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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】弾性磁性化合物を有する磁性部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20230530BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230530BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H01F7/02 A
C08L67/00
C08L77/00
H01F7/02 E
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022545950
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2021052007
(87)【国際公開番号】W WO2021152024
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】20154692.6
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518426608
【氏名又は名称】マックス ベールマン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】パトリック クチュケ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF00X
4J002CL00W
4J002DE116
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、本体材料で作製された本体(1)と、本体(1)に固定位置で接続された磁性プラスチック部分(2)とを備える磁性部品(100)に関し、プラスチック部分(2)は、高分子支持材及び高分子支持材に埋め込まれた磁性粒子を含む化合物から生成され、本体材料及び化合物は異なる熱膨張特性を有する。プラスチック部分(2)は本体(1)に位置固定的に接続される接触面を有し、化合物は少なくとも60重量%、特に60重量%と95重量%の間の磁性粒子からなり、化合物はクラックが磁性プラスチック部分(2)に形成されるのを防止するための弾性材料として構成され、特に、本体材料は金属であり、本体(1)は特にスリーブ、ディスク又はシャフトの態様である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体材料で作製された本体(1)と、該本体(1)に固定位置で接続された磁性プラスチック部分(2)と、を備え、前記プラスチック部分(2)は、高分子支持材及び該高分子支持材に埋め込まれた磁性粒子を含む化合物から生成され、前記本体材料及び前記化合物は異なる熱膨張特性を有し、
前記プラスチック部分(2)は前記本体(1)に位置固定的に接続される接触面を有し、前記化合物は少なくとも60重量%、特に60重量%と95重量%の間の前記磁性粒子からなり、前記化合物はクラックが前記磁性プラスチック部分(2)に形成されるのを防止するための弾性材料として構成され、特に、前記本体材料は金属製であり、前記本体(1)は特にスリーブ、ディスク又はシャフトの態様で設計されている、磁性部品(100)。
【請求項2】
前記高分子支持材は少なくとも1つのポリアミドを含み、前記化合物は特に少なくとも84重量%、特に84重量%~92重量%の磁性粒子からなり、前記化合物は前記本体材料の線熱膨張係数の少なくとも2倍の線熱膨張係数を有し、特に前記化合物は10GPa~25GPaの範囲の弾性率を有する、請求項1に記載の磁性部品(100)。
【請求項3】
前記高分子支持材は半結晶熱可塑性材料であり、特に、前記高分子支持材は少なくとも80重量%の少なくとも1つのポリエステル及び/又は少なくとも1つのポリアミド、特に少なくとも1つの脂肪族ポリアミドからなり、特に前記高分子支持材は異なるポリマーを含む混合物である、請求項1又は2に記載の磁性部品(100)。
【請求項4】
前記磁性粒子は、0.5μm~100μmの平均粒子サイズを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁性部品(100)。
【請求項5】
前記化合物は、10分あたり30gと10分あたり150gの間のメルトマスフローレートを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁性部品(100)。
【請求項6】
前記磁性プラスチック部分(2)は、前記磁性部品(100)の温度が変化する場合に-10℃~100℃の温度範囲にわたる前記本体(1)と前記プラスチック部分(2)の異なる前記熱膨張挙動に起因して前記化合物に発生する材料応力を、クラック形成を回避しつつ、弾性的に吸収するように設計されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁性部品(100)。
【請求項7】
前記化合物は、7GPa~30GPaの引張弾性率、30MPa~100MPaの引張応力、及び/又は1%~6%の破断伸びを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁性部品(100)。
【請求項8】
前記プラスチック部分(2)は、静摩擦接触で前記接触面によって前記本体(1)に接続され、かつ/又はフォームフィッティングの態様で前記本体(1)に接続されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁性部品(100)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の磁性部品(100)を実現するための本体(1)、磁性粒子及びポリマー粉末の使用であって、
弾性化合物が生成され、該弾性化合物の少なくとも60重量%が前記磁性粒子からなり、最大で40重量%が前記ポリマー粉末からもたらされるポリマーからなり、前記化合物が前記本体(1)に適用及び付着される、使用。
【請求項10】
前記化合物の生成時に、前記ポリマー粉末が最初に溶融された後に、溶融された該ポリマー粉末に接着促進剤、潤滑剤、熱安定化剤及び/又は耐衝撃性改良剤が添加され、前記溶融されたポリマー粉末に前記磁性粒子が添加される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記磁性プラスチック部分(2)は、射出成形によって生成され、特に前記本体(1)に対して成形される、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載の磁性部品を実現するための弾性磁性化合物を生成する方法であって、
磁性粒子が、生成される前記化合物について、前記磁性粒子が前記化合物の少なくとも60重量%を構成し、ポリマー粉末に対して、該ポリマー粉末からもたらされる前記ポリマーが前記化合物の最大で40重量%を構成するような比で混合される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の包括部分に係る磁性部品に関し、磁性部品を実現する本体、磁性粒子及びポリマー粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な磁性部品は、通常、磁石、特に永久磁石を、この磁石がモータ又はセンサの磁石として使用可能となるように、回転部品に取り付けるのに使用される。この目的のために、磁性プラスチック部分及び本体を備える磁性部品を実現することが知られている。磁性プラスチック部分は、通常は、高分子支持材に埋め込まれた磁性、特に硬磁性粒子を備える。このような材料粒子が高分子支持材又はポリマーマトリクスに埋め込まれたプラスチック部分を、通常は高充填プラスチック部分という。このようなプラスチック部分が高い充填レベルの磁性粒子を含有する場合、それらをプラスチックボンド永久磁石ということが多い。磁性粒子、特に硬磁性粒子は、その磁気特性に起因して磁化可能な又は既に磁化されている少なくとも1つの材料による粒子である。
【0003】
原則として、従来の磁性部品は、シャフト又はスリーブなどの回転部品に磁石を取り付けるのに多くの点で特に適することが分かっている。通常は環状、特に少なくとも50%、特に少なくとも70%、特にその全範囲にわたって中空円筒状であるプラスチック部分は磁石を設ける一方で、本体は磁性部品を回転固定的に回転対象部品に固定するように作用する。この目的のため、本体は、通常はスリーブ又はシャフトの形態で設計され、シャフト又はスリーブなどの対応の回転対象部品にプレスフィットされることにより装着され得る。磁性プラスチック部分は通常、磁性部品が意図する通り使用される場合、特に本体がそれに設定された回転軸に関して回転される場合、プラスチック部分が本体の位置のあらゆる変化にも追従するように、位置固定的に本体に接続される。その回転軸は、磁性部品が意図する通りに使用される場合に磁性部品がそれに装着される際に回転対象部品が回転される軸に対応する。それにより、磁性プラスチック部分によって生成される磁界を検出することによって、磁性部品が取り付けられる回転対象部品の回転についての結果が引き出され得る。
【0004】
通常、プラスチック部分は、本体に設定された軸が延在する方向に、この方向に垂直な方向よりも小さな範囲(extension)を有する。この小さな範囲は、この方向に垂直なプラスチック部分の範囲の、特に70%未満、特に50%未満、特に35%未満であり、これは充分な磁気特性を保持しつつ材料の最大限の節約をもたらし得る。もちろん、磁性部品は通常、特に排他的に本体によって回転固定的に回転対象部品に接続されることにより、磁性部品の特定の回転位置が上記軸を中心とした回転対象部品の特定の回転位置に対応付けられることになる。本発明はさらに、回転対象部品及び磁性部品を備える構成に関し、磁性部品は、特に排他的に本体によって回転対象部品に対して回転不能に接続される。
【0005】
一方、適宜の一般的な磁性部品の実施では種々の問題が起こる。まず、本体及び磁性プラスチック部分は各々異なる特性を有していなければならないため、本体は、通常はプラスチック部分とは異なる材料で作製される。本体は、回転対象部品に対する確実な非回転固定を与えることが意図される一方で、磁性プラスチック部分は、特定の用途に対して具体的に調整された明確に定められた磁界を磁石、特に永久磁石に与える目的を果たさなければならない。したがって、本体の熱膨張挙動は通常、磁性プラスチック部分の熱膨張挙動とは異なり、通常、本体は磁性プラスチック部分よりも大幅に硬い材料で作製される。一方、磁性プラスチック部分は、磁性粒子が可能な限り均一に充分に高い密度でプラスチック部分に含有されるように製造されなければならず、プラスチック部分は可能な限り簡易かつ予め決定可能な態様で本体に射出成形され得る。
【0006】
一般的な磁性部品に課されるこれらの要件によって、長期間にわたって使用可能な強健な磁性部品を製造することが難しくなる。本体材料と磁性プラスチック部分の材料との間の異なる材料特性及びそれらの異なる熱膨張挙動のために、磁性プラスチック部分にクラックが入ることが多い。これは、プラスチック部分が位置固定的に本体に接続される場合に異なる熱膨張挙動がプラスチック部分に応力をもたらすためである。特に、一般的な磁性部品は、通常、大きな温度変動が起こる環境、特に-10℃~+100℃、特に-30℃~+120℃、特に-40℃~125℃、特に-40℃~+150℃で使用されることが考慮されなければならない。さらに、使用時、特に自動車での使用時に、そのような磁性部品は、上記の温度範囲の温度変動に、多数のサイクルにわたって、特に数百サイクル、特に千サイクルにわたって耐えなければならない。これらの問題は、従来技術では、例えば、本体と磁性プラスチック部分の間に、それを介して磁性プラスチック部分が本体に結合される弾性中間層を設けることによって対処されてきた。しかし、これはコストが高くなることが分かっており、そのような磁性部品の実施は段差を加工するのに非常に精密な接着を必要とし、そのような磁性部品の製造に誤差を引き起こす。あるいは、磁性プラスチック部分の材料を、その熱膨張挙動について、本体の熱膨張挙動に可能な限り近づけて合わせる試みがなされてきた。しかし、これは、磁性プラスチック部分の材料の強健性の観点で又は本体の材料及び回転対象部品へのその取付け性の観点で品質の損失を伴うことで実現される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来の磁性部品又は方法の問題点の少なくとも一部が少なくとも部分的に解決可能な磁性部品及び/又は磁性部品を実施するための方法を提供する問題に基づく。
【0008】
上記の技術的問題に対する解決手段として、本発明は、本体材料で作製される本体及び位置固定的に本体に接続される磁性プラスチック部分を備える磁性部品を提案する。磁性プラスチック部分は、化合物で作製される。化合物は、プラスチック技術で一般的に用いられる配合によって調製され、一軸押出機、二軸押出機、混練機又は分散混練機など、この目的のために提供される市販の機械が用いられる。調製された化合物は、加工プラント、例えば、磁性プラスチック部分が例えば射出成形によって生成される射出成形プラントに供給される。本発明によると、化合物は、高分子基材、及び高分子支持材に埋め込まれた磁性粒子を有する。特に、磁性プラスチック部分が作製される本体材料及び化合物は、異なる熱膨張挙動を有する。したがって、特に、本体材料及び化合物では、特に0℃~100℃の温度範囲内で、それぞれの体積について温度に対する依存性が異なる。異なる熱膨張挙動は、本体が化合物とは異なる目的を果たすために本体材料が化合物と同一でないことに起因するものである。本体の目的は、磁石部品が回転対象部品に可能な限り強健かつ強固に固定されることを可能とすることであり、これが、本体材料が好ましくは高い引張強度及び特に高い硬度を有する理由である。本体材料は、例えば、金属化合物又は純金属、例えば、金属合金、鋼、黄銅、銅及び/又はアルミニウムであり得る。本体材料は、上記材料の組合せであってもよい。
【0009】
本発明によると、磁性プラスチック部分は磁性プラスチック部分が位置固定的に本体に接続される接触面を有するので、接触面の各位置において磁性プラスチック部分が本体の対応の位置に位置固定的に接続される。特に好ましくは、磁性プラスチック部分は、その接触面によって本体との直接の接触状態にある。磁性プラスチック部分は、例えば、本体に直接成形されてもよいし、例えば、接触面上で本体に結合されてもよい。本体へのプラスチック部分の射出成形は、本体の対応の位置へのプラスチック部分の接触面の各位置の位置固定設定を確実にしつつ磁性部品の簡易かつ安価な生成に特に有利である。本発明によると、化合物は、少なくとも60重量%、特に少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、特に60重量%と95重量%の間、特に70重量%と95重量%の間、特に80重量%と95重量%の間の磁性粒子を含み、磁性プラスチック部分におけるクラックの形成を回避するために弾性材料として設計される。
【0010】
弾性材料は、動作温度範囲における伸張の範囲内で可逆的な変形可能性を示す材料である。特に好ましくは、弾性材料は、少なくとも概ね伸張範囲内の弾性変形の挙動として説明可能な粘弾性変形の挙動を示す。磁性粒子は、特に硬質の磁性粒子、特に好ましくはフェライト、ネオジム含有粒子、例えばNdFeB及び/又は例えばSmCoであるが、特に、異なる磁性粒子が化合物に含有され得る。特に好適には、磁性粒子の少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%はフェライトである。磁性粒子は、支持材によって形成された高分子マトリクスと互換可能ではないが、例えば結合剤によって、化合物における高分子支持材のマトリクスに結合される。例えば、シラン類、チタネート類、ジルコネート類及び無水マレイン酸グラフトポリオレフィン類が、結合剤として使用され得る。接着促進剤の使用、及び記載する接着促進剤などからの適切な接着促進剤の選択は、磁性化合物の生成の当業者の熟練した実施の範囲内であり、本発明によると、化合物は、好ましくは0.1重量%~3重量%、特に0.1重量%~1重量%のそのような接着促進剤を含む。
【0011】
本発明によると、化合物は、磁性プラスチック部分におけるクラック形成が回避されるように、弾性材料として設計される。本発明によると、磁性プラスチック部分が接触面上で本体に適所に固定され、それにより、この接触面にわたる固定位置に起因して、応力がプラスチック部分に発生し得ることが考慮されるべきである。この点については、一般には、本体に対するプラスチック部分の位置を固定するために、磁性プラスチック部分が好ましくは接触面にわたって排他的に本体に接続されることが注記される。本発明に係る磁性部品の意図する使用において通常起こるように、特に磁性部品の温度が変化する場合、すなわち、磁性部品が異なる温度に曝される場合、例えば、本体材料と化合物との異なる熱膨張挙動に起因して、プラスチック部分に応力が発生し得る。特に、化合物に含有された磁性粒子を除き、化合物は、好ましくは全ての化合物の構成成分が当該磁性粒子を除き高分子支持材の熱分解温度以下のそれぞれの温度において流動性となるように、溶融可能である。高分子支持材は、好ましくは熱可塑性材料である。特に、成分の全ては、磁性粒子を除き、好ましくは一般的な温度範囲内で流動性であり、当該温度範囲は好ましくは300℃以下で50℃以上である。好ましくは、化合物は、磁性粒子が唯一の不均質物である均質な流動性質量体を構成するように、高分子支持材の熱分解温度以下の温度では可融性である。好ましくは、磁性粒子は、流動性質量体に埋め込まれて0.5μm超の粒子サイズを有する固体の粒子のみである。これは、好ましくは、化合物が溶融されて均質な流動性質量体を構成する温度で、磁性粒子のみが固体凝集状態で存在し、特に化合物の全ての構成成分が、当該磁性粒子を除き、それらの液体凝集状態で存在することを意味する。
【0012】
一般的に、本発明の意味において、例えば、室温における半結晶熱可塑性材料の場合に、存在し得る熱可塑性凝集状態も固体凝集状態であるものとして理解され、熱可塑性凝集状態は液体凝集状態であるものとして理解される。したがって、化合物は、好ましくは、均質な流動性質量体を形成するように高分子支持材の熱分解温度以下の温度で溶融可能であり、これは、磁性粒子が、流動性質量体に埋め込まれて0.5μm超の粒子サイズを有する固体として形成された粒子のみとなるように行われる。これにより、磁性部品の加工性の向上及び再使用の容易化が可能となる。好ましくは、化合物は、以下の加工方法、特に射出成形によって磁性プラスチック部分に加工される。化合物は、第1の作業工程において、磁性粒子が唯一の不均質物として埋め込まれた均質溶融質量体として本体に適用され、第2の作業工程において、本体において冷却され、そのプロセスにおいて、本体において固化し、本体との回転固定接続を構成する。特に好ましくは、磁性プラスチック部分、すなわち、磁性プラスチック部分が作製される化合物の弾性特性は、次のように設計される。すなわち、-10℃~+100℃、特に-30℃~+120℃、好ましくは-40℃~+125℃の温度範囲にわたる磁性部品の温度変化に際して、本体とプラスチック部分との異なる熱膨張挙動に起因して磁性部品に発生する材料応力が、クラック形成を回避しつつ、化合物及び結果として磁性プラスチック部分に弾性的に吸収される。特に、本体の、好ましくは引張弾性率によって表される硬さは、プラスチック部分の硬さよりも大きい。同時に、当然に、磁性プラスチック部分は、磁性部品の温度変化中に常に接触面にわたって位置固定的に本体に接続される。
【0013】
好ましくは、特に引張係数によって表される化合物の硬さは、磁性粒子を埋め込むことによって、特に引張弾性率によって表される高分子支持材の硬さと比較して増加する。特に、高分子支持材の少なくとも70重量%、特に少なくとも85重量%、特に少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%が、未架橋高分子材料からなる。当業者であれば、未架橋高分子材料は、材料を構成する分子又は高分子が相互に架橋されておらず又は共有結合によって無視できる程度にしか架橋されていないことを理解するはずである。好ましくは、磁性プラスチック部分は、プラスチック部分がその体積全体にわたって構成成分の均質な分布を有するように、化合物の構成成分、並びに結果として磁性粒子及び高分子支持材が均質に分散された化合物で作製される。特に好ましくは、磁性プラスチック部分は、高分子支持材及び磁性粒子からなる化合物で作製され、磁性粒子は高分子支持材に埋め込まれ、高分子支持材は磁性粒子間で均質な材料として延在する。したがって、化合物の機械的特性は、好ましくは高分子支持材の機械的特性及びその磁性粒子との相互作用からもたらされ、高分子支持材内の材料遷移は化合物の機械的特性については無視できる。
【0014】
特に、高分子支持材は、せいぜい、材料遷移であって以下に定義するように決定可能でありかつ化合物の機械的特性について無視できるとみなされる材料遷移しか有さないように、均質な材料として構成される。好ましくは、磁性粒子間に延在する支持材は、次のように均質である。各々プラスチック部分の総体積1mmの10個の離間した立方形状の試験体積部のランダムな決定において、いずれも、相互に対して垂直に延びて各方向において相互から離間したそれぞれ20μmの辺の長さの2つの正方形断面領域が試験体積部内で任意に選択され、すなわち、試験体積部内で自由に選択され、いずれも、25個の4μmの正方形断面領域が定義され、それがそれぞれの断面領域にわたって統計的に均等に分布して配置され、いずれも、厳密に1つ、特に1μmの正方形の試験領域が定義され、特にそれらの試験領域の各々において、それらの試験領域の少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に少なくとも98%において、期待値、特に算術平均値に関して、好ましくは10%未満、特に5%未満、特に2%未満の正規分布分散を有し、材料遷移又は排他的に高分子支持材と少なくとも1つの磁性粒子との間の材料遷移は検出可能ではない。
【0015】
当業者であれば、上記の材料遷移とは、当然に、固体凝集状態で、すなわち、固体として、少なくとも磁性プラスチック部分に存在する少なくとも2つの異なる材料間の遷移であるものとして理解するはずである。したがって、空気又は気体含有、気泡、液胞などへの遷移は、上記の意味における材料遷移とは理解されない。特に、好ましくは上述したような比率及び/又は上述したような分散を有する上記のものは、試験体積部の各々のうちの20個、特に10個、特に5個、特に2個の試験領域からなる試験体積部の全てから、試験領域の定義された量により既に決定可能である。いずれも、これらの試験体積部あたりの試験領域数の半分が、試験体積部の2つの断面領域の一方に割り当てられる。
【0016】
試験体積部又はそれぞれの試験体積部内の断面領域の決定は、それぞれの試験体積部若しくはそれぞれの断面領域又はプラスチック部分の全体積部内のそれぞれの試験領域の位置が決定される仮想的な決定である。好ましくは、プラスチック部分は、次のように設計される。すなわち、試験体積部の各々内で相互に垂直な2つの断面表面が、それらの断面表面が全ての空間方向において少なくとも100μmだけ相互から離間される条件で及び/又は試験体積部が総体積若しくは以下に定義するプラスチック部分の体積範囲にわたって均一に分布される条件で定義されても測定試験面についての上記条件が充足される。好ましくは、試験体積部に対するエッジ効果の影響を除外するために、試験体積部は、プラスチック部分の全ての絶対端部から少なくとも100μm離れた総体積の体積範囲内で排他的に取られるべきである。これは、化合物が、原則として、磁性粒子間に延在する材料が磁性粒子間のいずれの材料遷移もなく延在するように均質であることを意味し、これは、例えば、特に例えば上述したようなプラスチック部分の総体積の上記体積範囲内で排他的に、プラスチック部分内の充分に大量な試験体積部を確認することによって、検出可能である。材料体積部における材料遷移は、異なる材料からなる材料体積部の2つの部分体積部間、すなわち、2つの固体の部分体積部間の境界をそれが規定するということによって特徴付けられる。材料は、例えば、それらの機械的特性又はそれらの化学組成において異なり得るものであり、当業者には周知の材料の機械的特性又は化学組成からの通常は不可避な偏差を無視する。
【0017】
高分子支持材が磁性粒子間で均質であるということに起因して、化合物は、特に良好な機械的特性を有して、特に9GPa超、特に10GPa超の高い弾性率、好ましくは同時に30MPa~100MPa、特に35MPa~95MPaの引張応力、及び好ましくは同時に1%~6%の破断伸びを有して実現可能となる。この場合、好ましくは、高い弾性率に起因して、本体の硬さ又は硬度に対する特定の近似が実現可能となり、同時に充分な弾性特性が確保可能となり、これは通常の用途において磁石部品の機械的特性及び負荷容量について全体として特に有利である。
【0018】
発明者は、例えば、磁性粒子間に延在する高分子支持材が化合物の弾性特性に対して関連の影響を有する所定量のゴム弾性粒子を備えるという従来技術で周知の化合物とは異なるものを認識した。それは、磁性粒子間に延在する高分子支持材内での材料遷移に関連し、それにより、本発明に係るプラスチック部分の化合物の磁気特性、特に本発明に係る磁性部品の耐久性が全体として大幅に改善され得る。好ましくは、高分子支持材は、5体積%未満、特に1体積%未満、特に0.5体積%未満の比率の弾性粒子及び/又は他の粒子しか有さず、特に弾性粒子及び/又は他の粒子を全く有さず、それにより、記載される均質な特性が実現可能となる。したがって、発明者は、高分子支持材におけるそのような粒子の関連の使用なしに機械的特性を実現することが特に有利であることを認識した。場合によっては、そのような粒子の無視できる比率は、化合物の機械的特性に対する悪影響なしに依然として許容可能である。
【0019】
特に好ましくは、化合物は、少なくとも84重量%の磁性粒子からなる。好ましくは、化合物は84重量%と92重量%の間の磁性粒子を含有し、磁性粒子のパーセンテージは、磁性粒子を含有する化合物の重量に対する磁性粒子の重量の比に着目している。好ましくは、化合物を含む高分子支持材は少なくとも1つのポリアミドを含み、高分子支持材は特に2以上のポリアミドを含み得る。好ましくは、磁性粒子によって構成されない化合物の残余部分は、少なくとも50%、特に少なくとも70%、特に少なくとも80%のポリアミドを含む。特に、化合物は、10GPa~25GPaの弾性率を有する。
【0020】
化合物は、好ましくは、本体材料及び化合物が異なる熱膨張挙動を有するようなものである。異なる熱膨張挙動は、特に、本体材料が化合物よりも低い線熱膨張係数を有することによって示される。特に、本体材料は等方性の熱膨張挙動を示し、それにより、本体材料で作製される試験片は、その熱膨張挙動に関して試験されると、各方向において、同等の、特に同一の線熱膨張係数を示す。特に好ましくは、化合物は、各空間方向において同等の線熱膨張係数、特に同じ線熱膨張係数を示す。好ましくは、化合物が高分子支持材のガラス転移温度以下の温度を有する場合、化合物は、ガラス転移温度以上の温度を有する場合とは異なる線熱膨張係数を有する。特に、ガラス転移温度以上の温度における化合物の線熱膨張係数は、ガラス転移温度以下の温度における線熱膨張係数よりも大きい。好ましくは、ガラス転移温度以下の温度範囲における化合物の線熱膨張係数は、同じ温度範囲における本体の線熱膨張係数の少なくとも2倍である。好ましくは、この温度範囲は、ガラス転移温度以下-40℃及び5℃の限界温度値によって規定される。特に好ましくは、ガラス転移温度以上の温度範囲における化合物の線熱膨張係数は、同じ温度範囲における本体の線熱膨張係数の少なくとも2倍であり、特に2倍超である。好ましくは、この温度範囲は、ガラス転移温度以上5℃及び125℃の限界温度値によって規定される。特に、本体材料は、15×10-61/K~25×10-61/Kの範囲において線熱膨張係数を有する。特に、ガラス転移温度以上の温度における化合物の線熱膨張係数は、ガラス転移温度以下の温度における線熱膨張係数の少なくとも1.5倍大きく、特に少なくとも2倍大きい。線熱膨張係数の決定は、一般にISO11359-1/-2の要件に従う測定に基づかなければならない。線熱膨張係数を決定する際に、3mm×3mm×4mmの辺の長さの化合物で作製され、1N未満の負荷をかけられ、1分あたり10Kの温度変化を受ける直方試験片が測定のために使用されなければならない。本体材料及び化合物の線熱膨張係数の比は、平均値から構成されるものであり、特に方向依存の異なる膨張係数がそれぞれの材料に対して決定可能となるべきである。
【0021】
予想外なことに、発明者は、上記特性を有する化合物が温度の影響に対して特に強健であることで磁性プラスチック部分のための材料として特に良好に適することを特定することができた。反復温度変化に起因するクラック形成は、本体材料が、化合物の熱膨張挙動に上述のように対応する熱膨張挙動を同様に有する場合に、特に良好に回避可能となる。線熱膨張係数の比は、一方では、異なる熱膨張挙動が磁性部品の故障をもたらさないことを可能とし、他方では、本体及び磁性プラスチック部品がそれらの相互の接続から剥離されることなく相互に対して可動となることを可能とする。高い比率の磁性粒子を提供することよっても、高い磁束密度を有する磁性部品が提供可能となる。高い比率の磁性粒子を提供することは、通常は、磁性粒子が埋め込まれた材料の脆化、すなわち、低い引張強度及び高い弾性率に関連する。
【0022】
一方、発明者は、上記特性を有する化合物がそのような不利な点を厳密には有さずに機械的特性の要件を満たすことができることを特定することができた。同時に、発明者は、本体が磁性プラスチック部分との特に信頼性が高くかつ位置的に安定な接続を維持することを、上記特性の組合せによって確実にすることに成功した。高い比率の磁性粒子にもかかわらず、上記特性は、磁性部品の高い機械的及び熱的耐荷重能力を与えることを可能とし、これは本発明による長寿命な磁性部品という利益をもたらす。特に好ましくは、化合物は、磁石部品がいずれも少なくとも20分間にわたって上記範囲の限界温度の一方に曝され、その後に少なくとも20分間にわたって当該範囲の限界温度の他方に曝され、それにより、磁石部品全体がいずれも当該少なくとも20分の経過後に可能な限りそれぞれの限界温度に近づいている場合に、対応するクラック形成が回避されるような弾性特性を有する。一方の限界温度から他方の限界温度への変化は、10秒以内に行われる。特に好ましくは、クラック形成はまた、説明したように、合計500サイクル、特に合計1000サイクル、特に合計1500サイクルにわたって対応の範囲の限界温度間での周期的な往復変化がある場合にも回避される。
【0023】
本発明に係る磁性部品は、従来の磁性部品と比較して多数の有利な効果をもたらす。磁性部品が本体と、弾性化合物で作製されて接触面にわたって本体に適所に固定される磁性プラスチック部分とを備えることに起因して、強健な磁性部品が非常に簡易に提供可能となる。一つに、本体と磁性プラスチック部分の間の磁性部品において、磁性部品の製造を複雑化するとともに磁性部品の安定性に対して悪影響を有し得る中間層を設ける必要がなくなる。その代わり、プラスチック部分の弾性設計によって、プラスチック部分自体が、本体と磁性プラスチック部分の間に生じる応力を弾性的に吸収及び軽減可能となり、これはクラックが磁性プラスチック部分に形成されることを確実に防止する。この背景において、発明者は、驚くべきことに、そのような弾性磁性プラスチック部分も非常に高い比率の磁性粒子を有し得るものであり、それにより、印加目的のために必要な磁界がこの磁性プラスチック部分により付与可能となることを見出した。
【0024】
さらに、弾性磁性プラスチック部分は、本体に位置固定的に容易に固定可能である。例えば、プラスチック部分は、例えば、プラスチック部分を本体に射出成形して射出成形後の冷却中にそれを収縮させて本体に結合させることによって、本体にフォースフィットでかつ結果として静摩擦により接続可能である。特に好ましくは、フォームフィットは、プラスチック部分と本体部分の間に設けられてもよい。特に好ましくは、フォームフィットは、次のように設計される。すなわち、磁性部品の2つの部品、すなわち、本体及び磁性プラスチック部分のうちの少なくとも一方が、他方の部品が係合する凹部を有し、好ましくは、これらの凹部はその凹部が他の部品に対抗する外側輪郭を有し、それは丸みを帯びた連続部を有することで鋭いエッジを有さず、好ましくはそれらの連続部において90度の角度を回避し、それにより、問題となる材料応力が防止可能となる。凹部は、例えば、切欠き及び/又は孔として設計され得る。特に好ましくは、本体は、スリーブ、シャフト又はディスクとして設計され、本体は、回転対象部品に意図する通りに取り付けられる場合にその回転の回転軸に設定される。例えば、本体は、それに設定された当該回転軸に対称に設計され得る。特に好ましくは、この回転軸を中心とする凹部の連続部は、丸みを帯びかつ特に90度の角度を有さない外側輪郭、特に90度超の角度しか有さない外側輪郭を有する。
【0025】
本発明の本質的な発見は、磁性部品の場合に、対応して弾性磁性化合物で作製される弾性磁性プラスチック部分を提供することが特に有利であるということに基づく。従来技術では、基本的に非弾性であって記載される意図する目的を果たす本体に磁性プラスチック部分を結合するためには、磁性粒子によって予め決定されたプラスチック部分の材料特性のために、非常に複雑な設計の磁性部品又は好ましくは本体とプラスチック部分の間の弾性中間層の付与のいずれかが必要となることが従来的に想定されている一方で、本発明はプラスチック部分自体が弾性化合物から作製される点で異なる手法をとる。
【0026】
化合物が30MPa~100MPa、特に40MPa~90MPaの引張応力を有し、1%~6%、特に1.5%~5%を範囲とする破断伸びを有し、かつ/又は好ましくは7GPa~30GPa、特に10GPa~25GPaを範囲とする引張弾性率を有することが特に有利となることが分かった。これは、DIN ISO527-1/-2に従う上記値を測定することによって取得される値に基づく。1分あたり5mmの試験速度が、標準気候における引張試験によって上記値の標準化された決定のために与えられる。弾性率は、0.005%~0.025%の伸張範囲において決定される。標準気候とは、23℃の周囲温度及び50%の周囲空気の相対湿度を意味し、測定される試験片は測定の前に少なくとも16時間の期間にわたって標準気候に曝されなければならない。一般に、標準への言及は、常に、適用時において有効な標準のバージョンをいう。特に好ましくは、化合物及び結果としてプラスチック部分は、本体材料及び結果として本体の引張弾性率の半分未満、特に3分の1未満、特に5分の1未満、特に10分の1未満の引張弾性率を有する。本体材料の弾性率は、本体材料が属するそれぞれの材料分類、例えば、金属についてDIN EN ISO6892-1、繊維強化プラスチックについてDIN EN ISO527-4/-5に適用可能な引張試験の標準を適用することによって決定されるべきであり、繊維強化プラスチックの場合、繊維方向における最大弾性率が考慮されるべきである。
【0027】
記載される値を有する化合物を得るように化合物を生成する配合時に相互に混合される構成成分を選択することは、特に有利であることが分かった。それは、化合物は、その後に、上記のように特に効果的にクラック形成を回避するとともに追加的に充分な比率の磁性粒子及び充分な強健性を有する磁性プラスチック部分の生成を可能として、それにより磁性プラスチック部分が本体において適所に確実に固定可能となるためである。プラスチック部品及び本体の記載される比の引張係数を与えることによって、そのようなクラック形成が驚くほど簡易な態様で回避可能となる一方で、磁性部品の2つの部品はそれらのそれぞれの目的に特に適した材料特性を有する。またさらに、驚くべきことに、記載される値による特性を有する化合物は好ましくは射出成形によって好ましくは本体に直接適用可能であり、それにより、所望の幾何形状を有する磁性プラスチック部分が生成されて同時に本体に接合され得ることが、発明者に開示された。これにより、別個の組立工程における磁性プラスチック部分の生成及び本体への磁性プラスチック部分の後続の適用などの、生成における中間工程を省略し、生成をより効率化することができる。
【0028】
高分子支持材として半結晶熱可塑性材料を提供することは特に有利であることが分かった。特に好ましくは、高分子支持材は、少なくとも80重量%の、例えば、半結晶熱可塑性ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などからなる。特に好ましくは、少なくとも80重量%の高分子基材は、ポリエステル及び/又は少なくとも1つのポリアミドからなる。低い粘性に起因して、高分子支持材は、少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%について少なくとも1つの脂肪族ポリアミドからなることが特に有利であることが分かった。概して、高分子支持材は、好ましくは80重量%超について半結晶熱可塑性材料で作製され、特に高い耐温性によって特徴付けられるので、化合物は125℃の周囲温度において永久的に使用可能である。
【0029】
異なるポリマー、特に異なるポリアミドを高分子支持材として含む混合物を提供することが特に有利であることが分かった。例えば、異なるポリアミド、特に脂肪族ポリアミドを混合することによって高分子支持材を生成することが特に有利であることが分かった。概略として、少なくとも5重量%、特に少なくとも8重量%、特に5重量%と20重量%の間、特に8重量%と16重量%の間の、磁性プラスチック部分が生成される化合物がポリマーからなるように、化合物を生成することが特に有利であることが分かった。特に好ましくは、化合物を生成する配合時に、更なる添加物、特に接着促進剤、潤滑剤及び/又は熱安定化剤が添加される。特に好ましくは、化合物及び結果として磁性プラスチック部分は、0.05重量%~2重量%、特に0.1重量%~1重量%、特に0.2重量%~0.8重量%の接着促進剤、0.1重量%~5重量%、特に0.1重量%~3重量%の潤滑剤、0.02重量%~2重量%、特に0.03重量%~1重量%の熱安定化剤、及び/又は0.5重量%~5重量%の耐衝撃性改良剤からなる。
【0030】
一般的な接着促進剤、潤滑剤、熱安定化剤及び耐衝撃性改良剤は、当業者、すなわち、プラスチック加工の専門家には周知であり、化合物を生成する配合時に対応の添加物を添加することは従来技術において一般的である。例えば、シラン類、チタネート類、ジルコネート類及び無水マレイン酸グラフトポリオレフィン類が、結合剤として使用可能であり、アルコール類、例えば、エステル類、脂肪酸類、ワックス類、ステアレート類及び金属石鹸類が、潤滑剤として使用可能である。例えば、立体障害フェノール類、安息香酸塩類、アミド類及び金属塩類が熱安定化剤として使用可能であり、このような熱安定化剤は基本的に、ポリマーの連鎖劣化並びに結果としてポリマー及び結果として化合物の脆化を阻止するために、例えば、高温に起因して放出され得るラジカルを捕捉するラジカル捕捉剤として作用する目的を果たす。耐衝撃性改良剤は、通常、高分子支持材の高分子マトリクスを形成するとともに高分子支持材の80重量%超を占める化合物の高分子マトリクス材料よりも低い融点を有する低分子量物質又はポリマーである。
【0031】
これにより、発明者は、予想外にも、特に記載される範囲において添加物が使用される従来の配合プロセスは、記載される磁気特性を有する弾性化合物を容易に生成することができ、それにより、説明するように、磁性部品へのクラック発生及び結果として損傷が防止可能であることを認識した。0.5μm~100μm、特に0.5μm~5μm、特に1μm~5μm、特に1μm~3μmの平均粒子サイズを有する化合物において磁性粒子用いることが特に有利であることが分かった。0.5μm~5μm、特に1μm~5μm、特に1μm~3μmの粒子サイズを有する磁性粒子としてフェライト系粒子を用いることが特に有利であることが分かった。対応する粒子サイズは、化合物中の特定のパーセンテージの磁性粒子と組み合わせて化合物の特性、特に弾性特性について特に有利となる。粒子サイズとの記載は、特に、光学的測定方法による、特に透過光顕微鏡検査による特定をいうことがある。
【0032】
サンプル質量体が270℃で溶融され、10kgの荷重で負荷をかけられ、標準化された毛管を通過させられるDIN ISO1133Aに従う測定に基づいて、化合物が10分あたり30gと10分あたり150gの間の、当業者にはMFI(メルトフローインデックス)又はMFR(メルトフローレート)としても周知のメルトマスフローレートを有するように、化合物を生成することが特に有利であることが概略として分かった。化合物を、DIN EN ISO1183に従う密度の測定に基づいて、特に好ましくはDIN EN ISO1183-2に従う密度の測定に基づいて、密度が2.0g/cmと5.0g/cmの間、特に3.0g/cmと4.0g/cmの間となるように、所定密度において生成することが概ね有利であることも分かった。対応する密度の提供は対応するポリマー及び対応する磁性粒子の使用の背景から当業者には明らかであることも考慮されるべきであり、発明者は、磁性粒子、ポリマー及び更なる添加物の間の対応する比であれば、指定された密度の化合物が実現される場合に、化合物の特に有利な特性がもたらされることを見出した。
【0033】
本発明はさらに、磁性部品、特に上記説明したような本発明に係る磁性部品を実現するための本体、磁性粒子及びポリマー粉末の使用に関する。本発明はさらに、磁性部品、特に本発明に係る磁性部品を生成する方法に関する。ポリマー粉末は、粒体又は粉末形態の1以上のポリマー、及び磁性粒子に加えて添加される添加物を含む。本発明の一態様によると、少なくとも60重量%の磁性粒子及びポリマー粉末からもたらされる最大で40重量%のポリマーを含む弾性化合物が生成される。化合物、特に溶融によって得られる溶融化合物が本体に、特に本体に直接適用及び付着され、これは、特に排他的に、例えば化合物を射出成形加工及びその後の冷却の一部として本体に適用して本体への化合物の焼き嵌めを実現することによる直接適用によって、特に、締り嵌めを生成することによって、化合物と本体の間に静摩擦を構成することによって、及び/又はこの目的のために対応する凹部を有する本体に化合物を適用することによるフォームフィット部を生成することによって、行われる。したがって、好適な実施形態では、中間層、特に接着層などの更なる固定手段は設けられない。
【0034】
更なる有利な実施形態では、ポリアミドが、ポリエステルの代わりに提供され得る。プラスチック部分における磁性粒子の比率が80重量%超である場合にポリマーとして少なくとも支配的にポリアミドを用いることが有利であることが概略として分かった。
【0035】
本発明はさらに、弾力性磁性化合物を生成するプロセスに関し、生成される化合物において、磁性粒子が化合物の少なくとも60重量%を構成し、ポリマー粉末からもたらされるポリマーが化合物の最大で40重量%を構成するような比率で化合物を生成するように、磁性粒子がポリマー粉末と混合される。本発明に係る使用及び本発明に係る方法は、相互に組み合わせられてもよく、各々及びそれらの組合せにおいて、本発明に係る磁性部品の上記説明との関連で当業者には明らかな特徴を有し得る。同様に、本発明に係る磁性部品は、本発明に係る使用及び本発明に係る方法並びにそれぞれの好適な実施形態の本説明から当業者には明らかな特徴を有し得る。この時点において、本発明に係る磁性部品、本発明に係る方法及び本発明に係る使用の各々は包括的な磁性部品の上記説明から明らかな特徴を有し得ることも注記されるべきである。
【0036】
特に好ましくは、本発明に係る使用又は本発明に係るプロセスにおいて、ポリマー粉末が、化合物の生成時に磁性粒子と混合され、その後に溶融される。好ましくは、ポリマー粉末が最初に溶融され、その後に磁性粒子が溶融ポリマー粉末に添加され、溶融ポリマー粉末と混合される。特に好ましくは、本発明に係る使用又はプロセスにおいて、最初にポリマー粉末が溶融され、その後に接着促進剤、潤滑剤、熱安定化剤及び/又は耐衝撃性改良剤が溶融ポリマー粉末に添加され、溶融ポリマー粉末と混合される。混合において、当然に、均一混合が好適であり、均一混合とは、特に、溶融ポリマー粉末における充填剤及び添加剤の均質な分散を意味する。好ましくは、化合物は、押出し加工によって、特に、好ましくは共回転二軸押出機を用いて生成される。当業者であれば、自身の知識によって、押出し加工を用いる場合に適宜の脱気領域を設け、異なるスクリュー幾何形状を使用しかつ/又は異なる焼き戻し領域を設けるように修正することができ、それにより、当業者はスムーズな加工のために使用される押出機をどのように拡縮及び適合するかを知ることになる。特に好ましくは、磁性粒子は、少なくとも耐衝撃性改良剤が溶融ポリマー粉末に添加された後にのみ溶融ポリマー粉末に添加される。
【0037】
発明者は、本来の粘性若しくは分子量の、望ましくない放散によってもたらされる低減を回避するために及び/又は磁性粒子と対応の添加剤との間の品質を低減する化学反応を回避するために、ポリマー粉末が溶融された後にのみ、特に耐衝撃性改良剤が添加された後にのみ磁性粒子が添加される場合に化合物の材料品質が特に改善され得ることを見出した。特に好ましくは、磁性粒子は、全ての添加剤が以前に溶融ポリマー粉末に添加された後にのみ、溶融ポリマー粉末に添加される。概略として、異なるポリマー、特に、磁性部品に関して上述したように、異なるポリアミドを含むポリマー粉末を用いることが特に好適である。密度が1.0g/cmと1.3g/cmの間にあり、メルトマスフローレートが50g/10分と200g/10分の間にあり(DIN ISO1133Aに従って融点270℃、10kgの支持荷重)、引張弾性率が1.0GPaと4.0GPaの間にあり、かつ破断伸びが10重量%と60重量%の間にある高分子支持材を用いることによって化合物を生成することが特に有利であることが分かった。この背景において、高分子支持材は、特に、磁性粒子の添加なしに最初に選択的に生成され、記載される特性を実現するように適合可能であり、その後、続いて、高分子プラスチックとしてそれ自体で高分子支持材の記載される特性を実現するのに必要な高分子支持材の構成成分を用い、それらを記載される有利な比率で磁性粒子に混合することによって、化合物が生成され、それにより、記載される特に有利な特性を有する化合物が生成可能となる。特に、高分子支持材を作製する中間工程なしに化合物が作製可能であり、特に、高分子支持材の成分は、それらが高分子支持材に混合されるのと同じ相互に対する比率で化合物に混合されることになる。
【0038】
好ましくは、化合物が、第1の作業工程において、磁性粒子が唯一の不均質物として埋め込まれかつ/又は磁性粒子が流動性質量体に埋め込まれて0.5μm超の粒子サイズを有する固体として形成された唯一の粒子である均質溶融質量体として本体に適用され、第2の作業工程において、本体上で冷却され、本体と回転固定接続を構成しつつ本体上で固化する加工方法、特に射出成形法によって、磁性プラスチック部分が生成される。特に好ましくは、磁性プラスチック部分は、射出成形によって生成される。特に好ましくは、プラスチック部分内の磁性粒子の分布は次のように均質である。すなわち、本体に対して直接位置する第1の体積部がプラスチック部分内に定義可能であり、その体積が第1の体積部と同一の体積である第2の体積部が定義可能であり、第2の体積部は本体とは逆を向く第1の体積部の面上に配置され、第1の体積部内の磁性粒子の比率(重量%)は第2の体積部の比率とは30%未満、特に20%未満だけ異なり、パーセンテージ偏差は第1の体積部内の比率に基づき、特に体積はいずれも少なくとも1mm、特に3mmである。
【0039】
特に好ましくは、磁性プラスチック部分は、射出成形によって製造され、それにより、その製造プロセス中に本体に直接成形される。特に好ましくは、本体及びその本体に成形されたプラスチック部分は、プラスチック部分が静摩擦接触で本体にその接触面にわたって接続されかつ/又は積極的ロック態様で本体に接続されるように、相互に関して設計される。特に好ましくは、磁性プラスチック部分は、本体周囲に周方向に本体に成形されることによって、又は内部から本体の内周面に成形されることによって生成され、本体の内周面は本体によって内包されたキャビティを周方向に内包する。特に好ましくは、本体には回転軸が設定され、磁性プラスチック部分は、回転軸周りに周方向に本体に成形され、回転軸周りに周方向に閉じられ若しくは分割された回転軸とは逆を向く本体の外面に、又は回転軸周りに周方向に閉じられ若しくは分割された回転軸を向く本体の内面に成形される。この目的のため及び一般的に好ましくは、本体は金属化合物、特に排他的に金属で作製され、好ましくはシャフト、スリーブ又は円盤の形状を有する。
【0040】
以下に、本発明を、実施形態の例示によって6図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による磁性部品の模式表現での一実施形態の種々の図である。
図2】本発明による磁性部品の模式表現での更なる実施形態の図である。
図3】本発明による磁性部品の模式表現での更なる実施形態である。
図4】本発明による磁性部品の模式表現での更なる実施形態である。
図5】本発明による磁性部品の模式表現での更なる実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1図1a及び1bからなり、本発明に係る磁性部品の一実施形態を模式表現で示す。図1aは磁性部品100の断面図を示し、図1bは磁性部品100の模式上面図を示す。磁性部品100は、本体1及び磁性プラスチック部分2を有する。本体1はスリーブとして設計され、プラスチック部分2が埋め込まれる凹部を有する。プラスチック部分2は、スリーブ1への射出成形によって生成される。プラスチック部分2が係合するスリーブ1の凹部は、図1bに模式的に示す平坦部10を有し、それは凹部の外側輪郭によって形成され、プラスチック部分2と本体1の間の改善したフォームフィットを確実にする。図1aに、本体1及び結果として磁性部品100に関連する回転軸Rが模式的に図示される。図1a及び図1bの合成図によると、図1bは回転軸Rに沿う磁性部品100の模式上面図を示し、磁性プラスチック部分2とスリーブ1との間の特に有利なフォームフィットがあることが明らかである。これは、回転軸Rに沿いかつ回転軸Rに垂直なプラスチック部分2及びスリーブ1の相対移動、特に回転軸Rを中心としたスリーブ1に対するプラスチック部分2の回転も効果的に阻止する。なぜなら、スリーブ1の凹部の外側輪郭によって形成された平坦部10は、回転軸Rに垂直な平面において回転軸Rを中心として回転対称には延在していないためである。
【0043】
記載される実施形態において、磁性プラスチック部分2は、1.5μmの平均粒子サイズを有する90重量%のフェライト系硬質磁性粒子を含む。磁性プラスチック部分2は、さらに、この場合では異なるポリアミドによって構成される9重量%のポリマー並びに0.1重量%の接着促進剤、0.2重量%の潤滑剤、0.1重量%の熱安定化剤及び0.6重量%の耐衝撃性改良剤からなる。一般に有利であるように、耐衝撃性改良剤は、無水マレイン酸で官能化されたポリマーであり、したがって、二次的な原子価結合を介してのみ高分子支持材のポリマーと相互作用する。この場合では、フタル酸エステルが耐衝撃性改良剤として使用されるが、当業者には周知のように、例えば、アジピン酸塩又はアイオノマーに基づく物質も耐衝撃性改良剤として使用可能である。
【0044】
図2に、本発明に係る磁性部品100の更なる実施形態を模式表現で示す。この実施形態において、本体1は、プラスチック部分2が係合する凹部を有する金属シャフトとして構成される。本体1及び磁性プラスチック部分2の双方とも、図2に模式的に示す回転軸Rを中心として各々回転対称であり、これは本発明によると概して有利である。図1について説明したように、図2における磁性プラスチック部分2も、回転軸Rを中心として本体1の外側に射出成形される。好適な実施形態では、図2に係る例において、図1に示すような対応する平坦部10が、シャフトとして構成された本体1の凹部に設けられてもよい。プラスチック部分2は、71.5重量%の磁性粒子、ここではフェライト、18重量%のポリマー、ここではポリエステル、並びに2重量%の接着促進剤、3重量%の潤滑剤、2.5重量%の耐衝撃性改良剤及び3重量%の熱安定化剤からなる化合物から射出成形によって生成される。図2に記載する実施形態では、シランが接着促進剤として使用され、脂肪酸が潤滑剤として使用され、アジピン酸塩が耐衝撃性改良剤として使用され、フェノールが熱安定化剤として使用される。
【0045】
図3~5は、本発明に係る磁性部品100の更なる実施形態を模式図で示す。これらの実施形態において、それぞれ、本体1は金属、この場合は鋼で作製され、磁性プラスチック部分2は図1の実施形態で説明したような化合物で作製される。磁性プラスチック部分2は、常に射出成形によって製造され、製造工程中に回転軸R周りに周方向に外側及び/又は内側に本体1に直接成形される。種々の実施形態は、本体1及びプラスチック部分2の幾何形状及び配置並びに本体1に対するプラスチック部分2の結果的な位置に関してのみ異なる。図3a及び3bからなる図3に係る実施形態では、プラスチック部分2はスリーブとして設計された本体1のフランジに射出成形され、フランジは凹部が設けられた平坦部10を構成し、それにより、スリーブ1に対するプラスチック部分2の特に強健で位置的に固定された固定が可能となる。図4a及び4bからなる図4に係る実施形態では、本体1は、一方では外向き曲げ部12、及び他方ではタブ付きの凹部11を有するスリーブとして設計される。プラスチック部分2は、外向き曲げ部12を収容して凹部11に係合するように本体1の外側周囲に成形され、結果として本体1に対するプラスチック部分2の特に信頼性が高くかつ位置的に安定な固定を確実にする。図5a及び5bからなる図5に係る実施形態では、本体1はフランジを有するスリーブとして構成され、円形の凹部13がフランジに設けられ、プラスチック部分2は、本体1に対するプラスチック部分2の特に信頼性の高い固定を確実にするために円形の凹部13に係合するようにフランジ上に射出成形される。
【符号の説明】
【0046】
1 本体
2 プラスチック部分
10 平坦部
11 凹部
12 曲げ部
13 凹部
100 磁性部品
R 回転軸
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
【国際調査報告】