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  • 特表-抗CD19抗体及びその使用 図1-1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】抗CD19抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230530BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230530BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230530BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 N
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564659
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021028880
(87)【国際公開番号】W WO2021217024
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/015,385
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500287639
【氏名又は名称】ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】タヴァレス、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ、ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】ゲーガン、ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB33
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4H045AA11
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
CD19に特異的に結合する抗体、その断片、及び融合タンパク質、ならびにそのような抗体を作製及び使用する方法が記載されている。そのような抗体、融合タンパク質、及びその断片は、B細胞悪性腫瘍及び自己免疫疾患を含むさまざまなB細胞障害の治療及び診断に有用である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD19抗体またはその抗原結合断片であって、
SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列を含む、前記CD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGAVPIT(配列番号12)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQVDSLHPFT(配列番号13)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPLT(配列番号14)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQLFDSPYT(配列番号15)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGVPPLT(配列番号16)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPFT(配列番号17)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASNRAT(配列番号10)(LCDR2)、及びQQAGVFPFT(配列番号18)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASRRAT(配列番号11)(LCDR2)、及びQQAGIPPYT(配列番号19)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号20に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変(V)領域と、
配列番号5に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(V)領域と、を含む、請求項1に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
CD19抗体またはその抗原結合断片であって、
配列番号20~27に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変(V)領域と、
配列番号5に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(V)領域と、を含む、前記CD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記V領域が、配列番号20~27と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~11に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記V領域が、配列番号20~27と同一であるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記V領域が、配列番号5と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
前記V領域が、配列番号5と同一であるアミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記V領域が、配列番号20~27と同一であるアミノ酸配列を含み、前記V領域が、配列番号5と同一である、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
前記CD19抗体またはその断片が、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体、IgM抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、単離されたCDRまたはそれらのセット;単鎖可変断片(scFv)、ポリペプチド-Fc融合、単一ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体、マスク抗体、小モジュラー免疫薬(「SMIPs(商標)」)、単鎖、タンデムダイアボディ、VHH、Anticalin、ナノボディ、ミニボディ、BiTE、アンキリンリピートタンパク質、DARPIN、Avimer、DART、TCR様抗体、アドネクチン、アフィリン、トランスボディ、アフィボディ、TrimerX、MicroProtein、Fynomer、Centyrin、及びKALBITORからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
前記CD19抗体またはその断片が、モノクローナル抗体または単鎖可変断片(scFv)である、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記CD19抗体またはその断片が、IgG定常領域を含む抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
前記CD19抗体またはその断片が、単鎖可変断片(scFv)である、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
前記CD19 scFvが配列番号36~39を含むリンカー配列を含む、請求項20に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
前記CD19 scFvが配列番号40または41から選択されるシグナルペプチドを含む、請求項20または21に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項23】
前記抗体またはその断片が、約8ナノモル(nM)~約242nMのKでCD19に結合する、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項24】
前記抗体またはその断片が、約0.1nM~約2.7nMのEC50で標的細胞上のCD19に結合する、先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片。
【請求項25】
がんを治療する方法であって、治療を必要とする対象に先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記がんが、白血病、リンパ腫、または骨髄腫から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
CD19抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物であって、前記CD19抗体またはその断片が:
SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域を含む、前記医薬組成物。
【請求項28】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が:
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGAVPIT(配列番号12)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQVDSLHPFT(配列番号13)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPLT(配列番号14)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQLFDSPYT(配列番号15)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGVPPLT(配列番号16)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPFT(配列番号17)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASNRAT(配列番号10)(LCDR2)、及びQQAGVFPFT(配列番号18)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASRRAT(配列番号11)(LCDR2)、及びQQAGIPPYT(配列番号19)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項36】
がんを治療する方法であって、CD19抗体またはその抗原結合断片を治療を必要とする対象に投与することを含み、前記CD19抗体またはその断片が:
SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域を含む、前記方法。
【請求項37】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGAVPIT(配列番号12)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQVDSLHPFT(配列番号13)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記CD19抗体またはその断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPLT(配列番号14)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQLFDSPYT(配列番号15)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGVPPLT(配列番号16)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPFT(配列番号17)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASNRAT(配列番号10)(LCDR2)、及びQQAGVFPFT(配列番号18)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記CD19抗体またはその抗原結合断片が、
RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASRRAT(配列番号11)(LCDR2)、及びQQAGIPPYT(配列番号19)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸。
【請求項46】
配列番号20~27のうちのいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸。
【請求項47】
請求項45または46のいずれかに記載の単離された核酸配列を含むベクター。
【請求項48】
請求項47に記載のベクターを含む単離された細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年4月24日に出願された米国特許仮出願第60/015,385号に基づく優先権を主張するものであり、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2021年3月30日に作成された前記ASCIIコピーは、MIL-004WO_SL.txtという名称であり、38,765バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
CD19抗原は、B細胞に見られる細胞表面タンパク質である。CD19は、正常なB細胞と悪性B細胞の両方に発現しており、その異常増殖はB細胞リンパ腫をもたらし得る。例えば、CD19は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、及び急性リンパ性白血病を含むがこれらに限定されないB細胞系統の悪性腫瘍で発現する。当該技術分野では、抗CD19抗体を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
B細胞障害及びそれらの治療に関連する多くの問題に対処するために、本発明は、B細胞リンパ腫及び白血病ならびに自己免疫障害の治療のためのヒト抗CD19抗体及びその断片を提供する。本発明の抗体及びその断片は、単独で、融合タンパク質中で、または少なくとも1つの診断薬及び/もしくは治療薬にコンジュゲートして、または他の治療法と組み合わせて使用することができる。本明細書に記載の抗CD19抗体またはその断片とのヒトCD19の結合は、ADCC活性、アポトーシスの誘導、及びB細胞増殖の阻害を示し得る。
【0005】
一態様では、本発明は、CD19に特異的に結合する抗体またはその断片を提供する。一態様では、本発明は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列を含むCD19抗体またはその断片を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGAVPIT(配列番号12)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQVDSLHPFT(配列番号13)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPLT(配列番号14)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQLFDSPYT(配列番号15)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGVPPLT(配列番号16)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPFT(配列番号17)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASNRAT(配列番号10)(LCDR2)、及びQQAGVFPFT(配列番号18)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASRRAT(配列番号11)(LCDR2)、及びQQAGIPPYT(配列番号19)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、配列番号20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)領域と、配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域と、を含む。
【0015】
一態様では、本発明は、配列番号20~27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)領域と、配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域と、を含むCD19抗体またはその断片を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号20~27と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号20~27と同一であるアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号5と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号5と同一であるアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号20~27と同一であるアミノ酸配列を含み、VH領域は配列番号5と同一である。
【0021】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体、IgM抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、単離されたCDRまたはそれらのセット;単鎖可変断片(scFv)、ポリペプチド-Fc融合、単一ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体、マスク抗体、小モジュラー免疫薬(「SMIPs(商標)」)、単鎖、タンデムダイアボディ、VHH、Anticalin、ナノボディ、ミニボディ、BiTE、アンキリンリピートタンパク質、DARPIN、Avimer、DART、TCR様抗体、アドネクチン、アフィリン、トランスボディ、アフィボディ、TrimerX、MicroProtein、Fynomer、Centyrin、及びKALBITORからなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、モノクローナル抗体または単鎖可変断片(scFv)である。
【0023】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、IgG定常領域を含む抗体である。
【0024】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、単鎖可変断片(scFv)である。
【0025】
いくつかの実施形態では、CD19 scFvは、配列番号36~39を含むリンカー配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、CD19 scFvは、配列番号40~42から選択されるシグナルペプチドを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、約8ナノモル(nM)~約242nMのKDでCD19に結合する。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、標的細胞上のCD19に約0.1nM~約2.7nMのEC50で結合する。
【0029】
一態様では、本発明は、がんを治療する方法であって、治療を必要とする対象に先行請求項のいずれか一項に記載のCD19抗体またはその断片を投与することを含む、方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、がんは、白血病、リンパ腫、または骨髄腫から選択される。
【0031】
一態様では、本発明は、CD19抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、CD19抗体またはその断片がSYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域を含む、医薬組成物を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGAVPIT(配列番号12)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQVDSLHPFT(配列番号13)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPLT(配列番号14)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQLFDSPYT(配列番号15)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGVPPLT(配列番号16)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPFT(配列番号17)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASNRAT(配列番号10)(LCDR2)、及びQQAGVFPFT(配列番号18)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASRRAT(配列番号11)(LCDR2)、及びQQAGIPPYT(配列番号19)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0040】
一態様では、本発明は、がんを治療する方法であって、CD19抗体またはその断片を治療を必要とする対象に投与することを含み、CD19抗体またはその断片がSYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGAVPIT(配列番号12)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQVDSLHPFT(配列番号13)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPLT(配列番号14)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQLFDSPYT(配列番号15)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGVPPLT(配列番号16)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPFT(配列番号17)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASNRAT(配列番号10)(LCDR2)、及びQQAGVFPFT(配列番号18)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法は、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASRRAT(配列番号11)(LCDR2)、及びQQAGIPPYT(配列番号19)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むCD19抗体またはその断片を投与することを含む。
【0049】
一態様では、本発明は、配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を提供する。
【0050】
一態様では、本発明は、配列番号20~27のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を提供する。
【0051】
一態様では、本発明は、配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び/または配列番号20~27のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むベクターを提供する。
【0052】
一態様では、本発明は、配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び/または配列番号20~27のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むベクターを含む単離された細胞を提供する。
【0053】
定義
AまたはAn:冠詞「a」及び「an」は、本明細書において、冠詞の文法的な対象の、1または1を超えるもの(すなわち、少なくとも1)を指すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は、1個の要素または2個を超える要素を意味する。
【0054】
親和性:本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、結合部分(例えば、抗原結合部分(例えば、本明細書に記載の可変ドメイン)及び/またはFc受容体結合部分(例えば、本明細書に記載のFcRn結合部分))と標的(例えば、抗原(例えば、CD19)及び/またはFcR(例えば、FcRn))との間の結合相互作用の特徴を指し、それは結合相互作用の強さを示す。いくつかの実施形態では、親和性の尺度は、解離定数(K)として表される。いくつかの実施形態では、結合部分は、標的に対して高い親和性を有する(例えば、約10-7M未満、約10-8M未満、または約10-9M未満のK)。いくつかの実施形態では、結合部分は、標的に対して低い親和性を有する(例えば、約10-7Mよりも高い、約10-6Mよりも高い、約10-5Mより高い、または約10-4Mより高いK)。いくつかの実施形態では、結合部分は、第1のpHで標的に対して高い親和性を有し、第2のpHで標的に対して低い親和性を有し、第1のpHと第2のpHとの間のpHレベルで標的に対して中間の親和性を有する。
【0055】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、1つ以上の目的の値に適用されるとき、「およそ」または「約」という用語は、言及された参照値に類似する値を指す。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特に明記されていない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除いて)、言及された参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下のいずれかの方向(よりより大きいまたはより小さい)の範囲内の値の範囲を指す。
【0056】
抗体:本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域、例えば、免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を提供するアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)を含み得る。別の例では、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域及び2つの軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、Fab、F(ab’)、Fd、Fv、及びdAb断片)、ならびに完全な抗体、例えば、IgA、IgG、IgE、IgD、IgMのタイプ(及びそのサブタイプ)の無傷の免疫グロブリンを包含する。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパまたはラムダのタイプであってもよい。
【0057】
結合部分:本明細書で使用される場合、「結合部分」は、標的、例えば目的の標的(例えば、抗原(例えば、CD19)及び/またはFcR(例えば、FcRn))に特異的に結合することができる任意の分子または分子の一部である。結合部分としては、例えば、抗体、その抗原結合断片、Fc領域またはそのFc断片、抗体模倣体、ペプチド、及びアプタマーが挙げられる。
【0058】
抗原結合断片またはその抗原断片とは、無傷の抗体の一部を指す。抗原結合断片またはその抗体断片とは、抗原(例えば、CD19)に結合する無傷の抗体の一部を指す。抗原結合断片は、無傷の抗体の抗原決定可変領域を含み得る。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、抗体模倣物、scFv、ならびに単鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
相補性決定領域(CDR):可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothia、KabatとChothiaとの両方の蓄積、すなわちAbM、接触及び/または立体配座の定義、または当該技術分野で周知のCDR決定の任意の方法に従って同定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabatらによって最初に定義された超可変領域として識別される場合がある。例えば、Kabat et al.,1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.Cを参照されたい。CDRの位置は、元はChothia及び他によって説明される構造的ループ構造として識別される場合もある。例えば、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989を参照されたい。CDR同定のための他のアプローチとしては、KabatとChothiaとの間の妥協案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在のAccelrys(登録商標))を使用して導出される「AbM定義」、またはMacCallum et al.,J. Mol. Biol.,262:732-745,1996に記載される、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」が挙げられる。本明細書でCDRの「立体配座定義」と呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピーの寄与をする残基として同定することができる。例えば、Makabe et al.,Journal of Biological Chemistry,283:1 156-1166,2008を参照されたい。さらに他のCDR境界定義は、上記のアプローチの1つに厳密に従わない場合があるが、特定の残基もしくは残基の群またはCDR全体でさえ、抗原結合に大きな影響を与えないという予測または実験的発見に照らして短縮または延長される可能性があるが、それでもKabatのCDRの少なくとも一部と重複する。本明細書で使用される場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該技術分野で知られている任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されたCDRを利用することができる。1つを超えるCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、接触、及び/または立体配座の定義に従って定義され得る。
【0060】
定常領域:本明細書で使用される場合、「定常領域」という用語は、抗体の1つ以上の定常領域免疫グロブリンドメインに対応する、またはそれに由来するポリペプチドを指す。定常領域は、以下の免疫グロブリンドメインのうちのいずれかまたはすべてを含むことができる:CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン(IgA、IgD、IgG、IgE、またはIgMに由来する)、及びCH4ドメイン(IgEまたはIgMに由来する)。
【0061】
エピトープ:本明細書で使用される場合、「エピトープ」は当該技術分野の用語であり、抗体が特異的に結合できる抗原の局在領域を指す。エピトープは、例えば、ポリペプチドの連続アミノ酸(線状もしくは連続のエピトープ)であり得、またはエピトープは、例えば、ポリペプチドまたはポリペプチドの2つ以上の非連続領域から一緒になり得る(立体配座、非線状、不連続、もしくは不連続のエピトープ)。特定の実施形態では、抗体が結合するエピトープは、例えば、NMR分光法、X線回折結晶学研究、ELISAアッセイ、質量分析と組み合わせた水素/重水素交換(例えば、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレー質量分析)、アレイベースのオリゴペプチドスキャンアッセイ、及び/または変異導入マッピング(例えば、部位特異的変異導入マッピング)によって決定され得る。X線結晶学の場合、結晶化は、当該技術分野で知られている方法のいずれかを使用して達成することができる(例えば、Giege R et al,(1994) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt 4) :339-350;McPherson A(1990) Eur J Biochem 189:1-23;Chayen NE(1997) Structure 5 :1269-1274;McPherson A(1976) J Biol Chem 251 :6300-6303)。抗体:抗原結晶は、周知のX線回折技術を使用して研究することができ、例えばRefmac及びPhenixなどの当該技術分野で周知のコンピュータソフトウェアを使用して精密化することができる。変異導入マッピング研究は、当業者に知られている任意の方法を使用して達成することができる。例えば、アラニンスキャニング変異導入技術を含む変異導入技術の説明について、Champe M et al,(1995) J Biol Chem 270:1388- 1394 and Cunningham BC & Wells JA(1989) Science 244:1081-1085を参照されたい。
【0062】
Fc領域:本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、2つの「Fcポリペプチド」の二量体を指し、それぞれの「Fcポリペプチド」は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含む。いくつかの実施形態では、「Fc領域」は、1つ以上のジスルフィド結合、化学リンカー、またはペプチドリンカーによって連結された2つのFcポリペプチドを含む。「Fcポリペプチド」は、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインを指し、これらのドメインに対してN末端のフレキシブルなヒンジの一部またはすべてを含み得る。IgGの場合、「Fcポリペプチド」は、免疫グロブリンドメインCガンマ2(Cγ2)及びCガンマ3(Cγ3)、ならびにCガンマ1(Cγ1)とCγ2との間のヒンジの下部を含む。Fcポリペプチドの境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fcポリペプチドは、通常、T223またはC226またはP230からそのカルボキシル末端までの残基を含むと定義され、ナンバリングは、Kabatら(1991,NIH Publication 91-3242,National Technical Information Services,Springfield,VA)のEUインデックスに従う。IgAの場合、Fcポリペプチドは、免疫グロブリンドメインCアルファ2(Cα2)及びCアルファ3(Cα3)、ならびにCアルファ1(Cα1)とCα2との間のヒンジの下部を含む。Fc領域は、合成、組換え、またはIVIGなどの天然源から生成されたものであり得る。
【0063】
:本明細書で使用される場合、「K」は、結合部分/標的複合体を形成するための特定の結合部分と標的の会合速度を指す。
【0064】
:本明細書で使用される場合、「K」は、特定の結合部分/標的複合体の解離速度を指す。
【0065】
:本明細書で使用される場合、「K」は解離定数を指し、これはKのKに対する比(すなわち、K/K)から得られる、モル濃度(M)として表される。K値は、当該技術分野で十分に確立された方法を使用して、例えば、表面プラズモン共鳴を使用するか、Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用して決定することができる。
【0066】
参照:「参照」の実体、システム、量、条件のセットなどは、それらに対して、本明細書に記載されているように、試験実体、システム、量、条件のセットなどを比較するものである。例えば、いくつかの実施形態では、「参照」抗体は、本明細書に記載のように操作されていない対照抗体である。
【0067】
選択的結合:本明細書で使用される場合、「選択的結合」、「選択的に結合する」、「特異的結合」、または「特異的に結合する」とは、結合部分及び標的に関して、結合部分の標的への優先的会合であって、標的ではない実体への会合ではないことを指す。結合部分と非標的との間で、ある程度の非特異的結合が生じ得る。いくつかの実施形態では、結合部分と標的との間の結合が、結合部分と非標的との結合と比較して、2倍を超える、5倍を超える、10倍を超える、または100倍を超える場合、結合部分が標的に選択的に結合する。いくつかの実施形態では、結合親和性が約10-5M未満、約10-6M未満、約10-7M未満、約10-8M未満、または約10-9M未満である場合、結合部分は標的に選択的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原に特異的に結合する分子は、例えばイムノアッセイ、BIACORE(登録商標)、KinExA 3000機器(Sapidyne Instruments,Boise,ID)、または当該技術分野で知られている他のアッセイによって決定されるとき、一般的により低い親和性で、他のペプチドまたはポリペプチドに結合し得る。
【0068】
単鎖可変断片(scFv):本明細書で使用される場合、「単鎖可変断片」または「scFv」という用語は、V::VLヘテロ二量体を形成するために共有結合された、免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖(V)及び軽鎖(V)の可変領域の融合タンパク質を指す。重鎖(V)と軽鎖(V)は、直接結合されるか、またはVのN末端をVのC末端に、もしくはVのC末端をVのN末端に、接続する、ペプチドコードリンカー(例えば、10、15、20、25個のアミノ酸)によって結合される。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシンが豊富で、溶解性のためにセリンまたはトレオニンが豊富である。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結することができる。リンカーの非限定的な例は、Shen et al.,Anal. Chem. 80(6):1910-1917(2008)及びWO2014/087010に開示され、それらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、診断、予後、または治療が望まれる任意の対象を意味する。例えば、対象は哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類(類人猿、サル、オランウータン、またはチンパンジーなど)、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、またはウシであり得る。
【0070】
標的:本明細書で使用される場合、「標的」は、抗体の結合部分またはその抗原結合断片によって特異的に結合される任意の分子である。いくつかの実施形態では、標的は、本明細書に記載の抗原(例えば、CD19)である。いくつかの実施形態では、標的はFcR(例えば、FcRn)である。「第1の標的」及び「第2の標的」という用語は、本明細書では、同じ分子種の2つの分子ではなく、2つの異なる分子種の分子を指すために使用される。例えば、いくつかの実施形態では、第1の標的は血清タンパク質であり、第2の標的はFcRnである。
【0071】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、任意の医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で、処置される対象に治療効果を与える治療用分子(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)の量を指す。治療効果は、客観的(すなわち、いくつかの試験またはマーカーによって測定可能である)または主観的(すなわち、対象が効果の徴候を示すか、または効果を感じる)であり得る。特に、「治療有効量」は、特定の疾患または状態を処置、改善、または予防するのに有効な、あるいは例えば、疾患に関連する症状を改善すること、疾患の発症を予防もしくは遅延させること、及び/または疾患の症状の重症度もしくは頻度をも軽減することによって検出可能な治療効果または予防効果を示すのに有効な、治療用分子または組成物の量を指す。治療有効量は、複数の単位用量から構成され得る投与レジメンで投与され得る。任意の特定の治療用分子について、治療有効量(及び/または有効な投与レジメン内での適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬品との組み合わせに応じて変動し得る。また、任意の特定の対象に対する具体的な治療有効量(及び/または単位用量)は、処置されている障害及び障害の重症度;使用される特定の医薬品の活性;使用される特定の組成物;対象の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、及び食事;使用される特定の治療用分子の投与時間、投与経路、及び/または排出もしくは代謝の速度;処置期間;ならびに医学分野において周知の類似の因子を含む種々の因子に依存し得る。
【0072】
処置:本明細書で使用される場合、用語「処置」(同様に「処置する」または「処置すること」)は、特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、及び/または特徴を、部分的または完全に、軽減し、改善し、緩和し、阻害し、それらの発症を遅延させ、それらの重症度を低減し、及び/またはそれらの発生率を低減する治療用分子(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)の任意の投与を指す。そのような処置は、関連する疾患、障害、及び/もしくは状態の徴候を示さない対象のもの、ならびに/または疾患、障害、及び/もしくは状態の初期徴候のみを示す対象のものであり得る。代替的にまたは追加的に、そのような処置は、関連する疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の確立された徴候を示す対象のものであり得る。
【0073】
図面は説明のみを目的としており、限定を目的としていない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】野生型及びCD19ノックアウトの、CD19を発現するRaji及びNALM-6細胞に結合する抗CD19抗体のフローサイトメトリークロマトグラムの例を示す。
図2】A~Cは、NALM-6細胞上のCD19に結合する抗CD19抗体の例示的な結合曲線を示す。
図3】エピトープビニングによって抗CD19抗体及びその抗原結合断片を特徴付けるために使用される競合アッセイの例示的な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本開示は、部分的に、CD19(例えば、ヒトCD19)への結合を示す操作された抗体及びその抗原結合断片の発見に基づく。CD19(表面抗原分類19、Bリンパ球抗原CD19、Bリンパ球表面抗原B4、B4、CVID3、または分化抗原CD19としても知られる)は、単一の膜貫通ドメイン、細胞質C末端、及び細胞外N末端を有するタンパク質である。CD19は、正常及び腫瘍性のB細胞、濾胞性樹状細胞で特異的に発現する。CD19の表面密度は、B細胞の発生と成熟を通じて、形質細胞の最終分化中に発現が失われるまで、高度に制御されている。さらに、CD19はBリンパ球の表面バイオマーカーであるため、このタイプのB細胞から生じるがん細胞(例えば、B細胞リンパ腫)を認識するための有用な抗原であり得る。
【0076】
抗体
本明細書に記載の抗CD19抗体は、CD19に特異的に結合するように設計されている。特定の実施形態では、本開示の抗CD19抗体及びその断片は、ヒトCD19に結合する。特定の実施形態では、ヒトCD19は、NCBI参照番号:NP_001171569.1(配列番号4)を有するアミノ酸配列またはその断片を含むか、またはそれからなる。
【0077】
配列番号4は以下に提供される:
【0078】
MPPPRLLFFL LFLTPMEVRP EEPLVVKVEE GDNAVLQCLK GTSDGPTQQL TWSRESPLKP FLKLSLGLPG LGIHMRPLAI WLFIFNVSQQ MGGFYLCQPG PPSEKAWQPG WTVNVEGSGE LFRWNVSDLG GLGCGLKNRS SEGPSSPSGK LMSPKLYVWA KDRPEIWEGE PPCLPPRDSL NQSLSQDLTM APGSTLWLSC GVPPDSVSRG PLSWTHVHPK GPKSLLSLEL KDDRPARDMW VMETGLLLPR ATAQDAGKYY CHRGNLTMSF HLEITARPVL WHWLLRTGGW KVSAVTLAYL IFCLCSLVGI LHLQRALVLR RKRKRMTDPT RRFFKVTPPP GSGPQNQYGN VLSLPTPTSG LGRAQRWAAG LGGTAPSYGN PSSDVQADGA LGSRSPPGVG PEEEEGEGYE EPDSEEDSEF YENDSNLGQD QLSQDGSGYE NPEDEPLGPE DEDSFSNAES YENEDEELTQ PVARTMDFLS PHGSAWDPSR EATSLAGSQS YEDMRGILYA APQLRSIRGQ PGPNHEEDAD SYENMDNPDG PDPAWGGGGR MGTWSTR [配列番号4]
【0079】
特定の実施形態では、ヒトCD19は、NCBI参照番号NP_001761.3(配列番号45)を有するアミノ酸配列またはその断片を含むか、またはそれからなる。
【0080】
配列番号45は以下に提供される:
MPPPRLLFFL LFLTPMEVRP EEPLVVKVEE GDNAVLQCLK GTSDGPTQQL TWSRESPLKP FLKLSLGLPG LGIHMRPLAI WLFIFNVSQQ MGGFYLCQPG PPSEKAWQPG WTVNVEGSGE LFRWNVSDLG GLGCGLKNRS SEGPSSPSGK LMSPKLYVWA KDRPEIWEGE PPCLPPRDSL NQSLSQDLTM APGSTLWLSC GVPPDSVSRG PLSWTHVHPK GPKSLLSLEL KDDRPARDMW VMETGLLLPR ATAQDAGKYY CHRGNLTMSF HLEITARPVL WHWLLRTGGW KVSAVTLAYL IFCLCSLVGI LHLQRALVLR RKRKRMTDPT RRFFKVTPPP GSGPQNQYGN VLSLPTPTSG LGRAQRWAAG LGGTAPSYGN PSSDVQADGA LGSRSPPGVG PEEEEGEGYE EPDSEEDSEF YENDSNLGQD QLSQDGSGYE NPEDEPLGPE DEDSFSNAES YENEDEELTQ PVARTMDFLS PHGSAWDPSR EATSLGSQSY EDMRGILYAA PQLRSIRGQP GPNHEEDADS YENMDNPDGP DPAWGGGGRM GTWSTR [配列番号 45]
【0081】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体及びその抗原結合断片は、CD19の細胞外ドメインに結合する。特定の実施形態では、抗CD19抗体及びその抗原結合断片は、ヒトCD19の細胞外ドメインに結合する。特定の実施形態では、ヒトCD19の細胞外ドメインは、配列番号4のアミノ酸20~291を含むか、またはそれらからなる。特定の実施形態では、ヒトCD19の細胞外ドメインは、配列番号45のアミノ酸20~291を含むか、またはそれらからなる。
【0082】
特定の実施形態では、CD19は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列またはそれらの断片を含むかまたはそれからなる。
【0083】
特定の実施形態では、CD19は、配列番号45に記載されるアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列またはそれらの断片を含むかまたはそれからなる。
【0084】
本明細書に記載の抗CD19抗体は、免疫グロブリン、重鎖抗体、軽鎖抗体、LRRベースの抗体、または抗体様特性を有する他のタンパク質足場、ならびに例えば、Fab、Fab’、Fab’2、Fab、Fab、F(ab’)、Fd、Fv、Feb、scFv、SMIP、抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、マキシボディ、タンダブ、DVD、BiTe、TandAbなどを含む当該技術分野で公知のその他の免疫学的結合部分、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。抗体の異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成は、当該技術分野で知られている。
【0085】
抗体は、4つのポリペプチド鎖、例えば、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖の免疫グロブリン分子であり得る。重鎖は、重鎖可変ドメイン及び重鎖定常ドメインを含むことができる。重鎖定常ドメインは、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、及び場合によってはCH4領域を含むことができる。適切な重鎖定常領域は、任意の免疫グロブリン(例えば、IgA、IgG、またはIgE)に由来し得る。いくつかの実施形態では、適切な重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、またはIgG4に由来し得る。特定の実施形態では、適切な重鎖定常領域はIgG1に由来する。軽鎖は、軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含むことができる。軽鎖定常ドメインは、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかを含むことができる。重鎖の重鎖可変ドメイン及び軽鎖の軽鎖可変ドメインは、典型的には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる可変性の領域にさらに分割され得る。そのような重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシル末端まで以下の順序で配置された、3つのCDRと4つのフレームワーク領域を含むことができる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。これらのうちの1つ以上は、本明細書に記載されているように操作することができる。それぞれのドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987 and 1991))、またはChothia & Lesk J. Mol. Biol.196:901-917(1987);Chothia et al.Nature342:878-883(1989).定義に従う。本明細書で使用される場合、CDRは、重鎖(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及び軽鎖(LCDR1、LCDR2、LCDR3)のそれぞれについて言及される。
【0086】
本発明の実施形態は、IMGT、Kabat、及びClothiaナンバリングシステムなどの従来のナンバリングシステムを使用して識別される、本明細書に記載のvH及びvLドメインに見出されるCDRを含む抗体を含む。そのようなナンバリングシステムは、当該技術分野において周知である。
【0087】
重鎖可変領域
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体またはその断片は、共通の重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、以下の重鎖可変領域(vH)相補性決定領域(CDR)配列を含む:
vH CDR1:SYGMH(配列番号1)
vH CDR2:LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)
vH CDR3:PVEGLLRGFDY(配列番号3)
【0088】
特定の実施形態では、CDRは、Kabatナンバリングシステムに従って識別される。
【0089】
いくつかの実施形態では、可変重鎖は、QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVALIWYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPVEGLLRGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号5)のアミノ酸配列を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号5に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する重鎖アミノ酸配列を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号5に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有し、一方で本明細書に記載のvH CDR1、vH CDR2、及び/またはvH CDR3の配列のうちの1つ以上をさらに含む重鎖アミノ酸配列を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、操作された抗体は、配列番号5と同一の重鎖アミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)同一または相同であるアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%同一または相同であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号5と比べて、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2個以下のアミノ酸置換を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗CD19可変重鎖は、以下の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0094】
CAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCGTGGTCCAGCCTGGGAGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCGTCTGGATTCACCTTCAGTAGCTATGGCATGCACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGCAAGGGGCTGGAGTGGGTGGCACTGATATGGTATGATGGAAGTAATAAATACTATGCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCGGTGTACTACTGCGCCAAGCCAGTGGAAGGACTATTAAGAGGATTCGATTACTGGGGACAGGGTACATTGGTCACCGTCTCCTCA(配列番号6)
【0095】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号6に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する重鎖核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された抗体は、配列番号6と同一の重鎖核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号5と比べて30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2個以下のアミノ酸置換を含む抗体をコードする核酸配列を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号6に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有し、一方で本明細書に記載のvH CDR1、vH CDR2、及び/またはvH CDR3の配列のうちの1つ以上をさらに含む重鎖アミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0097】
当業者によって理解されるように、任意のそのような重鎖CDR配列は、例えば分子生物学の技術によって、本明細書で開示されるかそうでなければ当該技術分野で既知の任意の形式の抗体またはその抗原結合断片に存在し得るような、本明細書で開示されるかそうでなければ当該技術分野で既知の任意のフレームワーク領域、CDR、もしくは定常ドメイン、またはその一部を含む、本明細書に提供されるかそうでなければ当該技術分野で既知の任意の他の抗体配列またはドメインと容易に組み合わせることができる。
【0098】
本明細書に記載されるさまざまな操作された抗体において、重鎖定常ドメインは、任意のクラス(またはサブクラス)であり得る。本明細書に記載のさまざまな操作された抗体において、重鎖定常ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2などのサブクラスを含む、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEのうちの1つ以上のいずれかのアミノ酸配列を含み得る。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の操作された抗体の定常ドメインは、免疫グロブリン重鎖定常ドメインの2つ以上のクラス(またはサブクラス)の混合物を含み得る。例えば、抗CD19抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEクラスの定常ドメインから選択される免疫グロブリン定常ドメインの配列を有する定常ドメインの第1の部分と、第1のものとは異なる、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEクラスの定常ドメインから選択される免疫グロブリン定常ドメインの配列を有する定常ドメインの第2の部分とを含むことができる。場合によっては、本明細書に記載の抗CD19抗体の定常ドメインは、定常ドメインの特定のクラスの2つ以上のサブクラスの混合物、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラス定常ドメインから選択される免疫グロブリン定常ドメインの配列を有する定常ドメインの第1の部分と、第1とは異なる、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラス定常ドメインから選択される免疫グロブリン定常ドメインの配列を有する定常ドメインの第2部分とを含むことができる。いくつかの特定の実施形態では、定常ドメインは、IgG2定常ドメインの全部または一部と、IgG4定常ドメインの全部または一部と、を含む。
【0099】
場合によっては、抗CD19抗体は、1つ以上のFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcγRIV、またはFcRn受容体)に対する(参照定常領域と比べて)改変された結合を示す抗体定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む。いくつかの実施形態では、定常領域、Fc領域、またはFc断片は、参照の定常領域、Fc領域、またはFc断片と比べて、標的(例えば、FcRn受容体)に変化した様式で(例えば、pH感受性様式で(例えば、より多いもしくはより少ないpH感受性様式で)及び/または減少もしくは増加した結合で、結合するように操作される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、1つ以上のFcγ受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、FcγRIIIB、またはFcγRIV)に対する(参照定常領域と比べて)減少した結合を示す抗体定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、血清pHで、及び/または細胞内pHで(参照定常領域と比較して)FcRn受容体への増加した結合を示す抗体定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む。
【0100】
例えば、抗CD19抗体は、アミノ酸残基251~256、285~290、308~314、385~389、及び428~436(Kabatナンバリング(Kabat et al.,(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH))のうちの1つ以上の、アミノ酸付加、欠失、または置換を含むように操作されたIgG抗体の定常領域、Fc領域、またはFc断片を含み得る。理論に拘束されることは望まないが、これらの定常領域、Fc領域、またはFc断片アミノ酸のうちの1つ以上が、Fc受容体、例えばFcRnとの相互作用を媒介すると考えられている。いくつかの実施形態では、これらの開示されたアミノ酸の1つ以上が、ヒスチジン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンで置換されている。いくつかの実施形態では、非ヒスチジン残基がヒスチジン残基で置換されている。いくつかの実施形態では、ヒスチジン残基が非ヒスチジン残基で置換されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、308位、309位、311位、312位、及び314位のうちの1つ以上にアミノ酸改変を有する、より具体的には、308位、309位、311位、312位、及び314位のうちの1つ以上の、それぞれトレオニン、プロリン、セリン、アスパラギン酸、及びロイシンへの置換を有する、IgG抗体の定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む。いくつかの実施形態では、308位、309位、及び311位のうちの1つ以上の残基が、それぞれイソロイシン、プロリン、及びグルタミン酸で置換されている。さらに他の実施形態では、308位、309位、311位、312位、及び314位のうちの1つ以上の残基が、それぞれトレオニン、プロリン、セリン、アスパラギン酸、及びロイシンで置換されている。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、位置251、252、254、255、及び256のうちの1つ以上にアミノ酸改変を有する、より具体的には、これらの位置のうちの1つ以上に置換を有する、IgG抗体の定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む。いくつかの実施形態では、残基251はロイシンもしくはアルギニンで置換され、残基252はロイシン、チロシン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、もしくはトレオニンで置換され、残基254はトレオニンもしくはセリンで置換され、残基255はロイシン、グリシン、イソロイシン、もしくはアルギニンで置換され、及び/または残基256は、セリン、フェニルアラニン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、アスパラギン、もしくはトレオニンで置換されている。いくつかの実施形態では、残基251はロイシンで置換され、残基252はチロシンもしくはロイシンで置換され、残基254はトレオニンもしくはセリンで置換され、及び/または残基255はアルギニンで置換されている。さらに他の実施形態では、残基252はフェニルアラニンで置換され、及び/または残基256はアスパラギン酸で置換されている。いくつかの実施形態では、残基251はロイシンで置換され、残基252はチロシンで置換され、残基254はトレオニンもしくはセリンで置換され、及び/または残基255はアルギニンで置換されている。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、位置428、433、434、435、及び436のうちの1つ以上にアミノ酸改変を有する、より具体的には、これらの位置のうちの1つ以上に置換を有する、IgG抗体の定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む。いくつかの実施形態では、残基428は、メチオニン、トレオニン、ロイシン、フェニルアラニン、もしくはセリンで置換され、残基433は、リジン、アルギニン、セリン、イソロイシン、プロリン、グルタミン、もしくはヒスチジンで置換され、残基434は、フェニルアラニン、チロシン、もしくはヒスチジンで置換され、残基435はチロシンで置換され、及び/または残基436は、ヒスチジン、アスパラギン、アルギニン、トレオニン、リジン、メチオニン、もしくはトレオニンで置換されている。いくつかの実施形態では、433位、434位、435位、及び436位のうちの1つ以上の残基は、それぞれリジン、フェニルアラニン、チロシン、及びヒスチジンで置換されている。いくつかの実施形態では、残基428はメチオニンで置換され、及び/または残基434はチロシンで置換されている。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、385位、386位、387位、及び389位のうちの1つ以上にアミノ酸改変を有する、より具体的には、これらの位置のうちの1つ以上に置換を有する、IgG抗体の定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む。いくつかの実施形態では、残基385は、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、トレオニン、ヒスチジン、リジン、もしくはアラニンで置換され、残基386は、トレオニン、プロリン、アスパラギン酸、セリン、リジン、アルギニン、イソロイシン、もしくはメチオニンで置換され、残基387は、アルギニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、アラニン、もしくはプロリンで置換され、及び/または残基389はプロリンもしくはセリンで置換されている。いくつかの実施形態では、385位、386位、387位、及び389位のうちの1つ以上の残基は、アルギニン、トレオニン、アルギニン、及びプロリンでそれぞれ置換されている。いくつかの実施形態では、385位、386位、及び389位のうちの1つ以上の残基は、それぞれアスパラギン酸、プロリン、及びセリンで置換されている。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、以下の置換のうちの1つ以上を有するIgG抗体の定常領域、Fc領域、またはFc断片を含む:残基251でのロイシン、残基252でのチロシンもしくはロイシン、残基254でのトレオニンもしくはセリン、残基255でのアルギニン、残基308でのトレオニン、残基309でのプロリン、残基311でのセリン、残基312でのアスパラギン酸、残基314でのロイシン、残基385でのアルギニン、残基386でのトレオニン、残基387でのアルギニン、残基389でのプロリン、残基428でのメチオニン、残基433でのリジン、残基434でのフェニルアラニンもしくはチロシン、位置435でのチロシン、及び/または436位でのチロシン。定常領域、Fc領域、またはFc断片に含めることができる追加のアミノ酸置換としては、例えば、米国特許第6,277,375号;同第8,012,476号;及び同第8,163,881号に記載されるものが挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、例えば、PCT公開番号WO94/28027及びWO98/47531;ならびにXu et al.(2000) Cell Immunol 200:16-26に記載されたAla-Ala変異を含む重鎖定常ドメインを含む。したがって、いくつかの実施形態では、Ala-Ala変異を含む重鎖定常領域内に1つ以上の変異を有する抗CD19抗体は、エフェクター機能が低下しているか、またはエフェクター機能を有していない。これらの実施形態によれば、本明細書に記載の抗CD19抗体の定常領域は、234位でアラニンへの置換、及び/または235位(EUナンバリング)でのアラニンへの変異を含み得る。
【0107】
当業者によって理解されるように、任意のそのような重鎖定常ドメイン配列は、例えば分子生物学の技術によって、本明細書で開示されるかそうでなければ当該技術分野で既知の任意の形式の抗体またはその抗原結合断片に存在し得るような、本明細書で開示されるかそうでなければ当該技術分野で既知の任意のフレームワーク領域、CDR、もしくは定常ドメイン、またはその一部を含む、本明細書に提供されるかそうでなければ当該技術分野で既知の任意の他の抗体配列またはドメインと容易に組み合わせることができる。
【0108】
軽鎖可変領域
本発明はさらに、軽鎖相補性決定領域LCDR1~3を含む、1つ以上の軽鎖可変領域にさまざまな特定の配列を含むCD19抗体またはその断片を提供する。さまざまな実施形態では、指定された軽鎖可変領域を有する分子は、上で議論されたように重鎖配列と共に提供される。特定の実施形態では、CDRは、Kabatナンバリングシステムに従って識別される。
【0109】
したがって、一態様では、本発明は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGAVPIT(配列番号12)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含むCD19抗体またはその断片を提供する。
【0110】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQVDSLHPFT(配列番号13)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPLT(配列番号14)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQLFDSPYT(配列番号15)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVRSSYLA(配列番号8)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGVPPLT(配列番号16)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASSRAT(配列番号9)(LCDR2)、及びQQAGGVPPFT(配列番号17)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASNRAT(配列番号10)(LCDR2)、及びQQAGVFPFT(配列番号18)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列と、RASQSVSSSYLA(配列番号7)(LCDR1)、GASRRAT(配列番号11)(LCDR2)、及びQQAGIPPYT(配列番号19)(LCDR3)の相補性決定領域(CDR)配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、CD19抗体またはその断片は、配列番号20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)領域と、配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域と、を含む。
【0118】
一態様では、本発明は、配列番号20~27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)領域と、配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域と、を含むCD19抗体またはその断片を提供する。いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号20~27と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、SYGMH(配列番号1)(HCDR1)、LIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号2)(HCDR2)、及びPVEGLLRGFDY(配列番号3)(HCDR3)の重鎖可変相補性決定領域(CDR)配列を含み、及び/または表1に示される軽鎖可変領域(vL)相補性決定領域(CDR)配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、表1に示される軽鎖可変領域(vL)相補性決定領域(CDR)配列を含む。
【0120】
【表1】
【0121】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、表2に示されるアミノ酸配列を有するか、または表2に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域(vL)を含む。
【0122】
【表2-1】
【0123】
【表2-2】
【0124】
【表2-3】
【0125】
【表2-4】
【0126】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号20~27に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号20~27に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含み、一方で、本明細書に記載のvL CDR1、vL CDR2、及び/またはvL CDR3配列のうちの1つ以上をも含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、配列番号20~27と同一の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号20~27とくらべて、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2個以下のアミノ酸置換を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸配列は、配列番号20~27に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含み、一方で、本明細書に記載のvL CDR1、vL CDR2、及び/またはvL CDR3配列のうちの1つ以上をも含む抗CD19抗体をコードする。
【0130】
当業者によって理解されるように、任意のそのような軽鎖CDR配列は、例えば、分子生物学の技術によって、本明細書で開示されるか、そうでなければ当該技術分野で知られる任意の形式の抗体またはその抗原結合断片に存在し得るような、本明細書で開示されるか、そうでなければ当該技術分野で既知の任意のフレームワーク領域、CDR、もしくは定常ドメイン、またはその一部を含む、本明細書に提供されるか、そうでなければ当該技術分野で既知の任意の他の抗体配列またはドメインと容易に組み合わせることができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、任意の軽鎖定常ドメイン配列、例えば当業者に知られている軽鎖の定常配列を含む軽鎖を含む。当業者が認識するように、軽鎖定常ドメインは、カッパ軽鎖定常ドメインまたはラムダ軽鎖定常ドメインであり得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される軽鎖の定常ドメインは、カッパ軽鎖定常ドメインである。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、軽鎖定常ドメインを含む。
【0132】
例示的な抗体
操作された抗体は、本明細書に記載のさまざまな重鎖及び軽鎖を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、2つの重鎖及び軽鎖を含み得る。さまざまな実施形態では、本開示は、少なくとも1つの本明細書に開示される重鎖及び/もしくは軽鎖、少なくとも1つの本明細書に開示される重鎖フレームワークドメイン及び/もしくは軽鎖フレームワークドメイン、少なくとも1つの本明細書に開示される重鎖CDRドメイン及び/もしくは軽鎖CDRドメイン、ならびに/または本明細書に開示される任意の重鎖定常ドメイン及び/もしくは軽鎖定常ドメインを含む抗体を包含する。
【0133】
さまざまな実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、ホモ二量体モノクローナル抗体である。さまざまな実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、ヘテロ二量体モノクローナル抗体である。さまざまな実施形態では、抗CD19抗体は、例えば、典型的な抗体、またはダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、マキシボディ、タンダブ、DVD、BiTe、scFv、TandAb、scFv、Fab、Fab、Fab、F(ab’)など、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0134】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の1つ以上の可変ドメインまたは操作された抗体、またはその一部と、1つ以上の追加のポリペプチドと、を含む融合タンパク質を提供する。
【0135】
例示的な単鎖可変断片
いくつかの実施形態では、本開示は、単鎖可変断片を提供する。いくつかの実施形態では、scFvはヒトscFvである。「単鎖可変断片」または「scFv」という用語は、V::VLヘテロ二量体を形成するために共有結合された、免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖(V)及び軽鎖(V)の可変領域の融合タンパク質を指す。重鎖(V)と軽鎖(V)は、直接結合されるか、またはVのN末端をVのC末端に、もしくはVのC末端をVのN末端に、接続する、ペプチドコードリンカー(例えば、10、15、20、25個のアミノ酸)によって結合される。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシンが豊富で、溶解性のためにセリンまたはトレオニンが豊富である。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結することができる。リンカーの非限定的な例は、Shen et al.,Anal. Chem. 80(6):1910-1917(2008)及びWO2014/087010に開示され、それらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、リンカーはG4Sリンカー(配列番号46)である。
【0136】
代替的に、または追加的に、scFvは、(例えば、Fabライブラリーから得られた抗体からではなく)Fabに由来してもよい。特定の実施形態では、抗CD19抗体またはその断片はFabである。特定の実施形態では、Fabは架橋されている。特定の実施形態では、抗CD19抗体またはその断片はF(ab)である。前述の分子のいずれも、異種配列との融合タンパク質に含まれて、抗CD19抗原抗体またはその抗原結合断片を形成することができる。
【0137】
特定の実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、少なくとも約1×10-6M、少なくとも約1×10-7M、少なくとも約1×10-8M、少なくとも約1×10-9M、または少なくとも約1×10-10Mの解離定数(Kd)でCD19(例えば、ヒトCD19)に結合する。特定の実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、少なくとも約2×10-8Mの解離定数(Kd)でCD19(例えば、ヒトCD19)に結合する。特定の実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、少なくとも約2×10-8M~約8×10-9Mの解離定数(Kd)でCD19(例えば、ヒトCD19)に結合する。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、約1nM~50nM、約5nM~30nM、約5nM~25nM、または約8nM~20nMの解離定数(Kd)でCD19(例えば、ヒトCD19)に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、少なくとも約50nM、少なくとも約40nM、少なくとも約35nM、少なくとも約30nM、少なくとも約25nM、少なくとも約20nM、少なくとも約19nM、少なくとも約18nM、少なくとも約17nM、少なくとも約16nM、少なくとも約15nM、少なくとも約14nM、少なくとも約13nM、少なくとも約12nM、少なくとも約11nM、少なくとも約10nM、少なくとも約9nM、少なくとも約8nM、少なくとも約7nM、少なくとも約6nM、少なくとも約5nMの解離定数(Kd)でCD19(例えば、ヒトCD19)に結合する。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号1~4を含む可変重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、表1に提供される1つ以上のCDR配列を含む可変軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、表2に提供される1つ以上の軽鎖配列を含む可変軽鎖を含む.
【0140】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、以下に提供される配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるリンカーを含む:
GGGGSGGGGSGGGGS [配列番号36]
【0141】
いくつかの実施形態では、リンカーは、以下に提供される配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる:
GGGGSGGGGSGGGSGGGGS[配列番号37]。
【0142】
いくつかの実施形態では、リンカーは、以下に提供される配列番号38に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる:
GGGGSGGGGSGGGGSGGGSGGGGS[配列番号38]。
【0143】
いくつかの実施形態では、リンカーは、以下に提供される配列番号39に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる:
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSGGGGS[配列番号39]。
【0144】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体またはその断片は、保存的配列改変を含む(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体またはその断片)。いくつかの実施形態では、保存的配列改変は、アミノ酸配列を含む本開示の抗CD19抗体またはその断片(例えば、抗体またはその断片)の結合特性に有意な影響を及ぼさないか、またはそれらの結合特性を変更しないアミノ酸改変である。保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加、及び欠失が含まれ得る。改変は、部位特異的変異導入及びPCR媒介変異導入などの当該技術分野で知られている標準的な技術によって、抗CD19抗体またはその断片に導入することができる。アミノ酸は、それらの電荷や極性などの物理化学的性質に応じてグループに分類できる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同じグループ内のアミノ酸で置き換えられているものである。例えば、アミノ酸は電荷によって分類できる:正電荷のアミノ酸にはリジン、アルギニン、ヒスチジンが含まれ、負電荷のアミノ酸にはアスパラギン酸、グルタミン酸が含まれ、中電荷のアミノ酸にはアラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが含まれる。さらに、アミノ酸は極性によって分類できる:極性アミノ酸には、アルギニン(塩基性極性)、アスパラギン、アスパラギン酸(酸性極性)、グルタミン酸(酸性極性)、グルタミン、ヒスチジン(塩基性極性)、リジン(塩基性極性)セリン、トレオニン、及びチロシンが含まれ;非極性アミノ酸には、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、及びバリンが含まれる。したがって、CDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基を同じグループからの他のアミノ酸残基で置換することができ、改変された抗体を保持された機能について試験することができる。特定の実施形態では、特定の配列またはCDR領域内の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、5つ以下の残基が改変される。
【0145】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvの軽鎖及び/または重鎖はシグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、アミノ酸配列MDMRVPAQLLGLLLLWLPDTRC(配列番号40)、またはMEFGLSWVFLVALLRGVQC(配列番号41)に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列の配列を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号42に示されるアミノ酸配列を含む。EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQAGAVPITFGGGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVALIWYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPVEGLLRGFDYWGQGTLVTVSS [配列番号42]
【0147】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号42に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列の配列を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含む。
【0149】
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQLFDSPYTFGGGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVALIWYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPVEGLLRGFDYWGQGTLVTVSS [配列番号 43]
【0150】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号43に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列の配列を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。
【0152】
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVALIWYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPVEGLLRGFDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASRRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQAGIPPYTFGGGTKVEIK [配列番号 44]
【0153】
いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号44に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列の配列を含む。
【0154】
ヌクレオチド配列
本開示は、1つ以上の重鎖、重鎖可変ドメイン、重鎖フレームワーク領域、重鎖CDR、重鎖定常ドメイン、軽鎖、軽鎖可変ドメイン、軽鎖フレームワーク領域、軽鎖CDR、軽鎖定常ドメイン、もしくは他の免疫グロブリン様配列、または本明細書に開示される抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。さまざまな実施形態では、そのようなヌクレオチド配列はベクター内に存在し得る。さまざまな実施形態では、そのようなヌクレオチドは、細胞、例えば、治療を必要とする対象の細胞、または抗体産生のための細胞、例えば、抗体産生のための哺乳動物細胞のゲノムに存在し得る。
【0155】
操作された抗体と融合タンパク質
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)本明細書に記載の1つ以上の抗原結合領域(例えば、免疫グロブリンの抗原結合領域、重鎖抗体、軽鎖抗体、LRRベースの抗体、または抗体様特性を有する他のタンパク質足場、ならびに例えば、Fab、Fab’、Fab’2、Fab、Fab、F(ab’)、Fd、Fv、Feb、scFv、SMIP、抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、マキシボディ、タンダブ、DVD、BiTe、TandAbなどを含む当該技術分野で既知のその他の抗原結合部分)、例えば、本明細書に記載の1つ以上の可変ドメイン、またはその一部(例えば、本明細書に記載の1つ以上のCDR)と、(ii)1つ以上の追加のポリペプチドと、を含む、融合タンパク質を提供する。例えば、アルブミンは豊富な血清タンパク質であり、FcRnとの相互作用によって媒介されるpH依存性のリサイクルによって分解から保護されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の可変ドメインまたは操作された抗体、またはその一部(例えば、本明細書に記載の1つ以上のCDR)は、アルブミン、その一部(FcRnに結合するアルブミンの一部など)、及び/または改善された親和性でFcRnに結合するアルブミンの操作されたバリアントに融合されている。他の例では、本明細書に記載の1つ以上の可変ドメインまたは操作された抗体、またはその一部(例えば、本明細書に記載の1つ以上のCDR)は、アルブミンに結合して融合タンパク質-アルブミン複合体を形成するポリペプチドに融合され、結果としてFcRnに結合することができる。いくつかの実施形態では、アルブミンに結合するポリペプチドは、単鎖可変断片(scFv)である。アルブミンまたはその一部は、FcRnへの結合を改変できる1つ以上のアミノ酸の変異を含むことができる。そのような変異は当該技術分野で知られている(例えば、Andersen et al.,Nature Communications 3:610 doi:10.1038/nocmms1607(2012)を参照されたい)。他の例では、本明細書に記載の1つ以上の可変ドメインまたは操作された抗体、またはその一部(例えば、本明細書に記載の1つ以上のCDR)がトランスフェリンに融合されている。トランスフェリンは、トランスフェリン受容体に結合することによってリサイクルされる(例えば、Widera et al.,Adv. Drug Deliv. Rev. 55:1439-66(2003)を参照されたい)。
【0156】
抗CD19抗体とCD19のpH依存性結合及び/またはFc受容体
本明細書に記載の操作された抗体は、CD19に対する親和性においてpH依存性または増強されたpH依存性(例えば、本明細書に記載の1つ以上の可変ドメインによって媒介される)、及び/またはFcRnに対する改変された親和性(例えば、増加、例えば、pH依存性)(例えば、本明細書に記載の1つ以上の定常ドメインによって媒介される)を示すように操作することができる。例えば、いくつかの実施形態では、CD19に結合することができる抗体、またはCD19に結合することができる可変ドメインは、区画(例えば、エンドソーム)pH(例えば、酸性pHまたはpH6.0以下のpH)においてよりも、血清pH(例えば、中性pHまたは7.4より高いpH)において、より高い親和性でCD19に結合する。CD19がpH依存性CD19結合を有する抗体によって結合されるさまざまな実施形態では、血清pHから区画pHへの(例えば、血清からエンドソームへの)pHの遷移は、コンパートメントpHでの、及び/または特定のコンパートメント、例えばエンドソーム内でのCD19と抗体との分離(すなわち、「解離」)を容易にする。さまざまな実施形態では、そのようなpH依存性結合は、抗体のリサイクル及び/またはCD19分解を媒介することができる。特定の例において、血清pHから区画pH(例えば、血清からエンドソーム)への遷移は、区画pHでの、及び/または特定の区画、例えばエンドソーム内でのCD19と抗体との分離(すなわち、「解離」)を促進し、抗体がFcRnによってリサイクルされ、抗原がリソソーム内で分解されるようにする。そのようないくつかの例では、CD19結合のpH依存性は、少なくともリサイクル時に抗体が血清に戻り、標的循環CD19に自由に結合するという点で、抗体の「処理能力」を改善する。場合によっては、pH依存性CD19結合を示す抗体のリサイクルは、抗体が最終的に分解するか分解されるまで続くことができ、その時までに、単一の抗体分子が、1つだけでなく、複数のCD19分子に結合し、その不活化を媒介することができる。
【0157】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、FcRnなどのFc受容体に対する対照と比べて増加した親和性を示す定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、そのような対照と比べて増加した親和性は、血清のpH値(例えば、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、またはそれ以上を超えるpH)においてである。いくつかの実施形態では、そのような対照と比べて増加した親和性は、区画pH(例えば、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6、6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、またはそれ以下未満のpH)においてである。特定の実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、FcRnなどのFc受容体に対する親和性において対照と比べてpH依存性(または増強されたpH依存性)を示す定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)を含む。新生児Fc受容体(FcRn)はMHCクラスI様分子であり、異化作用からIgG及びアルブミンを保護するように機能し、上皮細胞を横切るIgGの輸送を媒介し、プロフェッショナルな抗原提示細胞による抗原提示に関与する。IgG抗体サブタイプは、主に細胞からIgGをリサイクルするFcRnによるエンドソームからの抗体のスカベンジングにより、長い血清半減期を示す。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体の血清半減期が増加する。例えば、抗CD19抗体のFcRnへの結合は、抗体の血清半減期を約4日~約45日まで、例えば、約5日~約30日まで、約10日~約30日まで、または約20日~約30日まで増加させる。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、約5日、約10日、約15日、約20日、約25日、約30日、約35日、約40日、約45日、約50日、またはそれ以上の血清半減期を有する。
【0159】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、CD19に対する親和性のpH依存性変化を示す。親和性は、抗体と抗原のK(平衡解離定数)として測定でき、Kと親和性は反比例の関係にある。さまざまな実施形態では、血清pH(例えば、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、もしくはそれ以上より大きいpH)または血清条件下での、本明細書に記載の抗CD19抗体のCD19に対するKは、約10-4、10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、または10-15M未満である。特定の例において、血清pHでの、本明細書に記載の抗体のCD19に対するKは、0.001~1nM、例えば、0.001nM、0.005nM、0.01nM、0.05nM、0.1nM、0.5nM、または1nMである。いくつかの実施形態では、区画pH(例えば、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6、6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、もしくはそれ以下未満のpH)または区画条件下での、CD19に対するKは、血清pHまたは血清条件下でのCD19に対する同じ抗体のKよりも、例えば少なくとも2倍、例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2,000倍、3,000倍、4,000倍、5,000倍、6,000倍、7,000倍、8,000倍、9,000倍、10,000倍、またはそれ以上高い(及び/あるいは区画pHまたは区画条件下での、CD19に対する抗体の親和性は、血清pHまたは血清条件下での親和性と比べて減少し得る)。いくつかの実施形態では、区画pH(例えば、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6、6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、もしくはそれ以下未満のpH)または区画条件下でのCD19に対するKは、例えば、10-15、10-14、10-13、10-12、10-11、10-10、10-9、10-8、10-7、10-6、10-5、10-4、または10-3Mより大きくあり得る。特定の例において、区画pHまたは区画条件下での本明細書に記載の抗CD19抗体のCD19に対するKは、例えば1nM以上、例えば、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、100nM、200nM、300nM、400nM、500nM、600nM、700nM、800nM、900nM、1mM、またはそれ以上であり得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、対象に、例えば対象の血清中に投与された場合、参照抗体(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)よりも長い半減期を示す。さまざまな実施形態では、血清中の参照抗体(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)の半減期は、例えば、250~300時間であり得る。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体の血清中半減期は、例えば、少なくとも250時間、例えば、少なくとも260、270、280、290、または300時間であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体の血清中半減期は、少なくとも300時間、例えば、少なくとも350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1,000時間であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体の血清中半減期は、少なくとも1,000時間、例えば、少なくとも1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、または15,000時間、またはそれ以上であり得る。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体の血清中半減期は、少なくとも12日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはそれ以上であり得る。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体の血清中半減期は、参照抗体(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)と比較して、少なくとも、例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、またはそれ以上増加し得る。
【0161】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、血漿中の半減期の増加、血漿中の平均保持時間の増加、及び/またはCD19クリアランスのレベルの上昇を示す(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)。これらのパラメーターは、当業者に知られている方法によって決定することができる(例えば、Nestorov et al.,J. Clin. Pharmacol. 48:406-417(2008);Leveque et al.,Anticancer Research 25:2327-2344(2005);Igawa et al.,PLoS One 8:e63236. doi:10.1371/journal.pone.0063236(2013)に記載されるように)。例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体(例えば、そのような抗CD19抗体の単回用量)は、参照抗体と比べて、血漿中のCD19のレベルを少なくとも10倍、50倍、100倍、250倍、500、750倍、1000倍、1500倍、またはそれ以上低下させる。
【0162】
操作された抗体及びその断片
本開示によるCD19抗体及びその断片は、pH依存的に1つ以上の目的の標的に特異的に結合する1つ以上の結合部分を含むように操作される。CD19抗体及びその断片は、核酸(例えば、RNA及びDNA)、タンパク質(例えば、抗体)、及びそれらの組み合わせを包含する。pH依存性結合部分は、例えば、核酸(例えば、RNA及びDNA)、ならびにアプタマー、ポリペプチド(例えば、抗体またはその断片、アルブミン、受容体、リガンド、シグナルペプチド、アビジン、及びプロテインA)、多糖類、ビオチン、疎水基、親水基、薬物、及び受容体に結合するあらゆる有機分子であり得るか、またはそれらを含み得る。
【0163】
結合部分としての抗体またはその断片
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片は、抗CD19抗体である。場合によっては、本明細書に記載の1つ以上の結合部分は、抗体、その抗原結合断片、及び/またはそのFc領域(またはFc断片)であるか、またはそれらを含む。IgG抗体の基本構造は、ジスルフィド結合によって一緒に連結された、2つの同一の軽ポリペプチド鎖と2つの同一の重ポリペプチド鎖とからなる。それぞれの鎖のアミノ末端に位置する最初のドメインは、アミノ酸配列が可変であり、個別の抗体に見られる抗体結合特異性を提供する。これらは、可変重(VH)領域及び可変軽(VL)領域として知られている。それぞれの鎖の他のドメインは、アミノ酸配列が比較的不変であり、定常重(CH)領域及び定常軽(CL)領域として知られている。IgG抗体の場合、軽鎖には1つの可変領域(VL)と1つの定常領域(CL)が含まれる。IgG重鎖は、可変領域(VH)、第1の定常領域(CH1)、ヒンジ領域、第2の定常領域(CH2)、及び第3の定常領域(CH3)を含む。IgE及びIgM抗体では、重鎖に追加の定常領域(CH4)が含まれる。
【0164】
抗体としては、例えば、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、操作された抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2つの重鎖及び2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、細胞内抗体、抗体融合体(本明細書では「抗体コンジュゲート」と呼ばれることもある)、ヘテロコンジュゲート抗体、抗体-薬物コンジュゲート、単一ドメイン抗体、一価抗体、単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディ、Fab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗抗Id抗体を含む)、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(「抗体模倣体」と呼ばれることもある)、及び上記のいずれかの抗原結合断片が挙げられ得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。
【0165】
本明細書で使用される場合、「Fc断片」という用語は、Fc機能及び/またはFc受容体への結合など、本明細書に記載の活性を保持するFc領域の1つ以上の断片を指す。本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含される結合断片の例としては、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv断片、dAb断片(Ward et al.,(1989) Nature 341:544-546)、及び単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して得ることができ、断片は、無傷の抗体と同一の方法で有用性についてスクリーニングできる。
【0166】
いくつかの態様において、本発明は、ヒト重鎖及び/または軽定常領域を含み、ヒト重定常領域が、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4のFc領域を含むアイソタイプバリアントを含む、ヒトCD19に結合する抗体またはその断片を提供する。
【0167】
さらなる態様において、本発明は、ヒトCD19に結合するヒト化抗体またはその断片を提供し、抗体は、親抗体のアミノ酸324位のセリンをアスパラギンで置換するアミノ酸置換S324Nを含むバリアントヒトIgG Fc領域を含み、一方、バリアントヒトIgG Fc領域を含む抗体は、親抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を示す。
【0168】
抗体または断片は、抗体を合成するための当該技術分野で公知の任意の方法によって生成することができる(例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed. 1988);Brinkman et al.,1995,J. Immunol. Methods 182:41-50;WO92/22324;WO98/46645を参照されたい)。キメラ抗体は、例えば、Morrison,1985,Science 229:1202に記載されている方法を使用して産生することができ、ヒト化抗体は、例えば、米国特許第6,180,370号に記載される方法による。
【0169】
本明細書に記載のさらなる組成物及び方法は、二重特異性抗体及び多価抗体であり、例えば、Segal et al.,J. Immunol. Methods 248:1-6(2001);及びTutt et al.,J. Immunol. 147:60(1991)に記載される。
【0170】
操作された抗原結合領域
いくつかの実施形態では、結合部分は、抗体(例えば、IgG抗体、例えば、IgG1、IgG2、もしくはIgG3抗体)、または抗原結合断片であるか、またはそれを含み、参照抗体または抗原結合断片と比べて改変された方法で(例えば、pH感受性様式で、例えば、より多いもしくはより少ないpH感受性様式で)標的(すなわち抗原)に結合するように操作される。例えば、抗体は、1つ以上の抗体CDR内及び/または抗体のCDR構造に関与する位置のアミノ酸を改変することによって(例えば、付加、削除、または置換することによって)操作することができる。改変され得る抗体の例示的な非限定的部位としては、以下が挙げられる(アミノ酸位置は、Kabatナンバリング(Kabat et al.,(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH)に基づいて示される)。
【0171】
重鎖:H27、H31、H32、H33、H35、H50、H58、H59、H61、H62、H63、H64、H65、H99、H100b、及びH102
【0172】
軽鎖:L24、L27、L28、L32、L53、L54、L56、L90、L92、及びL94。
【0173】
いくつかの実施形態では、これらの開示されたアミノ酸の1つ以上が、ヒスチジン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンで置換され得る。理論に縛られることは望まないが、これらの位置の1つ以上のアミノ酸をヒスチジンで置換すると、pH依存性抗原結合特性を有する抗体が得られると考えられる。いくつかの実施形態では、非ヒスチジン残基がヒスチジン残基で置換されている。いくつかの実施形態では、ヒスチジン残基が非ヒスチジン残基で置換されている。追加の操作された抗原結合領域としては、例えば、米国特許出願公開第20110229489号に記載されるものが挙げられる。
【0174】
操作された定常領域
場合によっては、結合部分は、1つ以上のFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcγRIV、またはFcRn受容体)に結合する抗体定常領域、Fc領域、またはFc断片であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、定常領域、Fc領域、またはFc断片は、参照の定常領域、Fc領域、またはFc断片と比べて、標的(例えば、Fc受容体)に変化した様式で(例えば、pH感受性様式で(例えば、より多いもしくはより少ないpH感受性様式で)、結合するように操作される。
【0175】
いくつかの例では、結合部分は、本明細書に記載のアミノ酸残基(例えば、251~256、285~290、308~314、385~389、及び428~436(Kabatナンバリング(Kabat et al.,(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH)))のうちの1つ以上の、アミノ酸付加、欠失、または置換を含むように操作されたIgG抗体の定常領域、Fc領域、またはFc断片であり得るか、またはそれらを含む。
【0176】
CD19抗体及びその断片の産生
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片は、既知の技術を使用した変異導入によって、1つ以上の標的へのpH感受性結合を示す1つ以上の結合部分を含むように操作される。例えば、参照ポリペプチド(例えば、治療用抗体または治療用融合タンパク質)の配列を得ることができ、1つ以上のアミノ酸残基を付加、欠失、または置換することができる。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基のうちの1つ以上が、ヒスチジン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンで置換されている。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸がヒスチジンで置換されている。理論に束縛されることは望まないが、アミノ酸残基をヒスチジンで置換するとプロトン化部位が挿入され、結合部分のpH感受性を増加させることができると考えられている。ポリペプチドは、標準的な方法を使用して生成し、本明細書に記載の目的の標的への結合についてアッセイすることができる。結合部分のpH感受性を増加させる追加の方法は、例えば、Sarkar et al.,Nature Biotechnology 20:908-913(2002);Murtaugh et al.,Protein Science 20:1619-1631(2011);及び米国特許出願公開第20110229489号に記載される。
【0177】
いくつかの実施形態では、目的の第1の標的が選択され、標的に選択的に結合する抗体が提供され、取得され、及び/または(例えば、本明細書に記載の既知の方法を使用して)生成される。抗原結合領域及び/またはFc領域のうちの1つ以上のアミノ酸が置換され(例えば、ヒスチジン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンで)、標的への(及び、追加的にまたは代替的に、FcRnへの)結合のpH感受性が、決定される。
【0178】
いくつかの実施形態では、目的の標的に自然に結合するポリペプチドが提供され、取得され、及び/または生成される。ポリペプチドは、既知の方法を使用して、本明細書に記載のFc領域またはFc断片(例えば、所望の結合親和性でFcRnに結合する)にコンジュゲートされる。例えば、ポリペプチドとFc領域またはFc断片とは、化学的手段によって、または融合タンパク質としての組換え発現によってコンジュゲートすることができる。追加的にまたは代替的に、ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸を(例えば、ヒスチジン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンで)置換することができ、ポリペプチドの結合のpH感受性及び標的が決定される。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片は、同定され、及び/またはスクリーニングで選択された、1つ以上の結合部分を含むように操作される。例えば、pH感受性様式で抗原に結合する抗原結合部分は、抗原結合部分を発現するライブラリー、例えばファージライブラリーを使用して同定することができる。そのようなライブラリーは、第1のpH(例えば、pH7.4)で抗原に対する第1の親和性を有し、第2のpH(例えば、pH5.5)で抗原に対する第2の親和性を有する抗原結合部分についてスクリーニングすることができる。本明細書に記載の抗体またはその断片は、そのような同定されたpH感受性抗原結合部分を含むように操作することができる。追加的に、及び/または代替的に、ライブラリーを使用して、FcRnにpH感受性様式で結合するFcRn結合部分を同定することができる。組換え抗体ライブラリーをスクリーニングする方法は既知である(例えば、Hoogenboom,Nature Biotech. 23:1105-1116(2005);米国特許第5,837,500号;米国特許第5,571,698号;WO2012/044831を参照されたい)。
【0180】
PEG化
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、モノまたはポリ(例えば、2~4の)PEG部分を含むようにPEG化することができる。そのようなPEG化抗体は、非PEG化参照抗体、例えば、同じアミノ酸配列を有するが異なる、異なる量のPEG化を有する、またはPEG化を有さない抗体と比較して増加した半減期を示し得る。
【0181】
PEG化は、当該技術分野で知られている任意の適切な反応によって実施することができる。PEG化タンパク質を調製するための方法は、一般に、(a)ポリペプチドをポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)と、それによってポリペプチドが1つ以上のPEG基に結合するようになる条件下で反応させることと;(b)反応生成物(複数可)を得ることと、を含むことができる。一般に、反応の条件は、既知のパラメーター及び所望の結果に基づいてケースバイケースで決定することができる。
【0182】
当業者が利用できる多数のPEG結合方法がある。例えば、本明細書に記載の抗体またはその断片をPEG化するステップは、反応性ポリエチレングリコール分子とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施することができる。
【0183】
結合部分と標的の相互作用の測定
本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)の標的(例えば、CD19及び/またはFcRn)への結合特性は、当該技術分野で公知の方法、例えば、以下の方法のうちの1つによって測定することができる:BIACORE分析、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、X線結晶学、配列分析及びスキャニング変異導入。抗体とCD19及び/またはFcRnとの結合相互作用は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して分析できる。SPRまたは生体分子相互作用分析(BIA)は、相互作用物質のいずれをも標識することなく、生体特異的な相互作用をリアルタイムで検出する。BIAチップの結合表面における質量の変化(結合事象を示す)は、表面近くの光の屈折率の変化をもたらす。屈折率の変化は検出可能なシグナルを生成し、生体分子間のリアルタイム反応の指標として測定される。SPRを使用するための方法は、例えば、米国特許第5,641,640号;Raether(1988) Surface Plasmons Springer Verlag;Sjolander and Urbaniczky(1991) Anal. Chem. 63:2338-2345;Szabo et al.(1995) Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705、及びBIAcore International AB(Uppsala,Sweden)によって提供されるオンライン資料に記載されている。さらに、Sapidyne Instruments(Boise,Id.)から入手可能なKinExA(登録商標)(結合平衡除外法)アッセイも使用できる。
【0184】
SPRからの情報は、標的に対する結合部分(例えば、CD19及び/またはFcRnに対する抗CD19抗体)の結合について、平衡解離定数(K)、ならびにKonとKoffを含む動力学パラメーターの正確かつ定量的な測定を提供するために使用できる。このようなデータは、異なる分子を比較するために使用できる。SPRからの情報は、構造活性相関(SAR)の開発にも使用できる。例えば、さまざまなpHレベルでの標的への特定の結合部分の動力学的及び平衡結合パラメーターを評価することができる。特定のpHレベルで、特定の結合パラメーター、例えば、高親和性、低親和性、及び遅いKoffと相関する所与の位置のバリアントアミノ酸を同定することができる。
【0185】
処置方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、1つ以上のCD19関連状態を治療する方法で使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、医薬として使用するためのものである。CD19関連状態は、非限定的に、CD19発現によって引き起こされる状態、全体的にもしくは部分的にCD19発現に起因する症状に関与する状態、またはCD19発現に関連して起こることが知られている状態を含み得る。
【0186】
いくつかの態様において、本発明は、CD19に特異的に結合する薬剤(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体またはその断片)を投与することを含む、がんを治療する方法を提供する。がんは、体内の異常な細胞の制御不能の増殖を特徴とするさまざまな疾患の広いグループである。制御不能の細胞分裂と増殖により、悪性腫瘍が形成され、隣接する組織に侵入し、リンパ系や血流を介して体の離れた部分に転移し得る。いくつかの実施形態では、「がん」または「がん組織」は固形腫瘍を含む。本発明の方法によって治療できるがんの例としては、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球悪性腫瘍を含む免疫系のがんが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がんはB細胞リンパ腫である。
【0187】
いくつかの実施形態では、B細胞リンパ腫は、急性リンパ性白血病(ALL)、AIDS関連リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、古典的ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に発生する大細胞型B細胞性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯B細胞リンパ腫(MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、結節性リンパ球優勢ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、B細胞リンパ腫は、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯B細胞リンパ腫(MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、B細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。
【0188】
さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体またはその断片)の投与は、有病率、頻度、レベル、及び/または本明細書に記載の、または当該技術分野で知られているCD19関連状態の1つ以上の症状またはバイオマーカーの量の減少、例えば、対象における以前の測定値または参照値と比較した、1つ以上の症状またはバイオマーカーの少なくとも3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%の減少をもたらす。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)をがんを有する対象に投与すると、がんの1つ以上の症状またはバイオマーカーが、参照抗体、例えば、同等の条件下でのCD19結合を交差競合する抗体がするよりも大幅に減少または改善される。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、参照タンパク質(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)と比較して有効用量の減少を示す。例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体の有効用量は、例えば、1,000mg/用量未満、例えば、900mg/用量、800mg/用量、700mg/用量、600mg/用量、500mg/用量、550mg/用量、400mg/用量、350mg/用量、300mg/用量、200mg/用量、100mg/用量、50mg/用量、25mg/用量、またはそれ以下であり得る。特定の例において、本明細書に開示される抗CD19抗体の有効用量は、参照抗体の有効または推奨または承認された投与量よりも低く、参照抗体の投与量は、例えば、900mg/投与、または600mg/投与であり得る。代替的に、または本明細書に開示される投与量と組み合わせて、本明細書に記載の抗CD19抗体は、週に1回未満、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、または1年間に1回未満である頻度で、有効にまたは有用に投与することができる。特定の例において、本明細書に開示される抗CD19抗体の有効または有用な投与頻度は、参照抗体の有効または推奨または承認された投与頻度よりも低く、参照抗体の投与頻度は毎週(例えば、対象の体重に応じて300~600mgの投与量で)、または2週間ごとに(例えば、対象の体重に応じて300~1200mgの投与量で)、投与することができる。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、抗CD19抗体が参照(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)と同一、同等、または実質的に同等の製剤で、及び/または参照と同一、同等、または実質的に同等の投与経路によって投与される場合、参照タンパク質、例えば、CD19結合について交差競合する抗体と比較して少ない用量で投与して、同等、同等に有効、同等に有効、または実質的に有効な転帰を達成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、抗CD19抗体が参照と同一、同等、または実質的に同等の製剤で、及び/または参照と同一、同等、または実質的に同等の投与経路によって投与される場合、参照抗体(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)と比較して広げられた間隔で投与して、同等、同等に有効、同等に有効、または実質的に有効な転帰を達成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、抗CD19抗体が参照(例えば、CD19結合について交差競合する抗体)と同一、同等、または実質的に同等の製剤で、及び/または参照と同一、同等、または実質的に同等の投与経路によって投与される場合、参照抗体と比較して、減少した単位用量の数で、及び/または短縮された治療期間で投与して、同等、同等に有効、同等に有効、または実質的に有効な転帰を達成することができる。
【0192】
いくつかのそのような実施形態によれば、本明細書に記載の抗CD19抗体の投与用量は、参照抗体、例えば、例えば、CD19結合について交差競合する抗体の有効用量よりも、対象に投与されたときに有害反応、例えば、有害免疫反応を誘発する可能性が低い可能性がある。したがって、さまざまな実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、投与される活性単位あたりで、参照抗体よりも有害反応または副作用を誘発する可能性が低くあり得る。さまざまな実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、投与される活性単位あたりで、参照抗体よりも、特定の重症度を有する有害反応または副作用を誘発する可能性が低くあり得る。さまざまな実施形態では、本明細書に開示される抗CD19抗体は、投与される活性単位当たり、参照抗体よりも低い程度で、またはより少ない患者において、1つ以上の有害反応または副作用を誘発する可能性がある。CD19に結合できる抗体の投与に関連する可能性のある有害反応または副作用の例としては、頭痛、鼻咽頭炎、背中の痛み、悪心、下痢、高血圧、上気道感染症、腹痛、嘔吐、貧血、咳、末梢浮腫、及び/または尿路感染が挙げられ得る。
【0193】
いくつかの実施形態では、対象への投与時に(例えば、単回用量で)、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、投与後の定義された時間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日、またはそれ以上)に、同じ定義された時間での対照(例えばCD19結合に対して交差競合する抗体)のレベルと比べて血漿中の増加したレベルで測定される。例えば、単回用量の投与後の所定の時点で、本明細書に記載の抗CD19抗体のレベルは、参照抗体の対応するレベルよりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、または500%高い。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、(例えば単回用量の)投与後の定義された時間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日、またはそれ以上)に、同じ定義された時間での対照のレベルと比べて血漿中の増加したレベルで測定される。例えば、投与後の所定の時点で、本明細書に記載の抗CD19抗体のレベルは、参照抗体の対応するレベルよりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、または500%高い。
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、(例えば、対照、例えば、参照抗体、例えば、CD19結合について交差競合する抗体と比べて)増加した半減期を有し、したがって、抗CD19抗体は、投与間隔を広げて対象に投与することができる。例えば、抗CD19抗体は、毎週1回、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、6週間ごと、8週間ごと、またはそれ以上の期間で投与することができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)の治療有効量は、参照治療用タンパク質、例えば、CD19結合について交差競合する抗体の有効量の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、または5%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体の単回用量は、参照抗体の2回以上の用量と同等の治療効果を達成する。
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、対象における標的抗原(例えば、CD19)の濃度の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、また5%である用量で投与される。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、当業者に知られているさまざまな方法及び送達システムのいずれかを使用して、対象に物理的に導入することができる。本明細書に開示される製剤の例示的な投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経口投与経路、例えば注射または注入によるものが挙げられる。本明細書で使用される場合、「非経口投与」という語句は、経腸投与及び局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び注入、並びにインビボのエレクトロポレーションが含まれる。いくつかの実施形態では、製剤は、局所、表皮または粘膜の投与経路のような非経口経路によって、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下、または局所で投与される。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/または1つ以上の長い期間にわたって行うことができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)は、多くの診断及び治療用途に使用することができる。例えば、本明細書に記載の操作された抗体の検出可能に標識されたバージョンをアッセイで使用して、試料(例えば、生体試料)中のCD19の存在または量を検出することができる。本明細書に記載の操作された抗体は、CD19への結合を研究するためのインビトロアッセイで使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、そうでなければCD19関連障害を治療するのに有用である追加の新規化合物を同定するために設計されたアッセイにおける陽性対照として使用することができる。例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体は、CD19に結合する追加の化合物(例えば、小分子、アプタマー、または抗体)を同定するためのアッセイにおいて陽性対照として使用することができる。
【0200】
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は、対象、例えば、1つ以上のCD19関連状態を有する、有する疑いがある、発症するリスクがある、または治療中である、対象をモニタリングするのに使用することができる。モニタリングは、対象、例えば、対象の血清中のCD19の量または活性を決定することを含み得る。いくつかの実施形態では、評価は、本明細書に記載の抗CD19抗体の投与後、少なくとも1時間、例えば、少なくとも2、4、6、8、12、24、もしくは48時間、または少なくとも1日間、2日間、4日間、10日間、13日間、20日間、もしくはそれ以上、または少なくとも1週間、2週間、4週間、10週間、13週間、20週間、もしくはそれ以上行われる。対象は、以下の期間の1つ以上で評価することができる:治療の開始前;治療中;または治療の1つ以上の要素が投与された後。評価は、さらなる治療の必要性を評価すること、例えば、投与量、投与頻度、または治療期間を変更すべきかどうかを評価することを含むことができる。また、選択された治療法を追加または削除する必要性を評価すること、例えば、本明細書に記載のCD19関連障害の任意の治療を追加または削除することも含み得る。
【0201】
製剤化及び投与
さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)を医薬組成物に組み込むことができる。そのような医薬組成物は、例えば、疾患、例えばCD19関連障害の予防及び/または治療のために有用であり得る。医薬組成物は、当業者に知られている方法によって製剤化することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed. Alfonso R. Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1985)に記載されているような)。
【0202】
投与の適切な手段は、対象の年齢及び状態に基づいて選択することができる。本明細書に記載の抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CD19抗体)を含む医薬組成物の単回用量は、体重1kgあたり0.001~1000mgの範囲から選択することができる。一方、用量は体重あたり0.001~100000mgの範囲で選択できるが、本開示はそのような範囲に限定されない。用量及び投与方法は、患者の体重、年齢、状態などに応じて変動し、当業者であれば必要に応じて適宜選択することができる。
【0203】
さまざまな実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含むように製剤化することができる。薬学的に許容される担体の例としては、非限定的に、生理学的に適合性のある任意の及びすべての溶媒、分散媒、被覆、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩を含むことができる。
【0204】
さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗体を含む組成物、例えば注射用無菌製剤は、ビヒクルとして注射用蒸留水を使用して、従来の薬務に従って製剤化することができる。例えば、生理食塩水またはブドウ糖と、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムなどの他の補充成分を含む等張液を、任意選択で適切な可溶化剤、例えば、エタノール、及びプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどの多価アルコールなどのアルコール、ポリソルベート80(商標)、HCO-50などの非イオン性界面活性剤などと組み合わせて、注射用水溶液として使用することができる。
【0205】
本明細書に開示される場合、医薬組成物は当該技術分野で知られている任意の形態であってよい。そのような形態としては、例えば、液体、半固体、及び固体の剤形、例えば、液体の液剤(例えば、注射剤及び点滴剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、及び坐剤が挙げられる。
【0206】
任意の特定の形態の選択または使用は、部分的には、意図する投与様式及び治療への適用に依存し得る。例えば、全身または局所送達を目的とする組成物を含む組成物は、注射剤または点滴剤の形態であり得る。例えば、組成物は非経口様式(例えば静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)による投与用に製剤化され得る。本明細書中で使用される場合、非経口投与は、通常は注射による、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を指し、非限定的に、静脈内、鼻腔内、眼内、肺内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内及び胸骨内の注射及び注入が含まれる。
【0207】
投与経路は、非経口、例えば、注射による投与、経鼻投与、経肺投与、または経皮投与であり得る。投与は、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射による全身または局所であり得る。
【0208】
さまざまな実施形態では、本発明の医薬組成物は、液剤、マイクロエマルション、分散剤、リポソーム、または高い濃度での安定した保存に適した他の規則構造として製剤化することができる。滅菌注射剤は、必要量の本明細書に記載の組成物を上に挙げた成分の1つまたは組み合わせと共に適正な溶媒に組み込み、必要により、続いて濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般的に、分散剤は、本明細書に記載の組成物を、基礎的な分散媒及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルへと混合することによって調製される。滅菌注射剤を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法は、事前に滅菌濾過された本明細書に記載の組成物と任意の所望の追加成分(下記参照)との溶液から、本明細書に記載の組成物と任意の所望の追加成分との粉末を生じる、真空乾燥及び凍結乾燥を含む。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる試薬、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0209】
医薬組成物は、水または別の薬学的に許容される液体中の滅菌の溶液または懸濁液を含む注射可能な製剤の形態で非経口的に投与することができる。例えば、医薬組成物は、治療用分子を、薬学的に許容されるビヒクルまたは媒体、例えば、滅菌水及び生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味賦形剤、希釈剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤と好適に組み合わせ、続いて、一般的に受け入れられている薬務に必要な単位用量形態で混合することによって製剤化することができる。医薬製剤に含まれる活性成分の量は、指定された範囲内の適切な用量が提供されるような量である。油性液体の非限定的な例としては、ゴマ油及び大豆油が挙げられ、可溶化剤として安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと組み合わせることができる。含まれ得る他の品目は、リン酸緩衝液または酢酸ナトリウム緩衝液などの緩衝剤、塩酸プロカインなどの無痛化剤、ベンジルアルコールまたはフェノールなどの安定剤、及び抗酸化剤である。処方された注射剤は、適切なアンプルに包装することができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、組成物は、0℃未満の温度(例えば、-20℃または-80℃)で保存するために製剤化することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、最大2年間(例えば、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、1年間、11/2年間、または2年間)、2~8℃(例えば4℃)での保存のために製剤化することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、2~8℃(例えば、4℃)で少なくとも1年間保存安定である。
【0211】
特定の例では、医薬組成物は、溶液として製剤化することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、適切な濃度で、2~8℃(例えば、4℃)での保存に適した緩衝された溶液として製剤化することができる。
【0212】
本明細書に記載の1つ以上の操作された抗体を含む組成物は、イムノリポソーム組成物に製剤化することができる。そのような製剤は、当該技術分野で知られている方法によって調製することができる。循環時間が強化されたリポソームは、例えば、米国特許第5,013,556号に開示される。
【0213】
特定の実施形態では、組成物は、インプラント及びマイクロカプセル化の送達系を含む制御放出製剤など、化合物を急速な放出から保護する担体とともに製剤化することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。そのような製剤の調製のための多くの方法は、当該技術分野で知られている。例えば、J. R. Robinson(1978) ”Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,” Marcel Dekker,Inc.,New Yorkを参照されたい。
【0214】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒトなどの哺乳動物への肺内投与(例えば、吸入器またはネブライザーによる投与)に適した組成物に製剤化することができる。そのような組成物を製剤化する方法は、当該技術分野で周知である。乾燥粉末吸入製剤及び製剤の投与に適したシステムも当該技術分野で知られている。経肺投与は経口及び/または鼻投与であってよい。肺送達用の薬学的デバイスの例としては、定量吸入器、乾燥粉末吸入器(DPI)、及びネブライザーが挙げられる。例えば、本明細書に記載の組成物は、乾燥粉末吸入器によって対象の肺に投与することができる。これらの吸入器は、分散性で安定した乾燥粉末製剤を肺に送達する噴射剤を使用しないデバイスである。乾燥粉末吸入器は医学の技術分野でよく知られており、非限定的に、TURBOHALER(登録商標)(AstraZeneca;London,England)、AIR(登録商標)吸入器(ALKERMES(登録商標);Cambridge,Mass.);ROTAHALER(登録商標)(GlaxoSmithKline;London,England);及びECLIPSE(商標)(Sanofi-Aventis;Paris,France)が含まれる。例えば、PCT公開番号WO04/026380、WO04/024156、及びWO01/78693も参照されたい。DPIデバイスは、インスリン及び成長ホルモンなどのポリペプチドの肺投与に使用されてきた。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、定量吸入器によって肺内投与することができる。これらの吸入器は、噴射剤に依存して、個別の用量の化合物を肺に送達する。追加のデバイス及び肺内投与方法は、例えば、米国特許出願公開第20050271660号及び同第20090110679号に記載されており、これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、薬学的に許容される溶液、懸濁液、または軟膏の形態で、眼への送達のために製剤化することができる。眼の治療に使用する製剤は、例えば、防腐剤、緩衝剤、等張化剤、抗酸化剤及び安定剤、非イオン性湿潤剤または清澄化剤、ならびに増粘剤などであるがこれらに限定されない追加の成分を含む、滅菌水性溶液の形態であり得る。本明細書に記載の製剤は、治療を必要とする対象(例えば、AMDに罹患している対象)の眼に、従来の方法、例えば点滴薬の形態で、または眼を1つ以上の組成物を含む治療溶液に浸すことによって、局所的に投与することができる。
【0216】
特定の実施形態では、眼の硝子体腔に薬物を導入するためのさまざまなデバイスが、本明細書に記載の組成物の投与に適切であり得る。例えば、米国特許出願公開第2002/0026176号は、硝子体腔内に突出して医薬品を硝子体腔内に送達するように、強膜を通して挿入することができる薬剤含有プラグを記載している。別の例では、米国特許第5,443,505号は、眼の内部への薬物の徐放のために、脈絡膜上腔または無血管領域への導入のための移植可能なデバイスを記載している。米国特許第5,773,019号及び同第6,001,386号はそれぞれ、眼の強膜表面に取り付け可能な移植可能な薬物送達デバイスを開示している。治療薬を眼に送達するための追加の方法及びデバイス(例えば、経強膜パッチ及びコンタクトレンズを介した送達)は、例えば、Ambati and Adamis(2002) Prog Retin Eye Res 21(2):145-151;Ranta and Urtti(2006) Adv Drug Delivery Rev 58(11):1164-1181;Barocas and Balachandran(2008) Expert Opin Drug Delivery 5(1):1-10(10);Gulsen and Chauhan(2004) Invest Opthalmol Vis Sci 45:2342-2347;Kim et al.(2007) Ophthalmic Res 39:244-254;及びPCT公開番号WO04/073551に記載され、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0217】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体の投与は、抗体をコードする核酸を対象に投与することによって達成される。本明細書に記載の治療用抗体をコードする核酸は、細胞内で抗体を発現及び産生するために使用できる核酸を送達するための遺伝子治療プロトコールの一部として使用される遺伝子構築物に組み込むことができる。そのような成分の発現構築物は、治療上有効な担体、例えば、成分遺伝子をインビボで細胞に効果的に送達できる任意の製剤または組成物中で投与することができる。アプローチとしては、組換えのレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、及び単純ヘルペスウイルス-1(HSV-1)を含むウイルスベクター、または組換え細菌もしくは真核生物のプラスミドへの対象遺伝子の挿入が挙げられる。ウイルスベクターは細胞に直接トランスフェクトできる。プラスミドDNAは、例えば、カチオン性リポソーム(リポフェクチン)または誘導体化されたポリリジンコンジュゲート、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープ、または他のそのような細胞内担体の助けを借りて送達することができ、さらに遺伝子構築物の直接注入またはCaPO沈殿によって送達することができる(例えば、WO04/060407を参照されたい)。適切なレトロウイルスの例としては、当業者に知られているpLJ、pZIP、pWE、及びpEMが挙げられる(例えば、Eglitis et al.(1985) Science 230:1395-1398;Danos and Mulligan(1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:6460-6464;Wilson et al.(1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:3014-3018;Armentano et al.(1990) Proc Natl Acad Sci USA 87:6141-6145;Huber et al.(1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:8039-8043;Ferry et al.(1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:8377-8381;Chowdhury et al.(1991) Science 254:1802-1805;van Beusechem et al.(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:7640-7644;Kay et al.(1992) Human Gene Therapy 3:641-647;Dai et al.(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:10892-10895;Hwu et al.(1993) J Immunol 150:4104-4115;米国特許第4,868,116号、及び同第4,980,286号;ならびにPCT公開番号WO89/07136、WO89/02468、WO89/05345、及びWO92/07573を参照されたい)。別のウイルス遺伝子送達システムは、アデノウイルス由来のベクターを利用する(例えば、Berkner et al.(1988) BioTechniques 6:616;Rosenfeld et al.(1991) Science 252:431-434;及びRosenfeld et al.(1992) Cell 68:143-155を参照されたい)。アデノウイルス株Ad5型dl324またはアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する適切なアデノウイルスベクターは、当業者に知られている。対象遺伝子の送達に有用なさらに別のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。例えば、Flotte et al.(1992) Am J Respir Cell Mol Biol 7:349-356;Samulski et al.(1989) J Virol 63:3822-3828;及びMcLaughlin et al.(1989) J Virol 62:1963-1973を参照されたい。
【0218】
さまざまな実施形態では、皮下投与は、注射器、充填済み注射器、自動注射器(例えば、使い捨てまたは再使用可能)、ペン型注射器、パッチ注射器、ウェアラブル注射器、皮下注入セットを備えた携帯用注射器注入ポンプ、または皮下注射用の抗体薬と組み合わせるための他のデバイスなどのデバイスによって達成され得る。
【0219】
本開示の注射システムは、米国特許第5,308,341号に記載されているように送達ペンを使用することができる。糖尿病患者へのインスリンの自己送達に最も一般的に使用されるペンデバイスは、当該技術分野で周知である。このようなデバイスは、少なくとも1本の注射針(例えば、長さ約5~8mmの31ゲージの針)を含むことができ、通常、1回または複数回の治療単位用量の治療溶液が事前に充填されており、可能な限り痛みが少なく、対象への溶液の迅速な送達に有用である。1つの薬物送達ペンは、治療薬または他の薬物のバイアルを受け取ることができるバイアルホルダーを含む。ペンは完全に機械的なデバイスである場合もあれば、電子回路と組み合わせてユーザーに注射される医薬の投与量を正確に設定及び/または示す場合もある。例えば、米国特許第6,192,891号を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペンデバイスの針は使い捨てであり、キットは、1つ以上の使い捨て交換針を含む。現在特徴付けられている組成物のいずれか1つの送達に適したペンデバイスはまた、例えば、米国特許第6,277,099号;同第6,200,296号;及び同第6,146,361号に記載されている。これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。マイクロニードルベースのペンデバイスは、例えば、米国特許第7,556,615号に記載されている。この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Scandinavian Health Ltd.製のPrecision Pen Injector(PPI)デバイス、MOLLY(商標)も参照されたい。
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、局所投与によって対象に治療的に送達することができる。本明細書で使用される場合、「局所投与」または「局所送達」は、組成物または薬剤の、血管系を介したその意図する標的組織または部位への輸送に依存しない送達を指すことができる。例えば、組成物は、組成物もしくは薬剤の注射もしくは移植によって、または組成物もしくは薬剤を含有する装置の注射もしくは移植によって送達され得る。特定の実施形態では、標的組織または部位の近くで局所投与した後、組成物もしくは薬剤、またはそれらの1つ以上の成分は、投与部位ではない意図された標的組織または部位に拡散し得る。
【0221】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、自己投与に適し得る単位剤形で存在し得る。このような単位剤形は、典型的には例えばバイアル、カートリッジ、充填済みシリンジ、または使い捨てペンなどの容器内で提供され得る。米国特許第6,302,855号に記載された投与装置のような投与装置も、例えば、本明細書に記載の注射システムと共に使用することができる。
【0222】
対象の障害を治療または予防することができる本明細書に記載の組成物の適切な用量は、例えば、治療対象の年齢、性別、及び体重、ならびに使用される特定の阻害剤化合物を含む、さまざまな因子に依存し得る。例えば、本明細書に記載の抗体を含むある組成物の異なる用量は、その抗体の異なる製剤の用量と比較して、CD19関連障害を有する対象を治療するために必要とされ得る。対象に投与される用量に影響を及ぼす他の因子としては、例えば、障害の種類または重症度が挙げられる。例えば、あるCD19関連障害を有する対象は、別のCD19関連障害を有する対象とは異なる投与量の投与を必要とし得る。他の因子としては、例えば、同時にまたは以前に対象に影響を及ぼした他の医学的障害、対象の全体的な健康状態、対象の遺伝的素因、食事、投与期間、排泄速度、薬物の組み合わせ、及び対象に投与される任意の他の追加の治療法が挙げられ得る。任意の特定の対象に対する具体的な投与量及び治療レジメンもまた、治療する医師の判断に基づいて調整され得ることも理解されるべきである。
【0223】
本明細書に記載の組成物は、固定用量として、またはキログラムあたりのミリグラム(mg/kg)の用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物中の抗体またはその抗原結合断片の1つ以上に対する抗体の生成または他の宿主免疫応答を低減または回避するように用量を選択することもできる。決して限定することを意図するものではないが、本明細書に記載の組成物などの抗体の例示的な投与量としては、例えば、1~1000mg/kg、1~100mg/kg、0.5~50mg/kg、0.1~100mg/kg、0.5~25mg/kg、1~20mg/kg、及び1~10mg/kgが挙げられる。本明細書に記載の組成物の例示的な投与量としては、非限定的に、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、または20mg/kgが挙げられる。
【0224】
医薬溶液は、治療有効量の本明細書で記載の組成物を含むことができる。このような有効量は、当業者であれば、投与された組成物の効果、または複数の薬剤が使用される場合には組成物と1つ以上の追加の活性剤との組合せ効果に部分的に基づいて容易に決定することができる。本明細書に記載の組成物の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに、組成物(及び1つ以上の追加の活性剤)が個体における所望の応答、例えば、少なくとも1つの状態パラメーターの改善、例えば、少なくとも1つのCD19関連障害の症状の改善を誘発する能力などの因子によってもまた変動し得る。例えば、本明細書に記載の組成物の治療有効量は、特定の障害、及び/または当該技術分野で知られている、もしくは本明細書に記載されている特定の障害の症状のうちのいずれか1つを阻害する(重症度を軽減する、もしくは発生を排除する)、及び/または予防することができる。治療有効量はまた、組成物の任意の毒作用または有害作用よりも治療的に有益な効果が上回る量である。
【0225】
本明細書に記載の組成物のうちのいずれかの適切なヒト用量は、例えば第I相用量漸増試験でさらに評価することができる。例えば、van Gurp et al.(2008) Am J Transplantation 8(8):1711-1718;Hanouska et al.(2007) Clin Cancer Res 13(2,part 1):523-531;及びHetherington et al.(2006) Antimicrobial Agents and Chemotherapy 50(10):3499-3500を参照されたい。
【0226】
組成物の毒性及び治療効果は、細胞培養または実験動物(例えば、CD19関連障害のいずれかの動物モデル)における既知の薬学的手順によって決定することができる。これらの手順は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%における治療有効用量)を決定するために使用することができる。毒性と治療効果と間の用量比は、治療指数であり、それはLD50/ED50の比率として表すことができる。高い治療指数を示す本明細書に記載の組成物が好ましい。有毒な副作用を示す組成物が使用される場合があるが、そのような化合物を影響を受ける組織の部位に標的化する送達システムを設計し、正常細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を軽減するように注意する必要がある。
【0227】
当業者は、細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトで使用するための投与量範囲を製剤化する際に使用できることを理解するであろう。本明細書に記載の組成物の適切な投与量は、一般に、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む組成物の循環濃度の範囲内にある。投与量は、採用された剤形及び/または使用される投与経路に依存して、この範囲内で変動する可能性がある。本明細書に記載の組成物に関して、治療有効量は、最初に細胞培養分析から推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるI(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する抗体の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて製剤化することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用できる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、局所投与(例えば、眼または関節への)が望まれる場合、細胞培養または動物モデルを使用して、局所部位内で治療有効濃度を達成するのに必要な用量を決定することができる。
【0228】
併用療法
さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体は、対象への少なくとも1つの追加の薬剤の投与をさらに含む一連の治療に含まれ得る。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体と組み合わせて投与される追加の薬剤は、薬剤化学療法剤であり得る。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗体と組み合わせて投与される追加の薬剤は、炎症を阻害する薬剤であり得る。
【0229】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、ヒトCD19に対する特異性を有する単鎖可変断片(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、がん細胞に結合し、がん細胞に治療剤を送達し、ヒトCD19を発現するがん細胞を殺傷するために、治療剤(例えば、化学療法剤及び放射性原子)にコンジュゲート(例えば、連結)することができる。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は治療剤に連結される。いくつかの実施形態では、治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、放射性原子、siRNA、または毒素である。いくつかの実施形態では、治療薬は化学療法薬である。いくつかの実施形態では、薬剤は放射性原子である。
【0230】
いくつかの実施形態では、方法は、CD19関連障害の他の治療法と併せて実施することができる。例えば、組成物は、化学療法と同時に、その前に、またはその後に対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、養子療法の方法と同時に、その前に、またはその後に対象に投与することができる。
【0231】
さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体と組み合わせて投与される追加の薬剤は、抗CD19抗体と同時に、抗CD19抗体と同じ日に、または抗CD19抗体と同じ週に投与され得る。さまざまな実施形態では、本明細書に記載の抗CD19抗体と組み合わせて投与される追加の薬剤は、抗CD19抗体と共に単一製剤で投与され得る。特定の実施形態では、追加の薬剤は、本明細書に記載の抗CD19抗体の投与から時間的に離れた様式で、例えば、抗CD19抗体の投与の1時間以上前もしくは後に、1日以上前もしくは後に、1週間以上前もしくは後に、または1か月以上前もしくは後に投与される。さまざまな実施形態では、1つ以上の追加の薬剤の投与頻度は、本明細書に記載の抗CD19抗体の投与頻度と同じ、同様、または異なり得る。
【0232】
併用療法に包含されるのは、本明細書に記載の2つの異なる抗体の投与を含む治療レジメン、ならびに/または複数の製剤及び/もしくは投与経路による本明細書に記載の抗体の投与を含む治療レジメンである。
【0233】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の追加の治療薬、例えば、対象におけるCD19関連障害(例えば、がんまたは自己免疫障害)を治療または予防するための追加の治療とともに製剤化することができる。対象におけるCD19関連障害を治療するための追加の薬剤は、治療される特定の障害に応じて変化するが、非限定的に、リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、オスファミド、カルボプラチン、エトポシド、デキサメタゾン、シタラビン、シスプラチン、シクロホスファミド、またはフルダラビンを含むことができる。
【0234】
本明細書に記載の組成物は、以前に、または現在投与されている治療を置き換えるかまたは増強することができる。例えば、本明細書に記載の組成物で治療すると、1つ以上の追加の活性剤の投与は、本明細書に記載の抗CD19抗体の投与に続いて、停止または減少することができ、例えば、より低いレベルで、例えば、CD19結合について交差競合する参照抗体のより低いレベルで投与される。いくつかの実施形態では、以前の治療の投与を維持することができる。いくつかの実施形態では、組成物のレベルが治療効果を提供するのに十分なレベルに達するまで、以前の治療が維持される。2つの治療法は組み合わせて投与することができる。
【0235】
組換え遺伝子技術
本開示に従って、当業者の範囲内の従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術を使用することができる。そのような技術は文献(例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(D. N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization(B. D. Hames & S. J. Higgins eds.(1985));Transcription And Translation(B. D. Hames & S. J. Higgins,eds.(1984));Animal Cell Culture(R. I. Freshney,ed.(1986));Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,(1986));B. Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F. M. Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい)に記載されている。
【0236】
本明細書に記載の抗CD19抗体などのポリペプチドをコードする核酸などの遺伝子の組換え発現は、ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターの構築を含み得る。ポリヌクレオチドが得られると、ポリペプチドの産生のためのベクターは、当該技術分野で知られている技術を使用する組換えDNA技術によって産生することができる。既知の方法を使用して、ポリペプチドコード配列と適切な転写及び翻訳制御シグナルとを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えが挙げられる。
【0237】
発現ベクターを従来の技術によって宿主細胞に導入してもよく、次いでトランスフェクトした細胞を従来の技術によって培養して、ポリペプチドを産生してもよい。
【0238】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。さらに、物質、方法、及び例は、例示にすぎず、限定を意図しない。別途定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、本発明の所属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において記載されているものと類似または同等の方法及び物質を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法及び物質を本明細書に記載する。
【実施例
【0239】
以下の実施例は、本発明を作成及び実施する好ましい様式のいくつかを説明するものである。しかしながら、これらの実施例は単に例示を目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解すべきである。
【0240】
実施例1 抗CD19抗体の同定と特性評価
本実施例は、抗CD19抗体の特性評価を示す。ヒト抗CD19抗体は、Adimab酵母に由来し、産生された。抗原は、EZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit(Thermo Scientific、カタログ番号21425)を使用してビオチン化された。抗原は約1mg/mLに濃縮され、1:7.5モル比のビオチン化試薬を添加する前に緩衝液をPBSに交換された。溶液中の遊離ビオチンを除去するための別の緩衝液交換の前に、混合物を4℃で一晩保持した。ビオチン化は、ForteBio上の標識タンパク質のストレプトアビジンセンサー結合によって確認された。
【0241】
8つのナイーブなヒト合成酵母ライブラリーのそれぞれの約10の多様性は、以前に記載されたように増殖された(例えば、Y.Xu et al,PEDS 26(10),663-70(2013);WO2009036379;WO2010105256;及びWO2012009568を参照されたい。)
【0242】
選択の最初の2ラウンドでは、Miltenyi MACSシステムを利用した磁気ビーズ選別技術を、以前に記載されたように行った(例えば、Siegel et al,J Immunol Methods 286(1-2),141-153(2004)を参照されたい)。簡潔に述べると、酵母細胞(約1010細胞/ライブラリー)は、洗浄緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA))中、30℃で30分間、ビオチン化抗原とインキュベートした。40mLの氷冷洗浄緩衝液で1回洗浄した後、細胞ペレットを20mLの洗浄緩衝液に再懸濁し、ストレプトアビジンMicroBeads(500μL)を酵母に添加し、4℃で15分間インキュベートした。次いで、酵母をペレット化し、5mLの洗浄緩衝液に再懸濁し、Miltenyi LSカラムにロードした。5mLをロードした後、カラムを3mLの洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、カラムを磁場から取り出し、酵母を5mLの増殖培地で溶出し、一晩増殖させた。
【0243】
選択の第3ラウンドは、フローサイトメトリー(FACS)を使用して実行された。約2×10個の酵母をペレット化し、洗浄緩衝液で3回洗浄し、平衡条件下で100~200nMのビオチン化抗原とともに30℃でインキュベートした。ラウンド3のFACSから選択された酵母産出物と共に、ビオチン化されたNALM-6及びRajiの細胞をインキュベートすることによって、選択の第4及び第5ラウンドを行った。インキュベーション後、前洗浄したM-280 ストレパビジンDynabeads(カタログ番号60210)を、酵母/哺乳動物細胞複合体に添加し、インキュベートした。次に、DynaMag-2磁石を使用して複合体を分離し、結合していない上清を除去した。ビーズ/細胞複合体を、1mLの選択緩衝液で3回洗浄した。次いで、捕捉された複合体を、増殖用の酵母増殖培地を含むフラスコに移した。選択の第6ラウンドでは、増殖した酵母を、NALM-6/Raji細胞選択、100nMの組み換えCD19抗原による選択、または非特異的抗体を除去するための多特異性試薬(PSR)によるネガティブ選択のいずれかの追加のラウンドにかけた。
【0244】
PSRの枯渇のために、以前に記載されたように、ライブラリーをビオチン化PSR試薬の1:10希釈でインキュベートした(例えば、Y.Xu et al,PEDS 26(10),663-70(2013)を参照されたい)。次いで、酵母を洗浄緩衝液で2回洗浄し、1:100希釈したヤギF(ab’)2抗ヒトカッパ-FITC(LC-FITC)(Southern Biotech、カタログ番号2062-02)及び1:500希釈したストレプトアビジン-AF633(SA-633)(Life Technologies、カタログ番号S21375)または1:50希釈したExtravidin-phycoerthyrin(EA-PE)(Sigma-Aldrich、カタログ番号E4011)の二次試薬のいずれかで4℃で15分間染色した。氷冷洗浄緩衝液で2回洗浄した後、細胞ペレットを0.3mLの洗浄緩衝液に再懸濁し、ストレーナーでキャップした選別チューブに移した。FACS ARIAソーター(BD Biosciences)を使用して選別を行い、所望の特性を持つ抗体を選択するためにソートゲートを決定した。所望の特性をすべて備えた母集団が得られるまで、選択のラウンドを繰り返した。選別の最終ラウンドの後、酵母を播種し、特性評価のために個々のコロニーをつつきとった。
【0245】
軽鎖の多様化
ナイーブ産出物からの重鎖を使用して、追加の選択ラウンドに使用される軽鎖多様化ライブラリーを調製した。重鎖プラスミドを酵母から抽出し、E.coliで増殖させた後、E.coliから精製し、5×106の多様性を有する軽鎖ライブラリーに形質転換した。上記のようにこれらのライブラリーに対して選択を行った。すなわち、MACSを1ラウンド、RajiまたはNALM-6の細胞による2ラウンドの細胞選択をし、続いて組換えCD19抗原を使用して第4ラウンドのFACS選択をした。軽鎖の多様化に特異的に、Raji及びNALM-6の細胞選択には、CD19遺伝子の標的化遺伝子ノックアウトを受けた操作されたRaji及びNALM-6の細胞による最初のネガティブ選択が組み込まれた。CD19ノックアウト細胞による枯渇に続いて、内因性CD19と過剰発現の両方を発現する操作されたRaji及びNALM-6の細胞を使用して、ポジティブ選択を実行した。異なるFACS選択ラウンドで、ライブラリーを(多特異性試薬)PSR結合、種交差反応性、及び抗原滴定による親和性圧力について評価した。所望の特徴を有する集団を得るために、選別が行われた。上記のそれぞれのFACS選択ラウンドからのそれぞれのコロニーを、配列決定及び特性評価のためにつつきとった。
【0246】
抗体産生及び精製
酵母クローンは飽和状態まで増殖し、その後、振とうしながら30℃で48時間誘導された。誘導後、酵母細胞をペレット化し、上清を精製のために回収した。プロテインAカラムを使用してIgGを精製し、pH2.0の酢酸で溶出した。
【0247】
ForteBio K測定
これらの抗CD19抗体は、ForteBio Octetシステム(Octet RED384、概して以前に記載されたように(例えば、Estep et al,Mabs 5(2),270-278(2013)を参照されたい)において可溶性CD19に対するそれらの結合親和性について試験された。簡潔に述べると、ForteBio親和性測定は、AHCセンサーにIgGをオンラインでロードすることにより実行された。抗体を抗ヒトIgGピンに固定し、可溶性CD19-HSA融合タンパク質(ヒト血清アルブミンに融合したCD19細胞外ドメイン)に結合させた。センサーは、アッセイ緩衝液で30分間オフラインで平衡化され、次いでベースラインの確立のために60秒間オンラインでモニターされた。IgGをロードしたセンサーを100nMの可溶性CD19-HSA融合タンパク質抗原に3分間曝露し、その後、オフレート測定のためにアッセイ緩衝液に3分間移した。すべての動力学は、1:1結合モデルを使用して分析した。結合動態の概要を表3に示す。例示的な抗体の親和性は、8nM~20nMの範囲であった。表3に示されるすべての抗CD19抗体のvHは、配列番号5のvH配列を含む。
【0248】
【表3】
【0249】
実施例2. 抗CD19抗体の細胞上結合
抗CD19抗体の細胞上結合は、内因性CD19を発現するRaji及びNALM-6の細胞株に対するフローサイトメトリーによって評価された。それぞれの抗体は、CD19陽性の親系統と対応するCD19ノックアウトの両方の、Raji及びNALM-6の系統で試験され、細胞上の標的特異的結合を確認した。図1に示すフローサイトメトリークロマトグラムは、対応するノックアウト細胞株のバックグラウンド結合よりもCD19陽性株で1~2logシフトしていることを示している。
【0250】
図2A~2Cに示す段階希釈フローサイトメトリーの結果は、NALM-6細胞に対する飽和結合を示している。曲線から計算されたEC50値を表4に示す。例示的な抗CD19抗体は、少なくとも0.2nMの高親和性でCD19陽性NALM-6細胞に結合する。可溶性タンパク質に対してCD19陽性細胞で観察されたより高い親和性は、これらの抗体が、CD19-HSA融合タンパク質よりも細胞上により自然に提示される可能性があるエピトープに結合することを示唆している。
【0251】
【表4】
【0252】
実施例3. 交差競合によるエピトープビニング
交差競合エピトープビニングアッセイを実施して、抗CD19抗体のいずれかが、参照抗CD19抗体であるデニンツズマブからの固有の非競合エピトープに結合したかどうかを決定した。エピトープビニング/リガンドブロッキングは、サンドイッチ形式のクロスブロッキングアッセイを使用して実行された。対照の抗標的IgGをAHQセンサーにロードし、センサー上の占有されていないFc結合部位を無関係なヒトIgG1抗体でブロッキングした。次いで、センサーを100nMの標的抗原に曝露した後、二次抗標的抗体またはリガンドに曝露した。抗原結合後の二次抗体またはリガンドによるさらなる結合は、占有されていないエピトープ(非競合)を示し、結合がないことはエピトープブロッキング(競合またはリガンドブロッキング)を示す。
【0253】
抗CD19参照対照のデニンツズマブを抗ヒトIgGピンで捕捉し、液相で可溶性CD19をロードした。解離ステップを実行する代わりに、それぞれの試験抗体で2回目のローディングを実行した。デニンツズマブからの競合しないエピトープに結合する抗体は、トレース上の新しい結合イベントを反映するが、同じエピトープを有する抗体は、平坦なトレースによって反映されるデニンツズマブによってブロックされる。図3に示す結果は、それぞれの抗体がデニンツズマブと競合するエピトープに結合することを示している。これらの結果は、抗体が参照抗CD19抗体デニンツズマブと競合するCD19上の同様のエピトープに結合することを示唆している。
【0254】
実施例4. 抗CD19 scFvのCD19結合の特性評価
共通のエピトープに対する相対的な競合は、Biacore SPRアッセイで評価された。このアッセイでは、抗CD19抗体2(配列番号42)のvH及びvLを含むscFvを、CD19-T2バインダー、SJ25c1、及びFMC63(Kymriahの「チサゲンレクルユーセル」及びYescarta の「アキシカブタゲン シロルユーセル」)に対する相対的な競合について評価された。抗体2 scFvをBiacore CM5チップに固定し、次いで、100nMのCD19-HSA-hisとそれぞれの競合scFvの滴定(0、50nM、100nM、200nM、及び800nM)の混合物を結合させた。3分間の競合結合ステップの後、緩衝液HBS-EP(300mMのNaCl)で5分間の解離を行った。
【0255】
CD19抗体1 scFvは、このアッセイで参照抗体のすべてと競合する(データは示さず)。FMC63 scFvは、最低濃度(50nM)でもCD19結合について完全に競合した。アッセイは、CD19への少量の結合が保存された25nMを含むように繰り返され、これらの抗体が、SJ25C1 scFvと類似しているがわずかにそれよりも高い親和性でCD19に結合することを示唆している。これらのデータは、試験したバインダーのすべてが、CD19上の重複するエピトープへの結合について競合することを示唆している。
【0256】
抗CD19抗体が非特異的膜タンパク質に結合する可能性をさらに評価するために、本明細書に記載のCD19抗体由来のscFvを表面膜タンパク質(SMP)アッセイで評価した。SMPアッセイは、プレート上にコーティングされたヒトHEK-293または昆虫SF9細胞膜を用いたELISAベースのアッセイで、試験抗体によるこれらの膜への非特異的結合を試験する。SPRアッセイと同様に、内部対照の高非特異結合抗体及び低非特異結合抗体(高非特異結合対照、sc209及び低非特異結合対照、5f9)が含まれた。得られた結果は、HEK-293膜またはSF9膜のいずれかでのCD19抗体に対する結合活性が低く、上記のSPRアッセイと一致していた。
【0257】
他の実施形態
本発明の多くの実施形態が本明細書に記載されているが、本開示及び実施例は、本発明の他の方法及び組成物を提供するために変更され得る。したがって、本発明の範囲が、一例として提示されている特定の実施形態に加えて、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきであることが理解されるであろう。本明細書に引用されるすべての参照は、その全体が参照により組み込まれている。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
【配列表】
2023523601000001.app
【国際調査報告】