(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】長尺物を収容するための荷物収容手段を備えた産業車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/075 20060101AFI20230530BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B66F9/075 Z
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562482
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021056842
(87)【国際公開番号】W WO2021209219
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】102020110180.5
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519073553
【氏名又は名称】フープテクス マシーネンバウ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】HUBTEX Maschinenbau GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Werner-von-Siemens-Str. 8, 36041 Fulda, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン ケラー
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FA11
3F333FA20
3F333FA29
3F333FE05
(57)【要約】
産業車両(100,200,300,400,500)であって、長尺物(L)を収容するための荷物収容手段(1)と、長尺物(L)を検出するための長尺物検出装置(2)と、安全制御装置(3)とを有しており、この安全制御装置は、少なくとも1つの監視センサ(4,4’)を有しており、この監視センサ(4,4’)によって、少なくとも1つの保護領域(5,5’)を形成しており、安全制御装置(3)は、長尺物検出装置(2)に作用結合され、長尺物検出装置(2)によって検出された長尺物(L)に応じて、少なくとも1つの保護領域(5,5’)に影響を与えるように形成されている、産業車両(100,200,300,400,500)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両(100,200,300,400,500)であって、長尺物(L)を収容するための荷物収容手段(1)と、長尺物(L)を検出するための長尺物検出装置(2)と、
安全制御装置(3)と、を有しており、前記安全制御装置は、少なくとも1つの監視センサ(4,4’)を有しており、該監視センサ(4,4’)によって、少なくとも1つの保護領域(5,5’)を形成しており、
前記安全制御装置(3)は、前記長尺物検出装置(2)に作用結合されており、該長尺物検出装置(2)によって検出された長尺物(L)に応じて、前記少なくとも1つの保護領域(5,5’)に影響を与えるように形成されている、産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項2】
前記産業車両(100,200,300,400,500)は、サイドローダとして形成された無人の搬送車両である、請求項1記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項3】
前記安全制御装置(3)は、前記少なくとも1つの保護領域(5,5’)を、前記産業車両(100,200,300,400,500)と収容された長尺物(L)とから生じる全体輪郭(G)に適合させるように形成されている、請求項1または2記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項4】
前記安全制御装置(3)は、前記長尺物検出装置(2)によって検出された長尺物(L)に応じて、サイズおよび/または形状および/または前記産業車両(100,200,300,400,500)に対する位置が異なっている保護領域(5,5’)間で切り替えを行うように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項5】
前記産業車両は、上方領域(9)を有するマスト(8)ならびにフォーク(10)を有しており、前記長尺物検出装置(2)は、スキャナ検出領域(7)を有したレーザースキャナ(6)を備えており、該レーザースキャナ(6)は、前記マスト(8)の前記上方領域(9)に配置されており、前記レーザースキャナのスキャナ検出領域(7)は、斜め下方に向かって前記フォーク(10)に向けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項6】
前記産業車両は、上方領域(9)を有するマスト(8)ならびにフォーク(10)を有しており、前記長尺物検出装置(2)は、カメラ検出領域(12)を有したカメラ(11)を備えており、該カメラ(11)は、前記マスト(8)の前記上方領域(9)に配置されており、前記カメラのカメラ検出領域(12)は、斜め下方に向かって前記フォーク(10)に向けられている、請求項1から5までのいずれか1項記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項7】
前記安全制御装置(3)は2つの監視センサ(4,4’)を有しており、該監視センサは、対角線上のセンサ位置(13,13’)で前記産業車両に配置されており、270°にわたって延在しているそれぞれ1つの監視センサ検出領域(14,14’)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項8】
前記産業車両(100,200,300,400,500)は、スラストマスト(15)として形成された、すなわち伸張可能かつ再び引き込み可能であるマスト(8)を有しており、前記産業車両(100,200,300,400,500)は、ホイールアーム(20,20’)を有しており、前記安全制御装置(3)は、少なくとも1つの保護領域(5,5’)を、前記スラストマスト(15)の、前記荷物収容手段(1)とは反対の側で、前記ホイールアーム(20,20’)の間に配置されている後方空間保護領域(16)として形成している、請求項1から7までのいずれか1項記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項9】
前記産業車両(100,200,300,400,500)は、積載物キャリア検知装置(17)を有しており、前記積載物キャリア検知装置は、前記産業車両(100,200,300,400,500)が積載物キャリアを一義的に測定しかつ/または識別しかつ/または収容することができるように、前記積載物キャリアを検知しかつ/または測定するように形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【請求項10】
前記産業車両(100,200,300,400,500)は、爪(21,21’)を有するフォーク(10)を備えており、前記積載物キャリア検知装置(17)は、前記フォーク(10)の前記爪(21,21’)の間に配置されている積載物キャリア検知カメラ(18)を備えている、請求項9記載の産業車両(100,200,300,400,500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物を収容するための荷物収容手段を備えた産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
独国欧州特許公報の翻訳文(DE69800852T2)により、長尺物を収容するための荷物収容手段を備えた産業車両が既に知られている。
【0003】
独国特許出願公開第102018109298号明細書により、安全制御装置を備えた産業車両が既に知られている。
【0004】
従来技術における欠点は、長尺物を収容するための荷物収容手段を備えた産業車両が、長尺物を収容するための荷物収容手段を備えた産業車両における特別な要求に対して所望されるように適応する安全制御装置を有していないということにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、このような欠点を有さないこのような形式の産業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1記載の産業車両によって解決される。
【0007】
本発明による産業車両は、長尺物を検出するための長尺物検出装置を有している。さらに産業車両は、安全制御装置を有しており、安全制御装置自体は少なくとも1つの監視センサを有しており、監視センサによって、少なくとも1つの保護領域を形成する。安全制御装置は、長尺物検出装置に作用結合され、長尺物検出装置によって検出された長尺物に応じて、少なくとも1つの保護領域に影響を与えるように形成されている。
【0008】
保護領域は、監視領域と呼ぶこともできる。保護領域は、好ましくは産業車両と共に移動する。好ましくは、保護領域は、監視センサの検出領域の一部である。
【0009】
好ましくは、安全制御装置は、好ましくは少なくとも1つの監視センサによって、近付いてくる車両または人が検知された場合に、必要最小限の間隔を下回るとただちに、かつ/または、近付いてきた車両もしくは人が少なくとも1つの保護領域内に到るとただちに、産業車両を安全状態に移行させるように形成されている。安全状態への移行はこの場合、走行速度の減速または産業車両の停止を意味する。また、荷物収容手段の運動を産業車両に対してゆっくりさせることまたは停止させることを意味することもある。近付いてくる車両または人とは、車両または人自体は静止しており、産業車両が車両または人に近付いていく場合もあり得る。
【0010】
安全制御装置は、壁または棚または降ろされた物品のような動かない対象物が検知された場合に、必要最小限の間隔を下回るとただちにかつ/または対象物が保護領域内に到るとただちに、産業車両を安全状態に移行させるように形成されていてもよい。
【0011】
このようにして、長尺物を収容するための荷物収容手段を備えた産業車両における特別な要求に対して所望されるように適応する安全制御装置を有している、長尺物を収容するための荷物収容手段を備えた産業車両を提供することができる。なぜならば、保護領域は、収容される長尺物に応じて実際に必要なだけの大きさに形成されればよいからである。このようにして、高い保護レベルと同時に特に円滑な動作フローを保証することができる。
【0012】
監視センサは、人保護スキャナを含むことができる。
【0013】
荷物収容手段は、例えばフォークまたは積載物プラットフォームを含んでよい。
【0014】
産業車両はフォークリフトとして形成されていてよい。すなわち、産業車両はマストを備えていてよく、産業車両の荷物収容手段はフォークを含んでよい。フォークは好ましくは爪を、特に好ましくは2つの爪を有している。爪は、好ましくは、上方から見てホイールアームの外側に配置されるほど離れて互いに離隔しているか、またはこのような配置を可能にする、爪のための間隔調節装置が設けられている。これにより得られたまたは得ることができる、爪の互いの大きな間隔により、長尺物の収容のための特別な適性が得られる。
【0015】
産業車両は、好ましくはシャシを有している。シャシは「U字」形に形成されていてよい。「U字」形の両脚はそれぞれ1つのホイールアームによって形成されている。
【0016】
産業車両はスラストマストフォークリフトとして形成されていてよい。すなわち、産業車両のマストは、伸張可能かつ再び引き込み可能であってよい。スラストマストは、ホイールアームの間に配置されていてよく、伸張および引き込みはホイールアームに対して平行に行われてよい。
【0017】
好ましくは、産業車両は、サイドローダとして形成された車両である。産業車両は好ましくは、フォーク爪に対して横方向に進む走行を可能とする。産業車両は好ましくは、産業車両の荷物収容運動および/またはフォークに対して横方向に進む走行を可能とする。産業車両は好ましくは、荷物の長手方向に進む走行を可能とする。
【0018】
産業車両は好ましくは、横走行および縦走行で走行可能である。好ましくは、産業車両は、横走行および縦走行に加えて、好ましくはカルーセル走行とも称される円形走行でかつ/または対角線走行で走行可能なマルチウェイ車両である。産業車両の全てのホイールは、好ましくは少なくとも90°変向可能である。好ましくは、横走行と縦走行とは、それぞれ直線走行の際に、シャシに対して見て、ホイールが90°回転されている点で異なっている。
【0019】
長尺物は、通常のパレットよりも長い荷物であってよい。長尺物は、1200mmよりも長い荷物であってよい。長尺物は、荷物収容手段上に収容された状態で、かつ産業車両の走行準備完了状態で(スラストマストフォークリフトの場合は、すなわち好ましくはスラストマストが引き込まれた状態で)、産業車両の輪郭を越えて延び、したがって、荷物を有していない産業車両の輪郭よりも大きな産業車両の全体輪郭を生じさせる荷物であってよい。
【0020】
「長尺物検出装置」の用語は、この文献の範囲では、長尺物を検知するための装置を意味する。この装置は、好ましくは、産業車両の荷物収容手段上に長尺物が配置されているか否かを検知する。長尺物検出装置は、好ましくは、自動的な長尺物検出装置である。長尺物検出装置は、すなわち好ましくは、自動的に作用するように形成されている。好ましくは、長尺物検出装置は、荷物収容手段上に配置された荷物が産業車両の輪郭を越えて突出しているか否かを、かつ/またはどの程度越えて突出しているのかを、かつ/またはどの個所で突出しているのかを検出する。
【0021】
好ましくは、産業車両は無人の搬送車両である。すなわち、産業車両は、好ましくは自動制御および/または無接触式ガイドのための装置を有している。
【0022】
好ましくは、安全制御装置は、少なくとも1つの保護領域または保護領域の1つを、産業車両と収容された荷物とから生じる全体輪郭に適合させるように構成されている。
【0023】
少なくとも1つの保護領域または保護領域の1つは、走行方向で産業車両の手前に形成されていてよい。少なくとも1つの保護領域または保護領域の1つの幅は、すなわち走行方向に対して垂直な延在は、車両輪郭または全体輪郭の幅、すなわち走行方向に対して垂直な延在に少なくともほぼ相当していてよい。
【0024】
好ましくは、安全制御装置は、長尺物検出装置によって検出された長尺物に応じて、サイズおよび/または形状および/また産業車両に対する位置が異なっている保護領域間を切り替えるように形成されている。
【0025】
別の実施形態では、安全制御装置は、長尺物検出装置によって検出された長尺物に応じて、少なくとも1つの保護領域または保護領域のうちの1つのサイズおよび/または形状および/または産業車両に対する位置に影響を与える。これにより、保護領域の無段階式の適合が可能である。
【0026】
好ましくは、安全制御装置は、全体輪郭が走行方向で前方に向かって拡大されている場合には、輪郭または全体輪郭が走行方向で前方に向かって拡大されていない場合よりも、走行方向でより大きな保護領域を形成するように形成されている。
【0027】
好ましくは、安全制御装置は、全体輪郭が走行方向に対して横方向に拡大されている場合には、輪郭または全体輪郭が走行方向に対して横方向に拡大されていない場合よりも、走行方向に対して横方向でより大きな保護領域を形成するように形成されている。
【0028】
好ましくは、産業車両は、上方領域を有するマストを有している。長尺物検出装置は好ましくは、スキャナ検出領域を有したレーザースキャナを含む。スキャナ検出領域は好ましくは、荷物収容手段に向けられている。好ましくは、レーザースキャナは、マストの上方領域に配置されており、そのスキャナ検出領域は、斜め下方に向かってフォークに向けられている。レーザースキャナのスキャナ検出領域は、例えば、組み込まれた1つだけの回転ミラーによって2次元的に形成されていてよい。この場合、第1の次元はレーザービームの方向に、第2の次元は、例えば回転ミラーを変向させることにより、これに対して垂直に形成することができる。第2の次元が、フォークの爪に対して垂直に延びるようにレーザースキャナを配置することができる。スキャナ検出領域は、フォークが下降した状態にあるとき、第2の次元において好ましくは爪の互いの最大間隔の少なくとも1.5倍、または2倍、または3倍にわたって延びている。このようにして、長い長尺物も確実に検出し正確に測定することができる。スキャナ検出領域は、フォークが下降した状態にあるとき、第2の次元において好ましくは爪の互いの最大間隔の10倍未満または5倍未満にわたって延びている。
【0029】
形状が一定ではない荷物も確実に検知するために、レーザースキャナのスキャナ検出領域を3次元的に形成することができる。レーザースキャナを、第3の次元が、フォークの爪の方向に延在するように配置することができる。好ましくは、スキャナ検出領域は、フォークが下降した状態にあるとき、第3の次元で少なくとも爪長さ全体にわたって延在している。このようにして、荷物の長さを全フォーク長さにわたって検出し測定することができる。スキャナ検出領域は、好ましくは、均一でない長尺物、例えば様々な長さの成形体の検知がレーザースキャナによって行われるように寸法設定されている。スキャナ検出領域を3次元的に形成するために、レーザースキャナを旋回可能に産業車両に、例えばマストに配置することができる。スキャナ検出領域を3次元に形成するために、ミラーを2つの方向に変向させることも考えられるし、または、直交して立つ2つの回転可能なミラーを互いに近傍に配置し、このミラーによってレーザービームを反射させることも考えられる。レーザースキャナは、好ましくは安全性が保証されている。レーザースキャナは、好ましくは少なくともdの性能レベルを有する。
【0030】
長尺物検出装置は、レーザースキャナの代わりにまたはレーザースキャナに加えて付加的に、カメラ検出領域を有するカメラを備えることができる。カメラ検出領域は好ましくは荷物収容手段に向けられている。カメラ検出領域は好ましくは、均一でない長尺物、例えば様々な長さの成形体の検知がカメラによって行われるように寸法設定されている。カメラは好ましくは安全性が保証されている。カメラは、好ましくは少なくともdの性能レベルを有する。このカメラは、好ましくは3Dカメラである。カメラは好ましくはマストの上方領域に配置されている。カメラ検出領域はさらに好ましくは斜め下方に向かってフォークに向けられている。好ましくは、カメラ検出領域は、フォークが下降した状態にあるとき、第1の次元で少なくとも爪長さ全体にわたって延在している。好ましくは、カメラ検出領域は、フォークが下降した状態にあるとき、第2の次元において、好ましくはフォーク爪に対して横方向で、爪の互いの最大間隔の少なくとも1.5倍、または2倍、または3倍にわたって延在している。このようにして、長い長尺物も確実に検出し正確に測定することができる。好ましくは、カメラ検出領域は、フォークが下降した状態にあるとき、第2の次元において、爪の互いの最大間隔の10倍未満または5倍未満にわたって延在している。
【0031】
フォークが下降した状態は、好ましくは、荷物を収容するためにフォークがとっている状態に相当する。カメラおよび/またはレーザースキャナは、好ましくは、荷物収容手段の垂直方向の運動の際に一緒に動かないように配置されている。
【0032】
安全制御装置は、2つの監視センサを有することができる。監視センサは、対角線上のセンサ位置で産業車両に配置されていてよく、好ましくは水平方向で、270°にわたって延在しているそれぞれ1つの監視センサ検出領域を有していてよい。このような形式の安全制御装置を備えた産業車両は、前述した特徴とは関係なく独立して形成されていてもよい。
【0033】
これにより、特に適切な形式で、産業車両の全周にわたる視野を保証することができ、安全制御装置が、産業車両の周囲の任意の位置において保護領域を形成することができるための前提を提供することができる。
【0034】
産業車両が、スラストマストとして形成された、すなわち伸張可能かつ再び引き込み可能であるマストを有している場合、安全制御装置は、少なくとも1つの保護領域または保護領域のうちの1つを後方空間保護領域として形成することができる。このような形式の安全制御装置を備えた産業車両は、前述した特徴とは関係なく独立して形成されていてもよい。
【0035】
後方空間保護領域は好ましくは、スラストマストの後方に、すなわち好ましくはスラストマストの、荷物収容手段またはフォークとは反対の側に配置されている。好ましくは、後方空間保護領域は、後方空間を少なくともほぼ完全にカバーしている。
【0036】
産業車両がホイールアームを有している場合、後方空間保護領域は、好ましくはホイールアームの間に配置されている。安全制御装置は、少なくとも1つの保護領域または保護領域のうちの1つを、その都度のマストの伸張位置に応じたサイズを有する後方空間保護領域として形成することができる。好ましくは、スラストマストが伸張されるとただちに、安全制御装置が後方空間保護領域を形成する。
【0037】
後方空間保護領域によって、スラストマストが伸張された状態でスラストマストの後方の領域、例えば伸張されたスラストマストとホイールアームとの間に人が侵入した場合に検知されることを保証することができる。好ましくは後方空間では、このようにして人の挟み込みが防止されている。スラストマストが伸張しているか否か、かつどの程度伸張しているのかを検出する装置、例えばスラストマストセンサが設けられていてよい。安全制御装置は、好ましくは、この装置に作用接続されている。
【0038】
好ましくは、安全制御装置は、スラストマストが伸張されている程度に応じて少なくとも1つの後方空間保護領域のサイズおよび形状に影響を与える、またはスラストが伸張されている程度に応じて、サイズおよび形状の異なる保護領域間を切り替える。好ましくは、このようにして、後方空間保護領域が、スラストマストの全ての可能なスラスト位置において、後方空間を常に少なくともほぼ完全にカバーすることが達成される。
【0039】
産業車両が「U字」形のシャシを有しており、「U字」形の両脚がそれぞれ1つのホイールアームによって形成されている場合、安全制御装置が後方空間保護領域を形成する際に用いる、後方空間センサとも呼ぶことができる監視センサは、好ましくは、産業車両の、両ホイールアームを結合する領域に配置されている。
【0040】
「後方空間」という概念は、この文献の範囲では、スラストマストの、荷物収容手段とは反対側に位置する領域を意味する。産業車両がホイールアームを有している場合には、後方空間は好ましくはホイールアームによっても画定される。好ましくは、この場合、後方空間は、産業車両の、ホイールアームを互いに結合する領域によっても画定される。
【0041】
産業車両は、積載物キャリア検知装置を有していてよく、この積載物キャリア検知装置は、産業車両が積載物キャリアを一義的に測定しかつ/または識別しかつ/または収容することができるように、積載物キャリアを検知しかつ/または測定するように形成されている。このような形式の積載物キャリア検知装置を備えた産業車両は、前述した特徴とは関係なく独立して形成されていてもよい。
【0042】
「積載物キャリア」という用語は、この文献の範囲では、ユーロパレット、長尺物パレット、ワークピースキャリア、および/またはコンテナ、例えば格子箱のような、その上にまたはその中に荷物、例えば長尺物を配置することができる装置を意味する。
【0043】
積載物キャリア検知装置は、好ましくは積載物キャリア検知カメラを含む。このカメラは、好ましくは3Dカメラである。積載物キャリア検知装置は、好ましくは、荷物収容手段またはフォークが垂直方向の運動を行う際に、これらと共に動くように、さらに好ましくは、フォークの爪の間に配置されるように、配置されている。産業車両は、フォーク支持体を有していてよい。好ましくは、フォーク支持体はフォークをマストに結合している。積載物キャリア検知装置は、フォーク支持体の下方中央に配置されていてよい。積載物キャリア検知装置は、好ましくは、フォークの爪に対して少なくとも平行にも延びる積載物キャリア検出領域を有している。積載物キャリア検出装置が積載物キャリア検知カメラとして形成されている場合、積載物キャリア検知カメラは、この場合、積載物キャリアを検知しかつ/または測定するために、荷物に対して平行な、または荷物収容時に産業車両および/またはスラストマストが実施する荷物収容運動に対して平行な視線方向を有している。
【0044】
産業車両の、ちょうど1つの、2つの、またはそれ以上の、または全てのホイールが駆動されてよい。駆動される各ホイールのために、固有の駆動モータが設けられていてよい。産業車両の、ちょうど1つの、2つの、またはそれ以上の、または全てのホイールが変向可能であってよい。変向可能な各ホイールのために、固有の変向モータが設けられていてよい。
【0045】
次に本発明を、図示した実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】収容された長尺物とともに本発明による産業車両の第1の実施例を示す側面図である。
【
図3】
図1に示された産業車両を保護領域と共に上方から見た図である。
【
図4】長尺物検出装置として、レーザースキャナの代わりにカメラを有する、本発明による産業車両の第2の実施例を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示した産業車両を、収容された長尺物および保護領域と共に上方から見た図である。
【
図6】本発明による産業車両の第3の実施例を上方から見た図である。
【
図7】本発明による産業車両の第4の実施例を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示した産業車両を、伸張されたスラストマストと狭められた爪間隔と共に上方から見た図である。
【
図9】本発明による産業車両の第5の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1~
図3に符号100で示された本発明による産業車両の第1の実施例(以後、産業車両100)は、長尺物Lを収容するための荷物収容手段1を備えた産業車両に関する。
【0048】
産業車両100はフォークリフトとして形成されている。すなわち、この産業車両はマスト8を含み、産業車両の荷物収容手段1はフォーク10を備えている。フォークは、2つの爪21,21’を有している。爪21,21’のための間隔調節装置が設けられており、この間隔調節装置は、上方から見てホイールアーム20,20’の外側に配置される(
図3参照)ほど離れて互いに離隔している爪21,21’の配置を可能にする。産業車両は、縦走行LF(
図3)で走行可能である。産業車両は、第2の実施例200に関する
図5に示されているように、横走行QFでも走行可能である。産業車両100は、スラストマストフォークリフトとして形成されており、スラストマスト15として形成された、伸張可能かつ再び引き込み可能なマスト8を備えている。産業車両100は、「U字」形のシャシを有しており、「U字」形の両脚はそれぞれ1つのホイールアーム20,20’によって形成されている。
図3から最もよくわかるように、長尺物Lは、荷物収容手段上に収容された状態で、かつ産業車両100の走行準備完了状態で、すなわちスラストマスト15が引き込まれた状態でも、産業車両100の輪郭を越えて延びており、したがって、荷物を有していない産業車両の輪郭よりも大きな全体輪郭Gを生じさせる荷物である。この産業車両はサイドローダであり、すなわちフォーク爪21,21’に対して横方向に延びる走行方向(F)(
図3)を可能とする。
【0049】
産業車両100は無人の搬送車両であり、長尺物Lを検出するための長尺物検出装置2を有している。
【0050】
さらに、産業車両は、
図1に四角形で象徴的に示されている安全制御装置3を有しており、安全制御装置自体は、少なくとも1つの監視センサ4,4’を有しており、この監視センサ4,4’によって、少なくとも1つの保護領域5,5’を形成する。安全制御装置3は、長尺物検出装置2に作用結合されており、長尺物検出装置2によって検出された長尺物Lに応じて、少なくとも1つの保護領域5,5’に影響を与えるように形成されている。
【0051】
安全制御装置3は、少なくとも1つの監視センサ4,4’によって、保護領域5,5’内に車両または人が検知された場合に、産業車両100を停止させるように形成されている。
【0052】
安全制御装置3は、長尺物検出装置2により検出した長尺物に応じて、サイズおよび/または形状および/または産業車両に対する位置が異なっている保護領域5,5’間を切り替えることで、産業車両および収容された長尺物から生じる全体輪郭に保護領域5,5’を適合させる。
【0053】
このことは、例えば
図3に示されている。この場合、産業車両100は、縦走行LFで左に向かって位置しており、所定の速度を有している。収容された荷物によって、この荷物はとりわけ走行方向Fで前方に向かって産業車両100の輪郭を越えて突出しているので、産業車両100と荷物とから成る全体輪郭Gは拡大される。このことを考慮するために、安全制御装置3は、長尺物Lを有さないこの方向でのこの速度による走行の際に形成する保護領域5(格子で示す)から、走行方向でより拡大された保護領域5’へと切り替える。すなわち、安全制御装置3は、
図3で、走行方向Fで前方に向かって拡大されている全体輪郭Gに基づき、走行方向Fでより大きな保護領域5’を形成する。
【0054】
図5には、収容された長尺物Lを有した状態が横走行で示されている。全体輪郭Gの拡幅を考慮するために、安全制御装置3は、長尺物Lを有さないこのような走行の際に形成する保護領域5(格子で示す)からより幅の広い保護領域5’へと切り替える。すなわち、安全制御装置3は、
図5で、走行方向Fに対して横方向に向かって拡大されている全体輪郭Gに基づき、走行方向Fに対して横方向でより大きな保護領域5’を形成する。
【0055】
図3および
図5において、保護領域5,5’は、走行方向Fで産業車両100,200の手前に形成されていて、その幅は、すなわち走行方向Fに対して横方向の延在は、少なくともほぼ全体輪郭Gの幅に相当する。車両輪郭/全体輪郭と保護領域との間の図示されたこのような比率は、単なる例である。したがって、安全制御装置は常に、車両輪郭または全体輪郭Gよりも幅の広い保護領域を設けることができる。カーブ走行のためには、安全制御装置は、別の保護領域を形成することができる。
【0056】
産業車両100では、長尺物検出装置2は、マスト8の上方領域9に配置されたレーザースキャナ6を備えており、このレーザースキャナは、斜め下方に向かってフォーク10に向けられたスキャナ検出領域7を有している。
【0057】
レーザースキャナ6のスキャナ検出領域7自体は、まずは2次元的に形成されている。この場合、第1の次元はレーザービームの方向に、第2の次元はこれに対して垂直に形成されている。レーザースキャナ6は、第2の次元が、フォーク10の爪21,21’に対して垂直に延びるように配置されている。スキャナ検出領域7は、フォーク10が下降した状態にあるとき(この状態は図面には示されていない)、第2の次元で爪21,21’の互いの最大間隔のほぼ3倍にわたって延在している。レーザースキャナ6のスキャナ検出領域7(
図1に破線で示されている)は3次元的に形成されており、その内部でレーザースキャナ6が旋回可能であるようにマスト8に配置されている。このことは
図1に両方向矢印Pで示されている。スキャナ検出領域の第3の次元は、フォーク10の爪21,21’の方向に延在している。スキャナ検出領域7は、フォークが下降した状態にあるとき、第3の次元で爪長さ全体にわたって延在している。
【0058】
図4~
図10にはさらなる実施例が示されている。この場合、同じ符号は同じ構成要素を示している。これらの構成要素に関しては上記説明が参照される。以下には、
図1~
図3に示された第1の実施例に対する相違点のみを示す。
【0059】
図4および
図5には、符号200で示された本発明による産業車両の第2の実施例(産業車両200)が示されている。第2の実施例は、長尺物検出装置2が、レーザースキャナ6の代わりにカメラ検出領域12を有するカメラ11を備えている(
図5)点で、第1の実施例100とは異なっている。
【0060】
図6に符号300で示された本発明による産業車両の第3の実施例(産業車両300)では、安全制御装置3はちょうど2つの監視センサ4,4’を有しており、これらの監視センサは、対角線上のセンサ位置13,13’で産業車両300に配置されており、好ましくは水平方向で、270°の角度α,α’にわたって延在しているそれぞれ1つの監視センサ検出領域14,14’を有している。これにより、特に適切な方式で、産業車両300の全周にわたる視野が保証されている。少なくとも1つの監視センサ4,4’が、図示されている全ての実施例において、このように形成されていてもよい。
【0061】
図7および
図8に符号400で示された本発明による産業車両の第4の実施例(産業車両400)では、安全制御装置3が保護領域5の1つを後方空間保護領域16として形成しており、この後方空間保護領域のサイズは、その都度のマスト伸張位置に依存しており、
図8に斜線で示されている。スラストマスト15が伸張しているか否か、かつどの程度伸張しているのかを検出する装置、すなわちスラストマストセンサ23が設けられている。安全制御装置3はスラストマストセンサ23に作用結合されており、スラストマスト15が伸張している寸法に応じて、サイズおよび形状が異なる保護領域間で、後方空間保護領域16が、スラストマスト15の全ての可能なスラスト位置で後方空間を常に少なくともほぼ完全にカバーするように、切り替えを行う。安全制御装置3は、後方空間センサ22によって後方空間保護領域16を形成しており、後方空間センサ22は、産業車両400の、両ホイールアーム20,20’を結合する領域に配置されている。
【0062】
図9および
図10に符号500で示された本発明による産業車両の第5の実施例(産業車両500)では、産業車両500が積載物キャリア検知装置17を有しており、この積載物キャリア検知装置は、産業車両500が積載物キャリアを一義的に測定し、識別し、収容することができるように、ユーロパレットまたは格子箱のような積載物キャリアを検知し測定するように形成されている。積載物キャリア検知装置17は、積載物キャリア検知カメラ18を有しており、このカメラは3Dカメラとして形成され、フォーク10の爪21,21’の間の真ん中でフォーク支持体19の下方に配置されている。積載物キャリア検知カメラ18は、とりわけ、フォーク10の爪21,21’に対して平行に延びる積載物キャリア検出領域24を有している。積載物キャリア検知カメラ18は、この場合、積載物キャリアを検知し測定するために、荷物収容時に産業車両500および/またはスラストマスト15が実施する荷物収容運動に対して平行な視線方向を有している。
【符号の説明】
【0063】
100,200,300,400,500 産業車両
1 荷物収容手段
2 長尺物検出装置
3 安全制御装置
4,4’ 監視センサ
5,5’ 保護領域
6 レーザースキャナ
7 スキャナ検出領域
8 マスト
9 上方領域
10 フォーク
11 カメラ
12 カメラ検出領域
13,13’ センサ位置
14,14’ 監視センサ検出領域
15 スラストマスト
16 後方空間保護領域
17 積載物キャリア検知装置
18 積載物キャリア検知カメラ
19 フォーク支持体
20,20’ ホイールアーム
21,21’ 爪
22 後方空間センサ
23 スラストマストセンサ
24 積載物キャリア検出領域
α,α’ 角度
F 走行方向
G 全体輪郭
L 長尺物
P 両方向矢印
LF 縦走行
QF 横走行
【国際調査報告】