(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-05
(54)【発明の名称】改質βゼオライト、接触分解触媒ならびにそれらの製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/46 20060101AFI20230529BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230529BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230529BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230529BHJP
B01J 29/80 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C01B39/46
B01J37/08 ZAB
B01J37/04 102
B01J37/00 F
B01J29/80 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566138
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2021090881
(87)【国際公開番号】W WO2021219064
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】202010367845.X
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】于善青
(72)【発明者】
【氏名】嚴加松
(72)【発明者】
【氏名】張傑瀟
(72)【発明者】
【氏名】唐立文
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA20
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4G169ZF07A
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4G169ZF09B
(57)【要約】
本発明は、改質βゼオライト、接触分解触媒、ならびに、それらの製造方法および使用に関する。改質βゼオライトは、改質βゼオライトの乾燥基準重量に基づいて、酸化物の点から、0.5重量%~15重量%のIVB族金属元素を含む。改質βゼオライトの酸強度が中程度である中心の数は、全酸量の30%~60%を占め、強酸中心の数は全酸量の5%~25%を占め、L酸に対するB酸の比率は0.8以上である。改質βゼオライト本体相中のIVB族金属元素の重量含有量の、表面上のIVB族金属元素の重量含有量に対する比率は、0.1~0.8である。本発明の改質βゼオライトを含む接触分解触媒は、C4オレフィンの良好な選択性および収率を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質βゼオライトであって、
前記改質βゼオライトの乾燥基準重量に基づく酸化物の点から、0.5重量%~15重量%のIVB族金属元素を含み、
前記改質βゼオライトの酸強度が中程度である中心の数は、全酸量の30%~60%を占め、
前記改質βゼオライトの強酸中心の数は、前記全酸量の5%~25%を占め、
L酸に対するB酸の比率は、0.8以上であり、
前記改質βゼオライト本体相中の前記IVB族金属元素の重量含有量の、表面上の前記IVB族金属元素の重量含有量に対する比率は、0.1~0.8である、改質βゼオライト。
【請求項2】
前記L酸に対する前記B酸の前記比率は、1.0~1.5である、請求項1に記載の改質βゼオライト。
【請求項3】
前記酸強度が中程度である中心の前記数は、前記全酸量の35%~55%を占める、請求項1に記載の改質βゼオライト。
【請求項4】
前記強酸中心の前記数は、前記全酸量の5%~20%を占める、請求項1に記載の改質βゼオライト。
【請求項5】
前記改質βゼオライトは、前記改質βゼオライトの前記乾燥基準重量に基づく酸化物の点から、1重量%~12重量%の前記IVB族金属元素を含む、請求項1に記載の改質βゼオライト。
【請求項6】
前記IVB族金属元素は、Zrおよび/またはTi、好ましくはZrであり、
前記Zr元素の重量はZrO
2に基づき、
前記Ti元素の重量は、TiO
2に基づく、請求項1に記載の改質βゼオライト。
【請求項7】
前記改質βゼオライト本体相中の前記IVB族金属元素の前記重量含有量の、前記表面上の前記IVB族金属元素の前記重量含有量に対する前記比率は、0.1~0.6である、請求項1に記載の改質βゼオライト。
【請求項8】
接触分解触媒であって、
前記接触分解触媒の乾燥基準重量に基づいて、
10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~50重量%のY型ゼオライト、
2重量%~40重量%の改質βゼオライト、
10重量%~70重量%の粘土、および
5重量%~60重量%の耐熱性無機酸化物を含み、
前記改質βゼオライトは、請求項1~7のいずれか1項に記載の改質βゼオライトである、接触分解触媒。
【請求項9】
下記(i)~(iii)のうち1つ以上を満たす、請求項8に記載の接触分解触媒:
(i)前記Y型ゼオライトは、リンおよび/または希土類を含むY型ゼオライト、超安定Yゼオライト、ならびに、リンおよび/または希土類を含む超安定Yゼオライトのうちの1つ以上から選択される;
(ii)前記粘土は、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイトおよびセピオライトのうちの1つ以上から選択される;
(iii)前記耐熱性無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および非晶質シリカ-アルミナのうちの1つ以上から選択される。
【請求項10】
前記接触分解触媒は、15重量%~45重量%、好ましくは30重量%~45重量%の前記Y型ゼオライト、5重量%~30重量%の前記改質βゼオライト、10重量%~50重量%の前記粘土、および5重量%~40重量%の前記耐熱性無機酸化物を含む、請求項8に記載の接触分解触媒。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の改質βゼオライトを製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
工程(1)IVB属金属を含む化合物、炭素源、および第1の溶媒を混合し、
前記混合物のpH値を4~9に調整して第1のスラリーを得る工程であって、
前記炭素源は、天然高分子有機化合物および/または半合成高分子有機化合物を含む工程;
工程(2)20℃~100℃で10分間~180分間撹拌することにより、前記第1のスラリーおよびβゼオライトを混合し、
固形物を取り出して、350℃~650℃において0.5時間~5時間、第1の焼成を行う工程。
【請求項12】
前記第1のスラリーの前記pH値を、工程(2)において、5~8に調整する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
IVB属金属を含む前記化合物の量と、前記βゼオライトの量と、の重量比率は、(0.005~0.15):1であり、
前記βゼオライトの量と前記炭素源の量との重量比率は、1:(0.001~0.15)であり、
IVB属金属を含む前記化合物は、前記IVB属金属の前記酸化物に基づき、
前記βゼオライトは、乾燥基準重量に基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
下記(i)~(iv)のうち1つ以上を満たす、請求項11に記載の方法:
(i)前記βゼオライトは、水素型βゼオライト、ナトリウム型βゼオライト、リンを含むβゼオライト、希土類金属を含むβゼオライト、ならびに、リンおよび希土類金属を含むβゼオライトのうちの1つ以上から選択される;
(ii)前記炭素源は、デンプン、リグニン、ビスコース繊維、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのうちの1つ以上から選択される;
(iii)IVB族金属を含む前記化合物は、四塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロポキシド、四塩化チタン、チタンオキシスルファート、フルオロチタン酸アンモニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸チタン(IV)、テトラブチルチタネート、三塩化チタンおよび硫酸チタン(III)のうちの1つ以上から選択される;
(iv)前記第1の溶媒は、脱イオン水、エタノール、アセトンおよびn-ヘキサンのうちの1つ以上から選択される。
【請求項15】
請求項8~10のいずれか1項に記載の接触分解触媒を製造する方法であって、
前記Y型ゼオライト、前記改質βゼオライト、前記粘土、前記耐熱性無機酸化物、および第2の溶媒を混合して第2のスラリーを得る工程、
得られた前記第2のスラリーを造粒する工程、ならびに、
乾燥および/または第2の焼成を実施する工程を含み、
前記改質βゼオライトは、請求項1~7のいずれか1項に記載の改質βゼオライトである、方法。
【請求項16】
前記乾燥の温度は、80℃~200℃であり、
前記乾燥の時間は、0.5時間~24時間であり、
前記第2の焼成の温度は、350℃~700℃であり、
前記第2の焼成の時間は、0.5時間~5時間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか1項に記載の改質βゼオライト、または、請求項8~10のいずれか1項に記載の接触分解触媒の、重油の接触分解における使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、改質βゼオライト、接触分解触媒ならびにそれらの製造方法および使用に関する。
〔背景技術〕
環境意識の高まりに伴い、自動車ガソリンの品質基準は絶えず引き上げられている。自動車ガソリンの新しい基準およびGB17930-2016は、国家VI基準ガソリンが、2019年から全国的に実施されることを明確に規定している。国家V基準と比較して、国家VI基準では、ガソリンにおけるベンゼン、芳香族、およびオレフィンの含有量が低減される。現在、中国におけるガソリンの混合成分の方式では、その必要条件をほとんど満たすことができない。オクタン価が高く、オレフィン、芳香族化合物およびベンゼンの含有量がゼロであるため、アルキル化ガソリンは、従来の触媒ガソリンおよび国家VI基準下における改質ガソリンと比較して良好なガソリン混合成分であり、ガソリン混合成分におけるアルキル化されたガソリンの割合は大幅に増加するだろう。アルキル化ユニットの主な原料は、イソブタンおよびC4オレフィンである。世界のC4オレフィンのほぼ70%が接触分解ユニットから得られ、接触分解ユニットからC4オレフィン留分を製造する技術は、投資が少なく、低コストであるという利点を有する。多くの企業は、接触分解処理からより高い収率のC4オレフィンを得ることを試みている。
【0002】
低炭素オレフィンの生成を増加させるために、通常、触媒に形状選択的なモレキュラーシーブが添加される。1993年、米国のEngelhard CORP.は、米国特許USP5243121において、イソブチレンおよびイソアミレンの生成を増加させる接触分解触媒を初めて開示した。水熱処理を介して分解触媒中のYゼオライトの単位格子径を小さくすることにより、炭化水素の分解の際に生成物中のオレフィン選択性を高めることができる触媒が得られる。助剤としての特定量のZSM-5ゼオライトの触媒への添加は、コークス収率の低下および活性の増加をもたらし得る。US3758403は、ZSM-5および大孔径ゼオライト(主にY型ゼオライト)を活性成分として有する触媒を開示している。当該触媒は、オクタン価の増加ならびにC3およびC4オレフィンの収率の増加をもたらし、大孔径ゼオライトは原料を分解してガソリンおよびディーゼルを生成する。ZSM-5形状選択的モレキュラーシーブは、さらにそれを低炭素オレフィンへと分解する。
【0003】
βゼオライトは、1967年にMobilのWadlingerらによって初めて製造された。1988年までに、Higginsらは、その固有の三次元構造特性を明らかにした。これは、12個の環が交差したチャネルシステムを有する唯一の高シリカゼオライトである。(001)結晶面に平行な一次元の12個の環のチャネルは、0.75~0.57nmの直径を有し、(100)結晶面に平行な他の二次元の12個の環のチャネルは、0.65~0.56nmの直径を有する。その特有の構造により、酸触媒特性および構造選択性の両方を有し、近年、新規な触媒材料として急速に発展している。βゼオライトの使用における主な問題点は、一方では、βゼオライトの構造が、鋳型剤を除去する工程において損傷を受けやすいが、もう一方では、反応工程において脱アルミニウム化しやすいことから、活性安定性を悪化させることである。したがって、βゼオライトの改質に関する多くの研究報告が存在する。
【0004】
CN103771437Aは、リンを含む改質βモレキュラーシーブを開示している。リンの含有量はP2O5として計算して3重量%~10重量%を占める。当該モレキュラーシーブの27Al MAS NMRにおいて、化学シフトが54ppm±3ppmである共鳴信号ピーク面積に対する、化学シフトが40±3ppmである共鳴信号ピーク面積の比率は、1以上である。モレキュラーシーブにおいて、リンは、骨格アルミニウムと完全に配位し、当該骨格アルミニウムは完全に保護され、優れた水熱安定性および、より良好な生成物選択性を有する。
【0005】
CN1179994Aは、βゼオライトの改質方法を開示する。Na βゼオライトはアンモニウムイオン交換を経て、ゼオライト上のNa2Oの含有量を0.1重量%未満にする;次いで、上述の、アンモニウム交換されたβゼオライトは酸で処理され、骨格アルミニウムの一部が除去され、そのシリカ-アルミナ比率を50より大きくする;上述の、脱アルミニウム化されたβゼオライトは、リン酸またはリン酸塩と均一に混合され、得られたゼオライト上のP2O5含有量を2重量%~5重量%にするために乾燥される;最後に、水蒸気雰囲気下において、得られた生成物は、450℃~650℃で0.5時間~4時間、水熱焼成される。この方法に従って改質されたβゼオライトを炭化水素分解反応に使用すると、オレフィン、特にイソオレフィンをより高い収率で得ることができ、コークスをより低い収率で得ることができる。
【0006】
CN105621432Aは、改質βモレキュラーシーブおよびその製造方法を開示している。アンモニウム交換後に得られたβモレキュラーシーブを前処理および乾燥に供する;炭堆積反応を行う;、高温焼成処理を行う;次いで、脱アルミニウム処理、乾燥および炭焼却処理に供し、改質βモレキュラーシーブを得る。改質βモレキュラーシーブの本体相のケイ素アルミニウム比は30~80であり、表層のシリカアルミナ比率は50~130であり、表層のシリカアルミナ比率は、本体相のシリカアルミナ比率よりも30~70高い。比表面積は400m2/g~800m2/gであり、細孔容積は0.2ml/g~0.60ml/gであり;赤外酸量は0.1mmol/g~0.6mmol/gであり;相対的な結晶化度は100%~150%である。この発明のモレキュラーシーブ表層のシリカアルミナ比率は、本体相のシリカアルミナ比率よりも高く、水素化分解反応工程において広い適用可能性を有する。
【0007】
CN107899607Aは、改質βモレキュラーシーブ、モレキュラーシーブの製造方法および使用を提供する。当該触媒の製造方法は、βモレキュラーシーブを基質とすること;金属元素を改質剤とすること;金属元素の水溶性塩溶液およびイオン交換法を用いて改質βモレキュラーシーブを製造すること;を含む。金属元素は、Cu、Al、Zn、FeおよびSnのうちの1つ、またはそれらの2つ以上の混合物から選択され、製造された改質βモレキュラーシーブの質量の0.5%~4%を占める。
【0008】
低炭素オレフィンを製造するための接触分解触媒におけるβゼオライトの使用に関する多くの報告もまた存在する。米国特許US4837396は、βゼオライトおよびYゼオライトを含む触媒を開示している。金属イオン含有化合物は、当該触媒の水熱安定性および機械強度を向上させるための安定剤として使用される。当該安定剤は、βゼオライトに対して直接的に作用し得、または製造工程において導入されうる。
【0009】
CN1055105Cは、イソブテンおよびイソペンテンを高収率で得るための分解触媒を開示しており、当該触媒は、6重量%~30重量%の五員環を有しリンおよび希土類元素を含む高Siゼオライトと、5重量%~20重量%のUSYゼオライトと、1重量%~5重量%のβゼオライトと、30重量%~60重量%の粘土と、15重量%~30重量%の無機酸化物と、を含む。当該触媒は、接触分解の処理条件下でイソブテンおよびイソペンテンを高収率でもたらす特徴を有し、同時に、高オクタンガソリンを共生産することができる。
【0010】
CN107971003Aは、リンおよび添加金属を含むβモレキュラーシーブを含有する、接触分解助剤およびその製造方法を開示している。当該助剤は、リンおよび添加金属を含むβモレキュラーシーブを乾燥基準で10重量%~75重量%と、粘土を乾燥基準で0重量%~60重量%と、無機酸化物バインダーを乾燥基準で15重量%~60重量%と、リン添加剤をP2O5基準で0重量%~25重量%と、VIII属金属添加剤を酸化物基準で0重量%~15重量%含有し、モレキュラーシーブ中のAlの分配パラメータDは、0.4≦D≦0.8であり;モレキュラーシーブのミクロ細孔比面積は420m2/g~520m2/gであり;モレキュラーシーブのメソ細孔容積は全細孔容積の30%~70%を占め;モレキュラーシーブ中の強酸の量は全酸量の65%~80%を占め;酸Lの量に対する酸Bの量の比率は25~90である。当該助剤は、接触分解に適用される場合、イソブテンおよびプロピレンの収率、ならびにガソリンのオクタン価を向上させることができる。しかしながら、液化ガス中の全ブテン濃度の増加は有意ではない。
【0011】
CN104998681Aは、低炭素オレフィンの濃度を向上させるための接触分解助剤、およびその製造方法を開示している。当該助剤は、リンおよび金属を含有するホウ素改質βモレキュラーシーブ、無機酸化物接着剤、VIII族金属添加剤、リン添加剤および任意成分の粘土を含む。接触分解助剤は、石油炭化水素の接触分解に適用され、接触分解液化ガス中のイソブテンの濃度を増加させることができ、コークスの収率を低下させることができる。
【0012】
CN107971000Aは、リン含有βモレキュラーシーブを含む、接触分解助剤およびその製造方法を開示している。当該助剤は、乾燥基準で10重量%~75重量%のリン含有βモレキュラーシーブ、乾燥基準で0重量%~60重量%の粘土、乾燥基準で15重量%~60重量%の無機酸化物バインダー、P2O5基準で0重量%~25重量%のリン添加剤、および酸化物基準で0重量%~15重量%のVIII族金属添加剤を含有する。接触分解において当該助剤を適用する場合、イソブチレンおよびプロピレンの収率を向上させることができ、ガソリンのオクタン価を向上させることができる。
【0013】
低炭素オレフィンの収率を増加させるという目的は、接触分解において、上述の技術に従って製造された種々の触媒/助剤を使用することによって、ある程度達成することができる。しかしながら、プロピレンおよびブチレンの増加に伴い、液化ガスの収率も増加するため、液化ガス中のプロピレンまたはブチレンの濃度の変化がほとんどなくなるという問題点もあり;一方で、ブチレンの増加に伴い、プロピレンの収率も増加し、ブチレンに対する選択性が悪化するという問題もある。
【0014】
接触分解工程におけるC4オレフィンの生成および転化機構の分析によれば、接触分解工程におけるC4オレフィンの生成は、主に2つの局面に由来する:1つは、一分子分解反応または二分子分解反応により、原料中の炭化水素高分子から生成された活性中間体の分解から生じる生成物であり、もう1つは、当該分解反応において形成された低炭素オレフィンの二次反応の生成物である。接触分解中に生成されるC4オレフィンは、さらに、分解反応、異性化反応、二量化反応、および水素移動反応を経ることができる。
【0015】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、改質βゼオライト、接触分解触媒、ならびにそれらの製造方法および使用を提供することである。本発明の接触分解触媒は、C4オレフィンの良好な選択性および収率を有する。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、第1の態様において、改質βゼオライトの乾燥基準重量に基づく酸化物の点から、0.5重量%~15重量%のIVB族金属元素を含む、改質βゼオライトを提供する。前記改質βゼオライトの酸強度が中程度である中心の数は、全酸量の30%~60%を占め、強酸中心の数は、前記全酸量の5%~25%を占め、L酸に対するB酸の比率は、0.8以上である。表面上の前記IVB族金属元素の重量含有量に対する、前記改質βゼオライト本体相中の前記IVB族金属元素の重量含有量の比率は、0.1~0.8である。
【0017】
任意で、前記L酸に対する前記B酸の前記比率は、1.0~1.5である。
【0018】
任意で、前記酸強度が中程度である中心の数は、全酸量の35%~55%を占める。
【0019】
任意で、前記強酸中心の数は、前記全酸量の5%~20%を占める。
【0020】
任意で、前記改質βゼオライトは、前記改質βゼオライトの前記乾燥基準重量に基づく酸化物の点から、1重量%~12重量%の前記IVB族金属元素を含む。
【0021】
任意で、前記IVB族金属元素は、Zrおよび/またはTi、好ましくはZrであり、前記Zr元素の重量はZrO2に基づき、前記Ti元素の重量は、TiO2に基づく。
【0022】
任意で、前記表面上の前記IVB族金属元素の重量含有量に対する、前記改質βゼオライト本体相中の前記IVB族金属元素の重量含有量の比率は、0.1~0.6である。
【0023】
本発明は、第2の態様において、接触分解触媒の乾燥基準重量に基づいて、10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~50重量%のY型ゼオライト、2重量%~40重量%の改質βゼオライト、10重量%~70重量%の粘土、および5重量%~60重量%の耐熱性無機酸化物を含む接触分解触媒を提供し、前記改質βゼオライトは、本発明の前記第1の態様において提供される改質βゼオライトである。
【0024】
任意で、前記Y型ゼオライトは、リンおよび/または希土類を含むY型ゼオライト、超安定Yゼオライト、ならびに、リンおよび/または希土類を含む超安定Yゼオライトのうちの1つ以上から選択され;
任意で、前記粘土は、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイトおよびセピオライトのうちの1つ以上から選択され;
任意で、前記耐熱性無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および非晶質シリカ-アルミナのうちの1つ以上から選択される。
【0025】
任意で、前記接触分解触媒は、15重量%~45重量%、好ましくは30重量%~45重量%の前記Y型ゼオライト、5重量%~30重量%の前記改質βゼオライト、10重量%~50重量%の前記粘土、および5重量%~40重量%の前記耐熱性無機酸化物を含む。
【0026】
本発明は、第3の態様において、本発明の前記第1の態様において提供される、前記改質βゼオライトを製造する方法を提供する。前記方法は、
工程(1)IVB属金属を含む化合物、炭素源、および第1の溶媒を混合し、
前記混合物のpH値を4~9に調整して第1のスラリーを得、
前記炭素源は、天然高分子有機化合物および/または半合成高分子有機化合物を含む工程;
工程(2)20℃~100℃で10分間~180分間撹拌することにより、前記第1のスラリーおよびβゼオライトを混合し、固形物を取り出して、350℃~650℃において0.5時間~5時間、第1の焼成を行う工程、を含む。
【0027】
任意で、工程(2)において、前記第1のスラリーの前記pH値を5~8に調整する。
【0028】
任意で、IVB属金属を含む前記化合物の量と、前記βゼオライトの量と、の重量比率は、(0.005~0.15):1であり、前記βゼオライトの量と前記炭素源の量との重量比率は、1:(0.001~0.15)であり、IVB属金属を含む前記化合物は、前記IVB属金属の前記酸化物基準であり、前記βゼオライトは、乾燥基準重量に基づく。
【0029】
任意で、前記βゼオライトは、水素型βゼオライト、ナトリウム型βゼオライト、リンを含むβゼオライト、希土類金属を含むβゼオライト、ならびに、リンおよび希土類金属を含むβゼオライトのうちの1つ以上から選択される。
【0030】
任意で、前記炭素源は、デンプン、リグニン、ビスコース繊維、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのうちの1つ以上から選択される。
【0031】
任意で、IVB族金属を含む前記化合物は、四塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロポキシド、四塩化チタン、チタンオキシスルファート、フルオロチタン酸アンモニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸チタン(IV)、テトラブチルチタネート、三塩化チタンおよび硫酸チタン(III)のうちの1つ以上から選択される。
【0032】
任意で、前記第1の溶媒は、脱イオン水、エタノール、アセトンおよびn-ヘキサンのうちの1つ以上から選択される。
【0033】
本発明は、第4の態様として、本発明の前記第2の態様において提供される前記接触分解触媒を製造する方法を提供する。当該方法は、前記Y型ゼオライト、本発明の第1の態様において提供される前記改質βゼオライト、前記粘土、前記耐熱性無機酸化物、および第2の溶媒を混合して第2のスラリーを得る工程、得られた前記第2のスラリーを造粒する工程、ならびに、乾燥および/または第2の焼成を実施する工程を含む。
【0034】
任意で、前記乾燥温度は、80℃~200℃であり、前記乾燥時間は、0.5時間~24時間であり;前記第2の焼成の温度は、350℃~700℃であり、前記第2の焼成の時間は、0.5時間~5時間である。
【0035】
本発明は、第5の態様において、本発明の第1の態様において提供される前記改質βゼオライト、または、本発明の第2の態様において提供される前記接触分解触媒の、重油の接触分解における使用を提供する。
【0036】
上述の技術的解決手段により、本発明の改質βゼオライトは、優れた酸分布およびIVB族金属分布を有し、この改質βゼオライトを含む接触分解触媒は、良好な触媒性能を有する。重油の接触分解工程に使用される場合、優れた重油の分解性能を有する。前記接触分解触媒は、ガソリンおよび液化ガスの収率を低下させることなく、液化ガス中のC4オレフィンの濃度を増加させ、C4オレフィンの収率および選択性を増加させることができる。
【0037】
本発明の方法は簡便であり、βゼオライト上に分布するIVB族金属酸化物の状態および量を向上させ、βゼオライトのチャネル分布を調整することができ、良好な物理化学的性質を有する改質βゼオライトの製造を可能にする。
【0038】
本発明の他の特徴および効果は、以下の具体的な実施形態の一部において詳述される。
【0039】
〔具体的な実施形態〕
本発明の具体的な実施形態を以下に詳述する。本明細書に記載される具体的な実施形態は、本発明を限定するのではなく、本発明を例示および説明することのみを目的としていることを理解されたい。
【0040】
本発明は、第1の態様において、改質βゼオライトの乾燥基準重量に基づく酸化物の点から、0.5重量%~15重量%、例えば2重量%~13.5重量%のIVB族金属元素を含む、改質βゼオライトを提供する。前記改質βゼオライトの酸強度が中程度である中心の数は、全酸量の30%~60%、例えば30%~50%を占め、強酸中心の数は、全酸量の5%~25%、例えば10%~25%を占め、L酸に対するB酸の比率は、0.8以上であり、例えば、0.9~1.5である。表面上の前記IVB族金属元素の重量含有量に対する、前記改質βゼオライト本体相中の前記IVB族金属元素の重量含有量の比率は、0.1~0.8であり、例えば、0.15~0.45である。
【0041】
従来のβゼオライトと比較して、本発明の改質βゼオライトは、優れた酸分布、およびL酸に対するB酸の比率を有し、酸強度が中程度である中心の個数が増加し、これは接触分解反応工程におけるカルベニウムイオンの分解反応に対する異性化反応の比率を最適化し、β位切断反応に先立つ接触分解工程において生成されるC6~C10オレフィンの異性化反応に寄与し、C4オレフィンの選択性を増加させる;一方、改質βゼオライトは、重油を分解する優れた能力を有する。
【0042】
本発明によれば、前記IVB族金属元素は、Zrおよび/またはTiであり、好ましくはZrであり、前記Zr元素の重量はZrO2に基づき、前記Ti元素の重量は、TiO2に基づく。本発明によれば、前記βゼオライトの表面上のIVB族金属元素は、前記IVB属金属の酸化物の形で存在し得る。好ましい実施形態において、前記IVB属金属酸化物は、ZrO2および/またはTiO2であり、より好ましくは、ZrO2である。
【0043】
好ましい実施形態において、改質βゼオライトは、改質βゼオライトの乾燥基準重量に基づき、酸化物の点から、IVB族金属元素を1重量%~12重量%、例えば2重量%~12重量%含む。酸強度が中程度である中心の数は、全酸量の35%~55%、例えば35%~50%または35~45%を占め、強酸中心の数は全酸量の5%~20%、例えば10%~20%を占める。L酸に対するB酸の比率は、0.8以上、例えば1.0~1.5または1.1~1.5である。表面上のIVB族金属元素の重量含有量に対する、改質βゼオライト本体相中のIVB族金属元素の重量含有量の比率は、0.1~0.6、例えば0.15~0.45である。
【0044】
本発明は、第2の態様において、接触分解触媒の前記乾燥基準重量に基づいて、20重量%~50重量%のY型ゼオライト、2重量%~40重量%の改質βゼオライト、10重量%~70重量%の粘土、および5重量%~60重量%の耐熱性無機酸化物を含む接触分解触媒を提供し、改質βゼオライトは、本発明の第1の態様において提供される改質βゼオライトである。
【0045】
本発明の発明者は、Yゼオライトと改質βゼオライトとの組合せが、C4オレフィンの選択性をさらに増加させることができるだけでなく、重油高分子の分解処理を促進し、オイルスラリーおよびディーゼルオイルの収率を低下させ、ガソリンの収率を増加させ、C4オレフィンの製造量を増加させるための潜在的な成分をより多く提供し得ることも見出した。本発明の接触分解触媒を重油の接触分解法に使用すると、ガソリンおよび液化ガスの収率を低下させることなく、液化ガス中のC4オレフィンの濃度を増加させ、C4オレフィンの収率および選択性を増加させることができる。
【0046】
好ましい実施形態において、前記接触分解触媒は、30重量%~45重量%の前記Y型ゼオライト、5重量%~30重量%の前記改質βゼオライト、10重量%~50重量%の前記粘土、および5重量%~40重量%の前記耐熱性無機酸化物を含む。
【0047】
本発明によれば、耐熱性無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素および非晶質シリカ-アルミナのうちの1つ以上などの、接触分解触媒のマトリクスおよび/またはバインダー成分として使用される耐熱性無機酸化物から選択することができる。これらの耐熱性無機酸化物そのものおよびそれらの製造方法は、当業者に周知である。
【0048】
本発明によれば、前記Y型ゼオライトおよび前記粘土は、当業者に周知である。例えば、前記Y型ゼオライトは、リンおよび/または希土類を含むY型ゼオライト、超安定Yゼオライト、ならびに、リンおよび/または希土類を含む超安定Yゼオライトのうちの1つ以上から選択され得;前記粘土は、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイトおよびセピオライトのうちの1つ以上から選択され得る。
【0049】
本発明は、第3の態様において、本発明の前記第1の態様において提供される、前記改質βゼオライトを製造する方法を提供する。前記方法は、
工程(1)IVB属金属を含む化合物、炭素源、および第1の溶媒を混合し、前記混合物のpH値を4~9に調整して第1のスラリーを得、前記炭素源は、天然高分子有機化合物および/または半合成高分子有機化合物を含む工程;
工程(2)20℃~100℃で10分間~180分間撹拌することにより、前記第1のスラリーおよびβゼオライトを混合し、固形物を取り出して、350℃~650℃において0.5時間~5時間、第1の焼成を行う工程、を含む。
【0050】
前記第1の焼成の雰囲気は特に限定されず、例えば、大気雰囲気および/または不活性雰囲気とすることができ、前記不活性雰囲気中の不活性気体は、窒素、ヘリウムおよびアルゴンのうちの1つ以上から選択される。工程(1)で行われる混合の温度および時間は、特に限定されず、例えば、40℃~90℃で30分間~120分間混合することができる。固形物の取り出し方は特に限定されないが、例えば、ろ過または加熱乾燥法を用いることができ、ろ過法が好ましい。
【0051】
本発明によれば、IVB属金属を含む前記化合物の量と、前記βゼオライトの量と、の重量比率は、(0.005~0.15):1であり得、前記βゼオライトの量と前記炭素源の量との重量比率は、1:(0.001~0.15)であり得、IVB属金属を含む前記化合物は、前記IVB属金属の前記酸化物に基づき、前記βゼオライトは、乾燥基準重量に基づく。好ましくは、IVB族金属を含む前記化合物の量と、前記βゼオライトの量と、の重量比率は、(0.01~0.12):1であり、前記βゼオライトの量と前記炭素源の量との重量比率は、1:(0.005~0.10)である。より好ましくは、IVB族金属を含む前記化合物は、Zrを含む化合物および/またはTiを含む化合物である。
【0052】
本発明によれば、前記炭素源は、天然高分子化合物および/または半合成高分子化合物などの高分子有機化合物であり得る。特定の実施形態において、前記炭素源は、デンプン、リグニン、ビスコース繊維、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのうちの1つ以上から選択され得る。前記高分子有機化合物および/または半合成高分子有機化合物から製造された改質βゼオライトの表面上のIVB族金属元素の重量含有量は、本体相中のIVB族金属元素の含有量よりも高い。前記改質βゼオライトは、比較的優れた触媒性能を有する。重油の接触分解工程において使用される場合、前記改質βゼオライトは、ガソリンおよび液化ガスの収率を低下させることなく、液化ガス中のC4オレフィンの濃度を増加させ、C4オレフィンの収率および選択性を増加させることができる。
【0053】
本発明によれば、IVB族金属を含む前記化合物における前記IVB金属は、チタンおよび/またはジルコニウムであり得る。特定の実施形態において、IVB族金属を含む前記化合物は、四塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロポキシド、四塩化チタン、チタンオキシスルファート、フルオロチタン酸アンモニウム、硫酸チタン、テトラブチルチタネート、三塩化チタンおよび硫酸チタン(III)のうちの1つ以上から選択され得る。前記第1の溶媒の種類は、IVB属金属を含む前記化合物が溶解され得、および前記βゼオライトが分散され得る限りは、特に限定されない。例えば、前記第1の溶媒は、脱イオン水、エタノール、アセトンおよびn-ヘキサンのうちの1つ以上から選択され得る。
【0054】
本発明によれば、前記βゼオライトは、当業者に周知であり、例えば、前記βゼオライトは、水素型βゼオライト、ナトリウム型βゼオライト、リンを含むβゼオライト、希土類金属を含むβゼオライト、ならびに、リンおよび希土類金属を含むβゼオライトのうちの1つ以上から選択され得、好ましくは、水素型βゼオライトおよびリンを含むβゼオライトである。
【0055】
本発明によれば、工程(1)において、第1のスラリーのpH値を5~8に調整することができる。好ましくは、第1のスラリーのpH値は6~8に調整される。pH値を調整する方法は、特に限定されない。例えば、アンモニア水、水ガラスの水溶液、メタアルミン酸ナトリウム水溶液および水酸化ナトリウム水溶液、好ましくはアンモニア水のうちの1つ以上であり、好ましくはアンモニア水であり得るアルカリ性溶液を添加することによって、第1のスラリーのpH値を調整することができる。アルカリ性溶液の濃度は、広い範囲で変動し得る。特定の実施形態では、OH-に基づくアルカリ性溶液の濃度は、2重量%~20重量%であり得、好ましくは3重量%~15重量%であり得る。別の特定の実施形態では、アルカリ性溶液がNH3に基づいて2重量%~20重量%、好ましくは3重量%~15重量%の濃度である希釈アンモニア水である。混合物のpH値を調整することによって、IVB族金属イオンは、水酸化物析出物を形成することができ、これは、βゼオライトの表面中に、IVB族金属を含有する析出物が均一に分散するために役立つ。
【0056】
本発明は、第3の態様において、本発明の第2の態様おいて製造される接触分解触媒を製造する方法を提供する。当該方法は、前記Y型ゼオライト、本発明の前記第1の態様において製造された前記改質βゼオライト、前記粘土、前記耐熱性無機酸化物、および第2の溶媒を混合して第2のスラリーを得る工程、得られた前記第2のスラリーを造粒する工程、ならびに、乾燥および/または第2の焼成を実施する工程を含む。
【0057】
本発明によれば、前記耐熱性無機酸化物は、耐熱性無機酸化物そのものおよび/または耐熱性無機酸化物の前駆体を含む。前記耐熱性無機酸化物そのものは、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素および非晶質シリカ-アルミナのうちの1つ以上のような、前記接触分解触媒のマトリクスおよび/またはバインダー成分として使用される耐熱性無機酸化物の1つ以上から選択することができる。前記耐熱性無機酸化物の前駆体とは、本発明の前記触媒を製造する工程において前記耐熱性無機酸化物を形成することができる物質を示す。例えば、酸化アルミニウムの前駆体は、アルミニウムゾル、擬ベーマイト、ベーマイト、アルミナ三水和物、および非晶質水酸化アルミニウムのうちの1つ以上から選択することができ;例えば、酸化ケイ素の前駆体は、シリカゾル、シリカゲル、および水ガラスのうちの1つ以上から選択することができる。これらの耐熱性無機酸化物そのものおよび/または耐熱性無機酸化物の前駆体ならびにそれらの製造方法は、当業者に周知である。
【0058】
好ましい特定の実施形態において、粘土、前記耐熱性無機酸化物および第1の溶媒は、強い叩解に供される。得られたスラリー、改質βゼオライトおよびY型ゼオライトを混合し、撹拌する。噴霧造粒、焼成、任意で洗浄および乾燥することにより、本発明の接触分解触媒が得られる。好ましくは、酸は、強い叩解中または強い叩解後に添加される。スラリーのpH値を1~5、好ましくは2~4に調整し、スラリーを30℃~90℃で0.5時間~5時間熟成する。酸は、水溶性の無機酸または有機酸であり得、好ましくは塩酸、硝酸およびリン酸のうちの1つ以上であり得る。ここで、噴霧乾燥の方法および条件は当業者に周知であり、ここでは説明しない。
【0059】
本発明において、第2のスラリーの固形分は、広範囲で変化し得、例えば、第2のスラリーの固形分は、15重量%~50重量%であり、好ましくは20重量%~45重量%である。
【0060】
本発明によれば、前記乾燥温度は、80℃~200℃であり、前記乾燥時間は、0.5時間~24時間である。好ましくは、前記乾燥温度は、80℃~120℃であり、前記乾燥時間は、0.5時間~12時間である。前記第2の焼成の温度は、350℃~700℃であり得、前記第2の焼成の時間は、0.5時間~5時間であり得る。好ましくは、前記第2の焼成の温度は、400℃~650℃であり、前記第2の焼成の時間は、1時間~4時間である。前記焼成は、例えば、大気雰囲気のような、任意の雰囲気下において実施され得る。
【0061】
本発明は、第4の態様において、本発明の第1の態様において製造された改質βゼオライト、または、本発明の第2の態様において製造される接触分解触媒の、重油の接触分解における使用を提供する。
【0062】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明されるが、本発明はそれによって限定されない。
【0063】
カオリンは、蘇州カオリン会社によって製造され、固形分は76重量%である。
【0064】
アルミニウムゾルにおける酸化アルミニウムの含有量は、21.5重量%である。
【0065】
擬ベーマイトは、山東のアルミニウム工場で製造され、固形分は、62.0重量%である。
【0066】
酸性化された擬ベーマイトの固形分は、12.0重量%であり、塩酸により酸性化されている。酸性化された際、前記酸(HCl)の、酸化アルミニウムに対するモル比率は、0.15である。
【0067】
採用された超安定Yゼオライト(USY)は、固形分が94.7%、単位格子定数が24.48Åであり、重量パーセントで、Na2O含有量が1.3%、およびRE2O3含有量が2.5%である。
【0068】
希土類超安定Yゼオライト(REUSY)は、固形分が84.8%、単位格子定数が24.51Åであり、重量パーセントで、Na2O含有量が1.6%、およびRE2O3含有量が12.0%である。
【0069】
リンを含むYゼオライト(PREHY)は、固形分が92.4%、単位格子定数が24.59Å、重量パーセントで、Na2O含有量が1.5%、P2O5含有量が7.5%、およびRE2O3含有量が8.5%である。
【0070】
水素型βゼオライトは、固形分が75%、SiO2/Al2O3(モル比率)=25、およびNa2O含有量が0.15%である。
【0071】
リン改質βゼオライトは、固形分が82.5%、SiO2/Al2O3(モル比率)=25、Na2O含有量が0.15%、およびP2O5含有量が7.0%である。
【0072】
上述のY型ゼオライトおよびβゼオライトのすべては、Sinopec Catalyst Co.,Ltd.製であり、その他の試薬は、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.製である。すべての試薬のグレードは、分析的純度である。前記含有量のうち、具体的に示されていないものは、重量パーセントである。
【0073】
NH3に基づく希釈アンモニア水の濃度は12重量%である。
【0074】
(改質βゼオライトの特性を試験するための方法)
(1)酸量および酸強度の測定:熱重量プログラム温度昇温脱離(TG-TPD)法を用いて、アルカリ吸着ガスとしてNH3を用いて、室温でゼオライト試料を飽和させる。次いで、プログラムされた昇温および脱離の際のNH3の重量減少を、熱重量示差熱重量測定(PCT-2)によって測定する。NH3の脱離量は試料の酸量である。ゼオライトの弱酸中心、酸強度が中程度である中心および強酸中心の温度帯は、それぞれ、120℃~270℃、270℃~390℃および390℃~560℃である。対応する温度範囲において脱離するNH3のモル量は、ゼオライトの酸量に対応する。
【0075】
(2)B酸およびL酸:触媒の表面酸性は、US Nicolet社製のNicolet 560赤外分光計で特徴づけられ、波数は1400cm-1~1700cm-1である。触媒中のB酸は1540cm-1にある特徴的なピークに特徴づけられ、触媒中のL酸は、1450cm-1にある特徴的なピークに特徴づけられる。対応するピーク面積の積分計算に基づいて、L酸に対するB酸の比率は、L酸の特徴的なピークのピーク面積に対するB酸の特徴的なピークのピーク面積の比率を指す。
【0076】
(3)改質βゼオライト表面のIVB族金属元素の重量含有量および本体相のIVB族金属元素の重量含有量:ゼオライト表面のIVB族金属元素の重量含有量は、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析した、ゼオライト表面の2nm~5nmの範囲における、IVB族金属元素の重量含有量を指す。
【0077】
改質βゼオライト本体相中のIVB族金属元素の重量含有量は、化学的な元素分析定量法(ICP(Jarrell-Ash、ICAP 9000)により分析した、ゼオライト中のIVB族金属元素の重量含有量である。
【0078】
本願において、改質βゼオライトに含まれるIVB族金属元素とは、改質βゼオライトの本体相に含まれるIVB族金属元素を指す。改質βゼオライトに含まれる酸化物に基づくIVB族金属元素の重量含有量は、改質βゼオライト本体相において測定されたIVB族金属元素の重量含有量を、変換することにより得ることができる。変換方法は当業者に周知であり、ここでは説明しない。実施例および比較例で製造された改質β型ゼオライトの特性を表1に示す。
【0079】
触媒の組成の分析:X線蛍光分光法(XRF)を用いる。
【0080】
触媒の組成の分析結果を、表2~4に示す。
【0081】
実施例1~8は、改質βゼオライトの製造例である。比較例1~4は、改質βゼオライトの製造の比較例である。
【0082】
(実施例1)
(1)脱イオン水2250g、オキシ塩化ジルコニウム39.23g(ZrOCl2・8H2O)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース7.5gを混合した。混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて7.0に調整した。混合物を40分間撹拌して、第1のスラリーを得た;
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト150gを混合し、40℃で90分間撹拌した。混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、550℃で2時間焼成して、本発明の改質βゼオライトを得、B1として記録した。
【0083】
ここで、オキシ塩化ジルコニウムの量、βゼオライトの量、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースの量の重量比率は、0.1:1:0.05である。オキシ塩化ジルコニウムはジルコニアに基づき、βゼオライトは乾燥基準重量に基づく。
【0084】
(実施例2)
(1)脱イオン水1500g、ジルコニウムイソプロポキシド28.34g、およびメチルセルロース3gを混合した。混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて5.0に調整した。混合物を60分間撹拌して、第1のスラリーを得た;
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト150gを混合し、60℃で120分間撹拌した。混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、500℃で3時間焼成し、本発明の改質βゼオライトを得、B2として記録した。
【0085】
ここで、ジルコニウムイソプロポキシドの量、βゼオライトの量およびメチルセルロースの量の重量比率は、0.06:1:0.02である。ジルコニウムイソプロポキシドはジルコニアに基づき、βゼオライトは乾燥基準重量に基づく。
【0086】
(実施例3)
(1)脱イオン水750g、硝酸ジルコニウム(Zr(NO3)4・5H2O)10.45g、およびリグニン0.8gを混合した。混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて5に調整した。混合物を30分間撹拌して、第1のスラリーを得た;
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト150gを混合し、80℃で180分間撹拌した。混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、550℃で1時間焼成して、本発明の改質βゼオライトを得、B3として記録した。
【0087】
ここで、硝酸ジルコニウムの量、βゼオライトの量、およびリグニンの量の重量比率は、0.02:1:0.005である。硝酸ジルコニウムはジルコニアに基づき、βゼオライトは乾燥基準重量に基づく。
【0088】
(実施例4)
(1)脱イオン水3000g、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)47.08g、およびビスコース繊維15gを混合した。混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて7.5に調整した。混合物を60分間撹拌して、第1のスラリーを得た;
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト150gを混合し、45℃で85分間撹拌した。混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、450℃で3時間焼成して、本発明の改質βゼオライトを得、B4として記録した。
【0089】
ここで、オキシ塩化ジルコニウムの量、βゼオライトの量、およびビスコース繊維の量の重量比率は、0.12:1:0.1である。オキシ塩化ジルコニウムはジルコニアに基づき、βゼオライトは乾燥基準重量に基づく。
【0090】
(実施例5)
(1)脱イオン水1500g、ジルコニウムイソプロポキシド18.9g、およびヒドロキシエチルセルロース6gを混合した。混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて5.5に調整した。混合物を30分間撹拌して、第1のスラリーを得た;
(2)第1のスラリー、およびリン改質βゼオライト150gを混合し、80℃で60分間撹拌した。混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、550℃で2時間焼成し、本発明の改質βゼオライトを得、B5として記録した。
【0091】
ここで、ジルコニウムイソプロポキシドの量、βゼオライトの量、およびヒドロキシエチルセルロースの量の重量比率は、0.04:1:0.04である。ジルコニウムイソプロポキシドはジルコニアに基づき、βゼオライトは乾燥基準重量に基づく。
【0092】
(実施例6)
工程(1)において、脱イオン水2250g、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)39.23、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース0.12gを混合し、当該混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて7.0に調整し、当該混合物を40分間撹拌して第1のスラリーを与えたこと以外は、実施例1と同じ方法で改質βゼオライトB6を製造した。
【0093】
ここで、オキシ塩化ジルコニウムの量、βゼオライトの量、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース量の重量比率は、0.10:1:0.0008である。オキシ塩化ジルコニウムはジルコニアに基づき、βゼオライトは乾燥基準重量に基づく。
【0094】
(実施例7)
工程(1)において、脱イオン水2250g、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)62.78gおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース7.5gを混合し、当該混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて7.0に調整し、当該混合物を40分間撹拌して第1のスラリーを与えたこと以外は、実施例1と同じ方法で改質βゼオライトB7を製造した。
【0095】
ここで、オキシ塩化ジルコニウムの量、βゼオライトの量、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースの量の重量比率は、0.16:1:0.05である。オキシ塩化ジルコニウムはジルコニアに基づく。
【0096】
(実施例8)
工程(1)において、脱イオン水2250g、四塩化チタン35.61g、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース7.5gを混合し、当該混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて7.0に調整し、当該混合物を40分間撹拌して第1のスラリーを与えたこと以外は、実施例1と同じ方法で改質βゼオライトB8を製造した。
【0097】
ここで、四塩化チタンの量、βゼオライトの量、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースの量の重量比率は、0.1:1:0.05である。四塩化チタンは酸化チタンに基づき、βゼオライトは乾燥基準重量に基づく。
【0098】
(比較例1)
第1のスラリーのpHを調整しないこと以外は、実施例1と同じ方法を用いて改質βゼオライトを製造した。
(1)脱イオン水2250g、オキシ塩化ジルコニウムZrOCl2・8H2Oを39.2g、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース7.5gを混合した。当該混合物を40分間撹拌して、第1のスラリーを得た。得られたスラリーのpHは1.4であった。
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト200gを混合し、40℃で90分間撹拌した。当該混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、550℃で2時間焼成して、比較のβゼオライトを得、DB1として記録した。
【0099】
(比較例1’)
第1のスラリーのpHを調整しないこと以外は、実施例1と同じ方法を用いて改質βゼオライトを製造した。
(1)脱イオン水2250g、オキシ塩酸ジルコニウムZrOCl2・8H2Oを39.23g、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース7.5gを混合した。当該混合物を40分間撹拌して、第1のスラリーを得た。得られたスラリーのpHは1.4であった。
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト150gを混合し、40℃で90分間撹拌した。当該混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、550℃で2時間焼成して、比較のβゼオライトを得、DB1-1として記録した。
【0100】
(比較例2)
炭素源を添加しないこと以外は、実施例2と同じ方法を用いて改質βゼオライトを製造した。
(1)脱イオン水1500gおよびジルコニウムイソプロポキシド28.3gを、均一に混合した。当該混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて5.0に調整した。当該混合物を60分間撹拌して、第1のスラリーを得た;
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト200gを混合し、60℃に加熱して、120分間撹拌した。当該混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、500℃で3時間焼成して、比較のβゼオライトを得、DB2として記録した。
【0101】
(比較例2’)
炭素源を添加しないこと以外は、実施例2と同じ方法を用いて改質βゼオライトを製造した。
(1)脱イオン水1500gおよびジルコニウムイソプロポキシド28.34gを、均一に混合した。当該混合物のpHを、希釈アンモニア水を用いて5.0に調整した。当該混合物を60分間撹拌して、第1のスラリーを得た;
(2)第1のスラリーおよび水素型βゼオライト150gを混合し、60℃に加熱して120分間撹拌した。当該混合物をろ過した。得られたろ過ケーキを、大気雰囲気中、500℃で3時間焼成して、比較のβゼオライトを得、DB2-1として記録した。
【0102】
(比較例3)
改質βゼオライトを、従来の水溶液含浸法により調製した。
【0103】
室温において、200gのHβゼオライトを、1500gの脱イオン水と共に叩解した。次いで、45gの(NH4)2SO4を添加し、均一に混合した。次いで、当該混合物を、交換のために90℃にて1時間加熱し、ろ過し、脱イオン水で洗浄した。ろ過ケーキを600℃で2時間焼成して、水素型βゼオライトを得た。
【0104】
47.1gのオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)を、200gの脱イオン水に溶解させることにより、含浸溶液を形成させ、得られた含浸溶液を、処理したHβゼオライトと共に均一に混合した。当該混合物を室温で1時間放置し、次いで500℃で4時間焼成して、改質βゼオライトを得、DB3として記録した。
【0105】
(比較例4)
改質βゼオライトを、有機溶媒溶液含浸法により製造し、DB4として記録した。
【0106】
室温において、200gのHβゼオライトを、1500gの脱イオン水と共に叩解した。次いで、45gの(NH4)2SO4を添加し、均一に混合した。次いで、当該混合物を、交換のために90℃にて1時間加熱して、ろ過して、脱イオン水で洗浄した。ろ過ケーキを600℃で2時間焼成して、水素型βゼオライトを得た。
【0107】
47.1gのオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)を、200gのエタノールに溶解させ、含浸溶液を形成させ、得られた含浸溶液を、処理したβゼオライトと共に均一に混合した。当該混合物を室温で1時間放置し、次いで500℃で4時間焼成して、改質βゼオライトを得、DB4として記録した。
【0108】
実施例9~22は、本発明の改質βゼオライトを含む、接触分解触媒の実施例である。比較例5~8および比較例9~10は、比較の改質βゼオライトを含む接触分解触媒の比較例である。
【0109】
(実施例9)
447gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および513gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、さらに271gのREUSYゼオライトおよび150gの改質βゼオライトB1(乾燥基準)を添加し、578gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一に分散(撹拌)させて、スラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、本発明によって提供される接触分解触媒C1を得た。
【0110】
(実施例10~16)
接触分解触媒を製造するための改質βゼオライトが、それぞれ実施例2~8で製造された改質βゼオライトB2~B8であったこと以外は、実施例9と同じ方法を用いて接触分解触媒C2~C8を製造した。
【0111】
(比較例5、5’、6、6’、7および8)
接触分解触媒を製造するための改質βゼオライトが、それぞれ、比較例1、1’、2、2’、3および4で製造された改質βゼオライトDB1、DB1-1、DB2、DB2-1、DB3およびDB4であったことを除いて、実施例9と同じ方法を用いて接触分解触媒DC1、DC1-1、DC2、DC2-1、DC3およびDC4を製造した。
【0112】
(実施例17)
421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および487gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間の撹拌後、105gのUSYゼオライト、236gのREUSY、および100gの改質βゼオライトB1(乾燥基準)をさらに添加し、847gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(撹拌)させて、スラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、本発明によって提供される接触分解触媒C9を得た。
【0113】
(実施例18)
421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および537gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、さらに294gのREUSYゼオライトおよび150gの改質βゼオライトB2(乾燥基準)を添加して、560gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(撹拌)させてスラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、本発明によって提供される接触分解触媒C10を得た。
【0114】
(実施例19)
421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および540gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。その後、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、105gのUSYゼオライト、294gのREUSYゼオライトおよび50gの改質βゼオライトB3(乾燥基準)をさらに添加し、844gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(撹拌)させてスラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、本発明によって提供される接触分解触媒C11を得た。
【0115】
(実施例20)
421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および487gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、さらに、162gのPREUSYゼオライトおよび250gの改質βゼオライトB4(乾燥基準)を添加し、640gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(撹拌)させてスラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、本発明によって提供される接触分解触媒C12を得た。
【0116】
(実施例21)
421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および487gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、105gのUSYゼオライト、259gのREUSYゼオライト、および80gの改質βゼオライトB5(乾燥基準)をさらに添加し、867gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(撹拌)させてスラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、本発明によって提供される接触分解触媒C13を得た。
【0117】
(実施例22)
421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および487gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、190gのUSYゼオライト、235gのREUSY、および20gの改質βゼオライトB1(乾燥基準)をさらに添加し、847gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(撹拌)させてスラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、本発明によって提供される接触分解触媒C14を得た。
【0118】
(比較例9)
本比較例は、βゼオライトを含まない接触分解触媒の製造である。
【0119】
実施例17の方法に従い、触媒を製造した。421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、487gの脱イオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、211gのUSYゼオライトおよび236gのREUSY(乾燥基準)をさらに加え、841gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(撹拌)させてスラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成して、比較の接触分解触媒DC5を得た。
【0120】
(比較例10)
CN104998681Aの実施例4の方法に従い、リンおよび鉄による改質βゼオライトDB5を製造した。
【0121】
実施例21の方法に従い、触媒を製造した。421gのカオリン、372gのアルミニウムゾル、および487gの脱カチオン水を、叩解槽に入れ、叩解した。次いで、1666gの酸性化された擬ベーマイトを添加した。60分間撹拌した後、105gのUSYゼオライト、259gのREUSYゼオライト、および80gのリンおよび鉄による改質βゼオライト(乾燥基準)をさらに加え、867gの脱イオン水と共に叩解し、30分間均一分散(混乱)させてスラリーを形成させた。次いで、得られたスラリーを、成形のために噴霧乾燥した。これを500℃で2時間焼成し、比較の接触分解触媒DC6を得た。
【0122】
(接触分解触媒の評価)
接触分解触媒C1~C8およびDC1~DC4を、予め固定床熟成ユニット中において100%水蒸気を用いて800℃で12時間熟成し、次いで、小型固定流動床ユニット中で評価した。反応供給油の特性を表8に示す。反応温度は500℃であり、油に対する触媒の重量比率は5.92である。
【0123】
接触分解触媒C9~C14およびDC5~DC6を、予め固定床熟成ユニット中において100%水蒸気を用いて800℃で8時間熟成し、次いで、小型固定流動床ユニット中で評価した。反応供給油の特性を表8に示す。反応温度は500℃であり、油に対する触媒の重量比率は4.0である。
【0124】
ここで、転化率=ガソリン収率+液化ガス収率+乾性ガス収率+コークス収率;
C4オレフィン収率=1-ブテン収率+2-ブテン収率+イソブチレン収率;
C4オレフィン濃度=C4オレフィン収率/液化ガス収率;
C4オレフィン選択性=C4オレフィン収率/C4留分収率。
【0125】
評価結果を、表5~表7に示す。表中、強酸量/全酸量とは、全酸量中の強酸中心の量の数を指し、中程度の酸量/全酸量とは全酸量中の酸強度が中程度である中心の量の数を指す。
【0126】
【0127】
表1の結果から、添加したジルコニウム含有化合物の量が同じであるならば、実施例1に基づいて製造された改質βゼオライトは、比較例1と比較して高いジルコニア含有量を有することが分かる。これは、希釈アンモニア水を用いてスラリーのpHを調整することが、ジルコニウム含有化合物を十分に利用するために好ましく、βゼオライトの表面上にジルコニウム含有化合物を析出させるために役立つ一方で、比較例1ではジルコニウム含有化合物がろ過において失われることを示している。したがって、実施例1では、ゼオライト本体相中のIVB族金属元素の重量含有量/ゼオライト表面上のIVB族金属元素の重量含有量の比率が相対的に低く、B酸/L酸の比率は相対的に高く、酸強度が中程度である中心の数は多い。比較例3と比較して、本発明に従って製造された改質βゼオライトは、より高いB酸/L酸、およびより多くの酸強度が中程度である中心を有する。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
表5および表7の結果は、比較例5で製造された触媒DC1と比較して、本発明の実施例9で製造された触媒C1では、ガソリンおよび液化ガスの総収率が1.11%著増し、重油の収率が0.16%減少し、ディーゼル油の収率が0.97%減少し、およびC4オレフィンの収率が0.65%増加することを示している。液化ガスでは、C4オレフィンの濃度は2.91%増加し、C4オレフィンの選択性は5.01%増加する。液化ガス中のプロピレン濃度はほとんど変化しない。比較例5’に従って製造された触媒DC1-1と比較して、本発明の実施例9で製造された触媒C1では、ガソリンおよび液化ガスの総収率が1.27%著増し、重油の収率が0.14%減少し、ディーゼル油の収率が1.14%減少し、およびC4オレフィンの収率が0.67%増加する。液化ガスでは、C4オレフィンの濃度が2.95%増加し、C4オレフィンの選択性が5.17%増加する。液化ガス中のプロピレン濃度はほとんど変化しない。これは、本発明において、希釈アンモニア水によりスラリーのpHを調整することが、βゼオライトの表面上へのジルコニウム含有化合物の析出を可能にし、製造された改質βゼオライトは、重油の分解についてより高い活性および性能を有し、C4オレフィンの優れた収率と選択性とを有することを示す。
【0136】
比較例6で製造された触媒DC2と比較して、本発明の実施例10で製造された触媒C2では、ガソリンおよび液化ガスの総収率が1.41%著増し、重油の収率が0.59%減少し、ディーゼル油の収率が1.31%減少し、およびC4オレフィンの収率が0.87%増加する。液化ガス中では、C4オレフィンの濃度は4.61%増加し、C4オレフィンの選択性は7.15%増加する。液化ガス中のプロピレン濃度はほとんど変化しない。比較例6’に従って製造された触媒DC2-1と比較して、本発明の実施例10で製造された触媒C2では、ガソリンおよび液化ガスの総収率が1.44%著増し、重油の収率が0.64%減少し、ディーゼル油の収率が1.34%減少し、およびC4オレフィンの収率が0.86%増加する。液化ガス中では、C4オレフィンの濃度は4.58%増加し、C4オレフィンの選択性は7.1%増加する。液化ガス中のプロピレン濃度は、ほとんど変化しない。これは、本発明において、炭素源を用いて製造された改質βゼオライトが、重油の分解についてより高い活性および性能を有し、C4オレフィンの優れた収率と選択性とを有することを示す。
【0137】
比較例7で製造された触媒DC3と比較して、本発明の実施例13で製造された触媒C5では、ガソリンおよび液化ガスの総収率が2.13%著増し、重油の収率が0.10%減少し、ディーゼル油の収率が2.58%減少し、C4オレフィンの収率が0.76%増加する。液化ガスでは、C4オレフィンの濃度は4.8%増加し、C4オレフィンの選択性は5.81%増加する。液化ガス中のプロピレン濃度はほとんど変化しない。これは、本発明中で製造されたリンを含む改質βゼオライトが、重油の分解についてより高い活性および性能を有し、C4オレフィンの優れた収率と選択性とを有することを示す。
【0138】
触媒中の改質βゼオライトの含有量が同量である場合、本発明の実施例9~16に従って製造された接触分解触媒C1~C9では、比較例5~8と比較して、重油の分解能がより高く、ディーゼル油の収率がより低く、C4オレフィンの収率がより高い。液化ガス中のC4オレフィン濃度は、液化ガスの収率を基本的にほとんど変化させないように増加する。
【0139】
本発明の好ましい実施形態は、上述のように詳述される。しかしながら、本発明は、上述の実施形態の具体的な詳細に限定されない。本発明の技術思想の範囲内で、本発明の技術的解決手段に対して、様々な簡単な変更を加えることができ、これらの簡単な変更は全て、本発明の保護範囲内にある。
【0140】
また、明確にする必要があることとして、上述した特定の実施の形態に記載されている、具体的な各技術的特徴は矛盾しない限り、適宜組み合わせることが可能である。不必要な繰り返しを避けるために、本発明は、もはや様々な可能な組み合わせ方法を説明しない。
【0141】
さらに、本発明の様々な実施形態は本発明の思想に反しない限り、任意に組み合わせることもできる。それはまた、本発明によって開示された内容と見なされるべきである。
【国際調査報告】