(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(54)【発明の名称】遺伝性黄斑変性症の治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20230530BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/79 20060101ALI20230530BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230530BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230530BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230530BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230530BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230530BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230530BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230530BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230530BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230530BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C12N15/54
C12N15/90 Z ZNA
C12N15/88 Z
C12N15/63 Z
C12N15/79 Z
C12N5/10
A61P27/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K45/06
A61K9/51
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/14
A61K47/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565707
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2021030007
(87)【国際公開番号】W WO2021222654
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522418635
【氏名又は名称】サリオジェン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンズ、ジョセフ、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン、スコット
(72)【発明者】
【氏名】タビビアザール、レイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA27
4B065CA44
4C076AA65
4C076AA95
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4C084AA13
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4C084NA13
4C084ZA33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA33
(57)【要約】
患者において、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)またはその機能的断片を標的化するための遺伝子療法組成物及び方法であって、それによって、Stargardt疾患または網膜変性症を含む他の疾患を含む遺伝性黄斑変性症を治療または緩和する、方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子導入構築物を含む組成物であって、
(a)ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABC)トランスポーター(ABCA4)タンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸と、
(b)網膜特異的プロモーターと、
(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位、及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む、非ウイルスベクターと、を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記遺伝子導入構築物が、DNAまたはRNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記遺伝子導入構築物が、コドン最適化されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ABCA4タンパク質が、ヒトABCA4タンパク質、またはその機能的断片である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒトABCA4タンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸が、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒトABCA4タンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸が、配列番号2のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記網膜特異的プロモーターが、ヒトプロモーターである、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記網膜特異的プロモーターが、任意選択的に、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)プロモーター、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)プロモーター、及び卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーターから選択される網膜色素上皮(RPE)プロモーター、または任意選択的に、PDE、ロドプシンキナーゼ(GRK1)、CAR(錐体アレスチン)、RP1、及びL-オプシンから選択される光受容体プロモーター、またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記プロモーターが、任意選択的に、配列番号16の核酸配列、またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片を含む、CMVエンハンサー、ニワトリベータ-アクチンプロモーター、及びウサギベータ-グロビンスプライスアクセプター部位(CAG)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記RPEプロモーターが、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5の核酸配列、またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記光受容体プロモーターが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、もしくは配列番号9の核酸配列、またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記非ウイルスベクターが、DNAプラスミドである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記DNAプラスミドが、そばにある遺伝子の活性化または不活性化を防止または緩和する1つ以上のインスレーター配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ITRもしくは前記端部配列が、任意選択的に、TTAA反復性配列を含む、piggyBac様トランスポゾンのものであり、及び/または
前記ITRもしくは前記端部配列が、前記ABCA4タンパク質をコードする前記核酸に隣接する、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記非ウイルスベクターが、トランスポザーゼ、任意選択的に、RNAトランスポザーゼプラスミドをコードする核酸構築物を更に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
DNAトランスポザーゼプラスミドまたはインビトロ転写mRNAトランスポザーゼをコードする核酸構築物を更に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記トランスポザーゼが、前記遺伝子導入構築物から前記遺伝子を切除及び/または転移することが可能である、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記トランスポザーゼが、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来し、及び/またはその操作されたバージョンであり、及び/または前記トランスポザーゼが、前記ITRもしくは前記端部配列を特異的に認識する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記遺伝子が、トランスポザーゼの存在下での転移が可能である、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、脂質ナノ粒子(LNP)の形態にある、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジメチルアミノエタン-カルバモイルと混合されたカチオン性コレステロール誘導体(DC-Chol)、ホスファチジルコリン(PC)、トリオレイン(トリオレイン酸グリセリル)、ならびに1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG 2K)、及び1,2-ジステアロール(distearol)-sn-グリセロール-3-ホスホコリン(DSPC)から選択される1つ以上の脂質を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
ポリエチレンイミン(PEI)及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ならびにN-アセチルガラクトサミン(Gal-Nac)から選択される、1つ以上の分子を含む、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物を含む、単離された細胞。
【請求項24】
患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるための方法であって、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるための方法であって、
(a)患者または別の個体から得られた細胞を、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物と接触させることと、
(b)前記細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項26】
前記方法が、前記患者の遠見視力(distance visual acuity)を改善する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、投与を行わないレチンアルデヒド、N-レチニリデン-N-レチニルエタノールアミン(A2E)、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上のレベルと比較して、レチンアルデヒド、A2E、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上を、任意選択的に、約40%超、または約50%超、または約60%超、または約70%超、または約80%超、または約90%超低下させることを提供する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、網膜における、任意選択的に、前記RPE及び/またはBruch膜におけるリポフスチン蓄積を低下または防止する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、ステロイド治療の不在下で実施される、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、実質的に非免疫原性である、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
光受容体喪失の前記防止またはその前記速度の減少が、恒久的である、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、単回投与を必要とする、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、網膜色素上皮(RPE)破片の形成を低減または防止する、請求項24~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物を投与することを更に含む、請求項24~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞を、任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、もしくはTrichoplusia niに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物と接触させることを更に含む、請求項24~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記投与することが、硝子体内、または網膜内、または硝子体下、または網膜下である、請求項24~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記投与することが、RPE細胞及び/または光受容体へのものである、請求項24~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記投与することが、注射による、請求項24~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ABCA4タンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸対前記トランスポザーゼをコードする核酸構築物の比が、約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5である、請求項34~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ABCA4タンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸対前記トランスポザーゼをコードする核酸構築物の前記比が、約2:1である、請求項34~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
遺伝性黄斑変性症(IMD)を治療及び/または緩和するための方法であって、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
遺伝性黄斑変性症(IMD)を治療及び/または緩和するための方法であって、
(a)患者または別の個体から得られた細胞を、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物と接触させることと、
(b)前記細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項43】
前記IMDが、STGDであり、前記STGD疾患が、任意選択的に、STGDタイプ1(STGD1)である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記IMDが、ABCA4、ELOVL4、PROM1、BEST1、及びPRPH2のうちの1つ以上における1つ以上の変異を特徴とし、前記ABCA4変異が、任意選択的に、常染色体劣性変異である、請求項41~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記方法が、治療の欠如と比較して、遠見視力の改善及び/または光受容体喪失の前記速度の減少を提供する、請求項41~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、最高矯正視力(BCVA)の約20/200超までの改善をもたらす、請求項41~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記方法が、眼底自発蛍光(FAF)またはスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定した、網膜または中心窩の形状の改善をもたらす、請求項41~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、前記患者における、変視症(wavy vision)、盲点、かすみ、奥行き知覚の喪失、まぶしさへの感受性、色覚障害、及び薄暗い照明への適応困難(暗所適応の遅延)のうちの1つ以上の低減または防止をもたらす、請求項41~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記方法が、ステロイド治療の必要性を排除する、請求項41~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、前記患者の遠見視力を改善する、請求項41~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記方法が、実質的に非免疫原性である、請求項41~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記治療及び/または緩和が、恒久的である、請求項41~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、単回投与を必要とする、請求項41~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記方法が、網膜色素上皮(RPE)破片の形成を低減または防止する、請求項41~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物を投与することを更に含む、請求項41~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与することが、硝子体内または網膜内である、請求項41~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記投与することが、RPE細胞及び/または光受容体へのものである、請求項41~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与することが、注射による、請求項41~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記細胞を、任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物と接触させることを更に含む、請求項42~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記ABCA4タンパク質またはその機能的断片をコードする前記核酸対前記トランスポザーゼをコードする前記核酸構築物の前記比が、約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5である、請求項55~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記ABCA4、またはその機能的断片をコードする前記核酸対前記トランスポザーゼをコードする前記核酸構築物の前記比が、約2:1である、請求項55~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
遺伝子導入構築物を含む組成物であって、
(a)ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABC)トランスポーター(ABCA4)タンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸と、
(b)CAGプロモーターと、
(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位、及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む、非ウイルスベクターと、を含み、
前記ABCA4タンパク質が、配列番号2のヌクレオチド配列によってコードされるヒトABCA4もしくはその機能的断片、またはそれに対して少なくとも約95%の同一性を有するバリアントである、前記組成物。
【請求項63】
遺伝性黄斑変性症(IMD)を治療及び/または緩和するための方法であって、
(a)患者または別の個体から得られた細胞を、請求項62に記載の組成物と接触させることと、
前記細胞を、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物と接触させることであって、ABCA4またはその機能的断片対トランスポザーゼの前記比が、約2:1である、前記接触させることと、
(c)前記細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、療法、例えば、遺伝性黄斑変性症(IMD)を治療及び/または緩和するための方法、組成物、及び製品に部分的に関連する。
【0002】
優先権
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2020年4月29日出願の米国仮特許出願第63/017,442号の優先権及び利益を主張する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願は、EFS-Webを介して電子的に本明細書とともに提出されたASCII形式の配列表を含有する。2021年4月28日に作成されたASCIIコピーは、SAL-002PR_Sequence_Listing_ST25.txtという名称であり、64,498バイトのサイズである。配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
黄斑変性症は、網膜の中心部に見られる黄斑の細胞-光を感知する眼の後部の組織-が損傷を受けた状態である。通常、視力喪失が徐々に発生し、典型的には異なる速度で両眼に影響を及ぼす。黄斑ジストロフィー(MD)とも呼ばれる遺伝性黄斑変性症(IMD)は、検眼鏡によって目視可能な異常を網膜に引き起こす遺伝性傷害の群を指す。
【0005】
1909年にドイツ人眼科医Karl Stargardtによって初めて記載されたStargardt疾患(STGD)は、IMDの最も一般的な形態である。これは、通常、網膜の劣性遺伝障害である。疾患の別名としては、Stargardt黄斑ジストロフィー(SMD)、若年性黄斑変性症、または黄色斑眼底が挙げられる。STGDは、典型的には、小児期または青年期に視力喪失を引き起こすが、時折成人期の後半まで、視力喪失が気付かれない場合がある。STGDは、まっすぐ前方の視力を担う網膜の中心部の小さな領域にある、黄斑の進行性損傷、または変性を引き起こす。STGDの世界的な発生率は、8,000~10,000人に1人と推定されている。
【0006】
STGDは、黄斑変性症を引き起こすいくつかの遺伝子障害のうちの1つであり、網膜における光を感知する光受容体細胞の喪失に起因する進行性の視力の悪化を特徴とする。中心視力の喪失は、読み書き、周囲環境で安全に歩行する能力を劇的に低減し、その人の生活の質を顕著に低減する。劣性Stargardt疾患(STGD1)は、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)における変異によって引き起こされる、Stargardt疾患の群を抜いて最も一般的な形態である。ABCA4遺伝子/タンパク質は、光受容(PR)細胞において発現する。STGD1は、部分的に消化されたタンパク質及び脂質の蛍光混合物であるリポフスチンが、網膜色素上皮(RPE)のリソソーム区画に堆積することによって現れ、これによって、光受容体変性が生じる。RPEは、先天性免疫の重要な構成要素である免疫系の補体部分に会合するmRNA及びタンパク質の発現を通じて、免疫応答を制御する役割を果たす。加齢黄斑変性症(AMD)は、STGD1と顕著な類似性を有する疾患であり、RPEリポフスチン蓄積及び補体調節異常とも関連する。Lenis et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2017 Apr 11;114(15):3987-3992.
【0007】
STGDの別の形態は、PROM1遺伝子における稀な優性欠損であるSTGD4である。Kniazeva et al.Am J Hum Genet.1999;64:1394-1399.Stargardt様ジストロフィーとしても知られているSTGD3は、STGDの別の稀な優性形態であり、超長鎖脂肪酸様4遺伝子の伸長(ELOVL4)における変異によって引き起こされる。Agbaga et al.Invest Ophthalmol Vis Sci.2014;55:3669-3680.
【0008】
IMDの既存の療法としては、重水素化ビタミンA、微小電流刺激(MCS)、RPE移植、栄養補助食品、幹細胞療法、及び補体系の調節が挙げられる。しかしながら、これらの努力にもかかわらず、現在、一般的なIMD、特にSTGDの治療に有効な療法は存在しない。一般的に使用されるアデノ随伴ウイルス(AAV)は、他の網膜障害の中でも、STGDの原因となる遺伝子であるABCA4(6.8kb)を含む、5kb超のコード配列を有する遺伝子の容量を有さないので、IMD疾患のための遺伝子療法開発は困難である。
【0009】
したがって、Stargardt疾患等のIMD、ならびに他の黄斑ジストロフィーを効率的に防止及び治療するための組成物及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
様々な態様では、本発明は、世界的に失明の主要な原因である遺伝性黄斑変性症(IMD)障害を治療及び/または緩和するための組成物及び方法を提供する。IMDとしては、Stargardt疾患、ならびにBest疾患、X連鎖性網膜分離症、パターンジストロフィー、Sorsby眼底ジストロフィー、及び常染色体優性ドルーゼンを含む他の黄斑ジストロフィー(MD)が挙げられる。本発明の組成物及び方法は、これらの疾患に関連する遺伝子欠損を補正するために配列特異的または遺伝子座特異的転移(SLST)を使用するトランスポゾン発現ベクターを含む遺伝子導入構築物を使用する。記載の組成物及び方法は、遺伝子導入の非ウイルスモードを用いる。したがって、ウイルスベクターの使用に関連する欠点が克服される。
【0011】
いくつかの態様では、(a)ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)タンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸と、(b)網膜特異的プロモーターと、(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む非ウイルスベクターと、を含む、遺伝子導入構築物を含む組成物が提供される。
【0012】
本開示による遺伝子療法は、導入される遺伝子(シス)と同じベクター上、または異なるベクター(トランス)上、またはRNAとして提供されるトランスポザーゼによる補助を用いる、トランスポゾンに基づくベクター系を使用して実施することができる。トランスポゾンに基づくベクター系は、網膜特異的プロモーターの制御下で動作することができる。
【0013】
実施形態では、例えば、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンが、ABCA4遺伝子またはその機能的断片を患者のゲノムに挿入するために使用される。
【0014】
実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号10のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアント、ならびにL573X、E574X、及びS2Xから選択される1つ以上の変異を含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)であり、Xが、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、A、G、または欠失である。実施形態では、変異は、L573del、E574del、及びS2Aである。
【0015】
実施形態では、MLTトランスポザーゼは、変異L573del、E574del、及びS2A(配列番号10)、加えて、高活性(または高活性変異)を付与する1つ以上の変異を有する、アミノ酸配列を含む。実施形態では、高活性変異は、S8X、C13X、及びN125X変異のうちの1つ以上であり、Xが、任意選択的に、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、P、R、またはKである。実施形態では、変異は、S8P、C13R、及びN125Kである。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P及びC13R変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、N125K変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P、C13R、及びN125K変異の3つ全てを有する。
【0016】
記載の組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を使用して宿主細胞に送達され得る。いくつかの実施形態では、LNPは、中性または構造的脂質(例えばDSPC)、カチオン性脂質(例えばMC3)、コレステロール、PEG共役脂質(CDM-PEG)、及び標的化リガンド(例えばN-アセチルガラクトサミン(GalNAc))から選択される1つ以上の分子を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、変異したABCA4または他の遺伝子(例えば、ELOVL4、PROM1、BEST1、またはPRPH2)を有する細胞への、アシアロ糖タンパク質(Asialoglycoprotein)受容体(ASGPR)によって媒介される取り込みのためのGalNAcまたは別のリガンドを含む。
【0017】
いくつかの態様では、インビボまたはエクスビボ方法であり得る、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるための方法が提供される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の実施形態による組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、(a)患者(自己)または他の個体(同種異系)から得られた細胞を、記載の組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することとを含む、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるためのエクスビボ方法が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、STGD、Best疾患、X関連性網膜分離症、パターンジストロフィー、Sorsby眼底ジストロフィー、及び常染色体優性ドルーゼンを含む部類のIMD(黄斑ジストロフィー(MD)とも称される)を治療及び/または緩和するための方法が提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、インビボまたはエクスビボでも実施することができる、IMDを治療及び/または緩和するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の実施形態よる組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、IMDを治療及び/または緩和するための方法は、(a)患者または別の個体から得られた細胞を、本開示の組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む。
【0020】
IMDは、STGDであり得、いくつかの実施形態では、STGDは、STGDタイプ1(STGD1)であり得る。いくつかの実施形態では、STGDは、STGDタイプ3(STGD3)またはSTGDタイプ4(STGD4)疾患であり得る。IMDは、ABCA4、ELOVL4、PROM1、BEST1、及びPRPH2のうちの1つ以上における変異を特徴とし得る。ABCA4変異は、常染色体劣性または優性変異であり得る。本開示よる方法は、治療の欠如と比較して、遠見視力(distance visual acuity)の改善、及び/または光受容体喪失の速度の減少を含む、例えば、Stargardt疾患等のIMDの症状を低減、減少、または緩和することを可能にする。いくつかの実施形態では、方法は、最高矯正視力(BCVA)の約20/200超までの改善をもたらす。
【0021】
本開示の実施形態による組成物及び方法は、実質的に非免疫原性であり、いかなる管理不能な副作用も引き起こさず、場合によっては、単回投与を介して効果的に送達され得る。光受容体喪失の防止またはその速度の減少は、堅牢かつ恒久的であり得る。記載の組成物及び方法は、網膜(例えば、RPE及び/またはBruch膜)におけるリポフスチン蓄積を低下または防止し、網膜色素上皮(RPE)破片の形成を低減または防止し、患者の遠見視力を改善する。
【0022】
本開示のいくつかの態様では、本開示の実施形態による組成物を含む単離された細胞が提供される。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、治療の欠如と比較して、遠見視力の改善及び/または光受容体喪失の速度の減少を提供する。方法はまた、最高矯正視力(BCVA)の約20/200超までの改善をもたらし得る。いくつかの実施形態では、方法は、眼底自発蛍光(FAF)またはスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定した、網膜または中心窩の形状の改善をもたらす。同様に、他の撮像技術も使用され得る。
【0024】
記載の方法は、患者の視力を改善する。いくつかの実施形態では、方法は、患者における、変視症(wavy vision)、盲点、かすみ、奥行き知覚の喪失、まぶしさへの感受性、色覚障害、及び薄暗い照明への適応困難(暗所適応の遅延)のうちの1つ以上の低減または防止をもたらす。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、ステロイド治療の必要性を排除する。加えてまたはあるいは、方法は、ソラプラザン、イソトレチノイン、ドベシラート、4-メチルピラゾール、ALK-0019(C20重水素化ビタミンA)、フェンレチニド(ビタミンAの合成形態)、LBS-500、A1120、エミクススタット、フェノフィブラート、アバシンカプタドペゴル、及び他の治療剤の必要性を排除し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、本組成物及び方法はソラプラザン、イソトレチノイン、ドベシラート、4-メチルピラゾール、ALK-0019(C20重水素化ビタミンA)、フェンレチニド(ビタミンAの合成形態)、LBS-500、A1120、エミクススタット、フェノフィブラート、アバシンカプタドペゴル、及び他の治療剤から選択される1つ以上の追加の治療剤の使用を伴う。
【0026】
本発明の他の態様及びある特定の実施形態は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】網膜細胞株におけるトランスフェクション、転移有効性、及び発現研究で使用することができるベクターの概略図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態で使用される脂質ナノ粒子構造を示す。
【
図3】変動するリポフェクション試薬、ならびに本開示のMLTトランスポザーゼ1(N125K変異を有するMLT)またはMLTトランスポザーゼ2(S8P/C13R変異を有するMLT)のいずれかとのトランスフェクションの24時間後の661Wマウス光受容体細胞の、トランスフェクトされていない細胞と比較した、GFP発現を示す。上段は、トランスフェクトされていない661Wマウス光受容体細胞、L3(リポフェクタミン3000)及びMLT1を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、ならびにL3及びMLT2を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞を示し、中段は、トランスフェクトされていない661Wマウス光受容体細胞、LTX(リポフェクタミンLTX&PLUS)及びMLT1を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、ならびにLTX及びMLT2を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞を示し、下段は、トランスフェクトされていない661Wマウス光受容体細胞、MAX(リポフェクタミンメッセンジャーMAX)及びMLT1を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、ならびにMAX及びMLT2を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞を示す。
【
図4】15日間にわたる4回の継代後のマウス光受容体細胞株661Wにおける転移によるドナーDNA(GFP)の安定的な組み込みを示す。段は、3、6、9、12、及び15日目の結果を示し、列は、トランスフェクトされていない細胞、ドナーDNAのみでトランスフェクトされた細胞、ドナーDNA及びMLT1でトランスフェクトされた細胞、ならびにドナーDNA及びMLT2でトランスフェクトされた細胞の結果を示す。
【
図5】15日目のマウス光受容体細胞株661Wにおける転移によるドナーDNA(GFP)の安定的な組み込みのFACS分析の結果を示す棒グラフである。GFP発現のパーセント(%)は、トランスフェクトされていない細胞、ドナーDNAのみでトランスフェクトされた細胞(「+GFPのみ」)、ドナーDNA及びMLT1でトランスフェクトされた細胞(「MLT1+GFP」)、ならびにドナーDNA及びMLT2でトランスフェクトされた細胞(「MLT2+GFP」)について示されている。
【
図6】トランスフェクションの24時間後のARPE-19細胞におけるGFPの発現を示す。上段は、トランスフェクトされていないARPE-19細胞、L3のみを含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、L3及びMLT1を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、ならびにL3及びMLT2を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞を示し、中段は、トランスフェクトされていないARPE-19細胞、LTXのみを含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、LTX及びMLT1を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、ならびにLTX及びMLT2を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞を示し、下段は、トランスフェクトされていないARPE-19細胞、MAXのみを含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、MAX及びMLT1を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞、ならびにMAX及びMLT2を含むトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞を示す。
【
図7】トランスフェクションの24時間後の、MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2の目視可能なGFP発現のより高い解像度画像を示す。
【
図8】MLTトランスポザーゼ2(MLT2)を用いた、光受容体細胞株ARPE19におけるドナーDNA(GFP)の安定的な組み込みを示す。段は、4、8、12、及び15日目の結果を示し、列は、ドナーDNAのみでトランスフェクトされた細胞、ならびにドナーDNA及びMLT2でトランスフェクトされた細胞の結果を示す。
【
図9】4世代の細胞分裂後のARPE19細胞株における転移によるドナーDNA(GFP)の安定的な組み込みのFACS分析の結果を示す棒グラフである。GFP発現のパーセント(%)は、トランスフェクトされていない細胞、ドナーDNAのみでトランスフェクトされた細胞(「+GFPのみ」)、ドナーDNA及びMLT1でトランスフェクトされた細胞(「MLT1+GFP」)、ならびにドナーDNA及びMLT2でトランスフェクトされた細胞(「MLT2+GFP」)について示されている。
【
図11】DNAのみを注射したマウス3-1L及び3-1R右眼(
図11A及び
図11C)ならびにドナーDNA及びMLT2を注射したマウス3-1L及び3-1R左眼(
図11B及び
図11D)の画像を示す。
【
図13】ドナーDNAのみを注射したマウス4-NP右眼(
図13A)、ならびにドナーDNA及びMLT2の両方を注射した左眼(
図13B)の画像を示す。
【
図14】ドナーDNAのみを注射したマウス4-1L右眼(
図14A)、ならびにドナーDNA及びMLT2の両方を注射した左眼(
図14B)の画像を示す。
【
図15】ドナーDNAのみを注射したマウス5-BP右眼(
図15A)、ならびにドナーDNA及びMLT2の両方を注射した左眼(
図15B)の画像を示す。
【
図16】本開示のいくつかの実施形態による、DNAドナー及びRNAヘルパーを使用した、661Wマウス光受容体細胞及び網膜上皮(ARPE19)細胞の転移の有効性を評価する実験の設計を示す。
【
図17】トランスフェクションで使用したMLTトランスポザーゼを含む(「+MLT」)かまたは含まない(「-MLT」)、網膜下注射の21日後に撮影した、マウスの左眼及び右眼(それぞれ上段及び下段)の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるために、非ウイルス性の、カプシドを含まない遺伝子療法方法及び組成物を使用することができるという発見に部分的に基づいている。本開示による非ウイルス遺伝子療法方法は、遺伝性黄斑変性症(IMD)に対する網膜指向性遺伝子療法での使用を見出す。いくつかの実施形態では、本方法及び組成物は、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)における変異によって引き起こされるStargardt疾患(STGD)の網膜指向性遺伝子療法での使用を見出す。記載の方法及び組成物は、遺伝子導入構築物からのABCA4もしくは別の遺伝子またはそれらの機能的断片の、宿主ゲノムへの転移を用いる。記載の方法及び組成物は、網膜(例えば、RPE及び/またはBruch膜、及び光受容体)におけるリポフスチン蓄積を低下または防止し、患者の遠見視力を改善する。
【0029】
STGDは、網膜色素上皮(RPE)における黄斑萎縮及び周辺の斑点を特徴とする。ABCA4遺伝子は、杆体及び錐体光受容体に見られる、具体的にはN-レチニリジン-ホスファチジルエタノール-アミン(N-RPE)等のビタミンA中間体のRPEへの輸送に関与する膜貫通タンパク質であるタンパク質(ABCA4タンパク質)をコードする。ABCA4は、光受容体細胞からのall-トランス-レチナール(反応性ビタミンAアルデヒド)のクリアランスを担い、ABCA4機能の喪失は、光受容体細胞の外側セグメント膜へのビス-レチノイド(N-RPE等)の蓄積をもたらし、ひいてはリポフスチンの形成を引き起こす。これは、最終的には、RPEにおける高レベルのリポフスチンの蓄積(したがって、網膜の自発蛍光を増加させる)、ならびに進行するRPE喪失及び光受容体細胞喪失をもたらす。
【0030】
ABCA4の変異は、杆体-錐体ジストロフィー(STGD疾患では錐体及び杆体が死滅する)及び網膜色素変性症(網膜における細胞の分解及び喪失)を含む、広範な表現型に関連する。例えば、Song et al.,JAMA,Ophthalmol.2015;133(10):1198-1203を参照されたい。同様に、MDの原因となる他の遺伝子における変異も同様に、患者間で異なる様々な表現型を呈する。
【0031】
上述のように、ABCA4を伴う遺伝子療法のためにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用することは、AAVの4.5kb~5.0kbの容量を超えるABCA4(6.8kb)のサイズによって妨げられる。したがって、ウマ伝染性貧血レンチウイルス(EIAV)が、網膜下注射による遺伝子導入に使用されている。Kong et al.,Gene Ther.2008;15(19):1311-1320.ABCA4の比較的大きなサイズに対処した別のアプローチは、2つの導入遺伝子断片が宿主細胞内で組み合わさるように、遺伝子を2つのAAVベクターにわたって分割することであった。Dyka et al.,Hum Gene Ther.2019;Nov;30(11):1361-1370.
【0032】
本開示の組成物及び方法は、ABCA4または他の標的遺伝子(複数可)の変異コピーを置き換える導入遺伝子の非ウイルス送達を提供する。したがって、本開示の組成物及び方法は、患者のゲノムにおける病原性バリアントを補正し、したがって、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるための、ABCA4またはその機能的断片を標的とする遺伝子導入構築物を提供する。したがって、本開示のいくつかの態様では、(a)ABCA4タンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸と、(b)網膜特異的プロモーターと、(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む非ウイルスベクターと、を含む、遺伝子導入構築物を含む組成物が提供される。
【0033】
いくつかの実施形態では、ABCA4タンパク質は、ヒトABCA4タンパク質、またはその機能的断片である。実施形態では、ヒトABCA4をコードする遺伝子は、ヒトABCA4である(GenBank Acc.No.NM_000350)。ヒトABCA4をコードする核酸は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含み得る。いくつかの実施形態では、ヒトABCA4をコードする核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ヒトABCA4をコードする核酸は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトABCA4をコードする核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0035】
配列番号1は、以下である。
【0036】
【0037】
実施形態では、ヒトABCA4は、配列番号2のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有する、コドン最適化バージョンを含むバリアントによってコードされる。配列番号2は、以下である。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示は、二重トランスポゾン及びトランスポザーゼ系を介した遺伝子導入のための組成物及び方法に関する。転移可能な因子は、天然に普遍的に見出される非ウイルス遺伝子送達ビヒクルである。トランスポゾンに基づくベクターは、細胞への導入遺伝子構築物の安定的なゲノム組み込み及び長期間の発現の能力を有する。総じて、二重トランスポゾン及びトランスポザーゼ系は、目的の導入遺伝子(複数可)を含有するトランスポゾンDNAが、反復性配列部位でトランスポザーゼ酵素によって染色体DNAに組み込まれることによる、切断及び貼り付け機序を介して機能する。
【0042】
当該技術分野において理解されるであろうように、トランスポゾンは、多くの場合、トランスポゾンの中央の導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレームと、トランスポゾンの5’及び3’末端の末端反復配列と、を含む。翻訳されたトランスポザーゼは、トランスポゾンの5’及び3’配列に結合し、転移機能を実行する。
【0043】
実施形態では、トランスポゾンは、それら自体のコピーを他のポリヌクレオチドに挿入することが可能なポリヌクレオチドを指すために使用される、転移可能な因子と同義に使用される。トランスポゾンという用語は、当業者に周知であり、配列編成、例えば、各末端での短い逆位反復(ITR)、及び/または末端での直接的に繰り返される長い末端反復(LTR)に基づいて区別され得る部類のトランスポゾンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトランスポゾンは、piggyBac様因子、例えば、TTAA配列を認識し、トランスポゾンの除去後に挿入部位の配列を元のTTAA配列に戻す、痕跡が残らない切除を特徴とするトランスポゾン因子として説明することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、トランスポザーゼによって認識されるITRに隣接する、トランスポゾン媒介性遺伝子導入系(例えば、DNAプラスミドトランスポゾン系)である。いくつかの実施形態では、ITRは、ABCA4遺伝子をコードする核酸に隣接する。非ウイルスベクターは、トランスポザーゼによって認識される2つの末端に隣接する異種ポリヌクレオチド(導入遺伝子とも称される)を含む、トランスポゾンに基づくベクター系として動作する。トランスポゾン末端は、正確または不正確な反復であってもよく、互いに対して方向が逆のITRを含む。トランスポザーゼは、トランスポゾン末端に作用して、それによって、トランスポゾンを(トランスポゾン末端とともに)ベクターから「切断」し、トランスポゾンを宿主ゲノムに「貼り付ける」かまたは組み込む。実施形態では、トランスポザーゼは、DNA発現ベクターとして、またはトランスポザーゼの長期発現がトランスジェニック細胞において生じないように、発現可能なRNAもしくはタンパク質として提供される。
【0045】
実施形態では、遺伝子導入系は、トランスポゾンをコードする核酸(DNA)であり、「ドナーDNA」と称される。実施形態では、トランスポザーゼをコードする核酸は、ヘルパーRNA(すなわち、トランスポザーゼをコードするmRNA)であり、トランスポゾンをコードする核酸は、ドナーDNA(またはDNAドナートランスポゾン)である。実施形態では、ドナーDNAは、プラスミドに組み込まれる。実施形態では、ドナーDNAは、プラスミドである。
【0046】
「切断及び貼り付け」機序を使用する移動性因子であるDNAドナートランスポゾンとしては、ヒト(Homo sapiens)を含む哺乳類(例えば、Myotis lucifugus、Myotis myotis、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、及びPan troglodytes)の場合では2つの端部配列に隣接するドナーDNA、または昆虫(例えば、Trichnoplusia ni)もしくは両生類(Xenopus種)等の他の生体では逆位末端反復(ITR)が挙げられる。ゲノムDNAは、宿主のドナー部位での二本鎖切断によって切除され、ドナーDNAは、この部位に組み込まれる。生物工学的に操作されたトランスポゾン及びトランスポザーゼを使用する二重系は、(1)TTAA等の特定のヌクレオチド配列で「切断」する活性トランスポザーゼの供給源、及び(2)トランスポザーゼによって移動される認識端部配列またはITRに隣接するDNA配列(複数可)を含む。DNA配列の移動によって、DNAフットプリントを用いずに特定のヌクレオチド配列(すなわち、TTAA)に介在核酸または導入遺伝子を挿入することが可能になる。
【0047】
実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号10のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアントを含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)である。実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアント、及びS2Xを含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)であり、Xが、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、A、G、または欠失である。
【0048】
実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアント、及びS2Xを含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)であり、Xが、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、AまたはGであり、C末端欠失が、L573X及びE574Xから選択され、Xが、非アミノ酸である。実施形態では、変異は、L573del、E574del、及びS2Aである。
【0049】
実施形態では、MLTトランスポザーゼは、変異L573del、E574del、及びS2Aを含む配列番号10のアミノ酸配列:
MAQHSDYSDDEFCADKLSNYSCDSDLENASTSDEDSSDDEVMVRPRTLRRRRISSSSSDSESDIEGGREEWSHVDNPPVLEDFLGHQGLNTDAVINNIEDAVKLFIGDDFFEFLVEESNRYYNQNRNNFKLSKKSLKWKDITPQEMKKFLGLIVLMGQVRKDRRDDYWTTEPWTETPYFGKTMTRDRFRQIWKAWHFNNNADIVNESDRLCKVRPVLDYFVPKFINIYKPHQQLSLDEGIVPWRGRLFFRVYNAGKIVKYGILVRLLCESDTGYICNMEIYCGEGKRLLETIQTVVSPYTDSWYHIYMDNYYNSVANCEALMKNKFRICGTIRKNRGIPKDFQTISLKKGETKFIRKNDILLQVWQSKKPVYLISSIHSAEMEESQNIDRTSKKKIVKPNALIDYNKHMKGVDRADQYLSYYSILRRTVKWTKRLAMYMINCALFNSYAVYKSVRQRKMGFKMFLKQTAIHWLTDDIPEDMDIVPDLQPVPSTSGMRAKPPTSDPPCRLSMDMRKHTLQAIVGSGKKKNILRRCRVCSVHKLRSETRYMCKFCNIPLHKGACFEKYHTLKNY(配列番号10)、
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、配列番号10のアミノ酸配列を含むMLTトランスポザーゼは、以下のヌクレオチド配列:
atggcccagcacagcgactacagcgacgacgagttctgtgccgataagctgagtaactacagctgcgacagcgacctggaaaacgccagcacatccgacgaggacagctctgacgacgaggtgatggtgcggcccagaaccctgagacggagaagaatcagcagctctagcagcgactctgaatccgacatcgagggcggccgggaagagtggagccacgtggacaaccctcctgttctggaagattttctgggccatcagggcctgaacaccgacgccgtgatcaacaacatcgaggatgccgtgaagctgttcataggagatgatttctttgagttcctggtcgaggaatccaaccgctattacaaccagaatagaaacaacttcaagctgagcaagaaaagcctgaagtggaaggacatcacccctcaggagatgaaaaagttcctgggactgatcgttctgatgggacaggtgcggaaggacagaagggatgattactggacaaccgaaccttggaccgagaccccttactttggcaagaccatgaccagagacagattcagacagatctggaaagcctggcacttcaacaacaatgctgatatcgtgaacgagtctgatagactgtgtaaagtgcggccagtgttggattacttcgtgcctaagttcatcaacatctataagcctcaccagcagctgagcctggatgaaggcatcgtgccctggcggggcagactgttcttcagagtgtacaatgctggcaagatcgtcaaatacggcatcctggtgcgccttctgtgcgagagcgatacaggctacatctgtaatatggaaatctactgcggcgagggcaaaagactgctggaaaccatccagaccgtcgtttccccttataccgacagctggtaccacatctacatggacaactactacaattctgtggccaactgcgaggccctgatgaagaacaagtttagaatctgcggcacaatcagaaaaaacagaggcatccctaaggacttccagaccatctctctgaagaagggcgaaaccaagttcatcagaaagaacgacatcctgctccaagtgtggcagtccaagaaacccgtgtacctgatcagcagcatccatagcgccgagatggaagaaagccagaacatcgacagaacaagcaagaagaagatcgtgaagcccaatgctctgatcgactacaacaagcacatgaaaggcgtggaccgggccgaccagtacctgtcttattactctatcctgagaagaacagtgaaatggaccaagagactggccatgtacatgatcaattgcgccctgttcaacagctacgccgtgtacaagtccgtgcgacaaagaaaaatgggattcaagatgttcctgaagcagacagccatccactggctgacagacgacattcctgaggacatggacattgtgccagatctgcaacctgtgcccagcacctctggtatgagagctaagcctcccaccagcgatcctccatgtagactgagcatggacatgcggaagcacaccctgcaggccatcgtcggcagcggcaagaagaagaacatccttagacggtgcagggtgtgcagcgtgcacaagctgcggagcgagactcggtacatgtgcaagttttgcaacattcccctgcacaagggagcctgcttcgagaagtaccacaccctgaagaattactag(配列番号11)、
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0051】
いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼ(例えば、配列番号10のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するMLTトランスポザーゼ)は、MLTトランスポザーゼに高活性を付与する1つ以上の高活性変異を含む。実施形態では、高活性変異は、配列番号10のアミノ酸配列またはその機能的等価物と比較して、S8X、C13X、及びN125X変異のうちの1つ以上であり、Xが、任意選択的に、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、P、R、またはKである。実施形態では、変異は、S8P、C13R、及びN125Kである。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P及びC13R変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、N125K変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P、C13R、及びN125K変異の3つ全てを有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、配列番号10のアミノ酸配列と比較して、N125Kの変異を有するアミノ酸(配列番号13)に対応するヌクレオチド配列(配列番号12)
【0053】
【0054】
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列(N125K変異に対応するコドンは下線が引かれ、太字である)。
【0055】
【0056】
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列(N125K変異に対応するアミノ酸は下線が引かれ、太字である)によってコードされる。
【0057】
いくつかの実施形態では、配列番号12のヌクレオチド配列によってコードされ、配列番号13のアミノ酸配列を有するMLTトランスポザーゼは、MLTトランスポザーゼ1(またはMLT1)と称される。
【0058】
いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、配列番号10のアミノ酸配列またはその機能的等価物と比較して、S8P及びC13Rの変異を有するアミノ酸(配列番号15)に対応するヌクレオチド配列(配列番号14)(配列番号14及び配列番号15が、以下のとおりである):
【0059】
【0060】
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列(S8P及びC13R変異に対応するコドンは、下線が引かれ、太字である)。
【0061】
【0062】
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列(S8P及びC13R変異に対応するアミノ酸は下線が引かれ、太字である)によってコードされる。
【0063】
いくつかの実施形態では、配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされ、配列番号15のアミノ酸配列を有するMLTトランスポザーゼは、MLTトランスポザーゼ2(またはMLT2)と称される。
【0064】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Tc1/マリナートランスポゾン(mariner transposon)からのものである。例えば、Plasterk et al.Trends in Genetics.1999;15(8):326-32を参照されたい。
【0065】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Sleeping Beautyトランスポゾン系(例えば、Cell.1997;91:501-510を参照されたい)またはpiggyBacトランスポゾン系(例えば、Trends Biotechnol.2015Sep;33(9):525-33.doi:10.1016/j.tibtech.2015.06.009.Epub 2015 Jul 23を参照されたい)からのものである。
【0066】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、LEAP-IN1型またはLEAP-INトランスポゾン系(Biotechnol J.2018 Oct;13(10):e1700748.doi:10.1002/biot.201700748.Epub 2018 Jun 11)からのものである。
【0067】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、LEAP-IN1型のLEAPINトランスポザーゼ(ATUM,Newark,CA)を含む。LEAPINトランスポザーゼ系は、トランスポザーゼ(例えば、トランスポザーゼmRNA)と、トランスポゾンの同族逆位末端反復(ITR)及び転移認識モチーフ(TTAT)に隣接する、1つ以上の目的の遺伝子(トランスポゾン)、選択マーカー、調節因子等を含有するベクターと、を含む。ベクターDNA及びトランスポザーゼmRNAの共トランスフェクションの際に、一過性に発現した酵素は、宿主細胞のゲノム全体にわたる1つ以上の部位で、トランスポゾンカセットの単一コピー(ITR間の全ての配列)の高効率かつ正確な組み込みを触媒する。Hottentot et al.In Genotyping:Methods and Protocols.White SJ,Cantsilieris S,eds:185-196.(New York,NY:Springer):2017.pp.185-196.LEAPINトランスポザーゼは、主にオープンクロマチンセグメントにおいて、複数のゲノム遺伝子座における単一コピーの組み込みを含む、様々な有利な特徴を有する安定的な導入遺伝子組み込み物を生成し、ペイロード制限がないので、複数の独立した転写単位を単一構築物から発現させることができ、組み込まれた導入遺伝子は、それらの構造的及び機能的完全性を維持し、導入遺伝子完全性の維持は、全ての組換え細胞における所望の鎖比を確保する。
【0068】
いくつかの実施形態では、ABCA4は、導入遺伝子(例えば、ABCA4またはその機能的断片)の全体的な発現レベル及び細胞特異性に影響を及ぼすことができるプロモーターに動作可能に結合される。
【0069】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーター及びウサギベータ-グロビンスプライスアクセプターに融合されたサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー)(1732bp)であり、これは、インビボ及びインビトロでRPE及び視覚受容体レベルの両方で発現する。いくつかの実施形態では、CAGプロモーターは、以下のヌクレオチド配列(配列番号16):
【0070】
【0071】
またはそれに対して少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、任意選択的に、配列番号16の核酸配列、またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む、CMVエンハンサー、ニワトリベータ-アクチンプロモーター、及びウサギベータ-グロビンスプライスアクセプター部位(CAG)である。
【0073】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、組織特異的、すなわち、網膜特異的プロモーターである。トランスポザーゼがDNA配列をコードするトランスポザーゼである実施形態では、そのようなDNA配列はまた、プロモーターに動作可能に連結される。組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター等を含む多様なプロモーターが使用され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、網膜特異的プロモーターは、網膜色素上皮(RPE)プロモーターであり、RPE65(網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質遺伝子)、IRBP(光受容体間レチノイド結合タンパク質)、またはVMD2(卵黄様黄斑ジストロフィー2)プロモーターであり得る。
【0075】
RPE65、IRBP、及びVMD2プロモーターは、例えば、Aguirre.Invest Ophthalmol Vis Sci.2017;58(12):5399-5411.doi:10.1167/iovs.17-22978に記載されている。いくつかの実施形態で使用され得るRPE65プロモーターの例は、以下:
【0076】
【0077】
またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である。
【0078】
ヒト光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)プロモーターは、進行性変性症から光受容体を救出することが実証されている。al-Ubaidi&Baehr.J.Cell Biol.1992;119:1681-1687.いくつかの実施形態で使用され得る(Bobola et al.,J.Biol.Chem.1995;270:1289-1294から適応させた)IRBPプロモーター(1325bp)の例は、以下:
【0079】
【0080】
またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である。
【0081】
ヒトVMD2プロモーターは、(イヌにおいて)単回網膜下注射後、インビボでRPE細胞への導入遺伝子発現を特異的かつ排他的に標的とすることが示された。Guziewicz et al.,PloS One vol.8,10 e75666.15 Oct.2013,doi:10.1371/journal.pone.0075666を参照されたい。いくつかの実施形態で使用され得る、BEST1遺伝子の上流領域であるVMD2プロモーター配列(624bp)の例(Esumi et al.,J.Biol.Chem.2004;279(18):19064-19073を参照されたい)は、以下:
【0082】
【0083】
またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である。
【0084】
いくつかの実施形態では、網膜特異的プロモーターは、任意選択的に、β-ホスホジエステラーゼ(PDE)、ロドプシンキナーゼ(GRK1)、CAR(錐体アレスチン)、網膜色素変性症1(RP1)、及びL-オプシンから選択される、光受容体プロモーターである。PDE及びRP1プロモーター、ならびにロドプシン(Rho)プロモーターは、インビトロで光受容体特異的発現を駆動することが示された。Kan et al.,Molecular Therapy,vol.15,Suppl.1,S258,May 01,2007.いくつかの実施形態で使用され得るPDEプロモーター(200bp)の例(例えば、Di Polo et al.,Nucleic Acids Res.1997;25(19):3863-3867に記載の)は、以下:
【0085】
【0086】
またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である。
【0087】
ヒトロドプシンキナーゼ(GRK1)遺伝子プロモーターは、杆体及び錐体光受容体に対して活性かつ特異的であることが示され、その小さなサイズ及び錐体における実証された活性の理由によって、杆体及び錐体を標的とする体細胞遺伝子導入及び遺伝子療法のためのプロモーターの選択肢である。Khani et al.,Investigative Ophthalmology&Visual Science September 2007;vol.48:3954-3961.いくつかの実施形態で使用され得るGRK1プロモーター(295bp)の例(Khani et al.,2007、McDougald et al.,Mol Ther Methods Clin Dev.2019;13:380-389.Published 2019 Mar 28を参照されたい)は、以下:
【0088】
【0089】
またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である。
【0090】
CARプロモーターはまた、網膜における強い発現を駆動することが示された。Dyka et al.,Adv Exp Med Biol.2014;801:695-701.いくつかの実施形態では、CARプロモーター(2026bp)(McDougald et al.,Mol Ther Methods Clin Dev.2019;13:380-389.Published 2019 Mar 28を参照されたい)は、以下:
【0091】
【0092】
またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である。
【0093】
ヒトL-オプシンプロモーターは、マウス光受容体における高レベルのGFP発現を導くことが示された。Ye et al.,Hum Gene Ther.2016;27(1):72-82.いくつかの実施形態では、L-オプシンプロモーター(1726bp)(Lee et al.,Vision Res.2008 Feb;48(3):332-8を参照されたい)は、以下:
【0094】
【0095】
またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片である。
【0096】
実施形態では、網膜特異的プロモーターは、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5の核酸配列、またはそれに対して少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含むRPEプロモーターである。
【0097】
実施形態では、網膜特異的プロモーターは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、もしくは配列番号9の核酸配列、またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片を含む、光受容体プロモーターである。
【0098】
実施形態では、本非ウイルスベクターは、トランスポゾンの5’及び3’末端に少なくとも1対の逆位末端反復を含み得る。実施形態では、逆位末端反復は、ベクターの対向する末端に位置する相補的配列と組み合わせて使用される場合、ヘアピン構造を形成することができる、ベクターの一端に位置する配列である。一対の逆位末端反復は、本開示の非ウイルスベクターのトランスポゾンの転移活性に関与し、具体的には、DNA付加または除去及び目的のDNAの切除に関与する。一実施形態では、少なくとも一対の逆位末端反復は、プラスミドにおける転移活性に必要な最小配列であると思われる。別の実施形態では、本開示のベクターは、少なくとも2、3、または4対の逆位末端反復を含み得る。当業者によって理解されるであろうように、クローニングの容易さを促進にするのに必要な末端配列は、可能な限り短くてもよく、したがって、逆位反復を可能な限り少なく含有してもよい。したがって、一実施形態では、本開示のベクターは、1対以下、2対以下、3対以下、または4対以下の逆位末端反復を含み得る。一実施形態では、本開示のベクターは、1つの逆位末端反復のみを含み得る。
【0099】
実施形態では、本発明の逆位末端反復は、完璧な逆位末端反復(または同義に「完璧な逆位反復」と称される)または不完全な逆位末端反復(または同義に「不完全な逆位反復」と称される)のいずれかを形成し得る。本明細書で使用される場合、「完璧な逆位反復」という用語は、反対方向に配置された2つの同一のDNA配列を指す。対照的に、「不完全な逆位反復」という用語は、それらがいくつかのミスマッチを含有することを除いて、互いに同様である2つのDNA配列を指す。これらの反復(すなわち、完璧な逆位反復及び不完全な逆位反復の両方)は、トランスポザーゼの結合部位である。
【0100】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターのITRは、任意選択的に、TTAA反復性配列を含むpiggyBac様トランスポゾンのものであり、及び/またはITRは、ABCA4に隣接する。piggyBac様トランスポゾンは、「切断及び貼り付け」機序を通じて転移し、piggyBac様トランスポゾンは、TTAA反復性配列を含み得る。piggyBacトランスポゾンは、遺伝子組換えのために頻繁に使用されるトランスポゾン系であり、実際の転移事象中にDNA合成を必要としない。piggyBac因子は、トランスポザーゼによってドナー染色体から切断され得、継代ドナーDNAは、DNAリガーゼと再結合することができる。Zhao et al.Translational lung cancer research,2006;5(1):120-125.piggyBacトランスポゾンは、正確な切除、すなわち、配列を組み込み前の状態に戻すことを示す。Yusa.piggyBac Transposon.Microbiol Spectr.2015 Apr;3(2).いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、Super piggyBac(商標)(SPB)トランスポザーゼを含む。Barnett et al.Blood2016;128(22):2167を参照されたい。
【0101】
いくつかの実施形態では、他の非ウイルス遺伝子導入ツール、例えば、Sleeping Beautyトランスポゾン系等が使用され得る。例えば、Aronovich et al.Human Molecular Genetics,2011;20(R1),R14-R20を参照されたい。
【0102】
いくつかの実施形態では、トランスポゾン系の配列は、哺乳類系において改善されたmRNA安定性及びタンパク質発現を提供するようにコドン最適化され得る。
【0103】
様々な実施形態では、遺伝子導入構築物は、核酸構築物、プラスミド、またはベクター等の任意の好適な遺伝子構築物であり得る。様々な実施形態では、遺伝子導入構築物は、DNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、RNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子導入は、DNA配列及びRNA配列を有し得る。
【0104】
実施形態では、本核酸は、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはそれらの類似体もしくは誘導体のいずれかである、任意の長さのヌクレオチドの重合体形態を含む。実施形態では、二本鎖及び一本鎖DNA、ならびに二本鎖及び一本鎖RNA、ならびにRNA-DNAハイブリッドが提供される。実施形態では、メチル化またはキャップされたポリヌクレオチド等の転写活性化ポリヌクレオチドが提供される。実施形態では、本組成物は、mRNAまたはDNAである。
【0105】
実施形態では、本非ウイルスベクターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、制御配列に操作可能に連結されている線状または環状のDNA分子であり、制御配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を提供する。実施形態では、非ウイルスベクターは、プロモーター配列、ならびに転写及び翻訳停止シグナル配列を含む。そのようなベクターとしては、とりわけ、染色体及びエピソームベクター、例えば、細菌プラスミド、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入因子、酵母染色体エレメントに由来するベクター、ならびにそれらの組み合わせに由来するベクターを挙げることができる。本構築物は、発現を調節ならびに発生させる制御領域を含有し得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、コドン最適化され得る。記載の実施形態では、ABCA4、またはその機能的断片をコードする核酸は、宿主ゲノム(例えば、ヒトゲノム)に組み込まれて所望の臨床転帰を提供する導入遺伝子として機能する。導入遺伝子コドン最適化は、導入遺伝子の療法的潜在性及び宿主生物におけるその発現を最適化するために使用され得る。導入遺伝子におけるコドン使用量を、宿主生物または細胞における各コドンのトランスファーRNA(tRNA)の存在量と一致させるために、コドン最適化が実施される。コドン最適化方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2007/142954に記載されている。最適化戦略としては、例えば、翻訳開始領域の修飾、mRNA構造的因子の改変、及び異なるコドンバイアスの使用を挙げることができる。
【0107】
遺伝子導入構築物は、構築物の安定的な発現を確実にするために選択されるいくつかの他の調節因子を含む。したがって、いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、そばにある遺伝子の活性化または不活性化を防止または緩和する1つ以上のインスレーター配列を含み得るDNAプラスミドである。いくつかの実施形態では、1つ以上のインスレーター配列は、HS4インスレーター(1.2-kb5′-HS4ニワトリβ-グロビン(cHS4)インスレーター因子)及びD4Z4インスレーター(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)に関連するタンデムマクロサテライト反復)を含む。いくつかの実施形態では、HS4インスレーター及びD4Z4インスレーターの配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるRival-Gervier et al.Mol Ther.2013 Aug;21(8):1536-50に記載のとおりである。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物の遺伝子は、トランスポザーゼの存在下で転移することが可能である。いくつかの実施形態では、本開示の実施形態による非ウイルスベクターは、トランスポザーゼをコードする核酸構築物を含む。トランスポザーゼは、RNAトランスポザーゼプラスミドであり得る。いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、DNAトランスポザーゼプラスミドをコードする核酸構築物を更に含む。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、インビトロで転写されたmRNAトランスポザーゼである。トランスポザーゼは、遺伝子導入構築物から遺伝子を切除し、及び/または部位特異的もしくは遺伝子座特異的ゲノム領域に遺伝子を転移することが可能である。
【0108】
本開示による遺伝子導入構築物を含む組成物は、1つ以上の非ウイルスベクターを含み得る。また、トランスポザーゼは、導入遺伝子を含むトランスポゾンと同じ(シス)かまたは異なる(トランス)ベクター上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、トランスポザーゼと、導入遺伝子を包含するトランスポゾンとは、それらが同じベクターに含まれるような、シス構成にある。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼと、導入遺伝子を包含するトランスポゾンとは、それらが異なるベクターに含まれるような、トランス構成にある。ベクターは、本開示による任意の非ウイルスベクターである。
【0109】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来し、及び/またはその操作されたバージョンである。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、ITRを特異的に認識する。トランスポザーゼは、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、またはTrichoplusia niタンパク質をコードするDNAまたはRNA配列を含み得る。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,041,077号を参照されたい。
【0110】
しかしながら、いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、例えば、細胞透過性ペプチド(例えば、Ramsey and Flynn.Pharmacol.Ther.2915;154:78-86に記載の)を使用して、塩及びプロパンベタインを含む低分子(例えば、Astolfo et al.Cell 2015;161:674-690に記載の)、またはエレクトロポレーション(例えば、Morgan and Day.Methods in Molecular Biology 1995;48:63-71に記載の)を使用して、タンパク質として細胞に直接導入され得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、トランスポゾン系は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,435,696号に記載のように実施され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、記載の組成物は、導入遺伝子(例えば、ABCA4またはその機能的断片)及びトランスポザーゼをある特定の比で含む。いくつかの実施形態では、転移活性の効率を改善する、導入遺伝子対トランスポザーゼ比が選択される。導入遺伝子対トランスポザーゼ比は、トランスフェクトされた遺伝子導入構築物の濃度、及び他の要因に依存し得る。いくつかの実施形態では、ABCA4を、またはその機能的断片をコードする核酸対トランスポザーゼをコードする核酸構築物の比は、約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5である。いくつかの実施形態では、ABCA4タンパク質をコードする核酸対トランスポザーゼをコードする核酸構築物の比は、約2:1である。いくつかの態様では、遺伝子導入構築物を含む組成物が提供される。実施形態では、組成物は、(a)ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABC)トランスポーター(ABCA4)タンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸と、(b)CAGプロモーターと、(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む非ウイルスベクターと、を含み、ABCA4タンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約95%の同一性を有するバリアントを含む、ヒトABCA4タンパク質、またはその機能的断片である。
【0113】
いくつかの態様では、遺伝子導入構築物を含む組成物が提供される。実施形態では、組成物は、(a)ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABC)トランスポーター(ABCA4)タンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸と、(b)CAGプロモーターと、(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む非ウイルスベクターと、を含み、ABCA4タンパク質が、配列番号2のヌクレオチド酸配列、またはそれに対して少なくとも約95%の同一性を有するバリアントによってコードされる、ヒトABCA4、またはその機能的断片である。
【0114】
いくつかの態様では、遺伝性黄斑変性症(IMD)を治療及び/または緩和するための方法であって、(a)患者または別の個体から得られた細胞を、請求項62に記載の組成物と接触させることと、(b)細胞を、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物と接触させることであって、ABCA4タンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸対トランスポザーゼをコードする核酸構築物の比が、約2:1である、核酸構築物と接触させることと、(c)細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、方法が提供される。
【0115】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、例えば、脂質粒子を用いる方法等の様々なトランスフェクション方法によって細胞に導入される、共役ポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物を含む組成物は、送達粒子を含む。いくつかの実施形態では、送達粒子は、脂質に基づく粒子(例えば、脂質ナノ粒子(LNP))、カチオン性脂質、または生分解性ポリマー)を含む。遺伝子導入構築物の脂質ナノ粒子(LNP)送達は、潜在的なオフターゲット事象及び免疫応答を制限するための一過性の非組み込み発現、ならびに大きなカーゴを輸送する能力を有する効率的な送達を含む、ある特定の利点を提供する。LNPは、mRNAを網膜に送達するために使用されている。Patel et al.,J Control Release.2019 Jun 10;303:91-100.doi:10.1016/j.jconrel.2019.04.015.Epub 2019 Apr 12を参照されたい。また、例えば、米国特許第10,195,291号は、RNA干渉(RNAi)治療剤の送達のためのLNPの使用について記載している。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示の実施形態による組成物は、LNPの形態にある。いくつかの実施形態では、LNPは、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、ジメチルアミノエタン-カルバモイルと混合されたカチオン性コレステロール誘導体(DC-Chol)、ホスファチジルコリン(PC)、トリオレイン(トリオレイン酸グリセリル)、ならびに1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG 2K)、及び1,2-ジステアロール(distearol)-sn-グリセロール-3ホスホコリン(DSPC)から選択される1つ以上の脂質を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、Patel et al.,J Control Release 2019;303:91-100から適応させたLNPは、
図2に示されるとおりである。
図2に示されるように、LNPは、構造的脂質(例えば、DSPC)、PEG共役脂質(CDM-PEG)、カチオン性脂質(MC3)、コレステロール、及び標的化リガンド(例えば、GalNAc)のうちの1つ以上を含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、組成物は、様々な比で脂質及びポリマーを有し得、脂質が、例えば、DOTAP、DC-Chol、PC、トリオレイン、DSPE-PEGから選択され得、ポリマーが、例えば、PEIまたはポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)であり得る。加えてまたはあるいは、任意の他の脂質及びポリマーが使用され得る。いくつかの実施形態では、脂質及びポリマーの比は、約0.5:1、または約1:1、または約1:1.5、または約1:2、または約1:2.5、または約1:3、または約3:1、または約2.5:1、または約2:1、または約1.5:1、または約1:1、または約1:0.5である。
【0119】
いくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性脂質を含み、その非限定的な例としては、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)もしくはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-’)アミノ)エチル)(2ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(Tech G1)、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0120】
いくつかの実施形態では、LNPは、肝送達に好適である、ポリエチレンイミン(PEI)及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ならびにN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)から選択される1つ以上の分子を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,985,826号に記載の肝指向性化合物を含む。GalNAcは、哺乳類肝細胞で発現するアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を標的とすることが知られている。Hu et al.Protein Pept Lett.2014;21(10):1025-30を参照されたい。
【0121】
いくつかの例では、本開示の遺伝子導入構築物は、PEI、またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)もしくはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-triGAL)誘導体等のそれらの誘導体と製剤化または複合化され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、LNPは、共役脂質であり、その非限定的な例としては、限定されないが、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはそれらの混合物を含む、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質が挙げられる。PEG-DAA共役物は、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)であり得る。
【0123】
実施形態では、ナノ粒子は、約1000nm未満の直径を有する粒子である。いくつかの実施形態では、本開示のナノ粒子は、約500nm以下、または約400nm以下、または約300nm以下、または約200nm以下、または約100nm以下の最大寸法(例えば、直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、約50nm~約150nm、または約70nm~約130nm、または約80nm~約120nm、または約90nm~約110nmの範囲の最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、約100nmの最大寸法(例えば、直径)を有する。
【0124】
いくつかの態様では、本開示による組成物は、インビボ遺伝子組換え方法を介して送達され得る。いくつかの実施形態では、本開示による遺伝子組換えは、エクスビボ方法を介して実施され得る。
【0125】
したがって、いくつかの実施形態では、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるための方法であって、本開示の任意の実施形態または実施形態の組み合わせによる組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。方法は、注射による投与を含む、好適な経路を介して組成物を送達することを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、本方法及び組成物は、光受容体喪失の恒久的な防止またはその速度の減少を提供することができ、したがって、追加の治療剤の必要性を減少または排除することができる。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、ステロイド治療の不在下で実施される。方法は、実質的に非免疫原性であり得る。
【0127】
いくつかの態様では、本発明は、エクスビボ遺伝子療法アプローチを提供する。したがって、いくつかの態様では、(a)患者(自己)または別の個体(同種異系)から得られた細胞を、本開示の実施形態による組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することとを含む、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるための方法が提供される。
【0128】
いくつかの態様では、遺伝性黄斑変性症(IMD)を治療及び/または緩和するための方法であって、本開示の実施形態による組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。そのようなインビボ方法では、組成物は、本明細書に記載の技法のうちのいずれかを使用して投与される。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインビボ及びエクスビボ方法は、両側で対称的な中心視力喪失を特徴とする、疾患の異種群である様々なMDを治療し、進行を遅らせることができる。MDとしては、Stargardt疾患、Best疾患、X連鎖性網膜分離症、パターンジストロフィー、Sorsby眼底ジストロフィー、及び常染色体優性ドルーゼンが挙げられる。BEST疾患は、BEST1における疾患を引き起こすバリアントに関連する常染色体優性状態であり、X連鎖性網膜分離症(XLRS)は、青年期の男性における若年発症性網膜変性症の最も一般的な形態であり、パターンジストロフィー(PD)は、RPEレベルでの色素堆積の可変分布を特徴とする障害の群であり、Sorsby眼底ジストロフィー(SFD)は、多くの場合50代に両側の中心視力喪失をもたらす稀な黄斑ジストロフィーであり、常染色体優性ドルーゼン(ADD)は、黄斑におけるドルーゼン様堆積物を特徴とする常染色体優性状態であり、これは、放射状またはハニカム様の外観を有し得る。Rahman et al.,Br J Ophthalmol.2020;104(4):451-460を参照されたい。
【0130】
いくつかの実施形態では、(a)患者または別の個体から得られた細胞を、本開示の実施形態による組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、IMDを治療及び/または緩和するためのエクスビボ方法が提供される。いくつかの実施形態では、IMDは、STGDである。いくつかの実施形態では、STGDは、STGDタイプ1(STGD1)である。いくつかの実施形態では、STGD疾患は、STGDタイプ3(STGD3)またはSTGDタイプ4(STGD4)疾患であり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、IMDは、ABCA4、ELOVL4、PROM1、BEST1、及びPRPH2のうちの1つ以上における変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、ABCA4変異は、常染色体劣性変異である。
【0132】
ELOVL4(プロテイン4の超長鎖脂肪酸の伸長)における変異は、網膜変性を特徴とするSTGD3を引き起こすことが示された。Agbaga et al.,PNAS September 2,2008;105(35)12843-12848、また、Zhang et al.,Nat Genet.2001;Jan;27(1):89-93を参照されたい。STGD3の臨床プロファイルは、STGD1と非常に類似している。
【0133】
PROM1(プロミニン1遺伝子)は、膜突起に局在化したタンパク質であるペンタスパン膜貫通糖タンパク質をコードする。Yang et al.,J Clin Invest.2008;118(8):2908-2916.PROM1遺伝子における変異は、網膜色素変性症及びStargardt疾患をもたらすことが示されており、この遺伝子は、組織依存的様式で発現する少なくとも5つの代替プロモーターから発現する。例えば、Lonnroth et al.,Int J Oncol.2014;45(6):2208-2220を参照されたい。
【0134】
BEST1遺伝子は、正常な視力において重要な役割を果たすように思われる、ベストロフィン-1と呼ばれるタンパク質を作製するための指示を提供する。BEST1遺伝子における変異は、隣接するRPE細胞における原発性チャネロパシーに起因して、網膜の剥離及び光受容体細胞(PR)の変性を引き起こす。Guziewicz et al.,PNAS March 20,2018 115(12)E2839-E2848、また、Petrukhin et al.,Nature Genetics 1998;vol.19:241-247を参照されたい。BEST1における疾患を引き起こすバリアントは、Best疾患(BD)に関連し、これは、およそ10000人に1人に影響を及ぼす、2番目に一般的なMDである。Rahman et al.,Br J Ophthalmol.2020 Apr;104(4):451-460.BEST1配列バリアントはまた、成人の卵黄様MD、常染色体優性硝子体脈絡膜症、常染色体劣性ベストロフィノパチー、及び網膜色素変性症等の少なくとも4つの他の表現型の原因となる。Id.
【0135】
PRPH2(ペリフェリン-2)遺伝子は、ペリフェリン-2/網膜変性症低速(retinal degeneration slow、RDS)と呼ばれるPR特異的テトラスパニンタンパク質をコードし、PRPH2における変異は、網膜色素変性症及び黄斑変性症の形態を引き起こすことが示されている。Conley&Naash.Cold Spring Harb Perspect Med.2014 Aug 28;4(11):a017376.PRPH2における変異は、Stargardt黄斑変性症を有する患者において同定されている。
【0136】
ABCA4、ELOVL4、PROM1、BEST1、及びPRPH2のうちの1つ以上における病原性変異は、関連する黄斑ジストロフィー状態を治療及び/または緩和するための記載の方法を使用して補正することができる。
【0137】
エクスビボ遺伝子療法の利点のうちの1つは、患者の投与前に形質導入された細胞を「サンプリング」する能力である。これによって、有効性が促進され、細胞(複数可)を患者に導入する前に安全性確認を実施することが可能になる。例えば、組み込みの形質導入効率及び/またはクローン性を、生成物の注入の前に評価することができる。本開示は、エクスビボ遺伝子組換えに効果的に使用することができる組成物及び方法を提供する。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインビボ及びエクスビボ方法のうちのいずれかは、患者の遠見視力を改善する。いくつかの実施形態では、方法は、実質的に非免疫原性である。
【0139】
いくつかの実施形態では、方法は、単回投与を必要とし、これは、本組成物の送達を簡略化し、全体的な患者経験を改善する。様々なIMD障害によって影響を受けている多くの患者は、子供であり、本開示のいくつかの実施形態による恒久的な、実質的に非免疫原性の治療を、1度の投与として送達することによって、療法送達プロセスが容易になり、患者の負担が減少される。
【0140】
上述のように、RPEにおけるリポフスチンの蓄積は、STGD、加齢黄斑変性症、及び他の網膜疾患の発症に関連している。斑点を形成する黄色の物質であるリポフスチンの塊は、黄斑の中及び周辺に蓄積し、中心視力を損わせる。リポフスチンの主な構成要素は、ビス-レチノイドN-レチニリデン-N-レチニルエタノールアミン(A2E)であるが、リポフスチンは他のビス-レチノイドを含む。A2Eは、年齢とともに、またはSTGD等のいくつかの網膜障害において、眼のRPEのリソソームに蓄積する蛍光物質である。RPEリポフスチンは、A2Eと、追加のフルオロフォア-A2Eの二重結合異性体、イソ-A2Eとを含む。A2E及びイソ-A2Eの光化学に関する研究は、それらが44(A2E):1(イソ-A2E)の光平衡状態で存在することを示した。Parish et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1998;95(25):14609-13を参照されたい。A2Eは、RPEにおけるリポフスチン様破片の蓄積を引き起こすことが示された。Mihai&Washington.Cell Death&Disease 5,e1348(2014).A2Eは、リポフスチン様体、後期リソソーム、異常なグリコーゲン及び脂質堆積物、ならびに不均一な電子密度を示す包含物を包含する、ヒトの眼に見出されるRPE破片の原因となり得る。Id.したがって、A2Eは、網膜老化及び関連する変性症を駆動する。A2Eの化学的前駆体であるビタミンAアルデヒド(レチンアルデヒド)も、変性過程においてある役割を果たす。Id.
【0141】
したがって、レチンアルデヒド、A2E、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上のレベルを低下させることによって、網膜、例えばRPE及び/またはその下のBruch膜におけるリポフスチン蓄積を治療または緩和することができる。いくつかの実施形態では、方法は、RPE破片の形成を低減または防止する。いくつかの実施形態では、レチンアルデヒド、A2E、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上のレベルを低下させることによって、RPE及びBruch膜(BM)におけるビタミンA二量体の蓄積を治療または緩和することができる。
【0142】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、本組成物の投与を行わないレチンアルデヒド、N-レチニリデン-N-レチニルエタノールアミン(A2E)、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上のレベルと比較して、レチンアルデヒド、A2E、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上を低下させることを提供する。いくつかの実施形態では、レチンアルデヒド、A2E、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上のレベルが(本組成物の投与を行わないレチンアルデヒド、A2E、及びイソ-A2Eのうちの1つ以上のレベルと比較して)低下され、少なくとも約40%超低下される。いくつかの実施形態では、方法は、約40%超、または約50%超、または約60%超、または約70%超、または約80%超、または約90%超の低下を提供する。
【0143】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼをコードする核酸構築物が、患者に投与される。トランスポザーゼは、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiens、及び/またはその操作されたバージョンに由来し得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるためのエクスビボ方法は、細胞を、任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物と接触させることを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、患者における光受容体喪失を防止するか、またはその速度を減少させるための方法は、ステロイド治療の不在下で実施される。グルココルチコイドステロイド(例えば、プレドニゾン)等のステロイドを使用して、免疫応答を低減することによって、AAVに基づく遺伝子療法の有効性が改善されている。しかしながら、ステロイド治療は、副作用を伴わないわけではない。本開示の組成物及び方法は、実質的に非免疫原性であり得、したがって、ステロイド治療の必要性を排除することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、しかしながら、方法は、ステロイド治療と組み合わせて実施される。
【0147】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせた記載の組成物を投与するために、方法が使用され得る。追加の治療剤の非限定的な例は、アフリベルセプト(Eylea)、ラニビズマブ(Lucentis)、及びベバシズマブ(Avastin)を含む抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療剤のうちの1つ以上を含む。追加の治療剤は、重水素化ビタミンA、及び/または他のビタミン、または栄養補助剤(例えば、ベータカロテン、ルテイン、及びゼアキサンチン)を含み得る。
【0148】
投与は、硝子体内または網膜内であり得る。いくつかの実施形態では、投与することが、RPE細胞及び/または光受容体へのものである。本開示による非ウイルス遺伝子療法のための組成物は、注射による投与を含む、様々な送達経路を介して投与され得る。いくつかの実施形態では、注射は、硝子体内または網膜内である。いくつかの実施形態では、注射は、硝子体下または網膜下である。いくつかの実施形態では、注射は、RPE下である。
【0149】
いくつかの実施形態では、IMDを治療及び/または緩和するためのインビトロまたはエクスビボ方法は、治療の欠如と比較して、遠見視力の改善及び/または光受容体喪失の速度の減少を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、最高矯正視力(BCVA)の約20/200超までの改善をもたらす。
【0150】
いくつかの実施形態では、IMDを治療及び/または緩和するための方法は、眼底自発蛍光(FAF)またはスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定した、網膜または中心窩の形状の改善をもたらす。FAFは、網膜色素上皮におけるリポフスチンの密度マップを提供するために使用される非侵襲性網膜撮像診断法である。Madeline et al.,Int J Retin Vitr 2,12(2016)、Sepah et al.,Saudi J Ophthalmol.2014;28(2):111-116、Sparrow et al.,Investigative Ophthalmology&Visual Science September 2010;vol.51:4351-4357を参照されたい。
【0151】
SD-OCTは、干渉縞パターンのスペクトル分析による後方散乱光の大きさ及び遅延で符号化された、深さによって解析した組織構造情報を提供する、干渉測定技法である。Yaqoob et al.,Biotechniques,vol.39,No.6S;published Online:30 May 2018.例えば、走査型レーザー検眼鏡検査法(SLO)、蛍光寿命撮像検眼鏡検査法(FLIO)、及び2光子顕微鏡撮像(TPM)を含む、他の撮像技術も同様に使用することができる。好適な技術を使用して取得された(片目または両目の)画像を分析して、蛍光強度を含む患者のパラメータを評価することができる。例えば、自発蛍光強度の全般的な増加を特徴とするFAFは、疾患の初期段階でのStargardt疾患の指標である。Burke et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2014;55:2841-2852.
【0152】
いくつかの実施形態では、方法は、患者における、変視症、盲点、かすみ、奥行き知覚の喪失、まぶしさへの感受性、色覚障害、及び薄暗い照明への適応困難(暗所適応の遅延)のうちの1つ以上の低減または防止をもたらす。
【0153】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせた記載の組成物を投与するために、方法が使用され得る。追加の治療剤の非限定的な例は、ソラプラザン、イソトレチノイン、ドベシラート、4-メチルピラゾール、ALK-001 9(C20重水素化ビタミンA)、フェンレチニド(ビタミンAの合成形態)、LBS-500、A1120、エミクススタット、フェノフィブラート、及びアバシンカプタドペゴルのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、方法は、上の治療剤のうちのいずれかであり得る追加の治療剤の必要性を排除する。
【0154】
いくつかの実施形態では、方法は、ステロイド治療の必要性を排除する。
【0155】
いくつかの実施形態では、本開示による組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む。
【0156】
好適な薬学的組成物を製剤化する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,2005、及びDrugs and the Pharmaceutical Sciencesシリーズの本であるa Series of Textbooks and Monographs(Dekker,N.Y.)を参照されたい。例えば、注射可能な使用に好適な薬学的組成物は、滅菌注射溶液または分散液を即時調製するための、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び滅菌粉末を含み得る。静脈内投与に好適な担体としては、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、滅菌される必要があり、流体は、シリンジによって容易に吸い上げられる必要がある。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定である必要があり、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対応して保存される必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましいであろう。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことによって、注射組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0157】
滅菌注射溶液は、上に列挙された成分のうちの1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒中に、活性化合物を必要な量で組み込み、必要に応じて、その後濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒、及び上に列挙されたものとは異なる必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これらによって、予め滅菌濾過したその溶液から、活性成分及び任意の所望の追加成分の粉末が得られる。
【0158】
治療化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤等の、体内からの急速な放出に対して治療化合物を保護するであろう担体とともに調製され得る。コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物(例えば、ポリ[1,3-ビス(カルボキシフェノキシ)プロパン-コ-セバシン酸](PCPP-SA)マトリックス、脂肪酸二量体-セバシン酸(FAD-SA)コポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド))、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコールでコーティングされたリポソーム、及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤は、標準的な技法を使用して調製することができるか、または例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。また、リポソーム懸濁液は、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の、当業者に既知の方法に従って調製され得る。例えば、手術部位への投与が望ましい場合、半固体、ゲル化、軟質ゲル、または他の製剤(制御放出を含む)が使用され得る。そのような製剤を作製する方法は、当該技術分野において既知であり、生分解性、生体適合性ポリマーの使用を含み得る。例えば、Sawyer et al.,Yale J Biol Med.2006;79(3-4):141-152を参照されたい。
【0159】
実施形態では、トランスポザーゼの存在下で、本明細書に記載の遺伝子導入構築物を使用して細胞を形質転換して、目的の遺伝子の細胞への安定的な組み込みから生じる安定的にトランスフェクトされた細胞を生成する方法が提供される。実施形態では、安定的な組み込みは、細胞の染色体またはミニ染色体へのポリヌクレオチドの導入を含み、したがって、細胞ゲノムの比較的永続的な部分となる。
【0160】
実施形態では、本発明は、目的の遺伝子、例えば、ABCA4が宿主のゲノムに導入されたかどうかを決定することに関する。一実施形態では、方法は、目的の遺伝子に隣接するプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を実施することと、得られた増幅ポリメラーゼ連鎖反応生成物のサイズを決定することと、得られた生成物のサイズを参照サイズと比較することとを含み得、得られた生成物のサイズが予想されるサイズと一致する場合、目的の遺伝子が、うまく導入されている。
【0161】
実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、限定されないが、遺伝子導入構築物及び/またはトランスポザーゼを含む組成物)を含む宿主細胞が提供される。実施形態では、宿主細胞は、原核細胞または真核細胞、例えば、哺乳類細胞である。
【0162】
実施形態では、本開示の方法によって形質転換された細胞を含み得るトランスジェニック生物が提供される。一例では、生物は、哺乳類または昆虫であり得る。生物が哺乳類である場合、生物としては、限定されないが、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ等を挙げることができる。生物が昆虫である場合、生物は、限定されないが、ミバエ、蚊、アメリカタバコガの幼虫等を挙げることができる。
【0163】
組成物は、投与のための説明書と一緒に、容器、キット、パック、またはディスペンサー内に含まれ得る。
【0164】
また、本明細書で提供されるのは、i)本発明の先述の遺伝子導入構築物のうちのいずれか、及び/または本発明の先述の細胞のうちのいずれか、ならびにii)容器、を含むキットである。ある特定の実施形態では、キットは、キットを使用するための説明書を更に含む。ある特定の実施形態では、先述のキットのうちのいずれかは、トランスポザーゼをコードする核酸配列を含む組換えDNA構築物を更に含み得る。
【0165】
本発明は、以下の非限定的な実施例により更に説明される。
【0166】
定義
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」は、1つ、または2つ以上を意味し得る。
【0167】
更に、参照された数値表示に関連して使用される場合の「約」という用語は、その参照された数値表示に、その参照された数値表示の最大10%を加算または減算することを意味する。例えば、「約50」という言葉は、45から55の範囲を包含する。
【0168】
医療用途に関連して使用される場合の「有効量」は、対象とする疾患の測定可能な治療、予防、または発病速度の低減をもたらすのに有効な量である。
【0169】
本明細書で言及される場合、全ての組成パーセンテージは、別段の指定がない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」という単語及びその変形は、リスト内のアイテムの列挙が、本技術の組成物及び方法でも有用であり得る他の同様のアイテムを除外するものではないように、非限定的であることを意図する。同様に、「し得る(can)」及び「し得る(may)」という用語、ならびにそれらの変形は、一実施形態が、ある特定の要素または特色を含み得る(can)かまたは含み得る(may)列挙が、それらの要素または特色を含有しない本技術の他の実施形態を除外しないように、非限定的であることを意図する。
【0170】
含むこと(including)、含有すること、または有すること等の同義語としての「含むこと(comprising)」という開放的な用語は、発明、本発明、または本発明の実施形態について記載及び特許請求するために本明細書で使用され、代替的に、「からなること」または「から本質的になること」等の代替的な用語を使用して記載され得る。
【0171】
本明細書で使用される場合、「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、ある特定の状況下である特定の利益をもたらす技術の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も、同じかまたは他の状況下で好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味せず、本技術の範囲から他の実施形態を除外することを意図しない。
【0172】
治療効果を達成するために必要な本明細書に記載の組成物の量は、特定の目的のための従来の手順に従って経験的に決定され得る。一般に、治療目的で治療剤を投与するために、治療剤は薬理学的有効用量で投与される。「薬理学的有効量」、「薬理学的有効用量」、「治療有効量」、または「有効量」は、特に障害または疾患の治療のために、所望の生理学的作用を生じさせるのに十分な量または所望の結果を達成することができる量を指す。本明細書で使用される場合、有効量としては、例えば、障害または疾患の症状の発生を遅延させるため、障害または疾患の症状の経過を改変するため(例えば、疾患の症状の進行を遅らせるため)、障害または疾患の1つ以上の症状または徴候を低減または排除するため、及び障害または疾患の症状を元に戻すために十分な量が挙げられるであろう。治療的利益には、改善が実現されているか否かにかかわらず、基礎疾患または障害の進行を停止させるかまたは遅らせることも含まれる。
【0173】
有効量、毒性、及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の約50%に対する致死用量)、及びED50(集団の約50%における治療有効用量)を決定するための細胞培養物または実験動物における、標準的な薬学的手順によって決定され得る。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変動する場合がある。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、これは、LD50/ED50の比で表すことができる。いくつかの実施形態では、大きな治療指数を呈する組成物及び方法が好ましい。治療的有効用量は、例えば、細胞培養アッセイを含む、インビトロアッセイから最初に推定され得る。また、用量は、細胞培養物において、または適切な動物モデルにおいて決定したIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて製剤化され得る。血漿中の記載の組成物のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定の投与量の効果は、好適なバイオアッセイによって監視され得る。投与量は、医師によって決定され、必要に応じて、治療の観察された効果に適合するように調整され得る。
【0174】
本明細書で使用される場合、「治療方法」は、本明細書に記載の疾患もしくは障害を治療するための組成物の使用、及び/または本明細書に記載の疾患もしくは障害を治療するための薬剤の製造における、使用のための組成物及び/またはその使用に等しく適用可能である。
【実施例】
【0175】
以下、実施例を参照して、本発明について更に詳細に説明する。これらの実施例が、例示目的に過ぎず、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではないことは、当業者には明らかであろう。加えて、本発明の技術範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形が行われ得ることが、当業者には明らかであろう。
【0176】
実施例1-トランスポゾン発現ベクターの設計
図1A~1Iに概略的に示される非ウイルスのトランスポゾン発現ベクターは、網膜細胞株におけるトランスフェクション、転移有効性、及び発現研究のインビトロ、インビボ、及びエクスビボ研究のために設計され、クローニングされる。
【0177】
図1Aは、GFP蛍光活性化細胞選別(FACS)によるトランスポゾン(Tn):トランスポザーゼ(Ts)比及び転移有効性を決定するために使用される、PGKプロモーターを含むホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)-GFPトランスポゾン構築物を示す。
図1B及び1Cは、網膜色素上皮プロモーター(RPEP)(
図1B)及び光受容体プロモーター(PRP)(
図1C)が、(FACSによって決定される)GFP発現及び[ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)または定量PCR(qPCR)技術を使用して決定される]コピー数を選択的に最大化する場合の有効性を評価するために使用されるトランスポゾン構築物を示す。
【0178】
図1Dは、フローサイトメトリー及びABCA4コピー数(例えば、ddPCRまたはqPCRを使用する)によって、ABCA4の発現を評価するために使用することができるBEST-RPEP構築物を示す。
図1Eは、同様に、フローサイトメトリー及びABCA4コピー数(例えば、ddPCRまたはqPCRを使用する)によって、ABCA4の発現を評価するために使用することができるBEST-PRP構築物を示す。
【0179】
図1F、1G、1H、及び1Iに示されるトランスポゾン構築物は、以下で考察されるヒトiPSC及びトランスジェニックabca4-/-マウス研究において使用される。
図1F及び1Hの構築物は、BEST-RPEPプロモーターを含み、
図1G及び1Iの構築物は、BEST-PRPプロモーターを含む。
【0180】
実施例2-異なるトランスポゾン(Tn):トランスポザーゼ(Ts)比の効果の決定
異なるトランスポゾン(Tn):トランスポザーゼ(Ts)比の効果は、網膜及び非網膜起源の細胞株における安定的な緑色蛍光タンパク質(GFP)発現(>14日)で評価する。研究は、ヒト網膜由来接着細胞株(ARPE-19、RPE-1)及びマウス由来光受容体細胞株(661W)の培養物を確立することを含む。HEK293(ABCA4陰性)及びHeLa(ABCA4陽性)細胞の培養物を対照として使用する。この実施例では、
図1Aに示されるトランスポゾンベクターが使用され得る。LEAPINトランスポザーゼ技術(ATUM,Newark,CA)を使用してもよい。
【0181】
確立された細胞株のエレクトロポレーションについての異なる条件は、構成的プロモーターによって駆動されるGFPを発現するトランスポゾンベクター、例えば、
図1Aに示されるように設計されたベクターを使用して研究することができる。2つ、3つ、または3つ超の異なるTn:Ts比を有する遺伝子導入構築物で、細胞をトランスフェクトすることができる。比較的多くの数のGFP陽性細胞を含む培養物をもたらす条件が、14日間継代して培養物において維持され得る。これらの研究では、14日間は、GFPの一過性発現を喪失させるのに十分な期間であると予想される。トランスフェクトされた培養物を、フローサイトメトリーによって14日後に分析して、安定的な発現の尺度として、GFP発現を保持した細胞のパーセンテージを決定する。40%超のGFP発現を有する培養物を、ddPCRまたはqPCRによって分析して、コピー数を決定することができる。
【0182】
実施例3-RPE特異的プロモーター及び光受容体プロモーターの選択
この研究では、網膜色素上皮(RPE)または光受容体に由来する網膜細胞株において特異的かつ高レベルのGFP発現を引き起こすそれらの能力に基づいて、プロモーターを評価及び選択する。この実施例では、
図1B及び1Cに示されるトランスポゾンベクターが使用され得る。RPE(VMD2、IRBP、RPE65)、光受容体[PDE、ロドプシンキナーゼ(RkまたはGRK1)、CAR(錐体アレスチン)、RP1、L-オプシン]、及び非特異的プロモーター(PGK、CAG、CMV)をトランスポゾンベクターにクローニングし、GFPの発現を駆動する。ある特定の条件(実施例2に記載されるように同定することができる)を使用して、生成された構築物を、2つのヒトRPE細胞株(ARPE-19、RPE-1)、マウス由来光受容体細胞株(661W)、及び2つの対照細胞株(HEK293、HeLa)にトランスフェクトする。定性的に(目よって視覚的にまたはフローサイトメトリーによって)相対的な発現レベルを決定し、RPEまたは光受容体細胞株において強く発現し、対照細胞において相対的に低く発現したプロモーターを、このアッセイの目的の網膜特異的と見なすものとする。
【0183】
また、この研究では、RPE特異的及び光受容体特異的と見なされるプロモーターを用いた、ARPE-19、RPE-1、及び661Wトランスフェクションを、約14日間継代して培養し、この期間後にフローサイトメトリーによって分析する。GFP発現の異なるレベルを、研究した細胞株におけるこれらのプロモーターの相対的な強度の尺度として捉える。
【0184】
実施例4-網膜及び非網膜起源の細胞株における、網膜特異的プロモーターによって駆動されるヒトABCA4の安定的な発現の実証
HEK293細胞を使用して、内因性ABCA4陽性対照及び陰性対照を確認する。トランスフェクトされたHEK293細胞において、ABCA4が、光受容体細胞内と同様の輸送機能を有することが示されており(Sabirzhanova et al.,J Biol Chem 2015;290:19743-55、Quazi et al.,Nat Commun 2012;3:925)、トランスフェクトされていないHEK293(タンパク質アトラス)において、RT-PCRが、内因性ABCA4発現を示さないので、HEK293細胞を使用する。Bauwens et al.,Genet Med 2019;21:1761-71を参照されたい。加えて、HeLa細胞は、内因性ABCA4(タンパク質アトラス)を発現する。HEK293細胞を陰性対照として使用することができ、HeLa細胞を陽性対照として使用することができることを確認するために、標準的な方法を使用して、ヒトABCA4に対する抗体で細胞を標識する。標識された細胞を、フローサイトメトリーによって定量化し、免疫細胞化学技法によって可視化する。加えて、内因性ABCA4のmRNAレベルを、ddPCRまたはRTqPCRによって定量する。
【0185】
この研究では、実施例3に記載されるように選択されるRPE特異的プロモーター及び光受容体プロモーターが使用され得る。選択されたプロモーターを、例えば、
図1D及び1Eに示されるトランスポゾンベクター等のトランスポゾンベクターにクローニングし、ヒト及びマウスABCA4の両方の発現を駆動する。例えば、実施例2に記載されるように決定した、ヒト網膜由来接着細胞株(ARPE-19、RPE-1)及び光受容体細胞株(661W)へのトランスフェクション条件を使用して、トランスポゾン構築物をトランスフェクトする。HEK293(ABCA4陰性)及びHeLa(ABCA4陽性)細胞を、トランスフェクトされていない対照として使用する。約14日間継代して、細胞を培養する。この期間後に、培養した細胞を、抗ABCA4抗体を使用して標識し、ABCA4を発現している細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって定量化した。フローサイトメトリーによって分析した蛍光細胞のパーセンテージは、トランスフェクション効率を監視するために使用する。
【0186】
加えて、既知の方法を使用するddPCRまたはRT qPCRによって、ABCA4転写産物の存在を定量化する。
【0187】
実施例5-STGD患者iPSC、トランスジェニックabca4-/-マウス、及び大型動物モデルにおける研究のためのトランスポゾン(Tn)及びトランスポザーゼ(Ts)構築物の生成
この研究の目的は、患者の個々の多能性幹細胞(iPSC)、トランスジェニックabca4-/-マウス、及び大型動物モデル(例えば、abcd4変異型ラブラドールレトリバー)におけるインビボ、インビトロ、及びエクスビボ試験のためのリードトランスポゾン(Tn)及びトランスポザーゼ(Ts)構築物を同定することである。
図1F、1G、1H、及び1Iに示されるベクター構築物が、使用され得る。構築物は、ルシフェラーゼ(pLuc)またはGFP遺伝子、ならびに光受容体及びRPE特異的プロモーターを含み得る。
【0188】
この研究では、形質導入された細胞の網膜内送達を使用する、Abca4-/-トランスジェニックマウスまたは他の動物におけるインビボ試験を実施して、転移有効性を示す。したがって、Abca4a-/-マウスへの(マウスAbc4a遺伝子を使用する)構築物の網膜内注射を実施して、表現型の補正を示す。適切な構築物及び投与手順の安全性、忍容性、及び有効性を示すために、天然に存在するAbca4-/-ラブラドールレトリバーイヌにおいて同様の実験(Makelainen et al.,PLoS Genet 2019;15:e1007873を参照されたい)を設計する。生体分布、用量応答、薬物動態、薬力学、安全性、及び病理学的研究を、GLP環境においてAbca4-/-ラブラドールレトリバーイヌ(または他のイヌ科動物モデル)または非ヒト霊長類(カニクイザル、macaca fascicularis)で実施して、網膜病状を元に戻す。
【0189】
実施例6-661Wマウス光受容体細胞を転移するためのMLTトランスポザーゼの使用
この研究の目的は、CAG-GFPドナー構築物によって駆動される緑色蛍光タンパク質(GFP)を使用して、661W光受容体細胞を、本開示のMLTトランスポザーゼ(RNAヘルパー)を使用して転移するためのリポフェクション条件を決定することであった。
【0190】
661W細胞を、10ug:5ugの、ドナートランスポゾンDNA(CAG-GFP):MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2mRNA(ドナーDNA:ヘルパーRNA)の比でトランスフェクトした。比較的多くの数のGFP陽性細胞を含む培養物をもたらす条件を、7~14日間継代して培養物において維持した。14日間は、GFPの一過性発現を喪失させるのに十分な期間であると予想される。トランスフェクション後の異なる時点で細胞を撮像して、発現を監視し、14日以内にGFP発現を無くす条件を決定した。最適なトランスフェクトされた培養物を撮像し、フローサイトメトリーによって分析して、GFP発現を保持している細胞のパーセンテージを決定する。40%超のGFP発現を有する培養物を、qPCRによって分析して、コピー数を決定する。
【0191】
本研究では、以下の薬剤:ドナーDNA(>1ug/ul、300ul、1xTE緩衝液、エンドトキシン非含有、滅菌)、ヘルパーRNA MLTトランスポザーゼ1(>500ng/ul、100ul、ヌクレアーゼ非含有水、滅菌)、及びヘルパーRNA MLTトランスポザーゼ2(>500ng/ul、100ul、ヌクレアーゼ非含有水、滅菌)を使用した。本研究で使用した試薬を表1に示す。
【0192】
【0193】
結果
図3は、変動するリポフェクション試薬、ならびに本開示のMLTトランスポザーゼ1もしくはMLT1(配列番号13のアミノ酸配列を含む)、またはMLTトランスポザーゼ2もしくはMLT2(配列番号15のアミノ酸配列を含む)のいずれかを用いたトランスフェクションの24時間後の、661Wマウス光受容体細胞のGFP発現を、トランスフェクトされていない細胞と比較して示す。
【0194】
図4は、15日間にわたる4回の継代後のマウス光受容体細胞株661Wにおける転移によるドナーDNA(GFP)の安定的な組み込みを示す。
【0195】
図5は、15日目のマウス光受容体細胞株661Wにおける転移によるドナーDNA(GFP)の安定的な組み込みのFACS分析の結果を示す。
【0196】
図3に示されるように、全てのトランスフェクトされていない細胞は、いかなるGFP発現も示さなかった。トランスフェクションのためにMLTトランスポザーゼ1を使用することによって、24時間後に661W細胞に存在するGFP発現がもたらされた。MLTトランスポザーゼ2についても同じことが観察された(
図3)。MAX+CAG-GFPは、MLTトランスポザーゼ1またはMLTトランスポザーゼ2のいずれのトランスフェクションにおいても、あまりGFPを発現しなかった。L3+CAG-GFPは、トランスフェクションの24時間後に少量のGFPを発現した。LTX+CAG-GFPは、トランスフェクションの24時間後に適度な量のGFPを発現した。LTXは、トランスフェクションの24時間後に、40~50%の細胞がGFPを発現していた。
【0197】
ヘルパーRNA(MLTトランスポザーゼ1またはMLTトランスポザーゼ1)がGFPドナーDNAと長期間にわたって共発現した条件でのみ、トランスフェクトされた細胞でGFPは発現し続けた(
図4)。15日の期間をかけて細胞を4回継代し、ドナーのみのDNA状態はその発現を喪失した一方で、MLTトランスポザーゼ1またはMLTトランスポザーゼ2のいずれかを含むドナーDNA(GFP)は、GFPを発現し続けた。
【0198】
4つの条件全てについて、15日目にFACS分析を実行した(
図5)。FACSデータは、MLTトランスポザーゼ1が、MLTトランスポザーゼ2とともにGFPドナーDNAで共トランスフェクトされた細胞と比較して、より多くのGFP発現を示すことを示唆している。MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2の両方は、ドナーDNA単独またはトランスフェクトされていない条件と比較して、GFPの発現が顕著に高いことを示した。
【0199】
要約すると、このデータは、リポフェクタミンでは、LTX(PLUS試薬を含むリポフェクタミン)が、CAG-GFP、及びMLTトランスポザーゼ1またはMLTトランスポザーゼ2のいずれかを含む661W細胞を転移するための有効な試薬であることを示す。MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2の両方は、トランスフェクションの24時間後に同様のGFP発現を有し、したがって、転移によってドナーDNAの安定的な組み込みが得られた。661W細胞型では、MLTトランスポザーゼ1は、MLTトランスポザーゼ2と比較して、より効果的な転移を示した。
【0200】
実施例7-MLTトランスポザーゼを用いたARPE-19ヒト網膜色素上皮細胞トランスフェクション
この研究の目的は、CAG-GFPドナー構築物を使用して、網膜細胞株における安定的な緑色蛍光タンパク質(GFP)発現についての、2つの異なるヘルパーRNAトランスポザーゼ(MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2)対ドナーDNAトランスポゾンに対するヘルパーRNAトランスポザーゼ(Ts)の効果を評価することであった。
【0201】
ARPE-19細胞を、10μg:5μgのドナートランスポゾンDNA(CAG-GFP):MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2mRNA(ドナーDNA:ヘルパーRNA)の比でトランスフェクトした。比較的多くの数のGFP陽性細胞を含む培養物をもたらす条件を、7~14日間継代して培養物において維持した。14日間は、GFPの一過性発現を喪失させるのに十分な期間であると予想される。トランスフェクション後の異なる時点で細胞を撮像して、発現を監視し、14日以内にGFP発現を無くす条件を決定した。最適なトランスフェクトされた培養物を撮像し、フローサイトメトリーによって分析して、GFP発現を保持している細胞のパーセンテージを決定した。
【0202】
本研究では、以下の薬剤:ドナーDNA(>1ug/ul、300ul、1xTE緩衝液、エンドトキシン非含有、滅菌)、ヘルパーRNA MLTトランスポザーゼ1(>500ng/ul、100ul、ヌクレアーゼ非含有水、滅菌)、ヘルパーRNA MLTトランスポザーゼ2(>500ng/ul、100ul、ヌクレアーゼ非含有水、滅菌)を使用した。本研究で使用した試薬を表2に示す。
【0203】
【0204】
図6は、トランスフェクションの24時間後のARPE-19細胞におけるGFPの発現を示す。この実験では、ARPE-19細胞を24ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞を3つの異なるトランスフェクション系:L3(リポフェクタミン3000、ThermoFisherカタログ番号L3000-001)、LTX(リポフェクタミンLTX&PLUS、ThermoFisherカタログ番号A12621)、及びMAX(リポフェクタミンメッセンジャーMAX、ThermoFisherカタログ番号LMRNA001)でトランスフェクトした。次いで、トランスフェクションの24時間後、細胞をGFPのために撮像した。
【0205】
図7は、トランスフェクションの24時間後の、MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2の目視可能なGFP発現のより高い解像度画像を示す。
【0206】
図8は、MLTトランスポザーゼ2を用いた、光受容体細胞株ARPE19におけるドナーDNA(GFP)の安定的な組み込みを示す。
【0207】
図9は、FACS分析が、4世代の細胞分裂後のARPE19細胞株からの安定的なGFP発現を示すことを示す。
【0208】
本研究の結果に示されるように、全てのトランスフェクトされていない細胞は、
図6に見ることができるように、いかなるGFP発現も示さなかった。L3及びCAG-GFPのみが、トランスフェクションの24時間後にGFPの存在を発現した。LTX及びCAG-GFPのみが、トランスフェクション後24時間後に最も多くのGFPの存在を発現した。MAX及びCAG-GFPも同様に、トランスフェクションの24時間後に中程度のGFP発現を示した。MLTトランスポザーゼ1をリポフェクション試薬及びCAG-GFPに添加した場合、依然として24時間後に細胞にGFP発現が存在したが、それはリポフェクション試薬及びCAG-GFPのみほど多くはなかった。MLTトランスポザーゼ2についても同じことが当てはまった(
図6を参照されたい)。MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2は、MLTトランスポザーゼ1(左の欄)及びMLTトランスポザーゼ2(右の欄)の両方を含むリポフェクション試薬+DNAを並べて比較すると、GFP発現効率において同様であり、これは
図7に見ることができる。
【0209】
ドナーDNA、GFPは、MLTトランスポザーゼ1またはMLTトランスポザーゼ2のいずれかのヘルパーと共過剰発現した場合にのみ、ARPE19細胞株において安定的に組み込まれていることが見出された。目視可能なシグナルが一過性でないことを確認するために、GFPの発現を15日間及び4回の継代の間に調査した。ドナーのみの条件は、2回目の継代後にGFP発現を喪失した(
図8を参照されたい)。
【0210】
フローサイトメトリー分析は、MLTトランスポザーゼ2が、トランスフェクトされていないかまたはドナーのみ等の他の条件と比較して、ドナー(GFP)の安定的な転移において顕著により有効であることを明らかにした。MLTトランスポザーゼ1もまた、GFPの安定的な組み込みに有効であるように思われた(
図9)。
【0211】
リポフェクタミン&PLUSは、CAG-GFPのみを使用する場合、ならびにCAG-GFPとMLTトランスポザーゼ1またはMLTトランスポザーゼ2のいずれかとの両方を使用する場合、効率的なリポフェクション試薬であった。MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2の両方は、これらのARPE-19細胞では同様のGFP発現率を有した。これらのデータは、MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2の両方が、ゲノムへのドナーDNAの安定的な転移において効率的であることを示す。しかしながら、MLTトランスポザーゼ2は、MLTトランスポザーゼ1よりも、ARPE19細胞株におけるドナーDNAの安定的な組み込みにおいてより効果的である。
【0212】
実施例8-ドナーDNA(CAG-GFP)/MLTトランスポザーゼを使用するマウスインビボ網膜下LNP用量薬力学
この研究の目的は、ドナーDNA(CAG-GFP)をコードする核酸及びヘルパーRNA(MLTトランスポザーゼ2またはMLT2)をコードする核酸を含む、2つの用量(高及び低)の脂質ナノ粒子(LNP)製剤の網膜下注射後のマウス網膜におけるGFP発現レベルを分析することであった。
【0213】
本研究では、ドナーDNA(CAG-GFP)及びヘルパーRNA(MLTトランスポザーゼ2またはMLT2)を2:1の比で含む、2つの用量の脂質ナノ粒子製剤の網膜下注射後に、マウス網膜におけるGFP発現を測定した。「高」用量は、500ng/uL(333ngのドナーDNA/166ngヘルパーRNA)であり、「低」用量は、250ng/uL(166ngのドナーDNA/83ngヘルパーRNA)であった。
【0214】
光受容体層及びRPE細胞層における網膜GFP発現の結果を、免疫組織化学(IHC)によって測定した。
【0215】
脂質ナノ粒子にともにカプセル化されたドナーDNA(CAG-GFP)及びMLTトランスポザーゼ2(S8P/C13R変異を有するMLT)を、左眼に注射した。脂質ナノ粒子によってカプセル化されたドナーDNAのみを、右眼に注入した。目標は、MLTトランスポザーゼ2が、細胞損傷を引き起こすことなく、網膜にARPE-19細胞をトランスフェクトすることができることを実証することであった。
【0216】
本研究では、CAG-GFPをコードするDNA(VB200819-1024gzm)を使用し、MLTトランスポザーゼ2をコードするRNA(VB200926-1055qkq)を使用した。LNP製剤は、カチオン性脂質、コレステロール、リン脂質、及びPEG脂質を有した。表2は、本実験で使用したマウスに関する情報を含む。
【0217】
【0218】
結果
マウスの眼の画像を、眼底撮像であるPhoenix MICRON IV(商標)Retinal Imaging Microscopeを使用して捉えた。
【0219】
【0220】
図11A、11B、11C、及び11Dは、DNAのみを注射したマウス3-1L及び3-1R右眼(
図11A及び
図11C)ならびにドナーDNA及びMLT2を注射したマウス3-1L及び3-1R左眼(
図11B及び
図11D)の画像を示す。
【0221】
【0222】
図13A及び13Bは、ドナーDNAのみを注射したマウス4-NP右眼(
図13A)、ならびにドナーDNA及びMLT2の両方を注射した左眼(
図13B)の画像を示す。
【0223】
図14A及び14Bは、ドナーDNAのみを注射したマウス4-1L右眼(
図14A)、ならびにドナーDNA及びMLT2の両方を注射した左眼(
図14B)の画像を示す。
【0224】
図15A及び15Bは、ドナーDNAのみを注射したマウス5-BP右眼(
図15A)、ならびにドナーDNA及びMLT2の両方を注射した左眼(
図15B)の画像を示す。
【0225】
図16は、本研究の一般的な設定を示し、加えて、画像が網膜下注射の21日後に撮影されたことを示す。
図17は、トランスフェクションで使用したMLTトランスポザーゼを含む(「+MLT」)かまたは含まない(「-MLT」)、網膜下注射の21日後に撮影した、マウスの左眼及び右眼(それぞれ上段及び下段)の画像を示す。
図17では、右眼は対照(ドナーDNAのみ)であり、左眼は治療した眼(ドナーDNA+MLT2トランスポザーゼ)である。
【0226】
図10A、10B、11A-11D、12A、12B、13A、13B、14A、14B、15A、15B、及び17は、500ng/uLの高用量で治療したマウスの眼の画像を示す。
【0227】
この研究の結果は、ドナーDNA(この実施例ではCAG-GFP)とともにカプセル化したMLTトランスポザーゼ2を網膜下注射した場合、マウスの眼に悪影響を及ぼさないことを示す。
図14A及び14Bに示されるように、網膜下注射の7日後の両眼は、目視可能な損傷を受けず、GFP発現を呈した。動物間、及びまた同じ動物の左右の眼間で、いくらかの外科的効率の変動が認められた。
【0228】
本研究では、ドナーDNAからの遺伝子の転移の成功をもたらすMLTトランスポザーゼ用量が、500ng/uL(333ngのDNA/166ngのRNA)であると決定した。
【0229】
結論として、本研究は、眼の網膜下へのLNPの注射の際に、導入遺伝子(導入遺伝子の実施例として使用した緑色蛍光タンパク質(GFP))の陽性発現を示す。導入遺伝子の発現は21日まで続き(
図17を参照されたい)、療法的使用のための本アプローチの実現可能性を実証した。
【0230】
等価物
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載したが、更なる修正が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従って、本発明の任意の変形、使用、または適応を網羅するものであり、本発明が属する技術分野において知られているか、または慣行に含まれるような本開示からの逸脱、及び前述される本質的な特徴に適用され得るもの、ならびに添付の請求項の範囲に含まれるような本開示からの逸脱を含むことを理解されたい。
【0231】
当業者であれば、単なる日常的な実験を使用して、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態の多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲の範囲内に包含されることが意図される。
【0232】
参照による組み込み
本明細書で参照される全ての特許及び刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0233】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前に単独でそれらの開示が提供されている。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0234】
本明細書で使用される場合、全ての見出しは単に本明細書の構成のためのものであり、いかなる様式においても開示を制限することを意図したものではない。いかなる個々のセクションの内容も、全てのセクションに等しく適用可能であり得る。
【配列表】
【国際調査報告】