の一部としての「ヒドロカルビル」という用語は、指定される数の炭素原子を有する(すなわち、C1-C6は1~6個の炭素を意味する)直鎖又は分枝鎖の炭化水素を意味する。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルが挙げられる。複数の実施形態では、ヒドロカルビルは、メチル及びエチルなどの(C1-C3)アルキルなどの(C1-C6)アルキルである。用語「不飽和ヒドロカルビル」というは、少なくとも一つの二重結合又は三重結合を含有するヒドロカルビルを意味する。
【0110】
用語「ハロアルキル」は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子によって置換されるアルキル基を意味する。用語「ペルハロアルキル」は、全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されているハロアルキル基を意味する。ペルハロアルキルには、-(C1-C6)ペルフルオロアルキル(例えば、-(C1-C3)ペルフルオロアルキル基、例えば-CF3)などのペルフルオロアルキルが含まれる。
【0111】
用語「ハロアルコキシ」は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子によって置換されているアルコキシ基を意味する。用語「ペルハロアルコキシ」は、全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されているハロアルコキシ基を意味する。ペルハロアルコキシ基には、-(C1-C6)ペルフルオロアルコキシ(例えば、-(C1-C3)ペルフルオロアルコキシ、例えば-OCF3)などのペルフルオロアルコキシが含まれる。
【0112】
本明細書において使用される場合、(治療の対象などの場合で)「個体」又は「患者」又は「対象」は、哺乳動物及び非哺乳動物の両方を意味する。哺乳動物としては、例えば、ヒト;非ヒト霊長類、例えば、類人猿及びサル;イヌ;ネコ;ウシ;ウマ;ヒツジ;及びヤギが挙げられる。非哺乳動物としては例えば、魚類及び鳥類が挙げられる。一実施形態では、個体はヒトである。
【0113】
本明細書で使用される際に、用語「医薬的に許容可能」とは、製剤化された化合物が患者に投与されたときに、化合物の生物活性、薬理活性、及び/又は他の特性を著しく妨げない化合物の製剤を指す。複数の実施形態では、医薬的に許容可能な製剤は、患者に対し著しい刺激を引き起こさない。
【0114】
用語「置換された」は、原子又は原子群が、別の基に付加された置換基として水素を置換していることを意味する。アリール基及びヘテロアリール基については、「置換された」という用語は、任意の置換レベル、すなわち当該置換が許容される場合に、一、二、三、四又は五-置換を指す。置換基は独立して選択され、置換は化学的にアクセス可能な任意の位置にありうる。置換基としては、例えば、ハロ基、オキシ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキル-チオ基、アルキル-チオ-アルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、トリハロメチル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アルキルシリル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びアミノ基の群に由来する部分の一つが挙げられうる。炭素鎖を含む置換基は、1~6個、1~3個、又は1~2個の炭素原子を含有しうる。
【0115】
本明細書で使用される場合、疾患又は状態(例えば、NASH)に関連して「治療する」及び「治療」という用語は互換的に使用され、疾患又は状態(例えば、NASH)の個々の罹患又はリスクにおける有益又は望ましい臨床結果を得るための措置をとることを示し、疾患又は状態の症状を予防、維持、阻害、治療、又は低減することを含む。したがって、患者の治療には、さらなる疾患の進行の予防又は延期(例えば、予防又は維持)、発症している又は発症が予測される症状の重症度の予防又は軽減、既存の症状の改善及びさらなる症状の予防、ならびに/又は対象が状態を発症する確率の低下をもたらす、状態(例えば、NASH)を発症するリスクがある対象の予防的治療が含むことができる。
【0116】
範囲:本開示全体を通して、本開示の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式の記述は、単に便宜及び簡潔性を目的としており、本開示の範囲に関する柔軟性のない限界として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の説明は、可能な限り全ての部分範囲だけでなく、その範囲内の個別の数値も特に開示したと考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、特に開示した部分範囲、ならびに、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などのその範囲内の個別の数値を持つと考えられるべきである。このことは範囲の幅に関わらず適用される。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本開示の実施形態を以下に記載する。しかし、本開示はこれらの実施形態に限定されないものの、むしろ当業者に明らかである変形とその等価物も含むことが意図されていることに、特に留意されたい。
【0118】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は一般的に、過剰な脂肪が肝臓に蓄積し、かつ過度のアルコール摂取が原因でない一連の状態を表すことができる。例えば、単純脂肪肝(非アルコール性脂肪肝又はNAFL)は、肝臓に脂肪があり、肝炎又は細胞損傷がほとんど又は全くない状態である。この状態は通常、肝損傷又は他の合併症をもたらすまで進行しない。しかしながら、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、対象が脂肪肝に加えて肝臓の炎症(肝炎)及び/又は細胞損傷を有し、線維症(肝硬変を含む)又は肝がんを引き起こす可能性のある別の状態である。NAFLDを有する対象のサブセットのみがNASHを有し(約20%)、米国の成人の約3~12%がNASHを有する。しかし、NASHは肝移植の待機リストへの登録及び肝移植の二番目に多い原因として特定されている。したがって、NASHに罹患している患者の転帰の重症度は、効果的な治療が緊急に必要であることを示している。
【0119】
現在、NAFLD及びNASHの治療は、薬物療法ではなく、食事及び他のライフスタイルの改変に依存する。特に、NASH及び関連する病態又は合併症(例えば、線維症及び肝硬変)に対する効果的な治療剤の開発には、かなりの課題があった。
【0120】
驚くべきことに、式Iの化合物は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む肝疾患及び障害、ならびにNASHに関連するか、又はNASHとは無関係に発症し得る、肝線維症(肝硬変を含む)、肝脂肪症、肝炎(例えば、小葉の炎症)、及び肝細胞バルーニングなどの状態の治療に効果的であることが見出された。
【0121】
例えば、式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、当技術分野で認識されたNASHの齧歯類モデルで示されるように、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療に有効であることが見出されている。特に、式Iの化合物は、糖尿病関連の耐糖能障害(IGT)を改善し、肝臓における脂肪沈着を減少させ、肝脂肪症を減弱させ、肝線維症、肝炎症、肝肥大を減弱させ、及びNASHを治療することが見出されている。したがって、式Iの化合物、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載されるものを含む、これらの状態のいずれかを治療(例えば、予防、阻害、減少、又は維持)するのに、有用でありうる。
【0122】
例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)又は他の肝臓病態(脂肪症、肝炎(例えば、小葉の炎症)、肝細胞のバルーニング、及び/又は線維症(例えば、肝硬変)を含む)に罹患しているか、又はそのリスクがある個人は、式Iによる化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与を含む治療から利益を得ることができる。
【0123】
式Iの化合物
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法で使用する化合物は、式Iに従う化合物、
【化35】
(I)
及びその薬学的に許容可能な塩を含み、
式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2
-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、
-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換の-アラ(C1-C6)アルキル、非置換又は置換の
-ヘテロアラ(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、式中、該置換アラ(C1-C6)アルキル及び置換ヘテロアラ(C1-C6)アルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2からなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルからなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR5及びR6の両方が-OHであることができず;
11及びR12は、独立して、水素、
-(C1-C6)アルキル、及び-OHからなる群から選択され、但しR11及びR12の両方が-OHであることができず;
mは1、2、3、又は4であり;
nは0、1、2、3、又は4であり;
oは0、1、2、3、又は4であり;
pは1、2、3、又は4であり;
qは0、1、2、3、又は4であり;
rは0、1、2、3、又は4である。
【0124】
複数の実施形態では、R1及び/又はR2を含むハロ(C1-C6)アルキル及び/又はハロ(C1-C6)アルコキシは、ペルハロ(C1-C6)アルキル及びペルハロ(C1-C6)から選択される。
【0125】
複数の実施形態では、R1は、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R2は、水素又は-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。上述の実施形態では、-(C1-C8)アルキルは、-(C1-C6)アルキル、-(C1-C3)アルキル、又はメチル若しくはエチルである。複数の実施形態では、R1及びR2は水素である。
【0126】
複数の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8の各々は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。-(C1-C8)アルキルは、-(C1-C6)アルキル、-(C1-C3)アルキル、又はメチル若しくはエチルである。複数の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は水素である。
【0127】
複数の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。-(C1-C8)アルキルは、-(C1-C6)アルキル、-(C1-C3)アルキル、又はメチル若しくはエチルである。複数の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14は水素である。
【0128】
複数の実施形態では、R3~R14の各々は独立して、上述のスキームに従い、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R3~R14は水素である。
【0129】
式Iの化合物の複数の実施形態では、m+n+oの合計は、2から10、9、8、7、6、5、4、若しくは3までの範囲にあるか;3から10、9、8、7、6、5、若しくは4までの範囲にあるか;又は4から10、9、8、7、6、若しくは5までの範囲にある。複数の実施形態では、m+n+oの合計は、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2である。
【0130】
式Iの化合物の複数の実施形態では、p+q+rの合計は、1から10、9、8、7、6、5、4、3、若しくは2までの範囲にあるか;2から10、9、8、7、6、5、4、若しくは3までの範囲にあるか;3から10、9、8、7、6、5、若しくは4までの範囲にあるか;又は4から10、9、8、7、6、若しくは5までの範囲にある。複数の実施形態では、p+q+rの合計は、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1である。
【0131】
m+n+oの合計を規定し、及び/又はp+q+rの合計を規定する前述の実施形態のうちの複数の実施形態では、R3~R14の各々は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R3~R14は水素である。
【0132】
式Iの化合物の複数の実施形態では、mは3であり;pは4であり;n、o、q、及びrのそれぞれはゼロである。複数の実施形態では、R3、R4、R9、及びR10は独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R3、R4、R9、及びR10は独立して水素である。複数の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択されてもよい。複数の実施形態では、R1及びR2は独立して水素であってもよい。複数の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R9、及びR10は水素である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1))、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0133】
式Iの化合物の複数の実施形態では、mは4であり;nは1又は2であり;pは3であり;o、q、及びrのそれぞれはゼロである。複数の実施形態では、R3、R4、R9、及びR10は独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。複数の実施形態では、R3、R4、R9、及びR10は独立して水素である。複数の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択されてもよい。複数の実施形態では、R1及びR2は独立して水素から選択されてもよい。複数の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R9、及びR10は水素である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、若しくはその薬学的に許容可能な塩、又は(S)-2-アミノ-5-((6-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、若しくはその薬学的に許容可能な塩である。
【0134】
複数の実施形態では、R1及びR2はそれぞれ水素である。複数の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ水素である。複数の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14はそれぞれ水素である。複数の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14はそれぞれ水素である。複数の実施形態では、(m+n+o)は3である。複数の実施形態では、(m+n+o)は4である。複数の実施形態では、(m+n+o)は5である。複数の実施形態では、(m+n+o)は6である。複数の実施形態では、(p+q+r)は3である。複数の実施形態では、(p+q+r)は4である。複数の実施形態では、(p+q+r)は5である。複数の実施形態では、(p+q+r)は6である。
【0135】
複数の実施形態では、式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩が、本明細書に記載される方法で使用される。例示的な薬学的に許容可能な塩が本明細書に記載される。複数の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、式Iの化合物の塩酸塩(例えば、式Iの化合物の一塩酸塩、二塩酸塩、又は三塩酸塩)である。
【0136】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、
【化36】
(1)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩、
【化37】
である。
【0137】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、
【化38】
(2)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化39】
である。
【0138】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、
【化40】
(3)、
又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩、
【化41】
である。
【0139】
化合物の合成
式Iの化合物は、当技術分野で公知の方法に従って調製されてもよい。例示的な合成を本明細書に記載する。
【0140】
化合物(1)
式Iの化合物である化合物(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1)、二塩酸塩)の二塩酸塩を調製する例示的方法は、以下の通りである。
A.(S)-(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバミン酸tert-ブチルの調製:
【化42】
【0141】
ジ-tert-ブチル-ジカルボネート(733μL、3.189mmol)を、無水テトラヒドロフラン(4mL)中L-(-)-α-アミノ-ε-カプロラクタム塩酸塩(500mg、3.037mmol)及びトリエチルアミン(847μL、6.074mmol)の懸濁液に加えた。結果として得られた懸濁液を、室温で一晩攪拌し、濃縮した。残渣の白色固形物を、酢酸エチルと水との間で分離した。水層を除去した。有機層を、1N塩酸水溶液で二回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で二回、飽和食塩水で一回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。純粋な表題化合物((S)-(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバミン酸tert-ブチル)を、白色固体として得た。1H NMR(400 MHz,CD3OD)δ 6.45(bd,J = 5.8 Hz,1H),4.18-4.30(m,1H),3.17-3.30(m,2H),1.70-2.03(m,4H),1.48-1.57(m,1H),1.45(s,9H),1.28-1.42(m,1H);MS(ESI):m/z 250.8(M+Na)+
B.(S)-(1-(3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)-2-オキソアゼパン-3-イル)カルバミン酸tert-ブチルの調製:
【化43】
【0142】
ビス(トリメチルシリル)アミド(2.524mmol;2.5 mLのテトラヒドロフラン中1.0M溶液)を、無水テトラヒドロフラン(12mL)中(S)-(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバミン酸tert-ブチル(288mg、1.262mmol)溶液に加えた。
【0143】
結果として得られた懸濁液を、室温で30分間攪拌した。3-(Boc-アミノ)プロピル臭化物(2.524mmol;470μL)を一斉に加え、反応物を室温で28時間攪拌した。
【0144】
反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣を酢酸エチルと水との間で分配する。水層を除去する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの0~100%の勾配溶媒系を使用したシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物((S)-(1-(3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)-2-オキソアゼパン-3-イル)カルバミン酸tert-ブチル)を無色油として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.96(bd,J=5.0Hz,1H),5.32(bs,1H),4.36(m,1H),3.45-3.62(m,2H),3.33-3.41(m,1H),3.08-3.22(m,2H),2.97-3.06(m,1H),2.02-2.09(m,1H),1.92-2.00(m,1H),1.76-1.87(m,2H),1.61-1.70(m,2H),1.40-1.50(m,19H),1.31-1.38(m,1H);MS(ESI):m/z 407.8(M+Na)+
C.(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩(化合物(1)、二塩酸塩)の調製:
【化44】
【0145】
(S)-(1-(3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)-2-オキソアゼパン-3-イル)カルバミン酸tert-ブチル(100mg、0.2596mmol)を、12N塩酸水溶液(4mL)に溶解した。結果として得られた溶液を、発泡が全て収まるまで室温で攪拌した。溶液をマイクロ波反応バイアルに移して、160℃で90分間加熱した。濃縮すると、純粋な表題化合物((S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩)を、淡黄褐色固体として得た。1H NMR(400MHz,D2O)δ4.00(t,J=6.3Hz,1H),3.08-3.20(m,6H),1.90-2.15(m,4H),1.72-1.83(m,2H),1.43-1.62(m,2H);MS(ESI):m/z 203.9(M+H)+
【0146】
(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(「APL」)の溶解性、肝ミクロソーム安定性、及び溶液安定性が判定されている。WO2018/049019及び米国公開2019/0192462を参照のこと。
【0147】
化合物(2)
式Iの化合物である、化合物(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(2)、三塩酸塩)を調製する例示的方法は、以下の通りである。
A.(6-オキソヘキシル)カルバミン酸tert-ブチルの調製:
【化45】
【0148】
無水ジメチルスルホキシド(83μL)を、無水ジクロロメタン(2mL)中の塩化オキサリル(50μL)の撹拌溶液に、-78℃で滴下して加えた。15分間攪拌した後、無水ジクロロメタン(1mL)中の6-(tert-ブトキシ-カルボニルアミノ)-1-ヘキサノール(115mg、0.53mmol)の溶液を滴下して加えた。結果として得られた混合物を、-78℃で45分間攪拌した。トリエチルアミン(368μL)を加え、反応物を室温まで加温した。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、表題化合物((6-オキソヘキシル)カルバミン酸tert-ブチル)をオフホワイトの固体(86mg、収率75%)として得て、これをさらに精製せずに使用する。
B.(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-((6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル)アミノ)-ペンタン酸の調製
【化46】
【0149】
酢酸(100μL)を含有する無水メタノール(2mL)中のN-アルファ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン94mg(0.352mmol)の攪拌懸濁液に、無水メタノール(1.9mL)中(6-オキソヘキシル)カルバミン酸tert-ブチル(114mg、0.528mmol)溶液を加えた。結果として得られた混合物を、室温で30分間攪拌した。次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(66mg、1.057mmol)を加え、反応物を室温で一晩攪拌した。ロータリーエバポレーターで濃縮した後、残渣を酢酸エチルと1M硫酸水素カリウム水溶液との間で分配した。水層を除去した。有機相を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。結果として得られた残渣を、0.1%ギ酸調節剤を含む水中10~100%アセトニトリルの勾配を用いた逆相クロマトグラフィー(C18カラム)によって精製した。表題化合物((S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-((6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル)アミノ)-ペンタン酸)(87mg、収率53%)を淡黄色油として得た。1H NMR(400MHz,D2O)δ3.94(t,J=5.92Hz,0.5H),3.63(m,0.5H),2.99-3.13(m,6H),1.65-2.04(m,8H),1.43(m,4H);MS(ESI):m/z 466.2[(M+H)+]。
C.(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩の調製
【化47】
【0150】
6N塩酸水溶液(4mL)中の(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ-5-((6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル)アミノ)ペンタン酸(18mg、0.039mmol)の溶液を二時間還流した。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、表題化合物((S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩)(12mg、収率90%)を淡黄色油として得た。1H NMR(400MHz,D2O)δ4.27(m,0.5H),3.95(m,0.5H),3.33-3.48(m,6H),2.00-2.37(m,8H),1.77(m,4H);MS(ESI):m/z 232.2[(M+H)+]。
【0151】
化合物(3)
式Iの化合物である、化合物(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(3)、三塩酸塩)を調製する例示的方法は、以下の通りである。
A.(5-オキソペンチル)カルバミン酸tert-ブチルの調製
【化48】
【0152】
無水ジメチルスルホキシド(58μL)を、無水ジクロロメタン(1.5mL)中の塩化オキサリル(35μL)の撹拌溶液に、-78℃で滴下して加えた。15分間攪拌した後、無水ジクロロメタン(0.75mL)中の6-(tert-ブトキシ-カルボニルアミノ)-1-ペンタノール(75mg、0.37mmol)の溶液を滴下して加えた。結果として得られた混合物を、-78℃で45分間攪拌した。トリエチルアミン(257μL)を加え、反応物を室温まで加温した。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、表題化合物((5-オキソペンチル)カルバミン酸tert-ブチル)をオフホワイトの固体(52mg、収率70%)として得て、これをさらに精製せずに使用した。
B.(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-((5-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル)アミノ)-ペンタン酸の調製
【化49】
【0153】
酢酸(38μL)を含有する無水メタノール(1mL)中のN-アルファ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン35mg(0.13mmol)の攪拌懸濁液に、無水メタノール(1.0mL)中の(5-オキソペンチル)カルバミン酸tert-ブチル(40mg、0.20mmol)溶液を加えた。結果として得られた混合物を、室温で30分間攪拌した。次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(25mg、0.40mmol)を加え、反応物を室温で一晩攪拌する。ロータリーエバポレーターで濃縮した後、残渣を酢酸エチルと1M硫酸水素カリウム水溶液との間で分配した。水層を除去した。有機相を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。結果として得られた残渣を、0.1%ギ酸調節剤を含む水中10~100%アセトニトリルの勾配を用いた逆相クロマトグラフィー(C18カラム)によって精製した。表題化合物((S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-((5-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル)アミノ)-ペンタン酸)(34mg、収率58%)を無色油として得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ7.26-7.38(m,5H),5.08(s,2H),4.03(m,1H),2.90-3.07(m,6H),1.87(m,1H),1.65-1.79(m,5H),1.34-1.54(m,13H);MS(ESI):m/z 452.30[(M+H)+]。
C.(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩の調製
【化50】
【0154】
6N塩酸水溶液(4mL)中の(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ-5-((5-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル)アミノ)ペンタン酸(20mg、0.044mmol)の溶液を二時間還流した。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、表題化合物((S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩)(12mg、収率88%)を淡黄色油として得る。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ4.06(t,J=5.36Hz,1H),3.06(m,4H),2.96(t,J=7.52Hz,2H),1.88-2.10(m,4H),1.68-1.83(m,4H),1.47-1.55(m,2H);MS(ESI):m/z 218.2[(M+H)+]。
【0155】
当業者は、WO 2018/049019及び米国公開2019/0192462のスキーム1~16で説明されたプロセスが、式Iの化合物を合成しうるための専らの手段ではないこと、ならびに本開示の化合物を合成する際に採用されうる利用可能な合成有機反応のレパートリーがあることを理解するものとなる。当業者は、適切な合成経路をどのように選択し実行するかを知っている。適した合成方法は、Comprehensive Organic Synthesis,Ed.B.M.Trost and I.Fleming(Pergamon Press,1991),Comprehensive Organic Functional Group Transformations,Ed.A.R.Katritzky,O.Meth-Cohn,and C.W.Rees(Pergamon Press,1996),Comprehensive Organic Functional Group Transformations II,Ed.A.R.Katritzky and R.J.K.Taylor(Editor)(Elsevier,2nd Edition,2004),Comprehensive Heterocyclic Chemistry,Ed.A.R.Katritzky and C.W.Rees(Pergamon Press,1984),and Comprehensive Heterocyclic Chemistry II,Ed.A.R.Katritzky,C.W.Rees,and E.F.V.Scriven(Pergamon Press,1996)などの参照源を含む文献を参照して特定されうる。
【0156】
式Iの化合物及び中間体は、それらの反応混合物から単離され、濾過、液液抽出、固相抽出、蒸留、再結晶、又はクロマトグラフィーなどの標準的な手法によって精製されうる。
【0157】
式Iの化合物が一つ又は複数のキラル中心を含有するとき、化合物は、純粋なエナンチオマー体若しくはジアステレオマー体として、又はラセミ混合物として、存在しうるか又は単離されうることが理解されよう。したがって、本開示は、NASHの治療において生物活性である本開示の化合物の任意の生じ得るエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、又はそれらの混合物を含む。
【0158】
式Iの化合物のα-アミノ酸官能基のα-炭素にキラル中心が発生する。式Iの化合物は、カーン・インゴルド・プレローグ則に従って、含まれるα-アミノ酸官能基のα-炭素に関する(S)絶対配置によって特徴付けられ、
【化51】
式Iの化合物である、化合物(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1))によって例示される通りである。
【化52】
(1)
(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸
【0159】
複数の実施形態によれば、式Iの化合物は、含まれているα-アミノ酸官能基のα-炭素の周りの立体配置に関する、単離された(S)光学異性体である。「単離された光学異性体」とは、同じ式の対応する光学異性体から実質的に精製されている化合物を意味する。複数の実施形態では、単離された異性体は、重量で少なくとも約80%、少なくとも85%純粋であり、少なくとも90%純粋であり、少なくとも95%純粋であり、少なくとも98%純粋であり、少なくとも約99%純粋であり、この残りを対応の(R)エナンチオマーが占める。複数の実施形態では、単離された(S)エナンチオマーは、少量の(R)エナンチオマーを除いて対応の(R)エナンチオマーを含まない。
【0160】
薬学的に許容可能な塩
式Iの化合物は、塩を形成することができる基又は原子で適切に置換されたときには、塩の形態をとる場合がある。そうした基又は原子は有機化学分野の当業者に公知である。「塩」という用語は、本開示の化合物である遊離酸又は遊離塩基の付加塩を包含する。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、医薬用途において有用性をもたらす範囲内の毒性プロファイルを保有する塩を指す。薬学的に許容不可能な塩は、高い結晶化度などの性質を保有する場合があるが、例えば本発明化合物の合成、精製又は製剤化のプロセスにおける有用性など、本開示の実施において有用性を有する。
【0161】
適切な薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製されうる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及びリン酸が挙げられる。適切な有機酸は、脂肪族、脂環族、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、複素環族、炭素環族及びスルホン酸族の有機酸から選択されてもよく、その例としては、ギ酸、酢酸、ピバル酸、プロピオン酸、フロ酸、粘液酸、イセチオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸、カンファスルホン酸、及びガラクツロン酸が挙げられる。薬学的に許容不可能な酸付加塩の例としては例えば、過塩素酸塩及びテトラフルオロホウ酸塩が挙げられる。
【0162】
複数の実施形態では、適切な薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載の化合物の塩酸塩(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のうちのいずれか一つの塩酸塩)である。複数の実施形態では、塩酸塩は、一塩化物塩である。複数の実施形態では、塩酸塩は、二塩酸塩である。複数の実施形態では、塩酸塩は、三塩酸塩である。
【0163】
本開示の化合物の適切な薬学的に許容可能な塩基付加塩としては例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛の塩などをはじめとする金属塩が挙げられる。薬学的に許容可能な塩基付加塩はさらに、例えばN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、トロメタミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインなどの塩基性アミンから生成された有機塩も含む。薬学的に許容不可能な塩基付加塩の例としては、リチウム塩及びシアン酸塩が挙げられる。
【0164】
これらの塩は全て、例えば、式Iの化合物と適切な酸又は塩基を反応させることにより、式Iの対応する化合物から従来的な手段で調製され得る。塩は結晶形態であってもよく、適切な溶媒から塩を結晶化させることにより調製されうる。当分野の当業者であれば、例えばHandbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use by P.H.Stahl and C.G.Wermuth(Wiley-VCH 2002)に記載されるように適切な塩形態をどのように調製及び選択するかを知っているであろう。
【0165】
治療方法
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
一態様では、本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。別の態様では、本発明は、対象におけるNASHの治療に使用するための、式Iに記載の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を特徴とする。別の態様では、本発明は、NASHの治療のための薬剤の調製のための式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を特徴とする。
【0166】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、肥満の流行を反映して、世界中で最も顕著な形態の慢性肝疾患の一つとなっている。肝脂肪症又は「脂肪肝」は、肝臓における脂肪の蓄積である。NAFLDとは別に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、実質的な健康リスクを特徴とする障害である。肝臓に過剰な脂肪があることに加えて、NASHは、線維症を伴うか伴わないかに関わらず、肝炎症及び肝細胞損傷(バルーニング)の組織学的証拠によって特徴付けられることがある。NASHと診断された対象は、罹患及び死亡のリスクが著しく上昇しており、NASHの治療のための治療薬を継続的に必要としている。
【0167】
より具体的には、NASHは、心血管性及び肝臓関連の死亡リスクの増加によって特徴付けることができる。NASHは、肝臓が永久的に損傷し、瘢痕化する、肝硬変につながることがある。肝硬変は、体液貯留、筋肉の消耗、腸からの出血、及び肝不全をもたらす。肝移植は、肝不全を伴う進行肝硬変に対する唯一の治療である。NASH患者では移植がますます実施される。NASHは現在、肝移植の理由の第二位であり、新しい抗ウイルス薬が、現在、肝不全の原因の第一位であるC型肝炎を抑制するため、10年後には第一位になる可能性が非常に高い。
【0168】
複数の実施形態では、NASHは、肝生検(例えば、肝疾患の他の原因又は実質的なアルコール消費がない場合の、例えば、脂肪症、炎症、及び肝細胞バルーニングの組織学的証拠)によって診断されうる。例えば、NAFLD活性スコア(NAS)は、NASH患者を特定するのに有用でありうる。Kleiner et al,“Design and Validation of a Histological Scoring System for Nonalcoholic Fatty Liver Disease”,Hepatology,41(6):1313-1321(2005)を参照のこと。
【0169】
NASは、脂肪症(0~3)、肝細胞バルーニング(0~2)、及び小葉の炎症(0~3)の別個のスコアの合計であり、最大スコアは8である。NASスコアは、Kleinerらの上記に記載される基準に従い、生検時に生成することができる。表1も参照のこと。
【表1】
【0170】
複数の実施形態では、対象は、肝生検(例えば、NASスコアを決定するために使用される肝生検)に基づいて選択される。
【0171】
複数の実施形態では、対象は、NASスコアに基づいて選択される。複数の実施形態では、NASHの存在は、4以上のNASスコア(すなわち、4以上のNASスコア)によって確立される。複数の実施形態では、NASHの存在は、5以上のNASスコア(すなわち、5以上のNASスコア)を明らかにする肝生検によって確立されうる。
【0172】
複数の実施形態では、対象は、治療前に決定されるNASスコアに基づいて選択される。
【0173】
複数の実施形態では、NASHの存在は、4以上の治療前のNASスコア(すなわち、4以上のNASスコア)によって確立される。複数の実施形態では、NASHの存在は、5以上の治療前のNASスコア(すなわち、5以上のNASスコア)を明らかにする肝生検によって確立されうる。
【0174】
複数の実施形態では、NASHは、5以上のNAFLD活性スコア(NAS)によって特徴付けられてもよく、NASは、脂肪症(範囲:0~3)、肝細胞バルーニング(範囲:0~2)、及び小葉の炎症(範囲:0~3)に対する個別のスコアの合計である。上記、Kleinerらを参照されたい。脂肪症は、肝臓内の脂質の異常な保持である。脂肪症スコアは、脂肪液滴(脂肪症)を0(<5%)、1(5~33%)、2(33~66%)、及び3(>66%)として含有する肝細胞の割合を表す。本開示によるNASHの治療を受けた患者は、NAS脂肪症スコア1、2又は3を有することができる。肝細胞バルーニングは、細胞の中心又はその近傍での細胞核の肥大及び局在化によって視覚的に特徴付けられる細胞死の一種である。複数の実施形態では、肝細胞バルーニングは、0(なし)、1(少数)、又は2(顕著なバルーニングを有する多数の細胞)としてスコア付けされる。複数の実施形態では、小葉の炎症は、炎症の病巣の数:0(病巣なし)、1(2未満の病巣/200倍のフィールド)、及び2(2~4の病巣/200倍のフィールド)に従ってスコア付けされる。複数の実施形態では、対象は、0、1、2、又は3の小葉の炎症スコア、及び0、1、又は2のバルーニングスコアを有し、ただし、小葉の炎症スコア及びバルーニングスコアの合計は少なくとも2である。
【0175】
複数の実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用は、NASスコアの改善を含む。複数の実施形態では、改善は、線維症を悪化させずに起こる。
【0176】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩を投与することは、4未満のNAFLD活性スコア(NAS)をもたらす。
【0177】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のNASスコアにおいて少なくとも一(≧1)の減少をもたらす。
【0178】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のNASスコアにおいて少なくとも二(≧2)の減少をもたらす。
【0179】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のNASスコアにおいて少なくとも三(≧3)の減少をもたらす。
【0180】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の肝脂肪症スコアにおいて一(1)~三(3)の減少をもたらす。
【0181】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の肝細胞バルーニングスコアにおいて一(1)又は二(2)の減少をもたらす。
【0182】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の小葉の炎症スコアにおいて一(1)~三(3)の減少をもたらす。
【0183】
複数の実施形態では、対象は、1、2、又は3の脂肪症スコアを有する。
【0184】
複数の実施形態では、脂肪症は、大滴性脂肪症を含む。複数の実施形態では、脂肪症は、微小胞性脂肪症を含む。複数の実施形態では、脂肪症は、大滴性及び微小胞性脂肪症を含む。
【0185】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、それを必要とする患者における線維症の悪化を伴わない脂肪性肝炎の解消をもたらす。複数の実施形態では、解消は、肝細胞バルーニング(例えば、バルーニングスコア0)の欠如、無炎症又は軽炎症(例えば、バルーニングスコア0~1)、及び/又は脂肪症の存在若しくは非存在(例えば、脂肪症スコア0~3)を含む。
【0186】
複数の実施形態では、NASHは、小葉の炎症及び肝細胞バルーニングのうちの少なくとも一つによって特徴付けられる脂肪性肝炎である。複数の実施形態では、NASHは、肝疾患の他の原因及び/又は実質的なアルコール消費の非存在下で起こる。
【0187】
複数の実施形態では、対象は肝炎を有する。複数の実施形態では、肝炎は小葉の炎症である。
【0188】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、肝炎の減少をもたらす。
【0189】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0又は1の肝炎のスコアをもたらす(例えば、本明細書に記載される通り)。
【0190】
複数の実施形態では、対象の肝臓は、肝細胞バルーニングによって特徴付けられる。
【0191】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、肝細胞バルーニングの減少をもたらす。
【0192】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0のバルーニングスコアをもたらす。
【0193】
複数の実施形態では、治療は、NASスコアを決定することと関係なく開始される。
【0194】
複数の実施形態では、対象は、NASスコア(例えば、バイオマーカー)の組織学的評価と平行する代理マーカーに基づいて選択される。
【0195】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、それを必要とする患者における線維症の悪化を伴わない、NASにおける少なくとも二点で改善をもたらす。
【0196】
複数の実施形態では、対象は肝線維症を有する。
【0197】
複数の実施形態では、線維症は0~4の値でスコア化/ステージ付けされる(表2)。
【表2】
【0198】
複数の実施形態では、対象は非肝硬変NASHを有する。
【0199】
複数の実施形態では、対象は肝硬変NASHを有する。
【0200】
複数の実施形態では、対象は0~3の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は0の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は1の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は2の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は3の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は4の線維症ステージスコアを有する(肝硬変)。複数の実施形態では、治療後の患者は、治療前のベースラインスコアよりも少なくとも悪化していない線維症ステージスコアを有してもよく、あるいは、少なくとも一レベル、あるいは少なくとも二又は三レベルの線維症ステージスコアの減少を有していてもよい。
【0201】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の肝線維症スコアの増加をもたらさない(対象の肝線維症の安定化)。
【0202】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の肝線維症スコアの少なくとも一(≧1)の減少をもたらす(対象の肝線維症の逆転)。
【0203】
複数の実施形態では、肝線維症は、肝線維症試験(ELF)スコアの強化を使用して特徴付けられる。複数の実施形態では、肝線維症は、7.7未満のELFスコアとして特徴付けられる。複数の実施形態では、肝線維症は、7.7以上かつ9.8未満のELFスコアによって特徴付けられる。複数の実施形態では、肝線維症は、9.8超のELFスコアによって特徴付けられる。
【0204】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、それを必要とする患者における線維症ステージの維持(悪化なし)をもたらす。
【0205】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、それを必要とする患者における線維症の退縮をもたらす。
【0206】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象における肝臓肥大の減少をもたらす。
【0207】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象における肝臓コラーゲンレベルの減少をもたらす。
【0208】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の肝組織アルファ平滑筋アクチン(α-SMA)レベルの減少をもたらす。
【0209】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象における肝細胞アポトーシスの減少をもたらす。
【0210】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象におけるヒアルロン酸レベルの減少をもたらす。
【0211】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP-1)レベルの減少をもたらす。
【0212】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のプロコラーゲンIII末端ペプチド(PIIINP)レベルの減少をもたらす。
【0213】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の可溶性Fasリガンドレベルの減少をもたらす。
【0214】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のレプチンレベルの減少をもたらす。
【0215】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)対血小板指数(APRI)の減少をもたらす。
【0216】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象の線維症4(FIB-4)スコアの減少をもたらす。
【0217】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象における肝硬度の減少をもたらす。
【0218】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のアディポネクチンレベルの増加をもたらす。
【0219】
血清マーカー及びバイオマーカー
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用のいずれかは、それを必要とする患者における血清マーカー(例えば、肝線維症又はNASHなどの肝病理の血清マーカー)の変化をもたらす。したがって、複数の実施形態では、患者は、血清マーカー(本明細書に記載される任意のものを含む)の特定の発現レベルに基づいて選択される。例えば、本明細書に記載の方法は、血清マーカー(例えば、本明細書に記載の任意のもの)の特定の(例えば、閾値レベル)を有する患者に特に有益でありうる。さらに、本明細書に記載の方法は、血清マーカーの好ましい変化をもたらすことができる(例えば、本明細書に記載の任意の血清マーカーのレベルを調節する)。複数の実施形態では、本明細書に記載の方法は、上昇した血清マーカー(例えば、本明細書に記載の任意のもの)の減少をもたらすことができる。
【0220】
例えば、治療有効性を監視するための線維症の非侵襲的測定は、肝生検を繰り返す必要性を回避するのに有用でありうる(例えば、NASHなどの本明細書に記載の任意の肝病理を有する患者を含む、本明細書に記載の方法から利益を得ることができる患者を特定するため)。複数の実施形態では、血清マーカーは、FIB-4である。複数の実施形態では、血清マーカーは、APRIである。APRI及びFIB-4スコアは、以下の公開された式(Kim et al.,Hepatology 2013,57:1357)によって計算され、「PLT数」は血小板数であり、「AST」はアスパラギン酸トランスアミナーゼであり、正常上限は40IU/mLであり、「ALT」はアラニンアミノトランスフェラーゼである。
APRI=([AST/正常上限]/PLT数[109/L])
FIB-4=(年齢〔年〕×AST[IU/L])/(PLT[109/L]×(ALT[IU/L])1/2)。
【0221】
したがって、例示的な血清マーカーは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、又はγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、又はそれらの任意の組み合わせなどの酵素を含む。複数の実施形態では、患者は、少なくとも一つの上昇した肝酵素を有する。
【0222】
さらに他の例示的な血清マーカーとしては、総コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール、トリグリセリド、ビリルビン、アルブミン、C-ペプチド、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、レプチン、アディポネクチン、遊離脂肪酸、グレリン、及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)が挙げられる。
【0223】
複数の実施形態では、対象の肝アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルが上昇した。複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、肝アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの減少をもたらす。複数の実施形態では、対象は、正常レベル(例えば、約10~40IU/L)内に収まるALTレベルを有する。複数の実施形態では、対象は、約40IU/Lを超えるALTレベルを有する。複数の実施形態では、ALTは、約30IU/Lを超えない(例えば、男性患者の場合)。複数の実施形態では、ALTは、約30IU/Lを超える(例えば、男性患者の場合)。複数の実施形態では、ALTは、約19IU/Lを超えない(例えば、女性患者の場合)。複数の実施形態では、ALTは、約19IU/Lを超える(例えば、女性患者の場合)。
【0224】
複数の実施形態では、対象の肝アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルが上昇した。複数の実施形態では、対象は、正常レベル(例えば、約10~35IU/L)内に収まるASTレベルを有する。複数の実施形態では、対象は、約30IU/Lを超えるASTレベルを有する。複数の実施形態では、対象は、約35IU/Lを超えるASTレベルを有する。複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、肝アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの減少をもたらす。
【0225】
複数の実施形態では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)の比率が決定される。複数の実施形態では、患者は、1よりも大きいAST/ALTの比率を有する。複数の実施形態では、患者は、1未満のAST/ALTの比率を有する。
【0226】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)対アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)比の減少をもたらす。
【0227】
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、対象のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の比が1に近くなるように変化をもたらす。
【0228】
複数の実施形態では、対象は、アルカリホスファターゼ(ALP)レベルの上昇を有する。複数の実施形態では、対象は、正常範囲(例えば、約20~140又は約37~116IU/L)内に収まるALPレベルを有する。複数の実施形態では、対象は、約120IU/L又は約140IU/Lを超えるALPレベルを有する。複数の実施形態では、対象は、約150IU/Lを超えるALPレベルを有する。複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、アルカリホスファターゼ(ALP)レベルの減少をもたらす。
【0229】
複数の実施形態では、対象は、上昇したγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)レベルを有する。複数の実施形態では、対象は、正常範囲(例えば、約5~30IU/L又は約9~48IU/L)内に収まるGGTレベルを有する。複数の実施形態では、対象はGGTを有する。複数の実施形態では、対象は、少なくとも約50IU/Lである上昇したGGTレベルを有する。GGTレベルは、最大約90IU/L又は約100IU/Lである。複数の実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用は、GGTレベルの減少をもたらす。
【0230】
複数の実施形態では、対象は、トリグリセリドレベルの上昇を有する。複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、トリグリセリドレベルの減少をもたらす。
【0231】
複数の実施形態では、対象は、非エステル化脂肪酸(NEFA)レベルの上昇を有する。複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、非エステル化脂肪酸(NEFA)レベルの減少をもたらす。
【0232】
複数の実施形態では、対象は、コレステロールレベルの上昇を有する。複数の実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、コレステロールレベルの減少をもたらす。
【0233】
複数の実施形態では、対象は、HDL-コレステロールレベルが低下している。
【0234】
肝炎
一態様では、本発明は、肝炎を治療する(例えば、軽減する)ための方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。
【0235】
複数の実施形態では、肝炎は小葉の炎症である。
【0236】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0又は1の肝炎のスコアをもたらす。
【0237】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0238】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩(化合物(1)、二塩酸塩)である。
【0239】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸(化合物(2))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(2)、三塩酸塩)である。
【0240】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸(化合物(3))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(3)、三塩酸塩)である。
【0241】
肝細胞バルーニング
一態様では、本発明は、肝細胞バルーニングを治療する(例えば、低減する)ための方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。
【0242】
肝細胞バルーニングは、細胞の中心又はその近傍での細胞核の肥大及び局在化によって視覚的に特徴付けられる細胞死の一種である。
【0243】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、0のバルーニングスコアをもたらす。
【0244】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0245】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩(化合物(1)、二塩酸塩)である。
【0246】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸(化合物(2))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(2)、三塩酸塩)である。
【0247】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸(化合物(3))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(3)、三塩酸塩)である。
【0248】
肝線維症(肝硬変を含む)
一態様では、本発明は、肝線維症を治療する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。
【0249】
複数の実施形態では、対象は、ステージ2、ステージ3、又はステージ4の肝線維症を有する。
【0250】
複数の実施形態では、対象は肝硬変を有する(ステージ4の肝線維症)。
【0251】
複数の実施形態では、対象は1以上の線維症ステージスコアを有する。
【0252】
複数の実施形態では、対象は0~3の線維症ステージスコアを有する。
【0253】
複数の実施形態では、対象は0の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は1の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は2の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は3の線維症ステージスコアを有する。複数の実施形態では、対象は4の線維症ステージスコアを有する(肝硬変)。
【0254】
複数の実施形態では、治療後の患者は、治療前のベースラインスコアよりも少なくとも悪化していない線維症ステージスコアを有してもよく、あるいは、少なくとも一レベル、あるいは少なくとも二又は三レベルの線維症ステージスコアの減少を有していてもよい。
【0255】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における肝線維症の安定化をもたらす。
【0256】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における肝線維症の逆転をもたらす。
【0257】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0258】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩(化合物(1)、二塩酸塩)である。
【0259】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸(化合物(2))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(2)、三塩酸塩)である。
【0260】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸(化合物(3))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(3)、三塩酸塩)である。
【0261】
脂肪症
一態様では、本発明は、脂肪症を治療する方法を特徴とし、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の式Iによる化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。
【0262】
複数の実施形態では、式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を投与することは、対象における脂肪症の減少をもたらす。
【0263】
複数の実施形態では、脂肪症は、大滴性脂肪症を含む。複数の実施形態では、脂肪症は、微小胞性脂肪症を含む。複数の実施形態では、脂肪症は、大滴性及び微小胞性脂肪症を含む。
【0264】
複数の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する。
【0265】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(化合物(1))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式(I)の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸二塩酸塩(化合物(1)、二塩酸塩)である。
【0266】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸(化合物(2))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(2)、三塩酸塩)である。
【0267】
複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸(化合物(3))、又はその薬学的に許容可能な塩である。複数の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸三塩酸塩(化合物(3)、三塩酸塩)である。
【0268】
併存疾患
本明細書に記載される方法は、併存疾患を有する対象を治療するために有用でありうる。
【0269】
複数の実施形態では、対象は前糖尿病性である。
【0270】
複数の実施形態では、対象は糖尿病である。複数の実施形態では、対象は2型糖尿病を有する。
【0271】
複数の実施形態では、対象は糖尿病ではない。複数の実施形態では、対象は2型糖尿病を有していない。
【0272】
複数の実施形態では、対象は肥満である。複数の実施形態では、対象は肥満ではない。複数の実施形態では、対象は30超の体格指数(BMI)を有する。複数の実施形態では、対象は30未満のBMIを有する。複数の実施形態では、対象は25未満のBMIを有する。
【0273】
複数の実施形態では、対象は脂質異常症を有する。複数の実施形態では、対象は脂質異常症を有していない。
【0274】
複数の実施形態では、対象は高血圧を有する。複数の実施形態では、対象は高血圧を有していない。
【0275】
複数の実施形態では、対象はインスリン抵抗性である。複数の実施形態では、対象はインスリン抵抗性ではない。
【0276】
複数の実施形態では、対象は心血管疾患を有する。複数の実施形態では、対象は心血管疾患のリスクがある。複数の実施形態では、対象は心血管疾患を有していない。
【0277】
医薬組成物
別の態様では、本発明は、式Iによる化合物(例えば、化合物(1)、(2)、及び(3)のうちのいずれか)、又はその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を特徴とする。「医薬的に許容可能な担体」とは、製剤の他の成分に適合し、かつレシピエントに有害ではない任意の担体、希釈剤、又は賦形剤を意味する。
【0278】
本明細書に記載の方法及び使用の複数の実施形態では、化合物は、医薬的に許容可能な担体と組み合わされて、医薬組成物の形態で投与されうる。
【0279】
活性剤は、医薬品分野における標準的な習慣に従った剤型に製剤化されうる。Alphonso Gennaro,ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(1990),Mack Publishing Co.,Easton,PA.を参照されたい。適切な剤形は、例えば、錠剤、カプセル、溶液、非経口溶液、トローチ、坐剤、又は懸濁液を含みうる。
【0280】
式Iの化合物は、簡便な方法で投与されてもよい。適した局所経路としては、経口、直腸、吸入(鼻を含む)、局所的(頬側及び舌下を含む)、経皮、及び膣が挙げられ、例えば、表皮を経る。また式Iの化合物を、非経口投与(皮下、静脈内、筋肉内、皮内、動脈内、くも膜下腔内及び硬膜外を含む)に使用することもできる。選択された経路は、例えばレシピエントの状態により変化しうることが明白であろう。
【0281】
非経口投与については、活性剤は、例えば水、油(特に植物油)、エタノール、生理食塩水溶液、水性デキストロース(グルコース)及び関連糖溶液、グリセロール、又は例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなどのグリコールなどの適切な担体又は希釈剤と混合されうる。非経口投与用の溶液は、活性剤の水溶性塩を含有することができる。安定化剤、抗酸化剤、及び保存剤も添加されうる。適した酸化防止剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、クエン酸、及びその塩、ならびにEDTAナトリウムが挙げられる。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-パラベン又はプロピル-パラベン、及びクロルブタノールが挙げられる。非経口投与用の組成物は、水溶液若しくは非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルションの形態をとりうる。
【0282】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、対象に経口投与される。
【0283】
経口投与については、活性剤は、錠剤、カプセル、丸薬、粉末、顆粒又は他の適切な経口用剤型の調製のための一つ又は複数の固形不活性成分と組み合わされうる。例えば、活性剤は、充填剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤又は潤滑剤などの少なくとも一つの賦形剤と組み合わされうる。一つの錠剤での実施形態によれば、活性剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びデンプンと組み合わせられ、次いで従来的な錠剤形成方法により錠剤へと形成されうる。
【0284】
また、本開示の医薬組成物は、所望の放出プロファイルを提供するための様々な割合のヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマー基材、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム及び/又はマイクロスフィアを使用して、その中に含まれる活性成分を遅延放出又は制御放出するように製剤化されてもよい。
【0285】
概して、制御放出型の調製物は、必要とされる速度で活性成分を放出し、所望の期間、一定の薬理活性を維持することができる医薬組成物である。このような剤形は、所定の期間の間に身体に薬剤の供給をもたらし、それゆえに従来の非制御型製剤よりも長期間にわたって治療範囲に薬物レベルを維持する。
【0286】
米国特許第5,674,533号は、強力な末梢鎮咳薬であるモグイステイン(moguisteine)の投与用の液体剤型の制御放出型医薬組成物を開示している。米国特許第5,059,595号は、器質性精神障害の治療に関し、胃液抵抗性錠剤の使用による、活性剤の制御放出を記載している。米国特許第5,591,767号は、制御放出のための液体貯蔵型経皮パッチを記載している。米国特許第5,120,548号は、膨潤性ポリマーから構成される制御放出型の薬剤送達装置を開示している。米国特許第5,073,543号は、ガングリオシド-リポソームビヒクルに封入された栄養素を含有する制御放出型製剤を記載している。米国特許第5,639,476号は、疎水性アクリルポリマーの水性分散から誘導されたコーティングを有する安定固体制御放出型製剤を開示している。生分解性微粒子は、制御放出型製剤における用途が公知である。米国特許第5,733,566号は、抗寄生虫組成物を放出する高分子微粒子の使用を記載している。
【0287】
活性成分の制御放出は、例えばpH、温度、酵素、水、又は他の生理学的条件若しくは化合物などの様々な誘導因子によって刺激されうる。様々な薬物放出の機構が存在する。例えば一つの実施形態では、制御放出の構成要素は、患者への投与後に膨潤し、活性成分を放出するのに充分な大きさの多孔性開口部を形成しうる。本開示の文脈において「制御放出の構成要素」という用語は、医薬組成物中の活性成分の制御放出を促進する例えばポリマー、ポリマー基材、ゲル、透過性膜、リポソーム及び/又はマイクロスフィアなどの化合物として本明細書に定義される。別の実施形態では、制御放出コンポーネントは生分解性であり、体内での水性環境、pH、温度、又は酵素への曝露によって誘発される。別の実施形態では、ゾル-ゲルを使用してもよく、この場合において活性成分は室温で固体であるゾル-ゲル基材に組み込まれる。この基材は、患者、例えば、ゾル-ゲル基質のゲル形成を誘導するのに充分な高さの体温を有する哺乳動物へと移植され、それにより活性成分が当該患者内に放出される。
【0288】
医薬組成物の製剤化に使用されるコンポーネントは、高純度を有し、有害である可能性のある汚染物質を実質的に含まない(例えば、少なくとも国の食品グレード、一般には少なくとも分析グレード、さらに典型的には少なくとも医薬品グレードである)。特にヒトでの消費に関しては、組成物は、米国食品医薬品局の適用可能規制で規定されるGood Manufacturing Practice標準のもとで製造又は製剤化されうる。例えば、適した製剤は、滅菌性であり、及び/又は実質的に等張性であり、及び/又は米国食品医薬品局の全ての適正製造実施基準に完全に準拠しうる。
【0289】
用量及び投与レジメン
医師は、最も適切な活性剤の用量を決定する。用量は、投与の形態及び選択された特定の化合物で変化する。さらに用量は、限定されないが治療を受けている患者、患者の年齢、治療される状態の重症度、投与経路などをはじめとする様々な因子に応じて変化する。医師は一般的に、化合物の至適投与量よりもずっと少ない低用量で治療を開始し、その状況のもとで最適な効果が得られるまで、少しずつ漸増させることで用量を増加させることを希望する。多くの場合、組成物が経口投与されたときに、非経口で少量投与されたときと同じ効果を得るためには、より多くの量の活性剤が必要となることが判明する。化合物は、同等の治療剤と同じ様式で有用であり、投薬レベルは、他の治療剤で一般的に採用されている桁数と同じ桁数である。
【0290】
例えば、一日の用量は、約2mg/kg/日~約1000mg/kg/日、約10mg/kg/日~約1000mg/kg/日、又は約10mg/kg/日~約100mg/kg/日である。複数の実施形態では、一日の用量は約2mg/kg/日~約1000mg/kg/日である。複数の実施形態では、一日の用量は約10mg/kg/日~約1000mg/kg/日である。複数の実施形態では、一日の用量は約10mg/kg/日~約100mg/kg/日である。
【0291】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約2~1000、10~1000、又は10~100mg/kgの用量で、対象(例えば、ヒト)に投与される。複数の実施形態では、用量は約10~1000mg/kg/日である。複数の実施形態では、用量は約10~100mg/kg/日である。
【0292】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約10mg/kg又はそれを超える一日の総用量で、対象(例えば、ヒト)に投与される。複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約2mg/kg又はそれを超える一日の総用量で、対象(例えば、ヒト)に投与される。
【0293】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、一日に約100~5000、500~5000、又は600~3000mgの一日の総用量で、対象(例えば、ヒト)に投与される。複数の実施形態では、一日の総用量は約500~5000mg/日である。複数の実施形態では、一日の総用量は約600~3000mg/日である。
【0294】
治療は、必要に応じて、単一の連続した期間で、又は別個の期間のどちらかで、長期間にわたって実行されうる。複数の実施形態では、対象は治療を受ける。
【0295】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、少なくとも約4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、又は16週間、対象(例えば、ヒト)に投与される。
【0296】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、少なくとも14週間、対象(例えば、ヒト)に投与される。
【0297】
複数の実施形態では、式Iの化合物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)のいずれか一つ)、又はその任意の薬学的に許容可能な塩は、少なくとも約4~6、4~8、4~10、4~12、4~14、又は4~16週間、対象(例えば、ヒト)に投与される。
【0298】
本開示の実践は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【実施例
【0299】
以下の例では、全てのプロトコルは、動物実験委員会(IACUC)によって承認された。動物の福祉、安全、健康、快適さを確保し、ストレスと痛みを最小限に抑えるために、全ての措置が講じられた。剖検などの処置は、IACUCが承認した安楽死のためのプロトコルを使用して実施された。
【0300】
実施例1-NASHの齧歯類モデルにおけるAPL及びグルコース耐性
この実験は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸(APL)が、当技術分野で認識されたNASHのモデルにおける耐糖能障害(IGT)に及ぼす影響を決定するように設計した。以下の齧歯類モデルを使用した:Zucker fa/fa肥満ラット及びZucker Fa/fa痩せラット、ならびにC57BL/6Jマウス。C57BL/6Jマウスは、食事誘発性肥満(DIO)モデルであり、これらのマウスは、肥満誘発性食事に対する高い感受性を示し、食事誘発性肝壊死性炎症及び線維症を発症しやすい。例えば、Liang et al,2014,PLoS One,9(12):e115922;and London &George,2007,Clinics in Liver Disease,11(1):55-74を参照のこと。
【0301】
Zucker fa/fa肥満ラット及びZucker Fa/fa痩せラット(米国マサチューセッツ州ウィルミントンのCharles Rivers Laboratoriesから取得した7週齢のオス動物)を、個々のケージで飼育し(定住性の活動を促進するためにケージにつき1匹のラット)、実験開始までの7日間、標準的な齧歯類固形飼料(カタログ番号5053、ミズーリ州セントルイスのLabdietから取得)及び水(Hydrapakシステムを使用して濾過及び充填)に自由にアクセスさせた。Zucker fa/fa肥満ラットを、1)ビヒクルp.o.b.i.d.(経口投与、一日二回)78日間(n=7)、及び2)100ミリグラム/キログラム(mg/kg)体重APL(p.o.b.i.d.)78日間(n=8)の二群に無作為に割り当てた。Zucker Fa/fa痩せラット(n=4)に、78日間、ビヒクル(p.o.b.i.d.)を投与した。APLを溶解するために使用される溶液であるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、ビヒクル溶液として使用した。APL粉末を、100mg/mLの濃度でPBSを用いて滅菌条件下で溶解し、各動物の体重に応じて容量を調整した。動物は、グルコース負荷試験(GTT)手順中を除いて、食物及び水へ自由にアクセスした。
【0302】
C57BL/6Jマウス(米国、メイン州、バーハーバーのJackson Laboratoriesから取得された5週齢のオスマウス)を、ケージで飼育し(ケージにつき5匹のマウス)、実験開始までの5日間、標準的な齧歯類固形飼料(カタログ番号5053、ミズーリ州セントルイスのLabdietから取得)及び水(Hydrapakシステムを使用して濾過及び充填)に自由にアクセスさせた。次いで、動物を、五群(各群でn=5)に無作為に割り当て、表Aに示されるように異なる食事及び処置を130日間受けさせた。各処置は、一日二回経口投与した。各動物に投与されたAPL用量は、強制経口投与により、体重1キログラム当たり200ミリグラムを一日二回に分けて投与し、各動物に投与されたピオグリタゾンの用量は、強制経口投与により、体重1キログラム当たり20ミリグラムを一日二回に分けて投与した。「HFD」は、脂肪58%、炭水化物25%、タンパク質17%を含有する高脂肪/高フルクトース食である。HFDはResearch Diets,Inc.から入手した。「固形飼料」は、標準的な齧歯類固形飼料(カタログ番号5053、ミズーリ州セントルイスのLabdietから取得)を指す。動物は、GTT実験中を除いて、自由に摂食した。
【表3】
【0303】
実験期間の終了時に(ラットは78日、マウスは130日)、動物を以下のようにグルコース負荷試験(GTT)に供した。動物は5時間絶食させ、体重を測定し、尾部を切り取って、空腹時血糖値を測定した。直後に、グルコース(2mg/g体重)を経口投与した。グルコース値は、グルコース投与の0、15、30、45、60、及び120分後に測定された。グルコースは、アボットのAlphaTRAK 2血糖計を使用して測定した。
【0304】
グルコース負荷試験データの曲線下面積(AUC)を算出した。これらのデータを図1及び図2に示す。図1は、ラットデータを示す。GTTのAUCは、対照ラットと比較して、ビヒクルで処置した全ての肥満ラットで有意に高かった。APLで処置した肥満ラットのGTTのAUCは、ビヒクルで処置した肥満ラットよりも有意に低かった(**p<0.01)。マウスでは、GTTを18週目の初めに(130日で)実施した。図2は、マウスデータを示す。図2Aは、経時的なGTTデータを示す。15分(****p<0.0001)、60分(*p<0.05)、及び120分(***p<0.001)の時点で、陽性対照群と処置群との間に有意な統計的差異が観察された。陰性対照群と陽性対照群との間にも、0分及び30分(*p<0.05)、45分(**p<0.01)、及び15分、30分、60分、及び120分(****p<0.0001)の時点で、有意な統計的差異が観察された。いずれの時点でも、陰性対照群と処置群との間に有意差はなかった。図2Bは、統合AUCデータを示す。HFD食餌を与えられ、ビヒクル溶液で処置されたマウスは、対照マウス(固形飼料を与えられ、ビヒクル溶液で処置された)及びHFDを与えられ、APLで処置されたマウスの両方と比較して、GTTのAUCが有意に高い(**p<0.01)。
【0305】
耐糖能障害(IGT)及び糖尿病は、NASHの有意な併存疾患である。これらのデータは、ラットNASHモデル及びマウスNASHモデルの両方において、APLがIGTを統計的に有意な程度に改善することを示す。
【0306】
実施例2-高脂肪/高フルクトース齧歯類NASHモデルにおけるAPL及び肝脂肪症
実施例1と同様に、C57BL/6マウス(実施例1と同じマウスの試料)を、ケージ(ケージ当たり5匹のマウス)に飼育し、標準的な齧歯類固形飼料(カタログ番号5053、ミズーリ州セントルイスのLabdietから取得)及び水(Hydrapakシステムを使用して濾過及び充填)に5日間自由にアクセスさせた。C57BL/6JマウスにCHOW又は高脂肪/高フルクトース食(HFD)のいずれかを与え、ビヒクル又はAPLのいずれかを一日二回(b.i.d.)経口投与(p.o.)して18週間処置した。APL用量は、一日当たり200ミリグラム/キログラム(mg/kg)とし、100ミリグラム/キログラム(mg/kg)体重のAPLを二回(p.o.b.i.d.)投与した。動物に自由摂取させた。動物を人道的に安楽死させ、組織学的分析のために肝臓を摘出した。ホルマリン中の肝臓試料を48時間固定し、固定後にFFPEブロックに加工した。スライドを、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、BODIPY及びDAPIで免疫染色して、共焦点顕微鏡を使用して脂肪沈着及び核数を定量した。例えば、Rico et al、2007、J Cell Physiol、211(2):504-12、及びDaemen et al、2016、Mol Metab、5(3)153-63を参照のこと。データを図3、4、及び5に示す。
【0307】
図3及び図4は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色された肝臓試料を示す。図3は、20倍の倍率での肝臓試料を示す。左端の列はCHOWを与えられたマウスの肝臓試料(陰性対照)を示し、中央の列はビヒクルと共にHFDを与えられたマウスの肝臓試料(陽性対照)を示し、右端の列はHFDを与えられ、APLで処置された(処置)マウスからの肝臓試料を示す。図4は、100倍での類似の肝臓切片を示す。左端の列は陰性対照群からの肝臓を示し、中央の列は陽性対照群からの肝臓を示し、右端の列は処置群からの肝臓を示す。
【0308】
APLで処置された動物の肝臓切片は、より重症度の低い肝細胞脂肪蓄積、炎症性浸潤、及び肝細胞バルーニングを呈した。これらのデータは、APLがNASHに関連する特徴的な肝損傷を改善することを実証している。
【0309】
図5Aは、CHOW又は高脂肪/高フルクトース食(HFD)のいずれかを与えられ、ビヒクル又はAPLのいずれかで一日二回処置されたC57BL/6Jマウスからの肝臓切片のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色の複数の画像を表す。図5Aの左の画像は、CHOW食事を与えられたマウスで観察された肝臓の正常な解剖学的構造を示す。正常な解剖学的構造は、脂肪蓄積(白色の大きな斑点)によって完全に変化し、HFDを与えられ、ビヒクル溶液で処置されたマウスの非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)で観察された特徴的な変化を示す(図5A、中央画像)。対照的に、図5Aの右の画像に示されるように、HFDを与えられ、APLで処置されたマウスは、肝臓の正常な解剖学的構造を保持した。
【0310】
図5Bは、同じマウスからの肝臓切片のBODIPY及びDAPIを用いた免疫蛍光染色の複数の画像の図解であり、図5Cは、DAPIで染色された免疫蛍光スライドからの核の定量である。Operetta CLS(商標)(マサチューセッツ州ウォルサムのPerkinElmer)のHarmony(登録商標)4.6 High-Content Imaging and Analysis Softwareを使用して、核酸数の定量化を実施した。HFDを与えられたHFDマウスは、CHOWを与えられたマウス、又はHFDを与えられ、APLで処置されたマウスのいずれかと比較して、統計的に有意に核の数が少なかった(***p<0.001)。これらのデータは、APLが、NASHの肝細胞死(すなわち、バルーニング)病態を改善することを示している。
【0311】
図5Dは、共焦点顕微鏡を使用して評価した脂肪沈着のプロットである。測定は20倍の倍率フィールドで行った。各群の三匹の異なる動物から21以上のフィールドを分析した:Chow-ビヒクル(フィールド数=26)、HFD-ビヒクル(フィールド数=25)、及びHFD-APL(フィールド数=23)。ImageJを使用した間接的な測定(Schneider et al.,2012,Nature Methods 9(7):671-675)を使用して、脂肪沈着を計算した。脂肪沈着は、CHOW対照マウス及びHFD/APL処置マウスと比較して、HFD/ビヒクル処置マウスで3倍増加した(***p<0.001)。これらのデータは、APLが、どちらもNASHの特徴である、肝臓の脂肪沈着を減少させ、肝脂肪症を軽減することを実証している。
【0312】
肝細胞のバルーニング及び脂肪症は、NASHの病態であり、この病態と関連する肝損傷を示す。これらのデータは、APLがこれらの特徴を著しく減少させ、NASHの治療に効果的であることを示す。
【0313】
実施例3-高脂肪/高フルクトース齧歯類NASHモデルにおけるAPL及び非アルコール性脂肪肝疾患活性スコア(NAS)
C57BL/6Jマウスを、ケージで飼育し(ケージにつき5匹のマウス)、実験開始までの5日間、標準的な齧歯類固形飼料(カタログ番号5053、ミズーリ州セントルイスのLabdietから取得)及び水(Hydrapakシステムを使用して濾過及び充填)に自由にアクセスさせた。次いで、動物を、三群(各群でn=5)に無作為に割り当て、表Bに示されるように異なる食事及び処置を130日間受けさせた。各処置は、一日二回経口投与した。APLの用量は、200mg/kg体重であった。「HFD」は、実施例1に記載される高脂肪/高フルクトース食である。「Chow」は、実施例1に記載されるように、標準的な齧歯類の固形飼料を指す。動物に自由摂取させた。
【表4】
【0314】
試験期間の終了時、動物を人道的に安楽死させ、組織学的分析のために肝臓を摘出した。ホルマリン中の肝臓試料を48時間固定し、固定後にFFPEブロックに加工した。スライドをヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。図6Aは、肝臓切片のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色の複数の画像を表す。これらのデータは、APLが、NASHの肝臓病態における形態学的変化を減弱することを示している。陽性対照群は、大滴性と微小胞性の両方の脂肪症の増加を示した(それぞれ矢印1及び矢印2)。さらに、陽性対照群は、進行した肥大(すなわち、バルーニング)及び炎症性病巣(それぞれ矢印3及び矢印4)を示した。
【0315】
肝試料を、NASスコアリングシステムに従って肝脂肪(脂肪症)、炎症、及び肥大について評価した。NASスコアリングを図6Bに示す。HFD/ビヒクル処置マウスにおけるマウスのNASスコアは、CHOW/ビヒクル処置マウスと比較して、大滴性脂肪症、微小胞性脂肪症、肝肥大及び炎症性病巣の全ての病理学的パラメータで増加する。特に、APL治療は、全てのパラメータの統計的に有意な改善を示した(***p<0.001)。したがって、APLは、肝損傷及びNASHの各々の病態である、肝脂肪症、肝臓の炎症及び肥大を減弱する。
【0316】
図7は、NASHのDIOマウスモデルにおける追加のNASH活性スコア(NAS)データを示す。図7Aは、CHOW及び投与されたビヒクルを与えられたマウス、HFD及び投与されたビヒクルを与えられたマウス、及びHFDを与えられたマウス、及びAPL(200mg/kg/日、2回に分割された)で処置されたマウスの総NASを示す。これらのデータは、APLを用いた治療が、NASを有意に減少させることを実証している(****p<0.0001)。図7Bは、脂肪症、小葉の炎症、及び肝臓のバルーニングに対するNAS構成要素スコアを示す。繰り返すが、これらのデータは、APLを用いた治療は、脂肪症、小葉の炎症、及び肝バルーニングを含むNASの各構成要素を有意に減少させることを実証している(****p<0.0001)。したがって、APLは、NASHの各特徴(肝脂肪症、肝臓の炎症及び肥大)を減弱させ、総NASを減少させ、NASHの治療に有効である。
【0317】
実施例4-齧歯類NASHモデルにおけるAPL及び肝線維症
Zucker(fa/fa)肥満ラット及びZucker(Fa/fa)痩せラット(米国マサチューセッツ州ウィルミントンのCharles Rivers Laboratoriesから取得した7週齢のオス動物)を、個々のケージで飼育し(定住性の活動を促進するためにケージにつき1匹のラット)、実験開始までの7日間、標準的な齧歯類固形飼料(カタログ番号5053、ミズーリ州セントルイスのLabdietから取得)及び水(Hydrapakシステムを使用して濾過及び充填)に自由にアクセスさせた。Zucker(fa/fa)肥満ラットを、1)ビヒクルp.o.b.i.d.(経口投与、一日二回)78日間、及び2)100ミリグラム/キログラム(mg/kg)体重APL(p.o.b.i.d.)78日間の二群に無作為に割り当てた。Zucker(Fa/fa)痩せラットを対照とした。APL用量は100mg/kg/日であった。動物に自由摂取させた。動物を人道的に安楽死させ、組織学的分析のために肝臓を摘出した。ホルマリン中の肝臓試料を48時間固定し、固定後にFFPEブロックに加工した。スライドを、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)及びメイソントリクローム染色で染色した。
【0318】
データを図8に示す。図8Aは、Zuckerラットのヘマトキシリン及びエオシン染色肝臓切片の複数の写真のうちの一つの図である。左の画像は対照のZucker(Fa/fa)痩せラットからの肝臓であり、肝臓の正常な形態を示す。真ん中の画像は、ビヒクルで処置されたZucker(fa/fa)肥満ラットからの肝臓の画像であり、右の画像は、APLで処置されたZucker(fa/fa)肥満ラットからの肝臓の画像である。この画像は、ビヒクルで処置されたZucker(Fa/fa)肥満ラットにおける脂肪蓄積による肝臓組織での大きな変化を明確に示している(中央画像)。対照的に、APLで処置されたZucker(Fa/fa)肥満ラットは、肝臓の正常な形態を維持している(右の画像)。
【0319】
図8Bは、図8Aの同じZuckerラットからのメイソントリクロームの染色肝臓切片を表す。図8Cは、図8Bの一つの領域の拡大である。ビヒクルで処置したZucker(Fa/fa)肥満の拡大(中央画像)では、青色染色コラーゲン線維が複数染色されていることは明らかであるが、APLで処置したZucker(Fa/fa)肥満ラット(右画像)では、青色染色が最小限である。したがって、APLは肝臓コラーゲン線維の増加を減弱する。
【0320】
これらのデータは、APLが、進行した及び/又は重症のNASHに関連する肝損傷の特徴である、肝線維症を減弱することを示す。したがって、APLは肝線維症の発症を減弱し、NASHの治療に有効である。
【0321】
実施例5-齧歯類(ラット)NASHモデルにおけるAPL及び肝タンパク質カルボニル
4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)を含む、多数の酸化ストレス及び抗酸化バイオマーカーが、NASHの病理学的状態及び進行の評価における可能な使用のために研究されている。例えば、Ore et al.,2019,Medicina(Kaunas)55(2):26を参照のこと。酸化ストレスは、反応性のカルボニル基、主にはアルデヒド及びケトンを形成することによって、タンパク質に対する不可逆的な損傷を直接的又は間接的に誘発しうる。間接カルボニル化の過程における最も一般的な反応性アルデヒドは、4-HNEである。APLは、4-HNEに高い親和性を有し、4-HNEのタンパク質に対する有害な効果を防止することができ、インスリン抵抗性の軽減に有効である。WO2018/049019及び米国特許出願公開2019/0192462を参照のこと。
【0322】
実施例4のZuckerラットからの肝臓試料を、4-HNEの存在の免疫蛍光分析のために、Abcam(方ロブ番号ab46545)からの抗-4HNE抗体で染色した。データを図9に示す。図9Aは、Zucker(Fa/fa)痩せラット、ビヒクルを投与されたZucker(fa/fa)肥満ラット、及びビヒクルを投与され、APLを投与されたZucker(fa/fa)肥満ラットの4-HNE免疫蛍光肝臓切片の代表的な画像である。図9Bは、組織面積当たりの4HNE免疫蛍光強度のプロットであり、図9Cは、総組織面積のプロットである。これらのデータは、ビヒクルを投与されたZucker(Fa/fa)肥満ラットと比較して、APLがZucker(Fa/fa)肥満ラットの肝臓においてタンパク質カルボニルを統計的に有意な程度まで減少させ、肝組織総面積を維持することを示す(***p<0.001)。4-HNEなどの生成物による細胞傷害性脂質は、健康な肝臓と比較して、ヒトNASH肝臓で上昇することが知られている。例えば、Serviddio et al.,Uncoupling protein-2(UCP2)induces mitochondrial proton leak and increases susceptibility of non-alcoholic steatohepatitis(NASH)liver to ischaemia-reperfusion injury.Gut.2008 Jul;57(7):957-65.doi:10.1136/gut.2007.147496.Epub 2008 Feb 28を参照のこと。このデータは、4-HNEがNASHの病態形成において重要な役割を果たしていることを示唆している。さらに、これらのデータは、APLを用いた治療が4-HNEの存在を有意に減少させることを実証している(***p<0.001)。本明細書に開示されるように、4-HNEのこの減少、及び脂肪症、小葉の炎症、肝細胞バルーニング、及び線維症などのNASHの特徴の改善は、4-HNEの減少が、NASHを減弱するための重要な治療アプローチであることを示す。
【0323】
実施例6-齧歯類(マウス)NASHモデルにおけるAPL及び肝タンパク質カルボニル
実施例1に記載されるように、固形飼料を与えてビヒクルで処置したC57BL/6Jマウス、HFDを与えてビヒクルで処置したC57BL/6Jマウス、及びHFDを与えてAPLで処置したC57BL/6Jマウスからの肝臓試料を調製し、4-HNEの存在を免疫蛍光分析するために、Abcamの抗-4HNE抗体(カタログ番号ab46545)で染色した。APLの用量、投与頻度、及び治療期間は、実施例1に記載されるとおりであった(各動物に投与されたAPLの用量は、強制経口投与により、体重1キログラム当たり200ミリグラムを、一日二回に分けて投与;130日の治療期間;動物は自由摂食)。データを図10に示す。図10Aは、固形飼料を与えてビヒクルで処置したC57BL/6Jマウス、HFDを与えてビヒクル又はAPL(TB-019)のいずれかで処置したC57BL/6Jマウスの4-HNE免疫蛍光肝臓切片を20倍又は63倍に拡大した代表的な画像である。図10Bは、組織面積当たりの4-HNE免疫蛍光強度のプロットである。これらのデータは、HFDを与えられてビヒクルを投与されたC57BL/6Jマウスと比較して、HFDを与えられたC57BL/6Jマウスの肝臓において、APL(TB-019)がタンパク質カルボニルを統計的に有意な程度に減少させたことを示す(***p<0.001)。本明細書に開示されるように、タンパク質カルボニル化のこの減少、及び脂肪症、小葉の炎症、肝細胞バルーニング、及び線維症などのNASHの特徴の改善は、4-HNEの減少が、NASHを減弱するための重要な治療アプローチであることを示す。
【0324】
NASHの病態生理学的機序は、肝細胞中の遊離脂肪酸の増加を伴い、これがその後、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)を含む脂肪毒性脂質の増加をもたらす。理論に縛られることなく、NASHの治療におけるAPLの有効性のメカニズムは、カルボニル化を含む肝細胞タンパク質における4-NHEの有害な作用を低減又は防止する4-HNEに対するAPLの高親和性に基づくと考えられている。
【0325】
実施例7-食事誘発マウスモデルにおけるAPL及び肝機能血清バイオマーカー
C57BL/6マウスをケージ内で飼育し、標準的な齧歯類の固形飼料(カタログ番号5053、ミズーリ州セントルイスのLabdietから取得)及び水に自由にアクセスさせた。C57BL/6Jマウスに、CHOW(陰性対照)又はアミリン肝NASH(AMLN)食事(58%高脂肪、25%炭水化物、2%コレステロール)のいずれかを20週間与えた。20週より、AMLN食事を与えられた動物をHFDに変更した。50週で、動物を、ビヒクル(陽性対照)又はAPL(処置)のいずれかの経口投与(p.o.)で一日二回(b.i.d.)処置した。APL用量は、1キログラム当たり50、100、又は200ミリグラム(mg/kg)/日であり、二用量(すなわち、25mg/kgを一日二回、50mg/kgを一日二回、又は100mg/kgを一日二回)として投与した。66週間後、血清試料を採取し、ALT、AST、APL、トリグリセリド、非エステル化脂肪酸、及びコレステロールについてアッセイした。200mg/kg/日を投与したコレステロール試験群を除き、全ての治療群に50mg/kg/日を投与した。これらの結果を図11に要約する。APLで処置された動物は、陽性対照群動物と比較して、ALT、AST、ALP、トリグリセリド、非エステル化脂肪酸、及びコレステロールの有意な減少を示した(*p<0.02;**p=0.002;***p=0.0008、及び****p<0.0001)。NAS及び肝線維症の減少に関する結果を図12に要約する。APLで処置した動物は、NAS(***p<0.001)及び肝線維症(****p<0.0001)の有意な減少を示した。このデータは、APLがNAS、血清肝機能バイオマーカー、及び線維症を減弱することを示しており、したがってNASHの治療に有効である。
【0326】
本明細書に引用されるそれぞれの特許、特許出願、GenBank記録及び公開の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0327】
本実施形態は、上記の実施例を参照して詳細に説明したが、これらの実施形態の趣旨から逸脱することなく様々な修正を行うことができ、当業者には容易に知られるであろうことが理解される。添付の特許請求の範囲は、こうした全ての実施形態及び均等の変動を含むと解釈されることが意図される。
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【国際調査報告】