(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】冠循環のマルチスケール解剖学的および機能的撮像のための3D超音波冠動脈造影、非電離および非侵襲技術
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562548
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2021059534
(87)【国際公開番号】W WO2021209435
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マテュー・ペルノ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・タンター
(72)【発明者】
【氏名】クレマン・パパダキ
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・ドミュレナール
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD03
4C601DD15
4C601DD27
4C601DE03
4C601DE04
4C601DE05
4C601DE06
4C601EE01
4C601EE07
4C601FF08
4C601GB06
4C601JB34
4C601JC31
4C601JC37
(57)【要約】
本発明は、超音波および心臓の冠血流の撮像の分野に関する。冠微小血管機能不全(CMD)の患者は、予後が不良であり、心不全のための入院、突然心臓死、および心筋梗塞(MI)を含む心血管系イベントの発生率が著しく高い。臨床において早急に必要であるにもかかわらず、冠微小血管を直接視覚化し局所冠微小血管系を評価するための非電離非侵襲技法は臨床的に利用可能ではない。血流撮像は、心臓において実施される場合、この器官が高速に動くことに起因して困難な作業になる。冠血流についての実際の撮像法の制限を解消するために、本発明者らは、心筋運動速度が低い期間を自動的に検出し、同じデータ取得から冠血流速度および組織運動速度を推定する超音波超高速撮像法を提案した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の心臓の冠血流を撮像するための方法であって、少なくとも以下のステップ、すなわち、
ステップa)非集束超音波が2Dアレイ超音波トランスデューサによって前記心臓内で伝送され、後方散乱した超音波からの生データが前記2Dアレイ超音波トランスデューサによって取得される取得ステップと、
ステップb)前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスが前記生データから生成される撮像ステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、撮像ステップと、
ステップc)少なくとも1つの時間窓が特定される特定ステップであって、前記時間窓では、心臓の動きが最小限である、特定ステップと、
ステップd)冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、ステップc)において特定された前記少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
ステップe)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップd)の前記3Dカートグラフィに基づいて、ステップc)において特定された前記少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおいて位置を特定される位置特定ステップと、
ステップf)前記冠血流速度がステップe)の前記少なくとも1つの関心点において自動的に決定され、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータが自動的に算出される定量化ステップであって、前記冠血流速度が、もっぱらステップd)の前記3Dカートグラフィに基づいて前記少なくとも1つの関心点において自動的に決定される、定量化ステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記特定ステップc)は、以下のステップ、すなわち、
ステップi)前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスが、ステップa)の前記生データから生成される撮像ステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、撮像ステップと、
ステップii)心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示すN個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
ステップiii)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップii)の前記3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおいて位置を特定され、前記少なくとも1つの関心点における前記組織運動速度が自動的に決定される、前記心臓組織の運動推定ステップと、
ステップiv)前記時間窓が特定され、前記時間窓では、ステップiii)において定量化された前記組織運動速度が最低速度に達する特定ステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップiv)の前記最低速度が5cm/s未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
特定ステップc)の前記少なくとも1つの時間窓は、心電図検査法によって特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)の前記少なくとも1つの時間窓は、心臓拡張期の開始時間および終了時間に相当し、ステップf)の前記定量化パラメータは、血流プロファイル、最高速度プロファイル、平均速度プロファイル、または時間速度プロファイルから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
患者自体の血管系に注入される微小気泡または超音波造影剤をすでに投与された前記患者において、微小気泡または超音波造影剤が追跡され、前記微小気泡または前記超音波造影剤の軌跡および速度が決定される追跡ステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ドプラ推定器またはスペックルトラッキングによって前記組織運動推定が実行される、請求項1、2、5、および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記気泡または超音波造影剤追跡ステップは、時空間フィルタ処理または機械学習からなる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
冠状血管の密度が自動的に定量化され、ボリューム単位で灌流される血液ボリュームが自動的に定量化され、血流速度を加速することによって狭窄が自動的に検出され、すでに血管拡張剤物質を投与されている患者における冠血流速度の変動を推定することによって冠血流予備能指標が取得され、前記方法は、中心腔の自動セグメント化ステップをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
生物の心臓の冠血流を4D撮像するための装置であって、前記装置が、少なくとも2Dアレイ超音波プローブ(2)と制御システム(3、4)とを含み、前記制御システム(3、4)が、
(a)2Dアレイ超音波トランスデューサによって前記心臓内で非集束超音波を伝送し、後方散乱した超音波から前記2Dアレイ超音波トランスデューサを通じて生データを取得することと、
(b)前記生データから前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスを生成することであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、生成することと、
(c)前記心臓の運動が最小限になる少なくとも1つの時間窓を特定することと、
(d)(c)において特定された前記少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出することと、
(e)もっぱら(d)の前記3Dカートグラフィに基づいて、(c)において特定された前記少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定することと、
(f)もっぱら(d)の前記3Dカートグラフィに基づいて(e)の前記少なくとも1つの関心点における前記冠血流速度を自動的に特定し、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータを自動的に算出することとを行うように構成される、装置。
【請求項11】
(c)において、
(i)(a)の前記生データから前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスを生成することであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、生成することと、
(ii)前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示すN個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出することと、
(iii)もっぱら(ii)の前記3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定し、前記少なくとも1つの関心点における前記組織運動速度を自動的に決定することと、
(iv)(iii)において定量化された前記組織運動速度が最低速度に達する前記時間窓を特定することとを行うように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
(c)において、心電図検査法によって(c)の前記少なくとも1つの時間窓を特定するように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
命令を含むコンピュータ可読媒体であって、前記命令が、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、以下のステップ、すなわち、
ステップa)2Dアレイ超音波トランスデューサによって心臓内で非集束超音波を伝送し、後方散乱した超音波から前記2Dアレイ超音波トランスデューサを通じて生データを取得するステップと、
ステップb)前記生データから生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスを生成するステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、ステップと、
ステップc)前記心臓の運動が最小限になる少なくとも1つの時間窓を特定するステップと、
ステップd)ステップc)において特定された前記少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出するステップと、
ステップe)もっぱらステップd)の前記3Dカートグラフィに基づいて、ステップc)において特定された前記少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定するステップと、
ステップf)もっぱらステップd)の前記3Dカートグラフィに基づいてステップe)の前記少なくとも1つの関心点における前記冠血流速度を自動的に特定し、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータを自動的に算出するステップとを実行させる、コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
ステップc)を実行するための命令をさらに含み、前記命令が、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、以下のステップ、すなわち、
(i)(a)の前記生データから前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスを生成するステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、ステップと、
(ii)前記心臓の撮像されたボリュームの移動を示すN個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出するステップと、
(iii)もっぱら(ii)の前記3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定し、前記少なくとも1つの関心点における前記組織運動速度を自動的に決定するステップと、
(iv)(iii)において定量化された前記組織運動速度が最低速度に達する前記時間窓を特定するステップとを実行させる、請求項13に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに心電図検査法によってステップc)を実行させる命令を含む、請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冠循環は、心灌流に関与しており、安定狭心症または心筋梗塞の場合に見られるように、冠血流が変化すると、心臓の機能に深刻な影響がもたらされる。冠血管系は3つの区画で構成されている。第1の区画は、心外膜冠動脈で構成され、心外膜冠動脈は、心臓の表面に沿って延び、直径が数ミリメートルから500μmまでの範囲である。第2の区画は、前細動脈を含み、前細動脈は、心外膜から心内膜まで心筋を貫通し、直径が500μmから100μmまでの範囲である。第3の区画は、冠微小血管に相当し、冠微小血管の血管径は100μmよりも小さい([非特許文献1])。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、心外膜冠血管系は、X線([非特許文献3])、CT血管造影(CTA)([非特許文献4])、または心臓磁気共鳴(CMR)画像([非特許文献5])などの、現在の血管造影技法([非特許文献1]、[非特許文献2])を用いてヒトの生体内で撮像できる唯一の区画である。したがって、心臓病学の慣習では、局所の肉眼的な冠動脈疾患に重点が置かれている。たとえば、カテーテル法を用いた侵襲的冠動脈造影(ICA)([非特許文献3])は、現在でも依然として、虚血の疑いがある場合に冠動脈病変を調べるための基準技法である。ICAは、深刻な心外膜狭窄の解剖学的解析だけでなく冠血流予備量比(FFR)に基づく全体的な機能査定も可能にする。FFRの評価は確かに、虚血性心疾患における臨床的判断のための主要な手段であり([非特許文献2]、[非特許文献6])、かつ経皮の冠状動脈インターベンションまたは手術を介したその後の薬理学治療または侵襲性治療のための主要な手段である([非特許文献7])。
【0003】
多くの患者では、冠動脈疾患(CAD)の初期兆候が微小血管疾患であり、現在、冠微小血管機能不全、すなわち、前細動脈を含む冠微小血管機能不全が、心筋虚血の重要なマーカーであることが認識されている([非特許文献1]、[非特許文献6])。しかし、臨床慣習におけるこのマーカーの評価には依然として問題がある。
【0004】
確かに、安定虚血性心疾患の管理における臨床ガイドラインでは、心外膜疾患の兆候を除外した後の冠微小血管機能不全しか考慮されていない([非特許文献8])。狭心症症状および負荷試験における虚血を示す多数の患者が正常な冠動脈造影図を有する([非特許文献9])。現在のエビデンスでは、これらの患者の大部分は、微小血管狭心症とも呼ばれる冠微小血管機能不全(CMD)を有することが示されている([非特許文献9])。CMDの患者は、予後が不良であり、心不全のための入院、突然心臓死、および心筋梗塞(MI)を含む心血管系イベントの発生率が著しく高い。
【0005】
臨床において早急に必要であるにもかかわらず、冠微小血管を直接視覚化し局所冠微小血管系を評価するための技法は臨床的に利用可能ではない。現在のところ、血管拡張アデノシンに応じて心筋血流(MBF)および冠血流予備能(CFR)などの血行動態情報を提供するのは機能試験(PET、CMR、およびコントラスト心エコー図)による全体的な間接測定だけである([非特許文献1])。
【0006】
しかし、放射線量管理が向上しているにもかかわらず、電離モダリティの累積被爆にはがんが発症する危険性が伴う([非特許文献10])。この危険性は、X線写真術、診断および介入心臓カテーテル法を含む蛍光透視処置、電気生理学的検査、心臓コンピュータ断層撮影(CT)検査、および心臓核医学検査を含む、必要な医用撮像手順からの比較的高い生涯累積線量の電離放射線にさらされることがある先天性または後天性心疾患を有する子供などの小児の患者において特に重要である([非特許文献11])。
【0007】
血流撮像は、心臓のような高速に動く器官では依然として実施が困難な作業である。従来の超音波ドプラ撮像の感度は以前から、低流速の小さい血管の撮像では制限されたままであり(<1cm/s)、この範囲の速度では組織と血液の運動が重複することによって、組織と血液の信号の分離が困難になる。近年、超高速ドプラ撮像によって、血流撮像の感度を大幅に高めることが可能になっている。この技法によって、神経科学研究用の麻酔小動物および覚醒小動物において、神経血管連関に起因する脳の血流のわずかな変化を検出し、したがって、脳機能撮像を実施することができることが示された([非特許文献12])。時空間特異値分解などの、超高速撮像に適合させた新規のクラッタフィルタが開発されることによって感度はさらに高められた([非特許文献13])。しかし、心臓用途では、心臓が高速に動くことに起因して、冠血流についての超音波ドプラ撮像は依然として制限されている。
【0008】
超高速ドプラ撮像では、上記の動きの一部の影響を制限することが可能になり、ドプラ撮像の感度を高めることが可能になることが実証されている([非特許文献14])が、ドプラ撮像は依然として心臓の高速運動相の間は不可能である。
【0009】
冠血流についての実際の撮像法の制限を解消するために、本発明者らは、近年提案された4D(3D+時間)超音波超高速撮像法([特許文献1])を、心筋運動速度が低い期間を自動的に検出し、同じデータ取得から流速および組織運動速度を推定するように適合させた。
【0010】
したがって、患者のベッドサイドにおいてマクロスケールおよび顕微鏡スケールで冠血流を撮像するための非侵襲非電離技法が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】P. G. Camici, G. d’Amati, O. Rimoldi, Nat. Rev. Cardiol. 12, 48-62 (2015).
【非特許文献2】S. D. Fihn et al., J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 149, e5-23 (2015).
【非特許文献3】J. A. Ambrose, D. H. Israel, Curr. Opin. Cardiol. 5, 411-416 (1990).
【非特許文献4】A. Sharma, A. Arbab-Zadeh, J. Nucl. Cardiol. 19, 796-806 (2012).
【非特許文献5】W. Y. Kim et al., N. Engl. J. Med. 345, 1863-1869 (2001).
【非特許文献6】T. P. van de Hoef, M. Siebes, J. A. E. Spaan, J. J. Piek, Eur. Heart J. 36, 3312-3319a (2015).
【非特許文献7】E. J. Velazquez et al., N. Engl. J. Med. 374, 1511-1520 (2016).
【非特許文献8】Task Force Members et al., Eur. Heart J. 34, 2949-3003 (2013).
【非特許文献9】A. I. Loffler, J. Bourque, Curr. Cardiol. Rep. 18, 1 (2016).
【非特許文献10】A. Berrington de Gonzalez et al., Br. J. Cancer. 114, 388-394 (2016).
【非特許文献11】N. Journy et al., Circ. Cardiovasc. Interv. 11, e006765 (2018).
【非特許文献12】E. Mace et al., Nat. Methods. 8, 662-664 (2011).
【非特許文献13】C. Demene et al., IEEE Trans. Med. Imaging. 34, 2271-2285 (2015).
【非特許文献14】D. Maresca et al., JACC Cardiovasc. Imaging. 11, 798-808 (2018).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義される。特許請求の範囲から外れるあらゆる主題は、情報提供のみを目的として提供される。
【0014】
冠血流の直接撮像および心外膜領域から心内膜領域へのマクロスケールおよび顕微鏡スケールでの冠状血管の生体構造および機能の撮像を向上させるために非侵襲および非電離撮像方法が開示される。
【0015】
したがって、マクロスケールおよび顕微鏡スケールでの冠状血管の非電離非侵襲解剖学的および機能的撮像のための撮像方法、撮像デバイス、およびコンピュータ可読媒体が提供される。
【0016】
略語のリスト
CAD=冠動脈疾患
CFR=冠血流予備能
CMD=冠微小血管機能不全
CMR=心臓磁気共鳴
CT=コンピュータ断層撮影
CTA=コンピュータ断層撮影血管造影
DSP=デジタル信号プロセッサ
ECG=心電図
FFR=冠血流予備量比
ICA=侵襲的冠動脈造影
MBF=心筋血流
MI=心筋梗塞
PET=ポジトロン放出断層撮影
SVD=特異値分解
TD=送信遅延
【0017】
本開示の他の特徴および利点は、添付の図面を参照する本開示の非制限的な一例についての以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】心臓の4D撮像用の装置を示す概略図である。
【
図3】
図1~
図2の装置によって生成された発散超音波の仮想ソースを示す図である。
【
図4】
図1~
図2の装置による生物の心臓における発散超音波の伝送を示す図である。
【
図5】それぞれ、2つの仮想ソースからの異なる伝搬方向を有する2つの連続する発散超音波の伝送を示す図である。
【
図6】心周期の間の心筋壁運動を示す図である。血流は、制限された組織運動速度を有する2つの時間窓内で再構成することができる。
【
図7】ベースライン充血および反応性充血の間の冠血流速度撮像の例を示す図である。
【
図8】微小気泡撮像および局所化(平均強度投影)を示す図である。
【
図9】(A)超音波撮像によって灌流された単離心臓の冠動脈網および(B)単離灌流心臓におけるマッピング冠血流速度を用いた微小気泡局所化および追跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図において、同じ参照符号が同一または同様の要素を示す。
【0020】
図1および
図2に示す装置は、生物1、たとえば哺乳類、特にヒトの心臓の超高速4D超音波撮像に適合されている。
【0021】
この装置は、たとえば、少なくとも2Dアレイ超音波プローブ2と制御システムとを含んでもよい。
【0022】
2Dアレイ超音波プローブ2は、たとえば、ピッチが1mmよりも小さい数百個から数千個のトランスデューサ素子Tijを有してもよい。2Dアレイ超音波プローブ2は、2本の垂直軸X、Yに沿ってマトリックスとして配置されたn*n個のトランスデューサ素子を有してもよく、XY平面に垂直な軸Zに沿って超音波を伝送する。特定の一例では、2Dアレイ超音波プローブ2は、0.3mmのピッチを有する1024個のトランスデューサ素子Tij(32*32)を有してもよい。トランスデューサ素子は、たとえば、1MHzから10MHzの間、たとえば3MHzの中心周波数で伝送を行ってもよい。
【0023】
制御システムは、たとえば、特定の制御ユニット3とコンピュータ4とを含んでもよい。この例では、制御ユニット3は、2Dアレイ超音波プローブ2を制御し、2Dアレイ超音波プローブ2から信号を取得するために使用され、一方、コンピュータ4は、制御ユニット3を制御し、制御ユニット3によって取得された信号から3D画像シーケンスを生成し、3D画像シーケンスから定量化パラメータを決定するために使用される。変形実施形態では、単一の電子デバイスが、制御ユニット3およびコンピュータ4のすべての機能を実現することができる。
【0024】
図2に示すように、制御ユニット3は、たとえば、
- 2Dアレイ超音波プローブ2のn個のトランスデューサT
ijに個々に接続されたn*nアナログ/デジタル変換器5(AD
ij)と、
- それぞれn*n個のアナログ/デジタル変換器5に接続されたn*nバッファメモリ6(B
ij)と、
- バッファメモリ6およびコンピュータ4と通信する中央処理ユニット7(CPU)と、
- 中央処理ユニット7に接続されたメモリ8(MEM)と、
- 中央処理ユニット7に接続されたデジタル信号プロセッサ9(DSP)とを含んでもよい。
【0025】
この装置は、以下のように動作してもよい。
【0026】
(a)取得
2Dアレイ超音波プローブ2は、
図4に示すように患者の心臓12の前部における、患者1の胸部10上の、通常は2本の肋骨の間に配置される。
【0027】
撮像すべき心臓12のサイズと比較して肋骨11間の肋間間隙が限られているので、2Dアレイ超音波プローブ2は、胸部10内で発散超音波、たとえば球面超音波(すなわち、球形の波面O1を有する超音波)を伝送するように制御される。制御システムは、毎秒数千個の割合で超音波を伝送し、たとえば毎秒10000個を超える割合で非集束超音を伝送するようにプログラムされてもよい。
【0028】
球面波は、単一のトランスデューサ素子によって(低振幅で)生成することができ、またはより有利には、
図3~
図4に示すように2Dアレイ超音波プローブ2の後方または前方に配置された仮想アレイ2’を形成する1つまたは複数の仮想ソースT’
ijを使用してマトリックスアレイの大部分によってより高い振幅で生成することができる。所定の位置
【0029】
【0030】
に配置されたトランスデューサ素子e(所定の位置
【0031】
【0032】
に配置された仮想ソースvに関連付けられている)に制御システムによって加えられる送信遅延TDは、
【0033】
【0034】
によって表され、この場合、cは音速である。
【0035】
使用される各仮想ソースT’ijについて、制御システムは、2Dアレイ超音波プローブ2のサブセット2aのみを作動させることが可能であり、サブセット2aは、発散超音波の開口角αを決定するサブアパーチャLを有する。開口角αは、たとえば90°であってもよい。軸Zに沿った撮像深度は約12cm~15cmであってもよい。
【0036】
後で説明するように、心臓の各3D画像に1つの仮想ソースT’ijしか使用せず、したがって、1個の超音波しか使用しないことが可能である。
【0037】
しかし、画像解像度およびコントラストを向上させるには、非集束超音波を数連の連続する非集束超音波として伝送すると有用であり、それぞれの一連の非集束超音波における連続する非集束超音波はそれぞれ異なる伝搬方向を有し、その場合、各3D画像は、後で説明するように前記数連の連続する非集束超音波のうちの一連の連続する非集束超音波から取得される信号から合成される。それぞれの一連の非集束超音波における連続する超音波は、
図5に示すように、仮想ソースT’
ijを波に対して交互に変更し、したがって、波面O1、O2などを変更することによって取得されてもよい。それぞれの一連の非集束超音波は、それぞれに異なる方向の1個から81個の連続する超音波、たとえば、それぞれに異なる方向の3個から25個の連続する超音波、たとえば、それぞれに異なる方向の5個から20個の連続する超音波、たとえば、それぞれに異なる方向の10個から20個の連続する超音波を含んでもよい。
【0038】
すべての場合に、各超音波が伝送された後、後方散乱したエコーが前記2Dアレイ超音波プローブによって取得され(たとえば、12MHzのサンプリングレートでサンプリングされ)記憶される。この生データ(通常、RFデータまたは無線周波数データとも呼ばれる)を使用して3D画像のシーケンスが生成される。
【0039】
取得の持続時間は、10msから数心周期の間に含まれていてもよく、たとえば、心周期の少なくとも一部(たとえば、心臓拡張期もしくは心臓収縮期、好ましくは心臓拡張期、または1心周期)から10心周期未満(たとえば、5心周期未満)であってもよい。そのような持続時間はたとえば、1sから10sの間に含まれていてもよい(たとえば、5s未満)。特定の例では、そのような持続時間は約1.5sである。
【0040】
この取得時に心電図(ECG)が同時記録されてもよい。
【0041】
(b)撮像
後方散乱したエコーを受け取った後、制御システムによって平行ビームフォーミングが直接適用され、各単一の超音波から3D画像が再構成され得る。時間ドメインまたはフーリエドメインにおいて、遅延和ビームフォーミングを使用することができる。時間ドメインにおいて、
【0042】
【0043】
に配置されたボクセルを再構成するために各トランスデューサ素子eによって受け取られる信号に加えられる遅延は、仮想ソースvからこのボクセルまでの順伝搬時間とトランスデューサ素子eまでの後方散乱伝搬時間との和である。
遅延=順方向遅延+後方散乱遅延
【0044】
【0045】
別の可能性は、フーリエドメイン撮像(空間周波数、k空間)を使用することである。
【0046】
上記で説明したように、それぞれに異なる伝搬方向を有する一連の超音波によって超音波を伝送する場合、各画像は、制御システムによって既知の合成撮像プロセスを通じて取得することができる。ボクセルは、各仮想ソースについて遅延和アルゴリズムを使用してビームフォーミングされ、その後コヒーレントに複合されて、最終的な高品質3D画像が形成される。そのような合成撮像の詳細は、たとえば以下の文献に記載されている。
Montaldo, G., Tanter, M., Bercoff, J., Benech, N., Fink, M., 2009. Coherent plane-wave compounding for very high frame rate ultrasonography and transient elastography. IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 56, 489-506. doi:10.1109/TUFFC.2009.1067
Nikolov, S.I., 2001. Synthetic aperture tissue and flow ultrasound imaging. Orsted-DTU, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark.
Nikolov, S.I., Kortbek, J., Jensen, J.A., 2010. Practical applications of synthetic aperture imaging, in: 2010 IEEE Ultrasonics Symposium (IUS). 2010 IEEE Ultrasonics Symposium (IUS)にて発表、pp. 350-358. doi:10.1109/ULTSYM.2010.5935627
Lockwood, G.R., Talman, J.R., Brunke, S.S., 1998. Real-time 3-D ultrasound imaging using sparse synthetic aperture beamforming. IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 45, 980-988. doi:10.1109/58.710573
Papadacci, C., Pernot, M., Couade, M., Fink, M., およびTanter, M. High-contrast ultrafast imaging of the heart. IEEE transactions on ultrasonics, ferroelectrics, and frequency control 61, 288-301, doi:10.1109/tuffc.2014.6722614 (2014).
【0047】
フレームレート、すなわち、最終的に取得されるアニメーションシーケンスにおける3D画像の割合は、毎秒数千個の3D画像、たとえば毎秒3000個~5000個の3D画像であってもよい。
【0048】
(c)時間窓の特定
組織運動速度が最小値に達する時間窓は、制御システムによって既知の方法を使用して特定されてもよい。
【0049】
特定の例では、組織運動速度が最小値に達する時間窓は、
- 心筋の運動速度が5cm/s未満である時間窓、または
- 心臓拡張期の開始時間および終了時間に相当する時間窓として定義することができる。
【0050】
特定の例では、時間窓は電子写真によって特定される。
【0051】
別の特定の例では、時間窓は、制御システムによって、以下で説明する方法を使用して実行される組織運動推定によって特定される。
【0052】
(d)血流および組織運動速度の算出
血流および組織運動推定は、制御システムによって既知の方法を使用して実行されてもよい。
【0053】
たとえば、Kasaiアルゴリズムを使用し、1/2波長空間サンプリングを用いて血液および組織の運動を推定してもよい(Kasai, C., Namekawa, K., Koyano, A., Omoto, R.、1985. Real-Time Two-Dimensional Blood Flow Imaging Using an Autocorrelation Technique. IEEE Trans. Sonics Ultrason. 32, 458-464. doi:10.1109/T-SU.1985.31615)。血流は、まずベースバンドデータにハイパスフィルタを適用することによって推定することができ、次いで個々の各ボクセルについて、パワースペクトル密度を積分することによってパワードプラを取得してもよく、短時間フーリエ変換を計算することによってパルスドプラを取得してもよく、ボクセル固有パルスドプラスペクトログラムの第1のモーメントを推定することによってカラードプラマップを取得してもよい。パワー速度積分マップは、パワー掛ける速度の時間積分を計算して流量に関するパラメータの画像を得ることによって取得することができる。特異値分解に基づく時空間フィルタなどの高度フィルタ処理を使用してクラッタ信号をより適切に除去することができる(Demene, C. et al. Spatiotemporal Clutter Filtering of Ultrafast Ultrasound Data Highly Increases Doppler and Ultrasound Sensitivity. IEEE transactions on medical imaging 34, 2271-2285, doi:10.1109/tmi.2015.2428634 (2015))。
【0054】
特定の例では、
- 1D相互相関を実行して組織ボリューム間軸方向変位のボリュームを取得することによって4D組織運動速度を算出してもよい。次いで、60Hzカットオフ周波数を有するバターワースローパスフィルタ処理を変位に適用した。心筋3Dマスク(心筋の組織に固有の3Dマスク)を適用して筋肉の外部の信号を除去してもよい。4D組織運動速度を表面するために、Amira(登録商標)ソフトウェアを使用してもよい。各ボクセルにおいて、1つの組織運動速度曲線を導出してもよい。
- たとえば、上記の[非特許文献21]において行われたようにSVDフィルタ処理を実行して組織から信号を除去し、血流からの信号のみを維持することによって4Dカラードプラを算出してもよい。SVDフィルタ処理後のボクセルに画素単位の1D軸方向相互相関を実行してカラードプラボリュームを取得してもよい。
【0055】
心周期にわたって積分された組織運動速度および2つの互いに垂直な2Dスライス上での輪郭の手動選択を使用して心筋をセグメント化してもよい。楕円補間を使用して3次元表現を取得してもよい。
【0056】
より一般的には、ステップ(d)は、3D画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリューム内の血流速度および/または組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出することを含む。前記3Dカートグラフィは、算出されたパラメータの3D画像のアニメーションシーケンスからなってもよい。このパラメータは、血流速度および/もしくは組織運動速度、またはそれらの組合せであってもよい。
【0057】
(e)関心点の位置特定
追及される定量化パラメータに応じて、所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置が3D画像のシーケンスにおいて特定される。所定の特性を有する前記少なくとも1つの関心点の位置を制御システムによって自動的に特定するか、またはオペレータによって手動で特定することができる。
【0058】
定量化パラメータが、ある解剖学的領域における血流速度を含むとき、前記関心点を前記解剖学的領域内および3D画像のシーケンスの少なくとも一部内の血流速度の点として、制御システムが自動的に特定してもよく、またはオペレータが手動で特定してもよい。特定の例では、各ボクセルにおいて60サンプルスライディングウィンドウを使用してボリューム内のあらゆる位置のスペクトグラムを取り込むことによって、経時的なフーリエ変換を実施してもよい。上記の[非特許文献21]に従って自動デエイリアシングを実施してもよい。次いで、血流最大値を検出することによって関心点の位置を自動的に検出してもよい。
【0059】
定量化パラメータが心臓内のある解剖学的位置における組織運動速度を含むとき、3D画像のシーケンス内の前記解剖学的位置を、制御システムが自動的に特定してもよく、またはオペレータが手動で特定してもよい。そのような自動的位置特定は、コンピュータ4に記憶された心臓の解剖学的モデルに従って行われてもよく、または組織内の点を選択することによって行われてもよい。
【0060】
定量化パラメータが、ある解剖学的領域内の最低組織運動速度を含むとき、3D画像のシーケンスにおける前記解剖学的領域を、制御システムが自動的に特定してもよく、またはオペレータが手動で特定してもよく、かつ前記関心点を3D画像のシーケンスにおける前記解剖学的領域内の最低組織運動速度の点として、制御システムが自動的に特定してもよく、またはオペレータが手動で特定してもよい。たとえば、心筋の最低組織運動速度を算出する必要があるとき、システムは、画像シーケンス心筋内の最低速度を有する心筋の点を特定する。
【0061】
(f)定量化
次いで、制御システムによって(詳細にはコンピュータ4によって)、すでに特定された関心点に基づき、かつそのような関心点のピーク血流速度または組織運動速度に基づいて、所望の定量化パラメータを算出することができる。
【0062】
以下のことについて留意すべきである。
- 関心点の位置を特定するステップ(ステップ(e))において、前記少なくとも1つの関心点は、もっぱら前記3Dカートグラフィおよびその時間プロファイルに基づいて位置を特定される。
- 定量化ステップ(ステップ(f))において、前記少なくとも1つの速度は、もっぱら前記3Dカートグラフィおよびその時間プロファイルに基づいて前記少なくとも1つの関心点において自動的に決定される。
【0063】
より一般的には、本開示では、任意の追加の解剖学的情報なしに空間および時間速度情報のみを使用して冠血流を局所化することができる。
【0064】
したがって、関心点およびこの関心点での速度は、本方法が、撮像されたボリューム全体における速度の3Dカートグラフィを特定することを含むことに起因して、解剖学的画像の必要なしに、特にBモード解剖学的画像の必要なしに決定される。したがって、本開示の方法のいかなる部分もBモード撮像を必要とせず、より一般的には解剖学的撮像を必要とせず、それによって、本方法ではより迅速に結果を得ることができる。
【0065】
したがって、生物の心臓の冠血流を撮像するための方法が提供され、前記方法は少なくとも以下のステップ、すなわち、
ステップa)非集束超音波が2Dアレイ超音波トランスデューサによって心臓内で伝送され、後方散乱した超音波からの生データが前記2Dアレイ超音波トランスデューサによって取得される取得ステップと、
ステップb)前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスが前記生データから生成される撮像ステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、撮像ステップと、
ステップc)少なくとも1つの時間窓が特定される特定ステップであって、この時間窓では、心臓の動きが最小限である、特定ステップと、
ステップd)冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像のシーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
ステップe)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいて、ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおいて位置を特定される位置特定ステップと、
ステップf)冠血流速度がステップe)の少なくとも1つの関心点において自動的に決定され、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータが自動的に算出される定量化ステップであって、前記冠血流速度が、もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいて前記少なくとも1つの関心点において自動的に決定される、定量化ステップとを含む。
【0066】
この方法は、以下の特徴のうちの一方および/または他方をさらに含んでもよい。
- 特定ステップc)の少なくとも1つの時間窓が心電図検査法によって特定される。
- 特定ステップc)が以下のステップ、すなわち、
ステップi)前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスが、ステップa)の生データから生成される撮像ステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、撮像ステップと、
ステップii)心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示すN個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
ステップiii)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップii)の3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおいて位置を特定され、前記少なくとも1つの関心点における組織運動速度が自動的に決定される、心臓組織の運動推定ステップと、
ステップiv)前記時間窓が特定され、この時間窓では、ステップiii)において定量化された組織運動速度が最低速度に達する特定ステップとを含む。
- ステップi)の組織撮像ステップが、ステップb)の血流撮像ステップと同時に実行される。
- ステップiv)の最低速度が5cm/s未満である。
- ステップa)~ステップf)が心周期ごとに繰り返される。
- ステップc)の少なくとも1つの時間窓は、心臓拡張期の開始時間および終了時間に相当する。
- ステップf)の定量化パラメータが、血流プロファイル、最高速度プロファイル、平均速度プロファイル、または時間速度プロファイルから選択される。
- 患者自体の血管系に注入される微小気泡または超音波造影剤をすでに投与された患者において、微小気泡または超音波造影剤が追跡され、微小気泡または超音波造影剤の軌跡および速度が決定される追跡ステップ。
- ドプラ推定器またはスペックルトラッキングによって組織運動推定が実行される。
- ドプラエネルギー撮像、ドプラカラー撮像、またはスペックルトラッキングによって冠血流3Dカートグラフィが実行される。
- ステップc)の時間窓の間の組織運動が推定され、運動補正が適用され、組織運動の推定が以下のステップ、すなわち、
ステップ1)前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスが、ステップc)の時間窓に対応するステップa)の生データから生成される撮像ステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、ステップc)の時間窓の間における心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、撮像ステップと、
ステップ2)心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、ステップc)の時間窓の間における心臓の撮像されたボリュームの移動を示すN個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
ステップ3)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップ2)の3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおいて位置を特定され、前記少なくとも1つの関心点における組織運動速度が自動的に決定される運動推定ステップとを含む。
- 自動画像レジストレーションが実行され、連続する冠血流3Dカートグラフィが算出される。
- 気泡または超音波造影剤追跡ステップは、時空間フィルタ処理または機械学習からなる。
- 冠状血管の密度が自動的に定量化される。
- ボリューム単位で灌流される血液ボリュームが自動的に定量化される。
- 血流速度を加速することによって狭窄が自動的に検出される。
- すでに血管拡張剤物質を投与されている患者における冠血流速度の変動を推定することによって冠血流予備能指標が取得される。
- 中心腔の自動セグメント化ステップ。
- 位置特定ステップe)の所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、自動的に位置を特定されるかまたはオペレータによって手動で位置を特定される。
- 運動推定ステップiii)の所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、自動的に位置を特定されるかまたはオペレータによって手動で位置を特定される。
- 運動推定ステップ3)の所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、自動的に位置を特定されるかまたはオペレータによって手動で位置を特定される。
【0067】
さらに、上記で説明した方法に従って生物の心臓の冠血流を4D撮像するための装置も開示され、前記装置が、少なくとも2Dアレイ超音波プローブ(2)と制御システム(3、4)とを含み、制御システム(3、4)が、
(a)2Dアレイ超音波トランスデューサによって心臓内で非集束超音波を伝送し、後方散乱した超音波から前記2Dアレイ超音波トランスデューサを通じて生データを取得することと、
(b)前記生データから前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスを生成することであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、生成することと、
(c)心臓の運動が最小限になる少なくとも1つの時間窓を特定することと、
(d)(c)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像のシーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出することと、
(e)もっぱら(d)の3Dカートグラフィに基づいて、(c)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定することと、
(f)もっぱら(d)の3Dカートグラフィに基づいて(e)の少なくとも1つの関心点における冠血流速度を自動的に特定し、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータを自動的に算出することとを行うように構成される。
【0068】
この装置は、以下の特徴のうちの一方および/または他方をさらに含んでもよい。
- 装置は、(c)において、
(i)(a)の生データから前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスを生成することであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、生成することと、
(ii)心臓の撮像されたボリュームの移動を示すN個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出することと、
(iii)もっぱら(ii)の3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定し、前記少なくとも1つの関心点における組織運動速度を自動的に決定することと、
(iv)(iii)において定量化された組織運動速度が最低速度に達する前記時間窓を特定することとを行うように構成される。
- 装置は、(c)において、心電図検査法によって(c)の少なくとも1つの時間窓を特定するように構成される。
【0069】
上記で説明した方法に従って生物の心臓の冠血流を4D撮像するためのコンピュータ可読媒体が開示され、前記コンピュータ可読媒体が命令を含み、命令が、コンピュータによって実行されたときに、コンピュータに以下のステップ、すなわち、
ステップa)2Dアレイ超音波トランスデューサによって心臓内で非集束超音波を伝送し、後方散乱した超音波から前記2Dアレイ超音波トランスデューサを通じて生データを取得するステップと、
ステップb)前記生データから前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスを生成するステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、ステップと、
ステップc)心臓の運動が最小限になる少なくとも1つの時間窓を特定するステップと、
ステップd)ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像のシーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出するステップと、
ステップe)もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいて、ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定するステップと、
ステップf)もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいてステップe)の少なくとも1つの関心点における冠血流速度を自動的に特定し、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータを自動的に算出するステップとを実行させる。
【0070】
コンピュータ可読媒体は、命令をさらに含んでもよく、命令が、コンピュータによって実行されたときに、コンピュータに以下のステップを実行させる。
- コンピュータは、ステップc)において以下のステップ、すなわち、
(i)(a)の生データから前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスを生成するステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、ステップと、
(ii)心臓の撮像されたボリュームの移動を示すN個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおける心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィを自動的に算出するステップと、
(iii)もっぱら(ii)の3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおける所定の特性を有する少なくとも1つの関心点の位置を特定し、前記少なくとも1つの関心点における組織運動速度を自動的に決定するステップと、
(iv)(iii)において定量化された組織運動速度が最低速度に達する前記時間窓を特定するステップとを実行するように構成される。
- コンピュータ可読媒体は、心電図検査法によってステップc)を実行するように構成される。
【実施例】
【0071】
特定の実施例では、生物の心臓の冠血流を撮像する方法は、以下のステップ、すなわち、
ステップa)非集束超音波が2Dアレイ超音波トランスデューサによって心臓内で伝送され、後方散乱した超音波からの生データが前記2Dアレイ超音波トランスデューサによって取得される取得ステップと、
ステップb)前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック組織画像およびN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスがステップa)の生データから生成される撮像ステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、撮像ステップと、
ステップc)心臓の動きが最小限である少なくとも1つの時間窓が特定される特定ステップであって、以下のステップ、すなわち、
(i)心臓の撮像されたボリュームの移動を示すステップb)のN個の3Dボリュメトリック組織画像のシーケンスに基づいて、心臓組織運動速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
(ii)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップ(i)の3Dカートグラフィに基づいて、N個の3Dボリュメトリック組織画像の前記シーケンスにおいて位置を特定され、前記少なくとも1つの関心点における組織運動速度が自動的に決定される、心臓組織の運動推定ステップと、
(iii)ステップ(ii)において定量化された組織運動速度が最低速度に達するとき時間窓が特定される特定ステップとを含む、特定ステップと、
ステップd)冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像のシーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
ステップe)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいて、ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおいて自動的に位置を特定される位置特定ステップと、
ステップf)冠血流速度がステップe)の少なくとも1つの関心点において自動的に決定され、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータが自動的に算出される定量化ステップであって、前記冠血流速度が、もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいて前記少なくとも1つの関心点において自動的に決定される、定量化ステップとを含む。
【0072】
別の特定の実施例では、生物の心臓の冠血流を撮像するための方法は、以下のステップ、すなわち、
ステップa)非集束超音波が2Dアレイ超音波トランスデューサによって心臓内で伝送され、後方散乱した超音波からの生データが前記2Dアレイ超音波トランスデューサによって取得される取得ステップと、
ステップb)前記生物の心臓のN個の3Dボリュメトリック冠血流画像のシーケンスが前記生データから生成される撮像ステップであって、アニメーションを形成する3D画像の前記シーケンスが、心臓の撮像されたボリュームの移動を示す、撮像ステップと、
ステップc)心臓の動きが最小限である少なくとも1つの時間窓が特定される特定ステップであって、前記時間窓が心電図検査法によって特定され、少なくとも1つの時間窓が好ましくは、心臓拡張期の開始時間および終了時間に相当する、特定ステップと、
ステップd)冠血流速度に関する少なくとも1つのパラメータの3Dカートグラフィが、ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像のシーケンスに基づいて、前記撮像されたボリュームにおいて自動的に算出される算出ステップと、
ステップe)所定の特性を有する少なくとも1つの関心点が、もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいて、ステップc)において特定された少なくとも1つの時間窓に対応するN個の3D冠血流画像の前記シーケンスにおいて位置を特定される位置特定ステップと、
ステップf)冠血流速度がステップe)の少なくとも1つの関心点において自動的に決定され、前記冠血流速度を含む所定の定量化パラメータが自動的に算出される定量化ステップであって、前記冠血流速度が、もっぱらステップd)の3Dカートグラフィに基づいて前記少なくとも1つの関心点において自動的に決定される、定量化ステップとを含む。
【符号の説明】
【0073】
1 生物
2 2Dアレイ超音波プローブ
2’ 仮想アレイ
2a サブセット
3 制御ユニット
4 コンピュータ
5 n*nアナログ/デジタル変換器(ADij)
6 n*nバッファメモリ(Bij)
7 中央処理ユニット(CPU)
8 メモリ(MEM)
9 デジタル信号プロセッサ(DSP)
10 胸部
12 心臓
Tij, e トランスデューサ素子
T’ij, v 仮想ソース
【国際調査報告】