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  • 特表-体外血液処置デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】体外血液処置デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230529BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
A61M1/16 185
A61M1/34 145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566093
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2021060316
(87)【国際公開番号】W WO2021219451
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】102020111764.7
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ガゲル、アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、ブルカルト
(72)【発明者】
【氏名】クレッフェル、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ティス、マルティン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC06
4C077DD26
4C077GG03
4C077HH03
4C077HH06
4C077HH13
4C077KK09
(57)【要約】
本発明は、半透膜2によって、液体システムIIの一部である第1の区画3と、体外血液回路Iの一部である第2の区画4とに分割された血液処置ユニット1を有する体外血液処置デバイスに関する。さらに、本発明は、この種の血液処置デバイスを動作させるための方法に関する。本発明による血液処置デバイスは、バルブデバイス21のための制御ユニット31と協働する圧力ベースの制御デバイス32を有し、該圧力ベースの制御デバイスは、特別動作モードでは流路20内の液体が出口11に通じる流路10の方向に流れることが確実にされる動作状態を圧力ベースの制御デバイス32が検出した場合にのみ、特別動作モードでは流路20の上流部分20Aと下流部分20Bとの間に液体接続を確立することができるように設計されている。したがって、問題となる液体が、出口11に通じる流路10にのみ流入することができるが、新しい処置液体が位置する別の流路8に入らないことが確実になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜によって、流体システムの一部である第1の区画と、体外血液回路の一部である第2の区画とに分割された血液処置ユニットに接続するように設計された体外血液処置装置であって、
前記流体システムは、少なくとも1つの流体ラインを有し、かつ新しい処置流体を流体供給源から前記血液処置ユニットの前記第1の区画に供給するための流路として設計された第1の流路を備えるとともに、少なくとも1つの流体ラインを有し、かつ使用済み処置流体を前記血液処置ユニットの前記第1の区画からドレインに排出するための流路として設計された第2の流路を備え、
少なくとも1つの流体ラインを有する少なくとも1つの追加の流路が特別動作モードのために設けられており、前記流路は、少なくとも1つの遮断部材を有するバルブデバイスの上流にある上流部分と、前記バルブデバイスの下流にあり、前記第2の流路と流体接続する下流部分とを有し、前記バルブデバイスは、前記バルブデバイスの第1の動作位置では特別動作モードのための前記流路の前記上流部分と前記下流部分との間に流体接続が確立され、前記バルブデバイスの第2の動作位置では前記流体接続が中断されるように設計されており、
前記バルブデバイスが前記特別動作モードのための前記第1の動作位置と、別の動作モードのための前記第2の動作位置とをとるように前記バルブデバイスを作動させるための制御ユニットが設けられており、
前記制御ユニットと相互動作する圧力ベースのチェックデバイスが設けられており、前記圧力ベースのチェックデバイスは、特別動作モードのための前記流路内の流体が前記第2の流路に向かって流れることが確実にされる動作状態を前記圧力ベースのチェックデバイスが検出した場合にのみ、特別動作モードのための前記流路の前記上流部分と前記下流部分との間に流体接続を確立することができるように設計されていることを特徴とする、体外血液処置装置。
【請求項2】
前記圧力ベースのチェックデバイスは、特別動作モードのための前記流路の前記上流部分内の上流圧力を測定するための上流圧力計と、特別動作モードのための前記流路の前記下流部分内の下流圧力を測定するための下流圧力計と、前記上流圧力計および前記下流圧力計から測定信号を受信するとともに前記上流圧力が前記下流圧力と比較されるように構成された評価ユニットとを備え、前記上流圧力が前記下流圧力よりも高い場合に、前記評価ユニットは、流体が前記第2の流路に向かって流れることが確実にされる動作状態を示すことを特徴とする、請求項1に記載の体外血液処置装置。
【請求項3】
前記圧力ベースのチェックデバイスは、前記圧力ベースのチェックデバイスが前記制御ユニットのためのイネーブル信号を生成するように構成され、前記制御ユニットは、前記制御ユニットが前記特別動作モードに切り替えるための制御信号と、前記圧力ベースのチェックデバイスからの前記イネーブル信号とを受信した場合にのみ、前記バルブデバイスが前記第1の動作位置をとるように前記バルブデバイスを作動させるように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の体外血液処置装置。
【請求項4】
前記第1の流路は、半透膜によって第1のフィルタチャンバと第2のフィルタチャンバとに分割された第1のフィルタと、前記流体供給源を前記フィルタの前記第1のフィルタチャンバに接続する前記第1の流路の上流部分と、前記フィルタの前記第2のフィルタチャンバを前記血液処置ユニットの前記第1の区画の入口に接続する前記第1の流路の下流部分とを備え、前記特別動作モードのための前記流路の前記上流部分は、前記第1の流路の前記下流部分と流体接続するライン部分であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の体外血液処置装置。
【請求項5】
前記第1の圧力計は前記第1の流路の前記下流部に配置され、前記第2の圧力計は前記第2の流路に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の体外血液処置装置。
【請求項6】
前記体外血液回路は、動脈血ラインおよび静脈血ラインを備え、前記特別動作モードのための前記流路の前記上流部分は、前記静脈血ラインのライン部分または前記静脈血ラインと流体接続するライン部分であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の体外血液処置装置。
【請求項7】
前記第1の圧力計は前記静脈血ラインに配置され、前記第2の圧力計は前記第2の流路に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の体外血液処置装置。
【請求項8】
前記交換ユニットは、半透膜によって透析流体チャンバと血液チャンバとに分割された透析器であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の体外血液処置装置。
【請求項9】
体外血液処置装置を動作させるための方法であって、
半透膜によって、流体システムの一部である第1の区画と、体外血液回路の一部である第2の区画とに分割された血液処置ユニットを備え、
前記流体システムは、少なくとも1つの流体ラインを有し、かつ新しい処置流体を流体供給源から前記血液処置ユニットの前記第1の区画に供給するための流路として設計された第1の流路を備えるとともに、少なくとも1つの流体ラインを有し、かつ使用済み処置流体を前記血液処置ユニットの前記第1の区画からドレインに排出するための流路として設計された第2の流路を備え、
特別動作状態のための追加の流路の上流部分と、前記第2の流路と流れ接続する特別動作状態のための前記流路の下流部分との間に流れ接続が確立される前に、特別動作状態のための前記流路の前記上流部分内の上流圧力および前記下流部分内の下流圧力が測定され、前記上流圧力が前記下流圧力よりも高い場合にのみ前記流れ接続が確立されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記第1の流路は、半透膜によって第1のフィルタチャンバと第2のフィルタチャンバとに分割された第1のフィルタと、前記流体供給源を前記フィルタの前記第1のフィルタチャンバに接続する前記第1の流路の上流部分と、前記フィルタの前記第2のフィルタチャンバを前記血液処置ユニットの前記第1の区画の入口に接続する前記第1の流路の下流部分とを備え、
前記第1の流路の前記下流部分から前記第2の流路への特別動作モードのための前記流路を介した流体流れは、前記上流部分内の前記上流圧力が特別動作モードのための前記流路の前記下流部分内の前記下流圧力よりも高い場合にのみ確立される
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記上流圧力は、前記第1の流路の前記下流部分に配置された圧力計によって測定され、前記下流圧力は、前記第2の流路に配置された圧力計によって測定されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記体外血液回路は、動脈血ラインおよび静脈血ラインを備え、前記静脈血ラインから前記第2の流路への前記特別動作状態のための前記流路を介した流体流れは、前記上流部分内の前記上流圧力が特別動作状態のための前記流路の前記下流部分内の前記下流圧力よりも高い場合にのみ確立されることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記上流圧力は、前記静脈血ラインに配置された圧力計によって測定され、前記下流圧力は、前記第2の流路に配置された圧力計によって測定されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記交換ユニットは、半透膜によって透析流体チャンバと血液チャンバとに分割された透析器であることを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
特別動作状態のための前記流路を介して流れる前記流体は透析流体またはフラッシング流体であることを特徴とする、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透膜によって、流体システムの一部である第1の区画と、体外血液回路の一部である第2の区画とに分割された血液処置ユニットを備える体外血液処置装置に関する。また本発明は、この種の血液処置装置を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の透析装置は、体外血液回路および透析流体システムを備える。透析流体システムは、透析流体供給源から透析器の透析流体チャンバに通じる透析流体供給ラインと、透析器の透析流体チャンバからドレインに通じる透析流体排出ラインとを備える。体外血液回路は、患者の動脈穿刺部位から血液チャンバに通じる動脈血ラインと、血液チャンバから患者の静脈穿刺部位に通じる静脈血ラインとを備える。透析流体が透析器の透析流体チャンバを流れる間、透析器の半透膜を介して血液チャンバと透析流体チャンバとの間で質量の移動がある。
【0003】
既知の体外血液処置装置、例えば、透析装置の流体システムは、一般に、所定の流量で、新しい医療処置流体、例えば透析流体が血液処置ユニットの第1の区画に流入し、使用済み処置流体が血液処置ユニットの第1の区画から出てドレインに流入するように構築されている。したがって、既知の血液処置装置の流体システムは、一般に、少なくとも1つの流体ラインを有し、かつ新しい処置流体を流体供給源から血液処置ユニットの第1の区画に供給するための流路として設計された第1の流路と、少なくとも1つの流体ラインを有し、かつ使用済み処置流体を血液処置ユニットの第1の区画からドレインに排出するための流路として設計された第2の流路とを備える。汚染のリスクを低減するために、既知の血液処置装置の第1の流路と第2の流路とは互いに分離されている。
【0004】
既知の血液処置装置の流体システムは、一般に、特別動作モードのために各々必要とされる追加の流路を有する。これらの特別動作モードは、例えば、血液処置のために血液処置装置に洗浄剤および/または消毒剤を充填すること、または血液チューブシステムを準備することを含む。血液処置の準備の際または障害があった場合の血液処置中に、第1の流路と第2の流路との間に流れ接続を形成し、それによって血液処置ユニットをバイパスすることも、特別動作モードである。
【0005】
流体の流れを制御するために、既知の血液処置装置の流体システムは、1つまたは複数の遮断部材を備えることができるバルブデバイスと、バルブデバイスが1つの動作モードのための1つの動作位置および別の動作モードのための別の動作位置をとるようにバルブデバイスを作動させるための制御ユニットとを含む。
【0006】
特別動作モードのための流路は、少なくとも1つのバルブを有するバルブデバイスの上流にある上流部分と、バルブデバイスの下流にある下流部分とを備え、バルブデバイスは、バルブデバイスの第1の動作位置では流路の上流部分と下流部分との間に流体接続が確立され、バルブデバイスの第2の動作位置では流体接続が中断されるように設計されている。個々の動作モードについて、特別動作モードのための流路の下流部分が第2の流路と流れ接続することが必要であり得、それにより、流路の流れ接続が中断されていない場合に、流体、例えば透析流体が、上流部分から第2の流路を介してドレインに直接流入することができるようになる。
【0007】
例えば、EP2844313B1から、血液処置中に新しい透析流体および使用済み透析流体が流れる2つの別個の流路を備える透析装置が既知である。透析装置の流体システムは、フラッシングプロセスを実施するために複数の遮断部材を備えるバルブデバイスを有する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、使用済み流体が新しい流体に流れ込んだことにより血液処置装置を汚染するリスクをさらに低減するために追加の安全対策を提供することである。
【0009】
本発明によれば、本目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に関連する。
【0010】
本発明による血液処置装置は、特別動作モードのための流路に設けられたバルブデバイスを有する。バルブデバイスは、バルブデバイスの第1の動作位置では特別動作モードのための流路の上流部分と下流部分との間に流体接続が確立され、バルブデバイスの第2の動作位置では流体接続が中断されるように設計されている。また、本血液処置装置は、バルブデバイスを作動させるための制御ユニットと相互動作する圧力ベースのチェックデバイスを有し、該圧力ベースのチェックデバイスは、特別動作モードのための流路内の流体がドレインに通じる流路に向かって流れることが確実にされる動作状態を圧力ベースのチェックデバイスが検出した場合にのみ、特別動作モードのための流路の上流部分と下流部分との間に流体接続を確立することができるように設計されている。これにより、問題となる流体が、ドレインに通じる流路にのみ流入することができ、新しい処置流体が位置する別の流路に入らないことが確実になる。
【0011】
本発明による流れ方向のモニタリングについては、特別動作モードにおいて流体がどの流体ラインを流れるか、またはどの流体であるかは基本的に無関係である。
【0012】
好ましい実施形態では、圧力ベースのチェックデバイスは、特別動作モードのための流路の上流部分内の上流圧力を測定するための上流圧力計と、流路の下流部分内の下流圧力を測定するための下流圧力計と、上流圧力計および下流圧力計から測定信号を受信する評価ユニットとを備える。評価ユニットは、上流圧力が下流圧力と比較されるように構成されており、上流圧力が下流圧力よりも高い場合に、流体が第2の流路に向かって流れることが確実にされる動作状態を示す。
【0013】
制御ユニットおよび/または評価ユニットは、血液処置装置の中央制御・演算ユニットの一部であり得る。圧力は、特別動作モードのための流路の上流部分または下流部分に配置された圧力計によって、または問題となる部分に流体接続される流体ラインに配置された圧力計によって測定され得る。血液処置をモニタリングするために従来の血液処置装置に既に設けられている圧力計を使用することが好ましい。
【0014】
障害のある動作状態が示された場合に、様々な対策を講じることができる。例えば、音響、視覚、または触覚アラームを発して医療スタッフに警告し、それに応じて応答することができる。
【0015】
バルブデバイスの制御ユニットまたは血液処置装置の中央制御・演算ユニットは、障害のある動作状態をシグナリングする評価ユニットからの信号を受信したら、正しい圧力状態をもたらす対策を導入するか、または方法ステップを実施するように構成され得る。
【0016】
別の実施形態では、圧力ベースのチェックデバイスは、制御ユニットのためのイネーブル信号を生成し、制御ユニットは、制御ユニットが特別動作モードに切り替えるための制御信号とイネーブル信号とを受信した場合にのみ、バルブデバイスが第1の動作位置をとるようにバルブデバイスを作動させるように構成されている。その結果、新しい処置流体が位置する流体システムの部分に流体が入らないことが確実にされた場合にのみ、バルブデバイスによって流れ接続を確立することができる。
【0017】
別の実施形態では、血液処置装置の流体システムが、第1の流路が半透膜によって第1のフィルタチャンバと第2のフィルタチャンバとに分割された第1のフィルタを備える特別な構造を有することが必要である。このフィルタは、新しい透析流体のための滅菌フィルタとして機能することができる。第1の流路の上流部分は、流体供給源をフィルタの第1のフィルタチャンバに接続し、第1の流路の下流部分は、フィルタの第2のフィルタチャンバを血液処置ユニットの第1の区画の入口に接続する。この実施形態では、特別動作モードのための流路の上流部分は、第1の流路の下流部分と流体接続するライン部分であり得る。特別動作モードのための流路の下流部分は、第2の流路と、したがってドレインと流れ接続するので、特別動作状態では、新しい処置流体のための第1の流路と使用済み処置流体のための第2の流路との間の滅菌フィルタの下流に流れ接続を確立することができ、それによって血液処置ユニットをバイパスする。
【0018】
この実施形態では、第1の圧力計は第1の流路の下流部に配置され得、第2の圧力計は第2の流路に配置され得る。圧力をモニタリングするために血液処置装置の他の流体ラインに圧力計が既に設けられている場合、特別動作モードのための流路の上流部分および下流部分に直接圧力計を配置しないことが好都合であり得る。
【0019】
体外血液回路が静脈血ラインおよび動脈血ラインを備える別の実施形態では、特別動作モードのための流路の上流部分は、静脈血ラインのライン部分または静脈血ラインと流体接続するライン部分である。この実施形態では、流れ方向をモニタリングすることにより、流体が静脈血ラインからドレインにのみ流入することが可能になり、第1の圧力計を静脈血ラインに配置することができ、第2の圧力計を第2の流路に配置することができる。
【0020】
体外血液処置装置を動作させるための本発明による方法において、特別動作状態のための流路の上流部分と、第2の流路と流れ接続する特別動作状態のための流路の下流部分との間に流れ接続が確立される前に、特別動作状態のための流路の上流部分内の上流圧力および下流部分内の下流圧力が測定される。特別動作状態のための流路の上流部分と下流部分との間の流れ接続は、上流圧力が下流圧力よりも高い場合にのみ確立される。
【0021】
本発明の2つの実施形態について、以下の図面を参照して以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1のバルブデバイスを制御するために流体の流れ方向がモニタリングされる、本発明による血液処置装置の一実施形態の非常に単純化した概略図である。
図2】第2のバルブデバイスを制御するために流体の流れ方向がモニタリングされる、本発明による血液処置装置の一実施形態の非常に単純化した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
血液処置装置、特に血液(透析)濾過装置には、半透膜2によって、第1の区画3、特に透析流体チャンバと、第2の区画4、特に血液チャンバとに分割された血液処置ユニット1、特に透析器が動作のために装備されている。
【0024】
血液ポンプ6が接続されている血液供給ライン5が、血液チャンバ4の入口4aに通じており、返血ライン7が、血液チャンバ4の出口4bから出ている。血液供給ライン5および血液排出ライン7は、血液チャンバ4と共に、血液処置装置の体外血液回路Iを形成する。血液処置装置の流体システムIIについて以下に説明する。血液供給ライン5および血液排出ライン7は、血液処置装置に接続されたチューブシステムの一部である。
【0025】
血液処置装置の流体システムII、特に透析流体システムは、透析流体供給源9から透析流体チャンバ3の入口3aに通じる透析流体供給ライン8と、透析流体チャンバ3の出口3bから出てドレイン11に通じる透析流体排出ライン10とを備える。透析流体供給ライン8は、透析流体供給源9から第1の滅菌フィルタ12の第1のフィルタチャンバ12Aに通じる第1の部分8Aを有し、第1の滅菌フィルタ12は、半透膜12Cによって第1のフィルタチャンバ12Aと第2のフィルタチャンバ12Bとに分割されている。バランシングデバイス13の一方のチャンバ13Aが、透析流体供給ライン8の第1の部分8Aに接続されている。透析流体チャンバ3に通じる透析流体供給ライン8の第2の部分8Bが、第1の滅菌フィルタ12の第2のフィルタチャンバ12Bから出ている。
【0026】
透析流体から置換液を得るために、血液(透析)濾過装置は、第2の滅菌フィルタ14を備えることができ、これは、半透膜15によって第1のフィルタチャンバ16と第2のフィルタチャンバ17とに分割されている。第2の滅菌フィルタ14の第1のフィルタチャンバ16は、透析流体供給ライン8の第2の部分8Bに接続されている。置換液ラインは図1に示していない。
【0027】
透析流体排出ライン10は、ドレイン11に通じる2つの部分10Aおよび10Bに分かれている。第1の部分10Aには透析流体ポンプ18が接続され、第2の部分10Bには限外濾液ポンプ19が接続されている。さらに、バランシングデバイス13の他方のチャンバ13Bが、第2の部分10Bに接続されている。
【0028】
血液処置中、新しい透析流体が透析流体供給源9から透析流体チャンバ3に流入し、使用済み透析流体が透析流体チャンバ3から出てドレイン11に流入する。透析流体供給ラインは、新しい透析流体が透析流体供給源9から透析流体チャンバ3に流れる第1の流路8を表し、透析流体排出ラインは、使用済み透析流体が透析流体チャンバ3からドレイン11に流れる第2の流路10を表す。これら流路は、ラインに接続された構成要素を含む、関連するラインのすべての部分を形成している。
【0029】
透析流体排出ライン10に通じるバイパスライン20が、第1の滅菌フィルタ12の第2のフィルタチャンバ12Bの下流で透析流体供給ライン8の第2の部分8Bから分岐している。電磁的に作動可能な遮断部材21Aを有する第1のバルブデバイス21が、第2のバイパスライン20に接続されている。バイパスラインは、特別動作モードのために設けられた流路20を表す。この動作モードは、例えば誤作動、例えば透析流体の正しくない組成の検出であり得、これは導電率の測定によって検出することができる。この誤作動が生じた場合に、透析流体が透析器1をバイパスしながらドレイン11にガイドされることができるように第1のバルブデバイス21の遮断部材21Aが開かれる。透析器1を隔離するために、透析流体チャンバ3の上流に遮断部材22が設けられ、下流に遮断部材23が設けられている。
【0030】
以下では、透析流体供給ライン8に接続されるバイパスライン20のライン部分を特別動作モードのための流路20の上流部分20Aと呼び、透析流体排出ライン10に接続されるバイパスライン20のライン部分を下流部分と呼ぶ。
【0031】
第2の滅菌フィルタ14の第2のフィルタチャンバは、接続ライン24を介して透析流体排出ライン10に接続されている。電磁的に作動可能な遮断部材25Aを有する第2のバルブデバイス25が、接続ライン24に接続されている。静脈血ライン7A(図2)をフラッシングするために静脈血ライン7Aが接続され得る接続部26(ポート)が、この遮断部材25Aの上流に位置する。フラッシングプロセスのために閉じられる遮断部材27が、接続部26の上流に設けられている。静脈血ライン7Aのフラッシングは、図2を参照して詳述する特別動作モードの別の例である。
【0032】
追加のライン、遮断部材、または接続部(ポート)、例えば、参照符号28で示すライン、遮断部材29、30、または接続部35(ポート)などを設けることもできるが、本発明の理解のためには重要ではない。
【0033】
血液処置装置は、第1のバルブデバイス21および第2のバルブデバイス25の遮断部材21Aおよび25Aそれぞれを開閉することができるように構成された制御ユニット31を有する。第1のバルブデバイス21および第2のバルブデバイス25の電磁的に作動可能な遮断部材21Aおよび25Aのための制御ラインが、図1および図2において、それぞれ参照符号21’、25’によって示されている。制御ユニット31は、他の遮断部材を作動させることもできる。
【0034】
血液処置装置は、第1の圧力計33からの測定信号および第2の圧力計34からの測定信号を受信する評価ユニット32Aを備えるチェックデバイス32を有する。
【0035】
図1に示す実施形態では、第1の圧力計33は、透析流体供給ライン8の下流部分8Bに配置され、このライン部分内の圧力Pを測定し、一方、第2の圧力計34は、透析流体ポンプ18および限外濾液ポンプ19の上流の透析流体排出ライン10に配置され、このライン部分内の圧力Pを測定する。2つの圧力計33、34は、信号ライン33’、34’を介してチェックデバイス32に接続されている。
【0036】
第1の遮断部材21Aおよび第2の遮断部材25Aは、血液処置中は閉じている。特別動作モードが指定された場合、制御ユニット31は、第1の遮断部材21Aまたは第2の遮断部材25Aを開くための制御信号を受信する。本実施形態では、制御ユニット31は、血液処置装置の中央制御・演算ユニット(図示せず)から第1または第2の遮断部材を開くための制御信号を受信するものと想定し、このユニットは、血液処置のための血液処置装置の準備および血液処置自体を制御する。
【0037】
評価ユニット32Aは、第1の圧力計33によって測定された圧力Pと第2の圧力計34によって測定された圧力Pとの差を計算し、差が0よりも大きい、すなわちP>Pである場合、制御ユニット31によって受信されるイネーブル信号を生成する。制御ユニット31は、中央制御・演算ユニットからの第1または第2の遮断部材についての対応する制御信号と評価ユニット32Aからのイネーブル信号との両方を受信した場合にのみ、第1の遮断部材21Aまたは第2の遮断部材25Aを開く。
【0038】
制御ユニット31が「バイパス」動作モードのための対応する制御信号を受信した場合、圧力がP>Pである場合にのみ、この特別動作モードのための流路20の上流部分20Aと下流部分20Bとの間に流れ接続が確立され、その結果、新しい透析流体が第1の流路8から第2の流路10に、したがってドレイン11に流入することが確実になる。圧力がP<Pである場合、イネーブル信号は生成されず、そのため、第2の流路10からの使用済み透析流体が新しい透析流体のための第1の流路8に入る恐れはない。図1では、第1のバルブデバイス21の遮断部材21Aが開いているときの透析流体の流れ方向を矢印で示している。バイパス動作のために他の動作状態も考慮することができる。例えば、非生理的な透析流体が透析器1に入ることはできない。P<Pの場合には、第1の流路8内の圧力Pを上昇させるために好適な対策を講じることができる。これらの対策には、透析器1の透析流体チャンバ3の上流の第1の流路8内の遮断部材22を閉じることが伴い得る。P>Pとなるように遮断部材22が閉じられた場合、遮断部材21Aを開くことができる。遮断部材21Aの代わりに遮断部材29を開くこともできる。
【0039】
図2は、血液処置の準備をするために静脈チューブライン7Aが接続部26に接続され、それにより第2のバルブデバイス25の遮断部材25Aが開いているときにフラッシング流体が静脈血ライン7Aを通ってドレイン11に流れることができる状態の、図1の体外血液処置装置を示す。静脈血ライン7Aをフラッシングするために、第2のバルブデバイス25の遮断部材25Aの上流の遮断部材27が閉じられる。この実施形態では、第1の圧力計は、静脈血ライン7Aに配置され、かつ第2のバルブデバイス25の遮断部材25Aの上流でこのライン内の圧力Pを測定する圧力計33(2)である。第2の圧力計は、図1の第1の実施形態と同様に、透析流体排出ライン10に配置され、かつこのライン内の圧力Pを測定する圧力計34である。
【0040】
静脈血ライン7Aが接続部26に接続され、制御ユニット31が特別動作モード「血液ラインのフラッシング」のための対応する制御信号を受信した場合、第2のバルブデバイス25の遮断部材25Aは、圧力がP>Pの場合にのみ開かれ、その結果、フラッシング流体は第2の流路10に向かってのみ流れることが確実になる。図2では、第2のバルブデバイス25の遮断部材25Aが開いているときのフラッシング流体の流れ方向を矢印で示している。
【0041】
2つの実施形態のうちの1つのみが血液処置装置において実施されてよい。しかしながら、両方の実施形態を実施することも可能である。流れ方向は、本発明によるチェックデバイスによって他の「クリティカル流路(critical flow paths)」においてもモニタリングされ得る。こうした意味で、説明した2つの動作モードは、「クリティカル流路」の1つの実施形態にすぎないと理解されたい。
図1
図2
【国際調査報告】