IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エレクトリック パワー リサーチ インスチテュート インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-523448スロープアウト技法を使用して欠陥のない電子ビーム溶接を実施するための継合方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】スロープアウト技法を使用して欠陥のない電子ビーム溶接を実施するための継合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 15/00 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
B23K15/00 501C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565853
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021029415
(87)【国際公開番号】W WO2021222259
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】17/191,293
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/016,934
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】307026857
【氏名又は名称】エレクトリック パワー リサーチ インスチテュート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デュティユル, トマ
【テーマコード(参考)】
4E066
【Fターム(参考)】
4E066AB01
4E066AB06
4E066BA03
4E066CB02
4E066CB06
(57)【要約】
本発明は、スロープアウト方法論と称される、EBWプロセスに対する修正を提供し、概して、2つの構成要素を継合するための通常のEBW溶接プロセスの終了時に位置する溶接物全体のその領域内に位置する、「スロープアウト部分」の形成をもたらす。スロープアウト部分は、溶接部に沿った所与の距離または長さにわたってワークピースの初期溶接部と重複し、事実上、鍵穴状部を排除し、特に、スロープアウト部分内に欠陥が最小限もしくは全くない状態の溶接物を提供する。スロープアウト方法論は、本質的にビームを減衰させるために、電子ビームに関連する種々のパラメータを調節することによって開始する。一般に、電子ビームの焦点位置は、重複溶接が行われるにつれて、アンダー焦点調節された状態(焦点位置が材料の嵩内にある状態)からオーバー焦点調節された状態(焦点位置がワークピース表面より前方にある状態)に移行される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの構成要素をともに溶接するための方法であって、
電子ビームを含む電子ビーム溶接を使用して、2つの構成要素を溶接することであって、前記溶接は、第1の期間にわたって実施される、ことと、
前記電子ビームの焦点を、前記2つの構成要素の嵩内から前記2つの構成要素の上方に、継続的かつ第2の期間の全体を通して調節することと
を含み、
前記第2の期間は、前記第1の期間内に開始し、前記第1の期間および前記第2の期間は、並行して終了する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その種々の実施形態を含め、溶接プロセスの終結時に鍵穴状部を排除するための電子ビーム溶接および方法に関する。具体的には、本発明は、その種々の実施形態を含め、電子ビーム溶接プロセスにおいて、溶接の終了時に、2つの部分または構成要素を継合し、鍵穴状部を閉鎖し、欠陥が最小限もしくは全くない状態の完成された溶接物を提供するために使用される、あるパラメータを調節するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム溶接(EBW)は、圧力容器等の圧力下で流体を保持する機器において使用される、圧力留保構成要素等、厚肉区分構成要素を継合するための溶接時間を劇的に短縮させるための潜在性を有する。これらの構成要素は、圧力下で流体を保持するために必要な強度を提供するための厚肉区分または厚肉壁を有し、故に、これらの厚肉区分構成要素の溶接もしくは継合を要求する。いくつかの実施形態では、これらの厚肉区分構成要素は、円形であり、圧力容器の製造におけるように、円周方向溶接を要求する。EBWは、シングル溶接パスにおいて約8インチ(200mm)の厚さの材料を継合しながら、2つの構成要素を継合するために要求される全体的時間を有意に短縮することが可能である。故に、EBWは、そのような材料を継合するための魅力的な溶接方法である。
【0003】
しかしながら、溶接の間、EBWにおいて使用される凝集された電子ビームが、基質材料を透過し、溶接プールの前縁に位置する、溶接されている材料内の孔である、鍵穴状部を形成する。本鍵穴状部は、溶接の終結時点までを含む、溶接プロセスの全体を通して存在する。線形溶接または円周方向(パイプもしくはシェル)溶接に関して、結果は、特に、圧力留保構成要素の場合には容認可能ではない、溶接物の端部の鍵穴状部(本質的には、ワークピースを通した孔)となるであろう。
【0004】
さらに、ある場合には、EBWは、溶接物内に、続いて修復を要求するであろう、欠陥、特に、鍵穴状部の近傍の欠陥をもたらす。典型的にはより厚い壁を有する、大きい圧力留保構成要素の文脈において、そのような欠陥の存在は、特に、圧力容器等の高圧留保機器を使用するときの安全性への懸念に照らして、そのような構成要素を溶接するためのEBWの魅力を低減させる。
【0005】
故に、溶接プロセスの終結時に鍵穴状部を閉鎖し、特に、鍵穴状部が閉鎖される面積内に欠陥が最小限または全くない溶接物を生産する、EBW方法の必要性が、存在する。特に、厚肉区分構成要素の円周方向溶接を要求する、圧力容器等の圧力留保構成要素のための、そのような溶接プロセスの必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、本発明は、2つの部分または構成要素を継合するために使用される溶接プロセスの終結時に鍵穴状部を排除するための電子ビーム溶接(EBW)および方法を対象とする。具体的には、本発明は、その種々の実施形態を含め、溶接プロセスのほぼ終了時に溶接パラメータを調節し、鍵穴状部を閉鎖し、特に、鍵穴状部が閉鎖された面積内にスパイク孔隙を含む孔隙等の欠陥または埋設された欠陥が最小限もしくは全くない状態の溶接物を提供するための方法に関する。本発明は、概して、通常のEBWプロセスの終了時に位置する溶接物全体のその領域内に位置する、「スロープアウト部分」の形成をもたらす、「スロープアウト方法論」と称される、EBWプロセスに対する修正を提供する。スロープアウト部分は、溶接部に沿った所与の距離または長さにわたってワークピースの初期溶接部と重複し、事実上、鍵穴状部内を充填し、溶接物を完成させ、特に、スロープアウト部分内に欠陥が最小限もしくは全くない状態の溶接物を提供する。スロープアウト方法論は、EBWを用いた線形または円周方向溶接において使用され得、特に、厚肉構成要素を溶接することにおいて有用である。
【0007】
溶接部のスロープアウト部分は、概して、溶接プロセス全体のほぼ終了時または完成する初期溶接部のほぼ終了時に開始する、スロープアウト方法論を使用することによって生成される。スロープアウト方法論の開始に先立って、ワークピースは、電子ビームの焦点位置または焦点面が溶接されている材料の嵩内に位置する(すなわち、ビームがアンダー焦点調節された状態もしくは負の脱集束状態にある)状態で、かつ電子ビームパラメータが一定に保持されている状態で、定常状態様式において溶接されている。スロープアウト方法論は、本質的にビームを減衰させ、初期溶接部に重複する溶接部を形成するための、電子ビームに関連する種々のパラメータを調節することによって開始する。いくつかの実施形態では、スロープアウト方法論は、ビーム焦点位置がスロープアウト距離に伴って、またはスロープアウト方法論が進行するにつれて進展もしくは変化するように、これを修正するステップを含み、これは、線形関係または湾曲関係のいずれでもあり得、スロープアウト方法論を通して持続的であることができる。一般に、電子ビームの焦点位置は、重複溶接部が作製されるにつれて、アンダー焦点調節された状態または負の脱集束状態(焦点位置が定常溶接により材料の嵩内にある状態)からオーバー焦点調節された状態もしくは正の脱集束状態(焦点位置がワークピース外側表面の外側にある状態)まで移動される。加えて、いくつかの実施形態では、スロープアウト方法論の開始時、または電子ビームの焦点位置がアンダー焦点調節された状態からオーバー焦点調節された状態(もしくは、負から正に)まで変化されるにつれて、電子ビーム発振パターンもまた、変更され得る。いくつかの実施形態では、発振パターンは、広げられる。スロープアウト方法論は、所定の時間量にわたって、または所定の長さの重複溶接部が、形成されるまで継続し、その時点で、鍵穴状部が、閉鎖され、溶接プロセス全体およびスロープアウト方法論は両方とも、完了する。
【0008】
本発明は、スロープアウト領域内に結果として生じる欠陥を伴うことなく、EBWによって形成される鍵穴状部を閉鎖し、溶接部を生産するための方法を提供する。これは、本発明が、単回の溶接パスにおいて2つの構成要素または部分を継合するだけではなく、厚肉区分の円筒形構成要素等の厚肉構成要素を継合するためにも使用されることを可能にする。故に、欠陥の欠如は、いかなる再作業も低減または排除し、これは、そうでなければ、シングルパスにおける溶接によって生産された利得に悪影響を及ぼすであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、EBWを使用して溶接されている、リアクタ圧力容器を示す。
【0010】
図2A図2Aは、本発明の一実施形態による、2G溶接配向にある、ワークピースおよび電子ビーム溶接機を図示する。
【0011】
図2B図2Bは、EBWにおける鍵穴状部を図示する。
【0012】
図3図3は、本発明の一実施形態による、EBWプロセス全体の一部としてのスロープアウト方法論を図示する、フローチャートである。
【0013】
図4図4は、鍵穴状部形状に及ぼす、電子ビーム脱集束の変化の影響を図示する。
【0014】
図5図5は、スロープアウト方法論の間に線形に進展したレンズ焦点位置に伴って生産された、合焦試行の結果を図示する。
【0015】
図6図6は、図5の種々の脱集束試行のためのスロープアウトの間に生産された溶接部の外観を比較する、写真を図示する。
【0016】
図7図7は、図6の溶接物の長手方向スライスの写真を図示する。
【0017】
図8A図8Aは、図6のスロープアウト溶接に関する位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフを図示する。
【0018】
図8B図8Bは、図8Aのグラフの一部に関する、位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフを図示する。
【0019】
図9図9は、脱気試験の間に生産される溶接物の外観を比較する、写真を図示する。
【0020】
図10図10は、図9のスロープアウト溶接物に関する位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフを図示する。
【0021】
図11図11は、図9の溶接部の長手方向スライスの写真を図示する。
【0022】
図12図12は、全周方向溶接のスロープアウト領域の写真を図示する。
【0023】
図13図13は、図12のスロープアウト溶接の位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフおよび図12の溶接部の長手方向スライスを図示する。
【0024】
図14A図14Aおよび14Bは、SA508等級3から作製されたリングを使用して行われた付加的な実験からの結果を図示する。
図14B図14Aおよび14Bは、SA508等級3から作製されたリングを使用して行われた付加的な実験からの結果を図示する。
【0025】
図15図15は、ビードオンプレート試行の第2のセットからの結果を図示する。
【0026】
図16図16Aおよび16Bは、2つの150mmの高さのSA508等級3、クラス1の鍛造リングを溶接するためのリング溶接設定の写真を示す(試験リング溶接1)。
【0027】
図17図17Aおよび17Bは、2つの150mmの高さのSA508等級3、クラス1の鍛造リングの本溶接からの溶接部の完成されたスロープ領域の写真を示す(試験リング溶接1)。
【0028】
図18図18Aおよび18Bは、試験溶接1のスロープアウト領域からのToFD検査結果を示す。
【0029】
図19図19Aおよび19Bは、試験溶接1のためのPAUT走査を図示する。
【0030】
図20図20は、SA508等級3、クラス1のリング(試験リング溶接2)の2つの150mmの高さの区分を接合するステップの結果として生じる溶接部を示す。
【0031】
図21図21は、試験リング溶接2に適用された、化粧溶接パスを示す。
【0032】
図22図22Aおよび22Bは、シェル/フランジ溶接のための設定を図示する。
【0033】
図23図23Aおよび23Bは、完成された溶接部の写真ならびにシェル/フランジ溶接のためのスロープアウト面積の拡大図を示す。
【0034】
図24図24は、シェル/フランジ溶接のための機械加工トレースを示す。
【0035】
図25図25は、シェル/フランジ溶接のためのDPI症状の写真を示す。
【0036】
図26図26は、シェル/フランジ溶接からのToFDデータを示す。
【0037】
図27図27は、シェル/フランジ溶接からのPAUT結果を示す。
【0038】
図28図28は、シェル/フランジ溶接の位相化アレイグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、付随の図面または図を参照して、下記により完全に説明される。本発明は、特定の実施形態と併せて説明されるであろうが、それは、実施例のみとして見なされるべきであり、本発明の実施形態のみに限定する、またはそれのみを記載するものとして見なされるべきではない。むしろ、本発明は、その全てが、本明細書に明示的に説明されているかどうかにかかわらず、本発明および請求項の精神ならびに範囲内に含まれる、種々の実施形態または形態および種々の関連する側面、もしくは特徴ならびに使用、ならびに代替物、修正、および均等物を含む。さらに、本説明の全体を通した、用語「発明」、「本発明」、「実施形態」、および類似の用語の使用は、広義に使用され、本発明が、説明されている任意の特定の実施形態または側面を要求する、もしくはそれに限定されること、またはそのような説明が、本発明が作製もしくは使用され得る唯一の様式であることを意味ように意図するものではない。
【0040】
概して、本発明は、2つの部分または構成要素を継合するために使用される溶接プロセスの終結時に鍵穴状部を排除するための電子ビーム溶接(EBW)および方法を対象とする。具体的には、本発明は、その種々の実施形態を含め、溶接プロセスのほぼ終了時に溶接パラメータを調節し、鍵穴状部を閉鎖し、特に、鍵穴状部が閉鎖された面積内にスパイク孔隙を含む孔隙等の欠陥または埋設された欠陥が最小限もしくは全くない状態の溶接物を提供するための方法に関する。本発明は、概して、通常のEBWプロセスの終了時に位置する溶接物全体のその領域内に位置する、「スロープアウト部分」の形成をもたらす、「スロープアウト」方法論またはプロセスと称される、EBWプロセスに対する修正を提供する。特に、スロープアウト部分は、基本的に、溶接プロセスの開示時に形成された溶接物に重複する、鍵穴状部が位置する場所を含む、溶接プロセスの終了時に作製される溶接物の一部である。故に、スロープアウトプロセスは、溶接物が、溶接プロセス全体の開始時に形成された溶接物に重複し始める時点である、溶接プロセス全体のほぼ終了時のある期間に生じる。その後、スロープアウトプロセスおよび溶接プロセス全体が両方とも、並行して終了すると見なされることができる。
【0041】
例えば、円周方向溶接では、ワークピースが、溶接プロセスの間に360度回転される。いったんワークピースが、完全360度回転され、その全周を中心として溶接されると、スロープアウトプロセスが、開始し、スロープアウト部分が、形成される。スロープアウト部分は、本場合では、ワークピースが最初に旋回し始めたときの溶接プロセスの開示時に作製された溶接物の初期部分にここで重複する、溶接物のその部分であろう。故に、本スロープアウト部分は、下記にさらに説明されるような種々のパラメータに応じて溶接部に沿った所与の長さまたは距離にわたって延在する。本スロープアウト部分は、事実上、鍵穴状部内を充填し、溶接物を完成させ、特に、スロープアウト部分内に欠陥が最小限または全くない状態の溶接物を提供する。いったんスロープアウト部分が所望に応じて形成されると、スロープアウトプロセスは、終了し、これは、溶接プロセス全体の終了と平行して生じる。
【0042】
溶接部のスロープアウト部分は、概して、溶接プロセス全体のほぼ終了時に開始する、ロープアウト方法論またはプロセスを使用することによって生成される。言い換えると、スロープアウト方法論は、溶接プロセス全体のほぼ終了時、特に、溶接が初期溶接部に重複し始める時点で行われ、スロープアウト部分が完成されるまで継続する。スロープアウトプロセスは、通常のEBWプロセスの終了時に行われるため、溶接プロセス全体の最後の部分であると見なされ得る。
【0043】
例えば、スロープアウトプロセスの開始に先立って、ワークピースは、電子ビームの焦点位置または焦点面が溶接されている材料の嵩内にある(すなわち、ビームがアンダー焦点調節された状態もしくは負の脱集束状態にある)状態で、かつ電子ビームパラメータが一定に保持されている状態で、定常状態様式において溶接される。精密な焦点位置が、材料および幾何学形状考慮点に基づくであろうこと、ならびに溶接を実施するために必要な定常状態溶接手順の一部を形成するであろうことを理解されたい。一般に、円周方向溶接を参照すると、スロープアウトプロセスは、ワークピースが、定常状態溶接がワークピースのほぼ全周に完成されるように、360度の完全回転を達成している点から開始する。スロープアウトプロセスは、次いで、初期の360度溶接物の形成のほぼ終了時または終了時に開始する。言い換えると、ビームがここで溶接プロセスの開始時(すなわち、ワークピースの回転の開始時)に作製された溶接部に重複している点において、スロープアウトプロセスが、開始される。
【0044】
スロープアウトプロセスは、ワークピースを回転し続けながら、本質的にビームを減衰させ、初期溶接部に重複する溶接部を形成するための、電子ビームに関連する種々のパラメータを調節することによって開始する。スロープアウトプロセスは、所定の時間量にわたって、または所定の長さの重複溶接部が、形成されるまで継続し、その時点で、鍵穴状部が、閉鎖され、溶接プロセス全体的およびスロープアウトプロセスが両方とも、完了する。いくつかの実施形態では、スロープアウト部分は、ワークピースの厚さおよび欠陥のないスロープを発生させるために要求される時間に応じて、溶接部に沿って、2~12インチの長さだけ延在してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、スロープアウトプロセスは、レンズ焦点位置がスロープアウト距離に伴って、またはスロープアウトプロセスが進行するにつれて進展もしくは変化するように、これを修正するステップを含む。レンズ焦点位置の変化は、線形関係または湾曲関係のいずれでもあり得、スロープアウト方法論もしくは手順の全体を通して持続的であることができる。言い換えると、レンズ焦点位置の変化の率または脱集束の規模は、スロープアウト方法論もしくはスロープアウト溶接が進行するにつれて、一定の率において線形に、または種々の率において非線形に変化されることができる。一般に、スロープアウトプロセスの間、または重複溶接部もしくはスロープアウト部分が作製されるにつれて、電子ビームの焦点位置は、アンダー焦点調節された状態または負の脱集束状態(焦点位置が定常溶接により材料の嵩内にある状態)からオーバー焦点調節された状態もしくは正の脱集束状態(焦点位置がワークピース表面の前方にある状態)まで移動される。概して、アンダー焦点調節されたビームの呼称が、ワークピース内にある焦点位置を指し、オーバー焦点調節されたビームの呼称が、ワークピース表面から外れた焦点位置を指すことを理解されたい。鮮明焦点は、ワークピース表面にある焦点位置を指す。
【0046】
加えて、いくつかの実施形態では、スロープアウトプロセスの開始時、または電子ビームの焦点位置がアンダー焦点調節された状態からオーバー焦点調節された状態(もしくは、負から正に)まで変化されるにつれて、電子ビーム発振パターンもまた、変更され得る。いくつかの実施形態では、発振パターンは、広げられる。いくつかの実施形態では、溶接方向に対して直角に伸長された、楕円形発振パターンが、使用される。本場合には、楕円形パターンはさらに、スロープアウトプロセスの開始時に伸長される。いくつかの実施形態では、楕円形発振パターンは、垂直方向および溶接の方向の両方に伸長される。そのようなより広い発振は、鍵穴状部空洞のサイズを増大させ、スパイク欠陥等の特徴的欠陥の形成を低減させる、または回避する。しかしながら、発振に対するそのような変更または修正は、鍵穴状部を不安定化させることを回避するべきであることを理解されたい。概して、また、脱集束の規模および発振のサイズもまた、ビーム幾何学形状に依存することを理解されたい。
【0047】
一般に、成功スロープアウト条件は、例えば、材料の厚さおよび半径/長さならびに焦点位置の変化率を含む、ワークピースの幾何学形状に応じて達成されることができるが、しかしながら、最終焦点位置は、材料表面から離れた距離である。成功スロープアウト条件はまた、電子銃幾何学形状、ビーム幾何学形状、ビーム電流、ビーム加速電圧、および稼働距離の関数であり、それらから導出される。
【0048】
スロープアウト手順は、スロープアウトプロセスの間に同時に生じる、3つの重要となる要因またはビーム特性を平衡させることによって達成される。第1に、ビーム電流が、事実上、溶接において結果として生じるビーム電流を低減させる、スロープアウト領域が、完全透過溶接から部分透過溶接に遷移する間に、持続的に低減される。第2に、ビームの焦点位置が、定常状態溶接のために材料の嵩内に位置している場所(アンダー焦点調節された状態)からワークピース表面の上方に位置する場所(オーバー焦点調節された状態)に操作される。オーバー焦点調節されたビームは、部分透過溶接を制御するために要求される。第3に、ビーム発振が、(ビーム方向に対して平行な)水平発振から(ビーム方向に対して直角の)垂直発振に操作される。本発振は、スロープアウトの間に生じているビームパワーの低減の結果として、電子ビームプロファイルの鮮明化に逆らう。本発振はまた、「スパイク」タイプの欠陥を回避するためにも使用される。
【0049】
全ての場合において、ビーム特性の変化に対する材料またはワークピースの応答は、ある固有の慣性を有する。したがって、これらの重要となるパラメータ(ビーム電流、焦点位置、およびビーム発振)の変化率が、欠陥が急速な固化の結果として材料の中に「凍結」されていないことを確実にするために、十分に長い期間にわたって生じる必要がある。時間の長さは、溶接条件(例えば、溶接の長さおよび速度)ならびに材料特性(例えば、主要要素の固化範囲、沸点)に依存する。いくつかの実施形態では、溶接部の厚さの約10倍である、スロープアウトを発生させることが、融解プールフローが変化に適応するために十分な時間を提供する。いくつかの実施形態では、溶接部の厚さの10分の1である、スロープアウトを発生させることが、十分であり得る。例えば、大きい細孔が捕捉された場合、これは、期間が、短すぎることを示すであろう。代替として、大きい細孔が捕捉されていない場合、期間を短縮することが、可能であろう。故に、スロープアウトプロセスを行い、材料が平衡することを可能にすることが、より優れた溶接を提供するであろう。スロープアウトプロセスの間に材料が平衡するための時間を有することを確実にすることは、スロープアウト部分または領域の長さが十分に長くある必要があること(例えば、固定溶接速度)、もしくは溶接速度がスロープアウトプロセスの間に減少されることのいずれかを意味する。
【0050】
故に、溶接の長さまたは溶接速度調節のいずれによっても判定されるような、スロープアウトプロセスのために要求される時間は、例えば、溶接品質に対するガイドとしてNDT技法を使用することによって、反復的に判定されることができる。しかしながら、より長い長さまたはより緩徐な溶接速度が、欠陥のないスロープアウトに有利に働くことを理解されたい。また、ワークピースの厚さが増加するにつれて、スロープアウトプロセスのために要求される時間も同様に、延長されるべきであることを理解されたい。これは、スロープアウト部分または領域の長さを拡張させることによって、もしくはスロープアウト部分または領域の間の溶接速度を低減させることによって、達成されるであろう。
【0051】
多くの異なるワークピースが、本明細書に説明される本発明のEBWおよび方法を使用して溶接され得ること、本発明が、特に、円周方向溶接のために非常に好適であることを理解されたい。本発明が、厚肉区分溶接と称される、種々の厚さを伴う種々の材料の溶接において使用され得ることを理解されたい。また、本発明の方法が、種々の構築材料を有するワークピースを溶接するときに使用され得ることも理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、ワークピースは、炭素鋼、低合金鋼、ニッケル鋼、またはステンレス鋼であってもよい。いくつかの実施形態では、ワークピースの構築材料または組成は、定常状態電子ビーム溶接条件を判定し、スロープアウトプロセス条件は、次いで、上記に説明されるように、判定され、定常状態溶接条件から開始するであろう。しかしながら、ワークピースの物理的性質が、スロープアウトプロセス条件を判定することを補助するために使用されることができる。例えば、ニッケル合金のような材料が、より粘着性の融解プールおよびフローを事実上、あまり良好ではないものにする。そのような実施形態では、スロープアウトプロセスは、例えば、より長いスロープアウト部分または領域を形成することによって減速され得る。ワークピース組成の固化範囲が、使用され得る別の要因である。例えば、より急速に固化する材料は、細孔捕捉のさらなる傾向を有するであろう。そのような実施形態では、スロープアウトプロセスは、同様により長いスロープアウト部分または領域を形成するために実装され得る。しかしながら、比較的により急速な固化を伴う材料が、ビーズ安定性のために有益であろう。
【0052】
また、本発明の方法が、EBWにおいて典型的に使用されるもの以外の付加的な機器または構成要素の必要性を伴わずに実装され得ることも理解されたい。言い換えると、本発明の方法は、既存の電子ビーム溶接機、および集束レンズまたは磁気レンズ、ならびに屈折システムを含み、それが磁気的である、もしくはワークピースを移動させることによって実装されるかどうかにかかわらず、その種々の構成要素と併用され得るが、電子ビーム溶接機に追加される付加的な機器または構成要素の使用を伴わない。言い換えると、本発明の方法は、別様に電子ビーム溶接機の動作を改変するための付加的な構成要素または機器の必要性を伴うことなく、脱集束を含む、溶接パラメータを調節することによって実装され得る。
【0053】
以下において、不随の図が、本発明の方法の付加的な詳細に加えて議論される。以下の説明は、欠陥のない電子ビームスロープアウトを達成するために、本発明の方法を実装することにおいて有用である、それらのパラメータの識別に関する情報を提供する。加えて、本発明の方法を実証し、本発明の方法を実装することにおいて有用であるパラメータの識別を例証する、種々の実験試験からの結果が、提供される。
【0054】
図1は、本発明の一実施形態による、EBWを使用して溶接されている、リアクタ圧力容器を示す。リアクタ圧力容器102は、フランジ104に溶接される。溶接部106は、EBWを使用して生成される、円周方向の溶接物である。これは、EBWを使用して溶接されているワークピースのある実施例を図示する。多くの異なるワークピースが、本明細書に説明される本発明のEBWおよび方法を使用して溶接され得ること、本発明が、特に、円周方向溶接のために非常に好適であることを理解されたい。また、本発明のEBWおよび方法の使用が、いくつかの実施形態では、特に、約25~200mm(1~8インチ)またはそれを上回る厚さを有する材料等、厚い材料を溶接するために好適であることも理解されたい。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、特に、圧力下で動作する、または圧力を留保する厚肉区分構成要素を有する機器において使用される構成要素を溶接するために好適である。
【0055】
図2Aは、本発明の一実施形態による、2G溶接配向におけるワークピースおよび電子ビーム溶接機を図示する。示されるように、溶接されるべき厚肉区分構成要素を有するリアクタ圧力容器であり得る、ワークピース202が、垂直方向に配向され、溶接を可能にする。電子ビーム溶接機204は、水平に配向され、電子ビームヘッド206と、回転子208とを含む。ワークピース202および電子ビーム溶接機204の本配向は、2G配向であり、円周方向溶接、すなわち、ワークピースが定常状態溶接の間に360度回転されるものにおいて有用である。本配向では、ワークピースが、回転されること、および電子ビーム溶接機が、溶接の間、定常状態であることを理解されたい。電子ビーム溶接機に対するワークピースの他の配向または位置も、本発明の方法と併用され得るため、本発明の方法を用いたEBWの使用が、必ずしも2G溶接位置の使用に限定されるものではないことを理解されたい。
【0056】
図2Bは、EBWプロセスにおいて形成される、鍵穴状部を図示する。示されるように、EBWプロセスは、ワークピース214を継合するために使用される。EBWプロセスは、融解槽218の形成をもたらす、プラズマ216を形成する。EBWプロセスは、継合されているワークピース214内での鍵穴状部212の形成を引き起こす。鍵穴状部212は、ワークピース214内の開口部であり、本発明のスロープアウト方法論によって閉鎖または中が充填されるものである。
【0057】
図3は、本発明の一実施形態による、EBWプロセス全体の一部としてのスロープアウト方法論を図示する、フローチャートである。スロープアウト方法論は、円周方向溶接または線形溶接のいずれのためにも使用されることができるが、以下は、円周方向溶接の観点から説明されるであろう。上記に記載されるように、スロープアウト方法論は、溶接プロセス全体のほぼ終了時に開始する。故に、EBWプロセスは、最初に実施されるであろう(302)。EBWプロセスは、溶接されている材料およびEBW機器によって判定されるような、定常状態条件において実施されるであろう。全周方向溶接を達成するために、ビームパワーが増大した状態で、電子ビームが、材料またはワークピースの中に導入されてもよく、これは、鍵穴状部の初期の生成をもたらす。ワークピースが、完全に360度回転される間、ビーム溶接パラメータが、次いで、本質的に一定に保持され、溶接が、ワークピースの全周の周囲で継続する。ある場合には、ワークピースが、回転され、電子銃(したがって、電子ビーム)が、定常状態である、または逆もまた同様であることを理解されたい。さらに、電子ビームの精密な焦点位置が、材料および幾何学的考慮点に基づくであろうこと、ならびに溶接を実施するために必要な定常状態溶接手順の一部を形成するであろうことを理解されたい。いくつかの実施形態では、電子ビーム焦点位置は、溶接されている材料の嵩内にある、またはアンダー焦点調節された状態にある。
【0058】
いったん完全に回転されると、スロープアウト方法論が、開始されるであろう(304)。上記に記載されるように、スロープアウト方法論は、溶接部が、ワークピースの全周の周囲に作製される時点から開始する。言い換えると、電子ビームが定常状態溶接プロセスの開始時に作製された溶接部にここで重複し始めている時点において、スロープアウト方法論が、開始される。
【0059】
スロープアウト方法論は、本質的にビームを減衰させながら、ワークピースを回転し続け、初期溶接部に重複する溶接部を形成するための、電子ビームに関連する種々のパラメータを調節することによって開始する(304)。一般に、調節は、磁気集束レンズ振幅およびビーム発振振幅に対して行われ得る。いくつかの実施形態では、スロープアウト方法論は、スロープアウト方法論が進行するにつれて、線形率または非線形率のいずれにおいても変化するように、レンズ焦点位置を修正するステップ(306)を含む。一般に、電子ビームの焦点位置は、重複溶接部が作製されるにつれて、アンダー焦点調節された状態または負の脱集束状態(焦点位置が定常溶接により材料の嵩内にある状態)からオーバー焦点調節された状態もしくは正の脱集束状態(焦点位置がワークピース表面の前方にある状態、または焦点がワークピース内のより高いレベルにある状態)まで移動される。加えて、電子ビーム発振パターンもまた、変更され得る(308)。いくつかの実施形態では、発振パターンは、広げられる。いくつかの実施形態では、溶接方向に対して直角に伸長された、楕円形発振パターンが、使用される。いくつかの実施形態では、溶接方向に対して直角に伸長された、楕円形発振パターンが、使用される。いくつかの実施形態では、楕円形発振パターンは、溶接方向に対して直角に、かつ溶接の方向に線形に伸長される。本場合には、楕円形パターンはさらに、スロープアウトプロセスの開始時に伸長される。そのようなより広い発振は、鍵穴状部空洞のサイズを増大させ、スパイク欠陥等の特徴的欠陥の形成を低減させる、または回避する。
【0060】
図4は、鍵穴状部形状に及ぼす電子ビーム脱集束を変化させる影響を図示する。x軸(水平)は、脱集束距離(mm)であり、左側における-100mmから右側における100mmまでの範囲に及ぶ。y軸(垂直)は、電子ビームとワークピースの表面との間の距離である。左から右への各形状は、1mmのビーム径および20mmのレイリー長にわたる鍵穴状部形状を図示する。鍵穴状部形状毎の水平な矢印は、電子ビームの焦点位置を示す。形状毎に、左側におけるより薄く陰影が付けられた部分が、電子の方向を示し、右側におけるより濃い陰影が付けられた部分が、強度の輪郭線を示す。図4は、焦点位置がスロープアウト領域の開始時(図4の左側)のアンダー焦点調節された状態からスロープアウト領域の終了時(図4の右側)のオーバー焦点調節された状態まで移動されるにつれて、電子ビーム形状が変動する方法を示す。
【0061】
図4は、ビームエネルギーの最も効率的な使用を実証するため、さらなる透過(本場合には、100mmに到達する)が、アンダー焦点調節位置の使用を通して達成されることを明確に示す。これは、例えば、円周方向溶接における全周の周囲における初期溶接部のために所望されるものであり、理想的な焦点位置は、ビーム径およびレイリー長ならびに材料の厚さおよび性質に依存する。図4はまた、スロープアウト方法論の間に回避されるべきである、縮径部が、溶接部内に生成されることを示す。スロープアウト方法論が、開始されるにつれて、ビームは、焦点領域が、ワークピースに対してより高い、または電子ビーム銃により接近する、ワークピースの厚さ内の異なるレベルに移動されるように、脱集束される。言い換えると、ビームは、スロープアウトの全長にわたるオーバー焦点調節状態まで脱集束する必要がある。結果として、ワークピースとともにその厚さレベルにおいて孔隙に付随する、ガスおよび孔隙が、低減または排除されることができる。
【0062】
図3に戻ると、スロープアウト方法論は、ワークピースが回転し続けるにつれて所定の時間にわたって、またはワークピースの回転の開始時に、初期溶接部に沿って所与の距離を有する重複溶接部を生産するための所与の距離にわたって、継続する。再び、スロープアウト方法論は、溶接プロセス全体のほぼ終了時に、溶接物全体のスロープアウト部分が、同一の溶接プロセス全体の間の直前に作製された溶接部と重複し始める時点において実施され、スロープアウト部分が形成されるまで継続する。例えば、溶接プロセス全体は、所与の期間を要し、スロープアウト方法論は、溶接プロセス全体のためのより長い期間全体内でより短い期間を要するであろう。スロープアウト方法論の期間は、したがって、両方の期間が並行して終了し得るように、溶接プロセス全体の終了時において同一の期間と重複するであろう。
【0063】
スロープアウト方法論のための本期間の間に、電子ビームレンズの脱集束が、達成されるべき脱集束の所望の率および規模に基づいて継続する。再び、一般に、脱集束は、スロープアウト方法論の間にアンダー焦点調節された状態からオーバー焦点調節された状態まで進行する。重複部(スロープアウト領域)の長さが、溶接されている構成要素の厚さによって決定付けられることを理解されたい。より厚肉の区分は、より長いスロープアウトをとり得る一方、より薄肉の区分は、より短いスロープアウトをとり得る。
【0064】
いったんスロープアウト方法論が、初期溶接部に沿った所望の距離にわたって、またはワークピースが回転される間の所望の時間にわたって、重複溶接部を形成すると、スロープアウト方法論ならびに溶接プロセス全体は両方とも、完了されるであろう(308)。故に、本時点で、溶接が、欠陥を伴わずに完了し、鍵穴状部が、閉鎖される。
【0065】
一般に、成功スロープアウト条件は、焦点位置の変化率に基づいて、部品の幾何学形状(材料厚および半径/長さ)に従って達成され、最終焦点位置は、材料表面から離れて距離を空けて存在している。加えて、成功スロープアウト条件はまた、銃幾何学形状、ビーム幾何学形状、ビーム電流、ビーム加速電圧、および稼働距離の関数である。故に、異なる材料は、異なるように溶接し、異なる溶接パラメータを要求するであろう。しかしながら、本発明のスロープアウト方法論は、EBWを用いて溶接されるいかなる材料とも併用されることができる。いくつかの実施形態では、より高い熱伝導を伴う材料が、同一のパワー/速度に関してより少ない透過を有するであろうことを理解されたい。したがって、よりアンダー焦点調節された状態にある焦点位置は、別の材料より必要ではない場合がある。さらに、スロープアウト方法論の間のその高い熱伝導材料のためのオーバー焦点調節の率は、より低い熱伝導材料のためのものより高い必要があろう。
【0066】
本発明が、例えば、厚肉区分圧力容器において使用され得る、鍛冶および熱間静水圧プレス処理(HIP処理)の両方が施されたSA508等級3、クラス1ならびに2の鋼鉄を含む、種々の材料を溶接することにおいて使用され得ることを理解されたい。
【実施例
【0067】
以下は、スロープアウト方法論および溶接物のスロープアウト部分に関する種々のパラメータの効果を評価するために行われた、いくつかの実験の結果である。1,960mm(OD)×80mm(壁厚)のS355(低炭素マンガン鋼)リングが、使用された(上記の図1参照)。溶接パラメータが、溶接方向に対して伸長状態である、楕円形の電子ビーム発振(2×1mm)を使用して展開され、これは、溶接方向において伸長状である同一の発振パターンより安定した溶接を生産した。100mmの長さの完全透過溶接の後に、400mmの長さのスロープアウト領域が、続いた。溶接パラメータが、表1に提示される。
【表1】
【0068】
全ての試行に関して、定常状態溶接電流(スロープアウト方法論の開始に左右される)は、450mAであり、溶接脱集束は、-490mAであり、これは、事実上、電子ビームの焦点を材料の嵩内の(外径から)20mmの深度に設置した。スロープアウト方法論の間、溶接電流は、定常状態溶接条件(450mA)から0に、スロープアウトの長さ(400mm)にわたって線形に低減された。
【0069】
図5は、スロープアウト方法論の間に線形に進展する、レンズ焦点位置に伴って生産された、合焦試行の結果を図示する。図5では、スロープアウトは、右から左に(450mAから0mAまで戻るように)進行し、脱集束が生じた種々の率が、個々の線によって示され、これは、漸次、490(最も下の線)から1,130(最も上の線)までの範囲に及ぶ。450mAから0mAへの脱集束の変化は、電子ビームの焦点位置をアンダー焦点調節された状態(焦点位置が定常溶接により材料の嵩内にある状態)から前方に移動させる効果を有する。したがって、低レンズ電流試行(490mA)に関して、電子ビームの焦点位置は、本質的に、スロープアウトの終了時に材料の表面にある一方、より高いレンズ電流試行に関して、ビームは、オーバー焦点調節された状態(焦点が材料表面の前方にある状態)になる。レンズ電流が高いほど、より早期に、ビーム焦点が、材料の内側から材料表面から離れたある距離まで移動する。いくつかの実施形態では、脱集束位置は、材料、銃幾何学形状、およびパワーに応じて、初期の定常状態溶接脱集束位置の+2~4倍であり得る。
【0070】
図6は、ビードオンプレート方式で行われた、図5の種々の脱集束試行のためのスロープアウトの間に生産された、溶接部の外観を比較する、写真を図示する。同様に、溶接は、右に示される(上部における「溶接」矢印によって示される)100mmの長さの定常状態溶接に続いて、右から左に進行し、(「溶接」矢印の左に、上部における「スロープアウト」矢印によって示される場所で)スロープアウト方法論が、開始する。溶接部の各個別の図内の垂直矢印が、電子ビームがワークピースの表面上に合焦された点を識別する。ビームがアンダー焦点調節された状態であった間のスロープアウト溶接の部分が、(UF矢印によって示される)水平な「UF」範囲によって図示され、ビームがオーバー焦点調節された状態であった間のスロープアウト溶接の部分が、(OF矢印によって示される)水平な「OF」範囲によって図示される。
【0071】
スロープアウト矢印に先立つ(またはその右にある)全てのものが、アンダー焦点調節された状態であり、その後の全てのものが、オーバー焦点調節された状態であった(すなわち、ビームの最大パワー密度が、材料の外側、すなわち、銃側にある)。1,130mA条件の場合には、溶接は、溶接最頂部の下落を呈し始め、したがって、さらなる試行は、行われなかった。低レンズ電流試行(490mA)は、スロープアウトの間に焦点位置が0に戻る、一般的場合に関連する。溶接がスロープの終了時にテーパ状になるという事実は、ビームが、事実上、スロープの終了時に表面において合焦される(矢印によって示される)ことを示す。見られ得るように、溶接融解プールは不安定であり、スロープの間の終了時に滴下する。
【0072】
スロープアウトの間に、+570、+650、+730、+810、および+970mAにおいて脱集束値を増加させるステップが、スロープアウト領域の外観を大幅に改良した。+570mAにおいて、融解プールは、安定しておらず、最頂部の下落が、着目された。本状況に関して、焦点が、再び、スロープのほぼ端部に位置した。しかしながら、脱集束値が、増加するにつれて、ビーム焦点が厳密に材料最頂部表面上にあった点が、スロープアウトの間より早期に出現する(矢印によって示される)。これは、溶接最頂部の狭小化を通して視認可能である。1,130mA条件の場合には、溶接は、最頂部の下落を呈し始め、したがって、さらなる試行は、行われなかった。これは、脱集束の初期の率が、+1,130を用いるとより良好であったが、これは、高すぎ、下落につながることを示し、これは、いくつかの実施形態は、スロープアウト方法論の非線形の脱集束率、すなわち、2線形またはそれを上回るもの等が、好ましくあり得ることを例証する。
【0073】
手動の超音波試験(UT)が、欠陥を評価するために実施された。本プロセスを用いると、(-490)+970mAスロープ焦点を伴うパラメータセットが、最も少ない欠陥をもたらした条件であった。加えて、本スロープアウト条件は、最良な外観を伴う溶接部を生産した。これらの結果に基づいて、本パラメータセットが、下記に説明される後続の調査のために選択された。
【0074】
図7は、図6の溶接部の長手方向スライスの写真を図示する。スロープアウト溶接部が、スロープアウト領域内の元の、または初期溶接部と垂直に重複していたため、上部溶接を検査し、次いで、その下方にある次の溶接部に到達するように、材料を粉砕して取り去ることが、必要であった。図7に示されるように、連続的機械加工を通して、溶接区域に到達し、任意の欠陥を視覚的に観察することが可能であった。
【0075】
図8Aは、図6のスロープアウト溶接に関する位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフを図示する。グラフの水平な部分の大部分を横断して延在する、水平なマークが、ノイズであることを理解されたい。傾きが付けられた部分は、スロープアウト領域を表す。図8Bは、図8Aのグラフの一部に関する、位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフを図示する。図8の溶接の3つのもの(490、650、および970mAにおいて行われた溶接)に関して、図8Bは、(「スロープアウト開始」矢印によって識別される)スロープアウト部分の開始ならびに(具体的に記載された欠陥と関連付けられる矢印によって識別される)種々の欠陥を識別する。表2は、溶接入力パラメータの関数として、欠陥情報を記録する。
【表2】
【0076】
2つの欠陥タイプが、着目された。概して、スロープアウトの開始時に据え付けられた(図6上の650における円を参照)、細孔が、観察された。また、スロープアウト溶接部が元の溶接部の上にある、界面であり、図6において右から左に進行する上向きに傾きのある「線」として見られ得る、スパイク欠陥が、溶接融合線に続いて観察された。スパイク欠陥は、平均透過線を超えた、電子ビームの透過の急増として表される。
【0077】
図8Aおよび8Bならびに表2上で強調されるように、スパイク欠陥は、脱集束値が増加するにつれて減退するように見られた。その結果、スパイク欠陥は、1,130mA条件によってほぼ消去した。これは、オーバー焦点調節された構成内のビームが、「アンダー焦点調節された」構成におけるものほど多くのスパイク欠陥を被らないことを示すように見られる。図8Bを具体的に参照すると、焦点位置が、490から970まで偏移するにつれて、全般的な結果は、より小さいスパイク事象に移行する。加えて、スパイクの周波数および重症度が、焦点位置が偏移するにつれて低減する。
【0078】
直前の結果に基づいて、数回の溶接が、有効脱気時間を増大した方策を使用して行われた。溶接の間の脱気は、孔隙および収縮タイプの欠陥を回避し、また、スパイク欠陥を抑制することにも役立つ。これらの方略は、より広い発振パラメータの使用によって、スロープ長を増加させる(事実上、スロープアウト方法論を減速させる)ステップと、鍵穴状部空洞サイズを拡大させるステップとを含んだ。溶接速度を低減させるステップは、脱気のための時間を低減させるだけではなく、欠陥のある溶接部ももたらし、したがって、本アプローチは、追求されなかった。
【0079】
図9は、脱気試験の間に生産された複数の溶接部の外観を比較する、写真を図示する。図10は、図9のスロープアウト溶接に関する位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフを図示する。表3は、精査される溶接パラメータのリストを提供する。
【表3】
【0080】
溶接1は、上記に説明されている試験からの溶接970mAの繰り返しであるが、より長いスロープ長(800mm対上記の400mm)を伴うものであった。スパイク欠陥が、依然として存在するが、非常に低減されたことが、明白であった(図10、溶接1参照)。溶接2が、ビーム発振が3×1mmに増加された、追加された修正を含んだ。図10から見え得るように、位相化アレイ超音波検査結果は、溶接1および2に関して相互に類似しているように見られた。
【0081】
800mmを横断した3mmビーム発振への増加が、緩慢すぎると見なされた。したがって、溶接3に関して、ビーム発振が、4×1mmに増加された。図10、溶接3の位相化アレイ超音波検査結果から見え得るように、スロープアウト領域の開始時に残された、1つの小さい細孔欠陥が、存在し、そうでなければ、スロープアウトは、完全に欠陥がない状態であった。これは、発振の拡大がビームの両方の寸法に適用された(4×2mm発振)、溶接4に関して類似した。
【0082】
図11は、図9の溶接部の長手方向スライスの写真を図示する。これらは、スロープアウトの機械加工された表面を強調する。いくつかの欠陥が、写真上で、溶接1および溶接3内の丸によって示されるように視認可能である。溶接1は、スパイク欠陥を示し、溶接3は、細孔(約3mmの直径)を示す。0.2mmの増分における連続的な切断にもかかわらず、スパイク欠陥は、スケールにおいて非常に細微であったため、それらは、観察することが困難であった。
【0083】
図12は、全周方向溶接のスロープアウト領域の写真を図示する。図13は、図12のスロープアウト溶接の位相化アレイ超音波検査(PAUT)グラフおよび図12の溶接部の長手方向スライスを図示する。図12に示される溶接は、上記の溶接3の同等物であり、全径溶接を実施することによって発生され、これは、1,960mmODの80mm壁厚リングの直径全体の周囲で70分継続し、800mmの長さのスロープが後に続いた。図13の位相化アレイ超音波検査グラフは、スロープアウトが、欠陥がない状態であることを示す。図13の長手方向スライスは、電子ビームがスロープアウト方法論の間に抽出または脱集束された方法を示すためにマーキングされている。
【0084】
S355鋼は、電子ビーム溶接特性に対してSA508と異なるように挙動した。同一のパラメータに関して、S355材料は、はるかにより平坦な最頂部と、より突出している根部とをもたらした。これは、溶接面上の逃げ溝の量によって分かり得る。本逃げ溝はまた、これがより突出している重複部の開始時点で視認可能であった。図12および13に示される2つの逃げ溝点を除いて、電子ビーム溶接スロープアウトは、いかなる欠陥も含有しない。
【0085】
付加的な実験が、低合金鋼である、SA508等級3から作製されるリングを使用して行われている。第1の一連のビードオンプレート溶接が、100mmの定常状態溶接と、その後に続く約400mmのスロープアウト溶接とから成る、約500mmの全長にわたって実施された。溶接パラメータは、表4に示されるようなものである。
【表4】
【0086】
スロープアウト溶接の間、溶接電流が、スロープアウトの長さ(これらの試行に関して400mm)にわたって定常状態溶接条件(450mA)から0mAまで、線形に低減された。これらの試行は、電流が低減されるにつれて電子ビーム溶接の焦点位置を変更する影響を査定することを目的とする。5回のスロープアウト試行溶接が、実施され、溶接パワーを初期の最大定常状態条件から、スロープアウトの終了時における、延々0mAまで低減させる影響を査定した。
【0087】
溶接試行の間に査定された主要パラメータは、表5に示されるような溶接脱集束パラメータであった。(+490から+1,290mAまで)脱集束パラメータを増加させることは、事実上、ビームの焦点距離が同一のスロープアウト長にわたってワークピース表面からさらに離れるように移動していることを意味する。言い換えると、焦点は、上記に説明されるように、より迅速な率において、材料からEB銃に向かって移動している。
【表5】
【0088】
図14Aおよび14Bは、SA508等級3から作製されたリングを使用して行われた、付加的な実験からの結果を図示する。これらの図は、体積査定に関する5回の試行溶接の外観と、対応するPAUT走査とを含む。溶接部の各写真上の垂直の線は、ワークピース材料の表面上のビーム焦点に対応する、鮮明な焦点位置を指定する、溶接ビーズの狭小化を示す。ボックスが、PAUT走査のそれぞれの上に重畳され、溶接部を示す。各列が、脱集束の量によって、A-Eと識別されている。
【0089】
スロープアウトの間の溶接部の外観は、溶接品質に対する重要となるインジケータであった。+490mAの脱集束パラメータは、定常状態溶接がスロープアウトに変化した点の直後の最頂部領域の一般的損失をもたらした(図14A、列A参照)。溶接最頂部の喪失もまた、最大脱集束(+1,290mA)を特徴としたスロープアウトにわたって観察され、これは、スロープアウト領域の終了時により近接した時点において生じた。+730mA脱集束条件および+970mA脱集束条件は両方とも、(外観の観点から)非常に安定した溶接を生産した。各写真上の個別の垂直線によって示される鮮明な焦点位置は、+730mAおよび+970mAに関して、焦点の進展が、SA508等級3基質材料に関して比較的に安定していることを示唆する。
【0090】
PAUT走査はさらに、+490mA、+1,130mA、+1,290mAにおいてこれを確認し、拒否すべき細孔/空洞タイプの症状を示す。しかしながら、+730mA条件は、改良を示すが、依然として、PAUT走査から着目されるスパイク欠陥を含む。+970mA条件は、着目されるスパイクタイプの欠陥に対応する小さい領域を伴う、最良のPAUT結果をもたらした。表5は、これらの結果も同様に強調する。
【0091】
ビードオンプレート試行の第2のセットは、スロープアウト距離の増加を査定するために有望な+970mA条件(上方から)を使用し、また、ビーム発振パターンの偏向(水平から垂直)の適用を含む。これらの試行の詳細が、表6に記録される。
【表6】
【0092】
図15は、ビードオンプレート試行の第2のセットからの結果を図示する。本図は、溶接の外観と、PAUT検査結果とを含む。ボックスが、PAUT走査のそれぞれの上に重畳され、溶接部を示す。第1のスロープアウト溶接(A)は、事実上、初期溶接部の繰り返しであり、非常に類似する外観を提示した。第2のスロープアウト溶接(B)は、事実上、スロープ長を400から800mmまで増加させながら、全ての他のプロセスパラメータを維持した。本溶接からのPAUT走査は、スパイク欠陥の重症度の減少を示し、スロープアウト長を増加させることが、有益であったことを示した。本溶接が、ASME V基準に対して査定された場合、スパイク欠陥が、報告可能な症状サイズを優に下回るであろうことに留意されたい。
【0093】
第3のスロープアウト試行(C)は、ビーム発振が完全透過発振パターンから(水平)から部分的透過発振パターン(垂直)に遷移された状況を提示する。スロープアウト長は、前述の条件(スロープアウト長=800mm)と同一に維持された。PAUT走査は、スロープアウト領域の品質の付加的な改良を露見させる。再び、ASME V基準下において、本溶接は、欠陥がないものと見なされるであろう。
【0094】
第4のスロープアウト試行(D)は、発振変更を維持し、さらに、スロープアウト長を800から1,600mmまで増加させた。本溶接からの結果は、優れており、PAUT結果は、スロープアウトがきれいであり、完全に、いかなる欠陥もない状態であったことを示す。
【0095】
結果が、スロープアウト長が、実際には、細孔/欠陥の捕捉を防止することにおいて非常に重要な要因であることを示唆することを理解されたい。さらに、発振変更(水平から垂直)の適用が、スパイクの事例を低減させた。
【0096】
完全な溶接スロープアウト手順が、2/3スケールのリアクタ圧力容器突出部の溶接のために展開された。表7は、溶接パラメータを提示する。本スロープアウト手順が、SA508等級3から生産された、実際の厚肉区分溶接継合に適用された。
【表7】
【0097】
第1の溶接(試験リング溶接1)が、2つの150mmの高さのSA508等級3、クラス1鍛造リングをともに接合することによって行われた。噛合するリングは両方とも、同一の鍛造から区分された。図16Aおよび16Bは、2つの150mmの高さのSA508等級3、クラス1鍛造リング(試験リング溶接1)を溶接するためのリング溶接設定の写真を示し、これは、溶接滴下を制御するための5mmの開始ならびに停止の前置および後置バー(図示せず)を含む。図17Aおよび17Bは、2つの150mmの高さのSA508等級3、クラス1の鍛造リングの本溶接(試験リング溶接1)からの溶接部の完成されたスロープ領域の写真を示す。
【0098】
図18Aおよび18Bは、試験溶接1のスロープアウト領域からのToFD検査結果を示す。結果は、スロープアウトの線をトレースし、事実上、材料の外かつそれから離れるように移動する際の、電子ビームの透過を表す、一連の症状が、存在したことを示唆した。これらの症状は、裏壁(0mm位置および内径)から開始し、外径まで継続する。結果が、0mm(裏壁)位置から外側表面から42mmのみまで通して被覆することを提示したことに留意されたい。図18Bは、ボックス内のマーキングされた区分を示す。本段階において、症状がToFDを介して定寸されなかったことに留意することが、重要である。
【0099】
ToFD走査が、PAUT走査によって、同一のスロープアウト領域を横断して支援された。図19Aおよび19Bは、試験溶接1のためのPAUT走査を図示する。ボックス1902、1904、1906、1908は、溶接部を示す。図19Aは、収集された、フィルタ処理されていない日付を示し、図19Bは、AME検出要件に即した、フィルタ処理された日付を示す。高い振幅信号利得を採用した、収集されたままのデータ(図19A)が、事実上、スロープアウト線をトレースする、いくつかの症状が存在することを示唆する。しかしながら、ASME V検査基準の適用(図19B)は、症状が、報告可能なサイズを優に下回ることを実証する。これは、スロープアウト領域が容認可能であり、報告可能な症状が存在しなかったことを示唆する。いかなる報告可能も、検査の間(開始時および定常状態)の溶接の残部において観察されなかったことが、注目に値する。
【0100】
第2の溶接(試験リング溶接2)が、(再び、同一の鍛造からの)SA508等級3クラス1リングの2つの150mmの高さの区分を接合することによって、溶接1の直接的繰り返しとして行われた。目標は、溶接スロープアウトが、別のセットの鍛造物を使用して再現可能であるかどうかを判定することであった。類似の手順が、試験リング溶接2内のスロープのために、およびスロープアウトにおいて使用された。図20は、SA508等級3、クラス1のリング(試験リング溶接2)の2つの150mmの高さの区分を接合するステップの結果として生じる溶接部を示し、また、視覚的に類似する。ToFDおよびPAUTは両方とも、試験リング溶接1と比較して、試験リング溶接2に関するほぼ同じ結果を提示した。図21は、試験リング溶接2に適用された、化粧溶接パスを示す。化粧パスは、溶接面の充填不足の発生を低減させることに成功した。
【0101】
第3の溶接が、鍛造されたフランジと、シェルシリンダと、下側の窪んだ頭部とから成る、NuScaleリアクタ圧力容器下側アセンブリの下側区分の実物大模型として行われた。シェル/フランジ溶接は、鍛造されたシェルに溶接された、鍛造されたフランジから成る(外径1,780mm)。継合部の厚さは、80mmであり、内径および外径上に、(前置バーに類似する)溶接支持部として作用するための、統合された5mmの段を含む。フランジが、DTIを使用して心合され、継合部の平坦性もまた、補正された。図22Aおよび22Bは、シェル/フランジ溶接のための設定を図示する。
【0102】
溶接プログラムが、継目追跡および自動化されたタッキング手順を用いて、半自動化された。本活動は、15分を要した。溶接は、次いで、50分(ビームオン時間)で完了した。図23Aおよび23Bは、それぞれ、完成された溶接部の写真ならびにシェル/フランジ溶接のためのスロープアウト面積の拡大図を示す。設定から溶接の完了までの全体動作は、2時間を要した。
【0103】
図24は、シェル/フランジ溶接のための機械加工トレースを示し、これは、電子ビーム溶接の間の電圧および電流を記録する。いくつかのアーク発生エラーをもたらす、最大3kVのいくつかの高電圧不安定性が、示される。しかしながら、溶接が計画立案されたように進行したことを重視されたい。
【0104】
シェル/フランジのIDおよびODが、溶接最頂部ならびに根部ならびに後置バーを前面および背面場所から除去するように機械加工された。これは、溶接の完全NDTを促進するために要求された。機械加工のために、両側から最大5mmが、除去され、溶接をきれいにした。機械加工の後、染料浸透検査(DPI)が、実施された。
【0105】
図25は、シェル/フランジ溶接のためのDPI症状の写真を示す。DPIは、IDにおいて症状がないことを示したが、ODは、充填不足に対応する、4つの隔離された領域を提示した。これらの領域は、きれいにするために4mmの深度までの後続の手動ドレッシングを要求した。最大の症状が、スロープイン/スロープアウト重複部の開始時点において充填不足を有した領域内のスロープに対応した。これらの領域が、k2000トレースから記録されるような高電圧/ビーム電流事象に関連する証拠は、存在しない。これらの特徴は、前述で説明されたように、化粧パスを使用することから恩恵を享受するであろう。
【0106】
図26は、シェル/フランジ溶接からのToFDデータを示し、図27は、シェル/フランジ溶接からのPAUT結果を示す。ToFDおよびPAUTの両方を組み合わせる、同一の体積NDTアプローチが、前述で説明されたようなシェル/フランジ溶接のために採用された。シェル/フランジ溶接に関して、図26および27のみが、スロープアウト領域からの走査を示す。溶接の残部は、いかなる記録可能な症状も提示しなかった。シェル/フランジ溶接からのToFDデータは、症状が、スロープ領域において、溶接1および2において前述に観察されたものと同じであったことを示す。走査が、内径から得られ、故に、症状が、前述の結果に対して反対方向に存在したことに留意されたい。PAUT結果を検討すると、走査は、シェル/フランジのスロープアウト部分の間にいかなる記録可能な症状も露見しなかった。図28は、シェル/フランジ溶接の位相化アレイグラフを示す。いったんASME V基準が走査に適用された時点で、トレースが、図28の底部に記載されるように、非常にきれいな状態になった。これらの結果は、シェル/フランジ溶接がSA508等級3材料の異なる熱からのものであるため、スロープアウト手順が、転送可能であることを確認する。
【0107】
本発明の種々の実施形態が、上記に説明されている。しかしながら、代替実施形態が、可能性として考えられること、および本発明が、上記に説明される具体的な実施形態に限定されないことを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図24
図25
図26
図27
図28
【国際調査報告】