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特表2023-523572ATRA又はその他のレチノイドと、BCMAに結合する免疫療法用薬剤との併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ATRA又はその他のレチノイドと、BCMAに結合する免疫療法用薬剤との併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20230530BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/4436 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230530BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230530BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K31/203 ZNA
A61K31/07
A61K31/11
A61K31/192
A61K31/165
A61K31/4436
A61K39/395 D
A61K35/17
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P3/02 102
A61P35/02
A61P19/08
A61K39/395 C
A61K38/05
A61K31/19
A61P21/04
A61P17/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P9/00
A61P3/10
A61P1/16
A61P27/02
A61P25/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562543
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2021059657
(87)【国際公開番号】W WO2021209498
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20169313.2
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518098047
【氏名又は名称】ユリウス-マクシミリアン-ウニヴェルシテート・ヴュルツブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フデチェク
(72)【発明者】
【氏名】エステファニア・ゲレロ・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】サブリナ・プロメルスベルガー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA14
4C084BA23
4C084CA59
4C084DC32
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA751
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB071
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC202
4C084ZC231
4C084ZC351
4C084ZC411
4C084ZC541
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA26
4C085EE03
4C086AA01
4C086BC17
4C086GA04
4C086GA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC23
4C086ZC35
4C086ZC41
4C086ZC54
4C086ZC75
4C087AA01
4C087BB37
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA75
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC35
4C087ZC41
4C087ZC54
4C087ZC75
4C206AA01
4C206CA10
4C206CB03
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4C206DA17
4C206DA21
4C206GA07
4C206GA22
4C206JA19
4C206KA01
4C206KA04
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA33
4C206ZA36
4C206ZA75
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB07
4C206ZB08
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4C206ZB15
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC23
4C206ZC35
4C206ZC41
4C206ZC54
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ATRA及びその他のレチノイドと、BCMAに結合する免疫療法用薬剤、例えばBCMAに結合することができるCAR-T細胞、BCMAに結合することができる抗体、又はBCMAに結合することができる抗体断片との併用療法に関する。本発明によれば、これらの併用療法は多発性骨髄腫等のがんの治療に有利に適用することができ、抗体媒介自己免疫疾患の治療にも適用することができる。本発明によるがんの治療における併用療法は、例えばATRA等のレチノイドががん細胞におけるBCMA mRNAのレベル並びにBCMAタンパク質レベルを上方制御し、それにより、がん細胞はBCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤、例えばBCMAに結合することができるCAR-T細胞、BCMAに結合することができる抗体、又はBCMAに結合することができる抗体断片によってより効果的に標的とすることができるので、有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤であって、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤が前記ヒト患者に投与される方法である、免疫療法用抗がん剤。
【請求項2】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のためのBCMA mRNAレベルの上方制御剤であって、前記方法が、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤が前記ヒト患者に投与される方法である、上方制御剤。
【請求項3】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せ。
【請求項4】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対する免疫療法によってがんを治療する方法であって、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤を前記ヒト患者に投与する工程を含む方法。
【請求項5】
前記上方制御剤がレチノイドである、請求項1に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、請求項2に記載の使用のための上方制御剤、請求項3に記載の使用のための組合せ、又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レチノイドが非芳香族レチノイドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項7】
前記非芳香族レチノイドが、全trans-レチノイン酸(ATRA)、イソトレチノイン(13-cis-レチノイン酸)、アリトレチノイン(9-cis-レチノイン酸)、レチナール、又はレチノールである、請求項6に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項8】
前記上方制御剤が全trans-レチノイン酸(ATRA)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項9】
前記レチノイドが芳香族レチノイドである、請求項5に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項10】
前記芳香族レチノイドがモノ芳香族レチノイド、好ましくはアシトレチン、エトレチナート、又はモトレチニドである、請求項9に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項11】
前記芳香族レチノイドがポリ芳香族レチノイド、好ましくはアダパレン、アロチノイド、アセチレンレチノイド、例えばタザロテン、又はベキサロテンである、請求項9に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項12】
前記がんが、前記上方制御剤によるBCMA mRNAレベルの上方制御を受けやすいがんである、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項13】
前記がんが、血液がん、好ましくは白血病、リンパ腫、又は骨髄腫である、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項14】
前記がんが、がん細胞のいくつか又は全てがBCMAを発現するがんである、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項15】
前記がんが、多発性骨髄腫、B細胞白血病、又はB細胞リンパ腫である、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項16】
前記がんが多発性骨髄腫である、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項17】
BCMAに結合することができる前記免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項18】
BCMAに結合することができるCARを発現する前記免疫細胞が、BCMAに結合することができるCARを発現するT細胞(BCMAに結合することができるCAR-T細胞)である、請求項17に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項19】
BCMAに結合することができる前記免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片を含み、前記抗体又は抗体断片が好ましくは二重特異的抗体、より好ましくはBiTE又はDARTから選択される抗体である、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項20】
BCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片が薬物とのコンジュゲートである、請求項19に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項21】
前記薬物が抗がん薬物である、請求項20に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項22】
前記使用が、免疫細胞単独によるがん免疫療法と比較して免疫細胞の長期持続及び/又は腫瘍質量の長期の低下をもたらす、請求項17又は18に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項23】
前記がんが、再発した及び難治性の多発性骨髄腫又は新たに診断された多発性骨髄腫である、請求項1から22のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項24】
前記方法においてガンマセクレターゼ阻害剤が投与される、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項25】
前記ガンマセクレターゼ阻害剤が、セマガセスタート(LY 450139)、クレニガセスタート(LY3039478)、RO4929097、DAPT、又はMK-0752である、請求項24に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項26】
ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤であって、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤が前記ヒト患者に投与される方法である、免疫療法用薬剤。
【請求項27】
ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のためのBCMA mRNAレベルの上方制御剤であって、前記方法が、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤が前記ヒト患者に投与される方法である、上方制御剤。
【請求項28】
ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せ。
【請求項29】
ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法であって、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤を前記ヒト患者に投与する工程を含む方法。
【請求項30】
前記上方制御剤が請求項5から11のいずれか一項で定義される、請求項26に記載の使用のための免疫療法用薬剤、請求項27に記載の使用のための上方制御剤、請求項28に記載の使用のための組合せ、又は請求項29に記載の方法。
【請求項31】
BCMAに結合することができる前記免疫療法用薬剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含む、請求項26から30のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項32】
BCMAに結合することができるCARを発現する前記免疫細胞が、BCMAに結合することができるCARを発現するT細胞(BCMAに結合することができるCAR-T細胞)である、請求項31に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項33】
BCMAに結合することができる前記免疫療法用薬剤が、BCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片を含む、請求項26から32のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項34】
BCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片が薬物とのコンジュゲートである、請求項33に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項35】
前記薬物が細胞傷害性薬物である、請求項34に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項36】
前記抗体媒介自己免疫疾患が、グレーブス病、重症筋無力症、ループスエリテマトーデス、リウマチ性関節炎、グッドパスチャー症候群、強皮症、CREST症候群、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、顕微鏡的多発性血管炎、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、橋本甲状腺炎、視神経脊髄炎スペクトラム障害、抗NMDA受容体脳炎、脈管炎、又は多発性硬化症である、請求項26から35のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項37】
BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含む、ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための免疫療法用抗がん剤であって、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターであり、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤がヒト患者に投与される方法である、免疫療法用抗がん剤。
【請求項38】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMA mRNAレベルの上方制御剤であって、前記方法が免疫療法用抗がん剤をヒト患者に投与する方法であり、前記免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである、上方制御剤。
【請求項39】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せであって、
前記免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである、組合せ。
【請求項40】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対する免疫療法によってがんを治療する方法であって、前記方法が免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤を前記ヒト患者に投与する工程を含み、前記免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである、方法。
【請求項41】
前記上方制御剤が請求項5から11のいずれか一項で定義されている、請求項37から40のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項42】
前記がんが請求項12から16又は23のいずれか一項で定義されている、請求項37から41のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【請求項43】
前記方法において、ガンマセクレターゼ阻害剤が投与され、前記ガンマセクレターゼ阻害剤が請求項24又は25で定義される、請求項37から42のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATRA及びその他のレチノイドと、BCMAに結合する免疫療法用薬剤、例えばBCMAに結合することができるCAR-T細胞、BCMAに結合することができる抗体、又はBCMAに結合することができる抗体断片との併用療法に関する。本発明によれば、これらの併用療法は多発性骨髄腫等のがんの治療に有利に適用することができ、抗体媒介自己免疫疾患の治療にも適用することができる。本発明によるがんの治療における併用療法は、例えばATRA等のレチノイドががん細胞におけるBCMA mRNAのレベル並びにBCMAタンパク質のレベルを上方制御し、それにより、がん細胞はBCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤、例えばBCMAに結合することができるCAR-T細胞、BCMAに結合することができる抗体、又はBCMAに結合することができる抗体断片によってより効果的に標的とすることができるので、有利である。さらに、ATRA及びその他のレチノイドは、ガンマセクレターゼ阻害剤及びBCMA標的免疫療法用薬剤と併用することができ、標的細胞上のBCMAの発現をさらに増大させ、したがってより良い免疫療法の奏功をもたらすことができる。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄における悪性形質細胞の制御されないクローナルな増殖によって特徴付けられる主として治癒しにくい血液疾患である1、2。いくつかの新規な治療薬が最近承認されたにも関わらず、骨髄腫はいまだに治癒しないと考えられている。大多数の患者は難治性になるか、又は毒性のために治療を中断しなければならず、究極的にはこの疾患によって死亡する3-5
【0003】
CAR T-細胞は急性リンパ球性白血病(ALL)及び瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)のような他の進行した血液悪性疾患において永続的な完全寛解を誘起することが示されているので、MMに対するCARに基づく療法を開発するための著しい努力が進行中である6-10。最近、MMの治療のための可能な標的抗原として、B細胞成熟抗原(BCMA)に対する注目が増大している2、11、12。BCMAは、MM細胞によって発現される腫瘍壊死ファミリー受容体(TNFR)である。これはいくつかの健常な造血細胞、例えば形質細胞及び形質細胞様樹状細胞においても見出されているが、健常な固体組織由来の細胞では見出されない。好ましい発現プロファイルによって、CAR T細胞療法を含むBCMA特異的免疫療法の注目すべき装備の開発が促進されてきた13-19。最近の第I/II相臨床試験において、BCMA-CAR T細胞はMM患者の一部で部分的及び完全な奏功を達成した16、19
【0004】
レチノイン酸は細胞の遺伝子発現及びタンパク質産生に影響することがある20。いくつかのがんの型の治療として全trans-レチノイン酸(ATRA)の使用が広く検討されており、これは腫瘍細胞におけるヒストンのアセチル化等の翻訳後修飾の主要な変化を誘起し得ることが示された21-24。ATRAによる治療はまた、MM細胞において遺伝子外変化を誘起し、CD38の発現の増強及び続いてCD38を標的とする抗体ダラツムマブの有効性の増強をもたらす22、25
【0005】
ガンマセクレターゼ阻害剤(GSI)の投与も、遍在性マルチサブユニットy-セクレターゼ複合体によるBCMAの切断をブロックすることによって、MM細胞におけるBCMAの発現を増大させ、BCMA-CAR-T細胞によるMM細胞の認識の改善をもたらすことができる40
【0006】
本発明に先立って、多発性骨髄腫の療法を含むより効果的ながん療法へのニーズが当技術で残っていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K Hofmannら、Front. Immunol.、2018年4月23日、「Targeting B Cells and Plasma Cells in Autoimmune Diseases」、https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.00835
【非特許文献2】A. Rubbert-Rothら、「Efficacy and safety of various repeat treatment dosing regimens of rituximab in patients with active rheumatoid arthritis:results of a Phase III randomized study(MIRROR)」、Rheumatology、49巻、9号、2010年9月、1683~1693頁、https://doi.org/10.1093/rheumatology/keq116
【非特許文献3】Liu E,ら、「Use of CAR-Transduced Natural Killer Cells in CD19-Positive Lymphoid Tumors」、N Engl J Med.、2020年2月6日、382(6):545~553頁、doi:10.1056/NEJMoa1910607
【非特許文献4】T.T. Smithら、「In situ programming of leukaemia-specific T cells using synthetic DNA nanocarriers」、Nat Nanotechnol.、2017年8月; 12(8):813~820頁、2017年4月17日にオンラインで公開、doi:10.1038/nnano.2017.57
【非特許文献5】Agarwal Sら、Oncoimmunology、2019年10月10日;8(12):e1671761.「In vivo generated human CAR T cells eradicate tumor cells」、doi:10.1080/2162402X.2019.1671761
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ATRAによって誘起された遺伝子外変化が、がん細胞、特にMM細胞によるBCMAの表面発現及び可溶性BCMA(BCMAs)分子の放出に影響するか否かを検討した。さらに、これらのATRAによって誘起された変化がBCMA-CAR T細胞の有効性にも影響するか否かを解析した。
【0009】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、多発性骨髄腫(MM)細胞を含むBリニエージ細胞によって優先的に発現される。その好ましい発現パターンのために、これはキメラ抗原受容体(CAR)療法のための有望な標的を代表している。BCMA-CAR T細胞を用いる臨床試験が現在進行中であり、最初の有望な結果が達成されている。しかし、BCMAの発現が少ないことや均一でないこと、並びに抗原の喪失又は下方制御の後の腫瘍の再発等の、いくつかの治療上の限界がある。これらの障害を克服するため、本発明者らは、MM細胞等のがん細胞における全体のBCMAの発現を増大させることを目的とした。
【0010】
本発明者らは、MM細胞上のBCMAを上方制御し、それにより、BCMA特異的CAR T細胞の性能を増強するための全trans-レチノイン酸(ATRA)の可能性を検討した。定量的RT-PCR及びフローサイトメトリーを用いることによって、レチノイドATRAとの共インキュベーションによって初代MM細胞及び骨髄腫細胞株におけるBCMA RNAレベル及びBCMA表面発現の顕著な増大が誘起できることが観察された。
【0011】
重要なことに、BCMA特異的CAR T細胞は、これらをATRAと前処置した場合に、標的細胞株の認識の増強及び溶解を示した。ATRAで処置した標的細胞による刺激の後で、未処置の標的細胞と比較してサイトカインの放出及びBCMA-CAR T細胞の増殖が増強された。MM1.S/NSGマウスにおいてさえ、動物に数日間ATRAを注射すると、腫瘍細胞の表面でBCMAが上方制御された。ATRA及びBCMA特異的CAR T細胞のコンビナトリアル処置によって、単剤処置と比較して区別できる長期の腫瘍質量の低減がもたらされた。
【0012】
さらに、標的細胞株に対するBCMAの上方制御の効果は、ATRAとガンマセクレターゼ阻害剤(GSI)とを組み合わせることによってさらに増強できることが示された。両方の薬物の投与を組み合わせることによって、BCMA-CAR T細胞の有効性は、インビトロ及びインビボでさえ、さらに増大した。即ち、2つの薬剤、GSI及びATRAの組合せ適用によって、BCMAの上方制御及びBCMA-CAR-T細胞による認識に関するさらに大きな効果がもたらされる。
【0013】
本発明によれば、ATRA等のレチノイドを用いて、例えば腫瘍細胞におけるBCMAのベースライン発現を増大し、治療の間、これを高いレベルに保つことによって、BCMAを標的とする免疫療法を増強することができる。
【0014】
レチノイドATRAは骨髄腫細胞の表面上でBCMAの発現の増強をもたらしたが、ATRA処置した細胞の上清において流出した可溶性BCMA(sBCMA)の増加は見られなかった。これはレチノイドATRAの予期しない好ましい効果であった。それは、1)sBCMAが骨髄腫患者の血清中で定常的に見出され、したがってATRAによる処置で増大することが予想されたため、及び2)sBCMAはBCMAによって方向付けられた抗がん療法に干渉し、その有効性を阻害する可能性があるので、その増加は避けるべきであるからである。
【0015】
それにも関わらず、本発明者らは、ATRA処置の後の時点で生じ、骨髄腫患者の血清中で定常的に見出される高濃度のsBCMAの存在において、BCMA CARの抗MM反応性が阻害されないことを確認した。
【0016】
本発明によれば、BCMAの有利な上方制御は、ATRAで達成されるだけでなく、その他のレチノイドによっても達成することができる。これらのレチノイドは、同じ作用(例えば特異的な遺伝子外モジュレーターとして)を共有していると考えられ、したがって本発明に従って用いることができる。
【0017】
本発明者らによる研究により、骨髄腫の治療のようながんの治療のための、ATRA等のレチノイドとBCMA-CAR T細胞等のBCMAに結合することができる免疫療法用薬剤とを組み合わせることの有利な効果が説明される。
【0018】
さらに本発明によれば、そのような併用療法は、抗体媒介自己免疫疾患の治療にも有利に適用することができる。抗体はB細胞、主として分化したB細胞である形質細胞によって分泌される。自己抗体は個体自身のタンパク質に結合する抗体であり、自己免疫疾患(例えばループスエリテマトーデス)を誘起することがある。したがって、B細胞及び特に形質細胞は、そのような自己免疫疾患の治療のための治療用標的として作用し得る。CD19、CD20、及びCD22に対するいくつかのモノクローナル抗体が多数のB細胞サブタイプを標的とするために既に用いられている。CD20を標的とする抗体リツキシマブが、リウマチ性関節炎、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、及び顕微鏡的多発性血管炎における使用のために既に承認されている(K Hofmannら、Front. Immunol.、2018年4月23日、「Targeting B Cells and Plasma Cells in Autoimmune Diseases」、https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.00835、A. Rubbert-Rothら、「Efficacy and safety of various repeat treatment dosing regimens of rituximab in patients with active rheumatoid arthritis:results of a Phase III randomized study(MIRROR)」、Rheumatology、49巻、9号、2010年9月、1683~1693頁、https://doi.org/10.1093/rheumatology/keq116)。
【0019】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、形質細胞を含むBリニエージ細胞によって優先的に発現される。したがって、本発明によれば、抗体媒介自己免疫疾患も、BCMAに結合することができる本発明による免疫療法用薬剤によって治療することができる。ここで、本発明によるBCMA mRNAレベルの上方制御剤、例えば本発明によるレチノイドの投与は、治療の有効性を増強することが期待される。BCMAに結合することができる本発明の免疫療法用薬剤の代わりに、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである遺伝子療法ベクターを含む免疫療法用薬剤も、本発明に従って用いることができる。
【0020】
本発明を、以下の好ましい実施形態によって例示する。
1. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤であって、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤がヒト患者に投与される方法である、免疫療法用抗がん剤。
2. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のためのBCMA mRNAレベルの上方制御剤であって、前記方法が、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤がヒト患者に投与される方法である、上方制御剤。
3. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せ。
4. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対する免疫療法によってがんを治療する方法であって、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤をヒト患者に投与する工程を含む方法。
5. 上方制御剤がレチノイドである、項目1に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、項目2に記載の使用のための上方制御剤、項目3に記載の使用のための組合せ、又は項目4に記載の方法。
6. レチノイドが非芳香族レチノイドである、項目1から5のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
7. 非芳香族レチノイドが、全trans-レチノイン酸(ATRA)、イソトレチノイン(13-cis-レチノイン酸)、アリトレチノイン(9-cis-レチノイン酸)、レチナール、又はレチノールである、項目6に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
8. 上方制御剤が全trans-レチノイン酸(ATRA)である、項目1から7のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
9. レチノイドが芳香族レチノイドである、項目5に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
10. 芳香族レチノイドがモノ芳香族レチノイド、好ましくはアシトレチン、エトレチナート、又はモトレチニドである、項目9に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
11. 芳香族レチノイドがポリ芳香族レチノイド、好ましくはアダパレン、アロチノイド、アセチレンレチノイド、例えばタザロテン、又はベキサロテンである、項目9に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
12. がんが、前記上方制御剤によるBCMA mRNAレベルの上方制御を受けやすいがんである、項目1から11のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
13. がんが、血液がん、好ましくは白血病、リンパ腫、又は多発性骨髄腫である、項目1から12のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
14. がんが、がん細胞のいくつか又は全てがBCMAを発現するがんである、項目1から13のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
15. がんが、多発性骨髄腫、B細胞白血病、又はB細胞リンパ腫である、項目1から14のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
16. がんが多発性骨髄腫である、項目1から15のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
17. BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含む、項目1から16のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
18. BCMAに結合することができるCARを発現する免疫細胞が、BCMAに結合することができるCARを発現するT細胞(BCMAに結合することができるCAR-T細胞)である、項目17に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
19. BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片を含み、前記抗体又は抗体断片が好ましくは二重特異的抗体、より好ましくはBiTE又はDARTから選択される抗体である、項目1から18のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
20. BCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片が薬物とのコンジュゲートである、項目19に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
21. 薬物が抗がん薬物である、項目20に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
22. 使用が、免疫細胞単独によるがん免疫療法と比較して免疫細胞の長期持続及び/又は腫瘍質量の長期の低下をもたらす、項目17又は18に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
23. がんが、再発した及び難治性の多発性骨髄腫又は新たに診断された多発性骨髄腫である、項目1から22のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
24. 前記方法においてガンマセクレターゼ阻害剤が投与される、項目1から23のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
25. ガンマセクレターゼ阻害剤が、セマガセスタート(LY 450139)、クレニガセスタート(LY3039478)、RO4929097、DAPT、又はMK-0752である、項目24に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
26. ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤であって、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤がヒト患者に投与される方法である、免疫療法用薬剤。
27. ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のためのBCMA mRNAレベルの上方制御剤であって、前記方法が、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤がヒト患者に投与される方法である、上方制御剤。
28. ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せ。
29. ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法であって、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤をヒト患者に投与する工程を含む方法。
30. 上方制御剤が項目5から11のいずれか一項で定義される、項目26に記載の使用のための免疫療法用薬剤、項目27に記載の使用のための上方制御剤、項目28に記載の使用のための組合せ、又は項目29に記載の方法。
31. BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含む、項目26から30のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
32. BCMAに結合することができるCARを発現する免疫細胞が、BCMAに結合することができるCARを発現するT細胞(BCMAに結合することができるCAR-T細胞)である、項目31に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
33. BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤が、BCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片を含む、項目26から32のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
34. BCMAに結合することができる抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片が薬物とのコンジュゲートである、項目33に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
35. 薬物が細胞傷害性薬物である、項目34に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
36. 抗体媒介自己免疫疾患が、グレーブス病、重症筋無力症、ループスエリテマトーデス、リウマチ性関節炎、グッドパスチャー症候群、強皮症、CREST症候群、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、顕微鏡的多発性血管炎、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、橋本甲状腺炎、視神経脊髄炎スペクトラム障害、抗NMDA受容体脳炎、脈管炎、又は多発性硬化症である、項目26から35のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用薬剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
37. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含む免疫療法用抗がん剤であって、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターであり、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤がヒト患者に投与される方法である、免疫療法用抗がん剤。
38. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMA mRNAレベルの上方制御剤であって、前記方法が免疫療法用抗がん剤をヒト患者に投与する方法であり、前記免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである、上方制御剤。
39. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せであって、前記免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである、組合せ。
40. ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対する免疫療法によってがんを治療する方法であって、前記方法が免疫療法用抗がん剤及びBCMA mRNAレベルの上方制御剤をヒト患者に投与する工程を含み、前記免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである、方法。
41. 上方制御剤が項目5から11のいずれか一項で定義されている、項目37から40のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
42. がんが項目12から16又は23のいずれか一項で定義されている、項目37から41のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
43. 前記方法において、ガンマセクレターゼ阻害剤が投与され、ガンマセクレターゼ阻害剤が項目24又は25で定義される、項目37から42のいずれか一項に記載の使用のための免疫療法用抗がん剤、使用のための上方制御剤、使用のための組合せ、又は方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ATRA処置は骨髄腫細胞株においてBCMA発現の増強をもたらす。 50nMのATRAの非存在下又は存在下に72時間培養したMM.1S、OPM-2、及びNCI-H929細胞株におけるBCMAの発現のフローサイトメトリー解析である。影付きのヒストグラムは抗BCMA mAbによる染色を示し、白色のヒストグラムはアイソタイプ対照抗体による染色を示す。7-AADを用いて死細胞を解析から除外した。挿入した数はアイソタイプに対する処置済み及び未処置の細胞のMFIの絶対差を表す。
図2】ATRA処置はMM.1S、OPM-2、及びNCI-H929細胞においてBCMAの発現の増強をもたらす。 棒グラフは、未処置細胞に対して正規化したATRA処置骨髄腫細胞株におけるBCMAの発現の相対的増加を示す。棒グラフは平均値+SD(n=3)を示す。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図3】ATRA処置はMM.1S細胞においてBCMAの発現の増強をもたらす。 直接確率論的光学再建顕微鏡(dSTORM)によって可視化した未処置及びATRA処置MM.1S細胞についてのBCMA分子の分布の代表的な写真である。
図4】ATRAによるBCMAの上方制御は骨髄腫細胞株において可逆的である。 オーバーレイヒストグラムは、未処置の骨髄腫細胞株、ATRA処置(50nM)後72時間、引き続く薬物除去後24時間、及びATRAへの再曝露後72時間におけるBCMAの発現を示す。
図5】ATRA処置は骨髄腫細胞株においてBCMA-RNAレベルの増強をもたらす。 増加する用量のATRAとの48時間のインキュベーションの後、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)アッセイによってMM.1S(n=4)及びOPM-2(n=3)におけるBCMA RNAのレベルを定量した。平均値+SDを示す。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図6】BCMAの発現は骨髄腫患者の間で大きく変動する。 新たに診断された(ND)及び以前に免疫調節薬物及びプロテアソーム阻害剤による治療を受けた再発/難治性(R/R)骨髄腫由来のCD38+ CD138+骨髄腫細胞について、BCMAとアイソタイプ対照の染色の平均蛍光強度(MFI)の差を示す(n=18)。デルタMFIはBCMAとアイソタイプ対照の染色のMFIの差である。
図7】ATRA処置は初代骨髄腫細胞においてBCMAの発現の増強をもたらす。 ATRAの非存在下又は存在下に72時間培養した初代骨髄腫細胞におけるBCMAの発現のフローサイトメトリー解析である。7-AADを用いて死細胞を解析から除外した。
図8】ATRA処置は初代骨髄腫細胞においてBCMAの発現の増強をもたらす。 棒グラフは、ATRA処置の前後の初代骨髄腫細胞(n=5)における正規化したBCMAの発現を示す。平均値+SDを示す。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図9】ATRAによるBCMAの上方制御は初代骨髄腫細胞において可逆的である。 オーバーレイヒストグラムは、未処置の初代骨髄腫細胞、ATRA処置(100nM)後72時間、引き続く薬物除去後24時間、及びATRAへの再曝露後72時間におけるBCMAの発現を示す。7-AADを用いて死細胞を解析から除外した。
図10】ATRA及びGSIによる処置の組合せは、MM.1S及びOPM-2細胞においてBCMAの発現の増強をもたらす。 棒グラフは、100nMのATRA及び/又は0.01μMのGSI LY3039478との72時間の処置の後のMM.1S細胞(n=5)及びOPM-2細胞(n=3)におけるBCMAの発現を示す。平均値+SDを示す。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図11】ATRA処置はBCMA-CAR T細胞の生存率に影響しない。 増加する用量のATRAとの72時間のインキュベーションの後のBCMA CD4+及びCD8+ CAR T細胞の生存率をフローサイトメトリーによって決定した。棒グラフは、未処置細胞に対して正規化したATRA処置後の生存している(7-AAD-)T細胞のパーセンテージを示す。データは平均値+SDとして提示している(n=3)。
図12】ATRA処置はBCMA-CAR T細胞におけるCARの発現に影響しない。 増加する用量のATRAとの72時間のインキュベーションの後のBCMA CD4+及びCD8+ CAR T細胞のEGFRt_BCMA-CARトランスジーン発現をフローサイトメトリーによって決定した。棒グラフは、未処置細胞に対して正規化したATRA処置後のEGFRt+ T細胞のパーセンテージを示す。データは平均値+SDとして提示している(n=3)。
図13】BCMA-CAR T細胞はインビトロでATRA又はATRA+GSI処置MM.1Sに対する細胞傷害性を増強させる。 骨髄腫細胞株を100nMのATRA及び/若しくは0.01μMのGSIと72時間インキュベート、又は未処置で放置した。標的細胞との4時間の共インキュベーションの後、CD8+ BCMA-CAR T細胞の細胞溶解活性を生物発光に基づくアッセイによって決定した。アッセイは1ウェルあたり5,000個の標的細胞として三重測定ウェルで実施した。データはn=4の独立した実験の平均値+SDとして提示する。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図14】BCMA-CAR T細胞はインビトロでATRA又はATRA+GSI処置OPM-2に対する細胞傷害性を増強させる。 骨髄腫細胞株を100nMのATRA及び/若しくは0.01μMのGSIと72時間インキュベート、又は未処置で放置した。標的細胞との4時間の共インキュベーションの後、CD8+ BCMA-CAR T細胞の細胞溶解活性を生物発光に基づくアッセイによって決定した。アッセイは1ウェルあたり5,000個の標的細胞として三重測定ウェルで実施した。データはn=4の独立した実験の平均値+SDとして提示する。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図15】BCMA-CAR T細胞はインビトロでATRA又はATRA+GSIで処置したMM.1Sによる刺激の後で増殖反応性を増強させる。 MM.1Sを100nMのATRA及び/若しくは0.01μMのGSIと72時間インキュベートするか、又は未処置で放置した。その後、CFSEで標識したBCMA-CAR T細胞をこれらの標的細胞と共インキュベートした。3日後にエフェクター細胞中のCFSE標識の低減を測定することによってBCMA-CAR T細胞の増殖能力を決定した。データはn=3の独立した実験の平均値+SDとして提示する。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図16】BCMA-CAR T細胞はインビトロでATRA又はATRA+GSIで処置したMM.1Sによる刺激の後でサイトカインの放出を増強させる。 MM.1Sを100nMのATRA及び/若しくは0.01μMのGSIと72時間インキュベートするか、又は未処置で放置した。その後、BCMA-CAR T細胞をこれらの標的細胞と20時間共インキュベートした。BCMA-CAR T細胞のサイトカイン放出はELISAによって上清中で決定した。アッセイは三重測定ウェルで実施した。データはn=3の独立した実験の平均値+SDとして提示する。表示した群の間のP値は、対応のないt検定を用いて計算した。*p<0.05。
図17】ATRAはインビボでMM.1SにおけるBCMAの発現を増強させる。 NSGマウスにMM.1S細胞を接種した。12日後、マウスに30mg/kgのATRAを4日間、i.p.注射した。未処置及びATRA処置したマウスの骨髄から得たMM.1S細胞におけるBCMAの発現をフローサイトメトリーによって解析した。
図18】ATRA及びBCMA-CAR T細胞又はATRA、GSI、及びBCMA-CAR T細胞のコンビナトリアル処置はインビボでMM.1Sの絶滅の増強をもたらす。 NSGマウスに2×106個のMM.1S細胞(ffluc+GFP+)を接種した。14日後、これらのマウスを1×106個のBCMA-CAR T細胞で処置した(CD4+:CD8+比=1:1)。BCMA-CAR T細胞は単独で、又はATRA(i.p.注射として30mg/kg体重)、GSI LY3039478(i.p.注射として1mg/kg体重)、若しくは両方の薬物との組合せとして投与した。12用量のATRAを12日目~27日目(月曜~金曜)の間に注射した。GSIは同じ期間の間に投与し、マウスは全部で7用量(それぞれ月曜、水曜、及び金曜)を受けた。MM.1Sのシグナルの平均輝度を解析して、各処置群における骨髄腫の進行/縮退を評価した。生物発光(BMI)値は、それぞれのマウスの全身を包含する目的の領域における光子/秒/cm2/srとして得た。A) 実験の時間経過。灰色のボックスは、GSI及びATRAを投与した期間を表す。B) グラフは、14日目に誘導されたベースライン値からの生物発光シグナルのパーセンテージ変化を示す。それぞれのバーはマウス群あたりの平均値を表す。1群あたりマウスn=3~6。
図19】ATRAは細胞株上清においてsBCMAを増加させない。 増加する用量のATRAとのインキュベーションの後のMM.1S及びOPM-2細胞の上清中の可溶性BCMAの濃度。細胞株を1×106/ウェルで24時間培養した。インキュベーションの後、上清を採取し、ELISAによって解析した。刺激は三重測定で実施した。平均値+SDを示す。
図20】骨髄腫患者の血清中のsBCMAレベルは腫瘍負荷とともに増加する。 MM患者の血清中の可溶性BCMA濃度。MM患者からの末梢血を採取した。3,000rpm、10分の遠心分離を実施して血清を得、これをELISAによって解析した(刺激は三重測定で実施した)。PD:疾患の進行、SD:疾患の安定化、PR:部分的寛解、CR:完全寛解。
図21】可溶性BCMAはATRA処置骨髄腫細胞に対するBCMA-CAR T細胞の効果を無効化しない。 CD8+ BCMA-CAR T細胞を、150ng/mlの可溶性BCMAの非存在下又は存在下にMM.1S又はK562/BCMA標的細胞と共培養した。4時間後、培養液にルシフェリンを添加し、生物発光に基づくアッセイによって細胞傷害性を評価した。データは技術的三重測定の平均値±SDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義及び実施形態
以下、他に定義しない限り、本発明で用いる用語は、当業者には既知の一般的な意味に従って理解すべきである。
【0023】
それぞれの出版物、特許出願、特許、及び本明細書で引用するその他の参考文献は、本発明と矛盾しない程度に、あらゆる目的のため、参照により全体として本明細書に組み込まれる。参考文献はそれらの参照番号及び「参考文献」の節に提供する対応する参照詳細によって表示する。
【0024】
用語「KD」又は「KD値」は、当技術で既知の平衡解離定数に関連する。本発明の文脈においては、これらの用語は、目的の抗原(即ちBCMA)に関してBCMAに結合することができる免疫療法用薬剤又は抗がん剤(例えばCAR T細胞又は抗体)の平衡解離定数に関連し得る。平衡解離定数は、複合体(例えば抗原-標的剤の複合体)がその成分(例えば抗原及び標的剤)に可逆的に解離する傾向の尺度である。KD値を決定する方法は当技術で既知である。
【0025】
キメラ抗原受容体は、1つ又は複数の抗原、好ましくはがん抗原、より好ましくはがん細胞の表面抗原に結合することができる。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、がん抗原の細胞外ドメインに結合することができる。特に好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体はBCMAの細胞外ドメインに結合することができ、さらにより好ましくは配列番号1の核酸配列によってコードされるキメラ抗原受容体及び/又は配列番号13のアミノ酸配列を有するキメラ抗原受容体である。
【0026】
本発明によれば、T細胞、NK細胞、又はPBMC等の免疫細胞が患者から単離され、本発明によるキメラ抗原受容体をコードする遺伝子移入ベクターによって遺伝子修飾され(例えば形質導入され)、本発明の方法及び使用に従って患者に投与される。好ましい実施形態では、T細胞はCD8+ T細胞又はCD4+ T細胞である。或いは、ドナー、好ましくは健常ドナーからのT細胞、NK細胞、又はPBMC等の同種免疫細胞を用いることができる。これらは本発明によるキメラ抗原受容体をコードする遺伝子移入ベクターによって遺伝子修飾され(例えば形質導入され)、本発明の方法及び使用に従って患者に投与される。好ましい実施形態では、T細胞はCD8+ T細胞又はCD4+ T細胞である。
【0027】
CAR NK細胞療法は、例えば[Liu E,ら、「Use of CAR-Transduced Natural Killer Cells in CD19-Positive Lymphoid Tumors」、N Engl J Med.、2020年2月6日、382(6):545~553頁、doi:10.1056/NEJMoa1910607]に記載されている。
【0028】
CAR T細胞療法のために、通常エクスビボでT細胞が操作され、増殖される。しかし本発明によれば、遺伝子移入をインビボで行なう選択もある。体内のT細胞等の免疫細胞をプログラムする1つの方法は、DNAを輸送するナノ粒子による遺伝子移入である。これは、例えばSmithら[T.T. Smithら、「In situ programming of leukaemia-specific T cells using synthetic DNA nanocarriers」、Nat Nanotechnol.、2017年8月; 12(8):813~820頁、2017年4月17日にオンラインで公開、doi:10.1038/nnano.2017.57]によって記載されている。第2の戦略は、ウイルスベクターによるインビボにおけるCAR免疫細胞(例えばCAR T細胞)の生成である。これは、例えばAgarwalら[Agarwal Sら、Oncoimmunology、2019年10月10日;8(12):e1671761.「In vivo generated human CAR T cells eradicate tumor cells」、doi:10.1080/2162402X.2019.1671761]によって記載されている。
【0029】
本発明で用いられる「免疫細胞」は特に限定されず、例えばT細胞、NK細胞、又はPBMCを含む。好ましい実施形態では、T細胞はCD8+ T細胞又はCD4+ T細胞である。
【0030】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、目的の抗原に特異的に結合することができる任意の機能性抗体を指す。特定の限定はなく、用語「抗体」は、ニワトリ等の鳥類及びマウス、ヤギ、非ヒト霊長類、及びヒト等の哺乳類を含む任意の適切な供給源の種に由来する抗体を包含する。好ましくは、抗体はヒト化抗体又はヒト抗体である。ヒト化抗体は、ヒトの配列及び目的の抗原(例えばBCMA)に対する結合特異性を付与する小部分の非ヒト配列を含む抗体である。抗体は、好ましくは当技術で周知の方法によって調製できるモノクローナル抗体である。用語「抗体」は、IgG-1、-2、-3、若しくは-4、IgE、IgA、IgM、又はIgDアイソタイプ抗体を包含する。用語「抗体」は、モノマー抗体(例えば(IgD、IgE、IgG)又はオリゴマー抗体(IgA又はIgM等)を包含する。用語「抗体」は、(特定の限定はなく)単離された抗体及び遺伝子操作された抗体等の修飾された抗体、例えばキメラ抗体若しくは二重特異的抗体、又は抗がん薬物若しくは細胞傷害性薬物等の薬物との抗体コンジュゲートも包含する。本発明に従ってBCMAに結合することができる好ましい二重特異的抗体は、BiTE(二重特異的T細胞エンゲージャー)、例えばCD3xBCMA BiTE等のT細胞エンゲージャー、又はDART(二重親和性再標的タンパク質)であってよい。本明細書に記載した「抗体」(例えばモノクローナル抗体)又は「その断片」は、異なる分子によって誘導体化又はそれに連結されていてもよい。例えば、抗体に連結され得る分子は、その他のタンパク質(例えばその他の抗体)、分子標識(例えば蛍光、発光、着色、又は放射活性分子)、薬学的及び/又は毒性の薬剤である。抗体又は抗原結合部分は、直接(例えば2つのタンパク質の融合の形態で)、又はリンカー分子(例えば当技術で既知の任意の好適な種類の化学的リンカー)を介して、連結されてよい。
【0031】
本明細書で用いられる、BCMAに結合することができる抗体断片又は抗体の断片は、BCMA抗原に特異的に結合する抗体の能力を保持している抗体の部分を指す。この能力は、例えば当技術で既知の方法によって抗原への特異的な結合について抗体と競合する抗原結合部分の能力を決定することによって決定することができる。特定の限定なく、抗体断片は、組換えDNA法及び抗体の化学的又は酵素的な断片化による調製を含む当技術で既知の任意の好適な方法によって産生することができる。抗体断片は、Fab断片、F(ab')断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、又は抗原に特異的に結合する抗体の能力を保持している抗体のその他の任意の部分であってよい。
【0032】
本発明による「がんの治療」又は「がんを治療する」又は「がん療法」又は「がん免疫療法」等の用語は、治療的処置を指す。治療的処置が奏功したか否かの評価は、例えば治療を受けた患者において治療によってがんの増殖が阻止されたか否かを評価することによって行なうことができる。好ましくは、阻止は当技術で既知の適切な統計的検定によって評価して統計的に有意である。がんの増殖の阻止は、本発明に従って治療した患者の群におけるがんの増殖と未治療の患者の対照群との比較によって、又は当技術の標準的ながん治療及び本発明による治療を受けた患者の群と当技術の標準的ながん治療のみを受けた患者の対象群との比較によって、評価することができる。がん増殖の阻止を評価するためのそのような研究は、臨床試験のための許容される標準、例えば十分な統計的検出力を伴う二重盲検ランダム化試験に従って設計される。用語「がんを治療する」には、がんの増殖が部分的に阻止される(即ち、患者におけるがんの増殖が患者の対照群と比較して遅延する)がん増殖の阻止、がんの増殖が完全に阻止される(即ち患者におけるがんの増殖が停止する)阻止、及びがんの増殖が逆転する(即ち、がんが縮小する)阻止が含まれる。治療的処置が奏功したか否かの評価は、がんの進行の既知の臨床的指標に基づいて行なうことができる。固形腫瘍を形成しないがんに関しては、がんの増殖は、がん細胞の計数に基づく方法等の既知の方法によって評価することができる。
【0033】
本発明に従って用いられる「がんの治療」又は「がんを治療する」又は「がん療法」又は「がん免疫療法」は、好ましくはがん自体の治療である。或いは、本発明による「がんの治療」又は「がんを治療する」又は「がん療法」又は「がん免疫療法」は、好ましくはMGUS(意義不明のモノクローナル免疫グロブリン異常症)及びくすぶり型多発性骨髄腫等の多発性骨髄腫前駆状態から選択される前がん状態の治療であってもよい。
【0034】
本発明によるがんの治療は、アミロイドーシス、例えば多発性骨髄腫に随伴するアミロイドーシスの治療等の、患者において追加的な又は二次的な治療有益性を生じることを除外しない。
【0035】
本発明によるがんの治療は、第1線療法、第2線療法、第3線療法、又は第4線療法であってよい。治療は第4線療法を超える療法であってもよい。これらの用語の意味は当技術で既知であり、US National Cancer Instituteによって一般に用いられる用語に従っている。
【0036】
がん免疫療法の方法又は免疫療法によってがんを治療する方法等の本発明による方法は、一実施形態では、本方法において遺伝子外モジュレーターも投与される方法であってよい。本発明による遺伝子外モジュレーターは、BET阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、又はDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤であってよく、好ましくはバルプロ酸、酪酸、パノビノスタットラクテート、ベリノスタット、ボリノスタット、ダシノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、ロミデプシン、及びリコリノスタットからなる群から選択される。
【0037】
本明細書で用いられる用語「結合することができる」は、結合すべき分子(例えばBCMA)と複合体を形成する能力を指す。結合は典型的にはイオン結合、水素結合、及びファンデルワールス力等の分子間力によって非共有結合的に生じ、典型的には可逆的である。結合能力を決定するための種々の方法及びアッセイが当技術で既知である。結合は通常、高い親和性を有する結合であり、KD値として測定される親和性は、好ましくは1μM未満、より好ましくは100nM未満、さらにより好ましくは10nM未満、さらにより好ましくは1nM未満、さらにより好ましくは100pM未満、さらにより好ましくは10pM未満、さらにより好ましくは1pM未満である。
【0038】
本明細書で用いる場合、「含む(comprising)又は(comprises)」等の用語は出現するごとに、「からなる(consisting of)又は(consists of)」で随意に置き換えてもよい。
【0039】
本発明による「組合せ」は、特定の投与様式に限定されない。BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤又は抗がん剤とBCMA mRNAレベルの上方制御剤は、例えば、個別にしかし同時に、又は1つの組成物の中で同時に、投与することができ、又は個別に別の時点で投与してもよい。
【0040】
ある物質がBCMA mRNAレベルの上方制御剤であるか否かは、当技術で既知の方法によって、例えば目的の細胞、例えばがん細胞におけるBCMA mRNAのレベルを、例えば本明細書の「BCMA mRNAレベルの定量」の節に記載した定量RT-PCR等の方法によって測定することによって決定することができる。
【0041】
BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤及び/又はBCMA mRNAレベルの上方制御剤を含む本発明による組成物及び製剤は、医薬組成物及び製剤の調製のための既知の標準に従って調製される。例えば、組成物及び製剤は、担体、賦形剤、又は安定剤等の薬学的に許容される成分を用いることによって、適切に保存し投与され得る方法で調製される。そのような薬学的に許容される成分は、医薬組成物又は製剤を患者に投与する際に用いられる量では毒性ではない。医薬組成物又は製剤に添加される薬学的に許容される成分は、活性薬剤(例えばBCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤及び/又はBCMA mRNAレベルの上方制御剤)の化学的性質、医薬組成物の意図された特定の用途、及び投与経路に基づいて選択することができる。本発明によれば、組成物又は製剤は、ヒトへの投与に好適であることが理解される。
【0042】
任意の好適な希釈剤を含む薬学的に許容される担体は、当技術で既知のように本明細書で用いることができる。本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容される」は、連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されていること、又は米国薬局方、欧州薬局方、若しくは哺乳類、特にヒトにおける使用のための一般に認められたその他の薬局方に列挙されていることを意味する。薬学的に許容される担体には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、無菌等張水性緩衝液、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。製剤は投与様式に合わせて適切に適合されることが理解されよう。
【実施例
【0043】
以下の非限定的な実施例によって、本発明を例示する。
【0044】
本実施例において用いた材料及び方法は以下の通りであった。
【0045】
ヒト対象
末梢血及び骨髄の試料は、Wurzburg大学のInstitutional Review Boardsによって承認された研究プロトコルに参加する旨の書面によるインフォームドコンセントの後に、健常ドナー及び骨髄腫患者から得た。
【0046】
細胞株
K562、OPM-2、NCI-H929、及びMM.1S細胞株は、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ、Braunschweig、Germany)から得た。K562、OPM-2、及びMM.1S細胞株は、レンチウイルス形質導入により、ホタルルシフェラーゼGFPによって修飾した。完全長のヒトBCMAを発現するK562は、BCMAをコードするレンチウイルスベクターをK562-ffluc細胞株に形質導入することによって生成した。
【0047】
フローサイトメトリー
悪性形質細胞及び抗BCMA mAb(BioLegend社、クローン19F2)又はアイソタイプ対照(Biolegend社、マウスIgG2a,κ)を同定するため、メーカーの使用説明書に従って骨髄単核球(BMMC)を抗CD38 及び抗CD138 mAb(Biolegend社、Koblenz、Germany)で染色した。フローサイトメトリーはCanto II(BD社、Heidelberg、Germany)で行ない、FlowJoソフトウェア(TreeStar社、Ashland、OR)を用いてデータを解析した。
【0048】
骨髄腫細胞のATRA処置
10%のウシ胎児血清を添加したRPMI-1640(Gibco社、Darmstadt、Germany)中、1×106細胞/mlで骨髄腫細胞を培養した。ジメチルスルホキシド中でATRA(Sigma-Aldrich社、Darmstadt、Germany)を再構成し、最終濃度25、50、又は100nMで培地に添加した。
【0049】
インビトロT細胞機能アッセイ
細胞溶解活性は、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)を形質導入した標的細胞を用いる生物発光に基づくアッセイによって解析した。増殖は、フローサイトメトリーにより、CFSE増殖色素の希釈によって測定した。そのため、CFSE標識したCAR T細胞を標的細胞とともにエフェクター対標的細胞の比を4:1として72時間インキュベートした。T細胞と標的細胞の20時間の共培養(エフェクター:標的比=4:1)の後、得られた上清中のIFNγ及びIL-2をELISA(Biolegend社、Koblenz、Germany)によって測定した。
【0050】
BCMA mRNAレベルの定量
RNeasy Mini Kit(Qiagen社、Hilden、Germany)を用い、メーカーのプロトコルに従って全RNAを抽出した。BCMAの逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)解析は、1μgの全RNA及びSuperScript(商標)II Reverse Transcriptase(Thermo Fisher Scientific, Inc社、Massachusetts)を用いて実施した。RNAの品質及び一体性は、Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies社、Santa Clara、CA)によって検証した。用いたプライマーの配列は下記の通りであった。BCMAフォワードプライマー:5'-TGT TCT TCT AAT ACT CCT CCT CT-3'(配列番号25)及びリバースプライマー:5'-AAC TCG TCC TTT AAT GGT TC-3'(配列番号26)。対照としてβ-アクチンに特異的なプライマーを用いた(フォワード:5'-TCC ATC ATG AAG TGT GAC GT-3'(配列番号27)及びリバース:5'-GAG CAA TGATCTTGATCT TCA T-3'(配列番号28))。RT-qPCRは、Quantitec SYBR green Kit(Qiagen社、Hilden、Germany)を用い、7900HT Real-time PCR System(Thermo Fisher Scientific, Inc社、Massachusetts)、7900 HT Fast Real Time PCR System(Applied Biosystems社、Foster City、CA)で実施した。PCR条件は以下からなっていた。変性のため95℃で3分、アニーリングのため95℃で30秒、及び延長のため62℃で40秒、40サイクル。直線範囲から各試料についての閾サイクルを選択し、プライマーのそれぞれの組について同じプレートで生成した標準曲線からの補間によって開始時の量に変換した。BCMAのメッセンジャー(m)RNAレベルは、2-ΔΔCq法 (21)を用いて各ウェルについてβ-アクチンmRNAレベルに正規化した。
【0051】
ATRAはインビボでMM.1S上のBCMAの発現を上方制御する。
全てのマウス実験は、Wurzburg大学のInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。Charles River社から6~8週齢の雌NSG(NOD-scid IL2rγnull)マウスを入手し、0日目に尾静脈注射によって2×106個のMM.1S/ffluc_GFPを接種し、ATRA処置及び対照群にランダムに割り付けた。ATRA(Sigma Aldrich社、Darmstadt、Germany)をトウモロコシ油中で製剤化し、腫瘍の接種の12日後に開始して4日間、腹腔内(i.p.)注射によって投与した(30mg/kg)。16日目の実験終了時点で、これらのマウスの骨髄試料をCanto II(BD社、Heidelberg、Germany)によって解析して、MM.1S上のBCMAの発現を検討し、FlowJoソフトウェア(TreeStar社、Ashland、OR)を用いてデータを解析した。
【0052】
ATRAとGSTとの組合せによるインビボ実験
BCMA-CAR T細胞、ATRA、及びGSIによるコンビナトリアル処置を検討するため、0日目に雌NSG(NOD-scid IL2rγnull)マウスに尾静脈注射によって2×106個のMM.1S/ffluc_GFPを接種し、処置群と対照群とにランダムに割り付けた。14日目に、マウスに尾静脈注射によって単一用量の1×106個のT細胞(即ち、0.5×106個のCD4+及び0.5×106個のCD8+)を投与した。ATRA(Sigma Aldrich社、Darmstadt、Germany)をDMSO中で希釈し、PEG300、Tween80、及び食塩水で製剤化して、腫瘍の接種後12日目に開始して月曜から金曜まで16日間、30mg/kgの用量で腹腔内注射(i.p.)によって投与した。GSI LY3039478(Med Chem Express社、NJ 08852、USA)をDMSO中で希釈し、PEG300、Tween80、及び食塩水で製剤化して、腫瘍の接種後12日目に開始して月曜、水曜、及び金曜に16日間、1mg/kgの用量で腹腔内注射(i.p.)によって投与した。D-ルシフェリン(0.3mg/g体重)(Biosynth社、Staad、Switzerland)のi.p.注射に続いてIVIS Lumina(Perkin Elmer社、Waltham、MA)による生物発光イメージングを実施し、Living Imageソフトウェア(Perkin Elmer社)を用いてデータを解析した。
【0053】
統計解析
統計解析は、Prismソフトウェアv6.07(GraphPad社、San Diego、California)を用いて実施した。対応のないt検定を用いて、インビトロ及びインビボ実験から得られたデータを解析した。P値0.05未満を統計的有意とみなした。
【0054】
(実施例1)
ATRAは骨髄腫細胞株におけるBCMAの表面発現を増大させる。
本発明者らは一般に利用されている3種の骨髄腫細胞株におけるBCMAの発現をフローサイトメトリーによって決定し、段階的なBCMAの発現を見出した。即ちMM.1SはBCMAlow(デルタMFI:1,098)、OPM-2はBCMAintermediate(デルタMFI:3,558)、及びNCI-H929はBCMAhigh(デルタMFI:9,883)であった(図1)。次に本発明者らは、それぞれの骨髄腫細胞株をATRAで72時間処置し、BCMAの発現をフローサイトメトリーによって再検討した。本発明者らは、BCMAの発現が3種の骨髄腫細胞株の全てで増加したこと、及びBCMA発現の序列が変化しなかったことを見出した。MM.1S(デルタMFI:2,709)<OPM-2(デルタMFI:7,358)<NCI-H929(デルタMFI:13,891)(図1)。本発明者らはベースラインで得られたデルタMFIを1に正規化した。したがって、BCMA発現のATRA処置の後の相対的増加はMM.1S(図2)及びOPM-2骨髄腫細胞(図2)において1.9倍、NCI-H929骨髄腫細胞(図2)において1.7倍であった。ATRA処置の中止に際して、BCMA発現は3種全ての骨髄腫細胞株において72時間以内にベースラインレベルに戻ったが、ATRA処置を再開すると同じ大きさに再び増加した(図4)。ATRA処置後のMM.1S細胞におけるBCMA表面分子の増加は、直接確率論的光学再建顕微鏡(dSTORM)を用いる単分子感受性超分解能顕微鏡によってさらに確認された(図3)。本発明者らは、ATRAが骨髄腫細胞において遺伝子外変化を誘起し、これがBCMA遺伝子発現の増大をもたらすとの仮説を立て、これがまさに事実であることをqPCRによって確認した。MM.1S及びOPM-2の例において、50nMのATRAによる処置の後のBCMA転写物の相対的増加は、それぞれ1.8倍及び2.1倍であった(図5)。合わせると、これらのデータは、ATRAによる処置によってMM.1S、OPM-2、及びNCI-H929骨髄腫細胞の表面におけるBCMA RNA及びBCMAタンパク質の発現の増加がもたらされることを示している。
【0055】
(実施例2)
ATRAは初代骨髄腫細胞におけるBCMAの表面発現を上方制御する。
初代骨髄腫細胞における知見を確証するため、本発明者らは、新たに診断された(ND、n=7)、及び再発した/難治性の(R/R、n=11)骨髄腫を有する患者から骨髄を得た。R/Rコホートの患者は以前に免疫調節薬物及び/又はプロテアソーム阻害剤による処置を受けていたが、いずれの患者も抗BCMA療法は受けていなかった。本発明者らは、精製されたCD38+CD138+悪性形質細胞をフローサイトメトリーによって解析し、デルタMFIによって評価して患者間で変動するBCMAの発現を見出した(デルタMFIlow=94、デルタMFIhigh=2,650)。NDとR/Rの患者由来の骨髄腫細胞において、BCMAの発現に有意差はなかった(図6)。n=5の患者からATRA処置及びBCMA発現の逐次解析を実施するために十分な数の初代骨髄腫細胞があった(図7)。これら5名の患者の内訳は3名のND及び2名のR/R患者であり、これらの患者は上で決定した低度から高度のBCMA発現のスペクトルを均一にカバーしていた。これら5名の患者の試料のそれぞれにおいて、本発明者らは、ATRAによる72時間の処置の後でフローサイトメトリーによってBCMA発現の実質的な増加を検出した。全ての用量レベルで用いたATRAによる有意な増加を観察することができた(100nM P=0.04、50nM P=0.006、及び25nM P=0.04)(図8)。初代骨髄腫細胞について100nMのATRA処置の後で本発明者らが観察したBCMA発現のデルタMFIの増加は、平均で1.6倍(1.23倍~2.23倍)であった。初代骨髄腫細胞においても、ATRAへの曝露をいったん中止すれば、BCMA発現はベースラインレベルまで低下し、薬物への再曝露に際して再び増加した(図9)。合わせると、これらのデータは、ATRAによる処置によって、ND及びR/Rの疾患を有する患者の初代骨髄腫細胞におけるBCMAの表面発現が増大することを示している。
【0056】
(実施例3)
ATRAとGSIとの組合せによって骨髄腫細胞株におけるBCMAの発現がさらに増加する。
GSIは細胞表面からのBCMA分子の流出を阻害するので、骨髄腫細胞におけるBCMAの発現の増加を誘起することができる40。本発明者らは、ATRAとGSIとの組合せが骨髄腫細胞におけるBCMAの発現をさらに増加させることができるか、及びこれがBCMA-CAR T細胞の抗骨髄腫反応性をATRA単独の効果よりさらに改善することができるかを判定した。100nMのATRA及び0.01μMのGSI LY3039478によるMM.1S及びOPM-2細胞の72時間の処置によって、BCMA発現の有意な増加がもたらされた。両方の薬物の組合せによって、2つの薬物のうちの1つの単独使用よりも高いBCMA発現がもたらされた(図10)。
【0057】
(実施例4)
BCMA-CAR T細胞はATRA処置骨髄腫細胞に対する反応性を増強させる。
本発明者らは、ATRA処置によって誘起されるBCMA発現の増加がBCMA-CAR T細胞の抗骨髄腫反応性に影響するか否かの判定を探求した。最初に、本発明者らは、ATRA処置はBCMA-CAR T細胞の生存率に対して不利な影響はなく(図11)、EGFRt_BCMA-CARトランスジーンの発現を低減しない(図12)ことを確認した。次いで、本発明者らは、BCMA-CAR T細胞の細胞溶解活性を試験し、ATRA処置MM.1S骨髄腫細胞の未処置MM.1S骨髄腫細胞と比較して優れた細胞溶解性を見出した(図13)。さらに、MM.1S標的細胞をATRAとGSIとの組合せで前もって処置した場合、BCMA-CAR T細胞の細胞溶解効果はさらに増強された(図13)。OPM-2細胞について同様の結果が得られた(図14)。さらに、標的細胞をATRA単独又はATRAとGSIとの組合せで前処置した場合、BCMA-CAR T細胞は増殖能力(図15)及びサイトカイン放出(図16)の増強を示した。
【0058】
これにより、骨髄腫(NSG/MM1.S)のマウス異種移植モデルにおける実験が促された。最初の実験の組では、6匹のマウスにMM1.S細胞(2×106個、尾静脈注射によるi.v.投与)を12日間接種して全身性骨髄腫を定着させ、次いで4日の処置コースでATRA(マウス3匹、30mg/kgを毎日i.p.投与)又は溶媒対照(マウス3匹)を投与した。翌日マウスを犠牲死させ、骨髄からMM.1S骨髄腫細胞を単離し、BCMAの発現をフローサイトメトリーによって解析した。ATRAを投与したマウス由来のMM.1S骨髄腫細胞において、対照マウスと比較して有意に高いBCMA発現が見出された(P=0.002、図17)。GSI処置の後のBCMAのインビボにおける上方制御はPontら(2019)によって示されている40
【0059】
第2のMM.1S/NSGマウス実験において、準最適用量のBCMA-CAR T細胞(全CAR-T細胞1×106個、CD8:CD4比1:1、14日目に尾静脈注射によりi.v.投与)の抗骨髄腫有効性を、ATRA単独、GSI単独、又は両方の薬物の組合せとの組合せで検討した。腫瘍の接種後12日目に開始し、16日以内に30mg/kgのATRAを12回、i.p.投与した。同じ期間内に、1mg/kgのGSIを7回、i.p.投与した(腫瘍の接種後12日目~28日目)。
【0060】
CAR T細胞の注射後、最初の数日間は、全てのマウス群で生物発光イメージングが低下した。しかし、CAR-T細胞のみを投与したマウスは、処置後2週以内に再発した。ATRAとBCMA-CAR T細胞との組合せによって処置したマウスは、それと比較してずっと遅く再発した(図18)。さらに、CAR T細胞、ATRA、及びGSIの組合せでマウスを処置した場合には、生物発光イメージングによってより明確でより安定した腫瘍縮退が明らかになった。これらのマウスは、フォローアップ期間中に完全寛解を達成し、これが持続した(図18)。
【0061】
概して、これらのデータは、ATRAがインビボで骨髄腫細胞におけるBCMAの発現を増強し、BCMA-CAR T細胞の抗骨髄腫反応性を強化することを示している。さらに、BCMAを標的とする免疫療法は、ATRA単独による治療からのみでなく、GSIとATRAとの併用治療からも恩恵を得ることができる。
【0062】
(実施例5)
sBCMAはATRA処置した骨髄腫細胞に対するBCMA-CAR T細胞の機能を障害しない。
膜結合BCMAの細胞外部分が骨髄腫細胞から流出して短い可溶性のBCMA(sBCMA)タンパク質アイソフォームを放出し得ることはよく確立されている26、27。本発明者らは、ATRAと72時間処置したMM.1S及びOPM-2骨髄腫細胞の上清中のsBCMAを測定し、対応する未処置細胞株におけるものと同様の値を得た(図19)。注目すべきことに、ATRA処置又は未処置のMM.1S及びOPM-2骨髄腫細胞の馴化培地中のsBCMAの濃度は、骨髄腫患者の血清中より高かった(図20)。本発明者らは、新鮮な培地又はsBCMA含有培地中のBCMA-CAR T細胞の細胞溶解活性を解析し、全てのエフェクター対標的細胞の比及び全ての時点で、MM.1S又はK562/BCMA標的細胞に対する同様に強力な細胞溶解活性を観察した(図21)。これらのデータは、ATRA処置が骨髄腫細胞からのsBCMAの放出を加速せず、ATRA処置骨髄腫細胞に対して本発明で用いるBCMA-CAR T細胞の増大した反応性がsBCMAによる干渉によって低減しないことを示している。
【0063】
総合して、これらのデータは、ATRAが初代骨髄腫細胞及び骨髄腫細胞株においてBCMAの発現の増加を誘起し、インビトロ及びインビボにおけるBCMA-CAR T細胞の反応性の増強を可能にすることを実証している。これらのデータは、ATRAと組み合わせたBCMA-CAR T細胞及びその他のBCMA指向免疫療法の検討を促すものである。この効果は、ATRAとGSIを組み合わせることによって強化することができる。
【0064】
BCMA-CAR T細胞について現在進行中の臨床試験は、MM患者において最初の有望な結果を示しており、この治療戦略における期待を高めている16、19。しかし、当初の高い奏効率にも関わらず、一部の患者において腫瘍の撲滅は不完全なままであり、全体の奏功期間は短く、BCMAの下方制御又は喪失の後の再発の症例報告があった16、17。この現象はCD19及びCD22を標的とするその他のCAR T細胞の治験でも記載されている。抗原密度の低減がCAR標的療法からの腫瘍の逃避の機構であろうという強力な証拠がある32-35
【0065】
さらに、BCMAのベースライン発現はMM細胞において低く、不均一であることがあり、治療からの患者の排除、又は治療に対する準最適な奏功をもたらすことがある16、17。以前の報告によれば、MMの試料においてBCMA発現レベルの高い変動が見出された36、37。BCMA分子はND及びR/RのMM患者由来の初代骨髄腫細胞の表面に等しく発現していることがさらに観察され、BCMA-CAR療法が両方の疾患状態に適用可能であることを示している。
【0066】
これらの理由により、標的細胞の表面におけるBCMAの密度を増大することによって、BCMA-CAR T細胞の有効性を増強するニーズがある。MM細胞上のレチノイン酸受容体がATRAによるCD38の発現の誘起に重要な役割を果たしていることが実証されている22、38、39。したがって、ATRAもCD38以外のその他のMM抗原、特にBCMAを上方制御し得るという仮説を立てた。まさに、これらのデータは、BCMA遺伝子及び表面発現が全ての腫瘍細胞株及び初代悪性形質細胞においてATRA処置の後で増大したことを示している。重要なことに、BCMAのベースライン発現が低い初代骨髄腫細胞についてもこれは真であった。この効果をインビボで検証するため、MM.1S腫瘍担持NSGマウスにATRAを注射した。これらのMM.1Sの解析によって、ATRA処置の後のBCMA発現の有意な増加が明らかになった。
【0067】
標的細胞におけるBCMAの表面発現の増加がBCMA-CAR T細胞による認識の増強をもたらすことが以前示された40。ATRA処置によるBCMAの上方制御の後のBCMA-CAR T細胞の抗骨髄腫有効性の増強が確認された。CAR T細胞療法とATRAとの間のこの相乗効果は、抗原が少ない腫瘍細胞クローンの増殖に対抗する戦略として用いることができ、BCMA-CAR T細胞の治療有効性を支持している。さらに、低いBCMAベースライン発現を有する患者をATRAで処置し、次いで成功裡にBCMA-CAR T細胞で処置することができる。さらに、ATRAとGSIの投与を組み合わせることによって、腫瘍細胞におけるBCMAの発現をさらに増強することができる。
【0068】
本発明者らはMM患者からの血清試料をsBCMAについて解析し、可溶性BCMAの濃度と疾患の状態との間の相関を見出した。以前の報告と一致して、血清sBCMAレベルは、疾患が進行している患者において、免疫調節療法若しくはプロテアソーム阻害剤療法に対する治療奏功を有する患者又は腫瘍負荷が低い患者より高かった27
【0069】
本発明者らは、ATRAによる処置が骨髄腫細胞株の上清におけるsBCMAレベルの増加ももたらすか否かを検討した。膜結合BCMAのレベルの顕著な増強にも関わらず、薬物に曝露した細胞の上清においてはsBCMAの上昇は観察されなかった。このことから、より多くの膜結合分子を発現した後の細胞外ドメインの流出は直ちに増大しないという結論が導かれた。
【0070】
それにも関わらず、本発明者らは、sBCMAが原理的にこれらのBCMA-CAR T細胞の抗骨髄腫機能を無効にし得るか否かを知る必要があった。したがって、本発明者らは150ng/mlまでのsBCMAの存在下にCAR T細胞の機能性を試験した。この濃度は、進行性疾患を有する患者の血清中で本発明者らが観察した平均濃度の約10倍である。この高い濃度においてさえ、本発明者らは、これらのBCMA-CAR T細胞の細胞溶解活性に対して不利な影響を有するsBCMAを見出すことができなかった。
【0071】
BCMA-CAR T細胞に対するsBCMAの影響については相違する先行報告がある。M.J. Pontらは、CAR T細胞のサイトカイン放出及び増殖は10ng/mlという低レベルのsBCMAによってさえ、また細胞傷害性は少なくとも100ng/mlという高レベルのsBCMAによって障害されることを報告している40。他方、R.O. Carpenterら及びK.M. Friedmanらのグループは、BCMA-CAR T細胞はMM異種移植マウスにおいて約7ng/mlと増加した血清sBCMAレベルにも関わらず高効率であったことを見出している37、41。さらに、R.O. Carpenterらは、150ng/mlまでの濃度のsBCMAはインビトロでCAR T細胞のサイトカイン放出に影響がなかったことを見出している41。これらの異なる観察は、異なるエピトープに結合する異なるBCMA CARの使用による可能性がある。これらのエピトープの全てが可溶性BCMAのコンフォメーションにおいて接近可能であるわけではない。
【0072】
結論として、本研究は、BCMA-CAR T細胞療法の有効性がATRAによる抗原発現の上方制御によって改善できることを実証している。したがって、本発明によれば、臨床状況においてATRA等のレチノイドとBCMA-CAR T細胞とを相乗的に用いて、ND及びR/Rの骨髄腫において奏効率を増大させ、奏功期間を延長させることができる。よく選択されたCAR構築物の使用により、患者血清中のsBCMA分子による不利な影響を低減することができよう。BCMAの上方制御及びBCMA-CAR T細胞のターゲティングの効果は、ATRAを用いる場合のみでなく、ATRAとGSIとの組合せの場合でも、より大きい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に従って用いられる免疫療法用薬剤及びレチノイドは、医薬品及び診断用製品の製造のための既知の基準に従って、工業的に製造し、特許を請求する方法及び使用のため(例えば本明細書で定義したがんを治療するため)の製品として販売することができる。したがって、本発明は産業上利用可能である。
【0074】
配列
全てのヌクレオチド配列は5'から3'の順に示している。全てのアミノ酸配列は3文字アミノ酸コードを用いてN末端からC末端の順に示している。
【0075】
BCMAに結合することができる実施例で用いたキメラ抗原受容体(CAR)の全ヌクレオチド配列(配列番号1):
【0076】
【化1A】
【0077】
【化1B】
【0078】
GMCSFシグナルペプチドのヌクレオチド配列(配列番号2):
【0079】
【化2】
【0080】
BCMA一本鎖可変断片VHのヌクレオチド配列(配列番号3):
【0081】
【化3】
【0082】
(4GS)3リンカーのヌクレオチド配列(配列番号4):
【0083】
【化4】
【0084】
BCMA一本鎖可変断片VLのヌクレオチド配列(配列番号5):
【0085】
【化5】
【0086】
IgG4-Fcヒンジ-CH2-CH3 4/2NQのヌクレオチド配列(配列番号6):
【0087】
【化6】
【0088】
CD28膜貫通ドメインのヌクレオチド配列(配列番号7):
【0089】
【化7】
【0090】
4-1BB細胞質ドメインのヌクレオチド配列(配列番号8):
【0091】
【化8】
【0092】
CD3ゼータドメインのヌクレオチド配列(配列番号9):
【0093】
【化9】
【0094】
T2Aリボソーマルスキップエレメントのヌクレオチド配列(配列番号10):
【0095】
【化10】
【0096】
GMCSFシグナルペプチドのヌクレオチド配列(配列番号11):
【0097】
【化11】
【0098】
tEGFR配列のヌクレオチド配列(配列番号12):
【0099】
【化12】
【0100】
BCMAに結合することができる実施例で用いたキメラ抗原受容体(CAR)の全アミノ酸配列(配列番号13):
【0101】
【化13A】
【0102】
【化13B】
【0103】
GMCSFシグナルペプチドのアミノ酸配列(配列番号14):
【0104】
【化14】
【0105】
BCMA一本鎖可変断片VHのアミノ酸配列(配列番号15):
【0106】
【化15】
【0107】
(4GS)3リンカーのアミノ酸配列(配列番号16):
【0108】
【化16】
【0109】
BCMA一本鎖可変断片VLのアミノ酸配列(配列番号17):
【0110】
【化17】
【0111】
IgG4-Fcヒンジ-CH2-CH3 4/2NQのアミノ酸配列(配列番号18):
【0112】
【化18】
【0113】
CD28膜貫通ドメインのアミノ酸配列(配列番号19):
【0114】
【化19】
【0115】
4-1BB細胞質ドメインのアミノ酸配列(配列番号20):
【0116】
【化20】
【0117】
CD3ゼータドメインのアミノ酸配列(配列番号21):
【0118】
【化21】
【0119】
T2Aリボソーマルスキップエレメントのアミノ酸配列(配列番号22):
【0120】
【化22】
【0121】
GMCSFシグナルペプチドのアミノ酸配列(配列番号23):
【0122】
【化23】
【0123】
tEGFR配列のアミノ酸配列(配列番号24):
【0124】
【化24】
【0125】
本発明による好ましい実施形態では、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)は、配列番号1のヌクレオチド配列又はそれと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるキメラ抗原受容体(CAR)である。本発明による別の好ましい実施形態では、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)は、配列番号13のアミノ酸配列又はそれと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0126】
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
2023523572000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤を含む、ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための医薬であって、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤が前記ヒト患者に投与される方法であり、前記上方制御剤がレチノイドであり、BCMAに結合することができる前記免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含み、及び/又はBCMAに結合することができる抗体若しくはBCMAに結合することができる抗体断片を含む、医薬
【請求項2】
BCMA mRNAレベルの上方制御剤を含む、ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための医薬であって、前記方法が、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤が前記ヒト患者に投与される方法であり、前記上方制御剤がレチノイドであり、BCMAに結合することができる前記免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含み、及び/又はBCMAに結合することができる抗体若しくはBCMAに結合することができる抗体断片を含む、医薬
【請求項3】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用抗がん剤BCMA mRNAレベルの上方制御剤の組合せであって、前記上方制御剤がレチノイドであり、BCMAに結合することができる前記免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含み、及び/又はBCMAに結合することができる抗体若しくはBCMAに結合することができる抗体断片を含む、組合せ
【請求項4】
前記レチノイドが非芳香族レチノイドであり、好ましくは全trans-レチノイン酸(ATRA)、イソトレチノイン(13-cis-レチノイン酸)、アリトレチノイン(9-cis-レチノイン酸)、レチナール、又はレチノール、より好ましくは全trans-レチノイン酸(ATRA)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項5】
前記レチノイドが芳香族レチノイドであり、好ましくはアシトレチン、エトレチナート、若しくはモトレチニドから選択されるモノ芳香族レチノイド、又はアダパレン、アロチノイド、アセチレンレチノイド、例えばタザロテン、若しくはベキサロテンから選択されるポリ芳香族レチノイドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項6】
前記がんが、
(i)前記上方制御剤によるBCMA mRNAレベルの上方制御を受けやすいがん
(ii)血液がん、好ましくは白血病、リンパ腫、又は骨髄腫、
(iii)がん細胞のいくつか又は全てがBCMAを発現するがん、及び/又は
(iv)多発性骨髄腫、B細胞白血病、又はB細胞リンパ腫、好ましくは多発性骨髄腫、より好ましくは再発した若しくは難治性の多発性骨髄腫又は新たに診断された多発性骨髄腫
である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項7】
BCMAに結合することができるCARを発現する前記免疫細胞が、BCMAに結合することができるCARを発現するT細胞(BCMAに結合することができるCAR-T細胞)であり、及び/又は前記抗体若しくは抗体断片が、好ましくはBiTE若しくはDARTから選択される二重特異的抗体であり、BCMAに結合することができる前記抗体又はBCMAに結合することができる抗体断片が、好ましくは薬物、より好ましくは抗がん薬物とのコンジュゲートである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項8】
BCMAに結合することができる前記免疫療法用抗がん剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含み、前記使用が、免疫細胞単独によるがん免疫療法と比較して免疫細胞の長期持続及び/又は腫瘍質量の長期の低下をもたらす、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項9】
前記方法においてガンマセクレターゼ阻害剤が投与され、前記ガンマセクレターゼ阻害剤が、好ましくはセマガセスタート(LY450139)、クレニガセスタート(LY3039478)、RO4929097、DAPT、又はMK-0752である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項10】
BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤を含む、ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のための医薬であって、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤が前記ヒト患者に投与される方法であり、前記上方制御剤がレチノイドであり、BCMAに結合することができる前記免疫療法用薬剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含み、及び/又はBCMAに結合することができる抗体若しくはBCMAに結合することができる抗体断片を含む、医薬
【請求項11】
BCMA mRNAレベルの上方制御剤を含む、ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のための医薬であって、前記方法が、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤が前記ヒト患者に投与される方法であり、前記上方制御剤がレチノイドであり、BCMAに結合することができる前記免疫療法用薬剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含み、及び/又はBCMAに結合することができる抗体若しくはBCMAに結合することができる抗体断片を含む、医薬
【請求項12】
ヒト患者における抗体媒介自己免疫疾患を治療する方法における使用のための、BCMAに結合することができる免疫療法用薬剤BCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せ物であって、前記上方制御剤がレチノイドであり、BCMAに結合することができる前記免疫療法用薬剤が、BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を含み、及び/又はBCMAに結合することができる抗体若しくはBCMAに結合することができる抗体断片を含む、組合せ物
【請求項13】
前記上方制御剤が、請求項4又は5のいずれか一項に規定されたものである、請求項10から12のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項14】
BCMAに結合することができるCARを発現する前記免疫細胞が、BCMAに結合することができるCARを発現するT細胞(BCMAに結合することができるCAR-T細胞)であり、及び/又はBCMAに結合することができる抗体若しくはBCMAに結合することができる抗体断片が薬物、好ましくは細胞傷害性薬物とのコンジュゲートである、請求項10から13のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項15】
前記抗体媒介自己免疫疾患が、グレーブス病、重症筋無力症、ループスエリテマトーデス、リウマチ性関節炎、グッドパスチャー症候群、強皮症、CREST症候群、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、顕微鏡的多発性血管炎、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、橋本甲状腺炎、視神経脊髄炎スペクトラム障害、抗NMDA受容体脳炎、脈管炎、又は多発性硬化症である、請求項10から14のいずれか一項に記載の医薬又は組合せ物
【請求項16】
BCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含む、ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための免疫療法用抗がん剤であって、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターであり、前記方法が、BCMA mRNAレベルの上方制御剤が前記ヒト患者に投与される方法であり、前記上方制御剤がレチノイドである、免疫療法用抗がん剤。
【請求項17】
BCMA mRNAレベルの上方制御剤を含む、ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための医薬であって、前記上方制御剤がレチノイドであり、前記方法が免疫療法用抗がん剤を前記ヒト患者に投与する方法であり、前記免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターである、医薬
【請求項18】
ヒト患者におけるがん抗原としてのBCMAに対するがん免疫療法の方法における使用のための、免疫療法用抗がん剤BCMA mRNAレベルの上方制御剤との組合せ物であって、前記免疫療法用抗がん剤がBCMAに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子療法ベクターを含み、前記遺伝子療法ベクターが免疫細胞における前記CARのインビボ発現のための遺伝子療法ベクターであり、前記上方制御剤がレチノイドである、組合せ物
【請求項19】
前記上方制御剤が請求項4又は5に規定されたものであり、前記がんが請求項6に規定されたものであり、及び/又は前記方法において、ガンマセクレターゼ阻害剤が投与され、前記ガンマセクレターゼ阻害剤が請求項9に規定されたものである、請求項16から18のいずれか一項に記載の免疫療法用抗がん剤、医薬、又は組合せ物
【国際調査報告】