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特表2023-523664改善されたネオエピトープワクチン及びがんを治療するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】改善されたネオエピトープワクチン及びがんを治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230531BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230531BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230531BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230531BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230531BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K38/10
A61K38/08
A61K39/39
A61P37/04
C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528979
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 US2020061014
(87)【国際公開番号】W WO2021101965
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/982,172
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/959,439
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/936,654
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522194016
【氏名又は名称】エピヴァックス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ウィリアム ディー
(72)【発明者】
【氏名】デ グルート アン
(72)【発明者】
【氏名】ベルドゥーゴ ガッド
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ギレム
(72)【発明者】
【氏名】ブリドン ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】モイーズ レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】プリンシオッタ マイケル エフ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB01
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE06
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新生物ワクチンを製造するための改善された戦略、組成物、及び方法、ならびに、患者におけるがんを治療するための方法におけるそれらの使用に関する。ある態様では、がんを治療するための方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチド(表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むペプチドまたはポリペプチドを含む)のうちの1種または複数種を投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示する対象特異的ペプチドまたはポリペプチドのうちの1種または複数種を投与すること、を含む。ステップ(a)及びステップ(b)で投与されるペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除するように設計されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における新生物を治療するための方法であって、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを投与すること、を含み、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む前記ペプチドまたはポリペプチド、及びステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む前記対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する、前記方法。
【請求項2】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、
場合に、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアント、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表Cの前記ポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアント、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表Cの前記ポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている、
場合に、新生物を有することが疑われているまたは有している対象には投与されない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象に由来する新生物試料における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出すること及び/または前記対象に存在するHLAアロタイプを確認すること、ならびに、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、
場合に、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアント、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表Cの前記ポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドのうちの1種または複数種を投与すること、
をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアント、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表Cの前記ポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている、
場合に、新生物を有することが疑われているまたは有している対象には投与されない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアント、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表Cの前記ポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)は、対象に由来する新生物試料(例えば、腫瘍組織、例えば、膀胱癌腫瘍組織など)における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出する及び/または前記対象に存在するHLAアロタイプを確認する1週間以内に投与される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1種または複数種の特定された共通のネオエピトープは、
i)対象の新生物標本に由来する特定された共通の新生物特異的変異を評価して、前記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている共通のネオエピトープを特定すること、
ii)ステップ(i)の前記変異によってコードされている前記特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定し、制御性T細胞に結合することが知られているまたは確認されているこのように特定されたネオエピトープを前記共通のネオエピトープから排除すること、
を含む方法によって特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記共通の新生物特異的変異は共通の新生物特異的体細胞変異である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記共通の新生物特異的体細胞変異は、一塩基多型(SNV)、インフレーム挿入、インフレーム欠失、フレームシフト挿入、及びフレームシフト欠失である、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記共通の新生物特異的体細胞変異は、新生物を有すると診断された前記対象の前記新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(i)で前記共通の新生物特異的変異を評価して、前記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている共通のネオエピトープを特定することは、
a)1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定することであって、前記変異ペプチドは前記共通の新生物特異的変異のうちの少なくとも1種によってコードされている、前記測定すること、
b)前記1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定することであって、前記非変異ペプチドは、前記コードされた前記共通の新生物特異的変異のうちの少なくとも1つ以外は変異ペプチドと同一である、前記測定すること、
c)自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した少なくとも10,000のペプチドの結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の前記変異ペプチドとステップ(b)の前記非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めること、
d)前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認すること、及び
e)
1)前記変異ペプチドが、前記予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、前記非変異ペプチドが、前記予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または
2)前記変異ペプチドが、前記予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、前記非変異ペプチドが、前記予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、前記変異ペプチドと前記非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、
前記変異ペプチドを共通のネオエピトープとして特定すること、
を含む、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドは両方共、9アミノ酸長である、または、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドは両方共、10アミノ酸長である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドの4、5、6、7、8、及び9位にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(i)で前記共通の新生物特異的変異を評価して、前記変異によってコードされている知られているまたは確認されている共通のネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む、請求項7から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(ii)における、前記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている共通のネオエピトープを特定するための前記in silico試験は、推定上のT細胞エピトープでタンパク質配列をスクリーニングするためのアルゴリズムを使用することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(ii)で前記共通の新生物特異的変異によってコードされている前記特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、前記変異によってコードされている前記特定された共通のネオエピトープが、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有しているかどうかを確認することを含み、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有していることが確認された、前記変異によってコードされている前記特定された共通のネオエピトープは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープとして特定される、請求項7から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
MHCクラスII分子に結合する9-merの特定された共通のネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定された共通のネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定された共通のネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定された共通のネオエピトープの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定された共通のネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定された共通のネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(ii)で前記変異によってコードされている前記特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む、請求項7から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記in silico試験は、制御性T細胞との交差反応性を予測するアルゴリズムを使用して、前記特定された共通のネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測されるかどうかを解析することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特定された共通のネオエピトープは、前記共通のネオエピトープのスコアが所定のカットオフ超である場合に、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(iii)で前記変異によってコードされている前記特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、前記特定された共通のネオエピトープがin vitroで制御性T細胞に結合するかどうかを確認することを含む、請求項7から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
共通のネオエピトープは、前記共通のネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記特定された共通のネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することをさらに含む、請求項20から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
共通のネオエピトープは、前記共通のネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
iii)少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、前記ペプチドまたはポリペプチドは、前記共通のネオエピトープが、ステップ(ii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているものと特定されていない場合、前記共通の新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含む、請求項7から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
iv)ステップ(iii)で設計した前記少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供すること
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
v)ステップ(iv)で提供した前記少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供すること
をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、薬学的に許容されるアジュバント及び/または担体と共に投与される、請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、
前記対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または
有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)
場合に、ステップ(a)において投与される、請求項1から請求項30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている、
場合に、ステップ(a)において投与されない、請求項1から請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
対象に由来する新生物試料における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出すること及び/または前記対象に存在するHLAアロタイプを確認すること、ならびに、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、
場合に、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを投与すること、
をさらに含む、請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、前記対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または
前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている、
場合に、新生物を有することが疑われているまたは有している対象には投与されない、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む前記1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、対象に由来する新生物試料における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出する及び/または前記対象に存在するHLAアロタイプを確認する1週間以内に投与される、請求項7から請求項34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドのうちの前記1種または複数種は、
i)対象の新生物標本における新生物特異的変異を特定すること、
ii)ステップ(i)で特定された前記新生物特異的変異を評価して、前記変異によってコードされている知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することであって、前記ネオエピトープは前記対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、前記特定すること、及び
iii)ステップ(ii)の前記変異によってコードされている前記特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定し、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているこのような特定されたネオエピトープを前記対象特異的ネオエピトープから排除すること、
を含む方法によって特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(i)で新生物特異的変異を特定することは、新生物を有すると診断された前記対象に由来する新生物標本及び非新生物標本の完全または部分的なゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトーム間の配列差異を特定することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
新生物特異的変異を特定することまたは配列差異を特定することは次世代シークエンシング(NGS)を含む、請求項36または請求項37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(i)で新生物特異的変異を特定することは、非新生物試料に存在しない変異をそれぞれが含む複数種の核酸配列を前記新生物から選択することを含む、請求項36または請求項37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
新生物特異的変異を特定することまたは配列差異を特定することは、前記新生物標本のゲノムDNA及び/またはRNAをシークエンシングすることを含む、請求項36または請求項37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記非新生物標本は、新生物を有すると診断された前記対象に由来する、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記新生物特異的変異は新生物特異的体細胞変異である、請求項36から請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記新生物特異的体細胞変異は、一塩基多型(SNV)、インフレーム挿入、インフレーム欠失、フレームシフト挿入、及びフレームシフト欠失である、請求項36から請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記新生物特異的体細胞変異は、新生物を有すると診断された前記対象の前記新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(ii)で前記新生物特異的変異を評価して、前記変異によってコードされている知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、
a)1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定することであって、前記変異ペプチドは前記新生物特異的変異のうちの少なくとも1種によってコードされている、前記測定すること、
b)前記1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定することであって、前記非変異ペプチドは、前記コードされた前記新生物特異的変異のうちの少なくとも1つ以外は変異ペプチドと同一である、前記測定すること、
c)自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した少なくとも10,000のペプチドの結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の前記変異ペプチドとステップ(b)の前記非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めること、
d)前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認すること、及び
e)
1)前記変異ペプチドが、前記予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、前記非変異ペプチドが、前記予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または
2)前記変異ペプチドが、前記予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、前記非変異ペプチドが、前記予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、前記変異ペプチドと前記非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、
前記変異ペプチドをネオエピトープとして特定すること、
を含む、請求項36から請求項44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドは両方共、9アミノ酸長である、または、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドは両方共、10アミノ酸長である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記変異ペプチド及び前記非変異ペプチドの4、5、6、7、8、及び9位にある、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(ii)で前記新生物特異的変異を評価して、前記変異によってコードされている知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む、請求項36から請求項49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(ii)における、前記変異によってコードされている知られているまたは確認されているネオエピトープを特定するための前記in silico試験は、推定上のT細胞エピトープでタンパク質配列をスクリーニングするためのアルゴリズムを使用することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(iii)で前記変異によってコードされている前記特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、前記変異によってコードされている前記特定されたネオエピトープが、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有しているかどうかを確認することを含み、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有していることが確認された、前記変異によってコードされている前記特定されたネオエピトープは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープとして特定される、請求項36から請求項51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(iii)で前記変異によってコードされている前記特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む、請求項36から請求項53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記in silico試験は、制御性T細胞との交差反応性を予測するアルゴリズムを使用して、前記特定されたネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測されるかどうかを解析することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
特定されたネオエピトープは、前記ネオエピトープのスコアが所定のカットオフ超である場合に、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ステップ(iii)で前記変異によってコードされている前記特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定することは、前記特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することを含む、請求項36から請求項53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
ネオエピトープは、前記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することをさらに含む、請求項54から請求項56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
ネオエピトープは、前記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
iv)少なくとも1種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、前記ペプチドまたはポリペプチドは、前記ネオエピトープが、ステップ(iii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているものと特定されていない場合、前記変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む、請求項36から請求項60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
v)ステップ(iv)で設計した前記少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供すること
をさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
vi)ステップ(v)で提供した前記少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供すること
をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む前記1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、薬学的に許容されるアジュバント及び/または担体と共に投与される、請求項1から請求項63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む前記1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドでおおよそ3週間投与される、請求項1から請求項64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある、請求項14に記載の方法。
【請求項67】
MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある、請求項18に記載の方法。
【請求項68】
MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある、請求項48に記載の方法。
【請求項69】
MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、前記特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープの前記TCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願及び参照による組み込み
本出願は、2019年11月18日出願の米国仮出願第62/936,654号、2020年1月10日出願の米国仮出願第62/959,439号、及び2020年2月27日出願の米国仮出願第62/982,172号に対する優先権を主張するものであり、それぞれのその全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書と共に同時に出願の国際出願代理人整理番号第Y8652-99006号、2020年1月10日出願の米国仮出願第62/959,440号、及び2020年2月27日出願の米国仮出願第62/982,173号を参照する(それぞれのその全体は参照により本明細書に組み込まれる)。2020年2月27日出願の国際出願第PCT/US2020/020089号及び2019年2月27日出願の米国仮出願第62/811,207号を参照する(それぞれのその全体は参照により本明細書に組み込まれる)。2020年5月5日出願の国際出願第PCT/US2020/031357号、ならびに2019年5月3日出願の米国仮出願第62/842,800号、2019年7月31日出願の米国仮出願第62/880,965号、2019年11月8日出願の米国仮出願第62/933,651号、及び2019年5月3日出願の米国仮出願連番第62/932,654号を参照する(それぞれのその全体は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0003】
上記の出願、及びその中またはその特許出願中に引用される全ての文献(「出願で引用した文献」)、ならびに出願で引用した文献で引用または参照される全ての文献、及び本明細書で引用した文献内において引用または参照される全ての文献(「本明細書で引用した文献」)は、本明細書または参照により本明細書に組み込まれる任意の文献内において言及する任意の製品用の任意の製造業者の取扱説明書、説明書、製品仕様書及び製品パンフレットとともに、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施において採用され得る。より具体的には、全ての参照文献は、それぞれの個々の文献が参照により組み込まれることが明示的及び個別に示されるかのように、同程度に参照により組み込まれる。
【0004】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。上記ASCIIのコピー(2020年11月18日に作成)の名称はY8652-99007.txtであり、そのサイズは62,319バイトである。
【0005】
本発明の実施形態は、新生物ワクチンを製造するための改善された戦略、組成物、及び方法、ならびに、患者におけるがんを治療するための方法におけるそれらの使用に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、対象におけるがんを治療するための方法に関し、その方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)のうちの1種または複数種を投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示する対象特異的ペプチドまたはポリペプチドのうちの1種または複数種を投与すること、を含む。重要なことに、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドと、ステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドの両方は、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除するように設計されている。特定及び設計された共通のネオエピトープは、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫に利用することができ、それを使用することによって、幅広い集団のがん患者(例えば、限定するわけではないが、膀胱癌患者)に対するがんネオアンチゲンベースワクチンの迅速な製造が可能となり得る。共通のネオエピトープ倉庫を、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドと共に使用することにより、患者における新生物特異的ネオアンチゲンの最適な利用が可能となる。
【背景技術】
【0006】
アブレーション技術(例えば、外科的処置、凍結/熱処理、超音波、高周波、及び放射線)及び化学的技術(例えば、医薬品、細胞傷害/化学療法剤、モノクローナル抗体、及びこれらの様々な組み合わせ)を含む多くの既存のがん療法が存在している。しかしながら、これらの療法は往々にして、重大なリスク、有害副作用、及び極めて高い費用、ならびに不確かな効果を伴う。
【0007】
さらに最近において、臨床試験では、患者自身の免疫系を利用することにより患者のがんを効果的に制御する精密がん免疫療法の潜在能に光をあてている。このような精密がん免疫療法は、個別化ワクチンにおける、新生物特異的ネオアンチゲンの患者特異的プールの特定及び使用を含む。しかしながら、このようなワクチンは、個々の患者のゲノム(がん細胞のゲノムと非がん細胞のゲノムの両方を含む)のシークエンシング、及び、個々の患者に含まれていることが確認されているネオアンチゲンの組み合わせを含む個別化組成物の製造を必要とする。それゆえ、このような患者特異的な新生物特異的ネオアンチゲンを含有するワクチンには、設計及び投与するためにかなりの量の時間及び労力が必要となることがある。
【0008】
さらに、新生物ワクチンを調製するためのいくつかの異なる方法が採用されている一方で、最近の研究では、標的新生物を効果的に治療するための強力なCD8+エフェクターT細胞応答及びCD4+エフェクターT細胞応答を確立させることの難しさが強調されている。この難しさは、ネオアンチゲンベースワクチン中に、制御性T細胞によって認識されることによりその制御性T細胞を活性化させ得る抑制性T細胞ネオエピトープが偶発的に含まれることに起因する場合があり、それにより、腫瘍細胞に対する効果的な免疫応答が阻害される場合がある。さらに、自己に由来するエピトープとTCR接触部を共有する抗原由来エピトープを認識するT細胞は、それらT細胞が末梢へと放出され得る前に、胸腺選択中に欠失またはアネルギー性になり得る。それゆえ、これらのT細胞を標的とするワクチン成分は無効となり得る。その一方で、交差反応性エピトープを標的とするワクチン誘導性免疫応答は、本発明者らの相同性検索によって特定された交差反応性エピトープのホモログを標的とする望ましくない自己免疫応答を誘導し得る。その結果として、ワクチンの安全性が低下し得る。それゆえ、ネオアンチゲンベースワクチン中に、その他の有害なT細胞(自己免疫応答をもたらし得る潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞に加えて、アネルギー性T細胞を含む)によって認識されることによりその有害なT細胞を活性化させ得るその他の有害なT細胞-ネオエピトープが偶発的に含まれることにより、腫瘍細胞に対する効果のない免疫応答もまたもたらされ得る。
【0009】
免疫寛容は、抗原提示細胞(APC)、T細胞、B細胞、サイトカイン、ケモカイン、及び表面受容体の間の複雑な相互作用によって制御されている。最初の自己/非自己識別は、骨髄の上皮細胞が未成熟T細胞に対する特定の自己タンパク質エピトープを発現する新生児成長中の胸腺内で生じる。自己抗原を高親和性で認識するT細胞は欠失されるが、中程度の親和性を有する自己反応性T細胞は時として、欠失を回避して、いわゆる「天然」制御性T細胞へと変換され得る。これらの天然制御性T細胞は末梢へと輸送されて、潜在的な自己免疫応答を制御するのに役立つ。
【0010】
寛容の第2の形態は末梢において生じる。この場合、活性化T細胞は、ある特定の免疫抑制性サイトカイン及びケモカイン、例えば、IL-10、TGF-β、及びCCL19などの作用を介して、「適応」制御性T細胞表現型へと変換される。これらの「適応」制御性T細胞の考えられる役割としては、侵入病原体の成功裏の排除に続いて免疫応答を抑制すること、アレルギー反応によって引き起こされる過剰な炎症を制御すること、低レベルまたは慢性の感染症によって引き起こされる過剰な炎症を制御すること、または場合により、有益な共生細菌を標的とする炎症反応を制御すること、が挙げられる。
【0011】
天然制御性T細胞(自然制御性T細胞と適応制御性T細胞の両方を含む)は、末梢における免疫制御の重要な構成要素である。例えば、自然制御性T細胞がそのTCRによって活性化されると、自然制御性T細胞は免疫調節サイトカイン及びケモカインを発現する。活性化された自然制御性T細胞は、接触依存性メカニズム及び接触非依存性メカニズムを介して、近傍のエフェクターT細胞を抑制し得る。加えて、これらの細胞が放出するサイトカイン(IL-10及びTGF-βを含むがこれらに限定されない)は、抗原特異的適応制御性T細胞を誘導することができる。しかしながら、制御性T細胞活性が自己免疫の防止に不可欠であるとはいえ、過剰な制御性T細胞の作用が腫瘍細胞に対する効果的な免疫応答を阻害する場合がある(Nishikawa et al.,“Regulatory T Cells in Tumor Immunity,”Int.J.Cancer 127:759-767(2010))。事実、制御性T細胞活性の下方制御は、抗がん療法を改善するための有効なツールとして使用されている(Grauer et al.,“Elimination of Regulatory T Cells is Essential for an Effective Vaccination with Tumor Lysate-Pulsed Dendritic Cells in a Murine Glioma Model,”Int.J.Cancer 122:1794-1802(2008)、Zhou et al.,“Depletion of Endogenous Tumor-Associated Regulatory T Cells Improves the Efficacy of Adoptive Cytotoxic T-Cell Immunotherapy in Murine Acute Myeloid Leukemia,”Blood 114:3793-3802(2009))。それゆえ、腫瘍細胞に対する効果的な免疫応答の阻害を防止するために、ネオアンチゲンベースワクチンを含む新生物ワクチン中に、制御性T細胞によって認識されることによりその制御性T細胞を活性化させ得る抑制性T細胞ネオエピトープが偶発的に含まれることを回避しなければならない。
【0012】
このように、がんを治療するため及びネオアンチゲンベースワクチンを製造するための改善された戦略、組成物、及び方法に対する要望が依然として存在している。より詳細には、共通のネオエピトープを含む第1のワクチンと、それに続く、対象特異的ネオエピトープを含む第2のワクチン(例えば、第1のワクチンの約3週間後に投与される)の両方(共通のネオエピトープと対象特異的ネオエピトープの両方は、対象内において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する)を利用した、対象におけるがんを治療するための戦略、組成物、及び方法に対する要望が依然として存在している。ある態様では、第1のワクチンは、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫から製造される。
【発明の概要】
【0013】
それゆえ、本発明の実施形態は、新生物ワクチンを製造するための改善された戦略、組成物、及び方法、ならびに、対象における新生物(例えば、がん)を治療するための方法におけるその使用を提供する。より詳細には、本発明の実施形態は、対象における新生物を治療するための方法に関し、その方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチド(表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cのポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表CのポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)のうちの1種または複数種を投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示する対象特異的ペプチドまたはポリペプチドのうちの1種または複数種を投与すること、を含む。ある態様では、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、及びステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。特定及び設計された共通のネオエピトープは、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫に利用することができ、それを使用することによって、幅広い集団のがん患者(例えば、限定するわけではないが、膀胱癌患者)に対するがんネオアンチゲンベースワクチンの迅速な製造が可能となり得る。1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドと共に共通のネオエピトープ倉庫を使用することにより、患者における新生物特異的ネオアンチゲンの最適な利用が可能となる。
【0014】
1つの実施形態は、対象における新生物を治療するための方法に関し、その方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cのポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表CのポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)を投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを投与すること、を含み、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、及びステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。1つの実施形態は、対象における免疫応答を誘導するための方法に関し、その方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cのポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)を投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを投与すること、を含み、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、及びステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。
【0015】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表CのポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである。上記の方法の態様では、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドのそれぞれは、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコアアミノ酸配列を有し、任意選択的に、コア配列のC末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、これらの隣接アミノ酸の総数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10、または10~12であり、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る(例えば、全ての隣接アミノ酸が一方の末端に付加され得る、またはアミノ酸が両方の末端に均等または任意のその他の比率で付加され得る)。上記の方法の態様では、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドのそれぞれは、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有し、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、これらの隣接アミノ酸の総数は、1~12、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10、または10~12であり、隣接アミノ酸は、隣接アミノ酸を有するポリペプチドが、上記隣接アミノ酸を有さない上記ポリペプチドコア配列のように同一のHLA分子になおも結合可能である(すなわち、MHC結合性を保持している)場合、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る(例えば、全ての隣接アミノ酸が一方の末端に付加され得る、またはアミノ酸が両方の末端に均等または任意のその他の比率で付加され得る)。ある態様では、隣接アミノ酸を有する上記ポリペプチドは、同一のHLA分子になおも結合可能であり(すなわち、MHC結合性を保持している)、上記隣接アミノ酸を有さない上記ポリペプチドコア配列と同一のTCR特異性を保持している。ある態様では、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有し、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有する。ある態様では、上記隣接アミノ酸配列は、天然タンパク質においてその内部に含まれているペプチドまたはポリペプチドにも隣接している隣接アミノ酸配列である。ある態様では、本明細書に記載の上記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。より長いペプチドを使用することにより、患者細胞による内在性プロセシングが可能となり得、より効果的な抗原提示及びT細胞応答の誘導がもたらされ得る。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、N末端アセチル及びC末端アミノ基でキャップ付加されていてもよい。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)形態または塩形態のいずれかであってもよく、修飾、例えば、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などを含まないまたは含むのいずれかであってもよい。
【0016】
上記の方法の態様では、本明細書に記載の表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)は、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている場合に、新生物を有することが疑われているまたは有している対象には投与されない。
【0017】
上記の方法の態様では、方法は、対象に由来する新生物試料における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出すること及び/または前記対象に存在するHLAアロタイプを確認すること、ならびに、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合に、本明細書に記載の表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)のうちの1種または複数種を投与すること、をさらに含む。ある態様では、本明細書に記載の表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている場合に、新生物を有することが疑われているまたは有している対象には投与されない。
【0018】
上記の方法の態様では、本明細書に記載の表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)を含む1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、対象に由来する新生物試料(例えば、腫瘍組織、例えば、膀胱癌腫瘍組織など)における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出する及び/または前記対象に存在するHLAアロタイプを確認する1週間以内に投与される。
【0019】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープは、i)特定された共通の新生物特異的変異を評価して、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定すること、及び、ii)ステップ(i)の上記変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定し、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)このような特定されたネオエピトープを共通のネオエピトープから排除すること、を含む方法によって特定される。
【0020】
上記の方法の態様では、共通の新生物特異的変異は新生物特異的体細胞変異である。ある態様では、新生物特異的変異は、一塩基多型(SNV)、挿入及び欠失(インフレーム変異とフレームシフト変異の両方を生成し得る)、ならびに、その他の大規模再構成、限定するわけではないが例えば、染色体の逆位、重複、挿入、欠失、または転座などである。ある態様では、SNV、挿入、及び欠失を含む新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV、挿入及び欠失(非同義変異であり得る)、ならびにその他の大規模再構成を含む新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である。ある態様では、SNVを含む共通の新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV(非同義変異であり得る)、インデル、及びフレームシフトを含む共通の新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の共通の変異である。
【0021】
上記の方法の態様では、ステップ(i)で共通の新生物特異的変異を評価して、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定することは、a)1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定すること(上記変異ペプチドは上記共通の新生物特異的変異のうちの少なくとも1種によってコードされている)、b)1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定すること(非変異ペプチドは、コードされた上記共通の新生物特異的変異のうちの少なくとも1つ以外は変異ペプチドと同一である)、c)自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した十分に大きな群のペプチド(例えば、少なくとも10,000)の結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めること、d)上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認すること、及び、e)1)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または、2)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、変異ペプチドと非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、変異ペプチドを共通のネオエピトープとして特定すること、を含む。更なる態様では、1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である。ある態様では、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、9アミノ酸長である、または、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、10アミノ酸長である。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位にある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位にある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある。
【0022】
上記の方法の態様では、ステップ(i)で共通の新生物特異的変異を評価して、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む。更なる態様では、ステップ(i)における、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定するための上記in silico試験は、EPIMATRIX(登録商標)アルゴリズムを使用することを含む。
【0023】
上記の方法の態様では、ステップ(ii)で上記共通の新生物特異的変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、上記変異によってコードされている上記特定された共通のネオエピトープが、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有しているかどうかを確認することを含み、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有していることが確認された、上記変異によってコードされている上記特定された共通のネオエピトープは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープとして特定される。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定された共通のネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定された共通のネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定された共通のネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定された共通のネオエピトープの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定された共通のネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定された共通のネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある。
【0024】
上記の方法の態様では、ステップ(iii)で上記共通の新生物特異的変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む。ある態様では、in silico試験は、制御性T細胞及びその他の有害なT細胞との交差反応性を予測するアルゴリズムを使用して、特定された共通のネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測されるかどうかを解析することを含む。ある特定の態様では、アルゴリズムはJANUSMATRIX(商標)アルゴリズムである。更なる態様では、特定された共通のネオエピトープは、交差反応性スコアが所定のカットオフ超である場合に、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測されるが、例えば、交差反応性スコアを用いて、自己抗原と比較した潜在的なネオエピトープを評価し、対象のMHCに十分に結合すること及び/または対象のプロテオームに頻発していることが測定または計算された交差反応性ネオエピトープを特定または識別する。ある特定の態様では、共通のネオエピトープのJANUSMATRIX(商標)スコアは、2以上である(更なる態様では、3以上)。ある態様では、方法は、特定された共通のネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することをさらに含む。ある態様では、共通のネオエピトープは、上記共通のネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。
【0025】
上記の方法の態様では、ステップ(ii)で上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、特定された共通のネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することを含む。ある態様では、共通のネオエピトープは、上記共通のネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。
【0026】
上記の方法の態様では、方法は、iii)少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記共通のネオエピトープが、ステップ(ii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているものと特定されていない場合、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含む。ある態様では、方法は、iv)ステップ(iii)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。なおも更なる態様では、方法は、v)ステップ(iv)で提供した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。
【0027】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、薬学的に許容されるアジュバント及び/または担体と共に投与される。ある態様では、アジュバントはポリ-ICLCを含む。
【0028】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合に、ステップ(a)において投与される。上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている場合に、ステップ(a)において投与されない。
【0029】
上記の方法の態様では、方法は、対象に由来する新生物試料における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出すること及び/または対象に存在するHLAアロタイプを確認すること、ならびに、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合に、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを投与すること、をさらに含む。ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている、及び/または、1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている場合に、新生物を有することが疑われているまたは有している対象には投与されない。
【0030】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、対象に由来する新生物試料における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出する及び/または対象に存在するHLAアロタイプを確認する1週間以内に投与される。
【0031】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドのうちの1種または複数種は、i)対象の新生物標本における新生物特異的変異を特定すること、ii)ステップ(i)で特定された新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されているネオエピトープを特定すること(上記ネオエピトープは対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている))、及びiii)ステップ(ii)の上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているネオエピトープを特定し、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されているこのような特定されたネオエピトープを対象特異的ネオエピトープから排除すること、を含む方法によって特定される。
【0032】
上記の方法の態様では、ステップ(i)で新生物特異的変異を特定することは、新生物を有すると診断された対象に由来する新生物標本及び非新生物標本の完全または部分的なゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトーム間の配列差異を特定することを含む。ある態様では、非新生物標本は、新生物を有すると診断された対象に由来する。更なる態様では、新生物特異的変異を特定することまたは配列差異を特定することは次世代シークエンシング(NGS)を含む。ある態様では、ステップ(i)で新生物特異的変異を特定することは、非新生物試料に存在しない変異をそれぞれが含む複数種の核酸配列を新生物から選択することを含む。ある態様では、新生物特異的変異を特定することまたは配列差異を特定することは、新生物標本のゲノムDNA及び/またはRNAをシークエンシングすることを含む。
【0033】
上記の方法の態様では、新生物特異的変異は新生物特異的体細胞変異である。ある態様では、新生物特異的変異は、一塩基多型(SNV)、挿入及び欠失(インフレーム変異とフレームシフト変異の両方を生成し得る)、ならびに、その他の大規模再構成、限定するわけではないが例えば、染色体の逆位、重複、挿入、欠失、または転座などである。ある態様では、SNV、挿入、及び欠失を含む新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV、挿入及び欠失(非同義変異であり得る)、ならびにその他の大規模再構成を含む新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である。ある態様では、SNVを含む新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV(非同義変異であり得る)、インデル、及びフレームシフトを含む新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である。
【0034】
上記の方法の態様では、ステップ(ii)で新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、a)1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定すること(上記変異ペプチドは上記新生物特異的変異のうちの少なくとも1つによってコードされている)、b)1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定すること(非変異ペプチドは、コードされた上記新生物特異的変異のうちの少なくとも1つ以外は変異ペプチドと同一である)、c)自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した十分に大きな群のペプチド(例えば、少なくとも10,000)の結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めること、d)上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認すること、及び、e)1)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または、2)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、変異ペプチドと非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、変異ペプチドをネオエピトープとして特定すること、を含む。更なる態様では、1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である。ある態様では、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、9アミノ酸長である、または、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、10アミノ酸長である。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある。
【0035】
上記の方法の態様では、ステップ(ii)で新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む。更なる態様では、ステップ(ii)における、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するための上記in silico試験は、EPIMATRIX(登録商標)アルゴリズムを使用することを含む。
【0036】
上記の方法の態様では、ステップ(iii)で上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、上記変異によってコードされている上記特定されたネオエピトープが、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有しているかどうかを確認することを含み、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有していることが確認された、上記変異によってコードされている上記特定されたネオエピトープは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープとして特定される。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、及び8位の残基の任意の組み合わせにある。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位、1、4、5、6、7、8、及び9位、または1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある。更なる態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある。
【0037】
上記の方法の態様では、ステップ(iii)で上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む。ある態様では、in silico試験は、JANUSMATRIX(商標)アルゴリズムを使用して、特定されたネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測されるかどうかを解析することを含む。更なる態様では、特定されたネオエピトープは、ネオエピトープのJANUSMATRIX(商標)スコアが2以上(更なる態様では、3以上)である場合に、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測される。ある態様では、方法は、特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することをさらに含む。ある態様では、ネオエピトープは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。
【0038】
上記の方法の態様では、ステップ(iii)で上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することを含む。ある態様では、ネオエピトープは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。
【0039】
上記の方法の態様では、方法は、iv)少なくとも1種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記ネオエピトープが、ステップ(iii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む。ある態様では、方法は、v)ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。なおも更なる態様では、方法は、vi)ステップ(v)で提供した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。
【0040】
ある態様では、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、薬学的に許容されるアジュバント及び/または担体と共に投与される。ある態様では、アジュバントはポリ-ICLCを含む。
【0041】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドでおおよそ3週間投与される。
【0042】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20種のペプチドまたはポリペプチドを含む。ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む3~20種の選択されたペプチドまたはポリペプチドを含む。ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むそれぞれのペプチドまたはポリペプチドは、8~100アミノ酸の全長を有する。ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドのうちのそれぞれのペプチドまたはポリペプチドは、8~40アミノ酸、8~30アミノ酸、8~25アミノ酸、8~23アミノ酸、8~20アミノ酸、または8~15アミノ酸の全長を有する。
【0043】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、本明細書で開示する少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20種のペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)を含む。上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、本明細書で開示する表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cのポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである3~20種のペプチドまたはポリペプチドを含む。上記の方法の態様では、本明細書で開示する表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cのポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるそれぞれのペプチドまたはポリペプチドは、8~100アミノ酸の全長を有する。ある態様では、本明細書で開示するそれぞれのペプチドまたはポリペプチドは、8~40アミノ酸、8~30アミノ酸、8~25アミノ酸、8~23アミノ酸、8~20アミノ酸、または8~15アミノ酸の全長を有する。
【0044】
上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、本明細書で開示する1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20種のペプチドまたはポリペプチドを含む。ある態様では、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む3~20種の選択されたペプチドまたはポリペプチドを含む。ある態様では、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むそれぞれのペプチドまたはポリペプチドは、8~100アミノ酸の全長を有する。ある態様では、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドのうちのそれぞれのペプチドまたはポリペプチドは、8~40アミノ酸、8~30アミノ酸、8~25アミノ酸、8~23アミノ酸、8~20アミノ酸、または8~15アミノ酸の全長を有する。
【0045】
上記の方法の態様では、方法は、抗免疫抑制剤の投与をさらに含む。ある態様では、抗免疫抑制剤は、チェックポイント遮断調節剤、例えば、チェックポイント遮断阻害剤及び免疫チェックポイント刺激剤などを含む。
【0046】
上記の方法の態様では、新生物は固形腫瘍である。ある態様では、新生物は、膀胱癌、乳癌、脳癌、結腸癌、胃癌、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、または精巣癌である。ある態様では、新生物は膀胱癌である。
【0047】
ある実施形態では、本発明は、上記の方法に使用するための組成物及びキットを提供する。ある実施形態では、本発明は、対象における新生物の治療に使用するための、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを含む組成物を提供し、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。ある実施形態では、本発明は、対象における新生物の治療に使用するための、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを含む組成物を提供し、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む1種または複数種の特定された対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。
【0048】
ある実施形態では、本発明は、対象における新生物の治療に使用するための、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを含む組成物、及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを含む組成物を提供し、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。
【0049】
ある実施形態では、本発明は、上記の態様及び特性のそれぞれを採用したキット及び組成物を提供する。
【0050】
本明細書で開示する主題のこれら及び追加の実施形態及び特性は、本明細書に記載の図及び発明を実施するための形態を参照することにより明らかとなるであろう。
【0051】
上記の発明の概要と下記の発明を実施するための形態の両方は例示であり、請求項に記載の本発明の更なる説明を提供することを意図しているということを理解されたい。発明の概要も下記の発明を実施するための形態も、発明の概要または発明を実施するための形態で言及する特定の特性に本発明の範囲を定義または限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に、そのMHCクラスIネオエピトープ含有量に基づいて割り当てられたポイントの概略図である。
図2】MHCクラスIネオエピトープの最小パーセンタイルランクに基づいて、本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に割り当てられたポイントの概略図である。
図3】、本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に、そのMHCクラスIIネオエピトープ含有量に基づいて割り当てられたポイントの概略図である。
図4】MHCクラスIIネオエピトープの最小パーセンタイルランクに基づいて、本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に割り当てられたポイントの概略図である。
図5】本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に、そのMHCクラスI相同性スコアに基づいて割り当てられたポイントの概略図である。
図6】本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に、そのMHCクラスII相同性スコアに基づいて割り当てられたポイントの概略図である。
図7】本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に、その起源転写物の発現パーセンタイルランクに基づいて割り当てられたポイントの概略図である。
図8】本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に、腫瘍DNAにおけるその変異カバレッジに基づいて割り当てられたポイントの概略図である。
図9】A~Bは、腫瘍DNAにおける変異のバリアントアレル頻度(VAF)に基づいて、同系モデル(A)または患者(B)のミュータノームに由来する本明細書で開示するランク付けシステムにおけるネオアンチゲン候補に割り当てられたポイントの概略図である。
図10】A~Bは、PBS対照群(A)及びポリ-ICLC群(B)におけるCT26腫瘍増殖を示すグラフである。個々のマウスはより淡い濃淡で示している。より濃い濃淡は平均腫瘍増殖±SEMを示している。マウスの半数がエンドポイントに到達するまで平均値をプロットする。
図11】A~Bは、PBS対照群(A)及びANCER(商標)ペプチド群におけるCT26腫瘍増殖を示すグラフである。個々のマウスはより淡い濃淡で示している。より濃い濃淡は平均腫瘍増殖±SEMを示している。マウスの半数がエンドポイントに到達するまで平均値をプロットする。
図12】PBS対照群、抗ポリ-ICLC群、及びANCER(商標)ペプチド群における平均(±SEM)CT26腫瘍増殖を示すグラフである。マウスの半数がエンドポイントに到達するまで平均値をプロットする。
図13】A~Bは、CT26ネオアンチゲンIFNγ応答を示すグラフである。Bは、CT26ネオアンチゲンIFNγ応答を示すグラフである。
図14】A~Bは、CT26 TregペプチドがCT26ネオアンチゲンペプチドに対するIFNγ応答を抑制することを示すグラフである。
図15】A~Bは、T細胞がANCER(商標)-CT26ワクチン製剤との高い多官能性を示していることを示すグラフである。
図16】大規模マルチパラメータCT26効果実験(予言的)用の試験設計を示す。
図17図16に開示するそれぞれの試験群の予想相対効果を示す。
図18】同系CT26マウス腫瘍モデルにおける腫瘍増殖を制御するためにポリ-ICLCと共に投与したANCER(商標)選択ペプチドワクチンの効果を示す。
図19】A~Dは、膀胱癌における個人的な変異対共通の変異を示す。(A)患者の少なくとも1%に39種の変異が存在していることが判明した。ANCER(商標)を用いて、39種の頻繁に共通している変異の周辺にネオアンチゲンを設計した。(B)TCGA BLCA患者のミュータノーム及びHLAハプロタイプに基づいた、それぞれのANCER(商標)で設計した共通のネオアンチゲンを受けることができたTCGA BLCA患者のパーセンテージである。(C)TCGA BLCA患者間における、それぞれの共通のネオアンチゲンによってコードされている共通ではない変異の頻度である。(D)それぞれのANCER(商標)で設計した共通のネオアンチゲンの全体的なMHCクラスI免疫原性スコア及びMHCクラスII免疫原性スコア(ネオエピトープZスコアの合計)である。患者特異的免疫原性はHLAハプロタイプによって決まる。
図20】A~Bは、共通の抗原のパネルによるネオアンチゲンBLCA患者累積カバレッジを示す。(A)10種の共通のネオアンチゲンのパネル(その配列はANCER(商標)を用いて精緻化した)は、TCGA BLCA集団の約25%をカバーしている。このパネルを20種の配列へと拡張すると、TCGA BLCAカバレッジが患者の最大3分の1(33%)に増加した。(B)患者の小規模コホートにおける共通のネオアンチゲンのパネルのカバレッジのシミュレーションである。30名の患者の50のシミュレーションコホートでは、10種の共通のネオアンチゲンは、中央9名(30%)の患者[範囲=3~18]をカバーした。シミュレーションにおいてこのパネルを20種の配列へと拡張すると、カバレッジが中央12名(40%)の患者[範囲=4~21]に増加した。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の様々な実施形態の個々の詳細を記載して、ある特定の態様を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲において定義される本実施形態の範囲を逸脱することなく、修正及び変化形態が可能であることは当業者に明らかである。より具体的には、本発明の実施形態の一部の態様を好ましいまたは特に有利なものとして本明細書において特定し得たとしても、本発明の実施形態がこれらの好ましい態様に限定されないものとみなされる。
【0054】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本明細書で開示する主題が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。
【0055】
臨床試験では、がん適応症全体にわたり患者のがんを効果的に制御する個別化がん免疫療法の潜在能に光をあてている。このような精密がん免疫療法は、個別化ワクチンにおける、新生物特異的ネオアンチゲンの患者特異的プールの特定及び使用を含む。しかしながら、このような個別化ワクチンは、個々の患者のゲノム(がん細胞のゲノムと非がん細胞のゲノムの両方を含む)のシークエンシング、及び、個々の患者に含まれている特定されたネオアンチゲンの組み合わせを含む個別化組成物の製造を必要とする。それゆえ、このような患者特異的な新生物特異的ネオアンチゲンには、設計及び投与するためのかなりの量の時間及び労力が必要となることがある。さらに、新生物ワクチンを調製するためのいくつかの異なる方法が採用されている一方で、最近の研究では、標的新生物を効果的に治療するための強力なCD8+エフェクターT細胞応答及びCD4+エフェクターT細胞応答を確立させることの難しさが強調されている。この難しさは、ネオアンチゲンベースワクチン中に、制御性T細胞によって認識されることによりその制御性T細胞を活性化させ得る抑制性T細胞ネオエピトープが偶発的に含まれること(それにより、腫瘍細胞に対する効果的な免疫応答が阻害される場合がある)、及び/または、ネオアンチゲンベースワクチン中に、その他の有害なT細胞(自己免疫応答をもたらし得る潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞に加えて、アネルギー性T細胞を含む)によって認識されることによりその有害なT細胞を活性化させ得るその他の有害なT細胞-ネオエピトープが偶発的に含まれること、に起因する場合がある。このように、ネオアンチゲンベースワクチンに関連する改善された組成物及び方法に対する要望が依然として存在している。
【0056】
本発明の実施形態は、共通の新生物ワクチンを製造してこれらの問題を克服するための改善された戦略、組成物、及び方法に関する。対象におけるがんを治療するための本明細書で開示する戦略、組成物、及び方法は、共通のネオエピトープを含む第1のワクチンと、それに続く、対象特異的ネオエピトープを含む第2のワクチン(例えば、第1のワクチンの約3週間後に投与される)の両方を利用しており、共通のネオエピトープと対象特異的ネオエピトープの両方は、対象内において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。ある態様では、第1のワクチンは、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫から製造されるが、それを使用することによって、幅広い集団のがん患者(例えば、限定するわけではないが、膀胱癌患者)に対するがんネオアンチゲンベースワクチンの迅速な製造が可能となり得る。事実、ある態様では、本明細書で開示するネオエピトープのうちの10のパネルは膀胱癌集団のおおよそ25%をカバーし、本明細書で開示するネオエピトープのうちの20のパネルは膀胱癌集団のおおよそ33%をカバーし、本明細書で開示するネオエピトープのうちの39のパネルは膀胱癌集団のおおよそ40%をカバーしている。それに続いて、本明細書で開示する戦略及び方法を使用して対象特異的ネオエピトープを含むワクチンを設計し、対象に投与してもよい。共通のネオエピトープワクチンをそれに続いて投与する対象特異的ネオエピトープワクチンと共に組み合わせて使用することにより、患者における新生物特異的ネオアンチゲンの最適な利用が可能となる。
【0057】
その他のワクチンパイプラインと比較した、新生物ワクチンを製造するための本明細書で開示する戦略、組成物、及び方法の更なる固有の特性は、CD4+T細胞及びCD8+T細胞の共通のネオエピトープと対象特異的ネオエピトープの両方を予測する能力、及び、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)によって認識されることによりその制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞を活性化させ得るネオエピトープを特定してから排除する能力である。例えば、本発明者らは、非同義変異に基づいて、共通のネオエピトープ(例えば、膀胱癌患者における39の特定された「極めて頻繁な」非同義変異に基づいて)と対象特異的ネオエピトープの両方を特定、設計、及び選択するために、ANCER(商標)システムを使用した。本明細書で開示する特定、設計、及び選択された共通のネオエピトープ及び対象特異的ネオエピトープは、幅広く様々なHLAクラスI及びクラスIIアレルに限定される。腫瘍特異的ネオエピトープを特定、特性決定、及び選別するための登録商標のあるプラットフォームであるANCER(商標)は、EPIMATRIX(登録商標)(共通の新生物ワクチンと対象特異的新生物ワクチンの両方に使用する上記新生物特異的変異によってコードされている確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープの特定用)及びJANUSMATRIX(商標)(制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープの特定用、及び、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが予測されているこのような特定されたネオエピトープの、共通の新生物ワクチン及び対象特異的新生物ワクチンに使用するネオエピトープからの排除用)を活用しており、これらは、感染症の前向きワクチン研究において広く有効となっている最先端の予測アルゴリズムである(Moise et al.,Hum.Vaccines Immunother 2015,11(9):2312;Wada et al.,Sci.Rep.2017,7(1)1283)。他のin silicoパイプラインと比較したANCER(商標)の固有の特徴は、CD4+T細胞エピトープを正確に予測して、寛容またはTregエピトープ、及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合可能なエピトープを特定するその能力である。潜在的な制御性T細胞誘導性ネオエピトープ及び/または潜在的な有害T細胞誘導性ネオエピトープを特定及び排除するための、共通のネオアンチゲン配列及び対象特異的ネオアンチゲン配列を含むネオアンチゲン配列のスクリーニングは、費用及び所要時間を最小化しつつより高い品質の候補を含む新規ワクチンを強化及び設計する可能性を提供する。
【0058】
それゆえ、本発明は、共通の新生物ワクチン及び対象特異的新生物ワクチンを製造するための改善された戦略、組成物、及び方法に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、新生物ワクチンを製造するための改善された戦略、組成物、及び方法、ならびに、対象における新生物(例えば、がん)を治療するための方法におけるその使用に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、対象における新生物を治療するための方法に関し、その方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)、ならびに任意選択的に、表A、表B、及び/または表CのポリペプチドのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを含む)のうちの1種または複数種を投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の本明細書で開示する対象特異的ペプチドまたはポリペプチドのうちの1種または複数種を投与すること、を含む。ある態様では、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、及びステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、以下でより詳細に論じるとおり、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。
【0059】
定義
【0060】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容上明確に別様に示されない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことを意味している。「または」とは、「及び/または」のことを意味する。本明細書で使用する場合、用語「及び/または」及び「1つまたは複数の」は、付随する列挙要素の全ての組み合わせを含む。
【0061】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、当該技術分野における通常の許容範囲の範囲内、例えば、平均値の2標準偏差以内として理解される。「約」は、記載した値の50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内として理解され得る。文脈から特に明らかでない限り、本明細書で提供する全ての数値は、「約」という用語によって修飾されている。
【0062】
本明細書で使用する場合、「抗原」という用語は、免疫応答を誘導する任意の物質のことを意味する。ある態様では、「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質、好ましくは、ペプチドまたはタンパク質に関する。本発明によれば、「抗原」という用語は、少なくとも1つのエピトープを含む任意の分子を含む。好ましくは、「抗原」は、任意選択的にプロセシング後、その「抗原」(その「抗原」を発現する細胞を含む)に特異的であることが好ましい免疫反応を誘導する分子である。「抗原」は、細胞によって提示されることが好ましく、「抗原」に対する免疫反応をもたらすMHC分子との関係において、疾患細胞、とりわけがん細胞を含む抗原提示細胞によって提示されることが好ましい。「抗原」は、天然抗原に相当するまたは天然抗原に由来する生成物であることが好ましい。このような天然抗原としては、腫瘍抗原、例えば、腫瘍細胞の一部、例えば、細胞質、細胞表面、または細胞核に由来し得る、腫瘍細胞内において発現しているタンパク質またはペプチド、とりわけ、主に細胞内でまたは腫瘍細胞の表面抗原として発生しているタンパク質またはペプチドなどが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「生体試料」という用語は、生物に由来する組織、細胞、または分泌物の任意の試料のことを意味する。
【0064】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する」、及び「有する」などの用語は、米国特許法に属する意味を有し得、「含む(includes)」、「含む(including)」などのことを意味し得、同様に、「から本質的になる」または「本質的になる」は、米国特許法に属する意味を有し、その用語は、列挙されたものの基本的または新規の特徴が列挙されたものを超えるものの存在によって変化しない限りにおいて、列挙されたものを超えるものの存在を可能とするオープンエンドではあるが、先行技術の実施形態を排除する。
【0065】
本明細書で使用する場合、「対照」という用語は、基準条件または参照条件のことを意味する。
【0066】
本明細書で使用する場合、「疾患」という用語は、細胞、組織、または器官の正常な機能を障害または阻害する任意の症状または障害のことを意味する。
【0067】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、未治療患者と比較して疾患(例えば、新生物/腫瘍)の症候を改善するのに必要な量のことを意味する。疾患の治療的治療のために本発明を実施するために使用される「有効量」の活性化合物(複数可)は、投与方法、対象の年齢、体重、及び総合的な健康状態に応じて変化する。最終的には、主治医または獣医が適切な量及び用量レジメンを決定する。このような量は「有効」量と呼ばれる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「フラグメント」とは、ポリペプチドまたは核酸分子の一部のことを意味する。この部分は、参照核酸またはポリペプチドの全長の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含有していることが好ましい。フラグメントは、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸を含有していてもよい。
【0069】
本明細書で使用する場合、「免疫応答」という用語は、がん性細胞、転移性腫瘍細胞、悪性黒色腫、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、または、自己免疫または病理学的な炎症の場合における正常ヒト細胞もしくは組織への選択的な損傷、それらの破壊、または、人体からのそれらの排除をもたらす、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び/または上記の細胞または肝臓が産生する可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の共同作用のことを意味する。
【0070】
本明細書で使用する場合、「免疫シナプス」という用語は、所与のT細胞エピトープが細胞表面MHC複合体とTCRの両方に同時に結合することによって形成されたタンパク質複合体のことを意味する。
【0071】
本明細書で使用する場合、「単離」という用語は、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはそのフラグメント、バリアント、もしくは誘導体が、それが自然に結合しているその他の生体物質から本質的に排除されていること、または、例えば、本発明のポリペプチドを発現するように遺伝子組換えされた組換え宿主細胞に由来するその他の生体物質を実質的に含まないことを意味する。
【0072】
本明細書で使用する場合、「主要組織適合遺伝子複合体(MHC)」、「MHC分子」、「MHCタンパク質」、または「HLAタンパク質」という用語は、とりわけ、タンパク質抗原のタンパク質分解開裂によって生じたペプチドに結合し、潜在的なT細胞エピトープを提示し、そのペプチドを細胞表面へと輸送して、特定の細胞、とりわけ、細胞傷害性Tリンパ球またはヘルパー T細胞に対し、そのペプチドをその細胞表面に提示できるタンパク質のことを意味するものと理解されるものとする。ゲノム内の主要組織適合遺伝子複合体は、細胞表面上に発現した遺伝子産物が内在性抗原及び/または外来抗原に結合してそれらを提示することによって免疫学的プロセスを制御するのに重要な遺伝子領域を含む。主要組織適合遺伝子複合体は、異なるタンパク質をコードする2つの遺伝子群、すなわち、MHCクラスIの分子及びMHCクラスIIの分子に分類される。2つのMHCクラスの分子は異なる抗原供給源に特化されている。MHCクラスIの分子は、内在的に合成された抗原、例えば、ウイルスタンパク質及び腫瘍抗原を提示する。MHCクラスIIの分子は、外来供給源から生じたタンパク質抗原、例えば、細菌生成物を提示する。2つのMHCクラスの細胞生物学及び発現パターンは、これらの異なる役割に適合している。クラスIのMHC分子は重鎖及び軽鎖で構成されており、約8~11のアミノ酸、しかし一般的には9または10のアミノ酸のペプチドと結合して、このペプチドが好適な結合モチーフを有している場合に、このペプチドを細胞傷害性Tリンパ球に提示することができる。クラスIのMHC分子が結合するペプチドは、内在性タンパク質抗原に由来している。クラスIのMHC分子の重鎖は、好ましくは、HLA-A、HLA-B、またはHLA-Cモノマーであり、軽鎖はβ-2-ミクログロブリンである。クラスIIのMHC分子はα鎖及びβ鎖で構成されており、約12~25のアミノ酸のペプチドに結合して、このペプチドが好適な結合モチーフを有している場合に、このペプチドをヘルパー T細胞に提示することができる。クラスIIのMHC分子が結合するペプチドは一般的に、外来タンパク質抗原の細胞外物質に由来している。α鎖及びβ鎖はとりわけ、HLA-DR、HLA-DQ、及びHLA-DPモノマーである。
【0073】
本明細書で使用する場合、「MHC結合モチーフ」という用語は、特定のMHCアレルへの結合性を予測する、タンパク質配列内におけるアミノ酸のパターンのことを意味する。
【0074】
本明細書で使用する場合、「MHCリガンド」という用語は、1種または複数種の特定のMHCアレルに結合することができるポリペプチドのことを意味する。「HLAリガンド」という用語は、「MHCリガンド」という用語と交換することができる。その表面上にMHC/リガンド複合体を発現する細胞は、「抗原提示細胞」(APC)と呼ばれる。同様に、本明細書で使用する場合、「MHC結合ペプチド」という用語は、MHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子に結合するペプチドに関する。MHCクラスI/ペプチド複合体の場合、より長いまたはより短いペプチドは有効であり得るが、結合ペプチドは一般的に8~10アミノ酸長である。MHCクラスII/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは一般的に10~25アミノ酸長、とりわけ13~18アミノ酸長である一方、より長いまたはより短いペプチドもまた有効であり得る。
【0075】
本明細書で使用する場合、「エピトープ」という用語は、抗原などの分子の内部の抗原決定基、すなわち、とりわけ、MHC分子との関係において提示された際に免疫系が認識する、例えば、T細胞が認識する分子の一部またはフラグメントのことを意味する。腫瘍抗原などのタンパク質のエピトープは、好ましくは、上記タンパク質の連続的または不連続的な部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えば、エピトープは、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であってもよい。本発明との関係におけるエピトープがT細胞エピトープであることがとりわけ好ましい。
【0076】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーのことを意味し、特定の長さのことを意味しないことから、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義内に含まれる。本明細書で使用する場合、ポリペプチドは、組換え細胞及び非組換え細胞から単離した際に細胞性物質を実質的に含まない場合、または、化学合成した際に化学的前駆体またはその他の化学物質を含まない場合に、「単離」または「精製」されたと言われる。しかしながら、本発明のポリペプチドは、細胞内において通常は結合していない別のポリペプチド(例えば、非相同ポリペプチド)に結合、連結していてもよく、または、その別のポリペプチドの内部に挿入されていてもよく、それでもなお、「単離」または「精製」された状態である。ポリペプチドを組換え的に製造する場合、ポリペプチドはまた、培地、例えば、ポリペプチド配合物の容積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満に相当する培地を実質的に含んでいなくてもよい。
【0077】
本明細書で使用する場合、「ネオエピトープ」という用語は、正常な非がん性細胞または生殖細胞系細胞などの参照物質内には存在していないががん細胞内には存在しているT細胞エピトープのことを意味する。このことは、とりわけ、正常な非がん性細胞または生殖細胞系細胞内に、対応するエピトープが存在している状態を含むが、がん細胞内の1つまたは複数の変異によって、ネオエピトープが生じるようにエピトープの配列が変化する。このことはまた、正常な非がん性細胞または生殖細胞系細胞内にT細胞エピトープが存在していない状態を含むが、がん細胞内の1つまたは複数の変異によって、新しいネオエピトープが生じるように配列が変化する。ある態様では、本発明の「ネオエピトープ」は、新生物患者/対象に固有の新生物特異的変異によってコードされていてもよく(例えば、がん細胞とがん細胞が存在している対象の両方に特異的なエピトープ)、本明細書では「対象特異的ネオエピトープ」と呼ぶこともある。ある態様では、本発明の「ネオエピトープ」は、新生物(例えば、膀胱癌)を患う対象の集団中の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、または5%超の対象における新生物(例えば、がん)細胞内に存在する新生物特異的変異によってコードされていてもよく、本明細書では「共通のネオエピトープ」と呼ぶこともある。ある態様では、「共通のネオエピトープ」は、新生物(例えば、膀胱癌)を患う対象の集団中の2人以上、3人以上、4人以上、5人以上などの対象に存在していてもよい。
【0078】
本明細書で使用する場合、「ネオアンチゲン」または「ネオアンチゲン性」という用語は、ゲノムコードタンパク質のアミノ酸配列を変化させる新生物特異的変異(複数可)に起因する腫瘍抗原の部類のことを意味する。「ネオアンチゲン」は、対象特異的ネオエピトープまたは共通のネオエピトープを含む1種または複数種のネオエピトープを含んでいてもよい。「対象特異的ネオエピトープ」とは、新生物患者/対象に固有の新生物特異的変異(例えば、がん細胞とがん細胞が存在している対象の両方に特異的な変異)のことを意味する。「共通の新生物特異的変異」とは、新生物、例えば、特定のタイプの新生物、例えば、膀胱癌などを患う対象の集団中の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、または5%超の対象における新生物(例えば、がん)細胞内に存在する新生物特異的変異のことを意味する。ある態様では、「共通の新生物特異的変異」とは、新生物、例えば、特定のタイプの新生物、例えば、膀胱癌などを患う対象の集団中の2人以上、3人以上、4人以上、5人以上などの対象における新生物(例えば、がん)細胞内に存在する新生物特異的変異のことを意味する。
【0079】
本明細書で使用する場合、「新生物」という用語は、細胞の異常増殖、不適切に低いレベルのアポトーシス、またはその両方によって引き起こされたまたはもたらされた任意の疾患のことを意味する。新生物は、良性、前悪性、または悪性であってもよい。がんは新生物の例である。がんの非限定例としては、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、及び固形腫瘍、例えば、肉腫及びがん腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、希突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)などが挙げられる。リンパ増殖性障害もまた増殖性疾患とみなされる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府または州政府の監督機関により承認されているまたは承認可能であること、または、ヒトを含む動物における使用用に米国薬局方またはその他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0081】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤」などの用語は、薬剤と共に対象に投与することができ、治療量の薬剤を送達するのに十分な用量で投与する際に薬剤の薬理活性を損なわず非毒性である、賦形剤、担体、または希釈剤のことを意味する。
【0082】
本明細書で提供する範囲は、範囲内の全ての値の略記であると理解すべきである。例えば、1~25の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25からなる群からの任意の数値、数値の組み合わせ、または下位範囲に加えて、上記整数間にある全ての10進値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、及び1.9などを含むものと理解すべきである。下位範囲については、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子下位範囲」がとりわけ考えられる。例えば、例示的な1~25の範囲の入れ子下位範囲は、一方の方向における1~5、1~10、1~15、及び1~20、または、もう一方の方向における25~20、25~15、25~10、及び25~5を含み得る。
【0083】
本明細書で使用する場合、「制御性T細胞」、「Treg」などの用語は、細胞間接触及び抑制的サイトカイン産生を含む様々な異なるメカニズムを介した、CD4+及び/またはCD8+エフェクターT細胞(Teff)誘導、増殖、及び/またはサイトカイン産生の抑制または下方制御を含む免疫エフェクター機能を抑制するT細胞の亜集団のことを意味する。ある態様では、CD4+Tregは、CD4、CD25、及びFoxP3を含むがこれらに限定されないある特定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする。ある態様では、CD4+制御性T細胞は、活性化されると、IL-10及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムB及びパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、CD8+Tregは、CD8、CD25、及び活性化後のFoxP3を含むがこれらに限定されないある特定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする。ある態様では、制御性CD8+T細胞は、活性化されると、IFNγ、IL-10、及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。ある態様では、CD8+Tregはまた、グランザイムB及び/またはパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。
【0084】
本明細書で使用する場合、「制御性T細胞エピトープ」(「Tregitope」)という用語は、寛容原性応答を引き起こし(Weber CA et al.,(2009),Adv Drug Deliv,61(11):965-76)、MHC分子に結合することができ、血中天然Tregに結合する(すなわち、血中天然Tregと相互作用してそれを活性化させる)ことができる(自然Treg及び/または適応Tregを含む態様において)「T細胞エピトープ」のことを意味する。ある態様では、CD4+制御性T細胞は、活性化されると、IL-10及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムB及びパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、CD8+Tregは、CD8、CD25、及び活性化後のFoxP3を含むがこれらに限定されないある特定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする。ある態様では、制御性CD8+T細胞は、活性化されると、IFNγ、IL-10、及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。ある態様では、CD8+Tregはまた、グランザイムB及び/またはパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。
【0085】
本明細書で使用する場合、「T細胞エピトープ」という用語は、7~30アミノ酸長であり、MHC分子(例えば、ヒト白血球抗原(HLA)分子)に特異的に結合して特定のT細胞受容体(TCR)と相互作用することができるMHCリガンドまたはタンパク質決定因子のことを意味する。本発明で使用する場合、T細胞(例えば、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞、例えば、潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞など)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)T細胞エピトープ(例えば、ネオエピトープ、Tregitopeなど)との関係における「結合する」、「結合」などの用語は、MHC分子(例えば、ヒト白血球抗原(HLA)分子)に結合した際に、T細胞エピトープがT細胞のTCRと相互作用してT細胞を活性化させることができる(アネルギー性T細胞の場合には、機能的不活性化を含む)ということを意味する。一般的に、T細胞エピトープは直鎖状であり特定の三次元特性を発現しない。T細胞エピトープは変性溶媒の存在による影響を受けない。T細胞エピトープと相互作用する能力は、in silico法を用いて予測することができる(De Groot AS et al.,(1997),AIDS Res Hum Retroviruses,13(7):539-41;Schafer JR et al.,(1998),Vaccine,16(19):1880-4;De Groot AS et al.,(2001),Vaccine,19(31):4385-95;De Groot AR et al.,(2003),Vaccine,21(27-30):4486-504(その全ての全体は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0086】
本明細書で使用する場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、APCの表面上に提示されたMHC/リガンド複合体の特定のレパートリーに結合することができるT細胞が発現するタンパク質複合体のことを意味する。
【0087】
本明細書で使用する場合、「ワクチン」という用語は、投与時に免疫応答、とりわけ、細胞性免疫応答を誘導する医薬品製剤(医薬組成物)または製品のことを意味し、病原体または疾患細胞、例えば、新生物(例えば、がん細胞)などを認識して攻撃する。疾患の予防または治療のためにワクチンを使用してもよい。それゆえ、ワクチンは、抗原を含む薬剤であり、ワクチン接種による特定の防御及び保護物質を生じさせるためにヒトまたは動物に使用される。「個別化新生物ワクチン」などの用語は、特定の新生物患者に関係し、新生物(例えば、がん)ワクチンを個々の新生物患者のニーズまたは特殊な事情に適合させることを意味する。「共通の新生物ワクチン」などの用語は、新生物(例えば、がん)ワクチンを新生物患者の集団のニーズに適合させることを意味する。
【0088】
対象における新生物を治療するため及び/または免疫応答を誘導するための方法
1つの実施形態は、対象における新生物を治療するための方法に関し、その方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを投与すること、を含み、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、及びステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。1つの実施形態は、対象における免疫応答を誘導するための方法に関し、その方法は、(a)1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む有効量の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドを投与すること、及びそれに続いて、(b)1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む有効量の1種または複数種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを投与すること、を含み、ステップ(a)で投与される1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、及びステップ(b)で投与される1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを排除する。ステップ(a)における有効量の、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたはこのようなものを含む医薬組成物、及びステップ(b)における有効量の、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたはこのようなものを含む医薬組成物、を対象に投与することにより、固形腫瘍、例えば、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、膵臓癌、前立腺癌、悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌などに加えて、血液腫瘍及び/または悪性腫瘍、例えば、小児期白血病及びリンパ腫など、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ球及び皮膚由来のリンパ腫、急性及び慢性白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病など、形質細胞新生物、リンパ性新生物、及びAIDSに関連するがんを含むがこれらに限定されない多種多様ながんのための治療を提供することができるということが理解されよう。特定の態様では、がんは膀胱癌である。
【0089】
例えば、改善されたネオアンチゲンベース膀胱癌ワクチンを製造するために、本発明者らは、膀胱癌患者のミュータノームから個人的なネオアンチゲン及び共通のネオアンチゲンを特定した。本発明者らは、研究を行った膀胱癌患者(n=411)のミュータノームに生じた非同義変異(例えば、ミスセンス、インデル、及びフレームシフト変異を含む)のうちの99.02%が個人的なネオアンチゲン(合計82,572の個人的なネオアンチゲンが特定された)である一方で、0.98%が共通のネオアンチゲン(合計820の共通のネオアンチゲンが特定された)であることを明らかにした。本発明者らは、特定された共通のネオアンチゲンのうち、39の非同義変異(4.7%)が膀胱癌患者ミュータノームのうちの1%に存在していることを明らかにした。そこで、「極めて頻繁な」変異は、その変異がネオエピトープをコードしている限りにおいて、既製ワクチンのための潜在的な標的として機能する。
【0090】
その後、本発明者らは、これら39の特定された「極めて頻繁な」非同義変異に基づいて、共通のネオエピトープを特定、設計、及び選択するために、ANCER(商標)システムを使用した。これらの共通のネオエピトープは、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む。これらの本明細書で開示する、特定、設計、及び選択された共通のネオエピトープは、幅広く様々なHLAクラスI及びクラスIIアレルに限定される。腫瘍特異的ネオエピトープを特定、特性決定、及び選別するための登録商標のあるプラットフォームであるANCER(商標)は、EPIMATRIX(登録商標)(共通の新生物ワクチンに使用する上記新生物特異的変異によってコードされている確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープの特定用)及びJANUSMATRIX(商標)(制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープの特定用、及び、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが予測されているこのような特定されたネオエピトープの、共通の新生物ワクチンに使用する共通のネオエピトープからの排除用)を活用しており、これらは、感染症の前向きワクチン研究において広く有効となっている最先端の予測アルゴリズムである(Moise et al.,Hum.Vaccines Immunother 2015;Wada et al.,Sci.Rep.2017)。他のin silicoパイプラインと比較したANCER(商標)の固有の特徴は、CD4+T細胞エピトープを正確に予測して、寛容またはTregエピトープ、及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合可能なエピトープを特定するその能力である。潜在的な制御性T細胞誘導性ネオエピトープ及び/または潜在的な有害T細胞誘導性ネオエピトープを特定及び排除するための、共通のネオアンチゲン配列及び対象特異的ネオアンチゲン配列を含むネオアンチゲン配列のスクリーニングは、費用及び所要時間を最小化しつつより高い品質の候補を含む新規ワクチンを強化及び設計する可能性を提供する。
【0091】
このように、対象における新生物を治療するため及び/または免疫応答を誘導するための上記の方法の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである。ある態様では、上記少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドは、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有し、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、これらの隣接アミノ酸の総数は、1~12、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10、または10~12であり、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る(例えば、全ての隣接アミノ酸が一方の末端に付加され得る、またはアミノ酸が両方の末端に均等または任意のその他の比率で付加され得る)。ある態様では、上記少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドは、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有し、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、これらの隣接アミノ酸の総数は、1~12、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10、または10~12であり、隣接アミノ酸は、隣接アミノ酸を有するペプチドが、上記隣接アミノ酸を有さない上記ペプチドのように同一のHLA分子になおも結合可能である(すなわち、MHC結合性を保持している)場合、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る(例えば、全ての隣接アミノ酸が一方の末端に付加され得る、またはアミノ酸が両方の末端に均等または任意のその他の比率で付加され得る)。ある態様では、隣接アミノ酸を有する上記ポリペプチドは、同一のHLA分子になおも結合可能であり(すなわち、MHC結合性を保持している)、上記隣接アミノ酸を有さない上記ポリペプチドコア配列と同一のTCR特異性を保持している。ある態様では、上記隣接アミノ酸配列は、天然タンパク質においてその内部に含まれているペプチドまたはポリペプチドにも隣接している隣接アミノ酸配列である。ある態様では、本明細書に記載の上記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。より長いペプチドを使用することにより、患者細胞による内在性プロセシングが可能となり得、より効果的な抗原提示及びT細胞応答の誘導がもたらされ得る。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、N末端アセチル及びC末端アミノ基でキャップ付加されていてもよい。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)形態または塩形態のいずれかであってもよく、修飾、例えば、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などを含まないまたは含むのいずれかであってもよい。
【0092】
ある態様では、本明細書に記載の上記少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)、少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドに含まれる上記共通のネオエピトープは、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、及び/または、少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドに含まれる上記共通のネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)。ある態様では、このような少なくとも1種の設計ペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸は、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫として提供され得る。このような設計ペプチドもしくはポリペプチド、または上記設計ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を使用することによって、膀胱癌患者を含む幅広い集団のがん患者に適用するための共通のネオアンチゲンベースワクチンを迅速に製造することができる。上記ペプチドまたはポリペプチドの態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、単離、合成、または組換えであってもよい。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0093】
対象における新生物を治療するため及び/または免疫応答を誘導するための上記の方法の態様では、共通のネオエピトープは、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、共通のネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、共通のネオエピトープは、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質に結合することが知られていないまたは確認されていない(例えば、予測されていない)。例えば、上記の方法の態様では、ワクチンなどの医薬品製剤中に含まれていてもよい、本明細書で開示する表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)は、共通のネオエピトープが、対象に由来する新生物試料において検出/コードされている表A、表B、及び/または表Cに開示されている共通の新生物特異的変異(表A、表B、及び表C内の「変異」と表示した列で示す)によってコードされている、共通のネオエピトープが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質(表A、表B、及び表C内の「HLA限定」と表示した列で示す)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、共通のネオエピトープが、対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合に、ステップ(a)において対象に投与される。ある特定の態様では、共通のネオエピトープは、共通のネオエピトープが、対象に由来する新生物試料において検出されていない共通の新生物特異的変異によってコードされている、共通のネオエピトープが、対象のMHCタンパク質に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、共通のネオエピトープが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質(表A、表B、及び表C内の「HLA限定」と表示した列で示す)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合に、ステップ(a)において対象に投与されない。例えば、上記の方法の態様では、本明細書で開示する表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(例えば、ワクチンなどの医薬品製剤中の)は、共通のネオエピトープが、対象に由来する新生物試料において検出及び/またはコードされていない表A、表B、及び/または表Cに開示されている共通の新生物特異的変異(表A、表B、及び表C内の「変異」と表示した列で示す)によってコードされている、共通のネオエピトープが、対象のMHCタンパク質(表A、表B、及び表C内の「HLA限定」と表示した列で示すようなMHC)に結合しないことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)、及び/または、共通のネオエピトープが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質(表A、表B、及び表C内の「HLA排除」と表示した列で示すようなMHC)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合に、ステップ(a)において、膀胱癌を有することが疑われているまたは有している対象には投与されない。
【0094】
このように、上記の免疫応答を誘導するための方法または新生物(例えば、膀胱癌)を治療するための方法を必要とする対象においてそれを実施する態様では、方法のステップ(a)は、共通のネオエピトープが、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、及び/または、共通のネオエピトープが、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)場合に、対象に由来する新生物試料(例えば、腫瘍組織、例えば、膀胱癌腫瘍組織など)における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出する及び/または対象に存在するHLAアロタイプを確認すること、及び、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)のうちの1種または複数種を投与すること、をさらに含む。ある態様では、方法はさらに、共通のネオエピトープが、有害または抑制的な免疫応答をもたらし得る対象のMHCタンパク質(表A、表B、及び表C内の「HLA排除」と表示した列で示すようなMHC)に結合することが知られていないまたは確認されていない(例えば、予測されていない)場合に、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)のうちの1種または複数種を投与すること、を任意選択的に含む。上記の方法のある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む適切なペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)は、対象に由来する新生物試料(例えば、腫瘍組織、例えば、膀胱癌腫瘍組織など)における1種または複数種の腫瘍特異的変異を検出する及び/または前記対象に存在するHLAアロタイプを確認する1週間以内に投与される。
【0095】
・ステップ(a)の共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープの特定
上記の免疫応答を誘導するための方法または新生物(例えば、膀胱癌)を治療するための方法を必要とする対象においてそれを実施する態様では、ステップ(a)で投与するための1種または複数種の特定された共通のネオエピトープは、i)新生物を有すると診断された対象の新生物標本における共通の新生物特異的変異を特定すること、ii)ステップ(i)で特定された共通の新生物特異的変異を評価して、共通の新生物ワクチンに使用する上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定すること、及び、iii)ステップ(ii)の上記共通の新生物特異的変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定し、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは予測されているこのような特定されたネオエピトープを、共通の新生物ワクチンに使用する共通のネオエピトープから排除すること、を含む方法を用いて特定される。共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法の態様では、方法は、iv)少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記共通のネオエピトープが、ステップ(iii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含む。ある態様では、方法は、v)ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。ある態様では、方法は、v)ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。ある態様では、方法は、v)対象のための、ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することを含み、上記共通のネオエピトープは、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、及び/または、上記共通のネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)。ある態様では、ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸は、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫として提供され得る。なおも更なる態様では、方法は、vi)ステップ(v)で提供した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。ある態様では、方法は、vi)ステップ(v)で提供した対象のための、少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することを含み、上記共通のネオエピトープは、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、及び/または、上記共通のネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)。ある態様では、ワクチンは、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫を使用して製造され得る。
【0096】
ある態様では、ステップ(a)で投与するための共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法は、i)対象の新生物標本に由来する特定された共通の新生物特異的変異を評価して(例えば、新生物を有すると診断された上記の対象の態様において)、共通の新生物ワクチンに使用する上記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定すること、及び、ii)ステップ(i)の上記共通の新生物特異的変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定し、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)このような特定されたネオエピトープを、共通の新生物ワクチンに使用する共通のネオエピトープから排除すること、を含む。共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法の態様では、方法は、iii)少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記共通のネオエピトープが、ステップ(ii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含む。ある態様では、方法は、iv)ステップ(iii)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。ある態様では、方法は、iv)対象のための、ステップ(iii)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することを含み、上記共通のネオエピトープは、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、及び/または、上記共通のネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)。ある態様では、ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸は、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫として提供され得る。なおも更なる態様では、方法は、v)ステップ(iv)で提供した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。ある態様では、方法は、v)ステップ(iv)で提供した対象のための、少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することを含み、上記共通のネオエピトープは、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、及び/または、上記共通のネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)。ある態様では、ワクチンは、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫を使用して製造され得る。
【0097】
〇共通の新生物特異的変異の特定
ある態様では、共通の新生物特異的変異(例えば、共通のがん特異的変異)を特定するためのステップは、新生物標本(例えば、患者の新生物標本、または対象の集団内の対象もしくはそれぞれの対象に由来する新生物標本)のゲノムDNA及び/またはRNAをシークエンシングすることを含む。ある態様では、新生物標本は、新生物細胞(例えば、腫瘍またはがん細胞)を含有しているまたは含有していることが予想される任意の試料、例えば、患者に由来する身体試料などに関する。ある態様では、身体試料は、任意の組織試料、例えば、血液、新生物試料(例えば、原発性腫瘍または腫瘍転移/循環腫瘍細胞)から得た組織試料、または、新生物細胞(例えば、腫瘍またはがん細胞)を含有する任意のその他の試料などであってもよい。特定の態様では、新生物は膀胱癌である。
【0098】
ある態様では、共通の新生物特異的変異を特定するためのステップは、新生物標本(例えば、患者の新生物標本、または対象の集団内の対象もしくはそれぞれの対象に由来する新生物標本)から得た配列情報を、参照試料、例えば、正常な非新生物細胞(例えば、非がん性細胞)、例えば、体細胞または生殖細胞系の組織/細胞などの核酸(例えば、DNAまたはRNAなど)をシークエンシングすることにより得た配列情報などと比較することを含む。ある態様では、参照試料は、新生物試料を得たのと同一の新生物患者、または異なる個体から得てもよい。ある態様では、参照試料は、任意の組織試料、例えば、非新生物組織に由来する血液または試料などであってもよい。ある態様では、正常なゲノム生殖細胞系DNAは、末梢血単核球(PBMC)から得てもよい。
【0099】
ある態様では、共通の新生物特異的変異は、患者の1種または複数種の新生物細胞(例えば、がんまたは腫瘍細胞)内に存在する全ての共通の新生物特異的(例えば、がん特異的)変異を含んでいてもよく、または、患者の1種または複数種の新生物細胞内に存在する共通の新生物特異的変異のうちのごく一部のことを意味していてもよい。それゆえ、本発明は、患者の1種または複数種の新生物細胞内に存在する全ての共通の新生物特異的変異の特定を含んでいてもよく、患者の1種または複数種の新生物細胞内に存在する共通の新生物特異的変異のうちのごく一部の特定を含んでいてもよい。ある態様では、本発明の共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法は、十分な数の共通のネオエピトープが本明細書で開示する戦略、方法、及び組成物に含まれることを提供する、多くの共通の新生物特異的変異の特定を提供する。
【0100】
ある態様では、変異は、新生物患者(例えば、がん患者、例えば、膀胱癌患者など)の新生物標本(例えば、腫瘍標本)内の共通の新生物特異的変異(例えば、体細胞変異)であり、それら共通の新生物特異的変異は、新生物標本のゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトームと非新生物標本のゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトームの間の配列差異を特定することによって特定され得る。ある態様では、体細胞変異を含む共通の新生物特異的変異は、新生物標本のゲノム、好ましくは完全ゲノム中において特定される。それゆえ、本発明は、1種または複数種の新生物細胞のゲノム、好ましくは完全ゲノムの共通の新生物特異的変異の全てまたは一部を特定することを含んでいてもよい。ある態様では、体細胞変異を含む共通の新生物特異的変異は、新生物標本のエキソーム、好ましくは完全エキソーム中において特定される。それゆえ、本発明は、1種または複数種の新生物細胞のエキソーム、好ましくは完全エキソームの共通の新生物特異的変異の全てまたは一部を特定することを含んでいてもよい。ある態様では、体細胞変異を含む共通の新生物特異的変異は、新生物標本のトランスクリプトーム、好ましくは完全トランスクリプトーム中において特定される。それゆえ、本発明は、1種または複数種の新生物細胞のトランスクリプトーム、好ましくは完全トランスクリプトームの共通の新生物特異的変異の全てまたは一部を特定することを含んでいてもよい。
【0101】
ある態様では、ステップ(i)において、共通の新生物特異的変異を特定するために、本発明に従い、「従来の」シークエンシング法及び次世代シークエンシング(NGS)技術を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において周知の任意の好適なシークエンシング法を使用してもよい。「次世代シークエンシング」または「NGS」とは、サンガー化学反応として知られている「従来の」シークエンシング法とは対照的に、完全ゲノムを小さな断片へと切断することによって核酸鋳型を全長ゲノムに沿ってランダムに同時並行的に読む全てのハイスループットシークエンシング技術のことを意味する。当該技術分野において周知のとおり、このようなNGS技術(超並列シークエンシング技術としても周知)は、完全ゲノム、エキソーム、トランスクリプトーム(ゲノムの全ての転写配列)、またはメチローム(ゲノムの全てのメチル化配列)の核酸配列情報を、ごく短期間、例えば、1~2週間以内、好ましくは1~7日間以内、または最も好ましくは24時間未満以内に出力することができ、原則的に、単一細胞シークエンシング法を可能とする。市販または当該技術分野において周知の複数のNGSプラットフォームを使用してもよい。このようなNGS技術/プラットフォームの非限定例としては、ライゲーションによるシークエンシング法、イオン半導体シークエンシング技術、パイロシークエンシング技術、1分子シークエンシング技術、1分子シークエンシングのためのナノ技術、及び1分子シークエンシングのための電子顕微鏡ベースの技術が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、ある態様では、新生物特異的変異を特定するために、当該技術分野において周知の「第3世代シークエンシング」法を使用してもよい。ある態様では、当該技術分野において周知の直接タンパク質シークエンシング技術を用いて、新生物特異的変異を特定してもよい。さらに、ある態様では、当該技術分野において周知のMHC多量体を使用することによって、新生物特異的変異を特定してもよい。
【0102】
このように、ステップ(a)の共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法の態様では、共通の新生物特異的変異を特定するためのステップは、新生物を有すると診断された対象に由来する新生物標本及び非新生物標本の完全または部分的なゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトーム間の配列差異を特定することを含む。ある態様では、非新生物標本は、新生物を有すると診断された対象に由来する。更なる態様では、共通の新生物特異的変異を特定することまたは配列差異を特定することは次世代シークエンシング(NGS)を含む。ある態様では、共通の新生物特異的変異を特定するためのステップは、非新生物試料に存在しない変異をそれぞれが含む複数種の核酸配列を新生物から選択することを含む。ある態様では、共通の新生物特異的変異を特定することは、新生物標本のゲノムDNA及び/またはRNAをシークエンシングすることを含む。
【0103】
ステップ(a)の共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法の態様では、共通の新生物特異的変異は新生物特異的体細胞変異である。ある態様では、新生物特異的変異は、一塩基多型(SNV)、挿入及び欠失(インフレーム変異とフレームシフト変異の両方を生成し得る)、ならびに、その他の大規模再構成、限定するわけではないが例えば、染色体の逆位、重複、挿入、欠失、または転座などである。ある態様では、SNV、挿入、及び欠失を含む新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV、挿入及び欠失(非同義変異であり得る)、ならびにその他の大規模再構成を含む新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である。ある態様では、SNVを含む新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV(非同義変異であり得る)、インデル、及びフレームシフトを含む新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である。ある態様では、対象は膀胱癌を有すると診断されている。
【0104】
〇共通のネオエピトープの特定
ステップ(a)の共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法の態様では、特定された共通の新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定することは、in silico試験を含む。ある態様では、in silico試験は、どの共通の新生物特異的変異が共通のネオエピトープ、好ましくは、患者のMHCアロタイプに結合可能なネオエピトープを生じさせるかを予測するための有効なアルゴリズム(例えば、限定するわけではないが、EPIMATRIX(登録商標)、netMHCpan、NetMHC、netMHCcons、SYFPEITHI、HLA_BIND)を使用することを含む。例えば、有効なアルゴリズムを使用して、特定された共通の新生物特異的変異及びその対応する関連天然抗原のバイオインフォマティクス解析を実施して、どの特定された共通の新生物特異的変異が共通のネオエピトープ(好ましくは、患者のMHCアロタイプに結合可能な共通のネオエピトープ)を生じさせるかを予測してもよく、ある態様では、どの特定された共通の新生物特異的変異が、関連天然抗原と比較してより効果的に、患者のMHCアロタイプに結合可能な共通のネオエピトープを生じさせるかを予測してもよい。それゆえ、ある態様では、新生物を有すると診断された対象の新生物標本に由来する特定された共通の新生物特異的変異を評価して、共通の新生物ワクチンに使用する上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定すること(上記ネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている))は、十分に有効なアルゴリズムの使用を含む。
【0105】
ある態様では、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定するための上記in silico試験は、EPIMATRIX(登録商標)アルゴリズムを使用することを含む。EPIMATRIX(登録商標)は、推定上のT細胞エピトープの存在でタンパク質配列をスクリーニングするのに使用される、EpiVaxが開発した登録商標のあるコンピュータアルゴリズムである。このアルゴリズムは、MHC分子に結合する9及び10-merペプチドの予測用のマトリックスを使用する。それぞれのマトリックスは、ポケットプロファイル法(Sturniolo,T.et al.,Nat.Biotechnol.,17:555-561,1999)に類似しているが同一ではない方法によって説明されるアミノ酸結合親和性に関連する位置特異的係数に基づいている。入力配列は、それぞれのフレームがそれぞれ8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。それゆえ、ある態様では、変異ペプチド及び非変異ペプチドの入力配列は、それぞれのフレームが8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。次に、変異ペプチド及び非変異ペプチドから得られたフレームのそれぞれを、MHCクラスIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-Aアレル及びHLA-Bアレル)及びMHCクラスIIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-DRB1アレル)に対する予測された結合親和性でスコア付けする。EPIMATRIX(登録商標)生スコアを、無作為に生成した大きなサンプルのペプチド(例えば、限定するわけではないが、無作為に生成した10,000のペプチド)のスコアに対して正規化する。得られた「Z」スコアは正規分布しており、アレル全体にわたり直接比較することができる。得られた「Z」スコアを記録する。ある態様では、理論上任意の試料の上位5%であるアレル特異的EPIMATRIX(登録商標)Zスコアを有する任意の9-merまたは10-merペプチド(例えば、1.64超のEPIMATRIX(登録商標)Zスコアを有する)は、推定上のT細胞エピトープとみなされる。ある態様では、EPIMATRIX(登録商標)は、1)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または、2)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、変異ペプチドと非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、変異ペプチドをネオエピトープとして特定する。これまでの研究もまた、EPIMATRIX(登録商標)が公開されたMHCリガンド及びT細胞エピトープを正確に予測することを示している。
【0106】
ある態様では、共通の新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定することは、以下のステップ、
a)1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定すること(上記変異ペプチドは上記共通の新生物特異的変異のうちの少なくとも1種によってコードされている)、
b)1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定すること(非変異ペプチドは、コードされた上記共通の新生物特異的変異のうちの少なくとも1つ以外は変異ペプチドと同一である)、
c)自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した十分に大きなセットのペプチド(例えば、少なくとも10,000)の結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めること、
d)上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認すること、及び、
e)1)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または、2)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、変異ペプチドと非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、変異ペプチドを共通のネオエピトープとして特定すること、
のうちの1つまたは複数を含む。更なる態様では、1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である。
【0107】
ある態様では、共通の新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定するためのステップは、in vitro試験を含む。より詳細には、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアを測定することは、1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定するため及び1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定するためのin vitro MHC結合アッセイ(当該技術分野において周知)を含んでいてもよい。ある態様では、in silico解析に類似しているが、入力配列は、それぞれのフレームがそれぞれ8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。それゆえ、ある態様では、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドの入力配列は、それぞれのフレームが8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。次に、in vitro結合アッセイで、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドから得られたフレームのそれぞれを、MHCクラスIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-Aアレル及びHLA-Bアレル)に対する結合親和性でスコア付けするが、このような結合アッセイは当該技術分野において周知である。in vitro結合アッセイにおいてMHCクラスIIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-DRB1アレル)に結合するエピトープの試験の場合、入力配列は、それぞれのフレームがそれぞれ5または10アミノ酸分末尾に重複している重複した15-merまたは20-merフレームに分解される。それゆえ、ある態様では、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドの入力配列は、それぞれのフレームが5または10アミノ酸分末尾に重複している重複した15-merまたは20-merフレームに分解される。次に、in vitro結合アッセイで、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドから得られたフレームのそれぞれを、MHCクラスIIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-DRB1アレル)に対する結合親和性でスコア付けするが、このような結合アッセイは当該技術分野において周知である。
【0108】
ある態様では、自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した十分に大きなセットのペプチド(例えば、少なくとも10,000)の結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めるためのステップ、生の結合スコア(in silico法を用いて測定されたかまたはin vitro法を用いて測定されたかを問わない)は、正規またはZ分布に沿うように調整される。生の結合スコアを、以下、
【数1】

のとおり、UniProtKB/Swiss-Protの自然に認められるアミノ酸頻度に従い、大きな数(例えば、10,000)の無作為9-または10-merアミノ酸配列のセットの平均(μ)結合スコア及び標準偏差(σ)に基づいて正規化する。
【0109】
正規化結合スコアは、結合スコアまたは結合の可能性と呼ばれることもあるが、この正規分布の上位5%以内は、潜在的に免疫原性でありさらに検討する価値のある「ヒット」として定義される。これらのペプチドは、中程度から高い親和性でMHC分子に結合する有意な可能性を有し、その結果として、専業的な抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞またはマクロファージなどと非専業的なAPCの両方の表面上(これらのペプチドはそこで、通過するCD8+T細胞及びCD4+T細胞によって応答及び潜在的に結合され得る)に提示される有意な可能性を有している。
【0110】
ある態様では、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、9アミノ酸長である、または、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、10アミノ酸長である。ある態様では、上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、8、及び9位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7、及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある残基の任意の組み合わせにあるアミノ酸残基を特定することを含む。
【0111】
共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するため、とりわけ、共通の新生物特異的変異を評価して、知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープを特定するための方法の態様では、特定された共通のネオエピトープは任意選択的に、ペプチド-MHC結合、CD8+T細胞及び/またはCD4+T細胞の活性化の実験的確認、及び/または、RNAレベルにおける遺伝子発現の確認によって、さらに確認されてもよい。このような実験的確認は、当該技術分野において周知のin vitro技術及び/またはin vivo技術を含んでいてもよい。
【0112】
〇ネオエピトープの特定、及び制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)共通のネオエピトープからのそれらネオエピトープの排除
ワクチン製剤中に、制御性T細胞誘導性ネオエピトープに加えて、その他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するネオエピトープが偶発的に含まれることにより、強力なT細胞介在性腫瘍制御が阻害される場合がある。共通のネオアンチゲン配列をスクリーニングして、潜在的な制御性T細胞誘導性ネオエピトープ、及びその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するネオエピトープを特定及び排除すること(例えば、in silicoスクリーニングツールを含む専用ツールを使用して)は、より高い品質の候補を含む新規の共通のネオアンチゲンワクチンを設計するのに重要となり得る。
【0113】
このように、ある態様では、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合する(例えば、結合して活性化させる)ことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、上記変異によってコードされている上記特定された共通のネオエピトープが、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有しているかどうかを確認することを含み、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有していることが確認された、上記変異によってコードされている上記特定されたネオエピトープは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープとして特定される。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある。ある態様では、上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7、及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある残基の任意の組み合わせにあるアミノ酸残基を特定することを含む。
【0114】
ある態様では、上記変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、コードされているMHCクラスI及びMHCクラスII限定の特定された共通のネオエピトープ、及びその対応する非変異エピトープのうちのそれぞれの自己との類似性の程度を特性決定するために、MHCに結合する高い可能性を示すそれぞれの特定された共通のネオエピトープまたはエピトープ配列に対して相同性スクリーニングを実施することを含む。参照プロテオーム内の2つ以上(及び更なる態様では、3つ以上)の交差反応性マッチを有するMHCクラスIまたはMHCクラスIIの共通のネオエピトープ及びMHCクラスIまたはMHCクラスIIの対応する非変異エピトープは、自己との高い程度の類似性を示すものとして分類され、寛容されるまたは制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するより高い可能性を示すものとみなされる。
【0115】
ある態様では、相同性スクリーニングを使用して、参照プロテオーム内に一般的に存在するTCR接触残基の組み合わせを含有するエピトープを排除する。ある態様では、相同性スクリーニングは、任意のタンパク質配列内に含まれる全ての予測されたエピトープを解析して、それぞれの予測されたエピトープを、MHC結合アグレトープとTCR結合エピトープの両方のその構成アミノ酸成分に分類することを含む。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープ(TCR結合残基、TCR接触エピトープ、TCR接触残基、またはTCR接触部と呼ばれることもある)が、特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にある一方で、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープ(MHC接触部、MHC接触残基、MHC結合残基、またはMHC結合面と呼ばれることもある)は、1、4、6、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、9、及び10位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある一方で、10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。
【0116】
次に、それぞれの配列を、タンパク質のデータベース(例えば、Uniprotデータベース(Uniprotプロテオーム番号UP000005640、Reviewed/Swiss-Protセット))に由来するヒトタンパク質のデータベース)に対してスクリーニングする。交差保存エピトープ、または、互換MHC結合アグレトープ(すなわち、入力(変異)ペプチドとその参照非変異対応物の両方のアグレトープは、同一のMHCアレルに結合することが予測される)を有する参照プロテオームに由来するペプチド、及び厳密に同一のTCR接触エピトープについては戻す。エピトープの相同性スコアは、参照プロテオーム内のマッチング交差保存MHC結合ペプチドの数に対応している。言い換えると、エピトープeの相同性スコアHeは、以下、
e=|Xe|、
(式中、
eは、エピトープeと同一のMHCクラスIまたはMHCクラスIIに限定され、エピトープeと同一のTCR接触エピトープを提示する、参照プロテオームに由来するMHC結合ペプチドのセットに相当する)
のとおりに計算される。
【0117】
ひいては、所与のペプチドまたはタンパク質の相同性スコアは、そのペプチドまたはタンパク質に含まれるそれぞれ個々のエピトープの平均相同性スコアに対応している。言い換えると、ペプチドpの相同性スコアHpは、以下、
【数2】
(式中、
-Eは、ペプチドp内のMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープのセットに相当し、
-Heは、上で定義したとおり、エピトープeの相同性スコアに相当する)
のとおりに計算される。
【0118】
ある態様では、次に、それぞれの変異配列に対して解析処理を実行して、以下となるように、アミノ酸配列内の部分列が存在し得るかどうかを確認する。
-少なくとも1種のMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープが、部分列においてコードされている、
-部分列においてコードされている全てのMHCクラスIまたはMHCクラスII限定ネオエピトープが、参照プロテオーム内の2つ以下の交差反応性マッチを有している、
-部分列においてコードされている全てのMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープが、参照プロテオーム内の2つ以下の交差反応性マッチを有している。
【0119】
この解析処理には、制御性T細胞、その他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)、及び特定された共通のネオエピトープ配列に由来するその他の高度に交差保存されたエピトープに結合する推定上のエピトープを含有するアミノ酸部分列を排除する効果がある。得られた共通のネオエピトープ配列は、自己配列との低い程度の類似性を示すエピトープまたはネオエピトープのみを含有している。上記基準の部分列マッチングが存在し得ない場合、共通のネオエピトープ配列は、共通の新生物特異的ワクチンに使用する検討から棄却される。逆に、例えば、IEDBデータベースから抽出した、免疫原性であることが知られている既知の感染症由来エピトープのセットに対して、または、その他の既知の免疫原性配列または一般的な病原体由来配列のセットに対して、同一の相同性解析を実施してもよい。この解析には、その他の既知または推定上のエフェクターT細胞エピトープとの高い程度の相同性を共有する共通のネオエピトープ候補を特定する目的がある。このような共通のネオエピトープを含有する共通のネオアンチゲンはワクチン製剤用に優先され得る。
【0120】
ある態様では、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、in silico試験を含む。ある態様では、in silico試験は、特定されたネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測されるかどうかを解析することを含む。ある態様では、in silico試験は、JANUSMATRIX(商標)アルゴリズムを使用することを含む。JANUSMATRIX(商標)は、直鎖状ペプチドフラグメントではなくゲノム配列全体にわたる、推定上のT細胞エピトープ及びそのTCR接触残基を比較することによって、生の配列アライメントによっては捕捉されない抗原認識の特徴を考察する、相同性解析ツールである。ある態様では、JANUSMATRIX(商標)は、エピトープを9-merフレームまたは10-merフレームに分解し、それぞれの9-merまたは10-merをMHC結合アグレトープ及びTCR結合エピトープに分類する。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープ(TCR結合残基、TCR接触エピトープ、TCR接触残基、またはTCR接触部と呼ばれることもある)が、特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にある一方で、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープ(MHC接触部、MHC接触残基、MHC結合残基、またはMHC結合面と呼ばれることもある)は、1、4、6、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、9、及び10位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある一方で、10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。次に、JANUSMATRIX(商標)は、消化管マイクロバイオーム(例えば、ヒト消化管マイクロバイオーム)を構成する細菌性生物及びウイルス性生物に由来するタンパク質配列、ゲノム(例えば、ヒトゲノム)に由来する自家タンパク質、ならびに、ウイルス性病原体及び細菌性病原体(例えば、ヒトウイルス性病原体及びヒト細菌性病原体)を含む、予めツールに読み込んだ多くの大規模な配列データベースにわたり、潜在的に交差反応性のTCR接触エピトープを検索する。JANUSMATRIX(商標)は、異なる長さのペプチドがMHCと相互作用するが、ペプチドがより長かったとしても、任意のペプチド内のほとんどのT細胞エピトープが最低9または10アミノ酸にマッピング可能であることから、9-mer及び/または10-merの検索に焦点をあてる。更なる態様では、特定された共通のネオエピトープは、ネオエピトープの出力JANUSMATRIX(商標)スコアが2以上(更なる態様では、3以上)である場合に、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測される。
【0121】
ある態様では、方法は、特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することをさらに含む。ある態様では、ネオエピトープは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。上記のとおり、ある態様では、CD4+制御性T細胞は、活性化されると、IL-10及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムB及びパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、CD8+Tregは、CD8、CD25、及び活性化後のFoxP3を含むがこれらに限定されないある特定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする。ある態様では、制御性CD8+T細胞は、活性化されると、IFNγ、IL-10、及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。ある態様では、CD8+Tregはまた、活性化後に、グランザイムB及び/またはパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。
【0122】
共通の新生物ワクチンのための共通のネオエピトープを特定するための方法の態様では、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている特定された共通のネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することを含む。ある態様では、ネオエピトープは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。上記のとおり、ある態様では、CD4+制御性T細胞は、活性化されると、IL-10及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムB及びパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、CD8+Tregは、CD8、CD25、及び活性化後のFoxP3を含むがこれらに限定されないある特定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする。ある態様では、制御性CD8+T細胞は、活性化されると、IFNγ、IL-10、及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。ある態様では、CD8+Tregはまた、活性化後に、グランザイムB及び/またはパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、交差反応性または自己反応性のT細胞応答は、非同義アミノ酸置換を含有し自家pAPCによって提示されるネオエピトープペプチドを使用したT細胞のin vitro感作によって試験される。このin vitro免疫原性プロトコルは、Wullner et al.が確立した方法(Wullner D,Zhou L,Bramhall E,Kuck A,Goletz TJ,Swanson S,Chirmule N,Jawa V.Considerations for Optimization and Validation of an In vitro PBMC Derived T cell Assay for Immunogenicity Prediction of Biotherapeutics.Clin Immunol 2010 Oct;137(1):5-14(その全体は参照により組み込まれる))に従っていてもよい。次に、in vitro感作後にネオエピトープペプチドへと伸びるT細胞は、対応する天然または野生型(非変異)のペプチドエピトープに対する反応性について試験される。天然のペプチド配列に対する反応性は、IFNγ、TNFα、IL-2を含むがこれらに限定されないサイトカイン産生、及び/または、CD107a及びグランザイムBを含むがこれらに限定されないT細胞エフェクター機能のマーカーを測定することによって確認される。
【0123】
〇上記特定された共通の新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドの設計
ある態様では、方法は、本明細書で開示する少なくとも1種のペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記共通のネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記共通の新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含む。ある態様では、少なくとも1種の設計ペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を使用して、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫を製造してもよい。上記ペプチドまたはポリペプチドの態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、単離、合成、または組換えであってもよい。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、N末端アセチル及びC末端アミノ基でキャップ付加されていてもよい。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)形態または塩形態のいずれかであってもよく、修飾、例えば、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などを含まないまたは含むのいずれかであってもよい。
【0124】
なおも更なる態様では、方法は、少なくとも1種の設計または提供ペプチドもしくはポリペプチドまたは提供した核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。ある態様では、方法は、対象のための、少なくとも1種の設計または提供ペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することを含み、上記共通のネオエピトープは、対象に由来する新生物試料において検出された共通の新生物特異的変異によってコードされている、及び/または、上記共通のネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)。ある態様では、ワクチンは、「既製の」予め供給された共通のネオエピトープ倉庫を使用して製造され得る。上記ペプチドまたはポリペプチドの態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、単離、合成、または組換えであってもよい。
【0125】
・ステップ(b)の対象特異的新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープの特定
上記の免疫応答を誘導するための方法または新生物(例えば、膀胱癌)を治療するための方法を必要とする対象においてそれを実施する態様では、ステップ(b)で投与するための1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープは、i)新生物を有すると診断された対象の新生物標本における新生物特異的変異を特定すること、ii)ステップ(i)で特定された新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定すること(上記ネオエピトープは対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている))、及びiii)ステップ(ii)の上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定し、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは予測されているこのような特定されたネオエピトープを、個別化新生物ワクチンに使用する対象特異的ネオエピトープから排除すること、を含む方法を用いて特定される。個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、方法は、iv)少なくとも1種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記ネオエピトープが、ステップ(iii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む。ある態様では、方法は、v)ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。なおも更なる態様では、方法は、vi)ステップ(v)で提供した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。
【0126】
上記の方法の態様では、ステップ(b)で投与するための1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープは、i)特定された新生物を有すると診断された対象の新生物標本に由来する特定された新生物特異的変異を評価して、個別化新生物ワクチンに使用する上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定すること(上記ネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている))、及びii)ステップ(i)の上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定し、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)このような特定されたネオエピトープを、個別化新生物ワクチンに使用する対象特異的ネオエピトープから排除すること、を含む方法を用いて特定される。個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、方法は、iii)少なくとも1種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記ネオエピトープが、ステップ(ii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む。ある態様では、方法は、iv)ステップ(iii)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。なおも更なる態様では、方法は、v)ステップ(iv)で提供した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。
【0127】
〇対象特異的新生物特異的変異の特定
ある態様では、新生物特異的変異(例えば、がん特異的変異)を特定するためのステップは、新生物標本(例えば、患者の新生物標本)のゲノムDNA及び/またはRNAをシークエンシングすることを含む。ある態様では、新生物標本は、新生物細胞(例えば、腫瘍またはがん細胞)を含有しているまたは含有していることが予想される任意の試料、例えば、患者に由来する身体試料などに関する。ある態様では、身体試料は、任意の組織試料、例えば、血液、新生物試料(例えば、原発性腫瘍または腫瘍転移/循環腫瘍細胞)から得た組織試料、または、新生物細胞(例えば、腫瘍またはがん細胞)を含有する任意のその他の試料などであってもよい。
【0128】
ある態様では、新生物特異的変異を特定するためのステップは、新生物標本から得た配列情報を、参照試料、例えば、正常な非新生物細胞(例えば、非がん性細胞)、例えば、体細胞または生殖細胞系の組織/細胞などの核酸(例えば、DNAまたはRNAなど)をシークエンシングすることにより得た配列情報などと比較することを含む。ある態様では、参照試料は新生物患者または異なる個体から得てもよい。ある態様では、参照試料は、任意の組織試料、例えば、非新生物組織に由来する血液または試料などであってもよい。ある態様では、正常なゲノム生殖細胞系DNAは、末梢血単核球(PBMC)から得てもよい。
【0129】
ある態様では、新生物特異的変異は、患者の1種または複数種の新生物細胞(例えば、がんまたは腫瘍細胞)内に存在する全ての新生物特異的(例えば、がん特異的)変異を含んでいてもよく、または、患者の1種または複数種の新生物細胞内に存在する新生物特異的変異のうちのごく一部のことを意味していてもよい。それゆえ、本発明は、患者の1種または複数種の新生物細胞内に存在する全ての新生物特異的変異の特定を含んでいてもよく、患者の1種または複数種の新生物細胞内に存在する新生物特異的変異のうちのごく一部の特定を含んでいてもよい。ある態様では、本発明の個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法は、十分な数のネオエピトープが本明細書で開示する戦略、方法、及び組成物に含まれることを提供する、多くの新生物特異的変異の特定を提供する。
【0130】
ある態様では、変異は、新生物患者(例えば、がん患者)の新生物標本(例えば、腫瘍標本)内の新生物特異的変異(例えば、体細胞変異)であり、それら共通の新生物特異的変異は、新生物標本のゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトームと非新生物標本のゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトームの間の配列差異を特定することによって特定され得る。ある態様では、体細胞変異を含む新生物特異的変異は、新生物標本のゲノム、好ましくは完全ゲノム中において特定される。それゆえ、本発明は、1種または複数種の新生物細胞のゲノム、好ましくは完全ゲノムの新生物特異的変異の全てまたは一部を特定することを含んでいてもよい。ある態様では、体細胞変異を含む新生物特異的変異は、新生物標本のエキソーム、好ましくは完全エキソーム中において特定される。それゆえ、本発明は、1種または複数種の新生物細胞のエキソーム、好ましくは完全エキソームの新生物特異的変異の全てまたは一部を特定することを含んでいてもよい。ある態様では、体細胞変異を含む新生物特異的変異は、新生物標本のトランスクリプトーム、好ましくは完全トランスクリプトーム中において特定される。それゆえ、本発明は、1種または複数種の新生物細胞のトランスクリプトーム、好ましくは完全トランスクリプトームの新生物特異的変異の全てまたは一部を特定することを含んでいてもよい。
【0131】
ある態様では、ステップ(i)において、新生物特異的変異を特定するために、本発明に従い、「従来の」シークエンシング法及び次世代シークエンシング(NGS)技術を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において周知の任意の好適なシークエンシング法を使用してもよい。「次世代シークエンシング」または「NGS」とは、サンガー化学反応として知られている「従来の」シークエンシング法とは対照的に、完全ゲノムを小さな断片へと切断することによって核酸鋳型を全長ゲノムに沿ってランダムに同時並行的に読む全てのハイスループットシークエンシング技術のことを意味する。当該技術分野において周知のとおり、このようなNGS技術(超並列シークエンシング技術としても周知)は、完全ゲノム、エキソーム、トランスクリプトーム(ゲノムの全ての転写配列)、またはメチローム(ゲノムの全てのメチル化配列)の核酸配列情報を、ごく短期間、例えば、1~2週間以内、好ましくは1~7日間以内、または最も好ましくは24時間未満以内に出力することができ、原則的に、単一細胞シークエンシング法を可能とする。市販または当該技術分野において周知の複数のNGSプラットフォームを使用してもよい。このようなNGS技術/プラットフォームの非限定例としては、ライゲーションによるシークエンシング法、イオン半導体シークエンシング技術、パイロシークエンシング技術、1分子シークエンシング技術、1分子シークエンシングのためのナノ技術、及び1分子シークエンシングのための電子顕微鏡ベースの技術が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、ある態様では、新生物特異的変異を特定するために、当該技術分野において周知の「第3世代シークエンシング」法を使用してもよい。ある態様では、当該技術分野において周知の直接タンパク質シークエンシング技術を用いて、新生物特異的変異を特定してもよい。さらに、ある態様では、当該技術分野において周知のMHC多量体を使用することによって、新生物特異的変異を特定してもよい。
【0132】
このように、個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、新生物特異的変異を特定するためのステップは、新生物を有すると診断された対象に由来する新生物標本及び非新生物標本の完全または部分的なゲノム、エキソーム、及び/またはトランスクリプトーム間の配列差異を特定することを含む。ある態様では、非新生物標本は、新生物を有すると診断された対象に由来する。更なる態様では、新生物特異的変異を特定することまたは配列差異を特定することは次世代シークエンシング(NGS)を含む。ある態様では、新生物特異的変異を特定するためのステップは、非新生物試料に存在しない変異をそれぞれが含む複数種の核酸配列を新生物から選択することを含む。ある態様では、新生物特異的変異を特定することは、新生物標本のゲノムDNA及び/またはRNAをシークエンシングすることを含む。
【0133】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、新生物特異的変異は新生物特異的体細胞変異である。ある態様では、新生物特異的変異は、一塩基多型(SNV)、挿入及び欠失(インフレーム変異とフレームシフト変異の両方を生成し得る)、ならびに、その他の大規模再構成、限定するわけではないが例えば、染色体の逆位、重複、挿入、欠失、または転座などである。ある態様では、SNV、挿入、及び欠失を含む新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV、挿入及び欠失(非同義変異であり得る)、ならびにその他の大規模再構成を含む新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である。ある態様では、SNVを含む新生物特異的変異は、非同義変異である。ある態様では、SNV(非同義変異であり得る)、インデル、及びフレームシフトを含む新生物特異的変異は、新生物を有すると診断された対象の新生物標本においてコードされているタンパク質の変異である。
【0134】
〇対象特異的ネオエピトープの特定
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、in silico試験を含む。ある態様では、in silico試験は、どの新生物特異的変異がネオエピトープ、とりわけ、患者のMHCアロタイプに結合可能なネオエピトープを生じさせるかを予測するための有効なアルゴリズム(例えば、限定するわけではないが、EPIMATRIX(登録商標)、netMHCpan、NetMHC、netMHCcons、SYFPEITHI、HLA_BIND)を使用することを含む。例えば、有効なアルゴリズムを使用して、特定された新生物特異的変異及びその対応する関連天然抗原のバイオインフォマティクス解析を実施して、どの特定された新生物特異的変異が患者のMHCアロタイプに結合可能なネオエピトープを生じさせるかを予測してもよく、ある態様では、どの特定された新生物特異的変異が、関連天然抗原と比較してより効果的に、患者のMHCアロタイプに結合可能なネオエピトープを生じさせるかを予測してもよい。それゆえ、ある態様では、特定された新生物を有すると診断された対象の新生物標本に由来する特定された新生物特異的変異を評価して、個別化新生物ワクチンに使用する上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定すること(上記ネオエピトープは、対象のMHCタンパク質に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている))は、十分に有効なアルゴリズムの使用を含む。
【0135】
ある態様では、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するための上記in silico試験は、EPIMATRIX(登録商標)アルゴリズムを使用することを含む。EPIMATRIX(登録商標)は、推定上のT細胞エピトープの存在でタンパク質配列をスクリーニングするのに使用される、EpiVaxが開発した登録商標のあるコンピュータアルゴリズムである。このアルゴリズムは、MHC分子に結合する9及び10-merペプチドの予測用のマトリックスを使用する。それぞれのマトリックスは、ポケットプロファイル法(Sturniolo,T.et al.,Nat.Biotechnol.,17:555-561,1999)に類似しているが同一ではない方法によって説明されるアミノ酸結合親和性に関連する位置特異的係数に基づいている。入力配列は、それぞれのフレームがそれぞれ8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。それゆえ、ある態様では、変異ペプチド及び非変異ペプチドの入力配列は、それぞれのフレームが8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。次に、変異ペプチド及び非変異ペプチドから得られたフレームのそれぞれを、MHCクラスIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-Aアレル及びHLA-Bアレル)及びMHCクラスIIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-DRB1アレル)に対する予測された結合親和性でスコア付けする。EPIMATRIX(登録商標)生スコアを、無作為に生成した大きなサンプルのペプチド(例えば、限定するわけではないが、無作為に生成した10,000のペプチド)のスコアに対して正規化する。得られた「Z」スコアは正規分布しており、アレル全体にわたり直接比較することができる。得られた「Z」スコアを記録する。ある態様では、理論上任意の試料の上位5%であるアレル特異的EPIMATRIX(登録商標)Zスコアを有する任意の9-merまたは10-merペプチド(例えば、1.64超のEPIMATRIX(登録商標)Zスコアを有する)は、推定上のT細胞エピトープとみなされる。ある態様では、EPIMATRIX(登録商標)は、1)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または、2)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、変異ペプチドと非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、変異ペプチドをネオエピトープとして特定する。これまでの研究もまた、EPIMATRIX(登録商標)が公開されたMHCリガンド及びT細胞エピトープを正確に予測することを示している。
【0136】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定することは、以下のステップ、
a)1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定すること(上記変異ペプチドは上記新生物特異的変異のうちの少なくとも1種によってコードされている)、
b)1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定すること(非変異ペプチドは、コードされた上記新生物特異的変異のうちの少なくとも1つ以外は変異ペプチドと同一である)、
c)自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した十分に大きなセットのペプチド(例えば、少なくとも10,000)の結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めること、
d)上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認すること、及び、
e)1)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル未満の測定結合スコアを有する場合、または、2)変異ペプチドが、予想分布の上位5パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、非変異ペプチドが、予想分布の上位10パーセンタイル内の測定結合スコアを有し、かつ、変異ペプチドと非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している場合に、変異ペプチドをネオエピトープとして特定すること、
のうちの1つまたは複数を含む。更なる態様では、1種または複数種のMHC分子はMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子である。
【0137】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、新生物特異的変異を評価して、上記変異によってコードされている知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、in vitro試験を含む。より詳細には、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアを測定することは、1種または複数種のMHC分子に対する変異ペプチドの結合スコアを測定するため及び1種または複数種のMHC分子に対する非変異ペプチドの結合スコアを測定するためのin vitro MHC結合アッセイ(当該技術分野において周知)を含んでいてもよい。ある態様では、in silico解析に類似しているが、入力配列は、それぞれのフレームがそれぞれ8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。それゆえ、ある態様では、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドの入力配列は、それぞれのフレームが8または9アミノ酸分末尾に重複している重複した9-merまたは10-merフレームに分解される。次に、in vitro結合アッセイで、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドから得られたフレームのそれぞれを、MHCクラスIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-Aアレル及びHLA-Bアレル)に対する結合親和性でスコア付けするが、このような結合アッセイは当該技術分野において周知である。in vitro結合アッセイにおいてMHCクラスIIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-DRB1アレル)に結合するエピトープの試験の場合、入力配列は、それぞれのフレームがそれぞれ5または10アミノ酸分末尾に重複している重複した15-merまたは20-merフレームに分解される。それゆえ、ある態様では、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドの入力配列は、それぞれのフレームが5または10アミノ酸分末尾に重複している重複した15-merまたは20-merフレームに分解される。次に、in vitro結合アッセイで、ステップ(a)の変異ペプチド及びステップ(b)の非変異ペプチドから得られたフレームのそれぞれを、MHCクラスIIアレル(例えば、限定するわけではないがHLA-DRB1アレル)に対する結合親和性でスコア付けするが、このような結合アッセイは当該技術分野において周知である。
【0138】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、自然に認められるアミノ酸頻度を使用して無作為に生成した十分に大きなセットのペプチド(例えば、少なくとも10,000)の結合スコアの予想分布と比較した、ステップ(a)の変異ペプチドとステップ(b)の非変異ペプチドの両方の結合スコアのパーセンタイルランクを求めるためのステップ、生の結合スコア(in silico法を用いて測定されたかまたはin vitro法を用いて測定されたかを問わない)は、正規またはZ分布に沿うように調整される。生の結合スコアを、以下、
「正規化結合スコア」=(「生の結合スコア」-μ)/σ
のとおり、UniProtKB/Swiss-Protの自然に認められるアミノ酸頻度に従い、大きな数(例えば、10,000)の無作為9-または10-merアミノ酸配列のセットの平均(μ)結合スコア及び標準偏差(σ)に基づいて正規化する。
【0139】
正規化結合スコアは、結合スコアまたは結合の可能性と呼ばれることもあるが、この正規分布の上位5%以内は、潜在的に免疫原性でありさらに検討する価値のある「ヒット」として定義される。これらのペプチドは、中程度から高い親和性でMHC分子に結合する有意な可能性を有し、その結果として、専業的な抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞またはマクロファージなどと非専業的なAPCの両方の表面上(これらのペプチドはそこで、通過するCD8+T細胞及びCD4+T細胞によって応答及び潜在的に結合され得る)に提示される有意な可能性を有している。
【0140】
ある態様では、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、9アミノ酸長である、または、変異ペプチド及び非変異ペプチドは両方共、10アミノ酸長である。ある態様では、上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、8、及び9位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7、及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある残基の任意の組み合わせにあるアミノ酸残基を特定することを含む。
【0141】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するため、とりわけ、新生物特異的変異を評価して、知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するための方法の態様では、特定されたネオエピトープは任意選択的に、ペプチド-MHC結合、CD8+T細胞及び/またはCD4+T細胞の活性化の実験的確認、及び/または、RNAレベルにおける遺伝子発現の確認によって、さらに確認されてもよい。このような実験的確認は、当該技術分野において周知のin vitro技術及び/またはin vivo技術を含んでいてもよい。
【0142】
〇制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープの特定及び排除
上記のとおり、本明細書で開示するデータは、腫瘍由来ネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)を腫瘍へと動員し得るという可能性を示唆している。それゆえ、ワクチン製剤中に、制御性T細胞誘導性ネオエピトープ及び/またはその他の有害なT細胞誘導性ネオエピトープ(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)が偶発的に含まれることにより、強力なT細胞介在性腫瘍制御が阻害される場合がある。ネオアンチゲン配列をスクリーニングして、潜在的な制御性T細胞誘導性ネオエピトープ及び/またはその他の有害なT細胞誘導性ネオエピトープを特定及び排除すること(例えば、in silicoスクリーニングツールを含む専用ツールを使用して)は、より高い品質の候補を含む新規のワクチンを設計するのに重要となり得る。
【0143】
このように、個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合する(例えば、結合して活性化させる)ことが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、上記変異によってコードされている上記特定されたネオエピトープが、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有しているかどうかを確認すること、を含み、ヒトプロテオームまたはヒトマイクロバイオームのいずれかに由来するタンパク質とTCR接触部を共有していることが確認された、上記変異によってコードされている上記特定されたネオエピトープは、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープとして特定される。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR接触部は、アミノ末端からカウントして、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある。ある態様では、上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基、MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7、及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にあるアミノ酸残基を特定することを含む。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドの上記変異ペプチド及び上記非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基を確認するためのステップは、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの1、3、4、5、6、7、8、及び9位にある残基の任意の組み合わせにあるアミノ酸残基を特定することを含む。
【0144】
ある態様では、上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、コードされているMHCクラスI及びMHCクラスII限定の特定されたネオエピトープ、及びその対応する非変異エピトープのうちのそれぞれの自己との類似性の程度を特性決定するために、MHCに結合する高い可能性を示すそれぞれの特定されたネオエピトープまたはエピトープ配列に対して相同性スクリーニングを実施することを含む。参照プロテオーム内の2つ以上(及び更なる態様では、3つ以上)の交差反応性マッチを有するMHCクラスIまたはMHCクラスIIのネオエピトープ及びMHCクラスIまたはMHCクラスIIの対応する非変異エピトープは、自己との高い程度の類似性を示すものとして分類され、寛容されるまたは制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するより高い可能性を示すものとみなされる。
【0145】
ある態様では、相同性スクリーニングを使用して、参照プロテオーム内に一般的に存在するTCR接触残基の組み合わせを含有するエピトープを排除する。ある態様では、相同性スクリーニングは、任意のタンパク質配列内に含まれる全ての予測されたエピトープを解析して、それぞれの予測されたエピトープを、MHC結合アグレトープとTCR結合エピトープの両方のその構成アミノ酸成分に分類することを含む。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープ(TCR結合残基、TCR接触エピトープ、TCR接触残基、またはTCR接触部と呼ばれることもある)が、特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にある一方で、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープ(MHC接触部、MHC接触残基、MHC結合残基、またはMHC結合面と呼ばれることもある)は、1、4、6、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、9、及び10位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある一方で、10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。
【0146】
次に、それぞれの配列を、タンパク質のデータベース(例えば、Uniprotデータベース(Uniprotプロテオーム番号UP000005640、Reviewed/Swiss-Protセット))に由来するヒトタンパク質のデータベース)に対してスクリーニングする。交差保存エピトープ、または、互換MHC結合アグレトープ(すなわち、入力(変異)ペプチドとその参照非変異対応物の両方のアグレトープは、同一のMHCアレルに結合することが予測される)を有する参照プロテオームに由来するペプチド、及び厳密に同一のTCR接触エピトープについては戻す。エピトープの相同性スコアは、参照プロテオーム内のマッチング交差保存MHC結合ペプチドの数に対応している。言い換えると、エピトープeの相同性スコアHeは、以下、
e=|Xe|、
(式中、
eは、エピトープeと同一のMHCクラスIまたはMHCクラスIIに限定され、エピトープeと同一のTCR接触エピトープを提示する、参照プロテオームに由来するMHC結合ペプチドのセットに相当する)
のとおりに計算される。
【0147】
ひいては、任意のペプチドまたはタンパク質の相同性スコアは、そのペプチドまたはタンパク質に含まれるそれぞれ個々のエピトープの平均相同性スコアに対応している。言い換えると、ペプチドpの相同性スコアH_pは、以下、
【数3】
(式中、
-Eは、ペプチドp内のMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープのセットに相当し、
-Heは、上で定義したとおり、エピトープeの相同性スコアに相当する)
のとおりに計算される。
【0148】
ある態様では、次に、それぞれの変異配列に対して解析処理を実行して、
-少なくとも1種のMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープが、部分列においてコードされている、
-部分列においてコードされている全てのMHCクラスIまたはMHCクラスII限定ネオエピトープが、参照プロテオーム内の2つ以下の交差反応性マッチを有している、
-部分列においてコードされている全てのMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープが、参照プロテオーム内の2つ以下の交差反応性マッチを有している、
ことになるように、アミノ酸配列内の部分列が存在し得るかどうかを確認する。
【0149】
この解析処理には、制御性T細胞、その他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)、及び特定されたネオエピトープ配列に由来するその他の高度に交差保存されたエピトープに結合する推定上のエピトープを含有するアミノ酸部分列を排除する効果がある。得られた配列は、自己配列との低い程度の類似性を示すエピトープまたはネオエピトープのみを含有している。上記基準の部分列マッチングが存在し得ない場合、ネオエピトープ配列は、個別化新生物特異的ワクチンに使用する検討から棄却される。逆に、例えば、IEDBデータベースから抽出した、免疫原性であることが知られている既知の感染症由来エピトープのセットに対して、または、その他の既知の免疫原性配列または一般的な病原体由来配列のセットに対して、同一の相同性解析を実施してもよい。この解析には、その他の既知または推定上のエフェクターT細胞エピトープとの高い程度の相同性を共有するネオエピトープ候補を特定する目的がある。このようなネオエピトープを含有するネオアンチゲンはワクチン製剤用に優先され得る。
【0150】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、in silico試験を含む。ある態様では、in silico試験は、JANUSMATRIX(商標)アルゴリズムを使用して、特定されたネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測されるかどうかを解析することを含む。JANUSMATRIX(商標)は、直鎖状ペプチドフラグメントではなくゲノム配列全体にわたる、推定上のT細胞エピトープ及びそのTCR接触残基を比較することによって、生の配列アライメントによっては捕捉されない抗原認識の特徴を考察する、相同性解析ツールである。ある態様では、JANUSMATRIX(商標)は、エピトープを9-merフレームまたは10-merフレームに分解し、それぞれの9-merまたは10-merをMHC結合アグレトープ及びTCR結合エピトープに分類する。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープ(TCR結合残基、TCR接触エピトープ、TCR接触残基、またはTCR接触部と呼ばれることもある)が、特定されたネオエピトープの2、3、5、7、及び8位にある一方で、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープ(MHC接触部、MHC接触残基、MHC結合残基、またはMHC結合面と呼ばれることもある)は、1、4、6、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、及び9位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープの4、5、6、7、8、及び9位にある一方で、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、1、2、3、9、及び10位にある(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの2、3、5、7、及び8位の残基の任意の組み合わせ(例えば、限定するわけではないが、3、5、7、及び8位、2、5、7、及び8位、2、3、5、及び7位など)にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの4、5、6、7、及び8位、1、4、5、6、7及び8位、または1、3、4、5、6、7、及び8位にある一方で、9-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。ある態様では、MHCクラスI分子に結合する10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのTCR結合エピトープが、特定されたネオエピトープまたはエピトープの1、3、4、5、6、7、8、及び9位の残基の任意の組み合わせにある一方で、10-merの特定されたネオエピトープまたはエピトープのMHC結合アグレトープは、TCR接触残基に対する相補的な表面である(両方共アミノ末端からカウントして)。次に、JANUSMATRIX(商標)は、消化管マイクロバイオーム(例えば、ヒト消化管マイクロバイオーム)を構成する細菌性生物及びウイルス性生物に由来するタンパク質配列、ゲノム(例えば、ヒトゲノム)に由来する自家タンパク質、ならびに、ウイルス性病原体及び細菌性病原体(例えば、ヒトウイルス性病原体及びヒト細菌性病原体)を含む、予めツールに読み込んだ多くの大規模な配列データベースにわたり、潜在的に交差反応性のTCR接触エピトープを検索する。JANUSMATRIX(商標)は、異なる長さのペプチドがMHCと相互作用するが、ペプチドがより長かったとしても、任意のペプチド内のほとんどのT細胞エピトープが最低9または10アミノ酸にマッピング可能であることから、9-mer及び/または10-merの検索に焦点をあてる。更なる態様では、特定されたネオエピトープは、ネオエピトープの出力JANUSMATRIX(商標)スコアが2以上(更なる態様では、3以上)である場合に、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合すると予測される。
【0151】
ある態様では、方法は、特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することをさらに含む。ある態様では、ネオエピトープは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。上記のとおり、ある態様では、CD4+制御性T細胞は、活性化されると、IL-10及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムB及びパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、CD8+Tregは、CD8、CD25、及び活性化後のFoxP3を含むがこれらに限定されないある特定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする。ある態様では、制御性CD8+T細胞は、活性化されると、IFNγ、IL-10、及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。ある態様では、CD8+Tregはまた、活性化後に、グランザイムB及び/またはパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。
【0152】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、上記変異によってコードされている特定されたネオエピトープを評価して、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープを特定するためのステップは、特定されたネオエピトープがin vitroで制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するかどうかを確認することを含む。ある態様では、ネオエピトープは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞の活性化、増殖、及び/またはIL-10またはTGF-βの産生をもたらす場合に、制御性T細胞に結合することが確認される。上記のとおり、ある態様では、CD4+制御性T細胞は、活性化されると、IL-10及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムB及びパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、CD8+Tregは、CD8、CD25、及び活性化後のFoxP3を含むがこれらに限定されないある特定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする。ある態様では、制御性CD8+T細胞は、活性化されると、IFNγ、IL-10、及び/またはTGFβを含むがこれらに限定されない免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。ある態様では、CD8+Tregはまた、活性化後に、グランザイムB及び/またはパーフォリンを含むがこれらに限定されないエフェクター分子の活性化後の発現を特徴とする、標的細胞の直接殺傷による免疫抑制効果を発揮し得る。ある態様では、交差反応性または自己反応性のT細胞応答は、非同義アミノ酸置換を含有し自家pAPCによって提示されるネオエピトープペプチドを使用したT細胞のin vitro感作によって試験され得る。このin vitro免疫原性プロトコルは、Wullner et al.が確立した方法(Wullner D,Zhou L,Bramhall E,Kuck A,Goletz TJ,Swanson S,Chirmule N,Jawa V.Considerations for Optimization and Validation of an In vitro PBMC Derived T cell Assay for Immunogenicity Prediction of Biotherapeutics.Clin Immunol 2010 Oct;137(1):5-14(その全体は参照により組み込まれる))に従っていてもよい。次に、in vitro感作後にネオエピトープペプチドへと伸びるT細胞は、対応する天然または野生型(非変異)のペプチドエピトープに対する反応性について試験される。天然のペプチド配列に対する反応性は、IFNγ、TNFα、IL-2を含むがこれらに限定されないサイトカイン産生、及び/または、CD107a及びグランザイムBを含むがこれらに限定されないT細胞エフェクター機能のマーカーを測定することによって確認される。
【0153】
〇上記特定された新生物特異的変異によってコードされている対象特異的ネオエピトープを含むポリペプチドのランク付け
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、方法は、上記ネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを、個別化新生物ワクチンなどの免疫原性組成物におけるその有用性でランク付けすること、をさらに含む。それゆえ、ある態様では、上記特定された新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む特定された対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、個別化新生物ワクチンなどの免疫原性組成物におけるエピトープとしてのその有用性でランク付けされる。ある態様では、方法は、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドが解析されて、提供される対応するワクチンにおけるその有用性で選択される、手作業またはコンピュータベースの解析プロセスを含む。ある態様では、上記解析プロセスはコンピュータアルゴリズムベースのプロセスである。好ましくは、上記解析プロセスは、対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを、免疫原性となるその能力の確認(例えば、予測)に応じて特定及び/またはランク付けすること、を含む。
【0154】
ある態様では、上記特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを、個別化新生物ワクチンなどの免疫原性組成物におけるエピトープとしてのその有用性でランク付けすることは、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドに関連する1つまたは複数の特徴を確認すること(例えば、予測すること)を含み、特徴は、免疫原性関連特性、シークエンシング関連特性、及び/または生理化学関連特性を含む。
【0155】
ある態様では、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドの確認された免疫原性関連特性は、MHCクラスIネオエピトープのカウント、MHCクラスIネオエピトープのパーセンタイルランク、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)のMHCクラスI限定制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)誘導可能性、MHCクラスIIネオエピトープのカウント、MHCクラスIIネオエピトープのパーセンタイルランク、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)のMHCクラスII限定制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)誘導可能性、及び/または、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がMHCクラスIネオエピトープとMHCクラスIIネオエピトープの両方を含有しているかどうか、のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0156】
ある態様では、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドの確認されたシークエンシング関連特性は、必要とされる場合、関連転写物の発現レベル、腫瘍DNAにおける変異のカバレッジ、すなわち、変異のゲノム位置にオーバーラップしている固有シークエンシングリードの数、腫瘍DNAにおける変異のバリアントアレル割合(VAF)、すなわち、シークエンシングリードにわたり認められた変異の0~1の相対頻度、及び/または、その他のシークエンシングメタデータ、のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0157】
ある態様では、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドの確認された生理化学関連特性は、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)の正味電荷、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つの荷電残基を含有しているかどうか、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)内におけるシステイン(C)のカウント、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つのシステイン(C)を含有し負に荷電しているかどうか、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がポリ-プロリンモチーフ(「PP」)を含有しているかどうか、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つのメチオニン(M)を含有しているかどうか、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がN末端グルタミン(Q)を含有しているかどうか、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が最後の位置または最後から2番目の位置にグリシン(G)及び/またはプロリン(P)を含有しているかどうか、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が「DG」、「DS」、「DA」、または「DN」モチーフを含有しているかどうか、及び/または、最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)のハイドロパシー指数、のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0158】
ある態様では、方法は、確認された特徴に基づいて、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドのそれぞれをランク付けすることをさらに含む。ある態様では、上位5~30(その中の全ての値及び範囲を含む)にランク付けされた、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドは、個別化新生物ワクチン中に含まれる。ある態様では、特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドは、実施例1で開示するランク付けスキームに従い、スコア付け及びランク付けされる。
【0159】
〇上記特定された新生物特異的変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む対象特異的ペプチドの設計
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、方法は、少なくとも1種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記ネオエピトープが、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む。
【0160】
個別化新生物ワクチンのための対象特異的ネオエピトープを特定するための方法の態様では、方法は、iv)少なくとも1種の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを設計することをさらに含み、上記ペプチドまたはポリペプチドは、上記ネオエピトープが、ステップ(iii)において、制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合することが知られているまたは確認されている(例えば、予測されている)ものと特定されていない場合、上記変異によってコードされている少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む。ある態様では、方法は、v)ステップ(iv)で設計した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチド、または上記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を提供することをさらに含む。なおも更なる態様では、方法は、vi)ステップ(v)で提供した少なくとも1種のペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。
【0161】
本明細書で使用する場合、「治療すること」という用語は、予防的治療及び治療的治療を含むがこれらに限定されない、新生物(例えば、がんまたは固形腫瘍、例えば、膀胱癌など)の任意の治療に関する。「治療すること」は、新生物の改善をもたらす任意の効果、例えば、予防すること、減少させること、低下させること、調節すること、または排除することを含む。例えば、がん状態を「治療すること」またはがん状態の「治療」は、がんを阻害すること、すなわち、がんまたはその臨床症候の進行を抑えること、または、がんを軽減すること、すなわち、がんまたはその臨床症候の一時的または永続的な後退をもたらすこと、を含む。「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的治療」などとは、疾患または症状を有していないがそれらのリスクがあるまたはそれらを発症しやすい対象において、疾患または症状を発症する確率を低下させることを意味する。
【0162】
「対象」としては、哺乳動物、例えば、ヒト、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ、トリなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ニワトリなど)、及び実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、トリなど)が挙げられる。本明細書で開示する方法のある特定の態様では、有効量を投与される対象は哺乳動物、より詳細には、ヒトである。
【0163】
新生物(例えば、がんまたは固形腫瘍、例えば、膀胱癌など)の治療と関連させて本明細書で定義する「有効量」とは、新生物(例えば、がん細胞または腫瘍)の増殖を低下させる、抑制する、阻害する、または別様に抑止する量のことである。「有効量」は、新生物及びその重症度、ならびに治療する哺乳動物の年齢、体重などによって様々である。対象に投与する本発明の組成物の量ならびにタイミング及び投与スケジュールは、疾患のタイプ及び重症度、ならびに個体の特徴、例えば、総合的な健康状態、年齢、性別、体重、及び薬物に対する耐性などによって決まる。新生物疾患の程度、重症度、及びタイプによっても決まる。当業者は、これら及びその他の因子に応じて、適切な用量及び用量スケジュールを決定することができる。
【0164】
免疫応答を誘導するための方法または新生物(例えば、膀胱癌)を治療するための方法を必要とする対象においてそれを実施する一部の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチド、または医薬組成物は、対象の身体の特定の1つの罹患領域または複数の罹患領域へと局所的に送達してもよい。一部の実施形態では、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物は全身的に投与してもよい。例えば、がんを治療するための方法を必要とする対象においてそれを実施する一部の実施形態では、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物は経口投与される。本明細書で開示する方法によれば、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物は、固体または液体として経口投与してもよい。その他の実施形態では、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物は静脈内投与される。本明細書で開示する方法によれば、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物は、液剤、懸濁剤、またはエマルション剤として静脈内投与してもよい。代替的に、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物はまた、リポソーム懸濁剤として、吸入、静脈内、または筋肉内で投与してもよい。
【0165】
本発明の組成物はまた、1種または複数種の別の治療用化合物と組み合わせて投与してもよい。それゆえ、一部の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチド、または医薬組成物は、1種または複数種の別の治療用化合物と共に投与される。本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドを用いた治療を1種または複数種の別の治療用化合物と組み合わせることによって、がんの治療の治療効果が実現可能となるということが理解されよう。「別の治療用化合物」という用語は他の抗がん剤または治療薬を含む。このような組み合わせの選択は、疾患のタイプ、対象の年齢及び総合的な健康状態、疾患進行のアグレッシブさ、ならびに、組み合わせを含む薬剤に耐える対象の能力を含むがこれらに限定されない様々な因子によって決まる。例えば、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物は、腫瘍サイズを縮小させるのに有効なその他の薬剤及び治療レジメン(例えば、放射線療法、外科手術、化学療法、ホルモン治療、及び/または遺伝子療法)と組み合わせてもよい。さらに、一部の実施形態では、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物を、疾患の副作用、または、例えば、対象に鎮痛をもたらす別の治療薬のうちの1種の副作用を治療する1種または複数種の薬剤と組み合わせることが望ましい場合がある。
【0166】
それゆえ、「別の治療用化合物」という用語としては、様々な抗がん剤または抗がん治療薬、例えば、抗新生物薬または化学療法剤としても知られている化合物などが挙げられる。これらの薬剤を、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチド、または医薬組成物と組み合わせて使用してもよい。このような化合物としては、アルキル化剤、DNAインターカレーター、タンパク質合成阻害剤、DNA合成またはRNA合成の阻害剤、DNA塩基アナログ、トポイソメラーゼ阻害剤、抗血管新生薬、及びテロメラーゼ阻害剤またはテロメアDNA結合化合物が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、好適なアルキル化剤としては、アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなど、アジリジン、例えば、ベンゾジゼパ、カルボコン、メツレデパ、及びウレデパなど、エチレンイミン及びメチルメラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチロールメラミンなど、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタードなど、ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなど、が挙げられる。
【0167】
化学療法用タンパク質合成阻害剤もまた、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドと組み合わせてもよい。このような阻害剤としては、アブリン、アウリントリカルボン酸、クロラムフェニコール、コリシンE3、シクロヘキシミド、ジフテリア毒素、エデインA、エメチン、エリスロマイシン、エチオニン、フッ化物、5-フルオロトリプトファン、フシジン酸、グアニリルメチレンジホスホネート及びグアニリルイミドジホスフェート、カナマイシン、カスガマイシン、キロマイシン、ならびにO-メチルスレオニンが挙げられる。
【0168】
加えて、タンパク質合成阻害剤もまた、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドと組み合わせてもよい。このような阻害剤としては、モデシン、ネオマイシン、ノルバリン、パクタマイシン、パロモマイシン、ピューロマイシン、リシン、志賀毒素、ショウドマイシン、スパルソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、チオストレプトン、及びトリメトプリムが挙げられる。さらに、DNA合成の阻害剤は、本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドと組み合わせてもよい。このような阻害剤としては、アルキル化剤、例えば、硫酸ジメチル、マイトマイシンC、ナイトロジェンマスタード及びサルファマスタードなど、挿入剤、例えば、アクリジン染料、アクチノマイシン、アドリアマイシン、アントラセン、ベンゾピレン、臭化エチジウム、プロピジウムジヨージドインターツウィニング(propidium diiodide-intertwining)など、ならびに、ジスタマイシン及びネトロプシンなどの薬剤が挙げられる。トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、クーママイシン、ナリジクス酸、ノボビオシン、及びオキソリン酸など、細胞分裂の阻害剤(コルセミド、コルヒチン、ビンブラスチン、及びビンクリスチンを含む)、ならびにRNA合成阻害剤(アクチノマイシンD、α-アマニチン、及びその他の真菌アマトキシン、コルジセピン(3′-デオキシアデノシン)、ジクロロリボフラノシルベンゾイミダゾール、リファンピシン、ストレプトバリシン、及びストレプトリジギンを含む)はまた、好適ながん治療を提供するための1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む本明細書で開示するペプチドもしくはポリペプチドまたは医薬組成物と組み合わせてもよい。
【0169】
それゆえ、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドと組み合わせて使用してもよい現行の化学療法剤としては、アドリマイシン、5-フルオロウラシル(5FU)、エトポシド、カンプトテシン、アクチノマイシン-D、マイトマイシン、シスプラチン、過酸化水素、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチン、ビンブラスチン、及びメトトレキサートなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0170】
別の治療薬は、同一の経路または異なる経路を用いて投与してもよい。例えば、選択された組み合わせの第1の治療薬を静脈内注射で投与してもよく、その一方で、組み合わせのもう一方の治療薬を経口投与してもよい。代替的に、例えば、全ての治療薬を経口投与してもよく、または、全ての治療薬を静脈内注射で投与してもよい。治療薬を投与する順番は厳密には重要ではない。
【0171】
・ステップ(a)の1種または複数種の特定された共通のネオエピトープまたはステップ(b)の1種または複数種の対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド
ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)を含む)、及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、を含む、本発明のペプチドまたはポリペプチドは、様々な長さであってもよい。例えば、1種または複数種の共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドは、本明細書に記載のとおりに設計してもよい。さらに、ある態様では、対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも1種の特定されたネオエピトープ(例えば、MHCクラスII分子に結合する9-merの特定されたネオエピトープ、及び/または、MHCクラスI分子に結合する9-merまたは10-merの特定されたネオエピトープ、及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)のアミノ酸配列を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである少なくとも1種の特定されたネオエピトープ、ならびに任意選択的に、少なくとも1種の特定されたネオエピトープのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸、を含む。ある態様では、本発明は、少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコアアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチド(任意選択的に、コアアミノ酸配列のC末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有する)に関し、これらの隣接アミノ酸の総数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10、または10~12であり、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る(例えば、全ての隣接アミノ酸が一方の末端に付加され得る、またはアミノ酸が両方の末端に均等または任意のその他の比率で付加され得る)。ある態様では、本発明は、少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有するペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)(任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有する)に関し、これらの隣接アミノ酸の総数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10、または10~12であり、隣接アミノ酸は、隣接アミノ酸を有するポリペプチドが、上記隣接アミノ酸を有さない上記ポリペプチドコア配列のように同一のHLA分子になおも結合可能である(すなわち、MHC結合性を保持している)場合、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る(例えば、全ての隣接アミノ酸が一方の末端に付加され得る、またはアミノ酸が両方の末端に均等または任意のその他の比率で付加され得る)。ある態様では、隣接アミノ酸を有する上記ポリペプチドは、同一のHLA分子になおも結合可能であり(すなわち、MHC結合性を保持している)、上記隣接アミノ酸を有さない上記ポリペプチドコア配列と同一のTCR特異性を保持している。ある態様では、上記隣接アミノ酸配列は、天然タンパク質における少なくとも1種の特定されたネオエピトープにも隣接している隣接アミノ酸配列である。
【0172】
ある態様では、本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドは、N及び/またはC末端方向に延びる追加の隣接アミノ酸を含んでいてもよい。ある態様では、このような追加の隣接配列は、3以上、5以上、10以上、15以上、20以上、及びさらに50以上のアミノ酸(それらの間の任意の値または範囲を含む)を含んでいてもよく、N末端またはC末端においてペプチドまたはポリペプチド配列に隣接していてもよい。ある態様では、上記ペプチドまたはポリペプチドは、天然タンパク質においてその内部に含まれている共通のネオエピトープ(または、本明細書で開示する、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチド)または対象特異的ネオエピトープにも隣接しているアミノ酸配列に隣接していてもよい。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、N末端アセチル及びC末端アミノ基でキャップ付加されていてもよい。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)形態または塩形態のいずれかであってもよく、修飾、例えば、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などを含まないまたは含むのいずれかであってもよい。
【0173】
ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本発明のペプチドまたはポリペプチドを「単離」または「精製」してもよく、それは、組換え細胞及び非組換え細胞から単離した際に細胞性物質を実質的に含まない、または、化学合成した際に化学的前駆体またはその他の化学物質を含まないということを意味する。しかしながら、本発明のペプチドまたはポリペプチドは、細胞内において通常は結合していない別のポリペプチド(例えば、非相同ポリペプチド)に結合、連結していてもよく、または、その別のポリペプチドの内部に挿入されていてもよく、それでもなお、「単離」または「精製」された状態である。
【0174】
ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本発明のペプチドまたはポリペプチドは、限定するわけではないが、約8~約100(その中の任意の値または範囲を含む)のアミノ酸残基を含んでいてもよい。ある態様では、ペプチドまたはポリペプチドは、100超のアミノ酸残基を含んでいてもよい。ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むそれぞれのペプチドもしくはポリペプチド(本明細書で開示する、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)または1種または複数種の対象特異的ネオエピトープを含むそれぞれのペプチドもしくはポリペプチドは、8~40アミノ酸、8~30アミノ酸、8~25アミノ酸、8~23アミノ酸、8~20アミノ酸、または8~15アミノ酸の長さを有する。ある態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本発明のペプチドまたはポリペプチドは、ペプチドまたはポリペプチドを投与された患者のMHC分子に結合することが確認されている(例えば、予測されている)少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含んでいてもよく、それぞれの少なくとも1種のネオエピトープは、アミノ酸(例えば、1~12アミノ酸長の)の伸長部を含み、その伸長部は、場合により、ペプチドまたはポリペプチドの生化学的特性(例えば、限定するわけではないが、溶解性または安定性)を向上させる、または、ペプチドの効率的なプロテアソームプロセシングの可能性を向上させる役割を果たす。
【0175】
1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチド及びポリペプチドを含む)及び1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む、本発明のペプチドまたはポリペプチドの態様では、それぞれの1種または複数種の特定されたネオエピトープは、リンカー、とりわけ、中性リンカーによって隔てられていてもよい。「リンカー」という用語は、2つのペプチドドメイン、例えば、エピトープまたはワクチン配列などの間に付加され上記ペプチドドメインを連結するペプチドのことを意味する。ある態様では、リンカー配列は、それぞれの1種または複数種の特定されたネオエピトープ間の立体障害を低下させるために使用され、適切に翻訳され、それぞれの1種または複数種の特定されたネオエピトープのプロセシングを支援するまたは可能とする。ある態様では、リンカーは免疫原性配列エレメントをほとんど有していないはずまたは有していないはずである。例えば、ある態様では、本発明は、別のペプチドまたはポリペプチドに共に連結、融合、または結合した(例えば、インフレームで融合した、化学的に連結した、または別様に結合した)1種または複数種の本明細書で開示する共通のペプチドまたはポリペプチド及び/または対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを含むコンカテマーポリペプチドまたはペプチドに関する。このような別のペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種の本明細書で開示する共通のペプチドまたはポリペプチド及び/または対象特異的ペプチドまたはポリペプチドであってもよく、または、目的の別のペプチドまたはポリペプチド、例えば、従来の腫瘍関連抗原(TAA)などであってもよい。ある態様では、コンカテマーペプチドは、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上の本明細書で開示する共通のペプチドまたはポリペプチド及び/または対象特異的ペプチドまたはポリペプチドで構成されている。その他の態様では、コンカテマーペプチドまたはポリペプチドは、1000以上、1000以下、900以下、500以下、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、20以下、または100以下の対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを含む。さらにその他の実施形態では、コンカテマーペプチドは、共に連結、融合、または結合した3~100、5~100、10~100、15~100、20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、45~100、50~100、55~100、60~100、65~100、70~100、75~100、80~100、90~100、5~50、10~50、15~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、45~50、100~150、100~200、100~300、100~400、100~500、50~500、50~800、50~1,000、または100~1,000の本明細書で開示する共通のペプチドまたはポリペプチド及び/または対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを有する。コンカテマーポリペプチドのそれぞれのペプチドまたはポリペプチドは、1つまたは複数のリンカーを任意選択的に有していてもよく、リンカーは任意選択的に、ペプチドまたはポリペプチドのN及び/またはC末端に隣接した開裂しやすい部位であってもよい。このようなコンカテマーペプチドでは、2種以上のペプチド(本明細書で開示する対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを含む)は、それらのペプチドの間に開裂しやすい部位を有していてもよい。代替的に、2種以上のペプチド(本明細書で開示する対象特異的ペプチドまたはポリペプチドを含む)は、互いに直接連結していてもよく、または、開裂しやすい部位ではないリンカーを介して連結していてもよい。
【0176】
本明細書で使用する場合、2種のペプチドまたはポリペプチド(またはポリペプチドの領域)は、アミノ酸配列が、少なくとも約45~55%、一般的には少なくとも約70~75%、より一般的には少なくとも約80~85%、より一般的には約90%超、及びより一般的には95%超、またはそれ以上相同または同一である場合、実質的に相同または同一である。2種のアミノ酸配列または2種の核酸配列の相同性パーセントまたは同一性パーセントを求めるために、それらの配列を最適比較目的のためにアラインする(例えば、もう一方のポリペプチドまたは核酸分子との最適アライメントのために、一方のポリペプチドまたは核酸分子の配列内にギャップを導入してもよい)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。一方の配列内のある位置に、もう一方の配列内の対応する位置にあるものと同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドが存在する場合、それら分子はその位置において相同である。本明細書で使用する場合、アミノ酸または核酸「相同性」はアミノ酸または核酸「同一性」と同等である。2つの配列間の相同性パーセントは、配列により共有される同一位置の数の関数である(例えば、相同性パーセント=同一位置の数/位置の総数×100)。
【0177】
ある態様では、本発明はまた、少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(ステップ(a)における投与用)、及び少なくとも1種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(ステップ(b)における投与用)を包含し、少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープまたは対象特異的ネオエピトープは、より低い程度の同一性を有しているが、1種または複数種の同一機能を実施するのに十分な類似性を有している。例えば、本発明は、より低い程度の同一性を有しているが、1種または複数種の同一機能を実施するのに十分な類似性を有している、本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを包含する。類似性は保存されたアミノ酸置換によって決まる。このような置換は、ポリペプチド内の任意のアミノ酸を特徴が類似した別のアミノ酸で置換する置換である。保存的置換は表現型的にサイレントであると考えられる。一般的に保存的置換として認められるものは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、Met、及びIleの間の一方からもう一方への置換、ヒドロキシル残基Ser及びThrの交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基Asn及びGlnの間の置換、塩基性残基His、Lys、及びArgの交換、及び、芳香族残基Trp、Phe、及びTyrの間の置換である。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントであると考えられるかに関するガイダンスが存在している(Bowie JU et al.,(1990),Science,247(4948):130610(その全体は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0178】
ある態様では、ステップ(a)で投与するためのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープのバリアント、または、ステップ(b)で投与するためのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1種の特定された対象特異的ネオエピトープのバリアントは、1つまたは複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、及びトランケート、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせによって、アミノ酸配列が異なっていてもよい。例えば、本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドは、1つまたは複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、及びトランケート、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせによって、アミノ酸配列が異なっていてもよい。ある態様では、ステップ(a)で投与するためのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープのバリアント、または、ステップ(b)で投与するためのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1種の特定された対象特異的ネオエピトープのバリアントは、完全に機能的であってもよく(例えば、MHC結合性及びTCR特異性を保持している)、1つまたは複数の活性における機能を欠いていてもよい。完全に機能的なバリアントは一般的に、保存的変異、または重要ではない残基または重要ではない領域における変異のみを含有しており、この場合、一般的には、MHC接触残基がもたらすMHC結合は保存されている。ある態様では、機能的バリアントはまた、機能における変化をもたらさないまたは機能における重要ではない変化をもたらす類似したアミノ酸の置換を含有していてもよい(例えば、MHC結合性及びTCR特異性を保持している)。代替的に、このような置換は、ある程度、良い方または悪い方に、機能に影響を及ぼし得る。非機能的バリアントは一般的に、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、またはトランケート、または、重要な残基または重要な領域における置換、挿入、逆位、または欠失を含有しており、この場合、一般的には、TCR接触残基である。
【0179】
ある態様では、本発明はまた、本明細書で開示する表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドのフラグメントを含むステップ(a)で投与するためのペプチドまたはポリペプチドの本明細書で開示する少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープのフラグメント、または、ステップ(b)で投与するためのペプチドまたはポリペプチドの本明細書で開示する少なくとも1種の特定された対象特異的ネオエピトープのフラグメント、を含む。ある態様では、本発明はまた、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドのバリアントのフラグメントを含む、本明細書に記載の特定されたネオエピトープのバリアントのフラグメントを包含する。ある態様では、本明細書で使用する場合、フラグメントは、少なくとも約9連続アミノ酸を含む。有用なフラグメント(及び本明細書に記載の特定された共通のネオエピトープまたは特定された対象特異的ネオエピトープのバリアントのフラグメント)としては、特定されたネオエピトープの生物学的活性、とりわけ、MHC結合性及びTCR特異性のうちの1つまたは複数を保持しているフラグメントが挙げられる。生物学的に活性なフラグメントは、例えば、約9、12、15、16、20、もしくは30、またはそれ以上のアミノ酸長(それらの間の任意の値または範囲を含む)である。ある態様では、フラグメントは、不連続(その他のアミノ酸またはポリペプチドに融合していない)であってもよく、または、より大きなポリペプチドの内部にあってもよい。ある態様では、いくつかのフラグメントは、単一のより大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよい。ある態様では、宿主内における発現用に設計されたフラグメントは、ポリペプチドフラグメントのアミノ末端に融合した非相同プレ及びプロポリペプチド領域、ならびにフラグメントのカルボキシル末端に融合した別の領域を有していてもよい。
【0180】
ある態様では、ステップ(a)で投与するためのペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)の少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープ、及び、ステップ(b)で投与するためのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1種の特定された対象特異的ネオエピトープは、アレルもしくは配列バリアント(「変異体」)またはそのアナログを含んでいてもよい。ある態様では、少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープまたは対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドは、化学修飾(例えば、ペグ化、グリコシル化)を含んでいてもよい。ある態様では、変異体は、本発明の核酸分子によってコードされているポリペプチドが実施するのと同一の機能、とりわけ、MHC結合性及びTCR特異性を保持している。ある態様では、変異体は、MHC分子への強化された結合性をもたらし得る。ある態様では、変異体は、TCRへの強化された結合性をもたらし得る。別の例では、変異体は、MHC分子及び/またはTCRへの結合性における低下をもたらし得る。TCRには結合するがTCRを介したシグナル伝達については可能としない変異体もまた考えられる。
【0181】
ある態様では、ステップ(a)で投与するための少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)、及び、ステップ(b)で投与するための少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドは、その薬学的に許容される塩を含んでいてもよい。ペプチドまたはポリペプチドの「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、親ペプチドまたはポリペプチドの所望の薬理活性を有している塩のことを意味する。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」とは、本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドの誘導体のことを意味し、このような化合物は、その酸性塩または塩基性塩を生成することによって変性される。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられるがこれらに限定されない。薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性塩または四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性塩としては、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、サブ酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸から選択される無機酸及び有機酸、ならびに一般的に生じているアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから誘導した非毒性塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0182】
ステップ(a)で投与するための少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)、及び、ステップ(b)で投与するための少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドは、周知のin vitro法及びin vivo法を含むペプチドまたはポリペプチドを製造するための任意の周知の方法を用いて製造してもよい。in vitro製造は当該技術分野において周知の様々な方法を用いて行ってもよいが、それらの方法としては、ペプチドまたはポリペプチドの化学合成技術、標準的な分子生物学的技術を用いたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現、天然供給源からのタンパク質またはペプチドの単離、in vitro翻訳、に続く、発現させたペプチド/ポリペプチドの任意の必要な精製が挙げられる。代替的に、少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドは、腫瘍特異的ネオアンチゲンをコードする分子(例えば、DNA、RNA、ウイルス発現系など)を対象に導入し、その結果、コードされた腫瘍特異的ネオアンチゲンを発現させることによって、in vivoで製造してもよい。
【0183】
ある態様では、本発明はまた、本発明の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(コンカテマーペプチドを含む)の全てまたは一部をコードする核酸(例えば、DNA、RNA、ベクター、ウイルス、またはハイブリッド)を提供する。明確にさせると、このような核酸は、ペプチドまたはポリペプチドの使用を取り替えるまたはそれと共に使用するのいずれかで、本明細書で開示する対象における新生物を治療するための方法または対象における免疫応答を誘導するための方法のステップ(a)及びステップ(b)において投与してもよい。ある態様では、少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)をコードする、または、少なくとも1種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を使用して、in vitroまたはin vivoでネオエピトープを製造してもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、一本鎖及び/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、または、当該技術分野において周知の天然または安定化形態のポリヌクレオチドであってもよい。ポリペプチドを発現させることができる発現ベクターもまた調製してもよい。異なる細胞型用の発現ベクターは当該技術分野において周知であり、過度な実験をすることなく選択することができる。一般的に、DNAは、発現用の適切な方向及び適切な読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターへと挿入される。必要に応じ、DNAは、所望の宿主(例えば、細菌)が認識する適切な転写及び翻訳制御性対照ヌクレオチド配列へと連結させてもよいが、このような対照は一般的に、発現ベクター内において利用可能である。次に、標準的な技術(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)を使用して、ベクターをクローニング用の宿主細菌へと導入する。
【0184】
ある態様では、本発明は、少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(コンカテマーペプチドを含む)(本明細書で開示する、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるペプチドまたはポリペプチドを含む)または少なくとも1種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む発現ベクター、ならびにその発現ベクターを含有する宿主細胞に関し、それらもまた検討される。ペプチドまたはポリペプチドは、所望のネオエピトープをコードするRNAまたはcDNA分子の形態で提供してもよい。本発明の1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドは、単一の発現ベクターによってコードされていてもよい。このような核酸分子は、例えば、DNA/RNAワクチンの形態で、ネオアンチゲン性ペプチド/ポリペプチドを必要とする対象へとそれらをin vivoで送達するための媒体として機能し得る。
【0185】
ある態様では、本明細書で開示するペプチドまたはポリペプチドは、均一となるように精製してもよく、または部分的に精製してもよい。しかしながら、少なくとも1種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドが均一となるように精製されていない製剤が有用であるということを理解すべきである。重要な特性は、製剤が、かなりの量のその他の構成成分の存在下においてでも、少なくとも1種のネオエピトープの所望の機能を可能とするということである。それゆえ、本発明は様々な程度の純度を包含する。一実施形態では、「細胞性物質を実質的に含まない」という表現は、約30%未満(乾燥重量)のその他のタンパク質(例えば、混入タンパク質)、約20%未満のその他のタンパク質、約10%未満のその他のタンパク質、約5%未満のその他のタンパク質、約4%未満のその他のタンパク質、約3%未満のその他のタンパク質、約2%未満のその他のタンパク質、約1%未満のその他のタンパク質、またはその中の任意の値または範囲を有する少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチドの製剤を含む。
【0186】
ある態様では、本発明のペプチドまたはポリペプチドを組換え的に製造する場合、上記ペプチドまたはポリペプチドはまた、培地を実質的に含んでいなくてもよく、例えば、培地は、ペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸製剤の容積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満に相当する。「化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、ペプチドもしくはポリペプチドまたは核酸の製剤がその合成に関する化学的前駆体またはその他の化学物質から分離されているということを含む。「化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、例えば、約30%未満(乾燥重量)の化学的前駆体またはその他の化学物質、約20%未満の化学的前駆体またはその他の化学物質、約10%未満の化学的前駆体またはその他の化学物質、約5%未満の化学的前駆体またはその他の化学物質、約4%未満の化学的前駆体またはその他の化学物質、約3%未満の化学的前駆体またはその他の化学物質、約2%未満の化学的前駆体またはその他の化学物質、または約1%未満の化学的前駆体またはその他の化学物質を有するペプチドまたはポリペプチドの製剤を含んでいてもよい。
【0187】
医薬組成物
ある態様では、本明細書に記載のステップ(a)で投与するための1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド(コンカテマーペプチドを含む)またはステップ(b)で投与するための1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドは、医薬組成物、例えば、ステップ(a)用の共通の新生物ワクチンまたはステップ(b)用の個別化新生物ワクチンなどへと製剤化されてもよく、免疫応答を誘導するためまたは対象の新生物を治療するために、本明細書で開示するとおり、対象に投与されてもよい。
【0188】
それゆえ、更なる実施形態は、本明細書で開示する対象における新生物を治療するための方法または対象における免疫応答を誘導するための方法のステップ(a)に使用する医薬組成物に関し、組成物は、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープを含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチド、または、上記複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドをコードする1種または複数種の核酸を含み、1種または複数種の特定されたネオエピトープは、対象における新生物特異的エフェクターT細胞応答を誘導する。ある態様では、本発明は、ステップ(a)に使用する医薬組成物に関し、上記組成物は、本明細書で開示する表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)を含み、表A、表B、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメント及びバリアント)は、対象における膀胱癌特異的エフェクターT細胞応答を誘導する。ある態様では、ステップ(a)に使用する、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチド、または、上記複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドをコードする1種または複数種の核酸は、本明細書で開示する方法を用いて選択及び製造される。
【0189】
同様に、更なる実施形態は、本明細書で開示する対象における新生物を治療するための方法または対象における免疫応答を誘導するための方法のステップ(b)に使用する医薬組成物に関し、組成物は、1種または複数種の特定された対象特異的ネオエピトープを含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチド、または、上記複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドをコードする1種または複数種の核酸を含み、1種または複数種の特定されたネオエピトープは、対象における新生物特異的エフェクターT細胞応答を誘導する。ある態様では、ステップ(b)に使用する、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチド、または、上記複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドをコードする1種または複数種の核酸は、本明細書で開示する方法を用いて選択及び製造される。
【0190】
ある態様では、本明細書に記載の医薬組成物は薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでいてもよい。「薬学的に許容される賦形剤」とは、概ね安全、非毒性であり、生物学的にも他の点でも有害ではない医薬組成物の調製に有用な賦形剤のことを意味し、獣医学的な用途に加えヒトの医薬品用途に許容される賦形剤を含む。それゆえ、「医薬賦形剤」という用語は、本発明の化合物(複数可)以外の任意の成分を記載するために本明細書で使用される。医薬賦形剤の例としては、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、防腐剤、湿潤剤、錠剤崩壊剤、または封入材として機能し得る1種または複数種の物質が挙げられる。賦形剤の選択は、個々の投与方法、溶解性及び安定性に対する賦形剤の影響、及び剤形の性質などの因子にかなりの程度依存している。「医薬賦形剤」は、1種のこのような賦形剤と2種以上のこのような賦形剤の両方を含む。
【0191】
ある態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、ヒトまたは動物への投与のための薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。それゆえ、医薬組成物は、固体または液体として経口投与してもよく、または、液剤、懸濁剤、またはエマルション剤として筋肉内投与または静脈内投与してもよい。代替的に、医薬組成物は、リポソーム懸濁剤として、吸入、静脈内、または筋肉内で投与してもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は経口投与用に製剤化される。その他の実施形態では、医薬組成物は静脈内投与用に製剤化される。
【0192】
ある態様では、本明細書に記載の医薬組成物は薬学的に許容されるアジュバントを含んでいてもよい。このようなアジュバントとしては、ポリ-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、アンプリヴァックス、AS 15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、オンタック、PEPTEL、ベクター系、PLGA微粒子、レシキモド、SRL172、ビロゾーム及びその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、ならびにAquila’s QS21 stimulonを挙げることができるがこれらに限定されない。医薬組成物の態様では、アジュバントはポリ-ICLCを含む。TLR9アゴニストCpG及び合成二本鎖RNA(dsRNA)TLR3リガンドポリ-ICLCは、現在臨床開発中の最も有望な新生物ワクチンアジュバントのうちの2つである。前臨床試験において、ポリ-ICLCは、LPS及びCpGと比較した場合に、最も強力なTLRアジュバントであると考えられる。このことは、ポリ-ICLCの、炎症性サイトカインの誘導、及びIL-10の刺激の欠如、ならびにDCにおける高レベルの共刺激分子の維持に起因しているものと考えられる。ポリ-ICLCは、平均長約5000ヌクレオチドのポリI鎖及びポリC鎖で構成される合成的に調製された二本鎖RNAであり、ポリリジン及びカルボキシメチルセルロースを加えることによって熱変性及び血清ヌクレアーゼによる加水分解に対して安定化されている。この化合物は、TLR3、及びMDA5のRNAヘリカーゼドメイン(その両方はPAMPファミリーのメンバーである)を活性化させ、DC及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、及び、I型インターフェロン、サイトカイン、及びケモカインの混合生成をもたらす。
【0193】
本明細書に記載の医薬組成物(本明細書で開示する新生物を治療するための方法または免疫応答を誘導するための方法のステップ(a)またはステップ(b)のいずれかに使用する)の態様では、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープ(ステップ(a)用)または対象特異的ネオエピトープ(ステップ(b)用)を含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドはそれぞれ、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープまたは対象特異的ネオエピトープをそれぞれが含む、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20種のペプチドまたはポリペプチドを含む。例えば、ある態様では、ステップ(a)で投与するための医薬組成物は、本明細書に記載の表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド、及び/またはそのフラグメント及びバリアントを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20種のペプチドまたはポリペプチド(最大40種のペプチドまたはポリペプチドを含む)(それらの間の任意の値または範囲を含む)(例えば、表A(配列番号:105~163)、表B(配列番号:164~350)、及び/または表Cの1種または複数種のペプチドまたはポリペプチド(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかであるコア配列を有する1種または複数種のペプチドまたはポリペプチドであり、任意選択的に、C末端及び/またはN末端上の1~12のアミノ酸の伸長部を有し、隣接アミノ酸は、任意の比率でC末端及びN末端に分布し得る)を含んでいてもよい。ある態様では、このようなポリペプチドは、上記のとおり、リンカー、とりわけ、中性リンカーによって隔てられていてもよい。ある態様では、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含む複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドは、1種または複数種の特定された共通のネオエピトープをそれぞれが含む本明細書で開示する3~20種の選択されたペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0194】
医薬組成物の態様では、上記複数種の選択されたペプチドまたはポリペプチドをコードする1種または複数種の核酸は、DNA、RNA、またはmRNAである。
【0195】
医薬組成物の態様では、医薬組成物は抗免疫抑制剤をさらに含む。ある態様では、抗免疫抑制剤は、以下に記載するチェックポイント遮断阻害剤またはその他の別の治療用アジュバントを含む。
【実施例
【0196】
以下の実施例は本発明の特定の特徴及び態様の例示を目的としたものであり、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0197】
実施例1
Tregitope枯渇個別化がんワクチンを用いたワクチン接種後の腫瘍増殖阻害
臨床試験では、がん適応症全体にわたり患者の腫瘍を効果的に制御する精密がん免疫療法の潜在能に光をあてている。しかしながら、最近の研究では、強力なCD8+T細胞応答及びCD4+T細胞応答を確立させることの難しさが強調されている。本発明者らは、不十分ながんワクチン性能が、ネオアンチゲンワクチン中に、制御性T細胞(Treg)によって認識され得る抑制性T細胞ネオエピトープが偶発的に含まれることに部分的に起因する場合があるという仮説を立てた。
【0198】
この仮説を検証するために、本発明者らは、ANCER(商標)システムを使用して、CT26同系結腸癌マウスモデルに由来するネオエピトープを特定及び選択した。腫瘍特異的ネオエピトープを特定、特性決定、及び選別するための登録商標のあるプラットフォームであるANCER(商標)は、EPIMATRIX(登録商標)(個別化新生物ワクチンに使用する上記新生物特異的変異によってコードされている確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープの特定用)及びJANUSMATRIX(商標)(制御性T細胞に結合することが確認されている(例えば、予測されている)ネオエピトープの特定用、及び、制御性T細胞に結合することが予測されているこのように特定されたネオエピトープの、個別化新生物ワクチンに使用する対象特異的ネオエピトープからの排除用)を活用しており、これらは、感染症の前向きワクチン研究において広く有効となっている最先端の予測アルゴリズムである(Moise et al.,Hum.Vaccines Immunother 2015;Wada et al.,Sci.Rep.2017)。その他のin silicoパイプラインと比較したANCER(商標)の固有の特性は、CD4+T細胞エピトープを正確に予測して、寛容またはTregエピトープを特定するその能力である。
【0199】
1.1 Tregitope枯渇CT26ワクチンのバイオインフォマティクス設計
個人的な供給源及び公開供給源(Castle et al.BMC Genomics 2014)からCT26ミュータノーム及びトランスクリプトームを読み込んだ。それぞれ個人的なミュータノーム及び公開ミュータノームからの3,267及び3,023のバリアントをスクリーニングして、両方のデータセットに共通する1,787のSNVを抽出した。これらのうちの1,002の変異は、トランスクリプトームデータに基づく発現の証拠を示す遺伝子内に含まれていた。ある態様では、トランスクリプトームデータ中において検出されないバリアントを排除するこのステップは、この情報が利用できないケースなどのその他の解析においては省略され得る。潜在的な候補のリストをさらに絞るために、本発明者らの解析では、腫瘍DNAにおける少なくとも30×のカバレッジを有する378のバリアントに焦点をあてた。
【0200】
試験中の378のバリアントのそれぞれについて、変異及び野生型(すなわち正常)の23-merアミノ酸配列のペアを抽出した。11-mer隣接部に取り囲まれた中心部に変異を置くように変異配列を設計した。この長さにより、ペプチド設計用の隣接残基を付加しつつ、変異とオーバーラップしている全ての9-merフレーム及び10-merフレームを特性決定することが可能となる。
【0201】
変異ペプチド及び正常ペプチドのそれぞれのペアを、ネオエピトープの特定及び特性決定用のANCER(商標)プラットフォームにアップロードした。先ず、それぞれのペプチドをオーバーラップしている9-merフレーム及び10-merフレームに分解した。本発明者らは次に、Balb/c MHCクラスI(H2-Dd及びH2-Kd)アレル及びMHCクラスII(I-Ad、I-Ed)アレルに結合する可能性について、それぞれのフレームを評価した。ヒト解析用に、患者のMHCクラスI(HLA-A、HLA-B)アレル及びMHCクラスII(HLA-DRB1)アレルに結合する可能性について、それぞれのフレームを評価してもよい。本発明者らのプロセスは、この日まで、1,284のHLA-Aアレル、933のHLA-Bアレル、及び612のHLA-DRB1アレルを裏付けている。予測が容易に入手可能ではないMHCアレルを患者が発現している場合、患者アレルと本発明者らの参照アレルの間の相同性解析を実施してもよい。この解析用に、本発明者らは、患者アレルのMHC結合ポケットに由来するアミノ酸配列を抽出して、そのアミノ酸配列を、本発明者らの確実なモデルのアレルに由来する結合ポケットと比較する。MHC結合ポケットが参照アレルのMHC結合ポケットと少なくとも90%相同である任意の裏付けられていない患者アレルを本発明者らの解析に含ませてもよく、そこでは、相同参照アレル用のモデルを使用して、患者アレルに結合するフレームの可能性を評価する。これらの相同性解析を実施することにより、本発明者らが、本発明者らの裏付けを、追加の1,412のHLA-Aアレル、1,872のHLA-Bアレル、及び949のHLA-DRB1アレルへと拡張することが可能となる。
【0202】
それぞれのフレームバイアレル「評価」は、予測されたMHC結合親和性に関する記載(すなわち、予測されたMHC結合親和性の測定)である。生の結合スコアは、正規またはZ分布に沿うように調整される。生の結合スコアを、以下、
【数4】
のとおり、UniProtKB/Swiss-Prot(web.expasy.org/docs/relnotes/relstat.html)の自然に認められるアミノ酸頻度に従い、10,000の無作為9-または10-merアミノ酸配列のセットの平均(μ)結合スコア及び標準偏差(σ)に基づいて正規化する。
【0203】
正規化結合スコアは、本明細書において結合スコアまたは結合の可能性と呼ぶが、この正規分布の上位5%以内は、「ヒット」、すなわち、潜在的に免疫原性でありさらに検討する価値のあるものとして定義される。これらのペプチドは、中程度から高い親和性でMHC分子に結合する有意な可能性を有し、その結果として、専業的な抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞またはマクロファージなどと非専業的なAPCの両方の表面上(これらのペプチドはそこで、通過するT細胞によって応答され得る)に提示される有意な可能性を有している。
【0204】
ネオエピトープを特定するために、変異配列で予測されたT細胞エピトープを正常マッチ配列と比較する。以下の場合に、変異配列に由来するT細胞エピトープをネオエピトープと表示する。
-MHCに結合するT細胞エピトープの可能性が、本発明者らの予想分布の上位5パーセンタイル内に含まれ、かつ、正常マッチ配列のMHCに結合するその可能性が、予想分布の上位10パーセンタイル未満内に含まれる、または、
-MHCに結合するT細胞エピトープの可能性が、本発明者らの予想分布の上位5パーセンタイル内に含まれ、正常マッチ配列のMHCに結合するその可能性が、予想分布の上位10パーセンタイル内に含まれ、かつ、変異ペプチドと非変異ペプチドの間に少なくとも1つのミスマッチTCR接触アミノ酸が存在している。
【0205】
MHCクラスII分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの2、3、5、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する9-mer変異ペプチド及び9-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、及び8位にあり、MHCクラスI分子に結合する10-mer変異ペプチド及び10-mer非変異ペプチドのTCR接触アミノ酸残基は、アミノ末端からカウントして、変異ペプチド及び非変異ペプチドの4、5、6、7、8、及び9位にある。
【0206】
加えて、カスタマイズした相同性検索を使用して、MHCに結合する高い可能性を示す配列をスクリーニングし、参照プロテオーム内に一般的に存在するTCR接触残基の組み合わせを含有するエピトープを排除する。この相同性スクリーニングでは、先ず、任意のタンパク質配列内に含まれる全ての予測されたエピトープを考察して、それぞれの予測されたエピトープを、その構成アグレトープ及びエピトープに分類する。次に、それぞれの配列を、Uniprotデータベース(Uniprotプロテオーム番号UP000000589、Reviewed/Swiss-Protセット)に由来するマウスタンパク質のデータベースに対してスクリーニングする。ヒト解析用に、次に、それぞれの配列を、Uniprotデータベース(Uniprotプロテオーム番号UP000005640、Reviewed/Swiss-Protセット)に由来するヒトタンパク質のデータベースに対してスクリーニングしてもよい。
【0207】
交差保存エピトープ、または、互換MHC結合アグレトープ(すなわち、入力(変異)ペプチドとその参照非変異対応物の両方のアグレトープは、同一のMHCアレルに結合することが予測される)を有する参照プロテオームに由来するペプチド、及び厳密に同一のTCR接触エピトープが戻される。エピトープの相同性スコアは、参照プロテオーム内のマッチング交差保存MHC結合ペプチドの数に対応している。言い換えると、エピトープeの相同性スコアHeは、以下、
【数5】
(式中、
eは、エピトープeと同一のMHCクラスIまたはMHCクラスIIに限定され、エピトープeと同一のTCR接触エピトープを提示する、参照プロテオームに由来するMHC結合ペプチドのセットに相当する)
のとおりに計算される。
【0208】
ひいては、任意のペプチドまたはタンパク質の相同性スコアは、そのペプチドまたはタンパク質に含まれるそれぞれ個々のエピトープの平均相同性スコアに対応している。言い換えると、ペプチドpの相同性スコアHpは、以下、
【数6】
(式中、
-Eは、ペプチドp内のMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープのセットに相当し、
-Heは、上で定義したとおり、エピトープeの相同性スコアに相当する)
のとおりに計算される。
【0209】
自己に由来するエピトープとTCR接触部を共有する抗原由来エピトープを認識するT細胞は、それらT細胞が末梢へと放出され得る前に、胸腺選択中に欠失またはアネルギー性になり得る。それゆえ、これらのT細胞を標的とするワクチン成分は無効となり得る。その一方で、交差反応性エピトープを標的とするワクチン誘導性免疫応答は、本発明者らの相同性検索によって特定された交差反応性エピトープのホモログを標的とする望ましくない自己免疫応答を誘導し得る。その結果として、ワクチンの安全性は低下し得る。IEDBデータベース(iedb.org)中に含まれるMHCクラスII限定T細胞エピトープのレビューは、高い相同性スコアと認められたIL-10の産生の間には統計的に有意な相関があり、高い相同性スコアと認められたIL-4の産生の間には統計的に有意な逆相関があるということを示している(例えば、Moise et al.iVax:An integrated toolkit for the selection and optimization of antigens and the design of epitope-driven vaccines.Human Vaccin Immunother.2015;11(9):2312-21(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。逆に、例えば、IEDBデータベースから抽出した、免疫原性であることが知られている既知の感染症由来エピトープのセットに対して、または、その他の既知の免疫原性配列または一般的な病原体由来配列のセットに対して、同一の相同性解析を実施してもよい。この解析には、その他の既知または推定上のエフェクターT細胞エピトープとの高い程度の相同性を共有するネオエピトープ候補を特定する目的がある。このようなネオエピトープを含有するペプチドまたはポリペプチド(または、上記ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸)はワクチン製剤用に優先され得る。
【0210】
コードされているMHCクラスI及びMHCクラスII限定のエピトープ及びネオエピトープのうちのそれぞれの自己との類似性の程度を特性決定するために、それぞれの変異配列に上記の相同性スクリーニングを実施する。参照プロテオーム内の2つ以上の交差反応性マッチを有するMHCクラスIまたはMHCクラスIIのエピトープ及びMHCクラスIまたはMHCクラスIIのネオエピトープは、自己との高い程度の類似性を示すものとして分類され、寛容されるまたは制御性T細胞及び/またはその他の有害なT細胞(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞を含む)に結合するより高い可能性を示すものとみなされる。次に、それぞれの変異配列に対して最適化処理を実行して、以下となるように、アミノ酸配列内の部分列が存在し得るかどうかを確認する。
-少なくとも1種のMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープが、部分列においてコードされている、
-部分列においてコードされている全てのMHCクラスIまたはMHCクラスII限定ネオエピトープが、参照プロテオーム内の2つ以下の交差反応性マッチを有している、
-部分列においてコードされている全てのMHCクラスIまたはMHCクラスII限定エピトープが、参照プロテオーム内の2つ以下の交差反応性マッチを有している。
【0211】
この処理には、推定上のTregitope及び/またはその他の推定上の有害なT細胞エピトープ(潜在的な宿主交差反応性を有するT細胞及び/またはアネルギー性T細胞に結合するエピトープを含む)、及び変異配列に由来するその他の高度に交差保存されたエピトープを含有するアミノ酸部分列を排除する効果がある。得られた最適化配列は、自己配列との低い程度の類似性を示すエピトープまたはネオエピトープのみを含有している。上記基準の部分列マッチングが存在し得ない場合、変異配列は検討から棄却される。
【0212】
378の解析変異配列のうちの135を最適化して、低い程度の自己類似性を示すMHCクラスI及び/またはMHCクラスII限定ネオエピトープを含有するアミノ酸配列を得ることができた。次に、これら135の配列(1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)を、以下の特性、
-免疫原性関連特性、
〇MHCクラスIネオエピトープのカウント、
〇MHCクラスIネオエピトープの最小パーセンタイルランク、
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)のMHCクラスI限定Treg誘導潜在能、
〇MHCクラスIIネオエピトープ(ある態様では、そのうちの1種または複数種を含んでいてもよい)のカウント、
〇MHCクラスIIネオエピトープの最小パーセンタイルランク、
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)のMHCクラスII限定Treg誘導潜在能、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がMHCクラスIネオエピトープとMHCクラスIIネオエピトープの両方を含有しているかどうか、
-シークエンシング関連特性(ある態様では、以下のうちの1種または複数種を含んでいてもよい)、
〇関連転写物の発現レベル、
〇腫瘍DNAにおける変異のカバレッジ、すなわち、変異のゲノム位置にオーバーラップしている固有シークエンシングリードの数、
〇腫瘍DNAにおける変異のバリアントアレル割合(VAF)、すなわち、シークエンシングリードにわたり認められた変異の0~1の相対頻度、
〇必要に応じて、その他のシークエンシングメタデータ、
-生理化学関連特性(ある態様では、以下のうちの1種または複数種を含んでいてもよい)、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)の正味電荷、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つの荷電残基を含有しているかどうか、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)内におけるシステイン(C)のカウント、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つのシステイン(C)を含有し負に荷電しているかどうか、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がポリ-プロリンモチーフ(「PP」)を含有しているかどうか、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つのメチオニン(M)を含有しているかどうか、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がN末端グルタミン(Q)を含有しているかどうか、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が最後の位置または最後から2番目の位置にグリシン(G)及び/またはプロリン(P)を含有しているかどうか、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が「DG」、「DS」、「DA」、または「DN」モチーフを含有しているかどうか、
〇最適化ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)のハイドロパシー指数、
のうちの1つまたは複数に従ってランク付けした。
【0213】
以下のスコアリングスキーム(ある態様では、イタリック体かつ太字としたスコア{本翻訳では[ ]内で示す}(例えば、ポイント及び/またはパーセンテージ)は調整される場合があり、ある態様では、スコアリングスキームは、以下のスコアリングステップ/ペナルティ適用ステップのうちの1つまたは複数を含んでいてもよい)に従って、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)にスコアを割り当ててもよい。
-MHCクラスIネオエピトープのカウント([最大20ポイント])、
〇1種以下のMHCクラスIネオエピトープを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
〇2種のMHCクラスIネオエピトープを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[80%]のポイント(すなわち、16ポイント)を割り当てる
〇3種以上のMHCクラスIネオエピトープを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、20ポイント)を割り当てる。
【0214】
図1は、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に、そのMHCクラスIネオエピトープ含有量に基づいて割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-MHCクラスIネオエピトープの最小パーセンタイルランク(最大[20ポイント])、
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)(MHCクラスIネオエピトープの最小パーセンタイルランクは5%(それを含む)~2.5%(それを含まない)に収まる)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)(MHCクラスIネオエピトープの最小パーセンタイルランクは1%(それを含まない)~2.5%(それを含む)に収まる)に[50%]のポイント(すなわち、10ポイント)を割り当てる
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)(MHCクラスIネオエピトープの最小パーセンタイルランクは1%(それを含む)内に収まる)に[100%]のポイント(すなわち、20ポイント)を割り当てる
【0215】
図2は、MHCクラスIネオエピトープの最小パーセンタイルランクに基づいて、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-MHCクラスIIネオエピトープのカウント(最大[10ポイント])、
〇1種以下のMHCクラスIIネオエピトープを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
〇2種のMHCクラスIIネオエピトープを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[80%]のポイント(すなわち、8ポイント)を割り当てる
〇3種以上のMHCクラスIIネオエピトープを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、10ポイント)を割り当てる
【0216】
図3は、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に、そのMHCクラスIIネオエピトープ含有量に基づいて割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-MHCクラスIIネオエピトープの最小パーセンタイルランク(最大[5ポイント])、
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)(MHCクラスIIネオエピトープの最小パーセンタイルランクは5%(それを含む)~2.5(それを含まない)に収まる)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)(MHCクラスIIネオエピトープの最小パーセンタイルランクは1%(それを含まない)~2.5%(それを含む)に収まる)に[50%]のポイント(すなわち、2.5ポイント)を割り当てる
〇ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)(MHCクラスIIネオエピトープの最小パーセンタイルランクは1%(それを含む)内に収まる)に[100%]のポイント(すなわち、5ポイント)を割り当てる
【0217】
図4は、MHCクラスIIネオエピトープの最小パーセンタイルランクに基づいて、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-MHCクラスIネオエピトープとMHCクラスIIネオエピトープの両方の存在(最大[20ポイント])、
〇MHCクラスIネオエピトープのみまたはMHCクラスIIネオエピトープのみを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
〇少なくとも1種のMHCクラスIネオエピトープ及び少なくとも1種のMHCクラスIIネオエピトープを含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、20ポイント)を割り当てる
-MHCクラスI限定Treg誘導潜在能(最大[5ポイント])、
〇参照プロテオーム内のMHCクラスI限定平均カバレッジまたは[0](それを含む)~[0.25](それを含まない)のMHCクラスI相同性スコア(上で計算した)を有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、5ポイント)を割り当てる
〇参照プロテオーム内のMHCクラスI限定平均カバレッジまたは[0.25](それを含む)~[0.5](それを含まない)のMHCクラスI相同性スコアを有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[50%]のポイント(すなわち、2.5ポイント)を割り当てる
〇参照プロテオーム内のMHCクラスI限定平均カバレッジまたは[0.5](それを含む)~[1](それを含まない)のMHCクラスI相同性スコアを有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[10%]のポイント(すなわち、0.5ポイント)を割り当てる
〇参照プロテオーム内のMHCクラスI限定平均カバレッジまたは[1](それを含む)超のMHCクラスI相同性スコアを有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
【0218】
図5は、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に、そのMHCクラスI相同性スコアに基づいて割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-MHCクラスII限定Treg誘導潜在能(最大[20ポイント])、
〇参照プロテオーム内のMHCクラスII限定平均カバレッジまたは[0](それを含む)~[0.25](それを含まない)のMHCクラスII相同性スコアを有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、20ポイント)を割り当てる
〇参照プロテオーム内のMHCクラスII限定平均カバレッジまたは[0.25](それを含む)~[0.5](それを含まない)のMHCクラスII相同性スコアを有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[50%]のポイント(すなわち、10ポイント)を割り当てる
〇参照プロテオーム内のMHCクラスII限定平均カバレッジまたは[0.5](それを含む)~[1](それを含まない)のMHCクラスII相同性スコアを有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[10%]のポイント(すなわち、2ポイント)を割り当てる
〇参照プロテオーム内のMHCクラスII限定平均カバレッジまたは[1](それを含む)超のMHCクラスII相同性スコアを有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
【0219】
図6は、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に、そのMHCクラスII相同性スコアに基づいて割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-転写物発現(例えば、当該技術分野において周知のとおりに計算される百万あたりの転写物、TPMによる)(最大[30ポイント])、
〇発現がTPMの上位[10%]内にある転写物に由来するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、30ポイント)を割り当てる
〇発現がTPMの上位[25%]未満にある転写物に由来するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
〇発現がTPMの上位[25%]~[10%]にある転写物に由来するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に直線的に分布したパーセントのポイントを割り当てる
【0220】
図7は、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に、その起源転写物の発現パーセンタイルランクに基づいて割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-当該技術分野において周知のとおりに計算したカバレッジ(最大[1ポイント])、
〇腫瘍DNAにおける[20]未満のカバレッジを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
〇腫瘍DNAにおける[20]~[50](厳密には、未満)のカバレッジを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[50%]のポイント(すなわち、0.5ポイント)を割り当てる
〇腫瘍DNAにおける[50]以上のカバレッジを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、1ポイント)を割り当てる
【0221】
図8は、腫瘍DNAにおけるその変異カバレッジに基づいて、ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
-当該技術分野において周知のとおりに計算したバリアントアレル割合(VAF)(最大[20ポイント])、
〇同系モデルのミュータノームに由来するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)について、
■[0.5]未満のVAFを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
■[0.5]~[0.75](厳密には、未満)のVAFを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[50%]のポイント(すなわち、10ポイント)を割り当てる
■[0.75]以上のVAFを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、20ポイント)を割り当てる
〇患者のミュータノームに由来するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)について、
■[0.1]未満のVAFを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[0%]のポイント(すなわち、0ポイント)を割り当てる
■[0.1]~[0.25](厳密には、未満)のVAFを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[50%]のポイント(すなわち、10ポイント)を割り当てる
■[0.25]以上のVAFを有する変異を含有するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に[100%]のポイント(すなわち、20ポイント)を割り当てる
【0222】
図9A図9Bは、腫瘍DNAにおける変異のバリアントアレル頻度(VAF)に基づいて、同系モデル(図9A)または患者(図9B)のミュータノームに由来するネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)候補に割り当てられたポイントを示す例示的なグラフである。
【0223】
その後、ポイントを合計して100ポイントスケールに正規化するが、そこで、完全なネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)、言い換えると、最大数のポイントを割り当てられたネオアンチゲンは、100とスコア付けされることとなる。
【0224】
以下の場合、重度のペナルティ(目下、100ポイントの差引きに設定され、100ポイント正規化の前後に割り当てられてもよい)は、候補ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に割り当てられてもよい。
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が荷電残基を有していない、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が無正味電荷を有している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも2つのシステインを含有している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つのシステインを含有し負に荷電している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がN末端グルタミンを含有している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)がポリ-プロリンモチーフを含有している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が2以上のハイドロパシー指数を有している。
【0225】
以下の場合、中程度のペナルティ(目下、10ポイントの差引きに設定されている)は、候補ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に割り当てられてもよい。
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が1つのシステインを含有している。
【0226】
以下の場合、軽度のペナルティ(目下、1ポイントの差引きに設定されている)は、候補ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)に割り当てられてもよい。
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が負に荷電している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が少なくとも1つのメチオニンを含有している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が最後の位置または最後から2番目の位置にグリシン及び/またはプロリンを含有している、または
-ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)が「DG」、「DS」、「DA」、または「DN」モチーフを含有している。
【0227】
代替的に、以下のスコアリングスキームに従って、スコアを割り当ててもよい(明確にさせると、このプロセスはCT26ペプチドをランク付けするためには使用しなかった。
【数7】
(式中、
-Spはペプチドpのスコアに相当し、
-C1pはペプチドpのMHCクラスI限定免疫原性潜在能に相当し、
-C2pはペプチドpのMHCクラスII限定免疫原性潜在能に相当し、
-Fpは、腫瘍生検におけるペプチドpによってコードされている変異の観察頻度に相当し、
-Epは、認められた発現分布のパーセンタイルランクとして表される、腫瘍生検におけるペプチドpによってコードされている変異の発現(ある態様では、変異を含有する遺伝子の発現)に相当する)。
【0228】
ペプチドpのMHCクラスI限定免疫原性潜在能C1pは、以下のとおりに計算される。
【数8】
(式中、
-α1(例えば、通常、1に設定される)及びβ1(例えば、通常、2に設定され、それは、「参照プロテオーム内の2つ以上の交差反応性マッチを有するエピトープは、自己との高い程度の類似性を示すものとして分類される」という上で定義した方法の状況に相当する)は所定の定数であり、
-E1pは、ペプチドp内のMHCクラスI限定ネオエピトープのセットに相当し、
-Z1pは、標準的なZスコアを使用して表される、ペプチドp内のそれぞれのMHCクラスI限定ネオエピトープのパーセンタイルランクの合計に相当し、
-Z1eは、標準的なZスコアを使用して表される、MHCクラスI限定ネオエピトープeのパーセンタイルランクに相当し、
-H1pは、上で定義したとおり、ペプチドpのMHCクラスI限定相同性スコアであり、
-H1eは、上で定義したとおり、ネオエピトープeのMHCクラスI限定相同性スコアである)。
【0229】
ペプチドpのMHCクラスII限定免疫原性潜在能C2pは、以下のとおりに計算される。
【数9】
(式中、
-α2(例えば、通常、1に設定される)及びβ2(例えば、通常、2に設定され、それは、「参照プロテオーム内の2つ以上の交差反応性マッチを有するエピトープは、自己との高い程度の類似性を示すものとして分類される」という上で定義した方法の状況に相当する)は所定の定数であり、
-E2pは、ペプチドp内のMHCクラスII限定ネオエピトープのセットに相当し、
-Z2pは、標準的なZスコアを使用して表される、ペプチドp内のそれぞれのMHCクラスII限定ネオエピトープのパーセンタイルランクの合計に相当し、
-Z2eは、標準的なZスコアを使用して表される、MHCクラスII限定ネオエピトープeのパーセンタイルランクに相当し、
-H2pは、上で定義したとおり、ペプチドpのMHCクラスII限定相同性スコアであり、
-H2eは、上で定義したとおり、ネオエピトープeのMHCクラスII限定相同性スコアである)。
【0230】
次に、候補ネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)をそのスコアに従って高から低へとランク付けする。20の最も高くランク付けしたネオアンチゲン(例えば、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)を本発明者らのCT26 ANCER(商標)ワクチン用に選択したが、それらについては表1に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0231】
1.2 in vivo試験デザイン
ANCER(商標)設計CT26ワクチンの効果をBalb/cマウスで試験した。マウスを3つの群、1)PBS対照、2)ポリ-ICLC(溶媒)、3)ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド+ポリ-ICLCに分けた。
-群1:PBS、5、8、12、15、19、22、及び26日目の皮下注射。
-群2:ポリ-ICLC、50μg、5、8、12、15、19、22、及び26日目の皮下注射。
-群3:5μg/ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド(合計100μgのANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド)+50μgのポリ-ICLC、5、8、12、15、19、22、及び26日目の皮下注射。
【0232】
0日目に、全てのマウス(N=群あたり10匹のマウス)に0%マトリゲル中の3*105のCT26腫瘍細胞を注射した。腫瘍容積が2,000mm3に到達するかまたは45日目かのどちらか早い方でマウスを屠殺した。
【0233】
1.3 ポリ-ICLCはCT26モデルにおける全身腫瘍組織量を制御できない
図10A図10Bは、PBS対照群(図10A)及びポリ-ICLC群(図10B)におけるCT26腫瘍増殖を示している。個々のマウスはより淡い濃淡で示している。より濃い濃淡は平均腫瘍増殖±SEMを示している。マウスの半数がエンドポイントに到達するまで平均値をプロットする。群2(ポリ-ICLCで免疫化したマウス)は、群1(PBSで免疫化したマウス)と比較して全身腫瘍組織量の減少を示さなかった。これらの結果は、Charles Riverによってこれまでに報告されている実験と一致している。群1のマウスのうちの50%未満は28日目を越えて生存し、10匹のマウスのうちの7匹(70%)はその日までに少なくとも2,000mm3の腫瘍容積に到達した。群1のマウスのいずれも、45日間の実験を生存しなかった。同様に、群2のマウスのうちの50%未満は28日目を越えて生存し、10匹のマウスのうちの6匹(60%)はその日までに少なくとも2,000mm3の腫瘍容積に到達した。群2のマウスのいずれも、45日間の実験を生存しなかった。
【0234】
1.4 ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドワクチンは全身腫瘍組織量を最大45%減少させる
図11A図11Bは、PBS対照群(図11A)及びANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド群(図11B)におけるCT26腫瘍増殖を示している。個々のマウスはより淡い濃淡で示している。より濃い濃淡は平均腫瘍増殖±SEMを示している。マウスの半数がエンドポイントに到達するまで平均値をプロットする。群3(ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドワクチン+ポリ-ICLCで免疫化したマウス)は、群1と比較して長期間にわたる生存を示した。マウスのうちの70%が28日目までにエンドポイントに到達した群1とは対照的に、群3のマウスのうちの50%のみがその日までにエンドポイントに到達した。群3のマウスのうちの50%未満は32日目を越えて生存し、10匹のマウスのうちの8匹(80%)はその日までに少なくとも2,000mm3の腫瘍容積に到達した。群3のマウスのうちの2匹(20%)は45日間の実験を生存した。
【0235】
図12は、PBS対照群、ポリ-ICLC群、及びANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド群における平均(±SEM)CT26腫瘍増殖を示している。マウスの半数がエンドポイントに到達するまで平均値をプロットする。加えて、腫瘍増殖は、群1及び群2と比較して群3において減少した。最も高い腫瘍増殖阻害は21日目及び25日目に認められ、そこで、全身腫瘍組織量は、群2と比較して群3においてそれぞれ45%及び38%減少した。
【0236】
実施例2
自己類似ネオエピトープをペプチドワクチンと共に同時投与した際のIFN-γ応答の抑制
ANCER(商標)プラットフォームを使用して、CT26バリアントを潜在的なワクチン候補ペプチドとして特定及びランク付けした。このリストから、CT26結腸直腸癌同系マウスモデル(上記を参照のこと)用に開発したペプチドベースワクチンの開発に利用する、20種のネオアンチゲンを選択した。
【0237】
推定上の「自己類似」ネオエピトープを、ワクチン候補に対する免疫原性応答を抑制するその潜在能ゆえに、特定及び排除する重要性を実証するために、本発明者らは、JANUSMATRIX(商標)に基づいて、高い程度の自己類似性を示すCT26ネオエピトープを特定し、それらCT26ネオエピトープがワクチン製剤中に含まれることがそれらワクチン製剤の免疫原性をどのように変化させるかを試験した。
【0238】
2.1 CT26自己類似配列の選択
個人的なCT26ミュータノーム及び公開CT26ミュータノームから抽出した378のバリアントをJANUSMATRIX(商標)アルゴリズムでスクリーニングして、マウス配列との高い程度の類似性を示すネオアンチゲン配列を特定した。推定上の「自己類似」制御性T細胞ネオエピトープを生成する、これら378のSNVのうちの35及び24はそれぞれ、MHCクラスII及びMHCクラスIに限定された。これらMHCクラスII限定配列のうちの10は、潜在的な製造性の問題ゆえに、または、MHCに結合する限定的な潜在能を有する推定上のTregネオエピトープの存在ゆえに、排除された。
【0239】
残り25のMHCクラスII限定配列については、最も高度に交差保存されたネオエピトープを含有するネオアンチゲンを優先するために、手作業で精査した。言い換えると、参照マウスプロテオーム内の適合性のあるTCR接触部との最も多い数の相同性マッチを有するMHCクラスII限定ネオエピトープをコードするネオアンチゲンを、残りのネオアンチゲンよりも優先した。in vivo免疫原性試験に使用するために、10種のMHCクラスII「自己類似」ネオアンチゲンをこのリスト(表2に示す)から選択した。表2の配列は、任意選択的なN末端キャップ及びC末端キャップ(それぞれ、Ac及びNH2)を備えた状態で示されている。
【表5】
【0240】
加えて、フォローアップin vivo試験に使用するために、10種のMHCクラスI「自己類似」ネオアンチゲンを選択した(表3に示す)。表3の配列は、任意選択的なN末端キャップ及びC末端キャップ(それぞれ、Ac及びNH2)を備えた状態で示されている。
【表6】
【0241】
2.2 試験デザイン
Balb/cマウスを3つの群、A)溶媒対照、B)ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド+アジュバント、C)ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド+JANUSMATRIX(商標)MHCクラスII選択ペプチド+アジュバント、に分けた。全てのワクチンは、アジュバントのポリ-ICLCを加えて製剤化した。Hiltonolとしても知られているポリ-ICLCは、パターン認識受容体(PRR)用の合成二本鎖RNA(dsRNA)アゴニスト、及びTLR3アゴニストである。群A、群B、及び群Cは最初のワクチン接種を受け、それに続いて、最初のワクチン接種の2週間後及び4週間後にワクチンのブーストを受けた。最後のブーストの7~10日後に全てのマウスを屠殺し、脾細胞単離及びIFNγ ELISpotアッセイ用に脾臓を採取した。
群A:200uL中の50ugのポリ-ICLC
群B:5ug/ペプチドの20種のANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド、合計100ugのペプチド、50ugのポリ-ICLC、200uL
群C:5ug/ペプチドの20種のANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド+10種のJANUSMATRIX(商標)MHCクラスII自己類似ペプチド、合計150ugのペプチド、50ugのポリ-ICLC、200uL
【0242】
単離脾細胞を播種してから、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド(CT26_プール)、JANUSMATRIX(商標)選択ペプチド(CT26-Treg_プール)、クラスIペプチドプールに加えて、個々のANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドCT26-1(CT26_ペプチド1)及びCT26-20(CT26_ペプチド1)で刺激した。プレートを一晩培養してから読み取った。陽性結果は、バックグラウンドと比較したスポット形成細胞、50超のSFC/百万脾細胞、及びバックグラウンドと比較した2倍超の刺激指数として定義した。統計的有意性は、スチューデントt検定(マウス-抗原対抗原刺激無しに加えて、群比較で)によって求めた(p<0.05)。
【0243】
2.3 ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドは免疫原性である
図13A図13Bは、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドIFNγ応答を示している。CT26ネオアンチゲンペプチドプール、クラスIのみのプール、及び個々のペプチドCT26-1は、CT26ペプチドでワクチン接種したマウスにおいて有意なエピトープ特異的IFNγ応答を誘導した。この刺激条件において、JANUSMATRIX(商標)選択ペプチドは認識されず、陽性結果は測定されなかった。ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドは、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド+ポリ-ICLCでワクチン接種したマウスにおいて免疫原性であることが確認された。CT26プールに対する想起応答は、培地のみで刺激した細胞と比較して有意に高いエピトープ特異的IFNγ応答を刺激した(図13)。CT26-Tregペプチドプールで刺激した細胞においてIFNγ応答が測定されなかったことは、CT26ペプチドのみでワクチン接種したマウスにおいて、無関係なペプチドが認識されないということを示した。加えて、CT26ネオアンチゲンは、クラスIプールに対する陽性応答によって示されているとおり、CD8+特異的T細胞応答を刺激することができた。個々のエピトープに対する応答は様々であった。CT26-1(クラスI及びクラスII)エピトープが免疫原性であると考えられる一方で、CT26-20(クラスI)はそうではなかった(データは省略)。
【0244】
2.4 ANCER(商標)選択CT26 MHCクラスII「自己類似」Tregネオアンチゲンペプチドはネオアンチゲン免疫応答を抑制する
図14A図14Bは、CT26 MHCクラスII「自己類似」ペプチドがANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドに対するIFNy応答を抑制していることを示している。ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドプールは、群Bのワクチン接種マウスにおいて、エピトープ特異的応答を示す群Aにおいては認められなかった強力なIFNγ応答を誘導した(図14A図14B)。CT26ペプチドプール及びクラスIプールはまた、群Aと比較した場合に、群Bのマウスにおいて強力なエピトープ特異的IFNγ応答を刺激することができたが、群Cに投与するワクチンにJANUSMATRIX(商標)選択MHCクラスIIエピトープを加えると、IFNγ応答が有意に低下する。
【0245】
ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド応答は、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドのみを受けた群Bと比較して、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドとJANUSMATRIX(商標)選択ネオアンチゲンの両方で免疫化した群Cのマウスにおいて抑制される。
【0246】
実施例1及び実施例2の結論
本試験の目的は、ANCER(商標)プラットフォームが、ネオエピトープがんワクチンに使用可能なミュータノームに由来するペプチドを成功裏に予測することができるという前臨床概念実証研究があることから、結腸直腸癌細胞モデルであるCT26から選択したネオエピトープの免疫原性を評価することであった。本データは、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドを用いたワクチン接種が、ナイーブBalb/cマウスにおいて強力な新規のエピトープ特異的IFNγ応答を刺激するということを示している。ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドは、クラスIペプチドプール及びクラスIIペプチドプールに加えて、クラスIのみのペプチドプールを含み、ANCER(商標)が成功裏に免疫原性CD8+T細胞エピトープを特定したことを示唆している。さらに、推定上の「自己類似」制御性T細胞ネオエピトープを含有する特定されたCT26ネオアンチゲンペプチドは、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチドプールを用いた刺激に対して認められるIFNγ応答を抑制することにより、免疫抑制能を示した。それゆえ、免疫原性ではなく寛容を誘導する能力を有し得る任意のネオエピトープを検討することには価値がある。ANCER(商標)を用いたT細胞エピトープのMHC及びTCR接触残基の解析により、エピトープ表現型の予測が可能となり、ワクチン中における任意の潜在的な免疫寛容を排除するのに役立ち得る。
【0247】
実施例3
T細胞はANCER(商標)-CT26ワクチン製剤との高い多官能性を示す
3.1 方法
CD4+T細胞及びCD8+T細胞の多官能性を評価するために、それぞれの細胞型における、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド(「ANCER(商標)-CT26」)刺激後のサイトカイン産生をフローサイトメトリーで評価した。ANCER(商標)-CT26を用いた刺激後、ANCER(商標)-CT26でワクチン接種したマウスは、サイトカイン産生CD4+及びCD8+T細胞の頻度の増加を示し、IFNγ+TNFα+産生CD4+集団は最大の増加を示した(図15A図15B)。図15A図15Bは、ANCER(商標)-CT26免疫化が多官能性CD4T細胞及びCD8T細胞を刺激することを示している。ポリ-ICLCまたはANCER(商標)-CT26/ポリ-ICLCで免疫化したナイーブマウスから採取した脾細胞のフローサイトメトリー評価。平均+SEM。IFNγを分泌するその他の集団もまた、劇的にではないが、増加していた。CD8+T細胞は、類似したサイトカイン発現パターンを示し、サイトカイン分泌細胞の最も高い頻度はIFN+IL-2+であり、その他のIFNγ+分泌集団の増加はより少なかった。
【0248】
3.2 結果
本試験の目的は、本発明者らのANCER(商標)プラットフォームが、ネオエピトープワクチン(例えば、共通のネオエピトープワクチンまたは個別化ネオエピトープワクチン)に使用するミュータノームに由来するペプチドを成功裏に予測することができるということを実証するために、マウス結腸直腸癌モデルであるCT26から選択したネオエピトープの免疫原性を評価することであった。本データは、ANCER(商標)-CT26を用いたワクチン接種が、ナイーブ雌Balb/cマウスにおいて強力な新規のエピトープ特異的IFNγ応答を刺激するということを示している。さらに、特定されたCT26-Treg-ネオアンチゲンペプチドは、ANCER(商標)-CT26を用いた刺激に対して認められるIFNγ応答を抑制する免疫抑制活性を示した。このことは、免疫原性ではなく寛容を誘導する能力を有し得るネオエピトープを特定することの価値を示している。ANCER(商標)を用いたT細胞エピトープのMHC及びTCR接触残基の解析により、T細胞応答の表現型の予測が可能となり、ワクチン中における任意の潜在的な免疫寛容を排除するのに役立ち得る。
【0249】
実施例4
(予言的)Treg誘導性ネオエピトープの特定及びT細胞区画に対するその影響の特性決定
4.1 方法
本実験では、本発明者らは、コンピュータで導き出した推定上の自己類似ネオエピトープのプールからの、制御性T細胞を誘導するTregitope配列の特定を実証する。Tregitopeのない20種のネオアンチゲンペプチド及びTreg応答を誘導することが予測される10種のネオアンチゲンペプチドの混合物でナイーブBalb/c動物を免疫化する。脾臓を35日目に採取する。脾細胞を、
-20種の(Tエフェクター「Teff」)ネオアンチゲンペプチド
-20種の(Teff)ネオアンチゲンペプチド+10種の(Treg)自己類似ネオアンチゲンペプチド
-20種の(Teff)ネオアンチゲンペプチド+1種の(Treg)自己類似ネオアンチゲンペプチド(10種の自己類似配列のそれぞれについて1つの培養液)
の存在下で培養する。
【0250】
読み取り:フローサイトメトリー。
4.2 予想結果
-20種のTeffネオアンチゲンを含む培養液は、CD3+CD25FoxP3CD8+T細胞(活性化CD8+T細胞)及びCD3+CD25Foxp3CD4+T細胞(活性化CD4+T細胞)の増殖を誘導する。
-20種のTeffネオアンチゲン及び10種のTregネオアンチゲンを含む培養液は、対照(20種のTeffネオアンチゲンのみ)と比較して、CD3+CD25FoxP3CD8+T細胞(活性化CD8+T細胞)及びCD3+CD25Foxp3CD4+T細胞(活性化CD4+T細胞)の増殖を低下させる。CD3+CD25Foxp3CD4+T細胞(Treg)は増殖し得る。
-20種のTeffネオアンチゲン及び10種のTregネオアンチゲンを含む一部の培養液は、対照(20種のTeffネオアンチゲンのみ)と比較して、CD3+CD25FoxP3CD8+T細胞(活性化CD8+T細胞)及びCD3+CD25Foxp3CD4+T細胞(活性化CD4+T細胞)の増殖を低下させる。CD3+CD25Foxp3CD4+T細胞(Treg)は増殖し得る。
活性化CD8+T細胞及び活性化CD4+T細胞の増殖を低下させることができる自己類似ネオアンチゲンはTregitopeとして分類される。
【0251】
実施例5
(予言的)自己類似ネオエピトープをペプチドワクチンと共に同時投与した際のワクチン接種後の腫瘍増殖阻害
5.1 方法
本実験では、本発明者らは、Tregitopeのない20種のネオアンチゲンペプチド(少なくとも、それらネオアンチゲンペプチドはTregを誘導する低い潜在能を有する)の混合物に特定されたTregitopeを加えることにより、マウスCT26ネオエピトープワクチンの腫瘍増殖阻害の低下を実証する。本実験は実施例4に類似しているが、腫瘍増殖阻害を測定する。CT26腫瘍株用のネオエピトープベースワクチンを設計する。Tregを誘導する低い潜在能を有する20種のネオアンチゲンをワクチン用に選択する。生理食塩水、ポリ-ICLCを含み10種の自己類似ネオエピトープを含むまたは含まない20種のネオアンチゲンをコードするネオエピトープベースワクチンでCT26保有マウスを免疫化する(N=群あたり12匹のマウス)。最長60日間にわたり腫瘍容積をモニターする。
【0252】
5.2 予想結果
-中央腫瘍増殖は、生理食塩水を受けたマウスと比較して、ワクチンで免疫化したマウスにおいて50%超低下するはずである。
-中央腫瘍増殖は、10種の自己類似ネオエピトープの混合物の存在下、ワクチンで免疫化したマウスにおいて50%未満低下するはずである。
-理想的には、中央腫瘍増殖は、10種の自己類似ネオエピトープの混合物の存在下、ワクチンで免疫化したマウスにおいて30%未満低下するはずである(それゆえ、そのモデルにおける自己類似ネオエピトープの存在により、中央腫瘍増殖が少なくとも20%、好ましくはより多く低下するはずである)。
【0253】
実施例6
(予言的)自己類似ネオエピトープをペプチドワクチンと共に同時投与した際のワクチン接種後の腫瘍増殖阻害
6.1 方法
本実験では、本発明者らは、Tregitopeのない20種のネオアンチゲンペプチド(少なくとも、それらネオアンチゲンペプチドはTregを誘導する低い潜在能を有する)の混合物に、これまでの試験において特定された特定のTregitopeを加えることにより、マウスCT26ネオエピトープワクチンの腫瘍増殖阻害の低下を実証する。本実験は実施例2に類似しているが、免疫原性の代わりに腫瘍増殖阻害を測定する。CT26腫瘍株用のネオエピトープベースワクチンを設計する。Tregを誘導する低い潜在能を有する20種のネオアンチゲンをワクチン用に選択する。生理食塩水、ポリ-ICLCを含み特定の十分に特性決定されたTregitopeを含むまたは含まない20種のネオアンチゲンをコードするネオエピトープベースワクチンでCT26保有マウスを免疫化する(N=群あたり12匹のマウス)。最長60日間にわたり腫瘍容積をモニターする。
【0254】
6.2 予想結果
-中央腫瘍増殖は、生理食塩水を受けたマウスと比較して、ワクチンで免疫化したマウスにおいて50%超低下するはずである。
-中央腫瘍増殖は、特定の十分に特性決定されたTregitopeの存在下、ワクチンで免疫化したマウスにおいて50%未満低下するはずである。
-理論上、中央腫瘍増殖は、特定の十分に特性決定されたTregitopeの存在下、ワクチンで免疫化したマウスにおいて30%未満低下するはずである(それゆえ、そのモデルにおけるTregitopeの存在により、中央腫瘍増殖が少なくとも20%、好ましくはより多く低下するはずである)。
実施例7
(予言的)Tregを誘導する低い潜在能を有するように設計されたペプチドワクチン及びTregを誘導する潜在能を有するペプチドワクチンを比較した際のワクチン接種後の腫瘍増殖阻害
【0255】
7.1 方法
本実験では、本発明者らは、Tregitopeのない20種のネオアンチゲンペプチド(少なくとも、それらネオアンチゲンペプチドはTregを誘導する低い潜在能を有する)の混合物と、同一の腫瘍株に対応する、自己類似ネオエピトープ(Tregitopeを含む)が排除されていない20種のネオアンチゲンの混合物を比較することにより、マウスCT26ネオエピトープワクチンの腫瘍増殖阻害の低下を実証する。CT26腫瘍株用のネオエピトープベースワクチンを設計する。Tregを誘導する低い潜在能を有する20種のネオアンチゲンをワクチン用に選択する。20種のその他のネオアンチゲンはまた、当該技術分野において周知の方法に従って選択される。当該技術分野において周知の方法を使用して設計された20種のネオアンチゲンが、その免疫原性を低下させることによりその抗腫瘍効果の強度を低下させることが知られているある特定の数(少なくとも1種)の自己類似ペプチド及び/またはTregitopeを含むことが予想される。生理食塩水、ポリ-ICLCを含む20種のネオアンチゲンをコードするネオエピトープベースワクチン、及び、目下の自己及びTregitopeを含む20種のネオアンチゲンをコードするネオエピトープベースワクチンで、CT26保有マウスを免疫化する(N=群あたり12匹のマウス)。最長60日間にわたり腫瘍容積をモニターする。
【0256】
7.2 予想結果
-中央腫瘍増殖は、生理食塩水を受けたマウスと比較して、ワクチンで免疫化したマウスにおいて50%超低下するはずである。
-中央腫瘍増殖は、Tregitopeのないワクチンと比較して、自己ペプチド及びTregitopeを含むネオアンチゲンに対応するワクチンにおいて低下するはずである(理想的には、本発明者らは、群間における10%の低下、好ましくは20%、より好ましくは30%などを観察するであろう)。
【0257】
実施例8
(予言的)CT26マウスにおけるANCER(商標)選択自己類似エピトープの寛容誘導性質の確認
8.1 方法
ANCER(商標)パイプラインは、がんワクチンに対する免疫応答を改善させるために、JANUSMATRIX(商標)アルゴリズムを使用して、Treg-ネオAgを排除する。JANUSMATRIX(商標)は感染症の前向きワクチン研究において有効とされている。この目的において提案される試験の目標は、Treg-ネオAgがTregを誘導可能であることを実証することである。CT26モデルを使用した予備試験では、本発明者らは、ナイーブBalb/cマウスにおいて、最適に設計されたネオエピトープワクチンと同時投与されたTreg-ネオAgのプールが、Treg-ネオAgを含まないワクチン接種と比較して、IFNγ ELISpot応答を5倍減少させることを実証した(p=0.003)。この知見に基づいて、本発明者らは、ANCER(商標)選択CT26ネオアンチゲンペプチド(「ANCER(商標)-CT26」)と同時投与された個々のTreg-ネオAgでペプチド免疫化したナイーブマウスにおけるTreg応答の誘導を評価することによって、それぞれのTreg-ネオAgの免疫抑制能を評価する。ANCER(商標)-CT26に対するIFNγ応答を抑制することが示されTreg表現型を有するT細胞によって認識されるTreg-ネオAgは、CT26モデルにおけるワクチン効果に対するその影響を評価するための更なる試験用に選択される。
【0258】
8.2 免疫化
ポリ-ICLCアジュバント(50μg)を用いて製剤化したANCER(商標)-CT26(5μg/ペプチド)と共に、10種のCT26-Treg-ネオAgのそれぞれを個別に皮下(s.c.)注射することにより、Balb/cマウスの群(N=6)を感作し、その後、2週間のインターバルをあけて2回ブーストする。比較群は、同一の免疫化スケジュールに続いて、ANCER(商標)-CT26のみを含有する同様に製剤化されたワクチンを受ける。対照は、生理食塩水及びポリ-ICLCを単独で受けるマッチ群を含む。
【0259】
8.3 予想結果
自己類似エピトープの免疫抑制機能の評価。最後の免疫化の1週間後、個々のTreg-ネオAgの抑制効果をIFNγ ELISpotアッセイで評価する。脾細胞をANCER(商標)-CT26で刺激する。ANCER(商標)-CT26のみを受けたマウスと比較した、Treg-ネオAgで免疫化したマウスにおけるIFNγ分泌ANCER(商標)-CT26特異的細胞の数の減少により、Treg-ネオAgを潜在的なTreg誘導性エピトープとして特定し、フローサイトメトリーによるT細胞表現型の確認を待機する(以下を参照のこと)。
【0260】
プレコートプレートを備えた比色定量Mabtech IFNγ ELISpotキットを製造業者のプロトコルに従って使用し、エピトープ特異的脾細胞の頻度を測定する。10%ウシ胎児血清を補足したRPMI 1640(Gibco)中の洗浄済み脾細胞をウェルあたり2.5×105の細胞で加える。抗原刺激を三重で行うが、その抗原刺激は、(i)10μg/ml(ペプチドあたり0.5μg/mlに相当)で加えた20種のANCER(商標)-CT26ペプチド、及び(ii)0.5μg/mlの個々のTreg-neoAgを含む。3つのウェルを陽性対照としての2μg/mlのコンカナバリンAで刺激し、0.02% DMSOを含有する培地を入れた6つの複製ウェルをバックグラウンド測定用に使用する。Zeiss高解像度自動化ELISpotリーダーシステム及び付属KS ELISpotソフトウェアを使用して、生のスポットカウントをZellNet Consulting,Inc.で記録する。結果をペプチドウェル内のSFCの平均数として計算し、百万細胞に調節する。スポットの平均数が、(i)バックグラウンドの少なくとも2倍多い(刺激指数≧2)、(ii)百万の脾細胞あたりバックグラウンドを上回る50超のSFC(20,000の細胞あたり1回の応答)、及び(iii)マンホイットニーU検定において模擬免疫化マウスのスポット平均数とは統計的に異なっている(p<0.05)場合に、免疫化マウスの応答を陽性とみなす。免疫化群(Treg-ネオAgを含む及び含まないANCER(商標)-CT26)間におけるSFC数の差異を、マンホイットニーU検定を用いた統計的有意性(p<0.05)で評価する。
【0261】
実施例9
エピトープ特異的T細胞表現型
9.1 方法
四量体技術及びフローサイトメトリーを使用して、Treg-ネオAgを認識するT細胞の表現型を特定する。Treg-ネオAgを含有するPEまたはAPC標識MHC II四量体(I-Ad/I-Ed)をNIH Tetramer Core Facilityで作製する。死細胞を生細胞と識別するためのfixable viability stain 450と共に脾細胞を培養してから、マウスの免疫化に使用したTreg-ネオAgに対応する四量体で染色し、次に、Tregの検出及びTregのその他の細胞型(CD45、CD3、CD4、CD8、CD14、CD19、CD25、CTLA-4、GITR、CD103、ICOS)との識別を同時に行うための細胞表面マーカーに対する所定のパネルの抗体で染色する。PMA-イオノマイシンを用いた刺激後にFoxP3、T-bet、IL-10、及びTGF-β1に対する細胞内染色でTregをTeff/Th1細胞とさらに機能的に識別し、ブレフェルディンAで分泌を遮断し、表面染色後の固定及び透過処理を行う。BD Fortessaサイトメーター上でフローサイトメトリー測定を実施する。試料あたり500,000~1,000,000のイベントが収集される。データ解析:FlowJoソフトウェアを使用して収集データを解析する。リンパ球/シングレット/生存/CD45+CD3+CD4+CD8-CD14-CD19-イベントで細胞をゲーティングする。エピトープ特異的Treg細胞を、Treg-ネオAgを受けていないマウスと比較してTreg-ネオAgで免疫化したマウスにおいてCTLA-4、GITR、CD103、及び/またはICOSの頻度、及び/またはMFIが高い四量体結合CD4+CD25+FoxP3+T-bet-細胞として定義する。ポアソンモデルに基づいて、バックグラウンドを上回る2標準偏差に相当するより低い閾値をそれぞれの集団パターン用に設定する。この閾値未満の値を0に設定する。絶対値ではなく応答パターンの比較用に、総応答内のそれぞれ個々の応答パターンの比率を計算する。群間の比較はウィルコクソンの順位和検定に基づく。統計的有意性は、ペアワイズ比較用にp<0.05、及び多重比較用にp<0.01として定義される。
【0262】
9.2 予想結果
全10種のTreg-ネオAgが図14に示す5倍低いIFNγ応答に等しく寄与しているというのはありそうもない。それゆえ、本発明者らは、ANCER(商標)-CT26に対するIFNγ応答を有意に低下させTreg応答を生成する推定の3~5の個々のTreg-ネオAgを特定することを予想する。統計上有意に低い応答を誘導しないTreg-ネオAgは、全10種のTreg-ネオAgが共に送達される際に認められる5倍の低下に最小限寄与し得、代替的に、それらTreg-ネオAgは、クローン欠失またはアネルギーの結果として寛容され得る。Treg-ネオAgのいずれもが個別にIFNγ応答を低下させないというのはありそうもないが可能である。たとえこれが事実であったとしても、本発明者らは、ネオエピトープワクチン中においては「将来性のない」寛容エピトープを避ける必要があるということを依然として学んでいる。
【0263】
実施例10
(予言的)キャップ付加ペプチド対キャップ非付加ペプチドの比較
免疫原性ペプチドのN末端またはC末端に対する修飾が親分子とは異なる特性を誘導し得るということはよく知られている。調整され得るパラメータ(限定するわけではないが)は、
-ペプチドの半減期
-細胞局在化
-細胞分布
-エンドソーム脱出、及び移行のメカニズム
-細胞内への放出の動態及び収率
-HLAへの提示
である。
【0264】
複合体キャッピングが免疫ペプチドのオーバーラップ特性を劇的に変化させ得るということもまた、当該技術分野において周知である。複合体キャッピングファミリーのメンバーとしてはリポペプチド及びアナログが挙げられる。本実施例では、本発明者らは、N末端をアセチル化で修飾する効果とC末端をアミド化で修飾する効果を比較すること、それらのT細胞応答のin vivo誘導を比較すること、及び、CT26マウスモデルにおけるそれらの抗腫瘍増殖効果を比較することを目的とする。
【0265】
実施例11
(予言的)推定上のTregエピトープを有さないCT26マウスのワクチン接種後に減少した全身腫瘍組織量の確認
11.1 方法
これらの試験の目標は、CT26モデルを使用して、ネオエピトープワクチン効果に対するTreg-ネオAgの有害な影響を実証することである。Treg-ネオAgを用いたワクチン接種の2つのアプローチを評価する。1つ目では、Treg誘導性Treg-ネオAgを使用する。2つ目では、JANUSMATRIX(商標)アルゴリズムを用いることなくANCER(商標)を使用して発見されたネオエピトープを使用する。その他のパイプラインと比較したANCER(商標)の固有の特性であるJANUSMATRIX(商標)を用いることなく設計されたワクチンの評価により、ネオエピトープ選択プロセスにおけるその重要性が確立される。加えて、これらのワクチンの免疫原性を評価して、最適に設計されたANCER(商標)CT26ワクチンと比較する。
【0266】
11.2 腫瘍保有マウスにおけるCT26ネオエピトープワクチンの治療効果の評価
本発明者らは先ず、腫瘍移植後の2つの異なる時点において腫瘍保有動物を免疫化することによるペプチド-アジュバントワクチン接種の投与スケジュール、及び3回の異なるブーストスケジュールを最適化する。Balb/cマウスに3×105のCT26腫瘍細胞を皮下注射する。本発明者らは、腫瘍保有マウスの3つの群(10匹のマウス/群)に対して、ポリ-ICLCを用いて製剤化したANCER(商標)-CT26を、腫瘍移植の4日後、以下のスケジュール、群1の4、12、20日目、群2の4、18日目、群3の4、7、10、13、16、19、22日目に、皮下でワクチン接種を行う。2つの追加の群に対して、腫瘍移植の10日後、以下のスケジュール、群4の10、18、26日目、群5の10、13、16、19、22日目で、ワクチン接種を行う。本発明者らは、この目的の最初のパートで決定した最適な投与スケジュールを使用して、CT26腫瘍保有マウスをANCER(商標)-CT26/ポリ-ICLCで免疫化する。腫瘍移植マウスの比較群は、目的1の有効なTreg-ネオAgと共に、または、同一の免疫化スケジュールを使用してJANUSMATRIX(商標)を用いることなく発見されたCT26ネオエピトープペプチドを含有する同様に製剤化されたワクチンと共に、ANCER(商標)-CT26/ポリ-ICLCを受ける。対照は、生理食塩水またはポリ-ICLCを単独で受ける腫瘍移植マウスのマッチ群を含む。対応するセットのマウスに、ワクチン及び、2週間にわたる隔週の5mg/kg用量の抗PD-1抗体(RMP1-14)を使用したCPIの組み合わせ療法を受けさせ、抗PD-1単剤療法と比較する。
【0267】
11.3 腫瘍進行
【0268】
試験のエンドポイント(2,000mm3の腫瘍容積または45日目のいずれか、どちらか早い方)まで、ノギス測定で腫瘍進行を隔週で追跡する。実験の結果から生存曲線を作成する。それぞれのワクチン候補の効果を、未治療動物と比較して向上した生存率として定義する。ログランク検定を使用して生存関数を比較する。二元配置ANOVAを使用して、その治療効果について異なるワクチン治療群を比較する。テューキーの事後解析を使用して、それぞれのワクチンがその他の群と比較して差別化された治療効果を有しているかどうかを調査する。群あたり10匹のマウス(n=10)のサンプルサイズは、0.05の第一種過誤を考慮し、平均28.8%の標準偏差を有するワクチン群間のエンドポイントまでの中央時間(TTE)における5.97日間の差異を検出するための0.80の検定力を有する。
【0269】
11.4 免疫モニタリング試験
ワクチン群及び対照群あたりの別の6匹のマウスに由来するTIL及び脾細胞の移植後21日目におけるネオアンチゲンに対する応答について、IFNγ、IL-2、及びTNFβ用のex vivo ELISpotアッセイを用いて解析する。フローサイトメトリー解析を使用して、CD4+及びCD8+T細胞の脾臓及びTIL集団(CD45/CD3/CD4/CD8発現)、Tregの数及び頻度(CD25/FoxP3発現)、Tregの機能(CD25 MFI)、CD8+T細胞エフェクター及び消耗状態(GzmA/LAG-3発現及びPD-1 MFI)を特性決定する。腫瘍関連Tregがサプレッサーマクロファージ集団の制御に関連するとされていることから、本発明者らは、M1及びM2頻度の変化について腫瘍のIHCを実施する(F4/80/iNOS/Arg-1)。
【0270】
11.5 予想結果
本発明者らは、ANCER(商標)-CT26が未治療マウスと比較して腫瘍増殖を有意に低下させ、抗PD-1組み合わせ療法が腫瘍制御をさらに高める(場合によっては、完全な制御を発揮する)ものと予想する。Treg誘導が腫瘍増殖を促進することから、Treg誘導性エピトープを含有するワクチンを受けたマウスにおける腫瘍増殖は、Treg誘導性エピトープを含有しないワクチンを接種したマウスにおけるよりも有意に高いものと予想され、これらのマウスにおける腫瘍制御は、未治療マウスにおけるものと類似し得る、または場合により、未治療マウスにおけるものよりも悪くなり得る。CPI療法はこれらのマウスにおける腫瘍制御を改善し得るが、ANCER(商標)-CT26を受けたマウスにおいて認められる組み合わせ効果には近づかない。JANUSMATRIX(商標)を用いることなく設計されたワクチンで治療したマウスは、CPIを用いない状態または用いた状態で、同様に応答するものと予想される。本発明者らは、腫瘍及び全身における免疫応答がこれらの腫瘍増殖予想と相関関係にあるものと予想し、それはすなわち、ANCER(商標)-CT26を受けたマウスの腫瘍における高いマルチサイトカイン産生性CD4T細胞及びCD8T細胞、より低いTreg頻度、脾臓におけるANCER(商標)-CT26ペプチドに対する高いIFNγ応答である。潜在的な課題は、「次善」ワクチンとの区別が不可能なANCER(商標)-CT26で治療したマウスにおける腫瘍制御である。このことは、最適なワクチン投与レジメンが未治療マウスと比較して腫瘍増殖を有意に遅らせることを示すCT26モデルの予備データ(データは省略)を本発明者らが有しているとはいえ、課題であり得る。本発明者らは、この課題に対処するために、ワクチン用量を増加させてもよく、または用量の数を増加させてもよい。加えて、腫瘍増殖がワクチン間の差異を観察するには速すぎる場合、本発明者らは、移植するCT26細胞の数を滴定してもよい。
【0271】
実施例12
(予言的)7つの独立した試験を含む大規模マルチパラメータマウスCT26試験
適切な対照を含む大規模マウスCT26腫瘍試験を実施することが本発明者らの意図である。試験は8つの独立した試験群に関する洞察を本発明者らに与えるものでなければならないことから、8つの適切に制御された試験を作成する。対照を含む試験全体の設計については図16に開示している。
【0272】
12.1 試験#1:腫瘍増殖阻害モデルにおける本発明者らのワクチンの効果(群1、群4、及び群5を含む)
目標は、ANCER(商標)が腫瘍増殖を制御するネオアンチゲンを選択するという概念実証を実証することである。
このことを実証するマウス群は、
・生理食塩水
・ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
を含む。
【0273】
12.2 試験#2:抗PD1との相乗効果(群1、群3、群4、群5、及び群13を含む)
目標は、ワクチン接種及びチェックポイント阻害剤療法の腫瘍制御への寄与を確認することである。
このことを実証するマウス群は、以下を含む。
・生理食塩水
・抗PD-1
・ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水+抗PD-1。
【0274】
12.3 試験#3:抗CTLA4との相乗効果(群1、群2、群4、群5、及び群12を含む)
目標は、ワクチン接種及びチェックポイント阻害剤療法の腫瘍制御への寄与を確認することである。
このことを実証するマウス群は、以下を含む。
・生理食塩水
・抗CTLA-4
・ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水+抗CTLA4。
【0275】
12.4 試験#4:自己及び/またはTregitopeの効果(群1、群4、群5、群6、群9、群10、及び群11を含む)
目標は、Treg誘導性エピトープがネオアンチゲンワクチン効果に対して有する効果を示すことである。
このことを実証するマウス群は、以下を含む。
・生理食塩水
・ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)+10種の自己類似ペプチド(キャップ付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ付加)+10種の自己類似ペプチド(キャップ付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・10種のANCER(商標)ペプチド(キャップ付加)+10種の自己類似ペプチド(キャップ付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水。
【0276】
12.5 試験#5:自己及び/またはTregitopeを排除する効果(1、4、6、及び8を含む)
目標は、ネオアンチゲン選択及びワクチン効果に対するJANUSMATRIX(商標)の効果を示すことである。JANUSMATRIX(商標)は、本明細書で開示する戦略、方法、及び組成物を競合と区別する重要なツールである。20種の配列をANCER(商標)で選択するが、JANUSMATRIX(商標)結果を考慮に入れることはない。
このことを実証するマウス群は、以下を含む。
・生理食塩水
・ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド-JMX無し(キャップ付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水。
【0277】
12.6 試験#6:キャップ付加ペプチドの効果(1、4、5、及び6を含む)
目標は、キャップ付加ペプチドまたはキャップ非付加ペプチドを含有するワクチンの効果を比較することである。デフォルトはキャップ非付加である。キャップ付加により、ワクチン効果を高めるペプチド特性、例えば、半減期または抗原プロセシングなどが変化し得る。
・このことを実証するマウス群は、以下を含む。
・生理食塩水
・ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ非付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水
・20種のANCER(商標)ペプチド(キャップ付加)/ポリ-ICLC/生理食塩水。
【0278】
12.6 予想結果
本試験に含まれるそれぞれの群において認められる効果は、図17に記載の範囲に従うものと予想される。
【0279】
図17.それぞれの試験群の予想相対効果。対照群(群1、群2、群3、群4)、ANCER誘導ワクチンを試験する群(群5、群6、群7)、ワクチンにおけるTregエピトープの効果を試験する群(群8、群9、群10、群11)、及びANCER誘導ワクチンとチェックポイント阻害剤の間の相乗効果を試験する群(群12、群13)について相対効果を示す。
【0280】
実施例13
CT26マウス腫瘍モデルを使用したポリ-ICLCを用いたまたは用いていない抗腫瘍活性
13.1 方法
本実験の目標は、ANCER(商標)選択ネオアンチゲンを含有するペプチドワクチン中にアジュバントポリ-ICLCを含ませるための要件を決定することであった。本実験用に、雌Balb/cマウスに3×105のCT26マウス結腸腫瘍細胞を皮下移植した。ノギス測定で腫瘍増殖をモニターし、腫瘍移植の45日後かまたは腫瘍容積が2000mm3に到達するかのどちらか早い方でマウスを屠殺した。
【0281】
4つのワクチン群を試験した(n=10匹のマウス/群)。
群1=PBSのみ
群2=PBS+50μgのポリ-ICLC
群3=20種のANCER(商標)選択(キャップ非付加)ペプチド+50μgのポリ-ICLC
群4=20種のANCER(商標)選択(キャップ非付加)ペプチドのみ
【0282】
ペプチドワクチンは、5μg/ペプチドの濃度の20種の異なるANCER(商標)選択ペプチド(免疫化あたり100μgのペプチドの総用量)で構成されていた。マウスの免疫化は、腫瘍移植の4日後に開始して、3週間にわたり週に2回、腫瘍移植とは反対側の脇腹に皮下で行った。
【0283】
13.2 結果
図18は、同系CT26マウス腫瘍モデルにおける腫瘍増殖を制御するためにポリ-ICLCと共に投与したANCER(商標)選択ペプチドワクチンの効果を示すグラフである。ポリ-ICLCの不在下で投与したペプチドワクチンでは、溶媒(PBSまたはポリ-ICLCのみ)を受けた動物と比較して、腫瘍増殖を制御できなかった。腫瘍移植の25日後において統計的に有意な腫瘍増殖制御を示す唯一の群が、ANCER(商標)選択ペプチドとポリ-ICLCの両方を受けた群であったことをデータが示した。ポリ-ICLCのみでは、PBSのみを受けたマウスと比較して腫瘍増殖動態の差異を示さなかった。ポリ-ICLCの不在下でANCER(商標)選択ペプチドを受けたマウスはまた、非ペプチド対照またはポリ-ICLCのみと比較して腫瘍増殖を制御できなかった。これらの結果は、腫瘍増殖を制御するために、ポリ-ICLCなどのアジュバントをペプチドワクチン注射に含ませることの必要性を示している。
【0284】
実施例14(予言的)
MB49マウス膀胱モデルにおける最適な免疫原性を有するネオエピトープワクチンの製造
14.1 方法
ネオエピトープワクチン製造において、プロセスが製品である。ミュータノーム及びHLAタイプが人毎に異なることから、同一のネオエピトープワクチンは2つとない。逆に、有効なワクチンを製造するプロセスは変化しない。それゆえ、本発明者らは、2種以上のがんモデルにおいて端から端まで成功する本明細書で開示するネオエピトープワクチン製造プロセスを示すことを提案する。本発明者らは、ヒト膀胱癌とかなり類似していることからマウス移行性MB49腫瘍モデルを選択したが、ヒト膀胱癌とかなり類似しているということがマウス移行性MB49腫瘍モデルを、新規免疫療法を試験するための興味深いモデルとしている。MB49株は、長期初代培養の2日目の化学発がん性物質7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)を用いた単回の24時間処理によって変換されたC57BL/6マウス膀胱上皮細胞から誘導される。膀胱内への注射後、マウスは3~7日間以内に尿路上皮癌を形成するが、浸潤リンパ球はフローサイトメトリーを用いて検出することができる。これらの腫瘍はPD-L1を発現するが、PD-L1はIFNγによって上方制御される。この目的において、本発明者らは、MB49腫瘍モデルをシークエンスし、Teff及びTregネオエピトープを生成する変異を特定し、JANUSMATRIX(商標)を用いて及び用いることなくANCER(商標)選択MB49ネオエピトープワクチン(「ANCER(商標)-MB49」)を設計し、腫瘍保有動物におけるANCER(商標)-MB49ワクチンの抗腫瘍効果を確認することを提案する。
【0285】
14.2 MB49発現ミュータノームの定義
本発明者らは、標準的な次世代シークエンシング技術を使用してMB49エキソーム及びトランスクリプトームをシークエンスし、腫瘍特異的変異を特定するための確立されたバイオインフォマティクス法を使用する。非同義変異をもたらす一塩基多型、インフレーム挿入及び欠失(例えば、インデル)、ならびにフレームシフト挿入及び欠失(例えば、フレームシフト)は、ネオエピトープ予測を進歩させる。
【0286】
14.3 MB49ネオエピトープの予測
本発明者らは、ANCER(商標)プラットフォームを使用して、防御性Teff及び阻害性Tregを誘導する潜在能を有する腫瘍特異的CD8+T細胞ネオエピトープ及び腫瘍特異的CD4+T細胞ネオエピトープを特定する。これら高品質なMHCクラスIネオエピトープ及びMHCクラスIIネオエピトープを含ませるために、可能であれば、それぞれの変異の周辺にネオAg配列を設計する。所定の基準、例えば、(i)MHCクラスI結合能及びMHCクラスII結合能、ならびにTCR接触部の相同性、(ii)転写物の存在量及びクローン性、及び(iii)疎水性(例えば、本明細書で開示する)などに基づいてネオAgをランク付けした後に、上位20種のTeffネオAgをワクチン設計用に選択する。
【0287】
14.4 ワクチン製造
CT26モデルにおいて実現させた作業と同様に、本発明者らは、本発明者らのバイオインフォマティクスによって特定された上位20種のネオAgに相当する上位20種のANCER(商標)選択MB49ネオエピトープ(ANCER(商標)-MB49)を合成し、それらを例示的なアジュバントとしてのポリ-ICLCと配合する。より具体的には、本発明者らは、マルチペプチド合成装置を使用して、固相ペプチド合成(SPPS)プロセスを用い、トリフルオロ酢酸塩としてのペプチド(平均して15~25アミノ酸残基)を合成する。ワクチン中に含まれるペプチドは完全に合成であるが、それらペプチドは完全に、天然の非修飾アミノ酸で構成されている。全てのペプチドは、分析証明書付きの非GMP品質基準で製造される。20種のペプチドを、個々のペプチドの溶解性に応じて最大4%のジメチルスルホキシドを含有する水または等張ブドウ糖中に溶解させ、その後、ポリ-ICLC(0.5mg)と混合する。
【0288】
14.5 腫瘍保有マウスにおけるANCER(商標)-MB49の治療効果の評価
麻酔下、カテーテルを介して、C57BL/6マウスの膀胱内に1×105の腫瘍細胞を点滴する。膀胱の天然環境における腫瘍は、皮下モデルにおけるよりも良好に増殖し、3日間以内に成長する。このモデルの生存期間は最長3週間である。ポリ-ICLCを用いて製剤化されたANCER(商標)-MB49の皮下注射で10匹のマウスの群を感作する。腫瘍点滴マウスの比較群は、JANUSMATRIX(商標)を用いることなく発見されたMB49ネオエピトープペプチドを含有する同様に製剤化されたワクチンを受ける。免疫化スケジュールは、目的2で実施した投与スケジュール試験において決定したとおりである。対照は、生理食塩水またはポリ-ICLCを単独で受ける腫瘍移植マウスのマッチ群を含む。対応する群のマウスに、2週間にわたる隔週の5mg/kg用量で投与する抗PD-1(RMP1-14)と組み合わせたワクチンを受けさせ、抗PD-1単剤療法と比較する。
【0289】
ルシフェラーゼ導入を用いて、試験のエンドポイント(2,000mm3の腫瘍容積または45日目のいずれか、どちらか早い方)まで、生体内イメージング(Xenogen IVIS 200光学イメージングシステム)で腫瘍進行を隔週で追跡する。実験の結果から生存曲線を作成する。それぞれのワクチン候補の効果を、後の時点で測定する。
【0290】
14.6 免疫モニタリング試験
ワクチン群及び対照群あたりの別の6匹のマウスに由来するTIL及び脾細胞の腫瘍移植後21日目におけるネオアンチゲンに対する応答について、上記の実験用に記載したのと同一のプロトコルに従って解析する。
【0291】
14.7 予想結果
本発明者らは、ANCER(商標)-MB49が未処置マウスまたはJANUSMATRIX(商標)を用いることなく設計されたワクチンで処置したマウスと比較して腫瘍増殖を有意に低下させ、抗PD-1組み合わせ療法が腫瘍制御をさらに高める(場合によっては、完全な制御を発揮する)ものと予想する。
【0292】
実施例15(予言的)
in vitro HLAペプチド結合アッセイ
患者の全エキソームシークエンシングデータから特定された個々の腫瘍特異的変異ペプチド(例えば、本明細書で開示する、1種または複数種の特定されたネオエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド)のHLA結合を、in vitro競合結合アッセイで試験することによって確認する。このアッセイでは、試験ペプチドの結合親和性を、結合親和性が既知の対照ペプチドによるHLA結合の阻害を測定することによって確かめる。試験ペプチドを、対応するHLA分子と共に、所定濃度の対照ペプチドと、数種類の濃度で培養する。対照ペプチドのHLA分子への結合が阻害されるレベルをそれぞれの試験ペプチド濃度で測定し、これらのデータを使用して、アッセイで評価する特定のHLA分子に対する試験ペプチドの結合親和性を確認する。
【0293】
実施例16(予言的)
in vitro免疫原性プロトコル
患者特異的HLA分子へのペプチド結合を確認した後、本発明者らは、患者のT細胞が腫瘍特異的変異ペプチド(例えば、少なくとも1種の特定されたネオエピトープ(及び/またはそのフラグメントまたはバリアント)のアミノ酸配列、ならびに任意選択的に、少なくとも1種の特定されたネオエピトープのN末端及び/またはC末端上に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるかである少なくとも1種の特定されたネオエピトープを含む対象特異的ペプチドまたはポリペプチド)を認識してそれらに応答する能力を測定する。患者HLA分子と結合することが確認された変異ペプチドを合成して、患者由来の専業的な抗原提示細胞(pAPC)、例えば、自家樹状細胞またはCD40Lで増殖した自家B細胞などを興奮させるのに使用する。IL-2及びIL-7の存在下における、ペプチドで興奮させた自家pAPCを用いた毎週のin vitro再刺激を使用して、患者由来T細胞を増殖させる。数週間の培養後、IFN-γ放出を測定するためのELISpotアッセイを用いて、増殖したT細胞のペプチド-HLA特異的反応性を試験する。クロム放出アッセイなどのin vitro殺傷アッセイ、または患者T細胞クローンを用いた同等の方法を使用して、ペプチド特異的T細胞応答の更なる特性決定を実施してもよい。T細胞クローンは、ペプチドで興奮させた自家pAPCを使用し、標準的なプロトコルに従った限界希釈による追加のクローニングステップを含む、in vitro刺激によって作製される。
【0294】
実施例17(予言的)
阻害性Tregペプチド配列の評価
エフェクターT細胞機能を抑制することができる阻害性の制御性T細胞(Treg)応答を活性化させるペプチド配列の能力は、破傷風トキソイドバイスタンダー抑制アッセイ(TTBSA)と呼ばれるin vitroアッセイを使用して評価する。このアッセイは、破傷風トキソイドに特異的なメモリーT細胞の機能を抑制するTregの能力に基づいている。破傷風トキソイドを用いた免疫化歴を有する患者に由来する末梢血単核球(PBMC)を培養することにより、破傷風トキソイド特異的CD4+エフェクターT細胞の増殖がもたらされる。Tregが認識するペプチドを破傷風トキソイドと共にin vitroで加えると、破傷風トキソイド特異的CD4+エフェクターT細胞の活性化及び増殖がTregによって用量依存的に阻害される。このエフェクターT細胞の活性化及び増殖の阻害は、ペプチド特異的Treg活性の指標として使用される。
【0295】
実施例18(予言的)
阻害性Tregペプチド配列の評価
交差反応性または自己反応性のT細胞応答は、非同義アミノ酸置換を含有し自家pAPCによって提示されるネオエピトープペプチドを使用したT細胞のin vitro感作によって試験される。このin vitro免疫原性プロトコルは、Wullner et al.が確立した方法(Wullner D,Zhou L,Bramhall E,Kuck A,Goletz TJ,Swanson S,Chirmule N,Jawa V.Considerations for Optimization and Validation of an In vitro PBMC Derived T cell Assay for Immunogenicity Prediction of Biotherapeutics.Clin Immunol 2010 Oct;137(1):5-14(その全体は参照により組み込まれる))に従っていてもよい。次に、ネオエピトープペプチドへのin vitro感作後に拡張するT細胞が、対応する天然または野生型(非変異)のペプチドエピトープに対する反応性について試験される。天然のペプチド配列に対する反応性は、IFNγ、TNFα、IL-2を含むがこれらに限定されないサイトカイン産生、及び/または、CD107a及びグランザイムBを含むがこれらに限定されないT細胞エフェクター機能のマーカーを測定することによって確認される。
【0296】
本発明の実施形態を詳細に例示及び記載してきたが、別の態様及び実施形態が添付の特許請求の範囲によって定義されるクレームの範囲内であることを当業者は理解するであろう。
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【配列表】
2023523664000001.app
【国際調査報告】