IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンジオメト・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・メディツィンテクニク・カーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】ステントグラフトおよびキット
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20230531BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022543666
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2020051236
(87)【国際公開番号】W WO2021148105
(87)【国際公開日】2021-07-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510294003
【氏名又は名称】アンジオメト・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・メディツィンテクニク・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ブライヤー,ピーア・ウーテ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC03
4C097DD10
4C097EE12
4C097EE17
4C097FF04
(57)【要約】
本発明は、ステントグラフトに関し、ステントグラフトは、中空のステントグラフト本体であって、ステントグラフト本体の一方の端部からステントグラフト本体の他方の各端部へと延在する内腔を有する、中空のステントグラフト本体と、ステントグラフト本体の内部に設けられる拡張可能リザーバとを備え、拡張可能リザーバが、拡張可能リザーバの内腔と面する側において隔離層で被覆されており、拡張可能リザーバが、血液にさらされると膨張するように構成されており、隔離層が、拡張可能リザーバが内腔に流れる血液にさらされるのを防ぐように構成されており、隔離層が、拡張可能リザーバを選択的に血液にさらして拡張可能リザーバを膨張させることができるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のステントグラフト本体(12)であって、前記ステントグラフト本体の一方の端部から前記ステントグラフト本体の他方の各端部へと延在する内腔(13)を有する、中空のステントグラフト本体(12)と、
前記ステントグラフト本体(12)の内部に設けられる拡張可能リザーバ(14)と
を備え、
前記拡張可能リザーバ(14)が、前記拡張可能リザーバ(14)の前記内腔に面する側において隔離層(16)で被覆されており、前記拡張可能リザーバ(14)が、血液にさらされると膨張するように構成され、前記隔離層(16)が、前記拡張可能リザーバ(14)が前記内腔を流れる血液にさらされるのを防ぐように構成されており、
前記隔離層(16)が、前記拡張可能リザーバ(14)を選択的に血液にさらして前記拡張可能リザーバ(14)を膨張させることができるように構成されている、
ステントグラフト(10)。
【請求項2】
前記拡張可能リザーバ(14)と前記隔離層(16)との間に半透過性膜(15)をさらに備える、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記隔離層(16)が、事前設定された波長の光(20)にさらされると前記拡張可能リザーバを血液にさらすように構成されている、請求項1または2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記隔離層(16)が、1つまたは複数の化学物質にさらされると血液に対して透過性になるように構成されている、請求項1または2に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記拡張可能リザーバ(14)が前記内腔を取り囲むリングの形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記ステントグラフト(10)が複数の拡張可能リザーバ(14)を備え、前記複数の拡張可能リザーバ(14)が、前記ステントグラフト本体の内側の異なる軸方向位置に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のステントグラフト(10)と、前記隔離層(16)に前記拡張可能リザーバ(14)を血液にさらさせ、これにより前記拡張可能リザーバ(14)が膨張することを可能にするように構成されたカテーテル(18)とを備える、部品のキット。
【請求項8】
部品のキットであって、請求項3に記載のステントグラフトを備えるとき、前記カテーテルが、前記カテーテルの近位端部から前記カテーテルの遠位端部へと、したがって前記カテーテルから出て行くように光(20)を伝えるように構成された光ファイバを備え、前記部品のキットが、前記事前設定された波長の光を発するように構成された光源をさらに備え、前記光ファイバが、前記カテーテルの前記遠位端部へと前記光を伝達するように構成されている、部品のキット。
【請求項9】
部品のキットであって、請求項4に記載のステントグラフトを備えるとき、前記カテーテルが、1つまたは複数の適当な化学物質を放出するように構成され、前記1つまたは複数の適当な化学物質は、前記隔離層(16)を透過性にするように選択されて、前記拡張可能リザーバが血液にさらされたことによって膨張することを可能にする、部品のキット。
【請求項10】
ステントグラフトであって、
中空のステントグラフト本体であって、前記ステントグラフト本体の第1の端部から前記ステントグラフト本体の第2の端部へと延在する内腔を有する、中空のステントグラフト本体と、
前記ステントグラフト本体の内部に設けられる拡張可能リザーバと
を備え、
前記拡張可能リザーバが、血液にさらされると膨張するように構成されているが、前記拡張可能リザーバが前記内腔を流れる血液にさらされることを防ぐために、前記拡張可能リザーバの前記内腔と面する側において隔離層で被覆されており、前記隔離層が、前記拡張可能リザーバを選択的に血液にさらすように構成されている、
ステントグラフト。
【請求項11】
前記拡張可能リザーバと前記隔離層との間に半透過性膜をさらに備える、請求項10に記載のステントグラフト。
【請求項12】
前記隔離層が、事前設定された波長の光にさらされると前記拡張可能リザーバを血液にさらすように構成されている、請求項10または11に記載のステントグラフト。
【請求項13】
前記隔離層が、1つまたは複数の化学物質にさらされると血液に対して透過性になるように構成されている、請求項10、11、または12に記載のステントグラフト。
【請求項14】
前記拡張可能リザーバが、前記内腔を取り囲むリングの形状を含む、請求項10、11、12、または13に記載のステントグラフト。
【請求項15】
前記拡張可能リザーバが、前記ステントグラフト本体の前記内部の異なる軸方向位置に配置される複数の別個の拡張可能リザーバを備える、請求項10から14のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経頸静脈肝内門脈大循環シャント(TIPS)として使用され得るステントグラフト、およびこうしたステントグラフトを備えるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
門脈圧亢進症は、肝臓を通して最終的に心臓へと静脈血を戻しているが(肝硬変などの)病変のある肝臓の状態によりこれが妨げられた、消化器官の静脈脈管構造系での圧力の上昇である。治療されないと、これはしばしば腸内出血を引き起こし、または場合によっては生命を脅かす食道出血を引き起こす。他の合併症は、過度の静脈血管の拡張(「静脈瘤」)の形成である場合があり、これは突然の出血および死、または腹膜に水が蓄積した腹水症を引き起こす場合がある。
【0003】
経頸静脈肝内門脈大循環シャント(TIPS)は門脈圧亢進症およびその合併症に対処するために使用される。TIPSステントグラフト、すなわちカバードステントで製作されるシャントは、肝臓内に作り出された人工チャネルを通って延在し、門脈から肝静脈への静脈血を再定着させて、肝臓全体の圧力勾配を減少させる。
【0004】
しかし、TIPSを配置した後、シャントを通って肝臓を迂回する静脈の流れが過度に多くなることにより、患者の20%~30%は肝性脳症に苦しむ。これは、かなりの量の血液が肝臓を迂回することにより、濾過される血液の割合がより小さくなり、したがって、大量の濾過されていない血液および有毒な分子が脳に入るからである。このように生じる肝性脳症は、人格の変化、知的障害、および意識レベルの低下によって特徴付けられる精神神経系の異常を伴う。
【0005】
さらに、患者の生存が芳しくない。肝性脳症の発生は入院につながり、1年間で約42%、3年間で約23%の生存可能性に関連付けられる。肝性脳症はTIPSを通る血流が過剰に多くなることによって生じるということを考えれば、配置後にその直径を縮小することができるTIPSの必要性が存在する。
【0006】
市販のTIPSステントグラフトは、門脈の圧力を最適化するために、配置時に約8mmである初期直径から約10mmの直径へと拡大させられる能力を有する。しかし、すべての装置が配置後にその直径を調節する能力を有しているとは限らず、具体的には、現在利用可能な装置は配置後にその直径を制限することができない。
【0007】
さらに、TIPSシャントはその直径が時間とともに拡大する場合があり、したがって血流が後に増加するのを可能にすることが、医学界で知られるようになってきている。また、この挙動は肝性脳症を引き起こす、または悪化させる可能性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、配置後にその直径を縮小することができるTIPSステントグラフトを提供する必要性がある。また、他の状況では、その直径を縮小することができるステントグラフトが望まれる。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決することを目的とし、配置後にその直径を縮小することができるステントグラフト、具体的にはTIPSステントグラフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、TIPS処置に使用され得るステントグラフトは、被覆されたステントによって形成された中空のステントグラフト本体を備える。ステントは自己拡張ステントでもよく、たとえばニチノールで製作されてもよい。ステントは適した被覆材料(たとえば延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」))によって被覆され、したがって中空の管を作り出す。特定の実施形態では、TIPSステントグラフトのステントはベアである(すなわちその箇所にはステントを被覆する被覆材料が存在しない)。この被覆されていない部分は、門脈にTIPSステントグラフトを係留するように機能することができる。
【0011】
このステントグラフト本体は、ステントグラフト本体の一方の長手方向端部からステントグラフト本体の他方の各長手方向端部へと延在する内腔を備える。内腔は、ステントグラフト本体の一方の端部からこのステントグラフト本体の他方の各端部へと液体が流れることを可能にするように機能することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、ステントグラフト本体の内部に拡張可能リザーバが設けられる。すなわち、その拡張可能リザーバは内腔に面するように設けられる。拡張可能リザーバは、この内腔に流れる任意の液体から拡張可能リザーバを隔離するために、拡張可能リザーバの内腔に面する側において隔離層で被覆される。拡張可能リザーバは血液にさらされる(換言すれば、血液に対して露出される)と膨張するように構成される。これは、拡張可能リザーバがやはり生体適合性であるべき浸透圧的活性物質(osmotically active substance)を含有していることに起因していてもよい。たとえば、透析で使用されるような適当なサイズの糖分子(つまり、水分子よりも著しく大きい分子を有する糖)を浸透圧的活性物質として使用することができる。
【0013】
隔離層は、拡張可能リザーバが内腔に流れる血液にさらされるのを防ぐように構成される。すなわち、血液にさらされたときに拡張可能リザーバが膨張するのを防ぐのはこの隔離層である。臨床医によって所望されていなければ隔離層が拡張可能リザーバを血液にさらさないように、この隔離層は不透過性であるべきであり、血液に不溶性であるべきである。
【0014】
隔離層は、拡張可能リザーバを選択的に血液にさらして、拡張可能リザーバを膨張させることができるように構成される。隔離層が拡張可能リザーバを血液にさらすと、血漿または水などの血液の成分が拡張可能リザーバに浸透して、拡張可能リザーバを拡張させることになる。これにより、内腔の断面積が縮小することになる。したがって、このステントグラフトは配置後にその内径を縮小することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、拡張可能リザーバと隔離層との間に半透過性膜が存在し、この膜は拡張可能リザーバとは異なる材料で製作される。こうした膜は、たとえば、水分子が通過することは可能にするが浸透圧的活性物質の分子が通過することは可能にしない細孔サイズを有するポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、または酢酸セルロースもしくは改質セルロースで製作されてもよい。こうした半透過性膜は、水分子がそこを通過することは可能にするが、糖または他のより大きい分子が通過することは可能にしない。こうした半透過性膜は拡張可能リザーバの材料を保持することに優れており、すなわち、半透過性膜により、拡張可能リザーバの浸透圧性物質などの材料が、ステントグラフトの壁に近いその定位置に保持されることが確実となる。したがって、半透過性膜により、拡張可能リザーバがその形状を保持することが確実となる。
【0016】
いくつかの実施形態では、隔離層は、事前設定された波長の光にさらされると拡張可能リザーバを血液にさらすように構成される。そうすることにより、具体的には、事前設定された一定の波長の光にさらされると分解することになる隔離層を使用することにより、その波長の光を伝える光ファイバを備えるカテーテルを、配置されたステントグラフトへと導入し、次いでその光ファイバを通して隔離層に適当な光を照らすことによって、拡張可能リザーバを血液にさらすことが容易になる。こうした隔離層は、500~540nmの波長を有する光にさらされると劣化する両親媒性共重合体で製作されてもよい。適した材料は、ポリアクリラート、ポリトリアジン、およびポリケタルの単独重合体およびブロック共重合体を含む。たとえばポリスチレンと合成されたビニルケトンベースのブロック重合体の薄膜は、366nnmでの光劣化性を有し、PEGMAポリマーブラシ基板は400nmで光劣化する。さらなる詳細は、G.Pasparakisら、「Photodegradable Polymers for Biotechnological Applications」、Macromol.Rapid Commun.2012、33、183-198に見て取ることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、隔離層は、ある化学物質、または適した化学物質にさらされると、血液に対して透過性になるように構成される。こうしたステントグラフトは、容易に実装することができ、容易に溶解される、すなわち隔離層を単に適切な薬剤にさらすことによって容易に溶解される隔離層を有することができる。たとえば、こうした薬剤でコーティングされたカテーテルを患者の脈管構造へと導入してもよく、または別法として、カテーテルに依存する必要なしに、こうした薬剤を患者の脈管構造へと注入してもよい。
【0018】
複数の実施形態では、拡張可能リザーバは内腔を取り囲むリングとして形成される。これにより、拡張可能リザーバが拡張するとき、直径が均一に縮小する。
いくつかの実施形態では、ステントグラフトは、ステントグラフト本体の内側の異なる軸方向位置に配置される複数の別個の拡張可能リザーバを備える。こうした構成を有することにより、設計において柔軟性が提供され、また必要な場合、いくつかのリザーバのみを拡張し、リザーバのすべては拡張しないことも可能になる。これにより、ステントグラフトの断面直径を縮小する際により柔軟性が与えられる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、本発明は、これまでに定義されたステントグラフトと、隔離層に拡張可能リザーバを血液にさらさせ、それによって拡張可能リザーバが膨張することを可能にするように構成されたカテーテルとを備える、部品のキットに関する。
【0020】
いくつかの実施形態では、部品のキットは、事前設定された波長の光にさらされると拡張可能リザーバを血液にさらすように構成された隔離層を有するステントグラフトと、カテーテルの近位端部からカテーテルの遠位端部へと、次いでカテーテルから出て行くように光を伝えるように構成された光ファイバを備えるカテーテルとをともに備え、すなわち、光はカテーテルの遠位端部から出て行く。部品のキットは、事前設定された波長の光を発するように構成された光源をさらに備え、したがって、この事前設定された波長の光により、隔離層は分解することができる。部品のキットなどを使用すると、ステントグラフトは、必要に応じて、埋め込み後であっても容易にその直径を縮小させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、部品のキットは、隔離層を備えたステントグラフトと、1つまたは複数の適当な化学物質を放出するように構成されたカテーテルとを備える。こうした化学物質を放出することにより、隔離層を分解させて、したがって血液の少なくともいくつかの成分に対して透過性にし、それにより、拡張可能リザーバが膨張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態によるTIPSステントグラフトの断面を概略的に示す図である。
図2】この実施形態によるステントグラフトが使用され得る方式を示す図である。
図3】拡張した状態の本発明の実施形態のステントグラフトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1a)には、本発明によるTIPSステントグラフト10の断面図が示してある。図示されていないが、ステントグラフト10の長手方向端部のうちの一方はベアステント(換言すれば、裸ステント)を有し、すなわちその端部は、ステントグラフト10の基礎をなすステント用の被覆材料を有しない。
【0024】
ステントグラフト10は、中空の管状の形状を有するステントグラフト本体12を備える。ステントグラフト本体12、すなわちTIPSステントの本体は内腔13を取り囲み、内腔13により、ステントグラフト10に流体が流れることができる。図1b)により詳細に示されているように、ステントグラフト本体12の内側には、最初に半透過性膜15によって被覆され、次いで隔離層16によって被覆された拡張可能リザーバ14が設けられる。拡張可能リザーバ14は浸透圧的活性物質を備える。隔離層16は血液またはその成分のいくつかに対しては透過性であるが、拡張可能リザーバ14の材料は通さず、したがってその材料を定位置に保持する。半透過性膜15は血液またはその成分の少なくともいくつかに対しては透過性であるが、拡張可能リザーバ14の材料に対しては不透過性である。したがって、隔離層16が血液に対して透過性にされているとき、拡張可能リザーバ14は膨張することになる。
【0025】
図1a)、b)に示されているステントグラフト10は患者の身体に埋め込まれる。配置後しばらくしてTIPSステントグラフト10の直径をさらに制限することが所望される場合、図2a)、b)に示されている処置を実施することができる。光ファイバ(図示せず)を備えるカテーテル18が患者の脈管構造へと導入される。この光ファイバを通して、紫外線などの光20が隔離層16の表面を照らして隔離層16を分解することができるが、半透過性膜15は光に影響されないままである。したがって、拡張可能リザーバ14は内腔13に流れる血液にさらされる。
【0026】
図3から見て取ることができるように、血液中に存在する液体により、リザーバ14は拡張する。この拡張により、血液が流れるのに利用可能な内腔13内の容積が縮小する。したがって、ステントグラフト10は、必要に応じてその内径を縮小することができる。
【0027】
この実施形態では、隔離層16が光によって透過性にされる状況が説明されたが、隔離層16を適当な薬剤にさらすことによってこの層を透過性にすることも可能である。さらに、たとえば、引き抜くことができ、引き抜かれると隔離層16を引き裂くことになる、隔離層16に埋め込まれた糸を有することにより、隔離層16を機械的に破砕する機構を実装することも想定可能である。化学反応によって透過性にすることができる隔離層16を使用することが望まれる場合、適当な化学物質でコーティングされたPTAバルーンを備えたカテーテルを使用することができる。バルーンがステントグラフトの内側に配置されると、バルーンは次いで拡張して、隔離層16と接触することができる。その接触により、隔離層16は透過性になることになり、したがって拡張可能リザーバは膨張することができる。
図1a-1b】
図2a-2b】
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のステントグラフト本体(12)であって、前記ステントグラフト本体の一方の端部から前記ステントグラフト本体の他方の各端部へと延在する内腔(13)を有する、中空のステントグラフト本体(12)と、
前記ステントグラフト本体(12)の内部に設けられる拡張可能リザーバ(14)と
を備え、
前記拡張可能リザーバ(14)が、前記拡張可能リザーバ(14)の前記内腔に面する側において隔離層(16)で被覆されており、前記拡張可能リザーバ(14)が、血液にさらされると膨張するように構成され、前記隔離層(16)が、前記拡張可能リザーバ(14)が前記内腔を流れる血液にさらされるのを防ぐように構成されており、
前記隔離層(16)が、前記拡張可能リザーバ(14)を選択的に血液にさらして前記拡張可能リザーバ(14)を膨張させることができるように構成されている、
ステントグラフト(10)。
【請求項2】
前記拡張可能リザーバ(14)と前記隔離層(16)との間に半透過性膜(15)をさらに備える、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記隔離層(16)が、事前設定された波長の光(20)にさらされると前記拡張可能リザーバを血液にさらすように構成されている、請求項1または2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記隔離層(16)が、1つまたは複数の化学物質にさらされると血液に対して透過性になるように構成されている、請求項1または2に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記拡張可能リザーバ(14)が前記内腔を取り囲むリングの形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記ステントグラフト(10)が複数の拡張可能リザーバ(14)を備え、前記複数の拡張可能リザーバ(14)が、前記ステントグラフト本体の内側の異なる軸方向位置に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のステントグラフト(10)と、前記隔離層(16)に前記拡張可能リザーバ(14)を血液にさらさせ、これにより前記拡張可能リザーバ(14)が膨張することを可能にするように構成されたカテーテル(18)とを備える、部品のキット。
【請求項8】
請求項7に記載の部品のキットであって、請求項3に記載のステントグラフトを備えるとき、前記カテーテルが、前記カテーテルの近位端部から前記カテーテルの遠位端部へと、したがって前記カテーテルから出て行くように光(20)を伝えるように構成された光ファイバを備え、前記部品のキットが、前記事前設定された波長の光を発するように構成された光源をさらに備え、前記光ファイバが、前記カテーテルの前記遠位端部へと前記光を伝達するように構成されている、部品のキット。
【請求項9】
請求項7に記載の部品のキットであって、請求項4に記載のステントグラフトを備えるとき、前記カテーテルが、1つまたは複数の適当な化学物質を放出するように構成され、前記1つまたは複数の適当な化学物質は、前記隔離層(16)を透過性にするように選択されて、前記拡張可能リザーバが血液にさらされたことによって膨張することを可能にする、部品のキット。
【請求項10】
ステントグラフトであって、
中空のステントグラフト本体であって、前記ステントグラフト本体の第1の端部から前記ステントグラフト本体の第2の端部へと延在する内腔を有する、中空のステントグラフト本体と、
前記ステントグラフト本体の内部に設けられる拡張可能リザーバと
を備え、
前記拡張可能リザーバが、血液にさらされると膨張するように構成されているが、前記拡張可能リザーバが前記内腔を流れる血液にさらされることを防ぐために、前記拡張可能リザーバの前記内腔と面する側において隔離層で被覆されており、前記隔離層が、前記拡張可能リザーバを選択的に血液にさらすように構成されている、
ステントグラフト。
【請求項11】
前記拡張可能リザーバと前記隔離層との間に半透過性膜をさらに備える、請求項10に記載のステントグラフト。
【請求項12】
前記隔離層が、事前設定された波長の光にさらされると前記拡張可能リザーバを血液にさらすように構成されている、請求項10または11に記載のステントグラフト。
【請求項13】
前記隔離層が、1つまたは複数の化学物質にさらされると血液に対して透過性になるように構成されている、請求項10、11、または12に記載のステントグラフト。
【請求項14】
前記拡張可能リザーバが、前記内腔を取り囲むリングの形状を含む、請求項10、11、12、または13に記載のステントグラフト。
【請求項15】
前記拡張可能リザーバが、前記ステントグラフト本体の前記内部の異なる軸方向位置に配置される複数の別個の拡張可能リザーバを備える、請求項10から14のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【国際調査報告】