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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】神経学的および精神障害の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/381 20060101AFI20230530BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A61K31/381
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562531
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 US2021026953
(87)【国際公開番号】W WO2021211489
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/009,595
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/039,722
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500114922
【氏名又は名称】サノビオン ファーマシューティカルズ インク
【氏名又は名称原語表記】Sunovion Pharmaceuticals Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】ボーエン,キャリー エイ
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス,セス キャボット
(72)【発明者】
【氏名】サイナン,コリーン エム
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB40
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZA01
4C086ZA16
4C086ZA18
(57)【要約】
本開示は、神経学的または精神疾患または障害、例えば統合失調症などの治療方法に関する。化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、非D2作用機序を有する抗精神病薬である。D2ドーパミン受容体を標的とする抗精神病薬に関連する有害事象は、化合物1、またはその薬学的に許容される塩で障害を治療することにより、減少し得る。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とする、方法。
【請求項2】
神経学的または精神疾患または障害を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とする、方法。
【請求項3】
治療を必要とする患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とする、方法。
【請求項4】
統合失調症を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とする、方法。
【請求項5】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、夕方に、または夜に投与される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、就寝時頃に投与される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、毎日ほぼ同じ時刻に投与される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、1日1回投与される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、経口投与される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、前記患者に約10mg/日から約100mg/日までの1日用量で投与される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、前記患者に約50mg/日の1日用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、前記患者に約75mg/日の1日用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩を毎日第1の用量で投与し、続いて化合物1、またはその薬学的に許容される塩を毎日治療用量で投与することを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の用量が、約50mg/日である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記治療用量が、約25mg/日、約50mg/日、約75mg/日または約100mg/日である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の用量が、3日間毎日投与される、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩を毎日第1の用量で投与した後、化合物1、またはその薬学的に許容される塩を毎日治療用量で投与する前に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩を毎日第2の用量で投与することをさらに特徴とする、請求項13から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の用量が、4日間毎日投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の用量が、約75mg/日である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記神経学的または精神疾患または障害が、統合失調症である、請求項1、2および5から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記神経学的または精神疾患または障害が、統合失調症、統合失調症に関連する認知機能障害、統合失調症スペクトラム障害、統合失調症陰性症状、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、妄想性障害、精神病、精神病性障害、譫妄、トゥレット症候群、不安ならびに全般性不安障害(GAD)および心的外傷後ストレス障害などの関連障害、行動障害、情動障害、うつ病、大うつ病性障害、気分変調症、双極性障害、双極性うつ病、治療抵抗性うつ病(TRD)、および大うつ病性障害(MDD)などの気分障害;躁病、季節性情動障害、強迫性障害、ナルコレプシー、REM行動障害、物質濫用もしくは依存、レッシュ・ナイハン病、ウィルソン病、自閉症スペクトラム障害、認知症、認知症関連の精神病(DRP)、パーキンソン病に伴う精神症状(PDP)、並びにアルツハイマー病の焦燥性興奮および精神症状などの神経変性障害、またはハンチントン舞踏病である、請求項1、2および5から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記神経学的または精神疾患または障害が、統合失調症、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、シゾイドパーソナリティ障害、および統合失調型パーソナリティ障害から選択される、請求項1、2および5から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記精神病が、器質性精神病、薬剤性精神病、パーキンソン病に伴う精神症状、および興奮性精神病から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物1の塩酸塩が、前記患者に投与される、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物1の塩酸塩の結晶形Aが、前記患者に投与される、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、前記患者を臨床的意義のある有害事象のリスクにさらすことなく実施される、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記有害事象が、患者の薬物探索行動に向かう傾向である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与が、前記患者の薬物探索行動に向かう傾向を臨床的に有意に強めない、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与が、前記患者の、濫用、誤用、嗜癖、身体依存、または耐性に向かう傾向を臨床的に有意に強めない、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、規制物質でない、請求項1から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が、規制物質でない、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
治療を必要とする患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与が、前記患者の薬物探索行動に向かう傾向を臨床的に有意に強めない、方法。
【請求項33】
前記薬物探索行動が、濫用、誤用、嗜癖、身体依存、または耐性である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
神経学的または精神疾患または障害を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与が、前記患者の薬物探索行動に向かう傾向を臨床的に有意に強めない、方法。
【請求項35】
前記薬物探索行動が、濫用、誤用、嗜癖、身体依存、または耐性である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
治療を必要とする患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化7】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与が、前記患者の薬物探索行動に向かう傾向を臨床的に有意に強めない、方法。
【請求項37】
前記薬物探索行動が、濫用、誤用、嗜癖、身体依存、または耐性である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
統合失調症を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化8】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与が、前記患者の薬物探索行動に向かう傾向を臨床的に有意に強めない、方法。
【請求項39】
前記薬物探索行動が、濫用、誤用、嗜癖、身体依存、または耐性である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、規制物質でない、請求項32から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、夕方に、夜に、または就寝時頃に投与される、請求項32から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物1の塩酸塩が、前記患者に投与される、請求項32から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩を一つ以上の医薬剤と併用して投与することをさらに特徴とする、請求項1から42のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月16日提出の米国仮出願番号第63/039,722号および2020年4月14日提出の米国仮出願番号第63/009,595号に対する優先権を主張し、それらの内容は、本明細書での参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、神経学的および精神疾患および障害の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
D2ドーパミン受容体は、定型および非定型抗精神病薬の両方にとっての第一標的である。Wang et al. NATURE 555, 269~273(2018)。しかしながら、D2ドーパミン受容体を標的とする多くの薬物は、重篤なまたは生命を脅かす恐れのある副作用を引き起こす。Wang et al. Nature 555, 269~273(2018)。数十年に及ぶ非D2作用機序についての研究にもかかわらず、安全かつ有効な非D2抗精神病薬療法の開発は、ずっと困難なままである。Girgis et al., J. Psychiatric Res.(2018), https://doi.org/10.1016/j.jpsychires.2018.07.006。特に、1970年から2017年までの250の研究を含む、統合失調症を治療するためのグルタミン酸作動性、セロトニン作動性、コリン作動性、神経ペプチド作動性、ホルモン性、ドーパミン作動性、代謝性、ビタミン/自然療法、ヒスタミン作動性、感染/炎症性、およびその他の種々の機序による、統合失調症の実験的治療に関する文献の包括的な見直しを行った結果、Girgisは、「いくつかの有望な[非D2]標的、例えばNMDAおよびα7ニコチン受容体のアロステリック調節などがあるにもかかわらず、我々は、この見直しで網羅される機構的に新しい実験的治療のいずれかが、統合失調症の治療に疑いなく有効であり、臨床的に使用できる状態であると自信をもって言うことはできない」と述べる。したがって、神経学的および精神疾患および障害(例えば、統合失調症)の治療に有効で、有害事象発生率のより低い治療剤が必要とされる。
【0004】
本明細書に開示されるように、化合物1は、米国食品医薬品局(FDA)から、統合失調症患者たちの治療のための新薬として画期的治療薬指定を受けている。画期的治療薬指定は、予備的臨床エビデンスが、薬物は利用可能な治療法と比較して、一つ以上の臨床的に意義のある評価項目について実質的な改善を示すことがあるということを指し示す場合に、重篤なまたは命に関わる疾患の治療薬の開発および審査を促進することを目的としている。FDAは、極めて重要な、本明細書に開示される臨床試験のフェーズ2データに基づいて、化合物1の画期的治療薬指定を承諾した。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、神経学的および精神疾患および障害の治療方法に関する。
【0006】
いくつかの実施形態において、神経学的または精神疾患または障害を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に化合物1
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に経口投与することを特徴とする、方法が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とし、前記患者における有害事象を最小化する、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記方法は、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象を最小化する。
【0008】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とし、有害事象を実質的に欠いている、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記患者における有害事象のリスクは、プラセボとほぼ同じか、または類似している。
【0009】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬の有害事象を実質的に欠いており、前記患者に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩から選択される、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない治療有効量の抗精神病薬を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とする、方法が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態において、神経学的または精神疾患または障害の治療を必要とする患者における有害事象を最小化する方法であって、前記方法が、前記患者に、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない治療有効量の抗精神病薬を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とし、前記抗精神病薬が、化合物1、またはその薬学的に許容される塩であって、前記方法が、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象を最小化する、方法が提供される。
【0011】
いくつかの実施形態において、患者を臨床的意義のある有害事象のリスクにさらさない、前記患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とし、前記有害事象のリスクが、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記疾患または障害は、統合失調症である。
【0012】
いくつかの実施形態において、臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こすことなく、治療を必要とする患者に抗精神病薬を投与する方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とし、前記患者が、臨床的意義のある有害事象を経験しない、方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態において、臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こさない、神経学的または精神疾患または障害を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とする、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記患者は、統合失調症である。
【0014】
いくつかの実施形態において、有害事象は、次の一つ以上を指す:心血管有害事象(例えば、心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、ホットフラッシュ、QT延長、起立性低血圧、または起立性頻脈)、錐体外路系有害事象(例えば、アカシジア、不穏状態、関節硬直、筋骨格硬直、項部硬直、姿勢振戦、または振戦)、高プロラクチン血症、不眠症、不安、頭痛、統合失調症、傾眠、焦燥性興奮、悪心、下痢、および消化不良。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記患者における神経学的または精神疾患または障害の治療に有効である。いくつかの例において、前記方法は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア、PANSSサブスコア(陰性、陽性、総合精神病理)、臨床全般印象度・重症度(CGI-S)スコア、簡易陰性症状尺度(BNSS)合計スコア、およびMontgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアのうちの一つ以上を向上させる。
【0016】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない治療有効量の抗精神病薬を、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に投与することを特徴とし、前記患者における有害事象を実質的に欠いており、前記有害事象が、ドーパミンD2に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する、方法が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、結晶形Aの化合物1塩酸塩である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(FIG.1)は、実施例1.1の研究についての、PANSS合計スコアにおけるベースラインからの変化のMMRM解析を示す。
図2図2(FIG.2)は、実施例1.1の研究についての、PANSS陽性下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化のMMRM解析を示す。
図3図3(FIG.3)は、実施例1.1の研究についての、PANSS陰性下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化のMMRM解析を示す。
図4図4(FIG.4)は、実施例1.1の研究についての、PANSS総合精神病理下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化のMMRM解析を示す。
図5図5(FIG.5)は、実施例1.1の研究についての、CGI-Sスコアにおけるベースラインからの変化のMMRM解析を示す。
図6図6(FIG.6)は、実施例1.1の研究についての、BNSS合計スコアにおけるベースラインからの変化のMMRM解析を示す。
図7図7(FIG.7)は、実施例1.1の研究についての、MADRS合計スコアにおけるベースラインからの変化のMMRM解析を示す。
図8図8(FIG.8)は、実施例1.1の研究についての、プロラクチンレベルにおけるベースラインから4週目までの中央値の変化を示す。
図9図9(FIG.9)は、二重盲検治療(実施例1.1)および非盲検延長研究(実施例1.2)期間中に観察されたPANSS合計スコアを示す。
図10図10(FIG.10)は、二重盲検治療(実施例1.1)および非盲検延長研究(実施例1.2)期間中に観察されたPANSS陽性サブスコアを示す。
図11図11(FIG.11)は、二重盲検治療(実施例1.1)および非盲検延長研究(実施例1.2)期間中に観察されたPANSS陰性サブスコアを示す。
図12図12(FIG.12)は、二重盲検治療(実施例1.1)および非盲検延長研究(実施例1.2)期間中に観察されたPANSS総合精神病理サブスコアを示す。
図13図13(FIG.13)は、二重盲検治療(実施例1.1)および非盲検延長研究(実施例1.2)期間中に観察されたCGI-Sスコアを示す。
図14図14(FIG.14)は、二重盲検治療(実施例1.1)および非盲検延長研究(実施例1.2)期間中に観察されたBNSS合計スコアを示す。
図15図15(FIG.15)は、二重盲検治療(実施例1.1)および非盲検延長研究(実施例1.2)期間中に観察されたMADRS合計スコアを示す。
図16図16(FIG.16)は、非盲検ベースラインから26週目までの、プロラクチンレベルの変化を示す。
図17図17(FIG.17)は、非盲検ベースラインから26週目までの、(A)体重および(B)肥満度指数(BMI)の変化を示す。
図18図18(FIG.18)は、非盲検ベースラインから26週目までの、脂質:(A)総コレステロール(全体)、(B)トリグリセリド(全体)、(C)HDL(全体)、および(D)LDL(全体)の変化を示す。
図19図19(FIG.19)は、非盲検ベースラインから26週目までの、血糖指標:(A)グルコース(全体)、および(B)HbA1cの変化を示す。
図20図20(FIG.20)は、(A)実施例1.2の研究における、全ての原因による中止までの時間および(B)他の薬物についての比較データを示す。
図21図21(FIG.21)および図22(FIG.22)は、結晶形Aの化合物1塩酸塩のXRPDパターンを示しており、図21は透過法で、図22は反射法で測定したXRPDである。
図22図21(FIG.21)および図22(FIG.22)は、結晶形Aの化合物1塩酸塩のXRPDパターンを示しており、図21は透過法で、図22は反射法で測定したXRPDである。
図23図23(FIG.23)は、結晶形Aの化合物1塩酸塩のDSCサーモグラムである。
図24A図24A(FIG.24A)は、実施例5の自己投与(コカイン置換)試験における平均(±SEM)注入回数を示す。
図24B図24B(FIG.24B)は、実施例5の自己投与(アンフェタミン置換)試験における平均(±SEM)注入回数を示す。
図24C図24C(FIG.24C)は、実施例5の自己投与(ヘロイン置換)試験における平均(±SEM)注入回数を示す。
図25A図25A(FIG.25A)は、実施例5の薬物弁別研究における、化合物1に対する平均(±SEM)アンフェタミン対応レバー反応率を示す(po=経口)。
図25B図25B(FIG.25B)は、実施例5の薬物弁別研究における、化合物1に対する平均(±SEM)反応速度を示す。
図26A図26A(FIG.26A)は、実施例5の薬物弁別研究における、化合物1に対する平均(±SEM)MDMA対応レバー反応率を示す。
図26B図26B(FIG.26B)は、実施例5の薬物弁別研究における、ブスピロンに対するアンフェタミン対応レバー反応率を示す。
図27A図27A(FIG.27A)は、実施例5のコカイン復帰研究における手がかり誘導性復帰試験セッションでの能動的レバー押しの平均(±SEM)回数を示す。
図27B図27B(FIG.27B)は、実施例5のコカイン復帰研究におけるコカインプライム誘導性復帰試験セッションでの能動的レバー押しの平均(±SEM)回数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に引用される全ての公開文書は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0020】
特に明示されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野における通常の技術を有する人により一般に理解されるのと同じ意味を持つ。したがって、以下の用語は、以下の意味を持つよう意図される。
【0021】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むよう意図される。
【0022】
特に断らない限り、「含む(includes)」(またはその任意のバリエーション、例えば「include」、「including」など)という単語は、制限がないよう意図される。例えば、「Aは1、2および3を含む」は、Aは1、2および3を含むが、これらに限定されないという意味である。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「治療(treatment)」、「治療する(treat)」、および「治療する(treating)」という用語は、疾患または障害、あるいはそれらの一つ以上の症状の発生を逆転させる、軽減する、遅延させる、またはそれらの進行を抑制することを指し、治療的有用性を含むが、これに限らない。いくつかの実施形態において、治療は、一つ以上の症状が生じた後、例えば症状の急性増悪の後に施される。いくつかの実施形態において、治療は、症状がないときに施されることがある。例えば、治療は、症状の発生に先立って対象に施されることがある(例えば、それまでの症状を考慮して、および/または遺伝的または他の感受性因子を考慮して)。治療は、症状が回復した後も、例えばその再発を予防するか、または遅延させるために続けられることがある。
【0024】
治療的有用性には、治療されるべき基礎疾患の根絶および/または寛解が挙げられ、対象がいまだに基礎疾患に悩まされている可能性があるにもかかわらず、改善が対象において観察されるような、基礎疾患に関連する症状のうちの一つ以上の根絶および/または寛解も含まれる。いくつかの実施形態において、「治療(treatment)」または「治療する(treating)」は、次のうちの一つ以上を含む:(a)障害を抑制すること(例えば、障害によって生じる一つ以上の症状を減少させること、および/または障害の程度を弱めること);(b)障害に関連する一つ以上の症状の発現を遅延させるか、または停止させること(例えば、障害を安定化させること、および/または障害の悪化または進行を遅延させること);および/または(c)障害を緩和すること(例えば、臨床症状の軽減を引き起こすこと、障害を寛解させること、障害の進行を遅延させること、および/または生活の質を上昇させること)。
【0025】
本明細書で使用されるとき、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の「投与する(administering)」または「投与(administration)」は、例えば、本明細書に記載されるような、任意の適当な製剤または投与経路を用いて、化合物1、もしくはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグもしくは他の薬学的に許容される誘導体を対象へ送達することを包含する。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量(therapeutically effective amount)」または「有効量(effective amount)」という用語は、望ましい生物学的または医学的応答を引き起こすのに効果的である量を指し、障害を治療するために対象に投与される場合、障害のそのような治療をもたらすのに十分な化合物の量を含む。有効量は、障害、およびその重症度、並びに治療されるべき対象の年齢によって変わるであろう。有効量は、一つ以上の用量である場合がある(例えば、1回分の用量または複数回分の用量が、望ましい治療評価項目を達成するために必要である場合がある)。有効量は、一つ以上の他の薬剤と併用して、望ましいまたは有益な結果が達成される可能性がある、または達成される場合、有効量で投与されると見なされることがある。任意の共投与される化合物の適当な用量は、化合物の複合作用、相加または相乗作用によって適宜減らしてもよい。
【0027】
本明細書で使用されるとき、障害の発現を「遅延させる(delaying)」は、障害の発現を延期する、妨げる、遅くする、安定化させる、および/または先送りにすることを意味する。遅延時間は、病歴および/または治療を受ける個人によって決まり、時間の長さは様々であり得る。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「予防(prevention)」または「予防する(preventing)」は、障害の臨床症状が発現しないような、障害の発生から守るレジメンを指す。したがって、「予防」は、疾患の徴候が対象において検出可能である前に、対称へ治療法を実施することに関する(例えば、検出可能な障害の症候群がない場合での治療法の実施)。対象は、障害を発現する危険性がある個人である場合がある。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「危険性がある」個人は、治療されるべき障害を発現する危険性がある個人である。これは、例えば、障害の発現と相関する測定可能なパラメータであり、当技術分野で既知である一つ以上の危険因子により示されることがある。
【0030】
本明細書で使用されるとき、投与が企図される「対象(subject)」または「患者(patient)」には、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性または女性、例えば、小児の対象(例えば、乳児、幼児、青年)または成人の対象(例えば、ヤングアダルト、中年成人または老人))および/または他の霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル);商業的に関連のある哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、および/またはイヌなどを含む哺乳動物;並びに/または商業的に関連のある鳥類、例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、および/またはシチメンチョウなどを含む鳥類が挙げられるが、これらに限らない。本明細書で使用されるとき、「対象」または「患者」は、互換的である。
【0031】
「薬学的に許容される(Pharmaceutically acceptable)」または「生理学的に許容される(physiologically acceptable)」は、獣医学的またはヒトの医薬用途に適する医薬組成物の調製に有用な化合物、塩、組成物、剤形および他の物質に言及する。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される塩(pharmaceutically acceptable salt)」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、過度の毒性、刺激、アレルギー反応および同類のものを伴わず、合理的なリスク・ベネフィット比に見合っている塩を指す。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、S. M. Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1~19で薬学的に許容される塩を詳細に記述している。化合物1の薬学的に許容される塩には、適当な無機および有機酸および塩基に由来する塩が挙げられる。薬学的に許容される、無毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸など、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などとともに形成される、あるいは当技術分野で使用される他の方法、例えばイオン交換などを用いることで形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、および同類のものが挙げられる。薬学的に許容される対イオンは、医薬製剤の調製にとって好ましいであろうが、他のアニオンは合成中間体としてかなり許容される。それゆえ、Xは、そのような塩が化学中間体である場合、薬学的に好ましくないアニオン、例えばアイオダイド、オキサレート、トリフルオロメタンスルホネートおよび同類のものなどであってもよい。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される添加剤(pharmaceutically acceptable excipient)」という用語は、任意の結合剤、増量剤、アジュバント、担体、添加剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張化剤、溶媒、乳化剤、固化防止剤、香味料、乾燥剤、可塑剤、崩壊剤、滑沢剤、ポリマーマトリックスシステム、ポリマーコーティングシステムおよび艶出し剤を含むが、これらに限定されず、米国食品医薬品局により、ヒトまたは家畜における使用について許容されるものとして認可されている。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「臨床的意義のある(clinically significant)」有害事象のリスクは、統計的に有意な差でプラセボよりも大きいリスクを指す。有害事象または特定の有害事象のリスクが、プラセボよりも小さい、と同じである、またはとほぼ同じである場合、リスクは臨床的意義がない。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「臨床的に重要な(clinically meaningful)」有害事象のリスクは、必ずしも統計的に有意な差ではないが、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬における同じ有害事象のリスクよりも小さいリスクを指す。有害事象または特定の有害事象のリスクが、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬よりも小さい場合、リスクは臨床的に重要でない。いくつかの実施形態において、前記臨床的に重要な有害事象のリスクは、困っている患者に抗精神病薬を処置するおよび/または処方する技術分野における通常の技術を有する人により決定され得る。いくつかの実施形態において、前記臨床的に重要な有害事象のリスクは、患者集団をまたぐ比較計算により割り出され得る。
【0036】
本明細書で使用されるとき、有害事象を「実質的に欠いている(substantially devoid)」方法は、プラセボよりも小さい、と同じである、またはとほぼ同じである有害事象発生率を伴う方法を指す。
【0037】
本明細書で使用されるとき、有害事象を「最小化する(minimizing)」は、D2ドーパミン受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬で治療した患者集団における代表的な有害事象発生率と比較した、患者集団における有害事象発生率の統計的に有意な減少に言及する。D2ドーパミン受容体に対して親和性を持つ、かかる抗精神病薬(例えば、本明細書に定義されるような)は、当業者が、D2ドーパミン受容体の直接標的化を主要な(単独または別の受容体と組み合わせてのいずれかで)作用機序として提案する可能性があるような、D2ドーパミン受容体に対する治療的親和性を持つであろう。一人の患者における、対応する有害事象のリスクは、それに応じて減少する。いくつかの実施形態において、前記有害事象発生率は、患者集団についての、特定の有害事象の頻度または割合を指す。いくつかの実施形態において、前記有害事象発生率は、個々の対象により経験された有害事象の総数を指す。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「抗精神病薬(antipsychotic agents)」は、精神病を治療、予防、または管理するために、例えば統合失調症または双極性障害で、より広くは様々な神経学的および精神障害の治療に特に使用される薬物群である。第1世代抗精神病薬は、「定型抗精神病薬(typical antipsychotics)」として知られ、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、チオリダジン、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、チオチキセン、ドロペリドール、フルペンチキソール、フルフェナジン、ハロペリドール、ピモジド、プロクロルペラジン、チオプロペラジン、トリフロペラジンおよびズクロペンチキソールが含まれる。第2世代抗精神病薬は、「非定型抗精神病薬(atypical antipsychotics)」として知られ、アリピプラゾール、アセナピンマレイン酸塩、クロザピン、イロペリドン、ルラシドン、オランザピン、オランザピン/フルオキセチン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドンが含まれる。定型および非定型抗精神病薬の両方が、D2ドーパミン受容体を標的としており、それに対して親和性を持つ。
【0039】
「有害事象(adverse events)」は、ヒトにおける薬物の使用に関連する任意の有害な医療上の出来事であって、薬物が関連していると見なされるかどうかを問わない。「有害事象」は、本明細書で使用されるとき、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する事象を含む。いくつかの実施形態において、有害事象は薬物探索行動である。いくつかの実施形態において、前記薬物探索行動は、濫用、誤用、嗜癖、身体依存、および/または耐性である。いくつかの実施形態において、有害事象は、濫用、誤用、嗜癖、身体依存、および/または耐性である。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与は、患者の薬物探索行動に向かう傾向を臨床的に有意に強めない。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与は、患者の濫用、誤用、嗜癖、身体依存、または耐性に向かう傾向を臨床的に有意に強めない。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の投与は、患者の濫用、誤用、嗜癖、または身体依存に向かう傾向を臨床的に有意に強めない。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、規制物質でない。本明細書で使用されるとき、「濫用(abuse)」という用語は、その望ましくない精神的または生理学的効果のために、たとえ1回でも故意に薬物を非治療的に使用することを意味する。本明細書で使用されるとき、「誤用(misuse)」という用語は、ヘルスケア提供者に指示された以外の方法で個人が、または薬物を処方されていない個人が、治療目的で薬物を意図的に使用することを意味する。本明細書で使用されるとき、「嗜癖(addiction)」という用語は、薬を服用したいという強い願望、薬物使用を制御する上での困難(例えば、有害な結果にもかかわらず薬物使用を継続すること、他の活動および義務よりも薬物使用を優先すること)、および起こり得る耐性または身体依存を含む、一群の行動的、認知、および生理学的現象を意味する。身体依存は嗜癖と同義でなく、患者は、薬物に嗜癖することなく、薬物に身体的に依存していることがある。同様に、濫用は嗜癖と同義でない。耐性、身体依存、および離脱症状は、特定の薬物による慢性治療の結果である、全て予想される生物学的現象である。これらの現象は、それ自体で嗜癖の状態を示さない。本明細書で使用されるとき、「身体依存(physical dependence)」という用語は、薬物の反復使用に対する生理学的適応の結果として生じる、突然の中止または大幅な薬物の減量の後に、離脱徴候および症状が現れる状態を意味する。本明細書で使用されるとき、「耐性(tolerance)」という用語は、反復投与後の薬物に対する反応低下を特徴とする生理学的状態(例えば、より高用量の薬物が、以前はより低用量で得られたのと同じ効果をもたらすのに必要である)を意味する。本明細書で使用されるとき、「規制物質(controlled substance)」という用語は、参照により本明細書に組み込まれるUSC第21編第811~814条の一覧表I、II、III、IV、またはVに記載される、薬物または他の物質、あるいは直接前駆体を意味する。
【0040】
「ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象(adverse events associated with antipsychotic agents with affinity to dopamine D2 receptors)」は、当業者により、D2抗精神病薬療法の代表的な有害事象として理解される。いくつかの実施形態において、前記ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象は、抗精神病薬剤のクラスエフェクトのうちのいずれか一つ以上である。いくつかの実施形態において、前記ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象は、定型抗精神病薬のクラスエフェクトのうちのいずれか一つ以上である。いくつかの実施形態において、前記ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象は、非定型抗精神病薬のクラスエフェクトのうちのいずれか一つ以上である。いくつかの実施形態において、前記ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象は、心血管有害事象または錐体外路系有害事象である。いくつかの実施形態において、前記ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象には、心血管有害事象(例えば、心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、ホットフラッシュ、QT延長、起立性低血圧、または起立性頻脈)、錐体外路系有害事象(例えば、アカシジア、不穏状態、関節硬直、筋骨格硬直、項部硬直、姿勢振戦、または振戦)、高プロラクチン血症、不眠症、不安、頭痛、統合失調症、傾眠、焦燥性興奮、悪心、下痢、および消化不良が挙げられる。
【0041】
本明細書で時間(例えば、就寝時)に関して使用される「約(about)」は、指示される時間±3時間以下、例えば、指示される時間±3時間、指示される時間±2時間、指示される時間±1時間、指示される時間±30分または指示される時間±15分に言及する。
【0042】
「就寝時(bedtime)」は、本明細書で使用されるとき、対象が、眠るために通常床に就く時刻を指す。
【0043】
本開示は様々な実施形態を記述する。本開示を審査する当業者は、様々な実施形態を任意のバリエーションで組み合わせることができるということを容易に認識するであろう。例えば、本開示の実施形態は、様々な障害の治療、患者集団、様々な用量での、剤形の投与、様々な有害事象の最小化、および様々な有効性指標の向上などを含む。様々な実施形態の任意の組み合わせは、本開示の範囲内である。
【0044】
化合物1は、本開示の方法での使用について本明細書にあるように、以下の構造:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を有する。特に明記しない限り、または文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本開示において、「化合物1(Compound 1)」という用語は、
【化4】
の薬学的に許容される塩も含む。
【0045】
化合物1の化学名は、(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン(「(S)-TPMA」と略されることがある)、またはその薬学的に許容される塩である。当業者は、様々な化合物の命名法を認識するであろう。したがって、化合物1は、(S)-1-(4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン、(S)-1-(5,7-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン、もしくはその他、またはその薬学的に許容される塩として識別されることもある。例えば、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、SEP-0363856またはSEP-856として識別されており、米国食品医薬品局(FDA)から、統合失調症患者たちの治療のための新薬として画期的治療薬指定を受けている。画期的治療薬指定は、予備的臨床エビデンスが、薬物は利用可能な治療法と比較して、一つ以上の臨床的に意義のある評価項目について実質的な改善を示すことがあるということを指し示す場合に、重篤なまたは命に関わる疾患の治療薬の開発および審査を促進することを目的としている。FDAは、極めて重要な、本明細書に開示される臨床試験のフェーズ2データに基づいて、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の画期的治療薬指定を承諾した。化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、非直接的D2作用機序を有する抗精神病薬であり、精神病およびうつ病の動物モデルにおいて広い有効性を示す。化合物1、またはその薬学的に許容される塩の抗精神病および抗うつ有効性に関与する分子標的は、微量アミン関連受容体-1(TAAR1)および5HT1A受容体の両方におけるアゴニスト活性であると理解される。例えば、Dedic et al. The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 371, 1~14(2019)に記載されるように、化合物1は、既知の分子標的(イオンチャネル、Gタンパク質共役受容体(GPCRs)、および酵素)の、いくつかのパネルに対して試験され、10μMで、化合物1は、α2A、α2B、D、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、および5-HT受容体において、特異的結合の>50%阻害を示した。さらなる受容体パネルスクリーニングおよび補足機能試験は、化合物1がいくつかの受容体において、様々な活性を示すことを明らかにした。ヒトTAAR1受容体(0.14±0.062μMのEC50、最大効果(Emax)=101.3%±1.3%)および5-HT1A受容体(EC50=2.3μM、値は0.1から3μMまで幅がある、Emax=74.7%±19.6%)におけるアゴニズム。D受容体機能アッセイにおいて、化合物1は、10.44±4μM(cAMP、Emax=23.9%±7.6%)および8μM(β-アレスチン動員、Emax=27.1%)というEC50値を有する、弱い部分的なアゴニズムを示した。特定の作用機序に縛られることなく、化合物1は、シナプス前ドーパミン調節因子として作用するとも理論化される。
【0046】
化合物1は、遊離塩基として、または薬学的に許容される塩の形態で、本明細書に記載される方法で使用され得る。いくつかの実施形態において、化合物1の塩酸(HCl)塩は、本明細書に記載される方法で使用される。
【0047】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、参照により全体として、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれるPCT特許公開番号WO2011/069063(米国特許番号第8,710,245号、2014年4月29日発行)もしくはPCT特許公開番号WO2019/161238に記載される生産方法、またはそれらに類似する方法に従って得られる。
【0048】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、アモルファスまたは結晶形態である場合がある。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の結晶形は、本明細書に記載される方法で使用される。いくつかの実施形態において、前記化合物1のHCl塩の結晶形Aは、本明細書に記載される方法で使用される。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記化合物1のHCl塩の結晶形Aは、2シータを単位として、9.6±0.2°、14.9±0.2°、20.5±0.2℃、および25.1±0.2℃でピークを含み、いくつかの実施形態において、20.2±0.2°および20.8±0.2°でピークをさらに含み、いくつかの実施形態において、20.2±0.2°および20.8±0.2°でピークを、17.9±0.2°、24.8±0.2°および27.1±0.2°のうちの二つ以上で突出したピークをさらに含む、粉末x線回折パターンにより特徴づけられる。前記化合物1のHCl塩の結晶形Aを調製する方法の例は、実施例4で提供される。
【0050】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、実質的に、鏡像異性的に純粋である。いくつかの例において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物は、組成物中の化合物1およびその(R)-エナンチオマーの総量に対して、化合物1の約90%、95%、97%、99%、99.5%、99.7%または99.9%以上を含む。いくつかの実施形態において、実質的に鏡像異性的に純粋な、化合物1のHCl塩の結晶形Aは、本明細書に記載される方法で使用される。
【0051】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩、および一つ以上の薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物および剤形もまた、本明細書で提供される。本明細書で提供される組成物および剤形は、一つ以上の追加の活性成分をさらに含むことがある。化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載されるように、医薬組成物の一部として投与されることがある。
【0052】
適切な医薬品を選択して神経学的または精神疾患または障害を治療することは、患者における有害事象をほとんどまたは全く引き起こさない医薬品を見つけることを伴う。本明細書に開示されるように、神経学的または精神疾患または障害の治療に対する試行錯誤の取り組みを回避したいと望む医者は、利用可能な抗精神病薬から化合物1を選択し、臨床的意義のある有害事象のリスクを伴わずに患者を治療することができる。例えば、QT延長は死をもたらし得る重大な有害事象であるため、QT延長のリスクがある患者にとって、これは重要である可能性がある。本明細書に開示されるように、化合物1は、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持ついくつかの抗精神病薬剤とは異なり、臨床的意義のあるQT延長のリスクをもたらさず、QT延長のリスクが高い患者において、より安全な投薬を可能にする可能性がある。神経または精神薬による治療を以前に受けたことがない患者におけるQT延長のリスクは、未知であることがある。しかしながら、本明細書で提供されるいくつかの実施形態において、化合物1は、臨床的意義のあるQT延長のリスクを伴わずに投与され得る。他の有害事象、例えば他の心血管イベントなどは、例えば体重増加、血中脂質または血糖値の変化など、現れるまでにいくらか時間がかかる場合がある。時間とともに、かかる事象は、患者における心血管問題を引き起こし得る。化合物1の投与により、有害事象を回避するか、または大幅に減らすことができる。
【0053】
本開示は、神経学的および精神疾患および障害、例えば統合失調症などの治療方法に関する。
【0054】
いくつかの実施形態において、神経学的または精神疾患または障害を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に化合物1
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を経口投与することを特徴とする、方法が提供される。
【0055】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩
【化6】
を投与することを特徴とし、前記患者における有害事象を最小化する、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記方法は、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象を最小化する。
【0056】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、有害事象を実質的に欠いている、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記方法は、プラセボとほぼ同じであるか、または類似している、前記患者における有害事象のリスクをもたらす。
【0057】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬の有害事象を実質的に欠いており、前記患者に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩から選択される、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない治療有効量の抗精神病薬を投与することを特徴とする、方法が提供される。
【0058】
いくつかの実施形態において、神経学的または精神疾患または障害の治療を必要とする患者における有害事象を最小化する方法であって、前記方法が、前記患者に、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない治療有効量の抗精神病薬を投与することを特徴とし、前記抗精神病薬が、化合物1、またはその薬学的に許容される塩であって、前記方法が、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象を最小化する、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記方法は、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬による治療と比較して、かかる有害事象の発生率を減少させている。
【0059】
いくつかの実施形態において、患者を臨床的意義のある有害事象のリスクにさらさない、前記患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、前記有害事象のリスクが、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する、方法が提供される。
【0060】
いくつかの実施形態において、臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こすことなく、治療を必要とする患者に抗精神病薬を投与する方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、前記患者が、臨床的意義のある有害事象を経験しない、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記患者における神経学的または精神疾患または障害(例えば、統合失調症)を治療する。
【0061】
いくつかの実施形態において、患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない治療有効量の抗精神病薬を投与することを特徴とし、前記患者における有害事象を実質的に欠いており、前記有害事象が、ドーパミンD2に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する、方法が提供される。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書に通常記載されるような、例えば有害事象が最小化されている、神経学的または精神疾患または障害の治療における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の使用が提供される。本明細書に通常記載されるような、例えば有害事象が最小化されている、神経学的または精神疾患または障害の治療に使用される、化合物1、またはその薬学的に許容される塩もまた提供される。本明細書に通常記載されるような、例えば有害事象が最小化されている、神経学的または精神疾患または障害の治療のための薬物の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の使用もまた提供される。
【0063】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、29日の治療期間の間、毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、26週または30週の治療期間の間、毎日投与される。
【0064】
いくつかの実施形態において、有害事象は、次のうちのいずれか一つ以上を指す:心血管有害事象(心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、ホットフラッシュ、QT延長、起立性低血圧、起立性頻脈)、錐体外路系有害事象(アカシジア、不穏状態、関節硬直、筋骨格硬直、項部硬直、姿勢振戦、振戦)、高プロラクチン血症、不眠症、不安、頭痛、統合失調症、傾眠、焦燥性興奮、悪心、下痢、および消化不良。
【0065】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、前記患者における神経学的または精神疾患または障害の治療に有効である。いくつかの例において、前記方法は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア、PANSSサブスコア(陰性、陽性、総合精神病理)、臨床全般印象度・重症度(CGI-S)スコア、簡易陰性症状尺度(BNSS)合計スコア、およびMontgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアのうちの一つ以上を向上させる。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記方法は、次のうちの一つ以上をもたらす:
ベースラインからのPANSS合計スコアの減少、例えば、ベースラインからのPANSS合計スコアの少なくとも1、2、3、4、5、7、10、15、または17(例えば、少なくとも17.2)の減少、またはベースラインからのPANSS合計スコアの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、または20%の減少、または少なくとも0.1、0.2、0.3、または0.4(例えば、少なくとも0.45)のPANSS合計スコアの効果量、またはプラセボと比較して統計的に有意に向上したPANSSレスポンダー率(例えば、プラセボよりも、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%または20%高いレスポンダー率);
ベースラインからのPANSS陰性下位尺度スコアの減少、例えば、ベースラインからのPANSS陰性下位尺度スコアの少なくとも0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5または3(例えば、少なくとも3.1)の減少、またはベースラインからのPANSS陰性下位尺度スコアの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、または20%の減少、または少なくとも0.1、0.2、0.3または0.35(例えば、少なくとも0.37)のPANSS陰性下位尺度スコアの効果量;
ベースラインからのPANSS陽性下位尺度スコアの減少、例えば、ベースラインからのPANSS陽性下位尺度スコアの少なくとも1、2、3、4、または5(例えば、少なくとも5.5)の減少、またはベースラインからのPANSS陽性下位尺度スコアの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、または20%の減少、または少なくとも0.1、0.2または0.3(例えば、少なくとも0.32)のPANSS陽性下位尺度スコアの効果量;
ベースラインからのPANSS総合精神病理下位尺度スコアの減少、例えば、ベースラインからのPANSS総合精神病理下位尺度スコアの少なくとも1、2、3、4、5、7または9(例えば、少なくとも9)の減少、またはベースラインからのPANSS総合精神病理下位尺度スコアの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、または20%の減少、または少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4または0.5(例えば、少なくとも0.51)のPANSS総合精神病理下位尺度スコアの効果量;
ベースラインからのCGI-Sスコアの減少、例えば、ベースラインからのCGI-Sスコアの少なくとも0.2、0.4、0.6、0.8または1(例えば、少なくとも1)の減少、またはベースラインからのCGI-Sスコアの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、または20%の減少、または少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4または0.5(例えば、少なくとも0.52)のCGI-Sスコアの効果量;
ベースラインからのBNSS合計スコアの減少、例えば、ベースラインからのBNSS合計スコアの少なくとも1、2、3、4、5、6または7(例えば、少なくとも7.1)の減少、またはベースラインからのBNSS合計スコアの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、または20%の減少、または少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4または0.45(例えば、少なくとも0.48)のBNSS合計スコアの効果量;および
ベースラインからのMADRS合計スコアの減少、例えば、ベースラインからのMADRS合計スコアの少なくとも0.5、1、1.5、2、2.5または3(例えば、少なくとも3.3)の減少、またはベースラインからのMADRS合計スコアの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、または20%の減少、または少なくとも0.1、0.2、または0.3(例えば、少なくとも0.32)のMADRS合計スコアの効果量。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記PANSS(合計またはサブスコア)、CGI-S、BNSS、またはMADRSスコアの減少は、29日の治療期間の後に測定される。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記スコアの減少は、30週の治療期間の後に測定される。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、(i)30週の治療後にベースラインからのPANSS合計スコアの少なくとも約30の減少;(ii)30週の治療後にベースラインからのPANSS陽性下位尺度スコアの少なくとも約10の減少;(iii)30週の治療後にベースラインからのPANSS陰性下位尺度スコアの少なくとも約5の減少;(iv)30週の治療後にベースラインからのPANSS総合精神病理下位尺度スコアの少なくとも約15の減少;(v)30週の治療後にベースラインからのCGI-Sスコアの少なくとも約1.5の減少;(vi)30週の治療後にベースラインからのBNSS合計スコアの少なくとも約10の減少;および/または(vii)30週の治療後にベースラインからのMADRS合計スコアの少なくとも約5の減少をもたらす。
【0069】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、治療期間、例えば、29日、26週、または30週の間に中止をもたらす有害事象の数を減少させる。例えば、いくつかの実施形態において、前記方法は、26週または30週の治療期間にわたって有害事象により治療を中止する患者の数を50%未満、40%未満または35%未満にする。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、統合失調症である。いくつかの実施形態において、前記患者は、統合失調症の急性増悪を起こす。いくつかの実施形態において、統合失調症の治療は、統合失調症の症状を寛解させることを含む。いくつかの実施形態において、統合失調症の治療は、統合失調症の陰性症状を治療することを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、パーキンソン病に伴う精神症状である。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、統合失調症スペクトラム障害、統合失調症陰性症状、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、妄想性障害、精神病、精神病性障害、譫妄、トゥレット症候群、心的外傷後ストレス障害、行動障害、情動障害、うつ病、双極性障害、大うつ病性障害、気分変調症、躁病、季節性情動障害、強迫性障害、ナルコレプシー、REM行動障害、物質濫用または依存、レッシュ・ナイハン病、ウィルソン病、自閉症、アルツハイマー病の焦燥性興奮および精神症状、またはハンチントン舞踏病である。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、統合失調症、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、シゾイドパーソナリティ障害、および統合失調型パーソナリティ障害から選択される。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、アルツハイマー病の焦燥性興奮および精神症状である。いくつかの実施形態において、前記患者は、認知症である。いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、認知症関連の精神症状である。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記精神病は、器質性精神病、薬剤性精神病、パーキンソン病に伴う精神症状、および興奮性精神病から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、双極性障害および双極性うつ病から選択される双極性障害である。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記患者は、少なくとも一つの定型抗精神病薬または少なくとも一つの非定型抗精神病薬である抗精神病薬に対して十分に反応しない。いくつかの実施形態において、前記患者は、抗精神病薬に対して十分に反応せず、前記抗精神病薬は、定型抗精神病薬または非定型抗精神病薬である。いくつかの実施形態において、前記患者は、抗精神病薬に対して十分に反応せず、前記抗精神病薬は、定型抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、チオリダジン、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、チオチキセン、ドロペリドール、フルペンチキソール、フルフェナジン、ハロペリドール、ピモジド、プロクロルペラジン、チオプロペラジン、トリフロペラジン、ズクロペンチキソール)または非定型抗精神病薬(例えば、アリピプラゾール、アセナピンマレイン酸塩、クロザピン、イロペリドン、ルラシドン、オランザピン、オランザピン/フルオキセチン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン)である。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記患者は、高齢者である。
【0079】
いくつかの実施形態において、神経学的または精神疾患または障害の治療は、前記神経学的または精神疾患または障害の症状を寛解させることを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記患者は、次のうちの一つ以上を特徴とする:
前記患者は、成人である;
前記患者は、少なくとも6か月の間、統合失調症と診断されている;
前記患者は、少なくとも2か月の間、精神病症状の急性増悪を経験している;
前記患者は、統合失調症の急性増悪の治療のために、過去に2回以下入院したことがある;
前記患者は、ベースラインのPANSS合計スコアが少なくとも80である;
前記患者は、ベースラインのPANSSスコアが、次のうちの二つ以上で少なくとも4である:妄想、概念の統合障害、幻覚による行動、および不自然な思考内容;並びに
前記患者は、ベースラインのCGI-Sスコアが少なくとも4である。
【0081】
いくつかの実施形態において、有害事象は、次のうちの一つ以上を指す:心血管有害事象(例えば、心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、ホットフラッシュ、QT延長、起立性低血圧、または起立性頻脈)、錐体外路系有害事象(例えば、アカシジア、不穏状態、関節硬直、筋骨格硬直、項部硬直、姿勢振戦、または振戦)、高プロラクチン血症、不眠症、不安、頭痛、統合失調症、傾眠、焦燥性興奮、悪心、下痢、および消化不良。
【0082】
D2ドーパミン受容体は、定型および非定型抗精神病薬の両方にとっての第一標的である。Wang et al. NATURE 555, 269~273(2018)。残念ながら、D2ドーパミン受容体を標的とする多くの薬物は、関連する受容体に対する無差別な活性により、重篤で命を脅かす恐れのある副作用を引き起こす。Wang et al. Nature 555, 269~273(2018)。D2ドーパミン受容体に対して親和性を持つ、現在利用可能な抗精神病薬には、定型抗精神病薬、例えばクロルプロマジン、クロルプロチキセン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、チオリダジン、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、チオチキセン、ドロペリドール、フルペンチキソール、フルフェナジン、ハロペリドール、ピモジド、プロクロルペラジン、チオプロペラジン、トリフロペラジンおよびズクロペンチキソールなど、並びに非定型抗精神病薬、例えばアリピプラゾール、アセナピンマレイン酸塩、クロザピン、イロペリドン、ルラシドン、オランザピン、オランザピン/フルオキセチン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドンなどが挙げられる。定型および非定型抗精神病薬に関連する有害事象には、心血管有害事象(例えば、心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、ホットフラッシュ、QT延長、起立性低血圧、または起立性頻脈)、錐体外路系有害事象(例えば、アカシジア、不穏状態、関節硬直、筋骨格硬直、項部硬直、姿勢振戦、または振戦)、および高プロラクチン血症、不眠症、不安、頭痛、統合失調症、傾眠、焦燥性興奮、悪心、下痢、ならびに消化不良が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記抗精神病薬に関連する有害事象は、FAERSを用いるEBGMランキングで定義されるような、クラスエフェクトの有害事象のうちのいずれか一つ以上である。いくつかの実施形態において、前記抗精神病薬に関連する有害事象は、次のうちのいずれか一つ以上である:高プロラクチン血症、血中プロラクチン異常、血中プロラクチン増加、乳汁漏出症、歯車様硬直、肥満、メタボリック症候群、アカシジア、顎口腔ジストニア、パーキンソニズム、流涎症、眼球回転発作、強迫性障害、筋硬直、2型糖尿病、糖尿病、過体重、パーキンソン病様歩行、舌の痙攣、遅発性ジスキネジア、動作緩慢、チック、精神運動発達遅延、錐体外路障害、遺尿症、耐糖能異常、唾液分泌過多、ジストニア、糖尿、不穏状態、斜頸、空腹時血糖異常、自症性皮膚症、肥満度指数上昇、多動、ウイルス性肝炎、ジスキネジア、血中トリグリセリド増加、心電図QT延長、睡眠異常、起立性高血圧、ブラキシズム、食欲亢進、瞬目過剰、慢性膵炎、体重増加、脂質異常症、下肢静止不能症候群、咬舌、または項部硬直。
【0084】
いくつかの実施形態において、化合物1は、高プロラクチン血症、血中プロラクチン異常、血中プロラクチン増加、乳汁漏出症、歯車様硬直、肥満、メタボリック症候群、アカシジア、顎口腔ジストニア、パーキンソニズム、流涎症、眼球回転発作、強迫性障害、筋硬直、2型糖尿病、糖尿病、過体重、パーキンソン病様歩行、舌の痙攣、遅発性ジスキネジア、動作緩慢、チック、精神運動発達遅延、錐体外路障害、遺尿症、耐糖能異常、唾液分泌過多、ジストニア、糖尿、不穏状態、斜頸、空腹時血糖異常、自症性皮膚症、肥満度指数上昇、多動、ウイルス性肝炎、ジスキネジア、血中トリグリセリド増加、心電図QT延長、睡眠異常、起立性高血圧、ブラキシズム、食欲亢進、瞬目過剰、慢性膵炎、体重増加、脂質異常症、下肢静止不能症候群、咬舌、または項部硬直のうちのいずれか一つ以上の有害事象のリスクを臨床的に有意に上昇させない。
【0085】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、D2ドーパミン受容体に対する直接親和性を持たない。本明細書に記載されるように(例えば、下記の実施例にあるように)、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、患者に投与される場合、D2ドーパミン受容体を標的とする定型または非定型抗精神病薬に関連する有害事象および重篤有害事象の高い発生率を引き起こさなかった。驚いたことに、本明細書の実施例に記載されるように(例えば、実施例1.1、実施例1.2)、化合物1は、強力な有効性を持っているにもかかわらず、プラセボに類似した有害事象プロファイルを有していた。特に、患者が経験する、心血管有害事象(QT延長、起立性低血圧、起立性頻脈など)、錐体外路系有害事象、高プロラクチン血症、不眠症、不安、および頭痛の発生率は、臨床的意義がなかった(すなわち、プラセボよりも小さい、と同じである、またはとほぼ同じである、もしくはと類似している)。
【0086】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、心血管有害事象を最小化する。いくつかの実施形態において、前記方法は、心血管有害事象を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記患者における前記心血管有害事象のリスクは、プラセボとほぼ同じであるか、または類似している。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の5%以下で心血管イベントをもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の4.2%以下で心血管有害事象をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、29日の治療期間の間、患者の5%以下(例えば、4.2%以下)で心血管有害事象をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、26週の治療期間の間、患者の6%以下(例えば、5.8%以下)で心血管イベントをもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、プラセボよりも1%大きいにすぎない割合で、患者に心血管有害事象をもたらす。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬の投与によって心血管有害事象のリスクが上昇する。いくつかの実施形態において、前記患者は、心血管疾患の既往歴がある。いくつかの実施形態において、前記患者は、以前の抗精神病薬療法による心血管有害事象の既往歴がある。いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬による心血管有害事象を起こしやすい。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記患者は、治療期間の間、心血管有害事象について積極的に監視されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、治療期間の間、心電図モニタリングにより監視されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、心血管有害事象について警告されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、心血管有害事象について同時に治療されない。
【0089】
いくつかの実施形態において、心血管有害事象は、心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、またはホットフラッシュとみなされる。いくつかの実施形態において、心血管有害事象は、心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、ホットフラッシュ、QT延長、起立性低血圧、または起立性頻脈とみなされる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、錐体外路系有害事象を最小化する。いくつかの実施形態において、前記方法は、錐体外路系有害事象を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記患者における前記錐体外路系有害事象のリスクは、プラセボとほぼ同じであるか、または類似している。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の5%以下で錐体外路系有害事象をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の3.3%以下で錐体外路系有害事象をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、29日の治療期間の間、患者の5%以下で錐体外路系有害事象をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、26週の治療期間の間、患者の5%以下(例えば、3.2%以下)で錐体外路系有害事象をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、プラセボより大きくない割合で、患者に錐体外路系有害事象をもたらす。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬の投与によって錐体外路系有害事象のリスクが上昇する。いくつかの実施形態において、前記患者は、以前の抗精神病薬療法による錐体外路系有害事象の既往歴がある。いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬による錐体外路系有害事象を起こしやすい。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記患者は、錐体外路系有害事象について警告されない。
【0093】
いくつかの実施形態において、錐体外路系有害事象は、アカシジア、不穏状態、関節硬直、筋骨格硬直、項部硬直、姿勢振戦、または振戦とみなされる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、QT延長を最小化する。いくつかの実施形態において、前記方法は、QT延長を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記患者における前記QT延長のリスクは、プラセボとほぼ同じであるか、または類似している。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の5%以下でQT延長をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の1%以下でQT延長をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、29日の治療期間の間、QT延長を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記方法は、プラセボより大きくない割合で、患者にQT延長をもたらす。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記患者は、抗精神病薬の投与によってQT延長のリスクが上昇する。いくつかの実施形態において、前記患者は、以前の抗精神病薬療法によるQT延長の既往歴がある。いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬によるQT延長を起こしやすい。いくつかの実施形態において、前記患者は、低カリウム血症、C型肝炎、HIV、心電図のT波異常があるか、女性であるか、高齢者であるか、またはQT延長のリスクを上昇させることが知られている第2の活性薬剤を服用している。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記患者は、QT延長について積極的に監視されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、QT延長ついて警告されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、QT延長について同時に治療されない。
【0097】
いくつかの実施形態において、QT延長は、次のうちの1つまたは両方とみなされる:
前記患者において、ベースラインで認められなかった450ミリ秒より大きいQTcF間隔が、任意の時点で認められる;および
少なくとも1回のベースライン後の測定において、QTcF間隔が、ベースラインから30ミリ秒以上増加する。
【0098】
いくつかの実施形態において、QT延長は、次のうちの1つまたは両方とみなされる:
前記患者が男性の場合、前記患者において、ベースラインで認められなかった450ミリ秒より大きいQTcF間隔が、任意の時点で認められるか、または前記患者が女性の場合、前記患者において、ベースラインで認められなかった470ミリ秒より大きいQTcF間隔が、任意の時点で認められる;および
少なくとも1回のベースライン後の測定において、QTcF間隔が、ベースラインから30ミリ秒以上増加する。
【0099】
いくつかの実施形態において、QT延長は、次のうちの1つまたは両方とみなされる:
前記患者が男性の場合、前記患者において、ベースラインで認められなかった450ミリ秒より大きいQTcF間隔が、任意の時点で認められるか、または前記患者が女性の場合、前記患者において、ベースラインで認められなかった470ミリ秒より大きいQTcF間隔が、任意の時点で認められる;および
少なくとも1回のベースライン後の測定において、QTcF間隔が、ベースラインから60ミリ秒以上増加する。
【0100】
心電図(ECG)のQTc間隔の延長は、トルサード・ド・ポアント、失神を引き起こすことがあり、心室細動および突然死に至る場合がある心室性不整脈の発生に関連することがある。健康な成人における平均QTc間隔は、およそ400ミリ秒である。500ミリ秒以上のQTc間隔は、トルサード・ド・ポアントの実質的な危険因子である見なされる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、高プロラクチン血症を最小化する。いくつかの実施形態において、前記方法は、高プロラクチン血症を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記患者における前記高プロラクチン血症のリスクは、プラセボとほぼ同じであるか、または類似している。いくつかの実施形態において、前記方法は、臨床的意義のある高プロラクチン血症のリスクがない。いくつかの実施形態において、前記方法は、29日の治療期間の間、高プロラクチン血症を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記方法は、26週の治療期間の間、高プロラクチン血症を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記方法は、プラセボより大きくない割合で、患者に高プロラクチン血症をもたらす。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬の投与によって高プロラクチン血症のリスクが上昇する。いくつかの実施形態において、前記患者は、以前の抗精神病薬療法による高プロラクチン血症の既往歴がある。いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬による高プロラクチン血症を起こしやすい。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記患者は、高プロラクチン血症について積極的に監視されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、高プロラクチン血症ついて警告されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、高プロラクチン血症について同時に治療されない。
【0104】
高プロラクチン血症は、プロラクチンの濃度の有意な上昇を指し、特定の抗精神病薬の投与の間に起こることが知られている。
【0105】
いくつかの実施形態において、前記方法の代謝効果は、プラセボと同じであるか、または類似しており、例えば、前記患者における総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリド、および/またはグルコース値は、プラセボと同じであるか、または類似している。いくつかの実施形態において、前記方法は、臨床的意義のある体重増加をもたらさない。
【0106】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、起立性低血圧を最小化する。いくつかの実施形態において、前記方法は、起立性低血圧を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記患者における前記起立性低血圧のリスクは、プラセボとほぼ同じであるか、または類似している。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の5%以下で起立性低血圧をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の4.2%以下で起立性低血圧をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、29日の治療期間の間、患者の5%以下で起立性低血圧をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、プラセボより大きくない割合で、患者に起立性低血圧をもたらす。
【0107】
いくつかの実施形態において、前記患者は、抗精神病薬の投与によって起立性低血圧のリスクが上昇する。いくつかの実施形態において、前記患者は、以前の抗精神病薬療法による起立性低血圧の既往歴がある。いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬による起立性低血圧を起こしやすい。
【0108】
いくつかの実施形態において、前記患者は、起立性低血圧について積極的に監視されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、起立性低血圧ついて警告されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、起立性低血圧について同時に治療されない。
【0109】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、起立性頻脈を最小化する。いくつかの実施形態において、前記方法は、起立性頻脈を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、前記患者における前記起立性頻脈のリスクは、プラセボとほぼ同じであるか、または類似している。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の5%以下で起立性頻脈をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者の4.2%以下で起立性頻脈をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、29日の治療期間の間、患者の5%以下で起立性頻脈をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、プラセボよりも2%大きいにすぎない割合で、患者に起立性頻脈をもたらす。
【0110】
いくつかの実施形態において、前記患者は、抗精神病薬の投与によって起立性頻脈のリスクが上昇する。いくつかの実施形態において、前記患者は、以前の抗精神病薬療法による起立性頻脈の既往歴がある。いくつかの実施形態において、前記患者は、ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持つ抗精神病薬による起立性頻脈を起こしやすい。
【0111】
いくつかの実施形態において、前記患者は、起立性頻脈について積極的に監視されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、起立性頻脈ついて警告されない。いくつかの実施形態において、前記患者は、起立性頻脈について同時に治療されない。
【0112】
化合物1は、非D2作用機序を有する抗精神病薬であり、精神病およびうつ病の動物モデルにおいて広い有効性を示す。下記の実施例にあるように、化合物1は、統合失調症の治療において有効性を示す。具体的には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア、PANSSサブスコア(陰性、陽性、総合精神病理)、臨床全般印象度・重症度(CGI-S)スコア、簡易陰性症状尺度(BNSS)合計スコア、およびMontgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの有効性指標それぞれが、化合物1で治療された、統合失調症の急性増悪を患っている患者において、(例えば、プラセボと比較して)改善を示した。
【0113】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示の方法は、次のうちの一つ以上をもたらす:
・ベースラインからのPANSS合計スコアの少なくとも17.2の減少;
・少なくとも0.45のPANSS合計スコアの効果量;
・ベースラインからのPANSS陽性下位尺度スコアの少なくとも5.5の減少;
・少なくとも0.32のPANSS陽性下位尺度スコアの効果量;
・ベースラインからのPANSS陰性下位尺度スコアの少なくとも3.1の減少;
・少なくとも0.37のPANSS陰性下位尺度スコアの効果量;
・ベースラインからのPANSS総合精神病理下位尺度スコアの少なくとも9の減少;
・少なくとも0.51のPANSS総合精神病理下位尺度スコアの効果量;
・ベースラインからのCGI-Sスコアの少なくとも1の減少;
・少なくとも0.52のCGI-Sスコアの効果量;
・ベースラインからのBNSS合計スコアの少なくとも7.1の減少;
・少なくとも0.48のBNSS合計スコアの効果量;
・ベースラインからのMADRS合計スコアの少なくとも3.3の減少;および/または
・少なくとも0.32のMADRS合計スコアの効果量。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、前記患者における不眠症、不安、または頭痛の症状を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記患者における不眠症、不安、頭痛、またはそれらの任意の組み合わせのリスクは、プラセボより小さい。いくつかの実施形態において、前記方法は、不眠症、不安、頭痛またはそれらの任意の組み合わせを最小化する。
【0115】
いくつかの実施形態において、前記症状は、不眠症である。いくつかの実施形態において、前記症状は、不安である。いくつかの実施形態において、前記症状は、頭痛である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、前記患者における眩暈を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記不眠症、不安、頭痛、統合失調症、傾眠、焦燥性興奮、悪心、下痢および消化不良のリスクは、個別でも群としても、臨床的意義がない(すなわち、プラセボよりも小さい、と同じである、またはとほぼ同じである、もしくはと類似している)。
【0116】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、4週の治療期間の間、毎日(例えば、1日1回)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、29日の治療期間の間、毎日(例えば、1日1回)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、1か月以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12月、または1、2、3、4もしくは5年;慢性的に、継続的に)にわたって、毎日(例えば、1日1回)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、夕方に、または夜に(例えば、1日1回夕方に、または夜に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、就寝時頃に(例えば、1日1回就寝時に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、夕方に、または夜の就寝時頃に(例えば、1日1回夕方に、または夜の就寝時に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、ほとんど同じ時間に毎日(例えば、ほとんど同じ時間に、毎夕または毎夜の就寝時頃)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、約10mgから約250mgまで、約10mgから約200mgまで、約10mgから約150mgまで、約10mgから約100mgまで、約25mgから約100mgまで、約25mg、約50mg、約75mgまたは約100mgの1日用量(例えば、1日の漸増用量、1日の治療用量)で投与される。
【0117】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することは、漸増期間および治療期間を含む。いくつかの例において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の第1の用量が、漸増期間の間投与され、続いて化合物1、またはその薬学的に許容される塩の治療用量が、治療期間の間投与される。いくつかの例において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の第2の用量は、漸増期間の間の第1の用量の後かつ治療期間の間に投与される治療用量の前に、投与される。第1の用量は、治療用量より少ないことがある。いくつかの例において、第1の用量は、1日あたり50mg、第2の用量は、投与される場合、75mg/日、治療用量は、1日あたり50mg、1日あたり75mgまたは1日あたり100mgである。いくつかの実施形態において、漸増期間は3日であり、続いて治療期間(例えば、4日目に始まり、例えば、29日目まで、6か月以上、例えば1年などの間続く)がある。いくつかの実施形態において、漸増期間は7日であり、続いて治療期間(例えば、8日目に始まり、例えば、29日目まで、6か月以上、例えば1年などの間続く)がある。7日間の漸増期間のいくつかの実施形態において、50mg/日の化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、1~3日目に投与され、75mg/日の化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、4~7日目に投与される。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記治療用量は、(例えば、100mg用量から75mg用量へ、75mg用量から50mg用量へ、50mg用量から25mg用量へ)漸減されることがある。いくつかの例において、75mg用量は、50mg用量へ減少されることがある。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、1日約25mgから1日約100mgまでの可変用量として(例えば、1日約25mg、1日約50mg、1日約75mgまたは1日約100mg)投与される。
【0119】
いくつかの実施形態において、患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に化合物1、またはその薬学的に許容される塩を、毎日第1の用量で1から3日間投与し、続いて、前記患者に化合物1、またはその薬学的に許容される塩を、毎日治療用量で投与することを特徴とし、前記第1の用量が、前記治療用量より少ない、方法が提供される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、毎日第1の用量で、1~3日目に投与され、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、毎日治療用量で、3日目以降に(例えば、4~29日目に)投与される。いくつかの実施形態において、前記第1の用量は、50mgであり、前記治療用量は、75mgである。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される(例えば、1日1回)。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、夕方に、または夜に(例えば、1日1回夕方に、または夜に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、就寝時頃に(例えば、1日1回就寝時に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、夕方に、または夜の就寝時頃に(例えば、1日1回夕方に、または夜の就寝時に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、ほとんど同じ時間に毎日(例えば、ほとんど同じ時間に、毎夕または毎夜の就寝時頃)投与される。
【0120】
いくつかの実施形態において、患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に1日50mgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法が提供される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、29日の治療期間の間、毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、6か月以上の期間(例えば、7、8、9、10、11もしくは12か月、または1、2、3、4もしくは5年)にわたって、毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、夕方に、または夜に(例えば、1日1回夕方に、または夜に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、就寝時頃に(例えば、1日1回就寝時に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、夕方に、または夜の就寝時頃に(例えば、1日1回夕方に、または夜の就寝時に)投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、ほとんど同じ時間に毎日(例えば、ほとんど同じ時間に、毎夕または毎夜の就寝時頃)投与される。
【0121】
いくつかの実施形態において、患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が:
前記患者に1日75mgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩を、治療期間の間経口投与すること、または投与したこと;
前記患者が治療期間の間、有害事象を経験したかどうかを判断すること、または判断したこと;
前記患者が治療期間の間、有害事象を経験する場合、投与量を1日50mgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩に減少させること、または減少させたこと
を特徴とする、方法が提供される。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記方法は、有害事象について、前記治療期間の間、前記患者を監視することをさらに特徴とする。
【0123】
いくつかの実施形態において、患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を経口投与し、前記患者において、単回投与の1~4時間後および複数回投与の2~4時間後に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の最大血漿中濃度を達成することを特徴とし、前記治療有効量が、1日50mgまたは75mgである、方法が提供される。
【0124】
いくつかの実施形態において、患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を経口投与し、患者において、7日以内に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の定常状態における血漿中濃度を達成することを特徴とし、前記治療有効量が、1日50mgまたは75mgである、方法が提供される。
【0125】
いくつかの実施形態において、統合失調症を有する患者における、不眠症、不安、または頭痛の症状の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記症状は、不眠症である。いくつかの実施形態において、前記症状は、不安である。いくつかの実施形態において、前記症状は、頭痛である。
【0126】
いくつかの実施形態において、患者における統合失調症に関連する、不眠症、不安、または頭痛の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法が提供される。
【0127】
いくつかの実施形態において、患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、患者における不眠症、不安、または頭痛、あるいはそれらの任意の組み合わせの発症率が、プラセボより低い、方法が提供される。
【0128】
いくつかの実施形態において、統合失調症を患っている患者におけるPANSS合計スコアを減少させる方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、(i)ベースラインからのPANSS合計スコアの少なくとも17.2の減少または(ii)少なくとも0.45のPANSS合計スコアの効果量をもたらす、方法が提供される。
【0129】
いくつかの実施形態において、統合失調症を患っている患者におけるCGI-Sスコアを減少させる方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、(i)ベースラインからのCGI-Sスコアの少なくとも1の減少または(ii)少なくとも0.52のCGI-Sスコアの効果量をもたらす、方法が提供される。
【0130】
いくつかの実施形態において、統合失調症を患っている患者におけるBNSS合計スコアを減少させる方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、(i)ベースラインからのBNSS合計スコアの少なくとも7.1の減少または(ii)少なくとも0.48のBNSS合計スコアの効果量をもたらす、方法が提供される。
【0131】
いくつかの実施形態において、統合失調症を患っている患者におけるMADRS合計スコアを減少させる方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、(i)ベースラインからのMADRS合計スコアの少なくとも3.3の減少または(ii)少なくとも0.32のMADRS合計スコアの効果量をもたらす、方法が提供される。
【0132】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物の一部として投与されることがある。本開示の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入により、局所的に、直腸に、経鼻的に、口腔内に、舌下に、経膣的にまたは埋め込み式リザーバーを介して投与されることがある。本明細書で使用されるとき、「非経口的な(parenteral)」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、経口、腹腔内または静脈内投与される。本開示の組成物の滅菌注射剤型は、水性懸濁液であっても油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当技術分野で既知の技術に従って製剤化されることがある。滅菌注射用製剤もまた、非毒性で、非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、滅菌注射溶液であっても懸濁液であってもよく、例えば、1,3-ブタンジオール溶液として、などである。
【0134】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的に許容される組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液などの、任意の経口的に許容される剤形で経口投与されることがある。
【0135】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、一つ以上の結合剤、増量剤、緩衝剤、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、粘度増強剤または粘度低下剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、味マスキング剤、香料剤、風味剤、希釈剤、艶出し剤、ポリマーマトリックスシステム、可塑剤および薬物の見栄えを上品にするか、または本開示の組成物を含む薬物もしくは医薬製品の製造に役立つ他の既知の添加物などの、一つ以上の薬学的に許容される添加剤を含む。当業者に周知の担体および添加剤の例は、例えば、Ansel, Howard C., et al., Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems. Philadelphia:Lippincott, Williams & Wilkins, 2004;Gennaro, Alfonso R., et al. Remington:The Science and Practice of Pharmacy. Philadelphia:Lippincott, Williams & Wilkins, 2000;and Rowe, Raymond C. Handbook of Pharmaceutical Excipients. Chicago, Pharmaceutical Press, 2005に詳細に記載される。
【0136】
いくつかの実施形態において、添加剤の非限定的な例には、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、天然および合成ゴム、例えばアカシアなど、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギネート、トラガカント末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えば、番号2208、2906、2910)、ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレイト、カオリン、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、syloidシリカゲル(AEROSIL200、メリーランド州ボルチモアW.R. Grace Co.が製造)、合成シリカの凝固エアロゾル(テキサス州プレイノDegussa Co.が販売)、CAB-O-SIL(マサチューセッツ州ボストンCabot Co.が販売する焼成二酸化ケイ素製品)、着色剤およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限らない。
【0137】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、既知で確立された慣例に従って、一つ以上の薬学的に許容される添加剤とともに製剤化される。それゆえ、いくつかの実施形態において、前記組成物は、液体、粉末、エリキシル剤、注射溶液、または懸濁液として製剤化される。
【0138】
いくつかの実施形態において、経口用製剤は、錠剤、カプレット、またはカプセルとして提供されてもよく、前記薬理活性成分は、不活性固体希釈剤とともに混合される。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記経口剤形は、固体経口剤形である。いくつかの実施形態において、前記固体経口剤形は、タブレットを含み、いくつかの実施形態において、前記固体経口剤形は、カプセルを含む。錠剤もまた、造粒および崩壊剤を包含してもよく、コーティングされていても、されていなくてもよい。
【0140】
いくつかの実施形態において、局所用製剤は、例えば、局所用溶液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、フォーム、パッチ、粉末、固体、スポンジ、テープ、蒸気、ペーストまたはチンキ剤として提供されてもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の適当な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量であろう。かかる有効用量は、一般に、本明細書に記載されるか、または当業者により理解されるような因子によって決まるであろう。一般に、患者にとっての、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口、静脈内および皮下用量は、1日あたり、体重1キログラムあたり約0.005mgから体重1キログラムあたり約5mgに及ぶであろう。いくつかの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、体重1キログラムあたり約0.125mgから体重1キログラムあたり約2.5mgに及ぶであろう。いくつかの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、体重1キログラムあたり約0.25mgから体重1キログラムあたり約2.5mgに及ぶであろう。いくつかの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、体重1キログラムあたり約0.125mgから体重1キログラムあたり約1.125mgに及ぶであろう。いくつかの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、約10mgから約300mgに及ぶであろう。もう一つの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、約20mgから約250mgに及ぶであろう。もう一つの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、約100mgから約300mgに及ぶであろう。もう一つの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、約10mgから約100mgに及ぶであろう。もう一つの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、約50mgから約75mgに及ぶであろう。もう一つの実施形態において、前記化合物1、またはその薬学的に許容される塩の経口用量は、1日あたり、約50mgから約200mgに及ぶであろう。上に列挙した用量範囲のそれぞれは、単一または複数単位の用量の製剤として製剤化される場合がある。
【0142】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、1日あたり約50mgまたは約75mgで投与される。
【0143】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記患者において、単回経口投与の1~4時間後および複数回経口投与の2~4時間後に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の最大血漿中濃度を達成する。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記患者において、単回経口投与の1~4時間後に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の最大血漿中濃度を達成する。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記患者において、複数回経口投与の2~4時間後に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の最大血漿中濃度を達成する。
【0144】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記患者において、7日以内に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩の定常状態における血漿中濃度を達成する
【0145】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、29日の治療期間の間、毎日投与される。
【0146】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載される疾患および障害を治療する、予防する、および/または管理する、一つ以上の第2の活性薬剤と組み合わせて使用されることがある。
【0147】
本開示のいくつかの実施形態は、患者に治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、神経学的および精神疾患および障害の治療方法を含有する。いくつかの実施形態は、前記疾患を予防または管理する治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、神経学的および精神疾患および障害の予防または管理方法を包含する。
【0148】
American Psychiatric Associationにより2013年に出版され、その後改正された、The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第5版(以下、「DSM-5」)は、様々な疾患および障害の診断について当業者が頼る、標準的な診断システムを提供する。
【0149】
本明細書で使用されるとき、「気分障害(mood disorder)」という用語は、うつ病、大うつ病、大うつ病性障害、軽度うつ病、精神病症状を伴わない重度うつ病、精神病症状を伴う重度うつ病、メランコリア(以前は内因性うつ病)、非定型うつ病、気分変調性障害、躁うつ病、双極性障害、双極性うつ病、双極I型障害、双極II型障害、双極III型障害、気分循環性障害、および慢性軽躁病を包含する。
【0150】
精神障害は、認知、感情もしくは気分、または最も統合的な行動の態様の異常を引き起こす特定可能な症状により特徴づけられる、脳の病態である。これらの障害は、症状の重症度、持続時間、および機能障害が様々である場合がある。精神障害は、世界中で何百万もの人々を苦しめ、多大な人的被害および生産性損失による経済的負担を引き起こす。気分障害は、精神障害の一種であり、広汎性気分障害、精神運動機能障害、および自律神経症状により特徴づけられる単極性(抑うつの)および双極性(躁うつ病の)障害などの、異種性で、通常再発性の疾患群としばしば定義される。気分障害の患者における最も重篤な合併症である自殺は、気分障害を有する未治療患者の15から25%で死因となっており、認識されていないまたは治療が不十分なうつ病は、全ての自殺既遂の50から70%で一因となる。
【0151】
いくつかの実施形態において、前記神経学的障害は:うつ病(例えば、大うつ病性障害または気分変調症);双極性障害、季節性情動障害;認知障害;線維筋痛症;疼痛(例えば、神経障害性疼痛);精神疾患により生じる睡眠障害などの睡眠関連障害(例えば、睡眠時無呼吸、不眠症、ナルコレプシー、カタプレキシー);慢性疲労症候群;注意欠陥障害(ADD);注意欠陥多動性障害(ADHD);下肢静止不能症候群;統合失調症;不安(例えば、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害);強迫性障害;心的外傷後ストレス障害;季節性情動障害(SAD);月経前不快気分;閉経後の血管運動症状(例えば、ホットフラッシュ、寝汗);神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病および筋萎縮性側索硬化症);躁病;気分変調性障害;気分循環性障害;肥満;および物質濫用または依存(例えば、コカイン嗜癖、ニコチン嗜癖)である。もう一つの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、例えば、精神病およびうつ病など、合併している二つ以上の疾患/障害の治療、予防、および/または管理に有用である。
【0152】
神経学的障害もまた、これらに限らないが、老人性認知症、アルツハイマー型認知症、認知、記憶障害、健忘症/健忘症候群、てんかん、意識障害、昏睡、注意力低下、発話障害、レノックス症候群、自閉症、および多動症候群などの脳機能障害を包含する。
【0153】
いくつかの実施形態において、本開示の方法が治療する前記疾患または障害は、気分障害、双極性障害(BPD)、双極性うつ病、睡眠障害、REM行動障害、精神病障害、焦燥性興奮および/または精神病を伴うアルツハイマー病、パーキンソン病に伴う精神症状、統合失調症、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、および統合失調感情障害のうちの一つ以上を含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、気分障害、双極性障害(BPD)、双極性うつ病、睡眠障害、REM行動障害、精神病障害、焦燥性興奮および/または精神病を伴うアルツハイマー病、パーキンソン病に伴う精神症状、統合失調症、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、および統合失調感情障害のうちの一つ以上である。
【0155】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、統合失調症(妄想型、解体型、緊張型または未分化型)、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、精神感情障害、攻撃性、譫妄、パーキンソン精神病、興奮性精神病、全身症状による精神病性障害、物質誘発性または薬剤誘発性(例えば、フェンシクリジン、ケタミンおよび他の解離性麻酔薬、アンフェタミンおよび他の精神刺激薬ならびにコカイン)精神病障害、情動障害に関連する精神病、短期反応精神病、統合失調性精神病、「統合失調症スペクトラム」障害、例えばシゾイドまたは統合失調型パーソナリティ障害など、または統合失調症ならびに他の精神病の両方の、陽性、陰性、および認知症状;急性ストレス障害、広場恐怖症、全般性不安障害、強迫性障害、パニック発作、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、分離不安障害、社会恐怖症、限局性恐怖症、物質誘発性不安障害および全身症状による不安などの不安障害;物質関連障害および常習行為(物質誘発性譫妄、持続性認知症、持続性健忘障害、精神病性障害または不安障害;耐性、依存またはアルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入剤、ニコチン、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静薬、睡眠薬または抗不安薬などの物質からの離脱など);並びに焦燥性興奮および/または精神病を伴うアルツハイマー病などの、精神病(例えば大うつ病、躁うつ(双極性)障害、アルツハイマー病および心的外傷後ストレス症候群など)に関連する疾患を含む、精神病から選択される。
【0156】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、これらに限らないが、単極性うつ病、季節性うつ病、産後うつ病、非定型うつ病、緊張性うつ病、老人性うつ病、内因性うつ病、メランコリー型うつ病、周産期うつ病、場面性うつ病、慢性うつ病、双極性うつ病、大うつ病性障害(MDD)、混合性の特徴を持つ大うつ病性障害(MDD-MF)、治療抵抗性うつ病(TRD)、および気分変調症などのうつ病性障害から選択され、抑うつ気分(悲しみ)、集中力低下、不眠症、倦怠感、食欲障害、過度の罪悪感および自殺念慮、月経前症候群(PMS)および月経前不快気分障害(PDD)、全身症状による気分障害、並びに物質誘発性気分障害に関連する。
【0157】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、これらに限らないが、双極性うつ病、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、物質/医薬品誘発性双極性障害および関連障害、別の医学的疾患による双極性障害および関連障害、他の特定される双極性障害および関連障害、および特定不能の双極性障害および関連障害などの双極性障害から選択される。
【0158】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、これらに限らないが、肥満、神経性過食症、異食症および強迫性摂食障害などの摂食障害を含む、摂食障害から選択される。
【0159】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、これらに限らないが、不眠症、睡眠障害(disturbed sleep)、時差ぼけ、過眠症、カタプレキシー、睡眠時無呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸、REM睡眠行動障害、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、概日リズム睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠時遊行症、夜驚症、夜尿症、レム睡眠行動障害、交代勤務睡眠障害、日中の過剰な眠気、非24時間睡眠覚醒障害、睡眠麻痺およびナルコレプシーなどの睡眠障害(sleep disorder)から選択される。
【0160】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、双極性障害である。双極性障害(双極I型および双極II型の両方を含む)は、人口のおよそ2%の有病率があり、男女どちらも同様に罹患する重篤な精神障害である。それは、高揚した気分(すなわち、躁)と抑うつ気分の間を循環することを特徴とする再発寛解型の疾患であり、大うつ病性障害および統合失調症などの他の障害と区別される。
【0161】
双極I型は、完全な躁病エピソードの発生によって定義されるが、大半の人は、重度のうつ病を経験する。躁病の症状には、高揚したまたは怒りっぽい気分、多動、誇大的態度、睡眠欲求の減少、競い合ういくつもの考え、および、ある場合には精神病が挙げられる。うつ病エピソードは、快感消失、悲しい気分、絶望、低い自尊心、集中力の減退および嗜眠を特徴とする。双極II型は、大うつ病エピソードおよび軽躁病(比較的軽度の躁病)エピソードの発生と定義されるが、患者は、相当に多くの時間をうつ状態で過ごす。他の関連疾患には、気分循環性障害が挙げられる。
【0162】
双極II型障害において、うつ病エピソードは、軽躁病(比較的軽度で、非精神病性の期間、通常1週間未満)と交互に起こる。軽躁病期の間、気分は明るくなり、睡眠欲求は減少し、精神運動活動は患者の通常のレベルを超えて加速する。しばしば、切り換えは、概日性の因子によって誘発される(例えば、うつ状態で就寝し、軽躁状態で早朝に覚醒する)。過眠および過食は、特有であり、季節的に(例えば、秋または冬に)再発することがある;不眠および食欲不振は、うつ病相の間に起こる。いくらかの人にとって、軽躁病期は、高い活力、自信、および通常以上の社会的機能を伴うので、適応的である。心地よい気分の高まりを経験する多くの患者は、通常うつ病の終わりに、特に質問されない限りそのことを報告しない。
【0163】
大うつ病エピソードおよび双極性障害の家族歴を有する患者(非公式に双極III型と呼ばれる)は、しばしばわずかな軽躁傾向を示し;その気質は、発揚(すなわち、意欲的、野心的、および成果志向)と呼ばれる。
【0164】
気分循環性障害において、比較的軽度な軽躁および小うつ病期間は、不規則な経過をたどり、各期間は、2、3日続く。気分循環性障害は、一般に双極II型障害の前兆である。しかし、それは、大気分障害による悪化を伴わない極度の不機嫌としてもまた起こり得る。そのような場合には、低い自信および睡眠の増加を伴う遅滞性うつ病(retarded depression)の短期周期が、高揚感または熱意の上昇および睡眠不足と交互に起こる。別の型において、軽度うつ病の特徴が優勢である;いかに簡単に高揚感または易怒性が、抗うつ剤によって誘発されるかにより、双極性傾向が主に示される。臨床的にまず見られない型である慢性軽躁病において、高揚期間が優勢であり、睡眠時間が習慣的に6時間未満に減少する。この型を有する人は、常に、過度に快活で、自信があり、過度に活動的で、予定でいっぱいであり、先のことを考えておらず、過度に夢中になり、干渉的であって;落ち着きのない衝動で駆け寄り、人に話しかける。
【0165】
したがって、いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、他の特定される双極性障害および関連障害、または特定不能の双極性障害および関連障害、並びに、不安性の苦痛の特定用語を伴うか、混合性の特徴を伴うか、急速交代型であるか、メランコリアの特徴を伴うか、非定型の特徴を伴うか、気分に一致する精神病性の特徴を伴うか、気分に一致しない精神病性の特徴を伴うか、緊張病を伴うか、周産期発症か、および/または季節型である、双極I型障害または双極II型障害のうちの一つ以上である。Huらによる最近の論文[Prim Care Companion CNS Disord. 2014;16(2):PCC.13r01599]は、双極性障害は、通常、プライマリケアの状況で直面するが、しばしば誤診されるか、または診断されないということを強調する。DSM-5は、症候群に至らない混合症状を伴う患者の大部分を、特定用語の混合を含めることで把握しようと試みる。
【0166】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、うつ病性障害である。うつ病性障害には、これらに限らないが、単極性うつ病、季節性うつ病、産後うつ病、非定型うつ病、緊張性うつ病、老人性うつ病、内因性うつ病、メランコリー型うつ病、周産期うつ病、場面性うつ病、慢性うつ病、双極性うつ病、大うつ病性障害(MDD)、混合性の特徴を持つ大うつ病性障害(MDD-MF)、治療抵抗性うつ病(TRD)、および気分変調症が挙げられ、抑うつ気分(悲しみ)、集中力低下、不眠症、倦怠感、食欲障害、過度の罪悪感および自殺念慮、月経前症候群(PMS)および月経前不快気分障害(PDD)、全身症状による気分障害、並びに物質誘発性気分障害と関連する。
【0167】
うつ病は情動障害であり、その病因は、任意の単一の原因または理論で説明できない。残念ながら、抗うつ剤による治療に対して最適以下の臨床反応を示すうつ病患者にとっての治療選択肢は、限られている。抗うつ剤治療を開始した患者のおよそ30パーセント(30%)が、うつ病を治療するのに通常使用される第一選択の抗うつ剤に対して、最適以下のまたは遅延性の臨床反応を示す。
【0168】
通常、患者が抗うつ剤による治療の数週間後に、最適以下のまたは遅延性の臨床反応を示す場合、臨床医の最初の手段は、抗うつ剤の投与量を増やすことである。患者の応答が投与量の増加後も不満足のままである場合、多くの臨床医が推進するであろう最も一般的な手段は:a)別の抗うつ剤に切り換える;またはb)第2の抗うつ剤を追加する;またはc)炭酸リチウム、甲状腺ホルモン(トリヨードチロニン)、精神刺激薬、モダフィニル、非定型抗精神病薬、ブスピロン、またはピンドロールなどの薬剤を投与することによる増強療法を試みることである。
【0169】
その完全な症候群性の発現において、臨床的うつ病は、挿間性の経過を伴い、残存する症状の程度がエピソード間で様々である、大うつ病性障害として現れる。気分は、一般に、憂うつ、怒りっぽい、および/または不安である。患者は、顔をしかめ、口角が下がり、姿勢がうなだれ、アイコンタクトが乏しく、会話が短くてそっけなく(または無く)、悲惨に見えることがある。病的な気分は、罪悪感への没入、自虐的発想、集中力の低下、優柔不断、日常活動に対する興味の減退、引きこもり、無力感、絶望、並びに死および自殺についての反復的思考を伴うことがある。睡眠障害は一般的である。場合によって、病的な気分は、涙が枯れるほど深く;患者は、通常の感情-悲嘆、歓喜、および満足など-を抱くことができないこと、並びに世界が無色で、活気がなく、死んでいるようになったという感覚を訴える。
【0170】
メランコリア(以前は内因性うつ病)は、著しい精神運動遅滞(思考および活動の)または精神運動性激越(例えば、不穏状態、両手をもみ合わせる、談話心迫)、体重減少、不合理な罪悪感、および喜びを経験する能力の喪失を特徴とする。気分および活動は、毎日変化し、朝に最低の状態となる。大半のメランコリアの患者は、なかなか寝付けないこと、何度も目覚めること、および真夜中または早朝に眠れないことを訴える。性的欲求は、しばしば減退するか、または消失する。無月経症が起こり得る。摂食障害および体重減少は、るい痩および二次的な電解質バランスの異常をもたらす場合がある。
【0171】
非定型うつ病において、非定型の植物症状が、臨床症状を支配しており;それらには、不安恐怖症的症状、夕方の悪化、初期不眠症、しばしば日中に及ぶ過眠症、および体重増加を伴う過食症が挙げられる。メランコリアの患者とは異なり、非定型うつ病の患者は、潜在的に肯定的な出来事に対して明るくする気分を示すが、しばしばちょっとした不運で麻痺を伴ううつ病に衝突する。非定型うつ病性障害および双極II型障害は、かなり重複する。
【0172】
気分変調性障害において、抑うつ症状は、一般に、小児期または青年期に潜行性に発症し、何年または何十年にもわたって間欠性のまたは軽度の経過をたどり;大うつ病エピソードがそれを悪化させる(二重うつ病)。純型気分変調症において、抑うつ症状は、閾値下レベルで生じ、抑うつ気質の症状:常に暗い、悲観的、ユーモアを解さない、または楽しむことができない;受動的で嗜眠状態である;内向的;懐疑的、酷評的、または不満を言う;自己批判的で、自責的で、自己軽蔑的;並びに不足、失敗、および否定的な出来事に気を取られるとかなり重複する。
【0173】
うつ病を抱える多くの人たちの徹底的な評価は、双極性の特性を明らかにし、うつ病性障害を抱える患者の5人に1人もが、明らかな軽躁病または躁病も発症する。大半の単極性障害から双極性障害への転換は、抑うつ症状の発症の5年以内に起こる。転換の予測因子には、うつ病の早期発症(25歳未満)、産後うつ病、高頻度のうつ病のエピソード、身体療法(例えば、抗うつ剤、光線療法、睡眠剥奪、電気痙攣療法)により急速に気分が明るくなる、および連続3世代にわたる気分障害の家族歴が挙げられる。
【0174】
エピソード間で、双極性障害の患者は、抑うつ気分および時々精力的な活動を示し;双極性うつ病における発達的機能および社会的機能の障害は、単極性障害においてよりも多く見られる。双極性障害では、単極性障害に比べて、うつ病エピソードはより短く(3から6か月)、発症年齢はより若く、エピソードの発症はより突然で、周期(あるエピソードの発症から次のエピソードの発症までの時間)はより短い。周期性は、双極性障害の急速交代型(通常1年あたり4回以上のエピソードと定義される)で特に顕著である。さらに、双極性障害におけるうつ病エピソードは、治療するのが困難なBPDの構成要素である。例えば、精神科医は、双極性障害の全患者の約25%が、躁病エピソードの間難治性である一方、約70%が、うつ病エピソードの間難治性であることを示す。
【0175】
したがって、いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、双極性うつ病、大うつ病性障害(MDD)、持続性抑うつ障害(気分変調症)、月経前不快気分障害(PMDD)、混合性の特徴を持つ大うつ病性障害(MDD-MF)、別の医学的疾患によるうつ病性障害、他の特定されるうつ病性障害、特定不能のうつ病性障害、または治療抵抗性うつ病(TRD)、および不安性の苦痛の特定用語を伴うか、混合性の特徴を伴うか、メランコリアの特徴を伴うか、非定型の特徴を伴うか、気分に一致する精神病性の特徴を伴うか、気分に一致しない精神病性の特徴を伴うか、緊張病を伴うか、周産期発症か、および/または季節型である、MDD、並びに季節性情動障害のうちの一つ以上である。
【0176】
TRDは、少なくとも2つの抗うつ剤による適切な治療に対して十分に反応しない大うつ病性障害(MDD)の症例を説明するために、精神科で使用される用語であるということが理解されるべきである。
【0177】
いくつかの実施形態において、うつ病性障害は、急性の自殺傾向または自殺念慮を伴う。米国食品医薬品局は、抗うつ剤が、MDDなどのうつ病性障害を抱える何人かの小児、青年およびヤングアダルト(24歳以下)において、自殺念慮および自殺行動のリスクを上昇させる場合があることを示す「黒枠」のラベル警告を採用している。いくつかの実施形態において、本開示の組成物および方法は、うつ病性障害、例えばMDDを抱える小児、青年および/またはヤングアダルトにおいて、自殺念慮および/または自殺行動のリスクを上昇させない。いくつかの実施形態において、本開示は、自殺念慮および/または自殺行動のリスクを上昇させない、小児、青年および/またはヤングアダルトにおけるうつ病性障害(例えば、MDD)のうちの一つ以上の症状を治療するための薬物および治療方法を提供する。
【0178】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、統合失調症である。統合失調症は、原因不明の障害であり、通常、成人早期に初めて発症し、特性、例えば精神病症状、段階的進行および発達、並びに/または社会的行動および職務上の能力の低下などを特徴とする。特徴的な精神病症状は、思考内容の障害(例えば、多重な、断片的な、支離滅裂な、信じがたいもしくは単に妄想的な内容、または迫害観念)および知能の障害(例えば、連想の消失、想像の飛躍、理解不能に至るまでの思考散乱)、並びに知覚(例えば、幻覚)、感情(例えば、うわべだけの感情または無力感)、自己認識、意志、衝動、および/または対人関係の障害、ならびに精神運動障害(例えば、緊張病)である。他の症状もまた、この障害に関連する。統合失調症は、いくつかのサブグループに分類される;妄想型、妄想および幻覚を特徴とし、思考障害、解体した行動、および感情の平板化がない;解体型、「破瓜型統合失調症」とも呼ばれ、思考障害および感情の平板化が共存している;緊張型、顕著な精神運動障害が明らかであり、症状として、緊張病性昏迷および蝋屈症が挙げられる;並びに未分化型、精神病症状はあるが、妄想型、解体型、または緊張型の基準を満たしていない。統合失調症の症状は、通常、3つの広いカテゴリー:陽性、陰性および認知症状として現れる。陽性症状は、「過度」の正常な体験、例えば幻覚および妄想などを示す症状である。陰性症状は、患者が、正常な体験の欠如、例えば快感消失および社会的相互作用の欠如などに苦しむ症状である。認知症状は、統合失調症患者の認知機能障害、例えば持続的注意の欠如および意思決定の欠如などに関する。
【0179】
したがって、いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、統合失調型(パーソナリティ)障害、妄想性障害、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調症、統合失調感情障害、物質/医薬品誘発性精神病性障害、別の医学的疾患による精神病性障害、他の特定される統合失調症スペクトラムおよび他の精神病性障害、特定不能の統合失調症スペクトラム、並びに他の精神病性障害のうちの一つ以上である。
【0180】
統合失調感情障害は、統合失調症および、例えば大うつ病性障害、双極性障害などの気分障害の両方の側面が含まれる疾患を包含することが理解されるべきである。
【0181】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、不安障害である。不安障害は、恐怖、心配、および不安を特徴とし、通常、全般性であり、状況に対する過剰反応として焦点が定まらない。不安障害は、恐怖、不安、または回避行動を誘発する状況または対象の種類、および関連する認知的観念が異なる。不安は、認知される将来的な脅威に対する感情的な反応である一方、恐怖は、認知されるかまたは現実の差し迫った脅威に関連するという点で、不安は恐怖とは異なる。それらは、関連する思考または信念の内容も異なる。不安障害の例には、分離不安障害、選択性緘黙、限局性恐怖症、社会不安障害(社会恐怖症)、パニック障害、パニック発作特定用語、広場恐怖症、全般性不安障害、物質/医薬品誘発性不安障害、別の医学的疾患による不安障害、病気不安症、社会的(語用論的)コミュニケーション障害、他の特定される不安障害、および特定不能の不安障害;並びに、反応性アタッチメント障害、脱抑制型対人交流障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害、および適応障害などのストレス因関連障害が挙げられる。
【0182】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、精神状態によってもたらされる睡眠障害を包含する睡眠障害であり、不眠症、睡眠障害(disturbed sleep)、時差ぼけ、過眠症、カタプレキシー、睡眠関連障害(例えば、睡眠時無呼吸、不眠症、ナルコレプシー、カタプレキシー)、閉塞性睡眠時無呼吸、REM睡眠行動障害、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、概日リズム睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠時遊行症、夜驚症、夜尿症、レム睡眠行動障害、交代勤務睡眠障害、日中の過剰な眠気、非24時間睡眠覚醒障害、睡眠麻痺およびナルコレプシーが挙げられるが、これらに限らない。
【0183】
いくつかの実施形態において、前記神経学的または精神疾患または障害は、社会的機能障害である。いくつかの実施形態において、前記社会的機能障害は、神経発達障害、強迫性障害または秩序破壊的・衝動制御・素行症である。いくつかの実施形態において、前記社会的機能障害は、言語障害、語音障害、小児期発症流暢障害(吃音)、社会的コミュニケーション障害、発達性協調運動障害、常同運動障害、チック障害、トゥレット障害、持続性(慢性)運動または音声チック障害、暫定的チック障害、別の特定されるチック障害、特定不能のチック障害、強迫性障害、または衝動制御障害である。いくつかの実施形態において、前記社会的機能障害は、言語障害、語音障害、小児期発症流暢障害(吃音)、社会的コミュニケーション障害、発達性協調運動障害、常同運動障害、チック障害、トゥレット障害、持続性(慢性)運動または音声チック障害、暫定的チック障害、別の特定されるチック障害、または特定不能のチック障害である。いくつかの実施形態において、前記社会的機能障害は、言語障害、語音障害、小児期発症流暢障害(吃音)、または社会的コミュニケーション障害である。いくつかの実施形態において、前記社会的機能障害は、言語障害、小児期発症流暢障害(吃音)、社会的コミュニケーション障害、発達性協調運動障害、常同運動障害、持続性(慢性)運動または音声チック障害、暫定的チック障害、他の特定されるチック障害、または特定不能のチック障害である。
【0184】
併用療法
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、一つ以上の医薬剤と併用して本明細書に開示される化合物を投与することを特徴とする、本明細書に記載される神経学的および/または精神疾患または障害の治療方法を提供する。本発明の化合物と組み合わせて使用されることがある適当な医薬剤には、抗パーキンソン薬、抗アルツハイマー薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗虚血薬、CNS抑制薬、抗コリン作用薬、向知性薬、抗てんかん薬、注意力を高める(例えば、抗ADD/ADHD)薬、睡眠促進薬、覚醒促進薬、および鎮痛薬が挙げられる。
【0185】
適当な抗パーキンソン薬には、ドーパミン補充療法(例えばL-DOPA、カルビドパ、COMT阻害剤、例えばエンタカポンまたはトルカポンなど)、ドーパミンアゴニスト(例えばD1アゴニスト、D2アゴニスト、D1/D2混合アゴニスト、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、ロピニロール、プラミペキソール、ピリベジル、またはドンペリドンと併用のアポモルヒネ)、ヒスタミンH2アンタゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えばセレギリン、ラサギリン、サフィナミドおよびトラニルシプロミンなど)、ピマバンセリン(非ドーパミン系の非定型抗精神病薬であり、セロトニン5-HT2A受容体のインバースアゴニスト)などの特定の非定型抗精神病薬、およびアマンタジンが挙げられる。
【0186】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、レボドパ(カルビドパまたはベンセラジドなどの選択的脳外脱炭酸酵素阻害剤と併用してもしなくてもよい)、抗コリン作用薬、例えばビペリデン(適宜その塩酸塩または乳酸塩として)およびトリヘキシフェニジル(ベンズヘキシル(benzhexyl))塩酸塩など、COMT阻害剤、例えばエンタカポンまたはトルカポンなど、MAO A/B阻害剤、抗酸化剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作用薬、NMDA受容体アンタゴニスト、セロトニン受容体アンタゴニスト並びにドーパミン受容体アゴニスト、例えばアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリドおよびプラミペキソールなどと組み合わせて使用され得る。ドーパミンアゴニストは、薬学的に許容される塩の形態、例えば、アレンテモール臭化水素酸塩、ブロモクリプチンメシル酸塩、フェノルドパムメシル酸塩、ナキサゴリド塩酸塩およびペルゴリドメシル酸塩である場合があることが理解されるであろう。リスリドおよびプラミペキソールは、通常、塩でない形態で使用される。
【0187】
適当な抗アルツハイマー薬には、ベータ-セクレターゼ阻害剤、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、ガランタミンまたはリバスチグミンなど、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、イブプロフェンなどのNSAID’s、ビタミンE、および抗アミロイド抗体が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗アルツハイマー薬は、メマンチンである。
【0188】
適当な抗うつ薬および抗不安薬には、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(第3級アミン三環系抗うつ薬および第2級アミン三環系抗うつ薬など)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOIs)、可逆性モノアミンオキシダーゼ阻害剤(RIMAs)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRIs)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)アンタゴニスト、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、ニューロキニン-1受容体アンタゴニスト、非定型抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、5-HT1Aアゴニストまたはアンタゴニスト、特に5-HT1Aパーシャルアゴニスト、並びに副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)アンタゴニストが挙げられる。
【0189】
具体的な、適当な抗うつ薬および抗不安薬には、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミンおよびトリミプラミン;アモキサピン、デシプラミン、シタロプラム、エスシタロプラム、マプロチリン、ノルトリプチリンおよびプロトリプチリン;フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリン;イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミンおよびセレギリン;モクロベミド:ベンラフェキシン;デスベンラファキシン、デュロキセチン;アプレピタント;ブプロピオン、ビラゾドン、ミルタザピン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドンおよびビロキサジン;アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸(chlorazepate)、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパムおよびプラゼパム;ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロンおよびイプサピロン、レボキセチン、ボルチオキセチン、クロラゼプ酸、およびケタミン並びにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。いくつかの実施形態において、適当な抗うつ薬および抗不安薬は、チアネプチン、またはその薬学的に許容される塩である。
【0190】
適当な抗精神病薬および気分安定薬には、D2アンタゴニスト、5HT2Aアンタゴニスト、非定型抗精神病薬、リチウム、および抗痙攣薬が挙げられる。
【0191】
具体的な、適当な抗精神病薬および気分安定薬には、クロルプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドール、アミスルプリド、ペルフェナジン、チオリダジン、トリフロペラジン、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、オランザピン、パリペリドン、ブレクスピプラゾール、パリペリドン、カリプラジン、ピマバンセリン、イロペリドン、ルマテペロン、MIN-101、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、ルラシドン、フルペンチキソール、レボメプロマジン、ペリシアジン(pericyazine)、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、ズクロペンチキソール、オランザピンおよびフルオキセチン、リチウム、カルバマゼピン、ラモトリジン、バルプロ酸、イロペリドン、チオチキセン、ギャバペンチン、チアギャビンおよびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0192】
適当な抗てんかん薬には、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、クロバザム、レチガビン、ゾニサミド、フェルバメート、エスリカルバゼピン酢酸エステル(esclicarbazepine acetate)、ラコサミド、カルバマゼピン、チアギャビン、メトスクシミド、プロガビド、バルプロ酸、ラモトリジン、ブリバラセタム、ルフィナミド、トピラメートおよびペランパネルが挙げられる。
【0193】
適当な注意力を高める薬には、メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン、D-アンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルアンフェタミン、およびクロニジンが挙げられる。
【0194】
適当な睡眠促進薬には、ラメルテオン、トリアゾラム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゾルピデム、テマゼパム、およびトラゾドンが挙げられる。
【0195】
適当な覚醒促進薬には、モダフィニル、D-アンフェタミン、カフェイン、およびアルモダフィニルが挙げられる。
【0196】
適当な鎮痛薬には、デキストロメトルファン、タペンタドール、ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、ナロキセゴール、オキシコドン、トラマドール、ガバペンチル(gabapentil)、ジフルプレドナート、プレガバリン、アセチルサリチル酸(acetyl salicyclic acid)、ブロムフェナク、ジクロフェナク、ジフルニサル、インドメタシン、ケトロラク、メオキシカン(meoxican)、およびナプロキセンが挙げられる。
【0197】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物および組成物は、他の治療法と組み合わせて使用される場合がある。適当な治療法には、精神療法、認知行動療法、電気痙攣療法、経頭蓋磁気刺激療法、迷走神経刺激療法、および脳深部刺激療法が挙げられる。
【実施例
【0198】
実施例1.1:4週臨床試験
【0199】
化合物1を、統合失調症を有する急性精神病の成人対象で、4週間の無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照可変用量多施設試験で評価し、その有効性および安全性を調査した。18から40歳(両端含む)の入院患者(男性および女性)が、組み入れ基準に合う場合、登録対象となった。組み入れ基準には、以下が含まれる:
1.対象が、臨床面接によって確証される(DSM-5を参考にし、SCID-CTを用いて確認する)統合失調症のDSM-5基準に合い、治療を受けているか未治療であるかにかかわらず、罹患期間が6か月以上であった
2.対象が、スクリーニングおよびベースライン(1日目)で4以上のCGI-Sスコア(中等度以上)であった
3.対象が、スクリーニングおよびベースライン(1日目)で80以上のPANSS合計スコア、および以下のPANSS項目:妄想、概念の統合障害、幻覚および不自然な思考内容のうちの2つ以上で4以上のPANSS項目スコアであった
4.(i)一つ以上の領域、例えば職業的、社会的、または身の回りの世話、すなわち衛生状態などにおける機能の顕著な悪化;および(ii)スクリーニング時に、精神病の急性増悪のために入院を必要としていること、またはスクリーニングの直前に連続2週間以下の間、精神病の急性増悪を治療する目的で入院していることからも明らかなように、対象が精神病症状の急性増悪を(2か月以下の間継続して)経験していた
5.対象が、統合失調症の急性増悪の治療のために、以前に2回以下入院した(現在の入院を含めない)
6.ベースラインで、対象が、SASで5未満の合計スコアであった
【0200】
患者は、以下の除外基準のうちのいずれかに合った場合、研究から除外された:
1.対象が、スクリーニング期間中(過去1か月)および/またはベースラインで、C-SSRS評価における自殺念慮の項目4(積極的な自殺念慮、実行する意思あり、具体的な計画はなし)または項目5(自殺念慮、具体的な計画および意思あり)に「はい」と回答した
2.対象が、以前に化合物1の治療を受けた
3.対象が、DSM-5により定義される統合失調症以外の主要な精神障害(これらに限らないが、アルコール使用障害(過去12か月以内)、過去12か月以内の物質(ニコチンまたはカフェイン以外)使用障害、大うつ病性障害、双極性うつ病、躁病、統合失調感情障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害など)と一致する症状の、病歴または存在を生涯にわたって有した
4.研究者の判断に基づき、対象に、自分自身、他人、または物体に危害を加える重大な危険性があるとされた
5.対象が、スクリーニング前の3か月以内に自殺を試みた
6.対象が、不本意に入院した
7.対象が、スクリーニングで12.0mg/日以上のハロペリドールに相当する総投与量の抗精神病薬を投与されていた(ただし、かかる治療の期間が2週未満で、対象が適格であるかもしれない場合を除く)
8.対象が、スクリーニング前の6か月以内に電気痙攣療法(ECT)を受けたか、または研究期間中にECTを必要とすることが予想される
9.対象が、スクリーニング前の1年の期間内に、少なくとも4週間の間適量で投与された2つ以上の市販の抗精神病薬に反応しなかったことを根拠に、研究者によって抗精神病薬治療に抵抗性があると判断された
10.対象に、難治性精神病のためのクロザピンによる治療歴があった、および/または対象が、スクリーニングの4か月以内に(任意の理由で)クロザピンによる治療を受けた
11.対象が、試験中のまたは市販の化合物または機器を用いる研究に、現在参加していたか、もしくはインフォームド・コンセントに署名する前の6か月以内に参加した、またはインフォームド・コンセントに署名する前の24か月以内に2つ以上の研究に参加した
12.対象が、デポ型の抗精神病薬を投与された(ただし、最後の注射が、スクリーニング期間の少なくとも1つの治療周期または少なくとも30日(いずれか長い方)前であった場合を除く)
【0201】
無作為化ができるよう、患者は、以下の無作為化基準を満たした:
1.対象が、ベースライン(1日目)で80以上のPANSS合計スコアであった
2.対象が、ベースラインで、以下のPANSS項目:妄想、概念の統合障害、幻覚および不自然な思考内容のうちの2つ以上で4以上のPANSS項目スコアであった
3.対象が、スクリーニングとベースライン診察の間で、PANSS合計スコアの20%以上の減少(改善)を示さなかったか、またはPANSS合計スコアが、ベースラインで80未満に減少しなかった
4.対象が、ベースラインで4以上のCGI-Sスコアであった
5.ベースラインで、対象が、SASで5未満の合計スコアであった
6.対象が、ベースラインで(最後の診察以降)、C-SSRS評価における自殺念慮の項目4(積極的な自殺念慮、実行する意思あり、具体的な計画はなし)または項目5(自殺念慮、具体的な計画および意思あり)に「はい」と回答しなかった
7.対象が、ベースラインで他の組み入れ基準の全てを満たし、除外基準のいずれも満たさない
【0202】
化合物1による治療は、サイズ0、スウェーデンオレンジ色のカプセル(50mgまたは75mg)、1日1回経口投与であった。化合物1は、毎夕就寝時前に、食前または食後に服用された。患者は、1日目から3日目まで化合物1を50mg/日で投与された。4日目に、患者は75mg/日の用量に増量することが許可された(必須ではない)。その後、有効性を最適化するために用量を増加させる必要がある場合、診察4(1週目)から始まる定期診察(1週間間隔)で、研究者の判断に基づいて増量を行った。認容性のための減量は、1週間に1回よりも高い頻度で行ってもよいとした。患者は診察6(3週目)まで柔軟に増量されたが、その後、用量の調節は許可されなかった。治療期間は、4週間であった。
【0203】
対抗するプラセボによる治療は、サイズ0、スウェーデンオレンジ色のカプセル、1日1回経口投与であった。プラセボによる治療は、毎夕就寝時前の同じ時刻に、食前または食後に行われた。プラセボに無作為に割り付けられた対象は、研究の間を通じてプラセボを投与された。
【0204】
化合物1およびプラセボの両方が、包装、ラベリング、重量、外観、投与スケジュールが全く同じブリスターパックで提供された。
【0205】
抗コリン作動剤またはプロプラノロールによる治療は、アカシジアおよび運動障害について許可された。ロラゼパム、テマゼパム、およびエスゾピクロン(またはそれらと同等のもの)は、不安または不眠症について必要に応じて許可されたが、任意の試験評価前の8時間以内では許可されなかった。プライマリー有効性エンドポイントは、ベースラインから4週目の、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの変化であった。事前に指定されたセカンダリー有効性エンドポイントには、ベースラインから4週目の、臨床全般印象度・重症度(CGI-S)スコア、PANSS下位尺度スコア、簡易陰性症状尺度(BNSS)合計スコアおよびMontgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの変化;PANSS応答(PANSS合計スコアにおける20%以上の改善と定義される);並びにベースラインからの無相関PANSSスコアマトリックス(UPSM)変換PANSS因子重症度スコアの変化が挙げられる。UPSM変換PANSS因子は、個々のPANSS項目間で相関する改善を補正することにより、統合失調症の臨床症状領域への薬物効果をより高い特異度で評価する。反復測定用混合モデル(MMRM)解析を用いて、ベースラインからのプライマリーおよびセカンダリー有効性指標の変化を分析した。
【0206】
研究デザイン:研究は3つの期間からなった:(1)スクリーニング/ウォッシュアウト(最長14日まで)、(2)治療(4週間、入院)、および(3)フォローアップ診察(診察7(4週目)の前に研究を中止したか、または研究を完了したが、非盲検延長研究(実施例1.2に記載)には参加しない対象への最後の試験薬投与から7日後)。スクリーニング/ウォッシュアウト期の間、患者は最長14日の期間にわたって適格性について評価され、その期間中、添付文書および慣習的な医療行為に合致する方法で全ての向精神薬の量を徐々に減らされた。対象はスクリーニング/ウォッシュアウト期の期間中、入院したままであった。
【0207】
二重盲検期の間、患者は4週目まで入院しており、その時点で退院の対象となった。ベースライン(1日目)で、事前に服用していた薬物のウォッシュアウトに成功し、無作為化基準を満たした対象を、無作為に1:1の比率で2つの治療群:化合物1(50mg/日または75mg/日の用量で、4週間にわたって柔軟に投与する)またはプラセボ(4週間)のうちの1つに割り当てた。試験薬の投与はベースライン診察の夕方に開始した。上に記載されるように、治療は1日1回夜で研究の残りの期間にわたって継続した。
【0208】
二重盲検治療期を終えた対象は、分離非盲検26週延長研究に参加する資格があった。研究を早期に中止したか、または研究を完了したが、6か月延長研究には参加しない対象は、試験薬またはプラセボの最後の投与から7日(±2日)後にフォローアップ診察を完了するよう義務付けられた。
【0209】
安全性:安全性評価には、有害事象および重篤有害事象の監視、バイタルサインおよび体重の評価、臨床検査(空腹時脂質値および空腹時血糖値など)、並びに12誘導心電図検査が含まれた。錐体外路症状は、Simpson-Angus評価尺度(SAS;0から40点のスコアで、スコアが高いほど強い錐体外路徴候を示し、それぞれ0から4点の10項目からなる)、薬剤誘発性アカシジアについてのBarnes評価尺度(BARS;0から5点のグローバル臨床的評価スコアで、スコアが高いほどアカシジアを強く示す)、および異常不随意運動評価尺度(AIMS;0から44点のスコアで、スコアが高いほど、より頻繁で重篤な異常不随意運動を示す)を用いて評価された。自殺傾向は、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)を用いて評価された。睡眠の質は、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI;0から21点のグローバルスコアで、スコアが高いほど睡眠の質が悪いことを示す)を用いて評価された。
【0210】
統計解析法:無作為化を経て、化合物1またはプラセボのうちの少なくとも一つを投与され、PANSSまたはCGI-S尺度に基づいて、有効性のベースライン評価および少なくとも1回のベースライン後評価を受けた全ての患者を包含する修正治療企図集団で、有効性の分析を行った。しかしながら、全ての患者はこれらの基準を満たし、修正治療企図集団は、治療企図集団と同じであった。安全性集団は、無作為化を経て、化合物1またはプラセボのうちの少なくとも一つを投与された全ての患者を包含した。中間解析または非盲検データ監視は、本試験では行わなかった。
【0211】
プライマリー有効性エンドポイントは、反復測定用混合モデルを用いて評価された;効果量は、4週目におけるベースラインからのスコアの変化の、化合物1群とプラセボ群の間の差の絶対値を、スコアの変化の群間の差の、プールした標準偏差で除したものとして算出された。プライマリーエンドポイントの反復測定用混合モデル解析の頑健性および早期中止による欠測データの潜在的影響を評価するために、tipping-point analysisおよびプラセボに基づく多重代入法を用いるパターン混合モデリングを感度解析として実行した。
【0212】
4週試験を完了した患者における領域別変化を評価するための事前に指定された共分散モデルの解析法を用いて評価されるUPSM変換PANSS因子を除いて、セカンダリー有効性エンドポイントもまた、反復測定用混合モデルを用いて評価された。多重比較調整が行われなかったので、セカンダリー有効性エンドポイントに関していかなる推論も導かれ得ない。これらの結果は未調整95%信頼区間のみとともに点推定として提示される。PANSS応答は、共変量としてベースラインでのPANSS合計スコアを用いるロジスティック回帰モデルで評価された。
【0213】
記述統計学を用いて安全性データ(有害事象、臨床検査値、臨床的評価の結果、およびC-SSRSスコアなど)を分析した。ベースラインからのSAS、BARS、およびAIMSスコアの変化は、反復測定用混合モデルを用いて評価された。ベースライン後PSQI評価は1度だけ行われ、それゆえ、これらのデータは共分散分析を用いて評価された。
【0214】
結果:この無作為化プラセボ対照4週研究で、50または75mg/日の可変用量の化合物1は、急性増悪を経験している統合失調症の患者における、統計的に有意で臨床的に重要な症状の改善を示した。化合物1は、陽性、陰性、抑うつ、および総合精神病理症状を含む、ロバストで広域スペクトルの活性を示した。陰性症状の改善は特に顕著で、簡易陰性症状尺度で0.48の効果量を示した。化合物1の認容性および安全性プロファイルは、この4週試験において、プラセボと類似しているように見えた。
【0215】
患者:合計295人の患者がスクリーニングされ、そのうち245人が無作為化を経て、化合物1またはプラセボのうちの少なくとも一つを投与され、少なくとも1回のベースライン後有効性評価を受けた。4週試験は、化合物1群では78.3%の患者によって、プラセボ群では79.2%の患者によって完了された。化合物1群における中止の理由には以下が含まれた:26人の患者が治療を中止し、5人が有効性を示さず、10人が有害事象を示し、9人が同意を撤回し、2人がその他の理由で中止した。プラセボ群における中止の理由には以下が含まれた:26人が治療を中止し、4人が有効性を示さず、8人が有害事象を示し、14人が同意を撤回した。化合物1群における、1日あたり75mgの用量を投与されていた患者の割合は、1週目では67.2%、2週目では70.0%、3週目では72.5%であった。化合物1の用量は、4人の患者において1日あたり75mgから50mgに減らされた。化合物1またはプラセボの平均(±SD)投与期間は、化合物1群では24.3±7.6日、プラセボ群では25.4±6.4日であった。併用薬の使用には、抗コリン作動剤(プラセボ群で1人の患者)、抗精神病薬(プラセボ群で1人の患者)、抗不安薬(化合物1群で32人の患者、およびプラセボ群で30人の患者)、並びに睡眠薬および鎮静薬(化合物1群で10人の患者、およびプラセボ群で15人の患者)が含まれた。ベースラインでの患者間の臨床的および人口統計学的特性は、2つの試験群で類似していた。平均年齢は30.3歳で、81.6%が白人で、63.7%が男性で、統合失調症発症からの平均経過時間は5年であった。ベースラインでの平均PANSS合計スコアは、化合物1群では101.4、プラセボ群では99.7であった。
【0216】
ベースライン特性:ベースライン患者特性を表1に示す。
【0217】
【表1】
【表2】
【0218】
有効性:4週目におけるベースラインからのPANSS合計スコアの最小二乗平均の変化は、化合物1群では-17.2ポイント、プラセボ群では-9.7ポイントであった(最小二乗平均の差は-7.5ポイント;95%信頼区間[CI]は-11.9から-3.0;P=0.001)。4週目におけるベースラインからのCGI-S尺度スコアおよびPANSS陽性、陰性、および総合精神病理下位尺度スコアの変化における、最小二乗平均の群間差は、それぞれ-0.5ポイント(95%CIは-0.7から-0.2)、-1.7ポイント(95%CI、-3.1から-0.3)、-1.5ポイント(95%CIは-2.6から-0.4)、および-4.3ポイント(95%CIは-6.6から-2.0)であった。4週目におけるベースラインからのBNSSおよびMADRS合計スコアの変化における、最小二乗平均の群間差は、それぞれ-4.3ポイント(95%CIは-6.8から-1.8)および-1.8ポイント(95%CI、-3.2から-0.3)であった。4週目においてPANSS応答は、化合物1群では64.6%の患者で、プラセボ群では44.0%の患者で見られた(オッズ比は2.6;95%CIは1.4から4.9)。セカンダリーエンドポイントの多重比較調整の計画を事前に決めていなかったので、信頼区間は多重比較のために調整されておらず、セカンダリーエンドポイントデータからはいかなる推論も導かれ得ない。計画された感度解析の結果はプライマリー有効性解析の結果と同じ方向であった。国別試験群解析は、4週目において有意な交互作用効果を示さなかった。
【0219】
安全性:患者における有害事象を監視した。有害事象は、試験薬の最初の投与と同時に、またはの後に始まった有害な、医学的な出来事である。治療群における有害事象発生率は非常に低かった。あらゆる種類の有害事象にわたって、治療群での発生率はプラセボと類似していた。特定の有害事象について、治療群での発生率はプラセボより低かった。有害事象発生率は、D2ドーパミン受容体に対して親和性を持つ非定型抗精神病薬などの市販の抗精神病薬と比較して有利であった。
【0220】
有害事象を表2~6にまとめた。重篤有害事象は、化合物1群では7人の患者(5.8%)で、プラセボ群では2人の患者(1.6%)で生じた。不眠症の発生率は、化合物1群では3.3%、プラセボ群では10.4%で、併用の睡眠薬は、それぞれ患者の8.3%および12.0%で使用された。化合物1による治療は、プラセボによる治療と比較して睡眠の質を向上させ、4週目におけるベースラインからのPSQIグローバルスコアの最小二乗平均(±SE)の変化は、化合物1群では-2.5±0.4ポイント、プラセボ群では-1.7±0.4ポイントであった。
【0221】
錐体外路症状(アカシジア、不穏状態、筋骨格または関節硬直、振戦、および項部硬直)の発生率は、化合物1群では3.3%、プラセボ群では3.2%であった。4週目において、運動障害に対する効果を決定するために使用される、SAS、BARS、およびAIMSスコアのベースラインからの最小二乗平均の変化は、化合物1群ではそれぞれ-0.01±0.01ポイント、0.0±0.06ポイント、および0.0±0.01ポイント、プラセボ群ではそれぞれ0.01±0.01ポイント、0.1±0.05ポイント、および0.0±0.01ポイントであった。錐体外路症状を治療するための併用薬は、化合物1群では1人の患者に(不穏状態のためのロラゼパム)、プラセボ群では1人の患者に(手の振戦および不穏状態のためのトリヘキシフェニジル)処方された。
【0222】
化合物1群で起きた2つの重篤有害事象は、37歳の女性に起きた統合失調症の悪化および急性心血管不全で、彼女が50mg用量の化合物1を最初に服用してから7日後に突然死をもたらした。その患者は本態性高血圧の病歴があり、剖検により冠動脈疾患および肺塞栓を有していたことが分かった。プラセボ群では4つの重篤事象があった(3人の患者が統合失調症を悪化させ、1人の患者が自殺を試みた)。C-SSRSスコアによると、化合物1群の患者間では自殺念慮または自殺行動はなく、プラセボ群の患者間では自殺傾向の実例が2つあった。
【0223】
化合物1群およびプラセボ群の間におけるバイタルサイン(起立性低血圧または頻脈など)、体重、肥満度指数、および臨床検査値(プロラクチンおよび空腹時代謝量など)の差もまた追跡した。ベースライン後において臨床的意義のある心電図異常はなく、化合物1群またはプラセボ群において1人の患者も、450ミリ秒より大きい、Fridericia式で計算された補正QT間隔(QTcF)の延長、またはQTcF間隔の60ミリ秒より大きい増加を示さなかった。プラセボ群において、4週目で体重に見られたベースラインからの変化は、0.1±2.3kgであり、4週目で肥満度指数に見られたベースラインからの変化は、0.0±0.8であった。化合物1群において、4週目で体重に見られたベースラインからの変化は、0.3±1.9kgであり、4週目で肥満度指数に見られたベースラインからの変化は、0.1±0.6であった。プラセボ群において、4週目におけるベースラインからのプロラクチンレベルの中央値の変化(男性/女性)は、-0.036/-0.101nmol/リットルであった。化合物1群において、4週目におけるベースラインからのプロラクチンレベルの中央値の変化(男性/女性)は、-0.037/-0.175nmol/リットルであった。
【0224】
図1は、4週間の研究中におけるベースラインからの患者のPANSS合計スコアの変化を示す。治療群は、プラセボの-9.7に対して、4週目におけるベースラインからの最小二乗平均の変化が-17.2であり、0.45の効果量に相当する。
【0225】
図2は、4週間の研究中におけるベースラインからの患者のPANSS陽性下位尺度スコアの変化を示す。治療群は、プラセボの-3.9に対して、4週目におけるベースラインからの最小二乗平均の変化が-5.5であり、0.32の効果量に相当する。
【0226】
図3は、4週間の研究中におけるベースラインからの患者のPANSS陰性下位尺度スコアの変化を示す。治療群は、プラセボの-1.6に対して、4週目におけるベースラインからの最小二乗平均の変化が-3.1であり、0.37の効果量に相当する。
【0227】
図4は、4週間の研究中におけるベースラインからの患者のPANSS総合精神病理下位尺度スコアの変化を示す。治療群は、プラセボの-4.7に対して、4週目におけるベースラインからの最小二乗平均の変化が-9.0であり、0.51の効果量に相当する。
【0228】
図5は、4週間の研究中におけるベースラインからの患者のCGI-Sスコアの変化を示す。治療群は、プラセボの-0.5に対して、4週目におけるベースラインからの最小二乗平均の変化が-1.0であり、0.52の効果量に相当する。
【0229】
図6は、4週間の研究中におけるベースラインからの患者のBNSS合計スコアの変化を示す。治療群は、プラセボの-2.7に対して、4週目におけるベースラインからの最小二乗平均の変化が-7.1であり、0.48の効果量に相当する。
【0230】
図7は、4週間の研究中におけるベースラインからの患者のMADRS合計スコアの変化を示す。治療群は、プラセボの-1.6に対して、4週目におけるベースラインからの最小二乗平均の変化が-3.3であり、0.32の効果量に相当する。
【0231】
表2は、治療群またはプラセボのいずれかにおいて患者の2%以上で起きた一般的有害事象の発生率を示す。頭痛、不眠症、統合失調症の急性増悪および不安のそれぞれの発生率は、プラセボ群よりも治療群において低かった。
【0232】
【表3】
【0233】
表3は、錐体外路系有害事象の発生率を示す。治療群における錐体外路系有害事象の発生率は、プラセボとほぼ同じであった。
【0234】
【表4】
【0235】
表4は、心血管有害事象の発生率を示す。治療群における心血管有害事象の発生率は、プラセボと類似していた。治療群における心血管有害事象発生率の合計は、プラセボの4.0%に対して、4.2%であった。
【0236】
【表5】
【0237】
表5は、重篤有害事象の発生率を示す。治療群における重篤有害事象の発生率は、プラセボより低かった。
【0238】
【表6】
【0239】
表6は、研究の中止をもたらした有害事象の発生率を示す。かかる有害事象の発生率は、治療群とプラセボの間で類似していた。
【0240】
【表7】
【0241】
図8は、4週目におけるベースラインからのプロラクチンレベルの中央値の変化を示す。治療群は、平均してプロラクチンの減少を経験した。表7は、4週目におけるベースラインからのプロラクチンの変化を示す。化合物1の、臨床的意義のあるプロラクチンに対する効果はなかった。
【0242】
【表8】
【0243】
表8は、起立性低血圧および起立性頻脈の発生率を示す。起立性低血圧は、それぞれ仰臥位で測定した収縮期血圧および拡張期血圧と比較して、対象が少なくとも2から4分間起立していた後の、収縮期血圧の20mmHg以上の減少または拡張期血圧の10mmHg以上の減少と定義される。起立性頻脈は、仰臥位で測定した心拍数と比較して、対象が少なくとも2から4分間起立していた後の、毎分20回(20bpm)以上の心拍数の増加および100bpmより高い心拍数と定義される。治療群における起立性低血圧および起立性頻脈の発生率はプラセボと類似しており、治療群における起立性低血圧の発生率はプラセボより低かった。
【0244】
【表9】
【0245】
表9は、QTcF間隔で判断されるQT延長の発生率を示す。患者データは心電図(ECG)により収集された。QTc値が以下のカテゴリーに当てはまる対象の数および割合を同定した。同じ基準をQTcFおよびQTcBの両方に適用する。
ベースラインで認められなかった450ミリ秒より大きいQTc値がベースライン後の任意の時点(予定外の診察を含む)で認められる
ベースラインで認められなかった480ミリ秒より大きいQTc値がベースライン後の任意の時点(予定外の診察を含む)で認められる
ベースラインで認められなかった500ミリ秒より大きいQTc値がベースライン後の任意の時点(予定外の診察を含む)で認められる
少なくとも1回のベースライン後の測定(予定外の診察を含む)において、QTc値がベースラインから30ミリ秒以上増加する、かつ、すべてのベースライン後の測定(予定外の診察を含む)において、QTc値がベースラインから60ミリ秒未満増加する
少なくとも1回のベースライン後の測定(予定外の診察を含む)において、QTc値がベースラインから60ミリ秒以上増加する
治療群およびプラセボ群の両方について、QT延長の発生はなかった。
【0246】
【表10】
【0247】
表10は、Barnesアカシジア評価尺度(BARS)、異常不随意運動評価尺度(AIMS)、およびSimpson-Angus評価尺度(SAS)で判断される錐体外路症状を示す。
【0248】
【表11】
【0249】
したがって、本開示の様々な方法は、低い有害事象発生率、例えば、プラセボよりも小さい、と同じである、またはとほぼ同じである、もしくはと類似する有害事象発生率をもたらす。これはドーパミンD2受容体に対して親和性を持ち、より高い発生率で有害事象をもたらす多くの定型および非定型抗精神病薬と対照的である。
【0250】
考察:統合失調症の急性増悪を有する患者が関与するこの4週可変用量試験において、ドーパミンD2受容体に結合しない薬物である化合物1は、プラセボと比較して、4週目(プライマリー有効性エンドポイント)におけるベースラインからのPANSS合計スコアのより大きな減少をもたらした。化合物1による治療は、4週目におけるセカンダリー有効性指標(CGI-S尺度およびPANSS陽性、陰性、および総合精神病理下位尺度など)の重症度スコアの変化と関連し、そのスコアはプライマリー有効性解析のスコアと同じ方向であった。化合物1による治療は、4週目における統合失調症の陰性症状の重症度スコア(BNSS合計スコアおよびUPSM変換PANSS陰性症状因子スコアの両方で判断される)の変化とも関連し、そのスコアはプライマリー有効性解析のスコアと同じ方向であった。
UPSM変換PANSS陰性症状因子スコア(アパシーまたは意欲消失および感情の欠落)の変化は、UPSM変換PANSS陽性症状因子スコアの変化とほとんど相関がないことが以前に示されており、この知見は陰性症状に及ぼす特定の効果がUPSM陰性症状因子で測定されることを示唆する。PANSS合計スコアの減少は、追加で行われた化合物1による非盲検治療の26週延長研究の間に認められた(実施例1.2を参照)。
【0251】
化合物1またはプラセボを中止した患者の割合は2群間で類似しており(それぞれ21.7%対20.8%)、以前の、第1および第2世代抗精神病薬の短期試験を脱落した患者の割合と類似していたか、またはより低かった。しかしながら、以前の試験のデザインは我々の試験との直接比較を許容しない。有害事象発生率は一般的に、化合物1群およびプラセボ群で類似しており、各事象における差は2.5%以下であった。化合物1およびプラセボ群は、錐体外路症状を報告した患者の割合(3.3%対3.2%)、錐体外路症状の治療薬を使用した割合、および運動障害尺度の所見に関して類似していた。さらに、プロラクチンへの影響は化合物1群においてほとんど認められなかった。これらの結果は化合物1がD2受容体と結合しないことと一致している。化合物1による短期治療は、0.3kgの平均体重増加、総コレステロール値およびLDLコレステロール値の減少、並びにその他の代謝臨床検査値の無変化をもたらした。臨床的意義のある心電図異常(QTcF間隔の延長など)は、ベースライン後に認められなかった。
【0252】
結論として、統合失調症の急性増悪を有する患者が関与するこの4週試験において、非D2受容体結合作用機序を有するが、TAAR1および5-HT1A受容体においてアゴニスト活性を示す薬物である化合物1は、プラセボと比較して、PANSS合計スコアのより大きな減少をもたらした。
【0253】
実施例1.2:26週延長研究
【0254】
26週非盲検安全性および認容性延長研究は、実施例1.1の治療期間を完了した統合失調症を有する対象について行われた。組み入れ基準を満たした患者は実施例1.1の研究から延長研究に即座に移行した(この研究において、実施例1.1の診察7(29日目)の評価はベースライン評価として機能する)。研究者によって適切と判断された場合、対象は研究の最初の1週間の間入院した。治療期間の間、患者は最初の4週間、週に1回診察を受け、その後は26週目まで4週間に1回診察を受けた。診察と診察の間に(1週目と2週目の間、並びに5、7、9、11、13、15、17、19、21、23および25週目に)臨床研究スタッフのメンバーが患者に電話をかけ、臨床症状および有害事象を監視した。研究を早期に中止したか、または研究を完了した対象は、試験薬の最後の投与から7日(±2日)後にフォローアップ診察を完了するよう義務付けられた。
【0255】
合計156人の患者(4週試験を完了した患者の80.8%)が26週非盲検延長研究に登録され、化合物1による治療を受けた。最初に二重盲検実施例1.1試験で化合物1による治療に無作為に割り当てられ、次に非盲検延長で治療を受け続けた77人の患者において、26週目における延長研究ベースラインからのPANSS合計スコアの平均(±SD)変化は、-17.1±12.4ポイントであった。最初にプラセボによる治療に無作為に割り当てられ、次に非盲検化合物1に切り換えた79人の患者において、26週目における延長研究ベースラインからのPANSS合計スコアの平均変化は、-27.9±16.4ポイントであった。156人の患者の間で起こった錐体外路症状に関連する有害事象には、パーキンソニズム(2人の患者)、ジスキネジア(1人の患者)、振戦(1人の患者)、および不穏状態(1人の患者)が含まれた。
【0256】
患者は延長研究の1~3日目の間、化合物1を50mg/日で1日1回経口投与された(表では「化合物1」と表記)。(安全性、認容性または有効性の理由で)研究者によって臨床的に必要と判断された場合、4日目から、25から75mg/日の可変用量が許可された。4日目に、対象は有効性の理由で75mg/日の用量に増量することが許可された(必須ではない)。その後、有効性を最適化するために用量を増加させる必要がある場合、定期診察で、研究者の判断に基づいて増量を行った。4日目の用量変更は予定外の診察で行われた。その後、用量の増加は週1回の間隔で、1用量レベルずつ、75mg/日の最大用量まで行われた。認容性のための減量は、研究期間中いつでも許可された。25、50および75mg/日の用量は、研究の2~26週目に許可された。
【0257】
化合物1による治療は、サイズ0、スウェーデンオレンジ色のカプセル(25、50または75mg/日)、1日1回経口投与であった。試験薬は、毎夕就寝時前のほぼ同じ時刻に、食前または食後に服用された。
【0258】
安全性および認容性は、身体検査の結果、ECG、バイタルサイン、AE、臨床検査パラメータ、C-SSRS、体重およびBMIの収集により、研究を通じて監視された。有効性は、PANSS合計スコアおよび下位尺度スコア、ならびにCGI-S、BNSS、およびMADRSスコアを用いて評価された。対象はアンケートを通じて自覚的な薬物効果についての情報を提供した。
【0259】
参加ができるよう、患者は、以下の全ての組み入れ基準を満たした:
1.対象は、4週にわたる実施例1.1の研究を完了した。
2.対象は、実施例1.1の研究期間中、統合失調症の症状を制御する目的で試験薬以外のいかなる薬物も服用しなかった。
【0260】
患者は、以下の除外基準のいずれも満たさなかった:
1.対象が、実施例1.1の研究の診察7で、C-SSRS評価における「自殺念慮」の項目4(積極的な自殺念慮、実行する意思あり、具体的な計画はなし)または項目5(積極的な自殺念慮、具体的な計画および意思あり)に「はい」と回答した。
2.対象が、実施例1.1の研究の診察7で、臨床的意義のある異常(身体検査、バイタルサイン、ECG、または臨床検査など)を有し、研究者が臨床観察者と相談したうえで研究への参加を認めることが不適切であると見なした。
3.対象が、実施例1.1の研究の診察7で、尿中薬物スクリーニング(UDS)検査または呼気アルコール検査で陽性であった。
4.対象が、妊娠していたか、または泌乳していた。
5.研究者によって、対象はノンコンプライアンスのリスクが高いと判断された。
6.その他、研究者によって、対象はこの研究に参加することが不適当であると判断された。
【0261】
研究のプライマリーエンドポイントは、全体のAE、SAE、および中止をもたらすAEの発生率であった。セカンダリーエンドポイントは以下の通りであった:
・臨床検査(血液学的検査、血液化学検査、尿検査、グルコースおよび脂質パネル検査、プロラクチン検査、グリコヘモグロビン(HbA1c)検査)の絶対値および実施例1.1の二重盲検(DB)ベースラインからの変化;
・臨床的評価(バイタルサイン、体重、BMI、血圧[仰臥位および立位]、心拍数[仰臥位および立位]、12誘導ECG)の絶対値および実施例1.1のDBベースラインからの変化;
・C-SSRSを用いる自殺念慮および自殺行動の頻度および重症度;
・実施例1.1の4週間の治療に対して臨床応答を示した患者における、26週非盲検期間中での再発率および再発までの時間(再発は、以下のいずれかの発生と定義された):
○臨床応答時からのPANSS合計スコアの30%以上の上昇および3以上のCGI-Sスコア;
○精神病の悪化による再入院;
○自殺念慮、殺人念慮および/または自己もしくは他人へ危害を加えるリスクの発生;
・PANSS合計スコア、PANSS下位尺度スコア(陽性、陰性、および総合精神病理)、CGI-Sスコア、BNSS合計スコア、およびMADRS合計スコアの、実施例1.1のDBベースライン(表1を参照)からの変化;および
・応答を達成した(ベースラインからのPANSS合計スコアの20%以上の改善と定義され、(1)二重盲検化合物1に割り当てられた対象における実施例1.1の研究のDBベースライン、および(2)実施例1.1の研究で二重盲検プラセボに割り当てられた対象における、この研究のOLベースラインを用いて算出される)患者の割合。
【0262】
結果
【0263】
105人の対象(66.9%)が26週研究を完了し、52人の対象(33.1%)が、有害事象(18人;11.5%)、対象による離脱(16人;10.2%)、その他(9人;5.7%)、有効性の欠如(8人;5.1%)またはノンコンプライアンス(1人;0.6%)により中止した。
【0264】
有効性指標は、26週延長研究にわたって記録された。
【0265】
図9は、参考用に示される実施例1.1の研究のPANSS合計スコアデータとともに、延長研究期間中のPANSS合計スコアを示す。
【0266】
図10は、参考用に示される実施例1.1の研究のPANSS陽性下位尺度スコアデータとともに、延長研究期間中のPANSS陽性下位尺度スコアを示す。
【0267】
図11は、参考用に示される実施例1.1の研究のPANSS陰性下位尺度スコアデータとともに、延長研究期間中のPANSS陰性下位尺度スコアを示す。
【0268】
図12は、参考用に示される実施例1.1の研究のPANSS総合精神病理下位尺度スコアデータとともに、延長研究期間中のPANSS総合精神病理下位尺度スコアを示す。
【0269】
図13は、参考用に示される実施例1.1の研究のCGI-Sスコアデータとともに、延長研究期間中のCGI-Sスコアを示す。
【0270】
図14は、参考用に示される実施例1.1の研究のBNSS合計スコアデータとともに、延長研究期間中のBNSS合計スコアを示す。
【0271】
図15は、参考用に示される実施例1.1の研究のMADRS合計スコアデータとともに、延長研究期間中のMADRS合計スコアを示す。
【0272】
延長研究期間中、有害事象は監視および記録された。有害事象発生率は、(i)以前にプラセボを投与され、延長研究期間中に初めて積極的治療を受けた対象、および(ii)実施例1.1の研究から延長研究まで積極的治療を受け続けた対象の両方で低いままであった。表11~16は、延長研究期間中に経験された有害事象を示す。
【0273】
【表12】
【0274】
【表13】
【0275】
【表14】
【0276】
26週目におけるベースラインからのプロラクチンレベルの変化を図16に示す。
【0277】
【表15】
【0278】
【表16】
【0279】
【表17】
【0280】
図20Aは延長研究における、全ての原因による中止までの時間を示す。図20Bはいくつかの他の薬(オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、ペルフェナジン、およびクエチアピン)における中止までの時間を示す。
【0281】
さらなる臨床的測定を研究期間中に行った。26週目における非盲検ベースライン(すなわち、延長研究の開始時)からの体重およびBMIの変化を図17AおよびBに示す。非盲検ベースラインからの脂質測定(総コレステロール、トリグリセリド、HDL、LDL)の変化を図18A-Dに示す。非盲検ベースラインからの血糖指標(グルコース、HbA1c)の変化を図19AおよびBに示す。
【0282】
日常生活技能評価であるUPSA-Bスコアによって機能改善も測定した。化合物1は26週間で、対象のUPSA-B合計スコアを平均約76から平均約84に(0.66の効果量)向上させた。
【0283】
概して延長研究は、高い完了率;統合失調症の症状の継続的な改善(すなわち、有効性スコアの向上);非常に低いEPS関連、プロラクチン関連、および心血管関連有害事象の発生率;並びに体重、脂質および血糖指標のわずかな変化を示した。
【0284】
実施例1.3:6週臨床試験(パーキンソン病に伴う精神症状)
【0285】
化合物1はパーキンソン病に伴う精神症状と臨床診断された55歳以上の成人で評価され、パーキンソン病に伴う精神症状を有する対象における化合物1の有効性、安全性および認容性を多施設無作為化並行群間プラセボ対照研究で検討した。適格患者は、パーキンソン病に伴う精神症状についての確立された米国国立神経疾患・脳卒中研究所/米国国立精神衛生研究所(NINDS/NIMH)診断基準を満たし、英国ブレインバンク基準と一致する特発性パーキンソン病が1年以上続いており、パーキンソン病の診断後に発症した精神病症状を1か月以上有し、スクリーニング前の月に少なくとも週に1回発症し、抗精神病薬による治療を必要とするほど重症であった。患者は、スクリーニング(診察1)およびベースライン(診察3)において、神経精神症状評価(NPI)項目A(妄想)および/または項目B(幻覚)で合計6以上のスコアまたは4以上の個別スコアとなる、臨床的意義のあるパーキンソン病に伴う精神症状を有する必要があった。患者はスクリーニングの前および試験期間中、パーキンソン病運動症状のためのドーパミン療法および他の治療法を1か月以上の間継続して受けていた。患者は、ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアが30点満点中16点より大きくなければならず、介護人が診察時に必要であった。
【0286】
診断基準に従って、精神病が非定型であるか、または薬物療法もしくは他の神経変性障害に続発し、PDと同時にもしくはの前に診断される認知症、または他の中毒障害もしくは代謝障害を伴う認知症を起こす場合、運動症状が認知症発症より1年未満前に始まるか、または症状がレヴィー小体型認知症と一致する場合、患者は除外された。スクリーニングの1年以内に、2つ以上の十分な投与量の抗精神病薬に対して有効性を示さなかった患者は除外された。他の除外基準には、ベースラインより6か月未満前の卒中もしくは他の制御されない神経学的疾患、スクリーニングもしくはベースライン時の自殺念慮、または患者の研究に参加する能力を制限するであろう臨床的意義のある任意の病状もしくは慢性疾患が含まれた。患者は、PDのための外科治療を受けた場合、除外された。
【0287】
標準プロトコルの承認および患者の同意
【0288】
ヘルシンキ宣言に従って、患者は書面によるインフォームド・コンセントを提出した。参加施設は施設内審査委員会の承認を受理した。介護人もまた、患者が研究に参加すること、並びに患者の神経精神状態の評価(NPIにより測定される)に関連する介護人のデータを収集することについて同意した。
【0289】
研究デザイン
【0290】
この研究は25、50、または75mg/日の可変用量で二重盲検化合物1の有効性、安全性、および認容性を評価した。研究は、スクリーニング/ウォッシュアウト期(二重盲検治療の14日前まで)および二重盲検治療期(6週)からなった。スクリーニング期間中、いかなる抗精神病薬または中枢作用性抗コリン薬も徐々に減らされ、中止された。抗精神病薬による前治療は、NPIおよびMMSEスクリーニング評価を行う5半減期以上前に中止された。
【0291】
研究は二重盲検期の完了後に12週非盲検期が追加され、長期安全性および認容性の情報を提供した。
【0292】
ベースライン(1日目)で、スクリーニング/ウォッシュアウト期の完了に成功した患者を、無作為に2:1の比率で化合物1またはプラセボに割り当てた。二重盲検試験薬はベースライン時および患者が増量した診察日に診療所で服用された。翌日に始まるその後の服用は、就寝時に行われた。化合物1に無作為に割り当てられた患者は1週間(1から7日目)の間、25mg/日で投与された。安全性または認容性の問題がなければ、患者は2週目で50mg/日に、3週目で75mg/日に増量された。依然として25mg/日で投与されている患者は、安全性および認容性の懸念がある場合を除き、3週目で50mg/日に増量された。増量は、5週目以降では許可されなかった。50mg/日または25mg/日への減量は、安全性および認容性の理由で、いつでも1用量レベルずつ許可された。二重盲検治療期を完了した患者は非盲検延長へと継続することがあった。
【0293】
評価は、スクリーニング、ベースライン、および毎週の診察時に行われた(評価尺度のスコア範囲については表1.3.1を参照)。
【0294】
【表18】
【表19】
【表20】
【0295】
プライマリーアウトカムは、ベースラインから6週目(43日目)までのパーキンソン病の陽性症状評価尺度(SAPS-PD)合計スコアの変化であった。SAPS-PDには個別の症状を評価する7項目、全体的な幻覚項目、および全体的な妄想項目の9項目がある。SAPS-PDは、訓練および較正された、1か所に集められた盲検評価者により評価された。6週目における他のセカンダリー有効性エンドポイントには、SAPS-PD合計スコアの30%以上、50%以上および100%以上の減少を達成した患者の割合、ベースラインからのSAPS-PD幻覚および妄想下位尺度スコアの変化、ベースラインからの臨床全般印象度・重症度(CGI-S)スコア、NPI幻想+妄想スコア、パーキンソン病における睡眠(日中の眠気および夜間の睡眠)についての評価尺度(SCOPA-DSおよびSCOPA-NS)、MMSEスコアの変化が含まれた。化合物1による治療がパーキンソン病の運動症状に及ぼす効果を評価するために、ベースラインから6週目までの統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)Part III運動スコアの変化が含まれた。安全性評価には、有害事象(AE)、重篤AE、中止をもたらすAE、心電図(ECG)、バイタルサイン、臨床検査評価、およびコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)により測定される自殺念慮が含まれた。患者は、事前に決められた基準に基づいて起立性低血圧について評価された。起立性低血圧は、収縮期血圧の20mmHg以上の減少または拡張期血圧の10mmHg以上の減少と定義された。
【0296】
統計解析法
【0297】
標本サイズは、6週間可変用量で投与される化合物1(25、50、または75mg/日)の有効性、安全性、および認容性を調査するために決定された。36人の患者の標本サイズは、6週目におけるベースラインからのSAPS-PD合計スコアの変化において、化合物1対プラセボでおよそ0.5の治療効果量を検出するために決定された。これは、両側有意水準が0.05である独立な2群のt検定を用いて推定された。およそ36人の患者が2:1の比率で、化合物1およびプラセボに無作為に割り当てられた。安全性集団は、無作為化を経て、二重盲検治療期間中に試験薬を1回以上投与された全ての患者を包含した。修正治療企図(mITT)集団は、無作為化を経て、試験薬を1回以上投与され、二重盲検治療期間中に、SAPS-PD、NPI、またはCGI-Sのベースライン合計スコアおよび1回以上のベースライン後合計スコアが出された全ての患者と定義された。mITT集団を有効性解析の主要集団とした。プライマリーおよびセカンダリーエンドポイントなどの選択された有効性指標については、ベースラインからの変化を、治療、診察(カテゴリー変数として)、および治療と診察の相互作用の因子を含み、ベースラインスコアを共変量として含む反復測定用混合モデル(MMRM)法で評価した。
【0298】
結果
【0299】
患者
【0300】
80人の患者がスクリーニングされ、25人が無作為に化合物1投与に割り当てられ、14人がプラセボ投与に割り当てられた。無作為化された患者のうち、化合物1では60.0%、プラセボでは78.6%が二重盲検治療を完了した。最も一般的な中止の理由は、化合物1群ではAE(5/10患者)、プラセボ群では研究離脱(2/3患者)であった。17人(43.6%)の患者が、スクリーニングおよびウォッシュアウト前に抗精神病薬または中枢作用性抗コリン薬を服用しており、17.9%がピマバンセリン、15.4%がクエチアピン、2.6%がリスペリドンを服用していた。化合物1に無作為に割り当てられた1人の患者は、mITT有効性解析に含まれなかった。表1.3.1は、mITT集団のベースラインにおける人口統計学的および臨床的特性を示す。PD発症からの平均(範囲)経過時間は、9.0(2.4~20.7)年であった。全体的に見て、ベースラインSAPS-PD、NPI、MMSE、およびCGI-Sスコアは、参加した患者集団がベースラインにおいて、妄想と比べて幻覚を優位に有していたことを示す。意義のある認知機能障害(MMSEが24以下)は、ベースラインにおいて患者の36.8%で見られた。ベースラインにおいて、治療群の間でこれらの尺度についての顕著な差はなかった。
【0301】
平均(範囲)服用期間は、化合物1では32.1(2~43)日、プラセボでは37.4(9~45)日であった。全ての患者が1週間の間、25mgで投与された。化合物1治療群において、50.0%が3週目までに75mgに増量し、半分以上(59.1%)が5週目までに75mgで投与された。服用量は同等のプラセボを投与された患者についても同様であった。
【0302】
有効性
【0303】
化合物1による治療は、6週後にSAPS-PD合計スコアで測定される精神病の症状の改善をもたらした。6週目におけるベースラインからの最小2乗(LS)平均標準誤差(SE)の変化は、化合物1およびプラセボについてそれぞれ-2.5(1.62)および-1.4(2.0)であり、統計的に有意な差を示さなかった(p=有意でない[ns])。SAPS-PD合計スコアの減少は、早くも1週目に、25mgの化合物1を投与された全ての患者で見られ、6週目まで一貫して見られた。SAPS-PDレスポンダーは、それぞれ、ベースラインからのSAPS-PD合計スコアの30%以上、50%以上、および100%以上の改善(減少)を示した患者と定義された。6週目において、30%以上の応答および50%以上の応答の両方が、化合物1群では患者の37.5%で、プラセボ群では患者の27.3%で達成された。精神病の症状の消散(すなわち、100%の応答)は、6週目において、化合物1群では患者の25.0%で見られ、プラセボ群では一人の患者にも見られなかった。
【0304】
化合物1による治療は、治療の6週後にSAPS-PD幻覚スコアで測定される幻覚の改善をもたらした。6週目におけるベースラインからのSAPS-PD幻覚下位尺度スコアのLS平均(SE)の変化は、化合物1対プラセボについてそれぞれ-3.6(1.07)および-1.9(1.35;p=ns)であった。SAPS-PD合計スコアの減少は、早くも1週目に化合物1の患者で見られ、6週目まで一貫して見られた。反対に、SAPS-PD妄想下位尺度スコアについて改善は見られず、6週目におけるSAPS-PD妄想下位尺度スコアは、化合物1群で軽度の悪化を示した。
【0305】
認知機能障害はPDPを有する患者の治療に影響を及ぼす場合があるということが、研究により示されていた。パーキンソン病および認知機能障害を有する患者における化合物1の有効性を評価するために、MMSEが24以下の患者(認知機能障害の徴候)およびMMSEが24より大きい患者で予備解析を行った。ベースラインMMSEが24以下である患者の化合物1による治療は、6週目でSAPS-PD合計スコアの改善をもたらした。6週目におけるベースラインからのSAPS-PD合計スコアのLS平均(SE)の変化は、化合物1およびプラセボについてそれぞれ-5.2(2.81)および-2.1(3.00;p=ns)であった。SAPS-PD合計スコアの減少は1週目で見られ、6週の治療期間にわたって見られた。MMSEスコアが24より大きい患者について、SAPS-PD合計スコアの一貫した減少は、6週の治療期間にわたって見られなかった。6週目におけるベースラインからのLS平均(SE)の変化は、化合物1では-1.3(2.03)、プラセボでは-0.4(2.94)であった。化合物1による治療はMMSEスコアに影響を及ぼさなかった。6週目におけるベースラインからのMMSEスコアのLS平均(SE)の変化は、化合物1およびプラセボについてそれぞれ-0.8(0.48)および0.3(0.55)であった(p=ns)。
【0306】
6週目におけるベースラインからのCGI-Sスコアの変化について、化合物1とプラセボ群の間に有意差はなく、6週目におけるベースラインからのLS平均(SE)の変化は、化合物1およびプラセボについてそれぞれ-0.4(0.33)および-0.7(0.39)であった(p=ns)。NPI合計スコア、およびNPI幻覚+妄想スコアは、化合物1とプラセボの間で差がなかった。化合物1群のNPI幻覚下位尺度スコアは、6週目で改善を示した。6週目におけるベースラインからのNPI幻覚下位尺度スコアのLS平均(SE)の変化は、化合物1およびプラセボについてそれぞれ-2.5(0.77)および-0.8(0.97;p=ns)であった。6週目で、ベースラインからのLS平均(SE)SCOPA-DSスコアの変化において、プラセボ(0.9[0.80])に対して化合物1(-1.8[0.74])を投与された患者で、有意な改善(p=0.022)が見られた。反対に、6週目におけるベースラインからのSCOPA-NSスコアの変化について、改善は見られなかった。6週目におけるLS平均(SE)SCOPA-NSスコアは、化合物1およびプラセボについてそれぞれ-0.1(0.73)および0.2(0.79;p=ns)であった。
【0307】
安全性
【0308】
化合物1による治療がPDの運動症状に影響を及ぼすかどうかを評価するために、UPDRS Part IIIスコアをベースラインで、およびベースライン後の診察で測定した。平均(SD)ベースラインUPDRS Part IIIスコアは、化合物1およびプラセボ群についてそれぞれ33.4(10.28)および35.9(13.12)であった。ベースラインからのUPDRS Part IIIスコアのLS平均(SE)の変化において、化合物1およびプラセボ群について6週目まで一貫した変化は見られなかった。
【0309】
全体的に見て、化合物1群では18人(72.0%)の患者が65のAEを経験し、プラセボ群では12人(85.7%)の患者が32のAEを経験した。化合物1群では2人の患者が重篤AE:それぞれ股関節骨折および精神状態変化を経験し、どちらの事象も治療に関連するとは見なされず、両方とも消散した。化合物1群では5人の患者がそれぞれ、中止をもたらすAEを経験した。死亡は報告されなかった。
【0310】
事象発症時の用量別にAEを表1.3.2に示す。
【表21】
【0311】
化合物1対プラセボにおいて最も一般的なAE(10%以上)には、幻覚(24%対14%)、錯乱状態(20%対14%)、めまい(16%対7%)、悪心(12%対7%)、転倒(12%対21%)、および倦怠感(8%対14%)が含まれた。全体的に見て、精神的AEの発生率は、化合物1において、25mg用量の群と比べて50mgおよび75mg用量の群でより高かった。錯乱状態の発生率は、75mgで化合物1を投与された患者で最も高かった。
【0312】
全体的に見て、患者における服用前および服用後の起立性低血圧の発生率は、プラセボと化合物1群で類似していた。研究期間にわたって、ECGパラメータ、臨床検査値、またはC-SSRSで臨床的に重要な変化はなかった。この研究は、UPDRS Part IIIスコアが悪化していないことから示されるように、運動機能が悪化することなく、化合物1によるパーキンソン病に伴う精神症状の改善が起きたということを示唆する。
【0313】
実施例2:抗精神病薬にわたるクラスエフェクト有害事象
【0314】
抗精神病の医薬化合物群は、部分的に、統合失調症、双極性およびうつ病患者集団を治療するためのその使用に関連する特定の有害事象リスクを特徴とする。医薬品規制用語集(MedDRA)は、医学的状態、医薬および医療機器(有害事象を含む)に関する国際的に使用される用語集である。MedDRAによる用語の標準化(優先使用語)を用いて、抗精神病薬類関連有害事象の優先使用語集が、FDA実臨床有害事象報告データベース(FAERS)への報告に基づいて確立された。特に、FAERSは、ごく最近FDAに承認された11の抗精神病薬(アリピプラゾール、アセナピン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、イロペリドン、ルラシドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドン)に関連する優先使用語を特定するのに使用される。優先使用語は、様々な医療制度および臓器症状を網羅する。合計9500を超える有害事象記録が、Empirica Signalサーバーに展開された2018年第2四半期のデータを用いて作成された。
【0315】
11の抗精神病薬プールの有害事象についての優先使用語が、算出した経験的ベイズ幾何平均(EBGM)を用いて、相対リスクでランク付けされた。統合失調症または双極性障害の臨床試験で使用される精神症状評価尺度(例えば、PANSS、MADRS)の個別項目に対応するような、統合失調症および/または双極性障害の個別の症状に対応する優先使用語が選択され、疾患の関連するものとして注意し、薬物の副作用として解析されなかった。ある薬物のEBGM値がより高いことは、他の全ての薬物および他の全ての優先使用語/有害事象と比較して、優先使用語/有害事象とその薬物との間の統計的関連性がより大きいことに対応する。ここで、EBGM値によるランク付けが作成され、抗精神病薬のクラスとしての効果(11の抗精神病薬プール全体として算出される)を記述する優先使用語/有害事象がリストアップされた。したがって、治療を受ける患者集団の臨床的に意義のある部分に、上位に入る優先使用語(例えば、閾値を超えるEGBM値を有する優先使用語)をともなう有害事象を引き起こす化合物は、抗精神病薬類と同様の有害事象プロファイルを有すると見なすことができる。
【0316】
一例として、11の抗精神病薬プールに関連する優先使用語を以下の表17に示す。患者集団の臨床的に意義のある部分に、これらの例示される優先使用語に対応する有害事象を示す化合物は、抗精神病薬類と同様の有害事象プロファイルを有すると見なすことができる。
【0317】
【表22】
【表23】
【0318】
11の抗精神病薬プールの有害事象についての9500を超える優先使用語を用いて、実施例1.1(4週研究)の臨床試験データを検索した。EBGMによる、化合物1についての優先使用語のランキングを表18に示す。化合物1は、実臨床有害事象報告データベース(例えば、クラス関連有害事象)の中で相対リスクが最大である優先使用語によって定義される、現在の抗精神病薬類に関連する有害事象(例えば、高プロラクチン血症、血中プロラクチン異常、血中プロラクチン増加、乳汁漏出症、歯車様硬直、肥満、メタボリック症候群など)の、臨床的に重要でない発生率を示した。また、化合物1の対照薬としてプラセボを投与された対象で認められる優先使用語も、同様の有害事象発生率を示した。したがって、化合物1は、抗精神病薬クラスエフェクトに対応する有害事象プロファイルを示さない。
【0319】
【表24】
【0320】
実施例3:薬物動態
【0321】
化合物1の薬物動態(PK)、安全性、および認容性は、それぞれ、健康な成人男性対象において、並びに統合失調症を有する成人男性および女性患者において、単回漸増投与(5mgから125mg並びに25mgから150mg)で、または統合失調症を有する成人男性および女性患者において、複数回漸増投与(10、25、50、75、および100mg、1日1回)で評価された。投与後0から144時間の血液サンプルをPK解析のために回収した。安全性評価には、有害事象、バイタルサイン、臨床検査、身体診察および神経学的診察、C-SSRS、12誘導ECG、および安全性EEGが含まれた。
【0322】
健康な成人男性対象、単回漸増投与
【0323】
単回経口投与の化合物1の安全性、認容性および最大耐用量(MTD)は、39人の健常な成人男性対象で試験された。対象は、18~50(両端含む)歳の健康な男性で、BMIが16-32kg/m2(両端含む)で、統合失調症と診断されておらず、CNS作用薬またはCYP2D6阻害剤を併用していないことが条件であった。
【0324】
5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、および125mgの濃度での単回投与で、化合物1は対象に投与された。125mgの群(9人の対象がこの用量で投与された)を除く各群には6人の対象が存在し、13人のプラセボ対象がいた。この研究では、死亡者も、治療下で発現した臨床的意義のある検査値の変化もなかった。血漿PKパラメータの結果を以下の表19に示す。
【0325】
【表25】
【0326】
統合失調症を有する成人男性および女性対象、単回漸増投与
【0327】
研究を行い、統合失調症を有する男性および女性対象における、単回経口投与の化合物1の安全性、認容性およびMTDを評価した。対象は、18~55(両端含む)歳の男性または女性で、BMIが19.5kg/m2~37kg/m2(両端含む)であることが条件であった。さらに、対象は、統合失調症の一次診断のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版;Text Revision(DSM-IV-TR)基準を満たし、CNS作用薬またはCYP2D6阻害剤を併用していない必要があった。
【0328】
25mg、50mg、100mg、および150mgの濃度での単回投与で、化合物1は対象に投与された。各群には9人の対象が存在し、12人のプラセボ対象がいた。この研究では、死亡者も、治療下で発現した臨床的意義のある検査値の変化もなかった。血漿PKパラメータの結果を以下の表20に示す。
【0329】
【表26】
【0330】
研究デザイン:統合失調症を有する成人男性および女性対象、複数回漸増投与;2部の臨床研究:複数回投与および28日非盲検
【0331】
この研究は、2部:複数回投与研究および28日非盲検研究で実施された。化合物1は、統合失調症と診断された成人男性および女性対象で評価され、統合失調症の治療におけるその安全性、認容性、および薬物動態を調査した。研究には別個の2つの部分があり、別々の患者のコホートを組み入れたが、同じ研究組み入れ基準を利用した。パートAは多施設無作為化単盲検プラセボ対照漸増複数回経口投与研究であったが、パートBは単一施設非無作為化非盲検研究で、28日にわたる、75mg/日用量の化合物1による治療の安全性、認容性、および薬物動態を評価するものであった。有効性評価は、パートBの非盲検治療期間中に行った。
【0332】
研究組み入れ基準:男性および女性対象は18から55歳(両端含む)であり、統合失調症の一次診断のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版;Text Revision(DSM-IV-TR)基準を満たす場合、登録対象となった。対象は、肥満度指数(BMI)が19.5~37kg/m(両端含む)であり;過去6か月間で臨床的に安定しており;CGI-Sスコアが4以下であり;PANSS合計スコアが80以下(以下のPANSS項目のスコアが4以下[中等度以下]である:敵意[P7]、非協調性[G8])でなければならなかった。対象は研究期間の間、抗精神病薬、抗うつ薬もしくは気分安定薬、または処方薬もしくは市販薬(ビタミンおよび栄養補助食品など)を使用しないなど、薬物のない状態を保つことが要求された。許可された薬物には、OTC鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン)、ヒドロコルチゾンクリーム、女性用避妊薬、および安定した状態のための薬(例えば、高血圧または高コレステロール血症)が含まれ、ロラゼパムおよびゾルピデムの限定的利用がウォッシュアウトおよび治療期間の間許可された。
【0333】
研究デザイン:複数回投与(パートA):60人の対象を5つの漸増用量コホート(N=12)に無作為に分け、以下の化合物1用量群:10mg、25mg、50mg、75mg、100mg(空腹時、1日1回経口投与)に割り当てた。各コホートにおいて、対象は3:1の比率で、化合物1(N=9)または対応するプラセボ(N=3)のいずれかに無作為に割り当てられ、7日間投与された。
【0334】
無作為化された60人の対象のうち、71.7%が男性で、平均年齢は41.8(範囲24~55)歳で、85.0%がアフリカ系アメリカ人で、平均PANSS合計スコアは59.4であった。1人を除く全ての対象がプロトコルに従って研究を完了した。この対象は、精神病性障害のSAE(試験薬に関連しないと判断された)のために研究を中止した。
【0335】
表21は、(A)1日目における漸増濃度の化合物1の単回経口投与および(B)7日目における化合物1の複数回投与後の薬物動態パラメータを示す。
【0336】
【表27】
【0337】
10~100mg/日の用量範囲において、化合物1は、7日目のCmaxについては用量に比例し(β=1.17[95%CI:0.98~1.37])、AUC0-24についてはおよそ用量に比例する(β=1.30[95%CI:1.10~1.50])ことが分かった。7日目における化合物1の平均Vss/Fおよび平均CLss/Fは、用量の増加とともに大幅に変化するようには思われなかった。
【0338】
研究デザイン:28日間非盲検投薬(パートB)
【0339】
非盲検研究において、統合失調症と診断された成人患者(N=16)は入院させられ、それまでの抗精神病薬のウォッシュアウトを完了した。ウォッシュアウトが成功した後、対象は化合物1(75mg/日)を28日間投与された。患者は、投薬の最初の2週間入院を続け、投薬の残りの2週間通院した。安全性評価には、有害事象発生率、臨床検査測定、および運動障害尺度(BARS、AIMSおよびM-SAS)が含まれた。化合物1が陽性・陰性症状(PANSS)評価尺度および臨床全般印象度・重症度(CGI-S)に及ぼす効果もまた評価した。
【0340】
合計14人の対象が28日非盲検研究を完了した。2人の対象が、2週間後に複数の軽度有害事象により研究を中止した。無作為化された16人の対象のうち、50%が男性で、平均年齢は31.8(範囲23~40)歳で、75.0%がアフリカ系アメリカ人で、平均PANSS合計スコアは73.3であった。
【0341】
統合失調症の症状の増悪は、いずれの対象においても認められなかった。研究のパートAまたはパートBのいずれにおいても、治療下で発現した臨床的意義のある検査値の変化(ECGパラメータ(QTcBおよびQTcF間隔など);神経学的診察;またはBarnesアカシジア評価尺度、異常不随意運動評価尺度、もしくは修正Simpson-Angus評価尺度で測定される運動障害への効果)も、いかなる死亡者もなかった。
【0342】
75mg/日で化合物1を複数回投与した後の薬物動態パラメータ(パートB、13日目)は、以下の通りであった:Cmax(CV%)、316ng/mL(17.5%);tmax(中央値)、4.0時間;AUC0-24、3487h・ng/mL。化合物1の平均トラフ血漿中濃度の目視検査は、7日目までに定常状態が達成されることを示した。
【0343】
さらに、化合物1による治療は、ベースラインと比較して有効性指標(PANSS合計スコア、CGI-S)の改善を示した。その上、アドホックなサブグループ解析は、1年あたりの病気で入院する回数がより多い対象と比較して、1年あたりの病気で入院する回数がより少ない対象で、28日治療期間終了時におけるベースラインからのPANSS合計スコアの有意に大きな減少を示した。
【0344】
要約すると、安全性の問題は、10~100mg/dの用量範囲で7日間、または75mg/dの用量で28日間、化合物1を複数回経口投与した場合に認められなかった。治療下で発現した臨床的意義のある、バイタルサイン、身体診察、検査値、またはECGパラメータ(QTcF間隔など)の変化はなかった。治療下で自殺念慮または自殺行動を発現した対象はいなかった。28日間にわたる75mg/dでの化合物1による治療は、PANSS合計スコアの改善を伴い、その改善は、ベースラインのPANSS合計スコアが高く、より若く、より入院回数が少ない患者でより大きかった。この研究の結果は、統合失調症を有する患者において、28日まで化合物1(75mg/日)の安全性および認容性プロファイルが許容されることを示した。
【0345】
様々な集団(例えば、臨床研究)にわたって血漿サンプルから測定する薬物動態(pk)メトリクスは、集団薬物動態プロファイルをモデル化するためにプールすることができる。例えば、9つの様々な集団(例えば、臨床研究)にわたるpk測定値をプールし、表22に示すモデル化された集団pkプロファイルを得た。
【0346】
【表28】
【0347】
実施例4:結晶形Aの(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン(「(S)-TPMA」) HCl(すなわち、化合物1のHCl塩の結晶形A)の調製およびその製剤
【0348】
スキーム1:4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン トリフラートの調製
【化7】
【0349】
77gの3-チオフェンエタノール(化合物A)を、69gのN-メチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールの、595ml(508g)の2-メチルテトラヒドロフラン(THF)溶液に添加した。5分間撹拌した後、99g(58.2ml)のトリフルオロメタンスルホン酸を添加した。トリフルオロメタンスルホン酸が非常に有害な物質であることに注意されたい。反応物を加熱し、1時間還流させた(80±2℃)。次に反応物を大気圧で蒸留し、副生成物のメタノールを除去し、4~8時間かけて反応物の体積を目標の460mlに減少させた。サンプルHPLC解析により、化合物1Bの残存量が1.0%以下(興味の対象となる化合物A、BおよびCのピークのHPLCピーク面積%)になった場合、反応は完了したと判断された。
【0350】
化合物Bの量が1%以上である場合、適量の2-メチルTHFを添加し、目標の体積になるまで蒸留を続けた。反応の完了(約4時間)前に目標の体積に到達した場合、蒸留を続けるために300mlの2-メチルTHFを反応物に添加した。反応の完了後、反応物を約40~50℃に冷却し、目標の325mlまで真空蒸留で濃縮した。次に218g(325ml)のトルエンを約15分かけて添加し、次にスラリー形成した反応物を50±2℃で1時間攪拌し、次に1時間45分かけて、撹拌しながら20±2℃に直線的に冷却した。スラリーを濾過し、生成物のケーキを2-メチルTHFとトルエンの混合物(1:1 体積/体積)で洗浄した。ウェットケーキを40±5℃で一定重量まで真空乾燥させ、ラセミTPMAトリフラート(化合物C)をオフホワイト固体として得た。収率は約79%であった。
【0351】
スキーム2:(S)-(-)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン (R) マンデラートの調製
【化8】
【0352】
555.3gのTPMAトリフラート(化合物1C)の、1668mlのメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)懸濁液に、1076gの1.77N KOH水溶液を添加した。10分間攪拌した後、pHをチェックし、13より小さい場合は少量の1.77N KOHを添加し、pHを13以上にした。水層および有機層を置いておき、分離し、別々に回収した。MTBE(上側)有機相の層をさらなる処理のために保持した。水(下側)相の層をMTBEで2回(1回目は835ml、2回目は150ml)抽出し、その都度有機(MBTE)層を回収した。MTBE層(有機層)を混ぜ合わせ、20% NaCl水溶液(492.9g)で洗浄し、攪拌し、相を10分間置いておいた。水層を取り除き、残りのMTBE有機層を大気圧で蒸留し、反応物の体積を目標値の1.9Lに減少させた。完了後に処理液を約45℃に冷却し、温度を35~45℃で維持しながら目標の890mlまで真空蒸留で濃縮した。真空蒸留後の含水量は重量約0.37%であることが分かった。次に濾過を行い、204mlのMTBEで洗浄して不溶性物質を除去し、処理液(濾液)をクリーンなリアクターに移した。2512mLのアセトニトリルを添加し、35~45℃で目標の800mlまで真空蒸留することで溶媒を切り替え、リアクターを150mlのアセトニトリルで洗浄し、処理液に添加した。得られた処理液は、TPMA遊離塩基(化合物D)のアセトニトリル溶液であった。必要であれば、次にアセトニトリルをTPMA遊離塩基(化合物D)のアセトニトリル溶液に添加し、化合物Dが重量約33%となるようにした。
【0353】
250.3gの(R)-マンデル酸の、1828mlのアセトン溶液を48±2℃に温めた。次にTPMA遊離塩基のアセトニトリル溶液(302.1gの化合物Dの、917.7gのアセトニトリル溶液)を、反応温度を51℃未満で維持しながら添加した。48±2℃で約10分間撹拌した後、処理液を45±2℃に冷却し、1.5gの(S)-TPMA (R)-マンデラート種結晶を入れた。処理液を45±2℃で約30分間攪拌し、90分かけて、21±2℃に直線的に冷却した。45±2℃で約30分間保持した後、45分かけて、処理液を10±2℃に直線的に冷却した。次に反応スラリーを10±2℃で60分間攪拌し、濾過し、生成物のケーキをアセトン/CHCNの混合物(2.3:1 重量/重量)で洗浄した。ウェットケーキを40±2℃で一定重量まで真空乾燥させ、粗製(S)-TPMA (R)-マンデラート(化合物E)を白色結晶性固体として得た。収率は約41%であった。
【0354】
スキーム3:(S)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン (R) マンデラートの再結晶
【化9】
【0355】
スキーム2の粗製(S)-TPMA (R)-マンデラート(化合物E)(200.1g)の、4205mlのアセトンスラリーを約56℃(アセトンの沸点)に温め、透明な溶液が得られるまで攪拌した。およそ20分かけて溶液を47±2℃に冷却した後、(S)-TPMA (R)-マンデラート種結晶を添加した。処理液を47±2℃で約30分間攪拌し、90分かけて、21±2℃に直線的に冷却した。21±2℃で約30分間保持した後、45分かけて、スラリーを10±2℃に直線的に冷却し、次に10±2℃で1時間攪拌し、濾過し、生成物のケーキをアセトンで洗浄した(それぞれ401mlで2回)。ウェットケーキを約40±2℃で一定重量まで真空乾燥させ、(S)-TPMA (R)-マンデラート(精製された化合物E)を白色結晶性固体として得た。収率は約77%であった。
【0356】
スキーム4:結晶形Aの(S)-(-)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン ヒドロクロライドの形成
【化10】
【0357】
本実施例のスキーム4は、結晶形Aとしての(S)-(-)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン HCl((S)-TPMA HCl)の反応晶析を提供する。(S)-TPMA HClは、結晶化すると2つの異なる形態を示し(多形)、1つはブロック状結晶(フォームA)、もう1つは針状結晶(フォームB)である。
本明細書に記載される単結晶X線回折研究に基づくと、フォームAは単斜晶系を有す一方、フォームBは斜方晶系を有する。
【0358】
スキーム3の(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン (R)-マンデラート塩(化合物E)(100g)の、305mlのMTBE懸濁液に、172.5mlの10% KOH水溶液を添加した。20±2℃で10分間撹拌した後、水層および有機層を分離した。有機MTBE(上側)層をさらなる処理のために取っておいた。水層のpHが13より小さい場合、少量の19%KOH溶液を添加し、pHを13に上昇させた。水(下側)層をMTBEで2回逆抽出し(1回目は208mlのMTBE、2回目は155mlのMTBE)、その都度有機層をさらなる処理のために取っておいた。取っておいた有機層を混ぜ合わせ、合わせた有機層を共沸蒸留して水を除去し、目標の140mlまで大気圧で蒸留した。処理液を濾過して不溶性物質(例えば水の除去により沈殿した塩)を取り除き、濾液をクリーンなリアクターに移した。775mlのイソプロパノールを添加し(処理液の全体積は約1030mlとなった)、45℃未満で真空蒸留することで溶媒を切り替え、(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミンのイソプロパノール溶液(10%~15%)を得た。
【0359】
様々な実施形態において、添加するイソプロパノールの量は、遊離塩基(化合物F)の重量%濃度が6~7%となるように選択される。反応混合物を20±2℃に冷却し、濾過し、フィルターを78mlのイソプロパノールで洗浄し、濾液をクリーンなリアクターに移した。次に201.6gの6%HCl(w/w)イソプロパノール溶液を、45分かけて、約20±2℃でリアクターに添加した。様々な実施形態において、HClの目標量は、遊離塩基(化合物F)のモル当量と比較して約10%の過剰量であることが理解されるべきである。HClを以下の通りに添加した。最初の10%を15分かけて添加し、次に30%を15分かけて添加し、次に残りを15分かけて添加した。処理液の体積を約740mlとして、後退翼形状の羽根車を160rpmから270rpmで、5Lスケールのリアクター内で使用し、明らかな凝集が見られない、適切な大きさの粒子および粒子分布を得た。20分かけて、形成したスラリーを40±2℃に直線的に温め、40±2℃で約30分間保持した。次にこれを20分かけて20±2℃に直線的に冷却した。20±2℃で約30分間撹拌した後、スラリーを濾過し、生成物のケーキをイソプロパノールで洗浄した(1回目は86ml、2回目は92ml)。ケーキを約40±2℃で一定重量まで真空乾燥させ、(S)-(-)-TPMAヒドロクロライド(化合物G)を白色結晶性固体として得た。収率は約84%であった。
【0360】
スキーム4のステップ4bにおいて、ゆっくりと添加すること、すなわち低い過飽和生成速度は、目的のブロック状(S)-(-)-TPMA HCl結晶(フォームA)の形成に有利に働く一方、好ましくない針状結晶(フォームB)の生成を減少させ、温度がより高いと、フォームBよりも、ブロック状のフォームA結晶の形成に有利に働く。
【0361】
実施例4で得た(S)-(-)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン ヒドロクロライド(化合物G)のH NMRスペクトルは、以下の特性を有する:1H NMR (300 MHz, DMSO-d6); δ (ppm): 2.53 (s, 3 H, -CH3); 2.5-2.8 (m, ,2 H, -CH2-); 3.15-3.37 (2dd, 2 H, CH2-NH); 3.77 and 4.13 (2ddd, 2 H, CH2-O); 5.19 (dd, 1 H, O-CH-C=); 6.95 (d, J = 5 Hz, 1 H, HC=); 7.49 (dd, J = 5 Hz, 1 H, HC=); 9.12 (br, 2 H, NH2 +)
【0362】
図21および22は、フォームAの(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン ヒドロクロライドのXRPDパターンを示す。図21は透過法で、図22は反射法で測定したXRPDである。図23は、結晶形Aの(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン ヒドロクロライドのDSCサーモグラムである。
【0363】
製剤および製造
【0364】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも一つの薬学的に許容される添加剤を含む製剤は、例えば、PCT特許公開番号WO2019/161238に開示され、参照またはそれに類似する方法によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0365】
いくつかの実施形態において、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも一つの薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態において、表23および表24に記載される製剤と実質的に同じような医薬組成物が提供される。
【表29】
【表30】
【0366】
実施例5:化合物1の前臨床濫用傾向評価
【0367】
化合物1は、特有の非D2非5-HT2A作用機序(MOA)を有し、統合失調症の態様に関する複数の動物モデルにわたって広い有効性を示している向精神薬である。化合物1の抗精神病有効性に関与する分子標的は、完全に解明されていないが、微量アミン関連受容体-1(TAAR1)および5HT1A受容体のアゴニズムが含まれる。その特有のMOAおよび動物モデルにおけるプロファイルを根拠に、化合物1は、統合失調症および潜在的に他の神経精神障害の治療の有望な候補となる。例えば、Koblan et al. The New England Journal of Medicine 382(16), 1497-1506 (2020);Dedic et al. The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 371, 1-14 (2019)を参照されたい。化合物1の中枢神経系活性を考慮して、一連の非臨床研究が化合物1で行われ、濫用の潜在的リスクが評価された。米国食品医薬品局(FDA)は、薬物の濫用の可能性を評価するための指針書:”Assessment of Abuse Potential of Drugs.Guidance for Industry.January 2017”を提供し、その全体が本明細書に組み込まれる。濫用に関連する一連の動物行動研究(自己投与および薬物弁別)がオスおよびメスのラットで行われ、化合物1がヒトの濫用の可能性を示唆する行動変化をもたらすかどうかが評価された。さらに、オスのラットにおいて化合物1がコカイン探索行動の復帰を阻止する可能性を調べるために研究が行われた。
【0368】
実験的にナイーブなラットを床敷の入ったプラスチックケージ内で個別に飼育した。飼育室を12/12時間の明/暗周期、一定の環境温度および相対湿度で維持した。動物を実験の開始前に実験室条件に順応させ、自由に水を飲むことができた。MDMA薬物弁別実験でのメスのラットの訓練を除き、餌へのアクセスはオペラント行動の訓練および維持を促進するために制限された。実験は、防音・換気付きキュービクル内にあるオペラントチャンバー(MED Associates, Inc., St. Albans, Vermont, U.S.A.)で行われた。各チャンバーには刺激光が備えられ、給餌器につながった餌用の容器の近くにレバーがあった。復帰研究用のチャンバーにもまた、Sonalert(登録商標)音発生装置が備えられた。
【0369】
自己投与研究:オペラント訓練の完了および静脈内(i.v.)カテーテル挿入手術からの回復に成功した後、自己投与訓練セッションを行った(FR10スケジュール下で0.5mg/kg/コカイン注入、FR5スケジュール下で0.07mg/kg/アンフェタミン注入、またはFR3スケジュール下で0.015mg/kg/ヘロイン注入)。訓練薬の反応が安定化した後、自己投与が消えるまで生理食塩水が置換された。化合物1のオペラント行動に及ぼす効果の評価に基づいて選択された、化合物1の漸増i.v.投与が、少なくとも5連続のテストセッションの間、訓練薬に対して置換された。訓練薬(0.25mg/kg/コカイン注入、0.07mg/kg/アンフェタミン注入、0.015mg/kg/ヘロイン注入)を用いる再試験を断続的に行い、自己投与行動の維持を確かにした。安定した反応を示した最後の3セッションにわたる平均注入回数(安定した反応がなかった場合、10セッションの平均)を各動物について算出した。
【0370】
図24A図24B、および図24Cは、化合物1が、それぞれコカイン、アンフェタミンまたはヘロインを自己投与するように訓練されたラットによって自己投与されなかったことを示す。自己投与(コカイン置換)試験における、オスのSDラット(n=10)の平均(±SEM)注入回数は、0.1、0.3および1mg/kg/注入の化合物1投与レベルで、1セッションあたりそれぞれ1.9±0.4、1.5±0.3および1.0±0.3であった。それぞれの化合物1投与レベルにおける平均注入回数は、先行するコカインセッションの平均よりも有意に低く(範囲32.7±2.1から33.4±2.7;p<0.001、Tukey多重比較検定)、ビークル(2.2±0.5)または生理食塩水(3.1±0.3)コントロールとの有意差はなかった。
【0371】
自己投与(アンフェタミン置換)試験における、オスのSDラット(n=12)の平均(±SEM)注入回数は、0.1、0.3および1mg/kg/注入の化合物1投与レベルで、1セッションあたりそれぞれ2.5±0.3、2.4±0.6および1.8±0.3であった。それぞれの化合物1投与レベルにおける平均注入回数は、先行するアンフェタミンセッションの平均よりも有意に低く(範囲18.5±0.5から19.4±0.6;p<0.001、Tukey多重比較検定)、ビークル(3.5±0.6)または生理食塩水(3.4±0.4)コントロールとの有意差はなかった。
【0372】
自己投与(ヘロイン置換)試験における、オスのSDラット(n=8~9/セッション)の平均(±SEM)注入回数は、0.01、0.03、0.1、および0.3mg/kg/注射の化合物1投与レベルで、それぞれ8.0±2.5、5.4±0.9、6.4±1.4、および4.4±0.5であった。それぞれの化合物1投与レベルにおける統計学的補正後の平均注入回数は、ヘロイン獲得セッションの平均よりも有意に低く(19.0±0.4;p<0.001、Dunnett検定)、生理食塩水消去セッションの平均(4.8±0.2)との有意差はなかった。
【0373】
薬物弁別:オペラント訓練の完了に成功した後、餌強化(アンフェタミンはFR10、MDMAはFR5)を用いる2択レバー押し試験で、訓練薬(0.6mg/kg アンフェタミン i.p.または1.25mg/kg 3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA) i.p.)と生理食塩水を識別できるように別々のラットの群を訓練させた。訓練薬はセッションの15分前に投与された。各動物が弁別訓練基準を達成した時点で、化合物1またはブスピロン用量が試験セッションの前に経口投与された。訓練薬対応レバーの全反応に占める割合および反応速度が各ラットについて算出された。
【0374】
図25Aおよび図25Bは、化合物1が、ラットにおいてアンフェタミン手がかりに般化しなかったことを示す。3.5%(±2.0%)、11.2%(±5.8%)および13.7%(±6.6%)の平均(±SEM)アンフェタミン対応レバー反応が、オスのSDラット(n=10)において、それぞれ3、10、および30mg/kgの化合物1用量で見られた。平均(±SEM)反応速度(反応/s)は、3または10mg/kgの化合物1用量で影響を受けなかった(それぞれ、0.77±0.12または0.69±0.10対0.91±0.13反応/s(ビークル)、p>0.05)。30mg/kgで、化合物1は応答速度を有意に減少させた(0.42±0.05、*p<0.001、Tukey多重比較検定)
【0375】
図26Aおよび図26Bは、化合物1が、ラットにおいてi.p.MDMA手がかりに部分的に般化したことを示す。メスのLister hoodedラット(n=6~7/投与)において、化合物1は、3または10mg/kgでMDMA手がかりに般化しなかった(それぞれ、19.8±8.5%および15.1±8.1%でMDMAに般化)。30mg/kgで、化合物1はMDMA手がかりに部分的に般化した(43.0±17.6%で般化)。いずれの化合物1用量でも、許容できないレバー押しの抑制は生じなかった。メスのLister hoodedラット(n=6/投与)において、ブスピロンは、0.3または1mg/kgでMDMA手がかりに般化しなかった(それぞれ、6.6±3.9%または10.8±7.9%でMDMAに般化)。最も高い用量で、ブスピロンはMDMA手がかりに部分的に般化した(37.2±20.4%で般化)。いずれのブスピロン用量でも、許容できないレバー押しの抑制は生じなかった。
【0376】
MDMAおよび5-HT2Aアゴニスト幻覚剤は、MDMA弁別手がかりに完全に般化する。MDMAの弁別手がかりには5-HT1Aを介する成分がある。これは、承認された非指定の抗不安薬であるブスピロン(5-HT1Aパーシャルアゴニスト)が、MDMA手がかりに部分的に般化したからである。ブスピロンと同様に、化合物1はMDMA手がかりに部分的に般化した。ブスピロンと同様に、化合物1はMDMA手がかりに部分的に般化した。結果は、化合物1がMDMA様または5-HT2Aアゴニスト様精神活性作用をもたらさないことを示す。任意の特定の理論に制約されることを望むものではないが、最高用量の化合物1で見られる部分的な般化は、その5-HT1Aアゴニスト特性に由来する可能性が最も高い。
【0377】
コカイン復帰:i.v.カテーテル挿入手術から回復した後、コカイン(0.5mg/kg/注入)を自己投与するように、FR1の下でラットを訓練させ、その期間中、能動的にレバーを押すごとに注入が行われ、注入の間、Sonalert(登録商標)から音が鳴り、刺激光が点滅し、部屋の光が消えた。コカイン自己投与訓練に成功した後、「プライム」または「手がかり」条件下で消去セッションを行った。「プライム」消去セッションの間、コカイン注入は行われなかった。消去の間、その他の条件は自己投与の間の条件と同一であった。「手がかり」消去セッションの間、部屋の光を明るくし、レバーを伸ばしたが、注入は行われず、他のいかなる刺激の変更も予定通りに行われた。化合物1(1~10mg/kg)またはそのビークルがセッションの60分前に経口投与され、(a)17mg/kg i.p.コカインがセッションの10分前に投与されたか(「プライム」)、または(b)コカインの自己投与による注入が行われず、以前にコカイン注入と関連付けられた手がかりが、復帰試験セッションの開始時および右側のレバーを押すごとに非随伴的に6秒間提示された(「手がかり」)という点を除けば、復帰試験の間の条件は、消去の間の条件と同一であった。復帰試験セッションの間の、能動的なレバー押しの平均回数が各動物について算出された。
【0378】
図27Aおよび図27Bは、化合物1が、コカイン(0.5mg/kg/注入)を自己投与するように訓練されたラットにおける反応の手がかり誘導性復帰を弱めたことを示す。化合物1(10mg/kg)は、オスのLong-Evans hoodedラット(n=11~12/群)における手がかり復帰反応を有意に減少させた。手がかり誘導性復活試験セッションの間の、能動的レバー押しの平均(±SEM)回数は、ビークル、1、3、または10mg/kgの化合物1について、それぞれ90.08±17.86、94.92±16.83、57.27±9.36、および45.36±5.55であった(*p<0.05、未補正フィッシャーのLSD法)。化合物1(1、3または10mg/kg)は、オスのLong-Evans hoodedラット(n=11~12/群)におけるコカインプライム復帰反応を有意に減少させた。コカインプライム誘導性復活試験セッションの間の、能動的レバー押しの平均(±SEM)回数は、ビークル、1、3、または10mg/kgの化合物1について、それぞれ84.38±14.65、109.82±22.16、77.08±19.70、および70.17±17.78であった。
【0379】
アンフェタミンまたはコカインを自己投与するように訓練されたラットは、化合物1を自己投与しなかった。同様に、化合物1は低用量のヘロインを自己投与するように訓練されたラットにおいて、正に強化しなかった。齧歯類における確立された自己投与手順の予測妥当性に基づき、これらの結果は、化合物1がヒトにおいて強化効果を示さないことを示唆する。行動的に活性な用量範囲の3から30mg/kgにわたって、化合物1は、薬物弁別手順においてアンフェタミン手がかりで訓練されたラットにおいて、アンフェタミンと同様の主観的品質を示さなかった。5-HT1Aパーシャルアゴニスト活性を有する非指定の抗不安薬である化合物1およびブスピロンは、MDMAにより誘発される手がかりに対して弱い(<50%)部分的な般化を示した。まとめると、これらの結果は、化合物1がヒトにおいて娯楽的濫用のリスクをもたらしそうにないことを示唆する。さらに、復帰研究の結果は、物質使用障害の治療における化合物1の潜在的な治療的有用性を示唆する。
【0380】
身体依存:
【0381】
化合物1が離脱誘導性身体依存をもたらす可能性の評価を行った。
【表31】
【0382】
ベースライン期間(-6から0日目)の間、服薬に慣れさせるために、ラットにビークルを1日1回(q.d.)経口投与し、1から46日目に、体重に基づいた投与量でビークル、化合物1、またはジアゼパムを1日2回(b.i.d.)投与した。離脱期間の間、動物に投与を行わなかった。午前中の投与は、全ての動物を毎日個別に観察できるようずらして行われた。
ベースライン期間:ビークル 7日間(-6から0日目)
薬物投与期間:46日間(1から46日目)
離脱期間:7日間(47から53日目)
終了:薬物離脱から8日目(54日目)
【0383】
-6から46日目の各投与セッションの前および離脱期間期間の午前中に体重を記録した。午前の投与セッションの前に記録された体重のみ、統計解析に使用した。餌および水の摂取量は、-6から46日目の投与直前の午前中に、および離脱期間の午前中に1日1回測定された。体温は、-6から46日目の投与直前、および離脱期間中の体重測定直後に直腸プローブを用いて1日1回測定された。詳細な観察チェックリストを使用し、投与期間における薬理効果の、および離脱期間における薬物依存の、任意の身体的徴候または行動的徴候を記録した。ベースラインおよび投与期間の期間中は午前の投与の1時間後に、46日目および離脱期間の期間中は1日2回、蓋のない飼育ケージの作業台の上で(研究を通してずっとラットが飼育される飼育室の中)ラットを2分間観察した。データ解釈のために、身体的徴候または行動的徴候については、離脱は46日目の午後の観察から開始したと定義される(この観察がジアゼパムまたは化合物1の最終投与の5時間後に行われたため)。他の全てのエンドポイントについては、離脱は47日目に開始する。
【0384】
13匹のラット(採血用のラット12匹および予備1匹)の3群に、1から46日目にビークルまたは化合物1(3および10mg/kg p.o.,b.i.d.)を投与し、主要期間におけるラットの投与レジメンを反映した。以下のタイムポイント:投与前、30分、1時間、2時間、4時間、7時間、7.5時間、8時間、9時間、11時間および24時間で、1日目、23日目および46日目に血液サンプルを回収した(タイムポイントあたりラットn=3)。用量処方解析を行った。
【0385】
結果:ビークル治療コントロール群のラットは、ベースライン、投与および離脱期間の間、行動的徴候および身体的徴候をほとんど示さず、全体的に発生率が低かった(2~3匹のラット)。ベースライン期間の間、これらの徴候は、立ちあがり行動、音への反応の増加(指パッチンへの反応)および投与/軽度の拘束への易怒性の上昇に限られた。投与期間の間、立ちあがり行動、ケージからの脱出の試み、自発運動活性の上昇、音への反応の増加、立毛および被毛湿潤が観察された。立ちあがり行動のみ、中程度の発生率で見られた(4、5および9日目;4匹のラット)。ビークルの投与が突然終了したとき、音への反応の増加のみ観察され、投与期間の42~46日目午前と比べて発生率は低かった。離脱期間中の行動は、ケージからの脱出の試み、自発運動活性の上昇、音への反応の増加および被毛湿潤に限られ、自発運動活性の上昇(49日目午前;4匹のラット)を除き、先と同様に発生率は低かった。
【0386】
化合物1(3mg/kg/日 p.o.,b.i.d.)は、投与期間を通じて日単位、週単位および全体で表した場合、投与期間の間の体重、餌の摂取量、水の摂取量および体温に、ならびに離脱期間の間の1日の変化に影響を与えなかった。化合物1(3mg/kg p.o. b.i.d.)投与の中止は、離脱の4日目(50日目)に、ビークルと比較して1日の餌の摂取量の、まれであるが有意な増加をもたらした。しかしながら、離脱期間を通じての餌の摂取量の1日の変化としてデータを解析した場合、有意な変化は認められなかった(42から46日目の平均との差)。ビークルと比較した1日の水の摂取量の有意な増加は、離脱の1から5日目(47~51日目)に認められた。これは、投与の42~46日目と比較した、離脱の4および5日目(50および51日目)における水の摂取量の1日の変化の有意な増加に反映された。化合物1(3mg/kg p.o. b.i.d.)からの離脱は、体重または体温に有意な影響を及ぼさなかった。化合物1(3mg/kg p.o. b.i.d.)は、低から中程度の発生率で、立ちあがり行動、体緊張の増加、自発運動活性の上昇、音への反応の増加、立毛、および被毛湿潤をもたらした。自発運動活性の上昇および体緊張の増加は、投与の最初の1から2週間で、排他的ではないが支配的に認められ、音への反応の増加は、投与期間を通じて散発的に認められた一方、立毛および被毛湿潤は、投与期間の間を通してずっと認められた。化合物1(3mg/kg p.o. b.i.d.)の投与が終了したとき、観察された新しい行動は、歯をガタガタさせる行動(4日目(午後)に低い発生率で)および鼻部の着色(同様に低い発生率で)のみであった。さらに、投与期間の終わり頃(42~46日目午前)と比較して、猫背姿勢の増加、自発運動活性の上昇、立毛および被毛湿潤が離脱期間中に観察された。ビークルと比較して、離脱期間中、猫背姿勢、立ちあがり行動、音への反応の増加、立毛、歯をガタガタさせる行動、被毛湿潤および鼻部の着色の発生率が増加し、ケージからの脱出の試み、および自発運動活性の上昇の発生率が減少した。化合物1(10mg/kg p.o. b.i.d.)は、投与期間の最初の4日間にわたって初期の体重減少をもたらし、この減少は、36日目まで投与期間のほとんどで、ビークル治療コントロールと比較して、1日の体重の有意な低下をもたらした。投与期間の終わりにおいて、ラットの体重は、ビークルコントロール群と比較して-2.6%低かった(p=0.088)。化合物1(10mg/kg p.o. b.i.d.)は、1週目(2、3、7日目)の間、およびその後散発的に(8、11、12、13、23および45日目)、1日の餌の摂取量の有意な減少をもたらした(範囲:1週目;-11.2%から-25.9%、2~6週目;-8.0%から-14.5%)。これは、1から4週目の間および全体での、週の餌の平均摂取量の低下に反映された。化合物1(10mg/kg p.o. b.i.d.)は、1日の水の摂取量の有意な減少もまた、もたらした(1、9、11、13、15および23日目)。週単位または全体としてデータを解析した場合に示されるように、この影響は1および2週目に限定された。体温への影響は、投与期間の間中、観察されなかった。化合物1(10mg/kg p.o. b.i.d.)の突然の中止の後、離脱の1から7日目(47から53日目)における1日の体重は、ビークル群より低いが有意差はなく、ビークルコントロールの水準にゆっくりと戻った。体重を、7日間の離脱期間期間における体重の累積変化(46日目との差)として表した場合、累積体重増加の漸進的な増加(46日目から53日目まで)が見られ(投与期間中に認められた化合物1に関連する体重/体重増加の減少の逆転を表すと思われる)、53日目に統計学的有意に達した。1日の餌の摂取量は、離脱の1日目(47日目)において有意に低いままであり、4および7日目(50および53日目)にコントロールの水準を超えて増加した。餌の摂取量を、離脱期間における餌の摂取量の1日の変化(42から46日目までの平均との差)として解析した場合、離脱の1および5日目(47および51日目)に有意な減少、4および7日目(50および53日目)に増加が認められた。しかしながら、51日目での影響は、この日に全ての用量群にわたって同様の減少が認められたので、薬物に関連する離脱症状の代表であると見なされない。結果として、離脱期間中、初めは餌の摂取量が減少し、その後離脱期間の終わりに向かうにつれて餌の摂取量が徐々に増加すると考えられる。この増加は、投与期間期間中の化合物1に関連する餌の摂取量の減少の逆転を反映すると思われる。水の摂取量の1日の変化としてデータを解析した場合(投与期間の最後の5日間と比較した場合)、離脱期間を通して(47から53日目)、および47から53日目(離脱の1から7日目)に、1日の水の摂取量の有意な増加が認められた。投与期間の最後の5日間(42から46日目)における平均体温との差としてデータを解析した場合に限り、体温の1日の変化のまれな有意な減少が、離脱の3日目(49日目)に認められた。1日の体温は、離脱期間を通して、ビークルと比較して変化しなかった。明らかな行動的徴候および身体的徴候は、投与期間中、低から高発生率で認められ、猫背姿勢、立毛、腹部のたるみ、体緊張の増加、自発運動活性の上昇、音への反応の増加、および被毛湿潤などがあった。化合物1(10mg/kg p.o. b.i.d.)投与の中止時に5つの新たな行動的徴候および身体的徴候が低い発生率で認められ、それは振戦(48日目午後;2匹のラット)、眼瞼下垂(47日目午後、48日目午後および49日目午後;2~3匹のラット)、不規則な呼吸(47日目午後および49日目午後;2匹のラット)、歯をガタガタさせる行動(47日目午後、49日目午後および51日目午後;2匹のラット)および鼻部の着色(46日目午後、47日目午後、48日目午後、49日目午後~51日目午前、および53日目午前/午後;2~3匹のラット)であった。さらに、投与期間の終わり頃(42~46日目午前)と比較して、立ちあがり行動、ケージからの脱出の試みおよび自発運動活性の上昇の発生率の増加が、離脱期間にわたって認められた。投与期間の終わり頃と比較して、腹部のたるみ、猫背姿勢、音への反応の増加および立毛の発生率の減少もまた認められた。ビークルと比較して、腹部のたるみ、猫背姿勢、立ちあがり行動、歯をガタガタさせる行動、振戦、音への反応の増加、立毛、体緊張の増加、眼瞼下垂、不規則な呼吸または呼吸の増加、自発運動活性の上昇、被毛湿潤および鼻部の着色の発生率の増加、ならびにケージからの脱出の試みの発生率の減少が、離脱期間にわたって認められた。
【0387】
ジアゼパムは、用量漸増レジメン(1~5/6~18/19~46日目に、0/15/20mg/kg p.o. b.i.d.)を用いて投与された。ビークル治療コントロールと比較した場合、ジアゼパムは、1から18日目までは1日の体重に影響を与えなかったが、19から46日目までこのパラメータを有意に上昇させた。これは、投与期間全体にわたる体重増加の有意な増加に反映された。投与期間の終わりにおいて、ジアゼパムを投与されたラットの体重は、ビークルを投与されたラットと比較して5.4%高かった。この体重の増加は、7日目以降のほとんどの日における餌の摂取量、2から5週目、36~45日目を通しての1日の餌の平均摂取量、および投与期間を通しての全体の1日の餌の摂取量の有意な増加に関連したが、水の摂取量への影響はなかった。ジアゼパム投与は、投与期間の間ずっと1日の体温の上昇も引き起こし、2から4、7、12、28から31、33から35、37、38、40、41および44日目に統計学的有意に達した。これは、1、4、5週目および36から46日目を通しての、並びに投与期間全体を通しての平均体温の有意な上昇に反映された。ジアゼパム投与の離脱時に、1日の体重減少または体重増加の減少が、餌の消費量、水の摂取量、および体温の減少(投与期間との比較)とともに認められ、餌および水の摂取量については、その減少が離脱の1日目で特に顕著であり、離脱期間にわたって和らいだ。明らかな行動的徴候および身体的徴候は、ジアゼパム投与期間中、低から高発生率で認められ、運動失調/千鳥足、猫背姿勢、足上げ歩行、行動の抑制、立ちあがり行動、ケージからの脱出の試み、体緊張の増加、体緊張の減少、自発運動活性の上昇、音への反応の増加、および被毛湿潤などがあった。発生率の低い行動には、跳躍、自発運動活性の低下、眼球突出、不規則な呼吸、呼吸の減少、および目的のない咀嚼運動も含まれた。多くの行動的徴候および身体的徴候の発生率は、離脱時にコントロールの水準にすぐに戻ったか、または離脱期間中に著しく減少した。しかしながら、腹部のたるみ、呼吸の増加および鼻部の着色は、低から中程度の発生率ではあるが認められ、これらは投与期間を通して認められなかった。さらに、投与期間の終わり頃(42~46日目午前)と比較して、立ちあがり行動、体緊張の増加、音への反応の増加、立毛、被毛湿潤および足上げ歩行の発生率の増加が、離脱期間にわたって認められた。投与期間の終わり頃と比較して、運動失調/千鳥足、猫背姿勢、跳躍、ケージからの脱出の試み、自発運動活性の上昇、呼吸の減少および目的のない咀嚼の発生率の減少もまた認められた。ビークルと比較して、腹部のたるみ、猫背姿勢、足上げ歩行、立ちあがり行動、自発運動活性の低下、不規則な呼吸または呼吸の増加、音への反応の増加、立毛、体緊張の増加、被毛湿潤および鼻部の着色の発生率の増加が、離脱期間にわたって認められた。さらに、自発運動活性の上昇およびケージからの脱出の試みが観察されることが減少した。用量処方サンプルの全てが受け入れ基準の±10%以内であった。1、23および46日目における最高血中濃度(Cmax)は、3mg/kg p.o. b.i.d.ではそれぞれ、534、490および520ng/mlに到達し、10mg/kg p.o. b.i.d.ではそれぞれ、1390、1690および1940ng/mlに到達した。この研究における3および10mg/kg p.o. b.i.d.の化合物1の用量は、ヒトにおける臨床的に有効な用量での薬物曝露(100mg用量、Cmax=431ng/ml;化合物1治験薬概要書、バージョン9.0)と比較して、それぞれ1.14から1.23倍および3.23から4.50倍大きい薬物曝露を達成した。
【0388】
結論:この研究は、十分な投与期間、投与の突然の中止、および投与中止後数日間の頻繁な監視を含む、身体依存の症候群を誘発する可能性を決定するための受け入れられている基準に従う(CHMP/EMA,2006;CDER/FDA,2017)。46日間の投与の中止後に、食欲不振および寡飲症などのジアゼパム離脱徴候の典型的なパターンが認められた。身体依存は、ビークルと比較した、投与の突然の中止後の多くの行動的徴候および身体的徴候の発生率、または発現の変化により示された。46日目の化合物1(3mg/kg p.o. b.i.d.)による投与の中止は、離脱を示唆する行動および身体的徴候(多渇症、猫背姿勢、立ちあがり行動、音への反応の増加、立毛、歯をガタガタさせる行動、被毛湿潤、鼻部の着色およびケージからの脱出の試み)の発生率の変化をもたらした。一過性の食欲不振、多渇症、ならびに離脱を示唆する行動および身体的徴候(腹部のたるみ、立ちあがり行動、自発運動活性の上昇、音への反応の増加、歯をガタガタさせる行動、振戦、眼瞼下垂、立毛、猫背姿勢、被毛湿潤、鼻部の着色、体緊張の増加、ケージからの脱出の試み、および不規則な呼吸または呼吸の増加)の発生率の変化により示される、化合物1(10mg/kg p.o. b.i.d.)による投与の中止後の離脱のエビデンスもまた認められた。
【0389】
要約すると、3または10mg/kg p.o. b.i.d.のいずれかで化合物1を46日間投与した後に投与を中止すると、身体依存を示すいくつかの離脱徴候が用量依存的に増加した。しかしながら、化合物1からの離脱期間における生理学的効果および身体的徴候の発生率および重症度は、ジアゼパム(10/15/20mg/kg p.o. b.i.d.)について離脱期間で認められたものと異なり、明確により軽度の離脱症候群を示した。
【0390】
本発明の様々な好ましい実施形態[A]から[CB]を以下に記す:
[実施形態A]
臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こさない、治療を必要とする患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化11】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、前記患者が、臨床的意義のある有害事象を経験しない、方法。
[実施形態B]
臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こさない、治療を必要とする患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化12】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法。
[実施形態C]
臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こさない、神経学的または精神疾患または障害を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化13】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法。
[実施形態D]
臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こさない、治療を必要とする患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化14】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法。
[実施形態E]
臨床的意義のある有害事象のリスクを引き起こさない、統合失調症を有する患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化15】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法。
[実施形態F]
患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化16】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とし、前記患者における、ドーパミンD2に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象を最小化する、方法。
[実施形態G]
患者における神経学的または精神疾患または障害の治療方法であって、前記方法が、前記患者に、治療有効量のドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない抗精神病薬を投与することを特徴とし、前記患者における有害事象を実質的に欠いており、前記有害事象が、ドーパミンD2に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する、方法
[実施形態H]
前記ドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない抗精神病薬が、化合物1
【化17】
またはその薬学的に許容される塩である、実施形態[G]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態I]
神経学的または精神疾患または障害の治療を必要とする患者における有害事象を最小化する方法であって、前記方法が、前記患者に、治療有効量のドーパミンD2受容体に対して直接親和性を持たない抗精神病薬を投与することを特徴とし、前記抗精神病薬が、化合物1
【化18】
またはその薬学的に許容される塩であり、前記方法が、ドーパミンD2受容体に対して親和性を持つ抗精神病薬に関連する有害事象を最小化する、方法。
[実施形態J]
前記神経学的または精神疾患または障害が、統合失調症である、実施形態[A]から[I]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態K]
統合失調症の陰性症状を治療することをさらに含む、実施形態[J]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態L]
前記神経学的または精神疾患または障害が、統合失調症、統合失調症に関連する認知機能障害、統合失調症スペクトラム障害、統合失調症陰性症状、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、妄想性障害、精神病、精神病性障害、譫妄、トゥレット症候群、不安ならびに全般性不安障害(GAD)および心的外傷後ストレス障害などの関連障害、行動障害、情動障害、うつ病、大うつ病性障害、気分変調症、双極性障害、双極性うつ病、治療抵抗性うつ病(TRD)、および大うつ病性障害(MDD)などの気分障害;躁病、季節性情動障害、強迫性障害、ナルコレプシー、REM行動障害、物質濫用もしくは依存、レッシュ・ナイハン病、ウィルソン病、自閉症スペクトラム障害、認知症、認知症関連の精神病(DRP)、パーキンソン病に伴う精神症状(PDP)、並びにアルツハイマー病の焦燥性興奮および精神症状などの神経変性障害、またはハンチントン舞踏病である、実施形態[A]から[I]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態M]
前記神経学的または精神疾患または障害が、統合失調症、減弱精神病症候群、統合失調症前駆症状、シゾイドパーソナリティ障害、および統合失調型パーソナリティ障害から選択される、実施形態[A]から[J]または[L]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態N]
前記精神病が、器質性精神病、薬剤性精神病、パーキンソン病に伴う精神症状、および興奮性精神病から選択される、実施形態[L]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態O]
前記患者が、少なくとも一つの定型抗精神病薬または少なくとも一つの非定型抗精神病薬である抗精神病薬に対して十分に反応しない、実施形態[A]から[N]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態P]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、化合物1のHCl塩を含む、実施形態[A]から[O]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態Q]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、経口投与される、実施形態[A]から[P]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態R]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、夕方に、または夜に、あるいは就寝時頃に毎日投与される、実施形態[A]から[Q]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態S]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、1日あたり約50mgまたは約75mgで投与される、実施形態[A]から[R]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態T]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、4週の治療期間の間、毎日投与される、実施形態[A]から[S]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態U]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、26週の治療期間の間、毎日投与される、実施形態[A]から[S]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態V]
前記患者における有害事象のリスクが、プラセボとほぼ同じか、または類似している、実施形態[A]から[U]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態W]
心血管有害事象を最小化する、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態X]
患者の5%以下で心血管イベントをもたらす、実施形態[A]から[W]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態Y]
前記患者が、抗精神病薬の投与によって心血管有害事象のリスクが上昇する、実施形態[A]から[W]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態Z]
29日の治療期間の間、患者の5%以下で心血管有害事象をもたらす、実施形態[T]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AA]
26週の治療期間の間、患者の6%以下で心血管有害事象をもたらす、実施形態[U]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AB]
プラセボとほぼ同じであるか、または類似する割合で、患者に心血管有害事象をもたらす、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AC]
心血管有害事象が、心房頻拍、徐脈、心血管不全、動悸、体位性頻脈症候群、血圧上昇、高血圧、低血圧、ホットフラッシュ、QT延長、起立性低血圧、または起立性頻脈とみなされる、実施形態[W]から[AB]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AD]
錐体外路系有害事象を最小化する、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AE]
患者の5%以下で錐体外路系有害事象をもたらす、実施形態[A]から[V]または[AD]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AF]
前記患者が、抗精神病薬の投与によって錐体外路系有害事象のリスクが上昇する、実施形態[A]から[V]または[AD]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AG]
錐体外路系有害事象が、アカシジア、不穏状態、関節硬直、筋骨格硬直、項部硬直、姿勢振戦、または振戦とみなされる、実施形態[AD]から[AF]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AH]
プラセボより大きくない割合で、患者に錐体外路系有害事象をもたらす、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AI]
QT延長を実質的に欠いている、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AJ]
患者の5%以下でQT延長をもたらす、実施形態[A]から[V]または[AI]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AK]
前記患者が、抗精神病薬の投与によってQT延長のリスクが上昇する、実施形態[A]から[V]または[AI]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AL]
29日の治療期間の間、QT延長を実質的に欠いている、実施形態[T]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AM]
プラセボより大きくない割合で、患者にQT延長をもたらす、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AN]
QT延長が、以下:
前記患者において、ベースラインで認められなかった450ミリ秒より大きいQTcF間隔が、任意の時点で認められる;および
少なくとも1回のベースライン後の測定において、QTcF間隔が、ベースラインから30ミリ秒以上増加する
のうちの一つまたは両方とみなされる、実施形態[AI]から[AM]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AO]
前記患者における高プロラクチン血症を最小化する、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AP]
プラセボより大きくない割合で、患者に高プロラクチン血症をもたらす、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AQ]
前記患者における起立性低血圧を最小化する、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AR]
患者の5%以下で起立性低血圧をもたらす、実施形態[A]から[V]または[AQ]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AS]
前記患者が、抗精神病薬の投与によって起立性低血圧のリスクが上昇する、実施形態[A]から[V]または[AQ]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AT]
プラセボより大きくない割合で、患者に起立性低血圧をもたらす、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AU]
前記患者における起立性頻脈を最小化する、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AV]
患者の5%以下で起立性頻脈をもたらす、実施形態[A]から[V]または[AU]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AW]
前記患者が、抗精神病薬の投与によって起立性頻脈のリスクが上昇する、実施形態[A]から[V]または[AU]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AX]
プラセボとほぼ同じであるか、または類似する割合で、患者に起立性頻脈をもたらす、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AY]
(i)ベースラインからのPANSS合計スコアの少なくとも17.2の減少または(ii)少なくとも0.45のPANSS合計スコアの効果量をもたらす、実施形態[A]から[AX]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態AZ]
前記結果が、29日の治療期間の後に測定される、実施形態[AY]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BA]
30週の治療後にベースラインからのPANSS合計スコアの少なくとも約30の減少をもたらす、実施形態[AX]または[AY]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BB]
(i)ベースラインからのPANSS陽性下位尺度スコアの少なくとも5.5の減少または(ii)少なくとも0.32のPANSS陽性下位尺度スコアの効果量をもたらす、実施形態[A]から[BA]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BC]
前記結果が、29日の治療期間の後に測定される、実施形態[BB]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BD]
30週の治療後にベースラインからのPANSS陽性下位尺度スコアの少なくとも約10の減少をもたらす、実施形態[BB]または[BC]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BE]
(i)ベースラインからのPANSS陰性下位尺度スコアの少なくとも3.1の減少または(ii)少なくとも0.37のPANSS陰性下位尺度スコアの効果量をもたらす、実施形態[A]から[BD]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BF]
前記結果が、29日の治療期間の後に測定される、実施形態[BE]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BG]
30週の治療後にベースラインからのPANSS陰性下位尺度スコアの少なくとも約5の減少をもたらす、実施形態[BE]または[BF]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BH]
(i)ベースラインからのPANSS総合精神病理下位尺度スコアの少なくとも9の減少または(ii)少なくとも0.51のPANSS総合精神病理下位尺度スコアの効果量をもたらす、実施形態[A]から[BG]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BI]
前記結果が、29日の治療期間の後に測定される、実施形態[BH]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BJ]
30週の治療後にベースラインからのPANSS総合精神病理下位尺度スコアの少なくとも約15の減少をもたらす、実施形態[BH]または[BI]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BK]
(i)ベースラインからのCGI-Sスコアの少なくとも1の減少または(ii)少なくとも0.52のCGI-Sスコアの効果量をもたらす、実施形態[A]から[BJ]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BL]
前記結果が、29日の治療期間の後に測定される、実施形態[BK]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BM]
30週の治療後にベースラインからのCGI-Sスコアの少なくとも約1.5の減少をもたらす、実施形態[BK]または[BL]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BN]
(i)ベースラインからのBNSS合計スコアの少なくとも7.1の減少または(ii)少なくとも0.48のBNSS合計スコアの効果量をもたらす、実施形態[A]から[BM]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BO]
前記結果が、29日の治療期間の後に測定される、実施形態[BN]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BP]
30週の治療後にベースラインからのBNSS合計スコアの少なくとも約10の減少をもたらす、実施形態[BN]または[BO]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BQ]
(i)ベースラインからのMADRS合計スコアの少なくとも3.3の減少または(ii)少なくとも0.32のMADRS合計スコアの効果量をもたらす、実施形態[A]から[BP]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BR]
前記結果が、29日の治療期間の後に測定される、実施形態[BQ]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BS]
30週の治療後にベースラインからのMADRS合計スコアの少なくとも約5の減少をもたらす、実施形態[BQ]または[BR]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BT]
前記患者における不眠症、不安、または頭痛の症状を治療することを含む、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BU]
前記患者における不眠症、不安、頭痛またはそれらの任意の組み合わせを最小化する、実施形態[A]から[V]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BV]
前記患者における不眠症、不安、頭痛、またはそれらの任意の組み合わせのリスクが、プラセボより小さい、実施形態[BT]または[BU]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BW]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、毎日第1の用量で1から3日間経口投与され、続いて、化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、前記患者に毎日治療用量で投与され、前記第1の用量が、前記治療用量より少なく、前記神経学的または精神疾患または障害が、統合失調症である、実施形態[A]から[BV]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BX]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、毎日前記第1の用量で1~3日目に投与され、化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、毎日前記治療用量で4~29日目に投与される、実施形態[A]から[BW]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BY]
前記第1の用量が、50mgであり、前記治療用量が、75mgである、実施形態[BW]または[BX]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態BZ]
患者における統合失調症の治療方法であって、前記方法が:
前記患者に1日75mgの化合物1
【化19】
またはその薬学的に許容される塩を、治療期間の間経口投与すること、または投与したこと;
前記患者が治療期間の間、有害事象を経験したかどうかを判断すること、または判断したこと;
前記患者が治療期間の間、有害事象を経験する場合、投与量を1日50mgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩に減少させること、または減少させたこと
を特徴とする、方法。
[実施形態CA]
統合失調症を有する患者における、不眠症、不安、または頭痛の症状の治療方法であって、前記方法が、前記患者に治療有効量の化合物1
【化20】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法。
[実施形態CB]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩が、結晶形Aの化合物1塩酸塩である、実施形態[A]から[CA]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態CC]
以下の一連のステップ:
(c)4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン遊離塩基をアセトニトリル中に溶解し、重量25%~35%溶液を得て、前記溶液を15~20%(重量対重量)の(R)-マンデル酸のアセトン溶液(40~55℃)に添加し、10~25℃に冷却し、(S)-(-)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン (R) マンデラートを濾過する;
(d)前記(S)-(-)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン (R) マンデラートを過剰量の塩基水溶液と反応させて、(S)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン遊離塩基を得る;および
(e)重量6~10%の濃度になるように、前記(S)-4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン遊離塩基をイソプロピルアルコール中に溶解し、過飽和を最小化するように選択した速度で6%HCl(w/w)のイソプロパノール溶液を添加し、混合物を35~45℃で15から60分間保持し、15~25℃に冷却し、(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン ヒドロクロライド結晶形Aを濾過する
を含む、(S)-(4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン ヒドロクロライド結晶形Aを調製する方法。
[実施形態CD]
以下の一連のステップ:
(a)トリフルオロメタンスルホン酸存在下で、3-チオフェンエタノールをN-メチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールと反応させて、4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン トリフラートを得る;および
(b)前記4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン トリフラートを過剰量の塩基水溶液と反応させて、4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン遊離塩基を得る
により、4,5-ジヒドロ-7H-チエノ[2,3-c]ピラン-7-イル)-N-メチルメタンアミン遊離塩基が調製される、実施形態[CC]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態CE]
実施形態[CC]もしくは実施形態[CD]に記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法によって調製される、化合物1塩酸塩結晶形A。
[実施形態CF]
化合物1、またはその薬学的に許容される塩を一つ以上の医薬剤と併用して投与することをさらに特徴とする、実施形態[A]から[CB]のいずれか1つに記載の、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
[実施形態CG]
前記一つ以上の医薬剤が、抗パーキンソン薬、抗アルツハイマー薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗虚血薬、CNS抑制薬、抗コリン作用薬、向知性薬、抗てんかん薬、注意力を高める(例えば、抗ADD/ADHD)薬、睡眠促進薬、覚醒促進薬、または鎮痛薬である、実施形態[CF]、または本発明の他の実施形態に記載の方法。
【0391】
本明細書に記載される内容に加えて、本発明の様々な修正は、上述の説明から当業者にとって明らかであろう。かかる修正もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるよう意図される。本出願に引用されるそれぞれの参考文献(全ての特許、特許出願、および出版物など)は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
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図24B
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図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
【国際調査報告】