(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】DSAサスペンション用の能動PZT拘束層を備えた多層PZTマイクロアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20230530BHJP
G11B 21/21 20060101ALI20230530BHJP
G11B 21/10 20060101ALI20230530BHJP
G11B 5/60 20060101ALI20230530BHJP
G11B 5/596 20060101ALI20230530BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20230530BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20230530BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20230530BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20230530BHJP
H10N 30/50 20230101ALI20230530BHJP
【FI】
H02N2/04
G11B21/21 D
G11B21/10 N
G11B5/60 P
G11B5/596
H10N30/20
H10N30/853
H10N30/87
H10N30/88
H10N30/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564324
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021028474
(87)【国際公開番号】W WO2021216766
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517151084
【氏名又は名称】マグネコンプ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MAGNECOMPCORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グラース、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】イー、クエン チー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ロン
(72)【発明者】
【氏名】ダン、クリス
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681BB13
5H681BB18
5H681BC00
5H681DD15
5H681DD23
5H681DD27
5H681DD39
5H681DD82
5H681EE20
5H681FF08
5H681GG02
(57)【要約】
ハードディスクドライブ用等のPZTマイクロアクチュエータは、PZTが取り付けられる側面とは反対側の側面に接合された抑制層を有する。抑制層は、ステンレス鋼等の高剛性の弾力材料を有している。抑制層は、PZTの上部の大部分または全体を覆っており、抑制層によって覆われていないPZTに対して電気接続が行われる。抑制層は、取り付けられたPZTの曲げを低減することによって有効ストローク長を増加させるか、または、曲げの符号を逆にすることによって有効ストローク長をさらに増加させる。抑制層は、主PZT層とは反対方向に作用するPZT材料の1つまたは複数の能動層であってもよい。抑制層は主PZT層よりも薄くてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロアクチュエータアセンブリであって、
少なくとも1つのPZT素子と、
前記マイクロアクチュエータアセンブリの第1の側面に位置している第1の電極であって、前記少なくとも1つのPZT素子の前記第1の側面の全長にわたって延びる第1の幅を有する第1の電極と、
前記第1の電極の幅よりも小さい第2の幅を有する、前記少なくとも1つのPZT素子の第2の側面に位置する第2の電極と、を備えたマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項2】
前記第2の電極が、圧電接合接着剤によって及ぼされる前記第1の電極の拘束に対抗するように構成されている、請求項1に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項3】
前記第1の電極および第2の電極が、前記マイクロアクチュエータアセンブリを表面に接合している導電性接着剤によって電気的に連結されている、請求項1に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのPZT素子が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された複数のPZT素子である、請求項1に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項5】
前記第2の電極の幅が、前記第2の電極の長手方向軸線に沿って変化している、請求項1に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項6】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の少なくとも2つの部位を露出させるように構成されている、請求項5に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項7】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の1つの部位を露出させるように構成されている、請求項5に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項8】
前記第2の電極の幅が、前記第2の電極の短手方向軸線に沿って変化している、請求項1に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項9】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の少なくとも2つの部位を露出させるように構成されている、請求項8に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項10】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の1つの部位を露出させるように構成されている、請求項8に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項11】
前記第2の電極が少なくとも1つの露出部を有している、請求項1に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項12】
前記第2の電極が、先端部と、基端部と、前記先端部と前記基端部とを接続している接続部とを有するように構成されている、請求項11に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの露出部が複数の露出部である、請求項11に記載のマイクロアクチュエータアセンブリ。
【請求項14】
ディスクドライブ用のサスペンションであって、
マイクロアクチュエータアセンブリを備えており、
前記マイクロアクチュエータアセンブリが、
少なくとも1つのPZT素子と、
前記マイクロアクチュエータアセンブリの第1の側面に位置している第1の電極であって、前記少なくとも1つのPZT素子の第1の側面の全長にわたって延びる第1の幅を有する第1の電極と、
前記第1の電極の幅よりも小さい第2の幅を有する、前記少なくとも1つのPZT素子の第2の側面に位置する第2の電極と、を有している、サスペンション。
【請求項15】
前記第2の電極が、圧電接合接着剤によって及ぼされる前記第1の電極の拘束に対抗するように構成されている、請求項14に記載のサスペンション。
【請求項16】
前記少なくとも1つのPZT素子が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された複数のPZT素子である、請求項14に記載のサスペンション。
【請求項17】
前記第2の電極の幅が、前記第2の電極の長手方向軸線に沿って変化している、請求項14に記載のサスペンション。
【請求項18】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の少なくとも2つの部位を露出させるように構成されている、請求項17に記載のサスペンション。
【請求項19】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の1つの部位を露出させるように構成されている、請求項17に記載のサスペンション。
【請求項20】
前記第2の電極の幅が、前記第2の電極の短手方向軸線に沿って変化している、請求項14に記載のサスペンション。
【請求項21】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の少なくとも2つの部位を露出させるように構成されている、請求項20に記載のサスペンション。
【請求項22】
前記第2の電極が、前記少なくとも1つのPZT素子の1つの部位を露出させるように構成されている、請求項20に記載のサスペンション。
【請求項23】
前記第2の電極が少なくとも1つの露出部を有している、請求項14に記載のサスペンション。
【請求項24】
前記第2の電極が、先端部と、基端部と、前記先端部と前記基端部とを接続している接続部とを有するように構成されている、請求項23に記載のサスペンション。
【請求項25】
前記少なくとも1つの露出部が複数の露出部である、請求項23に記載のサスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ用のサスペンションの技術分野に関する。より詳細には、本発明は、二段作動式サスペンションで使用される、1つまたは複数の能動圧電拘束層を有する多層圧電マイクロアクチュエータの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ハードディスクドライブおよび光ディスクドライブ等の他の種類の回転媒体ドライブは広く知られている。
図1は、本発明を適用可能な従来例のハードディスクドライブおよびサスペンションの斜視図である。従来技術のディスクドライブユニット100は、ディスクドライブに記憶されたデータを構成する1および0のパターンを磁気的に格納する回転磁気ディスク101を有している。磁気ディスクは駆動モータ(図示しない)によって駆動される。ディスクドライブユニット100はディスクドライブサスペンション105をさらに有しており、ディスクドライブサスペンション105のロードビーム107の先端付近には磁気ヘッドスライダ(図示しない)が取り付けられている。サスペンションまたはロードビームの「基端」は、支持される端部、すなわち、かしめ等によってアクチュエータアームに取り付けられているベースプレート12に最も近い端部である。サスペンションまたはロードビームの「先端」は、基端の反対側の端部であり、すなわち、「先端」は片持ち端部である。
【0003】
サスペンション105は、ボイスコイルモータ112に接続されたアクチュエータアーム103に接続されている。ボイスコイルモータ112は、ヘッドスライダをデータディスク101上の正しいデータトラックに位置決めするために、サスペンション105を円弧状に動かす。ヘッドスライダはジンバル上に載置されており、回転しているディスク上の正しいデータトラックを追従できるように、スライダのピッチおよびロールを可能としている。このため、ディスクの振動、バンピング等の慣性による事象、ディスク表面の不規則性等の変動に対応できる。
【0004】
一段作動式ディスクドライブサスペンションと二段作動式(DSA)サスペンションの両方が周知である。一段作動式サスペンションでは、サスペンション105は、ボイスコイルモータ112のみによって動かされる。
【0005】
DSAサスペンションでは、例えば、Meiらに付与された特許文献1および他の多くの例でみられるように、サスペンション全体を動かすボイスコイルモータ112に加えて、少なくとも1つのマイクロアクチュエータが追加されてサスペンション上に配置されている。このマイクロアクチュエータによって、磁気ヘッドスライダの微細な動きが可能となり、回転しているディスクのデータトラックに正しく位置合わせできる。マイクロアクチュエータが設けられていることによって、サスペンションおよび磁気ヘッドスライダを比較的粗く動かすことしかできないボイスコイルモータ単独と比較して、サーボ制御ループのより細かい制御と、大幅に高い帯域幅とが可能となる。マイクロアクチュエータモータとしては、単にPZTと称される場合もある圧電素子が使用される場合が多いが、他の種類のマイクロアクチュエータモータが使用される場合もある。
【0006】
図2は、
図1の従来技術のサスペンション105の上面図である。2つのPZTマイクロアクチュエータ14が、ベースプレート12に形成されたマイクロアクチュエータ取り付け用棚板部18でサスペンション105に取り付けられており、ベースプレート12の各隙間を跨ぐように配置されている。マイクロアクチュエータ14の両端部は、エポキシ16によって取り付け用棚板部18に取り付けられている。サスペンションのフレキシブル配線トレースおよび/またはプレートに対するPZTからの正および負の電気接続は、様々な手法によって行うことができる。マイクロアクチュエータ14は、作動されると伸張または収縮することによって取り付け用棚板部の間の隙間の長さを変化させる。これによって、サスペンション105の先端に取り付けられた読み取り/書き込みヘッドの微細な動きがもたらされる。
【0007】
図3は、
図2の従来技術のPZTマイクロアクチュエータおよび組み付けの側断面図である。マイクロアクチュエータ14は、PZT素子20自体と、PZTに配置されてPZTを作動させる電極を形成している上部金属化層26および下部金属化層28とを有している。PZT14は、隙間を跨ぐように、図中左側および右側の両方で、エポキシまたははんだ16によって取り付けられている。
【0008】
DSAサスペンションでは、概して、単位入力電圧あたりのPZTのストローク距離(または単に「ストローク長」)を長くすることが望ましい。
これまでの多くのDSAサスペンション設計では、マウントプレートにPZTが取り付けられていた。そのような設計では、PZTの直線運動は、PZTの回転中心と読み取り/書き込みトランスデューサヘッドとの間のアームの長さによって拡大される。したがって、PZTの小さな直線運動によって、読み取り/書き込みヘッドが径方向に比較的大きく移動する。
【0009】
他のサスペンション設計では、PZTがジンバルまたはその近傍に取り付けられている。本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の特許文献2には、ジンバルに取り付けられたPZTの一例であるDSAサスペンションが記載されている。ジンバルに取り付けられたDSAサスペンション(「GSA」サスペンション)では、PZTと読み取り/書き込みトランスデューサヘッドとの間のアームの長さが長くないため、ストローク長を長くすることが特に重要である。アームの長さが短くなるにつれて、読み取り/書き込みヘッドの動きも小さくなる。したがって、GSAの設計においては、ストローク長を大きくすることが特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7459835号明細書
【特許文献2】米国特許第8879210号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願の発明者は、PZTマイクロアクチュエータが取り付けられた従来のサスペンションにおいてPZTのストローク長の損失の原因を特定し、ストローク長の損失の原因を排除するPZTマイクロアクチュエータ構造および当該構造を製造する方法を開発した。
【0012】
図4Aは、
図2の従来技術によるサスペンションに取り付けられたPZTマイクロアクチュエータ14の側断面図であり、PZTを伸張させるために印加された駆動電圧によってPZTが作動されている状態を示す。PZTの下層22は、取り付けられたサスペンション18に接着されているので部分的に拘束されている。このため、下層22は、上層24ほど直線方向に伸張しない。上層24は下層22よりも大きく伸張するので、PZT14は下方に曲がり、上から見るとわずかに凸状になる。結果として生じた直線ストローク長の損失は、δ1として図に示されている。
【0013】
図4Bに、PZTを収縮させるために印加された駆動電圧によってPZTが作動されている状態の、
図4AのPZTマイクロアクチュエータ14を示す。PZTの下層22は、取り付けられたサスペンション18に接着されているので部分的に拘束されている。このため、下層22は、上層24ほど直線方向には収縮しない。上層24は下層22よりも大きく収縮するので、PZT14は上方に曲がり、上から見るとわずかに凹状になる。結果として生じた直線ストローク長の損失は、δ2として図に示されている。
【0014】
このように、作動時にはPZTが直線的のみに伸張および収縮することが望ましいが、従来の組み付けでは、PZTが上または下に曲がり、ストローク長が失われる。
図5は、PZTの曲げにより追加または損失する有効直線ストロークの量を示す図および関連する式である。ビームが
図4Aに示されるように上に曲がる場合は、曲げ角度が小さいときには下側先端点に正の変位δがx方向に発生する。
【0015】
図6は、厚さの異なる3つのPZTについて、曲げ角度に対する、曲げに起因するストローク損失を示すグラフである。図に示すように、長さ1.50mm、厚さ45μmのPZTでは、曲げ角度が5度未満の場合、曲げによって正のx変位δが生じる。この曲げ量では、細いビームよりも太いビームの方により大きなx変位が生じている。同様に、印加電圧によってPZTが収縮すると、PZTの右半分が下向きに曲がり、サスペンションに接着されたPZTの下端に負のx変位が発生する。つまり、サスペンションに対する従来のPZTの組み付けでは、曲げによる直線変位の成分δは、PZTの動作とは逆方向となる。したがって、このデルタを低減または排除するか、デルタの符号を逆にして、最終的な直線状の伸張または収縮の総量を実際に増加させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、作動されたPZTの曲げの低減、排除、方向の変更または他の制御を行うために、PZTにおいて、サスペンションに取り付けられている側部または側面とは反対側の側部または側面に少なくとも接合された1つまたは複数の高剛性抑制層または抑制要素を有するPZT素子に関する。少なくとも名目上はPZTの伸張と収縮を抑制する高剛性層が追加されていることによって、直観に反する結果ではあるが、達成される有効直線ストローク距離は実際に増加する。本発明に係る抑制層を有するPZTは、ハードディスクドライブ用サスペンションのマイクロアクチュエータとして使用可能であるが、他の用途にも同様に使用できる。
【0017】
好ましい一実施形態では、抑制層の作用によって、曲げの方向が実際に変化する。したがって、下面がサスペンションに接合されたPZTの場合、抑制層が設けられていることによって、圧電素子を伸張させる電圧によって圧電素子が作動した場合は、圧電素子はその上面が実質的に凹状となる方向に曲がる。圧電素子を収縮させる電圧によって圧電素子が作動した場合は、圧電素子はその上面が実質的に凸状になる方向に曲がる。このように、伸張モードでは有効な直線状の伸張を増加させ、収縮モードでは有効な直線状の収縮を増加させるように作用する。つまり、抑制層が設けられていることによって、実際の有効ストローク長が増加する。
【0018】
拘束層を有するPZTは様々な手法で製造することができ、例えば、拘束層を既存のPZT素子に積層してもよいし、アディティブ法によってPZT素子および拘束層の一方を他方の上に形成してもよい。このようなアディティブ法では、ステンレス鋼(SST)等の基板上に薄膜PZTを成膜してもよい。拘束層は、ステンレス鋼、シリコン、実質的にはポーリング処理されていない(励起されていない)ことを除いてはPZT素子を構成するセラミック材料と同じセラミック材料または剛性の比較的高い他の材料から形成できる。抑制層が非導電性である場合、柱状の導電性材料からなる複数の電気ビアを抑制層に貫通させることによって、マイクロアクチュエータの表面から内部のPZT素子まで作動電圧または接地電位を送ることができる。
【0019】
拘束層は、PZT素子よりも大きくてもよく(表面積が大きい)、PZT素子と同じ大きさでもよく、PZT素子よりも小さくてもよい(表面積が小さい)。好適な実施形態では、拘束層はPZT素子よりも小さいため、マイクロアクチュエータが段差面状構造を有しており、PZT素子への電気接続が行われる箇所である段差の棚板部は拘束層によって覆われていない。電気接続が行われる棚板部を有する上記のような構造の利点のひとつは、電気接続を有する完成アセンブリの高さを、抑制層がPZT全体を覆う構造よりも低くできることである。高さを低くすることによって、所定のプラッタのスタック高さ内で、より多くのハードドライブプラッタおよびそれらのサスペンションを積み重ねることができるため、ディスクドライブアセンブリの所定の体積におけるデータストレージ容量を増やせるという利点がもたらされる。
【0020】
シミュレーションでは、本発明によって構成されたマイクロアクチュエータはストローク感度が向上しており、揺れモードゲインおよびねじりモードゲインが低減していることが示された。このため、ヘッド位置決め制御ループの帯域幅を上げることができ、その結果、データシーク時間を低減できるとともに、振動の影響を受け難くできるという効果がもたらされる。
【0021】
本発明に係るPZTに拘束層または拘束要素を追加することの別の利点としては、現在のハードディスクドライブにおいて、サスペンションおよびPZTを含む構成要素が一般的に非常に薄いことが挙げられる。PZTがマウントプレートに取り付けられている現在のDSAサスペンション設計で使用されるマイクロアクチュエータの厚さは150μm程度である。ジンバルに取り付けられているDSAサスペンション設計では、PZTはさらに薄く、厚さは100μm未満である場合が多い。このため、PZT材料は非常に薄く、かつ脆いため、PZTマイクロアクチュエータモータ自体の製造工程や、サスペンション組み立て工程での自動ピックアンドプレース動作を含む製造/組み立てにおいて簡単に割れる場合がある。次世代のハードドライブのPZTの厚さは75μm以下になると予想されており、さらに問題が悪化する可能性がある。ここまで薄いPZTは、製造/組み立て中に損傷を受けやすいだけでなく、ディスクドライブが衝撃(g力)を受けたときに亀裂や破損が生じやすいという懸念もある。本発明に係る高剛性および弾性の拘束層を追加することによって、PZTの強度および弾力性を高めることができ、その結果、製造/組立て中および衝撃事象において、PZTの割れ等の機械的損傷を抑制できる。
【0022】
本発明の別の態様では、マイクロアクチュエータアセンブリは多層PZT素子であり、主能動PZT層の作用に対抗する傾向を有する抑制層として機能する1つまたは複数の能動PZT層を含む複数の能動PZT層を有している。
【0023】
主PZT層の動きに抵抗する1つまたは複数の層を追加することによって、全体的な有効ストローク長を増やすことができるという考えは、反直感的である。主PZT層とは反対方向に能動的に作用する1つまたは複数の能動層を追加することで、全体的な有効ストローク長をさらに増やすことができるという考えは、さらに反直感的であるといえる。しかしながら、このような結果が、本発明者らによって実証された。
【0024】
図面を参照して本発明の例示的な実施形態を以下に説明する。図面において、同様の部分には同様の符号が付されている。図面は縮尺どおりではない場合もあり、特定の構成要素は、一般化または概略化された形式で示され、明確かつ簡潔にするために商業的名称によって特定されている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術の磁気ハードディスクドライブの上面斜視図。
【
図2】
図1のディスクドライブのサスペンションの上面図。
【
図3】
図2の従来技術のPZTマイクロアクチュエータおよび組み付けを示す側断面図。
【
図4A】PZTを伸張させる電圧が加えられた状態における、
図2の従来技術に係るサスペンションに取り付けられたPZTマイクロアクチュエータの側断面図。
【
図4B】PZTを収縮させる電圧が加えられた状態における、
図2の従来技術に係るサスペンションに取り付けられたPZTマイクロアクチュエータの側断面図。
【
図5】PZTの曲げによって追加または損失する直線ストローク量の図および関連式。
【
図6】厚さの異なる3つのPZTについて、曲げ角度に対する、曲げに起因するストローク損失を示すグラフ。
【
図7】本発明に係る、拘束層が接合されたPZTの側断面図。
【
図8A】PZTに電圧を印加して伸張させた状態における、
図8のPZTマイクロアクチュエータの側断面図。
【
図8B】PZTに電圧を印加して収縮させた状態における、
図8のPZTマイクロアクチュエータの側断面図。
【
図9】厚さ130μmのPZTについて、拘束層の厚さに対する、単位入力電圧当たりのストローク長(単位はnm/V)を示すグラフ。
【
図10】本発明に係る、拘束層が接合されたPZTの側面図。
【
図11】PZTと抑制層とを合わせた厚さが130μmで一定である
図10のPZTについて、PZT厚さに対するストローク長を示すグラフ。
【
図12】異なる厚さのステンレス拘束層を有するPZTを備えたサスペンションにおける、拘束層の厚さに対するGDAストローク感度を示すグラフ。
【
図13A】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図13B】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図13C】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図13D】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図13E】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図13F】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図13G】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図13H】本発明に係る拘束層を有するPZTを製造可能な1つの製造プロセスを示す図。
【
図14A】本発明に係る薄膜PZTマイクロアクチュエータモータが組み付けられているGSAサスペンションの斜視図。
【
図14B】本発明に係る薄膜PZTマイクロアクチュエータモータが組み付けられているGSAサスペンションの斜視図。
【
図16】シミュレーションに基づく、
図15のマイクロアクチュエータのSST基板厚さに対するストローク感度を示すグラフ。
【
図17A】本発明に係るステンレス基板を有する薄膜PZT構造を製造するプロセスを示す図。
【
図17B】本発明に係るステンレス基板を有する薄膜PZT構造を製造するプロセスを示す図。
【
図17C】本発明に係るステンレス基板を有する薄膜PZT構造を製造するプロセスを示す図。
【
図17D】本発明に係るステンレス基板を有する薄膜PZT構造を製造するプロセスを示す図。
【
図17E】本発明に係るステンレス基板を有する薄膜PZT構造を製造するプロセスを示す図。
【
図17F】本発明に係るステンレス基板を有する薄膜PZT構造を製造するプロセスを示す図。
【
図18】本発明に係るシリコン基板を有する薄膜PZT構造の上面図。
【
図20】シミュレーションに基づく、
図19のマイクロアクチュエータのシリコン基板厚さに対するストローク感度を示すグラフ。
【
図22】本発明の一実施形態に係る、基板およびサイドビアを有する薄膜PZTの上面図。
【
図23】
図22のマイクロアクチュエータのA-A’線断面図。
【
図24】本発明の追加の実施形態に係るPZTマイクロアクチュエータの断面図。
【
図25】
図24のPZTマイクロアクチュエータを一対有するGSAサスペンションの斜視図。
【
図27】シミュレーションに基づく、
図25のサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図28A】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28B】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28C】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28D】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28E】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28F】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28G】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28H】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28I】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図28J】
図24のPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造するための例示的なプロセスを示す図。
【
図29】PZTが多層PZTである、本発明の追加の実施形態に係る多層PZTマイクロアクチュエータアセンブリの側断面図。
【
図30】極厚電極が抑制層として機能する、本発明の追加の実施形態に係る多層PZTマイクロアクチュエータアセンブリの側断面図。
【
図31】マイクロアクチュエータアセンブリの抑制層が、主能動PZT層とは反対方向に作用する傾向を有する1つまたは複数の能動PZT層を有している実施形態の断面図。
【
図32】
図31のマイクロアクチュエータアセンブリのポーリング処理と、結果として生じる、能動PZT材料の様々な層の分極方向とを示す図。
【
図33】電気的接続を概念的に示す、
図31のマイクロアクチュエータアセンブリの分解図。
【
図34】様々な構造に関するシミュレーションに基づく、1つまたは複数の能動抑制層を有するマイクロアクチュエータのストローク感度(nm/V)を示すグラフ。
【
図35】マイクロアクチュエータアセンブリが複数の能動PZT層を有している別の実施形態を示す断面図であって、ポーリング処理および結果として生じる分極方向を概念的に示す図。
【
図36】本開示の一実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリの一実施形態の等角図。
【
図38A】本開示の一実施形態に係る、
図36の単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図39】シミュレーションに基づく、
図38のサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図40】本開示の代替的な実施形態に係る、
図36の単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有している、ジンバルに取り付けられた二段作動式サスペンションの平面図。
【
図41】シミュレーションに基づく、
図40のサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図42】本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図43】本開示の一実施形態に係る、
図42のE-E’線断面図。
【
図44A】
図37の単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリが回転した状態の、サスペンションのジンバルの斜視図。
【
図45A】本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図45C】シミュレーションに基づく、
図45AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図46A】本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図46C】シミュレーションに基づく、
図46AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図47A】本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図47C】シミュレーションに基づく、
図47AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図48A】本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図48C】シミュレーションに基づく、
図48AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図49A】本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図49C】シミュレーションに基づく、
図49AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図50A】本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリを有しているサスペンションのジンバルの平面図。
【
図50C】シミュレーションに基づく、
図50AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフ。
【
図51】本開示の一実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリの一実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図7は、本発明の一実施形態に係る、拘束層130が接合されたPZTマイクロアクチュエータアセンブリ114の側断面図である。この図に示される配向を参照して、サスペンションに接合されるPZTの側面を、PZT114の下面129と称し、PZTがサスペンションに接合される側面とは反対側の側面は、PZT114の上面127と称する。本発明によれば、1つまたは複数の拘束層または拘束要素130が、マイクロアクチュエータPZT素子120の上面127に接合される。拘束層130は、好ましくは、ステンレス鋼等の高剛性の弾性材料からなり、好ましくは、上部電極126を有しているPZT素子120の上面127に直接接合されるか、またはSST材料自体が上部電極として機能することによって上面の金属被覆を不要とするように構成してもよい。拘束層130は、作動時にPZTの曲げを大幅に低減、排除または反転させることが可能な剛性を有している。SST層130は、SSTに対する良好な電気的接続を確保するために、金または他の接点金属の層131を有することが好ましい。
【0027】
あるいは、拘束層130をステンレス鋼で形成するのではなく、圧電層120と同じセラミック材料であるが励起されていない(ポーリング処理または分極処理されていない)セラミック等の層としてもよく、接合または成膜によってアセンブリに組み込まれてもよい。セラミック材料が分極処理されていないとは、圧電層120を形成するポーリング処理されたセラミックよりも大幅に低い圧電効果を示し、例えば10%未満の圧電効果を示すことを意味する。このような、下から上に電極/ポーリング処理されたPZT/電極/ポーリング処理されていないPZTが積層されているアセンブリは、電極/PZT/電極/SSTの積層よりも容易に製造できる。
【0028】
以下の説明では、説明を簡単にするために、上部電極126および下部電極128の図示および説明が省略される場合があるが、ほぼすべてのPZTマイクロアクチュエータが、少なくとも何らかの種類の上部電極および下部電極を備えていることに留意されたい。
【0029】
本出願の譲受人によって所有されている、Schreiberらに付与された米国特許第8395866号明細書に記載されているように、SSTへの金の接着を高めるために、金層131を施す前に、銅またはニッケルの層をSST層130上に成膜してもよい。上記特許は、ステンレス鋼上に他の金属を電着することに関し、その参照により本明細書に組み込まれる。同様に、電極126、128も、ニッケルおよび/またはクロムと、金(NiCr/Au)との組み合わせを含んでいてもよい。
【0030】
124ー167(
図5)。シミュレーションによる例示的な一実施形態では、各層の厚さは以下の通りであった。
130 PZT 3μm
126、128、131 NiCr/Au 0.5μm
薄膜PZTの長さは1.20mm、両端のPZT接合部の幅は0.15mm、圧電係数d31は250pm/Vであった。いくつかの実施形態では、SST層の厚さは、適切に支持できるように12マイクロメートル以上とした。
【0031】
シミュレーションによると、上記例では、DSAサスペンションのストローク感度は26.1nm/Vであった。これに対し、同じ形状で厚さ45μmのバルクPZT(d31=320pm/V)のストローク感度は、概して、わずか7.2nm/Vであった。
【0032】
SST層に対するPZT層の厚さの比は、1:1と大きく、または、1.25:1またはそれ以上であった。拘束層とPZTとの厚さの比率が約1:25に達すると、拘束層によるストローク感度の向上が下降し始めたため、この比率がPZT拘束層の厚さの限界であることがわかった。
【0033】
図8Aに、PZTに電圧を印加して伸張させた状態における、
図7のPZTマイクロアクチュエータ114の側断面図を示す。PZTストロークは2つのベクトルで構成される。一方は純粋な伸張ストロークδEで、他方は拘束層による伸張寄与分δ1である。抑制層を有しないPZTのように下向きに曲がるのではなく、拘束層が設けられているためPZTの右先端が上向きに曲がることによって伸張寄与分δ1が発生している。合計のストローク長はδE+δ1である。したがって、伸張モードでは、PZTは上から見るとわずかに凹状になり、すなわち、PZTの上面はわずかに凹んだ形状になり、曲げ方向は、
図4の従来技術の曲げとは反対となる。このため、本発明における曲げは、有効ストローク長を減らすのではなく、有効ストローク長を増加させる。
【0034】
図8Bは、PZT114に電圧を印加して収縮させた状態における、
図7のPZTマイクロアクチュエータの側断面図である。PZTストロークは2つのベクトルで構成される。一方は純粋な収縮ストローク-|δC|で、他方は拘束層による収縮寄与分δ2である。抑制層を有しないPZTのように上向きに曲がるのではなく、拘束層が設けられているためPZTの右先端が下向きに曲がることによって収縮寄与分δ2が発生している。合計のストローク長は-[δC+δ2]である。したがって、収縮モードでは、PZTは上から見るとわずかに凸状になり、すなわち、PZTの上面はわずか凸状になり、曲げ方向は、
図4の従来技術の曲げとは反対となる。このため、本発明における曲げは、有効ストローク長を減らすのではなく、有効ストローク長を増加させる。
【0035】
拘束層130をPZTマイクロアクチュエータ114に追加しても、そのPZT114が拘束層130以外には拘束および接合されていない場合は、ストローク長に顕著な影響は及ぼされない。しかし、
図4に示されるようにPZT114の下端がサスペンション18に接合される場合、拘束層は、実際にはストローク長をわずかに増加させるように作用する。ステンレス鋼のヤング率は約190~210GPaである。好適には、拘束層の材料のヤング率は、50GPaより大きく、より好適には100GPaより大きく、さらに好適には150GPaより大きい。
【0036】
図9は、シミュレーションによる、ステンレス拘束層130が接合された厚さ130μmのPZT114について、拘束層の厚さに対する単位入力電圧当たりのストローク長(単位はnm/V)を示すグラフである。厚さ20μm、40μmおよび60μmの各SST抑制層をPZTの上面に追加することによって、総ストローク長が増加している。このように、拘束層を追加することによって、総ストローク長が実際に増加した。
【0037】
また、PZTと拘束層とを合わせた合計の厚さを一定に保ち、拘束層の最適な厚さを決定することもできる。
図10は、本発明に係る、合計の厚さが130μmで一定に保たれている、PZTと、PZTに接合された拘束層との組み合わせを示す側面図である。
図11は、
図10のPZTに関し、PZTと拘束層とを合わせた厚さが130μmで一定である場合における、PZT厚さに対するストローク長を示す、シミュレーションに基づくグラフである。拘束層が無い場合、厚さ130μmのPZTのストローク長は約14.5nm/Vである。拘束層130の厚さが65μmでPZTの厚さが65μmの場合、PZTのストローク長は約20nm/Vである。つまり、拘束層を追加することによって、有効ストローク長が実際に約35%増加した。
【0038】
図12は、シミュレーションに基づく、
図7のマイクロアクチュエータを有するGDAサスペンションにおける拘束層の厚さに対するGDAストローク感度を示すグラフである。PZT素子の厚さは45μmであり、上に形成されるステンレス拘束層の厚さは異なる。このグラフからわかるように、厚さ30μmの拘束層によって、GDAストローク感度が9nm/Vから14.5μmをわずかに超えるまで増加した。つまり、ストローク長が50%以上増加した。
【0039】
図13A~13Hに、本発明に係る拘束層を有するPZTマイクロアクチュエータアセンブリを製造可能な1つの製造プロセスを示す。この方法は、拘束層となる基板上にPZT材料を成膜するアディティブ法の一例である。
図13Aに示すように、このプロセスは第1の基板140から始まる。
図13Bでは、第1のUV/熱テープ142が基板に施されている。
図13Cでは、予め形成されたSST層130がテープ上に追加されている。
図13Dでは、電極層126が、スパッタリングまたは他の周知の成膜処理等によってSST上に成膜されている。
図13Eでは、PZT層120が、ゾルゲル法または他の周知の方法によって電極層上に形成されている。
図13Fでは、第2の電極128が、スパッタリング等によってPZTの露出面上に成膜されている。
図13Gでは、SST層130がテープから分離され、製品が第2のテープ143および第2の基板141上に裏返して配置されている。
図13Hでは、個々のマイクロアクチュエータ114に切り離すために、機械的な鋸引きまたはレーザー切断等によって、製品がダイスカットされている。上記プロセスによって、電極を備えたPZT素子120がSST抑制層130に直接的に接合されているマイクロアクチュエータ114が形成され、抑制層の抑制効果を低減させる有機材料(例えばポリイミド)等の他の材料が介在していない。電極層の材料は、Au、Ni、Crおよび/またはCu等である。Auのヤング率は約79GPa、Cuのヤング率は約117GPa、Niのヤング率は約200、Crのヤング率は約278である。好適には、SST抑制層130とPZT素子120との間に、20GPa未満のヤング率、抑制層のヤング率より大幅に小さいヤング率、または抑制層のヤング率の半分よりも小さいヤング率を有する中間層が存在しないことが望ましい。
【0040】
エポキシ等の接着剤によって抑制層をPZT表面に直接接着する等、他の方法によって製品を製造することも可能であるが、好適な方法であると現在考えられているのは
図13A~13Gに示す方法である。
【0041】
SST抑制層130は、アディティブ法製造プロセス中および完成した製品の両方において、PZT層120の基板として機能する。このため、抑制層130を基板と称する場合もある。
【0042】
図14Aおよび14Bは、本発明による薄膜PZTマイクロアクチュエータモータ114が組み付けられる、ジンバルに取り付けられた二段作動式(GSA)サスペンション150の斜視図である。GSAサスペンションでは、PZTは、ジンバルアセンブリを有しているトレースジンバルに取り付けられ、読み取り/書き込みヘッドスライダ164を保持するサスペンションのジンバル領域に直接作用する。
図14Aに、PZTマイクロアクチュエータアセンブリ114が取り付けられる前のサスペンション150を示す。2つのマイクロアクチュエータ114は、マイクロアクチュエータ114の先端が接合される舌状部154と、マイクロアクチュエータ114の基端が接合されるトレースジンバルの部分156とに接着され、これらの間の隙間170を跨いでいる。
図14Bに、PZTマイクロアクチュエータ114が取り付けられた後のサスペンション150を示す。マイクロアクチュエータアセンブリ114は、作動されると伸張または収縮するため、舌状部154とトレースジンバルの部分156との間の隙間170の長さを変化させる。これによって、読み取り/書き込みトランスデューサを保持しているヘッドスライダ164の微細な位置決め移動が可能となっている。
【0043】
図15は、
図14BのB-B’線断面図である。GSAサスペンション150は、ステンレス層を含むトレースジンバル152と、ポリイミド等の絶縁体157と、AuまたはNi/Auの組み合わせ等の保護金属159によって覆われたCu等の信号伝達トレース158の層とを有している。マイクロアクチュエータ114の先端は、導電性接着剤162によって、ジンバル領域から延在するステンレス製の舌状部154に取り付けられている。接着剤162は、導電性を有するようにAg粒子を含有しているエポキシ等である。マイクロアクチュエータ114の基端は、ステンレス製の取り付け部分156に、非導電性エポキシ等の非導電性接着剤161によって取り付けられている。駆動電圧の電気的接続は導電性接着剤160の箇所によってもたらされている。導電性接着剤160は、金めっきされた銅製の接触パッド158からPZTマイクロアクチュエータ114の上面まで延び、この例においてさらに詳細には、マイクロアクチュエータの上部電極を構成するSST層130まで延びている。SST基板の厚さは、開示された薄膜PZT構造の利点を損なうことなく、ある程度変化させてもよい。
図16は、シミュレーションに基づく、
図15のSST拘束層の厚さに対するストローク感度を示すグラフである。シミュレーションによると、厚さ40μmのSST拘束層を有する薄膜PZTのストローク感度は、20nm/Vであり、上記の厚さ45μmのバルクPZTのストローク感度のおよそ3倍であった。ただし、厚さ45μmのSST拘束層の方が、薄膜PZTマイクロアクチュエータをより良好に保護できる。
【0044】
図17A~17Fに、本発明によるSST拘束層を有する薄膜PZT構造を製造するための代替的なプロセスを示す。
図17Aに示すように、プロセスは、
図18Bのような基板140およびテープ142ではなく、シリコン基板144から始まる。
図17Bでは、SST層130がシリコンに接合されている。これ以外は、本プロセスは
図13C~
図13Hのプロセスと実質的に同じであり、
図17Eに示すように、アセンブリが裏返されて、シリコン基板が取り除かれる。さらに、
図13Eでは明示的に示されていなかったNiCr/Au層131が最後に追加されていることがこの図では明瞭に示されている。
【0045】
前述したように、異なる用途では異なる種類の拘束層を使用できる。導電性または非導電性の他の高剛性材料も、拘束層または基板として使用できる。例えば、拘束層の材料はシリコンであってもよい。
図18は、本発明の一実施形態に係るシリコン拘束層を有する薄膜PZT構造の平面図である。
図19は、
図18のマイクロアクチュエータのA-A’線断面図である。シリコン拘束層230は非導電性であるため、シリコン230上のAu等の導電性上層234からPZT素子120上の金属化電極126までPZT駆動電圧を送るために、ビア232が設けられる。形成されたビアは、Schreiberらに付与された米国特許第7781679号明細書に開示されているように、導電性金属で充填されてもよい。上記特許は、本発明の譲受人が所有しており、導電性ビアおよび導電性ビアの形成方法に関して、その参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
図20は、シミュレーションに基づく、
図19のマイクロアクチュエータのシリコン基板厚さに対するストローク感度を示すグラフである。グラフに示されるように、厚さ3μmの薄膜PZTおよび厚さ20μmのシリコン基板のストローク感度は、31.5nm/Vである。これは、厚さ45μmのバルクPZTを使用した設計のストローク感度の4倍以上である。シリコン基板は、薄膜PZTの信頼性向上にも寄与する。
【0047】
図21A~21Eに、
図18の薄膜PZT構造を製造するプロセスを示す。このプロセスは、
図21Aおよび21Bに示す、レーザー穿孔等によって形成されたホールまたはビア232を有するシリコン基板から始まる。
図21Cでは、NiCr/Au層がシリコン基板230に追加されて上部電極126を形成している。NiCr/Auはホールにも充填されて、電気ビア232を形成している。より一般的には、ビアの充填には他の導電性材料を用いてもよい。
図22Dでは、PZT薄膜120がゾルゲル法等によって成膜され、NiCr/Auの別の層が追加されて下部電極128が形成されている。
図22Eでは、材料が裏返されて、最終的なNiCr/Au層131が追加されている。層131および126は、導電性金層131に印加された電圧(または接地電位)がPZT素子126に伝達されるように、ビア232によって電気的に接続されている。シリコン基板を有する薄膜PZTマイクロアクチュエータの製造プロセスは、SST基板を有する薄膜PZTの製造プロセスよりも単純であるといえる。
【0048】
代替的な実施形態では、シリコン基板の中央のビアの代わりに、1つまたは複数のビアがシリコンの端部に形成される。このため、最後のダイシングの後には、シリコンの両端に半円が形成される。
図22は、上側にメタライゼーション層等の導電性上層231を有するシリコンまたは他の非導電性拘束層330を備え、上層231を上部電極126に電気的に接続するサイドビア234、236を備えた薄膜PZTマイクロアクチュエータの上面図である。
図23は、
図22のPZTのA-A’線断面図である。本実施形態の製造プロセスは、上記以外の点では、
図21A~21Eの製造プロセスと同じである。
【0049】
拘束層は、PZT素子よりも大きくてもよく(表面積が大きい)、PZT素子と同じ大きさでもよく、PZT素子よりも小さくてもよい(表面積が小さい)。
図24は、拘束層430がPZT素子420よりも小さいため、マイクロアクチュエータが、段差434と、抑制層430に覆われていない露出棚板部422とを有する段差面状構造を備えているPZTマイクロアクチュエータアセンブリ414を示す側断面図である。PZT素子420への電気接続は、棚板部422において行われる。電気接続が行われる段差を有する上記のような構造の利点のひとつは、電気接続を有する完成アセンブリの高さを、抑制層430がPZT420全体を覆う場合よりも低くできることである。高さを低くすることによって、所定のプラッタのスタック高さ内で、より多くのハードドライブプラッタおよびそれらのサスペンションを積み重ねることができるため、ディスクドライブアセンブリの所定の体積におけるデータストレージ容量を増やせるという利点がもたらされる。拘束層430は、棚板部422上での電気接続を可能とするために、PZT素子420の上面の50%を超えるが95%よりは小さい範囲を覆うと想定される。
【0050】
シミュレーションでは、本発明によって構成されたマイクロアクチュエータはストローク感度が向上しており、揺れモードゲインおよびねじりモードゲインが低減していることが示された。このため、ヘッド位置決め制御ループの帯域幅を上げることができ、その結果、データシーク時間を低減できるとともに、振動の影響を受け難くできるという効果がもたらされる。
【0051】
図25は、
図24のPZTマイクロアクチュエータ414を一対有するGSAサスペンションの斜視図である。
図26は、
図25のGASサスペンションのA-A’線断面図である。この実施形態では、導電性エポキシ等の導電性接着剤460は、抑制層430の上には配置されない。その代わりに、導電性エポキシ460は、PZT素子420の上側の棚板部422上に位置し、その表面によってPZT420およびマイクロアクチュエータアセンブリ414全体への電気接続がもたらされる。図示のように、導電性エポキシ460によって形成される電気接続部の最も高い部分は、SST抑制層430の上面よりも低い。より一般的には、電気接続が導電性接着剤、超音波熱圧着等によって接合されるワイヤ、はんだ付けまたは他の手法等のいずれによって行われるかを問わず、マイクロアクチュエータアセンブリ414の電気接続部461は、マイクロアクチュエータ414の最上部よりも高くない位置、またはより低い位置に設けられる。このため、電気接続を有しているマイクロアクチュエータアセンブリ414をできるだけ薄くすることができ、その結果、ディスクドライブアセンブリのプラッタスタック内にデータ記憶ディスクプラッタをより高密度に積層できる。
【0052】
この図には、マイクロアクチュエータ414が取り付けられるトレースジンバルのステンレス部分154上の金層469も明瞭に示されている。金層469は、SSTに耐腐食性を与え、導電性を高める。
【0053】
この実施形態では、他のすべての実施形態と同様に、拘束層、より一般的にはPZTマイクロアクチュエータアセンブリの上面には、通常、電気接続部以外には何も接合されていない。
【0054】
図27は、シミュレーションに基づく、
図26のサスペンションのPZT周波数応答関数の周波数応答を示すグラフである。このサスペンションでは、拘束層430の無いシミュレーションと比較して、揺れモードゲインおよびねじりモードゲインが低減していた。このため、ヘッド位置決め制御ループの帯域幅を上げることができ、その結果、データシーク時間を低減できるとともに、振動の影響を受け難くできるという効果がもたらされる。
【0055】
図28A~28Jに、
図24の薄膜PZTアセンブリ114を製造するプロセスを示す。
図28Aでは、バルクPZTウェハ420が転写テープ422上に配置されている。
図28Bでは、上部電極層426が、スパッタリングおよび/または電着等によって形成されている。
図28Cでは、マスク436が上部電極426の一部の上に配置されている。
図28Dでは、導電性エポキシ432が施されている。
図28Eでは、拘束層430となるステンレス層がエポキシ上に施された後に硬化されている。
図27Fでは、マスク436が除去されている。
図27Gでは、アセンブリが裏返されて第2の転写テープ443上に置かれている。
図27Hでは、下部電極層428が、スパッタリングおよび/または電着等によって形成されている。次いで、PZT素子420に分極処理が施される。
図27Iでは、アセンブリはもう一度裏返されて、第3の転写テープ444に配置されている。
図28Jでは、完成した状態のPZTマイクロアクチュエータアセンブリ414を形成するために、アセンブリが個々に切断されている。
【0056】
図29は、本発明の追加の実施形態に係る多層PZTアセンブリ514の側断面図である。このアセンブリは、多層PZT素子520と、素子を包囲する第1の電極526と、第2の電極528と、導電性エポキシ532によってPZT素子520に接合された拘束層530とを有している。図示されているのは、2層PZT素子である。より一般的には、素子はn層PZT素子であってもよい。
【0057】
図30は、極厚電極が抑制層として機能する、本発明の追加の実施形態に係る多層PZTマイクロアクチュエータアセンブリ614の側断面図である。この実施形態では、PZT素子620は、上部電極626および下部電極628を有している。上部電極626は、棚板部を形成しているより薄い第1の部分622と、抑制機能の大部分を担うより厚い第2の部分630とを有している。段差634は、より薄い第1の部分622からより厚い第2の部分630への移行部に位置している。第2の電極626は、段差634を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、段差を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子620に施すことができる。あるいは、第2の電極626は、別個に形成されてからPZT素子620に接合されるSST等の導電性材料の部品であってもよい。したがって、上部電極626の材料は、下部電極628の材料と同じであっても異なっていてもよい。より厚い第2の部分630は、より薄い部分622および/または第2の電極628よりも少なくとも50%厚くてもよい。または、より厚い第2の部分630は、より薄い部分622および/または第2の電極628より少なくとも2倍厚くてもよい。
図24~26の実施形態と同様に、電気接続部は、より薄い部分622によって形成されている棚板部に設けることができ、抑制層を形成しているより厚い部分630の上面以上の高さとならないように形成できる。
【0058】
本発明の範囲は、記載されている実施形態に厳密に限定されない。当業者であれば、本明細書の教示に基づいて、様々な変更を行うことができる。例えば、抑制層はステンレス鋼である必要はなく、他の比較的剛性の高い弾性材料であってもよい。抑制層は、1つの材料の単一層である必要はなく、材料の異なる複数の層から構成してもよい。抑制層は表面全体または実質的に上面全体を覆っていてもよい。しかしながら、抑制層は、表面全体よりも少ない部分、例えば、上面の面積の90%、75%、50%または25%よりも大きい部分を覆っていてもよい。段差を有する実施形態では、抑制層は、マイクロアクチュエータの上面の95%未満を覆うと想定される。拘束層は、単一の一体的な層である必要はなく、PZTの上面に並んで配置された複数の拘束片等の複数の部分を有していてもよい。このような拘束片は、伸張/収縮の方向またはこれに垂直な方向に延びていてもよい。一実施形態では、拘束層は、PZTの上面に接合されたステンレス鋼または他の材料の2つの拘束片を含み、2つの拘束片のサイズ、位置および接合は、PZTの下面が接合される2つの取り付け用棚板部の取り付け領域と略対称をなしている。素子の上側の抑制層によって加えられる全体的な剛性が、サスペンションに接合することによって素子の下部に加えられる全体的な剛性と略一致し、接合された領域が互いに略対称的である場合は、結果として生じる実質的な曲げはゼロまたはゼロに近くなる。このため、サスペンションに取り付けおよび実装されたPZTマイクロアクチュエータは、作動時にほとんど曲がらない。
【0059】
本明細書に記載または示唆される実施形態のいずれにおいても、拘束層は、拘束層が無い場合には作動時に発生する曲げを低減させるように選択してもよいし、PZTの曲げを可能な限り排除するように選択してもよいし、PZT曲げの符号を逆にするように選択してもよい。PZTがハードディスクドライブのマイクロアクチュエータとして使用される用途では、多くの場合、上記の例示的な例で図示および記載されているように拘束層を用いることによって曲げの符号を逆にすることが望ましいと考えられる。なぜなら、この形態では、有効ストローク長を長くできるからである。ただし、符号を逆にすることは望ましくないPZTの用途もある。したがって、一般的には、本発明は、PZTが特定の用途において他の部品にどのように取り付けまたは装着されるかに関係なく、PZTの曲げの方向と量の両方を制御するために使用できる。拘束層を用いることによって、選択した用途およびパラメータに応じて、拘束層が無い場合の曲げの50%未満または25%未満に曲げを低減させてもよいし、または、曲げの符号を逆にしてもよい。符号が逆になった場合、下面の端部またはその近傍で接合されているとともに上側に抑制層を有しているPZTは、伸張モードまたは拡張モードでは、上面が凹状になるように曲がる。つまり、抑制層を有していない類似のPZTのように凸状にはならない。同様に、収縮モードでは、PZTは、抑制層を有していない類似のPZTのように凹状になるのではなく、凸状になる。
【0060】
特定の用途においては、様々な理由からPZT素子に予め応力が加えられている場合があり、PZTが電圧によって作動されていない状態でも所定の方向に曲がっている。つまり、すでに凹状または凸状になっている。当然ながら、このように予め応力の加えられたPZTも、本発明においてマイクロアクチュエータとして使用できる。この場合、PZTは、実質的もしくは完全な凹状または実質的もしくは完全な凸状に曲がらない可能性がある。例えば、PZTに予め応力が加えられてすでに凹状である場合は、正の作動電圧によって作動されると、素子がより凹んだ形状に曲がる。一方、負の作動電圧で作動されると、凹みの小さくなった形状に曲がり、名目上は平坦な形状または凸状になる。特に定義しない限り、「凹状」および「凸状」という用語は、絶対的な用語ではなく相対的な用語として理解されるべきである。
【0061】
図31は、多層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ3100の一実施形態の断面図である。このマイクロアクチュエータアセンブリの抑制層は、主能動PZT層3120とは反対方向に作用する傾向を有する1つまたは複数の能動PZT層3130、3140を含んでいる。主能動PZT層3120は、マイクロアクチュエータ3100が接合されるサスペンションの表面の近傍に位置している。PZT抑制層3130、3140は、主PZT層3120の動作を拘束し、能動的に対抗するため、「拘束層」または「対抗層」と称する場合もある。
【0062】
PZT層3120、3130および3140は、平らに互いに積み重ねられた関係で配置される。主PZT層3120は、能動PZT領域3121と、非能動PZT領域3122および3123とを有している。能動PZT領域3121は、ポーリング処理時に電界が印加されて分極されているため、素子の作動時に電界が印加されると伸張または収縮する。非能動PZT領域3122および3123は、ポーリング処理および作動の際に有意な電界が印加されないため、圧電的に有意に作用しない。この素子は、第1の電極または下部電極3124と、能動PZT領域のための第2の電極または上部電極3126と、端部3128を有し、第1の能動拘束層3130と第2の能動拘束層3140との間に延在するとともにPZTの端部を包囲している第3の電極3132と、第2の能動拘束層3140の上に位置して、素子の側面と下面の両方を包囲する包囲部3143を有している第4の電極3142と、を備えている。素子は、導電性エポキシ3160等の導電性接着剤によってサスペンションに接合されている。導電性エポキシ3160は、電極3142を、マイクロアクチュエータ駆動電圧を供給する駆動電圧電気接触パッド158に機械的および電気的に接合している。また、素子は、電極3124および3128をサスペンションの接地部分154に機械的および電気的に接合する導電性エポキシ3162によってもサスペンションに接合されている。
【0063】
素子の動作を理解するためには、素子がどのようにポーリング処理されているかを理解する必要がある。
図32に、
図31の素子のポーリング処理を示す。この図には、結果として生じる、能動PZT材料の複数の層の分極方向が示されている。印加される電圧は3つであり、正電圧(Vp+)が電極3124に印加され、電極3128に負電圧(Vp-)が印加され、アースは電極3142に印加される。図中の矢印は、能動PZT層3120、3130および3140の、結果として得られる分極方向を示している。
【0064】
図31を再び参照すると、この図は、例示的な本実施形態において素子3100がどのように接続されるかを示している。導電性エポキシ3162が電極3124と3132との間の隙間を埋めることによってこれらを電気的に連結するため、ポーリング処理時に3極であった素子を、動作時には2極素子に変更する。電極の連結は、他の周知の電気接続手段を用いて、導電性エポキシ3162以外の手段で達成することもできるが、サスペンションアセンブリへの素子の接合に用いられている導電性エポキシ3162を利用することによって、別の連結工程を必要とせずに連結機能を得ることができる。
【0065】
電極3142に電圧が印加され、能動領域3121の伸張によって、主PZT層3120が図示されるようにx方向(左右方向)に伸張するときには、能動PZT拘束層3130および3140は、x方向に収縮する。すなわち、2つの拘束層3130、3140は、主PZT層3120と対抗する、すなわち反対方向に作用する傾向を有している。
【0066】
より詳細に説明すると、素子が
図32に示されるようにポーリング処理され、
図31に示すように電気接続されている場合、素子は以下のように動作する。電極3124が接地された状態で電気接触パッド158および電極3142に印加される正の素子作動電圧によって、以下の反応が生じる。主PZT層3120に印加される作動電圧の極性は、ポーリング処理時の極性とは逆である。したがって、主PZT層3120はz方向に収縮し、このためx方向に伸張する。一方、この作動電圧の極性は、ポーリング処理で2つの拘束層3130、3140に印加された極性と同じである。したがって、これらのPZT層はz方向に伸張し、このためx方向に収縮する。このように、2つの拘束層3130、3140は収縮する傾向を有し、主PZT層3120は対応する方向に伸張する傾向を有している。
【0067】
主PZT層と反対方向に作用する拘束層の効果は、
図10の拘束層130のような受動的拘束層や、上記の他の実施形態の同様の抑制層230、330、430、530および630の効果と同様である。能動PZT抑制層の作用により、主PZT層と、サスペンションへの主PZT層への組み付け(接合)とによって発生する曲げが減少し、曲げの符号を逆にすることさえ可能となる。いずれの場合でも、取り付けられたマイクロアクチュエータによってもたらされる実質的な変位が増加する。
【0068】
図33は、
図31のマイクロアクチュエータアセンブリの分解図であり、電気接続が概念的に示されている。
図31および
図32には図示していないが
図33に示されている任意選択の特徴には、電極3132のパターニング3133と、電極3142に対応付けられた電圧抑制器3144とが含まれるが、これらの機能については後述する。
【0069】
マイクロアクチュエータアセンブリを薄くすることが望ましい理由は以下の通りである。(1)サスペンション、特にジンバルを用いるDSAサスペンション(GSAサスペンションと称されることもある)のジンバルまたはその近傍の質量を小さくでき、その結果、g力として測定されるリフトオフ力、すなわち、衝撃に対する耐性が上がる。(2)風損を低減できる。(3)ヘッド積層アセンブリの積層密度を高めることができるため、同じ体積のディスクドライブ積層アセンブリスペースにより多くのデータを格納できる。このような理由により、PZT拘束層を非常に薄くすることが望ましい。ただし、PZT拘束層が薄いほど、動作中にこれらの層全体の電界強度が高くなるため、過度に高い電界強度によって動作中に消極が発生しやすくなる。したがって、名目上、主PZT層および拘束PZT層の厚さを同じにする必要がある。
【0070】
拘束PZT層の消極を発生させることなく薄くする方法のひとつは、主PZT層の電界を大幅に減少させることなく、1つまたは複数の手段によって、拘束層全体の電界強度を下げることである。この目的を達成するための第1の手段は、能動PZT拘束層の1つと動作的に関連付けられているが、主PZT層とは動作的に関連付けられていない1つまたは複数の電極をパターニングすることである。パターニングは、電極3132に穴3133を追加することや、他の電気的ボイドを追加することによって行える。パターニングは、平行または交差する導体のグリッド等のメッシュパターンであってもよく、間に電気的ボイドを有していてもよい。平面電極3132における導電体の面積の割合を減少させることによって、主PZT層3120の電界強度を低減させることなく、拘束層3130および3140の電界強度を効果的に下げることができる。
【0071】
第2の手段は、拘束層が消極され難くするために、拘束層の抗電界強度を増加させることである。抗電界強度(圧電材料を指す場合は単に「抗電力(coercivity)」)とは、圧電材料の消極に要する電界強度の尺度である。拘束層3130、3140の抗電力を主PZT層3120よりも高くすることによって、主PZT層と同じ作動電圧が印加されたときに消極が発生するリスクを回避しながら、これらの拘束層をより薄くできる。拘束層3130、3140は、異なるもしくはわずかに異なる圧電材料を使用することや、他の処理を行うことによって、d31ストローク長または他の望ましい特性のある程度の損失と引き換えに、より高い抗電力を有するように形成することもできる。
【0072】
別の方法は、分圧抵抗ネットワーク、ダイオード、電圧レギュレータまたは機能的に類似した各種の周知装置等の電圧抑制器を使用して、拘束層に関連付けられた駆動電極に印加される有効電圧を下げることである。図では、一般的な電圧抑制器3144によって、電極3142が受け取る電圧が低くされるため拘束層3140が受ける電界強度が低下しているが、主PZT層3120が受ける電界強度は低下していない。分圧器は、例えば、PZT材料の表面上に分圧器抵抗ネットワークを形成するように金属化処理を行って電極層を形成することによって、隣接する圧電層間に一体的に形成および配置できる。単純な抵抗分圧器はグランドを必要とする場合もあるが、グランドは同じ層に設けることができる。このような装置の設計者には明らかであるように、多くの構成が可能である。
【0073】
パターニング3133および電圧抑制器3144はいずれも拘束層3140の電界強度を弱めるため、好ましくない消極を動作時に発生させることなく、拘束層3140をより薄くできる。電極パターニング、電圧抑制器、拘束層3130および/または3140の電界強度を減少させる他の手段等を使用できる。パターニング3133は、電極3132と一体的に形成されるため、マイクロアクチュエータアセンブリに一体形成されて組み込まれる。電極の1つに対する電圧抑制器は、アセンブリと一体形成されて組み込まれてもよいし、対応する電極自体が電気リードを有し、他の電極と接合されていない場合は、アセンブリの外部に設けてもよい。
【0074】
上記の3つの手段のいずれも、単一の能動拘束層、2つの能動拘束層(
図31~33)またはより一般的にはn個の能動拘束層(
図35)を備えた圧電マイクロアクチュエータに適用可能である。
【0075】
図34は、様々な拘束層構造(CLC)のシミュレーションに基づく、1つまたは複数の能動抑制層を有するマイクロアクチュエータのストローク感度(nm/V)を示すグラフである。このグラフは、主PZT層の厚さが45μmであり、電界強度を弱めるためのパターニング3133または電圧抑制器3144を有していない以下の3つの異なる構造に関するグラフである。
a)1つの非能動抑制層(「受動CLC」、ひし形のデータ点)
b)1つの能動抑制層(「単層」、正方形のデータ点)
c)2つの能動抑制層(「2層」、三角形のデータ点)
このデータから、少なくとも検討したパラメータについては、主PZT層と反対方向に作用する能動抑制層を1つ備えたPZTマイクロアクチュエータは、抑制層が非能動材料である場合よりもストローク感度が常に高いことがわかる。最も高いストローク感度は、抑制層として機能する(つまり、主PZT層とは反対方向に作用する)の複数の能動PZT薄層によって達成されている。具体的には、最も高いストローク感度は、厚さがそれぞれ5μmまたは主PZT層の厚さの約11%である2つの抑制層を設けることによって達成されている。したがって、拘束層の厚さは、好適には主PZT層の厚さの50%未満、より好適には主PZT層の厚さの20%未満、さらに好適には主PZT層の厚さの5~15%であることが望ましい。
【0076】
2つの能動抑制層の構成の場合、ストローク感度は抑制層の厚さが増加するにつれて顕著に減少し、厚さ約5μmの2つの能動拘束層の構成のストローク感度が最も高かった。したがって、マイクロアクチュエータは、合計の厚さが主PZT層の厚さよりも薄い2つ以上の抑制層を有することが好ましく、合計厚さが主PZT層の厚さの50%未満であることがより好ましい。より好適には、各拘束層の厚さは主PZT層の厚さの半分未満である。さらに好適には、各拘束層の厚さは主PZT層の厚さの20%未満であり、さらに好適には、主PZT層の厚さの5~15%である。
【0077】
単一の能動抑制層を有するマイクロアクチュエータアセンブリの場合、抑制層の厚さの増加に伴うストローク感度の低下は、2つの能動抑制層の場合ほど顕著ではなかった。単一の能動抑制層の局所的な最大値は、厚さ約10μmで発生している。したがって、単一の能動抑制層を有するマイクロアクチュエータアセンブリの場合、層の厚さは、主PZT層の厚さの10~40%であることが好ましく、主PZT層の厚さの約10~20%であることがより好ましい。
【0078】
図35は、マイクロアクチュエータアセンブリが複数の能動PZT層を有している別の実施形態を示す断面図であって、ポーリング処理および結果として生じる分極方向を概念的に示す図である。
図35の素子が、電極3524および3528が導電性エポキシによって連結された状態で
図31に示すようなサスペンションに電気的および機械的に接合されると、1つの主能動PZT層と、3つの能動PZT層とが形成される。3つの能動PZT層は、主能動PZT層とは反対方向に作用する傾向を有しているため抑制層として機能する。つまり、下側のPZT層が伸張して上側の3つのPZT層が収縮する。または、この逆の状態になる。
【0079】
マイクロアクチュエータアセンブリの構成は、
図31~33に示す1つの主能動PZT層および2つの能動PZT抑制層を有する素子や、
図35に示す1つの主能動PZT層と3つの能動PZT抑制層を有する素子から、任意の数の主能動層および能動抑制層を有する素子に拡張可能である。1つまたは複数の拘束層の電界強度は、電極パターニングおよび/または電圧抑制器を含む様々な手段によって低減できる。用途に応じた最適な拘束層の数と最適な厚さは実験を行うことによって判断できる。
【0080】
本明細書で開示されるPZTマイクロアクチュエータは、ディスクドライブサスペンション以外の技術分野でもアクチュエータとして使用できる。したがって、そのようなマイクロアクチュエータおよびそれらの構造の詳細は、使用される環境、ディスクドライブのサスペンション環境またはその他の環境に関係なく、本発明に係る素子に含まれる。
【0081】
図36は、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000の一実施形態の等角図である。
図37は、PZTの幅方向のC-C’切断線に沿った、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000の断面図である。この単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000も、上部電極4042、PZT素子4040および下部電極4032を有している。上部電極4042は、PZT素子4040の上面4048に取り付けられている。下部電極4032は、PZT素子4040の下面4034に取り付けられている。
【0082】
上部電極4042の幅W1は、下部電極4032の幅W2よりも狭い。上部電極4042は、上部電極4042の終端である段差4044を有している。PZT素子4040は、上面4048に、上部電極4042によって覆われていない露出部4046を有している。いくつかの実施形態では、上部電極4042は、PZT接合面の反対側でPZT素子4040に配置される。
【0083】
上部電極4042は、段差4044を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、段差4044を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子4040に施すことができる。あるいは、上部電極4042は、別個に形成されてからPZT素子4040に接合されるSSTまたは本明細書に記載の他の導電性材料の部品であってもよい。したがって、上部電極4042の材料は、下部電極4032の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0084】
図38Aは、本開示の一実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000を有しているサスペンションのジンバル4050の平面図である。露出部4046(すなわち電極デッドゾーン)は、PZTの内側に配置され、PZT上面の残りの部分は上部電極4042である。PZTは、ジンバルアセンブリを有しているジンバルに取り付けられ、読み取り/書き込みヘッドスライダを保持するサスペンションのジンバル領域に直接作用する。2つのマイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000は、マイクロアクチュエータ4000の基端が接合される舌状部4054と、マイクロアクチュエータ4000の先端が接合されるトレースジンバルの部分4056とに接着され、これらの間の隙間を延びている。
【0085】
図38Bは、本開示の一実施形態に係る
図38Aのサスペンション4050のD-D’線断面図である。PZT下部電極4032の基端および先端は、非導電性接着剤502および導電性接着剤504によってそれぞれ接合される。上部電極4042の基端にも導電性接着剤504が施され、PZT電気接続を形成している。マイクロアクチュエータアセンブリ4000は、作動されると伸張または収縮するため、舌状部4054とトレースジンバルの部分4056(
図38A)との間の隙間の長さを変化させる。これによって、読み取り/書き込みトランスデューサを保持しているヘッドスライダの微細な位置決め移動が可能となっている。
【0086】
上部電極4042の幅寸法が狭くされていることによって、基端の非導電性接着剤502と先端の導電性接着剤504での接着接合によって下部電極4032に加えられる抑制に対抗する作為的な抑制が生じている。上部電極4042の幅を適切に選択することにより、サスペンションPZT励起周波数応答関数(FRF)のゲインを、周波数帯域全体にわたっていくつかの主要モードで小さくできる。
【0087】
図39に、シミュレーションに基づく、
図38のサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフを示す。上部電極4042の幅は、下部電極4032よりも0.05mm狭い。その結果、第1ジンバルねじりモード(GT1)、回路ねじりモード、ロードビーム揺れモードのゲインが改善されている。特に、ロードビーム揺れモードのゲインは3dB小さくなり、ヘッド位置決めサーボ制御の帯域幅が改善され、その結果、データシーク時間を低減できるとともに、振動の影響を受け難くできる。
【0088】
図40は、本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000を有しているサスペンションのジンバル4150の平面図である。
図40では、露出部4047(電極デッドゾーン)は、PZT上面4048の外側に配置され、PZT上面の残りの部分は上部電極4042である。
【0089】
図41に、シミュレーションに基づく、
図40のサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフを示す。このサスペンションでは、第1のジンバルねじりモード、回路ねじりモードおよびロードビーム揺れゲインが変化した。本明細書に記載の単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリの本実施形態は、反対のゲインピークを有する1つのサスペンションのPZTのFRFを調整して上記モードでのPZTのFRFを最適化するために使用できる。
【0090】
図42は、本開示の一実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4100を有しているサスペンションのジンバル4250の平面図である。
図42では、露出部4146(電極デッドゾーン)は、PZT上面4148の内側および外側の両方に配置され、PZT上面4148の残りの部分は上部電極4142である。
図43は、PZTの幅方向のE-E’切断線に沿った、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4100の断面図である。単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4100は、上部電極4142、PTZ素子4140および下部電極4132を有している。上部電極4142は、PZT素子4140の上面4148に取り付けられている。下部電極4132は、PZT素子4140の下面4134に取り付けられている。上部電極4142の幅W3は、下部電極4132の幅W4よりも狭い。上部電極4142は、上部電極4142の終端である段差4144を有している。PZT素子4140は、上面4148に、上部電極4142によって覆われていない露出部4146を有している。いくつかの実施形態では、上部電極4142は、PZT接合面の反対側でPZT素子4140に配置される。
【0091】
上部電極および下部電極は、段差4144を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、上面を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子4140に施すことができる。あるいは、上部電極は、別個に形成されてからPZT素子4140に接合されるSST等の導電性材料からなる別個の部分であってもよい。したがって、上部電極の材料は、下部電極4132の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0092】
上部電極4142の寸法が狭くされていることによって、下部電極の基端および先端でのPZT接合によって下部電極4132に加えられる抑制に対抗する作為的な抑制が生じている。上部電極の幅を適切に選択することにより、サスペンションPZT励起FRFのゲインを、周波数帯域全体にわたっていくつかの主要モードでさらに小さくできる。
【0093】
図44Aは、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000が回転した状態の、サスペンション4250のジンバルの斜視図である。単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4000が回転しているため、上部電極4042が第1の側部電極5042になり、露出部4046も側面に位置している。下部電極4032は第2の側部電極5032になっている。この構成では、第1の側部電極5042および第2の側部電極5032は、2つの側面において銅接合パッドに電気的に接続されている。
【0094】
図44Bは、本開示の一実施形態に係る、
図44AのF-F’線断面図である。PZTの第1の側部電極5042は、導電性接着剤604によって先端側銅パッド606に接合されている。第1の側部電極5042には、非導電性接着剤602も施されている。
図44Cは、本開示の一実施形態に係る、
図44AのG-G’線断面図である。PZTの第2の側部電極5032は、導電性接着剤604によって基端側銅パッド608に接合されている。マイクロアクチュエータアセンブリ4000は、作動されると伸張または収縮するため、読み取り/書き込みトランスデューサを保持しているヘッドスライダの微細な位置決め移動が可能となっている。
【0095】
第1の側部電極5042の幅寸法が狭くされていることによって、先端の非導電性接着剤602および基端の導電性接着剤604での接着接合によって第2の側部電極5032に加えられる抑制に対抗する作為的な抑制が生じている。第1の側部電極5042の幅を適切に選択することにより、サスペンションPZT励起周波数応答関数(FRF)のゲインを、周波数帯域全体にわたっていくつかの主要モードでさらに小さくできる。
【0096】
図45Aは、本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4200を有しているサスペンション4350のジンバルの平面図である。
図45Aでは、露出部4246(電極デッドゾーン)は、PZT上面4248の内側と外側の両方に配置され、PZT上面4248の残りの部分は上部電極4242である。露出部4246(電極デッドゾーン)は、内側に湾曲するように構成されており、PZT上面4246の中心またはその付近で上部電極4242の表面積が小さくなっている。上部電極4242の断面積は、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4200の先端および基端に近づくほど大きくなっている。
【0097】
図45Bは、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4200の中心をPZT幅方向に横断する切断線H-H’に沿った単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4200の断面図である。上部電極4242は、PZT素子4240の上面4248に取り付けられている。下部電極4232は、PZT素子4240の下面4234に取り付けられている。上部電極4242は、基端および先端に向かって増加する不定幅W5を有している。上部電極4242の不定幅W5は、下部電極4232の幅W6よりも狭い。上部電極4242は、上部電極4242の終端である段差4244を有している。PZT素子4240は、上面4248に、上部電極4242によって覆われていない露出部4246を有している。いくつかの実施形態では、上部電極4242は、PZT接合面の反対側でPZT素子4240に配置される。
【0098】
上部電極および下部電極は、段差4244を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、上部電極を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子4240に施すことができる。あるいは、上部電極4242は、別個に形成されてからPZT素子4240に接合される、SSTまたは本明細書に記載の他の材料等の導電性材料からなる別個の部品であってもよい。したがって、上部電極4242の材料は、下部電極4232の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0099】
上部電極4242の断面が一定ではないことによって、下部電極の基端および先端でのPZT接合によって下部電極4232に加えられる抑制に対抗する作為的な抑制が生じている。上部電極4242の幅を変化させることによって、サスペンションPZT励起FRFのゲインを、周波数帯域全体にわたっていくつかの主要モードでさらに小さくできる。
【0100】
図45Cは、シミュレーションに基づく、
図45AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフである。電極の両側の湾曲した露出部(電極のデッドゾーン)は、第2のジンバルねじりモード(GT2)ゲインの最適化に使用できる。
【0101】
図46Aは、本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4300を有しているサスペンション4450のジンバルの平面図である。
図46Aでは、露出部4346(電極デッドゾーン)は、PZT上面4348の内側に配置され、PZT上面4348の残りの部分は上部電極4342である。露出部4346(電極デッドゾーン)は、内側に湾曲するように構成されており、PZT上面4348の中心またはその付近で上部電極4342の表面積が小さくなっている。上部電極4342の断面積は、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4300の先端および基端に近づくほど大きくなっている。
【0102】
図46Bは、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4300の中心をPZT幅方向に横断する切断線J-J’に沿った単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4300の断面図である。上部電極4342は、PZT素子4340の上面4348に取り付けられている。下部電極4332は、PZT素子4340の下面4334に取り付けられている。上部電極4342は、基端および先端に向かって増加する不定幅W7を有している。上部電極4242の不定幅W7は、下部電極4332の幅W8よりも狭い。上部電極4342は、上部電極4342の終端である段差4344を有している。PZT素子4340は、上面4348に、上部電極4342によって覆われていない露出部4346を有している。いくつかの実施形態では、上部電極4342は、PZT接合面の反対側でPZT素子4340に配置される。
【0103】
上部電極および下部電極は、段差4344を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、上部電極を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子4340に施すことができる。あるいは、上部電極4342は、別個に形成されてからPZT素子4340に接合されるSSTまたは本明細書に記載の他の材料等の導電性材料からなる別個の部品であってもよい。したがって、上部電極4342の材料は、下部電極4332の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0104】
上部電極4342の断面が一定ではないことによって、下部電極の基端および先端でのPZT接合によって下部電極4332に加えられる抑制に対抗する作為的な抑制が生じている。上部電極4342の幅を変化させることによって、サスペンションPZT励起FRFのゲインを、周波数帯域全体にわたっていくつかの主要モードでさらに小さくできる。
【0105】
図46Cは、シミュレーションに基づく、
図46AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフである。電極の内側の湾曲した露出部(電極のデッドゾーン)は、第1ジンバルねじりモード(GT1)のゲイン(GT1位相遅れの増加)と揺れゲイン(揺れモードの位相進みの増加)の最適化に使用できる。
【0106】
図47Aは、本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4400を有しているサスペンション4550のジンバルの平面図である。
図47Aでは、露出部4446(電極デッドゾーン)は、PZT上面4448の外側に配置され、PZT上面4448の残りの部分は上部電極4442である。露出部4446(電極デッドゾーン)は、内側に湾曲するように構成されており、PZT上面4448の中心またはその付近で上部電極4442の表面積が小さくなっている。上部電極4442の断面積は、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4400の先端および基端に近づくほど大きくなっている。
【0107】
図47Bは、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4400の中心をPZT幅方向に横断する切断線K-K’に沿った単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4400の断面図である。上部電極4442は、PZT素子4440の上面4448に取り付けられている。下部電極4432は、PZT素子4440の下面4334に取り付けられている。上部電極4442は、基端および先端に向かって増加する不定幅W9を有している。上部電極4442の不定幅W9は、下部電極4432の幅W10よりも狭い。上部電極4442は、上部電極4442の終端である段差4444を有している。PZT素子4440は、上面4448に、上部電極4442によって覆われていない露出部4446を有している。いくつかの実施形態では、上部電極4442は、PZT接合面の反対側でPZT素子4440に配置される。
【0108】
上部電極および下部電極は、段差4444を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、上部電極を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子4440に施すことができる。あるいは、上部電極4442は、別個に形成されてからPZT素子4440に接合されるSSTまたは本明細書に記載の他の材料等の導電性材料からなる別個の部品であってもよい。したがって、上部電極4442の材料は、下部電極4432の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0109】
上部電極4442の断面が一定ではないことによって、下部電極の基端および先端でのPZT接合によって下部電極4432に加えられる抑制に対抗する作為的な抑制が生じている。上部電極4442の幅を変化させることによって、サスペンションPZT励起FRFのゲインを、周波数帯域全体にわたっていくつかの主要モードでさらに小さくできる。
【0110】
図47Cは、シミュレーションに基づく、
図47AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフである。電極の外側の湾曲した露出部(電極のデッドゾーン)は、第1ジンバルねじりモード(GT1)のゲイン(GT1位相遅れの増加)と揺れゲイン(揺れモードの位相進みの増加)の最適化に使用できる。
【0111】
図48Aは、本開示の一実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4500を有しているサスペンションのジンバル4650の平面図である。露出部4546(すなわち電極デッドゾーン)は、PZTの先端に配置され、露出部の外側の部分が内側の部分よりも大きくなるように湾曲している。PZT上面の残りの部分は上部電極4542である。2つのマイクロアクチュエータPZTアセンブリ4500は、マイクロアクチュエータ4500の基端が接合される舌状部4554と、マイクロアクチュエータ4500の先端が接合されるトレースジンバルの部分4556とに接着され、これらの間の隙間を延びている。
【0112】
図48Bは、本開示の一実施形態に係る、
図48Aのサスペンション4650のL-L’線断面図である。PZT下部電極4532の基端および先端は、非導電性接着剤502および導電性接着剤504によってそれぞれ接合される。上部電極4542の基端にも導電性接着剤504が施され、PZT電気接続を形成している。マイクロアクチュエータアセンブリ4500は、作動されると伸張または収縮するため、舌状部4554とトレースジンバルの部分4556(
図48A)との間の隙間の長さを変化させる。これによって、読み取り/書き込みトランスデューサを保持しているヘッドスライダの微細な位置決め移動が可能となっている。
【0113】
図48Cは、シミュレーションに基づく、
図48AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフである。電極の先端の湾曲した露出部(電極デッドゾーン)は、第1のねじりモード(T1)ゲインと第1のジンバルねじりモード(GT1)の最適化に使用できる。
【0114】
図49Aは、本開示の代替的な実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4600を有しているサスペンション4750のジンバルの平面図である。
図49Aでは、露出部4646(電極デッドゾーン)は、PZT上面4648の外側に配置され、PZT上面4446の残りの部分は上部電極4642である。具体的には、上部電極4642は、先端部、基端部および先端部と基端部とを接続する接続部を有している。図示のように、上部電極4642の基端部の表面積は、先端部の表面積より大きい。あるいは、上部電極4642の先端部の表面積は、基端部の表面積より大きくてもよい。他の実施形態では、基端部および先端部の表面積は同じまたは実質的に同じである。露出部4646(電極デッドゾーン)は、上部電極4642の先端部、基端部および接続部によって画定されている。先端部および基端部の断面積は、上部電極4642の接続部の断面積よりも大きい。
【0115】
図49Bは、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4400の中心をPZT幅方向に横断する切断線M-M’に沿った単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4600の断面図である。上部電極4642は、PZT素子4640の上面4648に取り付けられている。下部電極4632は、PZT素子4640の下面4634に取り付けられている。上部電極4642の接続部の幅W11は、基端部および先端部(図示しない)の幅よりも小さい。また、上部電極4642の幅W11は、下部電極4632の幅W12よりも狭い。上部電極4642は、上部電極4642の終端である段差4644を有している。PZT素子4640は、上面4648に、上部電極4642によって覆われていない露出部4646を有している。いくつかの実施形態では、上部電極4642は、PZT接合面の反対側でPZT素子4640に配置される。
【0116】
上部電極および下部電極は、段差4644を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、上部電極を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子4640に施すことができる。あるいは、上部電極4642は、別個に形成されてからPZT素子4640に接合されるSSTまたは本明細書に記載の他の材料等の導電性材料からなる別個の部品であってもよい。したがって、上部電極4642の材料は、下部電極4632の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0117】
上部電極4642が複数の断面積を有していることによって、下部電極の基端および先端でのPZT接合によって下部電極4632に加えられる抑制に対抗する作為的な抑制が生じている。上部電極4642の幅を変化させることによって、サスペンションPZT励起FRFのゲインを、周波数帯域全体にわたっていくつかの主要モードでさらに小さくできる。
【0118】
図49Cは、シミュレーションに基づく、
図49AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフである。電極の外側の湾曲した露出部(電極のデッドゾーン)は、第1ジンバルねじりモード(GT1)のゲイン(GT1位相遅れの増加)と揺れゲイン(揺れモードの位相進みの増加)の最適化に使用できる。
【0119】
図50Aは、本開示の一実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4700を有しているサスペンションのジンバル4850の平面図である。マイクロアクチュエータPZTアセンブリ4700は、複数の露出部4746(すなわち電極デッドゾーン)を含み、それぞれがPZT上面4748の外側の一部分に配置されている。PZT上面4748の残りの部分は上部電極4742である。具体的には、上部電極4742は、先端部と、基端部と、先端部と基端部との間の1つまたは複数の中間部と、PZT上面4748の内側に沿って上記各部を接続する接続部とを有している。別の実施形態では、パターニングされたデッドゾーンは、PZT上面4748の内側に配置される。他の実施形態では、パターニングされたデッドゾーンは、PZT上面4748の内側とPZT上面4748の外側とに交互に配置される。
【0120】
上部電極4742の上記各部の表面積は同じまたは実質的に同じであってもよい。露出部4746(電極デッドゾーン)は、上部電極4742の先端部、基端部、中間部および接続部によって画定されている。先端部、基端部および中間部の断面積は、上部電極4742の接続部の断面積よりも大きい。
【0121】
図50Bは、本開示の一実施形態に係る、
図50Aのサスペンション4750のN-N’線断面図である。PZT下部電極4732の基端および先端は、非導電性接着剤502および導電性接着剤504によってそれぞれ接合される。上部電極4742は、先端部4742Cと、基端部4742Aと、先端部と基端部との間でPZT上面4748の内側に沿って配置された1つまたは複数の中間部4742Bとを有している。基端部4742Aにも導電性接着剤504が施され、PZT電気接続を形成している。マイクロアクチュエータアセンブリ4700は、作動されると伸張または収縮するため、舌状部4754とトレースジンバルの部分4756(
図50A)との間の隙間の長さを変化させる。これによって、読み取り/書き込みトランスデューサを保持しているヘッドスライダの微細な位置決め移動が可能となっている。
【0122】
図50Cは、シミュレーションに基づく、
図50AのサスペンションのPZT周波数応答関数のグラフである。パターニングされたPZT上部電極4742のデッドゾーンは、第1ねじりモードz(T1)(T1位遅れの増加)、第1ジンバルねじりモード(GT1)(GT1位相進みの増加)および揺れ(揺れ位相遅れの増加)の共振最適化に使用できる。グラフからわかるように、3.4nm/Vに対して3.7nm/Vであり、ストロークへの影響は小さい。
【0123】
図51は、本開示の一実施形態に係る、単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリの一実施形態の断面図である。この単層マイクロアクチュエータPZTアセンブリ5000も、上部電極5042、PZT素子5040および下部電極5032を有している。上部電極5042は、PZT素子5040の上面5048に取り付けられている。下部電極5032は、PZT素子5040の下面5034に取り付けられている。
【0124】
上部電極5042の幅W1は、PZT素子5040の幅よりも狭い。上部電極5042は、上部電極5042の終端である段差5044を有している。PZT素子5040は、上面5048に、上部電極5042によって覆われていない露出部5046を有している。いくつかの実施形態では、上部電極5042は、PZT接合面の反対側でPZT素子4040に配置される。いくつかの実施形態においては、上部電極は、不定幅を有しているか、または本明細書に記載の技術に従ってPZT素子の一部を露出させるように構成されている。
【0125】
下部電極5032の幅W2は、PZT素子5040の幅よりも狭い。下部電極5032は、下部電極5032の終端である段差を有している。PZT素子5040は、下面に、下部電極5032によって覆われていない露出部を有している。いくつかの実施形態においては、下部電極は、不定幅を有しているか、または本明細書に記載の技術に従ってPZT素子の一部を露出させるように構成されている。いくつかの実施形態は、PZT素子の上面および下面に同様の露出面を有するように構成された上部電極および下部電極を有している。他の実施形態は、PZT素子の上面および下面が異なる露出面を有するように、上部電極および下部電極を有している。したがって、上部電極は、PZT素子の表面全体を覆っていなくてもよく、形状およびサイズは第2の電極と同じでも異なっていても良いが、PZT素子の外寸内とする。
【0126】
上部電極5042および下部電極5032は、段差を形成するためのマスキング工程を含んだ成膜処理によって、または、段差を形成するために材料を選択的に除去する成膜処理によって、PZT素子5040に施すことができる。あるいは、上部電極5042および/または下部電極5032は、別個に形成されてからPZT素子5040に接合されるSSTまたは本明細書に記載の他の材料からなる別個の導電性部品であってもよい。したがって、上部電極5042の材料は、下部電極5032の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0127】
本明細書では単一のPZT層が示されているが、開示される実施形態は、本明細書に記載の技術と同様の技術を使用して、複数のPZT素子を有する多層PZTマイクロアクチュエータアセンブリに適用できる。上部電極の幅を適切に選択することにより、一組の多層PZTを使用する配列されたマイクロアクチュエータサスペンションのPZTのFRFを効果的に調整できる。
【0128】
本明細書および特許請求の範囲内で使用される「概ね」、「略」、「約」、「実質的に」および「同一平面上にある」という用語は、任意の正確な寸法、測定値からの一定量の変動を許容することが理解される。これらの用語は、本明細書に開示されている本発明の説明および動作の文脈内で理解されるべきである。
【0129】
本明細書の明細書および特許請求の範囲内で使用される「上部」、「下部」、「上」および「下」等の用語は、任意の特定の空間的または重力の方向ではなく、各部の互いに対する空間的関係性を表す便宜的な用語である。したがって、これらの用語は、アセンブリの図示および明細書に記載されている特定の方向、その反対の方向または他の回転方向に配向されるかに関わらず、構成部品のアセンブリを包含することを意図している。
【0130】
特許請求の範囲、要約および図面を含む明細書に開示されたすべての特徴ならびに開示された方法またはプロセスのすべてのステップは、特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。特許請求の範囲、要約および図面を含む明細書に開示されている各特徴は、別段の明示的な記載がない限り、同じ、同等または同様の目的を果たす代替的な特徴に置き換えることができる。したがって、明示的な記載がない限り、開示された各特徴は、一連の同等または類似の一般的な特徴の一例にすぎない。
【0131】
本明細書における「本発明」という用語は、単一の必須要素または要素群を有する単一の発明のみが提示されることを意味すると解釈されるべきではない。同様に、「本発明」という用語は、それぞれ別個の発明とみなすことができる複数の別個の技術革新を包含すると理解される。好適な実施形態および図面を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変形例および変更例を実施できることは明らかである。したがって、上記の詳細な説明および添付の図面は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲および適切に解釈されたその法的均等例からのみ推測されるべきであることが理解される。
【国際調査報告】